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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】統合的観察システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20231124BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20231124BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20231124BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20231124BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61B5/00 N
A61B5/1455
A61B5/107 300
A61B5/0245 100B
A61B5/11 200
A61B5/02 C
A61B5/08
A61B5/113
A61F13/42 F
A61F5/44 S
A61B5/01 350
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541851
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 AU2021051095
(87)【国際公開番号】W WO2022056607
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】2020903382
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512115243
【氏名又は名称】フレッド バーグマン ヘルスケア ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】スプーナー,マイケル
【テーマコード(参考)】
3B200
4C017
4C038
4C098
4C117
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200DF04
3B200DF05
3B200DF20
4C017AA10
4C017AA12
4C017AA14
4C017AB05
4C017AC28
4C017BC11
4C017DD14
4C017EE01
4C017FF17
4C038KK01
4C038KL07
4C038SS08
4C038SV01
4C038VA04
4C038VB28
4C038VB31
4C098AA09
4C098CD08
4C098CD09
4C117XB01
4C117XC15
4C117XD28
4C117XE04
4C117XE13
4C117XE20
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE29
4C117XE36
4C117XE37
4C117XE48
4C117XG05
4C117XH02
4C117XH16
(57)【要約】
本発明は、失禁及び生理的パラメータを観察する為のセンサとシステムと方法との組み合わせに関する。システムは、吸収性コアを含み観察対象の着用者により着用される吸収性物品における複数の電極と、電極との電気的接続の為と、失禁事象の発生を示す電極の一以上の電気的特性を観察する為の装置と、着用者の血液の酸素飽和度を観察する為の酸素飽和度センサとを含み、着用者の体位に従って酸素飽和度センサの動作が制御される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
失禁及び生理的パラメータを観察する為のシステムであって、
吸収性コアを含み観察対象の着用者により着用される吸収性物品における複数の電極と、
前記電極との電気的接続の為と、失禁事象の発生を示す前記電極の一以上の電気的特性を観察する為の装置と、
前記着用者の血液の酸素飽和度を観察する為の酸素飽和度センサと、
を含み、
前記着用者の体位に従って前記酸素飽和度センサの動作が制御される、
システム。
【請求項2】
前記酸素飽和度センサが、一対の発光ダイオード(LED)と、光検出器と、前記着用者の血液の酸素飽和度を判断する為のプロセッサとを具備し、前記酸素飽和度センサの前記動作の制御が、前記LEDにより発出される光の強度を制御することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記LEDにより発出される光の強度の制御が、前記LEDにより発出される光の強度を異なる強度設定の間で調節することを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
プロセッサが、前記着用者の前記体位を示すデータに従って前記LEDに提供される電流を調節するのに適応している、請求項2又は請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記LEDに提供される電流の調節に加えて、あるいは電流の調節の代わりに、前記光検出器から受信した信号に対する感度を調節するのに適応している、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記酸素飽和度センサから受信した前記信号から前記着用者の心拍数を判断する、請求項2乃至5のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記酸素飽和度センサから受信した前記信号から前記着用者の呼吸数及び/又は呼吸深度を判断する、請求項2乃至6のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記装置内のプロセッサ、前記装置の遠隔に配置された装置又はサーバに配置されるプロセッサ、あるいはクラウドコンピューティングプロセッサのうち一以上を含むか、上記の組み合わせの中で分散される、請求項2乃至7のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項9】
前記体位が腹臥位と座位と立位のうち一以上を含む、請求項1乃至8のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項10】
前記装置が更に前記着用者の前記体位を検出する為の体位センサを含む、請求項1乃至9のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項11】
前記体位センサが、加速度計と、前記加速度計からの信号を処理して前記着用者の前記体位を示すデータを判断するためのプロセッサとを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記加速度計からのデータが処理されて前記着用者の呼吸数及び/又は深度を示す前記着用者の動きが判断される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記装置が更に前記着用者の皮膚の温度を検出する為の非接触温度センサを含む、請求項1乃至12のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項14】
前記非接触温度センサが、赤外高温計と、前記高温計からの信号を処理して前記着用者の体温を示すデータを判断する為のプロセッサとを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記電極が、少なくとも二つの相互に離間した可撓性の導電性電極から成り、観察される前記電極の電気的特性が静電容量である、請求項1乃至14のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項16】
前記着用者とは反対向きである前記吸収性物品の不透水層の外面に前記電極が配設されて、前記着用者に面する前記不透水層の反対側に前記吸収性コアが配置される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電極の静電容量を観察して前記吸収性物品における失禁事象の発生を示すデータを判断する為のプロセッサを含む、請求項15又は請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
失禁及び生理的パラメータを観察する為の方法であって、
着用者により着用される吸収性物品に設置された電極に、装置を電気的に接続することと、
前記電極により示される電気的特性を観察することと、
前記吸収性パッドにおける尿失禁事象からの流体あるいは便失禁事象の成分の存在による前記電気的特性の変化を検出することと、
尿又は便失禁事象の発生を前記電気的特性の変化から判断することと、
前記着用者の血液の酸素飽和度を観察する為の酸素飽和度センサからのデータを受信及び処理することと、
前記着用者の体位を判断する為の体位センサからのデータを受信及び処理することと、
判断された前記着用者の前記体位に従って前記酸素飽和度センサの動作を制御することと、
を含む方法。
【請求項19】
前記酸素飽和度センサの前記動作の制御が、一対の発光ダイオード(LED)により発出される光の強度を制御すること、及び/又は、光検出器から受信した信号に対する感度の調節を制御することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸素飽和度センサから受信した前記信号から前記着用者の心拍数を判断することを含む、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酸素飽和度センサから受信した前記信号から前記着用者の呼吸数及び/又は呼吸深度を判断することを含む、請求項18乃至20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
体位センサからのデータの受信及び処理が加速度計から信号を受信することを含む、請求項18乃至21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記加速度計からのデータが処理されて呼吸数及び/又は深度を示す前記着用者の動きが判断される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
生理的パラメータを観察する為のシステムであって、
発光ダイオード(LED)と光検出器とプロセッサとを含む着用装置であり、前記LEDが二つの波長の光を前記着用者の身体へ発出して、前記着用者の身体から反射した光の検出を受けて前記光検出器が電気的特性を示す、着用装置、
を含むシステムであり、
前記プロセッサが、前記光検出器により示された前記電気的特性から前記着用者の呼吸数及び/又は呼吸深度を判断する、
システム。
【請求項25】
前記プロセッサが、前記光検出器により示された前記電気的特性から前記着用者の血液の酸素飽和度を判断する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記装置が加速度計を含み、前記加速度計からのデータが処理されて呼吸数及び/又は深度も示す前記着用者の動きが判断される、請求項24又は請求項25に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁及び生理的パラメータを観察する為のセンサとシステムと方法との組み合わせに関する。本発明は、排他的ではないが、特に、失禁衣類内で発生する失禁事象を検出するとともに、呼吸困難又は発熱など健康状態の変化を示し得る他のパラメータを検出するのに適応している。
【背景技術】
【0002】
失禁は、人の腸又は膀胱からの排出物又は排泄物の被制御放出が起きる状態である。尿失禁は、無意識又は非制御の排尿を生じる膀胱の制御不能を指す。他の形態の失禁は、便又は腸失禁を含む。
【0003】
失禁インジケータ及び検出システムが存在するが、大抵の事例では、失禁事象が発生して着用者がおむつ又はパッドの交換を必要とする状況について介護者に通知するに過ぎない。着用者が着用している吸収性物品で受容した体内排出物の量の推定が可能である、より高度なシステムが存在する。
【0004】
失禁を観察する為の方法及び装置の例は、「湿度観察システム(Moisture Monitoring System)」の名称の出願人自身の特許文献1、「失禁の観察及び評価の改良(Improvements in Incontinence Monitoring and Assessment)」の名称の特許文献2、「最適化によるセンサデータからの事象解析機器及び方法(Apparatus and Method for Analysing Events from Sensor Data by Optimization)」の名称の特許文献3、「事象検出アルゴリズムに関する改良(Improvements Relating to Event Detection Algorithms)」の名称の特許文献4、「失禁観察システム(A System for Managing Incontinence)」の名称の特許文献5に開示されており、その各々の内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0005】
このようなシステムは、吸収性物品で失禁事象が発生しているか発生した時に処理装置に信号を送信する送受信器などの電子装置への電気的接続に適応しているセンサを含み得る。システムは、吸収性物品内の漏れセンサについて抵抗などの電気的変数を計測して、失禁事象が発生したかどうかと、発生しているか発生した失禁事象の他の特性を判断するように構成されている。このようなシステムは、介護者が物品を確認して必要であれば物品を交換し得るように失禁事象の発生について介護者に通知するのに適応し得る。
【0006】
失禁インジケータ及び検出システムは、高コストを特徴とする。消耗品の高コストは一般的に、既存の検出システムが高齢者施設において評価段階のみで使用されることを意味する。これは、高齢者施設の新規着用者が約72時間など比較的短時間にわたって失禁について評価される場合である。最近、常時失禁インジケータ又は通知システムとして使用する為の失禁インジケータ及び検出システムが開発された。
【0007】
装置及び消耗品のコストに加えて、常時失禁インジケータ及び検出システムの開発における別の主要課題は、電力管理である。常時失禁インジケータ及び検出システムは、吸収性物品内の漏れセンサの電気的挙動を観察可能な電子機器と、データをワイヤレス送信する為の送信器と、装置に電力供給する為のバッテリとを含んで着用者に着用される電子装置を伴うと理想的である。好ましくは、バッテリの寿命を最大化するか、充電式バッテリの場合には充電と充電の間の時間を最大化するように、このような装置の電力消費量は可能な限り低い。
【0008】
出願人自身の常時失禁観察及び評価の為の着用装置は加速度計も含み、失禁データ及び関連の通知の精度及び確実性が強化される。加速度計は、流体力学と位置圧と重力との複合作用により、尿量推定値を調節する目的で使用され得る体位の判断に有益なデータを提供する。体位の判断は、着用者の動きを観察するとともに落下を検出するのにも有益である。
【0009】
呼吸困難又は発熱は、高齢者及び身体障害者にとって、あるいは乳児及び幼児にとって生死に関わり得る症状である。失禁に加えて、高齢者又は障害者である成人及び乳児又は幼児の他の生理的パラメータを観察することが望ましい。特に、呼吸困難又は発熱など健康状態の変化を示し得る他のパラメータを観察することが有益であり得る。
【0010】
しかしながら、単独での、あるいは失禁の観察と併せた生理的パラメータの観察は、確実かつ効果的に行うには課題が多い。また、常時失禁観察及び評価の為ばかりでなく生理的パラメータを観察する為の着用装置を用意すると、電力消費要件を不許容なレベルまで高めることがある。
【0011】
従って、着用者により着用される吸収性物品での失禁事象の常時検出の為と、呼吸困難又は発熱など健康状態の変化を示し得る生理的パラメータの常時観察の為の確実でコスト効果の高い手段が望ましい。
【0012】
失禁事象の常時検出の為と生理的パラメータの観察の為の着用装置が、可能な最低電力消費量を有することが望ましい。
【0013】
失禁事象の常時検出の為と生理的パラメータの観察の為の着用装置が、適切な行動が取られ得るように失禁についての情報と生理的パラメータとを許容時間内で介護者に提供することが望ましい。
【0014】
文献、法令、材料、装置、物品、その他への言及を含めて、本明細書に含まれる発明の背景についての考察は、本発明の状況を説明する為に含められる。これは、請求項のいずれかの優先日において、言及される材料のいずれかがオーストラリア又は他のいずれかの国で公開されるか、周知であるか、共通の一般的知識の一部であるとの承認又は示唆として見なされてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2007/128038号
【特許文献2】国際公開第2011/054045号
【特許文献3】国際公開第2011/156862号
【特許文献4】国際公開第2013/003905号
【特許文献5】国際公開第2019/090387号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、一態様において、本発明は失禁及び生理的パラメータを観察する為のシステムに関しており、このシステムは、
吸収性コアを含み観察対象の着用者により着用される吸収性物品の複数の電極と、
電極との電気的接続の為と電極の一以上の電気的特性を観察する為の装置と、
着用者の血液の酸素飽和度を観察する為の酸素飽和度センサと、
を含み、
酸素飽和度センサの動作は着用者の体位に従って制御される。
【0017】
好ましくは、装置は、失禁事象の発生あるいは吸収性物品の現状を示す電極の一以上の電気的特性を観察するように動作可能である。
【0018】
好ましくは、電極の電気的挙動を示すデータを受信及び処理して、吸収性物品の現状、例えば尿及び/又は便失禁事象の発生、多数の失禁事象により吸収性物品に存在する漏れの累積量、失禁事象が発生した回数、各個別失禁事象の量を判断するのにどの情報が関連しているかを判断するように装置が構成されている。
【0019】
好ましくは、酸素飽和度センサは、一対の発光ダイオード(LED)と、光検出器と、着用者の血液の酸素飽和度を判断する為のプロセッサとを具備し、酸素飽和度センサの動作の制御は、LEDにより発出される光の強度を制御することを含む。
【0020】
好ましくは、LEDにより発出される光の強度の制御は、LEDにより発出される光の強度を異なる強度設定の間で調節することを含む。
【0021】
好ましくは、システムは、着用者の体位を示すデータに従ってLEDに提供される電流を調節するのに適応した、好ましくは装置に搭載のプロセッサを含む。
【0022】
好ましくは、システムは、電流を調節して比較的低強度の光をLEDに発出させるとともに、確実な検知が達成されるまで、電流を適応調節して高強度の光をLEDに発出させるように構成されている。
【0023】
好ましくは、プロセッサは、LEDに提供される電流の調節に加えて、あるいはこれに代わって、光検出器から受信した信号に対する感度を調節するのに適応している。
【0024】
好ましくは、プロセッサは、酸素飽和度センサから受信した信号から着用者の心拍数を判断する。
【0025】
好ましくは、プロセッサは、酸素飽和度センサから受信した信号から着用者の呼吸数及び/又は呼吸深度を判断する。
【0026】
好ましくは、装置内のプロセッサ、装置に配置されるプロセッサ、又は装置の遠隔に配置されるサーバ、又はクラウドコンピューティングプロセッサのうち一以上をプロセッサが含むか、これらの組み合わせの中で処理が分散される。
【0027】
好ましくは、体位は、腹臥位と座位と立位のうち一以上を含む。
【0028】
好ましくは、装置は更に、着用者の体位を検出する為の体位センサを含む。
【0029】
好ましくは、体位センサは、慣性計測ユニットセンサ、好ましくは加速度計と、慣性計測ユニットセンサからの信号を処理して着用者の体位を示すデータを判断する為のプロセッサとを含む。
【0030】
好ましくは、加速度計からのデータが処理されて、着用者の呼吸数及び/又は深度を示す着用者の動きが判断される。
【0031】
好ましくは、装置は更に、着用者の皮膚の温度を検出する為の非接触温度センサを含む。
【0032】
好ましくは、非接触温度センサは、赤外高温計と、赤外高温計からの信号を処理して着用者の体温を示すデータを判断する為のプロセッサとを含む。
【0033】
好ましくは、電極は少なくとも二つの相互に離間した可撓性の導電性電極から成り、観察される電極の電気的特性は静電容量である。
【0034】
好ましくは、着用者とは反対向きである吸水性物質の不透水層の外面に電極が配設されて、着用者に面する不透水層の反対側に吸水性コアが配置される。
【0035】
実施形態において、不透水層は少なくとも一部において吸水性物品の外層を具備する。実施形態において、不透水層は吸水性物品の外層に設けられるプリント層又は局所的設置層又はストリップを具備して、この外層自体は透水性又は不透水性であり、電極は不透水層に長手に配設されて不透水層は電極からある距離だけ横向きに延在する。不透水層が電極から横向きに延在する距離は、1mmから15mm、あるいはその間の増分であり得る。
【0036】
好ましくは、不織布から可塑化膜が押し出される押出成形による外層を含有する吸収性物品について、可塑化膜の押出成形に先立って不織布に電極が配設される。実施形態において、不織布は、電極の設置に先立ってプリントワニス層などで不織布が局所的に準備又は調整される。
【0037】
好ましくは、システムは、電極の静電容量を観察して、吸収性物品での失禁事象の発生を示すデータを判断する為の、上に記載されたのと同じプロセッサであるプロセッサを含む。
【0038】
別の態様において、本発明は、失禁及び生理的パラメータを観察する為の方法を提供し、この方法は、
着用者により着用される吸収性物品に設置された電極に装置を電気的に接続することと、
電極により示される電気的特性を観察することと、
吸収性パッドにおける尿失禁事象からの流体あるいは便失禁事象の成分の存在による電気的特性の変化を検出することと、
尿又は便失禁事象の発生を電気的特性の変化から判断することと、
着用者の血液の酸素飽和度を観察する為の酸素飽和度センサからのデータを受信及び処理することと、
着用者の体位を判断する為の体位センサからのデータを受信及び処理することと、
判断された着用者の体位に従って酸素飽和度センサの動作を制御することと、
を含む。
【0039】
好ましくは、酸素飽和度センサの動作の制御は、一対の発光ダイオード(LED)により発出される光の強度を制御すること、及び/又は、光検出器から受信した信号に対する感度の調節を制御することを含む。
【0040】
好ましくは、この方法は、酸素飽和度センサから受信した信号から着用者の心拍数を判断することを含む。
【0041】
好ましくは、この方法は、酸素飽和度センサから受信した信号から着用者の呼吸数及び/又は呼吸深度を判断することを含む。
【0042】
好ましくは、体位センサからのデータの受信及び処理は、加速度計から信号を受信することを含む。
【0043】
好ましくは、加速度計からのデータが処理されて呼吸数及び/又は深度を示す着用者の動きが判断される。
【0044】
別の態様において、本発明は、生理的パラメータを観察する為のシステムを提供し、このシステムは、
発光ダイオード(LED)と光検出器とプロセッサとを含む着用装置であって、LEDが二つの波長の光を着用者の身体へ発出し、着用者の身体から反射した光の検出を受けて光検出器が電気的特性を示す、着用装置、
を含み、
プロセッサが、光検出器により示された電気的特性から着用者の呼吸数及び/又は呼吸深度を判断する。
【0045】
好ましくは、プロセッサは、光検出器により示された電気的特性から着用者の血液の酸素飽和度を判断する。
【0046】
好ましくは、装置が加速度計を含み、加速度計からのデータが処理されて呼吸数及び/又は深度も示す着用者の動きが判断される。
【0047】
本発明の以上及び他の態様と実施形態とは、先行する図面の要約及び詳細な説明から明白になるだろう。
【0048】
図に示されている本発明の実施形態を参照して、これから本発明がより詳しく記載される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】吸収性物品における複数の電極と、電極との電気的接続の為の装置とを含むとともに、パルスオキシメータと加速度計と温度センサとを含む、失禁及び生理的パラメータを観察する為の本発明の実施形態によるシステムの図表現を示す。
図2図1の装置の図表現を示す。
図3】赤色及び赤外波長についての酸化ヘモグロビン(HbO)及び脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の吸収スペクトル図を示す。
図4】吸収性物品における複数の電極と、電極との電気的接続の為の装置とを含む請求項1に記載のシステムの概略図を示すとともに、パルスオキシメータと加速度計と温度センサとの動作を示す。
図5】着用者の皮膚に超近接している図1の装置の概略表現を示す。
図6】着用者の鼠径部又は腰部領域において皮膚と超近接している図1のシステムの概略図を示す。
図7図1の装置のパルスオキシメータの光検出器から受信したデータを記したグラフである。
図8】酸素飽和度、姿勢、失禁の現状、体温、心拍数、呼吸数、及び呼吸深度を表すデータを含む情報を図1のシステムの実施形態によりユーザに提示する為の装置のグラフィカルインタフェースを示す。
図9】健康状態又は疾患が図1の装置の着用者に見られる可能性についての通知を提供するアルゴリズムを示す。
図10】装置と充電クレードルとを含む図1のシステムの実施形態の図表現を示し、装置及びクレードルは、その間での誘導結合を介したエネルギー伝達を通して装置のバッテリを充電するように構成されている。
図11図10の装置及び充電クレードルの概略表現を示す。
図12】失禁を起こさない人に使用する為の装置であって、失禁の観察ではなく生理的パラメータの観察のみの為の装置の実施形態を示し、装置用の一体化ポケットを含む下着又はパンツにより腰部又は鼠径部エリア及びその近くに装置が締結され得る。
図13】腰部又は鼠径部エリア及びその近くにベルトで締結された図12の装置を示す。
図14】複数の電極と、電極との電気的接続の為の装置と、装置の挿入を可能にするおむつの外被部の開口部と含むパンツ型プルアップおむつを具備する実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
一態様において、そして図を参照すると、本発明は失禁及び生理的パラメータを観察する為のシステム1に関する。図1を参照すると、システム1は一部において、吸収性コア27を含む吸収性物品25での複数の電極12,14,16と、電極12,14,16との電気的接続の為と電極12,14,16の電気的特性を観察する為の装置30とを含む。下に記載されるように、電極12,14,16は、尿失禁事象と関連する漏れの検出に適応している。任意であるが、装置30との電気的接続の為に第2組の電極(不図示)が設けられる。第2組の電極は、便失禁事象の検出に適応している。
【0051】
図2に示されているように、装置30は、着用者の血液の酸素飽和度を観察する為の酸素飽和度センサ40を含む。酸素飽和度センサは複数存在し、パルスオキシメータと呼ばれる。パルスオキリメトリでは、血液の光吸収特性に基づいて動脈酸素飽和度を計測する。図3のグラフに示されているように、酸素と結合すると、デオキシヘモグロビン(Hb)はその光吸収性を変化させる。パルスオキシメトリでは、Hbと酸化ヘモグロビン(HbO)との間の光吸収差を利用する。酸素飽和HbOは、Hbよりも多くの赤外光(波長660nm)を、そして少ない赤色光(波長940nm)を吸収する。
【0052】
図4は、装置30の構成要素の概略図を提供する。酸素飽和度センサ40は、一対の発光ダイオード(LED)43,45と、フォトダイオードなどの光検出器47とを具備する。LED43,45と光検出器47とは、プロセッサ35と、好ましくは充電式バッテリであり得るバッテリ37の形態である電源とを含む装置30に搭載の他の構成要素に回路基板などを介して電気的に接続されている。
【0053】
下で更に詳しく記載されるように、酸素飽和度センサ40の動作は、着用者の皮膚の近くにLED43,45を配置することを必要とする。吸収性物品が着用者により着用される時に装置30が鼠径部又は腰部領域に配置されるように、装置30は吸収性物品25に取り付けられて電極12,14,16と電気的に接続される。従って、LED43,45と光検出器47とが鼠径部又は腰部領域で着用者の皮膚6の近くに配置されるように装置30が構成されている。
【0054】
図4及び5に示されているように、LED43,45と光検出器47とは、互いに隣接して、同じ方向すなわち装置30を着用している着用者の皮膚に面して配置される。LED43,45は、着用者の皮膚に入射する二つの波長の光(つまり赤外光(波長660nm)と、これより少ない赤色光(波長940nm))を発出する。光は着用者から反射して、プロセッサ30に電気的に接続されている光検出器47に入射する。プロセッサ30は、光検出器47に入射する光の波長及び/又は強度を示す信号を光検出器47から受信する。プロセッサ30は、基板上で信号を処理するか、代替的に別のプロセッサでデータが処理され、波長の各々でLED43,45により発出された光の吸収度の変化を判断することにより、着用者の身体で脈動している動脈及び/又は静脈血による吸収度を判断する。
【0055】
反射光信号は、直流(DC)成分とパルス交流(AC)成分とで構成される。パルスオキシメトリでは、以下のように赤色及び赤外信号のDC及びAC成分を使用することにより変調率Rを計算する。
【数1】
上式において、AC及びACIRはそれぞれ、赤色及び赤外信号のAC振幅である。そして、以下の(i)に見られるように変調率Rに基づいてSaOを推定するのに、経験的に導出された校正曲線が使用される。
【数2】
【0056】
(ii)に見られるように、SaOの減少とともにAC及びDCIRが増加する。他方で、ACIR及びDCは減少する。
【数3】
【0057】
従って、光検出器により検出される反射後の赤色光と赤外光との間のオフセットは、着用者の身体の動脈及び/又は静脈血の酸素飽和度(SaO)を計算するのにプロセッサ30により使用される。
【0058】
装置30を着用している着用者の体位に従って酸素飽和度センサ40の動作が制御されるように装置30が構成されている。酸素飽和度センサ40の動作の制御は、LED43,45により発出される光の強度を制御することを含む。LEDにより発出される光の強度を異なる発出強度設定に調節することにより、LEDにより発出される光の強度が制御される。プロセッサ35は、LED43,45に提供される電流を調節することにより光発出強度設定を提供するのに適応している。下に記載されるように、装置30の着用者の体位又は姿勢を示すデータに従って、異なる光強度設定の間で調節を行なうようにプロセッサ35は構成されている。
【0059】
装置30を着用している着用者が臥位になると、装置30の酸素飽和度センサ40は着用者の皮膚に近接する、及び/又は、着用者の皮膚に大きな力で圧迫される。これは特に、着用者の鼠径部又は腰部に装置30が配置されるように、おむつ又はパッドなどの失禁用衣類に装置30が装着されている場合である。装置30が着用者の皮膚に圧迫される程度は、少なくとも一部は重力の影響とともに、吸収性物品25あるいは装置30を付ける為の弾性バンドにより印加される他の力による。
【0060】
装置30の酸素飽和度センサ40が着用者の皮膚に近接している、及び/又は、着用者の皮膚に大きな力で圧迫される時には、充分に正確で確実な酸素飽和度の表示を提供するのに充分な強度である着用者の身体からの反射光を光検出器47が検出するのに必要なLED43,45からの発出光の強度は、低い。
【0061】
装置30を着用している着用者が立位である時には、着用者が臥位である上述の場合と比較して、装置30の酸素飽和度センサ40は着用者の皮膚から更に離れた位置にある、及び/又は、着用者の皮膚に弱い力で押圧される。装置30の酸素飽和度センサ40が着用者の皮膚から更に離れた位置にある、及び/又は、着用者の皮膚に弱い力で押圧されている時には、着用者の身体からの充分な強度の反射光を光検出器47が検出するのに必要なLED43,45からの発出光の強度は、高い。これは、着用者の身体に入射する光の強度がLED43,45と着用者の身体との間の距離に比例する、及び/又は、光を通過させる着用者の皮膚の傾向が、装置30の酸素飽和度センサ40が着用者の皮膚に押圧される際の力に比例するからである。反射して光検出器47に戻る光の強度も、着用者の身体と光検出器との間の距離に比例する、及び/又は、光を通過させる着用者の皮膚の傾向が、装置30の酸素飽和度センサ40が着用者の皮膚に押圧される際の力に比例する。従って、酸素飽和度センサ40の感度は、センサ40と着用者の身体との間の距離に非常に影響されやすい。
【0062】
装置30を着用している着用者が座位である時に、装置30の酸素飽和度センサ40は、おそらくは着用者の皮膚から中間距離に位置している、及び/又は、着用者が臥位である時よりも大きく着用者が立位である時よりも小さい力で着用者の皮膚に押圧される。装置30の酸素飽和度センサ40が着用者の皮膚から中間位置に位置している、及び/又は、着用者の皮膚に中間的な力で押圧される時に、着用者の身体から反射した充分な強度の光を光検出器47が検出するのに必要なLED43,45からの発出光の強度は、中間レベルである。
【0063】
従って、LED43,45に提供される電流を異なるレベルに調節することにより、臥位、座位、及び立位など異なる姿勢での酸素飽和度の正確かつ確実な表示を提供するのに充分なレベルに発出光の強度を調節するように装置30が構成されている。従って、臥位又は腹臥位設定(つまり最低電流)と座位設定(つまり中間電流)と立位設定(つまり最高電流)とを含む少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つの設定の間で、LED43,45に提供される電流をプロセッサ35が調節するように装置30が構成されている。
【0064】
装置30は更に、着用者の体位を検出する為の体位センサ50を含む。図の実施形態において、装置30は、電気、圧電、ピエゾ抵抗、又は容量性加速度計など機械的な加速度計から成る加速度計55を含む。代替的に、小型の微小電気機械システム(MEMS)加速度計が採用されてもよい。
【0065】
体位センサ50は、回路基板などを介して、プロセッサ35を含む装置30に搭載の他の構成要素に電気的に接続される。プロセッサ35は、体位センサ50から入力を受信して、着用者が臥位(つまり腹臥位)、座位、あるいは立位であるかなど、装置30の着用者の姿勢を判断するように構成されている。好適な形態において、プロセッサ35は、加速度計55からの信号を処理して、着用者の体位を示すデータを判断する。プロセッサ35は、LED43,45に提供される駆動電流を調節することにより、着用者の姿勢に基づいて、これらから発出される光の強度を調節するようにも構成されている。
【0066】
別の実施形態では、LED43,45に提供される駆動電流の調節に加えて、あるいはその代わりに、光検出器47から受信した信号に対する感度が着用者の姿勢に従って調節されるようにプロセッサ35が適応化される。光検出器47の感度の調節は、臥位、座位、立位など異なる姿勢での酸素飽和度の正確で確実な表示も提供できる。
【0067】
着用者の体位を判断するとともに酸素飽和度センサ40の動作を調節するように構成されている装置30の実施形態は、LED43,45を駆動するのに必要な電力消費量を最小にして着用者の血液の酸素飽和度の充分に正確かつ確実な表示を提供するという点で、有利である。
【0068】
従って、プロセッサ35は、光検出器47へ入射する光の波長及び/又は強度を示す信号を光検出器47から受信する。プロセッサ35が基板上で信号を処理するか、代替的にデータが別のプロセッサで処理されて、着用者の身体の動脈及び/又は静脈血の酸素飽和度(SaO)が判断される。実施形態において、プロセッサ35は、体位センサ50からの入力を受信して、着用者が臥位、座位、又は立位であるかどうかなど、装置30の着用者の姿勢を判断するようにも構成されている。実施形態において、プロセッサ35は、LED43,45に提供される電流を異なるレベルに調節することにより、プロセッサ35により判断される着用者の姿勢に従ったレベルに発出光の強度を調節して、臥位、座位、立位など異なる姿勢での酸素飽和度の正確かつ確実な表示を提供するようにも構成されている。
【0069】
実施形態では、着用者の身体から反射した光を示す光検出器47からの受信信号がプロセッサ35により処理されて他の生理的パラメータが判断される。図7に示されているように、着用者の心拍数と呼吸数と呼吸深度も、酸素飽和度センサから受信した信号から判断される。
【0070】
図6を参照すると、着用者の鼠径部又は腰部の近傍における酸素飽和度センサ40を含む装置30の配置は、心拍数、呼吸数、そして呼吸深度に関する信号を発生させることが分かる。着用者の鼠径部又は腰部領域における装置30の配置は、吸入及び吐出中の横隔膜の動きにより生じる着用者の鼠径部又は腰部の動きが酸素飽和度センサ40からの信号で明らかになることを意味する。従って、プロセッサ35により受信された酸素飽和度センサ40からの信号は、着用者の呼吸数及び/又は深度を示すデータである。
【0071】
図7では、着用者の心拍数が信号の極大値及び極小値により示されている。呼吸数は、信号の最大値又は最小値の間の期間により示されている。呼吸深度は、互いに比較的近接している極大値及び極小値を包含する連続的な変動における信号の中央値又は平均値の間での信号の大きさの差により示されている。
【0072】
図7は、極大値が互いに比較的近いか所与の公差内にあって極小値が互いに比較的近いか所与の公差内にある三つの離散した変動シーケンスを包含する時間領域信号を示している。
【0073】
特に、赤色スペクトルでは、極大値及び極小値が約109500と109700との間の範囲にある第1シーケンスと、極大値及び極小値が約109300と109500との間の範囲にある第2シーケンスと、極大値及び極小値が約109500と109700との間の範囲にある第3シーケンス。赤外スペクトルでは、極大値及び極小値が約70900と71000と間の範囲にある第1シーケンスと、極大値及び極小値が約70600と70900との間の範囲にある第2シーケンスと、極大値及び極小値が約70900と71000との間の範囲にある第3シーケンス。
【0074】
本発明の実施形態は、例えばスペクトル解析を実行することにより周波数領域の信号を解析することを必要とする。例えば、心拍数及び呼吸数を示し得るかその間を区別し得る顕著な卓越周波数を識別すること。一実施形態において、プロセッサ35は、フーリエ変換を実行して、図7に示されている信号の時間領域表現を信号の周波数領域表現に変換するように構成されている。周波数スペクトル内に広がる周波数成分は、周波数領域のピークとして表現される。スペクトル解析により判断される周波数成分は、着用者の心拍数及び呼吸数を示し得る。
【0075】
三つの周波数の間の時間の計測値を参照することにより、呼吸数が判断される。このような計測値は、第1シーケンスの始点、中点、又は終点と、第2シーケンスの始点、中点、又は終点との間、あるいは第2シーケンスの始点、中点、終点から第3シーケンスの始点、中点、終点までの期間を含み得る。
【0076】
呼吸深度は、三つのシーケンスと関連する時間間隔における信号の間の差の計測値を参照することにより判断される。このような計測値は、各シーケンスと関連する時間間隔にわたる中央値又は平均値信号の間の差を含む。
【0077】
着用者の鼠径部又は腰部における装置30の配置は、加速度計により検出される動きが、吸入及び吐出中の横隔膜の動きにより生じる着用者の鼠径部又は腰部の動きを示すことを意味する。従って、プロセッサ35により加速度計55から受信された信号は、着用者の呼吸数及び/又は深度を示すデータである。特に、プロセッサ35により加速度計55から受信された信号は、吸入及び吐出中の横隔膜の動きにより生じた着用者の鼠径部又は腰部の動きを示すデータを含む。プロセッサ35による加速度計55からの信号の処理は、着用者の呼吸数及び呼吸深度を示すデータを提供する。実施形態において、加速度計55からの信号から判断された呼吸数及び呼吸深度が、酸素飽和度センサ40からの信号の処理から得られた呼吸数及び呼吸深度データと比較されて、データが検証される。
【0078】
装置30は、着用者の皮膚の温度を検出するための非接触温度センサ60も含む。温度センサ60は、プロセッサ35とバッテリ37とを含む装置30に搭載された他の構成要素に回路基板などを介して電気的に接続される赤外高温計を含む。プロセッサ35は、高温計からの信号を処理して着用者の体温を示すデータを判断する。
【0079】
温度センサ60は赤外高温計62を含み、プロセッサ35は、高温計62からの信号を処理して着用者の体温を示すデータを判断するように構成されている。
【0080】
吸収性物品25における複数の電極12,14,16は、少なくとも二つ、好ましくは三つの相互に離間した可撓性の導電性プリント電極から成る。特に、電極12,14,16は、吸収性物品に設置されるか吸収性物品25の製造プロセスで組み込まれる基板にプリントされる炭素ストリップである。
【0081】
装置30は、電極12,14,16との接続に適応した一組の電気接点(不図示)を含む。接点は、電極12,14,16のそれぞれへ押入されてこれとの電気的接続を形成するのに適応した突起の形態であり得る。装置30の接点との電気的接触を確立する為の電極12,14,16あるいは電極12,14,16の少なくとも一部分は各々、突起形状の電気接点の各々がそれぞれの電極12,14,16のみを貫通してこれと電気の電気的接続を確立するように、重複のなくそれぞれの横向き配置で配置される。代替的に、装置30は、電極12,14,16との非接触接続の為に構成されてもよい。
【0082】
装置30は、電極12,14,16の間の抵抗、電圧、又は静電容量など、電極12,14,16の一以上の電気的特性を観察するのに適応している。電極12,14,16とプロセッサ35との間の回路には、信号調整器31が含まれる。尿又は便失禁事象の発生などによる、吸収層27への水又は他の何らかの流体や尿又は便成分の流入時には、上に記載されたように電極12,14,16の電気的特性の変化が装置30により検出され得る。
【0083】
図示されている実施形態では、不透水性外層29に、及び/又は、(透過性又は不透過性の)外層29に後で設置される不透水性基板13に、電極12,14,16が設けられる。電極12,14,16には絶縁層15が設置され得る。これにより電極は、無極性の可変電解コンデンサを形成する。対になった電極12,14,16は、電解コンデンサの二つの電極として作用する。絶縁体15及び/又は不透水性外層29及び/又は基板13は、電解コンデンサの誘電体として作用する。吸収層27の液体あるいは他の尿又は便成分は、電解コンデンサの電解液(電解質溶液)として作用する。電解コンデンサの静電容量値は、吸収層27に含有される液体あるいは他の尿又は便成分の含有量及び分布に関係している。吸収性物品25の吸収層27の漏れ状態又は汚れ状態は、電解コンデンサの静電容量値又は電圧を検出して静電容量値の変化パターンを解析することにより得られる。
【0084】
従って、主として吸収層27への水あるいは他の尿又は便成分の流入の後に変化する、電極12,14,16により示される電気的特性は、静電容量又は電圧である。時間を経て、より多くの失禁事象が発生すると、より多くの水あるいは尿又は便成分が吸収層27に吸収され、静電容量値又は電圧の更なる変化でこれが検出される。尿失禁事象と関連する液体の存在などの質的情報とともに、尿失禁事象での液体の量あるいは吸収層又はコア27に存在する液体の蓄積総量などの量的情報を示すのに、静電容量値は有益である。
【0085】
上に記載されたように、装置30の実施形態は、プロセッサ35とバッテリ37と酸素飽和度センサ40と加速度計55と温度センサ60とを含む。装置30の実施形態は、搭載メモリと送信器/受信器34も含む。装置30のコストを可能な限り低く保つ為に、メモリは比較的小さい容量を有する。それゆえ装置30により観察される電極12,14,16の電気的特性を示すプロセッサによる生成データを記憶するのに装置30が有する容量は、制限される。更に、装置30のメモリ及び電源は比較的小さい容量を有するので、好ましくは、装置30の近くにあるか近付けられるスマートフォン装置又はタブレット又は固定装置(例えばルームモニタ)又はスマートウォッチなどの受信装置110へ、ワイヤレスで、そして短距離では小さいデータパケットでデータを送信するように装置30が構成されている。好ましくは、送信器/受信器34は、ブルートゥース(登録商標)規格を使用してデータをワイヤレス送信及び受信するように構成されている。受信装置110は送信装置30の遠隔に配置され、好ましくはブルートゥース規格を介してデータを受信するようにも構成されている。システム1は、送信装置34と受信装置110とのペアリングを必要とするか必要としないように構成され得る。
【0086】
送信装置30のメモリが制限されるか送信パケットサイズが制限されるので、装置30は、それが収集したデータの全てを記憶することはできない。装置30は、電極12,14,16の電気的挙動を示すデータを処理して、吸収性物品25の現状、例えば、尿及び/又は便失禁事象の発生、多数の失禁事象により吸収性物品に存在する漏れの蓄積量、失禁事象が発生した回数、あるいは各個別の失禁事象の量を判断するのに関連しているのはどの情報であるかを判断するように構成されている。代替的に、装置30が行う前処理が無いかごくわずかであって、記憶及び更なる処理の為に一以上の受信装置110へ生の時間ベースデータを送ってもよい。
【0087】
装置30は、意図的に低電力消費用に設計されている。この為に、装置は容量が比較的制限されたメモリを採用し、プロセッサ35は比較的制限された計算力を有し、装置30は比較的低い(つまり数分の一秒ではなく数秒程度の)周波数のデータサンプリング又は及び検知の為に構成されている。装置30は好ましくは、電極12,14,16に関連して(つまり抵抗及び/又は静電容量の観察時に)、数秒あるいは数分ごとなど比較的低周波数のデータサンプリングの為に構成されている。LED43,45により提供される電流を着用者の姿勢に従って異なるレベルに調節することにより、装置30の低電力消費量が更に強化される。
【0088】
従って、本開示は、着用者により着用されている吸収性物品での失禁事象の常時観察と、呼吸困難又は発熱など健康状態の変化を示し得る生理的パラメータの常時観察とが可能である確実でコスト効果の高いシステム1を提供する。
【0089】
実施形態において、着用装置30と吸収性物品25と電極12,14,16との組み合わせを含むシステム1は、着用者の身体の動脈及び/又は静脈血の酸素飽和度(SaO)、着用者の姿勢、吸収性物品25の失禁状態、着用者の体温、心拍数、呼吸数、そして呼吸深度のうち一以上の常時観察が可能である。
【0090】
実施形態では、着用者の血液の酸素飽和度の充分に正確かつ確実な表示を提供するLED43,45を駆動するのに消費される必要電力が最少となるように、装置30のプロセッサ35が着用者の姿勢を判断し、判断された姿勢に従って酸素飽和度センサ40の動作を調節する構成をシステム1が持つ。
【0091】
実施形態では、反射光を示す酸素飽和度センサ40の光検出器47からの受信信号がプロセッサ35により処理されて、他の生理的パラメータが判断される。特に、図7に図示されているように、酸素飽和度センサ40から受信した信号から、着用者の心拍数と呼吸数と呼吸深度とが判断される。
【0092】
プロセッサ35などにより、あるいは他の形で処理が実行されると本明細書で言及される場合には常に、このような処理は、プロセッサ35で、遠隔の装置又はサーバに配置されたプロセッサで、あるいはクラウドコンピューティングプロセッサで行われるか、これらの組み合わせの中で分散され得る。
【0093】
システム10により収集されるデータは、着用者により着用される吸収性物品での失禁事象の常時観察の為と、呼吸困難又は発熱など健康状態の変化を示し得る生理的パラメータの常時観察の為に使用され得る。失禁事象が吸収性物品内で発生したかどうか、あるいは健康状態の変化(例えば呼吸困難又は発熱)を示す他の幾つかの生理的パラメータが観察されているとシステム10が判断した場合に、受信装置110は通知を表示するように構成され得る。代替的に、システム10では、着用者の身体の動脈及び/又は静脈血の酸素飽和度(SaO)、着用者の姿勢、吸収性物品25の失禁状態、着用者の体温、心拍数、呼吸数、そして呼吸深度などのパラメータについての閾値又は目標値をユーザが設定できる。システム10は更に、閾値又は目標値のうち一以上を超えたかどうかを装置110が表示できるように構成され得る。実施形態において、閾値又は目標値はユーザ設定可能である。
【0094】
システム10は好ましくは、酸素飽和度、姿勢、失禁状態、体温、心拍数、呼吸数、及び呼吸深度を表すデータが、図8に示されているように装置画面120又はユーザインタフェースにグラフィック表示されるように構成されている。図8に示されているように、システム10は、酸素飽和度及び体温などの履歴データの表示を提供するようにも構成され得る。
【0095】
図9は、着用者に健康状態又は疾患が見られる可能性についての通知を提供するアルゴリズムを示している。アルゴリズムは、ニューラルネットワーク又はAIなどの学習アルゴリズムを使用して更新され得る定数aからgを含む。特に、アルゴリズムは、酸素飽和度の変化、体温の変化、心拍数の変化、呼吸数の変化、呼吸深度の変化、活動の変化、失禁の変化などの変数に関係する情報を処理するのに適応している。情報は、ニューラルネットワークなどの人工知能アルゴリズムを介して処理されて、着用者が疾患又は感染症にかかっているかもしれないかどうかと、手作業による調査及び診断が保証されているとの判断などの出力を発生させる。
【0096】
一実施形態において、アルゴリズムは、変数の各々に重み付けを割り当てること、重み付け変数の合計を計算することと、疾患又は感染症が示されている場合に重み付け変数の合計が閾値を超えたかどうかを判断することとを含む機能を適用することを必要とし得る。実施形態において、臨床医などのユーザは、これらの変数を訓練するか他の形で判断して通知に境界を設けるか、或る条件を無視するようにシステムをプログラムできる。アルゴリズムは更に、最適化機能を適用することなどにより反復プロセスで重み付けを判断することを含み得る。最適化機能は、ニューラルネットワーク又は線形回帰又はロジスティック回帰又は勾配降下を含む。
【0097】
図10及び11を参照すると、システム1の実施形態はワイヤレス充電の為に構成されている装置30の一形態を含む。装置30を受容するのに適応した充電ステーション5が設けられ、ステーション5と装置30とはともに、誘導結合を介してその間でエネルギーを伝達するように構成されている。図10に示されているように、充電ステーション5は一次コイル7と装置30を受容するクレードルとを含む。装置30はバッテリ37に電気的に接続される二次コイル38を含む。充電ステーション5と装置30とは、装置30に搭載のバッテリ37の簡便な再充電を容易にする。
【0098】
更なる実施形態において、本発明は、失禁を起こさない人に使用する為のシステム101であって、失禁の観察ではなく生理的パラメータのみの観察の為のシステムに関している。これらの実施形態において、システム101は、電極12,14,16との電気的接続の為の電気接点を含まない形の装置30を含む。従って、装置30は、プロセッサ35とバッテリ37と酸素飽和度センサ40と加速度計55と温度センサ60のうち一以上を含む。装置30は、誘導結合を介した充電の為にバッテリ37に電気的に接続される二次コイル38も含む。
【0099】
装置30は、好ましくは、臥位又は腹臥位設定(つまり最低電流)と座位設定(つまり中間電流)と立位設定(つまり最高電流)とを含む少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つの設定の間で、LED43,45に提供される駆動電流をプロセッサ35が調節するように構成されている。
【0100】
プロセッサ35は、好ましくは、酸素飽和度センサ40のデータから、及び/又は、加速度計55のデータから、着用者の呼吸数及び/又は深度を判断するのにも適応している。代替的に、システム101では、着用者の身体の動脈及び/又は静脈血の酸素飽和度(SaO)、着用者の姿勢、着用者の体温、心拍数、呼吸数、そして呼吸深度などのパラメータについて閾値又は目標値をユーザが設定できる。システム101は更に、閾値又は目標値のうち一以上を超えたかどうかを装置110が表示するように構成され得る。
【0101】
図12に示されているように、装置30は、装置30の為の一体的ポケット3を含む下着又はパンツ2により腰部又は鼠径部エリアの近くに締結され得る。図13に示されているように、装置30は、腰部又は鼠径部エリア及びその近くにベルト9で締結され得る。
【0102】
実施形態において、装置30は、MEMSマイクロフォンセンサなどのマイクロフォン又は音響センサを含む。排便事象を腸の動きとして検出することを目的として、腰部又は鼠径部領域に近接して装置30が使用時に配置されるので、着用者の腸下部を「聴取」するようにセンサが構成され得る。本明細書に記載の他の実施形態により判断される体位データは、好ましくは、マイクロフォンからのデータを解析の為に調節又はフィルタリングするのに使用される。
【0103】
図14は、不透水性外層に設けられる電極12,14,16を含むパンツ型プルアップおむつ150から成る吸収性物品25を具備する実施形態を示す。おむつ150は、ひだ付き腰部弾性領域152の直下にあるおむつ150の外層又は外被部に開口部155を含む。装置30が電極12,14,16に結合され、おむつ150の外層又は外被部の開口部155へ挿入されて、酸素飽和度センサ40と温度センサ60とが着用者の皮膚との接触状態になる。装置30は、好ましくは、装置30の一組の電気接点との電気的接続を確立するように電極12,14,16を挟持するかあるいは摩擦で把持する仕組みを含む。装置30と電極12,14,16との接続時に、装置30は矢状面で回転されて開口部155へ挿入され得る。
【0104】
本発明では、本明細書に開示された発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく他の変形又は機械的同等物が考えられ得る。
【符号の説明】
【0105】
1 システム
2 パンツ
3 一体的ポケット
5 充電ステーション
6 皮膚
7 一次コイル
9 ベルト
10 システム
12,14,16 電極
13 不透水性基板
25 吸収性物品
27 吸収層
29 不透水性外層
30 装置
31 信号調整器
34 送信器/受信器
35 プロセッサ
37 バッテリ
38 二次コイル
40 酸素飽和度センサ
43,45 LED
47 光検出器
50 体位センサ
55 加速度計
60 温度センサ
62 赤外高温計
101 システム
110 受信装置
120 装置画面
150 パンツ型プルアップおむつ
152 腰部弾性領域
155 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
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【国際調査報告】