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特表2023-550547二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0276 20160101AFI20231124BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231124BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20231124BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20231124BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20231124BHJP
   H01M 8/028 20160101ALI20231124BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20231124BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20231124BHJP
   C25B 9/21 20210101ALI20231124BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/12 101
H01M8/1213
H01M8/12 102C
H01M8/1226
H01M8/0286
H01M8/028
H01M8/0247
C25B1/02
C25B9/21
C25B15/08 302
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551961
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2021081647
(87)【国際公開番号】W WO2022110580
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011337853.6
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523194341
【氏名又は名称】浙江臻泰能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG ZHENTAI ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Cangshan Block, Zehjiang Lijin Hardware Technology Industrial Park, Jinyun County Lishui, Zhejiang 321400, China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【弁理士】
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】胡 強
(72)【発明者】
【氏名】呉 剣
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021CA09
4K021DA09
4K021DB12
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA13
5H126AA14
5H126BB06
5H126CC02
5H126FF04
5H126HH01
5H126HH02
5H126HH04
5H126HH10
5H126JJ03
5H126JJ06
(57)【要約】
本発明は、二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ及びその製造方法を提供し、電気化学の技術分野に属する。二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップは、二層の電解質層を含み、二層の電解質層はその間に挟まれた内部電極によって隔てられ、内部電極の内部に規則的に配列された気体流路が設けられ、且つ内部電極の少なくとも二つの側面はサイドシール部材に被覆され、電解質の外面に外面部材が設けられ、外面部材は中間層と、外部電極と、内部電極の極板と、外部電極の極板とを含み、内部電極は内部電極の極板に接続され、外部電極は外部電極の極板に接続される。サイドシール層は多層構造として設けられ、内側にあるサブ層は内部電極を流れる気体の漏れに対する抵抗を高めることができ、外側のサブ層の材料は内側のサブ層の材料とは成分と構造がいずれも異なり、減圧後に漏れる気体に対してよりよい封止を実現し、構造強度をよりよく維持できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップであって、
二層の電解質層を含み、二層の前記電解質層はその間に挟まれた内部電極によって隔てられ、
前記内部電極の内部に規則的に配列された複数本の気体流路が設けられ、且つ内部電極の少なくとも二つの側面はサイドシール部材に被覆され、
前記電解質の外面に外面部材が設けられ、前記外面部材は中間層と、外部電極と、内部電極の極板と、外部電極の極板とを含み、
前記内部電極は前記内部電極の極板に接続され、前記外部電極は前記外部電極の極板に接続されることを特徴とする、前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項2】
前記内部電極の内部に規則的に配列された複数本の気体流路における、単一の気体流路の横断面の等価直径寸法は20~200μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項3】
前記サイドシール部材は複数のサブ層を含み、そのうち少なくとも一層のサブ層は緻密で非通気性のものであり、且つ前記緻密で非通気性のサブ層と、前記電池チップの側面との間には、少なくとも一層の粗さが大きく通気性のサブ層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項4】
前記外面部材は、外部電極の外面に被覆した複数本の外部集電体をさらに含み、且つ前記外部集電体の導電率は、外部電極の導電率より低くないことを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項5】
前記外面部材は、さらに保護層を含み、
前記保護層は、少なくとも外面部材中の一つを被覆することを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項6】
前記内部電極と内部電極の極板との間は、内部バスバーによって接続され、
前記内部バスバーの導電率は、前記内部電極の導電率より低くないことを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項7】
前記内部バスバーは、サイドシール部材と前記電池チップの側面との間に位置することを特徴とする、請求項6に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項8】
前記内部バスバーは、少なくとも部分的に、前記外部電極が位置する電解質の一方の表面に設けられ、且つ前記電解質の開口部を介して、内部電極に接続され、
前記電解質の開口部の表面は、一層の封止構造によって被覆され、前記内部バスバーと前記内部電極の、前記電解質の開口部における合流接続箇所を完全に被覆して封止することを特徴とする、請求項6に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項9】
前記電池チップは長尺シート状を呈し、
前記電池チップの外形は、電池チップの中央部にある外部電極領域から気体流路出入口のある端面に向かって次第に狭くなり、テーパ形状の斜辺と、電池チップの中央部の外部電極領域の直線辺との夾角は、5°~60°の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項10】
ステップ(1)基材シートの製造:内部電極と電解質を構成する成分中に、比率に応じて適切な助剤及び溶媒を添加した後、流延操作により薄膜基材シートを製造するステップと、
ステップ(2)基材シートの積層:電解質基材シート、気体流路を含む内部電極基材シート、気体流路を含まない内部電極基材シートを、一定の順番で揃えて重ね合わせた後、真空バッグ中に入れて真空引き及び封口を行い、さらに真空バッグ中に置かれた基材シート集合体を、高温圧着により融合させた後、積層体を形成するステップと、
ステップ(3)裁断:積層体を打抜装置中に置き、指定された設計形状を有する電池チップブランクに裁断するステップと、
ステップ(4)焼結:電池チップブランクを高温炉中に置き、適切な熱処理スケジュールにより焼結させ、焼結後の電池チップブランクは寸法が収縮し、比較的高い強度を有する電池チップになるとともに、熱処理スケジュールにおいて気体流路前駆体が気化して逸出することにより、電池チップの内部電極中に規則的で均一な埋込気体流路が残されるステップと、
ステップ(5)中間層の焼成:焼成後の電池チップの両面の電解質上に高温熱処理により中間層を製造するステップと、
ステップ(6)還元:中間層が焼成された電池チップを還元炉中に入れて還元させ、内部電極中における酸化ニッケルを金属ニッケルに還元するステップと、
ステップ(7)外面部材の製造:還元後の電池チップの外面に外面部材をプリントするステップと、
ステップ(8)サイドシール部材の製造:上記工程を完了した電池チップに対してサイドシール部材を製造し、まず粗さが大きく通気性のサイドシール内層を製造し、サイドシール内層が乾燥してから、さらにその上に緻密で非通気性のサイドシール外層を製造するステップと、
ステップ(9)熱処理:外面部材のプリント、及びサイドシール部材の製造が完成した電池チップに対して熱処理し、熱処理後、各外面部材とその附着物は強固な接続を形成し、且つサイドシール部材に少なくとも一層の緻密化構造があるステップと、
ステップ(10)電極の強化ステップと、を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学の技術分野に属し、固体酸化物電池チップ及びその製造方法に関し、特に二重電解質構造(double-electrolyte structure)を有する固体酸化物電池チップ(solid oxide cell chip)及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1. 固体酸化物電池(Solid Oxide Cell,SOC)の作動原理
【0003】
固体酸化物電池(Solid Oxide Cell,SOC)は固体酸化物を電解質とするセラミックス電気化学デバイスであり、少なくとも一層の電解質層と、少なくとも2つの電極から構成され、電極によって電池の全体的な強度を提供するものは、電極支持型の固体酸化物電池であり、電解質によって電池の全体的な強度を提供するものは、電解質支持の固体酸化物電池である。電解質材料は通常、ドープにより安定化された酸化ジルコニウムであり、例えば、酸化イットリウム添加により安定化した酸化ジルコニウム(yttria-stabilized zirconia, YSZ)、Sc添加により安定化した酸化ジルコニウム(scandia-stabilized zirconia, ScSZ)、酸化スカンジウムと酸化イットリウムの添加により安定化した酸化ジルコニウム(scandia and yttria stabilized zirconia, ScYSZ)、酸化スカンジウムと酸化セリウムの添加により安定化した酸化ジルコニウム(ScCeSZ)または酸化カルシウムCaOにより安定化された酸化ジルコニウム(CSZ)などであり、その中で最も広く応用されるのは8mol%酸化イットリウム添加により安定化した酸化ジルコニウム(8YSZ)である。電解質は、その他の蛍石型構造の酸化物とすることもでき、例えば酸化ガドリニウムまたは酸化サマリウムのドープにより安定化された酸化セリウム、即ちGDC(gadolinia doped ceria)またはSDC(samaria doped ceria)であり、またはペロブスカイト構造を有する酸化物、例えばLaSrGaMgO(LSGM)などとすることもできる。これらは当業者においてよく知られている[V.V.Kharton,et al.,Transport properties of solid oxide electrolyte ceramics:a brief review,Solid State Ionics,174:135-149(2004)]。電極の材料組成は、例えばLaSrMnO(LSM)、LaSrCoFeO(LSCF)などのペロブスカイト構造の酸化物とすることができ、または例えばSDC、GDCなどの蛍石型構造の酸化物とすることができ、または例えばLSM及びYSZ/CGOなどからなる複合物のような複合物とすることができ、または例えばPtのような貴金属、または、例えばPt及びYSZからなる複合物のような、貴金属を含有する複合物とすることができ、これらは当業者においてよく知られている[E.V.Tsipis,et al.,Electrode materials and reaction mechanisms in solid oxide fuel cells:a brief review,J.Solid State Electrochem.,12:1367-1391(2008)]。
【0004】
固体酸化物電池(SOC)が作動する際、少なくとも2つの電極付近の酸素濃度には10倍または数桁の差異があり、以下において、酸素濃度が比較的高い気体を「酸素富化気体」と言い、酸素富化気体中で作動する電極を「酸素富化電極」と称する。酸素濃度が比較的低い気体を「酸素欠乏気体」と言い、対応する電極を「酸素欠乏電極」と称する。酸素富化気体の成分は、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスを含むことができるが、しかし最も一般的に使用される、最も典型的な酸素富化気体は空気であり、対応する電極は「空気極」と称する。酸素欠乏気体は、一酸化炭素、メタン、メタノール、水素ガス等の複数種類の燃料特性または還元特性を持つ気体成分を含むことができる。典型的な酸素欠乏雰囲気は、例えば、水素/水混合ガス、水素/一酸化炭素/水蒸気混合ガス、一酸化炭素/二酸化炭素混合気体、窒素酸化物(NOx)/窒素ガス混合気体とすることができ、対応する電極を「燃料極」と言う。酸素欠乏電極と酸素富化電極は電解質によって隔てられて、電解質はなるべく緻密で気体が漏れない必要があり、その導電性は可能な限り、電子の移動ではなく、イオンの移動によって実現される必要がある。電解液中において、電子伝導が存在すれば、電池内部に短絡電流が発生し、電池の全体効率が大幅に低下する。SOC電解質の電荷輸送は通常、酸素イオンを担体とするものであり、即ち酸素イオンによって導電する。
【0005】
固体酸化物電池(SOC)は、500~1000℃の温度範囲で作動し、二つの作動モードがある。これらは、発電モードの固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell, SOFCモード)と電気分解モードの固体酸化物電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell, SOECモード)である。SOCが発電モード、即ちSOFCモードで作動する際、酸素富化電極内の酸素分子は還元反応して酸素イオン(O2-)となり、酸素イオンは酸素富化電極側から、電解質拡散して、酸素欠乏電極側に移動し、例えば酸素欠乏電極内に燃料ガス分子がある場合、酸素イオンは酸素欠乏電極内の燃料ガス分子と化学反応する。典型的に、酸素欠乏電極内の気体成分に水素(H)と一酸化炭素(CO)が含まれる場合、酸素欠乏電極内で起こる化学反応は以下を含む。
【0006】
+O2-→HO+2e-
【0007】
CO+O2--→CO+2e-
【0008】
プロセス全体は巨視的には、酸素分子が、酸素富化気体側から電解質を通って酸素欠乏気体側に移動し、酸素富化気体と酸素欠乏気体の間の酸素濃度差がそれに伴い減少する。発電モードでは、SOCは酸素欠乏気体の化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、外部に出力する。水素電極と酸素電極を例にすると、SOFCモードでの電極反応と全体的な電気化学反応は以下のように表すことができる。
【0009】
アノード(酸素欠乏電極):H+O2-→HO+2e-
【0010】
カソード(酸素富化電極):1/2O+2e-→O2-
【0011】
全体反応:H+1/2O→H
【0012】
電極反応生成物を速やかに除去できなければ、反応が進むにつれて、酸素富化気体と酸素欠乏気体の間の酸素濃度差は減少する。
【0013】
固体酸化物電池(SOC)が電気分解モード、即ちSOECモードで作動する場合、酸素欠乏電極内の気体、例えば酸素(O)、水蒸気(HO)、二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)などの分子中の酸素分子または酸素イオンは、外部電場の作用下で、酸素イオン(O2-)の形で拡散し、電解質を通って、酸素富化電極に移動し、さらに酸素富化電極内において酸化反応が起こり、酸素分子となる。プロセス全体は巨視的には、外部電場の作用下において、酸素分子が、酸素濃度の比較的低い酸素欠乏気体側から、電解質中を通って、酸素濃度の比較的高い酸素富化気体側に移動する。酸素富化気体と酸素欠乏気体の間の酸素濃度差はそれにしたがって大きくなる。電気分解モードにおいては、SOCは外部から入力された電気エネルギーを吸収し、それを酸素欠乏気体の化学エネルギーに変換する。水素電極と酸素電極を例にすると、SOECモードでの電極反応と全体的な電気化学反応は次のように表すことができる。
【0014】
アノード(酸素富化電極):O2-→1/2O+2e-
【0015】
カソード(酸素欠乏電極):HO+2e-→H+O2-
【0016】
全体反応:HO→H+1/2O
【0017】
SOCが2つのモード間で切り替えて作動する際、電気エネルギーと化学エネルギーの間の相互変換を実現でき、このプロセスには熱の放出または吸収を伴うことがある。SOCは、発電(SOFC)モードと電気分解(SOEC)モードのいずれで作動する場合でも、外部からの熱エネルギーの入力を受け入れたり、または自身が熱エネルギーを外部に放出することがあるため、SOC技術を利用して、電気エネルギー、熱エネルギー及び化学エネルギーの間の相互変換を実現できる。SOCが電気分解モード(SOEC)で作動する場合、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵し、発電モード(SOFC)で作動する場合、酸素欠乏気体の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する。カルノーサイクルによる熱機関プロセスの発電効率に対する制限を回避し、効率的な化学エネルギーの利用を実現している。
【0018】
典型的な酸素欠乏気体、例えばHとHOの混合物は、発電モード(SOFC)下において、SOCの全体反応は以下の通りである:H+1/2O→HO。電気分解モード(SOEC)下において、SOCの全体反応は以下の通りである:HO→H+1/2O。典型的な酸素欠乏気体、例えばCO、HO、CO、Hからなる混合物とすることができ、発電モード下において、SOCの全体反応は以下の通りである:H+1/2O→HO,2CO+O→2CO。電気分解モード(SOEC)下においては、SOCの全体反応はHO→H+1/2O,2CO→2CO+Oであり、COとHを含む電解生成物は合成気体とも呼ばれ、成熟したフィッシャー・トロプシュ合成法(Fischer-Tropsch process)により、さらに一連の炭化水素化合物、例えばメタノール、エタノール、天然ガス、ガソリン、ディーゼルオイルなどの成熟した、広く使用されている燃料または工業原料に変換できる。酸素元素を含む気体成分が窒素酸化物NO、硫黄酸化物SOなどの典型的な環境汚染物質である場合、SOCの電気分解技術を利用して、これらの汚染物質を除去することができ、その化学プロセスは次のように表すことができる。
【0019】
NO→N+O(x=1或2)或SO→S+O(x=1或2);
【0020】
2. 固体酸化物電池(SOC)の電極反応プロセス
【0021】
SOCの電極反応プロセスにおいて、少なくとも3つの相の物質が反応に関与し、即ち、酸素イオン(O2-)、電子(e)、及び気体物質であり、気体物質は例えば、酸素分子(O)、水(HO)、水素(H)、一酸化炭素(CO)などである。電極反応プロセスが連続的、迅速に進むためには、反応に関与するすべての物質は、速やかに出入りするための通路(チャネル)が必要で、例えば、反応プロセスに必要とされる電子、酸素イオンはスムーズな輸送チャネルが必要で、言い換えれば、電極には、電子伝導度が高く、及び酸素イオン伝導度が高い材料が含まれる必要があり、同時に一定の気孔率を有する必要があり、これにより高温下において気体反応物が電極に入り、及び電極反応の気体生成物を電極から排出することに寄与する。既知の酸素欠乏電極の電子伝導性材料は、金属のニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などが含まれ、酸素イオン伝導体は、酸化イットリウム添加により安定化した酸化ジルコニウム(yttria-stabilized zirconia, YSZ)、酸化スカンジウムと酸化イットリウムの添加により安定化した酸化ジルコニウム(scandia and yttria stabilized zirconia, ScYSZ)、酸化スカンジウムと酸化セリウムの添加により安定化した酸化ジルコニウム(ScCeSZ)、または、酸化サマリウム(Sm)、酸化ガドリニウム(Gd)などの添加により安定化された酸化セリウムなどの材料、例えばSDC、GDCなどである。一部の既知の酸素イオン伝導体材料、例えばドープにより安定化された酸化セリウム、例えばSDC、GDCなどは、一定の電子伝導性を併せ持ち、混合導体とも呼ばれる。既知の酸素富化電極の電子伝導体材料は、LaSrMnO、LaSrCoO、LaSrCoFeOなどの高温酸化雰囲気下で安定した性質を維持でき、具体的な成分組成が一定の範囲内で変化できる酸化物を含むことができ、または耐高温酸化の貴金属、例えば銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などとすることができ、これらの高温酸化耐性のある貴金属は、同時に電極の反応を促進する触媒としての作用を併せ持つ。酸素富化電極の酸素イオン伝導体には、酸化イットリウム添加により安定化した酸化ジルコニウム(YSZ)、または、酸化サマリウム(Sm)、酸化ガドリニウム(Gd)添加により安定化された酸化セリウムなどの材料、例えばSDC、GDCである。同時に、酸素富化電極内の電子伝導体材料、例えばLaSrCoO、LaSrCoFeOなどの酸化物も、一定の酸素イオン伝導性を有することがあり、業界では混合伝導体とも呼ばれる。これらは業界においてよく知られている[E.V.Tsipis,et al.,Electrode materials and reaction mechanisms in solid oxide fuel cells:a brief review,J.Solid State Electrochem.,12:1367-1391(2008)]。
【0022】
よく使用される固体酸化物電池は、電極支持型であり、電極内に気体流路を配置することにより、電極構造の一部が中空になり、これは電池の構造強度を顕著に低下させ、気体流路の体積が大きく、占有比が大きく、サイズが非均一であるほど、電池の強度の低下は大きい。そのため、通常の固体酸化物電池(SOC)技術において、電極内の気体流路のサイズは小さく、1μm以下であり、不規則な点状分布を呈する[M.B.Mogensen,et al.,Reversible solid-oxide cells for clean and sustainable energy,Clean Energy,1-27(2019).]
【0023】
これらの電極内の気体流路の成形方法は通常、電極製造の前駆体粉末スラリー中に一定含有量の造孔剤(例えばグラファイトまたはデンプンなど)を加える。これらの造孔剤、及び一部の溶媒(例えばアルコール、トルエン及びイソプロパノールなど)は、電池の高温焼結製造プロセス中において、高温受熱分解により揮発して電極から逸出し、または空気中の酸素に酸化されて気体酸化物を生成し、例えば二酸化炭素(CO )は電極から逸失して、これにより電極内において気体流路を残しておく。これらは業界において熟知されている方法である[M.Chen,et al.,Microstructural degradation of Ni/YSZ electrodes in solid oxide electrolysis cells under high current.J.Electrochem.Soc.,160:F883-F891(2013)]。
【0024】
このような方法で構築された微細気体孔路は、電極全体内において気体を素早く輸送できるチャネルを形成できないため、電池全体に充分な気体供給ができず、または気体生成物を速やかに排出できない。これに対する通常の解決策は、電極外に外部気体流路を構築し、酸素富化気体と酸素欠乏気体は、それぞれ外部気体流路内において流動し、即ち酸素富化流路及び酸素欠乏流路であり、これらの流路はインターコネクタ、電池及び封止ガラスに囲まれて形成され、これらは公開文献において紹介されている[M.B.Mogensen,et al.,Reversible solid-oxide cells for clean and sustainable energy,Clean Energy,1-27(2019).]。図1は、公開文献において得られる典型的な固体酸化物電池(SOC)技術の一つの電池チップの断面の概略構造を示している。これから分かることは、これらの典型的な構造において、気体、特に酸素欠乏気体の電極内部における拡散流動速度は非常に低いため、電池の側面辺縁から漏れる気体流量が非常に少なく、そのため電極の側面辺縁を封止する必要がなく、高温封止材料、例えばガラスで、インターコネクタと電極の間の隙間を封止すればよい。これらの構成において、気体の主体は電池の外部に位置し、規則的な外形を有する気体流路内において流動し、気体流路の幾何学形状と断面形状は要求に応じて設計製作することができ、反応物として気体原料はまず、外部気体流路から拡散して比較的緻密な電極から、電極と電解質界面の電気化学反応区域内に入り、電極反応の後、生成物としての気体生成物は再度拡散により比較的緻密的な電極から外部気体流路に入り、除去される。
【0025】
このような設計において、構造強度に対するニーズにより、電極内の気体流路は多すぎても、大きすぎてもならない。そのため、電極内の気体輸送速度が低過ぎるのは、電極反応速度を制限する主な要因の1つである。この問題を減軽するため、固体酸化物電池中の電極は通常、非常に薄く作られ、通常の厚みは0.05~0.5mmである。これにより気体成分が拡散により電極から出入りすることをなるべく減少させ、即ち気体流路から電極及び電解質界面までの距離を減少させる。薄すぎる電極は、気体が拡散により、電極から出入りする抵抗を減少させることに寄与するが、電池の構造強度を顕著に低下させることができる。このような方式により設計及び製造された電池は、スタック(stack, cell group)の組み立て及び使用の過程において破裂しやすく、さらにスタック全体が失効して使用できなくなる。これは高温固体酸化物電池技術の商業化における大規模使用を制限する主な要因の一つである。
【0026】
3. 固体酸化物電池(SOC)のスタック組み立て設計
【0027】
良く見られる固体酸化物電池のSOC構成はシート式(flat plate type,平板型)であり、シート式SOCのスタック構造は、SOC素子、封止リング(sealing)、インターコネクタ(interconnect)などを順次接続することで実現され、スタック全体が高温環境中に置かれ、これは公開文献において紹介されている[N.Q.Minh,System design and application,in High-Temeperature Solid Oxide Fuel Cells for the 21st Century(2nd Ed.ISBN:978-0-12-410453-2),2015.]。封止リングは通常、ガラスまたは金属(例えば金、銀など)から製造され、インターコネクタの材料は通常、耐高温合金である。合金インターコネクタは通常、電池に接触する表面に導電性の抗酸化塗層を溶射(スプレーコーティング)して、これにより高温条件下における抗酸化能力を向上させ、スタック接続の電気抵抗損失を減少させる。多くの場合、固体酸化物電池(SOC)の両面の電極及び合金インターコネクタの間には、さらに一層または複数層の比較的柔らかい金属またはセラミックスパッドがあり、これにより電池(SOC)とインターコネクタの優れた電気接触を実現する。典型的には、金(Au)または銀(Ag)などの高温酸化耐性を有する金属で作られたメッシュを用いることにより、優れた電気的接触を保証する。一つのシート式SOCスタック中において、気流(酸素欠乏気体と酸素富化気体)は、インターコネクタ、電池(SOC)、及び封止リングによって構成された、隔離された空間内で流れ、スタックの外部漏れることを防ぐ。シート式SOCスタックを構成する各素子は、電池(SOC)、封止リング、インターコネクタなどを含み、これらはいずれも個別に製造する必要があり、最終的にスタックに組み立てる。シート式SOCスタックは、電極形状が規則的で、電流経路が短く、パワー密度が比較的大きく、スタックの組み立てが容易である。シート式SOCスタックの実用化は困難である。その理由は以下である。
【0028】
1) 封止リングの信頼性が低い。封止リングは、気密性、耐ヒートサイクル性、耐高温還元性及び耐高温酸化性雰囲気を同時に満たす必要があり、且つ一定の機械的強度と靱性などのニーズがあり、さらには、合金インターコネクタ及びSOC電池シートの熱膨張係数が近い必要があり、即ち熱膨張が整合(熱膨張マッチング)する必要がある。即ち、温度変化下において、封止リングと封止部材の寸法変化とがほぼ同じことが求められる。ガラス製封止リングであっても、または金属製封止リングであっても、これらの性能ニーズを同時に実現することは困難である。例えば、ガラス封止リングは通常壊れやすく、SOCのスタック組み立て、及び熱サイクル作動中に非常に簡単に断裂したり失効しやすい。ガラスを用いてかろうじてセラミックスと金属の封止を実現しても、その耐えられる温度変化速度は非常に小さくなければならず、これにより封止リングが過度な応力により、過度な歪みが生じることを回避し、これにより普通の固体酸化物電池技術を用いたスタックの起動と停止に係る時間は非常に長く、通常10時間以上、場合によっては20時間以上かかる場合もある。
【0029】
2) 各スタック素子はいずれも個別に製造する必要があるため、技術的要求が高く、
各素子の平坦度、強度、靱性、耐酸化性、熱膨張マッチング性に対していずれも要求が比較的高く、そのためシート式SOCスタックのコストは一般的に高く、実際の応用が制限される。
【0030】
3)スタック組み立ての自由度が低い。シート式SOCスタックの各単体セルの接続方式は直列接続であり、且つ封止リングは使い捨て素子であり、一つのシート式SOCスタックは熱処理すると、即ち、封止リングと封止部材が高温下、例えば850℃下において融着して封止を実現した後、各単体電池とインターコネクタを含む、各スタック素子は取り替えることができなくなり、そのため、スタック全体において任意の素子が失効すると、スタック全体の失効をもたらし、これはシート式SOCスタックを使用するリスクを大いに増大させ、使用コストを顕著に増加させる。
【0031】
既存特許[CN108336386B]は、フラットチューブ構造(flat tubular type,円筒平板型)の固体酸化物電気化学デバイス及びその製造方法について開示し、[CN108321408B]は、複数対の電極を含むフラットチューブ固体酸化物電気化学デバイス及びその製造方法について開示し、[CN108336376B]は、歩留まりと単体セルのパワーを向上させるためのフラットチューブ固体酸化物電池の構造及びその製造方法について開示し、上記技術課題の解決策を提供している。この解決策は、フラットチューブ構造の固体酸化物電池を採用し、このような電池は電解質支持を用いることができる。作動する場合、該技術を使用する電池は、高温と低温の温度範囲にまたがり、電池は高温部(高温エンド)で電気化学反応し、低温部(低温エンド)で封止と外部接続を実現する。この技術を用いる電池の構造的特徴は以下である。1)電池の作動に必要とされる気流隔離構造、即ち気体流路は、電解質、2つの気体流路壁及び一層のセパレータで囲まれて形成される;2)電解質、気体流路壁とセパレータの三者の構成材料は同じ材料または組成が近い材料である;3)電池の非気体流路の出入口の外側面には気体流路壁があり、且つ該気体流路壁は封止の信頼性を確保するために、一定の幅を有することが必須である。このような構成中においては気体流路壁により、通常技術において通常使用される高温封止材料、例えばガラスによって気体流路の封止を実現するものではない。予め残されている気体流路壁は電池の有効発電面積を減少させるが、気体流路の構成材料の成分と性質は電解質に近く、シート式スタック技術においてよく見られる、スタック各素子間の熱膨張特性がマッチングしないことにより、部材がスタックの熱サイクル中において破裂して失効することをもたらし、または長時間の高温操作により、スタック部材間が化学的に不適合することにより互いに反応して、スタック性能が減衰して失効することをもたらす、という問題が解決されまたは多いに緩和される。
【0032】
フラットチューブ式電池構造の実際の応用における問題点は、電池の歩留まりと電気的性能を両立させることが難しいことである。フラットチューブ式構成中の気体流路の囲み構造の実現は、少なくとも一層の電解質層を含む。電解質は、固体酸化物電池の作動時に、電気化学反応が起こるために不可欠な機能部材であり、電解質が薄いほど、酸素イオンの輸送の抵抗が小さく、電池の電気的性能が向上する。しかし電解質が薄いほど、強度が比較的低く、気体流路を構成する電解質部分は電池の製造プロセス中、または電池作動時に大流量の気流が通過する時に破裂しやすく、これはフラットチューブ電池の歩留まり及び信頼性を低下させ、技術の使用コストを増加させる。典型的に、フラットチューブ電池の気槽に充分な強度を持たせるために、電解質の厚みは一般的に0.5mm以上にする必要があり、しかし電解質の厚みを0.5mmにすることで、電池の出力パワー密度は100mW/cm以下となり、電池の出力パワー密度を300mW/cm以上にするには、電解質の厚みは0.1mmを超えないことが望ましい。しかしこのような厚みは、電解質が気槽のところで破裂しやすく、そのためこのような技術は歩留まりと電気的性能を両立させることが困難である。また、電池の非気体流路出入口の側面は気体流路壁とする必要があり、そのため電池を製造する際、電池の辺縁の気体流路壁は対応のスラリーまたは気体流路壁フィルムの指定位置に精確にプリントし、または貼り付ける必要があり、追加の製造工程ステップを増やす必要があり、電池の製造工程に対する要求が高くなり、コストが増加し、電池の生産効率が低下する。
【0033】
上記既存特許によって開示されている電池も、電極支持型の技術構成を用いることができ、電池の作動は同じように高温と低温の温度範囲にまたがり、電池は高温部(高温エンド)で電気化学反応し、低温部(低温エンド)で封止と外部接続を実現する。しかし囲んで気体流路を形成する電解質が内部電極に置き換えられ、そのため気体流路は完全に電極材料によって実現され、気体流路壁及び電池の強度は、内部電極の厚みを適度に増加させることにより実現でき、同時に電解質の厚みを比較的薄く保持することは、電池が比較的大きいパワーを有することに寄与する。このような構成において、電池の非気体流路出入口の外側面にも気体流路壁が存在し、電池が作動する際に高温部位の封止は気体流路壁によって実現され、通常技術中においてよく用いられる高温封止材料、例えばガラスによって実現されるものではない。必ず予め残さなければならない気体流路壁の幅は電池の発電面積を減少させ、同時に、電池の非気体流路出入口の側面は気体流路壁でなければならず、そのため電池を製造する際、電池の辺縁の気体流路壁は対応のスラリーまたは膜片を指定位置に精確にプリントし、または貼り合わせる必要があり、追加の製造工程ステップを増やす必要があり、電池の製造工程に対する要求を向上させ、コストが増加し、電池の生産効率が低下する。また、このような構成は、電池の性能及び歩留まりを向上させることに有効であるが、程度が限られ、気孔率が比較的低い内部電極中における気体の拡散速度は限られ、電極の厚みを過度に増やすことは電極反応の気体供給不足をもたらし、比較的薄い内部電極は気体流路の強度不足をもたらし、電池の高い製造歩留まりを実現できない。
【0034】
上記既存特許において、内部電極電流の輸送領域は、中央部の電池作動高温部(高温エンド)領域と、外部接続及び封止機能を担う低温部(低温エンド)極板との間であり、電流のキャリア、即ち導電性材料は、白金(Pt)またはニッケル(Ni)などの耐高温の金属で、回路の集電抵抗が比較的大きい。例えば、Ptなどの貴金属の導電率は約9×10S/cmと比較的低く、貴金属は高価であるため、薄い層でしか使用できず、厚みは一般的に約50μm、Ptコーティング層の集電の電気抵抗は約20mOhmである(幅1cm、長さ10cmを例に)。ニッケルの導電率は約1×10S/cmであるが、電極内において成形のニーズにより、その含有量は一般に60%以下であり、内部電極全体の導電率は通常200~250S/cmに過ぎない。そのためニッケル電極の集電抵抗は約400mOhmである(幅1cm、厚さ1mm、長さ10cmを例に)、内部電極の回路集電抵抗は比較的大きい。
【0035】
上記既存特許の電池が作動するには、高温領域と低温領域の温度範囲にまたがる必要がある。即ち、電池の電極は高温部(高温領域)で電気化学反応し、低温部(低温領域)で電池の封止と外部接続を実現する。そのため、電池全体は不可避的に、作動時に熱を高温領域から低温領域に移動させ、熱流出をもたらし、システム効率を低下させる。このような技術構成を用いる電池の製造プロセスは複雑で、実際には比較的シンプルな形状、角形または正方形の電池しか製造できない。このような形状設計において、高温領域から低温領域へ、熱が移動する通路は、寸法、断面積が等しく、熱損失が比較的大きい。次第に狭くなる構造、即ち電池が高温作動部位から低温封止部位に向かって徐々にサイズを小さくする構造を用いることができれば、熱が高温から低温に流出する通路は次第に狭くなることができ、これは電池の熱流出速度を低下させることに有利で、しかし既知の技術構成では、工程が複雑のため、実現しにくい。
【0036】
【発明の概要】
【0037】
本発明の目的は、従来技術における上記課題に鑑みて、固体酸化物電池チップを提案することであり、本発明が解決しようとする技術課題は、如何に迅速に行われる電極反応のために低い抵抗の気体輸送通路を構築すると同時に、電池に充分な構造強度を確保するかである。本発明に記載の固体酸化物電池チップは本文において「セルチップ(cell chip)」と呼び、または簡単に「セル(cell)」と呼ぶ。
【0038】
本発明の目的は、以下の技術構成によって実現できる。二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップであって、その特徴は、二層の電解質層を含み、二層の前記電解質層はその間に挟まれた内部電極によって隔てられ、前記内部電極の内部に規則的に配列された複数本の気体流路が設けられ、且つ内部電極の少なくとも二つの側面はサイドシール部材に被覆され、前記電解質の外面に外面部材(outer surface component)が設けられ、前記外面部材は中間層と、外部電極と、内部電極の極板と、外部電極の極板とを含み、前記内部電極は前記内部電極の極板に接続され、前記外部電極は前記外部電極の極板に接続される。
【0039】
内部電極と外部電極の間には酸素分圧の差があり、即ち、外部電極を酸素富化電極として設計し、内部電極を酸素欠乏電極として設計することも、または、操作ニーズに応じて、外部電極を酸素欠乏電極として設計し、内部電極を酸素富化電極として設計することもできる。
【0040】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記内部電極中に規則的に配列された複数本の気体流路における、単一の気体流路の横断面の等価直径(equivalent diameter)寸法は20~200μmの範囲内である。
【0041】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記サイドシール部材は複数のサブ層を含み、そのうち少なくとも一層のサブ層は緻密で非通気性のものであり、且つ前記緻密で非通気性のサブ層と、前記電池チップの側面との間には、少なくとも一層の粗さが大きく通気性のサブ層が設けられている。
【0042】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記外面部材は、外部電極の外面に被覆した複数本の外部集電体をさらに含み、且つ前記外部集電体の導電率は、外部電極の導電率より低くない。
【0043】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記外面部材は、さらに保護層を含み、前記保護層は、少なくとも外面部材中の一つを被覆する。
【0044】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記内部電極と内部電極の極板との間は、内部バスバーによって接続され、前記内部バスバーの導電率は、前記内部電極の導電率より低くない。
【0045】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記内部バスバーは、サイドシール部材と前記電池チップの側面との間に位置する。
【0046】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記内部バスバーの主体は電解質の外面に設けられ、且つ電解質を貫通して内部電極に接続される。
【0047】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記内部バスバーは電解質を貫通して且つ気体漏れを防ぐために封止材料で個別に封止される。
【0048】
前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ中において、前記電池チップは長尺シート状を呈し、前記電池チップの外形は、電池チップの中央部にある外部電極領域から気体流路出入口の端面に向かって次第に狭くなる。
【0049】
本発明の目的は、さらに以下の技術構成によって実現できる:
高温固体酸化物電池チップの製造方法であって、その特徴は、以下のステップを含む:
【0050】
(1)基材シートの製造:内部電極と電解質を構成する成分中に、比率に応じて適切な助剤及び溶媒を添加した後、流延操作により薄膜基材シートを製造し、そのうち一部の基材シート上において、ニーズに応じて、気体流路前駆体を製造する。
【0051】
(2)基材シートの積層:電解質基材シート、気体流路を含む内部電極基材シート、気体流路を含まない内部電極基材シートを、一定の順番で揃えて重ね合わせた後、真空バッグ中に入れて真空引き及び封口を行い、さらに真空バッグ中に置かれた基材シート集合体をプレス機中に入れ、高温圧着により融合させた後、積層体を形成する。
【0052】
(3)裁断:積層体を打抜装置中に置き、指定された設計形状を有する電池チップブランク(blank, greenbody)に裁断する。
【0053】
(4)焼結:電池チップブランクを高温炉中に置き、適切な熱処理スケジュールで焼結させ、焼結後の電池チップブランクは比較的高い強度の電池チップとなる。同時に、熱処理スケジュールにおいて、気体流路前駆体が気体化して逸出することにより、電池チップの内部電極中に規則的で均一な埋込気体流路が残される。
【0054】
(5)中間層の焼成:焼成後の電池チップの両面の電解質上に高温熱処理により中間層を製造する。
【0055】
(6)還元:中間層が焼成された電池チップを還元炉中に入れて還元させ、内部電極中における酸化ニッケルを金属ニッケルに還元させる。電池チップの還元操作は、ここに示されている場合以外にも、電池チップが使用されず、スタックに組み立てられる前に完了でき、または電池チップがスタックに組み立てられた後に、スタック全体の還元により実現できる。
【0056】
(7)外面部材の製造:還元後の電池チップの外面に、電池チップの外面部材をプリントする。これらの外面部材は、外部集電体、外部電極、外部電極の極板、内部電極の極板、外部電極バスバー、内部電極バスバー及び保護層等を含み、これらの部材は全部を中間層上にプリントすることができ、または部分的または全部を電解質の表面にプリントすることもできる。使用されるさまざまなスラリーは、溶媒としてエタノールとテルピネオールの混合物を使用でき、さらに孔形成剤として約0~10%のグラファイトを含む。
【0057】
(8)サイドシール部材の製造:上記工程を完了した電池チップに対してサイドシール部材を製造し、前記サイドシール部材は、内外二層のサブ構造を含むことができ、まずサイドシール内層を塗布し、好ましい材料はグラファイト(C)、またはケイ酸マグネシウムタルク類素材(Mg)[Si] O0(OH))である。サイドシール内層が乾燥してから、さらにその上にサイドシール外層を塗布する。好ましい材料はカリ石灰ガラス(potash-lime glass)で、成分はKO 12~18%,CaO 5~12%,SiO 60~75%である。
【0058】
(9)熱処理:外面部材のプリント、及びサイドシール部材の塗布が完了した電池チップに対して熱処理し、熱処理後、各外面部材とその附着物は強固な接続を形成し、且つサイドシール部材に少なくとも一層の緻密化構造がある。好ましい熱処理スケジュール(heat treatment schedule)は850℃で1時間、雰囲気は還元性保護雰囲気であり、水素含有量は5~60%、その他のバランスガス(balance gas)は窒素である。
【0059】
(10)電極の強化。熱処理された電池チップは実際の応用に用いることができ、電池チップの電気的特性をさらに向上させ、内部抵抗を低下させるために、電極の強化処理を行うことができる。典型的な電極の強化処理方法は例えば含浸などの工程である。
【0060】
本発明により製造された固体酸化物電池チップは、同じように高温部(高温エンド)で作動し、低温部(低温エンド)で外部接続と封止を実現するという特徴を有する以外に、本発明の電池チップはさらに以下の特徴を有する。
【0061】
1) 二重電解質は挟まれた内部電極によって隔てられ、内部電極内には規則的に配列された微小気体流路が埋め込まれている。電池チップの非気流出入口端面の側辺も、これらの気体流路の出口を含むことができ、これにより電池チップ製造の工程ステップを顕著に減少させ、電池チップの生産効率を向上させ、電池チップの生産コストを低下させることができる。
【0062】
2)内部電極は、複数層を有する可能性があり、例えば、活性内部電極と支持内部電極があり、そのうち活性内部電極は配合上、電気化学反応を促進することに寄与し、支持内部電極は成分上において、電池チップの全体強度及び/または導電性を向上させることに寄与する。
【0063】
3)規則的な微小気体流路が埋め込まれ、且つ気体流路の数量と位置は必要に応じて調
整でき、且つ、電解質に近接することができ、電極反応に必要とされる原料気体の供給速度、または生成物気体の排出速度は、内部電極の厚みの増加に伴って低下することはなく、逆に内部電極の厚みの増加に伴って増加する。同時に、内部電極の厚みの増加により、内部電極全体の導電性及び電池チップの強度も向上する。
【0064】
4)内部気体流路は規則的に配列され、単一の気体流路の横断面の等価直径寸法は20~200μmの範囲内であり、好ましくは30~60μmの範囲内である。気体流路の断面が大きすぎると電池チップの強度を低下させ、電池チップが壊れやすくなり、電池チップの歩留まりを顕著に低下させる。気体流路が小さすぎると、電池チップの作動時に過度の気流圧降下をもたらす。実際の試験結果によれば、単一気体流路の等価直径寸法は30~60μmの範囲内に制御すべきである。これと同時に、単一の電池チップに含まれる気体流路の数は6本以上で、これにより電池チップが一定の通気能力が有することを保証し、単一の電池チップが充分なパワーを有するようにする。
【0065】
5)電池チップの非気体流路壁の側面には専用の封止構造があり、一つの封止構造は複数のサブ層を含むことがあり、その材料と微小構造は異なる。異なるサブ構造は異なる機能を有することができ、例えば最内層のサブ構造は主に、封止底面との接触を強化することに用いられ、気密性に対する要求は低い。最外層の構造は高い気密性が要求される封止に用いられ、最外層と最内層のサブ構造中には、機能に応じてより多くのサブ構造を埋め込むことができ、いずれにしても、サイドシール部材の各サブ層には、少なくとも一層が緻密的で非通気性のものである。
【0066】
6)内部電極の集電構造の層を含んでもよく、その導電性は比較的高く、内部電極の集電抵抗を低下させるものである。該内部電極の集電構造は、封止層内に配置され、内部電極の側面に貼り付けられてもよく、または別の位置、例えば電池チップの表面に設けられてもよい。好ましい内部電極の集電構造の材料は、銀(Ag)またはニッケル(Ni)ベースのコーティング層である。銀とニッケルの材料コストは、Ptなどの貴金属に比べ安価で、且つ導電性が高く、電池チップの片側の側面、または側面に塗布することのみに用いられ、構造上の要求がないため、材料構成成分に比較的大きな調整余地がある。内部電極の集電構造の導電率は、一般的に使用されるニッケル電極材料の導電率よりもはるかに大きくすることができる。例えば、ニッケル電極の導電率は約250S/cmであり、しかし銀とニッケルの集電コーティング層は、それぞれ6×10S/cmと1×10S/cmの導電率を実現できる。同じ状況下で、銀(Ag)材料を側面集電コーティング層とする配線抵抗は約17mOhmで、ニッケル(Ni)材料による側面集電体コーティング層の配線抵抗は約100mOhmである(幅1cm、厚み1mm、長さ10cmを例に)。両者はいずれも、ニッケル電極の集電抵抗の約400mOhmより顕著に小さい。明らかなように、このような内部電極の集電構造を用いれば、比較的低コストで、電池チップの内部電極の集電抵抗を顕著に低下させることができると考えられる。
【0067】
7)電池チップはテーパー形状の形状設計を採用することがある。即ち、電池チップの高温領域における作動面はより幅広く、しかし電池チップの幅は、内部電極の気流方向に沿って、電池チップの低温領域に向かって、次第に狭くなる。このようなテーパー形状の設計により、電池チップは高温領域において作動面積をできるだけ大きくすることができ、高温から低温への遷移領域では、電池チップの熱伝導断面積は次第に小さくなる。電池チップの熱伝導による熱損失も緩和され、これにより電池チップのパワー出力を効果的に向上できる。試験結果によれば、テーパー形状の設計を採用した単一セルは、長方形の等幅設計を採用した単一セルの出力パワーよりも、最大で約10%高くなる。しかし、テーパー形状の電池チップの設計により、内部電極の気流抵抗の増加をもたらし、即ち内部電極の気体が電池チップを流れるときの圧力低下が増大する。実際の試験及び流体力学シミュレーション計算により、電池チップのテーパ形状(tapered shape)の斜辺と、高温領域の直線辺との夾角αは、5°~60°の範囲内にあり、好ましくは10°~30°の範囲内にある場合、電池チップ内を流れる内部電流の電圧降下は比較的小さい。
【0068】
機能の違いによれば、本発明の前記電池チップは以下の複数の構成部材を含むべきである。そのうち、電池チップ外部に位置し、中間層以外に、電解質上に直接または間接的に付着する構造部材は、電池チップの外面部材と呼ばれ、各部材の機能と材料の組成は以下である。
【0069】
1)内部電極の極板と外部電極の極板:電池チップの内部電極、外部電極の、外部デバイスとの電気接続を実現するための接続部材であり、好ましくは、比較的高い導電率を有し且つ抗酸化性の材料であり、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Ph)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タングステン(W)などの元素の材料によって製造される。
【0070】
2) 内部電極:内部電極を流れる気体が電気化学反応して、内部電極の電気化学プロセスが発生する場所を提供し、電池チップ全体の構造強度を提供し、さらに少なくとも部分的に内部電極の電流輸送通路を提供する。内部電極は、異なるサブ層を含む可能性があり、これにより電気化学反応、強度支持、及び電流輸送の3つの機能をそれぞれ実現する。異なる内部電極サブ層は組成が近い材料から構成され、好ましくは、内部電極には、活性内部電極と支持内部電極という2つのサブ層が含まれる。活性内部電極の成分の設計は、電気化学反応に有利となるようにし、例えば50~60%の8YSZと40~50%の金属ニッケル(Ni)を含有し、支持内部電極の成分の設計は、電子輸送と電池チップの強度支持に有利となるようにし、例えば30~50%の3YSZと50~70%のNiを用いる。内部電極は、NiとYSZの基本組成をベース、さらに少量の他の添加物を含むことができ、例えば白金、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ランタン、チタン酸ストロンチウム、またはこれらの添加物をベースとした複合物である。これらの添加物の含有量は通常5%以下であるが、内部電極によりよい電気化学的活性とより優れた高温安定性をもたらすことができる。
【0071】
3)気体流路:内部電極に対して電極過程に必要とされる原料供給と生成物除去の通路を提供する。気体流路は内部電極全体に亘って分布され、さらに電池チップの縁まで延伸する。単一の気体流路の等価直径寸法は20~200μmの範囲内であり、好ましくは30~60μmの範囲内である。このようにすることで、内部電極に亘って気体流路が設けられる場合でも、内部電極の強度を顕著に低下させないことを確保できる。このような規則的な微小気体流路が配置された内部電極は、その厚みが大きいほど、含まれる気体流路は多く、電池チップの気体供給量は大きく、強度も大きい。
【0072】
4)電解質:内部電極と外部電極の間のセパレータで、持続的に電極反応を行うのに必要なイオン通路を提供する。電解質の電子伝導率は小さいほど良く、気密性は高いほど良い。好ましくは、電解質は、ドープにより安定化した酸化ジルコニアを基本原料とし、特に酸化イットリウム添加により安定化した酸化ジルコニウム(YSZ)である。
【0073】
5)内部集電体:内部電極に貼り合わせられ、またはそれ自体が内部電極の一部であり、内部電極の電極反応に対して必要とされる電子高速輸送通路を提供する部材である。適切な材料を適切な位置に配置する内部集電体は、内部電極の全体導電率を効果的に高めることができ、これにより、電池チップの内部抵抗、特に集電体の内部抵抗を低下させる。好ましくは、内部集電体は、内部電極よりも高い電子伝導率を有するもの、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Ph)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タングステン(W)などの耐高温酸化性金属材料または合金からなることができ、またはチタン酸ストロンチウムのような還元性雰囲気下で高温導電性を有する酸化物から構成される。好ましくは、内部集電体は、気体が電池チップに出入りする端面ではない電池チップの側面に配置され、または電池チップの他の部位に配置することもでき、例えば外部電極の所在する電池チップ表面である。内部集流体は、専用の電池チップ部材でも、または内部電極自身がこれを担うこともできる。
【0074】
6)内部バスバー:内部集流体と内部電極の極板を連通する電子輸送通路である。内部電極電流を流す必要があるため、内部バスバーは一般に、断面面積が比較的大きく、導電率が比較的高く、これにより電子輸送時の電気抵抗が比較的小さいよう確保する。好ましくは、内部バスバーは、内部電極よりも高い電子伝導率を有し、材料の組成としては、耐高温酸化の金属、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Ph)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タングステン(W)、銅(Cu)等の材料及びその合金、及びこれらの金属材料と、高温導電性を有する酸化物、例えばチタン酸ストロンチウム、ドープにより安定化された酸化セリウム、ドープにより安定化された酸化ジルコニアなどの高温導電性を有する酸化物材料から構成される複合物からなる。
【0075】
7)中間層:電池チップの外面部材と電解質の接触を促進し、これらの外面部材と電解質の高温下における反応を減軽または回避する部材である。電解質は電池チップの高温焼結により、通常は比較的緻密で滑らかであり、電池チップの外面部材と電解質の優れた接触を実現及び保持することに不利である。これ以外に、電池チップの製造過程及び使用過程において、温度が比較的高く、例えば電池チップの製造過程において、最高温度は1500℃に達することができ、電池の長期使用も500~1000℃の高温範囲に維持できる。電池チップの外面部材はこのような条件下において、電解質と反応することにより、電池チップの性能低下をもたらす可能性が大きい。そのため一層の中間層を導入することにより、これらの問題を回避または緩和できる。中間層は電解質及び電池チップの各外面部材に対して高温下において化学的安定を維持できるだけでなく、または製造後に比較的粗い表面を有し、各外面部材との優れた接触を実現する。中間層は外部電極と電解質の間に製造できるだけでなく、すべての電池チップ外面部材と電解質の間に製造することもでき、これらの外面部材は以下:外部電極、内部/外部電極の極板、内部/外部バスバー、内部/外部集流体、保護層、封止構造などを含むことができる。好ましくは、中間層の材料はドープにより安定化された酸化セリウム(例えばSDCまたはGDC)、またはドープにより安定化された酸化セリウム(例えばSDCまたはGDC)とドープにより安定化された酸化ジルコニウム(例えばYSZまたはScYSZ)の複合材料からなる。
【0076】
8)外部電極:電池チップの外部を流れる気体が電気化学反応し、外部電極の電極過程に反応場所を提供する。好ましくは、外部電極材料は、ドープにより安定化された酸化セリウムと、例えばAg、Pt、Pdなどの抗酸化金属から構成される複合材料を用いることができ、または既知の固体酸化物電池技術の電極材料、例えばLaSrMnO、LaSrCoFeO、LaNiFeOなどの酸化物またはそれをベースとする複合材料を用いることができる。これ以外に、外部電極の製造過程には、さまざまな既知の電極強化工程、例えば活性酸化物の含浸などの工程を含むことができる。
【0077】
9)外部集電体:外部電極に貼り合わせられ、またはそれ自体が外部電極の一部であり、外部電極に対して電極反応を行うために必要とされる電子高速輸送通路を提供する部材である。好ましくは、外部集電体は耐高温酸化性金属、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Ph)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タングステン(W)など及びその合金と、高温導電性を有する酸化物、例えばチタン酸ストロンチウム、ドープにより安定化された酸化セリウム、ドープにより安定化された酸化ジルコニアなどの高温伝導性を有する酸化物材料から構成される複合物からなる。好ましくは、外部集電体は、外部電極の外面に配置され、または内面(inner surface)に位置することもでき、即ち、外部電極と電解質との間、または外部電極と中間層との間に設けることもできる。好ましくは、外部集電体は、集電効果を高めるためにグリッド状の形式を用いることが好ましい。
【0078】
10)保護層:外部電極を含む各外面部材を直接または間接的に被覆して、それに対して保護を提供する構造である。保護層が被覆する可能性のある外面部材は、外部電極、内部/外部電極の極板、内部/外部電流バスバー、内部/外部集電体、保護層、サイドシール部材及び封止構造などが含まれる。保護層は、有効成分の揮発流出を抑制することで、外部電極を含む電池チップの各外面部材の高温安定性を高めることができ、または、物理濾過または化学吸収の方法により、各外面部材の、外部気体不純物(例えば粉塵または水蒸気)、または他の電池チップ外面部材を中毒させ失効させやすい気体不純物(例えば芳香族炭化水素、シラン、COなど)に対する耐性を高め、これにより電池チップ作動の安定性を向上させ、電池チップの使用寿命を効果的に延長させることができる。好ましくは、保護層は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素、白金、パラジウム、ロジウムなどの高温条件下で安定した性質を維持できる酸化物及び/または金属材料で製造できる。
【0079】
11)外部バスバー:外部集電体と外部電極の極板を連通する電子輸送通路である。外部電極電流を流す必要があるため、外部バスバーは一般的に断面積が比較的大きく、導電率が比較的高く、これにより電子輸送時の抵抗が比較的小さくなることを保証する。好ましくは、外部バスバーは、外部電極材料より高い電子伝導率を有するもの、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Ph)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タングステン(W)、銅(Cu)などの金属及びその合金と、高温導電性を有する酸化物、例えばチタン酸ストロンチウム、ドープにより安定化された酸化セリウム、ドープにより安定化された酸化ジルコニアなどの高温導電性を有する酸化物材料からなる複合物からなる。
【0080】
12)サイドシール部材:電池チップの非気体出入り端面に対して、気体隔離封止を行う構造であり、複数のサブ層構造を含むことができる。好ましくは、内外二つのサイドシールサブ層を含み、サイドシール内層は電池チップの内部電極の側面を覆い、内部電極とサイドシール外層との間に位置し、内部電極の気流が電池チップの側辺から漏洩する抵抗を増大させ、サイドシール外層との優れた接触を実現し、さらにサイドシール外層と化学的安定を維持し、高温下においても化学反応により両者の構造が破壊されることはない。好ましくは、サイドシール内層の材料は、グラファイト(C)またはケイ酸マグネシウムタルク材料、例えば(Mg)[Si]O20(OH)などを用いることができる。サイドシール外層は電池チップサイドシール部材の最も外層であり、内部電極の気体流路を流れる気体が電池チップの外部に漏れることを防ぐ緻密性の封止構造である。好ましくは、サイドシール外層は、グラファイトまたはカリ石灰ガラス(potash-lime glass)をベースにする材料から構成される。例えばカリ石灰ガラスを使用する場合、好ましい成分の配合比の範囲は:KO 12-18%,CaO 5-12%,SiO 60-75%である。
【0081】
ここで説明すべきは、前記部材はその機能の違いによって定義されるものであり、それらの位置または材料の組成の違いにより区別されるものではない。実施過程において、異なる機能部材は、類似の、場合によっては同じ材料と同じ製造工程によって製造される。このような場合、異なる部材も、同じ、または類似の構造特徴を有する可能性があり、これによりこれらは微小構造特徴において区別できない。例えば、外部電極、外部集電体、及び外部バスバーは、担う機能が異なっていても、同じ材料、例えば、70%のAgと30%のSDCからなる複合材料という同じ種類の材料、及び同じ製造工程、例えばスクリーン印刷という同じ操作ステップにより製造できる。
【0082】
従来技術と比較して、本発明には以下のメリットがある。
【0083】
1. 内部電極内に埋め込まれる規則的な微小流路は、気体が内部電極を流れる際の通気抵抗を顕著に低下させ、且つ内部電極内に分散する規則的な微小流路は、内部電極を流れる気体がすべての電解質及び電極の界面領域全体に均一に分布することに寄与する。これにより、電極反応がより充分となり、電池チップの電気効率が高くなる。
【0084】
2.内部電極は複数のサブ層を含み、例えば活性内部電極と支持内部電極に分けられ、そのうち活性内部電極は配合上において、電気的化学反応に有利で、支持内部電極は成分上において、電池の全体的強度及び/または導電性の向上に有利である。
【0085】
3.内部電極は、さらに二層の電解質間の支持(サポート)とすることができ、電解質の厚みが比較的薄くでも、比較的高い歩留まりを保証できる。
【0086】
4.サイドシール層は多層構造とし、内側のサブ層は、内部電極を流れる気体の漏洩抵抗を高めることができ、外側のサブ層の材料は、内側のサブ層の材料と組成と構造がいずれも異なり、これにより減圧後の漏洩気体に対してより優れた封止(シール)を実現でき、構造強度をよりよく維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1図1は、知られている典型的な固体酸化物電池の一つのスタックユニットの断面模式図である。
【0088】
図2図2は本発明の実施例1の平面構造図である。
【0089】
図3図3は本発明の実施例1の端部側面視構造図である。
【0090】
図4図4は、本発明の実施例1の断面構造模式図である。
【0091】
図5図5は本発明の実施例2の平面構造図である。
【0092】
図6図6は本発明の実施例2の分解図である。
【0093】
図7図7は本発明の実施例3の平面構造図である。
【0094】
図8図8は本発明の実施例4の平面構造図である。
【0095】
図中において、1は電解質、2は内部電極(inner electrode)、201は支持内部電極、202は活性内部電極、3は外部電極(outer electrode)、4はサイドシール部材、401はサイドシール内層、402はサイドシール外層、5は中間層、6は内部電極の極板、7は外部電極の極板、8は内部バスバー(inner bus bar)、9は外部バスバー(outer bus bar)、10は封止構造、11は気体流路、12は外部集流体(outer current collector)、13は保護層、14は内部集流体(inner current collector)、15は接続片(connecting piece)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下は本発明の具体的な実施例であり、以下に図面を参照して、本発明の技術構成に対してさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0097】
【実施例1】
【0098】
図2及び図3に示すように、本実施例1は固体酸化物電池チップであり、電池チップは長方形の長尺シート状構造を用いて、厚み方向上において互いに隔てられた二層の電解質1を含む。二層の電解質1の間に内部電極2が配置され、且つ内部電極2の両つの側面はそれぞれサイドシール部材4で被覆され、電解質1の外面には外面部材が設けられ、外面部材は、中間層5、外部電極3、内部電極の極板6及び外部電極の極板7が含まれ、内部電極2は内部電極の極板6に接続され、外部電極3は外部電極の極板7に接続される。
【0099】
図4を参照すると、内部電極2の内部に、規則的に配列されている微小気体流路11が設けられ、サイドシール部材4は、サイドシール内層401とサイドシール外層402という二つのサブ層を含み、サイドシール内層401とサイドシール外層402の材料はいずれも電解質1と内部電極2の材料と異なり、これと共にサイドシール外層402は緻密で非通気性であり、サイドシール内層は粗さが大きく(多孔的で)通気性のある401である。内部電極と外部電極は、それぞれ各自の極板を備え、これは電池チップと外部を接続するためで、外側電極の極板7と外部電極3の間は、外部バスバー9によって接続される。内部電極2は、支持内部電極201と活性内部電極202を含み、内部電極2と内部電極の極板6の接続は内部バスバー8によって接続され、外部電極3の外面には外部集流体12が設けられ、外部電極3の外面に位置し、外部集流体12及び外部電極3上に保護層13が被覆している。内部電極の極板6、外部電極の極板7、外部電極3、外部バスバー9などはいずれも中間層5上に設けられ、電解質1と直接接触しない。本実施例1の内部電極の極板6と外部電極の極板7は電池チップの同じ端に設けられ、内部集電体14はサイドシール部材4内に埋め込まれている。
【0100】
本実施例1の電池チップの製造工程は以下である。
【0101】
1) 基材シートの製造。基材シートは三種類に分けられる:支持内部電極基材シート、活性内部電極基材シート及び電解質基材シートである。それぞれの基材シートの製造工程は以下の通りである。
【0102】
(a) スラリーの調製。セラミックス微粉、例えば8YSZ、NiO及びGDCなどの酸化物微粉に、適量の有機助剤及び溶媒、例えばPVB、トリエタノールアミン、エタノールなどを添加し、ボールミルして混合した後、これらのセラミックス微粉は均一に分散され安定的なスラリーに調製される。典型的な活性内部電極スラリー中において、固体有効成分の含有量は8YSZ:NiO:GDC=5:4:1(重量比)であり、且つ約20%の変動範囲がある。典型的な支持内部電極スラリー中において、固体有効成分の含有量は8YSZ:NiO:Al=3.5:5.5:1(重量比)であり、且つ約20%の変動範囲がある。支持内部電極中の酸化ニッケル(NiO)の含有量は若干高く、これにより内部電極が還元された後により高い導電性を有するようになる。典型的な電解質スラリーにおいて、固体有効成分は8YSZまたはScYSZである。
【0103】
(b)基材シートの製造。(a)中のスラリーを流延装置で、電解質と内部電極の薄膜(フィルム)に製造し、典型的な電解質薄膜の厚みは5~40μmであり、典型的な内部電極薄膜の厚みは100~200μmである。薄膜を60℃で2時間乾燥させた後に、所定の寸法、例えば270×220mmの薄片に裁断し、これを基材シート(基片,substrate sheet)と呼ぶ。これに対応して、活性内部電極スラリーから製造された基材シートは、活性内部電極基材シートと呼び、支持内部電極スラリーから製造された基材シートは、支持内部電極基材シートと呼び、電解質スラリーから製造された基材シートは、電解質基材シートと呼ぶ。
【0104】
(c)気体流路前駆体の調製。電池チップの気体流路前駆体を一枚の支持内部電極基材シート上に製造する。典型的な気体流路前駆体は、グラファイト、デンプン、または例えばPTFE、PVCなどの他の高分子材料の微粉を含むスラリーである。これらのスラリー中において、例えばグラファイト、デンプン、PTFE、PVCなどの固体粉末の含有量は、好ましくは5~30%の範囲であり、溶媒はテルピネオール(terpineol)である。前駆体スラリーを内部電極基材シート上に製造する方法としては、スクリーン印刷及び高温圧着などの業界で知られている方法が挙げられる。
【0105】
2)基材シートの積層。電解質基材シート、活性内部電極基材シート、気体流路前駆体を含む支持内部電極基材シート、気体流路を含まない支持内部電極基材シートを、図4に示す順番で揃えて重ね合わせた後、真空バッグ中に入れて真空引き及び封口を行う。それから、基材シート集合体が入った封口された真空バッグを静水圧プレス機内に置き、75℃の水浴中で20MPaの圧力を5分間加えた後、取り出す。静水圧プレスのプロセス後、集合体中の各基材シートは互いに融着して、積層体となる。積層体の厚みは約2mmで、各構成層は部分的または完全に分離させ、単一の基材シートとすることはできない。
【0106】
3) 裁断。上記ステップにより製造された積層体を打ち抜き機内にセットし、打ち抜き型により、所定の設計形状の電池チップブランクに裁断する。典型的に、一つの積層体は3本の外形が65×260mmの電池チップブランクに裁断する。
【0107】
4) 焼結。電池チップブランクを高温炉中に置き、適切な熱処理スケジュールを選択して高温焼結を行う。高温焼結により、例えば1400℃で2時間焼結した場合、ブランクの寸法は20~30%収縮し、比較的高い強度の電池チップとなる。同時に、熱処理スケジュール中の気体流路前駆体ガスが逸失し、電池チップ中に埋め込まれた規則的で均一な微小気体流路が残される。
【0108】
5)中間層の焼成。焼成後の電池チップの両面の電解質上に、中間層をプリントする。典型的な中間層材料は、ドープされた酸化セリウム、例えばGDCまたはSDCであり、プリント方法は、業界内でよく知られるスクリーン印刷工程を用いることができる。中間層をプリントした電池チップを90℃で1時間乾燥させた後高温炉中に置き、それから炉温を1300℃に上げ、2時間焼成した後、炉温を下げ且つ冷却速度が5℃/毎分間を超えないようにする。炉内温度が室温まで低下したら、電池チップを取り出し、このとき、両面の中間層は電池チップの電解質の外面に堅固に焼成される。
【0109】
6)還元する。中間層を焼成した電池チップを還元炉内に入れて還元させる。還元性雰囲気は水素と窒素の混合ガスであり、水素含有量は70~100%で、窒素含有量は0~30%であり、還元条件は680℃、6時間である。還元操作した後、電池チップの内部電極中の酸化ニッケルは金属ニッケルに還元され、これは内部電極中に余分の気体流路を形成するだけでなく、同時に、形成された金属ニッケルは電子伝導体であるため、還元された内部電極は導電能力があり、電気化学反応を行う電池チップの高温領域と、外部との接続を担う内部電極の極板との間を連結する、電子輸送通路を形成できる。
【0110】
7) 外面部材の製造。還元後の電池チップの外面にセルの外面部材をプリントし、これらの外面部材は、外部集電体、外部電極、外部電極の極板、内部電極の極板、外部電極バスバー、内部電極バスバー及び保護層などを含み、これらの部材はすべて中間層上にプリントすることも、部分的にまたは全部を電解質表面にプリントすることもできる。電池チップは向かい合って配置される二面の電解質を有するため、電池チップの片側の外面部分は、もう片側の外面部材を製造した後に、順次製造することができる。
【0111】
電池チップの外面部材において、外部集電体、外部電極の極板、内部電極の極板、外部電極バスバー、及び内部電極バスバーの成分は同一または近いものであり、例えば、ドープにより安定化された酸化セリウム(SDCまたはGDC)含有率が5~20%,銀含有率が80~95%で、同じスクリーンで同じステップによりプリントできる。外部電極の成分は、ドープにより安定化された酸化セリウム(SDCまたはGDC)含有量が30~55%,銀含有量が45~70%であり、そのプリントは、外部集電体をプリントする以前または以後に行うことができ、両者の間に乾燥過程があり、乾燥条件は90℃の熱風乾燥1時間である。保護層の成分は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、または酸化物をベースとする様々な複合材料であり、好ましい成分は酸化アルミニウムであり、これらの酸化物により製造されたスラリーは、乾燥後の他の外面部材上にプリントされまたは溶射(スプレーコーティング)される。本ステップで使用される各種スラリーは、エタノールとテルピネオールの混合物を溶媒として使用でき、さらに孔形成剤として約0~10%のグラファイトを含む。
【0112】
8)内部集流体の製造。外部電極などの部材をプリントした電池チップに対して内部集流体を製造する。まず、電池チップの側面に内部集流体スラリーを塗布し、基本成分は、ドープにより安定化された酸化セリウム(SDCまたはGDC)含有量5~20%,銀含有量80~95%である。内部集流体を塗布した電気セルは、90℃で1時間熱風乾燥してスラリーを硬化させる。
【0113】
9)サイドシール部材の製造。上記工程を終わらせた電池チップに対してサイドシール内層を塗布し、サイドシール内層は、内部集電体コーティング層上に塗布することができ、その基本的な成分はグラファイト、またはケイ酸マグネシウムタルク材料((Mg)[Si]O20(OH)である。サイドシール内層を90℃の熱風で1時間乾燥させた後、さらにサイドシール内層上にサイドシール外層を塗布する。基本的な材料はグラファイトまたはカリ石灰ガラスであり、成分はKO 12~18%、CaO 5~12%、SiO 60~75%である。
【0114】
10)熱処理。外面部材のプリント、及びサイドシール部材の塗布が完了した電池チップに対して熱処理し、熱処理後、各外面部材とその附着物は強固な連結を形成し、且つサイドシール部材に少なくとも最外層は緻密化のものである。好ましい熱処理スケジュールは850℃で1時間、雰囲気は還元性保護雰囲気であり、水素含有量は5~60%、その他のバランスガス(balance gas)は窒素である。
【0115】
11) 電極の強化。熱処理された電池チップは実際の応用に用いることができ、電池チップの電気的特性をさらに向上させ、内部抵抗を低下させるために、電極の強化処理を行うことができる。典型的な電極の強化処理方法は例えば含浸である。SDC(samaria doped ceria、酸化サマリウムがドープされた酸化セリウム)の含浸を例にすると、まずSm(NOとCe(NOを、一定のSm:CeO(例えばモル比20:80のSm:CeO)の配合比に応じて水溶液(または約pH=5の希硝酸)中に溶解させ、それから該溶液を内部電極と外部電極上に塗布し、昇温熱処理を行う(例えば500℃または300℃で20分間熱処理行う)。Sm(NO、Ce(NOは分解して、特定の比率のSm:CeOを有するドープにより安定化された化合物SDCを形成する。このプロセスは3~5回繰り返すことができ、これによりSDCの含浸量を増加させる。SDCは知られている、優れた触媒活性とイオン/電子混合伝導性を有する酸化物である。含浸処理した後、SDCは非常に微小のナノメートルスケール、例えば100ナノメートル未満で、電極内部に分散することができ、電極プロセスの反応領域、即ちTPB(Triple Phase Boundary、三相境界、即ち気体―固体電気化学サイト)を非常に大きくに拡大させることにより、電極プロセス(electrode process)の抵抗を顕著に低下させ、電池チップの内部抵抗が減少する。これは業界では既知の技術である。
【0116】
【実施例2】
【0117】
図5及び図6を参照して、本実施例2の構造は実施例1と基本的に同じで、相違点は以下である:中間層5は、電解質1の外壁面全体に被覆することも、部分的に電解質1上に被覆することもできる。内部電極2と接続する内部電極の極板6、及び外部電極3と接続する外部電極の極板7はそれぞれ電池チップの両端に配置され、内部バスバー8は電池チップの端面上に位置する。
【0118】
【実施例3】
【0119】
図7を参照すると、本実施例3の構造は、実施例2と基本的に同じで、相違点は以下である:実施例3の電池チップの両端はテーパー形状の設計を採用して、テーパ形状の斜辺と、高温領域の直線辺との夾角αは、5°~60°の範囲内にある、好ましくは10°~30°の範囲内にある。本電池チップが作動する際、内部電極2の気体出入口の温度は、外部電極中心の温度と少なくとも200℃以上の差があるが、上記設計により、上記作動条件をよりよく満たすことができる。本実施例3の外部集電体12は、外部電極3の外面上に位置し、外部電極の極板7上に、外部接続用の接続片15が溶接されている。好ましくは、接続片15は銅、ニッケル、金、銀の材料から製造される。
【0120】
【実施例4】
【0121】
図8を参照すると、本実施例4の構造は実施例3と基本的に同じであり、相違点は、実施例4の内部バスバー8は電池チップの表面に設けられ、その高温領域は電解質1の表面の開口部を貫通して内部電極2と接続し、電解質1の開口部の表面にはさらに封止構造10の層が被覆され、封止構造10は電解質1に浸入し、且つ電解質1の開口部を完全に被覆し、内部バスバー8と内部電極2の合流接続箇所を完全に被覆し、これにより内部電極を流れる気体は、この開口部から電池チップの外部に漏れないように確保する。
【0122】
本明細書に記載されている具体的な実施例は、本発明の趣旨に対して例を挙げて説明するものに過ぎない。本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の趣旨から逸脱せず、または添付の請求の範囲が定義する範囲を超えなければ、記載された具体的な実施例に対して様々な修正や補足を行い、または類似の方法を用いて置き換えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップであって、
二層の電解質層を含み、二層の前記電解質層はその間に挟まれた内部電極によって隔てられ、
前記内部電極の内部に規則的に配列された複数本の気体流路が設けられ、且つ内部電極の少なくとも二つの側面はサイドシール部材に被覆され、
前記電解質の外面に外面部材が設けられ、前記外面部材は中間層と、外部電極と、内部電極の極板と、外部電極の極板とを含み、
前記内部電極は前記内部電極の極板に接続され、前記外部電極は前記外部電極の極板に接続され
前記サイドシール部材は複数のサブ層を含み、そのうち少なくとも一層のサブ層は緻密で非通気性のものであり、且つ前記緻密で非通気性のサブ層と、前記電池チップの側面との間には、少なくとも一層の粗さが大きく通気性のサブ層が設けられていることを特徴とする、前記二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項2】
前記内部電極の内部に規則的に配列された複数本の気体流路における、単一の気体流路の横断面の等価直径寸法は20~200μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項3】
前記外面部材は、外部電極の外面に被覆した複数本の外部集電体をさらに含み、且つ前記外部集電体の導電率は、外部電極の導電率より低くないことを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項4】
前記外面部材は、さらに保護層を含み、
前記保護層は、少なくとも外面部材中の一つを被覆することを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項5】
前記内部電極と内部電極の極板との間は、内部バスバーによって接続され、
前記内部バスバーの導電率は、前記内部電極の導電率より低くないことを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項6】
前記内部バスバーは、サイドシール部材と前記電池チップの側面との間に位置することを特徴とする、請求項に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項7】
前記内部バスバーは、少なくとも部分的に、前記外部電極が位置する電解質の一方の表面に設けられ、且つ前記電解質の開口部を介して、内部電極に接続され、
前記電解質の開口部の表面は、一層の封止構造によって被覆され、前記内部バスバーと前記内部電極の、前記電解質の開口部における合流接続箇所を完全に被覆して封止することを特徴とする、請求項に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項8】
前記電池チップは長尺シート状を呈し、
前記電池チップの外形は、電池チップの中央部にある外部電極領域から気体流路出入口のある端面に向かって次第に狭くなり、テーパ形状の斜辺と、電池チップの中央部の外部電極領域の直線辺との夾角は、5°~60°の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップ。
【請求項9】
ステップ(1)基材シートの製造:内部電極と電解質を構成する成分中に、比率に応じて適切な助剤及び溶媒を添加した後、流延操作により薄膜基材シートを製造するステップと、
ステップ(2)基材シートの積層:電解質基材シート、気体流路を含む内部電極基材シート、気体流路を含まない内部電極基材シートを、一定の順番で揃えて重ね合わせた後、真空バッグ中に入れて真空引き及び封口を行い、さらに真空バッグ中に置かれた基材シート集合体を、高温圧着により融合させた後、積層体を形成するステップと、
ステップ(3)裁断:積層体を打抜装置中に置き、指定された設計形状を有する電池チップブランクに裁断するステップと、
ステップ(4)焼結:電池チップブランクを高温炉中に置き、適切な熱処理スケジュールにより焼結させ、焼結後の電池チップブランクは寸法が収縮し、比較的高い強度を有する電池チップになるとともに、熱処理スケジュールにおいて気体流路前駆体が気化して逸出することにより、電池チップの内部電極中に規則的で均一な埋込気体流路が残されるステップと、
ステップ(5)中間層の焼成:焼成後の電池チップの両面の電解質上に高温熱処理により中間層を製造するステップと、
ステップ(6)還元:中間層が焼成された電池チップを還元炉中に入れて還元させ、内部電極中における酸化ニッケルを金属ニッケルに還元するステップと、
ステップ(7)外面部材の製造:還元後の電池チップの外面に外面部材をプリントするステップと、
ステップ(8)サイドシール部材の製造:上記工程を完了した電池チップに対してサイドシール部材を製造し、まず粗さが大きく通気性のサイドシール内層を製造し、サイドシール内層が乾燥してから、さらにその上に緻密で非通気性のサイドシール外層を製造するステップと、
ステップ(9)熱処理:外面部材のプリント、及びサイドシール部材の製造が完成した電池チップに対して熱処理し、熱処理後、各外面部材とその附着物は強固な接続を形成し、且つサイドシール部材に少なくとも一層の緻密化構造があるステップと、
ステップ(10)電極の強化ステップと、を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の二重電解質構造を有する固体酸化物電池チップの製造方法。
【国際調査報告】