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特表2023-550355キメラ抗原受容体を発現する遺伝子操作された細胞に関連する方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体を発現する遺伝子操作された細胞に関連する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20231124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P43/00 105
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528758
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2021059182
(87)【国際公開番号】W WO2022104090
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/113,739
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/229,017
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519312511
【氏名又は名称】ブイオーアール バイオファーマ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】VOR BIOPHARMA INC.
【住所又は居所原語表記】100 Cambridgepark Drive, Suite400,Cambridge,MA 02140, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カシム,サディク
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】カネシン,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボーティ,ティルタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB27
(57)【要約】
本開示は、キメラ抗原受容体を発現する遺伝子操作された細胞に関する方法および組成物を対象とし、ここにおいて、細胞は動員リンパ球である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子操作された細胞であって、
過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸を含み、
動員リンパ球細胞、またはその子孫である、細胞。
【請求項2】
Tリンパ球である、請求項1に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項3】
前記Tリンパ球が、CD3、CD4、および/またはCD8を発現する、請求項2に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項4】
前記Tリンパ球が、CD4、およびCD8を発現する、請求項2または3に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項5】
前記Tリンパ球が、PD1を発現する、請求項2~4いずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項6】
前記Tリンパ球が、アルファ/ベータTリンパ球である、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項7】
前記Tリンパ球が、ガンマ/デルタTリンパ球である、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項8】
前記Tリンパ球が、ナイーブTリンパ球である、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項9】
前記Tリンパ球が、エフェクターTリンパ球である、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項10】
前記Tリンパ球が、メモリーTリンパ球である、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項11】
前記Tリンパ球が、調節性Tリンパ球(Treg)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項12】
前記細胞が、Bリンパ球である、請求項1に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項13】
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項1に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項14】
前記造血幹細胞動員が、対象にエトポシド、プレリキサホル、シクロホスファミド、および/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項15】
前記キメラ抗原受容体が、第一世代CARである、請求項1~14のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項16】
前記キメラ抗原受容体が、第二世代CARである、請求項1~14のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項17】
前記キメラ抗原受容体が、第三世代CARである、請求項1~14のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項18】
前記系統特異的細胞表面抗原が、CD33、CD30、CD38、CD123、CLL-1、CD5、CD6、CD7、CD19、またはBCMAである、請求項1~17のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項19】
前記過剰増殖性疾患が造血器悪性腫瘍である、請求項1~18のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項20】
前記造血器悪性腫瘍が骨髄性悪性腫瘍である、請求項19に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項21】
前記造血器悪性腫瘍が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である、請求項19または20に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項22】
前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ球性白血病である、請求項21に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項23】
前記造血器悪性腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項19~22のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項24】
前記造血器悪性腫瘍が骨髄異形成症候群である、請求項19~22のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項25】
前記造血器悪性腫瘍がリンパ性悪性腫瘍である、請求項19に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項26】
それを必要とする対象に投与するための、請求項1~25のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞であって、ここにおいて前記対象が、造血器悪性腫瘍を有するか、または造血器悪性腫瘍と診断されており、かつ前記系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、または前記CARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される前記系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された幹細胞を含む造血幹細胞移植を受けている、遺伝子操作された細胞。
【請求項27】
方法であって、
第一の対象から得られた動員リンパ球を、過剰増殖性疾患と関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸と接触させ、それによって前記CARを発現する遺伝子操作されたリンパ球を産生すること、を含む、方法。
【請求項28】
前記遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫を、第二の対象に投与すること、をさらに含み、
前記第二の対象が、それを必要とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第二の対象が、過剰増殖性疾患を有するか、または過剰増殖性疾患と診断されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第一の対象が、前記第二の対象とは異なる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記第一の対象が、前記第二の対象と同一である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫の投与を必要とする前記対象が、前記系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、または前記CARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される前記系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された造血幹細胞を含む造血幹細胞移植を受けている、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項28~31のいずれか一項に記載の方法であって、
前記遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫の投与後に、造血幹細胞移植を、それを必要とする前記対象に投与すること、をさらに含み、
ここにおいて、前記移植が、前記系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、または前記CARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される前記系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された造血幹細胞を含む、方法。
【請求項34】
前記遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫が、前記系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、または前記CARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される前記系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された造血幹細胞を含む造血幹細胞移植と組み合わせて投与される、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項27~34のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第一の対象から得られた造血幹細胞を、RNA誘導ヌクレアーゼおよびガイドRNA、またはそれをコードする核酸と接触させ、ここで前記ガイドRNAは、前記系統特異的細胞表面抗原をコードする遺伝子を標的とし、
それによって、前記系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、または前記系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された造血幹細胞を産生することを、さらに含み、
ここにおいて、前記遺伝子操作された造血幹細胞が、前記CARによって標的化されていない、方法。
【請求項36】
前記遺伝子操作された造血幹細胞またはその子孫を、それを必要とする対象に投与すること、をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記動員リンパ球が、Tリンパ球である、請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記Tリンパ球が、CD3、CD4、および/またはCD8を発現する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記Tリンパ球が、CD4、およびCD8を発現する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記Tリンパ球が、PD1を発現する、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記Tリンパ球が、アルファ/ベータTリンパ球である、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記Tリンパ球が、ガンマ/デルタTリンパ球である、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記Tリンパ球が、ナイーブTリンパ球である、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記Tリンパ球が、エフェクターTリンパ球である、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記Tリンパ球が、メモリーTリンパ球である、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記Tリンパ球が、調節性Tリンパ球(Treg)である、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記動員リンパ球が、Bリンパ球である、請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記動員リンパ球が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記キメラ抗原受容体が、第一世代CARである、請求項27~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記キメラ抗原受容体が、第二世代CARである、請求項27~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記キメラ抗原受容体が、第三世代CARである、請求項27~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記系統特異的細胞表面抗原が、CD33、CD30、CD38、CD123、CLL-1、CD5、CD6、CD7、CD19、またはBCMAである、請求項27~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記過剰増殖性疾患が造血器悪性腫瘍である、請求項27~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記造血器悪性腫瘍が骨髄性悪性腫瘍である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記造血器悪性腫瘍が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記白血病が、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ球性白血病である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記造血器悪性腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項53~56のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項58】
前記造血器悪性腫瘍が骨髄異形成症候群である、請求項53~56のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項59】
前記造血器悪性腫瘍がリンパ性悪性腫瘍である、請求項27~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記RNA誘導ヌクレアーゼが、CRISPR/Casヌクレアーゼである、請求項35~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記CRISPR/Casヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記CRISPR/Casヌクレアーゼが、SpCasヌクレアーゼである、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記CRISPR/Casヌクレアーゼが、SaCasヌクレアーゼである、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記CRISPR/Casヌクレアーゼが、Cpf1ヌクレアーゼである、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記ガイドRNAおよび/または前記RNA誘導ヌクレアーゼをコードする前記核酸が、RNA、好ましくは、mRNAまたはmRNA類似体である、請求項35~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記ガイドRNAが、化学的に修飾されている一つ以上のヌクレオチド残基を含む、請求項35~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記ガイドRNAが、2’O-メチル部分を含む一つ以上のヌクレオチド残基を含む、請求項35~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記ガイドRNAが、ホスホロチオエートを含む一つ以上のヌクレオチド残基を含む、請求項35~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記ガイドRNAが、チオPACE部分を含む一つ以上のヌクレオチド残基を含む、請求項35~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
請求項1~26のいずれかに記載の複数の遺伝子操作された細胞を含む、または請求項27~69のいずれかに記載の方法によって産生される、取得される、もしくは取得可能である、細胞集団。
【請求項71】
請求項70に記載の細胞集団を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年11月13日に出願された米国仮特許出願第63/113,739号、および2021年8月3日に出願された米国仮特許出願第63/229,017号の35 U.S.C.119(e)に基づく優先権を主張するものであり、当該仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、少なくとも部分的に、過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸を含む遺伝子操作された細胞を対象とし、ここにおいて、細胞は、造血幹細胞動員後に対象から得られたリンパ球細胞(またはその子孫)である。一態様では、遺伝子操作された細胞は、動員リンパ球細胞または動員リンパ球細胞の子孫である。本開示はさらに、部分的には、このような遺伝子操作された細胞を産生する方法、およびこのような遺伝子操作された細胞(またはその子孫)を、それを必要とする対象に投与する方法を対象とする。本開示は、部分的には、造血幹細胞動員を受けた対象からのアフェレーシス試料から、過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とする本開示の遺伝子操作された細胞(例えば、CAR発現細胞)が生成され得るという発見に基づく。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、遺伝子操作されたリンパ球、例えばCAR発現リンパ球、および対象における造血幹細胞動員後に対象から採取された同じアフェレーシス試料由来の遺伝子操作された造血幹細胞(HSC)の産生を可能にし、このように、複数のアフェレーシス処置を回避し、造血幹細胞を対象に移植するのに使用することができるHSC、例えば遺伝子操作されたHSC、ならびにHSCに遺伝子的に合致するリンパ球、例えば、CARを発現する、および造血幹細胞移植を受ける同じ対象に投与することができる、遺伝子操作されたリンパ球を作成する。
【0003】
いかなる特定の理論にも拘束されることを所望するものではないが、造血幹細胞は、典型的には、造血幹細胞動員後に対象から採取されたアフェレーシス試料から採取される。しかしながら、アフェレーシス試料(例えば、CD34+)細胞の細胞のサブセットのみが造血幹細胞である。このようなアフェレーシス試料はまた、末梢血単核細胞(PBMC)を含み、これには例えば、リンパ球、および他の細胞が含まれる。本開示は、部分的に、造血幹細胞として採取されなかったアフェレーシス試料(例えば、PBMC)由来の細胞を使用して、遺伝子操作された細胞、例えば、キメラ抗原受容体を発現するリンパ球(例えば、CAR細胞)を調製し得るという発見を対象とする。こうした遺伝子操作された細胞(例えば、CAR細胞)は、免疫療法として使用されてもよく、多くの疾患を治療する際に使用される。さらに、本開示の細胞および方法は、単一のドナー対象からの単一のアフェレーシス試料から、本開示の造血幹細胞および遺伝子操作された細胞(例えば、CAR細胞)を産生するための、資源効率の良い手段を提供することができる。
【0004】
本開示の態様は、過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸を含む遺伝子操作された細胞を提供し、ここにおいて、細胞はリンパ球細胞であり、および細胞またはその親細胞は、造血幹細胞動員後に対象から得られる。本開示の態様は、過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸を含む遺伝子操作された細胞に関し、ここにおいて、細胞は動員リンパ球細胞であるか、またはその子孫である。
【0005】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞はリンパ球細胞であり、細胞またはその親細胞は、造血幹細胞動員後に対象から取得される。いくつかの実施形態では、細胞は動員リンパ球細胞である。
【0006】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞または動員リンパ球は、Tリンパ球である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、CD3、CD4、および/またはCD8(例えば、CD4およびCD8)を発現する。いくつかの実施形態では、Tリンパ球はPD1を発現する。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、アルファ/ベータTリンパ球、ガンマ/デルタTリンパ球、ナイーブTリンパ球、エフェクターTリンパ球、メモリーTリンパ球、または調節性Tリンパ球(Treg)である。
【0007】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞または動員リンパ球は、Bリンパ球である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞または動員リンパ球は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0008】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞動員は、対象に、エトポシド、プレリキサホル、シクロホスファミド、および/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、第一世代CAR、第二世代CAR、または第三世代CARである。
【0010】
いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原は、CD33、CD30、CD38、CD123、CLL-1、CD5、CD6、CD7、CD19、またはBCMAである。
【0011】
いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、造血器悪性腫瘍または骨髄性悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ球性白血病である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、またはリンパ性悪性腫瘍である。
【0012】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、それを必要とする対象への投与用であり、ここにおいて、対象は、造血器悪性腫瘍を有するか、または造血器悪性腫瘍と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、またはCARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された幹細胞を含む造血幹細胞移植を受けている。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、第一の対象から得られた動員リンパ球を、過剰増殖性疾患と関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸と接触させ、それによってCARを発現する遺伝子操作されたリンパ球を産生することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫を第二の対象に投与することをさらに含み、ここにおいて、第二の対象はそれを必要とする。いくつかの実施形態では、第二の対象は、過剰増殖性疾患を有するか、または過剰増殖性疾患と診断されている。いくつかの実施形態では、第一の対象は、第二の対象とは異なる。いくつかの実施形態では、第一の対象は、第二の対象と同一である。
【0014】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫の投与を必要とする対象は、系統特異的細胞表面抗原の発現が低下したか、もしくは発現を欠く、またはCARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する遺伝子操作された造血幹細胞を含む造血幹細胞移植を受けている。いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫の投与後に、造血幹細胞移植を、それを必要とする対象に施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたリンパ球またはその子孫は、遺伝子操作された造血幹細胞を含む造血幹細胞移植と組み合わせて投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、第一の対象から得られた造血幹細胞を、RNA誘導ヌクレアーゼおよびガイドRNA、またはそれをコードする核酸と接触させ、ここにおいてガイドRNAは、系統特異的細胞表面抗原をコードする遺伝子を標的とし、この接触させることによって、系統特異的細胞表面抗原の発現が低下するか、もしくは発現を欠く、または系統特異的細胞表面抗原のバリアント型を発現する、遺伝子操作された造血幹細胞を産生することをさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された造血幹細胞は、CAR、例えば遺伝子操作されたリンパ球のCARによって、標的化されない。いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子操作された造血幹細胞またはその子孫を、それを必要とする対象に投与することをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞または動員リンパ球は、Tリンパ球である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、CD3、CD4、および/またはCD8(例えば、CD4およびCD8)を発現する。いくつかの実施形態では、Tリンパ球はPD1を発現する。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、アルファ/ベータTリンパ球、ガンマ/デルタTリンパ球、ナイーブTリンパ球、エフェクターTリンパ球、メモリーTリンパ球、または調節性Tリンパ球(Treg)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞または動員リンパ球は、Bリンパ球である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞または動員リンパ球は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0018】
いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原は、CD33、CD30、CD38、CD123、CLL-1、CD5、CD6、CD7、CD19、またはBCMAである。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、第一世代CAR、第二世代CAR、または第三世代CARである。
【0019】
いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、造血器悪性腫瘍または骨髄性悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ球性白血病である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、またはリンパ性悪性腫瘍である。
【0020】
いくつかの実施形態では、RNA誘導ヌクレアーゼは、CRISPR/Casヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、SpCasヌクレアーゼ、SaCasヌクレアーゼ、またはCpf1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ガイドRNAおよび/またはRNA誘導ヌクレアーゼをコードする核酸は、RNA、好ましくは、mRNAまたはmRNA類似体である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、化学的に修飾されている一つ以上のヌクレオチド残基を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、2’O-メチル部分を含む一つ以上のヌクレオチド残基を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、ホスホロチオエートを含む一つ以上のヌクレオチド残基を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、チオPACE部分を含む一つ以上のヌクレオチド残基を含む。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示される複数の遺伝子操作された細胞を含む、または本明細書に記載される方法によって産生される、取得される、もしくは取得可能である、細胞集団を提供する。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される細胞集団のうちのいずれかを、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0023】
図1図1は、単一ドナーからの、編集された造血幹細胞(eHSC)およびキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞治療システムの産生の例示的な実施形態を示す概略図である。
図2図2は、編集された造血幹細胞(eHSC)およびキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞(CAR-T細胞)が、単一ドナーから産生され、患者に投与される例示的方法を示す概略図である。
図3A-E】図3A~3Hは、動員末梢血単核細胞(PBMC、図2において「非標的分画」と呼称される)の集団を特徴付けたプロットを示す。図3Aは、CD3+細胞(T細胞)の集団を示すフローサイトメトリー分析プロットである。図3Bは、CD14+細胞(単球)の集団を示すフローサイトメトリー分析プロットである。図3Cは、CD56+細胞(NK細胞)の集団を示すフローサイトメトリー分析プロットである。図3Dは、CD19+細胞(B細胞)の集団を示すフローサイトメトリー分析プロットである。図3Eは、定常状態細胞分画(左パネル)または動員細胞分画(右パネル)における、CD3+細胞(T細胞)、単球、NK細胞、およびB細胞の相対的存在量を示すチャートを提示する。
図3F-H】図3Fは、CCR7(y軸)およびCD45RA(x軸)の発現に基づく、図3AのCD3+細胞(T細胞)の集団のさらなる特徴解析を示すフローサイトメトリー分析プロットである。図3Gは、図3Fの細胞型の特定を示す概略図である。TCM:セントラルメモリーT細胞、低CD45RA、高CCR7、ナイーブ:高CD45RA、高CCR7、TEM:エフェクターメモリーT細胞、低CD45RA、低CCR7、TEFF:エフェクターT細胞、高CD45RA、低CCR7。図3Hは、T細胞集団定常状態細胞分画(左パネル)または動員細胞分画(右パネル)の相対的存在量を示すチャートを提示する。
図4A-C】図4A~4Dは、動員および非動員PBMC集団の免疫表現型の特徴解析を示す。図4A:CD3+細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、およびB細胞を示す免疫細胞表現型解析。図4B:CD8およびCD4集団を示すT細胞表現型の比較。図4C:ナイーブT細胞、Tエフェクター細胞(Teff)、Tエフェクターメモリー細胞(TEM)、およびセントラルメモリーT細胞(TCM)集団を示すT細胞表現型の比較。
図4D図4D:定常状態、ならびに動員CD8+およびCD4+サブセット。図4A~4Cの細胞型それぞれについて、データ点は、定常状態(左)および動員(右)に対応する。
図5図5は、二つのドナー(D1およびD2)のPBMC集団のCITEseq特徴解析を示す。左パネルの積み重ねグラフでは、各列は上から下へ、B細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、HSPC、マクロファージ、単球、ネイチャーキラー(nature killer)細胞、およびpDC集団に対応する。右パネルでは、各細胞型について、左の列は動員細胞を指し、右の列は定常状態細胞を指す。
図6図6は、二つのドナー(D1およびD2)のT細胞サブ集団のCITEseq特徴解析を示す。左パネルの積み重ねグラフでは、各列は上から下へ、CD4+Tエフェクター細胞、CD4+Tナイーブ、CD4+TCM、CD4+TEM、CD8+Tエフェクター細胞、およびCD8+Tナイーブ細胞集団に対応する。右パネルでは、各細胞型について、左の列は動員細胞を指し、右の列は定常状態細胞に対応する。
図7図7は、二つのドナー(D1およびD2)からの動員PBMC集団および非動員PBMC集団から得られたリンパ球におけるT細胞活性化の特徴解析を示す。各マーカーについて、列は、左から右に、定常状態(SS)非活性化、動員(Mob)非活性化、SS活性化、およびMob活性化を指す。
図8図8は、より大きなドナーコホート全体にわたる動員PBMC集団および非動員PBMC集団から得られたリンパ球におけるT細胞活性化の特徴解析を示す。
図9図9は、抗CD33 CARで形質導入された、動員(mob)および非動員(ss)PBMC由来細胞を使用した細胞傷害性アッセイの結果を示す。各薬剤について、各列は上から下へ、死滅細胞、アポトーシス細胞、および生細胞に対応する。
図10図10は、CD33発現標的細胞の存在下および不在下での、動員および非動員PBMC由来抗CD33 CAR発現細胞集団におけるTNFアルファ(TNFa+)およびIFNガンマ(IFNg+)発現の細胞内サイトカイン染色(ICS)解析を示す。各状態について、列は、左から右へ、刺激なし(No Stim)、PMA/I、WT MOLM13、CD33KO MOLM13、およびジャーカット細胞に対応する。
図11図11は、CD33発現標的細胞の存在下および不在下での、動員および非動員PBMC由来抗CD33 CAR発現細胞集団におけるTNFアルファ(TNFa)およびIFNガンマ(IFNg)発現のLUMINEX(商標)解析の結果を示す。各状態について、列は、左から右へ、刺激なし(No Stim)、PMA/I、WT MOLM13、CD33KO MOLM13、およびジャーカット細胞に対応する。
図12-1】図12は、インビボでのマウスモデルにおける、動員PBMC由来抗CD33CAR T細胞および非動員PBMC由来抗CD33 CAR T細胞の細胞傷害性アッセイの結果を示す。
図12-2】図12は、インビボでのマウスモデルにおける、動員PBMC由来抗CD33CAR T細胞および非動員PBMC由来抗CD33 CAR T細胞の細胞傷害性アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
臨床使用のための造血幹細胞(HSC)は、アフェレーシスを介した造血幹細胞動員後にドナー対象から得ることができる。こうした対象から得られたアフェレーシス試料は、典型的には、HSC、例えばCD34+HSCの分画(時には「標的分画」とも呼ぶ)と、幹細胞ではない細胞、例えば末梢血単核細胞(PBMC)および他の細胞の分画(時には「非標的分画」とも呼ぶ)とを含む。いくつかの治療アプローチは、遺伝子操作されたHSC、例えば系統特異的抗原の発現を欠く編集されたHSCを、系統特異的抗原を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するリンパ球などの免疫療法と組み合わせて利用し、悪性疾患と関連する細胞を特異的に根絶する一方で、非悪性造血細胞をスペアリングする。例えば、Borot et al., Gene-edited stem cells enable CD33-directed immune therapy for myeloid malignancies PNAS 2019,116(24):11978-11987、およびWO2017/066760として公開された国際特許出願PCT/US16/057339を参照のこと。こうしたアプローチでは、対象は、典型的には、遺伝子操作されたHSCを含む造血細胞移植(HCT)を施され、対象におけるHSCの生着が成功した後、免疫療法、例えば、CAR-T細胞が対象に施される。
【0025】
本開示は、部分的には、動員リンパ球を使用して遺伝子操作された細胞(例えば、CAR細胞)を産生し得るという発見を対象とする。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された造血幹細胞および遺伝子操作されたリンパ球、例えばCAR細胞を、同じ対象から、例えば対象からの同じ血液(例えば、アフェレーシス)試料から産生し、それゆえにドナー対象からの単一の試料から治療用の二つの異なる細胞集団を効率的に提供することに関する、組成物および方法が提供される。本開示は、部分的に、過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とするCARをコードする異種核酸を含む遺伝子操作された細胞を対象とし、ここにおいて、細胞は、動員リンパ球(もしくは動員リンパ球の子孫)、または造血幹細胞動員後に対象から得られたリンパ球(もしくはその子孫)である。また、当該細胞(例えば、例えば系統特異的抗原の発現を欠く遺伝子操作されたHSC、および例えば、造血幹細胞の動員後に対象からの単一のアフェレーシス試料から取得された系統特異的抗原を標的とするCARを発現する遺伝子操作されたリンパ球)を産生し、それを必要とする対象、例えば系統特異的抗原の発現によって特徴付けられるがんを有する対象に、投与する方法も本明細書に含み、ここにおいて、系統特異的抗原はまた、いくつかの非悪性細胞上でも発現される。本開示はまた、遺伝子操作された造血幹細胞を産生および/または投与する方法も提供し、ここにおいて、遺伝子操作された造血幹細胞は、CARによって標的化されない。
【0026】
定義
抗体:本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、特定の標的抗原に特異的結合を付与するのに十分な標準的な免疫グロブリン配列エレメントを含むポリペプチドを指す。当技術分野で公知のように、自然界で生産されるインタクトな抗体は、典型的には、二つの同一の重鎖ポリペプチド(各約50kD)と、二つの同一の軽鎖ポリペプチド(各約25kD)とを含む、約150kDの四量体剤であり、それらは互いに会合して、一般的に「Y字型」構造と称されるものになる。各重鎖は、少なくとも四個のドメイン(それぞれ約110アミノ酸の長さ)を含む。すなわちアミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)、続いて三個の定常ドメイン:CH1、CH2およびカルボキシ末端のCH3(Yの幹の基部に位置する)を含む。「スイッチ」として知られる短い領域は、重鎖可変領域および定常領域を接続する。「ヒンジ」は、CH2ドメインとCH3ドメインを抗体の残りの部分に接続する。インタクトな抗体において、このヒンジ領域中の二つのジスルフィド結合が、二つの重鎖ポリペプチドを互いに接続させる。各軽鎖は、二つのドメインを含む。すなわちアミノ末端の可変(VL)ドメイン、続いてカルボキシ末端の定常(CL)ドメインを含み、それらは互いに別の「スイッチ」によって分離されている。インタクトな抗体四量体は、二つの重鎖-軽鎖二量体を含み、この重鎖-軽鎖は、単一のジスルフィド結合によって互いに連結され、他の二つのジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに接続し、その結果、二量体が互いに連結され、四量体が形成される。
【0027】
天然産生抗体も、典型的にはCH2ドメイン上で典型的にはグリコシル化されている。天然抗体中の各ドメインは、圧縮抗平行ベータバレル中に互いに詰め込まれた二つのベータシート(例えば、3、4、または5ストランドシート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。各可変ドメインは、「相補的決定領域」(CDR1、CDR2、およびCDR3)として知られる三つの超可変ループと、四つのやや不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含有する。天然抗体が折り畳まれると、FR領域は、ドメインの構造フレームワークを提供するベータシートを形成し、重鎖および軽鎖の両方からのCDRループ領域は、三次元空間に集められて、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を生成する。天然に存在する抗体のFc領域は、補体系のエレメントに結合し、また、例えば、細胞傷害を媒介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。Fc受容体に対するFc領域の親和性および/または他の結合属性は、グリコシル化または他の改変を介して調節され得る。いくつかの実施形態では、本発明に従って(例えば、CARの構成要素として)産生および/または利用される抗体は、改変または操作されたグリコシル化を有するFcドメインを含む、グリコシル化Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、天然抗体に見られるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含むポリペプチドまたはポリペプチド複合体は、そのようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原に反応する生物によって生成される)か、または組換え工学、化学合成、もしくは他の人工系もしくは方法論によって産生されるのかに関わらず、「抗体」と呼ばれ得るおよび/または「抗体」として使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列エレメントは、当技術分野で公知であるヒト化、霊長化、キメラなどである。更に、本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、適切な実施形態において(別段の記載または文脈から明らかでない限り)、別の提示における抗体の構造および機能的特徴を利用するための、当分野に公知または開発された構築物または形式のいずれかを指すことができる。例えばいくつかの実施形態では、本発明に従って利用される抗体は、限定されるものではないが、インタクトなIgA、IgG、IgE抗体またはIgM抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、本明細書で最も広い意味で使用され、様々な抗体構造を包含するような抗体断片であって、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および/または抗体断片(好ましくは、所望の抗原結合活性を呈する断片)を含む、抗体断片、から選択される形式のものである。本明細書に記載される抗体は、免疫グロブリン、重鎖抗体、軽鎖抗体、LRR系抗体、または抗体様特性を有する他のタンパク質足場、ならびに例えば、Fab、Fab’、Fab’2、Fab2、Fab3、F(ab’)2、Fd、Fv、Feb、scFv、SMIP、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ミニボディ、マキシボディ、tandab、DVD、BiTe、TandAbなど、またはそれらの任意の組み合わせを含む、当技術分野で公知の他の免疫学的結合部分であり得る。異なるクラスの抗体のサブユニット構造および三次元配置は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生された場合に有するであろう共有結合改変(例えば、グリカンの付着)を欠いている場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合改変(例えば、グリカンの付着、ペイロード(例えば、検出可能な部分、治療部分、触媒部分など)、または他のペンダント基(例えば、ポリエチレングリコールなど)の付着)を含有してもよい。
【0028】
抗原結合断片:「抗原結合断片」は、抗体が結合する抗原に結合する抗体の一部分を指す。抗体の抗原結合断片は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然の、酵素的に取得可能な、合成された、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。例示的な抗体断片としては、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、線状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFvまたはVHHまたはVHまたはVLドメインのみ)、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の抗原結合断片は、scFvである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の抗原結合断片は、VHHドメインのみである。完全な抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。抗体の多重特異性抗原結合断片は、少なくとも二つの異なる可変ドメインを含んでもよく、各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する。
【0029】
抗体重鎖:本明細書で使用される場合、用語「抗体重鎖」は、全ての抗体分子でその天然に存在する立体配置中に存在する二種類のポリペプチド鎖のうち大きい方を指す。
【0030】
抗体軽鎖:本明細書で使用される場合、用語「抗体軽鎖」は、全ての抗体分子でその天然に存在する立体配置中に存在する二種類のポリペプチド鎖のうち小さい方を指す。
【0031】
合成抗体:本明細書で使用される場合、用語「合成抗体」は、例えば、本明細書に記載のバクテリオファージによって発現される抗体など、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を指す。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成された抗体であって、そのDNA分子が抗体タンパク質、または抗体を指定するアミノ酸配列を発現する抗体を意味すると解釈されるべきであり、DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能で周知の合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られたものである。
【0032】
抗原:本明細書で使用される場合、用語「抗原」または「Ag」は、免疫反応を誘発することができる分子を指す。この免疫反応は、抗体産生、特定の免疫適格細胞の活性化、またはその両方に関与し得る。当業者であれば、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の巨大分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者であれば、免疫反応を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、その用語が本明細書で使用される「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原は遺伝子の全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解するであろう。本発明は、限定されるものではないが、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含み、これらのヌクレオチド配列は、所望の免疫反応を誘発するために様々な組み合わせで配置されることが容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原が合成して生成され得るか、または生体試料から誘導され得ることは容易に明らかである。このような生体試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液を含み得るが、これらに限定されない。
【0033】
自己:本明細書で使用される場合、用語「自己」は、後に同じ個体に再導入される個体に由来する任意の材料を指す。
【0034】
同種異系:本明細書で使用される場合、用語「同種異系」は、同じ種の異なる動物に由来する任意の材料(例えば、細胞集団)を指す。
【0035】
過剰増殖性疾患:本明細書で使用される場合、用語「過剰増殖性疾患」は、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖によって特徴付けられる疾患を指す。過剰増殖性疾患は、良性または悪性疾患であり得る。悪性疾患は、典型的には、がん細胞などの悪性細胞の存在によって特徴付けられる。がん細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を介して、身体の他の部分に広がり得る。様々ながんの例としては、限定されるものではないが、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎がん、肝がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がんなどが挙げられる。特定の実施形態では、過剰増殖性は、例えば骨髄性悪性腫瘍またはリンパ性悪性腫瘍などの造血器悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、骨髄異形成症候群である。
【0036】
保存的配列改変:本明細書で使用される場合、用語「保存的配列改変」は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に対して、著しく影響も変更もしないアミノ酸改変を指す。かかる保存的改変には、アミノ酸置換、付加および欠失が含まれる。改変は、部位特異的変異誘発およびPCR介在性変異誘発などの当技術分野で公知の標準的な技術によって、様々な実施形態と適合する抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているアミノ酸置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、抗体のCDR領域内の一つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更された抗体を、本明細書に記載される機能的アッセイを使用して抗原に結合する能力について試験することができる。
【0037】
共刺激性リガンド:本明細書で使用される場合、用語「共刺激性リガンド」は、免疫細胞(例えば、Tリンパ球)上の同族共刺激性分子に特異的に結合し、それによって、増殖、活性化、分化などを含むがこれらに限定されない免疫細胞応答を媒介するシグナルを提供する抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を指す。共刺激性リガンドには、限定されないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD28、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激性リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM;リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3と特異的に結合するリガンドが、含まれ得る。共刺激性リガンドはまた、とりわけ、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドなどの、免疫細胞(例えば、Tリンパ球)上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体を包含する。
【0038】
細胞傷害性:本明細書で使用される場合、用語「細胞傷害性の」または「細胞傷害性」は、細胞を死滅または損傷させることを指す。一実施形態では、代謝的に増強された細胞の細胞傷害性は、改善され、例えば、免疫細胞(例えば、Tリンパ球)の細胞溶解活性が増加される。
【0039】
有効量:本明細書で使用される場合、本明細書に記載の「有効量」は、個体における新生物疾患、例えば、がんを予防または治療するのに適切な用量を指す。治療または予防的使用に対する有効量は、例えば、治療される疾患または障害の段階および重症度、患者の年齢、体重、および一般的な健康状態、ならびに処方医師の判断に依存する。用量のサイズはまた、選択される活性、投与方法、投与のタイミングおよび頻度、特定の活性成分の投与に付随し得る任意の有害な副作用の存在、性質、および範囲、ならびに望ましい生理学的効果によって決定される。当業者であれば、様々な疾患または障害が、本明細書に記載のように、例えば編集された造血幹細胞との短い時間間隔での、各ラウンドまたは様々なラウンドの投与において、おそらくは本開示の遺伝子操作された細胞(例えばCAR細胞)を使用した、複数の投与を伴う長期的な治療を必要とする可能性があることを理解するであろう。
【0040】
本発明の目的のためには、投与される本明細書に記載のCAR構築物を含有する異種核酸を含む遺伝子操作された細胞の量または用量は、合理的な時間枠にわたって、対象または動物において治療的または予防的応答をもたらすのに十分であるべきである。例えば、用量は、投与時間から約2時間以上、例えば、約12~約24時間以上の期間で、抗原に結合するか、またはがんを検出、治療、もしくは予防するのに十分であるべきである。特定の実施形態では、期間はさらに長くてもよい。用量は、本開示の特定の遺伝子操作された細胞(例えば、CAR細胞)の有効性、および動物(例えば、ヒト)の状態、ならびに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0041】
エフェクター機能:本明細書で使用される場合、「エフェクター機能」または「エフェクター活性」は、免疫細胞の刺激に応答して免疫細胞によって実施される特異的活性を指す。例えば、Tリンパ球のエフェクター機能は、抗原を認識し、抗原を発現する細胞を死滅させることを含む。
【0042】
内因性:本明細書で使用される場合、「内因性」とは、特定の生物体、細胞、組織、もしくは系由来の、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
【0043】
外因性:本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、特定の生物体、細胞、組織または系から導入される、またはそれらの外部で産生される任意の物質を指す。
【0044】
拡張する:本明細書で使用される場合、用語「拡張する」は、細胞、例えば、免疫細胞、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、および/または造血細胞などの細胞の数の増加におけるように、数が増加することを指す。一実施形態では、エクスビボで拡張される免疫細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞および/または造血細胞は、培養物中に元々存在した数と比較して数が増加する。別の実施形態では、エクスビボで拡張される免疫細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞および/または造血細胞は、培養物中の他の細胞型と比較して数が増加する。いくつかの実施形態では、拡張は、インビボで発生し得る。本明細書で使用される場合、用語「エクスビボ」は、生物体(例えば、ヒト)から取り出され、生物体の外側(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクター内)で増やされた細胞を指す。
【0045】
機能的部分:本明細書で使用される場合、用語「機能的部分」は、CARに関連して使用される場合、本発明のCAR構築物の任意の部分または断片を指し、その部分または断片は、それが一部であるCAR構築物(親CAR構築物)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、親CAR構築物と同様の程度、同じ程度、またはより高い程度に、標的細胞を認識する能力、またはがんを検出、治療、もしくは予防する能力を保持する、CAR構築物のそれらの部分を包含する。親CAR構築物に関して、機能的部分は、例えば、親CARの約10%、約25%、約30%、約50%、約68%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成することができる。
【0046】
機能的部分は、その部分のアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または両方の末端に追加のアミノ酸を含むことができ、これらの追加のアミノ酸は親CAR構築物のアミノ酸配列には見られない。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能、例えば、標的細胞を認識する、がんを検出する、がんを治療または予防するなどを妨げない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親CAR構築物の生物学的活性と比較して、生物学的活性を強化する。
【0047】
機能的バリアント:本明細書で使用される場合、用語「機能的バリアント」は、本明細書で使用される場合、親CAR構築物と実質的または有意な配列同一性または類似性を有するCAR構築物、ポリペプチド、またはタンパク質を指し、その機能的バリアントは、バリアントであるそのCARの生物学的活性を保持する。機能的バリアントは、例えば、本明細書に記載のCAR構築物(親CAR構築物)のバリアントを包含し、親CAR構築物と同様の程度、同じ程度、またはより高い程度に標的細胞を認識する能力を保持する。親CAR構築物に関して、機能的バリアントは、例えば、アミノ酸配列において親CAR構築物と、少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上同一であり得る。機能的バリアントは、例えば、少なくとも一つの保存的アミノ酸置換を有する親CARのアミノ酸配列を含み得る。あるいはまたはさらに、機能的バリアントは、少なくとも一つの非保存的アミノ酸置換を有する親CAR構築物のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を増強してもよく、その結果、機能的バリアントの生物学的活性が親CAR構築物と比較して増加する。
【0048】
gRNA:用語「gRNA」および「ガイドRNA」は、全体を通して交換可能に使用され、gRNA/Cas9分子複合体の標的核酸への特異的標的化またはホーミングを促進する核酸を指す。gRNAは、本明細書で、時にsgRNAと称されることもある、単分子(単一のRNA分子を有する)、またはモジュール式(一つより多い、典型的には、二つの別個のRNA分子を含む)であり得る。gRNAは、宿主細胞のゲノム中の標的ドメインに結合してもよい。gRNA(例えば、その標的化ドメイン)は、標的ドメインに対して部分的または完全に相補的であってもよい。gRNAはまた、(例えば、gRNA配列の標的化ドメインによって)gRNA配列に結合された標的ドメインにCas9分子をリクルートする、「足場配列」(例えば、tracrRNA配列)を含んでもよい。足場配列は、少なくとも一つのステムループ構造を含み、エンドヌクレアーゼをリクルートしてもよい。例示的な足場配列は、例えば、Jinek, et al. I(2012)337(6096):816-821、Ran, et al. Nature Protocols(2013)8:2281-2308、PCT公開第WO2014/093694号、およびPCT公開第WO2013/176772号に見出すことができる。
【0049】
異種:本明細書で使用される場合、用語「異種」は、生態系、例えば細胞において発生し、その系において自然には発生しない現象を指す。例えば、タンパク質がその細胞において自然には発生しない(例えば、細胞がそのタンパク質を自然にコードしない)細胞におけるタンパク質の発現は、タンパク質の異種発現である。いくつかの実施形態では、異種核酸は、キメラ抗原受容体構築物をコードする。
【0050】
免疫細胞:本明細書で使用される場合、本明細書で「免疫エフェクター細胞」という用語と交換可能に使用される「免疫細胞」という用語は、免疫反応、例えば、免疫反応の促進に関与する細胞を指す。免疫細胞の例としては、以下に限定されないが、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、好中球、好酸球、マスト細胞、血小板、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、またはBリンパ球が挙げられる。免疫細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞)の供給源は、対象から得ることができる。
【0051】
免疫反応:本明細書で使用される場合、用語「免疫反応」は、リンパ球が抗原分子を異物として識別し、抗体の形成を誘導し、および/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する際に生じる、抗原に対する細胞および/または全身の応答を指す。
【0052】
動員細胞/リンパ球:本明細書で使用される場合、用語「動員細胞」は、造血幹細胞動員を受けた対象からの血液試料(例えば、アフェレーシス試料)から得られた細胞を指す。対照的に、「定常状態細胞」は、造血幹細胞動員を受けていない対象からの血液試料(例えば、アフェレーシス試料)から得られた細胞を指す。例えば、図3Eおよび3Hに示すように、細胞型の相対的集団および細胞の発生状態は、定常状態試料と動員試料との間で異なっている。いくつかの実施形態では、動員細胞集団は、定常状態細胞集団と比較して、より高い割合のB細胞(Bリンパ球)を含む。いくつかの実施形態では、動員細胞集団は、定常状態細胞より、低い割合のT細胞(Tリンパ球)を含む。いくつかの実施形態では、動員細胞は、定常状態細胞よりも高い割合のナイーブT細胞を含む。いくつかの実施形態では、動員細胞は、定常状態細胞よりも低い割合のセントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、またはT細胞エフェクターのうちの一つ、二つ、または全てを含む。本明細書で使用される場合、用語「動員リンパ球」は、造血幹細胞動員を受けた対象から得られたリンパ球(またはその子孫)を指す。造血幹細胞動員技術およびプロトコルは臨床で日常的に使用され、本開示の態様に従って好適な例示的な技術およびプロトコルには、エトポシド、プレリキサホル、シクロホスファミド、および/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を利用するプロトコルが含まれる。いくつかの例示的なプロトコルが本明細書に提供されており、追加の好適なプロトコルは、当業者に明らかであろう。いくつかの例示的に好適なプロトコルには、Albakri et al.,A Review of Advances in Hematopoietic Stem Cell Mobilization and the Potential Role of Notch2 Blockade,Cell Transplant 2020,29:0963689720947146に列挙したものが含まれる。
【0053】
核酸:本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、少なくとも三つのヌクレオチドのポリマーを指す。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖部分と二本鎖部分の両方を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、一つ以上のホスホジエステル結合を含む骨格を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合および非ホスホジエステル結合の両方を含む骨格を含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、例えば、一つ以上のホスホロチオエートまたは5’-N-ホスホラミダイト結合、および/または例えば、「ペプチド核酸」におけるように一つ以上のペプチド結合を含む骨格を含んでもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、天然残基(例えば、アデニン、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、グアニン、チミン、ウラシル)の一つ以上、または全てを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、一つ以上の、または全ての非天然残基を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、およびそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、天然残基のものと比較して、一つ以上の修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはポリペプチドなどの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、一つ以上のイントロンを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、酵素合成(例えば、インビボまたはインビトロでの相補的鋳型に基づく重合、組換え細胞もしくは系における複製、または化学合成など、によって調製され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれ以上の残基長である。
【0054】
単鎖抗体:本明細書で使用される場合、用語「単鎖抗体」は、免疫グロブリン重鎖断片および軽鎖断片が、アミノ酸の操作された範囲を介してFv領域に連結される、組換えDNA技術によって形成される抗体を指す。単鎖抗体を作製する様々な方法が公知であり、米国特許第4,694,778号;Bird(1988)Science 242:423-442;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Ward et al.(1989)Nature 334:54454;Skerra et al.(1988)Science 242:1038-1041に記載される方法が挙げられる。
【0055】
特異的に結合する:本明細書で使用される場合、抗体剤、またはキメラ抗原受容体の一部などの抗原結合ドメインに関して「特異的に結合する」という用語は、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的には認識も結合もしない抗原結合ドメインまたは抗体剤を指す。例えば、ある種由来の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインまたは抗体剤は、一つ以上の種由来のその抗原にも結合し得る。しかし、こうした異種間反応性自体は、特異的としての抗原結合ドメインまたは抗体剤の分類を変化させるものではない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインまたは抗体剤はまた、抗原の異なる対立遺伝子型にも結合し得る。しかしながら、こうした交差反応自体は、特異的としての抗原結合ドメインまたは抗体剤の分類を変化させるものではない。場合によっては、用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、抗原結合ドメインまたは抗体剤、タンパク質、またはペプチドと、第二の化学種との相互作用に関連して使用することができ、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存していることを意味し、例えば抗原結合ドメインまたは抗体剤は、タンパク質全般ではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗原結合ドメインまたは抗体剤がエピトープ「A」に特異的である場合、エピトープA(または遊離、非標識A)を含有する分子の存在は、標識「A」および抗原結合ドメインまたは抗体剤を含有する反応において、抗体に結合された標識Aの量を減少させる。
【0056】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」は、生物体、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験室動物、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、またはイヌ)を指す。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態、例えば、本明細書に提供されるように治療され得る疾患、障害、または状態、例えば、本明細書に列挙されたがんまたは腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に感受性であり、いくつかの実施形態では、感受性のある対象は、疾患、障害、または状態を発症するリスクの増加(参照対象または集団において観察される平均リスクと比較して)の素因があり、および/またはそれら発症するリスクの増加を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の一つ以上の症状を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の特定の症状(例えば、疾患の臨床症状)または特徴を呈しない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態のいずれかの症状または特徴を示さない。いくつかの実施形態では、対象は患者である。いくつかの実施形態では、対象は、診断および/もしくは療法が施される、ならびに/またはそれが施されている個体である。
【0057】
標的:本明細書で使用される場合、用語「標的」は、提供される方法、系、および/または組成物の対象である体内の細胞、組織、器官、または部位、例えば、治療を必要とする、もしくは例えば、本明細書に記載されるCARによって優先的に結合される、体内の細胞、組織、器官、または部位を指す。
【0058】
T細胞受容体:本明細書で使用される場合、用語「T細胞受容体」または「TCR」は、抗原の提示に応答してT細胞(交換可能にTリンパ球とも呼ばれる)の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合複合体分子に結合した抗原を認識する役割を担っている。TCRは、アルファ(a)およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体を含むが、一部の細胞では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖を含む。TCRは、アルファ/ベータ形態およびガンマ/デルタ形態に存在してもよく、構造的に類似しているが、解剖学的位置および機能が異なる。各鎖は、可変ドメインおよび定常ドメインの二つの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TCRは、例えばヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびガンマデルタT細胞を含む、TCRを含む任意の細胞上で改変されてもよい。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、アルファ/ベータTリンパ球である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、ガンマ/デルタTリンパ球である。
【0059】
治療的:本明細書で使用される場合、用語「治療的」は、治療および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0060】
トランスフェクトされた:本明細書で使用される場合、用語「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」は、外因性核酸が宿主細胞内に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」細胞、または「形質転換された」細胞、または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクトされ、形質転換され、または形質導入された細胞である。細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0061】
導入遺伝子:本明細書で使用される場合、用語「導入遺伝子」は、細胞内、例えば、細胞のゲノム内に含まれる外因性核酸配列であって、核酸配列が天然には存在しないものを指す。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、遺伝子産物、例えば、CARをコードする核酸配列を含むか、またはそれからなり得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、発現構築物、例えば、調節エレメント、例えば、プロモーターの制御下にある遺伝子産物をコードする核酸配列を含むか、またはそれからなり得る。
【0062】
治療:本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状または特徴の発生率および/または重症度における、部分的または完全な緩和、改善、発症の遅延、阻害、予防、軽減、および/または低減を意味する。いくつかの実施形態では、治療は、疾患、障害、および/または状態の兆候または特徴を示さない対象に施されてもよい(例えば、予防的であってもよい)。いくつかの実施形態では、治療は、例えば、疾患、障害、および/または状態に関連する病理を発症するリスクを低下させる目的で、疾患、障害、および/または状態の初期または軽度の兆候または特徴のみを示す対象に施され得る。いくつかの実施形態では、治療は、疾患、障害、または状態の定着した、重度な、および/または末期の兆候を呈する対象に施され得る。いくつかの実施形態では、治療することは、CAR(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞)を発現する遺伝子操作された細胞を含む免疫細胞を対象に投与すること、または遺伝子操作された幹細胞を含む造血幹細胞移植を対象に施すことを含み得る。
【0063】
腫瘍:本明細書で使用される場合、用語「腫瘍」は、細胞または組織の異常な増殖を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、および/または非転移性である細胞を含んでもよい。いくつかの実施形態では、腫瘍は、がんと関連しているか、またはがんの兆候である。いくつかの実施形態では、腫瘍は分散腫瘍または液体腫瘍であってもよい。いくつかの実施形態では、腫瘍は固形腫瘍であってもよい。
【0064】
遺伝子操作された細胞
本開示のいくつかの態様は、細胞、例えば、動員リンパ球またはその子孫、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞であって、CARをコードする導入遺伝子を含む異種核酸を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞またはその子孫は、造血幹細胞動員後に対象から得られたリンパ球である。
【0065】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、疾患または障害に関連するヒト抗原を標的とする、例えば過剰増殖性疾患に関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とする、キメラ抗原受容体をコードする。いくつかの実施形態では、CARは、細胞型特異的プロモーター、または構成的プロモーターに動作可能に結合される。いくつかの実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、CD8プロモーターである。いくつかの実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、CD3デルタプロモーターである。いくつかの実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、CD56プロモーターである。いくつかの実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、CD244プロモーターである。いくつかの実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、CD94プロモーターである。いくつかの実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、NKG2Dプロモーターである。
【0066】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、細胞質シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む、キメラ抗原受容体をコードする。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、抗原に結合する抗体または抗原結合抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、抗原に結合するscFvまたは単一ドメイン抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、系統特異的細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、抗原の発現は、過剰増殖性疾患と関連している。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、例えば骨髄性悪性腫瘍またはリンパ性悪性腫瘍などの造血器悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原CD33、CD123、CD19、CLL-1、CD30、CD38、BCMA、CD5、CD6、CD7、または本明細書に記載されるものなどの任意の他の系統特異的細胞表面抗原。いくつかの実施形態では、CARのヒンジドメインは、CD8α(CD8アルファ)ヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、CD8またはCD28膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、CARの共刺激性ドメインは、4-1BBもしくはCD28共刺激性ドメイン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、CARの細胞質シグナル伝達ドメインは、CD3ζ(CD3ゼータ)細胞質シグナル伝達ドメインである。
【0067】
いくつかの実施形態では、細胞は、リンパ球細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞であり、Tリンパ球とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、細胞は、アルファ/ベータT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ガンマ/デルタT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、ナイーブTリンパ球、エフェクターTリンパ球、メモリーTリンパ球、または調節性Tリンパ球である。いくつかの実施形態では、細胞は、B細胞であり、Bリンパ球とも呼ばれる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球であり、これはCD3(すなわち、CD3+)の発現によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、T細胞受容体(TCR)αおよびβ鎖を発現する。いくつかの実施形態では、T細胞は、TCRγ鎖およびTCRδ鎖を発現する。Tリンパ球は、他の細胞表面マーカー、例えば、CD4またはCD8の発現に基づいてさらに分類されてもよい。CD4またはCD8の発現は、T細胞を、CD4(CD4+)の発現によって特徴付けられる「Tヘルパー細胞」、またはCD8(CD8+)の発現によって特徴付けられる「細胞傷害性T細胞」として大きく分類する。当業者によって理解されるように、CD4+T細胞およびCD8+T細胞は、別個の細胞機能を有する。いくつかの実施形態では、T細胞は、Th1またはTh2 CD4+細胞としてさらに区別され得る、CD4+T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTL、CD8 T細胞とも呼ばれる)である。
【0069】
いくつかの実施形態では、T細胞は、細胞傷害性T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM)、幹メモリーT細胞(TSCM)、幹細胞様メモリーT細胞(または幹様メモリーT細胞)、およびエフェクターメモリーT細胞、例えば、TEM細胞およびTEMRA(CD45RA+)細胞、エフェクターT細胞、またはTヘルパー細胞、例えば、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、Tfh(濾胞性ヘルパー)細胞、T調節性細胞(Tregs、FoxP3+T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、およびγδT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、PD1などの細胞死リガンドを発現する。いくつかの実施形態では、PD1を発現するCD8+T細胞などのT細胞は、「疲弊」T細胞とみなされ、免疫抑制を促進する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球であり、これはCD19の発現(すなわち、CD19+)によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される免疫エフェクター細胞は、NK細胞であり、これはCD56の発現(すなわち、CD56+)によって特徴付けられ得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、動員リンパ球である。いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用する細胞、例えば動員リンパ球は、造血幹細胞動員を受けた対象から採取される。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、造血幹細胞動員を受けた対象から得られた末梢血単核細胞(PBMC)、例えばリンパ球である。造血幹細胞動員は、対象が動員剤に曝露されることにより、通常は骨髄に局在する細胞(例えば、造血幹細胞)の動員を促進して末梢血循環系内に移動させ、血液試料、例えばアフェレーシス試料を採取することによって、幹細胞を採取することを可能にするプロセスである。例えば、Karpova D,Rettig MP,DiPersio JF.Mobilized peripheral blood:an updated perspective.F1000Res.2019;8:F1000 Faculty Rev-2125.2019年12月20日に公開、doi:10.12688/f1000research.21129.1.を参照のこと。いくつかの実施形態では、造血幹細胞動員は、対象に、エトポシド、プレリキサホル、シクロホスファミド、および/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のうちの一つ以上を投与することを含む。いくつかの実施形態では、造血幹細胞動員は、対象における造血幹細胞集団の拡張を含む。いくつかの実施形態では、造血幹細胞動員を受けた対象から採取された血液試料(例えば、アフェレーシス試料)は、造血幹細胞動員を受けなかった定常状態の対象から採取された血液試料(例えば、アフェレーシス試料)と比較して、細胞の型の異なる相対比率(例えば、総細胞数に対する)を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞動員を受けた対象からの血液試料は、(例えば、過剰増殖性疾患と関連するCAR標的化系統特異的細胞表面抗原をコードする異種核酸を含む遺伝子操作された細胞を生成するための)動員リンパ球、および(例えば、本明細書に記載される遺伝子操作されたHSCを生成するための)HSCを供給することができる。造血幹細胞動員の方法、およびHSCを取得する方法は、例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、PCT出願第US2016/057339号に記載されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、哺乳動物対象は、非ヒト霊長類、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、ウシ、ブタ、ウマ、または家畜である。いくつかの実施形態では、動員リンパ球および/またはHSCは、造血器悪性腫瘍を有するヒト対象などのヒト対象から取得される。いくつかの実施形態では、動員リンパ球および/またはHSCは、健康なドナーから取得される。いくつかの実施形態では、動員リンパ球および/またはHSCは、キメラ受容体を発現する免疫細胞が後に投与されるであろう対象から取得される。細胞が取得された同じ対象に投与される動員リンパ球は、自己細胞と称される一方で、細胞が後に投与されるであろう対象ではない対象から取得される動員リンパ球は、同種異系細胞と称される。
【0074】
細胞または細胞型の特定の集団は、動員リンパ球細胞集団から単離されてもよい。いくつかの実施形態では、T細胞は、市販の単離方法を含む、当技術分野で周知の方法によって単離される(例えば、Rowland-Jones et al.,Lymphocytes:A Practical Approach,Oxford University Press,New York(1999)を参照されたい)。T細胞分離および単離方法は当技術分野で周知であり、例えば、T細胞は、当技術分野で周知のように、CD3、CD4、CD8、CD34(造血幹細胞および前駆細胞の場合)などを含むが、これらに限定されない、所望のT細胞サブタイプに応じて、様々な細胞表面マーカーまたはマーカーの組み合わせ(ポジティブおよびネガティブ選択を含む)を使用して単離することができ、細胞を分離するために使用することができる(Kearse,T Cell Protocols:Development and Activation,Humana Press,Totowa N.J.(2000)、De Libero,T Cell Protocols,Vol.514 of Methods in Molecular Biology,Humana Press,Totowa N.J.(2009)、Su et al.,Methods Mol.Biol.806:287-299(2012)、Bluestone et al.,Sci.Transl.Med.7(315)(doi:10.1126/scitranslmed.aad4134)(2015)、Miyara et al.,Nat.Rev.Rheumatol.10:543-551(2014)、Liu et al.,J.Exp.Med.203:1701-1711(2006)、Seddiki et al.,J.Exp.Med.203:1693-1700(2006)、Ukena et al.,Exp.Hematol.39:1152-1160(2011)、Chen et al.,J.Immunol.183:4094-4102(2009)、Putnam et al.,Diabetes 58:652-662(2009)、Putnam et al.,Am.Tranplant.13:3010-3020(2013)、Lee et al.,Cancer Res.71:2871-2881(2011)、MacDonald et al.,J Clin.Invest.126:1413-1424(2016)を参照されたい)。調節性T細胞を単離および拡張する方法も市販されている(例えば、BD Biosciences、San Jose,Calif.、STEMCELL Technologies Inc.、Vancouver,Canada、eBioscience、San Diego,Calif.、Invitrogen、Carlsbad,Calif.)を参照されたい。
【0075】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞(またはその子孫)は、例えばCARをコードする異種核酸と接触させた後などに、それを再び投与される対象に対して、自己である。いくつかの実施形態では、細胞は非自己であり、例えば、CARをコードする異種核酸と接触させた後などにそれを投与される対象に対して同種である。
【0076】
いくつかの実施形態では、動員細胞(例えば、動員リンパ球)は、対象から取得され、CARを発現するように遺伝子操作され、その後、同じ対象に再び投与される。いくつかの実施形態では、動員細胞(例えば、動員リンパ球)は、対象から取得され、CARを発現するように遺伝子操作され、その後、異なる対象、例えばHLAが合致した対象に投与される。
【0077】
CARの組み換え型発現に使用され得る細胞集団(例えば、動員PBMC)から特定の細胞型(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞)を単離するための任意の好適な方法を使用することができ、この任意の好適な方法には、限定するものではないが、当技術分野で公知の方法、例えば、Sadelain et al.,Nat.Rev.Cancer 3:35-45(2003);Morgan et al.,Science 314:126-129(2006),Panelli et al.,J Immunol.164:495-504(2000);Panelli et al.,J Immunol.164:4382-4392(2000)),Dupont et al.,Cancer Res.65:5417-5427(2005);Papanicolaou et al.,Blood 102:2498-2505(2003))に記載された方法が含まれる。
【0078】
本明細書に提供される系統特異的細胞表面抗原を標的とするCARをコードする異種核酸の細胞への送達は、任意の好適な方法または技術を介して行うことができる。例えば、ウイルスベクター系は、核酸を成熟細胞へ導入するのに特に好適であるが、他の送達様式も使用することができる。標的化組込みを作製する他の方法は当技術分野で公知であり、宿主細胞のゲノム内への組込みのための部位特異性または部位優先性(site preference)を示すトランスポゾンまたはウイルスベクター(例えば、AAVベクター)の使用が含まれるが、これらに限定されない。本明細書には細胞型特異的誘導性発現系のいくつかの例示的な送達方法が提供されるが、追加の好適な系は、本開示および当技術分野の知識に基づいて当業者には明らかであろう。本開示は、この点において限定されない。
【0079】
発現構築物
エフェクターリンパ球、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、またはNK細胞におけるキメラ抗原受容体の発現に適した発現構築物は、当技術分野で公知である。いくつかの例示的な発現構築物が本明細書に提供されており、当業者は追加の好適な構築物を認識するであろう。典型的には、好適な発現構築物は、異種プロモーターの制御下でCARをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構造的に活性なプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、細胞型特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態では、発現構築物は、例えば、ポリアデニル化シグナル、5’UTRおよび/または3’UTR配列、イントロン配列などの追加のエレメントを含む。標的細胞への、例えばリンパ球への発現構築物の送達経路に応じて、発現構築物は、追加のエレメント、例えば、ウイルス送達の場合のウイルスパッケージングおよび組込みエレメントを含んでもよい。
【0080】
本開示のいくつかの態様は、導入遺伝子、例えばCARを特定の細胞型で発現するのに有用な異種核酸およびその発現構築物を提供する。例えば、本開示のいくつかの態様は、特定の細胞型またはサブタイプ(例えば、Tリンパ球、T前駆細胞、成熟Tリンパ球、NK細胞、Bリンパ球など)においてのみ活性である発現構築物を提供する。いくつかの実施形態では、細胞型特異的および誘導性発現は、誘導性発現系を細胞型特異的に発現することによって、例えば、誘導性系の構成要素のうちの一つを、それぞれの細胞型でのみ活性な調節エレメント、例えばプロモーターの制御下に置くことによって、達成される。
【0081】
いくつかの実施形態では、CARを発現するためのプロモーターは、細胞型特異的プロモーターの制御下にあり、この細胞型特異的プロモーターは、一つの特定の細胞型、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、または例えばリンパ球などの細胞の特定のサブグループにおいて発現されるが、特定の細胞型以外の細胞では発現されないプロモーターである。
【0082】
いくつかの実施形態では、CARは、疾患または障害に関連する、例えば過剰増殖性疾患または障害に関連する抗原に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、CARは、第一世代CARである。いくつかの実施形態では、CARは、第二世代CARである。いくつかの実施形態では、CARは、第三世代CARである。いくつかの実施形態では、CARは、第四世代もしくは第五世代のCAR、または武装化(armored)CARである。例示的なCAR構築物が本明細書に提供されており、追加の好適なCAR構築物は、本開示および当技術分野の知識に基づいて当業者に明らかであろう。本明細書で提供される発現系に関連しての使用に適した様々なCAR骨格またはフレームワークの説明については、以下の例示的なおよび非限定的な刊行物を参照されたい:Sadelain et al.,Cancer Discov.3(4):388-398(2013);Jensen et al.,Immunol.Rev.257:127-133(2014);Sharpe et al.,Dis.Model Mech.8(4):337-350(2015);Brentjens et al.,Clin.Cancer Res.13:5426-5435(2007);Gade et al.,Cancer Res.65:9080-9088(2005);Maher et al.,Nat.Biotechnol.20:70-75(2002);Kershaw et al.,J.Immunol.173:2143-2150(2004);Sadelain et al.,Curr.Opin.Immunol.(2009);Hollyman et al.,J.Immunother.32:169-180(2009))。
【0084】
第一世代CARは、典型的には、細胞外抗原結合ドメイン、例えば、T細胞受容体鎖の細胞質/細胞内ドメインに融合された膜貫通ドメインに融合された単鎖可変断片(scFv)からなる。典型的には、第一世代CARは、内因性T細胞受容体(TCR)からのシグナルを伝達するCD3ζの細胞内ドメインを含み、「第一世代」CARは、HLA介在性抗原提示とは無関係に、デノボ抗原認識を提供でき、単一の融合分子におけるそれらのCD3ζ鎖シグナル伝達ドメインを介して、CD4+およびCD8+T細胞の両方の活性化を引き起こすことができる。
【0085】
第二世代CARは、T細胞を活性化することができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合した抗原結合ドメイン、ならびにT細胞の効力および持続性を増強するよう設計された共刺激ドメインを含む。例えば、Sadelain et al.,Cancer Discov.3:388-398,2013を参照されたい。第二世代CARは、CD3ζドメインに加えて、細胞内共刺激ドメイン、例えば、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、または類似の共刺激ドメインを含む。したがって、第二世代CARは、例えばCD28または4-1BBドメインによる共刺激と、例えばCD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化の両方を提供する。第二世代CARは、第一世代CARと比較して、T細胞の抗腫瘍活性を改善することができる。
【0086】
第三世代CARは、二つ以上の共刺激ドメイン、例えば二つの共刺激ドメイン、例えばCD28ドメインおよび4-1BBドメインの両方、ならびに例えば、CD3ζ活性化ドメインを含むことによる活性化ドメインを含む。
【0087】
一般に、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。典型的には、抗原結合ドメインは、疾患または障害に関連する、例えば、新生物または悪性疾患または障害に関連する抗原などの対象抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、単鎖抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、scFvを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、単一ドメイン抗体、例えば、ラクダ科動物抗体、またはそのヒト化誘導体を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、受容体または受容体リガンドを含む。
【0088】
本明細書に開示される発現系で使用するためのいくつかの例示的なCARが本明細書に提供される。追加のCARは、例えば、以下に示されているように、CARの設計に関する当技術分野の知識を考慮して、本開示に基づいて当業者には明らかであろう:Sadelain et al.,Cancer Discov.3(4):388-398(2013);Jensen et al.,Immunol.Rev.257:127-133(2014);Sharpe et al.,Dis.Model Mech.8(4):337-350(2015)、およびそれらに引用されている参考文献。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するためのCARは、例えば過剰増殖性疾患に関連する、系統特異的細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインを含む細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、新生物細胞または悪性細胞の表面上に発現する系統特異的細胞表面抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、病原性または病理学的細胞、例えば、感染病原体によって感染された細胞、または病原性または病理学的状態によって特徴付けられる細胞の表面上に発現または存在する系統特異的細胞表面抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、scFvまたはFab、単一ドメイン抗体、または抗体の任意の好適な抗原結合断片であってもよい(Sadelain et al.,Cancer Discov.3:38-398(2013)を参照されたい)。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、ヒト、ヒト化、キメラ、もしくはCDR-移植片抗体、または抗原結合抗体断片の配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、scFvを含む。例示的なscFvが本明細書に提供されており、追加の好適なscFvは、本開示およびscFvに関連する当技術分野の知識に基づいて当業者に明らかである(例えば、Huston,et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988);Ahmad et al.,Clin.Dev.Immunol.2012:ID980250(2012)、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号および同第4,956,778号、ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号を参照されたい))。本開示は、この点において限定されない。
【0091】
抗体に由来する抗原結合ドメインを使用する代わりに、CAR細胞外ドメインは、受容体のリガンドまたは細胞外リガンド結合ドメインを含み得る(Sadelain et al.,Cancer Discov.3:388-398(2013);Sharpe et al.,Dis.Model Mech.8:337-350(2015)を参照されたい)。
【0092】
いくつかの実施形態では、CARは、時にがん抗原とも呼ばれている悪性細胞上に発現される抗原に結合する。好適ながん抗原を標的とする任意のCARを、本開示の発現系との関連で使用することができる。例示的ながん抗原および例示的ながんを以下に提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原は、以下から選択される:CD5、CD6、CD7、CD13、CD19、CD22、CD20、CD25、CD30、CD32、CD38、CD44、CD45、CD47、CD56、96、CD117、CD123、CD135、CD174、CLL-1、BCMA、葉酸受容体β、IL1RAP、MUC1、NKG2D/NKG2DL、TIM-3、またはWT1。
【0094】
いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原は、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32a、CD32b、CD32c、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RO、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64a、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66F、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75S、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85A、CD85C、CD85D、CD85E、CD85F、CD85G、CD85H、CD85I、CD85J、CD85K、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD99R、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD14、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD152、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158b1、CD158b2、CD158d、CD158e1/e2、CD158f、CD158g、CD158h、CD158i、CD158j、CD158k、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210a、CDw210b、CD212、CD213a1、CD213a2、CD215、CD217、CD218a、CD218b、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD236R、CD238、CD239、CD240、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245、CD246、CD247、CD248、CD249、CD252、CD253、CD254、CD256、CD257、CD258、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD272、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD286、CD288、CD289、CD290、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300a、CD300c、CD300e、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、CD306、CD307a、CD307b、CD307c、CD307d、CD307e、CD309、CD312、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD350、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD359、CD360、CD361、CD362またはCD363から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原は、以下に列挙されるものから選択される:CD5、CD6、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD123、CD133、CD138、メソテリン(MSLN)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PCSA)、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、がん胎児性抗原(CEA)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-αおよびβ(FRαおよびβ)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/ERB2)、上皮増殖因子受容体vIII(EGFRvIII)、ERB3、ERB4、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1CAM)、黒色腫関連抗原1(黒色腫抗原ファミリーA1、MAGE-A1)、ムチン16(Muc-16)、ムチン1(Muc-1)、NKG2Dリガンド、がん-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、1型チロシンタンパク質キナーゼ膜貫通受容体(ROR1)、B7-H3(CD276)、B7-H6(Nkp30)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン-4(CSPG4)、DNAXアクセサリー分子(DNAM-1)、エフリンA型受容体2(EpHA2)、線維芽細胞関連タンパク質(FAP)、Gp100/HLA-A2、グリピカン3(GPC3)、HA-1H、HERK-V、IL-11Rα、潜伏膜タンパク質1(LMP1)、神経細胞接着分子(N-CAM/CD56)、およびTrail受容体(TRAIL R)。これらまたは他のがん抗原は、がん抗原CARによる標的化に利用され得ることが理解される。いくつかの例示的に好適なCARおよびいくつかの例示的に好適なCAR標的抗原が本明細書に開示されるが、追加の好適なCARSおよびCAR標的抗原は、CARおよびCAR抗原に関する当技術分野の知識に照らして、本開示に基づいて当業者に明らかとなる。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際PCT出願第PCT/US2017/027601号を参照されたい。いくつかの実施形態では、CARは、本明細書に開示される系統特異的細胞表面抗原に結合する。
【0096】
遺伝子操作された造血幹細胞
本開示のいくつかの態様は、系統特異的細胞表面抗原の発現が低下するか、もしくは発現を喪失する、または、系統特異的細胞表面を標的とするCARによって認識されない、系統特異的細胞表面抗原のバリアント型の発現を有するように遺伝子編集された遺伝子操作された造血幹細胞を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された幹細胞は、造血幹細胞移植の形態で対象に施される。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子操作された幹細胞は、系統特異的細胞表面抗原の発現の喪失、または系統特異的細胞表面抗原を標的とするCARによって認識されない系統特異的細胞表面抗原のバリアント型の発現をもたらすゲノム修飾を含み、外因性タンパク質をコードする発現構築物、例えばCARをコードする発現構築物を含まない。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子操作された造血幹細胞は、実質的に系統特異的細胞表面抗原タンパク質を発現せず、例えば、免疫染色法などの好適な方法によって測定され得る系統特異的細胞表面抗原タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される遺伝子操作された造血幹細胞は、野生型系統特異的細胞表面抗原タンパク質を実質的に発現しないが、変異系統特異的細胞表面抗原バリアント、例えば、系統特異的細胞表面抗原、例えばCAR発現細胞、もしくは抗体、抗体断片、を標的とする免疫療法剤、または系統特異的細胞表面抗原を標的とする抗体-薬物コンジュゲート(ADC)によって認識されないバリアント、を発現する。いくつかの実施形態では、系統特異的細胞表面抗原は、本明細書に記載される系統特異的細胞表面抗原のうちの任意の一つである。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子操作された造血幹細胞は、造血細胞、例えば造血幹細胞である。造血幹細胞(HSC)は、典型的には、骨髄系前駆細胞およびリンパ系前駆細胞の両方を生じさせることができ、それら前駆細胞はそれぞれ、さらに骨髄系細胞(例えば、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、樹状細胞、赤血球、血小板など)およびリンパ系細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)を生じさせる。HSCは、HSCの特定および/または単離に使用され得る細胞表面マーカーCD34の発現(例えばCD34+)、および細胞系統への関与に関連する細胞表面マーカーの不在によって特徴付けられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された造血幹細胞の集団は、複数の遺伝子操作された造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された造血幹細胞の集団は、複数の遺伝子操作された造血前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された幹細胞の集団は、複数の遺伝子操作された造血幹細胞および複数の遺伝子操作された造血前駆細胞を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたHSCは、ヒト対象などの対象から取得される。HSCを取得する方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT出願第US2016/057339号に記載されている。いくつかの実施形態では、HSCは、動員剤、例えば、エトポシド、プレリキサホル、シクロホスファミド、および/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与によって、対象の骨髄から動員される。いくつかの実施形態では、HSCは、造血器悪性腫瘍を有するヒト対象などのヒト対象から取得される。いくつかの実施形態では、HSCは、健康なドナーから取得される。いくつかの実施形態では、HSCは、動員リンパ球が取得されたのと同じ対象から取得される。いくつかの実施形態では、HSCは、CARを発現する遺伝子操作された細胞が後に投与されるであろう対象から取得される。いくつかの実施形態では、HSCは、CARを発現する遺伝子操作された細胞が後に投与されるであろう対象ではない対象から取得される。細胞が取得された同じ対象に投与されるHSCは、自己細胞と称される一方で、細胞が投与される対象ではない対象から取得されるHSCは、同種異系細胞と称される。
【0102】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された造血幹細胞の集団は、細胞の異種集団、例えば、系統特異的細胞表面抗原に異なる変異を含む遺伝子操作された造血幹細胞の異種集団である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された造血幹細胞の集団内の系統特異的細胞表面抗原をコードする遺伝子のコピーの少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、本明細書に記載されるゲノム編集アプローチによって、例えば本明細書で提供されるgRNAを使用するCRISPR/Casシステムによって、もたらされる変異を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された造血細胞、例えば、遺伝子操作された造血幹もしくは前駆細胞、または遺伝子操作された免疫エフェクター細胞などが、「編集」とも称される標的化された変化を細胞のゲノムに導入することが可能な任意の技術を含む、ゲノム編集技術を介して生成される。
【0104】
造血幹細胞および/または前駆細胞、ならびに免疫エフェクター細胞を遺伝子操作する方法は、当業者に明らかであろう。例えば、造血幹細胞および/または前駆細胞を遺伝子操作する例示的な方法は、PCT公開第WO2017/066760およびWO2020/047164で提供される。一つの例示的に好適なゲノム編集技術は、細胞のゲノムに標的一本鎖または二本鎖DNA切断を導入するためのRNA誘導ヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/Casヌクレアーゼの使用を含む、「遺伝子編集」であり、これは、例えば、非相同末端結合(NHEJ)、マイクロホモロジー媒介末端結合(時として「代替NHEJ」もしくは「alt-NHEJ」と称されることもあるMMEJ)、または典型的には(例えば、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド配列挿入、欠失、逆位、または置換を介して)ヌクレアーゼ切断の部位に、またはそのすぐ近位に改変された核酸配列をもたらす相同誘導型修復(HDR)などの細胞修復機構を誘起する。Yeh et al.Nat.Cell.Biol.(2019)21:1468-1478、例えば、Hsu et al.Cell(2014)157:1262-1278、Jasin et al.DNA Repair(2016)44:6-16、Sfeir et al.Trends Biochem.Sci.(2015)40:701-714を参照されたい。
【0105】
別の例示的に好適なゲノム編集技術は、「塩基編集」であり、これは、塩基エディタ、例えば、具体的な核酸塩基、例えば、細胞ミスマッチ修復機構を介して、CヌクレオチドからTヌクレオチドへの変化、またはAヌクレオチドからGヌクレオチドへの変化をもたらす、CまたはAヌクレオチドのシトシンまたはアデノシン核酸塩基を標的とし、脱アミン化する、デアミナーゼに融合されたヌクレアーゼ損傷または部分的ヌクレアーゼ損傷RNA誘導CRISPR/Casタンパク質の使用を含む。例えば、Komor et al.Nature(2016)533:420-424、Rees et al.Nat.Rev.Genet.(2018)19(12):770-788、Anzalone et al.Nat.Biotechnol.(2020)38:824-844を参照されたい。
【0106】
さらに別の例示的に好適なゲノム編集技術には、触媒的に損なわれたまたは部分的に触媒的に損なわれたRNA誘導ヌクレアーゼ、例えば、操作された逆転写酵素(RT)ドメインに融合されたCRISPR/Casヌクレアーゼを使用して、新しい遺伝情報、例えば改変されたヌクレオチド配列を、特異的に標的化されたゲノム部位へ導入することを含む、「プライム編集」が含まれる。Cas/RT融合は、所望の編集をコードする核酸配列も含み、RTのためのプライマーとして機能することができる、ガイドRNAによってゲノム内の標的部位に標的化される。例えば、Anzalone et al.Nature(2019)576(7785):149-157を参照されたい。
【0107】
ゲノム編集技術の使用は、典型的には、いくつかの実施形態では、例えば、塩基編集またはプライム編集のために、触媒的に損なわれるか、または部分的に触媒的に損なわれ得る、好適なRNA誘導ヌクレアーゼの使用を特徴とする。好適なRNA誘導ヌクレアーゼの例としては、CRISPR/Casヌクレアーゼが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞を遺伝子操作する方法で使用するための好適なRNA誘導ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、例えば、SpCas9またはSaCas9ヌクレアーゼである。別の例について、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞を遺伝子操作する方法で使用するための好適なRNA誘導ヌクレアーゼは、Cas12ヌクレアーゼ、例えば、Cas12aヌクレアーゼである。例示的に好適なCas12ヌクレアーゼには、限定されるものではないが、AsCas12a、FnCas12a、他のCas12aオルソログ、およびMAD7システム(MAD7(商標)、Inscripta,Inc.)、またはAlt-R Cas12a(Cpf1)Ultraヌクレアーゼ(Alt-R(登録商標)Cas12a Ultra、Integrated DNA Technologies,Inc.)などのCas12a誘導体が含まれる。例えば、Gill et al.LIPSCOMB 2017.In United States:Inscripta Inc.、Price et al.Biotechnol.Bioeng.(2020)117(60):1805-1816を参照されたい。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された造血細胞、例えば、遺伝子操作された造血幹もしくは前駆細胞、または遺伝子操作された免疫エフェクター細胞など)は、RNA誘導ヌクレアーゼが標的部位に結合し、細胞のゲノムDNAを切断するために好適な条件下で、RNA誘導ヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/Casヌクレアーゼ、例えば、Cas9ヌクレアーゼまたはCas12aヌクレアーゼなどを、細胞のゲノム内の好適な標的部位に標的化することによって生成される。好適なRNA誘導ヌクレアーゼは、好適なガイドRNA(gRNA)によってゲノム内の具体的な標的部位に標的化され得る。本開示の態様によるCRISPR/Casヌクレアーゼを標的化するための好適なgRNAが、本明細書で提供され、例示的に好適なgRNAが、本明細書の他の場所でより詳細に記載される。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される系統特異的細胞表面抗原gRNAは、CRISPR/Casヌクレアーゼ、例えば、Cas9ヌクレアーゼと複合体化される。様々なCas9ヌクレアーゼが、本開示の態様によるゲノム編集を生じさせるために本明細書で提供されるgRNAとともに使用するために好適である。典型的には、CasヌクレアーゼおよびgRNAは、細胞のゲノム上の標的部位、例えば、系統特異的細胞表面抗原をコードする配列内の標的部位を標的とする、Cas/gRNA複合体の形成に好適な形態および条件下で提供される。いくつかの実施形態では、Cas/gRNA複合体を、系統特異的細胞表面抗原をコードする配列の所望の標的ドメインに標的化するための所望のPAM特異性を示す、Casヌクレアーゼが使用される。好適な標的ドメインおよび対応するgRNA標的化ドメイン配列が、本明細書で提供される。
【0110】
いくつかの実施形態では、Cas/gRNA複合体が、例えば、インビトロで形成され、標的細胞が、例えば、細胞内へのCas/gRNA複合体のエレクトロポレーションを介して、Cas/gRNA複合体と接触される。いくつかの実施形態では、細胞は、別々にCasタンパク質およびgRNAと接触され、Cas/gRNA複合体は、細胞内に形成される。いくつかの実施形態では、細胞は、Casタンパク質をコードする核酸、例えば、DNAもしくはRNA、および/またはgRNAをコードする核酸、または両方と接触される。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子操作された細胞は、好適なゲノム編集技術を使用して生成され、ゲノム編集技術は、Cas9ヌクレアーゼの使用によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、Cas9分子は、化膿性連鎖球菌(SpCas9)、黄色ブドウ球菌(SaCas9)、もしくはストレプトコッカス・サーモフィラス(stCas9)のものであるか、またはそれらに由来する。追加の好適なCas9分子としては、髄膜炎菌(NmCas9)、アシドボラキス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、アクチノバシラス・スクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、アクチノバシラス・スイス、アクチノマイセス種、シクリフィルス・デニトリフィカンス(cycliphilus denitrificans)、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス種、ブラストピレルラ・マリナ(Blastopirellula marina)、ブラディリゾビウム種、ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ(CjCas9)、カンピロバクター・ラリ、カンジダツス・プニセイスピリルム(Candidatus Puniceispirillum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、ウエルシュ菌、コリネバクテリウム・アクコレンス(Corynebacterium accolens)、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・マツルショッティ(Corynebacterium matruchotii)、ディノロセオバクター・シバエ(Dinoroseobacter shibae)、ユウバクテリウム・ドリクム(Eubacterium dolichum)、ガンマプロテオバクテリア(gamma proteobacterium)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・スプトラム(Haemophilus sputorum)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter canadensis)、ヘリコバクター・シナエディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、イリオバクター・ポリトロパス(Ilyobacter polytropus)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、リステリア・イバノビ(Listeria ivanovii)、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア科細菌(Listeriaceae bacterium)、メチロシスチス種、メチロサイナス・トリコスポリウム(Methylosinus trichosporium)、モビルンカス・ムリエリス(Mobiluncus mulieris)、ナイセリア・バシリフォルミス(Neisseria bacilliformis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・フラヴェセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、髄膜炎菌、ナイセリア種、ナイセリア・ワズワーシイ(Neisseria wadsworthii)、ニトロソモナス種、パルビバクラム・ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ファスコラークトバクテリウム・スクシナテュテンス(Phascolarctobacterium succinatutens)、ラルストニア・シジジイ(Ralstonia syzygii)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドブラム種(Rhodovulum sp.)、シモンシエラ・ムエレリ(Simonsiella muelleri)、スフィンゴモナス種(Sphingomonas sp.)、スポロラクトバチルス・ビネア(Sporolactobacillus vineae)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、連鎖球菌属種、サブドリグラヌルム属種、チストレラ・モビリス(Tistrella mobilis)、トレポネーマ種(Treponema sp.)、もしくはベルミネフロバクター・エイセニア(Verminephrobacter eiseniae)のもの、またはそれらに由来するものが含まれる。いくつかの実施形態では、そのようなCas9ヌクレアーゼの触媒的に損なわれた、または部分的に損なわれたバリアントが、使用され得る。追加の好適なCas9ヌクレアーゼ、およびヌクレアーゼバリアントが、本開示に基づいて当業者に明らかであろう。本開示は、この点において限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、天然に存在するCas分子である。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、例えば、少なくとも一つのアミノ酸残基だけ、参照配列、例えば、最も類似する天然に存在するCas9分子、または参照によりその全体で本明細書に組み込まれるPCT公開第WO2015/157070号の表50の配列と異なる、操作、改変、または修飾されたCas分子である。
【0113】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼのクラス2のV型に属するCasヌクレアーゼが使用される。クラス2のV型Casヌクレアーゼは、V-A型、V-B型、V-C型、およびV-U型としてさらに分類することができる。例えば、Stella et al.Nature Structural & Molecular Biology(2017)を参照されたい。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、C2c1などのV-B型Casエンドヌクレアーゼである。例えば、Shmakov et al.Mol Cell(2015)60:385-397を参照されたい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるゲノム編集の方法で使用されるCasヌクレアーゼは、Cpf1(Cas12a)ヌクレアーゼなどのV-A型Casエンドヌクレアーゼである。例えば、Strohkendl et al.Mol.Cell(2018)71:1-9を参照されたい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるゲノム編集の方法で使用されるCasヌクレアーゼは、プレボテーラ属種(Provetella spp.)、もしくはフランシセラ属種(Francisella spp.)、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)(AsCpf1)、ラクノスピラ菌(Lachnospiraceae bacterium)(LpCpf1)、またはユウバクテリウム・レクターレ(Eubacterium rectale)に由来するCpf1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、MAD7である。
【0114】
CRISPR/Casヌクレアーゼの天然に存在するバリアントおよび修飾されたバリアントの両方が、本開示の態様による使用に好適である。例えば、dCasまたはニッカーゼバリアント、改変されたPAM特異性を有するCasバリアント、および改善されたヌクレアーゼ活性を有するCasバリアントが、本開示のいくつかの実施形態によって包含される。
【0115】
いくつかの例示的で非限定的な好適なCasヌクレアーゼのいくつかの特徴が、いかなる特定の理論にも拘束されることを所望することなく、本明細書により詳細に記載される。
【0116】
天然に存在するCas9ヌクレアーゼは、典型的には、二つのローブ:認識(REC)ローブおよびヌクレアーゼ(NUC)ローブを含み、その各々は、例えば、PCT公開第WO2015/157070号、例えば、その中の図9A~9B(その出願が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)に記載されるドメインをさらに含む。
【0117】
RECローブは、アルギニン豊富ブリッジヘリックス(BH)、REC1ドメイン、およびREC2ドメインを含む。RECローブは、Cas9特異的機能ドメインであると考えられる。BHドメインは、長いアルファヘリックスおよびアルギニン豊富領域であり、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)Cas9の配列のアミノ酸60~93を含む。REC1ドメインは、例えば、gRNAまたはtracrRNAの反復:抗反復二本鎖の認識に関与する。REC1ドメインは、化膿性連鎖球菌Cas9の配列のアミノ酸94~179および308~717に二つのREC1モチーフを含む。これら二つのREC1ドメインは、線形一次構造ではREC2ドメインによって分離されているが、三次構造に集合し、REC1ドメインを形成する。REC2ドメインまたはその一部はまた、反復:抗反復二本鎖の認識において役割を果たし得る。REC2ドメインは、化膿性連鎖球菌Cas9の配列のアミノ酸180~307を含む。
【0118】
NUCローブは、RuvCドメイン(本明細書ではRuvC様ドメインとも称される)、HNHドメイン(本明細書ではHNH様ドメインとも称される)、およびPAM相互作用(PI)ドメインを含む。RuvCドメインは、レトロウイルスインテグラーゼスーパーファミリーメンバーと構造的類似性を共有し、一本鎖、例えば、標的核酸分子の非相補鎖を切断する。RuvCドメインは、それぞれ、化膿性連鎖球菌Cas9の配列のアミノ酸1~59、718~769、および909~1098において、三つの分割RuvCモチーフ(当技術分野ではしばしば、RuvCIドメイン、またはN末端RuvCドメイン、RuvCIIドメイン、およびRuvCIIIドメインと一般的に称される、RuvC I、RuvCII、およびRuvCIII)から組み立てられる。REC1ドメインと同様に、三つのRuvCモチーフは、一次構造内の他のドメインによって直線的に分離されるが、三次構造では、三つのRuvCモチーフは、集合してRuvCドメインを形成する。HNHドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと構造的類似性を共有し、一本鎖、例えば、標的核酸分子の相補鎖を切断する。HNHドメインは、RuvC II-IIIモチーフの間に存在し、化膿性連鎖球菌Cas9の配列のアミノ酸775~908を含む。PIドメインは、標的核酸分子のPAMと相互作用し、化膿性連鎖球菌Cas9の配列のアミノ酸1099~1368を含む。
【0119】
結晶構造が、天然に存在する細菌Cas9ヌクレアーゼ(例えば、Jinek et al.,Science,343(6176):1247997,2014を参照)、およびガイドRNA(例えば、crRNAおよびtracrRNAの合成融合)を有する化膿性連鎖球菌Cas9について決定されている(Nishimasu et al.,Cell,156:935-949,2014、およびAnders et al.,Nature,2014,doi:10.1038/naturel3579)。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCas9分子は、標的部位に、またはその直接近位に二本鎖DNA切断の導入をもたらす、ヌクレアーゼ活性を示す。いくつかの実施形態では、Cas9分子は、エンドヌクレアーゼの触媒残基のうちの一つを不活化するように修飾されている。いくつかの実施形態では、Cas9分子は、ニッカーゼであり、一本鎖切断を生じる。例えば、Dabrowska et al.Frontiers in Neuroscience(2018)12(75)を参照されたい。酵素のRuvCおよびHNH触媒ドメイン内の一つ以上の変異が、Cas9効率を改善し得ることが示されている。例えば、Sarai et al.Currently Pharma.Biotechnol.(2017)18(13)を参照されたい。いくつかの実施形態では、Cas9分子は、第二のドメイン、例えば、DNAまたはクロマチンを修飾するドメイン、例えば、デアミナーゼまたはデメチラーゼドメインに融合される。いくつかのそのような実施形態では、Cas9分子は、そのエンドヌクレアーゼ活性を排除するように修飾される。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCasヌクレアーゼまたはCas/gRNA複合体は、相同誘導型修復(HDR)のためのテンプレートとともに投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCasヌクレアーゼまたはCas/gRNA複合体は、HDRテンプレートを伴わずに投与される。
【0122】
いくつかの実施形態では、酵素の特異性を強化する(例えば、標的外効果を低減し、堅調な標的上切断を維持する)ように修飾される、Cas9ヌクレアーゼが使用される。いくつかの実施形態では、Cas9分子は、強化特異性Cas9バリアント(例えば、eSPCas9)である。例えば、Slaymaker et al.Science(2016)351(6268):84-88を参照されたい。いくつかの実施形態では、Cas9分子は、高忠実度Cas9バリアント(例えば、SpCas9-HF1)である。例えば、Kleinstiver et al.Nature(2016)529:490-495を参照されたい。
【0123】
様々なCasヌクレアーゼが、当技術分野で公知であり、様々な供給源から入手され、酵素の一つ以上の活性または特異性を調節するように操作/修飾され得る。好適なCasヌクレアーゼ、例えば、SpCas9およびSaCas9などの好適なCas9ヌクレアーゼのPAM配列の選好および特異性が、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、一つ以上のPAM配列を認識するように操作/修飾されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼが操作/修飾を伴わずに認識するPAM配列とは異なる一つ以上のPAM配列を認識するように操作/修飾されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、酵素の標的外活性を低減するように操作/修飾されている。
【0124】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ活性の特異性を改変する(例えば、標的外切断を低減し、細胞内のエンドヌクレアーゼ活性または存続期間を減少させ、相同誘導型組換えを増加させ、非相同末端結合を低減する)ようにさらに修飾される、Casヌクレアーゼが使用される。例えば、Komor et al.Cell(2017)168:20-36を参照されたい。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼのPAM認識または選好を改変するように修飾される、Casヌクレアーゼが使用される。例えば、SpCas9が、PAM配列NGGを認識する一方で、一つ以上の修飾を含むSpCas9のいくつかのバリアント(例えば、VQR SpCas9、EQR SpCas9、VRER SpCas9)は、バリアントPAM配列、例えば、NGA、NGAG、および/またはNGCGを認識し得る。別の例について、SaCas9が、PAM配列NNGRRTを認識する一方で、一つ以上の修飾を含むSaCas9のいくつかのバリアント(例えば、KKH SaCas9)は、PAM配列NNNRRTを認識し得る。別の実施例では、FnCas9が、PAM配列NNGを認識する一方で、FnCas9のバリアントは、一つ以上の修飾(例えば、RHA FnCas9)を含み、PAM配列YGを認識し得る。別の実施例では、置換変異S542RおよびK607Rを含むCas12aヌクレアーゼは、PAM配列TYCVを認識する。別の実施例では、置換変異S542R、K607R、およびN552Rを含むCpf1エンドヌクレアーゼは、PAM配列TATVを認識する。例えば、Gao et al.Nat.Biotechnol.(2017)35(8):789-792を参照されたい。
【0125】
いくつかの実施形態では、塩基エディタが、系統特異的細胞表面抗原の発現の喪失、または免疫療法によって標的化されない系統特異的細胞表面抗原のバリアントの発現をもたらす、ゲノム修飾を生成するために使用される。塩基エディタは、典型的には、機能ドメイン、例えば、デアミナーゼドメインに融合された触媒的に不活性または部分的に不活性なCasヌクレアーゼを含む。例えば、Eid et al.Biochem.J.(2018)475(11):1955-1964、Rees et al.Nature Reviews Genetics(2018)19:770-788を参照されたい。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCasヌクレアーゼは、「死Cas」または「dCas」と称される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、アデニン塩基エディタ(ABE)、例えば、RNAアデニンデアミナーゼTadAから進化したABEに融合されたdCasを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、シチジンデアミナーゼ酵素(例えば、APOBECデアミナーゼ、pmCDA1、活性化誘発性シチジンデアミナーゼ(AID))に融合されたdCasを含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCas分子は、低減した活性を有し、例えば、ニッカーゼである。
【0126】
好適な塩基エディタの例としては、限定されるものではないが、BE1、BE2、BE3、HF-BE3、BE4、BE4max、BE4-Gam、YE1-BE3、EE-BE3、YE2-BE3、YEE-CE3、VQR-BE3、VRER-BE3、SaBE3、SaBE4、SaBE4-Gam、Sa(KKH)-BE3、Target-AID、Target-AID-NG、xBE3、eA3A-BE3、BE-PLUS、TAM、CRISPR-X、ABE7.9、ABE7.10、ABE7.10*、xABE、ABESa、VQR-ABE、VRER-ABE、Sa(KKH)-ABE、およびCRISPR-SKIPが挙げられる。塩基エディタの追加の例は、例えば、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、米国公開第2018/0312825A1号、米国公開第2018/0312828A1号、およびPCT公開第WO2018/165629A1号で見出すことができる。
【0127】
本開示のいくつかの態様は、系統特異的細胞表面抗原の発現の低下、系統特異的細胞表面抗原の発現の喪失、または系統特異的細胞表面抗原を標的とする免疫療法剤によって認識されない系統特異的細胞表面抗原のバリアント型の発現をもたらす細胞のゲノムにおける修飾を生じさせるために、例えば、本明細書で提供されるRNA誘導ヌクレアーゼを細胞のゲノム内の好適な標的部位に標的化するために好適であるガイドRNAを提供する。
【0128】
いくつかの例示的に好適なCas9 gRNA足場配列が本明細書で提供され、追加の好適なgRNA足場配列が、本開示に基づいて当業者に明らかであろう。そのような追加の好適な足場配列には、限定されるものではないが、Jinek,et al.Science(2012)337(6096):816-821、Ran,et al.Nature Protocols(2013)8:2281-2308、PCT公開第WO2014/093694号、およびPCT公開第WO2013/176772号に記載されているものが含まれる。
【0129】
例えば、天然に存在するSpCas9 gRNAの結合ドメインは、典型的には、crRNA(部分的に)およびtracrRNAという二つのRNA分子を含む。例えば、テトラループを介して、またはクリックケミストリー型共有結合を介して、互いに共有結合されたcrRNAおよびtracrRNA配列の両方を含む、単一のRNA分子のみを含むSpCas9 gRNAのバリアントが、操作されており、一般的に「単一ガイドRNA」または「sgRNA」と称される。天然に存在するCas12aガイドRNAが単一のRNA分子を含むため、他のCasヌクレアーゼ、例えば、Cas12aヌクレアーゼとともに使用するための好適なgRNAは、典型的には、単一のRNA分子のみを含む。したがって、好適なgRNAは、時として本明細書ではsgRNAと称されることもある、単分子(単一のRNA分子を有する)、またはモジュール式(一つより多く、典型的には、二つの別個のRNA分子を含む)であり得る。
【0130】
系統特異的細胞表面抗原における標的部位を標的化するのに好適なgRNAは、多くのドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、例えば、Cas9ヌクレアーゼが使用されるいくつかの実施形態では、単分子sgRNAは、5’から3’まで、
系統特異的細胞表面抗原コード遺伝子中の標的部位配列に対応する標的化ドメインと、
第一の相補性ドメインと、
結合ドメインと、
第二の相補性ドメイン(第一の相補性ドメインに相補的である)と、
近位ドメイン、および
任意選択的に、テールドメインと、を含む。
【0131】
これらのドメインの各々が、ここでより詳細に記載される。
【0132】
本明細書で提供されるgRNAは、典型的には、細胞のゲノム内の標的部位に結合する標的化ドメインを含む。標的部位は、典型的には、PAM配列と、PAM配列と同一の鎖上に、かつそれに直接隣接して、標的ドメインとを含む、二本鎖DNA配列である。gRNAの標的化ドメインは、典型的には、時として一つ以上のミスマッチを伴う標的ドメインの配列に類似するが、典型的には、DNA配列の代わりにRNAを含むという点で標的ドメイン配列に対応する、RNA配列を含む。したがって、gRNAの標的化ドメインは、(完全または部分的相補性で)標的ドメインの配列に相補的である二本鎖標的部位の配列と、したがって、PAM配列を含む鎖に相補的である鎖と塩基対合する。gRNAの標的化ドメインは、典型的には、PAM配列を含まないことが理解されるであろう。PAMの場所は、採用されるヌクレアーゼに応じて、標的ドメイン配列の5’または3’であり得ることがさらに理解されるであろう。例えば、PAMは、典型的には、Cas9ヌクレアーゼについては標的ドメイン配列の3’、Cas12aヌクレアーゼについては標的ドメイン配列の5’である。PAMの場所および標的部位に結合するgRNAの機構の例証については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Vanegas et al.,Fungal Biol Biotechnol.2019;6:6の図1を参照されたい。RNA誘導ヌクレアーゼを標的部位に標的化するgRNAの機構の追加の例証および説明については、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、Fu Y et al,Nat Biotechnol 2014(doi:10.1038/nbt.2808)、およびSternberg SH et al.,Nature 2014(doi:10.1038/naturel3011)を参照されたい。
【0133】
標的化ドメインは、標的ドメインの配列に対応するヌクレオチド配列、すなわち、PAM配列に直接隣接するDNA配列(例えば、Cas9ヌクレアーゼについてはPAM配列の5’、またはCas12aヌクレアーゼについてはPAM配列の3’)を含み得る。標的化ドメイン配列は、典型的には、17~30個のヌクレオチドを含み、標的ドメイン配列に完全に対応する(すなわち、いかなるミスマッチヌクレオチドも伴わない)か、または一つ以上であるが典型的には4つ以下のミスマッチを含み得る。標的化ドメインが、RNA分子の一部であるため、gRNAが、典型的には、リボヌクレオチドを含む一方で、DNA標的化ドメインは、デオキシリボヌクレオチドを含むであろう。
【0134】
22ヌクレオチド標的ドメインおよびNGG PAM配列を含むCas9標的部位、ならびに標的ドメインに完全に対応する(したがって、標的ドメインおよびPAMを含む鎖に相補的なDNA鎖と完全な相補性で塩基対合する)標的化ドメインを含むgRNAの例示的な例証が、以下に提供される。
【表1】
【0135】
22ヌクレオチド標的ドメインおよびTTN PAM配列を含むCas12a標的部位、ならびに標的ドメインに完全に対応する(したがって、標的ドメインおよびPAMを含む鎖に相補的なDNA鎖と完全な相補性で塩基対合する)標的化ドメインを含むgRNAの例示的な例証が、以下に提供される。
【表2】
【0136】
いくつかの実施形態では、Cas12a PAM配列は、5’-T-T-T-V-3’である。
【0137】
理論によって拘束されることを所望しないが、少なくともいくつかの実施形態では、標的化ドメインの長さおよび標的配列との相補性は、標的核酸とのgRNA/Cas9分子複合体の相互作用の特異性に寄与すると考えられる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAの標的化ドメインは、長さが5~50個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが15~25個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが18~22個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが19~21個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが15個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが16個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが17個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが18個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが19個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが20個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが21個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが22個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが23個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが24個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、長さが25個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、ミスマッチを伴わずに、本明細書で提供される標的ドメイン配列またはその一部に完全に対応する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAの標的化ドメインは、本明細書で提供される標的ドメイン配列に対して1つのミスマッチを含む。いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、標的ドメイン配列に対して2つのミスマッチを含む。いくつかの実施形態では、標的ドメインは、標的ドメイン配列に対して3つのミスマッチを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、例えば、参照によりその全体で組み込まれる、PCT公開第WO2015/157070号に記載されるように、コアドメインと、二次標的化ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、コアドメインは、標的化ドメインの3’末端から約8~約13個のヌクレオチド(例えば、標的化ドメインの最も3’位の8~13個のヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、二次ドメインは、コアドメインに対して5’に位置付けられる。いくつかの実施形態では、コアドメインは、標的ドメイン配列またはその一部に完全に対応する。他の実施形態では、コアドメインは、標的ドメイン配列の対応するヌクレオチドとミスマッチである、一つ以上のヌクレオチドを含み得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、例えば、Cas9 gRNAが提供されるいくつかの実施形態では、gRNAは、第一の相補性ドメインと、第二の相補性ドメインを含み、第一の相補性ドメインは、第二の相補性ドメインと相補的であり、少なくともいくつかの実施形態では、少なくともいくつかの生理学的条件下で二本鎖領域を形成するために、第二の相補性ドメインに対して十分な相補性を有する。いくつかの実施形態では、第一の相補性ドメインは、長さが5~30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第一の相補性ドメインは、5’から3’の方向に、5’サブドメイン、中央サブドメイン、および3’サブドメインである、3つのサブドメインを含む。いくつかの実施形態では、5’サブドメインは、長さが4~9個、例えば、4、5、6、7、8または9個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、中央サブドメインは、長さが1、2、または3、例えば、1個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’サブドメインは、長さが3~25個、例えば、4~22個、4~18個、または4~10個、または3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のヌクレオチドである。第一の相補性ドメインは、天然に存在する第一の相補性ドメインと相同性を共有するか、またはそれに由来し得る。一実施形態では、これは、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、またはサーモフィラス菌(S. thermophilus)の第一の相補性ドメインと少なくとも50%の相同性を有する。
【0140】
上述のドメインの配列および配置は、その中のページ88~112を含む、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2015/157070号により詳細に記載されている。
【0141】
結合ドメインは、単分子gRNAの第一の相補性ドメインを第二の相補性ドメインと結合する役割を果たし得る。結合ドメインは、第一および第二の相補性ドメインを共有結合的または非共有結合的に結合することができる。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合である。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、第一の相補性ドメインと第二の相補性ドメインとの間に介在する共有結合であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、一つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2018/126176号に開示される、少なくとも一つの非ヌクレオチド結合を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、第二の相補性ドメインは、少なくとも部分的に、第一の相補性ドメインと相補的であり、一実施形態では、少なくともいくつかの生理学的条件下で二本鎖領域を形成するために第二の相補性ドメインに対して十分な相補性を有する。いくつかの実施形態では、第二の相補性ドメインは、第一の相補性ドメインとの相補性を欠く配列、例えば、二本鎖領域からループを作る配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、第二の相補性ドメインは、長さが5~27個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第二の相補性ドメインは、第一の相補性領域よりも長い。一実施形態では、相補ドメインは、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第二の相補性ドメインは、5’から3’の方向に、5’サブドメイン、中央サブドメイン、および3’サブドメインである、3つのサブドメインを含む。いくつかの実施形態では、5’サブドメインは、長さが3~25個、例えば、4~22個、4~18個、または4~10個、または3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、中央サブドメインは、長さが1、2、3、4、または5、例えば、3個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’サブドメインは、長さが4~9個、例えば、4、5、6、7、8または9個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第一の相補性ドメインの5’サブドメインおよび3’サブドメインは、それぞれ、第二の相補性ドメインの3’サブドメインおよび5’サブドメインと相補的、例えば、完全に相補的である。
【0143】
いくつかの実施形態では、近位ドメインは、長さが5~20個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、近位ドメインは、天然に存在する近位ドメインと相同性を共有するか、またはそれに由来し得る。一実施形態では、これは、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、またはサーモフィラス菌由来の近位ドメインと少なくとも50%の相同性を有する。
【0144】
広範囲のテールドメインが、gRNAで使用するために好適である。いくつかの実施形態では、テールドメインは、長さが0(不在)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、テールドメインヌクレオチドは、天然に存在するテールドメインの5’末端からの配列に由来するか、またはそれと相同性を共有する。いくつかの実施形態では、テールドメインは、互いに相補的であり、少なくともいくつかの生理学的条件下で二本鎖領域を形成する配列を含む。いくつかの実施形態では、テールドメインは、存在しないか、または長さが1~50個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、テールドメインは、天然に存在する近位テールドメインと相同性を共有するか、またはそれに由来し得る。いくつかの実施形態では、テールドメインは、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、またはサーモフィラス菌由来のテールドメインと少なくとも50%の相同性/同一性を有する。いくつかの実施形態では、テールドメインは、3’末端に、インビトロまたはインビボ転写の方法に関連するヌクレオチドを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAは、
例えば、5’から3’の方向に、
標的化ドメイン(CD30遺伝子内の標的ドメインに対応する)、および
第一の相補性ドメイン、を含む、第一の鎖と、
例えば、5’から3’の方向に、
任意選択的に、5’拡張ドメイン、
第二の相補性ドメイン、
近位ドメイン、および
任意選択的に、テールドメイン、を含む、第二の鎖と、を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAのうちのいずれかは、化学的に修飾されている一つ以上のヌクレオチドを含む。gRNAの化学修飾は、以前に記載されており、好適な化学修飾には、gRNA機能のために有益であり、所与のgRNAの任意の望ましくない特性、例えば、標的外効果を計測可能に増加させない、任意の修飾が含まれる。好適な化学修飾としては、例えば、gRNAがエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ触媒活性の影響をあまり受けなくするものが挙げられ、限定されるものではないが、ホスホロチオエート骨格修飾、2’-O-Me修飾(例えば、3’および5’末端の一方または両方における)、2’F修飾、二環式ヌクレオチド-cEtによるリボース糖の置き換え、3’チオPACE(MSP)修飾、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。追加の好適なgRNA修飾が、本開示に基づいて当業者に明らかとなり、そのような好適なgRNA修飾には、限定されるものではないが、例えば、各々が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Rahdar et al.PNAS(2015)112(51)E7110-E7117、およびHendel et al.,Nat Biotechnol.(2015);33(9):985-989に記載されているものが含まれる。
【0147】
例えば、本明細書で提供されるgRNAは、一つ以上の2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端に、2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端に、2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’および3’末端の両方に、2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの5’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾され、例えば、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、および3’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾され、例えば、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドで、2’-O-メチル修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチドは、化学的に修飾されていない。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチドは、化学的に修飾された糖を有していない。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドで、2’-O-メチル修飾される。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドへのリン酸塩結合を含む。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドへのホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドへのチオPACE結合を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAは、一つ以上の2’-O修飾および3’リン修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端に、2’-O修飾および3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端に、2’-O修飾および3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’および3’末端に、2’-O修飾および3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、一つ以上の非架橋酸素原子が硫黄原子に置き換えられている、骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの5’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチドは、化学的に修飾されていない。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチドは、化学的に修飾された糖を有していない。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾される。
【0149】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAは、一つ以上の2’-O修飾および3’-リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端に、2’-O修飾および3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端に、2’-O修飾および3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’および3’末端に、2’-O修飾および3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、一つ以上の非架橋酸素原子が硫黄原子に置き換えられ、一つ以上の非架橋酸素原子が酢酸基に置き換えられている、骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの5’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’チオPACE修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’チオPACE修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’チオPACE修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’チオPACE修飾される。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチドは、化学的に修飾されていない。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチドは、化学的に修飾された糖を有していない。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾および3’リン修飾され、例えば、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドで、2’-O-メチル3’チオPACE修飾される。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAは、化学的に修飾された骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、一つ以上の非架橋酸素原子は、硫黄原子に置き換えられている。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの5’末端からの第三のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるgRNAは、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、一つ以上の非架橋酸素原子が硫黄原子に置き換えられ、一つ以上の非架橋酸素原子が酢酸基に置き換えられている、骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの5’末端からの第三のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端におけるヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第三のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端におけるヌクレオチド、gRNAの5’末端からの第二のヌクレオチド、5’末端からの第三のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第二のヌクレオチド、gRNAの3’末端からの第三のヌクレオチド、およびgRNAの3’末端からの第四のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるgRNAは、一つ以上の2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエートヌクレオチド、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、または6個の2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエートヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるgRNAは、三つの末端位置および5’末端のうちの一つ以上に、ならびに/または三つの末端位置および3’末端のうちの一つ以上に、修飾ヌクレオチド(例えば、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエートヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、例えば、参照によりそれらの全体で組み込まれる、PCT公開第WO2017/214460号、同WO2016/089433号、および同WO2016/164356号に記載されるように、一つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0153】
使用方法
本開示のいくつかの態様は、複数の本明細書に提供される細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。例えば、本開示のいくつかの態様は、本明細書に提供される複数の、好ましくは有効数の細胞を、例えば、過剰増殖性/新生物/悪性疾患と関連する系統特異的細胞表面抗原を標的とする導入遺伝子(例えば、CAR)をコードする異種核酸を含む遺伝子操作された細胞(細胞は動員リンパ球細胞である)を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、CARを発現する遺伝子操作されたリンパ球は、Tリンパ球である。いくつかの実施形態では、CARを発現する遺伝子操作されたリンパ球は、Bリンパ球である。いくつかの実施形態では、CARを発現する遺伝子操作されたリンパ球は、NK細胞である。
【0154】
いくつかの実施形態では、対象はまた、複数の、および好ましくは有効数の遺伝子操作された造血幹細胞を投与され、ここにおいて、遺伝子操作された造血幹細胞は、以下によって特徴付けられる:系統特異的細胞表面抗原の発現の低下、もしくは発現の欠如、またはCARによって認識されないか、もしくは低下したレベルで認識される系統特異的細胞表面抗原のバリアント型の発現。いくつかの実施形態では、細胞は、HSCまたはHPCである。
【0155】
いくつかの実施形態では、本方法は、過剰増殖性疾患の少なくとも一つの症状をモニタリングすることをさらに含む。
【0156】
本開示のいくつかの態様は、本明細書に提供される細胞、例えば、系統特異的細胞表面抗原を標的とするCARを発現する遺伝子操作されたリンパ球を、過剰増殖性疾患、例えば、骨髄性悪性腫瘍またはリンパ性悪性腫瘍などの造血器悪性腫瘍を有する対象に投与する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、過剰増殖性疾患を有するか、または過剰増殖性疾患と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、過剰増殖性疾患を有するか、または過剰増殖性疾患と診断されているが、疾患は、疾患の前悪性段階など、悪性状態にまだ入っていない。
【0157】
いくつかの実施形態では、対象への細胞の投与は、過剰増殖性疾患に関連する兆候または症状を改善し、これは、例えば、新生物細胞もしくは悪性細胞の数を減少させること、腫瘍の増殖を阻害することを含む、腫瘍量を減少させること、腫瘍の増殖速度を遅延させること、腫瘍のサイズを減少させること、腫瘍の数を減少させること、腫瘍を除去すること、または新生物疾患もしくは障害に関連する症状、例えば、疲労、痛み、体重減少、およびその他の臨床的尺度を軽減もしくは改善すること、を含み得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト対象である。
【0159】
いくつかの実施形態では、対象は、過剰増殖性疾患を有するか、または過剰増殖性疾患と診断されている。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、造血器悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、骨髄性悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、リンパ性悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ球性白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、新生物疾患は骨髄異形成症候群である。
【0160】
いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は肉腫である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は黒色腫である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、脳腫瘍または脊髄腫瘍である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は胚細胞腫瘍である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は神経内分泌腫瘍である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患はカルチノイド腫瘍である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、造血系統のがんである。いくつかの実施形態では、過剰増殖性疾患は、転移性がんである。
【0161】
本明細書に提供される細胞に採用されるCARに応じて、様々な疾患または悪性腫瘍が治療され、それらは、これらに限定されるものではないが、骨がん、腸がん、肝がん、皮膚がん、頭頸部がん、黒色腫(皮膚または眼球内悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞がん)、咽頭がん、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺腺がん)、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫)、子宮がん、直腸がん、肛門部のがん、膀胱がん(bladder cancer)、脳がん、胃がん(stomach cancer)、精巣がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん(carcinoma of the cervix)、膣がん、外陰がん、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症)、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎がんまたは尿管がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん(squamous cell cancer)、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されたがんを含む環境的に誘発されたがん、重鎖病、肉腫およびがん腫などの固形腫瘍、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮がん(squamous cell carcinoma)、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、ヘパトーマ、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん(cervical cancer)、子宮がん、精巣がん、膀胱がん(bladder carcinoma)、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫(oligodenroglioma)、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、悪性胸膜疾患、中皮腫、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、膵がん、卵巣がん、乳がん(例えば、転移性乳がん、転移性三種陰性乳がん)、結腸がん、胸膜腫瘍、神経膠芽腫、食道がん、胃がん(gastric cancer)、および滑膜肉腫が含まれる。固形腫瘍は、原発性腫瘍または転移性状態の腫瘍であり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される遺伝子操作された細胞、例えば、CARを発現する遺伝子操作されたリンパ球、遺伝子操作された造血幹細胞は、対象の体重の約10~約1010細胞/kg、例えば、約10~約10、約10~約10、約10~約10、または約10~10の用量で、それを必要とする対象に投与される。一般に、全身投与の場合、局所投与よりも高い用量が使用される。本明細書に記載された細胞のうちのいずれかの用量はまた、単回用量が投与されるか、または複数回用量が投与されるかを考慮して調整されてもよい。有効用量とみなされるものの正確な決定は、上述のように、特定の対象のサイズ、年齢、性別、体重、および状態を含む、各対象に対する個々の要因に基づくことができる。投与量は、本明細書の開示および当技術分野の知識に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。
【0163】
本明細書に提供される遺伝子操作された細胞は、限定されるものではないが、胸膜投与、静脈内投与、皮下投与、結節内投与、腫瘍内投与、髄腔内投与、胸膜内投与、腹腔内投与、頭蓋内投与、および胸腺への直接投与を含む、当技術分野に公知の任意の方法によって投与され得る。
【実施例
【0164】
実施例1:
図1および2に示す例示的な概略図に示すように、編集された造血幹細胞およびキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作された細胞は、単一の出発物質から産生されてもよい。
【0165】
簡潔に述べると、ドナー(例えば、健康なHLA適合ドナー)は、対象の骨髄に典型的に位置する細胞の動員を促進する、本明細書に記載のもののいずれかなどの動員剤を投与される。アフェレーシス産物は、造血幹細胞およびPMBCを含む、動員細胞の異種集団を含有するドナー対象から取得される。CD34+細胞(HSC、これは「標的細胞」と称され得る)は、出発物質から単離され、編集された造血幹細胞(eHSC)薬物製品を産生するために使用される。例えば、造血幹細胞は、CD33(CD34+/CD33neg eHSCs)などの系統特異的細胞表面抗原の発現が低下するか、または発現を欠くように遺伝子操作されてもよい。
【0166】
典型的には廃棄され得る残りの細胞集団(「非標的分画」と称される)は、CARをコードする異種核酸を形質導入することによって遺伝子操作され、CAR薬物製品、例えば、CAR-T細胞を産生する。CAR薬物製品細胞は、eHSCの生着後に患者に後で投与するために保存され得る。
【0167】
実施例2:
前臨床モデルにおける強力かつ効果的なAML療法としての、G-CSF/プレリキサホル二重動員ドナー由来CD33 CAR-T細胞
現在、急性骨髄性白血病(AML)特異的抗原はない。移植のための造血幹細胞(HSC)のCRISPR/Cas9操作を使用したCD33の遺伝子除去は、移植レシピエントに白血病特異的抗原を生成することに対して、合成生物学アプローチを表す。CD33KO HSCの移植は、編集されたCD33KO HSC、したがって、例えばこれらのCD33Ko HSCによって維持される骨髄性発生および機能の継続を、スペアリングする間、CD33標的免疫療法(例えば抗CD33 CAR-T細胞が媒介する)がAML細胞を死滅させることを可能にし、それによってCD33標的免疫療法のオンターゲットオフがん毒性(on-target, off-cancer toxicities)を軽減する。
【0168】
動員白血球アフェレーシスは、移植のための編集されたCD33ヌル(CD33またはCD33KO)HSC、および相補的免疫療法剤、例えば、CD33 CAR-T細胞産物の両方を生成するための魅力的な出発物質を表す。免疫細胞組成物、T細胞表現型、およびキメラ抗原受容体(CAR)形質導入時のAML腫瘍増殖を制御するこれらのT細胞の機能性に対する、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびプレリキサホル(モゾビル)を用いた二重動員の影響を、以下に説明する。
【0169】
動員(「mob」)PBMCを、G-CSF(10μg/kg/日、5日連続)およびプレリキサホル(240μg/kg、4日目および5日目)を注射された健康なドナーから採取した。同一のドナーから採取された非動員(「non-mob」、時として本明細書および図面で「定常状態」、または「ss」とも称される)PBMCを対照として使用した。分化マーカーおよび骨髄ホーミングマーカー、ならびに抗CD3(OKT3)およびIL-2を用いたT細胞活性化に対する応答を含む、免疫表現型解析およびT細胞特徴解析のためのフローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0170】
動員細胞集団を構成する細胞型を評価するために、フローサイトメトリー分析を使用して全体的な免疫表現型解析を実施した。動員細胞集団は、T細胞、単球、NK細胞、およびB細胞の集団を含有することが見出された。図3A~3Dを参照のこと。図3Eに示すように、動員細胞集団中に存在する特定の細胞型の相対的存在量は、定常状態細胞集団中の細胞型の存在量と異なっていた。例えば、CD3+細胞(T細胞)の相対的存在量は、定常状態と比較して、動員細胞集団において減少したが、B細胞の相対的存在量は、定常状態と比較して、動員細胞集団において増加した。
【0171】
動員細胞集団におけるT細胞の表現型をさらに評価した。図3F~3Hに示すように、ナイーブ、エフェクター、およびメモリーT細胞は、動員細胞集団に存在したが、ナイーブT細胞の相対的存在量は、定常状態と比較して、動員細胞集団において増加した。さらに、エフェクターおよびメモリーT細胞の相対的存在量は、定常状態と比較して、動員細胞集団において減少した。
【0172】
上述の免疫細胞およびT細胞表現型解析を、複数のドナーからの非動員および動員PBMC集団に対して行った。図4A~4Cを参照のこと。図4Dに示すように、非動員および動員PBMC集団から取得した異なるT細胞サブセット(CD8またはCD4)もまた分析された。合計で30の健康なドナーからのPBMCのエクスビボ免疫表現型解析により、動員は、CD3T細胞の総数を減少させるが、Tエフェクターメモリー(CD45RA/CCR7)およびセントラルメモリー(CD45RA/CCR7)集団を犠牲にして、ナイーブT細胞(CD45RA/CCR7)の数を増加させることが示された。
【0173】
非動員および動員PBMC集団はまた、広範囲なトランスクリプトームおよびT細胞受容体レパートリー解析と組み合わせた、127個の免疫細胞表現型マーカーを使用した単一細胞次世代シーケンシング(CITEseq)によっても分析された。二つのドナー(D1およびD2)のCITEseq結果を図 5(PBMC集団分析)および図 6(T細胞サブセット分析)に示す。単一細胞シーケンシング分析により、Tナイーブ細胞における動員誘導性の増加、ならびに単球/マクロファージ、CD4T細胞、およびNK細胞の割合におけるシフトが確認された。
【0174】
さらに、骨髄ホーミング因子(例えば、シアリルルイス、CXCR4)は、非動員T細胞試料と比較して、動員において多少減少することが観察された。
【0175】
T細胞活性化(標準的な抗CD3およびIL-2プロトコルを使用)は、非動員および動員PBMC集団にわたって、CD25、CD69、およびCD137発現の同様の増加、ならびにCD62L発現の減少をもたらした。図7は、二つのドナー(D1およびD2)から得られた非動員および動員PBMC集団についてのタンパク質発現の変化を示し、図8は、より大きなドナーコホートについてのマーカー発現の活性化誘導の変化を示す。動員ドナー試料の単球(CD14)の数は、非動員ドナー試料と比較して多いが、T細胞活性化条件下で培養後には消失した。
【0176】
抗CD33CAR構築物のレンチウイルス形質導入は、AML細胞共培養ならびにAMLマウスモデルにおけるmob-CAR T細胞およびnon-mob-CAR T細胞の機能的比較を可能にした。
【0177】
M195(抗CD33)結合剤と、CD28ヒンジおよび膜貫通ドメインと、CD3ゼータシグナル伝達ドメインと、を含む抗CD33 CAR、ならびにCAR-T細胞をコードするレンチウイルス構築物は、標準的なレンチウイルス形質導入プロトコルによって、動員および非動員PBMC分画から取得した(例えば、参照のためにPCT/US2020/022309を参照のこと)。CARの配列は以下の通りである。
【0178】
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPY NGGTGYNQKFKSKATITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRPAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGG GSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQGSGVPSRFSGSGSGT DFTLTISSLQPDDFATYYCQQSKEVPWTFGQGTKVEIKSGAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPL FPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIG MKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRGS(配列番号1)
【0179】
非形質導入T細胞の「バイスタンダー」活性化の減少を伴い、mob-CD33-CAR T細胞が、CD33AML細胞を死滅させる際に、non-mob-CD33-CAR T細胞と同様に効果的であることを、機能的インビトロ細胞傷害性アッセイが示した(図9~11)。非動員PBMC集団は、約28%のCAR発現頻度をもたらし、動員PBMC集団は、約27%のCAR発現細胞をもたらした。標的細胞には、CD33発現MOLM13細胞(wt MOLM)、CD33ヌルMOLM13細胞(CD33KO MOLM)、およびジャーカット細胞(CD33発現なし)が含まれた。CAR-T細胞および標的細胞を24時間共培養した。対照条件には、刺激を伴わない細胞(陰性対照)、および標準的なPMA/イオノマイシン刺激を伴う細胞(PMA/I、陽性対照)が含まれた。場合によっては、MYLOTARG(商標)を追加の陽性対照として使用した。アッセイを少なくとも二重で実施した。
【0180】
図9は、動員PBMC由来CAR-T細胞の細胞傷害性の可能性が、非動員PBMC由来CAR-T細胞のそれと等しいことを示す。
【0181】
図10は、細胞内活性化マーカーが、最小限の「バイスタンダー」活性化で、動員および非動員PBMC由来CAR-T細胞において同様の様式で上方制御されていること、およびCD8+およびCD8-T細胞の両方が活性化されて、CARおよび抗原依存的な様式で、IFNγおよびTNFαを産生することを示す。
【0182】
図11は、上清サイトカインのLUMINEX(商標)分析を示し、非動員および動員PBMC由来CAR-T細胞の同等の細胞傷害性の可能性の結果を確認する。
【0183】
インビボAMLマウスモデルにおける、非動員および動員PBMC由来CAR-T細胞の細胞傷害性の可能性の評価が図12に示されており、動員CD33-CAR T細胞は、非動員CD33-CAR T細胞と等しく、CD33腫瘍を除去するのに有効であることを示す。
【0184】
本明細書に示されたデータは、mobPBMCとnon-mobPBMCとの間の表現型のエクスビボでの差を示し、それらは活性化時に大部分が消失し、T細胞特異的刺激に対する類似の応答を示す。これらの所見は、non-/mob-CAR T細胞の類似のインビトロ細胞傷害性プロファイルによって裏付けられる。mob-CAR T細胞集団における非形質導入T細胞は、限定的な「バイスタンダー」活性化を示し、潜在的に好ましい臨床毒性プロファイルを示した。mob-CAR T細胞機能の追加的なインビボ評価は、効果的な腫瘍クリアランスを示し、これは、AML患者の治療のための操作されたHSCと組み合わせた臨床使用に向けたさらなる努力を支持する。
【0185】
参考文献
例えば、発明の背景、概要、詳細な説明、実施例、および/または参考文献のセクションにおける、本明細書に記述される全ての刊行物、特許、特許出願、公表、およびデータベースエントリー(例えば、配列データベースエントリー)は、個々の刊行物、特許、特許出願、公表、およびデータベースエントリーが、参照により具体的におよび個別に本明細書に組込まれるかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本明細書の任意の定義を含む本出願が優先されるであろう。
【0186】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載される実施形態の多くの均等物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができる。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0187】
「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、一つ、または一つより多くを意味し得る。群の二つ以上のメンバーの間に「または」を含む、請求項または明細書は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、群のメンバーのうちの一つ、一つより多く、または全てが存在する場合に満たされるとみなされる。二つ以上の群のメンバーの間に「または」を含む群の開示は、群の正確に一つのメンバーが存在する実施形態、群の一つより多くのメンバーが存在する実施形態、および群のメンバーの全てが存在する実施形態を提供する。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書では個別には詳述されていないが、これらの実施形態の各々は、本明細書で提供され、具体的に主張または否定され得ることが理解されるであろう。
【0188】
本発明は、請求項のうちの一つ以上、または明細書の一つ以上の関連部分からの一つ以上の制限、要素、節、または説明用語が、別の請求項に導入される、全ての変形例、組み合わせ、および順列を包含することを理解されたい。例えば、別の請求項に依存する請求項は、同じ基本請求項に依存する任意の他の請求項において見出される限定のうちの一つ以上を含むように改変され得る。更に、請求項が組成物を列挙する場合、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明白ではない限り、本明細書に開示される作製もしくは使用方法のうちのいずれかによる、または存在する場合、当技術分野で公知の方法による、組成物を作製もしくは使用する方法が含まれることを理解されたい。
【0189】
要素が、例えば、マーカッシュ群形式でリストとして提示される場合、要素の全ての可能な部分群も開示されており、任意の要素または要素の部分群が群から削除され得ることを理解されたい。また、「含む」という用語は、開放的であることを意図し、追加の要素またはステップの包含を可能にすることにも留意されたい。一般的に、実施形態、製品、または方法が、特定の要素、特徴、またはステップを含むと言及される場合、そのような要素、特徴、もしくはステップからなる、またはそれらから本質的になる実施形態、製品、または方法も同様に提供されることが理解されるべきである。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書では個別には詳述されていないが、これらの実施形態の各々は、本明細書で提供され、具体的に主張または否定され得ることが理解されるであろう。
【0190】
範囲が与えられる場合、終点が含まれる。さらに、別段の指示がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に別段に指示しない限り、いくつかの実施形態では、範囲の下限の単位の1/10まで、記載された範囲内の任意の特定の値を想定し得ることを理解されたい。簡潔にするために、各範囲の値は、本明細書には個別に詳述されていないが、これらの値の各々は、本明細書に提供され、具体的に主張されまたは否認され得ることが理解されよう。また、別段で指示されない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意の部分範囲を想定することができ、部分範囲の終点は範囲の下限の単位の1/10と同程度の精度で表されることも理解されたい。
【0191】
加えて、本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のうちのいずれか一つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。範囲が与えられる場合、その範囲内の任意の値は、請求項のうちのいずれか一つ以上から明示的に除外され得る。本明細書に記載される組成物および/または方法の任意の実施形態、要素、特徴、用途、または態様を、いずれか一つ以上の請求項から除外することができる。簡潔にするために、一つ以上の要素、特徴、目的、または態様が除外される実施形態の全ては、本明細書に明示的に記載されていない。
図1
図2
図3A-E】
図3F-H】
図4A-C】
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
【配列表】
2023550355000001.app
【国際調査報告】