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特表2023-550408切削ツールの貫通深さを特定するための外科システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】切削ツールの貫通深さを特定するための外科システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B17/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530065
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2021059890
(87)【国際公開番号】W WO2022109135
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,590
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】シャーマ,ラフル
(72)【発明者】
【氏名】ランバート,トレバー・ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL09
(57)【要約】
骨の近位皮層及び骨の遠位皮層を貫通する骨の穴の貫通深さを特定するための外科システムである。外科システムは、切削ツールに結合するための器具を含む。切削ツールが骨を切り通す際に、切削ツールの1つ又は複数の深さ測定を生成するためにセンサが器具に結合される。貫通深さは、切削ツールが骨の近位皮層を貫通した後になされる深さ測定に基づいて特定される。貫通深さは、任意選択で、切削される骨のタイプ、骨の硬さ、及び切削ツールの選択に基づく。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ツールを使用して骨に切り込むための外科システムであって、
切削プロセスの間、前記切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成される第1のセンサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、初期切削時間から最終切削時間までの、骨に対する前記切削ツールの変位データを特定するように構成され、前記変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値と、骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値と、を含み、
前記コントローラは、近位皮質閾値を受け取るように構成され、前記近位皮質閾値は、前記近位皮質の遠位であり、かつ、前記遠位皮質の近位である変位値を示し、
前記コントローラは、前記変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するように構成され、
前記コントローラは、前記近位皮質閾値の完全に遠位である前記遠位皮質加速度データに基づいて穴の貫通深さを特定するように構成される、
外科システム。
【請求項2】
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された電動機と、を有する器具を更に備え、前記電動機が、穴あけプロセスの間、ドリルビットに回転トルクを加えるように構成される、請求項1に記載の外科システム。
【請求項3】
ユーザ入力デバイスを更に備え、前記ユーザ入力デバイスがユーザから骨タイプを受け取るように構成され、前記近位皮質閾値が、前記受け取った骨タイプの関数として定義される、請求項1に記載の外科システム。
【請求項4】
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された電動機と、を有する器具を更に備え、前記電動機が前記切削ツールを動作させるように構成され、前記ユーザ入力デバイスが前記器具に結合される、請求項3に記載の外科システム。
【請求項5】
切削プロセスの間、前記切削ツールの変位を測定するように構成される測定モジュールを更に備え、前記測定モジュールが前記ハウジングに結合されるように構成される、請求項4に記載の外科システム。
【請求項6】
前記ユーザ入力デバイスが前記器具及び前記測定モジュールとは別で、遠隔である、請求項5に記載の外科システム。
【請求項7】
前記コントローラがメモリユニットを更に備え、前記メモリユニットが前記近位皮質閾値を記憶し、前記システムが少なくとも2つのドリルビットを更に含み、前記少なくとも2つのドリルビットの各々が異なる性能特徴を有し、前記システムが前記少なくとも2つのドリルビットの各々に対して同じ近位皮質閾値を利用するように構成される、請求項2に記載の外科システム。
【請求項8】
前記器具が第2のセンサを備え、前記第2のセンサが前記切削ツールの識別特徴に基づいて前記切削ツールの性能特徴を特定するように構成される、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項9】
前記コントローラがメモリユニットを更に備え、前記メモリユニットが、切削ツール識別特徴に相関された性能特徴を有するルックアップテーブルを記憶し、前記コントローラが、前記切削ツールの前記性能特徴に相関している前記識別特徴のうちの1つに基づいて近位皮質閾値を選択するように構成される、請求項8に記載の外科システム。
【請求項10】
前記近位皮質閾値が、前記切削ツールの性能特徴の関数として、又は骨タイプの関数として定義される、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項11】
前記近位皮質閾値が、切削される骨タイプの関数として定義され、前記骨タイプが、前記システムと共に使用されるプレートオフセットに基づく、請求項1~請求項10のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項12】
前記コントローラが、請求項20~請求項33に明記されているように実施するように更に構成される、請求項1~請求項11のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項13】
前記第1のセンサが測定モジュールに結合される、請求項1~請求項12のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項14】
前記第1のセンサが光学変位センサを備える、請求項1~請求項13のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項15】
前記切削ツールが、ドリルビット、刃、バー、鋸、やすり、ミル、リーマ、及び套管針ピンからなる切削ツールのグループから選択される1つの切削ツールを備える、請求項1及び請求項3~請求項14のいずれか1つに記載の外科システム。
【請求項16】
切削ツールを使用して骨に切り込むための外科システムであって、
切削プロセスの間、前記切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成される第1のセンサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記切削ツールが深さ閾値に対応する深さまで進行した後、前記切削ツールの近位皮質加速事象値を特定するように構成され、
前記コントローラは、前記近位皮質加速事象値が生じる時間に基づいて近位皮質加速事象深さ値を特定するように構成され、
前記コントローラは、前記切削ツールが基準点から前記近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまで進行した後、前記切削ツールの突進スピード値を特定するように構成され、前記突進スピード値は、前記基準点から前記近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまでの前記切削ツールの速度に基づき、
前記コントローラは、前記近位皮質加速事象値及び前記突進スピード値に基づいて骨硬さ係数を特定するように構成され、かつ、前記骨硬さ係数に基づいて穴の貫通深さを特定するように構成される、
外科システム。
【請求項17】
器具と、前記器具に結合されるように構成される測定モジュールと、を更に備え、前記測定モジュールが前記第1のセンサを備える、請求項16に記載の外科システム。
【請求項18】
第2のセンサを更に備え、前記器具は、切削プロセスの間、前記切削ツールに回転トルクを加えるための電流を受け取るように構成された電動機を備え、前記第2のセンサは、前記器具の前記電動機に印加された電流に応答して信号を生成するように構成され、前記コントローラは、前記第2のセンサの出力に基づいて前記電動機のトルクを特定するように構成される、請求項17に記載の外科システム。
【請求項19】
前記器具が器具ハウジングを備え、前記測定モジュールがアタッチメントハウジングを備え、前記第2のセンサ及び前記コントローラが前記器具ハウジング内に配置され、前記第1のセンサが前記アタッチメントハウジング内に配置される、請求項18に記載の外科システム。
【請求項20】
切削ツールによって骨に形成された穴の貫通深さを特定する方法であって、
初期切削時間から最終切削時間までの、骨に対する前記切削ツールの変位データを特定するステップと、
近位皮質閾値を提供するステップと、
前記変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するステップと、
前記近位皮質閾値の完全に遠位である前記遠位皮質加速度データに基づいて前記穴の貫通深さを特定するステップと、
を含み、
前記変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値と、骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値と、を含み、
前記近位皮質閾値は、前記近位皮質の遠位であり、かつ、前記遠位皮質の近位である変位値を示す、方法。
【請求項21】
前記切削ツールの性能特徴に基づいて前記近位皮質閾値を調整するステップを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記切削ツールの識別特徴に基づいて前記切削ツールの前記性能特徴を特定するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記切削ツール識別特徴をメモリに記憶されているルックアップテーブルと比較するステップと、前記ルックアップテーブル及び前記切削ツール識別特徴に基づいて前記切削ツールの前記性能特徴を特定するステップと、を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記切削ツールによって切削される骨タイプに基づいて前記近位皮質閾値を調整するステップを更に含む、請求項20~請求項23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
プレートオフセットを特定するステップと、前記プレートオフセットに基づいて、前記切削ツールによって切削される骨タイプを特定するステップと、を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
外科的処置において使用するために選択される骨プレート又はねじを特定するステップと、前記外科的処置において使用するために選択された前記骨プレート又はねじに基づいて前記プレートオフセットを特定するステップと、を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コントローラのメモリユニットに前記近位皮質閾値を記憶するステップを更に含む、請求項20~請求項26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
異なる性能特徴を有する少なくとも2つのドリルビットの各々に対して全く同じ近位皮質閾値を提供するステップを更に含む、請求項20~請求項27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記遠位皮質加速度データに基づいて1つ又は複数の加速事象を特定するステップと、前記1つ又は複数の加速事象及び加速事象閾値に基づいて貫通深さを特定するステップと、を更に含む、請求項20~請求項28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
前記加速事象閾値が前記切削ツールの性能特徴又は骨タイプに基づく、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ又は複数の加速事象の各々が、前記近位皮質閾値の完全に遠位である前記遠位皮質加速度データに基づく、請求項29又は請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ又は複数の加速事象の各々が、ある時間インターバルにわたる加速度に基づき、前記時間インターバルが、前記近位皮質閾値の完全に遠位である前記変位データに対応する時間期間の一部である、請求項29~請求項31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
前記時間インターバルが前記切削ツールの性能特徴又は骨タイプに基づく、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
切削器具に取り付けられた切削ツールによって骨に形成された穴の貫通深さを特定する方法であって、
切削される骨タイプを特定するステップと、
切削される骨タイプに基づいて深さ閾値を設定するステップと、
前記穴を形成するために前記切削ツールが基準点から骨の中へ進行する際の前記切削ツールの変位に基づいて変位データを特定するステップ、及び、前記変位データと前記変位データに対応する時間データとをメモリユニットに記憶するステップと、
前記変位データに基づいて加速度データを特定するステップと、
前記切削ツールが骨の近位皮質の中へ前記深さ閾値に対応する深さまで進行した後、前記加速度データに基づいて生じた近位皮質加速事象を特定するステップと、
前記加速度データに基づいて前記切削ツールの近位皮質加速事象値を特定するステップと、
前記近位皮質加速事象が生じる時間に基づいて近位皮質加速事象深さ値を特定するステップと、
前記切削ツールの突進スピード値を特定するステップと、
前記近位皮質加速事象値及び前記突進スピード値に基づいて骨硬さ係数を特定するステップと、
前記骨硬さ係数及び前記変位データに基づいて、完全に形成された穴の貫通深さを特定するステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
前記深さ閾値が、特定の骨タイプに対する平均近位皮質厚さに基づく、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記突進スピード値は、前記切削ツールが前記基準点から前記近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまで進行した後に特定され、前記突進スピード値は、前記基準点から前記近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまでの前記切削ツールの速度に基づく、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記突進スピード値は、前記基準点から前記近位皮質加速事象深さ値に対応する前記変位データまでの前記切削ツールの平均速度に基づく、請求項34~請求項36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記近位皮質加速事象値に対応する前記切削ツールの前記変位データに基づいて穿孔厚さ値を特定するステップと、前記近位皮質加速事象値に対応する時間データに基づいて穿孔時間値を特定するステップと、前記穿孔厚さ値及び前記穿孔時間値に基づいて前記突進スピード値を特定するステップと、を更に含む、請求項34~請求項37のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
前記切削ツールの回転スピード値を特定するステップを更に含み、前記近位皮質加速事象値及び前記突進スピード値に基づいて骨硬さ係数を特定するステップは、前記切削ツールの前記回転スピード値と前記近位皮質加速事象値と前記突進スピード値とに基づいて骨硬さ係数を特定するステップとして更に定義される、請求項34~請求項38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
前記切削ツールの前記回転スピード値は、前記切削ツールが前記基準点に位置している時間に対応する時間から、前記近位皮質加速事象深さ値が生じる深さに前記切削ツールが位置している時間に対応する時間までの時間期間の間で特定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記切削ツールのトルクを特定するステップを更に含み、前記骨硬さ係数を特定するステップは、前記切削ツールが前記基準点から前記近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまで進行する際の前記切削ツールのトルクと、前記近位皮質加速事象値と、前記突進スピード値と、に基づく、請求項34~請求項40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記切削器具の電動機に印加された電流を測定するステップを更に含み、前記トルクを特定するステップは、前記切削器具の前記電動機に印加された、前記測定された電流に基づいて前記切削ツールのトルクを特定するステップとして更に定義される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
切削される骨タイプを特定するステップは、前記切削ツールの性能特徴の識別に基づく、請求項34~請求項42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記切削器具内に配置されたセンサ及び前記切削ツールの識別特徴に基づいて前記切削ツールの前記性能特徴を特定するステップを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記切削ツール識別特徴をメモリに記憶されているルックアップテーブルと比較するステップと、前記ルックアップテーブル及び前記切削ツール識別特徴に基づいて前記切削ツールの前記性能特徴を特定するステップと、を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
プレートオフセットを特定するステップと、前記プレートオフセットに基づいて、前記切削ツールによって切削される骨タイプを特定するステップと、を更に含む、請求項34~請求項45のいずれか1つに記載の方法。
【請求項47】
外科的処置において使用するために選択される特定の骨プレート又はねじを特定するステップと、前記外科的処置において使用するために選択された特定の骨プレート又はねじに基づいて前記プレートオフセットを特定するステップと、を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
外科的処置において使用するために選択される特定の骨プレート又はねじを、前記ねじを較正デバイスに挿入することによって特定するステップを更に含む、請求項43~請求項47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
前記深さ閾値の完全に遠位である前記加速度データに基づいて穴全体の貫通深さを特定するステップを更に含む、請求項34~請求項48のいずれか1つに記載の方法。
【請求項50】
前記深さ閾値の遠位である前記加速度データに基づいて1つ又は複数の遠位皮質加速事象を特定するステップと、前記1つ又は複数の遠位皮質加速事象及び遠位皮質加速事象閾値に基づいて前記貫通深さを特定するステップと、を更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記遠位皮質加速事象閾値が前記骨硬さ係数に基づく、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記遠位皮質加速事象閾値は、前記加速度データに基づく数値を含み、より硬い骨に対応する骨硬さ係数に対しては前記数値がより高く設定され、より軟らかい骨に対応する骨硬さ係数に対しては前記数値がより低く設定される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記1つ又は複数の遠位皮質加速事象の各々が、ある時間インターバルにわたる加速度に基づき、前記時間インターバルが、前記深さ閾値の完全に遠位である前記変位データに対応する時間期間の一部である、請求項50~請求項52のいずれか1つに記載の方法。
【請求項54】
前記骨硬さ係数に基づいて前記時間インターバルを特定するステップを更に含む、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外科システム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2020年11月18日に出願した米国仮特許出願第63/115,590号の優先権及び利益を主張するものであり、参照によりこの仮特許出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
従来の医療及び外科的処置には、外科医が外科部位に近づけて処置することができる外科ツール及び器具の使用が決まって必要である。非制限の例として、外傷、スポーツ損傷、変性疾病、関節再建、等々などの様々な筋骨格条件に対処するために、整形外科的処置に関連して、ハンドヘルドドリルなどの回転器具が広く利用されている。ハンドヘルドドリル又は類似の外科器具が使用される処置では、解放可能(取り外し可能)に取り付けることができるドリルビット(drill bit)又は他の外科アタッチメントを異なるスピードで回転させるために、アクチュエータ(例えば電動機)によって選択的に生成される回転トルクが使用されている。
【0004】
外科ハンドピースアセンブリは、ドリルビットがあてがわれる組織に穴(ボア)をあける。穴をあける必要がある外科的処置の1つのタイプは、破損した骨を修復するための外傷処置である。このタイプの処置では、時によってはネイルと呼ばれる細長い棒を使用して、骨の破損した各片が一体に保持される。ネイルを所定の位置に保持するために、1つ又は複数の穴が骨に打ち込まれる。これらの穴は、ネイルに形成されている相補孔と整列して配置される。各々の整列した穴及びネイル孔にねじが挿入される。ねじは骨に対して適切な位置にネイルを保持する。
【0005】
別のタイプの処置では、プレートとして知られているインプラントが骨の破損した各片の外部表面に固着され、それにより各片が一体に保持される。ねじが骨の別々の切片にプレートを保持する。プレートを骨に保持するねじを篏合させるためには、最初に、ねじを受け入れるための穴をあけなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ねじを受け入れる穴を骨にあけるために使用される処置の一環として、穴の深さを知ることが望ましい。この情報により、外科医は、穿孔(あけられた穴)に篏合されるねじのサイズを選択することができる。従って、多くの骨穴形成処置のうちの不可欠の部分は、穴の深さを測定することである。現在、この測定は、しばしば、ドリルとは別の深さゲージを使用して実施されている。そのためには外科医は、ドリルビットを穴から引き抜いた後、深さゲージを穴の中に挿入しなければならない。次に、外科医は、触覚フィードバックに基づいて、ゲージの遠位端のみが穴の開口深くへ展開するようにゲージをセットする。これらのプロセスが完了すると、外科医は、ゲージを読んで穴の深さを特定する。
【0007】
これらのデバイス及び方法を改善する方法及び装置を見つけることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許請求の範囲及び本明細書に含まれている節で定義されている本発明の範囲によれば、発明の概要形態の効果を制限することなく、本開示は、切削ツールを使用して骨に切り込むための外科システムを対象としている。外科システムは、切削プロセスの間、切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成されたセンサと、コントローラとを含む。コントローラは、初期切削時間及び最終切削時間に基づく(初期切削時間から最終切削時間までの)、骨に対する切削ツールの変位データを特定するように構成される。変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値、及び骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。また、コントローラは、近位皮質閾値を受け取るように、又は任意選択で、コントローラのメモリに記憶された近位皮質閾値を有するように構成される。近位皮質閾値は、近位皮質の遠位であり、また、遠位皮質の近位である変位値を示すことができる。コントローラは、変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するように更に構成され、また、近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいて穴(ボア)の貫通深さ(突入深さ)を特定するように更に構成される。
【0009】
従って、本開示の第1の態様によれば、外科システムは、切削プロセスの間、切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成された第1のセンサと、コントローラとを含む。コントローラは、初期切削時間及び最終切削時間に基づく、骨に対する切削ツールの変位データを特定するように構成される。変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値、及び骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。また、コントローラは、近位皮質閾値を受け取るように構成される。近位皮質閾値は、近位皮質の遠位であり、また、遠位皮質の近位である変位値を示す。コントローラは、変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するように更に構成され、また、近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいて穴の貫通深さを特定するように更に構成される。
【0010】
特定の実施態様では、外科システムは、ハウジング及びそのハウジング内に配置された電動機を有する器具を含むことができる。電動機は、切削プロセスの間、切削ツールに回転トルクを加えるように構成することができる。切削ツールはドリルビットであってもよく、また、切削プロセスは穴あけプロセス(drilling process)であってもよい。外科システムは、ユーザから骨タイプ(骨の種類)を受け取るように構成されたユーザ入力デバイスを含むことができる。外科システムは、切削プロセスの間、切削ツールの変位を測定するように構成された測定モジュールを含むことができる。測定モジュールはハウジングに結合することができる。ユーザ入力デバイスは器具及び測定モジュールとは別で、遠隔であってもよい(つまり、ユーザ入力デバイスは器具及び測定モジュールから分離しており、また、遠く離れていてもよい)。ユーザ入力デバイスは、タブレット、スマートフォン又はコンソールであってもよい。器具は第2のセンサを含むことができる。第2のセンサは、切削ツールの識別特徴に基づいて切削ツールの性能特徴を特定するように構成することができる。コントローラはメモリユニットを含むことができる。メモリユニットは、切削ツール識別特徴に相関された切削ツールの性能特徴を有するルックアップテーブルを記憶することができる。外科システムは、外科的処置において使用される骨プレートのプレートオフセットを特定するためのデバイスを含むことができる。第1のセンサは測定モジュールに結合することができる。第1のセンサは光学変位センサ(光変位センサ)であってもよい。切削ツールは、刃(blade)、バー(bur)、鋸(saw)、やすり(rasp)、ミル(mill)、リーマ(reamer)又は套管針ピン(trocar pin)を含むことができる。コントローラはメモリユニットを更に含むことができる。メモリユニットは近位皮質閾値を記憶することができる。システムは少なくとも2つのドリルビットを含むことができる。少なくとも2つのドリルビットの各々は異なる性能特徴を有する。システムは、少なくとも2つのドリルビットの各々に対して同じ近位皮質閾値を利用するように構成することができる。
【0011】
本開示の第2の態様によれば、外科システムは、切削プロセスの間、切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成された第1のセンサを含む。外科システムは、切削ツールが深さ閾値に対応する深さまで進行した後、切削ツールの近位皮質加速事象値を特定するように構成されたコントローラを含む。コントローラは、近位皮質加速事象値が生じる時間に基づいて近位皮質加速事象深さ値を特定するように構成される。コントローラは、切削ツールが基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまで進行した後、切削ツールの突進スピード値を特定するように構成される。突進スピード値は、基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまでの切削ツールの速度に基づく。コントローラは、近位皮質加速事象値及び突進スピード値に基づいて骨硬さ係数を特定するように構成され、また、骨硬さ係数に基づいて穴の貫通深さを特定するように構成される。
【0012】
特定の実施態様では、外科システムは、器具及びその器具に結合されるように構成された測定モジュールを含むことができる。測定モジュールは、切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成された第1のセンサを含むことができる。外科システムは第2のセンサを含むことができる。器具は、切削プロセスの間、切削ツールに回転トルクを加えるための電流を受け取るように構成された電動機を含むことができる。第2のセンサは、器具の電動機に印加(供給)された電流に応答して信号を生成するように構成することができる。コントローラは、第2のセンサの出力に基づいて電動機のトルクを特定するように構成することができる。器具は器具ハウジングを含むことができる。測定モジュールはアタッチメントハウジングを含むことができる。第2のセンサ及びコントローラは器具ハウジング内に配置することができ、また、第1のセンサはアタッチメントハウジング内に配置することができる。
【0013】
本開示の第3の態様は、切削ツールによって骨に形成された穴の貫通深さを特定する方法を対象としている。本開示の第1の態様の外科システム、及び任意選択でその対応する実施態様のうちの任意の実施態様を使用して、第3の態様による方法を実施することができる。初期切削時間及び最終切削時間に基づく、骨に対する切削ツールの変位データが特定される。変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値、及び骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。近位皮質閾値が提供される。近位皮質閾値は、近位皮質の遠位であり、また、遠位皮質の近位である変位値を示す。変位データに基づいて遠位皮質加速度データが特定される。近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいて穴の貫通深さが特定される。
【0014】
特定の実施態様では、切削ツールの性能特徴に基づいて近位皮質閾値を調整することができる。切削ツールの性能特徴は、切削ツールの識別特徴に基づいて特定することができる。切削ツール識別特徴は、メモリに記憶されているルックアップテーブルと比較することができ、また、切削ツールの性能特徴は、ルックアップテーブル及び切削ツール識別特徴に基づいて特定することができる。近位皮質閾値は、切削ツールによって切削される骨タイプに基づいて調整することができる。プレートオフセットを特定することができ、また、切削ツールによって切削される骨タイプは、プレートオフセットに基づいて特定することができる。外科的処置において使用するための骨プレート又はねじを選択することができる。プレートオフセットは、外科的処置において使用するために選択される骨プレート又はねじに基づいて特定することができる。遠位皮質加速度データに基づいて1つ又は複数の加速事象を特定することができる。1つ又は複数の加速事象及び加速事象閾値に基づいて貫通深さを特定することができる。加速事象閾値は、切削ツールの性能特徴又は骨タイプに基づいていてもよい。1つ又は複数の加速事象の各々は、近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいていてもよい。1つ又は複数の加速事象の各々は、ある(一定の)時間インターバルにわたる加速度に基づいていてもよい。この時間インターバルは、近位皮質閾値の完全に遠位である変位データに対応する時間期間の一部であってもよい。時間インターバルは、切削ツールの性能特徴又は骨タイプに基づいていてもよい。
【0015】
本開示の第4の態様は、切削器具に取り付けられた切削ツールによって骨に形成された穴の貫通深さを特定する方法を対象としている。切削される骨タイプが特定される。切削される骨タイプに基づいて深さ閾値が設定される。穴を形成するために切削ツールが基準点から骨の中へ進行する際の切削ツールの変位に基づいて変位データが特定される。変位データ及びその変位データに対応する時間データがメモリユニットに記憶される。変位データに基づいて加速度データが特定される。切削ツールが骨の近位皮質の中へ深さ閾値に対応する深さまで進行した後、加速度データに基づいて生じた近位皮質加速事象が特定される。加速度データに基づいて切削ツールの近位皮質加速事象値が特定される。近位皮質加速事象が生じる時間に基づいて近位皮質加速事象深さ値が特定される。切削ツールの突進スピード値が特定される。近位皮質加速事象値及び突進スピード値に基づいて骨硬さ係数が特定される。骨硬さ係数及び変位データに基づいて完全に形成された穴(全形成穴)の貫通深さが特定される。
【0016】
特定の実施態様では、深さ閾値は特定の骨タイプに対する平均近位皮質厚さに基づく。突進スピードは、切削ツールが基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまで進行した後に特定することができる。突進スピード値は、基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまでの切削ツールの速度に基づくことができる。突進スピード値は、基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する変位データまでの切削ツールの平均速度に基づくことができる。穿孔(drilling)深さ値は、近位皮質加速事象値に対応する切削ツールの変位データに基づくことができる。穿孔時間値は、近位皮質加速事象値に対応する時間データに基づくことができる。突進スピード値は穿孔厚さ値及び穿孔時間値に基づくことができる。切削ツールの回転スピード値を特定することができる。骨硬さ係数は、切削ツールの回転スピード値、近位皮質加速事象値、及び突進スピード値に基づくことができる。切削ツールの回転スピード値は、切削ツールが基準点に位置している時間に対応する時間から、近位皮質加速事象深さ値が生じる深さに切削ツールが位置している時間に対応する時間までの時間期間の間で特定することができる。切削ツールのトルクが特定される。骨硬さ係数は、切削ツールが基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する深さまで進行する際の切削ツールのトルク、近位皮質加速事象値、及び突進スピード値に基づいていてもよい。切削器具の電動機に電流を印加することができる。切削器具の電動機に印加された、測定された電流に基づいてトルクを特定することができる。切削ツールの性能特徴の識別に基づいて、切削される骨タイプを特定することができる。切削器具内に配置されたセンサ、及び切削ツールの識別特徴の識別に基づいて、切削ツールの性能特徴を特定することができる。切削ツール識別特徴は、メモリに記憶されているルックアップテーブルと比較することができる。ルックアップテーブル及び切削ツール識別特徴に基づいて切削ツールの性能特徴を特定することができる。プレートオフセット及び切削ツールによって切削される骨タイプは、プレートオフセットに基づくことができる。外科的処置において使用するために特定の骨プレート又はねじを選択することができる。プレートオフセットは、外科的処置において使用するために選択される特定の骨プレート又はねじに基づくことができる。外科的処置に使用するために選択される特定の骨プレート又はねじは、ねじを較正デバイスに挿入することによって特定することができる。全穴(穴全体)の貫通深さは、深さ閾値の完全に遠位である加速度データに基づいていてもよい。1つ又は複数の遠位皮質加速事象は、深さ閾値の遠位である加速度データに基づいていてもよい。貫通深さは、1つ又は複数の遠位皮質加速事象及び遠位皮質加速事象閾値に基づいていてもよい。遠位皮質加速事象閾値は骨硬さ係数に基づいていてもよい。遠位皮質加速事象閾値は加速度データに基づく数値を含むことができる。この数値は、より硬い骨に対応する骨硬さ係数に対してはより高く設定することができ、また、より軟らかい骨に対応する骨硬さ係数に対してはより低く設定することができる。1つ又は複数の遠位皮質加速事象の各々は、ある(一定の)時間インターバルにわたる加速度に基づいていてもよい。この時間インターバルは、深さ閾値の完全に遠位である変位データに対応する時間期間の一部であってもよい。時間インターバルは骨硬さ係数に基づいていてもよい。
【0017】
本開示の第5の態様は、切削器具に取り付けられた切削ツールによって骨に形成された穴の貫通深さを特定する方法を提供する。切削ツールの変位データが特定される。切削される骨タイプが特定される。骨硬さ係数が特定される。完全に形成された穴の貫通深さが骨硬さ係数及び変位データに基づいて特定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】外科器具及びエンドエフェクタを備える外科システムの斜視図であり、示されているエンドエフェクタは、一構成による識別特徴及びチッププロテクタを有するドリルビットを有している。
図2図1の外科システムの部分分解斜視図であり、示されている外科器具は、測定モジュール、駆動アセンブリ、及びハンドピース体から間隔を隔てた解放機構を有しており、エンドエフェクタは外科器具から取り外されており、また、チッププロテクタがドリルビットの遠位切削先端部分から間隔を隔てた状態で示されている。
図3図1の線3-3に沿った、測定モジュール内に配置された識別特徴及びセンサの構造を示す部分等角断面図である。
図4図1図3の外科器具の縦方向に沿った、測定モジュール内に配置された識別特徴及びセンサの構造を示す断面図である。
図5A】小さい骨を、ドリルビット及びその小さい骨に対する第1の位置における深さ測定拡張部と共に示す断面図である。
図5B】小さい骨を、図5Aのドリルビット及びその小さい骨に対する第2の位置における深さ測定拡張部と共に示す断面図である。
図5C】小さい骨を、図5A図5Bのドリルビット及びその小さい骨に対する第3の位置における深さ測定拡張部と共に示す断面図である。
図6A】大きい骨を、別のドリルビット及びその大きい骨に対する第1の位置における深さ測定拡張部と共に示す断面図である。
図6B】大きい骨を、図6Aのドリルビット及びその大きい骨に対する第2の位置における深さ測定拡張部と共に示す断面図である。
図6C】大きい骨を、図6A図6Bのドリルビット及びその大きい骨に対する第3の位置における深さ測定拡張部と共に示す断面図である。
図7】2つのタイプの骨のための穴あけプロセスに対する変位信号を示すグラフである。
図8】2つのタイプの骨のための穴あけプロセスに対する加速度信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
同様の構造を示すために、いくつかの図を通して同様の符号が使用されている図面を参照すると、典型的には医療及び/又は外科的処置と関連付けられるオペレーション機能を実施するための外科システム又は外科ドリルシステムが図1図2において60で示されている。いくつかの構成では、外科ドリルシステム60は外科ハンドピースシステムと呼ぶことも可能である。本明細書において示されている代表的な構成では、外科ドリルシステム60は、患者の組織又は骨などのワークピース(対象物)への進入を容易にするために使用されている。本明細書において使用されているように、そうではないことが特に示されていない限り、ワークピースという用語は、別法としては組織及び/又は骨を意味することが理解される。そのために、外科ドリルシステム60の示されている構成は、別法としてはハンドヘルド外科切削器具62又は時によっては切削器具62と呼ばれるハンドピース62を備えた外科ドリル61、及びハンドピース62に結合された、概して64で示されているエンドエフェクタを備えている。そのエンドエフェクタ64はドリルビット66などの切削ツールを備えており、また、チッププロテクタ(先端プロテクタ)68を含むことができる。
【0020】
図2に最も良好に描写されているように、ドリルビット66は、それぞれハンドピース62に結合されると、概して70で示されている切削先端部分と、概して72で示されている挿入部分との間を、軸AX(すなわち縦軸AX又は軸AX)に沿って概ね縦方向に延びる。切削先端部分70はワークピースに接触する(嵌り込む)ように構成されており、また、挿入部分72は、ハンドピース62へのドリルビット66の解放可能(取り外し可能)な取付けを容易にするように構成されている。挿入部分の様々な構成には、様々な溝、スロット及び他の幾何構造などのハンドピース62へのドリルビット66の結合を可能にすることが企図されている。挿入部分の一例示的構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年12月25日に発行された米国特許第10,159,495号に見出すことができる。ハンドピース62へのドリルビット66の取付けを容易にするための他の構成が存在し得ることが企図されている。
【0021】
また、図2に示されているように、ドリルビットは近位端から遠位端まで軸AXに沿って延びている。ドリルビット66は、近位端178と遠位端180との間を軸AXに沿って延びている、概して176で示されているシャンク(シャフト)を備えている。シャンク176の遠位端180に隣接しているシャンク176の遠位部分は、軸AXの周りに螺旋状に配置することができ、また、ドリルビット66の切削先端部分70まで延びて、組織などのワークピースへの進入(貫入)を促進することができるフルート(溝)182を画定することができる(図2参照)。示されている構成では、ドリルビット66は、近位端178と遠位端180との間でシャンク176に結合された軸受領域184を備えることができる。多くの構成では、軸受領域184はシャンク176と一体である。軸受領域184は、ハンドピースに結合することができる測定モジュール128の深さ測定拡張部134内に受け取られ、かつ、深さ測定拡張部134に対して回転するようにサイズ設定されている(以下でより詳細に更に考察される)。ここでは軸受領域184は、シャンク176の「階段状」外部領域を画定することができ、この「階段状」外部領域は、ドリルビット66の長さに沿った回転サポートをもたらし、また、示されている構成では、シャンク176の隣接する遠位領域及び近位領域より大きい直径を有することができる。しかしながらドリルビット66のシャンク176の軸受領域184は、本開示の範囲を逸脱することなく他の方法で構成することも可能であることは認識されよう。更に、本開示においてはドリルビット66として説明されているが、切削ツールは、同様の特徴を有することができ、また、バー、鋸、やすり、ミル、リーマ、刃又は套管針ピン(例えばスタインマンピン又はK-ワイヤピン)などの別の適切なエンドエフェクタ又は回転エンドエフェクタとして構成することができることが企図されている。
【0022】
図1図4は、性能特徴の一構成を有するドリルビット66を示している。外科ハンドピース62に結合することができる他のドリルビットは、1つ又は複数の性能特徴において、示されているドリルビット66とは異なっていてもよいことが企図されている。また、他の切削ツールは、同様の性能特徴又はドリルビットとは全く異なる性能特徴を有することができることが企図されている。ドリルビットに関してより詳細には、図1図4に示されているドリルビットは、半径、切削先端幾何構造、材料、長さ、断面積、ドリルビットタイプ、切削効率、すくい角、フルート角、フルート深さ、先端角などの性能特徴、ドリルビット66の別の特徴、又はそれらの組合せなどにおいて、他の適切なドリルビットとは異なっていてもよい。これらの異なる性能特徴又は特性は、使用中における、使用されるドリルビット66に応じた外科ドリルシステム60の性能の変化によるものであってもよい。オペレータによる、ハンドピース62に結合するドリルビット66の特定を補助するために、それぞれのドリルビット66及びその性能特徴を識別するための識別特徴(識別特徴部)177をドリルビット66に含むことができる。識別特徴177は、各タイプのドリルビット66又はエンドエフェクタ64と関連付けられた性能特徴に相関されている(該性能特徴と相関がある)。この点に関して、オペレータは、結合されているドリルビット66に関する識別特徴177から得られた知識(情報)に基づいて、穴をあけるための外科ドリル61の操作をより正確に制御することができる。異なる性能特徴及びドリルビット識別を有するドリルビットの構成の例は、例えば、2020年5月15日に出願した、「Powered Surgical Drill Having Rotating Field Bit Identification」という名称の国際特許出願第PCT/US2020/033288号に記載されており、この特許出願の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
次に図1図4を参照すると、本明細書において示されている代表的な構成では、外科ハンドピースアセンブリ62は、ピストルグリップ形状ハンドピースハウジングアセンブリ74を有するハンドヘルドドリルとして実現されており、ピストルグリップ形状ハンドピースハウジングアセンブリ74は電池(バッテリ)76に解放可能に取り付けることができる(電池アタッチメントは詳細には示されていない)。いくつかの構成では、ハンドピースハウジングアセンブリ74は器具ハウジングと呼ぶことができる。しかしながらハンドピースハウジングアセンブリ74は、ピストルグリップを有する、又はピストルグリップを有していない任意の適切な形状を有することができることが企図されている。示されている外科ハンドピースアセンブリ62は電池76を使用しており、この電池76は、ドリルビット66を回転させるために利用される電力を外科ハンドピースアセンブリ62に供給するためにハンドピースハウジングアセンブリ74に解放可能に取り付けることができるが、外科ハンドピースアセンブリ62は、内部(例えば非取外し可能)電池を使用した方法、又は外部コンソール、電源、等々へのテザー接続を使用した方法などの他の方法で構成することができることは認識されよう。他の構成が企図されている。
【0024】
示されている構成では、電池76又は他の電源はコントローラ78(図4に概略的に描写されている)に電力を供給し、そのコントローラ78は入力コントロール80及びアクチュエータアセンブリ82と通信するように配置されている。ユーザ入力デバイス80及びアクチュエータアセンブリ82は、それぞれハンドピースハウジングアセンブリ74によって支持されている。コントローラ78は、概して、入力コントロール80の操作に応答したアクチュエータアセンブリ82の動作を容易にするように構成される。入力コントロール80は、示されている構成ではトリガスタイル構成として示されており、ユーザ(例えば外科医)による操作に応答し、また、磁気抵抗センサ(例えばホール効果センサ)及び磁石によって生成される電気信号などを介してコントローラ78と通信する。従って、外科医が入力コントロール80を操作して外科ハンドピースアセンブリ62を動作させると、コントローラ78は電池76からアクチュエータアセンブリ82へ電力を導き、そのアクチュエータアセンブリ82は、ドリルビット66を回転させるために使用される回転トルクを生成する。当業者は、ハンドピースハウジングアセンブリ74、電池76、コントローラ78及び入力コントロール80は、回転トルクの生成を容易にするために、本開示の範囲を逸脱することなく、多くの異なる方法でそれぞれ構成することができることを認識することになる。
【0025】
また、図3に示されているように、アクチュエータアセンブリ82は電動機84及び歯車対(ギヤセット)86を備えることができ、これらはハンドピース体74内にそれぞれ支持されている。電動機84は、コントローラ78から受け取ったコマンド(命令)、信号、等々に応答して、回転トルクを選択的に生成するように構成されている。図4に最も良好に示されているように、電動機84は、一対の軸受90によって軸AXの周りを回転するように支持されたロータカニューレ88を備えている。歯車対86に隣接して配置されている駆動歯車(ドライブギヤ)はロータカニューレ88に結合され、ロータカニューレ88と共に回転し、回転トルクを歯車対86に伝達するために使用される。そのために、示されている構成では、歯車対86は、2段複合遊星構造として実現され、通常、とりわけ、軸受90ならびに1つ又は複数の保持クリップ98、座金100及び/又はシール102を介して出力ハブ96を回転支持するリングギヤハウジング94を備えている。しかしながら、歯車対86の他の構成が企図されている。
【0026】
歯車対86の一構成についての更なる詳細は、例えば、2018年12月25日に発行された、「Drill Bit for Handheld Surgical Instrument」という名称の米国特許第10,159,495号に記載されており、この米国特許の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、また、電動機84の起動を介した駆動歯車の回転は出力ハブ96の同時回転をもたらし、また、出力ハブ96がドリルビット66と共に回転することを記載している。アクチュエータアセンブリ82は、本開示の範囲を逸脱することなく他の方法で構成することができる。非制限の例として、示されているアクチュエータアセンブリ82は、複合遊星構造を使用して回転スピードを調整し、また、電動機84の駆動歯車と出力ハブ96との間のトルクを調整しているが、いくつかの構成では他のタイプの歯車対86を利用することも可能である。更に、示されているアクチュエータアセンブリ82は電気式ブラシレスDC電動機を使用して回転トルクを生成しているが、他のタイプの原動機を利用することも可能である。他の構成が企図されている。
【0027】
上で言及したように、電動機84によって生成される回転トルクは出力ハブ96の回転をもたらし、その出力ハブ96は、結合されているドリルビット66と共に回転する。そのために、図2図4に最も良好に示されているように、ハンドピース62は、アクチュエータアセンブリ82の様々なカニューレ状構成要素を概ね貫通して延びて、歯車対86の出力ハブ96とスプライン係合している駆動アセンブリ114を更に備えている。駆動アセンブリ114は、ドリルビット66とハンドピース62との間の解放可能な取付けを容易にするように構成されている。駆動アセンブリ114は、通常、駆動カニューレ116、駆動ヘッド118、及び駆動体120を備えており、駆動体120は、駆動カニューレ116と駆動ヘッド118との間に延び、かつ、それらと共に回転する。駆動アセンブリ114は、駆動カニューレ116に隣接する出力ハブ96とのスプライン係合を介して、また、駆動ヘッド118に隣接する軸受、座金及びシールの構造を介して、ハンドピース体74内の軸AXの周りを回転するように支持されている。ドリルビット66は、ハンドピース62に取り付けて、上で説明した方法とは異なる方法でトルクを受け取るように構成することができることが企図されている。
【0028】
駆動アセンブリ114の更なる詳細は、例えば米国特許第10,159,495号に記載されている。示されている構成では、駆動アセンブリ114の駆動ヘッド118は、概して126で示されているカップリングを備えており、このカップリングは、ハンドピース62が本開示のドリルビット66の回転以外の他のアプリケーションに関連して利用される場合に、回転トルクの伝達を容易にするために提供されている。より詳細には、示されている駆動アセンブリ114は、ハンドピース62が、駆動カニューレ116の穴122又は駆動ヘッド118のカップリング126のいずれかと係合し、かつ、共に回転するように構成することができる多くの異なるタイプの外科器具、ツール、モジュール、エンドエフェクタ、等々を回転させ、駆動し、さもなければ起動することができるように構成されている。この構成によれば、極めて多くの医療及び/又は外科的処置において同じハンドピース62を利用することができることは認識されよう。しかしながら、駆動アセンブリ114は、いくつかの構成では別様に構成することができ、例えばハンドピース62が本開示のドリルビット66との専用使用のために構成される構成では、カップリング126を有する駆動ヘッド118を省略することができることが企図されている。
【0029】
もう一度図1図3を参照すると、ハンドピース62の示されている構成は、概して150で示されている、ドリルビット66の取外しを容易にするように構成された解放機構又は結合機構(カップリング機構)を更に備えている。結合機構150は、通常、解放サブアセンブリ152、キーパー体(保持体)154及びハウジングアダプタ156を備えている。キーパー体154及びハウジングアダプタ156は、それぞれ、解放サブアセンブリ152をアクチュエータアセンブリ82及びハンドピース体74に固着するように構成されており、また、いくつかの構成では、多くの異なる構成を使用して実現することができ、もしくはハンドピース62の他の部品に統合することができる。
【0030】
上で言及したように、ドリルビット66は、切削先端部分70と挿入部分72との間を軸AXに沿って概ね延びており、また、本明細書において説明され、また、図面を通して示されているハンドピース62に、ドリルビット66のインタフェース124と、駆動アセンブリ114の駆動カニューレ116の穴122との間の係合を介して解放可能に取り付けるように構成されている。その駆動カニューレ116は、アクチュエータアセンブリ82の歯車対86の出力ハブ96と協働して、軸AXの周りのドリルビット66の回転を容易にしている。
【0031】
外科ドリルシステム60の示されている構成は、概して128で示されている測定モジュール(別法としては、時によっては測定ヘッドと呼ばれる)を更に備えており、測定モジュールは、使用中、外科医に測定機能性を提供するために、ハンドピース62に解放可能に取り付けるように構成することができる。そのために、図3及び図4に最も良好に示されているように、測定モジュール128は、通常、ハウジング130、案内ブッシング132、及び深さ測定拡張部134(すなわち測定プローブ又は測定カニューレ)を備えることができ、深さ測定拡張部134は、ワークピース62又は組織に当接させる配置に適合された遠位端134Aを含む。測定モジュールの適切な例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/IB2018/056251号に記載されている。ハウジング130はハンドピース62に解放可能に取り付けることができ、通常、測定モジュール128の様々な構成要素を支持している。示されているハウジング130は、インターロックし、さもなければ取り付ける一対のハウジング構成要素138として形成することができ、また、分解して、測定モジュール128の洗浄又は保守を容易にするように構成することができる。測定モジュール128はハンドピース62の一体構成要素として形成することができ、もしくは使用後、測定モジュール128をハンドピース62から取り外すことができない方法でハンドピース62に取り付けられ、さもなければ固着される構成要素の形態であってもよいことを認識されたい。
【0032】
示されている構成では、ハウジング構成要素138及び案内ブッシング132は、ハウジング構成要素の中に形成されたウェブ又はリブの中に篏合する案内ブッシング132の中に形成されたノッチなどを介して、それらの間の相対軸方向運動及び回転運動を防止するようになされた、相応して形状化された特徴を備えている(詳細には示されてない)。案内ブッシング132は、以下で詳細に説明される窓142を更に備えることができる。
【0033】
深さ測定拡張部134は案内ブッシング132内に配置することができ、また、軸AXに沿って、ハンドピース62に対して並進運動するように支持されている。細長い凹んだスロット143(図2に部分的に描写されている)は、深さ測定拡張部134の中に横方向に形成することができ、縦方向に延びている。本明細書においては特に示されていないが、この細長い凹んだスロット143は、移動停止要素を受け取るように形状化し、かつ、配置することができ、その移動停止要素はハウジング130によって支持され、また、同様に、案内ブッシング132の側面を貫通して横方向に形成された開口を通って延びている。この構造は、深さ測定拡張部134を案内ブッシング132及びハウジング130に対して軸方向に前進(進出)させ、又は後退(退入)させることができる距離を制限するように働くことができ、また、軸AXの周りの深さ測定拡張部134の回転を防止することができる。しかしながら、測定モジュール128は、本開示の範囲を逸脱することなく、他の方法で深さ測定拡張部134の運動を制限し、又は防止するように構成することも可能であることは認識されよう。
【0034】
示されているように、深さ測定拡張部134は、変換器(トランスデューサ)アセンブリ136の歯車146と噛み合うように配置されているラック歯144を更に備えている。図4に示されているように、案内ブッシング132の窓142は、ラック歯144と歯車146との間の噛み合い(メッシュ係合)を容易にするために、変換器アセンブリ136に隣接して配置されている。歯車146は、共通歯車軸CAXに沿って延びているシャフト部分147を含む。歯車146自体は、プローブ134が軸AXに沿って、ハウジング130に対して移動すると、共通歯車軸CAXの周りを360度回転することができる。
【0035】
外科ドリル61がワークピースに当接するように配置されると、ハウジング130に対する深さ測定拡張部134の遠位端134Aの相対位置(相対位置決め)に対応する、軸AXに沿った、ハウジング130に対する測定プローブ134の位置の変化を表す電気信号(すなわち変換器信号)を生成するために、測定プローブ134の軸方向の運動によってもたらされる歯車146の回転に、変換器アセンブリ136が応答する。従って、変換器アセンブリ136は、強化された機能性を有する外科器具62を提供することができることは認識されよう。例として、いくつかの構成では、変換器アセンブリ136はコントローラ78と通信するように配置することができ、コントローラ78は、測定プローブ134の運動に基づいて電動機84を遮断し、又は電動機84の駆動度合いを調整するように構成することができ、例えばワークピース中の特定の穿孔深さに達すると、ドリルビット66の回転を遅くすることができる。また、変換器アセンブリ136は、測定プローブ134の運動に関する情報を外科医に提供して、例えばリアルタイム(実時間)の穿孔深さ、記録されている過去の最大穿孔深さ、等々を表示するために、ディスプレイスクリーン、1つ又は複数の発光ダイオード(LED)、等々などの出力デバイス148と通信するように配置することも可能である。他の構成が企図されている。出力デバイス148は、取り外すことができる測定モジュールの一部であってもよい。更に、図4に示されている変換器アセンブリ136及び深さ測定拡張部134は、深さ測定拡張部134のラック歯144及び変換器アセンブリ136の歯車146を有するラックアンドピニオン設計を集合的に備えているが、変換器アセンブリ136は、ハウジング130に対する深さ測定拡張部134の変位に応答して変換器信号を生成するために、ポテンショメータ、光学センサ及び線形可変変位変成器(linear variable displacement transformer)などの1つ又は複数のセンサを備えることができることが企図されている。
【0036】
いくつかの構成では、モジュールハウジング130はハンドピースハウジングアセンブリ74に解放可能に取り付けることができる。他の構成では、測定モジュール128は、別の方法で外科ハンドピースアセンブリ62に解放可能に取り付けられる。特定の構成では、測定モジュール128は、測定モジュール128の機能を制御するための1つ又は複数のボタンを含むことができる。モジュールハウジング130は、通常、測定モジュール128の様々な構成要素を支持している。更に他の構成では、外科ハンドピースアセンブリ62及び測定モジュール128は互いに解放可能に取り付けられていない。その代わりに、外科ハンドピースアセンブリ62及び測定モジュール128は、モジュールハウジング130がハンドピースハウジングアセンブリ74の一部を形成するよう、1つの一体アセンブリを形成することができる。
【0037】
図3及び図4に示されているように、外科ドリルシステム60は、識別特徴177に応答して1つ又は複数の信号(例えば識別信号)を生成するように構成されるセンサ201(例えばビット識別センサ)を含むことができる。例えばセンサ201は、外科ドリルシステム60が動作している間、ドリルビット66が軸AXの周りを回転する際に、ドリルビット66上の1つ又は複数の磁石から生成される磁気抵抗に応答して、又は、磁界に応答して、識別信号を生成するように構成することができる。センサ201によって生成される識別信号は、受け取った生成された信号/ハンドピース62に結合されているそれぞれのドリルビット66上の磁界に対応している。コントローラ78は、識別信号を受け取って解釈するか、又は磁界シグネチャ信号を受け取って解釈して、結合されているドリルビット66を識別するように構成されている。識別特徴、識別特徴ロケーション、センサ及びセンサロケーションの適切な例は、例えば既に言及した国際特許出願第PCT/US2020/033288号に記載されている。
【0038】
図3及び図4に示されている一構成では、センサ201は測定モジュール128に結合するか、又は測定モジュール128内に配置することができ、詳細には、ドリルビット66がハンドピース62に適切に結合されたときにセンサ201が識別特徴177の近傍の位置になるように、センサ201は、測定モジュール128のハウジング130に結合するか、又は測定モジュール128のハウジング130内に配置することができる。
【0039】
コントローラ78は、メモリに記憶されている命令を処理し、又はメモリに記憶されているアルゴリズムを処理して、本明細書において説明されている機能を実施するための、メモリユニットを有する1つ又は複数のマイクロプロセッサを備えている。追加又は別法として、コントローラ78は、1つ又は複数のマイクロコントローラ、サブコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、システムオンチップ、ディスクリート回路、及び/又は本明細書において説明されている機能を実施することができる他の適切なハードウェア、ソフトウェア又はファームウェアを備えることも可能である。例えばコントローラ78を測定モジュール128の中に配置し、また、第2のコントローラ(例えばサブコントローラ、プロセッサ、等々)をハンドピース62の中に配置することができる。第2のコントローラは、ハンドピース62の電動機に対する信号を生成して電動機を動作させるように構成することができる。より詳細には、第2のコントローラは、測定モジュール128の中の第1のコントローラ78が受け取った変換器信号及び識別信号に基づいて、電動機によって生成されるトルクの相対量を制御することができる。コントローラ78は、図4に示されているようにハンドピース体74の中で担持することができ、もしくは測定ヘッド128などの外科ドリルシステム60の中のどこかで担持することができ、又は遠隔配置することも可能である。メモリは、データ及びコンピュータ可読命令(すなわち可読コード)を記憶するのに適した任意のメモリであってもよい。例えばメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性RAM(NVRAM)、フラッシュメモリ又は任意の他の適切な形態のメモリとして具現化される局所メモリ、外部メモリ又はクラウドベースメモリであってもよい。
【0040】
特定の構成では、コントローラ78は、常に時間の経過を追うために内部クロックを備えている。例えば内部クロックはマイクロコントローラクロックであってもよい。マイクロコントローラクロックは、結晶(水晶)共振器、セラミック共振器、抵抗コンデンサ(RC)発振器、又はシリコン発振器を備えることができる。本明細書において開示されている内部クロック以外の他の内部クロックの例も完全に企図されている。内部クロックは、ハードウェア、ソフトウェア又は両方で実現することができる。いくつかの構成では、所定のタイミングパラメータに合致するために、メモリ、マイクロプロセッサ及びマイクロコントローラクロックが協働して様々な構成要素に信号を送り、それらを動作させている。
【0041】
コントローラ78は、外科ドリルシステム60の動作を制御するために、入力コントロール80、アクチュエータアセンブリ82、駆動アセンブリ114、測定モジュール128(変換器アセンブリ136を含む)及びセンサ201の各々に少なくとも電気結合されている。
【0042】
詳細には、コントローラ78は、それぞれのドリルビット66がカップリング126及びハウジング130に結合されてドリルビット66が軸AXの周りを回転すると、センサ201によって検知される識別特徴177によって生成される識別信号をセンサ201から受け取るように構成することができる。コントローラ78のマイクロプロセッサは、既知の識別信号のリストを含むアルゴリズムを使用して予めプログラムされているメモリユニットを含み、既知の識別信号のリストの各々の要素は、固有の識別特徴177を有する1つ又は複数のドリルビット66のうちのそれぞれの1つに対応している。従って、受け取った識別信号を既知の識別信号のリストと比較することで、一致するかが確認される。コントローラ78は、次に、識別されたドリルビット66に基づいて外科ドリルシステム60の動作を制御することができる。
【0043】
コントローラ78は、結合されているドリルビット66の識別に加えて、ハウジング130に対する深さ測定拡張部134の遠位端134Aの相対位置決めに対応する変換器アセンブリ136から、時によっては別法として変位信号と呼ばれる変換器信号を受け取るように構成することも可能である。そのコントローラ78は、識別信号に基づいて、更には受け取った変換器信号に基づいて、ハンドピース62から、ワークピースに対する、結合されているドリルビット66へのトルクの伝達を制御するように構成されている。
【0044】
詳細には、コントローラ78は、第1の時間インターバル内のある(一定の)時間の間、受け取った変換器信号に対応する、深さ測定拡張部134(本明細書において提供されている)の遠位端134Aの運動などの深さ測定拡張部134の運動に基づいて加速度信号を特定するように構成することも可能である。コントローラ78は、特定された加速度信号に基づいて、ワークピースを貫通する、結合されているドリルビット66の貫通深さ(突入深さ)を特定するように更に構成することができる。詳細には、コントローラ78は、加速度信号に基づいて、第1の時間インターバル内における、ワークピースを貫通するドリルビット66の貫通時間(突入時間)を特定する。この情報から、また、受け取った変換器信号及び受け取った識別信号とあわせて、コントローラ78は、アルゴリズムを使用して、ワークピース中の穿孔(ボア穴)すなわち穿孔通路(ドリル通路)の深さを特定する。
【0045】
様々な製造者から得られるねじ、プレート、ネイル又はピンを含むことができる様々な異なる整形外科インプラントセットを、深さゲージと共に使用することができる。インプラントセット同士の間のプレートは、プレートオフセットを含む多くの属性が変化し得る。典型的には、より分厚いプレートは大きいプレートオフセットを有し、大きい骨(例えば大腿骨、脛骨、上腕骨、等々)に対する外科的処置、とりわけ外科穿孔処置において使用される。一方、より薄いプレートは小さいプレートオフセットを有し、より小さい骨と共に使用される。切削/穿孔処置のために選択されたプレート又はねじの識別を使用して、どのタイプの骨が穿孔されているのかをシステム60に示すことができる。システム60がプレートオフセットを識別し、延いては、どのタイプの骨が穿孔されるのかを識別するために、外科ハンドピースシステム60は、異なるプレート及びねじを有する多くの異なるインプラントセットをメモリに記憶することができ、また、較正デバイス又は取付け具(fixture)を使用して特定のプレート及び/ねじを識別することができる。別法としては、システム60は、ディスプレイを有する遠隔デバイス(リモートデバイス)(図示せず)を備えることができる。遠隔デバイスは、外科ハンドピースアセンブリ62に対する信号を生成し、また、外科ハンドピースアセンブリ62から信号を受け取るように構成することができる。遠隔デバイスは、タブレット、スマートフォン、ラップトップ、コンソール、ワークステーション又はデスクトップコンピュータを備えることができる。外科ハンドピースアセンブリ62上のディスプレイ及び遠隔デバイス上のディスプレイのうちの一方又は両方は、穿孔処置に関する情報を出力することができる。
【0046】
一構成では、外科ハンドピースアセンブリ62及び遠隔デバイスのうちの一方又は両方は、コントローラ78に情報を入力し、又は情報を選択するためのユーザ入力デバイス(図示せず)を備えている。ユーザは、穿孔処置において使用されるプレート、プレートオフセット、ねじ、等々を入力し、又は選択することができる。コントローラ78は、入力された情報からプレートオフセットを特定するように構成することができる。コントローラ78は、このプレートオフセット情報を使用して、外科的処置で穿孔される骨のタイプ(種類)を特定するように構成することができる。コントローラ78は、次に、骨タイプの特定(特定された骨タイプ)を使用して、より正確な貫通特定(突入特定)を提供することができる。骨のタイプは、外科ハンドピースアセンブリ62のディスプレイ148及び遠隔デバイスのディスプレイのうちの一方又は両方に出力することができる。遠隔デバイスの機能性及び特徴は、代わりに、ハンドピースアセンブリ62の中に構築することも可能であることが企図されている。適切な較正デバイス及び取付け具、ならびに適切な遠隔デバイスの例は、2019年11月1日に公表された国際特許公開第WO2020/092951号に記載されており、この国際特許公開は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
図5A図6Cを参照すると、ドリルビット66の識別を使用して、穿孔されている骨のタイプをシステム60に示すことができる。例えば切削ツール(例えばドリルビット66)の一性能特徴は切削ツールの直径である。典型的には、小さい骨202の外科的処置には直径が小さいドリルビット266(図5A図5C参照)が使用される。一方、大きい骨302の外科的処置には直径が大きいドリルビット366が使用される。一構成では、コントローラ78は、ドリルビット266の識別特徴177に基づいて、小さい骨に穴をあけるために構成されるドリルビット266を特定することができ、すなわちドリルビット266の遠位部分は、通常、2mm以下の直径を有し得る(また、足又は手、等々などの小さい骨のために使用される)。別の構成では、コントローラ78は、ドリルビット366の識別特徴177に基づいて、大きい骨に穴をあけるために構成されるドリルビット366を特定することができ、すなわちドリルビット366の遠位部分は、約3.2mm以上の直径を有し得(また、大腿骨などのより大きい骨のために使用され)、又は2mmと3.2mmとの間の直径のドリルビットで骨に穴をあけるように構成される。
【0048】
特定の骨タイプは特定の平均皮質厚さを有しているため、骨タイプに関する情報は、穴の貫通深さをより正確に特定するために有用であり得る。変位信号から得られる特定の深さ情報は、その情報が、穿孔されている骨のタイプの厚さを包含する期待深さ情報の範囲外であることが特定されると、除外され得る。特定のドリルビット径及び特定のプレートオフセットによって包含されている骨のタイプの重畳する(オーバーラップする)範囲は、ドリルビット径又はプレートオフセットのいずれかのみを使用する場合よりも、潜在骨タイプのより狭いサブセットを提供するため、外科的処置において使用されるドリルビット径識別とプレートオフセット識別との組合せは、穿孔処置における骨タイプの特定にはとりわけ有利である。言い換えると、2つ以上のタイプの骨に対して特定のドリルビット径を使用することができる。2つ以上のタイプの骨に対して特定のプレートオフセットを使用することができ、プレートオフセットに対して使用される骨のタイプのうちの少なくとも1つは、特定のドリルビット径に対して使用される骨のタイプとは異なっている。コントローラ78は、共通骨タイプの使用に基づいて、穿孔処置における骨のタイプを識別することができる。
【0049】
図5A図8に示されている一例示的構成では、コントローラ78は、穿孔されている骨のタイプに基づいて、骨202、302を貫通するドリルビット266、366の貫通深さ(突入深さ)をより正確に特定するように構成することができる。図5A図5Cは、比較的小さい骨プレート204を使用した、比較的小さい骨202に対する、比較的小さい直径のドリルビット266の穿孔処置を示したものである。小さい骨は、骨の近位皮層206、骨の網状組織層208及び骨の遠位皮層210を含む。図6A図6Cは、比較的大きい骨プレート304を使用した、比較的大きい骨302に対する、比較的大きい直径のドリルビット366の穿孔処置を示したものである。大きい骨302は、骨の近位皮層306、骨の網状組織層308及び骨の遠位皮層310を含む。図7は、大きい骨302に対する変位データ「変位1(n)」、及び小さい骨202に対する変位データ「変位2(n)」を示したものである。コントローラ78は、初期穿孔時間(初期穿孔時刻)212、312から最終穿孔時間(最終穿孔時刻)214、314までの、骨に対するドリルビット266、366の変位データを特定することができる。変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値、及び骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。骨の近位皮質の近位表面を示す変位値は、初期穿孔時間212、312に対応する位置に示されている。骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値は、遠位皮質貫通(遠位皮質突破)216、316に対応する値に示されている。
【0050】
図6Aにおける大きい骨302に対するドリルビット366の位置は、図7の312における数値と対応している。この位置では、ドリルビット366は未だ変位していない/骨302の中に切り込んでいない。図6Bにおける大きい骨302に対するドリルビット366の位置は、図7の近位皮質貫通(近位皮質突破)318と対応している。この位置では、ドリルビット366は、骨の近位皮層306をちょうど貫通(突破)したところであり、また、骨の網状組織層308を貫通し始めたところである。図6Cにおける大きい骨302に対するドリルビット366の位置は、図7の遠位皮質貫通316と対応している。この位置では、ドリルビット366は、骨の遠位皮層310をちょうど貫通(突破)したところである。
【0051】
コントローラ78は、近位皮質318の遠位であり、また、遠位皮質316の近位である変位値を示す近位皮質閾値340を提供するように構成することができる。近位皮質閾値340は、切削ツール66によって穿孔される骨タイプに基づいて調整することができる。コントローラ78は、切削ツールの性能特徴(例えば切削ツール径)に基づいて骨タイプを特定するように構成することができる。上で言及したように、切削ツールの性能特徴は切削ツール66の識別特徴177にリンクさせることができる。コントローラ78は、切削ツール識別特徴177を、メモリに記憶されているルックアップテーブルと比較し、かつ、ルックアップテーブル及び切削ツール識別特徴177に基づいて性能特徴、この例では切削ツール径、を特定することができる。他の構成では、近位皮質閾値は、切削ツールの穿孔特性又は性能特徴の関数によって定義される。更に他の構成では、近位皮質閾値は予め設定され、かつ、コントローラ78のメモリユニットに記憶され、異なる直径を有するドリルビットなどの異なる性能特徴を有する切削ツールに対して同じ値を使用することができる。
【0052】
また、コントローラ78は、プレートオフセットに基づいて骨タイプを特定するように構成することも可能である。上で言及したように、プレートオフセットは、外科的処置において使用するために選択される骨プレート又はねじを特定することによって特定することができる。図7に示されている近位皮質閾値340は大きい骨タイプ302に対するものである。
【0053】
図8に示されているように、加速度データは図7に示されている変位データから特定することができる。図8では、加速事象(加速イベント)及びそれらの値は図7の変位データからの皮質貫通(皮質突破)に対応している。詳細には、小さい骨タイプ220に対する第1の加速事象は近位皮質貫通218に対応し、また、小さい骨タイプ222に対する第2の加速事象は遠位皮質貫通216に対応している。更に、大きい骨タイプ320に対する第1の加速事象は近位皮質貫通318に対応し、また、大きい骨タイプ322に対する第2の加速事象は遠位皮質貫通316に対応している。穴の貫通深さは、遠位皮質加速度と、近位皮質閾値340の完全に遠位である変位データとに基づくことができる。より詳細には、1つ又は複数の加速事象は遠位皮質加速度データに基づいて特定することができる。コントローラ78は、1つ又は複数の加速事象と、コントローラ78によって設定される加速事象閾値342とに基づいて、貫通深さを特定するように構成することができる。
【0054】
加速事象閾値342は、切削ツール径又は骨タイプなどの性能特徴に基づくことができる。加速事象閾値342を使用して、コントローラ78による骨の近位皮層及び遠位皮層の両方の貫通(突破)の特定から、それほど重要ではない加速事象324を除外することができる。1つ又は複数の加速事象の各々は、近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づくことができる。1つ又は複数の加速事象の各々は、ある(一定の)時間インターバルにわたる加速度に基づくことができる。この時間インターバル(時間間隔)は、近位皮質閾値340の完全に遠位である変位データに対応する時間期間の一部であってもよい。また、この時間インターバルは、切削ツール径又は骨タイプなどの切削ツールの性能特徴に基づいて特定することも可能である。
【0055】
図7に示されているように、近位皮質閾値340を選択されたロケーションに設定することは、ドリルビットが近位皮質又は皮質の近くを貫通して穿孔している間に生じる変位データ及び加速事象を除外するのに有利である。この除外は、骨の網状組織層までの骨の近位皮層の貫通が骨全体の貫通(すなわち近位皮質骨層及び遠位皮質骨層の両方の貫通)としてコントローラ78によって特定される可能性を小さくする。図7から認識され得るように、より小さい骨及びより大きい骨に対して近位皮質閾値を別様に設定することは有用である。例えば、より小さい骨変位及び加速度データがより大きい骨変位及び加速度データと同じ近位皮質閾値340を使用している場合、すべての加速事象が故意にではなく除外される可能性があり、また、コントローラ78は穴の貫通深さを特定することができなくなる可能性がある。一方、より小さい骨変位及び加速度データに対して使用される近位皮質閾値がより大きい骨変位及び加速度データに対して使用されると、骨の近位皮層の貫通に対する加速事象が貫通深さとして特定されかねない。
【0056】
骨の特定の特性も、貫通深さ特定の精度に役に立ち得る。例えば、より大きい骨の骨硬さは、典型的にはより小さい骨の骨硬さよりも硬い。骨の近位皮層の骨硬さの特定(特定された骨の近位皮層の骨硬さ)を使用して、骨の遠位皮層の貫通深さを予測することができる。
【0057】
図7に示されている一例示的構成では、コントローラは、上で説明した方法に基づいて、穿孔される骨のタイプを特定することができる。骨のタイプが特定されると、コントローラ78は、穿孔される骨タイプに基づいて深さ閾値344を設定することができる。深さ閾値344は特定の骨タイプに対する平均近位皮質厚さに基づくことができる。
【0058】
図7に示されているように、コントローラ78は、穴を形成するために切削ツール66が基準点から骨の中へ進行する際の切削ツール66の変位に基づいて変位データを特定することができる。変位データ及びその変位データに対応する時間データはメモリユニットに記憶することができる。コントローラ78は、変位データに基づいて加速度データ(図8参照)を特定するように構成されている。コントローラ78は、切削ツールが深さ閾値344に対応する深さまで骨の近位皮質の中へ進行した後の加速度データに基づいて、生じた近位皮質加速事象を特定するように構成されている。近位皮質加速事象は、骨の近位皮層を貫通するドリルビット66の突破と対応することができる。コントローラ78は、加速度データに基づいて切削ツール66の近位皮質加速事象値を特定するように構成することができる。コントローラ78は、次に、近位皮質加速事象が生じる時間に基づいて近位皮質加速事象深さ値を特定することができる。近位皮質加速事象深さ値は骨の近位皮層の厚さに対応し得る。
【0059】
コントローラ78は、次に、切削ツールの突進スピード値を特定することができる。突進スピード値は、近位皮質加速事象値に対応する切削ツールの変位データに基づいて穿孔厚さ値を特定することによって特定することができる。穿孔時間値は近位皮質加速事象値に対応する時間データに基づいて特定される。突進スピード値は穿孔厚さ値及び穿孔時間値に基づいている。言い換えると、突進スピード値は、骨の近位皮層の厚さと、ドリルビットが基準点(例えば皮質骨の外側層にドリルビットの先端を当接させた状態)から骨の近位皮層の突破まで進行するのに要した時間とに基づくスピードであってドリルビットが骨の近位皮層を貫通して突進するスピード(すなわち速度)に対応する数値である。いくつかの構成では、突進スピード値は、基準点から近位皮質加速事象深さ値に対応する変位データ(すなわち骨の近位皮層の貫通(突破))までの切削ツールの平均速度に対応する数値である。
【0060】
骨硬さ係数は近位皮質加速事象値及び突進スピード値に基づいて特定される。一構成では、近位皮質加速事象値は、ドリルビットが骨の近位皮層を貫通(突破)する際のドリルビット66の最大加速度に対応する数値である。骨硬さ係数が変位データとあわせて使用されることで、全穴(すなわち穴全体を通って、骨の近位皮層及び遠位皮層の両方を貫通して延びる穴)の深さが特定され得る。
【0061】
図8を参照すると、全穴の貫通深さは、深さ閾値の完全に遠位である加速度データに基づくことができる。更に、貫通深さは1つ又は複数の遠位皮質加速事象及び遠位皮質加速事象閾値に基づくことができる。遠位皮質加速事象閾値は骨硬さ係数に基づくことができる。遠位皮質加速事象閾値は、加速度データに基づくことができる数値を含む。この数値は、より硬い骨に対応する骨硬さ係数に対してはより高く設定され、また、より軟らかい骨に対応する骨硬さ係数に対してはより低く設定される。1つ又は複数の遠位皮質加速事象の各々は、ある(一定の)時間インターバルにわたる加速度に基づいている。この時間インターバル(時間間隔)は、深さ閾値の完全に遠位である変位データに対応する時間期間の一部であってもよい。この時間インターバルは骨硬さ係数に基づいていてもよい。
【0062】
いくつかの構成では、骨硬さ係数は、切削ツールの回転スピード値又はトルク値、近位皮質加速事象値及び突進スピード値に基づいて特定することも可能である。切削ツールの回転スピード値又はトルク値は、切削ツールが基準点に位置している時間に対応する時間から、近位皮質加速事象深さ値が生じる深さに切削ツールが位置している時間、すなわちドリルビット66が骨の近位皮層を貫通(突破)する時間に対応する時間までの時間期間の間で特定することができる。切削ツールのトルク値は、ハンドピースハウジングアセンブリ74内に配置されている電流センサ(図示せず)によって、ドリルの電動機に印加される電流に基づいて特定することができる。
【0063】
深さ閾値344及び近位皮質閾値340は、図7では同じ値として示されているが、それらは異なる目的のために使用されていることが認識される。コントローラ78が近位皮質貫通を遠位皮質貫通として解釈する機会を少なくすることによって、貫通特定の精度を改善するために、近位皮質閾値340を使用して変位データのサブセットが除外される。一方、近位皮層の骨硬さを観察して、遠位皮層の貫通に関する予測を実施するべく使用するために、深さ閾値344を使用して変位データのエンドポイントが設定される。更に、深さ閾値344及び近位皮質閾値340は異なる値であってもよいことが企図されている。多くの構成では、近位皮質閾値340及び深さ閾値344の両方が、骨の近位皮層と遠位皮層との間に存在するドリルビット66と対応することになる。
【0064】
「含む」及び「含んだ」という用語は、「備える」及び「備えた」という用語と同じ意味を有していることは更に認識されよう。更に、「第1の」、「第2の」、「第3の」、等々などの用語は、本明細書においては、明確性及び無矛盾性の非制限の例証目的のために、特定の構造的特徴及び構成要素を区別するために使用されていることは認識されよう。以下の定義を含む本出願においては、「コントローラ」という用語は「回路」という用語と置き換えることができる。「コントローラ」という用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルディスクリート回路、アナログディスクリート回路又は混合アナログ/デジタルディスクリート回路、デジタル集積回路、アナログ集積回路又は混合アナログ/デジタル集積回路、組合せ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用又はグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを記憶するメモリ回路(共有、専用又はグループ)、説明されている機能性を提供する他の適切なハードウェア構成要素、又はシステムオンチップなどにおける上記のうちのいくつかの組合せ、又はすべての組合せと呼ぶことができ、それらの一部であってもよく、又はそれらを含むことができる。
【0065】
コントローラ78は1つ又は複数のインタフェース回路を含むことができる。いくつかの例では、インタフェース回路は、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)に接続する有線又は無線インタフェースを実現することができる。LANの例は、Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) Standard 802.11-2016(WIFI(登録商標)無線ネットワーク化規格として知られている)、及びIEEE Standard 802.3-2015(ETHERNET(登録商標)有線ネットワーク化規格として知られている)である。WPANの例は、Bluetooth(登録商標) Special Interest Group and IEEE Standard 802.15.4からのBLUETOOTH(登録商標)無線ネットワーク化規格である。
【0066】
コントローラ78は、インタフェース回路を使用して他のコントローラと通信することができる。コントローラは、本開示においては他のコントローラと論理的に直接通信するものとしてとして描写することが可能であるが、様々な実施態様では、コントローラは通信システムを介して実際に通信することができる。通信システムは、ハブ、スイッチ、ルータ及びゲートウェイなどの物理的及び/又は仮想ネットワーク化機器を含む。いくつかの実施態様では、通信システムは、インターネットなどの広域ネットワーク(WAN)に接続し、又はこれらを経由する。例えば通信システムは、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)及び仮想プライベートネットワーク(VPN)を含む技術を使用して、インターネット又はポイントツーポイント専用回線を介して互いに接続された複数のLANを含むことができる。
【0067】
様々な実施態様では、コントローラの機能性は、通信システムを介して接続されている複数のコントローラの間で分散させることができる。例えば複数のコントローラは、負荷平衡化システムによって分散された同じ機能性を実現することができる。更なる例では、コントローラの機能性は、サーバ(遠隔すなわちクラウドとして知られている)コントローラとクライアント(すなわちユーザ)コントローラとの間で分割することができる。
【0068】
コントローラのいくつかのハードウェア特徴又はすべてのハードウェア特徴は、IEEE Standard 1364-2005(一般に「Verilog(登録商標)」と呼ばれている)及びIEEE Standard 1076-2008(一般に「VHDL」と呼ばれている)などのハードウェア記述のための言語を使用して定義することができる。ハードウェア記述言語を使用してハードウェア回路を製造し、及び/又はプログラムすることができる。いくつかの実施態様では、コントローラのいくつかの特徴又はすべての特徴は、以下で説明されるコード及びハードウェア記述の両方を包含しているIEEE 1666-2005(一般に「SystemC」と呼ばれている)などの言語によって定義することができる。
【0069】
上で使用されたコードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又はマイクロコードを含むことができ、また、プログラム、ルーチン、ファンクション、クラス、データ構造、及び/又はオブジェクトと呼ぶことができる。共有プロセッサ回路という用語は、複数のコントローラからのいくつかのコード又はすべてのコードを実行する単一のプロセッサ回路を包含している。グループプロセッサ回路という用語は、追加プロセッサ回路と組み合わせて、1つ又は複数のコントローラからのいくつかのコード又はすべてのコードを実行するプロセッサ回路を包含している。複数のプロセッサ回路に対する参照は、ディスクリートダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のプロセッサ回路の複数のコア、単一のプロセッサ回路の複数のスレッド、又は上記の組合せを包含している。共有メモリ回路という用語は、複数のコントローラからのいくつかのコード又はすべてのコードを記憶する単一のメモリ回路を包含している。グループメモリ回路という用語は、追加メモリと組み合わせて、1つ又は複数のコントローラからのいくつかのコード又はすべてのコードを記憶するメモリ回路を包含している。
【0070】
メモリ回路という用語はコンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。本明細書において使用されているコンピュータ可読媒体という用語は、媒体を通って伝搬する一時的電気信号又は電磁信号(搬送波上の信号など)を包含せず、従って、コンピュータ可読媒体という用語は、有形の非一時的コンピュータ可読媒体と見なすことができる。非一時的コンピュータ可読媒体の非制限の例は、不揮発性メモリ回路(フラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ回路又はマスクリードオンリメモリ回路など)、揮発性メモリ回路(スタティックランダムアクセスメモリ回路又はダイナミックランダムアクセスメモリ回路など)、磁気記憶媒体(アナログもしくはデジタル磁気テープ又はハードディスクドライブなど)、及び光学記憶媒体(CD、DVD、又はBlu-ray(登録商標) Discなど)である。
【0071】
本出願において説明されている装置及び方法は、コンピュータプログラムの中に具現化された1つ又は複数の特定の機能を実行するために汎用コンピュータを構成することによって作り出される専用コンピュータによって部分的又は完全に実現することができる。上で説明した機能ブロック及びフローチャート要素は、熟練技術者又はプログラマのルーチンワークによってコンピュータプログラムに翻訳することができるソフトウェア仕様として働いている。
【0072】
コンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されるプロセッサ実行可能命令を含む。また、コンピュータプログラムは、記憶されたデータを含むことも可能であり、もしくは記憶されたデータを利用することも可能である。コンピュータプログラムは、専用コンピュータのハードウェアと対話する基本入力/出力システム(BIOS)、専用コンピュータの特定のデバイスと対話するデバイスドライバ、1つ又は複数のオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、バックグラウンドサービス、バックグラウンドアプリケーション、等々を包含することができる。
【0073】
コンピュータプログラムは、(i)HTML(ハイパーマークアップ言語)、XML(拡張可能マークアップ言語)又はJSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)などの構文解析される記述テキスト、(ii)アセンブリコード、(iii)コンパイラによってソースコードから生成されるオブジェクトコード、(iv)解釈プログラム(インタプリタ)が実行するためのソースコード、(v)ジャストインタイムコンパイラがコンパイルし、かつ、実行するためのソースコード、等々を含むことができる。単なる例として、ソースコードは、C、C++、C#、Objective-C、Swift(登録商標)、Haskell、Go、SQL、R、Lisp、Java(登録商標)、Fortran、Perl、Pascal、Curl、OCaml、JavaScript(登録商標)、HTML5(Hypertext Markup Language 5th revision)、Ada(登録商標)、ASP(Active Server Pages)、PHP(PHP: Hypertext Preprocessor)、Scala、Eiffel、Smalltalk(登録商標)、Erlang(登録商標)、Ruby(登録商標)、Flash(登録商標)、Visual Basic(登録商標)、Lua、MATLAB(登録商標)、SIMULINK(登録商標)、及びPython(登録商標)を含む言語からの構文を使用して作成することができる。
【0074】
外科システムは、上で説明した多くの構成では、外科穿孔システム、切削ツール及びドリルビットとして実現されているが、外科システムは、刃、バー、鋸、やすり、ミル、リーマ又は套管針ピンのうちの1つ又は複数を使用した別の外科切削システムとして実現することができることが企図されていることに留意されたい。また、外科システムは外科用途を対象としているが、外科システムは非外科用途にも使用することができることに留意されたい。
【0075】
以上の説明では、いくつかの構成が考察されている。しかしながら、本明細書において考察されている構成には、網羅的であること、又は本発明を何らかの特定の形態に限定することは意図されていない。使用されている専門用語には、語の性質上、制限ではなく、説明であることが意図されている。上記の教示に照らして多くの変更形態及び変形形態が可能であり、また、本発明は、明確に説明されている以外の方法で実践することが可能である。
【0076】
本発明は独立請求項で定義され、特定の特徴は従属請求項で詳述されることが意図されており、1つの独立請求項に従属している請求項の主題は、別の独立請求項と関連して実現することができる。
【0077】
本開示は以下の節を含み、特定の特徴は従属節に詳述されており、とりわけ、上記構成及び図面を参照してより詳細に説明したように実現することができる。
I.切削ツールを使用して骨に切り込むための外科システムであって、外科システムは、切削プロセスの間、切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成されたセンサと、コントローラと、を備える。コントローラは、初期切削時間及び最終切削時間に基づく、骨に対する切削ツールの変位データを特定するように構成され、変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値、及び骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。コントローラは、変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するように構成され、かつ、近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいて穴の貫通深さを特定するように構成される。
II.節Iに記載の外科システムであって、近位皮質閾値は関数によって定義される。
III.節I又はIIに記載の外科システムであって、メモリユニットを更に備え、近位皮質閾値がこのメモリユニットに記憶される。
IV.節I~IIIのいずれか1つに記載の外科システムであって、切削ツールは、ドリルビット、バー、鋸、やすり、ミル、リーマ、刃及び套管針ピンからなる切削ツールのグループから選択される1つの切削ツールを備える。
V.切削器具に取り付けられた切削ツールによって骨に形成された穴の貫通深さを特定する方法であって、方法は、切削ツールの変位データを特定するステップと、切削される骨タイプを特定するステップと、骨硬さ係数を特定するステップと、骨硬さ係数及び変位データに基づいて、完全に形成された穴の貫通深さを特定するステップと、を含む。
VI.骨に切り込むための外科システムであって、外科システムは、第1の性能特徴を有する第1の切削ツールと、第1の性能特徴とは異なる第2の性能特徴を有する第2の切削ツールと、切削プロセスの間、第1の切削ツール及び第2の切削ツールのうちのいずれかの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成されたセンサと、コントローラと、を備える。コントローラは、初期切削時間及び最終切削時間に基づく、第1及び第2の切削ツールのうちのいずれかの骨に対する変位データを特定するように構成され、変位データは、骨の近位皮質の近位表面を示す変位値、及び骨の遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。コントローラは、変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するように構成され、かつ、近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいて穴の貫通深さを特定するように構成される。
VII.節VIに記載の外科システムであって、第1の切削ツールは第1のドリルビットを備え、また、第2の切削ツールは第2のドリルビットを備え、第1のドリルビットは、半径、切削先端幾何構造、材料、長さ、断面積、ドリルビットタイプ、切削効率、すくい角、フルート角、フルート深さ及び先端角から選択される少なくとも1つの性能特徴において第2のドリルビットとは異なる。
VIII.節VI又はVIIに記載の外科システムであって、近位皮質閾値は第1の切削ツール及び第2の切削ツールの両方に対して同じである。
IX.切削ツールを使用して骨に切り込むための外科システムであって、外科システムは、切削プロセスの間、切削ツールの変位と関連付けられた1つ又は複数の変位信号を出力するように構成されたセンサと、コントローラと、を備える。コントローラは、初期切削時間及び最終切削時間に基づく、第1の骨及びその第1の骨とは骨タイプが異なる第2の骨のうちのいずれかに対する切削ツールの変位データを特定するように構成され、変位データは、第1の骨及び第2の骨のうちのいずれかの近位皮質の近位表面を示す変位値、及び第1の骨及び第2の骨のうちのいずれかの遠位皮質の遠位表面を示す変位値を含む。コントローラは、変位データに基づいて遠位皮質加速度データを特定するように構成され、かつ、第1の骨及び第2の骨の各々に対して同じである近位皮質閾値の完全に遠位である遠位皮質加速度データに基づいて穴の貫通深さを特定するように構成される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【国際調査報告】