(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】流体流を加熱するための電気加熱システム
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20231124BHJP
B64G 1/40 20060101ALI20231124BHJP
F03H 99/00 20090101ALI20231124BHJP
【FI】
H05B3/10 A
B64G1/40 600
F03H99/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531081
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021080614
(87)【国際公開番号】W WO2022111968
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ、ロメイ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ロビンソン
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092PP20
3K092QA02
(57)【要約】
流体流を加熱するための電気加熱システムであって、電気加熱システムによって加熱されるべき流体流のための入口と、電気加熱システムによって加熱された流体流のための出口とを有するハウジングと、ハウジング内に取り付けられる抵抗ヒータとを備える、システム。抵抗ヒータは、入口及び出口にそれぞれ流体的に結合される流体入力及び流体出力と、導電性材料から構成される複数の環状壁であって、壁が、長手方向軸の周りに同心円状に直列に配置される複数の環状フローチャネルを画定するように入れ子にされ、壁が、長手方向軸に沿って互いに離間される抵抗ヒータの両側の第1及び第2の端部間で延在する、複数の環状壁と、抵抗ヒータの壁を加熱するべく電気エネルギー源に接続するための第1及び第2の電気端子であって、互いに隣り合うとともに抵抗ヒータの径方向外側に位置される壁の外側対を備えるそれぞれの第1及び第2の壁に電気的に接続される、第1及び第2の電気端子とを備える。複数の環状壁が互いに機械的に接続され、それによって、隣り合うフローチャネルは、反対の流体流れ方向を有するとともに、それぞれのチャネルの隣り合う端部で接続されて、交互の蛇行流路を画定し、該蛇行流路は、流体入力に入力端部を有し、流体出力に出力端部を有し、入力端部及び出力端部は、長手方向軸に対して径方向外側位置及び径方向内側位置にそれぞれ位置される。複数の環状壁は、互いに電気的に接続されて、第1及び第2の電気端子との間で延在する連続的な導電経路を画定し、導電経路は、第1の壁から抵抗ヒータの中心まで延在する第1の部分と、抵抗ヒータの中心から第2の壁まで延在する第2の部分とを有する。電気加熱システムを使用して高温流体流を生成する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流を加熱するための電気加熱システムであって、
前記電気加熱システムによって加熱されるべき流体流のための入口と、前記電気加熱システムによって加熱された前記流体流のための出口とを有するハウジングと、
前記ハウジング内に取り付けられる抵抗ヒータと、
を備え、前記抵抗ヒータは、
前記入口及び前記出口にそれぞれ流体的に結合される流体入力及び流体出力と、
導電性材料から構成される複数の環状壁であって、前記壁が、長手方向軸の周りに同心円状に直列に配置される複数の環状フローチャネルを画定するように入れ子にされ、前記壁が、前記長手方向軸に沿って互いに離間される前記抵抗ヒータの両側の第1及び第2の端部間で延在する、複数の環状壁と、
前記抵抗ヒータの前記壁を加熱するべく電気エネルギー源に接続するための第1及び第2の電気端子であって、互いに隣り合うとともに前記抵抗ヒータの径方向外側に位置される前記壁の外側対を備えるそれぞれの第1及び第2の壁に電気的に接続される、第1及び第2の電気端子と、
を備え、
前記複数の環状壁が互いに機械的に接続され、それによって、隣り合うフローチャネルは、反対の流体流れ方向を有するとともに、前記それぞれのチャネルの隣り合う端部で接続されて、交互の蛇行流路を画定し、該蛇行流路は、前記流体入力に入力端部を有し、前記流体出力に出力端部を有し、前記入力端部及び前記出力端部は、前記長手方向軸に対して径方向外側位置及び径方向内側位置にそれぞれ位置され、
前記複数の環状壁は、互いに電気的に接続されて、前記第1及び前記第2の電気端子との間で延在する連続的な導電経路を画定し、前記導電経路は、前記第1の壁から前記抵抗ヒータの中心まで延在する第1の部分と、前記抵抗ヒータの中心から前記第2の壁まで延在する第2の部分とを有する、
電気加熱システム。
【請求項2】
前記流体入力及び前記流体出力は、前記抵抗ヒータの前記第1及び第2の端部にそれぞれ位置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各環状壁は、前記導電性材料の中実層又は前記導電性材料の有孔層のいずれかから構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記抵抗ヒータは、前記導電性材料の中実層又は有孔層から構成される交互の環状壁を備え、前記導電性材料の前記中実層から構成される各環状壁には、その径方向外側及び径方向内側の少なくとも一方又は両方に、前記導電性材料の前記有孔層から構成される環状壁が隣り合っており、前記導電性材料の前記有孔層から構成される各環状壁には、その径方向外側及び径方向内側の少なくとも一方又は両方に、前記導電性材料の前記中実層から構成される環状壁が隣り合っている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
各環状壁が前記導電性材料の中実層から構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記壁は、入れ子になって一連の前記壁を形成するn個の壁を備え、前記一連の壁は、n=1を有する径方向最内壁、n=nを有する径方向最外壁、及びそれらの間の少なくとも1つの径方向中間壁を有し、それぞれの壁が1~nのそれぞれの値nを有し、前記壁は、nを偶数として有する壁を電気的に接続して前記導電経路の前記第1の部分を形成する第1の電気接続部によって及びnを奇数として有する壁を電気的に接続して前記導電経路の前記第2の部分を形成する第2の電気接続部によって互いに電気的に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1及び第2の電気接続部は、前記それぞれの電気接続部によって電気的に相互接続される前記壁と一体である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2の電気接続部のそれぞれは、前記長手方向軸と平行又は直交する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも幾つかの壁には、それを貫通して延びる開口が設けられ、第1及び第2の電気接続部のうちの少なくとも一方がそれぞれの開口を貫通して延びる、請求項6から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1及び第2の電気接続部が機械的接続部も備え、該機械的接続部によって前記壁が機械的に互いに接続される、請求項6から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記壁のうちの少なくとも1つが円筒形部分及び隣り合う円錐形部分を備え、前記円筒形部分の自由端部分が前記抵抗ヒータの前記第2の端部に位置され、前記円錐形部分が前記抵抗ヒータの前記第1の端部に向かって方向付けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記抵抗ヒータの前記第1の端部に最も近い前記円錐形部分は、前記複数の環状壁の閉鎖端部分を画定する中実層を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気加熱システムは、前記抵抗ヒータの前記第2の端部に位置される、電気絶縁材料で構成される環状閉鎖部材を更に備え、前記閉鎖部材は、前記抵抗ヒータの前記第2の端部で前記環状フローチャネルの端部を閉鎖して、前記抵抗ヒータの前記第2の端部で前記交互の蛇行流路に方向変化をもたらす、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電気絶縁性の閉鎖部材は、前記抵抗ヒータと接触する又は前記抵抗ヒータから離間される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
1つの環状壁は、前記抵抗ヒータの前記第1の端部で前記複数の環状壁の閉鎖端部分を形成するように構成され、前記閉鎖端部分は、前記抵抗ヒータの前記第1の端部で前記環状フローチャネルの端部を閉鎖して、前記抵抗ヒータの前記第1の端部で前記交互の蛇行流路に方向変化をもたらす、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記抵抗ヒータは、前記環状壁の内側対を互いに電気的に接続する前記抵抗ヒータの中心に位置される導電性材料で構成された電気コネクタを更に備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気コネクタが一対の長尺な螺旋要素を備え、これらの螺旋要素は、前記長手方向軸の周りに同心円状に配置されるとともに、前記最内壁によって囲まれ、各螺旋要素の第1の端部が前記壁の前記内側対のそれぞれの壁に接続され、前記螺旋要素の反対側の第2の端部が前記電気コネクタの接続部材によって互いに接続される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記接続部材が環状リングを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記螺旋要素の前記第1の端部が前記抵抗ヒータの前記第2の端部に位置される、請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
前記抵抗ヒータが一体のモノリシック本体を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記一体のモノリシック本体は、選択的レーザ溶融(SLM)、選択的レーザ焼結(SLS)、直接金属レーザ焼結(DMLS)、中性ビーム溶融(NBM)、電子ビーム溶接(EBW)、レーザ堆積溶接(LDW)、レーザビーム溶融(LBM)、レーザ金属堆積(LMD)、電子ビーム溶融(EBM)、直接エネルギー堆積(DED)、高速プロトタイピング(RP)、又は高速製造(RM)から任意選択的に選択される付加製造技術によって製造される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記ハウジングは、前記抵抗ヒータの前記第1及び第2の電気端子のうちの一方に電気的に接続され、それによって、前記それぞれの電気端子が前記ハウジングを介して前記電気エネルギー源に接続可能である、請求項1から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記それぞれの電気端子は、前記抵抗ヒータと前記ハウジングとの間の機械的接続部と一体である又はそれとは別個である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1及び第2の電気端子は、有線接続によって前記電気エネルギー源に電気的に接続されるように構成される、請求項1から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1及び第2の電気端子に接続される電気エネルギー源を更に備え、前記電気エネルギー源が直流電流又は交流電流を供給するように構成される、請求項1から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
複数の前記抵抗ヒータが前記ハウジング内に位置され、前記抵抗ヒータは、流体流のための前記入口及び前記出口に対して直列又は並列に配置される、請求項1から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記電気加熱システムは、レジストジェットであり、宇宙船に設置するように構成される、請求項1から26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
高温の流体流を生成する方法であって、
a)請求項1から27のいずれか一項に記載の電気加熱システムを設けるステップと、
b)加熱されるべき流体を流れ抵抗器の前記流体入力に供給することによって前記交互の蛇行流路に沿って前記流れ抵抗器の前記流体出力に流すステップであって、前記供給された流体が、前記ハウジングの外部を取り囲む外部ガス圧力よりも大きい圧力を有する、ステップと、
c)前記抵抗ヒータによって前記交互の蛇行流路内の前記流体流を加熱するために前記第1及び第2の端子の両端間に電位を印加するステップと、
d)前記ハウジングの前記出口から前記加熱された流体流を放出するステップと、
を含む方法。
【請求項29】
前記加熱された流体は、収束ノズルを介して亜音速又は音速で前記ハウジングの前記出口から放出される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記加熱された流体は、収束-発散ノズルを介して超音速又は極超音速で前記ハウジングの前記出口から放出される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記電気加熱システムは、レジストジェットであり、宇宙船内に設置され、前記方法は、前記宇宙船を宇宙空間で移動させるためのものである、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流を加熱するための電気加熱システム及びそのようなシステムを使用して流体流を加熱する方法に関する。本発明は、例えば、宇宙船内のレジストジェットスラスタ用のヒータ又はフローヒータを提供するためのそのような電気加熱システムの使用に対して特定の用途を有する。
【背景技術】
【0002】
電熱スラスタは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、ガス状推進剤のよどみ点温度を上昇させる衛星用の電気推進スラスタの一種である。よどみ点温度が高いほど、性能が高い。レジストジェットは、固体加熱要素のジュール(又は抵抗)加熱によってガスを加熱する電熱スラスタクラス内の技術である。高温レジストジェットは、高性能を与えるため魅力的であるが、ガス温度はヒータの動作温度によって制限される。
【0003】
従来のレジストジェットは、気体形態の推進剤を直接的又は間接的に加熱するために電気ヒータを使用する。ガスは、装置の外部温度を制限することによって、レジストジェットの熱効率を最大にするために使用される熱交換器を通じて流れる。高温レジストジェットの形態は、この設計概念の動作を首尾よく実証した、同心管状熱交換器による推進剤の直接的な加熱を使用して過去に得られている。しかしながら、この形態の製造は、化学蒸着(CVD)及び電子ビーム(EB)溶接の2つの製造技術の組み合わせを伴っていた。結果として、組み立て手順が長く複雑なプロセスであった。
【0004】
既知の高温レジストジェットは、同心円状に配置される化学蒸着によって製造された一連の長尺な管状要素からなる同心円管状ヒータを備える。管は、それらの端部が、電子ビーム溶接によって取り付けられた小さな支柱によって接合された。そのような管状ヒータ構造は、極端な加熱によってもたらされる著しい熱膨張と、ヒータアセンブリが必要とする多数の溶接継手に由来する製造上の欠陥との組み合わせに起因する早期不具合の問題を被った。
【0005】
(1)「Manufacturing of a High-Temperature Resistojet Heat Exchanger by Selective Laser Melting」と題されるF.Romei、A.N.Grubisic、D.Gibbonによる論文、Acta Astronaut.138(2017)356-368.doi:10.1016/j.actaastro.2017.05.020、(2)「Validation of an additively manufactured resistojet through experimental and computational analysis」と題されるF.Romei及びA.N.Grubisicによる論文、Acta Astronaut.(2020).doi:10.1016/j.actaastro.2019.10.046、及び(3)「Endurance testing of the additively-manufactured STAR resistojet」と題されるM.Robinson,A.Grubisic、G.Rempelos,F.Romei,C.Ogunlesi及びS.Ahmedによる論文、Mater.Des.(2019)107907.doi:10.1016/J.MATDES.2019.107907に開示されるように、同心管状ヒータは、金属付加製造を使用して単一のモノリシック部品として製造された。しかしながら、その管状ヒータ構造は、サイクルヒータ動作によってもたらされる熱膨張に起因する早期不具合の問題も被った。
【0006】
付加製造されたレジストジェットの更なる態様及び特徴は、2019年9月15日~20日にオーストリアのウィーンのウィーン大学で行なわれた第36回国際電気推進会議での以下のプレゼンテーション、すなわち、(i)「The development and qualification of the STAR resistojet system for telecommunications applications」と題されるRomei,F.、Robinson,M.D.、Ogunlesi,C.、Gibbon,D.及びGrubisic,A.N.によるプレゼンテーション、(2)「Lifetime investigations of an additively manufactured high-temperature resistojet heat exchanger from tantalum」と題されるRobinson,M.D.,Grubisic,A.N.,Romei,F.及びOgunlesi,C.によるプレゼンテーション、及び(3)「Structural effects on the high temperature performance of the Super High Temperature Additive Manufactured Resistojet(STAR)」と題されるOgunlesi,C.、Romei,F.、Robinson,M.D.、Grubisic,A.N.及びGibbon,D.によるプレゼンテーションに開示される。
【0007】
モノリシックヒータ設計について前述した問題を克服することができる構造設計を有するレジストジェットを製造するためのこれらの広範な努力にもかかわらず、それにもかかわらず、レジストジェットとして使用することができ、高いレベルの信頼性を有し、好ましくは例えば3D印刷によって付加的に製造することもできる流体流を加熱するための電気加熱システムに対する必要性が当該技術分野において依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Manufacturing of a High-Temperature Resistojet Heat Exchanger by Selective Laser Melting」と題されるF.Romei、A.N.Grubisic、D.Gibbonによる論文、Acta Astronaut.138(2017)356-368.doi:10.1016/j.actaastro.2017.05.020
【非特許文献2】「Validation of an additively manufactured resistojet through experimental and computational analysis」と題されるF.Romei及びA.N.Grubisicによる論文、Acta Astronaut.(2020).doi:10.1016/j.actaastro.2019.10.046
【非特許文献3】「Endurance testing of the additively-manufactured STAR resistojet」と題されるM.Robinson,A.Grubisic、G.Rempelos,F.Romei,C.Ogunlesi及びS.Ahmedによる論文、Mater.Des.(2019)107907.doi:10.1016/J.MATDES.2019.10790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、例えば3,500Kもの高温で確実に動作し、既知のレジストジェットと比較して高い信頼性を達成することができる電気ヒータ形態を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、小型であり、例えば、そのほかの点ではモノリシック電気ヒータを製造することができる「3D印刷」として当技術分野で知られている付加製造プロセスを使用して低コストで製造することができる電気ヒータ形態を提供することを目的とする。本発明で使用するための好ましい付加製造プロセスは、選択的レーザ溶融(SLM)として当技術分野で知られている。
【0011】
また、本発明は、高い熱効率を示す電気ヒータ形態を提供することも目的とする。
【0012】
また、本発明は、加熱された流体流を提供するために、レジストジェットでの使用に加えて、他の用途で使用することができる電気ヒータ形態を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、流体流を加熱するための電気加熱システムであって、
電気加熱システムによって加熱されるべき流体流のための入口と、電気加熱システムによって加熱された流体流のための出口とを有するハウジングと、
ハウジング内に取り付けられる抵抗ヒータと、
を備え、抵抗ヒータは、
入口及び出口にそれぞれ流体的に結合される流体入力及び流体出力と、
導電性材料から構成される複数の環状壁であって、壁が、長手方向軸の周りに同心円状に直列に配置される複数の環状フローチャネルを画定するように入れ子にされ、壁が、長手方向軸に沿って互いに離間される抵抗ヒータの両側の第1及び第2の端部間で延在する、複数の環状壁と、
抵抗ヒータの壁を加熱するべく電気エネルギー源に接続するための第1及び第2の電気端子であって、互いに隣り合うとともに抵抗ヒータの径方向外側に位置される壁の外側対を備えるそれぞれの第1及び第2の壁に電気的に接続される、第1及び第2の電気端子と、
を備え、
複数の環状壁が互いに機械的に接続され、それによって、隣り合うフローチャネルは、反対の流体流れ方向を有するとともに、それぞれのチャネルの隣り合う端部で接続されて、交互の蛇行流路を画定し、該蛇行流路は、流体入力に入力端部を有し、流体出力に出力端部を有し、入力端部及び出力端部は、長手方向軸に対して径方向外側位置及び径方向内側位置にそれぞれ位置され、
複数の環状壁は、互いに電気的に接続されて、第1及び第2の電気端子との間で延在する連続的な導電経路を画定し、導電経路は、第1の壁から抵抗ヒータの中心まで延在する第1の部分と、抵抗ヒータの中心から第2の壁まで延在する第2の部分とを有する、
電気加熱システムを提供する。
【0014】
本発明は、高温の流体流を生成するそのようなシステム方法を使用して流体流を加熱する方法を更に提供し、該方法は、
a)本発明に係る電気加熱システムを設けるステップと、
b)加熱されるべき流体を抵抗ヒータの流体入力に供給することによって交互の蛇行流路に沿って抵抗ヒータの流体出力に流すステップであって、供給された流体が、ハウジングの外部を取り囲む外部ガス圧力よりも大きい圧力を有する、ステップと、
c)抵抗ヒータによって交互の蛇行流路内の流体流を加熱するために第1及び第2の端子の両端間に電位を印加するステップと、
d)ハウジングの出口から加熱された流体流を放出するステップと、
を含む。
【0015】
本発明のシステム及び方法の好ましい特徴は、それぞれの従属請求項に規定される。
【0016】
本発明のシステム及び方法は、流体を高温、例えば3,500Kまで加熱する必要がある任意の用途で使用することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、特に、例えばモノリシック抵抗ヒータを製造することができる選択的レーザ溶融(SLM)などの付加製造プロセスを使用することによって、小型で且つ低コストで製造することができる抵抗ヒータを備える、流体流を加熱するための電気加熱システムを提供することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、抵抗ヒータの高温要素が熱負荷下で自由に膨張及び収縮できるようにする抵抗ヒータ形態を提供することができる。この改善は、抵抗ヒータが宇宙船内のレジストジェットとして使用される場合に、電気ヒータシステムが宇宙任務のための典型的な寿命要件を満たすことができるための基本である。実験室環境寿命試験により、本発明の好ましい実施形態が、衛星などの宇宙船の典型的なミッション要件を超える、6,000サイクルを上回る加熱/冷却のヒータ寿命を示すことができる抵抗ヒータ形態を提供できることが分かった。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、3,500Kもの高い温度への流体の加熱を可能にすることができる、純粋な又は合金の形態の耐火性金属から構成される抵抗ヒータを提供することができる。或いは、例えば、腐食又は酸化が潜在的に重大な問題である場合、最高温度が唯一の要件ではない用途のために、非耐熱性金属、例えばニッケル合金又は鋼を使用して抵抗ヒータを製造することができる。本発明の好ましい実施形態の抵抗ヒータは、高い熱効率を維持し、数千回の加熱サイクルにわたってヒータの完全性を示しながら、この範囲内の任意の所与の出口温度を達成するように設計することができる。更に、抵抗ヒータが一体のモノリシック形態を有する場合、抵抗ヒータは、複数の部品及び材料を使用する従来の組み立て方法と比較して、設計の自由度がより高く、更により迅速且つ安価な製造を提供することができる。更に、付加製造技術による一体のモノリシック形態の抵抗ヒータの製造は、付加製造技術(AM)の将来のコストが減少すると予測される一方で、印刷の品質及び材料の選択が増加すると予測されるという利点を有し、本発明の好ましい実施形態による抵抗ヒータの利点及び利点を向上させる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、第1の組の壁が環状流路を画定するとともに第2の組の壁が第1の組の壁によって形成された環状流路の内側に位置する、壁構造を使用することによって、流体への熱伝達を改善することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、温度が低い抵抗ヒータの外部に位置される電気端子を提供することができる。これにより、電気端子の機械的接続が簡素化され、抵抗ヒータからの導電性熱損失が低減され、熱効率が向上する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、電気ヒータシステムの圧力エンベロープとして使用時に機能するハウジングの一部を抵抗ヒータが形成しないようにすることができる。したがって、溶接を行なうことなく抵抗ヒータを製造することができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、モノリシック電気ヒータを製造することができる選択的レーザ溶融(SLM)などの付加製造プロセスによって抵抗ヒータを製造できるようにすることができる。そのようなプロセスを使用して、単一の印刷プロセスで大量の抵抗ヒータを製造することができ、抵抗ヒータは、例えば上記の刊行物から当業者に知られているニッケル合金及び耐熱合金などの高融点材料で製造することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態の抵抗ヒータは、特に、1つの付加製造(AM)プロセスにおいて単一の構成要素として製造される場合、異なる熱交換器及びヒータの概念のハイブリッドを利用する。抵抗ヒータは2つの主な機能を有する。すなわち、抵抗ヒータは、電流が流れると電気抵抗を使用して発熱し、また、抵抗ヒータは、そこを流れる流体を対流加熱する。本発明の好ましい実施形態の抵抗ヒータは、コンパクトで低コストのパッケージにおいて、高い熱効率で高い流体温度を達成するように容易に構成することができる。高温は循環流の幾何学的形状によって達成され、それによって、流体は、抵抗ヒータを通過する一連の通過を行ない、流体加熱時間を延長する。
【0025】
付加製造プロセスを使用して、本発明の好ましい実施形態の抵抗ヒータは、所与の構造温度に対して流体温度を最大化することができる熱伝達効率を高めるために、そのような特徴及びメッシュを容易に組み込むことができる。循環流形状は、抵抗ヒータの外径で加熱されるべき低温流体を導入することによって高い熱効率を可能にし、低音流体は、流体が抵抗ヒータの流体出口と流体連通する中心に向かって内側に循環するときに抵抗ヒータから失われる放射熱を取り込む。
ここで、以下の図面に関連して、本発明の実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る抵抗ヒータを組み込む電気ヒータシステムの全体構造を示す概略図である。
【
図2】
図1の電気ヒータシステムの概略図であるが、抵抗ヒータを介して加熱された流体が膨張されて亜音速/音速流領域に留まり、流出する流体が高い静的温度を保持するようにする、ハウジング又は圧力エンベロープを提供するべく変更された本発明の一実施形態に係る電気ヒータシステムの概略図である。
【
図3】
図1の電気ヒータシステムの概略図であるが、抵抗ヒータを介して加熱された流体が超音速/極超音速流領域まで膨張及び加速され、流出する流体が低い静的温度を有するようにする、ハウジング又は圧力エンベロープを提供するべく変更された本発明の他の実施形態に係る電気ヒータシステムの概略図である。
【
図4】本発明の更なる実施形態に係るモノリシック抵抗ヒータの部分的に切り取った流出端からの斜視側面図である。
【
図5】
図4のモノリシック抵抗ヒータの半分を通る長手方向断面であり、モノリシック抵抗ヒータにおける流体の流れ及び電気的接続を概略的に示す概略図である。
【
図6】本発明の更なる実施形態に係るモノリシック抵抗ヒータの部分的に切り取った流出端からの斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施形態に係る電気加熱システムの一般的な構成を示す
図1を参照すると、本発明は、流体流を加熱するための全体的に100として示される電気加熱システムを提供する。流体流は、供給システム102によって流体源101から供給される。流体は、単一の流体成分又は複数の流体成分の混合物を含んでもよい。システム100は、電気加熱システム100によって加熱されるべき流体流入103のための入口110と、電気加熱システム100によって加熱された流体流出105のための出口111とを有する、そのほかの点では圧力エンベロープとして当技術分野で知られているハウジング104を備える。抵抗ヒータ108が、取り付け機構(図示せず)によってハウジング104内に取り付けられる。抵抗ヒータ108は、入口110及び出口111にそれぞれ流体的に結合される流体入力112及び流体出力113を備える。流体は、供給システム102によって所望の圧力及び流量で流入103に供給される。
【0028】
システム100は、電気エネルギー源106から抵抗ヒータ108に電気エネルギーを供給するために、ハウジング104の外部に位置されたパワーエレクトロニクス107を更に備える。本発明の図示の実施形態において、抵抗ヒータ108は、有線接続によって電気エネルギー源106に電気的に接続されるように構成される。
【0029】
電気エネルギー源106は、抵抗ヒータ108を加熱する直流電流又は任意の所望の周波数の交流電流を供給するように構成される。
【0030】
流体は、熱エネルギーを放出して流体を加熱する抵抗ヒータ108を通じて流れ、流出105の総エンタルピーは、流入103のエンタルピーに対して増大される。
【0031】
本発明の図示の実施形態では、単一の抵抗ヒータ108がハウジング104内に位置される。しかしながら、本発明の別の実施形態では、複数の抵抗ヒータ108がハウジング104内に位置され、抵抗ヒータ104は、流入103及び流出105に対して直列又は並列に配置されてもよい。また、複数の抵抗ヒータ104は、電気的に直列又は並列に配置されてもよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、電気加熱システム100は、レジストジェットであり、宇宙船を宇宙で移動させる際に使用するために、宇宙船に設置するように構成される。
【0033】
図2は、本発明の第1の好ましい実施形態を示し、この実施形態において、流体流出205のための出口211は、ハウジング204の円錐台形壁201によって画定された収束形状を有する。使用時には、そのような出口211は、加熱された流体を、流体中の音速以下の速度でオリフィス202を通じて放出し、流体中の高い静的温度を保持する。円錐台形壁201の収束度を変化させて、流出速度及び静的温度を変化させることができる。
【0034】
図3は、本発明の第2の好ましい実施形態を示し、この実施形態において、流体流出305のための出口311は、ハウジング304と一体化される又は更なる構成要素によって達成される、出口311には、収束セクション301、スロート302、及び発散セクション303が形成される。そのような流出305は、下流又は周囲圧力よりも十分に高いハウジング内の背圧で動作するとき、流体中の音速よりも速い速度で加熱流体を放出する。したがって、より低温の高速流が生成される。ダクトの発散度は、流出速度及び静的温度を変化させるために変化し得る。
【0035】
図2及び
図3の実施形態において、出口211,311は、ハウジング204,304の本体220,230と一体であってもよく、又はハウジング204,304の本体220,230に嵌合される更なる構成要素から構成されてもよい。そのような更なる構成要素の使用は、高温流体流出のための出口を含む一体のハウジングの使用と比較して、熱応力に対する電気加熱システムの堅牢性を高め、より長い期間にわたってより高い温度での動作を可能にし得る。
【0036】
図示されていない更なる別の実施形態において、流体流出のための出口は、いかなる収束又は発散形状も有さずに、ハウジングの本体の直径よりも小さい直径を有するオリフィスを伴う直線状であってもよい。
【0037】
次に、
図1~
図3のいずれかの構成で使用され得る、本発明の好ましい実施形態に係る抵抗ヒータ108の構造を、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0038】
抵抗ヒータ108は、導電性材料で構成された複数の環状壁120を備える。本明細書において、「環状」という用語は「略リング状」を意味し、幾何学的に円形の形状に限定されず、円形又は円形以外の形状、例えば楕円形、多角形などを包含する。図示の実施形態では、環状壁120が円形断面を有する。しかしながら、環状壁は、任意の所望の断面形状を有してもよく、これは、任意の多角形、例えば正方形、長方形、三角形、六角形などであってもよく、又は湾曲又は丸みを帯びた形状、例えば円形、楕円形などであってもよい。
【0039】
環状壁120は、長手方向軸L-Lの周りに同心円状に直列に配置される複数の環状フローチャネル122を画定するように入れ子にされる。環状壁120は、長手方向軸L-Lに沿って互いに離間される抵抗ヒータ108の両側の第1及び第2の端部124,126間で延在する。
【0040】
複数の環状壁120は互いに機械的に接続され、それによって隣り合うフローチャネル122は、反対の流体流れ方向を有し、それぞれのチャネル122の隣り合う端部128で接続されて、交互の蛇行流路130を画定し、該蛇行流路は、流体入力112に入力端部132を有し、流体出力113に出力端部134を有する。入力端部及び出力端部132,134はそれぞれ、長手方向軸L-Lに対して径方向外側位置及び径方向内側位置に位置される。流体入力112及び流体出力113はそれぞれ、抵抗ヒータ108の第1及び第2の端部124,126に位置される。交互の蛇行流路130は、抵抗ヒータ108の第1及び第2の端部124,126にそれぞれ位置される第1及び第2の環状閉鎖側面131,133を有する。閉鎖側面131,133には、隣り合うフローチャネル122を接続するターン137,139がそれぞれ設けられる。
【0041】
図示の実施形態では、最外壁120fが円筒形であり、最外壁120fとは別に、その内側の他の壁120a~120eは、円筒形部分136及び隣り合う円錐形部分138を備える。円筒形部分136の自由端部分140は、抵抗ヒータ108の第2の端部126に位置され、円錐形部分138は、抵抗ヒータ108の第1の端部124に向けられる。抵抗ヒータ108の第1の端部124に最も近い円錐形部分138は、複数の環状壁120の閉鎖端部分144を画定する中実層142を備える。
【0042】
したがって、最外壁120fに内側で隣り合う一方の環状壁120eは、抵抗ヒータ108の第1の端部124で複数の環状壁120の閉鎖端部分144を形成するように構成される。閉鎖端部分144は、抵抗ヒータ108の第1の端部124で環状フローチャネル122の端部128を閉鎖して、抵抗ヒータ108の第1の端部124で交互の蛇行流路130に方向変化をもたらす。
【0043】
各環状壁120は、
図5に実線で概略的に示される導電性材料の中実層、又は
図5に破線で概略的に示される導電性材料の有孔層のいずれかで構成される。
【0044】
図4及び
図5の実施形態において、抵抗ヒータ108は、導電性材料の中実又は有孔層で構成された交互の環状壁120を備える。最内壁120aは導電性材料の中実層125から構成され、隣り合う壁120bは導電性材料の有孔層127から構成され、次の壁120cは導電性材料の中実層125から構成され、次の壁120dは導電性材料の有孔層127から構成され、次の壁120eは導電性材料の中実層125から構成され、最外壁120fは導電性材料の有孔層127から構成される。
【0045】
したがって、導電性材料の中実層125から構成される各環状壁120a、120c、120eには、その径方向外側及び径方向内側の少なくとも一方又は両方に、導電性材料の有孔層127から構成される環状壁120b、120d、120fが隣り合っており、また、導電性材料の有孔層127からなる各環状壁120b、120d、120fには、その径方向外側及び径方向内側の少なくとも一方又は両方に、導電性材料の中実層125から構成される環状壁120a、120c、120eが隣り合っている。有孔層127は、有孔メッシュを備えるが、任意の他のタイプの穿孔を備えてもよい。
【0046】
図6に示される別の実施形態では、各環状壁120a~120fが導電性材料の中実層125から構成される。
【0047】
環状壁120a~120fは、一連の環状壁120a~120fを形成するように入れ子にされるn個の壁を備える。この連なりは、n=1を有する径方向最内壁120aと、n=nを有する径方向最外壁120fとを有する。また、この連なりは、径方向最内壁120aと径方向最外壁120fとの間に少なくとも1つの径方向中間壁120b~120eも有する。各径方向中間壁120b~120eは、1~nのそれぞれの値nを有する。
【0048】
第1及び第2の電気端子150,152は、抵抗ヒータ108の壁120を加熱するべく電気エネルギー源106に接続するために設けられる。第1及び第2の電気端子150,152は、互いに隣り合っているとともに抵抗ヒータ108の径方向外側に位置される壁120f、120eの外側対を備えるそれぞれの第1及び第2の壁120f、120eに電気的に接続される。このため、電気端子150,152は、最外側壁120f及びこれに内側で隣り合う壁120eに接続される。好ましい実施形態において、端子150,152が接続される壁120は、壁120f、120eの外側対を備えるが、端子150,152自体は、抵抗ヒータ108の径方向外側に又はそれに向かって位置される必要はない。第1の端子150は、抵抗ヒータ108の径方向外側に又はそれに向かって位置されてもよく、一方、第2の端子152は、第1の端子150から離間された任意の適切な位置の他の場所、例えば壁120の閉鎖端部分144の下方の抵抗ヒータ108の中心に位置されてもよい。しかしながら、端子150,152は、任意の所望の位置に位置されてもよい。前述したように、第1及び第2の電気端子150,152は、有線接続によって電気エネルギー源106に電気的に接続されるように構成される。
【0049】
複数の環状壁120は、互いに電気的に接続されて、第1及び第2の電気端子150,152との間で延在する連続導電経路156を画定する。導電経路156は、第1の壁、すなわち最外壁120fから抵抗ヒータ108の中心Cまで延在する第1の部分158と、抵抗ヒータの中心Cから第2の壁、すなわち最外壁120fに内側で隣り合う壁120eまで延在する第2の部分160とを有する。
【0050】
環状壁120a~120fは、nを偶数として有する壁120を電気的に接続して導電経路156の第1の部分158を形成する第1の電気接続部162によって、及びnを奇数として有する壁120を電気的に接続して導電経路156の第2の部分160を形成する第2の電気接続部164によって、互いに電気的に接続される。
【0051】
好ましい実施形態において、第1及び第2の電気接続部162,164は、それぞれの電気接続部162,164によって電気的に相互接続される壁120と一体である。第1及び第2の電気接続部162,164のそれぞれは、縦軸L-Lと平行又は直交する。少なくとも幾つかの壁120には、それを貫通して延びる開口168が設けられ、第1及び第2の電気接続部162,164の少なくとも一方は、それぞれの開口168を通じて延びる。また、第1及び第2の電気接続部162,164は機械的接続部170も備え、該機械的接続部によって壁120が機械的に互いに接続される。
【0052】
好ましい実施形態において、長手方向軸L-Lに直交する機械的接続部170も備える第1及び第2の電気接続部162,164は、径方向に向けられた横方向支柱172を備え、また、nが偶数である又はnが奇数である壁120を相互接続するために、周方向に離間して径方向に向けられた複数の横方向支柱172が壁120の周囲にわたって設けられる。支柱172は、抵抗ヒータ108の第1及び第2の端部124,126の両方に向かって設けられる。支柱172は、環状壁120を電気的及び機械的に接続し、構造的剛性及び電流経路を与える。
【0053】
好ましい実施形態において、長手方向軸L-Lと平行な機械的接続部170も備える第1及び第2の電気接続部162,164は、長手方向に向けられた壁部分174を備え、開口168を設けるべく、nが偶数である又はnが奇数である壁120を相互接続するために、壁120の周囲にわたって複数の周方向に離間して長手方向に向けられる壁部分174が設けられる、又はnが偶数である又はnが奇数である壁120を相互接続するために壁120の周囲にわたって単一の長手方向に向けられる壁部分174が設けられ、また、単一の長手方向に向けられた壁部分174には1つ以上の168が設けられる。
【0054】
抵抗ヒータ108は、抵抗ヒータ108の中心Cに位置された導電性材料で構成された電気コネクタ176を更に備え、この電気コネクタは、環状壁120a、120bの内側対を互いに電気的に接続する。電気コネクタ176は、
図4に示されるが、説明を明確にするために
図5には示されておらず、代わりにハッチング領域によって表わされる。
【0055】
図示の実施形態において、電気コネクタ176は、抵抗ヒータ108の内側コイル177の形態を成す。しかしながら、本発明の別の実施形態では、電気コネクタの任意の他の形状及び構成を使用して、環状壁120a、120bの内側対を電気的に接続することができる。例えば、
図6に示される別の実施形態において、電気コネクタ276は、中央オリフィス280を有する導電性材料のリング部材278の形態を成し、中央オリフィス280を通じて加熱された流体流が放出される。
【0056】
各実施形態において、電気コネクタ176,276は、好ましくは抵抗ヒータ108の環状壁120と一体であり、抵抗ヒータ108は、例えば選択的レーザ溶融(SLM)などの付加製造プロセスによって一体のモノリシック本体として形成される。
【0057】
電気コネクタ176は、長手方向軸L-Lの周りに同心円状に配置されて最内壁120aによって囲まれる一対の長尺な螺旋要素178a、178bを備える。各螺旋要素178a、178bの第1の端部180a、180bは、壁120a、120bの内側対のそれぞれの壁120a、120bに接続され、螺旋要素178a、178bの反対側の第2の端部182a、182bは、電気コネクタ176の接続部材184によって互いに接続される。接続部材184は、環状リングを備える。螺旋要素178a、178bの第1の端部180a、180bは、抵抗ヒータ108の第2の端部126に位置される。
【0058】
したがって、最も外側の環状壁120fは内側コイル177の螺旋要素178aに接続され、内側に隣り合う環状壁120eは内側コイル177の螺旋要素178bに接続され、螺旋要素178a、178bは接続部材184によって内側コイル177の下端部179に接続される。
【0059】
図示の実施形態では、中実環状壁120a、120c及び120eが熱を発生させて流体のフローチャネルを形成する。支柱172は、環状壁120に設けられた開口168を通過し、それにより、電流が、電気端子150から全ての有孔環状壁120f、120d及び120bを順に通過し、続いて中央加熱コイル177を通過し、その後全ての中実環状壁120a、120c及び120eを順に通過して電気端子152に至る(又はその逆)。端子150は、電気端子(正又は負)と、抵抗ヒータ108をハウジングに機械的に接続する手段との両方を備える。端子152は、ハウジング104の壁を貫通し、圧力エンベロープ境界を形成する導電体に接続された電気端子(正又は負)を備え、電気絶縁シール(図示せず)によってハウジングに対してシールされる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、抵抗ヒータ108は、一体のモノリシック本体186を備える。言い換えれば、環状壁120、第1及び第2の電気接続部162,164、機械的接続部170、電気コネクタ176並びに第1及び第2の電気端子150,152は全て、単一の一体のモノリシック本体186に含まれる。
【0061】
一体のモノリシック本体186は、選択的レーザ溶融(SLM)、選択的レーザ焼結(SLS)、直接金属レーザ焼結(DMLS)、中性ビーム溶融(NBM)、電子ビーム溶接(EBW)、レーザ堆積溶接(LDW)、レーザビーム溶融(LBM)、レーザ金属堆積(LMD)、電子ビーム溶融(EBM)、直接エネルギー堆積(DED)、高速プロトタイピング(RP)、及び高速製造(RM)から選択されてもよい付加製造技術によって製造することができる。好ましくは、一体のモノリシック本体186は、選択的レーザ溶融(SLM)によって製造され、抵抗ヒータ108の第2の端部126から始まり、抵抗ヒータ108の第1の端部124で終端するように抵抗ヒータ108を漸進的に形成する連続する水平スライス又は層を生成する。
【0062】
電気加熱システム100は、抵抗ヒータ108の第2の端部126に位置される環状閉鎖部材188を更に備える。環状閉鎖部材188は、
図5に非常に概略的に示されるが、説明を明確にするために
図4には示されない。
【0063】
環状閉鎖部材188は、電気絶縁材料、例えばセラミック材料で構成される。閉鎖部材188は、一般に、電気絶縁性の有孔ディスクであり、これは、流体出口113に対応する1つ以上の孔190を備え、抵抗ヒータ108の第2の端部126を閉栓して、交互の蛇行流路130の側面を閉鎖する。閉鎖部材188は、抵抗ヒータ108の第2の端部126における環状フローチャネル122の端部を閉鎖して、抵抗ヒータ108の第2の端部126で交互の蛇行流路130に方向変化をもたらす。閉鎖部材188は、抵抗ヒータ108と接触していてもよく、又は例えば抵抗ヒータ108から僅かな距離だけ離間していてもよい。
【0064】
本発明の幾つかの実施形態において、ハウジング104は、抵抗ヒータ108に電気的に接続されない。しかしながら、本発明の別の実施形態において、ハウジング104は、抵抗ヒータ108の第1及び第2の電気端子150,152の一方に電気的に接続されてもよく、それにより、それぞれの電気端子150,152は、ハウジング104を介して電気エネルギー源106に接続可能である。それぞれの電気端子50、52は、抵抗ヒータ108とハウジング104との間の機械的接続部(図示せず)と一体であってもよく、又は別個であってもよい。
【0065】
本発明は更に、高温の流体流を生成する方法を提供する。本発明の好ましい実施形態において、電気加熱システム100は、レジストジェットであり、宇宙船内に設置され、方法は、宇宙船を宇宙空間で移動させるためのものである。
【0066】
この方法は、前述のような電気加熱システム100を提供することを含む。加熱されるべき流体は、流れ抵抗器108の流体入力112に供給され、それによって蛇行流路130に沿って流れ抵抗器108の流体出力113に流れる。供給された流体は、ハウジング104の外部192(
図1参照)を取り囲む外部ガス圧よりも大きい圧力を有する。
【0067】
抵抗ヒータ108によって交互の蛇行流路130内の流体流を加熱するために、第1及び第2の端子150,152の両端間に電位が印加される。流体は、底部から流れ、上側ターン139及び下側ターン137を介してフローチャネル122を直列に循環し、最終的に内側コイル177及び流出に到達する。次いで、加熱された流体流は、ハウジング104の出口112から放出される。
図2の実施形態において、加熱された流体は、収束ディフューザを介して亜音速又は音速でハウジングの出口から放出される。
図3の実施形態において、加熱された流体は、収束-発散ノズルを介して超音速又は極超音速でハウジングの出口から放出される。
【0068】
中実環状壁120は、それらの間にフローチャネル122を画定する。一般に有孔メッシュの形態を成す有孔環状壁120は、同じ寸法の中実環状壁と比較して、増大した電気抵抗及び増大した表面積を有する。したがって、中実環状壁120に隣り合って特にフローチャネル122内に交互の有孔環状壁120を設けることにより、所与の電流に関して流体への熱伝達を向上させることができる。
【0069】
更に、図示の実施形態において、中実環状壁120は、滑らかな内側円筒面及び外側円筒面を有する。しかしながら、代替的に、内側円筒面及び外側円筒面のいずれか又は両方にレリーフ面が設けられてもよく、このレリーフ面は表面積を増大させ、熱伝達を向上させることができる。このような表面特徴は、選択的レーザ溶融(SLM)などの付加製造プロセスを使用して容易に達成することができる。また、環状壁120は、厚さ並びに断面形状及び寸法が変化してもよい。
【0070】
本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムの主な用途は、宇宙用途の高温レジストジェットである。このような高温レジストジェットは、小型から大型のプラットフォームで使用することができ、レジストジェットは、それぞれ一次又は二次推進力を与えるスラスタとして使用することができる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムは、任意の他の現在のレジストジェットと比較して、より高い推進剤使用効率(比推力-Isp)を与えることができる。したがって、本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムは、コンステレーションを含む小型衛星用の非常に費用効果の高い推進システムを提供することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムにおける抵抗ヒータは、電気エネルギーを、流体に伝達される熱エネルギーに極めて効率的に変換することができる。抵抗ヒータは、エネルギーを流れに直接放出し、再循環経路を形成し、その結果、抵抗ヒータの中心に最高温度が生成され、最大95%の熱効率を達成する。抵抗ヒータが高融点金属で構成される場合、抵抗ヒータは、燃焼又は他の化学反応に依存することなく、流体を3,500Kもの高温に加熱することができる。更に、本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムにおける抵抗ヒータは、一体のモノリシック抵抗ヒータを提供するために、付加製造プロセス、例えば選択的レーザ溶融(SLM)によって製造することができる。この付加製造プロセスは、製造中のコスト及び複雑さを低減する単一の製造プロセスとして使用することができるだけでなく、熱膨張応力を最小化又は排除することができるため、高い使用中信頼性を有する抵抗ヒータを提供することもできる。この付加製造プロセスはまた、モノリシック抵抗ヒータのコンパクトで低コストを生成することができる。
【0073】
加えて、電気端子は、抵抗ヒータの外部に配置されるか、又は抵抗ヒータの外部に接続されることができ、抵抗ヒータの径方向最も外側の対の環状壁に接続されることができ、これにより、抵抗ヒータの最も外側の環状壁が冷えたままであり、温度上昇の熱勾配が、一般に、抵抗ヒータの外周から抵抗ヒータの中心に向かって延びることができる。温度上昇のそのような温度勾配はまた、一般に、抵抗ヒータを通る流体流の入力から出力まで延びる。これにより、熱効率が向上し、流体の高い出口温度を達成することが可能になる。
【0074】
衛星産業では、本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムを使用して、有害な推進剤を使用する化学推進システムを置き換えることができ、これにより、衛星アセンブリの統合及び試験活動のコストを大幅に削減することができ、宇宙船の設計を単純化することができる。
【0075】
更に、本発明の好ましい実施形態の電気ヒータシステムは、衛星推進以外の様々な他の熱流用途に使用することができる。例えば、本発明は、バイオフィルム及び硬質表面上の抗菌消毒のための過熱蒸気の発電機として;食品加工;エポキシ樹脂硬化;精製及び炭化水素産業におけるストリッピング又は洗浄目的;局所熱処理用ガストーチの電気的代替品として;高精度のガラス及び宝飾品加工;金属鋳造ハウジング内の機器の予熱;固体酸化物形燃料電池の起動加熱;燃焼機関の点火;プラスチック及び殆どの金属合金の高温ガス溶接用の電気加熱源;航空機、ランチャ、及び衛星リエントリーの飛行特性を試験するための、極超音速風洞における高エネルギーの非イオン化流の発生器;電子機器用の回路基板のワイヤハーネス、はんだ付け、及び脱はんだ付けのための、典型的な600°Cの空気流温度を超える、温度範囲が高められたヒートガンのために使用することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態に対する様々な改良及び修正は当業者に明らかであり、これらは添付の特許請求の範囲に規定される本発明に包含される。
【国際調査報告】