(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】薄膜堆積のための液体前駆体注入
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528947
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 US2021072113
(87)【国際公開番号】W WO2022109516
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518196871
【氏名又は名称】ユージェヌス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】フィンケルマン、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ムクヘルジー、ニロイ
(72)【発明者】
【氏名】サルダナ、ミグエル
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
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5F045AA06
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(57)【要約】
開示技術は一般的に半導体処理に、特に液体前駆体注入装置及び薄膜堆積方法に関する。液体前駆体を薄膜堆積チャンバに注入する方法は、液体注入ユニットを用いて液体前駆体を霧化前駆体液滴に霧化し気化チャンバ内で霧化前駆体液滴を気化液体前駆体に気化することによって気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバに送達することを含む。液体注入ユニットと液体前駆体は、液体注入ユニットでの第1の液体前駆体温度と液体前駆体注入ユニットの上流側の第1の液体前駆体圧力と液体前駆体注入ユニットの下流側の第1のガス圧力とを含む低安定性条件下で液体前駆体送達ユニットを動作させることによって、第1の持続時間中に液体前駆体の質量流量が液体前駆体の平均質量流量に対して10%以上変動するようなものとする。気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバに送達することは、高安定性条件下で液体前駆体送達ユニットを動作させることを含む。高安定性には、液体注入ユニットでの第1の液体温度よりも低い第2の液体前駆体温度;注入ユニットの上流側での第1の液体圧力よりも高い第2の液体圧力;及び、液体注入ユニットの下流側での第1のガス圧力よりも高い第2のガス圧力のうち1つ以上を含む。高安定性は、液体前駆体の質量流量が、第1の持続時間と同じ持続時間をもつ第2の持続時間中に平均質量流量に対して10%未満変動するようなものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達する方法であって、
液体注入ユニットを用いて前記液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化しそして気化チャンバ内で前記霧化前駆体液滴を気化液体前駆体へと気化することによって、前記気化液体前駆体を前記薄膜堆積チャンバ内に送達し、
前記液体注入ユニット及び前記液体前駆体は、前記液体注入ユニットにおける第1の液体前駆体温度と、前記液体注入ユニットの上流側における第1の液体前駆体圧力と、前記液体注入ユニットの下流側における第1のガス圧力と、を含むより低い安定性条件下で液体前駆体送達ユニットを動作させることによって、前記液体前駆体の質量流量が、第1の持続時間中に前記液体前駆体の平均質量流量に対して10%を超えて変動するようになるものであり、
前記気化液体前駆体を前記薄膜堆積チャンバ内に送達することは、前記液体前駆体送達ユニットを、より高い安定性条件下で動作させることを含み、
前記より高い安定性条件は、
前記第1の液体前駆体温度よりも低い、前記液体注入ユニットにおける第2の液体前駆体温度と、前記第1の液体前駆体圧力よりも高い、前記注入ユニットの上流側における第2の液体前駆体圧力と、前記第1のガス圧力よりも高い、前記液体注入ユニットの下流側における第2のガス圧力のうち1つ以上を含み、それによって、前記液体前駆体の質量流量が、前記第1の持続時間と同じ持続時間をもつ第2の持続時間中に平均質量流量に対して10%未満で変動する、方法。
【請求項2】
前記より高い安定性条件は、前記液体注入ユニットにおける第2の液体前駆体温度を含み、かつ、前記第2の液体前駆体温度は、少なくとも部分的に、前記液体注入ユニットにおいて前記液体前駆体を能動的に冷却することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気化液体前駆体を送達することが、前記霧化前駆体液滴を気化する前に前記霧化前駆体液滴と搬送ガスとを混合することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記気化液体前駆体を送達することが、前記搬送ガスを加熱することを含み、それによって前記混合することが、冷却された前記霧化前駆体液滴と加熱された前記搬送ガスとを混合することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液体前駆体を冷却することが、前記液体前駆体を少なくとも5℃冷却することを含み、かつ、前記搬送ガスを加熱することが、前記搬送ガスを少なくとも5℃加熱することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の液体前駆体温度において前記液体前駆体から形成された前記霧化前駆体液滴と加熱された前記搬送ガスとの混合物の温度が、前記搬送ガスを加熱する前の前記第1の液体前駆体温度において前記液体前駆体から形成された前記霧化前駆体液滴の混合物の温度と実質的に同じである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記より高い安定性条件が、前記第1の液体前駆体圧力よりも高い、前記注入ユニットの上流側における第2の液体前駆体圧力を含み、かつ、前記第2の液体前駆体圧力は、少なくとも部分的に、前記液体注入ユニットの上流側で液体プッシュ圧力を設定することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体注入ユニットの上流側で前記液体プッシュ圧力を設定することが、前記液体前駆体を貯蔵する液体前駆体ソースユニットで液体プッシュガスを調整することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体プッシュガスを調整することが、前記液体プッシュ圧力を14psiaより高く調整することを含み、かつ、調整前の液体プッシュ圧力が14psia未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記より高い安定性条件が、前記第1のガス圧力よりも高い、前記液体注入ユニットの下流側における第2のガス圧力を含み、かつ、前記第2のガス圧力が前記薄膜堆積チャンバ内の圧力よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記液体注入ユニットの下流側における前記第2のガス圧力が、少なくとも部分的に、前記液体注入ユニットと前記薄膜堆積チャンバとの間のコンダクタンスを制限することによって達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記霧化前駆体液滴が混合エリアに導入され、前記霧化前駆体液滴が気化チャンバ内で気化され、かつ、前記コンダクタンスを制限することが、前記混合エリア及び前記気化チャンバの一方又は両方を、1:1を超えるアスペクト比をもつように幅方向に対して長さ方向に延ばすことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンダクタンスを制限することが、バルブ又はレギュレータを調整することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のガス圧力が、前記第1のガス圧力よりも少なくとも10%高い、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記液体前駆体が、100℃未満の、大気圧下での気化温度と分解温度との差を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の持続時間が10秒を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記気化液体前駆体を送達することが、周期的堆積プロセスにより薄膜を堆積するために前記気化液体前駆体のパルスを送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記液体前駆体を送達することが、連続的堆積プロセスにより薄膜を堆積するために前記液体前駆体を連続的に送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達する方法であって、
液体注入ユニットを用いて前記液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化しそして気化チャンバ内で前記霧化前駆体液滴を気化液体前駆体へと気化することによって、前記気化液体前駆体を前記薄膜堆積チャンバ内に送達するように構成された液体前駆体送達ユニットを設けること;
前記液体注入ユニットにおける第1の液体前駆体温度と、前記液体注入ユニットの上流側における第1の液体前駆体圧力と、前記液体注入ユニットの下流側における第1のガス圧力と、を含むより低い安定性条件下で、気化液体前駆体を前記薄膜堆積チャンバ内に送達すること;
第1の持続時間中に前記液体前駆体の平均質量流量に対して10%を超える前記液体前駆体の質量流量の変動を検知すること;
前記第1の持続時間と同じ持続時間をもつ第2の持続時間中に前記液体前駆体の質量流量が平均質量流量に対して10%未満で変動するように、前記第1の液体前駆体温度よりも低い、前記液体注入ユニットにおける第2の液体前駆体温度と、前記第1の液体前駆体圧力よりも高い、前記液体注入ユニットの上流側における第2の液体前駆体圧力と、前記第1のガス圧力よりも高い、前記液体注入ユニットの下流側における第2のガス圧力のうち1つ以上を含む、より高い安定性条件下で前記気化液体前駆体を前記薄膜堆積チャンバ内に送達すること;を含む方法。
【請求項20】
前記より高い安定性条件が、前記液体注入ユニットにおける前記第2の液体前駆体温度を含み、かつ、前記第2の液体前駆体温度は、少なくとも部分的に、前記液体注入ユニットにおいて前記液体前駆体を少なくとも5℃能動的に冷却することによって達成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記気化液体前駆体を送達することが、前記霧化前駆体液滴を気化する前に、前記霧化前駆体液滴と加熱された搬送ガスとを混合することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の液体前駆体温度において前記液体前駆体から形成された前記霧化前駆体液滴と加熱された前記搬送ガスとの混合物の温度が、前記搬送ガスを加熱する前の前記第1の液体前駆体温度において前記液体前駆体から形成された前記霧化前駆体液滴の温度と実質的に同じである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記より高い安定性条件が第2の液体圧力を含み、かつ、前記第2の液体圧力は、少なくとも部分的に、前記液体前駆体を貯蔵する、前記液体注入ユニットの上流側における液体プッシュ圧力を設定することによって達成される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記液体プッシュ圧力が14psiaを超えるように設定され、かつ、前記より低い安定性条件下の液体プッシュ圧力が14psia未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記より高い安定性条件が第2のガス圧力を含み、かつ、前記第2のガス圧力が前記薄膜堆積チャンバ内の圧力よりも高い、請求項19に記載の方法。、
【請求項26】
前記液体注入ユニットの下流側における前記第2のガス圧力は、少なくとも部分的に、前記第2のガス圧力が前記第1のガス圧力より少なくとも10%高くなるように前記液体注入ユニットと前記薄膜堆積チャンバとの間のコンダクタンスを制限することによって達成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記気化液体前駆体を送達することが、周期的堆積プロセスにより薄膜を堆積するために前記液体前駆体のパルスを送達することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記気化液体前駆体を送達することが、連続的堆積プロセスにより薄膜を堆積するために前記液体前駆体を連続的に送達することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するための装置であって、
気化液体前駆体を前記薄膜堆積チャンバ内に送達するように構成された液体前駆体送達システムを有し、前記液体前駆体送達システムは、
前記液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化するように構成された液体注入ユニットと、
前記液体注入ユニットから前記霧化前駆体液滴を受け取って前記霧化前駆体液滴と搬送ガスとの混合物を形成するように構成され混合エリアと、
前記混合物を受け取って前記混合物中の前記霧化前駆体液滴を気化して気化液体前駆体を形成する気化チャンバと、
液体前駆体送達安定制御システムと、を有し、
前記液体前駆体送達安定制御システムは、
前記混合エリアに導入される前に前記液体注入ユニットにおいて液体前駆体温度を検知しかつ制御するように構成された注入ユニット温度制御システムと、
前記混合エリアに導入される前に搬送ガスの温度を検知しかつ制御するように構成された搬送ガス温度制御システムと、
前記液体注入ユニットの上流側における液体前駆体圧力を検知しかつ制御するように構成された液体プッシュ圧力制御システムと、
前記液体注入ユニットの下流側におけるガス圧力を検知しかつ制御するように構成された下流側ガス圧力制御システムのうち1つ以上を含む、装置。
【請求項30】
前記液体前駆体送達安定制御システムは、10秒を超える持続時間中に前記液体前駆体の平均質量流量に対して10%を超える質量流量の変動を含む、製造公差を外れた前記液体前駆体の質量流量の変動を検知することに応じて、前記注入ユニット温度制御システム、前記搬送ガス温度制御システム、前記液体プッシュ圧力制御システム、及び前記下流側ガス圧力制御システムのうち1つ以上を起動するように構成されている、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記液体前駆体送達安定制御システムが、前記液体注入ユニットにおける第1の液体前駆体温度と、前記液体注入ユニットの上流側における第1の液体前駆体圧力と、前記液体注入ユニットの下流側における第1のガス圧力とを含む、より低い安定性条件下で製造公差を外れた前記液体前駆体の質量流量の変動を検知することに応じて、前記液体前駆体送達ユニットが、
前記第1の液体前駆体温度よりも低い、前記液体注入ユニットにおける第2の液体前駆体温度と、前記第1の液体前駆体圧力よりも高い、前記液体注入ユニットの上流側における第2の液体前駆体圧力と、前記第1のガス圧力よりも高い、前記液体注入ユニットの下流側における第2のガス圧力のうち1つ以上を含むより高い安定性条件下で動作することによって、前記液体前駆体の質量流量が、10秒を超える持続時間中に平均質量流量に対して10%未満で変動する、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記液体前駆体送達安定制御システムが、少なくとも部分的に、液体冷却手段を用いて前記液体注入ユニットにおける前記液体前駆体を少なくとも5℃だけ能動的に冷却することによって前記第2の液体前駆体温度を達成するように構成された前記注入ユニット温度制御システムを有する、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記液体前駆体送達安定制御システムが、冷却された前記霧化前駆体液滴と前記混合エリアで混合される前に、前記搬送ガスをガス加熱手段を用いて加熱するように構成された前記搬送ガス温度制御システムをさらに有する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記第2の液体前駆体温度において前記液体前駆体から形成された前記霧化前駆体液滴と加熱された前記搬送ガスとの混合物の温度が、前記搬送ガスを加熱することなく前記第1の液体前駆体温度において前記液体前駆体から形成された前記霧化前駆体液滴の混合物の温度と実質的に同じである、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記液体前駆体送達安定制御システムが、少なくとも部分的に、前記液体前駆体を貯蔵する液体前駆体ソースユニットにおいてプッシュガスを用いて前記液体注入ユニットの上流側における液体プッシュ圧力を設定することによって前記第2の液体前駆体圧力を達成するように構成された前記液体プッシュ圧力制御システムを有する、請求項31に記載の装置。
【請求項36】
前記液体前駆体ソースユニットが、前記液体プッシュ圧力を14psiaより高く設定するための圧力レギュレータを有し、前記より低い安定性条件下での液体プッシュ圧力が14psia未満である、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記液体前駆体送達安定制御システムが、前記液体注入ユニットの下流側における前記第2のガス圧力を設定するために構成されたコンダクタンス制限手段を含む前記下流側ガス圧力制御システムを有する、請求項31に記載の装置。
【請求項38】
前記コンダクタンス制限手段は、前記第2のガス圧力が前記第1のガス圧力よりも少なくとも10%高くなるように前記液体注入ユニットと前記薄膜堆積チャンバとの間のコンダクタンスを制限するべく構成されている、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記液体前駆体送達システムが、周期的堆積プロセスにより薄膜を堆積するために前記気化液体前駆体のパルスを送達するように構成されている、請求項29に記載の装置。
【請求項40】
前記液体前駆体送達システムが、連続的堆積プロセスにより薄膜を堆積するために前記気化液体前駆体を連続的に送達するように構成されている、請求項29に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術は、一般的には半導体処理に関し、特に液体前駆体注入装置及び薄膜を堆積する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの横方向への寸法縮小化に伴い、電極及び誘電体などの機能性薄膜の厚さの縮小化を含む半導体デバイスの縦方向への寸法縮小化も対応している。半導体製造は、プロセスフロー全体に亘って堆積される多様な薄膜を含む。多様な薄膜は、湿式及び乾式の堆積方法を含む多様な技術を用いて堆積される。湿式堆積方法は、例えばエアロゾル/スプレー堆積法、ゾルゲル法、及びスピンコーティングを含む。乾式堆積方法は、例えば物理的な蒸気ベースの技術、例えば物理気相成長法(PVD)及び蒸発法がある。乾式堆積方法はさらに、前駆体及び/又は化学反応をベースとした技術、例えば化学気相成長法(CVD)及び原子層堆積法(ALD)がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様では、液体注入ユニットを用いて液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化しその霧化前駆体液滴を気化チャンバ内で気化液体前駆体へと気化することによって気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達することを含む。液体注入ユニット及び液体前駆体は、液体注入ユニットにおける第1の液体前駆体温度と、液体注入ユニットの上流側における第1の液体前駆体圧力と、液体注入ユニットの下流側における第1のガス圧力とを含む、より低い安定性条件下で液体前駆体送達ユニットを動作させることによって、第1の持続時間中に液体前駆体の質量流量が、液体前駆体の平均質量流量に対して10%を超えて変動するようなものとする。
気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達することは、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニットを動作させることを含む。より高い安定性は、液体注入ユニットにおける第1の液体前駆体温度よりも高い第2の液体前駆体温度と;第1の液体圧力よりも高い、注入ユニットの上流側における第2の液体圧力と;第1のガス圧力よりも高い、液体注入ユニットの下流側における第2のガス圧力;のうち1つ以上を含む。より高い安定性は、液体前駆体の質量流量が、第1の持続時間と同じ持続時間をもつ第2の持続時間中に平均質量流量に対して10%未満で変動するようなものとする。
【0004】
第2の態様では、液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するための方法が、液体注入ユニットを用いて液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化し、そしてその霧化前駆体液滴を気化チャンバ内で気化液体前駆体へと気化することによって、気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するように構成された液体前駆体送達ユニットを設けることを含む。その方法はさらに、気化液体前駆体を、より低い安定性条件下で薄膜堆積チャンバ内に送達することを含み、より低い安定性条件は、液体注入ユニットにおける第1の液体前駆体温度と、液体注入ユニットの上流側における第1の液体前駆体圧力と、液体注入ユニットの下流側における第1のガス圧力とを含む。
本方法はさらに、第1の持続時間中に、液体前駆体の平均質量流量に対して10%を超える液体前駆体の質量流量の変動を検知することを含む。
本方法はさらに、より高い安定性条件下で気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達することを含む。より高い安定性条件は、第1の液体前駆体温度よりも低い、液体注入ユニットにおける第2の液体前駆体温度と;第1の液体前駆体圧力よりも高い、注入ユニットの上流側における第2の液体前駆体圧力と;第1のガス圧力よりも高い、液体注入ユニットの下流側における第2のガス圧力;のうちの1つ以上を含む。より高い安定性条件は、第1の持続時間と同じ持続時間をもつ第2の持続時間中に液体前駆体の質量流量が平均質量流量に対して10%未満で変動するようにするものである。
【0005】
第3の態様では、液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するための装置が、気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するために構成された液体前駆体送達システムを有する。液体前駆体送達システムは、液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化するために構成された液体注入ユニットと、液体注入ユニットから霧化前駆体液滴を受け取って霧化前駆体液滴と搬送ガスとの混合物を生成するために構成された混合エリアと、混合物を受け取って混合物中の霧化前駆体液滴を気化して気化液体前駆体を生成するために構成された気化チャンバとを有する。
装置はさらに、混合エリア内に導入される前に液体注入ユニットでの液体前駆体温度を検知しかつ制御するために構成された注入ユニット温度制御システムと;混合エリアに導入される前に搬送ガス温度を検知しかつ制御するためにために構成された搬送ガス温度制御システムと;液体注入ユニットの上流側で液体前駆体圧力を検知しかつ制御するために構成された液体プッシュ圧力制御システムと;液体注入ユニットの下流側でガス圧力を検知しかつ制御するために構成された下流ガス圧力制御システム;のうち1つ以上を含む液体前駆体送達安定制御システムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】
図1Aは、実施形態による、気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するために構成された薄膜堆積システムを示す。
【
図1B】
図1Bは、実施形態による、
図1Aに示した薄膜堆積システムの薄膜堆積チャンバを示す。
【
図2】
図2は、実施形態による、気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達するための液体前駆体送達ユニットを示す。
【
図3A】
図3Aは、実施形態による、液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化するために構成された液体注入ユニットの例を示す。
【
図3B】
図3Bは、実施形態による、液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化するために構成された液体注入ユニットの例を示す。
【
図4】
図4は、実施形態による、液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達する方法を示す。
【
図5】
図5は、実施形態による、気化液体前駆体の薄膜堆積チャンバ内への送達を制御するための液体前駆体送達安定制御システムを示す。
【
図6A】
図6Aは、実施例による、液体前駆体送達方法及びシステムを実行可能な薄膜堆積プロセスを示す。
【
図6B】
図6Bは、実施例による、液体前駆体送達方法及びシステムを実行可能な薄膜堆積プロセスを示す。
【
図6C】
図6Cは、実施例による、液体前駆体送達方法及びシステムを実行可能な薄膜堆積プロセスを示す。
【
図7】
図7は、実施例による、液体前駆体送達方法を用いてパルスモードで薄膜堆積チャンバ内に導入された液体前駆体についての時間の関数としての質量流量の実験のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
原子層堆積(ALD)プロセスのような周期的堆積プロセスは、比較的高アスペクト比(例えば2:1)の構造上に、高い均一性で比較的コンフォーマルな導電性及び絶縁性の薄膜を提供できる。ALDに比べて一般的にコンフォーマリティと均一性は劣るが、化学気相成長法(CVD)などの連続的堆積プロセスを用いて堆積された薄膜は、生産性をより高くコストをより低くできる。ALD及びCVDは、元素金属、半導体(例えば、Si、III-V等)、誘電体(例えば、SiO2、AlN、HfO2、ZrO2等)、希土類酸化物、導電性酸化物及び酸化物(例えば、TiN、IrO2等)、強誘電体(例えば、PbTiO3、LaNiO3等)、超電導体(例えば、YBa2Cu3O7-x)、カルコゲナイド(例えば、GeSbTe)など挙げればきりがないほど、多様な異なる薄膜を堆積するために用いることができる。
【0008】
CVD及びALDプロセスなどの前駆体又は化学反応に基づく薄膜堆積技術においては、前駆体がリアクタ内に送達され、その中で加熱され得る基板へと運ばれて薄膜を堆積させる。高い蒸気圧(例えば、>0.1Torr)を有するガス状前駆体は比較的制御し易いが、全ての前駆体が大気圧及び常温でガス状形態であるわけではない。多くの前駆体は、液体形態で入手可能である。ガス状前駆体の送達に比べて、液体前駆体のリアクタチャンバ内への正確な送達を制御することは比較的難しく、そのことによって、液体前駆体を用いて得られる薄膜の組成、ナノ構造、及び一貫性を制御することがガス状前駆体に比べて難しくなる。したがって、成長速度、基板内均一性、基板間均一性、表面モルフォロジー、及び膜密度など、得られる薄膜の成膜特性の制御を向上させるために、液体前駆体のリアクタチャンバ内への送達を改善する必要性がある。
【0009】
液体前駆体に基づいた、幾つかの汎用的な前駆体又は化学反応に基づく薄膜堆積技術においては、バブラー技術を用いることができる。バブラー技術においては、液体前駆体が、典型的にはステンレス鋼キャニスターであるバブラーの内部に格納され、そして不活性搬送ガス(Ar、He、N2等)を液体内部に導入して気泡化させる。前駆体蒸気がバブラー内の空気を飽和させ、よって発生した蒸気が基板表面上に導入される。これらの技術における反応物の送達は、バブラーの温度、搬送ガスの流量、及び液体表面上の圧力を含むパラメータに依存する。バブラーに基づく技術は幾つかの液体前駆体においては十分に機能し得るが、比較的低い蒸気圧をもつ前駆体においては適切ではない場合がある。この理由は、バブラーの加熱がキャニスター内部の蒸気圧を上げるために現実的な方法であり得る一方、バブラーを加熱し得る最大温度が前駆体の分解温度に制限され得るからである。しかしながら、多くの液体前駆体は比較的低い分解温度をもつ。したがって、バブラーに基づく技術は、実際的使用のために十分に高い蒸気圧(例えば、>0.1Torr)となる温度と前駆体が分解する温度との間の温度ウィンドウが例えば約150℃、100℃、又は50℃未満のように比較的狭い前駆体においては現実的ではない場合がある。その結果、バブラーに基づく技術は、比較的高い温度で安定な前駆体を採用する技術に限定される場合がある。
【0010】
バブラーに基づく液体前駆体送達方法の限界を克服するために、本明細書に記載したシステム及び方法ではダイレクト・リキッド・インジェクション技術を採用する。本明細書で使用する場合、ダイレクト・リキッド・インジェクション(direct liquid injection(DLI))という用語は、反応物を堆積領域に供給するために例えばインジェクタである液体前駆体送達ユニットを用いる技術を称する。バブラー技術等の他の技術とは異なり、DLIに基づく技術では、液体前駆体が、真空下の低圧堆積チャンバ内への注入点まで液体形態に留まる。DLIに基づく技術は、実際的使用のために十分に高い蒸気圧(例えば、>0.1Torr)となる温度と前駆体が分解する温度との間の温度ウィンドウが比較的狭い前駆体においても、液体質量流量の正確な調整を可能とする。本明細書に開示する一部の実施形態によれば、液体前駆体送達方法及びシステムで用いられる液体前駆体の温度ウィンドウは、150℃、100℃、50℃、25℃未満、又は、これらの値のいずれかの間の温度ウィンドウであってもよい。
【0011】
DLIに基づく技術の一部においては、液体前駆体はそれが気化される気化チャンバを通過し、そして他の場合には、前駆体は、加熱された基板表面に液体状態で、例えば霧化液体前駆体液滴の形態で到達し、その後、分解前にそれらは気化される。前駆体が基板に到達したときにまだ液相である場合、液体液滴の生成方法に応じて、その堆積方法を、スプレー熱分解又はエアロゾル熱分解と称することがある。一部のスプレー/エアロゾル熱分解プロセスは、通常、高温に加熱された基板の近傍で蒸発が行われるため、大気圧CVDと呼ばれることがある。DLIに基づく技術の利点は、液体前駆体が比較的低温、例えば室温であることを含み、それによって温度安定性が低く蒸気圧の低い前駆体を用いることが可能となる。
【0012】
発明者らは、一部の汎用的液体送達システム及び方法では、液体前駆体の質量流量が不安定となり得ることを認識した。いかなる理論にも拘束されないが、発明者らは、質量流量の不安定性の原因の一つが、とりわけ、注入点の上流側であって、例えば気化チャンバである低圧領域内への注入点において注入される前に、汎用的なバルブ又はインジェクタでの又はその近傍での、意図しない又は過剰な液体前駆体の気化に関係し得ることを発見した。汎用的バルブ又はインジェクタにより送達されるとき、液体前駆体は、注入点までは液相に留まることを意図されている。しかしながら、発明者らは、注入点の上流側で相当量の意図しない液体前駆体の気化が発生し得ることを発見した。1つには、液体前駆体が注入点で気化温度近くまで加熱され得るという理由から、かつ/又は、バルブ又はインジェクタの下流側におけるガス圧力が堆積中の蒸気圧よりも相当に低い圧力となり得るという理由から、注入点の上流側での意図しない気化が起こり得る。その結果、液体前駆体の意図しない気化が、注入点の上流側で相当の量で生じる可能性があり。注入点の上流側での液体前駆体の気化によって、そこにガス又は気泡のポケットを誘引し、ひいては薄膜堆積チャンバ内で薄膜を堆積するための液体前駆体の質量流量の不安定につながり得る。これらのこと及び他の要請を解決するために、本明細書に開示したシステム及び方法は、液体前駆体の安定性と質量流量の再現性とを高めた、薄膜堆積チャンバ内への液体前駆体の送達を可能とする。
【0013】
[液体前駆体注入のために構成された薄膜堆積システム]
図1Aは、薄膜堆積チャンバ内に気化した液体前駆体を送達するために構成された薄膜堆積システムを示している。薄膜堆積システム100は、1つ以上の液体前駆体を液体前駆体パネル108から受け取るように構成された液体前駆体送達ユニット112を含む。液体前駆体送達ユニット112はさらに、例えば水素又はAr若しくはN
2等の不活性ガスである搬送ガスを受け取るべく構成されている。搬送ガスライン114を通るそれらの流れは、質量流量コントローラ114aにより制御される。液体前駆体送達ユニット112は、1つ以上の気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ104内へ送り出すように構成されている。薄膜堆積チャンバ104は、1つ以上の液体前駆体入口ライン118を通して気化液体前駆体を受け取るように構成され、そしてさらに、例えばO
2又はNH
3等の酸化剤である1つ以上のガス前駆体を受け取るように構成されている。ガスパネル116から1つ以上のガス前駆体入口ライン120を通るそれらの流れは、質量流量コントローラ120aにより制御される。
【0014】
液体パネル108は、1つ以上の液体前駆体ソースユニット110-1、110-2、・・・、110-nを含み、それらは、個々の液体前駆体を保持するように構成された液体タンク110a-1、110a-2、・・・、110a-nの各々を有する。液体タンク110a-1、110a-2、・・・、110a-nは、プッシュガスライン110b-1、110b-2、・・・、110b-nの各々に接続され、そして液体送達ライン110c-1、110c-2、・・・、110c-nの各々に接続されている。液体フローメーター(LFM)110d-1、110d-2、・・・、110d-nは、液体タンク110a-1、110a-2、・・・、110a-nと液体前駆体送達ユニット112との間の液体送達ライン110c-1、110c-2、・・・、110c-nの流路に配置されている。
【0015】
図示の実施形態では、複数の液体前駆体が、共通の液体前駆体送達ユニット112内に導入されるように示されている。しかしながら、その構成に限定されず、他の構成では、複数の液体前駆体送達ユニット112が存在してもよく、その場合、各液体前駆体送達ユニット112が個々の液体前駆体に専用である。さらに、単一の搬送ガスライン114が液体前駆体送達ユニット112に接続されるように示されている。しかしながら、その構成に限定されず、複数の搬送ガスライン114が存在してもよく、その場合、各搬送ガスラインが専用の液体前駆体送達ユニット112に接続されることによって、各液体前駆体送達ユニット112が専用の液体前駆体及び専用の搬送ガスを受け取る(例えば
図2)。
【0016】
液体前駆体ソースユニット110-1、110-2、・・・、110-nは、同様の方法で質的に動作させることができる。一例として液体前駆体ソースユニット101-1を参照すると、例えば水素又はヘリウム、アルゴン若しくは窒素等の不活性ガスであるプッシュガスが、プッシュガスライン110b-1から出てガス質量流量コントローラ(図示せず)を通って液体タンク110a-1へと流入する。プッシュガスは、液体タンク110a-1から液体前駆体を押し出し、そして液体送達ライン110c-1は、液体タンク110a-1から押し出された液体前駆体を液体前駆体送達ユニット112へ送達する。
【0017】
図1Bは、例えば
図1Aに関して上述した薄膜堆積システム100である、実施形態による薄膜堆積システムの薄膜堆積チャンバを示している。薄膜堆積チャンバ104は、チャンバを真空下で気密に密閉するように構成されたチャンバハウジング111を含む。
【0018】
薄膜堆積チャンバ104の下部は、その上に載置される基板117のために構成された上面124Sを有するサセプタ124を含む。サセプタ124は、加熱装置115によりプロセス温度に加熱することができる。所与の構成においては、サセプタ124が、膜の均一性を高めるために回転軸Dを中心に回転し得る。その回転は中心軸に対して生じ得る。出口128を介して薄膜堆積チャンバ104に接続された真空ポンプ(図示せず)は、薄膜堆積チャンバ104内を排気するように構成されている。薄膜堆積チャンバ104の上部は、通過するガス混合物を基板117の上に放出する複数の孔を有するガス分配プレートすなわちシャワーヘッド113を含む。
【0019】
液体前駆体送達ユニット112から気化液体前駆体を送達するように構成された1つ以上の液体前駆体入口ライン118と、ガスパネル116から例えば酸化剤である個々のガス前駆体を送達するように構成された1つ以上のガス前駆体入口ライン120が、シャワーヘッド113に接続されている。気化液体前駆体とガス前駆体の質量流量を計測するために、1つ以上の質量流量メーター132を液体前駆体入口ライン118とガス前駆体入口ライン120の流路に配置することができる。本明細書に開示された多様な実施形態によれば、より高い安定性条件下で液体前駆体の送達方法を稼動させるために、気化液体前駆体(複数可)の質量流量の変動を液体前駆体送達安定制御システム500(
図5)により検知することができる。例えば、気化液体前駆体(複数可)の検知された質量流量が、製造公差を超えて、例えば第1の持続時間中の液体前駆体の平均質量流量に対して10%を超えて変動したとき、液体前駆体送達安定制御システム500は、実施形態による方法400(
図4)をトリガーすることができる。
【0020】
・液体前駆体送達システム
図2は、例えば
図1Bに関して上述した薄膜堆積チャンバである薄膜堆積チャンバ内に気化液体前駆体を送達するための、実施形態による液体前駆体注入システムを示している。液体前駆体注入システム200は、液体前駆体送達ユニット112を含む。液体前駆体送達ユニット112は、液体前駆体ソースユニット110から液体前駆体を液相で受け取るように構成された液体注入ユニット204を含む。液体前駆体ソースユニット110は、その中に液体前駆体228を貯蔵した液体タンク110aを含む。プッシュガスライン110bは、圧力レギュレータ224を通して液体タンク110aに接続されている。液体送達ライン110cは、液体前駆体228を霧化するように構成された液体注入ユニット204に接続されている。本明細書に開示したように、霧化は、液体前駆体を液体前駆体液滴のスプレーへと形成するプロセスのことである。霧化された液体液滴は、例えば約1μm~100μmの平均直径を有し得る。液滴は、体積に対する表面積の比が大きく、気化液体前駆体への速やかな蒸発のために最適化されている。
【0021】
動作中、液体タンク110aから出た液体前駆体228を送達するために、例えば水素又はヘリウム、アルゴンもしくは窒素等の不活性ガスであるプッシュガスがプッシュガスライン110bを通して液体タンク110aへ供給され、それにより液体タンク110aから液体前駆体228が移動させられる。プッシュガスライン110bを通って流れるガス流は、圧力レギュレータ224により調整可能である。このようにして移動した液体前駆体は、液体送達ライン110cを通って液体注入ユニット204へと送達される。
【0022】
液体前駆体送達ユニット112はさらに、搬送ガスライン114を通して搬送ガスを受け取るように構成された搬送ガスバルブ208を含む。それは水素又はヘリウム、アルゴンもしくは窒素等の不活性ガスとし得る。搬送ガスバルブ208に送達される搬送ガスの温度を調整するために、搬送ガス加熱装置220を搬送ガスライン114の経路に配置することができる。液体前駆体送達ユニット112はさらに、液体注入ユニット204及び搬送ガスバルブ208の下流側において、霧化液体前駆体液滴と搬送ガスとを混合して霧化液体前駆体混合物を形成するように構成された混合エリア212を含む。液体注入ユニット204と搬送ガスバルブ208は、それぞれ霧化前駆体液滴と搬送ガスを混合エリア212内に噴出するように構成されている。所与の構成においては、液体注入ユニット204から噴出された霧化前駆体液滴の軌跡と、搬送ガスバルブ208から噴出された搬送ガスの軌跡とが、混合エリア212内の混合点において交差し得ることによって、気化前に、霧化前駆体液滴と搬送ガスの混合によって霧化液体前駆体混合物が十分に形成される。
【0023】
混合エリア212で形成された、霧化前駆体液滴と搬送ガスから形成された霧化液体前駆体混合物は、続いて気化チャンバ216内に導入される。気化チャンバ216は、霧化液体前駆体混合物中の霧化前駆体液滴を気化して、気化液体前駆体と搬送ガスとを含む気化液体前駆体混合物を形成するために構成されている。気化チャンバ216は、約1~3リットルの容積を有し得る。気化チャンバ216は、例えば加熱装置である気化手段を有する。例えば、霧化前駆体液滴の気化は、部分的には、気化チャンバ216の加熱された壁により実現し得る。気化チャンバ216の壁は、例えば、霧化前駆体液滴が大気圧での液体前駆体の気化温度と分解温度との間の温度に加熱されるような温度に加熱することができる。例えば、大気圧で200℃の気化温度と250℃の分解温度をもつ液体前駆体については、気化チャンバ216を、200℃と250℃との間の温度に加熱することができる。気化チャンバ216は、このようにして形成された気化液体前駆体混合物を、
図1A及び
図1Bに関して上述した通り、液体前駆体入口118を通してそしてさらにシャワーヘッド113を通して薄膜堆積チャンバ104内に送達するように構成されている。
図1A及び
図1Bに関して上述した通り、1つ以上のガス前駆体、例えばガスパネル116からの酸化剤が、同じくシャワーヘッド113に接続されたガス前駆体入口120を通して送達される。
【0024】
図2をさらに参照すると、混合エリア212と気化チャンバ216は、真空下又は薄膜堆積チャンバ圧力下とし得る薄膜堆積チャンバ104に接続されるが、堆積チャンバ圧力よりも高い局所的圧力となるように構成することができる。より高い局所的圧力は、混合エリア212及び/又は気化チャンバ216の内部空間の形状を設計して、それらのコンダクタンスを制限することによって実現することができる。例えば、混合エリア212及び気化チャンバ216の一方又は両方が、シャワーヘッド113の面に垂直な鉛直方向に延びる細長い部分を含むことができ、それによって鉛直方向に圧力勾配が存在するようになる。例えば、混合エリア212及び/又は気化チャンバ216の一方又は両方が、鉛直方向の長さと水平方向の幅又は直径とのアスペクト比として2:1、4:1、6:1、8:1、10:1又はこれらのいずれかにより規定される範囲内の数値よりも大きいアスペクト比を有し得る。それに替えて、混合エリア212及び/又は気化チャンバ216が、例えばコンダクタンス制限オリフィスにより、部分的に排気を妨げられてもよい。それに替えて、混合エリア212及び/又は気化チャンバ216の一方又は両方が、その下部において連続的に調整可能なコンダクタンス制御手段、例えば圧力レギュレータ又はバタフライバルブ等を含むことができ、それによってその箇所の局所的圧力が、堆積チャンバ圧力よりも高くなる。例えば、コンダクタンス制御手段は、混合エリア212と気化チャンバ216との間、及び/又は、気化チャンバ216と薄膜堆積チャンバ104との間、例えばシャワーヘッド113の上流側に配置することができる。
【0025】
図示の実施形態では、混合エリア212と気化チャンバ216が、分離されたチャンバとして示されている。しかしながら、その構成に限定されず、他の構成では、混合エリア212が気化チャンバ216の一部を形成する一方で、例えば上述した細長い空間とは異なる形状及び大きさの内部空間を有することもできる。なお、所与の他の構成においては、混合エリア212を省くことができ、そして霧化液体前駆体と搬送ガスとを直接、気化チャンバ216内に導入することもできる。
【0026】
図2をさらに参照すると、液体注入ユニット204が、液体前駆体を、霧化前駆体液滴すなわちエアロゾルへと霧化するために構成された適切な手段を含むことができる。一つの実施態様では、液体注入ユニット204が計量バルブを含むことができる。
図3A及び
図3Bは、実施形態による、液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化するために構成された計量バルブ304を含む液体注入ユニット204の例を示している。図示の例の計量バルブ304は、Nordson EFD LLC製のPICO(登録商標)バルブに類似し、その仕様及び設計はここに参照することにより全体として本明細書に包含される。
図3Aは閉状態の計量バルブ304を示し、
図3Bは開状態の計量バルブ304を示している。計量バルブ304は、液体前駆体ソースユニット110(
図2)から液体前駆体228を受け取るために液体送達ライン110cに接続された入口302と、混合エリア212(
図2)に接続された出口320とを含む。計量バルブ304は、矢印で示すように上下移動するべく圧電アクチュエータにより駆動されるように構成されたレバー308を含む。レバー308は、鉛直ロッド312が可動に接続された遠位端を有する。レバー308の移動によって、ロッド312の矢印で示す対応する鉛直移動が生じる。ロッド312の下端には、耐摩耗性セラミック製の半球状の封止ボール316が配置されている。セラミックバルブシート318はノズルプレートとも称され、封止ボール316の下方に配置されている。セラミックバルブシート318は、封止ボール316の直径よりも小さい孔を有する。その孔は、例えば50μm~500μmの直径を有し得る。図示の計量バルブ304の例においては、バルブシート318の孔が、注入点を表すことができる。本明細書に記載するように、注入点は、液体前駆体228が霧化前駆体液滴へと霧化される液体注入ユニット204内の領域を規定する。注入点はまた、液体前駆体が液体状態にある計量バルブ304の上流側部分と、例えば混合エリア212である低圧力領域に曝される計量バルブ304の下流側部分とを分ける点も規定する。
【0027】
図3Aに示すように、動作において、封止ボール316がバルブシート318に着座すると、封止ボール316によって孔又は注入点が閉じられ、それにより計量バルブ304から液体前駆体228の注入が阻止される。一方、
図3Bに示すように、封止ボール316がバルブシート318から離れて上昇すると、封止ボール316によって孔又は注入点が開かれ、それにより計量バルブ304から液体前駆体228が注入又は噴射されることが可能となる。
【0028】
液体注入ユニット204(
図2)の他の実施態様が可能である。代替的な実施態様によれば、注入ユニット204(
図2)が、制御バルブを含む質量流量コントローラを含むことができ、バルブの位置を変更することにより液体の流量を変更できる。さらに別の代替的実施態様によれば、注入ユニット204が、制御バルブを含まない質量流量メーターを含むことができ、それにかかる駆動圧力を変更することによって液体流量を変更できる。
【0029】
・液体注入方法及び制御システム
図4は、実施形態による、液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達する方法を示している。
図5は、実施形態による、気化液体前駆体の薄膜堆積チャンバ内への送達を制御するための液体前駆体送達安定制御システムを示している。以下では、液体前駆体の送達方法400(
図4)を、制御システム500(
図5)と関連付けて説明する。
【0030】
図5を参照すると、気化液体前駆体の薄膜堆積チャンバ内への送達を制御するための液体前駆体送達制御システム500は、液体プッシュ圧力制御システム510と、注入ユニット温度制御システム520と、搬送ガス温度制御システム530と、下流側圧力制御システム540とを含み、それらは互いに通信可能に連結されかつ中央制御ユニット550と通信可能に連結されている。
液体注入ユニット204(
図2)の上流側に配置可能な液体プッシュ圧力制御システム510は、互いに通信可能に連結された液体圧力検知手段514と液体圧力制御手段518とを用いて液体前駆体送達ユニット112(
図2)の上流側の液体送達ライン110c(
図2)における液体前駆体プッシュ圧力を制御するように構成されている。
液体注入ユニット204(
図2)又はその上流側に配置可能な注入ユニット温度制御システム520は、互いに通信可能に連結された液体温度検知手段524と液体温度制御手段528とを用いて液体注入ユニット204(
図2)又はその上方における液体前駆体温度を制御するように構成されている。
搬送ガスバルブ208(
図2)又はその上流側に配置可能な搬送ガス温度制御システム530は、互いに通信可能に連結された搬送ガス温度検知手段534と搬送ガス温度制御手段538とを用いて搬送ガスバルブ208(
図2)又はその上方における搬送ガス温度を制御するように構成されている。
液体注入ユニット204(
図2)の下流側に配置可能な下流側圧力制御システム540は、互いに通信可能に連結されたガス圧力検知手段544とガス圧力制御手段548とを用いて液体注入ユニット204(
図2)の下流側におけるガス圧力を制御するように構成されている。
液体圧力検知手段514及びガス圧力検知手段544の各々は、例えばナノメーター、トランスジューサー等の適切な圧力センサを含むことができる。液体温度検知手段214及び搬送ガス温度検知手段534の各々は、例えばサーモカップル、サーミスタ、抵抗温度検知器等の適切な温度センサを含むことができる。液体圧力制御手段518及びガス圧力制御手段548の各々は、圧力レギュレータ、制御バルブ等を含むことができ、それらは適切な制御回路及び/又は制御アルゴリズムにより制御可能である。液体温度制御手段528及び搬送ガス温度制御手段538の各々は、加熱装置及び/又は冷却装置を含むことができ、それらは内部又は外部の制御回路及び/又は制御アルゴリズムにより制御可能である。
【0031】
図5をさらに参照すると、液体プッシュ圧力制御システム510、注入ユニット温度制御システム520、搬送ガス温度制御システム530、及び下流側圧力制御システム540の各々、並びにそれらに含まれる各検知手段及び各制御手段は、互いに、そして中央制御又は処理ユニット550に通信可能に連結されている。中央制御又は処理ユニット550は、プロセッサ、メモリ、及び記憶デバイスを有し、それらは、液体プッシュ圧力制御システム510、注入ユニット温度制御システム520、搬送ガス温度制御システム530、及び下流側圧力制御システム540と通信しかつ、少なくとも部分的にそれらを自動制御するための実行可能なアルゴリズムを記憶しかつ実行するように集約的に構成されている。それによって、方法400の一部又は全部を自動的に又はアルゴリズム的に実行する。例えば、液体プッシュ圧力制御システム510、注入ユニット温度制御システム520、搬送ガス温度制御システム530、及び下流側圧力制御システム540のうち1つ以上が、所定の製造公差の範囲から外れた質量流量の変動を検知することに応じて起動されてもよい。流量変動は、例えば質量流量メーター132(
図1B)により検知してもよい。製造公差から外れた質量流量変動の検知に応じて、液体圧力制御手段518、液体温度制御手段528、搬送ガス温度制御手段538、及びガス圧力制御手段548のうち1つ以上が、液体送達ライン110c(
図2)内の液体プッシュ圧力、液体注入ユニット204(
図2)又はその上方における液体前駆体温度、搬送ガスバルブ208(
図2)又はその上方における搬送ガス温度、及び液体注入ユニット204(
図2)の下流側におけるガス圧力を、少なくとも部分的に中央制御ユニット550と連係して自動的又はアルゴリズム的にそれぞれ調整することができる
【0032】
図4及び
図5を参照すると、液体前駆体を薄膜堆積チャンバ内に送達する方法400は、気化液体前駆体228(
図2)を薄膜堆積チャンバ104(
図2)内に送達するように構成された液体前駆体送達ユニット112(
図2)を設けること410を含む。
上述した通り、液体前駆体送達ユニット112は、薄膜堆積チャンバ104(
図2)内に送達する前に、液体前駆体を霧化前駆体液滴へと霧化するように構成された液体注入ユニット204(
図2)を有する。本方法はさらに、液体前駆体送達ユニット112を用いて気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバ104内に送達することを含み、気化液体前駆体を送達することは、液体注入ユニット204を用いて液体前駆体228を気化前駆体液滴に霧化することと、気化チャンバ216を用いて霧化前駆体液滴を気化液体前駆体へと気化させることとを含む。
液体前駆体送達ユニット112及び液体前駆体228は、液体前駆体送達ユニット112がより低い安定性条件下で動作するときに、液体前駆体の質量流量が、第1の持続時間中に液体前駆体228の平均質量流量に対して製造公差を超えて変動するように構成されている。
【0033】
そのような変動を生じさせる、より低い安定性条件は、液体注入ユニット204(
図2)における第1の液体前駆体温度(T
PL1)と、液体注入ユニット204の上流側における第1の液体前駆体圧力(P
PL1)と、液体注入ユニット204の下流側における第1のガス圧力(P
PG1)とを含む。本発明者らは、このような質量流量の変動が、1つの基板全体に亘るだけでなく異なる基板間に亘って、厚さ、組成、及び密度等の膜品質におけるばらつきを含む製造上の不均一性をもたらし得ることを見出した。
【0034】
本発明者らは、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112を動作させること420によって、液体前駆体の質量流量が、第1の持続時間と同じ持続時間をもつ第2の持続時間中に平均質量流量に対して製造公差未満でしか変動しないことを見出した。所与の実施形態では、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112を動作させること420は:液体前駆体228の温度を、第1の液体前駆体温度(T
PL1)よりも低い、液体注入ユニット204(
図2)における第2の液体前駆体温度(T3)に設定すること又は下げること424;液体前駆体228の圧力を、第1の液体前駆体圧力(P
PL1)よりも高い、注入ユニットの上流側における第2の液体前駆体圧力(P
PL2)に設定すること又は上げること426;及び、液体注入ユニット204の下流側におけるガス圧力を、第1の下流側圧力(P
PG1)よりも高い、液体注入ユニット204の下流側における第2のガス圧力(P
PG2)に設定すること又は上げること428;のうちの1つ以上を含む。
【0035】
図4をさらに参照すると、本発明者らは、本明細書に開示した多様な実施形態において、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112(
図2)を動作させること420が、強化された安定性と再現性をもって液体前駆体228の薄膜堆積チャンバ104内への送達を有利に可能とすることを見出した。強化された安定性と再現性は、特に、上述した通り、少なくとも部分的に、液体前駆体を液相に留めるように保持しかつ注入点の上流側での液体前駆体の気化を防止することによって可能となる。有利な点として、方法400は、注入点の上流側での液体前駆体の気化の実質的な抑制を可能とし、ひいてはそのことがガス又はバブルのポケットの形成を抑制し、それによって薄膜堆積チャンバ104(
図2)内で薄膜を堆積するための気化前駆体の安定性を強化することができる。
【0036】
液体前駆体の質量流量の強化された安定性と再現性は、液体前駆体が注入点において気化温度又はその近傍に加熱されること及び/又は注入点の下流側のガス圧力が堆積中の蒸気圧よりもかなり低い圧力であることにも拘わらず有利に維持され得る。本明細書に記載した通り、気化温度とは、液体前駆体の蒸気圧が堆積に十分である温度、例えば蒸気圧が約0.1Torr、0.2Torr、0.5Torr、1Torr、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値より高くなる温度のことをいう。液体前駆体228の温度は、気化温度及び/又は分解温度の近傍に設定することができる。多様な実施形態によれば、液体前駆体送達ユニット112(
図2)又はその中の注入点における液体前駆体228(
図2)は、液体前駆体228の気化温度の+/-50℃、+/-30℃、+/-20℃、+/-10℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値とすることができ、又は、液体前駆体228の分解温度より50℃、30℃、20℃、10℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値より低くすることができる。
例えば混合エリア212(
図2)、気化チャンバ216(
図2)、及び/又は薄膜堆積チャンバ104(
図2)内の注入点の下流側における圧力は、0.01~0.2Torr、0.2~0.4Torr、0.4~0.6Torr、0.6~0.8Torr、0.8~1.0Torr、1.0~1.5Torr、1.5~2.0Torr、2.0~2.5Torr、2.5~3.0Torr、3.0~4.0Torr、4.0~5.0Torr、5.0~6.0Torr、6.0~7.0Torr、7.0~8.0Torr、8.0~9.0Torr、9.0~10.0Torr、10.0~11.0Torr、11.0~12.0Torr、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲の圧力とすることができる。
【0037】
図4をさらに参照すると、強化された安定性と再現性は、製造公差に対して質量流量メーター132(
図1B)により計測され得る質量流量の変動によって定量化することができる。有利な点として、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112を動作させること420によって、液体前駆体の質量流量を製造公差内に維持することができる。液体前駆体の質量流量の製造公差は、用途に依存し得る。例えば、先端技術ノード(例えば<130nm)でのメモリ及び論理半導体チップの製造用の誘電性と導電性の薄膜においては、製造公差は、質量流量が1ms、5ms、10ms、20ms、50ms、100ms、200ms、500ms、1s、2s、5s、10s、20s、50s、100s、200s、500s、1000s、2000s、5000s、10,000s、100,000s、1,000,000s、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲の持続時間より長い持続時間中、液体前駆体の平均質量流量に対して1%、2%、5%、10%、20%、又はこれらの値のいずれかによ規定される範囲内の値を超えて変動しないものと定義することができる。例えば、持続時間は、薄膜堆積システムの連続する予防保守動作間における数百又は数千のウェハプロセスの集積された曝露時間に対応し得る。化学気相成長法(CVD)等における連続的な前駆体曝露においては、持続時間は、中断されない持続時間を表すことができる。原子層堆積法(ALD)のような周期的な前駆体曝露においては、持続時間は、単一パルスの持続時間、又は複数の堆積の総和とすることができる。所与の実施態様では、持続時間は、液体前駆体送達ユニット112(
図2)が最初に起動されるときの初期スパイク又は初期ディップ等の過渡的効果を除外することができる。
【0038】
図4をさらに参照すると、所与の実施形態において、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112(
図2)を動作させること420は、液体前駆体228の温度(T
PL)を、より低い安定性条件下の第1の液体前駆体温度(T
PL1)よりも低い、液体注入ユニット204における第2の液体前駆体温度(T
PL2)に設定すること又は下げること424ことを含む。T
PL2は、部分的には、注入ユニット温度制御システム520(
図5)を用いて、又は注入ユニット温度制御システム520を搬送ガス温度制御システム530(
図5)と組み合わせて用いて、液体注入ユニット204(
図2)におけるT
PL2まで液体前駆体228(
図2)の温度を下げること424によって達成することができる。
【0039】
図5を参照すると、注入ユニット温度制御システム520は、液体温度検知手段524及び液体温度制御手段528を用いて、混合エリア212内に噴霧される前に、液体前駆体の温度を能動的に制御するように構成されている。例えば質量流量メータ132(
図1B)を用いて、製造公差から外れた質量流量を検知すると、液体温度検知手段534及び液体温度制御手段528は、液体注入ユニット204(
図2)内の注入点又はその上方における液体前駆体温度を、少なくとも部分的に中央制御ユニット550と連係して自動的又はアルゴリズム的に調整することができる。
【0040】
液体温度制御手段528は、混合エリア212(
図2)内に噴霧される前に注入ユニット204(
図2)における液体前駆体228の温度(T
PL)を下げるための能動的な冷却手段を含むことができる。多様な実施形態によれば、注入点の上流側例えば直ぐ上流側における液体前駆体の第1及び第2の液体前駆体温度(T
PL1、T
PL2)の一方又は両方を、大気圧における液体前駆体228の気化温度の+/-50℃、+/-30℃、+/-20℃、+/-10℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値となるように設定すること又は下げることができ、又は、大気圧における液体前駆体228(
図2)の分解温度より50℃、30℃、20℃、10℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値より低く設定すること又は下げることができる。能動的に冷却することにより、液体前駆体の温度は、T
P1からT
P2まで、少なくとも5℃~50℃、5℃~10℃、10℃~20℃、20℃~30℃、40℃~50℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲の値だけ、有利に設定すること又は下げることができる。上述した通り、これらの範囲より低いT
PLは液体前駆体の不十分な気化につながり、これらの範囲より高いT
PLは液体前駆体の分解につながり得るため、これらの範囲内でT
PLを制御することが重要であることが理解されるであろう。
【0041】
本発明者らは、所与の状況下では、本明細書に記載したように液体前駆体の温度を冷却することが望ましくない否定的結果となり得ることを見出した。例えば、液体前駆体温度を低下させることによって霧化すなわち前駆体液滴形成の効率及び/又は混合エリア212における混合効率を低下させ、かつ/又は、気化チャンバ216における気化効率を低下させる場合がある。これらの、及び他のあり得る否定的影響を解消するために、所与の実施形態では、液体前駆体228の低下した第2の液体前駆体温度(T
PL2)が、後述するように、搬送ガスを加熱し、そして冷却された液体前駆体から形成された霧化前駆体液滴を、加熱した搬送ガスと混合エリア212(
図2)内で混合することによって、少なくとも部分的に補償される。
【0042】
図5を参照すると、搬送ガス温度制御システム530は、搬送ガス温度検知手段534及び搬送ガス温度制御御手段538を用いて、混合エリア212内に導入される前に搬送ガスの温度(T
CG)を能動的に制御するように構成されている。例えば質量流量メータ132(
図1B)を用いて、製造公差を外れた質量流量の変動を検知することに応じて、搬送ガス温度検知手段534及び搬送ガス温度制御手段538は、混合エリア212(
図2)の上方の搬送ガスバルブ208において搬送ガス温度がより高い温度に加熱されかつ/又は維持されるように、少なくとも部分的に中央制御ユニット550と連係して自動的又はアルゴリズム的に調整することができる。
【0043】
これらの実施形態では、搬送ガスバルブ208は、混合エリア212内に送達される前に搬送ガスの温度を能動的に制御するように構成することができる。例えば、搬送ガス温度制御システム530は、搬送ガスバルブ208に導入された能動的な加熱手段を含むことができる。搬送ガス温度制御システム520は、例えば、搬送ガスバルブ208の上流側の搬送ガスの温度を検知するように構成された搬送ガス温度検知手段534と、混合エリア212内に導入される前に搬送ガスの温度を能動的に上げるための加熱装置を含む搬送ガス温度制御手段538とを含むことができる。搬送ガスの温度は、より低い安定性条件下におけるより低い搬送温度(TCG1)から、少なくとも5℃~50℃、5℃~10℃、10℃~20℃、20℃~30℃、40℃~50℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲の値だけ、より高い搬送温度(TCG2)まで加熱することができる。
【0044】
有利な点として、搬送ガスを、より低い安定性条件下のT
CG1からより高い安定性条件下のT
CG2まで加熱することによって、液体前駆体が混合エリア212(
図2)内に噴霧されるときに液体前駆体の冷却効果を少なくとも部分的に補償する。多様な実施態様によれば、第2の液体前駆体温度(T
PL2)で液体前駆体から形成された霧化前駆体液滴を、T
CG2で加熱された搬送ガスと混合することによって形成された霧化液体前駆体混合物の温度は、より低い安定性条件の第1の液体前駆体温度(T
PL1)で液体前駆体から形成された霧化前駆体液滴を、加熱前のT
CG1で搬送ガスと混合することによって形成された霧化液体前駆体混合物の温度と実質的に同じとなり得る。例えば、より低い安定性条件とより高い安定性条件との間での混合エリア212内の霧化液体前駆体混合物の温度変化は、5℃~50℃、5℃~10℃、10℃~20℃、20℃~30℃、40℃~50℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲の値となり得る。温度が低いと液体前駆体の気化が不十分になり、高いと液体前駆体の分解につながるため、霧化前駆体混合物の温度をこれらの範囲内で制御することが重要であることが理解されよう。
【0045】
図4を更に参照すると、所与の実施形態では、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112(
図2)を動作させること420は、液体前駆体228の液体圧力(P
PL)を、液体注入ユニット204内の注入点の上流側におけるより低い安定性条件の第1の液体圧力(P
PL1)よりも高い、注入ユニット204内の注入点の上流側におけるより高い安定性条件の第2の液体圧力(P
PL2)に設定すること又は上げること426を含む。
液体前駆体228の液体圧力を設定すること又は上げること426は、液体プッシュ圧力制御システム510を用いて達成できる。一つの実施態様では、プッシュガスライン110b(
図2)を通って供給される例えば水素又はヘリウム、アルゴンもしくは窒素等の不活性ガスであるプッシュガスの圧力を上げることで、液体タンク110aからの液体前駆体228の移動圧力を上げることができる。プッシュガスライン110b内の上昇したプッシュ圧力は、圧力レギュレータ224(
図2)により調整可能である。このようにしてP
PL2で移動した液体前駆体228は、液体送達ライン110cを通って注入ユニット204に送達される。
【0046】
図5を参照すると、液体プッシュ圧力制御システム510は、混合エリア121内に噴霧される前に、液体圧力検知手段514及び液体圧力制御手段518を用いて液体前駆体228(
図2)のP
PLを能動的に制御するように構成されている。例えば質量流量メーター132(
図1B)を用いて製造公差を外れた質量流量変動を検知したことに応じて、液体圧力検知手段514及び液体圧力制御手段518は、液体注入ユニット204(
図2)の上流側、例えば液体前駆体ソースユニット110における液体前駆体圧力を、少なくとも部分的に中央制御ユニット550と連係して自動的又はアルゴリズム的に調整する。
【0047】
所与の実施形態によれば、液体前駆体228を、P
PL2をもつ注入ユニット204に制御可能に送達するために、液体注入ユニット204の上流側におけるP
PLを設定すること又は上げることは、液体前駆体ソースユニット110(
図2)における液体プッシュガスを調整することを含む。圧力レギュレータ224は、液体送達ライン110c内の液体プッシュ圧力が10~50psia、10~15psia、15~20psia、20~25psia、25~30psia、30~35psia、35~40psia、40~45psia、45~50psia、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の圧力、例えば14psiaと30psiaとの間、例えば28psiaとなるように制御可能である。
【0048】
図4をさらに参照すると、その他の実施形態において、より高い安定性条件下で液体前駆体送達ユニット112を動作させること420が、注入ユニット204の下流側におけるガス圧力(P
PG)を、第1のガス圧力(P
PG1)よりも高い第2のガス圧力(P
PG2)に設定すること又は上げること428を含む。P
PG2は、少なくとも部分的に、下流側圧力制御システム540を用いて液体注入ユニット204と薄膜堆積チャンバ104との間の領域におけるコンダクタンスを制限することによって達成できる。例えば、P
PGを上げることは、混合エリア212及び気化チャンバ216の一方又は両方におけるP
PGを局所的に上げるためにコンダクタンスを制限することによって達成できる。
【0049】
所与の実施態様においては、P
PGの局所的上昇は、シャワーヘッド113の面に垂直な鉛直方向において混合エリア212及び気化チャンバ216の一方又は両方の空間を細長くすることによって、鉛直方向における圧力勾配が増すことで達成できる。混合エリア212及び気化チャンバ216の一方又は両方を細長くすることは、それらの鉛直方向の長さと幅又は直径とのアスペクト比が2:1、4:1、6:1、8:1、10:1、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値より大きくなるように各空間を細長くすることを含み得る。所与の他の実施態様では、混合エリア212及び気化チャンバ216の一方又は両方が、それらの下部において連続的に調整可能なコンダクタンス制御手段を、例えば圧力レギュレータ又はバタフライバルブ等を含むことによって、それらの中の局所的圧力が薄膜堆積チャンバ104(
図2)内のガス圧力よりも高くなるように制御することができる。
【0050】
図5を参照すると、下流側圧力制御システム540は、ガス圧力検知手段544及びガス圧力制御手段548を用いて、液体注入ユニット204の下流側の、例えば混合エリア212及び/又は気化チャンバ216内の液体前駆体を能動的に制御するように構成されている。例えば質量流量メーター132(
図1B)を用いて製造公差を外れた質量流量変動を検知するに応じて、ガス圧力検知手段544及びガス圧力制御手段548は、液体注入ユニット204の下流側を、例えば混合エリア212及び/又は気化チャンバ216内を、少なくとも部分的に中央制御ユニット550と連係して自動的又はアルゴリズム的に調整する。
【0051】
多様な実施形態によれば、堆積中、薄膜堆積チャンバ104内の全圧は、0.001.0~3.0Torr、3.0~5.0Torr、5.0~7.0Torr、7.0~10.0Torr、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の圧力であり得る。コンダクタンスを実質的に低下させることなく、PPG1は同じでも異なっていてもよく、0.001.0~3.0Torr、3.0~5.0Torr、5.0~7.0Torr、7.0~10.0Torr、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の圧力であり得る。下流側圧力制御システム540を用いて、混合エリア212及び気化チャンバ216の一方又は両方内の局所的圧力を、薄膜堆積チャンバ104に対して、10%、20%、50%、100%、200%、500%、又はこれらの値のいずれかに規定される範囲内の割合を超えて、例えば0.002.0~3.0Torr、3.0~5.0Torr、5.0~7.0Torr、7.0~9.0Torr、9.0~12Torr、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を超えて高くなるように設定すること又は上げることができる。
【0052】
・適用
気化液体前駆体を薄膜堆積チャンバに送達する方法及びシステムは、多様な前駆体ベースの堆積プロセスにおいて実施することができる。
図6A~
図6Cは、実施形態による液体前駆体送達方法及びシステムを実施し得る薄膜堆積プロセスを示している。実施形態による液体前駆体送達を実施し得る薄膜プロセスの代表例としては、化学気相成長法(chemical vapor deposition)(
図6A)、原子気相成長法(atomic vapor deposition)(
図6B)、及び原子層堆積法(atomic layer deposition)(
図6C)を含む。
図6A~
図6Cの各々は、y軸が前駆体パラメータを、x軸が時間を示す概略的なグラフである。前駆体パラメータは、例えば、前駆体流量、前駆体導入による前駆体分圧又はチャンバ圧力とすることができる。
図6Aから
図6Cの各々は、第1の前駆体610と第2の前駆体620を示している。第1及び第2の前駆体610、620の一方又は両方を液体前駆体(複数可)とすることができ、又は、第1及び第2の前駆体610、620の一方は液体前駆体ではないものとすることができる。例えば、第1の前駆体610は、ガスパネル116(
図2)からの例えばO2又はNH3である酸化剤前駆体とすることができ、第2の前駆体は、例えば金属前駆体である液体前駆体228(
図2)とすることができる。第1及び第2の前駆体610、610の一方又は両方を搬送ガスと共に導入できる。図示の目的で2つの前駆体のみを示しているが、2つより多い前駆体とし得ることは理解されるであろう。
【0053】
図6Aは、例えば化学気相成長法(CVD)である連続的な堆積プロセスを用いた薄膜の堆積中の、時間の関数として前駆体パラメータを概略的に示したグラフである。図示された連続的な堆積プロセスは、第1の前駆体610と第2の前駆体620を同時にすなわち時間的に重なるように薄膜堆積チャンバ104(
図2)に導入することを含む。
【0054】
図6Cは、例えば原子層堆積法(ALD)である周期的堆積を用いた薄膜の堆積中の、時間の関数として前駆体パラメータを概略的に示したグラフである。図示された周期的な堆積プロセスは、第1の前駆体610のパルスに続いて第2の前駆体620のパルスを周期的に導入することを含む。第1及び第2の前駆体610、620の各々の曝露時間すなわちパルス時間は、約0.1~1秒、1から10秒、10~30秒、30~60秒、又はこれらの値により規定される範囲内の持続時間とすることができる。サイクル310は、薄膜の所望する厚さを堆積するために複数回繰り返すことができる。第1の前駆体610のパルス及び第2の前駆体620のパルスは、それらの後に又はそれらを分離するパージガスを伴うことができる。パージガスは連続的でもパルス的でもよい。使用可能なパージガスの例は、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、水素(H
2)、及びこれらの混合物であるが、これらに限定されない。図示の例では、第1及び第2の前駆体610、620のサイクルが時間的に重なっていない。しかしながら、実施例はそれに限定されず、サイクル同士が部分的に重なっていてもよい。所与の実施態様では、パージのパルスは、連続的に、又は、第1及び第2の前駆体610及び620のパルスにより分離されたパルスとして薄膜堆積チャンバ104(
図2)に導入されてもよい。さらに別の実施形態では、第1の前駆体610及び第2の前駆体620のパルスが、パージガス無しで、ポンプ排気により分離されてもよい。
【0055】
図6Bは、例えば原子気相成長法(AVD)であるハイブリッド堆積を用いた薄膜の堆積中の、時間の関数として前駆体パラメータを概略的に示したグラフである。図示のハイブリッド堆積プロセスは、第2の前駆体620のパルスを周期的に導入しつつ、第1の前駆体610を連続的に、又は第2の前駆体620の少なくとも1つのパルスに跨がるパルスとして導入することを含む。パルスによる場合の第2の前駆体620及び第1の前駆体610の曝露時間すなわちパルス時間は、約0.1~1秒、1~10秒、10~30秒、30~60秒、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の持続時間とすることができる。図示の実施形態では、第1の前駆体610が、第2の前駆体の複数のパルスに跨がっている。しかしながら、実施例はこれに限定されず、第1の前駆体が、第2の前駆体620に1つのパルスにのみ部分的に又は完全に跨がっていてもよい。第1の前駆体610及び第2の前駆体620の一方又は両方は、搬送ガス又はパージガスを伴うことができる。パージガス又は搬送ガスは連続的又はパルス的とすることができ、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、水素(H
2)、及びこれらの混合物を含むことができるが、これに限定されない。
【0056】
液体前駆体を薄膜堆積チャンバに送達する方法及びシステムは、特に、B、N、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Cd、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Ti、La、及びErを含む液体前駆体のために構成することができる。金属の液体前駆体は、金属に関係する有機錯体に応じて、金属ハロゲン化物又は、金属β-ジケトネート、金属シクロペンタジエニル、金属アルコキシド、金属アルキル、金属アルキルアミド等の有機金属化合物とすることができる。液体前駆体は、液体状態の前駆体でもよく、溶媒に溶解した固体前駆体でもよい。液体前駆体は、化合物の中でも特に、金属酸化物、金属窒化物、化合物半導体、カルコゲナイド、フッ化物、元素状金属の形成に用いることができる。
【0057】
図7は、実施形態による送達方法を用いてパルスモードで導入した液体前駆体について、時間の関数として計測した質量流量の実験グラフを示している。y軸は、標準立方センチメートル毎分(sccm)で表した流量であり、x軸は時間(時間:分:秒)を表している。図示の例では、液体前駆体のパルスの持続時間は約60秒である。 液体前駆体の各パルスについて、液体前駆体送達ユニット112(
図2)の注入点の開放時点に対応する初期の過渡スパイク後に、パルス内の質量流量は極めて一定でありパルス間も再現性がよい。上述した通り、図示の例のような周期的な前駆体曝露では、製造公差を規定する持続時間は、単一パルスの持続時間とすることができ、又は、複数の堆積の総和とすることができる。図示の例では、持続時間は、液体前駆体送達ユニット112(
図2)が最初に起動されるときの初期スパイクを除外できる。
【0058】
本明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの実施形態は、本発明を限定する役割を果たすものではなく、例示の目的で記載されたものである。本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、変更及び改良がなされ得ることは、当業者にとって自明であろう。
【0059】
本明細書に開示された様々な実施形態のそのような単純な変更及び改良は、開示された技術の範囲内であり、開示された技術の特定の範囲は、添付の請求項によってさらに定義されることになるであろう。
【0060】
以上において、実施形態のいずれか1つの任意の特徴は、実施形態の他のいずれか1つの任意の他の特徴と組み合わせ又は置換することができることが理解されるであろう。
【0061】
文脈から明らかにそうでないことが要求されない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「有する(comprise)」、「有して(comprising)」、「含む(include)」、「含んで(include)」等の語は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味すなわち「含むが限定しない」という意味で解釈されるものとする。本明細書で一般的に使用される「連結(coupled)」という言葉は、直接的に接続されるか、又は1つ以上の中間要素を介して接続されるかのいずれかである2つ以上の要素を指す。 同様に、本明細書で一般的に使用される「接続された(connected)」という言葉は、直接接続されているか、又は1つ以上の中間要素を介して接続されている可能性がある2つ以上の要素を指す。さらに、「本明細書」、「上述」、「後述」及びこれらに類する語は、本願で使用される場合、本願全体を指すものとし、本願の特定の部分を指すものではない。文脈が許す限り、上述した詳細な説明において単数又は複数の数を使用する語は、それぞれ複数又は単数の数を含むこともある。2つ以上の項目のリストについて言及する「又は」という語は、その語の解釈として、リスト内の項目のいずれか、リスト内のすべての項目、リスト内の項目の任意の組み合わせのすべてをカバーする。
【0062】
さらに、特に「できる(can)」、「できた(could)」、「かもしれない(might)」、「でもよい(may)」、「例えば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「のような(such as)」等の本明細書で使用される条件付き言語は、特に明記されていない限り、又は使用されている文脈内で他の意味で理解されない限り、特定の実施形態が特定の特徴、要素及び/又は状態を含みが他の実施形態はそれらを含まないことを伝えることが、一般的に意図されている。したがって、このような条件付き言語は、特徴、要素及び/又は状態が1つ又は複数の実施形態に何らかの形で必要であること、又は、これらの特徴、要素及び/又は状態が任意の特定の実施形態に含まれるか又は実行されるかを示唆することを一般に意図していない。
【0063】
特定の実施形態について説明したが、これらの実施形態は例示としてのみ提示されたものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載される新規な装置、方法、及びシステムは、様々な他の形態で具現化され得る;さらに、本明細書に記載される方法及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更が、本開示の思想から逸脱せずになされ得る。例えば、機能は所定の配置で示されているが、代替的実施形態では、異なる部品及び/又はセンサのトポロジで同様の機能を実行することができ、いくつかの機能は、削除、移動、追加、細分化、結合、及び/又は変更することができる。これらの特徴の各々は、様々な異なる方法で実施することができる。上述した様々な実施形態の要素及び作動の任意の適切な組合せは、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。上述した様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して実施することができ、又は様々な方法で組み合わせることができる。本開示の特徴のすべての可能な組合せ及び下位の組合せは、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】