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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】二機能性分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231124BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231124BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231124BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20231124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231124BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231124BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231124BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20231124BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K51/10 200
A61K49/00
A61K51/10 100
A61K38/16
A61K38/20
A61K38/19
A61K38/21
A61K45/00
A61K47/68
A61K47/55
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P43/00 125
A61P11/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P15/00
A61P19/08
A61P13/12
A61P13/10
A61P13/08
A61P1/04
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P25/00
A61P21/00
A61P17/00
A61P37/04
C12N15/13
C12N15/12
C07K16/28
C07K16/24
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530164
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2021131389
(87)【国際公開番号】W WO2022105817
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/129918
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/073341
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522458778
【氏名又は名称】スーチョウ・トランスセンタ・セラピューティクス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】キアン,シュエミン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ホンジュン
(72)【発明者】
【氏名】テン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,フアンフアン
(72)【発明者】
【氏名】グー,イー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA12
4C084AA17
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA19
4C084DA22
4C084DA47
4C084DB63
4C084DC50
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA341
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB022
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZC032
4C084ZC201
4C084ZC411
4C084ZC421
4C084ZC711
4C084ZC712
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA23
4C085AA25
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085HH03
4C085HH11
4C085KA04
4C085KA05
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB12
4C085LL18
4C085LL20
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA51
4H045DA76
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
TGFβ結合性部分、IL-1結合性部分、免疫賦活性ポリペプチド(例えば、可溶性LAG3もしくは可溶性CD4)またはCD47結合性部分に連結されたPD-L1結合性部分を含むタンパク質、それをコードする単離されたポリヌクレオチド、それを含む医薬組成物およびこれらの使用が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイント分子に結合する第1の部分、およびインターロイキン-1(IL-1)の活性を遮断する第2の部分を含む、二機能性分子。
【請求項2】
第1の部分が、CD27、CD70、CD28、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD40、CD40L(CD154)、CD122、CD137、CD137L、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、GITR、ICOS(CD278)およびICOSLG(CD275)、CD2、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160およびCD83からなる群から任意選択で選択される、免疫賦活性チェックポイント分子のアゴニストを含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項3】
第1の部分が、A2AR、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、VISTA、SIGLEC7(CD328)、TIGIT、PVR(CD155)、SIGLEC9(CD329)、CD160、LAIR1、2B4(CD244)、CD47、B7-H5からなる群から任意選択で選択される、免疫阻害性チェックポイント分子のアンタゴニストを含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項4】
免疫チェックポイント分子がPD-L1である、請求項3に記載の二機能性分子。
【請求項5】
第1の部分がPD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含み、第2の部分がIL-1結合性部分またはIL-1受容体(IL-1R)結合性部分を含む、請求項1~5のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項6】
IL-1結合性部分が、IL-1Rまたはその断片もしくはバリアント、あるいはIL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項5に記載の二機能性分子。
【請求項7】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、XB2001、ルチキズマブ、LY2189102およびベルメキマブからなる群から選択される抗IL-1α抗体由来、またはSSGJ-613、CDP484、カナキヌマブおよびゲボキズマブからなる群から選択される抗IL-1β抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項8】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号104もしくは配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号105もしくは配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号106もしくは配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107もしくは配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号108もしくは配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号109もしくは配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項9】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号104の配列を含むHCDR1、配列番号105の配列を含むHCDR2、および配列番号106の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107の配列を含むLCDR1、配列番号108の配列を含むLCDR2、および配列番号109の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項10】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項11】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号102、配列番号110、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、配列番号111、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項12】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号102、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項13】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号110、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号111、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項6に記載の二機能性分子。
【請求項14】
IL-1R結合性部分が、インターロイキン-1受容体アンタゴニストまたはその断片もしくはバリアント、あるいはIL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項5に記載の二機能性分子。
【請求項15】
IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片が、スペソリマブ、アステゴリマブ、イムシドリマブ、AMG108、メルリリマブ、ニダニリマブ、MEDI8968、REGN6490、HB0034およびCSC012からなる群から選択される抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む、請求項14に記載の二機能性分子。
【請求項16】
PD-L1に結合する第1の部分、およびa)免疫抑制性サイトカインの活性を遮断する、またはb)免疫を刺激する第2の部分を含む二機能性分子であって、第1の部分が、重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含み、重鎖可変領域が、
a)DYYMN(配列番号1)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含むHCDR1、
b)DINPNNXTXYNHKFKG(配列番号19)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含むHCDR2、および
c)WGDGPFAY(配列番号3)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含むHCDR3
を含み、かつ/または
軽鎖可変領域が、
d)KASQNVXVA(配列番号20)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列からなる群から選択される配列を含むLCDR1、
e)SXSXRYT(配列番号21)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列からなる群から選択される配列を含むLCDR2、および
f)QQYSNYPT(配列番号6)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列からなる群から選択される配列を含むLCDR3
を含み、
式中、XがGまたはAであり、XがGまたはDまたはQまたはEまたはLであり、XがSまたはMまたはQまたはLまたはVであり、XがGまたはPまたはKであり、XがAまたはGであり、XがAまたはIであり、XがAまたはNまたはRまたはVであり、かつXがNまたはHまたはVまたはDである、二機能性分子。
【請求項17】
重鎖可変領域が、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、
b)配列番号2、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含むHCDR2、ならびに
c)配列番号3の配列を含むHCDR3、
を含み、かつ/または
軽鎖可変領域が、
d)配列番号4、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含むLCDR1、
e)配列番号5、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択される配列を含むLCDR2、ならびに
f)配列番号6の配列を含むLCDR3
を含む、請求項16に記載の二機能性分子。
【請求項18】
重鎖可変領域が、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
b)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号13の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
c)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号14の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
d)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号15の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;ならびに
e)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号17の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域
からなる群から選択される、請求項17に記載の二機能性分子。
【請求項19】
軽鎖可変領域が、
a)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
b)配列番号9の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
c)配列番号8の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
d)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号12の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
e)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域
からなる群から選択される、請求項17または18に記載の二機能性分子。
【請求項20】
PD-L1に対する抗体もしくはその抗原結合性断片が、重鎖HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4の1つもしくは複数、ならびに/または軽鎖LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4の1つもしくは複数をさらに含み、
a)HFR1が、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYXFT(配列番号40)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
b)HFR2が、WVRQAPGQX10LEWMG(配列番号41)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
c)HFR3配列が、RVTX16TVDX11SISTAYMELSRLRSDDTAVYYCX1213(配列番号42)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
d)HFR4が、WGQGTLVTVSS(配列番号25)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
e)LFR1が、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号26)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
f)LFR2が、WYQQKPGKX14PKLLIY(配列番号43)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
g)LFR3が、GVPX15RFSGSGSGTDFTX17TISSLQPEDIATYYC(配列番号44)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
h)LFR4が、FGQGTKLEIK(配列番号29)またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
式中、XがTまたはVであり、X10がGまたはSであり、X11がTまたはKであり、X12がAまたはVであり、X13がRまたはKであり、X14がAまたはSであり、X15がSまたはDであり、X16がMまたはVであり、かつX17がFまたはLである、請求項16から19のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項21】
HFR1が、配列番号22および30からなる群から選択される配列を含み、
HFR2が、配列番号23および31からなる群から選択される配列を含み、
HFR3が、配列番号24および32~35からなる群から選択される配列を含み、
HFR4が、配列番号25の配列を含み、
LFR1が、配列番号26からなる群からの配列を含み、
LFR2が、配列番号27および36からなる群から選択される配列を含み、
LFR3が、配列番号28、および37~38、39、45からなる群から選択される配列を含み、
LFR4が、配列番号29の配列を含む、請求項20に記載の二機能性分子。
【請求項22】
重鎖可変領域が、配列番号46、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む、請求項16から21のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項23】
軽鎖可変領域が、配列番号47、配列番号54、配列番号55、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む、請求項16から22のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項24】
PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号49/54、50/54、51/54、52/54、49/55、50/55、51/55、52/55、58/62、58/63、58/64、58/65、59/62、59/63、59/64、59/65、60/62、60/63、60/64および60/65からなる群から選択される重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列との対を含む、請求項16に記載の二機能性分子。
【請求項25】
PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、PD-L1への特異的結合特異性および/または親和性を依然として保持する1つまたは複数のアミノ酸残基置換または改変をさらに含む、請求項16から24のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項26】
置換または改変の少なくとも1つが、VHまたはVL配列のCDR配列の1つもしくは複数、および/または非CDR領域の1つもしくは複数にある、請求項25に記載の二機能性分子。
【請求項27】
PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、免疫グロブリン定常領域、任意選択でヒトIgの定常領域、または任意選択でヒトIgGの定常領域をさらに含む、請求項16から26のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項28】
定常領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域を含む、請求項27に記載の二機能性分子。
【請求項29】
定常領域が、対応する野生型Fc領域と比べて低下したエフェクター機能を有するFcバリアントを含む、請求項28に記載の二機能性分子。
【請求項30】
Fcバリアントが、220S、226S、228P、229S、233P、234V、234G、234A、234F、234A、235A、235G、235E、236E、236R、237A、237K、238S、267R、268A、268Q、269R、297A、297Q、297G、309L、318A、322A、325L、328R、330S、331Sおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基置換を含み、Fc領域中の残基の番号付けがKabatにあるとおりのEUインデックスのものである、請求項29に記載の二機能性分子。
【請求項31】
Fcバリアントが、a)K322A、L234AおよびL235A;b)P331S、L234FおよびL235E;c)L234AおよびL235A;c)N297A;d)N297Q;e)N297G;f)L235E;g)L234AおよびL235A(IgG1);h)F234AおよびL235A(IgG4);i)H268Q、V309L、A330SおよびP331S(IgG2);j)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330SおよびP331S(IgG2)からなる群から選択される変異の組合せを含み、Fc領域中の残基の番号付けがKabatにあるとおりのEUインデックスのものである、請求項29から30のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項32】
Fcバリアントが、配列番号81のアミノ酸配列を含む、請求項29から31のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項33】
PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片がヒト化されている、請求項16から32のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項34】
抗原結合性断片が、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、1本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、多特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体および二価ドメイン抗体である、請求項16から33のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項35】
抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトPD-L1およびカニクイザルPD-L1の両方に結合することが可能である、請求項16から34のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項36】
第1の部分が、PD-L1への結合について、請求項16から35のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項1から15のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項37】
免疫抑制性サイトカインが、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリー中のサイトカイン、IL-1、または血管内皮増殖因子(VEGF)を含む、請求項16から36のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項38】
TGF-βスーパーファミリー中の免疫抑制性サイトカインが、TGF-β、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、NODAL、および増殖分化因子(GDF)を含む、請求項37に記載の二機能性分子。
【請求項39】
免疫抑制性サイトカインがTGF-βである、請求項16から38のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項40】
第2の部分がTGF-β結合性部分を含む、請求項16から39に記載の二機能性分子。
【請求項41】
TGF-β結合性部分が、可溶性TGFβ受容体(TGFβR)またはそのTGF-β結合性断片もしくはバリアント、あるいはTGFβに対する抗体およびその抗原結合性断片を含む、請求項40に記載の二機能性分子。
【請求項42】
可溶性TGFβRが、TGFβRの細胞外ドメイン(ECD)またはそのTGF-β結合性断片もしくはバリアントを含む、請求項41に記載の二機能性分子。
【請求項43】
TGFβRが、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、TGFβ受容体III(TGFβRIII)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項42に記載の二機能性分子。
【請求項44】
TGFβRがTGFβRIIである、請求項42に記載の二機能性分子。
【請求項45】
TGFβRIIが、TGFβ2およびTGFβ3よりもTGFβ1に選択的に結合する、請求項44に記載の二機能性分子。
【請求項46】
TGFβ1が、ヒトTGFβ1またはマウスTGFβ1である、請求項45に記載の二機能性分子。
【請求項47】
TGFβRのECDが、配列番号66、79、78、77のアミノ酸配列、またはTGF-βへの特異的結合特異性および/または親和性を依然として保持する、これらに少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項42から46のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項48】
第2の部分が、IL-1結合性部分またはIL-1受容体(IL-1R)結合性部分を含む、請求項36に記載の二機能性分子。
【請求項49】
IL-1結合性部分が、可溶性IL-1R、IL-1RのIL-1結合性断片もしくはバリアント、またはIL-1に対する抗体もしくはその抗原結合性断片を含む、請求項48に記載の二機能性分子。
【請求項50】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、XB2001、ルチキズマブ、LY2189102およびベルメキマブからなる群から選択される抗IL-1α抗体由来、またはSSGJ-613、CDP484、カナキヌマブおよびゲボキズマブからなる群から選択される抗IL-1β抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項51】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号104もしくは配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号105もしくは配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号106もしくは配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107もしくは配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号108もしくは配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号109もしくは配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項52】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号104の配列を含むHCDR1、配列番号105の配列を含むHCDR2、および配列番号106の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107の配列を含むLCDR1、配列番号108の配列を含むLCDR2、および配列番号109の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項53】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号113の配列を含むHCDR2および配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号116の配列を含むLCDR2および配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項54】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号102、配列番号110およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、配列番号111およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項55】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号102およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項56】
IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号110、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号111、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項57】
配列番号118もしくは配列番号120のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号119もしくは配列番号121のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項58】
IL-1結合性部分が、IL-1RIの細胞外ドメイン(ECD)、IL-1RI、IL-1RIのECD、IL-1RII、またはIL-1RIIのECD、またはIL-1RAP、またはIL-1RAPのECD、IL-1sRIまたはIL-1sRIIのいずれかのIL-1結合性断片またはバリアントを含む、請求項49に記載の二機能性分子。
【請求項59】
IL-1R結合性部分が、IL-1RaまたはそのIL-1結合性断片もしくはバリアント、あるいはIL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項48に記載の二機能性分子。
【請求項60】
IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片が、スペソリマブ、アステゴリマブ、イムシドリマブ、AMG108、メルリリマブ、ニダニリマブ、MEDI8968、REGN6490、HB0034およびCSC012からなる群から選択される抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む、請求項59に記載の二機能性分子。
【請求項61】
IL-1R結合性部分が、配列番号67もしくは76のアミノ酸配列、または配列番号67もしくは76に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはそのIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む、請求項60に記載の二機能性分子。
【請求項62】
IL-1が、IL-1αまたはIL-1βである、請求項48から49のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項63】
IL-1βがヒトIL-1βである、請求項62に記載の二機能性分子。
【請求項64】
第2の部分が、抗腫瘍免疫を刺激し、かつ免疫賦活性ポリペプチドを含む、請求項16から36のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項65】
免疫賦活性ポリペプチドが、インターロイキン(IL)-2(IL-2)、IL-15、IL-21、IL-10、IL-12、IL-23、IL-27、IL-35、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性CD4、可溶性LAG-3、IFN-α、またはこれらの機能性等価物を含む、請求項64に記載の二機能性分子。
【請求項66】
可溶性LAG-3が、LAG-3の細胞外ドメイン(ECD)またはそのMHCII結合性バリアントを含む、請求項65に記載の二機能性分子。
【請求項67】
第2の部分が、抗腫瘍免疫を刺激し、かつ免疫阻害性受容体シグナル伝達のアンタゴニストを含む、請求項16から36のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項68】
免疫阻害性受容体が、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)である、請求項67に記載の二機能性分子。
【請求項69】
第2の部分が、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断する、請求項68に記載の二機能性分子。
【請求項70】
第2の部分が、CD47結合性ドメインまたはSIRPα結合性ドメインを含む、請求項69に記載の二機能性分子。
【請求項71】
CD47結合性ドメインが、可溶性SIRPαまたはそのCD47結合性断片もしくはバリアント、あるいは抗CD47抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項70に記載の二機能性分子。
【請求項72】
可溶性SIRPαが、SIRPαの細胞外ドメイン(ECD)またはそのCD47結合性バリアントを含む、請求項71に記載の二機能性分子。
【請求項73】
CD47結合性ドメインが、配列番号84のアミノ酸配列、またはCD47に対する結合特異性を依然として保持する、これに少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項70に記載の二機能性分子。
【請求項74】
SIRPα結合性ドメインが、可溶性CD47またはそのSIRPα結合性断片もしくはバリアント、あるいは抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項70に記載の二機能性分子。
【請求項75】
可溶性CD47が、CD47の細胞外ドメイン(ECD)またはそのSIRPα結合性断片もしくはバリアント、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項74に記載の二機能性分子。
【請求項76】
第1の部分と第2の部分とを繋ぐリンカーをさらに含む、請求項1~75のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項77】
リンカーが、切断性リンカー、非切断性リンカー、ペプチドリンカー、可動性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される、請求項76に記載の二機能性分子。
【請求項78】
リンカーが((G)nS)mのアミノ酸配列を含み、式中、mおよびnが独立的に0から30から選択される整数である、請求項77に記載の二機能性分子。
【請求項79】
1つまたは複数の第2の部分を含む、請求項16から78のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項80】
第2の部分の少なくとも1つが、第1の部分のポリペプチド鎖のN末端またはC末端に連結されている、請求項79に記載の二機能性分子。
【請求項81】
第2の部分の少なくとも1つが、a)第1の部分の重鎖のN末端もしくはC末端、またはb)第1の部分の軽鎖のN末端もしくはC末端に連結されている、請求項79に記載の二機能性分子。
【請求項82】
第2の部分の少なくとも1つが、第1の部分の重鎖定常領域のC末端に連結されている、請求項79に記載の二機能性分子。
【請求項83】
第2の部分のそれぞれが、第1の部分の各重鎖定常領域のC末端にそれぞれ連結されている、請求項79に記載の二機能性分子。
【請求項84】
第1の部分の重鎖のN末端、第1の部分の重鎖のC末端、第1の部分の軽鎖のN末端、第1の部分の軽鎖のC末端、またはこれらの任意の組合せにそれぞれ連結された1つより多い第2の部分を含む、請求項79に記載の二機能性分子。
【請求項85】
ホモ二量体重鎖またはヘテロ二量体重鎖を含む、請求項79から84のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項86】
重鎖が、第2の部分の存在または位置に関してヘテロ二量体性である、請求項79から84のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項87】
ヘテロ二量体重鎖が、第2の部分を有する一方の重鎖およびそれを有さない他方の重鎖を含む、請求項86に記載の二機能性分子。
【請求項88】
ヘテロ二量体重鎖が、ホモ二量体化を防止する、および/またはヘテロ二量体化を支持するように関連するヘテロ二量体Fc領域をさらに含む、請求項86に記載の二機能性分子。
【請求項89】
ヘテロ二量体Fc領域が、ノブイントゥーホール、疎水性相互作用、静電相互作用、親水性相互作用、または可動性の増加を介してヘテロ二量体に会合することが可能である、請求項86に記載の二機能性分子。
【請求項90】
ヘテロ二量体Fc領域が、1つのFcポリペプチド鎖中にY349C、T366S、L368AもしくはY407Vまたはこれらの任意の組合せ、および別のFcポリペプチド鎖中にS354CもしくはT366Wまたはこれらの組合せを含み、Fcポリペプチド鎖中の残基の番号付けがKabatにあるとおりのEUインデックスのものである、請求項88から89のいずれかに記載の二機能性分子。
【請求項91】
1つまたは複数のコンジュゲート部分にさらに連結されている、請求項1~90いずれかに記載の二機能性分子。
【請求項92】
コンジュゲート部分が、クリアランス改変剤、化学療法剤、毒素、放射性同位元素、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、またはアンドロゲン受容体阻害剤などの他の抗がん薬物を含む、請求項91に記載の二機能性分子。
【請求項93】
請求項1~92のいずれかに記載の二機能性分子、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物またはキット。
【請求項94】
請求項16から92のいずれか一項に記載の二機能性分子をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項95】
請求項94に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項96】
請求項95に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項97】
請求項95に記載のベクターが発現される条件下で請求項96に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、請求項16から92のいずれか一項に記載の二機能性分子を発現させる方法。
【請求項98】
請求項16から92のいずれか一項に記載の二機能性分子、および/または請求項93に記載の医薬組成物もしくはキットの治療有効量を対象に投与するステップを含む、対象においてPD-L1関連疾患を処置する、予防するまたは軽減する方法。
【請求項99】
疾患が、免疫関連疾患もしくは障害、がん、または感染性疾患である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
がんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、肝臓がん、膵臓がん、乳がん、気管支がん、骨がん、肝臓および胆管がん、卵巣がん、精巣がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃-食道がん、直腸がん、肛門がん、胃腸がん、皮膚がん、下垂体がん、胃がん、腟がん、甲状腺がん、神経膠芽腫、星状細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、神経膠腫ならびに腺癌からなる群から選択される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
対象が、PD-L1発現がん細胞を有すると同定されている、請求項98から100のいずれかに記載の方法。
【請求項102】
PD-L1関連疾患が、PD-L1/PD-1単剤治療に抵抗性である、請求項98から101のいずれかに記載の方法。
【請求項103】
対象がヒトである、請求項98から102のいずれかに記載の方法。
【請求項104】
第2の治療剤の治療有効量を投与するステップをさらに含む、請求項98から103のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
第2の治療剤が、化学療法剤、抗がん薬物、放射線療法、免疫療法剤、血管新生抑制剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、またはサイトカインから選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
対象におけるPD-L1関連疾患または状態を処置するための医薬の製造における、請求項16から92のいずれかに記載の二機能性分子の使用。
【請求項107】
対象において、免疫抑制性サイトカインの抑制から、持続性免疫応答の誘導から、または抗腫瘍免疫の刺激から利益を受ける疾患または状態を処置する、予防する、または軽減する方法であって、請求項16から92のいずれかに記載の二機能性分子の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項108】
免疫抑制性サイトカインがTGFβである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
疾患または状態が、TGF-β関連疾患または状態である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
TGF-β関連疾患が、がん、線維性疾患、または腎疾患である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
免疫抑制性サイトカインがIL-1である、請求項107に記載の方法。
【請求項112】
疾患または状態が、IL-1関連疾患または状態である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
疾患または状態が、免疫賦活性ポリペプチドを用いてMHCIIシグナル伝達を刺激することによる持続性免疫応答の誘導から利益を受ける、請求項107に記載の方法。
【請求項114】
免疫賦活性ポリペプチドが可溶性LAG-3である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
疾患または状態が、免疫阻害性受容体シグナル伝達を阻害することによる抗腫瘍免疫の刺激から利益を受ける、請求項107に記載の方法。
【請求項116】
免疫阻害性受容体がSIRPαである、請求項115に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は、一般に、免疫チェックポイント分子(例えば、PD-L1)を標的化し、抗腫瘍免疫抑制(ATIS)サイトカイン(例えば、IL-1またはTGFβ)の活性を遮断するかまたは免疫を刺激する新規二機能性分子に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]プログラム死1(PD-1)ならびにそのリガンドPD-L1およびPD-L2は、T細胞媒介性免疫応答の調節における重要な共抑制分子である。PD-1は、末梢組織の活性化T細胞の表面で発現される単一の細胞外免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)V-セットドメインを含むI型膜タンパク質である(Zhang Xら、Immunity、2004、20(3):337~347)。PD-L1およびPD-L2は、樹状細胞およびマクロファージで一般に発現され、それらの外部ドメインは、膜遠位IgSF V-セットおよび膜近位IgSF C-セットドメインから構成される(Latchman Yら、Nature immunology、2001、2(3):261~268)。PD-1とその2つのリガンドとのライゲーションは、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフおよび免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフを含有するPD-1の細胞質ドメインを通じて共抑制シグナル伝達を開始し、それにより、シグナル伝達に関与するエフェクター分子を脱リン酸化することによってTCRシグナル伝達を下方制御するSHPホスファターゼの活性化をもたらす(Chemnitz J Mら、J.Immunol.、2004、173(2):945~954)。結果として、PD-1シグナル伝達は、過剰なまたは有害な炎症を予防し、正常な状態での自己抗原への免疫寛容を維持する(Collins A Vら、Immunity、2002、17(2):201~210)。
【0003】
[003]PD-L1は、別の受容体、B7.1(B7-1またはCD80としても知られる)との相互作用を通じてもT細胞機能を負に制御する。PD-L1/PD-1およびPD-L1/B7.1複合体の形成は、T細胞受容体シグナル伝達を負に制御し、続くT細胞活性化の下方制御および抗腫瘍免疫活性の抑制を生じる(Butte M Jら、Immunity、2007、27(1):111~122)。
【0004】
[004]PD-L1は、さまざまな腫瘍においてしばしば過剰発現され、T細胞でのPD-1とのその相互作用は、がん細胞がT細胞媒介免疫応答を回避できるようにする(Okazaki Tら、Nature immunology、2013、14(12):1212~1218)。これにより、PD-1/PD-L1相互作用を遮断することは、T細胞活性化および抗腫瘍応答を回復できる(Callahan M Kら、Immunity、2016、44(5):1069~1078)。アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))(Rittmeyer Aら、The Lancet、2017、389(10066):255~265)、アベルマブ(Bavencio(登録商標))(Hamilton Gら、Expert Opinion on Biological Therapy、2017、17(4):515~523)およびデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))(Brower V、The Lancet Oncology、2016、17(7):e275)などの抗体ベースのPD-1/PD-L1遮断療法の成功は、ヒトのがん、特に、固形腫瘍との闘いに大きな進歩をもたらした。腫瘍細胞および/または浸潤性免疫細胞によるPD-L1発現とPD-1/PD-L1標的療法への臨床応答との間に関連が示されたが、この関連は完璧ではない(Herbst,R.ら、Nature 515、563~567(2014);Taube J Mら、Clinical cancer research、2014、20(19):5064~5074)。PD-L1陽性腫瘍のごく一部だけがこれらの処置に応答し、ある種のPD-L1陰性腫瘍は、それにもかかわらず、処置に応答性である。このことは、追加的な因子がPD-1/PD-L1標的療法への患者の応答を決定し、追加的な予測バイオマーカーがこれらの薬剤の臨床使用を改善するために同定されなければならない可能性を生じる。
【0005】
[005]Mariathasan Sらは、応答の欠如が線維芽細胞におけるトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達のシグネチャーと関連することを見出した(Mariathasan Sら、Nature、2018、554(7693):544~548)。David JMらも上皮間葉転換(EMT)を誘導し、抗腫瘍免疫を抑制するとして知られる多面的サイトカインとして、TGF-βが、いくつかの上皮NSCLC細胞系において腫瘍PD-L1発現を上方制御でき、上方制御は、TGF-βシグナル伝達の重要な下流エフェクターであるSmad2のリン酸化と関連することを見出した(David J Mら、Oncoimmunology、2017、6(10):e1349589)。マウスでは、抗PD-L1と合わせたTGF-β遮断抗体の治療用投与は、間質細胞においてTGF-βシグナル伝達を低減し、腫瘍の中心へのT細胞進入を促進し、活発な抗腫瘍免疫および腫瘍退縮を誘発した(Mariathasan Sら、Nature、2018、554(7693):544~548)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[006]しかし、抗PD-L1抗体の低い親和性は、高い処置有効性および低い毒性の副作用を達成するための課題をいまだ提示している。
【0007】
[007]したがって、PD-L1への高い結合親和性を有し、治療有効性が改善され、毒性の副作用が低減された治療用分子が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[008]本開示を通じて、冠詞「a」、「an」および「the」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指して本明細書において使用される。例として「抗体(an antibody)」は、1つの抗体または1つより多い抗体を意味する。
【0009】
[009]一態様では、本開示は、免疫チェックポイント分子に結合する第1の部分、およびインターロイキン-1(IL-1)の活性を遮断する第2の部分を含む、二機能性分子を提供する。
【0010】
[0010]ある特定の実施形態では、第1の部分は、CD27、CD70、CD28、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD40、CD40L(CD154)、CD122、CD137、CD137L、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、GITR、ICOS(CD278)、およびICOSLG(CD275)、CD2、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160およびCD83からなる群から任意選択で選択される、免疫賦活性チェックポイント分子のアゴニストを含む。
【0011】
[0011]ある特定の実施形態では、第1の部分は、A2AR、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、VISTA、SIGLEC7(CD328)、TIGIT、PVR(CD155)、SIGLEC9(CD329)、CD160、LAIR1、2B4(CD244)、CD47およびB7-H5からなる群から任意選択で選択される、免疫阻害性チェックポイント分子のアンタゴニストを含む。
【0012】
[0012]ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子はPD-L1である。
【0013】
[0013]ある特定の実施形態では、第1の部分はPD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含み、第2の部分はIL-1結合性部分またはIL-1受容体(IL-1R)結合性部分を含む。
【0014】
[0014]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1RまたはそのIL-1結合性断片もしくはバリアント、あるいはIL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0015】
[0015]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、XB2001、ルチキズマブ、LY2189102およびベルメキマブからなる群から選択される抗IL-1α抗体由来、またはSSGJ-613、CDP484、カナキヌマブおよびゲボキズマブからなる群から選択される抗IL-1β抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0016】
[0016]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104もしくは配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号105もしくは配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号106もしくは配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107もしくは配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号108もしくは配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号109もしくは配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0017】
[0017]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104の配列を含むHCDR1、配列番号105の配列を含むHCDR2、および配列番号106の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107の配列を含むLCDR1、配列番号108の配列を含むLCDR2、および配列番号109の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0018】
[0018]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0019】
[0019]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、配列番号110、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、配列番号111、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
[0020]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0021】
[0021]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号110、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号111、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
[0022]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、インターロイキン-1受容体アンタゴニストまたはその断片もしくはバリアント、あるいはIL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0023】
[0023]ある特定の実施形態では、IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片は、スペソリマブ、アステゴリマブ、イムシドリマブ、AMG108、メルリリマブ(melrilimab)、ニダニリマブ(nidanilimab)、MEDI8968、REGN6490、HB0034およびCSC012からなる群から選択される抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0024】
[0024]別の態様では、二機能性分子は、PD-L1に結合する第1の部分、およびa)免疫抑制性サイトカインの活性を遮断する、またはb)免疫を刺激する第2の部分を含み、第1の部分は、重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含み、重鎖可変領域は、
a)DYYMN(配列番号1)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含むHCDR1、
b)DINPNNXTXYNHKFKG(配列番号19)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含むHCDR2、および
c)WGDGPFAY(配列番号3)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含むHCDR3
を含み、かつ/または
軽鎖可変領域は、
d)KASQNVXVA(配列番号20)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列からなる群から選択される配列を含むLCDR1、
e)SXSXRYT(配列番号21)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列からなる群から選択される配列を含むLCDR2、および
f)QQYSNYPT(配列番号6)もしくはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列からなる群から選択される配列を含むLCDR3
を含み、
式中、XはGまたはAであり、XはGまたはDまたはQまたはEまたはLであり、XはSまたはMまたはQまたはLまたはVであり、XはGまたはPまたはKであり、XはAまたはGであり、XはAまたはIであり、XはAまたはNまたはRまたはVであり、かつXはNまたはHまたはVまたはDである。
【0025】
[0025]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、
b)配列番号2、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含むHCDR2、ならびに
c)配列番号3の配列を含むHCDR3、
を含み、かつ/または
軽鎖可変領域は、
d)配列番号4、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含むLCDR1、
e)配列番号5、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択される配列を含むLCDR2、ならびに
f)配列番号6の配列を含むLCDR3
を含む。
【0026】
[0026]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
b)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号13の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
c)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号14の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
d)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号15の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
e)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号17の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;ならびに
f)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号18の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域
からなる群から選択される。
【0027】
[0027]ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、
a)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
b)配列番号9の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
c)配列番号8の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
d)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号12の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
e)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域
からなる群から選択される。
【0028】
[0028]ある特定の実施形態では、PD-L1に対する抗体もしくはその抗原結合性断片は、重鎖HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4の1つもしくは複数、ならびに/または軽鎖LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4の1つもしくは複数をさらに含み、
a)HFR1は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYXFT(配列番号40)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGQX10LEWMG(配列番号41)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
c)HFR3配列は、RVTX16TVDX11SISTAYMELSRLRSDDTAVYYCX1213(配列番号42)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号25)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
e)LFR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGKX14PKLLIY(配列番号43)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
g)LFR3は、GVPX15RFSGSGSGTDFTX17TISSLQPEDIATYYC(配列番号44)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号29)のアミノ酸配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含み、
式中、XはTまたはVであり、X10はGまたはSであり、X11はTまたはKであり、X12はAまたはVであり、X13はRまたはKであり、X14はAまたはSであり、X15はSまたはDであり、X16はMまたはVであり、X17はFまたはLである。
【0029】
[0029]ある特定の実施形態では、
HFR1は、配列番号22および30からなる群から選択される配列を含み、
HFR2は、配列番号23および31からなる群から選択される配列を含み、
HFR3は、配列番号24および32~35からなる群から選択される配列を含み、
HFR4は、配列番号25の配列を含み、
LFR1は、配列番号26からなる群からの配列を含み、
LFR2は、配列番号27および36からなる群から選択される配列を含み、
LFR3は、配列番号28、および37~38、39、45からなる群から選択される配列を含み、
LFR4は、配列番号29の配列を含む。
【0030】
[0030]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号46、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む。
【0031】
[0031]ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号47、配列番号54、配列番号55、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む。
【0032】
[0032]ある特定の実施形態では、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号49/54、50/54、51/54、52/54、49/55、50/55、51/55、52/55、58/62、58/63、58/64、58/65、59/62、59/63、59/64、59/65、60/62、60/63、60/64および60/65からなる群から選択される重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列との対を含む。
【0033】
[0033]ある特定の実施形態では、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、PD-L1への特異的結合特異性および/または親和性を依然として保持する、1つまたは複数のアミノ酸残基置換または改変をさらに含む。
【0034】
[0034]ある特定の実施形態では、置換または改変の少なくとも1つは、VHまたはVL配列のCDR配列の1つもしくは複数、および/または非CDR領域の1つもしくは複数にある。
【0035】
[0035]ある特定の実施形態では、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリン定常領域、任意選択でヒトIgの定常領域、または任意選択でヒトIgGの定常領域をさらに含む。
【0036】
[0036]ある特定の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域を含む。
【0037】
[0037]ある特定の実施形態では、ヒトIgG1のFc領域は、配列番号80、またはこれに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0038】
[0038]ある特定の実施形態では、定常領域は、対応する野生型Fc領域と比べて低下したエフェクター機能を有するFcバリアントを含む。ある特定の実施形態では、Fc領域は、配列番号80と比べて低下したエフェクター機能を生じる1つまたは複数のアミノ酸残基改変または置換を含む。
【0039】
[0039]ある特定の実施形態では、Fc領域は、220S、226S、228P、229S、233P、234V、234G、234A、234F、234A、235A、235G、235E、236E、236R、237A、237K、238S、267R、268A、268Q、269R、297A、297Q、297G、309L、318A、322A、325L、328R、330S、331Sおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基置換を含み、Fc領域中の残基の番号付けはKabatにあるとおりのEUインデックスのものである。
【0040】
[0040]ある特定の実施形態では、Fc領域は、a)K322A、L234AおよびL235A;b)P331S、L234FおよびL235E;c)L234AおよびL235A;c)N297A;d)N297Q;e)N297G;f)L235E;g)L234AおよびL235A(IgG1);h)F234AおよびL235A(IgG4);i)H268Q、V309L、A330SおよびP331S(IgG2);j)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330SおよびP331S(IgG2)からなる群から選択される変異の組合せを含み、Fc領域中の残基の番号付けはKabatにあるとおりのEUインデックスのものである。
【0041】
[0041]ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、配列番号81のアミノ酸配列を含む。
【0042】
[0042]ある特定の実施形態では、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片はヒト化されている。
【0043】
[0043]ある特定の実施形態では、抗原結合性断片は、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、1本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、多特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体および二価ドメイン抗体である。
【0044】
[0044]ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトPD-L1およびカニクイザルPD-L1の両方に結合することが可能である。
【0045】
[0045]ある特定の実施形態では、第1の部分は、PD-L1への結合について、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0046】
[0046]ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインは、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリー中のサイトカイン、IL-1、または血管内皮増殖因子(VEGF)を含む。
【0047】
[0047]ある特定の実施形態では、TGF-βスーパーファミリー中の免疫抑制性サイトカインは、TGF-β、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、NODAL、および増殖分化因子(growth and differentiation factor)(GDF)を含む。
【0048】
[0048]ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインはTGF-βである。
【0049】
[0049]ある特定の実施形態では、第2の部分はTGF-β結合性部分を含む。
【0050】
[0050]ある特定の実施形態では、TGF-β結合性部分は、可溶性TGFβ受容体(TGFβR)またはそのTGF-β結合性断片もしくはバリアント、あるいはTGFβに対する抗体およびその抗原結合性断片を含む。
【0051】
[0051]ある特定の実施形態では、可溶性TGFβRは、TGFβRの細胞外ドメイン(ECD)またはそのTGF-β結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0052】
[0052]ある特定の実施形態では、TGFβRは、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、TGFβ受容体III(TGFβRIII)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0053】
[0053]ある特定の実施形態では、TGFβRはTGFβRIIである。
【0054】
[0054]ある特定の実施形態では、TGFβRIIは、TGFβ2およびTGFβ3よりもTGFβ1に選択的に結合する。
【0055】
[0055]ある特定の実施形態では、TGFβ1は、ヒトTGFβ1またはマウスTGFβ1である。
【0056】
[0056]ある特定の実施形態では、TGFβRのECDは、配列番号66、79、78、77のアミノ酸配列、またはTGF-βへの特異的結合特異性および/または親和性を依然として保持する、これらに少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。
【0057】
[0057]ある特定の実施形態では、第2の部分は、IL-1結合性部分またはIL-1受容体(IL-1R)結合性部分を含む。
【0058】
[0058]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、可溶性IL-1R、IL-1RのIL-1結合性断片もしくはバリアント、またはIL-1に対する抗体もしくはその抗原結合性断片を含む。
【0059】
[0059]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1RIの細胞外ドメイン(ECD)、IL-1RI、IL-1RIのECD、IL-1RII、またはIL-1RIIのECD、またはIL-1RAP、またはIL-1RAPのECD、IL-1sRIまたはIL-1sRIIのいずれかのIL-1結合性断片またはバリアントを含む。
【0060】
[0060]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分が、IL-1RaまたはそのIL-1結合性断片もしくはバリアント、あるいはIL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0061】
[0061]ある特定の実施形態では、IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片は、スペソリマブ、アステゴリマブ、イムシドリマブ、AMG108、メルリリマブ、ニダニリマブ、MEDI8968、REGN6490、HB0034およびCSC012からなる群から選択される抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0062】
[0062]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、配列番号67もしくは76のアミノ酸配列、または配列番号67もしくは76に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはそのIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0063】
[0063]ある特定の実施形態では、IL-1は、IL-1αまたはIL-1βである。
【0064】
[0064]ある特定の実施形態では、IL-1βはヒトIL-1βである。
【0065】
[0065]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、XB2001、ルチキズマブ、LY2189102およびベルメキマブからなる群から選択される抗IL-1α抗体由来、またはSSGJ-613、CDP484、カナキヌマブおよびゲボキズマブからなる群から選択される抗IL-1β抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0066】
[0066]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104もしくは配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号105もしくは配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号106もしくは配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107もしくは配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号108もしくは配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号109もしくは配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0067】
[0067]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104の配列を含むHCDR1、配列番号105の配列を含むHCDR2、および配列番号106の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107の配列を含むLCDR1、配列番号108の配列を含むLCDR2、および配列番号109の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0068】
[0068]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0069】
[0069]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、配列番号110、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、配列番号111、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0070】
[0070]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0071】
[0071]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号110、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号111、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0072】
[0072]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、配列番号118もしくは配列番号120のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号119もしくは配列番号121のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0073】
[0073]ある特定の実施形態では、第2の部分は、抗腫瘍免疫を刺激し、かつ免疫賦活性ポリペプチドを含む。
【0074】
[0074]ある特定の実施形態では、免疫賦活性ポリペプチドは、インターロイキン(IL)-2(IL-2)、IL-15、IL-21、IL-10、IL-12、IL-23、IL-27、IL-35、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性CD4、可溶性LAG-3、もしくはIFN-α、またはこれらの機能性等価物を含む。
【0075】
[0075]ある特定の実施形態では、可溶性LAG-3は、LAG-3の細胞外ドメイン(ECD)またはそのMHCII結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0076】
[0076]ある特定の実施形態では、第2の部分は、抗腫瘍免疫を刺激し、かつ免疫阻害性受容体シグナル伝達のアンタゴニストを含む。
【0077】
[0077]ある特定の実施形態では、免疫阻害性受容体は、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)である。
【0078】
[0078]ある特定の実施形態では、第2の部分は、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断する。
【0079】
[0079]ある特定の実施形態では、第2の部分は、CD47結合性ドメインまたはSIRPα結合性ドメインを含む。
【0080】
[0080]ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、可溶性SIRPαまたはそのCD47結合性断片もしくはバリアント、あるいは抗CD47抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0081】
[0081]ある特定の実施形態では、可溶性SIRPαは、SIRPαの細胞外ドメイン(ECD)またはそのCD47結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0082】
[0082]ある特定の実施形態では、可溶性SIRPαは、配列番号84のアミノ酸配列、またはCD47に対する結合特異性を依然として保持する、これに少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
[0083]ある特定の実施形態では、SIRPα結合性ドメインは、可溶性CD47またはそのSIRPα結合性断片もしくはバリアント、あるいは抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0084】
[0084]ある特定の実施形態では、可溶性CD47は、CD47の細胞外ドメイン(ECD)またはそのSIRPα結合性断片もしくはバリアント、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0085】
[0085]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、第1の部分と第2の部分とを繋ぐリンカーをさらに含む。
【0086】
[0086]ある特定の実施形態では、リンカーは、切断性リンカー、非切断性リンカー、ペプチドリンカー、可動性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される。
【0087】
[0087]ある特定の実施形態では、リンカーは、((G)nS)mのアミノ酸配列を含み、式中、mおよびnは、独立的に0から30から選択される整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)である。ある特定の実施形態では、nは、2、3、4または5であり、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある特定の実施形態では、リンカーは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。
【0088】
[0088]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、1つまたは複数の第2の部分を含む。
【0089】
[0089]ある特定の実施形態では、第2の部分の少なくとも1つは、第1の部分のポリペプチド鎖のN末端またはC末端に連結されている。
【0090】
[0090]ある特定の実施形態では、第2の部分の少なくとも1つは、a)第1の部分の重鎖のN末端もしくはC末端、またはb)第1の部分の軽鎖のN末端もしくはC末端に連結されている。
【0091】
[0091]ある特定の実施形態では、第2の部分の少なくとも1つは、第1の部分の重鎖定常領域のC末端に連結されている。
【0092】
[0092]ある特定の実施形態では、第2の部分のそれぞれは、第1の部分の各重鎖定常領域のC末端にそれぞれ連結されている。
【0093】
[0093]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、第1の部分の重鎖のN末端、第1の部分の重鎖のC末端、第1の部分の軽鎖のN末端、第1の部分の軽鎖のC末端、またはこれらの任意の組合せにそれぞれ連結された1つより多い第2の部分を含む。
【0094】
[0094]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、ホモ二量体重鎖またはヘテロ二量体重鎖を含む。
【0095】
[0095]ある特定の実施形態では、重鎖は、第2の部分の存在または位置に関してヘテロ二量体性である。
【0096】
[0096]ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体重鎖は、第2の部分を有する一方の重鎖およびそれを有さない他方の重鎖を含む。
【0097】
[0097]ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体重鎖は、ホモ二量体化を防止する、および/またはヘテロ二量体化を支持するように関連するヘテロ二量体Fc領域をさらに含む。
【0098】
[0098]ある特定の実施形態では、第1のおよびヘテロ二量体Fc領域は、ノブイントゥーホール、疎水性相互作用、静電相互作用、親水性相互作用、または可動性の増加を介してヘテロ二量体に会合することが可能である。
【0099】
[0099]ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体Fc領域は、1つのFc領域中にY349C、T366S、L368AもしくはY407Vまたはこれらの任意の組合せ、および別のFc領域中にS354CもしくはT366Wまたはこれらの組合せを含み、Fc領域中の残基の番号付けはKabatにあるとおりのEUインデックスのものである。
【0100】
[00100]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、1つまたは複数のコンジュゲート部分にさらに連結されている。
【0101】
[00101]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、クリアランス改変剤(clearance-modifying agent)、化学療法剤、毒素、放射性同位元素、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、またはアンドロゲン受容体阻害剤などの他の抗がん薬物を含む。
【0102】
[00102]別の態様では、本開示は、本明細書において提供される二機能性分子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物またはキットをさらに提供する。
【0103】
[00103]別の態様では、本開示は、本明細書において提供される二機能性分子をコードする単離されたポリヌクレオチドをさらに提供する。
【0104】
[00104]別の態様では、本開示は、本明細書において提供される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターをさらに提供する。
【0105】
[00105]別の態様では、本開示は、本明細書において提供されるベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0106】
[00106]別の態様では、本開示は、ベクターが発現される条件下で本明細書において提供される宿主細胞を培養するステップを含む、本明細書において提供される二機能性分子を発現させる方法をさらに提供する。
【0107】
[00107]別の態様では、本開示は、本明細書において提供される二機能性分子、および/または本明細書において提供される医薬組成物もしくはキットの治療有効量を対象に投与するステップを含む、対象においてPD-L1関連疾患を処置する、予防するまたは軽減する方法をさらに提供する。
【0108】
[00108]ある特定の実施形態では、疾患は、免疫関連疾患もしくは障害、がん、自己免疫疾患、または感染性疾患である。
【0109】
[00109]ある特定の実施形態では、がんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、肝臓がん、膵臓がん、乳がん、気管支がん、骨がん、肝臓および胆管がん、卵巣がん、精巣がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃-食道がん、直腸がん、肛門がん、胃腸がん、皮膚がん、下垂体がん、胃がん、腟がん、甲状腺がん、神経膠芽腫、星状細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、神経膠腫ならびに腺癌からなる群から選択される。
【0110】
[00110]ある特定の実施形態では、対象は、PD-L1発現がん細胞を有すると同定されている。
【0111】
[00111]ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0112】
[00112]ある特定の実施形態では、方法は、第2の治療剤の治療有効量を投与するステップをさらに含む。
【0113】
[00113]ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤、抗がん薬物、放射線療法、免疫療法剤、血管新生抑制剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、またはサイトカインから選択される。
【0114】
[00114]別の態様では、本開示は、対象におけるPD-L1関連疾患または状態を処置するための医薬の製造における本明細書において提供される二機能性分子の使用を提供する。
【0115】
[00115]別の態様では、本開示は、対象において、免疫抑制性サイトカインの抑制から、持続性免疫応答の誘導から、または抗腫瘍免疫の刺激から利益を受ける疾患または状態を処置する、予防する、または軽減する方法であって、本明細書において提供される二機能性分子の有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0116】
[00116]ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインはTGFβである。
【0117】
[00117]ある特定の実施形態では、疾患または状態は、TGF-β関連疾患または状態である。
【0118】
[00118]ある特定の実施形態では、TGF-β関連疾患は、がん、線維性疾患、または腎疾患である。
【0119】
[00119]ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインはIL-1である。
【0120】
[00120]ある特定の実施形態では、疾患または状態は、IL-1関連疾患または状態である。
【0121】
[00121]ある特定の実施形態では、疾患または状態は、免疫阻害性受容体シグナル伝達、例えば、SIRPαシグナル伝達を阻害することによる抗腫瘍免疫の刺激から利益を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】[00122]図1は、ELISAによるヒトPD-L1へのヒト化4B6抗体の結合を示す。
図2】[00123]図2は、ELISAによるヒトPD-L1へのHu4B6_HgLaの結合を示す。
図3】[00124]図3A図3Cは、ELISAによるPD-L1へのAM-4B6-IgG1-TGFβRIIバリアントの結合を示す。
図4】[00125]図4は、フローサイトメトリーを使用するAM-4B6-IgG1-TGFβIIバリアントの親和性ランキングを示す。
図5】[00126]図5Aおよび図5Bは、AM-4B6-IgG1-TGFβIIバリアントによるPD-L1/PD-1またはPD-L1/B7-1の遮断を示す。
図6】[00127]図6は、細胞ベースのアッセイを使用するAM-4B6-IgG1-TGFβIIバリアントによるPD-L1/PD-1の遮断を示す。
図7】[00128]図7は、安定な細胞系を用いて発現されたAM4B6_hIgG1_TBRII(20-136)のSDS-PAGEを示す。
図8】[00129]図8Aおよび図8Bは、ELISA分析によるヒトPD-L1またはカニクイザルPD-L1への結合を示す。
図9-1】[00130]図9A図9Cは、ELISA分析によるヒトPD-L1およびB7ファミリーの他のメンバーならびにTGFβスーパーファミリーの他のメンバーへの結合を示す。
図9-2】[00130]図9A図9Cは、ELISA分析によるヒトPD-L1およびB7ファミリーの他のメンバーならびにTGFβスーパーファミリーの他のメンバーへの結合を示す。
図10-1】[00131]図10A図10Fは、FACS解析によるPD-L1発現細胞への結合を示す。
図10-2】[00131]図10A図10Fは、FACS解析によるPD-L1発現細胞への結合を示す。
図10-3】[00131]図10A図10Fは、FACS解析によるPD-L1発現細胞への結合を示す。
図11】[00132]図11は、FACS解析による活性化ヒトT細胞上のヒトPD-L1への結合を示す。
図12】[00133]図12A図12Bは、ELISA分析によるヒトPD-1へのヒトPD-L1の結合またはカニクイザルPD-1へのカニクイザルPD-L1の結合の遮断を示す。
図13】[00134]図13は、ELISA分析によるhPD-L1およびTGFb1への同時的結合を示す。
図14】[00135]図14は、レポーターアッセイを使用するhPD-L1/hPD-1の遮断を示す。
図15】[00136]図15は、TGF-βレポーターHEK-293細胞系を使用するTGFβ1シグナル伝達の遮断を示す。
図16】[00137]図16は、ツベルクリン(TB)により刺激されたPBMCのIFNγ放出に対するAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の効果を示す。
図17】[00138]図17A図17Bは、MC38-hPD-L1腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性を示す。
図18】[00139]図18A図18Bは、H460腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性を示す。
図19】[00140]図19A図19Bは、EMT6-hPD-L1腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性を示す。
図20】[00141]図20A図20Cは、in vivoでのAM4B6-hIgG1-TGFβIIの薬物動態および薬力学試験を示す。
図21】[00142]図21は、ELISAによるヒトPD-L1に対するAM4B6-hIgG1-IL-1RAの結合活性を示す。
図22】[00143]図22は、FACS解析によるヒトPD-L1に対するAM4B6-hIgG1-IL-1RAの結合活性を示す。
図23】[00144]図23は、細胞ベースのアッセイを使用するAM4B6-hIgG1-IL-1RAによるPD-L1/PD-1の遮断を示す。
図24】[00145]図24は、ELISAによるヒトIL-1βに対するAM4B6-IgG1-IL-1RAの遮断活性を示す。
図25】[00146]図25は、レポーター細胞上でのヒトIL-1βに対するAM4B6-hIgG1-IL-1RAの遮断活性を示す。
図26】[00147]図26は、非対称性二機能性抗体のSEC-HPLC純度を示す。
図27】[00148]図27は、ELISAによって測定されたヒトPD-L1への二機能性分子の結合を示す。
図28】[00149]図28は、ELISAによって測定されたヒトCD47への二機能性分子の結合を示す。
図29】[00150]図29は、hIL-1βタンパク質へのIgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbのELISAでの結合活性を示す。
図30】[00151]図30は、hPD-L1タンパク質へのIgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbのELISAでの結合活性を示す。
図31】[00152]図31は、FACS法による、PD-L1を発現する293T細胞へのIgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の結合を示す。
図32】[00153]図32は、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の細胞ベースのPD1/PD-L1遮断活性を示す。
図33】[00154]図33は、HDF細胞上でのヒトIL-1βに対するIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の遮断活性を示す。
図34】[00155]図34は、レポーター細胞上でのhIL-1βに対するIgG-scFv-ACZ885-AM4B6の遮断活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0123】
[00156]本開示の以下の記載は、本開示の種々の実施形態を例示することを単に目的とする。このように、考察される具体的な改変は、本開示の範囲の限定として解釈されない。種々の等価物、変更および改変が、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得ることは当業者に明らかであり、そのような等価の実施形態が本明細書に含まれることは理解される。刊行物、特許および特許出願を含む、本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
定義
[00157]本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、特定の抗原に結合する任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、二価抗体、一価抗体、多特異性抗体または二特異性抗体を含む。天然の無傷抗体は、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。哺乳動物の重鎖は、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューとして分類され、各重鎖は、可変領域(VH)ならびに第1の、第2の、第3のおよび任意選択で第4の定常領域(それぞれCH1、CH2、CH3、CH4)からなり;哺乳動物の軽鎖は、各軽鎖が、可変領域(VL)および定常領域からなり、λまたはκとして分類される。抗体は、ジスルフィド結合を介して共に結合された2本の重鎖の第2のおよび第3の定常領域からなるYのステムを含んで「Y」形を有する。Yの各アームは、単一の軽鎖の可変および定常領域に結合した単一の重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。両方の鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの高度に可変性のループを一般に含有する(軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、重鎖CDRはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含む)。本明細書において開示される抗体および抗原結合性断片についてのCDR境界は、Kabat、IMGT、Chothia、またはAl-Lazikaniの慣例によって定義されるか、または同定され得る(Al-Lazikani,B.、Chothia,C.、Lesk,A.M.、J.Mol.Biol.、273(4)、927(1997);Chothia,C.ら、J Mol Biol.Dec 5;186(3):651~63(1985);Chothia,C.およびLesk,A.M.、J.Mol.Biol.、196,901(1987);Chothia,C.ら、Nature.Dec 21~28;342(6252):877~83(1989);Kabat E.A.ら、Sequences of Proteins of immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Marie-Paule Lefrancら、Developmental and Comparative Immunology、27:55~77(2003);Marie-Paule Lefrancら、Immunome Research、1(3)、(2005);Marie-Paule Lefranc、Molecular Biology of B cells(第2版)、chapter 26、481~514、(2015))。3つのCDRは、CDRよりも高く保存され、高度に可変性のループを支えるスキャホールドを形成するフレームワーク領域(FR)(LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4を含む軽鎖FR、HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4を含む重鎖FR)として知られる隣接するストレッチの間に挿入される。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合には関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。本明細書で使用される場合、用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域と免疫細胞上のC1q補体タンパク質またはFc受容体(FcR)との間の相互作用によってもたらされる細胞媒介または補体媒介細胞障害性作用を指す。例示的なエフェクター機能として、限定することなく、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介ファゴサイトーシス(ADCP)および補体依存性細胞傷害(CDC)効果が挙げられる。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5つの主なクラスまたはアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMであり、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミュー重鎖の存在によってそれぞれ特徴付けられる。いくつかの主な抗体のクラスは、IgG1(ガンマ1重鎖)、IgG2(ガンマ2重鎖)、IgG3(ガンマ3重鎖)、IgG4(ガンマ4重鎖)、IgA1(アルファ1重鎖)またはIgA2(アルファ2重鎖)などのサブクラスに分けられる。
【0125】
[00158]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、その任意の抗原結合性断片を包含する。本明細書で使用される場合、用語「抗原結合性断片」は、1つもしくは複数のCDRを含む抗体の一部分から形成される抗体断片、または抗原に結合するが無傷の天然抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を指す。抗原結合性断片の例として、限定することなく、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、1本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、二特異性抗体、多特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体および二価ドメイン抗体が挙げられる。抗原結合性断片は、親抗体が結合する同じ抗原に結合することが可能である。
【0126】
[00159]抗体に関して、「Fab」は、ジスルフィド結合によって単一の重鎖の可変領域および第1の定常領域に結合された単一の軽鎖(可変性および定常領域の両方)からなる抗体の一部分を指す。
【0127】
[00160]「Fab’」は、ヒンジ領域の一部分を含むFab断片を指す。
【0128】
[00161]「F(ab’)」は、Fab’の二量体を指す。
【0129】
[00162]抗体(例えば、IgG、IgAまたはIgDアイソタイプの)に関して、「Fc」は、ジスルフィド結合を介して第2の重鎖の第2のおよび第3の定常ドメインに結合した第1の重鎖の第2のおよび第3の定常ドメインからなる抗体の一部分を指す。IgMおよびIgEアイソタイプの抗体に関するFcは、第4の定常ドメインをさらに含む。抗体のFcの一部分は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、および補体依存性細胞傷害(CDC)などの種々のエフェクター機能に関与するが、抗原結合には機能しない。
【0130】
[00163]抗体に関して、「Fv」は完全な抗原結合部位を保有する抗体の最小の断片を指す。Fv断片は、単一の重鎖の可変領域に結合された単一の軽鎖の可変領域からなる。
【0131】
[00164]「1本鎖Fv抗体」または「scFv」は、直接またはペプチドリンカー配列を介して互いに繋がれた軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる操作された抗体を指す(Huston JSら、Proc Natl Acad Sci USA、85:5879(1988))。
【0132】
[00165]「1本鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」は、抗体のFc領域に繋がれたscFvからなる操作された抗体を指す。
【0133】
[00166]「ラクダ化単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体」または「HCAb」は、2つのVドメインを含有するが軽鎖を含有しない抗体を指す(Riechmann L.およびMuyldermans S.、J Immunol Methods.Dec 10;231(1-2):25~38(1999);Muyldermans S.、J Biotechnol.Jun;74(4):277~302(2001);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体は、元はラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダおよびラマ)に由来した。軽鎖を欠いているが、ラクダ化抗体は、標準の抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C.ら、Nature.Jun 3;363(6428):446~8(1993);Nguyen VK.ら、Immunogenetics.Apr;54(1):39~47(2002);Nguyen VK.ら、Immunology.May;109(1):93~101(2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって生じる最小の公知の抗原結合単位を表す(Koch-Nolte F.ら、FASEB J.Nov;21(13):3490~8.Epub 2007 Jun 15(2007))。
【0134】
[00167]「ナノボディ」は、重鎖抗体由来のVHHドメインならびに2つの定常ドメイン、CH2およびCH3からなる抗体断片を指す。
【0135】
[00168]「ダイアボディ」または「dAb」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を含み、断片は同じペプチド鎖中でVLドメインに繋がれたVHドメインを含む(VH-VLまたはVL-VH)(例えば、Holliger P.ら、Proc Natl Acad Sci USA.Jul 15;90(14):6444~8(1993);EP404097;WO93/11161を参照されたい)。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対合するように仕向けられ、それにより2つの抗原結合部位を創出する。抗原結合部位は、同じまたは異なる抗原(またはエピトープ)を標的にし得る。ある特定の実施形態では、「二特異性dsダイアボディ」は、2つの異なる抗原(またはエピトープ)を標的にするダイアボディである。
【0136】
[00169]「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域だけを含有する抗体断片を指す。ある特定の場合では、2つ以上のVHドメインは、二価または多価ドメイン抗体を創出するようにペプチドリンカーを用いて共有結合される。二価のドメイン抗体2つのVHドメインは、同じまたは異なる抗原を標的にし得る。
【0137】
[00170]本明細書で使用される場合、用語「価」は、所与の分子中の指定の数の抗原結合部位の存在を指す。用語「一価」はただ1つの抗原結合部位を有する抗体または抗原結合性断片を指し;用語「多価」は複数の抗原結合部位を有する抗体または抗原結合性断片を指す。このように用語「二価」、「四価」および「六価」は、抗原結合分子中の2つの結合部位、4つの結合部位および6つの結合部位の存在をそれぞれ記す。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は二価である。
【0138】
[00171]本明細書で使用される場合、「二特異性」抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体由来の断片を有し、2つの異なるエピトープに結合することが可能である人工抗体を指す。2つのエピソードは同じ抗原上に存在していてよく、またはそれらは2つの異なる抗原上に存在してもよい。
【0139】
[00172]ある特定の実施形態では、「scFv二量体」は、一方の部分のVH’が他方の部分のVL’と合わせられ、同じ抗原(もしくはエピトープ)または異なる抗原(もしくはエピトープ)を標的にできる2つの結合部位を形成するように別のVH-VL部分と二量体化されたVH-VL(ペプチドリンカーによって連結されている)を含む二価ダイアボディまたは二特異性scFv(BsFv)である。他の実施形態では、「scFv二量体」は、VH1とVL1とが合わせられ、VH2とVL2とが合わせられ、合わせられた各対が異なる抗原特異性を有するように、VL1-VH2(ペプチドリンカーによって連結されている)と合わせられたVH1-VL2(同様に、ペプチドリンカーによって連結されている)を含む二特異性ダイアボディである。
【0140】
[00173]「dsFv」は、単一の軽鎖の可変領域と単一の重鎖の可変領域との間の連結がジスルフィド結合であるジスルフィド安定化Fv断片を指す。一部の実施形態では、「(dsFv)2」または「(dsFv-dsFv’)」は、3つのペプチド鎖を含む:ペプチドリンカー(例えば、長い可動性リンカー)によって連結され、2つのVL部分にそれぞれジスルフィド架橋を介して結合された2つのVH部分。一部の実施形態では、dsFv-dsFv’は、それぞれジスルフィド結合で対合した重鎖および軽鎖が異なる抗原特異性を有して二特異性である。
【0141】
[00174]本明細書で使用される場合、用語「キメラ」は、ある種由来の重鎖および/または軽鎖の一部分ならびに別の種由来の重鎖および/または軽鎖の残りの部分を有する抗体または抗原結合性断片を意味する。例示的な例では、キメラ抗体は、ヒト由来の定常領域およびマウス由来などの非ヒト動物由来の可変領域を含み得る。一部の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモットまたはハムスターである。
【0142】
[00175]本明細書で使用される場合、用語「ヒト化」は、抗体または抗原結合性断片が非ヒト動物由来のCDR、ヒト由来のFR領域および適用可能な場合はヒト由来の定常領域を含むことを意味する。
【0143】
[00176]本明細書で使用される場合、用語「親和性」は、免疫グロブリン分子(すなわち、抗体)またはその断片と抗原との間の非共有結合相互作用の強さを指す。
【0144】
[00177]本明細書で使用される場合、用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、2つの分子、例えば、抗体と抗原の間の非無作為結合反応を指す。特異的結合は、例えば、抗原と抗原結合分子との間の結合が平衡に達したときのK値、すなわち、解離速度の会合速度に対する比(koff/kon)によって表される結合親和性において特徴付けられ得る。Kは、これだけに限らないが、表面プラズモン共鳴法、オクテット法、マイクロスケール熱泳動法、HPLC-MS法およびFACSアッセイ法が挙げられる当技術分野において公知の任意の従来の方法を使用することによって決定され得る。≦10-6M(例えば、≦5x10-7M、≦2x10-7M、≦10-7M、≦5x10-8M、≦2x10-8M、≦10-8M、≦5x10-9M、≦4x10-9M、≦3x10-9M、≦2x10-9Mまたは≦10-9M)のK値は、抗体またはその抗原結合性断片とPD-L1(例えば、ヒトPD-L1またはカニクイザルPD-L1)との間の特異的結合を示すことができる。
【0145】
[00178]本明細書で使用される場合、「PD-L1への結合について競合」する能力は、PD-L1と第2の抗PD-L1抗体との結合相互作用を任意の検出可能な程度に阻害する第1の抗体または抗原結合性断片の能力を指す。ある特定の実施形態では、PD-L1への結合について競合する抗体または抗原結合性断片は、PD-L1と第2の抗PD-L1抗体との結合相互作用を少なくとも85%、または少なくとも90%阻害する。ある特定の実施形態では、この阻害は、95%より大きい、または99%より大きい場合がある。
【0146】
[00179]本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、各アミノ酸に特異的な側鎖と共にアミン(-NH)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合物を指す。本開示においてアミノ酸の名称は、以下にまとめられている標準的な1文字または3文字コードとしても表される。
【0147】
【表1】
【0148】
[00180]用語「ポリペプチド」、「ぺプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して本明細書において互換的に使用される。用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0149】
[00181]アミノ酸配列に関連する「保存的置換」は、同様の生理化学的特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基を用いてアミノ酸残基を置き換えることを指す。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基の中(例えば、Met、Ala、Val、LeuおよびIle)、中性親水性側鎖を有するアミノ酸残基の中(例えば、Cys、Ser、Thr、AsnおよびGln)、酸性側鎖を有するアミノ酸残基の中(例えば、Asp、Glu)、塩基性側鎖を有するアミノ酸残基の中(例えば、His、LysおよびArg)、または芳香族側鎖を有するアミノ酸残基の中(例えば、Trp、TyrおよびPhe)で行われ得る。当技術分野において公知のとおり、保存的置換は、タンパク質の立体配置的構造に顕著な変化を通常生じず、それによりタンパク質の生物活性を保持できる。
【0150】
[00182]アミノ酸配列(または核酸配列)に関して、「パーセント(%)配列同一性」は、最大の一致を達成するように任意選択でギャップを導入して配列をアラインした後に、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸(または核酸)配列同一性のパーセントを決定する目的のためのアライメントは、BLASTN、BLASTp(U.S.National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトで利用可能、Altschul S.F.ら、J.Mol.Biol.、215:403~410(1990);Stephen F.ら、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402(1997)も参照されたい)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイトで利用可能、Higgins D.G.ら、Methods in Enzymology、266:383~402(1996);Larkin M.A.ら、Bioinformatics(Oxford、England)、23(21):2947~8(2007)も参照されたい)およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公的に入手可能なツールを使用して達成され得る。当業者は、ツールによって提供される初期パラメーターを使用できる、または例えば、好適なアルゴリズムを選択することによってなどアライメントの任意選択でパラメーターをカスタマイズできる。ある特定の実施形態では、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なっている場合がある。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸によって置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変更しない。保存的置換によって2つ以上のアミノ酸配列が互いに異なっている場合、類似性のパーセントまたは程度は、置換の保存的性質を補正するように上方に調整される場合がある。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307~331を参照されたい。
【0151】
[00183]本明細書で使用される場合、「相同性配列」は、任意選択でアラインされた場合に別の配列に少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列(もしくはその相補鎖)またはアミノ酸配列を指す。
【0152】
[00184]「単離された」物質は、天然の状態から人工的に変更されている。「単離された」組成物または物質が天然に存在する場合、それは、その元の環境から変更されているか、もしくは除去されているか、または両方である。例えば、生きている動物において天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、実質的に純粋な状態で存在するように、それが天然状態で共存する材料から十分に分離された場合は、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いる。単離された「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、単離された核酸分子の配列を指す。ある特定の実施形態では、「単離された抗体またはその抗原結合性断片」は、電気泳動的方法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィーもしくは逆相HPLC)によって決定されて、少なくとも60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有する抗体または抗原結合性断片を指す。
【0153】
[00185]用語「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、すべての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類および爬虫類を含む。記した場合を除いて、用語「患者」または「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0154】
[00186]本明細書で使用される場合、状態を「処置すること」またはその「処置」は、状態を予防するもしくは軽減すること、状態の開始もしくは発達の速度を遅らせること、状態を発症するリスクを低減すること、状態に関連する症状の発症を予防するもしくは遅らせること、状態に関連する症状を低減するもしくは終わらせること、状態の完全なもしくは部分的な退縮を生じさせること、状態を治癒すること、またはこれらの何らかの組合せを含む。
【0155】
[00187]本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、遺伝的エレメントによってコードされたタンパク質、RNAもしくはDNAを産生するように、または遺伝的エレメントを複製するように、遺伝的エレメントの発現をもたらすように遺伝的エレメントが作動可能に挿入され得るビヒクルを指す。ベクターは、宿主細胞内にそれが保有する遺伝的エレメントの発現をもたらすように宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするために使用され得る。ベクターの例として、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌バクテリア人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)、バクテリオファージ、例えば、ラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスが挙げられる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能エレメントおよびレポーター遺伝子が挙げられる、発現を調節するための種々のエレメントを含有し得る。加えて、ベクターは、複製開始点を含有し得る。ベクターは、これだけに限らないが、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コーティングが挙げられる細胞へのその進入を補助する材料も含み得る。ベクターは、発現ベクターまたはクローニングベクターであり得る。本開示は、抗体またはその抗原結合性断片、核酸配列に作動可能に連結した少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーをコードする本明細書において提供される核酸配列を含有するベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。
【0156】
[00188]本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、外因性ポリヌクレオチドおよび/またはベクターが導入された細胞を指す。
【0157】
[00189]本明細書で使用される場合、用語「可溶性」は、液体および水性の環境などの溶媒に溶解される分子(例えば、タンパク質)の能力を指す。
【0158】
[00190]本明細書で使用される場合、用語「トランスフォーミング増殖因子ベータ」および「TGFβ」は、前駆体および成熟TGFβ(「潜在型TGFβ」)の潜在型形態および会合または非会合複合体を含んで、対象(例えば、ヒト)由来のTGF-ベータのいずれかの全長、天然アミノ酸配列のいずれかを有する任意のTGFβファミリータンパク質を指す。本明細書においてそのようなTGFβを参照することは、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3アイソフォームおよびこれらの潜在型バージョンが挙げられる現在同定されている形態、ならびに、任意の公知のTGFβの配列に由来し、配列に少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、またさらに好ましくは少なくとも約95%相同性であるポリペプチドを含む今後同定されるヒトTGFβ種のいずれか1つを参照すると理解される。具体的な用語「TGFβ1」、「TGFβ2」および「TGFβ3」は、文献、例えば、Derynckら、Nature、Cancer Res.、47:707(1987);Seyedinら、J.Biol.Chem.、261:5693~5695(1986);deMartinら、EMBO J.、6:3673(1987);Kuppnerら、Int.J.Cancer、42:562(1988)において定義されるTGF-ベータを指す。用語「トランスフォーミング増殖因子ベータ」、「TGFβ」、「TGFベータ」、「TGF-β」および「TGF-ベータ」は、本開示において互換的に使用される。
【0159】
[00191]本明細書で使用される場合、用語「ヒトTGFβ1」は、ヒトTGFB1遺伝子(例えば、野生型ヒトTGFB1遺伝子)によってコードされるTGFβ1タンパク質を指す。例示的な野生型ヒトTGFβ1タンパク質は、GenBank受託番号NP_000651.3によって提供される。本明細書で使用される場合、用語「ヒトTGFβ2」は、ヒトTGFB2遺伝子(例えば、野生型ヒトTGFB2遺伝子)によってコードされるTGFβ2タンパク質を指す。例示的な野生型ヒトTGFβ2タンパク質は、GenBank受託番号NP_001129071.1およびNP_003229.1によって提供される。本明細書で使用される場合、用語「ヒトTGFβ3」は、ヒトTGFB3遺伝子(例えば、野生型ヒトTGFB3遺伝子)によってコードされるTGFβ3タンパク質を指す。例示的な野生型ヒトTGFβ3タンパク質は、GenBank受託番号NP_003230.1、NP_001316868.1およびNP_001316867.1によって提供される。
【0160】
[00192]本明細書で使用される場合、用語「マウスTGFβ1」、「マウスTGFβ2」および「マウスTGFβ3」は、マウスTGFB1遺伝子(例えば、野生型マウスTGFB1遺伝子)、マウスTGFB2遺伝子(例えば、野生型マウスTGFB2遺伝子)およびマウスTGFB3遺伝子(例えば、野生型マウスTGFB3遺伝子)によってそれぞれコードされるTGFβ1タンパク質、TGFβ2タンパク質およびTGFβ3タンパク質を指す。例示的な野生型マウス(Mus musculus)TGFβ1タンパク質は、GenBank受託番号NP_035707.1およびCAA08900.1によって提供される。例示的な野生型マウスTGFβ2タンパク質は、GenBank受託番号NP_033393.2によって提供される。例示的な野生型マウスTGFβ3タンパク質は、GenBank受託番号AAA40422.1によって提供される。
【0161】
[00193]本明細書で使用される場合、用語「TGFβ受容体」は、少なくとも1つのTGFβアイソフォームに結合する任意の受容体を指す。一般に、TGFβ受容体として、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)またはTGFβ受容体III(TGFβRIII)が挙げられる。
【0162】
[00194]ヒトに関して、用語「TGFβ受容体I」または「TGFβRI」は、野生型TGFβRI、ならびに、少なくとも1つのTGFβアイソフォームに結合することが可能であることが公知であるそのすべてのアイソフォームおよびバリアントが挙げられるヒトTGFβ受容体1型配列を指す。野生型TGFβRIの例示的なアミノ酸配列は、GenBank受託番号ABD46753.1の下で、またはUniProtKB-P36897の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号69として含まれる。バリアントTGFβRIは、配列番号69のアミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性のある配列を有し、野生型配列(例えば、配列番号69)の少なくとも25%、35%、50%、75%、90%、95%または99%のTGFβ結合活性を保持し得る。
【0163】
[00195]ヒトに関して、用語「TGFβ受容体II」または「TGFβRII」は、野生型TGFβRII、ならびに、少なくとも1つのTGFβアイソフォームに結合することが可能であることが公知であるそのすべてのアイソフォームおよびバリアントを含んでヒトTGFβ受容体2型アイソフォームA配列を指す。野生型TGFβRIIアイソフォームAまたはアイソフォーム1の例示的なアミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_001020018.1の下またはUniProtKB-P37173-1の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号70として含まれ、野生型TGFβRIIアイソフォームBは、GenBank受託番号NP_003233.4またはUniProtKB-P37173-2の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号71として含まれる。バリアントTGFβRIIは、配列番号70または71に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性のある配列を有し、野生型配列(例えば、配列番号70または71)の少なくとも25%、35%、50%、75%、90%、95%または99%のTGFβ結合活性を保持し得る。
【0164】
[00196]ヒトに関して、用語「TGFβ受容体III」または「TGFβRIII」は、野生型TGFβRIIならびにすべてのアイソフォームおよびバリアントを含んでヒトTGFβ受容体3型配列を指す。野生型TGFβRIIIの例示的なアミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_003234.2の下またはUniProtKB-Q03167の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号72として含まれる。
【0165】
[00197]本明細書で使用される場合、ある特定の参照タンパク質またはペプチドに関して、用語「バリアント」は、参照配列に少なくとも70%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のあるアミノ酸配列を有し、参照配列(例えば、野生型配列)の少なくとも25%(例えば、35%、50%、75%、90%、95%または99%)の生物活性または結合活性を保持する参照タンパク質またはペプチドの改変バージョン、例えば機能性等価物、断片、融合物、誘導体、模倣物、またはこれらの任意の組合せを意味する。バリアントは、参照タンパク質またはペプチドの断片、変異体、融合物、短縮物またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0166】
[00198]本明細書で使用される場合、用語「インターロイキン-1」または「IL-1」は、IL-1αおよびIL-1β、それらの前駆体(例えば、プロIL-1αおよびプロIL-1β)、アイソフォームならびにバリアントを含む。
【0167】
[00199]本明細書で使用される場合、用語「ヒトIL-1α」は、ヒトIL1A遺伝子(例えば、野生型ヒトIL1A遺伝子)によってコードされるIL-1αタンパク質、およびアイソフォームおよびバリアントを指す。例示的な野生型ヒトIL1αタンパク質は、UniProtKB-P01583によって提供される。
【0168】
[00200]本明細書で使用される場合、用語「ヒトIL-1β」は、ヒトIL1B遺伝子(例えば、野生型ヒトIL1B遺伝子)によってコードされるIL-1βタンパク質を指す。例示的な野生型ヒトIL1βタンパク質は、GenBank受託番号NP_000567.1によって、またはUniProtKB-C9JVK0の下で提供される。
【0169】
[00201]本明細書で使用される場合、用語「IL-1受容体」または「IL-1R」は、IL-1に結合することができるそのすべての野生型受容体、アイソフォームおよびバリアントを含む、IL-1に結合することが可能である受容体を指す。一般に、2つの種類のIL-1受容体、すなわち、IL-1受容体I(IL-1RI)、およびIL-1受容体II(IL-1RII)がある。IL-1RIIは、シグナルを伝達することなくリガンドに結合するデコイ受容体として作用する。IL-1RIIのタンパク分解性切断は、シグナルを伝達することなくリガンドに結合する可溶性受容体、例えば、IL-1sRIおよびIL-1sRIIの形成を生じる(詳細には、Thomas G.Kennedy、Chapter V.B.2.、Encyclopedia of Hormones、2003を参照されたい)。IL-1sRIおよびIL-1sRIIは、IL-1RIIのタンパク分解性切断生成物であり、IL-1RIIの細胞外ドメイン断片の群であり得る。用語、IL-1Rは、NF-カッパ-Bおよび他の経路のインターロイキン-1-依存性活性化を媒介する高親和性インターロイキン-1受容体複合体を形成するようにIL-1βに結合したIL-1RIと会合できる共受容体IL-1RAPを包含することも意図する。
【0170】
[00202]本明細書で使用される場合、用語「IL-1RI」は、野生型IL-1RIならびにIL-1αおよび/またはIL-1βに結合することが可能であるそのすべてのアイソフォームおよびバリアントを含む。野生型IL-1RIの例示的なアミノ酸配列は、UniProtKB-P14778の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号73として含まれる。
【0171】
[00203]本明細書で使用される場合、用語「IL-1RII」は、野生型IL-1RII、ならびに、IL-1αおよび/またはIL-1βに結合することが可能であるそのすべてのアイソフォームおよびバリアントを含む。野生型IL-1RIIの例示的なアミノ酸配列は、UniProtKB-P27930の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号75として含まれる。
【0172】
[00204]本明細書で使用される場合、用語「IL-1RAP」は、野生型IL-1RAP、ならびに、IL-1βに結合したIL-1Rに結合することが可能であるそのすべてのアイソフォームおよびバリアントを含む。野生型IL-1RAPの例示的なアミノ酸配列は、UniProtKB-Q9NPH3の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号74として含まれる。
【0173】
[00205]本明細書で使用される場合、用語「IL-1sRI」は、メタロプロテイナーゼが関与するタンパク分解性切断によって産生され得るIL-1RIのすべての可溶性形態を含む。天然に存在するIL-1sRIは、約45kDaから60Kdaの範囲の分子量を有し得る。この用語は、IL-1αおよび/またはIL-1βに結合することが可能であるIL-1sRIのすべてのアイソフォームおよびバリアントも包含し得る。
【0174】
[00206]本明細書で使用される場合、用語「IL-1sRII」は、メタロプロテイナーゼが関与するタンパク分解性切断によって産生され得るIL-1RIIのすべての可溶性形態を含む。天然に存在するIL-1sRIIは、約45kDaから60Kdaの範囲の分子量を有し得る。この用語は、IL-1αおよび/またはIL-1βに結合することが可能であるIL-1sRIIのすべてのアイソフォームおよびバリアントも包含し得る。
【0175】
[00207]本明細書で使用される場合、用語「IL-1受容体アンタゴニスト」は、IL-1受容体への結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合でき、IL-1αまたはIL-1βの活性を阻害する任意のタンパク質を一般に含む。IL-1受容体アンタゴニストは、IL-1Ra、IL-1sRIおよびIL-1sRIIなどの天然に存在するアンタゴニスト、ならびに、IL-1受容体、特にIL-1RIへの結合についてIL-1αまたはIL-1βの結合を遮断できる他の人工アンタゴニストを含み得る。
【0176】
[00208]本明細書で使用される場合、用語「IL-1Ra」は、野生型IL-1Ra、ならびに、IL-1αおよび/またはIL-1βに結合することが可能であるそのすべてのアイソフォームおよびバリアントを含む。野生型IL-1Raの例示的なアミノ酸配列は、UniProtKB-P18510の下で入手可能であり、本明細書にも配列番号76として含まれる。
【0177】
[00209]本明細書で使用される場合、「がん」は、悪性の細胞増殖または新生物、異常な増殖、浸潤または転移によって特徴付けられる任意の医学的状態を指し、良性または悪性である場合があり、固形腫瘍および、白血病などの非固形がん(例えば、血液悪性腫瘍)の両方を含む。本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」は、新生物、および/または悪性細胞の固形塊を指す。
【0178】
[00210]用語「薬学的に許容される」は、指定の担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤(複数可)および/または塩が、製剤中に含まれる他の成分と一般に化学的におよび/または物理的に適合性であり、そのレシピエントと生理学的に適合性であることを示す。
【0179】
[00211]本明細書において「約」の値またはパラメーターを参照することは、その値またはパラメーターそれ自体に方向付けられる実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」を参照する記載は、「X」の記載を含む。数値範囲は、範囲を定義する数について包括的である。一般に述べると、用語「約」は、変数の指定の値、および指定の値の実験誤差の内(例えば、平均について95%信頼区間内)または指定の値の10パーセント内のいずれか大きい方での変数のすべての値を指す。
【0180】
[00212]アミノ酸配列(例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質)に関して使用される場合、用語「融合」または「融合された」は、例えば、化学結合または組換え手段による2つ以上のアミノ酸配列の天然では存在しない単一のアミノ酸配列への組合せを指す。融合アミノ酸配列は、2つのコードポリヌクレオチド配列の遺伝的組換えによって産生され得、組換えポリヌクレオチドを含有する構築物を宿主細胞に導入する方法によって発現され得る。
【0181】
[00213]用語「薬学的に許容される」は、指定の担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤(複数可)および/または塩が、製剤中に含まれる他の成分と一般に化学的におよび/または物理的に適合性であり、そのレシピエントと生理学的に適合性であることを示す。
【0182】
I.免疫チェックポイント分子を標的化し、IL-1活性を遮断する二機能性分子
[00214]本開示は、免疫チェックポイント分子に結合する第1の部分、およびインターロイキン-1(IL-1)の活性を遮断する第2の部分を含む二機能性分子を提供する。本明細書において提供される二機能性分子は、IL-1と、IL-1結合性部分またはIL-1受容体(IL-1R)結合性部分(すなわち、二機能性分子の第2の部分)のいずれかを含むIL-1受容体との間の相互作用を遮断することによって腫瘍微小環境でのIL-1活性の遮断および/または低減を可能にする。IL-1結合性部分および/またはIL-1R結合性部分は、ある特定の腫瘍細胞または免疫細胞の表面に見出され得る免疫チェックポイント分子を標的化する部分(すなわち、二機能性分子の第1の部分)に連結され得る。
【0183】
[00215]IL-1は、炎症性サイトカインである。炎症は、腫瘍微小環境の重要な構成要素であり、IL-1は、発癌および腫瘍進行において重要な役割を果たす(A.Mantovaniら、Immunol Rev.2018 Jan;281(1):57~61.)。IL-1は、慢性の治療抵抗性炎症の駆動、腫瘍血管新生、IL-17経路の活性化、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)およびマクロファージリクルートメントの誘導、侵入および転移を含む、腫瘍開始および進行のさまざまなレベルで作用する(同上)。
【0184】
[00216]免疫チェックポイント分子は、T細胞、ナチュラルキラー細胞などのある特定の免疫細胞上で発現される。一部のがん細胞はまた、免疫チェックポイントの活性化を遮断でき、それにより、がん細胞が免疫系のサーベイランスを回避できるようにするある特定の免疫チェックポイント分子を発現する。
【0185】
[00217]腫瘍微小環境中のIL-1を低減し、チェックポイント遮断を低減することによって、本開示は、がん、自己免疫疾患、感染性疾患などの免疫チェックポイント関連疾患を処置するために有用であり得る新規二機能性分子を提供する。
【0186】
[00218]ある特定の実施形態では、第1の部分は、免疫賦活または同時刺激活性を有する免疫チェックポイント分子のアゴニストを含む。そのような免疫賦活性チェックポイント分子として、限定することなく、CD27、CD70、CD28、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD40、CD40L(CD154)、CD122、CD137、CD137L、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、GITR、ICOS(CD278)およびICOSLG(CD275)、CD2、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160およびCD83を挙げることができる。
【0187】
[00219]ある特定の実施形態では、第1の部分は、免疫阻害性または共抑制活性を有するチェックポイント分子の阻害剤を含む。そのような免疫阻害チェックポイント分子として、限定することなく、A2AR、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、VISTA、SIGLEC7(CD328)、TIGIT、PVR(CD155)、SIGLEC9(CD329)、CD160、LAIR1、2B4(CD244)、CD47およびB7-H5を挙げることができる。
【0188】
[00220]ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-L1である。ある特定の実施形態では、第1の部分は、PD-L1に対する抗体部分またはその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態では、第1の部分は、PD-L1に対するアンタゴニスト抗体部分またはその抗原結合性断片を含む。
【0189】
[00221]ある特定の実施形態では、第2の部分は、IL-1結合性部分またはIL-1受容体(IL-1R)結合性部分を含む。
【0190】
[00222]IL-1αおよびIL-1βの両方は、炎症誘発性であり、IL-1Rに結合する。IL-1αまたはIL-1βへの結合で、IL-1Rは、IL-1Rアクセサリータンパク質およびアダプタータンパク質MyD88の両方を受容体複合体にリクルートでき、下流シグナル伝達カスケードの活性化および、最終的には多種多様な免疫および炎症遺伝子の活性化を生じる。IL-1の活性またはIL-1Rへのその結合を遮断することは、免疫チェックポイント分子の調節との組合せで有用であることが本発明者らによって見出された。
【0191】
[00223]ある特定の実施形態では、IL-1は、IL-1αまたはIL-1βである。ある特定の実施形態では、IL-1βはヒトIL-1βである。
【0192】
[00224]ある特定の実施形態では、第2の部分は、IL-1結合性部分を含む。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1αまたはIL-1βに特異的に結合する。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、可溶性IL-1R、IL-1RのIL-1結合性断片もしくはバリアント、またはIL-1に対する抗体もしくはその抗原結合性断片を含む。
【0193】
[00225]可溶性IL-1Rは、IL-1Rのドメインまたは断片、例えば、IL-1Rの細胞外ドメイン(ECD)であり得る。代替的に、可溶性IL-1Rはまた、天然で可溶性であり、IL-1に結合することが可能であるアイソフォームであるIL-1sRIまたはIL-1sRIIであり得る。
【0194】
[00226]当業者は、IL-1RIの短縮化断片、またはIL-1RIのECD、またはIL-1RII、またはIL-1RIIのECD、またはIL-1RAP、またはIL-1RAPのECD、またはIL-1sRIまたはIL-1sRIIは、そのような断片がIL-1結合性ドメインを含有する限り、IL-1(例えば、IL-1αまたはIL-1β)に結合するために十分であり得ることを理解するだろう。したがって、本開示はまた、IL-1RI、IL-1RIのECD、またはIL-1RII、またはIL-1RIIのECD、またはIL-1RAP、またはIL-1RAPのECD、IL-1sRIおよびIL-1sRIIのいずれかのすべてのIL-1結合性断片またはバリアントを包含する。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、配列番号73、74もしくは75のアミノ酸配列またはそのIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、配列番号73、74および75のいずれかに少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはそのIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0195】
[00227]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片も、そのような抗体または抗原結合性断片が、IL-1(例えば、IL-1αまたはIL-1β)のIL-1Rへの結合に干渉できる限り、使用され得る。
【0196】
[00228]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、XB2001、ルチキズマブ、LY2189102およびベルメキマブからなる群から選択される抗IL-1α抗体由来、またはSSGJ-613、CDP484、カナキヌマブおよびゲボキズマブからなる群から選択される抗IL-1β抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0197】
[00229]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104もしくは配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号105もしくは配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号106もしくは配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107もしくは配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号108もしくは配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号109もしくは配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0198】
[00230]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104の配列を含むHCDR1、配列番号105の配列を含むHCDR2、および配列番号106の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107の配列を含むLCDR1、配列番号108の配列を含むLCDR2、および配列番号109の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0199】
[00231]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0200】
[00232]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、配列番号110、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、配列番号111、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0201】
[00233]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0202】
[00234]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号110、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号111、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、第2の部分はIL-1R結合性部分を含む。
【0203】
[00235]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1RaまたはそのIL-1R結合性断片もしくはバリアントを含む。IL-1Raは、IL-1Rのアンタゴニストであり、IL-1Rへの結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合できる。同様に当業者は、IL-1Rへの結合において、および/またはIL-1αもしくはIL-1βとの競合において有用であることにIL-1Raの短縮化断片が十分であり得ることを理解するだろう。ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1Raの短縮形態を含む。ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、配列番号67もしくは76のアミノ酸配列、またはこれらの任意のIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、配列番号67もしくは76に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはこれらの任意のIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。当業者は、野生型IL-1Raのバリアントも、そのようなバリアントがIL-1Rとの結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合することができる限り、本開示において有用であり得ることを理解するだろう。
【0204】
[00236]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片も、そのような抗体または抗原結合性断片がIL-1Rとの結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合することが可能である限り使用され得る。
【0205】
[00237]ある特定の実施形態では、IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片は、スペソリマブ、アステゴリマブ、イムシドリマブ、AMG108、メルリリマブ、ニダニリマブ、MEDI8968、REGN6490、HB0034およびCSC012からなる群から選択される抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0206】
II.PD-L1を標的化する二機能性分子および第2の部分
[00238]PD-1/PD-L1軸チェックポイント阻害剤(例えば、PD-L1抗体)の治療有効性は、腫瘍微小環境(「TME」)が免疫抑制性サイトカインに富む場合に限定され得る。局在化された微小環境でのそのような免疫抑制性サイトカインのシグナル伝達は、腫瘍浸潤T細胞を低減しそれらをTregに傾け、免疫エフェクター細胞の活性化を減弱する場合がある。
【0207】
[00239]一態様では、本開示は、PD-L1に結合する第1の部分、およびa)免疫抑制性サイトカインの活性を遮断する、またはb)抗腫瘍免疫を刺激する第2の部分を含む新規二機能性分子を提供する。分子は、化合物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはこれらの任意の組合せであり得る。第2の部分は、免疫抑制性活性もしくはサイトカインを遮断することによって、または免疫を増加させるもしくは刺激することのいずれかによって腫瘍微小環境において免疫応答を回復させ得る。
【0208】
[00240]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、PD-L1に結合する第1の部分(すなわち、PD-L1結合性部分)、および免疫抑制性サイトカインの活性を遮断する第2の部分を含む。
【0209】
[00241]ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインは、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリー中のサイトカイン、IL-1、または血管内皮増殖因子(VEGF)を含む。ある特定の実施形態では、TGF-βスーパーファミリー中の免疫抑制性サイトカインは、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、NODAL、および増殖分化因子(GDF)を含む。
【0210】
[00242]ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインはTGF-βである。ある特定の実施形態では、免疫抑制性サイトカインはIL-1である。
【0211】
[00243]ある特定の実施形態では、第2の部分はTGFβ結合性部分を含む。ある特定の実施形態では、第2の部分はIL-1結合性部分を含む。本明細書で使用される場合、用語「結合性部分」、「結合性断片」は、標的分子または複合体に特異的に結合する能力を有する部分または断片を指す。用語「TGFβ結合性部分」は、TGFβファミリー(例えば、TGFβ1、TGFβ2もしくはTGFβ3)の1つまたは複数のファミリーメンバーまたはアイソフォームに特異的に結合する能力を有する部分を指す。同様に、用語「IL-1結合性部分」は、IL-1ファミリー(例えば、IL-1α、IL-1β)の1つまたは複数のファミリーメンバーに特異的に結合する能力を有する部分を指す。
【0212】
[00244]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、PD-L1に結合する第1の部分(すなわち、PD-L1結合性部分)、および抗腫瘍免疫を刺激する第2の部分を含む。ある特定の実施形態では、第2の部分は、免疫賦活性ポリペプチドまたはその機能性等価物またはそのバリアントを含む。ある特定の実施形態では、免疫賦活性ポリペプチドは、インターロイキン(IL)-2(IL-2)、IL-15、IL-21、IL-10、IL-12、IL-23、IL-27、IL-35、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性CD4、可溶性LAG-3もしくはIFN-α、またはこれらの機能性等価物である。
【0213】
[00245]ある特定の実施形態では、第2の部分は、免疫阻害性受容体シグナル伝達のアンタゴニストを含む。ある特定の実施形態では、免疫阻害性受容体はSIRPαである。
【0214】
[00246]ある特定の実施形態では、二機能性分子は1つまたは複数の第2の部分を含む。ある特定の実施形態では、第2の部分の1つまたは複数は同じ種類のものであり得る、例えばそれらそれぞれは、免疫抑制性サイトカインの活性を遮断できる、またはそれらそれぞれは抗腫瘍免疫を刺激できる。ある特定の実施形態では、第2の部分の1つまたは複数は、異なる種類のものであり得る。ある特定の実施形態では、第2の部分のそれぞれは同じ配列を有し得る、またはアミノ酸配列中に差異を有し得る。
【0215】
i.TGFβ結合性部分
[00247]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、可溶性TGFβ受容体(TGFβR)またはそのTGFβ結合性断片もしくはバリアント、あるいはTGFβに対する抗体およびその抗原結合性断片を含む。
【0216】
[00248]「TGFβ結合性部分」は、本開示において「TGFβ Trap」として参照される場合もある。したがって、PD-L1およびTGFβの両方を標的化するタンパク質は、本開示において「抗PD-L1/TGFβ Trap」として参照される場合もある。
【0217】
[00249]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、ヒトおよび/またはマウスTGFβに結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβシグナル伝達経路をアンタゴナイズおよび/または阻害することが可能である。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分はTGFβをアンタゴナイズおよび/または阻害することが可能である。
【0218】
[00250]本開示では、TGFβ結合性部分は、TGFβファミリーの1つまたは複数のファミリーメンバーまたはアイソフォームに特異的に結合する任意の部分を含み得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ1(例えば、ヒトTGFβ1)、TGFβ2(例えば、ヒトTGFβ2)、および/もしくはTGFβ3(例えば、ヒトTGFβ3)に結合する部分、または同様のもしくは改善されたTGFβ結合親和性を有するそのバリアントを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ1(例えば、ヒトTGFβ1)に結合する部分を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ2(例えば、ヒトTGFβ2)に結合する部分を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ3(例えば、ヒトTGFβ3)に結合する部分を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ1(例えば、ヒトTGFβ1)およびTGFβ2(例えば、ヒトTGFβ2)の両方に特異的に結合する部分を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ1(例えば、ヒトTGFβ1)およびTGFβ3(例えば、ヒトTGFβ3)の両方に特異的に結合する部分を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ2(例えば、ヒトTGFβ2)およびTGFβ3(例えば、ヒトTGFβ3)の両方に特異的に結合する部分を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ1(例えば、ヒトTGFβ1)、TGFβ2(例えば、ヒトTGFβ2)およびTGFβ3(例えば、ヒトTGFβ3)のそれぞれに特異的に結合する部分を含む。当業者は、TGFβファミリーの1つのファミリーメンバーまたはアイソフォームに結合するTGFβ結合性部分が、TGFβファミリーの1つまたは複数の他のファミリーメンバーまたはアイソフォームに同様のまたはより高い親和性で結合することが可能であり得ることを理解するだろう。
【0219】
[00251]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ2よりも、および/またはTGFβ3よりもTGFβ1に選択的に結合する部分を含む。
【0220】
[00252]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、同様の親和性でヒトTGFβ1およびマウスTGFβ1に特異的に結合する部分を含む。
【0221】
[00253]ある特定の実施形態では、本開示のTGFβ結合性部分は、可溶性TGFβ受容体(TGFβR)またはそのTGFβ結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0222】
[00254]例示的なTGFβ受容体として、TGFβRI、TGFβRIIおよびTGFβRIIIが挙げられる。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体は、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、TGFβ受容体III(TGFβRIII)およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体はTGFβRI(例えば、ヒトTGFβRI)である。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体はTGFβRII(例えば、ヒトTGFβRII)である。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体はTGFβRIII(例えば、ヒトTGFβRIII)である。
【0223】
[00255]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβ受容体(例えば、ヒトTGFβ受容体)の細胞外ドメイン(ECD)またはそのTGFβ結合性断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体のECDは、TGFβRI(例えば、ヒトTGFβRI)のECD、TGFβRII(例えば、ヒトTGFβRII)のECD、TGFβRIII(例えば、ヒトTGFβRIII)のECDまたはこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、TGFβRIIのECDは、配列番号66、79のアミノ酸配列、またはTGFβへの結合特異性を依然として保持する、これらに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、TGFβRIのECDは、配列番号77のアミノ酸配列、またはTGFβへの結合特異性を依然として保持する、これに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、TGFβRIIIのECDは、配列番号78のアミノ酸配列、またはTGFβへの結合特異性を依然として保持する、これに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0224】
[00256]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβに対する抗体およびその抗原結合性断片を含む。例示的な抗TGFβ抗体として、フレソリムマブおよびメテリムマブ、ならびに、例えば、それぞれその全体が本明細書に参照により組み込まれるUS7494651B2、US8383780B2、US8012482B2、WO2017141208A1に記載されている抗TGFβ抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0225】
[00257]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、1つもしくは複数のTGFβ受容体の1つもしくは複数のECD、および/または1つまたは複数の抗TGFβ抗体もしくはその抗原結合性断片の組合せを含む。
【0226】
[00258]1つまたは複数のECDは、同じでも異なっていてもよい。例えば、TGFβ結合性部分は、TGFβ受容体のECDの同一のリピートを含み得る、または代替的に同じTGFβ受容体の異なるECD配列の組合せを含み得る、または代替的に異なるTGFβ受容体由来の異なるECDの組合せを含み得る。同様に、1つまたは複数の抗TGFβ抗体は、同じでも異なっていてもよい。
【0227】
[00259]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβRI(例えば、ヒトTGFβRI)のECD、TGFβRII(例えば、ヒトTGFβRII)のECD、TGFβRIII(例えば、ヒトTGFβRIII)のECDまたはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるECDの組合せ(または融合物)を含む。
【0228】
[00260]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、1つまたは複数の抗TGFβ抗体またはその抗原結合性断片の組合せ(または融合物)を含む。
【0229】
[00261]ある特定の実施形態では、TGFβ結合性部分は、TGFβRI(例えば、ヒトTGFβRI)のECD、TGFβRII(例えば、ヒトTGFβRII)のECD、TGFβRIII(例えば、ヒトTGFβRIII)のECD、1つもしくは複数の抗TGFβ抗体もしくはその抗原結合性断片、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるECDの組合せ(または融合物)を含む。
【0230】
ii.IL結合性部分
[00262]ある特定の実施形態では、第2の部分はIL-1結合性部分を含む。ある特定の実施形態では、IL-1はIL-1αまたはIL-1βである。ある特定の実施形態では、IL-1βはヒトIL-1βである。
【0231】
[00263]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1αまたはIL-1βに特異的に結合する。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1αよりもIL-1βに選択的に結合する、またはIL-1βよりもIL-1αに選択的に結合する部分を含む。
【0232】
[00264]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、可溶性IL-1R、IL-1RのIL-1結合性断片もしくはバリアント、またはIL-1に対する抗体もしくはその抗原結合性断片を含む。
【0233】
[00265]可溶性IL-1Rは、IL-1Rのドメインまたは断片またはバリアント、例えば、IL-1Rの細胞外ドメイン(ECD)を含み得る。代替的に、可溶性IL-1Rは、天然で可溶性であり、IL-1に結合することが可能であるアイソフォームであるIL-1sRIまたはIL-1sRIIも含み得る。
【0234】
[00266]当業者は、IL-1Rの短縮化断片、またはIL-1RのECD、またはIL-1sRIまたはIL-1sRIIは、そのような断片がIL-1結合性ドメインを含有する限り、IL-1(例えば、IL-1αまたはIL-1β)に結合するために十分であり得ることを理解するだろう。したがって、本明細書において提供されるIL-1結合性部分は、IL-1R、IL-1RのECD、IL-1sRIおよびIL-1sRIIのいずれかのIL-1結合性断片も含み得る。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、配列番号73、74もしくは75のアミノ酸配列またはそのIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、配列番号73、74および75のいずれかに少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列またはそのIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。
【0235】
[00267]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片も、そのような抗体または抗原結合性断片がIL-1(例えば、IL-1αまたはIL-1β)のIL-1Rへの結合に干渉できる限り使用され得る。
【0236】
[00268]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、XB2001、ルチキズマブ、LY2189102およびベルメキマブからなる群から選択される抗IL-1α抗体由来、またはSSGJ-613、CDP484、カナキヌマブおよびゲボキズマブからなる群から選択される抗IL-1β抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0237】
[00269]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104もしくは配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号105もしくは配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号106もしくは配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107もしくは配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号108もしくは配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号109もしくは配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0238】
[00270]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号104の配列を含むHCDR1、配列番号105の配列を含むHCDR2、および配列番号106の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号107の配列を含むLCDR1、配列番号108の配列を含むLCDR2、および配列番号109の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0239】
[00271]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号112の配列を含むHCDR1、配列番号113の配列を含むHCDR2、および配列番号114の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号115の配列を含むLCDR1、配列番号116の配列を含むLCDR2、および配列番号117の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0240】
[00272]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、配列番号110、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、配列番号111、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0241】
[00273]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号102、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号103、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0242】
[00274]ある特定の実施形態では、IL-1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号110、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号111、およびこれに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0243】
[00275]ある特定の実施形態では、IL-1結合性部分は、IL-1R、IL-1RのECD、IL-1sRI、IL-1sRII、IL-1に対する抗体、これらの任意のIL-1結合性断片およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数の部分の組合せを含む。そのような1つまたは複数の部分は、直接結合によって連結され得る、または適切なリンカーによって連結され得る。
【0244】
[00276]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1RaまたはそのIL-1R結合性断片もしくはバリアントを含む。IL-1Raは、IL-1Rのアンタゴニストであり、IL-1Rへの結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合できる。同様に、当業者は、IL-1Rへの結合において、および/またはIL-1αもしくはIL-1βとの競合において有用であることにIL-1Raの短縮化断片が十分であり得ることを理解するだろう。ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1Raの短縮形態を含む。ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、配列番号67のアミノ酸配列、またはその任意のIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、配列番号67に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはその任意のIL-1結合性断片もしくはバリアントを含む。当業者は、野生型IL-1Raのバリアントも、そのようなバリアントがIL-1Rとの結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合することが可能である限り、本開示において有用であり得ることを理解するだろう。
【0245】
[00277]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片を含む。IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片も、そのような抗体または抗原結合性断片がIL-1Rとの結合についてIL-1αまたはIL-1βと競合できる限り使用され得る。
【0246】
[00278]ある特定の実施形態では、IL-1R結合性部分は、IL-1Ra、IL-1Rに対する抗体、その任意のIL-1R結合性断片またはバリアントおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数の部分の組合せを含む。そのような1つまたは複数の部分は、直接結合によって連結され得る、または適切なリンカーによって連結され得る。
【0247】
[00279]ある特定の実施形態では、IL-1Rに対する抗体またはその抗原結合性断片は、スペソリマブ、アステゴリマブ、イムシドリマブ、AMG108、メルリリマブ、ニダニリマブ、MEDI8968、REGN6490、HB0034およびCSC012からなる群から選択される抗体由来の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0248】
iii.免疫賦活性ポリペプチド
[00280]ある特定の実施形態では、第2の部分は、免疫賦活性ポリペプチドまたはその機能性等価物またはそのバリアントを含む。ある特定の実施形態では、免疫賦活性ポリペプチドは、可溶性CD4、可溶性LAG-3またはこれらの機能性等価物である。
【0249】
[00281]ある特定の実施形態では、可溶性LAG-3は、LAG-3の細胞外ドメイン(ECD)もしくはMHCクラスII(MHCII)結合性断片またはそのバリアントを含む。
【0250】
[00282]LAG-3(Uniprot番号:Q61790)は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、503アミノ酸を含むI型膜貫通タンパク質である。Lag-3は、細胞内ドメイン(ICD)、膜貫通ドメイン(TMD)および細胞外ドメイン(ECD)を含む。ECDは、4つのIg様ドメイン、すなわち、D1からD4を含み、ここで、D1は、9個のβ鎖、A、B、C、C’、C’’、D、E、FおよびG鎖を含む。C鎖とC’鎖との間には、「エクストラループ」を形成する約30アミノ酸を有する追加的配列がある。そのような「エクストラループ」は、LAG-3とMHCIIとの間の相互作用に関与すると報告されている。ある特定の実施形態では、可溶性LAG-3は、エクストラループ、D1ドメイン、D1プラスD2ドメイン、またはこれらの任意のMHC II結合性断片もしくはバリアントのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、可溶性LAG-3は、配列番号99、配列番号100、配列番号101またはこれらの任意のMHC II結合性断片もしくはバリアントのアミノ酸配列を含む。
【0251】
[00283]LAG-3は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞および形質細胞様樹状細胞で発現される。その主要なリガンドは、MHCクラスIIであり、CD4よりも高い親和性を有してそれに結合する。接続ペプチド(CP)は、LAG-3のD4とTMDとの間に存在し、ここでメタロプロテイナーゼADAM10および/またはADAM17の存在で切断が生じ、切断された可溶性LAG-3を産生する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Huardら、Proc Natl Acad Sci U S A 1997;94:5744~9.;Workmanら、J Immunol 2002;169:5392~5.doi:10.4049/jimmunol.169.10.5392;およびLawrenceら、J Immunother Cancer.2015;3(Suppl 2):P216を参照されたい。
【0252】
[00284]LAG-3は、LAG-3の可溶性形態に翻訳される代替的スプライスバリアントもコードする。可溶性LAG-3は、MHCIIシグナル伝達を通じて抗原提示細胞(APC)を活性化し、in vivoで抗原特異的T細胞応答の増加をもたらす。例えば、可溶性LAG-3は、樹状細胞(DC)を活性化し、サイトカイン活性化(例えば、TNF-αおよび/またはIL-12活性化)バイスタンダーT細胞の炎症誘発活性に関与することが報告されており、DCを直接活性化し得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Triebel、Trends Immunol.、2003、24:619~622を参照されたい。
【0253】
[00285]ある特定の実施形態では、可溶性LAG-3は、エフチラギモドアルファ(IMP321)またはそのMHC II結合性断片もしくはバリアントを含む。IMP321は、LAG-3の可溶性二量体組換え形態である。IMP321は、MHCII分子を通じて樹状細胞を刺激することによって持続性の免疫応答を誘導する。MP321と抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体との組合せ療法は、T細胞を相乗的に活性化することが示されている(特に、CD8+T細胞)。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Lucら、Future Oncol Actions Search in PubMed Search in NLM Catalog Add to Search.2019 Jun;15(17):1963~1973.doi:10.2217/fon-2018-0807.Epub 2019 Apr 12.;Julioら、Journal of Clinical Oncology、Volume 37、Issue 15;およびUS10874713Bを参照されたい。
【0254】
iv.免疫阻害性受容体シグナル伝達のアンタゴニスト
[00286]ある特定の実施形態では、第2の部分は、免疫阻害性受容体シグナル伝達のアンタゴニストを含む。ある特定の実施形態では、免疫阻害性受容体は、SIRPαである。
【0255】
[00287]本明細書で使用される場合、用語「SIRPα」は、用語「シグナル制御タンパク質アルファ」と互換的に、主に骨髄性細胞および樹状細胞上で発現される阻害性受容体を指す。SIRPαは、SIRPβおよびSIRPγが挙げられるいくつかの他の膜貫通糖タンパク質も含むSIRPファミリーに属する。SIRPファミリーの各メンバーは、3つの同様の細胞外Ig様ドメインと共に別個の膜貫通および細胞質ドメインを含有する。
【0256】
[00288]SIRPαは、ファゴサイトーシスを抑制するように「私を食べないで(don’t eat me)」シグナルを送達するCD47に結合でき、貪食細胞上のSIRPαのCD47媒介係合を遮断することは「私を食べて(eat me)」シグナルを保有する生細胞の除去を生じ得る。CD47は、細胞外N末端IgVドメイン、5つの膜貫通ドメインおよび短いC末端細胞内テールを有する広範に発現される膜貫通糖タンパク質である。CD47は、SIRPαについての細胞性リガンドとして機能する。腫瘍細胞は、マクロファージ媒介破壊を回避するためにCD47をしばしば過剰発現する。CD47とSIRPαとの相互作用は、マクロファージ媒介ファゴサイトーシスの制御に関与することが示されている(Takenakaら、Nature Immunol.、8(12):1313~1323、2007)。
【0257】
[00289]ある特定の実施形態では、第2の部分は、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断する。さまざまな前臨床モデルにおいて、CD47とSIRPαとの相互作用を遮断する治療は、in vitroでがん細胞のファゴサイトーシスおよびin vivoで抗腫瘍免疫応答を刺激する。
【0258】
[00290]第2の部分は、CD47結合性ドメインまたはSIRPα結合性ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、免疫阻害性受容体は、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)である。ある特定の実施形態では、第2の部分は、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断する。ある特定の実施形態では、第2の部分は、CD47結合性ドメインまたはSIRPα結合性ドメインを含む。ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、可溶性SIRPαもしくはそのCD47結合性断片、または抗CD47抗体もしくはその抗原結合性断片を含む。
【0259】
[00291]ある特定の実施形態では、可溶性SIRPα は、SIRPαの細胞外ドメイン(ECD)またはそのCD47結合性断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、可溶性SIRP は、配列番号84のアミノ酸配列、またはCD47に対する結合特異性を依然として保持する、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。任意選択で、可溶性SIRP は、操作された高親和性SIRP バリアントであり、がん細胞でCD47を強くアンタゴナイズしたが、それ自体はマクロファージファゴサイトーシスを誘導しない。ある特定の実施形態では、SIRP バリアントは、配列番号98と比較して、L4V、L4I、V6I、V6L、A21V、V27I、V27L、I31T、I31S、I31F、E47V、E47L、K53R、E54Q、H56P、H56R、V63I、S66T、S66G、K68R、V92I、F94L、F94VおよびF103Vからなる群から選択される1つまたは複数の変異を含む。ある特定の実施形態では、SIRPαバリアントは、1)V27I、K53R、S66T、K68R、F103V;2)L4V、V27L、E47V、K53R、E54Q、S66G、K68R、V92I;3)L4V、V6I、A21V、V27I、I31T、E47L、K53R、H56P、S66T、K68R、F94L;4)V6I、V27I、I31S、E47V、K53R、E54Q、H56P、S66G、V92I、F94L;5)L4I、A21V、V27I、I31F、E47V、K53R、E54Q、H56R、S66G、F94V、F103V;6)L4V、V6I、V27I、I31F、E47V、K53R、H56R、S66G、K68R、V92I、F94L;7)L4V、V6L、I31F、E47V、K53R、H56P、S66G、V92I、F103V;8)V6I、V27I、I31F、E47L、K53R、E54Q、H56P、S66T;9)L4V、V6I、V27I、I31F、E47V、K53R、E54Q、H56P、V63、S66T、K68R、V92I;10)V6I、V27I、I31T、E47V、K53R、E54Q、H56P、S66G、K68R、V92I、F103V;および11)V6I、V27I、I31F、E47V、K53R、E54Q、H56P、S66T、V92Iからなる群から選択される変異の組合せを含む。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Kipp Weiskopfら、Science 341、88(2013)を参照されたい。
【0260】
[00292]ある特定の実施形態では、SIRPα結合性ドメインは、可溶性CD47もしくはそのSIRPα結合性断片、または抗SIRPα抗体もしくはその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態では、可溶性CD47は、CD47の細胞外ドメイン(ECD)またはそのSIRPα結合性断片、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0261】
[00293]ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、抗CD47抗体およびその抗原結合性断片を含む。例示的な抗CD47抗体として、限定することなく、ヒト化5F9抗体、B6H12抗体およびZF1抗体が挙げられる。参照により本明細書に組み込まれる、Luら、OncoTargets and Therapy、Volume 13、DOI https://doi.org/10.2147/OTT.S249822を参照されたい。ある特定の実施形態では、SIRPα結合性ドメインは、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を含む。例示的な抗SIRPα抗体として、限定することなくBI765064およびAL008が挙げられる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WO2019073080A1、WO2019175218A1およびWO2018107058A1を参照されたい。
【0262】
[00294]ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、1つもしくは複数のSIRPα、SIRPβもしくはSIRPγおよび/または1つもしくは複数の抗CD47抗体もしくはその抗原結合性断片の1つまたは複数のECDの組合せを含む。
【0263】
[00295]1つまたは複数のECDは、同じでも異なっていてもよい。例えば、CD47結合性ドメインは、SIRPα、SIRPβもしくはSIRPγのECDの同一の反復を含み得る、または代替的に、同じSIRPα、SIRPβもしくはSIRPγの異なるECD配列の組合せを含み得る、または代替的に異なるSIRPα、SIRPβもしくはSIRPγ由来の異なるECDの組合せを含み得る。同様に、1つまたは複数の抗CD47抗体は、同じでも異なっていてもよい。
【0264】
[00296]ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、SIRPαのECD、SIRPβのECD、SIRPγのECD、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるECDの組合せ(または融合物)を含む。
【0265】
[00297]ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、1つまたは複数の抗CD47抗体またはその抗原結合性断片の組合せ(または融合物)を含む。
【0266】
[00298]ある特定の実施形態では、CD47結合性ドメインは、SIRPαのECD、SIRPβのECD、SIRPγのECD、1つもしくは複数の抗CD47抗体もしくはその抗原結合性断片、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるECDの組合せ(または融合物)を含む。
【0267】
v.PD-L1結合性部分
[00299]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、PD-L1結合性部分である第1の部分を含む。
【0268】
[00300]ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1結合性部分は、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1またはカニクイザルPD-L1)に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1結合性部分は、ヒトPD-L1に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1結合性部分は、カニクイザルPD-L1に結合する。
【0269】
[00301]ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1結合性部分は、抗PD-L1抗体部分を含む。ある特定の実施形態では、例示的な抗PD-L1抗体は、本開示の抗PD-L1抗体の章および例示的な抗PD-L1抗体の章に開示される。
【0270】
[00302]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体部分は、1つまたは複数のCDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体部分は、本開示の例示的な抗PD-L1抗体の章に開示される1つまたは複数のCDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体部分は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体部分は、本開示の例示的な抗PD-L1抗体の章に開示される抗PD-L1抗体のVHおよびVLを含む。
【0271】
[00303]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体部分は、重鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された重鎖定常ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、IgA、IgGおよびIgMからなる群由来である。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2またはIgM由来である。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体部分は、軽鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された軽鎖定常ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖由来である。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号80または81のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号82のアミノ酸配列を含む。
【0272】
vi.第1の部分と第2の部分との間の連結
[00304]本開示では、第2の部分は、第1の部分の任意の一部分に連結され得る。例えば、TGFβ結合性部分またはIL-1結合性部分などの第2の部分は、PD-L1結合性部分(例えば、抗PD-L1抗体部分)などの第1の部分の任意の好適な一部分に連結され得る。
【0273】
[00305]ある特定の実施形態では、PD-L1結合性部分は、抗体重鎖および軽鎖などの1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む。
【0274】
[00306]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、1つまたは複数の第2の部分を含む。ある特定の実施形態では、第2の部分の少なくとも1つは第1の部分のポリペプチド鎖のアミノ末端(N末端)またはカルボキシル(C末端)に連結される。ある特定の実施形態では、第2の部分の少なくとも1つは第1の部分の重鎖のN末端もしくはC末端に連結される、または第1の部分の軽鎖のN末端もしくはC末端に連結される。
【0275】
[00307]ある特定の実施形態では、第2の部分の少なくとも1つは第1の部分の重鎖定常領域のC末端に連結される。ある特定の実施形態では、第2の部分のそれぞれは、第1の部分の各重鎖定常領域のC末端にそれぞれ連結される。
【0276】
[00308]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、第2の部分の少なくとも2つを含み、そのそれぞれは、第1の部分の各重鎖のC末端にそれぞれ連結されるか、または第1の部分の各軽鎖のC末端にそれぞれ連結される。ある特定の実施形態では、二機能性分子は、第2の部分の少なくとも2つを含み、そのそれぞれは、第1の部分の各重鎖のN末端にそれぞれ連結されるか、または第1の部分の各軽鎖のN末端にそれぞれ連結される。
【0277】
[00309]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、第1の部分の重鎖のN末端、第1の部分の重鎖のC末端、第1の部分の軽鎖のN末端、第1の部分の軽鎖のC末端、またはこれらの任意の組合せにそれぞれ連結された第2の部分の1つより多くを含む。例えば、二機能性分子は、第2の部分の少なくとも2つを含んでよく、その一方は第1の部分の重鎖のC末端に連結され、他方は第1の部分の軽鎖のC末端に連結される。例えば、二機能性分子は、第2の部分の少なくとも2つを含んでよく、その一方は第1の部分の重鎖のN末端に連結され、他方は第1の部分の軽鎖のN末端に連結される。
【0278】
[00310]ある特定の実施形態では、1つまたは複数のTGFβ結合性部分、1つもしくは複数のIL-1結合性部分、1つもしくは複数の免疫賦活性ポリペプチド(例えば、可溶性LAG3もしくは可溶性CD4)または1つもしくは複数のCD47結合性部分は、抗PD-L1抗体部分に、抗PD-L1抗体部分の1)重鎖可変領域のN末端、2)軽鎖可変領域のN末端、3)重鎖可変領域のC末端;4)軽鎖可変領域のC末端;5)重鎖定常領域のC末端;6)軽鎖定常領域のC末端、および7)これらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数の位置で連結される。
【0279】
[00311]ある特定の実施形態では、二機能性分子はホモ二量体重鎖を含む。ある特定の実施形態では、二機能性分子はヘテロ二量体重鎖を含む。重鎖は、第2の部分の存在または位置に関してヘテロ二量体性である。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体重鎖は、第2の部分を有する一方の重鎖およびそれを有さない他方の重鎖を含む。
【0280】
vii.リンカー
[00312]第2の部分は、第1の部分に直接またはリンカーを介して連結され得る。直接の連結は、化学的連結(共有結合など)であり得る。
【0281】
[00313]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、第1の部分と第2の部分とを繋ぐリンカーをさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「リンカー」は、連結される少なくとも2つの実体と反応し、それにより1つの分子を形成するように実体を結合する、または十分に近い近接で実体の会合を維持することが可能である任意の好適な二機能性部分であり得る。リンカーは、反応したその官能基と共にまたはこれを伴わずに、生じた連結された分子または構造中に組み込まれ得る。
【0282】
[00314]ある特定の実施形態では、リンカーは、切断性リンカー、非切断性リンカー、ペプチドリンカー、可動性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される。
【0283】
[00315]ある特定の実施形態では、リンカーはペプチドリンカーを含む。ペプチドリンカーは、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸残基から作られていてよい。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、1つまたは複数の非天然アミノ酸をさらに含み得る。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、ペプチド結合によって繋がれ、2つ以上のポリペプチドを連結することが可能である少なくとも1、2、3、4、5、8、10、15、20、30、50またはこれを超えるアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む。ペプチドリンカーは、二次構造を有する場合と有さない場合がある。
【0284】
[00316]任意の好適なペプチドリンカーは使用され得る。多数のペプチドリンカー配列が当技術分野において公知である、例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448(1993);Poljakら、Structure 2:1121~1123(1994)を参照されたい。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸グリシン、セリン、アラニン、メチオニン、アスパラギンおよびグルタミンから選択されるアミノ酸残基を含み得るか、またはこれからなり得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシンおよびアラニンなどの立体障害のないアミノ酸が大部分で作製され得る。一部の実施形態では、リンカーは、ポリグリシン、ポリアラニン、グリシンとアラニンとの組合せ(例えば、ポリ(Gly-Ala))またはグリシンとセリンとの組合せ(例えば、ポリ(Gly-Ser))である。
【0285】
[00317]ある特定の実施形態では、リンカーは、((G)nS)mのアミノ酸配列を含み、式中、mおよびnは、独立的に0から30、1から29、2から28、3から27、4から26、5から25、6から24、7から23、8から22、9から21、10から20、11から19、12から18、13から17、14から16または5から選択される整数である。ある特定の実施形態では、mは4であり、nは4である。
【0286】
[00318]ある特定の実施形態では、リンカーは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、配列番号68に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0287】
viii.抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片
[00319]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子のPD-L1結合性部分は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片を含む部分を含む。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、PD-L1に特異的に結合することが可能である。
【0288】
[00320]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、Biacoreアッセイによる測定で、ヒトPD-L1に0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下、または0.4nM以下のK値で特異的に結合する。Biacoreアッセイは、表面プラズモン共鳴技術に基づく、例えば、Murphy,M.ら、Current protocols in protein science、Chapter 19、unit 19.14、2006を参照されたい。ある特定の実施形態では、K値は、本開示の実施例6に記載の方法によって測定される。
【0289】
[00321]本明細書において提供される抗体またはその抗原結合性断片のヒトPD-L1への結合は、その最大結合の50%が観察される抗体の濃度を指す「最大半量有効濃度」(EC50)値によっても表され得る。EC50値は、当技術分野において公知の結合アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、蛍光励起細胞選別(FACS)アッセイおよび他の結合アッセイなどの直接的または間接的結合アッセイによって測定され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその抗原結合性断片は、ELISAによる測定で0.3nM以下、0.2nM以下、0.1nM以下または0.09nM以下のEC50(すなわち、50%結合濃度)でPD-L1に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合性断片は、FACSアッセイによる測定で1.4nM以下、1.3nM以下、1.2nM以下、1.1nM以下、1.0nM以下、0.3nM以下、0.25nM以下または0.21nM以下のEC50(すなわち、50%結合濃度)でPD-L1に特異的に結合する。
【0290】
[00322]一部の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、PD-L1に特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、B7ファミリーの他のメンバーに結合しない。
【0291】
[00323]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、PD-L1とその結合パートナー(例えば、PD-1およびB7-1)との間の相互作用を、ELISAによる測定で2.2、2.1、2.0、1.9、1.8または1.2ug/ml以下のIC50を有して遮断することが可能である。
【0292】
[00324]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、PD-L1とその結合パートナー(例えば、PD-1、)との間の相互作用を、細胞ベースのアッセイによる測定で1.3、1.2、1.1、1.0、0.9または0.8nM以下のEC50を有して遮断することが可能である。
【0293】
ix.例示的な抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片
[00325]ある特定の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体(すなわち、PD-L1に対する抗体)およびその抗原結合性断片は、DYYMN(配列番号1)、DINPNNXTXYNHKFKG(配列番号19)、WGDGPFAY(配列番号3)、KASQNVXVA(配列番号20)、SXSXRYT(配列番号21)、QQYSNYPT(配列番号6)からなる群から選択される配列を含む1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5または6つ)のCDRを含み、式中、XはGまたはAであり、XはGまたはDまたはQまたはEまたはLであり、XはSまたはMまたはQまたはLまたはVであり、XはGまたはPまたはKであり、XはAまたはGであり、XはAまたはIであり、XはAまたはNまたはRまたはVであり、XはNまたはHまたはVまたはDである。
【0294】
[00326]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、
b)配列番号2、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含むHCDR2、ならびに
c)配列番号3の配列を含むHCDR3、
を含み、かつ/または
軽鎖可変領域は、
d)配列番号4、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含むLCDR1、
e)配列番号5、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択される配列を含むLCDR2、ならびに
f)配列番号6の配列を含むLCDR3
を含む。
【0295】
[00327]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、
g)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
h)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号13の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
i)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号14の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;
j)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号15の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;ならびに
k)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号17の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;ならびに
l)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号18の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域
からなる群から選択される。
【0296】
[00328]ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、
a)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
b)配列番号9の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
c)配列番号8の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;
d)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号12の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
e)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域
からなる群から選択される。
【0297】
[00329]本明細書で使用される場合、抗体「4B6」は、配列番号46の配列を有する重鎖可変領域、および配列番号47の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を指す。
【0298】
[00330]ある特定の実施形態では、本開示は、抗体4B6または抗体4B6のバリアントの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5または6つ)のCDR配列を含む抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片を提供する。CDR境界は、Kabatの慣例によって定義されたか、または同定された。
【0299】
[00331]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号2、13、14、15、17および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2、ならびに配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号4、7、8~9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号5、10、11~12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR2、ならびに配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0300】
[00332]
【0301】
【表2】
【0302】
[00333]
【0303】
【表3】
【0304】
[00334]CDRは、抗原結合に関与することが公知である。しかし、6つのCDRのすべてが不可欠または変更不能であるのではないことが見出された。言い換えると、抗PD-L1抗体4B6中の1つまたは複数のCDRは、PD-L1への特異的結合親和性を実質的に依然として保持して置き換えるか、変更するか、または改変することが可能である。
【0305】
[00335]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその抗原結合性断片は、抗体およびその抗原結合性断片がPD-L1に特異的に結合できる限り、好適なフレームワーク領域(FR)配列を含む。上の表1に提供されるCDR配列は、マウス抗体から得られるが、それらは、組換え技術などの当技術分野において公知の好適な方法を使用して、特にマウス、ヒト、ラット、ウサギなどの任意の好適な種の任意の好適なFR配列に移植され得る。
【0306】
[00336]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその抗原結合性断片は、ヒト化されている。ヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトでのその免疫原性の低減において望ましい。ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列がヒトまたは実質的にヒトのFR配列に移植されていることから、その可変領域においてキメラである。抗体または抗原結合性断片のヒト化は、非ヒト(例えば、マウス)CDR遺伝子でヒト免疫グロブリン遺伝子中の対応するヒトCDR遺伝子を置換することによって基本的に実施され得る(例えば、Jonesら、(1986)Nature 321:522~525;Riechmannら、(1988)Nature 332:323~327;Verhoeyenら、(1988)Science 239:1534~1536を参照されたい)。
【0307】
[00337]好適なヒト重鎖および軽鎖可変ドメインは、当技術分野において公知の方法を使用してこの目的を達成するために選択され得る。例示的な例では、「ベストフィット」アプローチは、使用されてよく、ここで、非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体可変ドメイン配列は、公知のヒト可変ドメイン配列のデータベースに対してスクリーニングされるかまたはBLASTされ、非ヒトクエリー配列に最も近いヒト配列が非ヒトCDR配列を移植するためのヒトスキャホールドとして同定され、使用される(例えば、Simsら、(1993)J.Immunol.151:2296;Chothiaら、(1987)J.Mot.Biol.196:901を参照されたい)。代替的に、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来のフレームワークは、非ヒトCDRの移植のために使用され得る(例えば、Carterら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285;Prestaら、(1993)J.Immunol.、151:2623を参照されたい)。
【0308】
[00338]一部の実施形態では、本開示は、4B6の12個のヒト化抗体を提供し、それらはそれぞれ、Hu4B6_Hg.2La.1、Hu4B6_Hg.2La.2、Hu4B6_Hg.2La.4、Hu4B6_Hg.2La.6、Hu4B6_Hg.3La.1、Hu4B6_Hg.3La.2、Hu4B6_Hg.3La.4、Hu4B6_Hg.3La.6、Hu4B6_Hg.5La.1、Hu4B6_Hg.5La.2、Hu4B6_Hg.5La.4およびHu4B6_Hg.5La.6と名付けられる。4B6の各ヒト化抗体の重鎖および軽鎖可変領域の配列番号は、表5に示される。4B6の12個のヒト化抗体それぞれのCDRは、表5(下線付き配列)に示される。CDR境界は、Kabatの慣例によって定義されたか、または同定された。
【0309】
[00339]下の表3aは、ヒト化4B6についてのバリアントCDRのアミノ酸配列を示し、下の表3bは、ヒト化4B6重鎖および軽鎖可変領域についてのFRを示す。下の表4は、キメラ抗体4B6についての12個のヒト化抗体の各重鎖および軽鎖についてのFRアミノ酸配列を示し、それらはそれぞれ、Hu4B6_Hg.2La.1、Hu4B6_Hg.2La.2、Hu4B6_Hg.2La.4、Hu4B6_Hg.2La.6、Hu4B6_Hg.3La.1、Hu4B6_Hg.3La.2、Hu4B6_Hg.3La.4、Hu4B6_Hg.3La.6、Hu4B6_Hg.5La.1、Hu4B6_Hg.5La.2、Hu4B6_Hg.5La.4およびHu4B6_Hg.5La.6と名付けられる。これら12個のヒト化抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は表5に示される。
【0310】
[00340]
【0311】
【表4】
【0312】
[00341]
【0313】
【表5】
【0314】
[00342]
【0315】
【表6】
【0316】
[00343]下の表5は、ヒト化4B6重鎖可変領域の3個のバリアント(すなわち、Hu4B6_Hg.2、Hu4B6_Hg.3およびHu4B6_Hg.5)ならびにヒト化4B6軽鎖可変領域の4個のバリアント(すなわち、AM4B6_La.1、AM4B6_La.2、AM4B6_La.4、AM4B6_La.6)を示す。
【0317】
【表7-1】
【0318】
【表7-2】
【0319】
[00344]ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、非ヒトであるCDR配列を除いて実質的にすべてのヒト配列から構成される。一部の実施形態では、可変領域FRおよび、存在する場合、定常領域は、完全にまたは実質的にヒト免疫グロブリン配列由来である。ヒトFR配列およびヒト定常領域配列は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子由来、例えば、1つのヒト抗体由来のFR配列および別のヒト抗体由来の定常領域であってよい。一部の実施形態では、ヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト重鎖HFR1-4、および/または軽鎖LFR1-4を含む。
【0320】
[00345]一部の実施形態では、ヒト由来のFR領域は、それが由来するヒト免疫グロブリンと同じアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、ヒトFRの1つまたは複数のアミノ酸残基は、親非ヒト抗体由来の対応する残基で置換される。これは、非ヒト親抗体構造に非常に近いヒト化抗体またはその断片を作るため、それにより結合特徴を最適化する(例えば、結合親和性を増加させる)ためにある特定の実施形態では望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFR配列のそれぞれにおいて10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個もしくは1個以下のアミノ酸残基置換、または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインのすべてのFR配列中に10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個もしくは1個以下のアミノ酸残基置換を含む。一部の実施形態では、アミノ酸残基におけるそのような変更は、重鎖FR領域にだけ、軽鎖FR領域にだけ、または両方の鎖に存在し得る。ある特定の実施形態では、ヒトFR配列の1つまたは複数のアミノ酸は、結合親和性を増加させるために無作為に変異される。ある特定の実施形態では、ヒトFR配列の1つまたは複数のアミノ酸は、結合親和性を増加させるように親非ヒト抗体の対応するアミノ酸(複数可)に復帰変異される。
【0321】
[00346]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYXFT(配列番号40)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む重鎖HFR1、WVRQAPGQX10LEWMG(配列番号41)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む重鎖HFR2、RVTX16TVDX11SISTAYMELSRLRSDDTAVYYCX1213(配列番号42)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む重鎖HFR3、およびWGQGTLVTVSS(配列番号25)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む重鎖HFR4を含み、式中、XはTまたはVであり、X10はGまたはSであり、X11はTまたはKであり、X12はAまたはVであり、X13はRまたはKである。
【0322】
[00347]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号26)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む軽鎖LFR1、WYQQKPGKX14PKLLIY(配列番号43)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む軽鎖LFR2、GVPX15RFSGSGSGTDFTX17TISSLQPEDIATYYC(配列番号44)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む軽鎖LFR3、およびFGQGTKLEIK(配列番号29)の配列またはこれに少なくとも80%の配列同一性のある相同性配列を含む軽鎖LFR4を含み、式中、X14はAまたはSであり、X15はSまたはDであり、X16はMまたはVであり、X17はFまたはLである。
【0323】
[00348]ある特定の実施形態では、HFR1は配列番号22および30からなる群から選択される配列を含み、HFR2は配列番号23および31からなる群から選択される配列を含み、HFR3は配列番号24および32~35からなる群から選択される配列を含み、HFR4は配列番号25の配列を含み、LFR1は配列番号26からなる群からの配列を含み、LFR2は配列番号27および36からなる群から選択される配列を含み、LFR3は配列番号28、および37~38、39、45からなる群から選択される配列を含み、LFR4は配列番号29の配列を含む。
【0324】
[00349]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、Hu4B6_Hg.2(配列番号58)、AM4B6_Hg.3(配列番号59)、AM4B6_Hg.5(配列番号60)からなる群から選択される重鎖可変領域中に含有されるHFR1、HFR2、HFR3、および/またはHFR4配列を含む。
【0325】
[00350]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、AM4B6_La.1(配列番号62)、AM4B6_La.2(配列番号63)、AM4B6_La.4(配列番号64)、およびAM4B6_La.6(配列番号65)からなる群から選択される軽鎖可変領域に含有されるLFR1、LFR2、LFR3、および/またはLFR4配列を含む。
【0326】
[00351]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号46、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号47、配列番号54、配列番号55、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、およびこれらに少なくとも80%の配列同一性を有するその相同性配列からなる群から選択される配列を含む。ある特定の実施形態では、PD-L1に対する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号49/54、50/54、51/54、52/54、49/55、50/55、51/55、52/55、58/62、58/63、58/64、58/65、59/62、59/63、59/64、59/65、60/62、60/63、60/64および60/65からなる群から選択される重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列との対を含む。
【0327】
[00352]これらの例示的なヒト化抗PD-L1抗体は、PD-L1への特異的結合能力または親和性を保持し、その態様においては親マウス抗体4B6より良好である。
【0328】
[00353]一部の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体または抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分および/または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む。一実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書において提供される重鎖可変ドメインのすべてまたは一部分からなる単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体についてのさらなる情報は、当技術分野において入手可能である(例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0329】
[00354]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、重鎖および/または軽鎖定常領域を任意選択でさらに含む免疫グロブリン(Ig)定常領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、CH1、ヒンジおよび/またはCH2-CH3領域(または、任意選択でCH2-CH3-CH4領域)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2またはIgMの重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、CκまたはCλを含む。本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片の定常領域は、野生型定常領域配列と同一であってよい、または1つまたは複数の変異において異なっていてよい。
【0330】
[00355]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、診断および/または治療的使用を提供するために十分である、ヒトPD-L1への特異的結合親和性を有する。
【0331】
[00356]本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二特異性抗体、多特異性抗体、標識抗体、二価抗体、抗イディオタイプ抗体または融合タンパク質であり得る。組換え抗体は、動物においてよりも組換え法を使用してin vitroで調製された抗体である。
【0332】
[00357]ある特定の実施形態では、PD-L1結合性部分は、配列番号49/54、50/54、51/54、52/54、49/55、50/55、51/55、52/55、58/62、58/63、58/64、58/65、59/62、59/63、59/64、59/65、60/62、60/63、60/64および60/65からなる群から選択される重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列との対を含む抗体またはその抗原結合性断片と、PD-L1への結合について競合する抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0333】
x.抗体バリアント
[00358]本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合性断片は、本明細書において提供される抗体配列の種々のバリアントも包含する。
【0334】
[00359]ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、上の表1に提供されるCDR配列の1つまたは複数に、上の表3a、3bおよび5に提供される重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域の非CDR配列の1つまたは複数に、ならびに/または定常領域(例えば、Fc領域)に1つまたは複数の改変または置換を含む。そのようなバリアントは、それらの親抗体のPD-L1への結合特異性を保持しているが、改変(複数可)または置換(複数可)によって付与される1つまたは複数の望ましい特性を有する。例えば、抗体バリアントは、改善された抗原結合親和性、改善されたグリコシル化パターン、グリコシル化のリスクの低減、脱アミノ化の低減、エフェクター機能(複数可)の低減もしくは枯渇、FcRn受容体結合の改善、薬物動態学的半減期、pH感度、および/またはコンジュゲーションへの適合性(例えば、1つまたは複数のシステイン残基の導入)の増加を有し得る。
【0335】
[00360]親抗体配列は、当技術分野において公知の方法、例えば「アラニンスキャニング変異誘発法」(例えば、CunninghamおよびWells(1989)Science、244:1081~1085を参照されたい)を使用して、改変または置換されるのに好適または好ましい残基を同定するためにスクリーニングされ得る。簡潔には、標的残基(例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGluなどの荷電残基)は、同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられ得、改変された抗体は産生され、目的の特性についてスクリーニングされる。特定のアミノ酸位置での置換が目的の機能的変化を実証する場合、次に位置は、改変または置換のための有望な残基として同定され得る。有望な残基は、異なる種類の残基(例えば、システイン残基、正に荷電した残基など)を用いて置換することによってさらに評価され得る。
【0336】
xi.親和性バリアント
[00361]抗体の親和性バリアントは、上の表1に提供される1つもしくは複数のCDR配列に、上の表3bおよび4に提供される1つもしくは複数のFR配列に、または上の表5に提供される重鎖もしくは軽鎖可変領域配列に改変または置換を含有し得る。FR配列は、CDR領域が可変領域中で2つのFR領域によって隣接されていることが当技術分野において周知であることから、上の表1のCDR配列および上の表5の可変領域配列に基づいて当業者によって容易に同定され得る。親和性バリアントは、親抗体のPD-L1への特異的結合親和性を保持しているか、またはさらに親抗体を超える改善されたPD-L1特異的結合親和性を有する。ある特定の実施形態では、CDR配列、FR配列または可変領域配列中の少なくとも1つ(またはすべて)の置換(複数可)は、保存的置換を含む。
【0337】
[00362]当業者は、上の表1および3aで提供されるCDR配列および上の表5で提供される可変領域配列において、1つまたは複数のアミノ酸残基は生じた抗体または抗原結合性断片が、PD-L1への結合親和性もしくは結合能力を依然として保持するか、またはさらに改善された結合親和性もしくは能力を有して置換され得ることを理解する。当技術分野において公知の種々の方法がこの目的を達成するために使用され得る。例えば、抗体バリアント(FabまたはscFvバリアントなど)のライブラリーは、ファージディスプレイ技術を用いて作製および発現され得、次に、PD-L1への結合親和性についてスクリーニングされ得る。別の例として、コンピューターソフトウェアは、PD-L1への抗体の結合を実質的にシミュレートし、結合境界面を形成する抗体上のアミノ酸残基を同定するために使用され得る。そのような残基は、結合親和性の低下を予防するために置換を回避されるか、またはより強力な結合を提供するために置換の標的にされるかのいずれかであり得る。
【0338】
[00363]ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、1つもしくは複数のCDR配列および/または1つもしくは複数のFR配列に、1つまたは複数のアミノ酸残基置換を含む。ある特定の実施形態では、親和性バリアントは、CDR配列および/またはFR配列に合計で20個、15個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個以下の置換を含む。
【0339】
[00364]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、PD-L1への特異的結合親和性をその親抗体と同様のまたはそれよりも高くさえあるレベルで依然として保持する、上の表1および3aに列挙されたもの(複数可)に少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1個、2個、または3個のCDR配列を含む。
【0340】
[00365]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、PD-L1への特異的結合親和性をその親抗体と同様のまたはそれよりも高くさえあるレベルで依然として保持する、上の表5に列挙されたもの(複数可)に少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つまたは複数の可変領域配列を含む。一部の実施形態では、上の表5に列挙された可変領域配列で合計1から10個のアミノ酸が置換されるか、挿入されるかまたは欠失されている。一部の実施形態では、置換、挿入または欠失はCDRの外の領域で(例えば、FRにおいて)生じる。
【0341】
xii.グリコシル化バリアント
[00366]本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、抗体またはその結合性断片のグリコシル化の程度を増加させるか、または減少させるかのいずれかのために得られ得るグリコシル化バリアントも包含する。
【0342】
[00367]抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、グリコシル化部位を導入するか、または除去する1つまたは複数の改変を含み得る。グリコシル化部位は、炭水化物部分(例えば、オリゴ糖構造)が結合され得る側鎖を有するアミノ酸残基である。抗体のグリコシル化は、典型的にはN結合またはO結合のいずれかである。N結合は、アスパラギン残基、例えば、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニンなどのトリペプチド配列中のアスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指し、ここでXは、プロリンを除く任意のアミノ酸である。O結合グリコシル化は、糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの内の1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指す。天然グリコシル化部位の除去は、例えば、配列中に存在する上に記載されたトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)またはセリンもしくはスレオニン残基(O結合グリコシル化部位について)の1つが置換されるようにアミノ酸配列を変更することによって好都合に達成され得る。新規グリコシル化部位は、そのようなトリペプチド配列またはセリンもしくはスレオニン残基を導入することによって同様の方法において創出され得る。
【0343】
[00368]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体または抗原結合性断片は、1つまたは複数の脱アミド化部位を除去するような1つまたは複数の変異を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体または抗原結合性断片は、重鎖中のG55に変異(例えば、G55A)を含む。これらの変異は、検査され、本明細書において提供される抗体の結合親和性に悪影響を与えないと考えられる。
【0344】
xiii.システインが操作されたバリアント
[00369]本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、1つまたは複数の導入された遊離システインアミノ酸残基を含む、システインが操作されたバリアントも包含する。
【0345】
[00370]遊離システイン残基は、ジスルフィド結合の一部ではないものである。システインが操作されたバリアントは、例えば、特に細胞傷害性および/またはイメージング化合物、標識、または放射性同位元素(radioisoptype)などとの、操作されたシステインの部位での、例えば、マレイミドまたはハロアセチルを通じたコンジュゲーションのために有用である。遊離システイン残基を導入するために抗体またはその抗原結合性断片を操作するための方法は、当技術分野において公知である、例えば、WO2006/034488を参照されたい。
【0346】
xiv.Fcバリアント
[00371]本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、ADCCおよびCDCなどエフェクター機能の変化を提供するように、Fc領域および/またはヒンジ領域に1つまたは複数のアミノ酸残基改変または置換を含むFcバリアントも包含する。抗体を操作することによってADCC活性を変化させる方法は、当技術分野において記載されている、例えば、Shields RL.ら、J Biol Chem.2001.276(9):6591~604;Idusogie EE.ら、J Immunol.2000.164(8):4178~84;Steurer W.ら、J Immunol.1995、155(3):1165~74;Idusogie EE.ら、J Immunol.2001、166(4):2571~5;Lazar GA.ら、PNAS、2006、103(11):4005~4010;Ryan MC.ら、Mol.Cancer Ther.、2007、6:3009~3018;Richards JOら、Mol Cancer Ther.2008、7(8):2517~27;Shields R.L.ら、J.Biol.Chem、2002、277:26733~26740;Shinkawa T.ら、J.Biol.Chem、2003、278:3466~3473を参照されたい。
【0347】
[00372]本明細書において提供される抗体または抗原結合性断片のCDC活性は、例えば、C1q結合および/またはCDCを改善するか、または弱めることによって変更され得る(例えば、WO99/51642;Duncan & Winter Nature 322:738~40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号を参照されたい);およびFc領域バリアントの他の例に関してWO94/29351。Fc領域のアミノ酸残基329、331および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸は、C1q結合を変更させる、および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を低減もしくは消失させるように異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る(Idusogieらによる、米国特許第6,194,551号を参照されたい)。1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)も、補体を固定する抗体の能力を変化させるために導入され得る(BodmerらによるPCT公開WO94/29351を参照されたい)。
【0348】
[00373]ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるFcバリアントは、野生型Fc(例えば、IgG1のFc)と比較して低減したエフェクター機能を有し、Fc領域の220、226、228、229、233、234、235、236、237、238、267、268、269、270、297、309、318、320、322、325、328、329、330、331および332からなる群から選択される位置に1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む(WO2016/196228;Richardsら、(2008)Mol.Cancer Therap.7:2517;Mooreら、(2010)mAbs 2:181;およびStrohl(2009)Current Opinion in Biotechnology 20:685~691を参照されたい)、ここで、Fc領域中の残基の番号付けはKabatにあるとおりのEUインデックスのものである。低減したエフェクター機能についての例示的な置換として、限定することなく、220S、226S、228P、229S、233P、234V、234G、234A、234F、234A、235A、235G、235E、236E、236R、237A、237K、238S、267R、268A、268Q、269R、297A、297Q、297G、309L、318A、322A、325L、328R、330S、331Sまたはこれらの任意の組合せが挙げられる(WO2016/196228;およびStrohl(2009)Current Opinion in Biotechnology 20:685~691を参照されたい)。
【0349】
[00374]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、エフェクター機能が低減しており、234、235、237、238、268、297、309、330および331からなる群から選択される位置でIgG1中に1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1アイソタイプのものであり、N297A、N297Q、N297G、L235E、L234A、L235A、L234F、L235E、P331Sおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。
【0350】
[00375]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1アイソタイプのものであり、L234AおよびL235A変異を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1アイソタイプのものであり、L234F、L235EおよびP331Sを含む。FcドメインのCH2領域に位置する、置換のL234F、L235EおよびP331Sのセット(FES三重変異とも称される)は、FCγRおよびC1q結合を抑止し、ADCCまたはCDCを誘発できない抗体を生じる(Oganesyanら、Acta Crystallogr.D 64:700~704(2008))。PCT/US2013/36872は、バリアントFcドメイン、例えば、抗体のバリアントFcドメインにおいてこれらの変異を組み合わせることが、野生型親分子、例えば、野生型IgG1 Fcと比べて低下した熱安定性を有するFcドメインを生じることを示した。ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、配列番号81のアミノ酸配列を含む。
【0351】
[00376]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG2アイソタイプのものであり、H268Q、V309L、A330S、P331S、V234A、G237A、P238S、H268Aおよびこれらの任意の組合せ(例えば、H268Q/V309L/A330S/P331S、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S)からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG4アイソタイプのものであり、S228P、N297A、N297Q、N297G、L235E、F234A、L235Aおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、IgG2/IgG4クロスアイソタイプのものである。IgG2/IgG4クロスアイソタイプの例は、Rother RPら、Nat Biotechnol 25:1256~1264(2007)に記載されている。
【0352】
[00377]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、新生児期Fc受容体(FcRn)へのpH依存性結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。そのようなバリアントは、それが酸性pHでFcRnに結合し、そのことがリソソームでの分解から逃れ、次いで細胞外に移動および放出されるようすることから、薬物動態学的半減期の延長を有し得る。FcRnとの結合親和性を改善するように抗体またはその抗原結合性断片を操作する方法は、当技術分野において周知である、例えば、Vaughn,D.ら、Structure、6(1):63~73、1998;Kontermann,R.ら、Antibody Engineering、Volume 1、Chapter 27:Engineering of the Fc region for improved PK、Springerにより公開、2010;Yeung,Y.ら、Cancer Research、70:3269~3277(2010);およびHinton,P.ら、J.Immunology、176:346~356(2006)を参照されたい。
【0353】
[00378]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、ヘテロ二量体化を促進するおよび/またはプロモートするためにFc領域の境界面に1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。これらの改変は、第1のFcポリペプチドへの隆起、および第2のFcポリペプチドへの空洞の導入を含み、ここで隆起は、ヘテロ二量体または複合体を形成するための第1のおよび第2のFcポリペプチドの相互作用をプロモートするように空洞中に位置付けられ得る。これらの改変を有する抗体を生成する方法は、例えば米国特許第5,731,168号に記載されているとおり当技術分野において公知である。
【0354】
xv.抗原結合性断片
[00379]本明細書において提供される二機能性分子中のPD-L1結合性部分は、抗PD-L1抗原結合性断片も包含する。さまざまな種類の抗原結合性断片が当技術分野において公知であり、例えば、そのCDRが上の表1および3aに示されており、可変配列が表2および5に示されている例示的な抗体およびそれらのさまざまなバリアント(例えば、親和性バリアント、グリコシル化バリアント、Fcバリアント、システインが操作されたバリアントなど)を含んで、本明細書において提供される抗PD-L1抗体に基づいて開発され得る。
【0355】
[00380]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗原結合性断片は、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、1本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、多特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体および二価ドメイン抗体である。
【0356】
[00381]種々の技術が、そのような抗原結合性断片の産生のために使用され得る。例示的な方法として、無傷抗体の酵素消化(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107~117(1992);およびBrennanら、Science、229:81(1985)を参照されたい)、E.Coliなどの宿主細胞による組換え発現(例えば、Fab、FvおよびScFv抗体断片について)、上に考察されたファージディスプレイライブラリーからのスクリーニング(例えば、ScFvについて)およびF(ab’)断片を形成するような2つのFab’-SH断片の化学的カップリング(Carterら、Bio/Technology 10:163~167(1992))が挙げられる。抗体断片の産生のための他の技術は、当業者に明らかである。
【0357】
[00382]ある特定の実施形態では、抗原結合性断片はscFvである。scFvの生成は、例えば、WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および第5,587,458号に記載されている。ScFvは、融合タンパク質を提供するようにアミノまたはカルボキシル末端のいずれかでエフェクタータンパク質に融合され得る(例えば、Antibody Engineering、Borrebaeck編を参照されたい)。
【0358】
[00383]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は、二価、四価、六価または多価である。二価より多い任意の分子は、例えば、三価、四価、六価などを包含して多価とみなされる。
【0359】
[00384]二価分子は、2つの結合部位が同じ抗原または同じエピトープへの結合に対して両方とも特異的である場合は、単一特異性であり得る。ある特定の実施形態では、これは、一価のカウンターパートよりも抗原またはエピトープに対するより強力な結合を提供する。同様に、多価分子も単一特異性であり得る。ある特定の実施形態では、二価または多価抗原結合性部分において、結合部位の第1の価および結合部位の第2の価は、構造的に同一である(すなわち、同じ配列を有する)または構造的に異なっている(すなわち、同じ特異性を有するが異なる配列を有する)。
【0360】
[00385]二価は、2つの結合部位が異なる抗原またはエピトープに対して特異的である場合に、二特異性でもあり得る。これは、多価分子にも適用される。例えば、三価分子は、2つの結合部位が第1の抗原(またはエピトープ)に単一特異性であり、第3の結合部位が第2の抗原(またはエピトープ)に特異的である場合に、二特異性であり得る。
【0361】
xvi.二特異性抗体
[00386]ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片は二特異性である。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される第2の部分とは別に、PD-L1結合抗体またはその抗原結合性断片は、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片由来の異なる結合特異性を有する追加的な機能的ドメインにさらに連結される。
【0362】
[00387]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二特異性抗体またはその抗原結合性断片は、PD-L1以外(および、第2の部分によって結合される標的以外)の第2の抗原、またはPD-L1上の第2のエピトープ(もしくは、第2の部分によって結合される標的上の第2のエピトープ)に特異的に結合することが可能である。
【0363】
xvii.二機能性分子
[00388]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、第2の部分によって結合されたPD-L1および標的の両方に結合することが可能である。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、PD-L1およびTGFβの両方に結合する、またはPD-L1およびIL-1の両方に結合する、またはPD-L1およびIL-1Rの両方に結合する、またはPD-L1およびMHCIIの両方に結合する、またはPD-L1およびCD47の両方に結合する、またはPD-L1およびSIRPαの両方に結合することが可能である。
【0364】
[00389]ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化する二機能性分子は、ELISAアッセイによる測定で2.0nM以下(例えば、2.0nM以下、1.2nM以下、1.1nM以下、1.0nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下)のEC50でヒトTGFβ1に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化するタンパク質は、ELISAアッセイによる測定でPD-L1およびTGFβに同時に結合することが可能である。ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化する二機能性分子は、Biacoreアッセイによる測定で0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下または0.4nM以下のK値でヒトPD-L1に特異的に結合することが可能である。ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化する二機能性分子は、ELISAアッセイによる測定で2.0nM以下(例えば、2.0nM以下、1.2nM以下、1.1nM以下、1.0nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下)のK値でヒトTGFβ1に特異的に結合することが可能である。
【0365】
[00390]ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化する二機能性分子は、用量依存的様式で腫瘍成長阻害に相乗効果を示すことが可能である。
【0366】
[00391]ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化する二機能性分子は、免疫チェックポイント分子のみを含む分子と比較して、腫瘍微小環境への抗腫瘍免疫細胞の浸潤の増強を示すことが可能である。
【0367】
[00392]ある特定の実施形態では、本開示のPD-L1およびTGFβを標的化する二機能性分子は、血漿中のTGFβ1を少なくとも90%(例えば、少なくとも80%、70%、60%、50%、40%、30%または20%)選択的に低減することが可能であり、そのような低減は、少なくとも10、14または21日間維持され得る。
【0368】
[00393]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、ヘテロ二量体重鎖を含む。重鎖は、第2の部分の存在または位置に関してヘテロ二量体性である。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体重鎖は、第2の部分を有する1つの重鎖と有さない他の重鎖とを含み、ここで第2の部分は、CD47結合性ドメイン(例えば、可溶性SIRPα)またはSIRPα結合性ドメインを含む。
【0369】
[00394]二機能性分子では、ヘテロ二量体重鎖は、第2の部分を有する1つの重鎖と有さない他の重鎖とを含む。ヘテロ二量体重鎖は、ホモ二量体化を防止する、および/またはヘテロ二量体化を支持するように関連するヘテロ二量体Fc領域をさらに含み得る。例えば、ヘテロ二量体Fc領域は、それらが同一ではなく、それらの中でホモ二量体を形成するよりも互いの間で優先的にヘテロ二量体を形成するように選択され得る。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体Fc領域は、ノブイントゥーホールの形成、疎水性相互作用、静電相互作用、親水性相互作用、または可動性の増加を介してヘテロ二量体に会合することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体Fc領域は、ノブイントゥーホールを形成することが可能であるようにそれぞれ変異されているCH2および/またはCH3ドメインを含む。ノブは、第1のCH2/CH3ポリペプチド中の小さなアミノ酸残基の大きなものでの置き換えによって得ることができ、ホールは、大きな残基の小さなものでの置き換えによって得ることができる。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体Fc領域は、S354CおよびT366W置換を含有するIgG1アイソタイプの第1のCH3ドメイン(配列番号96、ノブ)ならびにY349C、T366S、L368AおよびY407V置換を含有するIgG1アイソタイプの第2のCH3ドメイン(配列番号97、ホール)を含む。
【0370】
[00395]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、配列番号118もしくは配列番号120のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号119もしくは配列番号121のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0371】
xviii.コンジュゲート
[00396]一部の実施形態では、二機能性分子は、1つまたは複数のコンジュゲート部分をさらに含む。コンジュゲート部分は、二機能性分子に連結され得る。コンジュゲート部分は、二機能性分子に結合され得る部分である。種々のコンジュゲート部分が、本明細書において提供される二機能性分子に連結され得ることは検討されている(例えば、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J.M.CruseおよびR.E.Lewis,Jr.(編)、Carger Press、New York、(1989)を参照されたい)。これらのコンジュゲート部分は、他にも方法はあるが、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体化、会合、混合または付加によって二機能性分子に連結され得る。一部の実施形態では、二機能性分子は、リンカーを介して1つまたは複数のコンジュゲートに連結され得る。
【0372】
[00397]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、エピトープ結合性部分の外に、1つまたは複数のコンジュゲート部分への結合のために利用され得る特異的部位を含有するように操作され得る。例えば、そのような部位は、コンジュゲート部分への共有結合を促進するための1つまたは複数の反応性アミノ酸残基、例えば、システインまたはヒスチジン残基などを含み得る。
【0373】
[00398]ある特定の実施形態では、二機能性分子は、コンジュゲート部分に間接的にまたは別のコンジュゲート部分を通じて連結され得る。例えば、本明細書において提供される二機能性分子は、ビオチンにコンジュゲートされてよく、次いで、アビジンにコンジュゲートされる第2のコンジュゲートに間接的にコンジュゲートされてよい。一部の実施形態では、コンジュゲート部分は、クリアランス改変剤(例えば、半減期を延長するPEGなどのポリマー)、化学療法剤、毒素、放射性同位元素、ランタニド、検出可能な標識(例えば、発光標識、蛍光標識、酵素基質標識)、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、精製のための部分または他の抗がん薬物を含む。
【0374】
[00399]「毒素」は、細胞に有害である、または細胞を損傷もしくは死滅させることができる任意の薬剤であり得る。毒素の例として、限定することなく、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、MMAE、MMAF、DM1、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびそのアナログ、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン(fluorouracil decarbazine)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、有糸分裂阻害薬(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、トポイソメラーゼ阻害薬ならびにチューブリン結合剤が挙げられる。
【0375】
[00400]検出可能な標識の例として、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリンまたはテキサスレッド)、酵素基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ(luceriferase)、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質酸化酵素またはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位元素(例えば、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Biおよび32P、他のランタニド)、発光標識、発色部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、検出用DNA分子または金を挙げることができる。
【0376】
[00401]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、二機能性分子の半減期の増加を助けるクリアランス改変剤であってもよい。例示的な例として、水溶性ポリマー、例えばPEG、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられる。ポリマーは、任意の分子量のものであってよく、分岐または未分岐であってよい。抗体に結合しているポリマーの数は変動する場合があり、1つより多いポリマーが結合している場合、それらは同じまたは異なる分子であってよい。
【0377】
[00402]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、磁気ビーズなどの精製のための部分であり得る。
【0378】
[00403]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子は、コンジュゲートのためのベースとして使用される。
【0379】
III.ポリヌクレオチドおよび組換え法
[00404]本開示は、本明細書において提供される二機能性分子をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本明細書で使用される場合、用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、1本鎖形態または2本鎖形態のいずれかでのデオシキリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびこれらのポリマーを指す。他に示さない限り、具体的なポリヌクレオチド配列は、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNPおよび相補配列も、明確に示された配列と同様に非明示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605~2608(1985);およびRossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91~98(1994)を参照されたい)。
【0380】
[00405]モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定される。コードDNAは、合成法によっても得られ得る。
【0381】
[00406]二機能性分子をコードする単離されたポリヌクレオチドは、当技術分野において公知の組換え技術を使用して、さらなるクローニング(DNAの増幅)のために、または発現のためにベクターに挿入され得る。多数のベクターが入手可能である。ベクター構成要素として、これだけに限らないが、次の、単一配列、複製開始点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)および転写終結配列の1つまたは複数が一般に挙げられる。
【0382】
[00407]本開示は、本明細書において提供される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、二機能性分子、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)および少なくとも1つの選択マーカーをコードする。ベクターの例として、これだけに限らないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)、ラムダファージおよびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM.、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bosなどが挙げられる。
【0383】
[00408]二機能性分子をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターは、クローニングおよび遺伝子発現のために宿主細胞に導入され得る。本明細書におけるベクター中のDNAをクローニングまたは発現するために好適な宿主細胞は、上に記載される原核生物、酵母または高等真核生物細胞である。この目的のために好適な原核生物として、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、大腸菌属などの腸内細菌科、例えば、E.coli、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えば、Salmonella typhimurium、セラチア属、例えば、Serratia marcescansおよび赤痢菌属ならびに、B.subtilisおよびB.licheniformisなどの杆菌、P.aeruginosaなどのシュードモナス属ならびにストレプトマイセス属が挙げられる。
【0384】
[00409]原核生物に加えて、糸状菌類または酵母などの真核性微生物は、二機能性分子をコードするベクターのための好適なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的なパン酵母は、下等真核性宿主微生物では最も一般的に使用される。しかし、多数の他の属、種および株は、本明細書において一般に入手可能であり、有用である、例えば、Schizosaccharomyces pombe;クリベロミセス属宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotoleransおよびK.marxianusなど;ヤロウイア属(EP402,226);Pichia pastoris(EP183,070);カンジダ属;Trichoderma reesia(EP244,234);Neurospora crassa;シュワンニオミセス属、例えば、Schwanniomyces occidentalis;ならびに糸状菌類、例えば、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、トリポクラジウム属など、およびアスペルギルス属宿主、例えば、A.nidulansおよびA.nigerなど。
【0385】
[00410]本明細書において提供されるグリコシル化された二機能性分子の発現のために好適な宿主細胞は、多細胞生物由来である。無脊椎動物細胞の例として、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株およびバリアントならびに、Spodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(カ)、Aedes albopictus(カ)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ(fruiffly))、およびBombyx moriなどの宿主由来の対応する許容的昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1バリアントおよびBombyx mori NPVのBm-5株は公的に入手可能であり、そのようなウイルスは、本発明による本明細書のウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用され得る。
【0386】
[00411]しかし、関心は脊椎動物細胞において最も大きく、培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は、日常的手順である。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系(293または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.23:243~251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫系(Hep G2)である。一部の実施形態では、宿主細胞は、CHO、BHK、NS0、293およびそれらの派生物などの哺乳動物培養細胞系である。
【0387】
[00412]宿主細胞は、二機能性分子の産生のための上に記載された発現またはクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択する、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜改変された従来の栄養培地で培養される。別の実施形態では、二機能性分子は、当技術分野において公知の相同組換えによって産生され得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、本明細書において提供される二機能性分子を産生することが可能である。
【0388】
[00413]本開示は、本明細書において提供される宿主細胞を本開示のベクターが発現される条件下で培養することを含む、本明細書において提供される二機能性分子を発現する方法も提供する。本明細書において提供される二機能性分子を産生するために使用される宿主細胞は、種々の培地において培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、Minimal Essential Medium(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)およびDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)、Sigma)などの市販で入手可能である培地は、宿主細胞を培養するために好適である。加えて、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;または第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195または米国特許再発行第30,985号に記載されている任意の培地も宿主細胞のための培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれも必要に応じて、ホルモン、および/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンもしくは上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCINTM薬など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは等価のエネルギー源を補充され得る。任意の他の必要な補充物は、当業者に公知と思われる適切な濃度で含まれてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞を用いて以前使用されたものであり、当業者に明らかである。
【0389】
[00414]組換え技術を使用する場合、二機能性分子は、細胞内で、細胞膜周辺腔において、または培地に直接分泌されて産生され得る。二機能性分子が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解された断片のいずれかの粒子性のデブリが、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carterら、Bio/Technology 10:163~167(1992)は、E.coliの細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載している。簡潔には細胞ペーストは、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分間かけて解凍される。細胞デブリは、遠心分離によって除去され得る。二機能性分子が培地に分泌される場合、そのような発現系由来の上清は、市販で入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して、一般に最初に濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために上記のステップのいずれにも含まれてよく、抗生物質は、外来性の夾雑物の増殖を予防するために含まれてよい。
【0390】
[00415]細胞から調製された二機能性分子は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAEセルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析および親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得るが、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。
【0391】
[00416]ある特定の実施形態では、固相に固定されたプロテインAは、抗体およびその抗原結合性断片の免疫親和性精製のために使用される。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、二機能性分子中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトガンマ1、ガンマ2またはガンマ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用され得る(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1~13(1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプについて、およびヒトガンマ3について推奨される(Gussら、EMBO J.5:1567 1575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御された多孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、速い流速およびアガロースを用いて達成され得るよりも短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)は、精製のために有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSETM上でのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿などでの分画も回収される抗体に応じて利用可能である。
【0392】
[00417]任意の予備精製ステップ(複数可)に続いて、目的の抗体および夾雑物を含む混合物は、約2.5~4.5の間のpHの溶出緩衝液を使用して、好ましくは低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で実施される低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され得る。
【0393】
IV.医薬組成物
[00418]本開示は、二機能性分子および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0394】
[00419]本明細書において開示される医薬組成物における使用のための薬学的に許容される担体として、例えば、薬学的に許容される液体、ゲルまたは固形担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、麻酔薬、懸濁化/ディスペンディング(dispending)剤、捕捉もしくはキレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性補助物質、当技術分野において公知の他の構成要素、またはこれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0395】
[00420]好適な構成要素として、例えば、抗酸化剤、注入剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、潤滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、または糖類およびシクロデキストリンなどの安定化剤を挙げることができる。好適な抗酸化剤として、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよび/または没食子酸プロピルを挙げることができる。本明細書に開示されるとおり、本明細書において提供される二機能性分子およびコンジュゲートを含む組成物中でのメチオニンなどの1つまたは複数の抗酸化剤の含有は、二機能性分子の酸化を減少させる。酸化のこの低減は、結合親和性の減少を防止または低減し、それにより抗体安定性を改善し、有効期間を最大化する。したがってある特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書において開示される1つまたは複数の二機能性分子およびメチオニンなどの1つまたは複数の抗酸化剤を含んで提供される。さらに提供されるのは、二機能性分子をメチオニンなどの1つまたは複数の抗酸化剤と混合することによって、本明細書において提供される二機能性分子の酸化を防止する、有効期間を延長するおよび/または有効性を改善するための方法である。
【0396】
[00421]さらに例示するために、薬学的に許容される担体として、例えば、水性ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、等張デキストロース注射剤、無菌水注射剤、またはデキストロースおよび乳糖リンゲル注射剤、非水性ビヒクル、例えば、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油またはピーナッツ油、静菌性または静真菌性濃度の抗菌薬、等張剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース、緩衝剤、例えばリン酸またはクエン酸緩衝剤、抗酸化剤、例えば重硫酸ナトリウム、局所麻酔薬、例えば、プロカイン塩酸塩、懸濁化剤および分散剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはポリビニルピロリドン、乳化剤、例えば、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)-80)、捕捉もしくはキレート剤、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)もしくはEGTA(エチレングリコール四酢酸)、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を挙げることができる。担体として利用される抗菌薬は、フェノールまたはクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムならびにベンゼトニウム塩化物が挙げられて、複数用量容器中の医薬組成物に添加され得る。好適な賦形剤として、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールを挙げることができる。好適な非毒性補助物質として、例えば、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解性促進剤、または酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートもしくはシクロデキストリンなどの薬剤を挙げることができる。
【0397】
[00422]医薬組成物は、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤、丸剤、カプセル剤、錠剤、徐放製剤または粉末剤でありうる。経口製剤として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrollidone)、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体を挙げることができる。
【0398】
[00423]ある特定の実施形態では、医薬組成物は、注射可能組成物に製剤化され得る。注射可能医薬組成物は、任意の従来の形態、例えば、液体溶液剤、懸濁剤、乳剤または液体溶液剤、懸濁剤、乳剤を生成するために好適な固形形態に調製され得る。注射のための調製物として、注射のために準備された無菌および/または非発熱性溶液、無菌乾燥可溶性生成物、例えば、皮下組織用錠剤を含む使用直前に溶媒と合わせられるように準備された凍結乾燥粉末剤、注射のために準備された無菌懸濁剤、使用直前にビヒクルと合わせられるように準備された無菌乾燥不溶性生成物、ならびに無菌および/または非発熱性乳剤を挙げることができる。溶液は、水性または非水性のいずれであってもよい。
【0399】
[00424]ある特定の実施形態では、単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアルまたは針付きシリンジに包装される。非経口投与のためのすべての調製物は、当技術分野において公知であり、実行されるとおり無菌および非発熱性である必要がある。
【0400】
[00425]ある特定の実施形態では、無菌凍結乾燥粉末剤は、本明細書において開示される二機能性分子を好適な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、粉末から調製された粉末剤または再構成溶液の安定性または他の薬理学的構成要素を改善する賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤として、これだけに限らないが、水、デキストロース、ソルビトール(sorbital)、果糖、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、ショ糖または他の好適な薬剤が挙げられる。溶媒は、緩衝剤、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムまたは当業者に公知であり、一実施形態ではほぼ中性のpHであるそのような他の緩衝剤を含んでよい。溶液の続く無菌濾過後の、当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥は、所望の製剤を提供する。一実施形態では、生じた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、二機能性分子またはその組成物の単一投薬量または複数の投薬量を含有し得る。1用量または用量セットのために必要なものを少量(例えば、約10%)超えて含む過剰充填バイアルは、正確な試料退薬および正確な投薬を容易にするために許容される。凍結乾燥粉末剤は、約4℃から室温などの適切な条件下で保存され得る。
【0401】
[00426]注射用水を用いた凍結乾燥粉末剤の再構成は、非経口投与における使用のための製剤を提供する。一実施形態では、再構成のために、無菌および/または非発熱性水または他の液体の好適な担体が凍結乾燥粉末剤に添加される。正確な量は、与えられる選択された治療に応じて、経験的に決定され得る。
【0402】
V.キット
[00427]ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される二機能性分子および/または本明細書において提供される医薬組成物を含むキットを提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される二機能性分子および第2の治療剤を含むキットを提供する。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤、抗がん薬物、放射線療法、免疫療法剤、血管新生抑制剤、標的療法、細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、抗ウイルス剤、抗菌薬、鎮痛薬、抗酸化剤、金属キレーターおよびサイトカインからなる群から選択される。
【0403】
[00428]そのようなキットは、当業者に容易に明らかであるとおり、所望により、1つまたは複数の種々の従来の医薬品キット構成要素、例えば、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む容器、追加的容器などをさらに含む場合がある。投与される構成要素の量、投与の指針および/または構成要素を混合するための指針を示す使用説明書も、挿入物またはラベルとしてのいずれかでキットに含まれてよい。
【0404】
VI.使用方法
[00429]別の態様では、本開示は、対象におけるPD-L1関連疾患を処置する、防止する、または軽減する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される二機能性分子、または本明細書において提供される医薬組成物もしくはキットを投与することを含む、方法を提供する。
【0405】
[00430]ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0406】
[00431]PD-1関連状態および障害は、免疫関連疾患もしくは障害、がん、自己免疫疾患、または感染症であってもよい。
【0407】
[00432]ある特定の実施形態では、PD-1関連状態および障害としては、がん、例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉症、メルケル細胞がん、ならびに他の血液悪性腫瘍、例えば、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性および陰性PTLD、ならびにEBV関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、上咽頭癌、およびHHV8関連原発性滲出液リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマが挙げられる。ある特定の実施形態では、腫瘍およびがんは、転移性、特に、PD-L1を発現する転移性腫瘍である。
【0408】
[00433]ある特定の実施形態では、PD-1関連状態および障害としては、自己免疫疾患が挙げられる。自己免疫疾患としては、限定されるものではないが、後天性免疫不全症候群(AIDS、自己免疫成分を含むウイルス疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアック病-疱疹状皮膚炎(dermatitis hepetiformis);慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡(cicatricial pemphigold)、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血(pemacious anemia)、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症(全身性進行性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0409】
[00434]ある特定の実施形態では、PD-1関連状態および障害としては、感染症が挙げられる。感染症としては、例えば、慢性ウイルス感染、例えば、真菌感染、寄生虫/原虫感染または慢性ウイルス感染、例えば、マラリア、コクシジオイデス症(coccidioiodmycosis immitis)、ヒストプラスマ症、爪甲真菌症、アスペルギルス症(aspergilosis)、ブラストミセス症、カンジダ症(candidiasis albicans)、パラコクシジオイデス症(paracoccidioiomycosis)、微胞子虫症、アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫症、シャーガス病、肝吸虫症、ラセンウジバエ症(Cochliomyia)、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、象皮病、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ランブル鞭毛虫症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、メタゴニムス症、ハエウジ症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、ふん線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫病、鞭虫症、トリパノソーマ症、蠕虫感染、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、HIV-1、HIV-2、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、単純ヘルペスウイルスII型、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、カポジ西肉腫関連ヘルペスウイルス伝染病、シンリングウイルス(トルクテノウイルス)、ヒトTリンパ向性ウイルスI、ヒトTリンパ向性ウイルスII、水痘帯状疱疹ウイルス、JCウイルスまたはBKウイルスの感染が挙げられる。
【0410】
[00435]ある特定の実施形態では、PD-L1関連疾患は、PD-L1を発現するがん、またはPD-L1を過剰発現するがんである。「PD-L1を発現するがん」は、細胞表面上にPD-L1タンパク質が存在するがん細胞または腫瘍細胞を含むものである。「PD-L1を過剰発現するがん」は、同じ組織型の非がん性細胞と比較して、がんまたは腫瘍細胞の細胞表面に、有意に高いレベルのPD-L1を有するものである。
【0411】
[00436]PD-L1の発現または過剰発現を、細胞の表面上に存在するPD-L1のレベルの上昇を評価することによる(例えば、免疫組織化学アッセイ;IHCによる)、診断または予後診断アッセイにおいて決定することができる。あるいは、またはさらに、当業者であれば、例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月に公開されたWO98/45479を参照されたい)、サザンブロッティング、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、例えば、リアルタイム定量的PCR(RT-PCR)などによって、細胞中のPD-L1をコードする核酸のレベルを測定することができる。また、当業者であれば、血清などの生体液中の脱落抗原(例えば、PD-L1細胞外ドメインまたは可溶性PD-L1)を測定することによって、PD-L1の過剰発現を試験することもできる。上記アッセイの他に、種々のin vivoアッセイが当業者には利用可能である。例えば、当業者であれば、患者の体内の細胞を、任意選択で検出可能標識、例えば、放射性同位体で標識された抗PD-L1抗体に曝露し、患者内の細胞への抗体の結合を、例えば、放射活性に関する外部走査によって、または抗体に予め曝露した患者から採取した生検を分析することによって評価することができる。
【0412】
[00437]一部の実施形態では、対象は、PD-1アンタゴニストに応答する可能性が高いと同定されている。目的の生体試料上のPD-L1の存在またはレベルは、生体試料が誘導される対象がPD-1アンタゴニストに応答する可能性があるかどうかを示し得る。一部の実施形態では、試験試料は、がん細胞もしくは組織、または腫瘍浸潤性免疫細胞に由来する。ある特定の実施形態では、試験生体試料中のPD-L1の存在または上方調節されたレベルは、応答性の尤度を示す。本明細書で使用される場合、用語「上方調節された」とは、同じ抗体を使用して検出された参照試料中のPD-L1タンパク質レベルと比較して、試験試料中のPD-L1のタンパク質レベルにおける、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上の、またはそれより高い全体的な増加を指す。参照試料は、健康な、もしくは非疾患の個体から得られた対照試料、または試験試料が得られるのと同じ個体から得られた健康な、もしくは非疾患の試料であってもよい。例えば、参照試料は、試験試料(例えば、腫瘍)に隣接する、またはその近隣にある非疾患の試料であってもよい。
【0413】
[00438]ある特定の実施形態では、PD-L1関連疾患は、PD-L1/PD-1単剤療法に耐性である。本明細書で使用される場合、「PD-L1/PD-1単剤療法」とは、PD-L1およびPD-1相互作用またはシグナル伝達を阻害するか、または低減させることによって作用する単剤療法を指す。例示的なPD-L1/PD-1単剤療法は、抗PD-L1抗体療法、抗PD-1抗体療法、またはPD-1もしくはPD-L1に対する低分子阻害剤を含む単剤療法を含んでもよい。「耐性」とは、疾患がPD-L1/PD-1単剤療法に対する応答性または感受性がないか、または低減していることを意味する。低減した応答性は、例えば、所与の有効性を達成するための用量の増加の要求によって示され得る。ある特定の実施形態では、疾患は、PD-L1/PD-1単剤療法に対して非応答性であり得る。例えば、がん細胞または腫瘍サイズは、PD-L1/PD-1単剤療法を用いた処置にも拘わらず増加するか、または疾患は、その以前の状態に戻る退縮、例えば、部分的回復後の以前の症状の復帰を示した。PD-L1/PD-1単剤療法に対する耐性は、de novoであるか、または後天性であってもよい。
【0414】
[00439]別の態様では、本開示は、免疫抑制性サイトカインの抑制、持続的免疫応答の誘導、または抗腫瘍免疫の刺激から利益を受ける疾患または状態を対象において処置する、防止する、または軽減する方法であって、有効量の本明細書において提供される二機能性分子、または本明細書において提供される医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0415】
[00440]一部の実施形態では、免疫抑制性サイトカインは、TGFβまたはIL-1である。一部の実施形態では、免疫抑制性サイトカインは、TGFβ1またはIL-1βである。
【0416】
[00441]一部の実施形態では、疾患または状態は、TGFβ関連疾患または状態である。一部の実施形態では、TGFβ関連疾患は、がん、線維性疾患、または腎臓病である。
【0417】
[00442]ある特定の実施形態では、TGFβ関連疾患は、がんである。ある特定の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、膵がん、胃がん、前立腺がん、腎がん、子宮頸がん、骨髄腫、リンパ腫、白血病、甲状腺がん、子宮内膜がん、子宮がん、膀胱がん、神経内分泌がん、頭頸部がん、肝臓がん、上咽頭がん、精巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞がん、皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、神経膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群からなる群から選択される。
【0418】
[00443]ある特定の実施形態では、TGFβ関連疾患は、線維性疾患である。線維性疾患は、線維症を含む疾患または状態である。線維症は、例えば、肺、肝臓、腎臓、皮膚、心臓、腸または筋肉における、慢性臓器傷害の一般的な特徴である瘢痕化プロセスである。線維症は、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)の活性の上昇を特徴とし、細胞外マトリックスおよび他の線維症関連タンパク質の沈着の増加または変化をもたらす。
【0419】
[00444]線維性疾患は、肺、肝臓、腎臓、眼、皮膚、心臓、腸または筋肉における線維性疾患を含んでもよい。肺における線維性疾患の例としては、肺線維症、嚢胞性線維症、肺高血圧、進行性塊状線維症、閉塞性細気管支炎、慢性喘息と関連する気道再モデリングまたは特発性肺線維症(idiopathic pulmonary)が挙げられる。肝臓における線維性疾患の例としては、肝硬変または非アルコール性脂肪性肝炎が挙げられる。腎臓における線維性疾患の例としては、腎線維症、虚血性腎傷害、尿細管間質性線維症、糖尿病性ネフロパシー、腎硬化症、または腎臓毒性などが挙げられる。眼における線維性疾患の例としては、角膜線維症、網膜下線維症などが挙げられる。皮膚における線維性疾患の例としては、腎性全身性線維症、ケロイドまたは強皮症などが挙げられる。心臓における線維性疾患の例としては、心内膜心筋線維症または陳旧性心筋梗塞が挙げられる。
【0420】
[00445]一部の実施形態では、疾患または状態は、IL-1関連疾患または状態である。一部の実施形態では、IL-1関連疾患は、自己炎症疾患、代謝症候群、急性炎症、慢性炎症または悪性腫瘍である。
【0421】
[00446]一部の実施形態では、疾患または状態は、免疫賦活性ポリペプチド、例えば、可溶性LAG-3を用いてMHCIIシグナル伝達を刺激することによる持続的免疫応答の誘導から利益を受ける。一部の実施形態では、疾患または状態は、がん、ウイルス感染、寄生虫感染、またはその組合せである。
【0422】
[00447]一部の実施形態では、疾患または状態は、免疫阻害性受容体シグナル伝達を阻害することによる抗腫瘍免疫の刺激から利益を受ける。一部の実施形態では、免疫阻害性受容体は、SIRPαである。ある特定の実施形態では、疾患、障害または状態は、がん、固形腫瘍、慢性感染、炎症疾患、多発性硬化症、自己免疫疾患、神経疾患、脳傷害、神経傷害、多血症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片機能障害、または関節炎などの、SIRPα関連である。一部の実施形態では、がんは、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝臓および胆管がん、膵がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、精巣がん、腎臓がん、腎盂および尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頸部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、肛門がん、食道がん、胃腸がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽頭がん、神経膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、TまたはB細胞リンパ腫、GI臓器間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞癌、および腺癌である。一部の実施形態では、がんは、CD47を発現するがん、またはCD47を過剰発現するがんである。
【0423】
[00448]本明細書において提供される二機能性分子の治療有効量は、例えば、対象の体重、年齢、過去の病歴、現在の薬剤、健康状態および交差反応の可能性、アレルギー、感度および有害な副作用、ならびに投与経路および疾患発生の程度などの、当技術分野で公知の種々の因子に依存するであろう。これらの、および他の環境または要件によって示されるように、当業者(例えば、医師または獣医師)であれば、投薬量を比例的に減少または増加させることができる。
【0424】
[00449]ある特定の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子を、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療有効投薬量で投与することができる。ある特定の実施形態では、投与量は、処置の経過にわたって変化してもよい。例えば、ある特定の実施形態では、初期投与量は、その後の投与量よりも高くてもよい。ある特定の実施形態では、投与量は、対象の反応に応じて処置の経過にわたって変化してもよい。
【0425】
[00450]投薬量レジメンを、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するために調整することができる。例えば、単回用量を投与するか、またはいくつかの分割された用量を経時的に投与することができる。
【0426】
[00451]本明細書において提供される二機能性分子を、例えば、非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内輸注を含む静脈内、筋肉内、もしくは皮内注射)または非-非経口(例えば、経口、鼻内、眼内、舌下、直腸、もしくは局所)経路などの、当技術分野で公知の任意の経路によって投与することができる。
【0427】
[00452]一部の実施形態では、本明細書において提供される二機能性分子を、単独で、または治療有効量の第2の治療剤と組み合わせて投与することができる。例えば、本明細書において開示される二機能性分子を、第2の治療剤、例えば、化学療法剤、抗がん薬物、放射線療法、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法、細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、酸化防止剤、金属キレート剤、またはサイトカインと組み合わせて投与することができる。
【0428】
[00453]本明細書で使用される場合、用語「免疫療法」とは、がんなどの疾患に対して戦うために免疫系を刺激するか、または一般的な方法で免疫系を促進する療法の型を指す。免疫療法の例としては、限定されるものではないが、チェックポイントモジュレーター、養子細胞移入、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルスおよび治療ワクチンが挙げられる。
【0429】
[00454]「標的療法」は、正常細胞ではなく、がん細胞中に存在する、もしくはがん細胞中により豊富に存在する特定のタンパク質などの、がんと関連する特定の分子、またはがんの成長および生存に寄与するがん微小環境中の標的分子に対して作用する療法の型である。標的療法は、治療剤を腫瘍に標的化することによって、正常組織に治療剤の効果が及ばないようにする。
【0430】
[00455]ある特定のこれらの実施形態では、1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて投与される本明細書において提供される二機能性分子を、1つまたは複数のさらなる治療剤と同時に投与することができ、ある特定のこれらの実施形態では、二機能性分子およびさらなる治療剤を、同じ医薬組成物の一部として投与することができる。しかしながら、別の治療剤と「組み合わせて」投与される二機能性分子は、その薬剤と同時に、またはその薬剤と同じ組成物中で投与する必要はない。別の薬剤の前に、またはその後に投与される二機能性分子は、抗体または抗原結合性断片と第2の薬剤とが異なる経路によって投与される場合であっても、その語句が本明細書で使用される場合、その薬剤と「組み合わせて」投与されると考えられる。可能な場合、本明細書において開示される抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて投与されるさらなる治療剤は、さらなる治療剤の製品情報シートに列挙されたスケジュールに従って、またはPhysicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference、第57版、Medical Economics Company;ISBN:1563634457;第57版(2002年11月))もしくは当技術分野で周知のプロトコールに従って投与される。
【0431】
[00456]別の態様では、本開示はまた、対象におけるPD-L1関連疾患および/またはTGF-β関連疾患および/またはIL-1関連疾患および/またはCD47関連疾患を処置するために医薬の製造における、本明細書において提供される二機能性分子および/または本明細書において提供される医薬組成物の使用も提供する。
【0432】
[00457]以下の実施例は、特許請求される発明をより良好に例示するために提供され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。以下に記載される全ての特定の組成物、材料、および方法は、全体として、または部分的に、本発明の範囲内にある。これらの特定の組成物、材料、および方法は、本発明を限定することを意図するものではなく、単に本発明の範囲内にある特定の実施形態を例示することを意図するものである。当業者であれば、発明能力を行使することなく、また、本発明の範囲から逸脱することなく、等価な組成物、材料、および方法を開発することができる。本発明の範囲内に依然としてありながら、記載される本明細書の手順に多くの変更を加えることができることが理解されるであろう。そのような変更が本発明の範囲内に含まれることは、本発明者らの意図するところである。
【実施例
【0433】
実施例1
ヒト化4B6抗体の生成、発現および精製
[00458]以下に示される配列番号46のVH配列および配列番号47のVL配列を含む、特許WO2017161976A1に由来する抗PD-L1 mAb 4B6は、強力なPD-1/PD-L1遮断剤であった。この抗体は、マウスハイブリドーマ抗体から生成され、したがって、それは適切なヒト化を必要とした。マウス抗体4B6の可変ドメインの配列を使用して、その対応するマウスフレームワークと最も高い相同性を有する生殖系列配列を同定した。相補性決定領域(CDR)移植および復帰変異を有するヒト化バリアントを設計するために、コンピューターモデリングを使用した。
【0434】
[00459]マウス/キメラ重鎖可変領域(配列番号46):
EVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYVFTDYYMNWVKQSHGKSLEWIGDINPNNGGTSYNHKFKGKATVTVDKSSRTAYMELLSLTSEDSAVYYCVKWGDGPFAYWGQGTLVTVSA
[00460]マウス/キメラ軽鎖可変領域(配列番号47):
DIVMTQSQKFMSTSVGDRVSITCKASQNVGAAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASNRYTGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNMQSEDLADYFCQQYSNYPTFGSGTKLGIK
[00461]注記:斜体部分はフレームワーク(FR)を表し、下線付き部分はCDR配列を表す。順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4である。
【0435】
[00462]軽鎖についてはVK/1-33および重鎖についてはVH/1-2のヒト生殖系列フレームワーク配列を、それぞれ、CDR移植のために使用した。
【0436】
[00463]重鎖バリアント1、2、3および4(すなわち、VHバリアント1、2、3および4)を、3個のCDRをVH生殖系列配列(配列番号48)に直接移植することによって、さらに、それぞれ、VHバリアント1(配列番号49)についてはM69V、R71Vの、VHバリアント2(配列番号50)についてはM69V、R71V、A93V、R94の、VHバリアント3(配列番号51)についてはM69V、R71V、T73K、T28Vの、およびVHバリアント4(配列番号52)についてはM69V、R71V、A93V、R94K、T73K、T28V、G44Sの復帰変異によって得た。
【0437】
[00464]4B6 VHの生殖系列配列:
[00465]VH/1-2(4B6-VH生殖系列、配列番号48):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR
[00466]VH/1-2バリアント1(4B6_Ha、配列番号49):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYYMNWVRQAPGQGLEWMGDINPNNGGTSYNHKFKGRVTVTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
[00467]VH/1-2バリアント2(4B6_Hb、配列番号50):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYYMNWVRQAPGQGLEWMGDINPNNGGTSYNHKFKGRVTVTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCVKWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
[00468]VH/1-2バリアント3(Hu4B6_Hc、配列番号51):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYVFTDYYMNWVRQAPGQGLEWMGDINPNNGGTSYNHKFKGRVTVTVDKSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
[00469]VH/1-2バリアント4(Hu4B6_Hd、配列番号52):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYVFTDYYMNWVRQAPGQSLEWMGDINPNNGGTSYNHKFKGRVTVTVDKSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCVKWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
[00470]軽鎖バリアント1および2(VLバリアント1および2)を、3個のCDRを生殖系列配列(配列番号53)に直接移植することによって、さらに、それぞれ、VLバリアント1(配列番号54)についてはF73L変異の、およびVLバリアント2(配列番号55)についてはF73L、A43S、S60D変異の復帰変異によって得た。
【0438】
[00471]4B6 VLの生殖系列配列:
[00472]VK/1-33(4B6-VL-生殖系列、配列番号53):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQYDNLP
[00473]VK/1-33バリアント1(Hu4B6_La、配列番号54):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGAAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASNRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDIATYYCQQYSNYPTFGQGTKLEIK
[00474]VK/1-33バリアント2(Hu4B6_Lb、配列番号55):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGAAVAWYQQKPGKSPKLLIYSASNRYTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDIATYYCQQYSNYPTFGQGTKLEIK
[00475]上の重鎖および軽鎖の可変領域のcDNAを合成した後、ヒトIgG1およびヒトカッパの定常領域の配列を融合した。得られた抗体遺伝子配列を、発現ベクター中にクローニングした。表6に示されるように、ヒト化4B6バリアント発現のためにQiagenからのPlasmid Maxiprep Systemを使用することによって大規模DNAを調製し、製造業者のプロトコールに従ってInvitrogenからのExpiFectamine(商標)CHO Reagentを使用して細胞トランスフェクションを実行した。細胞生存能力が60%を超えた場合、上清を採取し、0.22μmの濾過カプセルを通して濾過して、細胞デブリを除去した。次いで、濾過された上清を、予め平衡化させたプロテインA親和性カラム上にロードした。プロテインA樹脂を、平衡化緩衝液(PBS)で洗浄した後、25mMクエン酸(pH3.5)を使用して抗体を溶出させた。精製された抗体溶液を、1M Tris塩基(pH9.0)を使用することによってpH6.0~7.0に調整した。内毒素を1EU/mgより下に制御した。最後に、精製された抗体を、SDS-PAGEによって特徴付けた。
【0439】
[00476]
【0440】
【表8】
【0441】
[00477]注記:この表は、異なる変異の種々の配列組合せを示す。例えば、Hu4B6_HaLaは、2種類の変異(重鎖Hu4B6_Haおよび軽鎖Hu4B6_La)がヒト化マウス抗体Hu4B6_HaLa上に存在することなどを示す。Hu4B6_L0およびHu4B6_H0は、CDR移植によって得られ、これらは重要な復帰変異を欠き、したがって、それらは発現のために使用されない。
【0442】
実施例2
ELISAアッセイによるヒトPD-L1への結合
[00478]ヒト化抗体の結合を、ELISA法によって評価した。簡単に述べると、ヒトPD-L1-Hisを、プレート上に固定した。表6に記載のヒト化4B6抗体を、PBS中で連続希釈し、1hのインキュベーションのために添加した。次に、ヒトIgG-HRPに対するヤギpAbおよびTMBを、OD450nmでの結合の検出のために添加した。
【0443】
[00479]図1に示されるように、全てのヒト化バリアントを、最良のものをスクリーニングするために試験した。全てのバリアントがその結合活性を保持しHu4B6_HdLaは他のものよりも良好な結合活性を示した。
【0444】
[00480]本発明者らは、この抗体のCDR配列を分析し、重鎖のCDR2中にNGモチーフが存在することを見出した。発現および精製においては、脱アミノ化(deamination)のリスクがあり得る。脱アミド化ホットスポットを除去するために、本発明者らは、Hu4B6_Hd中にG55A(以下で太字で拡大される)の変異を導入した。次いで、Hu4B6_Hg(配列番号56)を得て、図2に示されるように、ヒトPD-L1に対する親和性は影響されなかった。
【0445】
[00481]Hu4B6_Hg(配列番号56):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYVFTDYYMNWVRQAPGQSLEWMGDINPNNAGTSYNHKFKGRVTVTVDKSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCVKWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
実施例3
モノクローナルファージELISAおよび配列分析
[00482]Hu4B6-HgLaは、アンタゴニスト薬物としてのキメラ4B6に由来する活性を保持したが、より高い親和性が好ましかった。Hu4B6-HgLa配列に基づいて、CDR中の部位特異的変異誘発およびin vitroでの解離速度依存的選択のための数サイクルのパンニングを親和性成熟のためにさらに使用した。まず第1に、4B6-HgLaのVLおよびVHドメインを増幅し、ペプチドリンカー(GS)3によって結合させて、重複PCRによりscFvを形成させた後、SfiI切断部位を介して親和性成熟のための野生型配列としてのファージミドベクターpComb3x(Wuhan MiaoLingBio、P0862)中にサブクローニングした。
【0446】
[00483]重鎖と軽鎖との両方の抗体CDR3は通常、抗原結合において重要な役割を果たすため、両鎖のCDR1およびCDR2の4B6親和性成熟への個々の寄与を調査するために、上記のそれぞれのCDRについて1つのSPM(小摂動変異誘発)ファージライブラリーを構築する。両鎖のCDR1およびCDR2配列を生殖系列配列と整列させ、重鎖および軽鎖の可変領域の生殖系列は、それぞれ、IGHV1-2およびIGKV1-33であった。生殖系列CDR配列のバイオインフォマティクス分析結果を使用して、ライブラリーの設計を指導する。
【0447】
[00484]アミノ酸変異部位および置換配列を決定した後、変異ライブラリーの多様性を増大させるために縮重プライマーを設計した。多様化されたCDR断片を増幅して、4B6 scFv遺伝子変異体ライブラリーを構築した。scFv遺伝子を、pComb3XSSファージディスプレイベクターとライゲーションして、scFvライブラリーを生成した。それぞれのCDR(表2に列挙された、HCDR1、HCDR2、LCDR1およびLCDR2を含む)のコドンに基づくプライマーを、独立したライブラリーとして確立し、4B6親和性成熟ライブラリーを4つのライブラリーに分割した。その能力は、HCDR1については1.76x10CFM、HCDR2については1.81x10CFM、LCDR1については2.34x10CFMおよびLCDR2については2.00x10CFMであった。それぞれのライブラリーの5または6個のクローンを、コロニーの配列決定のために無作為に拾った。その結果、構築されたライブラリーの挿入率は100%であることが示された。
【0448】
[00485]10μg/mlのhPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)抗原を、ELISAプレートにコーティングし、37℃で1h、200μLのファージ(1x1010pfu/mlのファージディスプレイライブラリー)と反応させた。洗浄後、約0.5のOD600を有するTG1(Lucigen、60502-2)を、感染のために直接ウェルに添加し、ファージと共に15minインキュベートした。ライブラリーファージミドレスキューのための対数中期培養物に対する十分な体積のM13KO7ヘルパーファージ(NEB、N0315S)、およびファージを生成し、次のラウンドのスクリーニングのために精製した。スクリーニングプロセスを3ラウンドにわたって繰り返し、抗原の濃度を、2回目のラウンドについては2.5μg/mlに、3回目のラウンドについては1μg/mlに減少させた。
【0449】
[00486]これらのポリクローナルファージバリアントの力価を検出するために、ELISA結合アッセイを実行した。3ラウンドのパンニングの後、4B6-H-CDR2、4B6-L-CDR1および4B6-L-CDR2を含む3つのライブラリーが明らかに富化されている。
【0450】
[00487]これらの3つのライブラリーについて、各ライブラリーの96個のクローンを拾い、ファージELISAにかけて、その結合活性を検出した。簡単に述べると、1μg/mlのhPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)抗原をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。次いで、300μLの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、モノクローナル抗体断片ファージを含有する100μlの上清を、陰性対照としてPBSと共に添加し、37℃で1hインキュベートした。3回洗浄するために0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を使用し、100μlのHRP結合抗M13 mAb(1:20000、Sino Biological、11973-MM05T-H)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB(InnoReagents、TMB-S-003)基質試薬を添加し、プレートを室温で5minインキュベートした。反応を停止させるために0.1MのHSOを添加した後、OD450nmを記録した。Genewiz(Suzhou、China)によるDNA配列決定のために陽性クローンを拾った。配列を表7に示した。
【0451】
[00488]
【0452】
【表9】
【0453】
実施例4
結合親和性の検出のためのバイオレイヤー干渉法(BLI)
[00489]ヒトPD-L1-Fc(Sino Biological、70110-D02H)抗原に対する4B6 scFvバリアントの結合親和性を試験するために、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用した。材料および手順を、それぞれ、表8および表9に示した。その結果を、表10~12に示した。結合親和性の結果に従って、4つの軽鎖バリアント(L-CDR1-2、L-CDR1-3、L-CDR2-2、L-CDR2-3)および3つの重鎖バリアント(H-CDR2-2、H-CDR2-3、H-CDR2-5)を、将来の構築のために選択した。
【0454】
[00490]
【0455】
【表10】
【0456】
[00491]
【0457】
【表11】
【0458】
[00492]
【0459】
【表12】
【0460】
[00493]
【0461】
【表13】
【0462】
[00494]
【0463】
【表14】
【0464】
実施例5
AM-4B6-hIgG1-TGFβRII(1-136)融合タンパク質の構築および発現
[00495]選択された重鎖および軽鎖バリアントを交差混合し、hIgG1-TGFβRII(1-136)融合タンパク質と共に発現させた。TGFβRII(1-136)は、配列番号79に記載されるアミノ酸配列を有する:
TIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD
hIgG1のアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号80):
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
TGFβRII(1-136)を、ペプチドリンカー(G4S)G(配列番号68)を介してhIgG1のカルボキシル末端に連結した。
【0465】
hKappaのアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号82):
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
[00496]無傷抗体バリアントの前にAM(親和性成熟した)を付した。重鎖および軽鎖の配列構築物を表13に示し、無傷抗体の設計を表14に示した。例えば、表13および表14に示されるように、二機能性分子「AM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアント1」は、重鎖および軽鎖を有し、重鎖は、N末端からC末端に向かって、Hu4B6_Hg.2-_hIgG1-(G4S)4G-TGFβRII(1-136)を含み、軽鎖は、N末端からC末端に向かって、Hu4B6_La.1-hKappaを含む。同じ命名法が表14中の他のバリアントにも適用される。
【0466】
[00497]重鎖および軽鎖の同時トランスフェクションを、製造業者のプロトコールに従ってInvitrogenからのExpiFectamine(商標)CHO Reagent(Thermo、A29129)を使用して実行した。上清を10日目に採取し、親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0467】
[00498]
【0468】
【表15】
【0469】
[00499]
【0470】
【表16】
【0471】
実施例6
hPD-L1に対するAM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアントの結合親和性
[00500]ELISAアッセイによるhPD-L1への結合
[00501]1μg/mlのhPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)抗原をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。次いで、300μlの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.006nM(4倍連続希釈)の範囲の濃度のAM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアントまたは元の4B6-hIgG1-TGFβRIIの100μlを、陰性対照としてPBSと共に添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0472】
[00502]図3A図3Cに示されるように、元の4B6-hIgG1-TGFβRIIと比較した場合、全てのバリアントが、増強された結合シグナルおよび親和性を有していた。これらのバリアント間の限られた差異を考慮して、その結合親和性のさらなる評価のために表面プラズモン共鳴技術を使用した。
【0473】
[00503]BiacoreによるhPD-L1への結合
[00504]4μg/mlのAM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアントまたは元の4B6-hIgG1-TGFβRIIを、SシリーズのプロテインAチップの表面上に固定した。ヒトPD-L1を適切な濃度勾配(0nM、1.875nM、3.75nM、7.5nM、15nM、30nM、60nM)に希釈し、Biacore 2000の試料チャネルに注入した。その結果を、表15に示す。ヒトPD-L1に対するAM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアント7の結合親和性は、元の4B6-hIgG1-TGFβRIIのものよりも約15倍改善された。
【0474】
[00505]
【0475】
【表17】
【0476】
[00506]FACSアッセイによる細胞表面上に発現するPD-L1への結合
[00507]293T-PD-L1-CD3L細胞を、PD-L1抗体の特性評価のためにMabSpace Bioscienceによって生成した。細胞に、ヒトPD-L1と抗CD3 scFvとの両方をトランスフェクトした。AM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアントまたは元の4B6-hIgG1-TGFβRIIを連続希釈(5倍希釈)して、希釈緩衝液(2%BSAを含むPBS)中で8つの濃度を得た。293T-PD-L1-CD3L細胞を採取し、遠心分離した。それらを、2x10細胞/mlの密度でPBS中に再懸濁した後、ウェルあたり100μlでプレートに添加した。遠心分離および上清の除去後、希釈した抗体をプレートに添加し、4℃で30minインキュベートした。希釈緩衝液で2回洗浄した後、PEコンジュゲート化ロバ抗ヒトIgG(H+L)(Jacksonimmuno、709-116-149)をプレートに添加し、4℃で30minインキュベートした。洗浄後、細胞を200μlのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0477】
[00508]図4に示されるように、これらの5つのバリアントは、類似するEC50で293T-PD-L1-CD3L細胞の表面上に発現されたPD-L1に結合した。バリアント7は、他のものよりもわずかに低いEC50を有し、これはBiacoreによって測定された結合親和性の結果と一致していた。
【0478】
実施例7
AM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアントのPD-1/PD-L1遮断活性
[00509]ELISAアッセイによるPD-1/PD-L1およびB7-1/PD-L1遮断
リガンド/受容体遮断活性を試験するために、0.5μg/mlのhPD-L1-Fc抗原をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。300μLのブロッキング緩衝液を、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.024nM(4倍連続希釈)の範囲の濃度のAM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアント7または元の4B6-hIgG1-TGFβRIIの50μlを、1μg/mlの濃度のPD-L1-hisの50μlと共に添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を3回洗浄するために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化ストレプトアビジン(1:5000、Abcam、カタログ番号ab7403)を添加した。室温で1.5hインキュベートした後、混合TMB基質試薬を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。図5A図5Bに示されるように、両試料はPD-L1/PD-1またはPD-L1/B7-1を遮断することができたが、AM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアント7はより低いIC50を有し、これはバリアント7が改善された活性を有することを示している。
【0479】
[00510]細胞ベースのアッセイによるPD-1/PD-L1遮断
[00511]このアッセイでは、293T-PD-L1-CD3L細胞はPD-L1および抗CD3 scFvを発現し、Jurkat-NFAT-Luc-PD1細胞はPD-1を発現し、CD3刺激によって活性化することができるNFATシグナルを担持する。NFAT活性化は、下流のルシフェラーゼ遺伝子の転写および発現をもたらし、その基質によって検出することができる。2つの細胞を、MabSpace Bioscienceによって生成した。
【0480】
[00512]簡単に述べると、293T-PD-L1-CD3L細胞を採取し、2x10細胞/mlの密度で再懸濁した。ウェルあたり20μlの細胞を、ハーフウェルプレートに添加した。AM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアントまたは元の4B6-hIgG1-TGFβRIIを連続希釈(3倍希釈)して、2%FBSを含むRPMI培地中で8つの濃度を得た。ウェルあたり20μlの抗体をハーフウェルプレートに添加し、プレートを37℃、5%COで30minインキュベートした。Jurkat-NFAT-Luc-PD1細胞を採取し、2%FBSを含むRPMI培地中に4x10細胞/mlの密度で再懸濁した。最後に、ウェルあたり20μlの細胞を、5ng/mlのTGF-ベータ(R&D、240-B-010)と共にハーフウェルプレートに添加し、37℃、5%COで5hインキュベートした。60μlのOneGlo検出試薬(Promega、E6120)を各ウェルに添加し、室温で5分間インキュベートした。発光シグナルをマイクロプレートリーダーによって読み取った。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0481】
[00513]図6に示されるように、以前のELISAの結果と一致して、バリアント7が、他のバリアントと比較してこの細胞ベースのアッセイにおいて最も強力な遮断活性を有していた。したがって、AM-4B6-hIgG1-TGFβRIIバリアント7の4B6 Fab部分をAM4B6と省略し、AM-4B6-hIgG1-TGFβRII融合タンパク質を以下の実験においてさらに評価した。
【0482】
実施例8
in vitroでのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の生成および特性評価
[00514]AM4B6-hIgG1-TGFβRIIのクローニングおよび発現
[00515]短縮型TGFβRII ECD_20-136は可溶性であり、TGFβ1に結合する能力を保持することが報告された(Kim-Ming Loら、US9676863B2、2017;Christian C.ら、Protein Expression and Purification、2000、20:98~104)。次に、本発明者らは、TGFβRII_1-136の細胞外ドメインの完全長を、短縮型のものと置き換え、開発可能性および安定性を評価した。安定な細胞系からのSDS-PAGEの結果により、タンパク質発現が短縮型と完全長との両方のTGFβRII ECDについて良好であるが、タンパク質安定性は完全長TGFβRII ECDよりも短縮型TGFβRII ECD_20-136の方がはるかに良好であることが示された(図7)。短縮型TGFβRII ECD_20-136の配列は、以下の通りである:
[00516]安定なTGF-βトラップ、TGF-βRII細胞外ドメイン(20-136)の配列
GAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD
(配列番号66)
[00517]短縮型TGF-βRII(すなわち、TGF-βRII(20-136)、配列番号66)を含む二機能性分子を、本実施例において、また、実施例9~11においても使用した。そのような二機能性分子の名称を、TGF-βRII(1-136)と区別するために、TGFβRII’で示した。例えば、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、TGF-βRII(20-136)を有する分子を示す。
【0483】
[00518]ELISAアッセイによる様々な種に由来するPD-L1への結合
[00519]1μg/mlのヒトPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)またはカニクイザルPD-L1抗原をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。次いで、300μLの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.02nM(4倍連続希釈)の範囲の濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’または対照hIgG1-TGFβRII’の100μlを添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0484】
[00520]図8Aおよび図8Bに示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、ヒトPD-L1と類似するEC50でカニクイザルPD-L1と交差反応した。
【0485】
[00521]ELISAによる様々な種に由来するTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3への結合
[00522]Uniportのウェブサイト(https://www.uniprot.org/)上に公開された、4つの一般的な種:ヒト、カニクイザル、マウスおよびラットに由来するTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3の配列によれば、TGFβメンバーは非常に保存的である。ヒトTGFβ1およびカニクイザルTGFβ1の配列は同一である;マウスTGFβ1およびラットTGFβ1は同一である;ヒトTGFβ2およびカニクイザルTGFβ2は同一である;マウスTGFβ2およびラットTGFβ2は同一である;ヒトTGFβ3、カニクイザルTGFβ3およびマウスTGFβ3は同一である。
【0486】
[00523]TGFβ1およびTGFβ3について、手順は以下の通りである:0.5μg/mlのヒトTGFβ1(Sino Biological、10804-HNAC)またはマウスTGFβ1(Novoprotein、CK33)またはヒトTGFβ3(Genscript、Z03430)またはラットTGFβ3(Novoprotein、CJ44)抗原をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。次いで、300μLの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.006nM(4倍連続希釈)の範囲の濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’または対照hIgG1-TGFβRII’の100μlを添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0487】
[00524]TGFβ2については、試験手順が異なる:2μg/mlのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’または対照hIgG1-TGFβRII’をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。次いで、300μLの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、39.4nM~0.3nM(2倍連続希釈)の範囲の濃度のヒトTGFβ2またはマウスTGFβ2の100μlを添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を3回の洗浄のために使用し、100μlのTGFβ2ビオチン化抗体(1:10000、R&D、BAF302)を添加した。室温で1hインキュベートし、洗浄した後、100μlのHRP-ストレプトアビジン(1:5000、Abcam、ab7403)を添加し、プレートを室温で1hインキュベートした。洗浄後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートし、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0488】
[00525]結果を、表16にまとめた。TGFβ1に対する結合親和性について、EC50値は、異なる種の間で非常に類似していた。さらに、TGFβ1およびTGFβ3に対する結合親和性はTGFβ2よりも有意に高かったが、これは、TGFβ1およびTGFβ3に対する遮断活性がTGFβ2よりも強力であり得ることを示している。
【0489】
[00526]
【0490】
【表18】
【0491】
[00527]ELISAアッセイによるB7ファミリーまたはTGFβスーパーファミリー内の他のメンバーへの結合
[00528]B7ファミリーについては、0.5μg/mlのhPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)またはhPD-L2またはB7-2またはB7-1またはB7-H2またはB7-H3またはB7-H4またはVISTAをELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。TGFβスーパーファミリーについては、0.5μg/mlのヒトアクチビンA、BMP-2、LAPまたはTGFβ1を4℃で一晩コーティングした。次いで、300μLの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.006nM(連続希釈)の範囲の濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の100μlを添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0492】
[00529]図9A図9Bに示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、B7ファミリーにも属する他の抗原よりもむしろ、PD-L1に特異的に結合した。図9Cに示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、TGFβスーパーファミリーにも属する他の抗原よりもむしろTGFβ1に特異的に結合した。
【0493】
[00530]AM4B6-hIgG1-TGFβRII’のPD-L1発現細胞への結合
[00531]CRISPR-Cas9系によるmPD-L1の欠失、次いで、レンチウイルスを使用したhPD-L1の形質導入によって、MC38/hPD-L1を生成した。この細胞系は、Center of Systems Medicine、Chinese Academy of Medical Sciences Suzhou Institute of Systems MedicineのProfessor Qin Xiaofengの研究室の厚意によるものであった(Huang、Anfeiら、Scientific Reports 7(2017):42687)。MC-38/hPD-L1細胞を、RPMI1640+10%FBS中で培養した。EMT-6/hPD-L1は、トランスフェクトされたヒトPD-L1遺伝子を安定に発現するマウス乳がん細胞系である。EMT-6/hPD-L1細胞を、Waymouth’s(1x)MB752/1+15%FBS中で培養した。NCI-H460細胞を、COBIOER Ltd.から購入した。それは、PD-L1発現を示すヒト肺上皮腫瘍細胞系である。NCI-H460細胞を、RPMI1640+10%FBS中で培養した。NCI-H292細胞を、COBIOER Ltd.から購入した。それは、PD-L1発現を示すヒト肺上皮腫瘍細胞系である。NCI-H292細胞をRPMI1640+10%FBS+1nMピルビン酸ナトリウム溶液中で培養した。FACS解析のプロトコールは、実施例6のセクション3と同じであった。
【0494】
[00532]ヒトまたはカニクイザルPBMC(TPCS、カタログ番号PB025C)を、液体窒素から回収し、10%FBSを含むRPMI1640中に再懸濁した。5μg/mlのPHA(Sigma、カタログ番号L8902)を添加して、PBMC活性化を刺激し、細胞を3日間培養した。活性化されたPBMCを採取し、遠心分離し、2x10細胞/mlの密度でPBS中に再懸濁し、ウェルあたり100μlでプレートに添加した。AM4B6-hIgG1-TGFβRII’またはAM4B6または対照hIgG1-TGFβRII’を連続希釈(5倍希釈)して、希釈緩衝液(2%BSAを含むPBS)中で10種の濃度を得た。遠心分離し、プレート中の上清を除去した後、希釈した抗体を、活性化されたPBMCと共にプレートに添加し、4℃で1時間インキュベートした。希釈緩衝液で2回洗浄した後、Alexa488標識されたマウス抗ヒトCD3(Biolegend、カタログ番号300320)およびAPC標識された抗ヒトIgG二次抗体(BD、カタログ番号550931)を添加し、4℃で30minインキュベートした。洗浄後、細胞を150μlのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0495】
[00533]図10A図10Fに示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、AM4B6 mAb単独と類似する親和性で、これらのがん細胞系および活性化されたヒトまたはカニクイザルT細胞上に発現されるPD-L1に結合することができた。
【0496】
[00534]活性化されたヒトT細胞への結合
[00535]ヒトPBMC(TPCS、カタログ番号PB025C)を、液体窒素から回収し、10%FBSを含むRPMI1640中に再懸濁した。5μg/mlのPHA(Sigma、カタログ番号L8902)を添加して、PBMC活性化を刺激し、細胞を3日間培養した。活性化されたPBMCを採取し、遠心分離し、2x10細胞/mlの密度でPBS中に再懸濁し、ウェルあたり100μlでプレートに添加した。AM4B6-hIgG1-TGFβRII’またはAM4B6または対照hIgG1-TGFβRII’を連続希釈(5倍希釈)して、希釈緩衝液(2%BSAを含むPBS)中で10種の濃度を得た。遠心分離し、プレート中の上清を除去した後、希釈した抗体を、活性化されたPBMCと共にプレートに添加し、4℃で1時間インキュベートした。希釈緩衝液で2回洗浄した後、Alexa488標識されたマウス抗ヒトCD3(Biolegend、カタログ番号300320)およびAPC標識された抗ヒトIgG二次抗体(BD、カタログ番号550931)を添加し、4℃で30minインキュベートした。洗浄後、細胞を150μlのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0497】
[00536]図11に示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、活性化されたヒトT細胞上に発現されるPD-L1に結合することができた。
【0498】
[00537]ELISAアッセイによるhPD-L1/hPD-1およびカニクイザルPD-L1/カニクイザルPD-1の遮断
[00538]0.5μg/mlのhPD-L1-Fcまたは0.5μg/mlのカニクイザルPD-L1-FcをELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。300μLの3%(w/v)スキムミルクを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.02nM(4倍連続希釈)の範囲の濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’またはAM4B6の100μlを、0.5μg/mlのhPD-1-Fc-ビオチンまたはカニクイザルPD-1-Fc-ビオチンと共に添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を3回洗浄するために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化ストレプトアビジン(1:5000)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0499】
[00539]図12A図12Bに示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、ヒトPD-L1/ヒトPD-1の遮断のものと類似するIC50でカニクイザルPD-L1/カニクイザルPD-1を完全に遮断することもできた。
【0500】
[00540]hPD-L1およびhTGFβ1への同時的結合
[00541]0.5μg/mlのhTGFβ-1をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩静置した。次いで、300μLのブロッキング緩衝液を、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、100nM~0.02nM(4倍連続希釈)の範囲の濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’またはAM4B6または対照hIgG1-TGFβRII’の100μlを添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%PBS+Tween(登録商標)-20を3回洗浄するために使用し、次いで、0.5μg/mlのhPD-L1-ビオチンを各ウェルに添加した。1h後、100μlのHRPコンジュゲート化ストレプトアビジン(1:5000)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。
【0501】
[00542]図13に示されるように、抗PD-L1抗体AM4B6およびTGFβRII’から構成されるAM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、同時に2つの標的に結合することができたが、これは、その二特異性または二機能性特性を示している。
【0502】
[00543]レポーター細胞アッセイによるhPD-L1/hPD-1の遮断
[00544]プロトコールは、実施例15のセクション2と同じであった。図14に示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRIIは、AM4B6 mAb単独と同じく、PD-L1/PD-1の阻害効果を遮断し、続いて、シグナル伝達活性化を逆転させることができた。
【0503】
[00545]レポーター細胞アッセイによるTGFβ1シグナル伝達の遮断
[00546]TGFβレポーターHEK-293細胞系を、Genomeditech(カタログ番号GM-C05346)から購入し、5%二酸化炭素を含む37℃インキュベーター中、10%FBS、4μg/mlブラスチシジン、400μg/mlネオマイシン、125μg/mlハイグロマイシン、0.75μg/mlピューロマイシン、および1%Pen/Strepを含有するDMEM培地中で培養した。
【0504】
[00547]細胞を、対数増殖期で収集し、DMEM培地中に再懸濁し、ウェルあたり2x10細胞/100μlの密度で96ウェルプレート中に播種した。細胞を一晩培養した後、培地を、10ng/mlのヒトTGFβ1を含有する75μlの培養培地と置き換えた。100nM~0.02nM(3倍連続希釈)の範囲の最終濃度で、75μlのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’またはAM4B6を添加した。プレートを37℃インキュベーターで16時間インキュベートした。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを150μl/ウェルで添加し、室温で10分間インキュベートした後、プレートを、マイクロプレートリーダーを用いて読み取った。
【0505】
[00548]図15に示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、0.35nMのIC50でTGFβ1シグナル伝達に対する強力な遮断活性を示したが、AM4B6 mAb単独では遮断活性を有しなかった。これは、遮断活性がTGFβ1特異的であることを示している。
【0506】
[00549]ツベルクリン(TB)により刺激されたPBMCのIFN-γ放出に対するAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の効果
[00550]ヒトPBMCを、液体窒素から回収し、2x10個/mLの密度で細胞を再懸濁した。TBを1.33μg/mLの最終濃度で添加し、37℃で5日間培養する。6日目に、誘導されたPBMCを収集し、遠心分離し、PBSで1回洗浄し、新鮮な培地中に再懸濁し、1x10/mlの密度に調整し、180μL/ウェルで96ウェル細胞プレート中に播種した。20μL/ウェルの希釈した抗体を96ウェル細胞培養プレートに添加する。対照群およびブランク群を20μLのPBSと共に添加した。細胞培養プレートを、5%COインキュベーター中、37℃で3日間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、細胞上清を10倍希釈し、IFNγの分泌レベルを、IFN-γELISA検出キット(R&D、DY285B)で検出した。
【0507】
[00551]図16に示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、AM4B6 mAb単独よりも有意に高いレベルのIFN-γ放出を誘導したが、これは、その活性化活性がその二特異的結合および遮断活性に起因してより強力であることを示している。
【0508】
[00552]AM4B6-hIgG1-TGFβRII’のADCC/CDC活性
[00553]ADCCアッセイについて、エフェクター細胞:Jurkat-NFAT Luc-FcγRIIIa-158V細胞系を、Mabspace Biosciences(Suzhou)Co.,Limitedによって構築した。標的細胞:HEK-293T-hPD-L1細胞(Crown Biosciences Inc.、カタログ番号2005から購入)。
【0509】
[00554]HEK-293T-hPD-L1細胞を、ウェルあたり10,000個の細胞/12.5μlで細胞培養プレートに添加した。次いで、200nM~0.003nMの範囲の最終濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’希釈液を、12.5μl/ウェルで添加した。次いで、プレートを37℃でインキュベーターに入れて、抗体および細胞を30分間インキュベートした。次いで、Jurkat-NFAT Luc-FcγRIIIa-158V細胞を、ウェルあたり60,000個の細胞/25μlでウェルに添加した。次いで、プレートを37℃で6時間、インキュベーターに入れた。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを50μl/ウェルで添加し、室温で10分間インキュベートした後、プレートを、マイクロプレートリーダーを用いて読み取った。
【0510】
[00555]CDCアッセイについても、標的細胞はHEK-293T-hPD-L1細胞である。HEK-293T-hPD-L1細胞を、ウェルあたり10,000個の細胞/25で細胞培養プレートに添加した。次いで、200nM~0.3nMの範囲の最終濃度のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’希釈液を、12.5μl/ウェルで添加した。次いで、プレートを37℃でインキュベーターに入れて、抗体および細胞を30分間インキュベートした。HEK-293T-hPD-L1細胞を、50μl/ウェルで、40%補体で処理した後(最終濃度は20%)、37℃で80minインキュベートした。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを100μl/ウェルで添加し、室温で10分間インキュベートした後、プレートを、マイクロプレートリーダーを用いて読み取った。
【0511】
[00556]その結果、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’はHEK-293T-hPD-L1細胞に対するADCC活性もCDC活性も有しないことが示唆された(データは示さない)。
【0512】
実施例9
in vivoでのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の有効性
[00557]C57BL/6マウス上でのMC38-hPD-L1腫瘍モデル
[00558]マウス腫瘍細胞系MC38(ATCC)における内因性マウスPD-L1を、本発明者らが最近開発した非常に効率的なCRISPR/Cas系を使用してノックアウトした。簡単に述べると、マウスPD-L1遺伝子の第1のコードエクソンを標的とするsgRNAを設計し、ヒットエンドランCRISPR/Cas9+sgRNA構築物によって細胞をトランスフェクトし、ノックアウト細胞について選択した。内因性マウスPD-L1が完全にノックアウトされた細胞を、定常状態でのPD-L1の細胞表面発現についてFACS解析によって同定したか、またはインターフェロンガンマによって刺激した後、標的としたゲノム領域のTAクローニングおよび配列決定によって検証した。ヒトPD-L1置き換え細胞系を生成するために、ヒトPD-L1 cDNAのコード配列を、FG12由来レンチウイルスベクター中にクローニングした。次いで、マウスPD-L1ノックアウト細胞に、ヒトPD-L1を発現するレンチウイルスを感染させ、確立された細胞系におけるヒトPD-L1の高レベルかつ安定な発現をFACS解析によって確認した。MC38のこの操作された細胞を、MC38-hPD-L1と命名した。
【0513】
[00559]MC38-hPD-L1細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清を補充したRPMI1640培地中、空気中に5%COを含む雰囲気で37℃にて、単層培養物としてin vitroで維持した。指数増殖期で増殖している腫瘍細胞を採取し、腫瘍接種のために計数した。それぞれのメスSPF等級C57BL/6マウスに、50%マトリゲルを含む混合した2x10個のMC38-hPD-L1細胞を接種した。腫瘍サイズが約90mmになった時、腫瘍を担持するマウスを選択し、5つの群に無作為化した(n=8)。動物を、2.5mg/kgのアイソタイプ対照、3mg/kgのアイソタイプ対照-TGFβRII’、2.5mg/kgのAM4B6、0.3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、1mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’および3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’で処置した。全ての抗体を、i.p.注射によって4週間にわたって週2回投与した。腫瘍サイズを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週2回または3回測定し、式:V=0.5axb(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで体積を表した。結果を、Prism GraphPadを使用して分析し、平均±S.E.M.として表した。2群間の比較を、T検定によって行ったが、pが<0.05かつ**<0.01である場合、差異が有意であると考えられる。
【0514】
[00560]図17A図17Bに示されるように、3mg/kgのアイソタイプ対照-TGFβRII’は、腫瘍成長を全く阻害しなかったが、これは、TGFβRII’単独では有効性が低かったことを示している。2.5mg/kgのAM4B6は、0.3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’のものと同様、部分的な阻害効果のみ有していたが、これは腫瘍成長を制御するには不十分であると考えられた。投薬量の増加と共に、腫瘍体積は徐々に小さくなっていった。3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、腫瘍成長をほぼ完全に停止させ、そのTGIは84%であった(表17)。
【0515】
[00561]
【0516】
【表19】
【0517】
[00562]NOD-SCIDマウス上でのH460腫瘍およびヒトPBMC同時接種モデル
[00563]H460細胞を、COBIOER Ltd.から購入した。H460細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清を補充したRPMI1640培地中、空気中に5%COを含む雰囲気で37℃にて、単層培養物としてin vitroで維持した。指数増殖期で増殖している腫瘍細胞を採取し、腫瘍接種のために計数した。それぞれのメスSPF等級NOD-SCIDマウスに、混合した3x10個のH460細胞(モデル群)または1.5x10個のヒトPBMCと混合した3x10個のH460細胞を接種した。全ての細胞懸濁液を、接種前に1:1比としてマトリゲルとよく混合した。接種の約4時間後、動物を7群に分け(n=10)、示差的に投与した。動物を、16.7mg/kgの対照hIgG1、または20mg/kgの対照hIgG1-TGFβRII’、または16.7mg/kgのAM4B6、または5mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、または10mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、または20mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’のいずれかで処置した。モデル群は何も処置しなかった。全ての抗体を、i.p.注射によって5週間にわたって週2回投与した。腫瘍サイズを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週2回または3回測定し、式:V=0.5axb(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで体積を表した。結果を、GraphPad Prismを使用して分析し、平均±S.E.M.として表した。2群間の比較を、T検定によって行ったが、pが<0.05かつ**<0.01である場合、差異が有意であると考えられる。
【0518】
[00564]図18A図18Bに示されるように、20mg/kgのアイソタイプ対照-TGFβRII’は腫瘍成長を全く阻害しなかった。5mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’が既に有意により良好な腫瘍阻害を有していた一方、16.7mg/kgのAM4B6は部分的な阻害効果のみ有していたが、これは、TGFβRII融合物がAM4B6 mAb単独の抗腫瘍有効性を増加させたことを示している。さらに、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’の明らかな用量応答がこのモデルにおいて観察されたが、これは再度、有効性がAM4B6-hIgG1-TGFβRII’に依存していることを示唆している。
【0519】
[00565]C57BL/6マウス上でのEMT6-hPD-L1腫瘍モデル
[00566]マウス腫瘍細胞系EMT6(ATCC)中の内因性マウスPD-L1をノックアウトし、ヒトPD-L1を細胞中にノックインし、EMT6の操作された細胞をEMT6-hPD-L1と命名した。
【0520】
[00567]マウスに、EMT6/hPD-L1腫瘍細胞を皮下接種し、7つの群に無作為に分割した後、腫瘍体積に応じて1群あたり10匹のマウスにした。グループ分けの後、第1群~第7群の動物に、それぞれ、24.9mg/kgの対照hIgG1、30mg/kgの対照hIgG1-TGFβRII’、24.9mg/kgのAM4B6、3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、10mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’または30mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’を、4週間にわたって週2回、腹腔内注射によって投与した。腫瘍担持マウスの腫瘍体積および体重を週2回観察した。図19A図19Bに示されるように、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、投与後29日目で、3、10および30mg/kgでそれぞれ21.43%、46.83%および79.39%のTGIで腫瘍成長を用量依存的に阻害した。等モル量で、30mg/kgでのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の抗腫瘍活性は、24.9mg/kgでAM4B6よりも顕著であり、その群において、TGIは29日目で29.67%であった。
【0521】
実施例10
MC38-hPD-L1腫瘍モデルにおける腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対するAM4B6-hIgG1-TGFβRII’処置の影響
[00568]MC38-hPD-L1腫瘍細胞を培養し、実施例9の同じプロセスに従って接種した。腫瘍サイズが250~300mmになった時、腫瘍担持マウスを選択し、4つの群(n=6)に無作為化した。動物を、PBS、または3mg/kgのアイソタイプ対照-TGFβRII’、または2.5mg/kgのAM4B6、または3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’で処置した。全ての抗体を、i.v.注射によって1または2週間にわたって週2回投与した。腫瘍を、それぞれ、2回目の投薬の24時間後および4回目の投薬の24時間後に採取した後、穏やかなMACS Dissociator(Miltenyi Biotec、130-093-235)を用いて解離し、37℃で40min、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec、130-096-730)で消化した。各群の単離された単一腫瘍細胞懸濁液を、表18および表19に示されるように、PE抗マウスCD45(BD bioscience、カタログ番号553081)、APC抗マウスCD8a(Biolegend、カタログ番号100712)、APC抗マウスNK1.1(Biolegend、カタログ番号108710)、FITC抗マウスグランザイムB(Biolegend、カタログ番号515403)およびFITC抗マウスIFNガンマ(Invitrogen、カタログ番号11-7311-82)によって染色した後、FACSを使用してTILサブ集団のパーセンテージについて分析した。
【0522】
[00569]
【0523】
【表20】
【0524】
[00570]
【0525】
【表21】
【0526】
[00571]2回目の投薬の後、異なる処置群間でTILのサブ集団のパーセンテージに有意な変化はなかった(表18)。しかし、4回目の投薬の後、AM4B6群およびAM4B6-hIgG1-TGFβRII’群のCD8+/CD45+%は、アイソタイプ対照-TGFβRII’群のものと比較して有意に増加した(表19)。CD8+GZMB+%およびNK1.1+%もまた、アイソタイプ対照-TGFβRII’群のものと比較して、多く増加した。これらの知見は、CD8+T細胞およびNK1.1 T細胞を、AM4B6またはAM4B6-hIgG1-TGFβRII’によって刺激して、活性化および増殖させ、また、腫瘍微小環境中で富化させて、腫瘍細胞死滅を容易にすることができることを示している。AM4B6と比較した場合、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、さらにより高いCD8+GZMB+%およびNK1.1+%を有し、これは上記のTGIによって測定した場合、そのより強力な抗腫瘍活性と相関していた。
【0527】
実施例11
in vivoでのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’の薬物動態および薬力学試験
[00572]C57BL/6メスマウスを、6群(n=3)に無作為化した。動物を、3mg/kgのアイソタイプ対照-TGFβRII’、または2.5mg/kgのAM4B6、または0.3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、または1mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、または3mg/kgのAM4B6-hIgG1-TGFβRII’、または3mg/kgのM7824-アナログで処置した。M7824-アナログを、US9676863に開示された配列に従ってMabSpace Biosciencesによって生成した。全ての抗体を、i.v.単回注射によって投与した。注射後、それぞれのマウスの血液200μlを、異なる時点で収集した:投薬前、注射後30min、2h、8h、24h、48h、D4、D7、D10、D14、D21。それぞれのマウスの血漿80μlを収集し、抗体濃度を試験した。
【0528】
[00573]血漿中の抗体濃度を測定するために、2つの方法を使用した。第1のものは、AM4B6アームとTGFβRII’アームとの両方を含む全二機能性分子を検出することである。一般的には、1μg/mlのヒトPD-L1-hisを、室温で2時間、96ウェルELISAプレート上にコーティングした。ブロッキング後、連続希釈した標準および血漿試料を添加し、1.5時間インキュベートした。洗浄後、0.1μg/mlのビオチン化抗ヒトTGFβRII’を添加し、次いで、洗浄後、ストレプトアビジン-HRPを添加した。最後に、TMBを添加して発色させ、希硫酸によって停止させた。プレートを、マイクロプレートリーダーによってOD450nmおよびOD620nmについて読み取った。データをOD450nm-OD620nmによって分析した。
【0529】
[00574]第2のものは、AM4B6抗体アームのみを検出することである。上記手順と同様、1μg/mlのヒトPD-L1-hisをコーティングし、連続希釈した標準および血漿試料を添加し、1.5時間インキュベートした。洗浄後、希釈したヤギHRPコンジュゲート化抗ヒトIgG Fc抗体を添加した。最後に、TMBを添加して発色させ、希硫酸によって停止させた。プレートを、マイクロプレートリーダーによってOD450nmおよびOD620nmについて読み取った。データをOD450nm-OD620nmによって分析した。
【0530】
[00575]血漿中の抗体濃度と、TGFβの変化との相関を評価するために、血漿中のTGFβ1およびTGFβ2の濃度変化を試験した。簡単に述べると、4μg/mlのマウスTGF-β1捕捉抗体または2μg/mlのマウスTGF-β2捕捉抗体を、室温で2時間、96ウェルELISAプレート上にコーティングした。10μlの1N HClを、50μlのそれぞれの血漿試料に添加し、室温で10分間インキュベートした。10μlの1.2N NaOH/0.5M HEPESを添加して、最終pHを7.2~7.6以内に確保することによって、酸化した試料を中和した。ブロッキング後、連続希釈した標準および血漿試料を添加し、1.5時間インキュベートした。洗浄後、TGF-β1またはTGF-β2検出抗体を添加し、次いで、洗浄後、ストレプトアビジン-HRPを添加した。最後に、TMBを添加して発色させ、希硫酸によって停止させた。プレートを、マイクロプレートリーダーによってOD450nmおよびOD620nmについて読み取った。データをOD450nm-OD620nmによって分析した。
【0531】
[00576]図20Aは、血漿中の抗体濃度変化を示した。2つの方法を使用したPKプロファイルには有意な差異はなかったが、これは、全二機能性分子AM4B6-hIgG1-TGFβRII’が、AM4B6 mAbのものと同様、in vivoで異常な切断およびクリアランスを示すことなく非常に安定であったことを示している。そして同時に、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は、図20Bに示されるように、0.3mg/kgの最も低い用量でも、i.v.注射後30min以内にTGF-β1を枯渇させた。M7824-アナログおよびアイソタイプ対照-TGFβRII’もまたTGF-β1を枯渇させたが、M7824-アナログは2日目からその効果を維持することができなかった一方、AM4B6-hIgG1-TGFβRII’は21日目まで低レベルのTGF-β1を維持することができた。この結果は、そのPK曝露(図20C)とも一致していたが、これは、TGF-β1が血漿中のAM4B6-hIgG1-TGFβRII’標的係合のための良好な薬力学的マーカーとして役立ち得ることを示している。マウス血漿中でTGF-β2の明らかな枯渇が検出された(ここではデータは示さない)。
【0532】
実施例12
AM4B6-hIgG1-IL-1RA融合タンパク質の構築および発現
[00577]選択された重鎖および軽鎖バリアントを交差混合し、hIgG1-IL-1RA(34-177)(UniProtKB、P18510)融合タンパク質と共に発現させた。重鎖および軽鎖の配列を、表20に示した。
【0533】
[00578]
【0534】
【表22】
【0535】
[00579]AM4B6-hIgG1-TGFβRII’二機能性分子と同様、短縮型ヒトIL-1RA_34-177をAM4B6と融合させて、より良好な活性および安定性を得た。AM4B6-hIgG1-IL-1RAは、AM4B6-hIgG1-IL-1RA(34-177)の省略形であった。短縮型ヒトIL-1RA_34-177の配列は、以下の通りである:(配列番号67)
KMQAFRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKIDVVPIEPHALFLGIHGGKMCLSCVKSGDETRLQLEAVNITDLSENRKQDKRFAFIRSDSGPTTSFESAACPGWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYFQEDE
[00580]重鎖および軽鎖の同時トランスフェクションを、製造業者のプロトコールに従ってInvitrogenからのExpiFectamine(商標)CHO Reagent(Thermo、A29129)を使用して実行した。上清を10日目に採取し、親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0536】
実施例13
AM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子のhPD-L1に対する親和性
[00581]ELISAアッセイに基づくヒトPD-L1への結合
[00582]1μg/mlのhPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)抗原をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩コーティングした。次いで、300μLの2%(w/v)BSAを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1hのインキュベーション後、10nM~0.00017nM(3倍連続希釈)の範囲の濃度のAM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子またはAM4B6-hIgG1モノクローナル抗体の100μlを、陰性対照としてのPBSTと共に添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%Tween(登録商標)-20を含むPBSを、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。データをGraphPad prismによって分析した。
【0537】
[00583]図21に示されるように、AM4B6モノクローナル抗体と比較して、AM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子は、類似する結合シグナルおよび親和性を有する。
【0538】
[00584]FACSアッセイによるAM4B6-hIgG1-IL-1RAの細胞表面上に発現するPD-L1への結合
[00585]293T-PD-L1-CD3L細胞を、PD-L1抗体の特性評価のためにMabSpace Biosciencesによって生成した。細胞に、ヒトPD-L1と抗CD3 scFvとの両方をトランスフェクトした。AM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子またはAM4B6モノクローナル抗体を、3倍希釈によって連続希釈して、希釈緩衝液(2%BSAを含むPBS)中に11種の濃度を得た。293T-PD-L1-CD3L細胞を採取し、遠心分離した。次いで、それらを、2x10細胞/mlの密度でPBS中に再懸濁し、ウェルあたり100μlでプレートに添加した。遠心分離および上清の除去後、希釈した抗体をプレートに添加し、4℃で30minインキュベートした。希釈緩衝液で2回洗浄した後、PEコンジュゲート化ロバ抗ヒトIgG(H+L)(Jacksonimmuno、709-116-149)をプレートに添加し、4℃で30minインキュベートした。洗浄後、細胞を200μlのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0539】
[00586]図22に示されるように、AM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子およびAM4B6-hIgG1は、類似するEC50で細胞の表面上に発現されたPD-L1に結合することができ、これはELISAによって測定された親和性の結果と一致していた。
【0540】
実施例14
AM4B6-hIgG1-IL-1RAのPD1/PD-L1遮断活性
[00587]このアッセイでは、293T-PD-L1-CD3L細胞はPD-L1および抗CD3 scFvを発現し、Jurkat-NFAT-Luc-PD1細胞はPD-1を発現し、CD3刺激によって活性化することができるNFATシグナルを担持していた。NFAT活性化は、ルシフェラーゼ遺伝子の転写および発現をもたらし、その基質によって検出することができる。2つの細胞を両方とも、MabSpace Biosciencesによって生成した。
【0541】
[00588]簡単に述べると、293T-PD-L1-CD3L細胞を採取し、2x10細胞/mlの密度で再懸濁した。ウェルあたり20μlの細胞を、ハーフウェルプレートに添加した。AM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子およびAM4B6-hIgG1を連続希釈(3倍希釈)して、2%FBSを含むRPMI培地中で8種の濃度を得た。ウェルあたり20μlの抗体をハーフウェルプレートに添加し、プレートを37℃、5%COで30minインキュベートした。Jurkat-NFAT-Luc-PD1細胞を採取し、2%FBSを含むRPMI培地中に4x10細胞/mlの密度で再懸濁した。最後に、ウェルあたり20μlの細胞をハーフウェルプレートに添加し、37℃、5%COで5hインキュベートした。60μlのOneGlo検出試薬(Promega、E6120)を各ウェルに添加し、室温で5分間インキュベートした。発光シグナルをマイクロプレートリーダーによって読み取った。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0542】
[00589]図23に示されるように、AM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子およびAM4B6-hIgG1は、この細胞ベースのアッセイにおいてPD-L1に対する類似する遮断活性を有していた。
【0543】
実施例15
ヒトIL-1βに対するAM4B6-hIgG1-IL-1RAの遮断活性
[00590]ELISAに基づくhIL-1βに対するAM4B6-hIgG1-IL-1RA BsAbの遮断活性
[00591]リガンド/受容体遮断活性を試験するために、5μg/mlのヒトIL-1βタンパク質(Sino Biological、カタログ番号10139)をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。300μLのブロッキング緩衝液を、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1h後、200nM~0.03nM(3倍連続希釈)の範囲の連続濃度のAM4B6-hIgG1-IL-1RA BsAbまたはIL-1RAタンパク質(Sino Biological、カタログ番号10123-HNAE)の50μlを、50μlの10nMヒトIL-1RI-his(Sino Biological、カタログ番号10126-H08H)と共にウェルに添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%Tween(登録商標)-20を含むPBSを3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化hisタグ抗体(1:20000希釈、Genscript、カタログ番号A00612)を添加し、室温で1hインキュベートした。次いで、混合TMB基質試薬(InnoReagents、カタログ番号TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0544】
[00592]図24に示されるように、AM4B6-hIgG1-IL-1RAは、用量依存的にIL-1βを遮断することができ、IL-1RIに対するAM4B6-hIgG1-IL-1RAの遮断活性は、IL-1RAタンパク質のものよりも良好であった。
【0545】
[00593]レポーター細胞上でのhIL-1βに対するAM4B6-hIgG1-IL-1RA二機能性分子の遮断活性
[00594]このアッセイでは、HEK-Blue(商標)CD40L細胞を、Invivogen(カタログ番号hkb-cd40)から購入した。これらの細胞は、ヒトCD40遺伝子およびNF-κB誘導性SEAP構築物のHEK293細胞への安定なトランスフェクションによって生成された。CD40Lの、その受容体CD40への結合は、NF-κBの活性化およびSEAPのその後の産生をもたらすカスケードを誘発し、QUANTI-Blueによってモニタリングすることができる。HEK293細胞は、CD40Lと共通のシグナル伝達経路を共有するサイトカインIL-1βのための受容体を内因性に発現する。したがって、IL-1b媒介性SEAP産生を、中和抗体を使用して遮断することができる。
【0546】
[00595]簡単に述べると、対数期細胞でHEK293-CD40L細胞を収集し、5x10/ウェル(100μl/ウェル)の密度で細胞を96ウェルプレート中に播種して、一晩接着させる。AM4B6-hIgG1-IL-1RA二特異性抗体およびIL-1RAタンパク質を連続希釈(5倍希釈)して、完全培養培地中で10種の濃度を得た。50μl/ウェルの希釈した抗体(またはIL-1RAタンパク質)および50μl/ウェルのヒトIL-1βを細胞に添加し、37℃で24hインキュベートする。次の日、160μlのQUANTI-Blue(商標)溶液(Invivogen、カタログ番号rep-qbs)を新しいプレートに添加し、40μlの細胞培養上清をプレートに添加した。プレートを37℃で2hインキュベートする。620nmで分光光度計を使用してSEAPレベルを決定する。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0547】
[00596]図25に示されるように、AM4B6-hIgG1-IL-1RAは、用量依存的様式でIL-1βを遮断することができ、IL-1βに対するAM4B6-hIgG1-IL-1RAの遮断活性は、IL-1RAタンパク質よりも強力であったが、これはELISAによって測定された遮断の結果と一致していた。
【0548】
実施例16
AM4B6-SIRPα二機能性抗体の構築、発現、精製
[00597]SIRPα_CV1は、操作された高親和性SIRPαバリアントであり、がん細胞上のCD47と強力に拮抗したが、それ自身ではマクロファージファゴサイトーシスを誘導しなかった(Kipp Weiskopfら、Science 341、88(2013))。本発明者らは、対称性抗体(AM4B6-hIgG1-SIRPαおよび3280A-hIgG1-SIRPα)および非対称性抗体(AM4B6-hIgG1-SIRPα(KIH)および3280A-hIgG1-SIRPα(KIH))(ここで、KIHはノブイントゥーホールの省略形である)を含む、PD-L1とCD47との両方を標的とする二機能性抗体を発明した。これらの分子の構築は、表21に記載されており、配列決定されたSIRPα_CV1は以下にも列挙される。
【0549】
[00598]SIRPα_CV1配列(配列番号84):
[00599]EEELQIIQPDKSVLVAAGETATLRCTITSLFPVGPIQWFRGAGPGRVLIYNQRQGPFPRVTTVSDTTKRNNMDFSIRIGNITPADAGTYYCIKFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS
[00600]
【0550】
【表23】
【0551】
[00601]4つ全部の二機能性抗体を、製造業者のプロトコールに従ってExpi-CHO細胞を用いて発現させた。2つの対称性二機能性抗体について、1ステップのMabselect SuRe精製を用いて高純度の抗体が得られたが、非対称性二機能性抗体については、従来の1ステップのMabselect SuRe精製によって高純度抗体を得ることができない。高純度非対称性抗体を得るために、本発明者らが、HiTrap PrismA樹脂を使用して、抗体を研磨精製したところ、非対称性抗体の純度は95%よりも良好であった。研磨精製手順は、以下のように記載される。
【0552】
[00602]使用した緩衝液:
[00603]平衡化緩衝液:50mM Tris-HAc、150mM NaCl、pH7.4。
【0553】
[00604]洗浄緩衝液:50mM NaAc/HAc、500mM NaCl、5%PEG、pH5.5。
【0554】
[00605]溶出緩衝液:50mM HAc、500mM NaCl、5%PEG、pH3.0。
【0555】
[00606]UVベースライン、溶離液のpH、および伝導度が変化しなくなるまで、少なくとも5倍カラム体積(CV)にわたって平衡化緩衝液でHiTrap PrismAカラムを平衡化させる。
【0556】
[00607]予め平衡化させたHiTrap PrismAカラム上に試料をロードする。
【0557】
[00608]UVトレースがベースラインに戻るまで、5~10CVの洗浄緩衝液を用いて洗浄する。
【0558】
[00609]10~20CV中、0~100%の溶出緩衝液で溶出し、いくつかのチューブを用いて5~10の画分を別々に収集する。1M Tris塩基(pH9.0)を用いて、pHを約6.0~7.0に調整した。
【0559】
[00610]次いで、画分をSEC-HPLCによって特徴付けた。図26は、3280A-hIgG1-SIRPα(KIH)およびAM4B6-hIgG1-SIRPα(KIH)の純度が、それぞれ、95.33%および96.5%であることを示す。
【0560】
[00611]ヒトPD-L1またはヒトCD47に対する親和性を、ELISAを用いて試験した。図27および図28は、二機能性抗体の抗原に対する親和性が、親モノクローナル抗体(4B6 mAb対照)または融合タンパク質(SIRPα-Fc(FES))のものと同等であることを示す。
【0561】
[00612]
実施例17
IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6二特異性抗体(bsAb)の構築および発現
[00613]単鎖断片(scFv)AM4B6の配列を、以下の表に示す。抗IL-1β抗体であるゲボキズマブ(XOMA052)およびカナキヌマブ(ACZ885)は、Novartisからのものであった。AM4B6のscFvを、抗IL-1β抗体重鎖C末端に接続して、より良好な活性および安定性を得た。scFvは、VHをVLに接続したGSリンカー(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)を有し、残基H44CとL100C(Kabatの番号付け)との間にドメイン間ジスルフィド結合を含有する。抗IL-1β抗体(XOMA052およびACZ885)の配列を、表22に示す。構築された二特異性抗体を、それぞれ、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6と命名した。
【0562】
[00614]bsAbの重鎖および軽鎖の同時トランスフェクションを、製造業者のプロトコールに従ってInvitrogenからのExpiFectamine(商標)CHO Reagent(Thermo、A29129)を使用して実行した。上清を10日目に採取し、親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0563】
[00615]
実施例18
IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbのhIL-1βに対する結合活性
[00616]ELISAアッセイに基づくヒトIL-1βタンパク質への結合
[00617]100μLの1μg/mlのhIL-1βタンパク質(Sino Biological、カタログ番号10139-HNAE)をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩コーティングした。次いで、200μLの2%(w/v)BSAを、室温で2h、ブロッキングのために添加した。インキュベーション後、20nM~0.000339nM(3倍連続希釈)の範囲の濃度のIgG-scFv-ACZ885-AM4B6、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAb、ACZ885、およびXOMA052の100μlを、陰性対照としてのPBSTと共に添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%Tween(登録商標)-20を含むPBSを、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0564】
[00618]図29に示されるように、ACZ885およびXOMA052モノクローナル抗体と比較して、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbは、それぞれ、hIL-1βタンパク質に対する類似する結合活性を有する。
【0565】
[00619]
実施例19
IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbのhPD-L1に対する結合活性
[00620]ELISAアッセイに基づくヒトPD-L1への結合
[00621]1μg/mlのhPD-L1(Acro Biosystems、PD1-H5229)抗原100μLをELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩コーティングした。次いで、300μLの2%(w/v)BSAを、室温で1h、ブロッキングのために添加した。1hのインキュベーション後、20nM~0.000339nM(3倍連続希釈)の範囲の濃度のIgG-scFv-ACZ885-AM4B6、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbまたはAM4B6-hIgG1モノクローナル抗体(AM4B6 mAb)の100μlを、陰性対照としてのPBSTと共に添加し、室温で1hインキュベートした。0.5%Tween(登録商標)-20を含むPBSを、3回の洗浄のために使用し、100μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトFc抗体(1:20000、Abcam、ab98624)を添加した。室温で1hインキュベートした後、混合TMB基質試薬(InnoReagents、TMB-S-003)を添加し、室温で5minインキュベートした後、0.1M HSOを添加することによって停止させた。OD450nmを、マイクロプレートリーダーによって記録した。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0566】
[00622]図30に示されるように、AM4B6モノクローナル抗体と比較して、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6 bsAbは、hPD-L1タンパク質に対する類似する結合活性を有する。
【0567】
[00623]FACS法による、PD-L1を発現する293T細胞へのIgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の結合
[00624]293T-PD-L1-CD3L細胞を、PD-L1抗体の特性評価のためにMabSpace Biosciencesによって生成した。細胞に、ヒトPD-L1と抗CD3 scFvとの両方をトランスフェクトした。IgG-scFv-ACZ885-AM4B6、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6またはAM4B6 mAbを、4倍希釈によって連続希釈して、希釈緩衝液(2%BSAを含むPBS)中で9種の濃度を得た。293T-PD-L1-CD3L細胞を採取し、遠心分離した。次いで、それらを、2x10細胞/mlの密度でPBS中に再懸濁し、ウェルあたり100μlでプレートに添加した。遠心分離および上清の除去後、希釈した抗体をプレートに添加し、4℃で30minインキュベートした。希釈緩衝液で2回洗浄した後、PEコンジュゲート化ロバ抗ヒトIgG(H+L)(Jacksonimmuno、709-116-149)をプレートに添加し、4℃で30minインキュベートした。洗浄後、細胞を200μlのPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0568】
[00625]図31に示されるように、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6は、類似するEC50で細胞の表面上に発現されたPD-L1に結合することができ、これはELISAによって測定された親和性の結果と一致していた。
【0569】
実施例20
IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびIgG-scFv-XOMA052-AM4B6のPD1/PD-L1遮断活性
[00626]このアッセイでは、293T-PD-L1-CD3L細胞はPD-L1および抗CD3 scFvを発現し、Jurkat-NFAT-Luc-PD1細胞はPD-1を発現し、CD3刺激によって活性化することができるNFATシグナルを担持していた。NFAT活性化は、ルシフェラーゼ遺伝子の転写および発現をもたらし、その基質によって検出することができる。2つの細胞系を、MabSpace Biosciencesによって生成した。
【0570】
[00627]簡単に述べると、293T-PD-L1-CD3L細胞を採取し、2x10細胞/mlの密度で再懸濁した。ウェルあたり20μlの細胞を、ハーフウェルプレートに添加した。IgG-scFv-ACZ885-AM4B6、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6およびAM4B6-hIgG1を連続希釈(3倍希釈)して、2%FBSを含むRPMI培地中で9種の濃度を得た。ウェルあたり20μlの抗体をハーフウェルプレートに添加し、プレートを37℃、5%COで30minインキュベートした。Jurkat-NFAT-Luc-PD1細胞を採取し、2%FBSを含むRPMI培地中に4x10細胞/mlの密度で再懸濁した。最後に、ウェルあたり20μlの細胞をハーフウェルプレートに添加し、37℃、5%COで5hインキュベートした。60μlのOneGlo検出試薬(Promega、E6120)を各ウェルに添加し、室温で5分間インキュベートした。発光シグナルをマイクロプレートリーダーによって読み取った。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0571】
[00628]図32に示されるように、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6およびAM4B6-hIgG1は、この細胞ベースのアッセイにおいてPD-L1に対する類似する遮断活性を有していた。
【0572】
実施例21
ヒト皮膚線維芽(HDF)細胞上でのヒトIL-1βに対するIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の遮断活性
[00629]HDF細胞上でのヒトIL-1βに対するIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の遮断活性。
【0573】
[00630]リガンド/受容体遮断活性を試験するために、4x10個/mLのHDF細胞を、100μL/ウェルで、50pg/mLの組換えヒトIL-1β(Sino Biological、カタログ番号10139)で刺激したが、陰性対照として細胞をIL-1βで刺激しなかった。次いで、100nM~0.00038nM(4倍連続希釈)の範囲の連続濃度で100μL/ウェルのIgG-scFv-XOMA052-AM4B6およびXOMA052を培養物に添加し、室温で一晩(16~17h)インキュベートした。刺激後、細胞培養上清中のIL-6放出を、キットの使用説明書によって指導されるIL-6 ELISA Kit(R&D、DY206、P209026)を使用して検出した。
【0574】
[00631]図33に示されるように、IgG-scFv-XOMA052-AM4B6およびXOMA052は、IL-1βを用量依存的に遮断することができ、IL-1βに対するIgG-scFv-XOMA052-AM4B6の遮断活性は、HDF細胞上でのXOMA052のものと類似していた。
【0575】
[00632]レポーター細胞上でのhIL-1βに対するIgG-scFv-ACZ885-AM4B6の遮断活性
[00633]このアッセイでは、HEK-Blue(商標)CD40L細胞を、Invivogen(カタログ番号hkb-cd40)から購入した。これらの細胞は、ヒトCD40遺伝子およびNF-κB誘導性SEAP構築物のHEK293細胞への安定なトランスフェクションによって生成された。CD40Lの、その受容体CD40への結合は、NF-κBの活性化およびSEAPのその後の産生をもたらすカスケードを誘発し、QUANTI-Blueによってモニタリングすることができる。HEK293細胞は、CD40Lと共通のシグナル伝達経路を共有するサイトカインIL-1βのための受容体を内因性に発現する。したがって、IL-1β媒介性SEAP産生を、中和抗体を使用して遮断することができる。
【0576】
[00634]簡単に述べると、対数期細胞でHEK293-CD40L細胞を収集し、5x10/ウェル(100μl/ウェル)の密度で細胞を96ウェルプレート中に播種して、一晩接着させる。IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびACZ885を、100nMから連続希釈(4倍希釈)して、完全培養培地中で9種の濃度を得た。50μl/ウェルの希釈した抗体および50μl/ウェルのヒトIL-1β(1ng/mL)を細胞に添加し、37℃で24hインキュベートする。次の日、160μlのQUANTI-Blue(商標)溶液(Invivogen、カタログ番号rep-qbs)を新しいプレートに添加し、40μlの細胞培養上清をプレートに添加した。37℃で2h、プレートをインキュベートする。620nmで分光光度計を使用してSEAPレベルを決定する。データをGraphPad Prismによって分析した。
【0577】
[00635]図34に示されるように、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6およびACZ885(カナキヌマブ)は、用量依存的様式でIL-1βを遮断することができるが、IgG-scFv-ACZ885-AM4B6の遮断活性は、HEK293-CD40Lレポーター細胞上でACZ885(カナキヌマブ)と類似していた。
【0578】
[00636]
【0579】
【表24-1】
【0580】
【表24-2】
【0581】
【表24-3】
【0582】
【表24-4】
【0583】
【表24-5】
【0584】
【表24-6】
【0585】
【表24-7】
【0586】
【表24-8】
【0587】
【表24-9】
【0588】
【表24-10】
【0589】
【表24-11】
【0590】
【表24-12】
【0591】
【表24-13】
【0592】
【表24-14】
【0593】
【表24-15】
【0594】
【表24-16】
【0595】
【表24-17】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【配列表】
2023550419000001.app
【国際調査報告】