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特表2023-550662熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554772
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2021015943
(87)【国際公開番号】W WO2022114587
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0160361
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0149138
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523194802
【氏名又は名称】カテクエイチ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CATACKH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンイル
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA21
4F401AA26
4F401AB06
4F401AD08
4F401BA13
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB14
4F401EA40
4F401EA57
4F401EA65
4F401EA66
4F401EA90
4F401FA01Y
4F401FA01Z
4F401FA02Y
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素溶液又はギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程;を含んで成り、前記前処理に使用される水溶液と本処理に使用される水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解及び再活用のための方法と装置、これに活用される組成物及びキットが開示される。本開示によれば、従来の化学的分解方法とは異なり、低温及び常圧条件下でも分解反応時間を顕著に短縮させることができると共に、化学溶液の臭気(臭い)及び素材の腐食などによる量産設備の構築が困難であった点を改善することができ、且つ化学溶液の濃度を下げたにもかかわらず反応性能を保持することができて溶液の使用回数を大きく増加させることができる。これにより、生産コストを画期的に下げることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液または過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素溶液またはギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成り、
前記前処理に使用される水溶液と前記本処理に使用される水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項2】
前記前処理および/または前記本処理のうちの一つ以上の処理に使用される水溶液に対してラジカル開始剤が添加される、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項3】
前記分解方法は、前処理の前において熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液または過酸化水素溶液で事前含浸させる事前含浸工程をさらに含んで成る、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項4】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加される過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
をさらに含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項5】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加されるギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
をさらに含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項6】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加される過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
をさらに含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項7】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加されるギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
をさらに含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加されるギ酸水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて本処理を施す工程
をさらに含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項9】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加される過酸化水素水溶液に入れて本処理を施す工程
をさらに含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項10】
前記事前含浸は、常温および常圧で6~17時間行う、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項11】
前記前処理は、常圧および80~95℃の温度で2~6時間行う、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項12】
前記本処理は、常圧および80~95℃の温度で1~3時間行う、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項13】
ギ酸水溶液におけるギ酸の濃度が50~90%であり、
過酸化水素水溶液における過酸化水素の濃度が30~50%である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項14】
前記ギ酸水溶液または前記過酸化水素水溶液におけるラジカル開始剤が0.1~2wt%となるように該ラジカル開始剤が添加される、請求項2に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項15】
前記分解方法は、熱重量分析法(TGA)による分解率が98%以上となる、請求項2に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項16】
前記前処理または前記本処理の工程で緩衝溶液を添加して分解特性を調節する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項17】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液または過酸化水素水溶液で事前含浸させるための事前含浸槽、
前記事前含浸槽に接続される前処理槽であって、前記事前含浸槽から得られる熱硬化性樹脂複合材料が送られる、ギ酸水溶液または過酸化水素水溶液を含む前処理槽、および
前記前処理槽に接続される本処理槽であって、前記前処理槽から得られる熱硬化性樹脂複合材料が送られる、過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液を含む本処理槽
を有して成り、
前記前処理槽に含まれる水溶液と前記本処理槽に含まれる水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解装置。
【請求項18】
熱硬化性樹脂複合材料の分解キットであって、
ギ酸溶液または過酸化水素溶液を含む、事前含浸のための事前含浸組成物、
ギ酸水溶液または過酸化水素水溶液を含む、前処理のための前処理組成物、および
過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液を含む、本処理のための本処理組成物
を有して成り、
前記前処理組成物に含まれる水溶液と前記本処理組成物に含まれる水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解キット。
【請求項19】
前記分解キットは、過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液に添加されるためのラジカル開始剤をさらに有して成る、請求項18に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解キット。
【請求項20】
過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液において0.1~2wt%以下となるように添加されているラジカル開始剤を有する、熱硬化性樹脂複合材料の分解のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される水溶液組成物に関する。具体的に、特に炭素繊維に熱硬化性樹脂が含浸及び硬化してなる複合素材を環境にやさしい水溶液ベースの化学反応を用いて効果的に分解し再活用することができる、熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される水溶液組成物に関する。
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415160950
[課題番号]20183010025470
[部処名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国エネルギー技術評価院
[研究事業名]新再生エネルギー核心技術開発(R&D)
[研究課題名]化学分解法を用いた風力発電用複合素材ブレード繊維・有機素材の回収/高付加価値化技術の開発及び廃棄・再使用基準の開発
[寄与率]1/4
[課題遂行機関名]韓国科学技術研究院
[研究期間]2018.10.01~2019.03.31
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415163320
[課題番号]20183010025470
[部処名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国エネルギー技術評価院
[研究事業名]新再生エネルギー核心技術開発(R&D)
[研究課題名]化学分解法を用いた風力発電用複合素材ブレード繊維・有機素材の回収/高付加価値化技術の開発及び廃棄・再使用基準の開発
[寄与率]1/4
[課題遂行機関名]韓国科学技術研究院
[研究期間]2019.04.01~2019.12.31
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415166564
[課題番号]20183010025470
[部処名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国エネルギー技術評価院
[研究事業名]新再生エネルギー核心技術開発(R&D)
[研究課題名]化学分解法を用いた風力発電用複合素材ブレード繊維・有機素材の回収/高付加価値化技術の開発及び廃棄・再使用基準の開発
[寄与率]1/4
[課題遂行機関名]韓国科学技術研究院
[研究期間]2020.01.01~2020.12.31
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415169648
[課題番号]20012817
[部処名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品技術開発(R&D)
[研究課題名]炭素繊維及び中間材のアップサイクリングで15%以上コスト削減された機能性部品の製造技術の開発
[寄与率]1/4
[課題遂行機関名](株)エンバイオニア
[研究期間]2020.08.01~2021.02.28
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic、CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(Glass Fiber Reinforced Plastic、GFRP)などのような複合素材に多く使用される。このような複合材料の使用量が自動車分野、宇宙航空分野、新エネルギー分野などの産業全般の分野で徐々に増加しており、特にエコカーの急速な普及に伴う車両軽量化の必要に応じてさらに使用が増加すると見込まれるため、その分解及び再活用の必要性はますます高まってきている。
【0003】
しかし、熱硬化性樹脂は、その特性上、一度硬化すると熱を加えない限り溶剤に溶け難いため再活用が難しい。熱硬化性樹脂の代表的な樹脂としてポリウレタン、エポキシ樹脂などがある。
【0004】
従来、このような熱硬化性樹脂複合素材を処理する方式として、大きく熱分解、化学的分解方式が用いられていた。
【0005】
前記熱分解方式は、東レ、帝人などの日本の企業やAdherent Technology(アメリカ)、Procotex(フランス)、ELG Carbon Fibre(イギリス)のような企業で用いられてきたが、現在も依然として用いられている。しかし、熱分解工程は500℃以上の高い温度を要求し、且つ人体有害物質が生成されるなど環境にやさしくないため、徐々に熱分解工程の活用は減ってきている実情である。
【0006】
一方、化学的分解としては、有機溶媒をベースとする方式や超臨界又は準臨界工程などの特殊な工程条件で処理する方式が用いられている。
【0007】
しかし、有機溶媒をベースとする方式もまた、依然として環境にやさしくないという問題がある。また、このような有機溶媒ベースの処理溶液は、それ自体で高価の溶液(例えば、ベンジルアルコールなど)を使用したり、再使用が制限されたりする場合が多いため、生産コストがアップする問題点がある。
【0008】
また、超臨界条件などの場合、高い圧力下で工程を進めるので、作業中に危険にさらされる可能性や安全設備及び装置を具備し保持するためのコストが増加して経済的ではないという不具合がある。
【0009】
近年、なるべく有機溶媒を排除し水を中心としたマイルド(mild)な条件で処理する技術が開発されている(特許文献1)。
【0010】
しかし、当該化学的方法の場合は、実際の分解効率が高くなくてその処理に長時間がかかり、且つ実験室レベルではない大規模処理過程では実質的に用いることができなかった。
【0011】
また、マイルド(mild)な条件であっても、使用する化学溶液の取り扱いが非常に難しいという問題があり、実際の現場での適用には限界が存在していた。例えば、化学溶液自体の臭い(臭気)が強くて作業が難しく、且つ生産装備を設置して工程を進める場合、集塵機、スクラバーなどの設備を備えているにもかかわらず、周辺企業から苦情が寄せられる問題が発生しており、このような実際的な問題は技術適用の障害になっている。
【0012】
また、反応器、ポンプ、配管、バルブなどの各種の設備や計測制御装備などを構成する際に腐食に備えて高価の素材(例えば、チタンなど)を使用したり、当該設備や計測制御装備などの頻繁な取り替えが必要とされたりする問題点がある。
【0013】
そこで本発明者は、有機溶媒を排除する水溶液ベースの分解方式として、マイルドな条件における分解が可能であり且つ分解効率が高くて大規模処理施設への適用も可能であり、また強い臭気などがなくて取り扱い性や使用性に優れると共に腐食性の問題がなくて関連装備の取り替えの必要性が少ない熱硬化性樹脂複合材料の分解及び再活用技術を鋭意研究して本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国特許第1861095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、有機溶媒を使用しない水溶液ベースの分解方式でありながらも低温及び常圧のマイルドな条件における分解が可能であり且つ分解効率が高くて大規模処理施設への適用も可能な熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される組成物、これを含むキットを提供することである。
【0016】
本発明の例示的な具現例では、他の一側面において、取り扱い性や腐食性の問題を顕著に改善することができると共に、従来に比べて化学反応速度も大きく増加して生産性を改善することができる、熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される組成物、これを含むキットを提供することである。
【0017】
本発明の例示的な具現例では、他の一側面において、熱硬化性樹脂複合材料の分解処理に使用した水溶液の再使用性に優れると共に、処理工程の実施及び処理条件の制御が容易である、熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される組成物、これを含むキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の例示的な具現例では、熱硬化性樹脂複合材料(または熱硬化樹脂複合材料、thermosetting resin composite material)をギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液に入れて(ギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液において)前処理(またはプレ処理、pretreating)を施す工程(または段階、step)、及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素溶液又はギ酸水溶液に入れて(過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液でもって)本処理(またはメイン処理、main treatment)を施す工程(または段階、step)を含んで成り、前記前処理に使用される水溶液と前記本処理に使用される水溶液とは互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解方法が提供される。
【0019】
また、本発明の例示的な具現例では、熱硬化性樹脂複合材料(または熱硬化樹脂複合材料、thermosetting resin composite material)をギ酸溶液(もしくはギ酸水溶液)又は過酸化水素水溶液で事前含浸するための事前含浸槽(pre-impregnation tank);前記事前含浸槽に接続(または連結)される前処理槽であって、前記事前含浸槽から得られる(または収得される)熱硬化性樹脂複合材料が送られ、ギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液を含んでおくための(担持するための)前処理槽(pretreatment tank);及び前記前処理槽に接続(または連結)される本処理槽であって、前記前処理槽から得られる(または収得される)熱硬化性樹脂複合材料が送られ、過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液を含んでおくための(担持するための)本処理槽(main treatment tank);を有して成り、前記前処理槽に含まれる水溶液と前記本処理槽に含まれる水溶液とは互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解装置が提供される。
【0020】
また、本発明の例示的な具現例では、熱硬化性樹脂複合材料(または熱硬化樹脂複合材料、thermosetting resin composite material)の分解キット(kit for decomposition)であって、ギ酸溶液(もしくはギ酸水溶液)又は過酸化水素溶液(もしくは過酸化水素水溶液)を含む事前含浸のための事前含浸組成物;ギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液を含む前処理のための前処理組成物;及び過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液を含む本処理のための本処理組成物;を有して成り、前記前処理組成物の水溶液と本処理組成物の水溶液とは互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解キットが提供される。
【0021】
また、本発明の例示的な具現例では、過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液、好ましくは、過酸化水素水溶液中のラジカル開始剤(radical initiator)が0.1~2wt%以下で添加された熱硬化性樹脂複合材料の分解のための組成物(または熱硬化樹脂複合材料の分解のための組成物、composition for decomposing a thermosetting resin composite material)が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の例示的な具現例によれば、従来の化学的分解方法とは異なり、低温及び常圧のマイルドな条件下でも分解反応時間を顕著に短縮させることができると共に、化学溶液の臭気(臭い)及び素材の腐食などによる量産設備の構築が困難である点を改善することができ、且つ化学溶液の濃度を下げたにもかかわらず反応性能を保持することができて溶液の使用回数を大きく増加させることができる。また、熱硬化性樹脂複合材料の分解処理に使用した水溶液の再使用性に優れ、且つ処理工程の実施及び処理条件の制御が容易である。これにより、生産コストを画期的に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の例示的な具現例で使用される代替溶液の腐食性を既存溶液の腐食性と対比して示す結果表である。
図2】本実験1で代替溶液の使用時の反応速度の改善を示す結果写真である。
図3a】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図3b】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図3c】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図3d】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図3e】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図3f】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図3g】本実験2の分解前後のCFRP写真である。
図4a】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4b】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4c】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4d】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4e】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4f】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4g】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図4h】本実験3の分解前後のCFRP写真である。
図5】本実験4で事前含浸による分解時間の短縮を示す結果である。
図6】本発明の例示的な実施例で使用される溶液(D溶液)の場合における、緩衝溶液の添加又は未添加時の加熱(90℃)時間に応じた濃度及びpHの変化を示すグラフである。
図7】本発明の例示的な実施例で使用される溶液(D溶液)の場合における、緩衝溶液を添加して濃度を調節しながら繰り返し分解を施した結果(加熱温度90℃、1回当りの反応時間約5時間)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
用語定義
本明細書において熱硬化性樹脂複合素材とは、熱硬化性樹脂を含む種々の複合材料を意味する。例えば、エポキシ樹脂複合素材は、エポキシ樹脂硬化物及び炭素繊維などの各種の充填材を含むものであってよい。
【0025】
本明細書において再活用とは、熱硬化性樹脂複合素材を化学的に処理して分解する過程を含む意味である。
【0026】
本明細書及び特に請求の範囲で用いられる用語の分解は、分解それ自体の意味に加えて、分解及び分解後に続く再活用(リサイクル)をも含む意味であってよい。
【0027】
本明細書において分解及び再活用とは、前記分解及び前記再活用過程のうちの一つ以上を含む意味と定義される。
【0028】
本明細書において事前含浸とは、常圧(大気圧、atmospheric pressure)及び実質的な加熱処理と見なされない常温(室温、room temperature)で一定時間含浸することを意味する。ここで実質的な加熱処理と見なされない温度とは、何らの加熱のない常温又は実質的な加熱処理と見なされない温度である40℃以下であってよいが、好ましくは、常温である。このような温度及び常圧でギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液のような水溶液に熱硬化性樹脂複合素材を一定時間担持する。
【0029】
本明細書において前処理とは、常圧(大気圧、atmospheric pressure)及び80℃~120℃、好ましくは、水の沸点である100℃未満で加熱された温度のギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液のような水溶液に熱硬化性樹脂複合素材を一定時間担持することを意味する。
【0030】
本明細書において本処理とは、常圧(大気圧、atmospheric pressure)及び80℃~120℃、好ましくは、水の沸点である100℃未満で加熱された温度のギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液のような水溶液に前記前処理を経た熱硬化性樹脂複合素材を一定時間担持することを意味する。
【0031】
本明細書においてA溶液は、酢酸水溶液を指す。
本明細書においてB溶液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を指す。
本明細書においてC溶液は、ギ酸水溶液を指す。
本明細書においてD溶液は、過酸化水素水溶液を指す。
【0032】
本明細書においてラジカル開始剤は、マイルドな条件でラジカル種を生成し且つラジカル反応を促進することができる物質であって、本発明の例示的な具現例における事前含浸、前処理及び/又は本処理の過程中で使用されるギ酸水溶液及び/又は過酸化水素水溶液にさらに添加されることを意味する。
【0033】
本明細書において水溶液再使用性とは、事前含浸、前処理、本処理の各過程で使用した水溶液を同じ過程で再使用できる特性を意味する。
【0034】
本明細書において濃度は、溶液全体の質量に対する添加される物質の重量を百分率で表す。
【0035】
例示的な具現例の説明
以下、本発明の例示的な具現例を詳しく説明する。
本発明者は、既存の熱硬化性樹脂複合材料の化学的分解方法の過酷な工程条件、化学溶液の取り扱い性の問題、腐食性の問題と化学溶液のコスト増加の問題点を認知し、これを持続的に改善するために鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0036】
詳述すると、最近まで用いられていた方法として、炭素繊維複合素材を化学的に再活用の際に、例えば、酢酸水溶液で前処理を施し、次いで次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液で処理して熱硬化性樹脂を分解した後に溶液中に残留する炭素繊維を回収する方法があるが、当該方法は実際の適用には相当な問題があった。
【0037】
すなわち、上記の方法では、酢酸(正確には氷酢酸)自体の強い腐食性と臭気によって作業者らが溶液を取り扱ううえで且つ反応設備を取り備えるうえで深刻な制約が伴い、また次亜塩素酸ナトリウムの場合は、腐食性の問題がより深刻となって耐火学性を持つSUS316程度の合金ですら急速に腐食を誘発して反応設備を取り備えるうえで多くの困難が存在していた。
【0038】
そこで、本発明の例示的な具現例では、前述した取り扱い性や腐食性などの問題点を改善しながらも高い分解効率を得るために代替溶液(ギ酸水溶液及び過酸化水素水溶液)を採用すると共に前処理と本処理の段階的分解を施し、さらに前処理の前事前含浸の過程を施すようにする。
【0039】
例えば、酢酸に代えてギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液で前処理を施し、次亜塩素酸ナトリウムに代えて過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液で本処理を施す。再使用性、量産性、反応調節などの取り扱い性、分解効率の観点から、前記前処理及び本処理のそれぞれで使用する水溶液は互いに異なるもので構成する。
【0040】
これにより、取り扱い性や腐食性を画期的に改善し、且つ後述するように従来より化学反応速度も顕著に増加して分解率を上昇させ、結果として生産性を改善することができる。また、再使用性が高まるにつれて大規模処理が可能な量産性も向上することができる。
【0041】
図1は、本発明の例示的な具現例で使用される代替溶液の腐食性を既存溶液の腐食性と対比して示す結果表である。
【0042】
図1に示すように、既存溶液である酢酸や次亜塩素酸ナトリウムでは、SUS 304、SUS 316合金ともに反応回数の増加に伴い腐食の問題が生じたが、本発明の例示的な具現例で使用されるギ酸及び過酸化水素では、腐食の問題が生じることなく良好で且つ反応温度も水の沸点である100℃未満でより速く処理を施すことができた。
【0043】
本発明の例示的な具現例における前処理溶液(C溶液:ギ酸水溶液)及び本処理で使用される溶液(D溶液:過酸化水素水溶液)を既存の前処理溶液(A溶液:酢酸水溶液)及び本処理で使用される溶液(B溶液:次亜塩素酸ナトリウム水溶液)の諸性能及びコストを比較して表すと、次の腐食性結果表のとおりである。
【0044】
【表1】
【0045】
このように、本発明の例示的な具現例では、前記代替溶液(ギ酸水溶液及び過酸化水素水溶液)を使用する場合、腐食性が既存よりも減少し、それに伴い、反応設備を構成する素材の選択が容易になると共に、後述するように分解効率に優れ、且つ分解し難い熱硬化性樹脂複合材料も容易に分解することができる。
【0046】
一方、例示的な具現例において、当該複合材料を分解反応に投入する前にギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液に事前含浸(約10時間以内)することで、前処理及び本処理の反応時間をさらに短縮させることができる。
【0047】
具体的に、本発明の例示的な具現例において、熱硬化性樹脂複合材料の再活用方法は、熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液又は過酸化水素溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素溶液又はギ酸溶液に入れて本処理を施す段階;を含む。前述したように、前記前処理溶液及び本処理溶液は互いに異なる溶液を使用する。
【0048】
例示的な具現例において、前記事前含浸は、分解対象の熱硬化性樹脂複合材料の種類に応じて、常温(もしくは室温、room temperature)および常圧(もしくは大気圧、atmospheric pressure)で17時間以下、好ましくは10時間以下施されてよい。例えば、0時間超10時間以下、1~9時間、2~8時間、3~7時間、4~6時間施されてよい。非制限的な例示として、事前含浸は、常温および常圧で10時間以下、9時間以下、8時間以下、7時間以下、6時間以下、5時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下施されてよい。また、事前含浸は、0時間超、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上施されてよい。
【0049】
例示的な具現例において、前記前処理は、常圧(もしくは大気圧、atmospheric pressure)及び80~120℃、好ましくは80℃~100℃未満、85~95℃、又は90℃で1~6時間施してよい。
【0050】
非制限的な例示として、前記前処理の温度は、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上であってよく、且つ120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、好ましくは100℃未満、95℃以下、90℃以下、85℃以下であってよい。
【0051】
非制限的な例示として、前記前処理の時間は、1時間以上、1.5時間以上、2時間以上、2.5時間以上、3時間以上、3.5時間以上、4時間以上、4.5時間以上、5時間以上、5.5時間以上であってよく、且つ6時間以下、5.5時間以下、5時間以下、4.5時間以下、4時間以下、3.5時間以下、3時間以下、2.5時間以下、2時間以下、1.5時間以下であってよい。
【0052】
例示的な具現例において、前記本処理は、常圧(もしくは大気圧、atmospheric pressure)及び80~120℃、好ましくは80℃~100℃未満、85~95℃、又は90℃で1~3時間施してよい。
【0053】
非制限的な例示として、前記本処理の温度は、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上であってよく、且つ120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、好ましくは100℃未満、95℃以下、90℃以下、85℃以下であってよい。
【0054】
非制限的な例示として、前記本処理の時間は、1時間以上、1.5時間以上、2時間以上、2.5時間以上であってよく、且つ3時間以下、2.5時間以下、2時間以下、1.5時間以下であってよい。
【0055】
例示的な具現例において、ギ酸水溶液中のギ酸の濃度は、50%以上100%未満であってよいが、環境的の観点から、好ましくは90%以下、又は85%未満であってよく、且つ反応性の観点から、50%以上であってよい。
【0056】
非制限的な例示として、ギ酸の濃度は、例えば、50~90%であってよい。例えば、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下であってよく、且つ50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上であってよい。
【0057】
例示的な具現例において、過酸化水素水溶液中の過酸化水素の濃度は、20%以上50%以下であってよいが、環境的の観点から、好ましくは35%未満であってよく、且つ反応性の観点から、30%以上であってよい。50%超の場合、爆発の恐れがある。
【0058】
非制限的な例示として、過酸化水素の濃度は、34.5%以下、34%以下、33.5%以下、33%以下、32.5%以下、32%以下、31.5%以下、31%以下、30.5%以下であってよい。
【0059】
非制限的な例示として、過酸化水素の濃度は、30%以上、30.5%以上、31%以上、31.5%以上、32%以上、32.5%以上、33%以上、33.5%以上、34%以上であってよい。
【0060】
一方、後述する実験例でも確認できるように、水溶液ベースの分解において、事前含浸、前処理及び本処理の際に特定の溶液を特定のシーケンスで使用することは実際の分解効率で大きな差をもたらすことを確認した。その理由は明確に究明されていないが、水溶液ベースの場合に事前含浸、前処理及び本処理の各過程で使用する化学物質の種類に応じて分解メカニズムや効率に影響を与えることに起因すると考えられる。
【0061】
さらに、分解及び再活用しようとする熱硬化性樹脂複合材料のタイプに応じて前記ギ酸水溶液と過酸化水素水溶液の処理順序を変更することによって反応をより効率的に進めることができる。
【0062】
例えば、航空機の胴体を構成するCFRPなどのように分解が極めて難しいものである場合、後述するラジカル開始剤の添加に加えて、相対的に高い効率の分解シーケンスを有するものを使用することが好ましい。
【0063】
一方、前述した事前含浸、前処理、及び本処理のうちの一つ以上の過程、特に前処理及び本処理のうちの一つ以上の過程で微量のラジカル開始剤を併せて使用すると、分解効率が例えば10%以上に飛躍的に上昇し得る。熱硬化性樹脂複合素材の化学分解工程で他の条件を固定したまま分解効率のみを上昇させることが至難であることを勘案するとき、ラジカル開始剤の微量添加だけで分解効率が約10%程度上昇し得ることは驚くべきことである。
【0064】
メカニズムが明確に究明されたわけではないが、C溶液及び/又はD溶液を利用した事前含浸、前処理及び/又は本処理の過程でラジカル開始剤が熱硬化性樹脂複合素材の分解時にラジカル反応に関与して分解効率を高めるものと考えられる。
【0065】
例示的な一具現例において、前記ラジカル開始剤としては、分解効率の上昇の観点から、アゾ化合物や有機過酸化物などが好ましい。
【0066】
非制限的な例示として、ラジカル開始剤であるアゾ化合物は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であってよい。
【0067】
非制限的な例示として、ラジカル開始剤である有機過酸化物は、過酸化ベンゾイル(Benzoyl Peroxide、BPO)、過酸化アセチル(acetyl Peroxide)、過酸化ジラウロイル(dilauryl Peroxide)などであってよい。
【0068】
例示的な一具現例において、前記ギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液中のラジカル開始剤は、分解効率の観点から、0.01~2wt%添加されることが好ましい。2wt%を超えて過量使用すると、過剰な反応性によって化学反応を制御し難い問題が生じることがある。
【0069】
例示的な一具現例において、前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法の分解過程シーケンスは、熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に事前含浸する段階;事前含浸処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加された過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて本処理を施す段階;を含んでよい。
【0070】
例示的な一具現例において、前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法の分解過程シーケンスは、熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に事前含浸する段階;事前含浸処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加されたギ酸水溶液に入れて本処理を施す段階;を含んでよい。
【0071】
例示的な一具現例において、前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法の分解過程シーケンスは、熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に事前含浸する段階;事前含浸処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加された過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて本処理を施す段階;を含んでよい。
【0072】
例示的な一具現例において、前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法の分解過程シーケンスは、熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に事前含浸する段階;事前含浸処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加されたギ酸水溶液に入れて本処理を施す段階;を含んでよい。
【0073】
例示的な一具現例において、前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法の分解過程シーケンスは、熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に事前含浸する段階;事前含浸処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加されたギ酸水溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて本処理を施す段階;を含んでよい。
【0074】
例示的な一具現例において、前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法の分解過程シーケンスは、熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に事前含浸する段階;事前含浸処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて前処理を施す段階;及び前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加された過酸化水素水溶液に入れて本処理を施す段階;を含んでよい。
【0075】
一方、例示的な一具現例では、持続的な分解特性(continuous decomposition characteristics)を保持するために、過酸化水素水溶液の濃度及び/又はpHを一定の範囲内で保持するように調節してよく、当該濃度及び/又はpHを調節するための緩衝溶液(またはバッファー溶液、buffer solution)を使用してよい。
【0076】
非制限的な例示として、前処理又は本処理の際に過酸化水素水溶液を利用した反応が進められることに伴い、濃度及びpHが類似した相関関係を持ちながら変動するが、これを補償して持続的な分解特性を保持するために緩衝溶液を使用してよい。このとき、緩衝溶液としては、クエン酸、酒石酸、リン酸のうちの一つ以上を使用してよい。
【0077】
非制限的な例示として、過酸化水素水溶液の濃度は分解処理の前に比べて35%未満且つ30%以上にすることが好ましい。
【0078】
例示的な具現例において、前記前記熱硬化性樹脂複合材料の分解方法における分解率は、有機物の分解率を確認できる熱重量分析法(TGA、Thermogravimetric Analysis)で測定してよく、熱重量分析法による分解率が90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上であってよく、特に98%以上、99%以上が好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0079】
分解率は、最終的に回収された(乾燥後)炭素繊維(再生炭素繊維)をTGA分析して有無機の残留物が0%に近いほど分解率が100%に近いものとみる。
【0080】
一方、本発明の例示的な具現例に係る熱硬化性樹脂複合材料の分解装置は、熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液(もしくはギ酸水溶液)又は過酸化水素溶液に入れて前処理を施す前処理部(又は前処理領域);及び前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素溶液又はギ酸溶液に入れて本処理を施す本処理部(又は本処理領域);を含んでよい。前記前処理溶液及び本処理溶液は互いに異なる溶液で構成する。
【0081】
例示的な一具現例において、前記装置は、前処理の前の熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液又は過酸化水素溶液に事前含浸する事前含浸部(又は事前含浸領域)をさらに含んでよい。
【0082】
また、例示的な一具現例において、熱硬化性樹脂複合材料の分解装置は、熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液(もしくはギ酸水溶液)又は過酸化水素水溶液で事前含浸するための事前含浸槽;前記事前含浸槽に、例えばコンベヤーベルトにて連結される前処理槽であって、前記事前含浸槽から収得された熱硬化性樹脂複合材料が送られ、ギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液を含む(または担持する)前処理槽;及び前記前処理槽に、例えばコンベヤーベルトにて連結される本処理槽であって、前記前処理槽から収得された熱硬化性樹脂複合材料が送られ、過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液を含む(または担持する)本処理槽;を含んでよい。
【0083】
一方、本発明の例示的な具現例では、熱硬化性樹脂複合材料の分解キットを提供してよい。
【0084】
当該キットは、ギ酸溶液(もしくはギ酸水溶液)又は過酸化水素溶液が含まれる事前含浸のための事前含浸組成物;ギ酸水溶液又は過酸化水素水溶液が含まれる前処理のための前処理組成物;及び過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液を含む本処理組のための本処理組成物;を含む。前記前処理組成物の水溶液と前記本処理組成物の水溶液とは、互いに異なるように構成する。
【0085】
例示的な一具現例において、当該キットは、過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液、特に好ましくは過酸化水素水溶液にラジカル開始剤をさらに含んでよい。ここで、過酸化水素水溶液又はギ酸水溶液中のラジカル開始剤が0.01~2wt%以下で添加されることが好ましい。
【0086】
以下、本発明の例示的な具現例に係る具体的な実施例をさらに詳細に説明する。なお、本発明が下記の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で種々の形態の実施例が具現でき、且つ下記の実施例は単に本発明の開示が完全になるようにすると共に当業界における通常の知識を有する者が発明の実施を容易にできるようにするためのものであることが理解できるはずである。
【0087】
[実験1]
本実験1では、既存のA、B溶液と対比した代替溶液であるC溶液及びD溶液の使用時の分解効率の改善の有無を調べた。
【0088】
先ず、分解前の原料として航空機用CFRPスクラップ(破砕品)を使用した。参考までに、図2に分解前のCFRPスクラップの写真が示されている。
【0089】
分解に使用した溶液としては、氷酢酸水溶液(A溶液 - 99.9%)及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液(B溶液 - 12%)をそれぞれ使用した。また、ギ酸水溶液(C溶液 - 80%)及び過酸化水素水溶液(D溶液 - 34.5%)をそれぞれ使用した。各A溶液、B液、C溶液、及びD溶液は、CFRPに対して体積比1:20の割合で使用した。
【0090】
参考までに、事前含浸、前処理、及び本処理における処理複合材料に対する溶液の体積比は1(複合材料の体積):10(溶液の体積)以上、例えば、1(複合材料の体積):10(溶液の体積)~1(複合材料の体積):30(溶液の体積)であってよいが、コスト削減の側面から、なるべく溶液の体積の比率が低いことが好ましい。
【0091】
図2は、本実験1で代替溶液の使用時の反応速度の改善を示す結果写真である。図2aは既存溶液の場合、図2bは本実施例の場合である。
【0092】
図2に示すように、前述した既存溶液の場合、前処理(Step-1)及び本処理(Step-2)の反応時間の和が10時間を超えても反応残留物の除去が難しい(図2a参照)のに対し、本発明の例示的な具現例では、前処理(Step-1)及び本処理(Step-2)の反応時間の総和4時間で反応残留物を容易に除去することができた(図2b参照)。
【0093】
[実験2]
本実験2では、前処理でのC溶液の使用及び本処理でのD溶液の使用のシーケンスをベースとして事前含浸の分解シーケンスを変更した場合、前処理及び本処理の時間を変更した場合、及びさらにラジカル開始剤を使用した場合の分解効率の変化を測定した。
【0094】
先ず、分解前の原料として航空機用のCFRPプレートを使用した。大きさは30×30×5mm(1g)とした。参考までに、図3aは、前記分解前のCFRPプレートの写真である。
【0095】
分解に使用した溶液としては、ギ酸水溶液(C溶液 - 80%)及び過酸化水素水溶液(D溶液 - 34.5%)をそれぞれ使用した。各C溶液及びD溶液は、CFRPに対して体積比1:20の割合で使用した。
【0096】
事前含浸は施す場合に常温及び常圧で17時間進行し、前処理及び本処理はいずれも常圧及び90℃で施した。
【0097】
ラジカル開始剤としては、AIBNを各水溶液当たり1wt%の量で使用した。
【0098】
分解効率は熱重量分析法(TGA)で測定した。参考までに、TGA分析時の分析器はSCINCO TGA N-1000を使用し、温度範囲はRT~800℃とし、ファーネスはEGAを使用し、ヒーティング速度は10℃とし、N雰囲気を使用した。TGA分析方法は複数の本実験で同一である。
【0099】
本実験2の各実施例のシーケンス、ラジカル開始剤の添加の有無、分解率は、下表のとおりである。なお、各シーケンスにおいて下表に表した条件以外の他の条件は全て同一にした。一方、下記の実施例1~6の分解後の写真をそれぞれ図3b~3gに示した。
【0100】
【表2】
【0101】
以上から確認できるように、実施例1と2を比較すると、他の条件を同一とし、D溶液で事前含浸をさらに施した場合に分解効率が10%程度改善することが分かる。
【0102】
また、実施例1と3を比較すると、前処理時間を1時間増加させ、且つ本処理時間を1時間増加させた場合、D→C→Dシーケンスで分解効率が100%に達した。しかし、D溶液による事前含浸を施していない場合には、前処理時間を1時間増加させ、且つ本処理時間を1時間増加させても、分解効率が81.8%と低調であった。したがって、C溶液による前処理及びD溶液による本処理シーケンスで分解時間を増加させても、事前含浸をD溶液で施した場合に分解時間の増加による利得があることが分かる。参考までに、分解時間を増加させることは熱硬化性樹脂複合材料の分解や再活用効率、コストの観点から好ましくはないが、なるべく分解時間を抑え且つ高い分解効率を達成するうえで必要である。このような観点から、後述する実施例6のシーケンスでは非常に驚くべき結果を示している。
【0103】
すなわち、実施例5は、実施例1に対してラジカル開始剤を前処理溶液に添加した例であるが、この場合、分解効率は約2%程度上昇した。一方、実施例6は、実施例1に対してラジカル開始剤を本処理溶液に添加した例であるが、この場合、分解効率は100%と飛躍的に上昇した。
【0104】
このような結果は、D→C→Dの工程を施すときに特にD溶液にラジカル開始剤を添加したほうが分解効率を大きく高めることを示すことであり、且つこの結果は、下記の実験3でD溶液にラジカル開始剤を添加したほうがより分解効率を高める結果とも符合する。
【0105】
一方、本実験2で事前含浸の際に開始剤(AIBN)の添加の有無による差異を調べた結果、D溶液による事前含浸+ラジカル開始剤の場合に試片がより軟性化することを確認することができた。
【0106】
[実験3]
本実験3では、前処理でのD溶液の使用及び本処理でのC溶液の使用のシーケンスをベースとして事前含浸の分解シーケンスを変更した場合、及びさらにラジカル開始剤を使用した場合の分解効率の変化を測定した。
【0107】
先ず、分解前の原料として航空機用のCFRPプレートを使用した。大きさは30×30×5mm(1g)とした。参考までに、図4aは、前記分解前のCFRPプレートの写真である。
【0108】
分解に使用した溶液としては、ギ酸水溶液(C溶液 - 80%)及び過酸化水素水溶液(D溶液 - 34.5%)をそれぞれ使用した。各C溶液及びD溶液は、CFRPに対して体積比1:20の割合で使用した。
【0109】
事前含浸は常温及び常圧で進行し、前処理及び本処理はいずれも常圧及び90℃で施した。
【0110】
ラジカル開始剤としては、AIBNを各水溶液当たり1wt%の量で使用した。
【0111】
分解効率は実験2と同様に熱重量分析法(TGA)で測定した。
【0112】
本実験3の各実施例のシーケンス、ラジカル開始剤の添加の有無、分解率は、下表のとおりである。各シーケンスにおいて下表に表した条件以外の他の条件は全て同一にした。
【0113】
【表3】
【0114】
以上から分かるように、分解反応の前処理及び本処理の際にそれぞれラジカル開始剤を添加すると、分解率が相当増加(約10%程度増加)することが分かった。参考までに、CFRPのリサイクリングの場合、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上が分解される必要がある。
【0115】
一方、ラジカル開始剤の添加の場合に、事前含浸と前処理の分解反応、本処理の分解反応において、特定のシーケンスでより高い分解効率を示した。すなわち、実施例3(C→D+開始剤→C)の場合、実施例5の場合(C→D→C+開始剤)よりも高い分解効率を示した。
【0116】
また、実施例4(D→D+開始剤→C)の場合、実施例6(D→D→C+開始剤)に対して顕著に高い分解効率の上昇を示した。
【0117】
以上から確認できるように、ラジカル開始剤の添加が分解効率の上昇をもたらすが、特に前処理溶液としてD溶液を使用し、本処理溶液としてC溶液を使用した場合に。前処理の際にラジカル開始剤を入れたほうが全体的に分解効率のより高い上昇をもたらすことが分かる。
【0118】
さらに、前記のように前処理溶液としてD溶液を使用し、本処理溶液としてC溶液を使用したとき、特に事前含浸をC溶液で施すシーケンスの場合、同一の条件で99.7%の最も高い分解効率を示した。参考までに、図4b~4hは、それぞれ本実験2の当該実施例1~6による分解後の再生炭素繊維の写真である。
【0119】
一方、本実験でも事前含浸の際に開始剤(AIBN)の添加の有無による差異を調べた結果、C溶液による事前含浸+ラジカル開始剤の場合に効果の差異が僅かであったが、D溶液による事前含浸+ラジカル開始剤の場合に試片がより軟性化することを確認することができた。
【0120】
以上を総合すると、ラジカル開始剤はD溶液への添加時により高い上昇作用をするものと考えられる。
【0121】
[実験4]
一方、原料(廃CFRP)の性状に応じて分解シーケンスを変更することによって反応をより効率的に進めることができ、原料を分解反応に投入する前にC溶液又はD溶液に事前含浸(常温及び常圧、本実験4では17時間)することで前処理及び本処理の反応時間をより短縮させることができる。
【0122】
本実験4では、水素タンクのCFRPを切断後に破砕することなく直ちに分解した。先ず、ギ酸水溶液に常温で17時間事前含浸した。次いで、過酸化水素水溶液に入れて4時間前処理を施した。
【0123】
また、前処理後にギ酸水溶液に入れて1時間分解して処理を完了した。
【0124】
使用した各溶液の濃度は、ギ酸水溶液(C溶液 - 80%)及び過酸化水素水溶液(D溶液 - 34.5%)であった。各C溶液及びD溶液は、CFRPに対して体積比1:20の割合で使用した。
【0125】
前処理及び本処理はいずれも常圧及び90℃で施した。
【0126】
図5は、本実験4で事前含浸による分解時間の短縮を示す結果である。図5aは、事前含浸時の写真であり、図5bは、事前含浸をしていない場合の写真である。TGA分析の結果、事前含浸の場合は有機物の残留がなかったが、事前含浸をしていない場合は20%の有機物の残留が確認された。
【0127】
[実験5]
本実験5では、初期に緩衝溶液(pH=2.45)を添加(1.17%)して、pHを補償し、これにより、濃度を一定の水準に保持して分解特性を持続するようにした。
【0128】
緩衝溶液はクエン酸0.21g、酒石酸0.8g、リン酸0.5gを水100mlに入れて撹拌して溶解させた後、総溶液体積900mlまで薄めてもう一度撹拌して緩衝溶液を製造した。緩衝溶液のpHは2.45であった。その後、該緩衝溶液をD溶液に対して混合後、pH1.165になるように加えた。
【0129】
図6は、本発明の例示的な実施例で使用される溶液(D溶液)の場合における、緩衝溶液の添加又は未添加時の加熱(90℃)時間に応じた濃度及びpHの変化を示すグラフである。
【0130】
図7は、本発明の例示的な実施例で使用される溶液(D溶液)の場合における、緩衝溶液を添加して濃度を調節しながら繰り返し分解を施した結果(加熱温度90℃、1回当りの反応時間約5時間)を示すグラフである。
【0131】
図7から分かるように、本発明の例示的な実施例の溶液は繰り返し分解が可能であるため水溶液の再使用性に優れ、7回まで繰り返しが可能であった。
【0132】
図7中の残留率はTGA分析による有機物の残留率である。図7において3回以降に緩衝濃度が増加することは3回以降に緩衝溶液を使用したためである。図7から分かるように、繰り返し回数が高くなるにつれて分解率が落ちるものの、7回までは有機物の残留率が僅かであったが、8回からは分解自体がなされなかった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本明細書は、炭素繊維に熱硬化性樹脂が含浸及び硬化された複合素材を環境にやさしい水溶液ベースの化学反応を利用して効果的に分解し再活用することができる、熱硬化性樹脂複合素材の分解及び再活用方法並びに装置、これに活用される水溶液組成物に関する。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図4h
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液または過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素溶液またはギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成り、
前記前処理に使用される水溶液と前記本処理に使用される水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項2】
前記前処理および/または前記本処理のうちの一つ以上の処理に使用される水溶液に対してラジカル開始剤が添加される、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項3】
前記分解方法は、前処理の前において熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液または過酸化水素溶液で事前含浸させる事前含浸工程をさらに含んで成る、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項4】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加される過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項5】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加されるギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項6】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加される過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項7】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加されるギ酸水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料を、ラジカル開始剤が添加されるギ酸水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項9】
熱硬化性樹脂複合材料を過酸化水素水溶液で事前含浸させる工程、
前記事前含浸された熱硬化性樹脂複合材料をギ酸水溶液に入れて前処理を施す工程、および
前記前処理が施された熱硬化性樹脂複合材料をラジカル開始剤が添加される過酸化水素水溶液に入れて本処理を施す工程
を含んで成る、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項10】
前記事前含浸は、常温および常圧で6~17時間行う、請求項3に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項11】
前記前処理は、常圧および80~95℃の温度で2~6時間行う、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項12】
前記本処理は、常圧および80~95℃の温度で1~3時間行う、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項13】
ギ酸水溶液におけるギ酸の濃度が50~90%であり、
過酸化水素水溶液における過酸化水素の濃度が30~50%である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項14】
前記ギ酸水溶液または前記過酸化水素水溶液におけるラジカル開始剤が0.1~2wt%となるように該ラジカル開始剤が添加される、請求項2に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項15】
前記分解方法は、熱重量分析法(TGA)による分解率が98%以上となる、請求項2に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項16】
前記前処理または前記本処理の工程で緩衝溶液を添加して分解特性を調節する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解方法。
【請求項17】
熱硬化性樹脂複合材料をギ酸溶液または過酸化水素水溶液で事前含浸させるための事前含浸槽、
前記事前含浸槽に接続される前処理槽であって、前記事前含浸槽から得られる熱硬化性樹脂複合材料が送られる、ギ酸水溶液または過酸化水素水溶液を含む前処理槽、および
前記前処理槽に接続される本処理槽であって、前記前処理槽から得られる熱硬化性樹脂複合材料が送られる、過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液を含む本処理槽
を有して成り、
前記前処理槽に含まれる水溶液と前記本処理槽に含まれる水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解装置。
【請求項18】
熱硬化性樹脂複合材料の分解キットであって、
ギ酸溶液または過酸化水素溶液を含む、事前含浸のための事前含浸組成物、
ギ酸水溶液または過酸化水素水溶液を含む、前処理のための前処理組成物、および
過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液を含む、本処理のための本処理組成物
を有して成り、
前記前処理組成物に含まれる水溶液と前記本処理組成物に含まれる水溶液とが互いに異なる、熱硬化性樹脂複合材料の分解キット。
【請求項19】
前記分解キットは、過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液に添加されるためのラジカル開始剤をさらに有して成る、請求項18に記載の熱硬化性樹脂複合材料の分解キット。
【請求項20】
過酸化水素水溶液またはギ酸水溶液において0.1~2wt%以下となるように添加されているラジカル開始剤を有する、熱硬化性樹脂複合材料の分解のための組成物。
【国際調査報告】