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特表2023-550558ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)を検出するための化合物およびそれを含む方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)を検出するための化合物およびそれを含む方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/02 20060101AFI20231124BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231124BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231124BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C07F15/02 CSP
C07D487/22
A61K49/00
A61K31/555
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P25/00
G01N33/68
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552392
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 GB2021052929
(87)【国際公開番号】W WO2022101635
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】2017871.1
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523181709
【氏名又は名称】インペリアル カレッジ イノベーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ジェイムス ボイル
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジェイ ロング
(72)【発明者】
【氏名】エドワード アールエイチ ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】イン グア
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン シー メイソン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4C050
4C085
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA06
2G043EA13
2G043FA06
2G045AA25
2G045DA20
4C050PA05
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA09
4C085KB56
4C085LL01
4C085LL07
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA03
4C086CB04
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA45
4H050AA01
4H050AB20
4H050AD17
4H050BB12
4H050BB14
4H050BC10
4H050BE61
4H050WA15
4H050WA27
(57)【要約】
本発明は、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の検出のための化合物、特に、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格およびフルオロフォアを有する、本明細書で定義される式Iのポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリン化合物に関する。このような化合物は、生体内、生体外、および試験管内でのHO-1の検出に使用され得、診断方法および研究試薬としても使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iまたはその薬学的に許容される塩で表される化合物であって、
【化1】
前記化合物は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンから選択され、
【化2】
は、二重結合または単結合を表し、
【化3】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化4】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化5】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、化合物の全体の電荷であり、
A、B、CおよびDは、各々独立して、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から選択される5員含窒素複素環を表す、
化合物。
【請求項2】
前記化合物は、式IiaもしくはIIbまたはその薬学的に許容される塩で表されるポルフィリンから選択され、
【化6】
→は、窒素とMn+との間の配位結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化7】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化8】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、ポルフィリンの全体の電荷である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、式IIIa~IIIdのいずれか1つまたはその薬学的に許容される塩によって表されるクロリンから選択され、
【化9】
→は、窒素とMn+との間の配位結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化10】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化11】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、クロリンの全体の電荷である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、式IvaもしくはIVbまたはその薬学的に許容される塩で表されるバクテリオクロリンから選択され、
【化12】
→は、窒素とMn+との間の配位結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化13】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化14】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、バクテリオクロリンの全体の電荷である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、式Va~Vhのいずれか1つまたはその薬学的に許容される塩によって表されるイソバクテリオクロリンから選択され、
【化15】
→は、窒素とMn+との間の配位結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化16】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化17】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、イソバクテリオクロリンの全体の電荷である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
1a~R1fは、Hまたは一価のC~C-ヒドロカルビル、好ましくはH、C~C-アルキルまたはC~C-アルケニル、より好ましくはH、-CH、CHCHまたは-CH=CH、最も好ましくは-CHから独立して選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
2aおよびR2bは、H、一価のC~C10-ヒドロカルビルまたは二価のC~C10-ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-COOR、-CONH、-CON(R、-OH、-SHまたは-NHから選択される末端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルであり、好ましくはR2aおよびR2bはH、-CH、-(CHn’-CH、-(CHn’-COOH、-(CHn’-COOCH、または-(CHn’-COOCHCHから独立して選択され、n’は、1~3であり、より好ましくは-CH-CH-COOHまたは-CH-CH-COOCH、最も好ましくは、R2aは-CH-CH-COOHまたは-CH-CH-COOCHである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
3aおよびR3bは、H、-CH、-OH、-SH、または-NHから独立して選択され、好ましくはHである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
は、C~C-アルキレン-A2基、C~C-エーテル-A2基またはC~C-チオエーテル-A2基であり、A2は、X3または-COOH、-COOR、-CONH、-CON(R、-OH、-SHまたは-NHから選択される末端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビル基、好ましくは-(CHn’’-COOH、または-(CHn’’-COOCHであり、n’’は1~3であり、より好ましくは-(CH-COOHまたは-(CH-COOCH、最も好ましくは-(CH-COOHである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
n+は、アンモニウムまたは金属カチオン、好ましくはアンモニウムまたは鉄、亜鉛またはマグネシウムカチオン、より好ましくは鉄カチオン、最も好ましくは鉄(II)および鉄(III)から選択される鉄カチオンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Lは、二価のC~C20-ヒドロカルビル、好ましくはC~C20-アルキレン、C~C20-エーテル、C~C20-アリールまたはC~C20-ヘテロアリール、より好ましくは、1,4-フェニレンおよび/または1,2,3-トリアゾールを含む、C~C20-アルキレン、C~C20-アリールまたはC~C20-ヘテロアリール、であり、例えば、
【化18】
であり、YはO、NRまたは1,2,3-トリアゾールから選択され、Rは、HまたはC~C-ヒドロカルビルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Xは、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、チアゾール、チアジン、ベンゾチアゾール、シアニン、カルボシアニン、サリチレート、アントラニレート、クマリン、フルオレセインおよび/またはローダミンおよびそれらの誘導体から必要に応じて選択される芳香族または複素芳香族化合物であり、好ましくは、Xはクマリン、フルオレセインおよびその誘導体、インドシアニングリーンおよびメチレンブルーおよびそれらの誘導体から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Xおよびポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は、FRET対を表す、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Xからの蛍光は、Xの励起後、式I~Vのいずれか1つの化合物におけるFRETによって消光され、好ましくは、化合物は、ポルフィリンから選択され、Xは、クマリンもしくはフルオレセイン、またはそれらの誘導体であり、および/または化合物は、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンから選択され、Xは、インドシアニングリーンもしくはメチレンブルーまたはそれらの誘導体である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Xからの蛍光は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の励起後の式I~Vhのいずれか1つの化合物におけるFRETのために観察され、好ましくは、化合物は、ポルフィリンから選択され、Xは、インドシアニングリーンまたはメチレンブルーまたはそれらの誘導体である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
必要に応じてヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)過剰発現を特徴とする疾患の診断方法に使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
プラーク内出血、急性冠症候群、および/またはプラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化によって引き起こされる脳卒中の、生体内診断方法において使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記方法は、対象に化合物を投与することを含み、必要に応じて急性冠症候群の診断において化合物が冠動脈に投与される、請求項16または17に記載の診断方法で使用するための化合物。
【請求項19】
前記方法は、X、またはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンもしくはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の、吸光スペクトル内の波長の光を提供し、Xによって放射される光を検出することを含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の診断方法で使用するための化合物。
【請求項20】
プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる急性冠状動脈症候群および/または脳卒中の治療方法において使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記方法は、前記化合物を対象に投与すること、Xまたはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の吸光スペクトルの波長の光を提供すること、Xによって放射される光を検出すること、および蛍光変調が観察される対象内の位置を治療すること、を含む、請求項20に記載の治療方法で使用するための化合物。
【請求項22】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物を用いた、プラーク内出血、急性冠症候群、および/またはプラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる脳卒中の、試験管内および/または生体外診断方法。
【請求項23】
前記化合物を対象からの血液と接触させること、および/またはXまたはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンもしくはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の吸光スペクトル内の波長の光を提供すること、およびXによって放射される光を検出すること、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物を使用して、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)および/またはプラーク内出血をイメージングする方法。
【請求項25】
前記化合物をサンプルと接触させること、および/またはXまたはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンもしくはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の吸光スペクトル内の波長の光を提供すること、およびXによって放射される光を検出することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
プラーク内出血、急性冠症候群、および/または、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる脳卒中の、試験管内および/または生体外診断における、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項27】
ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)および/またはプラーク内出血をイメージングするための造影剤としての、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項28】
研究試薬として、好ましくはヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の検出のための、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項29】
式VIa~VIcまたはその薬学的に許容される塩の化合物を反応させることを含み、
【化19】
前記化合物は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンであり、
【化20】
は、二重結合または単結合を表し、
【化21】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eはR2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fはRと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化22】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化23】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
q’は、化合物の全体の電荷であり、
A、B、CおよびDは、各々独立して、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から選択される5員含窒素複素環を表し、
Wは、アジドまたはアルキン官能基を備え、
式[Z-X]q’’を有する化合物と共に、Xは、X2およびX3と同じであり得または異なり得るフルオロフォアであり、q’’は、化合物の全体の電荷であり、Zは、アジドまたはアルキン官能基を備え、
WおよびZの一方は、アジド官能基を備え、他方は、アルキン官能基を備える、
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法。
【請求項30】
前記反応は、銅含有触媒の存在下で、好ましくはアスコルビン酸塩および銅(I)および/または銅(II)を備える触媒の存在下で行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
Wは、アジドまたはアルキン終端二価C~C20-ヒドロカルビルを備え、好ましくはヒドロカルビルはフェニルを備え、および/またはZはアジドまたはアルキンのいずれかである、請求項29または30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の検出のための化合物、特に、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格およびフルオロフォアを有する、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリン化合物に関する。このような化合物は、生体内、生体外、および試験管内でのHO-1の検出に使用され得、診断方法および研究試薬としても使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、血管生物学および細胞シグナル伝達における重要な恒常性維持ミクロソーム酵素である。HOの主な役割は、細胞毒性のある「遊離」ヘム(Fe-PPIX)の蓄積を防ぐことである。このヘムは、生体内でフェントン触媒として作用し、活性酸素種の生成を引き起こす可能性がある。
【0003】
HOによるヘム異化は、分子状酸素とNADPHシトクロムp450レダクターゼとを必要とする3段階の反応である。このプロセス中に、ポルフィリン環は、5位(α-炭素原子としても知られる)で位置選択的に脱環されて、一酸化炭素(CO)と第一鉄(Fe2+)が失われ、α-ビリベルジンが形成される。これをスキーム1に示す。ビリベルジンは、サイトゾル内のビリベルジン還元酵素によってさらにビリルビンに変換される。
【0004】
スキーム1 HO-1によるFe-PPIX異化作用
【化1】
【0005】
ヘム分解の副産物は、それぞれ細胞保護作用があることが知られている。例えば、Fe2+はフェリチンによってキレートされ、フェントン活動から安全に保管される。また、多くの研究によって、COは必須の細胞内シグナル伝達分子であり、KATPイオンチャネルを活性化し、内皮細胞のアポトーシスを抑制することが実証されている。最後に、ビリルビンは抗酸化特性を示すことも証明されている。ギルバート症候群などの遺伝性疾患において基礎レベルを超えるビリルビン濃度を有する個人は、生涯を通じて心血管疾患を発症する可能性が大幅に低くなる。
【0006】
HOには、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)とヘムオキシゲナーゼ-2(HO-2)という2つの主要なアイソフォームがある。HOの両方のアイソフォームは、このようなヘム分解を触媒する。HO-1は、ヘムを分解する酵素の誘導性アイソフォームである。他のアイソエンザイムであるHO-2は、低レベルで存在しており、ヘム誘導性ではない。したがって、HO-1は、例えばプラーク内出血(IPH)などの、体内の細胞ストレス刺激によって誘導される唯一のアイソフォームであり、アテローム性動脈硬化症および癌などの多くの疾患において防御的な役割を果たす。このため、HO-1は、血管の健康および病気にとって重要な酵素であり、冠状動脈プラークの破裂および出血性脳卒中における出血のマーカーでもある。
【0007】
HO-1活性は定量化され得るが、HO-1活性の既存のアッセイはすべて破壊的で、人手を要し、半定量的で、信頼性が低く、スループットが低く、生細胞のリアルタイム測定とは互換性がない。さらに、これらのアッセイはほとんどの場合、HO-1の活性ではなくタンパク質レベルを検出し、単一細胞ベースではHO-1を検出しない。当技術分野で現在使用されている典型的なアッセイは数十年前のものであり、不安定な酵素補因子の複雑な混合物中での細胞溶解を伴う。反応後、混合物をクロロホルムで抽出し、分光光度法で測定する。このプロセスは、Tenhunen R、Marver HS、Schmid R「The enzymatic conversion of hemoglobin to bilirubin」、Trans Assoc Am Physicians、1969;82:363-71;およびPimstone NR、Tenhunen R、Seitz PT、Marver HS、Schmid R.「The enzymatic degradation of hemoglobin to bile pigments by macrophages」、J Exp Med 1971年 6月 1;133(6):1264-81に記載されている。HO-1の動態および局在化は特に困難であり、生体内での動的応用は現実的ではない。これらの問題は、病態生理学および薬理学におけるHO-1の役割の解明、および特に生体内での臨床応用を妨げている。
【0008】
したがって、生細胞または組織に対する信頼性の高いHO-1検出方法が依然として必要とされている。HO-1を検出するための化学プローブの開発は、例えば、IPHおよび関連疾患の検出において、重要なことに、より重度の関連症状が発症する前に、特に有用となるであろう。
【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンを5位のフルオロフォアで修飾することによって、HO-1がそのような分子に作用し、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格からフルオロフォアを切断するため、HO-1の濃度および/または位置を観察し得ることが見出された。これによって、プラーク内出血、急性冠症候群、プラーク内出血やアテローム性動脈硬化によって引き起こされる脳卒中など、HO-1の過剰発現を特徴とする症状のモニタリングが可能になる。
【0010】
この効果は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、またはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格およびフルオロフォアが蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対を表すとき、HO-1が化合物に作用するときにフルオロフォアからの蛍光が調節される(つまり、増加または減少する)ため、特に有益である。これによって、HO-1が蛍光変調の位置に存在することを確認し、HO-1のより高感度な検出を可能にし、HO-1の濃度の決定を可能にする可能性がある。
【0011】
本発明の化合物は極めて多用途であり、疾患の生体内、生体外、および試験管内の診断に使用され得る。さらに、これらは、例えばHO-1の活性および/または存在を測定するための研究試薬としても使用され得る。
【0012】
したがって、第1の態様では、本発明は、式Iまたはその薬学的に許容される塩で表される化合物であって、
【化2】
化合物は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンから選択され、
【化3】
は、二重結合または単結合を表し、
【化4】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化5】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C~Cアルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化6】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、化合物の全体の電荷であり、
A、B、CおよびDは、各々独立して、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から選択される5員含窒素複素環を表す、
化合物を提供する。
【0013】
実施形態では、フルオロフォアXおよびポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は、FRET対を表す。
【0014】
実施形態では、Xからの蛍光は、Xの励起後に式Iの化合物中で消光される。別の実施形態では、Xからの蛍光は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、またはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の励起後に式Iの化合物中で観察される。これらの効果は、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格とフルオロフォアXのFRETの組み合わせに起因し得る。
【0015】
別の態様では、必要に応じてヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)過剰発現を特徴とする疾患の、診断方法に使用するための本発明による化合物が提供される。
【0016】
さらなる態様では、プラーク内出血、急性冠症候群、および/または、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる、脳卒中の生体内診断方法に使用するための本発明による化合物が提供される。
【0017】
一態様では、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる、急性冠状動脈症候群および/または脳卒中の治療方法に使用するための本発明による化合物も提供される。
【0018】
さらなる態様では、本発明による化合物を使用する、プラーク内出血、急性冠症候群、および/または、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化によって引き起こされる、脳卒中の試験管内および/または生体外診断のための方法が提供される。
【0019】
さらなる態様では、本発明による化合物を使用してヘムオキシゲナーゼ1および/またはプラーク内出血をイメージングする方法が提供される。
【0020】
一態様では、プラーク内出血、急性冠症候群および/またはプラーク内出血、および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる、脳卒中の試験管内および/または生体外診断における本発明による化合物の使用も提供される。
【0021】
一態様では、ヘムオキシゲナーゼ1および/またはプラーク内出血をイメージングするための造影剤としての本発明による化合物の使用がさらに提供される。
【0022】
一態様では、研究試薬として、好ましくはヘムオキシゲナーゼ1の検出のための、本発明による化合物の使用も提供される。
【0023】
さらなる態様では、式VIa~VIcの化合物またはその薬学的に許容される塩を反応させることを含み、
【化7】
化合物は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンであり、
【化8】
は、二重結合または単結合を表し、
【化9】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eは、R2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fは、Rと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化10】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC1~C5-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C1~C5アルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化11】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC1~C5-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C1~C5-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
q’は、化合物の全体の電荷であり、
A、B、CおよびDは、各々独立して、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から選択される5員含窒素複素環を表し、
Wは、アジドまたはアルキン官能基を備え、
式[Z-X]q’’を有する化合物と共に、Xは、X2およびX3と同じでも異なっていてもよいフルオロフォアであり、q’’は、化合物の全体の電荷であり、Zは、アジドまたはアルキン官能基を備え、
WおよびZの一方は、アジド官能基を備え、他方は、アルキン官能基を備える、
本発明による化合物を調製する方法が提供される。
【0024】
次に、本発明を例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】pH7.4のPBS緩衝液中の1、1h、1gおよび1fの吸光スペクトルを示す図である。
図2】pH7.4のPBS緩衝液中のC3、C3gおよび1fの吸光スペクトルを示す図である。
図3】pH7.4のPBS緩衝液中の1fの吸光および発光スペクトル、および1eの吸光を示す図である。
図4】pH7.4のPBS中の1g、1hおよび1の発光スペクトルを示す図である。
図5】クロロホルム中の1g、1hおよび1の発光スペクトルを示す図である。
図6】pH7.4のPBS中のC3およびC3gの発光スペクトルを示す図である。
図7】クロロホルム中のC3およびC3gの発光スペクトルを示す図である。
図8】pH7.4のPBS中の1と比較した1fの発光スペクトルを示す図である。
図9】大腸菌溶解物にHO-1を添加したときの1iの蛍光の消光を示す図である。
図10】NADPHを添加した場合(上)と添加しなかった場合(下)の、UV励起下でHO-1の存在下での1の蛍光を示す図である。
図11】NADPHの存在下および非存在下で大腸菌溶解物中において1およびC3をHO-1でインキュベートした後の、酸性化およびクロロホルムへの抽出後のクマリン発光強度の変化を示す図である。光物理学的測定は、pH7.4のPBS中で記録された。
図12】NADPHの存在下および非存在下で大腸菌溶解物中において1およびC3をHO-1でインキュベートした後の蛍光発光強度の平均変化を棒グラフで示す図である。エラーバーは繰り返しの標準偏差として計算される。
図13】1の代謝とそれに続くクマリン1iの発光強度を示す図である。
図14】NADPHのインキュベーションありおよびなしと参照としてのビリベルジンとの、HO-1を過剰発現する大腸菌溶解物における1(A)およびC3(B)の吸光スペクトルを示す図である。
図15】NADPHを添加した場合と添加しない場合との両方の、HO-1の存在下における大腸菌溶解物中の320nmにおける1iのLCMSトレースを1(A)およびC3(B)のLCMSトレースに重ねたものを示す図である。
図16】HO-1およびNADPHの存在下での1のMALDI-MSスペクトルを示す図である。
図17】HO-1およびNADPHの存在下でのC3のMALDI-MSスペクトルを示す図である。
図18】RAW細胞におけるさまざまな濃度での1、1i、ヘム、鉄、およびビリベルジンの毒性を示す図である。
図19】培養ヒト血液由来炎症細胞における化合物1およびC3の任意蛍光単位(AFU)における蛍光活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的のために、本明細書で使用される下記の用語は、特に断りのない限り、下記の意味を有するものと理解されたい。下記に定義されていない他の用語は、当該技術分野における通常の意味として理解されたい。
【0027】
ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンおよびイソバクテリオクロリンは、テトラピロールまたは還元テトラピロール環系を備え、ピロール、ピロリン、またはピロリジン環から選択される4つのサブユニットがC2位およびC5位(アルファ位としても知られる)でメチン架橋(=CH-)を介して相互接続され、環を形成する。
【0028】
特に明記しない限り、ポルフィリンおよび還元ポルフィリン中のテトラピロールまたは還元テトラピロール環系における炭素原子および窒素原子の1から24の番号付けスキームが、本出願全体を通じて使用される。この容認された番号付けスキームは、「IUPAC, Compendium of Chemical Terminology」、第2版(「Gold Book」)、McNaught,A.D.および Wilkinson,A編、1997、Blackwell Scientific Publications、オックスフォード(オンライン版(2019年~現在)Chalk,S.J.作成、ISBN 0-9678550-9-8。https://doi.org/10.1351/goldbook)、およびMoss,G.P.、「Nomenclature of tetrapyrroles,Recommendations 1986 IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)」、Eur J Biochem.、1988、178(2)、277-328.に記載されている。この番号付けスキームでは、ポルフィリンは次のように番号付けられる。
【0029】
【化12】
【0030】
この番号付けシステムは還元ポルフィリンにも適用され得る。この番号付けシステムでは、2、3、7、8、12、13、17、および18位は、概して「ベータ位」(つまりピロール環の)または「非縮合炭素原子」と呼ばれる。同様に、1、4、6、9、11、14、16、および19位の位置は、概して「アルファ位」または「縮合炭素原子」と呼ばれ得、一方、5、10、15、および20位の位置は、概して「メソ位」と呼ばれ得る。代替のフィッシャー番号付けシステムでは、5位は、α位と呼ばれる。
【0031】
命名法上、飽和窒素原子は、概して21位および23位にある。ただし、テトラピロールまたは還元テトラピロール環系は、これら2つの水素原子の位置に関して互変異性であるため、これらは任意の2つの反対側の窒素原子と結合し得、例えば、飽和窒素原子は、22位および24位にあり得る。本明細書では、特に明記しない限り、1つの互変異性体の開示は、これらの飽和窒素原子の位置の移動から生じるその構造のすべての互変異性体を開示するとみなされる。通常、互変異性体は、通常、プロトンまたは非常に少数の二重結合および単結合の再配置を通じて、容易に相互変換され得る。
【0032】
ここでの構造は単一の共鳴形態として描かれている。ただし、共役構造は別の共鳴形態で存在し得る。
【0033】
本明細書でより詳細に説明するように、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は、置換基を含み得る。置換基は、2、3、7、8、12、13、17および/または18位、および/または5、10、15、および/または20位にあり得る。化合物がポルフィリンであり、テトラピロール骨格が置換されている(つまり、2、3、7、8、12、13、17、18、5、10、15、および20位の少なくとも1つがH以外の部分に結合している)および環A~Dの置換が同一ではないとき、構造の2つの互変異性体が存在する。化合物がクロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンであり、還元テトラピロール骨格が置換されている(つまり、2、3、7、8、12、13、17、18、5、10、15、および20位の少なくとも1つがH以外の部分に結合している)および環AからDの置換が同一ではないとき、化合物の複数の異性体が存在し得る。これらの異性体はそれぞれ互変異性体を有し得る。これらの構造については、下記でさらに詳しく説明する。示されている異性体は、A~Dが各々同一ではないという前提で描かれている。ただし、環A~Dの一部が同一である場合、下記で説明する可能な異性体の総数は減少する。
【0034】
ポルフィリンがカチオンに配位すると、飽和窒素原子(上記の説明の21位および23位)に結合した2つの水素原子が脱プロトン化され、-2の形式電荷を持つテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格が生成される。これらの負に帯電した窒素原子は、カチオンと共有結合を形成する。一方、他の2つの窒素原子(上記の22位および24位)は、非共有電子対の供与を通じてカチオンとの配位結合を形成する。これは、クロリン、バクテリオクロリン、またはイソバクテリオクロリンにも当てはまるが、これらについては下記でさらに詳しく説明する。
【0035】
本明細書で使用される「ポルフィリン」は、環状テトラピロール骨格を備える(すなわち、骨格が4つの修飾ピロールサブユニットを備える)複素環式大環状有機化合物の群を指す。この構造は共役しており、18π電子芳香経路を備える。
【0036】
ポルフィリンは、この共役系に関与しない2つの水素原子の位置に関して互変異性である。非置換ポルフィリン(一般的にポルフィリンと呼ばれる)の2つの互変異性体は、表1に示すとおりである。
【0037】
【表1】
【0038】
これらの互変異性体は、この例では(構造の対称性の結果として)実際には同一の分子であるが、理解されるように、環AからDが同一でないとき(例えば、分子がテトラピロール骨格に関して非対称に置換されている場合)、これは当てはまらない場合があり得る。
【0039】
本明細書で使用される「クロリン」は、飽和炭素原子がピロール環の1つの非縮合炭素原子に位置する還元ポルフィリン(ジヒドロポルフィリン)を指す。
【0040】
理論的には、クロリンは、どの環が還元されるかに応じて、3つのピロールサブユニットおよび1つのピロリンサブユニットを備える還元テトラピロール骨格を備え得る。これらの構造には18π電子芳香族経路が含有されている。好ましくは、芳香族構造が保持され、したがって、還元テトラピロール骨格は、好ましくは、3つのピロールサブユニットおよび1つのピロリンサブユニットを備え、18π電子芳香族経路を維持する。
【0041】
芳香族経路を保持する非置換クロリン(一般的にクロリンと呼ばれる)の考えられる2つの互変異性体を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
これらの構造の両方で、環Aは還元されているが、残りの骨格の共役は異なる。両方の互変異性体に18π電子芳香族経路が含まれている。ただし、互変異性体1の18π電子芳香族経路には、芳香族系内で非局在化するピロリンAの窒素非共有電子対が組み込まれているため、互変異性体2と比較して芳香族特性が低下する。したがって、互変異性体2が好ましい。この18π電子芳香族経路を維持するために、不飽和窒素原子を有するピロール(例えば、上記の番号表示の22位および24位)のみが還元され得る。これは、飽和窒素原子(例えば、上記の21位および23位)を有するピロールの還元から生じる互変異性体があまり好ましくないことを意味する。
【0044】
環A~Dが同一でない場合(例えば、分子が還元テトラピロール骨格を中心に非対称に置換されている場合)、どのピロール環が還元されているかに応じて、クロリンは、複数の異性体を備え得る。したがって、クロリンには表3の構造が含まれ得る。18π電子芳香族経路を維持する構造のみが含まれていることに留意されたい。
【0045】
【表3】
【0046】
これらの構造は、環A~Dがどれも同一ではないという仮定に基づいている。ただし、環A~Dの置換パターンによっては、これらの構造の一部が同一になり得る。
【0047】
本明細書で使用される「バクテリオクロリン」とは、飽和炭素原子が2つの対角線上にあるピロール環の非縮合炭素原子に位置する還元ポルフィリン(テトラヒドロポルフィリン)を指す。したがって、還元テトラピロール骨格は、18π電子芳香族経路を維持する。
【0048】
バクテリオクロリンは、2つのピロールサブユニットおよび2つのピロリンサブユニットからなる還元テトラピロール骨格を備える。
【0049】
対角線上にある環の非縮合炭素原子を還元する必要があるため、不飽和窒素原子を有するピロール(例えば、上記の表示の22位および24位)のみが還元され得る。これは、これらは両方とも非縮合炭素原子間の二重結合を含み、互いに対角線上にあるためである。これは、飽和窒素原子を有するピロール(例えば、上記の21位および23位)には当てはまらない。したがって、互変異性体は形成され得ないため、さらなる議論には含まれない。
【0050】
バクテリオクロリンは、環A~Dが同一でない場合(例えば、分子が還元テトラピロール骨格を中心に非対称に置換されている場合)、還元されるピロール環の対に応じて複数の異性体を備え得る。したがって、非置換バクテリオクロリン(一般的にバクテリオクロリンと呼ばれる)の考えられる構造を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
これらの構造は、環A~Dがどれも同一ではないという仮定に基づいている。ただし、環A~Dの置換パターンによっては、これらの構造の一部が同一になり得る。
【0053】
本明細書で使用される「イソバクテリオクロリン」は、飽和炭素原子が2つの隣接するピロール環の非縮合炭素原子に位置する還元ポルフィリン(テトラヒドロポルフィリン)を指す。したがって、還元テトラピロール骨格は、16π電子共役系を備え、芳香族ではない。
【0054】
イソバクテリオクロリンは、2つのピロールサブユニット、1つのピロリンサブユニット、および1つのピロリジンサブユニットを備える還元テトラピロール骨格を備える。
【0055】
イソバクテリオクロリンは、環A~Dが同一でない場合(例えば、分子が還元テトラピロール骨格を中心に非対称に置換されている場合)、還元されるピロール環の対に応じて複数の異性体を備え得る。これらの構造はそれぞれ互変異性体として存在し得る。したがって、非置換イソバクテリオクロリン(一般的にイソバクテリオクロリンと呼ばれる)には、表5の構造が含まれ得る。
【0056】
【表5】
【0057】
これらの構造は、環A~Dがどれも同一ではないという仮定に基づく。ただし、環A~Dの置換パターンによっては、これらの構造の一部が同一になり得る。
【0058】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル」という用語は、水素および炭素原子の大部分を備え、好ましくは水素および炭素原子のみからなる一価または二価の基を指し、この基は芳香族または脂肪族であり得、好ましくは飽和または不飽和脂肪族であり得、好ましくは、飽和、分枝状または非分枝状であり得、1~20個の原子(C1~C20)を含み、好ましくは1~12個の原子(C1~C12)を含み、より好ましくは1~6個の原子(C1~C6)を含む。好ましい実施形態では、ヒドロカルビル基は、1~20個の炭素原子を含む脂肪族基である。
【0059】
ヒドロカルビル基は、完全に脂肪族であり得、脂肪族部分と芳香族部分との組み合わせであり得る。したがって、ヒドロカルビル基の例には、非環式基、ならびに環状アルキル基およびアリール基から選択され得る、1つ以上の非環式部分と1つ以上の環式部分とを組み合わせた基が含まれる。
【0060】
脂肪族ヒドロカルビル基の例としては、非環式基、非芳香族環式基、および非環式部分と非芳香族環式部分との両方を含む基が挙げられる。これらには、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびカルボシクリル(例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル)基が含まれる。芳香族ヒドロカルビル基の例には、アリール基およびヘテロアリール基が含まれる。
【0061】
加えてまたはあるいは、ヒドロカルビル基の炭素原子の1つ以上、およびそれに結合する任意の置換基は、酸素原子(-O-)、窒素原子(-NR-)で置き換えられ得、ここで、酸素、窒素または硫黄原子は別のヘテロ原子に結合していないという条件で、Rは、Hまたはアルキル基、または硫黄原子(-S-)、好ましくは酸素原子である。このような実施形態では、ヒドロカルビル基は、エーテル、アミン、またはチオエーテルを備え得る。実施形態では、鎖原子の最大20%、好ましくは最大10%がヘテロ原子である。他の実施形態では、鎖中に1~3個のヘテロ原子が存在し、好ましくは1または2個、最も好ましくは1個である。
【0062】
ヒドロカルビル基は、1つ以上の基、例えば、1つ以上のヘテロ原子、アリールもしくはヘテロアリール基、またはそれらの組み合わせを含むアルキル基によって置換され得る。ヒドロカルビル基は、好ましくはヒドロキシ(-OH)基、カルボン酸(-COOH)基およびC1~C5エステル(-COO(C1~C5アルキル))から選択され、より好ましくはカルボン酸(-COOH)基およびC1~C5エステル(-COO(C1~C5アルキル))、最も好ましくはカルボン酸(-COOH)基から選択される1つ以上の基によって置換され得る。
【0063】
「シクロカルビル」という用語は、本明細書では環状ヒドロカルビルを指すために使用され、ヒドロカルビルは上記で定義した通りである。シクロカルビルは、1つ以上の二重結合を備える。環は、芳香族であっても芳香族でなくてもよい。複素環は、3~10個の炭素原子を含有し得、必要に応じてアルキル基が結合し得る。複素環基の例として、3~8個の炭素原子、例えば、4~6個の炭素原子、を含有する基が含まれる。
【0064】
本明細書で使用される「複素環」という用語は、好ましくは窒素、酸素および硫黄から選択される、1つ以上のヘテロ原子を備える、シクロカルビルを指す。複素環は、1つ以上の二重結合を備える。環は、芳香族であっても芳香族でなくてもよい。複素環は、3~10個の炭素原子を含有し得、必要に応じてアルキル基が結合し得る。複素環基の例として、3~8個の炭素原子、例えば、4~6個の炭素原子、を含有する基が含まれる。特定の例としては、3、4、5または6個の環炭素原子を含有する複素環基が挙げられる。窒素を備える複素環基には、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環が含まれる。
【0065】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、水素および1~20個の炭素原子を含有する炭素原子のみからなる一価の直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。アルキル基の例としては、1~20個の炭素原子(C1~C20)、好ましくは1~12個の炭素原子(C1~C12)、より好ましくは1~6個の炭素原子(C1~C6)を含有するアルキル基が挙げられる。特定の例には、1、2、3、4、6、8、10、12または14個の炭素原子を含有するアルキル基が含まれる。特に明記しない限り、用語「アルキル」には追加の置換基は含まれない。
【0066】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、水素および炭素原子のみからなり1~20個の炭素原子を含有する二価の直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。アルキル基の例としては、1~20個の炭素原子(C1~C20)、好ましくは1~12個の炭素原子(C1~C12)、より好ましくは1~6個の炭素原子(C1~C6)を含有するアルキル基が挙げられる。特定の例には、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含有するアルキレン基が含まれる。特に明記しない限り、用語「アルキレン」には必要に応じた置換基は含まれない。
【0067】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、3~20個の炭素原子を含有し、少なくとも1つの環を含有し、当該環が少なくとも3つの環炭素原子を有する、一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。本明細書で言及されるシクロアルキル基は、必要に応じて、それに結合したアルキル基を有し得る。シクロアルキル基の例としては、3~16個の炭素原子、例えば、3から10個の炭素原子を、含有する、シクロアルキル基が挙げられる。特定の例としては、3、4、5または6個の環炭素原子を含有するシクロアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、単環式、多環式(例えば二環式)または架橋環系である基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」とは、1つ以上の炭素原子が窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子で置換されたシクロアルキルを指す。「シクロアルケニル」基は、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む非芳香族シクロアルキル基に相当する。「ヘテロシクロアルケニル」基は、1つ以上の炭素原子が窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子で置換されたシクロアルケニルに対応する。
【0068】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、特に指定のない限り、2~20個の炭素原子を含有し、さらに、EまたはZ配置のいずれかの、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する、一価の直鎖または分枝鎖アルキル基を指す。アルケニル基の例としては、2~20個の炭素原子(C2~C20)、好ましくは2~12個の炭素原子(C2~C12)、より好ましくは2~6個の炭素原子(C2~C6)を含有するアルキル基が挙げられる。特定の例には、2、3、4、5または6個の炭素原子を含有するアルケニル基が含まれる。アルケニル基の例としては、エテニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニルなどが挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、6~14個の環炭素原子を含む芳香族炭素環系を指す。アリール基の例としては、6~10個の環炭素原子、例えば、6個の環炭素原子、を含有するアリール基が挙げられる。アリール基の例には、単環式芳香環系である基、または少なくとも1つが芳香族である2つ以上の環を含む多環式環系である基、が含まれる。アリール基の例としては、環炭素原子に加えて1~6個の環外炭素原子を備えるアリール基が挙げられる。アリール基としては、1価または多価のアリール基が適宜挙げられる。一価のアリール基としては、フェニル、ベンジルナフチル、フルオレニル、アズレニル、インデニル、アントリルなどが挙げられる。二価のアリール基の例は、1,4-フェニレンである。「ヘテロアリール」という用語は、1つ以上のヘテロ原子、特に窒素、酸素および/または硫黄から選択されるヘテロ原子をさらに含む、上記のアリールについて定義した芳香族炭素環系を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性の塩基または酸から調製される塩を指す。例えば、本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む薬学的に許容される非毒性塩基から便利に調製され得る。このような塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩、亜鉛、アルミニウムなどのポスト遷移金属塩の塩、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、tert-ブチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチルジアミン、メグルミン、トロメタミンおよびプロカインなどの有機塩基から誘導される塩、が挙げられる。好ましい塩基塩は、アルカリ金属の塩から選択され、最も好ましくはナトリウムである。あるいは、本発明の化合物が塩基性であるとき、その対応する塩は、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容される非毒性の酸から便利に調製され得る。このような塩の例としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸およびp-トルエンスルホン酸などの塩が挙げられる。好ましい酸塩は、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、および酒石酸である。実施形態では、化合物は、それぞれ化合物の塩基性部分および酸性部分の酸塩および塩基性塩の両方を備え得る。
【0071】
本発明による化合物は、式Iまたはその薬学的に許容される塩によって表され、
【化13】
化合物は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンから選択され、
【化14】
は、二重結合または単結合を表し、
【化15】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eはR2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fはRと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化16】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC1~C5-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C1~C5アルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC1~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC1~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化17】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X、X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
qは、化合物の全体の電荷であり、
A、B、CおよびDは、各々独立して、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から選択される5員含窒素複素環を表す。
【0072】
好ましくは、R1aとR1b、R1cとR1d、R1eとR2a、およびR1fとRの対はシクロカルビルを形成しない。したがって、実施形態では、R1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化18】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC1~C5-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C1~C5アルキレンであり、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC1~C10-ヒドロカルビル-A2基であり、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化19】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C~C-アルキレンである。
残りの置換基は上記で定義したとおりである。
【0073】
式Iにおいて、
【化20】
は、二重結合または単結合を表し、
【化21】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、A、B、CおよびDは各々、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から独立して選択される5員含窒素複素環を表す。化合物がポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、またはイソバクテリオクロリンから選択されると規定されているため、二重結合と単結合の位置、窒素とMn+との間のどの結合が配位結合であるか、どの結合が共有結合であるか、および環A~Dの相同性は、当業者には明らかである。
【0074】
上述のように、式Iのポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンおよびイソバクテリオクロリンは、互変異性体として存在し得る。式Iにおいて環AからDは同一ではないため、どの環が還元されるかに応じて、クロリン、バクテリオクロリン、およびイソバクテリオクロリンの複数の異性体も存在することになる。上で論じたように、これらの異性体には互変異性体が存在する場合もあり得る。式Iには、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンの定義内に入る限り、これらの分子の異性体および互変異性体のすべてが含まれる。
【0075】
したがって、化合物がポルフィリンから選択される実施形態では、化合物は、式IIaもしくはIIbまたはその薬学的に許容される塩によって表され得る。
【化22】
【0076】
化合物がクロリンから選択される実施形態では、化合物は、式IIIa~IIIdのいずれか1つまたはその薬学的に許容される塩によって表され得る。
【化23】
【0077】
化合物がバクテリオクロリンから選択される実施形態では、化合物は式IVaもしくはIVb、またはそれらの薬学的に許容される塩によって表され得る。
【化24】
【0078】
化合物がイソバクテリオクロリンから選択される実施形態では、式Va~Vhのいずれか1つまたはそれらの薬学的に許容される塩によって表され得る。
【化25】
【0079】
式IIa~Vhにおいて、→は窒素とMn+との間の配位結合を表す。NとMn+との間の固体結合は共有結合を表す(つまり、プロトンを失ったNH間)。
【0080】
式IIa、IIb、IIIa~IIId、IVa、IVbおよびVa~VhにおけるR1a~R1f、R2a、R2b、R3a、R3b、R、L、X、Mn+およびqの定義は、式Iについて定義されたものと同一である。式IIa、IIb、IIIa~IIId、IVa、IVbおよびVa~Vhは、式Iの表現である。式IIa、IIb、IIIa~IIId、IVa、IVbおよびVa~Vhは、共鳴構造を包含し、および、示された共鳴形態に限定されることを意図するものではない。
【0081】
1a~R1fは、上で定義したHまたは一価ヒドロカルビルから独立して選択され得る。あるいは、R1aとR1b、R1cとR1d、R1eとR2a、およびR1fとRの対のうちの1つ以上が結合してシクロカルビルを形成する。シクロカルビルは、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアレニル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、またはヘテロアリールから選択され得る。シクロカルビルは、C~C環、好ましくはCまたはC環であり得る。シクロカルビルは、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格のピロール、ピロリンまたはピロリジン環と多環式環系を形成し得る。シクロカルビルは、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0082】
がR1fと共にシクロカルビルを形成する実施形態では、この環は、二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基によってまたはA2単独によって置換され、ここで、A2は、本明細書で定義されるとおりである。好ましくは、そのような置換は、基R2bに最も近い環位置(あるいは、R3bから最も遠い環位置)にある。
【0083】
好ましい実施形態では、R1a~R1f、R2a、R2bおよびRの1つ以上、好ましくはすべてが、Hまたは一価のヒドロカルビルから選択される。
【0084】
実施形態では、R1a~R1fは、Hまたは一価のC~C-ヒドロカルビル、好ましくはH、C~C-アルキルまたはC1~C3アルケニル、より好ましくはH、C~C-アルキルまたはC~C-アルケニルから独立して選択され得る(すなわち、H、-CH、CHCHまたは-CH=CH)、最も好ましくは-CHである。
【0085】
2aおよびR2bは、好ましくは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択される。二価ヒドロカルビル-A1基は、X2であるか、または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化26】
から選択される末端基であり、ここで、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビルまたはX2であり、Rは、C~C-アルキレンである。あるいは、上記のように、R2aはR1eと一緒になって炭素環を形成してもよい。この実施形態では、R2bは、上記で定義したように、H、一価ヒドロカルビル基、または一価ヒドロカルビル-A1基から選択される。
【0086】
実施形態では、R2aおよびR2bは、H、一価のC~C10-ヒドロカルビル基、または二価のC~C10-ヒドロカルビル-A1基から独立して選択される。A1はX2、または-COOH、-COOR、-CONH、-CON(R、-OH、-SH、または-NHから選択される末端基であり、Rは一価のC~C-ヒドロカルビルである。好ましい実施形態では、R2aおよびR2bは、H、-CH、-(CHn’-CH、-(CHn’-COOH、-(CHn’-COOCH、または-(CHn’-COOCHCHから独立して選択され、n’は1~3であり、より好ましくはR2aおよびR2bは独立して-CH-CH-COOHまたは-CH-CH-COOCH、最も好ましくはR2aおよびR2bは-CH-CH-COOHから選択される。好ましくは、R2aは、-CH-CH-COOHまたは-CH-CH-COOCHから選択され、より好ましくは、R2aは、-CH-CH-COOHである。この実施形態では、R2bは上記のいずれかから選択され得、好ましくはHである。好ましい実施形態では、R2aはRと同じである。実施形態では、R2a、R2bおよびRは同じである。
【0087】
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択される。化合物がHO-1の結合ポケットに確実に適合するようにするために、R3aおよびR3bは小さな部分であることが好ましい。このため、R3aおよびR3bは、本明細書で特定される基に限定される。下記でさらに説明するように、これらの位置にある大きな基(例:フェニル)は分子に対するHO-1の作用を妨げ、議論された利点は観察されません。実施形態では、R3aおよびR3bは、独立して、H、-CH、-OH、-SH、または-NH、好ましくはHから選択され得る。
【0088】
は、好ましくは二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基であり、A2は、X3であり、または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化27】
から選択される末端基であり、ここで、Rは、一価のC~C-ヒドロカルビル基またはX3であり、Rは、C~C-アルキレンである。あるいは、RはR1fと共に、C~C10一価ヒドロカルビル-A2基またはA2単独で置換される上記定義のシクロカルビルを形成し得、A2は上記定義の通りである。好ましくは、シクロカルビルは、C~C-一価ヒドロカルビル-A2基によって、またはA2単独によって置換される。
【0089】
実施形態では、Rは、C~C-アルキル-A2基、C~C-エーテル-A2基、またはC~C-チオエーテル-A2基であり得、A2は、X3であるか、または-COOH、-COOR、-CONH、-CON(R、-OH、-SH、または-NHから選択され、ここでRは一価のC~C-ヒドロカルビル基である。好ましくは、Rは、-(CHn’’-COOHまたは-(CHn’’-COOCHから選択され、n’’は1~3であり、より好ましくは、-(CH-COOH(プロパン酸)または-(CH-COOCH(プロパン酸メチルエステル)、最も好ましくは-(CH-COOH(プロパン酸)から選択される。実施形態では、R2aおよびRは、-(CH-COOHまたは-(CH-COOCHから独立して選択され得、最も好ましくは、両方とも-(CH-COOHである。
【0090】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による化合物は、式Iaの化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【化28】
式IのRは-(CH-A2である。A2および他の置換基は本明細書に記載のとおりである。好ましくは、A2は、-COOH、-COOR、-OH、または-SHから選択され、ここで、Rは、C1~C2の一価ヒドロカルビル基である。より好ましくは、A2は-COOHまたは-COOCHであり、最も好ましくは-COOHである。
【0091】
式Iaの化合物がポルフィリンである実施形態では、その構造はジメチルジュテロヘム(DMD)の構造に基づく。DMDは、HO-1によって分解される内因性物質であるヘム(PPIX)の類似体であり、HO-1に対して活性を示すことが知られている。
【0092】
実施形態では、A1は、フルオロフォア(X2)を含まないか、またはそれからならず、A2は、フルオロフォア(X3)を含むか、またはそれからなる。実施形態では、A2は、フルオロフォア(X3)を含まないか、またはそれからならず、A1は、フルオロフォア(X2)を含むか、またはそれからなる。実施形態では、A1またはA2のいずれも、フルオロフォア(X2またはX3)を含まないか、またはそれからならない。実施形態では、A1およびA2の両方は、フルオロフォア(X2およびX3)を含むか、またはフルオロフォアからなる。
【0093】
上述のように、A1および/またはA2のいずれかまたは両方がフルオロフォア(X2および/またはX3)を備えるかまたはフルオロフォアからなる場合、フルオロフォアは、任意の適切なフルオロフォアであり得、Xに関して下記に論じられるフルオロフォアから選択され得る。好ましくは、フルオロフォアX2および/またはX3の包含は、化合物の溶解性に悪影響を及ぼさない。
【0094】
理解されるように、A1またはA2のいずれかがフルオロフォア(X2またはX3)を備えるかもしくはフルオロフォア(X2またはX3)からなる場合、またはA1およびA2が各々異なるフルオロフォア(X2またはX3)を備えるかもしくは各々それらからなる場合、合成は、保護基戦略を使用して、1つ以上のフルオロフォアを独立して結合することを含み得る。
【0095】
実施形態では、フルオロフォアX、X2、およびX3は、異なる波長で励起および/または発光最大値を有する。実施形態では、フルオロフォアの発光強度のレシオメトリック分析を実行することができる。
【0096】
Lは、化合物のテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の5位をフルオロフォアXに接続するリンカーである。Lの相同性は特に限定されない。実施形態では、Lは、フルオロフォアXがテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の5位に直接結合され得るように、直接結合を表し得る。別の実施形態では、Lは、二価のC~C20-ヒドロカルビル、好ましくはC~C20-アルキレン、C~C20-エーテル、C~C20-アリールまたはC~C20-ヘテロアリール、より好ましくは1,4-フェニレンおよび/または1,2,3-トリアゾールを含むC~C20-アルキレン、C~C20-アリールまたはC~C20-ヘテロアリールであり得る。
【0097】
1,2,3-トリアゾールは、アルキンとアジドとの間の「クリック」反応によって形成され得る。この反応は、式Iの化合物を合成するために、アジドまたはアルキンを含むように修飾されたテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格と、アジドまたはアルキンの他方を含むように修飾されたフルオロフォアXとの間で実行され得る。
【0098】
実施形態では、Lは、
【化29】
であり得、Yは、O、NRまたは1,2,3-トリアゾールから選択され、Rは、HまたはC~C-ヒドロカルビルである。
【0099】
Xは、フルオロフォアであり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、チアゾール、チアジン、ベンゾチアゾール、シアニン、カルボシアニン、サリチレート、アントラニレート、クマリン、フルオレセインおよび/またはローダミンおよびそれらの誘導体から必要に応じて選択される芳香族または複素芳香族化合物であり得る。好ましくは、Xは、クマリン、フルオレセインおよびその誘導体、インドシアニングリーンおよびメチレンブルーおよびそれらの誘導体から選択される。
【0100】
実施形態では、光が組織内に最大の侵入深さを有する、近赤外(NIR)ウィンドウで吸収および/または放射するフルオロフォアを選択することが好ましい。NIRウィンドウは、650nm~1350nmの波長として定義される。NIR色素の例は、インドシアニングリーン(ICG)で、これは人間の被験者で試験され、蛍光血管造影で広く使用されている。NIR色素のさらなる例には、メチレンブルー、aza-BODIPY、AlexaFluor 647、Cy7 Cy7.5、フルオレセイン、およびAlexa 488が含まれる。これによって、より深いところでの生体内および生体外イメージングが可能になる。
【0101】
実施形態では、フルオレセインおよびその類似体は、その発光および励起波長がほとんどの機器のデフォルト波長を構成するため、好ましい。これによって、実装がより容易になる。これは、生体外や試験管内などの生体内ではないイメージング実験や、化合物が研究試薬として使用される場合に特に当てはまる。
【0102】
実施形態では、Xはメチレンブルーである。これは患者の治療に認可されており、メトヘモグロビン血症の治療に高濃度で臨床的に使用されている。人間の被験者に対する毒性プロファイルは最小限で、よく特徴付けられている。
【0103】
n+は、金属カチオンまたは有機カチオンなど、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンに配位され得る任意のカチオンであり得る。Mn+は、一度結合すると毒性がないことが好ましい。nの値は1~3であり、好ましくは1~2である。実施形態では、Mn+は、アンモニウムまたは金属カチオンであり得、好ましくはアンモニウムまたは鉄、亜鉛もしくはマグネシウムカチオン(例えば、NH 、Fe2+、Fe3+、Zn2+またはMn2+)、より好ましくは鉄カチオン、最も好ましくは鉄(II)および鉄(III)から選択される鉄カチオンである。
【0104】
分子の電荷qは、Mn+の電荷と、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格上の置換基の電荷、つまりR1a~R1f、R2a、R2b、R3a、R3b、R、L、およびXの電荷に依存する。上記で論じたように、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は、Mn+との共有結合を形成する飽和窒素原子上の2つのプロトンが失われるため、形式電荷2-を有する。好ましくは、qは、3-~3+、より好ましくは2-~2+、最も好ましくは1-~1+である。化合物は中性であり得、従って、qは0であり得る。実施形態では、Mカチオンを有する化合物(すなわち、n=1)は、1-の電荷qを有し得る。 実施形態では、M2+カチオンを有する化合物(すなわち、n=2)は、0の電荷qを有し得る。実施形態では、M3+カチオンを有する化合物(すなわち、n=3)は、1+の電荷qを有し得る。
【0105】
式VIa~VIcの化合物の電荷q’は、3-~3+、より好ましくは2-~2+、最も好ましくは1-~1+であり得る。式VIaの場合、q’は、異なるMn+カチオンのqについて上で説明したとおりであり得る。好ましくは、式VIbおよびVIcは0のq’を有する。
【0106】
[Z-X]q’’の電荷q’’は、3-~3+、より好ましくは2-~2+、最も好ましくは1-~1+であり得る。好ましい実施形態では、q’’は0である。
【0107】
q、q’および/またはq’’が0ではない実施形態では、化合物は対イオンと結合し得る。このような複合体は、本明細書に定義される化合物の薬学的に許容される塩となる。任意の適切な対イオンを使用し得、その相同性は、化合物の電荷が正であるか(したがって、負の対イオンが必要である)、または負であるか(したがって、正の対イオンが必要である)に依存する。実施形態では、対イオンは、化合物の溶解性を助け得るため、塩化物(Cl)などのハロゲン化物(X)、またはヘキサフルオロホスフェート(PF )であり得る。
【0108】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、フェルスター共鳴エネルギー移動としても知られ、2つの発色団間のエネルギー移動を表す。FRETは、非放射性双極子-双極子結合を介したドナー分子からアクセプター分子への距離依存のエネルギー移動に依存する。このような方法で相互作用する分子の対は、ドナー/アクセプターの対と呼ばれることがよくある。ドナー分子は最初にエネルギーを吸収する発色団であり、アクセプター分子はその後エネルギーが移動する発色団である。ドナー発色団とアクセプター発色団とが異なるフルオロフォアであるとき、FRETはアクセプターの蛍光の出現またはドナー蛍光の消光によって検出され得る。
【0109】
FRET効率はドナー発光スペクトルとアクセプター吸収スペクトルとのスペクトルの重なりに依存し、重なりが良好であればFRET効率が向上する。FRETエネルギー伝達の効率もドナーとアクセプター間の距離の6乗に反比例するため、FRETは距離の小さな変化に非常に敏感になる。FRETは距離に対する感度が高いため、分子相互作用の調査に使用され得る。
【0110】
好ましい実施形態では、Xおよびポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は、FRET対を表す。これらの部分がFRET対を表すためには、それらは互いに近接していなければならず(通常10~100Å)、本発明の化合物ではこれが達成される。さらに、アクセプターの吸収または励起スペクトルは、ドナーの蛍光発光スペクトルと重複しなければならない。したがって、好ましいフルオロフォアは、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の相同性に依存する。これらの各々は独自のスペクトル特性を持っているためである。重複するスペクトル特性を有するテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格およびフルオロフォアの組み合わせは、本開示の利点を利用して、または既知の参照標準を使用して(既知のFRET対の表は、ThermoFisher Molecular Probes Handbook、第1章などにおいて確認され得る)、ドナーおよびアクセプターの発光スペクトルおよび励起スペクトルの日常的な測定および重複の確認(例えば、ThermoFisherスペクトルビューアを使用する)に基づいて、容易に達成され得る。
【0111】
関連する励起スペクトルと発光スペクトルが重複している場合、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格とフルオロフォアのいずれかがドナーとなり、もう一方がアクセプターとなり得る。したがって、本発明による化合物では、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格へのFRET転移によるXの励起に続いて、Xからの蛍光が消光され得る。あるいは、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格からXへのFRET転移によるテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の励起に続いて、本発明による化合物においてXからの蛍光が観察され得る。
【0112】
実施形態では、化合物がポルフィリンである場合、Xは、好ましくはクマリン、フルオレセイン、またはそれらの誘導体である。他の実施形態では、化合物はクロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンであり、Xはインドシアニングリーンまたはメチレンブルーまたはそれらの誘導体である。これらの実施形態の両方において、Xはドナーであり、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格がアクセプターである。したがって、Xの蛍光は、テトラピロールまたは還元テトラピロールアクセプターとのFRET相互作用によってXが励起された後に消光される。
【0113】
実施形態では、分子はポルフィリンであり、Xはインドシアニングリーン、メチレンブルー、またはそれらの誘導体である。この実施形態では、Xはアクセプターであり、ポルフィリンのテトラピロール骨格はドナーである。
【0114】
HO-1と本発明による化合物との反応によって、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は5位で脱環されると本発明者らは考える。この反応後、炭素原子5はL-Xに結合したままになるが、残りの分子は直鎖テトラピロールまたは還元テトラピロールになる。Xはテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格に結合しなくなるため、これらの部分は近接して維持されなくなる。したがって、これらの部分間のFRETはもはや発生しない。したがって、Xからの蛍光は、HO-1による化合物の脱環化に続いて調節される。このため、これらのFRETプローブは大きな信号対雑音比を提供し、その結果、HO-1活性の高感度なイメージングが可能になる。
【0115】
蛍光変調によってXからの蛍光が増加するか減少するかは、XがFRET対のドナーであるかアクセプターであるかによって決まる。Xがドナーである実施形態では、本発明による化合物ではXからの蛍光が消光され、HO-1の作用後に蛍光が増加する。したがって、Xからの蛍光の観察によって、HO-1活性が特定される。
【0116】
逆に、Xがアクセプターである実施形態では、テトラピロンまたは還元テトラピロール骨格が励起されると、Xからの蛍光が観察される。したがって、Xからの蛍光の減少によってHO-1活性が特定される。理解されるように、X2および/またはX3がさらに存在する場合、これらのフルオロフォアはさらにFRET対に関与し得る。本発明者らは、テトラピロール骨格の周囲の置換基の存在および/または欠如のために、テトラピロール骨格の5位のフルオロフォアを含む他の分子がHO-1によって脱環されないことを見出した。特に、10、15および20位のフェニルなどの大きな部分(すなわち、本発明による化合物においてR3a、R2bおよびR3bによって占められる)は、HO-1が化合物に作用するのを妨げることが判明した。さらに、Rヒドロカルビル基を末端とするカルボン酸またはメチルエステル、特にカルボン酸の存在によって、化合物に対するHO-1の活性が向上すると考えられる。これは、R鎖がC3鎖であるとき、およびR2aがプロパン酸である場合に特に当てはまる。したがって、Rは好ましくはプロパン酸基またはプロパン酸メチルエステル、好ましくはプロパン酸であり、R2aは好ましくはプロパン酸である。
【0117】
HO-1の結晶構造を考慮すると、これらの効果はHO-1の結合ポケットのサイズと形状によるものと考えられる。HO-1の活性部位におけるヘムの結合は広く知られている(PDB accession 1N45、PMID:12500973)。HO-1の結晶構造は、文献、例えばLad,Lら、J.Biol.Chem、2003、278、7834-7843に記載される。
【0118】
HO-1の結合ポケット内のヘムを検査すると、活性部位の深い内面に比較的大きなポケットがあることが明らかになる。これは、5位のフルオロフォアXの予想される位置に対応する。また、ヘムの10位および15位でのヘムの外部境界と活性部位の内部境界の間に追加のスペースがほとんどないことも示す。また、プロピオン酸は、HO-1活性部位の正に帯電したLysおよびArg側鎖に近接して位置しているようであり、これは、カルボン酸部分上のヘムプロパン酸Oδ-/Oと正に帯電したLysおよびArgの側鎖との間に静電結合があることを示唆している。
【0119】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、RはHO-1結合ポケット内の正に荷電した残基と同様の様式で相互作用し、Rが3原子長およびカルボン酸で終結しているとき(例えば、Rがプロピオン酸である)、ヘムと同様、相互作用が最大化されると考えられる。これによって、化合物の分解が改善され、より大きな蛍光応答が観察される。これはR2aにも当てはまると考えられており、好ましくはRについて上述した通りである。RおよびR2a位置の両方にプロピオン酸塩を有する基質の有利な結合能力は、HO-1に関してPeng,Dら、Biochemistry,2012,51,36,7054-7063で議論されている。Peng,Dらはさらに、プロピオン酸などの置換がR1f位で十分に許容されることを実証している。プロピオン酸塩を介した塩橋相互作用とHO-1との関連性は、Wang, J et al.,Biochemistry,2006,45,1,61-73でさらに実証されている。Wangらは、プロピオン酸塩への結合に関与すると考えられるHO-1結合ポケット内のアルギニンとリジンを変異させると、位置選択性が大幅に低下することも示した。これは、プロピオン酸塩が、位置選択的α切断のためのHO-1の結合においてヘムを固定する役割を果たし得ることを示唆している。
【0120】
さらに、フェニルなどのR3aおよびR3b位置の大きな置換基は、結合ポケットがそのような基を収容できるほど十分に広くないため、HO-1の結合を妨げると考えられる。
【0121】
本発明による化合物に対するHO-1の作用のために、化合物は、この酵素によって代謝されるため、HO-1を画像化し、HO-1過剰発現を特徴とする疾患を診断するために使用され得る。したがって、蛍光および/または蛍光変調の検出を使用して、HO-1レベルの増加を特定し、位置を特定し得る。これは、本明細書に記載されるように、分子がFRET対を含む実施形態では特に有利であり、HO-1の作用によって、テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格からフルオロフォアが除去され、FRETが防止され、蛍光変調がもたらされる。
【0122】
HO-1過剰発現を特徴とする疾患には、プラーク内出血、脳内出血、頭蓋内出血、くも膜下出血、大動脈瘤破裂(アテローム性動脈硬化性および非アテローム性動脈硬化性)、神経変性疾患(微小出血も含む)、網膜出血、血管内溶血、血栓症に関連する赤血球溶解(新型コロナウイルス感染症を含む)、他の部位の組織出血、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化によって引き起こされる急性冠症候群および/または脳卒中が挙げられる。
【0123】
アテローム性動脈硬化症は、脂肪、コレステロール、カルシウム、および血液中のその他の物質から形成されるプラークによって動脈が詰まる状態である。これらのプラークは動脈の硬化と狭窄を引き起こし、重要な器官への血流と酸素供給を制限し、心臓や脳への血流を潜在的に遮断する可能性のある血栓のリスクを高める。
【0124】
アテローム性動脈硬化は通常、最初は症状を示さないが、最終的には生命を脅かす問題を引き起こし得る。場合によっては、動脈壁を覆う脆弱なプラークが破裂するプラーク内出血が発生し得る。これによって血栓が形成され得、それ自体が虚血性脳卒中や急性冠症候群の発症を引き起こし得る。さらに、プラーク内出血は、さらに進行した脆弱性プラークの発生を引き起こし得、さらなる血栓の発生につながり得る。したがって、脆弱なプラークを早期に検出すると、さらなる問題の発生を防ぎ得る。
【0125】
アテローム性動脈硬化症では、プラーク内出血中にHO-1が誘導される。したがって、HO-1レベルの増加は、そのような出血を診断するために使用され得る。さらに、HO-1のプラーク発現を使用してプラークの破裂を予測し得る。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、これは、プラーク内出血がプラークの脆弱性を促進する一方、HO-1の誘導がプラークの脆弱性を低下させるためであると考えられる。したがって、HO-1レベルの上昇が検出されると、プラークが破裂する前にプラークの脆弱性が示され得、破裂前の治療が可能になる。これによって、示されている抗凝固薬、抗血小板薬、降圧薬、脂質低下薬、血糖降下薬などの強化された予防治療に加えて、血管形成術やステント留置術などの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)によるプラークの予防的治療が可能になる。
【0126】
急性冠症候群は、心臓の血管内での血栓の形成として定義される。この血栓は心臓内の血流を制限し、心臓組織の損傷や心筋梗塞(心臓発作)を引き起こし得る。プラーク内出血は血栓を引き起こし得るため、プラークの位置によっては急性冠症候群を引き起こし得る。したがって、HO-1は、心臓発作が急性冠症候群の結果であるかどうかを診断するために使用され得る。
【0127】
脳卒中は、脳の一部への血液供給が遮断されると発生する。したがって、脳卒中の治療を受けるのが早ければ早いほど、起こるダメージは少なくなる。プラーク内出血は血栓を引き起こし得るため、プラークの位置によっては脳卒中を引き起こし得る。
【0128】
脳卒中には、虚血性脳卒中や出血性脳卒中など、さまざまな種類がある。プラーク内出血によって引き起こされる脳卒中(虚血性脳卒中)はHO-1レベルの増加をもたらすため、本発明の化合物はこれらのタイプの脳卒中を区別するために使用され得る。抗凝固薬または血栓溶解薬は虚血性脳卒中を改善できる一方で、出血性脳卒中を悪化させ得るため、これはこの場合特に重要である。したがって、これらの治療を行う前に脳卒中の原因を理解することが重要である。
【0129】
診断は、生体内、生体外、または試験管内で行われ得る。
【0130】
実施形態では、診断は、被験者におけるHO-1の位置に関するより正確な詳細を提供し、その後の治療に役立ち得るため、生体内で実行されることが好ましい。場合によっては、生体内診断の方が侵襲性が低い場合もあり得る。例えば、患者に挿入する必要のある異なるカテーテルの数が少なくなるため、生体内診断は、1つのモダリティのみで行われ得、より迅速で中断の少ない手順が可能になる。この理由から、治療は、後続の手順ではなく、同じ手順で有利に提供され得る。末梢血に関するポイントオブケア診断は、カテーテルの挿入を回避し得るため、望ましいと考えられる。
【0131】
生体外および試験管内診断にも特別な利点がある。例えば、被験者から血液を採取し、そのような評価に必要な最小限の装置でHO-1レベルを迅速に検査し得る。したがって、本発明による化合物は、最小限の設備が利用可能な状況、例えば緊急事態における治療現場での例えば救急隊員による疾患の診断に使用され得る。この情報は、より高度な機器を備えた場所、例えば病院、に到着するまで待つことなく、どのような治療法を使用すべきかをアドバイスするために使用され得る。これによって、より迅速かつ/またはより適切な治療を施すことが可能になる。さらに、検査対象の血液の除去には被験者への干渉が最小限で済み、被験者自身のイメージングの必要性が減る。これによって、被験者との接触時間が減少し、被験者のストレスが軽減され得る。また、組成物を体内に注射する必要もない。
【0132】
これは、脳卒中の診断に特に役立つ。通常、このような診断には頭部のCTスキャンが必要であるが、それ自体、特定の場所でのみ利用可能な専門の機器を使用する必要がある。上で議論したように、特定の治療法を使用する前に脳卒中の原因を理解することが重要である。プラーク内出血によって引き起こされる脳卒中はHO-1レベルの上昇をもたらすため、本発明の化合物は、患者の血液を検査することによってこれらのタイプの脳卒中を区別するために使用され得る。したがって、CTスキャンを必要とせずに脳卒中の原因を迅速に特定し得るため、より迅速に適切な治療を行うことが可能になる。脳卒中によって引き起こされる損傷を制限するには治療のスピードが非常に重要であるため、このような検査には明らかな利点がある。
【0133】
したがって、本発明による化合物は、必要に応じてHO-1過剰発現を特徴とする疾患の診断方法に使用され得る。特に、それらは、プラーク内出血、急性冠状動脈症候群、および/またはプラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる脳卒中を生体内で診断する方法において使用され得る。
【0134】
本発明による化合物は、HO-1過剰発現を特徴とする疾患の試験管内および/または生体外診断のための方法に使用され得る。特に、それらは、プラーク内出血、急性冠状動脈症候群および/またはプラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる脳卒中の試験管内および/または生体外診断のための方法において使用され得る。
【0135】
生体内での診断方法は、好ましくは、対象に化合物を投与することを含む。急性冠症候群が診断される実施形態では、化合物は冠動脈に投与されることが好ましい。試験管内および/または生体外での診断方法は、化合物を、血液または組織、好ましくは血液などの対象から除去した生物物質と接触させることを含み得る。
【0136】
生体内、試験管内および/または生体外診断の方法は、フルオロフォアを励起し、蛍光応答を記録することを含み得る。実施形態では、この方法は、X、またはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンもしくはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の吸光スペクトル内の波長の光を提供するステップと、Xによって放射される光を検出するステップとをさらに含み得る。この方法では、蛍光変調の検出によってHO-1の存在が特定される。
【0137】
したがって、本発明による化合物は、プラーク内出血、脳内出血、頭蓋内出血、くも膜下出血、大動脈瘤破裂(アテローム性動脈硬化性および非アテローム性動脈硬化性)、神経変性疾患(微小出血も含む)、網膜出血、血管内溶血、血栓症に関連する赤血球溶解(新型コロナウイルス感染症を含む)、他の部位の組織出血、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化によって引き起こされる急性冠症候群および/または脳卒中の、試験管内および/または生体外での診断に使用され得る。
【0138】
生体内検出の利点は、低侵襲性の即時的なHO-1の検出、ひいては疾患の診断が容易になることである。これによって、患者への外傷が軽減され、治療の種類と部位に関する決定が通知され、血管形成術やステント留置術などの低侵襲外科手術による即時治療が容易になる。外科的介入もまた、生体内検出と同じ手順で行われ得る。
【0139】
このような試験管内および生体外での使用は、被験者に適したイメージング機器を利用できない場合に有益である。例えば、さらなるイメージングおよび治療のために病院に搬送される前に、最初に患者が脳卒中を経験したかどうかを判断するために使用され得る。このような検査は糖尿病検査に似ており、少量の血液しか必要としない。これによって、病院や他の施設に行くのを待たずに、適切な治療法をすぐに決定できるようになる。したがって、本発明の化合物は、ポイントオブケアで使用され得る。化合物は、ポイントオブケア装置に含め得る。
【0140】
本発明による化合物はHO-1の過剰発現を同定することができるため、そのような過剰発現を特徴とする疾患の治療方法の一部として使用され得、この場合、治療方法は、治療のための位置の決定を必要とする。したがって、本発明による化合物は、プラーク内出血および/またはアテローム性動脈硬化症によって引き起こされる急性冠状動脈症候群および/または脳卒中などの、HO-1過剰発現を特徴とする疾患の治療方法に使用され得る。
【0141】
この方法は、フルオロフォアを励起し、蛍光応答を記録することを含み得る。実施形態では、治療方法は、化合物を対象に投与するステップと、X、またはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンもしくはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の吸光スペクトル内の波長の光を提供するステップと、Xによって放射される光を検出するステップと、蛍光変調が観察される対象内の位置を治療するステップと、含み得る。
【0142】
本発明による化合物は、ヘムオキシゲナーゼ1および/またはプラーク内出血をイメージングする方法に使用され得る。このような方法は、化合物をサンプルと接触させることを含み得る。このイメージング方法は、フルオロフォアを励起し、蛍光応答を記録することを含み得る。実施形態では、この方法は、X、またはポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンもしくはイソバクテリオクロリンのテトラピロールもしくは還元テトラピロール骨格の吸光スペクトル内の波長の光を提供するステップと、Xによって放射される光を検出するステップとをさらに含み得る。この方法では、蛍光変調の検出によってHO-1の存在が特定される。
【0143】
したがって、本発明による化合物は、HO-1および/またはプラーク内出血をイメージングするための造影剤として使用され得る。
【0144】
さらに、本発明による化合物は、研究試薬として、好ましくはHO-1の検出のために使用され得る。
【0145】
現在、HO-1酵素活性の強力かつ便利な検出を可能にする単一の実験用試薬は存在しない。HO-1タンパク質を(ELISAによって)検出するキットは多数存在するが、これは活性酵素を調べることと同じではない。したがって、そのような使用は、例えば、HO-1活性の増加を特徴とする疾患、例えば心血管疾患、脳卒中、神経変性疾患、肺疾患、出血、ウイルス感染症を治療または予防することを目的とした治療法および他の治療薬の開発において有益となるであろう。
【0146】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」という用語は、疾患または障害、またはその少なくとも1つの認識可能な症状の改善を指す。「治療」または「治療すること」という用語は、物理的、例えば、認識可能な症状の安定化、または生理学的、例えば、物理的パラメータの安定化のいずれか、あるいはその両方で、疾患または障害の進行を阻害または軽減することを指す。
【0147】
化合物は、任意の適切な形態、例えば、水性もしくは油性の溶液もしくは懸濁液、分散可能な粉末もしくは顆粒もしくはエマルジョンで提供され得る。化合物は、配合物の一部として含まれ得る。「配合物」という用語は、本明細書では、化合物と、薬学的に許容されるビヒクルなどの1つ以上のビヒクルとの組み合わせを記述するために使用される。
【0148】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府または州政府などの規制当局によって承認されているか、ヒトでの使用に関して米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方に収載されているということを意味する。「ビヒクル」という用語は、本発明による組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。このような医薬ビヒクルは、亜麻仁油、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、魚油などの動物、植物または合成起源のものを含む、水および油などの液体であり得、好ましくは亜麻仁油および/または魚油である。医薬ビヒクルは、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。ビヒクルはまた、前述したように、リポソームベースであり得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を使用し得る。対象に投与されるとき、実施形態の組成物および薬学的に許容されるビヒクルは、好ましくは無菌である。生理食塩水、ブドウ糖およびグリセロール水溶液も液体ビヒクルとして使用され得る。適切な医薬ビヒクルには、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤などの賦形剤、コーンスターチまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤、デンプン、ゼラチン、アカシアなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤、および/またはグルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなど、も含まれる。必要に応じて、配合物は少量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤をも含有し得る。配合物には、静脈内注射/点滴用の非発熱性エマルジョンも含まれ得る。
【0149】
ビヒクルは配合物の他の成分と適合しており、プローブの活性を妨げない。したがって、ビヒクルは、それが投与される組織サンプルまたは細胞に悪影響を及ぼさないことが好ましい。薬学的に許容されるビヒクルは、配合物の他の成分と適合し、対象に無害である。
【0150】
実施形態では、ビヒクルには1つ以上の液体ビヒクルが含まれる。液体ビヒクルは、薬学的に許容される液体ビヒクルであり得る。薬学的に許容される液体ビヒクルは、化合物が生体内で投与される実施形態、特に化合物が静脈内投与される場合に好ましく使用される。化合物が試験管内、生体外、または研究試薬として使用される実施形態では、液体ビヒクルは任意の適切な液体ビヒクルであり得、薬学的に許容される液体ビヒクルである必要はない。
【0151】
好ましくは、配合物は、組成物および水を備える液体医薬ビヒクルを備える。実施形態では、液体医薬ビヒクルは水性であり得る。したがって、配合物は、組成物および薬学的に許容される水性液体ビヒクルを備え得る。
【0152】
実施形態では、配合物は生体内投与に適している。
【0153】
本発明による化合物は、任意の適切な形態で対象に投与され得る。好ましくは、生体内診断、イメージングおよび/または治療の場合、化合物は、静脈内注射によって投与し得る、好ましくは化合物は直接冠状動脈内注射によって投与される。
【0154】
静脈内投与としての投与が想定される実施形態では、組成物は、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、当技術分野で周知の方法に従って配合され得る。静脈内投与としての投与が想定される実施形態では、組成物は、滅菌注射用エマルジョンの形態であり得る。このエマルジョンは、適切な乳化剤を使用して、当技術分野で周知の方法に従って配合し得る。無菌注射用調製物はまた、1,3-ブタンジオール中の溶液などの非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液、エマルジョンまたは懸濁液であり得る。適切な希釈剤には、例えば、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、滅菌固定油を溶媒または懸濁媒体として従来通りに使用され得る。この目的には、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む、刺激の少ない固定油を使用し得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も同様に注射用製剤の調製に使用され得る。
【0155】
試験管内、生体外での使用、および研究試薬としての使用において、本発明による化合物は任意の適切な形態であり得る。例えば、化合物は、クロロホルムなどの薬学的に許容される液体ビヒクルである必要はない液体ビヒクルに溶解され得る。
【0156】
試験管内、生体外での使用、および研究試薬としての使用において、化合物または配合物は、サンプルまたは目的の化合物/組成物に直接投与され得る。
【0157】
被験者は脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトであり得る。被験者は、大人でも子供でもあり得る。
【0158】
さらに、5位を選択的に様々なフルオロフォアで容易に官能化し得る修飾テトラピロールまたは還元骨格が提供される。これによって、所望の位置でのテトラピロールまたは還元テトラピロール骨格の容易な修飾が可能となり、本発明による化合物のライブラリーの容易な合成が可能になる。これによって、各プローブを個別に長時間合成する必要がなくなる。
【0159】
修飾テトラピロールまたは還元テトラピロール骨格は、5位にアルキンまたはアジド官能基を含む。これによって、アジドまたはアルキンのもう一方で官能化されたフルオロフォアとの反応が可能になる。これらの分子は、アジドとアルキンとの間のよく特徴付けられた共有結合環化付加反応を使用して一緒に反応させ得る。
【0160】
したがって、本明細書に開示される化合物を合成する方法も提供され、この方法は、式VIa~VIcまたはその薬学的に許容される塩の化合物を反応させることを含み、
【化30】
化合物は、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリンまたはイソバクテリオクロリンであり、
【化31】
は、二重結合または単結合を表し、
【化32】
は、窒素とMn+との間の配位結合または共有結合を表し、
1a~R1fは、Hまたは一価のヒドロカルビルから独立して選択され、または(i)R1aおよびR1bは、共にシクロカルビルを形成し、(ii)R1cおよびR1dは、共にシクロカルビルを形成し、(iii)R1eはR2aと共にシクロカルビルを形成し、および/または(iv)R1fはRと共にシクロカルビルを形成し、
2aおよびR2bは、H、一価ヒドロカルビルまたは二価ヒドロカルビル-A1基から独立して選択され、A1は、X2または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR、-CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化33】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC1~C5-ヒドロカルビルまたはX2であり、およびRは、C1~C5アルキレンであり、または、R2aは、R1eと共にシクロカルビルを形成し、
3aおよびR3bは、H、-CH、-CHCH、-OH、-OCH、-OCOCH、-SH、-SCH、-NH、-NHCH、または-N(CHから独立して選択され、
は、二価のC1~C10-ヒドロカルビル-A2基であるか、またはRは、R1fと共に二価のC~C10-ヒドロカルビル-A2基またはA2単独によって置換されるシクロカルビルを形成し、A2は、X3または-COOH、-CSOH、-COSH、-CSSH、-CONH、-OH、-SH、-NH、-COOR、-CSOR、-COSR、-CSSR、-CON(R、-CONHR、-OR、-SR、-N(R、-NHR -CH(OR、-CH(OR)(SR)、-CH(SR
【化34】
から選択される終端基であり、Rは、一価のC1~C5-ヒドロカルビルまたはX3であり、Rは、C1~C5-アルキレンであり、
Lは、リンカーであり、
X2、およびX3は、フルオロフォアであり、これらは同じであり得るかまたは異なり得、
n+は、整数nの正電荷を有するカチオンであり、nは、1~3であり、
q’は、化合物の全体の電荷であり、
A、B、CおよびDは、各々独立して、ピロール、ピロリンまたはピロリジン環から選択される5員含窒素複素環を表し、
Wは、アジドまたはアルキン官能基を備え、
式[Z-X]q’’を有する化合物と共に、Xは、X2およびX3と同じでも異なっていてもよいフルオロフォアであり、q’’は、化合物の全体の電荷であり、Zは、アジドまたはアルキン官能基を備え、
WおよびZの一方は、アジド官能基を備え、他方は、アルキン官能基を備える。
【0161】
実施形態では、R1a~R1f、R2a、R2b、R3a、R3b、R、L、Mn+、A、B、CおよびDは、上記の通りであり得る。
【0162】
好ましくは、Wのアジドまたはアルキン官能基は、テトラピロール骨格に直接結合していない。実施形態では、Wはリンカーをさらに備える。好ましくは、アジドまたはアルキン官能基はリンカーに結合され、リンカーはテトラピロール骨格に結合される。実施形態では、Wは、アジドまたはアルキンを末端基とする二価のC~C20-ヒドロカルビルを備える。好ましくは、ヒドロカルビルは、フェニルを含む。実施形態では、Wは、
【化35】
である。実施形態では、Zはアジドまたはアルキンのいずれかである。
【0163】
アジドとアルキンの間の反応は、共有結合的付加環化反応である。好ましくは、反応はクリック反応である。この反応は、銅触媒によるアジド-アルキン付加環化(CuAAC)であり得、クリック反応の詳細はLiang,Lら、Coord,2011,225,23-24,2933-2945に記載されている。したがって、反応は銅含有触媒、好ましくはアスコルビン酸塩と銅(I)および/または銅(II)を含む触媒の存在下で実施され得る。この反応は、ひずみ促進アジド-アルキン環化付加(SPAAC)であり得る。したがって、反応は銅の存在なしで行われ得る。これは、最終製品に細胞毒性のある銅が残る可能性を排除するため、有益であり得る。このような反応では、アルキンは歪みによって活性化される。例えば、アルキンは、ジフルオロオクチン、ジベンジルシクロオクチン、またはビアリールアザシクロオクチノンなどのシクロオクチンであり得る。
【0164】
本発明は、下記の実施例によってさらに説明されるが、これらは例示を目的として提供されており、請求される本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【実施例
【0165】
(実施例1-プローブの合成)
本発明によるプローブの有効性を実証するために、様々なポルフィリン-クマリンプローブを合成した。これらのプローブを表6に示す。
【0166】
7-ヒドロキシメチル-クマリンおよび7-アミノメチル-クマリン誘導体を、ポルフィリンの吸光スペクトルと優れたスペクトルとの重複があるため、ドナーフルオロフォアとして選択した。ジメチルジュテロヘム(DMD)は、HO-1のための基質でもある一方、5位を選択的によって容易に官能化できるため、「遊離」ヘム(PPIX)とは対照的に、本発明による化合物の合成のためのポルフィリン骨格として選択された。比較例は、5位にフェノール基、10、15、および20位にフェニル基を含む5-(4’ヒドロキシフェニル)-10,15,20-トリフェニルポルフィリン(HP-TPP)に基づく。
【0167】
これらの化合物では、クマリンフルオロフォアがFRET対のドナーであり、テトラピロール骨格がアクセプターである。したがって、化合物1、2、C3、およびC4では、クマリンの励起後のクマリンからの蛍光が消光される。
【0168】
【表6-1】
【表6-2】
【0169】
1と2には、Fe-DMDに基づく同じポルフィリン骨格が含まれる。C3およびC4は、Fe-HP-TPPの構造に基づいているが、本発明の範囲には含まれない。
【0170】
1への合成経路を下記のスキーム1に示す。要約すると、この合成は、ベンジル3,4-ジメチル-1H-ピロール-2-カルボキシラート1aから開始して実施された。ジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸中の1aと4-ヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合によって、1bを形成した。続くベンジルエステルの水素化によって1cを生成し、1cとジホルミルジピロメテン1dとのマクドナルド縮合によって1eを生成した。1eの1fによるアルキル化は、塩基として炭酸カリウムを用いて室温で5日間かけてDMF中で達成され、1gを形成した。クロロホルム/メタノール(3:1)中で1gとFeCl・4HOとの錯体形成を1時間行い、塩基性条件下で1時間のメチルエステル加水分解によって、凍結乾燥後に1を得た。
【0171】
スキーム1 1の合成
【化36】
【0172】
基本手順:市販の試薬はすべて、供給業者から受け取ったままの状態でさらに精製せずに使用した。使用した溶媒は実験室グレードのものであった。無水溶媒を各部ごとの溶媒塔から入手し、3Åモレキュラーシーブ上で保管した。湿気に敏感な反応を、窒素の不活性雰囲気下でシュレンクライン技術によって実行した。薄層クロマトグラフィーおよびカラムクロマトグラフィーをシリカ(Merk Art 5554)上で実行し、UV照射下で視覚化した。H(400 MHz)および13C{H}(101MHz)NMRスペクトルを、インペリアルカレッジロンドンのBruker AV-400分光計で298Kで記録した。化学シフトは百万分率(ppm)で報告し、および結合定数をヘルツ(Hz)で報告した。ピーク多重度は、s=シングレット、m=マルチプル、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、dd=ダブルダブレット、br=ブロード、のように省略される。質量分析分析(ESIおよびMALDI-MS)は、特に明記されていない限り、ロンドンのインペリアルカレッジの質量分析サービスによって実施した。
【0173】
化合物1a、1d、および1fは、記載されているように、Lash,T.D.;Bellettini,J.R.;Bastian,J.A.;Couch,K.B.Synthesis of Pyrroles from Benzyl Isocyanoacetate.Synthesis(Stuttg).1994,170-172;Martin,P.;Mueller,M.;Flubacher,D.;Boudier,A.;Blaser,H.U.;Spielvogel,D.Total Synthesis of Hematoporphyrin and Protoporphyrin:A Conceptually New Approach.Org.Process Res.Dev.2010,14,799-804;およびJiang,N.;Huang,Q.;Liu,J.;Liang,N.;Li,Q.;Li,Q.;Xie,S.S.Design,Synthesis and Biological Evaluation of New Coumarin-Dithiocarbamate Hybrids as Multifunctional Agents for the Treatment of Alzheimer’s Disease.Eur.J.Med.Chem.2018,146,287-298、のように、文献にそれぞれ記載の手順を使用して調製した。
【0174】
ジベンジル-5,5’-(4-ヒドロキシフェニル)メチレン)ビス(3,4-ジメチル-1H-ピロール-2-カルボキシレート)-1b.
【化37】
K-10モンモリロナイトクレイ(0.86g)を、無水CHCl(12mL)中の1a(213.7mg、0.93mmol)の溶液に添加した。4-ヒドロキシベンズアルデヒド(60.3mg、0.49mmol)およびTFA(1.0mL、5.76mmol)を添加し、懸濁液を窒素の不活性雰囲気下、室温で2日間撹拌した。懸濁液をCHCl(10mL)で希釈し、不溶性無機物を濾過によって除去し、CHCl(2×10mL)で洗浄した。有機抽出物を組み合わせて、NaHCO(飽和溶液、20mL)および塩水(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、暗赤色の固体を形成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100%ヘキサンから60%ヘキサン、40%酢酸エチルの勾配)による精製によって、表題化合物を淡いピンク色の油(180.9mg、66%)として形成した。H NMR(400MHz,CDCl)8.40(2H,br s,-NH),7.39-7.24(10H,m),6.91(2H,d,H-H8.4),6.74(2 H,d,H-H8.4),5.67(1H,br s,-OH),5.41(1H,s),5.26(4H,s),2.25(6H,s),1.77(6H,s);13C{H}(101MHz,CDCl)161.7,155.2,136.5,132.6,130.4,129.5,128.4,128.0,127.9,117.9,117.4,116.1,115.9,65.7,40.4,10.8,8.9;ESI-LRMS[C3535,(+)m/z563.3,ESI-HRMS calculated for [C3535,563.2546 found,563.2554.
【0175】
5,5’-(4-ヒドロキシフェニル)メチレン)ビス(3,4-ジメチル-1H-ピロール-2-カルボン酸)-1c.
【化38】
パラジウムチャコール(10wt%、112.4mg、0.11mmol)を化合物1b(492.6mg、0.88mmol)のエタノール(30mL)溶液に加え、反応物を室温で水素雰囲気下において4時間撹拌した。この後、反応混合物をセライトプラグを通して濾過し、エタノール(20mL)およびCHCl(20mL)で洗浄した。溶媒を減圧下で除去して、紫色の油/固体(287.5mg、88%)を形成した。H NMR(400MHz,MeOD)6.88(2H,d,H-H6.9),6.74(2H,d,H-H6.9),5.56(1H,s),2.25(6H,s),1.81(6H,s);13C{H}(101MHz,MeOD)163.1,156.2,133.1,130.4,129.4,129.0,127.6,117.3,115.1,39.6,9.4,7.5;ESI-LRMS[C2121,(-)m/z381.1,ESI-HRMS calculated for [C2121,381.1450 found,381.1448.
【0176】
ジメチル-3,3’-(10-(4-ヒドロキシフェニル)-3,7,8,12,13,17-ヘキサ-メチルポルフィリン-2,18-ジイル)ジプロピオネート-1e。
【化39】
化合物1c(423.2mg、1.11mmol)を、無水CHCl(150mL)中の1d(456.4mg、1.11mmol)の溶液に添加した。メタノール(20mL)中のp-トルエンスルホン酸(758.5mg、3.99mmol)の溶液を15分間かけて滴下し、溶液を窒素の不活性雰囲気下において光から保護しながら室温で一晩撹拌した。18時間後、p-クロラニル(545.2mg、2.22mmol)を加え、反応物をさらに2時間撹拌し、その後溶媒を減圧下で除去して暗赤色の残留物を形成した。精製シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100%CHClから95%CHCl/5%MeOH勾配)によって、表題化合物を暗赤色固体として形成した(344.8mg、46%)。H NMR(400MHz,CDCl)10.1(2H,s),9.96(1H,s),7.06(2H,d,H-H7.9),6.68(2H,H-H7.9),4.42(4H,t,H-H7.7),3.70(6H,s),3.67(6H,s),3.46(6H,s),3.34(4H,t,H-H7.7),2.10(6H,s);13C{H}(101MHz,CDCl)173.8,158.1,156.1,144.9,144.8,143.0,137.8,137.6,137.2,136.9,133.7,118.5,114.2,96.8,95.2,51.8,37.0,22.0,14.9,12.1,11.8;ESI-LRMS [C4043,(-)m/z659.3,ESI-HRMS[C4043,659.3233 found,659.3245;UV-Vis(CHCl,λmax/nm):(ε/M-1cm-1)405(100179),504(14248),537(8943),571(7123),624(3287).
【0177】
ジメチル 3,3’-(3,7,8,12,13,17-ヘキサメチル-10-(4-(2-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)エトキシ)フェニル)ポルフィリン-2,18-ジイル)ジプロピオネート-1g
【化40】
無水KCO(56.2mg、0.41mmol)を、1e(26.2mg、0.04mmol)および1f(26.3mg、0.09mmol)の無水DMF(2.5mL)溶液に加えた。反応物を窒素の不活性雰囲気下で、光から保護しながら室温で4日間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、暗褐色の残留物を形成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100%CHClから99%CHCl/1%MeOH勾配)による精製によって、表題化合物を暗赤色固体(23.5mg、68%)として形成した。H NMR(400MHz,CDCl)10.15(2H,s),9.95(1H,s),7.77-7.74(2H,m),7.52-7.44(1H,m),7.10-7.05(2H,m),6.94-6.90(2H,m),6.17(1H,br s),4.44-4.33(8H,m),3.68(6H,s),3.65(6H,s),3.52(6H,s),3.30(4H,t,H-H7.8),2.41-2.30(9H,m);13C{H}(101MHz,CDCl)173.7,161.6,161.3,158.7,155.2,152.5,145.1,144.9,143.5,143.0,138.1,137.8,137.2,137.0,135.5,133.8,125.6,118.5,113.9,113.6,112.7,112.2,101.6,96.86,95.4,67.1,66.3,51.8,37.0,21.9,18.7,15.2,12.2,11.8;ESI-LRMS[C5253,(+)m/z861.4,ESI-HRMS calculated for [C5253,861.3863 found,861.3887;UV-Vis(CHCl,λmax/nm):(ε/M-1cm-1)291(14481.4),321(23963.1),405113969.6),503(10264.3),538(5047.8),572(4529.2),625(1601.4).
【0178】
鉄(II)ジメチル 3,3’-(3,7,8,12,13,17-ヘキサメチル-10-(4-(2-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)エトキシ)フェニル)ポルフィリン-2,18-ジイル)ジプロピオネート-1h
【化41】
FeCl・4HO(85.2mg、0.43mmol)、炭酸水素ナトリウム(30.2mg、0.36mmol)、およびアスコルビン酸ナトリウム(21.0mg、0.11mmol)を、1g(42.2mg、0.05mmol)のCHCl/MeOH(2:1)に添加した。溶液を60℃に加熱し、窒素の不活性雰囲気下で遮光しながら撹拌した。18時間後、反応物を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。粗残留物をCHCl(20mL)に再溶解し、HO(10mL)および塩水(10mL)で洗浄した。有機抽出物を合わせてNaSOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去して暗赤色/茶色の残留物を形成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配100%CHClから95%CHCl/5%MeOH)による精製によって、表題化合物を暗赤色/褐色固体(38.1mg、85%)として形成した。MALDI-MS 914.8;UV-Vis(CHCl,λmax/nm):(ε/M-1cm-1)290(28315.0),321(34896.4),384(58787.9),506(8568.1),535(7306.8),638(2916.6).).
【0179】
化合物1
【化42】
NaOH(4M、0.45mL)を、CHCl(1mL)およびメタノール(3mL)中の1hのジメチルエステルの溶液に加えた。溶液を40℃に加熱し、窒素の不活性雰囲気下で24時間撹拌した。反応中に暗赤色/茶色の沈殿物が現れ、1の生成を示した。24時間後、反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去して、暗褐色の残留物を形成した。残留物をHO(5mL)に再溶解し、HCl(6M)でpH3~4に酸性化した。沈殿物を遠心分離によって単離し、HO(3×10mL)で洗浄し、凍結乾燥して、表題化合物を暗紫色/茶色の固体(12.6mg、72%)として形成した。MALDI-MS 886.2;UV-Vis(CHClmax/nm):((ε/M-1cm-1)320(19980.8),385(59877.1),523(4975.3),548(4183.6),640(2615.6).
【0180】
2の合成は、フェノール置換ポルフィリンのアルキル化に使用した7-ヒドロキシメチル-クマリン誘導体1fを7-アミノメチル-クマリン誘導体2fに置き換えたことを除いて、上記1の合成と同一であった。化合物2fを1eと反応させて2gを形成し、Fe2+と錯体を形成して2hを形成し、脱保護して2を形成した。7-アミノクマリン誘導体(2f)の合成は、Lin,Qら、J.Am.Chem.Soc.2012、134、11、5052-5055からである(上記の論文の捕捉情報に実験の詳細が記載されている)。
【0181】
C3およびC4の合成は、アルキル化反応を1eの代わりにC3eに対して行ったことを除いて、それぞれ1および2の合成と同一であった。C3の合成では、C3eを1fと反応させてC3gを形成し、Fe2+と錯体を形成してC3を形成した。C4の合成では、C3eが2fと反応してC4gを形成し、Fe2+と錯体を形成してC4を形成した。
【0182】
1のHO-1異化は、ビリベルジン/ビリルビンおよびFe2+に伴う副産物としてクマリン1iを生成すると予測されている。これは、Wang,Jら、J.Biol.Chem.、2004、279、41、42593~42604の、フェニル置換ヘムのHO-1媒介異化作用が安息香酸を生成するという所見に基づいている。形成された分解生成物を定量するために、化合物1iを4-ヒドロキシ安息香酸エチルから2段階の手順で合成した。これを下記のスキーム2に示す。
【0183】
スキーム2:1iの合成
【化43】
【0184】
4-(2-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)エトキシ)安息香酸エチル
【化44】
クマリン1f(165.2mg、0.58mmol)を、無水アセトニトリル(7mL)中の4-ヒドロキシ安息香酸エチル(80.2mg、0.48mmol)、炭酸カリウム(300.4mg、2.17mmol)およびヨウ化カリウム(7.0mg、0.04mmol)の撹拌溶液に加えた。反応物を加熱還流し、24時間撹拌した後、室温に冷却した。懸濁液をCHCl(20mL)で希釈し、濾過して無機不純物を除去し、溶媒を減圧下で除去して、オフホワイトの固体を形成した。カラムクロマトグラフィー(100%ヘキサンから100%CHClの勾配)による精製によって、表題化合物を白色の結晶性固体として形成した(150.9mg、85%)。H NMR(400MHz,CDCl)8.03-7.99(2H,m),7.51(1H,d,H-H8.8),6.98-6.95(2H,m),6.92(1H,dd,H-H8.8 and H-H2.6),6.87(1H,d,H-H2.6),6.15(1H,d,H-H1.3),4.40(4H,s),4.34(2H,q,H-H7.1),2.40(3H,d,H-H1.3),1.38(3H,t,H-H7.1);13C{H}(101MHz,CDCl)166.3,162.1,161.5,161.2,155.2,152.5,131.6,125.7,123.6,114.2,114.0,112.7,112.3,101.6,66.9,66.3,60.7,18.7,14.4;ESI-LRMS [C2121,(+)m/z 369.1;ESI-HRMS calculated for [C2121,369.1333found,369.1324.
【0185】
4-(2-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)エトキシ)安息香酸メチル
【化45】
クマリン1f(239.2mg、0.84mmol)を、無水アセトニトリル(8mL)中の4-ヒドロキシ安息香酸メチル(104.6mg、0.69mmol)、炭酸カリウム(554.0mg、4.0mmol)およびヨウ化カリウム(12.1mg、0.07mmol)の撹拌溶液に加えた。反応物を加熱還流し、24時間撹拌した後、室温に冷却した。懸濁液をCHCl(20mL)で希釈し、濾過して無機不純物を除去し、溶媒を減圧下で除去して、オフホワイトの固体を形成した。カラムクロマトグラフィー(100%ヘキサンから100%CHClの勾配)による精製によって、表題化合物を白色の結晶性固体として形成した(186.4mg、77%)。H NMR(400MHz,CDCl)8.05-8.01(2H,m),7.52(1H,d,H-H8.7),7.01-6.98(2H,m),6.92(1H,dd,H-H8.7 and H-H2.4),6.88(1H,d,H-H2.4),6.16(1H,d,H-H1.3),4.41(4H,s),3.89(3H,s),2.41(3H,d,H-H1.3);13C{H}(101MHz,CDCl)166.9,162.3,161.6,161.3,155.3,155.6,131.8,125.8,123,3,114.3,114.1,112.8,112.4,101.7,67.0,66.4,52.1,18.8;ESI-LRMS [C2019,(+)m/z355.1;ESI-HRMS calculated for [C2019,355.1182 found,355.1177.
【0186】
4-(2-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)エトキシ)安息香酸、1i
【化46】
NaOH(4M、0.7mL)をエタノール(5mL)中のクマリン4-(2-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)エトキシ)安息香酸メチル(74.8mg、0.20mmol)の溶液に加えた。溶液を85℃で20時間加熱すると、白色の沈殿が生成した。沈殿物を脱イオン水(5mL)に溶解し、6MのHClでpH4~5に酸性化した。酸性化によって形成された白色沈殿を遠心分離によって単離し、水(3×10mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、表題化合物を白色固体として形成した(63.8mg、94%)。
H NMR(400MHz,(CHSO)12.60(1H,br s),7.92-7.88(2H,m),7.70(1H,d,H-H8.8),7.10-7.06(3H,m),7.02(1H,dd,H-H8.8 and H-H2.5),6.22(1H,d,H-H1.3),4.48-4.42(4H,m),2.40(3H,d,H-H1.3);13C{H}(101MHz,(CHSO)167.0,161.8,161.3,160.1,154.7,153.4,131.4,126.5,123.3,114.4,113.3,112.5,111.3,101.4,67.0,66.4,18.2;ESI-LRMS[C1917,(+)m/z341.1;ESI-HRMS calculated for [C1917,341.1025 found,341.1024.
【0187】
(実施例2-光物理学的研究)
紫外可視吸収スペクトルを、WinUVソフトウェアで動作するAgilent Technologies Cary60分光光度計を使用して測定した。サンプルを、経路長1cmの石英キュベット内に保持した。吸収スペクトルを、光学的に一致したキュベット内の純粋な溶媒のベースラインに対して、600nm/分のスキャン速度および1.0nmのデータ間隔で記録した。発光および励起スペクトルを、光路長1cmの石英キュベット内のAgilent Technologies Carry Eclipse蛍光分光光度計で取得した。発光スペクトルおよび励起スペクトルを、スキャン速度120.0nm/min、遅延間隔1.0nm、バンドパス5nmで収集した。
【0188】
1i、1、およびC3ならびにそれらの前駆体の光物理的特性を表7に示す。測定は、生理学的条件を模倣するために、pH7.4のPBS 緩衝液の水溶液中で記録された。表8は、298Kのクロロホルム中で測定された1i、1、およびC3ならびにそれらの前駆体の光物理的特性を示す。
【0189】
表7は、pH7.4のPBS緩衝液中での化合物1i、1、およびC3ならびにそれらの前駆体の光物理学的データである。濃度=20μM、PBS緩衝液(pH=7.4)、λex=320nm、298K。量子収率(φ)±20%は、トルエン中のテトラフェニルポルフィリン(HTPP)を基準として使用して測定された(φ514nm=0.11)。
【0190】
【表7】
【0191】
表8は、CHCl中、λex=320nm、298Kでの化合物1i、1、およびC3ならびにそれらの前駆体の光物理学的データである。量子収率(φ)±20%は、トルエン中のテトラフェニルポルフィリン(HTPP)を基準として使用して測定された(φ514nm=0.11)。
【0192】
【表8】
【0193】
PBS緩衝液中の1、1f、1g、1h、1、C3、およびC3gの吸光スペクトルを図1および2に示す。
【0194】
PBS緩衝液1では、S→S遷移とS→S遷移にそれぞれ割り当てられた401nmのブロードなソーレー帯と541~680nmに伸びるブロードなQ帯とが表示された。320nmでの吸光は、局所的なπ-π*特性を含むクマリン部分に割り当てられた。生物学的に関連した類似体1は、クロロホルム中と比較して、水性媒体中で著しくブロードな吸光スペクトルを示した。このような現象は、πスタッキングの増加によるPPIX類似体に典型的な現象であり、pHとイオン強度に強く依存する。1とは対照的に、化合物3は、PBS緩衝液中でより鮮明な吸光スペクトルと417nmで赤方偏移したソーレー帯とを示した。
【0195】
Fe2+の錯体形成は、クロロホルム中のUV-VisスペクトルのQ帯の数の変化(4つから2つ)から確認された。ソーレー帯の青方偏移もまた、水性媒体と有機媒体との両方で観察された。例えば、1hはFe2+錯体形成後に10nmの浅色シフトを示した。
【0196】
PBSでは、7-ヒドロキシメチル類似体(1およびC3)と比較して、7-アミノメチルクマリン(2およびC4)を使用したとき、クマリン供与体の最大吸光度において52nmの赤方偏移が観察された。1と同様に、化合物2の類似体は、pHおよびイオン強度の関数としてのπスタッキングの増加によって、PPIX類似体に典型的な、水性媒体中で著しくブロードな吸光スペクトルを示した。
【0197】
未修飾ポルフィリン1eの吸光スペクトルを、1fの吸光および発光スペクトルとともに図3に示す。これは、約300nm~500nmの広範囲の波長にわたる吸収と、赤色の波長での発光と、を示す。
【0198】
PBS緩衝液、pH=7.4およびクロロホルム中におけるλex=320nmでの1g、1hおよび1の発光スペクトルをそれぞれ図4および5に示す。PBS緩衝液、pH=7.4およびクロロホルム中におけるλex=320nmでのC3gおよびC3の発光スペクトルをそれぞれ図6および7に示す。上記で強調した例では、サンプル濃度はPBS緩衝液中で20μM、クロロホルム中で10μMであった。すべての測定は298Kで実行された。
【0199】
PBSおよびクロロホルムの両方において、すべてのクマリン-ポルフィリンダイアドは、95%超の優れたFRET効率を有することがわかった。
【0200】
クマリン部分のλmax(320nm)での励起に続いて、遊離塩基類似体1gおよびC3gで特徴的なポルフィリン発光スペクトルが観察された。ただし、それぞれの場合で異なる発光プロファイルが観察された。PBS緩衝液では、1gは638nmと675nmに2つの主要なピークを示し、708nmにブロードなショルダーが示された(図4、表7および8)。逆に、C3gは660nmと727nmに2つの異なる発光ピークを持つスペクトルを示した。このスペクトル形状の違いは、水性媒体中でのπスタッキングによるものと考えられる。この挙動は、両方のスペクトルが同じ発光プロファイルを持つクロロホルムでは観察されない。PBS緩衝液とクロロホルムとの両方において、C3gは、3つの追加のメソフェニル置換基によってもたらされる共役の増加によって、1gに対して赤方偏移した発光を示す。
【0201】
遊離塩基類似体のFe2+錯体形成後、ポルフィリン発光はPBS緩衝液およびクロロホルム中で完全に消光した(図4~7のベースラインでの発光を示す1h、1、およびC3を参照)。Fe2+は電子および/またはエネルギー移動プロセスを通じて蛍光を消光することがよく知られているため、このような挙動は驚くべきことではない。Fe2+の錯体形成によって、残留クマリンの発光も大幅に抑制される。したがって、HO-1によるポルフィリン異化の前には、ポルフィリン蛍光は観察されず、弱いクマリン蛍光のみが観察された。
【0202】
クマリン部分のλmax(320nm)で励起した後、1および1fの発光スペクトルも測定し、PBS緩衝液中で384nmを中心とした発光を示した(図8)。1の発光スペクトルは、図8のベースラインで見られ得る。
【0203】
(比較例3-化合物に対するHO-1活性)
クマリンからの蛍光は、1、2、C3、またはC4で消光されるが、クマリンがテトラピロール骨格から分離されるため、5位で化合物が分解すると観察され、これらの部分間のFRETが妨げられる。
【0204】
HO-1の存在が蛍光に及ぼす影響は、NADPH(1mM)と16時間インキュベートするか否かのいずれかで、ヒトHO-1を過剰発現する大腸菌溶解物を、1およびC3を含む溶液に添加することによって測定した。このような条件下では、ビリベルジンレダクターゼ(BVR)が欠如しているため、ビリベルジンはさらにビリルビンに変換されず、したがって、BVRの基質耐性からの潜在的な干渉が除去される。
【0205】
化合物1およびC3を1mMのNADPHとともに37℃(310K)で16時間インキュベートした。HO-1活性を定量するために、NADPHを添加せず、HO-1ヘム異化が起こるために必要なインキュベーションも行わずに、1とC3を大腸菌溶解物中でインキュベートする対照実験を実施した。
【0206】
HO-1はクマリンフルオロフォア1i(5位でのポルフィリン切断後の予想される分解生成物)の蛍光を大幅に消光することがわかり、1iにおける対照実験では、図9に示すように、大腸菌溶解物中のλex=320nmでHO-1の化合物1iへの添加後に、384nmで発光強度が2.3分の1に減少することが実証された。
【0207】
したがって、大腸菌溶解物系におけるHO-1の抑制効果を排除するために、インキュベーション後、分解生成物の酸性化(メタノール中の5%v/vのH2SO4)を実行し、続いてクロロホルムに抽出した。HO-1は、水相に残っていることが判明し、したがって反応生成物から効果的に除去された。
【0208】
この方法を使用すると、プローブ1をNADPHとインキュベートした後、対照と比較して、384nmでの蛍光の2.5倍の増加が観察された(図11および12)。測定は、pH7.4のPBS緩衝液中で行われた。クマリン発光の中心は384nmで、図9に示すように、PBS緩衝液中のλex=320nmにおけるクマリン1iの最大波長に特徴的であり、この分子の形成を示している。
【0209】
クマリンドナーフルオロフォアの発光波長における蛍光強度の大幅な「ターンオン」増加は、ポルフィリンの5位での切断とクマリン-ポルフィリンFRETシステムの除去とを確認する。
【0210】
1とは対照的に、図11および12に示すように、C3では、対照と比較した場合(1.4倍未満)、PBS緩衝液pH=7.4のλex=320nmで蛍光増強がほとんど観察されなかった。これは、酵素がこれらのプローブを代謝しないことを示しており、HO-1の活性を維持するにはFe-PPIXの類似体が必須の要件であることが確認される。これは、10、15、および20位の大きな置換基が酵素の結合を妨げ得るおよび/またはRおよびR2aのプロピオン酸残基がHO-1の活性部位への化合物の結合を助けるという結論を裏付ける。
【0211】
興味深いことに、クマリン発光は、溶解物抽出物における1と比較して、C3において著しく低かった。この挙動はPBS緩衝液でも観察され、C3ではクマリン発光が1と比較して3分の1に減少することが報告された。C3で観察されるこの強化されたクマリン消光によって、HO-1活性は1よりも大きな蛍光強化を引き起こすことが予想される。
【0212】
-NADPHおよび+NADPHを含む溶解物からの発光強度もまた、HO-1の存在下で測定された。NADPHからの蛍光は400nm未満の波長(クマリンからの発光が観察される)では低いことが判明したため、観察された発光強度の増加はNADPHの存在に起因するものではない。
【0213】
プローブの代謝に続いて、クマリンフルオロフォアからの蛍光が出現した。1の代謝のグラフを図13に示す。
【0214】
HO-1を過剰発現する大腸菌溶解物中でNADPHとインキュベートした後の1の吸収分光法の変化もモニタリングし、得られたスペクトルをNADPHおよびビリベルジン(ヘムの代謝による生成物)を添加しない化合物のスペクトルと比較した。図14(A)は、ビリベルジンへの吸光度シフト(約600nmから750nmでの吸光度)を示し、NADPHを含む大腸菌溶解物中でのインキュベーション後にソーレー帯の17nmシフトが観察され、これは、クマリンの分解および放出が成功したことを示している。図14(B)のC3ではビリベルジンへのそのようなシフトは観察されず、HO-1のC3を代謝する能力が低いことを示している。
【0215】
図15(A)に示すように、NADPHの存在下および非存在下での1に対するHO-1活性の影響をも、液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)を使用して測定した。大腸菌抽出物の酸性化サンプルをアセトニトリル中の25%DMSOに溶解して完全に溶解し、水中の20%-100%-20%アセトニトリルの勾配で分析した。1iのメチルエステルを同じ条件下で実行し、対照として使用した。保持時間(RT)は分(min)単位で表示される。メチルエステルは、LC-MS分析中に加水分解されて遊離酸になった。HO-1およびNADPHの存在下での1の代謝は、12.2分の保持時間で341ダルトンの特徴的なピークを示すクマリン分解生成物1iの検出によって測定された。
【0216】
LC-MS実験は、NADPHの存在下または陰性対照としての非存在下で、1iのメチルエステルの溶液およびHO-1を過剰発現する大腸菌溶解物中の1の溶液に対して行われた(図15A)。大腸菌溶解物からのサンプルを、Alpha 1-2LD plus-55℃凍結乾燥機で一晩凍結乾燥し、その後HSO/MeOH(5%v/v、400μL)で酸性化した。1iのメチルエステルは、酸性化中にカルボン酸1iに加水分解された。続いて、各サンプルをVWR Internationalミニボルテックスミキサーで30秒間撹拌し、298Kで24時間放置した。この後、サンプルをCHCl(800μL)で希釈し、有機相を脱イオン水(3×400μL)で洗浄した。有機層と水層とを分離し、有機溶媒を大気圧下、298Kで一晩蒸発させた。蛍光測定の場合、サンプルを20μL DMSOに溶解し、780μL PBS緩衝液(pH=7.4)で総量800μL(DMSO含量2.5%v/v)に希釈した。NADPHの存在下で1とHO-1とを反応させると、特徴的なクマリン1iピークが大幅に増加し、化合物の分解が示された。NADPHの非存在下での対照反応では、特徴的なクマリンピークの小さな増加も観察された。NADPHの存在下ではC3ではそのようなピークは観察されなかった(図15B)。
【0217】
1およびC3に対するHO-1活性の影響をも、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI MS)を使用して測定した。大腸菌溶解物からのサンプルを、Alpha 1-2LD plus -55℃凍結乾燥機で一晩凍結乾燥し、その後HSO/MeOH(5%v/v、400μL)で酸性化した。1iのメチルエステルは、酸性化中にカルボン酸1iに加水分解された。続いて、各サンプルをVWR Internationalミニボルテックスミキサーで30秒間撹拌し、298Kで24時間放置した。この後、サンプルをCHCl(800μL)で希釈し、有機相を脱イオン水(3×400μL)で洗浄した。質量分析サンプルは、MALDI-MS用の固体サンプルとして提出され、Imperial College Londonの質量分析サービスによって実行された。MALDI MS実験は、HO-1の存在下で、NADPHの有無にかかわらず、1またはC3のいずれかの溶液で実施された。これらを図16と17とに示す。
【0218】
NADPHおよびHO-1の存在下では、1の分解は、m/z587.6を有するビリベルジン類似体の形成によって証明された。ビリベルジン類似体は1つだけ検出され、これは切断が5位での位置特異的であることを示唆している。分子量がそれぞれ900.3および914.3である1のメチルおよびジメチル類似体も検出され、すべてのポルフィリンが脱環化されたわけではないことが示唆された。これを図16に示す。NADPHの非存在下で1とHO-1とを反応させた後、ポルフィリンのみが検出された(つまり、ビリベルジン類似体は検出されなかった)。
【0219】
NADPHの存在下と非存在下でのC3とHO-1の反応を、MALDI MSを使用して測定した。どちらの実験でも、m/z886.6の化合物C3のみが検出され、ポルフィリン分解生成物は検出されず、C3の分解がほとんどまたはまったく起こらなかったことを示唆している。これを図17に示す。この結果は、C3がHO-1によって代謝されないことを示す。
【0220】
(実施例4-毒性)
HO-1の導入前の実施例4の細胞培養物を対照培養物と比較した。本発明の化合物については毒性は確認されず、適切な蛍光発光が確認された。
【0221】
RAW細胞は、さまざまな濃度の1、クマリン1i、ヘム、鉄、およびビリベルジンの存在下でも培養された。本発明による化合物は、生存率(%)によって実証されるように、内因性同等物よりも毒性が低いことが見出された。これらの結果を図18に示す。
【0222】
(実施例5-細胞内のヘムオキシゲナーゼ1の検出)
ヒト単球由来マクロファージを血液から精製し、96ウェル透明底黒色プレートで24時間培養し、その後100nMトリコスタチンAで6時間刺激した。トリコスタチンAは、HO-1を誘導するが光学活性ではない薬剤である。10μMの化合物1またはC3をヒト単球由来マクロファージに18時間添加し、上清を交換して細胞に取り込まれていないプローブを除去した。
【0223】
24時間後、励起323±7nmで蛍光発光を測定した。これらの結果を図19に示す。見てわかるように、対照化合物C3はベースラインから蛍光発光に有意な変化を生じなかった。ただし、化合物1では、化合物1の分解を示すクマリン1iピークに対応する355nmで蛍光発光のピークが生じる。同じ濃度のクマリン1iと比較すると、プローブ(1μM)の約10%がクマリン1iに変換されたことがわかる。図19の蛍光データポイントは、n=8の被験者からのヒト単球由来マクロファージを表すn=4の技術的複製の平均±SEである。
【0224】
この実験は、本発明の化合物が細胞内のHO-1を検出可能であることを実証する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】