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特表2023-550482質量分析計で使用するための複数のイオン化体積を備えたイオン源アセンブリ
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  • 特表-質量分析計で使用するための複数のイオン化体積を備えたイオン源アセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】質量分析計で使用するための複数のイオン化体積を備えたイオン源アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/14 20060101AFI20231124BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20231124BHJP
   H01J 27/20 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01J49/14 700
H01J49/00 310
H01J27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530836
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021060542
(87)【国際公開番号】W WO2022115440
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/117,708
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/357,348
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520435429
【氏名又は名称】インフィコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴォレロ マイケル エフ.
(57)【要約】
質量分析計で使用するためのイオン源アセンブリは、第1のイオン化体積を画定する第1のアノードと、第1のアノードに近接して配置され、第1のアノードを通過して第1のイオン化体積に入る電子を生成するように構成される第1の電子源とを備える。イオン源アセンブリは、第2のイオン化体積を画定する第2のアノードと、第2のアノードに近接して配置され、第2のアノードを通過して第2のイオン化体積に入る電子を生成するように構成される第2の電子源とをさらに備える。少なくとも1つの光学素子が、第1のイオン化体積に近接して配置され、アパーチャを画定する。第1のアノードおよび第2のアノードならびに第1のイオン化体積および第2のイオン化体積は、質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、第1のアノードは、第2のアノードとアパーチャとの間に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計で使用するためのイオン源アセンブリであって、前記イオン源アセンブリは、
第1のイオン化体積を画定する第1のアノードと、
前記第1のアノードに近接して配置され、前記第1のアノードを通過して前記第1のイオン化体積に入る電子を生成するように構成される第1の電子源と、
第2のイオン化体積を画定する第2のアノードと、
前記第2のアノードに近接して配置され、前記第2のアノードを通過して前記第2のイオン化体積に入る電子を生成するように構成される第2の電子源と、
前記第1のイオン化体積に近接し、イオン源からのイオン出口を画定する少なくとも1つの光学素子と、
を備え、
前記第1のアノードおよび前記第2のアノードならびに前記第1のイオン化体積および前記第2のイオン化体積が、前記質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、前記第1のアノードが、前記第2のアノードと前記イオン出口との間に配置される、イオン源アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の電子源が第1のフィラメントを備え、前記第2の電子源が第2のフィラメントを備え、前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントが、電子を放出するために加熱されるように構成される、請求項1に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項3】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントが、ほぼ同一の寸法から構成される、請求項2に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項4】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントが、異なる寸法から構成される、請求項2に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項5】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントが、同じ材料から構成される、請求項2に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項6】
前記第1のフィラメントが、前記第2のフィラメントと異なる材料から構成される、請求項2に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項7】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントのうちの一方が、タングステン合金から構成される、請求項6に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項8】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントのうちの一方が、酸化物でコーティングされたイリジウムから構成される、請求項7に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項9】
前記第1のイオン化体積と前記第2のイオン化体積との間に配置された導電性エンドキャップをさらに備え、前記導電性エンドキャップが、前記第2のイオン化体積から前記第1のイオン化体積までイオンを通過させることができる、請求項1に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項10】
前記導電性エンドキャップが平面である、請求項9に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項11】
前記導電性エンドキャップが、前記第1のイオン化体積に向かう方向に凹面の形状を備える、請求項9に記載のイオン源アセンブリ。
【請求項12】
質量分析計でイオン源を操作する方法であって、前記方法が、
電流を第1の電子源に方向付けるステップと、
前記第1の電子源を加熱して電子を放出するステップと、
前記第1の電子源から放出された前記電子を第1のアノードを通して第1のイオン化体積に方向付けるステップと、
前記電子を使用して、前記第1のイオン化体積にイオンを生成するステップと、
前記電流を前記第1の電子源から第2の電子源へ転向させるステップと、
前記第2の電子源を加熱して電子を放出するステップと、
前記第2の電子源から放出された前記電子を第2のアノードを通して第2のイオン化体積に方向付けるステップと、
前記電子を使用して、前記第2のイオン化体積にイオンを生成するステップと、
前記第1のアノードに印加された電位を使用して前記第2のイオン化体積からイオン出口までイオンを導くステップと
を含み、
前記第1のアノード、前記第2のアノード、前記第1のイオン化体積、および前記第2のイオン化体積が、前記質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、前記第1のアノードが、前記第2のアノードと前記イオン出口との間に配置される、方法。
【請求項13】
前記第2の電子源が電子を放出し、イオンが前記第2のイオン化体積で生成される場合、前記第1の電子源の電位を前記第1のアノードの電位と等しく設定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電流を前記第1の電子源から前記第2の電子源へ転向させるステップが、前記第1の電子源の故障後に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ガスサンプルを分析するために質量分析計でイオン源を操作する方法であって、前記方法が、
イオン源アセンブリを提供するステップであって、前記イオン源アセンブリが、
第1のイオン化体積を画定する第1のアノードと、
第1の材料から構成され、前記第1のアノードを通して前記第1のイオン化体積に電子を放出するように構成される第1の電子源と、
第2のイオン化体積を画定する第2のアノードと、
第2の材料から構成され、前記第2のアノードを通して前記第2のイオン化体積に電子を放出するように構成される第2の電子源であって、前記第2の材料は、前記第1の材料と異なる材料であり、前記第1の材料と異なる化学的性質を備える、第2の電子源と、
イオン出口を画定する少なくとも1つのイオン光学素子と
を備える、ステップと、
前記ガスサンプルに対する前記第1の材料および前記第2の材料の耐性に基づいて前記ガスサンプルの分析のために前記第1の電子源および前記第2の電子源のうちの一方を操作するステップと
を含み、
前記第1のアノード、前記第2のアノード、前記第1のイオン化体積、および前記第2のイオン化体積が、前記質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、前記第1のアノードが、前記第2のアノードと前記イオン出口との間に配置される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月24日に出願された米国特許出願番号第17/357,348号、および2020年11月24日に出願された米国特許出願第63/117,708号に対して35U.S.C.§119の関連部分に基づいて優先権を主張する。上記の出願の各々はそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、複数のイオン化体積(ionization volume)を備え、各イオン化体積が別個の電子源(electron source)を含むイオン源アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析法は、サンプルの化学組成を決定するためにサンプル中のイオンの質量対電荷比を測定するために使用される一般的な分析手法である。一般に、質量分析法は、サンプルのイオン化、質量対電荷比に従ってイオンを分離すること、分離されたイオンを検出すること、および質量対電荷比の関数として検出されたイオンの信号強度を示すスペクトルとして結果を表示することを必要とする。サンプル、特にガス状サンプルのイオン化は、電子衝撃イオン化源、別名電子イオン化(EI)イオン源を使用して行われ得る。EIイオン源は電子源(source of electrons)を含み、この電子源は、電子を放出する温度まで加熱されるフィラメントであり得る。使用されるフィラメントは、コーティングされていないか、または金属酸化物でコーティングされた高融点金属から構成される細いワイヤであり得る。フィラメントの加熱は、フィラメントに電流を流すことによって抵抗的に行われ得る。フィラメントから熱電子的に(thermionically)放出された電子は、壁またはアノード(anode)を通って加速され、イオン化体積に入る。電子の移動は、制御ユニットによってフィラメントとアノードとの間に維持される電位差によって誘導される。アノードは、電子の一部の割合がアノードを通過してイオン化体積に入ることができる少なくとも1つの開口部を画定する。一般に、一定の電子放出電流がイオン化体積に入るように、フィラメントの温度および様々な電位を維持することが望ましい。電子を誘導するために、電子リペラ(electron repeller)などの追加の電極を含めることができる。イオン化体積の内部では、加速電子または高エネルギー電子の少なくとも一部が、イオン化体積にあるガスサンプルの分子と衝突する。電子は、ガス分子と衝突すると、ガス分子をイオン化し、および/または断片化してイオンを生成するように十分なエネルギーを有する。
【0004】
次いでこれらのイオンは、イオン源の一部であるイオン光学素子上に確立された他の電位によって質量フィルタへ加速され、誘導される。一部のイオン源はまた、イオン化体積の上流に配置されたイオンリペラ(ion repeller)を備える。イオンリペラは、イオン化体積で生成されたイオンの軌道の制御を支援するために特定の電位に設定され得る。イオンリペラは、平坦もしくは平面電極であってもよいか、または質量フィルタに向かう方向に凹面であってもよい。様々な質量対電荷比を有するイオンが質量フィルタに到達すると、それらは空間的または時間的に分離される。次いで、イオンはイオン検出器によって検出され、イオン検出器の出力から質量スペクトルが決定される。
【0005】
EIイオン源のフィラメントは有限の使用寿命がある。十分な数の電子を放出するために、フィラメントは、1500~2400Kの温度で動作しなければならない。これらの高温では、フィラメントワイヤ(および存在する場合はコーティング)が最終的に蒸発し、その結果、フィラメントの破損が生じる。フィラメントの破損は、高い動作温度で起こるフィラメントワイヤの結晶構造の変化の結果として発生する場合もある。さらに、フィラメントの電子放出面は、システム内のガスによって化学的に変化する場合があり、これにより電子放出面の仕事関数が増加する一方、電子放出面の電子放出効率が減少する。破損された、変形した、または化学的に「汚染された」フィラメントにより、ガスサンプルをイオン化するために利用可能な電子が存在しないか、または電子が不足している場合、質量分析計はもはや十分に機能しなくなる。したがって、質量分析計によって生成されたデータに基づいて監視および/または制御されているプロセスは、フィラメントを交換する機会が得られるまで停止するか、またはさもないと「ブラインドを実行(run blind)」しなければならない。フィラメントの交換は時間がかかり、不便なプロセスである。なぜなら、フィラメントはプロセス真空チャンバの内部に配置されることが多いので、この交換を行うためにプロセス真空チャンバを通気しなければならないからである。したがって、フィラメント交換の頻度を減らすことが望ましく、他のメンテナンス活動のためにプロセスチャンバがオフラインであると同時にフィラメントを交換できるように、前もってフィラメント交換をいつ行うかの予定を立てることができることがより好ましい。
【0006】
EIイオン源のこの欠点に対処するために一般的に採用されている方法の1つは、アノードの近くに配置され、第1のフィラメントが故障したときに動作することができる第2のフィラメントをイオン源に含めることである。2つのフィラメントは通常、互いのコピーであり、イオン源のイオン光軸に沿って延びる平面を中心に鏡映されている。このようにフィラメントを配置することは、どのフィラメントが使用されるかに関係なく、イオン化体積の同じ領域にイオンを形成できるようにすることで、質量分析計の一貫した性能を維持しようとするために行われる。これにより、電場がイオンを誘導して質量フィルタに首尾よく注入できる場所、および電場が感度に対する空間電荷の影響を克服するのに十分に高い場所でイオンが生成されることが保証される。しかしながら、このタイプのEIイオン源の欠点の1つは、一般にアノード付近で利用可能な空間が限られているため、2つのフィラメントの各々が1つのフィラメントしかない場合に使用されるフィラメントよりも短いことである。電子放出面から出る電子放出電流密度と、その表面の温度および仕事関数との関係は、温度の単調増加関数としてリチャードソン方程式によって表される。総電子放出電流は放出面の面積に依存するため、同じ総放出電流を得るためには、より短いフィラメントをより高い温度で動作させなければならない。したがって、連続して動作させた2つの短いフィラメントは、1つの長いフィラメントの2倍の寿命はない。実際に、2つの短いフィラメントを合わせた動作寿命は、「通常の」長さの単一フィラメントの動作寿命ほど長くない場合がある。さらに、より短いフィラメントは必然的に、より長いフィラメントよりも取り付け構造に対してより多くの熱を失う。この熱損失は、長い単一フィラメントと比較して、フィラメントの中心領域から取り付け点までのワイヤに沿った短い経路によって与えられる熱抵抗が低いためである。その結果として、総電子放出を必要なレベルに維持するために、フィラメントの最も熱い部分(中心近く)ではさらに高い温度が必要となり、フィラメントの動作寿命が短くなる。
【0007】
イオン源の2つの重要な特性は、感度(単位圧力あたりの許容速度で生成され、質量フィルタに注入されるイオンの数)および直線性(感度が圧力に依存しない程度)である。フィラメントの寿命を延ばそうとして、これらの特性を完全に無視することはできない。例えば、フィラメントの温度を下げることにより、フィラメントの寿命を延ばそうとして、放出電流および/または動作圧力を下げることができる。しかしながら、放出電流または動作圧力の低減は、感度および/またはイオン電流を犠牲にして行われる。
【0008】
これらは、質量分析計で現在使用されているイオン源に関連する欠点の一部にすぎない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
質量分析計で使用するためのイオン源アセンブリの実施形態は、第1のイオン化体積を画定する第1のアノードと、第1のアノードに近接して配置され、第1のアノードを通過して第1のイオン化体積に入る電子を生成するように構成される第1の電子源とを備える。イオン源アセンブリの実施形態は、第2のイオン化体積を画定する第2のアノードと、第2のアノードに近接して配置され、第2のアノードを通過して第2のイオン化体積に入る電子を生成するように構成される第2の電子源とをさらに備える。少なくとも1つの光学素子は、第1のイオン化体積に近接して配置され、イオン源からのイオン出口を画定する。第1のアノードおよび第2のアノードならびに第1のイオン化体積および第2のイオン化体積は、質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、第1のアノードは、第2のアノードとイオン出口との間に配置される。
【0010】
一実施形態では、第1の電子源は第1のフィラメントを備え、第2の電子源は第2のフィラメントを備え、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、電子を放出するために加熱されるように構成される。一実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、ほぼ同一の寸法から構成される。一実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、異なる寸法から構成される。一実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、同じ材料から構成される。一実施形態では、第1のフィラメントは、第2のフィラメントと異なる材料から構成される。一実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントのうちの一方は、タングステン合金から構成される。一実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントのうちの一方は、酸化物でコーティングされたイリジウムから構成される。一実施形態では、イオン源アセンブリは、第1のイオン化体積と第2のイオン化体積との間に配置された導電性エンドキャップをさらに備え、導電性エンドキャップは、第2のイオン化体積から第1のイオン化体積までイオンを通過させることができる。一実施形態では、導電性エンドキャップは平面である。一実施形態では、導電性エンドキャップは、第1のイオン化体積に向かう方向に凹面の形状を備える。
【0011】
質量分析計でイオン源を操作する方法の実施形態は、電流を第1の電子源に方向付けるステップと、第1の電子源を加熱して電子を放出するステップと、第1の電子源から放出された電子を第1のアノードを通して第1のイオン化体積に方向付けるステップと、電子を使用して、第1のイオン化体積にイオンを生成するステップとを含む。この方法は、電流を第1の電子源から第2の電子源へ転向させるステップと、第2の電子源を加熱して電子を放出するステップと、第2の電子源から放出された電子を第2のアノードを通して第2のイオン化体積に方向付けるステップと、電子を使用して、第2のイオン化体積にイオンを生成するステップとをさらに含む。イオンは、第1のアノードに印加された電位を使用して第2のイオン化体積からイオン出口まで導かれる。第1のアノード、第2のアノード、第1のイオン化体積、および第2のイオン化体積は、質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、第1のアノードは、第2のアノードとイオン出口との間に配置される。
【0012】
一実施形態では、質量分析計でイオン源を操作する方法は、第2の電子源が電子を放出し、イオンが第2のイオン化体積で生成される場合、第1の電子源の電位を第1のアノードの電位と等しく設定するステップをさらに含む。別の実施形態では、電流を第1の電子源から第2の電子源へ転向させるステップは、第1の電子源の故障後に行われる。
【0013】
ガスサンプルを分析するために質量分析計でイオン源を操作する方法の実施形態は、第1のイオン化体積を画定する第1のアノードと、第1の材料から構成され、第1のアノードを通して第1のイオン化体積に電子を放出するように構成される第1の電子源とを備えるイオン源アセンブリを提供するステップを含む。イオン源アセンブリは、第2のイオン化体積を画定する第2のアノードと、第2の材料から構成され、第2のアノードを通して第2のイオン化体積に電子を放出するように構成される第2の電子源とをさらに備える。第2の材料は、第1の材料とは異なり、第1の材料とは異なる化学的性質を備える。イオン源アセンブリは、イオン出口を画定する少なくとも1つのイオン光学素子をさらに備える。第1の電子源および第2の電子源のうちの一方は、ガスサンプルに対する第1の材料および第2の材料の耐性に基づくガスサンプルの分析のために操作される。第1のアノード、第2のアノード、第1のイオン化体積、および第2のイオン化体積は、質量分析計のイオン光軸に沿って配置され、第1のアノードは、第2のアノードとイオン出口との間に配置される。
【0014】
上記で簡潔に要約した本発明のより具体的な説明は、その一部が添付の図面に示されている実施形態を参照することによって得ることができる。しかしながら、添付の図面は本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本発明は他の同様に効果的な実施形態を許容し得るため、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意されたい。したがって、本発明の性質および目的をさらに理解するために、以下の詳細な説明を図面と併せて読むことにより参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】質量分析計における従来技術のイオン源の一実施形態の概略断面図を示す。
図2】質量分析計で使用するための従来技術のイオン源の一実施形態の斜視図を示す。
図3A】質量分析計で使用するための従来技術のイオン源の一実施形態の上面斜視図を示す。
図3B】質量分析計で使用するための従来技術のイオン源の一実施形態の側面斜視図を示す。
図4】質量分析計における本発明によるイオン源アセンブリの一実施形態の概略断面図を示す。
図5】本発明による質量分析計で使用するためのイオン源アセンブリの一実施形態の上面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は、複数のイオン化体積を備えたイオン源アセンブリの様々な実施形態に関する。本明細書に記載されるバージョンは、本明細書に詳述される特定の発明概念を具体化する例であることが理解されるであろう。この目的のために、当業者には、他の変形および修正が容易に明らかになるであろう。さらに、添付の図面に関して適切な基準枠を提供するために、この説明全体を通じて特定の用語が使用されている。「上部」、「下部」、「前方」、「後方」、「内部」、「外部」、「前部」、「後部」、「頂部」、「底部」、「内側」、「外側」、「第1」、「第2」などの用語は、具体的に示されている場合を除き、これらの概念を限定することを意図したものではない。本明細書で使用される「約」または「およそ」という用語は、特許請求または開示された値の80%~125%の範囲を指すことができる。図面に関しては、それらの目的は、複数のイオン化体積を備えるイオン源アセンブリの顕著な特徴を描くことであり、明確に縮尺どおりに提供されていない。
【0017】
図1は、電子イオン化(EI)イオン源101を有する従来技術の質量分析計100の一部の断面図を示す。EIイオン源101は、電子源102と、イオン化体積106を画定するか、または少なくとも部分的に取り囲むアノード105と、1つ以上の電子リペラ107と、1つ以上のイオンリペラ112とを備える。示されるように、電子源は、ある温度(1500~2400K)に加熱される細いワイヤなどのフィラメント102であり、その温度でフィラメント102は電子を放出する。フィラメント102は、金属酸化物104でコーティングされ得る高融点金属103から構成され得る。フィラメント102は、電子がフィラメント102から放出される温度にフィラメント102を加熱するために、電流がフィラメント102を通過できるようにするために電流源に接続され得る。示されるように、アノード105は、フィラメント102から間隔を置いて配置され、一般にフィラメント102とイオン化体積106との間に配置される。1つ以上の電子リペラ107などの追加の電極107が備えられ、フィラメント102から放出された電子を誘導するように構成され得る。示されるように、電子リペラ107は、フィラメント102が電子リペラ107とアノード105との間に位置するように、フィラメント102から半径方向外側に位置する。フィラメント102から熱電子的に放出された電子は、電子リペラ107によって誘導され、フィラメント102とイオン化体積106のアノード105との間に確立される電位差によって加速され得る。イオン源の構成要素に存在する電位は、制御ユニット(図示せず)または制御電子機器(図示せず)によって確立および維持される。これらの電位は、制御ユニット(図示せず)を介して調整することもできる。電子は、アノード105上に画定された開口部105a(図2)を通過し、イオン化体積106内に入り、そこで電子の少なくとも一部は、イオン化体積106内に存在するガスサンプルの分子と衝突する。ガス分子と衝突すると、電子はガス分子をイオン化および/または断片化してイオンを生成するような十分なエネルギーを有する。
【0018】
示されるように、イオン源101は、イオン出口を画定する1つ以上の光学素子108をさらに備え、そのイオン出口は、アパーチャ108aまたはグリッドであり得、イオン化体積106内で生成されたイオンを加速して、質量フィルタ109内に誘導するように作用する電位を確立するように構成される。質量フィルタ109は、様々な質量対電荷比のイオンを空間的または時間的に分離する。次いでイオンはイオン検出器110によって検出され、質量スペクトルがイオン検出器110の出力から決定される。一実施形態では、イオン検出器110は、イオン検出器110および/または質量スペクトルの出力が表示され得るインターフェース111と電気通信される。イオン源101の一部の実施形態では、イオンリペラ112がイオン化体積106の上流に配置され、生成されたイオンの軌道の制御を支援するために特定の電位に設定される。
【0019】
ここで図2を参照すると、図1のイオン源101の実施形態の斜視図が示されている。示されるように、単一のフィラメント102は、第1の端部から第2の端部までの長さで延びる。フィラメント102の第1の端部は第1の支持部材211aに接続され、それによって支持され、フィラメント102の第2の端部は第2の支持部材211bに接続され、それによって支持される。図3A~Bは、従来技術の二重フィラメントイオン源301の実施形態を示す。見ることができるように、図2の実施形態の単一の長いフィラメント102が、2つの短いフィラメント302a、302bに置き換えられている。第1のフィラメント302aは、第1の支持部材311aに接続され、それによって支持される第1の端部から第2の端部までの長さで延びる。第2のフィラメント302bは、第2の支持部材311bに接続され、それによって支持される第1の端部から第2の端部までの長さで延びる。第1のフィラメント302aおよび第2のフィラメント302bの両方の第2の端部は、第3または共通の支持部材311cに接続される。第1のフィラメント302aの長さおよび第2のフィラメント302bの長さは、合わせて、図2の実施形態の単一のフィラメント202の長さと近似し得る。第1のフィラメント302aおよび第2のフィラメント302bは、それらが互いの鏡像であるように垂直面Vに対して配置される。垂直面Vは、イオン源の光軸に沿って延びる。
【0020】
図4および図5は、質量分析計400のための本発明の複数のイオン化体積のイオン源アセンブリ401(「イオン源アセンブリ」)の実施形態を示す。複数のイオン化体積のイオン源アセンブリ401は、概して、少なくとも2つのイオン化体積を備える。示されるように、イオン源アセンブリ401は、第1のフィラメント402などの第1の電子源と、第1のイオン化体積406を画定するか、または少なくとも部分的に取り囲む第1のアノード405とを備える。イオン源アセンブリ401はさらに、第2のアノード415に近接して配置される第2のフィラメント412などの第2の電子源を備える。第2のフィラメント412は、第1のフィラメント402とほぼ同じ長さであってもよい。複数の支持部材511a~d(図5)は、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412に接続され、それらを支持するように構成される。2つのフィラメント402、412の各々は、支持部材511a~dの2つ以上によって支持され得る。第2のアノード415は、第2のイオン化体積416を少なくとも部分的に取り囲む。図5に示されるように、第1のアノード405および第2のアノード415は、第1のアノード405および第2のアノード415をそれぞれ横断する1つ以上の開口部405a、415aを画定することができる。第2のアノード415および第2のイオン化体積416は、イオン源アセンブリ401のイオン光軸Zに沿って、第1のアノード405および第1のイオン化体積406に対して上流に配置される。
【0021】
従来技術のフィラメントと同様に、イオン源アセンブリ401の第1のフィラメント402および第2のフィラメント412は、金属酸化物でコーティングされ得る高融点金属から構成され得る。第1のフィラメント402および第2のフィラメント412は、互いに同一であってもよいか、または互いに異なる長さであってもよく、互いに異なる材料から構成されてもよい。第1のフィラメント402および第2のフィラメント412を、電子が第1のフィラメント402および第2のフィラメント412の各々から放出される温度に加熱するために、電流を第1のフィラメント402および第2のフィラメント412に通過させることができるように第1のフィラメント402および第2のフィラメント412の各々は電流源に接続され得る。示されるように、第1のアノード405および第2のアノード415は、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412から間隔を置いて配置される。この構成では、第1のアノード405は、通常、第1のフィラメント402と第1のイオン化体積406との間に配置され、一方、第2のアノード415は、通常、第2のフィラメント412と第2のイオン化体積416との間に配置される。
【0022】
図4を参照すると、イオン源アセンブリは、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412から放出された電子を誘導するように作用する1つ以上の電子リペラ407をさらに備える。図5に示すように、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412が、電子リペラ407と、第1のアノード405および第2のアノード415との間に配置されるように、電子リペラ407は、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412から半径方向外側に配置される。したがって、第1のフィラメント402および/または第2のフィラメント412から熱電子的に放出された電子は、電子リペラ407によって誘導され、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412と、第1のアノード405および第2のアノード415との間に確立される電位差によって加速され得る。イオン源アセンブリ401は、イオン源アセンブリ401と電気通信し、イオン源アセンブリ401の構成要素上に存在する電位を確立し、維持するように構成される制御ユニット/制御電子機器450をさらに備えてもよい。これらの電位は、制御ユニット450を介して調整することもできる。第1のフィラメント402および第2のフィラメント412によって放出された電子は、それぞれ第1のアノード405および第2のアノード415上に画定された開口部405a、415aを通過し、第1のイオン化体積406および/または第2のイオン化体積416内に入る。第1のイオン化体積406および/または第2のイオン化体積416内の電子の少なくとも一部は、イオン化体積406、416内に存在するガスサンプルの分子と衝突する。電子は、ガス分子と衝突すると、ガス分子をイオン化し、および/または断片化してイオンを生成するように十分なエネルギーを有する。
【0023】
イオンは、各々が通路またはオリフィス408aを画定する1つ以上の光学素子408を通過し、様々な質量対電荷比のイオンを空間的または時間的に分離する質量フィルタ409内に入る。次いでイオンはイオン検出器410によって検出され、質量スペクトルがイオン検出器410の出力から決定される。一実施形態では、イオン検出器410は、イオン検出器410および/または質量スペクトルの出力が表示され得るインターフェースと電気通信する。一実施形態では、インターフェースは制御ユニット450の一部であってもよい。イオン源アセンブリ401は、圧力に対する良好なイオン電流直線性と同時に良好な感度を得ることができる、光軸(または垂直面V)に沿った位置に両方とも配置される2つの長いフィラメントを使用するため、イオン源の寿命を改善し、異なるフィラメント材料の使用を可能にする。
【0024】
例えば、第2のフィラメント402が動作しているとき、第1のアノード405が、第2のイオン化体積416内で生成されたイオンを光学素子408に輸送し、それによって質量フィルタ409内に入れるための抽出および集束光学素子として作用するように、第1のアノード405上の電位は制御ユニット450を介して調整することができる。第1のアノード405を抽出および集束光学素子として使用することによって、圧力に対するイオン源アセンブリ401の感度および直線性は、第2のフィラメント412が使用されているときに調整することができる。第2のフィラメント412が、光軸(垂直面V)に沿って質量フィルタ409からさらに遠く、単一のより長いアノードのより深くに位置する場合、このレベルの調整は不可能である。
【0025】
上述のように、一実施形態では、第2のフィラメント412は、第2のフィラメント412の長さとほぼ等しい長さを有する第1のフィラメント402の複製であり得、フィラメント交換機能の間の時間を2倍にすることができる。他の実施形態では、第2のフィラメント412は、第1のフィラメント402とは異なる長さであってもよく、および/または異なる材料から構成されてもよい。特定の実施形態では、第2のフィラメント412は、質量分析計の許容スペースを節約するために第1のフィラメント402より短くてもよい。この実施形態では、故障間の動作時間を必然的に2倍にするのではなく、次の予定されたメンテナンス時間まで機器の継続使用を可能にするために、より短い第2のフィラメント412が「ミニスペア」として作用し得る。
【0026】
別の実施形態では、各フィラメントの材料が、各サンプルの化学的性質に最適に適合するように選択される場合、異なるガスサンプルを連続的に分析または監視するためにイオン源アセンブリ401が質量分析計で使用され得るように、第2のフィラメント412は、第1のフィラメント402とは異なる材料から構成されてもよい。例えば、一方のフィラメントはタングステン合金から構成されてもよく、他方のフィラメントは酸化物でコーティングされたイリジウムから構成されてもよい。イオン源アセンブリ401のこの実施形態は、オペレータが、質量分析計へのGCからの水素担体流のサンプリングから、適切な減圧インターフェース(例えば、オリフィスまたは薄膜)を介する室内空気の直接サンプリングに切り替えることができるポータブルGC/MSシステムにおいて特に有用であり得る。この場合、水素はイリジウムフィラメント上に存在するイットリアコーティングを破壊するため、タングステン合金から構成されるフィラメントがGC流に使用される。空気中の酸素は高温のタングステンフィラメントをすぐに破壊してしまうため、イットリアでコーティングされたイリジウムフィラメントが空気サンプルに使用される。
【0027】
さらに図4図5を参照すると、イオン源アセンブリ401の第1のアノード405は、第1のアノード405に電気的に接続され、第1のイオン化体積406を第2のイオン化体積416から区切るように作用するセクションまたは第1のエンドキャップ425を備えることができる。別の実施形態では、第1のエンドキャップ425は、図1のイオンリペラ112と同様の別個の電極であってもよい。第1のエンドキャップ425は、イオンがそれを通過できるように構成される導電性材料から構成され得る。一実施形態では、第1のエンドキャップ425は、少なくとも部分的に導電性グリッドまたはメッシュから構成される。第1のイオン化体積406と第2のイオン化体積416との間に第1のエンドキャップ425を含めることは、特に第2のフィラメント412を動作させるときに、イオン源アセンブリ401の性能を向上させることが示されている。しかしながら、第1のエンドキャップ425は、プロセスチャンバ内の化学的性質に応じて、時間の経過とともに非導電性の表面の汚染物質を蓄積する場合がある。第1のエンドキャップ425上の非導電性フィルムのこの蓄積は、イオン源アセンブリ401の性能に影響を与える可能性があるが、そのような蓄積は、任意のイオン源の任意の実施形態の性能にも影響を与える場合がある。
【0028】
第2のアノード415は、同様に、第2のイオン化体積416の内側の電位を良好に画定するように作用する第2のエンドキャップ426を備えることができる。第2のエンドキャップ426は、第1のエンドキャップ425と同様であってもよい。そのため、第2のエンドキャップ426も導電性材料から構成され得るが、導電性材料が第2のエンドキャップ426をイオンが通過できるようにする必要はない。一実施形態では、第2のエンドキャップ426の導電性材料は、イオン化体積416に出入りするガスの自由な流れを可能にする1つ以上の開口部を画定する。第2のエンドキャップ426は、第2のアノード415に電気的に接続され、第2のアノード415と同じ電位で動作するように構成され得る。別の実施形態では、第2のエンドキャップ426は、以前に記載されているイオンリペラ112と同様に別個の電極であってもよい。第2のエンドキャップ426は、平坦もしくは平面形状、または質量フィルタ409に向かってほぼ凹面である形状を含む多くの異なる幾何学的形状を備えてもよい。
【0029】
図示されていないイオン源アセンブリのさらなる実施形態は、第3のイオン化体積と、第3のアノードと、第2のイオン化体積416の上流に位置する第3の電子源とを備える。この実施形態では、構成要素のうちの1つ以上は、イオン源アセンブリ401に関して以前に記載されている構成要素と同じであってもよいか、または同様であってもよい。
【0030】
特定の例では、イオン源アセンブリ401は、質量フィルタ409およびイオン検出器410の上流の残留ガス分析器(RGA)上に設置され得る。この例では、質量フィルタ409は四重極質量フィルタ(quadrupole mass filter)であり、イオン検出器410はファラデーカップイオン検出器であり、RGAは真空プロセスチャンバ内のガスを監視するために使用される。イオン源アセンブリ401の第1のフィラメント402および第2のフィラメント412は、それぞれのアノードに近接して各々が配置される2つのイットリアでコーティングされたイリジウムフィラメントである。2つのアノードは304ステンレス鋼メッシュから形成される。焦点レンズおよび出口アパーチャプレートなどのステンレス鋼のイオン光学素子408が、イオンビームを画定し、四重極質量フィルタ409内に注入するために使用される。最初に、制御電子機器からの電流は、電子の形態の2mAの放出電流が、第1のフィラメント402の表面から出るような温度まで第1のフィラメント402を抵抗的に自己発熱するために使用される。第1のフィラメント402は、フィラメント中心が110Vになるようにバイアスされる。第1のアノード405は、制御電子機器によって212Vにバイアスされ、焦点レンズは185Vであり、出口アパーチャプレート408および電子リペラ407は0Vである。これらの電圧は全て、監視されている真空チャンバの壁に対するものである。第1のフィラメント402から放出された電子は、第1のアノード405と第1のフィラメント402との間の102Vの差によって加速される。電子は、第1のアノード405のメッシュを通って第1のイオン化体積406内に入る。電子は監視されているガスの分子と衝突し、電子は強く打たれて解放され、ガス分子を断片化して、四重極質量フィルタ409によって分析されるイオンを生成する。第1のフィラメント402が使用されている間、第2のアノード415は215Vまたはいくらかの他の電圧に保持され得、第2のフィラメント412は0Vに保持され得る。四重極は、中心軸(極ゼロ(pole zero))が202Vになるように通常の方法で動作する。
【0031】
操作は、第1のフィラメント402が故障するまでこのように継続することができる。そのときに、フィラメント電流は第2のフィラメント412に送られ、その中心はここで110Vにバイアスされることになる。第2のアノード415は212Vに設定されているため、ここで2mAの102eVの電子が第2のイオン化体積416に入る。第1のアノード405は、ここで206Vに設定され、第2のイオン化体積416からイオンを引き出し、それらを焦点レンズおよび出口アパーチャプレート408に対して方向付け、次いで四重極質量フィルタ409に方向付けるように作用する。第2のフィラメント412を電子源として動作させる場合、第1のフィラメント402は、第1のアノード405と同じ電圧(この例では206V)に設定されてもよく、これにより、第1のフィラメント402が破損してアノード405に触れた場合、第1のアノード405と第1のフィラメント402との間に電流の流れは存在しない。次いでRGAの操作は、これらの新しい電位設定でフィラメント故障前と同様に継続することができる。
【0032】
本発明は主に、第1のフィラメントの使用から得られるものと同様に第2のフィラメントを使用しながら、かつ必要なイオン源メンテナンス操作間の動作時間を延長しながら、イオン源から同様のイオン電流を得る手段として説明されてきたが、これは必ずしもイオン源アセンブリ401を動作させることができる唯一の方法ではない。イオン源の感度および直線性は、制御ユニットの制御電子機器によって様々な電極に印加される電位によってイオン源において決定される電場に依存する。したがって、第1のフィラメント402および第2のフィラメント412の各々について電極設定をカスタマイズすることが可能である。言い換えれば、第1のフィラメント402が動作しているとき、適用される電極設定は、結果として生じるイオンビームを、当該結果として生じるイオンビームの特定の特徴に最適化する。同様に、第2のフィラメント412が動作しているとき、適用される電極設定は、結果として生じるイオンビームを、当該結果として生じるイオンビームの特定の特徴に最適化する。例えば、電極電位は、第1のフィラメント402を使用する場合には直線性を最適化し、第2のフィラメント412を使用する場合には感度を最適化するように選択することができる。代替例では、電極電位は、第1のイオン化体積406からの1つのエネルギーのイオンを質量フィルタ409内に方向付け、第2のイオン化体積416からの別のエネルギーのイオンを質量フィルタ409内に方向付けるように選択することができる。別の例では、両方のフィラメント402、412を同時に動作させることができるが、これにより、より広範囲のイオンエネルギーが質量フィルタ409に入ることになる。
【0033】
本発明は、特定の例示的な実施形態を参照して具体的に示され、説明されてきたが、当業者であれば、書面による説明および図面によって支持され得る本発明の精神および範囲から逸脱することなく、細部における様々な変更を行うことができることを理解するであろう。さらに、例示的な実施形態が特定の数の要素を参照して説明されている場合、例示的な実施形態は、特定の数の要素より少ないまたは多い要素を利用して実施できることが理解されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】