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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】眼科パラメータの決定
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20231124BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61B3/16
A61B3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529906
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 SE2021051163
(87)【国際公開番号】W WO2022115020
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2051370-1
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523180218
【氏名又は名称】ガレ バギ, アラシュ
【氏名又は名称原語表記】GHAREH BAGHI, Arash
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ガレ バギ, アラシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユセフィ, モザファル
(72)【発明者】
【氏名】サレヒ, メフディ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA02
4C316AA03
4C316AA20
4C316AA25
4C316AB14
4C316FA06
4C316FA11
4C316FA14
4C316FY02
4C316FZ03
(57)【要約】
時間-速度曲線を分析し、時間-速度曲線に基づいて眼科パラメータを計算するためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、システム、及び方法である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の眼(c)の角膜外面(b)に向かう第1の方向におけるプローブ本体(2)の移動の間、前記眼(c)で完全に停止となる場合の前記プローブ本体(2)の端部(2a)の前記角膜外面(b)との衝突の間、及び前記第1の方向と反対の第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返り移動の間の前記プローブ本体(2)の登録された速度及び時間を含む時間-速度曲線を分析するためのコンピュータ実装方法であって、
前記プローブ本体(2)の前記端部が前記角膜外面(b)と最初に衝突する時点と前記プローブ本体(2)が前記眼(c)で完全に停止となる時点との間の前記時間-速度曲線の勾配として、前記眼の眼圧(p)を計算するステップと、
前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)の前記角膜外面(b)との接触の瞬間の前記時間-速度曲線における前記プローブ本体(2)の速度Vと、前記第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返り移動の間に前記プローブ本体(2)が前記角膜外面を離れる瞬間の前記時間-速度曲線における前記プローブ本体(2)の速度Vと、を使用して、中心角膜厚(D)を計算するステップと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
コンピュータにより実行された場合に、対象者の眼の角膜外面に向かう第1の方向におけるプローブ本体の移動の間、前記眼(c)で完全に停止となる場合の前記プローブ本体(2)の端部(2a)の前記角膜外面(b)との衝突の間、及び前記第1の方向と反対の第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返り移動の間の前記プローブ本体(2)の登録された速度及び時間を含む時間-速度曲線の分析を前記コンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラムであって、
前記プローブ本体(2)の前記端部が前記角膜外面(b)と最初に衝突する時点と前記プローブ本体(2)が前記眼(c)で完全に停止となる時点との間の前記時間-速度曲線の勾配として、前記眼の眼圧(p)を前記コンピュータに計算させ、
前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)の前記角膜外面(b)との接触の瞬間の前記時間-速度曲線における前記プローブ本体(2)の速度Vと、前記第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返り移動の間に前記プローブ本体(2)が前記角膜外面を離れる瞬間の前記時間-速度曲線における前記プローブ本体(2)の速度Vと、を使用して、中心角膜厚(D)を前記コンピュータに計算させる、コンピュータプログラム。
【請求項3】
前記中心角膜厚(D)が、
D=C・exp(τ)+L(ここで、C及びLは定数である)と、
τ=(V -v )(1-exp(-K logp))/V
(ここで、Kは定数である)と、
から計算される、請求項1又は2に記載のコンピュータ実装方法又はコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記計算された角膜厚(D)及び前記眼圧(p)を使用して、補正眼圧(CP)を前記コンピュータに計算させる命令をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記計算した角膜厚(D)及び前記眼圧(p)を使用して、補正眼圧(CP)を計算するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記時間-速度曲線から、前記角膜外面上の涙液膜厚(L)を前記コンピュータに計算させる命令をさらに含み、前記涙液膜厚(L)が、
【数1】



から計算され、
V(t)が、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記眼と衝突して前記眼で完全に停止となる時点から、前記プローブ本体(2)が前記眼を離れるまでの前記プローブ本体(2)の衝突・跳ね返り経路の間に登録された前記プローブ本体(2)の速度-時間プロファイルであり、
(T,V)が、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面上の前記涙液膜(a)と最初に衝突する時点であり、
(T,V)が、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面(b)と最初に衝突する時点である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記時間-速度曲線から、前記角膜外面上の涙液膜厚(L)を計算するステップをさらに含み、前記涙液膜厚(L)が、
【数2】


から計算され、
V(t)が、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記眼と衝突して前記眼で完全に停止となる時点から、前記プローブ本体(2)が前記眼を離れるまでの前記プローブ本体(2)の衝突・跳ね返り経路の間に登録された前記プローブ本体(2)の速度-時間プロファイルであり、
(T,V)が、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面上の前記涙液膜(a)と最初に衝突する時点であり、
(T,V)が、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面(b)と最初に衝突する時点である、請求項1~3又は5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
対象者の眼科パラメータを決定するためのシステム(1)であって、プローブ(11)及びプロセッサ(10)を備え、前記プロセッサが、
対象者の眼の角膜外面に向かう第1の方向におけるプローブ本体(2)の移動の間、前記眼(c)で完全に停止となる場合の前記プローブ本体(2)の端部(2a)の前記角膜外面(b)との衝突の間、及び前記第1の方向と反対の第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返り移動の間の前記プローブ(11)の前記プローブ本体(2)の速度及び時間を登録することと、
前記プローブ本体(2)の前記登録された速度及び時間から得られる曲線に基づいて、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面(b)と最初に衝突する時点と前記プローブ本体(2)が前記眼(c)で完全に停止となる時点との間の勾配として、前記眼の眼圧(p)を計算することと、
前記時間-速度曲線に基づいて、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)の前記角膜外面(b)との接触の瞬間の前記プローブ本体(2)の速度Vと、前記第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返り移動の間に前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面を離れる瞬間の前記プローブ本体(2)の速度Vと、を使用して、中心角膜厚(D)を計算することと、
を行うように構成された、システム(1)。
【請求項9】
前記プローブ(2)が、
第1の端部(2a)及び反対の第2の端部(2b)を有する磁性プローブ本体(2)と、
第1の端部(4a)及び反対の第2の端部(4b)を有する非磁性チューブ(4)であり、前記磁性プローブ本体(2)が内部に摺動可能に配置され、前記プローブ本体(2)の前記第1の端部(2a)及び前記チューブ(4)の前記第1の端部(4a)が同じ方向に配向した、非磁性チューブ(4)と、
前記チューブにおける第1の位置から、少なくとも前記プローブ本体(2)の前記第1の端部(2a)が前記チューブ(4)の前記第1の端部(4a)から延出する第2の位置まで、第1の方向に前記プローブ本体(2)を移動させるように構成された磁界と、
を備え、
前記プローブ本体(2)の前記第1の端部(2a)が、前記第2の位置において、対象者の眼の角膜外面(b)と衝突するように構成された、請求項8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記非磁性チューブ(4)の前記第2の端部(4b)に光学ユニット(7)が配置され、前記チューブと同心状に位置合わせされ、当該光学ユニット(7)から放出された光が前記非磁性チューブ(4)を通過し、前記非磁性チューブ(4)の前記第1の端部(4a)に向かって通過し、前記チューブ(4)の前記第1の端部(4a)からある距離で垂直に配置された角膜外面(b)に向かうことで、前記角膜外面から反射され、前記プローブ(2)の前記第1の端部(2a)が前記角膜外面(b)と衝突する前記角膜外面上のエリアを示すように構成された、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
計算された眼科パラメータを表示するためのディスプレイ(20)をさらに備えた、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
対象者の眼科パラメータを決定する方法であって、
第1の端部(2a)及び反対の第2の端部(2b)を有するプローブ本体を用意するステップ(100)と、
前記プローブ本体(2)の端部(2a)が前記対象者の眼の角膜外面(b)からある距離となるように前記プローブ本体(2)を配置するステップ(101)と、
前記プローブ本体の前記端部(2a)が前記角膜外面(b)と衝突して、前記眼(c)で完全に停止となるまで、前記プローブ本体(2)を前記角膜外面(b)の中心エリアに向かって第1の方向に移動させるステップ(102)と、
前記プローブ本体(2)が前記第1の方向に移動する場合の前記プローブ本体(2)の衝突経路の間、前記プローブ本体(2)が前記角膜外面(b)と衝突して前記眼(c)で完全に停止となるまでの間、及び前記プローブ本体(2)が前記眼(c)での完全停止から、前記第1の方向と反対の第2の方向に、前記眼(d)を離れるまで移動する場合の前記プローブ本体(2)の跳ね返り経路の間の前記プローブ本体(2)の速度及び時間を登録するステップ(103)と、
前記プローブの前記登録された速度及び時間から得られる曲線に基づいて、前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面(b)と最初に衝突する時点と前記プローブ本体(2)が前記眼(c)で完全に停止となる時点との間の勾配として、前記眼の眼圧(p)を計算するステップ(104)と、
前記時間-速度曲線に基づいて、前記プローブ本体(2)の前記端部の前記角膜外面(b)との接触の瞬間の前記プローブ本体(2)の速度Vと、前記第2の方向における前記プローブ本体(2)の跳ね返りの間に前記プローブ本体(2)の前記端部(2a)が前記角膜外面を離れる瞬間の前記プローブ本体(2)の速度Vと、を使用して、中心角膜厚(D)を計算するステップ(105)と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、眼圧、角膜厚、涙液膜厚、及び補正眼圧等の眼科パラメータを決定するためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]角膜は、眼の最外透明層であり、人間の視覚において重要な役割を果たす。角膜は、特に網膜に向かって光が通過する中心部において、眼の屈折力のおよそ70%を占める。角膜の中心部の厚さである中心角膜厚(CCT)は、角膜の安定性において最も重要な因子である。CCTの厚さは、人間では平均530±10μm、動物では300~1500μmと、動物の種類によって決まる。この厚さの値は、緑内障等の疾患の診断パラメータとして眼科医により臨床ルーチンで採用されるのみならず、屈折矯正手術及び角膜移植等の外科手術の手続き上の術前パラメータとして採用される。
【0003】
[0003]健康な眼の場合、角膜は、粘性液体の薄層である涙液膜で覆われている。涙液膜は、約5μmで、眼の外側粘膜面を覆っている。涙液膜は、眼表面と周囲環境との間に界面を形成する。涙液膜の厚さが薄い場合は、ドライアイ疾患と称する状態になる。その症状は、軽い眼の熱感及びかゆみから、重症の場合は角膜穿孔に至るまで様々である。
【0004】
[0004]眼圧は、眼内の液体の絶え間ない再生よって生じる圧力であり、緑内障等の疾患があると上昇する。
【0005】
[0005]緑内障は、放っておくと眼に不可逆的なダメージをもたらす慢性的な末期疾患である。緑内障の患者は、完全に変性するまで、徐々に中心視野を失う。眼圧が高い人は、緑内障になるリスクが高い。疾患の診断が適時であれば、疾患管理を効果的に向上可能である一方、診断が遅れると後遺症が残る可能性もあり、より複雑な治療が必要となる。
【0006】
[0006]眼圧(IOP)は、緑内障等の眼疾患の適時診断において有効な役割を果たす眼の診断パラメータである。眼圧を正確に測定することは、緑内障患者の診断の向上に役立つ。
【0007】
[0007]角膜界面を通したIOPの直接測定により、CCTは、眼圧の測定値に影響を及ぼす。これは、CCT及びIOPの同時測定のための確実な技術がないことから、系統的に無視されている。結果として、IOP測定には系統的誤差を伴うことが多い。IOP値は、a)未補正IOP及びb)補正IOPとして、2つの方法で規定され得る。
【0008】
[0008]未補正IOPは、角膜の実際の厚さを考慮することなく、予め設定された固定的なCCT基準値すなわち530μmを用いて測定される。例えば米国特許出願公開第2018/368681A1号には、未補正IOPを測定するための装置及び方法が記載されている。未補正IOPを測定するための既存の装置は、一般的に安価ではあるものの、特に以前に屈折矯正手術を受けたことがあり、通常よりもCCTが薄い眼で測定する場合には、十分な精度を得られない。IOPの不正確さは、CCTが広い範囲に及ぶ様々な動物での測定に際しても問題となる。
【0009】
[0009]補正眼圧は、中心角膜厚が眼圧に及ぼす影響を特定の基準厚さに対して一元化するために用いられるパラメータである。補正眼圧は、未補正の場合よりも正確且つ重要であって、より高価且つ高度な機器を必要とする。現在の技術では、角膜厚及び未補正眼圧が独立して測定された後、測定パラメータによって補正IOPが計算される。これらの測定にはそれぞれ、高価な装置を必要とする。
【0010】
[00010]今日、LASIK(レーザin-situ角膜曲率形成術)、LASEK(レーザ上皮下角膜切除術)、及びPRK(屈折矯正角膜切除術)等のレーザ手術(表面切除)に対する需要が大きくなっており、このような治療介入を受けた人の角膜厚は著しく薄くなっている。これらの人々は、IOPが未補正で測定される場合、IOPの過小評価ひいては緑内障の誤診のリスクを抱えやすい。
[001]したがって、補正眼圧等の眼科パラメータをより簡単、迅速、且つ安価に測定する方法が明らかに求められている。
【発明の概要】
【0011】
[00011]本開示の目的は、眼圧、角膜厚、涙液膜厚、及び補正眼圧等の眼科パラメータを決定するためのコンピュータ実装方法を提供することである。
【0012】
[00012]他の目的は、このような眼科パラメータを計算するためのコンピュータプログラム、システム及び方法を提供することである。
【0013】
[00013]本発明は、添付の独立請求項により規定される。非限定的な実施形態については、従属請求項、添付の図面、及び以下の説明から明らかとなる。
【0014】
[00014]第1の態様によれば、対象者の眼の角膜外面に向かう第1の方向におけるプローブ本体の移動の間、眼で完全に停止となる場合のプローブ本体の端部の角膜外面との衝突の間、及び第1の方向と反対の第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間のプローブ本体の登録された速度及び時間を含む時間-速度曲線を分析するためのコンピュータ実装方法であって、プローブ本体の端部が角膜外面と最初に衝突する時点とプローブ本体が眼で完全に停止となる時点との間の時間-速度曲線の勾配として、眼の眼圧を計算するステップと、プローブ本体の端部の角膜外面との接触の瞬間の時間-速度曲線におけるプローブ本体の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間にプローブ本体が角膜外面を離れる瞬間の時間-速度曲線におけるプローブ本体の速度Vと、を使用して、中心角膜厚を計算するステップと、を含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0015】
[00015]プローブ本体は、眼で完全に停止となった場合、第1の方向にも第2の方向にも速度を持たない。
【0016】
[00016]ここで、角膜外面の中心エリアは、眼の瞳孔の中央のエリアを指す。中心エリアの直径としては、2mm未満も可能である。
【0017】
[00017]プローブの端部の角膜外面との接触の瞬間のプローブ本体の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間にプローブ本体の端部が角膜外面を離れる瞬間のプローブ本体の速度Vと、を使用することにより、中心角膜厚が速さ-速度曲線から計算される。この計算には、時間-速度曲線の如何なる非線形関数、線形関数、又は区分線形関数が用いられるようになっていてもよい。
【0018】
[00018]得られる眼圧は、いわゆる未補正眼圧であり、角膜の実際の厚さを考慮せずに得られる。この圧力の計算時、勾配は、例えば当該勾配上の一様に分布した3つの点を使用することにより、平均勾配として測定され得る。
【0019】
[00019]以前に屈折矯正手術を受け、角膜の厚さが通常より薄い眼の場合、未補正眼圧は、正しくない眼圧となる場合がある。さらに、角膜厚は、様々な動物において広い範囲に及ぶ。
【0020】
[00020]このコンピュータ実装方法において、未補正眼圧及び角膜の中心エリアの厚さは、同じ時間-速度曲線から計算される。そして、このコンピュータ実装方法では、これら両者の値を使用して、補正眼圧を計算するようにしてもよい。
【0021】
[00021]第2の態様によれば、プログラムがコンピュータにより実行された場合に、対象者の眼の角膜外面に向かう第1の方向におけるプローブ本体の移動の間、眼で完全に停止となる場合のプローブ本体の端部の角膜外面との衝突の間、及び第1の方向と反対の第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間のプローブ本体の登録された速度及び時間を含む時間-速度曲線の分析をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラムであって、プローブ本体の端部が角膜外面と最初に衝突する時点とプローブ本体が眼で完全に停止となる時点との間の時間-速度曲線の勾配として、眼の眼圧をコンピュータに計算させ、プローブ本体の端部の角膜外面との接触の瞬間の時間-速度曲線におけるプローブ本体の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間にプローブ本体が角膜外面を離れる瞬間の時間-速度曲線におけるプローブ本体の速度Vと、を使用して、中心角膜厚をコンピュータに計算させる、コンピュータプログラムが提供される。
【0022】
[00022]このコンピュータ実装方法又はコンピュータプログラムでは、
D=C・exp(τ)+L(ここで、C及びLは定数である)と、
τ=(V -v )(1-exp(-K logp))/V
(ここで、Kは定数である)と、
から中心角膜厚を計算するようにしてもよい。
【0023】
[00023]C、L、及びKは定数であり、眼圧を調整可能且つ中心角膜厚が異なる人工眼モデルを使用して得られた時間-速度曲線から求めることができる。或いは、定数は、吸引又は液体の眼への注入による加圧のほか、角膜の切断による異なる角膜厚の生成によって、牛等の死亡したばかりの動物の眼の時間-速度曲線から求められ得る。C、L、及びKの値を得るため、角膜厚30μm且つ眼圧10、20、及び30mmHg、角膜厚530μm且つ眼圧10、20、及び30mmHg、並びに角膜厚1500μm且つ眼圧10、20、及び30mmHg等の3つの基準設定が用いられるようになっていてもよい。
【0024】
[00024]このコンピュータプログラムは、計算された角膜厚及び眼圧を使用して、補正眼圧をコンピュータに計算させる命令をさらに含んでいてもよい。
【0025】
[00025]このコンピュータ実装方法は、計算した角膜厚及び眼圧を使用して、補正眼圧を計算するステップをさらに含んでいてもよい。
【0026】
[00026]補正眼圧は、中心角膜厚が眼圧に及ぼす影響を一元化するために用いられるパラメータである。補正眼圧は、未補正の場合よりも正確且つ重要である。通例、補正眼圧の測定には、高価且つ高度な機器を必要とする。現在の技術では、角膜厚及び未補正眼圧が全く同じ時間-速度曲線から計算された後、計算パラメータによって補正圧が計算され得る。したがって、このコンピュータ実装方法及びコンピュータプログラムは、補正眼圧を求める簡単、迅速、且つ費用対効果の高い方法を提示する。
【0027】
[00027]計算された角膜厚及び眼圧に基づき、高度なアルゴリズム及び幾何方程式を用いて新たな曲線(速度、時間)を再構築及び模擬することにより、この新たな曲線から補正眼圧が求められる。
【0028】
[00028]このコンピュータプログラムは、時間-速度曲線から、角膜外面上の涙液膜厚をコンピュータに計算させる命令をさらに含んでいてもよく、涙液膜厚Lは、以下により計算される。
【0029】
[00029]
【数1】

【0030】
[00030]V(t)は、プローブ本体の端部が眼と衝突して眼で完全に停止となる時点から、プローブ本体が眼を離れるまでのプローブ本体の衝突・跳ね返り経路の間に登録されたプローブ本体の速度-時間プロファイルである。(T,V)は、プローブ本体の端部が角膜外面上の涙液膜と最初に衝突する時点であり、(T,V)は、プローブ本体の端部が角膜外面と最初に衝突する時点である。
【0031】
[00031]このコンピュータ実装方法は、時間-速度曲線から、角膜外面上の涙液膜厚を計算するステップをさらに含んでいてもよく、涙液膜厚Lは、以下により計算される。
【数2】


V(t)は、プローブ本体の端部が眼と衝突して眼で完全に停止となる時点から、プローブ本体が眼を離れるまでのプローブ本体の衝突・跳ね返り経路の間に登録されたプローブ本体の速度-時間プロファイルであり、(T,V)は、プローブ本体の端部が角膜外面上の涙液膜と最初に衝突する時点であり、(T,V)は、プローブ本体の端部が角膜外面と最初に衝突する時点である。
【0032】
[00032]健康な眼の場合、角膜は、粘性液体の薄層である涙液膜で覆われており、これは約5μmと考えられる。涙液膜は、眼表面と周囲環境との間に界面を形成する。涙液膜の厚さが十分でない場合は、ドライアイ疾患と称する状態になる。その症状は、軽い眼のかゆみから、重症の場合は角膜穿孔に至るまで様々である。
【0033】
[00033]上述のコンピュータ実装方法及びコンピュータプログラムによれば、全く同じ時間-速度曲線を使用して、涙液厚層、角膜厚、眼圧、及び補正眼圧を計算することができる。
【0034】
[00034]第3の態様によれば、対象者の眼科パラメータを決定するためのシステムであって、プローブ及びプロセッサを備え、プロセッサが、対象者の眼の角膜外面に向かう第1の方向におけるプローブのプローブ本体の移動の間、眼で完全に停止となる場合のプローブ本体の端部の角膜外面との衝突の間、及び第1の方向と反対の第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間のプローブ本体の速度及び時間を登録することと、プローブ本体の登録された速度及び時間から得られる曲線に基づいて、プローブ本体の端部が角膜外面と最初に衝突する時点とプローブ本体が眼で完全に停止となる時点との間の勾配として、眼の眼圧を計算することと、時間-速度曲線に基づいて、プローブ本体の端部の角膜外面との接触の瞬間のプローブ本体の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返り移動の間にプローブ本体の端部が角膜外面を離れる瞬間のプローブ本体の速度Vと、を使用して、中心角膜厚を計算することと、を行うように構成された、システムが提供される。
【0035】
[00035]プローブは、プローブ本体が角膜外面の中心エリアに向かって第1の方向に移動する前に、プローブ本体の端部が角膜外面からある距離となるように配置される。このような距離は、例えば3~8mmであってもよい。
【0036】
[00036]プローブ本体の端部は、角膜外面及び瞳孔と実質的に垂直な方向で角膜外面と衝突するようになっていてもよい。これは、その方向が厳密に垂直であるか、又は、厳密な垂直から最大±2.5°まで逸脱していてもよいことを意味する。
【0037】
[00037]角膜厚の測定は、角膜の中心から1mmの近傍で実行される場合に信頼性が高いと考えられる。この円の外側では、測定厚さが中心角膜厚を示さない場合もある。
【0038】
[00038]上述のシステムにおいて、プローブは、第1の端部及び反対の第2の端部を有する磁性プローブ本体と、第1の端部及び反対の第2の端部を有する非磁性チューブであり、磁性プローブ本体が内部に摺動可能に配置され、プローブ本体の第1の端部及び当該チューブの第1の端部が同じ方向に配向した、非磁性チューブと、を備えていてもよい。また、チューブにおける第1の位置から第2の位置まで、少なくともプローブ本体の第1の端部がチューブの第1の端部から延出する第2の位置まで、第1の方向にプローブ本体を移動させるように構成された磁界が存在し、プローブ本体の第1の端部は、第2の位置において、対象者の眼の角膜外面と衝突するように構成されていてもよい。
【0039】
[00039]このシステムは、非磁性チューブの第2の端部に配置され、チューブと同心状に位置合わせされた光学ユニットであり、当該光学ユニットから放出された光が非磁性チューブを通過し、非磁性チューブの第1の端部に向かって通過し、チューブの第1の端部からある距離で垂直に配置された角膜外面に向かうことで、角膜外面から反射され、プローブの第1の端部が角膜外面と衝突する角膜外面上のエリアを示すように構成された、光学ユニットをさらに備えていてもよい。
【0040】
[00040]光学ユニットは、プローブ本体を角膜外面に向かって移動させる前に、プローブ本体が角膜外面に向かって移動する場合の移動方向である角膜外面に向かう方向に光を放出することにより、角膜外面に対するプローブ本体の端部の衝突の位置の制御に用いられるようになっていてもよく、角膜外面から反射された光は、プローブ本体の端部が角膜外面と衝突する角膜外面上のエリアを示す。任意選択として、プローブ本体の端部が角膜外面と衝突する位置は、角膜外面上の光が示す位置に基づいて、プローブ本体の位置を角膜外面に対して調整することにより調整可能である。
【0041】
[00041]光の放出には、プローブ本体の経路と位置合わせされた円筒状且つ同心状の光路が用いられるようになっていてもよい。例えばLED光源を用いることにより放出される光は、角膜表面での直径がおよそ2.6mmで、プローブ本体が角膜外面と衝突するエリアを示す円形光を生成するようにしてもよい。
【0042】
[00042]したがって、プローブ本体の端部が衝突する角膜表面のエリアが角膜の中心エリアとなり得る。
【0043】
[00043]プローブ本体の端部が角膜外面に衝突する表面が既に、角膜外面の中心部に存在することを反射光が示す場合は、調整の必要がない。
【0044】
[00044]放出される光は、同期光であってもよい。
【0045】
[00045]光学ユニットは、非磁性チューブの内側に配置されていてもよい。
【0046】
[00046]上述のシステムは、計算された眼科パラメータを表示するためのディスプレイをさらに備えていてもよい。
【0047】
[00047]表示される眼科パラメータは、眼圧、中心角膜厚、補正角膜圧、及び涙液膜厚のうち1つ又は複数であってもよい。
【0048】
[00048]第4の態様によれば、対象者の眼科パラメータを決定する方法であって、第1の端部及び反対の第2の端部を有するプローブ本体を用意するステップと、プローブ本体の端部が対象者の眼の角膜外面からある距離となるようにプローブ本体を配置するステップと、プローブ本体の端部が角膜外面と衝突して、眼で完全に停止となるまで、プローブ本体を角膜外面の中心エリアに向かって第1の方向に移動させるステップと、プローブ本体が第1の方向に移動する場合のプローブ本体の衝突経路の間、プローブ本体が角膜外面と衝突して眼で完全に停止となるまでの間、及びプローブ本体が眼での完全停止から、第1の方向と反対の第2の方向に、眼を離れるまで移動する場合のプローブ本体の跳ね返り経路の間のプローブ本体の速度及び時間を登録するステップと、を含む、方法が提供される。また、プローブの登録された速度及び時間から得られる曲線に基づいて、プローブ本体の端部が角膜外面と最初に衝突する時点とプローブ本体が眼で完全に停止となる時点との間の勾配として、眼の眼圧を計算するとともに、前記時間-速度曲線に基づいて、プローブ本体の端部の角膜外面との接触の瞬間のプローブ本体の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体の跳ね返りの間にプローブ本体の端部が角膜外面を離れる瞬間のプローブ本体の速度Vと、を使用して、中心角膜厚を計算する。
【0049】
[00049]また、この方法は、計算した眼圧及び角膜厚に基づいて、補正眼圧を計算するステップをさらに含んでいてもよい。
【0050】
[00050]この方法は、上述のシステムを用いて実行されるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】[00051]図1は、磁界中を移動するように構成された磁性プローブ本体を備え、デバイスがプローブ本体の移動の間、眼の角膜外面との衝突の間(衝突段階)、及びプローブの跳ね返りの間のプローブ本体の登録された速度及び時間に基づく患者の眼の眼科パラメータの測定に用いられるシステムを示した図である。
【0052】
図2】[00052]図2は、ケーシングに配置された図1のシステムを示した図である。
【0053】
図3】[00053]図3は、a)プローブ本体が角膜外面を覆う涙液膜と衝突する位置、b)プローブ本体が角膜外面と衝突する位置、c)プローブ本体が眼で停止となる位置、d)プローブ本体が眼を離れる位置といった眼の異なる位置における図1に示すシステムのプローブ本体の速度対時間のグラフである。
【0054】
図4】[00054]図4は、対象者の眼科パラメータを測定するための方法を模式的に示した図である。
【0055】
図5】[00055]図5及び6は、図3に示すものと同じ種類のグラフであり、角膜厚の各値及び元のグラフ(実線)から計算される眼圧を用いて再構成され、補正眼圧の計算に用いられる再構成グラフ(破線)である。
図6】[00055]図5及び6は、図3に示すものと同じ種類のグラフであり、角膜厚の各値及び元のグラフ(実線)から計算される眼圧を用いて再構成され、補正眼圧の計算に用いられる再構成グラフ(破線)である。
【発明の詳細な説明】
【0056】
[00056]角膜の中心部の厚さである中心角膜厚(CCT)は、角膜の安定性において最も重要な因子であり、人間では平均530±10μm、動物では300~1500μmと、動物の種類によって決まる。この厚さの値は、緑内障等の疾患の診断パラメータとして眼科医により臨床ルーチンで採用されるのみならず、屈折矯正手術及び角膜移植等の外科手術の手続き上の術前パラメータとして採用される。
【0057】
[00057]健康な眼の場合、角膜は、粘性液体の薄層である涙液膜(約5μm)で覆われている。涙液膜は、眼表面と周囲環境との間に界面を形成する。涙液膜の厚さが薄い場合は、ドライアイ疾患と称する状態になる。その症状は、軽い眼のかゆみから、重症の場合は角膜穿孔に至るまで様々である。
【0058】
[00058]眼圧は、眼内の液体の絶え間ない再生よって生じる圧力であり、緑内障等の疾患があると上昇する。
【0059】
[00059]眼圧を正確に測定することは、緑内障患者の診断の向上に役立つ。眼圧は、a)未補正又はb)補正圧として、2つの方法で規定され得る。
【0060】
[00060]未補正圧は、角膜の実際の厚さを考慮することなく測定されるため、特に以前に屈折矯正手術を受けたことがあり、通常よりも角膜が薄い眼で測定する場合には、十分な精度を得られない。
【0061】
[00061]補正眼圧は、中心角膜厚が眼圧に及ぼす影響を一元化するために用いられるパラメータである。補正眼圧は、未補正の場合よりも正確且つ重要であって、従来、より高価且つ高度な機器を必要とする。現在の技術では、角膜厚及び未補正眼圧が独立して測定された後、測定パラメータによって補正圧が計算される。
【0062】
[00062]以下、全く同じ時間-速度曲線から、角膜厚、涙液膜厚、未補正眼圧、及び補正眼圧等の眼科パラメータを計算するためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、システム1、及び方法について説明する。
【0063】
[00063]図1には、磁界中を移動するように構成された磁性プローブ2を備えた非侵襲システム1を示す。このシステムは、人間又は動物の患者の眼の眼科パラメータの測定に使用され得る。図2には、ケーシングに配置され、計算された眼科パラメータを表示するためのディスプレイ20を備えた図1のシステムを示す。図4には、このシステムで眼科パラメータを測定する方法を模式的に示す。
【0064】
[00064]システム1は、第1の端部2a及び反対の第2の端部2bを有する磁性プローブ2を備える。プローブは、第1の端部4a及び反対の第2の端部4bを有する非磁性チューブ4中に配置されていてもよい。磁性プローブ2は、非磁性チューブ中に摺動可能に配置されていてもよく、プローブの第1の端部2a及びチューブの第1の端部4aが同じ方向に配向している。プローブ2は、磁界中を移動するように構成されている。磁界は、一組のコイル6a、6bにより与えられるようになっていてもよい。
【0065】
[00065]図1に示すように、磁界によってプローブ2がチューブ4中で第1の方向に加速することにより、プローブ2の第1の端部2aがチューブ4の第1の端部4aから延出するようになっていてもよい。また、第1のコイル6aが電圧の供給により作動して、プローブが第1の方向に押されるようになっていてもよい。
【0066】
[00066]プローブ本体2を用意し(100)、プローブ2の第1の端部2aが対象者の眼の角膜外面からある距離となるようにプローブ2を配置した(101)ことにより、第1の端部2aが角膜外面と垂直な方向に衝突して眼で完全に停止となる(プローブ本体2の衝突経路)まで、プローブ2が磁界により角膜外面の中心エリアに向かって第1の方向に移動し得る(102)。プローブ本体2を用意し(100)、プローブ2の第1の端部2aが対象者の眼の角膜外面からある距離(3~8mm等)となるように配置してもよい(101)。
【0067】
[00067]プローブ本体2は、眼の角膜外面と接触したら、減速を開始して、眼から跳ね返る。その結果、眼圧によって決まる電圧が第2のコイル6bに誘起される。このプローブ本体2の電圧及び速度が第2のコイル6bにより検出され、プロセッサ5により登録されるようになっていてもよい(103)。第2のコイル6bの出力の結果としての登録された増幅信号(速度-時間)の波形を図3のグラフに示す。位置a)では、プローブ本体2が角膜外面を覆う涙液膜と衝突し、位置b)では、プローブ本体が角膜外面と衝突し、位置c)では、プローブ本体が眼で停止となり、位置d)では、プローブ本体が眼を離れる(すなわち、プローブ本体2の跳ね返り経路には均一な涙液膜が存在しないため、プローブ2の第1の端部2aが角膜外面から後退する)。
【0068】
[00068]コンピュータにより実行された場合に、図3に示す曲線のような時間-速度曲線の分析をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラムが用いられるようになっていてもよい。時間-速度曲線は、上述のシステムを用いることにより登録されていてもよいし、同じ種類の速さ-速度曲線を与える別のシステムを用いることにより登録されていてもよい。
【0069】
[00069]コンピュータプログラムは、プローブ本体2の端部が角膜外面と最初に衝突する(b)時点とプローブ本体2が眼で完全に停止となる(c)時点との間の時間-速度曲線の勾配として、眼の眼圧pをコンピュータに計算させるとともに、プローブ本体2の端部2aの角膜外面との接触の瞬間(b)の時間-速度曲線におけるプローブ本体2の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体2の跳ね返り移動の間にプローブ本体2が角膜外面を離れる瞬間の時間-速度曲線におけるプローブ本体2の速度Vと、を使用して、中心角膜厚Dをコンピュータに計算させるようにしてもよい。
【0070】
[00070]このコンピュータプログラムは、プロセッサ5により用いられるようになっていてもよい。このコンピュータプログラムにより実行された計算は、ディスプレイ20に表示されるようになっていてもよい。
【0071】
[00071]図3に示すような時間-速度曲線の分析には、コンピュータ実装方法が用いられるようになっていてもよい。時間-速度曲線は、上述のシステムを用いることにより登録されていてもよいし、同じ種類の速さ-速度曲線を与える別のシステムを用いることにより登録されていてもよい。このコンピュータ実装方法は、プローブ本体2の端部が角膜外面と最初に衝突する(b)時点とプローブ本体2が眼で完全に停止となる(c)時点との間の時間-速度曲線の勾配として、眼の眼圧pを計算することと、プローブ本体2の端部2aの角膜外面との接触の瞬間(b)の時間-速度曲線におけるプローブ本体2の速度Vと、第2の方向におけるプローブ本体2の跳ね返り移動の間にプローブ本体2が角膜外面を離れる瞬間の時間-速度曲線におけるプローブ本体2の速度Vと、を使用して、中心角膜厚Dを計算することと、を含んでいてもよい。このコンピュータ実装方法は、プロセッサ5により用いられるようになっていてもよい。このコンピュータ実装方法において実行された計算は、ディスプレイ20に表示されるようになっていてもよい。時間-速度曲線は、上述のシステムを用いることにより登録されていてもよいし、同じ種類の速さ-速度曲線を与える別のシステムを用いることにより登録されていてもよい。
【0072】
[00072]中心角膜厚Dは、例えば
D=C・exp(τ)+L(ここで、C及びLは定数である)と、
τ=(V -v )(1-exp(-K logp))/V
(ここで、Kは定数であり、Vは、プローブ本体2の衝突経路におけるプローブ2の第1の端部2aの角膜外面との接触の瞬間(b)のプローブ2の速度であり、Vは、プローブ本体2の跳ね返り経路においてプローブ本体2の第1の端部2aが角膜外面を離れる瞬間のプローブ本体2の速度である)と、
から計算されるようになっていてもよい(105)。
【0073】
[00073]上記のように得られる眼圧は、いわゆる未補正眼圧であり、角膜の実際の厚さを考慮せずに得られる。この圧力の計算時、勾配は、平均勾配
p=Δプローブ速度/Δ時間
として測定されるようになっていてもよく、これを図3に示す。この圧力は、勾配上の3つの点を用いることにより計算されるようになっていてもよい。涙液層の眼への影響を排除するため、角膜外面と衝突した後の曲線の初期点を勾配の計算から外すことも可能である。
【0074】
[00074]衝突経路における曲線の下側の面積は、眼の内方へのプローブ本体の長手方向移動の量である。跳ね返り経路における曲線の下側の面積は、衝突経路の下側の面積に等しい。眼圧は、衝突経路又は跳ね返り経路におけるプローブ本体の長手方向移動の量と逆相関する(図3参照)。
【0075】
[00075]プローブ本体2は、磁性を有する鉄ロッドであってもよく、また、その第1の端部2aにプラスチックキャップ(プローブ先端)が備わっていてもよい。非磁性チューブ4(プーリーシリンダの形態であってもよい)には、2つのコイル6a、6bが存在する。各コイルが電気パルスにより励起されると、非磁性チューブ4の内側に比較的強い磁界が生じて、プローブ本体2をチューブ4中で移動させる。非磁性チューブ4は、アルミニウムで構成されていてもよい。
【0076】
[00076]角膜厚は、角膜外面に衝突した後のプローブ本体2の機械的エネルギーの損失の割合と極めて直接的な論理的関係を有する。エネルギー損失は、眼との接触の瞬間の圧縮率と眼の圧縮が解かれる瞬間の加速度との間の差を計算することにより求められる。
【0077】
[00077]これらの運動エネルギーの損失のうちの一部(10%未満)は、眼の内側の粘弾性液体(ゲル状液体)によって眼圧が形成されることに起因し、眼の内側のゲル状液体によるエネルギー損失の量は、圧力の大きさに等しい。眼の圧力が低いほど損失が大きくなり、圧力が高いほど損失が小さくなる。眼との接触の瞬間の圧縮速度がVであり、眼を離れる瞬間のプローブ本体の速度がVである。
【0078】
[00078]両瞬間の圧縮運動エネルギーE(衝突時の圧縮運動エネルギー)、プローブ本体が眼を離れる際の運動エネルギーEのほか、エネルギー損失及び角膜厚は、以下の式の通りである。
【0079】
[00079]
=0.5mV 、及びE=0.5mV 、及び
tp=(E-E)=0.5m(V -V
【0080】
[00080]Etpは、角膜厚(全損失の90%を上回る)及び眼圧(眼の内側のゲル状液体(全エネルギー損失の10%未満))と関連するエネルギー損失の総量を有し、Eは眼圧によるエネルギー損失率、Eは角膜によるエネルギー損失量、mは質量である。したがって、角膜によるエネルギー損失量は、以下の式から求められる。
=Etp(1-exp(-K・logp))(ここで、Kは定数であり、pは眼圧であり、expは数学的指数関数であり、logは数学的対数関数であり、Eは角膜によるエネルギー損失であり、Etpは角膜及び眼圧による全エネルギー損失である)
眼及び
/Eの量は、角膜の厚さを示し、角膜の厚さの大きさは、角膜によるエネルギー損失量と相関する。
【数3】

【0081】
[00081]定数C及びLは、広範な角膜厚を測定できるように、装置の予備校正手順において求めることができ、通常は、100マイクロメートル~1500マイクロメートルの範囲に及ぶ。システム設定において、C及びLはそれぞれ、例えば781及び805の値となり得る。
【0082】
[00082]上述の一例においては、V=2m/s、V=1.6m/s、K=3、p=7mmHg、C=781、及びL=-805といった値のパラメータ及び定数を用いることにより、中心角膜厚Dを530マイクロメートルと算出した。
【0083】
[00083]この方法は、プローブ本体2を角膜外面(b)に向かって移動させる(102)前に、プローブ本体2が角膜外面に向かって移動する(102)場合の移動方向である角膜外面に向かう方向に光を放出することにより、角膜外面に対する第1の端部2aの衝突(b)の位置を制御すること(101b)をさらに含んでいてもよい。角膜外面から反射された光は、プローブ2の第1の端部2aが角膜外面と衝突する角膜外面上のエリアを示す。その後、任意選択として、角膜外面上の光が示す位置に基づいて、プローブ2の位置を角膜外面に対して調整することにより、プローブ2の第1の端部2aが角膜外面と衝突する位置が調整される。
【0084】
[00084]光を放出するため、光学ユニット7が非磁性チューブ4の第2の端部4bに配置されていてもよく、当該光学ユニット7から放出された光が非磁性チューブ4を通過し、非磁性チューブ4の第1の端部4aに向かって通過し、チューブ4の第1の端部4aからある距離で垂直に配置された角膜外面(b)に向かうことで、角膜外面から反射され、プローブ本体2の第1の端部2aが角膜外面と衝突する角膜外面上のエリアを示すように構成されていてもよい。放出された光が患者に見えることから、眼の表面と衝突した光の位置が装置のユーザに示される。ユーザは、患者の眼からの反射光を使用して、患者の眼の中心垂直位置を主観的に見出す。
【0085】
[00085]この方法は、プロセッサによって、角膜外面上の涙液膜厚Lを計算するステップ(106)をさらに含んでいてもよく、涙液膜厚Lは、以下から求められる。
【数4】


V(t)は、プローブ本体2が眼と衝突して(b)完全に停止となる(c)時点から、プローブが眼を離れる(d)までのプローブ本体2の衝突・跳ね返り経路の間に登録されたプローブ本体2の時間-速度プロファイルであり、(T,V)は、プローブ本体2の第1の端部2aの外側先端が角膜外面上の涙液膜と最初に衝突する(a)時点であり、(T,V)は、プローブ本体2の第1の端部2aが角膜外面と最初に衝突する(b)時点である。
【0086】
[00086]涙腺層(涙液層)は、角膜と空気との間の中間的な液体であり、角膜(固体)及び空気(気体)とは異なる物質(液体)である。これは、角膜層における圧縮運動及び圧縮停止係数とは異なる停止係数を有する。角膜中の圧縮係数がε、涙液層中の圧縮係数がε、空気中の圧縮係数がεである場合は、以下が成り立つ。
ε<ε<ε
結果として、圧縮停止の加速度すなわち屈曲の結果としての速度-時間曲線と同じ勾配が得られることになる。図3に示すグラフ中の戻りは、以下のようになる。Slopeは、圧縮加速度である。
Slope<Slope<Slope
結果として、空気から涙液又は眼層の最初の点までの圧縮の点(T、V)を認識した後、角膜での圧縮の点(T、V)を認識することにより、これらの2点における圧縮距離の大きさすなわち涙液層の厚さが以下のように求められる。
【数5】


(ここで、Lは涙液層の厚さであり、V図3におけるプローブ2の戻りの結果としての速度-時間曲線であり、tは時間の単位である)
【0087】
[00087]計算された角膜厚D及び眼圧pに基づいて/計算された角膜厚D及び眼圧pを使用することにより、補正眼圧PCが計算されるようになっていてもよい(107)。これは、以下のように実行されるようになっていてもよく、図5及び図6のグラフに示す通りである。
【0088】
[00088]図5には、第1の方向へのプローブ本体の移動中のプローブの衝突経路の間、角膜外面と衝突して眼で完全に停止となる間、及び第1の方向と反対の第2の方向におけるプローブ本体2の跳ね返り経路の間のプローブ本体2の登録された速度及び時間を実線として示す。本例において、この信号により求められた角膜厚は580μmであり、計算された眼圧は20mmHgであった。
【0089】
[00089]そして、この測定信号は、「通常」の530μmの角膜厚(人間の角膜厚の平均が530±10μmである)及び20mmHg未満の眼圧に対して再構成可能である。測定される角膜厚が580μmと厚い場合は、装置における圧力測定結果が高くなるため、20mmHg未満の圧力が使用される。
【0090】
[00090]測定信号は、以下のように再構成信号(図5の破線)として再構成可能である。
1)角膜厚が530ミクロンの場合のVは、τの方程式から求められる(上記参照)。
2)Vは、測定信号に対して求められたVと同じである。
3)プローブ本体2の跳ね返り経路の勾配率は、測定・再構成された値V及び時間から求められる。
4)プローブ本体の跳ね返り経路における経時的な速度の大きさは、勾配率及び実際の信号に基づいて点ごとに計算される。
5)プローブ本体の跳ね返り経路における再構成曲線の下側の面積は、計算される(眼の表面におけるプローブの落ち込み量)。
6)衝突段階における落ち込み量は、跳ね返り段階と同じである。
7)衝突段階の勾配率と跳ね返り段階の勾配率との比は、実際の測定信号(角膜の生体力学特性)において計算され、再構成信号と同じであるものとする。その後、衝突段階の勾配率が計算される。
8)速度-時間曲線は、衝突段階の勾配率及び信号の落ち込みに基づいて、衝突段階に対して再構成される。
9)補正眼圧は、再構成曲線を用いることにより計算される。
【0091】
[00091]そして、プローブ本体2の第1の端部2aが角膜外面と最初に衝突する(b’)時点とプローブ本体2が眼で完全に停止となる(c)時点との間の図5に示す勾配として、再構成曲線から補正眼圧CPが計算されるようになっていてもよい。
【0092】
[00092]図6には、登録された速度-時間信号から得られた角膜厚が450μmで、計算された眼圧が20mmHgである一例を示す。この信号は、530μmの角膜厚及び20mmHg超の眼圧に基づいて再構成されたものであり(角膜が薄いと、装置での圧力測定結果が低くなるためである)、図6においては破線として示している。そして、プローブ2の第1の端部2aが角膜外面と最初に衝突する(b’)時点とプローブ本体2が眼で完全に停止となる(c)時点との間の図6に示す勾配として、再構成曲線からCPが計算される。
【0093】
[00093]計算の精度を高くするため、計算されるパラメータは、複数(例えば、2~4つ)の測定結果又は時間-速度曲線の平均値であってもよい。
【0094】
[00094]このシステムは、麻酔薬の点眼の必要なく用いられるようになっていてもよい。
【0095】
[00095]第1のコイル6aは、およそ10ms間にわたって作動するようになっていてもよく、生成された磁界によって、プローブ本体2が最初のおよそ10mmの移動において、一定の安定した速度で眼に向かって移動する。速度の大きさは、第2のコイル6bによってモニタリングされる。プローブ本体2の端部2aは、涙液膜と衝突した後、角膜の外面と衝突する。プローブ本体は、角膜表面で完全に停止となるまで角膜を圧縮することになる(衝突段階)。その後、眼の眼圧によって、プローブ本体が眼を完全に離れるまで逆方向に移動する(跳ね返り段階)。衝突及び跳ね返り段階の速度プロファイルは、システムに登録される。プローブ本体2が眼を離れたことをプロセッサが検出した場合は、(およそ100ms以内の)第2のコイル6bの作動によって、プローブがその開始位置に戻される。
【0096】
[00096]目標に対する衝突及び跳ね返り段階の合計時間は、未補正眼圧が70mmHgの場合で1ms前後、未補正眼圧が7mmHgの場合で5ms前後となる。
【0097】
[00097]プローブ本体2の速度を制御するため、第1のコイル及び第2のコイル6a、6bはそれぞれ、2ms~3msの間及び4ms~5msの間等の短い間隔で順次、複数回にわたって作動させるようにしてもよい。プローブ本体の速度が特定の値から逸脱した場合は、例えばディスプレイ20上でシステムのユーザに警告が表示されるようになっていてもよい。このプロセスは、複数回の試行から成る測定全体で1回だけ実行される。
【0098】
[00098]システム1は、携帯型システムであってもよいし、デスクトップシステムであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】