(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(54)【発明の名称】微生物群集における微生物の制御
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20231127BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231127BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231127BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231127BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231127BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
C12N15/31
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12P21/02 C
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526895
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021072261
(87)【国際公開番号】W WO2022104320
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520067943
【氏名又は名称】シングロン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ガバント,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
(57)【要約】
微生物群集において分泌抗微生物ペプチドを生産する方法が記載される。本方法は、微生物群集の所望の微生物の少なくとも1つにin situで核酸を投与することを含みうる。遺伝子修飾された所望の微生物は、抗微生物ペプチドを分泌する。微生物群集が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物群集においてin situで分泌抗微生物ペプチドを生産する方法であって、以下:
所望の微生物を前記微生物群集のメンバーとして同定することと、
前記微生物群集の前記所望の微生物の少なくとも1つにin situで前記核酸を投与することであって、前記同定された所望の微生物を死滅させることもその繁殖を停止することもない抗微生物ペプチドを核酸がコードし、
それにより、前記抗微生物ペプチドを発現するように前記少なくとも1つつの所望の微生物が遺伝子修飾され、
前記遺伝子修飾された所望の微生物を前記微生物群集において成長させることであって、それにより、前記遺伝子修飾された所望の微生物が前記抗微生物ペプチドを分泌すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記所望の微生物の互いの比が、前記投与することから前記遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることまで実質的に不変のままである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターをコードする核酸が、前記少なくとも1つの所望の微生物に投与されない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物群集が、前記分泌することの前に未知アイデンティティーの1つ以上の望まれない微生物により汚染される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗微生物ペプチドが、前記1つ以上の望まれない微生物を死滅させるか又はその繁殖を停止する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗微生物ペプチドが、前記遺伝子修飾された所望の微生物の種の野生型ゲノムによりコードされない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗微生物ペプチドが、前記遺伝子修飾された微生物に対して外因性であるか、又は前記抗微生物ペプチドが合成である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸が、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドをコードする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸を投与することが、異なる抗微生物ペプチドをコードする2つ以上の異なる核酸を投与することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記異なる抗微生物ペプチドが、抗生物質耐性感染を標的とするために一緒に選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸を投与することが、以下:
前記核酸を含むプラスミドを投与すること、又は
前記核酸を含むファージを投与すること、
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記所望の微生物が、微生物の2つ以上の異なる種を含み、前記核酸が、前記異なる種の1つのみに又は2つ以上に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
異なる核酸を前記遺伝子工学操作された微生物とは異なる前記微生物群集の微生物にin situで投与することをさらに含み、前記異なる核酸が、前記核酸とは異なる抗微生物ペプチドをコードする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記異なる核酸が、前記核酸と同時に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記異なる核酸が、前記核酸とは異なる時間に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物群集が、マイクロバイオームに含まれる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロバイオームが、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌からなる群から選択されるマイクロバイオームである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物群集が、対象に対して自家性であり、前記核酸が、ex vivoで投与され、
前記方法が、前記遺伝子修飾された所望の微生物を含む前記微生物群集を前記対象に投与することをさらに含む、
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物群集が、保持健常サンプルであり、前記投与する時、前記対象が、前記対象のマイクロバイオームのディスバイオシスに罹患している、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物群集が、産業培養物に含まれる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
所望の微生物であって、前記所望の微生物の少なくとも1つは遺伝子修飾され、以下:
前記所望の微生物を標的としない第1の抗微生物ペプチドと、
前記第1の抗微生物ペプチドに対してインフレームの分泌シグナルと、
をコードする第1の核酸と、
前記第1の核酸と同一の配列を有する細胞フリーの第2の核酸と、
を含む、所望の微生物、
を含む微生物群集。
【請求項22】
前記第1の抗微生物ペプチドが、前記遺伝子修飾された所望の微生物の種の野生型ゲノムによりコードされない、請求項21に記載の微生物群集。
【請求項23】
前記第1の抗微生物ペプチドが合成である、請求項21又は22に記載の微生物群集。
【請求項24】
前記第1の抗微生物ペプチドが、前記遺伝子修飾された微生物に対して外因性である、請求項21又は22に記載の微生物群集。
【請求項25】
前記所望の微生物が、前記抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターを含まない、請求項21~24のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項26】
前記微生物群集が、未知アイデンティティーの1つ以上の望まれない微生物により汚染される、請求項21~25のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項27】
前記第1の核酸が、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドをコードする、請求項21~26のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項28】
前記遺伝子修飾された微生物が、
前記1つ以上の所望の微生物を標的としない第2の抗微生物ペプチドと、
前記第2の抗微生物ペプチドに対してインフレームの分泌シグナルと、
をコードする第3の核酸をさらに含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項29】
前記細胞フリーの第2の核酸が、プラスミド又はファージに含まれる、請求項21~28のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項30】
前記所望の微生物が、微生物の2つ以上の異なる種を含み、前記第1の核酸が、前記異なる種の1つのみ又は2つ以上に含まれる、請求項21~29のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項31】
前記微生物群集が、マイクロバイオームに含まれる、請求項21~30のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項32】
前記マイクロバイオームが、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌からなる群から選択されるマイクロバイオームである、請求項31に記載の微生物群集。
【請求項33】
前記微生物群集が、in situで対象中にある、請求項21~32のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項34】
前記微生物群集が、対象に対して自家性であり、前記対象に対してex vivoである、請求項21~32のいずれか一項に記載の微生物群集。
【請求項35】
前記微生物群集が産業培養物である、請求項21~30のいずれか一項に記載の微生物群集。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
[0001] 本願は、2020年11月10日出願の米国仮特許出願第63/112084号に基づく利益を主張する。この関連出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列リスト、表、又はコンピュータープログラムリストの参照
[0002] 本願は、電子フォーマットの配列リストを添えて出願されている。配列リストは、402,812バイトのサイズで2021年10月27日に作成及び最終保存されたSYNG007WOSEQUENCE.TXTという名称のファイルとして提供される。配列リストの電子フォーマットの情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 細菌などの微生物は、ヒト及び動物の健康に影響を及ぼすとともに、さまざまな動物器官及び組織に関連する微生物相に関与しうる。微生物媒介プロセスは、目的製品の製造のためのさまざまな産業プロセスに、たとえば、供給原料の発酵に使用可能である。そのほか、微生物は、無菌環境で製品を製造するために、たとえば、医薬品、生物製剤、及び化粧品の製造に使用可能である。
【0004】
[0004] 微生物の集団をチューニングすること、たとえば、望まれない微生物を低減又は排除することは、産業プロセスを維持するのに及び微生物を含む組織の健康を維持するのに有用でありうる。バクテリオシンなどの抗微生物ペプチドは、微生物の成長又は生存能に影響を及ぼしうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
分野
[0005] いくつかの実施形態は、微生物群集における抗微生物ペプチドの生産に関する。抗微生物ペプチドをコードする核酸は、マイクロバイオームなどの微生物群集においてin situで微生物に投与可能である。
【0006】
概要
[0006] いくつかの実施形態では、微生物群集においてin situで分泌抗微生物ペプチドを生産する方法(簡明さを期して「生産方法」ともいわれる)が記載される。生産方法は、微生物群集のメンバーとして所望の微生物を同定することを含みうる。生産方法は、微生物群集の所望の微生物の少なくとも1つにin situで核酸を投与することを含み得、ここで、同定された所望の微生物を死滅させることもその繁殖を停止することもない抗微生物ペプチドを核酸がコードする。そのため、少なくとも1つの所望の微生物は、抗微生物ペプチドを発現するように遺伝子修飾される。生産方法は、微生物群集において遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることをさらに含み得、これにより、遺伝子修飾された所望の微生物が抗微生物ペプチドを分泌する。いくつかの実施形態の生産方法では、所望の微生物の互いの比は、前記投与することから前記遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることまで実質的に不変のままである。いくつかの実施形態の生産方法では、抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターをコードする核酸は、少なくとも1つの所望の微生物に投与されない。いくつかの実施形態の生産方法では、微生物群集は、分泌することの前に未知アイデンティティーの1つ以上の望まれない微生物により汚染される。いくつかの実施形態の生産方法では、抗微生物ペプチドは、1つ以上の望まれない微生物を死滅させるか又はその繁殖を停止する。いくつかの実施形態の生産方法では、抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾された所望の微生物つの野生型ゲノムによりコードされない。いくつかの実施形態の生産方法では、抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾微生物に対して外因性であるか、又は抗微生物ペプチドは合成である。いくつかの実施形態の生産方法では、核酸は、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドをコードし、そのため、遺伝子修飾された所望の微生物細胞は、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドを発現する。いくつかの実施形態の生産方法では、核酸を投与することは、異なる抗微生物ペプチドをコードする2つ以上の異なる核酸を投与することを含む。いくつかの実施形態の生産方法では、異なる抗微生物ペプチドは、抗生物質耐性感染を標的とするために一緒に選択される。いくつかの実施形態の生産方法では、核酸を投与することは、核酸を含むプラスミドを投与すること及び/又は核酸を含むファージを投与することを含む。いくつかの実施形態の生産方法では、所望の微生物は、微生物の2つ以上の異なる種を含み、核酸は、異なる種の1つのみに又は2つ以上に投与される。いくつかの実施形態では、生産方法は、遺伝子工学操作微生物とは異なる微生物群集の微生物にin situで異なる核酸を投与することをさらに含み、異なる核酸は、核酸とは異なる抗微生物ペプチドをコードする(それゆえ、異なる微生物は、異なる抗微生物ペプチドを発現するように遺伝子修飾される)。いくつかの実施形態の生産方法では、異なる核酸は、核酸と同時に投与される。いくつかの実施形態の生産方法では、核酸とは異なる時間に投与される。いくつかの実施形態の生産方法では、微生物群集は、マイクロバイオームに含まれる。たとえば、マイクロバイオームは、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌、又は列挙されたアイテムの2つ以上の組合せからなる群から選択されるマイクロバイオームでありうる。たとえば、核酸は、対象においてin vivoで所望の微生物細胞に投与可能である。いくつかの実施形態の生産方法では、微生物群集は、対象に対して自家性であり、核酸は、ex vivoで投与される。本方法は、遺伝子修飾された所望の微生物を含む微生物群集を対象に投与することをさらに含みうる。たとえば、微生物群集は、対象の組織又は器官のマイクロバイオームを集団化又は再集団化可能である。いくつかの実施形態の生産方法では、微生物群集は保持健常サンプルであり、投与する時、対象は、対象のマイクロバイオームのディスバイオシスに罹患している。いくつかの実施形態の生産方法では、微生物群集は産業培養物に含まれる。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態では、微生物群集が記載される。微生物群集は、所望の微生物を含みうるとともに、所望の微生物の少なくとも1つは遺伝子修飾される。遺伝子修飾された所望の微生物は、所望の微生物を標的としない第1の抗微生物ペプチドをコードする第1の核酸を含みうる。そのため、遺伝子修飾された所望の微生物は、第1の抗微生物ペプチドを発現するように構成可能である。第1の核酸は、抗微生物ペプチドが発現されたときに分泌シグナルを含みうるように、たとえば本明細書に記載される第1の抗微生物ペプチドに対してインフレームで分泌シグナルをさらにコード可能である。微生物群集は、第1の核酸と同一の配列を有する細胞フリーの第2の核酸をさらに含みうる。細胞フリーの第2の核酸は、たとえば、第1の核酸が遺伝子修飾された所望の微生物にin situで投与されたことを示唆可能である。いくつかの実施形態の微生物群集では、第1の抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾された所望の微生物種の野生型ゲノムによりコードされない。いくつかの実施形態の微生物群集では、第1の抗微生物ペプチドは合成である。いくつかの実施形態の微生物群集では、第1の抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾微生物に対して外因性である。いくつかの実施形態の微生物群集では、所望の微生物は、抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターを含まない。いくつかの実施形態の微生物群集では、微生物群集は、未知アイデンティティーの1つ以上の望まれない微生物により汚染される。いくつかの実施形態の微生物群集では、第1の核酸は、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドをコードする。いくつかの実施形態の微生物群集では、遺伝子修飾微生物は、1つ以上の所望の微生物を標的としない第2の抗微生物ペプチドをコードする第3の核酸をさらに含む。第3の核酸は、第2の抗微生物ペプチドに対してインフレームで分泌シグナルをさらに含みうる。いくつかの実施形態の微生物群集では、細胞フリーの第2の核酸は、プラスミド又はファージに含まれる。いくつかの実施形態の微生物群集では、所望の微生物は、微生物の2つ以上の異なる種を含み、第1の核酸は、異なる種の1つのみ又は2つ以上に含まれる。いくつかの実施形態の微生物群集では、微生物群集は、マイクロバイオームに含まれる。たとえば、マイクロバイオームは、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌、又は列挙されたアイテムのいずれかの2つ以上の組合せからなる群から選択されるマイクロバイオームでありうる。いくつかの実施形態の微生物群集では、微生物群集は、対象においてin situである。いくつかの実施形態の微生物群集は、対象に対して自家性であり、対象に対してex vivoである(たとえば、対象の組織又は器官のマイクロバイオームの集団化又は再集団化での使用のために)。いくつかの実施形態の微生物群集では、微生物群集は産業培養物である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面の簡単な説明
【
図1】[0008]本開示のいくつかの実施形態に係る、微生物群集において分泌抗微生物ペプチドを生産する方法を示すフロー図である。
【
図2】[0009]本開示のいくつかの実施形態に係る、抗微生物ペプチドをコードする核酸により遺伝子修飾された所望の微生物と、抗微生物ペプチドをコードする核酸と同一の配列を有する細胞フリー核酸と、を含む微生物群集を示す模式図である。
【
図3】[0010]本開示のいくつかの実施形態に係る、微生物群集において分泌抗微生物ペプチドを生産する方法を示す模式フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
[0011] 本明細書には、微生物群集において分泌抗微生物ペプチドを生産する方法(本明細書では「生産方法」ともいわれうる)が提供される。一般的に言えば、生産方法は、抗微生物ペプチドをコードする核酸を微生物群中に存在する1つ以上の微生物に投与して、微生物を遺伝子修飾することを含みうる。遺伝子修飾微生物は、たとえば、汚染菌及び/又は病原体などの望まれない微生物を防御するために、抗微生物ペプチドを微生物群集の環境中に分泌可能である。抗微生物ペプチドは、抗微生物ペプチドに対して感受性のある微生物の成長を緩徐化若しくは阻害するのに又はそれを死滅させるのに十分なレベルで分泌されうる。他方では、遺伝子修飾微生物は、抗微生物ペプチドへの耐性がありうるとともに、微生物群集において分泌抗微生物ペプチドの存在下で成長及び繁殖を継続しうる。多くの微生物群集、たとえば、マイクロバイオーム若しくは産業発酵物又は食品若しくは医薬品若しくは化粧品製造環境中のものは、さまざまなタイプの微生物を特定比又は化学量論量で含有する。有利なことに、本明細書に記載の方法及び微生物群集は、in situで微生物を遺伝子修飾することにより微生物の既存の比又は化学量論量を維持可能である。さらに、微生物群集は、多くの場合、その微生物群集及びその環境に適合化された所望の特定微生物株を含有する。これらの所望の株は、簡単に同定可能であり、そのため、抗微生物ペプチドをコードする核酸を発現するための標的となりうる。しかしながら、望まれない微生物は、同定することがより困難でありうるとともに、微生物群集中に存在する時間及び位置は、未知でありうる。それゆえ、既知の微生物をin situで修飾することにより、所望の微生物をin situで具備すれば、本明細書に記載の生産方法及び微生物群集は、微生物群集において望まれない微生物の成長及び繁殖を効率的且つ確実に阻害しうる。一方、微生物群集及び環境に適合化された所望の特定微生物株は、保有可能であり、微生物群集内の微生物の化学量論量も同様でありうる。
【0010】
[0012] いくつかの実施形態の生産方法は、微生物群集において抗微生物ペプチドに対して感受性のある望ましくない微生物よりも優先的に1つ以上の所望の微生物を成長させる。微生物群集は、微生物を遺伝子修飾するために用いられる核酸によりコードされる抗微生物ペプチドを生産するように(外因性遺伝子修飾微生物を微生物群集に添加する必要がなく)遺伝子修飾された所望の微生物を含みうる。
【0011】
[0013] 本開示の実施形態によれば、微生物群集中の所望の微生物(たとえば、本明細書に記載のように遺伝子修飾された微生物)は、抗微生物ペプチドをコードする核酸をin situで微生物群集に投与することにより遺伝子修飾されうる。たとえば、核酸は、プラスミド、ファージ、染色体外アレイ、エピソーム、又はミニ染色体により投与可能である。
【0012】
[0014] 本明細書で用いられる場合、「微生物群集」は、本開示に鑑みて当業者により理解される、その通常の慣用的な意味を有する。それは、環境中に2つ以上の異なる種類の微生物を含むヘテロジニアス集団を意味する。たとえば、微生物群集は、マイクロバイオーム又は産業品若しくは化粧品若しくは医薬品製造培養物に含まれうる。微生物群集は、さまざまな属及び/又は種及び/又は同一種のさまざまな株など、さまざまな分類学的分類の微生物を含みうる。微生物群集は、たとえば、列挙された値のいずれかの2つの間の範囲を含めて、少なくとも106、107、108、109、1010、1011、又は1012個の微生物を含みうる。
【0013】
[0015] また、本明細書には、抗微生物ペプチドコード核酸が微生物群集中にも存在するようにして、抗微生物ペプチド及び抗微生物ペプチドに対してインフレームの分泌シグナルをコードする核酸を発現するように遺伝子工学操作された所望の微生物を含む微生物群集も提供される。
図2を参照すると、本開示のいくつかの非限定的実施形態は、1つ以上が核酸220で遺伝子修飾210されうる所望の微生物201を含有しうる微生物群集200を含む。核酸は、所望の微生物を標的としない抗微生物ペプチド230をコードしうる。核酸は、ペプチドが発現されたときに分泌シグナルを含むように、抗微生物ペプチドに対してインフレームの分泌シグナル240をさらにコードしうる。核酸はまた、自由に存在しうる(たとえば、微生物群集内のいずれかの細胞又は微生物区画210外にも)。微生物群集が本開示の方法により修飾される場合、所望の微生物を遺伝子修飾するために投与される核酸の少なくともいくつかは、所望の微生物に送達されなくてもよく、その代わりに、微生物群集内に細胞フリー状態で残留しうる。
【0014】
[0016] いずれかの好適な微生物群集が本開示で使用されうる。好適な微生物群集としては、限定されるものではないが、マイクロバイオーム又は産業培養物が挙げられる。いずれかの好適なマイクロバイオームが使用されうる。好適なマイクロバイオームの例としては、限定されるものではないが、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌に見いだされるものが挙げられる。
【0015】
微生物
[0017] 本明細書で用いられる場合、「微生物(microbial organism)」、「微生物(microorganism)」、及びこれらのルート語の変化形(たとえば、複数形など)は、本開示に鑑みて当業者により理解されるそれらの慣用的かつ通常の意味を有する。それらは、いずれの天然に存在する種も、完全合成原核又は真核単細胞生物も、さらには古細菌種も包含する。そのため、この用語は、細菌種、真菌種、及び藻類の細胞を意味しうる。「微生物(microbial organism)」及び「微生物(microorganism)」は、本明細書では互換的に用いられうるとともに、これらのルート語の対応する変化形も同様でありうる。
【0016】
[0018] 本明細書の実施形態に従って使用可能な好適な微生物としては、限定されるものではないが、細菌、酵母、及び藻類、たとえば光合成マイクロ藻類が挙げられる。さらに、連続自己複製能力のある合成微生物を生産するために、完全合成微生物ゲノムを合成して単一微生物細胞中に移植可能である(Gibson et al. (2010),“Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome,”Science 329:52-56(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)を参照されたい)。このため、いくつかの実施形態では、微生物は完全合成である。遺伝子発現を調節するエレメントを含む遺伝子エレメントと、遺伝子産物(たとえば、バクテリオシン、免疫モジュレーター、毒、解毒剤、及び産業上有用な分子)をコードするエレメントと、の所望の組合せを所望のシャーシ上でアセンブルし、部分又は完全合成微生物にすることが可能である。また、産業用途向け遺伝子工学操作微生物の説明は、Wright,et al. (2013)“Building-in biosafety for synthetic biology”Microbiology 159:1221-1235にも見いだされうる。
【0017】
[0019] 本明細書の実施形態に従ってさまざまな細菌種及び株を使用可能であるとともに、遺伝子修飾バリアント又は既知種の「シャーシ」に基づく合成細菌を提供可能である。本明細書の実施形態に従って使用可能である産業上適用可能な特性を有する模範的細菌としては、限定されるものではないが、バチルス属(Bacillus)種(たとえば、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、及びバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis))、パエニバチルス属(Paenibacillus)種、ストレプトマイセス属(Streptomyces)種、マイクロコッカス属(Micrococcus)種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)種、アセトバクター属(Acetobacter)種、シアノバクテリア門(Cyanobacteria)種、サルモネラ属(Salmonella)種、ロドコッカス属(Rhodococcus)種、シュードモナス属(Pseudomonas)種、ラクトバチルス属(Lactobacillus)種、エンテロコッカス属(Enterococcus)種、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種、バクテロイデス属(Bacteroides)種、アルカリゲネス属(Alcaligenes)種、クレブシエラ属(Klebsiella)種、パエニバチルス属(Paenibacillus)種、アルスロバクター属(Arthrobacter)種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)種、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)種、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、クロストリジウム・サーモセラス(Clostridium thermocellus)、並びにエシェリキア・コライ(Escherichia coli)が挙げられる。
【0018】
[0020] 本明細書の実施形態に従ってさまざまな酵母種及び株を使用可能であるとともに、遺伝子修飾バリアント又は既知種の「シャーシ」に基づく合成酵母を提供可能である。本明細書の実施形態に従って使用可能である産業上適用可能な特性を有する例示的な酵母としては、限定されるものではないが、サッカロマイセス属(Saccharomyces)種(たとえば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤナス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・ボウラルディー(Saccharomyces boulardii))、カンジダ属(Candida)種(たとえば、カンジダ・ウチリス(Candida utilis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei))、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)種(たとえば、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シゾサッカロマイセス・ジャポニカス(Schizosaccharomyces japonica)))、ピキア属(Pichia)又はハンセヌラ属(Hansenula)種(たとえば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)又はハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))、及びブレタノマイセス属(Brettanomyces)種(たとえば、ブレタノマイセス・クラウセニイ(Brettanomyces claussenii))が挙げられる。
【0019】
[0021] 本明細書の実施形態に従ってさまざまな藻類種及び株を使用可能であるとともに、遺伝子修飾バリアント又は既知種の「シャーシ」に基づく合成藻類を作り出すことが可能である。いくつかの実施形態では、藻類は、光合成マイクロ藻類を含む。バイオ燃料に有用でありうる及び本明細書の実施形態に従って使用可能な例示的な藻類種としては、ボトリオコッカス・ブラウニイ(Botryococcus braunii)、クロレラ属(Chlorella)種、デュナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、グラシラリア属(Gracilaria)種、プレウロクリシス・カルテラエ(Pleurochrysis carterae)、及びサルガサム属(Sargassum)種が挙げられる。そのほか、多くの藻類種は、食品、肥料品、廃棄物中和、環境レメディエーション、及び炭水化物製造(たとえば、バイオ燃料)に有用でありうる。
【0020】
[0022] 所望の微生物は、いずれかの好適な目的で微生物群集に有益でありうる。特定の実施形態では、所望の微生物は、たとえば、微生物群集自体の成長及び/又は維持、微生物群集が属するより大きな環境、微生物群集を使用する目的などに利益を提供する。特定の実施形態では、本開示の微生物群集は、望まれない微生物により汚染される。望まれない微生物は、いずれかの関連する理由で望ましくないものでありうる。いくつかの実施形態では、望まれない微生物は病原体である。たとえば、望まれない微生物は、微生物群集の宿主生物(たとえば、哺乳動物)(たとえば、マイクロバイオームを含む宿主)に対して病原性がありうる。いくつかの実施形態では、望まれない微生物は、微生物群集中で又はその周りで成長する生物に対して病原性がありうる。いくつかの実施形態では、望まれない微生物は、微生物群集中での所望の微生物の成長と競合する及び/又はそれに干渉する微生物である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物は、病原体、汚染菌、並びに微生物群集中の所望の微生物の成長と競合する及び/又はそれに干渉する微生物からなる群から選択される。
【0021】
核酸
[0023] 本明細書に記載のいくつかの実施形態の生産方法及び微生物群集によれば、抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、核酸、たとえば、DNA、RNA、又はこれらの組合せによりコードされる。たとえば、抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)遺伝子のDNA配列は、抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)を含む、それからなる、又はそれから本質的になるタンパク質に翻訳されるmRNA転写物をコードしうる。核酸は、1つ以上の天然に存在しないヌクレオチド、たとえば、ロック核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)などを含みうることが企図される。本明細書のいくつかの実施形態の方法及び組成物では、プロポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、微生物に送達可能であり、この微生物の染色体中に安定にインテグレート可能であるか、又はゲノムフリーで、たとえば、プラスミド、染色体外アレイ、エピソーム、ミニ染色体などに存在可能である。
【0022】
[0024] 微生物細胞の遺伝子修飾のための例示的なベクターとしては、限定されるものではないが、プラスミド、染色体外アレイ、エピソーム、ミニ染色体、ウイルス(バクテリオファージを含む)、及び転位性エレメントが挙げられる。そのほか、所望の配列を含む全微生物ゲノムを細胞で合成及びアセンブル可能であることは、理解されるであろう(たとえば、Gibson et al.(2010),Science 329:52-56を参照されたい)。このため、いくつかの実施形態では、微生物ゲノム(又はその一部分)は、所望の特徴、たとえば、バクテリオシンポリヌクレオチドを有して合成され、微生物細胞に導入される。
【0023】
[0025] いくつかの実施形態では、1つ以上の所望のバクテリオシン及び/又は免疫モジュレーターポリヌクレオチドをポリヌクレオチド配列に挿入するためのカセットが提供される(たとえば、バクテリオシンを含むプロポリペプチドをコードするカセットを発現ベクターに挿入するために)。例示的なカセットとしては、限定されるものではないが、Cre/loxカセット又はFLP/FRTカセットが挙げられる。いくつかの実施形態では、カセットは、所望のプロポリペプチドをコードする所望のポリヌクレオチドを有するプラスミドを微生物細胞に容易に導入できるように、プラスミド上に位置する。いくつかの実施形態では、カセットは、微生物細胞のゲノム中の所望の位置に位置する。
【0024】
[0026] いくつかの実施形態では、プラスミドコンジュゲーションは、所望のプラスミドを「ドナー」微生物細胞からレシピエント微生物細胞に導入するために使用可能である。Goni-Moreno,et al.(2013)Multicellular Computing Using Conjugation for Wiring.PLoS ONE 8(6):e65986(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)。たとえば、いくつかの実施形態の遺伝子修飾された所望の微生物は、抗微生物ペプチドをコードするプラスミドを微生物群集中の別の微生物に導入可能である。いくつかの実施形態では、プラスミドコンジュゲーションは、ドナー微生物細胞からレシピエント微生物細胞にコンジュゲーションプラスミドを導入することによりレシピエント微生物細胞を遺伝子修飾可能である。いかなる特定理論によっても限定されるものではないが、同一又は機能的に同一の複製遺伝子セットを含むコンジュゲーションプラスミドは、典型的には同一微生物細胞中で共存できない。このため、いくつかの実施形態では、プラスミドコンジュゲーションは、レシピエント細胞中に存在していた別のコンジュゲーションプラスミドに取って代わるように新しいコンジュゲーションプラスミドを導入することによりレシピエント微生物細胞を「再プログラムする」。いくつかの実施形態では、プラスミドコンジュゲーションは、プロポリペプチドをコードする特定核酸又はさまざまなプロポリペプチドをコードするさまざまな核酸の組合せで微生物細胞を工学操作(又は再工学操作)するために使用される。いくつかの実施形態によれば、多種多様なプロポリペプチドを含むさまざまな核酸を含むさまざまなコンジュゲーションプラスミドが提供される。プラスミドは、本明細書に記載の追加の遺伝子エレメント、たとえば、プロモーター、翻訳開始部位などを含みうる。いくつかの実施形態では、さまざまなコンジュゲーションプラスミドは、プラスミドコンジュゲーションのために所望のプラスミドを含むドナー細胞を選択できるように一群のドナー細胞で提供される。いくつかの実施形態では、バクテリオシンの特定組合せ及び/又は比が選択され、適切なドナー細胞(特定プロポリペプチドをコードする)は、その組合せを含むコンジュゲーションプラスミドをレシピエント細胞に導入するために目的微生物細胞とコンジュゲートされる。
【0025】
分泌シグナル
[0027] 抗微生物ペプチドの分泌を促進するために、抗微生物ペプチドは、好適な分泌シグナルをさらに含みうる。タクソン全体にわたる分泌系は、カノニカルにヘテロトリメリックタンパク質複合体である内在性膜トランスロケーション装置、たとえば、細菌のSecYEG複合体又は真核生物のSec61複合体又はこれらの複合体のメンバーの古細菌ホモログ、たとえば、古細菌のSecY/Sec61α及びSecE/Sec61γホモログを含めて、コア特徴を共有することが示されている(たとえば、Pohlschroder et al.,Cell 91:563-566(1997)を参照されたい)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0026】
[0028] グラム陽性、グラム陰性、又はその両方のタイプの細菌に適用可能でありうるいくつかのカノニカル細菌分泌系が記載されており、たとえば、Green et al.,Microbiol Spectr.4:doi:10.1128/microbiolspec.VMBF-0012-20 15(2016)(その全体が本願をもって参照により本明細書に組み込まれる)にレビューされている。以下に再掲されたGreenらの表1は、細菌Sec、Tat、T1SS、T2SS、T3SS、T4SS、T5SS、T6SS、SecA2、ソルターゼ、インジェクトソーム、及びT7SS分泌系の特性を浮き彫りにする。真核微生物のために、好適な分泌系も使用されうる。たとえば、酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)の分泌経路は、詳細に特徴付けられている(たとえば、Novick et al.,Cell 25:461-469(1981)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0027】
【0028】
[0029] 細胞外環境へのトランスロケーションは、シグナル配列により開始されうる。シグナル配列は、ライフドメイン全体にわたりカノニカルに保存され、例として、N末端シグナル配列は、正荷電N末端、疎水性アミノ酸残基コア、及びより極性のC末端を含みうる(Poehlschroder et al.,Cell 91:563-566(1997))。任意に、C末端シグナル配列に関しては、これらの特徴は、逆の順序でありうる。各種インフォマティクスツールは、たとえば、SignalP 5.0、Armenteros et al.,Nature Biotechnology,37,420-423(2019)(その全体が参照により組み込まれる)に記載のように、予測原核及び真核シグナル配列を同定するために利用可能である。SignalPの現在のバージョンは、ワールドワイドウェブ上のwww.cbs.dtu.dk/services/SignalPでアクセス可能である。
【0029】
[0030] 本明細書の実施形態によれば、所望の微生物は公知であり、それため、好適な分泌シグナル(関連分泌系に適合可能)を選択しうることは分かるであろう。
【0030】
抗微生物ペプチド
[0031] 本明細書で用いられる場合、「抗微生物ペプチド」(「抗微生物ペプチド」などのこれらのルート語の変化形を含む)は、本開示に鑑みて当業者により理解されうるその慣用的かつ通常の意味を有する。それは、微生物を死滅させる又はその成長を停止するペプチドクラスを意味する。抗微生物ペプチドは、微生物を標的とする無脊椎動物及び脊椎動物遺伝子産物クラスと古典的にいわれてきたが、バクテリオシンは、微生物を標的とする微生物遺伝子産物クラスと古典的にいわれてきた。しかしながら、簡潔にするために、本明細書で用いられる「抗微生物ペプチド」は、古典的抗微生物ペプチド(たとえば、微生物に対する先天性免疫活性を付与するもの)さらにはバクテリオシンを広義に包含する。そのため、好適な抗微生物ペプチドは、微生物の成長を低減若しくは阻害する又はそれを死滅させるいずれかの源に由来する(たとえば、原核生物若しくは真核生物、たとえば、哺乳動物、真菌、植物など、又は部分若しくは完全合成物に由来する)ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、無脊椎動物及び脊椎動物の自然免疫系のペプチドを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。そのため、いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、微生物を標的とする無脊椎動物及び脊椎動物遺伝子産物クラスを含む。
【0031】
[0032] 好適な抗微生物ペプチドの例は、たとえば、ワールドワイドウェブ上のaps.unmc.edu/AP/でアクセス可能な抗微生物ペプチドデータベース(Antimicrobial Peptide Database)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされうる。1000種を超える抗微生物ペプチド及びそれらのバリアントが同定及びカタログされている。抗微生物ペプチドデータベース(Antimicrobial Peptide Database)は、Wang et al. (2016), Nucleic Acids Res.44 (Database issue): D1087-D1093(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。本明細書の(たとえば、生産方法及び/又は微生物群集の)実施形態に好適な抗微生物ペプチドの例としては、バクテリオシン、抗細菌、抗ウイルス、抗HIV、抗真菌、抗寄生生物、及び抗癌ペプチド、たとえば、デルマセプチン(たとえば、デルマセプチン-B2)、アバエシン、Ct-AMP1、アンドロピン、アピダエシン、セクロピン、セラトトキシン、デルマシジン、マキシミンH5、モリシン、メリチン、マガイニン、ボンビニン、ブレビニン、エスクレチン、ブフォリン、CAP18、LL37、プロテグリン、プロフェニン、インドリシジン、タキプレシン、デフェンシン、ドロソマイシン、アウレイン1.1、ラクトフェリシンB、及びヘリオマイシン、又は列挙されたアイテムのいずれかの2つ以上の組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、バクテリオシン、デルマセプチン(たとえば、デルマセプチン-B2)、アバエシン、Ct-AMP1、アンドロピン、アピダエシン、セクロピン、セラトトキシン、デルマシジン、マキシミンH5、モリシン、メリチン、マガイニン、ボンビニン、ブレビニン、エスクレチン、ブフォリン、CAP18、LL37、プロテグリン、プロフェニン、インドリシジン、タキプレシン、デフェンシン、ドロソマイシン、アウレイン1.1、ラクトフェリシンB、及びヘリオマイシン、又は列挙されたアイテムのいずれかの2つ以上の組合せを含む。いくつかの実施形態の本開示の抗微生物ペプチドは、天然に存在する抗微生物ペプチド又はその変異体若しくはバリアント或いはそれらをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗微生物ペプチドは、天然に存在しない抗微生物ペプチド(たとえば、部分若しくは完全合成抗微生物ペプチド又はバリアント抗微生物ペプチド)或いはそれらをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗微生物ペプチドは、天然に存在しないペプチド配列又はそれらをコードする核酸である。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、列挙された値のいずれかの2つの間の範囲、たとえば、70%~99%、75%~99%、80%~99%、85%~99%、90%~99%、95%~99%、97%~99%、70%~95%、75%~95%、80%~95%、85%~95%、90%~95%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、及び85%~90%を含めて、参照抗微生物ペプチド(たとえば、デルマセプチン-B2、アバエシン、Ct-AMP1、アンドロピン、アウレイン1.1、ラクトフェリシンB、若しくはヘリオマイシン、又は配列番号4~450(偶数)及び699~737(奇数)のいずれか)に対して少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。かかる抗微生物ペプチドは、「バリアント」抗微生物ペプチドといわれうる。パーセント同一性は、デフォルトパラメーターでBLASTソフトウェア(Altschul,S.F., et al. (1990)“Basic local alignment search tool.”J. Mol. Biol. 215:403-410、ワールドワイドウェブ上のblast.ncbi.nlm.nih.govでアクセス可能)を用いて決定されうる。
【0032】
[0033] いくつかの実施形態では、本開示の抗微生物ペプチドは、バクテリオシンを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。本明細書で用いられる場合、「バクテリオシン」及びこのルート語の変化形は、本開示に鑑みて当業者により理解されるその慣用的かつ通常の意味を有する。それは、宿主細胞及び他の微生物細胞にクローナルに関連する細胞を含めて、宿主細胞により分泌される、及びポリペプチドが作製される個別宿主細胞以外の少なくとも1つの細胞を中和可能な、ポリペプチドを意味する。特定「免疫モジュレーター」(本明細書でより詳細に考察される)を発現する細胞は、特定バクテリオシン又はバクテリオシングループの中和作用に免疫がある。このため、バクテリオシンは、細胞が適切な免疫モジュレーターを産生しない限り、バクテリオシンを産生する細胞及び/又は他の微生物細胞を中和可能である。このため、宿主細胞は、バクテリオシンを分泌することにより複数の他の微生物に細胞傷害効果又は成長阻害効果を発揮可能である。バクテリオシン例は、配列番号4~450(偶数)及び699~737(奇数)に示される。これらのバクテリオシンをコードする核酸例は、配列番号5~451(奇数)及び700~738(偶数)として提供される。微生物細胞の成長を制御すべくバクテリオシンを使用するための方法及び組成物を含めて、バクテリオシンの詳細な説明は、たとえば、米国特許第9,333,227号(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)に見いだされうる。「バクテリオシン」は、ポリペプチドの起源により限定されるものではなく、例として、天然に存在するバクテリオシン、合成バクテリオシン、それらのバリアントや組合せなど、いずれのバクテリオシンも包含することが企図される。好適なバクテリオシンの例は、本明細書に詳細に記載される。
【0033】
[0034] バクテリオシンの多くは天然に存在するが(たとえば、配列番号4~450(偶数)及び699~737(奇数)に示される天然に存在するバクテリオシン)、本明細書に記載の方法、システム、及びキットのいくつかの実施形態では、バクテリオシンが配列番号4~450(偶数)及び699~737(奇数)のバクテリオシン及びコードヌクレオチド配列以外の天然に存在するバクテリオシン或いは天然に存在しないバクテリオシン若しくは合成バクテリオシン(たとえば、工学操作バクテリオシン)又はそれらのバリアント(これらはまた、いくつかの実施形態の工学操作バクテリオシンの一種でありうる)を含むことは、当業者であれば理解できるであろう。いくつかの実施形態では、工学操作バクテリオシンは、野生型バクテリオシンと比べて、同一又は異なる微生物又は微生物種に対する細胞傷害活性又は成長阻害活性のレベルを増強又は減少させた。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド(又はバクテリオシン)は、ランチバイオティックを含まない。
【0034】
[0035] いくつかのモチーフは、バクテリオシンの特性として認識されている。たとえば、モチーフYGXGV(配列番号2)(式中、Xはいずれかのアミノ酸残基である)は、クラスIIaバクテリオシンに特有のN末端コンセンサス配列である。それゆえ、いくつかの実施形態では、候補(又はバリアント)バクテリオシン(たとえば、工学操作バクテリオシン)は、配列番号2又はそのバリアントに対して少なくとも約50%の同一性を有するN末端配列を含む。いくつかの実施形態では、候補(又はバリアント)バクテリオシン(たとえば、工学操作バクテリオシン)は、配列番号2を含むN末端配列を含む。そのほか、いくつかのクラスIIbバクテリオシンは、GxxxGモチーフを含む。いかなる特定理論によっても限定されるものではないが、GxxxGモチーフは、たとえば、細胞膜相互作用を介してバクテリオシン媒介中和を促進するために、細胞膜中のヘリカルタンパク質間の会合を媒介可能であると考えられる。このため、いくつかの実施形態では、バクテリオシン(たとえば、工学操作バクテリオシン)は、細胞膜との相互作用を促進するモチーフを含む。いくつかの実施形態では、バクテリオシンはGxxxGモチーフを含む。任意に、GxxxGモチーフを含むバクテリオシンは、ヘリカル構造を含むことが可能である。本明細書に記載の構造に加えて、本明細書で用いられる「バクテリオシン」はまた、本明細書に明示的に提供されるバクテリオシンのいずれかと実質的に同一の効果を微生物細胞に及ぼす構造を包含する。
【0035】
[0036] いくつかのバクテリオシンは、同定及び特徴付けされている。理論により限定されるものではないが、例示的なバクテリオシンは、典型的に翻訳後修飾を受ける「クラスI」バクテリオシン及び典型的に非修飾である「クラスII」バクテリオシンとして分類可能である。バクテリオシンの分類に関する追加情報は、Cotter, P.D. et al.“Bacteriocins- a viable alternative to antibiotics”Nature Reviews Microbiology (2013) 11: 95-105(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされうる。
【0036】
[0037] いくつかのバクテリオシンは、本明細書の実施形態に従って使用可能である。バクテリオシンの例は、配列番号4~450(偶数)及び699~737(奇数)に示される。これらのバクテリオシンをコードする核酸の例は、配列番号5~451(奇数)及び700~738(偶数)として提供される。微生物細胞の成長を制御すべくバクテリオシンを使用するための方法及び組成物を含めて、バクテリオシン及びバクテリオシンをコードするいくつかのポリヌクレオチド配列の詳細な説明は、たとえば、米国特許第9,333,227号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされうる。好適なバクテリオシンのいくつかの例は、米国特許第9,333,227号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の表1.2に教示される。「バクテリオシン」は、ポリペプチドの起源により限定されるものではなく、例として、天然に存在するバクテリオシン、合成バクテリオシン、それらのバリアントや組合せなど、いずれのバクテリオシンも包含することが企図される。好適なバクテリオシンの例は、本明細書に詳細に記載される。
【0037】
[0038] いくつかの抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、細胞傷害活性(たとえば、「殺細菌」効果)を有するので、微生物、たとえば、細菌、酵母、藻類、合成微生物などを死滅させることが可能である。いくつかの抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、たとえば、細胞周期を停止することにより、微生物、たとえば、細菌、酵母、藻類、合成微生物などの繁殖を阻害可能である(たとえば、「静細菌」効果)。理論により限定されるものではないが、バクテリオシンは、さまざまな方法で標的微生物細胞の中和を行うことが可能である。たとえば、バクテリオシンは、細胞壁を透過化することにより、細胞壁を脱分極したり呼吸に干渉したりすることが可能である。
【0038】
[0039] 「抗生物質」及びこのルート語の変化形は、本開示に鑑みて当業者により理解されるその慣用的かつ通常の意味を有する。それは、少なくとも1つの微生物細胞を死滅させる又はその成長を停止することが可能な代謝物又は代謝経路の中間体を意味する。いくつかの抗生物質は、微生物細胞、たとえば、細菌により産生可能である。いくつかの抗生物質は、化学合成可能である。少なくとも、バクテリオシンが遺伝子産物(いくつかの実施形態では追加の翻訳後プロセシングを受ける)又はその合成アナログを意味し、一方、抗生物質が代謝経路の中間体若しくは産物又はそれらの合成アナログを意味するという点で、バクテリオシンは、抗生物質とは異なるものと理解される。
【0039】
[0040] いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、翻訳後修飾、たとえば、切断又は1個以上の官能基の付加を受けたポリペプチドを含む。
【0040】
[0041] いくつかの実施形態では、2つ以上の抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)又はその一部分を含む融合ポリペプチドは、2つ以上の抗微生物ペプチド又はその一部分の個別抗微生物ペプチドのどちらよりもより広範囲にわたる微生物に対する中和活性を有する。たとえば、ハイブリッド抗微生物ペプチドは、病原グラム陽性及びグラム陰性細菌に対する抗微生物活性を提示することが示されている(Acuna et al. (2012), FEBS Open Bio, 2: 12-19)。Ent35-MccV融合バクテリオシンは、N末端からC末端に向かって、N末端グリシン、エンテロシンCRL35、3つのグリシンを含むリンカー、及びC末端マイクロシンVを含むことに留意されたい。
【0041】
[0042] 抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、2つ以上のポリペプチド、たとえば、抗微生物(たとえば、バクテリオシン)活性を有する2つ以上のポリペプチドの融合体を含みうることが、本明細書では企図される。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド又は候補抗微生物ペプチドは、キメリックタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、バリアント抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)又は工学操作抗微生物ペプチド(たとえば、工学操作バクテリオシン)は、2つ以上の抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)を含む融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、バリアント抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)又は工学操作抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、2つ以上の抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)を含むキメリックタンパク質又はそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、融合体の2つ以上の抗微生物ペプチドは、配列番号4~450(偶数)及び699~737(奇数)のポリペプチド及び又は配列番号5~451(奇数)及び700~738(偶数)の核酸によりコードされたポリペプチド、又はそれらのバリアント若しくは修飾体を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、個別抗微生物ペプチドのどちらよりも広範な活性スペクトルを有し、たとえば、より多くの微生物に対する中和活性、より広範囲にわたる環境条件下での中和活性、及び/又はより高効率の中和活性を有する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の抗微生物ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の抗微生物ペプチドポリペプチドは、共有結合、たとえば、ペプチド連結を介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、融合ポリペプチドの2つの個別抗微生物ポリペプチド間に位置する。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つ以上のグリシン、たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のグリシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、融合タンパク質に含まれる個別抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)を産生するために細胞内で切断される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるバリアント抗微生物ペプチド(たとえば、バリアントバクテリオシン)又は工学操作抗微生物ペプチド(たとえば、工学操作バクテリオシン)は、非修飾又は候補抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)と比べて所望の活性スペクトルを提供するように修飾を含む。たとえば、バリアント抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)又は工学操作抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、非修飾又は候補抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)と同一の生物に対して増強又は減少された活性を有しうる。代替的に、修飾抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)は、非修飾又は候補抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシン)がより低活性又は無活性を有する生物に対して増強された活性を有しうる。
【0042】
[0043] いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドの特定中和活性又は活性範囲(たとえば、細胞傷害性又は微生物繁殖停止)は、望まれる抗微生物調節のタイプ及び標的となる微生物の特定分類カテゴリー、種、又は株に基づいて選択される。このため、いくつかの実施形態では、特定抗微生物ペプチド又は抗微生物ペプチドの組合せが選択される。たとえば、いくつかの実施形態では、所望の微生物は、調節される望まれない微生物に基づいて特定抗微生物ペプチドを発現するように工学操作される。いくつかの実施形態では、たとえば、汚染性の望まれない微生物を死滅させるべきである場合、少なくとも1つの細胞傷害性抗微生物ペプチド(たとえば、細胞傷害性バクテリオシン)が提供される。いくつかの実施形態では、特定培養物、マイクロバイオーム、特定地理的位置、又は特定地理的位置若しくは産業培養物で成長された特定培養物タイプに通常存在する汚染菌に対して有効なバクテリオシン又はバクテリオシンの組合せが選択される。いくつかの実施形態、たとえば、微生物細胞比の調節が望まれる実施形態では、微生物繁殖を阻害する抗微生物ペプチドが提供される。理論により限定されるものではないが、多くのバクテリオシンは、バクテリオシンを産生する種と同一の生態学的ニッチを典型的に占有する微生物に対する中和活性を有しうる。このため、いくつかの実施形態では、特定抗微生物ペプチド活性スペクトルが望まれるとき、バクテリオシンは、バクテリオシンの標的となる微生物又は生物と同一(又は類似)の生態学的ニッチを占有する宿主種から選択される。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドの特定組合せ及び/又は比は、単一微生物を標的とするように選択される(そのタイプの1つ以上の微生物、たとえば、クローナルに関連する微生物を標的とすることを含みうる)。たとえば、特定タイプの微生物は、抗微生物ペプチドのあらかじめ決められた混合物及び/又は比により、単一抗微生物ペプチドによるよりも効率的に標的とされうる。
【0043】
[0044] たとえば、いくつかの実施形態では、抗真菌活性(たとえば、抗酵母活性など)が抗微生物ペプチドに望まれる。抗真菌活性を有するいくつかのバクテリオシンは、同定されている。たとえば、バチルス属(Bacillus)由来のバクテリオシンは、酵母株に対する中和活性を有することが示されており(Adetunji and Olaoye (2013) Malaysian Journal of Microbiology 9: 130-13(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)を参照されたい)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)ペプチド(WLPPAGLLGRCGRWFRPWLLWLQ SGAQY KWLGNLFGLGPK、配列番号1)は、カンジダ属(Candida)種に対する中和活性を有することが示されており(Shekh and Roy (2012) BMC Microbiology 12: 132(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)を参照されたい)、及びシュードモナス属(Pseudomonas)由来のバクテリオシンは、真菌、たとえば、クルブラリア・ルナタ(Curvularia lunata)、フザリウム属(Fusarium)種、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)種、及びバイポラリス属(Biopolaris)種に対する中和活性を有することが示されている(Shalani and Srivastava (2008) The Internet Journal of Microbiology. Volume 5 Number 2. DOI: 10.5580/27dd - ワールドワイドウェブのarchive.ispub.com/journal/the-internet-journal-of-microbiology/volume-5-number-2/screening-for-antifungal-activity-of-pseudomonas-fluorescens-against-phytopathogenic-fungi.html#sthash.d0Ys03UO.1DKuT1US.dpuf(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)でアクセス可能)。例として、B.サブチリス(B. subtilis)由来のボトリシジンAJ1316(Zuber, P et al. (1993) Peptide Antibiotics. In Bacillus subtilis and Other Gram-Positive Bacteria: Biochemistry, Physiology、及びMolecular Genetics ed. Sonenshein et al., pp. 897-916, American Society for Microbiology(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)を参照されたい)及びアリリンB1(Shenin et al. (1995) Antibiot Khimioter 50: 3-7(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)を参照されたい)は、抗真菌活性を有することが示されている。このため、いくつかの実施形態、たとえば、真菌微生物の中和が望まれる実施形態では、バクテリオシンは、ボトリシジンAJ1316又はアリリンB1の少なくとも1つを含む。
【0044】
[0045] たとえば、いくつかの実施形態では、特定微生物群集の培養物中の抗微生物ペプチド活性が望ましく、抗微生物ペプチドは、所望の微生物とは異なる望まれない微生物を死滅させるために又はその成長を停止するために、あらかじめ決められたカクテル及び/又は比で選択される。所望の微生物により典型的に産生されるバクテリオシンは、所望の微生物がこうしたバクテリオシンに対する関連免疫モジュレーターをすでに産生可能であるので、又は免疫モジュレーターを産生するように簡単に工学操作可能であるので、選択可能である。このため、選択されたバクテリオシンは、所望の微生物の中和をほとんど又はまったく引き起こさずに、望まれない微生物細胞(微生物集団中にまだ存在しない望まれない微生物細胞を含む)を標的とすることが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、シアノバクテリアを保持しつつ、シアノバクテリア培養環境中に典型的に見いだされる侵入性微生物を中和するために、特定比で選択される。保存されたバクテリオシンポリペプチドのクラスターは、多種多様なシアノバクテリア種で同定されている。たとえば、少なくとも145種の推定バクテリオシン遺伝子クラスターは、Wang et al. (2011), Genome Mining Demonstrates the Widespread Occurrence of Gene Clusters Encoding Bacteriocins in Cyanobacteria. PLoS ONE 6(7): e22384(その全体が本願をもって参照により組み込まれる)に報告されるように、少なくとも43種のシアノバクテリア種で同定されている。模範的シアノバクテリアバクテリオシンは、配列番号420、422、424、426、428、430、432、434、436、438、440、442、444、446、448、及び450に示される。
【0045】
[0046] いくつかの実施形態では、1つ以上の抗微生物ペプチド活性が選択され、所望の化学量論量で抗微生物ペプチドを含むプロポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態の抗微生物ペプチドは、1つ以上の抗微生物ペプチド配列を含む及び個別抗微生物ペプチドを産生するために切断可能であるプロポリペプチド中で最初に産生可能である。プロポリペプチドは、切断されると抗微生物ペプチドが特定化学量論量で存在するようなコピー数の個別抗微生物ペプチドを含みうる。このため、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドの混合物は、所望の比又は化学量論量で産生されることが可能である。所望の比及び所望の化学量論量で抗微生物ペプチドを作製する方法は、たとえば、PCT国際公開第2019/046577号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。いくつかの実施形態では、プロポリペプチドは、微生物細胞の翻訳機構(たとえば、リボソームなど)により産生される。プロポリペプチドは、抗微生物ペプチド自体のポリペプチドを産生するために切断(たとえば、天然に存在するプロテアーゼや合成プロテアーゼなどの切断酵素によるプロセシング)を受けることが可能である。このため、いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、前駆体ポリペプチドから産生される。プロポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえば、核酸合成及び/又は分子クローニングを用いて調製可能であり、プロポリペプチドを産生するために使用可能である。
【0046】
[0047] いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド(及びその比)は、特定培養物中で成長を試みるおそれのある1つ以上の侵入性生物を中和するその能力に基づいて選択されうる。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド(及びその比)は、環境中、たとえば、産業用供給原料中、又は発酵槽中、又は食品、医薬品、若しくは化粧品製造環境中、又は組織環境、たとえば、消化管若しくは皮膚マイクロバイオーム中の特定有用微生物株の成長を限定するその能力、或いは植物、植物根、及び/又は土壌中の微生物集団を維持又はチューニングするその能力、或いは食品、薬剤、又は化粧品の品質を保持又は維持するその能力に基づいて選択されうる。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗微生物ペプチド活性(及び/又は比)は、既存の環境中の1つ以上の微生物株又は微生物株集団に基づいて選択される。たとえば、いくつかの実施形態では、特定インベーダークラス又は推定インベーダーが環境中で同定された場合、中和性抗微生物ペプチドのカクテル(及びその比)は、同定されたインベーダーを中和するように選択可能である。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドは、環境中の微生物細胞のすべて又は実質的にすべてを中和するために、たとえば、新しい産業培養物を培養環境に導入できるように培養環境中の産業培養物を排除するために、又は医薬品若しくは化粧品製造環境の汚染を予防若しくは阻害するために、又は食品、薬剤、若しくは化粧品の汚染若しくは腐敗を予防若しくは最小化するために、選択される。
【0047】
免疫モジュレーター
[0048] いくつかの実施形態では、特定免疫モジュレーター又は特定免疫モジュレーター組合せは、特定抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシンなど)、特定抗微生物ペプチドクラス若しくはカテゴリー、又は特定抗微生物ペプチド組合せに対する免疫を付与する。免疫モジュレーターが免疫を付与可能な例示的な抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシンなど)は、米国特許第9,333,227号の表2に同定されている。免疫モジュレーター配列例としては、たとえば、配列番号452~540(偶数)及び配列番号453~541(奇数)のいずれかが挙げられる。
【0048】
[0049] 米国特許第9,333,227号の表2及び本配列リストには、例示的な免疫モジュレーターの「起源生物」が同定されているが、これらの免疫モジュレーターは、本明細書のいくつかの実施形態に従って所望の抗微生物ペプチド免疫活性を提供するために、他の天然に存在する、遺伝子修飾された、又は合成の微生物において容易に発現可能である。このため、本明細書で用いられる場合、「免疫モジュレーター」は、本開示に鑑みて当業者により理解されるその慣用的かつ通常の意味を有し、本明細書に明示的に提供される構造だけでなく、完全合成免疫モジュレーター及び本明細書に開示される抗微生物ペプチドに機能的に等価な抗微生物ペプチド(たとえば、バクテリオシンなど)に対する免疫を提供する免疫モジュレーターを含めて、本明細書に記載の「免疫モジュレーター」構造と実質的に同一の効果を有する構造もまた意味する。
【0049】
[0050] 配列番号452~540(偶数)のポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチド配列は、配列番号453~541(奇数)に示される。遺伝暗号は縮重しており、そのうえ、コドン使用頻度は、遺伝子産物が発現されている特定生物に基づいて変動可能であり、そのため、特定ポリペプチドは、1つ以上のポリヌクレオチドによりコード可能であることは、当業者であれば容易に理解されよう。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド免疫モジュレーターをコードするポリヌクレオチドは、抗微生物ペプチド免疫モジュレーターを発現する生物のコドン使用頻度に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチド免疫モジュレーターをコードするポリヌクレオチドは、抗微生物ペプチド免疫モジュレーターを発現する特定生物に基づいてコドン最適化される。
【0050】
[0051] 莫大な範囲の機能免疫モジュレーターが、本明細書に開示される免疫モジュレーターの特徴を取り込むことが可能であり、そのため、配列番号452~540(偶数)の免疫モジュレーターに対して莫大な程度の同一性が提供される。いくつかの実施形態では、免疫モジュレーターは、米国特許第9,333,227号の表2のポリペプチドのいずれか1つに対して少なくとも約50%の同一性、たとえば、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性又は上記値のいずれか2つにより規定される範囲の同一性を有する。
【0051】
プロモーター
[0052] プロモーターは、当技術分野で周知である。プロモーターは、1つ以上の遺伝子の転写を駆動するために使用可能である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、本明細書に記載の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動する。いくつかの実施形態では、プロモーターは、2つ以上の本明細書に記載の抗微生物ペプチドを含むプロポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動する。いくつかの実施形態では、プロモーターは、本明細書に記載の免疫モジュレーターポリヌクレオチドの発現を駆動する。いくつかの実施形態では、プロモーターは、本明細書に記載の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動するが、微生物細胞は、1つ以上のこれらの抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターを発現しない(たとえば、細胞は、免疫モジュレーターの転写を駆動するプロモーターを欠如可能であるか、又は免疫モジュレーターをコードする核酸を欠如可能である)。いくつかの実施形態では、プロモーターは、微生物細胞中で2つ以上の抗微生物ペプチドを含むプロポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動するが、微生物細胞は、1つ以上のこれらの抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターを発現しない(たとえば、細胞は、免疫モジュレーターの転写を駆動するプロモーターを欠如可能であるか、又は免疫モジュレーターをコードする核酸を欠如可能である)。いくつかのプロモーターは、いつでも転写を駆動可能である(「構成的プロモーター」)。いくつかのプロモーターは、たとえば、環境条件の存在又は不在、化学化合物、遺伝子産物、細胞周期のステージなどに依存して、選ばれた状況下でのみ転写を駆動可能である(「条件的プロモーター」)。
【0052】
[0053] 所望の発現活性に依存して適切なプロモーターを選択し、発現される核酸配列に対してシスに配置可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。例示的な活性を有して本明細書のいくつかの実施形態に有用な例示的なプロモーターは、本明細書の配列番号544~698に提供される。いくつかプロモーターが特定転写機構(たとえば、RNAポリメラーゼ、一般的転写因子など)に適合可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。このため、本明細書に記載のいくつかのプロモーターに適合可能な「種」が同定されるが、いくつかの実施形態では、これらのプロモーターは、同定された種以外の微生物、たとえば、適合可能な内因性転写機構を有する種、適合可能な転写機構を含む遺伝子修飾種、又は適合可能な転写機構を含む完全合成微生物で簡単に機能可能であることが企図される。
【0053】
[0054] 本明細書の配列番号544~698のプロモーターは、Biobricks財団から一般公開されている。Biobricks財団は、BioBrick(商標)Public Agreement(BPA)に準拠したこれらのプロモーターの使用を奨励していることに留意されたい。配列番号544~698のプロモーターは、非限定的例としてのみ提供される。以上で参照されたプロモーターの多くのバリアント及び多くの他のプロモーター(天然に存在する生物から単離されたプロモーター、そのバリエーション、及び完全合成プロモーターを含む)を本明細書のいくつかの実施形態に従って簡単に使用可能であることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0054】
[0055] 本明細書に記載の「コーディング」ポリヌクレオチドはいずれも(たとえば、抗微生物ペプチドポリヌクレオチド、免疫ポリヌクレオチド、又は2つ以上の抗微生物ペプチドを含むプロポリペプチドをコードするヌクレオチド)、所望のプロモーターの制御下で一般に発現可能であることが、認識されるべきである。いくつかの実施形態では、単一「コーディング」ポリヌクレオチドは、単一プロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、2つ以上の「コーディング」ポリヌクレオチド、たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10つのポリヌクレオチドは、単一プロモーターの制御下にある。
【0055】
[0056] 一般に、特定転写物の翻訳開始は、転写物のコード配列の5’末端又はその5’側の特定配列により調節される。たとえば、コード配列は、イニシエーターtRNAに対合するように構成された開始コドンから始まりうる。天然に存在する翻訳系は、開始コドンとしてMet(AUG)を典型的に使用するが、イニシエーターtRNAは、いずれかの所望の1つ又は複数のトリプレットに結合するように工学操作可能であり、それゆえ、AUG以外のトリプレットもまた、いくつかの実施形態で開始コドンとして機能可能であることは、容易に分かるであろう。そのほか、開始コドンの近くの配列、たとえば、コザック配列(gcc)(gccRccAUGG、配列番号542、ここでRは「A」又は「G」を表す)、又は典型的真核翻訳系の内部リボソーム進入部位(IRES)、又は典型的原核翻訳系のShine-Dalgarno配列(GGAGGU、配列番号543)は、リボソームアセンブリーを促進可能である。このため、いくつかの実施形態では、「コーディング」ポリヌクレオチド配列、たとえば、抗微生物ペプチドポリヌクレオチド又は免疫ポリヌクレオチド、又は2つ以上の抗微生物ペプチドを含むプロポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む転写物は、適切な開始コドン及び翻訳開始配列を含む。いくつかの実施形態では、たとえば、2つ以上の「コーディング」ポリヌクレオチド配列が転写物上にシスに位置する場合、各ポリヌクレオチド配列は、適切な開始コドン及び翻訳開始配列を含む。いくつかの実施形態では、たとえば、2つ以上の「コーディング」ポリヌクレオチド配列が転写物上にシスに位置する場合、2つの配列は、単一翻訳開始配列の制御下にあり、及びどちらも、両方のコードポリペプチドをシスに有して機能可能な単一ポリペプチドを提供する。
【0056】
微生物群集においてin situで分泌抗微生物ペプチドを生産する方法
[0057] いくつかの実施形態では、微生物群集においてin situで分泌抗微生物ペプチドを生産する方法(簡明さを期して「生産方法」ともいわれる)が記載される。本方法は、所望の微生物を死滅させることもその繁殖を停止することもない抗微生物ペプチドを核酸がコードするようにして、微生物群集の少なくとも1つの所望の微生物にin situで核酸を投与することを含みうる。そのため、所望の微生物は、抗微生物ペプチドを発現するように構成可能である。本方法は、抗微生物ペプチドを分泌するように、遺伝子修飾された所望の微生物を群集中で成長させることを含みうる。
【0057】
[0058]
図1を参照すると、いくつかの非限定的実施形態に係る、微生物群集においてin situで分泌抗微生物ペプチドを生産する方法(「生産方法」)のフロー
図100が示される。生産方法は、所望の微生物を微生物群集(たとえば、マイクロバイオーム又は産業培養物中の微生物群集)のメンバーとして同定すること110を含みうる。生産方法は、同定された所望の微生物を死滅させることもその繁殖を停止することもない抗微生物ペプチドを核酸がコードするようにして、微生物群集の所望の微生物の少なくとも1つにin situで核酸を投与することを含みうる。それゆえ、少なくとも1つの所望の微生物は、抗微生物ペプチドを発現するように遺伝子修飾される120。たとえば、遺伝子修飾された所望の微生物は、本明細書に記載のようにプロモーターの制御下に抗微生物ペプチドをコードする核酸を含みうる。ブロック130に目を向けると、生産方法は、遺伝子修飾された所望の微生物が抗微生物ペプチドを分泌するようにして、微生物群集において遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることを含みうる。抗微生物ペプチドは、抗微生物ペプチドに対して感受性のあるいずれかの微生物を微生物群集において死滅させうるか又はその成長を停止しうる。所望の微生物は、遺伝子修飾された所望の微生物を含めて、抗微生物ペプチドの抗微生物効果への耐性がありうる。たとえば、抗微生物ペプチドがバクテリオシンを含む場合、遺伝子修飾された所望の微生物は、バクテリオシンに対する免疫モジュレーターを生産しうる。例として、微生物群集は、対象のマイクロバイオームでありうるとともに、核酸は、in vivoで送達されうる。例として、微生物群集は、対象のマイクロバイオームのサンプル中にありうるとともに、核酸は、ex vivoで送達されうるうえに、遺伝子修飾された所望の微生物を含むマイクロバイオームは、対象の組織又は器官にコロニー化(又は再コロニー化)するために、たとえば、ディスバイオシスのマイクロバイオームを置き換えるために対象に投与されうる。本明細書に記載の生産方法は、微生物群集中(たとえば、マイクロバイオーム中)のいずれかの微生物を望まれない微生物に対する抗微生物性を有するプロバイオティックに変換可能であることが企図される。
【0058】
[0059] 本明細書に記載の抗微生物ペプチドをコードする核酸を投与するために、いくつかの好適な技術を使用しうる。抗微生物ペプチドをコードする核酸はまた、「抗微生物ペプチド核酸」ともいわれうる。いくつかの実施形態の生産方法及び組成物では、微生物は、本明細書に記載の1つ以上の抗微生物ペプチドをコードする及びその発現能力のある核酸配列を含むように遺伝子修飾される。
【0059】
[0060] 本明細書のいくつかの実施形態の生産方法及び組成物では、1つ以上の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、微生物に送達可能であり、及びこの微生物の染色体中に安定にインテグレート可能であるか、又はゲノムフリーで、たとえば、プラスミド、染色体外アレイ、エピソーム、ミニ染色体などに存在可能である。核酸の分子クローニング及び微生物中への導入の技術は、たとえば、Green and Sambrook, ”Molecular Cloning:A Laboratory Manual,” 4th edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012に記載されている。
【0060】
[0061] いくつかの実施形態では、生産方法は、所望の微生物を微生物群集のメンバーとして同定することを含む。たとえば、微生物群集又はその培養物のサンプルは、微生物群集中の微生物を同定するために、16Sシーケンシングなどの核酸シーケンシングに付すことが可能である。たとえば、所望の微生物は、微生物群集の所望の特性、たとえば、目的化合物の発酵又は代謝に基づいて選択可能である。生産方法は、微生物群集の所望の微生物の少なくとも1つにin situで核酸を投与することをさらに含みうる。核酸は、同定された所望の微生物を死滅させることもその繁殖を停止することもない抗微生物ペプチドをコード可能である。抗微生物ペプチドは、本明細書に記載の通りでありうる。そのため、所望の微生物(又は生物)は、抗微生物ペプチドを発現するように遺伝子修飾される。たとえば、抗微生物をコードする核酸は、所望の微生物においてプロモーターに作動可能に連結可能である。本方法は、遺伝子修飾された所望の微生物が抗微生物ペプチドを分泌するように、微生物群集において遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることをさらに含みうる。いくつかの実施形態の生産方法では、抗微生物ペプチドに対する免疫の欠如した望まれない微生物が存在する場合、抗微生物ペプチドは、望まれない微生物を死滅させるか又はその成長を停止することが可能である。
【0061】
[0062] 抗微生物ペプチドをコードする核酸をin situで所望の微生物に添加することにより、微生物群集は、微生物群集へのいずれの追加の微生物の添加も行うことなく、遺伝子修飾微生物を含みうることに留意されたい。そのほか、微生物群集及び/又は群集が生息する環境に適合化された株の所望の微生物は、微生物群集に残留可能である。それゆえ、いくつかの実施形態の生産方法では、所望の微生物の互いの比は、核酸を投与することから遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることまで実質的に不変のままである。いくつかの実施形態では、所望の微生物の互いの比は、核酸を投与することから遺伝子修飾された所望の微生物を成長させることまで、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は上記値のいずれか2つにより規定される範囲内のパーセンテージ(たとえば、1~5%、1~30%、1~15%、5~30%、5~15%、10~30%、10~15%、15~30%)以下で変化する。いくつかの実施形態では、所望の微生物の互いの比は、核酸を投与する前から及び投与してから(たとえば、遺伝子修飾された所望の微生物を成長させる前から)実質的に不変のままである。いくつかの実施形態では、所望の微生物の互いの比は、核酸を投与する前から及び投与してから(たとえば、遺伝子修飾された所望の微生物を成長させる前から)、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は上記値のいずれか2つにより規定される範囲内のパーセンテージ(たとえば、1~5%、1~30%、1~15%、5~30%、5~15%、10~30%、10~15% 15~30%)以下で変化する。いくつかの実施形態では、本方法は、いずれかの微生物を微生物群集に添加することを含まない。
【0062】
[0063] 理論により限定されるものではないが、望まれない微生物を標的とする抗微生物ペプチドを生産することは、微生物群集に利益を付与するのに十分であることが企図される。そのため、いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、抗微生物ペプチドをコードする核酸は、対応する免疫モジュレーターをコードする核酸を投与することなく投与される。たとえば、所望の微生物は、抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターをすでに含みうるか(抗微生物ペプチドがバクテリオシンを含む場合)、又は所望の微生物は、抗微生物ペプチドに対して感受性のないタクソン又は株でありうる。所望の微生物の非感受性は、経験的に(たとえば、直接培養を介して)、又は抗微生物ペプチドに対する非感受性が既知の特性である微生物の分類学的分類、種、若しくは株を同定することにより、決定されうる。生産方法いくつかの実施形態では、抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターをコードする核酸は、少なくとも1つの所望の微生物に投与されない。
【0063】
[0064] 所望の微生物は、既知でありうるか又は簡単に同定されうるが、望まれない微生物は、未知及び/又は未同定特性を有しうることが、さらに企図される。たとえば、望まれない微生物のアイデンティティーは、未知でありうるか、又は望まれない微生物が微生物群集中に存在する時間及び/又は位置は、未知でありうる。それゆえ、いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、微生物群集は、前記分泌することの前に未知アイデンティティーの1つ以上の望まれない微生物により汚染される。いくつかの実施形態では、望まれない微生物のアイデンティティーは既知である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物は、微生物群集の通常の汚染菌又は病原体である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物の抗微生物ペプチド感受性は既知である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物の抗微生物ペプチド感受性は未知である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物の抗微生物ペプチド感受性は既知であり、望まれない微生物のアイデンティティーは未知である。
【0064】
[0065] いくつかの実施形態の生産方法及び微生物群集の抗微生物ペプチドは、1つ以上の望まれない微生物を死滅させうるか又はその繁殖を停止しうる。たとえば、望まれない微生物は、抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターを欠如しうるか(微生物ペプチドがバクテリオシンを含む場合)、又は抗微生物ペプチドによる荷電残基若しくはヒドロラーゼ活性は、望まれない微生物の細胞膜若しくは細胞壁を破壊して、孔形成を引き起こし、望まれない微生物への細胞傷害性をもたらしうる。
【0065】
[0066] いくつかの実施形態の生産方法及び微生物群集では、抗微生物ペプチドは、抗微生物ペプチドを発現するように工学操作された所望の微生物に対して外因性でありうることが企図される。たとえば、抗微生物ペプチドは、所望の微生物とは異なる株若しくは種のゲノム由来でありうるか、又は抗微生物ペプチドは、天然に存在する抗微生物ペプチドのバリアントでありうるか、又は抗微生物ペプチドは、完全合成でありうる。このため、いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾された所望の微生物種の野生型ゲノムによりコードされない。いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾微生物に対して外因性であるか、又は抗微生物ペプチドは合成である。
【0066】
[0067] いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、核酸は、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドをコードする。たとえば、核酸は、列挙された値のいずれかの2つの間の範囲、たとえば、2~5、2~7、2~10、3~5、3~7、3~10、5~7、又は5~10つの抗微生物ペプチドを含めて、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10つの抗微生物ペプチドを含みうる。例として、単一核酸は、2つ以上の抗微生物ペプチドをコードしうる。たとえば、核酸は、本明細書に記載のプロポリペプチドをコードしうる。例として、2つ以上の別々の核酸は、抗微生物ペプチドを一緒にコードしうる。例として、いくつかの実施形態の生産方法では、核酸を投与することは、異なる抗微生物ペプチドをコードする2つ以上の異なる核酸を投与することを含む。いくつかの実施形態の生産方法では、異なる抗微生物ペプチドは、抗生物質耐性感染(たとえば、多剤耐性(MDR)細菌による感染)を標的とするために一緒に選択される。
【0067】
[0068] いくつかの実施形態の生産方法では、核酸を投与することは、本明細書に記載の核酸を含むプラスミド、染色体外アレイ、エピソーム、ミニ染色体を投与すること、又は核酸を含むファージを投与することを含む。いくつかの実施形態の生産方法では、核酸を投与することは、本明細書に記載の核酸を含むプラスミドを投与すること、又は核酸を含むファージを投与することを含む。
【0068】
[0069] 本明細書に記載の1つ以上の抗微生物ペプチドを発現するように遺伝子修飾された所望の微生物は、たとえば、望まれない微生物を防御することにより、群集中の他の微生物に利益を付与しうることが企図される。そのため、微生物群集中の所望の微生物のたとえ全部でなくても一部が抗微生物ペプチドを発現するように遺伝子修飾されれば、微生物群集全体は、望まれない微生物からの保護の利益を受けうる。いくつかの実施形態の生産方法では、所望の微生物は、微生物の2つ以上の異なる種を含み、核酸は、異なる種の1つのみに又は2つ以上に投与される。
【0069】
[0070] いくつかの実施形態の生産方法では、本方法は、遺伝子工学操作微生物とは異なる微生物群集の微生物(「第2の微生物」ともいわれうる)に異なる核酸(「第2の核酸」ともいわれうる)をin situで投与することをさらに含む。異なる(又は「第2の」)核酸は、前記核酸とは異なる抗微生物ペプチドをコードしうる。例として、各々異なる抗微生物ペプチド又は抗微生物ペプチド組合せをコードする少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の異なる核酸(列挙された値のいずれかの2つの間の範囲、たとえば、1~5、1~7、1~10、2~5、2~7、2~10、3~7、3~10、5~7、又は5~10を含む)。いくつかの実施形態の生産方法では、異なる核酸(又は「第2の核酸」)は、核酸(又は「第1の核酸」)と同時に投与される。いくつかの実施形態の生産方法では、異なる核酸(又は「第2の核酸」)は、核酸(又は「第1の核酸」)とは異なる時間及び/又は位置に投与される。いくつかの実施形態の生産方法では、異なる核酸(又は「第2の核酸」)は、核酸(又は「第1の核酸」)とは異なる時間に投与される。
【0070】
[0071] 本明細書に記載の生産方法又は微生物群集のいずれかに係る微生物群集は、マイクロバイオームに含まれうることが企図される。たとえば、マイクロバイオームは、微生物群集を含みうるか、それから本質的になりうるか、又はそれからなりうる。本明細書に記載の実施形態に好適なマイクロバイオーム例としては、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌からなる群から選択されるマイクロバイオームが挙げられる。微生物群集は、追加の特性、たとえば、温度、圧力、湿度、pHなどを有しうる環境内にありうることにさらに留意されたい。本明細書に記載の生産方法又は微生物群集のいずれかに係る所望の微生物株は、マイクロバイオーム、微生物群集、及び/又は環境に適合化されうる。いくつかの実施形態の生産方法では、微生物群集は、マイクロバイオームに含まれる。
【0071】
[0072] いくつかの実施形態の方法では、核酸は、所望の微生物にex vivoで投与可能である。たとえば、微生物群集は、対象に対して自家性でありうるとともに、核酸は、ex vivoで投与可能である。本方法は、遺伝子修飾された所望の微生物を含む微生物群集を対象に投与することをさらに含みうる。たとえば、微生物群集を含むサンプルは、対象のマイクロバイオームから得ることが可能であり、核酸は、所望の微生物にex vivoで投与可能であり、遺伝子修飾された所望の微生物を含む微生物群集は、対象に投与可能である。任意に、サンプルを採取した後、内因性マイクロバイオームは、除去又は根絶可能であり(たとえば、抗生物質及び/又は抗微生物ペプチドにより)、遺伝子修飾された所望の微生物を含む微生物群集は、除去又は根絶された内因性マイクロバイオームを置き換えるために対象に投与可能である。いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、微生物群集は、対象のマイクロバイオームの保持健常サンプル中にある。投与するとき、対象は、自身のマイクロバイオームのディスバイオシスに罹患していてもよい。対象(ディスバイオシスに罹患している)のこのマイクロバイオームは、たとえば、抗生物質及び/又は抗微生物ペプチドで除去又は根絶されうる。次いで、遺伝子修飾された所望の微生物を含む微生物群集は、対象に投与可能である。このため、保持健常サンプルの微生物群集は、ディスバイオティックマイクロバイオームを置き換えうる。
【0072】
[0073] いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、微生物群集は、産業培養に含まれる。たとえば、産業培養は、目的製品を形成するために物質を発酵することでありうるか、又は廃棄材料若しくは毒性材料を分解することでありうる。たとえば、産業培養は、供給原料を発酵することでありうるか、又は産業培養は、医薬品若しくは化粧品を製造するためのものでありうる。
【0073】
[0074]
図3を参照すると、いくつかの非限定的実施形態の生産方法の模式図が示される。生産方法は、微生物群集300(たとえば、マイクロバイオーム又は産業培養物中の微生物群集)のメンバーである所望の微生物301を同定すること310を含みうる。本方法は、抗微生物ペプチド304をコードする核酸を所望の微生物302の少なくとも1つに投与すること320、及び遺伝子修飾された所望の微生物303を得ることを含みうる。遺伝子修飾された所望の微生物は、抗微生物ペプチドを発現するように構成されうる。たとえば、遺伝子修飾された所望の微生物は、本明細書に記載のようにプロモーターの制御下に抗微生物ペプチドをコードする核酸を含みうる。ブロック330に目を向けると、生産方法は、成長させる330と抗微生物ペプチドを微生物群集環境中に分泌する遺伝子修飾された所望の微生物を含みうる。いくつかの実施形態では、生産方法は、いずれかの微生物を微生物群集に添加することを含まない。
【0074】
微生物群集
[0075] 本明細書のいくつかの実施形態によれば、微生物群集が記載される。微生物群集は、所望の微生物を含みうる。所望の微生物の少なくとも1つは、遺伝子修飾可能で第1の核酸を含む。第1の核酸は、1つ以上の所望の微生物を標的としない第1の抗微生物ペプチドをコード可能である。第1の核酸は、第1の抗微生物ペプチドに対してインフレームで分泌シグナルをさらにコード可能である。微生物群集は、第1の核酸と同一の配列を有する細胞フリーの第2の核酸をさらに含みうる。例として、微生物群集は、マイクロバイオーム、たとえば、ヒト若しくは非ヒト哺乳動物のものの一部でありうるか、又は産業培養物、たとえば、発酵物又は医薬品若しくは化粧品製造培養物の一部でありうる。例として、細胞フリーの第2の核酸の存在は、本明細書に記載のように第1の核酸が所望の微生物にin situで投与されたことを示唆する構造でありうる。いくつかの実施形態の微生物群集では、細胞フリーの第2の核酸は、プラスミド、染色体外アレイ、エピソーム、ミニ染色体、又はファージに含まれる。いくつかの実施形態では、細胞フリーの第2の核酸は、所望の微生物を遺伝子修飾するのに十分な量で微生物群集中に存在する。いくつかの実施形態では、微生物群集は、所望の微生物の成長を促進するのに又はその集団を維持するのに十分な条件下にある。
【0075】
[0076] 本明細書に記載のように、微生物群集(及び生産方法)の所望の微生物は、内因的に生産しない1つ以上の抗微生物ペプチドを生産するように有利に遺伝子修飾可能である。かかる遺伝子修飾は、病原体や汚染菌などの望まれない微生物に対する所望の微生物(及び微生物群集)の防御活性範囲を広げることが可能である。このため、いくつかの実施形態では、第1の抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾された所望の微生物種の野生型ゲノムによりコードされない。
【0076】
[0077] いくつかの抗微生物ペプチド、たとえば、本明細書に記載のバクテリオシンは、本明細書に記載の微生物群集及び生産方法に好適であることが企図される。また、カノニカル抗微生物ペプチドの例は、本明細書に記載の通りである。いくつかの実施形態では、第1の抗微生物ペプチドは合成である。いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、第1の抗微生物ペプチドは、遺伝子修飾微生物に対して外因性である。
【0077】
[0078] 本明細書で考察されるように、所望の微生物は、たとえ抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターを含まなくて、抗微生物ペプチドを発現することにより、それ自体及び/又は微生物群集に利益を付与しうる。そのため、いくつかの実施形態の生産方法又は微生物群集では、抗微生物ペプチドをコードする核酸を含む所望の微生物は、抗微生物ペプチドに対する免疫モジュレーターをコードする核酸を含まない。
【0078】
[0079] いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、微生物群集は、未知アイデンティティーの1つ以上の望まれない微生物により汚染される。たとえば、望まれない微生物は、病原体を含みうるか、又は微生物群集を汚染しうるか、又は微生物群集による産業品の発酵若しくは生産に干渉しうる。いくつかの実施形態では、望まれない微生物のアイデンティティーは既知である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物は、微生物群集の通常の病原体又は汚染菌である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物の抗微生物ペプチド感受性は既知である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物の抗微生物ペプチド感受性は未知である。いくつかの実施形態では、望まれない微生物の抗微生物ペプチド感受性は既知であり、望まれない微生物のアイデンティティーは未知である。
【0079】
[0080] 本明細書のいくつかの実施形態の生産方法及び微生物群集の所望の微生物ペプチドは、2つ以上の異なる抗微生物ペプチドをコード及び発現するように遺伝子修飾されうる。2つ以上の異なる抗微生物ペプチドは、選択された抗微生物活性スペクトルを有する抗微生物ペプチドのカクテルを含みうる。異なる抗微生物ペプチドは、同一核酸又は異なる核酸によりコード可能である。いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、第1の核酸は、2つ以上の異なる抗微生物ペプチド、たとえば、列挙された値のいずれかの2つの間の範囲、たとえば、2~5、2~7、2~10、3~5、3~7、3~10、5~7、又は5~10つの抗微生物ペプチドを含めて、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10つの異なる抗微生物ペプチドをコードする。いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、遺伝子修飾された所望の微生物は、1つ以上の所望の微生物を標的としない第2の抗微生物ペプチドをコードする第3の核酸、及び第2の抗微生物ペプチドに対してインフレームの分泌シグナルをさらに含む。
【0080】
[0081] いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、微生物群集は、本明細書に記載の1つ以上の抗微生物ペプチドをコード及び発現するように各々遺伝子修飾された2つ以上の異なる所望の微生物を含有しうる。いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、所望の微生物は、微生物の2つ以上の異なる種を含む。例として、微生物の2つ以上の異なる種は、同一抗微生物ペプチド又は異なる抗微生物ペプチドをコードする核酸を各々含みうるので、抗微生物ペプチド又は異なる抗微生物ペプチドを各々発現可能である。いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、所望の微生物は、微生物の2つ以上の異なる種を含む。第1の核酸は、異なる種の1つのみに含まれうる。いくつかの実施形態の微生物群集(又は生産方法)では、所望の微生物は、微生物の2つ以上の異なる種を含む。第1の核酸は、異なる種の2つ以上に含まれうる。
【0081】
[0082] いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の微生物群集は、マイクロバイオームに含まれる。例として、マイクロバイオームは、列挙された値の2つ以上の組合せを含めて、胃腸管、皮膚、乳腺、胎盤、バイオ流体、精液、子宮、膣、卵胞、肺、唾液、口腔、粘膜、結膜、胆道、及び土壌からなる群から選択されるマイクロバイオームでありうる。たとえば、微生物群集は、in situで対象(たとえば、対象のマイクロバイオームの一部)にありうる。抗微生物ペプチドをコードする核酸は、in vivoで所望の微生物細胞に投与可能である。例として、抗微生物ペプチドをコードする核酸は、局所、経口、直腸投与など、マイクロバイオームへのin vivo送達のために製剤化されうる。製剤化技術の例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Allen,L.V.editor,22nd edition,Pharmaceutical Press,Philadelphia,PA(2014))(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0082】
[0083] たとえば、微生物群集は、対象に対して自家性でありうるとともに、対象に対してex vivoでありうる。かかる微生物群集は、たとえば、対象のマイクロバイオームが共生状態である場合、対象のマイクロバイオームを再導入又は再コロニー化するのに有用でありうるとともに、ex vivo自家マイクロバイオームは、健常マイクロバイオームの化学量論量で微生物種及び/又は株を含む。
【0083】
[0084] 本明細書で用いられる「対象」は、in situで分泌抗微生物ペプチドを生産することが望まれる微生物群集を有するいずれかの好適な対象でありうる。対象は、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、又は非哺乳動物対象でありうる。いくつかの実施形態では、対象は、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長動物、ネズミ、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、又はトリ対象である。いくつかの実施形態では、対象は家畜である。
【0084】
[0085] いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の微生物群集は、産業培養物である。産業培養物は、たとえば、発酵、廃棄物の破壊、又は医薬品若しくは化粧品の製造のためのものでありうる。
【実施例】
【0085】
実施例
実施例1:マイクロバイオーム中の微生物群集におけるin situでの分泌抗微生物ペプチドの生産
[0086] 対象の消化管マイクロバイオーム中の所望の微生物の存在を確認するために、対象の消化管マイクロバイオームのサンプルを得て、16Sシーケンシングにより分析する。ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種は、対象の消化管マイクロバイオーム中の所望の微生物であると決定される。ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種は死滅されず、その成長はバクテリオシン31により阻害されないと決定される。ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種に対するファージは、バクテリオシン31をコードする核酸を含有するように調製される。ファージは、摂取によりビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種に投与され、対象の消化管中のビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種の集団の一部分は、ファージトランスダクションを介してバクテリオシン31を発現するように遺伝子修飾される。消化管マイクロバイオーム中の遺伝子修飾ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種は、対象の消化管環境中にバクテリオシン31を分泌する。追加のビフィズス菌は、対象の消化管微生物相に添加されていないので、対象の消化管微生物相のビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種と他のメンバーとの比は、改変されていない。
【0086】
実施例2:産業発酵槽中の微生物群集におけるin situでの分泌抗微生物ペプチドの生産
[0087] サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株は、産業発酵槽中で成長する。このS.セレビシエ(S.cerevisiae)株は、ロイココシン(Leucococin)C及びジベルシンV41に対して感受性がないことが知られている。ロイココシン(Leucococin)C及びジベルシンV41をコードするプラスミドは、発酵槽中のS.セレビシエ(S.cerevisiae)細胞に投与される(たとえば、トランスコンジュゲーションを介して)。発酵槽中のS.セレビシエ(S.cerevisiae)のサブ集団は、プラスミドで形質転換されて、ロイココシン(Leucococin)C及びジベルシンV41を発酵ストック中に分泌する。そのため、発酵槽中のS.セレビシエ(S.cerevisiae)は、抗微生物ペプチドを分泌するように工学操作される。
【0087】
[0088] 本明細書に記載の実施形態の少なくともいくつかでは、実施形態で使用される1つ以上のエレメントは、他の実施形態で互換的に使用可能である。ただし、かかる交換が技術的に実現可能である場合に限る。特許請求された主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び構造に各種他の省略、追加、及び変更を行いうることは、当業者であれば理解できるであろう。かかる変更及び変化はすべて、添付の特許請求の範囲に規定される主題の範囲内に含まれることが意図される。
【0088】
[0089] 本明細書に記載の実質的にいずれの複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しても、文脈上及び/又は適用上適切であれば、当業者は複数形から単数形へ及び/又は単数形から複数形への変換が可能である。各種単数形/複数形の入替えは、明確にするために本明細書に明示的に定められうる。
【0089】
[0090] 一般的には、本明細書とくに添付の特許請求の範囲(たとえば添付の特許請求の範囲の本文)で用いられる用語は「オープン」用語であることが一般に意図されることは当業者であれば理解されよう(たとえば、「including(~を含む)」という用語は「~を含むがこれらに限定されるものではない」と解釈すべきであり、「having(~を有する)」という用語は「少なくとも~を有する」と解釈すべきであり、「includes(~を含む)」という用語は「~を含むがこれらに限定されるものではない」と解釈すべきであるなど)。さらに、導入クレームレシテーションの特定数が意図される場合、かかる意図はクレームで明示的にリサイトされ、かかるレシテーションの不在下ではかかる意図は存在しないことは当業者であれば理解されよう。たとえば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲は、クレームレシテーションを導入するために導入語句「at least one(少なくとも1つ)」及び「one or more(1つ以上)」の使用を含みうる。しかしながら、かかる語句が用いられたとしても、不定冠詞「a」又は「an」によるクレームレシテーションの導入が、かかる導入クレームレシテーションを含む任意の特定の請求項を、一方のかかるレシテーションを含む実施形態のみに限定することを意味するものと解釈すべきでない。たとえ同一の請求項が導入語句「one or more(1つ以上)」又は「at least one(少なくとも1つ)」と不定冠詞たとえば「a」又は「an」とを含む場合でさえも、そのように解釈すべきでない(たとえば、「a」及び/又は「an」は「at least one(少なくとも1つ)」又は「one or more(1つ以上)」を意味するものと解釈すべきである)。定冠詞を用いてクレームレシテーションを導入する場合にも、同じことが当てはまる。そのほかに、たとえ特定数の導入クレームレシテーションが明示的にリサイトされたとしても、かかるレシテーションは少なくともリサイトされた数を意味すると解釈すべきであることは当業者であれば分かるであろう(たとえば、「2つのレシテーション」という他の修飾語を含まないベアのレシテーションは、少なくとも2つのレシテーション又は2つ以上レシテーションを意味する)。さらに、「A、B、及びCの少なくとも1つ」に類似した条件が用いられる場合、一般的には、かかる構成は当業者がその条件を理解する意味であることが意図される(たとえば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有する系」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、及び/又はAとBとCの全部などを有する系を含であろう)。「A、B、又はCの少なくとも1つなど」に類似した条件が用いられる場合、一般的には、かかる構成は当業者がその条件を理解する意味であることが意図される(たとえば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有する系」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、及び/又はAとBとCの全部などを有する系を含であろう)。さらに、2つ以上の代替用語を表す実質上任意の選言的な語及び/又は語句は、明細書、請求項、又は図面にかかわらず、用語の1つ、用語のいずれか、又は用語の両方を含む可能性が企図されると理解すべきであることは当業者であれば理解されよう。たとえば、「A又はB」という語句は「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0090】
[0091] そのほか、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループにより記述される場合、それにより、本開示は、マーカッシュグループのいずれの個別のメンバー又はメンバーのサブグループによっても記述されることは当業者であれば分かるであろう。
【0091】
[0092] 当業者によって理解されるであろうが、あらゆる目的で、たとえば、明細書の提供に関して、本明細書に開示された範囲はすべて、あらゆる可能なサブ範囲及びそのサブ範囲の組合せをも包含する。いずれの列挙された範囲も、十分に記述されてその範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などされうるものとして容易に認識可能である。たとえば、限定されるものではないが、本明細書で考察される各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1に容易に分解可能である。当業者であれば同様に理解されるであろうが、「~まで」、「少なくとも~」、「~超」、「~未満」などの表現はすべて、列挙された数を含み、本明細書で考察されるように後続的にサブ範囲に分解可能な範囲を意味する。最終的に、当業者であれば理解されるであろうが、範囲は各個別のメンバーを含む。したがって、たとえば、1~3個の物品を有するグループは、1、2、又は3個の物品を有するグループを意味する。同様に、1~5個の物品を有するグループは、1、2、3、4、又は5個の物品を有するグループを意味し、他も同様である。
【0092】
[0093] 各種態様及び実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態は当業者には自明であろう。本明細書に開示される各種態様及び実施形態は、例示を目的としたものであり、限定を意図したものではなく、真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲により示される。本明細書に記載の各方法に対して、本方法での使用のための関連組成物は、明示的に企図され、本方法での組成物の使用及び適用可能であれば本方法での使用のための医薬剤の作製方法もまた、明示的に企図される。たとえば、抗微生物ペプチドの半減期をモジュレートする方法に対して、たとえば、in vivo環境で、対応する方法での使用のための抗微生物ペプチド及び/又はプロテアーゼ(及び/又は抗微生物ペプチド及び/又はプロテアーゼをコードする核酸)もまた、企図される。抗生物質耐性の阻害又は予防での使用のための抗微生物ペプチド(及び/又は抗微生物ペプチドをコードする核酸)を含む医薬剤の作製方法もまた、企図される。たとえば、抗微生物ペプチド又は抗微生物ペプチドをコードする核酸を含む、微生物群集においてin situで分泌抗微生物ペプチドを生産する方法に対して、対応する方法での使用のための抗微生物ペプチド(及び/又は抗微生物ペプチドをコードする核酸)もまた企図され、本方法に係る微生物群集における発現及び/又は未記載の微生物の阻害での抗微生物ペプチド(及び/又は抗微生物ペプチドをコードする核酸)の使用も同様である。微生物群集における発現及び/又は未記載の微生物の阻害での使用のための抗微生物ペプチド(及び/又は抗微生物ペプチドをコードする核酸)を含む医薬剤の作製方法もまた、企図される。
【配列表】
【国際調査報告】