(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ポリアミック酸組成物およびこれを含むポリイミド
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530289
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 KR2020017164
(87)【国際公開番号】W WO2022107968
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0155543
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イン・ファン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA04
4J043PA05
4J043SA06
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA231
4J043XA15
4J043XA19
4J043XB27
4J043YA06
4J043ZB47
(57)【要約】
本出願は、ポリアミック酸組成物およびこれを含むポリイミドに関し、ポリアミック酸の固形分の濃度が高く、低粘度を有し、硬化後に優れた耐熱性、寸法安定性および機械的物性だけでなく、優れた電気的特性を有するポリアミック酸組成物、これから製造されたポリイミドおよびポリイミドフィルムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアンヒドリド単量体成分とジアミン単量体成分を重合単位で含むポリアミック酸および溶媒を含み、前記溶媒は、第1溶媒と、該第1溶媒と異なる成分である第2溶媒と、を含み、
硬化後、120Hzで誘電率が3.5以下であり、硬化後、ASTM D257規格によって23℃温度および50%相対湿度で測定した表面抵抗が2.35×10
14Ω以上である、ポリアミック酸組成物。
【請求項2】
第1溶媒は、沸点が150℃以上であり、第2溶媒は、沸点が前記第1溶媒より低い、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項3】
第2溶媒は、前記ジアンヒドリド単量体に対して1.5g/100g未満の溶解度を有する、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項4】
第2溶媒は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、エステル基およびエーテル基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の極性官能基を有する、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項5】
第2溶媒は、全体ポリアミック酸組成物内で0.01~10重量%の範囲内に含まれる、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項6】
前記ジアンヒドリド単量体は、重合単位に含まれた単量体以外に重合しない開環構造を有する単量体を含む、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項7】
開環構造を有するジアンヒドリド単量体は、イミド化反応時に反応に参加する、請求項6に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項8】
ジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’-メチレンジアミン(MDA)、4,4-ジアミノベンズアニリド(4,4-DABA)、N,N-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン-1,4-ジカルボキサミド(BPTPA)、2,2-ジメチルベンジジン(M-TOLIDINE)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)または2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含む、請求項6に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項9】
ジアンヒドリド単量体は、ピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(a-BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)、オキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)、4,4-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸アンヒドリド(6-FDA)、p-フェニレンビス(トリメリテートアンヒドリド)(TAHQ)または2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンヒドリド(BPADA)を含む、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項10】
固形分が9~35%の範囲内である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項11】
23℃の温度および1s
-1のせん断速度で測定した粘度が500~50,000cPの範囲内である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項12】
重量平均分子量が10,000g/mol~500,000g/molの範囲内である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項13】
無機粒子をさらに含む、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項14】
硬化後のCTEが40ppm/℃以下の範囲を有する、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項15】
硬化後のガラス転移温度が350℃以上の範囲を有する、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項16】
少なくとも50℃以上で加熱する段階を含む請求項1に記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載のポリアミック酸組成物の硬化物を含むポリイミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2020年11月19日付けの韓国特許出願第10-2020-0155543号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、ポリアミック酸組成物およびこれを含むポリイミドに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミド(polyimide,PI)は、剛直な芳香族主鎖を基本とする熱的安定性を有する高分子物質であり、イミド環の化学的安定性を基礎にして優れた強度、耐化学性、耐候性、耐熱性などの機械的特性を有する。
【0004】
それだけでなく、ポリイミドは、絶縁特性、低い誘電率のような優れた電気的特性を有し、電子、通信、光学など広範囲な産業分野に適用可能な高機能性の高分子材料として脚光を浴びている。導体を被覆する絶縁層(絶縁被覆)には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度などが要求されている。また、適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で用いられるモーターなどでは、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、該絶縁被覆の表面に部分放電(コロナ放電)が発生しやすい。コロナ放電の発生により局部的な温度上昇やオゾンまたはイオンの発生を引き起こし、その結果、絶縁電線の絶縁被覆に劣化が生じることによって早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなることがある。
【0005】
最近では、各種電子機器が薄型化、軽量化および小型化するに伴い、軽くて柔軟性に優れた薄型のポリイミドフィルムを回路基板の絶縁素材またはディスプレイ用ガラス基板を代替できるディスプレイ基板に使用しようとする研究が多く行わている。
【0006】
特に高い工程温度で製造される回路基板またはディスプレイ基板に使用されるポリイミドフィルムの場合、より高いレベルの寸法安定性、耐熱性および機械的物性を確保することが必要である。
【0007】
このような物性確保のための方法の1つとして、ポリイミドの分子量を増加させる方法を例に取ることができる。
【0008】
分子内にイミド基が多いほどポリイミドフィルムの耐熱性および機械的物性を向上させることができ、高分子鎖が長くなるほどイミド基の割合が増加するので、高い分子量のポリイミドを製造することが物性の確保に有利になる。
【0009】
高い分子量のポリイミドを製造するためには、その前駆体であるポリアミック酸を高分子量で製造した後、熱処理を通じてイミド化することが一般的である。
【0010】
しかしながら、ポリアミック酸の分子量が高いほどポリアミック酸が溶媒に溶解した状態であるポリアミック酸溶液の粘度が上昇して、流動性が低下し、工程取り扱い性が非常に低くなる問題が発生する。
【0011】
また、ポリアミック酸の分子量を維持しつつ、ポリアミック酸の粘度を低減するためには、固形分の含有量を減少させ、溶媒の含有量を増加させる方法を考慮することができるが、この場合、硬化過程で多量の溶媒を除去しなければならないので、製造費用と工程時間が増加する問題が発生する。
【0012】
したがって、ポリアミック酸溶液の固形分の含有量が高くても、粘度を低く維持して工程性を満たしながらも、これから製造されるポリイミドの耐熱性および機械的物性だけでなく、電気的特性をも同時に満たすポリイミドフィルムの研究に関する必要性が高いのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願は、ポリアミック酸の固形分の濃度が高く、かつ低粘度を有し、硬化後に優れた耐熱性、寸法安定性および機械的物性だけでなく、優れた電気的特性を有するポリアミック酸組成物、これから製造されたポリイミドおよびポリイミドフィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願は、ポリアミック酸組成物に関する。本出願によるポリアミック酸組成物は、ジアンヒドリド単量体成分とジアミン単量体成分を重合単位で含むポリアミック酸および溶媒を含んでもよい。また、前記溶媒は、第1溶媒と、前記第1溶媒と異なる成分である第2溶媒と、を含んでもよい。前記溶媒は、有機溶媒であってもよい。本出願によるポリアミック酸組成物は、硬化後、120Hzで誘電率が3.5以下であり、硬化後、ASTM D257規格によって23℃温度および50%相対湿度で測定した表面抵抗が2.35×1014Ω以上であってもよい。前記誘電率の上限は、例えば、3.48、3.45、3.43、3.4、3.37、3.35、3.33、3.32、3.3、3.25、3.23、3.2、3.1または3.05以下であってもよく、下限は、例えば、1.0、2.0、2.5、2.8、3.0、3.1または3.15以上であってもよい。また、前記表面抵抗の下限は、2.35×1014、2.38×1014、2.4×1014、2.45×1014、2.48×1014、2.5×1014、2.65×1014、2.68×1014、2.7×1014、2.75×1014、2.8×1014、3×1014、3.5×1014、4×1014、4.5×1014、5×1014、5.3×1014、5.5×1014、または5.6×1014Ω以上であってもよく、上限は、例えば、10×1014、9×1014、8×1014、7×1014、6×1014、5.8×1014、5.6×1014、5.3×1014、5×1014、4.5×1014、4×1014、3.5×1014、3×1014、2.8×1014、または2.6×1014Ω以下であってもよい。本出願は、前記組成と共に、物性を一緒に調節することによって、低粘度として工程性が確保され、硬化後に優れた耐熱性、寸法安定性および機械的物性だけでなく、優れた電気的特性を有するポリアミック酸組成物を提供する。
【0015】
本出願において物性の測定において温度が物性に影響を与える場合、特に別途規定しない限り、25℃常温で測定したものであってもよい。
【0016】
本出願は、第1溶媒および第2溶媒を含んでもよい。前述したように、前記第2溶媒は、前記第1溶媒と異なる成分であってもよい。
【0017】
1つの例示において、前記第1溶媒は、沸点が150℃以上であってもよく、前記第2溶媒は、沸点が前記第1溶媒より低くてもよい。すなわち、第1溶媒が第2溶媒より沸点がさらに高くてもよい。前記第2溶媒は、沸点が30℃以上、150℃未満の範囲内であってもよい。前記第1溶媒の沸点の下限は、例えば、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃または201℃以上であってもよく、上限は、例えば、500℃、450℃、300℃、280℃、270℃、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃または205℃以下であってもよい。また、前記第2溶媒の沸点の下限は、例えば、35℃、40℃、45℃、50℃、53℃、58℃、60℃または63℃以上であってもよく、上限は、例えば、148℃、145℃、130℃、120℃、110℃、105℃、95℃、93℃、88℃、85℃、80℃、75℃、73℃、70℃または68℃以下であってもよい。本出願は、沸点が互いに異なる2つの溶媒を使用することによって、目的とする物性のポリイミドを製造することができる。
【0018】
1つの例示において、前記第2溶媒は、前記ジアンヒドリド単量体に対して1.5g/100g未満の溶解度を有していてもよい。すなわち、前記第2溶媒は、前記ジアンヒドリド単量体に対して1.5g/100g未満の溶解度を有していてもよい。前記溶解度の範囲の上限は、例えば、1.3g/100g、1.2g/100g、1.1g/100g、1.0g/100g、0.9g/100g、0.8g/100g、0.7g/100g、0.6g/100g、0.5g/100g、0.4g/100g、0.3g/100g、0.25g/100g、0.23g/100g、0.21g/100g、0.2g/100gまたは0.15g/100g以下であってもよく、下限は、例えば、0g/100g、0.01g/100g、0.05g/100g、0.08g/100g、0.09g/100g、または0.15g/100g以上であってもよい。本出願は、重合単位で含まれるジアンヒドリド単量体または重合しないジアンヒドリド単量体に対して低い溶解度を有する第2溶媒を含むことによって、目的とする物性のポリアミック酸組成物を提供することができる。本出願において測定する物性が温度に影響を受ける物性である場合、特に別途規定しない限り、常温23℃で測定したものであってもよい。
【0019】
本出願の具体例において、前記第1溶媒は、例えば、ジアンヒドリド単量体に対して1.5g/100g以上の溶解度を有していてもよい。前記溶解度の下限は、例えば、1.6g/100g、1.65g/100g、1.7g/100g、2g/100g、2.5g/100g、5g/100g、10g/100g、30g/100g、45g/100g、50g/100gまたは51g/100g以上であってもよく、上限は、例えば、80g/100g、70g/100g、60g/100g、55g/100g、53g/100g、48g/100g、25g/100g、10g/100g、5g/100g、または3g/100g以下であってもよい。第1溶媒は、第2溶媒より前記溶解度がさらに高くてもよい。
【0020】
本出願による第1溶媒は、ポリアミック酸が溶解することができる溶媒であれば、特に限定されない。前記第1溶媒の場合も、極性溶媒であってもよい。例えば、前記第1溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド溶媒が例示でき、例えば、前記第1溶媒は、アミド基を有したりケトングループを分子構造内に有していてもよい。前記第1溶媒は、第2溶媒より極性度がさらに低くてもよい。
【0021】
前記第1溶媒は、1つの例示として非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。第2溶媒は、非プロトン性極性溶媒またはプロトン性極性溶媒であってもよい。前記第2溶媒は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、エステル基およびエーテル基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の極性官能基を有していてもよい。例えば、第2溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、ブチルアルコール、イソブチルアルコールまたは2-プロパノールのようなアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、イソプロピルアセテートなどのエステル系溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸などのカルボン酸溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンメチルt-ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジメチルカーボネート、メチルメタアクリレート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸を含んでもよい。
【0022】
前述したように、本出願は、前記第1溶媒および第2溶媒を共に含んでもよい。この場合、第1溶媒は、第2溶媒よりさらに多い含有量で含まれてもよい。また、前記第2溶媒は、第1溶媒100重量部に対して0.01~10重量部の割合で含まれてもよい。前記含有量の割合の下限は、例えば、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.1重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.8重量部、1重量部または2重量部以上であってもよく、上限は、例えば、8重量部、6重量部、5重量部、4.5重量部、4重量部、3重量部、2.5重量部、1.5重量部、1.2重量部、0.95重量部、0.4重量部0.15重量部または0.09重量部以下であってもよい。
【0023】
1つの例示において、前述したように、本出願のポリアミック酸組成物は、第2溶媒を含んでもよいし、前記第2溶媒は、全体ポリアミック酸組成物内で0.01~10重量%の範囲内に含まれてもよい。前記第2溶媒の含有量の下限は、例えば、0.015重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.08重量%、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.8重量%、1重量%または2重量%以上であってもよく、上限は、例えば、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5.5重量%、5.3重量%、5重量%、4.8重量%、4.5重量%、4重量%、3重量%、2.5重量%、1.5重量%、1.2重量%、0.95重量%または0.4重量%以下であってもよい。また、前記第1溶媒は、全体ポリアミック酸組成物内で60~95重量%の範囲内に含まれてもよい。前記第1溶媒の含有量の下限は、例えば、65重量%、68重量%、70重量%、73重量%、75重量%、78重量%または80重量%以上であってもよく、上限は、例えば、93重量%、90重量%、88重量%、85重量%、83重量%、81重量%または79重量%以下であってもよい。本出願によるポリアミック酸組成物は、ジアンヒドリド単量体成分とジアミン単量体成分を含み、かつ前記2つの単量体は、互いに重合単位を構成し、ただし、前記ジアンヒドリド単量体のうちの一部は、前記有機溶媒により開環することで、前記重合反応に参加できない。重合せずに開環したジアンヒドリド単量体は、希釈単量体として作用して、全体ポリアミック酸組成物の粘度を相対的に低く調節することができる。前記開環構造を有するジアンヒドリド単量体は、イミド化反応時に反応に参加して、目的とするポリイミドを具現することができる。
【0024】
一具体例において、前記ジアンヒドリド単量体は、重合単位に含まれた単量体以外に重合しない開環構造を有する単量体を含んでもよい。すなわち、前記ジアンヒドリド単量体は、一部が重合単位に含まれていてもよく、一部は重合単位に含まれていなくてもよく、前記重合単位に含まれていないジアンヒドリド単量体は、本出願による溶媒により開環した構造を有していてもよい。本出願によるポリアミック酸組成物は、前記ジアンヒドリド単量体が重合しない状態で、2個以上のカルボン酸を有する芳香族カルボン酸の形態で存在してもよく、前記芳香族カルボン酸が硬化前の単量体で存在して、全体ポリアミック酸組成物の粘度を低減し、工程性を向上させることができる。前記2個以上のカルボン酸を有する芳香族カルボン酸は、硬化後に主鎖にジアンヒドリド単量体で重合することによって、全体高分子鎖の長さを増加させ、このような高分子は、優れた耐熱性、寸法安定性および機械的物性と電気的物性を具現することができる。
【0025】
具体的には、前記ポリアミック酸組成物においてポリイミドにイミド化のための熱処理時に、2個以上のカルボン酸を有する芳香族カルボン酸は、閉環脱水反応を通じてジアンヒドリド単量体となることによって、ポリアミック酸鎖またはポリイミド鎖の末端アミン基と反応して高分子鎖の長さが増加し、これによって、製造されるポリイミドフィルムの寸法安定性および高温での熱安定性を改善することができ、常温での機械的物性を向上させることができる。
【0026】
上記で記述したように、本出願のポリアミック酸組成物は、ジアミン単量体およびジアンヒドリド単量体を重合単位で含んでもよい。本明細書において前記ポリイミド前駆体組成物は、前記ポリアミック酸組成物または前記ポリアミック酸溶液と同じ意味で使用することができる。
【0027】
ポリアミック酸溶液の製造に使用することができるジアンヒドリド単量体は、芳香族テトラカルボン酸ジアンヒドリドであってもよく、前記芳香族テトラカルボン酸ジアンヒドリドは、ピロメリット酸ジアンヒドリド(またはPMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはBPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはa-BPDA)、オキシジフタル酸ジアンヒドリド(またはODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはDSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンヒドリド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはBTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンヒドリド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンヒドリド、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンヒドリド)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンヒドリド)、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸ジアンヒドリド、p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸ジアンヒドリド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンヒドリド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンヒドリド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンヒドリド、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンヒドリド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボキシル酸ジアンヒドリド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンヒドリドなどを例示することができる。
【0028】
前記ジアンヒドリド単量体は、必要に応じて、単独または2種以上を組み合わせて用いることができ、例えば、ピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(a-BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)、オキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)、4,4-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸アンヒドリド(6-FDA)、p-フェニレンビス(トリメリテートアンヒドリド)(TAHQ)または2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンヒドリド(BPADA)を含んでもよい。
【0029】
本出願の具体例において、前記ジアンヒドリド単量体は、1個のベンゼン環を有するジアンヒドリド単量体および2個以上のベンゼン環を有するジアンヒドリド単量体を含んでもよい。前記1個のベンゼン環を有するジアンヒドリド単量体および前記2個以上のベンゼン環を有するジアンヒドリド単量体は、それぞれ、20~60モル%および40~90モル%;25~55モル%および45~80モル%;または35~53モル%および48~75モル%のモル比で含まれてもよい。本出願は、前記ジアンヒドリド単量体を含むことによって、優れた接着力を有しながらも、目的とするレベルの機械的物性を共に具現することができる。
【0030】
また、ポリアミック酸溶液の製造に使用することができるジアミン単量体は、芳香族ジアミンであり、以下のように分類して例示することができる。
1)1,4-ジアミノベンゼン(またはパラフェニレンジアミン、PDA)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(またはDABA)などのように、構造上ベンゼン核1個を有するジアミンであり、相対的に剛直な構造のジアミン;
2)4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(またはオキシジアニリン、ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン(またはo-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(またはm-トリジン)、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのように、構造上ベンゼン核2個を有するジアミン;
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのように、構造上ベンゼン核3個を有するジアミン;
4)3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上ベンゼン核4個を有するジアミン。
【0031】
一例示において、本出願によるジアミン単量体は、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’-メチレンジアミン(MDA)、4,4-ジアミノベンズアニリド(4,4-DABA)、N,N-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン-1,4-ジカルボキサミド(BPTPA)、2,2-ジメチルベンジジン(M-TOLIDINE)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)または2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含んでもよい。
【0032】
1つの具体的な例において、前記ポリアミック酸組成物は、全重量を基準として固形分を9~35重量%、10~33重量%、10~30重量%、15~25重量%または18~23重量%含んでもよい。本出願は、前記ポリアミック酸組成物の固形分の含有量を相対的に高く調節することによって、硬化後の物性を目的とするレベルに維持しながらも、粘度の上昇を制御し、硬化過程で多量の溶媒を除去しなければならない製造費用と工程時間の増加を防止することができる。
【0033】
本出願のポリアミック酸組成物は、低粘度特性を有する組成物であってもよい。本出願のポリアミック酸組成物は、23℃の温度および1s-1のせん断速度の条件で測定した粘度が50,000cP以下、40,000cP以下、30,000cP以下、20,000cP以下、10,000cP以下または9,000cP以下であってもよい。その下限は、特に限定されないが、500cP以上または1000cP以上であってもよい。前記粘度は、例えば、Haake社のRheostress 600を用いて測定したものであってもよく、1/sのせん断速度、23℃の温度および1mmのプレートギャップの条件で測定したものであってもよい。本出願は、前記粘度の範囲を調節することによって、優れた工程性を有する前駆体組成物を提供して、フィルムまたは基板の形成時に目的とする物性のフィルムまたは基板を形成することができる。
【0034】
一具体例において、本出願のポリアミック酸組成物は、硬化後の重量平均分子量が10,000~500,000g/mol、15,000~400,000g/mol、18,000~300,000g/mol、20,000~200,000g/mol、25,000~100,000g/molまたは30,000~80,000g/molの範囲内であってもよい。本出願において用語重量平均分子量は、GPC(Gel permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。
【0035】
本出願によるポリアミック酸組成物は、無機粒子をさらに含んでもよい。前記無機粒子は、例えば、平均粒径が5~80nmの範囲内であってもよく、具体例において、下限は、8nm、10nm、15nm、18nm、20nmまたは25nm以下であってもよく、上限は、例えば、70nm、60nm、55nm、48nmまたは40nm以下であってもよい。本明細書において平均粒径は、D50粒度分析により測定したものであってもよい。本出願は、前記粒径の範囲を調節することによって、ポリアミック酸との相溶性を高め、硬化後の目的とする物性を具現させることができる。
【0036】
前記無機粒子の種類は、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、ジルコニア、イットリア、雲母、クレー、ゼオライト、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スカンジウムまたは酸化バリウムを含んでもよい。また、本出願の無機粒子は、表面に表面処理剤が含まれてもよい。前記表面処理剤は、例えば、シランカップリング剤を含んでもよい。前記シランカップリング剤は、エポキシ系、アミノ系およびチオール系化合物からなる群から選択される1種または2種以上であってもよい。詳細には、前記エポキシ系化合物は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glycidoxypropyl trimethoxysilane:GPTMS)を含んでもよいし、前記アミノ系化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxy-silane:APTMS)を含んでもよいし、前記チオール系化合物は、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(mercapto-propyl-trimethoxysilane:MPTMS)を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。また、前記表面処理剤は、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはテトラエトキシシラン(TEOS)を含んでもよい。本出願は、無機粒子の表面に1種の表面処理剤を処理したり、互いに異なる種類の2種の表面処理剤を用いて表面処理することができる。また、前記無機粒子は、ポリアミック酸100重量部に対して1~20重量部の範囲内に含まれてもよい。前記含有量の下限は、例えば、3重量部、5重量部、8重量部、9重量部または10重量部以上であってもよく、上限は、例えば、18重量部、15重量部、13重量部または8重量部以下であってもよい。本出願は、前記無機粒子をポリアミック酸組成物に配合させることによって、分散性および混和性を向上させ、硬化後の接着性および耐熱耐久性を具現することができる。
【0037】
前記ポリアミック酸組成物は、硬化後の熱膨張係数(CTE)が40ppm/℃以下の範囲を有していてもよい。一具体例において、前記CTEの上限は、40ppm/℃、35ppm/℃、30ppm/℃、25ppm/℃、20ppm/℃、18ppm/℃、15ppm/℃、13ppm/℃、10ppm/℃、8ppm/℃、7ppm/℃、6ppm/℃、5ppm/℃、4.8ppm/℃、4.3ppm/℃、4ppm/℃、3.7ppm/℃、3.5ppm/℃、3ppm/℃、2.8ppm/℃または2.6ppm/℃以下であってもよく、下限は、例えば、0.1ppm/℃、1ppm/℃、2.0ppm/℃、2.6ppm/℃、2.8ppm/℃、3.5ppm/℃または4ppm/℃以上であってもよい。1つの例において、前記熱膨張係数は、100~450℃で測定したものであってもよい。前記CTEは、TA社の熱機械分析器(thermomechanical analyzer)Q400モデルを使用することができ、ポリイミドをフィルム化製造して幅2mm、長さ10mmに切った後、窒素雰囲気下で0.05Nの張力を加えながら、10℃/minの速度で常温から500℃まで昇温後、さらに10℃/minの速度で冷却しつつ、100℃から450℃区間の傾きを測定することができる。
【0038】
また、前記ポリアミック酸組成物は、硬化後の伸び率(Elongation)が10%以上であってもよく、具体例において、12%以上、13%以上、15%以上、18%以上、20~60%、20~50%、20~40%、20~38%、22~36%、24~33%、または25~29%であってもよい。前記伸び率は、ポリアミック酸組成物をポリイミドフィルムに硬化して、幅10mm、長さ40mmに切った後、インストロン(Instron)社のInstron5564 UTM装備を用いてASTM D-882方法で伸び率を測定することができる。
【0039】
また、本出願のポリアミック酸組成物は、硬化後の弾性率が6.0GPa~11GPaの範囲内であってもよい。前記弾性率の下限は、例えば、6.5GPa、7.0GPa、7.5GPa、8.0GPa、8.5GPa、9.0GPa、9.3GPa、9.55GPa、9.65GPa、9.8GPa、9.9GPa、9.95GPa、10.0GPaまたは10.3GPa以上であってもよく、上限は、例えば、10.8GPa、10.5GPa、10.2GPaまたは10.0GPa以下であってもよい。また、ポリアミック酸組成物は、硬化後の引張強度が300MPa~600MPaの範囲内であってもよい。前記引張強度の下限は、例えば、350MPa、400MPa、450MPa、480MPa、500MPa、530MPaまたは540MPa以上であってもよく、上限は、例えば、580MPa、570MPa、560MPa、545MPa、530MPaまたは500MPa以下であってもよい。前記弾性率および引張強度は、前記ポリアミック酸組成物を硬化してポリイミドフィルムに製造した後、幅10mm、長さ40mmに切った後、インストロン(Instron)社のInstron5564 UTM装備を用いてASTM D-882方法で弾性率および引張強度を測定することができる。この際のCross Head Speedは、50mm/minの条件で測定することができる。
【0040】
本出願によるポリアミック酸組成物は、一例示において、硬化後のガラス転移温度が350℃以上の範囲を有していてもよい。前記ガラス転移温度の上限は、800℃または700℃以下であってもよく、その下限は、360℃、365℃、370℃、380℃、390℃、400℃、410℃、420℃、425℃、430℃、440℃、445℃、448℃、450℃、453℃、455℃または458℃以上であってもよい。前記ガラス転移温度は、ポリアミック酸組成物を硬化して製造されたポリイミドに対してTMAを用いて10℃/minの条件で測定することができる。
【0041】
本出願によるポリアミック酸組成物は、硬化後の1重量%熱分解温度が500℃以上であってもよい。前記熱分解温度は、TA社の熱重量分析(thermogravimetric analysis)Q50モデルを用いて測定することができる。具体例において、前記ポリアミック酸を硬化したポリイミドを窒素雰囲気下で10℃/分の速度で150℃まで昇温させた後、30分間等温を維持して水分を除去する。その後、10℃/分の速度で600℃まで昇温して1%の重量減少が発生する温度を測定することができる。前記熱分解温度の下限は、例えば、510℃、515℃、518℃、523℃、525℃、528℃、530℃、535℃、538℃、545℃、550℃、560℃、565℃、568℃、570℃、580℃、583℃、585℃、588℃、590℃または593℃以上であってもよく、上限は、例えば、800℃、750℃、700℃、650℃または630℃以下であってもよい。
【0042】
また、本出願によるポリアミック酸組成物は、硬化後の可視光線領域(380~780nm)のうちいずれか1つの波長帯で光透過率が50~80%の範囲内であってもよい。前記光透過率の下限は、例えば、55%、58%、60%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、または71%以上であってもよく、上限は、例えば、78%、75%、73%、72%、71%、69%、68%、67%、66%、65%または64%以下であってもよい。
【0043】
また、本出願は、前述したポリアミック酸組成物の製造方法に関する。
【0044】
前記製造方法は、少なくとも50℃以上で加熱する段階を含んでもよい。前記加熱段階は、例えば、55℃以上、58℃以上、60℃以上、63℃以上、65℃以上、または68℃以上であってもよく、上限は、例えば、100℃以下、98℃以下、93℃以下、88℃以下、85℃以下、83℃以下、80℃以下、78℃以下、75℃以下、73℃以下、または71℃以下であってもよい。本出願は、前記加熱段階前に有機溶媒とジアンヒドリド単量体成分を混合する段階を含んでもよい。本出願は、前記混合後に前述した加熱段階が行われてもよく、したがって、有機溶媒およびジアンヒドリド単量体が含まれた状態で加熱が行われてもよい。本出願は、従来の工程より高温の加熱段階を行うことによって、目的とするポリアミック酸構造を有することができ、硬化後には全体高分子鎖の長さを増加させ、このような高分子は、優れた耐熱性、寸法安定性および機械的物性を具現することができる。
【0045】
具体例において、本出願のポリアミック酸組成物の製造方法は、例えば、下記の重合方法を有することができる。
例えば、(1)ジアミン単量体全量を溶媒中に入れ、その後、ジアンヒドリド単量体をジアミン単量体と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(2)ジアンヒドリド単量体全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン単量体をジアンヒドリド単量体と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(3)ジアミン単量体のうちの一部の成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアンヒドリド単量体のうちの一部の成分を約95~105モル%の割合で混合した後、残りのジアミン単量体成分を添加し、これに連続して残りのジアンヒドリド単量体成分を添加して、ジアミン単量体およびジアンヒドリド単量体が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(4)ジアンヒドリド単量体を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物のうちの一部の成分を95~105モル%の割合で混合した後、他のジアンヒドリド単量体成分を添加し、続いて残りのジアミン単量体成分を添加して、ジアミン単量体およびジアンヒドリド単量体が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(5)溶媒のうちで一部のジアミン単量体成分と一部のジアンヒドリド単量体成分をいずれか1つが過量となるように反応させて、第1組成物を形成し、他の溶媒のうちで一部のジアミン単量体成分と一部のジアンヒドリド単量体成分をいずれか1つが過量となるように反応させて第2組成物を形成した後、第1、第2組成物を混合し、重合を完結する方法であって、この際、第1組成物を形成するとき、ジアミン単量体成分が過剰の場合、第2組成物では、ジアンヒドリド単量体成分を過量とし、第1組成物においてジアンヒドリド単量体成分が過剰の場合、第2組成物では、ジアミン単量体成分を過量として、第1、第2組成物を混合して、これらの反応に使用される全体ジアミン単量体成分とジアンヒドリド単量体成分が実質的に等モルとなるようにして重合する方法などが挙げられる。
【0046】
前記重合方法が以上の例にのみ限定されるものではなく、公知のいかなる方法を使用することができることはもちろんである。
【0047】
前記ポリアミック酸組成物を製造する段階は、30~80℃で行われてもよい。
【0048】
また、本出願は、前記ポリアミック酸組成物の硬化物を含むポリイミドに関する。また、本出願は、前記ポリイミドを含むポリイミドフィルムを提供する。前記ポリイミドフィルムは、基板用ポリイミドフィルムであってもよく、具体例において、TFT基板用ポリイミドフィルムであってもよい。
【0049】
また、本発明は、前記ポリアミック酸組成物の製造方法によって製造されたポリアミック酸組成物を支持体に製膜し、乾燥して、ゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを硬化する段階を含む、ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0050】
具体的には、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に製膜し、乾燥して、ゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを硬化する段階は、前記支持体に製膜されたポリイミド前駆体組成物を20~120℃の温度で5~60分間乾燥してゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを30~500℃まで1~8℃/分の速度で昇温し、450~500℃で5~60分間熱処理し、20~120℃まで1~8℃/分の速度で冷却する工程を通じて行われてもよい。
【0051】
前記ゲルフィルムを硬化する段階は、30~500℃で行われてもよい。例えば、前記ゲルフィルムを硬化する段階は、30~400℃、30~300℃、30~200℃、30~100℃、100~500℃、100~300℃、200~500℃または400~500℃で行われてもよい。
【0052】
前記ポリイミドフィルムの厚さは、10~20μmであることを特徴とする。例えば、前記ポリイミドフィルムの厚さは、10~18μm、10~16μm、10~14μm、12~20μm、14~20μm、16~20μmまたは18~20μmであってもよい。
【0053】
前記支持体は、例えば、無機基板であってもよく、無機基板としては、ガラス基板、金属基板が挙げられるが、ガラス基板を使用することが好ましく、前記ガラス基板は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0054】
本出願は、ポリアミック酸の固形分の濃度が高く、かつ低粘度を有し、硬化後に優れた耐熱性、寸法安定性および機械的物性だけでなく、優れた電気的特性を有するポリアミック酸組成物、これから製造されたポリイミドおよびポリイミドフィルムを提供する。
【0055】
<発明を実施するための最良の形態>
以下、本発明による実施例および本発明によらない比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0056】
<ポリアミック酸溶液の製造>
実施例1
撹拌機および窒素注入排出管を具備する500ml反応器に窒素を注入させながら、第1溶媒としてN-メチル-ピロリドン(NMP、99wt%)を投入した後、さらなる添加溶媒として第2溶媒メタノール(MeOH)を1wt%の割合で投入し、撹拌させた。反応器の温度を70℃に設定した後、ジアンヒドリド単量体としてビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)を投入して反応させた。次に、窒素雰囲気下で30℃に温度を下げて、この反応溶液にジアミン単量体としてパラ-フェニレンジアミン(PPD)を完全に溶解させ、迅速に撹拌させた。その後、40℃の温度で加熱しつつ、120分間撹拌を継続して、ポリアミック酸溶液を製造した。
【0057】
実施例2~6
表1のように単量体と含有量の割合および添加溶媒の種類と含有量の割合を調節したことを除いて、実施例1と同じ方法でポリアミック酸溶液を製造した。
【0058】
比較例1~6
表1のように単量体と含有量の割合を調節し、第2溶媒は除外したことを除いて、実施例1と同じ方法でポリアミック酸溶液を製造した。
【0059】
【0060】
<物性測定のためのポリイミドの製造>
前記実施例および比較例で製造されたポリアミック酸組成物を1,500rpm以上の高速回転を通じて気泡を除去した。その後、スピンコーターを用いてガラス基板に脱泡したポリアミック酸組成物を塗布した。その後、窒素雰囲気下および120℃の温度で30分間乾燥してゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを450℃まで2℃/分の速度で昇温し、450℃で60分間熱処理し、30℃まで2℃/分の速度で冷却して、ポリイミドフィルムを収得した。
【0061】
その後、蒸留水にディッピング(dipping)して、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離させた。製造されたポリイミドフィルムの物性を下記方式を用いて測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0062】
実験例1-誘電率
前記実施例および比較例で製造したポリイミドに対してASTM D150規格によって誘電率を測定した。具体的には、120Hz、23(±3)℃および45(±5)%相対湿度における誘電率をLCR Meter(Agilent)を用いて測定した。その結果、測定された誘電率を下記の表2に示した。
【0063】
実験例2-表面抵抗
実施例および比較例で製造されたポリイミドに対してASTM D257規格によって23℃温度および50%相対湿度で下記の測定機器および測定条件で表面抵抗を測定した。
1.Analyzer(分析装置)
1)装備名:Resistance Meter
2)製造社およびモデル:Agilent/4339B
3)Measurement range:1kΩ to 16PΩ
4)Basic accuracy:±0.6%
2.Analysis Method(分析方法)
1)Test condition(試験条件)
-温度:23±3℃
2)Specimen(試験体)
-110×110mm Film
3)Test method:ASTM D257
4)Source Voltage:500V
5)Load Scale:5kgf
6)Charge Time:60Sec.
【0064】
実験例3-粘度
実施例および比較例で製造されたポリイミド前駆体組成物に対して、Haake社のRheostress 600を用いて1/sのせん断速度、23℃の温度および1mmのプレートギャップの条件で粘度を測定した。
【0065】
実験例4-ガラス転移温度
実施例および比較例で製造されたポリイミドフィルムに対して、TMAを用いて10℃/minの条件で急激に膨張する地点をOn-set pointとして測定した。
【0066】
実験例5-CTE
TA社の熱機械分析器(thermomechanical analyzer)Q400モデルを用い、ポリイミドフィルムを幅2mm、長さ10mmに切った後、窒素雰囲気下で0.05Nの張力を加えながら、10℃/minの速度で常温から500℃まで昇温後、さらに10℃/minの速度で冷却しつつ、100℃からTg温度までの区間の傾きを測定した。
【0067】
実験例6-1重量%の熱分解温度(Td)
TA社の熱重量分析(thermogravimetric analysis)Q50モデルを用い、ポリイミドフィルムを窒素雰囲気下で10℃/分の速度で150℃まで昇温させた後、30分間等温を維持して水分を除去した。その後、10℃/分の速度で600℃まで昇温して、1%の重量減少が発生する温度を測定した。
【0068】
【国際調査報告】