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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】生体分子精製用ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231124BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 14/315 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 14/72 20060101ALI20231124BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231124BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20231124BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/00 ZNA
C07K16/46
C07K14/575
C07K16/28
C07K14/435
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/315
C07K14/72
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C07K1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531624
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 GB2021053021
(87)【国際公開番号】W WO2022106852
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2018381.0
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523192163
【氏名又は名称】ピュリアス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PURIUS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ローズ、マイケル ハリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA11
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
第1の構成体を含む組成物であって、第1の構成体が、電荷構成要素、錠構成要素、及び鍵構成要素を含む、組成物が開示される。錠構成要素及び鍵構成要素は、特異的親和性結合パートナーであり、同じ構成体内で結合対を形成することができないように分離されており、第1の環境条件において、電荷構成要素が第1の全体電荷を第1の構成体に付与し、錠構成要素がその結合パートナーに第2の構成体上で結合し、鍵構成要素がその結合パートナーに第3の構成体上で結合し、第2の環境条件において、電荷構成要素が第2の全体電荷を第1の構成体に付与し、錠及び鍵構成要素が未結合状態にある。この組成物を伴う標的化合物の精製方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構成体を含む組成物であって、前記第1の構成体が、
電荷構成要素、
錠構成要素、及び
鍵構成要素を含み、
前記錠構成要素及び前記鍵構成要素は、特異的親和性結合パートナーであり、同じ構成体内で結合対を形成することができないように分離されており、
第1の環境条件において、前記電荷構成要素は第1の全体電荷を前記第1の構成体に付与し、前記錠構成要素はその結合パートナーに第2の構成体上で結合し、前記鍵構成要素はその結合パートナーに第3の構成体上で結合し、
第2の環境条件において、前記電荷構成要素は第2の全体電荷を前記第1の構成体に付与し、前記錠構成要素及び前記鍵構成要素は未結合状態にある、組成物。
【請求項2】
溶液中に遊離している標的化合物を更に含み、前記標的化合物が前記鍵構成要素に対する特異的親和性結合パートナーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第3の環境条件において、前記電荷構成要素は第3の全体電荷を前記第1の構成体に付与し、前記錠構成要素はその結合パートナーに第2の構成体上で結合し、前記鍵構成要素はその結合パートナーに第3の構成体上で結合し、前記標的化合物は未結合のままである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の構成体が第2の鍵構成要素を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記錠構成要素及び前記第2の鍵構成要素が特異的親和性結合パートナーであり、前記錠構成要素及び前記第2の鍵構成要素は、同じ構成体内で結合対を形成することができないように分離されている。請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の構成体が、第2の錠構成要素を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2の錠構成要素及び前記鍵構成要素が特異的親和性結合パートナーであり、前記第2の錠構成要素及び前記鍵構成要素が、同じ構成体内で結合対を形成することができないように分離されており、任意選択で、前記第2の錠構成要素が前記第1の錠構成要素の改変バージョンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、標的化合物を含む標的構成体を更に含み、前記第1の構成体が、第2の鍵構成要素を更に含み、前記標的化合物が、前記第1の鍵構成要素及び前記第2の鍵構成要素に対する特異的親和性結合パートナーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の構成体の前記錠構成要素及び前記鍵構成要素は、前記第1の環境条件において、前記錠構成要素がその結合パートナーに第2の構成体上で結合するように、及び前記鍵構成要素が前記その結合パートナーに第2の構成体上で結合できないように配向されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の構成体がポリペプチドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の環境条件が第1のpHであり、前記第2の環境条件が第2のpHであり、任意選択で、前記第1のpHが5~9であり、前記第2のpHが2~6であり、任意選択で、前記第2のpHが前記第1のpHよりも少なくとも1.5pH単位低い、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(i)前記鍵構成要素が抗原であり、前記錠構成要素が前記抗原に特異的な抗体であり、任意選択で前記抗体がモノクローナル抗体、フラグメント抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー、アフィボディ又はカメリドであり、
(ii)前記鍵構成要素が、表面細胞壁タンパク質(プロテインA、プロテインL、又はプロテインGなど)であり、前記表面細胞壁タンパク質が、錠構成要素である抗体に特異的に結合し、任意選択で、前記抗体が、モノクローナル抗体、フラグメント抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー、アフィボディ又はカメリドであり、
(iii)前記鍵構成要素がホルモンであり、前記錠構成要素が前記ホルモンに特異的なホルモン受容体であり、
(iv)前記鍵構成要素がシグナル伝達経路タンパク質であり、前記錠構成要素が前記シグナル伝達経路タンパク質に特異的な受容体であり、
(v)前記鍵構成要素が干渉RNAであり、前記錠構成要素がオリゴヌクレオチド標的であり、
(vi)前記鍵構成要素がDNAリプレッサータンパク質であり、前記錠構成要素が対応物オリゴヌクレオチドであり、又は
(v)前記鍵構成要素がDNAアプタマーであり、前記錠構成要素がタンパク質リガンドである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(i)前記錠構成要素が、抗体、抗体フラグメント若しくは抗体模倣体であり、かつ/又は
(ii)前記鍵構成要素が、表面細胞壁プロテインA、表面細胞壁プロテインL、及び表面細胞壁プロテインGから選択される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記電荷構成要素が、2~8個のヒスチジン残基並びに2~8個のアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基を含むポリペプチドである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物であって、
(i)前記ヒスチジン残基が第1の群にクラスター化され、前記アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基が第2の群にクラスター化され、又は
(ii)前記ヒスチジン残基が前記アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基とともに散在している、
請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1の構成体が直鎖状であり、前記構成要素が、隣接する構成要素間の剛性の相互連結によって分離されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第2の構成体が前記第1の構成体と同一であり、かつ/又は前記第3の構成体が前記第1の構成体と同一である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
標的化合物の精製方法であって、
i)請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物と、標的化合物を含む試料とを第1の環境条件でインキュベーションする工程であって、前記第1の構成体が前記標的化合物に結合し、前記第1の構成体及び前記第2の構成体が一緒に結合して重合してポリマーを形成する、工程と、
ii)前記ポリマーを分離する工程であって、前記標的化合物が前記ポリマーに結合したままである、工程と、
iii)前記ポリマーを第2の環境条件でインキュベーションする工程であって、前記標的化合物が前記ポリマーから解離し、前記第1の構成体及び前記第2の構成体が解離及びモノマー化する、工程と、
iv)工程i~iiiを1~200サイクル繰り返す工程と、
v)前記標的化合物を、前記第1の構成体及び前記第2の構成体から分離する工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
前記分離工程が、篩分け、濾過又は遠心分離などの粗い分離である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の環境条件が第1のpHであり、前記第2の環境条件が第2のpHであり、任意選択で、前記第1のpHが5~9であり、前記第2のpHが2~6であり、任意選択で、前記第2のpHが前記第1のpHよりも少なくとも1.5pH単位低い、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物の、前記第1の構成体をコードする核酸配列。
【請求項22】
配列番号1による核酸配列。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項22に記載の核酸配列、又は請求項23に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項25】
配列番号2又は配列番号6によるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液環境の変化に反応して交互に重合及びモノマー化するように設計されたスマートな「構成体」による、不純物を含有する液体溶液混合物からの、標的の複雑な化合物の選択された特異的精製に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な化合物の精製は、典型的には高価で時間集約的な操作を伴う、高価値の工業的処理工程である。多くの場合、これらの化合物は、医療用途に使用される生成物又は生成物中間体であり、それらの機能及び有効性を発揮するための高度に特異的な分子構造に依存している。
【0003】
多くの場合、及び多くの医療用途のために、これらの化合物は生体分子の形態で提供され、バイオリアクター内の液体懸濁液中の大規模細胞培養で増殖させた宿主細胞株の遺伝子操作を介した生物学的プロセスで合成され、この細胞株は、標的分子の特定の変異体を大量に作製するように遺伝子操作されることが多い。これらのバイオ生産プロセスにおける工業的課題は、多様な種類の副生成物も細胞内で大量に作られることであり、これらの副生成物は、典型的には機能性高分子、反応中間体及び基質、並びに大きな細胞構造を含み、これらは、例えば人体内に適用される医療薬などにおいて、標的分子の作業用途にとって有害かつ有毒であることが多い。そこで、できる限り多くこれらの不純物を選択的に除去することが一般的に行われている。更に、標的生成物及び不純物は、生成物(又は不純物)の長期安定性の助けとならない溶液環境に懸濁されることが多く、これらは安全かつ用途に適した溶液に再溶解させる必要がある。生成物の量及び濃度はまた、その目的(多くの場合、医療用)のために生成物の最終製剤において必要とされるものよりも、はるかに低いことが多い。工業的製造プロセスにおいて、生成物の精製及び再懸濁は、多くの場合、クロマトグラフィー及び膜濾過などの選択工程の組み合わせによって達成される。
【0004】
精製工程において高い特異性を実現するために、一般的なクロマトグラフィーと呼ばれる工程実施は、不純物と比較して標的生成物に優先的に可逆的に結合する(又はその逆も同様である)リガンドを有すること、及びそのようなリガンドを適所に、典型的には非常に高い表面積を有する材料上に固定化し、これをある体積の不純懸濁液中に浸漬させることである。そのようなリガンドの固定化は、生成物の結合を可能にする一方で、不純物は通過し、緩衝液などの洗浄流体によって置換される。逆もまた同様であり、不純物はリガンドによって捕捉され、生成物を懸濁液中に遊離した状態で残す。このようなリガンドは、通常、物質移動速度を最大化するために、多孔性が高く表面積が大きい基材上に化学的に固定化される。そのような基材は多くの場合、微細な多孔性ビーズに形成され、各端部がメッシュフリットでキャップされたカラムにこれを充填し、これによって、不純混合物を含有する生成物及び他の流体を含む流体をポンプ輸送してカラムに通し、基材上に固定化されたリガンドを通過させることが可能になる。その後、溶出と呼ばれるプロセスにおいて、洗浄溶液環境の変化を使用して、リガンドの結合傾向を相殺又は逆転させることができ、その結果、結合した成分が放出され、システムをリセットして再び使用することができる。標的生成物が結合成分であり、溶出緩衝液がどのように分配されるかに依存していた場合、この溶出工程中に、生成物は、より小さい体積及び必然的に異なる溶液環境に放出させることができ、濃度の潜在的な増加及び異なる溶液環境への交換が可能になる。非常に高レベルの精製は、その対応物に対するリガンドの結合特異性を増加させることによって達成され得る。正確に相補的な構造及び電荷分布を介して標的生成物分子のみに特異的に結合するように設計されたリガンドは、アフィンである、又はアフィニティー型であると言うことができ、このようなクロマトグラフィーはアフィニティークロマトグラフィーとして知られている。一般に、工業的実施において、このような親和性リガンドは、それ自体が複雑な分子であり、複雑な生物学的精製プロセスにより製造する必要があるため、その費用は、標的生成物自体に匹敵するものとなる。もう1つのタイプのリガンドは、強い正電荷又は負電荷を有するものであり得る。これは、標的分子が典型的には荷電されているため、イオン交換クロマトグラフィーとして知られるクロマトグラフィープロセスを介して、標的生成物が、引き付け又は反発により選択され得る。多くの場合、標的分子は、酸性及び塩基性のサブ残基の組み合わせを含み、溶液環境のpHに応じて、これらの残基の解離の相対的レベルにより、異なるpHで異なる電荷レベルを有する生成物を残し、pIとして知られる平衡pHでは、標的分子を全体的に中性の電荷で残し得る。pHを調節することによって、及びクロマトグラフィー工程のために適切に荷電したリガンドを選択することによって、標的分子は、それらが反対の電荷を有する場合にはリガンドに引き付けられ得、又はそれらが同様の電荷を有する場合はリガンドから反発され得る。流体懸濁液中の他の不純物分子は、異なる電荷特性を有し得るので、同じ懸濁液において、これらは、リガンドから相補的に反発され得るか、又は結合され得、アフィニティー分離について記述されているメカニズムと同様のレベルの精製が得られる。標的分子がリガンドに結合し、次いで別個に、溶出緩衝液を介して再びリガンドから除去される様式では、同様の電荷を有する不純物もリガンドに共結合し得るが、これらの不純物は多くの場合、標的分子とは異なる酸/塩基残基組成を有し、異なるpHで異なるレベルの電荷を有する。溶出工程中、環境pHを変化させ、それによってその荷電レベル、ひいては結合強度を変化させることによって、又は溶解した塩イオンなどの過剰の荷電分子(これはリガンドに優先的に結合し、生成物を排除する)を導入することによって、目的の生成物がリガンドから放出され得る。同様に結合した不純物は、多くの場合異なる荷電レベルを有するか、又は異なるpHで異なる荷電レベルを有するので、これらの共結合した不純物は、溶液環境が変化するにつれて、標的生成物よりも結合が強く又は弱くなり得る。溶液環境を徐々に変化させることによって、これは、結合した分子を順次放出させ、標的生成物及び不純物の分離された放出を可能にし、それによって微調整された精製を可能にする。
【0005】
限外濾過/透析濾過として知られる別個の工程を使用して、標的生成物の溶液環境を変化させ、その濃度を変化させて、精製を行うこともできる。この処理工程においては、制御されたサイズ分布の多孔性を有する多孔性基材から、膜が形成される。標的生成物を含有する不純な流体懸濁液は、圧力下で保持側と呼ばれる膜の一方の表面に加圧され得る。また、懸濁液流体及び巨視的分子(タンパク質など)を含む、膜の孔径より小さい分子は、透過側と呼ばれる膜の他方の側に絞り出され、保持側の残りの分子はより濃縮されて残り得る。生成物がこの孔径よりも大きい場合、このようにして、保持液中で濃縮され得る。保持液に別の流体を加えることができ、これは膜を通って透過側に失われた流体の代わりとなり得、これを数多く行うことによって、懸濁液流体を非常に大量に新しい流体と交換することができる。このプロセスは非常に遅く、多くの場合、膜表面に平行方向の強い「クロスフロー」を適用することなどによって、保持液側の局所粘度を減少させるメカニズムによって加速される。
【0006】
これらは、複雑な巨大分子の精製における主要なツールであり、両方の場合において、複雑な表面特性を有する2次元表面に対する、3次元の大量の流体中に懸濁又は溶解された成分の物質移動を必要とし、これは基本的に遅いプロセスである。両方の場合においてプロセスを加速するために、表面には高度な操作が行われ、流れはこれらの交換の速度を最大化するように注意深く制御される。更に、表面特性(リガンド又は孔径など)と、必要とされる操作(マイクロビーズ固定化又は指向性クロスフローなど)の両方とも、これらの材料を非常に高価なものとし、その作業が複雑かつ低速であることにつながる。生物薬剤製造の分野では、多くの場合、複数の経路で適用されるこれらの処理工程は、これらの薬物が極端に高額となる原因となり、これは消費者にとって法外な価格となり得る。
【0007】
発明が解決しようとする課題
「構成体」への言及は、「第1の構成体」を指す。「第1の構成体」に関する実施形態は、「第2の構成体」及び「第3の構成体」に等しく適用される。「異なる構成体」及び「別個の構成体」への言及は、「第1の構成体」又は「第2の構成体」又は「第3の構成体」の別のコピーを指す。第1、第2又は第3の構成体は、それ自体、特異的に配置された構成要素のポリマーである。
【0008】
「重合」は、鎖又はポリマーを形成するための複数の構成体の会合を指す。例えば、第1の構成体の複数のコピーが互いに結合して鎖を形成し得る。第1の構成体は第2の構成体に結合してもよく、第2の構成体は第3の構成体などに結合して鎖を形成してもよい。
【0009】
「モノマー化」は、重合された構成体の鎖が個々のモノマー構成体単位に解離することを指し、このモノマー単位は未結合の構成体であり、すなわち、第1の構成体はモノマー単位である。
【0010】
「特異的親和性結合パートナー」は、適正な環境条件において互いに自発的に結合し、その結合が高度に特異的であり、非標的化合物の結合の大部分を反発し、その特異性が典型的にはそれらの複雑で特異的かつ相補的な構造によって可能になっている、2つの対応化合物を指す。代替の化合物はまた、ほぼ同一の相補的領域を保有していてよく、これによってまた、対応物に特異的に結合する。特異性とは、結合対のいずれかの結合部位に対する小さな修飾であっても、結合傾向の顕著な低下又は増強をもたらすことを意味する。親和性結合は、典型的には、多くのより弱い相補的相互作用の集合的な引き付け特性に依存し、したがって、多くの場合溶液環境への変化を介することにより、通常は可逆的である。
【0011】
第1の構成体を含む組成物であって、この第1の構成体が、
(i)電荷構成要素、
(ii)錠構成要素、及び
(iii)鍵構成要素を含む、組成物が提供される。
【0012】
錠構成要素及び鍵構成要素は、特異的親和性結合パートナーであり、同じ構成体内で結合対を形成することができないように構成体上で分離されている。
【0013】
第1の環境条件において、電荷構成要素は第1の全体電荷を第1の構成体に付与し、錠構成要素はその結合パートナーに第2の構成体上で結合し、鍵構成要素はその結合パートナーに第3の構成体上で結合する。
【0014】
第2の環境条件において、電荷構成要素は第2の全体電荷を第1の構成体に付与し、錠構成要素及び鍵構成要素は未結合状態にある。
【0015】
この組成物は、流体環境中に懸濁された不純物の混合物から標的化合物を精製及び再懸濁させるメカニズムを提供する。特に、モノクローナル抗体などの有用な生体分子は、生物学的培養物から得た、細胞破片並びにタンパク質、ヌクレオチド、炭水化物及び代謝基質中間体を含む水溶液から精製することができる。第1の構成体は、離れて保持される錠及び鍵の対のパートナー構成要素の両方を含む、鎖内のいくつかの構成要素から構成されてもよい。錠及び鍵構成要素は、それらの対応物と親和性結合を形成することができ、非特異的結合を排除する高い特異性を有し、その結合特性は、溶液環境(例えばpH)に対する変化の下で可逆的であるようなものであり得る。個々の構成体上の錠及び鍵構成要素は、しっかりと離れて保持することができるため、それらは、構成体の1つのコピー内で折り重なって互いに結合する傾向が低い。しかし、第1の構成体の錠構成要素は、別の構成体(すなわち、第2の構成体)の鍵構成要素に結合することができ、したがって、多くのコピーが、潜在的に無制限の長さの長鎖に重合し得る。この結合を調節するために溶液環境を制御することによって、構成体は、巨視的ポリマー小球体/ゲルを形成するように誘導することができるか、又は再モノマー化するように誘導することができる。また、このようなプロセスは、多数回繰り返すことができ、そして結合の特異性により、構成体の優勢なコピーが、重合の際に球状形態をとることができ、大部分の懸濁不純物が嵩高い容積中に残ることになる。嵩高のポリマーは、巨視的粗粒フィルターによって篩分けされ、第2の溶液中に再沈殿させてもよく、そこで、元の溶液環境と比較して、異なる特性を有する、清浄な、新しい溶液環境中で、新たな濃度で再モノマー化されてもよい。
【0016】
第1の構成体は、任意の適切なポリマーであり得る。例えば、構成体は、ポリペプチド、核酸、脂質、有機ポリマー又は合成ポリマーであり得る。いくつかの実施形態において、構成体は、アミノ酸、ヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、構成体は本質的にアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、構成体は本質的にヌクレオチドからなる。
【0017】
好ましくは、ポリマーはポリペプチドである。電荷構成要素、錠構成要素、鍵構成要素、切断構成要素及び切断部位は、同じ又は異なる分子タイプ、例えばペプチド、ポリペプチド、核酸、脂質、有機ポリマー又は合成ポリマーから構成され得る。好ましくは、構成要素は同じ分子タイプから構成され、より好ましくは、構成要素はペプチド及び/又はポリペプチドから構成される。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1の構成体はpH応答性であってもよい。
【0019】
電荷構成要素、錠構成要素及び鍵構成要素の各々は、球状の三次構造であってもよい。各構成要素は、大部分が折り畳まれていない、折り畳まれていない、及び/又は直鎖状であってもよい。いくつかの実施形態において、構成要素のいくつかは球状の三次構造であり、構成要素のいくつかは線状構造である。好ましくは、各構成要素は球状の三次構造を有する。より好ましくは、各構成要素は球状の三次構造を有し、構成要素は直鎖で一緒に連結されている。
【0020】
好ましくは、錠及び鍵構成要素は、構成体に直接コード化される。好ましくは、錠、鍵、及び電荷構成要素は、構成体に直接コード化される。「直接コード化される」とは、構成体のコード(例えば、DNA又はRNAコード)が錠及び鍵構成要素のコードを含み、これにより単一の構成体コードを発現させて、錠及び鍵構成要素を本質的に含む最終構成体を形成できることを意味する。例えば、構成体をコードする単一のオリゴヌクレオチドを発現させて、錠及び鍵構成要素を含む単一のポリペプチドを形成することができる。更なる例では、構成体をコードする単一のオリゴヌクレオチドを発現させて、錠、鍵及び電荷構成要素を含む単一のポリペプチドを形成することができる。他の例では、構成体の最終バージョンがポリヌクレオチドである場合、構成体をコードする単一オリゴヌクレオチドは、錠及び鍵、又は錠、鍵及び電荷構成要素を単一のオリゴヌクレオチド中に本質的に含み得る。
【0021】
構成体の構成要素は、任意の順序であってよい。以下の順序が想定されるが、これは本発明を制限するものではない。
【0022】
鍵-錠-鍵-電荷構成要素
標的化合物は別個に生成され、溶液中で遊離したままである。
【0023】
構成要素は、任意の順序で配置されてもよく、構成要素は、特注設計のためにスワップイン及びスワップアウトされ得る。ポリペプチド構成体について、N末端及びC末端は逆にされ得る。特定の設計規則を使用して、系の機能性を向上させることができる。
【0024】
錠構成要素及び鍵構成要素は、互いに隣接していてもよく、すなわち、互いに直接隣り合っていてもよく、又は小型及び/若しくは剛性のリンカーによって連結されていてもよい。この設計は、構成要素が折り返されて同じ構成体内で結合対を形成する柔軟性を有さないという利点を提供する。
【0025】
錠と鍵の親和性結合対の非限定的な例としては、以下が挙げられる。
【0026】
抗体(モノクローナル抗体(mAb)、フラグメント抗体(FAb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、アフィボディ、カメリドなどを含む「抗体」)に特異的に結合する表面細胞壁タンパク質(例えば、プロテインA、プロテインL、プロテインG)、
抗原に対して生成された抗体(モノクローナル抗体(mAb)、フラグメント抗体(fAb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、アフィボディ、カメリドなどを含む「抗体」)に対応する抗原、
特異的受容体パートナーに結合するホルモン/シグナル伝達経路タンパク質、
干渉RNA(例えば、miRNA、siRNA)の結合オリゴヌクレオチド、
DNAリプレッサータンパク質結合オリゴヌクレオチド、
DNAアプタマー結合標的タンパク質リガンド。
【0027】
いくつかの実施形態において、錠構成要素は、抗体、抗体フラグメント又は抗体模倣体であり得、鍵構成要素は、表面細胞壁プロテインA、表面細胞壁プロテインL、又は表面細胞壁プロテインGであり得る。
【0028】
電荷構成要素は、構成体中のどこに位置してもよい。好ましくは、電荷構成要素は構成体の一端に位置する。これは、電荷が最も露出し、潜在的に最も強力であるという利点を提供する。電荷構成要素がヒスチジン残基を含む場合、そのヒスチジン残基はポリマーの一端に位置してもよく、これにより電荷構成要素及びヒスチジンタグとしての二重機能性が可能になる。
【0029】
上記及び本明細書を通して開示される構成体は、特にポリペプチド構成体として想定される。上記及び本明細書を通して開示される構成体は、特にpH応答性であるポリペプチド構成体として想定され、すなわち、第1、第2及び第3の環境条件は、第1、第2及び第3のpHである。上記及び本明細書を通して開示される構成体は、特に、pH応答性であり構成要素間に剛性の相互連結を含むポリペプチド構成体として想定される。上記及び本明細書を通して開示される構成体は、特に、pH応答性であり構成要素間に剛性の相互連結を含み、可逆的に結合した標的化合物を更に含む、ポリペプチド構成体として想定される。上記及び本明細書を通して開示される構成体は、特に、pH応答性であり構成要素間に剛性の相互連結を含む構成体として想定される。上記及び本明細書を通して開示される構成体は、特に、pH応答性であり構成要素間に剛性の相互連結を含み、可逆的に結合した標的化合物を更に含む、構成体として想定される。
【0030】
第2の構成体は、第1の構成体と同一又は実質的に同一であり得る。第2の構成体は、第1の構成体と同じ必須要素の全てを含み得るが、非必須要素が異なり得る。添付の特許請求の範囲を読めば、当業者は、第1の構成体の必須要素を即座に認識するであろう。好ましくは、第2の構成体は、第1の構成体と同一又は実質的に同一である。より好ましくは、第2の構成体は、第1の構成体と同一である。
【0031】
第2の構成体は、
(i)電荷構成要素、
(ii)錠構成要素、及び
(iii)鍵構成要素を含み得る。
【0032】
第2の構成体は更に、
(i)追加の鍵構成要素、
(ii)追加の錠構成要素、
(iii)1つ以上の標的化合物、及び/又は
(iv)剛性の相互連結を含み得る。
【0033】
第2の構成体はpH応答性であってもよい。
【0034】
第2の構成体に関する実施形態は、第3の構成体に等しく適用される。好ましくは、第3の構成体は、第1の構成体と同一又は実質的に同一である。好ましくは、第3の構成体は、第2の構成体と同一又は実質的に同一である。より好ましくは、第3の構成体は、第1の構成体及び第2の構成体と同一である。
【0035】
第3の構成体は、
(i)電荷構成要素、
(ii)錠構成要素、及び
(iii)鍵構成要素を含み得る。
【0036】
第3の構成体は更に、
(i)追加の鍵構成要素、
(ii)追加の錠構成要素、
(iii)1つ以上の標的化合物、及び/又は
(iv)剛性の相互連結を含み得る。
【0037】
第3の構成体はpH応答性であってもよい。
【0038】
電荷構成要素は、全体電荷を構成体に割り当てる任意の構成要素であり得、全体電荷は、異なる環境条件において異なり、すなわち、構成体は、1つの条件において第1の全体電荷を有し、第2の条件において第2の全体電荷を有する。いくつかの態様において、環境条件は、環境pH、温度、圧力、音響振動、磁場密度、電場密度、電磁励起、局所構成要素濃度、及び補酵素又は補因子又は類似のアクチベーター化合物の存在又は非存在から選択される。好ましくは、環境条件はpH、すなわち、組成物を含む溶液のpHである。
【0039】
いくつかの実施形態において、環境条件は塩である。特異的親和性結合対は、構成タンパク質の不安定化(その環境における溶解度を含む)により親和性パートナー結合を不安定化することによって、環境塩条件に対して感受性であるように選択又は操作され得る。塩環境は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、銅、マグネシウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、リチウム、グアニジニウム、アンモニウム及び尿素などのカチオン性パートナー、並びに、塩素、臭素、リン及びリン酸塩、硫黄及び硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩などのアニオン性パートナーを含むことができる。具体的な対の例としては、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム及び塩化グアニジニウムが挙げられる。塩化グアニジニウム又は尿素などのホフマイスター系列での塩使用の例では、プロテインA/抗体親和性結合は、該構成要素がプロテインA/抗体構造を不安定化させるので、該構成要素の濃度が増加するにつれて不安定化されることが示された。塩濃度を同時に増加させることによって、プロテインA/抗体構成要素の相対的溶解度を低下させ、また、例えば硫酸アンモニウム条件を増加させる場合、結合を不安定化させる。
【0040】
様々な実施形態において、環境条件は温度である。例えば、DNA鎖の相補的セットを親和性結合対として使用してもよく、構成体中の他の構成要素に共有結合させてもよい。あるいは、例えばDNA-ヒストン結合のメカニズムにおいて、構成体の他の構成要素に特異的に結合させるために、DNA三次構造を利用することができる。両方のメカニズムとも、それらが環境温度に可逆的に感受性であり、高温で融解して別々の鎖になり、特に低温で再アニーリングするという利点を提供する。異なるレベルの相補性、GC含有量、及び長さを有する異なるDNA構成体を使用して、環境温度に対する融点の感受性を調整することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、環境条件は非水性溶媒である。例えば、親和性結合対は、非水性溶媒を増加させた条件下で放出され得る。非水性溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、エチレングリコール、可溶性ポリエチレングリコール、又はジメチルスルホキシドであってもよく、これらは水溶液に溶解させてもよく、又は水溶媒を完全に置換してそのまま非水性液体溶媒のみにしてもよい。
【0042】
電荷構成要素は、制御されたプログラム可能な電荷で設計され得るという利点を有する。これは、環境条件を制御することによって(例えばpHを制御することによって)、ポリマー全体の電荷の制御された誘導を可能にする。重合プロセス中に過剰の負電荷を有することは、負に帯電した不純物を能動的に反発させることができ、重合特異性を更に向上させるので、これは重合プロセス中に特に有用である。過剰の正電荷を用いて、重合を別の経路で行うと、同様に正に帯電した構成要素を排除することができる。更に、全体の電荷を注意深く制御することで、構成体の自己反発を調節することができ、ポリマーの構造的充填の調整を可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の環境条件は第1のpHであり、第2の環境条件は第2のpHである。第2のpHは、第1のpHよりも酸性であってもよい。第1のpHは5~9であってもよく、第2のpHは2~6であってもよい。いくつかの実施形態において、第1のpHは6~8であってもよく、第2のpHは3~5であってもよい。第2のpHは、第1のpHよりも少なくとも1.5pH単位低くてもよい。第1及び第2のpHは、中性又はほぼ中性であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素は、荷電している複数のサブユニットを含む。例えば、電荷構成要素は、複数の酸性及び/又は塩基性及び/又は双性イオン性の、化学的に解離する化合物を含んでもよい。好ましくは、電荷構成要素は、荷電残基を含むポリペプチドである。より好ましくは、電荷構成要素は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンから選択される複数のアミノ酸を含むポリペプチドである。更により好ましくは、電荷構成要素は、酸性側鎖を有する複数のアミノ酸と、塩基性側鎖を有する複数のアミノ酸とを含む、ポリペプチドである。更により好ましくは、電荷構成要素は、複数のヒスチジン残基並びに複数のアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基を含むポリペプチドである。
【0045】
中性に近いpIを含有する酸性又は塩基性又は双性イオン性サブユニットが組み込まれる場合、化学解離を制御するために環境pHを制御することによって、全体の電荷が荷電から中性に切り替えられ得るか、又は全体の電荷が一方の電荷から他方の電荷に反転され得るか、又は双性イオン性化合物の場合、個々に一方の電荷から他方の電荷に反転され得る。
【0046】
例えば、電荷構成要素はポリペプチドであってもよく、中性条件で解離して負電荷を与えるグルタミン酸又はアスパラギン酸などの多数の酸性残基、及び中性条件で解離して正電荷を与える(したがって、単位全体に全体的な正電荷を与える)多数のヒスチジン残基を含んでもよい。ヒスチジンは中性よりわずかに低いpIを有するので、環境pHをこのpIよりわずかに低くすることによって、これらのヒスチジン残基の一部分を再会合させて中性にするよう誘導することができ、残りの荷電ヒスチジン残基の数は、全体的な酸性残基の数とバランスをとり、全体的に中性の電荷を電荷構成要素に与えることができる。pHが更に低下すると、より多くのヒスチジン残基が再会合することができ、電荷構成要素全体が負に荷電した状態になる。過剰な数のヒスチジン残基を制御することによって、解離/再会合の比を所与のpHについて調整して、プログラム可能なpH感受性を与えることができる。したがって、電荷構成要素、ひいては構成体及びポリマーは、プログラム可能かつ制御可能な全体電荷を有することができる。
【0047】
様々な実施形態において、電荷構成要素は、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される少なくとも4個のアミノ酸残基を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態において、電荷構成要素は、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される少なくとも5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸残基を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態において、電荷構成要素は、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される最大5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸残基を含むポリペプチドである。
【0048】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも10%は、pH 7.0で負に荷電している。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも20%は、pH 7.0で負に荷電している。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも30%は、pH 7.0で負に荷電している。
【0049】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも10%は、pH 7.0で正に荷電している。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも20%は、pH 7.0で正に荷電している。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも30%は、pH 7.0で正に荷電している。
【0050】
様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも10%は、pH 7.0で負に荷電しており、電荷構成要素の残基の少なくとも10%は、pH 7.0で正に荷電している。様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも12.5%は、pH 7.0で負に荷電しており、電荷構成要素の残基の少なくとも12.5%は、pH 7.0で正に荷電している。様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも15%は、pH 7.0で負に荷電しており、電荷構成要素の残基の少なくとも15%は、pH 7.0で正に荷電している。様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも20%は、pH 7.0で負に荷電しており、電荷構成要素の残基の少なくとも20%は、pH 7.0で正に荷電している。様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも25%は、pH 7.0で負に荷電しており、電荷構成要素の残基の少なくとも25%は、pH 7.0で正に荷電している。
【0051】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも10%はヒスチジンである。様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも12.5%はヒスチジンである。特定の実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも15%はヒスチジンである。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも20%はヒスチジンである。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも25%はヒスチジンである。
【0052】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも10%は、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。様々な実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも12.5%は、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。特定の実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも15%は、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも20%は、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。いくつかの実施形態において、電荷構成要素の残基の少なくとも25%は、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。
【0053】
上記の任意の組み合わせが適用され得る。例えば、電荷構成要素の残基の少なくとも12.5%がヒスチジンであってもよく、電荷構成要素の残基の少なくとも12.5%がアスパラギン酸及びグルタミン酸から選択されてもよい。別の例では、電荷構成要素の残基の少なくとも15%がヒスチジンであってもよく、電荷構成要素の残基の少なくとも20%がアスパラギン酸及びグルタミン酸から選択されてもよい。
【0054】
様々な実施形態において、電荷構成要素は、リジン及び/又はアルギニン残基によって付与される固定正電荷を含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素は、トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンなどのカチオン-π結合相互作用を形成する1つ以上の芳香族残基を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、電荷構成要素は、2~8個のヒスチジン残基並びに2~8個のアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基を含むポリペプチドである。様々な実施形態において、ヒスチジン残基は第1の群にクラスター化され、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基は第2の群にクラスター化される。群のクラスター化は、別個であり完全に非重複でなくてもよく、又は実質的にクラスター化されていてもよく、すなわち、群はほとんど別個であるが、いくつかの残基が重複していてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、ヒスチジン残基は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基と共に散在している。ヒスチジン残基は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基と共に完全に散在していてもよく、すなわち、それらは均一に分布している。又は、ヒスチジン残基はアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基と共に部分的に散在していてもよく、すなわちヒスチジン残基の一部はアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基と共に均一に分布しており、ヒスチジン残基の一部はクラスター化している。同様に、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基は、ヒスチジン残基と共に完全に又は部分的に散在していてもよい。
【0058】
電荷構成要素中の正の解離残基及び負の解離残基の相対量を調整することにより、電荷構成要素に過剰な電荷を与えることができ、その結果、構成体全体にも過剰な電荷を与えることができる。更に、正の解離する残基は、中性に近いpKaを有するヒスチジンであり得るため、この残基は、環境pHをこのほぼ中性のpKaより上にすることによって中性と正との間で切り替わるようにすることができ、電荷構成要素中の多数のヒスチジンは、pHがpKaに接近し、それを超えるにつれて、連続的かつ漸進的に解離する。一例では、電荷構成要素が、はるかに低いpKa(アスパラギンなど)を有する対応する負の残基よりも相対的に多数(2倍など)のヒスチジン、又はほぼ中性の解離する正の残基を有する場合は、ほぼ中性の解離する残基のpKaにおいて、半分は解離して正電荷を与え、半分は中性であり、正に荷電した半分の集合電荷は、負の残基の集合反対電荷によって相殺され、基は中性のままとなり、このpHで構成体に正味の影響を及ぼさない。
【0059】
負の残基に対する中性/正の残基の相対比を増加させると、同じpHでより高い正の電荷が得られ、電荷構成要素の全体的な中性点(すなわちpI)はより低いpHにシフトし、逆もまた同様である。これは次に、必要に応じて所与のpHで構成体全体に追加の正電荷又は負電荷を付与し、したがって構成体全体のpIをシフトさせる。親和性結合対のメカニズムの相対的pHをシフトさせる電荷構成要素の例としては、過剰のヒスチジン及び不足のアスパラギン酸を有する電荷構成要素を有することによって、任意の所与のpHでより高い全体電荷を構成体に与え、全体的なpIをより高いpHにシフトさせる場合がある。親和性対の結合は、一緒になる構成体の個々のコピーに依存するため、それらが互いに結合する傾向は、これらが自己反発性であるため、同様の過剰電荷の欠如によって増強され、すなわちpI、したがってpIの増加は、親和性結合対の全体的な移行pHをより高い値に上昇させる。
【0060】
錠構成要素及び鍵構成要素は特異的親和性結合パートナーであり、これは、錠構成要素及び鍵構成要素が非特異的結合を排除する高度に特異的な様式で互いに結合することができることを意味する。結合相互作用は可逆的であり、これは、錠構成要素及び鍵構成要素が1つの状態で結合し、別の状態で解離することを意味する。好ましくは、結合相互作用は、溶液環境の変化の下で可逆的である。より好ましくは、結合相互作用は、溶液pHの変化の下で可逆的である。
【0061】
錠及び鍵構成要素結合パートナーは、構成体の複数のコピーが一緒に結合して鎖になり、重合して巨視的小球体/ゲルになることができるという利点を提供する。鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。結合は、共有結合、又は静電相互作用によって推進される可逆的部分結合を介して起こり得る。これにより、構成体の重合、及びその後の標的化合物を精製するための分離が可能になる。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物は、標的化合物を更に含む。標的化合物は、溶液から精製することが望まれる化合物又は分子であり、溶液は混入物を含み得る。標的化合物は溶液中で遊離していてもよい。
【0063】
標的化合物は、鍵構成要素に対する特異的親和性結合パートナーであってもよい。これらの実施形態において、錠構成要素及び標的化合物は両方とも、鍵構成要素の特異的親和性結合パートナーであり、すなわち、錠構成要素及び標的化合物は両方とも、鍵構成要素が特異的に結合するサブドメインを含有する。これは、標的化合物が同じ親和性の錠及び鍵系によって構成体に結合することができ、構成体の取り込みにおける特異性、及びまた重合の特異性も保証するという利点を提供する。いくつかの実施形態において、錠構成要素及び標的化合物は、異なる構造を有する。様々な実施形態において、鍵構成要素は、異なる結合メカニズムを介して錠構成要素及び標的化合物に結合する。好ましくは、錠構成要素及び標的化合物は、同じ構造、又は同じ構造を有するサブドメインを有する。好ましくは、鍵構成要素は、同じ結合メカニズムを介して錠構成要素及び標的化合物に結合する。いくつかの実施形態において、錠構成要素は、錠構成要素への鍵構成要素の結合が、標的化合物への鍵構成要素の結合とは異なるように改変される。例えば、錠構成要素は、鍵構成要素と錠構成要素との間の結合親和性を増加又は減少させるように改変され得る。この改変は、特定の環境条件(例えば、pHの変化)において結合親和性を増加又は減少させ得る。錠構成要素は切り詰められてもよい。改変は、切り詰め(truncation)、親和性を改変することが意図される結合部位での個々の残基の変化、電荷を改変することが意図される個々の残基の変化、残基のサイズの変化(例えば、大きいものから小さいものに、及びその逆)、小球体の全体的な柔軟性に対する変化(例えば、ジスルフィド結合及び/又は塩架橋の付加/除去による)などから選択され得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、第3の環境条件において、電荷構成要素は第3の全体電荷を第1の構成体に付与し、錠構成要素はその結合パートナーに第2の構成体上で結合し、鍵構成要素はその結合パートナーに第3の構成体上で結合し、標的化合物は未結合のままである。
【0065】
いくつかの実施形態において、第3の環境条件は第3のpHである。特定の実施形態において、第3のpHは、第1及び第2のpHよりも酸性であってもよい。様々な実施形態において、第3のpHは酸性pHであり、第1及び第2のpHは中性又はほぼ中性のpHである。いくつかの実施形態において、第3のpHは、第2のpH及び第1のpHよりも少なくとも1.5pH単位低い。いくつかの実施形態において、第3のpHは、第1のpHと第2のpHの間の中間pHであってもよい。
【0066】
構成体が重合してポリマーを形成し、標的化合物が溶液中で未結合及び遊離のままであり、標的化合物が構成体から分離されることを可能にする条件を、第3のpHは提供し得る。
【0067】
錠構成要素は、鍵構成要素と特異的親和性結合対を形成する任意の分子であってよい。錠構成要素は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、有機ポリマー、有機化合物、合成ポリマー又は合成化合物であってよい。様々な実施形態において、錠構成要素はポリペプチドである。特定の実施形態において、錠構成要素は、抗体、抗体フラグメント又は抗体模倣体である。
【0068】
鍵構成要素は、錠構成要素と特異的親和性結合対を形成する任意の分子であってよい。錠構成要素が標的化合物を含む実施形態において、鍵構成要素は、標的化合物と特異的親和性結合対を形成する任意の分子であってよい。鍵構成要素は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、有機ポリマー、有機化合物、合成ポリマー又は合成化合物であってよい。様々な実施形態において、鍵構成要素はポリペプチドである。特定の実施形態において、鍵構成要素は、表面細胞壁プロテインA、表面細胞壁プロテインL、表面細胞壁プロテインG、抗体及び抗体模倣体から選択される。好ましくは、鍵構成要素は、表面細胞壁タンパク質である。
【0069】
標的化合物は、精製される任意の分子であり得る。標的化合物は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、有機ポリマー、有機化合物、合成ポリマー又は合成化合物であってよい。いくつかの実施形態において、標的化合物は、ポリペプチドである。特定の実施形態において、標的化合物は、抗体又は抗体フラグメントである。特定の実施形態において、標的化合物は、細菌若しくはウイルス又は細胞表面上の膜結合タンパク質などの、より大きな四次構造に組み込まれたポリペプチドである。
【0070】
本発明の特定の実施形態において、錠構成要素及び/又は標的化合物は、抗体又は抗体フラグメントであり、鍵構成要素は、表面細胞壁プロテインA、表面細胞壁プロテインL及び表面細胞壁プロテインGから選択される。
【0071】
錠構成要素及び鍵構成要素は、同じ構成体内で結合対を形成することができないように、構成体上で分離されている。言い換えれば、錠構成要素は、同じ構成体内の鍵構成要素と結合できない。しかしながら、錠構成要素は、別個の構成体内の鍵構成要素と結合することができ、鍵構成要素は、別個の構成体内の錠構成要素と結合することができる。当業者は、「別個の構成体」が、構成体の同一のコピー、構成体の実質的に同一のコピー、又は同じ必須要素を有する異なる構成体であり得ることを認識するであろう。
【0072】
いくつかの実施形態において、構成体は、1つ以上の鍵構成要素、及び/又は1つ以上の錠構成要素を更に含んでもよい。追加の鍵構成要素は、鍵構成要素と同一又は実質的に同一であり得る。追加の鍵構成要素は、錠構成要素及び/又は標的化合物と特異的親和性結合対を形成し得る。追加の鍵構成要素は、錠構成要素及び/又は標的化合物に対する結合親和性など、鍵構成要素に対して異なる特性を示すように改変することができる。追加の鍵構成要素は、それらが同じ構成体内で結合対を形成することができないように、同じ構成体内でそれらの結合パートナーから分離され得る。
【0073】
追加の錠構成要素は、錠構成要素と同一又は実質的に同一であり得る。追加の錠構成要素は、鍵構成要素と特異的親和性結合対を形成し得る。追加の錠構成要素は、鍵構成要素に対する結合親和性など、錠構成要素に対して異なる特性を示すように改変することができる。追加の錠構成要素は、それらが同じ構成体内で結合対を形成することができないように、同じ構成体内でそれらの結合パートナーから分離され得る。
【0074】
追加の鍵構成要素及び/又は追加の錠構成要素は、構成体の重合により、分枝した、標的化合物に結合するための過剰な能力を有するポリマーを形成することができるという利点を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態において、第1の構成体は第2の鍵構成要素を更に含み、錠構成要素及び第2の鍵構成要素は特異的親和性結合パートナーであり、錠構成要素及び第2の鍵構成要素は、同じ構成体内で結合対を形成することができないように分離されている。
【0076】
いくつかの実施形態において、第1の構成体は第2の錠構成要素を更に含み、第2の錠構成要素及び鍵構成要素は特異的親和性結合パートナーであり、第2の錠構成要素及び鍵構成要素は、同じ構成体内で結合対を形成することができないように分離されている。
【0077】
いくつかの実施形態において、第1の構成体は第2の鍵構成要素を更に含み、組成物は、標的化合物を含む標的構成体を更に含み、標的化合物は、第1の鍵構成要素及び第2の鍵構成要素に対する特異的親和性結合パートナーである。
【0078】
いくつかの実施形態において、構成要素は、隣接する構成要素間の剛性の相互連結によって分離される。相互連結構成要素は、好ましくは永久的共有結合を介して分子構成要素を連結してもよく、好ましくは2つの末端を有し、2つの分子構成要素を各末端に1つずつ連結し、好ましくは2つの連結された分子構成要素を互いにしっかりと離して保持する比較的剛性の形状を維持する。
【0079】
剛性の相互連結は、構成要素が折り重なって同じ構成体内の他の構成要素に結合するのを防止する直鎖状構造を構成体に与えることができる。例えば、錠構成要素及び鍵構成要素は、錠構成要素及び鍵構成要素が同じ構成体内で結合対を形成することを防止する剛性の相互連結によって分離されてもよい。錠構成要素が標的化合物を含む実施形態において、標的化合物及び鍵構成要素は、標的化合物及び鍵構成要素が同じ構成体内で結合対を形成することを防止する剛性の相互連結によって分離されてもよい。
【0080】
複数の錠構成要素、及び/又は複数の鍵構成要素、及び/又は複数の標的化合物が存在する実施形態において、これらの構成要素は、同じ構成体内での親和性結合対の結合を防止する剛性の相互連結によって分離されてもよい。
【0081】
当業者は、同じ構成体内で生じる結合対(鍵-錠対、追加の鍵-錠対、鍵-追加の錠対、追加の鍵-追加の錠対)を防止するために、構成体に直鎖状構造を与えるのに必要な相互連結を特定することができる。
【0082】
標的化合物の精製方法であって、
i)本明細書で前述されている組成物と、標的化合物を含む試料とを、第1の環境条件でインキュベーションする工程であって、第1の構成体が標的化合物に結合し、第1の構成体及び第2の構成体が一緒に結合して重合してポリマーを形成する、工程と、
ii)該ポリマーを分離する工程であって、該標的化合物が該ポリマーに結合したままである、工程と、
iii)該ポリマーを第2の環境条件でインキュベーションする工程であって、該標的化合物が該ポリマーから解離し、該第1の構成体及び該第2の構成体が解離及びモノマー化する、工程と、
iv)工程i~iiiを1~200サイクル繰り返す工程と、
v)該標的化合物を、該第1の構成体及び該第2の構成体から分離する工程と、を含む、も提供される。
【0083】
上記の組成物に関して記載された実施形態は、この方法に等しく適用され、逆もまた同様である。
【0084】
上記の方法において、「第1の構成体」及び「第2の構成体」は、モノマー構成体を指す。「ポリマー」は、重合された構成体を指す。ポリマーに結合している標的化合物への言及は、重合された個々の構成体に結合している標的化合物も指す。
【0085】
第1のインキュベーション工程は、構成体が重合するのに適切な任意の長さの時間であり得る。この工程は、嵩高のポリマーが溶液中、肉眼で見えるようになる時間の長さであり得る。この工程は、1秒~48時間、30秒~24時間、1分~16時間、5分~12時間、20分~8時間、40分~4時間、1時間~2時間であってよい。
【0086】
いくつかの態様において、環境条件は、環境pH、温度、圧力、音響振動、磁場密度、電場密度、電磁励起、局所構成要素濃度、及び補酵素又は補因子又は類似のアクチベーター化合物の存在又は非存在から選択される。好ましくは、環境条件はpH、すなわち、組成物を含む溶液のpHである。
【0087】
混合は、第1のインキュベーション工程中に行ってもよい。混合は、第1のインキュベーション工程全体を通して、又は第1のインキュベーション工程の一部で行われてもよい。混合は、磁気撹拌、ボルテックス、機械的撹拌(例えばインペラによる)、気泡混合、超音波処理、手動撹拌、反転及び/又は振盪を含む任意の好適な手段によるものであってもよい。
【0088】
混合は、ゲル中に捕捉された任意の不純な溶質又は粒子が新しい溶液環境中に放出されるという利点を提供する。
【0089】
本方法は、溶液の環境条件を調整する工程を更に含んでもよい。この工程は、環境を第1の環境条件に調整することを伴ってもよい。この工程は、第1のインキュベーション工程の前、最中、又は後に行われ得る。好ましくは、この工程は第1のインキュベーション工程の前に行われる。いくつかの実施形態において、この工程は、溶液のpHを調整する工程である。様々な実施形態において、この工程は、溶液のpHを第1のpH範囲内又は第1のpHに調整する工程である。pHは、pH約7に調整することができる。pHは、5~9、5.5~8.5、6~8、6.5~7.5、6.8~7.2の範囲内のpHに調整することができる。pHは、pH 5、5.5、6、6.2、6.4、6.6、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9又は9に調整することができる。
【0090】
pHは、酸性溶液又はアルカリ性溶液の添加によって調整することができる。酸性溶液又はアルカリ性溶液は、所望のpH範囲内であってもよい。酸性溶液又はアルカリ性溶液は、緩衝化されていてもよく、緩衝化されていなくてもよい。酸性溶液又はアルカリ性溶液は、酢酸ナトリウム、酢酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リン酸二ナトリウム、MES、トリス、リン酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)、トリシン、ビシン、CHES、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0091】
混合は、pH調整工程中に行ってもよい。混合は、pH調整工程全体を通して、又はpH調整工程の一部で行われてもよい。混合は、磁気撹拌、ボルテックス、機械的撹拌(例えばインペラによる)、気泡混合、超音波処理、手動撹拌、反転及び/又は振盪を含む任意の好適な手段によるものであってもよい。外部混入を減少させるために、好ましくは、これは密封されたユニットにおいて磁気撹拌機を使用して行われる。
【0092】
混合は、ゲル中に捕捉された任意の不純な溶質又は粒子が新しい溶液環境中に放出され、その体積によって相対的に希釈されるという利点を提供する。
【0093】
分離工程は、重合/嵩高のポリマーをより小さい混入物から分離する、当業者によって認識される任意の好適なサイズ捕捉技法であってもよい。分離工程は、粗分離であっても微細分離であってもよい。好ましくは、分離工程は、粗分離である。様々な実施形態において、分離工程は、篩分け、濾過、精密濾過、限外濾過、遠心分離又はサイズ排除である。好ましくは、分離工程は、ポリマーがより微細な分離策又は差別化分離策(例えば、遠心分離)を必要としないほど十分に大きい、粗粒の篩分けである。
【0094】
分離工程は、同じ容器内又は異なる容器内で行うことができる。分離工程は、重合したポリマーを保持し、溶液から混入物を除去することができる。混入物は排出することができる。重合したポリマーを清浄な容器に分離して、最初の容器に混入物を残してもよい。
【0095】
第2のインキュベーション工程は、ポリマーがモノマー構成体にモノマー化するのに適した任意の長さの時間であってもよい。この工程は、嵩高のポリマーが溶液中、肉眼で見えなくなる時間の長さであり得る。この工程は、1秒~48時間、30秒~24時間、1分~16時間、5分~12時間、20分~8時間、40分~4時間、1時間~2時間であってよい。
【0096】
混合は、第2のインキュベーション工程中に行ってもよい。混合は、第2のインキュベーション工程全体を通して、又は第2のインキュベーション工程の一部で行われてもよい。混合は、磁気撹拌、ボルテックス、機械的撹拌(例えばインペラによる)、気泡混合、超音波処理、手動撹拌、反転及び/又は振盪を含む任意の好適な手段によるものであってもよい。外部混入を減少させるために、好ましくは、これは密封されたユニットにおいて磁気撹拌機を使用して行われる。
【0097】
混合は、ゲル中に捕捉された任意の不純な溶質又は粒子が新しい溶液環境中に放出されるという利点を提供する。
【0098】
本方法は、溶液の環境条件を調整する工程を更に含んでもよい。この工程は、環境を第2の環境条件に調整することを伴ってもよい。この工程は、第2のインキュベーション工程の前、最中、又は後に行われ得る。好ましくは、この工程は第2のインキュベーション工程の前に行われる。いくつかの実施形態において、この工程は、溶液のpHを調整する工程である。様々な実施形態において、この工程は、溶液のpHを第2のpH範囲内又は第2のpHに調整する工程である。pHは、pH約4に調整することができる。pHは、2~6、2.5~5.5、3~5、3.5~4.5の範囲内のpHに調整することができる。pHは、pH 2、2.5、3、3.4、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5又は6に調整され得る。
【0099】
pHは、酸性溶液の添加によって調整することができる。酸性溶液は、所望のpH範囲内であってもよい。酸性溶液は緩衝化されていてもよく、緩衝化されていなくてもよい。酸性溶液は、酢酸ナトリウム、酢酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リン酸二ナトリウム、MES、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0100】
本方法は、溶液の環境条件を調整する工程を更に含んでもよい。この工程は、環境を第1の環境条件に調整することを伴ってもよい。この工程は、第2のインキュベーション工程の後に、又は環境条件を第2の環境条件に調整する工程の後に行うことができる。いくつかの実施形態において、この工程は、溶液のpHを調整する工程である。様々な実施形態において、この工程は、溶液のpHを第1のpH範囲内又は第1のpHに調整する工程である。pHは、pH約7に調整することができる。pHは、5~9、5.5~8.5、6~8、6.5~7.5、6.8~7.2の範囲内のpHに調整することができる。pHは、pH 5、5.5、6、6.2、6.4、6.6、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9又は9に調整することができる。
【0101】
pHは、アルカリ性溶液の添加によって調整することができる。アルカリ性溶液は、所望のpH範囲内であってもよい。アルカリ性溶液は緩衝化されていてもよく、緩衝化されていなくてもよい。アルカリ性溶液は、トリス、リン酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)、トリシン、ビシン、CHES、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0102】
本方法は、溶液の環境条件を調整する工程を更に含んでもよい。この工程は、環境を第3の環境条件に調整することを伴ってもよい。この工程は、最終分離工程の前に行ってもよく、又は最終分離工程の一部として行ってもよい。いくつかの実施形態において、この工程は、溶液のpHを調整する工程である。様々な実施形態において、この工程は、溶液のpHを第3のpH範囲内又は第3のpHに調整する工程である。第3のpHは、第1及び第2のpHよりも酸性のpHであってもよい。第3のpHは、第1のpHと第2のpHの間の中間pHであってもよい。
【0103】
混合は、pH調整工程中に行ってもよい。混合は、pH調整工程全体を通して、又はpH調整工程の一部で行われてもよい。混合は、磁気撹拌、ボルテックス、機械的撹拌(例えばインペラによる)、気泡混合、超音波処理、手動撹拌、反転及び/又は振盪を含む任意の好適な手段によるものであってもよい。外部混入を減少させるために、好ましくは、これは密封されたユニットにおいて磁気撹拌機を使用して行われる。
【0104】
混合は、1秒~48時間、30秒~24時間、1分~16時間、5分~12時間、20分~8時間、40分~4時間、1時間~2時間行ってもよい。
【0105】
混合は、ゲル中に捕捉された任意の不純な溶質又は粒子が新しい溶液環境中に放出されるという利点を提供する。
【0106】
本方法の上記工程(任意選択の工程を含むか又は除外する)は、任意の回数繰り返すことができる。好ましくは、本方法の工程は、最大200サイクル繰り返される。本方法の工程は、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、50、75、100、150又は200サイクル繰り返され得る。当業者は、必要とされるサイクル数が溶液中の混入物に依存することを理解するであろう。
【0107】
使用される試薬溶液の体積及び特性(pH、塩濃度、イオン強度、伝導率、粘度、賦形剤若しくは安定化剤の有無、又は温度を含むが、これらに限定されない)は、各サイクルで変化し得る。構成体又は標的化合物(同一又は異なるかのいずれか)の量を増加して、各サイクルの前、最中又は後に添加することができる。各サイクルで、混入物は、十分な純度が得られるまで更に希釈される。
【0108】
構成体から標的化合物を分離する分離工程は、当業者によって認識される任意の適切なサイズ捕捉技術であってよく、好ましくは、粗粒濾過又は篩分け操作である。様々な実施形態において、分離工程は、別個のアフィニティークロマトグラフィー、組み合わされたアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーである。クロマトグラフィー工程による分離の場合、構成体の親和性結合は、構成体分子をモノマーに分離するために破壊されてもよく、これによってそれらが標的化合物と一緒にクロマトグラフィー媒体を通過することを可能にする。
【0109】
分離工程は、同じ容器内又は異なる容器内で行うことができる。分離工程は、標的化合物を保持し、溶液から構成体を除去することができる。分離工程は、構成体を保持し、溶液から標的化合物を除去することができる。標的化合物を清浄な容器に分離して、最初の容器に構成体を残してもよい。構成体は、本方法において再び使用されるためにリサイクルされ得る。
【0110】
上記方法により製造されたポリマーも提供される。
【0111】
本明細書で先に記載した組成物の第1の構成体をコードする核酸配列も提供される。第1の構成体は、ポリペプチド構成体であり得る。
【0112】
配列番号1による核酸配列、該核酸配列を含むベクター、本明細書において前述した組成物を含む宿主細胞、該核酸配列を含む宿主細胞、及び該ベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0113】
配列番号2に記載によるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0114】
配列番号6によるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
ここで、本発明を、図面を単に例として参照して、詳細に説明する。
【0116】
図1】構成体ポリマーの目に見える形成を示す。酸性溶液から中性溶液への脱塩後に、実施例1に記載されるようなプロトタイプ構成体のポリマー形成が、裸眼で見られた。
図2】N末端からC末端方向(左から右)での3つの構成体のドメインの構造配置を示す。(A)実施例1及び5の例示的な構成体。(B)実施例2の例示的な構成体。(C)実施例3の比較構成体。
図3】宿主細胞(細菌)タンパク質及びスパイク抗体を有する実施例1の構成体のSDS-PAGEゲルを示す。各レーンにおける試料の完全な内訳を以下に示す。実施例1に記載されるように、pH 7及び8での重合(A)並びにpH 3.6での再モノマー化(B)後に、抗体でスパイクされた宿主細胞(細菌)タンパク質を有する構成体を含有する試料の、2つのSDS-PAGEゲル。両方のゲルにおいて、レーン1は、図3に示されるようなサイズ(kDa)を有するタンパク質ラダーであり、構成体に対応するバンドは丸で囲まれ(予想どおり54kDa領域)、抗体バンドはゲルAにおいて標識され、ゲルBにおいて長方形のボックスで示される(予想されたサイズ150kDa)。Aでは、構成体及び宿主細胞タンパク質の大部分がポリマー中に回収され、スパイク抗体と共にpH 7及び8で消失する。一部の過剰な抗体は、pH 8でより高い濃度のままであるように見える(A9及びA10)。pH 3.6で再懸濁すると、モノマー化抗体及び構成体が再出現する。混入物も再出現するが、強度が低くなっており、pHサイクル間の希釈効果によって濃度が低くなっていることを示す。
【0117】
ゲルA:
1. 関連するサイズが標識されたタンパク質ラダー(kDa単位)
2. 抗体スパイクを伴わない、pH変化前のモノマー化試料
3. 低い抗体濃度で15分間、pH 7で試料採取
4. 低い抗体濃度で45分間、pH 7で試料採取
5. 低い抗体濃度で15分間、pH 8で試料採取
6. 低い抗体濃度で45分間、pH 8で試料採取
7. 高い抗体濃度で15分間、pH 7で試料採取
8. 高い抗体濃度で45分間、pH 7で試料採取
9. 高い抗体濃度で15分間、pH 8で試料採取
10. 高い抗体濃度で45分間、pH 8で試料採取
【0118】
ゲルB:
1. タンパク質ラダー(Aと同じ)
2. 高濃度のスパイク抗体を伴う、pH変化前のモノマー化試料
3. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
4. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
5. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
6. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
7. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
8. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
9. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
10. Aと同等のレーンで、ただしポリマーペレットをpH 3.6で再懸濁させ試料採取
図4】標的化合物が錠構成要素として倍加し、構成体に対して別個の実体として、ただし同じ混合物中に存在する、本発明の一実施形態を示す。標的化合物は、その構造の一部として適切な錠構成要素を特徴とする任意の化合物であり得、これは天然であるか、改変されているか、又は融合付加物であるかに関わらない。この構成体は、鍵構成要素に結合することもできるサブ錠構成要素に相互連結によって連結された鍵構成要素から構成され、このサブ錠構成要素は、別の鍵構成要素に相互連結によって連結され、この別の鍵構成要素は、電荷構成要素に相互連結によって連結されている。この図は、標的化合物を組み込む嵩高のポリマー形態と遊離溶液中のモノマー形態との間で、第1の環境条件及び第2の環境条件の間で切り替えることによって、どのように交互に可逆的に切り替えられ得るかを示す。標的及びサブ錠は、鍵構成要素を結合するために、わずかに傾向を変えて設計することができるので、最初の2つの間でバランスのとれた第3の環境条件を注意深く選択することで、サブ錠が鍵構成要素を結合するが標的はそれを結合しないようにでき、これによって、複数の錠/鍵結合によって結合された多くの分枝のみを有する構成体のポリマーの形成を可能にし、別個の標的を遊離溶液中に残す。
図5】実施例2及び3の構成体のSDS-PAGEゲルを示す。左パネルは、参照のためにSDS-PAGEゲルにおいて使用されたタンパク質ラダーを示す。各試料は、SDS PAGE用に、1/4 SDS PAGE試料緩衝液を添加した後、90℃で、3分間加熱で変性させることによって調製した。Thermofisher Scientific NuPAGE SDS PAGE Bis/Trisプレキャストゲルを、MES SDS泳動緩衝液に1回浸し、必要に応じて200 Vで20~30分間泳動させた。その後、ゲルを固定し、Coomassie/メタノール染色溶液を用いて染色し、加熱し、水を用いて脱染した。右パネルは、SDS-pageゲルを示す。各レーンにおける試料の完全な内訳を以下に示す。
【0119】
1. 関連するサイズが標識されたタンパク質ラダー(kDa単位)
2. 0.025g/Lに希釈した未処理抗体
3. 追加試験構成体「4」
4. 追加試験構成体「4」
5. 追加試験構成体「4」
6. 追加試験構成体「5」
7. 追加試験構成体「5」
8. 追加試験構成体「5」
9. 抗体スパイク試料(0.025g/L)の「上清」+実施例2構成体、緩衝液をpH 3.6(対照条件)に交換し、スピンダウンした
10. 抗体スパイク試料(0.025g/L)の上清+実施例2構成体、緩衝液をpH 7.0に交換し、スピンダウンした
11. 抗体スパイク試料(0.025g/L)の再モノマー化したゲルペレット+実施例2構成体、緩衝液をpH 7(対照条件)に交換し、スピンダウンし、分離し、50mM酢酸ナトリウム(pH 3.6)に再溶解した
12. 抗体スパイク試料(0.025g/L)の上清+実施例3構成体、緩衝液をpH 3.6(対照条件)に交換し、スピンダウンした
13. 抗体スパイク試料(0.025g/L)の上清+実施例3構成体、緩衝液をpH 7.0に交換し、スピンダウンした
14. 抗体スパイク試料(0.025g/L)の再モノマー化したゲルペレット+実施例3構成体、緩衝液をpH 7(対照条件)に交換し、スピンダウンし、分離し、50mM酢酸ナトリウム(pH 3.6)に再溶解した
図6】pH 3.6及びpH 7条件における実施例2の構成体(A)及び実施例3の構成体(B)の動的光散乱(DLS)データを示す。
【0120】
発明の詳細な説明
実施例1
一例では、ポリマーは以下の構造を有する。
鍵-錠-鍵-電荷構成要素
標的化合物は別個に生成され、溶液中で遊離したままである。
【0121】
本発明の実施形態において、標的化合物はまた、親和性「錠」構成要素として二重の役目を果たし、別個に生成され、遊離溶液中に残る。別個の構成体分子上で、鍵構成要素は、同様に特異的親和性結合メカニズムによって、標的化合物と同じ鍵構成要素に結合するサブ錠構成要素に相互連結によって結合され、標的化合物は、次に同じ鍵構成要素の別のコピーに相互連結によって結合され、これは次に、電荷構成要素に相互連結によって結合される。
【0122】
高pHなどの高い条件での本実施形態の系において、錠構成要素は鍵構成要素に結合し、電荷構成要素は強い正電荷を有し、構成体に全体的な正電荷を与える。この状態では、いずれかの鍵構成要素が別の分子のサブ錠構成要素に結合し、代わりにいずれかが標的化合物に結合することができ、個々の構成体上の錠構成要素と鍵構成要素との間の剛性のリンカーは、それらが折り重なって互いに結合することを防止する。このようにして、各構成体の各鍵構成要素は、溶液環境中に自由に浮遊する他の構成体又は標的化合物のサブ錠構成要素にのみ結合する。2つ以上の鍵構成要素が存在するので、それらは、分枝鎖を形成する複数の構成体由来の錠/標的構成要素に結合することができ、更に標的化合物にも結合できる。任意選択で、構成体は更に、サブ錠の複数のコピーを含み得、したがって、分枝がこの様式で同様に生じ得る。鍵/サブ錠のコピーの相対数を変更すると、分枝の傾向に影響を及ぼす。この鎖は、溶液中の最大で全ての構成体が単一の分枝ポリマー鎖に連結し得るような長さ及び分枝に成長するか、又はより多数のより小さいポリマー鎖が依然として長い長さ及び多くの分枝を形成し得る。これらの分枝ポリマーはサイズが非常に大きいため、嵩高の巨視的塊を形成し、個々の構成要素サブユニットは依然として溶媒によって溶媒和されるが、その嵩高の塊は、易流動性溶質のままであるには大きすぎ、したがって、一種のゲルを形成することになる。これは、粗粒フィルター又は篩分けによって物理的に濾過することができるほど十分に大きくなり得る。このような粗粒フィルター又は篩分けを使用することにより、多量の溶媒及び他の溶媒和若しくは懸濁した不純物溶質又は粒子から、結合した標的化合物を有する構成体ポリマー複合体(複数可)を除去することが可能になり、ゲルが、様々な化学環境、体積、及び不純物混合物を有し得る二次溶液中に堆積され得、したがって、この工程は、濃度及び相対純度を変化させ、新しい溶液環境に再交換することができ、それによって、ゲルを構成する構成体の化学的特性のシフトを誘導し得る。わずかに低いpHなどの、より低い条件では、電荷構成要素は中性に帯電し得る。更に低い条件では、電荷構成要素は負に帯電し得る。これとは別に、第1の条件よりも低い条件では、主に電荷構成要素の電荷のシフトの結果として構成体全体が中性に帯電し、より低い条件では、やはり主に電荷構成要素の電荷のシフトの結果として構成体全体が負に帯電し得る。これとは別に、第1の条件よりも低い条件では、鍵構成要素に対する標的/錠構成要素の結合速度が低下し、その結果、先にポリマー複合体に連結していた標的化合物が解離して新しい溶液環境に放出される一方で、サブ錠は、鍵に対してより高い親和性を有するように操作され、その結合、ひいては構成体のポリマー複合体への結合を保持し、この状態で、粗フィルター又は篩分けを任意選択で使用して、複合体から構成されるゲルを溶液環境から濾過して標的化合物を残すことができる。更に低い条件では、サブ錠構成要素は鍵構成要素に対する親和性を失い、構成体複合体は再びモノマーに分離する。全体を通して、電荷構成要素の異なる制御された状態を利用することによって、構成体は、イオン交換、疎水性相互作用、異なる種類の親和性、混合様式又は任意の他のものを含むクロマトグラフィーなどの従来の精製技術によって、溶液環境から更に分離又は精製され得る。構成体をポリマー状態とモノマー状態との間で循環させることによって、標的化合物を含む重合された構成体を篩分けし、新しい溶液中に再堆積させ、再モノマー化し、新しい環境と混合し、繰り返し再重合させることができる。化学環境がモノマー化を直ちに誘導するように予め調製することができるため、再モノマー化は、再堆積をするごとに新しい溶液中で直ちに起こり得る。又は、必要に応じてモノマー化を誘導するために、酸などの化学添加剤を後で添加してもよい。この時点で、溶液を混合することによって、ゲル中に捕捉された任意の不純な溶質又は粒子を新しい溶液環境中に放出させることができる。次いで、アルカリなどの添加剤を溶液環境に添加することによって再重合を誘導することができ、この添加量は、様々なレベルの構成体の全体電荷及び電荷構成要素の電荷で再重合が起こるように、制御することができる。重合は、溶液環境中の空間の凝縮領域に構成体分子を優先的に濃縮し、溶液環境中に残りの多量の不純物を残し、この重合中に構成体の電荷を制御することによって、電荷反発を介して不純物の分子群を更に反発させることができるという効果を有する。したがって、重合、篩分け、再堆積、再モノマー化及び混合の各サイクルで、生成物の純度を連続的に増加させることができ、重合中に電荷を変化させることによって、更なる種類の不純物を排除することができる。最終サイクルにおいて、溶液環境を、サブ錠が鍵に結合し、標的化合物がそれに結合しない中間状態に調整して、ポリマーを形成させることができ、最終篩分けプロセスにおいて、構成体を分離して、標的化合物を純粋な状態で残すことができる。構成体は廃棄されてもよく、又は標的化合物を含有する不純な供給物の新しいバッチにおいて再使用することもできる。このようにして、標的化合物及び構成体はまた、最初に別々に合成され得、そして記載されるような精製手順のために一緒にされ得る。
【0123】
実施例2
本実施例では、構成体の変異体は以下を組み込む:
プロテインLのBドメイン親和性結合パートナーの2つのコピー、
対応物としてのκ軽鎖抗体フラグメント、
リンカー及びC末端に位置する電荷構成要素(この場合、リンカーにおける酸性基及び末端におけるヒスチジン塩基基に空間的に分割される)。
【0124】
図2Bに示すように、構成要素の順序(5’から3’)は以下のとおりであった:
プロテインLのBドメイン、負のリンカー、プロテインLのBドメイン、負のリンカー、κ軽鎖、正電荷構成要素。
【0125】
発現された構成体は、配列番号6によるポリペプチド配列を有していた。
【0126】
構成体は、LB増殖培地を使用して増殖させ、IPTGを介して発現するように誘導した培養物中のpETベクターによって、BL21(DE3)E.coli細胞株中で発現させた。得られた細胞を遠心分離機でペレット化して濃縮し、培地を除去した。B-PER(商標)細胞溶解試薬(Thermofisher Scientific)を添加して細胞内容物を放出させ、DNase I(Thermofisher Scientific)を添加して、後の工程においてDNAによって引き起こされる不溶性画分への沈殿を防止した。6M塩酸グアニジンを添加して、後の工程における不溶性画分への沈殿を更に防止し、プロテアーゼのタンパク質分解作用を停止させた。混合物をPD10緩衝液交換カラム(Cytiva)に通して、B-PER(商標)/グアニジニウム混合物を交換し、pH 3.6の酢酸ナトリウム溶液に置き換えた。これは出発混合物であり、構成体と多くのポリペプチド及び細胞不純物の両方を含んでいた。このpHでは、プロテインL親和性結合パートナーはκ軽鎖への結合が妨げられ、構成体は主にモノマー形態で液体画分中に残った。
【0127】
全長ヒトIgG抗体精製標的(長さ約145kDa)を、構成体とほぼ同等の濃度に希釈し(SDS-PAGEゲル上での観察による)、混合物に添加し、混合し、試料採取した。
【0128】
37.5μLの試料を、SDS-PAGE上での直接泳動のために調製した。2×130μLの試料を、リン酸ナトリウムpH 7.0で予め平衡化した7kDa MWCO緩衝液交換/分離Zebaカラム(Thermofisher Scientific)に通した。対照として130μLの試料を、酢酸ナトリウムpH 3.6で予め平衡化した7kDa MWCO緩衝液交換/分離Zebaカラム(Thermofisher Scientific)に通した。こうして、全長抗体、構成体、及び広範囲のサイズ(>7kDa)の多くの不純物を含む混合物は、pH7.0に迅速に交換され、第2の対照ロットは、pH 3.6環境に十分に交換された。緩衝液交換溶出液を混合し、この条件にて室温で15分間インキュベーションした。
【0129】
pH 7.0条件において、プロテインL親和性結合パートナーは、構成体のコピー中のκ軽鎖に結合することが可能であり、構成体のポリマーを形成した。過剰のプロテインLは、構成体の2つ以上のコピー由来のκ軽鎖にいくつかのコピーが結合することを可能にし、ポリマー中に分枝を形成した。過剰のプロテインLは、構成体のコピーの大部分が遊離全長IgG抗体に結合することを可能にした。剛性のリンカー及び近接部は、プロテインL及びκ軽鎖が折り返され、構成体の1コピー内に結合することを防止した。
【0130】
構成体の単一ユニットにおけるプロテインL及びκ軽鎖の剛性及び配向は、安定な二量体の過剰な形成を防止した。特定の配向で結合するプロテインL鎖及びκ軽鎖の親和性結合は、構成体全体の剛性と共に、自由端が曲がること、及びまた互いに結合することを防止した。
【0131】
プロテインLは、抗体軽鎖上の複数の部位で結合することができ、したがって、構成体の複数のコピーが抗体に結合して、ポリマー中に分枝を形成することができる。この場合、構成体に組み込まれた電荷基は、理論上の全体pI 7.54を構成体に与え、したがって、この緩衝条件(pH 7.0)では、構成体に小さな全体的負電荷を与え、pH 8.0では、構成体に小さな全体的正電荷を与えた。これは、pH緩衝を制御することによって、同様の電荷の粒子の静電反発力の調整を可能にする。
【0132】
pH 3.6条件において、プロテインL親和性結合パートナーは、構成体のコピー中のκ軽鎖に対するそれらの結合傾向から可逆的に不活性化された。したがって、構成体はポリマーを形成することができず、IgG抗体に結合することができず、両方とも溶液中で遊離のままであった。
【0133】
pH 7.0条件において、構成体-抗体ポリマーは目に見える粒子を形成したが、3.6条件では形成しなかった。これらを両方とも遠心分離し、pH 7.0条件でポリマーのゲルペレットを形成し、残りの上清をデカントし、SDS-PAGEでの泳動のために調製した。残ったゲルペレットを等体積の酢酸ナトリウムpH 3.6に再懸濁させ、混合しながらインキュベーションした。pH環境の変化により、ポリマーは液体懸濁液に再モノマー化した。これもSDS-PAGE上での泳動のために調製した。
【0134】
図5のゲルは、かすかな抗体フラグメント(98~145kDaのサイズ)を有するレーン2の未処理抗体を示す。pH 3.6に緩衝液交換された抗体スパイク対照試料をレーン9に示す。pH 7.0に緩衝液交換された抗体スパイク試料の上清をレーン10に示す。再モノマー化ゲルペレットをレーン11に示す。
【0135】
レーン9は、様々なサイズの細胞不純物の混合物と混合された抗体の強い存在と共に、38~49kDaの中程度のバンドを示す(参照のために、構成体は40kDaである)。レーン10は、抗体が、約40kDaの構成体バンドを有するままで、上清混合物から実質的に除去されたことを示す。様々なサイズの細胞不純物の対応する混合物が残されている。これは、抗体が、構成体が存在するままで、溶液からほとんど隔離されたことを示している。レーン13(抗体スパイク試料(0.025g/L)の上清+実施例3構成体、緩衝液をpH 7.0に交換し、スピンダウンした)では、完全長抗体が再出現し、元の添加と同じ見かけ濃度であり、抗体の高い回収率を実証した。更に、他のタンパク質の混合物は、混合物から顕著に除去されており、高レベルの精製を示している。こうして、この系により、生成物隔離、生成物回収、生成物緩衝液置換、生成物濃縮、全般的な不純物除去を実証した。
【0136】
実施例3
本実施例では、構成体の変異体は以下を組み込む:
プロテインLのBドメイン親和性結合パートナーの2つのコピー、
対応物としてのκ軽鎖抗体フラグメント。
【0137】
図2Cに示すように、構成要素の順序(5’から3’)は以下のとおりであった:
プロテインLのBドメイン、リンカー、プロテインLのBドメイン、リンカー、κ軽鎖。
【0138】
発現された構成体は、配列番号7によるポリペプチド配列を有していた。
【0139】
構成体を発現させ、同じ全長ヒトIgG抗体精製標的と混合し、上記の実施例2に記載したようにpH 7.0又はpH 3.6に緩衝液交換した。
【0140】
pH 7.0条件において、プロテインL親和性結合パートナーは、構成体のコピー中のκ軽鎖に結合することが可能であり、構成体のポリマーを形成した。過剰のプロテインLは、構成体の2つ以上のコピー由来のκ軽鎖にいくつかのコピーが結合することを可能にし、ポリマー中に分枝を形成した。過剰のプロテインLは、構成体のコピーの大部分が遊離全長IgG抗体に結合することを可能にした。剛性のリンカー及び近接部は、プロテインL及びκ軽鎖が折り返され、構成体の1コピー内に結合することを防止した。
【0141】
構成体の単一ユニットにおけるプロテインL及びκ軽鎖の剛性及び配向は、安定な二量体の過剰な形成を防止した。特定の配向で結合するプロテインL鎖及びκ軽鎖の親和性結合は、構成体全体の剛性と共に、自由端が曲がること、及びまた互いに結合することを防止している。
【0142】
プロテインLは、抗体軽鎖上の複数の部位で結合することができ、したがって、構成体の複数のコピーが抗体に結合して、ポリマー中に分枝を形成することができる。追加の組み込まれた電荷構成要素なしでは、構成体の構成要素のpIは4.87であり、したがって、この緩衝条件(pH 7.0)において、構成体に顕著な正電荷を与え、したがって、他の同様の電荷を反発する。
【0143】
pH 3.6条件において、プロテインL親和性結合構成要素は、構成体のコピー中のκ軽鎖に対するそれらの結合傾向から可逆的に不活性化された。したがって、構成体はポリマーを形成することができず、IgG抗体に結合することができず、両方とも遊離溶液中に残った。
【0144】
pH 7.0条件において、構成体-抗体ポリマーは、目に見える粒子を形成した。これらを遠心分離してポリマーのゲルペレットを形成し、残りの上清をデカントし、SDS-PAGEでの泳動のために調製した。残ったゲルペレットを等体積の酢酸ナトリウムpH 3.6に再懸濁させ、混合しながらインキュベーションした。pH環境の変化により、ポリマーは液体懸濁液に再モノマー化した。これもSDS-PAGE上で泳動するために調製した。同様に、pH 3.6条件でも遠心分離し、上清をSDS-PAGE上での泳動のために調製した。
【0145】
図5のゲルは、細胞内容物と混合され酢酸ナトリウムpH 3.6に交換された抗体を、レーン12に示す。pH 7.0での調整及びインキュベーション後の上清をレーン13に示す。再モノマー化ゲルペレットをレーン14に示す。レーン12及び13は、様々な高分子量及び低分子量の不純物の、対応する混合物を示す。レーン12は完全長抗体の顕著な存在を示し、レーン13は抗体が上清混合物から顕著に減少したことを示す。同様に、かすかなバンドが構成体に対応する。更に、抗体のフラグメント(98~145kDaのサイズ)も残されている。これは、抗体が、構成体が存在するままで、溶液から顕著に隔離されたことを示す。レーン14では、完全長抗体は、レーン13の上清画分中に残っている抗体としてより高い見かけの濃度で、及びレーン12で見られる元の添加としての濃度の顕著な画分で再出現し、抗体の実質的な回収を実証している。更に、他のタンパク質の混合物は、混合物から顕著に除去されており、高レベルの精製を示している。更に、抗体フラグメントも顕著に除去されており、標的関連不純物の精製も示している。こうして、この系により、生成物隔離、生成物回収、生成物緩衝液置換、生成物濃縮、全般的不純物除去(すなわち、抗体フラグメント)を実証した。
【0146】
実施例2及び実施例3は構造的に類似しており、両方とも、プロテインLのBドメインの2つのコピーと、それに続くκ軽鎖の同一コピーとを有する。これらは、実施例2における電荷構成要素の存在(C末端に集められたヒスチジン残基と、この末端に散在し、剛性のリンカー領域に埋め込まれた荷電アミノ酸との組み合わせ)、及び実施例3における電荷構成要素の不在によって区別される。したがって、同一の操作条件において、本発明者らは、電荷構成要素によって誘導される差を観察することができた。実施例2のレーン10~11及び実施例3のレーン13~14で観察されたより高いレベルの抗体分離に見られるように、実施例2と3との間で、相対的な見かけの隔離レベルの差が観察された。中間サイズ範囲(14~28kDa)の不純物バンドのパターンの相対的除去のレベルも明らかに区別された。これらは、分離挙動が構成体の2つのバージョンの間で区別されることを示しており、これにより本発明者らは、電荷構成要素アミノ酸の存在が構成体の分離機能をうまく調整可能に調節することができたと結論付けた。
【0147】
実施例4
重合プロセスを更に調査するために、実施例2及び3の材料を、動的光散乱(DLS)装置を使用して試験した。両方とも50mM酢酸ナトリウムpH 3.6緩衝条件において、各々のいくつかの抗体スパイク再可溶化したペレットを2つに分割した。第1の32.5μLの試料を、元のpHを維持し対照として作用する、22.5μLの50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH 3.6を更に加えて希釈し、一方、第2の32.5μLの試料を、22.5μLの400mMリン酸ナトリウムpH 9を更に加えて希釈し、合わせた新たな組み合わせpH 7.0を得た。これらを室温で30分間インキュベーションし、Malvern Instruments APS2000 Zetasizerによって測定した。図6Aは、実施例2の構成体についてのDLSデータを示す。データは、pH 3.6条件において600nmの直径を中心としたより小さい粒径を明確に示し、更に、pH 7.0条件において2200nmの直径を中心としたより大きい粒径も示している。これらのピークは、pHがpH 7.0に上昇したときに重合が起こっていることを明確に示している。DLSデータの左端の第3の化学種は、より小さい粒子を形成するために破壊された重合体のフラグメント、又は潜在的に抗体若しくは抗体フラグメントのいずれかであり得る、第3のより小さい化学種を示す。同様に、図6B(実施例3の構成体についてのデータを示す)では、pH 3.6条件において200nmの直径を中心とするより小さい粒子の分布が観察され、pH 7.0条件において1600nmの直径を中心とするより大きい重合粒子の分布が観察される。実施例2の構成体と同様に、より小さいピークを左端に見ることができ、これも、重合形態又は抗体若しくは抗体フラグメントのいずれかのフラグメントを表し得る。この場合、このより小さいフラグメントは、pH 3.6条件で観察されるより小さい粒径にも対応する。このピークはまた、pH 7.0条件における大きなポリマーピーク及びpH 3.6条件におけるより小さなピークの両方よりも体積占有率において実質的に小さいので、これは、pHが3.6から7.0に増加した場合に、より大きなポリマーを形成するためにより小さなピークが消費されていることを示す。
【0148】
実施例5
このプロトタイプ実施例で使用した構成体は、細胞の粗混合物から抗体を精製するように設計した。このプロトタイプは、野生型Bドメインを含むタンパク質構成体であり、これは短いアミノ酸リンカーを介してFcドメインに接続され、これは短いアミノ酸リンカーを介して第2のFcドメインに接続されている(図2A)。
【0149】
発現された構成体は、配列番号2によるポリペプチド配列を有していた。
【0150】
構成体のDNA配列(配列番号1)をpET100クローニングベクターにクローニングした。別段の記載がない限り、以下の工程の試薬は、Thermo Fisher Scientificから購入した。大量の培地及び消耗品は、オートクレーブを用いて滅菌した。より少量(50mLまで)の試薬は、シリンジで0.2μmフィルターを通して滅菌した。
【0151】
プロトタイプ構成体を含有するpET100プラスミドを、製造業者が推奨するプロトコールに従って、E.coli One Shot(登録商標)BL21(DE3)化学的適格細胞に形質転換した。100μL/プレートの体積の形質転換反応物を、100μg/mLのアンピシリンを含有するLB寒天プレート上、37℃で一晩増殖させて、形質転換体を選択した。
【0152】
単一コロニーを採取し、これを使用して、100μg/mLのアンピシリンを補充したLB培地を含有する一晩培養物に接種した。これらを37℃で増殖させた。
【0153】
一晩培養物を用いて、0.5L振盪フラスコ内で100μg/mLアンピシリンを含有する200mLのLB培地に接種した。これらを37℃で2時間増殖させ、200RPMで撹拌した。
【0154】
イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を0.3mMの最終濃度まで添加することによって、プロトタイプの生成を誘導した。細胞を、200RPMで撹拌しながら、37℃で更に6時間増殖させた。
【0155】
ベンチトップ遠心分離機を用いて、5000×gで10分間遠心分離することにより細胞を回収し、ペレットを-80℃で保存した。
【0156】
抽出のために、細胞ペレットを室温で解凍し、B-PER(商標)Bacterial Protein Extraction Reagentを製造業者のプロトコールに従って使用し、細胞を溶解した。各0.5gの細胞ペレットについて、2mLのB-PER試薬を添加した。
【0157】
6M塩酸グアニジン(Gd-HCl)を溶解細胞に添加して、発現し折り畳み違えて封入体になった任意の構成体を展開した。
【0158】
変性試料を採取し、pH 3.6の酢酸ナトリウムで平衡化した使い捨てPD-10脱塩カラム(GE Healthcare)に通すことによって、構成体を再折り畳みして、構成体をそのモノマー形態に維持したが、宿主タンパク質混入物の大部分が存在した。
【0159】
純粋な抗体を、構成体を含有する混合物にスパイク添加した。SDS-PAGEにおける分析の結果、試料中に存在する混入物が、清浄な試料と比較して、抗体バンドをマスクすることを示した(データは示されていない)。リン酸ナトリウム緩衝液を最大45分間使用して、pHをpH 7及びpH 8に上方調整した。これを13000×gで2分間遠心分離してポリマーを回収した。構成体及び抗体の両方が可溶性試料から消失している(図3A)。遠心分離前にSDS-PAGEを介して試料を分析する試みは、重合した試料のピペッティングが困難であったため、失敗した。
【0160】
pH 3.6の酢酸ナトリウムを遠心分離ペレットに添加することによって、ポリマーを再モノマー化した。試料を、SDS-PAGEを用いて分析したところ、pH 7及び8で構成体及び抗体がポリマー中に消失し、pH 3.6で抗体及び構成体が回収され、宿主タンパク質混入物がわずかに希釈されたことが示された(図3)。
【0161】
実施例6
この方法は以下の工程を含む。
【0162】
1. 発明の概要に記載される重合する構成体は、タンパク質又は核酸であり得る標的分子、及びそれが分離される必要がある混入物の混合物を含有する、バルク試料に添加される。タンパク質構成体の添加は、標的生体分子と同じ試料(同じ細胞又は異なる細胞のネットワークのいずれかにおいて共発現される)におけるタンパク質構成体の生成を含み得る。試料中の混入物は、宿主細胞タンパク質、DNA、RNA、他の核酸変異体、ウイルス、緩衝液、培養/増殖培地、脂質、不溶性構成要素、細胞小器官、内毒素、エキソソーム、植物物質、昆虫組織、細菌細胞及び環境混入物、インビボ混入物のうちのいずれか1つ又はそれらの混合物を含み得る(ただしこれらに限定されない)。
【0163】
2. 標的分子及びタンパク質構成体の両方を含有する試料は、静置されてもよく、又は精製規模に適した従来の手段を使用して混合されてもよく、この手段としては、磁気撹拌、ボルテックス、機械的撹拌(例えば、インペラによる)、気泡混合、超音波処理、手動撹拌、反転、又は振盪が挙げられ得るが、これらに限定されない。1秒~48時間の指定された時間(30秒、1分、5分、20分、40分、1時間、4時間、8時間、12時間、16時間、24時間又は48時間を含む)にわたって、混合又は静置される。pHは、pH 5、5.5、6、6.2、6.4、6.6、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9又は9を含む、中性pH又はその付近、及びpH 5~9の範囲内に調整され得る。標的生体分子及びタンパク質構成体を含有するポリマーが形成される(図1)。これは、規模、使用される溶液の特性、及び試料の特性に応じて、可視であってもなくてもよい。
【0164】
3. ポリマーは、適切なサイズ捕捉技術によって捕捉される。これには、濾過、精密濾過、限外濾過、遠心分離、サイズ排除が含まれるが、これらに限定されない。これは、同じ容器内であっても、別個の容器/デバイスを介してであってもよい。混入物は排出されるが、標的分子は捕捉されたポリマー内に残る。
【0165】
4. 捕捉されたバイオポリマーは、pH 2、2.5、3、3.4、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5又は6を含むpH 2~6の範囲内の酸性溶液で「洗浄」することによってモノマー化される。酸性溶液は緩衝されていてもいなくてもよく、酸性溶液は酢酸ナトリウム、酢酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リン酸二ナトリウム又はMESのうちの1つ又は混合物を含有してもよい(ただしこれらに限定されない)。得られた混合物は、1秒~48時間の指定された時間(30秒、1分、5分、20分、40分、1時間、4時間、8時間、12時間、16時間、24時間又は48時間を含む)にわたって、工程2に記載の技術を使用して混合されてもされなくてもよい。バイオポリマー中に捕捉され得る混入物は、この工程で希釈される。
【0166】
5. ここで、工程4から得られた溶液は、標的生体分子及びモノマー化形態のタンパク質構成体を含有する。pHは、適切な試薬を使用して調整され、この試薬は、緩衝化されていてもいなくてもよく、トリス、リン酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)、トリシン、ビシン又はCHESのうちの1つ又は混合物を含有してもよい(ただしこれらに限定されない)。pHは、pH 5、5.5、6、6.2、6.4、6.6、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9又は9を含む、中性pH又はその付近、及びpH 5~9の範囲内に調整され得る。標的生体分子及びタンパク質構成体を含有するポリマーが形成される(図1)。これは、規模、使用される溶液の特性、及び試料の特性に応じて、可視であってもなくてもよい。
【0167】
6. 工程3~5は、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、50、75、100、150又は200サイクルを含む、最大200サイクルまで繰り返される。使用される試薬溶液の体積及び特性(pH、塩濃度、イオン強度、伝導率、粘度、賦形剤若しくは安定化剤の有無又は温度を含むが、これらに限定されない)は、各サイクルで変化し得、より多くの重合タンパク質構成体又は生体分子標的試料(工程1におけるものと同じか又は異なるかのいずれか)が、各サイクルの前、最中又は後に添加され得る。各サイクルで、混入物は、十分な純度が得られるまで更に希釈される。
【0168】
7. 最終工程は、重合構成体を標的生体分子から分離する。これは、要素Bに記載されるような構成体の特性に依存する。これには、別々の又は組み合わされたアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、タンパク質分解切断又はタンパク質分解自己切断が含まれ得るが、これらに限定されない。重合構成体はまた再循環され、精製の更なるバッチで使用されてもよい。
【0169】
実施例7
更なる例示的な系は、単一ドメイン抗体又は抗体模倣体又は「足場」タンパク質の例として、カメリド抗体フラグメントを含む。ヒト抗体と同様に、これらカメリドは、適切なタンパク質ベースの抗原に対する免疫応答又はライブラリー選択によって生成されて、非常に高い結合親和性及び特異性を達成することができ、コンパクトであることと、単一ドメインから構成されるということとの更なる利点を伴う。これらは、更なる長さを切除するように更に操作することができ、単一のポリペプチドに連結され得る。したがって、このようなプログラム可能な系は、プログラム可能な親和性のクラスを作製するために使用され得る。この実施例において、カメリドは、構成体中の(錠)親和性結合パートナーとして組み込まれてもよく、その特異的抗原パートナー(鍵)も構成体中に組み込まれる。
【0170】
そのようなリガンドパートナーには、乳酸デヒドロゲナーゼ又はグルタチオン-Sトランスフェラーゼなどの一般的なタンパク質、又はアルブミンなどのより良性のパートナー、又は緑色蛍光タンパク質(GFP)などのより希少なタンパク質が含まれ得る。GFPの場合、これは、構成体の存在の光学的蛍光モニタリングを可能にする利点を有し、励起特性の操作を通して、代替色が可能になり、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)を通して、重合が構成体の別個のコピー上のGFPのコピーを近接させる際に、量子トンネル効果による光エネルギーの伝達を通して重合の程度を光学的に測定するために使用され得る。各々の場合において、異なるカメリドは、その抗原に対して特異的に組み込まれる。
【0171】
典型的には、カメリド及び他のそのような足場型のプログラム可能な親和性タンパク質の、所与の標的に対する結合親和性は、実施例1~3のように環境条件を中性pHから酸性pHにすることによって可逆的に破壊される。更に、このような結合はまた、中程度の濃度の変性剤(例えば、1~3Mの塩酸グアニジン又は尿素)、又はいくつかの非水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール若しくはエチレングリコール)の添加によって、可逆的に破壊される。したがって、このような構成体は、前述の実施例におけるように、それ自体のコピーに結合してポリマーを形成することができ、緩衝環境における変化を介して可逆的にモノマー化することができ、そして実施例1~3がIgG抗体を精製できたのと同じ様式で、不純な混合物からパートナー抗原のコピーに結合して共精製することができる。
【0172】
カメリド抗体フラグメントがプログラム可能であることは、これが、構成体に組み込まれたパートナーリガンドとして抗体Fcドメイン又はκ軽鎖を有するIgG抗体又は抗体フラグメントに特異的に結合するように生成される前述の実施例におけるプロテインA及びプロテインLの機能を同様に複製することができること、並びに完全長抗体が前述の実施例におけるように混合物から共精製されることを意味する。更に、カメリド抗体フラグメントの複数のコピーが構成体に組み込まれるので、異なるカメリド及び各々の異なる量を組み込むことができ、組み込まれたカメリドの一次セットが、構成体に組み込まれた任意的タンパク質リガンドパートナーに結合して、言及されたタンパク質などの重合機能を提供し、組み込まれたカメリドの第2のセットが、構成体の一部ではない、精製される任意的標的リガンドに結合することを可能にする。構成体中の第1のタイプの量を増加させると、重合及びポリマー分枝化の速度及びレベルが増加し、第2のタイプの量を増加させると、精製される標的リガンドに対する親和性が増加する。更に、両方を別個の基として有することは、環境pHにおける結合傾向の更なる区別を可能にし、例に示すように、より良好な選択的結合解除を可能にする。
【0173】
環境pHは、構成体上に組み込まれ、抗体に結合するように生成されたカメリドが抗体を放出するように低下させることができ、一方、同じ条件で、同じ構成体上に組み込まれ、それ自体が構成体に組み込まれたGFPに結合するように生成された第2のカメリドは結合したままであり、構成体集塊は重合したままであり得、したがって溶液から篩分けされて抗体を残すことができる。
【0174】
カメリドフラグメントタンパク質は、抗体又は抗体模倣体の1つのクラスである。結果として、ヒト抗体及び抗体フラグメントの操作された一本鎖変異体、アフィボディ(プロテインAのZドメイン由来)、モノボディ(フィブロネクチン由来)、DARPin(アンキリン由来)、アフィマー(シスタチン由来)、ノブドメインペプチド(ウシ抗体由来)などを含むがこれらに限定されない任意の類似のタイプの系を、類似の方法でその代わりに使用することができる。全ての場合において、構成体のpI、及び構成体ポリマーのpI、及び構成体/標的タンパク質ポリマー複合体のpIは、構成体への電荷構成要素の包含によって調節及び調整され得る。テール及びリンカーに組み込まれた電荷構成要素中のヒスチジンと代替荷電アミノ酸との量及び比を制御することによって、全体のpIをシフトさせて、重合/モノマー化条件を有利な範囲に調節し、pHをプログラムされたpIのいずれかの側であるが重合範囲内に設定することによって重合中の静電荷を制御し、こうしてポリマーに正、負又は中性の全体電荷を与えて、それぞれ正、負電荷を選択的に反発させ、疎水性隔離を調節することができる。
【0175】
実施例8
別の提案された構成体の例示的な系は、プログラム可能な結合能力を有するオリゴヌクレオチドの例として、可逆的に結合するDNAアプタマーを含む。ヒト抗体と同様に、これらのアプタマーは、非常に高い結合親和性及び特異性を達成するために、適切なタンパク質標的ベースの抗原に対するライブラリー選択を介して生成され得る。それらは、コンパクトであり、ヌクレオチドのみから構成され、とりわけ化学的固体合成手段によってそれらを工業的に製造可能にし、従来の手段を介して最小限の免疫反応及び高い精製可能性で安全な生物適合性を付与するという更なる利点を有する。それらは、標的親和性を調整し、環境条件に応じて可逆的結合を付与するために三次構造を利用するように更に操作され得るか、又は更に選択され得る(すなわち、環境変化は、標的に対するそれらの結合親和性を顕著に減少させる立体構造シフトを誘導し得る)。したがって、このようなプログラム可能な系は、プログラム可能な親和性のクラスを迅速に作製するために使用され得る。この実施例において、アプタマーは、その特異的抗原パートナー(鍵)が目的の標的である状態で、構成体中の(錠)親和性結合パートナーとして組み込まれ得る。更に、オリゴヌクレオチド結合の性質によって、組み込まれたオリゴヌクレオチド配列は、別の組み込まれたオリゴヌクレオチド配列に対して相補的であるように操作することができ、構成体中に戦略的に配置され得るか、又は一致しない比での複数コピーであってもよく、そして構成体の2つのコピーが互いに結合してポリマーを形成することを可能にし得る。これらの配列の1つは、アプタマー部分自体の一部であってもよい。構成体の1コピー内の自己結合は、相補的配列の戦略的配置の両方を介して制限され得る。例えば、より安定で大きな三次構造によって分離された相補的配列の各々を有することは、それらが互いに到達することにより、自己結合を立体構造的にブロックすることを妨げるが、複数の構成体コピーが一緒に重合することを可能にする。
【0176】
典型的には、アプタマー及び他のそのようなプログラム可能な親和性オリゴヌクレオチドの、所与の標的に対する結合親和性は、環境条件をベースライン又は操作温度からより高い温度にすることによって可逆的に破壊される。しかし、このようなアプタマーを反復して選択することもでき、それによって、pHの変化又はメタノール、エタノール若しくはエチレングリコールなどの非水性溶媒の添加によってもまたこのような結合が可逆的に破壊される。したがって、そのようなアプタマーを組み込んだそのような構成体は、先の実施例におけるように、それ自体のコピーに結合してポリマーを形成し、溶液環境の変化を介して可逆的にモノマー化し、実施例1~3がIgG抗体を精製することができたのと同じ方法で、不純混合物から標的のコピーに結合して共精製することができた。
【0177】
アプタマーの複数のコピーを構成体に組み込むことができ、また、構成体中のアプタマーの量を増加させると、精製される標的リガンドに対する親和性及び結合比が増加する。同様に、構成体は、相補的配列の複数のコピーを組み込むことができ、重合及びポリマー分枝化の速度及びレベルに影響を及ぼす。
【0178】
そのようなアプタマーベースの構成体は、電荷構成要素を組み込んで構築することができ、これは複数の方法で達成することができる。1つのそのような方法は、他の実施例にしたがって電荷構成要素を含有するポリペプチドに特異的に結合するように選択された追加のアプタマーを組み込むことであり、こうして、他の場合のように基電荷及びプログラム可能なpIを付与する。類似の効果を達成するための別の方法は、固相化学合成手段を介して修飾塩基を組み込むことであり、これは、ペプチド基又はアミノ酸基を直接組み込むこと、又は電荷保有反応性基を直接含めることができ、それらのアミノ酸対応物に関して類似のpKaを用意することで、提供されるポリペプチドベースの実施例と同じ様式でプログラム可能なplを可能にする。
【0179】
人工的化学合成手段を介して非標準オリゴヌクレオチド塩基を組み込む選択肢はまた、アプタマー三次構造の立体構造を強化するため、又は精製標的へのアプタマー複合体の結合を調節するため、潜在的に結合を増強するため、又は結合の平衡及び可逆性を調整するような方法でそれに影響を与えるために、複合体及びカスタマイズ可能な基での代替の化学的手段の可能性を開く。
【0180】
提供されるカメリドの実施例と同様に、環境条件に応じて精製標的に対するアプタマーの結合親和性を調整することは、構成体重合領域の相補的結合に対するその親和性を制御するのに有利である。標的から構成体を除去するための最終自己精製工程として、後者は特定の環境において結合し得るが、前者は標的を残しながら構成体をゲル状態に重合させない条件を作製することによって、構成体を標的から除去する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023550518000001.app
【国際調査報告】