(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】スマート高温エージングシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231124BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20231124BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529878
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 KR2022009697
(87)【国際公開番号】W WO2023282596
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088257
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン グ
(72)【発明者】
【氏名】ドー、スン クァン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒュン チェオル
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヘオン ホ
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA10
5H028BB05
5H028BB15
5H028BB17
5H029AJ14
5H029BJ22
5H029CJ03
5H029CJ28
(57)【要約】
本発明は、高温エージングシステムに関するものであり、内部に多数個の電池セルが収容された電池セルトレイが多段に積層された構造の電池セルトレイ積層体と、高温エージング室の内部に収容され、電池セルトレイ積層体が収容される格子状の収納空間を含む少なくとも1つ以上のトレイラックと、上記格子状の収納空間に電池セルトレイを運搬するスタッカークレーンと、上記スタッカークレーンに設置され、上記格子状の収納空間に積載された電池セルトレイ積層体の熱画像温度データを取得する熱画像カメラと、上記熱画像温度データに基づいて高温エージング室内の温度を調節する制御部と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に多数個の電池セルが収容された電池セルトレイが多段に積層された構造の電池セルトレイ積層体と、
高温エージング室の内部に収容され、前記電池セルトレイ積層体が収容される格子状の収納空間を含む少なくとも1つ以上のトレイラックと、
前記格子状の収納空間に前記電池セルトレイを運搬するスタッカークレーンと、
前記スタッカークレーンに設置され、前記格子状の収納空間に積載された前記電池セルトレイ積層体の熱画像温度データを取得する熱画像カメラと、
前記熱画像温度データに基づいて前記高温エージング室内の温度を調節する制御部と、を含む高温エージングシステム。
【請求項2】
前記スタッカークレーンは、左右移動するマストおよび前記マストに設置されて昇降移動する積載台を含み、
前記熱画像カメラは、前記マストおよび前記積載台の移動時に共に移動しながら前記電池セルトレイの熱画像温度データを得る、請求項1に記載の高温エージングシステム。
【請求項3】
前記高温エージング室には、内部の温度調節のための少なくとも1つ以上のヒーターおよび送風ファンが設置された、請求項1に記載の高温エージングシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記熱画像温度データから前記電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度を算出し、算出された温度に基づいて前記高温エージング室内の温度を調節する、請求項1に記載の高温エージングシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記電池セルトレイ積層体の中心部の温度、または前記中心部と前記外郭部の温度差が基準範囲から外れた場合に前記高温エージング室内の温度を調節する、請求項4に記載の高温エージングシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記トレイラック内に収納された全体の前記電池セルトレイ積層体の中心部の温度、または前記中心部と前記外郭部の温度差の平均値を算出し、算出結果が基準範囲から外れた場合に前記高温エージング室全体の温度を調節する、請求項5に記載の高温エージングシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記トレイラック内に収納された一部の前記電池セルトレイ積層体の中心部の温度、または前記中心部と前記外郭部の温度差の平均値を算出し、算出結果が基準範囲から外れた場合に当該電池セルトレイ積層体が位置した領域の温度を局所的に調節する、請求項5に記載の高温エージングシステム。
【請求項8】
前記高温エージング室内の温度調節は、少なくとも1つ以上のヒーターおよび送風ファンのうち少なくとも1つの作動中断、再稼働またはこれらの組み合わせによって行われる、請求項3に記載の高温エージングシステム。
【請求項9】
前記制御部は、前記高温エージング室の内部を減温させる場合にヒーターの作動を中断して、送風ファンを稼働する、請求項8に記載の高温エージングシステム。
【請求項10】
前記制御部は、前記高温エージング室の内部を昇温させる場合に前記ヒーターを稼働して、送風ファンの作動を中断する、請求項8に記載の高温エージングシステム。
【請求項11】
前記制御部は、
前記熱画像温度データを学習して、前記電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度差が最小化となる温度調節アルゴリズムを導出する、請求項1から10のいずれか一項に記載の高温エージングシステム。
【請求項12】
前記制御部は、前記熱画像温度データを収集して学習データを構成し、前記学習データから前記電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度差が最小化となる温度調節アルゴリズムを導出する人工知能を含む、請求項11に記載の高温エージングシステム。
【請求項13】
前記人工知能は、導出された温度調節アルゴリズムによる予測温度と実際の電池セルトレイ積層体の熱画像温度データを対比してアルゴリズムの有効性を検証し、前記学習データに検証結果をアップデートする、請求項12に記載の高温エージングシステム。
【請求項14】
前記温度調節アルゴリズムは、稼働または作動中断するヒーターまたは送風ファンの位置および個数およびヒーターまたは送風ファンの稼働時間の調節に関するものである、請求項11に記載の高温エージングシステム。
【請求項15】
前記人工知能は、ディープラーニングのための深層神経網で構成された、請求項12に記載の高温エージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルのスマート高温エージングシステムに関するものである。
【0002】
本出願は、2021年7月6日付の韓国特許出願第10-2021-0088257号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、充放電が可能な二次電池は、ワイヤレスモバイル機器のエネルギー源として広く使用されている。また、二次電池は、化石燃料を使用する既存のガソリン車、ディーゼル車などに起因する大気汚染などを解決するための対策として提示されている電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのエネルギー源としても注目されている。したがって、二次電池を使用するアプリケーションの種類は二次電池の長所により非常に多様化しており、今後は今より多くの分野と製品に二次電池が適用されると予想される。
【0004】
このような二次電池は、電極と電解液の構成によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムポリマー電池などに分類され、そのうち電解液の漏液の可能性が少なく、製造が容易なリチウムイオンポリマー電池の使用量が増加している。一般的に、二次電池は、電池ケースの形状に応じて、電極組立体が円筒形または角形の金属缶に内蔵されている円筒形電池および角形電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートシートのパウチ型ケースに内蔵されているパウチ型電池に分類される。そして、電池ケースに内蔵される電極組立体は、正極、負極および上記正極と上記負極との間に分離膜が介在された構造からなる充放電が可能な発電素子であって、活物質が塗布された長いシート状の正極と負極との間に分離膜を介在して巻取したジェリーロール型と、所定のサイズの多数の正極と負極を分離膜が介在された状態で順次に積層したスタック型に分類される。
【0005】
このような二次電池は一般的に電解液の注液後に活性化工程が行われ、活性化工程で電池セルには初期充電を通じてSEI被膜を形成させた後、高温エージングを通じて金属異物を迅速に溶出させ、低電圧不良が発生することを防止することになる。
【0006】
上記高温エージングは、一般的に60℃以上の温度で行われるため、温度が一定に維持される空間で作業を行う必要がある。しかしながら、従来は、多数個の電池セルが搭載されたトレイを積置した後、一般的な温度計を使用して温度調節を行った。しかし、このような場合、高温エージング室内の電池セルのうちトレイ中心部の電池セルは、外郭部の電池セルに比べて熱循環が困難であるので、過度に温度が上がることになり、この場合、中心部に位置した電池セルの容量が不可逆反応により低下される現象が発生することになる。また、温度調節を人力により行う場合には均一な温度調節が難しく、作業をいちいち手動で行う必要があるため、多くの時間および費用がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0026994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するために案出されたものであり、高温エージング工程で電池セルトレイ内の温度偏差を最小化し得るアルゴリズムを備えたスマート高温エージングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高温エージングシステムは、内部に多数個の電池セルが収容された電池セルトレイが多段に積層された構造の電池セルトレイ積層体と、高温エージング室の内部に収容され、電池セルトレイ積層体が収容される格子状の収納空間を含む少なくとも1つ以上のトレイラックと、上記格子状の収納空間に電池セルトレイを運搬するスタッカークレーンと、上記スタッカークレーンに設置され、上記格子状の収納空間に積載された電池セルトレイ積層体の熱画像温度データを取得する熱画像カメラと、上記熱画像温度データに基づいて高温エージング室内の温度を調節する制御部と、を含む。
【0010】
具体例において、上記スタッカークレーンは、左右移動するマストおよび上記マストに設置されて昇降移動する積載台を含み、上記熱画像カメラは、マストおよび積載台の移動時に共に移動しながら電池セルトレイの熱画像温度データを得ることができる。
【0011】
具体例において、上記高温エージング室には、少なくとも1つ以上のヒーターおよび送風ファンが内部の温度調節のために設置され得る。
【0012】
具体例において、上記制御部は、熱画像温度データから電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度を算出し、算出された温度に基づいて高温エージング室内の温度を調節し得る。
【0013】
具体的には、上記制御部は、上記電池セルトレイ積層体の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差が基準範囲から外れた場合に高温エージング室内の温度を調節し得る。
【0014】
一つの具体例において、上記制御部は、トレイラック内に収納された全体の電池セルトレイ積層体の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差の平均値を算出し、上記算出結果が基準範囲から外れた場合に高温エージング室全体の温度を調節し得る。
【0015】
他の一つの具体例において、上記制御部は、トレイラック内に収納された一部の電池セルトレイ積層体の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差の平均値を算出し、上記算出結果が基準範囲から外れた場合に当該電池セルトレイ積層体が位置した領域の温度を局所的に調節し得る。
【0016】
このとき、上記高温エージング室内の温度調節は、少なくとも1つ以上のヒーターおよび送風ファンのうち少なくとも1つの作動中断、再稼働またはこれらの組み合わせによって行われ得る。
【0017】
具体的には、上記制御部は、高温エージング室の内部を減温させる場合にヒーターの作動を中断して、送風ファンを稼働させることができる。
【0018】
また、上記制御部は、高温エージング室の内部を昇温させる場合にヒーターを稼働して、送風ファンの作動を中断させることができる。
【0019】
他の一例において、上記制御部は、上記熱画像温度データを学習して、上記電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度差が最小化となる温度調節アルゴリズムを導出し得る。
【0020】
具体的には、上記制御部は、熱画像温度データを収集して学習データを構成し、上記学習データから上記電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度差が最小化となる温度調節アルゴリズムを導出する人工知能を含み得る。
【0021】
上記人工知能は、導出された温度調節アルゴリズムによる予測温度と実際の電池セルトレイ積層体の熱画像温度データを対比してアルゴリズムの有効性を検証し、学習データに検証結果をアップデートし得る。
【0022】
上記温度調節アルゴリズムは、稼働または作動中断するヒーターまたは送風ファンの位置および個数と、ヒーターまたは送風ファンの稼働時間の調節に関するものであり得る。
【0023】
上記人工知能は、ディープラーニングのための深層神経網で構成され得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、人工知能アルゴリズムに基づいて高温エージング室内の温度を最適に調節することにより、高温エージング工程で電池セルトレイ内の温度偏差を自動で最小化し得るので、エネルギーを節約し、電池セルの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る高温エージングシステムを示した模式図である。
【
図2】本発明に係る高温エージングシステムを示した模式図である。
【
図3】電池セルトレイおよび電池セルトレイ積層体の構造を示した模式図である。
【
図4】電池セルトレイおよび電池セルトレイ積層体の構造を示した模式図である。
【
図5】トレイラック内に電池セルトレイ積層体が収納される過程を示した模式図である。
【
図6】電池セルトレイ積層体内の電池セルトレイの時間に応じた温度変化を示したグラフである。
【
図7】本発明に係る温度調節アルゴリズムを示したフローチャートである。
【
図8】ディープラーニングのための深層神経網の構造を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が彼自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的な思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0027】
本出願において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1および
図2は、本発明に係る高温エージングシステムを示した模式図である。
図5はトレイラック内に電池セルトレイ積層体が収容される過程を示した模式図である。
【0030】
図1、
図2および
図5を参照すると、本発明に係る高温エージングシステム100は、内部に多数個の電池セルが収容された電池セルトレイが多段に積層された構造の電池セルトレイ積層体110、高温エージング室120の内部に収容され、電池セルトレイ積層体110が収容される格子状の収納空間を含む少なくとも1つ以上のトレイラック130、上記格子状の収納空間に電池セルトレイを運搬するスタッカークレーン140、上記スタッカークレーン140に設置され、上記格子状の収納空間に積載された電池セルトレイの熱画像温度データを取得する熱画像カメラ150、上記熱画像温度データに基づいて高温エージング室内の温度を調節する制御部160を含む。
【0031】
このように、本発明は熱画像温度データに基づいて高温エージング室の温度を調節し、後述するようにこのような温度調節過程を人工知能アルゴリズムに基づいて行うことにより、エネルギーを節約し、電池セルの性能を向上させることができる。
【0032】
以下、高温エージングシステムの各構成について詳細に説明する。
【0033】
図3および
図4は電池セルトレイおよび電池セルトレイ積層体の構造を示した模式図である。
【0034】
本発明において、高温エージング工程は、内部が高温に一定に維持される高温エージング室120で行われ、多数個の電池セル1が一度に高温エージング工程を経ることになる。そのために、多数個の電池セル1を一定の間隔で配置し得る電池セルトレイ10上に電池セルを搭載する。
【0035】
上記電池セルトレイ10は、内部に隔壁が設置されて格子状の収納空間を形成し得、隔壁で区画された空間に電池セル1が1つずつ配置され得る。
図3では、上記電池セル1を円筒形の電池セルであると図示したが、電池セルの形態に特に制限はなく、角形の電池セルまたはパウチ型の電池セルなど多様な形態の電池セルが使用され得る。この場合、電池セルトレイ10内部の隔壁は、電池セルの形態に合わせてその形状が変更され得る。
【0036】
このような電池セルトレイ10は、高温エージング工程で空間活用のために多数個を1セットとして多段に積層されて電池セルトレイ積層体110を形成することになる。
図4の場合、6つの電池セルトレイ10が積層されて1つの電池セルトレイ積層体110を形成することを示したが、電池セルトレイ積層体110を形成する電池セルトレイ10の個数は特に限定されない。
【0037】
上記電池セルトレイ10は、高温エージング環境で変形されないものであれば、いずれも使用可能であり、例えば、鉄、アルミニウムなどの金属素材またはポリカーボネート、アクリルなどの高分子素材をすべて使用し得る。
【0038】
図5を
図1および
図2と共に参照すると、高温エージング室120内には、電池セルトレイ積層体110を収容するために少なくとも1つ以上のトレイラック130が備えられ得る。上記トレイラック130は、電池セルトレイ積層体110が収容され得るように格子状の収納空間が本棚のように形成されている構造である。上記格子状の収納空間は一定数の行および段で構成されており、
図1および
図5には9行×5段で格子状の収納空間が形成されている様子が図示されているが、格子状の収納空間のサイズおよび個数に特に制限は存在しない。
【0039】
上記電池セルトレイ積層体110は、上記トレイラック130の格子状の収納空間に運搬された後、所定の時間の間、高温で保管される。スタッカークレーン140は、上記格子状の収納空間に電池セルトレイ10を運搬する。このとき、上記電池セルトレイ10は、個別の電池セルトレイの状態で運搬されることもでき、電池セルトレイ積層体110の形態で多段に積層された後、一度に収納空間に運搬され得る。
【0040】
本発明において、上記スタッカークレーン140は、左右移動するマスト141および上記マスト141に設置されて昇降移動する積載台142を含む。上記スタッカークレーン140は、高温エージング室120の床でトレイラックの一側に沿って左右移動するように構成された走行台車143を含む。上記走行台車143は、底面に転がり接触するホイールを含む。このとき、トレイラック130とスタッカークレーン140との間に一定の間隔を維持した状態で移動するために、走行台車143が移動する移動経路にガイドレール(図示せず)が形成され得る。
【0041】
上記マスト141は、走行台車143上に直立された柱状に装着され、積載台を支持し、積載台142が上下運動し得る経路を提供する。また、上記マスト141上には、積載台142が上下移動し得るように誘導するガイド溝(図示せず)が形成され得る。
【0042】
上記積載台142は、板状であり、運搬過程において電池セルトレイ10が搭載される部分であり、マスト141と結合する面にはガイド溝(図示せず)に挿入され得るホイール(図示せず)が結合されているため、上記ガイド溝に沿ってマスト141上で上下移動し得る。上記積載台142はマスト141上で上下移動し、マスト141は走行台車143によりガイドレールに沿って左右移動しながら電池セルトレイ10を所望の空間にローディングするか、または所望の空間からアンローディングし得る。
【0043】
上記高温エージング室120には、内部の温度調節のために少なくとも1つ以上のヒーター121および送風ファン122が設置されている。高温エージング室120の均一な昇温および減温のために、上記ヒーター121または送風ファン122は、高温エージング室の壁面および天井に沿って一定のパターンで配列され得る。そのため、後述するように、収納空間に配置された電池セルトレイ積層体のうち一部分の温度が過度に上昇するかまたは下降する場合に、当該部分の送風ファン122またはヒーター121を稼動させて高温エージング室内の熱対流を通じて温度を調節し得るのである。
図1および
図2にはヒーター121および送風ファン122が交番して配置されることが図示されたが、これに制限されるものではなく、ヒーターを高温エージング室の一側に置いて送風ファンを介して温度を調節することも可能である。
【0044】
一方、熱画像カメラ150は、スタッカークレーン140に設置され、格子状の収納空間に積載された電池セルトレイ積層体110の熱画像温度データを取得する。具体的には、上記熱画像カメラ150は、電池セルトレイ10のローディングまたはアンローディングのためにマスト141および積載台142の移動時に共に移動しながら、電池セルトレイの熱画像温度データを取得する。例えば、上記熱画像カメラ150は、積載台142上に結合されている形態であり得る。この場合、マスト141が左右に移動し、積載台142が上下に移動しながら、自然に電池セルトレイ積層体110が撮影され得る。
【0045】
具体的には、熱画像カメラ150は、電池セルトレイ積層体110の表面を撮影し、各領域別の温度分布を色で表わす。これにより、測定対象の2地点以上の温度を同時に測定することが可能である。さらに、熱画像カメラ150を使用することにより、各地点間の連続的な温度確認が可能であるため、測定対象の全領域の温度分布を直観的または定性的に把握することが可能である。例えば、温度が相対的に低い部分は、高い部分に比べて暗い色を帯びることになり得る。または、各温度分布を互いに異なる色で表現して、温度が高い部分は赤色で、温度が低い部分は相対的に青色を帯びるようにし得る。
【0046】
本発明は、電池セルトレイ積層体110の温度撮影のために熱画像カメラ150を使用することにより、従来の温度計を使用することに比べて測定対象全体の温度分布を1つの画面で撮影することにより、測定対象の1地点のみならず、測定対象の全領域の温度を測定し得る。これにより、後述するように、電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差を1回の撮影で把握し、温度計を使用するときより中心部の温度を容易に把握し得る。
【0047】
上記制御部160はコンピューティング装置であり得、上記熱画像カメラによって熱画像温度データが取得されると、熱画像温度データに基づいて高温エージング室120内の温度を調節する。
【0048】
上記制御部160は、熱画像イメージを具体的な温度数値に換算して外郭部の熱画像温度データを取得する。制御部が熱画像カメラによって撮影されたイメージを具体的な温度数値に換算する方法は、通常のコンピューティング装置またはプログラムによって行われ得る。
【0049】
続いて、上記制御部160は、熱画像温度データから電池セルトレイ積層体の中心部と外郭部の温度を算出する。
【0050】
図5のように、トレイラック130内の格子状の収納空間には、電池セルトレイが多段に積層された電池セルトレイ積層体110が搭載される。このとき、高温エージング工程で、電池セルトレイ積層体110の中心部Aは、周囲の構造物(他の電池セルトレイ)によって熱循環が難しいため、外郭部に比べて温度が高くなる。上記制御部160は、電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度データから高温エージング室の温度を調節する。
【0051】
上記制御部160は、電池セルトレイ積層体110の中心部の温度、または電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差を基準にして高温エージング室120の温度を調節する。具体的には、上記制御部160は、上記電池セルトレイ積層体110の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差が基準範囲から外れた場合に、高温エージング室120内の温度を調節する。ここで、上記基準範囲は適正数値であると判断される温度範囲であって、電池セルの規格および電池セルトレイのサイズ、収納空間のサイズ、高温エージング室の温度に応じて好適に調節され得る事項である。例えば、電池セルトレイ積層体110の中心部の温度が基準範囲より高いか、または中心部と外郭部の温度差が基準範囲より高い場合、制御部は高温エージング室120の加熱を中断して内部の温度を下げ得る。
【0052】
一例において、上記制御部160は、トレイラック130内に収納された全体の電池セルトレイ積層体110の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差の平均値を算出し、算出結果が所定の範囲から外れた場合に、高温エージング室120全体の温度を調節し得る。この場合、制御部160は、トレイラック130内の全体の電池セルを基準にして温度調節の有無を判断する。
【0053】
他の一例において、上記制御部160は、トレイラック130内に収納された一部の電池セルトレイ積層体110の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差の平均値を算出し、算出結果が基準範囲から外れた場合に、当該電池セルトレイ積層体110が位置した領域の温度を局所的に調節する。例えば、上記制御部160は、トレイラック130のうちいずれか1つの行または列に位置した電池セルトレイ積層体110の中心部の温度、または中心部と外郭部の温度差に対して平均値を算出し、算出結果が基準範囲から外れた場合に、当該電池セルトレイ積層体110が位置した領域の温度を局所的に調節することになる。または、トレイラック130内の一部の領域に他の領域より温度が高い領域が発生する場合には、該当領域の温度を局所的に調節し得る。
【0054】
上記高温エージング室120内の温度調節は、少なくとも1つ以上のヒーター121および送風ファン122のうち少なくとも1つの作動中断、再稼働、またはこれらの組み合わせによって行われ得る。上記ヒーター121または送風ファン122は、高温エージング室120の壁面および天井に沿って一定のパターンで配列されているため、高温エージング室120に設置されたヒーター121および送風ファン122の全部または一部を稼働または非稼働することにより、所望の領域の温度を調節し得る。
【0055】
具体的には、上記制御部160は、高温エージング室120の内部を減温させる場合にヒーター121の作動を中断し、送風ファン122を稼働する。また、上記制御部160は、高温エージング室120の内部を昇温させる場合にはヒーター121を稼働し、送風ファン122の作動を中断する。例えば、中心部の温度が過度に上昇して高温エージング室120の内部を減温させる場合に、ヒーター121の作動が中断されると、電池セルトレイ積層体110の中心部から外郭部に熱が発散されて外郭部の温度が高温に維持され得る。
【0056】
図6は電池セルトレイ積層体内の電池セルトレイの時間に応じた温度変化を示したものである。
【0057】
図6において、それぞれのグラフは、電池セルトレイ積層体110を構成する電池セルトレイ積層体の様々な地点で測定される温度変化を示したものである。
図6を参照すると、加熱開始から200分程度が経過したとき、電池セルトレイのうち最高温度を示すもの(中心部に位置した電池セルトレイ)は、その温度が約53℃であり、最低温度を示すもの(外郭部に位置した電池セルトレイ)は、その温度が約35℃であり、温度差は18℃であることが分かる。この場合、本発明のように送風ファンとヒーターを使用して高温エージング室内の温度を調節することによって、温度差が徐々に減少することが分かる。
【0058】
(第2実施形態)
図7は本発明に係る温度調節アルゴリズムを示したものである。
【0059】
他の一例において、上記制御部160は、上記熱画像温度データを学習して、上記電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が最小化される温度調節アルゴリズムを導出し得る。これにより、制御部160は、上記アルゴリズムを介して中心部と外郭部の温度差が最小化されるように上記第1の実施形態に言及したような作動方式により温度を自動で制御することによって、人力により直接温度を調節するときより、少ない時間および費用がかかり、温度差を精密に調節し得る。
【0060】
具体的には、上記制御部160は、温度調節のための人工知能をさらに含み得る。上記人工知能は、熱画像温度データを収集して学習データを構成し、上記学習データから上記電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が最小化される温度調節アルゴリズムを導出する。そして、上記人工知能は、温度調節アルゴリズムに従って第1の実施形態と同様の方法で高温エージング120室内の温度を調節する。すなわち、上記人工知能は、マシンラーニングまたはディープラーニングによって温度調節アルゴリズムを学習することになる。
【0061】
このために、本発明に係る高温エージングシステム100は、多数回の温度測定を行いながら得られた熱画像温度データを保存する。これは、測定時間、初期温度の条件および電池セル、電池セルトレイ、トレイラックなどの規格などによって分類された状態で保存され得、別途の保存装置に上記データを保存および管理するDBを設け得る。上記DBは、上記学習データ構成のための基礎資料として活用され得る。
【0062】
具体的には、上記制御部160は、保存された熱画像温度データを収集して学習データを構成し、上記学習データから上記電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が最小化される温度調節アルゴリズムを導出する人工知能を含み得る。上記人工知能は、既に保存されたDBに新たに測定された結果をアップデートして学習データを構成し得る。
【0063】
次に、上記人工知能は、学習データから電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が最小化するように温度調節アルゴリズムを導出する。上記温度調節アルゴリズムは、稼働または作動中断するヒーターまたは送風ファンの位置および個数およびヒーターまたは送風ファンの稼働時間の調節に関するものであり得る。人工知能は、温度を調節したい電池セルトレイ積層体の位置、個数、および温度データに基づいて上記温度調節アルゴリズムを導出する。
【0064】
温度調節アルゴリズムが導出されると、上記人工知能はアルゴリズムに従って温度を調節し、アルゴリズムの有効性を検証する。このような検証過程は、導出された温度調節アルゴリズムに応じた予測温度と実際の電池セルトレイ積層体110の熱画像温度データを対比して行われ得る。例えば、導出された温度調節アルゴリズムに従って温度を調節した後、電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が予測結果とズレたり、従来条件に応じた温度データに比べて効果面に大きな違いがない場合は、保存された学習データを修正およびアップデートする。このとき、保存されたデータと共に入力される実験条件を考慮して、アルゴリズムが有効でない原因を分析し得る。このように、本発明は、人工知能によって温度調節アルゴリズムを機械学習することにより、精密かつ効率的に温度を調節し得る。
【0065】
(第3実施形態)
図8はディープラーニングのための深層神経網の構造を示した模式図である。
【0066】
図8を参照すると、上記制御部160は、上記熱画像温度データを学習して上記電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が最小化される温度調節アルゴリズムを導出し得、上記制御部160は、温度調節のための人工知能をさらに含み得る。上記人工知能は、熱画像温度データを収集して学習データを構成し、上記学習データから上記電池セルトレイ積層体110の中心部と外郭部の温度差が最小化される温度調節アルゴリズムを導出する。
【0067】
このとき、上記人工知能は深層学習のための深層神経網で構成され得る。
【0068】
深層神経網(Deep Neural Network,DNN)は、学習されたデータに基づいて入力されたデータを分類するマシンラーニング(Machine Learning)のモデルの1つであって、1つ以上のコンピュータ内に1つ以上のレイヤー(Layer)を構築し複数のデータに基づいて判断を行うシステムまたはネットワークを意味する。
【0069】
図8を参照すると、深層神経網は、入力層(input layer,161)、1つ以上の隠れ層(hidden layer,162)、および出力層(output layer,163)で構成され得る。
【0070】
入力層161には上記学習データが入力され、隠れ層と出力層を介して計算された結果値を実際の値と比較し、加重値の値を逆にアップデートする。すべての学習が終わった後に、予測が必要な情報を入力して結果値を得ることができる。
【0071】
隠れ層162は、畳み込み層(convolution layer)、プーリング層(pooling layer)、および全結合層(fully connected layer)を含み得る。ここで、畳み込み層は、入力層に入力されたイメージに対して特徴マップを抽出し畳み込み演算を行い得る。プーリング層は畳み込み層に連結され、畳み込み層の出力に対するサブサンプリングを行い得る。全結合層は、プーリング層と連結され、サブサンプリングされたプーリング層の出力を学習し、出力層163に出力されるカテゴリに応じて学習し得る。
【0072】
一方、深層神経網をなす各層の連結構造は、公知のアルゴリズムを好適に選択して形成され得、例えば、畳み込み神経網(Convolutional Neural Network;CNN)構造または回帰型神経網(Recurrent Neural Network;RNN)構造で形成され得る。
【0073】
このような深層神経網は、1つのコンピュータ内で具現されることもでき、複数のコンピュータが連結されて、ネットワーク網を介して具現されることもあり得る。
【0074】
学習部は、アップデートされた学習データを深層神経網上の入力層161に入力する。入力された学習データは、隠れ層162を介して出力層163から最終的なアウトプットとして出力される。上記学習部は、予測結果の有効性の検証結果に応じた重み値をアップデートすることによって、新たにアップデートされた学習データを学習し得る。
【0075】
データの学習が完了されると、上記制御部は、学習されたデータから温度調節アルゴリズムを新たに導出し、それを適用して高温エージング室内の温度を調節する。その後、温度調節の結果を通じてアルゴリズムの有効性を検証し、それを反映する過程が自動で繰り返され、高温エージング室の温度を精密に制御し得る。
【0076】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能であろう。したがって、本発明に開示された図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【0077】
なお、本明細書では上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が用いられているが、これらの用語は説明の便宜のためのものであり、対象となる物体の位置や観察者の位置などによって変わり得ることは自明である。
【符号の説明】
【0078】
1:電池セル
10:電池セルトレイ
100:高温エージングシステム
110:電池セルトレイ積層体
120:高温エージング室
121:ヒーター
122:送風ファン
130:トレイラック
140:スタッカークレーン
141:マスト
142:積載台
143:走行台車
150:熱画像カメラ
160:制御部
161:入力層
162:隠れ層
163:出力層
【国際調査報告】