(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを含むSARS-CoV-2及びHCoV-OC43に対する抗ウイルス用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20231124BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20231124BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231124BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/196
A61P31/14
A61P11/00
A61P43/00 121
A61P43/00 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530069
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2021001312
(87)【国際公開番号】W WO2022107999
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154110
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】521371991
【氏名又は名称】インスティチュート フォア ベーシック サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヴイ.ネリ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンワン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンジュン
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA18
4C206FA33
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、レイン(rhein)及びメクロフェナム酸(meclofenamic acid)を有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物に関する。本発明の抗ウイルス用組成物を用いる場合に、SARS-CoV-2及びHCoV-OC43のウイルスRNAレベルが抑制され、抗ウイルス効果を示すことによってCOVID-19及び風邪を治療又は予防できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物。
【請求項2】
前記ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)は、HCoV-OC43(human coronavirus OC43)、HCoV-HKU1(human coronavirus HKU1)、SARS-CoV(severe acute respiratory syndrome coronavirus)、MERS-CoV(Middle East respiratory syndrome coronavirus)及びSARS-CoV2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)を含む、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項3】
前記有効成分は、前記ベータコロナウイルスの非構造タンパク質(non-structural protein,Nsp)、スパイク(spike,S)、被膜(envelop,E)、膜(membrane,M)、ヌクレオカプシド(nucleocapsid,N)及びヘマグルチニンエステラーゼ(haemagglutinin esterase,HE)のタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも一つのウイルスRNAレベルを抑制することを特徴とする、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項4】
前記非構造タンパク質(non-structural protein,Nsp)は、Nsp1、Nsp2、Nsp3、Nsp4、Nsp5、Nsp6、Nsp7、Nsp8、Nsp9、Nsp10、Nsp11、Nsp12、Nsp13、Nsp14、Nsp15及びNsp16からなる群から選ばれる1種以上のタンパク質である、請求項3に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項5】
前記抗ウイルス用組成物は、薬剤学的に許容可能な担体、運搬体、賦形剤、安定剤又は希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項の抗ウイルス用組成物を含むCOVID-19(coronavirus disease 2019)の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項の抗ウイルス用組成物を含む風邪(common cold)、急性上気道炎(acute upper respiratory tract infection)、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome)又はウイルス性肺炎(viral pneumonia)の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、大韓民国科学技術情報通信部の支援下で課題固有番号1711101405によってなされたものであり、当該課題の研究管理専門機関はソウル大学校産学協力団、研究事業名は「国際科学ビジネスベルト造成(基礎科学研究院研究運営費支援)」、研究課題名は「RNAによる細胞運命調節研究」、主管機関は基礎科学研究院、研究期間は2020.03.03.~2020.08.28.である。
【0002】
本特許出願は、2020年11月17日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2020-0154110号公報に対して優先権を主張し、当該特許出願の開示事項は本願に参照によって組み込まれる。
【0003】
本発明は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含む、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属(genus)のSARS-CoV-2及びHCoV-OC43に対する抗ウイルス用組成物に関する。
【0004】
〔背景技術〕
コロナウイルス(coronavirus,CoV)は、陽性センス一本鎖RNA遺伝体を持つ外皮ウイルス(enveloped virus)であり、コロナウイルス科(family Coronavirinae)に属する。
【0005】
コロナウイルス科は、アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタコロナウイルスの4つの属(genus)に分類される。人に感染を起こすコロナウイルスは現在まで7種が発見されており、その5種がベータコロナウイルス(betacoronavirus)に属する。軽い呼吸器症状を誘発するヒトコロナウイルスOC43(human coronavirus OC43,HCoV-OC43)及びヒトコロナウイルスHKU1(human coronavirus HKU1,HCoV-HKU1)と、致命的な呼吸器感染を起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus,SARS-CoV、サースコロナウイルス)及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus,MERS-CoV,メルスコロナウイルス)がベータコロナウイルスに属する。
【0006】
特に、2019年12月に中国・武漢で原因不明の肺炎を誘発し始め、全世界的に大流行した急性呼吸器疾患であるコロナウイルス感染病-19(coronavirus disease 19,COVID-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2,SARS-CoV-2)もベータコロナウイルスに分類される。
【0007】
SARS-CoV-2の感染による急性呼吸器疾患であるCOVID-19に対する新規治療剤の開発が活発に研究されており、新薬開発にかかる時間を短縮し且つ費用を節減するために、既存に開発された薬物からCOVID-19の予防及び治療効果を見出す薬物再創出(drug repurposing又はdrug repositioning)戦略が実行されている。
【0008】
例えば、エボラ治療剤として開発された抗ウイルス剤レムデシビル(remdesivir)、マラリア治療剤ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)、HIV治療剤ロピナビル/リトナビル(lopinavir/ritonavir)、サイトカイン暴風を抑制する免疫抑制剤トシリズマブ(tocilizumab)、ACE抑制剤(angiotensin-converting enzyme inhibitor)などがCOVID-19患者に緊急使用で投与されているか、臨床試験中である。このような潜在的治療剤は、COVID-19の症状を緩和したり回復期間を短縮したりできるが、現在までFDAの承認を受けたCOVID-19治療剤はない。
【0009】
このため、人に流行性感染を起こして軽い風邪から致命的な重症急性呼吸器疾患までも誘発するベータコロナウイルスに対する抗ウイルス剤の開発が至急な状況である。
【0010】
一方、レイン(rhein)はアントラキノン(anthraquinone)誘導体で、抗炎症の効果から既存に退行性関節炎の治療に用いられており、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)はアントラニル酸(anthranilic acid)誘導体で、既存に非ステロイド性抗炎症剤(non-steroidal anti-inflammatory drug,NSAID)及び解熱剤として用いられている。しかしながら、これらの化合物の、ベータコロナウイルス(betacoronavirus)に属するSARS-CoV-2及びHCoV-OC43に対する抗ウイルス効果は知られたところがない。
【0011】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物を開発するために鋭意研究努力した。その結果、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含む組成物がウイルスRNAを有意に抑制することを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明の目的は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含む、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含む、SARS-CoV-2及びHCoV-OC43に対する抗ウイルス用組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、COVID-19(Coronavirus Disease 2019)の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、風邪(common cold)、急性上気道炎(acute upper respiratory tract infection)、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome)又はウイルス性肺炎(viral pneumonia)の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することである。
【0016】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、本発明は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物を提供する。
【0017】
本発明者らは、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物を開発するために鋭意研究努力した。その結果、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含む組成物がウイルスRNAを有意に抑制することを突き止めた。
【0018】
本発明の「レイン(rhein)」は、カス酸(cassic acid)及び4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソアントラセン-2-カルボン酸(4,5-dihydroxy-9,10-dioxoanthracene-2-carboxylic acid)とも知られたアントラキノン(anthraquione)誘導体であり、抗炎症効果を有することから、既存に退行性関節炎の治療に用いられている、次の化学式1で表記される化合物を意味する。
【0019】
【0020】
本発明の「メクロフェナム酸(meclofenamic acid)」は、メクロフェナメート(meclofenamate)とも知られたアントラニル酸(anthranilic acid)誘導体であって、COX(cyclooxygenase)抑制剤であり、プロスタグランディンの形成を抑制する効果を有することから、現在、非ステロイド性抗炎症剤(non-steroidal anti-inflammatory drug,NSAID)及び解熱剤として用いられる、次の化学式2で表記される化合物を意味する。
【0021】
【0022】
本明細書の用語「有効成分として含む」とは、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はそれらの組合せの薬理学的効能又は活性を達成するのに十分な量を含むことを意味し、薬物の伝達、安定化及び製剤化のために様々な成分が付加的に添加されてもよいことを意味する。
【0023】
本発明の用語「抗ウイルス用組成物」とは、宿主細胞へのウイルス侵入、ウイルス遺伝体の複製及び合成、ウイルス遺伝体の転写、ウイルスのタンパク質合成、逆転写酵素の活性、ウイルス組立(assembly)又はウイルス出芽(budding)を抑制することによって、ウイルスの感染を予防する、ウイルスの複製を抑制する、ウイルスの伝搬を防止する、又はウイルスを死滅させる組成物、又はウイルス感染によって発病する疾病又はそれによって発現する症状を治療する組成物を意味する。
【0024】
本明細書の用語「予防」は、疾患又は疾患状態の防止又は保護的な治療を意味する。本明細書の用語「治療」は、疾患状態の減少、抑制、鎮静、又は根絶を意味する。
【0025】
本明細書において用語「ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)」とは、コロナウイルス科(family Coronavirinae)に属する4つの属(genus)の一つであり、動物及びヒトに感染され、無症状であるか、軽症又は重症の呼吸器症状を誘発するRNAウイルスを意味する。
【0026】
本発明の一具現例において、本発明のベータコロナウイルス(Betacoronavirus)は、HCoV-OC43(human coronavirus OC43)、HCoV-HKU1(human coronavirus HKU1)、SARS-CoV(severe acute respiratory syndrome coronavirus)、MERS-CoV(Middle East respiratory syndrome coronavirus)及びSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)を含む。
【0027】
本発明の一具体例において、本発明のベータコロナウイルス(Betacoronavirus)は、SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)及びHCoV-OC43(human coronavirus OC43)を含む。
【0028】
本発明の一具現例において、本発明の有効成分は、前記ベータコロナウイルスの非構造タンパク質(non-structural protein,Nsp)、スパイク(spike,S)、被膜(envelop,E)、膜(membrane,M)、ヌクレオカプシド(nucleocapsid,N)及びヘマグルチニンエステラーゼ(haemagglutinin esterase,HE)のタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも一つのウイルスRNAのレベルを抑制することを特徴とする。
【0029】
本発明の一具体例において、本発明の有効成分は、前記ベータコロナウイルスの非構造タンパク質(non-structural protein,Nsp)、膜(membrane,M)タンパク質、及びヌクレオカプシド(nucleocapsid,N)タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも一つのウイルスRNAのレベルを抑制することを特徴とする。
【0030】
本発明の用語「非構造タンパク質(non-structural protein,Nsp)」とは、コロナウイルスの複製及び転写関連の非構造タンパク質を意味する。コロナウイルスの非構造タンパク質には16個のNsp1~Nsp16があり、Nsp3及びNsp5はタンパク質分解活性を有し、Nsp7、Nsp8及びNsp12は複製酵素-転写酵素複合体(replicase-transcriptase complex,RTC)を形成する。RTCの核心構成要素であるNsp12は、RNA依存性RNA重合酵素(RNA-dependent RNA polymerase,RdRp)であり、ウイルスの複製でRNA合成を直接に媒介する。
【0031】
本発明の一具体例において、本発明の非構造タンパク質(non-structural protein,Nsp)は、Nsp1、Nsp2、Nsp3、Nsp4、Nsp5、Nsp6、Nsp7、Nsp8、Nsp9、Nsp10、Nsp11、Nsp12、Nsp13、Nsp14、Nsp15及びNsp16からなる群から選ばれる1種以上のタンパク質である。本発明の他の具体例において、本発明の非構造タンパク質は、Nsp12である。
【0032】
本発明の一具現例において、本発明の抗ウイルス用組成物はさらに、薬剤学的に許容可能な担体、運搬体、賦形剤、安定剤又は希釈剤を含む。
【0033】
本発明の薬剤学的に許容可能な担体、運搬体、賦形剤、安定剤又は希釈剤は、本発明の属する技術の分野における通常のものであって、本発明の有効成分と薬理学的に両立可能な担体、運搬体、賦形剤、安定剤、又は希釈剤を意味する。
【0034】
本発明の薬剤学的組成物の薬剤学的に許容可能な担体又は運搬体には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル、エタノール、DMSO(dimethyl sulfoxide)などが含まれるが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、賦形剤、安定剤、希釈剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。好適な薬剤学的に許容可能な担体、運搬体、賦形剤、安定剤又は希釈剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0035】
本発明の薬剤学的組成物は経口又は非経口で投与でき、非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与できる。
【0036】
本発明の薬剤学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練した医師は、希望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。一方、本発明の薬剤学的組成物の投与量は、好ましくは、1日当たり0.0001~1000mg/kg(体重)である。
【0037】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位用量形態で製造されたり又は多回用量容器内に内入させて製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含んでよい。
【0038】
本発明で用いられた哺乳動物細胞は、Vero細胞株(African green monkey kidney cell line)、Calu-3細胞株(human lung adenocarcinoma cell line)、HBEC細胞株(human bronchial epithelium cell line)、及びHCT-8細胞株(colon cancer cell line)からなる群から選ばれる少なくとも一つの哺乳動物細胞を含むが、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明のVero細胞株は、アフリカ緑色猿(African green monkey)の腎臓上皮細胞(kidney epithelial cell)から分離された細胞株で、ウイルス培養の宿主細胞として一般に用いられる。本発明のCalu-3細胞株は、ヒト肺癌細胞に由来する細胞株(human lung adenocarcinoma cell line)で、呼吸器感染ウイルスに対する研究に一般に用いられ、SARS-CoV-2研究において用いられる。本発明のHBEC細胞株は、ヒト気管支上皮細胞株(human bronchial epithelium cell line)であり、細胞培養研究から一段階さらに進んで、実際の呼吸器を摸倣するように細胞培養液-幹細胞(stem cell)から分化した気管支上皮細胞-空気層に培養された細胞株である。本発明のHCT-8細胞は大腸癌細胞株(colon cancer cell line)で、HCoV-OC43研究に一般に用いられている細胞株である。
【0040】
本発明の他の態様によれば、本発明は、上述した抗ウイルス用組成物を含むCOVID-19(coronavirus disease 2019)の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。本発明の用語「COVID-19」とは、SARS-CoV-2感染による呼吸器疾患であって、コロナウイルス感染症-19(coronavirus disease 2019,COVID-19)を意味し、無症状であるか、発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、肺炎、痰、咽喉痛、頭痛、喀血、むかつき、下痢などを含む軽症又は重症の呼吸器症状を示す。COVID-19の治療には、現在、大衆的な治療として水液補充及び/又は解熱剤の使用などの保存的治療があり、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス剤はない実情である。
【0041】
本発明のCOVID-19(coronavirus disease 2019)の予防又は治療用薬剤学的組成物は、上述した本発明の他の態様である抗ウイルス用組成物を含むので、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために重複する内容を援用し、その記載を省略する。
【0042】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上述した抗ウイルス用組成物を含む風邪(common cold)、急性上気道炎(acute upper respiratory tract infection)、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome)又はウイルス性肺炎(viral pneumonia)の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0043】
本発明の風邪(common cold)、急性上気道炎(acute upper respiratory tract infection)、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome)又はウイルス性肺炎(viral pneumonia)の予防又は治療用薬剤学的組成物は、上述した本発明の他の態様である抗ウイルス用組成物を含むので、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために重複する内容は援用し、その記載を省略する。
【0044】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は上述した本発明の他の態様に係るレイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物をそれを必要とする対象体に投与する段階を含むウイルス抑制方法を提供する。
【0045】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上述した本発明の他の態様によるレイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物をそれを必要とする対象体に投与する段階を含むウイルス感染による疾病治療方法を提供する。
【0046】
本発明のウイルス抑制方法及び疾病治療方法の対象になるウイルスと疾病は、上述した抗ウイルス用組成物において定義した通りである。
【0047】
本発明の一具現例において、本発明の対象体は哺乳動物又はヒトである。前記哺乳動物は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、チンパンジー、オランウータン、ヒヒ(baboon)などを含むが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明の上述したウイルス抑制方法及び疾病治療方法は、上述した本発明の他の態様に係る抗ウイルス用組成物を投与することによってなされるので、重複する内容は援用し、本明細書記載の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0049】
〔発明の効果〕
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(a)本発明は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物を提供する。
【0050】
(b)本発明は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むSARS-CoV-2及びHCoV-OC43に対する抗ウイルス用組成物を提供する。
【0051】
(c)本発明は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物をそれを必要とする対象体に投与する段階を含むウイルス抑制方法を提供する。
【0052】
(d)本発明は、レイン(rhein)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、又はこれらの組合せを有効成分として含むベータコロナウイルス(Betacoronavirus)に対する抗ウイルス用組成物をそれを必要とする対象体に投与する段階を含むウイルス感染による疾病治療方法を提供する。
【0053】
(e)本発明の抗ウイルス用組成物を用いると、ベータコロナウイルスのRNAレベルを抑制することによってCOVID-19(coronavirus disease 2019)、風邪(common cold)、急性上気道炎(acute upper respiratory tract infection)、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome)又はウイルス性肺炎(viral pneumonia)を予防又は治療することができる。
【0054】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕SARS-CoV-2又はHCoV-OC43に感染された細胞に、レイン(rhein)を含む抗ウイルス用組成物の処理の有無による、qRT-PCRで測定したウイルスRNAレベル(level)を示す。
図1AはSARS-CoV-2に感染されたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)、
図1BはSARS-CoV-2に感染されたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)、
図1CはHCoV-OC43に感染されたHCT-8細胞(HCoV OC43-infected HCT-8)、及び
図1DはHCoV-OC43に感染されたVero細胞(HCoV OC43-infected Vero)、においてウイルスRNAレベルを示す。全てのRNAレベルは、それぞれのGAPDHのRNAレベルに補正された。
【0055】
〔
図2〕SARS-CoV-2又はHCoV-OC43に感染された細胞にメクロフェナム酸(meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物の処理の有無によるqRT-PCRで測定したウイルスRNAレベルを示す。
図2AはSARS-CoV-2に感染されたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)、
図2BはSARS-CoV-2に感染されたHBEC細胞(SARS-CoV-2-infected HBEC)、
図2CはSARS-CoV-2に感染されたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)、
図2DはHCoV-OC43に感染されたHCT-8細胞(HCoV OC43-infected HCT-8)、及び
図2EはHCoV-OC43に感染されたVero細胞(HCoV OC43-infected Vero)、においてウイルスRNAレベルを示す。全てのRNAレベルは、それぞれのGAPDHのRNAレベルに補正された。
【0056】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0057】
<実施例>
<実施例1:抗ウイルス用組成物の製造>
<実施例1-1:レイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物の製造>
レイン(Rhein)は、Sigma-Aldrich(カタログ番号R7269)から購買し、運搬体DMSOにおいて5μM、10μM、25μM及び50μMの濃度のレイン(rhein)を含む抗ウイルス用組成物を製造したし、対照群として、DMSOのみを含む組成物、又は50%(v/v)DMSO及び50%(v/v)エタノールの混合溶液(DMSO+Ethanol)を製造した。
【0058】
<実施例1-2:メクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物の製造>
メクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)は、Sigma-Aldrich(カタログ番号M4531)から購買し、運搬体エタノールにおいて0.5μM、5μM、10μM、25μM、50μM及び100μMの濃度のメクロフェナム酸(MA)を含む抗ウイルス用組成物を製造したし、対照群として、エタノールのみを含む組成物、又は50%(v/v)DMSO及び50%(v/v)エタノールの混合溶液(DMSO+Ethanol)を製造した。
【0059】
<実施例2:細胞株>
<実施例2-1:Vero細胞株>
Vero細胞株(African green monkey kidney cell line,ATCC(American Type Culture Collection)、カタログ番号:CCL-81)は、10%FBS(fetal bovine serum)が添加されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)で37℃及び5%CO2の培養器で培養した。
【0060】
<実施例2-2:Calu-3細胞株>
Calu-3細胞株(human lung adenocarcinoma cell line,韓国細胞株銀行(Korean Cell Line Bank,KCLB),KCLB番号:30055)は、10%FBSが添加されたDMEMで37℃及び5%CO2の培養器で培養した。
【0061】
<実施例2-3:HCT-8細胞株>
HCT-8細胞株(colon cancer cell line,韓国細胞株銀行、KCLB番号:10244)は、10% FBSが添加されたRPMI(Rosewell Park Memorial Institute)培養液で37℃及び5%CO2の培養器で培養した。
【0062】
<実施例2-4:HBEC細胞株>
HBEC細胞株(human bronchial epithelium cell line,ATCC、カタログ番号:PCS-300-010)は、STEMCELLTM Technologiesから提供するプロトコルを必要部分だけやや修正(mutatis mutandis)して培養した。
【0063】
より詳細には、HBEC細胞の培養開始日から3日目までは、i)培養液PneumaCultTM-Ex plus medium(STEMCELLTM Technologies、カタログ#05040)に0.1μg/mlのヒドロコルチゾン(hydrocortisone,Sigma、カタログ#H0888)を添加した培養液で培養した。
【0064】
HBEC細胞の分化のために、培養後4日目から45日目までは、ii)上記の3日間培養したHBEC細胞を、3×105細胞/ウェルずつ、12ウェルプレート(下のBasal Chamberと上のApical Chamberとの間に0.4μm気孔膜(membrane)を有するTranswell(登録商標) insert,STEMCELLTM Technologies、カタログ#05001)のApical Chamberにおいて0.5mlの培養液PneumaCultTM-Ex plus medium(STEMCELLTM Technologies)で培養した。前記12ウェルプレートのBasal Chamberには、ウェル当たりに1mlの培養液(PneumaCultTM-Ex plus medium,STEMCELLTM Technologies)を添加した。HBEC細胞を培養した前記12ウェルプレートのApical Chamberにおいて細胞集合度(cell confluency)が100%に到達すると、Apical Chamberで培養液を除去して分化(differentiation)を誘導した。前記分化培養により、HBEC細胞は、生体内ヒトの気道(airway)上皮と形態学的及び機能的に類似する偽重層上皮(pseudostratified epithelium)を形成した。
【0065】
前記分化培養を始めて30日までは12ウェルプレートのBasal Chamberにおいて培養液を2日に1回ずつ培養液PneumaCultTM-ALI maintenance medium(STEMCELLTM Technologies、カタログ#05002、05003及び05006、1μg/mlのヒドロコルチゾンを添加)に交換した。その後、7日間は、1週に2回ずつ培養液を前記培養液に交換し、その次の7日間は1週に1回ずつ培養液を交換した。
【0066】
培養後45日目には、iii)前記分化して維持されたHBEC細胞にベータコロナウイルスを感染させ、iV)培養後47日目に、すなわち、ウイルス感染の48時間後に、RNA抽出のためにサンプルを得た。
【0067】
<実施例3:ウイルス>
<実施例3-1:SARS-CoV-2>
SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)は、疾病管理本部傘下国家病原体資源銀行から分譲された病原体資源であり、国際ワクチン研究所の生物安全3等級(biosafety level 3)研究施設で厳格な統制下に管理された。
【0068】
<実施例3-2:HCoV-OC43>
HCoV OC43(human coronavirus OC43)は、高麗大学校病原性ウイルス銀行から分譲され、生物安全2等級研究施設で管理した。
【0069】
<実施例4:ベータコロナウイルスの感染及び抗ウイルス用組成物の処理>
<実施例4-1:SARS-CoV-2又はHCoV-OC43に感染された細胞株においてレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物の処理>
1)SARS-CoV-2に感染されたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)
Calu-3細胞株を12ウェルプレート(12-well plate)において1.75×105細胞/ウェルずつ3個のウェル(well)に培養した。培養18時間後に無血清(serum-free)DMEMで各ウェルを洗浄し、生物安全3等級研究施設でSARS-CoV-2を各ウェルに0.05のMOI(multiplicity of infection)で感染させたし、2%FBSを含むDMEMで培養した。ウイルス感染と同時に、25μM濃度のレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物及び対照群としてDMSOを、各ウェルの細胞培養液に処理した。ウイルス感染の24時間後に、RNA抽出のためのサンプルを得た。
【0070】
2)SARS-CoV-2に感染されたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)
Vero細胞株を12ウェルプレートにおいて1.75×105細胞/ウェルずつ3個のウェルに培養した。培養18時間後に無血清DMEMで各ウェルを洗浄し、生物安全3等級研究施設でSARS-CoV-2を0.05のMOIで感染させ、2%FBSを含むDMEMで培養した。ウイルス感染と同時に、25μM濃度のレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物及び対照群としてDMSOを、各ウェルに(well)の細胞培養液に処理した。ウイルス感染の24時間後に、RNA抽出のためのサンプルを得た。
【0071】
3)HCoV-OC43に感染されたHTC-8細胞(HCoV-OC43-infected HCT-8)
HCT-8細胞株を12ウェルプレートにおいて2×105細胞/ウェルずつ2個のウェルに培養した。培養18時間後に、PBS又は3% FBSを含むRPMIで各ウェルを洗浄した後、生物安全2等級研究施設でHCoV-OC43を感染させ、3%FBSを含むRPMIで培養した。ウイルス感染と同時に、0.25μM、2.5μM、25μM及び250μM濃度のレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物、及び対照群としてDMSO及びエタノールの混合溶液を、各ウェルの細胞培養液に処理した。ウイルス感染の24時間後に、各ウェルをPBS又は3%FBSを含むRPMIで洗浄した後、RNA抽出のためのサンプルを得た。
【0072】
4)HCoV-OC43に感染されたVero細胞(HCoV-OC43-infected Vero)
Vero細胞株を12ウェルプレートに2×105細胞/ウェルずつ3個のウェルに培養した。培養18時間後に、PBS又は3%FBSを含むDMEMで各ウェルを洗浄した後、生物安全2等級研究施設でHCoV-OC43を感染させ、3%FBSを含むDMEMで培養した。ウイルス感染と同時に、5μM、10μM、25μM及び50μM濃度のレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物及び対照群としてDMSOを、各ウェルに(well)の細胞培養液に処理した。ウイルス感染の24時間後に、PBS又は3%FBSを含むDMEMで洗浄した後、RNA抽出のためのサンプルを得た。
【0073】
<実施例4-2:SARS-CoV-2又はHCoV-OC43が感染された細胞株においてメクロフェナム酸(meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物の処理>
処理した抗ウイルス用組成物の種類とSARS-CoV-2に感染されたHBEC細胞を除いては、前記実施例4-1に記載の条件と同一又は類似の条件にして各細胞株を培養して各ウイルスを感染させたので、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために、重複する内容は援用し、その記載を省略する。
【0074】
SARS-CoV-2に感染されたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)、SARS-CoV-2に感染されたHBEC細胞(SARS-CoV-2-infected HBEC)及びSARS-CoV-2に感染されたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)に対して、50μM濃度のメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物及び対照群としてエタノールを、各ウェルの細胞培養液に処理した。
【0075】
また、HCoV-OC43に感染されたHTC-8細胞(HCoV-OC43-infected HCT-8)は、0.5μM、5μM及び50μM濃度のメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物と対照群としてDMSO及びエタノールの混合溶液(DMSO+Ethanol)を各ウェルの細胞培養液に処理したし、HCoV-OC43に感染されたVero細胞(HCoV-OC43-infected Vero)は、5μM、10μM、25μM、50μM及び100μM濃度のメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物と対照群としてDMSOを各ウェルの細胞培養液に処理した。
【0076】
1)SARS-CoV-2に感染されたHBEC細胞(SARS-CoV-2-infected HBEC)
実施例2-4のように、培養したHBEC細胞株を培養後3日目に分化させて維持したし、培養後45日目に生物安全3等級研究施設においてPBSで各ウェルを洗浄した後、SARS-CoV-2を3.3×104pfu(plaque-forming unit)で感染させた。前記ウイルス感染2時間前に、50μM濃度のメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物と対照群としてエタノールを各ウェルの細胞培養液に処理した。培養後47日目に、すなわちウイルス感染の48時間後に、PBSで各ウェルを洗浄した後、RNA抽出のためのサンプルを得た。
【0077】
<実施例5:RNA分離及び精製>
前記実施例4で得たRNA抽出のためのサンプルに核酸抽出溶解液Trizol(Invitrogen、カタログ番号10296028)を処理して全体RNAを分離した。SARS-CoV-2に感染された細胞の全体RNAはPureLinkTM RNA Mini Kit(Invitrogen、カタログ番号:12183018A)を、HCoV-OC43に感染された細胞の全体RNAはRNeasy Mini Kit(Qiagen、カタログ番号:74106)を用いてメーカーのプロトコルにしたがって精製した。精製されたRNAの濃度は、分光光度計(NanoDropTM2000c Spectrophotometer,ND-2000C,Thermo Scientific)を用いて測定した。
【0078】
<実施例6:qRT-PCR(quantative real-time PCR)>
前記実施例5で得た精製されたRNAは、Power SYBRTM Green PCR Master Mix(Applied BiosystemsTM、カタログ番号:4367659)と実時間遺伝子増幅装備(Real-time QuantStudio 3 Real-Time PCR Instrument,Applied BiosystemsTM)でqRT-PCRを行った。
【0079】
qRT-PCR実験に用いられたプライマー(primer)の正方向(forward,F)及び逆方向(reverse,R)の配列は、次の表1に提示した。SARS-CoV-2に感染された細胞においてNSP12(non-structural protein 12)、M(membrane)及びN(nucleocapsid)のウイルスRNAレベルを測定する場合に、配列番号1~6に示したオリゴヌクレオチド配列を有するプライマーを用いた。SARS-CoV-2に感染されたCalu-3及びHBEC細胞においてGAPDHのRNAを測定する場合に、配列番号7及び8に示したオリゴヌクレオチド配列を有するプライマーを用いた。SARS-CoV-2に感染されたVero及びHCT-8細胞においてGAPDHのRNAを測定する場合に、配列番号9及び10に示したオリゴヌクレオチド配列を有するプライマーを用いた。HCoV-OC43に感染された細胞においてN(nucleocapsid)のウイルスRNAレベルの測定のために、配列番号11及び12に示したオリゴヌクレオチド配列を有するプライマーを用いた。
【0080】
【0081】
qRT-PCR実験の結果から得たnsp12(non-structural protein12)、膜(membrane,M)タンパク質及びヌクレオカプシド(nucleocapsid,N)タンパク質遺伝子のCt(Cycle threshold)値を内因性対照群であるGAPDHのCt値に補正し(normalized)、2-ΔΔCtの方法でウイルスRNAレベルを分析した。
【0082】
本発明の実験は、2回反復を行ったHCoV-OC43に感染されたHCT-8細胞実験を除けばいずれも少なくとも3回反復され、
図1A~
図1D及び
図2A~
図2Eのグラフ上の誤差線(error bar)は、標準誤差(standard error of the mean)を表す。
【0083】
<実施例7:レイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物のベータコロナウイルスRNAの抑制効果>
<実施例7-1:SARS-CoV-2に対するレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物のウイルスRNA抑制効果>
SARS-CoV-2を感染させたCalu-3細胞及びVero細胞にDMSOのみを処理した対照群と25μMのレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群においてqRT-PCRで測定したnsp12、M及びNのウイルスRNAレベルをGAPDHで補正して分析した(
図1A及び
図1B参照)。SARS-CoV-2を感染させたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)においてDMSOのみを処理した対照群に比べて25μMのレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群においてnps12、M、及びNのウイルスRNAレベルがいずれも5%未満と有意に抑制され(
図1A参照)、SARS-CoV-2を感染させたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)においても同様、レイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群においてnps12、M、及びNのウイルスRNAレベルがいずれも約30%未満(
図1B参照)と有意に抑制された。
【0084】
<実施例7-2:HCoV-OC43に対するレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物のウイルスRNA抑制効果>
HCoV-OC43を感染させたHCT-8細胞(HCoV OC43-infected HCT-8)にDMSO及びエタノールの混合液(DMSO+Ethanol)を処理した対照群と0.25μM、2.5μM、25μM及び250μMのレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群において(
図1C参照)、HCoV-OC43を感染させたVero細胞(HCoV OC43-infected Vero)にDMSOのみを処理した対照群と5μM、10μM、25μM及び50μMのレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群において(
図1D参照)、それぞれ、qRT-PCRで測定したNのウイルスRNAレベルをGAPDHで補正して分析した。
【0085】
HCoV-OC43を感染させたHCT-8細胞に250μM及び25μMのレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した場合とHCoV-OC43を感染させたVero細胞に5μM、10μM、25μM及び50μMのレイン(Rhein)を含む抗ウイルス用組成物を処理した場合に、NのウイルスRNAレベルが有意に抑制された。また、
図1Dに示すように、HCoV-OC43を感染させたVero細胞において処理した抗ウイルス用組成物中のレイン(Rhein)の濃度が増加するにつれてNのRNAレベルの抑制が増加する用量依存的効果(dose-dependent effect)を確認した。
【0086】
<実施例8:メクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物のウイルスRNAの抑制効果>
<実施例8-1:SARS-CoV-2に対するメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物のウイルスRNA抑制効果>
SARS-CoV-2を感染させたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)、HBEC細胞(SARS-CoV-2-infected HBEC)及びVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)にエタノールのみを処理した対照群と50μMのメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群においてqRT-PCRで測定したnsp12、M及びNのウイルスRNAレベルをGAPDHで補正して分析した(
図2A、
図2B及び
図2C参照)。SARS-CoV-2を感染させたCalu-3細胞とVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)では、エタノールのみを処理した対照群に比べて、50μMのMAを含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群においてnps12、M及びNのウイルスRNAレベルがいずれも5%未満と有意に抑制され(
図2A及び
図2C参照)、SARS-CoV-2を感染させたHBEC細胞(SARS-CoV-2-infected HBEC)の場合には約40%以下と有意に抑制された(
図2B参照)。
【0087】
<実施例8-2:HCoV-OC43に対するメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物のウイルスRNA抑制効果>
HCoV-OC43を感染させたHCT-8細胞(HCoV OC43-infected HCT-8)にDMSOとエタノールを処理した対照群と0.5μM、5μM及び50μMのメクロフェナム酸(Meclofenamic acid,MA)を含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群において(
図2D参照)、HCoV-OC43を感染させたVero細胞(HCoV OC43-infected Vero)にDMSOのみを処理した対照群と5μM、10μM、25μM、50μM及び100μMのMAを含む抗ウイルス用組成物を処理した実験群において(
図2E参照)、qRT-PCRで測定したNのウイルスRNAレベルをGAPDHで補正して分析した。HCoV-OC43を感染させたHCT-8細胞に50μMのMAを含む抗ウイルス用組成物を処理した場合とHCoV-OC43を感染させたVero細胞に10μM、25μM、50μM及び100μMのMAを含む抗ウイルス用組成物を処理した場合に、NのウイルスRNAレベルが有意に抑制されたことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1A】SARS-CoV-2に感染されたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図1B】SARS-CoV-2に感染されたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図1C】HCoV-OC43に感染されたHCT-8細胞(HCoV OC43-infected HCT-8)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図1D】HCoV-OC43に感染されたVero細胞(HCoV OC43-infected Vero)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図2A】SARS-CoV-2に感染されたCalu-3細胞(SARS-CoV-2-infected Calu-3)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図2B】SARS-CoV-2に感染されたHBEC細胞(SARS-CoV-2-infected HBEC)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図2C】SARS-CoV-2に感染されたVero細胞(SARS-CoV-2-infected Vero)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図2D】HCoV-OC43に感染されたHCT-8細胞(HCoV OC43-infected HCT-8)においてウイルスRNAレベルを示す。
【
図2E】HCoV-OC43に感染されたVero細胞(HCoV OC43-infected Vero)においてウイルスRNAレベルを示す。
【配列表】
【国際調査報告】