(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】コンカテマーを用いた分析物検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20231124BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20231124BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231124BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231124BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231124BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20231124BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231124BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20231124BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12N9/12
C12Q1/686 Z
C12Q1/6816 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554083
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2021082775
(87)【国際公開番号】W WO2022112300
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523194536
【氏名又は名称】オーリンク プロテオミクス アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】クンデル,ガウタム ニクレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブロバーグ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ランドバーグ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクソン,サラ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029FA12
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4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本開示および本発明は、複数のプールからDNA配列を検出する方法を提供する。本方法では、プールを組み合わせ、各プールからの単一のDNA分子を予め定められた順序で結合することによってDNAコンカテマーを生成し、次いでコンカテマーを配列決定する。各コンカテマーを配列決定することで、複数のDNA配列が検出され、検出された各DNA配列は、コンカテマー中のその位置によってその起源のプールに割り当てることができる。それにより、本方法は、複数のプールのそれぞれからのDNA配列の特異的検出を可能にする。本方法を実施するのに適したキットも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプールからDNA配列を検出する方法であって、各プールは複数種のDNA分子を含み、前記方法は、
(i)前記プールを組み合わせるステップと、
(ii)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、前記コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来する前記プールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップと、
(iii)前記コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからの前記DNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられる、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、ステップ(i)の前に、連結のためにDNA分子の複数のプールを調製するステップを含み、前記調製するステップは、各プール中の前記DNA分子に、連結ステップにおいて結合され得る規定された末端配列を提供することを含み、同じプール中の前記DNA分子は同じ末端配列を有し、異なるプールは異なる末端配列を有し、1つのプールからのDNA分子が1つまたは2つの所定の異なるプールからのDNA分子にのみ結合され得るようにする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA分子が、DNA増幅反応において生成されるアンプリコンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記DNA増幅反応がPCRである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各DNA分子は、分析物に特異的なレポーターDNA分子であり、各レポーターDNA分子の配列決定により、対応する分析物が検出される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物は、タンパク質であるか、またはタンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記レポーターDNA分子が、試料に対して実施されるマルチプレックス検出アッセイによって生成され、
前記方法は、各試料中の複数の分析物を検出するために、1つまたは複数の試料に対して複数のマルチプレックス検出アッセイを実施するステップを含み、各マルチプレックス検出アッセイで、レポーターDNA分子のプールを生じる、
請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記マルチプレックス検出アッセイが、第1のPCR産物を生成する第1のPCRを含み、
前記第1のPCR産物が、連結のための前記第1のPCR産物を調製するために第2のPCRによって修飾され、前記第2のPCRが前記DNA分子のプールを生成する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マルチプレックス検出アッセイが、前記レポーターDNA分子を生成する伸長ステップと、前記レポーターDNA分子が増幅される増幅ステップとを含む近接伸長アッセイであり、前記伸長ステップおよび増幅ステップが単一のPCR内で行われる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のマルチプレックス検出アッセイであるマルチプレックス近接伸長アッセイが同じ試料に対して実施され、
各近接伸長アッセイが、近接プローブの対を使用して分析物を検出することを含み、各近接プローブが、
(i)分析物に特異的な分析物結合ドメイン、および
(ii)核酸ドメイン
を含み、
各対内の両方のプローブは、同じ分析物に特異的な分析物結合ドメインを含み、各プローブ対が、異なる分析物に特異的であり、各プローブ対は、前記近接プローブの対がそれらのそれぞれの分析物に近接結合すると、前記近接プローブの前記核酸ドメインが相互作用してレポーターDNA分子を生成するように設計され、
近接プローブ対の少なくとも2つのパネルが使用され、各パネルは、分析物の異なる群を検出するためのものであり、各マルチプレックス近接伸長アッセイは、近接プローブ対の1つのパネルを使用し、
(a)各パネル内では、すべてのプローブ対が、核酸ドメインの異なる対を含み、(b)異なるパネルでは、前記プローブ対が、核酸ドメインの同じ対を含み、
近接プローブ対の各パネルの産物がプールを形成する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料は血漿または血清試料である、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
連結は、USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによって行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、アセンブリプライマーを使用して各プールに対してPCRを実施するステップを含み、各プール中のすべての前記DNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位を含み、各プール中のすべての前記PCRのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする、
ステップ(ii)において、各プールの前記PCR産物は、相補的なアセンブリ部位を有する異なるプールの前記PCR産物に結合され、それによって前記コンカテマーを生成する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
連結がUSERアセンブリによって実施され、各アセンブリ部位は、複数のウラシル残基、好ましくは少なくとも3つのウラシル残基を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、
(a)複数のマルチプレックス近接伸長アッセイを実施し、それによって、レポーターDNA分子の複数のプールを生成するステップであって、各プール中の前記レポーターDNA分子が、それらの3’末端および5’末端にユニバーサルプライマー結合部位を含む、ステップと、
(b)USERアセンブリのためのアセンブリ部位を含むアセンブリプライマーを使用して各プールに対してPCRを実施するステップと、
(c)USERアセンブリによって、前記プールからの前記PCR産物を直鎖状コンカテマーにアセンブルするステップであって、前記アセンブルするアセンブリステップが、
(i)各プール中の前記PCR産物を処理して、前記アセンブリ部位を含む3’オーバーハングを生成するステップ、
(ii)前記プールを組み合わせるステップ、および
(iii)前記複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各プールの前記PCR産物が、相補的な3’オーバーハングを有する異なるプールの前記PCR産物に結合される、ステップ
を含み、
(d)前記コンカテマーを配列決定し、それによって、各近接伸長アッセイにおいて検出された分析物を同定するステップであって、各近接伸長アッセイにおいて検出された前記分析物が、各レポーターDNA分子の配列とそのコンカテマー内のその位置との組み合わせに基づいて同定される、ステップ
を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記直鎖DNAコンカテマーをPCRに供して、少なくとも第1の配列決定アダプターを前記コンカテマーに付加する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記PCRにおいて、第1の配列決定アダプターが前記コンカテマーの一方の末端に付加され、第2の配列決定アダプターが前記コンカテマーの他方の末端に付加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記直鎖DNAコンカテマーをPCRに供して、少なくとも第1の配列決定プライマー結合部位を前記コンカテマーに付加する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記PCRにおいて、第1の配列決定プライマー結合部位が前記コンカテマーの一方の末端に付加され、第2の配列決定プライマー結合部位が前記コンカテマーの他方の末端に付加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(I)プールの複数のセットが個々に組み合わられ、プールの各セットについて別個の連結反応を実施されて、複数の連結反応産物を生じ、
(II)固有のインデックス配列がPCRによって各連結反応産物に付加され、
(III)前記連結反応産物が組み合わされ、
(IV)前記コンカテマーが配列決定され、前記インデックス配列が、各コンカテマーが由来する前記プールのセットを同定する、
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記PCRにおいて、第1のインデックス配列が前記コンカテマーの一方の末端に付加され、第2のインデックス配列が前記コンカテマーの他方の末端に付加される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記コンカテマーが、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列が各コンカテマーの両方の末端に付加される単一のPCRに供される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コンカテマーが供される前記PCRが、各末端に、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列を含む産物を生じる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の分析物が、前記試料中の存在量のレベルの範囲を有し、前記方法は、
(i)前記試料から複数のアリコートを提供するステップと、
(ii)各アリコートにおいて、各アリコートに対して別個のマルチプレックス検出アッセイを実施することによって、前記分析物の異なるサブセットを検出し、各アリコートから第1のPCR産物を生成するステップであって、各サブセットにおける前記分析物は、前記試料中のそれらの予測存在量に基づいて選択される、ステップと、
(iii)前記第1のPCR産物を複数のプールに組み合わせるステップと、
(iv)第2のPCRを実施して、前記第1のPCR産物を修飾し、連結のための前記第1のPCR産物を調製するステップと
を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、請求項10において定義されるように実施され、複数のアリコートが、近接プローブ対の各パネルについて前記試料から提供され、各パネルからの前記第1のPCR産物が組み合わせられ、前記第2のPCRが実施され、それによって、前記試料の各パネルからプールを生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
配列決定前のすべてのステップが同じ緩衝液中で行われる、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記コンカテマーが、超並列DNAシーケンシングによって配列決定される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
キットであって、
(i)複数の近接プローブ対であって、各近接プローブおよび近接プローブ対は請求項10に記載されているとおりであり、各対において、一方の近接プローブが、第1のユニバーサルプライマー結合部位およびその3’バーコード配列を含む核酸ドメインを含み、他方の近接プローブが、第2のユニバーサルプライマー結合部位およびその3’バーコード配列を含む核酸ドメインを含む、複数の近接プローブ対と、
(ii)第1のプライマー対であって、前記プライマーが、前記第1のユニバーサルプライマー結合部位および前記第2のユニバーサルプライマー結合部位に結合するように設計される、第1のプライマー対と、
(iii)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによる直鎖状コンカテマーへの指向性アセンブリのためにDNA分子を調製するのに適したアセンブリプライマー対のセットであって、各プライマーが、5’から3’に、アセンブリ部位およびハイブリダイゼーション部位を含み、各プライマー対において、前記ハイブリダイゼーション部位が、前記第1のユニバーサルプライマー結合部位および前記第2のユニバーサルプライマー結合部位に結合するように設計される、アセンブリプライマー対のセットと、
(iv)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによってDNA断片をアセンブルするのに適した酵素であって、前記アセンブリプライマー対と同じDNAアセンブリ手段での使用に適した酵素と、
(v)第2のプライマー対であって、各プライマーが、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、インデックス配列、およびハイブリダイゼーション部位を含み、前記ハイブリダイゼーション部位が、前記直鎖状コンカテマーの末端を形成するように設計された前記アセンブリプライマーの前記アセンブリ部位に結合するように設計される、第2のプライマー対と
を含み、
前記対における前記第1のプライマーが、第1の配列決定アダプター、第1の配列決定プライマー結合部位および第1のインデックス配列を含み、前記対における前記第2のプライマーが、第2の配列決定アダプター、第2の配列決定プライマー結合部位および第2のインデックス配列を含む、キット。
【請求項29】
前記第2のプライマー対における各プライマーは、5’から3’に、前記配列決定アダプター、前記配列決定プライマー結合部位、前記インデックス配列、および前記ハイブリダイゼーション部位を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記アセンブリプライマーおよび前記酵素は、アセンブリのためのDNA分子を調製し、USERアセンブリによってDNA分子をアセンブルするのに適しており、前記各アセンブリプライマーが、複数のウラシル残基、好ましくは少なくとも3つのウラシル残基を含むアセンブリ部位を含む、請求項28または29に記載のキット。
【請求項31】
請求項26に記載されているような使用に適した反応緩衝液をさらに含む、請求項28から30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
DNAポリメラーゼおよびdNTPミックスをさらに含む、請求項28から31のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示および発明は、複数のプールからDNA配列を検出する方法を提供する。本方法では、プールを組み合わせ、各プールからの単一のDNA分子を予め定められた順序で結合することによってDNAコンカテマーを生成し、次いでコンカテマーを配列決定する。各コンカテマーを配列決定(sequencing)することで、複数のDNA配列が検出され、検出された各DNA配列は、コンカテマー中のその位置によってその起源のプールに割り当てることができる。それにより、本方法は、複数のプールのそれぞれからのDNA配列の特異的検出を可能にする。本方法を実施するのに適したキットも提供される。
【背景技術】
【0002】
現代のプロテオミクス法では、少量の試料で多数の異なるタンパク質(またはタンパク質複合体)を検出する能力が必要である。これを達成するためには、マルチプレックス分析を実施する必要がある。試料中のタンパク質のマルチプレックス検出が達成され得る一般的な方法としては、近接伸長アッセイ(PEA)および近接ライゲーションアッセイ(PLA)が挙げられる。PEAおよびPLAは、WO 01/61037(特許文献1)に記載されており、PEAはさらにWO 03/044231(特許文献2)、WO 2004/094456(特許文献3)、WO 2005/123963(特許文献4)、WO 2006/137932(特許文献5)およびWO 2013/113699(特許文献6)に記載されている。
【0003】
PEAおよびPLAは近接アッセイであり、「近接プロービング(proximity probing)」の原理に依拠する。これらの方法では、複数の(一般的には2つの)プローブの結合によって分析物が検出され、プローブは、分析物への結合により近接すると(したがって「近接プローブ」)、シグナルを生成することができる。典型的には、近接プローブはそれぞれ、プローブの分析物結合ドメイン(または部分)に連結された核酸ドメイン(または部分)を含み、シグナルの生成に、核酸部分間の相互作用を伴う。このように、シグナルの生成は、プローブ間(より具体的には、それらの核酸部分/ドメイン間)の相互作用に依存するので、必要なプローブが分析物に結合した場合にのみ起こり、それにより、検出システムに改善された特異性を与える。
【0004】
PEAでは、プローブ対の分析物結合ドメインに連結された核酸部分は、プローブが極めて近接している場合(すなわち、標的に結合している場合)に互いにハイブリダイズし、その後、核酸ポリメラーゼを用いて伸長される。伸長産物は、レポーターDNA分子を形成し、その検出は、目的の試料中に特定の分析物(関連するプローブ対によって結合された分析物)が存在することを実証する。PLAでは、プローブ対の分析物結合ドメインに連結された核酸部分は、プローブ対のプローブがそれらの標的に結合するときに近接し、一緒にライゲーションされてもよく、代替的に、近接しているときに核酸ドメインにハイブリダイズすることができる別々に添加されたオリゴヌクレオチドのライゲーションを一緒に鋳型化してもよい。次いで、ライゲーション産物を増幅し、レポーターDNA分子として作用させる。PEAまたはPLAを用いたマルチプレックス分析物検出は、各プローブの核酸部分に固有のバーコード配列を含めることによって達成され得る。
【0005】
近接アッセイは、タンパク質だけでなく、核酸分析物を含む任意の分析物の検出に使用され得、また、そのような分析物のマルチプレックス検出に使用され得る。さらに、他の検出アッセイもまた、核酸レポーター分子を用いることができ、任意の分析物の検出に使用され得る(例えば、免疫PCRまたは免疫RCAアッセイ)。レポーターDNA分子は、提供されてもよいし、アッセイ中に生成されてもよく、それが、ひいてはその対応する分析物が検出され得るバーコード配列を含む。
【0006】
特定の分析物に対応するレポーターDNA分子は、それが含むバーコード配列によって同定され得る。マルチプレックス反応において、各レポーターDNA分子は、その特異的配列を検出するために用いられる技法によって検出され得る。これは、レポーターを配列決定することによって、またはレポーターもしくはそのアンプリコンにハイブリダイズする特異的プライマーおよび/もしくは特異的検出プローブを使用した増幅によって達成され得る。例えば、qPCRを使用して、定義された配列のレポーター分子を検出することができ、または同時係属PCT/EP2021/058008(特許文献7)に記載されているように、例えば、次世代シーケンシング(NGS)を使用して、特定のアッセイにおいて生成されたすべてのレポーターDNA分子を配列決定し、それによって、生成されたすべてのレポーターDNA分子を同定することができる。特定のレポーターDNA分子の検出は、そのレポーターDNA分子に対応する分析物が目的の試料中に存在することを示す。
【0007】
検出アッセイにおいて生成されたレポーターDNA分子が配列決定によって検出される既存の方法では、各レポーターDNA分子を個々に配列決定して、検出する。したがって、任意の所与の配列決定反応において配列決定および検出することができるレポーターDNA分子の数は、配列決定プラットフォーム(例えば、フローセル)の容量によって制限される。NGS反応において検出することができるレポーターDNA分子の数を増やすことは、検出アッセイの効率を高めるので、有利である。
【0008】
DNA分子の連結によってNGSのスループットを向上させる方法は、以前報告されており(Schlecht et al., Scientific Reports 7: 5252, 2017 (非特許文献1))、ConcatSeqと称される。ConcatSeq技法は、Gibsonアセンブリを利用して目的のDNA分子のコンカテマーを生成するもので、配列決定スループットを5倍超増加させることが報告された。この文献には、コンカテマー中の特定の位置に基づいたアッセイに関する情報、例えば、その位置でコンカテマーに組み込まれる配列の起源に関する情報を伝達するために、マルチプレックスアッセイの文脈でコンカテマー構築を使用することは示唆されていない。本発明は、PEAおよびPLAなどのマルチプレックス検出アッセイの文脈で特に有用な、配列決定のためのコンカテマーを生成する改善された方法を提供し、それにより、得られたコンカテマー内の各レポーターDNA配列の位置が、それが由来するプールを示すように、予め定義されている順序で複数のプールからのレポーターDNA分子を連結することによって配列決定スループットが増加する。各プールは、例えば、別個の試料からまたは近接プローブの別個のパネルを使用して生成され得る。本方法は、レポーターDNA分子の各プールが、同じ核酸部分のセットを有するプローブを使用して生成される場合に特に有利である。コンカテマー中の各レポーターDNA配列を起源の特定のプールに割り当てる能力は、複数のプール内に存在する同一のレポーター配列を、コンカテマー内のそれらの位置に基づいて区別することができることを意味する。
【0009】
このように、本明細書において提供される方法は、近接アッセイ(例えば、PEAおよびPLAアッセイ)の文脈で特定の有用性を有するが、その有用性は、これらのアッセイに限定されない。本発明の方法は、DNA分子のプールを分析することが所望される任意の文脈で使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 01/61037
【特許文献2】WO 03/044231
【特許文献3】WO 2004/094456
【特許文献4】WO 2005/123963
【特許文献5】WO 2006/137932
【特許文献6】WO 2013/113699
【特許文献7】PCT/EP2021/058008
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Schlecht et al., Scientific Reports 7: 5252, 2017
【発明の概要】
【0012】
第1の態様では、複数のプールからDNA配列を検出する方法であって、各プールは複数種のDNA分子を含み、以下を含む方法が本明細書で開示および提供される:
(i)プールを組み合わせるステップ;
(ii)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;および
(iii)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられる、ステップ。
【0013】
特に、プールは、予め定められた、指示された順序で連結することができるDNA分子を含み得る。言い換えると、各プール中のDNA分子は、予め指定されたかまたは選択された他のプールからの分子にのみ連結(concatenate)または連結(link)することができる。したがって、各プールは、コンカテマー中の予め指定された場所または位置に指定されるかまたは割り当てられる。このように、コンカテマーは、モノマー位置の所定の「プール順序(pool order)」を有し、コンカテマー内の各モノマーが由来するプールの同一性は、コンカテマー内のモノマーの位置から決定され得る。言い換えると、コンカテマー内の各DNA分子の位置は、それが由来するプールと相関する。プールの予め定義されている順序のコンカテマーが構築されることを可能にするために、各DNA分子(すなわち、モノマー)は、1つのみ(それが末端モノマーである場合)または2つの他のDNA分子に連結され得る(すなわち、各DNA分子(モノマー)は、1つのみ(それが末端モノマーである場合)または2つの他のプールからのDNA分子に連結され得る)。
【0014】
このように、プール中のDNA分子は、連結のために調製され得る。一実施形態では、方法は、ステップ(i)の前に、連結のためにDNA分子の複数のプールを調製するステップを含み、調製するステップは、各プール中のDNA分子に、連結ステップにおいて結合され得る規定された末端配列を提供することを含み、同じプール中のDNA分子は同じ末端配列を有し、異なるプールは異なる末端配列を有し、1つのプールからのDNA分子が1つまたは2つの所定の異なるプールからのDNA分子にのみ結合され得るようにする。DNA分子は、コンカテマー中のその位置に応じて、1つまたは2つの末端配列を有し得る。さらに、コンカテマー中の末端位置にあるDNA分子には、別の分子(すなわち、プールからのDNA分子以外の分子)、例えば、配列決定アダプターまたは他のアダプターへの連結のための第2の末端配列が提供され得る。
【0015】
第2の態様では、以下を含むキットが本明細書で開示および提供される:
(i)複数の近接プローブ対であって、各近接プローブが分析物に特異的な結合ドメインおよび核酸ドメインを含み、各近接プローブ対は異なる分析物に特異的であり、それにより、近接プローブの対がそれらのそれぞれの分析物に近接結合すると、近接プローブ対の核酸ドメインが相互作用してレポーターDNA分子を生成することができ、各対において、一方の近接プローブの核酸ドメインが第1のユニバーサルプライマー結合部位およびその3’バーコード配列を含み、他方の近接プローブの核酸ドメインが第2のユニバーサルプライマー結合部位およびその3’バーコード配列を含む、複数の近接プローブ対;
(ii)第1のプライマー対であって、プライマーが、第1のユニバーサルプライマー結合部位および第2のユニバーサルプライマー結合部位に結合するように設計される、第1のプライマー対;
(iii)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによる直鎖状コンカテマーへの指向性アセンブリのためにDNA分子を調製するのに適したアセンブリプライマー対のセットであって、各プライマーが、5’から3’に、アセンブリ部位およびハイブリダイゼーション部位を含み、各プライマー対において、ハイブリダイゼーション部位が、第1のユニバーサルプライマー結合部位および第2のユニバーサルプライマー結合部位に結合するように設計される、アセンブリプライマー対のセット;
(iv)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによってDNA断片をアセンブルするのに適した酵素であって、アセンブリプライマー対と同じDNAアセンブリ手段での使用に適した酵素;および
(v)第2のプライマー対であって、各プライマーが、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、インデックス配列、およびハイブリダイゼーション部位を含み、ハイブリダイゼーション部位が、直鎖状コンカテマーの末端を形成するように設計されたアセンブリプライマーのアセンブリ部位に結合するように設計される、第2のプライマー対;
ここで、対における第1のプライマーが、第1の配列決定アダプター、第1の配列決定プライマー部位、および第1のインデックス配列を含み、対における第2のプライマーが、第2の配列決定アダプター、第2の配列決定プライマー部位、および第2のインデックス配列を含む。
【0016】
一実施形態では、近接プローブは、PEA用のプローブであってもよい。そのような実施形態では、近接プローブ対は、互いにハイブリダイズし、伸長反応を鋳型化する核酸ドメインを含み得る。このように、一方の近接プローブの核酸ドメインは、対の他方のプローブの核酸ドメインによって鋳型化された伸長反応をプライミングし得る。別の実施形態では、近接プローブは、PLA用のプローブであってもよい。そのような実施形態では、近接プローブ対は、一緒にライゲーションされ得るように共通のライゲーション鋳型にハイブリダイズする核酸ドメイン、または1つもしくは複数の添加されたオリゴヌクレオチドのライゲーションの鋳型化および/もしくはライゲーション産物の増幅のプライミングを行う核酸ドメインを含む。
[詳細な説明]
【0017】
前述のように、第1の態様は、複数のプールからDNA配列を検出する方法を提供する。DNA配列は、DNA配列決定によって検出される。所与のDNA配列は、配列決定によって同定され、したがって、プール中のその存在が確認される。
【0018】
本明細書で使用される「プール(pool)」は、複数種のDNA分子を含む混合物(例えば、溶液)である。DNA分子の「種(species)」は、本明細書では、特定の配列を有するDNA分子を意味する。したがって、各プールは、複数の(multiple)、つまり複数の(a plurality of)、異なるDNA分子(すなわち、異なる配列を有するDNA分子)を含む。本明細書で使用される「複数の(multiple)」または「複数の(a plurality of)」とは、少なくとも2つを意味する。複数の異なるDNA分子を含むプールは、任意の好都合なまたは所望の方法で調製または生成することができる。異なる核酸分子は、試料中に天然に存在し得、異なる試料は、異なるプールを表し得る。代替的に、核酸分子を混合することによってプールを調製してもよい。核酸分子のプールを生成することができ、例えば、レポーター核酸分子のプールは、以下でさらに議論するように、試料中の複数の異なる分析物を検出するマルチプレックスアッセイによって生成され得る。このように、各プールは、少なくとも2種のDNA分子、例えば、少なくとも10種、少なくとも50種、または少なくとも100種以上のDNA分子を含む。それぞれの種のDNA分子の複数のコピーが、それぞれのプールに存在してもよい。本方法で検出される各プールからのDNA配列は、プールに存在する様々な種のDNA分子の配列であるか、またはその中に含まれる配列である。検出される配列は、以下でさらに議論するように、各DNA分子の全体であり得るか、または各DNA分子の一部であり得る(すなわち、検出される配列は、各DNA分子内に位置し得る)。
【0019】
各プールは、同じ数の種のDNA分子を含み得るか、または各プールは、異なる数の種のDNA分子を含み得る。各プールは、同様の濃度の各DNA分子または異なる濃度を含み得る。各プール内のDNA分子の総数は同程度であることが好ましい。
【0020】
本明細書で使用される「DNA分子(DNA molecule)」という用語は、当技術分野におけるその標準的な意味、すなわち、デオキシリボヌクレオチドのポリマーである。各DNA分子は、一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、一般的には二本鎖であり得る。一般に、DNA分子は、4つの標準的なDNA塩基(アデニン、チミン、シトシン、グアニン)を含む(または主に含む)が、他の非標準的なDNA塩基、例えば、修飾塩基およびDNA付加体を含んでいてもよい。以下でさらに説明するように、特定の実施形態では、DNA分子は、ウラシル塩基を含み得る。プール中のDNA分子は直鎖状である。環状DNA分子は、連結を行うためには直鎖化する必要がある。
【0021】
本方法は、複数のプール、すなわち、少なくとも2つのプールからDNA配列を検出するために使用される。好ましくは、一実施形態では、本方法は、少なくとも3つのプール(例えば、3、4、5、6、7または8つ以上のプール)からDNA配列を検出するために使用される。特定の実施形態では、本方法は、3~8プール、3~7プール、3~6プール、または4~6プールから配列を検出するために使用される。実際には、コンカテマーの長さ、ひいてはプールの数には実質的な制限はなく、必要に応じて、はるかに多くすることができる。
【0022】
ステップ(i)において、DNA分子のプールを組み合わせる。すなわち、すべてのプールを添加し、混合して、単一の反応混合物を形成する。このようにして、反応混合物は、各プールからのDNA分子を含む。
【0023】
プールの組み合わせ(すなわち、混合)に続いて、連結反応が行われる。連結反応は、プールされたDNA分子から複数の直鎖DNAコンカテマーを生成する。一般的な言い方では、DNAコンカテマーは、繰り返しDNA単位(repeating DNA unit)の連結されたコピーを含有する分子である。繰り返しDNA単位がプールからのDNA分子であるという点で、特許請求される方法においても同じことが言える。以下でさらに議論するように、各DNA分子は、一般に、共通の構造を有し(一部は共通の配列を共有し得)、そのため、コンカテマーに沿って繰り返される。しかしながら、繰り返し単位、すなわちコンカテマーのモノマーは、同一である必要はないことが理解されよう。コンカテマーのモノマーは、各プールから1つずつ、コンカテマーにおいて連結された個々のDNA分子によって構成される。生成されるコンカテマーは、直鎖状、すなわち、環状分子ではなく2つの末端を有する。
【0024】
各コンカテマーは、各プールからの1つのDNA分子を結合することによって生成される。このように、例えば、本方法がDNA分子の4つのプールに対して実施される場合、得られたコンカテマーはそれぞれ、4つの繰り返し単位、すなわち、4つのプールの各々から1つのDNA分子、を含む。したがって、生成されるコンカテマーは、所定の数のDNA分子(プールの数に対応する)を含み、本方法において使用されるプールの数に相関する予め定められた長さを有する。各コンカテマーは各プールからの1つのDNA分子を含むが、各コンカテマーに組み込まれた各プールからの特異的DNA分子はランダムであり、すなわち、各コンカテマーは各プールからの単一のDNA分子を含み、各コンカテマーにアセンブルされる各プールからのDNA分子はランダムに選択される。
【0025】
上記のように、本方法では複数のコンカテマーが生成される。生成されるコンカテマーの数は、各プール中のDNA分子の総数(特に、最小数の総DNA分子を有するプール中のDNA分子の総数(前述のように、プールが同様の数のDNA分子を含むことが好ましい))に対応する。連結反応は、プールからの本質的にすべてのDNA分子がコンカテマーに組み込まれるように、組み合わされたDNA分子を本質的に使い果たすことが好ましい。
【0026】
連結の際、各プールからのDNA分子は、各コンカテマー内の各DNA分子の位置(つまり、コンカテマー中のその位置)が、DNA分子が由来するプールに基づいて定義されるように、予め定められた順序でアセンブルされる。形成された各コンカテマーでは、DNA分子は、(各DNA分子が由来するプールに基づいて)同じ順序で配置される。このように、プールの順序(いわゆる「プール順序」)は、予め定められており、各コンカテマーについて同じである。連結を実行するために、任意の適切な方法が使用され得る。唯一の要件は、方法がDNA分子の指向性アセンブリを実施するのに適していることである。
【0027】
各コンカテマーが各プールからのDNA分子を含み、DNA分子が、それらの起源のプールに基づいて、予め定められた順序で配置されているという事実は、各コンカテマーの配列決定時に、コンカテマー内の各DNA分子の起源のプールを、単にコンカテマー内のDNA分子の位置に基づいて決定することができることを意味する。例えば、4つのプール(プールA、B、C、D)に対して本方法を実施した場合、各プールは、コンカテマー中の位置に予め割り当てられることになる。例えば、プールAには位置1、プールBには位置2、プールCには位置3、プールDには位置4が割り当てられ得る。このようにして、各コンカテマーは、以下の順序でアセンブルされた4つのDNA分子を含む:
プールA分子-プールB分子-プールC分子-プールD分子
試料A分子-試料B分子-試料C分子-試料D分子
【0028】
これは、4つのプール1、2、3、4のそれぞれからの分子がどのようにコンカテマーに組み込まれるかを示す
図7に概略的に示されている。この図は、各プールにおいて生成された単一分子を示す。星印(*)は相補的な配列を示す。言い換えると、「A」と「A*」とは互いに相補的である。
【0029】
DNAは二本鎖であり、各鎖は配列決定時に別々に読み取ることができるので、明らかに、DNA分子は2つの鎖において反対の順序で配置される。このように、上記の例では、上記の順序がコンカテマーの第1の鎖における分子の順序である場合、コンカテマーの第2の鎖は、逆の順序、すなわち以下の順序で4つのDNA分子を含む。
プールD分子-プールC分子-プールB分子-プールA分子
【0030】
各コンカテマーの2つの鎖は区別可能である。一般に、本方法が実施されるとき、各プール中のDNA分子の可能な配列は既知であり、例えば、各プール内のDNA分子の配列は、各DNA分子がDNA配列の限られたセットのうちの1つのみを有することができるように、DNA配列の既知のセットから選択される。この実施形態では、2つの鎖は、それらが各DNA分子の順方向配列を含むか逆方向配列を含むかに基づいて区別され得る。このように、上記の例では、第1の鎖は、各DNA分子の順方向配列を含み、逆方向鎖は、各DNA分子の逆方向配列を含む(ここでの逆方向とは、当然ながら、逆相補体を意味する)。このようにして、配列決定されるときに、各鎖がコンカテマーの順方向鎖であるか逆方向鎖であるかを決定し、それによってコンカテマー内の各DNA分子の起源のプールを確立することが可能である。このため、DNA分子がパリンドローム配列を有さないことが好ましい場合がある。
【0031】
代替的または追加的に、特にDNA分子の可能な配列が知られていない場合、各コンカテマーの末端にタグ付けして、区別することができるようにし得る。特に、末端特異的タグをコンカテマーの一方の末端または両方の末端に付加することができる。第1の末端特異的タグを、各DNAコンカテマーの一方の末端、例えば、位置1におけるDNA分子の遊離末端、に付加することができる。オプションで、第2の末端特異的タグを、コンカテマーの他方の末端におけるDNA分子の遊離末端に付加することができる(例えば、上記の例では、第2のタグは、位置4におけるDNA分子の遊離末端に付加されるであろう)。末端特異的タグにより、たとえコンカテマーに含まれるDNA分子の配列からは不可能であっても、各コンカテマー配列の配向が可能になる。2つの末端特異的タグが使用される場合、第1の末端特異的タグおよび第2の末端特異的タグは、異なる配列を有する。適切なタグの例は、下記で説明され、例えば、配列決定プライマー結合部位は、末端特異的タグとして作用し得る。
【0032】
コンカテマーが生成されると、その配列決定が行われる。以下でさらに議論するように、任意の適切な配列決定方法が使用され得る。コンカテマーが配列決定されると、各コンカテマー内のDNA分子を同定することができる。これは、各コンカテマー内の各プールからのDNA配列が検出されることを意味する。各コンカテマー内の配列の位置によって各DNA配列の起源のプールを決定することができるので、これにより、各DNA配列を、そのコンカテマー内のその位置に基づいてその起源のプールに割り当てることができる。すべてのコンカテマーを配列決定することで、各プールに存在するすべてのDNA配列を同定することができる。
【0033】
一般に、本方法は、ステップ(i)の前に行われる調製ステップを含む。調製ステップにおいて、DNA分子の複数のプールは、各プール内のDNA分子に、連結ステップにおいて結合することができる規定された末端配列を提供することによって、連結のために調製される。典型的には、各DNA分子は、各末端に1つずつ、2つの末端配列を受容するが、これは厳密には必要ではなく、コンカテマー内の末端モノマーとして指定されるDNA分子は、1つのみを受容してもよい。調製ステップにおいて、各プール中のすべてのDNA分子には、同じ末端配列が提供される(ただし、各プールにおいて、2つの末端配列は同じではない(各DNA分子には2つの異なる末端配列が提供される))。しかしながら、異なる末端配列が、各異なるプール中のDNA分子に提供される。すなわち、各プール内では、すべてのDNA分子に末端配列の同じ対が提供されるが、各異なるプールからのDNA分子には末端配列の異なる対が提供される。
【0034】
末端配列とは、本明細書では、各プール中のDNA分子の末端に付加された配列を意味し、その付加に続いて、規定された末端配列がプール内の各DNA分子の両方の末端を形成する。このように、各DNA分子には、DNA分子の一方の末端に付加される第1の規定された末端配列と、DNA分子の他方の末端に付加される第2の規定された末端配列とが提供される。上記で特定したように、第1の末端配列と第2の末端配列とは異なる。末端配列は、代替的に、アダプター配列、より具体的には、末端アダプター配列またはアセンブリアダプター配列と称されることがある。
【0035】
末端配列は、様々なプール中のDNA分子を定められた順序で互いに結合することを可能にするように構成される。このように、各末端配列(コンカテマーの末端を形成するように設計されたものを除き)は、使用される末端配列のセット内に対をなす末端配列(例えば、相補的な末端配列)を有する。末端配列の各対について、2つの末端配列は、異なるプールに提供される。すなわち、末端配列の所与の対のうち、第1の末端配列は、第1のプール中のDNA分子に付加され、第2の末端配列は、第2のプール中のDNA分子に付加される。これは、プールの組み合わせに続いて、第1のプールからのDNA分子が、それらの対になった末端配列を介して第2のプールからのDNA分子に結合することができることを意味する。このように、連結反応では、すべてのプールにわたって、それらの対になった末端配列を介して、各プールからのDNA分子は、定められた配向で、2つの他の定められたプールからのDNA分子に結合することができる(それぞれ1つの他のDNA分子にのみ結合される、コンカテマーの末端を形成するように設計されたDNA分子を除いて)。対になった末端配列の適切な型は、当該分野で知られており、例えば、末端配列の各対は、それらを結合するために使用することができる特定の制限部位を共有し得る。DNA分子の指向性結合のための他の手段については後述する。
【0036】
以下でさらに議論するように、末端配列を、任意の適切な方法でプール中のDNA分子の末端に付加することができる。末端配列を含むプライマーを用いた増幅、例えば、PCRによる増幅、が好ましい方法である。
【0037】
したがって、特定の実施形態では、複数のプールからDNA配列を検出する方法であって、各プールは複数種のDNA分子を含み、以下を含む方法が本明細書で提供される:
(i)各プール中のDNA分子に、連結ステップにおいて結合され得る規定された末端配列を提供することによって、連結のために各プール内のDNA分子を調製するステップであって、同じプール中のDNA分子は同じ末端配列を有し、異なるプールは異なる末端配列を有し、1つのプールからのDNA分子が1つまたは2つの所定の異なるプールからのDNA分子にのみ結合され得るようにする、ステップ;
(ii)プールを組み合わせるステップ;
(iii)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;および
(iv)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられる、ステップ。
【0038】
特定の実施形態では、本方法において連結および配列決定されるDNA分子は、DNA増幅反応において生成されるアンプリコンである。アンプリコンは、任意の既知のDNA増幅反応、例えば、LAMP(ループ媒介等温増幅)によって生成され得るが、最も好ましくは、PCRによって生成される。
【0039】
言い換えると、連結の前に、増幅反応(好ましくはPCR)によってDNA分子が生成され得る。各プール中のDNA分子は、この事例では、別個の増幅反応によって、例えば、別個のPCRによって生成される。同じPCRを使用して、プール中のDNA分子を生成することと、上記のようにそれらに末端配列を付加することの両方を行い得る。この実施形態では、末端配列は、増幅に使用されるプライマーの5’末端(または、少なくとも5’からプライマーのハイブリダイゼーション部位まで)に含まれる。別の実施形態では、第1のPCRを各プールで実施してDNA分子を生成し、続いて、第2のPCRを各プールで実施して末端配列をDNA分子に付加する。
【0040】
特定の実施形態では、各DNA分子は、分析物に特異的なレポーターDNA分子である(本明細書で使用される場合、「レポーターDNA(reporter DNA)」および「レポーターDNA分子(reporter DNA molecule)」という用語は交換可能である)。本明細書で使用される「分析物」という用語は、検出アッセイを使用して検出することが望まれる任意の物質(例えば、分子)または実体を意味する。この実施形態では、本発明の方法(上記のような)は、検出アッセイの一部を構成する。そのため、分析物は、検出アッセイの「標的」である。
【0041】
したがって、分析物は、検出することが望まれる任意の生体分子または化学化合物、例えば、ペプチドもしくはタンパク質、または核酸分子もしくは小分子(有機分子および無機分子を含む)であってもよい。分析物は、細胞もしくは微生物(ウイルスを含む)、またはその断片もしくは産物であり得る。したがって、分析物は、特異的結合パートナー(例えば、親和性結合パートナー)を開発することができる任意の物質または実体であり得ることが分かるであろう。必要なのは、分析物が少なくとも2つの結合パートナー(より具体的には、少なくとも2つの近接プローブの分析物結合ドメイン)に同時に結合することができることだけである。
【0042】
上で詳述したように、本方法は、近接プローブに基づくアッセイにおいて特に有用である。このようなアッセイは、タンパク質またはポリペプチドの検出において特に有用であることが分かっている。このように、特に関心のある分析物としては、タンパク質性分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくはプリオン)またはタンパク質もしくはポリペプチド成分などを含む任意の分子、あるいはそれらの断片が挙げられる。特定の実施形態では、分析物は、完全にまたは部分的にタンパク質性の分子、最も具体的にはタンパク質である。すなわち、一実施形態では、分析物は、タンパク質であるか、またはタンパク質を含む。この文脈では、「タンパク質(protein)」という用語は、任意のペプチドまたはポリペプチドを含むように使用される。
【0043】
分析物は、単一分子であっても、2つ以上の分子サブユニットを含む複合分子であってもよく、これらは互いに共有結合していてもしていなくてもよく、同じであっても異なっていてもよい。したがって、細胞または微生物に加えて、そのような複合分析物は、タンパク質複合体、またはタンパク質および1つまたは複数の他のタイプの生体分子を含むタンパク質複合体であってもよい。そのため、このような複合体は、ホモ多量体またはヘテロ多量体であり得る。分子(例えば、タンパク質)の凝集体はまた、標的分析物、例えば、同じタンパク質または異なるタンパク質の凝集体を構成し得る。分析物はまた、タンパク質またはペプチドとDNAまたはRNAなどの核酸分子との複合体であってもよい。特に興味深いのは、タンパク質と核酸、例えば、転写因子のような調節因子と、DNAまたはRNAとの間の相互作用であり得る。したがって、特定の実施形態では、分析物は、タンパク質-核酸複合体(例えば、タンパク質-DNA複合体またはタンパク質-RNA複合体)である。別の実施形態では、分析物は非核酸分析物であり、これは、核酸分子を含まない分析物を意味する。非核酸分析物としては、前述のタンパク質およびタンパク質複合体、小分子および脂質が挙げられる。
【0044】
上記のように、各DNA分子は、分析物に対するレポーターDNA分子であってもよい。この実施形態では、試料中の1つまたは複数の分析物の検出のために検出アッセイが使用される。一実施形態では、試料中の特定の分析物の存在は、検出アッセイの間に、特定の分析物に対応することが知られている、特定のヌクレオチド配列を有する核酸分子の産生をもたらす。別の実施形態では、特定のヌクレオチド配列を有する核酸分子は、分析物の存在についてのレポーターとして、例えば、分析物に結合する部分のタグまたは標識として、アッセイにおいて提供され得る。特定のヌクレオチド配列の検出は、その配列が対応する分析物が試料中に存在することを示す。したがって、「レポーターDNA分子」は、検出アッセイ中のその存在(または検出)または生成が、試料中の特定の分析物の存在を示す核酸分子である。一実施形態では、各プールは、別個の検出アッセイで生成されたレポーターDNA分子を含む。例えば、3つの検出アッセイが実施される場合、レポーターDNA分子の3つのプールが生成され得る。
【0045】
検出アッセイは、各アッセイが試料中の特定の分析物を検出するシンプレックスで、またはアッセイが試料中の複数の異なる分析物を検出するマルチプレックスで実施され得る。複数のシンプレックスアッセイからのレポーターDNA分子をプールして、複数の異なるレポーター分子を含むプールを作製し得る。代替的に、マルチプレックスアッセイで、異なるレポーター分子のプールを生じ得る。例えば、マルチプレックスアッセイを単一の試料に対して実施して、複数の異なる分析物を検出することができる。複数のプールは、複数のマルチプレックスアッセイから生成され得、各マルチプレックスアッセイで、異なるプールを生じる。
【0046】
上記のように、各レポーターDNA分子は、特定の分析物に特異的である。したがって、レポーターDNA分子は、所与の分析物を同定し、またはより具体的には、分析物が検出され得るバーコード配列として機能する配列またはドメインを含み得る。大まかに言えば、バーコード配列は、レポーター、ひいては検出された分析物を同定するレポーターDNA分子内のヌクレオチド配列として定義され得る。検出アッセイにおいて生成された各レポーターDNA分子の全体が固有である場合もあり、その場合、レポーターDNA分子全体がバーコード配列とみなされ得る。より一般的には、レポーターDNA分子の1つまたは複数のより小さいセクションがバーコード配列として作用する。
【0047】
したがって、特定の実施形態では、1つまたは複数の試料中の分析物を検出するための方法であって、以下を含む方法が提供される:
(i)複数の別個の検出アッセイを実施するステップであって、各検出アッセイが、複数の異なるレポーターDNA分子のプールを生成し、それぞれが特定の分析物に特異的である、ステップ;
(ii)プールを組み合わせるステップ;
(iii)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーが、コンカテマー内の各レポーターDNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のレポーターDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなレポーターDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;および
(iv)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからレポーターDNA配列を検出するステップであって、各プールからのレポーターDNA配列が、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられ、それによって、該または各試料中の分析物を検出する、ステップ。特に、本方法は、ステップ(i)の後に、各プール内のレポーターDNA分子に、連結ステップにおいて結合され得る規定された末端配列を提供するステップであって、同じプール中のレポーターDNA分子はすべて同じ末端配列を有し、異なるプールは異なる末端配列を有し、1つのプールからのレポーターDNA分子が1つまたは2つの所定の異なるプールからのレポーターDNA分子にのみ結合され得るようにする、ステップを含み得る。
【0048】
この実施形態では、複数の検出アッセイはすべて同じである(すなわち、同じアッセイを使用して、レポーターDNA分子の各プールを生成する)ことが好ましい。
【0049】
「検出する(detecting)」または「検出された(detected)」という用語は、分析物の存在または非存在を決定すること(すなわち、標的分析物が目的の試料中に存在するか否かを決定すること)を意味するために本明細書において広く使用される。したがって、本発明のこの実施形態が実施され、試料中の目的の特定の分析物を検出する試みがなされるが、分析物が試料中に存在しないために検出されない場合、試料からのその存在または非存在が評価されたため、「分析物を検出する」ステップは依然として実施されたこととなる。分析物を「検出する」ステップは、検出が成功したこと、すなわち、分析物が実際に検出されることに依存しない。
【0050】
分析物を検出することは、試料中の分析物の濃度または存在量の任意の形態の測定をさらに含み得る。標的分析物の絶対濃度が決定され得るか、または分析物の相対濃度が決定され得、この目的のために、標的分析物の濃度は、試料中または他の試料中の別の標的分析物(または他の標的分析物)の濃度と比較され得る。したがって、「検出すること(detecting)」は、分析物の存在もしくは非存在または量を決定すること、測定すること、評価すること、またはアッセイすることを含み得る。半定量的決定を含む、定量的および定性的決定、測定または評価が含まれる。このような決定、測定、または評価は、例えば、試料中の2つ以上の異なる分析物が検出されている場合、相対的であってもよく、または絶対的であってもよい。このように、「定量化(quantifying)」という用語は、試料中の標的分析物を定量化する文脈で使用される場合、絶対定量または相対定量を指すことができる。絶対定量は、1つまたは複数の対照分析物の既知の濃度(複数可)を含めること、および/または標的分析物の検出されたレベルを既知の対照分析物と参照すること(例えば、標準曲線の生成を通して)によって達成され得る。代替的に、相対定量は、2つ以上の異なる標的分析物の間の検出されたレベルまたは量を比較して、2つ以上の異なる分析物の各々の相対定量、すなわち、互いに対する相対定量を提供することによって達成され得る。本発明の方法において定量化が達成され得る方法については、さらに後述する。
【0051】
本方法のこの実施形態は、1つまたは複数の試料中の分析物を検出するためのものである。上で詳述したように、各別個の検出アッセイが、異なる試料に対して実施され得る。この場合、各検出アッセイは、複数の異なる試料中の同じ分析物を検出するために、または異なる試料中の異なる分析物を検出するために実施され得る。代替的に、各検出アッセイは、同じ試料に対して実施され得、異なる分析物が、各別個の検出アッセイにおいて検出される。代替的に、組み合わせが使用されてもよく、複数の試料がアッセイされ、複数の別個の検出アッセイが複数の試料の各々について実施される。
【0052】
目的の任意の試料は、本方法にしたがって(すなわち、本方法のすべての実施形態にしたがって)アッセイされ得る。すなわち、目的の分析物を含むかまたは含み得る任意の試料であって、それが目的の分析物を含むかどうかを決定するためにおよび/またはその中の目的の分析物の濃度を決定するために分析することが望まれる試料である。
【0053】
したがって、任意の生物学的または臨床試料、例えば、生物のもしくは生物からの任意の細胞もしくは組織試料、またはそれに由来する任意の体液もしくは調製物、ならびに細胞培養物、細胞調製物、細胞溶解物などの試料が分析され得る。環境試料、例えば、土壌および水試料、または食品試料もまた、本明細書の方法にしたがって分析され得る。試料は、新たに調製されてもよく、または例えば、保存のために、任意の好都合な方法で前処理されてもよい。
【0054】
したがって、代表的な試料としては、生体分子または任意の他の所望のもしくは標的の分析物を含み得る任意の材料が挙げられ、例えば、食品および関連製品、臨床試料および環境試料を含む。試料は、生物学的試料であってもよく、原核細胞または真核細胞、ウイルス、バクテリオファージ、マイコプラズマ、プロトプラストおよびオルガネラを含む任意のウイルスまたは細胞材料を含み得る。したがって、そのような生物学的材料は、任意のタイプの哺乳類および/または非哺乳類の動物細胞、植物細胞、藍藻類を含む藻類、真菌、細菌、原生動物などを含み得る。それはさらに、調製された試料または合成試料、例えば、単離または精製された分析物を含む試料であってもよい。
【0055】
試料は、臨床試料、例えば、全血、ならびに血漿、血清、バフィーコートおよび血液細胞などの血液由来産物、尿、糞便、脳脊髄液または任意の他の体液(例えば、呼吸分泌物、唾液、乳汁など)、組織、および生検であってもよい。一実施形態では、試料は、血漿または血清試料である。したがって、本方法は、例えば、バイオマーカーの検出、あるいは、病原体由来分析物もしくは疾患または臨床状態に関連付けられた分析物について試料をアッセイするために使用され得る。試料は、特に、ヒトに由来するものであり得るが、本方法は、ヒト以外の動物に由来する試料(すなわち、獣医学的試料)にも等しく適用され得る。試料は、本方法での使用のためにそれを調製するために、任意の好都合なまたは所望の方法で、例えば、細胞溶解または除去などによって前処理され得る。
【0056】
分析物検出方法の一実施形態では、複数の別個の検出アッセイのそれぞれを使用して、複数の分析物を検出する。言い換えると、一実施形態では、各検出アッセイはマルチプレックス検出アッセイである。本明細書で使用される場合、「マルチプレックス(multiplex)」という用語は、同じ反応容器または反応混合物において、複数の(すなわち、少なくとも2つの)異なる検出アッセイが同時に実施されるアッセイを指すために使用される。例えば、複数の異なる分析物が同時にアッセイされる。好ましくは、各マルチプレックス検出アッセイは、少なくとも5、10、20、50、100、150、200、250、または300個の分析物を検出するために使用される。このように、一実施形態では、レポーターDNA分子が、試料に対して実施されるマルチプレックス検出アッセイによって生成され、方法は、各試料中の複数の分析物を検出するために、1つまたは複数の試料に対して複数のマルチプレックス検出アッセイを実施するステップを含み、各マルチプレックス検出アッセイで、レポーターDNA分子のプールを生じる。
【0057】
したがって、特定の実施形態では、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、以下を含む方法が提供される:
(i)複数の別個のマルチプレックス検出アッセイを実施するステップであって、各マルチプレックス検出アッセイが試料中の複数の分析物を検出し、各マルチプレックス検出アッセイが、レポーターDNA分子のプールを生成し、それぞれが特定の分析物に特異的である、ステップ;
(ii)プールを組み合わせるステップ;
(iii)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーが、コンカテマー内の各レポーターDNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のレポーターDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなレポーターDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;および
(iv)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからレポーターDNA配列を検出するステップであって、各プールからのレポーターDNA配列が、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられ、それによって、該または各試料中の分析物を検出する、ステップ。
【0058】
特に、本方法は、ステップ(i)の後に、各プール内のレポーターDNA分子に、連結ステップにおいて結合され得る規定された末端配列を提供するステップであって、同じプール中のレポーターDNA分子はすべて同じ末端配列を有し、異なるプールは異なる末端配列を有し、1つのプールからのレポーターDNA分子が1つまたは2つの所定の異なるプールからのレポーターDNA分子にのみ結合され得るようにする、ステップを含み得る。
【0059】
上で詳述したように、各マルチプレックス検出アッセイは同じである(すなわち、レポーターDNA分子の各プールを生成するために同じアッセイが使用される)ことが好ましい。また、上で詳述したように、各マルチプレックス検出アッセイは、異なる試料に対して実施され得る。この場合、各マルチプレックス検出アッセイは、複数の異なる試料中の同じ分析物を検出するために、または異なる試料中の異なる分析物を検出するために実施され得る。代替的に、各マルチプレックス検出アッセイは、同じ試料に対して実施され得、異なる分析物が、各別個のマルチプレックス検出アッセイにおいて検出される。代替的に、組み合わせが使用されてもよく、複数の試料がアッセイされ、複数の別個のマルチプレックス検出アッセイが複数の試料の各々について実施される。
【0060】
上記の検出アッセイおよびマルチプレックス検出アッセイは、PCRを利用して、検出されるべきレポーターDNA分子を生成することができる。特定の実施形態では、検出アッセイおよびマルチプレックス検出アッセイにおいて第1のPCRを実施し、その後、第2のPCRを実施する。このような実施形態では、第1のPCRは、第1のPCR産物を生成し得、その後、この第1のPCR産物は、連結のための第1のPCR産物を調製するために、第2のPCRによって修飾(modified)され得る。この実施形態では、第2のPCRがDNA分子のプールを生成する。すなわち、第2のPCRでは、後に組み合わされ、連結されるDNA分子が生成される。この実施形態では、第2のPCRは、上記のようなに、第1のPCRの産物に、連結ステップにおいて結合されるべき規定された末端配列を提供するために使用される。したがって、第1のPCR反応および第2のPCR反応の両方が、プールを組み合わせる前に実施される。
【0061】
特定の実施形態では、上記の検出アッセイおよびマルチプレックス検出アッセイは、近接プローブに基づく検出アッセイ、例えば、PLAまたはPEAである。代表的な実施形態では、各検出アッセイは、近接伸長アッセイ(PEA)である。同様に、各マルチプレックス検出アッセイは、近接伸長アッセイ(すなわち、マルチプレックス近接伸長アッセイ)であってもよい。
【0062】
近接伸長アッセイ(PEA)は上に簡潔に説明されている。上記のように、これらの技法の両方は、近接プローブの対の使用に依拠する。PEAは、参照により本明細書に組み込まれるWO 2012/104261において一般的に議論されている。
【0063】
近接プローブは、本明細書では、分析物に特異的な結合ドメイン(または代替的に「分析物特異的結合ドメイン(analyte-specific binding domain)」と表現される)および核酸ドメインを含む実体として定義される。「分析物に特異的(specific for an analyte)」または「分析物特異的(analyte-specific)」とは、分析物結合ドメインが、特定の標的分析物を直接または間接的に特異的に認識および結合すること、すなわち、他の分析物または部分への結合より高い親和性でその標的分析物に結合することを意味する。結合ドメインは、分析物に直接結合してもよい、すなわち、それに対する一次結合パートナーであってもよいし、分析物に間接的に結合してもよい、すなわち、それに対する二次結合パートナーであってもよい。後者の場合、結合ドメインは、分析物に対する一次結合パートナーに結合し得る。一実施形態では、結合ドメインは、抗体、または抗原結合ドメインを含む抗体の断片もしくは誘導体であり、特に、抗体は、モノクローナル抗体である。このような抗体の断片または誘導体の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびscFv分子が挙げられる。
【0064】
近接プローブの核酸ドメインは、DNAドメインまたはRNAドメインであり得る。好ましくは、DNAドメインである。各対における近接プローブの核酸ドメインは、典型的には、互いにまたは1つもしくは複数の共通のオリゴヌクレオチド分子(対の両方の近接プローブの核酸ドメインがハイブリダイズし得る)にハイブリダイズするように設計される。したがって、核酸ドメインは、少なくとも部分的に一本鎖でなければならない。特定の実施形態では、近接プローブの核酸ドメインは完全に一本鎖である。他の実施形態では、近接プローブの核酸ドメインは、部分的に一本鎖であり、一本鎖部分および二本鎖部分の両方を含む。
【0065】
近接プローブは、典型的には対で提供され、各対は、標的分析物に特異的である。これは、各近接プローブ対内で、両方のプローブが同じ分析物に特異的な結合ドメインを含むことを意味する。マルチプレックス検出アッセイでは、複数の異なるプローブ対が各検出アッセイで使用され、各プローブ対は、異なる分析物に特異的である。すなわち、各異なるプローブ対の分析物結合ドメインは、異なる標的分析物に特異的である。
【0066】
各近接プローブの核酸ドメインは、プローブが使用される方法に応じて設計される。近接伸長アッセイフォーマットの代表的な試料を
図1に概略的に示し、これらの実施形態については、以下に詳述する。一般に、近接伸長アッセイでは、一対の近接プローブがそれらの標的分析物に結合すると、2つのプローブの核酸ドメインが互いに近接して相互作用する(すなわち、互いに直接または間接的にハイブリダイズする)。2つの核酸ドメイン間の相互作用は、少なくとも1つの遊離3’末端を含む核酸二本鎖を生じる(すなわち、二本鎖内の核酸ドメインの少なくとも1つは、伸長することができる3’末端を有する)。アッセイミックス内での核酸ポリメラーゼ酵素の添加または活性化により、少なくとも1つの遊離3’末端が伸長される。したがって、二本鎖内の核酸ドメインの少なくとも1つは、その対をなす核酸ドメインを鋳型として使用して伸長される。得られた伸長産物は、本明細書で使用されるレポーター核酸分子であり、伸長産物が生成された近接プローブ対によって結合された分析物の存在を示すバーコード配列を含む。特に、レポーター分子のバーコード配列は、その対における各プローブの核酸ドメインからのバーコード配列を含み得る。すなわち、近接プローブ対の各核酸ドメインは、レポーター分子のバーコード配列に寄与し、つまり、部分的バーコード配列を含むと見られ得る。
【0067】
図1のバージョン1は、「従来の」近接伸長アッセイを示しており、ここでは、各近接プローブの核酸ドメイン(矢印で示される)は、一本鎖であり、その5’末端によって分析物結合ドメイン(反転した「Y」で示される)に結合され、それによって、2つの遊離3’末端を残す。上記近接プローブがそれらのそれぞれの分析物(分析物は図示されていない)に結合する場合、それらの3’末端で相補的であるプローブの核酸ドメインは、ハイブリダイゼーションによって相互作用すること、すなわち、二本鎖を形成することができる。アッセイ混合物中での核酸ポリメラーゼ酵素の添加または活性化により、他の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して各核酸ドメインを伸長することができる。得られた伸長産物は、レポーター核酸分子であり、これは、検出されることによって、プローブ対によって結合された分析物を検出する。
図1のバージョン2は、代替の近接伸長アッセイを示しており、ここでは、第1の近接プローブの核酸ドメインが、その5’末端によって分析物結合ドメインに結合され、第2の近接プローブの核酸ドメインが、その3’末端によって分析物結合ドメインに結合される。したがって、第2の近接プローブの核酸ドメインは、伸長することができない遊離5’末端(鈍い矢印で示される)を有する。第2の近接プローブの3’末端は、効果的に「ブロック」されており、すなわち、それは「遊離」ではなく、分析物結合ドメインにコンジュゲートされ、したがって、それによってブロックされるので、伸長することができない。バージョン1とは対照的に、第1の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’末端を有する)のみが、第2の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長され得、伸長産物(すなわち、レポーター核酸分子)を生じる。
図1のバージョン3では、バージョン2と同様に、第1の近接プローブの核酸ドメインが、その5’末端によって分析物結合ドメインに結合され、第2の近接プローブの核酸ドメインは、その3’末端によって分析物結合ドメインに結合される。したがって、第2の近接プローブの核酸ドメインは、伸長することができない遊離5’末端(鈍い矢印で示される)を有する。しかしながら、この実施形態では、それぞれの近接プローブの分析物結合ドメインに結合した核酸ドメインは、相補性の領域を有さず、したがって、二本鎖を直接形成することができない。代わりに、各近接プローブの核酸ドメインと相同な領域を有する第3の核酸分子が提供される。この第3の核酸分子は、核酸ドメイン間の「分子架橋(molecular bridge)」または「スプリント(splint)」として機能する。この「スプリント」オリゴヌクレオチドは、核酸ドメイン間のギャップを架橋し、それらが間接的に互いに相互作用することを可能にする。すなわち、各核酸ドメインがスプリントオリゴヌクレオチドと二本鎖を形成する。このようにして、近接プローブが分析物上のそれぞれの分析物結合標的に結合すると、プローブの核酸ドメインはそれぞれ、スプリントオリゴヌクレオチドと、ハイブリダイゼーションによって相互作用する、すなわち、二本鎖を形成する。したがって、第3の核酸分子またはスプリントは、近接プローブの1つに提供された部分的に二本鎖の核酸ドメインの第2の鎖とみなされ得ることが分かる。この実施形態では、第1の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’末端を有する)は、「スプリントオリゴヌクレオチド」(または、他の核酸ドメインの一本鎖3’末端領域)を鋳型として使用して伸長され得る。代替的または追加的に、スプリントオリゴヌクレオチドの遊離3’末端(すなわち、非結合鎖または3’一本鎖領域)は、第1の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長され得る。一実施形態では、スプリントオリゴヌクレオチドは、アッセイの別個の成分として提供され得る。言い換えると、それは、反応ミックスに別々に添加されてもよい(すなわち、分析物を含有する試料への近接プローブに別々に添加される)。それでもなお、それは、別々に付加されるにもかかわらず、部分的に二本鎖の核酸ドメインの鎖とみなされ得る。代替的に、スプリントは、近接プローブの核酸ドメインの1つにプレハイブリダイズされてもよく、すなわち、近接プローブを試料と接触させる前にハイブリダイズされてもよい。この実施形態では、スプリントオリゴヌクレオチドは、近接プローブの核酸ドメインの一部として直接見ることができる。したがって、本明細書で定義される近接プローブの核酸ドメインの伸長は、「スプリント」オリゴヌクレオチドの伸長も包含する。有利には、伸長産物がスプリントオリゴヌクレオチドの伸長から生じる場合、得られた伸長された核酸鎖は、核酸分子の2つの鎖間の相互作用によって(2つの核酸鎖間のハイブリダイゼーションによって)のみ近接プローブ対に結合される。したがって、これらの実施形態では、伸長産物は、変性条件、例えば、温度の上昇、塩濃度の低下などを使用して近接プローブ対から解離され得る。
図1のバージョン4は、バージョン1の修飾であり、第1の近接プローブの核酸ドメインは、その3’末端に、第2の近接プローブの核酸ドメインに完全には相補的でない配列を含む。したがって、上記近接プローブがそれらのそれぞれの分析物に結合する場合、プローブの核酸ドメインは、ハイブリダイゼーションによって相互作用すること、すなわち、二本鎖を形成することができるが、第1の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’ヒドロキシル基を含む核酸分子の部分)の3’最末端は、第2の近接プローブの核酸ドメインにハイブリダイズすることができず、したがって、一本鎖の、ハイブリダイズしていない「フラップ(flap)」として存在する。核酸ポリメラーゼ酵素の添加または活性化の際、第2の近接プローブの核酸ドメインのみが、第1の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長され得る。
図1のバージョン5は、バージョン3の修飾とみなすことができる。しかしながら、バージョン3とは対照的に、両方の近接プローブの核酸ドメインは、それらの5’末端によってそれらのそれぞれの分析物結合ドメインに結合している。この実施形態では、核酸ドメインの3’末端は相補的ではないので、近接プローブの核酸ドメインは、相互作用することも、直接二本鎖を形成することもできない。代わりに、第3の核酸分子、すなわち、上述した「スプリント」オリゴヌクレオチドが提供される。このようにして、近接プローブがそれらのそれぞれの分析物に結合すると、プローブの核酸ドメインはそれぞれ、スプリントオリゴヌクレオチドと、ハイブリダイゼーションによって相互作用する、すなわち、二本鎖を形成する。したがって、バージョン3によれば、第3の核酸分子またはスプリントは、近接プローブの1つに提供された部分的に二本鎖の核酸ドメインの第2の鎖とみなされ得ることが分かる。この実施形態では、第2の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’末端を有する)は、「スプリントオリゴヌクレオチド」を鋳型として使用して伸長され得る。代替的または追加的に、スプリントオリゴヌクレオチドの遊離3’末端(すなわち、非結合鎖または第1の近接プローブの3’一本鎖領域)は、第2の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長され得る。バージョン3に関連して上述したように、スプリントオリゴヌクレオチドがアッセイの別個の成分として提供されてもよく、またはスプリントが近接プローブの核酸ドメインの1つにプレハイブリダイズされてもよく、すなわち、近接プローブを試料と接触させる前にハイブリダイズされてもよい。したがって、この実施形態でも、上述したように、本明細書で定義される近接プローブの核酸ドメインの伸長は、「スプリント」オリゴヌクレオチドの伸長も包含する。
図1のバージョン3および5に示されるスプリントオリゴヌクレオチドは、第1の近接プローブの核酸ドメインの全長に相補的であるように示されているが、これは単なる例であり、スプリントが近接プローブの核酸ドメインの末端と(または末端付近に)二本鎖を形成することができる、すなわち、近接プローブの核酸ドメイン間に架橋を形成することができれば十分である。
図1のバージョン6は、特に関心のあるPEAのバージョンを表している。すなわち、本方法がPEAの文脈内で実施されるかまたはPEAを含む場合、特定の代表的な実施形態では、PEAは、
図1のバージョン6にしたがって実施される。示されるように、このバージョンでは、対の両方のプローブは、部分的に一本鎖の核酸分子にコンジュゲートされる。各プローブにおいて、短い核酸鎖は、その5’末端を介して分析物結合ドメインにコンジュゲートされる(ただし、鎖は、代わりに、その3’末端を介して分析物結合ドメインにコンジュゲートされ得る)。分析物結合ドメインにコンジュゲートされる短い核酸鎖は、互いにハイブリダイズしない。むしろ、各短い核酸鎖は、その3’末端に一本鎖オーバーハングを有するより長い核酸鎖にハイブリダイズされる(すなわち、より長い核酸鎖の3’末端は、分析物結合ドメインにコンジュゲートされたより短い鎖の5’末端を超えて伸長する)。2つのより長い核酸鎖のオーバーハングは、互いにハイブリダイズして、二本鎖を形成する。2つのより長い核酸分子の3’末端が互いに完全にハイブリダイズする場合、示されるように、二本鎖は、2つの遊離3’末端を含むが、より長い核酸分子の3’末端は、バージョン4のように設計され得ので、より長い核酸分子のうちの一方の3’最末端は、他方に相補的ではなく、フラップを形成し、これは、二本鎖が1つの遊離3’末端のみを含むことを意味する。互いに相互作用する2つのより長い核酸分子は、分析物結合ドメインに直接コンジュゲートされた2つの短いオリゴヌクレオチドの間に一緒になって架橋を形成するという点で、スプリントオリゴヌクレオチドとして見られ得る。核酸ポリメラーゼの添加または活性化により、スプリントオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の遊離3’末端が伸長される。特に、いずれかのスプリントオリゴヌクレオチドの伸長は、他方のスプリントオリゴヌクレオチドを鋳型として使用する。したがって、一方のスプリントオリゴヌクレオチドが伸長される場合、他方の「鋳型」スプリントオリゴヌクレオチドは、分析物結合ドメインにコンジュゲートされるより短い鎖から置換される。特定の実施形態では、分析物結合ドメインに直接コンジュゲートされる短い核酸鎖は、「ユニバーサル鎖(universal strand)」である。すなわち、同じ鎖が、マルチプレックス検出アッセイで使用されるすべての近接プローブに直接コンジュゲートされる。したがって、各スプリントオリゴヌクレオチドは、ユニバーサル鎖にハイブリダイズする配列からなる「ユニバーサル部位(universal site)」と、プローブに固有のバーコード配列を含む「固有部位(unique site)」とを含む。この実施形態では、ユニバーサル部位は各スプリントオリゴヌクレオチドの5’末端に位置し、固有部位は3’末端に位置する。そのような近接プローブ、およびそれらの作製方法は、WO 2017/068116に記載されている。
【0068】
すべての近接検出アッセイ技法において、特定の実施形態では、各個々の近接プローブの核酸ドメインは、(PEAバージョン6について上述したような)特定のプローブを同定する固有のバーコード配列を含む。この場合、レポーター核酸分子(近接伸長アッセイの文脈では伸長産物である)は、各近接プローブの固有のバーコード配列を含む。したがって、これらの2つの固有のバーコード配列は一緒になって、レポーター核酸分子のバーコード配列を形成する。言い換えると、レポーター核酸分子バーコード配列は、組み合わされてレポーター核酸分子を生成した近接プローブからの2つのプローブバーコード配列の組み合わせを含む。このように、特定のレポーター配列の検出は、2つのプローブバーコード配列の特定の組み合わせを検出することによって達成される。この点において、上記のように、個々の近接プローブのバーコード配列は、レポーター分子の部分的なバーコード配列として見られ得る。
【0069】
上で詳述したように、近接伸長アッセイは、プローブがそれらの標的に結合した直後に行われる伸長ステップを含む。伸長ステップは、アッセイにおいて生成されるレポーター核酸分子の最初のコピーを形成する。伸長ステップは、核酸ポリメラーゼを使用して行われる。伸長ステップに続いて、伸長ステップで生成されたレポーター核酸分子を増幅するために、増幅ステップが行われ得る。増幅ステップは、一般に、PCRによって行われる。
【0070】
一実施形態では、PEAは、PEAの伸長ステップと増幅ステップの両方を含む単一のPCRを含む。すなわち、PEAは、レポーターDNA分子を生成する伸長ステップと、レポーターDNA分子が増幅される増幅ステップとを含み得、伸長ステップおよび増幅ステップが単一のPCR内で行われる。この実施形態では、(通常PCRの場合のように)変性ステップから開始するのではなく、反応は伸長ステップから開始し、その間にレポーター核酸分子が生成される。その後、レポーター核酸分子を増幅するために、標準的なPCRを実施し、レポーター分子の変性から開始する。上で詳述したように、一実施形態では、すべてのレポーターDNA分子は、5’ユニバーサル部位および3’固有部位を含む核酸ドメインを含む近接プローブを使用して生成される。これは、この実施形態では、すべてのレポーターDNA分子が、中央のバーコード配列に隣接するユニバーサル末端配列を有することを意味する。一実施形態では、2つのユニバーサル末端配列は異なり、すなわち、各レポーターDNA分子は、一方の末端に第1のユニバーサル末端配列を含み、他方の末端に第2のユニバーサル末端配列を含む。このようにして、レポーターDNA分子のユニバーサル末端配列にハイブリダイズし、したがって、すべてのレポーターDNA分子を増幅するように機能するプライマーの単一の共通セットを用いて増幅反応を行うことができる。すべてのプールで、増幅ステップ(すなわち、第1のPCR)にユニバーサル(共通)プライマーの同じセットを使用することができる。
【0071】
このように、一実施形態では、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、以下を含む方法が提供される:
(i)複数の別個のマルチプレックス近接伸長アッセイを実施するステップであって、各マルチプレックス近接伸長アッセイが、試料中の複数の分析物を検出し、各マルチプレックス検出アッセイが、レポーターDNA分子のプールを生成し、それぞれが特定の分析物に特異的である、ステップ;
ここで、各近接伸長アッセイが第1のPCRを含み、第1のPCRが、レポーターDNA分子が生成される伸長ステップと、レポーターDNA分子が増幅される増幅ステップとを含む;
(ii)各プールにおいて、第2のPCRを実施するステップであって、レポーターDNA分子が、連結ステップにおいて結合され得る規定された末端配列の付加によって修飾され、同じプール中のレポーターDNA分子はすべて同じ末端配列を有し、異なるプールは異なる末端配列を有し、1つのプールからのレポーターDNA分子が1つまたは2つの所定の異なるプールからのレポーターDNA分子にのみ結合され得るようにする、ステップ;
(iii)プールを組み合わせるステップ;
(iv)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーが、コンカテマー内の各レポーターDNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のレポーターDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなレポーターDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;および
(v)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからレポーターDNA配列を検出するステップであって、各プールからのレポーターDNA配列が、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられ、それによって、該または各試料中の分析物を検出する、ステップ。
【0072】
上記のように、レポーターDNA分子は、ユニバーサル(共通)末端配列を用いて生成され得る。したがって、各第2のPCRは、すべてのレポーターDNA分子にハイブリダイズして増幅することができる単一の対のユニバーサルプライマーを用いて実施することができる。しかしながら、単一のプライマー対をすべてのプールで使用することができる第1のPCRとは異なり、第2のPCRでは、異なるプライマー対を、各別個のプールで使用し、各プライマー対は、同じ3’のハイブリダイゼーション部位と、5’の規定された末端配列の異なる対とを含む。
【0073】
特定の実施形態では、複数のマルチプレックスPEAを実施して、同じ試料中の分析物の異なるセットを検出する。このように、複数のマルチプレックスPEAが単一の試料に対して実施され、各PEAは、近接プローブ対の異なるパネルを使用する。近接プローブ対の各パネルは、近接プローブ対の異なるセットを含む。すなわち、各パネル中の近接プローブ対は、分析物の異なるセットに結合する。一般に、各パネル中の近接プローブ対は、分析物の完全に異なるセットに結合し、すなわち、異なるパネル中の近接プローブ対によって結合される分析物には重複がない。このように、近接プローブの各パネルは、異なる群の分析物を検出するためのものであることが分かる。
【0074】
上記のように、近接プローブの各パネルは、近接プローブ対の異なるセットを含む。各個々のパネル内で、すべてのプローブは、異なる核酸ドメインを含む(すなわち、すべてのプローブは、異なる配列を有する核酸ドメインを含む)。このように、すべてのプローブ対は、核酸ドメインの異なる対を含み、そのため、固有のレポーターDNA分子が、パネル内の各プローブ対について生成される。しかしながら、同じ核酸ドメイン(および概ね同じ核酸ドメインの対)が、各異なるパネル中のプローブ対において使用される。すなわち、異なるパネルにおいて、プローブ対は、核酸ドメインの同じ対を含む。これは、同じレポーターDNA分子がすべてのパネルで生成されることを意味する。しかしながら、レポーターDNA分子は、異なるプローブ対を使用して各パネルによって生成されるので、同じレポーターDNA分子は、プローブの各パネルに異なる分析物が存在することを示す。
【0075】
マルチプレックスPEAの各々に対して近接プローブ対の異なるパネルが使用されるので、レポーターDNA分子の各プールは、近接プローブ対の1つのパネルから形成される。したがって、連結後、すべてのレポーターDNA配列は、試料中に特定の分析物が存在することを示すことが知られている。コンカテマー配列決定の際、コンカテマー内の各レポーターDNA配列の位置は、その配列が試料内に存在することを示す分析物に関する情報を提供する。
【0076】
したがって、この実施形態は、直前に記載した方法であって、複数のマルチプレックス近接伸長アッセイが同じ試料に対して実施される、方法を提供すると見ることができ;
ここで、各近接伸長アッセイが、近接プローブの対を使用して分析物を検出することを含み、各近接プローブが、以下を含む:
(i)分析物に特異的な分析物結合ドメイン;および
(ii)核酸ドメイン、
ここで、各対内の両方のプローブが、同じ分析物に特異的な分析物結合ドメインを含み、各プローブ対が、異なる分析物に特異的であり、各プローブ対は、近接プローブの対がそれらのそれぞれの分析物に近接結合すると、近接プローブの核酸ドメインが相互作用してレポーターDNA分子を生成するように設計され、
近接プローブ対の少なくとも2つのパネルが使用され、各パネルは、分析物の異なる群を検出するためのものであり、各マルチプレックス近接伸長アッセイは、近接プローブ対の1つのパネルを使用し、
(a)各パネル内では、すべてのプローブ対が、核酸ドメインの異なる対を含み、(b)異なるパネルでは、プローブ対が、核酸ドメインの同じ対を含み、
近接プローブ対の各パネルの産物がプールを形成する。
【0077】
相互作用してレポーターDNA分子を生成する近接プローブの核酸ドメインへの言及は、近接プローブの核酸ドメインが互いにハイブリダイズして、伸長反応のための1つまたは複数の鋳型を形成することができるようにすることを意味する。次いで、まずレポーターDNA分子を生成するための伸長ステップ、続いてレポーターDNA分子の増幅のための増幅ステップを含むPCRを実施する。
【0078】
代替の実施形態では、複数のマルチプレックスPEAを実施して、複数の異なる試料中の分析物の同じセットを検出する。この実施形態では、各PEAは、近接プローブ対の同じセット(すなわち、パネル)を利用し、各PEAは、異なる試料に対して実施される。上記のように、各PEAはレポーターDNA分子のプールを生成し、その後、連結されて配列決定される。近接プローブ対の同じパネルが各PEAで使用されるので、各レポーターDNA配列は、特定の分析物(これは、すべてのプールにわたって同じである)を示すことが知られている。このように、コンカテマー配列決定の際、コンカテマー内の各レポーターDNA配列の位置は、示された分析物がどの試料中に存在するかに関する情報を提供する。
【0079】
上でも詳述したように、別の代替の実施形態では、複数のマルチプレックスPEAを実施して、複数の異なる試料中の分析物の複数のセットを検出する。例えば、2つの異なる試料中で2セットの分析物が検出され得、合計4つのマルチプレックスPEA反応を必要とする。上で詳述したように、2つのセットの分析物の各々は、近接プローブ対の異なるパネルを使用して検出されるので、2つの試料の各々の分析には2つのセットの近接プローブ対が必要とされる。この実施形態では、連結および配列決定の後、コンカテマー中の各レポーターDNA配列の位置は、示された分析物(レポーター分子が生成された近接プローブ対のパネルに依存する)および分析物が存在した試料の両方に関する情報を提供する。
【0080】
上で詳述したように、連結は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して実施することができる。特定の好ましい実施形態では、連結は、USERアセンブリによって実施される。USERアセンブリの基本原理は、数年前から知られており、Geu-Flores et al., Nucleic Acids Research 35(7): e55, 2007に記載されており、改良されたプロトコルは、Lund et al., PLoS ONE 9(5): e96693, 2014に記載されている。いずれの文献も、参照により組み込まれる。USERは、ウラシル特異的切除試薬(uracil-specific excision reagent)を表し、制限酵素の使用を全く必要としない複数のDNA断片の指向性アセンブリの手段である。
【0081】
USERアセンブリにおいて、アセンブルされるべきDNA断片には、それらの末端に(または少なくとも、アセンブリ反応において別のDNA断片に融合されるべきいずれかの末端(複数可)に)二本鎖伸長が提供される。伸長配列は、固有のアセンブリ部位を含む。各二本鎖伸長は、少なくとも1つの(好ましくは複数の)ウラシル残基を含む第1の鎖を有し、第2の鎖は、標準的なDNA塩基のみを含有する(第1の鎖中のウラシル残基は、第2の鎖中のアデニン残基と対になっている)。融合されることとなるDNA断片において、ウラシル残基を含まない伸長の鎖におけるアセンブリ部位配列は、相補的である。一般に、伸長は、ウラシルヌクレオチド(複数可)を含む5’アセンブリ部位を含むプライマーを使用してPCRによってアセンブルされるべきDNA断片に提供される。したがって、各伸長において、ウラシル残基は、一般に5’鎖(すなわち、伸長の末端にその5’末端を有する鎖)にある。
【0082】
DNA断片のアセンブリは、USER酵素ミックス(ウラシルDNAグリコシダーゼ(UDG)およびDNAグリコシラーゼ-リアーゼエンドVIII(EndoVIII))の適用によって実施される。UDGは、ウラシル塩基部分とデオキシリボ糖部分(deoxyribosy sugar moiety)との間のウラシルヌクレオチド内のグリコシド結合を切断し、ヌクレオチドからウラシル塩基の喪失を引き起こし、脱塩基部位を形成する。EndoVIIIは、UDGによって作製された脱塩基部位を認識し、脱塩基部位の3’および5’のホスホジエステル結合を切断して、その位置でDNA中にニックを作製する。USER酵素ミックスによるウラシルヌクレオチドの切除により、DNA鎖の二重らせんが不安定になり、ニックの入った鎖からニックの上流の短い配列が喪失され、その結果、一本鎖3’オーバーハングとなる。ウラシル切除後にDNA分子を加熱すると、不安定化が促進され、オーバーハング形成を改善することができる。同様に、アセンブリ部位に複数のウラシル残基を含めると、DNAに複数のニックが形成され、不安定化が促進される。
【0083】
一本鎖3’オーバーハングの生成後、融合されることとなるDNA断片の相補的なオーバーハングは互いにハイブリダイズし、(DNAリガーゼを使用して)一緒にライゲーションされる。
【0084】
本方法では、アセンブリ部位は、PCRによってDNA分子(例えば、レポーターDNA分子)に付加される。PCRは、3’ハイブリダイゼーション部位(標的DNA分子にハイブリダイズする)および5’アセンブリ部位を含むプライマーを使用して実施される。このようなプライマーは、本明細書ではアセンブリプライマーと称される。プライマーの5’アセンブリ部位は、規定された末端配列を提供する。これは、プライマーの「プール特異的」部分とみなされ得る。3’ハイブリダイゼーション部位は、アセンブリプライマーの「ユニバーサル」部分とみなされ得、任意のプールに由来するDNA分子に結合され得る。プライマー中の5’アセンブリ部位はそれぞれ、少なくとも1つのウラシル残基、好ましくは複数のウラシル残基を含む。例えば、各アセンブリ部位は、少なくとも2つのウラシル残基、より好ましくは少なくとも3つのウラシル残基を含み得る。アセンブリ部位が複数のウラシル残基を含む場合、ウラシル残基は、互いに隣り合っていてもよいし、他の非ウラシル残基によって分離されて、アセンブリ部位にわたって広がっていてもよい。1つのウラシル残基は、USERミックスの適用後、生成された3’オーバーハングがアセンブリ部位全体を含むように、アセンブリ部位の3’末端に位置する必要がある。
【0085】
このように、アセンブリプライマーを使用してDNA分子の各プールに対してPCRが実施される。上記の教示と一致して、各プールで使用されるアセンブリプライマーは、多くても単一の対のアセンブリ部位を含み、すなわち、各プールにおいて、1つの順方向プライマー(または複数)は、第1のアセンブリ部位を含み、1つの逆方向プライマー(または複数)は、第2の異なるアセンブリ部位を含む。特に、各プール内のすべてのDNA分子は、単一の対のアセンブリプライマーを使用して各プール中のすべてのDNA分子を増幅することができるように、一対の共通プライマー結合部位を含む。コンカテマーの末端を形成することが意図されるDNA分子のプールに対して実施されるPCRは、コンカテマーの末端にさらなるアセンブリ部位が所望されるかどうかに応じて、1つのアセンブリプライマーおよび1つの標準プライマー(すなわち、アセンブリ部位を含まない)を含むプライマー対を使用して実施され得る。特に、DNA分子のすべてのプールは、一対のアセンブリプライマーを利用するPCRに供される。
【0086】
上記の教示に沿って、異なるアセンブリ部位が、各異なるプールにおいて実施されるPCRに使用されるプライマーにおいて提供される。しかしながら、互いに結合されることが意図されるプール中のDNA分子に対して相補的なアセンブリ部位が提供されるので、プールが組み合わせられる際、互いに結合されることが意図されるDNA分子が、それらのアセンブリ部位を介して互いにハイブリダイズし、次いで一緒にライゲーションされ、したがってコンカテマーを形成する。
【0087】
アセンブリプライマーを使用するPCRの間、アセンブリ部位の増幅は、アセンブリプライマーからのウラシル残基と対になったアデニン残基を有する標準的なDNAヌクレオチドを使用して進行する。このように、PCRは、両方の末端にアセンブリ部位を含むDNA産物を生成し(ただし、潜在的に、コンカテマーの末端を形成することが意図されるDNA分子の場合、上記のように、一方の末端にのみアセンブリ部位を有し得る)、各鎖の5’末端のアセンブリ部位(アセンブリプライマーに由来する)は、少なくとも1つのウラシル残基を含むが、鎖の3’末端の相補的なアセンブリ部位は、標準的なDNA塩基のみを含む。このように、得られたDNA産物をUSER酵素ミックスで処理すると、各鎖に3’オーバーハングを有するDNA産物が得られ、これは、次いで、他のプールのDNA分子中の相補的な3’オーバーハングにハイブリダイズし得る。
【0088】
代替の実施形態では、連結は、Gibsonアセンブリによって行われる。Gibsonアセンブリは、Gibson et al., Nature Methods 6: 343-345, 2009およびGibson et al., Science 329: 52-56, 2010(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。USERアセンブリと同様に、DNA断片のGibsonアセンブリは、重複する末端を有するDNA断片を生成することによって実施される。一般に、断片は、結合されることとなるDNA断片の重複する末端を形成する5’アセンブリ部位を含むアセンブリプライマーを使用してPCRを実施することによって生成される。DNA断片を混合し、DNAエキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼおよびDNAリガーゼを含有するGibson酵素ミックスを適用する。エキソヌクレアーゼは、各断片の5’末端からDNAを分解し、各断片の末端に3’オーバーハングを生じさせる。オーバーハングは互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーション後のDNA鎖間の任意のギャップはDNAポリメラーゼによって埋められる。その後、DNAリガーゼによって鎖が結合される。
【0089】
このように、Gibsonアセンブリ技法およびUSERアセンブリ技法には違いがあるが、いずれも、アセンブリされるべきDNA分子の末端にあるアセンブリ部位を利用し、これは一般に、アセンブリプライマーを使用するPCRによってDNA分子に導入される。どちらの場合も、3’オーバーハングがDNA分子の末端に生成され、DNA分子は、それらに結合されることとなる他のDNA分子の相補的な3’オーバーハングにハイブリダイズする。
【0090】
したがって、特定の実施形態では、本方法は、アセンブリプライマーを使用して各プールに対してPCRを実施するステップを含み、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位(または「プール特異的」部分)を含み、各プール中のすべてのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする;
連結ステップにおいて、各プールのPCR産物は、相補的なアセンブリ部位を有する異なるプールのPCR産物に結合され、それによってコンカテマーを生成する。
【0091】
すなわち、複数のプールからDNA配列を検出する方法であって、各プールは複数種のDNA分子を含み、以下を含む方法が本明細書で提供される:
(i)アセンブリプライマー対を使用して各プールに対してPCRを実施するステップであって、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位を含み、各プール中のすべてのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする、ステップ;
ここで、アセンブリ部位は、USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによるPCR産物の結合に適している;
(ii)プールを組み合わせるステップ;
(iii)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成され、各プールのPCR産物は、相補的なアセンブリ部位を有する異なるプールのPCR産物に結合される、ステップ;
ここで、コンカテマーは、USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによって生成される;および
(iv)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられる、ステップ。
【0092】
上記のように、この実施形態では、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅される。すなわち、各プールにおけるPCR反応は、1つの順方向プライマーおよび1つの逆方向プライマーを利用する。これは、各プール中のすべてのDNA分子が、プライマーの単一のセットを使用して各プール中のすべてのDNA分子を増幅することができるように、共通プライマー結合部位を含むことを意味する。特定の実施形態では、すべてのプールにわたるすべてのDNA分子は、本方法で使用されるすべてのプライマーが同じハイブリダイゼーション部位(または「ユニバーサル」部分)を含み、それらのアセンブリ部位によってのみ異なるように、同じ共通プライマー結合部位を含む。
【0093】
アセンブリプライマー対は、少なくとも1つのアセンブリプライマーを含む。上で詳述したように、アセンブリプライマーは、3’ハイブリダイゼーション部位(「ユニバーサル」部位)および5’アセンブリ部位(「プール特異的」部分)を含む。いくつかまたはすべてのアセンブリプライマー対では、両方のプライマーがアセンブリプライマーであり、すなわち、対における両方のプライマーが5’アセンブリ部位を含み得る。しかしながら、上で詳述したように、コンカテマーの末端を形成するプール中のDNA分子を増幅するために使用されるアセンブリプライマー対において、コンカテマーの関連する末端にアセンブリ部位が所望されるか否かに依存して、アセンブリプライマー対における2つのプライマーのうちの1つのみが、アセンブリプライマーでなければならない(すなわち、アセンブリ部位を含まなければならない)。しかしながら、特定の実施形態では、すべてのアセンブリプライマー対は、2つのアセンブリプライマーを含み、すなわち、対の両方のプライマーがアセンブリ部位を含む。その結果、形成されたコンカテマーの末端には、さらなるアセンブリを行うためのアセンブリ部位が存在することになる。
【0094】
各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅されるので、各プール中で生成されたすべてのPCR産物は同じアセンブリ部位(複数可)を含む。
【0095】
詳述したように、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用される。この点において「異なる」とは、2つ以上の異なるプールにおいて特異的プライマーが使用されないことを意味する。すべての増幅反応にわたって使用されるすべてのプライマーは、1つのプールのみで使用されるので、任意の所与のプールにおける増幅のために使用される2つのプライマーは、他のプールのいずれかにおける増幅に使用される任意のプライマーに対して固有かつ異なる(すなわち、任意のプライマーに対して異なる配列を有する)。
【0096】
本明細書で使用される「プライマーの種(species of primer)」は、固有の配列のプライマーを指す(したがって、「アセンブリプライマーの種(species of assembly primer)」は、特定の配列のアセンブリプライマーを指す)。このように、各PCRは、2種のプライマーを利用し、上記のように、各PCRで使用される2種のプライマーは固有であり、プライマーのそれぞれの種は、1つのプールに対して実施される単一のPCRでのみ使用される。上記のように、特定の実施形態では、プライマーハイブリダイゼーション配列は、すべてのプールにわたって共有されるので、すべてのプールにわたって使用される所与の配向(すなわち、「順方向」または「逆方向」)のプライマーのすべての種が同じハイブリダイゼーション部位を有する。しかしながら、上記のように、アセンブリプライマーのすべての種は、固有のアセンブリ部位を含む。本明細書で使用される「アセンブリ部位(assembly site)」は、(特定のプールからの)特定のDNA分子が(予め定められた他のプールからの)別のDNA分子にハイブリダイズするために使用される配列として規定される。本実施形態にあるように、アセンブリ部位がPCRによってDNA分子に導入される場合、アセンブリ部位は、プライマーの5’末端に位置し、ハイブリダイゼーション部位と重複しない。特に、DNA分子が、検出アッセイにおいて生成されたレポーターDNA分子である場合、アセンブリ部位は、レポーターDNA分子が最初に生成されるときにはレポーターDNA分子中に存在せず、PCRステップにおいてのみ導入される。特に、アセンブリ部位は、レポーターDNA分子バーコード配列の一部を形成しない。アセンブリ部位は、部位を導入するために使用されるアセンブリプライマーの5’末端に位置するので、得られるPCR産物では、アセンブリ部位は、末端に位置する。
【0097】
プールにわたって使用されるアセンブリプライマーのそれぞれの種は、固有のアセンブリ部位を含む。すなわち、同じアセンブリ部位配列を含むアセンブリプライマーの種が二つとないように、アセンブリプライマーのそれぞれの種は、固有の配列を有するアセンブリ部位を含む。これは、当然ながら、各プールからのDNA分子がコンカテマー内の定められた位置に位置付けられるためには不可欠である。しかしながら、同じアセンブリ部位配列を含むアセンブリプライマーの種は二つとしてないが、上述したように、アセンブリ部位の相補的な対がプールにわたって使用される。そのため、相補的なアセンブリ部位を含むPCR産物は、互いにハイブリダイズして結合することができる。このように、プールにわたるPCR内で使用されるすべてのアセンブリ部位は、対になった相補的なアセンブリ部位を有する。相補的なアセンブリ部位の対は、異なるプールに対するPCRで使用され、すなわち、特定のプールに対して実施される単一のPCRでは、相補的なアセンブリ部位を有するプライマーを使用することはない。これは、PCR産物を環状化させ得るもので、連結に適切ではなくならせる可能性がある。
【0098】
したがって、上記で説明したように、各PCRは、得られるPCR産物がそれぞれ、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むように、異なるアセンブリプライマー対を用いて実施される。「予め定められた(pre-defined)」とは、所与のプール中のDNA分子の特定の末端に付加されるべきアセンブリ部位が選択され、したがってPCRが実施される前に既知であることを意味する。固有の予め定められたアセンブリ部位が、各プール中のDNA分子に付加されるので、相補的なアセンブリ部位は、それらが互いにハイブリダイズして結合されるように、異なるプール中のDNA分子の末端に意図的に付加され得る。そのため、異なるプールからのDNA分子が連結反応の間に結合される順序は、プールにわたる相補的なアセンブリ部位の配置に基づいて、予め定められている。このように、各プールのPCR産物は、連結ステップの間に、予め定められた異なるプールのPCR産物に結合され、どの異なるプールが相補的なアセンブリ部位を有するPCR産物を含むかによって決定される。
【0099】
上記のように、連結は、特に、USERアセンブリによって実施され得る。USERアセンブリが連結に使用される場合、特に、アセンブリプライマーのすべての種にわたる各アセンブリ部位は、複数のウラシル残基を含み、より具体的には、すべてのアセンブリ部位が、少なくとも3つのウラシル残基を含む。
【0100】
上で詳述したように、各プール中のDNA分子にアセンブリ部位を導入するためにPCRを実施した後、PCR産物を酵素(または酵素混合物)で処理して、連結に必要な3’オーバーハングを生成する。USERアセンブリが連結に使用される場合、3’オーバーハングは、USER酵素ミックス(UDGおよびEndoVIII)を用いて生成され、Gibsonアセンブリが使用される場合、3’オーバーハングは、エキソヌクレアーゼを用いて生成される。3’オーバーハングを生成するこのステップは、プールを組み合わせる前または後に実施することができる。
【0101】
一実施形態では、3’オーバーハングは、プールを組み合わせる前に生成される。この実施形態では、アセンブリプライマーを用いてPCRが各プールに対して実施される。PCRに続いて、産物を適切な酵素または酵素ミックス(連結に使用される方法に応じて)で処理して、3’オーバーハングを生成する。次いで、様々なプールからのDNA分子がそれらの相補的な3’オーバーハングを介して互いにハイブリダイズすることができるように、プールを組み合わせる。次いで、ハイブリダイズしたDNA分子は、コンカテマーを形成するために互いに結合され、この結合は、適切な酵素または酵素ミックス(連結のために使用される方法に応じて)を使用して実施される:USERアセンブリが連結に使用される場合、ハイブリダイズしたDNA分子は、DNAリガーゼ単独によって結合される;Gibsonアセンブリが連結に使用される場合、ハイブリダイズしたDNA分子は、DNAポリメラーゼ(鎖間の任意のギャップを埋めるため)およびDNAリガーゼの組み合わせによって結合される。
【0102】
このように、この実施形態では、複数のプールからDNA配列を検出する方法であって、各プールは複数種のDNA分子を含み、以下を含む方法が提供される:
(i)アセンブリプライマー対を使用して各プールに対してPCRを実施するステップであって、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位を含み、各プール中のすべてのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする、ステップ;
ここで、アセンブリ部位は、USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによるPCR産物の結合に適している;
(ii)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによって、プールからのPCR産物を直鎖状コンカテマーにアセンブルするステップであって、以下を含むアセンブリステップ:
(a)各プール中のPCR産物を処理して、アセンブリ部位を含む3’オーバーハングを生成するステップ;
(b)プールを組み合わせるステップ;および
(c)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成され、各プールのPCR産物が、相補的な3’オーバーハングを有する異なるプールのPCR産物に結合される、ステップ;
(iii)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられる、ステップ。
【0103】
代替的に、上記のように、PCR産物中の3’オーバーハングは、PCR産物の組み合わせ後に生成することができる。この場合、すべての必要なアセンブリ酵素(すなわち、USERミックス+DNAリガーゼ、すなわちGibsonミックス)を、組み合わせたPCR産物に一緒に添加することができる。
【0104】
上記のように、特定の実施形態では、結合されるべきDNA分子は、1つまたは複数の試料中の分析物を検出するために実施されるPEAにおいて生成されるレポーターDNA分子である。したがって、特定の実施形態では、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、以下を含む方法が本明細書で提供される:
(i)複数のマルチプレックス近接伸長アッセイを実施し、それによって、レポーターDNA分子の複数のプールを生成するステップであって、各プール中のレポーターDNA分子が、それらの3’末端および5’末端にユニバーサルプライマー結合部位を含む、ステップ;
(ii)アセンブリプライマー対を使用して各プールに対してPCRを実施するステップであって、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位を含み、各プール中のすべてのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする、ステップ;
ここで、アセンブリ部位は、各プールからのPCR産物を1つまたは2つの異なるプールからのPCR産物に結合することができるように、USERアセンブリに適している;
(iii)USERアセンブリによって、プールからのPCR産物を直鎖状コンカテマーにアセンブルするステップであって、以下を含むアセンブリステップ:
(a)各プール中のPCR産物を処理して、アセンブリ部位を含む3’オーバーハングを生成するステップ;
(b)プールを組み合わせるステップ;および
(c)予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成され、各プールのPCR産物が、相補的な3’オーバーハングを有する異なるプールのPCR産物に結合される、ステップ;
(iv)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられ、それによって、該または各試料中の分析物を検出する、ステップ。
【0105】
より一般的には、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、以下を含む方法が提供される:
(i)複数のマルチプレックス近接伸長アッセイを実施し、それによって、レポーターDNA分子の複数のプールを生成するステップであって、各プール中のレポーターDNA分子が、それらの3’末端および5’末端にユニバーサルプライマー結合部位を含む、ステップ;
(ii)USERアセンブリのためのアセンブリ部位を含むアセンブリプライマーを使用して各プールに対してPCRを実施するステップ;
(iii)各プールのPCR産物を組み合わせ、USERアセンブリによって、予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;および
(iv)コンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられ、それによって、該または各試料中の分析物を検出する、ステップ。
【0106】
上で詳述したように、生成された後、コンカテマーを配列決定する。簡便には、このステップでは、ハイスループットDNA配列決定の形態が使用され得る。合成による配列決定は、本明細書において提供される方法で使用され得るDNA配列決定法の一例である。合成技法による配列決定の例としては、パイロシークエンシング、可逆的ダイターミネーターシーケンシングおよびイオントレントシーケンシングが挙げられ、これらのうちのいずれかが、本方法で利用され得る。一実施形態では、コンカテマーは、超並列DNAシーケンシング(massively parallel DNA sequencing)を使用して配列決定される。超並列DNAシーケンシングは、特に、合成による配列決定(例えば、前述のように、可逆的ダイターミネーターシーケンシング、パイロシークエンシングまたはイオントレントシーケンシング)に適用され得る。可逆的ダイターミネーター法を使用する超並列DNAシーケンシングは、本明細書において提供される方法で使用するための便利な配列決定法である。可逆的ダイターミネーター法を使用する超並列DNAシーケンシングは、例えば、Illumina(登録商標)のNovaSeq(登録商標)システムを使用して実施され得る。
【0107】
当技術分野で知られているように、超並列DNAシーケンシングは、複数(例えば、数千または数百万またはそれ以上)のDNA鎖が、並行して、すなわち、同時に配列決定される技法である。超並列DNAシーケンシングは、標的DNA分子が、固体表面、例えば、フローセルの表面またはビーズに固定化されることを必要とする。次いで、固定化された各DNA分子が、個々に配列決定される。一般に、可逆的ダイターミネーターシーケンシングを使用する超並列DNAシーケンシングは、固定化表面としてフローセルを利用し、パイロシークエンシングまたはイオントレントシーケンシングを使用する超並列DNAシーケンシングは、固定化表面としてビーズを利用する。
【0108】
当業者に知られているように、超並列シーケンシングの文脈での表面へのDNA分子の固定化は、一般に、1つまたは複数の配列決定アダプターを分子の末端に付加することによって達成される。そのため、本方法は、配列決定のための1つまたは複数のアダプター(配列決定アダプター)をコンカテマーに付加することを含み得る。
【0109】
一般に、配列決定アダプターは核酸分子(特にDNA分子)である。この事例では、アダプター配列に相補的な短いオリゴヌクレオチドを固定化表面(例えば、ビーズまたはフローセルの表面)にコンジュゲートさせて、アダプター配列を介して、標的DNA分子が表面にアニーリングすることを可能にする。代替的に、結合パートナーの任意の他の対が、標的DNA分子を固定化表面にコンジュゲートするために使用されてもよい(例えば、ビオチンおよびアビジン/ストレプトアビジン)。この場合、ビオチンが配列決定アダプターとして使用され得、アビジンまたはストレプトアビジンを固定化表面にコンジュゲートさせてビオチン配列決定アダプターに結合させることができ、またはその逆も可能である。
【0110】
そのため、配列決定アダプターは、一般的に10~30ヌクレオチド長(例えば、15~25または20~25ヌクレオチド長)の短いオリゴヌクレオチド(好ましくはDNA)であり得る。上で詳述したように、配列決定アダプターの目的は、固定化表面への標的DNA分子のアニーリングを可能にすることであり、したがって、核酸配列決定アダプターのヌクレオチド配列は、固定化表面にコンジュゲートされたその結合パートナーの配列によって決定される。これとは別に、核酸配列決定アダプターのヌクレオチド配列に対する特定の制約はない。
【0111】
配列決定アダプターは、以下にさらに詳述されるように、PCR増幅中にコンカテマーに付加され得る。核酸配列決定アダプターの場合、これは、一方または両方のプライマー内に配列決定アダプターヌクレオチドを含めることによって達成することができる。代替的に、配列決定アダプターが非核酸配列決定アダプター(例えば、タンパク質/ペプチドまたは小分子)である場合、アダプターは、一方または両方のPCRプライマーにコンジュゲートされ得る。代替的に、配列決定アダプターは、配列決定アダプターをコンカテマーに直接ライゲーションまたはコンジュゲートすることによってコンカテマーに付加されてもよい。特定の実施形態では、配列決定アダプターは、連結プロセスの間に、コンカテマーの両方の末端に付加される。すなわち、アセンブリ部位は、上記のように、配列決定アダプターのそれぞれに付加され、DNA分子のプールと組み合わされ、上記のようにコンカテマーにアセンブルされ得る(配列決定アダプターがコンカテマーの末端を形成するように)。特に、本方法で使用される1つまたは複数の配列決定アダプターは、核酸配列決定アダプター、具体的にはDNA配列決定アダプターである。
【0112】
このように、1つまたは複数の核酸配列決定アダプターが、増幅ステップにおいてコンカテマーに付加され得る。特に、コンカテマーをPCRに供して、少なくとも第1の配列決定アダプターをコンカテマーに付加し得る。好ましくは、2つの配列決定アダプターが、単一のPCR内で(すなわち、両方とも配列決定アダプターを含む一対のプライマーを使用するPCR増幅によって)コンカテマー(各末端に1つ)に付加されるが、代替的に2つの増幅ステップが実施されてもよい(第1のPCRが実施されて、第1の配列決定アダプターがコンカテマーに付加され、続いて第2のPCRが実施されて、第2の配列決定アダプターがコンカテマーの他方の末端に付加されるように)。一般に、2つの配列決定アダプターがコンカテマーに付加される場合、各末端には異なる配列決定アダプターが付加される。
【0113】
上記のように、1つまたは複数の配列決定アダプターがコンカテマーに付加され得る。これは、1つまたは2つの配列決定アダプターを意味し、配列決定アダプターはDNA分子の末端に付加されるので、単一のDNA分子(この事例では、コンカテマー)に付加することができる配列決定アダプターの最大数は2である。したがって、単一の配列決定アダプターがコンカテマーの一方の末端に付加されてもよく、または2つの配列決定アダプターがコンカテマーの各末端に1つずつ付加されてもよい。特定の実施形態では、IlluminaのP5アダプターおよびP7アダプターが使用され、すなわち、コンカテマーの一方の末端にはP5アダプターが付加され、他方の末端にはP7アダプターが付加される。P5アダプターの配列は、配列番号1に示され、P7アダプターの配列は、配列番号2に示される。
【0114】
特定の実施形態では、コンカテマー生成後、単一のPCRを実施して、コンカテマーを増幅し、それらの末端に配列決定アダプターを付加する(すなわち、コンカテマーの両方の末端に配列決定アダプターを付加する)。この実施形態では、PCRは、それぞれが3’ハイブリダイゼーション部位の上流に5’配列決定アダプターを含む一対のプライマーを使用して実施される。
【0115】
コンカテマーの末端に配列決定アダプターが付加された場合、配列決定のためにコンカテマーを表面上に固定化するために配列決定アダプターが配列決定ステップで使用される。
【0116】
上で詳述したように、一実施形態では、コンカテマーは、得られるコンカテマーが両方の末端にアセンブリ部位を有するように、両方の末端にアセンブリ部位を有するDNA分子からアセンブルされる。一実施形態では、配列決定アダプターをコンカテマーに付加するために実施されるPCRに使用されるプライマーは、末端アセンブリ部位にハイブリダイズする。すなわち、配列決定アダプターをコンカテマーに付加するために使用されるプライマーのハイブリダイゼーション部位は、コンカテマーの末端アセンブリ部位に相補的であり得る。すべてのコンカテマーが同じ末端アセンブリ部位を含むので、単一のプライマー対は、すべてのコンカテマーを増幅することができる。
【0117】
別の実施形態では、コンカテマーをPCRに供して、少なくとも第1の配列決定プライマー結合部位をコンカテマーに付加する。当該技術分野において周知であるように、超並列DNAシーケンシングに現在使用されているすべてのものを含むほとんどのDNA配列決定技法は、配列決定鎖の合成を開始するために配列決定プライマーを利用する。したがって、配列決定プライマー結合部位は、配列決定プライマーがそれにハイブリダイズすることができるように、配列決定プライマーの配列に相補的であるDNA配列である。配列決定プライマー結合部位の配列に特定の制約はない。
【0118】
このように、1つまたは複数の配列決定プライマー結合部位が、増幅ステップにおいてコンカテマーに付加され得る。特に、コンカテマーをPCRに供して、少なくとも第1の配列決定プライマー結合部位をコンカテマーに付加し得る。好ましくは、2つの配列決定プライマー結合部位が、単一のPCR内で(すなわち、両方とも配列決定プライマー結合部位を含む一対のプライマーを使用するPCR増幅によって)コンカテマー(各末端に1つ)に付加されるが、代替的に2つの増幅ステップが実施されてもよい(第1のPCRが実施されて、第1の配列決定プライマー結合部位がコンカテマーに付加され、続いて第2のPCRが実施されて、第2の配列決定プライマー結合部位がコンカテマーの他方の末端に付加されるように)。2つの配列決定プライマー部位がコンカテマーに付加される場合、一般に異なる配列決定プライマー結合部位が各末端に付加されるが、同じ配列決定プライマーを両方向でのDNA分子の配列決定に使用することができるので、これは必須ではない。しかしながら、コンカテマーの各末端に異なる配列決定プライマー結合部位を使用することが好ましい。なぜなら、そうしなければ、各鎖はその末端に逆相補的な配列決定プライマー結合部位を含み、コンカテマー鎖内にヘアピン構造が形成されるリスクが増加するからである。
【0119】
PCR(または他の増幅技法)を使用するのではなく、配列決定アダプターについて上で詳述したように、代替的に、配列決定プライマー結合部位を連結中にコンカテマーにアセンブルしてもよい。
【0120】
一実施形態では、コンカテマー生成後、単一のPCRを実施してコンカテマーを増幅し、それらの末端に配列決定プライマー結合部位を付加する(すなわち、コンカテマーの両方の末端に配列決定プライマー結合部位を付加する)。この実施形態では、PCRは、それぞれが3’ハイブリダイゼーション部位の上流に5’配列決定プライマー結合部位を含む一対のプライマーを使用して実施される。特定の実施形態では、Read1配列決定プライマー(Rd1SP)およびRead2配列決定プライマー(Rd2SP)を、以下の実施例で実証されるように、コンカテマー配列決定に使用する。すなわち、Rd1SP結合部位がコンカテマーの一方の末端に付加され、Rd2SP結合部位が他方の末端に付加される。Rd1SP結合部位の配列は、配列番号3に示され、Rd2SP結合部位の配列は、配列番号4に示される。
【0121】
上で詳述したように、コンカテマーは、得られるコンカテマーが両方の末端にアセンブリ部位を有するように、両方の末端にアセンブリ部位を有するDNA分子からアセンブルされ得る。一実施形態では、配列決定プライマー結合部位をコンカテマーに付加するために実施されるPCRに使用されるプライマーは、末端アセンブリ部位にハイブリダイズする。すなわち、配列決定プライマー結合部位をコンカテマーに付加するために使用されるプライマーのハイブリダイゼーション部位は、コンカテマーの末端アセンブリ部位に相補的であり得る。
【0122】
特定の実施形態では、配列決定アダプターと配列決定プライマー結合部位の両方がコンカテマーの末端に付加される。例えば、1つの配列決定アダプターおよび1つの配列決定プライマー結合部位が、コンカテマーの各末端に付加される。特に、配列決定アダプターは、それらがコンカテマーの末端を形成するように付加され、配列決定プライマー結合部位は、配列決定アダプターのすぐ下流にあり、コンカテマーを形成した目的のDNA分子は、配列決定プライマー結合部位の下流にある。上記のように、一般に、配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位は、PCRによってコンカテマーに付加される。配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位を付加するために複数のPCRが実施され得るが、一実施形態では、配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位の両方をコンカテマーに付加するために単一のPCRが実施される。このように、PCRは、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびハイブリダイゼーション部位を含むプライマーを使用して実施される。
【0123】
したがって、特定の実施形態では、複数のプールからDNA配列を検出する方法であって、各プールは複数種のDNA分子を含み、以下を含む方法が提供される:
(i)アセンブリプライマー対を使用して各プールに対してPCRを実施するステップであって、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位を含み、各プール中のすべてのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする、ステップ;
ここで、アセンブリ部位は、USERアセンブリによるPCR産物の結合に適している;
(ii)各プールのPCR産物を組み合わせ、USERアセンブリによって、予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;
(iii)コンカテマーをPCRに供して、配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位をコンカテマーの各末端に付加するステップであって、PCRが、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびハイブリダイゼーション部位をそれぞれ含む一対のプライマーを用いて実施される、ステップ;および
(iv)超並列DNAシーケンシングによってコンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられる、ステップ。
【0124】
別の実施形態では、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、以下を含む方法が提供される:
(i)複数のマルチプレックス近接伸長アッセイを実施し、それによって、レポーターDNA分子の複数のプールを生成するステップであって、各プール中のレポーターDNA分子が、それらの3’末端および5’末端にユニバーサルプライマー結合部位を含む、ステップ;
(ii)アセンブリプライマー対を使用して各プールに対してPCRを実施するステップであって、各プール中のすべてのDNA分子が同じプライマー対を使用して増幅され、異なるプライマー対が各プールにおける増幅に使用され、アセンブリプライマーのそれぞれの種が固有のアセンブリ部位を含み、各プール中のすべてのPCR産物が、一方または両方の末端に固有の予め定められたアセンブリ部位を含むようにする、ステップ;
ここで、アセンブリ部位は、各プールからのPCR産物を1つまたは2つの異なるプールからのPCR産物に結合することができるように、USERアセンブリに適している;
(iii)各プールのPCR産物を組み合わせ、USERアセンブリによって、予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップであって、各コンカテマーは、コンカテマー内の各DNA分子の位置が、それが由来するプールを示し、各コンカテマーが所定の数のDNA分子を含むように、各プールからの1つのランダムなDNA分子を所定の順序で結合することによって生成される、ステップ;
(iv)コンカテマーをPCRに供して、配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位をコンカテマーの各末端に付加するステップであって、PCRが、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびハイブリダイゼーション部位をそれぞれ含む一対のプライマーを用いて実施される、ステップ;および
(v)超並列DNAシーケンシングによってコンカテマーを配列決定し、それによって、各コンカテマー内の各プールからDNA配列を検出するステップであって、各プールからのDNA配列は、そのコンカテマー内のその位置に基づいてそのプールに割り当てられ、それによって、該または各試料中の分析物を検出する、ステップ。
【0125】
各プールのPCR産物を組み合わせ、USERアセンブリによって、予め定められた長さの複数の直鎖DNAコンカテマーを生成するステップは、上でより詳細に説明されているように実施され得る。
【0126】
特定の実施形態では、本方法は、DNA分子のプールの複数のセットに対して実施される。プールのセットは、任意の関係を有し得る。例えば、プールの各セットは、特定の試料に由来し得、各試料内の各プールは、分析物の異なるパネルを検出するための検出アッセイによって生成されている。
【0127】
いずれにしても、この実施形態では、各プールが上記のように処理され、プールの複数のセットが個々に組み合わられ、プールの各セットについて別個の連結反応を実施されて、複数の連結反応産物を生じる。すなわち、各セットからのすべてのプールが組み合わされ、したがって、プールの各元のセットから別個の組み合わされたプールが形成される。別個の連結反応がプールの各セットについて実施され、したがって、複数の連結反応産物が生成される。連結反応産物は、単一の連結反応の産物である。
【0128】
効率を高めるために、連結反応のそれぞれにおいて生成されたすべてのコンカテマーを一緒に配列決定することが望ましい場合がある。これを可能にするために、固有のインデックス配列がPCRによって各連結反応産物に付加される。代替的に、固有のインデックス配列は、上記のように、連結反応の間にコンカテマーに組み込まれてもよい(すなわち、アセンブリ部位がインデックス配列に付加され得、この配列は、連結のためにDNA分子のプールと組み合わされる)。「固有のインデックス配列(unique index sequence)」とは、同じインデックス配列が、特定の連結反応において生成された(すなわち、プールの特定のセットから生成された)すべてのコンカテマーに付加され、異なる(固有の)インデックス配列が、各異なる連結反応産物に対して(すなわち、プールの各異なるセットから生成されたコンカテマーに対して)使用され、各コンカテマーが由来するプールのセットを、そのコンカテマー内に含まれるインデックス配列によって決定することができるようにすることを意味する。このため、インデックス配列は、各コンカテマーが由来するプールのセットに関してコンカテマーを標識するのに役立つ。インデックス配列は、任意の長さおよび配列であり得るが、好ましくは比較的短く、例えば、3~12、4~10または4~8ヌクレオチドである。
【0129】
すべての連結反応産物がインデックス配列で標識されると、様々な連結反応産物が組み合わされ、配列決定される。そのため、上に詳述されるように、配列決定反応は、各コンカテマーが由来するプールのセットを、コンカテマー内に含まれるインデックス配列に基づいて同定する一方、各セット内のプールに存在するDNA分子は、コンカテマー内のそれらの位置に基づいて、それらの特定のプールに割り当てることができる。
【0130】
上で詳述したように、インデックス配列は、PCRによってコンカテマーに付加される。そのため、インデックス配列をコンカテマーに付加するために、各連結反応について別個のPCR反応が実施される。特に、2つのインデックス配列が各コンカテマーの各末端に1つずつ付加され得る。この実施形態では、PCRは、それぞれがインデックス配列を含む一対のプライマーを用いて実施され、すなわち、各プライマーは、5’インデックス配列および3’ハイブリダイゼーション部位を含有する。特に、コンカテマーの各末端に付加されるインデックス配列は異なり、例えば、各コンカテマーに対して、第1のインデックス配列が一方の末端に付加され、第2のインデックス配列が他方の末端に付加されるが、同じインデックス配列をコンカテマーの両方の末端に付加することができる。
【0131】
この実施形態では、インデックス配列(複数可)に加えて、上述したように、配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位がコンカテマーに付加され得る。これらの要素は、PCRの別個のラウンドにおいてコンカテマーに付加され得る。例えば、一実施形態では、インデックス配列は、各連結反応産物に対して実施される別個のPCRにおいて連結反応産物の各々に付加され、次いで、インデックス化された産物がプールされ、そして1つまたは複数のさらなるPCRが、プールされたインデックス化された産物に対して実施されて、配列決定アダプターおよび配列決定プライマー結合部位をコンカテマーに付加する。代替的に、複数の連続したPCRを、各連結反応産物に対して別々に実施して、インデックス配列、配列決定プライマー結合部位および配列決定アダプターを連続的に付加し得る。これらの3つの要素が連続的に添加される場合、アダプター配列は得られる産物の末端に位置しなければならないので、配列決定アダプターは最後に添加されるが、インデックス配列および配列決定プライマー結合部位は、いずれの順序で付加されてもよい。
【0132】
一実施形態では、3つの要素(すなわち、インデックス配列、配列決定プライマー結合部位および配列決定アダプター)はすべて、単一のPCR反応で、同時に連結反応産物に付加される。すなわち、各連結反応産物は、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列がコンカテマーの両方の末端に付加される別個のPCRに供される。これは、各プライマーが、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列をハイブリダイゼーション部位の上流に含むプライマー対を用いてPCRを実施することによって達成される。この実施形態では、PCRに続いて、複数のPCR産物(配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列を各末端に有するコンカテマーを含む)を組み合わせ、配列決定する。
【0133】
上記のように、一実施形態では、コンカテマーは、得られるコンカテマーが両方の末端にアセンブリ部位を有するように、両方の末端にアセンブリ部位を有するDNA分子からアセンブルされる。好都合なことに、このPCR(すなわち、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列をコンカテマーに付加するために実施されるPCR)に使用されるプライマーは、末端アセンブリ部位にハイブリダイズし得る。すなわち、このPCRにおいて使用されるプライマーのハイブリダイゼーション部位は、コンカテマーの末端アセンブリ部位に相補的であり得る。
【0134】
上記のように、配列決定アダプターは、配列決定される最終産物の末端を形成するように、コンカテマーに付加されることが必要とされる。しかしながら、配列決定プライマー結合部位およびインデックス配列は、いずれの順序で配置されてもよい。すなわち、PCRは、各末端において、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列を含む産物を生成し得る。代替的に、PCRは、各末端において、5’から3’に、配列決定アダプター、インデックス配列および配列決定プライマー結合部位を含む産物を生成してもよい。一般に、配列決定プライマー結合部位の上流にインデックス配列を配置することは、(例えば、ゲノム配列決定において)未知の長さの標的を配列決定する場合に有利であり得る。この場合、インデックス配列は、メインの配列決定反応とは別の特定の「インデックス配列決定」反応において読み取られる。しかしながら、配列決定標的が既知の長さである場合(本発明の方法のように)、配列決定プライマー結合部位の下流にインデックス配列を配置することで、インデックス配列を配列決定標的と同時に読み取ることができるようにして、各鎖からすべての必要な配列情報を得るのに単一の配列決定反応を実施するだけで済むようにすることが一般的に有利である。したがって、一実施形態では、コンカテマーが供されるPCRは、各末端に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、およびインデックス配列を含む産物(すなわち、配列決定プライマー結合部位の下流にインデックス配列を有する産物)を生じるように設計される。目的のDNA分子のコンカテマーは、インデックス配列の下流に位置する。そのため、PCRは、各プライマーが、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、インデックス配列、およびハイブリダイゼーション部位を含むプライマー対を使用して実施される。
【0135】
上で詳述したように、本方法は、いくつかのステップを含む。一般に、本方法は、複数の近接伸長アッセイから始まる。次いで、配列決定の前に、PEAの産物をPCRおよび連結反応(例えば、USERアセンブリまたはGibsonアセンブリ)に供する。配列決定の前に実施される様々な反応は、いくつかの異なる酵素(例えば、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、UDG、EndoVIII、エキソヌクレアーゼ)を利用する。酵素反応は、一般に、問題の酵素の活性に最適な緩衝液中で実施される。しかしながら、各段階において、その段階で使用される特定の酵素に対して最適化された緩衝液を使用して本発明の方法を実施することは、非効率的である。さらに、例えば、PCRクリーンアップによる、各段階での緩衝液の置き換えは、本方法を通して凝集される場合、産物の実質的な損失を発生させる。したがって、有利には、一実施形態において、配列決定前のすべてのステップは同じ緩衝液中で実施され、それにより、反応のクリーンアップまたは緩衝液の交換が不要になる。むしろ、各段階で必要とされる追加の酵素(複数可)および/または試薬を溶液に順次添加するだけである。
【0136】
この目的のために任意の適切な緩衝液が使用され得る。使用される緩衝液は、プロセスにおいて使用される酵素のいずれか、ましてやそれらのすべてとの使用に最適化される必要はないが、プロセスで使用されるすべての酵素は、使用される緩衝液中で中程度から高い活性を有する場合があり得る。プロセス全体を通して使用される緩衝液は、特に、Trisベースの緩衝液であり得る。
【0137】
上記のように、配列決定前のすべてのステップにおいて同じ緩衝液が使用され得る。可能であれば、配列決定反応もまた、(方法全体が単一の緩衝液のみを利用するように)同じ緩衝液中で実施され得る。しかしながら、より一般的には、配列決定反応には、以前の方法ステップに使用されるのとは異なる緩衝液が必要である。したがって、一般的に、配列決定の前(すなわち、連結の後、またはその後のPCRステップが実施される場合には、コンカテマーを修飾するためのPCRの後)に、反応混合物はクリーンアップされる。言い換えると、配列決定されるべき分子(コンカテマーまたは修飾されたコンカテマー)が精製され、混合物の他の部分(緩衝液、酵素、ヌクレオチドなど)が除去される。これは、当技術分野における任意の標準的な方法によって、例えば、Qiagen(独国)から入手可能であるようなPCR精製キットを使用して達成することができる。次いで、配列決定されるべき分子は、特殊な配列決定緩衝液、酵素などの、配列決定に必要な試薬を含む配列決定反応ミックスに添加される。配列決定試薬は、例えば、Illumina(米国)から市販されている。
【0138】
上で詳述したように、本発明の方法は、分析物検出アッセイ、特にPEAの文脈で使用され得る。このような検出方法は、一般的であるように、試料中の分析物(例えば、目的のタンパク質)が広い濃度範囲で存在する場合、高濃度の分析物からのシグナルが低濃度の分析物からのシグナルを圧倒し得、結果として、より低い濃度で存在する分析物を検出することができなくなるという課題に直面する。この問題は、同時係属出願PCT/EP2021/058008において対処されており、その出願で使用される方法と同じ方法が、本方法と併せて利用され得る。
【0139】
したがって、特定の実施形態では、本方法は、複数のマルチプレックス検出アッセイ(上記のような)において生成されたレポーターDNA分子を検出するために使用され、検出アッセイは、複数の分析物がある範囲の存在量レベルを有する1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するために実施される。この実施形態では、検出アッセイは以下を含む:
(i)該または各試料から複数のアリコートを提供するステップ;および
(ii)各アリコートにおいて、各アリコートについて別個のマルチプレックスアッセイを実施することによって分析物の異なるサブセットを検出するステップであって、各サブセットにおける分析物は、試料中のそれらの予測存在量に基づいて選択される、ステップ。
【0140】
特に、この実施形態では、本方法は以下を含む:
(i)該または各試料から複数のアリコートを提供するステップ;
(ii)各アリコートにおいて、各アリコートに対して別個のマルチプレックス検出アッセイを実施することによって、分析物の異なるサブセットを検出し、各アリコートから第1のPCR産物を生成するステップであって、各サブセットにおける分析物は、試料中のそれらの予測存在量に基づいて選択される、ステップ;
(iii)第1のPCR産物を複数のプールに組み合わせるステップ;および
(iv)各プールに対して第2のPCRを実施して、第1のPCR産物を修飾し、連結のための第1のPCR産物を調製するステップ。
【0141】
この実施形態では、第1および第2のPCRは、上記のとおりである。したがって、各マルチプレックス検出アッセイは、特定の分析物に特異的なレポーターDNA分子を生成し、第1のPCRが実施されて、生成されたレポーターDNA分子を増幅させる。したがって、第1のPCR産物は、レポーターDNA分子である。次いで、レポーターDNA分子を複数のプールに組み合わせる。プールの数および作製される第1のPCR産物の組み合わせは、上述したように、プールの意図される性質に依存する。例えば、各プールが異なる試料を表す場合、各試料からのすべての第1のPCR産物(すなわち、アリコート)を組み合わせ、それによって、各試料についてのプールを生じる。代替的に、各プールが、同じ試料からの分析物の異なるパネルを表す場合(すなわち、各プールが、近接プローブ対の異なるパネルを用いて実施される検出アッセイを表す場合)、各パネルからのすべての第1のPCR産物(すなわち、アリコート)を組み合わせ、それによって、各パネルについてのプールを生じる。さらなる代替において、本方法が、複数の試料からの分析物の複数のパネルを分析するために使用される場合、各試料の各パネルからのすべての第1のPCR産物(すなわち、アリコート)を組み合わせ、それによって、各試料の各パネルについてのプールを生じる。
【0142】
そのため、該または各試料からの分析物の複数のパネルが検出アッセイにおいて検出される場合、該または各試料の各パネルに対して複数のアリコートが提供される。すなわち、近接プローブ対の各パネルを用いて実施される検出アッセイのために、複数のアリコートが提供される。
【0143】
第2のPCRを各プールに対して別々に実施して、レポーターDNA分子を修飾してそれらを連結のために調製する。このステップは、上記のように実行される。したがって、第2のPCRは、上記のように各レポーターDNA分子に規定された末端配列を提供するために、例えば、USERアセンブリまたはGibsonアセンブリのためのアセンブリ配列を提供するために実施される。
【0144】
第2のPCR段階の後、プールを組み合わせ、上記のように連結を行う。次いで、コンカテマーは、(上記のように)修飾され得、その後上記のように配列決定される。別の見方をすると、上記の方法は、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出する方法として定義され得、上記分析物は、試料(複数可)中で様々なレベルの存在量を有し、上記方法は以下を含む:
該または各試料からの別個の複数のアリコートの各々に対してアッセイの別個のブロックを実施して、各別個のアリコートにおいて分析物のサブセットを検出するステップであって、各サブセットにおける分析物は、試料中のそれらの予測存在量に基づいて選択される、ステップ。
【0145】
個々のアリコートに対して実施されるアッセイの各ブロックは、上で詳述したように、マルチプレックスアッセイ(特にマルチプレックスPEA)である。そのため、分析物サブセット(すなわち、任意の1つの特定のアリコート中で検出されるように指定された分析物サブセット)中の複数の分析物を検出するためのマルチプレックスアッセイは、「存在量ブロック(abundance block)」とみなされ得る。したがって、本明細書で使用される「存在量ブロック」という用語は、試料中の検出されるべき(すなわち、アッセイされるべき)分析物の特定の群またはサブセットを検出するために実施されるアッセイのブロック(またはアッセイのセット)を指し、分析物は、試料中のそれらの存在量、すなわち、試料中のそれらの予想もしくは予測存在量、または相対的存在量に基づいて、アッセイの各ブロック(またはセット)に割り当てられる。言い換えると、アッセイは、存在量に基づいてグループ化または「ブロック化」される。したがって、異なるアリコートまたは異なる存在量ブロックは、例えば、低い、高い、または様々な程度の中間レベルの存在量などに基づいて、分析物の特定のサブセットの検出のために指定され得る。これは、アッセイのブロックまたはセット中の各分析物の存在量が同じまたはほぼ同じであることを意味するものではなく、存在量は、ブロックもしくはセット中の異なる分析物/アッセイ間でおよび/または異なる試料間で変動し得る。
【0146】
前述のように、本方法のこの実施形態は、1つまたは複数の試料中の複数の分析物を検出するためのものであり、分析物は、試料(複数可)中に様々なレベルの存在量を有する。すなわち、分析物は、異なる濃度でまたはある範囲の濃度で試料(複数可)中に存在する。該または各試料中のすべての分析物が、すべての他の分析物と実質的に異なる濃度で存在するのではなく、むしろ、すべての分析物が実質的に同じ濃度で存在する必要はない。試料(複数可)中の分析物は、ある範囲の濃度で存在するが、特定の分析物は、非常に類似した濃度で存在する可能性がある。
【0147】
分析物は、数桁に及ぶ濃度範囲にわたって試料(複数可)中に存在する可能性がある。例えば、最高濃度で試料(複数可)中に存在する(または存在すると予想される)分析物(複数可)は、試料(複数可)中に最低濃度で存在する(存在すると予想される)分析物の(予想)濃度より約1000倍高い濃度で存在する(または存在すると予想される)可能性がある。試料中の分析物は、例えば、約10倍、約100倍、約1000倍以上、そして当然のことながらその間の任意の値で相対的に濃度が変動し得る。臨床試料では、分析物は、数桁、例えば、3、4、5または6桁以上の範囲にわたって存在し得る。
【0148】
異なる分析物、またはより具体的には異なる分析物についてのアッセイをブロックするか、または一緒にグループ化するために使用される存在量についてのレベルまたは値は、試料中に存在する(または存在すると予想される)分析物の絶対レベルまたは濃度のみに依存しなくてもよい。アッセイ法の性質、異なる分析物についてのアッセイの性能の差などを含む他の要因が考慮され得る。例えば、抗体または他の結合剤に基づく検出アッセイの場合、これは、分析物に対する抗体親和性またはアビディティなどに依存し得る。異なる分析物についてのアッセイ間のこのような変動性が考慮に入れられ得る。例えば、存在量は、アッセイ出力値または測定値に関して、アッセイにおいて検出される分析物の存在量を反映し得る。したがって、サブセット中のどの分析物が選択されるかに基づいて予測される存在量は、少なくとも試料中の分析物の予測されるレベルまたは濃度に依存し得るが、それは、またまたは代わりに、特定の検出アッセイにおいて決定される存在量の予測されるレベルまたは値に依存し得る。別の言い方をすると、試料中の分析物の存在量は、その見かけの存在量、または検出アッセイに依存する概念的な存在量であってもよい。分析物の見かけの存在量は、使用されるアッセイ、特にそのアッセイの感度に依存して変化し得る。
【0149】
本方法は、該または各試料から複数の(すなわち、少なくとも2つの)アリコートを提供することを含む。すなわち、試料の複数の別個の部分が提供される。上記のように、複数のアリコートが、該または各試料についてのアッセイの各パネルについて提供され得る。各試料は、(試料全体がアリコートされるように)複数のアリコートに分割されてもよく、または該または各試料の一部が、試料全体を使用することなくアリコートとして提供されてもよい。アリコートは、同じサイズもしくは量(volume)であっても異なるサイズもしくは量であってもよいし、一部のアリコートが同じサイズであり、他のアリコートが異なるサイズであってもよい。
【0150】
アリコートの少なくとも一部は希釈され得る。例えば、アリコートは、1:2、1:4、1:5、1:10などに希釈され得る。特に、アリコートを10倍希釈に供してもよく、すなわち、1つまたは複数のアリコートを10倍(または1:10)に希釈してもよく、1つまたは複数のアリコートを100倍(1:100)に希釈してもよく、1つまたは複数のアリコートを1000倍(1:1000)に希釈してもよい。必要に応じて、さらなる希釈を行ってもよいが(例えば、1:10,000または1:100,000)、原則として、最大1:1000の希釈で十分であると予想することができる。1つまたは複数のアリコートは、希釈されていなくてもよい(本明細書では1:1と称する)。
【0151】
特定の実施形態では、一連の10倍希釈が行われ、以下の希釈度を有するアリコートが提供される:1:1、1:10、1:100および1:1000。この実施形態では、1:10希釈液は、未希釈試料の10倍希釈を行うことによって生成される。1:100および1:1000希釈液は、未希釈試料の直接100倍および1000倍希釈(それぞれ)を行うことによって、または1:10希釈アリコートの連続10倍希釈を行うことによって製造され得る(すなわち、1:10希釈アリコートを10倍希釈して1:100希釈アリコートを得ることができ、1:100希釈アリコートを10倍希釈して1:1000希釈アリコートを得ることができる)。試料の希釈(および実際には、本発明の方法全体にわたるすべてのピペッティングステップ)は、手動で、または代替的に自動ピペッティングロボット(SPT LabtechのMosquitoなど)を使用して実施され得る。
【0152】
アリコートの希釈は、任意の適切な希釈剤を用いて行われ得、これは、アッセイされる試料のタイプに依存し得る。例えば、希釈剤は、水もしくは生理食塩水または緩衝液、特に、生物学的に適合した緩衝化合物(すなわち、使用される検出アッセイに適合した緩衝液、例えば、PEAまたはPLAに適合した緩衝液)を含む緩衝液であってもよい。適切な緩衝化合物の例としては、HEPES、Tris(すなわち、Tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、リン酸二ナトリウムなどが挙げられる。希釈剤として使用するのに適した緩衝液としては、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、TBS(トリス緩衝生理食塩水)、HBS(HEPES緩衝生理食塩水)などが挙げられる。使用される緩衝液(または他の希釈剤)は、汚染物質分析物を含なないように、精製された溶媒(例えば、水)中で調整されなければならない。このように、希釈剤は無菌であるべきであり、水が希釈剤または希釈剤の基剤として使用される場合、使用される水は、好ましくは超純水(例えば、Milli-Q水)である。
【0153】
任意の適切な数のアリコートが、該または各試料から提供され得る。上記のように、少なくとも2つのアリコートが提供されるが、ほとんどの実施形態において、2つより多くのアリコートが提供される。特定の実施形態では、上で詳述したように、未希釈試料アリコートと、試料が1:10、1:100および1:1000に希釈されているアリコートという4つのアリコートが、各試料から、または各試料からのアッセイの各パネルについて提供され得る。より多いまたはより少ない試料の希釈が所望される場合、これより多いまたはより少ないアリコートが提供され得る。さらに、実施される特定のアッセイの要望/要件にしたがって、各希釈係数の1つまたは複数のアリコートが提供され得る。
【0154】
複数のアリコートが試料から提供されると、各アリコート(特にPEA)について別個のマルチプレックス検出アッセイを実施して、各アリコート中の標的分析物のサブセットを検出する。各アリコートが別々に分析される(すなわち、マルチプレックス反応中に複数のアリコートが混合されない)ように、各アリコートについて別個のマルチプレックスアッセイを実施する。各試料から提供され、マルチプレックスアッセイが実施されるすべてのアリコートにわたって、すべての標的分析物が検出される。すなわち、各試料からのすべてのアリコートにわたって、各標的分析物が試料中に存在するか存在しないかを決定するためにアッセイが実施される。しかしながら、特定の分析物を検出するための各個々のアッセイは、各試料からの1つのアリコートのみで実施され得る。したがって、分析物の異なるサブセットが、各試料からの各アリコートにおいて検出され、言い換えると、異なる分析物が、所与の試料からの各アリコートにおいて検出される。好ましくは、特定の試料からの各アリコートにおいて検出されるサブセットは、完全に異なり、すなわち、各標的分析物は、分析物サブセットの間に重複がないように、各試料からの1つのアリコートにおいてのみ検出される。しかしながら、いくつかの実施形態では、特定の分析物は、適切であると考えられる場合、各試料からの複数のアリコートにおいて検出され得る。この事例では、一部の分析物は複数の分析物サブセットに存在するが、他の分析物は1つのサブセットのみに存在するという点で、サブセット間で分析物が重複することもある。
【0155】
各サブセットにおける分析物は、試料または起源中のそれらの予測存在量(すなわち、濃度)に基づいて選択される。すなわち、同様の濃度で試料中に存在すると予想され得る分析物は、同じサブセットに含まれ、同じマルチプレックス反応で分析され得る。逆に、異なる濃度で試料中に存在すると予想され得る分析物は、異なるサブセットに含まれ、異なるマルチプレックス反応で分析され得る。各分析物は、試料または起源中に同様の濃度(例えば、特定の桁内の濃度)で存在すると予想される分析物のサブセットに割り当てられる。次いで、分析物の各サブセットは、分析物の予想濃度を考慮して適切な係数で希釈されるアリコート中で検出される。したがって、最低濃度で存在すると予想される分析物は、未希釈アリコートまたは低い希釈係数を有するアリコートにおいて検出され得、最高濃度で存在すると予想される分析物は、最も希釈されたアリコートにおいて検出され;そしてこれらの極値間の濃度で存在すると予想される分析物は、「中間の」希釈係数を有するアリコートにおいて検出される。
【0156】
上記のように、いくつかの実施形態では、特定の分析物は、複数のサブセットに含まれ得る。これは、例えば、分析物が、本質的に2つのサブセットの予想濃度の間の予想濃度を有し、それにより、その分析物が、それらのいずれにも明確には「属さない」場合であり得る。この事例では、分析物は、両方のサブセットに含まれ得る。分析物はまた、分析物が異常に広い範囲の濃度で試料または起源中に存在し得ることが知られている場合、2つ(またはそれ以上)のサブセットに含まれ得る。
【0157】
各サブセットにおける分析物が試料中のそれらの予測存在量に基づいて選択されることを考えると、各サブセットには異なる数の分析物が存在し得ることが理解されるであろう。代替的に、適宜、各サブセットに同じ数の分析物が存在してもよい。
【0158】
試料中の各分析物の存在量/濃度は、分析されるべき試料タイプにおける各分析物の正常レベルに関する既知の事実に基づいて予測され得る。例えば、試料が血漿または血清試料(または任意の他の体液の試料)である場合、その中の分析物の濃度は、これらの流体中の種の既知の濃度に基づいて予測され得る。潜在的に関心のある広範囲の分析物の正常な血漿濃度は、https://www.olink.com/resources-support/document-download-center/から入手可能である。しかしながら、上記のように、分析物を特定のサブセット(ブロック)に割り当てるために使用される存在量値は、アッセイ、およびそのアッセイから得ることができる結果(例えば、測定値)に依存することができる。
【0159】
上で詳述したように、PEAにおいて生成されたレポーターDNA分子はPCRによって増幅され、一般に、レポーターDNA分子を生成する伸長ステップおよび増幅ステップは、単一のPCR内で実施される。特に、「存在量ブロック」が、試料中の分析物濃度の差を補償するために上記のように使用される場合、PEAによって生成されたレポーターDNA分子を増幅するために実施されるPCR(レポーターDNA分子の生成と同時に実施されるか別々に実施されるかにかかわらず)は、飽和するまで実行され得る。当該技術分野において周知であるように、サイクル数に対するPCR増幅の産物の量は、「S」の形状をとる。アンプリコン濃度のゆっくりとした初期増加の後、指数関数的増幅の相に達し、その間に、産物の量は、各増幅サイクルで(およそ)2倍になる。指数相に続いて、直線相に達し、ここでは、産物の量は、指数関数的ではなく直線的に増加する。最終的に、反応のセットアップおよび使用される成分の濃度などを考慮して、産物の量がその最大可能レベルに達するプラトーに達する。
【0160】
本方法において、飽和PCRは、指数相を超えて移動した任意のPCR、すなわち、直線相にあるかまたはプラトーに達したPCRであると広く考えることができる。特定の実施形態では、本明細書で使用される「飽和(saturation)」は、より多くの増幅サイクルを実施してもそれ以上産物が生成されないような、最大可能産物が得られるまで反応が実行されること(すなわち、産物の量がプラトーに達するまで反応が実行されること)を意味する。飽和には、反応成分の枯渇、例えば、プライマー枯渇またはdNTP枯渇により達し得る。反応成分が枯渇すると、反応が遅くなり、次いでプラトーに入る。あまり一般的ではないが、ポリメラーゼを使い果たすと(すなわち、ポリメラーゼがその活性を失った場合に)、飽和に達することもある。アンプリコンの濃度が、DNAポリメラーゼの濃度が指数関数的増幅を維持するのに十分でないような高いレベルに達する場合、すなわち、ポリメラーゼ分子より多くのアンプリコン分子が存在する場合にも、飽和に達し得る。この事例では、十分なプライマーおよびdNTPが反応ミックス中に残っている限り、増幅は、直線相に入り、直線相のままである。
【0161】
PCR増幅は、飽和を仮定することができるように、単にそれを多数のサイクルにわたって実行することによって、飽和まで実行され得る。例えば、少なくとも25、30、35またはそれ以上の増幅サイクルにわたるPCR増幅の実行は、指数関数的増幅相がその段階までに終了するという点で、終点までに飽和に達したと仮定することができる。代替的に、飽和は、定量的PCR(qPCR)によって測定することができる。例えば、TaqMan PCRは、すべてのレポーターDNA分子にわたって共通の配列に結合するプローブを使用して実施され得、またはqPCRは、二本鎖DNAへの結合の際に色を変化させる色素(例えば、SYBR Green)を使用して実施され得る。そのため、反応を追跡することができ、飽和に達するのに必要な増幅サイクルの最小数を決定することができる。いずれにしても、増幅されたレポーターDNA分子のさらなる処理(配列決定までのおよび配列決定を含む)が必要とされることを考慮すると、TaqManプローブまたはインターカレーティング色素が方法のさらなるステップを妨害する可能性が高いので、任意のこのような実験的qPCRを実施して、配列決定のためのレポーターDNA分子を生成するために実験的に使用されるものとは別個のアリコートにおける飽和点を同定することが必要である。
【0162】
上で詳述したように、目的の試料の各アリコートについて別個のマルチプレックス反応を実施する。各アリコートは、試料中に異なるレベルで存在する分析物の検出のために使用される。レポーターDNA分子は、最初に、試料中の各分析物の量に対応する量で生成される。そのため、高濃度で存在する分析物については、高濃度のレポーターDNA分子が生成されると予想することができ、低濃度で存在する分析物については、低濃度のレポーターDNA分子が生成されると予想することができる。生成されるレポーターDNA分子の量は、試料中に存在する対応する分析物の量に比例すると予想され得、例えば、第1の分析物が第2の分析物の濃度の10倍で試料中に存在する場合、第1の分析物について第2の分析物の10倍のレポーターDNA分子が生成されると予想することができる。したがって、試料中に低濃度で存在すると予想される分析物の検出に使用されるアリコートよりも、試料中に高い濃度で存在すると予想される分析物の検出に使用されるアリコートでは、はるかに多数のレポーターDNA分子が最初に生成される。
【0163】
レポーターDNA分子の量のこの差が、連結および配列決定ステップに持ち越された場合、最も高い量で存在するレポーターDNA分子が、少量存在するレポーターDNA分子を「かき消す(drown out)」恐れがあり、試料中に少量存在する分析物の検出が不十分になる可能性がある。
【0164】
PCR実行において各マルチプレックス反応からのレポーターDNA分子を飽和まで増幅することは、アリコート間のレポーターDNA分子濃度のこれらの差が除去されることを意味する。飽和に達すると、各アリコート中には本質的に同じ量のレポーターDNA分子が存在することとなる。これは、試料中に存在する各分析物について、同様の量のレポーターDNA分子が存在すると予想することができ、よって、レポーターDNA分子が連結および配列決定される場合、すべてのレポーターDNA分子(ひいては、それらの対応する分析物)が検出されるはずであることを意味する。
【0165】
第1のPCRを飽和まで実行することは、各プールがほぼ同じ数のレポーターDNA分子を含むことを確実にするので、存在量ブロックが使用されるかどうかにかかわらず、本方法において有利である。上述したように、これは、1つまたは複数のプールからのレポーターDNA分子の大部分が連結されずに残ってしまうのではなく、連結の間に、プールされたレポーターDNA分子が本質的に使い果たされ得ることを確実にするので、有利である。
【0166】
上記の方法は、試料内の各目的の分析物の検出を可能にする。本方法はまた、各試料についての各サブセット内の分析物のレベルの比較を可能にし、すなわち、本方法は、分析される各特定の試料アリコート内の分析物のレベルの比較を可能にする。各個々のアリコート内で、生成される各異なるレポーターDNA分子のレベルは、それらのそれぞれの分析物のレベルに比例する(例えば、第1の分析物が第2のアリコートの2倍のレベルで特定のアリコート中に存在する場合、第1の分析物に対応するレポーターDNA分子の2倍が、第2の分析物に対応するレポーターDNA分子として生成される)。レポーターのレベルにおけるこの差は、レポーターDNA分子の検出中に、配列決定の間に検出され、試料中に存在する分析物の相対量の比較を可能にするが、同じアリコート中で検出される分析物についてのみである。
【0167】
試料中に存在するすべての分析物の相対量を比較することができれば(すなわち、異なるアリコート中で検出された分析物間で比較を行うことができれば)有利である。異なる試料中に存在する分析物の相対量を比較することができれば、さらに有利である。これは、各アリコートについての内部対照を含めることによって達成され得る。同じ内部対照が各試料の各アリコートに含まれる。内部対照は、アリコートの希釈係数に応じて、異なる濃度で試料の各アリコートに含まれる。内部対照の濃度は、アリコートの希釈係数に比例する。したがって、例えば、内部対照が、未希釈試料アリコートにおいて特定の所与の濃度で使用される場合、1:10希釈された試料アリコートにおいて、内部対照は、未希釈試料で使用される濃度の10分の1の濃度で使用され、以下同様である。これにより、内部対照が、アリコート中で検出される分析物に適した濃度で各アリコート中に存在するので、内部対照からのシグナルが、アリコート中で検出される分析物からのシグナルを圧倒しないことおよびそれによって圧倒されないことを保証しつつ、アリコート間の分析物の相対濃度を容易に比較することができる。
【0168】
内部対照は、対照レポーターDNA分子であるかまたは対照レポーターDNA分子を生成する。各レポーターDNA分子の量を対照レポーターと比較することによって、異なるアリコートにおいておよび/または異なる試料から分析された分析物の相対量を比較することができる。これは、各レポーターDNA分子と対照レポーターとの間の相対的な差が同等であるために達成可能である。
【0169】
例えば、異なる試料からの2つの異なるレポーターDNA分子が対照レポーターに対して同じ相対レベルで存在する場合(例えば、2倍もしくは3倍少ないかまたは2倍もしくは3倍多い)、これは、2つのレポーターDNA分子によって示される分析物が2つの試料中に本質的に同じ濃度で存在することを示す。同様に、対照レポーターに対する特定のレポーターDNA分子の比が、対照レポーターに対する異なる試料からの同じレポーターDNA分子の比の2倍である場合(例えば、レポーター分子が対照レポーターのレベルの2倍で第1の試料中に存在し、そしてレポーター分子が対照レポーターと本質的に同じレベルで第2の試料中に存在する場合)、これは、特定のレポーターDNA分子によって示される分析物が、第2の試料中に存在するレベルの約2倍で第1の試料中に存在することを示す。
【0170】
内部対照として使用され得る様々な代替物が存在する。適切な対照は、使用される検出技法に依存し得る。任意の検出アッセイについて、内部対照は、スパイクされた分析物、すなわち、規定された濃度で各アリコートに添加された対照分析物であってもよい。対照分析物は、マルチプレックス検出アッセイの前にアリコートに添加され、試料中の他の分析物と同じ様式で、各アリコート中で検出される。特に、対照分析物の検出は、対照分析物に特異的な対照レポーターDNA分子の生成をもたらす。対照分析物が使用される場合、対照分析物は、目的の試料中に存在し得ない分析物である。例えば、対照分析物は、人工分析物であってもよいし、試料が動物(例えば、ヒト)由来の場合、目的の動物には存在しない異なる種に由来する生体分子であってもよい。特に、対照分析物は、非ヒトタンパク質であってもよい。例示的な対照分析物としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、およびシアン蛍光タンパク質(CFP)などの蛍光タンパク質が挙げられる。
【0171】
内部対照の別の例は、マルチプレックス検出アッセイにおいて生成されるレポーターDNA分子と同じ一般構造を有する二本鎖DNA分子である。すなわち、DNA分子は、それを対照レポーターDNA分子として同定するバーコード配列と、分析物検出に応答して生成されるすべての他のレポーターDNA分子と共有され、増幅反応(複数可)で使用されるプライマーの結合を可能にするための共通プライマー結合部位とを含む。この様式で対照として使用される二本鎖DNA分子は、検出対照と称され得る。
【0172】
本方法の特定の実施形態では、対照分析物および検出対照の両方が各アリコートに添加される。この事例では、明らかに、対照分析物についてのバーコード配列は、検出対照についてのバーコード配列と異なるので、2つの内部対照を個々に同定することができる。
【0173】
マルチプレックス近接伸長アッセイが分析物検出に使用される場合、追加の内部対照、すなわち伸長対照が使用されることが有利である。伸長対照は、伸長が可能な遊離3’末端を含む二本鎖を含む核酸ドメインにコンジュゲートされた分析物結合ドメインを含む単一プローブである。一実施形態では、伸長対照は、それが単一の分析物結合ドメインのみを含むことを除いて、標的分析物への結合時に2つの実験プローブ間で形成される二本鎖と本質的に同等の構造を有する。伸長対照において使用される分析物結合ドメインは、目的の試料中に存在する可能性が高い分析物を認識しない。適切な分析物結合ドメインは、市販のポリクローナルアイソタイプ対照抗体、例えば、ヤギIgG、マウスIgG、ウサギIgGなどである。
【0174】
図2は、本方法において使用することができる伸長対照の例を示す。パートA~Fは、それぞれ、
図1のPEAアッセイバージョン1~6で使用することができる伸長対照に対応する。伸長対照は、伸長ステップが意図したとおりに行われることを確認するために使用される。伸長対照の伸長は、伸長対照レポーター核酸分子として同定され得るような固有のバーコードを含むレポーターDNA分子を生じる。マルチプレックスPEAが分析物検出に使用される場合、対照分析物、伸長対照、および検出対照がすべてアッセイで使用される(例えば、各アリコートに添加される)ことが有利である。他の実施形態では、内部対照のうちの2つのみ、例えば、対照分析物と伸長対照、対照分析物と検出対照、または伸長対照と検出対照が使用される。
【0175】
PEAの別個の成分の代わりに、内部対照は、代替的に、各レポーターDNA分子中に存在する固有分子識別子(UMI:unique molecular identifier)配列であってもよく、これは、各分子に固有である。これは、分析物検出の初期段階の間に生成された各個々のレポーターDNA分子がUMI配列を含むことを意味する。
【0176】
通常、PEAが実施される場合、検出される各分析物について複数の同一のプローブ対が試料に適用される。「同一の(identical)」プローブ対とは、標的分析物に結合するすべての同一のプローブ対が、試料中のその分析物の存在を示す同一のレポーターDNA分子の生成を引き起こすように、複数のプローブ対がすべて、同じ対の分析物結合分子および核酸ドメインの同じ対を含むことを意味する。
【0177】
UMI配列が内部対照として利用される場合、各特定の分析物を検出するために使用されるプローブは同一ではない。特定の対の分析物結合分子が使用されるが、各個別のプローブ、または対の2つの分析物結合分子の特定の1つを含む少なくとも各個別のプローブは、異なる固有の核酸ドメインを含む。各核酸ドメインは、その中にUMI配列が存在することによって固有になる。これは、特定の分析物分子に結合するプローブの各特異的対が、固有のレポーターDNA分子の生成をもたらすことを意味する。このようにして、近接プローブ対によって結合されたすべての個々の分析物分子について、固有のレポーターDNA分子が生成される。検出された分析物分子の正確な数は、その特定の分析物について生成された固有のレポーター核酸分子の数に基づいて計数することができるので、これは、試料中に存在する分析物の量の絶対定量を可能にする。
【0178】
したがって、特定の実施形態では、本方法は、1つまたは複数の試料に対して複数のマルチプレックスPEAを実施するステップを含み、各PEAはレポーターDNA分子のプールを生じ、各マルチプレックスPEAは、レポーターDNA分子を生成する伸長ステップと、それに続く、レポーターDNA分子が増幅される増幅ステップとを含むPCRを含む;
ここで、各PCRに対して内部対照が提供され、上記内部対照は以下である:
(i)所定の量で存在し、かつ、レポーターDNA分子と同じプライマーによって増幅される対照レポーターDNA分子であるか、もしくはそれを含むか、もしくはその生成をもたらす別個の成分;または
(ii)各レポーターDNA分子に存在し、かつ、伸長ステップで生成された各分子に固有である固有分子識別子(UMI)配列。
【0179】
マルチプレックスPEAのそれぞれにおいて同じ1つまたは複数の内部対照が使用される。
【0180】
特定の実施形態では、内部対照(上記のような)は、対照レポーターDNA分子であるか、またはそれを含むか、またはその生成をもたらし、対照レポーターDNA分子は、レポーターDNA分子の逆方向配列である配列を含む。すなわち、対照レポーターDNA分子は、検出される分析物に特異的なレポーターDNA分子のうちの1つの逆方向配列である配列を含む。この点において使用される「逆方向(reverse)」は、正確に、すなわち、単に逆方向配列を意味し、逆相補配列を意味しないことに留意すべきである。対照レポーターDNA分子は、分析物の検出に応答して生成されたレポーターDNA分子の逆方向配列のみを有するので、対照レポーターDNA分子は、問題のレポーターDNA分子にハイブリダイズすることができない。これにより、対照レポーターDNA分子と分析物の検出に応答して生成されたレポーターDNA分子との間の望ましくないハイブリダイゼーション相互作用を回避しながら、対照レポーターDNA分子と分析物の検出に応答して生成された逆方向配列レポーターDNA分子との間の最大レベルの類似性の維持することができ、PCR増幅において有利である。特に、対照レポーターDNA分子は、分析物の検出に応答して生成されるレポーターDNA分子のバーコード配列の逆方向配列であるバーコード配列を含み得るが、検出アッセイにおいて生成されたレポーターDNA分子と同じ共通のユニバーサル配列がバーコードに隣接し、これにより、他のレポーターDNA分子とともに対照レポーターDNA分子を増幅することができる。
【0181】
前述のように、一実施形態では、本方法で使用される検出アッセイは、対照分析物、伸長対照、および検出対照を、内部対照として使用する。これらの3つの対照が一緒に機能するためには、対照によって生成/提供される対照レポーター核酸分子が互いに区別可能でなければならず、すなわち、すべてが異なる配列を有していなければならないことは明らかである。一実施形態では、使用/生成される各対照レポーターDNA分子は、分析物の検出に応答して生成されるレポーターDNA分子の逆方向配列である配列を有する。この場合、明らかに、各対照レポーターDNA分子は、分析物の検出に応答して生成される異なるレポーターDNA分子の逆方向配列を有する。
【0182】
近接伸長アッセイが直面する別の課題は、何らかの「バックグラウンド」(すなわち、偽陽性)シグナルを可避することができないことである。バックグラウンドシグナルは、反応液中の非結合近接プローブとのまたはそれらの間のランダムな相互作用の結果として生じ得る。現在、近接反応におけるバックグラウンドシグナルのレベルは、別個の陰性対照の使用によって決定される。陰性対照については、すべてのシグナルがバックグラウンドとなるように、緩衝液のみを使用して(すなわち、試料なしで)近接アッセイを実施する。実験アッセイを陰性対照と比較することにより、真陽性シグナルを決定することができる。この問題は、同時係属出願PCT/EP2021/058025において対処されており、その出願で使用される方法と同じ方法が、本出願において利用されてもよい。
【0183】
特にバックグラウンド対照は、共有ハイブリダイゼーション部位を有する近接プローブ対を使用することによって改善することができる。これは、同じハイブリダイゼーション部位を共有するすべての非結合プローブ間の「バックグラウンド」シグナルの形成を促進する。生成されたレポーターDNA分子からのすべてのシグナルは連結され、一緒に読み取られる(真陽性および偽陽性の両方)。真陽性シグナルは、レポーターDNA分子が、対になったバーコード配列(すなわち、それぞれが同じ分析物に対応し、真陽性シグナルを示すバーコード配列)を含むか、対になっていないバーコード配列(すなわち、異なる分析物に対応し、偽陽性シグナルを示すバーコード配列)を含むかに基づいて、偽陽性シグナルと区別することができる。反応において生成される偽陽性シグナルのレベルは、バックグラウンドのレベルを示し、これは、バックグラウンドレベルを決定するための別個の陰性対照反応をもはや実施する必要がなく、アッセイ全体を単純化することを意味する。
【0184】
バックグラウンドを決定するための共有ハイブリダイゼーション部位の使用はまた、異なるハイブリダイゼーション部位間の性能の差を軽減する。ハイブリダイゼーション部位の異なる対は、他のものより強くまたは弱く相互作用し得、その結果、ハイブリダイゼーション部位の各対から異なるレベルのバックグラウンドが生成される。共有ハイブリダイゼーション部位により、各ハイブリダイゼーション部位対から生成されるバックグラウンドのレベルを個々に決定することができるので、計算されるべきバックグラウンドのレベルの決定がより正確になる。
【0185】
この目的のために、一実施形態では、近接伸長アッセイは以下によって実施される:
(i)該または各試料(またはそのアリコート)を複数対の近接プローブ(上記のように)と接触させるステップであって、各対内の両方のプローブが、同じ分析物に特異的な分析物結合ドメインを含み、分析物に同時に結合することができ、各プローブ対が、異なる分析物に特異的である、ステップ;
ここで、各近接プローブ核酸ドメインがバーコード配列およびハイブリダイゼーション配列を含み、各近接プローブのバーコード配列が異なる;
各近接プローブ対において、第1の近接プローブおよび第2の近接プローブは、対になったハイブリダイゼーション配列を含み、それにより、第1および第2の近接プローブがそれらの分析物に結合すると、第1および第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が互いに直接または間接的にハイブリダイズする;
ハイブリダイゼーション配列の少なくとも1つの対が、近接プローブの少なくとも2つの対によって共有される;
(ii)近接プローブの核酸ドメインを互いにハイブリダイズさせ、上記のように伸長反応を実施して、第1の近接プローブのバーコード配列および第2の近接プローブのバーコード配列を含むレポーターDNA分子を生成するステップ;および
(iii)レポーターDNA分子を増幅するステップ。
【0186】
生成されたレポーターDNA分子は、上記のように処理、連結、および配列決定され、各レポーターDNA分子の相対量が決定される。次いで、該または各試料中に存在する分析物を同定し、同定ステップにおいて:
(a)第1の近接プローブ対に属する第1の近接プローブからの第1のバーコード配列と、第2の近接プローブ対に属する第2の近接プローブからの第2のバーコード配列とを含むレポーターDNA分子がバックグラウンドとみなされる;および
(b)近接プローブ対からの第1のバーコード配列および第2のバーコード配列を含み、バックグラウンドより高い量で存在するレポーターDNA分子は、近接プローブ対によって特異的に結合された分析物が試料中に存在することを示す。
【0187】
前述のように、各試料(またはそのアリコート)を複数対の近接プローブと接触させる。そのような複数の近接プローブは、例えば、上で定義された近接プローブのパネルまたはそのサブセットに対応し得る。上記のように、各近接プローブは、固有のバーコード配列を含む(すなわち、異なるバーコード配列が各近接プローブ中に存在する)。特に、これは、各個々のプローブ分子が固有のバーコード配列を含むことを意味しない(ただし、上記のように、各プローブは、UMIを含んでもよく、その場合、UMIがバーコード配列を含むことまたはそれらから構成されることは問わない)。むしろ、各プローブ種は、固有のバーコード配列を含む。「プローブ種(probe species)」とは、特定の分析物結合ドメインを含むプローブを意味し、したがって、言い換えると、PEAについて上でより一般的に記載したように、同じ分析物結合ドメインを含むすべてのプローブ分子は、同じ固有のバーコード配列を含む。すべての異なるプローブ種は、異なるバーコード配列を含む。
【0188】
前述のように、各近接プローブの核酸ドメインは、ハイブリダイゼーション配列も含む。ハイブリダイゼーション配列は、各近接プローブ対内で対になっている。「対になったハイブリダイゼーション配列(paired hybridisation sequences)」とは、対内の2つのハイブリダイゼーション配列が互いに直接または間接的に相互作用することができ、それにより、本方法が実施され、一対の近接プローブがそれらの標的分析物に結合するとき、2つのプローブの核酸ドメインが互いに直接または間接的に連結されるようになることを意味する。
【0189】
特定の実施形態では、対になったハイブリダイゼーション配列は互いに直接相互作用し、その場合、それらは、互いにハイブリダイズするように、互いに相補的である。この実施形態では、対における第1の近接プローブのハイブリダイゼーション配列は、対における第2の近接プローブのハイブリダイゼーション配列の逆相補体である。これは、例えば、
図1のPEAバージョン1、2、4、6に当てはまる。バージョン6において、ハイブリダイゼーション部位は、部分的に二本鎖の核酸ドメイン中の2つのより長い核酸鎖の相互作用部位である(前述のように、スプリントオリゴヌクレオチドと称され得る)。
【0190】
上記のように、対になったハイブリダイゼーション部位は、代替的に互いに間接的に相互作用し得る。この場合、対になったハイブリダイゼーション配列は、互いに直接ハイブリダイズしないが、その代わりに、両方とも別個の架橋オリゴヌクレオチド、すなわち、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。別のオリゴヌクレオチドは、アッセイ法における第3のオリゴヌクレオチドとみなされ得る。言い換えると、この場合、対になったハイブリダイゼーション配列は、共通のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる。これは、例えば、上記のようにスプリントオリゴヌクレオチドを利用する
図1のPEAバージョン3および5に当てはまる。これらの実施形態では、対になったハイブリダイゼーション部位は、スプリント上の相補的な部位にハイブリダイズする一本鎖プローブ核酸ドメイン上の部位である。対になったハイブリダイゼーション配列がスプリントオリゴヌクレオチドを介して間接的に相互作用する場合、スプリントオリゴヌクレオチドは、2つのハイブリダイゼーション配列を含む。一方はプローブ対における第1のプローブのハイブリダイゼーション配列に相補的であり、他方はプローブ対における第2のプローブのハイブリダイゼーション配列に相補的である。したがって、スプリントオリゴヌクレオチドは、その近接アッセイセット中の近接プローブの対になったハイブリダイゼーション配列の両方にハイブリダイズすることができる。特に、スプリントオリゴヌクレオチドは、その近接アッセイセット中の近接プローブの対になったハイブリダイゼーション配列の両方に同時にハイブリダイズすることができる。したがって、一対の近接プローブがそれらの分析物に結合し、近接すると、プローブの核酸ドメインは両方ともスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、2つのプローブ核酸ドメインおよびスプリントオリゴヌクレオチドを含む複合体を形成する。
【0191】
本方法では、少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも2対の近接プローブによって共有される。言い換えると、(異なる分析物に結合する)少なくとも2対の近接プローブは、同じハイブリダイゼーション配列を有する。一対のハイブリダイゼーション配列を共有する対からのプローブは、互いにハイブリダイズすることができるか、または一緒に複合体を形成することができる。分析物へのプローブの結合により核酸ドメインが極めて近接するので、ハイブリダイゼーションは、一対の近接プローブの核酸ドメインの間で、それらが両方ともそれらのそれぞれの分析物に結合するときに起こる可能性が最も高い。しかしながら、いくつかの相互作用は、溶液中の非結合近接プローブの核酸ドメイン(すなわち、それらの分析物に結合していない近接プローブの核酸ドメイン)の対になったハイブリダイゼーション配列間で不可避的に形成されるか、または1つの近接プローブのみがその標的分析物に結合した場合、溶液中の別のプローブと相互作用し得る。特に、溶液中で、非結合近接プローブの核酸ドメインは、近接プローブが同じ分析物に結合するか異なる分析物に結合するかにかかわらず、対になったハイブリダイゼーション配列を有する任意の近接プローブの核酸ドメインに等しくハイブリダイズする(またはそれと複合体を形成する)可能性が高い。そのような非特異的ハイブリダイゼーションの結果として(すなわち、溶液中の非結合近接プローブ間のハイブリダイゼーションの結果として)生成されたレポーターDNA分子は、以下でさらに説明するように、バックグラウンドを形成する。
【0192】
一実施形態では、プローブ対のかなりの割合が、それらのハイブリダイゼーション配列を少なくとも1つの他の近接プローブ対と共有する。特定の実施形態では、近接プローブ対の少なくとも25%、50%、または75%が、それらのハイブリダイゼーション配列を別の近接プローブ対と(すなわち、少なくとも1つの他の近接プローブ対と)共有する。特定の実施形態では、すべての近接プローブ対が、それらのハイブリダイゼーション配列を少なくとも1つの他の近接プローブ対と共有する。しかしながら、上記から明らかなように、別の実施形態では、ハイブリダイゼーション配列の少なくとも1つの対は、近接プローブの単一の対に固有である。すなわち、近接プローブの少なくとも1つの対は、そのハイブリダイゼーション配列を任意の他の近接プローブ対と共有しない。特定の実施形態では、近接プローブの対の最大75%、50%、または25%が、それらのハイブリダイゼーション配列を任意の他の近接プローブ対と共有しない。
【0193】
一実施形態では、ハイブリダイゼーション配列の単一の対は、共有されたハイブリダイゼーション配列を有するすべてのプローブ対にわたって共有される。すなわち、別のプローブ対とそのハイブリダイゼーション配列を共有するすべてのプローブ対は、ハイブリダイゼーション配列の同じ対を有する。この実施形態では、マルチプレックス検出アッセイで使用される潜在的にすべてのプローブ対は、ハイブリダイゼーション配列の同じ対を有し得る。
【0194】
しかしながら、あまりにも多くのプローブ対がハイブリダイゼーション配列の同じ対を共有する場合あまりにも多数のバックグラウンド相互作用が起こり、真陽性シグナルを隠す可能性がある。したがって、ハイブリダイゼーション配列の各対が、より限定された数のプローブ対によって共有されることが有利であり得る。特定の実施形態では、20、15、10、または5個以下の近接プローブ対がハイブリダイゼーション配列の同じ対を共有する。そのため、一実施形態では、マルチプレックスアッセイは、それぞれがハイブリダイゼーション配列の特定の対を共有する近接プローブ対の複数のセットを使用する。したがって、特定の近接プローブ対セット中のすべての近接プローブ対は、ハイブリダイゼーション配列の同じ対を共有するが、ハイブリダイゼーション配列の異なる対が、各異なる近接プローブ対セットによって使用される。これにより、各プローブ対セット内のすべてのプローブ対間での非特異的ハイブリダイゼーションは可能になるが、異なるプローブ対セット中のプローブ対間の非特異的ハイブリダイゼーションは防止される。一般に、各プローブ対セットは、2~5個の範囲のプローブ対を含むが、好ましい場合は、より大きなセットが使用され得る。
【0195】
レポーターDNA分子が連結され、配列決定によって検出され、計数されると、どの分析物が試料中に存在するかを決定するために決定ステップが実施される。このステップでは、まず、バックグラウンドのレベルが決定される。非特異的プローブ相互作用の結果として生成されるすべてのレポーターDNA分子は、バックグラウンド相互作用とみなされ得る。これらのバックグラウンド相互作用のそれぞれの相対量が決定され、その結果、バックグラウンド相互作用のレベルが決定される。「非特異的プローブ相互作用(non-specific probe interactions)」とは、対になっていないプローブ間の相互作用、すなわち、異なる分析物に結合するプローブ間の相互作用を意味する。バックグラウンドレポーターDNA分子は、第1の近接プローブ対に属する第1の近接プローブからの第1のバーコード配列と、第2の近接プローブ対に属する第2の近接プローブからの第2のバーコード配列とを含む。代替的に、そのようなレポーターDNA分子は、第1の分析物に特異的な近接プローブからの第1のバーコード配列および第2の(または異なる)分析物に特異的な近接プローブからの第2のバーコード配列を含むと説明されてもよい。上記のように、対になっていない近接プローブ間の非特異的相互作用は、溶液中で遊離しているプローブ間で起こり得るか、または1つのプローブのみがその分析物に結合した場合に、それらの共有されたハイブリダイゼーション部位の結果として起こり得る。
【0196】
次いで、特異的プローブ相互作用によって生成されたレポーターDNA分子を分析する。「特異的プローブ相互作用(specific probe interactions)」とは、プローブ対内のプローブ間、すなわち、同じ分析物に結合する2つのプローブ間の相互作用を意味する。そのようなレポーターDNA分子は、近接プローブ対からの第1のバーコード配列および第2のバーコード配列を含む。代替的に、そのようなレポーターDNA分子は、同じ分析物に特異的な近接プローブからの第1のバーコード配列および第2のバーコード配列を含むと説明され得る。プローブ対内のプローブはまた、溶液中で相互作用し得るので、特異的プローブ相互作用によって生成されるレポーターDNA分子もまた、バックグラウンドを構成し得る(すなわち、バックグラウンド相互作用の結果として生成され得る)。したがって、特異的プローブ相互作用によって生成された各レポーターDNA分子の量は、非特異的プローブ相互作用の結果として生成されたレポーターDNA分子の量によって決定されるバックグラウンド相互作用のレベルと比較される。特異的プローブ相互作用によって生成されたレポーターDNA分子が、バックグラウンド相互作用のレベル(すなわち、非特異的バックグラウンドレポーターDNA分子のレベル)より高いレベルで存在する場合、これは、関連プローブ対によって結合された分析物が試料中に存在することを示す。一方、特異的プローブ相互作用によって生成されたレポーターDNA分子が、非特異的バックグラウンドレポーターDNA分子より高くないレベルで存在する場合(例えば、特異的プローブ相互作用によって生成されたレポーターDNA分子が、非特異的バックグラウンドレポーターDNA分子と同じかまたはそれより低いレベルで存在する場合)、関連プローブ対間の相互作用は、単にバックグラウンドであるとみなされる。この場合、プローブ対のプローブ間の相互作用が単にバックグラウンドであるという事実は、プローブ対によって結合された分析物が試料中に存在しないことを示す。代替的に、任意の個々の標的分子について、バックグラウンド相互作用は、その標的分子に結合するプローブを含む非特異的相互作用としてのみ定義されてもよい。すなわち、各標的分子について、バックグラウンド相互作用は、標的分子を認識するプローブと、標的分子を認識するプローブ対とそのハイブリダイゼーション部位を共有する対になっていないプローブ(すなわち、標的分子を認識しないプローブ)との間の非特異的相互作用として定義され得る。そのため、この場合、いずれも標的分子を認識しないプローブ間の非特異的相互作用は、その特定の標的分子に対するバックグラウンド相互作用とはみなされない。
【0197】
特定の実施形態では、特異的プローブ相互作用のレベルが比較されるバックグラウンドのレベルは、考慮されるバックグラウンド相互作用の平均レベル、特に、考慮されるバックグラウンド相互作用の平均レベルである。特定の実施形態では、PEAは、分析物に結合しない1つまたは複数のバックグラウンドプローブをさらに利用し、上記バックグラウンドプローブは、バーコード配列と、少なくとも1つの近接プローブと共有されるハイブリダイゼーション配列とを含む核酸ドメインを含む。「バックグラウンドプローブ(background probes)」は、本明細書では「不活性プローブ(inert probes)」と称されることもある。上記のように、不活性プローブは分析物に結合しない。それにもかかわらず、不活性プローブは、試料中に存在しないことが知られている分析物、特に抗体に特異的である場合、分析物結合ドメインを含み得る。不活性プローブは、事実上、機能的近接プローブの分析物結合ドメインと同等であるが、分析物結合機能を果たさない「結合ドメイン」を含み得、すなわち、結合ドメイン同等物は不活性である。一実施形態では、不活性ドメインは、バルクIgGによって提供され得る。代替的に、不活性プローブは、不活性分析物結合ドメイン、すなわち、非機能的分析物結合ドメインを含んでいてもよい。例えば、不活性プローブは、抗体の定常領域または抗体の1つの鎖(重鎖または軽鎖のみ)などの偽の分析物結合ドメインを含み得る。代替的に、不活性プローブは、核酸ドメインが結合されるが、機能を有さず、活性プローブの分析物結合ドメインに関連しない不活性ドメインを含んでいてもよい。不活性ドメインは、例えば、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミン)などの、アッセイ反応を妨害することなくアッセイに添加することができるタンパク質であり得る。別の代替法では、不活性プローブは単に核酸分子であり、非核酸ドメインを含まない。各不活性プローブは、その核酸ドメイン内にバーコード配列を含む。不活性プローブはそれぞれ、少なくとも1つの近接プローブと共有されるハイブリダイゼーション配列を含む。好ましくは、不活性プローブはそれぞれ、複数の近接プローブと共有されるハイブリダイゼーション配列を含む。不活性プローブが使用される場合、不活性プローブの単一の種のみが使用されてもよく、すなわち、すべての不活性プローブが同じハイブリダイゼーション配列を有する。しかしながら、好ましくは、複数種の不活性プローブが使用され、各不活性プローブ種は、異なるハイブリダイゼーション配列(異なる近接プローブまたは異なる群の近接プローブと共有される)を含む。不活性プローブの各異なる種は、異なる固有のID配列を有し得る。代替的に、共通の不活性プローブID配列は、すべての異なる種のすべての不活性プローブによって使用されてもよい。いずれにしても、明らかに、不活性プローブで使用される1つまたは複数のID配列は、いかなる近接プローブとも共有されない。
【0198】
不活性プローブと特定の近接プローブとの間で共有されるハイブリダイゼーション部位により、不活性プローブと近接プローブとの間の溶液中のバックグラウンド相互作用が可能である。不活性プローブと近接プローブとの相互作用により、不活性プローブバーコード配列および近接プローブバーコード配列を含むレポーターDNA分子が形成される。不活性プローブと近接プローブとの間の相互作用から生成されるレポーターDNA分子は、分析物同定ステップにおいてバックグラウンドとみなされる。
【0199】
第2の態様では、本開示および本発明は、上に詳述したようなキットを提供する。キットは、本明細書に定義および記載される方法を実施するのに適しており、以下を含む:
(i)複数の近接プローブ対であって、各対において、一方の近接プローブが、第1のユニバーサルプライマー結合部位およびその3’バーコード配列を含む核酸ドメインを含み、他方の近接プローブが、第2のユニバーサルプライマー結合部位およびその3’バーコード配列を含む核酸ドメインを含む、複数の近接プローブ対;
(ii)第1のプライマー対であって、プライマーが、第1のユニバーサルプライマー結合部位および第2のユニバーサルプライマー結合部位に結合するように設計される、第1のプライマー対;
(iii)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによる直鎖状コンカテマーへの指向性アセンブリのためにDNA分子を調製するのに適したアセンブリプライマー対のセットであって、各プライマーが、5’から3’に、アセンブリ部位およびハイブリダイゼーション部位を含み、各プライマー対において、ハイブリダイゼーション部位が、第1のユニバーサルプライマー結合部位および第2のユニバーサルプライマー結合部位に結合するように設計される、アセンブリプライマー対のセット;
(iv)USERアセンブリまたはGibsonアセンブリによってDNA断片をアセンブルするのに適した酵素であって、アセンブリプライマー対と同じDNAアセンブリ手段での使用に適した酵素;および
(v)第2のプライマー対であって、各プライマーが、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、インデックス配列、およびハイブリダイゼーション部位を含み、ハイブリダイゼーション部位が、直鎖状コンカテマーの末端を形成するように設計されたアセンブリプライマーのアセンブリ部位に結合するように設計される、第2のプライマー対;
ここで、対における第1のプライマーが、第1の配列決定アダプター、第1の配列決定プライマー部位、および第1のインデックス配列を含み、対における第2のプライマーが、第2の配列決定アダプター、第2の配列決定プライマー部位、および第2のインデックス配列を含む。キット中の近接プローブおよび近接プローブ対は、上記のとおりである。特に、近接プローブは、近接伸長アッセイでの使用に適している。特定の実施形態では、近接プローブは、PEAバージョン6(
図1)に示されるプローブの構造を有し、すなわち、各プローブは、部分的に一本鎖の核酸分子にコンジュゲートされた分析物結合ドメインを含む。各プローブにおいて、短い核酸鎖は、例えば、その5’末端を介して、分析物結合ドメインにコンジュゲートされる。各短い核酸鎖は、その3’末端に一本鎖オーバーハングを有するより長い核酸鎖にハイブリダイズされる(すなわち、より長い核酸鎖の3’末端は、分析物結合ドメインにコンジュゲートされたより短い鎖の5’末端を超えて伸長する)。2つのより長い核酸鎖のオーバーハングは、互いにハイブリダイズして二本鎖を形成することができるハイブリダイゼーション部位を含む。特定の実施形態では、近接プローブの複数の対は、上記のように、ハイブリダイゼーション部位の単一の対を共有する核酸ドメインを含む。一実施形態では、アセンブリプライマー対および酵素は、USERアセンブリによってDNA断片をアセンブルするのに適している。したがって、提供される酵素は、ウラシルDNAグリコシダーゼ(UDG)、DNAグリコシラーゼ-リアーゼエンドVIII(EndoVIII)、およびDNAリガーゼであり得る。USERアセンブリのためにDNA分子を調製するためのアセンブリプライマーは、有利には、それぞれ、上記のように、複数のウラシル残基を含むアセンブリ部位を含む。特に、各アセンブリ部位は、少なくとも3つのウラシル残基を含み得る。第2のプライマー対は、上記のとおりである。上で詳述したように、一実施形態では、第2のプライマー対における各プライマーは、5’から3’に、配列決定アダプター、配列決定プライマー結合部位、インデックス配列、およびハイブリダイゼーション部位を含む。代替の実施形態では、第2のプライマー対の各プライマーは、5’から3’に、配列決定アダプター、インデックス配列、配列決定プライマー結合部位、およびハイブリダイゼーション部位を含み得る。このキットは、1つまたは複数のPCRステップを実施するためのDNAポリメラーゼおよびdNTPミックスをさらに含み得る。特に、DNAポリメラーゼは、PEAおよび/またはUSERアセンブリの文脈でPCRを実施するのに適しているであろう。DNAポリメラーゼは、特に、Taqポリメラーゼであり得る。dNTPミックスは、PCRのためのストック溶液であり、したがって、4つの標準的なdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を含む。キットはまた、緩衝液をさらに含み得る。緩衝液は、キット中に提供される少なくとも1つの酵素と適合性である。好ましくは、緩衝液は、アセンブリ酵素(例えば、USER酵素)およびDNAポリメラーゼの両方と適合性であり、その結果、緩衝液は、上記のように、配列決定前の本発明の方法のすべての段階での使用に適している。キットはまた、PEAアッセイでの使用に適した1つまたは複数の対照を含み得る。対照は上記のとおりであってもよく、例えば、キットは、上記のように、対照分析物、伸長対照、および/または検出対照を含んでもよい。本明細書における方法およびキットは、以下の非限定的な実施例および図を参照することによってさらに理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【
図1】上記で詳細に説明した近接伸長アッセイの6つの異なるバージョンの概略図を示す。逆「Y」字形状は、例示的な近接プローブ分析物結合ドメインとしての抗体を表す。
【
図2】近接伸長アッセイで使用され得る伸長対照の例の概略図を示す。パートA~Fは、それぞれ
図1のバージョン1~6で使用するための適切な伸長対照を示す。パートB~Eでは、それぞれ
図1のバージョン2~5で使用するための異なる可能な伸長対照が、それぞれオプション(i)および(ii)に示されている。
図1の凡例は
図2にも適用される。
【
図3】4つのプローブパネルを使用して血漿試料をアッセイするために、2つのPEAプロトコルによって得られた正規化されたカウント数の比較を示す。「インデックス内側(index inside)」連結プロトコルを使用して得られた正規化されたカウントを、連結を含まない方法を使用して得られた正規化されたカウントと比較する。2つのプロトコルを使用して得られた正規化されたカウント間には高い相関が見られる(R=0.91)。
【
図4】特に
図3で比較されたアッセイから得られたIL-8の正規化されたカウント数の比較を示す。2つのプロトコルを使用して得られた正規化されたカウント間には、各パネルについて高い相関が見られる(R=0.97~0.99)。
【
図5】4つのプローブパネルを使用して血漿試料をアッセイするために、2つのPEAプロトコルによって得られた正規化されたカウント数の比較を示す。「インデックス内側」連結プロトコルを使用して得られた正規化されたカウントを、「インデックス外側(index outside)」連結プロトコルを使用して得られた正規化されたカウントと比較する。2つのプロトコルを使用して得られた正規化されたカウント間には、高い相関が見られる(R=0.98)。
【
図6】特に
図5で比較されたアッセイから得られたIL-8の正規化されたカウント数の比較を示す。2つのプロトコルを使用して得られた正規化されたカウント間には、各パネルについて高い相関が見られる(R=0.99~1.00)。
【
図7】本明細書で開示される方法の概略図を示し、4つのプール1、2、3、4のそれぞれからのPCRアンプリコンを含むコンカテマーの生成を示す。各プールは、アッセイのセットからのアンプリコンを含む。各プール中のPCRアンプリコンは、PCR1によって生成される。各プールからの単一のアンプリコンを示す。PCR2において、規定された末端配列がアンプリコンに提供され、これは、規定された末端配列を含む5’「プール特異的」部分と、アンプリコンにハイブリダイズする3’ハイブリダイゼーション部位(「ユニバーサル」部分)とを含むアセンブリプライマーを使用して、指向性連結(directed concatenation)を可能にする。星印(*)は相補的な配列を示す。末端は消化される。プール1、2、3、4からの消化産物をプールし(組み合わせ)、ライゲーションして、コンカテマー産物を生成する。PCR3を実施して、配列決定アダプターを末端に付加する。[実施例]
【実施例】
【0201】
例示的な実験プロトコル
ステップ1-試料の調製とインキュベーション
48~96の血漿試料それぞれから16のアリコートを、96ウェルまたは384ウェルのインキュベーションプレートで、16の近接プローブセット(4つの384プローブ対パネルの各々からの4つの存在量ブロック)の各々の1つとインキュベートする。
- 試料は、それを必要とするアッセイを含むプローブパネル/群について、1:10、1:100、1:1000および1:2000に予め希釈されてもよい。
- 血漿試料の希釈およびインキュベーション溶液への分注は、手動で、またはLabTechのMosquito(登録商標) HTSなどのピペッティングロボットによって実施することができる。インキュベーション溶液をプレートのウェルに分注する。
- 各ウェルの底の3μlのインキュベーションミックスに1μlの試料を加え、プレートを接着フィルムで密封し、400×gで室温で1分間回転させ、4℃で一晩インキュベートする。
- 上述のピペッティングロボットを使用する場合、量を0.2μlの試料および0.6μlのインキュベーションミックスに減らすことができる(5分の1)。
以下の表は、例示的な試薬製剤を示したものである。他の成分、例えば、プローブ溶液中の他のブロッキング剤が含まれていてもよい。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0202】
ステップ2-近接伸長およびレポーター分子増幅
伸長および増幅は、Pwo DNAポリメラーゼを使用して実施される。PCRは、すべての伸長産物の増幅に対して共通プライマーを使用して実施される(例えば、
図7のPCR1を参照されたい)。
インキュベーションプレート(ステップ1からの)を室温にし、400×gで1分間遠心分離する。伸長ミックス(超純水、DMSO、Pwo DNAポリメラーゼおよび反応液を)をプレートに加え、次いでプレートを密封した後、短時間ボルテックスし、400×gで1分間遠心分離し、次いで、PEA反応および増幅のためにサーマルサイクラーに入れた(50
oC20分、95
oC5分、(95
oC30秒、54
oC1分、60
oC1分)×25サイクル、10
oC保持)。好ましくは、分注ロボット、例えば、Thermo Scientific(登録商標)Multidrop(登録商標)Combi Reagent Dispenserを使用して、伸長ミックスをプレートに分注することができる。
【表6】
【表7】
【0203】
ステップ3-存在量ブロックをプール
各試料の各384プローブ対パネルからの存在量ブロックのそれぞれからのPCR産物を一緒にプールする。この結果、各384プローブ対パネルに対して1つずつ、1試料あたり4つのPCR産物の混合物(プール)が得られる。したがって、この場合の各プールは、近接プローブのパネル、すなわち、試料に対して実施されるアッセイのパネルに対応するPCR産物の混合物またはコレクションである。プールは、4つの存在量ブロックに由来するPCR産物から構成される(すなわち、各パネルについて4つの存在量ブロックが存在する。各ブロックは、各アッセイにおける試験対象の分析物の相対的な存在量に基づいて、アッセイのセットに対応する。)
各存在量ブロックから異なる量をとり、ブロック間のアッセイの相対数を均一にすることができる。PCR産物のプールは、手動でまたはピペッティングロボットによって実施することができる。
【0204】
ステップ4-アセンブリプライマーによる増幅
各試料からのPCR産物の各混合物(すなわち、各384プローブ対パネルの産物)について、USERアセンブリのためのアセンブリプライマーを使用して、別個の第2のPCRを実施する。これは、
図7にPCR2として示される。各アセンブリプライマーは、アンプリコンに付加される規定された末端配列を含むかまたは提供する「プール特異的」部分と、アンプリコンにハイブリダイズする「ユニバーサル」部分とを含む。ユニバーサル部分およびその相補的な結合部位は、異なるプールのアンプリコン間で共有される)。USERアセンブリプライマーのセットを、各試料の様々なパネル産物に使用する。アセンブリプライマーの例示的なセットを以下の表に示す(示すように、各プライマーは、固有のアセンブリ部位を有し、これは、末端アセンブリ部位を除いて、隣接する相補的な部位を有し、順方向ハイブリダイゼーション部位および逆方向ハイブリダイゼーション部位の各々は、それぞれ同じである)。一対のアセンブリプライマーは、試料からの各パネル(各プールに対応する)の産物の増幅のために使用され、例えば、例示されたプライマーを使用して、各試料について、対Aはパネル1に使用され、対Bはパネル2に使用され、対Cはパネル3に使用され、そして対Dはパネル4に使用される(
図7に示されるようなプール1~4に対応する)。第1のPCRの産物を第2のPCRミックス(超純水中にTaqポリメラーゼ、dNTP、ユニバーサル緩衝液、およびアセンブリプライマーを含む)に加え、PCRを実施する:95
oC3分、(95
oC30秒、45
oC30秒、72
oC1分)×5サイクル、(95
oC30秒、65
oC30秒、72
oC1分)×10サイクル、10
oC保持。
【表8】
【表9】
【0205】
ステップ5-消化
ステップ4の産物を消化して、ウラシル含有アセンブリ部位を分解し、各PCR産物の末端に3’オーバーハングを残す。各別個の第2のPCRの産物を別々に消化する。第2のPCR産物をUSER酵素に加え、37℃で60~120分間インキュベートする。
【表10】
【0206】
ステップ6-連結
各試料からの各PEAパネル(各パネルは4つの存在量ブロックからの産物のプールを表す)の消化された産物を組み合わせ、ライゲーションして、問題の試料の各パネルからの産物を含むコンカテマーを生成する。産物は、アセンブリ部位から生成された相補的なオーバーハングによって規定される順序で連結される。パネル1がアセンブリプライマー対Aを用いて増幅され、パネル2がアセンブリプライマー対Bを用いて増幅され、パネル3がアセンブリプライマー対Cを用いて増幅され、そしてパネル4がアセンブリプライマー対Dを用いて増幅された上記の実施例では、パネルの産物は、パネル1-パネル2-パネル3-パネル4の順序で連結される。
【表11】
【0207】
ステップ7-配列決定アダプターの付加
Illumina配列決定のために、配列決定アダプターを各コンカテマーの両方の末端に付加する。これは、第3のPCR(
図7においてPCR3として示される)において実施され、これはまた、配列決定プライマー結合部位およびインデックス配列を付加して、各コンカテマーが由来する試料を同定するためにも使用される。第3のPCRのためのプライマーは、5’から3’に、配列決定アダプター(例えば、上記のP5およびP7アダプター)、配列決定プライマー結合部位(例えば、上記のRd1SPおよびRd2SP結合部位)、インデックス配列、およびハイブリダイゼーション部位を含む。
ライゲーションされたコンカテマーを、Taqポリメラーゼ、プライマー、緩衝液、およびdNTPを含む第3のPCRミックスに加え、増幅する:95
oC3分、(95
oC30秒、60
oC30秒、72
oC1分)×5サイクル、(95
oC30秒、65
oC30秒、72
oC1分)×15サイクル、10
oC保持。
【表12】
【0208】
ステップ8-配列決定
コンカテマーをプールし、次いでIlluminaプラットフォーム(例えば、NoveSeqプラットフォーム)を使用して配列決定する。4つのパネルからのレポーターDNA分子を含むコンカテマーを生成することによって、各配列決定実行のスループットが4倍に増加する。
【0209】
ステップ9-データ出力
バーコード(各レポーターDNA分子からの)およびインデックス(各コンカテマーからの)配列は、既知のバーコード-アッセイ-試料キー(barcode-assay-sample key)にしたがって、データ中で同定され、カウントされ、合計され、整列/標識される。
- 「一致するバーコード」は、2つの対になったPEAプローブ間の相互作用を表す。カウントは、PEAにおける相互作用の数に対するものである。
- 各アッセイおよび試料についてのカウントは、試料間で比較することができるように、内部参照対照を使用して正規化される必要がある。
- 各存在量ブロックは、それ自体の内部参照対照を有する。
【実施例】
【0210】
連結なしの方法の参考例
この参照プロトコルは、同時係属出願PCT/EP2021/058008に開示されている。このプロトコルでは、ステップ1~3を実施例1のように実施した。その後のプロトコルは以下のとおりであった。
【0211】
ステップ4-PCR2インデックス化
48~96個の逆方向プライマーを含むプライマープレートが提供される(一般に、96ウェルプレートの各ウェルに1つのプライマー)。各逆方向プライマーは、「Illumina P7」配列決定アダプター配列(配列番号2)および試料インデックスバーコードを含む。各異なる試料からのPCR1産物(すなわち、ステップ2で実施されるPCRの産物)に対して、固有のバーコード配列が使用される。好ましくは、同じ血漿試料を含む最大4つのPCR1プール(各384プローブ対パネルについて1つ)の各々は、同定およびデータ処理を容易にするために、同じインデックス配列を受ける。「Illumina P5」配列決定アダプター配列を含む順方向共通プライマー(PCR1で使用されるものと同じ順方向プライマー)が、PCR2溶液中に提供される。
各PCR1プールを、順方向共通プライマー、プライマープレートからの単一の逆方向(インデックス)プライマー、およびDNAポリメラーゼ(TaqまたはPwo DNAポリメラーゼ)を含むPCR2溶液と接触させる。プライマーが枯渇するまでPCRによって増幅を実施する(95℃3分、(95℃30秒、68℃1分)×10サイクル、10℃保持)。
プールされたPCR1産物の理論的最終濃度は1μMである(すべてのプライマーを使用)。PCR1アンプリコンをPCR2のために1:20希釈し、各PCR2反応において50nMの開始濃度とする。各PCR2プライマーの濃度は500nMである。したがって、PCR2プライマー枯渇は、3.3サイクル(10倍増幅)後に起こるはずである。
【表13】
【表14】
【表15】
【0212】
ステップ5-プール終了
同じ384プローブ対パネルに属するすべての48~96のインデックス化試料プールを一緒にプールし、各試料から同じ量を加える。これは、各384プローブ対パネルに対して1つずつ、最大4つの最終プール(またはライブラリー)を生じる。
【0213】
ステップ6-精製および定量化(オプション)
ライブラリーを、磁気ビーズを使用して別々に精製し、精製したライブラリーの総DNA濃度を、DNA標準曲線を用いたqPCRを使用して決定する。より長いDNA断片に優先的に結合するAMPure XPビーズ(Beckman Coulter,USA)を、製造業者のプロトコルにしたがって使用することができる。AMPure XPビーズは、長いPCR産物に結合するが、短いプライマーには結合しないので、任意の残りのプライマーからのPCR産物を精製することができる。
PCR2プライマーの枯渇は、この精製ステップが不要であり得ることを意味する。
【0214】
ステップ7-品質管理(オプション)
各(精製した)ライブラリーの少量のアリコートを、製造業者の指示にしたがってAgilent Bioanalyser(Agilent,USA)で分析して、DNA増幅が成功したことを確認する。
【0215】
ステップ8-配列決定
Illuminaプラットフォーム(例えば、NoveSeqプラットフォーム)を使用して、ライブラリーを配列決定する。最大4つのライブラリー(各384プローブ対パネルからの)の各々を、フローセルの別個の「レーン」で実行する。使用されるフローセルおよびシーケンサーのサイズおよびモデルに応じて、異なるフローセル中で並行してまたは連続的に(順々に)最大4つのライブラリーを配列決定することができる。
【0216】
ステップ9-データ出力
バーコード(各レポーター核酸分子からの)および試料インデックス(試料インデックスプライマーからの)配列は、既知のバーコード-アッセイ-試料キーにしたがって、データ中で同定され、カウントされ、合計され、整列/標識される。
- 「一致するバーコード」は、2つの対になったPEAプローブ間の相互作用を表す。カウントは、PEAにおける相互作用の数に対するものである。
- 各アッセイおよび試料についてのカウントは、試料間で比較することができるように、内部参照対照を使用して正規化される必要がある。
- 4つの存在量ブロックのそれぞれは、それ自体の内部参照対照を有する。各384プローブ対パネルは、それが読み出されるレーンに基づいて分離される。各パネルは、同じ96個の試料インデックス、同じ384個のバーコードの組み合わせ、および内部参照対照を含む。
【実施例】
【0217】
連結および非連結レポーターの配列決定
3つの反応プロトコルを比較した:
1.実施例1に上述したプロトコル(「インデックス内側」と称する)。
2.第3のPCRに使用したプライマーが異なることを除いて、実施例1に上述したプロトコル。プロトコル2では、第3のPCRのためのプライマーを実施例1とは異なるように配置した。具体的には、第3のPCRのためのプライマーは、5’から3’に、配列決定アダプター、インデックス配列、配列決定プライマー結合部位、およびハイブリダイゼーション部位を含んでいた(すなわち、インデックス配列および配列決定プライマー結合部位の順序が逆であり、「インデックス外側」と称される)。
3.実施例2に記載のプロトコル。
【0218】
3つのプロトコルのそれぞれについて、8つの血漿試料を試験し、比較した。各試料を、それぞれ372個のプローブ対を含むPEAプローブの4つのパネルを使用してアッセイした。パネルの各々は、IL-8の検出のためのプローブ対を含んだ。配列決定後、各存在量ブロック内のすべての一致したバーコード読み取り値(カウント)を内部対照に照らして正規化した。各プロトコルによって生成された正規化されたバーコードカウントを比較した。
1つの試料(試料7)についてプロトコル1および3から得られた正規化されたカウントの比較を
図3に示す。この図は、2つの異なるプロトコルで得られた正規化されたカウントの間に高い相関(R
2=0.91)がある(および、他の7つの試料についても同様のR
2値が得られた)ことを示しており、2つの異なるプロトコルが、試料をアッセイするために使用される各プローブ対についてほぼ同じ数の正規化されたバーコードカウントを生成することを示している。
図5に示すように、同じ試料についてプロトコル1および2から得られた正規化されたカウントも比較した。この図は、2つの異なるプロトコルで得られた正規化されたカウントの間に非常に高い相関(R
化=0.98)がある(および、他の7つの試料についても同様のR
2値が得られた)ことを示しており、「インデックス内側」プロトコルの性能と「インデックス外側」プロトコルの性能との間に本質的に差がないことを示している。
IL-8についての異なるプロトコルからの正規化されたカウントも具体的に比較した。
図4に示すように、8つの試料のそれぞれについてプロトコル1および3を使用して各アッセイパネルから得られたIL-8に対するカウントを比較した。この図は、2つの方法で得られた正規化されたカウントの間に高レベルの相関があることを示している(4つの異なるアッセイパネルについてR
2値は0.97~0.99)。
図6に示すように、同じ比較を、プロトコル1および2を使用して得られた正規化されたカウントについて行った。この図は、2つの方法を用いて得られた正規化されたカウント間に非常に高いレベルの相関があることを示している(4つの異なるアッセイパネルについてR
2値は0.99~1)。これらの結果は、本明細書で提供される連結ステップを含むPEA法を使用して試料をアッセイした場合に、各レポーターDNA分子が個々に配列決定される以前の方法を用いた場合と非常に類似した結果が得られることを示す。試料が高レベルまたは低レベルの特定の標的タンパク質(例えば、IL-8)を含む場合、これは、試験された3つのプロトコルのすべてにおいて正確に同定される。上で詳述したように、連結により、方法のスループットを大幅に改善することができ、これらの結果は、スループットの改善が精度のいかなる損失も伴わずに得られることを示す。
【配列表】
【国際調査報告】