(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】イマチニブ処方物、その製造および使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20231124BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231124BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231124BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/72
A61K47/26
A61K9/14
A61P9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530592
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021060526
(87)【国際公開番号】W WO2022109458
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500731
【氏名又は名称】エアロベイト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイク, ベン
(72)【発明者】
【氏名】ニーブン, ラルフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC11
4C076DD67A
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA56
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA42
(57)【要約】
本発明は、吸入可能なイマチニブ処方物、その製造および使用に関する。本発明の組成物および方法は、吸入可能な処方物の使用を通じて、以前のイマチニブに基づくPAH(肺動脈性肺高血圧症)処置に関する問題に取り組む。特に、本発明は、PAHおよび他の状態が、経口投与または静脈内投与された場合よりも顕著に低い用量で、吸入可能な処方物によって効果的に処置され得ることを認識する。PAHの処置のための経口イマチニブメシル酸塩に関する公開された研究は200mg/日~400mg/日の間のイマチニブメシル酸塩の投与に依拠したが、本発明の吸入可能な処方物は、1mgほどの低用量で提供され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1mgのイマチニブを含む、吸入可能な処方物。
【請求項2】
前記イマチニブが1mg、3mg、10mg、30mg、35mg、70mg、および90mgからなる群より選択される量でその中に存在する、請求項1に記載の吸入可能な処方物。
【請求項3】
キャリアをさらに含む、請求項1に記載の吸入可能な処方物。
【請求項4】
前記キャリアがラクトースである、請求項3に記載の吸入可能な処方物。
【請求項5】
乾燥粉末である、請求項1に記載の吸入可能な処方物。
【請求項6】
乾燥粉末吸入器と、
少なくとも1mgのイマチニブを含む乾燥粉末処方物と
を含む、組合せ製品。
【請求項7】
前記イマチニブが1mg、3mg、10mg、30mg、35mg、70mg、および90mgからなる群より選択される量でその中に存在する、請求項6に記載の組合せ製品。
【請求項8】
前記乾燥粉末処方物がキャリアをさらに含む、請求項6に記載の組合せ製品。
【請求項9】
前記キャリアがラクトースである、請求項8に記載の組合せ製品。
【請求項10】
前記乾燥粉末処方物が、前記乾燥粉末吸入器に挿入される大きさおよび構成にされたカプセル中に包装されている、請求項6に記載の組合せ製品。
【請求項11】
肺循環系の状態を処置する方法であって、肺循環系の状態を有するヒト対象に薬学的組成物を提供する工程を含み、該薬学的組成物は、少なくとも1mgのイマチニブを含む吸入可能な処方物である、方法。
【請求項12】
前記肺循環系の状態が肺動脈性肺高血圧症(PAH)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬学的組成物が1日1回提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記薬学的組成物が1日2回提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記薬学的組成物が1mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記薬学的組成物が3mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記薬学的組成物が10mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記薬学的組成物が30mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記薬学的組成物が35mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記薬学的組成物が70mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記薬学的組成物が90mgのイマチニブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記吸入可能な処方物がキャリアをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記キャリアがラクトースである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記吸入可能な処方物が乾燥粉末である、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
イマチニブの前記乾燥粉末処方物を充填された乾燥粉末吸入器として前記薬学的組成物を提供する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2020年11月23日に出願された米国仮出願番号63/117,258および2021年2月18日に出願された米国仮出願番号63/150,731に基づく利益を主張し、これらの各々の内容は、本明細書においてその全体が参照によって援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的には、イマチニブの吸入可能な処方物ならびにその製造および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、肺血管系を通る血流に対する抵抗増加をもたらす不適切な細胞増殖という共通の病理的特徴を共有する、種々の病因を有する一群のまれな慢性心肺疾患を含む。WHO第1群のPAHは、肺動脈における種々の細胞型(平滑筋、内皮周皮細胞、線維芽細胞、および筋線維芽細胞)の異常な蓄積によって引き起こされる種々の病因を有するまれな疾患である。この疾患は、進行性であり、未処置のまま放置された場合は、右心室後負荷の増加をもたらして、右心室機能を損なって心不全および死に至る。PAH患者の処置のための肺血管拡張薬療法の導入により、生存期間中央値は、処置しない場合の2.8年から、現在のPAH特異的治療時代における7年~9年へと改善した。しかし、この疾患の治癒は存在せず、肺脈管障害の増殖性の性質を直接標的とする利用可能な治療は存在しない。
【0004】
イマチニブ(慢性骨髄性白血病の患者の処置のために承認されたチロシンキナーゼインヒビター)は、PAH患者の臨床試験において有意義な尺度に対して治療上顕著な改善を示してきた。PAHの処置における経口イマチニブメシル酸塩の臨床的有効性が、第2相試験においてPAH患者の部分集合において観察され、第3相IMPRES試験において機能分類II~IVの患者において確認され、その試験において、主要評価項目である6分間歩行距離(6MWD)、ならびに肺血管抵抗(PVR)、平均肺動脈圧(mPAP)、心拍出量(CO)、およびN末端(NT)-プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を測定する副次的評価項目はすべて、最上の標準治療に対して統計的に有意で治療上適切な改善を示した。
【0005】
残念なことに、容認できない量の重篤な有害事象(硬膜下血腫を含む)が、この薬物に関する熱狂を鈍らせた。Frostら、2015、Long-term safety and efficacy of imatinib in pulmonary arterial hypertension、J Heart Lung Transplant、34(11):1366~75(本明細書において参照によって援用される)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Frostら、2015、Long-term safety and efficacy of imatinib in pulmonary arterial hypertension、J Heart Lung Transplant、34(11):1366~75
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本発明の組成物および方法は、吸入可能な処方物の使用を通じて、以前のイマチニブに基づくPAH処置に関する問題に取り組む。特に、本発明は、PAHおよび他の状態が、経口投与または静脈内投与された場合よりも顕著に低い用量で、吸入可能な処方物によって効果的に処置され得ることを認識する。PAHの処置のための経口イマチニブメシル酸塩に関する公開された研究は200mg/日~400mg/日の間のイマチニブメシル酸塩の投与に依拠したが、本発明の吸入可能な処方物は、1mgほどの低用量で提供され得る。種々の実施形態において、1回分の投与量は、1mg、3mg、10mg、30mg、または90mgなどの量(すべて、上記の経口研究における200mg~400mgよりもかなり少ない)で1日1回または1日2回、提供され得る。好ましい実施形態において、1回分の投与量は、10mg、35mg、または70mgの量で1日2回提供される。したがって、本発明の処方物および方法は、それらの経口処置よりも低い全身濃度を生じ、それらの研究において経験された有害事象のリスクを減少させる。より少ない有効用量は、吸入による標的肺組織へのイマチニブ処方物の直接送達、イマチニブとキャリア(例えば、ラクトース)とだけを含むイマチニブ遊離塩基の簡易な組成物の使用、および/または微粒子化乾燥粉末イマチニブの使用による効率的な肺浸透を通じて、促進され得る。
【0008】
本明細書において記載される組成物および方法は、PAHおよび肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の他の状態の処置において顕著な進歩を示し、先行する経口処方物に関連する有害事象の容認できないリスクを伴わずに治療結果を提供する。
【0009】
種々の実施形態において、イマチニブ処方物は、ラクトースキャリアと混合したイマチニブ遊離塩基の微粒子化乾燥粉末組成物を含み得る。これらの組成物は、肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の状態(例えば、肺動脈性肺高血圧症(PAH))を有する対象を処置するために1mg~90mgの範囲の1回分の投与量で提供され得る。1回分の投与量は、1日に1回、2回、3回、4回、またはそれより多くの回数で投与され得る。例えば、1日2回投与される1回分の投与量90mgは、180mgの一日量をもたらす。
【0010】
本発明の局面は、少なくとも1mgのイマチニブを含む吸入可能な処方物を含み得る。イマチニブは、1mg、3,mg、10mg、35mg、70mg、または90mgなどの量で、その処方物中に存在し得る。処方物は、キャリアを含み得る。キャリアは、ラクトースであり得る。処方物は、乾燥粉末であり得る。特定の局面において、乾燥粉末吸入器と、少なくとも1mgのイマチニブを含む乾燥粉末処方物とを含む、組合せ製品が提供され得る。処方物は、乾燥粉末吸入器に挿入される大きさおよび構成にされたカプセル中に包装され得る。
【0011】
本発明の特定の局面は、肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の状態を処置する方法を含み、この方法は、そのような状態を有するヒト対象に、少なくとも1mgのイマチニブを含む吸入可能な処方物を提供することによる。処方物は、1日1回または1日2回提供され得る。特定の実施形態において、イマチニブ処方物を充填された乾燥粉末吸入器が、提供され得る。
【0012】
特定の実施形態において、イマチニブ乾燥粉末は微粒子化され得、その微粒子化イマチニブ乾燥粉末は、約0.5μm~約5μmの範囲にある空気力学的質量中央径を含む粒子からなり得る。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、従来の処方物において見出されるよりも高いAPI(医薬品有効成分)比を有する、吸入可能なイマチニブの処方物を提供する。特定の実施形態において、50質量%以上のイマチニブを含む処方物が、提供される。本発明の組成物および方法は、大きな体積は患者が吸入するのが困難または危険であり得ること、したがって、処方物中の非API成分の量を最小にすることが、標的組織において治療有効API濃度を依然として提供しながら吸入される化合物の全体量を減少させることによって、患者の快適さ、安全性および服薬遵守を改善し得ることを、認識する。
【0014】
本発明の吸入可能な組成物は、従来の経口経路を通じて投与されるかまたは静脈内投与される等価用量のイマチニブもしくはイマチニブメシル酸塩よりも大きな肺への曝露を提供する。比較的高経口用量のイマチニブまたはイマチニブメシル酸塩が、本発明の処方物の吸入によって達成されるのと同じ標的肺への曝露を達成するためには必要であるが、本発明の組成物および方法を使用して、顕著に低い投薬量が送達され得る。
【0015】
特定の実施形態において、吸入可能なイマチニブ化合物は、吸入用の乾燥粉末処方物のために望ましい粒径を達成するように湿式製粉または乾式製粉(たとえば、ジェットミル)によって微粒子化され得る。イマチニブは、望ましい深部肺浸透のために粒径約0.5μm~約5μmの空気力学的質量中央径(MMAD)へ微粒子化され得る。吸入される製品は、投与され得る粉末の質量に関して制限され得、特定のイマチニブ塩が、その吸入される化合物の分子量に顕著に寄与する。したがって、特定の実施形態において、イマチニブ遊離塩基が、肺組織への活性部分の効率的な送達のために好ましいものであり得る。好ましい実施形態において、その微粒子化乾燥粉末イマチニブ遊離塩基は、ラクトースキャリアと混合される。API:キャリア比は、50:50、75:25、または90:10よりも大きいものであり得る。特定の実施形態において、100%イマチニブが、キャリアなしで投与され得る。
【0016】
本明細書において記載される吸入可能な処方物は肺または微小血管系の標的組織におけるイマチニブの取込みを調節し得るので、本発明の処方物は、標的組織に到達する前に薬物を全身に導入する他の投与経路によって投与されるより高用量に関連する有害事象を回避しつつ、肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の種々の状態を処置するために使用され得る。例えば、本発明の化合物および方法は、PAHならびに肺移植片拒絶、肺静脈閉塞症(PVOD)、および他の疾患(駆出率が保たれた心不全(HFpEF)または住血吸虫症など)の二次症状である肺高血圧症を処置するために使用され得る。用量範囲は、1日ごとのスケジュールにおける吸入のために1回分の投与量当たり約1mg~約100mgの間を含み得る。1日1回または1日2回の1回分の投与量は、好ましい実施形態において、1mg、3mg、10mg、30mg、35mg、70mg、または90mgを含み得る。種々の実施形態において、1mgと300mgとの間が、吸入可能なイマチニブの1回分の投与量で提供され得る。その後、約0.01mg~約240mgの活性イマチニブ化合物が、吸入後に肺の内部に沈着され得る。本発明の組成物は比較的高濃度のAPI(例えば、50%以上)を有し得るので、上記の1回分の投与量は、1%(重量/重量)~3%(重量/重量)のAPIを有する従来の処方物と比較して小さい全体質量の吸入可能な粉末で達成され得る。
【0017】
特定の実施形態において、本発明の処方物は、遊離塩基形態のイマチニブの処理および投与を含み得る。本発明の遊離塩基イマチニブ処方物は、微粒子化後に結晶化度を保持し得、特定のイマチニブ塩よりも吸湿性が小さい。したがって、本発明の化合物および方法は、遊離塩基イマチニブの吸入可能な処方物を含む。
【0018】
一部の実施形態において、吸入可能な乾燥粉末イマチニブが、吸入によってそのような処方物を送達する方法(例えば、乾燥粉末吸入器)と一緒に提供され得る。そのイマチニブは、肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の状態(例えば、肺動脈性肺高血圧症(PAH))を処置するための治療有効量で存在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、経時的な血漿および肺における平均イマチニブ濃度の比較を示す。
【0020】
【
図2】
図2は、経時的な血漿および肺における平均遊離イマチニブ濃度の比較を示す。
【0021】
【
図3】
図3は、気管内投与されたイマチニブ懸濁物(IT)および乾燥粉末イマチニブ(IT DP)に関する経時的な血漿中濃度と経口投与されたイマチニブ(PO)との比較を示す。
【0022】
【
図4】
図4は、気管内投与されたイマチニブ懸濁物(IT)および乾燥粉末イマチニブ(IT DP)に関する経時的な肺濃度と経口投与されたイマチニブ(PO)との比較を示す。
【0023】
【
図5-1】
図5は、SAD試験における種々のコホートに関する経時的なイマチニブ血漿中濃度を示す(標準スケールおよび片対数スケール)。
【
図5-2】
図5は、SAD試験における種々のコホートに関する経時的なイマチニブ血漿中濃度を示す(標準スケールおよび片対数スケール)。
【0024】
【
図6-1】
図6は、SAD試験における種々のコホートに関する経時的なイマチニブ代謝物であるN-デスメチルイマチニブの血漿中濃度を示す(標準スケールおよび片対数スケール)。
【
図6-2】
図6は、SAD試験における種々のコホートに関する経時的なイマチニブ代謝物であるN-デスメチルイマチニブの血漿中濃度を示す(標準スケールおよび片対数スケール)。
【0025】
【
図7】
図7は、90mg定常状態投与量のイマチニブ血漿中濃度を、400mg経口一回投与量および400mg経口定常状態投与量(推定値)と比較して示す。
【0026】
【
図8】
図8は、反復投与用量漸増試験の7日目の90mg定常状態投与量のイマチニブ血漿中濃度を、1日目に観察された400mg経口一回投与量および7日目の予測(projected)された90mg2回目投与量に関する濃度と比較して示す。
【0027】
【
図9】
図9は、90mg定常状態投与量のN-デスメチルイマチニブ血漿中濃度を、400mg経口一回投与量および400mg経口定常状態投与量(推定値)と比較して示す。
【0028】
【
図10】
図10は、反復投与用量漸増試験の7日目の90mg投与量のN-デスメチルイマチニブ血漿中濃度を、400mg経口一回投与量および400mg経口定常状態投与量(予測値(projected))と比較して示す。
【0029】
【
図11】
図11は、吸入AV-101の反復投与後の時間ごとの濃度または400mgの1日1回のイマチニブに関するシミュレートしたプロファイルを、イマチニブについて片対数スケールで示す。
【0030】
【
図12】
図12は、吸入AV-101の反復投与後の時間ごとの濃度または400mgの1日1回のイマチニブに関するシミュレートしたプロファイルを、N-デスメチルイマチニブについて片対数スケールで示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(詳細な説明)
本発明は、イマチニブ遊離塩基の吸入可能な処方物に関する。吸入可能な処方物は、少なくとも1mgのイマチニブを含み得、1日1回または1日2回使用され得る。一部の実施形態において、1回分の投与量は、1日に3回、4回、またはそれより多くの回数で投与され得る。個別の1回分の投与量は、1mg、3mg、10mg、30mg、または90mgからなり得る。特定の実施形態において、1回分の投与量は、1日に1回、2回、3回、4回、またはそれより多くの回数で提供される、100mg未満、150mg未満、200mg未満、250mg未満、または300mg未満を含み得る。処方物は、イマチニブ遊離塩基を含み得、それは、微粒子化され得、キャリア(ラクトースなど)と混合され得る。その処方物は、乾燥粉末であり得、適合性のある乾燥粉末吸入器における使用のためのカプセル中で提供され得る。好ましい1回分の投与量は、1日に2回提供される、10mg、35mg、または70mgを含み得る。
【0032】
そのような処方物は、PAHを含む肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の状態を処置するために使用され得る。顕著に高い経口用量のイマチニブメシル酸塩が、PAHを処置することにおける将来性を以前に示したが、容認できないレベルの有害事象が、その使用に関連し、したがって、それらは使用するのに安全であるとは認められなかった。予想外にも、本明細書において記載されるイマチニブの吸入可能な処方物は、上記の1回分の投与量で、経口イマチニブメシル酸塩処方物に関連する有害事象を回避しつつPAHの処置における治療的利点を依然として提供し得る。標的肺組織への直接送達は、硬膜下血腫などの有害事象に関連する全身濃度を回避しつつ、薬物の治療濃度が達成されるのを可能にすると考えられる。
【0033】
下記実施例2において議論されるとおり、吸入は、顕著に低い血漿中濃度を伴って肺における高い局所濃度を提供し、他の投与経路によって引き起こされる高い全身濃度に関連する有害事象のリスクの減少が確認される。さらに、実施例2において示されるとおり、吸入される懸濁物または溶液とは対照的に、乾燥粉末吸入は、ラット肺において改善された肺滞留を示し得る。
【0034】
種々の実施形態において、本発明のイマチニブ処方物は、肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の種々の状態(例えば、PAH)を処置することにおける使用のための薬学的組成物であり得る。例えば、イマチニブは、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)および他のシグナル伝達キナーゼの強力なインヒビターである。したがって、本発明の組成物は、イマチニブに対して感受性であるPDGFRまたは他のキナーゼの阻害に関わるあらゆる疾患もしくは状態を処置するために使用され得る。特定の実施形態において、処置の組成物および方法は、実施例1において以下に記載されるとおりである。
【0035】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、PAHを処置するために使用され得る。PAHまたは他の障害の処置のために、本明細書において記載される種々の実施形態にしたがう治療有効量のイマチニブの薬学的組成物が、望ましい量のイマチニブ化合物を標的肺組織に送達するために、吸入によって(例えば、乾燥粉末吸入器または噴霧器によって)送達され得る。
【0036】
PAHおよび肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の他の状態を処置するための投薬量は、1日につき1回、2回または3回のスケジュールで吸入するために1回分の投与量当たり約1mg~約300mgの間の範囲内であり得る。その後、約0.01mg~約240mgのイマチニブが、吸入後に肺の内部に沈着され得る。特定の実施形態において、約1mg~40mgのイマチニブが、肺に到達すると期待される約0.5mg~約20mgのその化合物を含む乾燥粉末吸入一回量用のカプセル中で提供され得る。複数のカプセルが、一回量を投与するために使用され得る。例えば、1mgカプセルまたは10mgカプセルまたは30mgカプセルが、3mg、30mg、90mgまたは180mgという一回量を構成するために使用され得る。好ましい実施形態において、キャリアを伴わない100%イマチニブの30mgカプセルが、使用され得る。記載したとおり、一回量が、1日に1回、2回、3回、4回、またはそれより多くの回数で投与され得る。特定の実施形態において、35mg投与量または70mg投与量(2つのカプセルを使用した達成される)が1日2回送達され得るように、35mgカプセルが使用され得る。
【0037】
特定の実施形態において、本発明のイマチニブ処方物は、住血吸虫症の結果としての肺高血圧症を処置するために使用され得る。例えば、Liら、2019、The ABL kinase inhibitor imatinib causes phenotypic changes and lethality in adult Schistosoma japonicum、Parasitol Res.、118(3):881~890;Grahamら、2010、Schistosomiasis-associated pulmonary hypertension:pulmonary vascular disease:the global perspective、Chest、137(6 Suppl):20S~29S(それらの各々の内容が、参照によって本明細書において援用される)を参照のこと。
【0038】
本発明のイマチニブ薬学的組成物は、臓器拒絶を防ぐために肺移植レシピエントを処置するために使用され得る。Keilら、2019、Synergism of imatinib, vatalanib and everolimus in the prevention of chronic lung allograft rejection after lung transplantation (LTx) in rats、Histol Histopathol、1:18088(本明細書において参照によって援用される)を参照のこと。
【0039】
特定の実施形態において、本明細書において記載される薬学的組成物は、肺静脈閉塞症(PVOD)を処置するために使用され得る。Satoら、2019、Beneficial Effects of Imatinib in a Patient with Suspected Pulmonary Veno-Occlusive Disease、Tohoku J Exp Med.、2019、Feb;247(2):69~73(本明細書において参照によって援用される)を参照のこと。
【0040】
イマチニブが治療効果を生じ得る肺循環系(pulmonary cardiovascular system)のあらゆる状態の処置のために、本発明の化合物および方法は、低い結晶多形および非晶質の含有量によって提供される一貫性のある予測可能な薬物動態を伴って、吸入によって標的肺組織でより高い濃度を提供するために使用され得る。標的組織における治療化合物の効率的局在化は、より少ない全身への曝露と、イマチニブメシル酸塩の長期的経口投与に関連する有害事象の回避とを可能にする。
【0041】
各作用物質の有効投薬量は、患者の年齢、体重、性別および病歴などの代表的因子を考慮して、当業者によって容易に決定され得る。一般に、本発明の化合物の適切な一日量は、望ましい治療効果を生じるのに有効な最低用量であるその化合物の量である。そのような有効用量は、一般的には、上記の因子に依存する。
【0042】
望ましい場合、活性化合物の有効一日量は、その日を通して適切な間隔で(必要に応じて単位投薬形態で)別々に投与される1、2、3、4、5
6、またはそれより多くの分割投与量(sub-dose)として投与され得る。
【0043】
本発明の薬学的組成物は、「治療有効量」の1種もしくはそれより多くの本発明の化合物またはその機能的誘導体を含む。「有効量」とは、望ましい治療結果(例えば、PAHに関連する作用の減少または防止)を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量を指す。本発明の化合物またはその機能的誘導体の治療有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびにその治療化合物がその対象において望ましい反応を惹起する能力などの因子にしたがって、変化し得る。治療有効量はまた、その治療剤のいかなる毒性作用にも有害作用にもその治療上有益な効果が勝る、量である。
【0044】
投薬レジメンは、最適な望ましい反応(例えば、治療反応または予防反応)を提供するように調整され得る。例えば、単回の吸入可能なボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割投与量が経時的に投与されてもよく、または用量が、治療状況の緊急性によって示されるのに比例して減少もしくは増加されてもよい。本発明の薬学的組成物中にある活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の対象、組成物、および投与様式のために望ましい治療反応を達成するために有効である活性成分の量を得るように変化され得る。安全な投薬量の決定に関する例示的試験が、以下に実施例1において記載される。
【0045】
本明細書において使用される用語「投薬単位」とは、処置されるべき哺乳動物対象用の単位となる投与量として適している、物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的キャリアと一緒に望ましい治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態に関する詳細は、(a)その化合物の独自の特徴と、(b)個体における感受性の処置に関するそのような活性化合物を調合する分野において固有の制限とによって、規定され、これらに直接的に依存する。
【0046】
一部の実施形態において、治療有効量は、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常は、ラット、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタ)のいずれかにおいて、まず評価され得る。その動物モデルはまた、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するために使用される。その後、そのような情報は、他の対象における有用な用量および投与経路を決定するために使用され得る。一般的には、治療有効量は、対象におけるPAH症状を減少するのに十分である。一部の実施形態において、治療有効量は、対象におけるPAH症状を排除するのに十分である。
【0047】
特定の患者のための投薬量は、従来の考慮事項を使用して(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコルによって)当業者によって決定され得る。医師は、例えば、最初に、比較的低用量を処方し得、その後、適切な反応が得られるまでその用量を増加し得る。患者に投与される用量は、その患者における有益な治療反応を経時的にもたらすため、もしくは例えば、症状を減少させるため、または適用に依存して、他の適切な活性をもたらすために、十分である。その用量は、特定の処方物の効力、および本発明の化合物もしくはその機能的誘導体の活性、安定性、または半減期、ならびに患者の状態、ならびに処置されるべき患者の体重または表面積によって、決定される。その用量の大きさはまた、特定の対象における特定のベクター、処方物などの投与に付随するあらゆる有害な副作用の存在、性質および程度によって決定される。本発明の1種もしくはそれより多くの化合物またはそれらの機能的誘導体を含む治療組成物は、必要に応じて、1種もしくはそれより多くの適切なインビトロおよび/またはインビボの疾患の動物モデル(例えば、PAHのモデル)において、当該分野において周知の方法にしたがって効力を確認し、組織代謝を確認し、投薬量を評価するために、試験される。特に、投薬量は、適切なアッセイにおいて、非処置と比較した処置の活性、安定性または他の適切な尺度(例えば、非処置細胞モデルまたは非処置動物モデルと比較した処置細胞モデルまたは処置動物モデルの比較)によってまず決定され得る。投与は、一回量または分割投与量によって達成され得る。
【0048】
イマチニブ処方物は、好ましくは、イマチニブ遊離塩基を含み、本出願全体を通して使用される場合、イマチニブとは、その塩が記載されない限りは、遊離塩基化合物を指す。遊離塩基としてのイマチニブは、以下の構造:
【化1】
を有する。
特定の実施形態において、本発明のイマチニブ処方物は、賦形剤を含み得る。好ましい賦形剤は、種々の形態の(例えば、ローラー(roller)乾燥または噴霧乾燥された)ラクトースである。より大きなラクトース粒子が、微粒子化イマチニブ処方物の吸入のためのキャリアとして使用され得る。キャリア粒子は、そのより大きな粒径によって、吸入による送達を補助するために組み合わせたイマチニブ/キャリアに対する空気力を増加するために使用され得る。キャリアとして使用される場合にラクトースが吸入器デバイスを出て口腔内部にあるときに活性化合物がラクトースから効果的に分離され得るように、ラクトースを表面を調節するために溶媒が使用され得る。好ましい実施形態において、製粉されたラクトース(例えば、DFE Pharma(Goch、Germany)から入手可能なLactohale 206)が、使用され得る。
【0049】
種々の実施形態において、イマチニブは、吸入用の乾燥粉末処方物中で提供される。乾燥粉末が、例えば、Berkenfeldら、2015、Devices for Dry Pwder Drug Delivery to the Lung、AAPS PharmaSciTech、16(3):479~490(本明細書において参照によって援用される)において記載されるような乾燥粉末吸入器によって、投与され得る。乾燥粉末化合物は、障害(例えば、PAHまたは肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の他の状態)を処置するために、1日1回吸入、1日2回吸入、1日3回吸入、または1日4回吸入のための一回量ずつへと分割され得る。それらの一回量は、使用されるべき乾燥粉末吸入器と適合する個々のカプセルまたは他の形式中に分割され得る。
【0050】
乾燥粉末イマチニブは、望ましい粒径を達成するように微粒子化され得る。微粒子化イマチニブの粒径は、適用に依存して、約0.5μm~約5μmの範囲であり得る。好ましい実施形態において、そのサイズ範囲は、深部肺浸透を達成するために乾燥粉末処方物において約1μm~約3.5μmである。
【0051】
上記のとおり、本明細書において記載される方法および組成物は、経口投与されるかまたは静脈を通じて投与される等価な用量で得られるよりも高いイマチニブ濃度を標的肺組織において提供する。さらに、高いパーセンテージの処方物全体を含むそれらの用量は、1%と3%との間のAPIの従来組成物よりも小さい体積の処方物で送達可能である。患者が吸入しなければならない粉末質量を減少させることは、患者の快適さおよび服薬遵守を増加し得、それによって結果を改善し得る。したがって、本発明の方法および組成物は、全身投与において必要されるよりも低用量および少ない吸入可能な薬物による肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の状態(例えば、PAH)の処置を可能にし、それによって硬膜下血腫を含む有害事象のリスク(Frostらを参照のこと)を低下させる。したがって、本発明は、従来は実際の適用のためには危険すぎた、生命を脅かす疾患のための実行可能な処置方法を提供する。
【0052】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、イマチニブの処方物を含む。好ましい実施形態において、遊離塩基イマチニブが、肺循環系(pulmonary cardiovascular system)の状態(PAHなど)を処置するために吸入用処方物(乾燥粉末または懸濁物のいずれか)中で使用される。
【0053】
本発明の化合物がヒトおよび動物に医薬品として投与される場合、それらは、単独で、または例えば、0.1~100%の活性成分(例えば、イマチニブ)を含む薬学的組成物として、提供され得る。
【0054】
高いAPI比の処方物において、キャリアまたは賦形剤が、組成物全体の50%以下の量でその処方物の残りを構成し得る。特定の実施形態において、吸入可能な処方物は、API:キャリア比50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、または95:5を有し得る。特定の吸入可能な処方物は、追加成分を含まない純粋なAPIであり得る。種々の実施形態において、処方物は、APIとしてのイマチニブを5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%よりも多い量で含み得る。特定の実施形態において、その吸入可能な処方物は、キャリアを含まないイマチニブから本質的になり得る。本明細書において使用される場合、API比とは、%(重量/重量)を指す。
【0055】
例示的なイマチニブ処方物、処置方法、および製造方法が、例えば、米国特許出願第16/874,111号;米国特許出願第16/874,118号;米国特許出願第16/874,122号;米国特許出願第16/874,128号;米国特許出願第16/874,143号;米国特許出願第16/874,153号;米国特許出願第16/874,168号;および米国特許出願第16/874,190号(それらの各々の内容は、本明細書において参照によって援用される)において記載されている。
【0056】
(参照による援用)
他の文書、例えば、特許、特許出願、特許公開、雑誌、書物、論文、ウェブコンテンツの参照および引用が、本開示全体と通してなされてきた。そのような文書はすべて、すべての目的のために、その全体が本明細書によって参照によって本明細書において援用される。
【0057】
(等価物)
本明細書において示され記載される実施形態に加えて、本発明およびその多くのさらなる実施形態の種々の改変が、本文書の全内容(本明細書において引用される科学文献および特許文献の参照を含む)から当業者にとって明らかになる。本明細書における主題は、本発明の種々の実施形態およびそれらの等価物において本発明の実施に適合され得る、重要な情報、例証および指針を含む。
【実施例】
【0058】
実施例1:健常対象におけるAV-101(イマチニブ遊離塩基)の安全性、忍容性、および薬物動態を評価するためのランダム化二重盲検プラセボ対照単回投与用量漸増および反復投与用量漸増試験
【0059】
吸入によって投与されるチロシンキナーゼインヒビターであるAV-101(イマチニブ遊離塩基)を、単回投与用量漸増試験(SAD)フェーズおよび反復投与用量漸増試験(MAD)フェーズという2つのフェーズで調査する。
【0060】
パート1:健常志願者における単回投与用量漸増(SAD)試験
SAD部分は、各コホートに8人の参加者(6人の実薬(active)対象:2人のプラセボ対象)を含む5つのコホートを含んだ。乾燥粉末吸入器を使用して、一回量を朝に吸入によって投与した。その進行は、1mg、3mg、10mg、30mg、および90mgであった。非耐用量(non-tolerated dose)(NTD)に達しなかった場合には、さらなるコホートを追加し得る。このSAD部分はまた、400mgのイマチニブメシル酸塩の経口一回投与量を受けた8人の実薬(active)対象(プラセボなし)のさらなる1つのコホートを含んだ。
【0061】
薬物動態(PK)評価用の血液サンプルを、投与前および投与72時間後まで採取した。結果を表1において示し、それは、イマチニブおよびイマチニブ代謝物であるN-デスメチルイマチニブの観察された濃度を示す。
図5は、SAD試験における種々のコホートに関する経時的なイマチニブ血漿中濃度を示す(標準スケールおよび片対数スケール)。
図6は、SAD試験における種々のコホートに関する経時的なイマチニブ代謝物であるN-デスメチルイマチニブの血漿中濃度を示す(標準スケールおよび片対数スケール)。SAD1~SAD5とは、それぞれ、
図5および
図6における1mgコホート~90mgコホートを指す。
【0062】
【0063】
パート2:健常志願者における反復投与用量漸増(MAD)試験
MAD部分は、各コホートに8人~9人の実薬(active)参加者を含む3つのコホートを含んだ。AV-101を1日2回吸入によって7日間投与した。1回分の投与量は、SAD部分の結果によって10mg、30mg、および90mgと決定した。
【0064】
薬物動態評価用の血液サンプルを、最初の投与の前およびその12時間後まで、2日目~6日目の各投与の前、および7日目の最後の投与の前およびその12時間後まで採取した。すべての対象から、7日目の最後の投与の24時間後、48時間後、および72時間後に薬物動態評価のために血液を採取した。結果を表2(1日目)および表3(7日目)に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
図7は、MAD試験の90mg定常状態投与量のイマチニブ血漿中濃度を、400mg経口一回投与量および400mg経口定常状態投与量(推定値)と比較して示す。
図8は、反復投与用量漸増試験の7日目の90mg定常状態投与量のイマチニブ血漿中濃度を、1日目に観察された400mg経口一回投与量および7日目の予測(projected)された90mg2回目投与量に関する濃度と比較して示す。
図9は、MAD試験の90mg定常状態投与量のN-デスメチルイマチニブ血漿中濃度を、400mg経口一回投与量および400mg経口定常状態投与量(推定値)と比較して示す。
図10は、反復投与用量漸増試験の7日目の90mg投与量のN-デスメチルイマチニブ血漿中濃度を、400mg経口一回投与量および400mg経口定常状態投与量(予測値(projected))と比較して示す。
【0068】
図11および
図12は、吸入AV-101の反復投与後の時間ごとの濃度または400mgの1日1回のイマチニブに関するシミュレートしたプロファイルを、イマチニブ(
図11)およびN-デスメチルイマチニブ(
図12)について片対数スケールで示す。濃度は、7日目の72時間にわたる平均±標準偏差として示している。吸入AV-101の時間ごとの濃度は、MADパートの7日目の間に得た。
図11および
図12におけるシミュレートしたプロファイルは、SADパートの間に経口イマチニブ(グリベック)を受けたコホートの観察データから発展させた母集団薬物動態モデルから得た400mgイマチニブの1日1回の経口投与後の7日目の時間ごとの濃度を示す。
【0069】
(実施例2:吸入可能なイマチニブの薬物動態試験)
イマチニブを、乾燥粉末(IT DP)形式および懸濁物(IT)形式で3mg/kgでラットに気管内投与した。比較のために、イマチニブを経口投与もした。それらのラットを投与後の種々の時点で屠殺し、血漿中濃度および肺濃度を測定した。
図1は、経時的な血漿および肺における平均イマチニブ濃度の比較を示す。
図2は、経時的な血漿および肺における平均遊離イマチニブ濃度の比較を示す。示されるとおり、肺濃度は血漿中濃度よりもかなり高く、高い全身濃度に関連する有害事象リスクのうちの一部を回避しつつ、PAHなどの肺障害の処置のためのイマチニブの吸入の利点を示した。
【0070】
図3は、気管内投与されたイマチニブ懸濁物(IT)および乾燥粉末イマチニブ(IT DP)に関する経時的な血漿中濃度と経口投与されたイマチニブ(PO)との比較を示す。
図4は、同じ処方物に関する肺濃度の比較を示す。示されるとおり、乾燥粉末イマチニブは、肺においてより長い滞留を示す。経口投与されたイマチニブと比較して、両方の気管内投与は、肺組織においてより高いピーク濃度をもたらす。
【国際調査報告】