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特表2023-550362呼吸器ウイルス感染症の処置又は予防のためのスーパーオキシドジスムターゼ活性を有するポリペプチド及び細胞外小胞の使用
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  • 特表-呼吸器ウイルス感染症の処置又は予防のためのスーパーオキシドジスムターゼ活性を有するポリペプチド及び細胞外小胞の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】呼吸器ウイルス感染症の処置又は予防のためのスーパーオキシドジスムターゼ活性を有するポリペプチド及び細胞外小胞の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/54 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20231124BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20231124BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20231124BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
A61K38/54
A61K35/12
A61P43/00 121
A61P31/12
A61P11/00
A61P31/14
A61P27/16
A61P11/02
A61K35/742
A23L33/18
C12N9/02 ZNA
C12N1/20 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529033
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 KR2021017304
(87)【国際公開番号】W WO2022108424
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0158202
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516353272
【氏名又は名称】ジェノフォーカス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENOFOCUS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】パン, ジェ グ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ユイ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD20
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA15X
4B065AA15Y
4B065AA19X
4B065AC14
4B065BB02
4B065BB12
4B065BB29
4B065BC03
4B065BC05
4B065BC09
4B065BC26
4B065BC33
4B065BD15
4B065CA28
4B065CA41
4B065CA44
4C084AA02
4C084DC24
4C084NA14
4C084ZA34
4C084ZA59
4C084ZB33
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC64
4C087BC65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、対象における呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞の使用に関する。本発明はまた、対象における呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の使用に関する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための方法であって、
(i)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド、
(ii)SODを含有する細胞外小胞、又は
(iii)SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞
の治療有効量を投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる前記疾患が、風邪、肺炎、間質性肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、副鼻腔炎、Sars-Cov2感染症、耳炎、及び咽頭炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記呼吸器ウイルスがコロナウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる前記疾患が、ウイルス性肺損傷又は肺疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
SOD活性を有する前記ポリペプチド及び/又はSODを含有する前記細胞外小胞が、点鼻薬によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
SOD活性を有する前記ポリペプチド及びSODを含有する前記細胞外小胞が、同時に、又は順次投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、バチルス アミロリケファシエンス株に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
SODを含有する前記細胞外小胞が、バチルス ズブチリス株に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための医薬組成物であって、
(i)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド、
(ii)SODを含有する細胞外小胞、又は
(iii)SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞
を活性成分として含む、医薬組成物。
【請求項10】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための食品組成物であって、
(i)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド、
(ii)SODを含有する細胞外小胞、又は
(iii)SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞
を活性成分として含む、食品組成物。
【請求項11】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための、請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための薬物を調製するための、請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための、請求項10に記載の食品組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における呼吸器ウイルス感染症の予防及び/又は処置のための、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)株から得られるスーパーオキシドジスムターゼ(以後、単に「SOD」と称する)活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)株から得られるSODを含有する細胞外小胞(以後、単に「SOD-EV」と称する)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器感染症の原因の一つである呼吸器ウイルスは、活性酸素を生成する酵素(例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸オキシダーゼ(NADPHオキシダーゼ)、キサンチンオキシダーゼなど)を誘導することが知られている。
【0003】
さらに、代表的な呼吸器ウイルスであるコロナウイルスは主に、哺乳類や鳥類の気道や消化管に感染する。これらのコロナウイルスは、ライノウイルス、インフルエンザ、及び呼吸器多核体ウイルスと共に、風邪の原因となる病原体の1つであることが知られている。
【0004】
一方、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、2019年に初めて知られた重症急性呼吸器疾患コロナウイルス2であり、ポジティブセンス一本鎖RNAウイルスとして分類されている。このウイルスに感染した疾患はコロナウイルス病2019と呼ばれ、COVID-19と略されている。世界保健機関(WHO)はコロナウイルスのパンデミックを正式に宣言し、2020年11月時点で韓国における感染者数は3万人に迫り、世界中では約5560万人が感染していることが判明しており、COVID-19は、広がり続けている。COVID-19に感染すると、約2~14日の潜伏期間の後、発熱、咳、呼吸困難、及び肺炎などの症状が現れる。
【0005】
COVID-19は、気道感染症を引き起こすウイルスの一種で、2019年に中国湖北省武漢市で初めて発見されたウイルスで、コロナウイルス科に属し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)と類似したウイルスとして知られている。
【0006】
COVID-19の臨床試験は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)処置薬のカレトラ(主成分:ロピナビル)又はエボラウイルス処置薬のレムデシビルなどの薬物について実施され、2020年10月に米食品医薬品局(FDA)がレムデシビルはCOVID-19の処置に適応があることを承認したが、COVID-19の予防及び処置の両方の効果を有する治療効果を備えた薬ではない。したがって、COVID-19を含むコロナウイルスなどの呼吸器ウイルス感染症を予防及び処置することができる新しい治療法を見つけることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための方法を提供することであり、この方法は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞の治療有効量を投与することを含む。
【0008】
本発明の別の目的は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための方法を提供することであり、この方法は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の治療有効量を投与することを含む。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、コロナウイルス感染症又はコロナウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための方法を提供することであり、この方法は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の治療有効量を投与することを含む。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症の予防及び/又は処置のための医薬組成物を提供することであり、この組成物は、SOD活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞を含む。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症の予防及び/又は処置のための医薬組成物を提供することであり、この組成物は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を含む。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、コロナウイルス感染症の予防及び/又は処置のための医薬組成物を提供することであり、この組成物は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を含む。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症の予防及び/又は改善のための食品組成物を提供することであり、この組成物は、SOD活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞を含む。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症の予防及び/又は改善のための食品組成物を提供することであり、この組成物は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を含む。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、コロナウイルス感染症の予防及び/又は改善のための食品組成物を提供することであり、この組成物は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を含む。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための医薬組成物の使用を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための薬物を調製するための医薬組成物の使用を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための食品組成物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の発明者等は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチドを単独で、又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞と一緒に哺乳動物に使用した場合、コロナウイルス感染を予防、処置、又は改善する効果を発揮することを確認し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるバチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞は、単独で、又は一緒に使用した場合、呼吸器ウイルス感染症又はそれによって引き起こされる疾患の予防、処置、又は改善に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】バチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の粒径分析結果を示した図である。
図2】バチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の粒径分析結果を示した図である。
図3】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞のコロナウイルス感染症に対する予防及び治療効果を同定するための動物実験計画を示した図である。
図4】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の、コロナウイルス感染症によって引き起こされる肺損傷に対する治療効果を示した図である。
図5】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の、コロナウイルス感染症によって引き起こされる肺損傷に対する予防効果を示した図である。
図6】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を投与されたシリアンハムスターで観察された肺損傷が、ポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞を投与されていないシリアンハムスターのものとは大きく異なることを示した図である。
図7】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を投与した後の肺を観察した病理組織学的結果を示した図である。
図8】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の治療的投与による肺の病理組織学的スコアを示した図である。
図9】バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞の予防的投与による肺の病理組織学的スコアを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための方法であって、(i)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド、(ii)SODを含有する細胞外小胞、又は(iii)SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞の治療有効量を投与することを含む、方法が提供される。
【0023】
この場合、呼吸器ウイルス感染症はコロナウイルス感染症であってもよい。コロナウイルス感染症は、風邪、肺炎、間質性肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、副鼻腔炎、COVID-19感染症、耳炎、又は咽頭炎から選択される。さらに、呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患は、ウイルス性肺損傷又は肺疾患であってもよい。
【0024】
さらに、コロナウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス、又はデルタコロナウイルスであってもよい。特に、コロナウイルスはヒトコロナウイルスであってもよい。
【0025】
本発明のSOD活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する。本発明のSOD活性を有するポリペプチドはまた、このアミノ酸配列と実質的に同一なアミノ酸配列を含んでいると解釈される。実質的に同一とは、本発明のアミノ酸配列をその他の配列とできる限り一致するように整列させて、整列した配列を当技術分野で一般的に使用されるアルゴリズムを使用して分析した場合、少なくとも80%の相同性、より好ましくは96%の相同性、最も好ましくは98%の相同性を有するアミノ酸配列を意味する。
【0026】
ポリペプチドは、バチルス アミロリケファシエンスGF423株から単離することができる。バチルス アミロリケファシエンスGF423株は、2017年3月6日に受託番号KCTC 13222BPとして韓国生命工学研究院に国際寄託されており、その株の特徴及び培養方法は、韓国特許第1762199号に記載されている。
【0027】
本発明によるバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞とは、SOD活性を有する細胞外小胞を意味する。細胞外小胞とは、タンパク質、脂質、及び核酸を含む複合水和物を含む、膜で囲まれたナノサイズの小胞の不均一な集合体を意味する。
【0028】
SODを含有する細胞外小胞は、バチルス ズブチリスSOD株から単離することができる。
【0029】
本発明では、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞は、呼吸器ウイルスに既に感染した個体におけるウイルスの増殖を抑制するために利用することができる。好ましくは、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞は、コロナウイルスに既に感染した個体におけるウイルスの増殖を抑制することができる。さらに好ましくは、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞は、SARS又はCOVID-19に感染した個体におけるウイルスの増殖を抑制することができる。
【0030】
さらに、SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞は、同時に、又は順次投与され得る。
【0031】
本発明の別の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための方法を提供しており、この方法は、SOD活性を有するポリペプチド並びに/或いはSOD及び/又はその薬学的に許容できる塩を含有する細胞外小胞の治療有効量を投与するステップを含む。呼吸器ウイルス感染症はコロナウイルス感染症であってもよい。さらに、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2感染症であってもよい。
【0032】
本発明のさらに別の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための医薬組成物を提供することであり、この医薬組成物は、SOD活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞を含む。この場合、呼吸器ウイルス感染症はコロナウイルス感染症であってもよい。
【0033】
本発明のさらに別の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための医薬組成物を提供することであり、この医薬組成物は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を含む。この場合、呼吸器ウイルス感染症はコロナウイルス感染症であってもよい。
【0034】
本発明のさらに別の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための組成物の使用を提供する。この場合、組成物は前述のものと同じである。
【0035】
本発明のさらに別の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための薬物の調製のための組成物の使用を提供する。この場合、組成物は前述のものと同じである。
【0036】
本発明のSOD活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患に対する予防又は治療効果を有することが知られている化合物、ポリペプチドなどと一緒に使用することができる。さらに、本発明のバチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞は、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患に対する予防又は治療効果を有することが知られている化合物、ポリペプチドなどと一緒に使用することができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための方法を提供しており、この方法は、SOD活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞を含む食品組成物の生物学的有効量を投与するステップを含む。
【0038】
本発明のさらに別の態様では、呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防又は改善のための食品組成物を提供しており、この組成物は、SOD活性を有するポリペプチド及び/又はSODを含有する細胞外小胞を含む。さらに詳細には、呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防又は改善のための食品組成物を提供しており、この組成物は、バチルス アミロリケファシエンス株に由来するSOD活性を有するポリペプチド及び/又はバチルス ズブチリス株に由来するSODを含有する細胞外小胞を含む。この場合、呼吸器ウイルス感染症はコロナウイルス感染症であってもよい。
【0039】
本発明の態様では、呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための食品組成物の使用を提供している。
【0040】
本発明の医薬組成物は、従来の方法に従って、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、エアゾール剤、注射液剤などの形態に製剤化して使用することができる。例えば、本発明の医薬組成物に含まれていてもよい担体、賦形剤、又は希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油が含まれる。医薬組成物は、製剤化する場合、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、及び界面活性剤などの一般的に使用される希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。
【0041】
本発明の医薬組成物は、所望の方法によって経口投与又は非経口投与することができ、非経口投与する場合、点鼻薬、皮膚外用適用、又は腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、又は胸腔内注射を選択することが好ましい。
【0042】
この場合、経口投与用の固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形調製物は、複合組成を少なくとも1つの賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどと混合することによって調製することができる。単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウム及びタルクなどの潤滑剤も使用することができる。経口投与用の液体製剤には、懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれ、一般的に単純な希釈剤として使用される水及び流動パラフィンに加えて、湿潤剤、甘味剤、香料、及び保存剤などの様々な賦形剤を使用することができる。
【0043】
非経口投与用の製剤は、滅菌水性液剤、非水性液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥調製物、坐剤などを含むことができる。非水性液剤又は懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルなどを使用することができる。
【0044】
さらに、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与することができる。この薬物は肺に直接送達されるが、毒性はなく、少用量であっても長期間作用を発揮することができる。吸入のための投与は、薬物を含有する吸入可能な粒子又は液滴を含む、気道、鼻腔などを通して吸入できる医薬製剤を使用する投与であってもよい。例えば、吸入投与には、乾燥粉末吸入器(DPI)又は加圧定量噴霧式吸入器(pMDI)を使用することができるが、これらに限定はされない。例えば、薬物粒子は、送達装置(乾燥粉末吸入器)内に含まれる砕けやすいマトリックスに軽く圧縮されている。操作すると、送達装置はマトリックスから薬物粒子の一部を削り取り、それらを吸気中に分散させて気道に薬物粒子を送達する。或いは、薬物粒子は、送達装置(乾燥粉末吸入器)内のリザーバ内に含まれる自由流動粉末であってもよい。リザーバは、装置内の一体型区画であってもよいし、又は操作前に装置内に挿入されるカプセル、ブリスタ、若しくは類似の機能を備えたリザーバであってもよい。操作すると、装置はレザーバから薬物粒子の一部を分散させ、それらを吸気中に分散させて気道に薬物粒子を送達する。
【0045】
さらに、本発明の医薬組成物は、担体、賦形剤、又は希釈剤をさらに含むことができる。ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、でん粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、又は二酸化ケイ素などの鉱物などを担体、賦形剤、又は希釈剤として使用することができる。
【0046】
本発明の医薬組成物は、治療有効量で投与するべきである。本明細書で使用したように、「治療有効量」という用語は、あらゆる医学的処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を処置するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の体重、性別、年齢、状態、疾患の重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時期、投与経路及び排泄速度、処置期間、組成物と組み合わせて使用される薬物、並びに医療分野ではよく知られているその他の要素を含む要素に従って決定することができる。本発明の医薬組成物は、個々の治療薬として、その他の治療薬と組み合わせて投与してもよく、従来の治療薬と順次又は同時に投与してもよい。このような投与は単回投与であっても複数回投与であってもよい。副作用を伴わず、最小限の量で最大限の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、そのような量は当業者であれば容易に決定することができる。
【実施例
【0047】
以後、本発明をより理解するために、実施例に従って本発明を詳細に説明する。しかし、以下の実施例は本発明を例示しているだけであり、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1.バチルス アミロリケファシエンスGF423からのスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)ポリペプチドの単離/精製
1.1 バチルス アミロリケファシエンスGF423の培養
バチルス アミロリケファシエンスGF423株を培養するために、LB寒天培地(Luia-Bertani(LB)寒天;トリプトファン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 10g/L、寒天15g/L)で形成したシングルコロニーを、LB培地30mLに接種し、37℃で12時間培養した。この種培養物を、1mM硫酸マンガン(MnSO)を含有するLB培地3Lに再接種し、37℃で20時間培養した。
【0049】
1.2 スーパーオキシドジスムターゼの単離及び精製
細胞培養液を4℃で3,578×gで20分間遠心分離して上清を得た後、限外濾過(以後、UF(MWCO10,000))を使用して上清を10倍に濃縮した。濃縮した上清300mLを4℃で撹拌しながら、硫酸アンモニウムを最大60%飽和になるまで添加し、得られた混合物を30分間撹拌した。その後、混合物を3,578×gで30分間遠心分離して上清を得て、2M硫酸アンモニウムを含有する50mMリン酸カリウム(pH7.5)で平衡化したHiPrepTM Phenyl HP16/10カラムに上清を添加した。次に、2M~0.1M硫酸アンモニウムを含有する50mMリン酸カリウム(pH7.5)を使用して溶出を実施した。
【0050】
SOD含有画分(#35~#40)を収集し、UF(MWCO10,000)を使用して濃縮し、50mMリン酸カリウム(pH7.5)で透析して塩を除去した。タンパク質の濃度はブラッドフォードアッセイによって測定した(Bradford M、Anal Biochem、72、248~254、1976)。
【0051】
スーパーオキシドジスムターゼの活性は、スーパーオキシドジスムターゼアッセイキット(Cayman Chemical、Michigan、USA)を使用して確認した。スーパーオキシドジスムターゼ活性の1単位は、スーパーオキシドラジカルを50%阻害する酵素の量として定義される。精製したSODの活性は2231.12±269U/mgであり、SDS上の分子量は約22,000ダルトンであった。
【0052】
実施例2.バチルス ズブチリス株からのSODを含有する細胞外小胞の単離/精製
2.1.バチルス ズブチリスSOD株の培養
本発明者等が凍結保存したバチルス ズブチリスSOD株を、スーパーオキシドジスムターゼの単離精製用の株として使用した。1mM DSM(栄養培地8g/L、KCl 1g/L、MgSO・7HO 0.12g/L、Ca(NO、0.01mM MnCl・4HO 、及び0.001mM FeSO)を基礎培地として使用した。丸底チューブ及びフラスコ培養は、振盪インキュベーターを使用して実施し、撹拌速度は200rpm、温度は37℃に設定した。発酵槽として5Lジャーファーメンター(Fermentec Co.,Ltd.、FMT-ST-M05)を使用し、撹拌速度200rpm、温度37℃、通気量1.0vvm、pH6.8に設定した。
【0053】
バチルス ズブチリス株の前培養は、SODプレート上のシングルコロニーを採取し、そのコロニーを基礎培地3mLを含む丸底チューブに接種し、9時間培養することによって実施した。さらに、丸底チューブで培養した培地3mLを、基礎培地30mLを含む500mLフラスコに接種し、16時間培養した後、本培養接種に使用した。発酵槽では、培養は3.0Lで実施し、接種量は1%で、培養は24時間実施した。
【0054】
2.2.SOD-EV単離
上述のように、バチルス ズブチリスSOD株をジャーファーメンターで24時間培養した後、培地を4℃、12,000rpmで30分間遠心分離して培養上清を得た。培養上清では、TFFシステムの0.22μmカセットを使用して培地中に残存する細菌を除去し、純粋な培養上清のみを分離した。純粋な培養上清をTFFシステムの100kDaカットオフ膜を使用して200倍濃縮し、SODを含む細胞外小胞(SOD-EV)を得た。
【0055】
2.3.SOD-EVの定量及び同定
上述の方法で得られたSOD-EVについてタンパク質電気泳動を実施し、ブラッドフォード分析及びBCA分析を使用してSOD-EVのタンパク質量を測定した。
【0056】
[タンパク質電気泳動]
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)4~20%勾配ゲル(Biorad、Mini-protean TGXプレキャストゲル)を使用した。SDS-PAGE緩衝液として、25mMトリスベース、192mMグリシン、及び0.1%SDS(pH8.3)を使用し、SOD-EVを5×試料緩衝液と混合し、100℃で10分間加熱処置してから使用した。タンパク質電気泳動後、クマシー染色及びウェスタンブロットによってタンパク質を同定した。クマシーブリリアントブルーで30分間タンパク質を染色した後、脱色緩衝液で3時間反応を行った。
【0057】
[ウェスタンブロット]
SOD-EVのSDS-PAGE後、タンパク質を0.22μmPVDF膜に転写し、その後膜を5%スキムミルク中で1時間ブロックした。その後、洗浄緩衝液で3回洗浄した後、抗SOD抗体(1:10,000スキムミルク)を室温で3時間結合させた。その後、洗浄緩衝液を使用して3回洗浄し、2次抗体(1:100,000スキムミルク)をそれに結合させ、室温で1時間反応を実施した。その後、洗浄緩衝液を用いて3回洗浄し、ECL反応によって確認した。
【0058】
Mini-Protean II(Bio-Rad,Inc.)をタンパク質電気泳動装置として使用し、Chemi-doc MPイメージングシステム(Bio-Rad,Inc.)を確認装置として使用した。
【0059】
[SODを含有する細胞外小胞(SOD-EV)のサイズの決定]
動的光散乱法(DLS)を使用して、精製したSOD-EVのサイズを測定した。SOD-EV試料を8μLずつウェルに入れて、DLS装置のチャンバー内に置き、レーザー光を使用して粒径を測定した。図1及び図2は、粒径分析結果を示す。SOD-EVのタンパク質濃度は、ブラッドフォード分析では0.5mg/mLであり、BCA分析では0.124mg/mLであった(以下の表1を参照のこと)。
【表1】
【0060】
実施例3.コロナウイルス感染症に対するSOD及びSOD-EVの予防及び治療効果
実施例3-1.SOD及びSOD-EVの予防的及び治療的投与後の肺の視覚的評価
コロナウイルス感染症に対するSOD及びSOD-EVの予防及び治療効果を確認するために、動物実験用に6週齢のシリアンハムスター(雄)40匹をCentral Lab.Animal Inc.から購入した。購入したシリアンハムスターを以下の表2に示したような8つの群に分け、それぞれSOD、SOD-EV、並びにSOD及びSOD-EVをそれぞれハムスターに投与し、呼吸器ウイルスであるSars-Cov2を負荷ウイルスとして使用した。
【表2】
【0061】
コロナウイルス感染症の処置効果を試験するための群として、処置モードとしてG1~G3に分類した。G1にはSOD-EV、G2にはSOD、並びにG3にはSOD及びSOD-EVを、Sars-Cov2負荷の当日から負荷の4日後まで毎日投与した。
【0062】
コロナウイルス感染症の予防効果を試験するための群として、予防モードとしてG4~G6に分類した。G4にはSOD-EV、G5にはSOD、並びにG6にはSOD及びSOD-EVを、Sars-Cov2の負荷2日前から負荷の4日後まで1日1回投与した。
【0063】
G7には試験物質を使用せずにウイルスを負荷し、G8にはウイルス負荷を含まないSOD-EV及びSODのみを投与した。治療モード及び予防モードそれぞれの実験計画は図3に示した通りである。
【0064】
Sars-Cov2を負荷しなかったG8を除き、G1~G7全てにおいてSars-Cov2負荷後に肺損傷が観察された。
【0065】
しかし、Sars-Cov2負荷後にSOD及び/又はSOD-EVを投与したG1~G3の肺損傷スコアは、G7のスコアよりも低かった(図4を参照のこと)。特に、SODのみを投与したG2及びSOD-EVをSODと一緒に投与したG3で示された肺損傷は、G7で観察された肺損傷と比較して統計的に有意な差を示しており(p<0.05)、SODを単独で、又はSOD及びEVを一緒に使用した場合、Sars-Cov2などの呼吸器系ウイルスによって引き起こされる感染症の治療効果が優れていたことを示している。
【0066】
さらに、負荷の2日前にSOD及び/又はSOD-EVを投与したG4、G5、及びG6は、SOD及び/又はSOD-EVを投与しなかったG7よりも少ない肺損傷を示した(図5及び図6を参照のこと)。特に、SOD-EVとSODを一緒に投与したG6は、G7と比較して肺損傷において統計的に有意な差を示した(p<0.05)。これらの実験結果は、SOD及びEVを一緒に使用した場合、Sars-Cov2などの呼吸器系ウイルスによって引き起こされる感染症の処置効果が優れていることを示している。
【0067】
さらに、SOD-EV及び/又はSODを投与したG1~G3における肺水腫及び炎症は、G7で確認されたものよりも少なかった(図7の治療モードを参照のこと)。
【0068】
一方、Sars-Cov2負荷の前にSOD-EV及び/又はSODを投与したG4~G6における肺水腫及び炎症は、G7よりも少なかった(図7の予防モードを参照のこと)。
【0069】
実施例3-2.SOD及びSOD-EVの予防的及び治療的投与後の肺の病理組織学的評価
コロナウイルス感染症に対するSOD及びSOD-EVの予防及び治療効果を確認するために、実施例3-1で肉眼で評価した8つの群の肺の病理組織学的検査を実施した。
【0070】
詳細には、8つの群の肺から組織切片を採取し、各組織切片を10%中性緩衝ホルマリン溶液中で24時間固定した。固定した組織切片を自動組織処理装置に入れて組織内の水分を除去し、パラフィンを組織に浸透させた。浸潤処理完了後、組織切片を枠に入れ、枠内にパラフィンを流し込んで所定の形状のブロックを形成し、形成したブロックを冷却した後、ミクロトームを使用して厚さ4μmに切断した。
【0071】
上記の方法で作製したスライドに対して、以下のようにH&E染色を実施した。
【0072】
まず、パラフィン組織切片を含むスライドをそれぞれ別のキシレンに5分間入れて脱パラフィンし、その後100%エタノールで3分間2回、80%エタノールで2分間、及び70%エタノールで2分間処理して再水和した。
【0073】
切片を水道水で5分間洗浄した後、組織スライドをハリスヘマトキシリン中に10分間入れ、水道水で3分間洗浄した。切片を0.5%酸性アルコールに素早く2回浸して残留物を除去し、水道水で1分間洗浄し、洗浄した切片を1%アンモニア溶液に2分間入れて青色を呈させた。その後、切片を95%エタノールに10秒間軽く浸し、次いでエオシンで1分30秒染色した。染色した切片を100%エタノール中で50秒間3回脱水して、透明にするためにキシレンに5分間2回入れた。
【0074】
H&E染色を行ったスライドのカバースリップ上に水性固定溶液を1滴滴下した後、スライドを乾燥させ、結果を光学顕微鏡で観察した。
【0075】
表3を病理組織学的スコアの基準として使用して病理組織学的検査を実施し、その結果を以下の表4、並びに図8及び9に示す。
【表3】

【表4】

【0076】
病理組織学的検査によって、SOD及び/又はSOD-EVを投与したG1~G6で観察されたコンソリデーション及び気管支上皮萎縮は、SOD及び/又はSOD-EVを投与しなかったG7で観察されたものよりも有意に少ないことが示された(表4を参照のこと)。
【0077】
さらに、負荷後にSOD及び/又はSOD-EVを投与したG1、G2、及びG3は、SOD及び/又はSOD-EVを投与しなかったG7よりも病理組織学的スコアが低かった(図8を参照のこと)。特に、SODのみを投与したG2及びSODと一緒にSOD-EVを投与したG3で示された病理組織学的スコアは、G7で示されたものと比較して有意な差を示した(p<0.01)。
【0078】
さらに、ウイルスのみを負荷したG7は重度の気管支上皮萎縮を有し、したがって気管支上皮はほとんど観察されず、負荷の2日前にSOD及び/又はSOD-EVを投与したG4、G5、及びG6は、G7よりも病理組織学的スコアが低かった(図9を参照のこと)。特に、SODと一緒にSOD-EVを投与したG6で示された病理組織学的スコアは、G7で示されたものと比較して有意な差を示した(p<0.05)。
【0079】
すなわち、病理組織学的スコアは肉眼で観察される肺障害スコアに対して一貫したパターンを示し、特に、コンソリデーション及び気管支上皮萎縮の予防及び処置効果が優れていることがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023550362000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための医薬組成物であって、
(i)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド、
(ii)SODを含有する細胞外小胞、又は
(iii)SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞
を活性成分として含む、医薬組成物。
【請求項2】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための食品組成物であって、
(i)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有するポリペプチド、
(ii)SODを含有する細胞外小胞、又は
(iii)SOD活性を有するポリペプチド及びSODを含有する細胞外小胞
を活性成分として含む、食品組成物。
【請求項3】
呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる前記疾患が、風邪、肺炎、間質性肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、副鼻腔炎、Sars-Cov2感染症、耳炎、及び咽頭炎からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項4】
前記呼吸器ウイルスがコロナウイルスである、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項5】
呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる前記疾患が、ウイルス性肺損傷又は肺疾患である、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項6】
SOD活性を有する前記ポリペプチド及び/又はSODを含有する前記細胞外小胞が、点鼻薬によって投与される、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項7】
SOD活性を有する前記ポリペプチド及びSODを含有する前記細胞外小胞が、同時に、又は順次投与される、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項8】
前記ポリペプチドが、バチルス アミロリケファシエンス株に由来する、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項9】
SODを含有する前記細胞外小胞が、バチルス ズブチリス株に由来する、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の食品組成物
【請求項10】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は処置のための薬物を調製するための、請求項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
呼吸器ウイルス感染症又は呼吸器ウイルス感染症によって引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のための、請求項に記載の食品組成物の使用。
【国際調査報告】