(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】燃料電池用触媒層、その製造方法、それを含む膜-電極接合体及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20231124BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20231124BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20231124BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20231124BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231124BHJP
B01J 23/42 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/88 K
H01M8/10 101
B01J23/42 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528341
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 KR2021018237
(87)【国際公開番号】W WO2022145771
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189933
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】コ ギョンブン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンイル
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ドンジュン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナコン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュスン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スンヨン
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169DA05
5H018AA06
5H018AS02
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5H018HH01
5H018HH03
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
本発明は、燃料電池用触媒層、その製造方法、それを含む膜-電極接合体及び燃料電池に関し、より詳しくは、前記触媒層は触媒、放熱素材及びアイオノマーを含むことにより、触媒層で発熱反応によって発生する熱を効率的に外部に排出させ、触媒層の温度上昇による膜-電極接合体の劣化現象を抑制できる効果がある燃料電池用触媒層、その製造方法、それを含む膜-電極接合体及び燃料電池に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒、放熱素材及びアイオノマーを含む燃料電池用触媒層。
【請求項2】
前記触媒は担体及び前記担体に担持された金属粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項3】
前記担体は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、多孔性炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン及びグラフェンからなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項4】
前記金属粒子は白金又は白金系合金を含むことを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項5】
前記放熱素材は、前記触媒と隣接し、前記触媒層内に不規則に分布されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項6】
前記放熱素材は、セラミックナノ粒子、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)、及びポリアセチレンからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項7】
前記セラミックナノ粒子は、窒化ホウ素(Boron nitride)、窒化アルミニウム(Aluminum nitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、炭化ケイ素(Silicon carbide)、及び酸化ベリリウム(Beryllium oxide)からなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項8】
前記セラミックナノ粒子は平均直径が10~500nmであることを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項9】
前記触媒層の厚さは1~15μmであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項10】
アノード電極;
カソード電極;及び
前記アノード電極と前記カソード電極との間に位置するイオン交換膜を含み、
前記アノード電極及び前記カソード電極の中で一つ以上は、請求項1項~9項のいずれか一項に記載の触媒層を含む膜-電極接合体。
【請求項11】
請求項10に記載の膜-電極接合体を含む燃料電池。
【請求項12】
触媒、放熱素材、アイオノマー及び分散媒を含む電極スラリーを準備するステップ;
前記電極スラリーを基材上にコーティングしてスラリー層(slurry layer)を形成するステップ;及び
前記スラリー層から前記分散媒を除去するステップ;
を含む、
燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項13】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記分散媒は、前記電極スラリーの全体重量に対して80重量%~95重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項14】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記放熱素材は、前記電極スラリーの全体重量に対して0.1~15重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項15】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記触媒と放熱素材の重量比は5:1~20:1であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項16】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記触媒とアイオノマーの重量比は10:1~2:3であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項17】
前記電極スラリーを準備するステップは、均質混合するステップを含み、
前記均質混合するステップは、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合機からなる群から選択されるいずれか一つを用いて混合することを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月31日付で出願された韓国特許出願第10-2020-0189933号に対する優先権を主張するものであり、当該出願の明細書及び図面に開示された全ての内容は、引用により本出願に援用される。
【0002】
本発明は、燃料電池用触媒層、その製造方法、それを含む膜-電極接合体及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池(fuel cell)は、メタノール、エタノール、天然ガスといった炭化水素系の物質中に含まれている水素と酸素の化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電システムである。このような燃料電池の代表例としては、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)を挙げることができる。前記PEMFCは次世代エネルギー源として脚光を浴びており、特に自動車関連分野において環境にやさしいというイメージなどの利点から、商用化に向けた研究が活発に行われている。
【0004】
前記燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させる膜-電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly、MEA)は、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を挟んで、アノード電極(通称、燃料極又は酸化電極と言う)とカソード電極(通称、空気極又は還元電極と言う)とが位置する構造を有する。各電極は、触媒、アイオノマー、溶媒及び添加剤からなっており、前記構成要素の中で触媒は燃料電池の活性及び耐久性を決定する主要な因子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、触媒層で発生する発熱反応による膜-電極接合体の劣化を抑制することができる電極の触媒層を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記触媒層を含む膜-電極接合体を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、前記膜-電極接合体を含む燃料電池を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、前記触媒層の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例に係る燃料電池用触媒層は、触媒、放熱素材及びアイオノマーを含む。
【0010】
このとき、前記触媒は担体及び前記担体に担持された金属粒子を含むものであってもよい。
【0011】
前記担体は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、多孔性炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン及びグラフェンからなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0012】
前記金属粒子は白金又は白金系合金を含むことができる。
【0013】
前記放熱素材は、前記触媒と隣接し、触媒層内に不規則に分布されていてもよい。
【0014】
放熱素材は、セラミックナノ粒子、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)、及びポリアセチレンからなる群から選択される一つ以上を含むことができる。
【0015】
前記セラミックナノ粒子は、窒化ホウ素(Boron nitride)、窒化アルミニウム(Aluminum nitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、炭化ケイ素(Silicon carbide)、及び酸化ベリリウム(Beryllium oxide)からなる群から選択される一つ以上を含むことができ、前記セラミックナノ粒子の平均直径は10~500nmであってもよい。
【0016】
前記触媒層の厚さは1~15μmであってもよい。
【0017】
本発明の他の一実施例に係る膜-電極接合体は、アノード電極;カソード電極;及び前記アノード電極と前記カソード電極との間に位置するイオン交換膜を含み、前記アノード電極及び前記カソード電極の中で一つ以上は、前記触媒層を含む。
【0018】
本発明の別の一実施例に係る燃料電池は、前記膜-電極接合体を含む。
【0019】
本発明の別の一実施例に係る燃料電池用触媒層の製造方法は、触媒、放熱素材、アイオノマー及び分散媒を含む電極スラリーを準備するステップ;前記電極スラリーを基材上にコーティングしてスラリー層(slurry layer)を形成するステップ;及び前記スラリー層から前記分散媒を除去するステップを含む。
【0020】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記分散媒は、前記電極スラリーの全体重量に対して80重量%~95重量%であるものであってもよい。
【0021】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記放熱素材は、前記電極スラリーの全体重量に対して0.1~15重量%であるものであってもよい。
【0022】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記触媒と放熱素材の重量比は5:1~20:1であってもよく、前記触媒とアイオノマーの重量比は10:1~2:3であってもよい。
【0023】
前記電極スラリーを準備するステップは、均質混合するステップを含み、前記均質混合するステップは、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合機からなる群から選択されるいずれか一つを用いて混合することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の触媒層は、放熱素材を含むことにより、触媒層で発熱反応によって発生する熱を効率的に外部に排出させ、触媒層の温度上昇による膜-電極接合体の劣化現象を抑制できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例に係る製造された電極のTEM写真である。
【0026】
【
図2】本発明の実施例に係る製造された電極のSEM写真である。
【0027】
【
図3】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリを概略的に示す断面図である。
【0028】
【
図4】本発明の一実施例に係る燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。
【0029】
【
図5】本発明の実施例、比較例に係る触媒耐久性の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0031】
本発明の要約は、本発明の範囲内で一般的な構成を示すためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。また、本発明の要約は、本発明の全体や実施例を完全に掲示したものではない。
【0032】
本発明の詳しい説明及び特定の実施例は、本発明の実施例を示すものであって、本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。また、掲示された複数の実施例は、他の特徴として有する他の実施例や、掲示された特徴として有する実施例の組み合わせからなる他の実施例を除外することを意味するものではない。
【0033】
本発明で使用される「好ましい」又は「好ましくは」は、特定の条件下で特定の利点を有する本発明の実施例を示す。しかし、他の実施例も同じ条件又は異なる条件下で好ましい場合がある。また、一つ以上の好ましい実施例は、他の実施例が有用ではないことを意味するものではなく、本発明の範囲内にある他の実施例を排除することでもない。
【0034】
本明細書で使用される「含む」という用語は、本発明に有用な材料、組成物、装置、及び方法を列挙する際に使用され、その列挙された例に制限されるものではない。
【0035】
本発明の一実施例に係る燃料電池用触媒層は、触媒、放熱素材及びアイオノマー(ionomer)を含む。
【0036】
前記触媒は、水素酸化反応、酸素還元反応に触媒として使用できる金属粒子ならいかなるものを含んでも構わず、好ましくは、白金系金属を含むことができる。前記白金系金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金-M合金(前記Mは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)及びロジウム(Rh)からなる群から選択されるいずれか一つ以上)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される一つを含むことができ、より好ましくは、前記白金系触媒金属群から選択された2種以上の金属を組み合わせたものを使用することができるが、これに限定されるものではなく、本発明の技術分野で使用可能な白金系触媒金属なら制限なく使用することができる。
【0037】
例えば、前記白金系合金は、(i)Pt-Co、Pt-Pd、Pt-Mn、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ir、Pt-Ru、Pt-Ni、Pt-Feなどの二元合金(binary alloy)、(ii)Pt-Ru-W、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Ir、Pt-Co-Mn、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr-Irなどの三元合金(ternary alloy)、又は(iii)Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Ru-Ir-Niなどの四元合金(quaternary alloy)であってもよいが、前記の例示に限定されるものではない。
【0038】
前記触媒の金属粒子と放熱素材は非担持状態で使用することができるが、触媒の金属粒子が担体に担持されたものが、前記金属粒子と放熱素材の凝集現象による表面積の低下を防ぐことができる。したがって、前記触媒層において触媒は担体及び前記担体に担持された金属粒子を含むことができ、放熱素材は前記触媒と隣接して触媒層に不規則に分布することが、触媒層の触媒効率と放熱素材の放熱効率において好ましい。
【0039】
前記担体は、炭素系担体、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、ゼオライトなどから選択することができる。前記炭素系担体は、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nano tube、CNT)、炭素球(carbon sphere)、カーボンリボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、グラフェン、活性炭素、及びこれらの一つ以上の組み合わせから選択することができるが、これに限定されるものではなく、本発明の技術分野で使用可能な担体なら制限なく使用することができる。好ましくは、前記担体は炭素系素材であって、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、及びグラフェンの中で一つの素材を含むことが、触媒との電子交換をより容易にするのに役に立つことができる。
【0040】
前記金属粒子が前記担体に担持された場合、適切な触媒効果を発現するために、前記担体は、50m2/g以上又は50~1200m2/gの比表面積と、10~300nm又は20~200nmの平均粒径を有することが好ましい。
【0041】
前記担体に担持された触媒金属粒子と放熱素材は、前記担体の表面上に位置することもでき、前記担体の内部気孔(Pore)を埋めながら担体の内部に浸透することもできる。
【0042】
前記放熱素材は、触媒表面で起こる発熱反応による熱エネルギーを触媒層の外部に効率的に伝達するのに役立つ。前記放熱素材は、具体的には、セラミックナノ粒子、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)、及びポリアセチレンからなる群から選択される一つ以上を含むことができる。好ましくは、ポリアセチレンを使用する場合、前記セラミックナノ粒子と共に使用することが放熱機能をさらに高めることができる。
【0043】
前記セラミックナノ粒子は、具体的には、窒化ホウ素(Boron nitride)、窒化アルミニウム(Aluminum nitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、炭化ケイ素(Silicon carbide)、及び酸化ベリリウム(Beryllium oxide)からなる群から選択される一つ以上であってもよい。前記セラミックナノ粒子は、前記担体に担持されて触媒層の表面積を高めるだけでなく、熱伝導性に優れて、熱を容易に触媒層の外部に伝達する効果、及び触媒層内の水分蒸発抑制効果を有する。したがって、前記セラミックナノ粒子は平均直径が10~500nmであることが好ましく、前記範囲より大きい場合、大きい粒子による表面積の増加がごくわずかであって、放熱効果をまともに付与することが難しいという問題が発生する可能性があり、前記範囲より小さい場合、粒子同士、又は、触媒周辺に凝集現象などが発生して、触媒の機能をむしろ低下させかねないという問題が発生する可能性がある。
【0044】
また、前記放熱素材は、重量平均分子量(Mw)が3,500,000~10,500,000である超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)を含んで使用することができる。前記UHMWPEは、触媒層に含まれて触媒層の引張強度を高め、撥水性を有して触媒層で発生する水分を外部に容易に排出させる役割を果たすだけでなく、長鎖を介して触媒層で生成された熱を外部に素早く伝達させる役割を果たすことができる。
【0045】
前記放熱素材としてポリアセチレンを含む場合、優れた電気伝導効果と放熱効果を同時に具現化することができる。具体的には、前記ポリアセチレンは、重量平均分子量(Mw)が20,000~1,000,000で長鎖を持つことが触媒層内部の熱を効率的に排出するのに有利であるが、前記分子量に限定されない。
【0046】
前記アイオノマーは、プロトンといった陽イオン交換基を有する陽イオン伝導体であるか、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートといった陰イオン交換基を有する陰イオン伝導体であり得る。アイオノマーは、一般に燃料電池で使用されるアイオノマーを使用することができる。
【0047】
前記陽イオン交換基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよく、一般にスルホン酸基又はカルボキシル基であってもよい。
【0048】
前記陽イオン伝導体としては、前記陽イオン交換基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン又はポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、又はポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0049】
より具体的には、前記陽イオン伝導体が水素イオン陽イオン伝導体である場合、前記高分子は、側鎖にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選択される陽イオン交換基を含むことができ、その具体例としては、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボキシル酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン、又はこれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene、S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化されたポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化されたポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化されたポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化されたポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化されたポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化されたポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
また、前記陽イオン伝導体は、側鎖末端の陽イオン交換基において、HをNa、K、Li、Cs又はテトラブチルアンモニウムに置換することもできる。前記側鎖末端の陽イオン交換基において、HをNaに置換する場合は、炭素構造体組成物の製造時にNaOHを、テトラブチルアンモニウムに置換する場合は、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使用して置換し、K、Li又はCsも適切な化合物を使用して置換することができる。前記置換方法は当該分野で広く知られている内容であるので、本明細書において詳しい説明は省略する。
【0051】
前記陽イオン伝導体は、単一物又は混合物の形態で使用することが可能であり、また、選択的にイオン交換膜との接着力をより向上させる目的で、非伝導性化合物と共に使用することもできる。その使用量は、使用目的に適するよう調整して使用することが好ましい。
【0052】
前記非伝導性化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロ-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(PVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選択された1種以上のものを使用することができる。
【0053】
前記陰イオン伝導体は、ヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートといった陰イオンを移送させることができるポリマーであって、陰イオン伝導体は、ヒドロキシド又はハライド(一般にクロライド)の形態が商業的に入手可能であり、前記陰イオン伝導体は、産業的浄水(water purification)、金属分離又は炭素構造体工程などに使用することができる。
【0054】
前記陰イオン伝導体としては、一般に金属水酸化物がドーピングされたポリマーを使用することができ、具体的には金属水酸化物がドーピングされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを使用することができる。
【0055】
前記アイオノマーの中でもフッ素系高分子を使用することが好ましい。前記フッ素系高分子は、例えば、パーフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic acid:PFSA)系高分子又はパーフルオロカルボン酸(perfluorocarboxylic acid:PFCA)系高分子であってもよいが、これに制限されるものではない。前記パーフルオロスルホン酸系高分子としては、ナフィオン(Nafion、Dupont社)を、前記パーフルオロカルボン酸系高分子としては、フレミオン(Flemion、Asahi Glass社)を使用することができる。
【0056】
前記アイオノマー(ionomer)の重量平均分子量は、240g/mol~200,000g/mol、具体的には、240g/mol~10,000g/molであってもよい。
【0057】
本発明の一実施例に係る触媒層の厚さは1~15μmである。触媒層の厚さが前記範囲に比べて薄い場合、触媒層の耐久性が大きく低下するという問題が発生する可能性があり、触媒層の厚さが前記範囲に比べて厚い場合、触媒層の物質伝達が低下して性能が落ちたり、燃料電池の厚さが厚くなったりするという問題が発生する可能性がある。
【0058】
本発明の一実施例に係る膜-電極接合体は、互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、そして、前記アノード電極とカソード電極との間に位置するイオン交換膜を含み、前記アノード電極、前記カソード電極及びこの両方からなる群から選択されるいずれか一つは、前記燃料電池用触媒層を電極触媒層として含むものである。
【0059】
図3は、前記膜-電極アセンブリを概略的に示す断面図である。前記
図3を参照して説明すると、前記膜-電極アセンブリ100は、前記イオン交換膜50及び前記イオン交換膜50の両面にそれぞれ配置される前記電極20、20'を含む。前記電極20、20'は、電極基材40、40'と、前記電極基材40、40'の表面に形成された触媒層30、30'を含み、前記電極基材40、40'と前記触媒層30、30'との間に前記電極基材40、40'での物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含むこともできる。
【0060】
前記膜-電極アセンブリ100において、前記イオン交換膜50の一面に配置されて、前記電極基材40を通過して前記触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を引き起こす電極20をアノード電極といい、前記イオン交換膜50の他方の一面に配置されて、前記イオン交換膜50を介して供給された水素イオンと電極基材40'を通過して前記触媒層30'に伝達された酸化剤から水を生成させる還元反応を引き起こす電極20'をカソード電極という。
【0061】
前記アノード電極20、前記カソード電極20'、及びこの両方からなる群から選択されるいずれか一つの電極20、20'の触媒層30、30'は、前記で説明した本発明の一実施例に係る電極を含む。
【0062】
前記電極基材40、40'としては、水素又は酸素の円滑な供給が行われるよう、多孔性の導電性基材を使用することができる。その代表例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)、又は金属布(繊維状態の金属布からなる多孔性のフィルム又は高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)を使用することができるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40、40'は、フッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが、燃料電池の駆動時に発生する水によって反応物の拡散効率が低下することを防止できるので好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオリドアルコキシビニルエーテル、フルオリネイテッドエチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はこれらのコポリマーを使用することができる。
【0063】
本発明の一実施例に係る燃料電池は、前記膜-電極接合体を含むものであって、例えば、水素気体を燃料とする燃料電池であってもよい。
【0064】
図4は、前記燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。
【0065】
前記
図4を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水とが混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的な反応を引き起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0066】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと、酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0067】
各単位セルは、電気を発生させる単位のセルを意味するものであって、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜-電極アセンブリと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜-電極アセンブリに供給するための分離板(又はバイポーラープレート(bipolar plate)とも呼ばれ、以下「分離板」と称する)を含む。前記分離板は前記膜-電極アセンブリを中心に置き、その両側に配置される。このとき、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特にエンドプレートと呼ぶこともある。
【0068】
前記分離板の中で前記エンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管232が設けられ、他方のエンドプレートには、複数の単位セルで最終的に反応せずに残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1排出管233と、前記単位セルで最終的に反応せずに残った酸化剤を外部に排出させるための第2排出管234が設けられる。
【0069】
本発明の一実施例に係る触媒層の製造方法は、触媒、放熱素材、アイオノマー及び分散媒を含む電極スラリーを準備するステップ;前記電極スラリーを基材上にコーティングしてスラリー層(slurry layer)を形成するステップ;及び前記スラリー層から前記分散媒を除去するステップを含む。
【0070】
本明細書の一実施例において、前記分散媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの一つ以上の混合物からなる群から選択される溶媒であってもよい。
【0071】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の直鎖状、分枝状の飽和又は不飽和炭化水素を主鎖として含むアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドからなる群から選択される一つ以上の官能基を有するものであってもよく、これらは、脂環式又は芳香族のシクロ化合物を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。具体例としては、アルコールにはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシエタノール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、1,2-プロパンジオール、1-ペンタノール、1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオールなど;ケトンにはヘプタノン、オクタノンなど;アルデヒドにはベンズアルデヒド、トルアルデヒドなど;エステルにはメチルペンタノエート、エチル-2-ヒドロキシプロパノエートなど;カルボン酸にはペンタエン酸、ヘプタン酸など;エーテルにはメトキシベンゼン、ジメトキシプロパンなど;アミドにはプロパンアミド、ブチルアミド、ジメチルアセトアミドなどがある。
【0072】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0073】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記分散媒は、前記電極スラリーの全体重量に対して80重量%~95重量%で含有することができ、80重量%未満である場合は、固形分の含有量が高すぎて電極コーティング時の亀裂及び高粘度による分散問題が生じる可能性があり、95重量%を超える場合は、電極活性に不利となる可能性がある。
【0074】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記放熱素材は、前記電極スラリーの全体重量に対して0.1~15重量%であることが好ましい。前記放熱素材が前記電極スラリーの全体重量に対して0.1重量%未満である場合、放熱素材が放熱機能を効果的に果たしにくいという問題が発生する可能性があり、前記放熱素材が前記電極スラリーの全体重量に対して15重量%を超える場合、電気伝導性が低下する前記放熱素材によって触媒が包まれるか、或いはアイオノマーが触媒の代わりに放熱素材を包んで触媒表面で化学反応が円滑に行われず、触媒層の電気抵抗が増加するという問題が発生する可能性がある。
【0075】
また、前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記放熱素材は、前記触媒との関係において触媒より少ない重量を有することが触媒の効率性の観点から好ましく、より具体的には、触媒と放熱素材の重量比は、5:1~20 :1であることが好ましい。前記重量範囲に比べて放熱素材の比率が高い場合、触媒の量が少なくなって燃料電池の性能が低下する可能性があり、前記重量範囲に比べて放熱素材の比率が低い場合、触媒から発生する熱を効果的に外部に放出できないという問題が発生する可能性がある。
【0076】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記触媒とアイオノマー(ionomer)の重量比は10:1~2:3であることが好ましいが、これに限定されない。前記アイオノマー(ionomer)の含有量が触媒比で前記範囲より少ない場合、電解質膜へのイオン伝達がまともに行われないという問題が発生する可能性があり、前記アイオノマーの含有量が触媒比で前記範囲より多い場合、ガスの透過を妨げて膜-電極接合体の性能を低下させるという問題が発生する可能性がある。
【0077】
前記電極スラリーを準備するステップは均質混合するステップを含み、前記均質混合するステップは、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合機からなる群から選択されるいずれか一つを用いて混合することができる。前記触媒、放熱素材、アイオノマー及び分散媒を含む触媒スラリーの均質混合は、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合機からなる群から選択されるいずれか一つを用いて混合することができ、好ましくは、均質混合機及び共鳴音響混合機を混用して混合することができる。具体的には、前記共鳴音響混合機は、前記触媒スラリー組成物に低周波音響エネルギー(low-frequency acoustic energy)を加えて共振混合(resonant vibratory mixing)するものである。
【0078】
一例として、前記Resodyn社の共鳴音響混合機を用いる場合、前記触媒スラリー組成物を満たしている容器の周期的な直線変位によって前記音響エネルギーを供給し、そのために多数の機械式又は電子変換器の配置を利用し、より具体的には前記容器として振動と加速を移すオシレータドライブ(oscillator drives)とスプリングのような可変性弾性部材を含んでいる。
【0079】
前記共振混合は30秒~30分間行われてもよく、具体的には1分~10分間の短時間で行われてもよい。前記共振混合の時間が30秒未満である場合、混合が十分に行われないか、或いはコーティング特性を確認できない可能性があり、30分を超える場合、試料や組成が変化する可能性がある。
【0080】
前記触媒層を製造するステップは、具体的な一例として前記電極スラリーを基材上にコーティングしてスラリー層(slurry layer)を形成する。前記電極スラリーを前記基材上にコーティングする際は、前記電極スラリー組成物を連続的又は間欠的にコーター(coater)に移送させた後、基材上に1~15μmの乾燥厚さで均一に塗布することが好ましい。
【0081】
さらに詳しくは、前記電極スラリー組成物の粘性によってポンプを介して連続的にダイ(die)、グラビア(gravure)、バー(bar)、コンマコーター(comma coater)などのコーターに移送した後、スロットダイコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシなどの方法を使用して、デカールフィルムの上に触媒層の乾燥厚さが1μm~15μmに均一に塗布し、一定の温度に維持された乾燥炉を通過させて分散媒を蒸発させる。
【0082】
前記スラリー層を1μm未満の厚さでコーティングする場合、触媒の含有量が小さくて活性が低下する可能性があり、15μmを超える厚さでコーティングする場合は、イオン及び電子など物質伝達が円滑に行われなくなって抵抗が増加し性能が低下する可能性がある。
【0083】
前記乾燥工程は、25℃~120℃で12時間以上乾燥させることであり得る。前記乾燥温度が25℃未満であり、乾燥時間が12時間未満である場合は、十分に乾燥された触媒層を形成できないという問題が発生する可能性があり、120℃を超える温度で乾燥させると、触媒層の亀裂などが発生する可能性がある。
【0084】
ただし、前記電極スラリーを塗布及び乾燥方する方法は、前記に限定されない。
【0085】
選択的に、前記スラリー層を乾燥させて触媒層を製造するステップの後は、乾燥された触媒層及び基材を必要な大きさに切断してイオン交換膜に接合するステップをさらに含むことができる。
【0086】
前記触媒の種類、放熱素材の種類及び各組成の比率は前述しており、記載されていない過程は一般的な触媒層形成方法に従って製造することができる。
【0087】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は、本発明を具体的に例示するか或いは説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されない内容は、当技術分野における熟練した者であれば、十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0088】
[製造例:放熱素材を含む触媒層の製造]
【0089】
<実施例>
【0090】
1)白金触媒9gと放熱素材で窒化ホウ素(Boron nitride、h-BN)1gを水とN-プロパノール混合溶液に分散させる。
【0091】
2)10%のPFSAアイオノマー(EW725、3M社)溶液40gと混合触媒スラリーを前記触媒と放熱素材が分散された溶液に添加し、共鳴音響混合機を5分間処理した後、均質混合機で30分間分散させて均質に混合された触媒スラリーを製造する。
【0092】
3)前記触媒スラリーを、クリーンベンチ(clean bench)内のアプリケーター(applicator)の水平板上で、ドクターブレードでPTFEフィルム上に触媒層をキャスティングした後、60℃で3分間乾燥して最終的に触媒層を製造した。
【0093】
<比較例>
【0094】
放熱素材を添加せずに、白金触媒10gを水とN-プロパノール混合溶液に分散させたことを除いては、実施例と同一の方法で触媒層を製造した。
【0095】
[実験例:触媒層の物性評価]
【0096】
図1は、製造例を通じて製造された実施例の触媒層を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真であり、
図1を参照すると、放熱素材(h-BN)が触媒周辺に分布し、これをアイオノマーが囲んでいる形態を確認することができる。これにより、放熱素材が触媒層周辺に不規則(Random)に分布したことが分かる。
【0097】
図2は、前記放熱素材を含む実施例の触媒層を含む電極を離型フィルムにコーティングした後に製造された膜-電極接合体のSEM断面分析を行ったものである。ほとんどの放熱素材は不規則(Random)に粒子の形で存在するが、粒子同士の凝集も存在する。
図2では、触媒層の放熱素材部分を丸で示しており、これにより電極層内に一部の放熱素材が存在することを確認することができる。
【0098】
燃料電池の高温運転時に、燃料電池の反応熱とラジカル生成量の増加及び触媒の大きさの増加と担体の腐食が発生する。
【0099】
図5は、前記製造例で製造した実施例及び比較例の触媒層を含む膜-電極接合体について、DOE(米国エネルギー省)の触媒耐久性評価プロトコルを用いて耐久性を評価し、前記実施例を含む膜-電極接合体の初期(BOL)と10,000サイクル(cycle)後の性能を示すグラフである。
【0100】
図5を参照すると、本発明の実施例に係る放熱素材が添加された電極(実施例)は、セル(Cell)内の熱を効果的に放出して、10,000サイクルの後、耐久性能に優れていることを確認することができる。
【0101】
以上で、本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、前記した実施例は本発明の特定の一例として提示されるものであって、これにより本発明が制限されるものではなく、本発明の権利範囲は後述する特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も、本発明の権利範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0102】
20、20':電極
30、30':触媒層
40、40':電極基材
50:イオン交換膜
100:膜-電極アセンブリ
200:燃料電池
210:燃料供給部 220:改質部
230:スタック 231:第1供給管
232:第2供給管 233:第1排出管
234:第2排出管 240:酸化剤供給部
【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体及び前記担体に担持された金属粒子を含む触媒、
金属粒子-未担持放熱素材、及び
アイオノマーを含む燃料電池用触媒層。
【請求項2】
前記放熱素材は前記触媒の担体の表面上に位置されることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項3】
前記担体は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、多孔性炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン及びグラフェンからなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の燃料電池用触媒層 。
【請求項4】
前記放熱素材は、前記触媒の担体よりもサイズが小さく、前記触媒重量よりも少ない重量で含まれることを特徴とする、請求項
1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項5】
前記放熱素材は、前記触媒と隣接し、前記触媒層内に不規則に分布されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項6】
前記放熱素材は、セラミックナノ粒子、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)、及びポリアセチレンからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項7】
前記セラミックナノ粒子は、窒化ホウ素(Boron nitride)、窒化アルミニウム(Aluminum nitride)、酸化アルミニウム(Aluminum oxide)、炭化ケイ素(Silicon carbide)、及び酸化ベリリウム(Beryllium oxide)からなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項8】
前記セラミックナノ粒子は平均直径が10~500nmであることを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項9】
前記触媒層の厚さは1~15μmであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
【請求項10】
アノード電極;
カソード電極;及び
前記アノード電極と前記カソード電極との間に位置するイオン交換膜を含み、
前記アノード電極及び前記カソード電極の中で一つ以上は、請求項1項~9項のいずれか一項に記載の触媒層を含む膜-電極接合体。
【請求項11】
請求項10に記載の膜-電極接合体を含む燃料電池。
【請求項12】
担体及び前記担体に担持された金属粒子を含む触媒、
金属粒子-未担持放熱素材、アイオノマー及び分散媒を含む電極スラリーを準備するステップ;
前記電極スラリーを基材上にコーティングしてスラリー層(slurry layer)を形成するステップ;及び
前記スラリー層から前記分散媒を除去するステップ;
を含む、燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項13】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記分散媒は、前記電極スラリーの全体重量に対して80重量%~95重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項14】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記放熱素材は、前記電極スラリーの全体重量に対して0.1~15重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項15】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記触媒と放熱素材の重量比は5:1~20:1であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項16】
前記電極スラリーを準備するステップにおいて、前記触媒とアイオノマーの重量比は10:1~2:3であることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【請求項17】
前記電極スラリーを準備するステップは、均質混合するステップを含み、
前記均質混合するステップは、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合機からなる群から選択されるいずれか一つを用いて混合することを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
【国際調査報告】