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特表2023-550655感染性因子を使用して微生物を検出するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(54)【発明の名称】感染性因子を使用して微生物を検出するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20231127BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231127BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531567
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021060609
(87)【国際公開番号】W WO2022115473
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/118,052
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, スティーブン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ギル, ホセ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, マシュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB13
4B029FA03
4B029FA10
4B029GB10
4B029HA10
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QQ16
4B063QQ17
4B063QR79
4B063QR80
4B063QS05
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
表面(医療用デバイスを含む)での目的の微生物の迅速検出のための方法、組成物、キット、およびシステムが、本明細書で開示される。組換えバクテリオファージのカクテル組成物は、潜在的に有害な細菌を検出するために使用され得る。微生物への結合に対する組換えバクテリオファージの特異性は、目的の微生物の標的化されかつ非常に特異的な検出を可能にする。本発明の実施形態は、医療デバイス上の微生物の検出のための組成物、方法、キットおよびシステムを含む。本発明は、種々の方法で具現化され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面で目的の生きている微生物を検出するための方法であって、前記方法は、
(i)前記表面からサンプルを得る工程;
(ii)前記サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程;
(iii)前記組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで前記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、前記目的の生きている微生物が前記サンプルに存在することを示す、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記表面は、装置、機器、またはデバイスの部品の一部を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デバイスは、医療用デバイスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医療用デバイスは、内視鏡である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記装置の部品は、食品を処理するために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記表面は、サンプルを得る前に除染される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記除染は、滅菌プロセス、消毒プロセス、および清掃プロセスのうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記消毒プロセスは、高レベル消毒プロセスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルは、少なくとも1種の消毒薬または洗剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記サンプルの第1のアリコートを第1のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程、および前記サンプルの第2のアリコートを第2のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記インジケーターカクテル組成物は、前記目的の同じ微生物に対して特異的な少なくとも2種の組換えバクテリオファージを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記目的の微生物は、細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組換えバクテリオファージは、高リスク微生物に対して特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組換えバクテリオファージは、低リスクまたは中程度リスクの微生物に対して特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記高リスク微生物は、Escherichia coli、Klebsiella pneumonia、Klebsiella oxytoca、Enterobacteriaceae、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、β溶血性Streptococcus、およびEnterococcus種を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記低リスクまたは中程度リスクの微生物は、Micrococcus、Staphylococcus lugdunensisを除くコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Bacillus、類ジフテリア菌、腐生性Neisseria、ヴィリダンス型連鎖球菌、およびMoraxella種を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のインジケーターカクテル組成物は、高リスク微生物に対して特異的な少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含み、前記第2のインジケーターカクテル組成物は、低リスクまたは中程度リスクの微生物に対して特異的な少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
高リスク微生物の陽性検出によって、1またはこれより多くの作業工程が講じられるべきであることが決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも100CFUの低リスクまたは中程度リスクの微生物の陽性検出によって、1またはこれより多くの作業工程が講じられるべきであることが決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記1またはこれより多くの作業工程は、前記表面の再処理、使用からの除去、再滅菌、再消毒、および再清掃のうちの少なくとも1つを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含む前記インジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする前に、前記サンプルが濾過される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記サンプル中の10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個程度の微生物を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
結果までの合計時間は、26時間未満、25時間未満、24時間未満、23時間未満、22時間未満、21時間未満、20時間未満、19時間未満、18時間未満、17時間未満、16時間未満、15時間未満、14時間未満、13時間未満、12時間未満、11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、または2時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記インジケーターカクテル組成物の前記組換えバクテリオファージは、バクテリオファージゲノムへ挿入される遺伝子構築物を含み、ここで前記遺伝子構築物は、インジケーター遺伝子および外因性バクテリオファージ後期プロモーターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードせず、前記インジケーター遺伝子の転写は、外因性バクテリオファージ後期プロモーターによって制御される、請求項9に記載の方法。
【請求項26】
宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製中の前記インジケーター遺伝子の発現は、前記インジケータータンパク質生成物を生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項27】
前記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする、請求項9に記載の方法。
【請求項28】
検出された前記目的の微生物の抗生物質耐性を決定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
検出された前記目的の微生物の抗生物質耐性を決定する工程は、前記サンプルと前記インジケーターカクテル組成物とを接触させる前に、前記サンプルと抗生物質とを接触させるための工程をさらに包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1種は、T7、T4、T4様、ファージK、MP131、MP115、MP112、MP506、MP87、Rambo、SAP-JV1、SAP-BZ2、JG01、PAPWH2、PAPWH3、phiKZ、KPPDS2、KPPAH1、KOPAH1、KPPTD2、またはKPPTD3から構築される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記サンプル中の生きている微生物数を定量する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
表面で目的の微生物を検出するためのキットであって、前記キットは、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物を含み、ここで前記組換えバクテリオファージは、目的の微生物に対して特異的である、キット。
【請求項33】
検出試薬をさらに含み、ここで前記検出試薬は、インジケータータンパク質と反応して、前記インジケータータンパク質を検出するための基質を含む、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
フィルターをさらに含む、請求項32に記載のキット。
【請求項35】
表面で目的の微生物を検出するためのシステムであって、前記システムは、
(i)前記表面からサンプルを得るための装置;
(ii)少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物をインキュベートするための装置;および
(iii)前記組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出するための装置であって、ここで前記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、前記目的の生きている微生物が前記サンプルに存在することを示す、装置、
を含む、システム。
【請求項36】
前記サンプルを濾過するための装置をさらに含む、請求項35に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年11月25日出願の米国仮特許出願第63/118,052号の優先権を主張する。米国仮特許出願第63/118,052号の開示は、その全体において本明細書に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本開示は、感染性因子を使用する、微生物の検出のための組成物、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
表面で、および概して環境において微生物を低減させることは、しばしば有利でありおよび/または望ましい。例えば、微生物の低減は、環境中での微生物の接触による病気の可能性を低減し得る。滅菌プロセスおよび消毒プロセスは、多くの分野および産業にわたって重要である。滅菌は、全ての微生物を殺滅するプロセスである一方で、消毒は、有害微生物の数を低減するプロセスである。例えば、オートクレーブは、有害微生物(細菌、ウイルス、真菌、および芽胞を含む)を殺滅するために蒸気および圧力による滅菌を使用する。しかし、種々の理由から、いくらかの機器および装置は、旧来の技術(例えば、オートクレーブ処理)を使用して滅菌することができない。いくらかの機器は、熱および/または水分に感受性である場合がある一方で、他の装置は、大きすぎるかまたは動かせない構造に固定されている場合がある。滅菌が可能でない場合、清掃手順(cleaning procedure)、続いて、高レベル消毒が使用され得る。
【0004】
よって、滅菌または消毒後の装置に残っている微生物の検出は、交差汚染および疾患の拡がりの防止において重要である。しかし、滅菌および消毒手順の有効性をモニターするための長々とした検出時間は、再利用可能なデバイスおよび装置のスループットを制限し得る。スループットに対する制限を低減するために、非常に高感度、迅速かつ費用効果的な微生物検出アッセイの必要性が存在する。さらに、低レベルの微生物を有するサンプルから、短い時間枠内で微生物の抗生物質耐性を決定する能力は、成功裡の疾患防止にとって重要であり得る。従って、化学薬品の存在下で低レベルの生きている微生物を迅速な様式で同定し得る微生物検出アッセイを開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明の実施形態は、医療デバイス上の微生物の検出のための組成物、方法、キットおよびシステムを含む。本発明は、種々の方法で具現化され得る。
【0006】
本開示の第1の局面は、表面で目的の生きている微生物を検出するための方法であって、(i)表面からサンプルを得る工程;(ii)サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程;および(iii)組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここでインジケータータンパク質生成物の陽性検出は、目的の生きている微生物が前記サンプルに存在することを示す、工程、を包含する、方法である。
【0007】
本開示の第2の局面は、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物を含む、目的の微生物の検出のための組成物である。
【0008】
本開示の第3の局面は、表面で目的の微生物を検出するためのキットであって少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物を含み、ここで組換えバクテリオファージは、目的の微生物に対して特異的である、キットである。
【0009】
本開示の第4の局面は、表面で目的の微生物を検出するためのシステムであって、(i)表面からサンプルを得るための装置;(ii)少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物をインキュベートするための装置;および(iii)組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出するための装置であって、ここでインジケータータンパク質生成物の陽性検出は、目的の生きている微生物がサンプルに存在することを示す、装置を含む、システムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
表面で微生物を検出するための驚くべき速度および感度を実証する組成物、方法、キットおよびシステムが、本明細書で開示される。検出は、現在利用可能な方法を用いるより短い時間枠で達成され得る。本開示は、アッセイにおいて遺伝的に改変された感染性因子の使用を記載する。
【0011】
次の説明は、好ましい例示的実施形態を提供するに過ぎず、本開示の範囲、利用可能性または構成を限定することは意図されない。むしろ、好ましい例示的実施形態の次の説明は、種々の実施形態を実行するために実施可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に示されるとおりの趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置において種々の変更が行われ得ることが理解される。
【0012】
具体的詳細は、実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明の中に示される。しかし、実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、理解される。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセスおよび他の構成要素は、上記実施形態を不必要に詳細にして不明瞭にしないように、ブロック図において構成要素として示され得る。他の場合には、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術は、実施形態を不明瞭にすることを回避するために、不必要な詳細なしに示され得る。
【0013】
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解する意味を有するべきである。さらに、他に状況によって必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むべきであり、複数の用語は、単数を含むべきである。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法、ならびにこれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。公知の方法および技術は、他に示さない限り、当技術分野で周知の通常の方法によって、および本明細書を通して考察される様々な一般のおよびより特定の参考文献において記載されているように一般に行われる。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載のように、製造元の仕様によって行われる。本明細書に記載されている実験室の手順および技術に関連して使用される命名法は当技術分野で周知のものであり、一般に使用される。
【0014】
本開示の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、具体例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、それらそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書で開示される全ての範囲は、その中に包含される任意のおよび全ての部分範囲を包含することが理解されるべきである。例えば、「1~10」という示された値は、最小値1から最大値10の間の(およびその両端を含む)任意のおよび全ての部分範囲;すなわち、1もしくはこれより大きい最小値(例えば、1~6.1)で始まりかつ10もしくはこれより小さい最大値(例えば、5.5~10)で終わる全ての部分範囲を包含すると見做されるべきである。さらに、「本明細書で参考として援用される」といわれる任意の参考文献は、その全体が援用されるものとして理解されるべきである。
【0015】
下記の用語は、他に示さない限り、下記の意味を有すると理解すべきである:
【0016】
本明細書において使用する場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、他に特に留意しない限り、1つまたは複数を指すことができる。
【0017】
「または」という用語の使用は、代替物のみを言及することが明確に示されない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ超を意味することができる。
【0018】
本出願を通して、「約」という用語は、その値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差の変動、または試料の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0019】
「固体支持体」または「支持体」という用語は、その上に生体分子が結合し得る基材および/または表面を提供する構造物を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、例えば、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート)であり得、または固体支持体は、フィルター、アレイ、または移動性の支持体(例えば、ビーズ)または膜(例えば、フィルタープレート、ラテックス粒子、常磁性粒子またはラテラルフローストリップ)上の位置であり得る。
【0020】
「結合因子」という用語は、第2の(すなわち、異なる)対象分子に特異的および選択的に結合することができる分子を指す。相互作用は、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電相互作用もしくは疎水的相互作用の結果として非共有結合性であり得、あるいは相互作用は共有結合性であり得る。「可溶性結合因子」という用語は、固体支持体に会合(すなわち、共有結合または非共有結合)していない結合因子を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、測定されている分子、化合物もしくは細胞をいう。目的の分析物は、ある種の実施形態において、結合因子と相互作用し得る。本明細書で記載される場合、用語「分析物」とは、目的のタンパク質もしくはペプチドをいい得る。分析物は、アゴニスト、アンタゴニスト、もしくはモジュレーターであり得る。あるいは、分析物は、生物学的効果を有しなくてもよい。分析物としては、低分子、糖、オリゴサッカリド、脂質、ペプチド、ペプチド模倣物、および有機化合物などが挙げられ得る。
【0022】
用語「インジケーター部分」もしくは「検出可能な生体分子」もしくは「レポーター」もしくは「インジケータータンパク質生成物」とは、定性的、半定量的または定量的アッセイにおいて測定され得る分子をいう。例えば、インジケーター部分は、基質を、測定され得る生成物に変換するために使用され得る酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光の放射を生じる反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)であり得る。あるいは、インジケーター部分は、定量され得る放射性同位体であり得る。あるいは、インジケーター部分は、発蛍光団であり得る。あるいは、他の検出可能な分子が使用され得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「バクテリオファージ」もしくは「ファージ」とは、複数の細菌のウイルスのうちの1種またはそれより多くを含む。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生存している生物に侵入し得るウイルスであって、そして上記生物を使用して、該ウイルス自体を複製するウイルスを指す、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関する)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関する)、マイコプラズマファージ、および任意の他の用語などのウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの」とは、最大寸法が1ミリメートルまたはそれ未満であることを意味する。バクテリオファージは、それらを複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。ファージは、このことを、ファージ自体を細菌に付着させ、そのDNA(もしくはRNA)をその細菌の中に注入し、上記ファージを数百倍もしくはさらには数千倍も複製するようにその細菌を誘導することによって行う。これは、ファージ増幅ともいわれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「後期遺伝子領域」とは、ウイルス生活環において後期に転写されるウイルスゲノムの領域をいう。上記後期遺伝子領域は、代表的には、最も豊富に発現される遺伝子(例えば、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質)を含む。後期遺伝子は、クラスIII遺伝子と同義であり、構造およびアセンブリ機能を有する遺伝子を含む。例えば、上記後期遺伝子(クラスIIIと同義)は、ファージT7では、例えば、感染後8分から溶解するまでに、クラスI(例えば、RNAポリメラーゼ)は、早期に4~8分に、およびクラスIIは、6~15分に転写されるので、IIおよびIIIのタイミングは重なり合っている。後期プロモーターは、天然に位置し、このような後期遺伝子領域において活性であるプロモーターである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「富化のための培養」とは、旧来からの培養(例えば、微生物繁殖に都合のよい培地中でのインキュベーション)をいい、語句「富化」の他の考えられる使用(例えば、サンプルの液体構成要素を取り出して、その中に含まれる上記微生物を濃縮することによる富化)、または微生物繁殖の旧来の促進を含まない富化の他の形態と混同されるべきではない。ある期間にわたる富化のための培養は、本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「組換え(recombinant)」とは他の方法では見いだされ
ない遺伝的物質を一緒にするために、通常は実験室で行われる場合、遺伝的な(すなわち、核酸)改変をいう。この用語は、本明細書において用語「改変された」と交換可能に使用される。
【0027】
本明細書において使用する場合、「RLU」は、ルミノメーター(例えば、GLOMAX(登録商標)96)または光を検出する類似の機器によって測定される、相対発光量を指す。例えば、ルシフェラーゼと適当な基質(例えば、NANOLUC(登録商標)とNANO-GLO(登録商標))の間の反応物の検出が、検出されるRLUでしばしば報告される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「結果までの時間(time to results)」とは、サンプルインキュベーションの開始から結果が生成されるまでの時間総量をいう。結果までの時間は、いかなる確認試験時間も含まない。データ収集は、結果が生成された後の任意の時間で行われ得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「医療用デバイス」とは、疾患の診断、防止、モニタリング、処置または軽減;傷害の診断、モニタリング、処置、軽減または代償;解剖学的構造のまたは生理学的プロセスの調査、置き換え、改変、または支持;生命の支持または維持;受胎の制御;消毒;および身体に由来する標本のインビトロ試験による情報の提供のために、単独で、または組み合わせにおいて使用されることが意図される任意の機器、装置、器具、機械、電気機器、移植物、インビトロ使用のための試薬、ソフトウェア、材料または他の類似の関連物品をいう。
【0030】
サンプル
本開示の組成物、方法、キット、およびシステムの実施形態の各々は、表面に存在する微生物の迅速かつ高感度の検出を可能にし得る。例えば、本開示に従う方法は、短縮された期間において優れた結果を伴って実行され得る。本明細書で開示される方法、システム、およびキットによって検出可能な目的の微生物としては、表面に存在する細菌またはマイコバクテリアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
微生物の存在の検出は、いくつかの産業にわたって重要である。例えば、医学的な表面での微生物の検出は、医療関連感染(healthcare associated infection)(HAI)の防止において重要である。同様に、食品加工表面での微生物の検出は、食品由来の病気の防止において重要である。汚染の考えられる理由としては、不十分な清掃、消毒剤の不適切な選択、推奨される清掃、消毒、および/もしくは滅菌手順に従っていないこと、ならびに滅菌プロセスを使用できないこと、が挙げられる。本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムは、清掃、衛生化、および/または消毒プロセスの有効性をモニターするために使用され得る。
【0032】
ある特定の実施形態において、上記サンプルは、表面から得られる。上記表面は、任意の装置、機器、またはデバイスの一部(医療用デバイス、実験装置、食品加工装置、および商業的な表面(commercial surface)が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0033】
医療用デバイスとしては、医療用の移植物、医療実験装置、外科手術機器、全身検査装置、医療電子装置、医療用光学装置、機器および内視鏡装置、医療用レーザー装置、高周波医療装置、手術室および診察室のための装置および電気機器、ならびに歯科用の装置および装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
食品産業において、食品接触表面を消毒または滅菌することは、一般的な実務である。ある特定の実施形態において、食品加工表面は、製造工程中であろうが、食品取り扱い工程中であろうが、食品と接触した状態になる任意の表面である。食品加工装置とは、食品および食品製品を取り扱う、準備する、調理する、貯蔵する、およびパッケージングするために使用される構成要素、処理機械、およびシステムをいう。食品加工表面としては、食品生産、加工、準備、もしくは貯蔵活動の一部として使用される道具、機械、装置、または構造の表面が挙げられるが、これらに限定されない。食品加工表面の例としては、食品加工または準備する装置の、および食品加工が行われる構造の床、壁、または備品の表面が挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記表面は、サンプル収集の前に除染される。除染は、感染の伝播のリスクが存在しないことが合理的に想定され得るように、微生物汚染のレベルを低減する。除染プロセスとしては、滅菌、消毒、および清掃が挙げられるが、これらに限定されない。汚染の考えられる理由としては、不十分な清掃、消毒剤の不適切な選択、ならびに推奨される清掃、消毒、および/もしくは滅菌手順に従っていないこと、が挙げられる。従って、消毒したおよび滅菌した表面を汚染に関してモニターすることは、重要である。
【0036】
いくつかの実施形態において、サンプルは、サンプル収集の前に滅菌された表面から得られる。滅菌は、上記表面に生きている微生物がいないように、全ての微生物を殺滅するプロセスである。多くの医療用デバイスは,使用前に滅菌される。医療用デバイス滅菌は、種々の方法(例えば、熱、電離放射線、エチレンオキシド、過酸化水素、オゾン、マイクロ波照射、UVもしくは強い光、または蒸気化過酢酸)によって慣用的に行われる。滅菌前バイオバーデンの検査は、滅菌前の微生物集団を排除するために必要な滅菌剤の量を決定するにあたって重要である。ある特定の場合では、バイオバーデンベースの滅菌を使用して、感受性構成要素を保護するために滅菌剤の必要な用量を低減することは、望ましい。バイオバーデンベースの滅菌プロセスは、滅菌前に上記表面に存在する生物の数および耐性が、完全な滅菌を妨げないことを確実にするために、さらなるモニタリングを概して要する。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される方法は、滅菌前バイオバーデンを決定し、バイオバーデンベースの滅菌プロセスをモニターするために使用され得る。
【0037】
同様に、多くの食品加工表面は、使用前に滅菌される。製造区域の環境モニタリングは、食品製品が、デバイスが汚染された状態になることを許容してしまう条件下で準備も包装も維持もされないことを確実にするにあたって重要である。微生物夾雑物の追跡およびモニタリングは、汚染源を特定し、プロセス制御の有効性を評価するために使用され得る。汚染された表面の特定は、これらが製品の品質に影響を及ぼし得る前に、有害な汚染事象の除去および/または修正を可能にする。
【0038】
表面の滅菌は、感染のリスクを制御するために多くの産業にわたって重要であるが、全ての装置および表面が、滅菌できるわけではない。場合によっては、表面を滅菌することは不可能または現実的でない場合もある。いくつかの実施形態において、上記表面は、旧来の滅菌プロセスには大きすぎる装置の一部を構成し得る。ある特定の実施形態において、上記表面は、熱および/または水分に感受性の構成要素を含み得る。蒸気を使用するオートクレーブは、最も一般に使用される滅菌プロセスである。しかし、ある特定の医療用デバイスは、熱および/または水分に感受性の構成要素を含む。例えば、大部分の内視鏡、関節鏡、気管支鏡、腹腔鏡、膀胱鏡(cytoscope)は、熱感受性の構成要素を含み、従って、熱による滅菌に耐えられない。
【0039】
滅菌プロセスが使用できない場合、清掃および消毒プロセスが、代わりに使用され得る。消毒手順は、大部分の病原体を排除するが、必ずしも全てのタイプの微生物を排除するわけではない。消毒は、微生物汚染のレベルを低減するが、化学的滅菌とは異なり、芽胞は殺滅しない。結果として、微生物は、消毒後も医療用機器の上記表面に留まり続けることがあるか、または滅菌されていないすすぎ用の水を使用することを通じて導入される場合もある。そうすると、これらの微生物は、安全でない数までまたは上記機器のチャネル内にバイオフィルムを形成するまで増殖する場合もある。
【0040】
一般的な検査消毒薬は、10% 漂白剤および70% エタノールを含む。高レベル消毒(HLD)手順は、高濃度の化学的殺菌剤(chemical germicide)の使用を含む。例えば、濃縮次亜塩素酸ナトリウム グルタルアルデヒド、オルト-フタルアルデヒド、過酸化水素、ホルムアルデヒド、二酸化塩素、および過酢酸は、HLDを達成する能力があり得る。しかし、HLDは、多数の細菌芽胞を殺滅する能力はなく、従って、表面を汚染に関してモニターする必要がある。例えば、特定の表面が滅菌に耐えられない場合、化学的な清掃およびHLDが使用され得る。HLDは、熱および/または水分に感受性の構成要素を含む再利用可能な医療用デバイスのスループットを改善するために一般に使用される。
【0041】
従って、いくつかの実施形態において、上記表面は、サンプル収集の前に清掃される。場合によっては、酵素洗剤が使用され得る。酵素洗剤は、酵素を含み、これは、中性pH(代表的には、pH6~8)において汚れ(soil)を破壊する助けになる。他の実施形態において、アルカリ洗浄剤(代表的には、pH>10)が使用され得る。清掃後、表面は消毒され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記表面は、サンプル収集の前に消毒されている。HLDのいくつかの方法は、低温での化学的方法(例えば、液体の化学的殺菌剤)を含む。洗剤および高レベル消毒薬としては、ENDOZIME(登録商標) Bio-Clean、INTERCEPT(登録商標) Detergent、RAPICIDETM OPA/28、METRICDE(登録商標)、RELIANCE DG(登録商標)、およびCIDEX(登録商標) OPAが挙げられるが、これらに限定されない。清掃および消毒後に、残留消毒薬は、医療用デバイス表面上に留まり得る。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、ある量の洗剤および/または消毒薬をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、サンプルは、固体表面(例えば、医療用デバイスまたは食品加工装置)のスワブであり得る。他の実施形態において、灌注法(irrigation)が、サンプルを収集するために使用され得る。灌注法は、表面にわたる溶液(例えば、食塩水および蒸留水(dHO))の流れである。従って、いくつかの実施形態において、上記サンプルは、表面灌注液である。
【0043】
いくつかの実施形態では、サンプルは、調製も、濃縮も、希釈も、精製も、単離もなしに、本開示の検出法において直接使用され得る。例えば、液体サンプル(表面洗浄剤が挙げられるが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。サンプルは、緩衝化溶液もしくは細菌培養培地が挙げられ得るが、これらに限定されない溶液中で希釈もしくは懸濁され得る。固体もしくは半固体であるサンプルは、液体中の固体を細かく刻むか、混合するかもしくは浸軟することによって、液体中に懸濁され得る。サンプルは、上記宿主細菌細胞へのバクテリオファージ付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。サンプルはまた、2価カチオンおよび1価カチオン(Na、Mg2+、およびCa2+が挙げられるが、これらに限定されない)の適切な濃度を含むべきである。好ましくは、サンプルは、上記サンプル内に含まれる任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。
【0044】
ある特定の実施形態において、1種またはこれより多くの生きている微生物を含む上記サンプルは、上記サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする前に、濾過され得る。場合によっては、その液体サンプル(例えば、表面灌注液)は、フィルターに適用され得る。例えば、上記サンプルは、上記サンプル中の1またはこれより多くの微生物が上記膜上に保持されるように、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜フィルターに適用され得る。微生物を保持するための当該分野で公知の任意のフィルターが、本明細書で開示される実施形態で使用され得る。いくつかの実施形態において、上記フィルターは、0.5ミクロン未満、0.45ミクロン未満、0.4ミクロン未満、0.35ミクロン未満、0.3ミクロン未満、0.25ミクロン未満、0.2ミクロン未満、または0.15ミクロン未満の孔サイズを有する。
【0045】
検出アッセイのいくつかの実施形態では、上記サンプルは、上記サンプルに存在する任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。例えば、バクテリオファージが細菌細胞に付着している工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ付着を促進する温度で維持することは、好ましい。バクテリオファージが感染細菌細胞内で複製されているかもしくはこのような感染細胞を溶解する工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ複製および上記宿主の溶解を促進する温度で維持することは好ましい。このような温度は、少なくとも約25摂氏度(C)、より好ましくは、約45℃以下、最も好ましくは約37℃である。
【0046】
アッセイは、種々の適切なコントロールサンプルを含み得る。例えば、バクテリオファージを含まないコントロールサンプルまたは細菌なしのバクテリオファージを含むコントロールサンプルは、バックグラウンドシグナルレベルに関するコントロールとしてアッセイされ得る。
【0047】
インジケーター組換えバクテリオファージ
本明細書でより詳細に記載されるように、本開示の組成物、方法、システムおよびキットは、汚染された医療デバイスの検出において使用するための感染性因子を含み得る。ある種の実施形態において、本開示は、組換えインジケーターバクテリオファージを含む組成物を含むことができ、ここで、バクテリオファージゲノムはインジケーター遺伝子を含むように遺伝的に改変される。
【0048】
組換えインジケーターバクテリオファージは、インジケーター遺伝子を含む遺伝子構築物を含み得る。上記組換えインジケーターバクテリオファージのある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。例えば、ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。場合によっては、上記遺伝子構築物は、さらなる外因性プロモーターをさらに含み得る。ある種の実施形態において、上記遺伝子構築物は、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得る。後期遺伝子は構造タンパク質をコードするので、他のファージ遺伝子より高レベルで一般的に発現される。後期遺伝子領域はクラスIII遺伝子領域であってよく、主要カプシドタンパク質のための遺伝子を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態は、上記主要カプシドタンパク質遺伝子の下流に相同組換えのための配列を設計する(および、任意選択で調製する)ことを含む。他の実施形態は、主要カプシドタンパク質遺伝子の上流に相同組換えのための配列を設計する工程(および必要に応じて調製する工程)を含む。いくつかの実施形態において、上記配列は、非翻訳領域の後にコドン最適化インジケーター遺伝子を含む。非翻訳領域は、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含み得る。
【0050】
上記組換えインジケーターファージのいくつかの実施形態において、上記さらなる外因性後期プロモーター(例えば、ファージKまたはT7またはT4に由来するクラスIIIプロモーター)は、上記ファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じ天然のファージ(例えば、それぞれ、ファージKまたはT7またはT4)のRNAポリメラーゼに対して高い親和性を有する。これらのタンパク質は、各ファージ粒子がこれらの分子の数十または数百ものコピーを含むことから、ファージによって作られる存在量の最も多いタンパク質である。ウイルス後期プロモーターの使用は、インジケータータンパク質生成物の高レベルの発現を最適に確実にし得る。上記インジケーターファージが由来する元の野生型ファージに由来するか、またはこれに対して特異的かまたはその下で活性である後期ウイルスプロモーター(例えば、ファージKまたはT4またはT7ベースのシステムでのファージKまたはT4またはT7後期プロモーター)の使用は、上記酵素の最適な発現をさらに確実にし得る。標準的な細菌(非ウイルス/非ファージ)プロモーターの使用は、ある場合には、発現にとって有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターはしばしば、ファージ感染の間に(ファージが、ファージタンパク質生成のために細菌のリソースを優先するために)ダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、インジケータータンパク質生成物をコードし、高レベルで発現するために操作される。
【0051】
微生物の同定は、汚染源、その生物が製品品質に課すリスク、および適切な治療応答(remediation response)を決定する助けになり得る。いくつかの実施形態において、組換えインジケーターファージは、目的の特定の細菌に対して特異的なバクテリオファージから構築される。本開示によって検出可能な細菌細胞としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: Staphylococcusの全ての種(S.aureusが挙げられるが、これに限定されない)、Salmonella spp.、Klebsiella spp.、Pseudomonas spp.、Streptococcus spp.、Escherichia coliの全ての株、Listeria(L.monocytogenesが挙げられるが、これに限定されない)、Campylobacter spp.、Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Campylobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Clostridium perfringens、Enterobacter spp.、Klebsiella pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella typhi、Shigella sonnei、およびStreptococcus spp.。いくつかの実施形態において、本開示によって検出可能な細菌細胞は、公知の感染原因因子であるものである。例えば、Salmonella種およびPseudomonas aeruginosaは、消化管内視鏡検査によって伝播される感染の原因因子として同定されており、M.tuberculosis(非定型マイコバクテリア)、およびP.aeruginosaは、気管支鏡検査法によって伝播される感染の原因因子として同定されている。
【0052】
さらなる微生物(その抗生物質耐性が、特許請求される方法およびシステムを使用して検出され得る)は、以下からなる群より選択され得る: Abiotrophia adiacens、Acinetobacter baumanii、Actinomycetaceae、Bacteroides、CytophagaおよびFlexibacter phylum、Bacteroides fragilis、Bordetella pertussis、Bordetella spp.、Campylobacter jejuniおよびC.coli、Candida albicans、Candida dubliniensis、Candida glabrata、Candida guilliermondii、Candida krusei、Candida lusitaniae、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida zeylanoides、Candida spp.、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Clostridium spp.、Corynebacterium spp.、Cronobacter spp、Crypococcus neoformans、Cryptococcus spp.、Cryptosporidium parvum、Entamoeba spp.、Enterobacteriaceae群、Enterococcus casseliflavus-flavescens-gallinarum群、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Enterococcus spp.、Escherichia coliおよびShigella spp.群、Gemella spp.、Giardia spp.、Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Legionella spp.、Leishmania spp.、Mycobacteriaceae科、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria gonorrhoeae、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonads群、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus spp.、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、ならびにStreptococcus spp.。
【0053】
いくつかの実施形態において、サンプルは、少なくとも1種のバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートされる。ある特定の場合では、上記カクテル組成物は、高リスク微生物に対して特異的な少なくとも1種のバクテリオファージを含む。従って、いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1種の高リスク微生物を検出し得る。高リスク微生物は、疾患とよりしばしば関連する生物である。高リスク生物の例としては、グラム陰性桿菌(例えば、Escherichia coli、Klebsiella pneumoniaeまたは他のEnterobacteriaceae、およびPseudomonas aeruginosa)、グラム陽性生物(Staphylococcus aureus、β溶血性Streptococcus、およびEnterococcus種が挙げられる)が挙げられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の高リスク微生物の検出は、上記表面が汚染されていることを示す。
【0054】
ある特定の場合では、上記カクテル組成物は、中程度リスクの微生物に対して特異的な少なくとも1種のバクテリオファージを含む。従って、いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1種の中程度リスクの微生物を検出し得る。他の実施形態において、上記カクテル組成物は、低リスク微生物に対して特異的な少なくとも1種のバクテリオファージを含む。従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、少なくとも1種の低リスク微生物を検出し得る。低/中程度リスクの微生物は、疾患とそれほど頻繁には関連しない生物である;それらの存在は、サンプル収集の間に環境汚染から生じ得る。低リスク生物の例としては、グラム陽性細菌(例えば、Micrococcus)の多くの種、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus lugdunensisを除く)、ならびにBacillusおよび類ジフテリア菌または他のグラム陽性桿菌が挙げられる。中程度リスクの微生物としては、口腔中で一般に見出される微生物(例えば、腐生性Neisseria、ヴィリダンス型連鎖球菌、およびMoraxella種)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
ある特定の実施形態において、インジケーターバクテリオファージは、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermis、Enterococcus faecalis、Streptococcus viridans、Escherichia coli、Klebsiella pneumonia、Proteus mirabilis、またはPseudomonas aeruginosaに対して特異的なファージに由来する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、目的の特定の病原性微生物に対して非常に特異的なバクテリオファージに由来する。
【0056】
本明細書で考察されるように、このようなファージは、細菌の内部で複製して、数百もの子孫ファージを生じ得る。上記ファージに挿入されたインジケーター遺伝子の検出は、上記サンプル中の細菌の尺度として使用され得る。S.aureusファージとしては、ファージK、SA1、SA2、SA3、SA11、SA77、SA 187、Twort、NCTC9857、Ph5、Ph9、Ph10、Ph12、Ph13、U4、U14、U16およびU46が挙げられるが、これらに限定されない。E.coliの十分に研究されたファージとしては、T1、T2、T3、T4、T5、T7、およびlambdaが挙げられる;ATCCコレクションにおいて入手可能な他のE.coliファージは、例えば、phiX174、S13、Ox6、MS2、phiV1、PR772、およびZIK1が挙げられる。Pseudomonas aeruginosaファージは、ATCCファージPa2、phiKZ、PB1または近縁のファージを含み得る。あるいは、天然のファージは、種々の環境供給源から単離され得る。ファージ単離の供給源は、目的の微生物が見出されると予測される場所に基づいて選択され得る。
【0057】
上記のように、いくつかの実施形態において、上記ファージは、T7、T4、T4様、ファージK、MP131、MP115、MP112、MP506、MP87、Rambo、SAP-JV1、SAP-BZ2、PAP-WH2、PAP-WH3、PAP-JP1、PAP-JP2または上記で開示されるファージと少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78,%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、または70% 相同性を有するゲノムを有する別の天然に存在するファージに由来する。いくつかの局面において、本発明は、ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む組換えファージを含む。いくつかの実施形態において、上記ファージは、Tequatrovirus属またはKayvirus属の中にある。1つの実施形態において、上記組換えファージは、ファージK、SAP-JV1、SAP-BZ2、またはMP115に由来する。ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、特定の細菌に対して非常に特異的である。例えば、ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、MRSAに対して非常に特異的である。一実施形態において、上記組換えファージは、少なくとも100の他のタイプの細菌からMRSAを区別し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、ファージのCaudovirales目に由来する。Caudoviralesは、2本鎖DNA(dsDNA)ゲノムを有するテールのあるバクテリオファージの目である。Caudovirales目の各ビリオンは、ビリオンゲノムおよび可撓性テールを含む正二十面体ヘッドを有する。Caudovirales目は、5つのバクテリオファージ科を含む:Myoviridae(長い収縮性のあるテール)、Siphoviridae(長い非収縮性のテール)、Podoviridae(短い非収縮性のテール)、Ackermannviridae、およびHerelleviridae。用語マイオウイルスは、正二十面体ヘッドおよび長い収縮性のあるテールを有する任意のバクテリオファージを記載するために使用され得、これは、Myoviridae科およびHerelleviridae科の両方の範囲内のバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Myoviridae科のメンバー(例えば、ListeriaファージB054、T4およびT4様ウイルス(tequatrovirusとしても公知))である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Herelleviridae科のメンバー(ListeriaファージLMTA-94、P100ウイルスおよびA511など)である。Ackermannviridaeは、Kuttervirus(別名(Vil様)を含む。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Listeria spp.に感染する。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LMA4およびLMA8である。Herelleviridae科の下にあるPecentumvirus属は、バクテリオファージ(例えば、ListeriaファージLMSP-25、ListeriaファージLMTA-148、ListeriaファージLMTA-34、ListeriaファージLP-048、ListeriaファージLP-064、ListeriaファージLP-083-2、ListeriaファージLP-125、ListeriaウイルスP100、ListeriaファージList-36、ListeriaファージWIL-1、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、およびListeriaウイルスA511)を含む。LMA4およびLMA8はまた、Herelleviridae科の下にあるPecentumvirus属の中にあるようである。Siphoviridae科は、ListeriaファージA006、A118、A500、B025、LP-026、LP-030-2、LP-030-3、LP-037、LP-101、LP-110、LP-114、P35、P40、P70、PSA、vB_LmoS_188、およびvB_Lmos_293を含む。
【0059】
さらに、非必須であると考えられるファージ遺伝子は、認識されていない機能を有し得る。例えば、見かけは非必須の遺伝子は、アセンブリにおける巧妙な切断、適合、もしくはトリミング機能など、バーストサイズを上昇させることにおいて重要な機能を有し得る。それゆえ、遺伝子を欠失させてインジケーター遺伝子を挿入することは、有害であり得る。大部分のファージは、それらの天然のゲノムより数パーセント大きいDNAをパッケージし得る。この考察では、より小さなインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ(特に、より小さなゲノムを有するバクテリオファージ)を改変するためのより適切な選択であり得る。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするのに約500~600bp)である一方で、FLucは、約62kDa(コードするのに約1,700bp)である。さらに、インジケーター遺伝子は細菌によって内因的に発現されるべきでなく(すなわち、細菌ゲノムの一部でない)、高いシグナル対バックグラウンド比を生成するべきであり、タイムリーに容易に検出可能であるべきである。PromegaのNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、PromegaのNANO-GLO(登録商標)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン)と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑健なシグナルを提供し得る。
【0060】
いくつかのインジケーターファージ実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、野生型ファージ遺伝子を無傷のままにして、機能的遺伝子の破壊を回避するために非翻訳領域へと挿入され得、これは、非実験室株の細菌に感染させる場合に、より大きな適合をもたらし得る。さらに、3つ全てのリーディングフレームに終止コドンを含めることは、リードスルー(発現漏れ(leaky expression)としても公知)を低減することによって、発現を増加させる一助になり得る。このストラテジーはまた、上記ファージから分離できないバックグラウンドシグナル(例えば、ルシフェラーゼ)として現れる融合タンパク質が低レベルで作られるという可能性を排除し得る。
【0061】
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。上記インジケーター遺伝子は、検出可能な生成物を発現する遺伝子もしくは検出可能な生成物を生成する酵素である。例えば、一実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼまたは工学技術で作製された(engineered)ルシフェラーゼのうちの1種である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ遺伝子はOplophorusに由来する。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)などの遺伝的に改変されたルシフェラーゼ遺伝子である。
【0062】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、上記後期(クラスIII)遺伝子領域において非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む遺伝的に改変されたバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、後期プロモーターの制御下にある。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、上記インジケーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)がウイルスカプシドタンパク質のように、高レベルで発現されるのみならず、内因性細菌遺伝子もしくはさらには初期ウイルス遺伝子のように停止もされないことを確実にする。
【0063】
感染性因子に対する遺伝的改変は、核酸の小さなフラグメント、遺伝子の実質的部分、もしくは遺伝子全体の挿入、欠失、もしくは置換を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入もしくは置換された核酸は、非天然の配列を含む。非天然のインジケーター遺伝子は、バクテリオファージプロモーターの制御下にあるように、バクテリオファージゲノムへと挿入され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、いくつかの実施形態において、遺伝的改変は、上記インジケータータンパク質生成物が上記野生型のバクテリオファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明は、目的の細菌を検出するための方法を包含し、上記方法は、試験サンプルをこのような組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程を包含する。
【0064】
いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおけるインジケーター遺伝子の発現は、遊離の可溶性タンパク質生成物をもたらす。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、ファージ構造タンパク質をコードする遺伝子と連結していないので、融合タンパク質を生じない。ファージ構造タンパク質へのインジケータータンパク質生成物の融合物(すなわち、融合タンパク質)を使用するシステムとは異なり、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性インジケーター(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)を発現する。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質は、理想的には、上記バクテリオファージ構造を含まない。すなわち、上記インジケーターまたはレポーターは、上記ファージ構造タンパク質に結合されない。よって、上記インジケーターの遺伝子は、上記組換えファージゲノムにおける他の遺伝子と融合されない。これは、上記アッセイの感度を大いに増大させ得(単一の細菌まで)、上記アッセイを単純化し得、上記アッセイが、検出可能な融合タンパク質を生成する構築物で必要とされるさらなる精製工程に起因する数時間とは対照的に、いくつかの実施形態に関しては、2時間もしくはこれより短い時間で完了することを可能にする。さらに、融合タンパク質は、例えば、酵素活性部位のコンホメーションもしくは基質へのアクセスを変化させ得るタンパク質折り畳みの制約に起因して、可溶性タンパク質より活性が低い場合がある。上記濃度が、1,000細菌細胞/mLサンプルである場合、例えば、4時間未満が、上記アッセイに十分であり得る。
【0065】
さらに、定義による融合タンパク質は、上記バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着される部分の数を制限する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして働くように設計された市販のシステムを使用すると、各T7バクテリオファージ粒子において遺伝子10Bカプシドタンパク質の約415コピーに相当する、融合部分の約415コピーが生じる。この制約がなければ、感染した細菌は、上記バクテリオファージに適合し得るより多くの上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)のコピーを発現すると予測され得る。さらに、大きな融合タンパク質(例えば、カプシド-ルシフェラーゼ融合物)は、上記バクテリオファージ粒子のアセンブリを阻害し得、そのようにして、より少ないバクテリオファージ子孫を生じる。従って、可溶性の非融合インジケータータンパク質生成物が好ましいものであり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素などのインジケータータンパク質をコードする。上記インジケーター遺伝子産物は、光を生じ得、そして/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケータータンパク質生成物として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質生成物である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質生成物である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素もまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、可溶性非融合インジケータータンパク質生成物の使用は、汚染しているストックファージを、上記感染したサンプル細胞の溶解物から除去する必要性を排除する。融合タンパク質システムを用いると、サンプル細胞に感染させるために使用される任意のバクテリオファージは、付着されるインジケータータンパク質生成物を有し、上記インジケータータンパク質生成物も含む娘バクテリオファージから区別できない。サンプル細菌の検出は、新たに作り出された(デノボ合成された)インジケータータンパク質生成物の検出に依拠するので、融合構築物の使用は、古い(ストックファージ)インジケーターを新たに合成されたインジケーターから分離するためにさらなる工程を要する。これは、上記バクテリオファージの生活環の完了の前に、上記感染した細胞を複数回洗浄する工程、物理的もしくは化学的手段によって感染後に過剰なストックファージを不活性化する工程、および/または上記ストックバクテリオファージを結合部分(例えば、ビオチン)で化学的に改変する工程(これは、次いで、結合および分離され得る(例えば、ストレプトアビジン被覆セファロースビーズによって))によって達成され得る。しかし、除去時にすべてのこれら試みを使用したとしても、ストックファージは、少ない数のサンプル細胞の感染を保証するために高濃度のストックファージが使用される場合に残存することができ、感染した細胞の子孫ファージからのシグナルの検出を不明確にし得るバックグラウンドシグナルを作り出す。
【0068】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態において発現される可溶性非融合インジケータータンパク質生成物を用いると、最終溶解物からの上記ストックファージの精製は不要である。なぜなら上記ストックファージ組成物は、付着されるいかなるインジケータータンパク質生成物をも有しないからである。従って、感染後に存在する任意のインジケータータンパク質生成物は、感染した1個もしくは複数の細菌の存在を示して、新たに作り出されていなければならない。この利益を利用するために、ファージの生成および調製は、細菌培養物中での組換えバクテリオファージの生成の間に生成された任意の遊離インジケータータンパク質生成物からの上記ファージの精製を含み得る。標準的なバクテリオファージ精製技術は、本発明に従うファージのいくつかの実施形態を精製するために使用され得る(例えば、スクロース密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度(isopycnic)密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、および透析または派生技術(例えば、Amiconブランドの濃縮器 - Millipore, Inc.)。塩化セシウム等密度超遠心分離は、ストックファージ粒子を、上記細菌宿主中のファージの増殖の際に生成される汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離するために、本開示の組換えファージの調製の一部として用いられ得る。このようにして、本発明の組換えバクテリオファージは、上記細菌における生成の間に生成される任意のルシフェラーゼが実質的ない。上記ファージストックに存在する残りのルシフェラーゼの除去は、上記組換えバクテリオファージが試験サンプルとともにインキュベートされる場合に観察されるバックグラウンドシグナルを実質的に低減し得る。
【0069】
改変された組換えバクテリオファージのいくつかの実施形態において、後期プロモーター(クラスIIIプロモーター)は、バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じバクテリオファージのRNAポリメラーゼに対して高い親和性を有する。これらのタンパク質は、上記ファージによって作製される最も豊富なタンパク質である。なぜなら各バクテリオファージ粒子は、これら分子の数十または数百ものコピーを含むからである。ウイルス後期プロモーターの使用は、最適には、ルシフェラーゼインジケータータンパク質生成物の高レベルの発現を確実にし得る。野生型バクテリオファージに由来する後期ウイルスプロモーター、その下で特異的または活性である派生する上記インジケーターファージの使用は、インジケータータンパク質生成物の最適な発現をさらに確実にし得る。例えば、MRSAに対して特異的なインジケーターファージは、S.aureusファージISPに由来するコンセンサス後期遺伝子プロモーターを含み得る。他の場合では、上記SAP-BZ2は、グラム陽性/SigAプロモーターコンセンサス領域を含み得る。標準的な細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、いくつかの場合では、発現に有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターは、バクテリオファージ感染の間に(上記バクテリオファージがファージタンパク質生成のための細菌資源を優先するために)しばしばダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、発現をファージ構造構成要素のサブユニットの数に制限しないゲノム内での配置を用いて、可溶性(遊離)インジケータータンパク質をコードし、高レベルで発現するように操作されている。
【0070】
本開示の組成物は、1種または複数種の野生型または遺伝的に改変された感染性因子(例えば、バクテリオファージ)および1種または複数種のインジケーター遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、同じまたは異なるインジケータータンパク質をコードおよび発現し得る、異なるインジケーターファージのカクテルを含み得る。いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージのカクテルは、少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含む。
汚染された表面の検出のためのバクテリオファージの使用方法
【0071】
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明は、微生物を検出するための感染性粒子を使用するための方法を包含し得る。本発明の方法は、種々の方法で具現化され得る。
【0072】
滅菌、消毒および清掃プロセスは、表面が汚染されているかどうかを決定するために日常的にモニターされるべきである。一実施形態において、本発明は、表面で目的の微生物を検出するための方法であって、(i)表面からサンプルを得る工程;(ii)サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むある量のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程;および(iii)組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここでインジケータータンパク質生成物の陽性検出は、目的の微生物がサンプルに存在することを示す、工程、を包含する、方法を含み得る。
【0073】
ある特定の実施形態において、表面で目的の微生物を検出するための上記方法は、少なくとも1種の目的の微生物を検出する工程を包含する。一実施形態において、サンプル中の少なくとも1種の目的の微生物を検出するための方法は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法であって、サンプルを目的の細菌に感染するバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで、バクテリオファージは遺伝子構築物を含み、遺伝子構築物はインジケーター遺伝子を含み、その結果、目的の細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間のインジケーター遺伝子の発現は可溶性(非融合)インジケータータンパク質生成物を生じる工程、およびインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここでインジケータータンパク質生成物の陽性検出は目的の微生物がサンプル中に存在することを示す工程を含む。ある特定の実施形態において、上記遺伝子構築物は、さらなる外因性プロモーターをさらに含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記表面は、サンプル収集の前に除染される。除染は、感染の伝播のリスクが存在しないことが合理的に想定され得るように、微生物汚染のレベルを低減する。除染プロセスとしては、滅菌、消毒、および清掃が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記表面は、熱、エチレンオキシドガス、過酸化水素ガス、プラズマ、オゾン、および放射線のうちの少なくとも1つによって、上記サンプルを得る前に滅菌されている。ある特定の場合では、滅菌は、液体の殺菌剤の使用を通じて達成され得る。他の実施形態において、上記表面は、上記サンプルを得る前に、化学的殺菌剤を使用して消毒されている。例えば、濃縮された次亜塩素酸ナトリウム グルタルアルデヒド、オルト-フタルアルデヒド、過酸化水素、ホルムアルデヒド、二酸化塩素、および過酢酸は、HLDを達成し得る。
【0076】
ある特定の実施形態において、上記アッセイは、少なくとも1種の洗剤または消毒薬製品の存在下で行われ得る。いくつかの実施形態において、上記表面は、サンプル収集の前に清掃および/または消毒され得る。しかし、これらのプロセスは、液体の化学物質での処理を必要とし、これは、上記表面に残留し得る。従って、上記表面から収集されたサンプルは、ある量の洗剤または消毒薬製品を含み得る。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、ある量の1種またはこれより多くの洗剤および/または消毒薬製品をさらに含む。ある特定の場合では、上記検出アッセイは、1種またはこれより多くの洗剤および/または消毒薬製品の存在下で行われ得る。洗剤および高レベル消毒薬としては、ENDOZIME(登録商標) Bio-Clean、INTERCEPT(登録商標) Detergent、RAPICIDETM OPA/28、METRICDE(登録商標)、RELIANCE DG(登録商標)、およびCIDEX(登録商標) OPAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
ある種の実施形態において、異なるサンプルタイプまたはサイズおよびアッセイフォーマットに適合するように改変し得る一般的な概念を利用して、アッセイが行われ得る。本発明の組換えバクテリオファージ(すなわち、インジケーターバクテリオファージ)を使用する実施形態は、サンプルタイプ、サンプルサイズ、およびアッセイ形式に応じて、0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、6.5時間、7.0時間、7.5時間、8.0時間、8.5時間、9.0時間、9.5時間、10.0時間、10.5時間、11.0時間、11.5時間、12時間、12.5時間、13.0時間、13.5時間、14.0時間、14.5時間、15.0時間、15.5時間、16.0時間、16.5時間、17.0時間、17.5時間、18.0時間、18.5時間、19.0時間、19.5時間、20.0時間、21.0時間、21.5時間、22.0時間、22.5時間、23.0時間、23.5時間、24.0時間、24.5時間、25.0時間、25.5時間または26.0時間未満の合計アッセイ時間で、特定の細菌株の迅速検出を可能にし得る。例えば、必要とされる時間量は、バクテリオファージの株およびこのアッセイで検出される細菌の株、試験されるサンプルのタイプおよびサイズ、標的の生存性のために必要とされる条件、物理的/化学的環境の複雑性、ならびに「内因性」の非標的混在細菌の濃度に応じて、若干より短いかまたは長くてもよい。例えば、グラム陰性株(例えば、E.coli、Klebsiella、Shigella)の存在の検出は、抗生物質耐性の検出なしで0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、もしくは3.0時間を下回る総アッセイ時間で、または抗生物質耐性の検出ありで、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、もしくは4.5時間を下回る総アッセイ時間で、完了され得る。グラム陽性株の存在の検出は、抗生物質耐性の検出なしで1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、もしくは4.5時間を下回る総アッセイ時間で、または抗生物質耐性の検出ありで、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、もしくは6.5時間を下回る総アッセイ時間で、完了され得る。
【0078】
上記バクテリオファージ(例えば、ファージK、ISP、MP115、SAP-JV1、SAP-BZ2)は、上記ファージの複製の間に可溶性(非融合)ルシフェラーゼを発現するように操作され得る。ルシフェラーゼの発現は、ウイルスカプシドプロモーター(例えば、上記バクテリオファージ PecentumvirusまたはT4後期プロモーター)によって駆動され、高発現を生じる。ストックファージは、それらがルシフェラーゼを含まないように調製されるので、上記アッセイにおいて検出されるルシフェラーゼは、細菌細胞の感染の間に、子孫ファージの複製に由来しなければならない。従って、上記親ファージを上記子孫ファージから分離する必要は、一般にはない。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記サンプルにおける細菌の富化は、試験前に必要とされない。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、成長を助長する条件でのインキュベーションによる試験の前に富化することができる。このような実施形態では、富化期間は、サンプルのタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間またはそれより長くてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージは検出可能なインジケータータンパク質生成物を含み、単一の病原細胞(例えば、細菌)の感染は、インジケータータンパク質生成物を介して生成される増幅されたシグナルによって検出され得る。従って、本方法は、ファージ複製の間に生成されるインジケータータンパク質生成物を検出することを含み得、ここで、インジケーターの検出は、目的の細菌がサンプル中に存在することを示す。
【0081】
一実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法であって、上記サンプルを、目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで、上記組換えバクテリオファージは上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程、および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は上記目的の細菌が上記サンプル中に存在することを示す工程を含む、方法を含み得る。いくつかの実施形態において、検出されるインジケータータンパク質生成物の量は、上記サンプル中に存在する目的の細菌の量に相当する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージ検出アッセイは、上記医療用デバイスの表面に存在する、生きている微生物を検出し得、そしてその数を定量し得る。
【0082】
本明細書により詳細に記載されるように、本開示の組成物、方法およびシステムは、サンプルに存在する細菌に感染させるために、一連の濃度の親のインジケーターバクテリオファージを利用することができる。いくつかの実施形態において、上記インジケーターバクテリオファージは、10細胞などの上記サンプル中に非常に少ない数で存在する標的細菌を迅速に見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分な濃度で上記サンプルに加えられる。いくつかの実施形態において、ファージ濃度は、1時間未満で標的細菌を見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分であり得る。他の実施形態において、これらの事象は、上記サンプルへのインジケーターファージの添加の後、2時間未満、または3時間未満、または4時間未満に起こることができる。例えば、ある種の実施形態において、上記インキュベートする工程のためのバクテリオファージ濃度は、1×10PFU/mLより高いか、1×10PFU/mLより高いか、または1×10PFU/mLより高いか、または1×10PFU/mLより高い。
【0083】
ある種の実施形態において、上記組換えストックファージ組成物は、上記ファージストックの生産の際に生成され得るいかなる残留インジケータータンパク質も含まないように、精製され得る。従って、ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプルとともにインキュベートする前に、スクロース勾配または塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して精製され得る。上記感染性因子がバクテリオファージである場合、この精製は、DNAを有しないバクテリオファージ(すなわち、空のファージまたは「ゴースト」)を除去するという、追加の利点を有し得る。
【0084】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、上記微生物はサンプルからの上記微生物のいかなる単離または精製もなしに、検出され得る。例えば、ある種の実施形態において、1または数個の目的の微生物を含むサンプルは、アッセイ容器(例えば、スピンカラム、チューブ、マイクロタイターウェル、またはフィルター)に直接適用され得、上記アッセイはそのアッセイ容器の中で行われる。このようなアッセイの種々の実施形態は、本明細書に開示される。
【0085】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルのうちの少なくとも1つのアリコートは、ある量のインジケーターバクテリオファージカクテル組成物と接触される。ある特定の場合では、上記インジケーターカクテル組成物は、目的の特定の微生物に対して特異的な少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含む。他の実施形態において、上記インジケーターカクテル組成物は、目的の特定の微生物に対して特異的な、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種のタイプの組換えバクテリオファージを含む。ある特定の実施形態において、上記方法は、上記生物学的サンプルのうちの複数のアリコートと、複数のインジケーターカクテル組成物とを接触させる工程をさらに包含する。場合によっては、各インジケーターカクテル組成物は、目的の異なる微生物に対して特異的である。例えば、第1のアリコートは、Enterococcus faecalisに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第2のアリコートは、Staphylococcus aureusに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第3のアリコートは、Staphylococcus epidermidisに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第4のアリコートは、Streptococcus viridansに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第5のアリコートは、Escherichia coliに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第6のアリコートは、Klebsiella pneumoniaeに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第7のアリコートは、Proteus mirabilisに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第8のアリコートは、Pseudomonas aeruginosaに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得る。いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルのうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、または25個のアリコートは、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、21種、22種、23種、24種、または25種の異なるインジケーターカクテル組成物と接触される。いくつかの実施形態において、上記カクテル組成物は、目的の同じ微生物に対して特異的な2種またはこれより多くのバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記カクテル組成物は、目的の少なくとも2種の異なる微生物に対して特異的な2種またはこれより多くのバクテリオファージを含む。
【0086】
試験サンプルアリコートは、マルチウェルプレートのウェルへと直接分配され得、インジケーターファージが添加され得、そして感染のための十分な期間の後、溶解緩衝液は、インジケーター部分のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)と同様に添加され得、インジケーターシグナルの検出のためにアッセイされ得る。本方法のいくつかの実施形態は、フィルタープレートまたは96ウェルプレートの上で行うことができる。本方法のいくつかの実施形態は、インジケーターファージによる感染の前のサンプルの濃縮の有りまたはなしで行われ得る。
【0087】
例えば、多くの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(もしくは検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。プレートの他の色は、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度を有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルに関する1つの理由は、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れである。白色のウェルを有するいくつかのプレートがあるが、上記プレートの残りは黒色である。これは、上記ウェルの内部での高いシグナルを可能にするが、ウェルからウェルへの光の漏れを防止し、従って、バックグラウンドを低減し得る。従って、プレートもしくは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイのための感度およびバックグラウンドシグナルに影響を与え得る。
【0088】
本開示の方法は、感度を増加させるための種々の他の工程を包含し得る。例えば、本明細書でより詳細に考察されるように、上記方法は、過剰なバクテリオファージおよび/または上記バクテリオファージ調製物を汚染するルシフェラーゼもしくは他のインジケータータンパク質を除去するために、上記バクテリオファージを添加した後であるが、インキュベートする前に、上記捕捉されかつ感染した細菌を洗浄する工程を包含し得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の検出は、上記微生物の集団を増加させる方法としての、上記サンプルを培養する必要性なしに、完了し得る。例えば、ある種の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、28.0時間、27.0時間、26.0時間、25.0時間、24.0時間、23.0時間、22.0時間、21.0時間、20.0時間、19.0時間、18.0時間、17.0時間、16.0時間、15.0時間、14.0時間、13.0時間、12.0時間未満、11.0時間、10.0時間、9.0時間、8.0時間、7.0時間、6.0時間、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間または1.0時間未満である。結果までの時間を最小にすることは、診断試験において重大である。
【0090】
当該分野で公知のアッセイと対照的に、本開示の方法は、個々の微生物を検出し得る。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の10個程度の少ない細胞を検出し得る。例えば、ある種の実施形態において、組換えインジケーターバクテリオファージは、Staphylococcus spp.、E. coli株、Shigella spp.、Klebsiella spp.、Cutibacterium acnes、Proteus mirabalis、Enterococcus spp.、またはPseudomonas sppに高度に特異的である。一実施形態において、組換えインジケーターバクテリオファージは、他のタイプの細菌の存在下で、目的の細菌を区別し得る。ある種の実施形態において、組換えバクテリオファージは、サンプル中の特異的タイプの単一細菌を検出するために使用することができる。ある種の実施形態において、組換えインジケーターバクテリオファージは、サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌を検出する。さらなる実施形態において、上記組換えインジケーターバクテリオファージアッセイは、上記医療用デバイスの表面に存在する、目的の生きている微生物の数を定量するために使用され得る。
【0091】
従って、本開示の局面は、インジケータータンパク質生成物を介して試験サンプル中の微生物の検出のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記インジケータータンパク質生成物は、感染性因子(例えば、インジケーターバクテリオファージ)と関連づけられ得る。上記インジケータータンパク質生成物は、基質と反応して、検出可能なシグナルを放射してもよいし、内因性のシグナル(例えば、生体発光タンパク質)を放射してもよい。いくつかの実施形態において、上記検出感度は、試験サンプル中の上記目的の微生物の50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞の存在を明らかにし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の実に1個の細胞が、検出可能なシグナルを生じ得る。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、ファージK、ISP、MP115、SAP-JV1、SAP-BZ2またはJG04である。
【0092】
いくつかの実施形態において、上記組換えインジケーターバクテリオファージによってコードされる上記インジケータータンパク質生成物は、上記バクテリオファージの複製の間もしくは後に検出可能であり得る。インジケータータンパク質としての使用に適した検出可能な生体分子の多くの異なるタイプが、当該分野で公知であり、多くは市販されている。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、酵素をコードするインジケーターを含み、これは上記インジケータータンパク質として働く。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージのゲノムは、可溶性タンパク質をコードするように改変される。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素をコードする。上記インジケーターは、光を放射し得る、および/または転化された基質における色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0093】
従って、いくつかの実施形態において、本組成物、方法またはシステムの組換えインジケーターバクテリオファージは、野生型バクテリオファージから調製される。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、内因性シグナルを放射するタンパク質、例えば、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質など)をコードする。上記インジケーターは光を放射し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、基質と相互作用してシグナルを発生する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子である。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼ遺伝子は、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、External Gaussiaルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼまたは工学技術で作製されたルシフェラーゼ、例えばNANOLUC(登録商標)、Rluc8.6-535またはオレンジナノ-ランタンのうちの1つである。
【0094】
上記インジケータータンパク質の検出は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)は、検出可能なシグナルを生成するために、基質と反応される。上記シグナルの検出は、当該分野で概して公知の任意の機械またはデバイスで達成され得る。いくつかの実施形態において、上記シグナルは、In Vivo Imaging System(IVIS)を使用して検出され得る。上記IVISは、CCDカメラまたはCMOSセンサーを使用して、全フラックスによる光の放射を測定する。全フラックス=ラジアンス(光子/秒)。平均ラジアンスは、光子/秒/cm/ステラジアンとして測定される。他の実施形態において、上記シグナルの検出は、ルミノメーター、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラで達成され得、色の変化および他の光の放射を検出し得る。いくつかの実施形態において、上記シグナルは、絶対RLUとして測定される。さらなる実施形態において、単一細胞または少数の細胞が確実に検出されるためにはシグナル対バックグラウンド比が高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)ことが必要である。
【0095】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、上記ファージが特異的に認識しかつ感染する細菌の感染の際にのみ生成される酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の遺伝子を含むように遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、上記インジケーター部分は、ウイルス生活環において後期に発現される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される場合、上記インジケーターは、可溶性タンパク質(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)であり、そのコピー数を制限するファージ構造タンパク質と融合されない。
【0096】
インジケーターファージを利用するいくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、少なくとも1個の目的のサンプル微生物を捕捉する工程;該少なくとも1個の目的の微生物を、複数のインジケーターファージとともにインキュベートする工程;子孫ファージを生成し、可溶性インジケータータンパク質を発現するための、感染および複製の時間を与える工程;ならびに上記インジケータータンパク質を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質の検出は、上記目的の微生物が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0097】
例えば、いくつかの実施形態において、試験サンプル細菌は、プレートの表面に結合することによって、または上記サンプルを細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズのスピンフィルターまたはプレートフィルター)を介してろ過することによって、捕捉され得る。一実施形態において、上記感染性因子(例えば、インジケーターファージ)は、最小限の体積で、上記フィルター上に直接捕捉されたサンプルに添加される。一実施形態において、上記フィルターまたはプレート表面上に捕捉された微生物は、その後、過剰な結合されていない感染性因子を除去するために、1回または複数回洗浄される。実施形態において、培地(例えば、Luria-Bertani(LB)ブロス、緩衝化ペプトン水(BPW)またはTryptic SoyブロスもしくはTryptone Soyブロス(TSB)、ブレインハートインフュージョン(BHI)、緩衝化Listeria富化ブロス(BLEB) University of Vermont(UVM)ブロス、またはFraserブロス)は、さらなるインキュベーション時間のために添加されて、細菌細胞およびファージの複製ならびにインジケーター部分をコードする遺伝子の高レベル発現を可能にし得る。しかし、試験アッセイのいくつかの実施形態の驚くべき局面は、インジケーターファージによる上記インキュベーション工程が単一のファージ生活環にとって十分長いことのみが必要であるということである。インジケーターファージの単一の複製サイクルが、本発明のいくつかの実施形態に従って高感度かつ迅速検出を容易にするために十分であり得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、細菌を含む試験サンプルのアリコートをスピンカラムに適用し得、組換えバクテリオファージでの感染および任意の過剰なバクテリオファージを除去するための任意選択の洗浄後に、検出される可溶性インジケーターの量は、感染した細菌によって生成されるバクテリオファージの量に比例する。
【0099】
上記細菌の溶解の際に周囲の液体へと放出された可溶性インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、次いで、測定および定量され得る。一実施形態において、上記溶液は、フィルターを通して遠心され、その濾液はアッセイ(例えば、ルミノメーターでの)のために新しい容器に収集され、その後、上記インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)が添加される。
【0100】
種々の実施形態において、上記精製されたファージストックインジケーターファージは、上記検出可能なインジケーター自体を含まない。なぜなら上記親ファージは、これが試験サンプルとともにインキュベーションするために使用される前に精製され得るからである。後期(クラスIII)遺伝子の発現は、ウイルス生活環において後期に起こる。本発明のいくつかの実施形態において、親ファージは、いかなる存在するインジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)をも排除するために精製され得る。いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。従って、多くの実施形態において、上記検出工程の前に親ファージを子孫ファージから分離することは必須ではない。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記インジケーターファージは、バクテリオファージである。一実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、遊離、可溶性ルシフェラーゼであり、これは、上記宿主微生物の溶解の際に放出される。
【0101】
上記アッセイは、種々の方法で行われ得る。1つの実施形態において、上記サンプルは、96ウェルプレート上の少なくとも1つのウェルに添加され、ファージとともにインキュベートされ、溶解され、基質とともにインキュベートされ、次いで読み取られる。他の実施形態において、上記サンプルは、96ウェルフィルタープレートに添加され、そのプレートは遠心分離にかけられ、ファージとともにインキュベートされる前に、そのフィルター上に収集された細菌に培地が添加される。さらに他の実施形態において、上記サンプルは、抗体を使用して96ウェルプレートの少なくとも1個のウェルに捕捉され、培地で洗浄されて、ファージとともにインキュベートされる前に過剰な細胞が除去される。
【0102】
いくつかの実施形態において、上記細菌の溶解は、上記検出工程の前もしくはその間に起こり得る。実験は、感染した溶解されていない細胞が、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらくは、ルシフェラーゼは、完全な細胞溶解なしに、細胞から出ていき得る、および/またはルシフェラーゼ基質が細胞に入り得る。例えば、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼの基質は、細胞透過性である(例えば、フリマジン)。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態のために、上記溶解物へと放出されルシフェラーゼのみ(かつルシフェラーゼはさらに無傷の細菌の中にない)が、上記ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、溶液もしくは懸濁物のサンプルとともにフィルタープレートもしくは96ウェルプレートを利用する実施形態のために、無傷の細胞および溶解した細胞で満ちている元のプレートが上記ルミノメーターにおいて直接アッセイされる場合、溶解は、検出に必須ではない。
【0103】
いくつかの実施形態において、インジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、60分またはそれより長くにわたって続き得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいことであり得る。例えば、上記固体支持体として96ウェルフィルタープレートを、および上記インジケーターとしてルシフェラーゼを使用する実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および10分もしくは15分の間隔で、上記反応が完了するまで行われ得る。
【0104】
驚くべきことに、試験サンプルに感染させるために利用される高濃度のファージは、非常に短い時間枠で、標的微生物の非常に少数の検出を成功裏に達成した。ファージを試験サンプルとともにインキュベートすることは、いくつかの実施形態において、単一のファージ生活環にとって十分長いことのみを必要とする。いくつかの実施形態において、このインキュベートする工程のためのバクテリオファージの濃度は、1.0×10、2.0×10、3.0×10、5.0×10、6.0×10、7.0×10、8.0×10、9.0×10、1.0×10、1.1×10、1.2×10、1.3×10、1.4×10、1.5×10、1.6×10、1.7×10、1.8×10、1.9×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、5.0×10、6.0×10、7.0×10、8.0×10、9.0×10、もしくは1.0×10 PFU/mLより高い。
【0105】
ファージのこのような高濃度での成功は驚くべきことである。なぜならファージの多数が、「非感染溶菌」と以前に関連しており、これは、標的細胞を死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載される調製されたファージストックの浄化(clean-up)は、この問題を軽減する助けとなると考えられる(例えば、スクロース勾配または塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による浄化)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる汚染するルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この浄化はまた、ゴースト粒子(ghost particle)(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「非感染溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製のファージ溶解物(すなわち、塩化セシウム浄化前)が50%より多いゴーストを有し得ることを明らかに示す。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能性がある。さらに、非常にきれいなファージ調製物は、上記アッセイが洗浄工程なしで行われることを可能にし、このことは、初期濃縮工程なしで上記アッセイが行われることを可能にする。いくつかの実施形態は初期濃縮工程を含み、いくつかの実施形態において、この濃縮工程はより短い富化インキュベーション時間を可能にする。
【0106】
試験方法のいくつかの実施形態は、確認アッセイをさらに含み得る。種々のアッセイは、最初の結果を、通常は、後の時点で確認するために当該分野で公知である。例えば、上記サンプルが培養され得(例えば、選択的色素生成平板培養)、PCRは、微生物DNAの存在を確認するために利用され得るか、または他の確認アッセイが、最初の結果を確認するために使用され得る。
【0107】
ある種の実施形態において、本開示の方法は、感染性因子での検出に加えて、上記サンプルから目的の微生物(例えば、Staphylococcus spp.)を精製および/または濃縮するために、結合剤(例えば、抗体)の使用を組み合わせ得る。例えば、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、上記微生物を上記サンプルから、上記目的の微生物(例えば、Staphylococcus spp.)に特異的な捕捉抗体を使用して、先の支持体上に捕捉する工程;上記サンプルを、Staphylococcus spp.に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製に間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、Staphylococcus spp.が上記サンプル中に存在することを示す工程を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、合成ファージは、病原体検出アッセイにおける使用のための望ましい形質を最適化するために設計される。いくつかの実施形態において、遺伝的改変のバイオインフォマティクスおよび以前の分析は、望ましい形質を最適化するために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、特定の種の細菌を認識しかつこれに結合するために最適化され得る。他の実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、細菌の属全体、または属内の特定の種のグループを認識しかつこれらに結合するために最適化され得る。このようにして、上記ファージは、病原体のより広いまたはより狭いグループを検出するために最適化され得る。いくつかの実施形態において、上記合成ファージは、上記インジケーター遺伝子の発現を改善するために設計され得る。さらにおよび/または代わりに、場合によっては、上記合成ファージは、検出を改善するために上記ファージのバーストサイズを増大させるために設計され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、上記ファージの安定性は、貯蔵期間を改善するために最適化され得る。例えば、酵素生命的溶解度(enzybiotic solubility)は、その後のファージ安定性を増大させるために、増大され得る。さらにおよび/または代わりに、ファージ熱安定性が最適化され得る。熱安定性ファージは、貯蔵の間の機能的活性をより良好に保存し、それによって、貯蔵寿命を増大させる。従って、いくつかの実施形態において、上記熱安定性および/またはpH寛容性は、最適化され得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記遺伝的に改変されたファージまたは上記合成して導出されたファージは、検出可能なインジケーターを含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、上記ファージゲノムは、インジケーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子または検出可能なインジケーターをコードする別の遺伝子)を含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載される方法は、汚染された表面を特定し得る。ある特定の場合では、目的の微生物の検出は、表面が汚染されていることを示す。許容可能な微生物汚染限界は、その汚染している微生物およびデバイスまたは装置の使用に依存する。例えば、任意の数の高リスク微生物または>100CFUの低/中程度リスクの微生物に関して陽性のサンプルは、上記表面が汚染されていることを示す。いくつかの実施形態において、少なくとも50、60、70、80、90、100、125、150、175、200 CFUの低/中程度リスクの微生物の検出は、上記表面が汚染されていることを示す。
【0112】
いくつかの実施形態において、汚染された表面の特定は、1またはこれより多くの作業が講じられるべきであることを決定する。いくつかの実施形態において、その汚染された物体は、再処理される。例えば、上記作業は、その汚染された表面の再清掃、再消毒または再滅菌であり得る。他の実施形態において、上記作業は、その汚染された物体が使用から除去することであり得る。例えば、高レベルの低リスク生物は、不十分な再処理および/またはデバイスもしくは装置への損傷を示し得る。再処理プロトコールを検討することに加えて、施設はまた、医療用デバイスを使用から除去し、上記デバイスまたは装置を再処理し、次回の使用の前に、本明細書で記載される方法に従って、上記デバイスのさらなるサンプリングおよびアッセイを行うように選択し得る。上記デバイスまたは装置は、検出アッセイの反復によって、本明細書で記載されるように、陰性であり(または≦10 CFUの低/中程度リスクの生物)、プロトコール違反が特定されなかった場合、使用に戻され得る。他の実施形態において、単一の高リスク微生物の検出は、表面が汚染されていることを示し得、1またはこれより多くの作業工程が講じられるべきであることを決定する。いくつかの実施形態において、上記1またはこれより多くの作業工程は、治療上の作業工程である。例えば、再処理された内視鏡からの高リスク微生物の検出は、内視鏡を使用から除去する正当な理由である。再処理実務は、内視鏡が専門的なガイドラインおよび製造業者の使用についての指示に従って処理されていることを確認するために検証されるべきである。内視鏡は、再処理されるべきであり(適用可能であれば、再処理の改善および修正を組み込む)、内視鏡は、次回の患者への使用の前に、サンプリングされ、検査されるべきである。内視鏡は、検出アッセイの反復によって内視鏡が汚染されていないことが決定された場合にのみ、使用に戻され得る。
【0113】
低/中程度リスクの微生物の存在は、デバイスもしくは装置の清掃、保管および取り扱いに伴う問題、標本のサンプリングもしくは処置中の汚染、またはデバイスもしくは装置における欠陥の指標であり得る。低/中程度リスクの生物は、サンプリング中の汚染に起因してデバイスもしくは装置に存在し得るか、または使用中にデバイスもしくは装置に導入され、再処理もしくは最初の消毒または衛生化を生き延びた可能性がある。低/中程度リスクの生物を終始増殖させるデバイスおよび/または装置を有する施設は、再処理および保管のためのそれらのプロトコールの検討を考慮するべきである。例えば、内視鏡が低/中程度リスクの生物を終始増殖させる場合、上記デバイスを、必要であれば、評価および修理のために製造業者に戻すことが考慮されるべきである。
【0114】
抗生物質耐性の決定
いくつかの局面において、本発明は、微生物の抗生物質耐性を検出するための方法を包含する。いくつかの実施形態において、本開示は、サンプル中の抗生物質耐性微生物を検出するための方法であって、前記方法は、(a)上記サンプルと抗生物質とを接触させる工程、(b)上記サンプルと感染性因子とを接触させる工程であって、ここで上記感染性因子は、インジケーター遺伝子を含み、上記目的の微生物に対して特異的であり、上記インジケーター遺伝子は、インジケータータンパク質生成物をコードする工程、および(c)インジケータータンパク質生成物によって生成されるシグナルを検出する工程であって、ここで上記シグナルの検出は、抗生物質耐性を決定するために使用される工程を包含する、方法を提供する。
【0115】
上記方法は、上記目的の微生物の検出のために感染性因子を使用し得る。例えば、ある特定の実施形態において、上記目的の微生物は細菌であり、上記感染性因子はファージである。本出願において言及される抗生物質は、静菌性(微生物の増殖を阻害し得る)または殺菌性(微生物を殺滅し得る)任意の薬剤であり得る。従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、サンプルと抗生物質とを接触させる工程、および抗生物質と接触させた上記サンプルを、上記目的の微生物に感染する感染性因子とともにインキュベートする工程によって、サンプル中の目的の微生物の抗生物質に対する耐性の検出を包含し得る。これは、抗生物質耐性を付与し得る遺伝子の存在を検出する(例えば、PCR)またはタンパク質の存在を検出する(例えば、抗体)が、それらの機能性を試験しないアッセイとは異なる。従って、本アッセイは、遺伝子型検出とは対照的に、表現型検出を可能にする。
【0116】
ある特定の実施形態において、上記方法は、サンプル中の上記目的の微生物における抗生物質に対する機能的耐性遺伝子の検出を含み得る。PCRは、抗生物質耐性遺伝子の検出を可能にする;しかし、PCRは、機能的抗生物質耐性遺伝子を有する細菌と、非機能的抗生物質耐性遺伝子を有する細菌との間を区別することができず、従って、抗生物質耐性細菌の偽陽性の検出を生じる。現在具現化されている方法は、非機能的抗生物質耐性遺伝子を有する細菌の陽性検出なしに、機能的抗生物質耐性遺伝子を有する細菌を陽性検出し得る。本明細書で開示される方法は、耐性の機序が単一の遺伝子/タンパク質または変異でないとしても、抗生物質に対する機能的耐性の検出を可能にする。従って、上記方法は、上記耐性を媒介する遺伝子(PCR)またはタンパク質(抗体)の知識に依拠しない。
【0117】
ある特定の実施形態において、上記感染性因子は、インジケータータンパク質生成物を発現し得るインジケーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプルに存在し、上記微生物が上記抗生物質に対して耐性であることを示す、工程を包含し得る。場合によっては、上記目的の微生物は、抗生物質耐性に関して試験する前に、上記サンプルから単離されない。ある特定の実施形態において、上記サンプルは、培養されていないかまたは富化されていないサンプルである。いくらかの場合では、抗生物質耐性を検出する方法は、5時間以内に完了し得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記インジケータータンパク質を検出する前に、上記感染性因子に感染した微生物を溶解するために溶解緩衝液での処理を含み得る。
【0118】
本発明の別の局面において、本発明は、微生物を殺滅するにあたって抗生物質の有効用量を決定する方法を包含し、上記方法は、(a)抗生物質溶液のうちの1種またはこれより多くのものの各々を別個に、上記微生物を含む1またはこれより多くのサンプルとともにインキュベートする工程であって、ここで抗生物質溶液のうちの上記1またはこれより多くのものの濃度は、異なりかつ範囲を規定する工程、(b)サンプルのうちの上記1またはこれより多くのものの中の微生物を、インジケーター遺伝子を含む感染性因子とともにインキュベートする工程であって、ここで上記感染性因子は、上記目的の微生物に対して特異的である工程、および(c)サンプルのうちの上記1またはこれより多くのものの中の感染性因子によって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記複数のサンプルのうちの1またはこれより多くのものの中での上記インジケータータンパク質生成物の検出は、サンプルの上記1またはこれより多くのものを処理するために使用される抗生物質溶液の濃度が有効でないことを示し、上記インジケータータンパク質の検出がないことは、上記抗生物質が有効であることを示し、それによって、上記抗生物質の有効用量を決定する工程を包含する。
【0119】
本明細書で開示される方法は、目的の微生物が抗生物質に対して感受性であるかまたは耐性であるかを検出するために使用され得る。特定の抗生物質は、これが殺滅または阻害する微生物のタイプに対して特異的であり得る;上記抗生物質は、上記抗生物質に対して感受性である微生物を殺滅するかまたはその増殖を阻害し、上記抗生物質に対して耐性である微生物を殺滅もその増殖を阻害もしない。いくらかの場合には、以前は感受性であった微生物株が、耐性になることはあり得る。抗生物質に対する微生物の耐性は、多くの異なる機序によって媒介され得る。例えば、いくつかの抗生物質は、微生物において細胞壁合成を妨害する;このような抗生物質に対する耐性は、上記抗生物質の標的、すなわち、細胞壁タンパク質を変化させることによって媒介され得る。いくつかの場合には、細菌は、上記細菌に達する前に、抗生物質を不活性化し得る化合物を生成することによって、上記抗生物質に対する耐性を作り出す。例えば、いくつかの細菌は、βラクタマーゼを生成し、これは、ペニシリンまたは/およびカルバペネムのβラクタムを切断し得、従って、これらの抗生物質を不活性化し得る。いくらかの場合には、上記抗生物質は、特異的ポンプによって上記標的に達する前に、上記細胞から除去される。例は、RNDトランスポーターである。いくらかの場合には、いくつかの抗生物質は、リボソームRNA(rRNA)に結合することによって作用し、上記微生物におけるタンパク質生合成を阻害する。このような抗生物質に対して耐性の微生物は、上記抗生物質に対して低減した結合能力を有するが、リボソーム内の本質的に正常な機能を有する変異rRNAを含み得る。他の場合には、細菌は、耐性を付与し得る遺伝子を有する。例えば、いくらかのMRSAは、mecA遺伝子を有する。上記mecA遺伝子生成物は、細菌細胞壁形成に必要とされるトランスペプチダーゼに代表的には結合するある特定の抗生物質の環様構造に対して低親和性を有する代替のトランスペプチダーゼである。従って、抗生物質(βラクタムを含む)は、これらの細菌における細胞壁合成を阻害できない。いくらかの細菌は、遺伝子または調節の変異(これは、従来の核酸による方法(例えば、PCR)で抗生物質耐性として誤って検出され得るが、機能的方法(例えば、抗生物質とともにプレートするもしくは培養する、またはこの方法)によって検出され得ない)に恐らく起因して、非機能的である抗生物質耐性遺伝子を有する。
【0120】
本発明において使用され得る抗生物質の非限定的な例としては、アミノグリコシド、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、βラクタム抗生物質、キノロン、バシトラシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、ストレプトグラミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、およびリンコサミド、セファマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、オキサゾリジノン、ならびに糖ペプチド抗生物質が挙げられる。
【0121】
本明細書で注記されるように、ある特定の実施形態において、本発明は、抗生物質に対する微生物の耐性を検出するために、または別の言い方をすると、微生物に対する抗生物質の有効性を検出するために感染性粒子を使用する方法を包含し得る。別の実施形態において、本発明は、感染の処置のために抗生物質を選択するための方法を包含する。さらに、上記方法は、サンプル中の抗生物質耐性細菌を検出するための方法を包含し得る。本発明の方法は、種々の方法において具現化され得る。
【0122】
上記方法は、上記微生物を含むサンプルと、上記抗生物質および上記のとおりの感染性因子とを接触させる工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、本開示は、微生物を殺滅するまたはその成長を抑制するにあたって抗生物質の有効用量を決定する方法を提供し、上記方法は、(a)抗生物質溶液のうちの1種またはこれより多くのものの各々を別個に、上記微生物を含む1またはこれより多くのサンプルとともにインキュベートする工程であって、ここで抗生物質溶液のうちの上記1またはこれより多くのものの濃度は、異なりかつ範囲を規定する工程、(b)サンプルのうちの上記1またはこれより多くのものの中の微生物を、インジケーター遺伝子を含む感染性因子とともにインキュベートする工程であって、ここで上記感染性因子は、上記目的の微生物に対して特異的である工程、および(c)サンプルのうちの上記1またはこれより多くのものの中の感染性因子によって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記複数のサンプルのうちの1またはこれより多くのものの中での上記インジケータータンパク質生成物の検出は、サンプルの上記1またはこれより多くのものを処理するために使用される抗生物質溶液の濃度が有効でないことを示し、上記インジケータータンパク質の検出がないことは、上記抗生物質が有効であることを示し、それによって、上記抗生物質の有効用量を決定する工程を包含する。
【0123】
他の実施形態において、上記抗生物質および上記感染性因子は、順次添加され、例えば、上記サンプルは、上記サンプルが上記感染性因子と接触させられる前に、上記抗生物質と接触させられる。ある特定の実施形態において、上記方法は、上記サンプルと上記感染性因子とを接触させる前に、上記サンプルを上記抗生物質とともに一定期間にわたってインキュベートする工程を包含し得る。上記インキュベーション時間は、上記抗生物質および上記微生物の性質に依存して、例えば、上記微生物の倍加時間に基づいて変動し得る。いくつかの実施形態において、上記インキュベーション時間は、24時間未満、18時間未満、12時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、45分未満、または30分未満である。微生物と上記感染性因子とのインキュベーション時間はまた、特定の感染性因子の生活環に依存して変動し得、いくらかの場合には、上記インキュベーション時間は、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満である。上記抗生物質に対して耐性である微生物は、生き残り、増殖し得、上記微生物に対して特異的な感染性因子は複製し、上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)の生成を生じる;逆に、上記抗生物質に対して感受性である微生物は殺滅され、従って、上記感染性因子は複製しない。さらに、静菌性抗生物質は、細菌を殺滅しない;しかし、それらは、細菌の増殖および/または富化を停止させる。場合によっては、静菌性抗生物質は、細菌タンパク質合成に干渉し得、バクテリオファージがインジケーター分子(例えば、ルシフェラーゼ)を生成することを防止すると予測される。この方法に従う感染性因子は、インジケータータンパク質を含み、その量は、上記抗生物質で処理されているサンプルに存在する微生物の量に相当する。よって、上記インジケータータンパク質の陽性検出は、上記微生物が上記抗生物質に対して耐性であることを示す。
【0124】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗生物質耐性微生物が臨床サンプルに存在するか否かを決定するために使用され得る。例えば、上記方法は、患者が、特定の抗生物質に対して耐性または感受性であるStaphylococcus aureusに感染しているか否かを決定するために使用され得る。次いで、患者から得られた臨床サンプルは、S.aureusに対して特異的な抗生物質とともにインキュベートされ得る。次いで、上記サンプルは、S.aureusに対して特異的な組換えファージとともに一定期間にわたってインキュベートされ得る。上記抗生物質に対して耐性のS.aureusを有するサンプル中では、上記組換えファージによって生成されるインジケータータンパク質の検出は、陽性である。上記抗生物質に対して感受性のS.aureusを有するサンプル中では、上記インジケータータンパク質の検出は陰性である。いくつかの実施形態において、抗生物質耐性を検出するための方法は、病原性細菌が感受性である有効な治療剤を選択するために使用され得る。
【0125】
ある特定の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、6.0時間未満、5.0時間未満、4.0時間未満、3.0時間未満、2.5時間未満、2.0時間未満、1.5時間未満、または1.0時間未満である。検出に必要とされる合計時間は、目的の細菌、ファージのタイプ、および試験される抗生物質に依存する。
【0126】
必要に応じて、上記方法は、上記インジケーター部分を検出する前に、上記微生物を溶解する工程をさらに包含する。上記ルシフェラーゼの活性に影響を及ぼさない任意の溶液が、細胞を溶解するために使用され得る。いくらかの場合には、上記溶解緩衝液は、非イオン性洗浄剤、キレート剤、酵素または種々の塩および薬剤の所有権のある組み合わせを含み得る。溶解緩衝液はまた、Promega、Sigma-Aldrich、またはThermo-Fisherから市販されている。実験は、感染した溶解していない細胞が、いくつかの実施形態においてルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらく、ルシフェラーゼは、細胞を出ることもある、および/またはルシフェラーゼ基質は、完全な細胞溶解なしに細胞に入ることもある。例えば、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼの基質は、細胞透過性である(例えば、フリマジン)。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態に関しては、溶解物へと放出されたルシフェラーゼのみ(無傷の細菌内部になお存在するルシフェラーゼではない)が、ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、フィルタープレートまたは96ウェルプレートを、以下で記載されるように溶液または懸濁物中でファージに感染したサンプルとともに利用する実施形態に関しては、無傷のおよび溶解した細胞が、ルミノメーターにおいて直接アッセイされ得る場合、溶解は、検出のために必要でないこともある。従って、いくつかの実施形態において、抗生物質耐性を検出する上記方法は、上記微生物を溶解することを伴わない。
【0127】
上記アッセイの実施形態の驚くべき局面は、サンプル中の微生物を感染性因子とともにインキュベートする工程が、上記感染性因子(例えば、ファージ)の1つの生活環にとって充分長いことしか必要としない。ファージを使用することの増幅力は、ファージがいくつかのサイクルにわたって複製するように、より多くの時間を必要とすると以前は考えられていた。インジケーターファージの1回の複製は、本発明のいくつかの実施形態に従う高感度の迅速検出を容易にするために十分であり得る。上記アッセイの実施形態の別の驚くべき局面は、試験サンプルを感染させるために利用されるファージの高濃度(すなわち、高MOI)が、抗生物質で処理された非常に少ない数の抗生物質耐性標的微生物の検出を成功裡に達成したことである。要因(ファージのバーストサイズが挙げられる)は、ファージ生活環の数、従って、検出のために必要とされる時間量に影響を及ぼし得る。大きなバーストサイズ(およそ100 PFU)を有するファージは、1回の検出サイクルしか必要とし得ないのに対して、より小さなバーストサイズ(例えば、10 PFU)を有するファージは、多数回のファージ検出サイクルを要求し得る。いくつかの実施形態において、ファージと試験サンプルとのインキュベーションは、1回のファージ生活環に十分長いことしか必要としない。他の実施形態において、ファージと試験サンプルとのインキュベーションは、1回の生活環より長い時間量のものである。上記インキュベーション工程のためのファージ濃度は、使用されるファージのタイプに応じて変動する。いくつかの実施形態において、このインキュベーション工程のためのファージ濃度は、1.0×10、2.0×10、3.0 10、5.0×10、6.0×10、7.0×10、8.0×10、9.0×10、1.0×10、1.1×10、1.2×10、1.3×10、1.4×10、1.5×10、1.6×10、1.7×10、1.8×10、1.9×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、5.0×10、6.0×10、7.0×10、8.0×10、9.0×10、または1.0×10 PFU/mLより高い。このような高濃度のファージでの成功は驚くべきことである。なぜならこのような多数のファージが、「外因性溶菌(lysis from without)」と以前に関連しており、これは、標的細胞を直ぐに死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載されるファージストックの精製は、この問題を軽減する助けとなる可能性がある(例えば、スクロース勾配 塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による精製)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる夾雑ルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この精製はまた、ゴースト粒子(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「外因性溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製の組換えファージ溶解物(すなわち、塩化セシウム精製前)が50%より多いゴーストを有し得ることを実証する。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能性がある。
【0128】
本開示で記載されるとおりのインジケーター部分のうちのいずれも、抗生物質処理後の微生物の生存度を検出し、それによって、抗生物質耐性を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記感染性因子と関連付けられたインジケーター部分は、上記感染性因子の複製中または複製後に検出され得る。例えば、上記のように、いくらかの場合には、上記インジケーター部分は、固有のシグナルを発するタンパク質(例えば、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質など))であり得る。上記インジケーターは、光を発し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を検出するために使用され得る。しかし、他の機械またはデバイスがまた、使用され得る。例えば、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラは、色の変化および他の発光を検出し得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、抗生物質への上記サンプルの曝露は、5分またはそれより長く継続し得、種々の時点での検出が、最適な感度のために所望され得る。例えば、抗生物質で処理された一次サンプルのアリコートは、異なる時間間隔で(例えば、5分、10分、または15分で)採取され得る。次いで、種々の時間間隔からのサンプルは、ファージに感染させられ得、基質の添加後にインジケータータンパク質が測定され得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、シグナルの検出は、抗生物質耐性を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記サンプルによって生成されるシグナルは、実験的に決定された値と比較される。さらなる実施形態において、その実験的に決定された値は、コントロールサンプルによって生成されたシグナルである。いくつかの実施形態において、バックグラウンド閾値が、微生物なしのコントロールを使用して決定される。いくつかの実施形態において、ファージなしもしくは抗生物質なしのコントロール、または他のコントロールサンプルがまた、適切な閾値を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記実験的に決定された値は、平均バックグラウンドシグナル+平均バックグラウンドシグナルの1~3倍の標準偏差から計算されたバックグラウンド閾値であるか、またはこれより大きい。いくつかの実施形態において、上記バックグラウンド閾値は、平均バックグラウンドシグナル+平均バックグラウンドシグナルの2倍の標準偏差から計算され得る。他の実施形態において、上記バックグラウンド閾値は、平均バックグラウンドシグナル×数倍(例えば、2または3)から計算され得る。上記バックグラウンド閾値より大きいサンプルシグナルの検出は、上記サンプル中に1種またはこれより多くの抗生物質耐性微生物が存在することを示す。例えば、上記平均バックグラウンドシグナルは、250 RLUであり得る。上記閾値のバックグラウンド値は、平均バックグラウンドシグナル(例えば、250)に3をかけて、750 RLUの値と計算されることによって、計算され得る。750 RLUより大きいシグナル値を有する細菌を有するサンプルは、抗生物質耐性細菌を含むことに関して陽性であると決定される。
【0131】
あるいは、上記実験的に決定された値は、コントロールサンプルによって生成されたシグナルである。アッセイは、種々の適切なコントロールサンプルを含み得る。例えば、上記微生物に対して特異的な感染性因子を含まないサンプル、または感染性因子を含むが微生物のないサンプルは、バックグラウンドシグナルレベルのためのコントロールとしてアッセイされ得る。いくらかの場合には、上記抗生物質で処理されていない微生物を含むサンプルが、上記感染性因子を使用して抗生物質耐性を決定するためのコントロールとしてアッセイされる。
【0132】
いくつかの実施形態において、上記サンプルシグナルは、抗生物質耐性微生物が上記サンプルに存在するか否かを決定するために、コントロールシグナルと比較される。上記感染性因子と接触させているが、上記抗生物質とは接触させていないコントロールサンプルと比較した場合、上記シグナルの検出の変化なしは、上記微生物が上記抗生物質に対して耐性であることを示し、感染性因子と接触させているが、上記抗生物質とは接触させていないコントロールサンプルと比較した場合、上記インジケータータンパク質の検出の低減は、上記微生物が上記抗生物質に対して感受性であることを示す。検出の変化なしとは、上記抗生物質および感染性因子で処理したサンプルからの検出されたシグナルが、上記抗生物質で処理されていないコントロールサンプルからのシグナルの少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%であることに言及する。検出の低減とは、上記抗生物質および感染性因子で処理したサンプルからの検出されたシグナルが、上記抗生物質で処理されていないコントロールサンプルからのシグナルの80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、または少なくとも30%未満であることに言及する。
【0133】
必要に応じて、上記目的の微生物を含むサンプルは、培養されていないサンプルである。必要に応じて、上記感染性因子はファージであり、宿主細菌への感染後のファージ複製中のインジケーター遺伝子の発現が可溶性インジケータータンパク質生成物を生じるように、ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む。上記方法において使用される組成物の各々の特徴はまた、上記のように、上記目的の微生物の抗生物質耐性を検出するために上記方法において利用され得る。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子の転写は、さらなるバクテリオファージ後期プロモーターによって制御される。
【0134】
微生物を殺滅するための抗生物質の有効用量を決定する方法がまた、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、上記抗生物質は、Staphylococcus種を殺滅するにあたって有効である。例えば、上記抗生物質は、セフォキシチンであり得、これは、大部分のメチシリン耐性S.aureus(MSSA)に対して有効である。代表的には、異なる濃度を有する1種またはこれより多くの抗生物質溶液は、上記溶液の異なる濃度が範囲を規定するように調製される。いくらかの場合には、最小濃縮抗生物質溶液 対 最大濃縮抗生物質溶液の濃度比は、1:2~1:50、例えば、1:5~1:30、または1:10~1:20の範囲に及び得る。いくらかの場合には、1またはこれより多くの抗生物質溶液の最低濃度は、少なくとも1μg/mL、例えば、少なくとも2μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも20μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも80μg/mL、または少なくとも100μg/mLである。上記1またはこれより多くの抗生物質溶液の各々は、上記目的の微生物を含むサンプルの1つのアリコートとともにインキュベートされる。いくらかの場合には、上記微生物に対して特異的な感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、上記抗生物質溶液と同時に添加される。いくらかの場合には、サンプルの上記アリコートは、上記感染性因子を添加する前に、上記抗生物質溶液とともに一定期間にわたってインキュベートされる。上記インジケータータンパク質生成物が検出され得、陽性検出は、上記抗生物質溶液が有効でないことを示し、陰性検出は、上記抗生物質溶液が有効であることを示す。上記抗生物質溶液の濃度は、有効な臨床的用量に相関すると予測される。よって、いくつかの実施形態において、目的の微生物を殺滅するにあたって抗生物質の有効用量を決定する上記方法は、1またはこれより多くの抗生物質溶液の各々を別個に、サンプル中の目的の微生物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記1またはこれより多くの抗生物質溶液の濃度は、異なりかつ範囲を規定する工程;上記1またはこれより多くのサンプル中の微生物を、インジケーター部分を含む感染性因子とともにインキュベートする工程;上記1またはこれより多くのサンプル中の感染性因子のインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記1またはこれより多くのサンプル中のインジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記1またはこれより多くのサンプルを処理するために使用される抗生物質溶液の濃度が有効でないことを示し、上記インジケータータンパク質の検出がないことは、上記抗生物質が有効であることを示し、それによって、上記抗生物質の有効用量を決定する工程を包含する。
【0135】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗生物質耐性に関するカテゴリー割り当ての決定を可能にする。例えば、本明細書で開示される方法は、抗生物質のカテゴリー割り当て(例えば、感受性、中間、および耐性)を決定するために使用され得る。感受性の抗生物質は、病原性微生物をおそらく阻害するが、その保証はなく;処理の適切な選択肢であり得るものである。中間の抗生物質は、より高い投与量、もしくはより頻繁な投与では有効であり得るか、または上記抗生物質が浸透して適切な濃度を提供する特定の身体部位においてのみ有効であり得るものである。耐性の抗生物質は、実験室検査において生物の増殖を阻害するにあたって有効ではなく;処理の適切な選択肢ではない可能性があるものである。いくつかの実施形態において、2種またはこれより多くの抗生物質溶液が試験され、上記1またはこれより多くの抗生物質溶液における最小濃縮溶液および最大濃縮溶液の濃度比は、1:2~1:50、例えば、1:5~1:30、または1:10~1:20の範囲に及ぶ。いくらかの場合には、上記1またはこれより多くの抗生物質溶液の最低濃度は、少なくとも1μg/mL、例えば、少なくとも2μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも20μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも80μg/mL、または少なくとも100μg/mLである。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗生物質感受性微生物の存在下で抗生物質耐性微生物を検出するための方法を包含する。ある特定の場合では、抗生物質耐性細菌の検出は、ヘルスケア環境における感染の拡がりを防止するために使用され得る。次いで、防止的手段が、抗生物質耐性細菌の拡がりを防止するために実行され得る。
【0137】
抗生物質耐性微生物を検出するための方法のいくつかの実施形態において、サンプルは、抗生物質耐性細菌および抗生物質感受性細菌の両方を含み得る。例えば、サンプルは、MRSAおよびMSSAの両方を含み得る。いくつかの実施形態において、MRSAは、上記サンプルからMRSAを単離する必要性なしに、MSSAの存在下で検出され得る。抗生物質の存在下では、MSSAは、閾値を上回るシグナルを生成しないが、上記サンプルに存在するMRSAは、上記閾値を上回るシグナルを生成し得る。従って、両方がサンプル内に存在する場合、上記閾値を上回るシグナルは、抗生物質耐性株(例えば、MRSA)の存在を示す。
【0138】
当該分野で公知の多くのアッセイとは対照的に、微生物の抗生物質耐性の検出は、事前の単離なしに達成され得る。多くの方法は、サンプルが、アガープレート上で細菌の個々のコロニーを精製/単離するために、予め培養されることを必要とする。本明細書で開示される方法の増大した感度は、多数の特異的感染性因子、例えば、ファージが単一微生物に結合する能力に一部起因する。上記ファージの感染および複製後に、標的微生物は、ファージ複製中に生成されるインジケータータンパク質生成物を介して検出され得る。
【0139】
従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、≦10個の細胞の微生物(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の微生物)を含むサンプル中の微生物の抗生物質耐性を検出し得る。ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、上記抗生物質で処理したサンプル中の特異的タイプの単一細菌の検出によって、抗生物質耐性を検出するために使用され得る。ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、上記抗生物質と接触させたサンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌の存在を検出する。
【0140】
本明細書で開示されるとおりの抗生物質耐性を検出する方法の感度は、上記抗生物質とともにインキュベートする前に、捕捉および感染した微生物を洗浄することによってさらに増大され得る。標的細菌の単離は、評価されている抗生物質が他の細菌種によって分解されることが公知である場合に必要とされ得る。例えば、ペニシリン耐性は、精製なしに評価することが困難である。なぜならサンプルに存在する他の細菌が、上記抗生物質を分解し得(β-ラクタマーゼ分泌)、偽陽性をもたらし得るからである。さらに、捕捉された微生物は、抗生物質および上記感染性因子とのインキュベーション後であって、溶解緩衝液および基質を添加する前に洗浄され得る。これらのさらなる洗浄工程は、過剰な親ファージおよび/もしくはルシフェラーゼ、またはファージ調製を汚染する他のインジケータータンパク質の除去を補助する。よって、いくつかの実施形態において、上記抗生物質耐性を検出する方法は、ファージを添加した後であって、インキュベートする前に、捕捉および感染した微生物を洗浄する工程を包含し得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(もしくは検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。プレートの他の色は、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度をも有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルに関する1つの理由は、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れである。白色のウェルを有するいくつかのプレートがあるが、上記プレートの残りは黒色である。これは、上記ウェルの内部での高いシグナルを可能にするが、ウェルからウェルへの光の漏れを防止し、従って、バックグラウンドを低減し得る。従って、プレートもしくは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイのための感度およびバックグラウンドシグナルに影響を与え得る。
【0142】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、検出可能なシグナルを増幅し、それによって、微生物が抗生物質に対して耐性であるか否かを示すための感染性因子ベースの方法を使用し得ることによって、要求を解決する。本発明は、ユーザーが、精製または単離されていないサンプルに存在する微生物の抗生物質耐性を検出することを可能にする。ある特定の実施形態において、1個程度の少ない細菌が検出される。この原理は、微生物表面レセプターの特異的認識に基づいて1個または数個の細胞からのインジケーターシグナルの増幅を可能にする。例えば、微生物の単一細胞を複数のファージに曝露し、その後、ファージの増幅および複製中のコードされたインジケーター遺伝子生成物の高レベル発現を可能にすることによって、上記インジケーターシグナルは、上記単一微生物が検出可能であるように増幅される。本発明は、検出前に微生物の単離を要求しないことによって、微生物の検出のための迅速試験として優れている。いくつかの実施形態において、検出は、ファージまたはウイルスの1~2回の複製サイクル以内で可能である。
【0143】
さらなる実施形態において、本開示は、本明細書で開示される方法を行うための構成要素を含む、および/または本明細書で記載される改変された感染性因子を使用するシステム(例えば、コンピューターシステム、自動化システムまたはキット)を包含する。
【0144】
本発明のシステムおよびキット
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書で開示される方法を行うための構成要素を含むシステム(例えば、自動化システムもしくはキット)を含む。いくつかの実施形態において、本発明によるシステムまたはキットにはインジケーターファージが含まれる。本明細書に記載される方法は、このようなインジケーターファージシステムまたはキットも利用し得る。本明細書で記載されるいくつかの実施形態は、上記方法を行うために必要とされる試薬および材料の最小限の量を考慮すると、自動化もしくはキットに特に適している。ある種の実施形態において、上記キットの構成要素の各々は、第1の部位から第2の部位へと送達可能である自己充足式ユニットを含み得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、本開示は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムもしくはキットを含む。上記システムまたはキットは、ある特定の実施形態において、上記サンプルを、上記目的の微生物に対して特異的な組換えバクテリオファージとともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記組換えバクテリオファージは遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードする遺伝子を含む構成要素;および上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含み得る。いくつかのシステムは、固体支持体上に上記目的の微生物を捕捉するための構成要素をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記キットまたはシステムは、フィルターを含む。
【0146】
他の実施形態において、本開示は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムまたはキットであって、上記システムまたはキットは、上記目的の微生物に対して特異的な組換えバクテリオファージ構成要素であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードする遺伝子を含む、組換えバクテリオファージ構成要素;および上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含むシステムまたはキットを包含する。ある特定の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、特定の細菌に対して高度に特異的である。一実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、100より多くの他のタイプの細菌の存在下で、目的の細菌を区別し得る。ある特定の実施形態において、システムまたはキットは、上記サンプル中の特異的タイプの単一細菌を検出する。ある特定の実施形態において、システムまたはキットは、上記サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の生きている特異的細菌を検出および定量する。
【0147】
いくつかの実施形態において、上記システムおよび/またはキットは、上記目的の微生物を収集するための構成要素をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、固体表面(例えば、医療用デバイスまたは食品加工装置)のスワブを使用して収集され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記システムおよび/またはキットは、スワブをさらに含み得る。他の実施形態において、サンプルは、上記サンプルを収集するために使用され得る灌注法を使用して収集され得る。灌注法は、表面にわたる溶液(例えば、食塩水)の流れである。従って、いくつかの実施形態において、上記システムおよび/またはキットは、灌注溶液(例えば、食塩水)をさらに含み得る。
【0148】
ある種の実施形態において、上記システムおよび/もしくはキットは、上記捕捉された微生物サンプルを洗浄するための構成要素をさらに含み得る。さらにもしくは代わりに、上記システムおよび/もしくはキットは、上記インジケータータンパク質生成物の量を決定するための構成要素をさらに含み得、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する。例えば、ある種の実施形態において、上記システムもしくはキットは、ルシフェラーゼ酵素活性を測定するための、ルミノメーターもしくは他のデバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記ルミノメーターは、携行式デバイスである。
【0149】
いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、同じ構成要素は、複数工程(multiple steps)のために使用され得る。いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、上記工程は、ユーザーによってコンピューター入力を介して自動化もしくは制御され、そして/または液体取り扱いロボットが少なくとも1つの工程を行う。
【0150】
従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムまたはキットを包含し得、上記システムまたはキットは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な組換えバクテリオファージとともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記組換えバクテリオファージはインジケータータンパク質生成物をコードする遺伝子を含む構成要素;上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための構成要素;上記捕捉された微生物サンプルを洗浄して、結合されていない感染性因子を除去するための構成要素;および上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、捕捉する工程および/またはインキュベートする工程および/または洗浄する工程のために使用され得る(例えば、フィルター構成要素)。いくつかの実施形態は、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素であって、ここで検出されるインジケータータンパク質生成物の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する構成要素をさらに含む。このようなシステムは、微生物の迅速検出のための方法に関して上記に記載されるものに類似の種々の実施形態および下位実施形態を含み得る。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記感染性因子は、バクテリオファージである。コンピューター化システムにおいて、上記システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、もしくはコンピューターを介してユーザーによって指示されてもよい(もしくはこれらのいくつかの組み合わせ)。
【0151】
一実施形態において、本開示は、目的の微生物を検出するための構成要素を含むシステムまたはキットであって、上記システムまたはキットは、上記少なくとも1種の微生物に複数の組換えバクテリオファージを感染させるための構成要素;上記少なくとも1種の感染した微生物を溶解するための構成要素;および上記組換えバクテリオファージによってコードされかつ発現される可溶性インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素であって、ここで上記感染性因子の可溶性タンパク質生成物の検出は、上記微生物が上記サンプルに存在することを示す構成要素を含むシステムまたはキットを包含する。
【0152】
いくつかの実施形態において、本開示は、バイオフィルム関連感染を処理するための構成要素を含むシステムまたはキットを包含する。
【0153】
本開示のこれらのシステムおよびキットは、種々の構成要素を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成要素」とは、広く定義され、記載される方法を実施するための任意の適した装置もしくは適した装置の集まりを含む。上記構成要素は、いかなる特定の方法においても互いに関して一体的に接続される必要も据え付けられる必要もない。本発明は、互いに関して上記構成要素の任意の適切な配置を含む。例えば、上記構成要素は、同じ空間の中に存在する必要はない。しかしいくつかの実施形態において、上記構成要素は、一体ユニットにおいて互いに接続される。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、複数機能を実行し得る。
【0154】
本発明の別の局面では、表面で目的の微生物を検出するためのシステムであって、(i)表面からサンプルを得るための装置;(ii)少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物をインキュベートするための装置;および(iii)組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出するための装置であって、ここでインジケータータンパク質生成物の陽性検出は、目的の生きている微生物がサンプルに存在することを示す、装置を含む、システムが本明細書に記載される。
【0155】
上記システムは、現在の技術もしくはその構成要素のうちのいずれかにおいて記載されるように、コンピューターシステムの形態で具現化され得る。コンピューターシステムの代表例としては、汎用コンピューター、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、周辺集積回路素子、および本技術の方法を構成する工程を実装し得る他のデバイスもしくはデバイスの配置が挙げられる。
【0156】
コンピューターシステムは、コンピューター、入力デバイス、ディスプレイユニット、および/もしくはインターネットを含み得る。上記コンピューターは、マイクロプロセッサをさらに含み得る。上記マイクロプロセッサは、通信バスへと接続され得る。上記コンピューターはまた、メモリを含み得る。上記メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)を含み得る。上記コンピューターシステムは、記憶デバイスをさらに含み得る。上記記憶デバイスは、ハードディスクドライブもしくはリムーバル記憶デバイス(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)であり得る。上記記憶デバイスはまた、コンピュータープログラムもしくは他の指示を上記コンピューターシステムへとロードするための他の類似の手段であり得る。上記コンピューターシステムはまた、通信ユニットを含み得る。上記通信ユニットは、I/Oインターフェイスを通じて、上記コンピューターが他のデータベースおよびインターネットに接続することを可能にする。上記通信ユニットは、他のデータベースへの転送、ならびに他のデータベースからのデータの受領を可能にする。上記通信ユニットは、モデム、Ethernet(登録商標)カード、もしくは上記コンピューターシステムをデータベースおよびネットワーク(例えば、LAN、MAN、WANおよびインターネット)に接続することを可能にする任意の類似のデバイスを含み得る。上記コンピューターシステムは、従って、I/Oインターフェイスを介して上記システムへとアクセス可能な入力デバイスを通じてユーザーからの入力を容易にし得る。
【0157】
コンピューティングデバイスは、代表的には、そのコンピューティングデバイスの一般管理およびオペレーションのための実行可能なプログラム指示を提供するオペレーティングシステムを含み、代表的には、サーバーのプロセッサによって実行される場合に、上記コンピューティングデバイスにその意図された機能を行わせる指示を記憶するコンピューター可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリなど)を含む。上記オペレーティングシステムに適した実装および上記コンピューティングデバイスの一般的な機能性は、公知であるかもしくは市販されており、当業者によって、特に本明細書の開示に鑑みて、容易に実装される。
【0158】
上記コンピューターシステムは、入力データを処理するために、1以上の記憶素子の中に記憶される一群の指示を実行する。上記記憶素子はまた、記載されるとおりのデータもしくは他の情報を保持し得る。上記記憶素子は、処理機械に存在する情報ソースもしくは物理的メモリ素子の形態にあり得る。
【0159】
環境は、上記で考察されるとおりの種々のデータストアならびに他のメモリおよび記憶媒体を含み得る。これらは、種々の位置に存在し得る(例えば、上記コンピューターのうちの1以上にローカルな(および/もしくは中に存在する)、またはネットワーク全体にわたって記コンピューターのうちのいずれかもしくはすべてから遠隔にある記憶媒体において)。実施形態の特定の一群において、情報は、当業者が精通しているストレージエリアネットワーク(「SAN」)に存在し得る。同様に、上記コンピューター、サーバー、もしくは他のネットワークデバイスに帰した機能を行うための任意の必須のファイルは、適切な場合、ローカルにおよび/もしくは遠隔に保存され得る。システムが、コンピューティングデバイスを含む場合、各々のこのようなデバイスは、バスを介して電気的に連結され得るハードウェア要素を含み得、上記要素は、例えば、少なくとも1つの中央処理装置(CPU)、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラー、タッチスクリーン、もしくはキーパッド)、および少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンター、もしくはスピーカー)を含む。このようなシステムはまた、1つ以上の記憶デバイス(例えば、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、およびソリッドステート記憶デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)もしくはリードオンリーメモリ(「ROM」)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカードなどを含み得る。
【0160】
このようなデバイスはまた、コンピューター可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線もしくは有線)、赤外線通信デバイスなど)、および上記のとおりのワーキングメモリを含み得る。上記コンピューター可読記憶媒体リーダーは、遠隔、ローカル、固定、および/もしくはリムーバブル記憶デバイスを代表するコンピューター可読記憶媒体、ならびにコンピューター可読情報を一時的におよび/もしくはより恒久的に含む、記憶する、伝達する、および検索するための記憶媒体と接続され得るかまたはこれらを受容するように構成され得る。上記システムおよび種々のデバイスはまた、代表的には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム(例えば、クライアントアプリケーションもしくはウェブブラウザ)を含む、少なくとも1つのワーキングメモリデバイス内に位置した多くのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、もしくは他の要素を含む。代替の実施形態が、上記のものからの多くのバリエーションを有し得ることは認識されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアがまた使用され得る、および/または特定の要素が、ハードウェア、ソフトウェア(ポータブルソフトウェア(例えば、アプレット)を含む)、または両方において実装され得る。さらに、他のコンピューティングデバイス(例えば、ネットワーク入力/出力デバイス)への接続が使用され得る。
【0161】
コード、もしくはコードの一部を含むための非一時的な記憶媒体およびコンピューター可読媒体としては、当該分野で公知であるかもしくは使用される任意の適切な媒体(記憶媒体および通信媒体(例えば、コンピューター可読の指示、データ構造、プログラムモジュール、もしくは他のデータなどの情報の記憶および/または伝達のための任意の方法または技術において実装される、揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルの媒体が挙げられるが、これらに限定されない)を含む)が挙げられ得、これらとしては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を記憶するために使用され得、上記システムデバイスによってアクセスされ得る任意の他の媒体が挙げられる。上記開示および本明細書に提供される教示に基づいて、当業者は、上記種々の実施形態を実装するための他のやり方および/または方法を認識する。
【0162】
コンピューター可読媒体は、プロセッサにコンピューター可読指示を提供することができる電子式、光学式、磁気、もしくは他の記憶デバイスを含み得るが、これらに限定されない。他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、連想メモリ(「CAM」)、DDR、フラッシュメモリ(例えば、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュ、ASIC、構成されたプロセッサ、光学記憶媒体、磁気テープもしくは他の磁気記憶媒体、またはコンピュータープロセッサが指示を読み得る任意の他の媒体。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))の単一タイプを含み得る。他の実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブ、およびキャッシュ)のうちの2またはそれより多くのタイプを含み得る。上記コンピューティングデバイスは、1またはそれより多くの外付けのコンピューター可読媒体(例えば、外付けハードディスクドライブ、または外付けDVDもしくはブルーレイドライブ)と通信状態にあり得る。
【0163】
上記で考察されるように、上記実施形態は、コンピューター実行可能なプログラム指示を実行および/またはメモリに記憶された情報にアクセスするように構成されているプロセッサを含む。上記指示は、任意の適切なコンピュータープログラミング言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)、およびActionScript(Adobe Systems, Mountain View, Calif.)が挙げられる)で書かれたコードから、コンパイラおよび/もしくはインタープリターによって生成されたプロセッサ特異的指示を含み得る。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサを含む。他の実施形態において、上記デバイスは、2またはそれより多くのプロセッサを含む。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および状態機械を含み得る。このようなプロセッサは、プログラマブル電子デバイス(例えば、PLC)、プログラマブル割り込みコントローラー(PIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電子的にプログラム可能なリードオンリーメモリ(electronically programmable read-only memory)(EPROMもしくはEEPROM)、または他の類似のデバイスをさらに含み得る。
【0164】
上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスを含む。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、有線もしくは無線の通信リンクを介して通信するように構成されている。例えば、上記ネットワークインターフェイスは、Ethernet(登録商標)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、802.16(Wi-Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介して、ネットワーク上での通信を可能にし得る。別の例として、ネットワークインターフェイスは、ネットワーク(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、UMTS、もしくは他の携帯通信ネットワーク(cellular communication network))上での通信を可能にし得る。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、別のデバイスでの、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394 FireWire(登録商標)、シリアル接続もしくはパラレル接続、または類似のインターフェイスを介したポイントツーポイント接続を可能にし得る。適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、1以上のネットワーク上での通信のための2以上のネットワークインターフェイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスに加えてもしくはその代わりに、データストアを含み得る。
【0165】
適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、多くの外付けもしくは内部デバイス(例えば、マウス、CD-ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディースピーカー、1以上のマイクロフォン、または任意の他の入力もしくは出力デバイス)を含み得るかまたはこれらと通信状態にあり得る。例えば、上記コンピューティングデバイスは、種々のユーザーインターフェイスデバイスおよびディスプレイと通信状態にあり得る。上記ディスプレイは、任意の適切な技術(LCD、LED、CRTなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用し得る。
【0166】
上記コンピューターシステムによる実行のための指示セットは、特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成する工程)を行うための処理機械を指示する種々のコマンドを含み得る。上記指示セットは、ソフトウェアプログラムの形態にあり得る。さらには、上記ソフトウェアは、本技術におけるように、別個のプログラムの集まり、より大きなプログラムを有するプログラムモジュールもしくはプログラムモジュールの一部の形態にあり得る。上記ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態でのモジュラープログラミングを含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、以前の処理の結果、もしくは別の処理機械によって作成されたリクエストに応じ得る。
【0167】
本発明は、ある種の実施形態を参照して開示されてきた一方で、記載される実施形態に対する多くの改変、変化および変更は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく可能である。よって、本発明は、上記記載される実施形態に限定されないことは意図されるが、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定義される全範囲を有する。
【実施例
【0168】
実施例
以下の実施例は、当業者に本開示の主題の代表的実施形態を実施するためのガイダンスを提供するために含められている。本開示および当該分野の技術レベルに鑑みて、当業者は、以下の実施例が例示に過ぎないことが意図され、多くの変更、改変および代替が本開示の主題の範囲から逸脱することなく使用され得ることを認識し得る。
【0169】
実施例1. ATSマトリクス
ATS2015を、清掃の妥当性の確認および清掃の検証を行う目的で、医療用デバイスのシミュレートされた使用による汚れ(simulated use soiling)のために配合した。再構成したATS2015試験汚れは、医療用デバイスの汚れをシミュレートするために以下のマーカーを含む:タンパク質、ヘモグロビン、炭水化物、脂質、および不溶性線維。乾燥混合物を、精製ウシタンパク質(ヘモグロビンおよびアルブミン)、生理学的塩、ムチン、キサンタンガム、卵黄、およびセルロースを合わせることによって生成した。その乾燥混合物を再構成し、20%脱線維化ヒツジ血液(defribrinated sheep blood)をその再構成した混合物に添加した。その再構成した混合物の粘性を、振動式粘度計を使用しておよそ9cPであると決定した。金属基材へのコーティングフィルムの接着を評価するための標準ASTM D3359-97試験を、行った。その結果は、ステンレス鋼表面上で乾燥した場合に、ATS2015の<8%の汚れの除去を示した。
【0170】
上記ATSマトリクスを、MRSA株ATCC BAA-1707またはE. Coli O157:H7株ATCC 43888に一晩接種して、1×10 細胞/mL 最終濃度を生じさせた。その接種したATSマトリクスを、2種の希釈剤:BHIまたはPBSを使用して、100細胞/mLへと系列希釈した。陽性コントロールとして、同じ接種物を、その2種の希釈剤に添加したが、ATSマトリクスは含めなかった。陰性コントロールとして、上記ATSマトリクスを系列希釈したが、いかなる細胞をも含めなかった。各希釈物からの100μL サンプルを、96ウェルプレートへと二連で添加した。10μLの組換えファージを、各ウェルに添加し、37℃において2時間インキュベートした。65μLのルシフェラーゼマスターミックスを、各ウェルに添加し、そのプレートを、GloMax 96/Navigatorルミノメーターで読み取った。その96ウェルプレートを、表1に示すように設定した。
【表1】
【0171】
MRSA株ATCC BAA-1707を接種し、BHIを使用して希釈したATSマトリクスを使用する検出アッセイの結果を、表2に示す。2つのファージを含む組換えファージカクテルを、各サンプルとともにインキュベートした。上記マトリクスが未希釈、2×、5×、および10×希釈であった場合に、シグナルはクエンチされた。陽性結果は、10,000 CFU/ウェルを有するマトリクスの1:100希釈において認められた。
【表2】
【0172】
E.Coli O157:H7株ATCC 43888を接種し、BHIを使用して希釈したATSマトリクスを使用する検出アッセイの結果を、表3に示す。単一の組換えファージカクテルを、各サンプルとともにインキュベートした。上記マトリクスが未希釈、2×、5×、および10×希釈であった場合に、シグナルはクエンチされた。陽性結果は、10,000 CFU/ウェルを有するマトリクスの1:100希釈において認められた。
【表3】
【0173】
MRSA株ATCC BAA-1707およびE.Coli O157:H7株ATCC 43888を接種し、BHIを使用して希釈したATSマトリクスを使用する検出アッセイの結果を、表4に示す。S.aureusおよびE.coliに対して特異的なファージを含む組換えファージカクテルを、各サンプルとともにインキュベートした。表4に示すCFU/ウェルは、アッセイした細菌株のそれぞれにいついてのCFU/ウェルを表す。したがって、合計CFU/ウェルは、表4に示される量の倍である。上記マトリクスが未希釈、2×、5×、および10×希釈であった場合に、シグナルはクエンチされた。陽性結果は、10,000 CFU/ウェルを有するマトリクスの1:100希釈において認められた。
【表4】
【0174】
MRSA株ATCC BAA-1707を接種し、PBSを使用して希釈したATSマトリクスを使用する検出アッセイの結果を、表5に示す。S.aureusに対して特異的な2つのファージを含む組換えファージカクテルを、各サンプルとともにインキュベートした。上記マトリクスが未希釈、2×、5×、および10×希釈であった場合に、シグナルはクエンチされた。上記アッセイは、PBS中の少数の細胞の感染を検出することはできなかった。
【表5】
【0175】
E.Coli O157:H7株ATCC 43888を接種し、PBSを使用して希釈したATSマトリクスを使用する検出アッセイの結果を、表6に示す。E.coliに対して特異的な単一組換えファージを、各サンプルとともにインキュベートした。上記マトリクスが未希釈、2×、5×、および10×希釈であった場合に、シグナルはクエンチされた。上記アッセイは、PBS中で少数の細胞の感染を検出することはできなかった。
【表6】
【0176】
実施例2. 固定CFUでのATSマトリクス希釈
ATSマトリクスを、BHI培地中で1:100,000へと系列希釈した。各マトリクス希釈物を、100、1,000、および10,000 CFU/mLにおいて以下の細菌のうちの各々に接種した:(1)MRSA株ATCC BAA-1707、(2)E.coli O157:H7株ATCC 43888、および(3)MRSA ATCC-1707/E.coli O157:H7 ATCC 4388。陽性コントロールとして、同じ接種物を、ATSマトリクスなしのBHIに添加した。陰性コントロールとして、上記ATSマトリクスを、いかなる細胞もなしで系列希釈した。各希釈物からの100μL サンプルを、96ウェルプレートへと二連で添加した。10μLの組換えファージを、各ウェルに添加し、37℃において2時間インキュベートした。65μLのルシフェラーゼマスターミックスを各ウェルに添加し、そのプレートを、GloMax 96/Navigatorルミノメーターで読み取った。
【0177】
表7は、一晩の増殖後のATSマトリクス希釈物およびMRSA株ATCC BAA-1707の固定CFUでの検出アッセイの結果を示す。100CFU/ウェル(1000CFU/mL)およびマトリクスの1:100希釈物でのサンプルの陽性検出があった。10CFU/ウェル(100CFU/mL)では、シグナルは、陽性検出に関しては2×バックグラウンド閾値を下回り、陰性とみなされた。CFU/ウェルの実際の数字は、プレートすることによって決定した。これを、CFU/ウェルの列に括弧書きで示す。
【表7】
【0178】
表8は、一晩の増殖後のATSマトリクス希釈物およびE.coli O157:H7株ATCC 43888の固定CFUでの検出アッセイの結果を示す。100CFU/ウェル(1000CFU/mL)およびマトリクスの1:100希釈物でのサンプルの陽性検出があった。10CFU/ウェル(100CFU/mL)では、シグナルは、陽性検出に関しては2×バックグラウンド閾値を下回り、陰性とみなされた。CFU/ウェルの実際の数字は、プレートすることによって決定した。これを、CFU/ウェルの列に括弧書きで示す。
【表8】
【0179】
表8は、一晩の増殖後のATSマトリクス希釈物およびE.coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707の固定CFUでの検出アッセイの結果を示す。200CFU/ウェル(2000CFU/mL)およびマトリクスの1:100希釈物でのサンプルの陽性検出があった。20CFU/ウェル(200CFU/mL)では、シグナルは、陽性検出に関しては2×バックグラウンド閾値を下回り、陰性とみなされた。CFU/ウェルの実際の数字は、プレートすることによって決定した。これを、CFU/ウェルの列に括弧書きで示す。
【表9】
【0180】
上記組換えファージ検出アッセイは、ATSマトリクスの中程度に高い濃度(>100×希釈)の存在下で、E.coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707の低CFUを検出できた。しかし、未希釈または高濃度のATSマトリクスは、ルシフェラーゼシグナルをクエンチしたことが示された。その結果はまた、PBS中でのATSマトリクスの希釈が、ファージ感染に適していなかったことを示す。
【0181】
実施例3. 清掃試薬の存在下での検出アッセイ
MRSAまたはE.coliに対して特異的なバクテリオファージの活性を、種々の清掃試薬の存在下で試験した。10、100、および1,000 細胞/ウェルでの試験ファージを、4種の清掃溶液:(1)CIDEX(登録商標) OPA、(2)RAPICIDETM OPA/28、(3)INTERCEPT(登録商標) Detergent、および(4)ENDOZIME(登録商標) Bio-Clean中で系列希釈した。上記清掃試薬を未希釈および1:100,000の最終希釈までの作業濃度で試験した。全ての清掃試薬を、BHI培地中で希釈した。
【0182】
上記CIDEX OPA溶液は、全世界で医療施設において、広く種々のセミクリティカルな(semi-critical)熱感受性医療用デバイスで使用される高レベル消毒薬である、CIDEX OPAは、広い範囲の微生物に対して非常に有効であり、ほぼ中性のpHレベルを有する。CIDEX OPA溶液は、25℃またはそれより高い温度での自動内視鏡再処理装置における消毒に関しては5分間で、または手動で処理されれば20℃において12分で、迅速な高度滅菌を提供する。グルタルアルデヒド溶液のような広い材料適合性を有する他の新たな高レベル消毒薬は、過去30年間で利用可能でない。具体的には、グルタルアルデヒド溶液耐性M.chelonaeの株のような広い範囲のマイコバクテリアを標的にしている。CIDEX OPA溶液は、ボトルから直ぐに使用できる状態にあり、活性化も混合も必要としない。CIDEX製品は、医療および手術施設のための一連の現代的な医療施設消毒の重要な関連である。それは医療施設では広く使用されていると同時に、非医療従事者によるSCUBA(自己完結型呼吸器(self-contained breathing apparatus))一式のような品目に関しても使用されている。
【0183】
表10は、Cidex OPA試験プロトコールを示す。Cidex OPAは、希釈せずに(未希釈で)試験し、次いで、BHI培地で系列希釈した。E. coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707の一晩の培養物を、接種のために使用した。試薬の全てを含むが細菌は含まない陰性コントロールを、使用した。細菌、およびCidex OPAを除いて試薬の全てを含む陽性コントロールを、使用した。10μLのファージカクテルを、100μLの各希釈サンプルに添加し、37℃において2時間インキュベートした。65μLのマスターミックス(溶解緩衝液、基質、およびアッセイ緩衝液)を、各ウェルに添加した。表11は、E.coli O157:H7株ATCC 43888についての検出アッセイの結果を示す。表12は、MRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。表13は、E.coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0184】
RAPICIDETM OPA/28 High-Level Disinfectantは、患者およびスタッフの安全かつ健康的な環境を確保する、迅速に作用し、長時間持続する、適合性の高い高レベル消毒薬である。この再利用可能なオルト-フタルアルデヒド消毒薬は、滅菌には適さない熱感受性のセミクリティカルな医療用デバイスでの使用のために設計されている。RAPICIDE OPA/28は、他のOPA銘柄の再使用期間の2倍の最速の消毒時間および保証された材料適合性を特徴とし、これは、安全、便利、および価値という究極の組み合わせを可能にする。高レベル消毒が、25℃において5分間で達成され得る。室温では、消毒は、10分以内に起こる。消毒は、TB、肝炎ウイルス、MRSA、VRE、HIVおよびCREを効果的に不活性化する。RAPICIDETM OPA/28は、使用前の活性化を必要としない。
【0185】
表14は、RAPICIDETM OPA/28試験プロトコールを示す。RAPICIDETM OPA/28は、希釈せずに(未希釈で)試験し、次いで、BHI培地で系列希釈した。E. coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707の一晩の培養物を、接種のために使用した。試薬の全てを含むが細菌は含まない陰性コントロールを、使用した。細菌、およびRAPICIDETM OPA/28を除いて試薬の全てを含む陽性コントロールを、使用した。10μLのファージカクテルを、100μLの各希釈サンプルに添加し、37℃において2時間インキュベートした。65μLのマスターミックス(溶解緩衝液、基質、およびアッセイ緩衝液)を、各ウェルに添加した。表15は、E.coli O157:H7株ATCC 43888についての検出アッセイの結果を示す。表16は、MRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。表17は、E.coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0186】
INTERCEPT(登録商標) Detergentは、再処理の前の内視鏡およびアクセサリーの手動または自動清掃のために特別に開発された非酵素配合物を使用する。INTERCEPT(登録商標) Detergentは、生物学的および有機的な汚れの優れた除去、低発泡性および中性pH、ならびに迅速な1分間の接触時間を提供する。血液、粘液、タンパク質または他の除去しづらい汚れに遭遇した完全に浸漬可能な内視鏡、関連アクセサリー、手術用機器、および他の装置の清掃のために、3ガロンの水に対してハンドポンプを1回完全に往復させて(1オンス)、1/3オンス/ガロンの水(0.25% 使用濃度)のINTERCEPT(登録商標) Detergentを使用する。最良の手動清掃結果に関しては、INTERCEPT(登録商標) Detergentと冷水~温水(20℃~35℃)(68°F~95°F)と混合し、1分間の最小の接触時間を確実にする。全ての表面および内部のチャネルを水で完全にすすぐ。自動洗浄機における使用に関しては、洗浄機業者の推奨に従う。
【0187】
表18は、INTERCEPT(登録商標)Detergent試験プロトコールを示す。INTERCEPT(登録商標)Detergentは、希釈せずに(未希釈で)試験し、次いで、BHI培地で系列希釈した。E. coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707の一晩の培養物を、接種のために使用した。試薬の全てを含むが細菌は含まない陰性コントロールを、使用した。細菌、およINTERCEPT(登録商標)Detergentを除いて試薬の全てを含む陽性コントロールを、使用した。10μLのファージカクテルを、100μLの各希釈サンプルに添加し、37℃において2時間インキュベートした。65μLのマスターミックス(溶解緩衝液、基質、およびアッセイ緩衝液)を、各ウェルに添加した。表19は、E.coli O157:H7株ATCC 43888についての検出アッセイの結果を示す。表20は、MRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。表21は、E.coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0188】
ENDOZIME(登録商標) Bio-Cleanは、全てのバイオバーデン - 血液、炭水化物、タンパク質、ポリサッカリド、脂肪、油、尿酸および他の窒素化合物を除去するように設計された酵素の所有権のあるブレンドであり、これは、清掃プロセス中にポリサッカリドを可溶化し、高レベル消毒薬がバイオフィルムを殺滅および除去することを可能にする。生物学的に活性な添加剤は、液化および可溶化のプロセスを加速する。ENDOZIME(登録商標) Bio-Cleanは、全ての手術用機器およびスコープに対する使用に安全である/いかなる金属、プラスチック、ゴムもひだ状の管材料にも害を与えない。泡立ちが少なく、中性pH、非摩耗性(non-abrasive)、すすぎ不要および100% 生分解性という特性から、特に、感受性の医療用機器に特に適している。使用するために、1ガロンの水あたり1/2オンスから1オンスのENDOZIME(登録商標) Bio-Cleanを希釈する。清掃されるべき機器およびスコープを沈める。スコープに関しては、浸漬する前にチャネルを通して吸引するまたは洗い流す。2分間浸漬して、全ての有機性の汚れを除去する。水道水、蒸留水または滅菌水で完全にすすぐ。
【0189】
表22は、ENDOZIME(登録商標)Bio-Clean試験プロトコールを示す。ENDOZIME(登録商標)Bio-Cleanは、0.8%で試験し、次いで、BHI培地で系列希釈した。E. coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707の一晩の培養物を、接種のために使用した。試薬の全てを含むが細菌は含まない陰性コントロールを、使用した。細菌、およびENDOZIME(登録商標)Bio-Cleanを除いて試薬の全てを含む陽性コントロールを、使用した。10μLのファージカクテルを、100μLの各希釈サンプルに添加し、37℃において2時間インキュベートした。65μLのマスターミックス(溶解緩衝液、基質、およびアッセイ緩衝液)を、各ウェルに添加した。表23は、E.coli O157:H7株ATCC 43888についての検出アッセイの結果を示す。表24は、MRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。表25は、E.coli O157:H7株ATCC 43888およびMRSA株ATCC BAA-1707についての検出アッセイの結果を示す。
【表22】
【表23】
【0190】
【表24】
【0191】
【表25】
【0192】
上記組換えバクテリオファージ検出アッセイは、中程度に高い濃度の種々の清掃溶液の存在下で機能できた。100CFUは、ENDOZIME Bio-Clean(これは、100CFUにおいてMRSA検出を阻害した)を除いて、試験した洗浄剤の各々に関して1:100希釈において検出された。
【0193】
実施例4. 水フィルターアッセイ
E.coliサンプルの調製. E.coli O157:H7(ATCC 43888)を、37℃、225RPMにおいて一晩増殖させた。次いで、E.coli細胞培養物を、100および1000 CFU/mLへと希釈した。100または1000 CFU/mL E.coli細胞培養物の各々のうちの100μLを使用して、100mLの濾過したdHOに接種して、それぞれ、10または100細胞を有する代表的なE.coli 表面灌注液サンプルを作製した。4個の10細胞試験サンプルおよび4個の100細胞試験サンプルを調製した。次いで、100mLの各サンプルを、細菌細胞が膜フィルター上に保持されるように、47mm DURAPORE(登録商標)膜フィルター(0.45μm 孔サイズ)に適用した。
【0194】
コントロール. 陽性コントロールを、フィルター試験サンプルと同じ容積の培地ならびに同じ容積および数の細胞で1.5μLチューブの中に調製した。陰性コントロールを、上記フィルター試験サンプルと同じ容積の培地で、ただし細胞は存在させずに1.5μLチューブの中に調製した。
【0195】
水フィルターアッセイ. 200、500、750、および1000μL容積のトリプトンソイブロス(TSB)を、密閉可能なプラスチックバッグに添加した。試験サンプル、陽性コントロール、および陰性コントロールの各々に関して、1つのフィルターを、TSBの上記容積の各々を含むバッグへと追加し、手で混合した。上記フィルターを、37℃において1時間、TSB中でインキュベートした。1時間のインキュベーション後、組換えバクテリオファージ(CBA120.NL)ミックスを、以下の容積において各バッグに添加した:
a. 200μL TSB: CBA120.NLを20μL添加
b. 500μL TSB: CBA120.NLを50μL添加
c. 750μL TSB: CBA120.NLを75μL添加
d. 1000μL TSB: CBA120.NLを100μL添加。
【0196】
次いで、各サンプルを手で混合し、2時間、37℃においてインキュベートした。インキュベーション後、上記サンプルを再び手で混合し、150μL アリコートを取り出し、96ウェル分割可能プレート(96-well break-apart plate)に移した。65μLのマスターミックス(NANOGLO(登録商標)アッセイ緩衝液、NANOGLO(登録商標)基質、および溶解緩衝液)を各アリコートに添加し、上記プレートを、ルミノメーター(GLOMAX(登録商標))を使用して読み取った。表26は、水フィルター組換えバクテリオファージアッセイを使用するE.coli O157:H7株ATCC 43888に関する検出アッセイの結果を示す。
【表26】
【国際調査報告】