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特表2023-550443正極予備リチオ化剤、およびその準備方法および応用
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  • 特表-正極予備リチオ化剤、およびその準備方法および応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】正極予備リチオ化剤、およびその準備方法および応用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20231124BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231124BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231124BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530320
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2021105363
(87)【国際公開番号】W WO2022105259
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】202011332764.2
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ、シュオユ
(72)【発明者】
【氏名】シア、シェンガン
(72)【発明者】
【氏名】レイ、ユ
(72)【発明者】
【氏名】シャ、ユジン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050DA09
5H050DA16
5H050GA10
5H050GA11
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA13
(57)【要約】
本願の実施形態が、触媒およびリチウムリッチ材料を含む正極予備リチオ化剤を提供する。触媒は酸化物正極活物質であり、触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、触媒はリチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されている。リチウムリッチ材料は、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。触媒によって、正極予備リチオ化剤は低い電圧で活性リチウムイオンを放出でき、脱リチオ化後に残る残差がバッテリの電解質によるガス発生のリスクを増加させることはなく、電気化学セルのインピーダンスを増加させることもないので、優れた予備リチオ化効果を達成できる。本願の実施形態がさらに、正極予備リチオ化剤の準備方法、バッテリ用正極プレート、電気化学バッテリ、および端末を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極予備リチオ化剤であって、前記正極予備リチオ化剤が触媒およびリチウムリッチ材料を備え、前記触媒が酸化物正極活物質であり、前記触媒の結晶面回折ピーク(003)の、前記触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、前記触媒が前記リチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されており、前記リチウムリッチ材料が酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、正極予備リチオ化剤。
【請求項2】
前記触媒の前記結晶面回折ピーク(003)の、前記触媒の前記結晶面回折ピーク(104)に対する前記強度比が1.0~1.8に及ぶ、請求項1に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項3】
前記酸化物正極活物質が、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびニッケルコバルトアルミ酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項4】
前記酸化物正極活物質がさらにドーピング元素を含み、前記ドーピング元素が、B、P、N、Mg、Al、Ca、Ba、La、Zr、Mo、Nb、Ti、V、Sn、Sb、Cr、Fe、Cu、およびZnのうちの少なくとも1種を含む、請求項3に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項5】
前記触媒の粒子サイズが10nm~25μmに及ぶ、請求項1に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項6】
前記リチウムリッチ材料が前記触媒の表面を覆っている、および/または前記触媒が前記リチウムリッチ材料の中に分散している、請求項1から5のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項7】
前記リチウムリッチ材料の、前記触媒に対する質量比が1:(0.01~100)である、請求項6に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項8】
前記リチウムリッチ材料が10nm~20μmの厚さのリチウムリッチ材料コーティング層を前記触媒の前記表面に形成する、請求項6に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項9】
前記正極予備リチオ化剤がさらに、前記触媒および前記リチウムリッチ材料に巻き付けられた保護層を備え、前記保護層がイオン導電性を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項10】
前記保護層の材料が、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、リン酸リチウム、無機導電性カーボン、有機ポリマー、および不動酸化物のうちの少なくとも1種を含む、請求項9に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項11】
前記保護層の厚さが5nm~200nmに及ぶ、請求項9または10に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項12】
前記保護層の質量が前記正極予備リチオ化剤の質量の0.01%~10%である、請求項9から11のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項13】
前記正極予備リチオ化剤の粒子サイズが50nm~30μmに及ぶ、請求項1から12のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
【請求項14】
正極予備リチオ化剤の準備方法であって、前記準備方法が、
酸化物正極活物質に格子再構成を行って触媒を取得し、前記触媒およびリチウムリッチ材料に物理融合を行って正極予備リチオ化剤を取得する段階;または
酸化物正極活物質およびリチウムリッチ材料を混合し、次いで高エネルギーボールミリングを行って正極予備リチオ化剤を取得する段階、ここで前記正極予備リチオ化剤が触媒および前記リチウムリッチ材料を含み、前記触媒が格子再構成後の酸化物正極活物質である
を備え、
前記触媒の結晶面回折ピーク(003)の、前記触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、前記触媒が前記リチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されており、前記リチウムリッチ材料が、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、準備方法。
【請求項15】
前記格子再構成の方式が、(a)前記酸化物正極活物質に高エネルギーボールミリングを行う方式;または(b)前記酸化物正極活物質および3族元素および/または5族元素の化合物に高エネルギーボールミリングを行い、次いで焼結を行う方式のうちの一方を有する請求項14に記載の準備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年11月23日に中国国家知識産権局に出願された「正極予備リチオ化剤、およびその準備方法および応用(POSITIVE-ELECTRODE PRE-LITHIATION AGENT, AND PREPARATION METHOD AND APPLICATION THEREOF)」と題する中国特許出願第202011332764.2号に基づく優先権を主張し、当該中国特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本願の実施形態はバッテリ技術の分野に関し、具体的には、バッテリの正極用の正極予備リチオ化剤、およびその準備方法および応用に関する。
【背景技術】
【0003】
経済、科学、および技術の発展に伴い、高いエネルギー密度および長いサイクル寿命を備えたエネルギー貯蔵装置が、ポータブル電子デバイス(携帯電話、タブレットコンピュータ、およびノートブックコンピュータなど)、無人航空機、および電気自動車などの業界において喫緊に必要とされている。エネルギー貯蔵装置であるリチウムイオンバッテリが、前述した要件を満たすのを可能にするために、業界で一般に用いられている手段とは、活性リチウムの供給が可能な予備リチオ化剤をリチウムイオンバッテリシステムに予め添加して、バッテリの準備およびサイクリング時における活性リチウムの不可逆的損失を補うことである。
【0004】
現在、バッテリの予備リチオ化は主に、正極予備リチオ化および負極予備リチオ化に分類され得る。正極予備リチオ化では、正極予備リチオ化剤がバッテリの正極系に添加される。現在、数種類の正極予備リチオ化剤が利用可能であり、通常、これらはLiNiOおよびLiCoOなどのリチウムリッチ材料であり;これらの正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に正極側に残る残差によって、電気化学セルのインピーダンスが増加する、電解質を触媒してガスを生じさせるなどのことが起こる。
【発明の概要】
【0005】
これを考慮して、本願の実施形態では正極予備リチオ化剤を提供する。結晶面回折ピーク(003)の、結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しい酸化物正極活物質が触媒として用いられ、この触媒はリチウムリッチ材料を触媒して、低い電圧で活性リチウムを放出できる。さらに、正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に正極側に残る残差が、電解質によるガス発生のリスクまたは電気化学セルのインピーダンスを増加させることはない。これにより、正極予備リチオ化剤の選択範囲が拡大する。
【0006】
具体的には、本願の実施形態の第1態様が正極予備リチオ化剤を提供する。正極予備リチオ化剤は触媒およびリチウムリッチ材料を含む。触媒は酸化物正極活物質であり、触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、触媒はリチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されている。リチウムリッチ材料は、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0007】
本願の本実施形態で提供する正極予備リチオ化剤は、リチウムリッチ材料および触媒を含む。触媒は、特別なXRD特性を持つ酸化物正極活物質であり、高い触媒活性を有し、バッテリ化成段階において、元々は高い脱リチオ化電位を有するリチウムリッチ材料を触媒して低い電位で分解し、活性リチウムイオンを放出できる。これにより、正極予備リチオ化剤の選択範囲が拡大する。正極予備リチオ化剤は高い予備リチオ化容量を有し、バッテリ内の活性リチウムの不可逆的消費を十分に補うことができる。これがバッテリ性能の向上に役立つ。さらに、正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に多少の残差が正極側に残るが、電解質によるガス発生のリスクが増加することも、電気化学セルのインピーダンスが増加することも、またはバッテリエネルギー密度が低下することもない。
【0008】
本願のいくつかの実装例において、触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比は、1.0~1.8に及ぶ。この場合、触媒の触媒活性は高い。
【0009】
本願の一実装例において、酸化物正極活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびニッケルコバルトアルミ酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0010】
本願のいくつかの実装例において、酸化物正極活物質はさらにドーピング元素を含み、ドーピング元素は、B、P、N、Mg、Al、Ca、Ba、La、Zr、Mo、Nb、Ti、V、Sn、Sb、Cr、Fe、Cu、およびZnのうちの少なくとも1種を含む。適切なドーピング元素によって、酸化物正極活物質の内部電子軌道重複状態または表面特性を変えること、および構造安定性を向上させることなどが可能になる。
【0011】
本願の一実装例において、触媒の粒子サイズが10nm~25μmに及ぶ。触媒の粒子サイズは、リチウムリッチ材料の電気化学活性に基づいて選択されてよい。例えば、リチウムリッチ材料の電気化学活性が低い場合、粒子サイズが小さい方の触媒がリチウムリッチ材料の分解にとってより役立つ。
【0012】
本願の一実装例において、リチウムリッチ材料は触媒の表面を覆っている、および/または触媒はリチウムリッチ材料の中に分散している。このように、触媒の触媒活性をかなりの程度まで利用できる。
【0013】
本願の一実装例において、リチウムリッチ材料の、触媒に対する質量比が1:(0.01~100)である。リチウムリッチ材料の、触媒に対する質量比を制御すると、正極予備リチオ化剤の初期脱リチオ化容量を調整できる。
【0014】
本願のいくつかの実装例において、リチウムリッチ材料は、厚さが10nm~20μmのリチウムリッチ材料コーティング層を触媒の表面に形成する。リチウムリッチ材料が触媒を覆っている場合、触媒の触媒活性をかなりの程度まで利用できる。
【0015】
本願のいくつかの実装例において、正極予備リチオ化剤はさらに、触媒およびリチウムリッチ材料に巻き付けられた保護層を含み、保護層はイオン導電性を有する。保護層はさらに、特にリチウムリッチ材料が酸化リチウムまたは過酸化リチウムである場合、正極予備リチオ化剤の安定性および処理性能を向上させることができる。
【0016】
本願の一実装例において、保護層の材料が、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、リン酸リチウム、無機導電性カーボン、有機ポリマー、および不動酸化物のうちの少なくとも1種を含む。これらの保護層は、バッテリの電解質によるガス発生のリスクを増加させない。
【0017】
本願の一実装例において、保護層の厚さが5nm~200nmに及ぶ。適切な厚さの保護層によって、正極予備リチオ化剤の高い処理性能を確保でき、厚すぎるために活性リチウムのタイムリーな放出に影響を与えること、およびバッテリインピーダンスを増加させることなども防止できる。
【0018】
本願の一実装例において、保護層の質量が正極予備リチオ化剤の質量の0.01%~10%である。保護層の質量割合が低いため、正極予備リチオ化剤は、正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に残る残差の質量を過度に増加させることなく、高い処理性能を有することができるようになる。
【0019】
本願の一実装例において、正極予備リチオ化剤の粒子サイズが50nm~30μmに及ぶ。
【0020】
本願の実施形態の第2態様がさらに、正極予備リチオ化剤の準備方法を提供する。本方法には、酸化物正極活物質に格子再構成を行って触媒を取得し、次いで触媒およびリチウムリッチ材料に物理融合を行って正極予備リチオ化剤を取得する段階;または酸化物正極活物質およびリチウムリッチ材料を混合し、次いで高エネルギーボールミリングを行って正極予備リチオ化剤を取得する段階、ここで正極予備リチオ化剤は触媒およびリチウムリッチ材料を含み、触媒は格子再構成後の酸化物正極活物質であり、触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、触媒はリチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されており、リチウムリッチ材料は、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、が含まれる。
【0021】
本願のいくつかの実装例において、格子再構成の方式には、(a)酸化物正極活物質に高エネルギーボールミリングを行う;または(b)酸化物正極活物質および3族元素および/または5族元素の化合物に高エネルギーボールミリングを行い、次いで焼結を行う、という方式のうちの1つが含まれる。
【0022】
本願のいくつかの実装例において、高エネルギーボールミリングの回転速度が350r/minより大きいまたはこれに等しい。
【0023】
本願のいくつかの実装例において、物理融合は、回転速度が300r/minより小さいまたはこれに等しい低速ボールミリングである。
【0024】
本願のいくつかの実装例において、準備方法はさらに、リチウムリッチ材料が特に酸化リチウムおよび過酸化リチウムのうちの少なくとも一方を含む場合に、触媒およびリチウムリッチ材料に巻き付けられる保護層を形成する段階を含む。特定の一実施形態では、保護層を形成する方式が、触媒およびリチウムリッチ材料に物理融合を行うことで取得されるコア材料を、熱処理のために乾燥空気または二酸化炭素雰囲気の中に配置する段階を含む。このように、密な炭酸リチウム保護層をin-situで生成することができる。
【0025】
本願の実施形態の第2態様で提供される正極予備リチオ化剤の準備方法は、簡単なプロセスを有し、効率的で環境に配慮したものであり、大量生産に用いることができる。
【0026】
本願の実施形態の第3態様がさらに、バッテリ用正極プレートを提供する。バッテリ用正極プレートは、集電体、および集電体上に設けられた正極材料層を含む。正極材料層は、本願の実施形態の第1態様による正極予備リチオ化剤、正極活物質、バインダ、および導電剤を含む。
【0027】
バッテリ用正極プレートを準備する際に、正極材料層を形成するのに用いられる正極スラリーが調整可能な粘度を有し、ゼリー化現象を起こさないため容易に塗布でき、平坦性の高いフィルム層が取得される。正極予備リチオ化剤を含む電極プレートが、エネルギー密度が高くサイクル寿命が長い電気化学バッテリを提供するのに用いられ得る。
【0028】
本願の実施形態の第4態様がさらに、正極、負極、および正極および負極の間に位置するセパレータおよび電解質を含む電気化学バッテリを提供する。正極は、本願の実施形態の第3態様によるバッテリ用正極プレートである。電気化学バッテリは、高いエネルギー密度および長いサイクル寿命を有する。
【0029】
本願の実施形態の第5態様がさらに、端末を提供する。端末は、ハウジング、およびハウジング内に位置するメインボードおよびバッテリを含む。バッテリは本願の実施形態の第4態様による電気化学バッテリを含み、電気化学バッテリは端末に電力を供給するように構成されている。端末は、携帯電話、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、ポータブルデバイス、またはインテリジェントウェアラブル製品などの電子製品としてよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本願の一実装例による正極予備リチオ化剤の構造の概略図である。
【0031】
図2a】本願の一実装例による正極予備リチオ化剤の構造の概略図である。
【0032】
図2b】本願の別の実装例による正極予備リチオ化剤の構造の概略図である。
【0033】
図2c】本願のさらに別の実装例による正極予備リチオ化剤の構造の概略図である。
【0034】
図3】本願の一実装例によるバッテリ用正極プレートの構造に関する概略図である。
【0035】
図4】本願の一実施形態による端末の構造の概略図である。
【0036】
図5】本願の実施形態1による正極予備リチオ化剤に入っている触媒のX線回折(XRD)図である。
【0037】
図6】本願の実施形態1による正極予備リチオ化剤のXRD図である。
【0038】
図7】実施形態1による、正極予備リチオ化剤の充電/放電特性(a)、および正極予備リチオ化剤およびコバルト酸リチウムを混合することにより準備されたボタン型セルの充電/放電特性(b)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
リチウムイオンバッテリには主に、正極、負極、電解質、およびセパレータが含まれている。リチウムイオンバッテリ内の活性リチウムは全て、正極材料によって供給される。しかしながら、正極材料の初期クーロン効率および負極材料の初期クーロン効率が一致しないこと、および固体電解質相間膜(SEI膜)がバッテリの初期充電中に負極の表面に形成されることなどのために、正極の活性リチウムの一部が負極で消費される。これが、再利用可能なリチウムの損失につながり、バッテリの正極材料のグラム容量の利用に影響を及ぼし、バッテリエネルギー密度を低下させる。さらに、バッテリのサイクリング時における一部の不可逆的な化学副反応および負極材料のサイズ変化によるSEIの厚さ増加も、大量の活性リチウムの消費を引き起こし、バッテリの耐用年数に影響を及ぼす。リチウムイオンバッテリのエネルギー密度およびサイクル性能などを向上させるために、本願の実施形態では、予備リチオ化効果に優れた正極予備リチオ化剤を提供する。以下では、本願の実施形態における添付図面を参照して、本願の実施形態を説明する。
【0040】
図1に示すように、本願の一実施形態では、バッテリの正極に正極予備リチオ化剤100を提供する。正極予備リチオ化剤100は、触媒11およびリチウムリッチ材料12を含む。触媒11の材料が酸化物正極活物質である。触媒11の結晶面回折ピーク(003)の、触媒11の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しい。触媒11は、リチウムリッチ材料12を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されている。リチウムリッチ材料12は、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0041】
本願の一実装例において、リチウムリッチ材料12は(図1に示すように)触媒11の表面を覆ってよく、および/または触媒11はリチウムリッチ材料12の中に分散されている(図には示していない)。触媒11の触媒活性をかなりの程度まで利用できる。さらに、リチウムリッチ材料12は触媒11の表面全体を覆ってもよく(これは図1に示されている);または触媒11の表面の一部だけを覆ってもよい。
【0042】
正極予備リチオ化剤における触媒11は、「格子再構成後の酸化物正極活物質」と呼ばれることがある。一般的な酸化物正極活物質と比較すると、酸化物正極活物質に格子再構成を行うことで取得される触媒11の結晶面回折ピーク(003)の、触媒11の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比は小さく、結晶面の一部が露出し、表面が粗く、触媒11は触媒活性を示す。さらに、格子再構成後の酸化物正極活物質は、リチオ化容量が低くなり、可逆容量が小さいため、予備リチオ化にとってより適している。本願において、触媒11は、脱リチオ化電位が元々高い(換言すれば、電気化学活性が低い)リチウムリッチ材料12の脱リチオ化電位を低下させることができるため、リチウムイオンバッテリの動作電圧範囲内で、リチウムイオンがリチウムリッチ材料12から脱挿入されるようになる。これにより、予備リチオ化効果が達成され、予備リチオ化剤の選択範囲が拡大する。本願における「脱リチオ化電位」という用語は、材料中のリチウム原子が電解質に脱挿入されて活性リチウムイオンになることができる最小電圧である。
【0043】
さらに、正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に正極側に残る残差が、電解質によるガス発生のリスクを増加させることはなく、電気化学セルのインピーダンスを増加させることもない。具体的には、本願の正極予備リチオ化剤100がバッテリ化成段階で脱リチオ化した後に、触媒11はバッテリの正極に保持される。触媒11の材料は酸化物正極活物質であり、これは、電解質によるガス発生のリスクを増加させることがなく、電気化学セルに追加物質を導入することがなく、電気化学セルのインピーダンスに対する影響が小さい。一部のリチウムリッチ材料(酸化リチウム、過酸化リチウム、炭酸リチウム、およびシュウ酸リチウムなど)のガス状の脱リチオ化生成物が、バッテリ準備時の排気段階で放出されることがあり、電気化学セルのサイズまたは質量を占有することはなく、もちろん電解質によるガス発生を増加させることはない。一部の他のリチウムリッチ材料(フッ化リチウムおよび酢酸リチウムなど)の脱リチオ化生成物も、電解質によるガス発生のリスクを増加させることはなく、電気化学セルのインピーダンスを増加させずにバッテリの負極SEI膜の化成に関与できる。したがって、正極予備リチオ化剤は優れた予備リチオ化効果を達成でき、バッテリサイクル性能およびエネルギー密度などを十分に向上させることができる。
【0044】
本願におけるリチウムリッチ材料12の脱リチオ化電位は通常、触媒なしで4.5Vより大きく、バッテリの標準的な動作電圧範囲を超えているため、リチウムリッチ材料12は通常、予備リチオ化に用いられない。しかしながら、本願における触媒11の作用下では、リチウムリッチ材料12は、4.2Vより低い標準的なバッテリ動作電圧で活性リチウムを放出できる。表1は、触媒なしでの、リチウムリッチ材料12の脱リチオ化電位および理論上の比容量を示している。
[表1、触媒なしでのリチウムリッチ材料の脱リチオ化電位および理論上の比容量]
【表1】
【0045】
表1から分かるのは、本願の本実装例では、リチウムリッチ材料12の理論上の比充電容量(すなわち、脱リチオ化容量)が高く、400mAh/gを超えており、一部は1000mAh/gより大きいということである。特に、これらのリチウムリッチ材料12の可逆容量は小さく、したがって、実際の予備リチオ化容量は高い。実際の予備リチオ化容量とは、脱リチオ化容量および可逆容量の間の差であり、「不可逆的な脱リチオ化容量」とも呼ばれることがある。例えば、既存のLiNiOの理論上の脱リチオ化容量が510mAh/gであり、0.1Cで測定した脱リチオ化容量は390mAh/gである。しかしながら、LiNiOの可逆容量が約120mAh/gであり、したがって、LiNiOの予備リチオ化容量が270mAh/gしかない。しかしながら、本願では、コバルト酸リチウム触媒およびシュウ酸リチウムを3:1の質量比で含む正極予備リチオ化剤の実際の予備リチオ化容量が、0.1Cで320mAh/gに達することが可能である。
【0046】
本願のいくつかの実装例において、リチウムリッチ材料12は、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、および炭酸リチウムなどのうちの少なくとも1種である。これらのリチウムリッチ材料は理論上の比充電容量が高く、こうしたリチウムリッチ材料を含む正極予備リチオ化剤は、高い実際の予備リチオ化容量を提供できる。これがバッテリ容量をより望ましく向上させるのに役立つ。
【0047】
本願の一実装例において、リチウムリッチ材料12の、触媒11に対する質量比は1:(0.01~100)としてよい。いくつかの実施形態において、質量比は1:(0.1~20)としてよい。いくつかの他の実施形態において、質量比は1:(0.5~20)としてよい。さらにいくつかの他の実施形態において、リチウムリッチ材料12の、触媒11に対する質量比は1:(2~8)としてよい。リチウムリッチ材料12の、触媒11に対する比率は、適切な範囲内になるように制御されるため、正極予備リチオ化剤100の初期脱リチオ化容量および実際の予備リチオ化容量などを調整できるようになる。本願のいくつかの実装例において、正極予備リチオ化剤の初期脱リチオ化容量は、400mAh/g~1700mAh/gの範囲内で柔軟に選択されてよい。いくつかの実施形態において正極予備リチオ化剤の初期脱リチオ化容量は、420mAh/g~1400mAh/gの範囲内としてよい。いくつかの他の実施形態において、この値は420mAh/g~600mAh/gの範囲内で調整されてよい。例えば、リチウムリッチ材料が酸化リチウムである場合、且つ酸化リチウムの、触媒に対する質量比が1:4より大きいまたはこれに等しい場合、正極予備リチオ化剤の初期脱リチオ化容量は400mAh/gより大きくてよい。
【0048】
本願の一実装例において、正極予備リチオ化剤100の予備リチオ化容量が400mAh/gより小さくはない。正極予備リチオ化剤100は予備リチオ化容量が高く、バッテリの準備およびサイクリング時に、バッテリの負極において活性リチウムの不可逆的損失を十分に補うことができる。これにより、バッテリエネルギー密度およびサイクル寿命が著しく向上する。いくつかの実施形態において、正極予備リチオ化剤100の予備リチオ化容量は、400mAh/g~1300mAh/gとしてよい。いくつかの他の実施形態において、正極予備リチオ化剤100の予備リチオ化容量は、400mAh/g~800mAh/gとしてよい。
【0049】
バッテリ用語である「バッテリエネルギー密度」は、単位重量またはサイズ当たりの、バッテリに蓄えられる電気量を示している。バッテリエネルギー密度は、電極材料の比容量と放電電圧を掛け合わせることで求めることができる。この値は、活性リチウムの量をバッテリの合計サイズまたは合計質量で割ったものに本質的に等しい。予備リチオ化剤により提供される予備リチオ化容量が高いほど、予備リチオ化後に残る残差の質量が小さく、バッテリエネルギー密度の増加が大きいことを示す。
【0050】
本願のいくつかの実装例において、リチウムリッチ材料12は、酸化リチウム、過酸化リチウム、炭酸リチウム、およびシュウ酸リチウムのうちの少なくとも1種である。これらのリチウムリッチ材料の脱リチオ化生成物が酸素、窒素、またはCOガスであり、バッテリ準備時の排気段階で放出されてよい。この場合、脱リチオ化後の正極予備リチオ化剤の質量残差度(すなわち、脱リチオ化前における残差の質量の、正極予備リチオ化剤の質量に対する比率)が低い。これが、バッテリのサイズおよび質量の非常にわずかな増加を引き起こし、バッテリエネルギー密度の増加に非常に役立つ。
【0051】
本願のいくつかの実装例では、正極予備リチオ化剤が添加された後に、バッテリエネルギー密度を0.5%~2%増加させることができ、サイクル寿命を30%~50%増加させることができる。
【0052】
本願のいくつかの実装例において、触媒11の結晶面回折ピーク(003)の、触媒11の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比は、1.8より小さいまたはこれに等しい、例えば、1.0~1.8または1.4~1.8の範囲内としてよい。格子再構成を行わない酸化物正極活物質の結晶面回折ピーク(003)の、酸化物正極活物質の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が通常、2より大きい。酸化物正極活物質と比較すると、触媒11の比率が小さいほど、格子再構成度が高く、触媒11の触媒活性が高いことを示すため、電気化学活性が低いリチウムリッチ材料が低い脱リチオ化電位で活性リチウムを生成できるようになる。
【0053】
本願において、酸化物正極活物質は、非ドープ型に属しても、またはドープ型に属してもよい。本願のいくつかの実装例において、酸化物正極活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびニッケルコバルトアルミ酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含んでよいが、これに限定されない。ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびニッケルコバルトアルミ酸リチウムは通常、層状結晶構造を有し、マンガン酸リチウムはスピネル構造を有し、コバルト酸リチウムおよびニッケルマンガン酸リチウムは層状構造および/またはスピネル構造を有することがある。コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、およびニッケル酸リチウムの一般的な構造式は、LiMO、LiMO、LiMO、LiMO、LiMO、LiMO、およびLiMOのうちのいずれか1つとしてよく、ここでMはNi、Co、またはMnを表してよい。
【0054】
本願のいくつかの他の実装例において、酸化物正極活物質はさらにドーピング元素を含んでよい。この場合、酸化物正極活物質はあるドープ型に属しており、ドーピング元素は、B、P、N、Mg、Al、Ca、Ba、La、Zr、Mo、Nb、Ti、Sn、Sb、Cr、Fe、Cu、およびZnなどのうちの少なくとも1種を含んでよい。ニッケルコバルト酸リチウムは、ニッケルコバルトアルミ酸リチウム3元材料との重複を回避するために、ドーピング元素Alを含まないのが好ましい。酸化物正極活物質の内部電子軌道重複状態または表面特性を変えること、および構造安定性を向上させることなどのうちの少なくとも1つを実現するために、適切なドーピング元素が導入されてよい。
【0055】
本願のいくつかの実装例において、正極予備リチオ化剤はさらに保護層2を含んでよく、保護層2は触媒11およびリチウムリッチ材料12に巻き付けられている。リチウムリッチ材料12が、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種である場合、これらのリチウムリッチ材料は空気中で高い安定性を有し、保護層2は設けられてもよく、またはもちろん保護層は設けられなくてもよい。正極予備リチオ化剤に保護層2が設けられていない場合、リチウムリッチ材料2は触媒11の表面を覆っているのが好ましい。特に、リチウムリッチ材料12が酸化リチウムおよび/または過酸化リチウムである場合、保護層2は、正極予備リチオ化剤の高い処理性能および構造安定性を確保するために設けられてよい。
【0056】
具体的には、図2a、図2b、および図2cを一緒に参照されたい。正極予備リチオ化剤100は、コアハウジング構造を有し、コア1およびコア1に巻き付けられた保護層2を含む。コア1は、触媒11およびリチウムリッチ材料12を含む。コア1では、リチウムリッチ材料12が(図2aおよび図2cに示すように)触媒11の表面を覆ってよく、および/または触媒11は(図2bに示すように)リチウムリッチ材料12の中に分散されている。すなわち、正極予備リチオ化剤100の構造が、図2a~図2cに示す構造のうちの少なくとも1つを含んでよい。リチウムリッチ材料12は(図2aに示すように)触媒11の表面全体を覆ってもよく、または(図2cに示すように)触媒11の表面の一部だけを覆ってもよい。
【0057】
保護層2は、触媒11およびリチウムリッチ材料12が基本的に空気と接触しないように、且つ空気中の水分、二酸化炭素、または酸素などを吸収して予備リチオ化能力の低下を引き起こさないように設けられている。これによりさらに、正極予備リチオ化剤の安定性が向上する。さらに、従来技術におけるLiNiOおよびLiCoOなどのリチウムリッチ材料と比較すると、本明細書におけるリチウムリッチ材料12の化学的活性は低く、したがって構造安定性は高い。さらに保護層2は、アルカリ度が高い場合において、リチウムリッチ材料12が正極スラリーと直接接触しないように設けられている。したがって、正極予備リチオ化剤100は高い処理性能を有し、リチウムイオンバッテリの正極に関する従来の準備プロセスと十分に互換性があり、正極スラリーの流動性を低下させることも、またはコーティング効果に影響を及ぼすこともない。
【0058】
本願の一実装例において、保護層2の材料はイオン導電性を備えた材料である。このように、続いて起こるリチウムリッチ材料による活性リチウムの放出に影響を及ぼすことはない。任意選択で、室温における保護層2の構成材料のイオン導電率は、10-8S・cm-1より大きい。保護層2の材料は、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、無機導電性カーボン、有機ポリマー、および不動酸化物などのうちの少なくとも1種を含んでよい。さらに、図2a、図2b、および図2cでは、保護層2の材料はリチウムリッチ材料12の材料と異なる。保護層2は、空気中で高い安定性を有し、水、または酸素などを吸収する可能性が低く、アルカリ度が低い。保護層を備えた正極予備リチオ化剤では、空気中での安定性および処理性能を高くすることができる。さらに、正極予備リチオ化剤が脱リチオ化した後に、残りの保護層が(保護層が炭酸リチウムで作られている場合を除いて)、バッテリの電解質によるガス発生のリスクを増加させることはない。
【0059】
具体的には、無機導電性カーボンの例はアモルファスカーボンおよびグラフェンとしてよく;有機ポリマーの例はポリパラキシリレンおよびその誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリアクリレート、およびポリエチレン(PE)およびポリスチレンなどのポリオレフィンとしてよく;不動酸化物の例は二酸化シリコン、1族~3族金属元素の酸化物(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および酸化バリウムなど)、および非触媒性の遷移金属酸化物(二酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、および酸化スズなど)としてよい。保護層2が無機導電性カーボンで作られている場合、正極予備リチオ化剤の導電性をさらに向上させることができる。保護層2が炭酸リチウムで作られている場合、正極予備リチオ化剤は脱リチオ化時に分解してガスも生じさせるので、正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に、微量の残差が残る。これがさらに、バッテリの質量およびサイズに対する正極予備リチオ化剤の影響を低減し、バッテリエネルギー密度の向上に役立つ。
【0060】
本願の一実装例において、保護層2の厚さは5nm~200nmの範囲内としてよい。本願のいくつかの実装例において、保護層2の厚さは10nm~100nmとしてよい。保護層2の厚さは、コアのサイズに基づいて調整されてよい。適切な厚さの保護層2によって、正極予備リチオ化剤100の高い処理性能を確保でき、厚すぎるために活性リチウムのタイムリーな放出に影響を与えること、およびバッテリインピーダンスを増加させることなども防止できる。
【0061】
本願のいくつかの実装例において、保護層2の質量は正極予備リチオ化剤100の質量の0.01%~10%を占めてよい。質量割合が低いため、保護層は正極予備リチオ化剤の高い処理性能を確保できるようになる。保護層2が炭酸リチウムで作られていない場合でも、質量割合が低いため、正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に残る残差の質量が小さいことも確保できる。
【0062】
本願の一実装例において、正極予備リチオ化剤100の粒子サイズは50nm~30μmの範囲内としてよい。本願のいくつかの実装例において、正極予備リチオ化剤100の粒子サイズは300nm~15μmとしてよい。
【0063】
本願の一実装例において、触媒11の粒子サイズは10nm~25μmの範囲内としてよい。リチウムリッチ材料12(例えば、酸化リチウムまたは酢酸リチウム)の電気化学活性が低い場合、粒子サイズが小さい方の触媒11がリチウムリッチ材料の分解にとってより役立つ。本願のいくつかの実装例において、触媒11の粒子サイズは10nm~20μmとしてもよく、またはさらに20nm~200nmとしてもよい。例えば、図2aに示す正極予備リチオ化剤では、触媒11の粒子サイズは100nm~1μmとしてよく;図2bに示す正極予備リチオ化剤では、触媒11の粒子サイズは10nm~2μmとしてよく、例えば、10nm~450nmとしてよい。本願のいくつかの他の実装例では、図2cに示すように、触媒11の粒子サイズは100nm~25μmとしてよく、例えば、500nm~15μmとしてよい。
【0064】
本願のいくつかの実装例では(図1図2a、および図2cに示すように)、リチウムリッチ材料12は触媒11の表面を覆って、特定の厚さを持つリチウムリッチ材料コーティング層を形成する。リチウムリッチ材料12が触媒11を覆っている場合、触媒11の触媒活性をかなりの程度まで利用できる。リチウムリッチ材料コーティング層の厚さは、5nm~200nmに及ぶことがある。具体的には、この厚さは10nm~100nmであっても、または20nm~90nmであってもよい。
【0065】
本願の本実施形態で提供される正極予備リチオ化剤100は、高い構造安定性および高い安全性能を有し、(4.2Vを超えない)バッテリの標準的な動作電圧で効率的に活性リチウムを放出できるので、予備リチオ化容量が高くなる。さらに、正極予備リチオ化剤100の脱リチオ化後に残る残差が、電解質によるガス発生のリスクを増加させることはなく、電気化学セルのインピーダンスを増加させることもない。これが、バッテリサイクル性能およびエネルギー密度の向上に役立つ。
【0066】
これに応じて、本願の一実施形態がさらに、正極予備リチオ化剤の準備方法を提供する。この準備方法は以下の段階を含む。
【0067】
S01:酸化物正極活物質に格子再構成を行って触媒を取得する。ここで触媒の結晶面回折ピーク(104)の、触媒の結晶面回折ピーク(003)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しい。
【0068】
S02:触媒およびリチウムリッチ材料に物理融合を行って正極予備リチオ化剤を取得する。触媒はリチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されており、リチウムリッチ材料は、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0069】
この準備方法に従って、リチウムリッチ材料が触媒を覆っている図1に示す正極予備リチオ化剤を準備してもよく、または触媒がリチウムリッチ材料の中に分散されている正極予備リチオ化剤を準備してもよい。
【0070】
段階S01において、格子再構成の方式には、(a)酸化物正極活物質に高エネルギーボールミリングを行う;または(b)酸化物正極活物質および3族元素および/または5族元素の化合物に高エネルギーボールミリングを行い、次いで焼結を行う、という方式のうちの1つが含まれる。本願では、酸化物正極活物質に格子再構成を行った後に、酸化物正極活物質の表面が粗くなり、粒子分布が変わる。さらに、格子再構成後の酸化物正極活物質は、リチオ化容量が低くなり、サイクル性能が低下するため、予備リチオ化にとってより適している。
【0071】
方式aでは、酸化物正極活物質に高エネルギーボールミリングを行って酸化物正極活物質の元の構造にダメージを与え、酸化物正極活物質の格子再構成を実施する。このように、リチウム原子および遷移金属原子が混合され、結晶面の一部が露出し、リチウムリッチ材料を触媒して分解するための高い触媒活性が達成される。方式bでは、触媒されたリチウムリッチ材料および3族元素および/または5族元素の化合物に高エネルギーボールミリングを行い、次いで焼結を行う。3族元素および/または5族元素の化合物は、触媒されたリチウムリッチ材料内の結晶の再生を誘導するのに用いられてよく、優先結晶方位が成長のために選択され、触媒活性を示すようになる。さらに、3族元素および5族元素の一部が代替的に、酸化物正極活物質の結晶構造にドーピングされて、ドーピング元素として機能してよい。これにより、取得した触媒の構造安定性を向上させること、および表面特性を変えることなどが可能になる。
【0072】
本願の一実装例では、高エネルギーボールミリングの回転速度が350r/minより大きい。いくつかの実施形態において、高エネルギーボールミリングの回転速度は、400r/minより大きくてよい、例えば、400r/min~1200r/minとしても、または600r/min~1000r/minとしてもよい。本願のいくつかの実装例において、高エネルギーボールミリング時のボール対粉末比は(5~30):1の範囲内としてよい。格子再構成は、ボール対粉末比を高くするほど、より望ましく実施できる。いくつかの実施形態において、高エネルギーボールミリング時のボール対粉末比は、(10~30):1の範囲内としてよい。
【0073】
方式bにおいて、3族元素はB、Al、Ga、およびInのうちの少なくとも1種を含み、5族元素はN、P、As、Sb、およびBiのうちの少なくとも1種を含む。3族元素および/または5族元素は、その酸化物、窒化物、塩化物、フッ化物、または塩などの形態で添加されてよい。3族元素および/または5族元素の化合物は具体的には、酸化ホウ素、フッ化ホウ素、塩化ホウ素、ホウ酸、水素化ホウ素ナトリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫化アルミニウム、フッ化ガリウム、塩化ガリウム、酸化ガリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、またはリン酸チタンアルミリチウム(LATP)などとしてよい。
【0074】
本願のいくつかの実装例において、方式bでは、3族元素および/または5族元素の化合物の質量が、化合物の質量および酸化物正極活物質の質量の合計の0.05%~10%を占めてよい。いくつかの実施形態において、質量割合が0.5%~2%であるため、方位ベースの再生が酸化物正極活物質でより望ましく生じ、格子再構成効果を向上させるようになり得る。方式bでは空気中で焼結が行われてよく、焼結の温度は500℃~1000℃、例えば、700℃~800℃としてよい。焼結の時間は5時間~24時間、例えば、12時間~18時間としてよい。焼結温度が高いほど、および焼結時間が長いほど、酸化物正極活物質内の結晶再生にとってより役立ち、結晶性の高い材料が取得される。
【0075】
本願の本実施形態において、段階S02では、物理融合の方式が、ボールミリング、サンディング、またはコーティングなどであってよい。本願の一実装例において、物理融合の方式は低速ボールミリングであってよく、低速ボールミリングの回転速度が段階S01における高エネルギーボールミリングの回転速度より小さい。触媒を取得した後に、触媒およびリチウムリッチ材料に低速ボールミリングを行って、形成された触媒の格子構造にダメージを与えるのを回避する。本願のいくつかの実装例において、低速ボールミリングの回転速度は300r/minより小さいまたはこれに等しく、例えば、200r/min~300r/minとしても、または200r/min~250r/minとしてもよい。いくつかの実施形態において、低速ボールミリングの回転速度は250r/minより小さくてよい。本願のいくつかの実装例において、低速ボールミリングは低いボール対粉末比で行われる。例えば、低速ボールミリング時のボール対粉末比は、(2~10):1の範囲内としてよい。本願のいくつかの実装例において、低速ボールミリングで用いられる粉砕ボールの直径が10mmより小さいまたはこれに等しい。
【0076】
本願の別の実装例において、図1に示す正極予備リチオ化剤は代替的に、酸化物正極活物質およびリチウムリッチ材料を混合し、次いで高エネルギーボールミリングを行う方法を用いて準備されてよい。この場合、リチウムリッチ材料は酸化物正極活物質を覆ってよい、および/または酸化物正極活物質は酸化物正極活物質の格子再構成時にリチウムリッチ材料の中に分散されてよい。
【0077】
本願のいくつかの他の実装例において、準備方法はさらに、リチウムリッチ材料が特に酸化リチウムおよび過酸化リチウムのうちの少なくとも一方を含む場合に、触媒およびリチウムリッチ材料に巻き付けられる保護層を形成する段階を含む。
【0078】
具体的には、保護層を形成するための方法が、物理融合、物理気相堆積法、化学気相堆積法、コーティング、熱分解法、およびin-situ熱処理法のうちの少なくとも1つを含んでよい。物理融合は、ボールミリングおよびサンディングなどを含んでよい。物理気相堆積法は、蒸着堆積法およびスパッタリングなどを含んでよい。コーティング方式とは具体的には、ディスペンシング、ブラッシング、スプレー、ディップコーティング、ブレードコーティング、およびスピンコーティングのうちの1つまたはその組み合わせを含んでよい。コーティングに用いられるコーティング溶液が、保護層を直接含む材料であってもよく;または保護層材料を含む前駆体であってもよく、ここで保護層材料は共沈法またはゾルゲル法によってその後に取得されてよい。
【0079】
本願では、保護層を形成するための方法が、保護層の具体的な材料に基づいて選択されてよい。物理融合およびコーティング方式は、様々な材料の保護層を形成するのに適している。熱分解法は、無機導電性カーボン材料で作られた保護層を形成するのに特に適している。具体的には、有機カーボンソースおよびコア材料(すなわち、触媒およびリチウムリッチ材料)が粉砕されてよく、次いで高温熱処理が行われてよいため、有機カーボンソースが熱分解を起こして無機導電性カーボン層が取得されるようになる。化学気相堆積法は、いくつかの有機ポリマー(例えば、パラシクロファンなどのポリパラキシリレンおよびその誘導体)を用いて、密度が高く密着性に優れた保護層を形成するのに適している。
【0080】
本願のいくつかの実装例では、リチウムリッチ材料が酸化リチウムおよび過酸化リチウムのうちの少なくとも一方を含む場合、保護層はin-situ熱処理法を用いて形成されてよく、具体的には、in-situ熱処理のためにコア材料を乾燥空気または二酸化炭素気流の中に配置する段階を含む。このように、酸化リチウムおよび/または過酸化リチウムがin-situ熱処理を行った後に、密な炭酸リチウム保護層がin-situで生成され得る。in-situ熱処理法は、図2aおよび図2cに示す正極予備リチオ化剤を準備するのに特に適している。いくつかの実施形態では、in-situ熱処理の温度は80℃~400℃としてよく、例えば、100℃、120℃、150℃、180℃、200℃、220℃、250℃、300℃、320℃、350℃、または400℃としてよい。in-situ熱処理の時間は、0.5時間~5時間としてよい。
【0081】
保護層2が正極予備リチオ化剤に設けられている場合、および酸化物正極活物質の格子再構成が方式aで行われた場合、触媒の粒子サイズの分布範囲は広く、粒子サイズはナノメートル台~マイクロメートル台に及ぶ。方式aで準備された触媒の粒子サイズは通常、10nm~20μmの範囲内にある。最終的に取得される正極予備リチオ化剤は、図2a~図2cの3つの構造を全て有することがある。触媒の粒子サイズが大きい場合、取得される正極予備リチオ化剤は主に図2cに示す構造を有する。方式bで方位ベースの成長によって取得される触媒の粒子サイズは小さい且つ均一であり、触媒の粒子サイズは通常1μmより小さい、例えば、10nm~450nmの範囲内である。この場合、触媒を用いて準備される正極予備リチオ化剤は主に図2bに示す構造を有し、さらに図2aに示す構造を部分的に有することがある。
【0082】
もちろん、図2a~図2cに示す構造を選択的に取得する必要がある場合、段階S01で取得された触媒をリチウムリッチ材料と混合する前に、触媒の粒子サイズ集中化がさらに制御されてよい。粒子サイズ集中化の実施が可能な技術には、限定しないが、サイクロン分級(cyclosizing)、複合周波数ふるいがけ(complex frequency sieving)、静電分級(electrostatic grading)、およびジェット分級(jet grading)などが含まれる。本願のいくつかの実装例では、異なるバッチの正極予備リチオ化剤の均一な予備リチオ化能力を確保するために、触媒の粒子サイズ分布が、(D90粒子サイズ-D10粒子サイズ)/D50粒子サイズ<1.5という条件を満たし得る。
【0083】
本願の本実施形態で提供される正極予備リチオ化剤の準備方法は、プロセスが簡単で効率的且つ環境に配慮したものであり、大量生産に用いることができる。
【0084】
図3に示すように、本願の一実施形態がさらに、バッテリ用正極プレート200を提供する。バッテリ用正極プレート200は、集電体10および集電体10上に連続的に設けられた正極材料層110を含む。正極材料層110は、正極予備リチオ化剤100および正極活物質101を含む。正極材料層110はさらに、バインダ102および導電剤103を含んでよい。
【0085】
本願の一実装例において、正極予備リチオ化剤100の質量は、正極材料層110の質量の0.1%~40%としてよい。この質量割合によって、初期充電/放電時および複数回の非初期充電/放電時において、バッテリ用正極プレート200を用いて準備されるバッテリの高容量が確保でき、バッテリは高いエネルギー密度および長いサイクル寿命を有するようになる。いくつかの実装例において、質量割合は0.5%~10%である。
【0086】
本願の一実装例において、正極材料層110は、正極予備リチオ化剤100、正極活物質101、バインダ102、および導電剤103を含む正極スラリーで集電体10をコーティングし、次いで乾燥および圧縮を行うことで形成されてよい。正極予備リチオ化剤100は、コア材料内の触媒およびリチウムリッチ材料がバインダなどに接触しないようにする保護層を有する。このように、正極スラリーはゼリー化現象を起こすことなく、集電体10上に容易に塗布でき、平坦性の高いフィルム層が取得される。
【0087】
本願の一実装例において、集電体10は、限定しないが、金属箔または合金箔を含む。金属箔には、銅箔、チタン箔、アルミ箔、プラチナ箔、インジウム箔、ルテニウム箔、ニッケル箔、タングステン箔、タンタル箔、金箔、または銀箔が含まれる。合金箔には、ステンレス鋼、または銅、チタン、アルミニウム、プラチナ、インジウム、ルテニウム、ニッケル、タングステン、タンタル、金、および銀のうちの少なくとも1種の元素を含む合金が含まれる。任意選択で、前述した元素は合金箔の主成分である。金属箔はさらにドーピング元素を含んでよく、ドーピング元素には、限定しないが、プラチナ、ルテニウム、鉄、コバルト、金、銅、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、パラジウム、ロジウム、銀、およびタングステンのうちの1種または複数種が含まれる。集電体10は、正極材料層110との効果的な接触を実現するために、エッチングまたは粗化されて二次構造を形成してよい。
【0088】
本願において、正極活物質101は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸コバルトリチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン(NCM)、およびニッケルコバルトアルミニウム(NCA)などのうちの少なくとも1種としてよい。
【0089】
本願において、正極材料層110内のバインダおよび導電剤は特に限定されることはなく、当技術分野における既存の従来材料で作られてよい。例えば、バインダ102は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレンニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリオレフィン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびアルギン酸ナトリウムなどのうちの1種または複数種としてよい。例えば、導電剤103は、導電性カーボンブラック(例えば、アセチレンブラックまたはケッチェンブラック)、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、およびグラフェンなどのうちの1種または複数種としてよい。
【0090】
本願の一実施形態がさらに、正極、負極、セパレータ、および電解質を含む電気化学バッテリを提供する。セパレータおよび電解質は正極および負極の間に位置しており、正極は前述の説明におけるバッテリ用正極プレート200である。電気化学バッテリは、高いエネルギー密度および長いサイクル寿命を有する。
【0091】
電気化学バッテリは二次電池としてよく、高いサイクル性能および高い安全性を有する。具体的には、二次電池は特にリチウム二次電池としてよい。
【0092】
図4に示すように、本願の一実施形態がさらに端末300を提供する。端末300は携帯電話としてもよく、またはタブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、ポータブルデバイス、またはインテリジェントウェアラブル製品などの電子製品としてもよい。端末300は、端末の外側に取り付けられたハウジング301、およびハウジング301の中に位置する回路基板およびバッテリ(図には示されていない)を含む。バッテリは、本願の前述した実施形態で提供されたバッテリである。ハウジング301は、端末の前側に取り付けられたディスプレイ、および裏側に取り付けられた裏カバーを含んでよい。バッテリは、端末300に電力を供給するために、裏カバーの内側に固定されてよい。
【0093】
以下ではさらに、複数の実施形態を用いて本願の実施形態を説明する。
[実施形態1]
【0094】
正極予備リチオ化剤の準備には、以下のことが含まれる。
【0095】
触媒を取得するために、触媒前駆体としてコバルト酸リチウムLiCoOを選択し、20:1のボール対粉末比および350r/minの回転速度で48時間の高エネルギーボールミリングを行い、格子再構成を実施する。次いで、触媒およびリチウムリッチ材料LiOを4:1の質量比で混合し、200r/minの回転速度で一般的なボールミリングを6時間行う。次いで、ボールミリングで取得された混合粉末を管状炉の中に配置して400℃まで加熱し、乾燥空気を60sccm(60×10-3slm)の流束で2時間連続的に注入する。これによりLiOの一部が反応して、炭酸リチウムの保護層を形成する。温度を室温まで下げ、次いで、取得された粉末を粉砕してふるいにかけ、正極予備リチオ化剤を取得する。
【0096】
ソフトバックバッテリの準備には、以下のことが含まれる。
【0097】
(1)バッテリ用正極プレートを準備する。D50粒子サイズが14μmの単結晶LiCoOを正極活物質として用いる。正極活物質、正極予備リチオ化剤、バインダのPVDF、および導電剤のカーボンナノチューブ(CNT)を質量比94:2:2:2で計量する。最初に、PVDFをNMP溶剤に溶かし、次いでCNTを添加して均等に分散させる。次いで、正極活物質および正極予備リチオ化剤を同時に添加し、均等に分散させて、粘度が3Pa・s~8Pa・sで粉末度が25μm未満の正極スラリーを取得する。正極スラリーをフィルタにかけ、次いでアルミ箔集電体の上に塗布し、次いで、乾燥、圧延、およびダイカットを行って正極プレートを取得する。
【0098】
(2)負極プレートを準備する。
【0099】
シリカグラファイトの負極活物質(比容量が500mAh/g、初期効率が83%)、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を重量比96.0:1.0:1.5:1.5で脱イオン水に分散させて均等に混合し、負極スラリーを取得する。負極スラリーを銅箔の上に塗布し、乾燥、圧縮、およびスライシングを行い、負極プレートを取得する。
【0100】
(3)バッテリを組み立てる。LiPFが1mol/LのECおよびDECの混合溶液(ECのDECに対する体積比が1:1)を電解質として用いる。PP、PE、およびPPで作られた3層セパレータをセパレータとして用いる。グローブボックスの中で、正極プレート、セパレータ、および負極プレートを順に積み重ねて、正方形の未パッケージングセルに巻きつける。未パッケージングセルをバッテリハウジングの中に配置して溶接する。次いで、バッテリハウジングの中に電解質を注入し、バッテリハウジングを密閉し、エアバッグを確保して、約2270mAhの定格容量を備えたバッテリ性能試験用のソフトバックバッテリを取得する。
【0101】
ソフトバックバッテリに電気化学性能試験を行う前に、電気化学セルに化成を行って、電気化学セル内の正極活物質および負極活物質を活性化し、負極に安定なSEI膜を形成し、バッテリの自己放電および充電/放電性能および蓄電性能などを向上させるようにする。バッテリ化成段階では、電気化学セルの膜化成時にガスが生じる。本願の実施形態1における正極予備リチオ化剤も、脱リチオ化時に酸素ガスを生じさせ、このガスはエアバッグに入る。化成が完了した後に、エアバッグを切り離してよく、切断開口部を閉じて、提供予定のバッテリを取得してよい。具体的な化成プロセスは以下の通りである。温度が80℃まで上がった後に、バッテリを0.1Cの一定充電/放電比で12分間充電し、次いで、0.5Cの定電流で9分間充電し、次いで1Cで38分間充電する。前述の充電プロセスでは、電圧が4.48Vに制限されている。次いで、バッテリを1.0Cで3分間放電する、ここで電圧が3.0Vに制限されている。次いで、温度を45℃まで下げて、バッテリを0.2Cの定電流および定電圧で4.48Vまで充電する、ここでカットオフ電圧は0.025Cである。次いで、バッテリを0.5Cで60分間放電する、ここで電圧は3.0Vに制限されている。
【0102】
図5は、実施形態1で用いた触媒のXRD図(b)、および実施形態1で用いた触媒前駆体のXRD図(a)を示している。図5から分かるのは、格子再構成前のLiCoOのXRD図における結晶面回折ピーク(003)の、結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2.2より大きく;格子再構成後のLiCoO(すなわち、触媒)の結晶面回折ピーク(003)の、結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しいということである。図5の(a)において、この比率は具体的には1.65である。格子再構成前のLiCoOおよび格子再構成後のLiCoOのXRD図の特性は著しく異なり、格子再構成後のLiCoOは特定の触媒活性を有することが分かる。
【0103】
図6は、実施形態1における正極予備リチオ化剤のXRD図である。図6から分かるのは、触媒(LiCoO)、リチウムリッチ材料(LiO)、および保護層(炭酸リチウム)の特性ピークが示されているということである。これは、触媒、リチウムリッチ材料、および保護層を含む複合材料、すなわち正極予備リチオ化剤の準備が成功したことを示している。
【0104】
さらに、実施形態1における正極予備リチオ化剤を別途ボタン型ハーフセルに組み立て、正極予備リチオ化剤およびコバルト酸リチウムを5%:95%の比率で混合してボタン型ハーフセルを準備し、充電/放電試験を行う。結果が図7に示されている。図7は、実施形態1における正極予備リチオ化剤の充電/放電特性(a)、および正極予備リチオ化剤およびコバルト酸リチウムの正極活物質を5%:95%の質量比で混合して準備したボタン型セルの充電/放電特性(b)を示している。実施形態1における正極予備リチオ化剤を別途ボタン型ハーフセルに組み立てるプロセスは、以下の通りである。正極予備リチオ化剤、アセチレンブラック、およびPVDFを8:1:1の比率で計量し、溶剤を添加して正極スラリーを準備する。正極スラリーをアルミ箔集電体の上に塗布して乾燥し、次いで圧延およびスライシングを行って、正極プレートを取得する。正極プレートをリチウム金属シートと共に用い、LiPFが1mol/LのECおよびDECの混合溶液(ECのDECに対する体積比が1:1)を電解質として用い、PP、PE、およびPPで作られた3層セパレータをセパレータとして用いて、ハーフセルを準備する。0.05Cの充電/放電比でハーフセルに充電/放電試験を行い、正極プレートの試験電圧範囲は3V~4.5Vである。
【0105】
図7の(a)から分かるのは、正極予備リチオ化剤が初期の脱リチオ化において約500mAh/gの脱リチオ化容量に寄与でき、可逆容量(すなわち、放電容量)は50mAh/gより小さいということである。したがって、正極予備リチオ化剤の予備リチオ化容量が450mAh/gより大きいことを計算によって決定することができる。図7の(b)から分かるのは、正極予備リチオ化剤およびコバルト酸リチウムを混合して取得されるボタン型セルの初期充電容量は210mAh/gに達することがあり、コバルト酸リチウムだけで作られたボタン型セルの充電容量は180mAh/gであるということである。割合が5%の正極予備リチオ化剤は、セルの初期充電時に約30mAh/gの追加容量を正極に供給することが分かる。
【0106】
本願の実施形態1における正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に残る残差は微量のLiCoO粒子であり、このLiCoO粒子の粒子サイズは50nmおよび20μmの間に分布している。
[実施形態2]
【0107】
正極予備リチオ化剤の準備には、以下のことが含まれる。
【0108】
粒子サイズが2μm~50μmの範囲内である市販のコバルト酸リチウム粉末を触媒前駆体として選択し、酸化ホウ素粉末およびリン酸チタンアルミリチウム(LATP)粉末をコバルト酸リチウム粉末に添加して混合粉末を取得する。ここで酸化ホウ素粉末の質量およびLATP粉末の質量はそれぞれ、混合粉末の質量の1%を占める。混合粉末をボールミルの中に配置し、15:1のボール対粉末比および380r/minの回転速度で高エネルギーボールミリングを12時間行う。次いで、混合粉末を管状炉に移し、空気雰囲気内で700℃、8時間の焼結を行い、粉砕してふるいにかけ、格子再構成後のコバルト酸リチウム、すなわち触媒を取得する。触媒の粒子サイズが10nm~2μmであり、触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が1.55である。
【0109】
触媒およびリチウムリッチ材料LiOを3:1の質量比で混合し、250r/minの回転速度で一般的なボールミリングを3時間行う。次いで、ボールミリングで取得された混合粉末を取り出し、粉砕してふるいにかけ、コア材料を取得する。D50粒子サイズが30nmのγAlナノ粉末(質量割合が0.2%)をコア材料に添加して、2:1のボール対粉末比および150r/minの回転速度でボールミリングを2時間行い、次いで粉砕してふるいにかけ、正極予備リチオ化剤を取得する。
【0110】
実施形態2における正極予備リチオ化剤は図2bに示す構造を含み、保護層の厚さが20nmであり、コアは酸化リチウムの中に分散した酸化リチウムおよび触媒を含み、触媒は平坦な形状をしており、約200nmのD50粒子サイズを有する。
【0111】
実施形態1で説明した方式に従って、実施形態2における正極予備リチオ化剤を用い、約2270mAhの定格容量を備えたソフトバックバッテリを準備する。
[実施形態3]
【0112】
正極予備リチオ化剤の準備には、以下のことが含まれる。触媒を取得するために、粒子サイズが5μm~20μmの範囲内にある(D50粒子サイズが14μmの)コバルト酸リチウムLiCoO材料を触媒前駆体として選択し、10:1のボール対粉末比および400R/minの回転速度で高エネルギーボールミリングを14時間行って格子再構成を実施する。触媒およびシュウ酸リチウムLiを3:1の質量比で混合し、8:1のボール対粉末比および200r/minの回転速度で低速ボールミリングを8時間行い、取得された粉末を粉砕してふるいにかけ、正極予備リチオ化剤を取得する。
【0113】
実施形態3における正極予備リチオ化剤の構造が図1に示されてよく、正極予備リチオ化剤は、触媒(格子再構成後のコバルト酸リチウム)および触媒に巻き付けられたリチウムリッチのコーティング層Liを含む。触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が1.7である。Li層の厚さが約0.5μmである。予備リチオ化剤の粒子サイズが5.5μm~25μmであり、予備リチオ化剤のD50粒子サイズが約15μmである。
【0114】
実施形態1で説明した方式に従って、実施形態3における正極予備リチオ化剤を用い、約2270mAhの定格容量を備えたソフトバックバッテリを準備する。
[実施形態4]
【0115】
正極予備リチオ化剤の準備には、以下のことが含まれる。粒子サイズが5μm~20μmの範囲内にある(D50粒子サイズが14μmの)コバルト酸リチウムLiCoO材料を触媒前駆体として選択する。触媒前駆体およびリチウムリッチ材料LiFを1:1の質量比で混合し、20:1のボール対粉末比および350r/minの回転速度で高エネルギーボールミリングを48時間行う。次いで、取得された粉末を粉砕してふるいにかけ、正極予備リチオ化剤を取得する。正極予備リチオ化剤は、触媒(格子再構成後のコバルト酸リチウム)および触媒に巻き付けられたリチウムリッチのコーティング層LiFを含む。触媒の結晶面回折ピーク(003)の、触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が1.45である。LiF層の厚さが約2μmである。予備リチオ化剤のD50粒子サイズが約18μmである。
【0116】
実施形態1で説明した方式に従って、実施形態4における正極予備リチオ化剤を用い、約2270mAhの定格容量を備えたソフトバックバッテリを準備する。
[実施形態5]
【0117】
正極予備リチオ化剤の準備には、以下のことが含まれる。粒子サイズが5μm~30μmの範囲内にある(D50粒子サイズが14μmの)NCM811単結晶材料を触媒前駆体として選択する。触媒を取得するために、触媒前駆体に30:1のボール対粉末比および400r/minの回転速度で高エネルギーボールミリングを48時間行い、格子再構成を実施する。次いで、触媒およびリチウムリッチ材料LiOを4:1の質量比で混合し、250r/minの回転速度で一般的なボールミリングを3時間行う。次いで、ボールミリングで取得された混合粉末を管状炉の中に配置する。乾燥CHガスを連続的に注入し、次いで真空脱ガス処理を行う。前述したプロセスを3回繰り返して、管状炉内の空気を抜く。次いで、CHガスの流量を10mL/minに制御し、炉温を900℃まで上げて4時間保持し、黒鉛化カーボンのコーティングを完了する。炉温を室温まで下げた後に粉末を取り出し、取得された粉末を粉砕してふるいにかけ、正極予備リチオ化剤を取得する。
【0118】
実施形態5における正極予備リチオ化剤は、図2aおよび図2cに示す構造を含む。ここでコアのNCM811のD50粒子サイズが14μmであり、NCM811の表面を酸化リチウムでコーティングして形成されたコーティング層の厚さが1.5μmであり、黒鉛化カーボン保護層の厚さが20nmである。実施形態5における正極予備リチオ化剤の脱リチオ化後に残る残差が、NCM811粒子および炭素黒鉛化カーボンである。
【0119】
実施形態1~5における方法を参照し、表2に記載したパラメータに基づいて、別の実施形態における正極予備リチオ化剤材料を準備し、触媒が比較例の同じ条件で格子再構成を起こさない材料を提供する。実施形態1におけるボタン型ハーフセルの準備方法に従って、各実施形態における予備リチオ化剤、および比較例における対応する予備リチオ化剤を用いて、ボタン型セルを準備する。3V~4.5Vの電圧範囲内で0.05Cのレートでボタン型セルに充電/放電試験を行い、それぞれのボタン型セルの充電/放電特性を試験して、それぞれの予備リチオ化剤の充電グラム容量(すなわち、特定の脱リチオ化容量)を計算する。結果を表2に示す。
[表2、予備リチオ化剤の構造パラメータおよび充電グラム容量]
【表2】
【0120】
表2の試験結果から分かるのは、触媒が格子再構成を起こさない場合、触媒は基本的にリチウムリッチ材料を触媒する能力を持たないということである。結果として、取得された複合材料には非常に低い充電グラム容量しかなく、基本的に予備リチオ化能力がない。
【0121】
本願の実施形態の有益な効果をさらに強調するために、実施形態1におけるソフトパックフルセルの準備方法に従って、前述した実施形態における正極予備リチオ化剤および正極活物質であるコバルト酸リチウムを2%:98%の質量比で混合し、ソフトバックバッテリを準備する。25℃の一定温度および0.7Cの充電/放電比で、バッテリに表3の電気化学性能試験を行う。ここで試験電圧範囲は3V~4.48V(vs.Li/Li+)である。これに加えて、本願はさらに、従来の正極予備リチオ化剤LiNiOを添加したコバルト酸リチウムバッテリ(比較例1)および同じ条件下で本願の実施形態における正極予備リチオ化剤を添加していないコバルト酸リチウムフルセル(比較例2)の性能試験結果を提供する。
[表3、バッテリの性能試験結果]
【表3】
【0122】
表3から分かるのは、本願の実施形態における正極予備リチオ化剤の導入によって、バッテリサイクル性能が著しく向上し、バッテリエネルギー密度および初期クーロン効率もある程度まで向上するということである。さらに、本願の実施形態における正極予備リチオ化剤の、正極活物質に対する質量比が、従来の予備リチオ化剤LiNiOの、正極活物質に対する質量比と同じである場合、本願の実施形態における正極予備リチオ化剤によって、バッテリエネルギー密度、初期クーロン効率、およびサイクル寿命が、従来の予備リチオ化剤LiNiOと比較してより望ましく向上することが可能である。
[項目1]
正極予備リチオ化剤であって、前記正極予備リチオ化剤が触媒およびリチウムリッチ材料を備え、前記触媒が酸化物正極活物質であり、前記触媒の結晶面回折ピーク(003)の、前記触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、前記触媒が前記リチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されており、前記リチウムリッチ材料が酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、正極予備リチオ化剤。
[項目2]
前記触媒の前記結晶面回折ピーク(003)の、前記触媒の前記結晶面回折ピーク(104)に対する前記強度比が1.0~1.8に及ぶ、項目1に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目3]
前記酸化物正極活物質が、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびニッケルコバルトアルミ酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、項目1に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目4]
前記酸化物正極活物質がさらにドーピング元素を含み、前記ドーピング元素が、B、P、N、Mg、Al、Ca、Ba、La、Zr、Mo、Nb、Ti、V、Sn、Sb、Cr、Fe、Cu、およびZnのうちの少なくとも1種を含む、項目3に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目5]
前記触媒の粒子サイズが10nm~25μmに及ぶ、項目1に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目6]
前記リチウムリッチ材料が前記触媒の表面を覆っている、および/または前記触媒が前記リチウムリッチ材料の中に分散している、項目1から5のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目7]
前記リチウムリッチ材料の、前記触媒に対する質量比が1:(0.01~100)である、項目6に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目8]
前記リチウムリッチ材料が10nm~20μmの厚さのリチウムリッチ材料コーティング層を前記触媒の前記表面に形成する、項目6に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目9]
前記正極予備リチオ化剤がさらに、前記触媒および前記リチウムリッチ材料に巻き付けられた保護層を備え、前記保護層がイオン導電性を有する、項目1から8のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目10]
前記保護層の材料が、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、リン酸リチウム、無機導電性カーボン、有機ポリマー、および不動酸化物のうちの少なくとも1種を含む、項目9に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目11]
前記保護層の厚さが5nm~200nmに及ぶ、項目9または10に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目12]
前記保護層の質量が前記正極予備リチオ化剤の質量の0.01%~10%である、項目9から11のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目13]
前記正極予備リチオ化剤の粒子サイズが50nm~30μmに及ぶ、項目1から12のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤。
[項目14]
正極予備リチオ化剤の準備方法であって、前記準備方法が、
酸化物正極活物質に格子再構成を行って触媒を取得し、前記触媒およびリチウムリッチ材料に物理融合を行って正極予備リチオ化剤を取得する段階;または
酸化物正極活物質およびリチウムリッチ材料を混合し、次いで高エネルギーボールミリングを行って正極予備リチオ化剤を取得する段階、ここで前記正極予備リチオ化剤が触媒および前記リチウムリッチ材料を含み、前記触媒が格子再構成後の酸化物正極活物質である
を備え、
前記触媒の結晶面回折ピーク(003)の、前記触媒の結晶面回折ピーク(104)に対する強度比が2より小さいまたは2に等しく、前記触媒が前記リチウムリッチ材料を触媒して分解し、活性リチウムを放出するように構成されており、前記リチウムリッチ材料が、酸化リチウム、過酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、および酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、準備方法。
[項目15]
前記格子再構成の方式が、(a)前記酸化物正極活物質に高エネルギーボールミリングを行う方式;または(b)前記酸化物正極活物質および3族元素および/または5族元素の化合物に高エネルギーボールミリングを行い、次いで焼結を行う方式のうちの一方を有する項目14に記載の準備方法。
[項目16]
バッテリ用正極プレートであって、前記バッテリ用正極プレートが集電体および前記集電体上に設けられた正極材料層を含み、前記正極材料層が項目1から15のいずれか一項に記載の正極予備リチオ化剤、正極活物質、バインダ、および導電剤を含む、バッテリ用正極プレート。
[項目17]
前記正極予備リチオ化剤の質量が前記正極材料層の質量の0.1%~40%である、項目16に記載のバッテリ用正極プレート。
[項目18]
正極、負極、および前記正極および前記負極の間に位置するセパレータおよび電解質を備え、前記正極が項目16または17に記載のバッテリ用正極プレートである、電気化学バッテリ。
[項目19]
ハウジング、および前記ハウジング内に位置するメインボードおよびバッテリを備える端末であって、前記バッテリが項目18に記載の電気化学バッテリを含み、前記電気化学バッテリが前記端末に電力を供給するように構成されている、端末。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】