(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ラパマイシン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/439 20060101AFI20231124BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231124BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231124BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20231124BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231124BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231124BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K31/439
A61P9/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P17/00
A61K47/14
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/06
A61K47/44
A61K47/24
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530780
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 NZ2021050194
(87)【国際公開番号】W WO2022114964
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523187745
【氏名又は名称】エーエフティー ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アトキンソン、ハートレー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA07
4C076BB31
4C076CC11
4C076CC18
4C076CC26
4C076DD25Z
4C076DD30Z
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4C076DD39R
4C076DD41R
4C076DD43Z
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4C076DD54R
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4C076EE23
4C076EE55
4C076FF39
4C076FF57
4C076FF61
4C086AA01
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA36
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZB26
(57)【要約】
ラパマイシンは、公知の医学的治療物質である。ラパマイシンに関する問題は、ラパマイシンが非常に不安定であり、保存中に化学分解を起こしやすいことである。これにより、医薬品がその貯蔵寿命の間に「力価不足」になる可能性がある。少なくとも何らかの方法でこれに対処することが本発明の目的である。本発明は、活性成分としてのラパマイシン;例えばモノラウリン酸グリセリルとしてのモノラウリン及び例えばモノミリスチン酸グリセリルとしてのモノミリスチン;並びに溶媒としての水を含む、局所治療用組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所治療用組成物であって、
a)活性成分としてのラパマイシン;
b)以下を含むビヒクル:
○モノラウリン、例えばモノラウリン酸グリセリルとして;及び
○モノミリスチン、例えばモノミリスチン酸グリセリルとして;並びに
c)溶媒としての水
を含む組成物。
【請求項2】
前記ラパマイシンが0.5~5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラパマイシンが約0.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ラパマイシンが約1.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ラパマイシンが約5.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
血管線維腫を治療するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
顔面血管線維腫を治療するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
皮膚血管病変を治療するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ポートワイン母斑を治療するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ポートワイン母斑のレーザー処置後にポートワイン母斑を治療するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記モノラウリンが、モノラウラート(例えばモノラウリン酸グリセロール)の1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記モノラウリンが、約7~28重量%又は約5重量%~10重量%、又は約7重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記モノミリスチンが、モノミリスタート、例えばモノミリスチン酸グリセリルの1つ以上を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記モノミリスチン、例えばモノミリスチン酸グリセリルが、約7重量%~28重量%又は約15重量%~25重量%、又は約21重量%の量で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
a)5重量%~9重量%のモノラウリン+19重量%~23重量%のモノミリスチン;又は
b)12重量%~16重量%のモノラウリン+12~16重量%のモノミリスチン
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
a)約7重量%のモノラウリン+約21重量%のモノミリスチン;又は
b)約14重量%のモノラウリン+約14重量%のモノミリスチン
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ラパマイシンが約1重量%の量で存在する、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
保水剤を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記保水剤がステアリン酸ポリオキシエチレンを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
軟化剤を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記軟化剤が、プロピレングリコール、ペトロラタム、ラノリン、鉱油、グリセリン、レシチン及びソルビトールのうちの1つ以上を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
緩衝剤を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記緩衝剤が、無水クエン酸、重炭酸ナトリウム及びトリエタノールアミンのうちの1つ以上を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
金属イオン封鎖剤を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記金属イオン封鎖剤が、エデト酸二ナトリウム、クエン酸及びEDTA四ナトリウムのうちの1つ以上を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
pH調整のための水酸化物を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
防腐剤を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記防腐剤が、ソルビン酸カリウム、ジアゾリジニル尿素、フェノキシエタノール及びヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウムのうちの1つ以上を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記水が58重量%~72重量%の量で存在する、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
a)0.5~5重量%のラパマイシン;
b)以下を含むビヒクル:
・7~28重量%のモノラウリン;及び
・7~28重量%のモノミリスチン;並びに
c)溶媒としての水
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
0.5~5重量%のラパマイシン、5重量%~9重量%のモノラウリン及び19重量%~23重量%のモノミリスチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
0.5~5重量%のラパマイシン、7重量%のモノラウリン及び21重量%のモノミリスチンを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
1重量%のラパマイシン、7重量%のモノラウリン及び21重量%のモノミリスチンを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
0.5~5重量%のラパマイシン、12重量%~16重量%のモノラウリン及び12重量%~16重量%のモノミリスチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
0.5~5重量%のラパマイシン、14重量%のモノラウリン及び14重量%のモノミリスチンを含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
1重量%のラパマイシン、14重量%のモノラウリン及び14重量%のモノミリスチンを含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
0.5~5重量%のラパマイシン、17.5重量%(±2重量%)のモノラウリン及び10.5重量%(±2重量%)のモノミリスチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
0.5~5重量%のラパマイシン、17.5重量%のモノラウリン及び10.5重量%のモノミリスチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
1重量%のラパマイシン、17.5重量%のモノラウリン及び10.5重量%のモノミリスチンを含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項40】
1重量%のラパマイシン、21重量%のモノラウリン及び7重量%のモノミリスチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記モノラウリンがモノラウリン酸グリセリルであり、前記モノミリスチンがモノミリスチン酸グリセリルである、請求項31~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
ヒトにおける血管線維腫、皮膚血管病変又はポートワイン母斑を治療するのに適するように製剤化された、請求項31~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
a)0.5~5重量%のラパマイシン;
b)以下を含むビヒクル:
・10~18重量%のモノラウリン;及び
・10~18重量%のモノミリスチン;並びに
c)溶媒としての水
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
以下の状態:
・血管線維腫(例えば顔面血管線維腫);
・皮膚血管病変;及び
・ポートワイン母斑(例えばポートワイン母斑のレーザー処置後)
の1つ以上を、請求項1~43のいずれか一項に記載の組成物の局所適用によって治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトに投与するためのラパマイシン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンは、1972年又はその頃にストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)の試料から単離された。この化合物は最初に抗真菌剤として開発され、その製造はAyerst McKenna&Harrisonの米国特許第3929992号に記載されている。ラパマイシンは以下の構造式を有する:
【化1】
【0003】
ラパマイシンに関する問題は、ラパマイシンが非常に不安定であり、保存中に化学分解を起こしやすいことである。これにより、医薬品がその貯蔵寿命の間に「力価不足」になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題に少なくとも何らかの方法で対処することが本発明の好ましい実施形態の目的である。これは好ましい実施形態に適用されるが、本発明の目的自体はそのように限定されないことを理解されたい。本発明の目的は、単に、一般の人々に有用な選択を提供することである。したがって、任意の好ましい実施形態の任意の目的、利点、又は利益は、より広く表現される任意の請求項に対する限定として「読み込まれる(read-in)」べきではない。
【0005】
定義
「含む(comprising)」という用語又はその派生語、例えば「含む(comprises)」は、特徴又は工程の組合せに関して本明細書で使用される場合、言及されていないさらなる特徴又は工程が存在するという選択肢を排除すると解釈されるべきではない。したがって、この用語は包括的であり、排他的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この項において、組成物又はその特徴への言及は、組成物についての特定の1つ又は複数の選択肢のみが言及されていることが明らかにならない限り、組成物に与えられる選択肢のいずれかを意味する。
【0007】
本発明の一態様によれば、局所治療用組成物であって、
・活性成分としてのラパマイシン;
・以下を含むビヒクル:
○モノラウリン、例えばモノラウリン酸グリセリルとして;及び
○モノミリスチン、例えばモノミリスチン酸グリセリルとして;並びに
・溶媒としての水
を含む組成物が提供される。
【0008】
任意で、ラパマイシンは0.5~5重量%の量で存在する。
【0009】
任意で、ラパマイシンは約0.5重量%の量で存在する。
【0010】
任意で、ラパマイシンは約1.0重量%の量で存在する。
【0011】
任意で、ラパマイシンは約5.0重量%の量で存在する。
【0012】
任意で、組成物は血管線維腫を治療するためのものである。
【0013】
任意で、組成物は顔面血管線維腫を治療するためのものである。
【0014】
任意で、組成物は皮膚血管病変を治療するためのものである。
【0015】
任意で、組成物はポートワイン母斑を治療するためのものである。
【0016】
任意で、組成物は、ポートワイン母斑のレーザー処置後にポートワイン母斑を治療するためのものである。
【0017】
モノラウリン
任意で、モノラウリンは、モノラウラートの1つ以上(例えばモノラウリン酸グリセロール)を含む。
【0018】
任意で、モノラウリンは、約7~28重量%又は約5重量%~10重量%、好ましくは約7重量%の量で存在する。
【0019】
モノミリスチン
任意で、モノミリスチンは、モノミリスタートの1つ以上、例えばモノミリスチン酸グリセリルを含む。
【0020】
任意で、モノミリスチン、例えばモノミリスチン酸グリセリルは、約7重量%~28重量%又は約15重量%~25重量%、好ましくは約21重量%の量で存在する。
【0021】
モノラウリンとモノミリスチンの組合せ量
任意で、組成物は、
a)5重量%~9重量%のモノラウリン+19重量%~23重量%のモノミリスチン;
b)26重量%~30重量%のモノラウリン+0重量%~2重量%のモノミリスチン;
c)0重量%~2重量%のモノラウリン+26~30重量%のモノミリスチン;
d)12重量%~16重量%のモノラウリン+12~16重量%のモノミリスチン
を含むものであり、任意で、組成物は、
a)約7重量%のモノラウリン+約21重量%のモノミリスチン;
b)約28重量%モノラウリン+約0重量%のモノミリスチン;
c)約0重量%+約28重量%のモノミリスチン;
d)約14重量%のモノラウリン+約14重量%のモノミリスチン
を含むものである。
【0022】
上記a)~d)の各セットで示される組合せ量のそれぞれについて、ラパマイシンは、任意で約1重量%の量で存在する。
【0023】
本発明の第1の言及された態様についてのいくつかの優先事項
好ましくは、組成物は、0.5~5重量%のラパマイシン、5重量%~9重量%のモノラウリン及び19重量%~23重量%のモノミリスチンを含む。
【0024】
好ましくは、組成物は、0.5~5重量%のラパマイシン、7重量%のモノラウリン及び21重量%のモノミリスチンを含む。
【0025】
好ましくは、組成物は、1重量%のラパマイシン、7重量%のモノラウリン及び21重量%のモノミリスチンを含む。
【0026】
好ましくは、組成物は、0.5~5重量%のラパマイシン、12重量%~16重量%のモノラウリン及び12重量%~16重量%のモノミリスチンを含む。
【0027】
好ましくは、組成物は、0.5~5重量%のラパマイシン、14%のモノラウリン及び14重量%のモノミリスチンを含む。
【0028】
好ましくは、組成物は、1重量%のラパマイシン、14%のモノラウリン及び14重量%のモノミリスチンを含む。
【0029】
好ましくは、組成物は、0.5~5重量%のラパマイシン、17.5重量%(±2重量%)のモノラウリン及び10.5重量%(±2重量%)のモノミリスチンを含む。
【0030】
好ましくは、組成物は、1重量%のラパマイシン、17.5重量%のモノラウリン及び10.5重量%のモノミリスチンを含む。
【0031】
好ましくは、組成物は、1重量%のラパマイシン、21重量%のモノラウリン及び7重量%のモノミリスチンを含む。
【0032】
好ましくは、モノラウリンはモノラウリン酸グリセリルであり、モノミリスチンはモノミリスチン酸グリセリルである。
【0033】
好ましくは、組成物は、ヒトにおける血管線維腫、皮膚血管病変又はポートワイン母斑を治療するのに適するように製剤化される。
【0034】
1つの好ましい選択肢では、組成物は、
a)0.5~5重量%のラパマイシン;
b)以下を含むビヒクル:
・7~28重量%のモノラウリン;及び
・7~28重量%のモノミリスチン;並びに
c)溶媒としての水
を含む。
【0035】
別の好ましい選択肢では、組成物は、
a)0.5~5重量%のラパマイシン;
b)以下を含むビヒクル:
・7~28重量%のモノラウリン;及び
・7~28重量%のモノミリスチン;並びに
c)溶媒としての水
を含む。
【0036】
別の好ましい選択肢では、組成物は、
a)0.5~5重量%のラパマイシン;
b)以下を含むビヒクル:
・10~18重量%のモノラウリン;及び
・10~18重量%のモノミリスチン;並びに
c)溶媒としての水
を含む。
【0037】
保水剤
任意で、組成物は、約1重量%の量で存在する保水剤化合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレンを含む。
【0038】
任意の他の保水剤、例えばヒアルロン酸を使用してもよい。
【0039】
軟化剤
任意で、組成物は、軟化剤、例えばプロピレングリコールを含む。好ましくは、軟化剤、例えばプロピレングリコールは、約2重量%の量で存在する。
【0040】
任意の他の軟化剤は、ペトロラタム、ラノリン、鉱油、グリセリン、レシチン及びソルビトールの1つ以上を含む。
【0041】
緩衝剤
任意で、組成物は、緩衝剤、例えば無水クエン酸を含む。好ましくは、緩衝剤、例えば無水クエン酸は、約2重量%の量で存在する。好ましくは、緩衝剤は、組成物のpHを3~5の範囲、より好ましくは3.5~4.5の範囲に維持する。
【0042】
任意の他の緩衝剤は、重炭酸ナトリウム及びトリエタノールアミンの1つ以上を含む。
【0043】
金属イオン封鎖剤
任意で、組成物は、金属イオン封鎖剤、例えばエデト酸二ナトリウムを含む。好ましくは、金属イオン封鎖剤、例えばエデト酸二ナトリウムは、約0.05重量%の量で存在する。
【0044】
任意の他の金属イオン封鎖剤は、クエン酸及びEDTA四ナトリウムの1つ以上を含む。
【0045】
pH調整剤
任意で、組成物は、pH調整のための水酸化物、例えば水酸化ナトリウムを含む。任意で、水酸化ナトリウムは約0.18重量%の量で存在する。
【0046】
防腐剤
任意で、組成物は、防腐剤、例えばソルビン酸カリウムを含む。好ましくは、防腐剤、例えばソルビン酸カリウムは、約0.2重量%の量で存在する。
【0047】
使用のための任意の他の防腐剤は、ジアゾリジニル尿素、フェノキシエタノール及びヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウムの1つ以上を含む。
【0048】
水
任意で、水は約58重量%~72重量%の量で存在する。
【0049】
任意で、組成物は、ラパマイシンが不溶解粒子又は懸濁粒子の複数の層の形態であり、各層が実質的にビヒクルの層の間に位置するように形成された、上記の組合せのいずれかによるものである。好ましくは、粒子は、1~100μmの範囲のサイズを有する。
【0050】
別の態様によれば、本発明は、血管線維腫の局所治療用組成物の製造における、上記記載の1つ以上の成分の使用を含む。
【0051】
さらなる態様によれば、本発明は、上記記載の1つ以上による組成物でヒト血管線維腫を治療する方法を含む。
【0052】
本発明の別の態様によれば、上記記載のいずれかによる組成物をヒトに投与する工程を含む、以下の状態の1つ以上を治療するための方法が提供される:
・顔面血管線維腫;
・皮膚血管病変;及び
・ポートワイン母斑(例えばポートワイン母斑のレーザー処置後)。
【0053】
任意で、組成物はヒトに局所投与される。
【0054】
任意で、組成物は、ヒトの真皮に遭遇するようにヒトに投与される。
【0055】
任意で、組成物は、その人によって自己投与されるか、又は別の人によってその人に投与される。
【0056】
任意で、組成物はスクイーズチューブに含まれ、スクイーズチューブから投与される。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物又は方法は、それぞれの場合に記載される特徴又は工程からなるか、又は本質的にそれらからなることを除いて、上記のように記載される。
【0058】
さらなる態様によれば、本発明は、上記の方法について言及した状態のいずれかを治療する際に使用するための上記の組成物の調製において、
・活性成分としてのラパマイシン;
・以下を含むビヒクル:
○モノラウリン、例えばモノラウリン酸グリセリルとして;及び
○モノミリスチン、例えばモノミリスチン酸グリセリルとして;並びに
・溶媒としての水
の使用を含む(又は前記使用からなる、又は本質的に前記使用からなる)。任意で、組成物は、上記の選択肢又は優先事項のいずれかに従う。
【0059】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を、以下の画像を参照することによって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、局所適用のための1%ラパマイシン組成物の粒径分析から得られた結果を示す。
【
図2】
図2は、同じ1%組成物中のラパマイシン粒子の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
製剤例1及び2
本発明の2つの好ましい実施形態、すなわち製剤1及び製剤2は、ヒト血管線維腫、例えば顔面血管線維腫又は皮膚血管病変の局所治療用である。製剤は、例えばレーザー処置後に、ポートワイン母斑を治療するために使用され得る。それらは実質的に以下のように構成される-
【表1】
【0062】
製剤1及び2を含む本発明による組成物は、以下の方法に従って製造し得る。
【0063】
水相プレブレンドの製造
水相プレブレンドを以下のように調製する:
・ラパマイシンとプロピレングリコールを合わせ、ボルテックス混合する;
・継続的にボルテックス混合しながら水を添加する;
・次いで、ブレンドを70℃(±5℃)に加熱する;
・クエン酸、EDTA二ナトリウム及びソルビン酸カリウムを、溶解するまでボルテックス混合しながら添加する;
・次いで、混合物の温度を50℃に調節する;並びに
・ステアリン酸ポリオキシエチレン(100)を添加する。
【0064】
油相プレブレンドの製造油相プレブレンドを以下のように調製する:
・モノラウリン酸グリセリルとモノステアリン酸グリセリルを、低速ボルテックス混合及び70℃(±5℃)に加熱しながら合わせる。
【0065】
最終ブレンド
両方とも70℃(±5℃)の水相と油相のプレブレンドを合わせ、均質になるまで十分に混合する。次いで、混合物を1℃/分の速度でゆっくり冷却し、滑らかな白色及び虹色のクリームになるまでボルテックス混合する。クリームが32℃以下に冷却されたら、キャップにポリプロピレンスクリューが付いた30mLアルミニウムチューブに充填する。
【0066】
製剤例3及び4
製剤3及び4を、製剤1及び2について記載したのと同じ目的及び同じ方法で製造した。それらは以下の通りである-
【表2】
【0067】
製剤1~4の安定性試験
製剤1~4が室温、すなわち25℃(±2℃)及び相対湿度60%(±5%)での保存において安定であるかどうかを判定するために試験を行った。試験の結果は以下の表に示す通りである。各々の場合に、T0は0ヶ月での試験結果を指し、T1は1ヶ月での試験結果、T3は3ヶ月での試験結果を指し、以下同様である。いずれの場合も、試験値の「仕様」への言及は、特許権者の好ましい閾値に関する。
【表3-1】
【表3-2】
【表4】
【表5】
【0068】
試験は、製剤1、2及び4が室温で安定なままであることを示した。これらの結果は、特に現在の市販製品が有意に早く安定性を喪失すると考えられる場合、注目すべきものであった。例えば、Nobelpharmaは、Rapalimus(商標)の商標で0.2重量%ラパマイシンゲル製剤を日本市場に供給している。これは、12ヶ月間だけ、冷蔵した場合にのみ安定性を有する。
【0069】
さらなる例では、0.1重量%ラパマイシンクリームの形態の製剤を米国市場から調達し、試験して、以下のように室温で不安定であることも分かった:
【表6】
【0070】
驚くべきことに、製剤3(0.1%ラパマイシン)は不安定であることが分かった。12ヶ月及び18ヶ月間の保存後に、ラパマイシンは、それぞれラベル表示量のわずか79.3%及び67.9%まで分解していた。比較すると、0.5%~5%というより高い力価は、予想外に優れた結果をもたらした。より高い力価についてのより良好な結果は、説明が困難であり、驚くべき相乗効果に起因するようである。
【0071】
製剤例5~11
以下のさらなる製剤を、製剤1~4について上に記載したのと同じ方法で同じ治療目的のために調製した。
【表7】
【0072】
これらを、25℃(±2℃)の室温及び相対湿度60%(±5%)で6ヶ月間にわたって保存安定性試験に供した。
【0073】
試験結果は以下の表に示す通りであった。各々の場合に、T値は試料がいつ試験されたかを示し、例えば、T0は0ヶ月での試験、T1は1ヶ月での試験を示し、以下同様である。%数値は、各試験時点で残存していたラベル表示量1重量%のラパマイシンの割合を示す。ラパマイシンがより低い場合、これは、化合物が分解反応の対象であったことを示す。
【表8】
【0074】
製剤5~11もまた、過剰な含水量を発生したかどうかを調べるために各期間に再試験した。試料は、62~72重量%の範囲を満たす場合に合格とみなした。結果は以下の通りであった-
【表9】
【表10】
【0075】
製剤が有用であるためには、ラパマイシン含量は元の量の90%を下回るべきではなく、これは、活性成分の効力の10%の喪失を表し、活性成分の加水分解/酸化に起因して製剤が安定でないことと一致するためである。
【0076】
含水量に関して、各組成物は水中油型製品であるため、存在する水の量は、安定した均質な製剤を維持することに関連する。許容限界外の含水量は、製剤安定性の欠如又は喪失を示す。皮膚吸収は、フランツセル拡散装置を使用して測定した。好ましい製剤1及び2の試験は、有効なマスバランス回復を伴って、ヒト皮膚モデルにおける吸収及び製剤3よりも高い浸透性プロファイルを示した。より具体的には、フランツセルを使用して、5%ウシ血清アルブミン、水中0.9%NaClへの健常ヒト皮膚を介した吸収を測定した。より高い力価の製剤である製剤1及び2のみが、ヒト皮膚にわたる吸収及び浸透の許容基準を満たした。製剤3はこの試験に不合格であった。製剤3のこの不合格は、試験が新たに作製された材料を用いて行われたため、安定性とは無関係であった。皮膚の吸収及び浸透の差は驚くべきものであった。
【0077】
図1及び
図2は、製剤2として上記で特定された1%クリームのラパマイシン活性成分の特徴を示す。情報は、Malvern Morphologi GS3画像分析器を使用して製剤を分析することによって得た。これは、実質的に、ラパマイシン粒子の3D形状特徴を検出するために製剤を走査した自動顕微鏡である。
【0078】
図1を参照すると、CE直径(「円相当直径」)値は、数加重ベースでの粒径を表す。言い換えると、これは、粒子を最も近い適用可能な円に変換された2次元形状として表し、次いで、その直径が計算される。示されている特定の表記を参照すると、D[n,0.10](μm):3.17は、粒子の10%が粒子ベースで3.17μm以下であることを意味する;D[n,0.16](μm):は、16%が3.83μmより小さいことを意味する;D[n,0.50](μm):は、50%が粒子数ベースで8.33μmより小さいことを意味する、などである。
【0079】
図2を参照すると、画像は、製剤2中のラパマイシン粒子の形状及び相対サイズを表す。
【0080】
図1及び
図2は、ラパマイシンが組成物の残りの部分に溶解せず、むしろ担体又はビヒクル成分に懸濁していることを示す。
【0081】
開示に関して、本明細書は、本明細書で開示される他の項目、特徴又は工程のいずれか1つ以上と組み合わせて、いずれの場合もそのような組合せが特許請求されているかどうかにかかわらず、本明細書で言及される各項目、特徴又は工程をここに開示する。
【0082】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を例として説明してきたが、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく修正及び改良を行うことができることを理解されたい。
【国際調査報告】