(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(54)【発明の名称】溶融金属を充填した炭化ケイ素燃料被覆管及び均一な分布製作方法
(51)【国際特許分類】
G21C 21/02 20060101AFI20231127BHJP
G21C 3/07 20060101ALI20231127BHJP
G21C 3/20 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G21C21/02 120
G21C3/07
G21C3/20 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524301
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 US2021056108
(87)【国際公開番号】W WO2022087311
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591235304
【氏名又は名称】ゼネラル・アトミックス
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ATOMICS
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ジーピン
(72)【発明者】
【氏名】ガザ,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスデヴァムルティー,ゴクル
(72)【発明者】
【氏名】オッパーマン,ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】ブラックロック,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス,オースティン
(57)【要約】
核燃料棒(105)に核燃料ペレット(103)を封入するための燃料棒の設計及び技術が提供される。開示された燃料棒における管状被覆(110)は炭化ケイ素、及び核燃料ペレットの核反応中に溶融する金属で形成され、核燃料ペレットと管状被覆の内壁との間のギャップを満たす金属管を含むように管状被覆内側に位置され、且つリザーバー(150)として管状被覆内部の一方の末端と金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に空間を残すように核燃料ペレットの一方の末端に密閉した金属エンドキャップ(120A)を含むように構造化された金属充填材構造体(120)を含む。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料ペレットを封入するように構成された装置であって、
核燃料ペレットを管状被覆の内側に保持するための長さ、内側断面形状、及び外側断面形状を有する中空内部を有するように構造化された管状被覆であり、炭化ケイ素を含む管状被覆と、
核燃料ペレットの核反応中に溶融する金属で形成された金属充填材構造体であり、核燃料ペレットと管状被覆の内壁との間のギャップを満たす金属管を含むように管状被覆の内側に位置され、且つ管状被覆の末端と、核ペレットの核反応中に核燃料ペレットからの核分裂ガスを蓄積する金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に位置するリザーバーとして管状被覆内部の一方の末端と金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に空間を残すように核燃料ペレットの一方の末端に密閉した金属エンドキャップを含むように構造化された金属充填材構造体とを含む、装置。
【請求項2】
管状被覆及び金属充填材が、漏出の位置で金属充填材構造体と冷却剤との化学反応により、金属酸化物で微小亀裂を満たす金属酸化物を形成することによって、管状被覆を介した微小亀裂漏出から管状被覆への冷却剤の進入を停止するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
管状被覆がモノリシックの炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
管状被覆が1種以上の炭化ケイ素セラミックマトリックス複合体を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
リザーバー内側に位置するバネ又はスペーサーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
管状被覆及び金属充填材構造体が、U
3Si
2、UN、又はUO
2を含む核燃料ペレットを含有することに好適であるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
金属充填材構造体で満たされたギャップが約50μm~約150μmの間の厚さを有するように、金属充填材構造体が構造化されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
金属充填材構造体を形成するための金属がスズ(Sn)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
金属充填材構造体を形成するための金属が、スズ(Sn)とは異なる金属を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
金属充填材構造体を形成するための金属が鉛(Pb)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
金属充填材構造体を形成するための金属がビスマス(Bi)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
金属充填材構造体を形成するための金属が周期表Sn付近に位置する金属を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
核燃料ペレットを封入するための方法であって、
核燃料ペレットと管状被覆の内壁及び管状被覆の一方の内部末端との間にギャップを有する管状被覆の内側に核燃料ペレットを保持するためにSiCを含むように構造化された管状被覆内の中空内部空間の内側に核燃料ペレットを配置するステップと、
管状被覆の内側で核燃料ペレットの核反応中に溶融し、核反応中に管状被覆の内部に密封をもたらすように核燃料ペレットと管状被覆の内壁との間のギャップを満たす金属管を含むように構造化され、且つ核燃料ペレットの核反応中、核燃料ペレットからの核分裂ガスを蓄積するためのリザーバーとして管状被覆の内壁の一方の末端と金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に空間を残すように核燃料ペレットの一方の末端に密閉した金属エンドキャップを含むように構造化された金属充填材構造体を形成するステップとを含む、方法。
【請求項14】
炭化ケイ素被覆を介して微小亀裂漏出が生じた場合、漏出位置での金属充填材構造体と冷却剤との化学反応により微小亀裂を満たす金属酸化物を形成することによって水進入が停止する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
管状被覆がモノリシックの炭化ケイ素を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
管状被覆が1種以上の炭化ケイ素セラミックマトリックス複合体を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
金属充填材構造体がスズ(Sn)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
金属充填材構造体が周期表でスズ(Sn)付近に位置する金属を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
核燃料ペレットがU
3Si
2、UN、又はUO
2を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
金属充填材構造体が、約50μm~約150μmの間の厚さを有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許文献は、2020年10月23日に米国特許商標庁(U.S.Patent and Trademark Office)において出願された米国特許出願第17/079,328号の利益及び優先権を請求する。前に記述されている特許出願の全内容は、本出願の開示の一部として参照により組み込まれている。
【0002】
本特許文献は、核燃料物質、例えば、燃料ペレットを保持するための管に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの原子炉は、核分裂連鎖反応(nuclear fission chain reactions)を介して発電する燃料として核分裂性物質(fissile material)を使用する。燃料は、普通頑丈な物理的容器内に、例えば、高い作動温度及び極度の中性子照射環境に耐えることが可能な燃料棒の内部に保持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料構造体は、これらの形状及び完全性を、ある期間にわたり(例えば数年)炉心内に維持し、これによって核分裂生成物が炉冷却材へと漏出するのを防止する必要がある。他の構造、例えば、熱交換器、ノズル、ノーズコーン、流路挿入部、又は関連する構成成分もまた高温性能、耐食性、及び特定の、非平坦な形状を必要とし、ここでは高度の寸法精度が重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本特許文献は改善された熱伝導率を提供し、核燃料物質(nuclear fuel materials)、例えば、燃料ペレットを封入するためのデバイス、システム、及び方法を開示する。
【0006】
一態様では、核燃料ペレットのスタックを封入するように構成された装置が開示される。装置は、核燃料ペレットを管状被覆の内側に保持するための長さ、内側断面形状、及び外側断面形状を有する中空内部を有するように構造化された管状被覆であり、炭化ケイ素を含む管状被覆と、核燃料ペレットの核反応中に溶融する金属で形成された金属充填材構造体であり、核燃料ペレットと管状被覆の内壁との間のギャップを満たす金属管を含むように管状被覆の内側に位置され、且つ管状被覆材料の末端と核ペレットの核反応中に核燃料ペレットからの核分裂ガスを蓄積する金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に位置するリザーバーとして管状被覆内部の一方の末端と金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に空間を残すように核燃料ペレットの一方の末端に密閉した金属エンドキャップを含むように構造化された金属充填材構造体とを含む。
【0007】
以下の特徴を様々な組合せで含むことができる。被覆材はモノリシックの(monolithic)炭化ケイ素である。被覆材はCMCである。リザーバー(reservoir)はバネ又はスペーサーを含む。内側断面形状及び外側断面形状は環状である。核燃料ペレットはU3Si2、UN、又はUO2を含む。核燃料ペレットと管状被覆の内壁との間のギャップは約50μm~約150μmの間の厚さを有する。金属はスズ(Sn)であってもよい。管状被覆及び金属充填材は、漏出の位置で、金属充填材構造体と冷却剤との化学反応により、金属酸化物で微小亀裂を満たす金属酸化物を形成することによって、管状被覆を介した微小亀裂漏出から管状被覆への冷却剤の進入を停止するように構成されている。
【0008】
別の態様では、開示された技術は、核燃料ペレットを原子炉内側に封入するための方法を提供するように実施されてもよい。本方法は、核燃料ペレットと管状被覆の内壁及び管状被覆の一方の内部末端との間に(between the nuclear fuel pellets and an interior sidewall of the tubular cladding and one interior end of the tubular cladding)連続したギャップを有する管状被覆の内側に核燃料ペレットを保持するためにSiCを含むように構造化された管状被覆内の中空内部空間の内側に核燃料ペレットを配置するステップと、管状被覆の内側で核燃料ペレットの核反応中に溶融する金属で形成され、核反応中に管状被覆の内部に密封をもたらすように核燃料ペレットと管状被覆の内壁との間のギャップを満たす金属管を含むように構造化され、且つ核ペレットの核反応中、核燃料ペレットからの核分裂ガスを蓄積するためのリザーバーとして管状被覆の内部の一方の末端と金属充填材構造体の密閉した金属エンドキャップとの間に空間を残すように核燃料ペレットの一方の末端に密閉した金属エンドキャップを含むように構造化された金属充填材構造体を形成するステップとを含む。
【0009】
上記及び他の態様及びこれらの実施は、図、説明及び特許請求の範囲においてより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】一部の例示的実施形態による例示的な核燃料集合体を示している。
【
図1B】一部の例示的実施形態による、1種以上の核燃料ペレットを有する、スズを再充填した(backfilled)炭化ケイ素(SiC)管の実施例を表している。
【
図2】1種以上の燃料ペレットを含む燃料ペレットスタックを有する、スズを再充填したSiC管の別の実施例を表している。
【
図3】一部の例示的実施形態による、スズを含む及びスズを含まないSiC被覆のX線コンピューター断層撮影(XCT)画像を示している。
【
図5】29種の元素及び様々な期間にわたるこれらの関連する核分裂収率を示している。
【
図6】一部の例示的実施形態による、スズを再充填した被覆の品質を試験するためのセットアップを表している。
【
図7】モリブデン(Mo)ペレット及びスズ結合を有するSiC管の2-DX線スキャンの実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示されたデバイス及び技術は、炭化ケイ素核燃料被覆管を、溶融した金属、例えば、溶融したスズで満たすことにより、核燃料ペレットと被覆管の壁との間の熱伝導を有意に改善する。他の非金属(炭素又はケイ素)の使用もまた可能であり得る。しかし溶融したスズの使用は炭化ケイ素被覆に特有のものである。これは、溶融したスズは一般的な金属被覆、例えば、ジルカロイを好ましくないことに腐蝕するからである。開示されたデバイスは、原子炉被覆、蓄熱及び熱抽出の構成要素、熱回収システムの構成要素、核の廃棄処理及び貯蔵を含む領域に使用される。
【0012】
原子炉に使用される核燃料材料は普通、高い作動温度及び極度の中性子照射環境に耐えることが可能な燃料棒内に保持される。燃料構造体は、長期間にわたり炉心内にこれらの形状及び完全性を維持する必要があり、これによって、核分裂生成物が炉の炉冷却材へと漏出することを防止する。
図1Aは、原子炉に使用される燃料棒101の束で形成された核燃料棒集合体100の実施例を示している。各棒は中空内部に核燃料ペレット103、例えば、ウラン含有ペレットを含有し、スペーサーグリッドを使用して、棒を集合体で保持する。炉は、作動中多くの核燃料棒集合体を保持するように作られている。一部の燃料棒は、ジルコニウム被覆を使用するが、この文献の燃料棒は性能改善のためにSiCセラミックマトリックス複合体(CMC)を使用している。
【0013】
炭化ケイ素(SiC)は、分裂と溶融の両方の用途に使用することができ、最近では軽水型原子炉のための事故耐性燃料被覆に対する候補材料として考えられている。高純度の、結晶性SiCは中性子照射下で安定した材料であり、最小限の膨潤及び40dpa以上への強度変化を生じるだけであり、これは典型的な軽水型原子炉(LWR)燃料寿命に対する何倍もの曝露を意味する。加えて、SiCは高温でその機械的特性を保持し、ジルカロイと比較して、水蒸気とゆっくりと反応し、よって冷却材流出(LOCA)及び他の潜在的事故条件において、水冷却炉に対する安全性の改善をもたらす。しかし、様々なモノリシックのSiC材料は単独で低い破壊靭性を示す傾向にあり、このような材料は、燃料格納容器が必須であり、冷却可能な形状が特に一時的又は非正常な条件下で維持されなければならない核の被覆用途には不適切である。このようなモノリシックのSiC材料のこの壊れやすい挙動に対処するために、SiCマトリックスを強化することによって、SiC-SiC複合体を形成する強い炭化ケイ素繊維を使用した、設計された(engineered)複合体構造を使用することができる。モノリシックのSiCと比較して、これら複合体は改善された破壊靭性、疑似延性を提供し、より適切な不具合プロセスをたどる。高純度の、放射線耐性がある炭化ケイ素複合体は通常化学蒸気浸透(CVI)を使用して製作される。CVIは核の用途に対して必要な純度を提供するが、非常に低い多孔性レベル(<5%)に到達することは困難である。その結果、燃料被覆内に1種以上の核分裂ガスを含有するためには、複合体単独では十分となり得ない。最終的に、頑丈なSiC-SiC複合体をモノリシックのSiC層と組み合わせるように最適化されたSiCベースの被覆構造は、高密度の、モノリシックのSiCが不透過性の核分裂ガスバリアとしての機能を果たし、改善された耐食性を提供するので、完全にSiCベースの事故耐性燃料被覆設計を達成するために最も有望な設計である。さらに、被覆と燃料ペレットとの間に溶融したギャップ充填材としてスズを使用するという開示された技術を使用して、追加の保護を達成することができる。
【0014】
様々な原子炉用途において、核反応により生じる高温において、所望の強度又は強靱性を提供することに加えて、SiCベースの燃料被覆が一連の材料特性の要件及び性能要件を満たし、照射下で安定性を示し、他の原子炉の被覆材、例えば、ジルカロイと比較して酸化が減少することが望ましい。これらの要件は主に、炭化ケイ素構造体をジルカロイ管と比較した場合の特性の差異、及び性能に対するこれらの差異から導かれる推測により主導される。具体的には、SiCベースの被覆の特性は、使用されるプロセシング経路、特に任意の繊維補強した複合体層に対するプロセシング経路に極めて依存する。加えて、SiC-SiC複合体は脆性破壊よりもむしろ擬似延性破断を受けるが、大規模な微小亀裂はこのプロセスの間に生じ、これは気密性の損失をもたらし得る。この微小亀裂は、ジルカロイ被覆ではいかなる塑性変形も依然として示さないような歪みレベルで、0.1%の範囲の歪みにおいて生じる。したがって、SiCベースの被覆設計の特徴付け及び慎重な開発に注目することが、微小亀裂を軽減し、気密性を確実にするために必要とされる。別の考慮は、炭化ケイ素はジルカロイより低い照射された熱伝導率を有するが、ジルカロイのように、LWR作動温度で照射誘発性クリープを生じず、ペレット被覆の機械的相互作用及び関連する応力を遅らせるという利点を有する。
【0015】
したがって、制御可能な被覆管の循環性、粗度、及び真直度を達成することは被覆を介した予想可能な熱伝達に対して非常に重要である。SiCベースの被覆のより低い熱伝導率は、所与の直線的な発熱率に対して、被覆を介したより高い温度勾配につながる。これらの温度勾配は、熱膨張及び照射誘発性、温度依存性膨潤により著しい応力をもたらし得る。これらの応力(及び対応する不具合の可能性)は、被覆壁の厚さを低減させ、ひいては温度勾配を低下させることにより減少させることができる。加えて、被覆構造体(複合体とモノリシックのSiC層の組合せ)は、正常な作動条件の間の被覆厚さにもかかわらず、応力分布並びに事故シナリオに有意に影響を与えることができる。慎重な設計を用いて、被覆構造内の重大な層上への応力は減少させることができる。しかし、長い燃料被覆管に対する壁の厚さの減少と、特別に設計した管構造の生産の両方に関連して、製作及び取扱い上の難題が存在する。
【0016】
軽水型原子炉におけるSiCベースの事故耐性被覆管の導入は最適化された構造の設計及び一貫した、拡張可能な製作方法の開発を必要とするばかりでなく、生成される材料の十分な理解及び特徴付けも必要とする。他の性能測定基準の中でも、機械的及び熱特性は測定しなければならず、浸透率も評価しなければならない。限られてはいるが、試験基準を集めたものはコミュニティ(ASTM C28.07セラミックマトリックス複合体サブグループ)により一般に認められおり、追加の特徴付けツールの開発が必要である。
【0017】
2018年10月12日に出願したPCT出願番号PCT/US2018/055704、表題「JOINING AND SEALING PRESSURIZED CERAMIC STRUCTURES」、及び2017年8月08日に出願したPCT/US2017/045990、表題「ENGINEERED SIC-SIC COMPOSITE AND MONOLITHIC SIC LAYERED STRUCTURES」は本特許文献で開示された技術に関係した技術的情報を含み、本特許文献の開示の一部としてこれら全体が参照により組み込まれている。
【0018】
現在、LWR被覆は、核燃料と被覆との間に熱伝達を提供するために高圧ヘリウムを含有する。燃料ペレット周辺の高圧ヘリウムの熱伝導は液体金属、例えば、スズ(Sn)よりずっと低い。一部の導入において、開示されたスズを充填したSiC被覆管は、燃料と被覆との間の熱伝導率の約200倍の改善をもたらすように構造化することができる。開示された技術のより高い効率は、燃料温度を約500摂氏温度(C又は℃)だけ減少させ、これは事故防止のためのより大きなマージンを提供する。より高い効率はまた燃料の利用を増加させ、廃棄物を減少させる。スズを充填したSiC被覆管はSiC被覆において微小亀裂を軽減するという利点を有し、これはスズ-酸化物を形成することによって、被覆への冷却剤の進入及び燃料と漏出した冷却剤との相互作用を制限する。漏出後十分な溶融スズが利用可能であれば、スズは、漏出の位置を再充填することにより、SiC被覆の自己回復をもたらす。
【0019】
軽水型原子炉(LWR)の正常作動での被覆温度は約343摂氏温度(C)である。スズの融点は232Cであり、よってLWR作動温度で液相であるため、この作動温度でスズ又はスズ共晶は適切な溶融した金属となる。
【0020】
スズを充填したSiC被覆はまた製作するのが簡単であり、圧力密封、バネ構成要素、及び製造後の被覆の内側表面の平滑化を排除することによりコストを減少させる。平滑な内側表面は燃料ペレットの安全な充填のために望ましい。スズを再充填した、燃料ペレットを含有する被覆管により、使用前(照射前(pre-irradiation))の輸送をより安全とする、燃料ペレットを保護する。照射後(Post irradiation)の利点は、スズを再充填した棒の熱伝導率の増加により、He-充填した燃料棒よりも急速な、燃料棒の冷却を含む。例えば、開示されたデバイスの実験結果では、スズを充填した燃料棒の熱伝導率が、1メートルケルビン当たり約60ワット(W/m K)へと、ヘリウムに対する約0.2W/m Kから改善したことが示されている。
【0021】
スズに加えて、低融点を有する様々な他の金属を使用して、開示された技術を実施することができる。例えば、金属、例えば、鉛(Pb)又はビスマス(Bi)など及び周期表でSn付近に位置するその他の金属を使用することができる。炉用途のための様々な燃料棒状物(rodlet)設計において、スズは棒状物漏出の事象において別の特性を有し、スズは、スズが水と反応すると、水に不溶性で、漏出を停止するために使用することができる安定した酸化スズSnO2を形成することができるという追加の利点を有する。液体金属(例えば、Sn)の再充填は、水進入に対抗する内部密封部を提供することによって、SiCセラミックマトリックス複合体(CMC)管の水不透過性を促進する。被覆にSiC被覆を介して冷却剤又は水を漏出し始める小さな穴が開いた場合、Snは冷却剤/水と反応して、漏出位置で酸化スズを形成する。酸化スズは、スズ又は被覆の温度より高い、1600Cより高い融点を有する。酸化スズは、効果的に自己回復し、又は漏出を満たし、これによって冷却剤との接触からウランシリサイドペレットを保護する。開示されたスズの再充填を使用することは、高圧He再充填に対する必要性を排除し、これによって密封プロセスを簡略化する。Sn再充填はまた輸送及び貯蔵の間ペレットを安定化する。
【0022】
開示されたSn再充填の利点は以下を含む:SnはHeより良い熱導体である、燃料ペレット及びSn再充填を含む燃料棒は最初の内部圧力を有さない(現在の高圧He再充填とは異なる)、被覆管の末端の密封は、Heが使用された場合よりも簡単である、作動中Sn再充填は気体漏出の確率を減少させる、漏出はSnの急速な酸化により回復することになる、Sn再充填した被覆管は、高圧の気体密封部を必要としないため、従来の高圧He再充填した管より単純な内部構造を有する、Sn再充填した管はいかなるバネも必要としない、燃料ペレット充填は改善される、溶融したSnは、運用システムにおいて滑沢剤としての機能を果たす、Snは輸送温度で固体であるので、輸送が容易である、ペレットは保護される。
【0023】
図1Bは、一部の例示的実施形態による、燃料ペレット130を有するスズを再充填したSiC管の実施例105を表している。燃料管105は炭化ケイ素(SiC)セラミックマトリックス複合体(CMC)、モノリシックのSiC、SiCを含む他の材料、又は他の高温セラミック若しくは材料から作製された管状被覆110を含む。管状被覆110内側の内部空間が核燃料ペレット130で満たされ、燃料ペレット130の容量又はサイズ(volume ore size)が管状被覆110の内部サイズよりも小さいことによって、管状被覆110の内壁との間のギャップが形成される。このカンギャップは、一部の燃料管設計では約50μm~約150μmであってもよい。燃料ペレット130と、管状被覆110の内側との間のギャップは適切な金属充填材構造体120、例えば、スズ(Sn)で満たされ、管状被覆110の内壁の密封(sealing)境界面が得られ、管状被覆110の亀裂が満たされ、SiC管状被覆からの燃料ペレット130との結合が得られる。金属充填材構造体120は、例示されている通り、核燃料ペレット130の最上部に近接した管状末端120Aを含むように、管状構造を形成し、管状被覆110の最上部の内部末端から距離を開けて配置されて、内部空間をリザーバー150として封入し、これによって作動中の核分裂ガスが蓄積するのが可能となる。リザーバー150は、気体に対して開かれた容量を含み、バネ及び/又はスペーサー、例えば、SiCスペーサーを含むことができる。燃料ペレットからの核分裂ガスは溶融したスズを介して拡散し、被覆管内部の圧力が平衡化するまでリザーバー150内に蓄積する。核分裂ガスが液体スズ中に蓄積し、ガス気泡を形成すると、ガス気泡はリザーバーまで浮いて漂う。
【0024】
図2は、燃料ペレットを有する、スズを再充填したSiC管の別の実施例200を表している。外層はSiC被覆であり、管の2つの末端は2つの密封モジュールで密封され、内部リザーバーは、左側の片側の内部に形成されている。被覆の内側には燃料ペレットのスタックがあり、スズ(Sn)がSnの融点232C未満の温度において、燃料ペレットスタックをSiC被覆に結合している。封入された燃料ペレットスタックは機械的に安定しており、SiC被覆及びSn結合で支持されている。
【0025】
図3は、一部の例示的実施形態に従い、Snを含む及びSnを含まないSiC CMC被覆のX線コンピューター断層撮影(XCT)画像を示している。310の画像はSiC被覆325及びモリブデン(Mo)燃料ペレット335を示すXCT画像を示しており、被覆はSnなしで、He330が再充填されている。320の画像は、SiC CMC被覆325及びモリブデン(Mo)燃料ペレット335を示すXCT画像を示しており、被覆はHeなしでSn340が再充填されている。SnがSiC CMC被覆の空隙を満たしている例示的位置は342に示されている。SnがSiC CMCの空隙を満たすことによって、熱伝導率は増強され、SiC被覆を介して微小亀裂漏出が存在する場合、漏出位置でのSnと冷却剤との反応により微小亀裂を満たすSn酸化物を形成することによって水進入は停止する。342は、Snが空隙を満たす2つの位置のみを特定しているが、画像の中の被覆の長さに沿ってその他多くの位置が存在することに注目されたい。
【0026】
図4はSnの一部の特性を示す。Snの融点及び沸点はLWRと適合性がある。
【0027】
図5は29種の元素、並びに1年、10、年、100年、及び1000年を含む様々な期間にわたるこれらの関連する核分裂収率を示す。核分裂収率の低い元素はLWRにおける使用に対して安定している元素である。Snは非常に低い核分裂収率を有し、よって再充填する核燃料ペレット管に対して良好な候補となる。
【0028】
ある導入において、モリブデン(Mo)ペレットを使用し、溶融した金属は、燃料ペレットとモノリシックのSiC被覆管の内側表面との間のギャップを完全に満たした。
【0029】
HSCシミュレーションの、エンタルピー(H)、エントロピー(S)及び熱容量(C)に基づき、SiC被覆管においていかなる液体スズ誘発腐食/反応又は腐食も生じていない。HSCシミュレーションは、少なくとも1500Cまで、二酸化ウラン(UO2)でいかなる液体スズ誘発腐食/反応も生じないことを確認している。HSCシミュレーションは、U3Si2を用いて、少なくとも1500Cまでにおいて、いかなる液体スズ誘発腐食/反応も生じず、スズがU3Si2燃料と相容性があることを確認している。
【0030】
核分裂生成物の大部分はSnと化学的に反応しない。ヨウ素(I)は反応:Sn+I2(g)=SnI2に従いSnと反応するが、核分裂ガス中に多量のセシウム(Cs)が存在するので、SnI2よりむしろCsIが形成される。よって、Iは開示された技術と適合性がある。
【0031】
上に記載されているように、燃料スタックの上の開放空間を含むリザーバーは核分裂ガスを蓄積する。核分裂ガスは、平衡に到達するまで、圧力勾配により、Snを通って拡散する。核分裂ガスは熱伝導に有意に影響を与えない。
【0032】
キセノン-135(135Xe)の生成に対していくつかの経路が存在する。第1の経路では、135Xeが、2.65E6 Barnの高い断面積を有する安定した136Xeとなることによって中性子が捕獲される。第2の経路では、半減期9.17時間で135Csへのベータ崩壊が生じる。燃料管にHeが充填されている場合、第1の経路が優先される。管に液体スズが充填されている場合、135Xeはリザーバーの位置の最上部まで泡立ち、135Xeが中性子を捕獲する機会が低下し、第2の経路が優先される。中性子制御は異なる。スズを使用して、135Xeが低い中性子密度問題を引き起すことを回避することが可能である。
【0033】
図6は、一部の例示的実施形態によるスズを再充填した被覆の品質を試験するためのセットアップを表している。チャンバー610は加熱素子650に取り囲まれている。弁616及び621は、チャンバーに連結している真空620又はチャンバーに連結している圧縮アルゴン615を制御する。チャンバー610の内側にはSiC管625があり、管625の内側にはMoペレット635及びSn630がある。グラファイト640はSiC管625の底部にある。サーモカップル645は、SiC管625の内側の温度を測定する。
【0034】
以下のステップを実施して、Sn結合を有するMo燃料ペレットを有するSiC被覆管を生成する。第1のステップでは、弁621を開け、弁616を閉めることによりチャンバー610に真空を引き込む。次に、加熱素子650がチャンバー及び内容物を350Cより高い温度に加熱して、Snを融解させる。次に、チャンバーを加圧して、液体スズをMo燃料ペレットとSiC管の内壁との間のギャップへと押し込む。
【0035】
検査は、真空レベルを調節すること、H2をArにO2ゲッターとして添加することに関与しているSn酸化を検査すること、及びSn品質を検査することを含む。検査はまたSn再充填の均一性を検査することを含む。
【0036】
図7はMoペレット及びSn結合を有するSiC管の2-DX線スキャンの実施例を示している。
図7の例示では、管は内側直径8.20mmのモノリシックのSiCである。それぞれ直径7.76mmの5つのMoペレットがある。
図6のセットアップを使用して引き込んだ真空は60mTorrであり、80psi N
2を使用し、サーモカップルの温度は500C(最低値)であり、加圧前の期間は30分間であり、加圧期間はサーモカップルが室温を計測するまでであった。2-DX線スキャンは25マイクロメートルのギャップ均一性で、ギャップにSnが充填されたことを示している。
【0037】
一部の例示的実施形態では、燃料ペレット及び金属結合を有するSiC管は、以下の製作ステップを使用して製作することができる:1)燃料ペレットを、ペレットと被覆管内径との間にスズの粒子又はストリップを有する、密封した被覆管の一方の末端に充填する;2)スズの総量が全ギャップ容量と等しくなるように、核分裂ガスリザーバー領域内のペレットの上にさらなるスズを添加する;3)管を真空/加圧チャンバーに置き、被覆管をポンプで10mTorr周辺の真空レベルにする;4)ギャップ内と最上部の両方のスズが溶融するように、管をスズ融点(230C)より上の温度に加熱する;5)真空ポンプ供給を停止し、最上部からアルゴン加圧をかけて、液体スズを下方に押し込み、ギャップを満たす;並びに6)冷却して、スズを凝固させる。一部の例示的実施形態ではペレットはMoペレットであり、金属はスズである。
【0038】
本特許文献は多くの詳細を含有するが、これらはあらゆる発明又は特許請求され得るものの範囲を制限するものと解釈されるべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特異的であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。本特許文献に、別個の実施形態の文脈で記載されているある特定の特徴はまた、単一の実施形態において、組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴はまた、多数の実施形態において別々に又はあらゆる適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴はある特定の組合せで作用すると上記に記載され、さらに最初にそのように特許請求され得るが、特許請求された組合せの1種以上の特徴は、組合せから場合によって削除することもでき、特許請求された組合せはサブコンビネーション又はサブコンビネーションの変化形を対象とすることもできる。
【0039】
同様に、作業は特定の順序で図に示されているが、これは、このような作業を示されている特定の順序又は連続的な順序で実施されなければならない、又は望ましい結果を達成するためにはすべての例示された作業が実施されなければならないと理解されるべきではない。さらに、本特許文献に記載されている実施形態の様々な構成要素の分離は、すべての実施形態においてこのような分離がなされなければならないと理解されるべきではない。
【0040】
わずかの実施及び例のみが記載されているが、他の実装の増強及び変化形は、本特許文献に記載され、例示されていることに基づき作製することができる。
【符号の説明】
【0041】
100:核燃料棒集合体,101:燃料棒,103:核燃料ペレット,105:燃料管(SiC管),110:管状被覆,120:充填材構造体,130:燃料ペレット,150:リザーバー
【国際調査報告】