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特表2023-550363深部皮膚薬物送達のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】深部皮膚薬物送達のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20231124BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 31/585 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231124BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALN20231124BHJP
   A61K 8/891 20060101ALN20231124BHJP
   A61K 8/49 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P17/14
A61K45/00
A61K31/585
A61K47/34
A61K47/24
A61K9/10
A61Q7/00
A61K8/891
A61K8/49
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529059
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021059479
(87)【国際公開番号】W WO2022108911
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/114,887
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/221,349
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518194257
【氏名又は名称】アーキュティス・バイオセラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン,デビッド・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】トフィク,ババク・エヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD64N
4C076EE27N
4C076FF34
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD171
4C083AD492
4C083CC37
4C083DD39
4C083EE22
4C084AA17
4C084MA23
4C084MA63
4C084NA13
4C084ZA921
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086DA13
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA63
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA92
(57)【要約】
薬物の毛嚢脂腺単位への局所投与のための医薬組成物およびその同じものを投与するための方法。本明細書に開示されるように、本発明の発明者らは、有効医薬成分の小粒子およびシリコーン、例えばジメチコンまたはシクロメチコンを含む医薬組成物は、毛嚢脂腺単位に投与され得る、という驚くべき発見をした。医薬組成物は、SHR0302またはスピロノラクトンを有効医薬成分として含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、以下:
療法上有効量のSHR0302またはその薬学的に許容可能な塩であって、該SHR0302の一次粒径分布が約20μm未満のD90値によって特性付けられるSHR0302またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに
ジメチコンおよびシクロメチコンからなる群から選択されるシリコーン
を含む医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該組成物が懸濁液である医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該組成物が約0.10%w/w~約5%w/wのSHR0302またはその塩を含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該SHR0302の一次粒径分布が約10μm未満のD90値によって特性付けられる医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該SHR0302の一次粒径分布が約5μm未満のD90値によって特性付けられる医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該SHR0302の一次粒径分布が約1.0μm未満のD50値によって特性付けられる医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該SHR0302の一次粒径分布が約0.50μm未満のD10値によって特性付けられる医薬組成物。
【請求項8】
それを必要とする対象において円形脱毛症を処置する方法であって、
該対象に以下:(a)療法上有効量のSHR0302またはその薬学的に許容可能な塩であって、該SHR0302の一次粒径分布が約20μm未満のD90値によって特性付けられるSHR0302またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに(b)ジメチコンおよびシクロメチコンからなる群から選択されるシリコーン
を含む医薬組成物を局所投与すること、
を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、該SHR0302が毛嚢脂腺単位に送達される方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、該SHR0302が該対象において少なくとも1mmの皮膚浸透を達成する方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、該医薬組成物が懸濁液である方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、該組成物が約0.10%w/w~約5%w/wのSHR0302またはその塩を含む方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法であって、該SHR0302の一次粒径分布が約10μm未満のD90値によって特性付けられる方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、該SHR0302の一次粒径分布が約5μm未満のD90値によって特性付けられる方法。
【請求項15】
請求項8に記載の方法であって、該SHR0302の一次粒径分布が約1.0μm未満のD50値によって特性付けられる方法。
【請求項16】
請求項8に記載の方法であって、該SHR0302の一次粒径分布が約0.50μm未満のD10値によって特性付けられる方法。
【請求項17】
医薬組成物であって、以下:
療法上有効量の有効医薬成分であって、該有効医薬成分の一次粒径分布が約20μm未満のD90値によって特性付けられる有効医薬成分;および
ジメチコンおよびシクロメチコンからなる群から選択されるシリコーン
を含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の医薬組成物であって、該組成物が約0.10%w/w~約5%w/wの有効医薬成分を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の医薬組成物であって、該有効医薬成分の一次粒径分布が約10μm未満のD90値によって特性付けられる医薬組成物。
【請求項20】
請求項17に記載の医薬組成物であって、該有効医薬成分の一次粒径分布が約5μm未満のD90値によって特性付けられる医薬組成物。
【請求項21】
請求項17に記載の医薬組成物であって、該有効医薬成分が毛嚢脂腺単位に送達される医薬組成物。
【請求項22】
請求項17に記載の医薬組成物であって、該有効医薬成分が該対象において少なくとも1mmの皮膚浸透を達成することができる医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本出願は、2020年11月17日に出願された米国仮出願第63/114,887号および2021年7月13日に出願された米国仮出願第63/221,349号に対する優先権を主張し、その開示は参照によりそのまま本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
[0002] 本明細書で開示される主題は、一般に、毛嚢脂腺単位への薬物の局所投与のための医薬組成物およびその同じものを投与するための方法に関する。本明細書で開示されるように、本発明の発明者らは、有効医薬成分の小粒子およびシリコーン、例えばジメチコンまたはシクロメチコンを含む医薬組成物が毛嚢脂腺単位に標的化され得るという驚くべき発見をした。好ましい態様において、医薬組成物は、SHR0302またはスピロノラクトンを有効医薬成分として含む。
【背景技術】
【0003】
[0003] 薬物の経皮および局所送達は、他の投与経路と比較して様々な利点を有する。経皮および局所送達は、薬物を全身循環中に連続的に送達し、初回通過代謝を回避するために使用され得る。対照的に、経口薬物送達に関して、薬物の早すぎる代謝をしてしまい得る肝臓の著しい初回通過作用が存在する。経皮送達および局所送達は、無菌製品でなければならず痛みを伴いそれにより患者による非コンプライアンスを増大させ得る静脈内投与を上回る利点も有する。一方で、経皮送達は、無菌ではなく、非侵襲的で、自己投与されることができる。
【0004】
[0004] 伝統的な薬物送達システムは、経表皮送達経路を介した投与に焦点を当ててきた。Andrea C. Lauer et al., Transfollicular Drug Delivery, Pharmaceutical Research 12:2 (1995)。皮膚は、主に4つの層から構成されている:(a)角質層(非生存表皮)、(b)生存表皮、(c)真皮および(d)皮下組織。皮膚は、皮膚表面下を皮下脂肪組織中へと3mmより大きく伸び得る硬毛および真皮中に1mm未満しか伸びない細くてしばしば気付かれない体毛である毳毛の形態の付属器官も含有する。毛包、毛幹および毛包中に潤滑油物質を分泌する皮脂腺は、毛嚢脂腺単位として知られているものを含む。角質層は、伝統的には薬物の浸透のための主要な経路として見られてきたが、それは、経皮吸収に対する主な障壁でもある。過去には、研究者らは、薬物送達における毛嚢脂腺単位の重要性に疑問を呈していた。
【0005】
[0005] しかし、より最近には、毛嚢脂腺単位の潜在的な役割および薬物の経皮送達に関する代替機序が、研究されている。Amit Verma et al., Transfollicular drug delivery: current perspectives, Research and Reports in Transdermal Drug Delivery (April 20, 2016)。哺乳類の毛包は、独特の生化学的および免疫学的反応が起こる複雑で動的な構造である。毛嚢脂腺単位は、薬物送達のための許容可能な標的であり得るが、毛嚢脂腺単位への薬物送達にはいくつかの課題が存在する。毛嚢脂腺単位への薬物送達に関する課題の1つは、深さおおよそ10~20μmに及ぶ角質層および深さおおよそ80μmに及ぶ上部毛細血管集網を迂回する必要性である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Andrea C. Lauer et al., Transfollicular Drug Delivery, Pharmaceutical Research 12:2 (1995)
【非特許文献2】Amit Verma et al., Transfollicular drug delivery: current perspectives, Research and Reports in Transdermal Drug Delivery (April 20, 2016)
【発明の概要】
【0007】
[0006] 現在、真皮中により深く、毛嚢脂腺単位までおおよそ1,000μm~2,000μm、浸透することができる医薬組成物に関する必要性が存在する。新規医薬組成物および毛嚢脂腺単位を介して薬物を投与する方法に関する満たされていない必要性が存在する。
【0008】
[0007] 本発明は、薬物の毛嚢脂腺単位への局所投与のための医薬組成物および同医薬組成物を投与するための方法に関する。本発明の発明者らは、有効医薬成分の小粒子およびシリコーン、例えばジメチコンまたはシクロメチコンを含む医薬組成物が、毛嚢脂腺単位に送達されることができ、結果として真皮中へのより深い浸透および向上した有効性をもたらし得るという驚くべき発見をした。好ましい態様において、医薬組成物は、有効医薬成分としてSHR0302またはスピロノラクトンを含む。
【0009】
[0008] 本発明の特定の態様において、療法上有効量の有効医薬成分ならびにジメチコン、シクロメチコンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるシリコーンを含む医薬組成物が、提供される。有効医薬成分は、約20μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有する。特定の態様において、医薬成分は、約10μm未満またはより好ましくは約5μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有する。特定の態様において、組成物は、約0.10%w/w~約7.5%w/wの有効医薬成分を含む。本発明の医薬組成物は、有効医薬成分を毛嚢脂腺単位に送達することが可能であり得る。特定の態様において、有効医薬成分は、対象において少なくとも1mmの皮膚浸透を達成することが可能である。
【0010】
[0009] 本発明の特定の態様において、療法上有効量のSHR0302またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供される。SHR0302は、約20μm未満、約10μm未満またはより好ましくは約5μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。SHR0302は、さらに約5μm未満、約1μm未満またはより好ましくは約0.7μm未満のD50値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。SHR0302は、さらに約1μm未満、約0.5μm未満またはより好ましくは約0.25μm未満のD10値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。
【0011】
[00010] 医薬組成物は、ジメチコン、シクロメチコンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるシリコーンをさらに含む。本発明の特定の態様において、医薬組成物は、ジメチコンおよびシクロメチコンの少なくとも1つに懸濁されたSHR0302を含む。
【0012】
[00011] 特定の態様において、医薬組成物は、約0.10%w/w~約5%w/wのSHR0302またはその塩を含むことができる。好ましい態様において、医薬組成物は、約0.1%w/w~約3%w/wのSHR0302またはその塩を含むことができる。
【0013】
[00012] 本発明の特定の態様において、それを必要とする対象において円形脱毛症を処置する方法が提供される。方法は、本明細書に記載されるSHR0302の医薬組成物を対象に局所投与することを含む。本発明の方法において、SHR0302またはその塩は、毛嚢脂腺単位に送達され得る。本明細書で開示される方法において、医薬組成物の投与は、結果として対象において少なくとも約1mmの、好ましくは対象において約2~3mmの硬毛に関する毛球の深さまでのSHR0302の経皮浸透をもたらすことができる。
【0014】
[00013] 本発明の特定の態様において、療法上有効量のスピロノラクトンまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供される。スピロノラクトンは、約6μm未満、約1μm未満またはより好ましくは約0.25μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。スピロノラクトンは、さらに約2.7μm未満、約0.75μm未満またはより好ましくは約0.15μm未満のD50値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。スピロノラクトンは、さらに約1.2μm未満、約0.50μm未満、またはより好ましくは約0.10μm未満のD10値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。
【0015】
[00014] 医薬組成物は、ジメチコンおよびシクロメチコンからなる群から選択されるシリコーンをさらに含む。本発明の特定の態様において、スピロノラクトンの医薬組成物は、水中油型エマルジョンである。
【0016】
[00015] さらに、医薬組成物は、約0.10%w/w~約7.5%w/wのスピロノラクトンまたはその塩を含むことができる。特定の態様において、医薬組成物は、約0.5%w/w~約5%w/wのスピロノラクトンまたはその塩を含むことができる。
【0017】
[00016] 本発明の特定の態様において、それを必要とする対象においてざ瘡を処置する方法が提供される。特定の態様において、対象は、ヒトの男性または女性である。好ましい態様において、対象は、女性のヒトである。方法は、本明細書に記載されるスピロノラクトンの医薬組成物を対象に局所投与することを含む。本発明の方法において、スピロノラクトンまたはその塩は、毛嚢脂腺単位に送達され得る。本明細書で開示される方法において、医薬組成物の投与は、結果として対象において少なくとも1mm、好ましくは対象において約2または3mmのスピロノラクトンの皮膚浸透をもたらすことができる。
【0018】
図面の簡単な説明
[00017] 本明細書に組み込まれ、本開示の一部を形成する添付の図面は、本発明の様々な態様を説明するのを助け、記載と一緒に、本明細書に開示された態様を関連技術の当業者が作製および使用できるように本発明を記載するためにさらに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】[00018] 図1は、例示的な医薬組成物におけるSHR0302の粒径分布プロットを示す。
図2】[00019] 図2は、第1のドナー(ドナーA)に関する0.3%SHR0302局所30%DMSOクリームのフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴-高分解能-マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(FTICR-HR-MALDI)の深度プロファイルを示す。
図3】[00020] 図3は、第1のドナー(ドナーA)に関するジメチコン中3%SHR0302局所懸濁液のFTICR-HR-MALDIの深度プロファイルを示す。
図4】[00021] 図4は、第2のドナー(ドナーB)に関する0.3%SHR0302局所30%DMSOクリームのFTICR-HR-MALDIの深度プロファイルを示す。
図5】[00022] 図5は、第2のドナー(ドナーB)に関するジメチコン中3%SHR0302局所懸濁液のFTICR-HR-MALDIの深度プロファイルを示す。
図6】[00023] 図6は、0.05%ジオクチルスルホスクシネート(DOSS)および1.0%ヒドロキシルプロピルセルロースを有する水中でナノ製粉(nano-milled)した5.0%スピロノラクトンの懸濁液におけるスピロノラクトンの粒径分布を示している。
図7】[00024] 図7は、約5μm未満のD90を有する懸濁液を形成するためにローラー製粉されたシクロメチコン中の5%スピロノラクトン懸濁液に関して、製粉の完了を過ぎて2週間の保存後に撮影した顕微鏡写真である。
図8】[00025] 図8は、2つの例示的な配合物(実施例4に記載される配合物1および配合物2)および比較ゲル配合物(同じく実施例4に記載)に関して細胞あたり1回の5.0μl(皮膚組織1cmあたり10mg)の後24時間にわたって受容器溶液中に現れるスピロノラクトンの累積量を示す。
図9】[00026] 図9は、2つの例示的な配合物(実施例4に記載される配合物1および配合物2)および比較ゲル配合物(同じく実施例4に記載)に関して24時間後の表皮および真皮におけるスピロノラクトンの量(ng)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[00027] 本発明が以下で詳細に記載される前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に(これらは変動し得るため)限定されないことは、理解されるべきである。本明細書で使用される用語法は、特定の態様を記載する目的のためだけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することは意図されていないことも、理解されるべきである。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0021】
[00028] 本明細書で引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、別途記載されない限り、参照によりそのまま本明細書に援用される。同じ用語が、参照により本明細書に援用される刊行物、特許または特許出願および本開示において定義されている場合、本開示における定義が、支配的な定義を表す。特定のタイプの化合物、化学等を記載するために参照される刊行物、特許および特許出願に関して、そのような化合物、化学等に関連する部分が、参照により本明細書に援用される文献の部分である。
【0022】
[00029] 本明細書で使用される際、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈がそうではないことを明らかに指示しない限り、複数の参照語を含むことを特筆する。従って、例えば、“有効成分”は、単一の成分および2以上の異なる成分を含み、“硫酸塩”は、単一の硫酸塩ならびに2以上の異なる硫酸塩を含む。
【0023】
[00030] 用語“約”は、数値に関連して使用される場合、示された数値より5%小さい下限を有し、示された数値より5%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することが意味されている。
【0024】
[00031] 用語“有効な”は、結果として疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および期間の増加または疾患の苦悩による欠陥もしくは障害の予防をもたらすのに十分な量の化合物、薬剤、物質、配合物または組成物の量を指す。量は、単独でまたは他の化合物、薬剤または物質との組み合わせで、単回用量としてまたは複数回用量レジメンに従ってであることができる。当業者は、対象の大きさ、対象の症状の重症度および選択された特定の組成物または投与経路のような要因に基づいて、そのような量を決定することができるであろう。
【0025】
[00032] “薬学的に許容可能な”は、ヒトまたは動物への投与に関して一般的に安全であることを意味する。好ましくは、医薬的に許容可能な構成要素は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されたものまたは動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して米国薬局方会議(メリーランド州ロックビル)により発行される米国薬局方または他の一般に認められた薬局方に列挙されているものである。
【0026】
[00033] 本発明に従う“医薬組成物”は、異なる有効成分ならびに希釈剤および/もしくはキャリヤーが互いに混合されている組成物の形態で存在することができ、または有効成分が部分的にもしくは全く異なる形態で存在する組み合わせ調製物の形態をとることもできる。そのような組み合わせまたは組み合わせ調製物の例は、部品のキットである。
【0027】
[00034] 本明細書で使用される際、用語“対象”“または患者”は、最も好ましくはヒトを指す。用語“対象”または“患者”は、本明細書に記載される化合物から利益を得ることができるあらゆる哺乳類を含むことができる。
【0028】
[00035] “療法量”または“療法上有効量”は、意図された目的を達成するのに十分な療法剤の量である。所与の療法剤の有効量は、薬剤の性質、投与経路、療法剤を受けるべき対象の大きさおよび投与の目的のような要因によって変動するであろう。それぞれの個々の症例における有効量は、当業者によって、当技術分野における確立された方法に従って経験的に決定され得る。
【0029】
[00036] 薬物または組成物の投与に関する“局所的”という用語は、皮膚または角膜を含む体外の上皮表面へのそのような薬物または組成物の適用を指す。この適用に関して、口、膣または直腸のような粘膜表面が毛嚢脂腺単位を含有しない体の開口部の内側への適用は、局所適用とは見なされない。
【0030】
[00037] 本明細書で使用される際、疾患または障害を“処置する”、“処置すること”またはその“処置”は、以下の1つ以上を成し遂げることを意味する:(a)障害の重症度および/または期間を低減すること;(b)処置されている障害(単数または複数)に特徴的な症状の発生を制限または予防すること;(c)処置されている障害(単数または複数)に特徴的な症状の悪化を抑制すること;(d)以前にその障害(単数または複数)を有していた患者においてその障害(単数または複数)の再発を制限または予防すること;ならびに(e)以前にその障害(単数または複数)に関して症状があった患者において症状の再発を制限または予防すること。
【0031】
[00038] 略語“w/w”は、組成物中の構成要素の相対濃度を、体積または他の量に基づくのではなく“重量対重量”として表す(すなわち、百分率は総重量の百分率を指す)。
【0032】
[00039] 本発明は、毛嚢脂腺単位への薬剤の局所投与のための医薬組成物およびその同じものを投与するための方法に関する。本発明の発明者らは、ジメチコンまたはシクロメチコンのようなシリコーン中に有効医薬成分の小粒子を含む医薬組成物は毛嚢脂腺単位に標的化され、結果として真皮中へのより深い浸透および向上した有効性をもたらし得る、という驚くべき発見をしている。好ましい態様において、医薬組成物は、SHR0302またはスピロノラクトンを有効医薬成分として含む。
【0033】
[00040] 本発明の特定の態様において、療法上有効量の有効医薬成分ならびにジメチコン、シクロメチコン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるシリコーンを含む医薬組成物が提供される。特定の態様において、有効医薬成分の量は、約0.01%w/w~約10%w/wまたは約0.01%w/w~約5%w/wまたは約0.1%w/w~約3%w/wの範囲であり得る。例示的な範囲は、約0.01%w/w~約10%w/wまたは約0.01%w/w~約7.5%w/wまたは約0.01%w/w~約5%w/wまたは約0.1%w/w~約3%w/wまたは約1.0%w/w~約3%w/w、または約0.3%w/w~約3.0%w/wである。例えば、医薬組成物は、以下の有効医薬成分のw/wパーセントのいずれかを含む:0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、7%、1.8%、1.9%、1.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%等。
【0034】
[00041] 本発明の医薬組成物において、有効成分は、小さな粒子として存在する。薬物の粒径は、レーザー回折法を用いて評価されることができる。レーザー回折は、ISOおよびASTMを含む基準および指導機関によって認められており、粒径分布を決定するために広く使用されている。評価を行う際には、試料がレーザービームに通され、それが結果としてある範囲の角度で散乱したレーザー光をもたらす。一定の角度で配置された検出器が、その位置で散乱した光の強度を測定する。次いで、数学的モデルが適用されて粒径分布を生成する。本明細書で報告される粒径値は、液体または湿式分散法を用いることにより決定されたものである。
【0035】
[00042] 粒径決定において、中央値は、集団の半分がこの点より上に存在し、半分がこの点より下に存在する値として定義される。粒径分布に関して、中央値はD50と呼ばれる。D50は、この直径より上の半分および下の半分で分布を分ける大きさである。分布幅は、X軸上に1つ、2つ、または3つの値を挙げることにより特性付けられることもでき、典型的にはD10、D50およびD90の何らかの組み合わせである。中央値であるD50は、集団の半分がこの値より下にある直径として上記で定義されている。同様に、分布の90パーセントがD90の下にあり、集団の10パーセントがD10の下にある。
【0036】
[00043] 特定の態様において、有効医薬成分は、約20μm未満、約15μm未満、約10μm未満またはより好ましくは約5μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有する。特定の態様において、有効医薬成分は、約0.001μm、0.01μmまたは0.1μm~約5μm、10μm、15μmおよび20のD90値により特性付けられる一次粒径を有する。有効医薬成分は、さらに約5μm未満、約2μm未満、約1μm未満、約0.8μm未満、またはより好ましくは約0.7μm未満のD50値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。特定の態様において、有効医薬成分は、約0.001μm、0.01μmまたは0.1μm~約0.7μm、0.80μm、1.0μm、2.0μmまたは5.0μmのD50値によって特性付けられる一次粒径を有する。有効医薬成分は、さらに約1μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満またはより好ましくは約0.25μm未満のD10値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。特定の態様において、有効医薬成分は、約0.0001μm、0.001μm、または0.01μm~約0.25μm、0.4μm、0.5μmまたは1.0μmのD10値によって特性付けられる一次粒径を有する。
【0037】
[00044] 特定の態様において、本発明の医薬組成物は、有効医薬成分を毛嚢脂腺単位に送達することが可能である。特定の態様において、有効医薬成分は、対象において少なくとも1mmの皮膚浸透を達成することが可能である。
【0038】
[00045] 本発明の特定の態様において、医薬組成物は、SHR0302またはARQ-250としても知られているJAK1阻害剤である、(3aR,5S,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-カルボキサミドを含む。SHR0302およびARQ-250という用語は、本明細書において互換的に使用される。SHR0302の構造は、以下の通りである:
【0039】
【化1】
【0040】
【0041】
[00046] SHR0302は、JAK2よりもJAK1に関して高い選択性(selectively)を有することが示されているJAK1の強力な低分子阻害剤であり、従って、JAK2阻害と関係する貧血、血小板減少および好中球減少のような造血系の有害な作用を引き起こすことなく炎症性疾患を処置する可能性を有している。SHR0302は、米国特許第9,527,851号において開示されており、それは参照により本明細書に援用される。
【0042】
[00047] 本発明の特定の態様において、医薬組成物は、スピロノラクトンとしても知られているアルドステロン(aldosternone)アゴニストである、17-ヒドロキシ-7α-メルカプト-3-オキソ-17α-プレグン-4-エン-21-カルボン酸 γ-ラクトン アセテートを含む。スピロノラクトンの構造は、以下の通りである:
【0043】
【化2】
【0044】
[00048] スピロノラクトンは、アルドステロンの結合を競合的に阻害することにより鉱質コルチコイド受容体レベルで作用する薬物である。このステロイド化合物は、浮腫を低減するため、および本態性高血圧および原発性高アルドステロン症を処置するために、腎臓の遠位尿細管におけるアルドステロン依存性のナトリウム輸送を遮断するために使用されてきた。経口投与されるスピロノラクトンは、ざ瘡を有する女性の処置においても有効である。E.M. Attwa et al., Efficacy and safety of topical spironolactone 5% gel versus placebo in the treatment of acne vulgaris, J. Dermatol. Venerol. 39:89-94 (2019); J.W. Charny et al., Spironolactone for the treatment of acne in women, a retrospective study of 110 patients, Int. J. Womens Dermatol. 3(2): 111-115 (2017)。スピロノラクトンは、商品名ALDACTONE(登録商標)およびCAROSPIR(登録商標)の下で商業的に入手可能である。スピロノラクトンは、米国特許第3,013,012号に開示されており、それは参照により本明細書に援用される。
【0045】
[00049] 本発明において、医薬組成物は局所的に投与される。医薬組成物は、SHR0302またはスピロノラクトンを遊離塩基または薬学的に許容可能な塩として含むことができる。適切な薬学的に許容可能な塩類は、参照により本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Company (1985)において見付けられることができる。
【0046】
[00050] 特定の態様において、医薬組成物は、約20μm未満、約15μm未満、約10μm未満またはより好ましくは約5μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有するSHR0302を含んでいる。特定の態様において、SHR0302は、約0.01μm、0.1μmまたは1.0μm~約5.0μm、10.0μm、15.0μmまたは20.0μmのD90値により特性付けられる一次粒径を有する。
【0047】
[00051] SHR0302はさらに、約5μm未満、約2μm未満、約1μm未満、約0.8未満またはより好ましくは約0.7μm未満のD50値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。特定の態様において、SHR0302は、約0.001μm、0.01μmまたは0.1μm~約0.7μm、0.8μm、1.0μm、2.0μmまたは5.0μmのD50値により特性付けられる一次粒径を有する。
【0048】
[00052] SHR0302はさらに、約1μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満またはより好ましくは約0.25μm未満のD10値によって特性付けられる一次粒径分布を有し得る。特定の態様において、SHR0302は、約0.0001μm、0.001μmまたは0.01μm~約0.25μm、0.4μm、0.5μmまたは1.0μmのD10値によって特性付けられる一次粒径を有する。
【0049】
[00053] 特定の態様において、医薬組成物は、約6μm未満、約5μm未満、約2μm未満、約1μm未満、約0.5μm未満、約0.25μm未満またはより好ましくは約0.2μm未満のD90値によって特性付けられる一次粒径分布を有するスピロノラクトンを含む。特定の態様において、スピロノラクトンは、約0.001μm、0.01μmまたは0.1μm~約0.2μm、0.25μm、0.5μm、1μm、2μm、5μmまたは6μmのD90値によって特性付けられる一次粒径を有する。
【0050】
[00054] スピロノラクトンは、さらに約2.7μm未満、約2.0μm未満、約1.0μm未満、約0.75μm未満、0.5μm、約0.25μm未満、約0.2μm未満またはより好ましくは約0.15μm未満のD50値により特性付けられる一次粒径分布を有することができる。特定の態様において、スピロノラクトンは、約0.001μm、0.01μmまたは0.1μm~約0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.5μm、0.75μm、1.0μm、2.0μmまたは2.7μmのD50値により特性付けられる一次粒径を有する。
【0051】
[00055] スピロノラクトンは、さらに、約1.2μm未満、約1.0μm未満、約0.5μm未満、約0.25μm未満、約0.15μm未満、約0.10μm未満またはより好ましくは約0.08μm未満のD10値により特性付けられる一次粒径分布を有することができる。特定の態様において、スピロノラクトンは、約0.0001μm、0.001μmまたは0.01μm~約0.10μm、0.15μm、0.25μm、0.5μm、1.0μmまたは1.2μmのD10値により特性付けられる一次粒径を有する。
【0052】
[00056] 本発明の医薬組成物は、ジメチコン、シクロメチコンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択されるシリコーンをさらに含む。ポリジメチルシロキサン(PDMS)としても知られているジメチコンは、重合性有機ケイ素化合物である。シクロメチコンは、メチルシロキサンの一群であり、それは、ジメチコンとは異なり、環状有機ケイ素化合物である。特定の態様において、医薬組成物は、ジメチコンおよびシクロメチコンを含むシリコーンの組合せを含むことができる。例えば、医薬組成物は、ジメチコン-シクロメチコン-ジメチコン/ビニルジメチコンを含むことができる。追加のメチルシロキサン適合性賦形剤、例えばシクロペンタシロキサン、ジメチコノールおよびフェニルトリメチコンが、美観または粘度を調整するためにジメチコンおよび/またはシクロメチコンに添加され得る。シリコーン、例えばジメチコンまたはシクロメチコンは、皮脂と同様の極性を有し、医薬組成物が毛包送達を標的とすることを可能にする。
【0053】
[00057] 特定の態様において、医薬組成物は、懸濁液であり、ここで、有効成分(例えばSHR0302またはスピロノラクトン)は、シリコーン(例えばジメチコンまたはシクロメチコン)中に懸濁されている。特定の態様において、医薬組成物は、エマルジョンとして配合されることができる。例えば、医薬組成物は、以下の形態の1つとして配合されることができる:
[00058] 水中油型エマルジョン:製品は、疎水性構成要素の分離した相ならびに水および場合により1種類以上の極性親水性賦形剤ならびに溶媒、共溶媒、塩類、界面活性剤、乳化剤および他の構成要素を含む連続した水相を含むエマルジョンであることができる。これらのエマルジョンは、エマルジョンを安定化するのを助ける水溶性または水膨潤性ポリマーを含むことができる。
【0054】
[00059] 油中水型エマルジョン:組成物は、疎水性構成要素の連続相ならびに水および場合により1種類以上の極性親水性キャリヤー(単数または複数)ならびに塩類または他の構成要素を含む水相を含むエマルジョンであることができる。これらのエマルジョンは、油溶性または油膨潤性ポリマーならびにエマルジョンの安定化を助ける1種類以上の乳化剤(単数または複数)を含み得る。
【0055】
[00060] マイクロエマルジョン:これらは、油、水および界面活性剤をしばしば補助界面活性剤との組み合わせで含有する透明で熱力学的に安定な等方性液体系である。マイクロエマルジョンは、水連続、油連続または双連続の混合物であることができる。配合物は、場合により60重量%までの水を含有することもできる。一部の組成物ではより高いレベルが適切であり得る。
【0056】
[00061] ナノエマルジョン:これらは、水、油、および乳化剤を含有する等方性分散系である。その系は、ナノメートルサイズの液滴または油性相を形成する水性系に分散した油性系または油性系に分散した水性系であることができる。ナノエマルジョンは、しばしばマイクロエマルジョンよりも親油性有効成分に関するより高い装填容量を有する。疎水性および親水性有効成分も、ナノエマルジョンに配合されることができる。ナノエマルジョンは、高圧ホモジナイゼーション、マイクロ流体化および相転移温度を含む当技術分野で知られているあらゆる適切な方法によって形成されることができる。
【0057】
[00062] 特定の態様において、医薬組成物は、有効成分およびジメチコン、シクロメチコンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択されるシリコーンから本質的になる。あるいは、医薬組成物は、化粧品および医薬的局所製品に従来見られるものを含む追加の構成要素と共に配合されることができる。
【0058】
[00063] 投与および投与量
[00064] 本発明は、脱毛の病気、例えば脱毛症、アンドロゲン性脱毛、貧毛症(hypothrichosis)および休止期性脱毛を処置する方法を含む。その方法は、本明細書に記載のSHR0302またはスピロノラクトン(sprinolactone)の組成物を患者に投与することにより、それを必要とする患者において脱毛の病気を処置することを含むことができる。
【0059】
[00065] 好ましい態様において、本発明は、円形脱毛症(AA)を処置する方法を含む。AAは、毛包の免疫特権の崩壊およびその後の自己免疫性破壊による脱毛をもたらす、最も高い有病率の自己免疫疾患の1つである。AAは、頭皮および他の場所における脱毛を引き起こす皮膚疾患である。本発明以前、JAK阻害剤の局所投与は、再現性のある臨床的有効性を示すことはなかった。理論に縛られることなく、特許請求される本発明以前にJAK阻害剤がAAを処置できなかったのは、毛嚢脂腺単位、より具体的には毛球への不十分な薬物送達のためであると信じられている。本発明の発明者らは、本明細書で開示される医薬組成物がAA患者の毛包中に少なくとも約1mm、少なくとも約2mmおよび少なくとも約3mm浸透することができるという驚くべき発見をした。
【0060】
[00066] 特定の態様において、本発明は、療法上有効量の本明細書に記載のSHR0302医薬組成物を患者に局所適用することを含む、それを必要とする患者においてAAを処置するための方法を提供する。特定の態様において、有効成分であるSHR0302は、療法上有効量で投与され得る。特定の態様において、SHR0302の量は、約0.01%w/w~約7.5%w/wまたは約0.01%w/w~約5%w/wまたは約0.1%w/w~約3%w/wの範囲であり得る。例示的な範囲は、約0.01%w/w~約5%w/wまたは約0.01%w/w~約3%w/wまたは約0.1%w/w~約3%w/w、または約0.3%w/w~約3.0%w/wである。例えば、局所配合物は、以下のw/wパーセントのいずれかのSHR0302を含む:0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、7%、1.8%、1.9%、1.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%等。
【0061】
[00067] 本発明は、さらに、それを必要とする患者においてざ瘡を処置する方法を提供する。ざ瘡は、顔、胸、および背中に位置する毛嚢脂腺単位の障害である。ざ瘡は、ざ瘡、尋常性ざ瘡、炎症性ざ瘡、非炎症性ざ瘡、閃光状ざ瘡、結節性丘疹膿疱性ざ瘡、集簇性ざ瘡、酒さ性ざ瘡、酒さ、表皮剥離性ざ瘡、成人発症ざ瘡、10代を過ぎた持続再発性ざ瘡および他の障害に伴うざ瘡からなる群から選択される1つであり得る。特定の態様において、患者は、ヒトの男性または女性の患者である。好ましい態様において、患者は、ヒトの女性である。さらに、患者は:(a)月経と共に周期を成すざ瘡再燃(flare)を経験している;(b)高アンドロゲン症の臨床的もしくは実験室的兆候がない場合でさえも、成人発症ざ瘡もしくは10代を過ぎて持続的に再発するざ瘡に冒されている、(c)経口避妊薬を使用し、中程度~重症のざ瘡を示す、特に臨床的にホルモンパターンを伴う;または(d)従来の療法に反応せず、経口イソトレチノイン療法に関する候補ではない。
【0062】
[00068] 特定の態様において、本発明は、療法上有効量の本明細書に記載のスピロノラクトン医薬組成物を患者に局所適用することを含む、それを必要とする患者においてざ瘡を処置するための方法を提供する。特定の態様において、有効成分であるスピロノラクトンは、療法上有効量で投与され得る。特定の態様において、スピロノラクトンの量は、約0.01%w/w~約10%w/wまたは約0.01%w/w~約7.5%w/wまたは約0.01%w/w~約5%w/wまたは約0.1%w/w~約3%w/wの範囲であり得る。例示的な範囲は、約0.1%w/w~約10%w/wまたは約0.1%w/w~約7.5%w/wまたは約0.1%w/w~約5%w/wまたは約0.1%w/w~約3%w/wまたは約1.0%w/w~約5%w/w、または約0.3%w/w~約5.0%w/wである。例えば、局所配合物は、以下のw/wパーセントのいずれかのスピロノラクトンを含む:0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、7%、1.8%、1.9%、1.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%等。
【0063】
[00069] 特定の態様において、医薬組成物は、規則的な間隔におけるように、レジメンとして局所的に投与される。例えば、局所的な医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回または1週間に4回投与されることができる。医薬組成物は、所定の期間投与されることができる。例えば、局所用医薬組成物は、約2週間~少なくとも約6ヶ月の期間、または皮膚の状態または疾患における改善が視覚的に観察されるまで投与されることができる。処置レジメンに関する例示的な期間は、2週間、1ヶ月、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月または1年を含む。好ましい態様において、局所用医薬組成物は、少なくとも3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月の期間の間、毎日2回または3回投与される。
【0064】
[00070] 以下の実施例は、本発明の特定の態様を限定することなく説明する。
【実施例
【0065】
[00071] 様々な態様が上で記載されてきたが、それらは例としてのみ提示されており、限定としてではないことは、理解されるべきである。従って、本開示の広さおよび範囲は、上記の例示的な態様のいずれかによって限定されるべきでは決してない。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書で別途示されない限り、または文脈によって別途明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
【0066】
[00072] 比較例1
[00073] 比較例1は、表1に示される組成を有する0.3%SHR0302局所用クリームとして調製された。
【0067】
【表1】
【0068】
[00074] 実施例1
[00075] ジメチコン中に懸濁された3%SHR0302を含む医薬組成物を調製した。組成物において使用されたSHR0302は、図1に示されるような粒径分布を有していた。SHR0302の一次粒径分布は、約0.25μm未満のD10値;約0.7μm未満のD50値;および約5μm未満のD90値によって特性付けられる。その医薬組成物は、粒子が小さすぎて可視光を散乱させることができないため、透明な溶液であった。SHR0302の粒径分布プロファイルを決定するために、Hydro MV分散ユニットを使用するMalvern Metasizer Model 3000を使用した。実施した試料調製手順は、以下の通りであった:SCP処理したARQ-250を30mLバイアル中に10~20mg計量し、20mLの酢酸エチルを添加し、懸濁液を5℃の水浴中で40%出力の超音波プローブで2分間超音波処理し、試料懸濁液をMalvern Hydro MV分散ユニットに移して5~15%のオブスキュレーション(obscuration)を得る。装置のパラメーターは、以下の通りであった:(i)粒子の屈折率:1.5;(ii)分散剤の屈折率 1.395;(iii)吸収指数:0.01;(iv)測定期間:10秒;(v)測定回数:3;(vi)攪拌速度:3500rpm;(vii)超音波:オフ。
【0069】
[00076] 実施例2
[00077] 比較例1および実施例1のヒト死体頭皮皮膚中に浸透する能力を評価した。2つの異なるヒト死体頭皮皮膚(ドナーAおよびB)を特別なテンションセル上に取り付けた。比較例1または実施例1のどちらかの用量(7.5μL)を頭皮皮膚標本に6時間適用した。全ての配合物の残留物を皮膚から洗い流した。皮膚の真皮側から8mmのパンチ生検を採取し、液体窒素で瞬間冷凍した。連続する10μmの凍結切片を採取し、1切片おきにヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を調製し、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴-高分解能-マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(FTICR-HR-MALDI)を用いた分析用に隣接切片を保持した。FTICR-HR-MALDI分析は、Bruker 7T FTICR-HR-MALDI MSシステムを用いて実施された。
【0070】
[00078] 図2および図4は、それぞれドナーAおよびドナーBに関する0.3%SHR0302局所用30%DMSOクリームのFTICR-HR-MALDI深度プロファイルを示す。図2に示すように、比較例1は、ドナーAにおいて160μm未満の最大真皮浸透を達成した。図4に示すように、比較例1は、ドナーBにおいて500μm未満の最大真皮浸透を達成した。その結果は、角質層を越えて薬物を送達できる医薬組成物と一致し、薬物が上部毛細管網の下に浸透していないことを示している。
【0071】
[00079] 図3および5は、ドナーAおよびドナーBに関するジメチコン中の3%SHR0302局所懸濁液のFTICR-HR-MALDI深度プロファイルをそれぞれ示す。図3および図5に示すように、実施例1は、1mmを超える最大皮膚浸透を達成した。その結果は、驚くべきことに、医薬組成物が毛球に薬物を送達することが可能であることを示す。
【0072】
[00080] 実施例3
[00081] 0.5%スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよび1%ヒドロキシルプロピルセルロースを含有する5%スピロノラクトンの50mg/mL水性懸濁液は、5℃および周囲光で2週間保存後に薬物粒子の懸濁物の安定なサブミクロン粒子を提供するようにうまくナノ製粉された。スピロノラクトンは、図6に示すような粒径分布を有していた。Horibaレーザー散乱粒径分布分析装置モデルLA-950を使用してスピロノラクトンの体積ベースの分布プロファイルを決定した。循環、撹拌および超音波はすべてオフにされ、装置は手動反復モードに設定された。
【0073】
[00082] 表2に示す組成を有する安定な0.3%スピロノラクトン水中油型エマルジョンを調製した:
[00083]
【0074】
【表2】
【0075】
[00084] 実施例4
[00085] 0.05%~0.055%スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよび1.0~1.1%ヒドロキシルプロピルセルロースを含有する水中5.0%~5.5%スピロノラクトン懸濁液をナノ製粉して図6に示される粒径分布を達成した。完成品の懸濁液の組成を、配合1として表3に列挙した。シクロメチコン中の5%スピロノラクトン懸濁液をローラー製粉して、図7(製粉の完了を過ぎて2週間保存した後に撮影した顕微鏡写真)に示すように、約5μm未満のD90を有する懸濁液を形成した。この完成品懸濁液の組成は、配合2として表3に列挙されている。文献に記載されている比較ゲル配合物を調製し、比較ゲルとして表3に列挙する。(Attwa EM, Ibrahim AM, Abd El-Halim MF, Mahmoud HM, Efficacy and safety of topical spironolactone 5% gel versus placebo in the treatment of acne vulgaris, Egypt J Dermatol Venerol (2019); 39:89-94.)
[00086]
【0076】
【表3】
【0077】
[00087] インビトロ皮膚浸透試験(IVPT)を用いて、異なる配合物が切除されたヒトの皮膚をどれだけ急速に横断するかを決定した。ヒトの死体皮膚は、2人のドナー(白人女性、年齢=48歳、腹部皮膚採取されて580μmの平均厚さになった;およびヒスパニック男性、年齢=50歳、腹部皮膚採取されて910μmの平均厚さになった)から調達された。皮膚採取された皮膚は、米国の組織バンクから冷凍で受け取り、使用するまで-20℃で保存した。皮膚は、0.503cm(直径8mm)の拡散領域および32℃に恒温化された0.01%硫酸ゲンタマイシンを含有する水中4%BSA 3.0mlを充填された受容器チャンバーを有する垂直フランツセル上に装填された。容積式ピペットを用いて、5マイクロリットルの各配合物を各フランツセルに投与した(皮膚1平方センチメートルあたり10mg)。受容器溶液を、検証されたLC-MS/MS(Kinetex C18,5μm,2.1×50mmカラム、Shimadzu LC20ADXRポンプおよびAB Sciex API 4000 Turbo Spray検出器)を用いて分析した。受容器溶液中でアッセイされたスピロノラクトンの累積量は、4回の複製IVPT測定の平均値である。
【0078】
[00088] 皮膚に投与した24時間後に表皮および真皮に保持されるスピロノラクトンのレベルを決定するために、皮膚表面から全ての未吸収および未浸透のスピロノラクトンを洗浄した。これは、1xPBSで濡らしたQチップで組織表面を3回拭き、その後2回テープ剥離を行うことで成し遂げられた。表皮(角質層を含む)を真皮から剥がし、4.0mlのDMSO/アセトニトリル(ACN)(50/50 v/v)混合物にオービタルシェーカーを用いて室温で一夜浸漬した。残りの真皮層を小片に切り、4.0mlのDMSO/ACN混合物で、オービタルシェーカーを用いて室温で一夜抽出した。真皮および表皮の抽出物を、検証されたLC-MS/MS(Kinetex C18、5μm、2.1×50mmカラム、Shimadzu LC20ADXRポンプおよびAB Sciex API 4000 Turbo Spray検出器)を使用して分析した。
【0079】
[00089] 図8は、配合物1、配合物2および比較ゲルに関して、1細胞あたり5.0μl(皮膚組織1cmあたり10mg)を1回の後24時間にわたって受容器溶液中に現れるスピロノラクトンの累積量を図説している。図8において、それぞれのプロットされた値は、切除されたヒト皮膚の4つの別々の断片の平均値である。図9は、配合物1、配合物2および比較ゲルに関して24時間後の表皮および真皮におけるスピロノラクトンの量(ng)を図説している。図8に見られるように、5%溶解スピロノラクトンを有する比較ゲルは、5%スピロノラクトン水懸濁液または5%スピロノラクトンシクロメチコン懸濁液のいずれよりも多くのスピロノラクトンを切除されたヒト皮膚にわたって送達した。しかし、両方の懸濁液に関して、表皮(毛嚢脂腺単位の漏斗の位置)中へのスピロノラクトンの有意に大きな沈着が、図9において見られる。表皮および真皮における高レベルのAPIは、スピロノラクトンが毛嚢脂腺単位を標的とし、水性懸濁液(D90<0.5μm、配合1である)およびシクロメチコン懸濁液(D90<5.0μm、配合2である)から有意に大きい濾胞堆積を有することを示している。
【0080】
[00090] 前記の記載は、例示および記載の目的で提示されたものである。この記載は、本発明を開示された正確な形態に限定することは意図されていない。当業者は、基本的な発明の記載の修正および置換がなされ得ることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】