(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】モーターサイクルのための排気ガスシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20231124BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20231124BHJP
【FI】
F01N3/28 301H
F01N3/28
F01N3/28 301J
F01N13/08 G
F01N13/08 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530165
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2020083071
(87)【国際公開番号】W WO2022106037
(87)【国際公開日】2022-05-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マゲリーニ、アドリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス、ジョヴァンニ
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004BA06
3G004DA24
3G091AA03
3G091AB01
3G091BA01
3G091HA11
3G091HA12
3G091HB02
(57)【要約】
鞍乗型車両20の内燃エンジン2のための排気ガスシステム1であって、1つ又は複数の1次触媒6が内部に配置されている第1の管路部3と、1つ又は複数の2次触媒6’が内部に配置されている第2の管路部4と、前記第2の管路部4の内部に配置されている2次触媒の個数よりも少ない個数である2次触媒6’が内部に配置されている第3の管路部5と、排気ガスを大気に排出するための少なくとも1つの出口16、17とを備え、前記第1の管路部3が、前記内燃エンジン2の出口に接続可能な第1の端部11から延在し、分岐点19において前記第2及び第3の管路部4、5に分岐し、前記排気ガスシステム1が、エンジン2から来る排気ガス流れを、第1の管路部3から前記第2及び第3の管路部4、5のうちの一方又は両方に偏流させるように構成されている少なくとも1つの弁7をさらに備える排気ガスシステム1。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(20)の内燃エンジン(2)のための排気ガスシステム(1)であって、
1つ又は複数の1次触媒(6)が内部に配置されている第1の管路部(3)と、
1つ又は複数の2次触媒(6’)が内部に配置されている第2の管路部(4)と、
前記第2の管路部(4)の内部に配置されている2次触媒の個数よりも少ない個数である2次触媒(6’)が内部に配置されている第3の管路部(5)と、
排気ガスを大気に排出するための少なくとも1つの出口(16、17)と
を備え、
前記第1の管路部(3)が、前記内燃エンジン(2)の出口に接続可能な第1の端部(11)から延在し、分岐点(19)において前記第2及び第3の管路部(4、5)に分岐し、
前記排気ガスシステム(1)が、前記エンジン(2)から来る排気ガス流れを、前記第1の管路部(3)から前記第2及び第3の管路部(4、5)のうちの一方又は両方に偏流させるように構成されている少なくとも1つの弁(7)をさらに備える、排気ガスシステム(1)。
【請求項2】
前記第3の管路部(5)の内部には触媒(6’)が配置されていない、請求項1に記載の排気ガスシステム。
【請求項3】
前記第1の管路(3)の内部に2つの前記1次触媒(6)が配置されている、請求項1又は2に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項4】
前記第2の管路(4)の内部に2つの前記2次触媒(6’)が配置されている、請求項1から3までの一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弁(7)が、前記第1の管路部(3)が前記第2の管路部(4)及び第3の管路部(5)に分岐する前記分岐点(19)に配置されている三方弁(7A)である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項6】
前記三方弁(7A)が、前記弁(7A)が前記排気ガス流れを前記第1の管路部(3)から前記第2の管路部(4)に完全に偏流させる第1の作動位置(7A’)と、前記弁(7A)が前記排気ガス流れを前記第1の管路部(3)から部分的には前記第2の管路部(4)に、部分的には前記第3の管路部(5)に偏流させる第2の作動位置(7A’’)との間で切り替えられるように構成されている、請求項5に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項7】
前記弁(7A)が、前記弁(7A)が前記排気ガス流れを前記第1の管路部(3)から前記第3の管路部(5)に完全に偏流させる第3の作動位置(7A’’’)にさらに切り替えられるように構成されている、請求項6に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弁(7)が、前記第2の管路部(4)の途中に配置されており、複数の動作位置間で切り替えられるように構成されているバタフライ弁(7B)である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの弁(7)が、前記第3の管路部(5)の途中に配置されており、複数の動作位置間で切り替えられるように構成されているバタフライ弁(7C)である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項10】
前記第2の管路部(4)が第1のマフラ部(8)をさらに備える、請求項1から9までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項11】
前記第3の管路部(5)が第2のマフラ部(9)をさらに備える、請求項10に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項12】
前記第1及び第2のマフラ部(8、9)が、共通のケーシング(10)内、又はそれぞれのケーシング(10’、10’’)内に包囲されている、請求項11に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項13】
前記排気ガスシステム(1)の前記少なくとも1つの出口(16、17)が、前記第2の管路部(4)の遠位端(17)又は前記第3の管路部(5)の遠位端(16)であり、前記第2及び第3の管路部(4、5)が互いに流体接続されている、請求項1から12までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項14】
前記排気ガスシステム(1)の前記少なくとも1つの出口(16、17)が、前記第2及び第3の管路部(4、5)の遠位端(16、17)にそれぞれ対応する2つの出口を備える、請求項1から12までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項15】
前記第2の管路部(4)が、前記第3の管路部(5)の断面積よりも細い断面積を有し、又は逆になっている、請求項1から14までのいずれか一項に記載の排気ガスシステム(1)。
【請求項16】
出口を有する内燃エンジン(2)と、請求項1から15までの1つ又は複数の項に記載の排気ガスシステム(1)とを備えるモーターサイクル(20)であって、前記排気ガスシステム(1)が、前記内燃エンジン(2)から来る排気ガス流れを排出するために、前記出口に接続されている、モーターサイクル(20)。
【請求項17】
前記モーターサイクルの速度を測定するように構成されている速度センサ(13)と、
スロットル弁の角度位置を測定するように構成されているスロットル位置センサ(14)と、
前記エンジンのクランク軸の回転数を測定するように構成されているエンジン速度センサ(15)と
のうちの1つ又は複数をさらに備え、
前記排気ガスシステムの前記弁(7)と、前記センサ(13、14、15)のうちの1つ又は複数とに動作可能に接続されている制御ユニット(12)をさらに備える、請求項16に記載のモーターサイクル(20)。
【請求項18】
前記制御ユニット(12)が、前記センサ(13、14、15)によって測定される1つ又は複数の値に応じて、前記弁(7)を1つの動作位置から別の動作位置まで切り替える指令を出すように構成されている、請求項17に記載のモーターサイクル(20)。
【請求項19】
第1の速度しきい値及び/又は前記スロットル弁の第1の角度位置及び/又は前記クランク軸の第1の回転数が到達されると、前記制御ユニット(12)が、前記弁(7)を、単一経路の作動位置(7A’、7A’’’、7B’’、7C’’)から二経路の作動位置(7A’’、7B’、7C’)まで切り替える指令を出すように構成されており、及び逆になっており、
前記単一経路の作動位置(7A’、7A’’’、7B’’、7C’’)が、前記排気ガスが前記第1及び第2の管路部(3、4)のみを、又は第1及び第3の管路部(3、5)のみを流れる前記弁(7)の作動位置であり、
前記二経路の作動位置(7A’’、7B’、7C’)が、前記排気ガスが前記第1の管路部(3)から部分的には第2の管路部(4)を、部分的には前記第3の管路部(5)を流れる前記弁(7)の作動位置である、請求項17及び18のいずれか一項に記載のモーターサイクル(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの分野に属する。特に、本発明は、鞍乗型車両の内燃エンジンの分野に属する。さらに詳細には、本発明は、前述した種類の車両の内燃エンジンのための排気ガスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の観点での最も一般的且つ最新の法的規制によれば、内燃エンジンによって生成される雑音及び前記エンジンによって生成され環境中に入り込む排気ガス中に含まれている汚染物質の量は共に、非常に厳しい制限及び値よりも下に保たれなければならない。
【0003】
前述の法的制限に見合うために、内燃エンジンの製造業者によって解決策が提案されており、最も一般的な解決策によれば、排気ガスシステムの途中に配設されており、特に排気ガスシステムの排気ガスパイプ又は排気ガス管路のうちの1つ若しくは複数の内側に配設されている1つ或いは複数の触媒が使用され、燃焼によって生成された排気ガス中に含まれている汚染物質は、前記排気ガスが環境中に排出される前に捕捉される。
【0004】
従来技術による排気ガスシステムの一実例は、本出願と同じ出願人の名前で2017年11月3日に出願された、PTC出願PCT/IB2017/0566881から生じる米国特許出願公開第2020/0056519号により知られている。
【0005】
米国特許出願公開第2020/0056519号による排気ガスシステムにより、触媒によって捕捉される汚染物質の量が満足であることが分かったが、前記排気ガスシステムは欠点による影響を受けており、本出願の出願人は、本発明を用いてその欠点を克服又は少なくとも低減することを目指している。
【0006】
実際には前述の法的制限は、地域ごとに異なる又は、同じ地域若しくは同じ国の区域ごとでさえも異なる場合があり、例えば前述の法的制限は、都市区域では都市区域の外よりも厳しいことを考慮しなければならない。
【0007】
さらに、触媒がエンジンの性能に影響しており、例えば触媒の個数及び/又は寸法が増加することにより、特に発生する出力の観点、したがって車両の速度及び/又は加速の観点で、エンジンの性能が低下することも考慮しなければならない。
【0008】
従来技術による排気ガスシステムは、触媒の性能をエンジンの性能に合わせて調整することができず、その結果、例えば非常に高性能な触媒の組の場合、より多くの出力が都合の良いであろう状況(例えば都市区域の外)では出力の不足が生じ、その一方で、(エンジン性能への影響を低減させた)性能が低い触媒の組を使用すると、都市区域ではその車両を使用することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0056519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の主な目的は、従来技術による排気ガスシステムに影響を与えている欠点を克服することである。
【0011】
特に、本発明のさらなる目標は、触媒の組を備え、前記触媒の組の性能(したがって、エンジンの性能に対する前記触媒の組の影響)を、偶発的な状況に応じて調整することができる排気ガスシステムを提供することである。
【0012】
本出願のさらなる目標は、エンジン(したがってその車両)を、より多くのエンジン出力が必要且つより寛大な対汚染規制が予定されている及び/又は通用している区域内で使用する場合には、エンジンの性能に対する触媒の組の影響を低減させることができ、エンジン(したがってその車両)を、より厳しい対汚染規制が通用している区域内で使用する場合には、再び触媒の性能を高めることができる排気ガスシステムを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目標は、単純且つ迅速な作業によって、したがってコストを削減し又は少なくとも抑えて、製造され複数の異なる車両に設置されるように適合されている排気ガスシステムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、例えば対応する異なる個数の触媒、並びに/又は異なる種類及び/若しくは寸法である触媒を備えることにより、対応する異なる触媒性能をもたらす少なくとも2つの異なる流路に沿って、排気ガスを偏流させることができる排気ガスシステムを用いて、上記の目標の概要を実現することができる(したがって先行技術の排気ガスシステムに影響を与えている欠点を克服する)という考察から生じる。
【0015】
上記の考察を鑑み、先行技術の排気ガスシステムに影響を与えている欠点と、上記の目標及び/又は目的の概要を共に考慮して、本発明によれば、請求項1で主張される排気ガスシステム及び請求項15で主張されるモーターサイクルが提供され、本発明によるシステム及びモーターサイクルのさらなる実施例が従属請求項によって定義される。
【0016】
本出願において開示されるのは、排気ガスシステム、特に鞍乗型車両の内燃エンジンのための排気ガスシステムであって、
- 1つ又は複数の1次触媒が内部に配置されている第1の管路部と、
- 1つ又は複数の2次触媒が内部に配置されている第2の管路部と、
- 前記第2の管路の内部に配置されている触媒の個数よりも少ない個数である触媒が内部に配置されている第3の管路部と、
- 排気ガスを大気に排出するための少なくとも1つの出口と
を備え、
前記第1の管路部が、前記内燃エンジンの出口に接続可能な第1の端部から延在し、分岐点において前記第2及び第3の管路部に分岐し、
前記排気ガスシステムが、エンジンから来る排気ガス流れを、第1の管路部から前記第2及び第3の管路部のうちの一方又は両方に偏流させるように構成されている少なくとも1つの弁をさらに備える排気ガスシステムである。
【0017】
一実施例によれば、汚染の削減を改善するために、前記第1の管路の内部に2つの前記1次触媒が配置されている。
【0018】
一実施例によれば、汚染の削減をさらに改善するために、前記第2の管路の内部に2つの前記2次触媒が配置されている。
【0019】
一実施例によれば、排気システムの設定を選ぶために、前記少なくとも1つの弁は、前記第1の管路部が前記第2の管路部及び第3の管路部に分岐する前記分岐点に配置されている三方弁である。
【0020】
一実施例によれば、前記三方弁は、前記弁が前記排気ガス流れを前記第1の管路部から前記第2の管路部に完全に偏流させる第1の作動位置と、前記弁が前記排気ガス流れを前記第1の管路部から部分的には前記第2の管路部に、部分的には前記第3の管路部に偏流させる第2の作動位置との間で切り替えられるように構成されている。このようにして、2つの好ましい排気ガスシステムの設定が提供される。
【0021】
一実施例によれば、前記弁は、前記弁が前記排気ガス流れを前記第1の管路部から前記第3の管路部に完全に偏流させる第3の作動位置にさらに切り替えられるように構成されている。このようにして、より良いエンジン性能を実現することができる。
【0022】
一実施例によれば、排気ガスシステムの最も都合の良い設定を選択するために、前記少なくとも1つの弁が、前記第2の管路部の途中に配置されており、複数の動作位置間で切り替えられるように構成されているバタフライ弁である。
【0023】
一実施例によれば、排気ガスシステムの最も都合の良い設定を選択するために、前記少なくとも1つの弁が、前記第3の管路部の途中に配置されており、複数の動作位置間で切り替えられるように構成されているバタフライ弁である。
【0024】
一実施例によれば、発生する雑音を減らすために、前記第2の管路部は第1のマフラ部をさらに備える。
【0025】
一実施例によれば、発生する雑音をさらに減らすために、前記第3の管路部は第2のマフラ部をさらに備える。
【0026】
一実施例によれば、排気ガスシステムを審美的な観点から改善するために、前記第1及び第2のマフラ部は、共通のケーシング内、又はそれぞれのケーシング内に包囲されている。
【0027】
一実施例によれば、雑音の低減を最大限に得るために、前記排気ガスシステムの前記少なくとも1つの出口が、前記第2の管路部の遠位端又は前記第3の管路部の遠位端であり、前記第2及び第3の管路部が互いに流体接続されている。
【0028】
一実施例によれば、前記排気ガスシステムの前記少なくとも1つの出口が、前記第2及び第3の管路部の遠位端にそれぞれ対応する2つの出口を備える。このようにして、2つの管路部が、2つの独立した排気ガスシステムとして機能する。
【0029】
一実施例によれば、第2の部に行くガス流れの割合を調整し、したがって汚染を減らすために、前記第2の管路部が、前記第3の管路部の断面積よりも細い断面積を有し、又は逆になっている。
【0030】
一実施例によれば、第3の管路部の上流側に配置されている触媒のみを使用するために、第3の管路部の内部に配置されている触媒の個数は0である。
【0031】
本出願においてさらに開示されるのは、出口を有する内燃エンジンと、開示されている一実施例による排気ガスシステムとを備えるモーターサイクルであって、排気ガスシステムが、前記内燃エンジンから来る排気ガス流れを排出するために、前記出口に接続されている、モーターサイクルである。
【0032】
一実施例によれば、前記モーターサイクルは、
- 前記モーターサイクルの速度を測定するように構成されている速度センサと、
- スロットル弁の角度位置を測定するように構成されているスロットル位置センサと、
- 前記エンジンのクランク軸の回転数を測定するように構成されているエンジン速度センサと
のうちの1つ又は複数をさらに備え、
前記排気ガスシステムの前記弁と、前記センサのうちの1つ又は複数とに動作可能に接続されている制御ユニットをさらに備える。このようにして、排気ガスシステムの弁は、エンジン性能のパラメータに基づいて、特に低性能の領域と高性能の領域との間を区別することを許容するパラメータに基づいて制御される。
【0033】
一実施例によれば、前記制御ユニットは、前記センサによって測定される1つ又は複数の値に応じて、前記弁を1つの動作位置から別の動作位置まで切り替える指令を出すように構成されている。
【0034】
一実施例によれば、第1の速度しきい値及び/又はスロットル弁の第1の角度位置及び/又はクランク軸の第1の回転数が到達されると、前記制御ユニットは、弁を、単一経路の作動位置から二経路の作動位置まで切り替える指令を出すように構成されており、及び逆になっており、
前記単一経路の作動位置は、排気ガスが第1及び第2の管路部のみを、又は第1及び第3の管路部のみを流れる前記弁の作動位置であり、
前記二経路の作動位置は、排気ガスが第1の管路部から部分的には第2の管路部を、部分的には第3の管路部を流れる弁の作動位置である。
【0035】
このようにして、車両の性能を設定し改良することができる。
【0036】
本発明は、図面に示されている本発明の実施例の以下の詳細な説明を用いて、さらに明らかになる。しかしながら本発明の範囲は、以下に説明され図面に示されている実施例に限定されず、逆に本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されることを指摘する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】一実施例によるエンジン及び排気ガスシステムを概略的に示す図である。
【
図1A】一実施例による排気ガスシステムの第2の管路部を概略的に示す図である。
【
図1B】一実施例による排気ガスシステムの第1の管路部を概略的に示す図である。
【
図1C】さらなる実施例による排気ガスシステムの管路部の分岐部を概略的に示す図である。
【
図1D】さらなる実施例による排気ガスシステムの管路部の分岐部を概略的に示す図である。
【
図1E】さらなる実施例による排気ガスシステムの管路部の分岐部を概略的に示す図である。
【
図1F】一実施例による排気ガスシステムの第3の管路部を概略的に示す図である。
【
図1G】さらなる実施例による排気ガスシステムの遠位端部を概略的に示す図である。
【
図2】本発明による排気ガスシステムを装備するように適合されているモーターサイクルを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明による排気ガスシステムは、モーターサイクル、モーターバイク、スクーターなどの、1つ又は2つのフロント・ステアリング・ホイールを有する鞍乗型車両に適用される場合に、特に有利であり都合が良いことが分かった。このため、以下において本発明による排気ガスシステムは、前述の種類の車両を特に参照して最終的に開示される。しかしながら、本発明による排気ガスシステムの適用は前述の車両に限定されず、逆に任意の種類の内燃エンジンが、本発明による排気ガスシステムを装備し得ることを指摘する。
【0039】
図1において、図示されている本発明の実施例による排気ガスシステムは、第1の(又は主な)管路3を備え、管路3は、エンジン2の排気ガス出口に接続されるように適合されている端部11を有する。第1の管路部3の端部17がエンジン2の出口に接続されている方式は本発明の範囲内に入らず、したがって、その詳細な説明は簡潔にするために省略されている。
【0040】
さらに図示のように、第1の管路部3は、分岐点19(
図1A及び
図1B参照)において第2の管路部4及び第3の管路部5に分岐する。つまり、前記の第2の管路部4及び第3の管路部5が、分岐点19において第1の管路部3から延在する。さらに(
図1Fに)示すように、第2の管路部4及び第3の管路部5は、それぞれ出口17及び出口16を画定し、排気ガスは、第1の管路部3から来て第2の管路部4及び第3の管路部5の内部を流れ、そこからそれぞれ出口17及び出口16を通して排出される。
【0041】
図1A、
図1B、及び
図1Fを参照すると、触媒6、6’は、前記の第1の管路部3、第2の管路部4、及び第3の管路部5のうちの1つ又は複数に配置されていることが理解できよう。
図1A、
図1B、及び
図1Fに示されている実施例によれば、1つ又は2つの1次触媒6が第1の管路部3の内部に配置されており、1つ又は複数の2次触媒6’が第2の管路部4の内部に配置されており、1つ又は0個の2次触媒6’が第3の管路部5の内部に配置されている。2次触媒とは、1次触媒の下流側に配置されている触媒、したがって、すでに1次触媒によって触媒作用を及ぼされたガス流れに触媒作用を及ぼす触媒を意味する。
【0042】
しかしながら、第1の管路部3、第2の管路部4、及び第3の管路部5の中に配置されている触媒6、6’の各々の個数、種類、及び寸法などは、必要性及び/又は周囲の状況に従って選択され得ることを留意しなければならない。本発明の目的のため、及び以下で明らかになる理由のために、本発明による排気ガスシステムの少なくとも好ましい一実施例によれば、第3の管路部5の内部に配置される触媒6’の個数は、第2の管路部4の内部に配置される触媒6’の個数よりも少ない。つまり、前記の少なくとも一実施例によれば、第2の管路部4の内部に1つの触媒6’が配置されている場合、第3の管路部5の内部には触媒6’が配置され得ないことを意味する。別の少なくとも1つの追加の実施例によれば、第2の管路部4が2つの触媒6’を備える場合に、第3の管路部5の内部には1つの触媒6’が配置されることを意味する。同様に、さらに非限定的な実例を用いると、それぞれ、第2の管路部4の内部にはn個の触媒6’が配置され、第3の管路部5の内部にはn-1個の触媒6’が配置され得る。
【0043】
予想されるように、排気ガスシステムの触媒はエンジン2の性能に影響し、その結果、触媒により、エンジンによって発生する出力が低すぎる又は十分ではない状況が生じる場合がある。
【0044】
しかしながら、さらに予想されるように、本発明による排気ガスシステム1により、入口11から出口17及び/又は16までの排気ガスが流れる経路を(以下の説明を参照すると、自動的にさえ)選択することができ、したがって使用される(ガスが通って流れるように強制される)触媒の個数を選択することができ、そうして、利用可能なエンジン出力の量を変動させることができる。
【0045】
この目的のために、本発明によれば、排気ガスシステム1の内部で排気ガスの流れを偏流させるための偏流手段が提供される。
【0046】
特に、
図1Eに示されている本発明の実施例によれば、前記偏流手段は、排気ガスシステム1の内部、すなわち第1の管路部3の分岐点19に配設されている三方弁7Aを備える。前記弁7Aは、3つの異なる動作位置間で切り替えることができる。第1の動作位置7A’では、弁7Aは、第3の管路部5を閉止し第2の管路部4を開放する。つまり、第1の管路部3から来るガスの流れ全体が、第2の管路部4に偏流し出口17を通して排出される。第2の動作位置7A’’では、弁7Aは、第3の管路部5と第2の管路部4をどちらも開放する。つまり、第1の管路部3から来る排気ガスの流れが、部分的には第3の管路部5に、部分的には第2の管路部4に偏流し、出口17と16の両方を通してか、出口16のみを通して(以下の説明を参照)かのいずれかで排出される。第3の動作位置7A’’’では、弁7Aは第2の管路部4を閉止し、第3の管路部5を開放する。つまり、第1の管路部3から来るガスの流れが、全体的に第3の管路部5に偏流し出口16を通して排出される。
【0047】
図1Cに示されている本発明のさらなる一実施例によれば、前記偏流手段は、第2の管路部4の内部、すなわち分岐点19に対して下流側に配置されている少なくとも1つのバタフライ弁7Bを備える。前記バタフライ弁7Bは、開放状態の第1の動作位置7B’と閉止状態の第2の動作位置7B’’との間で切り替えることができる。バタフライ弁7Bが開放位置7B’にある場合、第1の管路部3から来る排気ガスは、部分的には第3の管路部5に、部分的には第2の管路部4に流れる。バタフライ弁7Bが閉止位置7B’’にある場合、第1の管路部3から来る排気ガスは、第3の管路部5のみに流れることができる。
【0048】
図1Dに示されている本発明のさらなる一実施例によれば、前記偏流手段は、第3の管路部5の内部、すなわち分岐点19に対して下流側に配置されている少なくとも1つのバタフライ弁7Cを備える。前記バタフライ弁7Cは、開放状態の第1の動作位置7C’と閉止状態の第2の動作位置7C’’との間で切り替えることができる。バタフライ弁7Cが開放位置7C’にある場合、第1の管路部3から来る排気ガスは、部分的には第3の管路部5に、部分的には第2の管路部4に流れる。弁7Cが閉止位置7C’’にある場合、第1の管路部3から来る排気ガスは、第2の管路部4のみに流れることができる。
【0049】
明確にするために、本発明によれば、バタフライ弁7B及び7Cのうちの一方又は両方が使用され得、バタフライ弁7B及び7Cのうちの一方又は両方が、三方弁7Aに対して代替的にも追加的にも、どちらも使用され得ることを指摘する。
【0050】
したがって上記より、一方又は両方のバタフライ弁7B及び7Cをそれぞれの開放位置と閉止位置との間で切り替えること、及び/又は三方弁7Aをそのそれぞれの3つの動作位置間で切り替えることによって、排気ガスが、第2の管路部4及び第3の管路部5のうちのどの管路部を通って、したがって1つ又は複数の触媒6、もしあれば6’のうちのどの触媒を通って流れ得るかを選択可能になることが生じる。
【0051】
本発明の排気ガスシステムのさらなる詳細は、
図1Gから見出すことができる。
図1Gに示すように、第2の管路部4及び第3の管路部5のうちの一方又は両方は、それぞれ第1のマフラ8及び第2のマフラ9を備え得、第2の管路部4の(出口17の近傍にある)端部は、第1のマフラ8を通って延在し、第3の管路部5の(出口16の近傍にある)端部は、第2のマフラ9を通って延在する。
【0052】
さらに図示のように、第1のケーシング10’及び/又は第2のケーシング10’’が設けられ得(第1のケーシング10’及び第2のケーシング10’’は両方とも
図1Gに示されている)、第1のマフラ8は、前記第1のケーシング10’内に包囲(配設)されており、及び/又は前記第2のマフラ9は、前記第2のケーシング10’’内に包囲(配設)されている。
【0053】
或いは、共通のケーシング10が設けられ得、この場合、前記の第1のマフラ8と第2のマフラ9がどちらも、前記共通のケーシング10内に包囲(配設)されている。
【0054】
さらに、共通のケーシング10が設けられる場合、第3の管路部5の端部又は遠位端と、第2の管路部4の端部又は遠位端が共に、共通のケーシング10の壁を横切って延在する、つまり、第3の管路部5の出口16及び第2の管路部4の出口17がどちらも、直接大気中且つ共通のケーシング10の外側で終端する、第1の解決策が想定される。
【0055】
さらに、共通のケーシング10が設けられる場合、(図示のように)第3の管路部5の端部若しくは遠位端、又は第2の管路部4の端部若しくは遠位端のいずれかが、共通のケーシング10の壁を横切って延在する、つまりこの場合、第3の管路部5の出口16若しくは第2の管路部4の出口17のいずれかが、直接大気中且つ前記共通のケーシング10の外側で終端する、代替的な解決策が想定される。
【0056】
この最後の場合には、(図示のように)第3の管路部5若しくは第2の管路部4のいずれかが、好ましくはそれぞれマフラ9又はマフラ8の上流側に、複数の貫通穴21を備え得、その結果、第2の管路部4の出口17を通して排出されるガスが、穴21を通って第3の管路部5に入り込む(そして、最終的に第3の管路部の出口16を通して排出される)か、第3の管路部5の出口16を通して排出されるガスが、穴21を通って第2の管路部4に入り込む(そして、最終的に第2の管路部の出口17を通して排出される)かのいずれかとなる。
【0057】
以下では
図2を参照すると、モーターサイクルが参照番号20によって特定されている。図示のように、モーターサイクル20は、前記モーターサイクルの速度を測定するように構成されている速度センサ13と、スロットル弁の角度位置を測定するように構成されているスロットル位置センサ14と、前記エンジンのクランク軸の回転数を測定するように構成されているエンジン速度センサ15とを装備している。モーターサイクル20は、前記の速度センサ13、スロットル位置センサ14、及びエンジン速度センサ15の各々に動作可能に接続されている制御ユニット12をさらに備え、その結果、前記センサ13、14、及び15によって、モーターサイクル速度の瞬間の値、前記スロットル弁の瞬間の位置、及び瞬間のエンジン速度がそれぞれ収集され、前記制御ユニット12に送信又は転送される。さらに、制御ユニット12は、前記の三方弁7A、バタフライ弁7B、及びバタフライ弁7Cのうちの1つ又は複数とも接続されており、その結果、前記の三方弁7A、バタフライ弁7B、及びバタフライ弁7Cのうちの1つ又は複数は、前記制御ユニット12によって発せられたインパルスを受信すると、それぞれの動作位置間で切り替えられる。
【0058】
したがって上記より、偶発的な条件及び/又は必要性に基づいて、排気ガス流れに対する最も都合の良い経路が自動的に選択されるようになる。実際に、非限定的な実例を用いて仮定すると、モーターサイクル2が、より多くのエンジン出力が必要且つより寛大な対汚染規則が予定されている都市区域の外を走行している場合には、触媒6、6’の個数を減らした排気ガス流れが自動的に選択される。例えば、第2の管路部4が閉止され、ガスは、触媒6’がより少ない又は触媒6’がない第3の管路部5の内部のみを流れる。
【0059】
逆に、非限定的な実例を用いて仮定すると、モーターサイクル2が、必要なエンジン出力がより少ない且つより厳しい対汚染規則が予定されている都市区域を走行している場合には、触媒6、6’の個数を増やした排気ガス流れが自動的に選択される。例えば、第2の管路部4及び第3の管路部5の両方が開放され、排気ガスは、(触媒6’がより少ない又は触媒6’がない)第3の管路部5の内部(少なくとも1つの触媒6’がある)及び第2の管路部4の内部の両方を流れる。
【0060】
したがって、図面に示されている本発明の実施例の上記の説明を用いて、本発明により、従来技術による排気ガスシステムに影響を与えている欠点を克服又は少なくとも低減することが可能になると証明されるに違いない。
【0061】
特に、本発明を用いて、
触媒の組の性能(したがってエンジンの性能に対する触媒の組の影響)を、偶発的な状況に応じて調整することができ、
エンジン(したがってその車両)を、より多くのエンジン出力が必要且つより寛大な対汚染規制が予定されている及び/又は通用している区域内で使用する場合には、エンジンの性能に対する触媒の組の影響を低減させることができ、エンジン(したがってその車両)を、より厳しい対汚染規制が通用している区域内で使用する場合には、再び触媒の性能を高めることができ、
単純且つ迅速な作業によって、したがってコストを削減し又は少なくとも抑えて、製造され複数の異なる車両に設置することができる排気ガスシステムが提供される。
【0062】
本発明は、図面に示されている本発明の実施例の上記の説明を用いて明らかになったが、本発明は、上記で説明され図面に示されている実施例に限定されるものではない。
【0063】
これに関して、上記で説明され図面に示されている実施例は、異なる代替例を代表すると理解されるべきではないことを指摘する。逆に、開示されている実施例の各々は、さらなる実施例のうちの1つ又は複数と組み合わされて実施されるように適合されている。
【0064】
したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】