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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】抽出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/40 20060101AFI20231124BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20231124BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20231124BHJP
   B01D 11/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01N1/40
G01N1/28 X
G01N1/28 T
G01N33/15 Z
B01D11/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530773
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021060181
(87)【国際公開番号】W WO2022109326
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/116,569
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523187332
【氏名又は名称】カム2・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】CAM2 TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】シーリング,デイビッド ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ケネス シー
(72)【発明者】
【氏名】レスラー,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ディドメニコ,アンソニー ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】シーレンビンダー,ジョン エイ
(72)【発明者】
【氏名】フィッツパトリック,ジェイムズ ジェイ
【テーマコード(参考)】
2G052
4D056
【Fターム(参考)】
2G052AB23
2G052AD32
2G052AD46
2G052DA08
2G052DA13
2G052FD08
2G052FD09
2G052GA12
2G052JA03
2G052JA07
4D056AB18
4D056AB19
4D056AC04
4D056AC22
4D056BA08
4D056CA06
4D056CA13
4D056CA17
4D056CA27
4D056CA39
4D056CA40
4D056DA05
(57)【要約】
固-液抽出または液-液抽出のための試料を準備するための装置および方法が提供される。一実施形態では、装置は、固体試料を受け取るための開口部を含む密閉容器と、リザーバを含む。リザーバは、溶剤を含むか、または溶剤を受け取るように適合される。固体試料と溶剤は、リザーバ内で混合され、試料の少なくとも1つの成分をリザーバ内の溶剤に濃縮させる。濃縮物は、容器内の溶剤層に沈殿する。溶剤層は、ポートを介してサンプリングされる。方法は、固体試料を溶剤に導入すること、固体試料を溶剤と混合して溶液を作成すること、溶剤溶液を少なくとも1つの層に沈降させること、および少なくとも1つの層内でサンプリングすることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験用の試料を準備するように適合された装置であって、
装置は、
固体試料を受けるように適合された開口部を含む密封容器と、
溶剤を含む、または溶剤を受けるように適合されたリザーバと、を含み、
リザーバは、固体試料と溶剤とがリザーバ内で混合され、試料の少なくとも1つの成分がリザーバ内の溶剤で濃縮するように適合され、
リザーバは、濃縮物が容器内の溶剤層に沈降するように適合され、
装置はまた、
溶剤層内から濃縮物をサンプリングするように適合された試料ポートを含む、装置。
【請求項2】
固体試料が、粉末試料、錠剤試料、および分割されていない固体試料のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
固体試料が、錠剤試料または分割されていない試料を含み、
装置が、錠剤試料または分割されていない試料を粉末試料に変換するように適合される、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
密封容器が、
錠剤試料または分割されていない試料を受け、錠剤試料または分割されていない試料を粉末試料に変換するように適合されたレセプタクルと、
粉末試料を受けて粉末試料を溶剤と混ぜるように適合されたレセプタクルと連結した液体チャンバと、を含む、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
溶剤が、容器内に配置された密封アンプル内に配置される、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
リザーバが、容器のポートを介して試料を受けるように適合された、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
密封容器が溶剤と、該溶剤と非混和性の第二の溶剤を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
溶剤が水性液体を含む、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
溶剤が第一の密封アンプルに配置され、第二の溶剤が第二のアンプルに配置される、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
密封容器が、溶剤を受けるように適合された少なくとも1つのポートを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
密封容器が、2つの異なる位置に配置される第一のシールと第二のシールとを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第一のシールが、錠剤試料または分割されていない固体試料である固体試料を受けるためにアクセス可能であり、第二のシールが濃縮物のサンプリングのためにアクセス可能である、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第一の、および第二のシールが取り外し可能なクランプによってシールされる、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
試料ポートが投与する先端を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
投与する先端が密封容器の底部に配置される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
試料ポートが、密封容器の底部に配置される、
請求項1に記載の装置。
【請求項17】
密封チャンバが予め充填された水性液体アンプルおよび予め梱包された第二の溶剤アンプルを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項18】
密封チャンバが、予め梱包された水性液体アンプル、および予め梱包された溶剤アンプルを密封容器の壁を隔てて破砕し、水性液体および溶剤を解放することを促進するように適合された、
請求項17に記載の装置。
【請求項19】
密封チャンバがピルを容器の壁を隔てて破砕することを促進するように適合された、
請求項1に記載の装置。
【請求項20】
溶剤が有機溶剤を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項21】
密封チャンバが、粉末固体試料を受けるように適合された、
請求項1に記載の装置。
【請求項22】
密封チャンバが、粉末試料と溶剤の完全な混合を促進するように適合された、
請求項1に記載の装置。
【請求項23】
密封チャンバが、密封チャンバの少なくとも1つの壁を隔てて混合することを促進するように適合された、
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
密封容器が混合チャンバおよび分離チャンバを含み、
密封容器のシールが、沈降のために混合液を分離チャンバに搬送することを促進するように適合された、
請求項1に記載の装置。
【請求項25】
層からの流体が、分析表面上に、または分析チャンバに内に置かれることを可能とするように試料ポートが適合された、
請求項1に記載の装置。
【請求項26】
容器が濃縮物が溶剤層内に沈降するように適合された容器を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項27】
容器が、分離漏斗を含む、
請求項26に記載の装置。
【請求項28】
試料ポートが、バルブディスペンサを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項29】
バルブディスペンサがデシカントを含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
バルブディスペンサが閉鎖位置に付勢される、
請求項28に記載の装置。
【請求項31】
バルブディスペンサが、少なくとも1つのばねを介して閉鎖位置に付勢される、
請求項30に記載の装置。
【請求項32】
試料を溶剤層から投与するために、バルブディスペンサの付勢は、バルブディスペンサのホルダに圧力をかけることにより克服される、
請求項30に記載の装置。
【請求項33】
デシカントがリザーバ内に配置される、
請求項1に記載の装置。
【請求項34】
試験用の試料を準備するように適合された装置であって、
装置は、
固体試料を受けるように適合されたレセプタクルと、
固体試料を受け、固体試料を溶剤と混合させるように適合された液体チャンバと、
液体チャンバ内に形成された層をサンプリングするための試料ポートと、を含む、
装置。
【請求項35】
固体試料が、粉末試料、錠剤試料、および分割されていない固体試料のうちの少なくとも1つを含む、
請求項34に記載の装置。
【請求項36】
固体試料が、錠剤試料または分割されていない試料を含み、
装置が、錠剤試料または分割されていない試料を粉末試料に変換するように適合される、
請求項35に記載の装置。
【請求項37】
錠剤試料の粉砕、破砕、研磨、および切削を含むグループのうちの少なくとも1つを介して錠剤試料を粉末試料に変換するように、レセプタクルが適合される、
請求項36に記載の装置。
【請求項38】
試料ポートが、液体チャンバの底部に配置される、
請求項34に記載の装置。
【請求項39】
試料ポートが、液体チャンバの上部に配置される、
請求項34に記載の装置。
【請求項40】
試験のための試料を準備する方法であって、
装置に固体試料を受けるステップと、
固体試料を装置内の溶剤に入れるステップと、
溶剤溶液を提供するために固体試料を溶剤と混合させることにより溶液を作成するステップと、
少なくとも1つの層となるまで溶剤溶液の沈降を待つステップと、
少なくとも1つの層内でサンプリングするステップと、
を含む方法。
【請求項41】
固体試料の少なくとも1つの材料を溶剤内に濃縮させるステップをさらに含む、
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
溶剤と非混和性の第二の溶剤が提供され、溶剤溶液が第二の溶剤と混合される、
請求項40に記載の方法。
【請求項43】
溶剤および第二の溶剤が複数の層に沈降する、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
サンプリングの操作が第二の溶剤に対応する層内で実行される、
請求項43に記載の方法。
【請求項45】
固体試料が、粉末試料、錠剤試料、および分割されていない固体試料のうちの少なくとも1つを含む、
請求項40に記載の方法。
【請求項46】
固体試料が、錠剤試料または分割されていない試料を含み、
装置が錠剤試料または分割されていない固体試料を粉末試料に変換するように適合された、
請求項45に記載の方法。
【請求項47】
錠剤試料の粉砕、破砕、研磨、および切削を含むグループのうちの少なくとも1つを介して錠剤試料を粉末試料に変換するように、レセプタクルが適合される、
請求項46に記載の方法。
【請求項48】
装置に溶剤溶液を提供するために、溶剤と非混和性の第二の溶剤を入れるステップを含む、
請求項40に記載の方法。
【請求項49】
固体試料がフェンタニル錠剤を含む、
請求項40に記載の方法。
【請求項50】
第二の溶剤が有機溶剤を含む、
請求項40に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの層が、装置の液体レセプタクルの底部に配置される、
請求項40に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1つの層が、装置の液体レセプタクルの上部に配置される、
請求項40に記載の方法。
【請求項53】
試験のための試料を準備するように適合された装置であって、
装置は、
錠剤試料、分割されていない固体試料、および粉末試料のうちの少なくとも1つを含む固体試料を受け、粉末試料を溶剤と混合させ、粉末試料の少なくとも1つの成分を溶剤の中に濃縮し、濃縮物が容器内の溶剤層に沈降するように適合された密封容器と、
層から濃縮物をサンプリングするように適合された試料ポートと、を含む装置。
【請求項54】
固体試料が、錠剤試料、または分割されていない固体試料を含み、装置は、溶剤と混合するために錠剤試料、または分割されていない固体試料を粉末試料に変換するように適合された、
請求項53に記載の装置。
【請求項55】
装置が、溶剤と非混和性の第二の溶剤を含む、またはそれを受けるように適合された、
請求項53に記載の装置。
【請求項56】
容器が、試料の少なくとも1つの成分を容器内の溶剤層に濃縮させるように適合された分離容器を含む、
請求項53に記載の装置。
【請求項57】
分離容器が、分離漏斗を含む、
請求項56に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月20日に出願された米国仮出願第63/116,569号の利益を主張し、その内容は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照によりここに組み込まれる。
【0002】
本開示は、化学分析のための試料を準備するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ストリートドラッグ、特にフェンタニル誘導体は、他のドラッグ、例えばヘロイン、および一般に「カッティングエージェント」と呼ばれる不活性物質と混合された低用量の形態で遭遇する。フェンタニルおよびその様々な誘導体は非常に毒性が強く、致死量は2~3mgであり、比較としてヘロインでは75mgである。レスポンダーと公衆の健康と安全、そして麻薬ディーラーの逮捕のために、現場でストリートドラッグを分析し、対処方針を明らかにするための迅速な状況認識を提供することが有用である。
【0004】
固-液抽出および液-液抽出は、溶解度特性に基づいて物質を分離および濃縮するために実験室環境で採用されるよく知られた技術である。
【発明の概要】
【0005】
薬物は、ピル(錠剤)や粉末の中に低レベルで存在し、「カッティングエージェント」と呼ばれる他の不活性な物質と混合されることがある。カッティングエージェントは、薬物を希釈して、より安全に、取り扱いや投与を容易にし、時にはディーラーの利益を増やす役割も果たす。分析方法の検出限界(抽出前の混合物中の物質の濃度)を下げるために、薬物材料をカッティングエージェントから分離して、薬物を別々に分析することは有利である。本明細書で提供される実施形態は、現場で疑わしい材料を分離して濃縮し、濃縮分離された材料を分析方法に導入するための抽出装置および方法を提供するものである。麻薬原料の文脈で説明したが、この装置および方法は一般的であり、検出限界(LOD)を下げるために濃縮が必要となる可能性がある他の原料、例えば医薬品、偽造医薬品、または食品に適用することが可能である。
【0006】
一実施形態では、一体化した装置で、サンプリングと、固-液抽出または液-液抽出による析出(deposition)との一体化に適応した装置。
【0007】
本発明の前記および他の態様、特徴、詳細、有用性、および利点は、以下の説明および請求項を読み、添付の図面を確認することから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、抽出方法の一実施形態のフロー図である。
図2図2は、予め濃縮され抽出された試料の分析例を示すグラフである。
図3A図3Aは、抽出装置の一実施形態を示す。
図3B図3Bは、抽出装置の一実施形態を示す。
図3C図3Cは、抽出装置の一実施形態を示す。
図4A図4Aは、抽出装置の実施形態を示す。
図4B図4Bは、抽出装置の実施形態を示す。
図4C図4Cは、抽出装置の実施形態を示す。
図4D図4Dは、抽出装置の実施形態を示す。
図5A図5Aは、抽出方法の実施形態を示すフロー図である。
図5B図5Bは、抽出方法の実施形態を示すフロー図である。
図6図6は、抽出装置の一実施形態を示す。
図7A図7Aは、抽出装置の一実施形態を示す。
図7B図7Bは、抽出装置の一実施形態を示す。
図7C図7Cは、抽出装置の一実施形態を示す。
図8A図8Aは、抽出装置の一実施形態を示す。
図8B図8Bは、抽出装置の一実施形態を示す。
図8C図8Cは、抽出装置の一実施形態を示す。
図9A図9Aは、抽出装置の一実施形態を示す。
図9B図9Bは、抽出装置の一実施形態を示す。
図9C図9Cは、抽出装置の一実施形態を示す。
図10A図10Aは、抽出装置の一実施形態を示す。
図10B図10Bは、抽出装置の一実施形態を示す。
図10C図10Cは、抽出装置の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、抽出方法の一実施形態のフロー図である。図1は、実験室で実験装置を用いて採用され得るような抽出方法の実施形態における工程を示す。本明細書で提供される実施形態は、手順を簡略化し、サンプリング、抽出、濃縮、および実験室設定以外の現場に配備できる装置へのまたは装置への導入を達成するように適応することができる。
【0010】
図1において、入力試料は、錠剤18または粉末17または他の分割されていない固体形態のような、1つまたは複数の形態で受け取ることができる。錠剤の形態18の場合、錠剤を破砕、研磨、または切断することなどにより、粉末混合物を得る19ことができる。粉末のサンプリングされたポーション20を水溶液などの溶剤に入れ、混合物を振るなどして撹拌して粉末と溶剤(例えば水溶液)を混合し、分析すべき目的の化学物質を含む試料の部分を溶解させる21。有機溶剤などの第一溶剤と混和しない第二溶剤を添加する22。次に、混合物を振るなどして撹拌し、粉末、第一溶剤(例えば、水溶液)、および第一溶剤と混和しない第二溶剤(例えば、有機溶剤)を混合させる23。混合物を沈降させ、非混和性の溶剤層に分離させることができるようにする24。第二溶剤を含む層内でサンプリングすることにより、層の1つ、例えば有機溶剤層からサンプルアリコートが採取される25。サンプリングされた溶剤溶液(例えば、有機溶剤溶液)は、センサ/基板上、またはチャンバ、または試料導入口に入れられ26、化学分析が実行される27。分析方法には、分光法、クロマトグラフィー、重量測定法、比色測定法、および当該技術分野で知られている他の任意の化学分析方法を含めることができる。法廷手続きの観点で、証拠物件の保全を維持することができ28、プロセスの要件に応じて、試料を処分29または保存することができる。
【0011】
一実施形態では、ストリートドラッグは、粉末混合物、またはピルもしくは錠剤の形態で発見されることがある。一方または両方のタイプを分析するためのシステムおよび方法が提供される。現代の問題は、オキシコドンの偽造錠剤である。これらの錠剤には、フェンタニル誘導体、時にはヘロインのような他の麻薬、アセトアミノフェン、および他の不活性物質が含まれている。一般的に、フェンタニルの濃度は1重量%以下である。この濃度では、錠剤中の他の材料の存在が、これらの錠剤中のフェンタニルの直接分析の妨げとなる。図1のプロセスフローを参照すると、これらの偽造オキシコドン錠剤は、フェンタニル、フェンタニル誘導体、または他の麻薬の存在について分析できる。一例では、フェンタニル塩酸塩を含む偽造オキシコドン錠剤の抽出、濃縮、および析出手順を説明したが、同じ手順を、ヘロイン、コカイン、およびメスアンフェタミンを含む他のストリートドラッグを含むがこれに限らない、あらゆるタイプの粉末試料に使用することができる。
【0012】
例示的な方法では、錠剤やその他の分割されていない固形物を破砕、研磨、その他の処理をして、より効率的に溶解できる粉末を製造することができる。このステップは、ストリートドラッグが粉末または他の溶解可能な形態として遭遇した場合には、任意である。粉末の一部を採取し、溶剤(塩酸塩を分析する場合は塩基性の水性媒体など)に溶解させる。すべての材料が必ずしも水性媒体に溶けるわけではないが、塩酸塩は溶ける。次に、水性媒体を有機溶剤などの第一溶剤と混和しない第二溶剤で抽出する。使用可能な溶剤は多数ある。水より密度の高い溶剤、例えばクロロホルム(CHCl)は、いくつかの実施形態で使用されるが、必須ではない。一実施形態における水性溶剤および有機溶剤の体積は、典型的には約0.5mlである。クロロホルム溶剤は、フェンタニルを溶解した第一の水性溶剤媒体を含む容器に添加される。容器を激しく振って、可溶性物質を有機(クロロホルム)溶剤に抽出する。水相と有機相は分離させる。クロロホルムの場合、有機相は水相の下にある。クロロホルム抽出液の一部を、シリンジ、マイクロピペット、実験用スポイト、多孔質媒体などを用いてサンプリングする。サンプリングする液体の量は、使用する分析方法によって異なる。減衰全反射(ATR)を用いたフーリエ変換赤外(FTIR)分光法では、100μl未満の溶液が必要である。この溶液を基板(FTIRの場合はATR内部反射素子(IRE))に置く。溶剤を蒸発させ、抽出した残渣をセンサ表面に残す。この抽出残渣を分析し、フェンタニルの存在を確認する。通常、サンプリングされた錠剤、抽出液は、証拠品として包装され保管される。最後に、余分な化学物質やその他の機器は洗浄または廃棄される。
【0013】
あらかじめ濃縮され、抽出された試料の分析例を図2に示す。この例では、試料は、一般的な偽造オキシコドン錠剤組成物であるアセトアミノフェンと混合した1重量%の塩酸フェンタニル(HCl)からなっていた。フェンタニル遊離基を製造し、図1に示す方法に従って、有機相、この場合はクロロホルム(CHCl)中に抽出された24。100マイクロリットル(μl)未満の体積の、予め濃縮され単離された25サンプルアリコートを、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光計の減衰全反射(ATR)界面の表面に移し26、抽出されたフェンタニルの赤外線(IR)スペクトルを記録した31。フェンタニルの特定は、フェンタニル30の既知の試料のIRスペクトルと比較することによって決定される。この比較は、当該技術分野でよく知られているコンピュータ検索および比較方法を用いて自動化することができる。例示的なFT-IR分光分析が示されているが、液体-液体抽出法は、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、ラマン分光法、紫外線-可視(UV-Vis)分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法、原子分光法、比色分析、または重量分析など、多くの他の化学分析技術と併用することができるが、これらに限定されない。
【0014】
液体-液体抽出は上記で説明したが、わずかな変更により、抽出装置の画定された実施形態は、固体試料から目的の化学物質を直接抽出する、固体-液体抽出に使用することができる。固-液抽出では、単一の溶剤または混和性溶剤混合物を使用して、理想的には細かく分割されているかまたは粉末状である固体試料から、目的の化学物質を直接抽出する。溶剤は、水性または非水性であることができる。そのような例示的な装置の1つが、図3A~3Cに示されている。この実施形態は、図3A~3Cに示されるように、錠剤または分割されていない固体の破砕、粉末サンプリング、固-液抽出、および成形プラスチック袋容器での析出を統合する。この実施形態では、容器52は、性質上プラスチックであり得る可撓性で変形可能なチューブから形成される。
【0015】
図3Aは、試料を挿入する前の、受け取った状態の装置を示している。容器の端部は、取り外し可能なクランプ51で密閉されている。溶剤59は、取り外し可能なクランプ51によって容器52に密封されたバイアル又はアンプル1に予め充填されている。溶剤59は、水性であっても非水性であってもよい。漏斗55の形状に形成されている容器52の一端には、ニブ(nib:ペン先)50が封入されている。デシカント又は乾燥剤53は、ニブ50の上の漏斗55の端部に予め装填される。装置が受け取られるとき、容器52の両端は折り畳まれ、取り外し可能なクランプ51でクランプされ、予め充填されたバイアルまたはアンプル1を出荷用に密閉する。錠剤36を破砕したり、固体試料から粉末37を製造したりするために、別の乳棒43が設けられている。
【0016】
図3Bは、試料が挿入されたプラスチック製袋容器を示す。袋容器52に試料を入れる前に、漏斗55が配置されていない容器の上端のクランプ51が取り外される。錠剤または分割されていない試料36または粉末試料37が容器52に入れられ、取り外し可能なクランプ51で袋の上部を再密封する。乳棒43は、錠剤又は他の固体試料を可撓性容器壁を通して破砕し、密封された容器52内に粉末19を生成するために使用される。錠剤は、乳鉢の機能を提供する硬い表面上に袋を置きながら、袋の外側に力を加えることによって乳棒で砕かれる。両クランプが容器の端部を密閉している間、乳棒43は、溶剤59を含むバイアル1を破砕するために使用される。密封された容器は、化学分析のための化学試料の可溶部分を溶解させるために振盪または撹拌される。
【0017】
図3Cは、化学分析のための試料析出の準備ができたときのプラスチック袋容器を示している。破砕された粉末状試料の不溶性部分は、溶剤を収容するために使用されたガラスバイアルまたはアンプルの破砕片54とともに袋の中に残っている。バッグの底にある取り外し可能なクランプ51を取り外し、バッグをニブ50が下を向くようにする。抽出された化学物質を含む溶剤は、漏斗55内のバッグの底に層59を形成する。使用する溶剤が有機物である場合、漏斗内にはデシカントまたは乾燥剤53が予め装填されている。デシカント又は乾燥剤は、抽出物から残留水分を除去するために使用される。水性溶剤が使用される場合、デシカントまたは乾燥剤53は予め装填されない。溶剤59の相は、プレロードされたデシカントまたは乾燥剤53を通ってニブ50に流れるようにされる。デシカント又は乾燥剤53は、有機相から残留する水分を除去する。残留する水分は、化学分析の成功を妨げる可能性がある。無水有機相は、液体の流量を制御する多孔質材料であるニブ50を通過して流れるようにされる。ニブから流出した無水有機相の液滴は、化学分析装置26に移送され、化学分析27が行われる。析出後、取り外し可能なクランプ51を使用して、袋容器または容器52の底部を再密封することができる。試料、使用済み溶剤、および破砕されたバイアルは、証拠となる目的28のために保持するか、または廃棄することができる29。溶剤が水性である場合、デシカントまたは乾燥剤53を排除して同じ手順が使用される。
【0018】
一実施形態では、ある装置が、比較的少数のコンポーネントを使用して液液抽出プロセスを実行する統合ソリューションを、低コストで使い捨てのパッケージで提供し、実験室から離れた現場での抽出方法を可能にする。図4Aは、装置の1つの例示的な実施形態の成分を示している。この実施形態は、錠剤、分割されていない固体、分割された固体、または粉末をサンプリングするためにも役立つ抽出容器を利用する。抽出容器は、容器の上部を下部の予め装填された混合容器35に固定し密封するためにねじ込まれる取り外し可能なツイストキャップ32を有する。キャップの上部にはガスケット33が組み込まれており、出荷、抽出の達成、および抽出と析出の完了後の化学物質の保存または廃棄のために装置を密閉する。容器の底部の側面に図示される取り外し可能なプラグ39は、抽出に使用される溶剤を保持する。容器の底部には、化学物質の抽出に使用される少なくとも2つの非混和性溶剤、この例では水溶液40および有機液41が予め充填されている。容器の底部と共に作用する容器キャップ32に組み込まれているのは、ピルまたは錠剤破砕機43であり、上部32と下部35の部分は、乳棒43と乳鉢44として作用する。容器32の上部が取り外されている間、錠剤36、またはその一部が、容器35の底部の円錐形レセプタクル、試料室34に置かれる。錠剤の破砕及び粉砕並びに粉末試料の製造を行うために、容器キャップ32は、ガスケット33に対して密封されるまで、ネジ山に沿って指の圧力を用いて回転される19。液体を含む容器の上部には、乳棒43がある。乳鉢44は、錠剤が粉砕されるにつれて、粉末試料が液体チャンバ内に落下することを可能にする穴38を有する。代替実施態様では、乳鉢の底はおろし金(例えば、金属製おろし金)とすることができる。この実施態様では、微粒子試料は、おろし金の穴を通って落下する。粉末または微粒子は、容器内の液体40、41の中に落下する21。容器のキャップ32は、ガスケット33で固定され、密閉される。
【0019】
図4Bは、試料を有する固定され密封された容器を示している。この例では、容器は、固体材料が水性媒体41に溶解するように、1分間など、静置することができる21。次に、密閉された容器を約30秒間激しく振盪させる23。容器はさらに1分間など放置され、水性層と有機層が分離する24。試料がHCl塩類を含むストリートドラッグで、水性媒体が塩基性である場合、麻薬は塩基形態に変換され、塩基形態の溶解特性により有機相に優先的に分配される。試料の他の成分、例えばカッティングエージェントは、有機相にほとんど溶解しないことがあり、水相に残留する。
【0020】
図4Cは、抽出容器へのディスペンサの挿入を示す図である。抽出容器が密閉されている間、水平な表面上で、オリフィスプラグ39が取り外される。オリフィスプラグ39が取り外されたオリフィスに、プラスチック製の使い捨ての実験用ピペットディスペンサ42が挿入される。ピペットの先端は、容器壁に対して密閉される。シリンジやスポイトを含む他のディスペンサを使用することもできる。本実施形態では、有機層は、有機溶剤41が水性溶剤40よりも密度が高く、有機溶剤41が容器の底にある場合を例示している。他のケースでは、有機層41は水性層40よりも密度が低く、例えばヘキサンであり、有機相41は水性相40の上にあることになる。この後者の場合、この実施形態に軽微な変更点であり、上層と一致するようにオリフィスとオリフィスプラグ39が配置される。すべての場合において、ディスペンサピペット42は、容器から目的の相を引き出すために使用されるであろう。
【0021】
図4Dは、抽出容器の側面へのディスペンサ42の挿入と、有機層41から試料アリコートを引き出すための容器の位置決めを示している25。有機層の一部は分析のためにサンプリングされる。有機層からの液体は、ディスペンサピペット42を使用して引き出される。ピペットが挿入され、容器壁に対して密閉された状態で、密封容器は、図4Dに示されるように、オリフィスが下を向くように配向される。この向きでは、より密度の高い層41がピペットチップに最も近接している。底部層の一部は、容器からディスペンサピペット42に引き出される。その後、容器は水平な表面に置かれ、ピペットは引き抜かれ、オリフィスはオリフィスプラグ39で再び密封される。この装置は、ピペットまたは他のサンプリング装置をサンプリングされる層40、41に合わせるのを助けるように適合されたストップまたは他の装置を含むこともできる。
【0022】
ピペットに含まれる溶液は、溶質を分析するための手法に導入される26。そのような方法の1つは、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)である。この場合、1滴または2滴に相当する100μl未満の液体が、ATR試料インターフェースのダイヤモンド内部反射素子(IRE)上に置かれる26。溶剤は蒸発し、分析対象物はダイヤモンド表面上に残り、分析が行われる27。別の方法として、表面増強ラマン分光法(SERS)がある。さまざまなSERS基板が知られている。数滴の液体をSERS基板に付着させ、ラマン分光分析を行う26。湿式化学分析も実施されることがある。これらのアッセイは、典型的には比色法である。数滴の有機液体を試薬に添加し26、色の変化で目的の化学物質の存在を示す27。これらの抽出液の分析に使用できる他の方法には、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、核磁気共鳴(NMR)分光法、紫外線可視(UV-VIS)分光法、または比色分析または重量分析がある。
【0023】
図5A~5Bは、抽出装置によって可能となる錠剤粉砕、粉末製造、溶解、抽出、試料配置の統合的方法を示す図である。この実施形態では、2つのシナリオが存在する。図5Aは、試料が溶解を促進するために微粒子への小型化を必要とする状況を示す図である。錠剤またはそうでなければ分割されていない固体試料が、装置に入れられる32。乳棒43または他の手段を用いて、固体材料を粉砕または摩滅させ、微粒子または粉末を生成する33。粉末や微粒子に含まれる目的の化学物質を溶剤に溶かす34。目的の化学物質は溶剤に抽出され35、最後に溶液のアリコートが分析装置または方法に入れられる36。図5Bは、粉末または微粒子の試料を直接装置に挿入する場合を示している37。粉末または微粒子に含まれる目的の化学物質は、溶剤に溶かされる34。目的の化学物質は、溶剤に抽出され35、最後に溶液のアリコートが分析装置または方法に入れられる36。
【0024】
抽出装置の他の実施形態も使用することができる。そのような例の1つが、図6に示されている。錠剤破砕19、粉末サンプリング20、および抽出25をディスペンサに組み込むことは、この実施形態45、デュアルポートシリンジ機構において想定されることである。シリンジ機構には、抽出された試料が投与されるまで、溶剤40、41が予め充填され、ストッパ48で密閉されている。錠剤破砕機、粉末サンプラー機構は、試料室34、破砕機ハンドル47、乳棒43、乳鉢44、および粉末試料37が液体40、41に輸送することを可能にする穴またはスクリーン38を含む。また、錠剤破砕機は、粉末試料37を導入するためにも使用される。本実施形態では、粉末試料はシュート47を介して液相に導入される21。シリンジアセンブリ45は、撹拌され23、目的の化学物質が水相40と有機相41の間で分配されるまで沈降させる24。抽出は、シリンジディスペンサ45の中で行われる。シリンジからの液滴は、シリンジプランジャ46を押し下げることによって、より密度の高い溶剤41のアリコート液滴を排出し、目的の化学物質を分析手段に導入する26。
【0025】
別の実施形態は、図7A~7Cに示されるように、錠剤破砕、粉末サンプリング、液-液抽出、および析出を、形成されたプラスチック袋容器に統合する。この実施形態では、容器52は、性質上プラスチックであり得る可撓性で変形可能なチューブから形成される。
【0026】
図7Aは、試料を挿入する前の、受け取った状態の装置を示している。容器の端部は、取り外し可能なクランプ51で密封されている。非混和性溶剤40、41は、取り外し可能なクランプ51によって容器52内に密封されたバイアル又はアンプル1、2に予め充填されている。容器52の一端には、漏斗55の形状に形成されたニブ50が封入されている。デシカント又は乾燥剤53は、ニブ50の上の漏斗55の端部に予め装填される。装置が受け取られると、容器52の両端が折り畳まれ、取り外し可能なクランプ51でクランプされ、予め充填されたバイアル又はアンプル1、2を出荷のために密閉する。錠剤又は分割されていない固体36を破砕し、又は固体試料から粉末37を製造するために、別の乳棒43が提供される。
【0027】
図7Bは、試料が挿入されたプラスチック袋容器を示す。袋容器52に試料を入れる前に、漏斗55が配置されていない容器の上端のクランプ51が取り外される。錠剤36または粉末試料37が容器52に入れられ、取り外し可能なクランプ51で袋の上部を再封する。乳棒43は、錠剤又は他の固体試料を可撓性容器壁を通して破砕し、密封された容器52内に粉末19を生成するために使用される。錠剤は、乳鉢44の機能を提供する硬い表面上に袋を置きながら、袋の外側に力を加えることによって乳棒で砕かれる。両クランプが容器の端部を密封している間、乳棒43は、水性溶剤40を含むバイアル1を破砕するために使用される。密封された容器は、化学分析のための化学試料の可溶部分を溶解するために、振盪または撹拌される。両クランプで容器の両端を密閉したまま、乳棒43で有機溶剤41の入ったバイアル瓶2を破砕する。密閉された容器を振盪または撹拌して、化学試料の可溶部分を有機溶剤に抽出する。
【0028】
図7Cは、化学分析用試料の析出の準備が整ったときのプラスチック袋容器を示す図である。破砕された粉末状試料の不溶性部分は、溶剤を収容するために使用されたガラスバイアルまたはアンプルの破砕片54とともに袋の中に残っている。バッグの底にある取り外し可能なクランプ51を取り外す。バッグの底部にある漏斗55の中で、非混和性溶剤が層を形成する24。有機相は、予め装填されたデシカント又は乾燥剤53を通過してニブ50に流れるようにされる。デシカント又は乾燥剤は、有機相から残留する水分を除去する。残留する水分は、化学分析の成功を妨げる可能性がある。無水有機相は、液体の流量を制御する多孔質材料であるニブ50を通過して流れるようにされる。ニブから流出した無水有機相の液滴は、化学分析装置に移送され26、化学分析が行われる27。析出後、取り外し可能なクランプ51を使用して、袋容器または容器52の底部を再密封することができる。試料、使用済み溶剤、および破砕されたバイアルは、証拠となる目的のために保持するか28、または廃棄することができる29。
【0029】
錠剤破砕、粉末サンプリング、液-液抽出、および析出を単一の容器に組み込んだ別の例示的な実施形態が、図8A~8Cに示されている。この実施形態では、容器は、一端が永久的に封止され、他端が封止キャップ57またはキャップディスペンサ58を取り付けるためにねじ込まれた、可撓性で変形可能なチューブ容器56を含む。
【0030】
図8Aは、試料を挿入する前の、受け取った状態の装置を示す。容器は、取り外し可能な封止キャップ57で封止されている。非混和性溶剤40、41は、取り外し可能な封止キャップ57によって容器56に封止されるバイアル又はアンプル1、2に予め充填されている。錠剤36を破砕したり、固体試料から粉末37を製造するために、別の乳棒43が提供される。ディスペンサ先端にデシカントまたは乾燥剤53が予め充填されているボトルキャップディスペンサ58が別個のものとして含まれる。
【0031】
図8Bは、試料が挿入されたチューブ容器56を示す。チューブ容器56に試料を入れる前に、封止キャップ57が取り外される。錠剤36又は粉末試料37がチューブ容器56に入れられ、封止キャップ57で再封止される。乳棒43は、錠剤又は他の固体試料を可撓性容器壁を通して破砕し、密封されたチューブ容器56内に粉末19を生成するために使用される。錠剤は、乳鉢44の機能を提供する硬い表面上に袋が静止しているときに、袋の外側に力を加えることによって乳棒で破砕される。封止キャップ57が容器を密封している間、乳棒43は、水性溶剤40を含むバイアル1を破砕するために使用される。密封された容器は、化学分析のための化学試料の可溶部分を溶解させるために、振盪または撹拌される。封止キャップ57がチューブ容器を密封している間、乳棒43は、有機溶剤41を含むバイアル2を破砕するために使用される。密閉された容器を振盪または撹拌して、化学試料の可溶分を有機溶剤41に抽出する。
【0032】
図8Cは、化学分析のための試料の析出の準備ができたときのチューブ容器を示している。破砕された粉末状試料の不溶性部分は、溶剤を収容するために使用されたガラスバイアルまたはアンプル1、2の破砕片54とともに、チューブ容器56に残っている。チューブ容器56には、ディスペンサ先端にデシカントまたは乾燥剤53を予め充填したボトルキャップディスペンサ58が取り付けられている。ボトルキャップディスペンサ58の底部には、非混和性の溶剤が層を形成する24。有機相は、予め装着されたデシカントまたは乾燥剤53を通過して、ボトルキャップディスペンサ58の先端部まで流れるようにする。デシカントまたは乾燥剤は、有機相から残留する水分を除去する。残留する水分は、化学分析の成功を妨げる可能性がある。無水有機相は、ボトルキャップディスペンサ58から流出させる。ボトルキャップディスペンサ58から流出した無水有機相の液滴は、化学分析装置に移送され26、化学分析が行われる27。析出後、ボトルキャップディスペンサ58を取り外し、取り外し可能な封止キャップ57を使用して、チューブ容器または容器56を再封止することが可能である。試料、使用済み溶剤、および破砕されたバイアルは、証拠となる目的のために保持するか28、または廃棄することができる29。
【0033】
錠剤破砕、粉末サンプリング、液-液抽出、および析出を単一の容器に組み込んだ別の例示的な実施形態が、図9A~9Cに示されている。この実施形態では、容器は、一端が永久的に封止され、他端がバルブディスペンサ4を取り付けるためにねじ切りされた、柔軟で変形可能なチューブ容器56で構成されている。
【0034】
図9Aは、試料を挿入する前の、受け取った状態の装置を示す。容器は、バルブディスペンサ4で密閉されている。非混和性溶剤40、41は、バルブディスペンサ4によって容器56に密封されたバイアル又はアンプル1、2に予め充填されている。錠剤36を破砕したり、固体試料から粉末37を製造するために、別途乳棒43が提供されている。
【0035】
図9Bは、バルブディスペンサ4の詳細を示す。バルブディスペンサ4は、バルブディスペンサキャップ5のねじ接続部を用いてチューブ容器56に接続し、チューブ容器56とバルブディスペンサ4との間に液密なシールが形成される。ホルダ12は、各種の密封状態を維持する役割を果たし、内部のバルブディスペンサ機構を収納し、バルブディスペンサの機能に関与している。バルブディスペンサには、あらかじめデシカントまたは乾燥剤53が充填されている。デシカントシール6は、バルブが作動するまで、液体が乾燥剤室に入らないようにする。チューブ・ディスペンサのシールは、シールガスケット7、容器シール16、リテーナ13、プランジャシール10によって行われる。バルブディスペンサの作動は、内部スプリング14、バルブスプリング位置クリップ8、バルブ位置停止ノッチ9、およびプランジャ11に依存する。
【0036】
図9Cは、試料が挿入されたチューブ容器56を示す。チューブ容器56に試料を入れる前に、バルブディスペンサ4は取り外される。錠剤36又は粉末試料37がチューブ容器56に入れられ、バルブディスペンサ4で再密封される。乳棒43は、錠剤又は他の固体試料を可撓性容器壁を通して破砕し、密閉されたチューブ容器56内に粉末19を生成するために使用される。錠剤は、袋が乳鉢44の機能を提供する硬い表面に置かれているときに、袋の外側に力を加えることによって乳棒で破砕される。バルブディスペンサ4が容器を密封している間、乳棒43は、水性溶剤40を含むバイアル1を破砕するために使用される。密封された容器は、化学分析のための化学試料の可溶部分を溶解させるために振盪または撹拌される。バルブディスペンサ4がチューブ容器を密閉している間、乳棒43は有機溶剤41を含むバイアル2を破砕するために使用される。密封された容器を振盪または撹拌して、化学試料の可溶部分を有機溶剤41に抽出する。
【0037】
図10A~10Cは、化学分析のための試料の析出の準備ができたときのバルブディスペンサ4の動作を示す。破砕された粉末状試料の不溶性部分は、溶剤を収容するために使用されたガラスバイアルまたはアンプル1、2の破砕片54とともにチューブ容器内に残る。デシカントまたは乾燥剤53をあらかじめ充填したバルブディスペンサ4は、チューブ容器56に取り付けられている。非混和性の溶剤は、チューブ容器56の中で層24を形成する。図10Aは、目的の抽出された化学物質を含む溶剤を投与する工程を開始する前のバルブディスペンサを示す。全てのシールとバルブは、バルブディスペンサ4の頭部でチューブ容器内に溶剤を保持するように配置される。図10Bの向きに示すように、ホルダ12は係合し、上方に付勢されている。バルブばね位置クリップ8は、バルブ位置停止ノッチ9に保持されるまで下方に移動する。ホルダ12は、バルブスプリング位置クリップ8がバルブ位置停止ノッチ9に保持されるまで、ホルダ12の外部に加えられる指圧を用いて係合されることができる。あるいは、バルブディスペンサアセンブリ4を表面に押し付けて、バルブスプリング位置クリップ8がバルブ位置停止ノッチ9に保持されるまで、ホルダ12に力を加えることもできる。これらのいずれの場合も、バルブばね位置クリップ8がバルブ位置停止ノッチ9に保持されると、乾燥剤シール6も上方に移動して、溶剤41が予め充填されたデシカントまたは乾燥剤53を通って流れるためのチャネルを露出する。図10Cに示すように、プランジャ11を表面に対して押し下げることによって、溶剤41がバルブディスペンサ4から放出される。プランジャ11を押し下げることによって、プランジャシール10を上方に移動させ、目的の化学物質を含む溶剤41がバルブディスペンサ4から出るためのチャネルを露出させる力が内部スプリング14に加えられる。
【0038】
様々な例において、固体試料から現場での液-液または固-液抽出を行うための、安価で含有量が多く、使いやすい装置が提供されている。重要な動機は、カッティングエージェントが質量の大部分を占める錠剤や粉末に含まれるフェンタニルの分析である。警察や危険物質レスポンダーは、実験装置や化学物質を利用することができない。いくつかの実施形態では、本装置は、現場での分析に必要な試料を準備するために必要なすべてのものを提供する。化学物質の量は少なく、廃棄または証拠保管のために収容することができる。
【0039】
以上、実施形態をある程度の特殊性をもって説明したが、当業者は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を加えることができる。例えば、固-液抽出または液-液抽出に関して様々な実施形態を説明したが、各実施形態は、溶剤の数および/または種類を変えることによって、それぞれ液-液抽出または固-液抽出に使用することができる。全ての方向性参照(例えば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、頂、底、上側、下側、垂直、水平、時計回り、反時計回り)は、読者の本発明の理解を助けるための識別目的にのみ使用され、特に本発明の位置、方向、または使用に関する制限を生じないものである。結合参照(例えば、付属、結合、接続など)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対移動との間の中間部材を含むことができる。そのため、結合に関する言及は、必ずしも2つの要素が直接的に接続され、互いに固定された関係にあることを示唆するものではない。上記の説明に含まれる、または添付図面に示される全ての事項は、例示的なものとしてのみ解釈され、限定的なものではないことが意図される。詳細または構造の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神から逸脱することなく行われ得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】