(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ポリアミド、耐衝撃性改良剤、およびガラス短繊維をベースとする透明な成形組成物、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/02 20060101AFI20231124BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20231124BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231124BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C08L77/02
C08L77/06
C08L23/00
C08L51/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528606
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 FR2021052018
(87)【国際公開番号】W WO2022106776
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プレンヴィール, トマ
(72)【発明者】
【氏名】サバード, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】グラッソン, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】マッソ, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB00Y
4J002BN00Y
4J002CL01W
4J002CL01Z
4J002CL03X
4J002CL03Z
4J002DL006
4J002EH007
4J002EJ007
4J002EP007
4J002EU077
4J002EW067
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD037
4J002FD097
4J002FD177
4J002GC00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~84%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
を重量で(合計100%)含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える、
透明な成形組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~84%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
を重量で合計100%含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率が、1.500~1.540である透明な成形組成物であって、
前記組成物がPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える、透明な成形組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド成形組成物から無研磨型において作製された幅および長さ100mm*100mmを有する、2mm厚のプレートでASTM D1003に従って測定される透過率が70%を超えることを特徴とする、請求項1に記載の透明な成形組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド成形組成物から無研磨型において作製された幅および長さ100mm*100mm、2mm厚のプレートでASTM D1003に従って測定されるヘイズが50%未満、特に40%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明な成形組成物。
【請求項4】
サイズ80mm×10mm×4mmのVノッチ付きのバーに対する、乾燥サンプル状態で温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%で、ISO179-1:2010/1eA(シャルピー衝撃)に従って測定される耐衝撃性が15KJ/m
2を超えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項5】
耐衝撃性改良剤がSEBS、SBS、およびコア-シェル構造から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項6】
非晶質ポリアミドが、式XYまたはA/XYのポリアミドであり、式中
- Aは、少なくとも1つのアミノ酸の重縮合から得られる単位、少なくとも1つのラクタムの重縮合から得られる単位、および少なくとも1つの脂肪族ジアミンと少なくとも1つの脂肪族二酸の重縮合から得られる単位から選択される脂肪族反復単位であり、
- Xは脂環式ジアミンであり、
- Yはジカルボン酸であり、
前記二酸は線状または分岐状脂肪族二酸、脂環式二酸、および芳香族二酸から選択され、
前記ジアミンおよび前記二酸が、4~36個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項7】
非晶質ポリアミドが、11/B10、12/B10、11/P10、12/P10、11/BI/BT、12/BI/BT、11/PI/BT、12/PI/BT、11/PI/PT、12/PI/PT、11/BI、12/BI、11/PI、および12/PIから選択され、特に11/B10であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項8】
半結晶質脂肪族ポリアミドが、窒素原子に対する炭素原子の平均数が8~14、特に9~14、特に10~14である2種の半結晶質脂肪族ポリアミドの混合物であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項9】
前記半結晶質脂肪族ポリアミドが、PA10、PA11、PA12、PA1010、PA1012から選択され、特にPA11およびPA12であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項10】
半結晶質脂肪族ポリアミドがPA11であり、非晶質ポリアミドが、11/B10、12/B10、11/P10、12/P10、11/BI/BT、12/BI/BT、11/PI/BT、12/PI/BT、11/PI/PT、および12/PI/PTから選択され、特に11/B10、12/BI/BTであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
半結晶質ポリアミドおよび/または非晶質ポリアミドが、部分的にまたは完全に生物由来であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
半結晶質脂肪族ポリアミドが混合物(A)において優勢であり、特に、前記混合物中に51重量%~80重量%含まれていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項13】
ノッチなしで非穿孔の状態で60°の曲げ角度で、標準ASTM D1052に従って測定される23℃でのノッチなしロスフレックス(Ross Flex)疲労試験に対する抵抗性が50,000を超えることを特徴とする、請求項12に記載の透明な成形組成物。
【請求項14】
スポーツ物品、特にスキーブーツもしくはスキーブーツ部品、または滑り止め、例えば、サッカー、ラグビーもしくはフットボール滑り止めを備えた硬い靴、ホッケーフットウェアもしくはホッケーフットウェアの部品、またはランニングシューズ、ゴルフボールもしくはゴルフボールの部品、またはラクロススティック、ホッケー物品、例えば、頭、肩、肘、手、膝、背中もしくは脛を保護するためのヘルメットおよびスポーツ物品、例えば、ヘルメット、グローブ、肩パッド、肘パッド、膝パッド、または脛ガードから選択される、射出によって得られる物品の製造のための、請求項12または13に記載の組成物の使用。
【請求項15】
スポーツシューズの中間ソールのパターンおよび色を、その透明性のために外側ソールを介して見ることを可能にする前記スポーツシューズの外側ソールを製造するために使用されることを特徴とする、請求項14に記載の透明な成形組成物の使用。
【請求項16】
非晶質ポリアミドが、混合物(A)において優勢であり、特に前記混合物中に55重量%~85重量%含まれていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の透明な成形組成物。
【請求項17】
エレクトロニクス用、電気通信用途のための、またはデータ変換のための、例えば、自律走行車用または相互接続用途のための物品の製造のための、請求項16に記載の透明な成形組成物の使用。
【請求項18】
請求項1から13および16のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって、成分(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)を押出機中で230と330℃の間の温度で混合して顆粒を製造する工程を含み、顆粒は、その後射出プレス上で230と330℃の間の温度で射出されて所望の物品を製造する、方法。
【請求項19】
乾燥混合物の形態で、または押出機上で配合した後に作製され得る、請求項1から13および16のいずれか一項に記載の組成物を含む、繊維、布、フィルム、シート、ロッド、チューブ、射出部品などの透明造形品。
【請求項20】
請求項1から13および16のいずれか一項に記載の組成物を含む樹脂エレメント(I)、および熱可塑性ポリマー、特に熱ポリウレタン(TPU)または発泡もしくは非発泡ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含む組成物を含む樹脂エレメント(II)を含み、樹脂エレメント(I)が、樹脂エレメント(II)に直接接合または結合されている、複合成形品。
【請求項21】
請求項20に記載の複合成形品を製造する方法であって、少なくとも1つの樹脂(I)および1つの樹脂(II)を加熱して一方の樹脂を他方の樹脂に取り付けることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である半結晶質脂肪族ポリアミド、非晶質ポリアミド、耐衝撃性改良剤、およびガラス短繊維、任意にプレポリマーの混合物をベースとする透明な成形組成物であり、ポリアミド、耐衝撃性改良剤、ガラス短繊維、およびプレポリマーの混合物の屈折率が1.500~1.540であり、前記組成物はPEBAを有さず、高い弾性率、特に1700MPaを超える弾性率を有する透明な成形組成物、および射出によって得られる物品の製造用、特にスポーツ用のまたはエレクトロニクス用の前記組成物の使用に関する。
【0002】
スポーツおよびエレクトロニクス市場は、透明ポリアミドをベースとする成形組成物を現在要求しており、それは成形後に、高い、特に少なくとも1700MPaの弾性率、および良好な衝撃強度、2mmウエハでの少なくとも70%の透過率、特に、スポーツ市場用では良好な耐疲労性、エレクトロニクス市場用では十分な皮脂耐性を有する。
【0003】
特許EP3,309,199B1は、非晶質コポリアミド、および任意に半結晶質ポリアミド、およびガラス充填剤の混合物を含む組成物について記載している。組成物は透明性が高いが衝撃強度が低い。
【0004】
特許FR3,018,280B1は、半結晶質ポリアミド、非晶質ポリアミド、ガラス繊維、および任意にPEBAを含む組成物について記載している。これらの組成物は低透過率およびわずかなヘイズを示す。しかし、弾性率、衝撃特性、または耐疲労性についての情報は与えられていない。
【0005】
出願EP3,486,287A1は、半結晶質ポリアミド、耐衝撃性改良剤、およびガラス繊維Sを含む組成物について記載している。
【0006】
これらの組成物は疲労強度が良好であるがヘイズが高く、透過率についての情報は与えられていない。
【0007】
上記の組成物のどれも次の3つおよび/または4つの特性を満足していない:
- 70%を超える透過率または50%未満のヘイズ
- 1700MPa超の弾性率
- 良好な衝撃強度および/または疲労強度。
【0008】
したがって、本発明は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~84%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
を重量で(合計100%)含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はポリエーテルブロックアミド(PEBA)を有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える、透明な成形組成物に関する。
【0009】
したがって、発明者らは、特定範囲の非晶質および半結晶質ポリアミド混合物、および特定範囲の耐衝撃性改良剤、任意に、少なくとも1つのプレポリマーへの特定範囲のガラス短繊維の添加、構成繊維の各ガラス短繊維の屈折率、非晶質および半結晶質ポリアミド、耐衝撃性改良剤、およびプレポリマーの混合は、1700MPaを超える高弾性率、高い透過率、および/またはわずかなヘイズならびに良好な衝撃強度および/または良好な疲労強度を有する組成物を得ることを可能とすることを予想外に発見した。
【0010】
非晶質ポリアミドは、本発明の意味において、ガラス転移温度のみ(溶解温度(Tm)でない)を有する透明非晶質ポリアミドを示し、または、示差走査熱量測定法DSCでの20K/分の速度の冷却工程の間の結晶化エンタルピーが、標準ISO11357-3:2013に従って測定され、30J/g未満である、特に20J/g未満、好ましくは15J/g未満であるようにガラス転移温度および融点を有する結晶化度がほとんどないポリアミドを意味する。これらのポリアミドについての標準ISO11357-1:2009およびISO11357-2:2013による20K/分の加熱速度でDSCによって測定されるガラス転移温度(Tg)は75℃を超える。
【0011】
半結晶質ポリアミドは、本発明の意味において、ISO標準11357-3:2013によるDSCによる溶解温度(Tm)、および2013年のISO標準11357-3によって測定されるDSCによる20K/分の速度での冷却工程の間の30J/gを超え、好ましくは40J/gを超える結晶化エンタルピーを有するポリアミドを示す。
【0012】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO標準1874-1:2011「Plastics-Polyamide(PA) Moulding And Extrusion Materials-Part1:Designation」に記載されており、当業者に周知である。
【0013】
本説明において使用される用語「ポリアミド」は、ホモポリアミドおよびコポリアミドの両方を包含する。
【0014】
1つの実施形態では、本発明による組成物は熱成形可能な組成物である。
【0015】
除外されたPEBAに関して:
ポリエーテルブロックアミド(PEBA)は、アミド単位(Ba1)およびポリエーテル単位(Ba2)を備えた共重合体であり、前記アミド単位(Ba1)は、少なくとも1つのアミノ酸から得られる単位、または少なくとも1つのラクタムから得られる単位、または以下の重縮合によって得られる単位X.Yから選択される脂肪族反復単位に対応する:
- 少なくとも1つのジアミン、前記ジアミンは、線状もしくは分岐状脂肪族ジアミン、または芳香族ジアミンもしくはそれらの混合物;および
- 少なくとも1つのジカルボン酸、前記二酸は、脂肪族二酸または芳香族二酸から選択され、
前記ポリエーテル単位(Ba2)は、特に少なくとも1つのポリアルキレンエーテルポリオール、特にポリアルキレンエーテルジオールに由来する。
【0016】
構成要素Aについて:
半結晶質ポリアミド
成分(A)は、半結晶質脂肪族ポリアミド10~95%を含む。
【0017】
有利には、構成要素(A)は、半結晶質脂肪族ポリアミド15~90重量%を含む。
【0018】
より有利には、構成要素(A)は、半結晶質脂肪族ポリアミド20~85重量%を含む。
【0019】
さらにより有利には、構成要素(A)は、半結晶質脂肪族ポリアミド25~80重量%を含む。
【0020】
特に、構成要素(A)は、半結晶質脂肪族ポリアミド30~75重量%を含む。
【0021】
前記少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミドは、少なくとも1つのラクタムの重縮合、または少なくとも1つのアミノ酸の重縮合、または少なくとも1つのジアミンXaと少なくとも1つのジカルボン酸Yaとの重縮合から得られる。
【0022】
半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数は8以上である。
【0023】
特に、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数は8~14である。
【0024】
有利には、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数は9以上である。
【0025】
特に、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数は9~14である。
【0026】
より有利には、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数は10以上である。
【0027】
特に、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数は10~14である。
【0028】
PA-Xa・Yaホモポリアミドの場合には、1つの窒素原子当たりの炭素原子の数が単位Xaおよび単位Yaの平均である。
【0029】
コポリアミドの場合には、1つの窒素原子当たりの炭素原子の数が同じ原理に従って算出される。様々なアミド単位のモル比は算出に使用される。
【0030】
1つの実施形態では、半結晶質脂肪族ポリアミドは、窒素原子に対する炭素原子のその平均数が8~14、特に9~14、特に10~14である2種の半結晶質脂肪族ポリアミドの混合物である。
【0031】
前記少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミドが少なくとも1つのラクタムの重縮合から得られる場合、したがって、それは単一のラクタムまたはいくつかのラクタムを含んでいてもよい。
【0032】
有利には、前記少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミドは、単一のラクタムの重縮合から得られ、前記ラクタムは、カプロラクタム、ラウロラクタム、およびウンデカノラクタムから選択され、有利にはラウロラクタムである。
【0033】
ラクタムが、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以下であるなら、そのとき、それは、コポリアミドが窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上であるように、他のアミノ酸、ラクタム、またはPAXaYaを備えたコポリアミドの形態であることは一目瞭然である。
【0034】
前記少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミドは、少なくとも1つのアミノ酸の重縮合から得られる場合、前記少なくとも1つのアミノ酸は、C6~C18、優先的にはC10~C18、より優先的にはC10~C12アミノ酸から選択されてもよい。
【0035】
C6~C12アミノ酸は、特に、6-アミノヘキサン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、10-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、および11-アミノウンデカン酸、ならびにそれらの誘導体、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸である。
【0036】
アミノ酸が、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以下であるなら、そのとき、それは、コポリアミドは窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上であるように、他のアミノ酸、ラクタム、またはPAXaYaを備えたコポリアミドの形態であることは一目瞭然である。
【0037】
前記少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミドが、少なくとも1つのアミノ酸の重縮合から得られる場合、それは単一のアミノ酸またはいくつかのアミノ酸を含んでいてもよい。
【0038】
有利には、前記半結晶質脂肪族ポリアミドは、単一のアミノ酸の重縮合から得られ、前記アミノ酸は、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸から選択され、有利には11-アミノウンデカン酸である。
【0039】
前記少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミドが、少なくとも1つのジアミンXaと少なくとも1つの二酸Yaとの重縮合から得られ、そのとき、ジアミンは、C4~C36、優先的にはC5~C18、優先的にはC5~C12、より優先的にはC10~C12であり、少なくとも1つの二酸Yaは、C4~C36、優先的にはC6~C18、優先的にはC6~C12、より優先的にはC10~C12であり、前記少なくとも1つのジアミンXaは脂肪族ジアミンであり、前記少なくとも1つの二酸Yaは脂肪族二酸である。
【0040】
ジアミンは線状または分岐状であってもよい。有利には、それは線状である。
【0041】
前記少なくとも1つのC4~C36ジアミンXaは、特に1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミンおよび1,18-オクタデカメチレンジアミン、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン、ならびに脂肪酸から得られるジアミンから選択されてもよい。
【0042】
有利には、前記少なくとも1つのジアミンXaはC5~C18であり、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミンおよび1,18-オクタデカメチレンジアミンから選択される。
【0043】
有利には、前記少なくとも1つのC5~C12ジアミンXaは、特に1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-へプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミンから選択される。
【0044】
有利には、前記少なくとも1つのC6~C12ジアミンXaは、特に1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミンから選択される。
【0045】
有利には、使用したジアミンXaはC10~C12ジアミンであり、特に1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミンから選択される。
【0046】
前記少なくとも1つのジカルボン酸YaはC4~C36であり、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、および脂肪酸から得られる二酸から選択されてもよい。
【0047】
二酸は線状または分岐状であってもよい。有利には、それは線状である。
【0048】
有利には、前記少なくとも1つのジカルボン酸YaはC6~C18であり、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸から選択される。
【0049】
有利には、前記少なくとも1つのジカルボン酸YaはC6~C12であり、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、およびドデカン二酸から選択される。
【0050】
有利には、前記少なくとも1つのジカルボン酸YaはC10~C12であり、セバシン酸、ウンデカン二酸、およびドデカン二酸から選択される。
【0051】
ジアミンXaが、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以下であるなら、そのとき、それは、コポリアミドが窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上であるようにジカルボン酸に関連することは明らかであり、逆の場合も同じである。
【0052】
ポリアミドXaYaは、また、半結晶質脂肪族ポリアミドの窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以下であってもよいが、そのとき、それは、コポリアミドが窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上であるようにコポリアミドの形態である。
【0053】
前記半結晶質脂肪族ポリアミドが少なくとも1つのジアミンXaと少なくとも1つのジカルボン酸Yaとの重縮合から得られる場合、それは、単一のジアミンまたはいくつかのジアミンおよび単一のジカルボン酸またはいくつかのジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0054】
1つの実施形態では、前記半結晶質脂肪族ポリアミドは、単一のジアミンXaと単一のジカルボン酸Yaとの重縮合から得られる。
【0055】
有利には、前記半結晶質脂肪族ポリアミドは、PA10、PA11、PA12、PA1010、PA1012から選択され、特にPA11およびPA12である。
【0056】
有利には、半結晶質ポリアミドは、部分的にまたは全体的に生物由来である。
【0057】
非晶質ポリアミド
構成要素(A)は、また少なくとも1つの非晶質ポリアミド5~90%を含む。
【0058】
有利には、構成要素(A)は非晶質ポリアミド10~85%を含む。
【0059】
より有利には、構成要素(A)は非晶質ポリアミド15~80%を含む。
【0060】
さらにより有利には、構成要素(A)は非晶質ポリアミド20~75%を含む。
【0061】
特に、構成要素(A)は非晶質ポリアミド25~70%を含む。
【0062】
非晶質ポリアミドは、式XYまたはA/XYのポリアミドであり、
- Aが、少なくとも1つのアミノ酸の重縮合から得られる単位、少なくとも1つのラクタムの重縮合から得られる単位、および少なくとも1つの脂肪族ジアミンと少なくとも1つの脂肪族二酸の重縮合から得られる単位から選択される脂肪族反復単位であり、
- Xが少なくとも1つの脂環式ジアミンであり、
- Yが少なくとも1つのジカルボン酸であり、前記二酸が線状または分岐状脂肪族二酸、脂環式二酸、および芳香族二酸から選択され、
前記ジアミンおよび前記二酸が、4~36個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含む。
【0063】
有利には、非晶質ポリアミドは式A/XYのポリアミドである。アミノ酸、ラクタム、ジアミン、およびジカルボン酸構成単位Aは、上述の定義された半結晶質脂肪族ポリアミドについて定義された通りである。
【0064】
非晶質ポリアミドはホモポリアミドまたはコポリアミドであってもよい。
【0065】
ジアミンXとジカルボン酸Yとのモル比は化学量論であることが好ましい。
【0066】
ジカルボン酸は4~36個の炭素原子、および有利には6~18個の炭素原子を含む。
【0067】
脂環式ジアミンは、例えば、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)-エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)-プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)-ブタン、一般に「BMACM」または「MACM」)と呼ばれるビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタンまたは3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシル-メタン(以下Bと記される)、一般に「PACM」と呼ばれるp-ビス(アミノシクロヘキシル)-メタン(以下Pと記される)、「PACP」と呼ばれるイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)、イソホロン-ジアミン(以下IPDと記される)、および一般に「BAMN」と呼ばれる2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナンから選択されてもよい。
【0068】
これらの脂環式ジアミンの包括的でないリストは、刊行物「Cycloaliphatic Amines」(Encyclopaedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer、第4版(1992)、386~405頁)において与えられる。
【0069】
ジカルボン酸は、線状または分岐状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸から選択されてもよい。
【0070】
ジカルボン酸Yが脂肪族で線状である場合、それは二酸Yaについて上述の定義される通りである。
【0071】
ジカルボン酸Yが脂環式である場合、それは次の炭素骨格を含んでいてもよい:ノルボルニルメタン、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)またはジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含んでいてもよい。
【0072】
ジカルボン酸Yが芳香族である場合、それは、テレフタル酸(Tで表される)、イソフタル酸(Iで表される)、およびナフタレン酸から選択されてもよい。
【0073】
有利には、ジカルボン酸Yは芳香族であり、それはテレフタル酸(Tで表される)およびイソフタル酸(Iで表される)から選択されてもよい。
【0074】
有利には、非晶質ポリアミドは、部分的にまたは全体的に生物由来である。
【0075】
有利には、半結晶質脂肪族ポリアミドおよび/または半結晶質ポリアミドは、部分的にまたは全体的に生物由来である。
【0076】
有利には、非晶質ポリアミドは、11/B10、12/B10、11/P10、12/P10、11/BI/BT、12/BI/BT、11/PI/BT、12/PI/BT、11/PI/PT、12/PI/PT、11/BI、12/BI、11/PI、および12/PIから選択され、特に11/B10である。
【0077】
有利には、半結晶質脂肪族ポリアミドは、PA10、PA11、PA12、PA1010、PA1012から選択され、特にPA11およびPA12であり、非晶質ポリアミドは、11/B10、12/B10、11/P10、12/P10、11/BI/BT、12/BI/BT、11/PI/BT、12/PI/BT、11/PI/PT、12/PI/PT、11/BI、12/BI、11/PI、および12/PIから選択され、特に11/B10である。
【0078】
有利には、半結晶質脂肪族ポリアミドはPA11であり、非晶質ポリアミドは、11/B10、12/B10、11/P10、12/P10、11/BI/BT、12/BI/BT、11/PI/BT、12/PI/BT、11/PI/PT、および12/PI/PTから選択され、特に11/B10、12/B1/BTである。
【0079】
耐衝撃性改良剤(B)に関して:
PEBAは耐衝撃性改良剤の定義から排除される。
【0080】
耐衝撃性改良剤は、組成物の全重量に対して10重量%~30重量%、特に15重量%~30重量%存在する。
【0081】
耐衝撃性改良剤は、それがクラッキングエネルギーを消散するように、樹脂より低い弾性率を有し、マトリックスに対して良好な接着を有するポリマーである限り、任意の耐衝撃性改良剤であってもよい。
【0082】
耐衝撃性改良剤は、有利には、標準ISO178に従って測定される曲げ弾性率が100MPaより低くTg(DSCサーモグラムの変曲点で標準11357-2に従って測定される)が0℃より低いポリマー、特にポリオレフィンからなる。
【0083】
耐衝撃性改良剤のポリオレフィンは官能性であってもよく、非官能性でなくてもよく、少なくとも1つの官能性ポリオレフィンおよび/または少なくとも1つの非官能性ポリオレフィンの混合物であってもよい。単純化するために、ポリオレフィンは、(B1)と表され、官能性ポリオレフィン(B1)および非官能性ポリオレフィン(B2)を以下に説明する。
【0084】
下記ポリオレフィンの一部は限定されないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンの単独重合体は屈折率が1.500未満であることは明らかである。この場合、前記ポリオレフィンは単独で使用することができず、混合物の屈折率が1.500~1.540であるように、1つ以上の他のものと混合されなければならない。
【0085】
非官能性ポリオレフィン(B2)は、従来、α-オレフィン、または例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、ブタジエンなどのジオレフィンの単独重合体または共重合体である。一例として以下が挙げられる。
- ポリエチレン、特にLDPE、HDPE、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、およびメタロセンポリエチレンの単独重合体および共重合体
- プロピレンの単独重合体または共重合体
- エチレン/プロピレン、EPR(エチレン-プロピレン-ゴムの略語)およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)などのエチレン/α-オレフィン共重合体
- スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体
- コモノマーの割合が40重量%に達することができる、アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルアクリレート)などの不飽和カルボン酸の塩類またはエステル類、または酢酸ビニル(EVA)などの飽和カルボン酸のビニルエステル類から選択される少なくとも1つの生成物とエチレンとの共重合体。
【0086】
官能性ポリオレフィン(B1)は、反応単位(官能価)を有しているα-オレフィンのポリマーであってもよく、そのような反応単位は、酸、無水物、またはエポキシ基である。一例として、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシドによって、またはカルボン酸もしくは(メタ)アクリル酸などの対応する塩類もしくはエステル類(Znなどの金属)によって完全にまたは部分的に中和され得る)によって、または無水マレイン酸などのカルボン酸無水物によってもグラフト、共重合、三重合された前述のポリオレフィン(B2)が挙げられる。
【0087】
官能性ポリオレフィン(B1)は、下記無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートグラフト(共)重合体から選択されてもよく、グラフト率は、例えば、0.01~5重量%である:
- 例えば、エチレン35~80重量%を含む、PE、PP、エチレンとプロピレン、ブテン、ヘキセン、またはオクテンとの共重合体
- エチレン/プロピレン、EPR(エチレン-プロピレン-ゴムの略語)およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)などのエチレン/α-オレフィン共重合体
- スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体
- 酢酸ビニル40重量%以下を含むエチレンおよび酢酸ビニル共重合体(EVA)
- アルキル(メタ)アクリレート40重量%以下を含むエチレンおよびアルキル(メタ)アクリレート共重合体
- コモノマー40重量%以下を含むエチレンおよび酢酸ビニル(EVA)およびアルキル(メタ)アクリレート共重合体。
【0088】
官能性ポリオレフィン(B1)は、また、主に無水マレイン酸グラフトプロピレンをモノアミンポリアミド(またはポリアミドオリゴマー)と縮合させたエチレン/プロピレン共重合体(EP-A-0,342,066に記載されている生成物)から選択されてもよい。
【0089】
官能性ポリオレフィン(B1)は、また少なくとも次の単位の共重合体または三元重合体であってもよい:
(1)エチレン、(2)アルキル(メタ)アクリレートまたは飽和カルボン酸のビニルエステル、および(3)無水マレイン酸などの無水物またはグリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸またはエポキシ。
【0090】
後者のタイプの官能性ポリオレフィンの一例として、次の共重合体が挙げられ、エチレンが少なくとも60重量%に相当することが好ましく、ターモノマー(官能性)が、例えば、共重合体の0.1~10重量%に相当する:
- エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレート共重合体;
- エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレート共重合体;
- エチレン/酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレート共重合体。
【0091】
前の共重合体では、(メタ)アクリル酸はZnまたはLiで塩化されていてもよい。
【0092】
(B1)または(B2)における用語「アルキル(メタ)アクリレート」は、C1~C8アルキルメタクリレートおよびアクリレートを意味し、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、およびエチルメタクリレートから選択されてもよい。
【0093】
さらに、前に引用したポリオレフィン(B1)も、任意の適切な方法または薬剤(ジエポキシ、二酸、過酸化物など)によって架橋されてもよく、官能性ポリオレフィンという用語は、また、これらと反応することができる二酸、二無水物、ジエポキシなど二官能価試薬と前に引用したポリオレフィンとの混合物、または反応し合うことが可能な少なくとも2種の官能性ポリオレフィンの混合物を含む。
【0094】
前記した共重合体(B1)および(B2)は、統計的なまたは順序づけられた方法で共重合され、線状または分岐構造を有していてもよい。
【0095】
これらポリオレフィンの分子量、インデックスMFI、密度は、また広く変化してもよく、それは当業者に公知である。メルトフローインデックスの略語MFIは、溶融状態での流動性の程度である。それは標準ASTM1238に従って測定される。
【0096】
有利には、官能性ポリオレフィン(B1)は、スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートでグラフトしたスチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体から選択され、グラフト率は、例えば、0.01~5重量%である。
【0097】
それは、例えば、Kraton(登録商標)FG1901(SEBS官能性無水マレイン酸)、Globalprene(登録商標)9901(SEBS官能性無水マレイン酸)、Taipol(登録商標)(SEBS無水マレイン酸)であってもよい。
【0098】
しかし、ポリアミドのMFI、(B1)および(B2)のMFIは、広い範囲で選択されてもよいが、ポリアミドのMFIは(B)の分散を促進するために(B)よりも大きいことが推奨される。
【0099】
耐衝撃性改良剤は、またコア-シェル構造であってもよい。
【0100】
コア-シェルは、球状ポリマー粒子の形態を有することが好ましい。これらの粒子は、またコア-シェル粒子またはコア-シェルポリマーと呼ばれる。第1の層はコアを形成し、第2またはすべての次の層は、それぞれのシェルを形成する。
【0101】
コア-シェルは、官能性であってもよく、または非官能性であってもよい。コア-シェルが官能性である場合、これは、前記本発明のポリアミドマトリックスとのより良好な相溶性を可能にする。一例として、無水マレイン酸タイプの官能化が好ましい。
【0102】
球状ポリマー粒子サイズに関して、それは20nm~500nmの重量平均粒径を有している。ポリマーの重量平均粒径は、好ましくは20nm~400nm、より好ましくは20nm~350nm、有利には20nm~300nmである。
【0103】
ポリマー粒子は、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(F1)を含む少なくとも1つの層(F)およびガラス転移温度60℃より高いポリマー(G1)を含む他の層(G)を含む多層構造を有する。
【0104】
好ましくは、ガラス転移温度が60℃より高いポリマー(G1)は、多層構造を備えたポリマー粒子の外側層である。
【0105】
ポリマー粒子は、2または3以上の工程などの多段階方法によって得られる。
【0106】
好ましくは、層(F)中のガラス転移温度が0℃未満であるポリマー(F1)は、多層構造を備えたポリマー粒子のコアを形成する多段階方法の第1の工程で製造される。ポリマー(F1)は、ガラス転移温度が好ましくは-5℃未満、より好ましくは-15℃未満、有利には-25℃未満である。
【0107】
好ましくは、ガラス転移温度が60℃より高いポリマー(G1)は、多層構造を備えたポリマー粒子の外側層を形成する多段階方法の最後の工程で製造される。
【0108】
1つまたはいくつかの中間工程によって得られるさらなる1つまたはいくつかの中間層が存在していてもよい。
【0109】
多層ポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば、熱機械分析などの動力学的方法によって評価されてもよい。
【0110】
ポリマー(F1)および層(F)は、芳香族基を含むモノマー0重量%~50重量%未満を含む。ポリマー(G1)および層(G)は、芳香族基を含むモノマー0重量%~50重量%未満を含む。
【0111】
1つの実施形態によれば、ポリマー(G1)および層(G)は、芳香族基を含むモノマーを含まない。
【0112】
ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(F1)について、それは、イソプレンまたはブタジエン由来のポリマー単位の少なくとも50重量%を含み、層(F)は、多層構造を有するポリマー粒子の最内層である。言い換えれば、ポリマー(F1)を含む層(F)は、ポリマー粒子のコアである。
【0113】
一例として、コアのポリマー(F1)は、イソプレン単独重合体またはブタジエン単独重合体、イソプレン-ブタジエン共重合体、ビニルモノマー98%重量以下を備えたイソプレン共重合体、およびビニルモノマー98重量%以下を備えたブタジエン共重合体からなっていてもよい。ビニルモノマーは、ポリマー(F1)が芳香族基を含むモノマー50重量%未満を含むなら、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、またはブタジエン、またはイソプレン、またはそれらの混合物であってもよい。
【0114】
ポリマー(F1)は架橋されていてもよい。本発明に役立つ架橋性モノマーは限定されないが、ジビニルベンゼンおよびジビニルトルエンなどの芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレートおよび1,3-ブタンジオールジアクリレートなどの多価アルコール、トリメタクリレート、トリアクリレート、アリルアクリレートおよびアリルメタクリレートなどのアリルカルボキシレート、ならびにジアリルフタレート、ジアリルセバケート、およびトリアリルトリアジンなどのジアリル化合物およびトリアリル化合物が挙げられる。
【0115】
1つの実施形態によれば、コアはブタジエン単独重合体である。
【0116】
他の実施形態によれば、コアはブタジエン-スチレン共重合体である。
【0117】
イソプレンまたはブタジエンに由来したポリマー単位を少なくとも50重量%を含むポリマー(F1)のガラス転移温度Tgは、より好ましくは-100℃~10℃、さらにより好ましくは-80℃~0℃、有利には-70℃~-20℃である。
【0118】
ポリマー(G1)については、二重結合を含むモノマーおよび/またはビニルモノマーを含む、単独重合体ならびに共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリマー(G1)は(メタ)アクリルポリマーである。
【0119】
好ましくは、ポリマー(G1)は、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを少なくとも70重量%を含む。さらにより好ましくは、ポリマー(G1)は、C1~C4アルキルメタクリレートモノマーおよび/またはC1~C8アルキルアクリレートモノマーの少なくとも80重量%を含む。
【0120】
最も好ましくは、ポリマー(G1)のガラス転移温度が少なくとも60℃である限り、ポリマー(G1)のアクリル酸またはメタクリル酸モノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびそれらの混合物から選択される。
【0121】
ポリマー(G1)は、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸、これらの酸に由来したアミド、例えば、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレートまたはメタクリレート、および2-アミノエチルアクリレートまたはメタクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される官能性モノマーを含んでいてもよい。
【0122】
有利には、ポリマー(G1)はメチルメタクリレートに由来したモノマー単位の少なくとも70重量%を含む。
【0123】
好ましくは、ポリマー(G1)のガラス転移温度Tgは60℃~150℃である。ポリマー(G1)のガラス転移温度は、より好ましくは80℃~150℃、有利には90℃~150℃、より有利には100℃~150℃である。
【0124】
好ましくは、ポリマー(G1)は先の工程で製造されたポリマーにグラフトされる。
【0125】
ある実施形態によれば、ポリマー(G1)は架橋されている。
【0126】
コア-シェルは、少なくとも2つの工程を含むいくつかの工程を備えた方法によって得られてもよい。そのような方法は、例えば、文献US2009/0149600又はEP0,722,961に記載されている。
【0127】
好ましくは、工程(F)で作製されたガラス転移温度が0℃未満のポリマー(F1)は、多段プロセスの第1の工程である。
【0128】
完全な多層ポリマーに対する工程(F)に含まれる層のポリマー(F1)の重量割合raは、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%である。
【0129】
完全な多層ポリマーに対する工程(G)における外側層のポリマー(G1)の重量比rbは、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも7重量%である。
【0130】
本発明によれば、ポリマー(B1)を含む外側層(G)と完全な多層ポリマーとの割合rbは30重量%以下である。
【0131】
好ましくは、完全な多層ポリマーに対するポリマー(G1)の割合は5重量%~30重量%である。
【0132】
有利には、耐衝撃性改良剤は、SEBS、SBS、およびコア-シェル構造から選択される。
【0133】
ガラス短繊維(C)に関して:
ガラス短繊維は、組成物中に6~20重量%、特に6~15重量%存在する。
【0134】
ガラス短繊維は断面が円形または非円形であってもよい。
【0135】
円形断面を備えた繊維は、その周囲のあらゆる点で繊維の中心に等しい距離を有する繊維として定義され、したがって真円または略真円を表す。
【0136】
したがって、この真円または略真円を有さないいずれのガラス繊維も断面が非円形の繊維として定義される。
【0137】
断面が非円形の繊維の限定されない例は、例えば、楕円、卵または繭形状、星形状、フレーク形状、へん平繊維、十字形状、多角形、およびリングの非円形繊維である。
【0138】
ガラス短繊維は、組成物が使用される前に、好ましくは長さが2~13mm、好ましくは3~8mmである。
【0139】
ガラス繊維は次の通りであってもよい:
- 直径が4~25μm、好ましくは4~15μmの円形断面を備える、
- またはL/D比が2~8、特に2~4の非円形断面を備える(Lは繊維の断面の最大寸法を表し、Dは前記繊維の断面の最小寸法を表す)。LおよびDは走査電子顕微鏡(SEM)によって測定されてもよい。
【0140】
プレポリマー(D)に関して:
少なくとも1つのプレポリマーは、組成物の全重量に対して0~10重量%で任意に存在する。
【0141】
用語「プレポリマー」は、マトリックスにおいて使用されるポリアミドより数平均分子量が必ず低いポリアミドのオリゴマーを指し、特に、前記プレポリマーは、数平均分子量が1000~15000g/mol、特に1000~10000g/molである。
【0142】
プレポリマーは、上記と定義が同じ脂肪族、線状または分岐状ポリアミドオリゴマー、脂環式ポリアミドオリゴマー、半芳香族ポリアミドオリゴマー、芳香族ポリアミドオリゴマー、脂肪族、線状または分岐状、脂環式、半芳香族、および芳香族ポリアミドから選択されてもよい。
【0143】
したがって、プレポリマーまたはオリゴマーは以下の縮合に由来する;
- 少なくとも1つのラクタム、または
- 少なくとも1つのアミノ酸、または
- 少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのジアミン、または
それらの混合物。
【0144】
したがって、プレポリマーまたはオリゴマーは、ジアミンとラクタムまたはアミノ酸との縮合に相当することができない。
【0145】
プレポリマーは、また、コポリアミドオリゴマー、またはポリアミドとコポリアミドオリゴマーとの混合物であってもよい。
【0146】
例えば、プレポリマーは、一官能価NH2、一官能価CO2H、または二官能価CO2HもしくはNH2である。
【0147】
したがって、プレポリマーは、一官能価または二官能価の酸またはアミンであってもよく、すなわち、それは、一官能価の場合(この場合、他の末端は非官能性、特にCH3)、単一の末端アミンもしくは酸機能を有している、または二官能価の場合、2つの末端アミン機能もしくは2つの末端酸機能を有している。
【0148】
有利には、プレポリマーは一官能価、好ましくはNH2またはCO2Hである。
【0149】
また、それは2つの末端、特にdiCH3で非官能性であってもよい。
【0150】
一官能価NH2プレポリマーは、NH2もしくはCOOH官能性アルキル(線状または分岐状)、好ましくはCOOH、またはラクタムもしくはアミノ酸またはジアミンの縮合後のアリールモノカルボン酸をジカルボン酸と反応させることによって製造されてもよい。
【0151】
DiNH2プレポリマーは、ラクタムもしくはアミノ酸またはジアミンの縮合後のジアミンをジカルボン酸と反応させることによって製造されてもよい。
【0152】
官能性CO2Hプレポリマーは、NH2またはCOOH官能性アルキル(線状または分岐状)、好ましくはCOOH、またはラクタムもしくはアミノ酸またはジアミンの縮合後のアリールモノカルボン酸をジカルボン酸と反応させることによって製造されてもよい。
【0153】
DiCO2Hプレポリマーは、ラクタムもしくはアミノ酸またはジアミンの縮合後のジカルボン酸をジカルボン酸と反応させることによって製造されてもよい。
【0154】
非官能性diCH3プレポリマーは、プレポリマーのアミン末端をアルキルモノカルボン酸と、酸末端をアルキルアミンと反応させることによって製造されてもよい。
【0155】
有利には、本発明の組成物では、プレポリマーは、長鎖ポリアミドから選択され、マトリックスのポリアミドと適合性であり、特に、マトリックスのポリアミドは、長鎖ポリアミドから選択され、特に脂肪族、半芳香族、または脂環式である。
【0156】
有利には、前記プレポリマーは、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドに相当し、特にPA6、PA11、PA12、PA11/6、およびPA6/12、またはそれらの混合物から選択される。
【0157】
有利には、単一のプレポリマーは、組成物において使用される。
【0158】
本発明の組成物において使用される前記プレポリマーは、数平均分子量が1000~15,000g/mol、特に1000~13,000g/mol、特に1000~10,000g/mol、特に1000~9000g/mol、特に1000~8000g/mol、特に1000~7000g/mol、特に1000~6000g/mol、特に1000~5000g/mol、特に2000~5000g/mol、特に2000~4000g/mol。特に2000~3000g/molであってもよい。
【0159】
有利には、プレポリマーの重量割合は、組成物の全重量に対して0.1~10%、特に1~10重量%、優先的には1~7重量%、より優先的には3~7重量%、さらにより優先的には5~7重量%である。
【0160】
有利には、プレポリマーは、diCH3、diNH2、モノNH2、一酸、二酸、およびアミノ酸プレポリマーから選択される。
【0161】
特に、プレポリマーは、モノNH2、または一酸もしくは二酸、特にモノNH2である。
【0162】
各成分(A)、(B)、(C)および(D)の屈折率は、560nmで1.500~1.540である。
【0163】
屈折率は、Atago社(モデルNAR_1T SOLID)のアッベ屈折計で560nmの波長で23℃で測定される。
【0164】
繊維の屈折率に関して、後者はデータシート、および/または文献においてアクセス可能である。
【0165】
添加剤(E)に関して:
少なくとも1つの添加剤は、組成物の全重量に対して任意に0~5重量%、特に0.1~5重量%で存在する。
【0166】
少なくとも1つの添加剤は、安定剤、着色剤、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される。
【0167】
添加剤の添加後の組成物は、その透明性特性を維持しなければならないことは留意すべきである。
【0168】
一例として、安定剤は、UV安定剤、有機安定剤、またはより一般には、フェノール系抗酸化剤などの有機安定剤(例えば、Ciba-BASFのタイプIrganox245もしくは1098または1010)の組み合わせ、亜リン酸抗酸化剤(例えば、Ciba-BASFのIrgafos(登録商標)126またはlrgafos(登録商標)168)、およびさらに任意にヒンダードアミン光安定剤(例えば、Ciba-BASFのTinuvin770)を意味するHALSのような他の安定剤、抗UV(例えば、CibaのTinuvin312)、リン系安定剤であってもよい。CromptonのNaugard445などのアミン抗酸化剤、またはClariantのNylostab S-EEDなどの多官能安定剤も使用されてもよい。
【0169】
この安定剤は、また銅系安定剤などの無機安定剤であってもよい。そのような無機安定剤の一例として、ハロゲン化物および酢酸銅が挙げられる。第2に、銀などの他の金属は、任意に検討されてもよいが、これらはそれほど有効でないことが分かっている。これらの銅系化合物は、典型的にアルカリ金属ハロゲン化物、特にカリウムに関連する。
【0170】
一例として、可塑剤は、n-ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)などのベンゼンスルホンアミド誘導体;エチルトルエンスルホンアミドまたはN-シクロヘキシルトルエンスルホンアミド;パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルおよびパラヒドロキシ安息香酸2-デシルヘキシルなどのヒドロキシ安息香酸エステル類;オリゴエチレンオキシテトラヒドロテトラヒドロフルフリルアルコールのようなテトラヒドロテトラヒドロフルフリルアルコールのエステル類またはエーテル類;クエン酸のエステル類、またはオリゴエチレンオキシマロネートなどのヒドロキシマロン酸のエステル類から選択される。
【0171】
可塑剤の混合物の使用は、本発明の範囲外ではない。
【0172】
組成物に関して:
本発明の組成物は、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0173】
異なる弾性率(例えば、引張弾性率、曲げ弾性率など)間で区別がなされている。本願発明者らが曲げ弾性率を検討すれば、それは引張弾性率よりも常に低い。
【0174】
これらの弾性率は、温度および試料中の水分レベルによって影響され得る。
【0175】
1つの実施形態では、上述の定義された弾性率は、曲げ弾性率および引張弾性率の両方に相当し、曲げ弾性率は、標準ISO178:2010に従って測定され、引張弾性率(または弾性係数E)は、標準ISO527-1および2:2012に従って測定される。
【0176】
他の実施形態では、上述の定義された弾性率は、曲げ弾性率に相当し、上記のように測定される。
【0177】
他の実施の形態では、上述の定義された弾性率は、引張弾性率に相当し、上記のように測定される。
【0178】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、23℃で乾燥測定される曲げおよび引張弾性率が1700MPaを超える。
【0179】
有利には、23℃で乾燥測定される曲げまたは引張弾性率は1800MPaを超える。
【0180】
有利には、23℃で乾燥測定される引張弾性率は、1900MPaを超え、特に2000MPaである。
【0181】
1つの実施形態では、本発明の透明な成形組成物は、前記ポリアミド成形組成物から無研磨型において作製された幅および長さ100mm*100mm、2mm厚のプレートでASTM D1003に従って測定されるように、70%を超える透過率を示す。
【0182】
有利には、透過率は、75%を超え、特に80%以上である。
【0183】
他の実施形態では、透明な成形組成物は、前記ポリアミド成形組成物から無研磨型において作製された幅および長さ100mm*100mm、2mm厚のプレートでASTM D1003に従って測定されるように、ヘイズが50%未満、特に40%未満である。
【0184】
有利には、ヘイズは35%以下である。
【0185】
有利には、本発明の透明な成形組成物は、前記ポリアミド成形組成物から無研磨型において作製された幅および長さ100mm*100mm、2mm厚のプレートでASTM D1003に従って測定されるように、透過率が70%を超え、ヘイズが50%未満、特に40%未満である。
【0186】
有利には、透過率は、75%を超え、特に80%以上であり、ヘイズは35%以下である。
【0187】
さらに他の実施形態では、本発明の透明な成形組成物は、80mm×10mm×4mmのサイズのVノッチ付バーの、乾燥サンプル状態で温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%でISO 179-1:2010/1eA(シャルピー衝撃)に従って測定される耐衝撃性が15KJ/m2を超え、特に17KJ/m2を超える。
【0188】
本発明の組成物は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~84%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
を重量で(合計100%)含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0189】
有利には、透明な成形組成物は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~84%;
B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
から重量で(合計100%)構成され、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0190】
他の実施形態では、透明な成形組成物は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~83%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー1~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
を重量で(合計100%)含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0191】
他の実施形態では、透明な成形組成物は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~83%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー1~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0~5%、特に0.1~5%
から重量で(合計100%)構成され、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0192】
さらに他の実施形態では、透明な成形組成物は、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~83.9%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0.1~5%
を重量で(合計100%)含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0193】
有利には、それは、
(A)- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~83.9%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー0~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0.1~5%
から合計100%で構成され、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0194】
さらに他の実施形態では、透明な成形組成物は、
(A)
- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~82.9%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー1~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0.1~5%
を重量で(合計100%)含み、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0195】
有利には、透明な組成物は、
(A)
- 窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上である、少なくとも1つの半結晶質脂肪族ポリアミド10~95重量%、
- 少なくとも1つの非晶質ポリアミド90~5重量%
を含むポリアミド混合物35~82.9%;
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤10超え~30%、特に15~30%;
(C)ガラス短繊維6~20%;
(D)少なくとも1つのプレポリマー1~10%;
(E)安定剤、染料、可塑剤、加工助剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤0.1~5%
から合計100%で構成され、
各成分(A)、(B)、(C)、および(D)の屈折率は、1.500~1.540であり、
前記組成物はPEBAを有さず、23℃での乾燥測定弾性率が1700MPaを超える。
【0196】
第1のバリアントでは、半結晶質脂肪族ポリアミドは混合物(A)において優勢であり、特に、それは前記混合物中に51重量%~80重量%で含まれている。
【0197】
したがって、用語「優勢(predominant)」は、混合物(A)では、半結晶質脂肪族ポリアミドが、混合物中に50%を超えて存在し、非晶質ポリアミドは50%未満で存在することを意味する。
【0198】
したがって、非晶質ポリアミドは、特に混合物中に20~49%で存在する。
【0199】
上述した組成物の実施形態はすべて、この第1のバリアントに有効である。
【0200】
有利には、この第1のバリアントにおいて、組成物は、試料がノッチなしで非穿孔の状態で60°の折り角度で、標準ASTM D1052に従って測定される23℃でのノッチなしロスフレックス(Ross Flex)疲労試験に対する抵抗性が50,000サイクルを超える。
【0201】
他の態様によれば、本発明は、スポーツ物品、特にスポーツブーツ、特にスキーブーツもしくはスキーブーツ部品、または滑り止め、例えば、サッカー、ラグビーもしくはフットボール滑り止めを備えた硬い靴、ホッケースケートもしくはホッケースケートの部品、またはランニングシューズ、ゴルフボールもしくはゴルフボールの部品、またはラクロススティック、ホッケー物品、例えば、頭、肩、肘、手、膝、背中もしくは脛を保護するためのヘルメットおよびスポーツ物品、例えば、ヘルメット、グローブ、肩パッド、肘パッド、膝パッド、または脛ガードから選択される、射出によって得られる物品の製造のための第1のバリアントについて上述の定義された組成物の使用に関する。
【0202】
有利には、前記第1のバリアントの組成物は、スポーツシューズの中間ソールのパターンおよび色を、その透明性のために外側ソールを介して見ることを可能にする前記スポーツシューズの前記外側ソールを製造するために使用される。
【0203】
第2のバリアントでは、非晶質ポリアミドは、混合物(A)において優勢であり、特に前記混合物中に55重量%~85重量%含まれている。
【0204】
したがって、用語「優勢(predominant)」は、混合物(A)では、非晶質ポリアミドが、混合物中に50%を超えて存在し、半結晶質脂肪族ポリアミドは50%未満で存在することを意味する。
【0205】
したがって、半結晶質脂肪族ポリアミドは、混合物中に特に15~45%で存在する。
【0206】
上述した組成物の実施形態はすべて、この第2のバリアントにも有効である。
【0207】
他の態様によれば、本発明は、エレクトロニクス用、電気通信用途用、またはデータ変換用、例えば、自律走行車用または相互接続用途用の物品の製造のための、第2のバリアントについて定義される組成物の使用に関する。
【0208】
さらに他の態様によれば、本発明は、上述の定義された組成物を調製する方法であって、成分(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)を押出機中で230と330℃の間の温度で混合して顆粒を製造する工程を含み、顆粒が、その後射出プレス上で230と330℃の間の温度で射出されて所望の物品を製造する、方法に関する。
【0209】
したがって、この調製方法は、組成物一般または第1および第2のバリアントの組成物であろうとなかろうと上述の定義された組成物すべてに関する。
【0210】
乾燥混合物の形態で、または押出機上で配合した後に作製され得る、上述の定義された組成物を含む、繊維、布、フィルム、シート、ロッド、チューブ、射出部品などの透明造形品。
【0211】
したがって、物品は、組成物一般または第1および第2のバリアントの組成物であろうとなかろうと上述の定義された組成物すべてに関する。
【0212】
他の態様によれば、本発明は、上述の定義された組成物を含む樹脂エレメント(I)、および半結晶質熱可塑性ポリマー、有利には熱ポリウレタン(TPU)または発泡もしくは非発泡ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含む組成物を含む樹脂エレメント(II)を含み、樹脂エレメント(I)は、樹脂エレメント(II)に直接接合または結合されている、複合成形品に関する。
【0213】
上述の定義された複合成形品を製造する方法であって、少なくとも1つの樹脂(I)および1つの樹脂(II)を加熱して一方の樹脂を他方の樹脂に取り付けることを含む、方法。
【実施例】
【0214】
本発明の組成物の調製および機械的特性:
溶融ポリアミド顆粒を、耐衝撃性改良剤およびガラス短繊維、ならびに任意選択のプレポリマーおよび添加剤を混合して表IおよびIIの組成物を調製した。この混合物は、平面温度プロファイル(T°)による直径18mmの二軸共回転押出機で配合することによって作製した。スクリュー速度は300rpmであり、流量は8kg/時である。
【0215】
サイドフィーダによってガラス短繊維を導入した。
【0216】
ポリアミド、プレポリマー、耐衝撃性改良剤、および添加剤を、メインホッパ中での配合プロセスの間に添加した。
【0217】
その後、組成物を、以下の基準に従って組成物の特性を調査するために、ダンベル(表3参照)またはバーの形状において、供給用設定温度240℃およびノズル用の260℃、および成形温度60℃で射出成形機(エンゲル(Engel))で成形した。
【0218】
引張弾性率を、タイプ1AのダンベルでISO標準527-1:2012に従って23℃で測定した。
【0219】
使用される機械は、インストロン5966タイプである。クロスヘッドスピードは、弾性率測定用の1mm/分である。テスト条件は、乾燥サンプルで23℃±2℃である。
【0220】
組成物は乾燥組成物である。
【0221】
乾燥サンプル状態での温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%または温度-30℃±2℃、相対湿度50%±10%で、80mm×10mm×4mmのサイズのVノッチ付バーの衝撃強度を、ISO179-1:2010/1eA(シャルピー衝撃)に従って測定した。
【0222】
破断点伸びおよび引張強度を、乾燥サンプルで標準ISO527-1:2012に従って23℃で測定した。
【0223】
23℃で、標準ASTM D1052 09(2014)に従ってノッチなしロスフレックス(Ross Flex)疲労試験を行う(差は折り角度の60°である)。厚さ2mm、長さ150mm、幅20mmの部品を、本発明の組成物(EIn)または比較組成物(ECn)から製造し、次いで70℃、相対湿度62%で7日間調整した。サイクル数は100/分である。
【0224】
100×100×2mm3のウエハを、透過率およびヘイズの測定のために射出成形によって作製した。次のパラメーターを使用した:
- 無研磨型
- ENGEL VICTORY500、160T液圧プレス
- 射出温度(供給/ノズル):260℃/280℃
- 金型温度:60C
- 保持時間:20秒
- 材料保持圧力:525バール
- 冷却時間:20秒
[表1]
[表2]
PA11: Rilsan(登録商標) (Arkema)
PA11/B10(重量で10:90)
Kraton(商標) FG 1901: スチレンおよびエチレン/ブチレンをベースとする線状トリブロック共重合体、無水マレイン酸で官能化、d=0.91g/cm3、Kraton Polymers社から供給
Paraloid(商標) EXL2690: メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コア-シェル共重合体
添加剤: 抗酸化剤混合物(0.1重量%) + 第2の抗酸化剤(0.2重量%)
【0225】
射出性および表面外観も測定した。
【0226】
様々な結果を表1~表6に示す。
[表3]
EC2およびEC3のデータは出願人に由来しないが、それぞれEP 3,309,199 B1及びEP 3,486,287 A1に示されるものである。
[表4]
タイプ1Aのダンベルをエンゲル(Engel)社タイプ射出成形機での射出によって得た:
[表5]
[表6]
【国際調査報告】