(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(54)【発明の名称】医療用シリコーン感圧接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20231127BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231127BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231127BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20231127BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20231127BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20231127BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J7/38
C08L83/05
C08L83/06
C08L83/07
A61L24/00 310
A61F13/02 310J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527116
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020126100
(87)【国際公開番号】W WO2022094748
(87)【国際公開日】2022-05-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホンター・ユイ
(72)【発明者】
【氏名】イン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・モアン
【テーマコード(参考)】
4C081
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4C081AA12
4C081AC04
4C081BA17
4C081CA27
4C081DA02
4J002CP04Y
4J002CP04Z
4J002CP06X
4J002CP12W
4J002DA066
4J002EA017
4J002EC017
4J002EG057
4J002EH007
4J002ET007
4J004AA18
4J004AB01
4J004BA02
4J004CB02
4J004DB03
4J004EA06
4J004FA09
4J040EK031
4J040EK042
4J040EK051
4J040EK052
4J040EK091
4J040EK092
4J040HD43
4J040JB09
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040NA02
(57)【要約】
本発明は、以下を含む医療用シリコーン感圧接着剤組成物に関する:オルガノポリシロキサンA、オルガノポリシロキサン樹脂B、オルガノポリシロキサン架橋剤XL、オルガノポリシロキサン延長剤CE、ヒドロシリル化触媒D、溶媒E、ヒドロシリル化阻害剤F;ここで、オルガノポリシロキサンA、CE及びXLは、モル比RHAlk=tH/tAlkが3.5~8.0、nHXL/nHCEが0.13~11となるように選択され、ここで:・tH=オルガノポリシロキサンXL及びCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、・tAlk=オルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合しているアルケニルのモル数、・nHXL=オルガノポリシロキサンXLのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、・nHCE=オルガノポリシロキサンCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数。また、本発明は、この医療用シリコーン感圧接着剤組成物を用いた基材のコーティング方法、この方法に従って得られるコーティングされた基材、及びこの医療用シリコーン感圧接着剤組成物を用いた皮膚貼付物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む医療用シリコーン感圧接着剤組成物:
・1分子あたり、それぞれがケイ素原子に結合した少なくとも2つのC
2~C
6アルケニルラジカルを含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
・ケイ素原子に結合したヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン樹脂B、
・ケイ素原子に結合した少なくとも3つの水素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン架橋剤XL、
・ケイ素原子に結合したちょうど2つの末端水素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン延長剤CE、
・少なくとも1つのヒドロシリル化触媒D、
・少なくとも1つの溶媒E、
・少なくとも1つのヒドロシリル化阻害剤F;
ここで、
オルガノポリシロキサンA、CE及びXLは、モル比RHAlk=tH/tAlkが3.5~8.0、nH
XL/nH
CEが0.13~11となるように選択され、ここで:
・tH=オルガノポリシロキサンXL及びCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、
・tAlk=オルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合しているアルケニルのモル数、
・nH
XL=オルガノポリシロキサンXLのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、
・nH
CE=オルガノポリシロキサンCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数。
【請求項2】
オルガノポリシロキサンAは、25℃で200mm/10~2000mm/10、好ましくは300mm/10~1800mm/10、より好ましくは500mm/10~1500mm/10の粘稠度を有するオルガノポリシロキサンガム、及び/又は、25℃で600000mPa・sを超える、好ましくは25℃で1000000mPa・sを超える粘度を有するオルガノポリシロキサンガム、及び/又は、オルガノポリシロキサンAの総重量に基づいて、0.001重量%~0.5重量%、好ましくは0.005重量%~0.025重量%、より好ましくは0.008重量%~0.018重量%のアルケニル含有量を有するオルガノポリシロキサンガムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モル比RHAlk=tH/tAlkは、4.30~6.00、好ましくは4.55~5.55であり、及び/又は、モル比nH
XL/nH
CEは、0.10~0.22、好ましくは0.12~0.20とすることができ、前記組成物は特に紙上にコーティングされる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
モル比RHAlk=tH/tAlkは、4.50~8.00、好ましくは4.70~5.70であり、及び/又は、モル比nH
XL/nH
CEは、0.50~11.0、好ましくは1.2~8.0とすることができ、前記組成物は特にポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタン上にコーティングされる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
モル比RHAlk=tH/tAlkは、3.50~8.00、好ましくは4.00~6.60であり、及び/又は、モル比nH
XL/nH
CEは、1.00~7.50、好ましくは1.20~6.50とすることができ、前記組成物は特に不織布上にコーティングされる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
モル比RHAlk=tH/tAlkは、4.10~8.00、好ましくは5.00~6.60であり、及び/又は、モル比nH
XL/nH
CEは、0.50~11.00、好ましくは2.00~8.00とすることができ、前記組成物は特に弾性布にコーティングされる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
オルガノポリシロキサン架橋剤XL及びオルガノポリシロキサン延長剤CEは混合物として導入される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
オルガノポリシロキサン架橋剤XLは、25℃で40~1000mPa・s、好ましくは25℃で50~750mPa・s、より好ましくは25℃で60~500mPa・sの動的粘度を有し、及び/又は、オルガノポリシロキサン延長剤CEは、25℃で1~1000mPa・s、好ましくは25℃で5~500mPa・s、より好ましくは25℃で5~300mPa・sの動的粘度を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
オルガノポリシロキサン樹脂Bは、MQ
(OH)、MQQ
(OH)又はMM
ViQ
(OH)タイプの水酸化シリコーン樹脂であり、オルガノポリシロキサン樹脂Bの乾燥重量に対して、ヒドロキシル基を0.1~4重量%、好ましくは0.3~2.0重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%含有し、及び/又は、M単位とQ単位の比は0.5~1.2、好ましくは0.6~0.9である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
オルガノポリシロキサン樹脂BとオルガノポリシロキサンAとの重量比は0.8~2.5、好ましくは1.0~2.0である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を使用して基材をコーティングする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法を使用して得られるコーティングされた基材。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤組成物を架橋してなるシリコーン感圧接着剤が塗布された基材。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用シリコーン感圧接着剤組成物を架橋してなるシリコーン感圧接着剤を両面の少なくとも一方に連続的又は非連続的に塗布した基材を含む、皮膚貼付物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、医療用感圧接着剤(pressure-sensitive adhesive、PSA)の分野である。具体的には、本発明は、医療用シリコーン感圧接着剤組成物、この医療用シリコーン感圧接着剤組成物を用いた基材のコーティング方法、この方法に従って得られるコーティングされた基材、及びこの医療用シリコーン感圧接着剤組成物を用いた皮膚貼付物品に関する。
【背景技術】
【0002】
PSAは、「感圧接着剤」という用語の略語であり、当技術分野では周知であり、様々な用途、特に医療用途で広く使用されている。現在、医療市場では、テープ、パッチ、包帯などの皮膚に触れる製品のほとんどがアクリル系PSAで製造されている。しかしながら、アクリル系PSAは、汗(水)に対する耐性が弱い、生体適合性が弱い、人間の皮膚、特に幼児や子供に対する感作率が高いなどの欠点がある。
【0003】
シリコーン系PSAは、皮膚に当てたり、皮膚と接触させて使用する医療用途でも広く使用されている。シリコーン系PSAは、単に接触するか、軽い圧力を加えるだけで表面に接着できる。アクリル系PSAに比べて大きな利点がある。シリコーン系PSAは、その通気性、耐水性、低刺激性、生体適合性により、医療用途に有利な特性を示す。例えば、シリコーン系PSAは、その生体適合性と透過性により、酸素、二酸化炭素、水蒸気の拡散を可能にするため、新しい医療用途の高まる要求に適しており、これにより、エアレーションの強化が必要な医療用途に最適になる。
【0004】
国際公開第2017/158249号には、皮膚接着剤として使用できるシリコーンゲルが記載されている。シリコーンゲルは、ポリエステル又はポリウレタン基材上で良好な接着性を有し、従来技術のゲルよりも皮膚に対する粘着性が良好である。シリコーンゲルは、その固有の性質により、湿った皮膚への接着力が欠けているため、包帯使用中の創傷への二次的損傷を回避でき、創傷ケア用途に有益である。しかし、外傷を与えずに皮膚に貼り付けられた医療材料の場合、湿った環境や発汗によりゲルの粘着力が低下し、剥がれてしまうことがよくある。
【0005】
韓国特許第10-1731612号には、ビニルシリコーン樹脂をベースとした医療用シリコーン感圧接着剤組成物が記載されており、従来のアクリル系感圧接着剤に比べ、人肌に無害であり、初期接着力、再接着力などの接着力に優れ、吸収性や創傷治癒効果にも優れている。しかしながら、この文献は、ヒドロキシシリコーン樹脂をベースとする医療用シリコーン感圧接着剤については研究しておらず、また、高分子量末端ビニルポリシロキサンの影響についても考慮していない。さらに、XL粘度、tH/tAlk比、nHXL/nHCE比などの要因が医療用シリコーン感圧接着剤の塗布性能に及ぼす影響は体系的に研究されておらず、明確に定義されていない。着用後の皮膚への感圧接着剤の残留性は評価しなかった。
【0006】
国際公開第2020/099999号には、接着剤を除去する際の皮膚の損傷及び痛みを最小限に抑えながら接着力を強化した医療用シリコーン感圧接着剤が記載されている。この文献では、末端ヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンとシリケート樹脂との反応により縮合生成物が形成され、その後、非反応性ポリオルガノシロキサンが混合される。その後のテープ製造プロセスでは、電子ビームを使用して非反応性ポリオルガノシロキサンの架橋を促進し、それによって基材上に感圧接着剤の層を形成する。この文献では、PSAの製造プロセスは複雑であり、縮合反応条件の制御が製品の品質に大きな影響を及ぼす。その後の硬化プロセスでは電子ビームが必要となり、装置は比較的高価である。さらに、縮合型PSAの特性は、事前の縮合反応によって決定され、その後の用途が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、医療用途に適した優れた総合特性を有するシリコーン系感圧接着剤組成物を得ることが常に求められている。
【0008】
本発明は、従来技術の問題を解決した。
【0009】
具体的には、本発明は、シリコーン系感圧接着剤本来の通気性、耐水性、低刺激性、生体適合性などの特性を維持することに加え、アクリル系PSAに匹敵する接着力を有し、したがって医療分野で次第にアクリル系PSAに取って代わる可能性があり、アクリル系PSAが適さないいくつかの新しい用途も見出される、医療用シリコーン感圧接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物は、架橋後、医療用途に適した優れた総合特性(例えば、引き裂きやすさ、皮膚への目に見えない残留物、基材への良好な定着性、良好な剥離接着力、良好な粘着性、適切な剥離力、及び許容可能な再貼り付け特性などの優れた総合特性)を提供する。
【0011】
本発明のシリコーン系感圧接着剤(PSA)組成物は、架橋後、基材(例えば、紙、PU(ポリウレタン)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、不織布、弾性布などの基材)上に良好な固定力を持つシリコーン系の感圧接着剤(PSA)が得られ、このようなPSAを皮膚から剥離する際に生じる不快感を回避しながら、皮膚上での良好な粘着性(又は「タック」)を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、以下を含む医療用シリコーン感圧接着剤組成物に関する:
・1分子あたり、それぞれがケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
・ケイ素原子に結合したヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン樹脂B、
・ケイ素原子に結合した少なくとも3つの水素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン架橋剤XL、
・ケイ素原子に結合したちょうど2つの末端水素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン延長剤CE、
・少なくとも1つのヒドロシリル化触媒D、
・少なくとも1つの溶媒E、
・少なくとも1つのヒドロシリル化阻害剤F;
ここで、
オルガノポリシロキサンA、CE及びXLは、モル比RHAlk=tH/tAlkが3.5~8、nHXL/nHCEが0.13~11となるように選択され、ここで:
・tH=オルガノポリシロキサンXL及びCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、
・tAlk=オルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合しているアルケニルのモル数、
・nHXL=オルガノポリシロキサンXLのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、
・nHCE=オルガノポリシロキサンCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数。
【0013】
本発明の医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、シリコーン感圧接着剤Gの前駆体であり、ヒドロシリル化反応により架橋可能である。
【0014】
本発明の別の目的は、以下を含む医療用シリコーン感圧接着剤組成物を架橋してなるシリコーン感圧接着剤を両面の少なくとも一方に連続的又は非連続的に塗布した基材を含む、皮膚貼付物品を提供することである:
・1分子あたり、それぞれがケイ素原子に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニルラジカルを含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
・ケイ素原子に結合したヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン樹脂B、
・ケイ素原子に結合した少なくとも3つの水素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン架橋剤XL、
・ケイ素原子に結合したちょうど2つの末端水素原子を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン延長剤CE、
・少なくとも1つのヒドロシリル化触媒D、
・少なくとも1つの溶媒E、
・少なくとも1つのヒドロシリル化阻害剤F;
ここで、
オルガノポリシロキサンA、CE及びXLは、モル比RHAlk=tH/tAlkが3.5~8、nHXL/nHCEが0.13~11となるように選択され、ここで:
・tH=オルガノポリシロキサンXL及びCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、
・tAlk=オルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合しているアルケニルのモル数、
・nHXL=オルガノポリシロキサンXLのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数、
・nHCE=オルガノポリシロキサンCEのケイ素原子に直接結合している水素原子のモル数。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、本発明の医療用シリコーン感圧接着剤組成物を用いて基材をコーティングする方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、本発明による方法によって得られるコーティングされた基材を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物を架橋してなるシリコーン感圧接着剤Gがコーティングされた基材を提供することである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発明者らは、特にこれらの目的を達成するために、多数な研究手段を用いて数多くの実験を行った。本発明者らの発見によると、モル比RHAlk=tH/tAlkが3.5~8、nHXL/nHCEが0.13~11となるようにオルガノポリシロキサンA、CE及びXLを選択することで、医療用シリコーン感圧接着剤組成物が得られ、これは、架橋後、医療用途に適した優れた総合特性(例えば、引き裂きやすさ、皮膚への目に見えない残留物、基材への良好な定着性、良好な剥離接着力、良好な粘着性、適切な剥離力、及び許容可能な再貼り付け特性などの優れた総合特性)を提供する。
【0019】
本発明の発明者らはまた、最終用途に応じてnHXL/nHCE比が特定の範囲内になるように成分CE及びXLを選択することにより、医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、さまざまな特定の基材(特に紙、TPU、不織布、弾性布で作られた基材)に特別に適用することができ、その結果、PSAの最終用途で良好な性能が得られることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
成分A:オルガノポリシロキサンA
成分Aは、組成物中の主鎖として使用される、少なくとも2つのC2~C6アルケニル置換シリコーンポリマーであり得る。
【0021】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンAは、25℃で200mm/10~2000mm/10、好ましくは300mm/10~1800mm/10、より好ましくは500mm/10~1500mm/10の粘稠度を有するオルガノポリシロキサンガムである。
【0022】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンAは、260000g/モル~1000000g/モル、好ましくは400000g/モル~1000000g/モル、より好ましくは600000g/モル~900000g/モルの重量平均分子量Mwを有するオルガノポリシロキサンガムである。重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレンを標準として測定される。
【0023】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンAは、25℃で600000mPa・sを超える、好ましくは25℃で1000000mPa・sを超える粘度を示すオルガノポリシロキサンガムである。
【0024】
別の実施形態によれば、本発明による医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、少なくとも2つのオルガノポリシロキサンAを含み、ここで、第1のオルガノポリシロキサンA’は上記で定義したガムであり、第2のオルガノポリシロキサンA”は、25℃で10~500,000mPa・s、好ましくは25℃で100~100,000mPa・s、より好ましくは25℃で10000~100000mPa・sの動的粘度を有する油である。オルガノポリシロキサンA”は、直鎖状又は分枝状であってもよく、成分A”の総重量に基づいて、0.05重量%~0.5重量%のアルケニル含有量を有してもよい。
【0025】
本明細書において考慮されるすべての粘度は、25℃における「ニュートン」動的粘度の大きさ、すなわち、測定される粘度が速度勾配に依存しないように、十分に低いせん断勾配でブルックフィールド粘度計を使用して、それ自体既知の方法で測定される動的粘度の大きさに対応する。
【0026】
ガムの粘稠度又は針入度は、標準化された条件下でサンプルに円筒形ヘッドを適用できるPNR12タイプ又は同等のモデルの針入度計を使用して25℃で測定される。ガムの針入度は、校正されたシリンダーが1分間にサンプルに進入する深さを10分の1ミリメートルで表す。これに関しては、ガムのサンプルを直径40mm、高さ60mmのアルミニウム容器に導入する。青銅又は真鍮製の円筒形ヘッドは直径6.35mm、高さ4.76mmで、針入度計に適合する長さ51mm、直径3mmの金属ロッドで担持されている。このロッドには100gの過剰荷重がかけられている。アセンブリの総重量は、円筒部分とそのサポートロッドの4.3gを含めて151.8gである。ガムのサンプルが入った容器を、25±0.5℃にサーモスタット制御された浴に少なくとも30分間置く。測定は製造業者の指示に従って行われる。深さ(V)の値(10分の1ミリメートル単位)と、この深さに到達するまでの時間(t)の値(秒単位)がデバイスに表示される。針入度は60V/tに等しく、1分あたり10分の1ミリメートルで表される。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下を含み得る:
(I)少なくとも2つの式(A1)のシロキシル単位:
(Y)a(Z)bSiO(4-(a+b))/2 (A1)
式中、
・Yは、少なくとも2つのアルケニル基を有する、2~6個の炭素原子を含む一価のラジカルを表し、
・Zは、1~20個の炭素原子を含み、アルケニル基を含まない一価のラジカルを表し、
・a及びbは整数を表し、aは1、2又は3、bは0、1又は2、及び(a+b)は1、2又は3である;
(ii)任意選択で、式(A2)の他のシロキシル単位を含んでもよい:
(Z)cSiO(4-c)/2 (A2)
式中、
・Zは上記と同じ意味を持ち、
・cは1、2、又は3の整数を表す。
【0028】
本発明によれば、式(A1)におけるオルガノポリシロキサンAの定義に関して、記号aは、好ましくは1又は2、さらにより好ましくは1に等しいことが賢明である。さらに、式(A1)及び式(A2)において、記号Zは、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基(少なくとも1つのハロゲン原子で置換されていてよい)、及びC6~C10アリール基からなる群から選択される一価の基を表すことができる。Zは、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなる群から選択される一価の基を表すことができる。さらに、式(A1)において、記号Yは、有利には、ビニル、プロペニル、3-ブテニル及び5-ヘキセニルからなる群から選択される基を表すことができる。好ましくは、記号Yはビニルであり、記号Zはメチルである。
【0029】
オルガノポリシロキサンAは、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。直鎖状オルガノポリシロキサンの場合、本質的に以下から構成できる:
・式(Y)2SiO2/2、(Y)(Z)SiO2/2及び(Z)2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」;及び
・式(Y)3SiO1/2、(Y)2(Z)SiO1/2、(Y)(Z)2SiO1/2及び(Z)3SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「M」、
・式中、記号Y及びZは上で定義したとおりである。
【0030】
直鎖状オルガノポリシロキサンAの重合度は、2000~10000の範囲であることが好ましく、2000~8000の範囲であることがより好ましく、2000~5000の範囲であることがさらに好ましい。
【0031】
単位「D」の例として、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ及びメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0032】
単位「M」の例として、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ及びジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0033】
オルガノポリシロキサンAは、特に直鎖状である場合、好ましくは400000g/モル~1000000g/モル、好ましくは600000g/モル~900000g/モルの重量平均分子量Mwを有するポリマーであり得る。
【0034】
有用なオルガノポリシロキサンAの例としては、以下のものが挙げられる:
・ジメチルビニルシリル末端基を含むポリジメチルシロキサン;
・ジメチルビニルシリル末端基を含むポリ(メチルフェニルシロキサン-コ-ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端基を含むポリ(ビニルメチルシロキサン-コ-ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端基を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-ビニルメチルシロキサン)。
【0035】
260,000g/モル~1,000,000g/モル、好ましくは600,000g/モル~900,000g/モルの重量平均分子量Mwを有するジメチルビニルシリル末端基を含むポリジメチルシロキサンであるオルガノポリシロキサンAは、特に有利である。特に有利なオルガノポリシロキサンAは、式MViDaMViのものであり、式中、
・MVi=式:(ビニル)(CH3)2SiO1/2のシロキシル単位、
・D=式:(CH3)2SiO2/2のシロキシル単位、
・aは2000~6000、好ましくは3000~5500の数値である。
【0036】
オルガノポリシロキサンAは、成分A+B+XL+CEの総量に基づいて15~45重量%、好ましくは20~35重量%の量で使用することができる。
【0037】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンAは、オルガノポリシロキサンAの総重量に基づいて、0.001重量%~0.5重量%、好ましくは0.005重量%~0.025重量%、より好ましくは0.008重量%~0.018重量%のアルケニル含有量を有する。
【0038】
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、トリメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンから選択され、より好ましくはジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンから選択され得る。
【0039】
成分B:Si原子に結合したヒドロキシル基を含むオルガノポリシロキサン樹脂B
ポリオルガノシロキサンを記述するために、シリコーンの分野で知られている命名法が使用され、シロキシ単位を記述するために次の文字が使用される:M、D、T、及びQ。文字Mは、式(R1)3SiO1/2の単官能性単位を表し、ケイ素原子は、この単位を含むポリマー中の1つの酸素原子だけに結合している。文字Dは、ケイ素原子が2つの酸素原子に結合している二官能性単位(R1)2SiO2/2を意味する。文字Tは、ケイ素原子が3つの酸素原子に結合している式(R1)SiO3/2の三官能性単位を表す。文字Qは、ケイ素原子が4つの酸素原子に結合している式SiO4/2の三官能性単位を表す。記号R1は記号R2と同じ定義を有する。M、D、T単位は官能化することができる。次に、特定のラジカルを指定しながら、M、D、及びT単位について言及する。
【0040】
Si原子にヒドロキシル基が結合したオルガノポリシロキサン樹脂Bとしては、従来公知のオルガノポリシロキサン樹脂から選択することができ、中でも、式(R2)3SiCl、(R2)2Si(Cl)2、R2Si(Cl)3及びSi(Cl)4からなる群から選択されるクロロシランの共加水分解及び共縮合によって調製される有機ケイ素樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、よく知られており、市販されている分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらは、その構造中に、式(R2)3SiO1/2(M単位)、(R2)2SiO2/2(D単位)、R2SiO3/2(T単位)、及びSiO4/2(Q単位)選択される少なくとも2つの異なるシロキシル単位を示し、これらの単位のうちの少なくとも1つはT単位又はQ単位である。R2ラジカルは、樹脂がケイ素原子あたり約0.8~1.8個のR2ラジカルを含むように分布している。さらに、これらの樹脂は完全には縮合しておらず、OH基を含んでいる。R2ラジカルは、同一であるか又は異なり、直鎖状又は分岐状のC1~C6アルキルラジカル、C2~C4アルケニルラジカル、フェニル又は3,3,3-トリフルオロプロピルから選択される。例えば、アルキルR2ラジカルとしては、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル及びn-ヘキシルラジカルが挙げられ、アルケニルラジカルとしては、ビニル又はアリル基が挙げられる。好ましくは、R2ラジカルはメチル基又はヒドロキシル基である。
【0041】
特定の実施形態によれば、ヒドロキシル基を含むオルガノポリシロキサン樹脂Bは、以下からなる群から選択される:
a)以下の式のM及びQ(OH)シロキシ単位を含むコポリマーであるMQ(OH)タイプのヒドロキシル化シリコーン樹脂:
・M=R3R4R5SiO1/2、及び
・Q(OH)=(OH)SiO3/2、
・任意選択でシロキシ単位Q=SiO4/2が存在する;
b)以下の式のM、DVi及びQ(OH)シロキシ単位を含むコポリマーであるMDViQ(OH)タイプの水酸化シリコーン樹脂:
・M=R3R4R5SiO1/2、
・DVi=(Vi)(R3)SiO2/2、及び
・Q(OH)=(OH)SiO3/2、
・任意選択でシロキシ単位Q=SiO4/2が存在する;
c)以下の式のM、MVi及びQ(OH)シロキシ単位を含むコポリマーであるMMViQ(OH)タイプの水酸化シリコーン樹脂:
・M=R3R4R5SiO1/2、
・MVi=(Vi)(R3)(R4)SiO2/2、及び
・Q(OH)=(OH)SiO3/2、
・任意選択でシロキシ単位Q=SiO4/2が存在する;
d)次の式のM、D、T(OH)及びTシロキシ単位を含むコポリマーであるMDT(OH)Tタイプの水酸化シリコーン樹脂:
・M=R3R4R5SiO1/2、
・D=R3R4SiO2/2、
・T(OH)=(OH)R3SiO2/2、
・T=R3SiO3/2;及び
e)以下の式のD、T(OH)及びTシロキシ単位を含むコポリマーであるDT(OH)Tタイプの水酸化シリコーン樹脂:
・D=R3R4SiO2/2、
・T(OH)=(OH)R3SiO2/2、
・T=R3SiO3/2;
式中、記号Vi=ビニル基、記号R3、R4、及びR5は、互いに独立して、以下から選択される:
・1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基(任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換される)、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル及びn-ヘキシル基からなる群から選択される;
・6~14個の炭素原子を有するアリール基又はアルキルアリール基、好ましくはフェニル基、キシリル基及びトリル基からなる群から選択される。
【0042】
好ましい実施形態によれば、オルガノポリシロキサン樹脂Bとしては、例えば、MQ樹脂、MDQ樹脂、DT樹脂及びMDT樹脂の少なくとも1種から選ばれるオルガノポリシロキサン樹脂Bが挙げられ、OH基はQ及び/又はT単位に担持されることが可能である。
【0043】
別の好ましい実施形態によれば、オルガノポリシロキサン樹脂Bは、MQ(OH)、MQQ(OH)又はMMViQ(OH)タイプの水酸化シリコーン樹脂であり、オルガノポリシロキサン樹脂Bの乾燥重量に対して、ヒドロキシル基を0.1~4重量%、好ましくは0.3~2.0重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%含有する。好ましくは、M単位とQ単位の比は0.5~1.2、好ましくは0.6~0.9である。成分Bは、3000g/モル~10000g/モル、好ましくは4000g/モル~6000g/モルの重量平均分子量Mwを有し得る。
【0044】
本発明の組成物においては、オルガノポリシロキサン樹脂Bを粘着性付与剤として使用することができる。
【0045】
オルガノポリシロキサン樹脂Bは、成分A+B+XL+CEの合計量に基づいて、15~45重量%、好ましくは25~40重量%の量で使用され得る。
【0046】
好ましくは、成分Bと成分Aとの重量比は0.8~2.5、好ましくは1.0~2.0である。
【0047】
成分XL:オルガノポリシロキサン架橋剤XL
成分XLは、架橋剤とも称され、Siに結合した少なくとも3個の水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。
【0048】
例えば、本発明によるオルガノヒドロシロキサン架橋剤XLは、以下を含み得る:
・少なくとも3つの式(XL-1)のシロキシル単位:
(H)(L)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中、記号Hは水素原子を表し、記号Lは1~8個の炭素原子を含むアルキル又はC6~C10アリールを表し、記号eは0、1又は2に等しい;
・任意選択で式(XL-2)の他のシロキシル単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中、記号Lは1~8個の炭素原子を含むアルキル又はC6~C10アリールを表し、記号gは0、1、2又は3に等しい;そして
・オルガノポリシロキサンXLは、ポリマーあたり0.5重量%~15.0重量%のSi-H官能基、好ましくはポリマーあたり1.0重量%~12.5重量%のSi-H官能基、さらにより好ましくはポリマーあたり1.5重量%~10.0重量%のSi-H官能基を含むことを条件とする。
【0049】
架橋機能を有し、本発明に従って使用されるオルガノポリシロキサンXLとしては、MHDxDw
HMH、MHDxDy
HM及びMDxDz
HMのものを挙げることができる、これらの式中、
・MH=式:(H)(CH3)2SiO1/2のシロキシル単位
・DH=式:(H)(CH3)SiO2/2のシロキシ単位
・D=式:(CH3)2SiO2/2のシロキシル単位、
・M=式:(CH3)3SiO1/2、のシロキシル単位
・ただし、
xは0~500、好ましくは2~250、さらに好ましくは5~80の数であり、
wは、1~500、好ましくは1~250、又は1~100、さらにより好ましくは1~70の数であり、
yは2~500、好ましくは3~250、又は2~100、さらにより好ましくは2~70の数であり、
zは3~500、好ましくは3~250、又は3~100、さらに好ましくは3~70の数であり、そして
ポリマー当たり0.5重量%~15.0重量%のSi-H官能基、好ましくはポリマーあたり1.0重量%~12.5重量%のSi-H官能基、さらにより好ましくはポリマーあたり1.5重量%~10.0重量%のSi-H官能基を含む。
【0050】
成分XLの粘度を調整することにより、医療用シリコーン感圧接着剤組成物をさまざまな特定の基材により具体的に適用することができ、PSAの最終用途で良好な性能が得られる。
【0051】
成分XLは、25℃で40~1000mPa・s、好ましくは25℃で50~750mPa・s、より好ましくは25℃で60~500mPa・sの動的粘度を有し得る。成分XLの粘度が25℃で40mPa・s未満であると、硬化したPSAの結合力が強すぎて容易に引き裂くことができず、結合力が強いと基材への接着力が弱くなり、硬化したPSA層を剥がしたときに皮膚に一部が残る可能性があることを確認した。
【0052】
成分XLは、成分XLの総重量に基づいて、0.5重量%~15重量%、好ましくは1.0重量%~12.5重量%、より好ましくは1.5重量%~10.0重量%のSi-H含有量を有し得る。
【0053】
好ましくは、オルガノポリシロキサン架橋剤XLは、トリメチルシロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、又はジメチル水素末端ポリメチル水素シロキサンであり得る。
【0054】
成分CE:オルガノポリシロキサン延長剤CE
成分CEは延長剤と称することができ、Siに結合した末端水素原子をちょうど2つ有するオルガノポリシロキサンである。
【0055】
例えば、本発明によるオルガノヒドロシロキサン延長剤CEは、以下を含み得る:
・2つの式(CE-1)のシロキシル末端単位(同一であっても異なっていてもよい):
(H)p(R6)qSiO1/2 (CE-1)
式中、
記号R6は、C1~C8アルキル基又はC6~C10アリール基に対応し、
記号Hは水素原子を表し、p=1、q=2;
・少なくとも1つの式(CE-2)のシロキシル単位:
(H)n(R7)mSiO2/2 (CE-2)
式中、ラジカルR7はC1~C8アルキル基又はC6~C10アリール基に相当し、記号Hは水素原子を表し、n=0、m=2;そして、
・オルガノポリシロキサンCEは2つの水素原子を含み、各水素原子はポリマーごとに異なるケイ素原子に結合していることを条件とし、好ましくは、オルガノポリシロキサンCEは、ポリマー当たり、p=1である式(CE-1)の2つのシロキシル単位と、n=0である式(CE-2)の少なくとも1つのシロキシル単位とを含む。
【0056】
「鎖延長剤」機能を有するオルガノポリシロキサンCEの例としては、動的粘度が25℃で1mPa・s~25℃で1000mPa・s、好ましくは25℃で5mPa・s~25℃で500mPa・s、さらに好ましくは25℃で5~300mPa・sである、ジメチルヒドロシリル末端基を含むポリジメチルシロキサンを挙げることができる。特に有利なオルガノポリシロキサンCEは、式MHDxMHのものであり、式中、
・ML=式:(H)(CH3)2SiO1/2のシロキシル単位、
・D=式:(CH3)2SiO2/2のシロキシル単位、
・xは1~200、好ましくは1~150、さらに好ましくは3~120の整数である。
【0057】
オルガノポリシロキサンCEは、SiH反応性官能基が鎖末端にある場合、架橋中にネットワークのメッシュサイズを増加させると推定される効果があるため、「鎖延長剤」と呼ばれる。
【0058】
成分CEは、25℃で1~1000mPa・s、好ましくは25℃で5~500mPa・s、より好ましくは25℃で5~300mPa・sの動的粘度を有し得る。
【0059】
成分CEは、成分CEの総重量に基づいて、0.2重量%~10重量%、好ましくは0.3重量%~8.0重量%、より好ましくは0.4重量%~6.0重量%のSi-H含有量を有し得る。
【0060】
好ましくは、オルガノポリシロキサン延長剤CEは、ジメチル水素末端ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0061】
オルガノポリシロキサン架橋剤XL及びオルガノポリシロキサン延長剤CEは、任意の適切な形態で本発明による組成物中に導入され得る。例えば、オルガノポリシロキサン架橋剤XL及びオルガノポリシロキサン延長剤CEは、別々に又は混合物として使用することができる。
【0062】
オルガノポリシロキサン架橋剤XLとオルガノポリシロキサン延長剤CEが混合物の形態で導入される場合、前記混合物は、成分A+B+XL+CEの総量に基づいて、1.0~5.0重量%、好ましくは1.0~2.0重量%の量で導入される。混合物は、25℃で少なくとも70mPa・sの動的粘度を有し得る。
【0063】
成分D:ヒドロシリル化触媒D
本発明に従って有用なヒドロシリル化触媒Dとしては、当業者に周知の白金族に属する金属の化合物を挙げることができる。白金族の金属は、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムに加えて、プラチノイドとして知られる金属である。白金及びロジウムの化合物が好ましく使用される。特に、白金錯体及び有機生成物(米国特許第3,159,601号、米国特許第3,159,602号、米国特許第3,220,972号、及び欧州特許出願公開第0057459号、第0188978号、第0190530号に記載されている)、白金とビニルオルガノシロキサンの錯体(米国特許第3,419,593号に記載されている)を使用することが可能である。一般に好ましい触媒は白金である。例として、とりわけ、黒白金、塩化白金酸、アルコールで変性された塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコールとの錯体が挙げられる。米国特許出願公開第3,775,452号に記載されているようなカルステット(Karstedt)溶液又は錯体、塩化白金酸六水和物、又はカルベン配位子を含む白金触媒が好ましい。
【0064】
好ましくは、成分Dはビニル末端ポリジメチルシロキサン中の白金錯体の溶液である。
【0065】
成分E:溶媒E
本発明の一実施形態によれば、溶媒Eは、以下からなる群から選択される:脂肪族C6~C16炭化水素、25℃で0.65~5mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル末端基を含むポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、(3-オクチル)ヘプタメチルトリシロキサン、トルエン、キシレン、C1~C8アルキルエステル、C2~C4カルボン酸及びそれらの混合物。
【0066】
特に、溶媒Eは少なくとも1つの溶媒である。溶媒Eは、少なくとも1つの医学的に承認された溶媒である。例えば、それはトルエン、キシレン、ヘプタン、酢酸エチルから選択され、より好ましくはヘルスケア用途には酢酸エチルである。
【0067】
溶媒Eの量は、組成物の総重量に基づいて、30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%である。
【0068】
成分F:ヒドロシリル化阻害剤F
ヒドロシリル化阻害剤Fが本組成物に使用される。
【0069】
本発明に従って使用されるヒドロシリル化反応の阻害剤の例としては、α-アセチレンアルコール、α,α’-アセチレンジエステル、エン-イン共役化合物、α-アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレイン酸塩、フマル酸塩及びこれらの混合物から選択されるものを挙げることができる。ヒドロシリル化阻害剤の役割を果たすことができるこれらの化合物は、当業者にはよく知られている。これらは単独で又は混合物として使用できる。
【0070】
α-アセチレンアルコールタイプの阻害剤は、次の式(F1)の化合物から選択できる:
(R8)(R9)C(OH)-C≡CH (F1)
式中、
・R8基は、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C6~C10アリール基又はC7~C18のアリールアルキル基を表し、
・R9基は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C6~C10アリール基又はC7~C18のアリールアルキル基を表し、
・あるいは、R8及びR9は、それらが結合している炭素原子とともに、5員、6員、7員又は8員の脂肪族環を構成する(任意選択で1回以上置換される)。
【0071】
式(F1)によると:
・「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含む飽和炭化水素鎖を意味すると理解される。アルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、イソアミル及び1,1-ジメチルプロピルからなる群から選択することができる。
・「シクロアルキル」という用語は、本発明によれば、3~20個の炭素原子、好ましくは5~8個の炭素原子を含む飽和の単環式又は多環式、好ましくは単環式又は二環式の炭化水素基を意味すると理解される。シクロアルキル基が多環式である場合、複数の環状核は共有結合を介して及び/又はスピラン原子を介して互いに結合することができ、及び/又は互いに縮合することができる。シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンタン及びノルボルナンからなる群から選択することができる。
・「(シクロアルキル)アルキル」という用語は、本発明によれば、上記で定義したアルキル基に結合した、上記で定義したシクロアルキル基を意味すると理解される。
・「アリール」という用語は、本発明によれば、単環式又は多環式の6~10個の炭素原子を含む芳香族炭化水素基を意味すると理解される。アリール基は、フェニル、ナフチル及びアントラセニルからなる群から選択することができる。
・「アリールアルキル」という用語は、本発明によれば、上記で定義したアルキル基に結合した、上記で定義したアリール基を意味すると理解される。
【0072】
好ましい態様によれば、式(F1)において、R8及びR9は、それらが結合する炭素原子とともに、非置換の5員、6員、7員又は8員の脂肪族環を構成する。別の好ましい実施形態によれば、R8及びR9は、同一又は異なって、互いに独立して、一価のC1~C12、好ましくはC1~C6アルキル基を表す。
【0073】
本発明に従って使用されるα-アセチレンアルコールを含む阻害剤は、以下の化合物からなる群から選択することができる:1-エチニル-1-シクロペンタノール;1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ECHとしても知られる);1-エチニル-1-シクロヘプタノール;1-エチニル-1-シクロオクタノール;3-メチル-1-ブチン-3-オール(MBTとしても知られる);3-メチル-1-ペンチン-3-オール;3-メチル-1-ヘキシン-3-オール;3-メチル-1-ヘプチン-3-オール;3-メチル-1-オクチン-3-オール;3-メチル-1-ノニン-3-オール;3-メチル-1-デシン-3-オール;3-メチル-1-ドデシン-3-オール;3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール;3-エチル-1-ペンチン-3-オール;3-エチル-1-ヘキシン-3-オール;3-エチル-1-ヘプチン-3-オール;3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール;3-イソブチル-5-メチル-1-ヘキシン-3-オール;3,4,4-トリメチル-1-ペンチン-3-オール;3-エチル-5-メチル-1-ヘプチン-3-オール;3,6-ジエチル-1-ノニン-3-オール;3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール(TMDDOとしても知られる);1,1,-ジフェニル-2-プロピン-1-オール;3-ブチン-2-オール;1-ペンチン-3-オール;1-ヘキシン-3-オール;1-ヘプチン-3-オール;5-メチル-1-ヘキシン-3-オール;4-エチル-1-オクチン-3-オール及び9-エチニル-9-フルオレノール。
【0074】
α,α’-アセチレンジエステル系の阻害剤は、下記式(F2)の化合物から選択することができる:
【化1】
式中、R
10及びR
11は、同一又は異なって、互いに独立して、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C
6~C
10アリール基、C
7~C
18アリールアルキル基又はシリル基を表す。
【0075】
本発明によれば、用語「シリル」は、式-SiR3の基(各R記号が独立して、1~20個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)を意味すると理解される。シリル基は、例えば、トリメチルシリル基であり得る。
【0076】
具体的な実施形態によれば、式(F2)中、R10及びR11は、同一又は異なって、互いに独立して、C1~C12、好ましくはC1~C6アルキル基又はトリメチルシリル基を表す。本発明に従って使用されるα,α’-アセチレンジエステルである阻害剤は、以下の化合物からなる群から選択することができる:アセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)、アセチレンジカルボン酸ジエチル、アセチレンジカルボン酸ジ(tert-ブチル)、アセチレンジカルボン酸ビス(トリメチルシリル)。
【0077】
エン-イン共役化合物タイプの阻害剤は、次の式(F3)の化合物から選択することができる:
【化2】
式中、
・R
12、R
13及びR
14基は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C
6~C
10アリール基又はC
7~C
18アリールアルキル基を表し、
・あるいは、R
12、R
13、及びR
14基のうちの少なくとも2つの基は、それらが結合している炭素原子(複数可)の原子とともに、5員、6員、7員又は8員の脂肪族環を構成する(任意選択で1回以上置換される)。
【0078】
特定の実施形態によれば、R12、R13及びR14基は、互いに独立して、水素原子、C1~C12、好ましくはC1~C6、アルキル基又はC6~C10アリール基を表す。本発明に従って使用されるエン-イン共役化合物である阻害剤は、以下の化合物からなる群から選択することができる:3-メチル-3-ペンテン-1-イン;3-メチル-3-ヘキセン-1-イン;2,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン;3-エチル-3-ブテン-1-イン;及び3-フェニル-3-ブテン-1-イン。別の特定の実施形態によれば、R12、R13、及びR14基のうちの少なくとも2つの基は、それらが結合している炭素原子(複数可)とともに、非置換の5員、6員、7員又は8員の脂肪族環を構成し、残りの第3の基は、水素原子又はC1~C12、好ましくはC1~C6のアルキル基を表す。本発明に従って使用されるエン-イン共役化合物である阻害剤は、1-エチニル-1-シクロヘキセンであり得る。
【0079】
α-アセチレンケトン型の阻害剤は、次の式(F4)の化合物から選択できる:
【化3】
式中、R
15は、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C
6~C
10アリール基、又はC
7~C
18のアリールアルキル基を表し、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール又はアリールアルキル基は、塩素、臭素又はヨウ素原子によって1回以上置換され得る。
【0080】
好ましい実施形態によれば、R15は、一価のC1~C12、好ましくはC1~C6アルキル基(任意選択で塩素又は臭素原子により1回以上置換される)、又はシクロアルキル基、又はC6~C10アリール基を表す。本発明に従って使用されるα-アセチレンケトンである阻害剤は、以下の化合物からなる群から選択することができる:1-オクチン-3-オン;8-クロロ-1-オクチン-3-オン;8-ブロモ-1-オクチン-3-オン;4,4-ジメチル-1-オクチン-3-オン;7-クロロ-1-ヘプチン-3-オン;1-ヘキシン-3-オン;1-ペンチン-3-オン;4-メチル-1-ペンチン-3-オン;4,4-ジメチル-1-ペンチン-3-オン;1-シクロヘキシル-1-プロピン-3-オン;ベンゾアセチレン及び(o-クロロベンゾイル)アセチレン。
【0081】
アクリロニトリル系の阻害剤は、次の式(F5)の化合物から選択することができる:
【化4】
式中、R
16及びR
17は、互いに独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C
6~C
10アリール基、又はC
7~C
18アリールアルキル基を表し、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール又はアリールアルキル基は、塩素、臭素又はヨウ素原子によって1回以上置換され得る。
【0082】
本発明に従って使用されるアクリロニトリルである阻害剤は、以下の化合物からなる群から選択することができる:アクリロニトリル;メタクリロニトリル;2-クロロアクリロニトリル;クロトノニトリルとシナモニトリル。
【0083】
マレイン酸塩又はフマル酸塩タイプの阻害剤は、以下の式(F6)及び(F7)の化合物から選択できる:
【化5】
【化6】
式中、R
18及びR
19は、同一又は異なって、互いに独立して、アルキル基若しくはアルケニル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、C
6~C
10アリール基、又はC
7~C
18のアリールアルキル基を表し、前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール及びアリールアルキル基は、アルコキシ基によって置換され得る。
【0084】
本発明によれば、用語「アルケニル」は、2~6個の炭素原子を含み、少なくとも1つの二重不飽和を含む飽和炭化水素鎖を意味すると理解される。好ましくは、アルケニル基は、ビニル及びアリルからなる群から選択される。用語「アルコキシ」は、式(F6)及び(F7)によれば、酸素原子に結合した上記で定義したアルキル基を意味すると理解される。アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシからなる群から選択することができる。
【0085】
特定の実施形態によれば、R18及びR19は、同一又は異なって、互いに独立して、C1~C6アルコキシ基によって場合により置換されたC1~C12、好ましくはC1~C6のアルキル基又はアルケニル基を表す。
【0086】
本発明に従って使用されるマレイン酸塩又はフマル酸塩である阻害剤は、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル及びマレイン酸ビス(メトキシイソプロピル)からなる群から選択することができる。
【0087】
これらの阻害剤は、シリコーン組成物全体の重量に対して1~50000ppm、特に10~10000ppm、好ましくは20~2000ppm、さらにより好ましくは800ppm~2000ppmの重量で添加される。
【0088】
本発明の医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、医療用途に適した各種基材に適用することができる。基材は、応用分野に応じて、非常に多様な性質の支持体にすることができる。
【0089】
好ましい実施形態によれば、基材は織布、不織布、又は編布地、又はプラスチックのフィルムである。「不織布」という用語は、糸の絡み合いを除いて、その性質や起源が何であれ、何らかの手段でネットに形成され、何らかの手段で結合された繊維、連続フィラメント又はカットヤーンなどの繊維材料からなる任意の構造を意味すると理解される。不織布は、テキスタイルの外観を持ち、多孔質で、主に繊維で構成され、紡績、織り、編み、結び目以外のプロセスで製造される製品である。
【0090】
別の好ましい実施形態によれば、基材はプラスチックで作られる。多種多様なプラスチックが、本発明による基板として使用するのに適している可能性がある。例としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、再生セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリウレタン、特にメルトブローンポリウレタンが挙げられる。基材は、有孔の軟質ポリウレタンフィルム又は連続した可撓性ポリウレタンフィルムであり得る。この可撓性ポリウレタンフィルムはメルトブローポリウレタンから製造できる。基材が可撓性ポリウレタンフィルムである場合、厚さは一般に5~600μm、好ましくは5~250μm、さらに好ましくは10~100μmである。
【0091】
好ましくは、基材は紙、ポリウレタン、不織布、弾性布から選択され得る。
【0092】
最終用途に応じて、本発明による医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、様々な基材に適応することができる。特に、オルガノポリシロキサンA、CE及びXLは、特定のモル比RHAlk=tH/tAlk及び特定の比nHXL/nHCEが特定の基材により適するように選択することができる。
【0093】
例えば、基材が紙である場合、モル比RHAlk=tH/tAlkは、4.30~6.00、好ましくは4.55~5.55であり得る;及び/又は、モル比nHXL/nHCEは、0.10~0.22、好ましくは0.12~0.20であり得る。
【0094】
基材が熱可塑性ポリウレタンである場合、モル比RHAlk=tH/tAlkは、4.50~8.00、好ましくは4.70~5.70であり得る;及び/又は、モル比nHXL/nHCEは、0.50~11.0、好ましくは1.2~8.0であり得る。
【0095】
基材が不織布である場合、モル比RHAlk=tH/tAlkは3.50~8.00、好ましくは、4.00~6.60であり得る;及び/又は、モル比nHXL/nHCEは、1.00~7.50、好ましくは1.20~6.50であり得る。
【0096】
基材が弾性布(好ましくはキネシオロジースポーツテープ用)である場合、モル比RHAlk=tH/tAlkは、4.10~8.00、好ましくは5.00~6.60であり得る;及び/又は、モル比nHXL/nHCEは、0.50~11.00、好ましくは2.00~8.00であり得る。
【0097】
当業者は、最終用途に応じて医療用シリコーン感圧接着剤組成物を調整することができる。一般に、本発明による医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、25℃で500~5000mPa・s、好ましくは25℃で800~3000mPa・s、より好ましくは25℃で1000~2500mPa・sの動的粘度を有し得る。
【0098】
本発明による医療用シリコーン感圧接着剤組成物は、当業者によく知られた任意の技術によって、様々な基材に適用又はコーティングすることができる。本発明の医療用シリコーン感圧接着剤組成物の適用手法としては、例えば、ナイフ、特にナイフオーバーロール、フローティングナイフ、及びナイフオーバーカーペットによって実行されるコーティング技術、パディング、すなわち2つのロール間で絞ることによるコーティング技術、又は舐めロール、回転機械、リバースロール若しくはトランスファー、若しくはスプレーによるコーティング技術を挙げることができる。他のコーティング技術としては、カーテンコーティング技術が挙げられる。カーテンコーティングは、物品又は支持体にコーティング液を塗布するプロセスである。カーテンコーティングは、ホッパーのリップから落下するコーティング液の自由落下カーテンの形成を特徴とし、重力の影響でカーテンを通って移動する物品に遭遇してコーティングを形成する。この技術は、多層感光性銀支持体の製造の分野で広く使用されている(例えば、米国特許第3508947号、米国特許第3508947号及び欧州特許第537086号を参照)。
【0099】
次に、基材上にコーティングされた医療用シリコーン感圧接着剤組成物を、例えば100℃~160℃、好ましくは120℃~150℃の温度で架橋させる。
【0100】
このようにして、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物を架橋することにより、シリコーン感圧接着剤がコーティングされた基材Gが得られる。
【0101】
発明の実施の形態
本発明の他の利点及び特徴は、例示として与えられ、決して限定的なものではない以下の実施例を読めば、明らかになる。
【実施例】
【0102】
1.測定方法
以下、実施例で実施した測定方法を説明する。
【0103】
1.1引き裂きやすさ
「引き裂きやすさ」試験は、硬化したPSAラミネートを10cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がし、次にストリップを幅に沿って素早く引き裂くことによって行われる。破断箇所を観察することで、「引き裂きやすさ」のテスト結果を3段階に分類できる。
A=きれいな破断かつ引き裂き時の伸線がない、合格
B=破断しにくいが、引き裂き時に伸線がない、合格
C=破断しにくい、かつ引き裂き時の伸線がある、不合格
【0104】
1.2.皮膚上の残留
「皮膚上の残留」試験は、硬化したPSA積層体を5cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がし、PSA層を皮膚に貼り付けることによって行われる。室温下で4時間放置後、PSA層を剥がし、皮膚への貼付面積を確認することにより、「皮膚上の残留」試験結果を5段階に分類する。
A=目に見える接着剤がなく、指でべたつく感じもない、合格
B=目に見える接着剤はなく、指でのベタつき感はほとんどなく、合格
C=目に見える接着スポット、不合格
D=目に見える接着片、不合格
E=接着領域全体に接着剤が見える、不合格
【0105】
1.3.基材への定着性
「基材への定着性」テストは、硬化したPSAラミネートを10cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がし、粘着面を折り曲げて両端を接着し、その後素早く剥がすことによって実施される。「基材への定着性」試験結果は、両端の付着領域を観察することで4段階に分類される。
A=両方の接着領域に変化なし、合格
B=接着領域のいずれかの内部で接着剤が破損している、合格
C=接着領域のいずれかで接着片が基材から剥がれている、不合格
D=接着領域のいずれかで接着剤が基材から完全に剥がれている、不合格
【0106】
1.4.剥離接着力
「剥離接着力」試験は、硬化したPSAラミネートを10cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がし、15cm×5cmサイズの凹凸のある硬質紙にPSA層を貼り付け、2kgのゴムローラーで2サイクルラミネートし、この「すぐにテストできる」サンプルをさらに20分間保持することによって実行される。次いで、FINAT FTM1に従って、Cheminstrument Co.LtdのPA1000-180剥離試験機を用いて剥離試験を実施する。雰囲気条件は23℃、50%RHである。
結果が4N/25mm以上の場合、合格となる。
【0107】
1.5.プローブタック試験
「プローブタック試験」は、硬化したPSAラミネートを2.5cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がし、ASTM D2979に従って、Cheminstrument Co.LtdのPT1000プローブタックテスターでタックテストを実行することによって実施される。雰囲気条件は23℃、50%RHである。
結果が1000g/cm2以上の場合、合格となる。
【0108】
1.6.ループタック試験
「ループタック試験」は、硬化したPSA積層体を10cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がすことによって実施される。試験は、FINAT FTM9に従ってCheminstrument Co.LtdのLT1000ループタックテスターで実行される。雰囲気条件は23℃、50%RHである。
結果が500g/25mm2以上の場合、合格となる。
【0109】
1.7.再貼り付け特性
「再貼り付け特性」試験は、ループタック試験又はプローブタック試験を用いて実施される。タックテストは、最初の結果と比較してタックが40%失われるまで同じサンプルで繰り返され、そして、サイクル数が再貼り付け特性の指標として記録される。雰囲気条件は23℃、50%RHである。
結果が4を超える場合、合格となる。
【0110】
1.8.剥離力
「剥離力」試験は、硬化したPSAラミネートを10cm(長さ)×2.5cm(幅)のストリップに切断し、PSA層から剥離ライナーを剥がし、15cm×5cmサイズの標準フッ素剥離剤にPSA層を貼り付け、2kgのゴムローラーで2サイクルラミネートし、この「すぐにテストできる」サンプルをさらに20分間保持することによって実施される。次いで、FINAT FTM3に従って、Cheminstrument Co.LtdからのPA1000-180剥離試験機によって、選択したライナーからPSAを剥がすときの剥離力を測定する。雰囲気条件は23℃、50%RHである。
結果が5g/25mm未満の場合、合格となる。
【0111】
2.本発明の組成物の調製
2.1.実施例で使用した原材料を次の表1に示す。
【0112】
【0113】
2.2.「すぐにコーティングできる」溶液の準備
37gのオルガノポリシロキサン樹脂B及び0.12gのECHを40gの酢酸エチルに均一に溶解し、次いで23gのオルガノポリシロキサンAを上記の酢酸エチル溶液に、すべての成分が均一に混合するまで撹拌しながら導入して、基本組成物を得る。
【0114】
基本組成物100gを酢酸エチル50gに秤量し、次に架橋剤XLと延長剤CEを以下の表に示す量で添加し、均一に混合し、次に、以下の表に示す量の触媒Dを加え、混合物を混合して、「すぐに使用できる」溶液と呼ばれる均一な溶液を得ることで、本発明による組成物を得た。
【0115】
3.基材への適用
3.1.適用例1、紙テープ
プロセスとして、まず「すぐに使用できる」溶液をフッ素シリコーン剥離ライナーにコーティングし、乾燥PSAの厚さを30μmにし、換気フードに10分間置き、その後120℃のオーブンに5分間置く。硬化層をオーブンから取り出したら、PSA層を不織布紙で覆い、得られた「サンドイッチ」タイプのアセンブリをオートラミネーターで30psiの圧力で2回ラミネートする。PSAは必要な基材側に転写される。硬化したPSA積層体が得られる。
【0116】
【0117】
例5と6~8:RHAlk<4.30(nHXL/nHCEは同じであるが)は、弱い結合力(弱い架橋)をもたらし、皮膚上にスポットが残る。
【0118】
例12と例2、4:nHXL/nHCE>0.22(RHAlkは同じであるが)では結合力が強すぎるため、基材への接着力が弱すぎて定着試験が不合格になる。
【0119】
例9~12:nHXL/nHCE>0.22(RHAlkの値に関係なく)では、結合力が強すぎて基材への接着力が弱すぎて定着試験に不合格となり、さらに悪いことに、PSAテープを剥がした後、一部のPSA片が皮膚に残る。
【0120】
nHXL/nHCEが0.10~0.22、RHAlkが4.3~6.0の範囲では、紙基材上で良好な特性、すなわち、簡単に剥がすことができ、再貼り付け特性と耐水性が良好で、基材への定着性が良好で、皮膚刺激性が低いことがわかる。
【0121】
3.2.適用例2、TPU透明パッチ。
プロセスとして、「すぐに使用できる」溶液をTPUフィルム(裏地としてポリエチレンコーティングされたクラフト紙を使用)上にコーティングし、乾燥したPSAの厚さが30μmになるようにし、その後できる限りすぐ60℃のオーブンに1分間置き、次に120℃のオーブンで5分間置く。硬化層をオーブンから取り出した後、硬化したPSA層とシリコーンフッ素剥離ライナー(Si-Fライナー)を30psiの圧力下で2回ラミネートする。硬化したPSA積層体が得られる。
【0122】
【0123】
例13~15:nHXL/nHCE<0.50の場合、結合力が弱くなるか硬化できなくなり、PSAを剥がした後に結合力が低下して皮膚に接着剤のスポット残留が発生する。
【0124】
例23~25:nHXL/nHCE>11の場合、結合力が強すぎて基材への接着力が弱くなり、PSAパッチを皮膚から剥がす際に定着性が低下する。一部の接着片が基材から皮膚に転写される。
【0125】
nHXL/nHCEが0.5~11、RHAlkが4.5~8.0の範囲で、TPU基材上で良好な特性、すなわち、良好な通気性、良好なせん断性能及び耐水性、長期着用に対する低刺激性、基材への良好な定着性が得られることがわかる。特にPUプライマーは必要でない。
【0126】
3.3.適用例3、不織布テープ。
基材は不織布である。
【0127】
プロセスとして、「すぐに使用できる」溶液をフッ素剥離ライナーにコーティングし、乾燥PSAの厚さを36μmにし、換気フードに10分間置き、その後30psiの圧力で不織布で2回ラミネートする。このサンドイッチ型アセンブリを120℃のオーブンに5分間置き、最後に取り出す。PSAは必要な基材側に転写される。硬化したPSA積層体が得られる。
【0128】
【0129】
例27~29:nHXL/nHCE<1.0では、結合力が弱く、PSAテープを剥がした後に皮膚に接着剤のスポット残留が発生する。
【0130】
例40~41:nHXL/nHCE>7.5では、ライナーからの剥離力が高すぎ、結合力が強すぎて、基材への定着性不良を引き起こす(基材への接着力が弱いため、皮膚上にPSA片が残留する)。
【0131】
nHXL/nHCEが1.00~7.50、RHAlkが3.5~8.0の範囲では、不織布基材上で良好な特性、すなわち、良好な通気性、良好なせん断性能及び耐水性、基材への良好な定着性が得られることがわかる。
【0132】
3.4.適用例4、弾性布テープ
適用例3と同じプロセスが行われ、硬化したPSA積層体を得る。基材は綿やナイロンなどの弾性布基材である。
【0133】
【0134】
例45と例46、例47と例48:RHAlk<4.10では、結合力が弱く、PSAテープを剥がした後に皮膚に接着剤のスポット残留が発生する。
【0135】
例42と例44、例43と例46:nHXL/nHCE<0.50では、結合力が弱く、PSAテープを剥がした後に皮膚に接着剤のスポット残留が発生する。
【0136】
nHXL/nHCEが0.5~11、RHAlkが4.1~8.0の範囲で、弾性布基材において良好な特性、すなわち、耐汗性、再配置性、通気性に優れ、長時間の着用に適した低刺激性が得られることがわかる。
【国際調査報告】