(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】組織係合デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/58 20060101AFI20231124BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61B17/58
A61B17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530900
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 AU2021051375
(87)【国際公開番号】W WO2022104425
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506362750
【氏名又は名称】ニューサウス・イノヴェイションズ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ペルティエ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ウォルシュ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB30
4C160LL30
4C160LL37
(57)【要約】
軟部組織係合デバイス(100)が開示される。軟部組織係合デバイス(100)は、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える。細長い本体は、軟部組織(10)内に、組織の耐荷重方向を横断して少なくとも部分的に挿入されるように構成されている。細長い本体は、骨(20)に固着された基盤となる縫合糸アンカー(412a、412b)に取り付けられた縫合糸(202)と係合し、それによって軟部組織(10)を骨(20)上に引き付けるように更に構成されている。また、軟部組織を骨に取り付けるための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える軟部組織係合デバイスであって、前記細長い本体が、軟部組織内に、前記軟部組織の耐荷重方向を横断して少なくとも部分的に挿入されるように構成されており、かつ骨に固着された基盤となる縫合糸アンカーに取り付けられた縫合糸と係合し、それによって前記軟部組織を前記骨上に引き付けるように構成されている、軟部組織係合デバイス。
【請求項2】
前記細長い本体が、弾性的に柔軟である、請求項1に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項3】
前記細長い本体の断面が、前記細長い本体の丈に沿って実質的に均一である、請求項1又は2に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項4】
前記細長い本体が、比較的より大きな断面直径のエリアを備える、請求項1又は2に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項5】
前記細長い本体が、一方の端部から他方の端部まで前記細長い本体の丈に沿って先細になっているか、又は中央領域から前記第1及び第2の端部に向かって先細になっている、請求項1又は2に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項6】
前記細長い本体が、前記第1及び第2の端部のうちの一方又は両方に保持ラグを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項7】
前記細長い本体が、前記細長い本体の丈に沿って実質的に中実である、請求項1~6のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項8】
前記細長い本体の少なくとも丈が、中空である、請求項1~6のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項9】
前記細長い本体の側壁が、前記縫合糸を受容するための1つ以上の開口部を前記側壁内に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項10】
前記細長い本体が、前記縫合糸のためのグリップを提供するための粗い表面のエリアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項11】
前記細長い本体が、縫合糸を受容するための1つ以上の溝を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項12】
前記細長い本体が、前記細長い本体の各端部に隣接する縫合糸を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項13】
軟部組織を骨に取り付ける方法であって、前記方法が、
軟部組織係合デバイスを、前記軟部組織の耐荷重方向を横断させて前記軟部組織内に挿入することであって、前記軟部組織係合デバイスが、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備え、前記細長い本体が、骨に固着された1つ以上の縫合糸アンカーに取り付けられた縫合糸と係合するように構成されている、挿入することと、
縫合糸を、前記縫合糸アンカーから、前記軟部組織係合デバイスに対して内側に前記軟部組織を通して通過させることと、
前記縫合糸を、前記軟部組織係合デバイスの上に通過させることと、
続いて、前記縫合糸の各々を、縫合糸アンカーに固着させることと、を含む、方法。
【請求項14】
前記1つ以上の縫合糸アンカーが、基盤となる骨内の前記軟部組織係合デバイスよりも下方に位置決めされた1つ以上の内側アンカーである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
縫合糸が、前記1つ以上の内側アンカーから、前記軟部組織係合デバイスに対して内側の前記軟部組織を通過させられ、前記軟部組織係合デバイスの上を通過させられて、前記1つ以上の内側アンカーに戻され固着される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記骨に1つ以上の外側アンカーを固着させることを更に含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
縫合糸が、前記1つ以上の内側アンカーから、前記軟部組織係合デバイスに対して内側の前記軟部組織を通過させられ、前記軟部組織係合デバイスの上を通過させられ、前記軟部組織係合デバイスに対して外側の前記軟部組織を通過させられて、前記1つ以上の外側アンカーに固着される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の内側アンカーを前記骨に繋止することと、
第2の内側アンカーを前記骨に、前記第1の内側アンカーから離間させて繋止することと、
第1の外側アンカーを前記骨に、前記第1及び第2の内側アンカーに対して外側の場所で繋止することと、
第2の外側アンカーを前記骨に、前記第1の外側アンカーから離間させて繋止することと、
固定端部を有する第1の縫合糸に自由端部を提供することであって、前記固定端部が、前記第1の内側アンカーに固着され、前記自由端部を、前記軟部組織係合デバイスに対して内側の前記軟部組織を通して通過させ、前記軟部組織係合デバイスの上を通過させ、前記軟部組織係合デバイスに対して外側の前記軟部組織を通過させて、前記自由端部を前記第1の外側アンカーに固着させる、提供することと、
固定端部を有する第2の縫合糸に自由端部を提供することであって、前記固定端部が、前記第2の内側アンカーに固着され、前記自由端部を、前記軟部組織係合デバイスに対して内側の前記軟部組織を通して通過させ、前記軟部組織係合デバイスの上を通過させ、前記軟部組織係合デバイスに対して外側の前記軟部組織を通過させて、前記自由端部を前記第2の外側アンカーに固着させる、提供することと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固定端部を有する第3の縫合糸に自由端部を提供することであって、前記固定端部が、前記第1の内側アンカーに固着され、前記自由端部を、前記軟部組織係合デバイスに対して内側の前記軟部組織を通して通過させ、前記軟部組織係合デバイスの上を通過させ、前記軟部組織係合デバイスに対して外側の前記軟部組織を通過させて、前記自由端部を前記第2の外側アンカーに固着させる、提供することと、
固定端部を有する第4の縫合糸に自由端部を提供することであって、前記固定端部が、前記第2の内側アンカーに固着され、前記自由端部を、前記軟部組織係合デバイスに対して内側の前記軟部組織を通して通過させ、前記軟部組織係合デバイスの上を通過させ、前記軟部組織係合デバイスに対して外側の前記軟部組織を通過させて、前記自由端部を前記第1の外側アンカーに固着させる、提供することと、を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記軟部組織が、腱である、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記軟部組織が、靭帯である、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体組織に係合するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
負傷により、骨からの靭帯若しくは腱などの軟部組織の完全若しくは部分的な脱離、又は軟部組織の完全若しくは部分的な切断がもたらされることがある。
【0003】
そのような負傷を修復するための現在のケアの標準は、組織の脱離した端部を骨に再び取り付けること、又は組織の切断された端部を再び取り付けることである。これは、典型的には、軟部組織を通して通過させられる縫合糸を使用して達成される。骨への再取り付けの場合、縫合糸は、組織が接近させられる骨内に挿入されたアンカーに固定され得る。修復は、組織に負荷がかかっている間に意図された取り付け部位から組織が偏位して離れるのを防止するのに十分な強度を有する必要がある。したがって、修復部位に適した引張強度を提供することを目的として、多くの様々な縫合技術及びパターンが開発されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、修復が負荷下に置かれたとき、力は、縫合糸によって提供される比較的小さい表面積にわたって集中される。その結果、修復の最終的な失敗の前に、縫合糸が組織に縦方向に通る切れ目を入れる可能性がある。この現象は、チーズのブロックを通ってスライスするワイヤーチーズカッターのメカニズムと同様のメカニズムであるため、「チーズワイヤリング」と呼ばれることがある。これは、局所組織の損傷、及び修復によって確立された元の固定位置の喪失につながる可能性がある。
【0005】
本明細書に含まれる文献、行為、材料、デバイス、又は物品などについてのあらゆる議論は、これらの事項のいずれか若しくは全てが、先行技術基盤の一部を形成すること、又は添付の特許請求の範囲の各々の優先日以前に存在していたものであるために本開示に関連する分野における通常の一般的知識であったことを認めるものとして解釈されてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える軟部組織係合デバイスであって、細長い本体が、軟部組織内に、組織の耐荷重方向を横断して少なくとも部分的に挿入されるように構成されており、かつ骨に固着された基盤となる縫合糸アンカーに取り付けられた縫合糸と係合し、それによって軟部組織を骨上に引き付けるように構成されている、軟部組織係合デバイスが提供される。
【0007】
本開示の別の態様によれば、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える軟部組織係合デバイスであって、細長い本体が、軟部組織内に、組織の耐荷重方向を横断して少なくとも部分的に挿入されるように構成されており、かつ骨に固着された基盤となるアンカーと係合し、それによって軟部組織を骨上に引き付けるように構成されている、軟部組織係合デバイスが提供される。
【0008】
デバイスは、典型的には、その最終的な位置において組織の耐荷重方向を横断して着座する。しかしながら、その最終的な位置に移動される前に、様々な角度で挿入され得る。例えば、デバイスは、最初に耐荷重方向に対して平行、垂直、又は斜めに挿入され得る。
【0009】
更に、その最終的な位置において、デバイスは、典型的には、組織の最大幅に対して平行に着座する。すなわち、腱において、デバイスは、典型的には、腱の厚さに対して平行ではなく、腱の幅に対して平行に植え込まれる。例えば、アキレス腱の修復に使用される場合、デバイスは、典型的には、前後方向ではなく外内方向に延在することとなる。
【0010】
軟部組織は、腱、靭帯、筋肉、軟骨を含むがこれらに限定されない、修復を必要とする任意の軟部組織であり得、又は一部の実施形態では、デバイスが骨などの組織とともに使用され得ることが想定される。デバイスを使用して、軟部組織の裂傷、分離、又は他の損傷を修復し得る。一実施形態では、軟部組織は腱であり、修復されるべき損傷は、腱の裂傷若しくは完全な断裂、又は骨からの腱の分離である。他の実施形態では、軟部組織には、皮膚、血管組織、及び神経組織などの結合組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
軟部組織係合デバイスの細長い本体は、構造的に十分な剛性を提供するだけでなく、必要に応じて軟部組織内への挿入及び位置決めを支援するためにある程度の柔軟性を可能にするために、弾性的に柔軟であり得る。デバイスはまた、例えば、負荷の結果として加えられた任意の弾性変形を回復することによって、又は組織内の位置に起因する負荷の方向を変更することによって、軟部組織に動的負荷を提供して治癒を促進し得る。
【0012】
細長い本体は、植え込まれたときに、細長い本体が基盤となる骨に実質的に適合するように変形可能であるように構成され得る。基盤となる骨に適合することにより、フットプリント面積及び骨上への負荷の分配が改善され得、細長い本体は、恒久的に変形可能であるように構成され得る。例えば、細長い本体は、細長い本体が負荷下においてその形状を保持するように、比較的高い弾性係数を有し得るが、基盤となる骨の輪郭を描くために恒久的に変形可能(又は予め形成されている)であり得る。他の実施形態では、細長い本体は、細長い本体が負荷下で変形するように、相対的に低い弾性係数を有し得る。そのような実施形態では、細長い本体は、負荷が取り除かれたときにその元の形状に戻るように、弾性的に変形可能であり得る。
【0013】
一部の実施形態では、細長い本体は実質的に直線状であり得る。直線状の細長い本体は、実質的に上記のように基盤となる骨の表面に適合するように構成され得る。他の実施形態では、細長い本体は、湾曲していてもよい。例えば、細長い部材は、植え込まれたときに変形することなく、又は最小限の変形で、基盤となる骨の表面に実質的に適合するように輪郭が描かれ得る。他の実施形態では、細長い部材の曲率は骨の曲率よりも小さくあり得、その結果、細長い本体の曲率を増加させて骨表面に適合させるには、細長い本体の変形が必要である。より更なる実施形態では、細長い本体は、過剰な輪郭が描かれ得る。すなわち、細長い本体は、骨の曲率よりも大きい曲率を有し得、その結果、細長い本体の曲率を減少させて骨表面に適合させるには、細長い本体の変形が必要である。そのような実施形態は、細長い本体の端部又はその近隣で、細長い本体と骨との間に増加した力を提供し得る。
【0014】
細長い本体は、その全長に沿って実質的に均一な断面を有し得る。他の実施形態では、細長い本体は、比較的より大きな断面積を有する部分を備え得る。例えば、細長い本体は、第1の端部から第2の端部まで(又は第2の端部から第1の端部まで)細長い本体の丈に沿って先細になり得る。あるいは、細長い本体は、比較的より大きな断面積を有する中間部分を備え、第1及び第2の端部の両方に向かって先細になり得る。他の実施形態では、第1及び第2の端部は、比較的より大きな断面積を有し得る。例えば、第1及び第2の端部のうちの一方又は両方は、細長い本体のそれぞれの端部が軟部組織に入るのを阻害するように構成された保持ラグを備え得る。
【0015】
細長い本体は、断面が円形であり得る。あるいは、細長い本体は、平らなプレート、卵形、正方形、長方形、三角形、楕円形、又は三日月形の断面を備え得る。断面はまた、軟部組織内の位置を保持するための周期的なスパイク、ホック、又は他の機構を含み得る。
【0016】
一部の実施形態では、細長い本体は、第1及び第2の端部に隣接する縫合糸と係合するように構成されている。細長い本体の外面は、縫合糸を把持するために少なくとも部分的に粗くされるか、エッチングされるか、多孔質であるか、又はリブ付きであり得る。一部の実施形態では、細長い本体は、縫合糸係合領域を画定する溝、スロット、又は隆起を含み得る。縫合糸は、デバイスの内側又は外面上に接続され得る。
【0017】
他の実施形態では、デバイスはアンカーと直接係合し得、縫合糸の必要性を否定する。デバイスは、1つ以上のアンカー係合部分を備え得る。例えば、細長い本体は、1つ以上の開口部、小穴、ホック、又は他のアンカー係合要素を含み得る。
【0018】
細長い本体は、金属又は金属合金から作製され得、又は代替的に、高分子材料から作製され得る。好適な材料の例には、ステンレス鋼及びその合金、チタン及びその合金、コバルトクロム及びその合金、タンタル及びその合金、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、MP35N及びその合金、グラファイト/パイロカーボンが含まれる。
【0019】
一部の実施形態では、細長い本体は、生体吸収性材料から少なくとも部分的に作製されている。細長い本体は、コラーゲン、キトサン、又はポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、及びポリ(乳酸-co-グリコリド)(PLGA)を含む合成ポリマー、リン酸三カルシウム(TCP)又はハイドロキシアパタイト(HA)を含むバイオセラミック材料から作製され得る。生体吸収性材料はまた、血管内方成長等の生物学的応答を促す化学走性薬品又は治療物質を含有し得る。
【0020】
細長い本体は、放射線透過性又は放射線不透過性材料から作製され得る。
【0021】
また、軟部組織を骨に取り付ける方法であって、方法が、
軟部組織係合デバイスを、軟部組織の耐荷重方向を横断させて軟部組織内に挿入することであって、軟部組織係合デバイスが、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備え、細長い本体が、骨に固着された1つ以上の縫合糸アンカーに取り付けられた縫合糸と係合するように構成されている、挿入することと、
縫合糸を、縫合糸アンカーから、軟部組織係合デバイスに対して内側に軟部組織を通して通過させることと、
縫合糸を、軟部組織係合デバイスの上に通過させることと、
続いて、縫合糸の各々を、縫合糸アンカーに固着させることと、を含む、方法が開示される。
【0022】
この実施形態では、軟部組織は腱であり得る。腱の例が提供されているが、方法は、例えば、靭帯などの別の軟部組織を骨に取り付けるために等しく利用され得ることが理解されるべきである。
【0023】
修復対象の腱は、筋腱接合部から、典型的には骨に固着された端部まで延在し得る。場合によっては、腱が損傷して骨から離れ、腱端部が固着されていない状態になる。このような修復には、固着されていない端部を再び骨に固着させることが必要である。本明細書で使用される「内側の」又は「内側に」という用語は、腱と筋肉との接合に向かう位置に関するのに対して、「外側の」又は「外側に」は、損傷状態にある腱の固着されていない端部に向かう、又はそれを越える位置を指す。修復の一例は、回旋腱板腱の修復である。回旋腱板以外の修復では、「内側の」という用語は「近位の」という用語に置き換えられ得、「外側の」という用語は「遠位の」という用語に置き換えられ得ることが理解されるべきである。
【0024】
軟部組織係合デバイスは、腱係合デバイスであり得る。1つ以上の縫合糸アンカーは、基盤となる骨内に、典型的には、実質的に腱係合デバイスの下方かつ腱係合デバイスと並ぶように位置決めされた、2つの内側アンカーを含み得る。縫合糸アンカーは、典型的には、一端においてアンカーに取り付けられておりかつ自由端部に向かって延在する、1つ以上の縫合糸を備える。
【0025】
内側アンカーが骨に固着されると、腱は外科医によって操作されて、腱と骨組織との間の接触面積を増加させることによって治癒を促進させることを含み、固着されていない端部を腱の足場となる骨の領域の上の正しい位置に移動させられる。
【0026】
腱が正しく位置決めされると、第1の内側アンカーに取り付けられた縫合糸が、腱係合デバイスに対して内側の腱組織を通過させられ、腱係合デバイスの上を通過させられて、同じ内側アンカーに戻され固着される。同じプロセスは、第2の又はそれ以上の内側アンカー及び関連する縫合糸で実行され得る。
【0027】
上記の方法は、基盤となる骨に対する腱の「内側固着」を提供する。このような内側固着は、縫合糸の長さが比較的短く、その結果、筋肉収縮によって腱に負荷が加えられたときに、縫合糸の伸びが最小限に抑えられ、弛緩がほとんど生じないという事実に起因して、腱の骨への比較的剛性な取り付けを提供する。しかしながら、外科医は、外側の場所で腱を骨に固着させることも望む場合がある。
【0028】
以下に概説されるステップは、上記の内側固定ステップに加えられてもよく、又はそれらに置き換わってもよい。1つ以上の内側アンカーは、腱係合デバイスに並ぶようにかつ腱係合デバイスの下方で、骨に固着され得る。1つ以上の外側アンカーはまた、腱の固着されていない端部の所望の位置に対して外側の場所で骨に固着され得る。各アンカーは、1つ以上の関連する縫合糸を有し得る。この実施形態では、内側アンカーは、第1の端部においてアンカーに固定されておりかつ自由端部に向かって延在する、縫合糸を有する。腱が正しく位置決めされると、第1の内側アンカーに取り付けられた縫合糸は、組織係合デバイスに対して内側の腱組織を通過させられ、腱係合デバイスの上を通過させられて、第1の外側アンカーに固着される前に、腱の外面を横切るか、又は代替的に腱組織を通るいずれかの外側方向に引き付けられる。縫合糸は、典型的には、腱上に下向きの力を加え、腱を基盤となる骨に向かって押し付ける。同じプロセスが、第2の又はそれ以上の内側アンカーで実行され得、ここでは各内側アンカーの縫合糸は、1つ以上の外側アンカーに固着され得る。
【0029】
一実施形態では、方法は、
第1の内側アンカーを骨に繋止することと、
第2の内側アンカーを骨に、第1の内側アンカーから離間させて繋止することと、
第1の外側アンカーを骨に、第1及び第2の内側アンカーに対して外側の場所で繋止することと、
第2の外側アンカーを骨に、第1の外側アンカーから離間させて繋止することと、
固定端部を有する第1の縫合糸に自由端部を提供することであって、固定端部が、第1の内側アンカーに固着され、自由端部を、組織係合デバイスに対して内側の腱組織を通して通過させて、自由端部を第1の外側アンカーに固着させる、提供することと、
固定端部を有する第2の縫合糸に自由端部を提供することであって、固定端部が、第2の内側アンカーに固着され、自由端部を、組織係合デバイスに対して内側の腱組織を通して通過させて、自由端部を第2の外側アンカーに固着させる、提供することと、を更に提供する。
【0030】
方法は、
固定端部を有する第3の縫合糸に自由端部を提供することであって、固定端部が、第1の内側アンカーに固着され、自由端部を、組織係合デバイスに対して内側の腱組織を通して通過させて、自由端部を第2の外側アンカーに固着させる、提供することと、
固定端部を有する第4の縫合糸に自由端部を提供することであって、固定端部が、第2の内側アンカーに固着され、自由端部を、組織係合デバイスに対して内側の腱組織を通して通過させて、自由端部を第1の外側アンカーに固着させる、提供することと、を更に提供し得る。
【0031】
別の態様において、軟部組織を骨に取り付ける方法であって、方法が、
軟部組織係合デバイスを、軟部組織の耐荷重方向を横断させて軟部組織内に挿入することであって、軟部組織係合デバイスが、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備え、細長い本体が、骨に固着された1つ以上のアンカーと係合するように構成されている、挿入すること、
1つ以上のアンカーをデバイスに固着させること、を含む、方法が開示される。
【0032】
この実施形態では、軟部組織係合デバイスがアンカーと直接係合するように構成されているため、縫合糸は必要とされないことを理解されたい。
【0033】
一部の実施形態では、1つ以上のアンカーは、軟部組織係合デバイスの挿入に続いて、軟部組織を通して挿入され、骨に固着され得る。1つ以上のアンカーは、軟部組織係合デバイスを通して挿入され、その後、骨に固着され得る。1つ以上のアンカーは、細長い本体に対して実質的に垂直に挿入され得る。1つ以上のアンカーは、軟部組織係合デバイスのそれぞれの1つ以上の開口部又は係合機構を通過し得る。アンカーの軟部組織係合デバイスへの接続は、リベット又はホック留め接続によって行われ得る。他の実施形態では、接続はねじ式であり得る。
【0034】
軟部組織係合デバイス及び/又はアンカーは、ガイド又はジグを使用して挿入され得る。ガイドは、軟部組織係合デバイス及び/又はアンカーの挿入及び整列を支援し得る。例えば、ガイドは、軟部組織デバイスを、軟部組織の耐荷重方向を横断させて軟部組織を通して挿入するように構成されたスライドアームを備え得る。ガイドは、軟部組織を通して骨内にアンカーを挿入するように構成された1つ以上のパンチ部材を更に備え得る。
【0035】
別の態様において、別々の部分に分離された軟部組織の修復のための方法であって、方法が、
第1の軟部組織係合デバイスを軟部組織の第1の部分内に、軟部組織の耐荷重方向を横断させて挿入することであって、軟部組織係合デバイスが、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える、挿入することと、
第2の軟部組織係合デバイスを軟部組織の第2の部分内に、軟部組織の耐荷重方向を横断させて挿入することであって、軟部組織係合デバイスが、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える、挿入することと、
2つの軟部組織係合デバイスを1つ以上の縫合糸によって互いに固着させることと、を含む、方法が説明される。
【0036】
本開示のデバイスは、切断された又は少なくとも部分的に切断された腱の修復に使用され得る。その一例が、アキレス腱の修復である。この実施形態では、本開示のデバイスは、一方の腱端部内に挿入され得、第2のデバイスは、他方の腱端部内に挿入され得る。縫合糸は、腱端部間の隙間を横切るように適用されて、各デバイスに取り付き、それによって腱の端部を一緒に結び付け得る。2つのデバイスの位置決めにより、縫合糸及び修復位置の喪失による腱端部の「チーズワイヤリング」が防止される。
【0037】
本明細書全体を通して、「備える(comprise)」、又は「備える(comprises)」若しくは「備える(comprising)」などの変化形は、定められた要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
次に、単なる例として、実施形態が添付の図面を参照して説明される。
【0039】
【
図1A】それぞれ非負荷構成及び負荷構成における先行技術の腱修復方法の上面図を示す。
【
図1B】それぞれ非負荷構成及び負荷構成における先行技術の腱修復方法の上面図を示す。
【
図2A】それぞれ非負荷構成及び負荷構成における
図1A及び
図1Bの腱修復方法の側面図を示す。
【
図2B】それぞれ非負荷構成及び負荷構成における
図1A及び
図1Bの腱修復方法の側面図を示す。
【
図3A】それぞれ非負荷構成及び負荷構成における本開示の実施形態による軟部組織係合デバイスを使用する腱修復方法の上面図を示す。
【
図3B】それぞれ非負荷構成及び負荷構成における本開示の実施形態による軟部組織係合デバイスを使用する腱修復方法の上面図を示す。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図6A】本開示のいくつかの更なる実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図6B】本開示のいくつかの更なる実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図6C】本開示のいくつかの更なる実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図6D】本開示のいくつかの更なる実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図6E】本開示のいくつかの更なる実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図6F】本開示のいくつかの更なる実施形態による軟部組織係合デバイスを示す。
【
図7A】本開示の一実施形態による腱を骨に取り付ける方法におけるステップを示す。
【
図7B】本開示の一実施形態による腱を骨に取り付ける方法におけるステップを示す。
【
図7C】本開示の一実施形態による腱を骨に取り付ける方法におけるステップを示す。
【
図7D】本開示の一実施形態による腱を骨に取り付ける方法におけるステップを示す。
【
図7E】本開示の一実施形態による腱を骨に取り付ける方法におけるステップを示す。
【
図7F】本開示の一実施形態による腱を骨に取り付ける方法におけるステップを示す。
【
図10】本開示の別の実施形態による腱修復の上面図を示す。
【
図11】本開示の別の実施形態による腱修復方法の側面図を示す。
【
図12】本開示の2つの実施形態による骨への腱接続の周期的負荷試験中に得られた負荷変位曲線を、縫合糸のみの修復と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示の軟部組織係合デバイスは、図面では概して100として示されている。デバイスは、組織修復のために使用され得る。例えば、デバイス100は、軟部組織の骨への再取り付け、又は軟部組織の切断された端部の互いへの再取り付けに使用され得る。
【0041】
例は、主に、腱が骨に再取り付けされる回旋腱板腱の修復を指す。しかしながら、デバイスは、任意の軟部組織、靭帯、若しくは腱の修復、又は骨のような組織、特に体重負荷ではない骨に適用され得ることが理解されるべきである。更なる例として、デバイスは、回旋腱板腱、アキレス腱、若しくは膝蓋腱の、腱から腱への修復又は腱から骨への修復に使用され得る。更に、デバイスは、靭帯から骨への、又は靭帯から靭帯への再取り付けの際に使用され得る。例えば、デバイスは、前十字靭帯又は後十字靭帯の修復に使用され得る。本発明は、これらの特定の用途に限定されず、他の処置において使用され得る。開示されるデバイス及び方法の使用により、縫合切断又は組織を通る縫合糸の「チーズワイヤリング」に対する耐性が改善され得、それによって修復の引張強度が改善される。修復界面での過剰な微動は、身体が治癒するための課題を増加させ、その結果、緩んだ結合組織を増加させ、機能を支援することのない瘢痕組織形成をもたらす。本デバイスは、修復の剛性を高め、界面での微動を低減し、治癒及び機能を改善する。
【0042】
図1A、
図1B、
図2A、及び
図2Bは、先行技術の腱修復方法を示している。腱10は、縫合糸ブリッジ(suture bridge)技術において、縫合糸アンカーの内側列50から縫合糸アンカーの外側列60に接続する縫合糸40によって骨20に固着される。しかしながら、筋肉30によって腱10に力が加わると、縫合糸40は「チーズワイヤリング」方式で腱10を切り裂く。点11及び12における腱10を通る縫合糸の変位を
図1B及び
図2Bに示す。この変位は、腱10組織に更に損傷を与えるだけでなく、骨20上の最初の配置からの腱10の外側端部13の変位にも相当する。「チーズワイヤリング」の結果としての腱10の外側端部13のこの変位は、回復不能であり、腱10と骨20との間のフットプリントの損失をもたらす。すなわち、変位は、骨統合が可能である腱10と骨20との間の利用可能な接触面積の減少をもたらし、修復の有効性を低下させる。この失敗は腱を傷つけ、サルベージ手術のための力学的完全性をほとんど持たせない。本発明はまた、従来の縫合糸ブリッジ修復の失敗後の改善されたサルベージ特性を可能にする
【0043】
図3A、
図3B、
図4A、及び
図4Bは、本開示による組織係合デバイス100を使用した同様の腱修復を示している。組織係合デバイス100は、腱10の耐荷重方向を横断して、少なくとも部分的に腱内に挿入される。縫合糸201、202、203、204は、骨20に固着され、組織係合デバイス100の内側の点11及び12で腱10を通して通過させられる。したがって、縫合糸201、202、203、204は骨20に固着される。
図4Aは、内側アンカー411から外側アンカー421までの縫合糸202の経路を示している。
図3B及び
図4Bは、負荷下における腱修復構築物の反応を示している。
図1B及び
図2Bの構築物とは異なり、筋肉30から腱10上に作用する力は、点11及び12に集中しない。むしろ、組織係合デバイス100は、点11及び12で縫合糸に係合し、縫合糸201、202、203、204によって腱10の組織上に加えられる力をより大きな表面積にわたって分配する。この力の分配は、縫合切断又は「チーズワイヤリング」に対する修復構築物の耐性を増加させる。更に、本開示による組織係合デバイスの使用により、複雑な縫合糸ステッチ技術の必要性を低減することによって、組織修復作業を実行するのに要する時間が短縮され得る。
【0044】
図4Bに示すように、腱10の外側端部13が、骨上の最初の配置から負荷下でいくらか変位することがある。しかしながら、この場合、変位は主に、
図2Bに示すような腱10の組織の損傷によるものではなく、縫合糸201、202、203、204の弾性変形によるものである。したがって、負荷が取り除かれると変位が回復可能であり、腱10と骨20との間の接触フットプリントは維持される。
【0045】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による組織係合デバイス100a~hを示している。組織係合デバイス100a~hの各々は、第1の端部101から第2の端部102まで延在する細長い本体の形態である。細長い本体は、実施形態100a~d及び100gのように実質的に直線状であってもよく、又は実施形態100e、100f、及び100hのように湾曲しているか若しくは波状であってもよい。
【0046】
一部の実施形態では、例えばデバイス100a、100b、100c、100d、100eのように、細長い本体は実質的に円形の断面を有する。他の実施形態では、例えばデバイス100f、100g、100hのように、細長い本体は楕円形の断面を有する。他の実施形態では、他の断面形状が使用されてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、細長い本体は、その丈に沿って実質的に一定の断面を有し得る(デバイス100a、100d、100e、100f、100g、及び100hのように)。他の実施形態では、細長い本体は、その丈に沿って変化する断面を有し得る。1つのそのような例が、その第1及び第2の端部101、102の各々にラグ110を含む、
図100bに示されている。ラグは、デバイス100bの端部101、102の組織内へのスリップを実質的に防止するように構成され得る。対照的に、そのようなラグ110のない実施形態は、組織内に完全に植え込み可能であるように構成され得る。
【0048】
例えばデバイス100cのように、一部の実施形態では、デバイスは内側ルーメン125を画定する側壁120を備え得る。ルーメンは、1つ以上の縫合糸、ワイヤ、又は送達デバイスを受容するように構成され得る。代替的に又は追加的に、デバイスは、デバイス100を完全に又は部分的に通って延在し得る1つ以上の開口部を含み得る。例えば、デバイス100cの開口部131、132は、側壁120を通ってルーメン125まで延在する。縫合糸はまた、縫合糸が剛性的に固定されて、そこを通りスライドするのを防止するように、デバイスと一体化されてもよく、又はデバイス内に成形されてもよい。
【0049】
デバイスの更なる実施形態が、
図6A~
図6Fに提供されている。
図6Aにおいて、デバイス100iは、らせん状部材121を通って中央に延在する中央シャフト120を備える。端部122aは、組織を通る挿入を支援するように尖っている。
【0050】
デバイス100jは、中央シャフト120を含まないらせん状部材121を備える。
【0051】
デバイス100kは、反対向きにあるラグ131a及び131bを有する細長い本体130を備える。各ラグは、縫合糸を受容するために使用され得る開口部132a及び132bを有する。
【0052】
図6Dにおいて、デバイス100lは、整列している4つの離間したラグ133を有する。
図6Eのデバイス100mは、2つのラグ134を有する。
【0053】
デバイス100nのラグ134a及び134bは、別の実施形態を提供する。ラグ134aは、シャフト136の両側に延在し、シャフト136の対向する側に位置決めされた2つの開口部を有する。ラグ134bは、角度がある形状であり、半分が他の半分に直交する平面内に延在する。
【0054】
軟部組織係合デバイスの細長い本体は、植え込まれたときに基盤となる骨に実質的に適合するように変形可能であるように構成され得る。例示的なそのような実施形態を
図13A及び
図13Bに示す。
【0055】
図13Aのデバイス100pは、実質的に直線状の細長い本体を有する。この実施形態では、細長い本体は、比較的高い弾性係数を有し、
図13Aの下部に示すように、変形して基盤となる骨20の表面に部分的に適合するように構成されている。これは、腱10と骨20との間の比較的小さい接触フットプリント面積をもたらす。
【0056】
他の実施形態では、例えば、
図13Bに示すデバイス100q、100r及び100sでは、細長い本体は、より低い弾性係数を有し、負荷下において変形して基盤となる骨の曲率に適合するように構成されている。デバイスの初期構成が、
図13Bの上部に示されている。これらのデバイスの各々は、骨の形状に適合して、
図13Bの下部に示すような、最終的な植え込まれた構成をとる。
【0057】
デバイス100rは、デバイス100pと同様に、最初は直線状である。しかしながら、デバイス100rはデバイス100pよりも柔軟であるため、
図13Bにおける腱と骨との間の最終接触フットプリント面積は、
図13Aよりも大きい。
【0058】
デバイス100sは、骨の形状に一致するために最小限の変形が必要とされるように、骨の曲率に緊密に一致するように湾曲している。デバイス100qは、過剰な輪郭が描かれており、すなわち、骨への適合のためにデバイス100qの曲率を低下させるために変形が必要となるような、骨の曲率よりも大きい曲率を有する。
【0059】
一例では、組織係合デバイス100は、脱離した回旋腱板腱の修復のために使用され得る。修復方法は、
図7A~
図7Fに示すステップを含み得る。手術は、関節鏡視下で実行され得る。
【0060】
図7Aは、修復が開始される前の骨20及び腱10を示している。
図7Bにおいて、2つの内側アンカー411a、411bが、骨20のより大きな粗面に配置されている。腱10は、所望の固定場所で骨20の上に位置決めされ、縫合糸201、202、203、204は、
図7Cに示すように、内側アンカー411a、411bから組織係合デバイス100に対して内側の腱組織を通して通過させられる。
【0061】
次いで、組織係合デバイス100は、デバイス100の軸が回旋腱板腱の軸又は負荷方向に実質的に直交するように、筋腱接合部に対して外側の腱内に挿入される。一部の実施形態では、組織係合デバイス100は、腱10の横切開を通して挿入されてもよく、又は他の実施形態では、最初に切開を行うことなく腱の組織を通して押し込まれてもよい。他の実施形態では、デバイスは、滑液包側の腱の上又は関節側の腱の下に着座し得ることが想定される。
【0062】
縫合糸は次いで、組織係合デバイス100の上を通過させられ、1つ以上のアンカーに固着される。
図7Eは、骨20内に挿入された2つの外側アンカー412a、412bを示しており、一方、
図7Fは、外側アンカー412a、412bに固着されて縫合糸ブリッジを形成する縫合糸201、202、203、204を示している。例示の目的のために、腱10は
図7Fに部分的に透明に示されており、組織係合デバイス100の位置を明らかにしている。しかしながら、この実施形態では、デバイス100は、完全に腱内に位置付けされる。
【0063】
他の実施形態では、組織係合デバイス100は、腱10の長手方向繊維を通して織り込まれ得る。一部の実施形態では、デバイス100は、腱組織の内外に縫うように進むように、腱組織内に挿入され得る。したがって、デバイス100の1つ以上の部分は、腱10の滑液包側及び/又は関節側に腱外になり得る。そのような実施形態では、腱10の関節及び/又は滑液包側の組織係合デバイス100の腱外部分は、縫合糸の取り付け点として使用され得る。
【0064】
図8及び
図9は、
図7A~
図7Hの方法による完成した修復を示している。縫合糸201、202、203、204は、内側アンカー411a、411bから、組織係合デバイス100に対して内側の腱10の組織を通して通過させられて、外側アンカー412a、412bに固着されている。組織係合デバイス100は、その端部の各々に隣接する縫合糸201、202、203、204と係合する。
【0065】
他の実施形態では、縫合糸201、202、203、204は単一の外側アンカー415に固着され得る。他の実施形態では、3つ以上の外側アンカーが使用され得る。
【0066】
一部の実施形態では、内側アンカーは省略され得る。例えば、
図10に示すように、縫合糸200は、外側アンカー415から組織係合デバイス100の周りを通過し、外側アンカー415に固着される(他の実施形態は、2つ以上のアンカーを使用し得る)。他の実施形態では、縫合糸は、デバイス100のルーメン又は1つ以上の開口部を通過し得る(例えば、
図5のデバイス100cに示すように)。1つ以上のアンカーの省略により、修復処置の全体的なコストを削減し得る。
【0067】
あるいは、一部の実施形態では、外側アンカーが省略され得る。例えば、
図11に示すように、縫合糸200は、内側アンカー400から腱10の組織を通して通過させられ、次に、縫合糸200が組織係合デバイス100を取り囲むように、内側アンカー400に固着される。そのような実施形態では、縫合糸の長さは、縫合糸が外側列のアンカーに固着される実施形態と比較して著しく短くなる。これにより、縫合糸の弾性変形による腱の取り付け部位からの移動の可能性が最小限に抑えられる。組織係合デバイス100の1つ以上の腱外部分を有する実施形態では、縫合糸は、腱10の関節側の腱外部分を通してループされ、内側アンカーに固着され得る。これにより、縫合糸の長さが短くなるため、腱10と骨20との間の接続の剛性が向上する。
【0068】
しかしながら、内側列のアンカーのみが使用される場合、
図10に示すように、腱10の外側端部13は自由のままであり、骨上に押し付けられない。これは、最適な治癒を阻害し得る。したがって、一部の実施形態では、任意選択の第2の縫合糸のセットが、内側アンカーから組織係合デバイスの周りを通って外側アンカー(又はアンカーの列)まで通過し、それによって腱の外側端部を骨上に押し付け得る。この構成における第2の縫合糸のセットの需要は、負荷の大部分が腱、デバイス、及び内側縫合糸/アンカーの間に向けられることとなるため、低くなる。
【0069】
一部の実施形態では、ガイド500が軟部組織係合デバイス100及び/又は1つ以上のアンカーを挿入するために使用され得る。
図14A~
図14Cは、軟部組織係合デバイス100tのアンカー413a及び413bとの整列及び適切な配置を達成するのを助けるガイドの例示的な実施形態を示している。
図14Aにおいて、デバイス100tは、アーム510を使用して、耐荷重方向を横断する腱10を通して挿入される。
図14Bに示すように、アンカー413aは、その後、パンチ520aを使用して、腱10を通し、デバイス100tのアンカー受容開口部135aを通して、骨20内に配置される。アンカー413bは、
図14Cに示すように、パンチ520bを使用して同様に配置される。この実施形態では、デバイス100tがアンカー413abに直接係合するため、縫合糸の必要性は排除されることを理解されたい。
【0070】
一部の実施形態では、1つ以上の組織係合デバイスを使用して、軟部組織構造の1つの切断された端部を別の切断された端部に取り付け得る。例えば、デバイスを使用して、切断された腱又は靭帯の端部を再取り付けし得る。そのような実施形態では、第1の組織係合デバイスが、組織の第1の切断された端部の組織内に挿入され得、一方、第2の組織係合デバイスが、組織の第2の切断された端部内に挿入され得る。次いで、縫合糸が、組織を通して通過させられ、組織係合デバイスの周りを通過させられ、1つ以上のループを形成するように結ばれ得、組織の切断された端部を互いに固着させる。軟部組織の骨に対する接続と同様に、組織係合デバイスは、縫合切断又は組織を通る縫合糸の「チーズワイヤリング」に対する耐性を向上させ得、それによって修復の引張強度を向上させる。
【0071】
図12は、5~50Nの周期的な負荷を受ける3つの腱修復についての負荷変位曲線を示す。曲線510は、縫合糸ブリッジによって接続された骨アンカーの内側及び外側列を使用して構築された対照腱修復に対応する。曲線520は、(例えば、
図8及び
図9に示すような)縫合糸ブリッジによって接続された骨アンカーの内側及び外側列と組み合わせて、本開示による組織係合デバイスを使用して構築された腱修復に対応する。曲線530は、骨アンカーの内側列のみと組み合わせて(例えば、
図11に示すように)、本開示による組織係合デバイスを使用して構築された腱修復に対するaに対応する。対照510と比較すると、曲線520及び530は、本開示の組織係合デバイスによって構築された修復が対照よりも剛性が高く、繰り返されるサイクルにわたってクリープが少ないことを示している。対照510におけるクリープの増加は、組織を通る縫合糸「チーズワイヤ」としての腱への損傷によるものである。更に、縫合糸の長さが縮小されたため、内側アンカーのみを使用した修復(曲線530)は、内側及び外側アンカーの両方を使用した修復よりも剛性が高いことが明らかである。
【0072】
当業者は、本開示の広範な一般的な範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に多数の変形及び/又は修正が行われ得ることを理解するであろう。したがって、本実施形態は、全ての点において例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0073】
10 軟部組織
13 外側端部
20 骨
30 筋肉
40 縫合糸
50 内側列
60 外側列
100 軟部組織係合デバイス
100a~t 組織係合デバイス
101 第1の端部
102 第2の端部
110 ラグ
120 側壁
121 状部材
122a 端部
125 内側ルーメン
130 本体
131 開口部
131a、131b ラグ
132、132a、132b 開口部
133、134、134a、134b ラグ
135a アンカー受容開口部
136 シャフト
200~204 縫合糸
400、411、411a、411b 内側アンカー
412a、412b、415、421 外側アンカー
413a、413b アンカー
500 ガイド
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部から第2の端部まで延在する実質的に剛体の細長い本体を備える軟部組織係合デバイスであって、前記細長い本体が、軟部組織内に、前記軟部組織の耐荷重方向を横断して少なくとも部分的に挿入されるように構成されており、かつ骨に固着された基盤となる縫合糸アンカーに取り付けられた縫合糸と係合し、それによって前記軟部組織を前記骨上に引き付けるように構成されている、軟部組織係合デバイス。
【請求項2】
前記細長い本体が、弾性的に柔軟である、請求項1に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項3】
前記細長い本体の断面が、前記細長い本体の丈に沿って実質的に均一である、請求項1又は2に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項4】
前記細長い本体が、比較的より大きな断面直径のエリアを備える、請求項1又は2に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項5】
前記細長い本体が、一方の端部から他方の端部まで前記細長い本体の丈に沿って先細になっているか、又は中央領域から前記第1及び第2の端部に向かって先細になっている、請求項1又は2に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項6】
前記細長い本体が、前記第1及び第2の端部のうちの一方又は両方に保持ラグを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項7】
前記細長い本体が、前記細長い本体の丈に沿って実質的に中実である、請求項1~6のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項8】
前記細長い本体の少なくとも丈が、中空である、請求項1~6のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項9】
前記細長い本体の側壁が、前記縫合糸を受容するための1つ以上の開口部を前記側壁内に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項10】
前記細長い本体が、前記縫合糸のためのグリップを提供するための粗い表面のエリアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項11】
前記細長い本体が、縫合糸を受容するための1つ以上の溝を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【請求項12】
前記細長い本体が、前記細長い本体の各端部に隣接する縫合糸を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の軟部組織係合デバイス。
【国際調査報告】