IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル・アニマル・ヘルス・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-免疫刺激性組成物 図1
  • 特表-免疫刺激性組成物 図2
  • 特表-免疫刺激性組成物 図3
  • 特表-免疫刺激性組成物 図4
  • 特表-免疫刺激性組成物 図5
  • 特表-免疫刺激性組成物 図6
  • 特表-免疫刺激性組成物 図7
  • 特表-免疫刺激性組成物 図8
  • 特表-免疫刺激性組成物 図9
  • 特表-免疫刺激性組成物 図10
  • 特表-免疫刺激性組成物 図11
  • 特表-免疫刺激性組成物 図12
  • 特表-免疫刺激性組成物 図13
  • 特表-免疫刺激性組成物 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】免疫刺激性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20231128BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231128BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20231128BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P37/04 ZNA
A61K48/00
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/22
A61K31/7125
A61P31/00
C12N15/117 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562142
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2021059279
(87)【国際公開番号】W WO2021204991
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】20169224.1
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517021606
【氏名又は名称】エランコ・アニマル・ヘルス・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ・マレーネ・プツィケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・イルグ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・フェルトヒュス
(72)【発明者】
【氏名】イリス・ヒープ
(72)【発明者】
【氏名】アルフ・ランプレヒト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076CC07
4C076CC31
4C076DD49
4C076DD60
4C076DD63
4C076DD70
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB32
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB32
(57)【要約】
本発明は、リポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物であって、前記複合体が、(1)その脂質に関して、第1の脂質及び第2の脂質を含むか、又はそれらからなり、第1の脂質が双性イオン性脂質であり、第2の脂質がカチオン性脂質である、リポソームと、(2)1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数のポリヌクレオチドとを含む、免疫刺激性組成物に関する。本発明は、更に、免疫刺激性組成物のある特定の使用、及びそれを調製する方法に関する。特に、本発明は、I型インターフェロン免疫応答を誘導するため、及び/又はTLR媒介性免疫応答を低減若しくは更に回避するためのリポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物における双性イオン性脂質の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物であって、前記複合体が、
- その脂質に関して、第1の脂質及び第2の脂質を含むか、又はそれらからなり、第1の脂質が双性イオン性脂質であり、第2の脂質がカチオン性脂質である、リポソームと、
- 1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチド
とを含む、免疫刺激性組成物。
【請求項2】
双性イオン性脂質の電荷が、双性イオン性脂質中に存在する少なくともリン酸部分及び第一級アミンによる、請求項1に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項3】
第1の脂質として使用される双性イオン性脂質が1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である、請求項1に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項4】
第2の脂質として使用されるカチオン性脂質が、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-[1-(2,3-ジオレオイロキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロールヒドロクロリド(DC-コレステロール)及び他のカチオン性コレステロール誘導体、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイロキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、1-[2-(オレオイロキシ)エチル]-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項5】
第1の脂質がDOPEであり、第2の脂質がDOTMAであるか、又は第1の脂質がDOPEであり、第2の脂質がDOTAPである、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項6】
リポソーム中の脂質の総質量に対して少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%、最も好ましくは少なくとも50質量%が第1の脂質である、請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項7】
1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、Aクラス、Bクラス及びCクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチド、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、Bクラス及びCクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項8】
1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、
(i)配列番号1、配列番号2、配列番号3若しくは配列番号4と少なくとも75%の配列同一性を含み、好ましくは、配列番号1若しくは配列番号2と少なくとも75%の配列同一性を含むか、又は、
(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択され、好ましくは、配列番号1及び配列番号2からなる群から選択される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項9】
1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド中の少なくともいくつかのホスホジエステル部分が、ヌクレアーゼ耐性を高めるために化学的に修飾されており、特にホスホロチオエート部分に置き換えられている、請求項1から8のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項10】
リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体が、少なくとも平均して、20~600nm、好ましくは40~500nm、より更に好ましくは60~300nm、よりいっそう好ましくは60~250nm、最も好ましくは60~220nmの直径を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項11】
A. リポソームを提供し、リポソームを1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドと接触させて、リポソーム-核酸複合体を形成させる工程;或いは、
B.リポソーム形成前又は形成中に、脂質を1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドと接触させて、リポソーム-核酸複合体を形成させる工程
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物を調製する方法。
【請求項12】
I型インターフェロン免疫応答を誘導するため、及び/又はTLR媒介性免疫応答を低減若しくは迂回するための、リポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物における双性イオン性脂質の使用。
【請求項13】
遺伝子治療において、対象における免疫応答を刺激する方法において、及び/又は対象における感染症を予防若しくは処置する方法において使用するための請求項1から10のいずれか一項に記載の免疫刺激性組成物であって、方法が対象に免疫刺激性組成物を投与する工程を含む、免疫刺激性組成物。
【請求項14】
感染症が細菌によって引き起こされる、請求項13に記載の免疫刺激性組成物。
【請求項15】
対象が、哺乳動物種、水産養殖種、及び鳥類種からなる群から選択され、特に、対象が、ウシ、家禽、ブタ、及びコンパニオンアニマルからなる群から選択される、請求項13又は14に記載の免疫刺激性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある特定のリポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物、そのある特定の使用、及びその調製方法に関する。特に、本発明は、I型インターフェロン免疫応答を誘導するため、及び/又はTLR媒介性免疫応答を低減若しくは更に迂回する(bypass)ための、リポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物における双性イオン性脂質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物の免疫系は、侵入病原体を認識するための防御メカニズムを進化させてきた。侵入病原体、例えば微生物を打ち負かすため、脊椎動物は自然免疫系と適応免疫系を有している。自然免疫系は第一線の防御を形成し、外来抗原に対していくぶん非特異的な免疫応答を可能にするが、一方、適応免疫系は第二線の防御を形成し、高度に特異的な免疫応答を引き起こす。しかし、高度に特異的な適応免疫応答は、新しい病原体への初めての曝露の際にはゆっくりとしか生じない。
【0003】
自然免疫系における重要な担い手は、食細胞、例えば、樹状細胞、顆粒球又はマクロファージ、及び数種類の自然免疫様(innate-like)リンパ球である。自然免疫系が媒介する応答は、多くの微生物で確認される保存された分子パターン、いわゆる病原体関連分子パターン(PAMP)の認識に依存する。微生物PAMPには核酸、脂質及びタンパク質が含まれ、これらが自然免疫系のパターン認識受容体(PRR)によって検出される。Toll様受容体(TLR)は、PRRとして重要な役割を果たす。TLR4は、例えば、リポ多糖(LPS)を認識し、特に、エンドソーム膜にすべて局在しているTLR3、TLR7、TLR8、及びTLR9を含めた核酸認識TLR(nucleic acid sensing TLR)のうち、TLR9は非メチル化シトシン-リン酸-グアニン(CpG)ジヌクレオチドを危険シグナルとして認識する。活性化の際、異なるPRRは、例えば、活性化B細胞の核因子「カッパ軽鎖エンハンサー」(NF-κB)、又はインターフェロン制御因子(IRF)、又はその両方に依存する異なる炎症性シグナル伝達経路を誘発する。NF-κBの活性化は、典型的には、炎症性サイトカインの発現を引き起こすが、活性化されたIRFは、通常、I型インターフェロン(IFN)の産生を引き起こす。I型インターフェロン(IFN)は、感染細胞により分泌されるポリペプチドであり、3つの主要な機能を有する。第一に、これらは感染細胞及び隣接する細胞に細胞内在性抗菌状態(cell-intrinsic antimicrobial states)を誘導し、それによって感染物質の拡散を抑制する。第二に、これらは、抗原提示とナチュラルキラー細胞機能を促進し、一方で、炎症誘発性経路とサイトカイン産生を抑制するバランスを保つ方法で自然免疫応答をモジュレートする。第三に、これらは、特に高親和性抗原特異的T細胞及びB細胞応答の発達を促進し、それにより免疫記憶を促進することによって、適応免疫系を活性化する。
【0004】
残念ながら、病原体特異的防御メカニズムは常に十分に有効ではなく、一部の個体は、感染が起こるか、又はかなり進行するまで獲得抵抗性が発達せず、場合によっては、病原体は脊椎動物の獲得防御を回避するステルス手段を進化させている。
【0005】
今日まで、抗生物質は、ヒト及び動物の細菌感染症の処置に広く使用されている。しかし、特に大規模な畜産農家は、抗生物質の代替品を至急必要としている。これには主として2つの理由がある。第一には、消費者が抗生物質不使用の肉製品及び乳製品をますます要求するようになってきていることと、第二には、抗生物質耐性病原体の発生により、抗生物質を大規模集団に予防的に投与することの危険性が明らかにされてきたことである。この問題に対処することを目的とした研究の1つは、宿主の免疫系を刺激して、侵入病原体を自ら効果的に防御することができるようにする方法、及び/又は適切なアジュバントを含むワクチンを開発する方法を見出すことである。しかし、この点に関し、依然として、有効な免疫刺激性組成物、並びにそのような組成物を製造する方法に対する高いニーズがある。
【0006】
核酸中の免疫刺激性CpGモチーフを介して自然免疫応答を刺激する核酸を含む免疫刺激性組成物が記載されている(例えば、Mui, Barbaraら、「Immune stimulation by a CpG-containing oligodeoxynucleotide is enhanced when encapsulated and delivered in lipid particles.」、Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 298.3 (2001): 1185~1192頁; Hanagata, Nobutaka、「CpG oligodeoxynucleotide nanomedicines for the prophylaxis or treatment of cancers, infectious diseases, and allergies.」、International journal of nanomedicine 12 (2017): 515頁)を参照されたい)。これらは、主としてTLR9依存性経路を介して作用する。
【0007】
CpGモチーフを含有するDNAはまた、ワクチンアジュバントとしても使用されており、プロフェッショナル抗原提示細胞の機能を改善し、体液性及び細胞性のワクチン特異的免疫応答の生成を促進させる(例えば、Bode, Christianら、「CpG DNA as a vaccine adjuvant.」、Expert review of vaccines 10.4 (2011): 499~511頁を参照されたい)。
【0008】
しかし、CpG媒介性TLR9の活性化は、少なくともそれが刺激される主要な炎症性免疫応答又は唯一の炎症性免疫応答である場合、特に望ましくない場合があり得る。例えば、TLR9活性化は、肺の炎症と関連している(Schwartz, David Aら、「CpG motifs in bacterial DNA cause inflammation in the lower respiratory tract.」、The Journal of clinical investigation 100.1 (1997): 68~73頁; Knuefermann, Pascalら、「CpG oligonucleotide activates Toll-like receptor 9 and causes lung inflammation in vivo.」、Respiratory research 8.1 (2007): 72頁; Ito, Toshihiroら、「Toll-like receptor 9 activation is a key mechanism for the maintenance of chronic lung inflammation.」、American journal of respiratory and critical care medicine 180.12 (2009): 1227~1238頁)。したがって、強力な免疫応答を誘導するためには、I型インターフェロン免疫応答経路等の古典的なTLR媒介性応答とは別に、追加又は代替の炎症経路を活性化することが望ましい。I型インターフェロン免疫応答経路の活性化は、病原体防御のための宿主免疫系の刺激だけでなく、例えば、腫瘍治療にも特に有利であり得る(Jablonska, Jadwigaら、「Neutrophils responsive to endogenous IFN-b regulate tumor angiogenesis and growth in a mouse tumor model.」、The Journal of clinical investigation 120.4 (2010): 1151~1164頁を参照されたい)。
【0009】
CpG誘導TLR9媒介性炎症応答の回避又は抑制は、他の状況でも望まれる。例えば、非ウイルス性遺伝子治療では、所望の遺伝子治療産物をコードする非ウイルス性ベクター又は核酸によって引き起こされるTLR9媒介性炎症応答は、回避されることが求められる既知の課題である(Zhao, Hongmeiら、「Contribution of Toll-like receptor 9 signaling to the acute inflammatory response to nonviral vectors.」、Molecular Therapy 9.2 (2004): 241~248頁; Makiya Nishikawa及びYoshinobu Takakura、「Development of safe and effective nonviral gene therapy by eliminating CpG motifs from plasmid DNA vector.」、Front Biosci 4 (2012): 133~41頁)。このような炎症性応答は、非ウイルス遺伝子治療の安全性及び有効性に影響を及ぼす可能性があり、場合によっては、この応答によって導入遺伝子発現細胞が排除される。このため、構築物中のCpGモチーフの数を減らすことを利用して、核酸ベースの遺伝子治療の効力を高めてきた。要約すると、遺伝子治療又は他の状況において、TLR媒介性免疫応答を回避する必要がある。
【0010】
まとめると、上記の観点から、古典的に刺激されるTLR、特にTLR9媒介性経路とは別に、又はその代わりに、他の免疫応答経路、特にI型インターフェロン経路を活性化する核酸の改良された製剤が必要とされている。遺伝子治療の状況においては、特に、TLR媒介性応答を低減するか、更には迂回させることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mui, Barbaraら、「Immune stimulation by a CpG-containing oligodeoxynucleotide is enhanced when encapsulated and delivered in lipid particles.」、Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 298.3 (2001): 1185~1192頁
【非特許文献2】Hanagata, Nobutaka、「CpG oligodeoxynucleotide nanomedicines for the prophylaxis or treatment of cancers, infectious diseases, and allergies.」、International journal of nanomedicine 12 (2017): 515頁
【非特許文献3】Bode, Christianら、「CpG DNA as a vaccine adjuvant.」、Expert review of vaccines 10.4 (2011): 499~511頁
【非特許文献4】Schwartz, David Aら、「CpG motifs in bacterial DNA cause inflammation in the lower respiratory tract.」、The Journal of clinical investigation 100.1 (1997): 68~73頁
【非特許文献5】Knuefermann, Pascalら、「CpG oligonucleotide activates Toll-like receptor 9 and causes lung inflammation in vivo.」、Respiratory research 8.1 (2007): 72頁
【非特許文献6】Ito, Toshihiroら、「Toll-like receptor 9 activation is a key mechanism for the maintenance of chronic lung inflammation.」、American journal of respiratory and critical care medicine 180.12 (2009): 1227~1238頁
【非特許文献7】Jablonska, Jadwigaら、「Neutrophils responsive to endogenous IFN-b regulate tumor angiogenesis and growth in a mouse tumor model.」、The Journal of clinical investigation 120.4 (2010): 1151~1164頁
【非特許文献8】Zhao, Hongmeiら、「Contribution of Toll-like receptor 9 signaling to the acute inflammatory response to nonviral vectors.」、Molecular Therapy 9.2 (2004): 241~248頁
【非特許文献9】Makiya Nishikawa及びYoshinobu Takakura、「Development of safe and effective nonviral gene therapy by eliminating CpG motifs from plasmid DNA vector.」、Front Biosci 4 (2012): 133~41頁
【非特許文献10】Vollmer, Jorg. 「CpG motifs to modulate innate and adaptive immune responses.」 International reviews of immunology 25.3-4 (2006): 125~134頁
【非特許文献11】Smith及びWaterman、Adv. Appl. Math., 2: 482頁, 1981
【非特許文献12】Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol., 48: 443頁, 1970
【非特許文献13】Pearson及びLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 8: 2444頁, 1988
【非特許文献14】Higgins及びSharp、Gene, 73: 237~244頁, 1988
【非特許文献15】Corpetら、Nucleic Acids Research, 16:881~90頁, 1988
【非特許文献16】Huangら、Computer Applications in the Biosciences, 8:1~6頁, 1992
【非特許文献17】Pearsonら、Methods in Molecular Biology, 24:7~331頁, 1994
【非特許文献18】Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 19, Ausubelら編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1995
【非特許文献19】「Antisense Drug Technology」、CRC Press, 第2版 2007、Ian MacLachlanによる「Liposomal Formulations for Nucleic Acid Delivery」の章
【非特許文献20】Zhang, Hongwei. 「Thin-film hydration followed by extrusion method for liposome preparation.」 Liposomes. Humana Press, New York, NY, 2017. 17~22頁
【非特許文献21】Jahn, Andreasら 「Controlled vesicle self-assembly in microfluidic channels with hydrodynamic focusing.」 Journal of the American Chemical Society 126.9 (2004): 2674~2675頁
【非特許文献22】Deamer, David W. 「Preparation and properties of ether-injection liposomes.」 Annals of the New York Academy of Sciences 308.1 (1978): 250~258頁
【非特許文献23】Vladisavljevic, Goran T.ら 「Production of liposomes using microengineered membrane and co-flow microfluidic device.」 Colloids and surfaces A: physicochemical and engineering aspects 458 (2014): 168~177頁
【非特許文献24】Kastner, Elisabethら 「High-throughput manufacturing of size-tuned liposomes by a new microfluidics method using enhanced statistical tools for characterization.」 International journal of pharmaceutics 477.1-2 (2014): 361~368頁
【非特許文献25】Bessey, Otto A., O. H. Lowky,及びMary Jane Brock. 「A method for the rapid determination of alkaline phosphatase with five cubic millimeters of serum.」 Journal of Biological Chemistry 164 (1946): 321~329頁
【非特許文献26】Hartmann, Gunther及びArthur M. Krieg. 「Mechanism and function of a newly identified CpG DNA motif in human primary B cells.」 The Journal of Immunology 164.2 (2000): 944~953頁
【非特許文献27】Marshall, Jason D.ら 「Identification of a novel CpG DNA class and motif that optimally stimulate B cell and plasmacytoid dendritic cell functions.」 Journal of leukocyte biology 73.6 (2003): 781~792頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の背景に対して、本発明の目的は、当該技術分野で公知の組成物と比較して、より効率的に細胞炎症性応答を誘導する、及び/又は有利に改変された炎症性応答を誘導する免疫刺激性組成物を提供することである。特に、本発明の目的は、TLR媒介性免疫応答に加えて、又はその代わりに、I型インターフェロン経路を(更に、又は主に)活性化する免疫刺激性組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、経済的な方法で生産することができ、その成分が化学的に十分に定義されている免疫刺激性組成物を提供することである。本発明の更に別の目的は、このような組成物を生産するための簡易で経済的な方法を提供することである。本発明の別の目的は、対象における感染症の予防又は処置に有効な免疫刺激性組成物を提供することである。さらなる目的は、ワクチンアジュバントとして有用な免疫刺激性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的の一部又は全部は、請求項1に記載の免疫刺激性組成物、請求項11に記載の免疫刺激性組成物を調製する方法、並びに請求項12及び13に記載の使用によって達成される。
【0014】
本発明は、リポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物であって、前記複合体が、
- その脂質に関して、第1の脂質及び第2の脂質を含むか、又はそれらからなり、第1の脂質が双性イオン性脂質であり、第2の脂質がカチオン性脂質である、リポソームと、
- 1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数のポリヌクレオチド
を含む、免疫刺激性組成物を提供する。
【0015】
本発明者らは、驚いたことに、リポソーム中の2つの必須脂質成分の1つとして双性イオン性脂質、特に1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含むリポソーム-核酸複合体、特にリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体は、細胞のI型インターフェロン免疫応答経路を活性化する際に特に強力かつ選択的であることを見出した。この知見を更に研究すると、本発明の基礎をなす作用機序の可能性が明らかになった。いかなる特定の科学的理論にも拘束されるものではないが、双性イオン性脂質は、この効果に寄与する可能性がある特別なエンドソーム溶解特性及び融合特性を有し得る。リポソーム-核酸複合体が通常取り込まれるエンドソームでは、典型的には、TLR活性化が起こる。リポソームにおける双性イオン性脂質の使用を介した本発明は、標的細胞に一度送達された免疫刺激性核酸が、細胞内エンドソームからサイトゾルへと速やかにエスケープすることを可能にするようである。したがって、このメカニズムは、免疫刺激性核酸のサイトゾル濃度を上昇させるのを助ける。サイトゾル核酸は、IRF依存性経路を活性化し、そのことによりI型インターフェロン免疫応答経路を活性化することができる。このIRF依存性経路のより顕著に活性化のこの効果は、特に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドが本発明のリポソーム-核酸複合体中の核酸として使用された場合に確認された。脂質の種類と核酸の種類の間の相互依存はこれまで開示されていなかったので、これは驚くべきことであった。
【0016】
リポソーム-核酸複合体のリポソームにおける第2の必須脂質成分は、カチオン性脂質である。双性イオン性脂質と組み合わせて使用することにより主に2つの利点を有する。一方では、カチオン性脂質は、リポソームの脂質二重層と負に帯電した免疫刺激性核酸との間の相互作用を促し、リポソーム-核酸複合体中の免疫刺激性核酸を濃縮することが可能であることが確認された。他方では、カチオン性脂質はまた、リポソームに正味の正電荷を与えることによって機能し、次にこれがリポソーム-核酸複合体のアニオン性細胞表面分子へのより効率的な結合を促進し、したがって、細胞によるリポソーム-核酸複合体の取り込みが促進される。
【0017】
本発明はまた、本発明の免疫刺激性組成物を調製する方法であって、
A. リポソームを提供し、リポソームを1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドと混合し、リポソーム-核酸複合体を形成させる工程;或いは、
B. リポソーム形成前又は形成中に、脂質を1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドと接触させ、リポソーム-核酸複合体を形成させる工程
を含む方法を提供する。
【0018】
この方法において、免疫刺激性組成物を効率よく、確実な方式で得ることができる。
【0019】
本発明は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを核酸として使用する場合、特に有利な結果と驚くべき効果を提供する。免疫刺激性組成物においてポリヌクレオチド、例えばプラスミドの代わりにオリゴヌクレオチドを使用する場合、本発明は、免疫刺激の点において驚くほど同様の結果を達成しながら、良好な特性のある試薬を用いて、より経済的で清潔に生産することができる。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、コスト効率の良いin vitro合成で生成することができるが、一方、プラスミドは、通常、細菌細胞における増殖等のバイオテクノロジー的な生産手段を必要とし、それ自体がより複雑で、化学的にあまり十分に規定されない製品をもたらす。したがって、免疫刺激性オリゴヌクレオチドをin vitroで合成する能力は、本発明の免疫刺激性組成物の生成に、より十分に規定された経済的な化学製品が使用されるという利点を有する。
【0020】
本発明の免疫刺激性組成物及び方法を、主としてリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体の文脈で以下に説明するが、記載のこれらの部分は、リポソーム-ポリヌクレオチド複合体を含むそれぞれの実施形態に同様に適用される。
【0021】
本発明はまた、I型インターフェロン免疫応答を誘導するため、及び/又はTLR媒介性免疫応答を低減若しくは迂回するための、リポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物における双性イオン性脂質の使用に関する。これらの効果は、治療的又は予防的な医療上の免疫刺激用途のみならず、所望の遺伝子治療産物をコードする核酸に対する望ましくない免疫応答を低減又は回避することができることから、遺伝子治療の状況においても特に有用である。
【0022】
最後に、本発明はまた、対象における免疫応答を刺激する方法及び/又は対象における感染症を予防若しくは処置する方法における本発明の免疫刺激性組成物の使用であって、方法が対象に免疫刺激性組成物を投与する工程を含む、使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
明確化のために、本明細書において別々の実施形態の文脈で記載されている本発明による免疫刺激性組成物、方法及び使用の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得る。逆に、簡潔化のために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明による免疫刺激性組成物、方法及び使用の様々な特徴は、任意の下位の組合せで提供され得る。同様に、本発明の免疫刺激性組成物に関連して記載されている特徴又は実施形態は、本発明の方法及び使用に等しく適用可能であり、その逆もまた同様である。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数形も、すなわち「1つ又は複数」の意味で同様に含むことを意図する。
【0024】
免疫刺激性組成物
本発明の免疫刺激性組成物は、リポソーム-核酸複合体を含む。前記リポソーム-核酸複合体は、リポソームと、核酸として1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドを含む。好ましくは、リポソーム-核酸複合体は、リポソームと1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む。
【0025】
本明細書で使用される場合の「免疫刺激性組成物」とは、免疫応答経路を活性化することが可能な組成物、特に、in vivoで脊椎動物の自然免疫系を刺激することが可能な組成物を意味する。「免疫応答経路」という用語は、「炎症性応答経路」又は「炎症誘発性応答経路」という用語と交換可能に用いられ、自然免疫応答の急性発生を促進する細胞内シグナル伝達経路を意味する。そのような免疫応答経路には、特に、炎症性サイトカインの発現を最終的に誘導するNF-κB依存性経路、及びI型インターフェロン免疫応答経路の活性化を引き起こすIRF依存性経路が含まれる。
【0026】
免疫刺激性組成物は、特に、対象における免疫応答を刺激する方法、及び/又は対象における感染症を予防若しくは処置する方法における使用を意図しており、その方法は、対象に免疫刺激性組成物を投与する工程を含む。したがって、免疫刺激性組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び添加物を含み得る。
【0027】
本発明の免疫刺激性組成物はまた、1つ又は複数の抗原を含んでいてもよく、したがって、リポソーム-核酸複合体がアジュバントとして機能するワクチン製剤として使用することができる。更に、本発明の免疫刺激組成物はまた、1つ又は複数の薬物を含んでいてもよい。この場合、免疫刺激性組成物は医薬組成物である。
【0028】
リポソーム
本発明の免疫刺激性の組成物は、リポソーム-核酸複合体の一部としてリポソームを含む。本明細書で使用される場合のリポソームは、典型的には水性液体コアである液体コアを封入している1つ又は複数の脂質二重層から構成される人工の微小な粒子である。リポソームは、単層小胞(特に大きな単層小胞(LUV)及び/又は小さな単層小胞(SUV))或いは多層小胞(MLV)であり得る。MLVは、いくつかの個別の区画を形成する各小胞中の複数の二重層を有する。これらのすべてのタイプのリポソームは、脂質二重層が液体コアを被包するという共通点がある。しかし、MLV、LUV及びSUVは、それらの直径が異なる。MLVは、典型的には、直径>500nmである。LUVは、典型的には、直径>100nmである。SUVは、典型的には、約20~100nmの直径を有する。
【0029】
好ましくは、リポソームは、単層小胞である。単層小胞は、一般に、それらが多重層リポソームより直径が小さいという有利性を有する。それらのサイズが小さいため、単層小胞は、多層リポソームよりも標的細胞によって容易にエンドサイトーシスされ得る。更に、単層小胞は、無菌濾過法にかけることができる。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態では、リポソームは、約10~約550nmの間の平均直径を有する単層小胞である。好ましくは、本発明のリポソーム-核酸複合体の形成に使用されるリポソームは、約20~約450nm、より好ましくは40~250nm、より更に好ましくは40~200nm、最も好ましくは40~200nmの平均直径を有する。そのようなリポソームが免疫刺激性核酸と複合体化する際に、適切なサイズのリポソーム-核酸複合体が形成され、それが標的細胞によって効率的にエンドサイトーシスされ得るので、これらのサイズ範囲のリポソームの使用が有利であることが見出された。約<250nm未満の平均直径を有するリポソーム-核酸複合体の追加の有利性は、そのようなリポソーム-核酸複合体が無菌濾過され得るということである。
【0031】
本明細書に記載されているリポソーム及びリポソーム-核酸複合体の平均直径は、動的光散乱によって決定され、それによって、測定結果はキュムラントの技術によって分析され、平均直径はZ平均として計算される(以下を参照)。
【0032】
最も好ましい実施形態では、リポソームは「小さな単層小胞(SUV)」である。SUVが本発明のリポソーム-核酸複合体の形成に使用される場合、実験からは、標的細胞によるリポソーム-核酸複合体の取り込みが特に効果的であることが示された。
【0033】
本明細書における数値に関する「約」という用語の使用は、典型的には、多くて±5%まで数値を変化させる測定誤差によって数値が影響を受けてもよいことを示す。「約」という用語と共に本明細書において開示される数値はまた、それ自体の数値として、すなわち、「約」という用語なしで開示されることを意味する。更に、本明細書で記述されている場合の数値範囲は、その範囲内の各値及びすべての値を含み、開示することを意味する。本明細書に開示された同じパラメーターに関する範囲の上限ポイント及び下限ポイントはすべて、互いに組み合わせることができる。本明細書に開示された異なるパラメーターに関する範囲はすべて、互いに組み合わせることができる。特に、同じ「優先レベル」の範囲は、とりわけ互いに適合性がある。
【0034】
リポソームの形成には、二重層構造の形成又は二重層構造への取り込みが可能な両親媒性脂質である「小胞形成脂質」の存在が必要である。脂質二重層には、それ自体で、又は別の脂質と組み合わせて、二重層を形成することが可能な脂質が含まれる。
【0035】
本発明によるリポソーム中に存在する脂質、すなわち小胞形成脂質は、第1の脂質及び第2の脂質を含むか、又はそれらからなり、第1の脂質は双性イオン性脂質であり、第2の脂質はカチオン性脂質である。
【0036】
双性イオン性脂質、すなわち、本発明のリポソームに含まれる第1の脂質は、pH7で、正電荷基及び負電荷基の両方を含み、全体として正味電荷は中性である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、双性イオン性脂質は、2つの脂肪族部分がエステル結合及び/又はエーテル結合によってグリセロール部分に結合しているグリセロリン脂質である。脂肪族部分は、飽和であってもよく、又は不飽和であってもよい。2つの脂肪族部分は、同じ炭化水素であってもよく、又は異なる炭化水素であってもよい。好ましくは、双性イオン性グリセロリン脂質の2つの脂肪族部分は同じである。別の好ましい実施形態では、脂肪族部分は、10~30個、好ましくは12~26個、より好ましくは14~24個、最も好ましくは16~22個の炭素原子を含む非分枝状不飽和炭化水素である。より好ましい実施形態では、脂肪族部分は、10~30個、好ましくは12~26個、より好ましくは14~24個、最も好ましくは16~22個の炭素原子及び単一の二重結合を含む非分枝状不飽和炭化水素である。本発明の別の好ましい実施形態では、双性イオン性脂質の電荷は、双性イオン性脂質中に存在する少なくともリン酸部分及び第一級アミンによる。双性イオン性脂質の前述した好ましい実施形態は、互いに自由に組み合わせることができる。本発明のリポソーム-核酸複合体のリポソームが前述のいずれかの構造要素を有する双性イオン性脂質を含む場合、I型インターフェロン免疫応答経路の活性化が特に効率的であることが見出された。
【0038】
本発明の最も好ましい実施形態では、双性イオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である。実用的な実験からは、リポソーム-核酸複合体のリポソーム中のカチオン性脂質と共にDOPEを使用すると、I型インターフェロン免疫応答経路を誘導するのに効果が高いことが明らかにされている。これらの効果は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを本発明の核酸-リポソーム複合体中の核酸として使用した場合に、使用した双性イオン性脂質の種類に対して特に明白であり特異的であった。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、第1の脂質は、リポソームの脂質含量の少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%、最も好ましくは少なくとも50質量%を構成する。本発明のリポソーム-核酸複合体に含まれるリポソームの脂質二重層中に双性イオン性脂質がこれらの量で存在する場合、I型インターフェロン免疫応答経路の活性化が特に効率的であることが見出された。
【0040】
カチオン性脂質に関する「第2の脂質」という用語は、第2の脂質が第1の脂質と異なることを示すために使用される。特に、第2の脂質は、DOPEを含まない。第2の脂質は、カチオン性脂質である。「カチオン性脂質」という用語は、本明細書では、約1~9、より好ましくは2~8の範囲の任意のpHでカチオン性正味電荷を有する脂質として定義される。カチオン性正味電荷は、好ましくは、前述のpH範囲全体にわたって存在するが、しかしそうである必要はない。別の実施形態では、カチオン性脂質は、少なくともpH7でカチオン性正味電荷を有すると定義される。
【0041】
本明細書で使用される場合の「脂質」とは、好ましくは、3000Da未満、より好ましくは2000Da未満の分子量を有する化合物を意味する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、カチオン性脂質は、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-[1-(2,3-ジオレオイロキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロールヒドロクロリド(DC-コレステロール)及び他のカチオン性コレステロール誘導体、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイロキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)並びに1-[2-(オレオイロキシ)エチル]-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)からなる群から選択される。
【0043】
本発明の特に好ましい実施形態では、第1の脂質はDOPEであり、第2の脂質はDOTMAであるか、又は第1の脂質はDOPEであり、第2の脂質はDOTAPである。本発明の基礎となる研究からは、免疫刺激性組成物においてこれら2種類の脂質を組み合わせたリポソームを使用することにより、I型インターフェロン免疫応答経路を活性化する際に特に効率的であることが実証された。
【0044】
リポソーム-核酸複合体中のカチオン性脂質の免疫刺激性核酸に対する電荷比は、好ましくは2:1、より好ましくは3:1、最も好ましくは3.5:1である。リポソーム-核酸複合体の電荷比は、複合体中に存在するカチオン性脂質及び免疫刺激性核酸の量を決定することによって評価することができる。決定された量に基づいて電荷比を算出することができる。この計算において、核酸の正味の電荷は、主として核酸骨格中の負に帯電したリン酸基及び/又はホスホロチオエート基に由来すると推測される。これらの電荷比がリポソーム-核酸複合体中に存在する場合、特に再現性があり、安定した複合体が得られる。更に、特に良好な封入能力(loading capacities)が確認された。
【0045】
本明細書で使用される場合の「封入能力」という用語は、すべての免疫刺激性核酸を付着及び/又は被包するリポソームの能力を意味する。
【0046】
免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明の免疫刺激性組成物は、好ましくは、核酸成分として1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合の「1つ又は複数の」という用語は、化学的に異なるオリゴヌクレオチドがリポソームと複合体化して、免疫刺激性組成物のリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体を形成することができることを意味する。例えば、異なる塩基配列のオリゴヌクレオチド、又は糖リン酸骨格が相違するオリゴヌクレオチドを使用することができる。一実施形態では、本発明の核酸-リポソーム複合体の核酸成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成される。
【0047】
本明細書で使用される場合の「免疫刺激性オリゴヌクレオチド」とは、脊椎動物の自然免疫系によって異物として検出され、それにより自然免疫応答経路を活性化することによって、脊椎動物において免疫応答を誘発するオリゴヌクレオチドである。
【0048】
典型的には、本発明により使用される免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、合成起源のものである。したがって、それらは任意の所望の配列で、及び/又は糖リン酸骨格中の修飾により合成することができる。更に、本発明の免疫刺激性組成物において使用される免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、pH7で正味の負電荷を有し、そのためポリアニオンを表す。驚いたことに、試験したすべての免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、それらのヌクレオチド配列とは無関係に、本発明によるリポソームとの複合体化の際に、I型インターフェロン免疫応答を誘導することができた。したがって、技術的効果は配列に非依存性であり、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドのポリアニオン性は必要最小限であると推測される。
【0049】
1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、直鎖状の、少なくとも部分的に一本鎖のDNA分子である。しかし、一本鎖DNA免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、とりわけ、ワトソン-クリック塩基対形成によってそれ自体又は互いに相互作用し、二次構造及び凝集体を形成することができる。しかし、一本鎖の伸長が、常に免疫刺激性オリゴヌクレオチドに存在する。本発明の好ましい実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG oligodesoxynucleotides)(又はCpG ODN)である。これらは、シトシン三リン酸デオキシヌクレオチド(「C」)とそれに続くグアニン三リン酸デオキシヌクレオチド(「G」)を含む短い一本鎖合成DNA分子である。「p」とは、連続するヌクレオチド間のホスホジエステル結合を意味するが、本発明によるODNは、代わりに修飾されたホスホロチオエート骨格を有していてもよい。序文で説明したように、CpGモチーフは、自然免疫系のTLR9パターン認識受容体によってPAMPとして認識されると考えられる。
【0050】
さらなる好ましい実施形態では、免疫刺激オリゴヌクレオチドは、Aクラス、Bクラス、及びCクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドからなる群から選択される。免疫刺激性オリゴヌクレオチドの「Aクラス」、「Bクラス」及び「Cクラス」への分類は当業者に周知であり、例えば、Vollmer, Jorg.「CpG motifs to modulate innate and adaptive immune responses.」 International reviews of immunology 25.3-4 (2006): 125~134頁に記載されている。
【0051】
Aクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には、中央のホスホジエステルCpG含有パリンドロームモチーフと部分的にホスホロチオエート修飾された骨格、特にホスホロチオエート3'ポリ-G伸長を特徴とする。
【0052】
Bクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には、1つ又は複数のCpGジヌクレオチドを有する完全ホスホロチオエート骨格を特徴とする。
【0053】
Cクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、クラスA及びクラスBの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの特性を示す。これらは、完全ホスホロチオエート骨格と1つ又は複数のパリンドロームCpG含有モチーフを含む。
【0054】
本発明による免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には、14~500ヌクレオチド、好ましくは14~400ヌクレオチド、より好ましくは14~300ヌクレオチド、更により好ましくは14~200ヌクレオチド、よりいっそう好ましくは16~40、最も好ましくは18~30ヌクレオチドの長さを有する。このサイズの免疫刺激性オリゴヌクレオチドはin vitroで容易に合成することができ、I型インターフェロン免疫応答経路を効率的に活性化することが見出された。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、Bクラス及びCクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドからなる群から選択される。本発明の基礎となる研究からは、本発明の免疫刺激性組成物中のBクラス及びCクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドにより、I型インターフェロン免疫応答経路の活性化が特に効率的であることが証明された。
【0056】
本発明の免疫刺激性組成物の別の好ましい実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4と少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、よりいっそう好ましくは85%の配列同一性、更により好ましくは90%、95%又は97%の配列同一性を含む。
【0057】
本発明の免疫刺激性組成物のより好ましい実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号2と少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、よりいっそう好ましくは85%の配列同一性、更により好ましくは90%、95%又は97%の配列同一性を含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「配列同一性パーセント」等の用語は、2つ以上の核酸間の配列関係を説明するために使用され、a)参照配列、b)比較ウィンドウ、c)配列同一性、及びd)配列同一性のパーセントを含む用語の文脈で理解され、またこれらの用語との関連において理解される。
a)「参照配列」は、配列比較の基準として使用される定義された配列である。参照配列は、特定した配列の部分集合又は全体であってもよく、例えば、完全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列であり得る。本件では、参照配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4である。
b)「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列の連続した特定されたセグメントへの参照を含み、ポリヌクレオチド配列は参照配列と比較することができ、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、二つの配列の最適アライメントに対して、(付加、置換又は欠失を含まない)参照配列と比較して付加、置換又は欠失(すなわちギャップ)を含み得る。当業者には、ポリヌクレオチド配列中にギャップが含まれることにより参照配列との誤解されるほどの高い類似性を避けるために、ギャップペナルティが典型的に導入され、マッチ数から減算されることが理解される。
c)比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための最適な配列のアライメントは、Smith及びWaterman、Adv. Appl. Math., 2: 482頁, 1981の局所相同性アルゴリズムによって;Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol., 48: 443頁, 1970の相同性アライメントアルゴリズムによって;Pearson及びLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 8: 2444頁, 1988の類似性検索方法によって;これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装によって、例えば、限定するものではないが、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 7 Science Dr., Madison, Wis., USAのIntelligenetics, Mountain View, Calif., GAP, BESTFIT, BLAST, FASTA, and TFASTAによるPC/GeneプログラムのCLUSTALを含むものによって行うことができる;CLUSTALプログラムは、Higgins及びSharp、Gene, 73: 237~244頁, 1988; Corpetら、Nucleic Acids Research, 16:881~90頁, 1988; Huangら、Computer Applications in the Biosciences, 8:1~6頁, 1992;並びにPearsonら、Methods in Molecular Biology, 24:7~331頁, 1994によって十分に開示されている。データベースの類似性検索に使用され得るプログラムのBLASTファミリーには、ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のためのBLASTN;タンパク質データベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のためのBLASTX;ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質クエリー配列のためのTBLASTN;及びヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のためのTBLASTXが含まれる。Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 19, Ausubelら編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1995を参照されたい。上記のプログラムの新しいバージョン又は新しいプログラムは間違いなく将来利用可能になり、本開示と共に使用することができる。
d)「同一性パーセント」とは、2つの最適にアラインされた配列を比較ウィンドウによって比較することによって決定される値を意味し、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントに対して、参照配列(付加、置換又は欠失を含まない)と比較して、付加、置換又は欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列において同一の核酸塩基が生じる位置の数を決定し、マッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を比較のウィンドウ内の位置の総数で割り、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。
【0059】
本発明の一実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される。実験的研究からは、本発明の免疫刺激性組成物における配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4をコードする免疫刺激性オリゴヌクレオチドの使用は、I型インターフェロン免疫応答経路を活性化するのに特に効率的であることが明らかである。配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと本発明のリポソームとの複合体化により、前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドは強力なTLR-アゴニストからI型インターフェロン免疫応答経路の強力なアゴニストに変換された。いかなる特定の科学的理論にも拘束されるものではないが、この効果は、本発明によるリポソームの脂質組成、特に双性イオン性脂質の存在によると考えられる。驚いたことに、これは、結果として免疫刺激性オリゴヌクレオチドのエンドソームから標的細胞のサイトゾルへと効果的な細胞内放出をもたらすように思われる。
【0060】
本発明のより好ましい実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、配列番号1及び/又は配列番号2のオリゴヌクレオチドである。配列番号1及び配列番号2をコードする免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む本発明の免疫刺激性組成物は、I型インターフェロン免疫応答経路を活性化するのに特に効率的であり、同時にTLR9媒介性免疫応答は迂回される。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、糖-リン酸骨格にホスホロチオエートを含み、すなわち、部分的にホスホロチオエート修飾された骨格を含む。別の実施形態では、1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、完全ホスホロチオエート骨格を含む。ホスホロチオエート修飾は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドが本発明のリポソームとの複合体化によって細胞外ヌクレアーゼによる分解から保護されるだけでなく、それらの修飾された化学的性質によっても保護されるという有利性を有する。ホスホロチオエート修飾はまた、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、標的細胞にそれらが取り込まれた際に細胞内ヌクレアーゼ分解から保護する。結果として、これらの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性が上昇する。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態では、免疫刺激性組成物は、プラスミドDNAを含まないか、又は本質的に含まない。プラスミドDNAを「本質的に含まない」とは、免疫刺激性組成物の総DNA含量の1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、最も好ましくは0.01質量%未満がプラスミドDNAであることを意味する。本質的にプラスミドを含まないか、又はプラスミドを含まない免疫刺激性組成物を使用することにより、本発明の免疫刺激性組成物は、化学的に十分に定義された成分のみを含むことが保証される。また、免疫刺激性組成物においてプラスミドの使用を回避することによって、本発明の免疫刺激性組成物の生産コスト及び複雑性が低減される。
【0063】
免疫刺激性ポリヌクレオチド
本発明の免疫刺激性組成物は、1つ又は複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドを含むことができる。本発明の免疫刺激性組成物が1つ又は複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び1つ又は複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドを含むこともまた可能である、別の実施形態では、本発明の核酸-リポソーム複合体の核酸成分は、免疫刺激性ポリヌクレオチドからなる。
【0064】
1つ又は複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のDNA分子であり得る。免疫刺激性ポリヌクレオチドは、環状又は直鎖状であり得る。一実施形態では、免疫刺激性ポリヌクレオチドは、プラスミドDNAである。
【0065】
本発明の免疫刺激性ポリヌクレオチドは、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと少なくともそれらの長さで異なる。本発明の免疫刺激性ポリヌクレオチドは、少なくとも31ヌクレオチド、好ましくは少なくとも41ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも201ヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも301ヌクレオチド、よりいっそう好ましくは少なくとも401ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも501ヌクレオチドの長さを有する。
【0066】
実験からは、本発明のリポソーム-ポリヌクレオチド複合体の形態で製剤化されたポリヌクレオチドがI型インターフェロン免疫応答経路を特に効率的に活性化することができることが明らかであった。
【0067】
リポソーム-核酸複合体
本発明の免疫刺激性組成物は、リポソーム-核酸複合体を含む。これらは本明細書では単一の複合体に基づいて定義されるが、実際上、本発明の免疫刺激性組成物が複数のリポソーム-核酸複合体を含むことは当然理解される。これらは、同じ組成物又は異なる組成物であり得る。しかし、平均して、単一のリポソーム-核酸複合体及びその成分について本明細書で記載されている特徴は、免疫刺激性組成物中のすべてのリポソーム-核酸複合体に適用される。好ましくは、リポソーム-核酸複合体は、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、リポソーム-核酸複合体は、少なくとも平均して、20~600nm、好ましくは40~500nm、より更に好ましくは60~300nm、よりいっそう好ましくは60~250nm、最も好ましくは60~220nmの直径を有する。これらのサイズ範囲の複合体は標的細胞によって効率的にエンドサイトーシスされ得るので、このサイズ範囲の複合体の使用が有利であることが確認された。約250nm未満の平均直径を有するリポソーム-核酸複合体のさらなる有利性は、それらを滅菌濾過することができるということである。
【0069】
当業者は、リポソーム及びリポソーム-核酸複合体の平均直径を決定するための適切な方法を知っている。本明細書に記述した平均直径は、例えば、Horiba Nanopartica SZ-100(HORIBA社)を用いて、173°の固定角(後方散乱モード)で、動的光散乱(DLS)により測定されるZ平均粒径である。キュムラントの技術によって動的光散乱データを分析する場合、リポソーム又はリポソーム-核酸複合体の集団収集物(ensemble collection)のZ平均を計算することができる。DLSによって測定された並進拡散係数は、ストークス・アインシュタイン関係式に基づいて、Z平均粒径に換算することができる。Z平均サイズは、散乱強度調和平均粒径(intensity weighted harmonic mean size)(ISO 22412:2017)である。
【0070】
本明細書で使用される場合の「リポソーム-核酸複合体」という用語は、免疫刺激性核酸がリポソームに被包されること、及び/又はそれらが単にリポソームの表面に付着することを意味し得る。核酸とリポソームとの複合体化、すなわち、それらのリポソームへの結合及び/又はリポソーム内への被包は、核酸がヌクレアーゼ分解から保護されるという有利性を有する。本発明の免疫刺激性組成物の好ましい実施形態では、リポソーム-核酸複合体の免疫刺激性核酸は、少なくとも実質的にリポソーム内に被包される。本明細書で使用される場合の「実質的に被包される」とは、組成物中に存在する免疫刺激性核酸の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より更に好ましくは少なくとも60%、よりいっそう好ましくは少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%がリポソームによって被包されることを意味する。リポソームに被包される場合、免疫刺激性核酸は、分解から、特にヌクレアーゼから特に効率的に保護される。本発明によるリポソームの特別な脂質組成物により、特に、両性イオン性脂質の推定されるエンドソーム溶解性及び融合性の特性により、免疫刺激性核酸は、被包されたとしても、それらの免疫刺激性効果を非常に強力に発揮することができるため、免疫系に直接アクセス可能ではない。したがって、本発明は、免疫刺激性核酸の効果的な保護を強固な免疫刺激効果と組み合わせるという有利性を提供する。
【0071】
当業者には、核酸の被包の程度を決定する方法が知られている。これは、例えば、ヌクレアーゼ保護アッセイによって実施することができる。ここでは、定められた同じサイズの組成物のアリコートが採取される。第1のアリコートから、そこに存在する核酸の総量を核酸抽出及びその後の核酸量の決定により決定する。第2のアリコートについては、リポソーム-核酸複合体を、アクセス可能な核酸が分解され得る条件下で核酸を分解することができるヌクレアーゼとインキュベートする。それに続いて、リポソームを洗浄し、ヌクレアーゼを不活性化する。これは、例えば、プロテイナーゼK処理によって達成され得る。ヌクレアーゼ処理したリポソームから残りの核酸を抽出した後、ヌクレアーゼ処理に耐えた核酸の量及び完全性を、例えばアガロースゲル電気泳動により分析することができる。したがって、被包の程度は、核酸の保護された量を核酸の総量と比較することにより決定することができる。
【0072】
本発明のリポソーム-核酸複合体は、特に安定性であることが証明されている。一実施形態では、リポソーム-核酸複合体は、本明細書の実施例に記載されている細胞培養アッセイでそれらの免疫刺激効果を喪失することなく、及び/又はZ平均、多分散性及びゼータ電位等のそれらの特性を変化されることなく、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、最も好ましくは少なくとも6ヶ月の間、液相で保存することができる。
【0073】
リポソームの多分散性及びゼータ電位は、当業者に公知の方法によって決定することができる。多分散性を決定する最も好ましい方法は、例えば、Horiba Nanopartica SZ-100(HORIBA社)を用いて173°の固定角度(後方散乱モード)で動的光散乱(DLS)を測定し、DLS測定した強度自己相関関数のキュムラント分析から算出された多分散性指数から多分散性を導く方法である。単一粒径モードが推定される場合、単一指数フィットが自己相関関数に適用され、多分散性は推定されたガウス分布の幅を示す。典型的には、このパラメーターは無次元であり、値が0.05~0.7の範囲となるようにスケーリングされ、小さな値は単分散サイズ分布を示す(「ISO 22412:2017 - Particle Size Analysis - Dynamic Light Scattering (DLS)」n.d.)。ゼータ電位を決定する好ましい方法は、例えば、Horiba Nanopartica SZ-100 (HORIBA社)を使用する電気泳動光散乱によるものである。公知の印加電場と測定された粒子速度から、粒子移動度を決定することができる。次いで、ゼータ電位は、移動度からSmoluchowskiモデル(「ISO 13099-2:2012 - Colloidal Systems - Methods for Zeta-Potential Determination - Part 2: Optical Methods」n.d.)によって算出される。
【0074】
当業者は、免疫刺激性組成物について、濃度及び用量を所定の閾値未満に調整することが細胞毒性を回避するのに重要であることを認識している。閾値は、所望の処置群の対象をサンプルとして用いた用量漸増試験で決定する必要がある。細胞毒性は、例えば、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を使用するアッセイを介して評価することができる。MTTアッセイは、細胞の生存率に比例的に関連していると考えられている細胞の代謝活性を評価するための比色アッセイである。本発明によれば、免疫刺激性組成物中のリポソーム-核酸複合体の濃度は、非細胞毒性である。この文脈での「非細胞毒性」とは、細胞毒性が細胞毒性測定法、例えばMTTアッセイの既知の閾値又は決定された閾値未満であることを意味する。本明細書で使用される場合の「細胞毒性」とは、異常な細胞状態、例えば、成長障害(failure to thrive)、増殖遅延、不規則な顕微鏡的外観、及び/又は免疫応答性の低下を意味する。好ましい実施形態では、免疫刺激性組成物中のリポソーム-核酸複合体の濃度は、約0.1~約250ng/ml、好ましくは約0.1~約200ng/ml、より好ましくは約0.1~約150ng/mlの間である。免疫刺激性組成物の別の好ましい実施形態では、免疫刺激性組成物の濃度は、約10~約250ng/ml、約50~約250ng/ml、又は約100~約250ng/mlの間である。
【0075】
方法
本発明はまた、上記の免疫刺激性組成物を調製する方法を提供する。本方法は、
A. リポソームを提供し、リポソームを1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドと接触させて、リポソーム-核酸複合体を形成させる工程;或いは、
B. リポソーム形成前又は形成中に、脂質を1つ若しくは複数の免疫刺激性オリゴヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の免疫刺激性ポリヌクレオチドと接触させて、リポソーム-核酸複合体を形成させる工程
を含む。
【0076】
工程A.で使用されるリポソームの脂質成分、及び工程B.で使用される脂質は、上記で定義した第1の脂質及び第2の脂質を含むか、又はそれらからなる。
【0077】
工程A.及び工程B.は、リポソームが1つ若しくは複数の免疫刺激性核酸と接触する前に予め形成されるか(工程A.)、又はリポソームの形成が1つ若しくは複数の免疫刺激性核酸の存在下で起こる(工程B.)という点で互いに異なっている。工程B.を介してリポソーム-核酸複合体を調製することにより、特に高い免疫刺激性核酸の被包効率を達成することができる。
【0078】
リポソーム形成のための技術は、当技術分野で周知である。例えば、「Antisense Drug Technology」、CRC Press, 第2版 2007のIan MacLachlanによる「Liposomal Formulations for Nucleic Acid Delivery」の章は、優れた概説を提供している。本発明を実施するために、リポソーム形成が薄膜水和とその後の押出法によって起こる場合、特に良好な結果が得られた(例えば、Zhang, Hongwei. 「Thin-film hydration followed by extrusion method for liposome preparation.」 Liposomes. Humana Press, New York, NY, 2017. 17~22頁; Jahn, Andreasら 「Controlled vesicle self-assembly in microfluidic channels with hydrodynamic focusing.」 Journal of the American Chemical Society 126.9 (2004): 2674~2675頁; Deamer, David W. 「Preparation and properties of ether-injection liposomes.」 Annals of the New York Academy of Sciences 308.1 (1978): 250~258頁; Vladisavljevic, Goran T.ら 「Production of liposomes using microengineered membrane and co-flow microfluidic device.」 Colloids and surfaces A: physicochemical and engineering aspects 458 (2014): 168~177頁; Kastner, Elisabethら 「High-throughput manufacturing of size-tuned liposomes by a new microfluidics method using enhanced statistical tools for characterization.」 International journal of pharmaceutics 477.1-2 (2014): 361~368頁を参照されたい)。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、工程A.で提供されるか、又は工程B.で形成されるリポソームは、上記の本発明の組成物中のリポソームについて説明した1つ又は複数の特徴を有する。これは、特に、ラメラの種類、サイズ、被包の程度、及び荷電比に適用される。
【0080】
自然免疫系の応答を誘導することが可能なリポソーム-核酸複合体を生成するためには、工程A.において提供されたリポソームに、又は工程Bにおけるリポソーム形成前若しくは形成中に、適切な量の免疫刺激性核酸を添加する必要がある。好ましい実施形態では、工程A又は本発明の組成物及び複合体における免疫刺激性核酸のリポソームに対する比は、約22nmolのリポソームに対して0.1~5μgの免疫刺激性核酸、好ましくは約22nmolのリポソームに対して0.1~3μgの免疫刺激性核酸、より好ましくは約22nmolのリポソームに対して0.1~1.5μgの免疫刺激性核酸である。
【0081】
双性イオン性脂質の使用
本発明は更に、I型インターフェロン免疫応答を誘導するためのリポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物における双性イオン性脂質、特にDOPEの使用に関する。本発明に至る研究においては、リポソーム-核酸複合体のリポソームに双性イオン性脂質を使用することにより、細胞のI型インターフェロン免疫応答経路を効率的に活性化することができることがわかった。これは、典型的には、リポソームによって送達される核酸は、TLR依存性経路を活性化し、サイトゾルI型インターフェロン免疫応答経路を活性化しないことから、驚くべきことであった。
【0082】
核酸を伴うか、又は封入するリポソーム中に双性イオン性脂質、特にDOPEが存在することにより、それらの免疫原性が変化し、誘発された免疫応答がI型インターフェロン免疫応答経路の活性化に向けて導かれるようである。双性イオン性脂質は特別な融合特性を有しているようであり、標的細胞の膜と融合することによって、複合体化した核酸の細胞内送達を促進し得る。このような膜融合は、核酸送達プロセスの多くの異なる段階で、例えば、細胞膜、エンドソーム膜及び/又は核膜で起こり得る。エンドソーム膜との融合を可能にすることによって、双性イオン性脂質は、本発明のリポソーム-核酸複合体の核酸のエンドソームから標的細胞のサイトゾルへのエスケープを可能にするようである。I型インターフェロン免疫応答経路を活性化することにより誘発される免疫応答を変化させる際のこの効果の発生もその有用性も、又は意図する免疫刺激用途の観点におけるこの変化の利点も、期待又は予測できるものではなかった。
【0083】
本明細書に記載の使用の好ましい実施形態では、双性イオン性脂質は、上記の本発明のリポソームに含まれる第1の脂質について定義した特徴のうちの1つ又は複数を有する。
【0084】
当業者には、免疫刺激性組成物がI型インターフェロン免疫応答経路を活性化するかどうかを試験するための適切なin vitro細胞培養アッセイは公知である。特に適切な方法は、Invivogen社によって提供されるJ774-Dual(商標)レポーター細胞株を使用することである(以下の実施例を参照されたい)。J774-Dual(商標)細胞は、IRF依存性経路の制御下でLuciaルシフェラーゼ遺伝子を発現し、最終的にI型インターフェロン免疫応答経路を誘発する。活性化の際、ルシフェラーゼは転写され、細胞培養上清に分泌される。発現したルシフェラーゼの量を定量することができる。
【0085】
本発明の免疫刺激性組成物は、I型インターフェロン免疫応答を誘導することが見出されている。これは、TLR媒介性免疫応答に加えて起こり得る。いくつかの実施形態では、本発明の免疫賦性活組成物は、I型インターフェロン免疫応答を誘導することに次いで、TLR媒介性免疫応答を低下させるか、又は迂回させることさえあり得る。
【0086】
したがって、I型インターフェロン免疫応答を誘導するためのリポソーム-核酸複合体を含む免疫刺激性組成物における双性イオン性脂質の使用により、標的細胞において、同時にTLR媒介性免疫応答を誘導し得るか、又はこれらが減少するか、若しくは全く生じないことにつながり得る。
【0087】
いかなる特定の科学的理論にも拘束されるものではないが、双性イオン性脂質を使用すると、特にTLR9の活性化がエンドソームで起こるので、TLR媒介性免疫応答にも影響を及ぼすと考えられる。双性イオン性脂質は、本発明の核酸のサイトゾルへのエスケープを促進すると思われる。これは、双性イオン性脂質の使用により、TLR活性化が低下され得るか、又は迂回され得るという驚くべき知見を説明することができる。
【0088】
当業者には、免疫刺激性組成物が細胞のTLR媒介性免疫応答経路を活性化するかどうかを試験する適切なin vitro細胞培養アッセイは公知である。これはまた、Invivogen社により提供されるJ774-Dual(商標)レポーター細胞株を使用することで実施することができ、TLR媒介性免疫応答経路とIRF依存性経路を同時に評価することが可能である。TLR媒介性免疫応答経路の評価を可能にするため、J774-Dual(商標)細胞は、TLR活性化の際に誘導されるNF-κB経路の制御下で、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を発現する。SEAPは、細胞培養上清に分泌される。発現SEAPの量は、簡単に定量することができる。
【0089】
医療での使用
本明細書に記載の免疫刺激性組成物は、遺伝子治療、対象における免疫応答を刺激する方法、及び/又は対象における感染症を予防若しくは処置する方法における使用に適しており、この方法は、対象に免疫刺激性組成物を投与する工程を含む。本方法は、免疫応答を誘発するために有効量の免疫刺激性組成物を対象に投与する工程を含む。また、免疫刺激効果を延長又は増強するために、免疫刺激性組成物の複数回投与が使用され得ることも企図されている。
【0090】
遺伝子治療のために本明細書に記載の免疫刺激性組成物を使用する際、特にリポソーム-核酸複合体の核酸成分としてポリヌクレオチドを用いる際、遺伝子治療構築物として使用される核酸によって典型的に誘導される望ましくないTLR媒介性免疫応答を低減し、又は更には迂回することが可能である。
【0091】
対象の免疫系を刺激することにより、感染症及び侵入病原体を自身でより良好に対抗できるようになると考えられる。本発明の文脈において特に関連性があると思われる感染症は、細菌によって引き起こされる感染症である。本発明の組成物及び方法は、家畜及び食肉生産において必要とされる抗生物質の量を低減するのに有用であり得ると考えられる。
【0092】
本発明の免疫刺激性組成物はまた、少なくとも1つの薬剤、例えば、薬物又はワクチン等の作用を増強するために、そのような薬剤に先行して対象に投与される場合、そのような薬剤と同時投与される場合、又はそのような薬剤の投与後に投与される場合に、使用することができる。1つ又は複数の異なる抗原と同時投与する場合、本発明の免疫刺激性組成物は、ワクチン接種におけるアジュバントとして使用することができる。或いは、1つ又は複数の異なる薬物と同時投与する場合、本発明の免疫刺激性組成物はまた、医薬組成物である。この場合、薬物分子はまた、リポソーム-核酸複合体のリポソームと複合体化され、すなわち、リポソームに付着及び/又は被包される。これは、薬物の排泄半減期が延長され、それと同時に、生物学的関門を通過する薬物の送達が強化されるという有利性を有する。
【0093】
更に、リポソーム-核酸複合体は、特に薬物と同時与する場合、例えば、ポリエチレングリコールによるポリマーコーティングによって、その表面を更に修飾し、特に全身送達の際に複合体の循環半減期を増加させることができる。更に、本発明のリポソーム-核酸複合体の細胞取り込みの特異性は、標的化目的で、例えば、抗体又はペプチドを複合体の表面に付着させることによって、更に改善することができる。
【0094】
本明細書で使用される場合の対象は、特に、哺乳動物種、水産養殖種、及び鳥類種からなる群より選択される対象を意味し得る。対象は、特に非ヒト動物であってよく、ウシ、家禽、ブタ、並びにコンパニオンアニマル、例えば、イヌ及びネコからなる群から選択することができる。
【0095】
本明細書に記載のいずれかの免疫刺激性組成物の有効量を対象に投与することができる。有効量は、レシピエント対象において免疫応答を誘発するのに十分な量である。このような有効量は、レシピエント対象において免疫応答を引き起こす任意の量である。免疫応答を測定する方法は、当技術分野おいて周知である。また、当業者には、有効量が年齢体重、感染の段階、並びに当技術分野において公知の他の要因によって決まることは理解されよう。適切な有効量は、対象当たり約0.01μg~1000μgの範囲であり得る。
【0096】
適切な有効量は、対象当たり約0.01μg~1,000μgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.01μg~約10μg、約0.01μg~約5μg、約0.05μg~約5μg、約0.1μg~約5μg、約0.05μg~約10μg、約5μg~約15μg、約10μg~約15μg、約10μg~約20μg、約20μg~約30μg、約30μg~約40μg、約40μg~約50μg、約50μg~約70μg、約70μg~約90μg、約50μg~約100μg、約100μg~約150μg、約150μg~約200μg、約200μg~約250μg、約250μg~約300μg、約300μg~約350μg、約350μg~約400μg、約400μg~約450μg、約450μg~約500μg、約500μg~約550μg、約550μg~約600μg、約600μg~約650μg、約650μg~約700μg、約700μg~約750μg、約750μg~約800μg、約800μg~約850μg、約850μg~約900μg、約900μg~約950μg、約950μg~約1000μgの範囲であり得る。好ましくは、いくつかの実施形態では、有効量は、約0.01μg~約10μgの範囲である。更に、好ましくは、他の実施形態では、有効量は、約50μg~約100μgの範囲である。また、好ましくは、他の実施形態では、有効量は、約40μg~約70μgの範囲である。
【0097】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、本明細書に記載のいずれかの免疫刺激性組成物の有効量を鳥類種のメンバーに投与することによって、鳥類種のメンバーに誘発され得る。有効量は、鳥類のメンバーにおいて免疫応答を誘発するのに十分な量である。例えば、鳥類種に対する免疫刺激性組成物の有効量は、約0.01μg~約10μg、約0.05μg~約5μg、約0.1μg~約1.5μg、又は約1.0μg~約10μgであり得る。例として、鳥類種である対象に対する適切な有効量は、約0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1.0μg、1.2μg、1.4μg、1.6μg、1.8μg、2.0μg、2.5μg、3.0μg、3.5μg、4.0μg、4.5μg、5.0μg、5.5μg、6.0μg、6.5μg、7.0μg、7.5μg、8.0μg、8.5μg、9.0μg、9.5μg、10.0μg、9.5μg、10.0μg、10.5μg、11.0μg、12μg、13μg、14μg、又は15μgであり得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかの免疫刺激性組成物の有効量をウシ種のメンバーに投与することによって、ウシ種のメンバーにおいて免疫応答を誘発させることができる。有効量は、ウシ種のメンバーにおいて免疫応答を誘発するのに十分な量である。例えば、ウシ種に対する免疫刺激性組成物の有効量は、動物一匹当たり約1μg~約1000μg、動物一匹当たり約5μg~約500μg、動物一匹当たり約10μg~約100μg、動物一匹当たり約10μg~約50μg、又は動物一匹当たり約40μg~約60μgの範囲であり得る。例として、ウシ種である対象に対する適切な有効量は、約30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg又は500μg以下、又は1000μg以下であり得る。
【0099】
本発明の方法は、対象が免疫応答の誘発を受けやすい疾患から保護されるように、対象において免疫応答を誘発する。本明細書で使用される場合、「疾患から保護される」という語句は、疾患の症状を軽減すること、疾患の発生を減少させること、疾患の臨床的若しくは病理学的重症度を軽減すること、又は疾患の原因となる病原体のシェディングを減少させることを意味する。対象を保護することは、対象に投与した場合、疾患の発生を予防し、治癒し、及び/又は疾患の症状、臨床兆候、病理、若しくは原因を緩和若しくは軽減する本発明の組成物の能力を意味し得る。例えば、限定するものではないが、ウシ呼吸器疾患(BRD)の臨床症状には、肺病変、体温上昇、抑うつ(例えば、食欲不振、外部刺激に対する反応の低下、垂れ耳)、鼻汁、及び呼吸特性(例えば、呼吸数、呼吸努力)が含まれる。本明細書に記載の免疫刺激性組成物は、BRDに曝露された疑いのあるウシに投与し、BRDの上記の臨床症状の重症度を予防又は軽減することができる。さらなる例として、限定するものではないが、鳥類対象におけるマレック病(Marek's disease)の臨床症状には、孵化率及び鳥類の生存率の低下が含まれる。本明細書に記載の免疫刺激性組成物は、マレック病ウイルスに曝露された疑いのある鳥類対象に投与し、マレック病の上記の臨床症状の重症度を予防又は軽減することができる。
【0100】
このように、本明細書で使用される場合の疾患から対象を保護することは、疾患の発生を予防すること(予防的処置)及び疾患に罹患した対象を処置すること(治療的処置)の両方を包含する。特に、対象を疾患から保護することは、有益な又は保護的な免疫応答を誘導することにより対象における免疫応答を誘発することによって達成されるが、これは、場合によっては、過剰活性の又は有害な免疫応答を更に抑制、低減、阻害、又は遮断し得る。「疾患」という用語は、対象の正常な健康状態からの任意の逸脱を意味し、疾患の症状が存在している場合の状態、並びに逸脱(例えば、感染、遺伝子変異、遺伝子異常等)が生じているが、まだ症状が現れていない状態が含まれる。
【0101】
本発明の方法は、疾患の予防、疾患に対するエフェクター細胞免疫の刺激、疾患の除去、疾患の緩和、及び原疾患の発生に起因する二次疾患の予防に使用することができる。
【0102】
本発明の免疫刺激性組成物を投与するために、種々の投与経路を利用することができる。選択される特定の様式は、もちろん、選択された特定の対象群、対象の年齢及び一般的な健康状態、処置される特定の状態、並びに治療効果及び/又は予防効果に必要な投与量に依存する。本発明の方法は、臨床的に許容できない副作用を引き起こすことなく、有効なレベルの免疫応答を生じる任意の投与様式を使用して実施され得る。
【0103】
免疫刺激性組成物は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、スプレー、羽嚢法(feather follicle method)による卵内、経口、眼内、気管内、鼻腔内、又は当技術分野で公知の他の方法により投与することができる。一態様では、免疫刺激剤は、皮下投与される。別の態様では、免疫刺激剤は、筋肉内投与され得る。別の態様では、免疫刺激剤は、スプレーとして投与される。別の態様では、免疫刺激剤は、経口投与され得る。
【0104】
様々な変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の組成物、生成物、及び方法においてなされ得るので、上記の説明及び以下に示す実施例に含まれるすべての事項は、例示として解釈され、限定する意味ではないことを意図している。
【0105】
配列表
本出願は、電子的に提出された配列表を含んでおり、その全体が参照により本出願に組み込まれる。2020年4月7日に作成された前記配列表ファイルは、BHC208001.txtという名称であり、1017バイトのサイズである。
【実施例
【0106】
(実施例1)
リポソーム及び核酸複合体の製剤化
リポソームを、薄膜水和法とそれに続く2回のその後の押出法に従って製剤化した。膜を二成分脂質混合物から得た。カチオン性脂質及び別の脂質を、クロロホルムに溶解した10mg/mLストック溶液から丸底フラスコに容量測定的に分注した。10mLのクロロホルムを添加し、37℃に調整した水浴中で、30分間350rpmで攪拌した(IKA RCT Standard, IKA(登録商標)-Werke GmbH & Co. KG社)。その後、50℃に加熱した水浴中で、ロータリーエバポレーターを使用して80mbarの最終圧力まで有機溶媒を除去した(Laborata 4000 efficient、Heidolph Instruments社)。得られた脂質膜を更に真空下にて40℃で3時間乾燥させた(Vacuum drying cabinet VDLシリーズ、Binder GmbH社)。超純水を添加した後、出現した懸濁液を、連続攪拌下で温水浴中に少なくとも3時間置き、膨潤させ、小胞を出がさせた。核酸の存在下での小胞の出芽、すなわち、リポソームの形成を行うことも可能である。最初の押出サイクルでは、Mini Extruder(Avanti Polar Lipids, Inc.社、米国)を、ポリカーボネート膜(孔径100nm)を用いて組み立て、リポソーム懸濁液をフィルターに13回通過させた。2回目の押出サイクルは、50nm膜で実施した。その後、使用した脂質(17.4μmol/mL 総脂質)当たり最終濃度8.7μmol/mLで得られたリポソームをマイクロ反応チューブ内で4℃にて保存した。
【0107】
複合製剤については、生理学的マンニトール溶液(5.2質量% pH7.2)中で、22nmolリポソームを1μgの核酸(カチオン性脂質/核酸の電荷比 3.5/1)と複合体化した。等量の2つの成分を一緒にピペッティングし、Eppendorf Thermomixer(登録商標) C (Eppendorf社、ドイツ)を使用し、300rpm、20℃で10分間、穏やかに混合した。
【0108】
固体から液晶状態へのDDA及びDOBAQの転移温度は高いので、65℃に調整した水浴中で脂質膜を再水和させるように、この方法を若干変更した。更に、DOBAQ-コレステロールリポソームの製剤化は、等モル混合では実現不可能であった。L-α-ホスファチジルコリンの添加により、転移温度は下がり、カチオン性リポソームが得られた(DOBAQ/L-α-ホスファチジルコリン/コレステロール(1:1:2))。
【0109】
上記の方法に基づき、13種のカチオン性リポソームとL-α-ホスファチジルコリン/コレステロール参照リポソームを製剤化した。これらのリポソームの脂質組成をTable 1(表1)に示す。組成物1~12は、記載した第1の脂質及び第2の脂質の1:1モル混合物を用いて調製した。組成物13は、記載した3つの脂質の1:1:2モル混合物を用いて調製した。
【0110】
【表1】
【0111】
リポソームとの複合体化に使用した核酸をTable 2(表2)に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
(実施例2)
リポソーム-核酸複合体の分析
リポソーム-核酸複合体は、Horiba Nanopartica SZ-100(HORIBA社)を使用して、サイズ(Z平均)、多分散性(PI)、及びゼータ電位の項目について分析した。サイズ及びPIに関しては、使い捨てのポリメチルメタクリレート(PMMA)セミマイクロキュベット内で、25℃にて173°の固定角度(後方散乱モード)で動的光散乱(DLS)によって試料を試験した。試料を1.08μmol/mLに希釈し、5回測定した。誤差は標準偏差(S.D.)として算出した。
【0114】
DLSデータをキュムラントの手法を使用して分析する場合、Z平均を算出することができる。この手法は、数値的に安定した最小二乗フィッティングに依存しているので、実験ノイズの影響を比較的受けにくい。DLSによって測定した並進拡散係数は、ストークス・アインシュタイン関係式に基づきZ平均粒径に換算することができる。Z平均サイズは、散乱強度調和平均粒径(ISO 22412:2017)である。
【0115】
【数1】
【0116】
Dz=流体力学的直径(粒径)
Dt, avg=並進拡散係数(DLSによる)
kB=ボルツマン定数
T=熱力学的温度
η=動的粘度
【0117】
多分散性は、DLSで測定した強度自己相関関数のキュムラント分析から算出される多分散性指数から導き出される。単一粒径モードが推定される場合、単一指数フィットが自己相関関数に適用され、多分散性は推定されたガウス分布の幅を示す。典型的には、このパラメーターは無次元であり、値が0.05~0.7の範囲となるようにスケーリングされ、小さい値は単分散粒径分布を示す(「ISO 22412:2017 - Particle Size Analysis -- Dynamic Light Scattering (DLS)」n.d.)。
【0118】
ゼータ電位は、炭素電極セルを使用した電気泳動光散乱法により測定した。この目的のため、試料をマンニトール溶液(5.2(w/v)%、pH7.2)で1:10に希釈した。誤差は10回の独立した測定値の標準偏差S.D.として算出し、平均電位はミリボルト[mV]で示した。
【0119】
剪断面における粒子の電荷は、ゼータ電位と呼ばれる。電気泳動光散乱法は、荷電粒子が印加電場内を移動するという事実を利用している。散乱光の周波数は、ドップラーシフトによる粒子速度の関数である。次いで、測定した周波数シフトの大きさを使用し、粒子速度を決定する。公知の印加電界と測定した粒子速度から、粒子移動度が容易に決定される。次いで、ゼータ電位は、Smoluchowskiモデルによって移動度から算出される(「ISO 13099-2:2012 - Colloidal Systems -- Methods for Zeta-Potential Determination -- Part 2: Optical Methods」n.d.)。
【0120】
【数2】
【0121】
μ=電気泳動移動度
Δω=ドップラー周波数シフト
λ0=レーザー波長
n=媒体屈折率
E=電界変化
Θ=入射光と散乱光の角度
ζ=ゼータ電位
ε=誘電率
η0=媒体粘度
f(κa)=粒子半径の電気二重層に対する比
【0122】
すべての計算は、Windowsソフトウェア用のSZ-100によって自動的に行われた。
【0123】
(実施例3)
リポソームの核酸封入能力
リポソームの核酸封入能力は、Nanosep(登録商標)遠心フィルター装置(Pall社)を使用して測定した。リポソームを0.11μmol/mLに希釈し、核酸を1xTEバッファー(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH7.5)でそれぞれ5μg/mL又は50μg/mLに希釈した。複合体は、実施例1と同様に製剤化した。
【0124】
リポソームを5μg/mLの核酸と複合体化した。Nanosep(登録商標)フィルターをTEバッファーで予備洗浄した後、14,000gで5分間遠心分離した(Z233 M-2、Hermle AG社)。400μLの複合体を別々のNanosep(登録商標)デバイスにアプライし、5,000gで5分間遠心分離した。100μLのTEバッファーを添加した後、チューブを14,000gで更に20分間遠心分離した。Quant-iT(商標) OliGreen(商標)ssDNAアッセイキット(Thermo Fisher Scientific社)によって蛍光分析するために、フロースルーをブラック96ウェルマイクロプレート(Perkin Elmer社)に移した。すべての実験は、3連で実施した。
【0125】
ODN 2395及びODN M362については、封入能力をNanosep(登録商標)300K遠心分離機を使用して決定した。
【0126】
遠心分離フィルター膜への高い親和性がODN M362の場合に確認されたため、複合体適用前に濾過膜を不動態化した。この目的のために、膜を5%のTriton X 100溶液で1時間飽和させ、その後、TEバッファーを用いて14,000g、5分間で2回洗浄した。このような前処理工程の後に、フィルターユニットを前述したような上記の複合体に使用した。
【0127】
各核酸タイプの検量線は、それぞれのリポプレックス製剤と同様の方法で核酸プロセスを使用して、すなわち、Quant-iT(商標) OliGreen(商標)ssDNAアッセイキット(Thermo Fisher Scientific社)を使用することにより、蛍光分析を実施することによって作成した。
【0128】
Quant-iT(商標)OliGreen(商標)ssDNAアッセイキット(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、製造業者のマニュアルに従い、フロースルー中のODN濃度を蛍光的に定量した。簡単に説明すると、1ウェル当たり100μLのQuant-iT(商標)OliGreen(登録商標)試薬を添加し、暗所で5分間プレートを振盪した後、蛍光(λex 485nm、λem 535nm)を測定した(Victor 3(商標)V、Perkin Elmer社)。
【0129】
核酸回収率及び封入能力は、得られた各核酸タイプの対応する検量線の一次関数を適用して算出した。希釈係数は、アッセイの直線範囲に調整した。
【0130】
(実施例4)
in vitro細胞培養
J774-DUAL(商標)細胞(InvivoGen社,マウスNF-κB & IRF Reporterマクロファージ様細胞)を、高D-グルコース含量、1mMのピルビン酸ナトリウム及び4mMの安定グルタミンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)で増殖させた。DMEMには、10% FBS、50μg/mLストレプトマイシン、50U/mLペニシリンG、及び100μg/mLのNormocin(商標)を補充した。隔週で、この培養培地に200μg/mLのZeocin(商標)及び20μg/mLのBlasticidinを追加補充した。
【0131】
一連の実験において、1mMのピルビン酸ナトリウム、4mMのL-グルタミン、50μg/mLのストレプトマイシン、50U/mLのペニシリンG、100μg/mLのNormocin(商標)、200μg/mLのZeocin(商標)及び20μg/mLのBlasticidinを含む、フェノールレッド非含有の無血清DMEMを調製した。J774-DUAL(商標)細胞株は、週に1回、分割比1:4で分割された。
【0132】
J774-DUAL(商標)細胞は、Heracell(商標)150インキュベーター(Thermo Scientific社)において、37℃、5%CO2、95%加湿空気で培養した。播種については、Neubauerブライトライン血球計算器(Marienfeld社)を使用し、体積0.1mm3で細胞をカウントした。細胞株は、マイコプラズマ混入がないことを定期的に確認した。
【0133】
(実施例5)
J774 Dualレポーター細胞における免疫学的読み取り
J774-Dual(商標)は、Invivogen社により提供されるレポーター細胞株であり、NF-κB及び/又はIRF経路の活性化をもたらすシグナル伝達を同時に調査することができる。
【0134】
NF-κB依存性経路
J774-Dual(商標)細胞は、NF-κB経路の制御下で、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を発現する。SEAPは、細胞培養上清に分泌される。したがって、NF-κB活性化の半定量的分析が可能である(Invivogen社製品情報(「J774-Dual Cells | NF-ΚB & IRF/IFN Reporter Macrophage」n.d.、774))。p-ニトロフェニルリン酸(pNPP)は、アルカリホスファターゼ活性を迅速に測定するために広く利用されている発色性化学物質である。アルカリホスファターゼの存在下で、物質はリン酸塩と黄色のパラニトロフェノールに加水分解され、これを分光光度計で測定することができる(Bessey, Otto A., O. H. Lowky,及びMary Jane Brock. 「A method for the rapid determination of alkaline phosphatase with five cubic millimeters of serum.」Journal of Biological Chemistry 164 (1946): 321~329頁)。
【0135】
細胞を96ウェルマイクロプレートに1x105細胞/ウェルの密度で播種し、24時間接着させた。培養培地を除去し、無血清培地中、37℃、5% CO2及び95%加湿空気(Heracell(商標) 150、Thermo Scientific社)で、裸のCpG核酸、リポソーム又はリポソーム-核酸複合体と細胞をインキュベートした。LC20>40μMのリポソームが一連の実験に含まれた。48時間のインキュベーション後、各試料の上清100μLを96ウェルマイクロプレート(SpectraPlate(商標)-96 TC、Perkin Elmer社)に移し、p-ニトロフェニルホスフェートアッセイを使用して分光光度計で分析した。
【0136】
この目的のために、50mMのNaHCO3バッファー(pH9.6)中の20mM pNPPからなる100μLのpNPP作業試薬を、試料、対照又はキャリブレーション標準を含むそれぞれのウェルに添加した。37℃で1時間混合物をインキュベートした後、405nmの吸光度フィルターを備えたVictor3(商標) V マルチモードプレートリーダー(Perkin Elmer社)を使用して吸光度を測定した。サルモネラ・アンテリカ(Salmonella anterica)血清型ミネソタ由来のリポ多糖をアッセイの線形範囲を決定するためのキャリブレーション標準として、また陽性対照として適用した。すべての実験は3連で行った。
【0137】
生データは10μg/mLのタンパク質含有量に正規化され、未処理の対照の平均値が差し引かれた。
【0138】
インターフェロン制御因子経路
J774-Dual(商標)細胞はまた、IRF経路の制御下で、ルシアルシフェラーゼ遺伝子を発現する。後者の活性化の際、ルシフェラーゼが転写され、細胞培養上清に分泌される。QUANTI-Luc(商標)試薬を使用することにより、したがってIRF活性化の半定量的分析が可能となる(Invivogen社製品情報(「J774-Dual Cells | NF-ΚB & IRF/IFN Reporter Macrophage」n.d., 774))。
【0139】
96ウェルマイクロプレートに1x105細胞/ウェルの密度で細胞を播種し、24時間接着させた。培養培地を除去し、無血清培地中、37℃、5%CO2及び95%加湿空気(Heracell(商標) 150、Thermo Scientific社)で、裸のCpG核酸、リポソーム又は複合体と細胞をインキュベートした。LC20>40μMのリポソームが一連の実験に含まれた。48時間のインキュベーション後、各試料の上清50μLを96ウェルマイクロプレート(0ptiPlate(商標)-96 HS、Perkin Elmer社)に移し、QUANTI-Luc(商標)発光アッセイを使用し、製造業者の説明書に従い分析した。
【0140】
QUANTI-Luc(商標)試薬を25mLのエンドトキシン非含有水に溶解し、試料、対照又はキャリブレーション標準を含む各ウェルに50μLずつ添加した。発光は、EnSpire(登録商標)マルチモードプレートリーダー(Perkin Elmer社)を使用して直ちに測定し、相対光単位(RLU)として測定した。組換えLuciaルシフェラーゼタンパク質をキャリブレーション標準として使用してアッセイの直線範囲を決定し、組換えIFNαを陽性対照として利用した。すべての実験は3連で行った。生データは10μg/mLのタンパク質含有量に正規化され、未処理の対照の平均値が差し引かれた。
【0141】
本発明を、以下、本発明のある特定の実施形態を示す図を参照しながら説明する。しかし、本発明は、特許請求の範囲に定義されているとおりであり、一般的には本明細書に記載されている。以下の図に例示の目的で示した実施形態に限定されるべきではない。
【0142】
以下の図の一部には、有意水準が含まれている(P<0.05(*)、P<0.01(**)、P<0.001(***))。これらは、Graphpad InStat 3を用いた統計分析により決定された。算出したデータとそれぞれの対照(及び1つの群と他のすべての群)の比較は、一元配置分散分析(ANOVA)とその後のDunnett多重比較検定を使用して行った。群の間の比較には、Welch補正した独立t-検定を実施した。
【図面の簡単な説明】
【0143】
図1図1は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したSEAPレベルの増加とその後のタンパク質含有量に対するデータの正規化に基づいた、クラスC免疫刺激性オリゴヌクレオチドODN 2395(配列番号1)及びODN M362(配列番号2)によるNF-κB経路の活性化を示す図である。J774-DUAL(商標)細胞を、リポソーム脂質が濃度40μMの裸のリポソーム(すなわち、複合体形成していないリポソーム)と、濃度1.85μg/mLの裸の免疫刺激性オリゴヌクレオチド(すなわち、遊離の又は複合体化していない免疫刺激性オリゴヌクレオチド)で処理した。オリゴヌクレオチド-リポソーム複合体によるJ774-DUAL(商標)細胞の処理については、使用した複合体は、対応する濃度のリポソーム脂質と免疫刺激性オリゴヌクレオチド(すなわち、40μMのリポソーム脂質及び1.85μg/mLの免疫刺激性オリゴヌクレオチド)を含んでいた。結果は、3つの独立した実験の平均±SDとして示す。複合体とそれぞれの非複合体化ODNとの統計的比較は、特段の明記のない限り、有意ではなかった。角括弧でくくられた棒は、同じ有意水準を有する。ODN 2395(配列番号1)及びODN M362(配列番号2)は、NF-κB免疫応答経路を活性化するために開発されたが(例えば、Hartmann, Gunther及びArthur M. Krieg. 「Mechanism and function of a newly identified CpG DNA motif in human primary B cells.」 The Journal of Immunology 164.2 (2000): 944~953頁; Marshall, Jason D.ら 「Identification of a novel CpG DNA class and motif that optimally stimulate B cell and plasmacytoid dendritic cell functions.」 Journal of leukocyte biology 73.6 (2003): 781~792頁を参照されたい)、強力なNF-κB経路の活性化は観察されなかった。3倍の刺激では、非複合体化CpG ODNを適用した場合と比較して、せいぜい免疫応答がわずかに増加したと考えることができる。
図2図2は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したルシフェラーゼレベルの増加と、その後のタンパク質含有量に対するデータの正規化に基づいた、クラスC免疫刺激性オリゴヌクレオチドODN 2395(配列番号1)及びODN M362(配列番号2)によるIRF経路の活性化を示す図である。J774-DUAL(商標)細胞を、リポソーム脂質が濃度40μMの裸のリポソームと、濃度1.85μg/mLの裸の免疫刺激性オリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチド-リポソーム複合体によるJ774-DUAL(商標)細胞の処理については、使用した複合体は、対応する濃度のリポソーム脂質と免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでいた。結果は、3つの独立した実験の平均±SDとして示す。複合体とそれぞれの非複合体化ODNとの統計的比較は、特段の明記のない限り、有意ではなかった。角括弧でくくられた棒は、同じ有意水準を有する。ODN 2395(配列番号1)及びODN M362(配列番号2)を、脂質DOTAP+DOPE、DOTMA+DOPE、又はDDA+DOPEを含むリポソームと複合体化することにより、強力なIRF経路活性化が観察された。
図3図3は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したSEAPレベルの増加と、その後のタンパク質含有量に対するデータの正規化に基づいた、クラスB免疫刺激性オリゴヌクレオチドODN 1668(配列番号3)及びODN 2006(配列番号4)によるNF-κB経路の活性化を示す図である。J774-DUAL(商標)細胞を、リポソーム脂質が濃度40μMの裸のリポソームと、濃度1.85μg/mLの裸の免疫刺激性オリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチド-リポソーム複合体によるJ774-DUAL(商標)細胞の処理については、使用した複合体は、対応する濃度のリポソーム脂質と免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでいた。結果は、3つの独立した実験の平均±SDとして示す。複合体と未処理のJ774-DUAL(商標)との統計的比較は、特段の明記のない限り、有意ではなかった。非複合体化ODN 1668(配列番号3)及び複合体化ODN 1668は、未処理のJ774-DUAL(商標)と比較して、NF-κB経路活性化が増加したことを示した。脂質DOTMA+DOPEを含むリポソームと形成された複合体を除き、ODN1668(配列番号3)の免疫刺激効力は、非複合体化ODN1668(配列番号3)と比較して有意に改善されなかった。ODN 2006(配列番号4)複合体については、NF-κB経路の活性化は、ほとんどの場合、未処理の対照と有意差はなかった。
図4図4は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したルシフェラーゼレベルの増加と、その後のタンパク質含有量に対するデータの正規化に基づいた、クラスB免疫刺激性オリゴヌクレオチドODN 1668(配列番号3)及びODN 2006(配列番号4)によるIRF経路の活性化を示す図である。J774-DUAL(商標)細胞を、リポソーム脂質が濃度40μMの裸のリポソームと、濃度1.85μg/mLの裸の免疫刺激性オリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチド-リポソーム複合体によるJ774-DUAL(商標)細胞の処理については、使用した複合体は、対応する濃度のリポソーム脂質と免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでいた。結果は、3つの独立した実験の平均±SDとして示す。複合体と未処理のJ774-DUAL(商標)との統計的比較は、特段の明記のない限り、有意ではなかった。角括弧でくくられた棒は、同じ有意水準を有する。ODN 1668(配列番号3)及びODN 2006(配列番号4)を、脂質DOTAP+DOPE、DOTMA+DOPE又はDDA+DOPEを含むリポソームと複合体化することにより、強力なIRF経路活性化が観察された。
図5図5は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したSEAPレベルの増加と、その後のタンパク質含有量に対するデータの正規化に基づいた、プラスミドpEX K-248、pGCMB75.6及びpcDNA3.1(+)によるNF-κB経路の活性化を示す図である。J774-DUAL(商標)細胞を、リポソーム脂質が濃度40μMの裸のリポソームと、濃度1.85μg/mLの裸のプラスミドで処理した。プラスミド-リポソーム複合体によるJ774-DUAL(商標)細胞の処理については、使用した複合体は、対応する濃度のリポソーム脂質とプラスミド(すなわち、40μMリポソーム脂質及び1.85μg/mLのプラスミド)を含んでいた。結果は、3つの独立した実験の平均±SDとして示す。複合体とPC Chol複合体との統計的比較は、特段の明記のない限り、有意ではなかった。強力なNF-κB経路の活性化は、複合体では観察されなかった(未処理のJ774-DUAL(商標)と比較して、最大で約4倍の増幅率が観察された)。
図6図6は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したルシフェラーゼ量の増加と、その後のタンパク質含有量に対するデータの正規化に基づいた、プラスミドpEX K-248、pGCMB75.6及びpcDNA3.1(+)によるIRF経路の活性化を示した図である。J774-DUAL(商標)細胞を、リポソーム脂質が濃度40μMの裸のリポソームと、濃度1.85μg/mLの裸のプラスミドで処理した。プラスミド-リポソーム複合体によるJ774-DUAL(商標)細胞の処理については、使用した複合体は、対応する濃度のリポソーム脂質とプラスミドを含んでいた。結果は、3つの独立した実験の平均±SDとして示す。複合体とPC Chol複合体との統計的比較は、特段の明記のない限り、有意(P<0.01(**))であった。DOBAQ+PC+Chol又はPC+Cholを含有するリポソームを含む複合体を除き、強力なIRF経路の活性化が核酸-リポソーム複合体で観察された。
図7図7は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したSEAPレベルの増加と、その後のデータのタンパク質含有量に対する正規化に基づいた、非複合体化プラスミドpEX K-248、pGCMB75.6及びpcDNA3.1(+)によるNF-κB経路の活性化、並びに非複合体化ODN 2395(配列番号1)、ODN M362(配列番号2)、ODN 1668(配列番号3)及びODN 2006(配列番号4)によるNF-κB経路の活性化を示す図である。
図8図8は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したSEAPレベルの増加と、その後のデータのタンパク質含有量に対する正規化に基づいた、非複合体化ODN 2395(配列番号1)、ODN M362(配列番号2)、ODN 1668(配列番号3)及びODN 2006(配列番号4)によるNF-κB経路の活性化を示す図である。
図9図9は、J774-DUAL(商標)の上清中で測定したルシフェラーゼレベルの増加と、その後のデータのタンパク質含有量に対する正規化に基づいた、非複合体化プラスミドpEX K-248、pGCMB75.6及びpcDNA3.1(+)、並びに非複合体化ODN 2395(配列番号1)、ODN M362(配列番号2)、ODN 1668(配列番号3)及びODN2006(配列番号4)によるIRF経路の活性化を示した図である。
図10図10は、774-DUAL(商標)の上清中で測定したルシフェラーゼレベルの増加と、その後のデータのタンパク質含有量に対する正規化に基づいた、非複合体化ODN 2395(配列番号1)、ODN M362(配列番号2)、ODN 1668(配列番号3)及びODN 2006(配列番号4)によるIRF経路の活性化を示した図である。
図11図11は、実施例2に記載したように決定された、オリゴヌクレオチドODN 2395(配列番号1)又はODN M362(配列番号2)として含む6ヶ月前のリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体と比較した、新しく調製したリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体のZ平均を示す図である。
図12図12は、実施例2に記載したように決定された、オリゴヌクレオチドODN 2395(配列番号1)又はODN M362(配列番号2)として含む6ヶ月前のリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体と比較した、新しく調製したリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体のゼータ電位を示す図である。
図13図13は、実施例2に記載したように決定された、オリゴヌクレオチドODN 2395(配列番号1)又はODN M362(配列番号2)として含む6ヶ月前のリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体と比較した、新しく調製したリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体の多分散性を示す図である。
図14図14は、実施例3に記載したように決定された、異なるリポソーム製剤の封入能力を示す図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023550667000001.app
【国際調査報告】