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  • 特表-ナノ粒子の調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ナノ粒子の調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/18 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20231124BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K49/18
A61K51/06 200
B01J13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530233
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 FR2021052041
(87)【国際公開番号】W WO2022106788
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2011904
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519433399
【氏名又は名称】エヌアッシュ テラギ
(71)【出願人】
【識別番号】511196870
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエ
(71)【出願人】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック - セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE - CNRS
【住所又は居所原語表記】3,rue Michel Ange,F-75016 Paris 16,France
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ティユモン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】リュクス,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ロスティ,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ロッチ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシノ,トリスタン
【テーマコード(参考)】
4C085
4G065
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085JJ03
4C085KA09
4C085KA28
4C085KA30
4C085KB12
4C085KB56
4C085LL18
4G065AA05
4G065AB28Y
4G065AB30Y
4G065AB38
4G065BB06
4G065CA01
4G065DA02
4G065EA02
4G065EA03
4G065EA06
(57)【要約】
本開示は、医薬における、特に腫瘍の治療のための、ナノ粒子およびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子のコロイド溶液を調製するための方法であって、各ナノ粒子がポリマーマトリックス上にグラフトされたキレート基を含み、前記キレート基の一部の部分のみが金属カチオンと錯化されており、他の部分が錯化されていない、以下を含む方法:
(1)前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供であって、前記前駆体ナノ粒子は、式[Ch-M-PSを有し、ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックス、例えばポリシロキサンマトリックスであり、
-[Ch-M]は、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンMと錯化されたキレート基であり、
-Chは、ポリマーマトリックス、例えばポリシロキサンマトリックス、の表面に共有結合的にグラフトされており、
-nは5~100であり、および
-ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~8nmである、前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供、
(2)好ましくは2.0未満、好ましくは1.0未満のpHを得るために、前記金属カチオンMの部分的放出を得るのに充分な時間をかけて、例えば塩酸溶液を添加することにより、前記コロイド溶液を酸性媒体中で処理する工程、
(3)必要に応じて、前記コロイド溶液を、例えば水で、希釈する工程、
(4)工程(2)で得られた前記ナノ粒子を、放出された前記金属カチオンMから分離する精製工程、
(5)必要に応じて、工程(4)で得られたナノ粒子の溶液を濃縮する工程、
(6)必要に応じて、工程(3)、(4)および(5)の繰り返し、
(7)必要に応じて、工程(4)、(5)または(6)の1つにおいて得られたナノ粒子の溶液の、凍結および/または凍結乾燥。
【請求項2】
が、磁気共鳴イメージング法(MRI)のための放射線増感剤および/または造影剤から選択される金属カチオンから選択され、例えば、Mがガドリニウムおよびビスマスから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キレート基Chが、大環状剤、好ましくは1,4,7-トリアザシクロノナン-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-テトラアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン,1-(グルタル酸)-4,7,10-トリ酢酸(DOTAGA)、2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトライル)テトラアセトアミド(DOTAM)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、およびデフェロキサミン(DFO)から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キレート基Chが下記式(I)のDOTAGAであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【化1】
【請求項5】
PSがポリシロキサンマトリックスであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆体ナノ粒子が以下の特徴を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法:
-前記ナノ粒子の総重量に対するシリコンの重量比が、5%~25%であり、
-前記ポリマーにグラフトされたキレート基の総数nが、ナノ粒子あたり5~50、好ましくは10~30であり、および
-前記ナノ粒子が、2~8nmの平均直径を有する。
【請求項7】
前記前駆体ナノ粒子が以下の特徴を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法:
(i)PSはポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Chは、下記式のDOTAGAキレート基であり、
【化2】

Si-C結合によって前記ポリシロキサンマトリックスにグラフトされており、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+であり、
(iv)nは、5~50、好ましくは10~30であり、および
(v)平均流体力学的直径は2~8nmである。
【請求項8】
ナノ粒子のコロイド溶液を調製するための方法であって、各ナノ粒子がポリマーマトリックス上にグラフトされたキレート基を含み、前記キレート基の第1フラクションf1が金属カチオンMと錯化されており、第2フラクションf2がカチオンMと錯化されており、第3フラクションf3が錯化されていない、以下を含む方法:
(1)前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供であって、前記前駆体ナノ粒子は、式[Ch-M-PSを有し、ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックスであり、
-Chは、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンMと錯化されたキレート基であり、
-Chは、ポリマーマトリックス上にグラフトされており、
-nは5~100であり、および
-ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~8nmである、前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供、
(2)2.0未満、好ましくは1.0未満のpHを得るために、前記金属カチオンMの部分的放出を得るのに充分な時間をかけて、例えば塩酸溶液を添加することにより、前記コロイド溶液を酸性媒体中で処理する工程、
(3)必要に応じて、溶液を、例えば水で、希釈する工程、
(4)工程(2)で得られた前記ナノ粒子を、放出された金属カチオンMから分離する精製工程、
(5)必要に応じて、工程(4)で得られた前記ナノ粒子の溶液を濃縮する工程、
(6)必要に応じて、工程(3)、(4)および(5)の繰り返し、
(7)必要に応じて、金属カチオンMと錯化されている所定量のキレート基Chを得るために、工程(2)、(3)、(4)、(5)または(6)で得られた前記ナノ粒子を、所定量の前記金属カチオンMと部分的に再錯化する工程、
(8)工程(4)、(5)、(6)または(7)で得られた前記ナノ粒子の溶液を、好ましくは40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有し、例えば前記金属カチオンMまたは放射性同位体とは別の金属カチオンである、充分な量のカチオンMと接触させて、工程(2)で遊離したキレート基Ch1の少なくとも一部を錯化させる工程、および
(9)必要に応じて、工程(8)で得られたナノ粒子の溶液を凍結および/または凍結乾燥する、工程。
【請求項9】
及び/又はMが、磁気共鳴イメージング法(MRI)のための放射線増感剤および/または造影剤、例えばガドリニウム又はビスマス、から選択される金属カチオンから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キレート基Chが、大環状剤、好ましくは1,4,7-トリアザシクロノナン-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-テトラアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン,1-(グルタル酸)-4,7,10-トリ酢酸(DOTAGA)、2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトライル)テトラアセトアミド(DOTAM)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、およびデフェロキサミン(DFO)から選択されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノ粒子を調製するためのプロセス、ナノ粒子、および医薬の分野における、特に腫瘍の治療のためのその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌との闘いは、現在、3つの主要な治療方法:手術、化学療法、および放射線療法に基づいている。現在、研究はこれらの3つのタイプの治療を改善する能力のためにナノ粒子の使用にますます焦点を当てているが、イメージング技術の改善を提供するか、またはイメージングと治療とを組み合わせて治療診断の概念を導くことさえも提供する。したがって、放射線療法の場合、高い原子番号を有する元素の存在のために、周囲の健康な組織を節約しながら、局所的に線量の効果を増加させることが可能である。
【0003】
それらの有利なマルチモード性および強力な前臨床研究にもかかわらず、現在臨床段階に達しているのは少数のナノ粒子のみである(Lux et al., 2018, Br. J. Radiology, 2018, 91, 20180365)。
【0004】
この数は、静脈内注射されたナノ粒子についてはさらに少なく、約155nmのシリカコアおよび金シェルを有するAuroShell、薬物送達のためのペグ化金コアからなるCUT-6091、核酸送達のための金ナノ粒子からなるNU-129、メラノーマターゲティングのための蛍光ポリシロキサンからなるCornell Dots、ならびに放射線療法およびMRIイメージングのためのポリシロキサンおよびガドリニウムキレートに基づくナノ粒子からなるAGuIXが挙げられ得る。
【0005】
これらのナノ粒子のうち、2つ(AGuIXおよびCornell Dots)は10nm未満の流体力学的直径を有し、静脈内投与後にその腎排泄を可能にする。超微細ナノ粒子は、可能性のある毒性を制限する一方で、より良好な腫瘍浸透、および、放射線増感の場合には送達される線量の有効性を局所的に増加させる「ナノスケール線量沈着」効果、にも起因する、この急速な腎排泄のために、臨床用途に特に適している。
【0006】
ナノ粒子の表面上のキレートの存在はしばしば、イメージングまたは治療に有用な金属イオンのキレート化に必要である。これは、近接照射療法またはシンチグラフィーで使用される放射性金属イオン、またはMRIで使用される磁気イオンの場合である。ナノ粒子の表面で金属キレートまたは遊離キレートを得るための2つの主要な戦略が、現在、文献に存在する。
【0007】
このタイプのナノ粒子を得るための第1の戦略は、ナノ粒子形成工程中にキレートを直接組み込むことによって合成を実施することである。これは、例えば、ガドリニウム錯体によって、および光線力学療法およびMRIのためのポルフィリンによって官能化された金ナノ粒子を得るために、N. G Chabloz et al.(Chem. Eur. J., 2020, 26, 4552-4566)によって採用された戦略である。この戦略は、V. L. Tran et al. 2018(Mt. Chem. B, 2018, 6, 4821-4834)によって提案されているポリシロキサンナノ粒子のワンポット合成にも使用され得る。
【0008】
次いでこれらのナノ粒子は、遊離キレート、または使用される出発シランに応じてガドリニウムを含むキレートを有する。しかしながら、この方法論にはいくつかの欠点があり、再現可能なナノ粒子を得るためには、比率および添加時間を非常に高い精度で決定しなければならず、これは臨床使用のためのスケールアップの試みを困難にする。
【0009】
第2の戦略は、所望のナノ粒子を得、次いで、後官能化工程を介して、遊離キレートまたはすでに金属を含むキレートを添加することにある。これは、P. Bouziotis et al.(Nanomedicine, 2017, 12, 1561-1574)によって、AGuIXポリシロキサン系ナノ粒子上で使用された戦略である。NODAGA無水物は、ナノ粒子の表面上で無水物と表面アミンとの反応によって官能化された。次いでガリウム68が添加され、前臨床PETイメージングを行うことが可能となった。M. Pretze et al. (Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, 2019, 62, 471-482)は、リガンド交換反応によってマレイミド官能基を導入し次いでNODAGAを添加する前に合成された金ナノ粒子に対して、同じタイプの戦略を使用した。銅64での放射性標識は、最終工程で行った。この戦略の主な難点は、表面電荷および親水性/親油性に関して、ナノ粒子およびそれらの表面のサイズを大幅に変化させ、出発ナノ粒子の異なる生体内分布をもたらし得ることである。
【0010】
したがって、特にAGuIXナノ粒子などの、すでに臨床段階に存在し、適切な生体内分布特性を有するナノ粒子の場合、出発ナノ粒子の特性の変化をできるだけ少なくする、ナノ粒子の表面上に遊離キレートを生成するための方法を開発することが必要であると思われる。それゆえ、本発明の別の目的は、出発ナノ粒子と同等であるが、元のキレートの一部が放出され、次いで、遊離したままであるか、または対象となる別の金属とキレート化することができる、ナノ粒子へのアクセスを提供することである。
【0011】
本開示は、これらの上述の目的の1つ以上に関する状況を改善する。
【0012】
腫瘍、特に原発性および/または転移性腫瘍の治療において適切な生体内分布を有するキレート化ナノ粒子を使用することも提案されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、以下に記載される実施形態のうちの1つ、またはそれらの組み合わせに関する:
実施形態1:ナノ粒子のコロイド溶液を調製するための方法であって、各ナノ粒子がポリマーマトリックス上にグラフトされたキレート基を含み、キレート基の一部の部分のみが金属カチオンと錯化されており、他の部分が錯化されていない、以下を含む方法:
(1)前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供であって、前駆体ナノ粒子は式[Ch-M-PSを有し、ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックス、例えばポリシロキサンマトリックスであり、
-[Ch-M]は、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンMと錯化されたキレート基であり、
-Chは、ポリマーマトリックス、例えばポリシロキサンマトリックス、の表面に共有結合的にグラフトされており、
-nは5~100であり、および
-ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~8nmである、前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供、
(2)好ましくは2.0未満、好ましくは1.0未満のpHを得るために、金属カチオンMの部分的放出を得るのに充分な時間をかけて、例えば塩酸溶液を添加することにより、コロイド溶液を酸性媒体中で処理する工程、
(3)必要に応じて、コロイド溶液を、例えば水で、希釈する工程、
(4)工程(2)で得られたナノ粒子を、放出された金属カチオンMから分離する精製工程、
(5)必要に応じて、工程(4)で得られたナノ粒子の溶液を濃縮する工程、
(6)必要に応じて、工程(3)、(4)および(5)の繰り返し、
(7)必要に応じて、工程(4)、(5)または(6)の1つにおいて得られたナノ粒子溶液の、凍結および/または凍結乾燥。
【0014】
実施形態2:Mが40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンから選択され、特に磁気共鳴イメージング法(MRI)のための放射線増感剤および/または造影剤から選択され、例えばMがガドリニウムおよびビスマスから選択されることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0015】
実施形態3:キレート基Chが、大環状剤、好ましくは1,4,7-トリアザシクロノナン-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-テトラアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン,1-(グルタル酸)-4,7,10-トリ酢酸(DOTAGA)、2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトライル)テトラアセトアミド(DOTAM)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、およびデフェロキサミン(DFO)から選択されることを特徴とする、実施形態1または2に記載の方法。
【0016】
実施形態4:キレート基Chが下記式(I)のDOTAGAであることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法:
【0017】
【化1】
【0018】
実施形態5:PSがポリシロキサンマトリックスであることを特徴とする、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
実施形態6:前駆体ナノ粒子が以下の特徴を有することを特徴とする、実施形態5に記載の方法:
-ナノ粒子総重量に対するシリコンの重量比が、5%~25%であり、
-ポリマーにグラフトされたキレート基の総数nが、ナノ粒子あたり5~50、好ましくは10~30であり、および
-ナノ粒子が、2~8nmの平均直径を有する。
【0020】
実施形態7:前駆体ナノ粒子が以下の特徴を有することを特徴とする、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法:
(i)PSはポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Chは、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0021】
【化2】
【0022】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+であり、
(iv)nは、5~50、好ましくは10~30であり、および
(v)平均流体力学的直径は2~8nmである。
【0023】
実施形態8:ナノ粒子のコロイド溶液を調製するための方法であって、各ナノ粒子がポリマーマトリックス上にグラフトされたキレート基を含み、キレート基の第1フラクションf1が金属カチオンMと錯化されており、第2フラクションf2がカチオンMと錯化されており、第3フラクションf3が錯化されていない、以下を含む方法:
(1)前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供であって、前駆体ナノ粒子は、式[Ch-M-PSを有し、ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックスであり、
-Chは、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンMと錯化されたキレート基であり、
-Chは、ポリマーマトリックス上にグラフトされており、
-nは5~100であり、および
-ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~8nmである、前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供と、
(2)2.0未満、好ましくは1.0未満のpHを得るために、金属カチオンMの部分的放出を得るのに充分な時間をかけて、例えば塩酸溶液を添加することにより、コロイド溶液を酸性媒体中で処理する工程、
(3)必要に応じて、溶液を、例えば水で、希釈する工程、
(4)工程(2)で得られたナノ粒子を、放出された金属カチオンMから分離する精製工程、
(5)必要に応じて、工程(4)で得られたナノ粒子の溶液を濃縮する工程、
(6)必要に応じて、工程(3)、(4)および(5)の繰り返し、
(7)必要に応じて、金属カチオンMと錯化されている所定量のキレート基Chを得るために、工程(2)、(3)、(4)、(5)または(6)で得られたナノ粒子を、所定量の金属カチオンと部分的に再錯化する工程、
(8)工程(4)、(5)、(6)または(7)で得られたナノ粒子の溶液を、例えば金属カチオンMまたは放射性同位体とは別の金属カチオンである、充分な量のカチオンMと接触させて、工程(2)で遊離したキレート基Ch1の少なくとも一部を錯化させる工程、および
(9)必要に応じて、工程(8)で得られたナノ粒子の溶液を凍結および/または凍結乾燥する、工程。
【0024】
実施形態9:Mおよび/またはMが、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンから選択され、特に磁気共鳴イメージング法(MRI)のための放射線増感剤および/または造影剤、例えばガドリニウムまたはビスマス、から選択されることを特徴とする、実施形態8に記載の方法。
【0025】
実施形態10:キレート基Chが、大環状剤、好ましくは1,4,7-トリアザシクロノナン-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-テトラアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン,1-(グルタル酸)-4,7,10-トリ酢酸(DOTAGA)、2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトライル)テトラアセトアミド(DOTAM)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、およびデフェロキサミン(DFO)から選択されることを特徴とする、実施形態8または9に記載の方法。
【0026】
実施形態11:キレート基Chが下記式(I)のDOTAGAであることを特徴とする、実施形態8~10のいずれか1つに記載の方法:
【0027】
【化3】
【0028】
実施形態12:PSがポリシロキサンマトリックスであることを特徴とする、実施形態8~11のうちの1つに記載の方法。
【0029】
実施形態13:前駆体ナノ粒子が以下の特徴を有することを特徴とする、実施形態12に記載の方法:
-ナノ粒子の総重量に対するシリコンの重量比が、5%~25%であり、
-ポリマーにグラフトされたキレート基の総数nが、ナノ粒子あたり5~50、好ましくは10~30であり、および
-ナノ粒子が、2~8nmの平均直径を有する。
【0030】
実施形態14:前駆体ナノ粒子が以下の特徴を有することを特徴とする、実施形態8~13のいずれか1つに記載の方法:
(i)PSはポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Chは、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0031】
【化4】
【0032】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+であり、
(iv)nは、5~50、好ましくは10~30であり、および
(v)平均流体力学的直径は2~8nmである。
【0033】
実施形態15:カチオンMがシンチグラフィー造影剤、例えば、44Sc、64Cu、68Ga、89Zr、111In、99mTcから選択されることを特徴とする、実施形態8~14のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態16:カチオンMが近接照射療法のための治療剤、例えば、90Y、166Ho、177Lu、212Bi、213Bi、211Atから選択されることを特徴とする、実施形態8~15のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
実施形態17:f1が0.1~0.9であり、f2が0.1~0.9であり、f3が0~0.5であり、典型的にはf1が0.25~0.35であり、f2が0.65~0.75であり、f3が実質的にゼロであることを特徴とする、実施形態8~16のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態18:各ナノ粒子が、ターゲティング剤、特にペプチド、免疫グロブリン、ナノボディ、抗体、アプタマーまたはターゲティングタンパク質でさらに官能化されることを特徴とする、実施形態8~17のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態19:実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法によって得られるナノ粒子またはナノ粒子の凍結乾燥物の溶液。
【0038】
実施形態20:以下の式(II)のナノ粒子:
【0039】
【化5】
【0040】
ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックス、例えばポリシロキサンマトリックスであり、
-[Ch-M]は、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンM、例えばガドリニウムカチオンと錯化されているキレート基Chであり、
-[Ch-M]は、例えば40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンから選択されるか、または放射性同位体から選択される、金属カチオンMとは別のカチオンMと錯化されているキレート基Chであり、好ましくはMはビスマスカチオンであり、
-[Ch]は、錯化されていないChキレート基であり、
(i)キレート剤Chは、ポリマーマトリックスの表面に共有結合的にグラフトされ、
(ii)モル比n/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは25%~35%であり、モル比m/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは65%~75%であり、モル比p/(n+m+p)は実質的にゼロであり、
(iii)ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~8nmである、ことを特徴とする。
【0041】
実施形態21:金属カチオンM、および必要に応じてMが、磁気共鳴イメージング法のための放射線増感剤および/または造影剤、特にガドリニウムまたはビスマスから選択されることを特徴とする、実施形態20に記載のナノ粒子。
【0042】
実施形態22:キレート基Chが、大環状剤、好ましくは1,4,7-トリアザシクロノナン-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-テトラアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン,1-(グルタル酸)-4,7,10-トリ酢酸(DOTAGA)、2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトライル)テトラアセトアミド(DOTAM)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、およびデフェロキサミン(DFO)から選択されることを特徴とする、実施形態20および21のいずれか1に記載のナノ粒子。
【0043】
実施形態23:キレート基Chが、以下の式(I)のDOTAGAであることを特徴とする、実施形態20~22のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0044】
【化6】
【0045】
実施形態24:PSがポリシロキサンマトリックスであることを特徴とする、実施形態20~23のうちの1つに記載のナノ粒子。
【0046】
実施形態25:以下を特徴とする、実施形態24に記載のナノ粒子。
-ナノ粒子の総重量に対するシリコンの重量比が、5%~25%であり、
-ポリマーにグラフトされたキレート基の総数n+m+pが、ナノ粒子あたり5~50、好ましくは10~30であり、
-平均直径は2~8nmである。
【0047】
実施形態26:金属カチオンMがシンチグラフィーイメージング剤、例えば、44Sc、64Cu、68Ga、89Zr、111In、99mTcから選択されることを特徴とする、実施形態20~25のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0048】
実施形態27:金属カチオンMが近接照射療法のための治療剤、例えば、90Y、166Ho、177Lu、212Bi、213Bi、211Atから選択されることを特徴とする、実施形態20~25のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0049】
実施形態28:(i)PSがポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Chが、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0050】
【化7】
【0051】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+であり、
(iv)pはゼロであり、m+nは5~50、好ましくは10~30であり、
(v)n/n+pは0.1~0.9、例えば、0.25~0.35、または0.65~0.75、または0.45~0.55であり
(vi)平均流体力学的直径は2~8nmである、ことを特徴とする、実施形態20~27のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0052】
実施形態29:(i)PSがポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Ch1は、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0053】
【化8】
【0054】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+、MはビスマスカチオンBi3+であり、
(iv)n+m+pは5~50、好ましくは10~30であり、
(v)n/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは45%~55%であり、
(vi)m/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは45%~55%であり、
(vii)pは実質的にゼロであり、
(viii)平均流体力学的直径は2~8nmである、ことを特徴とする、実施形態20~28のいずれか1つに記載のナノ粒子。
【0055】
実施形態30:実施形態20~29のいずれか1つに記載のナノ粒子のコロイド溶液。
【0056】
実施形態31:実施形態20~29のいずれか1つに記載のナノ粒子のコロイド溶液と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0057】
実施形態32:対象における癌の検出および/または治療におけるその使用のための、実施形態31に記載の医薬組成物であって、組成物が有効な量の、金属カチオンM、および必要に応じて放射線増感剤としてカチオンMを含み、好ましくはMがガドリニウムであり、
対象が組成物の投与後に放射線療法で治療されることを特徴とする、医薬組成物。
【0058】
他の特徴、詳細、および利点は以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することによって明らかになるのであろう:
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】Gd/Biナノ粒子形成方法全体を通しての、遊離DOTAの中間滴定の結果を示す:100/0(A.)、70/30(B.)、50/50(C.)、30/70(D.)。
【発明を実施するための形態】
【0060】
超微細ナノ粒子およびAGuIXナノ粒子
特により好適な実施形態において、特にそれらの非常に小さいサイズ、それらの安定性およびそれらの生体内分布のために、本開示の方法において使用することができる前駆体ナノ粒子は、金属酸化物に基づくコアおよびポリシロキサンコーティングを含むコア-シェルナノ粒子(特にWO2005/088314およびWO2009/053644に記載)とは異なり、ポリシロキサンマトリックスPSを含み、金属酸化物に基づくコアを含まないナノ粒子である。
【0061】
また、具体的な実施形態では、本発明の方法に従って使用することができる前駆物質ナノ粒子は、式[Ch-M-PSのポリシロキサン系ガドリニウムキレート化ナノ粒子であり、ここで:
(i)PSは、ポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Chは、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0062】
【化9】
【0063】
共有結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+であり、
(iv)nは5~50、好ましくは10~30であり、および
(v)平均流体力学的直径は2~8nmである。
【0064】
より具体的には、これらのポリシロキサン系ガドリニウムキレート化ナノ粒子は、AGuIXナノ粒子から出発材料として得られる超微細ナノ粒子である。
【0065】
このような超微細AGuIXナノ粒子は、特に、Mignot et al., Chem. Eur. J. 2013 “A Top-Down Synthesis Route to Ultrasmall Multifunctional Gd-Based Silica Nanoparticles for Theranostic Applications” DOI: 10.1002/chem.201203003に記載されているトップダウン合成法によって得ることができる。。
【0066】
他の超微細ナノ粒子合成方法も、WO2011/135101、WO2018/224684およびWO2019/008040に記載されている。
【0067】
本開示による方法において、出発材料として使用することができるAGuIXナノ粒子は特に、以下の式(III)を有し、
【0068】
【化10】
【0069】
ここで、PSはポリシロキサンマトリックスであり、nは平均で約10±2であり、ナノ粒子は4±2nmの平均流体力学的直径および約10kDaの質量を有する。
【0070】
AGuIXナノ粒子は、以下の式(IV)によっても特徴付けることができる。
(GdSi4-724-305-815-2540-60, 5-10 HO)
(IV)
好ましい実施形態では、前駆体ナノ粒子は、前のセクションで定義された超微細またはAGuIXナノ粒子であり、ガドリニウムカチオンと錯化される。
【0071】
上記の方法にしたがって得られたナノ粒子は、次いで有利には、Chおよび/またはターゲティング剤または親水性分子とは異なる他のキレート基で官能化され得る。したがって、本開示の方法の態様の1つは、有利な特性を有するナノ粒子を得るための方法、特に、以下に記載されるような、薬物または診断薬もしくは治療診断薬としてのその使用のための方法を提供する。
[キレート基Chと錯化された金属カチオンMおよびMを含むナノ粒子の生産方法の変形]
一実施形態において、処理工程(2)の後に遊離したキレート基Chの少なくともいくつかの錯化を得るために、上記の方法に従って得られたナノ粒子は、金属カチオンMとは別のカチオンM、例えば金属カチオンまたは目的の放射性同位体と接触させられる。
【0072】
それゆえ、本発明は、ナノ粒子のコロイド溶液を調製する方法であって、各々のナノ粒子は、ポリマーマトリックス上にグラフトされたキレート基を含み、キレート基の第1フラクションf1が金属カチオンMと錯化され、第2フラクションf2がカチオンMと錯化され、第3フラクションf3が錯化されていない、以下を含む方法に関する:
(1)前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供であって、前駆体ナノ粒子は、式[Ch-M-PSを有し、ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックスであり、
-Chは、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンM1と錯化されたキレート基であり、
-Chは、ポリマーマトリックス上にグラフトされており、
-nは5~100であり、
-前駆体ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より優先的には2~8nmである、前駆体ナノ粒子のコロイド溶液の合成または提供、
(2)好ましくは2.0未満のpHを得るために、金属カチオンMの部分的放出を得るのに充分な時間をかけて、塩酸溶液を添加することにより、コロイド溶液を酸性媒体中で処理する工程、
(3)必要に応じて、溶液を、例えば水で、希釈する工程、
(4)工程(2)で得られたナノ粒子を、放出された金属カチオンMから分離する精製工程、
(5)必要に応じて、工程(4)で得られたナノ粒子の溶液を濃縮する工程、
(6)必要に応じて、工程(3)、(4)および(5)の繰り返し、
(7)必要に応じて、金属カチオンMと錯化されている所定量のキレート基Chを得るために、工程(2)、(3)、(4)、(5)または(6)で得られたナノ粒子を、所定量の金属カチオンMと部分的に再錯化する工程、
(8)工程(2)、(3)、(4)、(5)または(6)で得られたナノ粒子の溶液を、例えば金属カチオンMまたは目的の放射性同位体とは別の金属カチオンである、充分な量のカチオンMと接触させて、工程(2)で遊離したキレート基Ch1の少なくとも一部を錯化させ、ナノ粒子のコロイド溶液を得る工程であって、それぞれのナノ粒子はポリマーマトリックス上にグラフトされたキレート基を含み、キレート基の第1フラクションf1は金属カチオンMと錯化され、第2フラクションf2はカチオンMと錯化され、第3フラクションf3は錯化されていない、工程、および
(9)必要に応じて、工程(8)で得られたナノ粒子の溶液を凍結および/または凍結乾燥する、工程。
【0073】
本開示による方法の具体的な実施形態は、実施例において与えられる。典型的には当該方法の2つの実施形態において、工程(2)中で、金属M(実施形態8)との再錯化があるか、または再錯化がないか(実施形態1)にかかわらず、当業者は金属カチオンMの所望の放出量に応じて、pHおよび/または処理時間を適合させることができる。工程(2)~(6)において、より多量の金属カチオンMを放出し、金属カチオンMとの部分的再錯化の工程(7)を用いて所望のフラクションf1を調整することもできる。実際、脱錯化されるべきChグループの所望の割合に特に応じて、工程(2)の酸処理の持続時間は、当業者によって調整されなければならない。典型的には、当業者は、当業者に選択された分析方法、例えばHPLC-ICP/MSによって、脱錯化をモニターすることができる。換言すれば、工程(2)の間、十分な持続時間は、HPLC-ICP/MSなどの分析技術によって放出をモニターすることによって決定することができる。
【0074】
具体的な実施形態では、特に前駆体ナノ粒子としてのAGuIXナノ粒子の使用において、工程(2)における処理時間は2.0未満、好ましくは1.0未満のpHにおいて、0.5~90時間、例えば1~72時間、特に少なくとも4、5、24または72時間である。
【0075】
工程(7)および(8)は、6.0~8.0のpH、好ましくは中性pH、を回復させること、および/またはナノ粒子の溶液を十分な温度および時間で加熱し錯化物を得ることを必要とし得る。例えば、工程(7)または(8)は、60℃~95℃、典型的には80℃の温度で、24~72時間、例えば48時間行うことができる。
【0076】
当業者はまた、工程(8)におけるカチオンMの量を、遊離キレート基の量、ならびに金属カチオンMまたは放射性同位体と錯化されたキレート剤の割合および錯化されていないままのキレート剤の量をそれぞれ表す所望のフラクションf2およびf3に応じて適合させることができる。
【0077】
一実施形態において、当業者は、本質的に全ての遊離キレート剤を錯化するためにMな過量のカチオンを使用するのであろう。したがって、フラクションf3は実質的にゼロである。
【0078】
別の実施形態では、もしカチオンMとの錯化の工程(8)の後に遊離キレート基が残っている場合、所望のフラクションf2およびf3を適合させるために、金属カチオン錯化の別の工程を実施することもできる。
[ナノ粒子をターゲティング分子で官能化する方法の変形]
キレート官能化に加えて、本開示による方法で得られるナノ粒子は任意に、親水性化合物(PEG)によって表面で修飾(官能化)され得、および/または別々に荷電させて、本体内での生体内分布および/またはターゲティング分子を適合させ、特定の細胞のターゲッティング、特に特定の腫瘍細胞または組織のターゲティングを可能にし得る。ターゲティング剤は、ポリマーマトリックスにグラフトされ、ナノ粒子あたり1~20のターゲティング剤、好ましくは1~5のターゲティング剤の割合で優先的に存在する。
【0079】
ターゲティング分子の表面グラフトのために、存在する反応基との従来のカップリングを使用することができ、必要に応じて活性化工程が先行する。カップリング反応は当業者に公知であり、ナノ粒子の表面層の構造およびターゲティング分子の官能基の構造に応じて選択される。例えば、“Bioconjugate Techniques”, G.T Hermanson, Academic Press, 1996, in “Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity”, Second Edition, W.T. Mason, ed. Academic Press, 1999.を参照されたい。好ましいカップリング方法は以下に記載されている。好ましくは、これらのターゲティング分子は、前述の段落に記載された超微細またはAGuIXナノ粒子の変異体などに応じて、ナノ粒子のアミン結合にグラフトされる。ターゲティング分子は、意図される用途に応じて選択される。
【0080】
具体的な実施形態において、前駆体ナノ粒子は、例えばペプチド、免疫グロブリン、ナノボディ、抗体、アプタマー、もしくは例えば腫瘍領域をターゲッティングする任意の他のタンパク質、典型的には抗体、免疫グロブリンもしくはナノボディなどのターゲッティング剤、VHH断片、または当業者に公知の腫瘍関連抗原もしくは特定の癌マーカーをターゲッティングする「単一ドメイン」、によって官能化される。
[キレート基Chと錯化されたカチオンMおよびMを含むナノ粒子]
本開示はまた、前述の段落に記載の方法によって得られるか、または前述の段落に記載の方法によって得られる可能性がある、ナノ粒子およびナノ粒子の溶液に関する。
【0081】
したがって、本開示は、以下の式(II)のナノ粒子に関し、
【0082】
【化11】
【0083】
ここで:
-PSは有機または無機ポリマーマトリックス、例えばポリシロキサンマトリックスであり、
-[Ch-M]は、40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオンM、例えばガドリニウムカチオンと錯化されたキレート基Chであり、
-[Ch-M]は金属カチオンMと同一または異種のカチオンM、例えば40を超える、好ましくは50を超える高原子番号Zを有する金属カチオン、または放射性同位体と錯化されたキレート基Chであって、例えばMはビスマスカチオンであり
-[Ch]は、錯化されていないChキレート基であり、
以下によって特徴づけられる:
(i)キレート剤Chは、ポリマーマトリックスの表面に共有結合的にグラフトされ、
(ii)モル比n/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは25%~35%、典型的には30%であり、モル比m/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは65%~75%であり、
(iii)ナノ粒子の平均流体力学的直径は、1~50nm、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~8nmである。
【0084】
前述の実施形態と優先的に組み合わせることができる一実施形態では、モル比p/(n+m+p)は実質的にゼロである。
【0085】
前述の2つの実施形態と組み合わせることができる別の好ましい実施形態では、モル比m/(n+m+p)は45%~55%、典型的には50%であり、モル比n/(n+m+p)は45%~55%、典型的には50%であり、モル比p/(n+m+p)は実質的にゼロである。
【0086】
特に、ポリマーマトリックスPSの化学的性質、平均流体力学的直径、キレート基Ch、およびナノ粒子当たりのキレート基の数、すなわちn+m+pに関する特性は本質的に、前述の段落に記載された方法における前駆体ナノ粒子の選択と関連する。したがって、本発明は、当該方法によって得られるか、または当該方法によって得られる可能性があるナノ粒子にも適用される。
【0087】
ナノ粒子は、好ましくは非常に小さい直径、例えば1~10nm、好ましくは2~8nmを有する。
【0088】
ナノ粒子はまた、好ましくはポリシロキサンマトリックスを含むナノ粒子である。
【0089】
好ましい実施形態において、キレート基Chは、以下の式(I)のDOTAGAである:
【0090】
【化12】
【0091】
より詳細には、金属カチオンMおよびMは重金属から独立して選択され、好ましくはPt、Pd、Sn、Ta、Zr、Tb、Tm、Ce、Dy、Er、Eu、La、Nd、Pr、Lu、Lu、Yb、Bi、Hf、Ho、Sm、InおよびGdからなる群から選択される。好ましくは、金属カチオンMおよびM(またはMおよびM)はそれぞれGdおよびBiである。
【0092】
特定の実施形態では、ナノ粒子が3~100個、好ましくは5~50個の金属カチオンMおよびM、例えば10~30個、特にGdおよびBiを含む。
【0093】
別の実施形態では、Mが上記の重金属から選択され、Mは放射性同位体から選択され、特に、シンチグラフィーイメージングまたは近接照射療法のためのその使用のために選択される。
【0094】
当業者は所望の効果に応じて、特に、所望の治療、患者のタイプ、使用される線量、および/または治療される患者に応じて、n/(n+m+p)およびm/(n+m+p)モル比を選択するのであろう。例えば、特定の実施形態では、(n+m)/(n+m+p)比率が80%以上、特に90~100である。
【0095】
好ましい実施形態において、上記式(2)のナノ粒子は、
(i)PSはポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Ch1は、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0096】
【化13】
【0097】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+、MはビスマスカチオンBi3+であり、
(iv)n+m+pは5~50、好ましくは10~30であり、
(v)n/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは45%~55%であり、
(vi)m/(n+m+p)は10%~90%、好ましくは45%~55%であり、
(vii)pは実質的にゼロであり、および
(viii)平均流体力学的直径は2~8nmである、ことによって特徴づけられる。
【0098】
好ましい実施形態において、上記式(2)のナノ粒子は、
(i)PSはポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Ch1は、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0099】
【化14】
【0100】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+、MがビスマスカチオンBi3+であり、
(iv)n+m+pは5~50、好ましくは10~30であり、
(v)n/(n+m+p)は25%~35%であり、
(vi)m/(n+m+p)は65%~75%であり、
(vii)pは実質的にゼロであり、および
(viii)平均流体力学的直径は2~8nmである、ことによって特徴づけられる。
【0101】
好ましい実施形態において、上記式(2)のナノ粒子は、
(i)PSはポリシロキサンマトリックスであり、
(ii)Ch1は、以下の式(I)のDOTAGAキレート基であり、
【0102】
【化15】
【0103】
Si-C結合によってポリシロキサンマトリックスにグラフトされ、
(iii)MはガドリニウムカチオンGd3+、MがビスマスカチオンBi3+であり、
(iv)n+m+pは5~50、好ましくは10~30であり、
(v)n/(n+m+p)は65%~75%であり、
(vi)m/(n+m+p)は25%~35%であり、
(vii)pは実質的にゼロであり、および
(viii)平均流体力学的直径は2~8nmである、ことによって特徴づけられる。
[本開示によるナノ粒子の医薬製剤]
本開示によるナノ粒子を含む組成物は、ナノ粒子のコロイド懸濁液の形態で投与される。それらは、本明細書に記載されるように、または当業者に公知の他の方法に従って調製され得、治療および治療される領域に応じて、異なる経路、局所または全身を介して投与され得る。
【0104】
また本開示は、前述のセクションに記載された式(2)のナノ粒子のコロイド懸濁液、および必要に応じて、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせられたこれらのコロイド懸濁液を含む医薬組成物に関する。
【0105】
医薬組成物は特に、凍結乾燥粉末、または静脈内注射用の水溶液の形態で製剤化され得る。好ましい実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の前述のセクションに記載された式(2)のナノ粒子、特にガドリニウムおよび少なくとも1つの他の金属カチオン、例えばビスマス、でキレート化された、より具体的には上記のAGuIXナノ粒子から得られるような、ポリシロキサン系ナノ粒子、を含むコロイド溶液を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、それは、バイアル当たり200mg~15g、好ましくは250~1250mgのナノ粒子を含む凍結乾燥粉末である。粉末はまた、他の賦形剤、特にCaClを含んでもよい。
【0107】
凍結乾燥粉末は、水溶液、典型的には注射用の滅菌水中で再構成され得る。それゆえ本開示は、前述のセクションに記載される式(2)のナノ粒子、特にポリシロキサン系ガドリニウムキレート化ナノ粒子、より具体的には上記のAGuIXナノ粒子から得られるようなナノ粒子を活性成分として含む、注射用溶液としてのその使用のための医薬組成物に関する。
[ナノ粒子の使用]
遊離した、または金属カチオンMと錯化したキレート基Ch1の存在、および必要に応じてカチオンMのために、本発明によるナノ粒子は、Mおよび/またはMが放射線増感剤としての使用のために慎重に選択される場合、放射線増感剤としての使用を可能にし、当該方法は組成物の投与後に、放射線療法による腫瘍の治療のために有効な線量で対象を照射する工程を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明によるナノ粒子は、造影剤として医療用造影、例えば磁気共鳴造影(MRI)のために、特に対象における腫瘍の検出のために、Mおよび/またはMが造影剤、例えばMRIのための造影剤として使用するために慎重に選択される場合において、造影剤としての使用を可能にし、また当該方法は、組成物の投与後に、関心領域を造影するために有効な線量で対象を造影する工程、特に腫瘍検出のための対象内のMRI造影を含む。
【0109】
「患者」または「対象」は、好ましくは例えば腫瘍を有する対象を含む哺乳類またはヒトを意味すると理解される。
【0110】
「治療(treatment)」および「治療(therapy)」という用語は、患者の健康を改善することを目的とする任意の行為、例えば、治療、防止、予防、および疾患の減速を指す。場合によってはこれらの用語は、疾患または疾患に関連する症状の改善または根絶を指す。他の実施形態ではこれらの用語は、そのような疾患に罹患している対象への1つ以上の治療薬の投与からもたらされる、疾患の広がりまたは悪化の低減を指す。腫瘍の治療の文脈において、用語「治療(treatment)」は、典型的には腫瘍の成長を停止させるため、腫瘍のサイズを縮小させるため、および/または腫瘍を排除するための治療を含み得る。
【0111】
特に、ナノ粒子は固形腫瘍、例えば脳腫瘍(原発性および続発性、神経膠芽腫など)、肝臓癌(原発性および続発性)、骨盤腫瘍(子宮頸癌、前立腺癌、肛門直腸癌、結腸直腸癌)、上部気道消化管癌、肺癌、食道癌、乳癌、膵癌の検出および/または治療に使用される。
【0112】
ナノ粒子の「有効量」は、患者に投与された場合に、腫瘍に局在化され、放射線治療による放射線増感効果による腫瘍の検出および/または治療を可能にするのに十分である、上記のナノ粒子の量を指す。
【0113】
この量は、対象の年齢、性別、および体重などの因子にしたがって、決定されかつ調整される。
【0114】
上記のナノ粒子の投与は、腫瘍内、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内、経口、舌下、直腸、膣または鼻腔内経路によって、吸入によってまたは経皮適用によって実施され得る。好ましくは、それは腫瘍内および/または静脈内で実施される。
【0115】
放射線増感剤としてのナノ粒子投与後における腫瘍の治療のための照射方法は、当業者に周知であり、特に以下の刊行物に記載されている:WO2018/224684、WO2019/008040の他、C. Verry, et al., Science Advances, 2020, 6, eaay5279;およびC. Verry, et al, NANO-RAD, a phase I study protocol, BMJ Open, 2019, 9, e023591。
【0116】
放射線療法中の照射の総線量は、癌の種類、病期および治療される対象に応じて調整されるであろう。治癒線量については、固形腫瘍の典型的な総線量は20~120Gyのオーダーである。他の因子として化学療法による治療、併存疾患、および/または放射線治療が手術の前または後に行われるかどうか、などが考慮され得る。総線量は通常、分割される。本開示による方法における放射線治療工程は例えば、1日当たり2~6Gyの数フラクション、例えば1週間当たり5日であり、特に2~8週間以上連続して、総線量は20~40Gy、例えば30Gyであり得る。
【0117】
また、本発明は腫瘍、特に固形腫瘍を治療するための方法であって、それを必要とする対象において、上記の式(2)のナノ粒子の有効量を対象に投与することを含み、MおよびMが、磁気共鳴イメージング剤および放射線増感剤、特にガドリニウムおよびビスマスから選択される方法に関する。
【0118】
本開示によるナノ粒子は、単独で、または1つ以上の他の活性成分、特に細胞毒性もしくは抗増殖剤または他の抗癌剤、特に免疫チェックポイント阻害剤などの他の薬物と組み合わせて投与することができる。併用投与は、同時投与または(異なる時点での)連続投与を意味すると理解される。
【実施例
【0119】
[材料及び方法]
酸性製品は、Nh Theraguix(フランス)によって供給される出発製品AGuIX(登録商標)を、CarlRoth製の超純粋37%塩酸から得られる強酸性媒質に導入することによって得られる。
【0120】
濾過工程は、蠕動ポンプおよびSartorius Stedim Biotech(フランス)製のVivaflow 200(登録商標)-5kDaカセットを用いて、Vivaflow 200(登録商標)製品に連動された説明書に記載された条件下で行われる。
【0121】
流体力学的直径の測定および等電点の滴定は、Malvern Instruments(米国)製のZetasizer Nano-S(633nmHe-Neレーザー)を用いて実施する。等電点の測定のために、この装置は、Malvern Instruments(米国)製のMPT-2自動滴定装置に連結される。
【0122】
HPLC-UVは、DAD検出器を備えたAgilent 1200を用いて実施される。使用される逆相カラムは、Jupiter社製のC4、5μm、300Å、150×4.6mmカラムである。検出は、295nmの波長のUV検出器によって行われる。A相(HO/ACN/TFA:98.9/1/0.1)およびB相(HO/ACN/TFA:10/89.9/0.1)のグラジエントは95/5で5分であり、その後10分以上線形グラジエントを続けることで10/90に到達することを可能にし、15分間維持される。これらの15分の終わりに、Aの比率は、1分で95%に戻され、95/5で7分のプラトーが続く。溶出相の組成物に使用される生産物は、全てHPLCグレード認定されている。
【0123】
元素分析は、the Institut des Sciences Analytiques [Institute of Analytical Sciences], UMR 5280, Pole Isotopes & Organique, 5 rue de la Doua 69100 Villeurbanne.において実施された。
【0124】
HPLC-ICP/MSは、Perkin-Elmer(米国)製のNexion 2000を用いて実施される。媒体中の遊離要素の測定は95%のA相および5%のB相の組成の溶出相を用いて、アイソクラティックモードで実施される。A相およびB相の組成はHPLC-UV法と同一である。使用された逆相カラムは、Jupiter製のC4、5μm、300Å、150×4.6mmカラムである。溶出相の組成物に使用される生産物は、全てHPLCグレード認定されている。
【0125】
粒子の凍結乾燥は、「主乾燥」プログラムに従って、Christ(ドイツ)製のAlpha 2-4 LSC凍結乾燥機を用いて実施する。
【0126】
遊離DOTAは、一定量の生産物に増加量のCu2+を添加することによって測定される。銅は、超純水に溶解したCuCl(Sigma Aldrich、99%、粉末、25g)から予め調製したCu2+の15mM溶液から得られる。次いで、試料の体積を、pH5の酢酸緩衝溶液で調整して、完全な錯化を確実にする。試料が調製されると、HPLC-UV測定が、先に指定されたように295nmで実施される。全吸光度は、得られたクロマトグラムの0~15分のセグメントを統合することによって測定される。吸光度シグナルの増大はDOTA(Cu)錯体の形成に基づくので、遊離DOTAと添加Cu2+との間の化学量論的点に達したときに、媒体中の遊離DOTAの含量を得ることができる。この点は、得られたグラフ上のグラジエントの急激な変化をもたらす。
[実施例1:媒体の酸性化およびGd3+イオンの放出]
当該方法によるナノ粒子を得るために、AGuIX(登録商標)製品を酸性媒体中に入れて、DOTA基をプロトン化し、それにより最初に錯化したGd3+イオンの一部を放出させた。
【0127】
まず、AGuIX(登録商標)の200g/L溶液は、50mlの超純水に10gの製品を溶解することによって調製された。溶液は室温で1時間撹拌された。同時に、10mlの37%塩酸(37%塩酸、超純粋、2.5L、プラスチック、CarlRoth)を50mlの超純水に添加することにより、2M塩酸溶液が調製された。
【0128】
1時間撹拌した後、50mlの2M塩酸溶液を50mlのAGuIX(登録商標)に添加する。次いで、pHを測定すると0.5未満である。得られた溶液は褐色~橙色である。合わせた混合物を50℃に予熱したオーブン中に4時間放置する。HPLC-ICP/MSによるガドリニウムイオンの放出を観察するために、サンプルを1時間ごとに採取した。保持時間Tr=2.3minでの媒体中の遊離Gd3+のピークは反応時間と共に増加することが観察される。
[実施例2:ガドリニウムを含まないナノ粒子を得ること]
AGuIX(登録商標)の100g/L溶液は、5gの製品を50mlの超純水に溶解することによって調製される。溶液を室温で1時間撹拌したままにする。同時に、10mlの37%塩酸(37%塩酸、超純粋、2.5L、プラスチック、CarlRoth)を50mlの超純水に添加することによって、2M塩酸溶液を調製する。
【0129】
1時間撹拌した後、50mlの2M塩酸溶液を、50mlのAGuIX(登録商標)を含有する溶液に添加する。合わせた混合物を50℃で1時間加熱する。このようにして得られた100mlの溶液を、ペリスタルティックポンプおよびSartorius Vivaflowの50R~5kDaカセットを用いて精製し、放出されたGd3+から微粒子を分離し、それによって、依然として複合体を形成しているGd3+の放出に向かって平衡を押し出す。したがって、初期溶液の体積を50mlに濃縮する。培地中にまだ存在するGd3+の量を推定するために、濾液をICP-MSによって直接的に分析する。AGuIX溶液を、再度、50mlの1M塩酸溶液で再希釈する。同様に、溶液を50℃で1時間放置し、次いで50mlに再濃縮する。測定されたGd3+が0になるまで、当該方法が繰り返される。このレベルに達したら、溶液は濃塩酸の使用による過剰な塩を排除するために、超純水を使用して10000倍で精製される。当該方法の最後に、最終生産物についてのICP-MS測定により、それがいかなるGd3+も含まないことを検証することができる。
【0130】
最終生産物が回収されたら、ボトル詰めし、-80℃で凍結し、次いで凍結乾燥する。次いで、得られた粉末を超純水中に再分散させて、100g/Lの溶液を得る。遊離DOTAの測定は、銅錯化および295nmでの吸光度の測定によって行われる。この測定は、新規製品が71μmol/mgの製品の遊離DOTA含有量を有することを示す。対照的に、この試験に使用したAGuIX(登録商標)のバッチは12.7%(重量%)のGd3+、すなわち、81μmol/mgのAGuIXのDOTA(Gd)含有量を含有していた。
【0131】
さらに、最終生産物のサンプルはサンプル中にまだ存在するGdの含有量をチェックするために専門の実験室に送られ、その結果は上述の初期バッチの12.7%(wt%)と比較して0.19%(wt%)のGdの重量含有量を示す(表1)。得られたナノ粒子のサイズは、DLSによって測定され、元のAGuIX(登録商標)製品と同じオーダーの、5.2nm±2.6nmの平均流体力学的直径を有する。さらに、最終生産物の等電点が測定され、したがって、最終生産物は、pH5.2に対して中性電荷を有する。このpHは、約7であるAGuIX(登録商標)の等電点よりも低い。この低下は、表面上の遊離DOTAの生成と一致する。
【0132】
【表1】
【0133】
[実施例3:複合体化Gdの80%の放出:72時間]
前の実施例において提示された方法は、ガドリニウムの部分的かつ制御された放出のみを有するように適合された。まず、AGuIX(登録商標)の200g/L溶液は、50mlの超純水に10gの製品を溶解することによって調製された。溶液を室温で1時間撹拌したままにする。同時に、10mlの37%塩酸(37%塩酸、超純粋、2.5L、プラスチック、CarlRoth)を50mlの超純水に添加することによって、2M塩酸溶液を調製する。
【0134】
1時間撹拌した後、50mlの2M塩酸溶液を50mlのAGuIX(登録商標)に添加する。次いで、pHを測定すると0.5未満である。合わせた混合物を50℃に予熱したオーブン中に72時間放置する。HPLC-ICP/MSによるGd3+イオンの最終放出を観察するために、4時間の反応後、また反応の終わりに試料を採取する。保持時間Tr=2.3分での培地中の遊離Gd3+のピークは反応時間と共に増加する。72時間でのピークは12ppmのGd3+基準ピークの77.2%を占め、これは使用したAGuIX溶液の総Gd濃度に相当する。それゆえ、最初に存在するDOTAGA(Gd)錯体の22.7%が、発明者らの粒子中に残存する。
[実施例4:Gd/Biナノ粒子の形成および錯化モニタリング]
特定のGd/Bi比率を有するナノ粒子を製造するために、遊離DOTAの量を測定する。それゆえ、粒子形成のための出発生産物はDOTAの80%が遊離であり、残りの20%がGd3+と複合体を形成するナノ粒子である。
【0135】
以下の3つの30/70、50/50、および70/30のGd/Bi(nGd/nBi)バッチを生産するために、Bi錯化を最初に行う。Bi3+錯化は長いプロセスである。それゆえ、必要量のBiCl(Sigma-Aldrich、試薬グレード、>98%)を添加して所望の比率に到達させ、pHを1MのNaOH溶液で7に調整し、混合物を80℃で48時間置く。それぞれのBi3+錯化工程の後、錯化の進行を確認するために、残存する遊離DOTAの個数を銅錯化によって測定する(図1)。遊離DOTAの含有量がこの比率に適合すると、必要量のGdCl・6H2O(Merck、99%)を添加して、残りのDOTAを複合化し、それにより所望の粒子を形成する。GdClを加えた後、pHを7に再調整し、80℃で24時間行う。次いで、粒子を凍結乾燥する。生産物が得られたら、様々なバッチにおける各元素の実際の含有量を検証するために、各バッチのサンプルを、元素分析のために発明者らのパートナーに送る(表2)。
【0136】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の技術的解決策は、特に医学の分野、特に腫瘍の治療に適用することができる。
【0138】
本開示は、単に例として、上記の例に限定されず、特許請求される保護の範囲内で、当業者が想定することができる任意の変形を包含する。
図1
【国際調査報告】