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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】改良された小分子
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20231124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231124BHJP
   C07K 5/062 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
C07D519/00
A61K31/551
A61K47/55
A61P35/00
C07K5/062
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552391
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 GB2021052698
(87)【国際公開番号】W WO2022101603
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】2017717.6
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518451183
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ダンディー
(71)【出願人】
【識別番号】593089149
【氏名又は名称】プロメガ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ チュッリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア テスタ
(72)【発明者】
【氏名】キアーラ マニアチ
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ マクキン
(72)【発明者】
【氏名】今出 慧海
(72)【発明者】
【氏名】ダネット ダニエルズ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン リッチング
【テーマコード(参考)】
4C072
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C072MM10
4C072UU01
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB30
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA50
4H045EA28
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、特に、タンパク質のブロモ反復配列および末端特異的配列(BET)ファミリー内のタンパク質に結合する、本明細書に記載の式Iの三官能性PROTACに関し、特に、優先的結合を誘導する小分子E3ユビキチンリガーゼタンパク質結合リガンド化合物を含む、BETファミリータンパク質のブロモドメイン内のBRD2タンパク質の分解を誘導するPROTACに関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
(式中、BおよびDは、それぞれ、ユビキチンリガーゼにより分解させようとしている標的タンパク質またはポリペプチドに結合するリガンドであり;
AはE3ユビキチンリガーゼタンパク質結合性リガンドであり;
m、nおよびoは、それぞれ独立に、0、1、2、3、4、5および6から選択される)
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形。
【請求項2】
mおよびnが、それぞれ独立に、2、3、4、5および6から選択され、任意選択的にmおよびnが両方とも同じであって2、3、4、5および6から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mおよびnが、それぞれ独立に、2、3および4から選択され、任意選択的にmおよびnが両方とも同じであって2、3および4から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
mおよびnが3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
oが0および1から選択され、任意選択的にoが0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
以下:
BおよびDが、それぞれ、タンパク質のブロモ反復配列および特異的末端配列(BET)ファミリー内のタンパク質に結合する化学部分である;
BおよびDが、それぞれ、ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列(BET)ファミリー内のタンパク質のBRD2、BRD3および/またはBRD4 タンパク質の分解を誘導する化学部分であることができる;
BおよびDが、それぞれ独立に、以下:
【化2】
から選択される
のうちの少なくとも1つである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
BおよびDの少なくとも1つが
【化3】
である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
BおよびDの両方が
【化4】
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Aがフォン・ヒッペル-リンドゥ(VHL)-E3ユビキチンリガーゼ結合リガンドまたはセレブロン(CRBN)-E3ユビキチンリガーゼリガンドから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
以下:
【化5】
からなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Aが以下:
【化6】
から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Aが
【化7】
である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
式Iの化合物が、式IA:
【化8】
(式中、pは2、3、4、5および6から選択され;そして
qは0、1、2から選択される)
を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形。
【請求項14】
pが2、3および4から選択され、任意選択的にpが3である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
qが0および1から選択され、任意選択的にqが0である、請求項13または14に記載の化合物。
【請求項16】
式Iの化合物が式IB:
【化9】
(式中、rは2、3、4、5および6から選択され;そして
sは0、1、2から選択される)
を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形。
【請求項17】
以下:
rが、2、3および4から選択され、任意選択的にrが3である;
sが0および1から選択され、任意選択的にsが0である
のうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
式Iの化合物が、式IC:
【化10】
(式中、tは2、3、4、5および6から選択され;そして
uは0、1および2から選択される)
を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形。
【請求項19】
以下:
tが2、3および4から選択され、任意選択的にtが3である;
uが0および1から選択され、任意選択的にuが0である
のうちの少なくとも1つである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
式Iの化合物が式ID:
【化11】
(式中、vは2、3、4、5および6から選択され;そして
wは0、1および2から選択される)
を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形。
【請求項21】
以下:
vが2、3および4から選択され、任意選択的にvが3である;
wが0および1から選択され、任意選択的にwが0である
のうちの少なくとも1つである、請求項20に記載の化合物。。
【請求項22】
前記化合物が以下:
(i)N,N′-(11-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル))カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(ii)N,N′-(11-((2-(2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(iii)N,N′-(14-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル))カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19、22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(iv)N,N′-(11-((2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(v)N,N′-(11-((2-(2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(vi)N,N′-(14-((2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(vii)N,N′-(11-((2-(((S)-1-((2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル))カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(viii)(2S,4R)-1-((20S)-20-(tert-ブチル)-1-((R)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-14-(13-((S)-4-(4-クロロフェニル))-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-12-オキソ-2,5,8-トリオキサ-11-アザトリデシル)-14-メチル-2,18-ジオキソ-6,9,12,16-テトラオキサ-3,19-ジアザヘニコサン-21-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド;
(ix)N,N′-(8-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル))カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-8-メチル-3,6,10,13-テトラオキサペンタデカン-1,15-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)
から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形。
【請求項23】
前記いずれかの請求項に記載された化合物と、その薬学的に許容されるビヒクルまたは希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項24】
薬剤として使用するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
良性の増殖性疾患、感染性または非感染性の炎症事象、自己免疫疾患;炎症性疾患;全身性炎症反応症候群;ウイルス感染症およびウイルス性疾患;眼科的疾患からなる群より独立に選択される、疾患または症状の予防または治療のための、請求項1~22のいずれか一項に記載の化合物、または請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規な小分子であるE3ユビキチンリガーゼタンパク質結合リガンド化合物、およびタンパク質分解標的キメラ(PROTAC)におけるそれらの利用、並びにそれらの製造方法、および医学における使用に関する。本発明は、特に、BETタンパク質(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列;Bromo-and Etra-terminal)ファミリー内のタンパク質に結合するPROTACに関し、特にBETファミリータンパク質のブロモドメイン内のBRD2タンパク質の優先的な分解を誘導する、小分子E3ユビキチンリガーゼタンパク質結合性リガンド化合物を含むPROTACに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
従来、標的分解性化合物は、結合が二価であるか一価であるかに応じてPROTACまたは分子接着剤(glue)のいずれかに分類されており、該化合物は、生物学および疾患治療のための療法を研究するうえでの新規クラスの化学的プローブとして大きな期待を集めている(参考文献(以下ref.とする)1-3)。
【0003】
分解剤(degrader)は三元複合体を形成し、標的タンパク質とE3ユビキチンリガーゼ成分を結び付け、ユビキチン化とその後のプロテアソームを介した標的タンパク質の分解を引き起こす。
【0004】
分子接着剤は、典型的には、E3リガーゼまたは標的のいずれかに一価で係合(engagement)し、三元複合体において非同族の結合パートナーの高度に協同的な動員(リクルート)を付随的に誘導する(ref.4-8)。
【0005】
対照的に、PROTACは、伝統的に二官能性、すなわちリンカーによって連結された2つのリガンドから構成されており、その結果、標的またはE3成分を二元複合体として別々に係合するか、または標的とE3成分の両者を同時に係合して三元複合体を形成することができる(ref.9-11)。この設計機能により、PROTACは分子接着剤よりも広範な標的範囲を可能にするだけでなく、確立されたE3リガーゼバインダーを利用して、該設計を標準化することもできる。実際、強力なPROTAC分解剤は、核(ref.12,13,14,15,16)、細胞質(ref.11,17,18)、膜結合(ref.19)、および多回通過膜貫通タンパク質(ref.20)に対してフォン・ヒッペル・リンドウ(von Hipper-Lindau;VHL)またはセレブロン(cereblon;CRBN)E3リガーゼのいずれかを最も多く動員するように開発されている。
【0006】
PROTACは、三元複合体を介した複雑な作用機序により、それを構成している阻害剤と比較して予想外の利点を示す。例えば、PROTACは、相同性の高い標的どうしを識別することができ(ref.21-24)、低い二成分結合親和性または低い細胞透過性を補完することができ、脆弱で機能的でない阻害剤であっても弾頭リガンドとして作用させることが可能である、触媒機構によって予想を上回る、かなり大きい能力を発揮することができる(ref.15,22,25,26)。
【0007】
さらに、PROTACは、バイスタンダーのユビキチン化または不安定化のいずれかを介して、分解剤に直接係合していなくても、複合体中のタンパク質に作用することができる(ref.15,27,28)。前述の利点と顕著な成功が実証されているにもかかわらず、PROTACを効率的に設計することは困難であり、しばしば広範な化学的最適化を必要とする(ref.29,30)。
【0008】
阻害剤とは異なり、分解剤は、単純なバイナリー結合(ホモ二量体結合)の域を超えて機能しなければならない。むしろ、分解剤は一連の事象のカスケードを経由して機能し、本来は相互作用しない2つのタンパク質間の近接化を誘導することのみならず、E3リガーゼによる効率的なユビキチン化のために標的タンパク質を構造的に適切に配置させる、プロダクティブな(生産的な)三元複合体を創出することも必要でありうる(ref.31,32,33)。
【0009】
PROTAC三元複合体の最近のX線結晶構造学および関連する生物物理学的研究は、一部のPROTAC媒介三元複合体が、分子接着剤のように、協同的に結合できることを見事に実証しており、特にVHL-MZ1-BRD4BD2三元複合体について顕著に示されている(ref.21)。この研究とその後の研究は、生産的な標的ユビキチン化と、触媒的な低濃度での顕著な標的分解を促進するために、分解剤が、有利な複合体内相互作用によって強化された、十分な安定性、協同性、および滞留時間を備えた複合体を形成する必要があることを示しておる(ref.15,21,22,31,32)。
【0010】
分子認識機能のこのような最適な「接着(gluing)」は、着目の標的において定義上一価である従来のPROTAC分解剤では実現することが困難であるだろう。これは、三元複合体内の好ましいタンパク質間相互作用やその他の安定化相互作用を活用する能力を制限してしまう。
【0011】
実際、非協同的なPROTAC三元複合体、または負に協同的な同複合体もしばしば認められるが、これは下流のタンパク質ユビキチン化および分解に対して忍容性であるにもかかわらず、高濃度での顕著なフック効果などの好ましくない分解剤の薬理学的特性を引き起こし、多くの場合、緩慢で不完全な標的分解をもたらし得る(ref.17,34)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、これらの問題の少なくとも一部を軽減または対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明者らは、BETドメイン(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列)ファミリーメンバータンパク質であるBRD2、BRD3およびBRD4の標的タンパク質分解を促進するために、三価(三官能価)のPROTACを利用する、新しい戦略を開発した。本発明者らは、二価の標的リガンドの効果とE3リガーゼ動員とを相乗させることにより、結合性、協同性および標的分解性が強化された三価PROTACを創製する戦略を開発した。
【0014】
第一態様において、式Iの化合物:
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、BおよびDはそれぞれ、ユビキチンリガーゼにより分解させようとしている標的タンパク質またはポリペプチドに結合するリガンドであり;
AはE3ユビキチンリガーゼタンパク質結合性リガンドであり;
m、nおよびoはそれぞれ独立に、0、1、2、3、4、5および6から選択される)
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形が提供される。
【0017】
式Iの化合物において、mおよびnは、それぞれ独立に、2、3、4、5および6から選択され得る。好ましい式Iの化合物では、mおよびnはそれぞれ独立に2、3および4から選択され得る。
【0018】
式Iの化合物において、mおよびnは両方とも同じであり、2、3、4、5および6から選択され得る。好ましい式Iの化合物では、mおよびnは両方とも同じであり、2、3、および4から選択され得る。さらに好ましい式Iの化合物では、mおよびnが両方とも3であってよい。
【0019】
式Iの化合物において、oは0および1から選択され得る。式Iの好ましい化合物において、oは0であってもよい。
【0020】
式Iの化合物において、BおよびDはそれぞれ、タンパク質のBET(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列)ファミリー内のタンパク質に結合する化学部分であり得る。式Iの化合物において、BおよびDはそれぞれ、BETファミリー内のBRD2、BRD3、および/またはBRD4タンパク質の分解を誘導する化学部分であり得る。
【0021】
式Iの化合物において、BおよびDは各々独立に、以下から選択され得る:
【0022】
【化2】
【0023】
好ましい実施形態では、BおよびDの少なくとも1つが
【化3】
である。
【0024】
好ましい実施形態では、
【化4】
のキラル中心(不斉中心)はS配置を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、BまたはDの一方が、
【化5】
であり、BまたはDの他方が、
【化6】
である。
【0026】
すなわち、いくつかの実施形態では、BまたはDの一方が、キラル中心にS配置を有する
【化7】
であり、そしてBまたはDの他方が、キラル中心にR配置を有する
【化8】
である。
【0027】
最も好ましい実施形態では、BおよびDは両方とも、
【化9】
である。すなわち、BおよびDはいずれもキラル中心にS配置を有する、
【0028】
【化10】
である。
【0029】
式Iの化合物において、Aは、フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau;VHL)-E3ユビキチンリガーゼ結合性リガンドまたはセレブロン(cereblon;CRBN)-E3ユビキチンリガーゼ結合性リガンドから選択することができる。
【0030】
式Iの化合物の好ましい実施形態では、Aは以下から選択され得る:
【0031】
【化11】
【0032】
式Iの化合物のさらに好ましい実施形態では、Aは以下から選択され得る:
【0033】
【化12】
【0034】
さらに好ましい実施形態では、Aは
【化13】
であり得る。
【0035】
式Iの化合物は、式IA:
【化14】
【0036】
(式中、pは2、3、4、5および6から選択され;
qは0、1および2から選択される)を有するか、
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、水和物もしくは多形であることができる。
【0037】
式IAの好ましい化合物において、pは2、3および4から選択され得る。さらに好ましい式IAの化合物において、pは3であり得る。
【0038】
式IAの好ましい化合物において、qは0および1から選択され得る。さらに好ましい式IAの化合物において、qは0であり得る。
【0039】
式Iの化合物は、式IB:
【化15】
【0040】
(式中、rは2、3、4、5および6から選択され;
sは0、1および2から選択される)を有するか、
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形であり得る。
【0041】
式IBの好ましい化合物において、rは2、3および4から選択され得る。さらに好ましい式IBの化合物において、rは3であり得る。
【0042】
式IBの好ましい化合物において、sは0および1から選択され得る。さらに好ましい式IBの化合物において、sは0であり得る。
【0043】
式Iの化合物は、式IC:
【化16】
【0044】
(式中、tは2、3、4、5および6から選択され;
uは 0、1および2から選択される)
を有するか、またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形であり得る。
【0045】
式ICの好ましい化合物において、tは2、3および4から選択され得る。さらに好ましい式ICの化合物において、tは3であり得る。
【0046】
式ICの好ましい化合物において、uは0および1から選択され得る。さらに好ましい式ICの化合物において、uは0であり得る。
【0047】
式Iの化合物は、式ID:
【化17】
【0048】
(式中、vは2、3、4、5、および6から選択され;
wは0、1および2から選択される)
を有するか、またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形であり得る。
【0049】
好ましい式IDの化合物において、vは2、3および4から選択され得る。さらに好ましい式IDの化合物において、vは3であり得る。
【0050】
好ましい式IDの化合物において、wは0および1から選択され得る。さらに好ましい式IDの化合物において、wは0であり得る。
【0051】
式I、IA、IB、IC、およびIDの化合物は、以下:
(i)N,N′-(11-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(ii)N,N′-(11-((2-(2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(iii)N,N′-(14-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(iv)N,N′-(11-((2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(v)N,N′-(11-((2-(2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(vi)N,N′-(14-((2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(vii)N,N′-(11-((2-(((S)-1-((2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル))カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
(viii)(2S,4R)-1-((20S)-20-(tert-ブチル)-1-((R)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-14-(13-((S)-4-(4-クロロフェニル))-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-12-オキソ-2,5,8-トリオキサ-11-アザトリデシル)-14-メチル-2,18-ジオキソ-6,9,12,16-テトラオキサ-3,19-ジアザヘニコサン-21-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド;
(ix)N,N′-(8-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-8-メチル-3,6,10,13-テトラオキサペンタデカン-1,15-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド);
またはその薬学的に許容される塩、エナンチオマー、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは多形から選択され得る。
【0052】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適した、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、本発明の方法によって形成される化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、66:1-19(1977)において、薬学的に許容される塩を具体的に記載している。それらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製中にその場で調製することができ、または遊離塩基官能基を適切な有機酸と反応させることによって個別に調製することができる。本明細書での使用に適した薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、非毒性の酸付加塩が挙げられ、酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と共に、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と共に形成される、またはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することにより形成される、アミノ基の塩である。
【0053】
他の薬学的に許容される塩には、限定されるものではないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム塩などが挙げられる。さらに薬学的に許容される塩としては、適切な場合、非毒性のアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、並びにハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、炭素原子数1~6のアルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを使用して形成される、アミンカチオン塩が挙げられる。
【0054】
本発明のPROTAC化合物は、本発明の化合物をin vivo(生体内)で遊離する、薬学的に許容されるプロドラッグとして投与することができる。本明細書で使用するときの「プロドラッグ」とは、代謝手段により(例えば、加水分解により)in vivoで変換され、本発明の式によって表される任意の化合物を与える化合物を意味する。例えば“Design and Application of Prodrugs, Textbook of Drug Design and Development”、第5章、113~191(1991);Bundgaard他、Journal of Drug Deliver Reviews、8:1-38(1992);およびBernard Testa & Joachim Mayer、“Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism-Chemistry,Biochemistry and Enzymology”、John Wiley and Sons,Ltd.(2003)で論じられているように、プロドラッグの様々な形態が当技術分野で知られている。
【0055】
本発明によって想定される置換基および変数の組み合わせは、安定な化合物の形成をもたらすもののみである。本明細書で使用する「安定な」という用語は、製造を可能にするのに十分な安定性を有し、且つ本明細書で詳述する目的(例えば、対象への治療的または予防的投与)に有用であるのに十分な期間にわたって化合物の完全性を維持する化合物のことを指す。
【0056】
関連用語は、上記の定義および技術分野での一般的な使用法に従って適宜解釈されるものとする。
【0057】
本明細書で定義される式IのPROTAC化合物に使用される式Iの化合物は、特定された立体異性体として表される場合がある。このような化合物の絶対配置は、例えばX線回折またはNMRなどの当業界で既知の方法および/または既知の立体化学の出発物質からの示唆を使用して決定することができる。
【0058】
本発明にかかる医薬組成物は、好ましくは、指定された立体異性体の実質上立体異性的に純粋な調製物を含むであろう。
【0059】
本明細書に記載の化合物および中間体の純粋な立体異性体は、前記化合物または中間体の同一基本分子構造の他のエナンチオマーまたはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に、「立体異性的に純粋な」という用語は、立体異性体過剰が少なくとも80%(すなわち、1異性体が最低90%で、他の可能な異性体が最大10%)から立体異性体過剰が最大100%(すなわち、1異性体が100%で、他の異性体は存在しない)までである化合物または中間体に関し、より具体的には、立体異性体過剰が90%~100%、さらにより特定的には、立体異性体過剰が94%~100%、最も特定的には立体異性体過剰が97%~100%である化合物または中間体に関する。「エナンチオマー的に純粋な」および「ジアステレオマー的に純粋な」という用語も同様に解釈されるべきであるが、問題の混合物のそれぞれのエナンチオマー過剰およびジアステレオマー過剰を考慮する必要がある。
【0060】
本明細書に詳述する化合物および中間体の純粋な立体異性体は、当該技術分野で知られている手順を適用することによって得ることができる。例えば、エナンチオマーは、光学活性酸または塩基を用いたジアステレオマー塩の選択的結晶化(分別結晶)によって互いに分割することができる。その例としては、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、カンファースルホン酸などが挙げられる。あるいは、エナンチオマーは、キラル固定相を使用するクロマトグラフィー技術によって分離することもできる。前記立体化学的に純粋な異性体は、反応が立体特異的に起こる場合には、適切な出発物質の対応する純粋な立体化学的な異性体から誘導することもできる。好ましくは、特定の立体異性体が望ましい場合、前記化合物は立体特異的な製造方法によって合成される。これらの方法は、有利にはエナンチオマー的に純粋な出発物質を使用するであろう。
【0061】
本明細書で定義される式IのPROTAC化合物に使用するための式Iの化合物のジアステレオマーラセミ体は、従来の方法により個別に得ることができる。有利に使用できる適切な物理的分離方法は、例えば、選択的結晶化(分別結晶)およびクロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィーである。
【0062】
本発明は、Bがタンパク質のBET(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列)ファミリー内のタンパク質に結合する化学成分である、式IのPROTAC化合物、好ましくは、BがBRD2、BRD3およびBRD4から独立に選択されたBETファミリータンパク質内のタンパク質に結合する化学成分である式IのPROTAC化合物、特にBがBETファミリータンパク質内のBRD2タンパク質の分解を選択的に誘導する化学成分である、式IのPROTAC化合物を提供する。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、薬剤として使用するための、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物を提供する。
【0064】
本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳動物を指す。したがって、対象とは、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモットなどを指す。好ましくは、対象はヒトである。対象がヒトである場合、対象は本明細書では患者(被験体)とも称され得る。
【0065】
「治療(処置)する」、「治療(処置)すること」および「治療(処置)」とは、疾患および/またはそれに付随する症状を緩和または軽減する方法を指す。
【0066】
「治療上有効な量」という用語は、疾病、疾患または病気の状態を治療、治癒または改善するのに有効な量を意味する。
【0067】
本発明のさらなる態様は、BET(Bromo-and Extra-terminal)ファミリー内のタンパク質BRD2、BRD3、およびBRD4のうちの1つまたは複数のタンパク質のタンパク質活性の調節解除(deregulation)に関連する疾患または症状の予防または治療方法であって、前記疾患または状態に罹患している、またはそれにさらされる可能性がある対象への式IのPROTAC化合物の投与を含む治療方法を提供する。本発明の関連する態様は、BETタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または症状の治療または予防における式IのPROTAC化合物の使用を提供する。さらに関連する態様は、BETタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または症状の治療または予防のための、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物の使用を提供する。
【0068】
本発明のさらなる態様は、タンパク質BRD2、BRD3、およびBRD4のBET(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列)ファミリー内の1つ以上のタンパク質のタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または症状の予防または治療方法を提供する。前記疾患または状態に罹患しているか、またはそれにさらされる可能性が高い対象に、治療有効量の式IのPROTAC化合物を投与することを含む。本発明の関連する態様は、BETタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または症状の治療または予防における、治療有効量の式IのPROTAC化合物の使用を提供する。さらに関連する態様は、BETタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または状態の治療または予防のための、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物の治療有効量の使用を提供する。
【0069】
本発明のさらなる態様は、前記疾患または状態に罹患している、またはそれにさらされる可能性がある対象に、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物を投与することを含む、BETファミリータンパク質のブロモドメイン内のBRD2タンパク質の選択的分解に関連する疾患または状態の予防または治療方法を提供する。本発明の関連する態様は、BETファミリータンパク質のブロモドメイン内でのBRD2タンパク質の選択的分解に関連する疾患または症状の治療または予防における、式IのPROTAC化合物の使用を提供する。さらに関連する態様は、BETファミリータンパク質のブロモドメイン内のBRD2タンパク質の選択的分解に関連する疾患または症状の治療または予防のための、式IのPROTAC化合物の使用を提供する。
【0070】
本明細書に定義される式IのPROTAC化合物の投与を介して治療することができる、タンパク質BRD2、BRD3、およびBRD4のBET(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列)ファミリー内の1つ以上のタンパク質のタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または状態には、次のものが含まれる:癌、良性の増殖性疾患、感染性または非感染性の炎症状態;自己免疫疾患;炎症性疾患;全身性炎症反応症候群;ウイルス感染症およびウイルス性疾患;および眼科疾患。
【0071】
本発明はまた、医学における使用、特にBET(ブロモドメインの反復配列および特異的末端配列)ファミリー内のタンパク質に結合する状態または疾患における使用のための、本明細書に詳述される任意の態様または好ましい態様による、式IのPROTAC化合物を提供する。本発明は、BRD2、BRD3、およびBRD4から独立して選択されるタンパク質の使用に関連しており、特に以下から独立して選択される1つ以上の状態または疾患の治療における使用に関連している:良性の増殖性疾患;感染性または非感染性の炎症事象;自己免疫疾患;炎症性疾患;全身性炎症反応症候群;ウイルス感染症およびウイルス性疾患;並びに眼科疾患。
【0072】
また、本明細書では、哺乳動物、特にそのような治療を必要とするヒトに対して、癌(がん)の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様による式IのPROTAC化合物、および本明細書のいずれかの態様による式IのPROTAC化合物の有効量の投与による癌の治療方法も提供される。本明細書で定義される式IのPROTAC化合物の投与を介して治療することができる癌の種類には、上皮細胞傷害に関連する癌腫型の癌、例えば、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌および結腸癌;間葉系細胞障害に関連する肉腫型の癌;リンパ腫;白血病、例えば急性骨髄性白血病など;精巣癌や卵巣癌などの多能性細胞に関連する癌および/または癌性腫瘍が含まれる。
【0073】
本発明の化合物を治療に使用することができる癌の例としては、副腎癌、腺房細胞癌、聴神経腫、末端性黒子性黒色腫、先端汗腺腫、急性好酸球性白血病、急性赤血球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺腫様歯原性腫瘍、腺扁平上皮癌、脂肪組織腫瘍、副腎皮質癌、成人T細胞白血病/リンパ腫、進行性NK細胞白血病、AIDS関連リンパ腫、肺胞横紋筋肉腫、肺胞軟部肉腫、エナメル上皮線維腫、未分化大細胞型リンパ腫、未分化甲状腺癌、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管筋脂肪腫、血管肉腫、星状細胞腫、非定型奇形性ラブドイド腫瘍、B細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、芽腫、骨肉腫、ブレンナー腫瘍、褐色腫瘍、バーキットリンパ腫、乳癌、脳腫瘍、癌腫、上皮内癌、癌肉腫、軟骨腫瘍、セメント腫、骨髄性肉腫、軟骨腫、脊索腫、絨毛癌、脈絡叢乳頭腫、腎臓明細胞肉腫、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、子宮頸癌、結腸直腸癌、デゴス病、線維形成性小円形細胞腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胚形成不全神経上皮腫瘍、胚芽細胞腫、胎児性癌、内分泌腺腫瘍、内皮洞腫瘍、腸疾患関連T細胞リンパ腫、食道癌、胎児線維腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性甲状腺癌、神経節神経腫、消化管癌、生殖細胞腫瘍、妊娠絨毛癌、巨細胞線維芽腫、骨巨細胞腫、グリア腫瘍、多形神経膠芽腫、神経膠腫、脳神経膠腫症、グルカゴノーマ、性腺芽腫、顆粒膜細胞腫瘍、婦人科芽腫、胆嚢癌、胃癌、有毛細胞白血病、血管芽腫、頭頸部がん、血管周皮腫、血液悪性腫瘍、肝芽腫、肝脾T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、浸潤性小葉癌、腸癌、腎臓癌、喉頭癌、悪性黒子、致死性正中癌、白血病、ライディッヒ細胞腫瘍、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、MALTリンパ腫、悪性線維性組織球腫、末梢悪性末梢神経鞘腫瘍、悪性トリトン腫瘍、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、マスト細胞白血病、縦隔胚細胞腫瘍、乳房髄様癌、甲状腺髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性尿路上皮癌、混合ミュラー管腫瘍、粘液性腫瘍、多発性骨髄腫、筋組織新生物、菌状息肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液腫、粘液肉腫、上咽頭癌、神経鞘腫、神経芽腫、神経線維腫、神経腫、結節性黒色腫、眼癌、乏突起星状細胞腫、乏突起膠腫、腫瘍細胞腫、視神経鞘髄膜腫、視神経腫瘍、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、パンコースト腫瘍、甲状腺乳頭癌、傍神経節腫、松果体芽腫、松果細胞腫、下垂体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、多胚腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、膵臓癌、咽頭癌、腹膜偽粘液腫、腎細胞癌、腎髄質癌、網膜芽細胞腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、リヒター形質転換、直腸癌、肉腫、神経鞘腫症、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、性索生殖腺間質腫瘍、印環細胞癌、皮膚癌、小型青色円形細胞腫瘍、小細胞癌、軟部組織肉腫、ソマトスタチノーマ、すすいぼ、脊髄腫瘍、脾臓辺縁帯リンパ腫、扁平上皮癌、滑膜肉腫、セザリー病、小腸癌、扁平上皮癌、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、鞘腫、甲状腺癌、移行上皮癌、咽頭癌、尿膜管癌、泌尿生殖器癌、尿路上皮癌、ブドウ膜黒色腫、子宮癌、疣状癌、視覚経路神経膠腫、外陰癌、膣癌、ワルデンシュトローム・マクログロブリン血症、ワルシン腫瘍、ウィルムス腫瘍、血液癌(白血病など)、肺癌、乳癌、結腸癌を含む上皮癌、正中線癌、間葉癌、肝臓癌、腎臓および神経腫瘍が挙げられる。
【0074】
したがって、本発明の化合物を治療に使用することができる良性増殖性障害の例としては、良性軟部組織腫瘍、骨腫瘍、脳および脊椎腫瘍、眼瞼および眼窩腫瘍、肉芽腫、脂肪腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、鼻ポリープ、下垂体腫瘍、プロラクチノーマ、脳偽性腫瘍、脂漏性角化症、胃ポリープ、甲状腺結節、膵臓の嚢胞性新生物、血管腫、声帯結節、ポリープおよび嚢胞、キャッスルマン病、慢性毛嚢炎、皮膚線維腫、柱状嚢胞、化膿性肉芽腫、および若年性ポリポーシス症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
また、本明細書では、感染性および非感染性の炎症事象、並びに自己免疫および他の炎症性の疾患、障害および症候群の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様による式IのPROTAC化合物、並びに感染性および非感染性の炎症事象並びに自己免疫性および他の炎症性疾患、障害および症候群の治療方法であって、本明細書のいずれかの態様に従って式IのPROTAC化合物の有効量を、哺乳動物に、特にそのような治療が必要なヒトに投与することによる治療方法も提供される。本発明の化合物を治療に使用することができる感染性および非感染性の炎症事象並びに自己免疫性および他の炎症性の疾患、障害および症候群の例には、限定されるものではないが、炎症性骨盤疾患(PID)、痛風、胸膜炎、湿疹、脾炎、喉頭炎、甲状腺炎、前立腺炎、咽頭炎、サルコイドーシス、脂漏性皮膚炎、過敏性腸症候群(IBS)、憩室炎、尿道炎、皮膚の日焼け、副鼻腔炎、肺炎、脳炎、髄膜炎、心筋炎、腎炎、骨髄炎、筋炎、肝炎、胃炎、腸炎、皮膚炎、歯肉炎、虫垂炎、膵炎、胆嚢炎、無ガンマグロブリン血症、乾癬、アレルギー反応、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、シェーグレン病、組織移植片拒絶反応、移植臓器の超急性拒絶反応、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、自己免疫性多腺症(自己免疫性多腺症候群としても知られる)、自己免疫性脱毛症、悪性貧血、糸球体腎炎、皮膚筋炎、多発性硬化症、一部のミオパチー、強皮症、血管炎、自己免疫性溶血性および血小板減少性状態、グッドパスチャー症候群、アテローム性動脈硬化症、アジソン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、I型糖尿病、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、変形性関節症、慢性特発性血小板減少性紫斑病、ワルデンストロームマクログロブリン血症、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、アトピー皮膚炎、変性関節疾患、白斑、自己免疫性下垂体機能低下症、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、強皮症、菌状息肉症、急性炎症反応(急性呼吸窮迫症候群、虚血/再灌流傷害など)、グレーヴス(バセドウ病)が挙げられる。
【0076】
他の実施形態では、本発明は、全身性炎症反応症候群の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様による式IのPROTAC化合物、および、本明細書のいずれかの態様による式Iの化合物を、哺乳動物、特にそのような治療を必要とするヒトに投与することを含む、有効量のPROTACの投与による全身性炎症反応症候群の治療方法を提供する。本発明の化合物を治療に使用することができる全身性炎症反応症候群の例としては、LPS誘発性内毒素ショックおよび/または細菌誘発性敗血症が挙げられる。
【0077】
本明細書で定義される構造式IのPROTAC化合物の投与によって治療することができる自己免疫疾患および自己免疫関連疾患には、次のものが含まれる:急性壊死性出血性白質脳炎;急性壊死性出血性脊髄炎;急性散在性脳脊髄炎(ADEM);アジソン病;無ガンマグロブリン血症;円形脱毛症;アミロイドーシス;強直性脊椎炎;抗GBM/抗TBM腎炎;抗リン脂質症候群(APS);自己免疫性血管浮腫;自己免疫性再生不良性貧血;自己免疫性自律神経失調症;自己免疫性肝炎;自己免疫性高脂血症;自己免疫性免疫不全症;自己免疫性内耳疾患(AIED);自己免疫性心筋炎;自己免疫性卵巣炎;自己免疫性膵炎;自己免疫性網膜症;自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP);自己免疫性甲状腺疾患;自己免疫性蕁麻疹;軸索および神経性神経障害;バロ病;ベーチェット病;膨隆性類天疱瘡;心筋症;キャッスルマン病;セリアック病;シャーガス病;慢性疲労症候群;慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP);慢性再発性多巣性口骨炎(CRMO);チャーグ・シュトラウス症候群;重症類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡;クローン病;コーガン症候群;寒冷凝集素病;先天性心ブロック;コクサッキー心筋炎;CREST病;本態性混合型クリオグロブリン血症;髄鞘形成性神経障害;疱疹状皮膚炎;皮膚筋炎;デビック病(視神経脊髄炎);椎間板性狼瘡;ドレスラー症候群;子宮内膜症;好酸球性食道炎;好酸球性筋膜炎;結節性紅斑;実験的アレルギー性脳脊髄炎;エヴァンス症候群;線維筋痛症;線維形成性肺胞炎;巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎);巨大細胞性心筋炎;糸球体腎炎;グッドパスチャー症候群;多発血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)(かつてはウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた);グレーブス病(バセドウ病);ギラン・バレー症候群;橋本脳炎;橋本甲状腺炎;溶血性貧血;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病;妊娠ヘルペス;低ガンマグロブリン血症;特発性血小板減少性紫斑病(ITP);IgA腎症;IgG4関連の硬化性疾患;免疫調節リポタンパク質;封入体筋炎;間質性膀胱炎;若年性関節炎;若年性糖尿病(I型糖尿病);若年性筋炎;川崎症候群;ランバート・イートン症候群;白血球破壊性血管炎;扁平苔癬;硬化性苔癬;木質結膜炎;線状IgA疾患(LAD);ループス(SLE);ライム病;メニエール病;顕微鏡的多発血管炎;混合結合組織病(MCTD);ムーレン潰瘍;ミュシャ・ハーベルマン病;多発性硬化症;重症筋無力症;筋炎;ナルコレプシー;視神経脊髄炎(デビック病);好中球減少症;眼瘢痕性類天疱瘡;視神経炎;パリンドローム性リウマチ;PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性精神神経疾患);腫瘍随伴性小脳変性症;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);パリー・ロンバーグ症候群;パーソナージ・ターナー症候群;扁平部炎(末梢ブドウ膜炎);天疱瘡;末梢神経障害;周囲静脈性脳脊髄炎;悪性貧血;POEMS症候群;結節性多発性動脈炎;I型、II型およびIII型自己免疫性多腺症候群;リウマチ性多発筋痛症;多発性筋炎;後心筋梗塞症候群;後心膜切開症候群;プロゲステロン皮膚炎;原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;乾癬;乾癬性関節炎;特発性肺線維症;壊疽性膿皮症;赤芽球癆(ろう);レイノー現象;反応性関節炎;反射性交感神経性ジストロフィー;ライター症候群;再発性多発性軟骨炎;レストレスレッグス(むずむず脚)症候群;後腹膜線維症;リューマチ熱;関節リウマチ;サルコイドーシス;シュミット症候群;強膜炎;強皮症;シェーグレン症候群;精子・精巣自己免疫;全身硬直(スティッフパーソン)症候群;亜急性細菌性心内膜炎(SBE);スザック症候群;交感神経性眼炎;高安動脈炎;側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎;血小板減少性紫斑病(TTP);トロサ・ハント症候群;横断性脊髄炎;1型糖尿病;潰瘍性大腸炎;未分化結合組織病(UCTD);ブドウ膜炎;血管炎;小水疱水疱性皮膚病;白斑;ウェゲナー肉芽腫症(現在は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれる)。
【0078】
当業者には容易に理解されるように、本明細書において炎症性および自己免疫性の障害または状態として定義される状態および疾患の間には、ある程度の重複があり、これは、そのような状態の複雑な性質および炎症の発現並びに各個体による提示を考慮すると予想されることである。
【0079】
さらに、ウイルス感染症および疾患の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物、および、本明細書のいずれかの態様に係る、哺乳動物、特にそのような治療が必要なヒトに対する式IのPROTAC化合物の有効量の投与による、ウイルス感染症および疾患の治療方法が本明細書で提供される。本発明の化合物を治療に使用することができるウイルス感染症および疾患の例としては、以下が挙げられる:ヒトパピローマウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、およびC型肝炎ウイルスなど。
【0080】
本明細書では、ウイルス感染症の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物、および有効量の本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物の投与によるウイルス感染症の治療方法も提供される。本明細書における側面は、哺乳動物、特にそのような治療を必要とするヒトに対するものである。本発明の化合物を治療に使用することができるウイルス感染症の例には、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルスおよび他のDNAウイルスが含まれる。
【0081】
また、本明細書では、眼科的適応症の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物、および、哺乳動物、特にそのような治療が必要なヒトに対する、本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物の有効量の投与による、眼科的適応症の治療方法も提供される。本発明の化合物を治療に使用できる眼科適応症の例には、ドライアイが含まれる。
【0082】
本発明のさらなる態様は、BETタンパク質活性の調節解除(deregulation)に関連する疾患または状態の予防または治療方法であって、本明細書で定義される構造IのPROTAC化合物を、前記疾患もしくは状態に罹患しているか、またはそれにさらされやすい対象に投与することを含む方法を提供する。前記疾患または状態は、以下から独立に選択される:癌;良性の増殖性疾患;感染性または非感染性の炎症事象;自己免疫疾患;炎症性疾患;全身性炎症反応症候群;ウイルス感染症とウイルス性疾患;および眼科的状態。本発明の関連する態様は、BETタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または状態の治療または予防における、本明細書で定義される式IのPROTAC化合物の使用を提供し、前記疾患または状態が、癌(がん);良性増殖性疾患;感染性または非感染性の炎症事象;自己免疫疾患;炎症性疾患;全身性炎症反応症候群;ウイルス感染症とウイルス性疾患;および眼科的状態から独立に選択される。さらに関連する態様は、BETタンパク質活性の調節解除に関連する疾患または状態の治療または予防のための、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物の使用を提供し、前記疾患または状態が、癌;良性増殖性疾患;感染性または非感染性の炎症事象;自己免疫疾患;炎症性疾患;全身性炎症反応症候群;ウイルス感染症とウイルス性疾患;および眼科的状態から独立に選択される。
【0083】
また、ブロモドメイン阻害剤が適応となる疾患または状態の治療に使用するための、本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物、および、ブロモドメイン阻害剤が適応となる疾患または状態の治療方法であって本明細書のいずれかの態様に係る式IのPROTAC化合物の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物、特にヒトに投与することによる治療方法が提供される。ブロモドメイン阻害剤が適応となる疾患または症状の例には、敗血症、火傷、膵炎、重大な外傷、出血および虚血などの全身性炎症反応症候群に関連する疾患が含まれる。
【0084】
そのような使用または方法において、式IのPROTAC化合物は、好ましくは、SIRSの発病、ショックの発症、多臓器不全症候群(急性肺損傷、ARDS、急性腎損傷、肝臓損傷、心臓損傷、胃腸損傷および死亡の発生を含む)の発症を低減するために、診断の時点でそのような治療が必要な対象に投与されるだろう。
【0085】
あるいは、敗血症、出血、広範な組織損傷、SIRSまたはMODSの高リスクが認識されている他の状況では、式IのPROTAC化合物は、好ましくは、かかるリスクからの保護を必要とする対象に、例えば敗血症、出血、広範な組織損傷、SIRSまたはMODSの高リスクに関連した外科手術またはその他の処置の前に、投与されるだろう。
【0086】
特定の実施形態によれば、敗血症、敗血症症候群、敗血症性ショックおよび/または内毒素血症の治療における使用のための式IのPROTAC化合物の使用が本明細書において提供される。
【0087】
別の実施形態によれば、本明細書では、急性もしくは慢性膵炎、または火傷の治療における使用のための、式IのPROTAC化合物の使用が提供される。
【0088】
ブロモドメイン阻害剤が適応となりかつ式IのPROTAC化合物がその治療に使用され得る疾患または状態のさらなる例としては、単純ヘルペス感染および再活性化、ヘルペス、帯状疱疹感染および再活性化、水痘、帯状疱疹、ヒトパピローマウイルス、子宮頸部腫瘍、急性呼吸器疾患を含むアデノウイルス感染症、牛痘や天然痘などのポックスウイルス感染症、アフリカ豚コレラウイルスなどが挙げられる。
【0089】
さらなる実施形態によれば、皮膚または頸部上皮のヒトパピローマウイルス感染症の治療に使用するための、式IのPROTAC化合物の使用が本明細書で提供される。
【0090】
さらなる態様では、癌、炎症性疾患および/またはウイルス疾患の治療における、上記の疾患または状態のいずれかの治療に使用するための式IのPROTAC化合物であって、前記治療が、タンパク質メチル化、遺伝子発現、細胞増殖、細胞分化および/またはアポトーシスのうちの1つ以上をin vivo(生体内)で調節するために使用される式IのPROTAC化合物が提供される。
【0091】
別の態様によれば、癌、炎症性疾患、および/またはウイルス性疾患から独立に選択された疾患または状態の治療における、タンパク質メチル化、遺伝子発現、細胞増殖、細胞分化および/またはアポトーシスのうちの1つ以上をin vivo(生体内)調節に使するために使用される、式IのPROTAC化合物が提供される。
【0092】
別の態様によれば、癌、炎症性疾患、および/またはウイルス性疾患の治療において、タンパク質メチル化、遺伝子発現、細胞増殖、細胞分化、および/またはアポトーシスのうちの1つ以上をin vivoで調節する治療方法であって、式Iの1つ以上のPROTAC化合物の治療有効量を、そのような治療が必要な対象に投与することによる治療方法が提供される。
【0093】
また、本明細書で実証されるように、例えば化合物SIM1などの式IのPROTAC化合物は、強力にかつ迅速に、BRD3やBRD4を上回る、可逆的で長期持続性でかつ予想外のBRD2の選択的除去を誘導する。
【0094】
したがって、本発明は、タンパク質のブロモドメインの反復配列および特異的末端配列(Bromo-and Etra-terminal;BET)ファミリー内のタンパク質に結合する式IのPROTAC化合物を提供する。
【0095】
一態様によれば、本発明は、式IのPROTAC化合物であって、式中、BおよびDが、ユビキチンリガーゼにより分解させようとしている標的タンパク質またはポリペプチドに結合するリガンドであり、そして前記標的タンパク質が、構造タンパク質、受容体、酵素、細胞表面タンパク質;細胞の統合機能、例えば触媒活性、アロマターゼ活性、運動活性、ヘリカーゼ活性、代謝過程(同化および異化)、抗酸化活性、タンパク質分解、生合成、キナーゼ活性、オキシドレダクターゼ活性、トランスフェラーゼ活性、加水分解酵素活性、リアーゼ活性、イソメラーゼ活性、リガーゼ活性、酵素調節活性、シグナル伝達活性、構造分子活性、結合活性(タンパク質、脂質、炭水化物)、受容体活性、細胞運動、膜融合、細胞間コミュニケーション、生物学的過程の調節、発生、細胞分化、刺激への応答に関与するタンパク質を含む、統合機能に関連するタンパク質;行動タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞死に関与するタンパク質、輸送に関与するタンパク質(タンパク質トランスポーター活性、核輸送、イオントランスポーター活性、チャネルトランスポーター活性、キャリア活性、パーミアーゼ活性、分泌活性、電子トランスポーター活性を含む)、病因学、シャペロン調節活性、核酸結合活性、転写調節活性、細胞外組織化および生合成活性、並びに翻訳調節活性に関与するタンパク質からなる群より選択される、式IのPROTAC化合物を提供する。
【0096】
一態様によれば、本発明は、上で定義した式Iを有するPROTAC化合物であって、式中、BおよびDが、ユビキチンリガーゼによって分解させようとしている標的タンパク質またはポリペプチドに結合するリガンドであり、前記標的タンパク質が、以下:B7.1およびB7、TI FRlm、TNFR2、NADPHオキシダーゼ、BclI Baxおよびアポトーシス経路の他のパートナー、C5a受容体、HMG-CoAレダクターゼ、PDE(ホスホジエステラーゼ)V型、PDE(ホスホジエステラーゼ)IV型、PDE I型、PDE II型、PDE III型、スクアレンシクラーゼ阻害剤CXCR1、CXCR2、一酸化窒素(NO)シンターゼ、シクロオキシゲナーゼ1、シクロオキシゲナーゼ2、5HT受容体、ドーパミン受容体、Gタンパク質、すなわちGq、ヒスタミン受容体、5-リポキシゲナーゼ、トリプターゼセリンプロテアーゼ、チミジル酸シンターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、GADPDトリパノソーマ、グリコーゲンホスホリラーゼ、炭酸脱水酵素、ケモカイン受容体、JAW STAT、RXRおよび類似体、HIV 1プロテアーゼ、HIV 1インテグラーゼ、インフルエンザ・ノイラミニダーゼ、B型肝炎逆転写酵素、ナトリウムチャネル、多剤耐性(MDR)タンパク質、プロテインP糖タンパク質(およびMRP)、チロシンキナーゼ、CD23、CD124、チロシンキナーゼp56 lck、CD4、CD5、IL-2受容体、IL-1受容体、TNF-αR、ICAM1、Catチャネル、VCAM、VLA-4インテグリン、セレクチン、CD40/CD40L、ニューロキニンおよび受容体、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ、p38 MAPキナーゼ、RasI/RafI/MEK/ERK(MARK)経路、インターロイキン-1変換酵素、カスパーゼ、HCV NS3プロテアーゼ、HCV NS3 RNAヘリカーゼ、グリシンアミドリボヌクレオチド・ホルミルトランスフェラーゼ、ライノウイルス3Cプロテアーゼ、単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)プロテアーゼ、サイトメガロウイルス(CMV)プロテアーゼ、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ、サイクリン依存性キナーゼ、血管内皮増殖因子、オキシトシン受容体、ミクロソーム転移タンパク質阻害剤、胆汁酸輸送阻害剤、5αレダクターゼ阻害剤、アンジオテンシンII、グリシン受容体、ノルアドレナリン再取込み受容体、エンドセリン受容体、神経ペプチドYおよび受容体、アデノシン受容体、アデノシンキナーゼおよびAMPデアミナーゼ、プリン作動性受容体(P2Y1、P2Y2、P2Y4、P2Y6、P2X1-7)、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ、NGFのTrkA受容体、βアミロイド、チロシンキナーゼFlk-II KDR、ビトロネクチン受容体、インテグリン受容体、Her-21 neu、テロメラーゼ阻害剤、サイトゾルホスホリパーゼA2およびEGF受容体チロシンキナーゼ、エクジソン20-モノオキシゲナーゼ、GABA依存性クロライドチャネルのイオンチャネル、アセチルコリンエステラーゼ、電圧感受性ナトリウムチャネルタンパク質、カルシウム放出チャネル、およびクロライドチャネル、アセチルCoAカルボキシラーゼ、アデニルコハク酸シンセターゼ、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ、並びにエノールピルビルシキミ酸ホスフェートシンターゼから選択されるPROTAC化合物を提供する。
【0097】
一態様によれば、本発明は、式Iを有するPROTAC化合物であって、式中、BおよびDが、ユビキチンリガーゼにより分解させようとしている標的タンパク質またはポリペプチドに結合するリガンドであり、そしてBおよびDが、Hsp90阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、MDM2阻害剤、ヒトBETブロモドメイン含有タンパク質を標的とする化合物、HDAC阻害剤、ヒトリジンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、RAF受容体を標的とする化合物、FKBPを標的とする化合物、血管新生阻害剤、免疫抑制性化合物、アリール炭化水素受容体を標的とする化合物、アンドロゲン受容体を標的とする化合物、エストロゲン受容体を標的とする化合物、甲状腺ホルモン受容体を標的とする化合物、HIVプロテアーゼを標的とする化合物、HIVインテグラーゼを標的とする化合物、HCVプロテアーゼを標的とする化合物、またはアシルプロテインチオエステラーゼ1および/または2を標的とする化合物である、式IのPROTAC化合物を提供する。
【0098】
一態様によれば、本発明は、必要な対象(患者)において標的タンパク質を分解する方法であって、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物の有効量を前記対象(患者)に投与することを含む方法、またはPROTAC化合物の有効量の投与による、対象(患者)において標的タンパク質を分解するための前記PROTACの使用を提供する。
【0099】
一態様によれば、本発明は、本明細書に定義される式IのPROTAC化合物の有効量に前記細胞を曝露することを含む、細胞内のタンパク質をターゲティング(標的指向)する方法、または前記細胞をPROTAC化合物の有効量に暴露することを含む、細胞内のタンパク質をターゲティングするための前記PROTACの使用を提供する。
【0100】
本発明のPROTAC化合物は、医薬組成物として、任意の従来の経路により、特に経腸的に、例えば経口的に、例えば錠剤もしくはカプセル剤の形態で、または非経口的に、例えば注射用液剤もしくは懸濁液剤の形態で、局所的に、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏もしくはクリームの形態で、または経鼻用もしくは座剤の形態で投与することができる。本発明のPROTAC化合物は、遊離形態でまたは薬学的に許容される塩の形態で、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて含有する医薬組成物は、混合、造粒またはコーティング法による従来の方式で製造することができる。例えば、経口組成物は、有効成分と共に、a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコール;錠剤の場合にはさらに、c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン;所望であれば、d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香料および甘味料を含有する、錠剤またはゼラチンカプセル剤でありうる。注射用組成物は等張水溶液剤または懸濁液剤であり得、坐剤は脂肪乳剤または懸濁液剤から調製され得る。該組成物は滅菌することができ、そして/または防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩および/または緩衝剤などの補助剤を含有することができる。さらに、他の治療上価値のある物質も含有してよい。経皮適用に適した製剤には、有効量の本発明のPROTAC化合物と担体が含まれる。担体は、宿主の皮膚の通過を助けるために吸収性の薬理学的に許容される溶媒を含むことができる。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、場合により担体を含む化合物を収容するリザーバ、場合により長期間にわたって制御された所定の速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための速度制御バリアを含む包帯の形態である。デバイスを皮膚に固定するための手段、マトリックス経皮製剤も使用できる。例えば皮膚および眼などの局所適用に適した製剤は、当技術分野で周知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルであることが好ましい。これらには、可溶化剤、安定剤、等張化剤、緩衝剤、および保存剤が含まれる場合がある。
【0101】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化された、本発明のPROTAC化合物の治療有効量を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、非毒性の、不活性固体の、半固体のまたは液体の充填剤、希釈剤、封入剤または任意の種類の製剤補助剤を意味する。
【0102】
本発明の医薬組成物は、ヒトおよび他の動物に、経口、直腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、点滴剤によるなど)、口腔、または経口もしくは経鼻スプレーとして投与することができる。
【0103】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、液剤、懸濁液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油脂(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含有することができる。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香料、および芳香剤などの補助剤も含んでよい。
【0104】
注射用製剤、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知技術に従って製剤化され得る。無菌注射用製剤はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非経口的に許容される非毒性の希釈剤または溶媒中の無菌注射用液剤、懸濁液剤または乳剤であってもよい。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、USP(米国薬局方)準拠および等張性の塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油が溶媒または懸濁化媒体として従来から使用されている。この目的には、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、刺激の少ない任意の固定油(不揮発性油)を使用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用される。薬物の奏効を持続させるために、皮下または筋肉内注射による薬物の吸収を遅らせることが望ましい場合がしばしばある。これは、水への溶解度が低い結晶質または非晶質材料の液体懸濁液を使用することにより達成することができる。次に、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、さらに溶解速度は結晶のサイズと結晶形に依存しうる。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。
【0105】
直腸または膣内投与用の組成物は、好ましくは、本発明のPROTAC化合物を、周囲温度では固体であるが体内では液体であり、直腸もしくは膣内で溶解して活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは座剤ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製できる、座剤である。同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。
【0106】
PROTAC化合物は、上述の1種以上の賦形剤とともに、マイクロカプセル化形態で提供することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および粒剤という固体剤形は、腸溶性コーティング、制御放出コーティングおよび医薬製剤業界で周知の他のコーティングなどのコーティング(被膜)およびシェル(外殻)を用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性化合物を、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合することができる。このような剤形は、通常の慣例のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば錠剤化のための滑沢剤および他の助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースを含んでもよい。カプセル、錠剤および丸薬の場合、剤形は緩衝剤も含んでよい。
【0107】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチが含まれる。有効成分は、必要に応じて、無菌条件下で、薬学的に許容される担体および任意の必要な保存剤または緩衝剤と共に混合される。眼科用製剤、点耳薬、眼軟膏、散剤および液剤も本発明の範囲内であると考えられる。軟膏、ペースト、クリームおよびゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油脂、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。
【0108】
散剤およびスプレー剤は、本発明のPROTAC化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤には、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤がさらに含まれる場合がある。経皮パッチは、身体への化合物の制御送達を提供するという追加の利点がある。このような剤形は、化合物を適切な媒質に溶解または分配することによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を通過する化合物の流量を増加させることもできる。その速度は、速度制御膜を設けるか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させるかによって、制御することができる。
【0109】
本発明の治療方法によれば、疾患、状態、または障害は、治療有効量の本発明のPROTAC化合物を対象に投与することによって、望ましい結果を達成するために必要な量と時間で、ヒトまたは他の動物などの対象において治療または予防される。本明細書で使用される本発明の化合物の「治療有効量」という用語は、対象における障害の症状を軽減するのに十分な化合物の量を意味する。医学領域で十分理解されているように、本発明のPROTAC化合物の治療有効量は、あらゆる医療に適用できる妥当なベネフィット/リスク比となるであろう。
【0110】
本発明の化合物の投与量は、疾患の種類、患者の年齢および全身状態、投与される特定の化合物、および薬物で経験毒性または副作用の存在またはレベルを含む多くの要因に従って変化し得る。適切な用量範囲の代表的な例は、約0.025mg程度から約1000mgまでである。ただし、投与量は一般に医師の裁量に任されている。
【0111】
哺乳動物患者用の多種多様な医薬剤形を使用することができる。固体剤形が経口投与に使用される場合、製剤は錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤またはロゼンジ錠の形態であり得る。固形担体の量は広範囲に異なるが、一般にPROTAC化合物の量は約0.025mg~約1gであり、所望の錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤またはロゼンジ錠のサイズによって固形担体の量が異なる。したがって、便利には、錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤またはロゼンジ錠は、例えば、0.025mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、25mg、100mg、250mg、500mg、または1000mgの本発明化合物を有するだろう。錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤またはロゼンジ錠は、1日1回、2回または3回投与するのが便利である。
【0112】
一般に、本発明のPROTAC化合物は、単独で、または1つ以上の治療薬と組み合わせて、当技術分野で公知の通常の許容される様式のいずれかを介して治療有効量で投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効力および他の要因に応じて大きく変動し得る。
【0113】
特定の実施形態において、本発明の化合物の治療量または用量は、約0.1mg/Kg~約500mg/Kg、あるいは約1~約50mg/kgの範囲であり得る。一般に、本発明による治療計画は、そのような治療を必要とする患者に、1日当たり約10mg~約1000mgの本発明の化合物を単回または複数回投与することを含む。治療量または用量は、投与経路以外にも他の薬剤との併用の可能性によって異なるだろう。対象の状態が改善したら、必要に応じて本発明の化合物、組成物または組み合わせの維持用量を投与してもよい。その後、症状の関数として、投与量もしくは投与頻度、またはその両方を、改善された状態が維持されるレベルにまで減らすことができ、症状が所望のレベルに軽減されたときには、治療を中止すべきである。しかしながら、疾患のいずれかの症状が再発した場合には、対象は長期にわたる断続的な治療を必要とする場合がある。本発明の化合物および組成物の一日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることが理解されるだろう。特定の患者に対する具体的な抑制量は、治療すべき疾患、および該疾患の重症度、使用した特定化合物の活性、使用した特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事;使用した特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;治療の存続期間;使用した特定化合物と併用または同時使用される薬剤;および医療分野で周知の同様の要因に依存するだろう。
【0114】
本発明はまた、医薬の組み合わせ、例えば、a)遊離形または薬学的に許容される塩の形の、本明細書に開示される本発明のPROTAC化合物である第1の薬剤と、およびb)少なくとも1つの補助薬剤(co-agent)とを含む医薬の組み合わせ、例えばキットを提供する。キットは、その投与のための説明書を含むことができる。本明細書で使用される「同時投与」または「併用投与」などの用語は、選択された治療薬を単一の患者へ投与することを含む意味であり、薬剤が必ずしも同じ投与経路でまたは同時に投与されるわけではない治療計画を含むことを意図する。本明細書で使用される「医薬組み合わせ」という用語は、複数の有効成分の混合または組み合わせから生じる製品を意味し、有効成分の固定組み合わせと非固定組み合わせの両方を含む。「固定組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば本発明のPROTAC化合物と補助薬剤とが両方とも単一の存在または1回量の形で同時に患者に投与されることを意味する。「非固定の組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば本発明のPROTAC化合物と補助薬剤とが両方とも別個の存在として患者に同時に、一緒に、または特定の時間制限なしで連続的に、投与されることを意味する。ここで、そのような投与は、患者の体内に2つの化合物の治療有効量を提供する。後者は、カクテル療法、例えば3つ以上の有効成分の投与にも適用される。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、羊毛脂、乳糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖類;コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン類;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび座薬ワックスなどの賦形剤、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;グリコール、例えばプロピレングリコールやポリエチレングリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質不含有の水、等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール、リン酸緩衝液、並びに他の非毒性の相溶性滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム;並びに着色剤、離脱剤、コーティング剤、甘味料、香料、芳香剤、防腐剤、酸化防止剤が、処方者の判断に従って、組成物中に存在することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1図1a)および1b)は、三価PROTAC設計においてリンカーの化学的分岐用化合物の溶媒暴露領域を同定するための、VHL:MZ1:BRD4BD2(a、PDB 5T35)およびBRD4BD2:MT1:BRD4BD2(b、PDB 5JWM)の三元複合体の結晶構造を示す。親の二官能性分子MZ1とMT1の化学構造も示す。図1c)は、VHLおよびCRBN E3リガーゼリガンドに基づいて設計された三価PROTACの化学構造を示す。図1d)は、HEK293細胞を1μM PROTAC(SIM1~6)またはDMSOで4時間処理した後のBRD2、BRD3、BRD4の免疫ブロット分析を示す。図1e)は、1μMのPROTAC化合物またはDMSOにより4連で(四重複製で)処理した後のCRISPR HiBiT-BRD4 HEK293細胞の定量的生細胞分解のカイネティクス(動態)を示す。発光(RLU)を24時間にわたって5分間隔で継続的にモニターした。図1f)は、各濃度点について3連で(三重複製で)PROTACまたはDMSOにより48時間処理した後のMV4;11 AML細胞株の細胞生存率を表すグラフである。
【0116】
図2図2a)は、段階希釈したPROTAC化合物SIM1、SIM2およびSIM3で4時間処理したHEK293細胞における、BRD2、BRD3、BRD4レベルの免疫ブロットを示す。図6dに示すように、BETタンパク質レベルの定量化をDMSO対照と比較して行い、プロットを使用してDC50値を測定した。図示されたブロットは、2つの独立した実験を表す。図2b)は、4連で段階希釈したSIM1で処理した後のCRISPR HiBiT-BRD2、BRD3およびBRD4 HEK293細胞の定量的生細胞分解のカイネティクス(動態)を示す。発光(RLU)を24時間にわたって継続的にモニターした。図2c)は、パネルbに示されたBRD2、BRD3およびBRD4カイネティクス解析プロファイルからの分解速度、分解最大値(Dmax)、およびDmax50値の計算を示す。図2d)は、10nMの化合物で4時間処理したMV4;11細胞のプロテオームに対するSIM1(青)およびcis-SIM1(赤)の効果を示す。データは、3つの独立した実験からのタンパク質あたりのP値の-log10(y軸)に対して、DMSO対照に対比した倍率変化のlog値(x軸)をプロットしたものである。代表的なタンパク質の定量化は図7dに見ることができる。図2e)は、10nMの化合物SIM1で処理した後のHiBiT-BETタンパク質のNanoBRET(商標)ユビキチン化のカイネティクス(動態)を示す。
【0117】
図3図3a)は、HiBiT-BRD2カイネティクスの用量応答プロファイルから計算された分解速度、Dmax、Dmax50値と、SIM1(カイネティクス解析プロファイルは図2bに示される)、ARV-771(カイネティクス解析プロファイルは図8aに示される)およびMZ1(ref.31)との比較を示す。図3b)は、指示化合物で4時間処理した22Rv1前立腺癌細胞株における内因性BRD2およびMycの定量化した発現レベルを示すグラフを示す。曲線は、生物学的に独立した2つの実験の平均値のベストフィット(±SEM)である。図3c)1nM濃度の指示化合物で4連で(4重複製で)処理したMV4;11細胞における、CRISPR cMyc-HiBiTタンパク質レベルの減少および相関する細胞生存率を表すグラフを示す。CellTiter-Glo(登録商標)により、24時間にわたる様々な時点で発光と細胞生存率を測定した。図3d)は、カスパーゼ阻害剤(QVD-OPh;20μM)またはネクロプトーシス(制御されたネクローシス)阻害剤(ネクロスタチン-1;20μM)の添加有り/無しで、10nMの指示化合物で24時間処理した22Rv1細胞におけるPARP開裂のイムノブロットを示す。48時間処理および1mMのMZ1およびMT1処理の場合のブロットは図10に示される。図3e)は、22Rv1細胞において化合物またはDMSOで24時間処理したカスパーゼ-Glo3/7(商標)アッセイを示す。曲線は3つの生物学的に独立した実験の平均値のベストフィット(±SEM)である。図3f)は、クローン形成アッセイにおける、22Rv1細胞の生存実験の画像を示す。細胞を10nMの化合物で24時間処理した。500個の細胞を再播種し、スキャン前に37℃で20日間増殖させた。生存率は、処理細胞のコロニー形成率を未処理細胞のコロニー形成率で割ることによって決定した。エラーバーは二重反復試験からの平均値±S.D.を示す。
【0118】
図4図4a)は、SIM1(赤)、MZ1またはcis-SIM1(オレンジ色)、MT1(緑色)またはDMSO(シアン色)と、BRD4由来のBD1-BD2タンデムドメインとのインキュベーション後の複合体形成のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す(左パネル:野生型、中央のパネル:N140F変異体、右のパネル:VCBタンパク質を有する野生型)。ピークの強度は280nmでの吸光度である。図4b)は、BRD4野生型(WT)のBD1-BD2タンデムドメインから成るか、またはNanoLuc(商標)ドナーおよびHaloTag(商標)受容体融合タグにより隣接されたBD2のN433F変異を含む、NanoBRET(商標)のコンフォメーションバイオセンサーアッセイを示す。HEK293細胞をWTまたはN433F変異体バイオセンサーのいずれかで一時的にトランスフェクトし、次いで化合物SIM1、cis-SIM1、またはMT1化合物の段階希釈液で4連(4重複製)にて処理した。どの処理がコンホメーション変化を示したかを決定するためにNanoBRETを測定し、EC50値を計算して示した。図4c)は、SIM1(16μM)とVCB(32μM)の1:1混合物中にBRD4のBD1-BD2タンデムタンパク質(シリンジ中に投入、WT200μM、N433F変異体300μM)のITC力価測定を示す。図4d)は、4連にてSIM1、cis-SIM1、MT1、またはDMSO対照で処理した全長BRD4のWT(野生型)、N140F変異体またはN433F変異体のいずれかと組み合わせた、HaloTag-VHLを一過性発現するHEK293細胞における、NanoBRET(商標)カイネティクス三元複合体形成を表示するグラフを示す。NanoBRETは化合物添加後2時間にわたり継続的にモニターし、BRD4変異体ごとに異なるレベルの三元複合体形成を示した。図4e)は、VCBタンパク質の非存在下(赤色)または存在下(青色)における、ビオチン-JQ1:BRD4BD2に対する2連(二重複製)でのSIM1のAlphaLISA(商標)滴定を示す。図4f)は、BRD4タンデムBD1-BD2の存在下または非存在下で、3連(三重複製)で滴定されたSIM1によるVCBからのFAM標識HIF-1αペプチドの置換を測定する蛍光偏光競合アッセイからの近似曲線を示す。図4g)は、プレインキュベートしたSIM1-BRD4タンデムタンパク質と固定化ビオチン-VCBタンパク質との相互作用を、リアルタイムでモニタリングするためのSPRセンサーグラムを示す。示されているセンサーグラムは、三元複合体の解離定数Kと解離半減期t1/2を測定するための、3つの独立した実験の代表としての三元単回カイネティクス(SCK)実験のものである。図4h)は、NanoBRET(商標)ターゲットエンゲージメントによって測定された、BRD4を用いた生細胞での化合物滞留時間実験を示す。CRISPR HiBiT-BRD4細胞を、指示化合物と共に4連(4重複製)でインキュベートし、続いて競合的に蛍光標識されたBET阻害剤を添加した。NanoBRETを生細胞中でカイネティクス測定した。
【0119】
図5図5a)は、VHLおよびBETタンパク質と共にSIM1が1:1:1の三元複合体を形成するというメカニズムの提唱を示す。BRD4のBD2へのSIM1の優先的な初期結合に続いて、コンホメーション変化とBD1への分子内同時結合が起こる。結合力と協同性は、ごく低濃度のSIM1で存続時間が長くなり、安定性の高い三元複合体の形成に寄与する。図5b)は、様々なタイプのPROTACと、E3リガーゼ部分を有する分子接着剤により誘導される三元複合体を示し、そしてPROTACまたは分解濃度の1因子としてそれらの変動する範囲で描写されている。結合力と協同性を併せ持つ三価複合体は、フック効果が最小限に抑えられた、最大でかつ最も持続的なレベルの三元複合体形成を示す。協同的な二価PROTAC複合体が次のレベルであり、非協同的な二価複合体がその後に続く。最後に、分子接着剤化合物により誘導された三元複合体が示されるが、これはプラトーに達し、PROTACとは異なり高濃度で競合的フック効果を受けない。
【0120】
図6図6図1に関連)図6a)は、三元複合体結晶構造の探索を示す。BRD4BD1:Bi-BET:BRD4BD1(PDB:5ad3)は、タンパク質界面の内側に埋没した二価の阻害剤を示し、誘導体化が結合様式を破壊することを示唆している。図6b)は、4連で段階希釈したSIM1~SIM3で処理した後の、LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD4 HEK293細胞の定量的生細胞分解動態を示す。発光(RLU)を24時間にわたって5~15分間隔で連続的にモニターし、DMSO対照に対する正規化によってフラクションRLUを決定した。図6c)は、各濃度点につき3連(三重複製)にてPROTACまたはDMSOで48時間処理した後のA549肺癌細胞株またはHL-60 AML細胞株の細胞生存率を示す。図6d)は、図2aのHEK293細胞からのIBデータのDMSO対照と比較した各BETタンパク質レベルの定量化を示す。
【0121】
図7図7図2に関連)図7a)、b)は、4連で段階希釈したSIM2またはSIM3処理した後の、LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD2、BRD3およびBRD4 HEK293細胞の定量的生存細胞分解の動態を示す。発光(RLU)を24時間にわたって5~15分間隔で連続的にモニターし、DMSO対照に対する正規化によりフラクションRLUを決定した。図7c)は、図7aまたは2bにそれぞれ示されているSIM2およびSIM3の動態プロファイルからのSIM2(上のセット)およびSIM3(下のセット)についての分解速度、分解最大値(Dmax)、およびDmax50値の計算を示す。図7d)は、図2dの質量分析プロテオミクスの代表的タンパク質の定量化を示す。図7e)は、4連での100nM SIM1もしくはMZ1またはDMSO処理後の、LgBiTおよびHaloTag-ユビキチンを発現しているHiBiT-BET HEK293細胞のNanoBRETユビキチン化動態を示す。値は、DMSO対照に対する倍率増加分として表される。
【0122】
図8図8図3に関連)図8a)は、4連で段階希釈したARV-771での処理後の、CRISPR HiBiT-BRD2、BRD3、およびBRD4 HEK293細胞の定量的生細胞分解のカイネティクスを示す。発光(RLU)を24時間にわたって5~15分間隔で連続的にモニターし、DMSO対照に対する正規化によってフラクションのRLUを決定した。図8b)SIM1(図2b)、ARV-771(図8a)、および以前に決定されたMZ1(Riching他、ACS Chem.Biol.2018)の動態プロファイルからのBRD3およびBRD4分解速度、分解最大値(Dmax)およびDmax50値の比較。図8c)(上のグラフ)は、化合物で4時間処理した22Rv1前立腺癌細胞株における内在性BRD3およびBRD4の定量化発現レベルを示す。曲線は、2つの生物学的に独立した実験からの平均値のベストフィット(最も適合)±SEMである。(下の画像)図3bおよび上のグラフ(8c)についてのウェスタンブロットの代表的な画像。図8d)は、プロテアソーム阻害剤(MG132)またはVHLリガンド(VH298)の有り/無しでの、BRD分解剤または阻害剤の存在下で4時間処理したMV4;11細胞における内在性BRD2、BRD3およびBRD4のイムノブロットを示す。エラーバーは、2つの生物学的に独立した実験からの平均値±SDを示す。SIM1およびcis-SIM1は100nMで使用した。MG132は3μMで使用した。VH298は10μMで使用した。
【0123】
図9図9図3cに関連)図9a)およびb)は、3nM、10nM、50nMおよび100nM濃度の指示化合物で4連で処理したMV4;11細胞におけるCRISPR cMyc-HiBiTタンパク質レベルの劣化(a)および相関細胞生存率(b)を示すグラフを示す。CellTiter-Glo(登録商標)による発光および細胞生存率を24時間にわたる様々な時点で測定し、DMSO対照に対して正規化した。
【0124】
図10図10図3d、eに関連)図10a)は、カスパーゼ阻害剤(QVD-OPh;20μM)またはネクロプトーシス阻害剤(ネクロスタチン-1;20μM)の添加有り/無しでの、指示時点における10nMのSIM1またはcis-SIM1を用いた22Rv1細胞中でのPARP開裂のイムノブロットを示す。図10b)は、カスパーゼ阻害剤(QVD-OPh;20μM)またはネクロプトーシス阻害剤(ネクロスタチン-1;20μM)の添加有り/無しでの、指示時点における10nMまたは1μMのMT1を用いた22Rv1細胞中でのPARP開裂のイムノブロットを示す。図10c)は、カスパーゼ阻害剤(QVD-OPh;20μM)または壊死阻害剤(ネクロスタチン-1;20μM)の添加有り/無しでの、指示時点における10nMまたは1μMのMZ1を用いた22Rv1細胞中でのPARP開裂のイムノブロットを示す。図10d)は、22Rv1細胞中でカスパーゼ阻害剤(QVD-OPh)またはVHLリガンド(VH298)の有り/無しでの、BET分解剤または阻害剤の存在下で24時間処理したカスパーゼ-Glo3/7(商標)アッセイを示す。エラーバーは、3つの生物学的に独立した実験からの平均値±SDを示す。SIM1、cis-SIM1およびMT1は100nMで使用した。MZ1およびARV-771は1μMで使用した。VH298は10mMで使用した。QvD-OPhは20μMで使用した。
【0125】
図11図11図4に関連)図11a)は、25μMのBRD4のBD1-BD2タンデムタンパク質(左パネル:N433F変異体、右パネル:VCBタンパク質を含むN140F変異体)と共にSIM1(赤色、25μM)、MZ1(橙色、25μM)、MT1(緑色、25μM)またはDMSO(シアン色、25μM)をインキュベートした後の複合体形成のサイズ排除クロマトグラフィーを示す。ピークの強度は280nmでの吸光度である。図11b)は、透過処理された生細胞形態で行われた、LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD4 HEK293細胞を用いた4連のNanoBRET標的結合アッセイを示す。細胞を蛍光BETトレーサーで処理し、その後、さまざまな濃度の指定化合物とともにインキュベートして、競合的置換を測定した。各化合物のIC50値は、透過処理された細胞と生細胞の両方について示される。図11c)は、4連での100nMのSIM1もしくはMZ1でまたはDMSOでの処理後の、LgBiTおよびHaloTag-VHLを発現するHiBiT-BET HEK293細胞のNanoBRET(商標)三元複合体のカイネティクスを示す。値は、DMSO対照に対する倍率増加分として表される。
【0126】
図12図12は、固定化VCBに結合するSIM1二元複合体および三元複合体についての実験およびフィッティングSPRデータを示している表1を示す。
【0127】
図13図13は、SIM1と、それの命名されたネガティブコントロール(R,S)-SIM1およびcis-SIM1の化学構造を示す。反対の立体中心はアスタリスク(*)で示されている。
【0128】
図14図14は、BRD4(1,2)からのSIM1および(R,S)-SIM1による、ブロモスキャン置換力価測定を示す。qPCRによって測定されたブロモドメインタンパク質の量(シグナル;y軸)が、対応する化合物濃度に対してlog10スケール(nM;x軸)でプロットされている。曲線フィッティングからの解離定数Kが表にまとめられる。誤差値はGraphPad Prism(商標)プログラムによって生成され、それは非線形最小二乗曲線と実験データとの間のフィッティングの質を反映する。
【0129】
図15図15は、1μMの指示化合物またはDMSOで4時間処理した後の、HEK293細胞におけるBETタンパク質分解の免疫ブロットを示す。
【0130】
図16図16は、CRISPR HiBiT-BRD2、BRD3およびBRD4 HEK293細胞を、ウォッシュアウト実験のために複製プレート中で、100nMのDMSO、MZ1、(R,S)-SIM1、並びに10nMと100nMの両方のSIM1で処理した結果を示す。10nMおよび/または100nMの化合物を含む培地を、グラフ上に示すように3.5時間目に取り出し、そして実験の残りのものについては、化合物を含まない培地と交換した。発光(RLU)を50時間の期間にわたって継続的にモニターし、DMSO対照に対して正規化してフラクションRLUとしてプロットした。
【0131】
図17図17は、Apoトラッカーグリーン(Apotracker Green)とDAPI染色によりそれぞれ生存率とホスファチジルセリンの細胞表面提示について分析し、そしてフローサイトメトリー分析により分析した、指示濃度の試験化合物で24時間処理した後の、初期(FITC:Apotracker Green)および後期(FITC:Apotracker GreenおよびDAPI)アポトーシス性MV4;11細胞と健全MV4;11細胞の割合を表す棒グラフを示す。データは積み重ね棒としてプロットされるため、単一点は表示されない。エラーバーは、3つの生物学的複製物の平均±S.D.を反映する。
【0132】
図18図18は、雄C57BL/6マウス(n=3)への単回静脈内(IV)または皮下(SC)投与(5mg/kg)後のSIM1の平均血漿濃度-時間プロファイルを示す。このグラフは、SIM1が生体内で優れた利用可能性(アバイラビリティ)と薬物動態暴露を提示することを示す。詳細については、関連する表2を参照のこと。
【0133】
図19図19は、SIM1の静脈内(i.v.)および皮下(s.c.)投与(本試験)について、MZ1(https://opnme.com/moleculed/bet-mz-1)およびJQ1(Filippakopoulos他、Nature468、1067-1073(2010))のものに対する、算出された薬物動態パラメータを記載した表2を示す。
【0134】
図20図20は、BRD2およびBRD4イソ型を分解するときのSIM1およびその類似体MN674の効力を定量化するための、BRD2、BRD4_longおよびBRD4_shortのDC50値(nMで)を要約する表3を示す。DC50値はnM単位であり、図22で作成された用量依存曲線から得られる。
【0135】
図21図21は、RCC4-HA-VHLにおいてヘテロ三価PROTACのSIM1およびMN674を使用した、BRD2およびBRD4の用量依存的タンパク質分解を表すイムノブロットを示す。
【0136】
図22図22は、分解剤PROTACの濃度(nMで)に対してプロットした、0.1%DMSOのみの対照(コントロール)に対して比率にし、%バンド強度に変換した、図21に示されるMn674およびSIM1による、BRD2(図22a)およびBRD4(図22b)の用量依存性タンパク質分解の免疫ブロットのバンド強度を表すグラフである。
【実施例
【0137】
三価PROTACの構造に基づく設計と合成
MZ1(欧州特許EP3268363に開示)を含むいくつかのBETファミリーPROTACは、親の一価BET阻害剤から開発されている(ref.9,11,37,38)。本発明者らは、pan-BET BD阻害剤である(+)-JQ1にコンジュゲートされたVHLリガンドVH032(ref.39)から構成される、有力なBET PROTAC化合物MZ1(ref.9)を以前に合成した。BRD4の第二ブロモドメイン(BD)であるBRD4BD2とVHLとを有する三元複合体(ref.21)に結合されたMZ1の結晶構造は、MZ1のPEG3リンカーの中央部分が溶媒の方に露出していることを示し、PEG3リンカーが2番目のBETリガンドに結合する潜在的な分岐点であることを示唆している(図1a)。同様に、BRD4BD2の2つのモノマーに結合した、PEG7リンカーを有する(+)-JQ1のホモ二量体である二価BET阻害剤MT1(ref.40)の共結晶構造の解析により、リンカーの中央領域内の1つの部位が、E3リガーゼリガンドに向かう潜在的な化学的分岐点であることを明らかにした(図1b)。対照的に、二価阻害剤Bi-BETは、その共結晶構造中の2つのブロモドメインの界面に完全に埋没しており、誘導体化によってその結合様式を破壊しうることを示唆している(図6a)(ref.41)。
【0138】
本発明者らは、設計戦略において前駆体二官能性分子としてMZ1およびMT1を選出した。次に、可変リンカーを介して3つのリガンドを集成し、三官能性PROTACを創製可能にする、適切な「コア・スキャフォールド(足場)」を考案した(図1c)。本発明者らは、トリメチロールエタン(TME)としても知られる1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタンを選択した。その理由は、該化合物がネオペンチルコア構造内の3つの第一級アルコール基を特徴としており、従ってPEG単位の分岐型近接バイオアイソステリック置換(生物学的等価体置換)として機能するからである。いくつかの実施形態では、各BETリガンド部分への化学リンカーは同一に保持され、その結果、TMEの中心の第四級炭素のアキラリティー(achirality;不斉がないこと)をもたらした。全体の化学構造を可能な限りMZ1およびMT1の化学構造に近似させながら、同時に、異なる単量体リガンド間の相対的拘束を探索する際に柔軟性をもたせるために、BETリガンドへ向かう各リンカーの位置にPEG3またはPEG4を有する(n=3または4)、およびVH032に向かうリンカーにPEG0またはPEG1を有する(m=0または1)、3種の分岐型PROTAC(SIM1~SIM3)を設計した(図1c)。本発明者らはまた、VH032(SIM4~SIM6)の代わりにCRBNターゲティングリガンドであるポマリドミド(pomalidomide)から構成される類似化合物も設計した(図1c)。
【0139】
一般構造(12)を有するVHLベースの三価PROTACを合成するために、本発明者らは、三価リンカーコアへの重要な前駆体として、TMEから合成されたアセトニド()から出発した(スキーム1)。アセトニド()のアリル化とその後の脱保護によりジオール()を提供し、これをメシレートリンカー()でアルキル化して、E3リガーゼリガンドへのm=0のPROTAC前駆体としてのアリルエーテル()を得た。追加のPEG1単位(m=1)を導入するために、水素化ナトリウムの存在下でアルコール()をヨウ化物()と反応させた。のアセトニド基の脱保護と、その後のリンカー()による露出した第一級アルコールのアルキル化により、ジアジド()を得た。ジアジドのp-メトキシベンジル(PMB)基を2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)で脱保護し、続いてアリル化して、アリルエーテル()を得た。アリルエーテル(または)中の二重結合を酸化的に開裂させ、その後得られたアルデヒド()をピニック酸化してカルボン酸(10)を得、これをVH032-アミン(ref. 27,37)とカップリングさせた。(11)中の2つのアジド基をアミンに還元し、さらに(+)-JQ1カルボン酸とアミドカップリングすることで、VHLベースの三価PROTACの調製を完成させた。CRBNベースの三価PROTACは、VH032-アミンの代わりにポマリドミド(ref.29)のアミン含有類似体をカップリングすることによって同様に達成された。
【0140】
cis-SIM1の合成はそのtrans型ジアステレオマーと同様に容易であったけれども、最終カップリング工程で半当量のBETリガンドを使用することによる(R,S)-SIM1化合物を合成する最初の試み(図13を参照)は、許容できる収率で所望の1:1カップリングを果たすことはできなかった。したがって、本発明者らは、まず(+)-JQ1(Filippakopoulos他、Nature 468,1067-1073(2010))とカップリングし、次に(-)-JQ1(Filippakopoulos他、Nature 468,1067-1073(2010))とカップリングするという、後続の独立したカップリング工程を可能にするように合成経路を修正した(本文「化学-材料と方法」の箇所を参照)。
【0141】
SIM1は、BRD2分解に好ましい有力なVHLベースの三価PROTACである
BETタンパク質の細胞内分解を誘導する三価化合物の能力を評価するために、本発明者らはまず、ヒトHEK293細胞を1μM濃度で4時間処理し、ウエスタンブロットによってBRD2、BRD3およびBRD4のレベルを評価した。VHLベースのSIM1~SIM3では、BETタンパク質全体にわたって顕著な分解が観察されたが、CRBNベースのSIM4~SIM6では、最小限から完全無までの分解が観察された(図1d)。CRBNベースのPROTACと比較して、VHLベースの化合物の活性がより高いことを確認するために、次に、HEK293細胞においてCRISPER/Cas9で内因的にタグ付けされたHiBiT-BRD4の生細胞連続発光モニタリングを24時間にわたって実施した(ref.29,31)SIM1~SIM3では、SIM4~SIM6と比較して、より大きな最大分解レベルを伴う、より迅速なBRD4分解の初期速度が認められた(図1e)。SIM1~3を含むHiBiT-BRD4の用量応答性カイネティクス解析では、どの化合物にもフック効果は観察されず、4nM~1μMで急速かつ完全に分解することが示された(図6b)。VHLベースの化合物のより大きな効力を確認するため、本発明者らは、化合物処理によるBET感受性癌細胞株MV4;11(図1f)、A549およびHL-60(図6c)の増殖阻害プロファイルを評価した。化合物SIM1~SIM3は、SIM4~SIM6と比較して、更に親の二官能性分子MZ1およびMT1と比較して、より強力な活性を一貫して示した(図1fおよび図6c)。まとめると、初期スクリーニングは、構造に基づいて誘導設計したVHL分解剤が、相同のCRBN分子を上回る、より大きな活性を持つことを支持している。
【0142】
これらの初期結果に励まされて、本発明者らは次に、BETタンパク質ファミリー全体にわたってVHLベースの分解剤の分解活性を、より深く特徴づけようと努めた。イムノブロットを使用した4時間の処理での濃度依存プロファイリングでは、すべてのBETタンパク質において、MZ1(DC50値が25~920nM)と比較して、化合物SIM1~SIM3のDC50値が0.7~9.5nMとはるかに低いことが証明され、SIM1が3つの分解剤の中で最も強力であった(図2aおよび図6d)。本発明者らはまた、MZ1の顕著に優先的なBRD4分解と比較して、すべての化合物でBRD3およびBRD4よりもBRD2の分解を優先することも観察した(図6d)(ref.9,21,25)。化合物SIM1~SIM3を用いた定量的生細胞分解速度アッセイは、BETファミリーメンバーBRD2、BRD3およびBRD4のCRISPER HiBiT細胞株を用いて実行され、化合物SIM1~SIM3を最大10nM濃度まで滴定した(図2bおよび図7a、b)。これらの分析により、化合物SIM1がすべてのBETファミリーメンバーの中で最も強力な分解剤である(Dmax50が60~400pM)(図2b、cおよび図7a~c)としてさらに見なされ、全ての化合物でBRD2が最速の分解速度と最低のDmax50値を示した(図2cおよび図7c)。
【0143】
(R,S)-SIM1も分解活性について試験したところ、MZ1と同様に挙動するが、すべてのBETファミリーメンバーの分解についてSIM1よりも活性が弱いことが判明した(図15を参照、この図は1μMの指示化合物またはDMSOで4時間処理した後のHEK293細胞におけるBETタンパク質の分解のイムノブロットを示す)。
【0144】
三価のPROTACが、MZ1または(R,S)-SIM1と比較して細胞内のBETタンパク質のより持続的な分解も誘導するかどうかを評価するために、分解ウォッシュアウト試験を実施した。CRISPER標識HiBiT-BET HEK293細胞を、等濃度(100nM)のSIM1、(R,S)-SIM1、およびMZ1化合物で3.5時間処理し、その後、培地を除去して、化合物を含まない培地で置換した。本発明者らはまた、BETタンパク質全体にわたるそのより高い分解能力を説明するために、10倍低い(10分の1の)濃度(10nM)でSIM1を試験した。HiBiT-BETタンパク質レベルを、化合物の最初の添加から洗浄直後まで合計50時間にわたって継続的にモニタリングした。100nM処理では、SIM1によるすべてのBETファミリーメンバーの分解は、ウォッシュアウト後に、時間経過しても一定の低レベルに留まったのに対し、10 nMのSIM1処理では、ウォッシュアウト後に、BRD2、BRD3およびBRD4について部分的な回復が観察された(図16)。100nMの(R,S)-SIM1または100nMのMZ1で処理した細胞のウォッシュアウト後のすべてのBETファミリーメンバーの回復は、SIM1で観察されたものよりも大きく、より迅速に起こった(図16)。
【0145】
BETタンパク質に対する化合物SIM1の細胞選択性を評価するために、多重化TMT(Tandem Mass Tag(商標))標識質量分析プロテオミクス実験を実施し、定量的でかつ公正な(客観的な)方法でタンパク質レベルをモニタリングした。これらの実験において適切な非分解性ネガティブコントロール(陰性対照)異性体を提供するために、発明者らは、VHLリガンドのヒドロキシプロリン中心に逆の立体化学を有しており、そのためVHLへの結合の損失を引き起こす、化合物cis-SIM1を合成した(本文の「化学-材料および方法」の箇所を参照のこと)(ref.9,10)。
【0146】
急性骨髄性白血病(AML)MV4;11細胞を、DMSO、10nMの化合物SIM1、または10nMの化合物cis-SIM1で4時間、3連(三重複製)において処理した。定量化された5,232種のタンパク質群の中で、BRD2は、化合物cis-SIM1と比較して化合物SIM1により最も顕著に分解されることが判明し、次にBRD3およびBRD4が続いた(図2dおよび図7d)。
【0147】
本発明者らはまた、BET誘導分解の既知の下流効果である、MYCのタンパク質レベルのわずかな減少、およびアポトーシスの早期開始を示唆するHMOX1(ヘムオキシゲナーゼ1)タンパク質レベルのわずかな減少を観察した(ref.42)。
【0148】
分解速度および/または分解レベルの増加は、ユビキチン化の増加と相関することが判明しているため、HiBiT-BET CRISPR細胞株からなる生物発光共鳴エネルギー移動(NanoBRET(商標))アッセイを使用して、蛍光標識されたHaloTag-ユビキチンを発現するBETファミリーメンバーのユビキチン化のカイネティクス(動態)をモニタリングする細胞研究を行った(31)。図2eに示すように、10nMの化合物SIM1で処理した後の細胞ユビキチン化の動的増加は、BRD3およびBRD4と比較してBRD2の方がより強かった。
【0149】
これらと同じ傾向が、100nM濃度の化合物SIM1でも観察された。MZ1との比較により、化合物SIM1が、すべてのBETファミリーメンバーのより高レベルのユビキチン化を引き起こし、BRD2で最も大きな差異が観察されたことが明らかになった(図7e)。これらの細胞分解データを総合すると、研究した三価PROTACの中で、SIM1化合物が最も強力なBET分解剤であり、BRD2が優先的に分解されることが強調された。
【0150】
化合物SIM1は、二価BET PROTACおよび親の二官能性阻害剤よりも機能的に強力である
【0151】
化合物SIM1の標的結合価数の増加が、他のVHLベースの二価PROTACと比較して、分解と有効性の両方を改善したかどうかを判断するために、まず、二価BET PROTAC ARV-771について各BETファミリーメンバーの動的分解プロファイルを決定した(ref.37)(図8a)。これらおよび以前に公開されたMZ1解析(ref.31)から計算し、化合物SIM1と比較した、分解速度およびDmax50値をBRD2(図3a)、並びにBRD3およびBRD4(図8b)についてプロットした。これらの定量的比較により、化合物SIM1は、大幅に向上した分解速度を有し、また、BRD2については80~300倍(図3a)、BRD3については2~35倍、BRD4については10~20倍の分解能の増加に及ぶDmax50値を有することが明らかになった(図8b)。
【0152】
二価のBET PROTACと比較して、三価PROTACの分解の改善が機能的結果の向上につながるのかどうかを解明するために、本発明者らは次に、BET感受性細胞株である前立腺癌株22Rv1における化合物SIM1の応答を研究することに移った。4時間という早い時点で様々な濃度の化合物で22Rv1細胞を処理すると、関連する二官能性BET分解剤であるMZ1およびARV-771並びに非分解性対照であるMT1およびcis-SIM1と比較して、化合物SIM1のBET分解力およびcMycレベルの抑制活性の増強が確認された(図3bおよび図8c)(ref.39)。
【0153】
VHL阻害剤VH298(ref.39)とプロテアソーム阻害剤MG132での同時処理により、機能的VHLリガーゼおよびプロテアソーム活性に対する化合物SIM1誘導性分解の予想される力学的依存関係が確証された(図8d)。
【0154】
BET阻害剤および分解剤は、MV4;11のBET関連AML系における非バイアスプロテオミクス・プロファイリングにおいて、cMycを含む多数の標的の下方制御(ダウンレギュレーション)をもたらした(10nMの化合物SIM1で4時間処理した後に減少を示した)(図2d)。この癌細胞系におけるcMycの時間依存性減少を定量するために、cMycにHiBiTで内因的にタグ付けし、様々な濃度の化合物SIM1、cis-SIM1、およびMT1を使用して細胞溶解物中のタンパク質レベルを様々な時点でモニタリングした(図3c、左および図9a)。1nMのSIM1濃度でcMycの急速かつ完全な減少が観察されたが(図3c、左)、親のMT1またはcis-SIM1では、同様のレベルのcMycの減少は50~100nMの処理濃度まで達成されなかった(図9a)。各化合物が細胞死にどのような影響を与えるかを解明するために、細胞生存率相関アッセイを実施した。該アッセイにより、1nMのSIM1での処理の場合のみ(cis-SIM1またはMT1の場合では起こらない)6時間後に測定可能な細胞死が生じることが明らかになった(図3c、右)。同様の傾向が、より高い化合物濃度でも観察され、6時間後にSIM1は、どの濃度でも対照化合物よりも細胞毒性が顕著に高いことが判明した(図9b)。
【0155】
次に、本発明者らは、22Rv1癌細胞の生存力に対するSIM1の機能的効果を評価した。PARP開裂アッセイによって示されるように、10nMのSIM1での24時間処理後に実質的な細胞死が観察された(図3dおよび図10a)。対照的に、MT1またはMZ1は、SIM1と同じ濃度で48時間処理しても、検出可能なPARP開裂を引き起こさなかった(図10b~c)。同レベルのPARP切断が、濃度1μMでのみMT1およびMZ1で観察された(図10b~c)。汎カスパーゼ阻害剤(pan-caspase inhibitor)であるQVD-OPhでの同時処理によるPARPの開裂の抑制によって示されるように、細胞はアポトーシスが原因で死滅したのであり、ネクロスタチン-1との同時処理によって示されるように、ネクロプトーシスによるものではなかった(図3dおよび図10a)。
【0156】
化合物処理の間の初期および後期アポトーシス誘導を比較したところ、顕著には、10倍高い濃度の(R,S)-SIM1、MZ1またはMT1と比較した場合でも、SIM1は、試験した全ての二価相当物と比較して、1nMで初期と後期のアポトーシスの両方をはるかに大きい程度誘導した(図17参照、これは、生存率およびホスファチジルセリンの表面存在についてそれぞれApotracker Green染色とDAPI染色によりおよびフローサイトメトリー分析により解析したとき、指示濃度の試験化合物での24時間処理後の、初期(FITC:Apotracker Green)および後期(FITC:Apotracker GreenおよびDAPI)アポトーシス性細胞と健全なMV4;11細胞との割合を示す。データは、積み重ねバーとしてプロットされ、単一のドットは示されない。エラーバーは、3つの生物学的複製物の平均±S.D.を反映する)。まとめると、生物学的データは、(R,S)-SIM1および親の二価分解剤または阻害剤と比較して、三価分解剤SIM1の、より強力な分解と、より実質的な下流機能活性とを裏付けている。
【0157】
二官能性分解剤であるMZ1およびARV-771(それぞれEC50が150nMおよび90nM)と比較して、化合物SIM1(EC50が2nM)の活性が著しく強力であることが確認され、非分解剤cis-SIM1およびMT1(図3e)よりもはるかに大きい最大シグナルを有した。化合物SIM1、MZ1、およびARV-771のカスパーゼ-Glo活性は、VH298およびQVD-OPhでの同時処理によってブロックされたが、一方でQVD-OPhのみがcis-SIM1およびARV-771の活性をブロックし、VH298との同時処理はブロックせず、この結果は、それらが異なる作用機序であることと一致している(図10d)。
【0158】
化合物SIM1の優れた活性は、22Rv1細胞を10nM濃度の試験化合物で24時間処理し、処理細胞を再播種して20日間増殖させるというコロニー形成アッセイにおいて証明された。このアッセイでは、化合物SIM1での処理のみが、ビヒクル対照と比較して有意な細胞毒性をもたらした(図3f)。総合すると、生物学的データは、基準となる親の二価分解剤または阻害剤と比較して、三価分解剤化合物SIM1の、より強力な分解とより実質的な下流機能活性を裏付けている。
【0159】
最後に、本発明者らは、マウスにおける静脈内および皮下投与後のSIM1の薬物動態(PK)を評価した(図18を参照)。SIM1は、高いAUC、低いクリアランス、長い半減期など、非常に好ましいバイオアベイラビリティと安定性を示し、標準的な小分子成分、いわゆる一価のJQ1(ref.36)や二価のMZ1と比べて優れている(データはOpnMe.comにて入手可能)(図18および表2)。このような好ましいPKプロファイルは、その大きなサイズ(分子量1,619Da)を考慮すると注目に値し、SIM1を生体内での使用に適した化学プローブとして認定する。
【0160】
化合物SIM1はBD1およびBD2と分子内で係合し、VHLおよびBRD4と1:1:1の三元複合体を形成する。
【0161】
化合物SIM1の顕著な細胞活性および効力のため、本発明者らは、代表的なBETタンパク質としてVHLおよびBRD4との三価PROTAC複合体の分子認識および化学量論を調べるように促された。これまでの研究により、二価のBET阻害剤がBETタンパク質内のBD1およびBD2ブロモドメインに分子内で同時に係合することは確立されていた(ref.40,41)。
【0162】
したがって、本発明者らは、三価のBET PROTAC SIM1が、その作用機序を支えるシス分子内結合を示す可能性があるという仮説を立てた。これに対処するために、本発明者らはまず、組換えタンパク質を用いた生物物理学的結合アッセイを採用した。野生型(WT)であってそのためシス分子内結合に適格性がある(competent)BRD4からのタンデムBD1-BD2構成物か、またはリガンド結合ポケット中の保存的アスパラギン残基のところにBD1もしくはBD2中に点変異を含み(BRD4BD1中のN140FまたはBRD4BD2中のN433F)2つのブロモドメインのうちの1つへの結合を無効にし、それによって変異体タンデムがシス二価様式で係合できなくなったBRD4からのBRD1-BDR2タンデム構成物を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(ref.27)実験を行った。
【0163】
化合物SIM1は、遊離型またはMZ1結合型BRD4と比較して、BRD4野生型BD1-BD2タンデム構築物のSECプロファイルを、より高い溶出容量にシフトすることができた。この結果は、MT1で観察されたように(図4a)、化合物SIM1とのよりコンパクトな分子内1:1複合体の形成と一致する。対照的に、N140FまたはN433F変異体タンデムを使用した場合、化合物SIM1およびMT1の両方で、溶出容量が大幅に減少することが観察された。この知見は、溶液中での高分子量二量体種の形成と一致しており、比較参照の遊離型のものまたはMZ1結合型BRD4と比較して、溶液中でのより高分子量の2:1種の形成と一致している(図4aおよび図11a)。
【0164】
化合物SIM1がその二価BETリガンド部分を利用して、シス分子内様式でBD1とBD2を係合することを確立したので、本発明者らは次に、VHLリガンド部分からの残余の結合原子価を利用することにより、化合物SIM1がBD1-BD2タンデムドメインとE3リガーゼVHLとの間で所望の1:1:1複合体を形成できるかどうかを問題にした。実際、化合物SIM1、BD1-BD2、およびVHL-ElonginB-ElonginC複合体(VCB)を1:1:1当量で含むサンプルは、単一種としてカラムを流れ、cis-SIM1、BD1-BD2タンデムおよびVCBを同じ当量比で含むサンプルから観察された2本のピーク(この場合は1:1のcis-SIM1:BD1-BD2複合体、および未結合VCBサンプルのみが形成されうる)のいずれと比較しても低い溶出容量で溶出した(図4a)。
【0165】
二価BET阻害剤を用いたこれまでの生物物理学および細胞研究において、BD1とBD2の分子内結合がBRD4の構造的コンホメーション変化を引き起こすことが示された(ref.41)。化合物SIM1のBRD4への細胞結合も構造変化を誘導する可能性があるかどうかを決定するために、本発明者らは、NanoLucドナーとHaloTagアクセプターがそれぞれ隣接した、野生型BRD4または変異体N433Fの同一BD1-BD2タンデムドメインを含有する、NanoBRETバイオセンサーを利用した(図4b)。BD1-BD2タンデムWTセンサーでは、すべての化合物がBRD4コンホメーションの変化を示した。これは、分子内係合で予想されるように、プラトーに達した後に維持される、NanoBRETシグナルの増加により明らかである(図4b)。cis-SIM1とSIM1が類似パターンを示すことを考慮すると、VHLを係合する能力は、BRD4の構造変化に有意な影響を与えないように見えた(図4b)。対照的に、BD1-BD2のN433F変異体センサーは全く応答を示さなかったが、これはコンホメーション変化にBD1とBD2の同時結合が必要であることを示している(図4b)。興味深いことに、cis-SIM1およびSIM1は、BRD4係合のEC50値がMT1よりも高いこと示した(図4b)。
【0166】
これが分子量の増加によるBRD4の結合親和性の低下および/またはそれらの透過性の減少によるものであるかどうかを判断するために、HiBiT-BRD4に結合した蛍光BETトレーサー分子の置換(displacement)を測定するNanoBRETターゲットエンゲージメントアッセイ(ref.41)を実施した。透過性が要因とはならない透過処理(透徹)細胞において、本発明者らは、SIM1、cis-SIM1およびMT1が、ほぼ同一の結合親和性およびIC50値で、内因性HiBiT-BRD4に結合することを観察した(図11b)。しかしながら、生細胞では、SIM1とcis-SIM1の両方とも、MT1と比較してBRD4に対する結合親和性の低下を示し、コンホメーションセンサーアッセイにおいても同じ10倍のシフトが観察された。この結果は、それが親の二価阻害剤と比較して、三価分子の透過性の減少を反映するものであることを示唆している(図11b)。
【0167】
このような細胞透過性の減少にもかかわらず、化合物SIM1が高度に有力な分解剤であり、それらの生化学および細胞研究は、三元複合体形成の様式に関して、化合物SIM1が所定のBETタンパク質内でBD1とBD2を同時に係合し、VHLをリクルートして1:1:1複合体を形成させるという洞察を与える。
【0168】
(R,S)-SIM1を単座BETバインダー対照として使用し、二座BETバインダーSIM1がどの程度の結合力を示すか、つまり分子内BD1およびBD2結合によるBETタンパク質に対する結合親和性をどの程度強化するかを調べた。本発明者らは、確立されたファージベースのブロモドメイン置換(displacement)アッセイを使用して、タンデムブロモドメイン構築物との化合物の結合を定量測定した。二座SIM1は、タンデムブロモドメイン構築物BRD2(1,2)、BRD3(1,2)、BRD4(1,2)および全長BRD4に対してピコモルの親和性を示し、単座(R,S)-SIM1と比較して親和性が50~90倍増加しており、二座(二価)SIM1の親和性を証明している(図14を参照)。
【0169】
化合物MN674は、SIM1の別の類似体として設計され合成された。MN674の構造はSIM1と同じであるが、JQ1バインダーへのリンカー中に含まれるPEG単位が1つ少ない。MN674は、用量応答性分解アッセイにおいて哺乳動物細胞株RCC4-HA-VHLでテストした。このアッセイは、各化合物について500nMから6.4pMまでの8段階の5倍段階希釈での6時間処理を示すイムノブロット(ウエスタンブロットの生データについては図21を、用量応答曲線については図22を参照)を含んだ。BRD2およびBRD4のタンパク質レベルの定量を行ってDC50値を測定し、それを表3にまとめた(図20)。図21は、RCC-HA-VHL細胞においてヘテロ三価PROTAC SIM1およびMN674を使用して、BRD2およびBRD4の用量依存性タンパク質分解を実証するイムノブロットの結果を示す。RCC-HA-VHL細胞を、ヘテロ三価BET-BET-VHL PROTAC SIM1およびMN674の8段階の5倍ずつの段階希釈液(500nM~6.4pM)に6時間曝露し、その後、溶解物を回収してイムノブロット分析した(図21)。BRD2(IRDye 800CW)、BRD4_long(IRDye 800CW)、BRD4_short(IRDye 800CW)およびハウスキーピング遺伝子チューブリン(ローダミン)の蛍光検出には、Bio-Rad社MPイメージングシステムを使用した。バンドの強度は、ImageLab(商標)ソフトウェアを使用して決定し、すべてのBETタンパク質強度を、0.1%DMSOのみの対照に対して有理化された%バンド強度に変換するために、チューブリンに対して正規化した。次に、これらの強度を用量応答[阻害]変数勾配(4パラメーター)分析用のGraphPad Prism(商標)にプロットして、BRD2(図22a)およびBRD4(図22b)に関する曲線を作成し、表3に示すDC50値を決定した(図20)。この実験は、n=2、つまり生物学的複製試験を表す。
【0170】
全体として、MN674は、異なる細胞株に応じて結果がわずかに異なるにもかかわらず、分解能力に関してはSIM1に匹敵することが示された。
【0171】
化合物SIM1は、細胞の滞留時間を延長して協同的で安定な三元複合体を形成する
三元複合体の化学量論を検証し、結合熱力学と三元複合体形成と解離の反応速度をさらに特徴付けるために、本発明者らは、次に逆滴定を行うことによる等温滴定熱量測定(ITC)を使用した(ref.21,32)。まず、予め形成されたSIM1:VCB複合体に対するBRD4のN140FまたはN433Fタンデムの滴定では、2:1の化学量論、モル結合エンタルピーΔH=-9.1および-11.6kcal/モル、およびK=0.12および1.2μMがそれぞれ観察された。対照的に、同一条件下でのBRD4のWT(野生型)BD1-BD2の滴定では、1:1の結合化学量論、大きな負の結合エンタルピー(ΔH=-20kcal/モル)、および、はるかに低い解離定数(K<20nM)が観察された(図4c)。総合すると、ITCデータは、SECで観察された化学量論を確証し、VCB:SIM1によるBRD4BD2の優先的結合が、分子内1:1係合より前の最初のステップである可能性が高いことを示している。
【0172】
細胞の全長BRD4に関連して、BD1とBD2の両方をVHLと共に三元複合体に係合する(engagement)ことの有利性を研究するために、本発明者らは、カイネティクス(速度論的)NanoBRET三元複合体アッセイ(ref.31)を使用して、全長BRD4のWT(野生型)、N140F変異体、またはN433F変異体に対するVHLの結合を調査した。HaloTag-VHLとのさまざまなNanoLuc-BRD4融合体を発現するHEK293細胞では、VHLとWTのBRD4を有する三元複合体が、SIM1の存在下で急速に形成されたのに対し、対照のcis-SIM1またはMT1では該複合体が形成されなかった(図4d)。しかしながら、三元複合体形成はBRD4のN140F変異により著しく減少し、N433F変異によりほぼ消失した(図4d)。これらの結果は、化合物SIM1が三元複合体形成にBD1とBD2の両方を利用することを確証し、ITCの結果およびMZ1で以前に観察されたものと一致して、化合物SIM1がBD1よりもBD2に優先的に結合することを示唆している(ref.21,32)。
【0173】
MZ1と比較した化合物SIM1による細胞内のNanoBRET三元複合体形成も、内因的にタグ付けされたHiBiT BETファミリーメンバーのパネルを用いて評価した。MZ1と比較して、化合物SIM1によって誘導されるVHLを含むBRD2およびBRD4では、より強力で持続的な三元複合体が観察された。BRD3を用いた場合のそれは、それほど長期にわたり安定していないようであり(図11c)、やはりMZ1で以前に認められた結果と同様であった(ref.31,32)。
【0174】
本発明者らは次に、三元複合体の協同性を調査し、BRD4BD2からのビオチン化JQ1の置換(ref.43)を介した、単独での化合物SIM1の結合(IC50=205nM)またはSIM1:VCB二元複合体(IC50=58nM)を測定する、競合AlphaLISAアッセイ(図4e)に示される通り、三元複合体形成に関して正の協同性を意味する、3.5のアルファ値を示すことを実証した。クロスバリデーション(相互検証)として、本発明者らは、蛍光HIF-1αペプチドプローブの置換を介した、PROTAC分子のVHL末端での結合を測定する、競合FPアッセイ(ref.15,32)において協同性を評価した。再び、この実験において、化合物SIM1は、SIM1単独(Kd=186nM)と比較して、二元SIM1:BD1-BD2タンデム(Kd=33nM)としての化合物SIM1の競合的置換の親和性を増強したことから、正の協同性(α=5.2)を示した(図4f)。
【0175】
最後に、本発明者らは、以前記載された通り(ref.32)、SPR結合アッセイにおいて化合物SIM1の三元複合体の形成を評価した。本発明者らは、ビオチン化VCBを表面チップ上に固定化し、シングルサイクル(単回)カイネティクス形式の実験で、BD1-BD2タンパク質過剰量の存在下でプレインキュベートした化合物SIM1の段階希釈溶液をチップに注入した(図4g)(ref.32)。SIM1:BD1-BD2は、予測1:1結合モデルについての%Rmax実測値(64.7±2.3%)が、単独のSIM1の滴定から観察された値(77%)と同等でありかつそれを超えていなかったことにより証明されるように、1:1化学量論でVCBに結合した(図12-表1)。化合物SIM1は、野生型BD1-BD2およびVCBと共に、高親和性で、安定で、かつ長寿命の1:1:1複合体を形成した(t1/2=119±21秒;K=53±4nM)(図4gと図12-表1)。
【0176】
かかる化合物SIM1の正の協同性と、更に二価阻害剤が一価阻害剤と比較して効力が向上するメカニズムとして長い標的滞留時間を提示することを示した以前の研究から、本発明者らは、生細胞において標的へのまたは三元複合体内のいずれかの、化合物SIM1のシス結合様式が、滞留時間の何らかの変化に寄与するかどうかを調べるべく促された。
【0177】
滞留時間をモニタリングするために、HiBiT-BRD4-CRISPR細胞をまず飽和濃度のPROTACまたは阻害剤化合物と共にインキュベートし、続いて競合BET蛍光トレーサーとインキュベートした。この競合的置換(displacement)から生成されるNanoBRETシグナルは、生細胞内でカイネティクス(動態)的に監視でき、その速度と強度は、初期化合物が結合した複合体の滞留時間と正の相関関係を示す(ref.41)。以前の研究と一致して、JQ1は短い滞留時間を有したが、一方でMT1は、二価阻害剤に予想されるように、長い滞留時間を示した(図4h)。興味深いことに、MZ1は、一価BET阻害剤と二価BET阻害剤の間の滞留時間を示し、一価BET標的結合であっても、PROTACを用いて滞留時間の改善が可能であることを示した(図4h)。本発明者らは、これがその協同的な結合によるものであると考えている(ref.21)。驚くべきことに、化合物cis-SIM1とSIM1との間に差が観察され、SIM1はBRD4に関して最長の滞留時間を示したが、cis-SIM1はMT1と同じ置換動態を示した(図4h)。
【0178】
いずれも二価のターゲットエンゲージメント(標的係合)からの結合活性を示しcis-SIM1、(R,S)-SIM1、およびSIM1の間の差異的な挙動は、、SIM1によるVHLのリクルートが、細胞の内側での高度に安定でかつ協同的な三元複合体の形成により、BRD4に対する滞留時間を有意に増加させることを示している。まとめると、それらの生物物理学的結合アッセイとin vitro(試験管内)での細胞研究の結果を総合すると、化合物SIM1が、VHLおよびBETタンパク質と共に、協同的でかつ安定した長寿命の1:1:1三元複合体を形成することが実証された。さらに、本発明者らの知見は、これが構造変化に加えて長期にわたる標的と化合物との相互作用の両方をもたらす、分子内結合によって促進されることを示唆し、かかる分子内結合は、三元複合体にVHLを係合させる能力によってさらに強化されることを示唆している。
【0179】
結果についての考察
本発明者らは、本発明の新規三価PROTAC化合物SIM1~SIM6、特にSIM1が、極めて強力で著しく活性なBETタンパク質の分解剤であることを実証した。本発明者らによる化合物SIM1の生物学および機序の研究は、三元複合体にプラス効果(付加効果)を与えることによってその作用機序を促進するための実行可能な戦略として、PROTAC分解剤の原子価を増加させるという概念実証(proof-of-concept)を提供する。化合物SIM1の作用機序を理解するために、一連の生物物理学的、生化学的、細胞的研究を実施した。最も重要なことに、それらが1:1:1のBRD4:SIM1:VHL複合体化学量論を示し、SIM1がBRD4のBD1とBD2の両方にシス様式で分子内結合し、構造変化を誘導したことを示した(図5a)。BRD4のBD1またはBD2変異体を用いた更なる研究により、親のPROTAC MZ1のBD2特異性と一致して、より重要な最初の段階がBD2であり、BRD4へのSIM1の連続的または優先的なBD結合が起こることが示唆された(図5a)。したがって、本明細書に提示される広範なデータおよびすべてのBETファミリーメンバーの分解パターンに基づいて、本発明者らは、すべてのBETファミリーがこれと同じ様式で化合物SIM1と連関することを提唱する。
【0180】
興味深いことに、BRD2は、一連の直交解析において、ファミリーメンバーの中で最も堅牢な分解レベルを示し、更にそれに対応して最も堅牢なユビキチン化レベルを示すことが判明した。これは、このクラスのBET PROTAC分解剤の中から、BRD2に対して前例のない優先性(選好性)があることを意味する。なぜこのような優先性があるのかは不明であるが、BRD2とVHLとのより高い結合力と三元複合体の安定性、または、誘導される構造変化が、BRD3またはBRD4と比較してBRD2をより生産的なユビキチン化に好ましい状態に配置させる可能性を反映していると思われる。
【0181】
PROTACを介して分解が成功するには、標的タンパク質とE3リガーゼとの間で誘導される三元複合体が形成されなければならないことのみならず、複合体内で標的が効率的なユビキチン化のために適切な位置に配置されることも必要である。この構造上の有利性を達成するために、E2/E3で触媒される新基質のユビキチン化にとって生産的な位置および形状において、標的を最適にリクルートする化合物を発見するために、PROTACの開発に向けて多数のリンカーがテストされている(ref.21,34,44)。おそらく最適でない構造配置までも克服できる、成功への鍵となる要因となり得る追加の要素は、三元複合体形成のカイネティクス(動態)的および熱力学的有利性である。これらの場合、PROTACは、一価分子接着剤の作用機序と同様に、E3リガーゼと標的との間のポジティブな(正の)新相互作用を促進し、その結果、触媒の様にユビキチン化を促進する、安定で、協同的で、かつ長寿命の三元複合体を創製する(ref.21,31,32,45)。この後者の三元複合体の有利性を持たない化合物の場合、二元複合体が三元複合体よりも形成の優先性は高いはずであるから、分解効率の領域(window)はフック効果によって制限されることになる(図5b)(ref.17,46)。一方、協同的な三元複合体を促進するPROTACは、標的またはE3リガーゼと化合物との非生産的な二元相互作用と比較して、より広範囲の分解活性領域を有する三元複合体の方に複合体平衡がシフトされるので、それらの分解効率の領域は、フック効果によって制限されるだろう(図5b)。下流のユビキチン化と分解の結果は三元複合体に依存するため、合理的な化学的設計を通じて最適化できる可能性がある(ref.15)。
【0182】
本明細書に開示される三価PROTACを用いた研究は、その過程での結合力増加の結果としての、構造的、エネルギー的およびカイネティクス的な三元複合体優先性パラメータの最適化を支持する証拠を提供する(図5b)。これは、VHLが係合すると三元複合体を形成する場合にのみ、BRD4に結合する化合物SIM1の細胞滞留時間が延長されることで最も顕著に観察される。三元PROTACによるパラメータの全ての改善が、分解域(window)の大幅な拡大をもたらし、ごく低濃度でのBETファミリーの損失速度から、全くフック効果が観察されないDmax50値より10,000倍高い濃度を有する最大分解まで、分解域の大幅な拡大をもたらした。それらの特性の一部は、MZ1との協同複合体(ref.9)やdBET-6(ref.38)およびARV-771(ref.37)による強力な分解など、二価BETファミリーPROTACで以前に観察されているが、三元複合体で最大の結合活性を達成するためにこれらを組み合わせることで、顕著な分解を駆動することができることは、まだ示されていない。
【0183】
ヘテロ二官能性分解剤から三価分解剤への移行は、特に化学合成の難しさという課題と、分解剤の分子量の増加により細胞透過性の低下または完全に不透性の化合物のいずれかが伴うという前提を鑑みると、三価分解剤への移行は分解結果を改善するための自明のアプローチではない。驚くべきことに、本明細書に開示され特徴づけられる式Iの化合物は、そうではないことを実証した。実際、三価化合物SIM1およびcis-SIM1は、親の二価阻害剤と比較して透過性が低下するけれども、それでもまだ十分な細胞透過性を示す。
【0184】
さらに、二価BET PROTACから三価BET PROTACへの移行により、いくつかの非常に強力で有効な化合物が生まれ、すべてのBETファミリーメンバーの分解が改善されるだけでなく、BET化合物の治療用途の可能性を評価するために使用される、関連の細胞疾患アッセイの性能も向上した。三価分解剤の化学設計と合成は、二価PROTACよりも複雑化するが、労力の増加によって大きな利益が生まれ、標的とE3バインダーの両方がコンジュゲートすることのできる分岐型三官能性のスキャフォールド(足場)を構築するための新しいリンカー設計戦略のアウトラインが提示される。これらの認識されている課題点を克服する上で、三価PROTACは、標的結合価数の増加によって改善された分解剤をもたらすことが明らかになった。
【0185】
生物学的方法
細胞株と培養物。HEK293、22Rv1およびMV4;11細胞(ATCC)を、それぞれDMEMおよびRPMI培地(Invitrogen社)中で増殖させ、10%v/vウシ胎児血清(FBS)(南米起源、Life Scientific Production社)を補足し、加湿雰囲気中、5%CO、37℃および5℃で培養した。LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD2、HiBiT-BRD3、およびHiBiT-BRD4 HEK293細胞を、10%(v/v)FBS含有DMEM中で増殖させ、CRISPR cMyc-HiBiT MV4;11細胞を、10%v/v FBS含有RPMI中で増殖させた。90%コンフルエントになった時点で全ての細胞を週に1~2回分割し、30継代以降は使用しなかった。Mycoalert(商標)検出キット(Lonza社)を使用して細胞のマイコプラズマ汚染を定期的にチェックした。
【0186】
分解アッセイ。処理の12~24時間前に、MV4;11細胞を、10cm培養皿に1mL当たり1×10-6細胞の密度で播種した。22Rv1およびHEK293細胞を、処理の12~24時間前に、6ウェルプレートに2.5~6×10細胞/ウェルの密度で播種した。それらの細胞を、指示阻害剤の有無のもと、試験化合物または等量のDMSOで処理し、記載の時点で溶解させた。溶解のために、細胞を氷冷PBS(Invitrogen社)で2回洗浄し、その後、50mMトリス塩酸塩、pH7.4、150mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、pH7.4、1%(v/v)Triton(商標)X-100、1×Halt(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(ThermoFisher社)を含有する氷冷溶解緩衝液を用いて、MV4;11細胞については250μL/プレート、または22Rv1細胞とHEK293細胞については80μL/ウェル中で溶解した。ライセートを超音波処理し、4℃、15800×gで10分間遠心分離して清澄にし、上清を-80℃で保存した。タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce社)によって決定し、562nmでの吸光度を分光測光法(NanoDrop(商標) ND1000)によって測定した。Novex(登録商標)NuPAGE(商標)4-12%Bis-Trisゲル(Invitrogen社)を使用し、総タンパク質量40μg/ウェルで、サンプルをSDS-PAGEで泳動し、湿式転写によって孔径0.2μmのニトロセルロース膜(Amersham社)に転写し、3%(w/v)BSA(Sigma社)-0.1%TBST溶液でブロックした。ブロットは、抗BRD2(1:2000、Abcam社#ab50818)、抗PARP(1:1000、CST社#9542S)、抗開裂形PARP(1:1000、BD Pharmingen社、#51-9000017)、抗カスパーゼ-3(1:10000、CST社、#9662S)、抗チューブリン(1:3000、Bio-Rad社#12004165)または抗β-アクチン(1:2500、CTS社#4970S)抗体中で4℃にて一晩、回転させながらブロットをインキュベートした。次いで、ヤギ抗マウスまたはロバ抗ウサギIRDye800CW二次抗体(1:10000、LICOR社#925-32210および#926-32213)中で、回転させながらブロットを室温で1時間インキュベートした。ChemiDoc(商標)MPイメージングシステム(Bio-Rad社)を使ってバンドを検出し、そしてβ-アクチンおよびDMSO対照に対する正規化を用いて、各時点についてバンドを定量した(Image Studio Lite、バージョン5.2)。特に示さない限り、データは2つの生物学的複製の平均である。分解データは、Prism(商標)(GraphPad、バージョン7.03)中の単相指数関数減衰モデルを使用して、非線形回帰によってプロットし、フィッティングした。
【0187】
細胞生死アッセイ。MV4;11細胞を、透明底の384ウェルプレート上で、所望の濃度の化合物とともに48時間インキュベートした。MV4;11細胞は、10%FBS、L-グルタミンを補足したRPMI培地中に維持した。初期細胞密度は3×10/mLであった。細胞を、様々な濃度の化合物または0.05%DMSOで各濃度点について3回ずつ処理した。処理後、製造業者の指示に従って、Promega製CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイキットを用いて、細胞生存率を測定した。シグナルは、BMG Labtech製Pherastar(登録商標)発光プレートリーダー上で、推奨設定のもとで記録した。データをGraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアで解析して、各試験化合物のEC50を取得した。
【0188】
カイネティクス的分解と定量。LgBiT(Promega)を安定発現するHEK293細胞(ATCCより)を、CRISPER/Cas9を使用してゲノム編集し、BRD2、BRD3またはBRD4のN末端ゲノム遺伝子座に、HiBiTタグを内在的に取り付けた(ref.31)。カイネティクス分解アッセイでは、細胞を白色の96ウェル組織培養プレートに、100μLの増殖培地中1ウェルあたり2×10個の細胞密度で播種し、37℃、5%COにて一晩インキュベートした。翌日、培地を1:100希釈のエンデュラジン(Endurazine;Promega製)を含有するCO非依存性培地(Gibco社製)と交換し、5%CO中37℃で2.5時間インキュベートした後、化合物の最終濃度1μM(SIM1、SIM2、およびSIM3とBRD4)または10nM(SIM1とBRD2、BRD3およびBRD4)の3倍段階希釈液を添加した。プレートを、37℃に設定したGloMax(登録商標)Discoverマイクロプレートリーダー(Promega製)に蓋をして置き、化合物処理後24時間にわたって5~15分ごとの読み取りによる連続発光測定を実施した。
【0189】
分解カイネティクスの定量化。分解速度および分解プラトー値は、上記で決定されたカイネティクス(動的)分解プロファイルから算出した(ref.31)。簡単に言うと、各カイネティクス濃度曲線の初期劣化部分を、次の方程式にフィッティング(適合)させた:
【0190】
y=(y-プラトー)e-λt+プラトー
【0191】
ここでパラメータλ=h-1単位での分解速度定数。最大分解分画量(degraded fraction)Dmaxは、1マイナス(-)プラトーとして計算された。各曲線について、分解の開始前のデータ点は、フィッティング(fitting)から除外された。次いで、Dmaxを濃度に対してプロットし、Dmax50値を決定した。
【0192】
質量分析プロテオミクス。サンプル調製。RPMI(Invitrogen社)中のMV4;11細胞を、処理24時間前に、100mmプレート上に5×10細胞数にて播種した。試験化合物の添加により細胞を3播種数(3重複製)にて処理した。4時間後、細胞を250×gで5分間遠心分離し、12mLの冷PBSで2回洗浄した。細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)を添加した100mM TRIS pH8.0、4%(w/v)SDS 500μL中で溶解させた。ライセートを短時間パルス超音波処理し、その後4℃、15,000×gで10分間遠心分離した。マイクロBCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fischer Scientific社製)を使用してサンプルを定量し、フィルター支援サンプル調製法を使用して各サンプル200μgを処理および消化し、その後、以前記載されたとおりに(ref.21)ヨードアセトアミドでのアルキル化とトリプシンによる消化を実施した。次に、製造業者の指示に従って、7mm径の3mL C18 SPEカートリッジカラム(Empore(商標);3M社製)を使ってサンプルを脱塩し、TMT10plex(商標)アイソバリック質量タグ標識試薬セット(Thermo Fisher Scientific社製)で標識した。標識後、9つのサンプルからのペプチドを、同じ割合で一緒にプールした。プールしたサンプルを、Ultimate(商標)3000HPLCシステム(Thermo Scientific/Dionex社製)上でXBridgeTMペプチドBEHカラム(130Å、3.5μm、2.1×150mm、Waters社製)での高pH逆相クロマトグラフィーを使用して分画した。緩衝液A(水中10mMギ酸アンモニウム、pH9)および緩衝液B(90%アセトニトリル中10mMギ酸アンモニウム、pH9)を、流速200μL/分で60分間にわたり、5%→60%緩衝液Bの直線勾配で使用した。次に、80本のフラクション(画分)を収集した後、各フラクションの紫外線シグナルに基づいて、それを20本のフラクションにまとめた。すべてのフラクションをGenevac(商標)EZ-2濃縮器中で乾燥し、質量分析のために1%ギ酸に再懸濁した。
【0193】
LC-MS/MS分析。フラクションをUltiMate(商標)3000 RSLCnano Ultra HPLCシステム(Thermo Scientifics社)およびEasySpray(商標)カラム(75μm×50cm、PepMap RSLC C18カラム、2μm、100Å、Thermo Scientific社)に接続されたQ Exactive(商標)HFハイブリッド四重極Orbitrap(商標)質量分析計(Thermo Scientific社)上で連続的に分析した。緩衝液A(水中0.1%ギ酸)および緩衝液B(80%アセトニトリル中0.08%ギ酸)を、300nL/分で125分間にわたって5%→35%緩衝液Bの直線勾配で使用した。カラム温度は50℃であった。質量分析計は、335~1,600m/zのシングル質量分析サーベイスキャンと、それに続く15回の連続したm/z依存MS2スキャンを行う、データ依存モードで操作した。最も強度の高い15本の前駆体イオンが、より高エネルギーの衝突解離によって順番に断片化された。MS1分離ウィンドウは0.7m/zに設定され、分解能は120,000に設定された。MS2分解能は60,000に設定された。MS1とMS2の自動利得制御(オートゲインコントロール;AGC)ターゲットは、それぞれ3×10イオンと1×10イオンに設定された。正規化された衝突エネルギーは32%に設定された。MS1とMS2の最大イオン導入時間は、それぞれ50msと200msに設定された。
【0194】
ペプチドとタンパク質の同定。20フラクションすべての質量分析生データファイルをマージし、タンパク質の同定とTMTレポーターイオンの定量のために、MaxQuant(商標)ソフトウェアのバージョン1.6.0.16によりUniprot-sprot(SwissProt)ヒト正準データベースに対して検索を行った。MaxQuant(商標)パラメータは次のように設定された:酵素はトリプシン/Pを使用、誤開裂の最大数は2に等しく;前駆体の質量許容誤差は10ppmに等しく;フラグメント質量許容誤差は20ppmに等しく;可変的修飾:酸化(M)、アセチル化(N末端)、脱アミド化(NQ)、Gln(グルタミン)→pyro-Glu(ピログルタミン酸)(N末端のQ);固定修飾:カルバミドメチル(C)。データは、1%の誤検出率を適用し、続いて2未満のユニークペプチドを含むタンパク質を除外することによってフィルタリングした。3つのDMSO複製物間の絶対的倍率変化の差が1.5以上である場合、定量したタンパク質を除外した。
【0195】
MV4;11細胞におけるcMyc損失と細胞生存率のモニタリング。CRISPER/cMyc-HiBiT/MV4;11細胞(Promega製)を、不透明の白色96ウェル組織培養プレート(Corning Costar(商標) #3917)に1ウェルあたり5×10細胞数の密度で塗抹した。一晩インキュベートした後、それらを1~100nM濃度の指定化合物で処理し、プロットした時点で、NanoGlo(商標)HiBiT溶解試薬(Promega製)による発光測定を使用して、cMycレベルを測定した。すべての化合物処理の複製プレートを調製し、タンパク質濃度測定と同じ時点で、CellTiter-Glo(登録商標)(Promega製)を使用して細胞生存率を測定した。プレートをオービタルシェーカー上で10~20分間振盪し、その後、GloMax(商標)Discoverマイクロプレートリーダー(Promega製)上で発光を読み取った。
【0196】
Caspase-Glo(登録商標)3/7アッセイ。22Rv1細胞を白色96ウェルプレート(Cloning社製、#3917)中に10,000個細胞/ウェルで播種してから12~24時間後に、阻害剤の存在下もしくは非存在下で試験化合物によりまたは等量のDMSOにより24時間処理した。100μL/ウェルのCaspase-Glo(登録商標)3/7試薬(Promega製)を加え、プレートを500rpmで30秒間振盪した。該プレートを2時間インキュベートし、PHERStar(登録商標)FSプレートリーダー(BMG Labtech社)を使用して発光を測定した。
【0197】
クローン形成アッセイ。22Rv1細胞を10nM SIM1、cis-SIM1、MT1、MZ1、およびARV711で24時間処理した。翌日、細胞をトリプシン処理して計数した。500個の細胞を再播種し、37℃、5%COにて20日間増殖させた。20日間インキュベーション後、氷冷100%(v/v)メタノールを用いて4℃で30分間、細胞を固定した。その後、メタノールを除去し、細胞を500μLの0.1%クリスタルバイオレット色素(MeOH中)により、室温で30分間、細胞を染色した。インキュベーション後、細胞をdHOで洗浄し、一晩放置して乾燥させた。プレートをエプソン社製Perfection(商標)V800フォトスキャナーでスキャンした。画像解析はImageJ(登録商標)ソフトウェアを使って実行した。コロニー形成率(plating effect;PE)は、各処理条件でコロニーを計数し、平均値をコロニー形成細胞数で割ることによって算出した。生存率は、処理細胞のPEを未処理細胞のPEで割り、100を乗じることによって求めた。棒グラフは、GraphPad PRISM(登録商標)ソフトウェアを使用して作成した。エラーバーは、平均値±SDを示す。2つの独立した実験を行った。
【0198】
構築物、タンパク質の発現および精製。ヒトタンパク質BRD2(P25440)、BRD3(Q15059)およびBRD4(O60885)VHL(UiProtアクセッション番号:P40337)、ElonginC(Q15369)、ElonginB(Q15370)の野生型および変異型バージョンをすべてのタンパク質発現に使用した。
【0199】
pET-His-SUMO TEV-BRD4タンデム構築物は、リガーゼ非依存性クローニングを使用して、2つのブロモドメイン(残基1~463)を含む短縮型BRD4を、親のpET-His6-SUMO TEV LICクローニングベクター(1S)中にクローニングすることによって作製した。pET His6 SUMO TEV LICクローニングベクター(1S)は、Scott Gradia社から贈呈された(Addgeneプラスミド#29659)。標準的な手順に従って、突然変異誘発性プライマーを使用してpET-His-SUMO BRD4タンデムに対してQuickChange(登録商標)突然変異誘発を実行し、アセチル-リジン結合ポケット中に位置する保存的アスパラギン残基がフェニルアラニン残基で置換された突然変異体、すなわち、BRD4 N140FおよびBRD4 N433Fを作出した。
【0200】
BRD4タンデム構築物の発現には、N末端にHis6タグが付けられたBRD4(残基1~463)または同様の変異体を、0.4mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を使用して、大腸菌BL21(DE3)中で18℃にて16時間発現させた。大腸菌細胞を高圧セルホモジナイザー(Stansted Fluid Power社)を使用して溶解し、溶解物を遠心分離によって清澄化した。His6タグ付きVCBを、HisTrap(商標)HPアフィニティーカラム(GE Healthcare社)上で、イミダゾール勾配を用いた溶出により精製した。TEVプロテアーゼを使用してHis6タグを除去し、タグを外した複合体を低濃度のイミダゾール緩衝液中に透析した。次に、BRD4をもう一度HisTrap(商標)HPカラムに流し(複合体は結合せずに溶出されるので)、不純物を結合させた。次いで、BRD4を、それぞれMono S(商標)およびSuperdex(商標)-200カラム(GE Healthcare社)を使用する、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。最終的に精製した複合体を、20mM HEPES、pH7.5、100mM塩化ナトリウムおよび1mM TCEP中に保存した。
【0201】
VCB複合体は、前述のように発現させて精製した。簡単に言えば、N末端にHis6タグが付いたVHL(残基54~213)、ElonginC(残基17~112)、およびElonginB(残基1~104)を同時発現させ、複合体をNi-アフィニティークロマトグラフィーによって単離し、TEVプロテアーゼを使用してHis6タグを外し、複合体を陰イオン交換およびサイズ排除クロマトグラフィーでさらに精製した。
【0202】
BETタンパク質BDは、以前に記載されているように(ref.21)発現および精製した。簡単に説明すると、N末端にHis6タグが付いたBRD2-BD1(残基71~194)、BRD2-BD2(残基344~455)、BRD3-BD1(残基24~146)、BRD3-BD2(残基306~416)、BRD4-BD1(残基44~178)およびBRD4-BD2(残基333~460)を発現させ、Ni-アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって単離した。
【0203】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SEC実験は、AKTA Pure System (GE Healthcare社)にて室温で行った。溶液中のオリゴマー状態のBRD4 BD1-BD2タンデムタンパク質は、Superdex(商標)200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare社)を使用し、20mM HEPES(pH7.5)、100mM NaClおよび1mM TCEPを含む緩衝液中でのゲル濾過によって分析し、分子量が既知の球状タンパク質(GE Healthcare、28-4038-41/42)で較正した。BRD4タンデム(25μM)は、注入前にSIM1(25μM)、MZ1(25μM)、MT1(25μM)またはDMSO(0.5%)と共に室温で30分間インキュベートした。各注入サンプル量は200μL、流速は0.8mL/分であった。溶出ピークは、280nmでの紫外吸光度を使用してモニターした。
【0204】
ITC
滴定はITC200マイクロ熱量計(Malvern社)で実施した。滴定は、20mMビス-トリス(Tris)プロパン、100mM NaCl、1mM TCEP、1.6%DMSO、pH7.5中の2μLのタンデムBRD4 BD1-BD2構成物(WTまたはN140FまたはN433F変異体)溶液を、120秒の時間間隔で0.5μL/秒を19回注入することで構成された。タンパク質の最初の注入(0.4μL)を行い、その結果はデータ解析中に廃棄した。すべての実験は、750rpmで撹拌しながら、10mM DMSO原液からのSIM1を25℃で実施し、VCBを20mMビス-トリスプロパン、100mM NaCl、1mM TCEP、pH7.5を含む緩衝液で希釈した。最終DMSO濃度は1.6%(v/v)であった。BRDタンパク質(200μM、シリンジ中)をSIM1-VCB複合体(SIM1 16μM;VCB 32μM、セル中)に滴定した。製造業者により提供されたMicrocal LLC製ITC200 Origin(商標)ソフトウェアを使用して、各BRD4変異体の単一結合部位モデルまたはBRD4 WTの2結合部位モデルにデータを当てはめて、化学量論(n)、解離定数(K)、および結合エンタルピー(ΔH)を取得した。
【0205】
AlphaLISAアッセイ
リガンドは、4nM Hisタグ付きBRD4BD2および10nMビオチン化JQ1に対して滴定した。すべての試薬は、50mM HEPES、100mM NaCl、0.1%BSA、0.02%CHAPS、pH7.5(最終濃度)に希釈した。VCBプレミックス条件では、緩衝液に12.5mM VCBも含まれていた。リガンドは、VCB無しで100μMから開始するか、または20mM VCB含有で10mMから開始して、最終DMSO濃度が1%となる11点の3倍ずつの段階希釈において試験した。結合は、抗His6抗体がコンジュゲートされたAlphaLISAアクセプタービーズおよびストレプトアビジンがコーティングされたドナービーズ(PerkinElmer社製)を使用して、各ビーズの最終濃度10μg/mLで検出した。滴定は、白色の384ウェルのAlphaplates(PerkinElmer社製)で調製され、AlphaLISA励起/発光モジュールを備えたPherastar(商標)FSプレートリーダー(BMG社製)上で読み取った。データを解析し、GraphPad Prism(登録商標)7を使用して用量反応曲線を作成した。各アッセイウェルの最終容量は25μLであった。まず、2.5×リガンドまたはVCBを含む2.5×リガンド10μLを、ブロモドメインとビオチン化JQ1との5×混合物5μLと混合し、室温で1時間インキュベートした。次いでアッセイプレートを暗室に移動し、5μLの5×アクセプタービーズを添加し、1時間インキュベートした。次に、(まだ遮光下で)5μLの5×ドナービーズを添加し、プレートを1時間インキュベートした後に読み取った。
【0206】
蛍光偏光アッセイ
FP競合結合アッセイは、以前に記載されたとおりに(ref.32)、15μLの最終容量で実施し、各ウェル溶液は、15nM VCBタンパク質、10nM FAM標識HF-1αペプチド(FAM-DEALAHypYIPMDDDFQLRSF、「JC9」と称する)、および漸減濃度のPROTAC(50μMから出発する14点の2倍段階希釈液)またはPROTAC:BRD4タンデムタンパク質(10μM PROTAC:40μM個々のブロモドメインまたは10μM PROTAC:20μMタンデムブロモドメインから出発する14点の2倍段階希釈液)を含有する。アッセイは、384ウェルプレート(Corning 3575)上で三重複製に調製し、全ての測定値は、PHERAstar FS(登録商標)(BMG LABTECH)を使用して、それぞれ485nmと520nmの励起波長と発光波長(λ)で取得した。100 mM Bis-Trisプロパン、100mM NaCl、1mM TCEP、pH7.5を使って各成分を原液から溶解し、そしてDMSOを適宜添加して1%の最終濃度になるようにした。正規化を可能にするために、化合物を含まないVCBとJC9を含有する対照ウェル(ゼロ置換)、またはタンパク質が存在しないJC9を含む対照ウェル(最大置換)も含めた。正規化された(%)変位値をlog[PROTAC]に対してプロットし、そしてPrism(商標)(v.8.0.1、GraphPad)を使って非線形回帰により曲線をフィットさせ、各滴定についてのIC50値を決定した。K値は、前に記載の通り、JC9のK(~2nM、直接結合から求めた)から逆算して、IC50値を当てはめた。協同性(α)値は、SIM1単独またはSIM1+BRD4によりそれぞれJC9置換について決定された二元K値と三元K値との比から計算された。
【0207】
SPR結合研究
SPR実験は、以前に記載されたとおり(ref.32)、Biacore(商標)T200装置(GE Healthcare社)上で実施した。ビオチン化VCBの固定化は、20mM TRIS、150mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM TCEP、0.005%TWEEN(商標)20、1%DMSOを含むランニング緩衝液(pH8.3)中で、予めカップリングされたSeries S SAチップ上で、25℃にて実施した。ビオチン化VHLの多重表面密度(40、80および120 RU)を使用した。ビオチン化VCBは以前に記載されているように調製した(ref.32)。すべての相互作用実験は、20mM TRIS、150 mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2 mM TCEP、0.005%TWEEN(商標)20、1%DMSOを含むランニング緩衝液(pH8.3)中で、9℃で実施した。SIM1(100%DMSO中10 mM)は、最初に2%DMSOの濃度のランニング緩衝液中1μMで調製した。この溶液を、DMSOを含まないランニング緩衝液中50μMのBRD4タンデムタンパク質の溶液と1:1混合し、1%DMSOを含むランニング緩衝液中500 nMのSIM1および25μMのBRD4タンデムタンパク質の最終溶液を調製した。次に、この複合体を、2μMブロモドメインおよび1%DMSOを含むランニング緩衝液で段階希釈した(5点の5倍ずつの段階希釈)。溶液は、注入の間に30秒の安定化期間とシリンジ洗浄(50%DMSO)を使用し、チップ表面の再生なしのシングルサイクルカイネティクス解析方式(実験繰り返しごとに三連の複製シリーズ、接触時間100秒、流速100μL/分、解離時間800秒)で連続的に注入した。物質移動の影響を最小限に抑えるために、高速の流速と高い表面密度(固定化量が多い)を使用した。すべてのシングルサイクル実験について、2シリーズのブランク注入を実行した。Biacore Insight(商標)評価ソフトウェアを使用したデータ解析の前に、基準表面とブランク注入からのセンサーグラムを生データから差し引いた。会合速度(kon)、解離速度(koff)、および解離定数(K)を算出するために、物質移動の項を含めた1:1ラングミュア(Langmuir)相互作用モデルを使用して、実験を該モデルにフィッティングさせた。
【0208】
NanoBRETユビキチン化、三元複合体、およびバイオセンサー実験
内因性生細胞BET:ユビキチンおよびBET:VHLアッセイにおいて、LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD2、HiBiT-BRD3、およびHiBiT-BRD4 HEK293細胞を、FuGENE HD(商標)(Promega)を使って、6ウェルプレート中2μgのHaloTag-UBBまたはHaloTag-VHLベクターによりトランスフェクトした。NanoLuc-BRD4 WT、N433F変異体、またはN140F変異体を使用した完全一過性NanoBRET実験では、HEK293細胞(8×10個)を、0.02μgのNanoLuc-BRD4および2μgのHaloTag-VHLベクターにより同時トランスフェクトした。WTタンデムBD1-BD2ドメイン(AA 44~460)またはN433F変異を含むBRD4 NL-BD1-BD2-HTバイオセンサーを使用した一過性NanoBRET実験では、HEK293細胞(8×10)を0.02μgバイオセンサープラスミドと2μgのキャリアDNAによりトランスフェクトした。翌日、トランスフェクトされた細胞(2×10個)を、HaloTag NanoBRET618リガンド(Promega製)の存在下または非存在下で、白色96ウェル組織培養プレートに再播種し、37℃、5%COにてインキュベートした。カイネティクス実験では、培地をビバジン(Vivazine;Promega製)の1:100希釈液を含有するOpti-MEM(商標)(Gibco社)に置き換え、プレートを37℃、5%COにて1時間インキュベートした後、DMSOまたは最終濃度10nM~1μMの指示化合物を添加した。次いで、37℃、5%COに設定された雰囲気制御ユニット(BMG Labtech社)を装備したCLARIOstar(商標)上で、3分ごとに最大5時間まで、継続的なBRET測定を実施した。バイオセンサー実験では、細胞を10μMの指定化合物の3倍ずつの段階的滴定で処理した。NanoBRET NanoGlo(商標)(Promega製)基質を添加し、化合物処理の2時間後に、GloMax(登録商標)Discoverマイクロプレートリーダー(Promega製)を使用してBRET測定を行った。二元フィルターを通過した発光は、460nm/80nmバンドパスフィルターと610nmロングパスフィルター(アクセプター、HaloTag NanoBRET(商標)リガンド)を使用し、0.5秒の積分時間で集光した。すべてのNanoBRET実験について、ミリBRET単位で表されるバックグラウンドを差し引いたNanoBRET比は、次の方程式から計算された。
【0209】
【数1】
【0210】
BRETの倍率増加は、mBRET比をDMSO対照の平均mBRET比に対して正規化することによって算出した。
【0211】
NanoBRET (商標) ターゲットエンゲージメントおよび滞留時間
生細胞と透過処理した細胞におけるターゲットエンゲージメント(候補化合物が目的の標的に結合し、疾患に対して期待通りの作用を示すかどうかを判断指標をもって評価すること)実験のために、LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD4 HEK293細胞を、2×10細胞/ウェルの密度で白色96ウェル組織培養プレートに播種した。NanoBRET測定の前に、細胞をエネルギー移動プローブおよび指定の試験化合物によって1時間平衡化した。NanoBRETトレーサーは、トレーサー希釈緩衝液(12.5mM HEPES、31.25%PEG-400、pH7.5)中20×の使用濃度に調製した。NanoBRET(商標) BRD Tracer-02を、0.5μMの最終濃度で細胞に添加した。生細胞中でNanoBRETを測定するために、NanoBRET NanoGlo(商標)基質および細胞外NanoLuc(商標)阻害剤(Promega)を、製造業者の推奨プロトコルに従って添加し、そして450nm BPフィルター(ドナー)および600nm LPフィルター(アクセプター)を備えたGloMax(登録商標)Discoverルミノメーター上で、フィルターを通過した発光を測定した。0.3秒の積分時間を使用した。透過処理された細胞でNanoBRETを測定するために、最終濃度50μg/mLになるようにジギトニンを細胞に添加し、検出工程では細胞外NLuc阻害剤を省略した。滞留時間実験では、LgBiTを安定発現するCRISPR HiBiT-BRD4 HEK293細胞をトリプシン処理し、洗浄し、Opti-MEM(登録商標)で2×10細胞/mLの密度に再懸濁し、1μM JQ1、1μM SIM1、100nMのcis-SIM1、100nM MT1のいずれかとともに、または生細胞フォーマットでのトレーサー置換の代表的なIC80値を表す10μM MZ1とともにインキュベートした。細胞は、組織培養インキュベータ内で、キャップを緩めた15 mLコニカルチューブ中で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を300×gで5分間遠心し、Opti-MEM(商標)で1回洗浄し、2回目に300×gで5分間遠心し、新鮮なOpti-MEMで再懸濁した後、2×10細胞/ウェルで塗抹した。NanoBRET(商標)Tracer-02を最終濃度0.5μM細胞で添加し、カイネティクスNanoBRET(商標)測定値をGloMax(登録商標)Discoverで収集した。NanoBRET(商標)比はミリBRET単位で表され、「NanoBRETユビキチン化、三元複合体、およびバイオセンサー実験」という上記の項目に記載の式に従って計算した。
【0212】
化学-材料と方法
特に断らない限り、全ての化学物質は市販品であり、少なくとも純度90%であり、更に精製することなく使用した。市販の乾燥溶媒を使用した。順相TLCは、プレコーティング済シリカプレート(Kieselgel(商標)60 F254、BDH社)上でUV光(UV 254nmおよび/または365nm)および/または塩基性過マンガン酸カリウム溶液を介した可視化によって実行した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、充填済Redisep(商標)RF順相使い捨てカラムを用いるテラダイン社のIsco Comiflash(商標)Rfを使って実施した。NMRスペクトルは、指定どおりブルカー社Ascend(商標)400MHzまたは500MHz上に記録した。化学シフトはppmで記録し、残留溶媒シグナルを基準とする:H-NMRδ(ppm)=7.26(CDCl)、13C-NMRδ(ppm)=77.16(CDCl);H-NMRδ(ppm)=5.32(CDCl)、13C-NMRδ(ppm)=53.84(CDCl)、H-NMRδ(ppm)=2.50(DMSO-d6);H-NMRδ(ppm)=3.31(CDOD)、13C-NMRδ(ppm)=49.00(CDOD)。シグナル分割パターンは、一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)、多重線(m)、幅広(br)、またはそれらの組み合わせとして記述される。カップリング定数(J)はヘルツ(Hz)単位で測定される。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、ブルカー社のmicroTOF(商標)上で記録された。他の分解用MSおよび分析用HPLCトレースは、Agilent社のダイオードアレイ検出器に接続されたAgilent Technologies社製6130四重極LC/MS搭載のAgilent Technologies社製1200HPLC上で記録された。使用したカラムはWaters社製XBridge(商標)カラム(50mm×2.1mm、粒径3.5μm)であり、化合物は5~95%アセトニトリル/水+0.1%ギ酸の勾配(「酸性法」)で溶出させた。HPLC精製は、Waters社製XBridge(商標)C18カラム(100mm×19mm;粒径5μm)を装備したGilson社製分取用HPLCシステム上で、10分間にわたる水中5%~95%アセトニトリルの勾配により、流量25mL/分にて、水相に0.1%アンモニアを使用して実施した。
【0213】
使用する略語:DMSO(ジメチルスルホキシド)、PMB(p-メトキシベンジル)、Ms(メシル)、tBu(tert-ブチル)、pTsOH(p-トルエンスルホン酸)、TBAB(臭化テトラブチルアンモニウム)、TFA(トリフルオロ酢酸)、MeOH(メタノール)、DCM(ジクロロメタン)、DDQ(2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン)、THF(テトラヒドロフラン)、HATU(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロリン酸塩)、HOAt(1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール)、DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)、COMU((1-シアノ-2-エトキシ)-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩)。
【0214】
化合物SIM1、SIM2およびSIM3の合成
【0215】
【化18】
【0216】
【化19】
【0217】
(2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(
【0218】
【化20】
【0219】
2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(50.0g、0.42モル)およびp-トルエンスルホン酸(50mg)を乾燥アセトン(500mL)に溶解した。-混合物を室温で2日間撹拌した。固体の炭酸カリウムを添加することによって溶液を中和し、濾過し、真空下で蒸発させて、所望の生成物(64g、96%、濃厚な無色油)を得、これをさらに精製することなく使用した。分析データは文献で報告されているデータと一致した(Ouchi M.他、J.Org.Chem.1987、52、2420)。
【0220】
2-((アリルオキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(
【0221】
【化21】
【0222】
O(1.05mL)中の水酸化カリウム(1.05g、16.75ミリモル)、臭化アリル(1.54mL、18.75ミリモル)およびTBAB(202mg、0.625ミリモル)を、トルエン(6.25mL)中の(2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール()(1.0g、6.25ミリモル)の溶液に添加した。得られた混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈した。有機相を分離し、蒸発乾固した。粗製物質をカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られたアリルエーテルをメタノール(16mL)およびHO(3.2mL)に溶解した。トリフルオロ酢酸(287μL)を加えた後、混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固した。粗製物質をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量:860mg(86%)。
【0223】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=5.98-5.83(1H,m),5.28(1H,dd,J=1.4,17.3Hz),5.21(1H,dd,J=1.2,10.5Hz),4.03-3.98(2H,m),3.73(2H,dd,J=4.8,11.0Hz),3.62(2H,dd,J=5.5,10.9Hz),3.47(2H,d,J=4.0Hz),2.70(2H,s),0.86(3H,s)。
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=134.3,117.2,75.8,72.5,68.0,40.8,17.2。
【0224】
11-((アリルオキシ)メチル)-1,21-ジアジド-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン(
【0225】
【化22】
【0226】
2-((アリルオキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール()(136mg、0.85ミリモル)、2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチルメタンスルホネート()(646mg、2.55ミリモル)を、1,4-ジオキサン(0.85mL)に溶解した。TBAB(55mg、0.18ミリモル)、ヨウ化カリウム(7.1mg、0.04ミリモル)および水酸化カリウム粉末(143mg、2.55ミリモル)を加え、反応液を100℃で2時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、濾過した。有機相を蒸発乾固させた。粗製物質を酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:50mg(12%)。
【0227】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=5.96-5.84(1H,m),5.26(1H,dd,J=1.7,17.2Hz),5.15(1H,dd,J=1.5,10.4Hz),4.01-3.93(2H,m),3.76-3.61(16H,m),3.62-3.55(4H,m),3.44-3.37(4H,m),3.37-3.33(4H,m),3.33-3.29(2H,m),0.96(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl3)δ(ppm)=135.3,116.0,74.0,73.0,72.3,71.1,70.8,70.7,70.5,70.0,50.7,41.0,17.4。
【0228】
14-((アリルオキシ)メチル)-1,27-ジアジド-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン(
【0229】
【化23】
【0230】
2-((アリルオキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール()(50mg、0.31ミリモル)、2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチルメタンスルホネート()(278mg、0.94ミリモル)を1,4-ジオキサン(0.31mL)に溶解した。TBAB(55mg、0.18ミリモル)、ヨウ化カリウム(2.6mg、0.016ミリモル)および水酸化カリウム粉末(52.5mg、0.94ミリモル)を加え、反応液を100℃で2時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、濾過した。有機相を蒸発乾固させた。粗製物質を酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:15mg(9%)。
【0231】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=5.93-5.83(1H,m),5.25(1H,dd,J=1.3,17.2Hz),5.16-5.11(1H,m),3.96-3.92(2H,m),3.71-3.54(28H,m),3.42-3.27(10H,m),0.94(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=135.5,116.2,74.2,73.2,72.4,71.2,70.9,70.8,70.6,70.2,50.9,41.2,17.6。
【0232】
1-((2-ヨードエトキシ)メチル)-4-メトキシベンゼン(
【0233】
【化24】
【0234】
ヨウ素(180mg、0.71ミリモル)を0℃で、トリフェニルホスフィン(187mg、0.71ミリモル)およびイミダゾール(48.6mg、0.71ミリモル)のジクロロメタン(3.8mL)溶液に加えた。得られた混合物を室温で5分間撹拌した。反応混合物に、ジクロロメタン(1.3mL)中の2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エタン-1-オール()(100mg、0.55ミリモル)を0℃で加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。反応をNaSO(水性)およびNaHCOでクエンチし、次いで酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、蒸発乾固した。粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量:131mg(82%)。
【0235】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=7.28(2H,d,J=8.8Hz),6.89(2H,d,J=8.8Hz),4.51(2H,s),3.81(3H,s),3.71(2H,t,J=7.0Hz),3.26(2H,t,J=6.7Hz)
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=159.4,129.9,129.4,113.9,72.6,70.5,55.3,3.0。
【0236】
5-((2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エトキシ)メチル)-2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン(
【0237】
【化25】
【0238】
水素化ナトリウム60%鉱油分散液(384mg、9.60ミリモル)を、0℃にてDMF(3.0mL)中の(2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール()(1.54g、9.60ミリモル)の溶液に加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。混合物に、DMF(0.5mL)中の1-((2-ヨードエトキシ)メチル)-4-メトキシベンゼン()(700mg、2.40ミリモル)を0℃で滴下した。反応混合物を130℃で45分間撹拌した。混合物をHOでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機相を蒸発乾固させた。粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量:110mg(14%)。
【0239】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=7.29(2H,d,J=6.3Hz),6.90(2H,d,J=8.8Hz),4.53(2H,s),3.83(3H,s),3.74(2H,d,J=11.9Hz),3.68-3.60(4H,m),3.56(2H,d,J=11.7Hz),3.49(2H,s),1.45(3H,s),1.42(3H,s),0.92(3H,s).
13CNMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=159.3,130.7,129.4,113.9,98.0,74.3,73.0,71.3,69.2,66.7,55.4,34.6,26.4,21.5,18.5。
【0240】
2-((2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エトキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(10
【0241】
【化26】
【0242】
トリフルオロ酢酸(11μL、0.14ミリモル)を、メタノール(0.6mL)と水(0.02mL)中の5-((2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エトキシ)メチル)-2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン()(77mg、0.24ミリモル)に添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌し、次いで蒸発乾固した。粗物質をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量60mg(89%)。
【0243】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=7.26(2H,d,J=8.5Hz),6.88(2H,d,J=8.5Hz),4.49(2H,s),3.80(3H,s),3.51(2H,s),2.66(2H,s),0.80(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=159.5,130.1,129.6,114.0,73.1,70.9,69.0,68.3,55.4,41.0,17.4。
【0244】
1,21-ジアジド-11-((2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン(11
【0245】
【化27】
【0246】
1,4-ジオキサン(0.51mL)中の2-((2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エトキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(10)(73mg、0.26ミリモル)と2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチルメタンスルホネート()(390mg、1.54ミリモル)の混合物に、TBAB(25mg、0.077ミリモル)、ヨウ化カリウム(2.1mg、0.013ミリモル)および水酸化カリウム粉末(86mg、1.54ミリモル)を添加した。得られた反応混合物を100℃で40時間撹拌した。反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量:85mg(55%)。
【0247】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=7.26(2H,d,J=8.4Hz),6.87(2H,d,J=8.4Hz),4.49(2H,s),3.80(3H,s),3.70-3.53(24H,m),3.41-3.35(4H,m),3.35-3.30(6H,m),0.94(3H,s)。
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=159.3,130.8,129.3,113.9,74.1,72.9,71.2,70.9,70.8,70.7,70.2,69.3,55.4,50.9,41.2,17.5。
【0248】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-オール(12
【0249】
【化28】
【0250】
O(0.20mL)とジクロロメタン(2.0mL)中の1,21-ジアジド-11-((2-((4-メトキシベンジル)オキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン(11)(118mg、0.20ミリモル)の混合物に、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(49.2mg、0.22ミリモル)を0℃で加えた。得られた反応混合物を4℃で16時間撹拌した。反応混合物をNaHCO(水性)でクエンチし、濾過して沈殿物を除去した。濾液を蒸発させ、残った残渣を酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)で精製して表題化合物を得た。収量:86mg(91%)。
【0251】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=3.71-3.61(18H,m),3.60-3.55(4H,m),3.55-3.51(2H,m),3.42-3.30(10H,m),2.48(1H,t,J=6.2Hz),0.94(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=74.2,73.5,72.3,71.2,70.9,70.8,70.7,70.2,61.7,50.9,41.1,17.7。
【0252】
11-((2-(アリルオキシ)エトキシ)メチル)-1,21-ジアジド-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン(13
【0253】
【化29】
【0254】
1,4-ジオキサン(0.21mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-オール(12)(50mg、0.10ミリモル)の混合物に、臭化アリル(26mg、0.31ミリモル)および水酸化カリウム粉末(18mg、0.31ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を80℃で6時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、蒸発させた。残った残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量:39mg(72%)。
【0255】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=5.95-5.85(1H,m),5.26(1H,dd,J=1.7,17.2Hz),5.16(1H,dd,J=1.4,10.5Hz),4.01(2H,d,J=6.0Hz),3.73-3.59(16H,m),3.58-3.52(8H,m),3.40-3.35(4H,m),3.35-3.28(6H,m),0.93(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=135.1,116.8,74.1,72.2,71.2,70.9,70.8,70.7,70.2,69.5,50.8,41.2,17.5。
【0256】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-アール(14
【0257】
【化30】
【0258】
O(0.3mL)および1,4-ジオキサン(1.0mL)中の11-((アリルオキシ)メチル)-1,21-ジアジド-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン()(25mg、0.053ミリモル)の混合物に、2,6-ルチジン(12.2μL、0.11ミリモル)、HO中4%四酸化オスミウム(6.7μL、0.0011ミリモル)、過ヨウ素酸ナトリウム(45mg、0.21ミリモル)を添加した。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物をNaSO(水溶液)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、残った残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。収量:16mg(64%)。
【0259】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=9.73(1H,s),4.02(2H,s),3.74-3.52(20H,m),3.46-3.26(10H,m),0.98(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=202.2,77.0,74.7,73.9,71.2,70.9,70.8,70.7,70.2,50.9,41.3,17.5。
【0260】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-アール(15
【0261】
【化31】
【0262】
O(0.6mL)および1,4-ジオキサン(1.7mL)中の11-((2-(アリルオキシ)エトキシ)メチル)-1,21-ジアジド-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン(13)(50mg、0.096ミリモル)の混合物に、2,6-ルチジン(22.4μL、0.19ミリモル)、四酸化オスミウム4%水溶液(12.2μL、0.0019ミリモル)および過ヨウ素酸ナトリウム(82.5mg、0.39ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物をNaSO(水溶液)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、残った残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。収量:38mg(76%)。
【0263】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=9.71(1H,s),4.14(2H,s),3.71-3.50(24H,m),3.44-3.25(10H,m),0.92(3H,s)。
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=201.3,77.0,73.9,73.4,71.1,70.8,70.6,70.1,55.1,50.8,41.0,17.5。
【0264】
1-アジド-14-(13-アジド-2,5,8,11-テトラオキサトリデシル)-14-メチル-3,6,9,12,16-ペンタオキサオクタデカン-18-アール(16
【0265】
【化32】
【0266】
O(0.4mL)および1,4-ジオキサン(1.7mL)中の14-((アリルオキシ)メチル)-1,27-ジアジド-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン()(35mg、0.062ミリモル)の混合物に、2,6-ルチジン(14.5μL、0.12ミリモル)、四酸化オスミウム4%水溶液(12.2μL、0.0012ミリモル)、過ヨウ素酸ナトリウム(53mg、0.25ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物をNaSO(水溶液)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、残った残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。収量:23mg(65%)。
【0267】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=9.75(1H,s),4.10-3.99(2H,m),3.77-3.29(38H,m),1.00(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=202.2,74.7,73.9,71.2,70.9,70.8,70.6,70.2,50.9,41.3,17.5。
【0268】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-酸(17
【0269】
【化33】
【0270】
t-BuOH(0.6mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-アール(14)(16mg、0.034ミリモル)の混合物に、THF中2Mの2-メチル-2-ブテン(84μL、0.168ミリモル)、NaHPO(4.0mg、0.034ミリモル)、HO(0.2mL)中塩化ナトリウム(12.1mg、0.134ミリモル)を添加した。生じた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、次いでNaOH(水性)で希釈した。混合物をMTBEで洗浄し、2M HClで中和した。ジクロロメタンで抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮した。残った粗生成物をさらに精製することなく次のステップで使用した。収量:16mg(97%)。
【0271】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=4.05(2H,s),3.70-3.58(20H,m),3.45-3.33(10H,m),0.95(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=172.1,75.4,74.7,71.3,70.9,70.7,70.4,70.2,68.8,50.8,40.8,18.0。
【0272】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-酸(18
【0273】
【化34】
【0274】
t-ブタノール(1.2mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-アール(15)(35mg、0.067ミリモル)の溶液に、THF中2Mの2-メチル-2-ブテン溶液(168μL、0.336ミリモル)、NaHPO(8.1mg、0.067ミリモル)、HO(0.2mL)中の塩化ナトリウム(24mg、0.265ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、次いでNaOH(水溶液)で希釈した。混合物をMTBEで洗浄し、2M HClで中和した。ジクロロメタンで抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮した。残った粗生成物をさらに精製することなく次のステップで使用した。収量:36mg(定量的)。
【0275】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=4.09(2H,s),3.71-3.47(24H,m),3.37-3.21(10H,m),0.87(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=172.2,74.0,73.9,71.5,71.1,70.8,70.7,70.1,68.9,50.8,41.0,17.5。
【0276】
1-アジド-14-(13-アジド-2,5,8,11-テトラオキサトリデシル)-14-メチル-3,6,9,12,16-ペンタオキサオクタデカン-18-酸(19
【0277】
【化35】
【0278】
t-ブタノール(0.45mL)中の1-アジド-14-(13-アジド-2,5,8,11-テトラオキサトリデシル)-14-メチル-3,6,9,12,16-ペンタオキサオクタデカン-18-アール(16)(14mg、0.025ミリモル)の混合物に、THF中2Mの2-メチル-2-ブテン溶液(62μL、0.124ミリモル)、NaHPO(3.0mg、0.025ミリモル)、HO(0.15mL)中の塩化ナトリウム(8.9mg、0.099ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、次いでNaOH(水溶液)で希釈した。混合物をMTBEで洗浄し、2M HClで中和した。ジクロロメタンで抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮した。残った粗生成物をさらに精製することなく次のステップで使用した。収量:8mg(56%)。
【0279】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=4.04(2H,s),3.71-3.55(28H,m),3.45-3.32(10H,m),0.95(3H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.9,75.3,74.7,71.4,70.9,70.8,70.7,70.4,70.2,68.9,50.9,40.8,18.0。
【0280】
(2S,4R)-1-((S)-1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-17-(tert-ブチル)-11-メチル-15-オキソ-3,6,9,13-テトラオキサ-16-アザオクタデカン-18-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(20
【0281】
【化36】
【0282】
COMU(10.4mg、0.024ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(14.1μL、0.081ミリモル)を、DMF(0.20mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-酸(17)(10mg、0.020ミリモル)の溶液に添加した。得られた反応混合物を室温で2分間撹拌した。VH032アミン塩酸塩(ref.53)(14.2mg、0.031ミリモル)を混合物に加えた。次いで、混合物を室温で16時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:10mg(54%)。
【0283】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.68(1H,s),7.39-7.30(5H,m),7.10(1H,d,J=8.5Hz),4.73(1H,t,J=7.8Hz),4.59-4.51(2H,m),4.48(1H,d,J=8.7Hz),4.35(1H,dd,J=5.5,15.0Hz),4.09(1H,d,J=12.0Hz),3.94(2H,dd,J=15.4,17.7Hz),3.71-3.53(21H,m),3.46-3.30(10H,m),2.60-2.49(1H,m),2.51(3H,s),2.16-2.08(1H,m),0.96(3H,s),0.95(9H,s)。
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.5,170.8,170.7,150.5,148.6,138.3,131.8,131.1,129.7,128.3,74.8,74.2,74.1,71.2,70.9,70.8,70.7,70.6,70.3,70.2,58.5,57.2,56.7,50.8,43.4,41.1,35.9,35.0,26.5,17.7,16.2。
MS(ESI):C41651011S[M+H]についての計算値905.5、実測値905.3。
【0284】
(2S,4R)-1-((S)-21-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-2-(tert-ブチル)-11-メチル-4-オキソ-6,9,13,16,19-ペンタオキサ-3-アザヘニコサノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(21
【0285】
【化37】
【0286】
DMF(0.32mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-酸(18)(17mg、0.032ミリモル)の溶液に、HATU(18mg、0.048ミリモル)、HOAt(6.5mg、0.048ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(22μL、0.127ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で5分間撹拌した。VH032アミン塩酸塩(ref.53)(22.1mg、0.032ミリモル)を混合物に加えた。次いで、混合物を室温で6時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:13mg(43%)。
【0287】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.75(1H,s),7.44-7.34(5H,m),7.21(1H,d,J=8.0Hz),4.76(1H,t,J=7.8Hz),4.61-4.50(3H,m),4.38(1H,dd,J=5.4,14.8Hz),4.12-3.97(3H,m),3.74-3.55(25H,m),3.43-3.29(10H,m),2.61-2.51(1H,m),2.54(3H,s),2.17-2.10(1H,m),0.97(9H,s),0.94(3H,s)。
【0288】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.6,170.8,170.5,150.6,148.3,138.4,131.9,130.9,129.7,128.3,74.2,74.1,71.2,71.1,70.9,70.8,70.6,70.3,70.2,58.6,57.2,56.8,50.9,43.4,41.1,36.0,35.1,26.6,17.5,16.0。
MS(ESI):C43691012S[M+H]についての計算値949.5、実測値949.4。
【0289】
(2S,4R)-1-((S)-1-アジド-14-(13-アジド-2,5,8,11-テトラオキサトリデシル)-20-(tert-ブチル)-14-メチル-18-オキソ-3,6,9,12,16-ペンタオキサ-19-アザヘニコサン-21-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(22
【0290】
【化38】
【0291】
DMF(0.20mL)中の1-アジド-14-(13-アジド-2,5,8,11-テトラオキサトリデシル)-14-メチル-3,6,9,12,16-ペンタオキサオクタデカン-18-酸(19)(7.1mg、0.012ミリモル)の溶液に、HATU(7.0mg、0.018ミリモル)、HOAt(2.5mg、0.018ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(8.5μL、0.127ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で5分間撹拌した。VH032アミン塩酸塩(ref.53)(22.1mg、0.049ミリモル)を混合物に加えた。次いで、混合物を室温で6時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:6.2mg(51%)。
【0292】
H-NMR(500MHz,CDOD)δ(ppm)=8.90(1H,s),7.54-7.36(5H,m),4.69(1H,d,J=9.7Hz),4.61-4.48(3H,m),4.36(1H,dd,J=5.1,15.6Hz),4.00(1H,d,J=14.8Hz),3.96(1H,d,J=15.4Hz),3.87(1H,d,J=11.5Hz),3.80(1H,dd,J=3.7,10.8Hz),3.69-3.55(28H,m),3.48(1H,d,J=9.3Hz),3.44(1H,d,J=9.0Hz),3.41-3.34(8H,m),2.49(3H,s),2.27-2.19(1H,m),2.14-2.06(1H,m),1.05(9H,s),1.01(3H,s)。
【0293】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=174.4,171.9,171.6,152.9,149.0,140.3,133.5,131.5,130.4,129.0,75.5,74.8,74.8,72.2,71.7,71.6,71.5,71.1,60.8,58.1,51.8,43.7,42.1,38.9,37.3,27.0,18.0,15.8。
MS(ESI):C45731013S[M+H]についての計算値993.5、実測値993.4。
【0294】
N,N′-(11-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(SIM1)
【0295】
【化39】
【0296】
MeOH(0.60mL)中の(2S,4R)-1-((S)-1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-17-(tert-ブチル)-11-メチル-15-オキソ-3,6,9,13-テトラオキサ-16-アザオクタデカン-18-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(20)(10mg、0.011ミリモル)の混合物に、10重量%パラジウム/炭素(2.0mg)を加えた。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、混合物をセライトパッドで濾過し、蒸発させた。DMF(0.20mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(12.5mg、0.031ミリモル)、COMU(13.4mg、0.031ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(13.6μL、0.078ミリモル)の事前攪拌混合物を、濃縮粗製物に添加した。次いで、その混合物を室温で3時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:10mg(54%)。
【0297】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.67(1H,s),7.47-7.28(14H,m),7.17(1H,d,J=9.7Hz),4.86(1H,m),4.83(t,1H,J=7.9Hz),4.70-4.61(3H,m),4.53(1H,dd,J=5.7,15.2Hz),4.48-4.42(1H,m),4.34(1H,dd,J=6.0,14.9Hz),4.1(1H,d,J=11.1Hz),4.06(1H,d,J=15.3Hz),3.96(1H,d,J=15.3Hz),3.70-3.24(31H,m),3.21(1H,d,J=8.9Hz),2.63(6H,s),2.50(3H,s),2.44(1H,m),2.39(6H,s),2.15(1H,m),1.94-1.84(4H,m),1.65(6H,s),0.97(9H,s),0.93(3H,s)。
【0298】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.5,171.2,170.8,170.7,164.0,155.9,150.4,149.9,148.6,138.5,136.9,132.3,131.1,130.9,130.7,130.1,129.6,128.8,128.2,73.7,73.6,73.5,71.2,70.8,70.7,70.6,70.4,70.3,70.1,59.0,57.3,56.7,54.5,43.3,41.1,39.6,38.8,36.5,35.6,26.6,17.7,16.2,14.5。
HRMS(ESI):C7999l21413[M+H]についての計算値1617.6050、実測値1617.6390。
【0299】
N,N′-(11-((2-(2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル))ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(SIM2)
【0300】
【化40】
【0301】
MeOH(0.80mL)中の(2S,4R)-1-((S)-21-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-2-(tert-ブチル))-11-メチル-4-オキソ-6,9,13,16,19-ペンタオキサ-3-アザヘニコサノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(21)(13mg、0.014ミリモル)の溶液に、10重量%パラジウム/炭素(2.5mg)を加えた。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、混合物をセライトパッドで濾過し、蒸発させた。DMF(0.20mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(22.2mg、0.055ミリモル)、COMU(23.7mg、0.055ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(16μL、0.092ミリモル)の溶液の事前撹拌混合物を、濃縮粗製物に添加した。次いで、混合物を室温で16時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中の5~95%CHCN)により精製して、表題化合物を得た。収量:12mg(53%)。
【0302】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.67(1H,s),7.57(1H,t,J=4.9Hz),7.42-7.28(12H,m),7.25-7.15(2H,m),4.81(1H,t,J=7.7Hz),4.69-4.60(3H,m),4.54-4.47(2H,m),4.46-4.42(1H,m),4.36(1H,dd,J=5.8,15.3Hz),4.07(1H,d,J=15.4Hz),4.05(1H,brd,J=11.1Hz),3.98(1H,d,J=15.4Hz),3.73-3.23(36H,m),2.63(3H,s),2.62(3H,s),2.50(3H,s),2.47-2.40(1H,m),2.39(6H,s),2.23-2.16(1H,m),2.01-1.91(4H,m),1.66(6H,s),0.97(9H,s),0.92(3H,s)。
【0303】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.4,171.2,170.7,170.2,163.9,155.9,150.3,149.9,148.6,138.5,136.9,136.8,132.3,131.8,131.1,130.9,130.7,130.0,129.6,128.8,128.2,74.0,73.8,71.2,71.1,71.0,70.7,70.6,70.1,59.0,57.2,56.8,54.5,43.3,41.2,39.6,39.0,36.5,35.8,26.6,17.6,16.2,14.5,13.2,11.9。
HRMS(ESI):C81103Cl1414[M+H]についての計算値1661.6312、実測値1661.8200。
【0304】
N,N′-(14-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(SIM3)
【0305】
【化41】
【0306】
MeOH(0.20mL)中の(2S,4R)-1-((S)-1-アジド-14-(13-アジド-2,5,8,11-テトラオキサトリデシル)-20-(tert-ブチル)-14-メチル-18-オキソ-3,6,9,12,16-ペンタオキサ-19-アザヘニコサン-21-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(22)(10mg、0.020ミリモル)の溶液に、10重量%のパラジウム炭素(10.4mg)を加えた。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、混合物をセライトパッド上で濾過し、蒸発させた。次いでその濃縮組成物に、DMF(0.12mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(14.8mg、0.037ミリモル)、HATU(14mg、0.037ミリモル)、HOAt(5.0mg、0.037ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(12.8μL、0.074ミリモル)の事前撹拌混合物を加えた。次いで、混合物を室温で16時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中の5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:13mg(43%)。
【0307】
H-NMR(500MHz,CDOD)δ(ppm)=8.86(1H,s),7.52-7.36(12H,m),4.71-4.40(6H,m),4.39-4.29(1H,m),3.97(1H,d,J=14.4Hz),3.93(1H,d,J=15.6Hz),3.85(1H,d,J=10.8Hz),3.79(1H,dd,J=3.9,11.1Hz),3.68-3.33(41H,m),3.28(1H,d,J=5.1Hz),2.68(6H,s),2.46(3H,s),2.44(6H,s),2.26-2.18(1H,m),2.12-2.05(1H,m),1.69(6H,s),1.03(9H,s),0.97(3H,s)。
【0308】
13C-NMR(126MHz,CDOD)δ(ppm)=174.4,172.9,171.8,171.6,166.1,157.1,152.8,149.1,140.3,138.2,137.9,133.5,133.2,132.0,131.5,131.4,130.5,130.4,129.8,129.0,75.5,74.8,72.2,71.7,71.6,71.5,71.4,71.1,70.7,60.9,58.1,58.0,55.2,43.7,42.1,40.6,38.9,38.8,37.3,27.0,18.0,15.9,14.4,12.9,11.6。
HRMS(ESI):C83107Cl1415[M+H]についての計算値1705.6574、実測値1705.6430。
【0309】
化合物SIM4、SIM5の合成
【化42】
【0310】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-N-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-アミド(23
【0311】
【化43】
【0312】
DMF(0.2mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-酸(17)(14mg、0.0284ミリモル)の溶液に、COMU(13.4mg、0.031ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(14.8μL、0.085ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で2分間撹拌した。その混合物に4-[(2-アミノエチル)アミノ]-2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(ref.54)(10.8mg、0.034ミリモル)を加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:12.5mg(56%)。
【0313】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.27(1H,s),7.54(1H,t,J=7.8Hz),7.14(1H,d,J=7.1Hz),7.07(1H,d,J=8.6Hz),6.50(1H,t,J=5.7Hz),4.94(1H,dd,J=5.3,12.3Hz),4.00-3.95(2H,m),3.73-3.49(24H,m),3.45-3.32(10H,m),2.94-2.70(3H,m),2.21-2.11(1H,m),0.92(3H,s)。
【0314】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.4,171.1,169.5,168.4,167.7,147.0,136.4,132.7,117.0,112.0,110.5,75.0,74.4,71.2,70.8,70.7,70.5,70.1,50.9,49.1,42.3,40.9,38.7,31.6,22.9。
MS(ESI):C34511012[M+H]計算値791.4、実測値791.3。
【0315】
1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-N-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-アミド(24
【0316】
【化44】
【0317】
DMF(0.42mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-酸(18)(14mg、0.026ミリモル)の混合物に、COMU(12mg、0.029ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(14μL、0.078ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で2分間撹拌した。その混合物に4-[(2-アミノエチル)アミノ]-2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(ref.54)(22.1mg、0.032ミリモル)を加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:12mg(55%)。
【0318】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.36(1H,s),7.53(1H,t,J=7.8Hz),7.22(1H,t,J=5.6Hz),7.14(1H,d,J=6.8Hz),7.05(1H,d,J=8.7Hz),6.49(1H,t,J=5.7Hz),4.94(1H,dd,J=5.2,12.2Hz),4.07-4.01(2H,m),3.72-3.47(28H,m),3.44-3.29(10H,m),2.95-2.69(3H,m),2.18-2.10(1H,m),0.95(3H,s)。
【0319】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.2,169.4,168.4,167.7,146.9,136.4,132.7,116.9,112.1,110.6,74.2,74.1,71.2,71.1,70.9,70.8,70.7,70.6,70.1,50.9,49.1,42.3,41.2,38.6,31.6,22.9,17.6。
MS(ESI):C36551013[M+H]計算値835.4、実測値835.3。
【0320】
N,N′-(11-((2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(SIM4)
【0321】
【化45】
【0322】
MeOH(0.8mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-N-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)-11-メチル-3,6,9,13-テトラオキサペンタデカン-15-アミド(23)(12.5mg、0.0158ミリモル)に、10重量%パラジウム/炭素(2.5mg)を加えた。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、その混合物をセライトパッド上で濾過し、溶媒を蒸発させた。その濃縮組成物に、DMF(0.20mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(12.5mg、0.031ミリモル)、COMU(13.4mg、0.031ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(13.6μL、0.078ミリモル)の事前撹拌混合物を加えた。次いで、その混合物を室温で4時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)で精製して、表題化合物を得た。収量:1.3mg(5%)。
【0323】
H-NMR(500MHz,CDOD)δ(ppm)=8.53(1H,s),7.51(1H,dd,J=7.3,8.5Hz),7.44(4H,d,J=8.4Hz),7.39(4H,dd,J=2.2,8.8Hz),7.08(1H,d,J=8.6Hz),7.02(1H,d,J=7.2Hz),4.99(1H,ddd,J=2.0,5.5,12.6Hz),4.65-4.59(2H,m),3.92-3.86(2H,m),3.69-3.38(32H,m),3.31-3.25(6H,m),2.89-2.78(1H,m),2.75-2.62(8H,m),2.43(6H,s),2.12-2.03(1H,m),1.68(6H,s),0.87(3H,s)。
【0324】
13C-NMR(126MHz,CDOD)δ(ppm)=174.7,173.5,172.9,171.4,170.3,169.2,166.1,157.0,152.2,148.1,138.1,137.9,137.3,133.5,133.2,132.0,131.4,130.4,129.8,129.5,118.0,112.1,111.3,75.4,74.7,72.1,71.6,71.4,70.7,55.2,42.6,41.8,40.6,39.6,38.7,32.2,30.8,23.8,18.0,14.5。
HRMS(ESI):C7285l21414[M+2H]/2計算値752.2633、実測値752.2732。
【0325】
N,N′-(11-((2-(2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)エトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル))-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(SIM5)
【0326】
【化46】
【0327】
MeOH(0.80mL)中の1-アジド-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-N-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)-11-メチル-3,6,9,13,16-ペンタオキサオクタデカン-18-アミド(24)(12mg、0.0144ミリモル)の混合物に、10重量%のパラジウム/炭素(2.5mg)を添加した。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、その混合物をセライトパッド上で濾過し、溶媒を蒸発させた。その濃縮粗製物に、DMF(0.20mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(13.8mg、0.035ミリモル)、COMU(14.8mg、0.035ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(15μL、0.086ミリモル)の事前攪拌混合物を添加した。次いで、混合物を室温で16時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中の5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:1.8mg(8%)。
【0328】
H-NMR(500MHz,CDOD)δ(ppm)=7.52(1H,dd,J=7.4,8.2Hz),7.44(4H,d,J=8.4Hz),7.39(4H,dd,J=1.4,8.7Hz),7.10(1H,d,J=8.6Hz),7.02(1H,d,J=7.1Hz),5.00(1H,dd,J=5.3,13.0Hz),4.62(2H,dd,J=5.2,8.9Hz),3.99-3.94(2H,m),3.67-3.38(36H,m),3.36-3.23(7H,m),2.88-2.78(1H,m),2.76-2.61(2H,m),2.68(6H,s),2.43(6H,s),2.12-2.04(1H,m),1.69(6H,s),0.88(3H,s)。
【0329】
13C-NMR(126MHz,CDOD)δ(ppm)=174.6,173.5,172.9,171.4,170.5,169.2,166.1,157.0,152.2,148.0,138.1,137.9,137.3,133.5,133.2,132.0,131.4,129.8,118.1,112.1,111.4,74.8,72.1,71.9,71.7,71.6,71.4,71.3,70.7,55.2,42.6,42.0,40.6,39.4,38.7,32.2,30.8,23.7,18.0,14.5,12.9,11.6。
HRMS(ESI):C7489Cl1415[M+H]計算値1547.5445、実測値1547.5989。
【0330】
化合物SIM6、cis-SIM1の合成
【0331】
【化47】
【0332】
N,N′-(11-((アリルオキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(25
【0333】
【化48】
【0334】
11-((アリルオキシ)メチル)-1,21-ジアジド-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン()(25mg、0.053ミリモル)のTHF(0.53mL)混合物に、PPh(41.7mg、0.166ミリモル)を添加した。得られた混合物を50℃で1時間撹拌した。HO(0.05mL)を反応混合物に加えた。次に、混合物を50℃で1時間撹拌し、濃縮した。DMF(0.42mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(64mg、0.16ミリモル)、COMU(20.5mg、0.16ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(55.4μL、0.32ミリモル)のDMF(0.42mL)の事前攪拌混合物を、濃縮粗製物に添加した。次いで、得られた混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:17mg(27%)。
【0335】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=7.40(4H,d,J=8.1Hz),7.31(4H,d,J=7.9Hz),6.98-6.89(2H,m),5.93-5.80(1H,m),5.23(1H,d,J=17.2Hz),5.12(1H,d,J=11.0Hz),4.65(2H,t,J=6.8Hz),3.93(2H,d,J=5.2Hz),3.72-3.24(32H,m),2.66(6H,s),2.39(6H,s),1.66(6H,s),0.94(3H,s)。
【0336】
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=170.7,164.0,155.8,150.0,136.9,136.8,135.4,132.3,131.0,130.9,130.6,130.0,116.3,74.1,73.1,72.4,71.2,70.7,70.6,70.5,70.0,54.5,41.1,39.6,39.2,17.6,14.5,13.2,11.9。
MS(ESI):C5873Cl10[M+H]計算値1187.4、実測値1187.4。
【0337】
N,N′-(14-((アリルオキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(26
【0338】
【化49】
【0339】
THF(1.2mL)中の14-((アリルオキシ)メチル)-1,27-ジアジド-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン()(67mg、0.119ミリモル)の混合物に、PPh(93.5mg、0.36ミリモル)を加えた。得られた混合物を50℃で1時間撹拌した。HO(0.12mL)を反応混合物に加えた。次に、その混合物を50℃で1時間撹拌し、濃縮した。その濃縮粗製物質にDMF(0.95mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(143mg、0.36ミリモル)、COMU(153mg、0.36ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(124μL、0.72ミリモル)の事前撹拌混合物を加えた。次いで、得られた混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:87mg(57%)。
【0340】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=7.38(4H,d,J=8.2Hz),7.28(4H,d,J=8.0Hz),7.09-6.93(2H,m),5.89-5.76(1H,m),5.20(1H,d,J=18.0Hz),5.08(1H,d,J=10.2Hz),4.62(2H,t,J=6.0Hz),3.89(2H,d,J=4.8Hz),3.82-3.18(40H,m),2.62(6H,s),2.36(6H,s),1.64(6H,s),0.90(3H,s)。
【0341】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=170.5,163.7,155.6,149.7,136.6,135.2,132.0,130.8,130.4,129.8,128.6,116.0,73.9,72.9,72.1,71.0,70.6,70.5,70.3,69.7,54.3,40.9,39.4,38.9,17.4,14.3,13.0,11.7。
MS(ESI):C6281Cl1011[M+H]計算値1275.5、実測値1275.5。
【0342】
N,N′-(11-メチル-11-((2-オキソエトキシ)メチル)-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(27
【0343】
【化50】
【0344】
O(0.09mL)および1,4-ジオキサン(0.26mL)中のN,N′-(11-((アリルオキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(25)(17mg、0.014ミリモル)の混合物に、2,6-ルチジン(3.3μL、0.029ミリモル)、四酸化オスミウム4%水溶液(1.8μL、0.0003ミリモル)、過ヨウ素酸ナトリウム(12.2mg、0.058ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で8時間撹拌した。反応混合物をNaSO(水溶液)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、残った残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。収量:14mg(82%)。
【0345】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=9.69(1H,s),7.40(4H,d,J=7.9Hz),7.31(4H,d,J=8.0Hz),7.00-6.90(2H,m),4.66(2H,t,J=6.7Hz),4.04-3.98(2H,m),3.74-3.27(32H,m),2.65(6H,s),2.39(6H,s),1.66(6H,s),0.97(3H,s)。
【0346】
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm)=202.4,170.7,163.9,155.8,150.0,136.8,132.3,131.0,130.8,130.6,130.0,128.8,74.7,73.9,71.2,70.7,70.6,70.0,54.5,41.2,39.5,39.2,29.8,17.5,14.5,13.2,12.0。
MS(ESI):C5771Cl1010[M+H]計算値1189.4、実測値1189.4。
【0347】
N,N′-(14-メチル-14-((2-オキソエトキシ)メチル)-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(28
【0348】
【化51】
【0349】
O(0.41mL)と1,4-ジオキサン(1.2mL)中のN,N′-(14-((アリルオキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(26)(87mg、0.068ミリモル)の混合物に、2,6-ルチジン(15.9μL、0.136ミリモル)、四酸化オスミウム4%水溶液(1.8μL、0.0014ミリモル)、過ヨウ素酸ナトリウム(58mg、0.27ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で8時間撹拌した。反応混合物をNaSO(水性)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、残った残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。収量:74mg(85%)。
【0350】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=9.70(1H,s),7.41(4H,d,J=8.3Hz),7.32(4H,d,J=8.6Hz),6.93-6.85(2H,m),4.65(2H,t,J=6.9Hz),4.07-4.01(2H,m),3.73-3.45(36H,m),3.44-3.29(6H,m),2.66(6H,s),2.39(6H,s),1.67(6H,s),0.94(3H,s)。
【0351】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=202.0,170.6,163.7,155.7,149.8,136.7,136.7,132.2,130.9,130.7,130.4,129.9,128.6,76.9,74.6,73.8,71.0,70.6,70.5,70.4,70.3,69.8,54.4,41.0,39.4,39.0,17.4,14.3,13.0,11.8。
MS(ESI):C6179Cl1012[M+H]計算値1277.5、実測値1277.5。
【0352】
1-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-14-(13-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-12-オキソ-2,5,8-トリオキサ-11-アザトリデシル)-14-メチル-2-オキソ-6,9,12,16-テトラオキサ-3-アザオクタデカン-18-酸(29
【0353】
【化52】
【0354】
t-BuOH(0.21mL)中のN,N′-(11-メチル-11-((2-オキソエトキシ)メチル)-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(27)(14mg、0.012ミリモル)の溶液に、THF中2Mの2-メチル-2-ブテン溶液(59μL、0.12ミリモル)、NaHPO(1.4mg、0.012ミリモル)、HO(0.07mL)中の塩化ナトリウム(4.6mg、0.047ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:6.2mg(44%)。
【0355】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=7.41(4H,d,J=8.7Hz),7.32(4H,d,J=8.7Hz),4.68(2H,t,J=7.1Hz),4.11-4.05(2H,m),3.72-3.31(34H,m),2.66(6H,s),2.40(6H,s),1.68(6H,s),0.94(3H,s)。
【0356】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=170.7,164.0,155.8,150.0,137.0,136.7,132.1,131.1,130.9,130.0,128.9,74.4,71.4,70.8,70.6,70.1,54.6,41.0,39.6,39.1,17.8,14.5,13.2,11.9。
MS(ESI):C5771Cl1011[M+H]計算値1205.4、実測値1205.4。
【0357】
1-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-17-(16-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-15-オキソ-2,5,8,11-テトラオキサ-14-アザヘキサデシル)-17-メチル-2-オキソ-6,9,12,15,19-ペンタオキサ-3-アザヘニコサン-21-酸(30
【0358】
【化53】
【0359】
t-ブタノール(1.0mL)中のN,N′-(14-メチル-14-((2-オキソエトキシ)メチル)-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(28)(74mg、0.058ミリモル)の混合物に、THF中2Mの2-メチル-2-ブテン(290μL、0.58ミリモル)、NaHPO(7.0mg、0.058ミリモル)、HO(0.35mL)中塩化ナトリウム(22.4mg、0.23ミリモル)溶液を添加した。得られた反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:63mg(84%)。
【0360】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=7.41(4H,d,J=8.8Hz),7.33(4H,d,J=8.6Hz),7.04-6.94(2H,m),4.66(2H,t,J=7.1Hz),4.09-4.05(2H,m),3.74-3.43(36H,m),3.41-3.30(6H,m),2.67(6H,s),2.40(6H,s),1.68(7H,s),0.94(3H,s)。
【0361】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=172.7,170.6,163.9,155.6,149.9,136.8,136.6,132.0,131.0,130.7,129.9,128.7,74.7,74.2,71.1,70.7,70.5,70.3,69.7,69.1,54.4,40.9,39.5,38.9,17.5,14.4,13.1,11.7。
MS(ESI):C6179Cl1012[M+H]計算値1293.5、実測値1293.4。
【0362】
N,N′-(14-((2-((2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-14-メチル-3,6,9,12,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(SIM6)
【0363】
【化54】
【0364】
DMF(0.12mL)中の1-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-17-(16-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-15-オキソ-2,5,8,11-テトラオキサ-14-アザヘキサデシル)-17-メチル-2-オキソ-6,9,12,15,19-ペンタオキサ-3-アザヘニコサン-21-酸(30)(10mg、0.0078ミリモル)の混合物に、COMU(3.7mg、0.0086ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.1μL、0.023ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で5分間撹拌した。混合物を4-[(2-アミノエチル)アミノ]-2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(ref.54)(3.7mg、0.012ミリモル)に加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:5.0mg(41%)。
【0365】
H-NMR(500MHz,CDOD)δ(ppm)=7.51(1H,dd,J=7.3,8.5Hz),7.44(4H,d,J=8.6Hz),7.39(4H,dd,J=1.3,8.5Hz),7.09(1H,d,J=8.6Hz),7.01(1H,d,J=6.9Hz),5.00(1H,ddd,J=2.3,5.3,12.8Hz),4.65-4.59(2H,m),3.91-3.86(2H,m),3.66-3.38(40H,m),3.30-3.23(6H,m),2.89-2.78(1H,m),2.76-2.61(2H,m),2.69(6H,s),2.43(6H,s),2.11-2.04(1H,m),1.69(6H,s),0.85(3H,s)。
【0366】
13C-NMR(126MHz,CDOD)δ(ppm)=174.6,173.5,172.9,171.3,170.6,169.2,166.1,157.1,152.1,148.2,138.2,137.9,137.3,133.9,133.5,133.2,132.0,131.4,129.8,118.1,112.2,111.4,75.6,74.8,72.1,71.7,71.6,71.4,70.7,55.2,50.2,42.6,41.9,40.6,39.6,38.8,32.2,23.8,18.0,14.4,12.9,11.6。
HRMS(ESI):C7693Cl1416[M+H+]計算値1591.5707、実測値1591.5343。
【0367】
N,N′-(11-((2-(((S)-1-((2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル))ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-11-メチル-3,6,9,13,16,19-ヘキサオキサヘニコサン-1,21-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(cis-SIM1)
【0368】
【化55】
【0369】
DMF(0.07mL)中の1-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-14-(13-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-12-オキソ-2,5,8-トリオキサ-11-アザトリデシル)-14-メチル-2-オキソ-6,9,12,16-テトラオキサ-3-アザオクタデカン-18-酸(29)(5.2mg、0.0043ミリモル)の混合物に、COMU(2.0mg、0.0047ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.3μL、0.013ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で5分間撹拌した。混合物をcis-VH032アミン塩酸塩(ref.9)(3.0mg、0.0065ミリモル)に加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)により精製して、表題化合物を得た。収量:4.4mg(63%)。
【0370】
H-NMR(500MHz,CDOD)δ(ppm)=8.85(1H,s),7.48-7.36(12H,m),4.65-4.59(3H,m),4.58-4.50(2H,m),4.40-4.32(2H,m),4.01-3.89(3H,m),3.73-3.34(35H,m),3.27(1H,d,J=5.1Hz),2.68(6H,s),2.46(3H,s),2.44-2.36(1H,m),2.43(6H,s),1.96(1H,dt,J=4.4,13.3Hz),1.69(6H,s),1.02(9H,s),0.97(3H,s)。
【0371】
13C-NMR(126MHz,CDOD)δ(ppm)=174.8,172.9,172.0,171.8,166.1,157.1,152.8,152.1,149.1,140.0,138.2,137.9,133.5,133.2,132.0,131.4,130.4,129.8,129.1,75.4,74.8,74.7,72.2,71.7,71.5,71.4,70.7,61.0,57.9,57.6,55.2,43.9,42.1,40.6,38.8,37.8,36.8,27.0,18.0,15.9。
MS(ESI):C7999Cl1413[M+H]計算値1617.6050、実測値1617.5716。
【0372】
(R,S)-SIM1の合成
【0373】
【化56】
【0374】
(2S,4R)-1-((17S)-1-アミノ-11-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-17-(tert-ブチル)-11-メチル-15-オキソ-3,6,9,13-テトラオキサ-16-アザオクタデカン-18-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(31
【0375】
【化57】
【0376】
酢酸エチル(1.5mL)中のトリフェニルホスフィン(15mg、0.057ミリモル)を、EtOAc/THF/1MHCl(4mL、4:1:5)中の化合物20(53mg、0.058ミリモル)に室温で3時間かけて滴下添加した。反応混合物を室温で一晩激しく撹拌した後、4M HCl(2mL)を加え、酢酸エチル層を除去した。水層をEtOAcで洗浄し、濃縮した。粗生成物をHPLC(0.1%アンモニアを含む水中5%~95%CHCN勾配)によって精製して、11mgの出発物質20および10mg(回収された出発物質に基づいて24%)の所望のモノアミン31を得た。
【0377】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.67(1H,s),8.52(1H,br),7.38-7.33(4H,m),7.17(1H,m),4.67(1H,m),4.55-4.47(3H,m),4.38(1H,m),4.07-3.94(4H,m),3.70-3.21(31H,m),2.98(2H,m),2.51(3H,s),2.31(1H,s),2.23(1H,s),1.02-0.93(12H,m)。
【0378】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.4,171.03,170.98,170.72,170.65,169.4,150.2,148.4,138.51,138.47,131.6,130.67,130.66,129.36,129.35,127.97,74.2,74.1,74.0,73.9,73.1,71.1,70.87,70.84,70.80,71.72,70.70,70.62,70.45,70.42,70.38,70.34,70.3,70.2,70.2,70.0,69.9,68.6,68.5,59.0,57.3,57.0,50.6,43.0,42.99,41.03,41.01,39.8,37.07,36.98,35.17,35.10,26.4,17.5,16.0。
MS(ESI):C416711[M+H計算値879.5、実測値879.5。
【0379】
(2S,4R)-1-((20S)-14-((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)-20-(tert-ブチル)-1-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-14-メチル-2,18-ジオキソ-6,9,12,16-テトラオキサ-3,19-ジアザヘニコサン-21-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(32
【0380】
【化58】
【0381】
DMF(0.2mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(4.5mg、0.011ミリモル)、HATU(4.2mg、0.011ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5μL、0.03ミリモル)の事前撹拌混合物を、化合物31(10mg、0.011ミリモル)に加えた。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、HPLC(0.1%HCOH水溶液中の5~95%CHCN)によって精製して、表題化合物32を得た。収量:12mg(86%)。
【0382】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.67(1H,s),7.69(1H,m),7.43-7.28(10H,m),7.15(1H,d,J=9.0Hz),4.82(1H,m),4.64(2H,m),4.54(1H,m),4.47(1H,m),4.35(1H,dd,J=5.4,16.0Hz),4.10(1H,m),4.04(1H,m),3.95(1H,m),3.70-3.18(38H,m),2.62(3H,s),2.51(3H,s),2.48(1H,m),2.39(3H,s),2.14(1H,m),1.65(3H,s),0.97(9H,s),0.95(1.5H,s),0.93(1.5H,s)。
【0383】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.2,171.1,170.8,170.55,170.52,163.9,162.3,155.8,150.2,149.8,148.4,138.3,136.7,132.0,131.7,131.0,130.8,130.7,129.9,129.5,128.7,128.1,74.5,73.9,73.8,73.5,73.0,72.7,71.1,70.95,70.92,70.8,70.7,70.51,70.47,70.3,70.24,70.21,70.0,58.7,57.0,56.6,54.3,50.7,43.2,40.9,39.5,38.4,38.3,36.2,35.3,35.2,26.4,17.54,17.48,16.0,14.4,13.1,11.8。
MS(ESI):C6083ClN1212[M+2H2+計算値631.3、実測値631.8。
【0384】
(2S,4R)-1-((20S)-20-(tert-ブチル)-1-((R)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-14-(13-((S)-4-(4-クロロフェニル))-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-12-オキソ-2,5,8-トリオキサ-11-アザトリデシル)-14-メチル-2,18-ジオキソ-6,9,12,16-テトラオキサ-3,19-ジアザヘニコサン-21-オイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド((R,S)-SIM1)
【0385】
【化59】
【0386】
MeOH(1mL)中の32(12mg、0.01ミリモル)の混合物に、10重量%のパラジウム/炭素(0.5mg)を加えた。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。次いで、混合物をセライトパッド上で濾過し、蒸発させた。濃縮粗製物に、DMF(0.20mL)中の(-)-JQ1カルボン酸(4mg、0.01ミリモル)、HATU(4mg、0.01ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5μL、0.03ミリモル)の事前撹拌混合物を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、HPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHN勾配)によって精製して、表題化合物を得た。収量:4.7mg(31%)。
【0387】
H-NMR(500MHz,CDCl、ジアステレオマー混合物)δ(ppm)=8.70(1H,s),7.57-7.28(14H,m),7.20(1H,m),4.76(1H,m),4.72-4.60(3H,m),4.58-4.44(2H,m),4.43-4.33(1H,m),4.14-3.95(3H,3H),3.69-3.25(38H,m),2.68-2.60(6H,m),2.50(3H,s),2.39(6H,s),2.36-2.29(1H,m),2.22-2.12(1H,m),1.68-1.61(6H,m),1.00-0.95(9H,m),0.92(3H,s)。
【0388】
13C-NMR(126MHz,CDCl、ジアステレオマー混合物)δ(ppm)=171.46,171.41,170.89,170.86,170.7(br),170.6,164.4(br),155.5,150.4,150.0,148.1,138.59,138.55,137.0(br),136.2(br),132.1(br),131.9,131.2(br),131.11,131.09,130.47,130.42,130.1(br),129.33,129.30,128.7,128.0,73.8(br),70.92,70.86,70.61,70.58,70.4,70.2(br),70.1,69.9,59.2,59.1,57.3,56.8(br),53.9,43.0,41.0,40.8,39.3(br),38.0(br),36.7(br),35.59,35.55,29.7,26.4,17.75,17.71,15.95,14.42,14.39,14.37,13.1,11.7。
HRMS(ESI):C7999Cl1413[M+H]計算値1617.6050、実測値1617.6025。
【0389】
化合物MN674の合成
【0390】
【化60】
【0391】
8-((アリルオキシ)メチル)-1,15-ジアジド-8-メチル-3,6,10,13-テトラオキサペンタデカン(33
【0392】
【化61】
【0393】
2-((アリルオキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール()(350 mg、2.19ミリモル)をDMF(5mL)に溶解し、0℃に冷却した。NaH(350mg、油中60%、8.75ミリモル)を加え、反応物を0℃で15分間撹拌した。その後、2-(2-アジドエトキシ)エチルメタンスルホネート(1.4g、6.5ミリモル)を加え、反応物を60℃で一晩撹拌した。次いで、混合物をセライトパッド上で濾過し、濃縮した。粗製物質を酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5~95%CHCN)により精製して、表題化合物を得た。収量:507mg(60%)。
【0394】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=5.96-5.84(1H,m),5.29(1H,m),5.16(1H,m),4.00-3.95(2H,m),3.73-3.68(4H,m),3.68-3.63(4H,m),3.63-3.58(4H,m),3.42-3.36(8H,m),3.33(2H,m),0.98(3H,s)。
【0395】
2-(3-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)-2-((2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)メチル)-2-メチルプロポキシ)アセトアルデヒド(34
【0396】
【化62】
【0397】
O(4mL)と1,4-ジオキサン(14mL)中の8-((アリルオキシ)メチル)-1,15-ジアジド-8-メチル-3,6,10,13-テトラオキサペンタデカン(33)(507mg、1.31ミリモル)の混合物に、2,6-ルチジン(330μL、2.6ミリモル)、四酸化オスミウム4%水溶液(180μL、0.01ミリモル)、過ヨウ素酸ナトリウム(1.2g、0.21ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物をNaSO(水性)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、残った残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。収量:425mg(85%)。
【0398】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=9.75(1H,s),4.02(2H,s),3.73-3.58(14H,m),3.46(2H,m),3.42-3.35(10H,m),1.01(3H,s)。
【0399】
2-(3-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)-2-((2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)メチル)-2-メチルプロポキシ)酢酸(35
【0400】
【化63】
【0401】
t-BuOH(15mL)中の2-(3-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)-2-((2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)メチル)-2-メチルプロポキシ)アセトアルデヒド(34)(425mg、1.1ミリモル)の混合物に、THF中2Mの2-メチル-2-ブテン(2.75mL、5.5ミリモル)、NaHPO(132mg、1.1ミリモル)、HO(3mL)中の塩化ナトリウム(500mg、4.4ミリモル)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、次いでNaOH(水溶液)で希釈した。混合物をMTBEで洗浄し、2M HClで中和した。ジクロロメタンで抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮した。残った粗生成物をさらに精製することなく次のステップで使用した。収量:422mg(95%)。
【0402】
(2S,4R)-1-((S)-15-アジド-8-((2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)メチル)-2-(tert-ブチル)-8-メチル-4-オキソ-6,10,13-トリオキサ-3-アザペンタデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(36
【0403】
【化64】
【0404】
HATU(194mg、0.51ミリモル)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(270μL)を2-(3-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)-2-((2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)メチル)-2-メチルプロポキシ)酢酸(35)(200mg、0.51ミリモル)のDMF(2mL)溶液に加えた。得られた反応混合物を室温で2分間撹拌した。VH032アミン塩酸塩(240mg、0.51ミリモル)を混合物に加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、酸性条件下でHPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)で精製して、表題化合物を得た。収量:312mg(75%)。
【0405】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.70(1H,s),7.43-7.33(5H,m),7.13(1H,d,J=8.5Hz),4.77(1H,t,J=7.8Hz),4.63-4.54(2H,m),4.47(1H,d,J=8.7Hz),4.37(1H,dd,J=5.5,15.0Hz),4.19-4.13(1H,m),3.96(2H,m),3.71-3.53(14H,m),3.46-3.34(10H,m),2.63(1H,m),2.54(3H,s),2.14(1H,m),1.01(3H,s),0.97(9H,s)。
MS(ESI):C375710S[M+H]計算値817.4、実測値817.9。
【0406】
N,N′-(8-((2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)-8-メチル-3,6,10,13-テトラオキサペンタデカン-1,15-ジイル)ビス(2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセトアミド)(MN674)
【0407】
【化65】
【0408】
MeOH(1mL)中の(2S,4R)-1-((S)-15-アジド-8-((2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)メチル)-2-(tert-ブチル)-8-メチル-4-オキソ-6,10,13-トリオキサ-3-アザペンタデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(36)(20mg、0.024ミリモル)の溶液に、10重量%パラジウム/炭素(0.5mg)を加えた。得られた反応混合物を水素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。次いで、混合物をセライトパッドで濾過し、蒸発させた。得られた濃縮粗生成物に、DMF(0.5mL)中の(+)-JQ1カルボン酸(20mg、0.05ミリモル)、HATU(19mg、0.05ミリモル)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(20μL)の事前攪拌混合物を加えた。その混合物を室温で1時間撹拌し、HPLC(0.1%HCOH水溶液中5%~95%CHCN勾配)によって精製して、表題化合物を得た。収量:13.5mg(37%)。
【0409】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=8.70(1H,s),7.67-7.61(2H,m),7.57(1H,m),7.44-7.30(12H,m),7.24(1H,d,J=9.4Hz),4.89(t,1H,J=8.0Hz),4.75-4.63(3H,m),4.53(1H,dd,J=6.4,15.2Hz),4.46(1H,m),4.34(1H,dd,J=5.5,15.1Hz),4.28(1H,d,J=15.7Hz),4.14(1H,d,J=11.0Hz),4.07(1H,d,J=15.7Hz),3.76-3.22(31H,m),2.64(6H,s),2.51(3H,s),2.40(6H,s),2.39(1H,m),2.18(1H,m),1.67(6H,s),1.02(9H,s),0.93(3H,s)。
【0410】
13C-NMR(126MHz,CDCl)δ(ppm)=171.5,171.2,170.9,170.7,164.0,163.9,155.7,150.3,149.9,148.3,138.4,136.8,136.75,136.5,132.04,132.02,131.8,131.04,130.97,129.99,129.97,129.4,128.75,128.73,128.0,73.8,73.6,73.4,71.3,70.9,70.3,70.2,70.0,58.9,57.3,56.5,54.1,53.5,43.1,41.1,39.6,38.3,36.6,35.4,26.6,26.4,17.7,16.0,14.4,13.4,13.1,11.8。
HRMS(ESI):C7591Cl1411[M+H]計算値1529.5531、実測値1529.5516。
【0411】
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【国際調査報告】