(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】フローセル信号の変更
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20231128BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20231128BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20231128BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231128BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231128BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20231128BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6869 Z
B82Y20/00
B82Y40/00
G01N21/64 F
G01N21/64 G
G01N21/64 C
G01N21/05
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580758
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2021081502
(87)【国際公開番号】W WO2022101401
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アルティオリ,ジャンルカ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フォン ハッテン,ゼイビア
【テーマコード(参考)】
2G043
2G057
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA05
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA03
2G043KA02
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2G043LA03
2G057AA04
2G057AB01
2G057AB04
2G057AC01
2G057BA05
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2G057CB01
4B029AA07
4B029AA23
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4B063QR62
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4B063QX02
4B063QX04
(57)【要約】
例示的な方法では、ヒドロゲルを基材の表面に適用し、適用ヒドロゲルにプライマーをグラフトする。プライマーをグラフトする前又は後に、プラズモンナノ構造は、適用ヒドロゲルへと導入された。この基材はフローセルの一方の表面を構成することができる。フローセルが配列決定操作で使用される場合、プラズモンナノ構造は、生成される蛍光信号を増強することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
基材の表面にヒドロゲルを適用することと、
プライマーを前記適用ヒドロゲルにグラフトすることと、
前記プライマーをグラフトする前又は後に、前記適用ヒドロゲルにプラズモンナノ構造を導入することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記プラズモンナノ構造が、前記ヒドロゲルの遊離アジド基に共有結合するアルキンで官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズモンナノ構造が、前記ヒドロゲルのアルキンに共有結合するアジドで官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズモンナノ構造が、前記ヒドロゲルに付着している前記結合対の第2のメンバーと相互作用する結合対の第1のメンバーで官能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のメンバー及び前記第2のメンバーが、NiNTAリガンド及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ(spytag)及びスパイキャッチャー(spycatcher)、又はマレイミド及びシステイン、又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びアミン、又はアルデヒド及びヒドラジン、又はアミン及び活性化カルボキシレート、又はアミン及びN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又はチオール及びアルキル化試薬、又はホスホラミダイト及びチオエーテルを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材の前記表面が、間隙領域によって分離されたくぼみを含み、前記方法が、前記プライマーをグラフトする前及び前記プラズモンナノ構造を導入する前に、前記ヒドロゲルを前記間隙領域から除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材の前記表面が、間隙領域によって取り囲まれたレーンを含み、前記方法が、前記プライマーをグラフトする前及び前記プラズモンナノ構造を導入する前に、前記ヒドロゲルを前記間隙領域から除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズモンナノ構造が、各々、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フローセルであって、
前記ベース支持体と、
前記ベース支持体上のパターン化材料であって、前記パターン化材料は、
樹脂マトリックス材料、及び
前記樹脂マトリックス材料の表面全体にわたって分散されている又は配置されている、消光ナノ構造
を含む、パターン化材料と、
活性領域のための領域を画定する前記パターン化材料であって、前記領域が間隙領域によって取り囲まれている、パターン化材料と、
前記領域内のヒドロゲルと、
前記ヒドロゲルに付着されたプライマーと、
を含む、フローセル。
【請求項11】
前記消光ナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載のフローセル。
【請求項12】
前記消光ナノ構造が、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有する、請求項10に記載のフローセル。
【請求項13】
前記領域が、レーンを含み、前記間隙領域が、前記レーンを取り囲む、請求項10に記載のフローセル。
【請求項14】
前記領域が、くぼみであり、
前記パターン化材料が、複数の前記くぼみを画定し、
前記複数のくぼみの各々が、前記間隙領域によって分離されている、
請求項10に記載のフローセル。
【請求項15】
フローセルにおける配列決定中にシグナル・ノイズ比を増加させるための方法であって、
樹脂マトリックス材料をナノインプリントして、間隙領域によって分離されたくぼみを含むパターン化材料を形成することと、
前記パターン化材料の表面上に消光ナノ構造のフィルムを堆積させることであって、前記フィルムが約1nm~約20nmの範囲の厚さを有する、堆積させることと、
ヒドロゲルを前記くぼみへと導入することと、
プライマーを前記ヒドロゲルにグラフトすることと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記消光ナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フローセルにおける配列決定中にシグナル・ノイズ比を増加させるための方法であって、
消光ナノ構造を樹脂マトリックス材料へと組み込むことと、
間隙領域によって取り囲まれた活性領域のための領域を画定するように前記樹脂マトリックス材料をパターン化することと、
ヒドロゲルを前記領域へと導入することと、
プライマーを前記ヒドロゲルにグラフトすることと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記消光ナノ構造が、前記消光ナノ構造と前記樹脂マトリックス材料との混合物の総重量の約0.1重量%~約10重量%の範囲にわたる量で前記樹脂マトリックス材料へと組み込まれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記消光ナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記領域が、レーンを含み、前記間隙領域が、前記レーンを取り囲む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記領域が、くぼみであり、
前記パターン化材料は、複数の前記くぼみを画定し、
前記複数のくぼみの各々が、前記間隙領域によって分離されている、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年11月16日に出願された米国仮特許出願第63/114,305号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的又は化学的研究における様々なプロトコルは、局所支持体表面上又は所定の反応チャンバ内で多数の制御された反応を実施することを含む。次いで、指定された反応を観察又は検出することができ、その後の分析は、反応に関与する化学物質の特性を識別又は明らかにするのに役立ち得る。いくつかの例では、制御された反応は、電荷、導電率、又は他の何らかの電気的特性を変化させ、したがって電子システムを検出に使用することができる。他の例では、制御された反応は蛍光を産生させ、したがって光学システムを検出に使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
プラズモンナノ構造体はフローセル基材に組み込まれる。いくつかの例では、プラズモンナノ構造はフローセルのヒドロゲルに導入され、したがって光学標識の信号増強近接内に局在化される。蛍光を示す光学標識は、フローセル基材上の配列決定中に新生核酸鎖へと組み込まれた標識ヌクレオチドの構成要素である。したがって、プラズモンナノ構造は、光学信号として読み取られる光学標識の蛍光を増強することができる。
【0004】
他の例では、プラズモンナノ構造は、基材樹脂マトリックス材料によって産生された蛍光信号(複数可)の信号消光近接内に局在化される。これらの例では、プラズモンナノ構造は、樹脂マトリックス材料の自己蛍光を消光させることができる。これらの例では、プラズモンナノ構造は消光ナノ構造として機能し、したがって樹脂マトリックス材料からのバックグラウンドノイズを低減する。
【0005】
更に他の例では、プラズモン/消光ナノ構造は、光学標識の光信号を増強すること、及びまた樹脂マトリックス材料からの光信号を消光することの両方が可能である。
【0006】
導入
本明細書に開示される第1の態様は、ヒドロゲルを基材の表面に適用することと、適用ヒドロゲルにプライマーをグラフトすることと、プライマーをグラフトする前又は後に、適用されたヒドロゲルへとプラズモンナノ構造を導入することと、を含む方法である。
【0007】
第1の態様の一例では、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルの遊離アジド基に共有結合するアルキンで官能化されている。
【0008】
第1の態様の一例では、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルのアルキンへと共有結合するアジドで官能化されている。
【0009】
第1の態様の一例では、プラズモンナノ構造体は、ヒドロゲルに付着している結合対の第2のメンバーと相互作用する結合対の第1のメンバーで官能化されている。一例では、第1のメンバー及び第2のメンバーは、NiNTAリガンド及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイキャッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びアミン、又はアルデヒド及びヒドラジン、又はアミン及び活性化カルボキシレート、又はアミン及びN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又はチオール及びアルキル化試薬、又はホスホラミダイト及びチオエーテルを含む。
【0010】
第1の態様の一例では、基材の表面は、間隙領域によって分離されたくぼみを含み、本方法は、プライマーをグラフトする前及びプラズモンナノ構造を導入する前に、ヒドロゲルを間隙領域から除去することを更に含む。
【0011】
第1の態様の一例では、基材の表面は、間隙領域によって取り囲まれたレーンを含み、本方法は、プライマーをグラフトする前及びプラズモンナノ構造を導入する前に、ヒドロゲルを間隙領域から除去することを更に含む。
【0012】
第1の態様の一例では、プラズモンナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0013】
第1の態様の一例では、プラズモンナノ構造は、各々、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有する。
【0014】
第1の態様の任意の特徴を、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせてもよく、及び/又は本明細書に開示される例のうちのいずれかと組み合わせて、例えば、配列決定プロトコルのイメージング中における蛍光を増強し、したがって信号を増強することを含む、本開示に記載される利益を達成してもよいことを理解されたい。
【0015】
本明細書に開示される第2の態様は、ベース支持体を含む、フローセルと、ベース支持体上のパターン化材料であって、樹脂マトリックス材料及び樹脂マトリックス材料の表面全体にわたって分散又は配置された消光ナノ構造を含む、パターン化材料と、活性領域のための領域を画定するパターン化材料であって、この領域が間隙領域によって取り囲まれている、パターン化材料と、領域内のヒドロゲルと、ヒドロゲルに付着したプライマーと、を含む。
【0016】
第2の態様の一例では、消光ナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0017】
第2の態様の一例では、消光ナノ構造は、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有する。
【0018】
第2の態様の一例では、領域はレーンを含み、間隙領域はレーンを取り囲む。
【0019】
第2の態様の一例では、領域はくぼみであり、パターン化材料は複数のくぼみを画定し、複数のくぼみの各々は間隙領域によって分離されている。
【0020】
第2の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/若しくは第2の態様の特徴の任意の組合せを一緒に使用してもよいこと、並びに/又は本明細書に開示される例のうちのいずれかと組み合わせて、例えば、配列決定プロトコルのイメージング中のバックグラウンド信号を消光することを含む、本開示に記載される利益を達成してもよいことを理解されたい。
【0021】
本明細書に開示される第3の態様は、フローセルにおける配列決定中にシグナル・ノイズ比を増加させるための方法であって、樹脂マトリックス材料をナノインプリントして、間隙領域によって分離されたくぼみを含むパターン化材料を形成することと、パターン化材料の表面上に消光ナノ構造のフィルムを堆積させることであって、当該フィルムが約1nm~約20nmの範囲の厚さを有する、堆積させることと、ヒドロゲルをくぼみへと導入する工程と、ヒドロゲルにプライマーをグラフトすることと、を含む方法である。
【0022】
第3の態様の一例では、消光ナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0023】
第3の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/若しくは第2の態様及び/若しくは第3の態様の特徴の任意の組合せを一緒に使用してもよいこと、並びに/又は本明細書に開示される例のうちのいずれかと組み合わせて、例えば、配列決定プロトコルのイメージング中のバックグラウンド信号を消光することを含む、本開示に記載される利益を達成してもよいことを理解されたい。
【0024】
本明細書に開示される第4の態様は、フローセルにおける配列決定中にシグナル・ノイズ比を増加させるための方法であって、消光ナノ構造を樹脂マトリックス材料に組み込むことと、間隙領域によって取り囲まれた活性領域のための領域を画定するように当該樹脂マトリックス材料をパターン化することと、ヒドロゲルを領域へと導入する工程と、ヒドロゲルにプライマーをグラフトすることと、を含む方法である。
【0025】
第4の態様の一例では、消光ナノ構造は、消光ナノ構造と樹脂マトリックス材料との混合物の総重量の約0.1重量%~約10重量%の範囲にわたる量で樹脂マトリックス材料へと組み込まれる。
【0026】
第4の態様の一例では、消光ナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0027】
第4の態様の一例では、領域はレーンを含み、間隙領域はレーンを取り囲む。
【0028】
第4の態様の一例では、領域はくぼみであり、パターン化材料は複数のくぼみを画定し、複数のくぼみの各々は間隙領域によって分離されている。
【0029】
第4の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/若しくは第2の態様及び/若しくは第3の態様及び/若しくは第4の態様の特徴の任意の組合せを一緒に使用してもよいこと、並びに/又は本明細書に開示される例のうちのいずれかと組み合わせて、例えば、配列決定プロトコルのイメージング中のバックグラウンド信号を消光することを含む、本開示に記載される利益を達成してもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載してもよく、記載しなくてもよい。
【
図1A】本明細書に開示される方法の2つの例を示す。
【
図1B】本明細書に開示される方法の2つの例を示す。
【
図1C】本明細書に開示される方法の2つの例を示す。
【
図1D】本明細書に開示される方法の2つの例を示す。
【
図1E】本明細書に開示される方法の2つの例を示す。
【
図2B】
図2Aの2B-2B線に沿った拡大断面図であり、
図1A~
図1Eに示す例示的な方法のいずれかで形成されたフローチャネル及び例示的な基材を示す。
【
図2C】
図2Aの2C-2C線に沿った拡大断面図であり、
図1A~
図1Eに示す例示的な方法のいずれかで形成されたフローチャネル及び他の例示的な基材を示す。
【
図3A】本明細書に開示される別の例示的方法を示す。
【
図3B】本明細書に開示される別の例示的方法を示す。
【
図3C】本明細書に開示される別の例示的方法を示す。
【
図3D】本明細書に開示される別の例示的方法を示す。
【
図4A】本明細書に開示される更に別の例示的方法を示す。
【
図4B】本明細書に開示される更に別の例示的方法を示す。
【
図4C】本明細書に開示される更に別の例示的方法を示す。
【
図5A】本明細書に開示される更に別の例示的方法を示す。
【
図5B】本明細書に開示される更に別の例示的方法を示す。
【
図5C】本明細書に開示される更に別の例示的方法を示す。
【
図6A】フローセルの最初に着色された写真の白黒再現であり、色はフローセルのレーンのいくつかに導入されたプラズモンナノ粒子溶液の存在を示し、レーン1は蛍光ヒドロゲル(ALEXA FLUOR(登録商標)545色素が付着したヒドロゲル)なし及びプラズモンナノ粒子溶液なしの対照レーンであり、レーン2はプラズモンナノ粒子溶液でコーティングされたが蛍光ヒドロゲルなしの対照レーンであり、レーン3~レーン7は蛍光ヒドロゲル及び異なる濃度のプラズモンナノ粒子溶液の両方でコーティングされた例示的なレーンであり、レーン8は蛍光ヒドロゲルでコーティングされたがプラズモンナノ粒子溶液なしの対照レーンであった。
【
図6B】請求項2~請求項7からナノ粒子溶液を洗い流した後、及び緩衝液を導入した後に、532nm緑色レーザ(励起用)及びTAMRAフィルタを用いて収集された、
図6Aのフローセルの蛍光スキャナ画像であって、レーン3~レーン8における蛍光信号滴定及びレーン1又はレーン2における信号なしを示す。
【
図6C】
図6Bの蛍光スキャナ画像に対応する相対強度を示すグラフである。
【
図6D】(i)蛍光ヒドロゲルを含む
図6Aのフローセルの一方のレーンであるが、ナノ粒子溶液での処理前であり、かつ緩衝液が導入された後である、一方のレーン(レーン8)と、(ii)ナノ粒子溶液がそこに導入され、そこから洗い流された後であり、かつ緩衝液が導入された後である、
図6Aのフローセルのレーン3~レーン7とについて、532nm緑色レーザを用いて収集された蛍光強度を示すグラフである
【
図7】(i)ナノ粒子溶液処理なしで、かつ緩衝液が導入された後に、別の蛍光ヒドロゲル(ALEXA FLUOR(登録商標)488色素を含む)でコーティングされたフローセルの一方のレーンと、(ii)ナノ粒子溶液がそこに導入され、そこから洗い流された後、かつ緩衝液が導入された後である、このフローセルの他の5つのレーンとについて、488nm青色レーザを用いて収集された蛍光強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書に開示される例では、配列決定中のヌクレオチド塩基呼び出しは、光学標識からの蛍光の検出を介して行われる。
【0032】
いくつかの例では、プラズモン共鳴による蛍光増強は、配列決定に使用されるフローセルのヒドロゲル全体に分散されたプラズモンナノ構造を介して達成される。ヒドロゲルは、プラズモンナノ構造の少なくともいくつかを、光学標識の信号増強近接内に局在化する。蛍光を示す光学標識は、配列決定中に新生核酸鎖へと組み込まれた標識ヌクレオチドの構成要素である。「信号増強近接(signal enhancing proximity)」とは、プラズモンナノ構造及び光学標識が、(i)プラズモンナノ構造及び光学標識が互いに近すぎる位置にある場合に起こり得る消光を防止し、(ii)より長い距離で著しく低下し得るプラズモン増強を増加させる距離によって、分離されることを意味する。信号増強近接に対応する距離は0nm超~約100nmの範囲であり得るが、プラズモンナノ構造(例えば、組成、形状、サイズ)と、光源で励起する際に蛍光を示す光学標識とに依存する。いくつかの例では、信号増強近接に対応する距離は、約0.1nm~約25nm、例えば約1nm~約20nmなどの範囲である。一具体例では、信号増強近接に対応する距離は、約3nm~約12nmの範囲である。
【0033】
他の例では、自己蛍光消光は、プラズモン又は消光ナノ構造によって達成される。フローセル基材に使用されるいくつかの樹脂マトリックス材料は、イメージング中に自己蛍光を示す。いくつかの例では、自己蛍光は、加熱中に表面に向かって移動する樹脂マトリックス材料中の光学活性成分(複数可)の結果であり得る。樹脂マトリックス材料からの自己蛍光は、配列決定中に個々の新生鎖に組み込まれ、光源で励起する際に蛍光を示すヌクレオチドの光学標識をイメージングする場合、バックグラウンドノイズを増加させ得る。バックグラウンドノイズが増加すると、シグナル・ノイズ比(signal to noise ratio:SNR)が低下する可能性があるため、光源で励起した際の個々の光学標識からの蛍光及び対応する信号は、配列決定中に解明することがより困難になる。これらの例では、プラズモンナノ構造は、樹脂マトリックス材料内に分散されるか、又は樹脂マトリックス材料上に層として適用され、したがって、樹脂マトリックス材料内の光学活性成分(複数可)の「信号消光近接(signal quenching proximity)」内か、樹脂マトリックス材料の表面に吸着されるか、又は樹脂マトリックス材料の表面に近い溶液中にある。「信号消光近接」とは、プラズモンナノ構造及び樹脂マトリックス材料が、樹脂マトリックス材料からのバックグラウンド信号が消光されるには充分に互いに近い(例えば、いくつかのナノ構造及び光学活性成分(複数可)については4nm以下以内)ことを意味する。バックグラウンド信号を消光するとSNRが増加し、したがって配列決定一次及び二次メトリックが改善される。一例として、バックグラウンドノイズが低いほど塩基をより正確に呼び出すことができ、これにより、より長い配列決定実行が可能になる。
【0034】
定義
本明細書に使用される用語は、別段の指定がない限り、関連する技術分野における通常の意味をとるものと理解されたい。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0035】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0036】
含む(comprising)、含む(including)、含有する(containing)という用語、及びこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、等しく広義であることを意味する。
【0037】
フローセル及び/又はフローセルの様々な構成要素を説明するために、本明細書では、上(top)、下(bottom)、下方(lower)、上方(upper)、隣接(adjacent)、上(on)などの用語が使用される。これらの方向を示す用語は、特定の配向を示すことを意味するものではなく、構成要素間の相対的な配向を指定するために使用されることを理解されたい。方向を示す用語の使用は、本明細書に開示される例を任意の特定の配向に制限すると解釈されるものではない。
【0038】
第1、第2などの用語はまた、特定の配向又は順序を示すことを意味するものではなく、むしろ1つの構成要素を別の構成要素から区別するために使用される。
【0039】
「アクリルアミドモノマー」は、構造
【0040】
【化1】
を有するモノマー、又はアクリルアミド基を含むモノマーである。アクリルアミド基を含むモノマーの例としては、アジドアセトアミドペンチルアクリルアミド:
【0041】
【0042】
【化3】
が挙げられる。他のアクリルアミドモノマーを使用してもよい。
【0043】
「活性領域」という用語は、反応を行うことができる基材の領域を指す。フローセルの作製中、活性領域は、核酸鋳型増幅に関与し得るプライマーを付着させることができるヒドロゲルを含み得る。最終フローセルでは、活性領域は、プライマーが付着したヒドロゲルを含み得る。いくつかの例では、活性領域はまた、ヒドロゲル全体に分散したプラズモンナノ構造も含む。活性領域内のプライマーを使用して、配列決定される核酸鋳型を産生することができ、配列決定中、核酸鋳型は光学標識で標識されたヌクレオチドの取り込みを可能にする。光学標識は(光源による励起の際に)蛍光を示し、この蛍光は、ヒドロゲル全体に分散したプラズモンナノ構造によって増強され得る。
【0044】
「活性化」という用語は、本明細書に使用されるとき、ベース支持体の表面、又は多層構造の最外層、又は消光ナノ構造のフィルムに反応性基を産生するプロセスを指す。活性化はシラン化又はプラズマアッシングを用いて達成され得る。活性化は本明細書に開示される方法のいずれかで実行され得ることを理解されたい。活性化が行われる場合、ヒドロゲルを下にある支持体又は層若しくはフィルムに共有結合的に付着させるように、シラン化層又は-OH基(プラズマアッシングから)が存在する。
【0045】
本明細書に使用されるとき、「アルデヒド」とは、構造-CHOを含む官能基を含有する有機化合物であり、これは、水素、及び、アルキル又は他の側鎖などのR基にも結合した炭素原子を有するカルボニル中心(すなわち、酸素に二重結合した炭素)を含む。アルデヒドの一般構造は、
【0046】
【0047】
本明細書に使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。ある例として、表記「C1~4アルキル」は、アルキル鎖中に1~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルからなる群から選択されることを示す。
【0048】
本明細書に使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0049】
本明細書に使用されるとき、「アルキン」又は「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。
【0050】
本明細書で使用するとき、「アリール」は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香環又は環系(すなわち、2個の隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが挙げられる。
【0051】
「アミノ」官能基は、-NRaRb基を指し、式中、Ra及びRbは各々、本明細書で定義されるように、水素(例えば、
【0052】
【化5】
)、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7炭素環、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリール、及び5~10員のヘテロ環から独立して選択される。
【0053】
本明細書に使用されるとき、「付着した(attached)」という用語は、2つのものが、直接的又は間接的のいずれかで、互いに、接合、締結、接着、接続、又は結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合又は非共有結合によってポリマーヒドロゲルに付着され得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない物理結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用、及び疎水性相互作用を挙げることができる。
【0054】
「アジド(azide)」又は「アジド(azido)」官能基は、-N3を指す。
【0055】
本明細書に使用されるとき、「炭素環」は、環系骨格に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環又は環系を意味する。炭素環が環系である場合、2つ以上の環が、縮合、架橋、又はスピロ結合方式で一緒に接合され得る。炭素環は、環系内の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有し得る。したがって、炭素環には、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルが含まれる。炭素環基は、3~20個の炭素原子を有し得る。炭素環式環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「カルボン酸」又は「カルボキシル」という用語は、-COOHを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン」は、2つの結合点を介して分子の残りに結合した完全飽和炭素環式環又は環系を意味する。
【0058】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルケニル」又は「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニル又はシクロヘキセン及びノルボルネニル又はノルボルネンが挙げられる。また、本明細書に使用されるとき、「ヘテロシクロアルケニル」又は「ヘテロシクロアルケン」とは、少なくとも1つの二重結合を有する、環骨格内に少なくとも1つのへテロ原子を有する炭素環又は環系を意味し、環系の中のいずれも環も、芳香族ではない。
【0059】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルキニル」又は「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例は、シクロオクチンである。別の例は、ビクロノニンである。本明細書に使用されるとき、「ヘテロシクロアルキニル」又は「ヘテロシクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する、環骨格内に少なくとも1つのへテロ原子を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。
【0060】
本明細書に使用されるとき、「くぼみ」という用語は、基材で定義された別個の凹状特徴を指し、基材の間隙領域(複数可)によって少なくとも部分的に取り囲まれた表面の開口部を有する。くぼみは、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)などの、様々な形状をとることができる。表面と直交するように取られたくぼみの断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、くぼみは、ウェル又は2つの相互接続されたウェルであり得る。
【0061】
「各」という用語は、項目の集合を参照して使用されるとき、集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内の全ての項目を指すものではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0062】
「エポキシ」という用語(グリシジル又はオキシラン基とも称される)は、本明細書で使用するとき、
【0063】
【0064】
本明細書で使用される場合、「フローセル」という用語は、反応を行うことができるフローチャネル、試薬(複数可)をフローチャネルに送達するための入口、及びフローチャネルから試薬(試薬)を除去するための出口を有する容器を意味することを意図する。いくつかの例では、フローセルは、フローセル内で起こる反応の検出に対応する。例えば、フローセルは、アレイ、光学的標識分子などの光学的検出を可能にする1つ又は複数の透明な表面を含み得る。
【0065】
本明細書に使用されるとき、「フローチャネル」又は「チャネル」とは、液体サンプル、試薬などを選択的に受け取ることができる2つの結合された構成要素間に画定された領域であり得る。いくつかの例では、フローチャネルは2つの基材間に画定されてもよく、したがって、各基材の活性領域と流体連通してもよい。他の例では、フローチャネルは基材と蓋との間に画定されてもよく、したがって、1つの基材の活性領域と流体連通してもよい。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、環骨格中に窒素、酸素、及び硫黄を含むがこれらに限定されない、1個以上のヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素を含有する芳香環又は環系(すなわち、2個の隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。ヘテロアリール基は、5~18環員を有し得る。
【0067】
本明細書で使用するとき、「複素環」は、環骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を含有する非芳香族環又は環系を意味する。複素環どうしは、縮合、架橋、又はスピロ結合式に、一体に接合されてもよい。複素環は、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有してもよい。環系の中で、ヘテロ原子は、非芳香環又は芳香環のいずれかに存在してよい。複素環基は、3~20環員(すなわち、炭素原子及びヘテロ原子を含む、環骨格を形成する原子の数)を有してよい。いくつかの例では、ヘテロ原子は、O、N、又はSである。
【0068】
本明細書に使用されるとき、用語「ヒドラジン」又は「ヒドラジニル」とは、-NHNH2基を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「ヒドラゾン」又は「ヒドラゾニル」という用語は、
【0070】
【化7】
基を指し、式中、R
a及びR
bは各々、本明細書で定義されるように、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7炭素環、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリール、及び5~10員のヘテロ環から独立して選択される。
【0071】
本明細書に使用されるとき、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0072】
本明細書に使用されるとき、「間隙領域」という用語は、例えば、くぼみを分離するか又はレーンを取り囲む基材の領域を指す。ある例として、間隙領域は、アレイの1つのくぼみを、アレイの別のくぼみから分離することができる。別の例として、間隙領域は、フローセルの一方のレーンをフローセルの別のレーンから分離することができる。互いに分離されたくぼみ及びレーンは、別個であってもよい、すなわち、互いとの物理的な接触が欠如していてもよい。多くの例では、間隙領域は、連続的であるが、くぼみ又はレーンは、例えば、それ以外が連続的である表面中に又は表面上に画定される複数のくぼみ又はレーンの場合のように、別個である。間隙領域によって提供される分離は、部分的又は完全な分離であり得る。間隙領域は、くぼみ又はレーンの表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、くぼみ及びレーンは、その中にポリマーヒドロゲル及びプライマーを有することができ、間隙領域は、ポリマーヒドロゲル及びプライマーの両方を含まなくともよい。
【0073】
「ニトリルオキシド」は、本明細書で使用される場合、「RaC≡N+O-」基を意味し、式中、Raは本明細書で定義される。ニトリルオキシドの調製例としては、クロラミド-Tでの処理による、又は、イミドイルクロリド[RC(Cl)=NOH]上での塩基作用による、又は、ヒドロキシルアミンとアルデヒドとの反応によるアルドキシムからのin situ生成が挙げられる。
【0074】
「ニトロン」は、本明細書に使用されるとき、
【0075】
【化8】
基を意味し、式中、R
1、R
2、及びR
3は、R
3が水素(H)ではないことを除き、本明細書で定義されるR
a及びR
b基のいずれかであり得る。
【0076】
本明細書に使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。RNAでは、糖はリボースであり、DNAでは、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基が欠如している糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基であってもピリミジン塩基であってもよい。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、又は核酸塩基のいずれかが変化していてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)などのユニバーサル塩基又はリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。「標識ヌクレオチド」は、少なくとも光学標識が付着したヌクレオチドである。光学標識の例としては、励起波長に応答して蛍光を発することができる任意の色素が挙げられる。
【0077】
「プラズモンナノ構造」は、プラズモン共鳴を示すことができる任意の独立した構造を含む。
【0078】
「ポリマーヒドロゲル」という用語は、液体及び気体に対して透過性である半硬質ポリマーを指す。ポリマーヒドロゲルは、液体(例えば、水)が吸収される場合に膨潤し、例えば乾燥によって液体が除去される場合に収縮することができる。ヒドロゲルは水を吸収し得るが、水溶性ではない。
【0079】
本明細書に使用されるとき、「プライマー」という用語は、一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNA)として定義される。本明細書において増幅プライマーと称されるいくつかのプライマーは、鋳型増幅及びクラスタ生成の開始点として機能する。本明細書において配列決定プライマーと称される他のプライマーは、DNA合成の開始点として機能する。プライマーの5’末端は、ポリマーヒドロゲルの官能基でカップリング反応を可能にするように修飾されてもよい。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な非天然ヌクレオチドを含むことができる。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0080】
「消光ナノ構造」とは、エネルギー伝達に起因して、光学活性成分の近接を消光する場合に光学活性成分によって放出される波長を最小にする、プラズモンナノ構造である。例えば、光学活性成分が、光学活性成分によって放出される波長でエネルギーを伝達する消光ナノ構造と直接接触している場合、蛍光は消光される。
【0081】
「チオール」官能基とは、-SHを意味する。
【0082】
本明細書に使用されるとき、用語「テトラジン」及び「テトラジニル」とは、4つの窒素原子を含む6員のヘテロアリール基を意味する。テトラジンは、任意に置換され得る。
【0083】
本明細書に使用されるとき、「テトラゾール」とは、4つの窒素原子を含む5員の複素環基を意味する。テトラゾールは、任意に置換され得る。
【0084】
プラズモン又は消光ナノ構造
本明細書に記載されるように、プラズモンナノ構造は、プラズモン共鳴を示すことができる任意の独立した構造を含む。プラズモン共鳴とは、材料表面層中の電子が、ある入射角の入射光の光子によって励起され、材料表面に平行に伝播する現象である。プラズモンナノ構造の表面は、伝搬又は局在化表面プラズモンとのカップリングを通じて電磁界を強く閉じ込めることができる。この相互作用は局所電界の大きな増強に関連し、これは、励起及び発光速度を高め、蛍光エミッタの励起状態の寿命を減少させ得る。これは増幅された蛍光信号をもたらし、光退色に対する耐性もまた改善し得る。
【0085】
本明細書に記載されるように、消光ナノ構造とは、エネルギー伝達に起因して、光学活性成分の近接を消光する場合に光学活性成分によって放出される波長を最小にする、ナノ構造である。このように、消光ナノ構造は、光学活性成分の近接を消光する場合、光学活性成分からのノイズの自己蛍光強度を減少させる。
【0086】
「プラズモン材料」と本明細書では称される、プラズモン共鳴が可能な任意の材料をプラズモンナノ構造として使用することができる。プラズモン共鳴が可能な特定のナノ構造体はまた、自己蛍光消光も可能である。いくつかの金属(例えば、金、銀、スズ、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミニウムなど)、ドープされた半金属(例えば、ドープシリコン)、直接バンドギャップ半導体(例えば、ガリウムヒ素)、及び金属複合材料は、プラズモン共鳴が可能である。金属複合材は上記の金属の2つ以上を含んでもよい。例として、2金属複合材は銀及び金を含み、3金属複合材は銀、金、及び白金を含む。本明細書に記載の例のいずれかでは、プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0087】
一例では、プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造は、球形ナノ粒子である。別の例では、プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造は、立方体、三角柱、棒状形状、小平板、ケージ状(例えば、多孔質シェルを有する非球形中空粒子)、チューブなどの非球形ナノ粒子である。更に別の例では、プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造は不規則な形状のナノ粒子である。プラズモンナノ構造の形態は、本明細書に開示される例のいくつかにおける蛍光増強の大きさに影響を及ぼし得る。例えば、球形ナノ粒子、ナノプレートレット、及びナノチューブは、ナノチューブよりも蛍光増強を拡大し得る。
【0088】
プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造は、各々、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有し得る。コアシェル構造は、コアとして1つの材料を有し、コアを少なくとも部分的に封入するシェルとして別の材料を有する。いくつかの例では、2つの異なるプラズモン材料がコア及びシェルとして使用される。他の例では、コアはプラズモン材料であり、シェルは非プラズモン材料である。好適なシェル材料のいくつかの例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、及び酸化タンタルなどの金属酸化物、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質、並びにポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(乳酸)(PLA)、及びポリ(メチルアクリレート)(PMA)などの配列決定中に使用される波長に対して透明な有機ポリマーが挙げられる。非プラズモン材料はコアのプラズモン共鳴を妨害しない。コアシェル構造の1つの具体例は、シリカコアによって少なくとも部分的にカプセル化された銀及び金複合コアを含む。
【0089】
プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造の寸法は、その形状に応じて変化し得る。本明細書に開示される例では、プラズモンナノ構造又は消光ナノ構造の最大寸法(例えば、直径、長さ、中央値など)は、ナノスケールであり、したがって約1nm~1000nm未満の範囲である。いくつかの例では、ナノ構造体は、1nm以上、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm以上、又は100nm以上の直径を有するナノ粒子である。プラズモンナノ構造のサイズは、本明細書に開示される例のいくつかにおける蛍光増強の大きさに影響を及ぼし得る。より具体的には、異なるサイズを有するプラズモンナノ構造(複数可)は、異なる波長で共鳴する。蛍光増強を最大化するために、ナノ構造共鳴波長が考慮され得る。例えば、モデリングを使用して、所望の波長で共鳴するナノ構造を標的とするために、所与のサイズ及び形状のナノ構造の光学特性を予測することができる。一例では、球形ナノ粒子のモデリングは、マクスウェル方程式の方程式を用いて、ミー理論によって実行することができる。その蛍光が増強されたフルオロフォアの化学構造はまた、本明細書に開示される例のいくつかにおける増強の大きさに影響を及ぼし得る。
【0090】
いくつかの例では、プラズモンナノ構造は、それらがヒドロゲルに付着することができるように官能化される。
【0091】
一例では、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルの官能基に共有結合することができる官能基を含む。例として、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルの遊離アジド基に共有結合するアルキン(例えば、ジベンゾシクロオクチン)で官能化されているか、又は、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルのアルキン(例えば、ジアルキン)へと共有結合するアジドで官能化されているか、又は、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルの遊離アミン基へと共有結合するエポキシで官能化されている。プラズモンナノ構造とヒドロゲルとの間の他の共有結合もまた可能であって、求核置換反応によって得られるものを含む(例えば、求核基と脱離基との間)。いくつかの具体例としては、アルデヒド及びヒドラジン、又はアミン及び活性化カルボキシレート(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、又はチオール及びアルキル化試薬、又はホスホラミダイト及びチオエーテルを含むものが挙げられる。
【0092】
他の例では、プラズモンナノ構造は、ヒドロゲルに非共有結合することができる。例えば、プラズモンナノ構造体は、ヒドロゲルに付着している結合対の第2のメンバーと相互作用する結合対の第1のメンバーで官能化されている。結合対の例では、第1のメンバー及び第2のメンバーは、それぞれ、NiNTA(ニッケル-ニトリロ三酢酸)リガンド及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン若しくはアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイキャッチャーを含む。
【0093】
プラズモン増強のための方法及びフローセル
図1A~
図1Eは、配列決定中に光学信号として読み取られる蛍光を増強することができるフローセル基材を作製するための方法の2つの異なる例を示す。一例では、
図1A~
図1C及び
図1Eが挙げられる。別の例では、
図1A、
図1B、
図1D、及び
図1Eが挙げられる。これらの例の各々では、プラズモンナノ構造は、フローセル基材のヒドロゲルに組み込まれる。この方法は、概して、ヒドロゲルを基材の表面に適用することと、適用ヒドロゲルにプライマーをグラフトすることと、プライマーをグラフトする前又は後に、適用されたヒドロゲルへとプラズモンナノ構造を導入することと、を含む。
【0094】
フローセル基材は、1つ以上の活性領域を支持する単層構造又は多層構造である。
図1Aにおいて、基材は単層構造12である。好適な単層構造12の例としては、エポキシシロキサン、ガラス、改質又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、及びスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、Chemours製のTEFLON(登録商標))、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(cyclo-olefin polymer:COP)(例えば、Zeon製ZEONOR(登録商標))、ポリイミドなど)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/セラミック酸化物、シリカ、溶融シリカ、又はシリカ系材料、ケイ酸アルミニウム、ケイ素及び改質ケイ素(例えば、ホウ素ドープp+ケイ素)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化ケイ素(SiO
2)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、又は他の酸化タンタル(TaO
x)、酸化ハフニウム(HfO
2)、炭素、金属、無機ガラスなどが挙げられる。
【0095】
他の例では、
図1A~
図1Eに示す方法は、多層構造12’(多層基材12’とも称される)を利用することができる。多層構造体12’の一例を
図2Cに示す。多層構造12’のいくつかの例は、光学イメージングに使用される光に対して透明である、五酸化タンタル又は別の酸化物のコーティング層を有するガラス又はケイ素を含む。多層基材12’の他の例としては、シリコン・オン・インシュレータ(silicon-on-insulator:SOI)基材を挙げることができる。
図2Cを特に参照すると、多層構造12’の他の例は、その上にパターン化材料16を有する下部ベース支持体14を含む。
【0096】
一例では、パターン化材料16は、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して支持体14に選択的に適用される無機酸化物であり得る。適切な無機酸化物の例としては、酸化タンタル(例えば、Ta2O5)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、酸化ケイ素(例えば、SiO2)、酸化ハフニウム(例えば、HfO2)などが挙げられる。
【0097】
別の例として、パターン化材料16は、支持体14に適用され、次いでパターン化される樹脂マトリックス材料であり得る。好適な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などを含む。好適なパターニング技術としては、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ(nanoimprint lithography:NIL)、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などが挙げられる。好適な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサンベースの樹脂、非多面体オリゴマーシルセスキオキサンエポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、アモルファスフルオロポリマー樹脂(例えば、BellexからのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0098】
本明細書に使用されるとき、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」(Hybrid Plasticsから商標名「POSS」(登録商標)として市販)という用語は、シリカ(SiO2)とシリコーン(R2SiO)とのハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成物を指す。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2]nを有する有機ケイ素化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。POSSの例示的なR基としては、エポキシ、アジド(azide)/アジド(azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、及び/若しくはメタクリレート、又は更には、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、及び/若しくはハロアルキル基が挙げられる。本明細書に開示される樹脂組成物は、モノマーユニットとして1つ以上の異なるケージ又はコア構造を含み得る。平均ケージ含有量は、合成期間に調整され得、及び/又は精製方法によって制御され得、モノマーユニットのケージサイズの分布は本明細書に開示される実施例で使用され得る。
【0099】
一例では、基材12、12’(単層であるか、多層である)は、円形かつ約2mm~約300mmの範囲にわたる直径を有してもよく、又は最大約10フィート(~3メートル)の最大寸法を有する長方形のシート若しくはパネルを有し得る。一例では、基材12、12’は、約200mm~約300mmの範囲にわたる直径を有するウェ-ハである。その後、ウェーハを角切りして個々のフローセル基材を形成することができる。別の例では、基材12、12’は、約0.1mm~約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法を示しているが、任意の好適な寸法を有する基材12、12’を使用してもよいことを理解すべきである。別の例として、300mmの丸いウェーハよりも大きな表面積を有する長方形の支持体であるパネルが使用され得る。その後、パネルを角切りして個々のフローセルを形成することができる。
【0100】
図1Aでは、基材は、平坦な表面を有し、任意の特定の構造を有しない単層構造12として示されている。しかしながら、基材12又は12’は、活性領域(複数可)が形成されるいくつかの構造を含むことを理解されたい。いくつかの例では、基材12又は12’の構造は、活性領域が形成される単一レーン18(
図2B参照)を含む。これらの例では、単一レーン18は、間隙領域22によって取り囲まれている。他の例では、基材12、12’の構造は、活性領域が形成されるくぼみ20を含む(
図2Cを参照されたい)。これらの例では、くぼみ20は間隙領域22によって分離されている。単一レーン18又はくぼみ20は、単層基材12内に形成されてもよく、又は多層構造12’の最外層に形成されてもよい。単一レーン18又はくぼみ20は、基材12、12’の材料(複数可)に応じて、エッチング、インプリント、ナノインプリントリソグラフィ、又は別の好適な技術によって画定することができる。基材12、12’の構造は、
図2A、
図2B、及び
図2Cを参照してより詳細に説明される。
【0101】
図1Bに示すように、本方法の各例は、ヒドロゲル24を基材12、12’の表面26に適用することを含む。基材12、12’の表面26は、単一レーン18又はくぼみ20、及び間隙領域22を含んでもよい。
【0102】
ヒドロゲル24は、液体が吸収される場合に膨潤し、例えば乾燥によって液体が除去される場合に収縮することができる任意のゲル材料であり得る。一例では、ヒドロゲル24には、アクリルアミドコポリマー、例えば、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAMが含まれる。PAZAM及び他のいくつかの形態のアクリルアミドコポリマーは、次の構造(I)で表され、
【0103】
【化9】
式中、
R
Aは、アジド、任意選択で置換アミノ、任意選択で置換アルケニル、任意選択で置換アルキン、ハロゲン、任意選択で置換ヒドラゾン、任意選択で置換ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意選択で置換テトラゾール、任意選択で置換テトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、硫酸塩、及びチオールからなる群から選択され、
R
BはH又は任意選択で置換アルキルであり、
R
C、R
D、及びR
Eはそれぞれ、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH
2)
p-のそれぞれは、任意選択で置き換えられ得、
pは1から50の範囲の整数であり、
nは1から50,000の範囲の整数であり、及び
mは、1から100,000の範囲の整数である)。
【0104】
当業者は、構造(I)において繰り返される特徴「n」及び「m」の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターン化、又はそれらの組合せ)中に任意の順序で存在し得ることを認識する。
【0105】
PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDaから約1500kDa又は約10kDaから約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは特定の例では、約312kDaであり得る。
【0106】
いくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは線状ポリマーである。他のいくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0107】
他の例では、ヒドロゲル24は、構造(I)の変形であってもよい。一例では、アクリルアミドユニットは、N,Nジメチルアクリルアミド(
【0108】
【化10】
)で置き換えられ得る。この例では、構造(I)のアクリルアミドユニットは
【0109】
【化11】
で置き換えられ得、ここで、R
D、R
E、及びR
FはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
HはそれぞれC1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は繰り返す特徴「n」及び「m」に加えて
【0110】
【化12】
を含み得、ここでR
D、R
E、及びR
FはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
HはそれぞれC1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0111】
ヒドロゲル24の別の例として、構造(I)における繰り返す特徴「n」は、構造(II)を有する複素環式アジド基を含むモノマーで置き換えられ得、
【0112】
【化13】
式中、R
1はH又はC1~C6アルキルであり、R
2はH又はC1~C6アルキルであり、Lは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子と、炭素上の10個の任意選択の置換基及び鎖中の任意選択的な窒素原子を有する線状鎖を含むリンカであり、Eは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子を含む線状鎖であり、その線状鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に任意選択的な置換基を含み、Aは、H又はC1~C4アルキルがNに付着したN置換アミドであり、Zは窒素含有複素環である。Zの例には、単環構造又は縮合構造として存在する5~10炭素含有環員が含まれる。Zのいくつかの具体的な例としては、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルが挙げられる。
【0113】
本明細書で前述したヒドロゲル24の例では、R
A、NH
2、及び/又はN
3のいずれかは、プラズモンナノ構造10の表面での官能化に応じて、プラズモンナノ構造10(
図1Dを参照)に付着し得る。R
A及び/又はN
3基のいくつかは、代替的にオリゴヌクレオチドプライマー28A、28B(
図1Cを参照)へと付着し得る。加えて、プラズモンナノ構造10を付着させるための結合対メンバー又は別の官能基は、例えば、重合において、又はヒドロゲル24形成後のグラフトプロセスにおいて、又は化学修飾反応において使用されるモノマーの一部として、ヒドロゲル24に導入されてもよい。
【0114】
オリゴヌクレオチドプライマー28A、28Bをグラフトし、プラズモンナノ構造10を付着させるように官能化されている限り、他のヒドロゲル24を使用してもよいことを理解されたい。好適なヒドロゲル24のいくつかの例としては、官能化ポリシラン、例えばノルボルネンシラン、アジドシラン、アルキン官能化シラン、アミン官能化シラン、マレイミドシラン、又は所望のプラズモンナノ構造10及びオリゴヌクレオチドプライマー28A、28Bを付着することができる官能基を有する任意の他のポリシランが挙げられる。好適なヒドロゲル24の他の例としては、アガロースなどのコロイド構造、又はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、又はポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、シランフリーアクリルアミド(SFA)、又はアジド分解バージョンのSFAなどの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドとアクリル酸若しくはビニル基を含むアクリル酸とから、又は[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成され得る。好適なポリマーヒドロゲルの更に他の例としては、アクリルアミドとアクリレートとの混合コポリマーが挙げられる。本明細書に開示される実施例では、星状ポリマー、星型又は星型ブロックポリマー、デンドリマーなどを含む分岐ポリマーなど、アクリルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリレートなど)を含む様々なポリマー構造は利用され得る。例えば、モノマー(例えば、アクリルアミド、触媒を含有するアクリルアミドなど)は、ランダムに又はブロックで、星型状ポリマーの分岐(アーム)に組み込まれてもよい。
【0115】
ヒドロゲル24は任意の好適な共重合プロセスを用いて形成することができる。ヒドロゲル24を表面26に導入するために、ヒドロゲル24の混合物を産生し、次いで基材12又は12’に適用することができる。一例では、ヒドロゲル24は、混合物(例えば、水との混合物、又はエタノールと水との混合物)中に存在し得る。次いで、混合物は、スピンコーティング、又は浸漬若しくはディップコーティング、又は陽圧若しくは陰圧下での材料の流れ、又は別の好適な技術を使用して、基材表面26に適用することができる。これらの種類の技術は、基材12又は12’上に(例えば、レーン18内に、くぼみ20内に、及び間隙領域22上に)全面を覆うようにヒドロゲル24を堆積させる。他の選択的堆積技術(例えば、マスク、制御された印刷技術などを伴う)は、レーン18又はくぼみ20内でヒドロゲル24を特異的に堆積させ、間隙領域22上では堆積させないように使用されてもよい。
【0116】
ポリマーヒドロゲル24の化学的性質に応じて、適用された混合物を硬化プロセスに曝露してもよい。一例では、硬化は、室温(例えば、約25℃)~約95℃の範囲の温度で、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間にわたって行うことができる。
【0117】
ヒドロゲル24の基材12又は12’への付着は、共有結合によるものであり得る。いくつかの例では、下にある基材12又は12’は、例えばシラン化又はプラズマアッシングによって最初に活性化されてもよい。一例では、シラン化は、ノルボルネンシランを基材12又は12’表面に導入することを含む。ヒドロゲル24の基材12又は12’への共有結合は、様々な使用中にフローセルの寿命を通して活性領域内のプライマー28A、28B及びプラズモンナノ粒子10を維持するのに役立つ。
【0118】
ヒドロゲル24が、レーン18内、又はくぼみ20内、及び間隙領域22上に堆積される場合、本方法は、プライマー28A、28Bをグラフトする前、及びプラズモンナノ粒子10を導入する前に、間隙領域22からヒドロゲル24を除去することを更に含み得る。ヒドロゲル24の除去は研磨プロセスを含み得る。研磨プロセスは化学スラリーを用いて実行してもよく、この化学スラリーは、間隙領域22からポリマーヒドロゲル24を、それらの領域22の下にある基材に有害な影響を与えることなく除去することができる一方で、レーン18内又はくぼみ20内のポリマーヒドロゲル24を少なくとも実質的に無傷のままにすることができる。化学スラリーとしては、例えば、研磨粒子、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、及び/又は分散剤を挙げることができる。あるいは、研磨は、研磨剤粒子を含まない溶液により行ってよい。化学的スラリー又は溶液は、化学機械研磨システムで使用されて、間隙領域22の表面を研磨することができる。一例として、研磨ヘッドは、Strasbaugh ViPRR II研磨ヘッドであってよい。
【0119】
本方法の一例は
図1Cに進み、ここで、プラズモンナノ粒子10の導入前にプライマー28A、28Bがヒドロゲル24にグラフトされる。グラフトは、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又はプライマー28A、28Bをポリマーヒドロゲル24に付着させる別の好適な方法を含み得る。これらの例示的な技術の各々は、プライマー28A、28B、水、緩衝液、及び触媒を含み得る、プライマー溶液又は混合物を利用し得る。グラフト法のいずれかを用いると、プライマー28A、28Bは、ポリマーヒドロゲル24の反応性基と反応し、周囲の基材12、12’(例えば、間隙領域22)に対する親和性を有しない。したがって、プライマー28A、28Bは、ポリマーヒドロゲル24へと選択的にグラフトする。
【0120】
一例では、プライマー28A、28Bは、プライマー28A、28Bの5’末端又はその近傍における一点共有結合性付着によって、ポリマーヒドロゲル24に固定化され得る。この付着により、(i)プライマー28A、28Bのアダプター特異的部分は、その同族の配列決定可能な核酸断片に自由にアニールすることができ、(ii)3’ヒドロキシル基は、自由にプライマーを伸長することができる。この目的のために、任意の好適な共有結合を使用することができる。使用できる末端プライマーの例としては、アルキン末端プライマー(例えば、ポリマーヒドロゲル24のアジド表面部分に付着し得る)、又はアジド末端プライマー(例えば、ポリマーヒドロゲル24のアルキン表面部分に付着し得る)が挙げられる。
【0121】
好適なプライマー28A、28Bの具体例としては、HISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、NOVASEQ(商標)、GENOME ANALYZER(商標)、ISEQ(商標)、及び他の機器プラットフォームでの配列決定のためにIllumina Inc.により販売されている市販のフローセルの表面上で使用されるP5及びP7プライマーが挙げられる。
【0122】
プライマー28A、28Bが(
図1Cに示すように)グラフトされた後、本方法のこの例は、プラズモンナノ粒子10のヒドロゲル24への導入に進む。これを
図1Eに示す。
【0123】
プラズモンナノ粒子10を水中に分散させ、次いで、基材12、12’(この例では、ヒドロゲル24及びその上のプライマー28A、28B)を分散液で洗い流してもよい。フラッシングは、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、液滴分配、又はプラズモンナノ粒子10をポリマーヒドロゲル24へと導入する別の好適な方法を含み得る。プラズモンナノ粒子10がヒドロゲル24に付着することができるように、ナノ粒子分散液を、基材12、12’上でインキュベートしてもよい。インキュベーション時間及び付着機構は、プラズモンナノ粒子10及びヒドロゲル24の官能化、プラズモンナノ粒子10及びヒドロゲル24の濃度などに依存する。一例では、インキュベーション時間は2分間~12時間の範囲であり得る。いくつかの例では、室温(例えば、約25℃)でのインキュベーションは、約5分間~約1時間、例えば約5分間~約30分間、又は約1分間~約10分間などの範囲である。
【0124】
図1A~
図1C及び
図1Eに示す方法の結果として、ヒドロゲル24は、両方のプライマー28A、28B、及びそれらに付着したプラズモンナノ粒子10を含む。
【0125】
図1Bに戻って参照すると、ヒドロゲル24が適用された後、本方法の別の例は
図1Dに進み、ここで、プラズモンナノ粒子10は、プライマー28A、28Bがグラフトされる前にヒドロゲル24へと導入される。プラズモンナノ粒子10を水中に分散させ、次いで、基材12、12’(この例では、その上のヒドロゲル24)を本明細書に記載のように分散液で洗い流してもよい。
【0126】
プラズモンナノ粒子10が(
図1Dに示すように)導入された後、本方法のこの例は、そこに付着したプラズモンナノ粒子10を有するヒドロゲル24へのプライマー28A、28Bのグラフトに進む。これを
図1Eに示す。プライマー28A、28Bは、
図1Cを参照して説明したようにグラフトされ得る。
【0127】
図1A、
図1B、
図1D、及び
図1Eに示される方法の結果として、ヒドロゲル24は、両方のプライマー28A、28B及びそれらに付着したプラズモンナノ粒子10を含む。
【0128】
図1Eに示す構造はフローセルの活性領域の一例を示す。活性領域のこの例は、プライマー28A、28B、及びそれらに付着したプラズモンナノ粒子10を伴うヒドロゲル24を含む。上述のように、活性領域は、フローセルの単一レーン18内に位置してもよく(
図2Bを参照)、又はフローセルのくぼみ20内に位置してもよい(
図2Cを参照)。これらフローセルの各例について説明する。
【0129】
フローセル30の例の上面図が
図2Aに示される。
図2Bを参照して説明するように、フローセル30Aのいくつかの例は2つの対向する基材12及び12Aを含み、その各々は、配列決定が行われ得る活性領域32及び32Aを支持するレーン18、18Aを含む。これらの例の各々では、フローチャネル34は、基材12と基材12Aとの間に画定される。
図2Cを参照して説明するように、フローセル30Bの他の例は2つの対向する基材12’及び12’’を含み、その各々は、配列決定が行われ得る活性領域32’及び32’’を支持するくぼみ20、20’を含む。これらの例の各々では、フローチャネル34は、基材12’と基材12’’との間に画定される。他の例では、フローセル30は、一方の基材12又は12’(活性領域(複数可)32又は32’を支持)と、基材12又は12’に取り付けられた蓋とを含む。これらの例では、フローチャネル34は、基材12又は12’と蓋との間に画定される。
【0130】
図2Aに示す例では、フローセル30は、複数のフローチャネル34を含む。8つのチャネル34が示されるが、任意の数のチャネル34がフローセル30(例えば、単一のチャネル34、4つのチャネル34など)に含まれ得ることを理解すべきである。各フローチャネル34は、任意の特定のフローチャネル34に導入された流体(複数可)が任意の隣接するフローチャネル34に流れ込まないように、フローセル30内でフローチャネル34ごとに単離されていてもよい。増幅、クラスタリング、配列決定、デブロッキングなどのための試薬は、それぞれ、入力ポート及び出力ポートを介してフローチャネル(複数可)34に導入及びそこから除去することができる。
【0131】
フローチャネル34の一部分は、基材12及び12A又は12’及び12’’の材料(複数可)に部分的に依存する任意の好適な技術を用いて、基材12及び12A又は12’及び12’’内に画定され得る。一例では、フローチャネル34の一部分が各ガラス基材(例えば、12及び12A)へとエッチングされる。別の例では、フローチャネル34の一部分は、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィなどを用いて、多層基材12’の材料16へとパターン化され得る。別個の材料36は基材12又は12’に適用されることで、別個の材料36がフローチャネル34の壁の少なくとも一部分を画定してもよい。
【0132】
一例では、フローチャネル34は、丸みを帯びた端部を有する実質的に長方形の構成を有する。フローチャネル34の長さ及び幅は、それぞれ、基材12又は12’の長さ及び幅よりも小さくてもよく、その結果、フローチャネル34を取り囲む基材表面の一部分は別の基材12A若しくは12’’又は蓋への付着に利用可能である。いくつかの例では、各フローチャネル34の幅は、少なくとも約1mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7mm、少なくとも約10mm、又はそれ超であり得る。いくつかの例では、各フローチャネル34の長さは、少なくとも約10mm、少なくとも約25mm、少なくとも約50mm、少なくとも約100mm、又はそれ超であり得る。各フローチャネル34の幅及び/又は長さは、上で指定した値よりも大きくてもよく、それよりも小さくてもよく、又はそれらの間であってもよい。別の例では、フローチャネル34は正方形(例えば、10mm×10mm)である。
【0133】
各フローチャネル34の深さは、例えば、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用して、流路壁を少なくとも部分的に画定する別個の材料36を堆積する場合、複数の単層の厚さまで小さくすることができる。他の例では、各フローチャネル34の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ以上であってもよい。一例では、深さは、約10μmから約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは約5μm以下である。各フローチャネル34の深さはまた、上で指定された値よりも大きいか、小さいか、又はそれらの間であり得ることを理解すべきである。フローチャネル34の深さはまた、例えば、くぼみ20が含まれる場合、フローセル30Bの長さ及び幅に沿って変化してもよい。
【0134】
図2Bは、レーン18、18Aを含むフローセル30Aの断面図を示す。この例では、フローチャネル34の一部は、単層基材12、12Aの各々に画定される。例えば、活性領域32、32Aの構成要素によって占有されていないレーン18、18A内の空間は、フローチャネル34の一部であると見なされ得る。
【0135】
それぞれの基材12、12Aのレーン18、18A内の活性領域32、32Aは、表面26又は26A上のヒドロゲル24又は24A、ヒドロゲル24又は24Aに付着したプライマー28A、28B、及びヒドロゲル24又は24Aに付着したプラズモンナノ粒子10、10Aを含む。これらの活性領域32,32Aの各々は、
図1A~
図1Eを参照して説明した方法のいずれかに従って基材12、12A上に調製されてもよく、その後、基材12、12Aが互いに取り付けられて、フローセル30Aの一例を形成し得る。接着剤、結合を助ける放射線吸収材料などの任意の好適な別個の材料36を使用して、基材12、12Aを一緒に結合してもよい。
【0136】
図2Cは、多層基材12’、12’’のパターン化材料16、16’に画定されたくぼみ20、20’を含むフローセル30Bの断面図を示す。
図2Cに示すように、パターン化材料16、16’は、それぞれそこに画定されたくぼみ20、20’、及び隣接するくぼみ20、20’を分離する間隙領域22、22’を含む。
【0137】
規則的、繰り返し、及び非規則的なパターンを含む、くぼみ20、20’の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、くぼみ20、20’は、密なパッキング及び改善された密度のために六角形グリッドに配置される。他のレイアウトは、例えば、直線的な(長方形)レイアウト、三角形のレイアウトなどを含み得る。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているくぼみ20、20’のx-y形式であり得る。他のいくつかの例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ20、20’及び/又は間隙領域22、22’の繰り返し配置であり得る。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ20、20’及び/又は間隙領域22、22’のランダムな配置であり得る。パターンは、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、格子柄、対角線、矢印、及び/又は正方形を含んでもよい。
【0138】
くぼみ20、20’のレイアウト又はパターンは、画定された領域におけるくぼみ20、20’の密度(例えば、くぼみ20、20’の数)により特徴付けられ得る。例えば、くぼみ20、20’は、およそ200万/mm2の密度で存在し得る。例えば、1mm2あたり約100、1mm2あたり約1,000、1mm2あたり約10万、1mm2あたり約100万、1mm2あたり約200万、1mm2あたり約500万、1mm2あたり約1000万、1mm2あたり約5000万、又はそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。パターン化材料16、16’のくぼみ20、20’の密度は、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間にあり得ることを更に理解すべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離されたくぼみ20、20’を有するものとして特徴付けられ得、中密度アレイは、約400nm~約1μmで分離されたくぼみ20、20’を有するものとして特徴付けられ得、低密度アレイは、約1μmを超えて分離されたくぼみ20、20’を有するものとして特徴付けられ得る。密度の例が提供されるが、任意の適切な密度を使用できることを理解すべきである。くぼみ20、20’の密度は、くぼみ20、20’の深さに部分的に依存し得る。いくつかの例では、くぼみ20、20’間の間隔が、本明細書に記載された例よりも更に大きいことが望ましい場合がある。
【0139】
くぼみ20、20’のレイアウト又はパターンはまた、又は代替的に、平均ピッチ、又はくぼみ20、20’の中心から隣接するくぼみ20、20’の中心までの間隔(中心間の間隔)、又は1つのくぼみ20、20’の左端から隣接するくぼみ20、20’の右端までの間隔(エッジ間の間隔)に関して特徴付けられ得る。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、おおよそ約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μmであってもよい。くぼみ20、20’の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得る。一例では、くぼみ20、20’は、約1.5μmのピッチ(中心間の間隔)を有する。平均ピッチ値の例が提供されるが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解すべきである。
【0140】
くぼみ20、20’の各々のサイズは、その体積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。
【0141】
くぼみ20、20’の各々は、フローセル30Bに導入される少なくともいくらかの流体を隔離する(confining)ことができる任意の体積を有し得る。最小又は最大の体積は、例えば、フローセル30Bの下流での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、解像度、ヌクレオチド、又は分析物の反応性に対応するように選択され得る。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm3、少なくとも約1×10-2μm3、少なくとも約0.1μm3、少なくとも約1μm3、少なくとも約10μm3、少なくとも約100μm3、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、体積は、最大で約1×104μm3、最大で約1×103μm3、最大で約100μm3、最大で約10μm3、最大で約1μm3、最大で約0.1μm3、又はそれ以下であり得る。
【0142】
各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の体積と同様の基準に基づいて選択され得る。例えば、各くぼみ開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm2、少なくとも約1×10-2μm2、少なくとも約0.1μm2、少なくとも約1μm2、少なくとも約10μm2、少なくとも約100μm2、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、面積は、最大で約1×103μm2、最大で約100μm2、最大で約10μm2、最大で約1μm2、最大で約0.1μm2、最大で約1×10-2μm2、又はそれ以下であり得る。各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0143】
くぼみ20、20’の各々の深さは、ポリマーヒドロゲル24、24Aの一部を収容するのに充分な大きさであり得る。一例では、深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、深さは、最大で約1×103μm、最大で約100μm、最大で約10μm、又はそれ以下であり得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。各くぼみ20、20’の深さは、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0144】
いくつかの例では、各くぼみ20、20’の直径又は長さ及び幅は、少なくとも約50nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、直径又は長さ及び幅は、最大で約1×103μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.5μm、最大で約0.1μm、又はそれ以下(例えば、約50nm)であり得る。いくつかの例では、直径又は長さ及び幅は約0.4μmである。各くぼみ20、20’の直径又は長さ及び幅は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0145】
図2Cに示す例では、フローチャネル34の一部は、多層基材12’、12’’の各々に画定される。例えば、活性領域32’、32’’の構成要素によって占有されていないくぼみ20、20’内の空間は、フローチャネル34の一部であると見なされ得る。
【0146】
それぞれの基材12’、12’’の活性領域32’、32’’は、各くぼみ20、20’の表面上のヒドロゲル24又は24’、ヒドロゲル24又は24’に付着したプライマー28A、28B、及びヒドロゲル24又は24’に付着したプラズモンナノ粒子10、10’を含む。これらの活性領域32’、32’’の各々は、
図1A~
図1Eを参照して説明した方法のいずれかに従って基材12’、12’’上に調製することができ、次いで、基材12’、12’’を互いに取り付けてフローセル30Bの別の例を形成してもよい。接着剤、結合を助ける放射線吸収材料などの任意の好適な別個の材料36を使用して、基材12’、12’’を一緒に結合してもよい。
【0147】
フローセル30A又は30Bの例が配列決定に使用される場合、配列決定される鋳型鎖(図示せず)は、ヒドロゲル24、24Aに付着したプライマー28A、28Bを用いて活性領域32、32A又は32’、32’’に形成され得る。鋳型鎖の形成の最初に、ライブラリ鋳型を、任意の核酸サンプル(例えば、DNAサンプル又はRNAサンプル)から調製することができる。DNA核酸サンプルは、同様にサイズ決定された(例えば、1000bp未満の)一本鎖DNA断片に断片化されてもよい。RNA核酸サンプルは、相補的DNA(cDNA)を合成するために使用することができ、cDNAは、同様にサイズ決定された(例えば、1000bp未満の)一本鎖cDNA断片に断片化されてもよい。調製中に、アダプターは断片のいずれかの末端に追加され得る。低減サイクル増幅を通して、活性領域32、32A又は32’、32’’におけるプライマー28A、28Bに相補的である配列決定プライマー結合部位、インデックス、及び領域などの様々なモチーフが、アダプターに導入され得る。いくつかの例では、単一の核酸サンプルからの断片は、断片に追加された同じアダプターを有する。最終的なライブラリ鋳型は、DNA又はcDNA断片と、両端にアダプターとを含む。DNA又はcDNA断片は、シーケンシングしようとする最終ライブラリ鋳型の一部分を表す。
【0148】
複数のライブラリ鋳型がフローセル30A、30Bに導入されてもよい。複数のライブラリ鋳型は、例えば、活性領域32、32A又は32’、32’’内に固定化された2種類のプライマー28A、28Bのうち1つにハイブリダイズする。
【0149】
次に、クラスタ生成が実行され得る。クラスタ生成の1つの例では、ライブラリ鋳型は、高忠実度DNAポリメラーゼ(high-fidelity DNA polymerase)を使用して3’伸長によって、ハイブリダイズされたプライマーからコピーされる。元のライブラリ鋳型は変性され、活性領域32、32A又は32’、32’’に固定化されたコピーが残る。固定化されたコピーを増幅するために、等温ブリッジ増幅又は他の何らかの形態の増幅が使用され得る。例えば、コピーされた鋳型はループオーバーして隣接する相補的なプライマーにハイブリダイズし、ポリメラーゼはコピーされた鋳型をコピーして二本鎖ブリッジ構造を形成し、当該構造は変性して2本の一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして隣接する相補的なプライマーにハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、密集したクローンクラスタを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスタが変性される。一例では、逆鎖は、特異的塩基切断によって除去され、順方向鋳型鎖を残す。クラスタリングは、活性領域32、32A又は32’、32’’に固定化されたいくつかの鋳型鎖の形成をもたらす(例えば、
図2Bに示すようにレーン18、18Aを横切るか、又は
図2Cに示すようにくぼみ20、20’にある)。このクラスタ化の例はブリッジ増幅と称され、この増幅は実行できる増幅の1つの例である。排除増幅(Examp)ワークフロー(Illumina Inc.)などの他の増幅技術が使用され得ることを理解すべきである。
【0150】
鋳型鎖上の配列の相補的な部分にハイブリダイズする配列決定プライマー(図示せず)を導入してもよい。この配列決定プライマーは、鋳型鎖を配列決定可能な状態にする。
【0151】
次いで、標識ヌクレオチドを含む組み込み混合物を、例えば入力ポートを介してフローセル30A、30Bへと導入してもよい。標識ヌクレオチドに加えて、組み込み混合物は、水、緩衝液、及びポリメラーゼを含み得る。組み込みミックスがフローセル30A、30Bへと導入された場合、ミックスがフローチャネル34に入り、活性領域32、32A又は32’、32’’(鋳型鎖が存在する)と接触する。
【0152】
組み込み混合物をフローセル30A、30B内でインキュベートし、標識ヌクレオチドを、鋳型鎖に沿ってそれぞれのポリメラーゼによって新生鎖へと組み込む。組み込み中、標識ヌクレオチドの1つは、それぞれのポリメラーゼにより、1つの配列決定プライマーを伸長し鋳型鎖の1つに相補的である1つの新生鎖に組み込まれる。組み込みは鋳型鎖依存的方式で行われ、したがって、新生鎖に付加された標識ヌクレオチドの種類の蛍光検出を使用して鋳型鎖の配列を決定することができる。組み込みは、単一の配列決定サイクル中に活性領域(複数可)32、32A又は32’、32’’にわたって鋳型鎖の少なくともいくつかで起こる。
【0153】
組み込まれた標識ヌクレオチドは、標識ヌクレオチドが付加されると更なる配列決定プライマー伸長を終結させる3’OHブロッキング基の存在に起因する、可逆的終結特性を含み得る。インキュベーション及び組み込みのための所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチドを含む組み込み混合物は、洗浄サイクル中にフローセル30A、30Bから除去され得る。洗浄サイクルは、例えばポンプ又は他の好適な機構によって、洗浄溶液(例えば、緩衝液)がフローチャネル内に導かれ、フローチャネルを通り、次いでフローチャネルから出るフロースルー技術を含み得る。
【0154】
プラズモンナノ粒子10、10Aは、鋳型鎖が固定化されている活性領域32、32A又は32’、32’’に存在し、ここには最後に組み込まれた標識ヌクレオチドが位置する。したがって、プラズモンナノ構造10、10Aの少なくともいくつかは、ヌクレオチド組み込み後に光学標識の信号増強近接内に保持される。
【0155】
更なる組み込みが行われることなく、直近で組み込まれた光学標識ヌクレオチドを、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システム(図示せず)は、活性領域32、32A又は32’、32’に励起光を提供してもよい。組み込まれた標識ヌクレオチドの光学(例えば、色素)標識は、励起光に応答して蛍光を発する。加えて、プラズモンナノ構造10、10Aの少なくともいくつかは、それぞれの色素標識の信号増強近接内にあるので、色素標識からの信号はプラズモン共鳴によって増強することができる。
【0156】
イメージングを行った後、切断ミックスを次いでフローセル30A、30Bへと導入してもよい。一例では、切断ミックスは、(i)組み込まれたヌクレオチドから3’OHブロッキング基を除去することができ、(ii)組み込まれたヌクレオチドから色素標識を切断することができる。切断ミックス中の3’OHブロッキング基及び好適な脱ブロッキング剤/成分の例は、以下を含み得る。塩基加水分解によって除去することができるエステル部分;Nal、クロロトリメチルシラン及びNa2S2O3で又はアセトン/水中のHg(II)で除去することができるアリル部分;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)などのホスフィンで切断することができるアジドメチル;酸性条件で切断することができるtert-ブトキシ-エトキシなどのアセタール;LiBF4及びCH3CN/H2Oで切断することができるMOM(-CH2OCH3)部分;チオフェノール及びチオサルフェートなどの求核剤で切断することができる2,4-ジニトロベンゼンスルフェニル;Ag(I)又はHg(II)で切断することができるテトラヒドロフラニルエーテル;並びにホスファターゼ酵素(例えば、ポリヌクレオチドキナーゼ)によって切断され得る3’ホスフェート。切断混合物中の好適な色素標識切断剤/構成要素の例としては、隣接ジオールを切断することができる過ヨウ素酸ナトリウム;アジドメチル結合を切断することができる、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリ(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)などのホスフィン;アリルを切断することができるパラジウム及びTHP;エステル部分を切断することができる塩基;又は任意の他の好適な切断剤を含み得る。
【0157】
次いで、鋳型鎖が配列決定されるまで、更なる配列決定サイクルが行われ得る。
【0158】
消光のための方法及びフローセル
本明細書に開示されるフローセル30の他の例は、消光ナノ構造40を含む。これらのフローセルの各一部を、それぞれ、
図3Dの符号30C、
図4Cの符号30D)、及び
図5Cの符号30Eに示す。これらの例では、消光ナノ構造40は、フローセル30Cに示されるようにパターン化材料16の表面にわたって配置されるか、又はフローセル30D及び30Eに示されるようにパターン化材料16全体にわたって分散される。これらの例示的なフローセル30C、30D、30Eでは、プラズモンナノ構造10、10Aはヒドロゲル24に付着していない。
【0159】
図3D、
図4C、及び
図5Cに示すように、フローセル30C、30D、30Eの各部分は、ベース支持体14と、ベース支持体14上のパターン化材料16と、樹脂マトリックス材料42、42’及び樹脂マトリックス材料42、42’の表面全体にわたって分散又は配置された消光ナノ構造40を含む、パターン化材料16と、活性領域(例えば、32B、32C、32D)のための領域(例えば、レーン18又はくぼみ20)を画定するパターン化材料16と、間隙領域22によって取り囲まれている領域と、領域内のヒドロゲル24と、ヒドロゲル24に付着したプライマー28A、28Bと、を含む。したがって、
図3D、
図4C、及び
図5Cの各々は、その上に形成された活性領域(複数可)32B、32C、32Dを有する多層基材12’、12’-1、12’-2の一例を示す。最終フローセル30C、30D、30Eは、第2の多層基材12’、12’-1、12’-2、又は多層基材12’、12’-1、12’-2に結合された蓋、及び基材12’、12’-1、12’-2又は基材12’、12’-1、12’-2と蓋との間に画定されたフローチャネル34を含むことを理解されたい。
【0160】
いくつかのパターン化材料16は、対象となる励起波長において、望ましくないレベルの自己蛍光(例えば、約380nm~約450nmの範囲の紫色励起波長、又は、約450nm~約495nmの範囲の青色励起波長、又は、約495nm~約570nmの範囲の緑色励起波長)を示す。パターン化材料16からの自己蛍光は、配列決定中にくぼみ20内に形成された個別の新生鎖に組み込まれるヌクレオチドの光学標識をイメージングするときに、バックグラウンドノイズを増加させる可能性がある。フローセル30C、30D、30E内の消光ナノ構造40は、パターン化材料16からの自己蛍光を消光するように配置される。これらのナノ構造40は、例えば、赤色、緑色、青色、紫色、又はそれらの組合せの標的波長を消光するように選択され得る。このように、消光ナノ構造40はバックグラウンドノイズを減少させ、したがってシグナル・ノイズ比(SNR)を増加させることで、結果として、個々のくぼみ20内の個々のクラスタからの蛍光は配列決定中に容易に分解可能である。
【0161】
ここで
図3A~
図3Dを参照すると、フローセル30Cを作製するための例示的な方法が図示されている。この方法は、概して、樹脂マトリックス材料42をナノインプリントして、間隙領域22によって分離されたくぼみ20を含むパターン化材料16を形成することと、パターン化材料16の表面上に消光ナノ構造40のフィルム46を堆積させることであって、フィルム46が約1nm~約20nmの範囲の厚さを有する、堆積させることと、ヒドロゲル24をくぼみ20へと導入する工程と、ヒドロゲル24にプライマーをグラフト28A、28Bすることと、を含む方法である。
【0162】
図3Aに示すように、この例示的な方法は、ベース支持体14の上に配置された樹脂マトリックス材料42を含む材料のスタックを利用する。樹脂マトリックス材料42及びベース支持体14は、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。樹脂マトリックス材料42をパターン化して、パターン化材料16(
図3B)と、多層基材12’の一例(
図2Cに示すものと同様)とを形成する。
【0163】
図3Aに示す例では、樹脂マトリックス材料42がベース支持体14に適用されている。樹脂マトリックス材料42は、適用に好適な粘度に希釈されてもよい。好適な液体担体の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。次いで、希釈樹脂マトリックス材料42は、手動又は自動であり得る任意の好適な適用技術を用いてベース支持体14上に適用され得る。例として、樹脂マトリックス材料42の適用は、蒸着技術又はコーティング技術などを用いて行うことができる。いくつかの特定の例としては、化学蒸着(CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。一例では、スピンコーティングが使用される。
【0164】
樹脂マトリックス材料42を適用するために使用される技術は、液体担体の少なくとも一部を蒸発させることができる。樹脂マトリックス材料42をベース支持体14の表面に適用した後、これをソフトベークして、余分な液体担体を除去してもよい。実施されるとき、ソフトベークは、樹脂マトリックス材料42が堆積された後、作業スタンプ38がその中に配置される前に行われてもよい。ソフトベークは、硬化に使用されるよりも低い温度(例えば、約50℃~約150℃の範囲)で、0秒間超~約3分間の範囲にわたる時間行われてもよい。一例では、ソフトベークの時間は、約30秒~約2.5分の範囲である。
【0165】
次いで、樹脂マトリックス材料42は、任意の好適なパターン化技術を用いてパターン化する。
図3A及び
図3Bに示す例では、ナノインプリントリソグラフィを使用して、樹脂マトリックス材料42をパターン化する。ナノインプリントリソグラフィモールド又は作業スタンプ38は、樹脂マトリックス材料42の層に押しつけられ、樹脂マトリックス材料42上にインプリントを形成する。言い換えれば、樹脂マトリックス材料42は、作業スタンプ38の突出部(ナノフィーチャ44)によってインデントされる、又は穿孔される。樹脂マトリックス材料42を、次に、作業スタンプ38が定位置にある状態で硬化することができる。
【0166】
硬化は、適用されナノインプリントされた樹脂マトリックス材料42を紫外線(UV)照射などの化学線に曝露することによって達成することができる。一例では、放出されるUV放射線の大部分は、約365nmの波長を有し得る。硬化プロセスは、単一のUV露光段階又は複数のUV硬化段階を含み得る。硬化後、作業スタンプ38が取り外される。得られた硬化樹脂マトリックス材料42’及び多層基材12’を
図3Bに示す。硬化樹脂マトリックス材料42’は、内部に画定された地形を有し、したがってパターン化材料16と称される。
図3Bに示すように、パターン化材料16はその中に画定されたくぼみ20を有し、各くぼみ20は、間隙領域22によって分離されている。
【0167】
図3Cに示すように、本方法は、次いで、パターン化材料16の表面上に消光ナノ構造40のフィルム46を堆積させることを含む。消光ナノ構造40は、本明細書に記載の例のいずれかであってもよく、任意の好適な技術を用いて堆積されてもよい。例として、消光ナノ構造40は、電着、スプレーコーティング、又は化学蒸着を用いて堆積されてもよい。
【0168】
消光ナノ構造40は、約1nm~約20nmの範囲にわたる厚さを有するフィルム46を形成するように堆積されてもよい。この厚さにより、硬化樹脂マトリックス材料42’内のフルオロフォアの信号消光近接内に消光ナノ構造40が配置される。
【0169】
図3Dに示すように、本方法は、次いで、ヒドロゲル24をくぼみ20に導入することと、グラフトプライマー28A、28Bをヒドロゲル24にグラフトすることと、を含む。ヒドロゲル24の適用は
図1Bを参照して記載されるように行われてもよく、プライマー28A、28Bのグラフトは、
図1Eを参照して記載されるように行われてもよい。他の例では、ヒドロゲル24はプライマー28A、28Bで予めグラフトされてもよく、したがって、追加のグラフトプロセスは実行されなくてもよい。
【0170】
ヒドロゲル24の適用の前に、フィルム46は、例えば、スルフィドノルボルネン誘導体、又は消光ナノ構造40に付着することができる別のノルボルネン誘導体で活性化されてもよい。スルフィドノルボルネン誘導体では、スルフィドはフィルム46の消光ナノ構造40に付着することができ、続いて、ノルボルネンは堆積されるヒドロゲル24に付着することができる。
【0171】
研磨が(予めグラフトされた)ヒドロゲル24の適用中に行われる場合、フィルム46中の消光ナノ構造40は、間隙領域22から除去されなくてもよいことを理解されたい。
【0172】
この例示的な方法は、くぼみ20の各々に活性領域32Bの別の例を産生する。この活性領域32Bは、各くぼみ20の表面上のヒドロゲル24と、ヒドロゲル24に付着したプライマー28A、28Bとを含む。消光ナノ構造40は、活性領域32Bの一部と見なされても、又は見なされなくてもよい。本明細書に記載されるように、消光ナノ構造40は、硬化樹脂マトリックス材料42’からの信号を消光するように配置される。フィルム46中の消光ナノ構造40のいくつかはまた、配列決定中にくぼみ(複数可)20に導入された光学標識の信号増強近接内に配置されてもよい。これらの消光ナノ構造40は、硬化樹脂バックグラウンド信号を消光し、光学標識信号を増強する二重機能を有し得る。
【0173】
図3Dに示すフィルム46及び活性領域32Bを有する多層基材12’は、フローセル30Cの一部を形成し、別の多層基材12’(フィルム46及び活性領域32Bを有する)又は蓋に取り付けられ(例えば、別個の材料36を介して)、最終フローセル30Cを形成してもよい。最終フローセル30Cの構造は
図2Cに示すものと同様であり得る。
【0174】
図4A~
図4C及び
図5A~
図5Cは、フローセル30D及び30Eを作製するための他の例示的な方法を示す。この例示的な方法は、概して、消光ナノ構造体40を樹脂マトリックス材料42に組み込むことと、間隙領域22によって取り囲まれた活性領域のための領域48を画定するように樹脂マトリックス材料42をパターン化することと、ヒドロゲル24を領域48へと導入する工程と、ヒドロゲル24にプライマーをグラフト28A、28Bすることと、を含む。
【0175】
ここで
図4A~
図4Cを参照すると、フローセル30Dを作製するための例示的な方法が図示されている。
図4Aに示すように、この例示的な方法は、ベース支持体14及びベース支持体14上の樹脂マトリックス材料42を含む材料のスタックを利用し、樹脂マトリックス材料42は、その中に分散された消光ナノ構造40を含む。
【0176】
ベース支持体14は、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。
【0177】
樹脂マトリックス材料42及び消光ナノ構造40はまた、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。この例では、消光ナノ構造体40は樹脂マトリックス材料42全体に分散されている。樹脂マトリックス材料42をベース支持体14上に適用する前に、本方法は、消光ナノ構造体40を樹脂マトリックス材料42に組み込むことを含んでもよい。一例では、消光ナノ構造40は、消光ナノ構造40と樹脂マトリックス材料42との混合物の総重量の約0.1重量%~約10重量%の範囲にわたる量で樹脂マトリックス材料42へと組み込まれる。消光ナノ構造体40を樹脂マトリックス材料42に添加して混合物を形成してもよく、混合物を撹拌又は他の方法で撹拌して消光ナノ構造体40を分散させてもよい。
【0178】
図4Aに示す例では、そこに分散された樹脂マトリックス材料42を有する消光ナノ構造40を、ベース支持体14に適用する。そこに分散された消光ナノ構造40を有する樹脂マトリックス材料42は、任意の例の液体担体で、適用に好適な粘度に希釈されてもよい。次いで、そこに分散した消光ナノ構造40を有する希釈樹脂マトリックス材料42を、任意の好適な適用技術を用いてベース支持体14上に好適してもよい。適用後、
図3A及び
図3Bを参照して説明したように、そこに分散した消光ナノ構造40を有する樹脂マトリックス材料42をソフトベークして、余分な液体担体を除去してもよい。
【0179】
次いで、例えばナノインプリントリソグラフィを用いて、そこに分散した消光ナノ構造40を有する樹脂マトリックス材料42をパターン化して、
図4Bに示すように、間隙領域22によって取り囲まれた領域48を画定する。この例では、領域48はレーン18であり、間隙領域22はレーン18を取り囲む。
図4Aに示すように、この例示的な方法における作業スタンプ38は、形成されるレーン(複数可)18のネガティブレプリカであるナノフィーチャ(複数可)44を含む。そこに分散した消光ナノ構造40を有する樹脂マトリックス材料42に作業スタンプ38を押しつける場合、
図3A及び
図3Bを参照して説明したように、樹脂が硬化し得る。得られた硬化樹脂マトリックス材料42’(パターン化材料16)及び多層基材12’-1を
図4Bに示す。
図4Bに示すように、パターン化材料16はその中に画定されたレーン18を有し、レーン18は間隙領域22によって取り囲まれている。
【0180】
図4Cに示すように、本方法は、次いで、ヒドロゲル24を領域48(この例ではレーン18)に導入することと、プライマー28A、28Bをヒドロゲル24にグラフトすることとを含む。ヒドロゲル24の適用は
図1Bを参照して記載されるように行われてもよく、プライマー28A、28Bのグラフトは、
図1Eを参照して記載されるように行われてもよい。他の例では、ヒドロゲル24はプライマー28A、28Bで予めグラフトされてもよく、したがって、追加のグラフトプロセスは実行されなくてもよい。
【0181】
この例示的な方法は、レーン18内の活性領域32Cの別の例を産生する。この活性領域32Cは、レーン18の表面上のヒドロゲル24と、ヒドロゲル24に付着したプライマー28A、28Bとを含む。この例では、消光ナノ構造40は活性領域32Cの一部とは見なされない。
【0182】
図4Cに示す活性領域32Cを有する多層基材12’-1は、フローセル30Dの一部を形成し、別の多層基材12’-1又は蓋に取り付けられて(例えば、別個の材料36を介して)、最終フローセル30Dを形成し得る。最終フローセル30Dの構造は
図2Bに示すものと同様であり得る。
【0183】
ここで
図5A~
図5Cを参照すると、フローセル30Eを作製するための例示的な方法が図示されている。
図5Aに示すように、この例示的な方法は、ベース支持体14及びベース支持体14上の樹脂マトリックス材料42を含む材料のスタックを利用し、樹脂マトリックス材料42は、その中に分散された消光ナノ構造40を含む。
【0184】
ベース支持体14は、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。
【0185】
樹脂マトリックス材料42及び消光ナノ構造40はまた、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。この例では、消光ナノ構造40は、
図4A~
図4Cを参照して説明したように、樹脂マトリックス材料42全体に分散されている。
【0186】
次いで、例えばナノインプリントリソグラフィを用いて、そこに分散した消光ナノ構造40を有する樹脂マトリックス材料42をパターン化して、
図5Bに示すように、間隙領域22によって取り囲まれた領域48を画定する。この例では、各領域48はくぼみ20であり、間隙領域22はくぼみ20を取り囲む。
図4Aに示すように、この例示的な方法における作業スタンプ38は、形成されるくぼみ(複数可)20のネガティブレプリカであるナノフィーチャ(複数可)44を含む。そこに分散した消光ナノ構造40を有する樹脂マトリックス材料42に作業スタンプ38を押しつける場合、
図3A及び
図3Bを参照して説明したように、樹脂が硬化し得る。得られた硬化樹脂マトリックス材料42’(パターン化材料16)及び多層基材12’-2を
図5Bに示す。
図5Bに示すように、パターン化材料16はその中に画定された複数のくぼみ20を有し、各くぼみ20は、間隙領域22によって分離されている。
【0187】
図5Cに示すように、本方法は、次いで、ヒドロゲル24を領域48(この例ではくぼみ20)に導入することと、プライマー28A、28Bをヒドロゲル24にグラフトすることとを含む。ヒドロゲル24の適用は
図1Bを参照して記載されるように行われてもよく、プライマー28A、28Bのグラフトは、
図1Eを参照して記載されるように行われてもよい。他の例では、ヒドロゲル24はプライマー28A、28Bで予めグラフトされてもよく、したがって、追加のグラフトプロセスは実行されなくてもよい。
【0188】
この例示的な方法は、各くぼみ20の活性領域32Dの別の例を産生する。この活性領域32Dは、各くぼみ20の表面上のヒドロゲル24と、ヒドロゲル24に付着したプライマー28A、28Bとを含む。この例では、消光ナノ構造40は活性領域32Dの一部とは見なされない。
【0189】
図5Cに示す活性領域32Dを有する多層基材12’-2は、フローセル30Eの一部を形成し、別の多層基材12’-2又は蓋に取り付けられて(例えば、別個の材料36を介して)、最終フローセル30Eを形成し得る。最終フローセル30Eの構造は
図2Cに示すものと同様であり得る。
【0190】
フローセル30C、30D、及び30Eの例は、フローセル30A及び30Bについて本明細書に記載の配列決定方法で使用してもよい。消光ナノ構造40の存在に起因して、配列決定中にシグナル・ノイズ比が増加し得る。フローセル30A及び30Bを参照して記載されたプラズモン増強は、フローセル30C、30D、及び30Eで発生しても、又は発生しなくてもよく、イメージング中に組み込まれた各標識ヌクレオチドの光学標識からの消光ナノ構造40の距離に部分的に依存する。
【0191】
プラズモン増強及び消光のためのフローセル
本明細書に開示されるフローセル30の更に他の例は、ハイブリッドである。一例は、
図2Cに示すフローセル30Bと、
図3Dに示すフローセル30Cとのハイブリッドである。この例は、ヒドロゲル24内のプラズモンナノ構造10と、パターン化材料16上に形成されたフィルム46内の消光ナノ構造40とを含む。別の例は、
図2Bに示すフローセル30Aと、
図4Cに示すフローセル30Dとのハイブリッドである。更に別の例は、
図2Cに示すフローセル30Bと、
図5Cに示すフローセル30Eとのハイブリッドである。これらの例は、ヒドロゲル24中のプラズモンナノ構造10と、パターン化材料16中の消光ナノ構造40とを含む。
【0192】
ハイブリッド例は、フローセル30A及び30Bについて本明細書に記載の配列決定方法で使用してもよい。プラズモンナノ構造10及び消光ナノ構造40の両方の存在に起因して、組み込まれた各標識ヌクレオチドの光学標識からの信号は増強されてもよく、硬化樹脂マトリックス材料42’からの信号は消光されてもよい。このようにして、シグナル・ノイズ比は配列決定中に増加し得る。
【0193】
本開示を更に説明するために、本明細書に例を示す。これらの例は、例示の目的で提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
【0194】
非限定的な作業例
実施例1
この実施例は、フローセルのヒドロゲルに組み込まれたプラズモンナノ粒子からの蛍光増強を実証するために行われた。
【0195】
この例では、8つのフローチャネル(長さ8cm)を有するパターン化フローセルを使用した。この例では、フローチャネルをレーン1~レーン8と称する。各フローチャネルはパターン化された樹脂材料に形成されたくぼみを含んだ。
【0196】
第1のフローチャネル及び第2のフローチャネル(レーン1及びレーン2)は、対照フローチャネルであり、任意のヒドロゲルでコーティングされていなかった。第3~第8のフローチャネル(レーン3~レーン8)を蛍光PAZAM(すなわち、そこにALEXA FLUOR(登録商標)545色素がグラフトされたPAZAM)でコーティングした。
【0197】
水中の銀ナノチューブ(約75nm)を用いて、異なるナノ粒子濃度を有する5つの異なるプラズモンナノ粒子溶液を調製した。溶液の濃度を表1に示す。
【0198】
【0199】
100μLの各溶液(NPS1~NPS5)を、レーン3~レーン7(蛍光PAZAMでコーティング)内でそれぞれ洗い流した。100μLのNPS1(1mg/mL)もまた、対照レーン2(蛍光PAZAMによりコーティングされず)内で洗い流した。ナノ粒子溶液のいずれも、対照レーン1(蛍光PAZAMでコーティングされていない)又は対照レーン8(蛍光PAZAMでコーティングされている)に導入しなかった。ナノ粒子溶液導入後のフローセルの写真を撮影し、
図6Aで本明細書に再現する。元のカラー写真では、ナノ粒子溶液でコーティングされたレーンは緑色であり、ナノ粒子濃度が増加するにつれて色が明るくなった。したがって、対照レーン2及びレーン3(各々NPS1でコーティングされ、したがって、ナノ粒子の最高濃度)は、最も明るい緑色を呈した。色により、異なるナノ粒子溶液(NPS1~NPS5)の存在が確認された。
【0200】
レーン2~レーン7のナノ粒子溶液を用いて、フローセルのTYPHOON(登録商標)スキャナ(Amersham)で蛍光スキャン(532nm励起)を行った。結果は本明細書で再現されないが、蛍光信号が、レーン3~レーン7(それぞれ、そこにNPS1~NPS5を含む)において、及び対照レーン8(蛍光PAZAMであるが、ナノ粒子溶液はなし)において観察されたが、対照レーン1又は対照レーン2のいずれにおいても観察されなかった。対照レーン2の結果は、ナノ粒子自体から蛍光信号が放射されないことを確認した。
【0201】
次いで、ナノ粒子溶液NPS1~NPS5をレーン2~レーン7から流し出した。クエン酸ナトリウム緩衝液をレーン1~レーン8の各々に導入し、TYPHOON(登録商標)スキャナ(Amersham)でフローセルの別の蛍光スキャン(532nm励起)を行った。このスキャンからの画像は、
図6Bにおいて、左側にレーン8、及び右側にレーン1を用いて再生される。
図6Bの画像に対応する相対強度を
図6Cのグラフに示す。
図6B及び
図6Cの両方に示すように、蛍光PAZAMなしの対照レーン1及び対照レーン2では蛍光信号は観察されなかった。これらの結果により、対照レーン2に導入されていたナノ粒子が、NPS1がそこから洗い流された場合に除去されたことが確認された。対照的に、蛍光PAZAMを含むがナノ粒子溶液を含まないレーン8と、蛍光PAZAMを含みNPS1~NPS5でコーティングされたレーン3~7の各々において、蛍光信号が観察された。これらの結果は、濃度が増加するにつれてレーン3~レーン7の蛍光信号が増加したので、プラズモンナノ粒子が、それぞれのナノ粒子溶液がそこから洗い流される前にレーン3~レーン7のヒドロゲルに捕捉されたことを実証している(すなわち、レーン3が最も強い信号を有し、レーン7が最も弱い信号を有した)。これらの結果は、ナノ粒子が蛍光信号を増強し、濃度が増強の大きさに影響を及ぼし得ることを実証した。
【0202】
蛍光PAZAMをレーン3~レーン8に導入した後、及びナノ粒子溶液の導入前に、フローセルのTYPHOON(登録商標)スキャナで蛍光スキャン(532nm励起)を行った。レーン8のスキャンは、NSP1~NSP5のうち1つで処理する前に、コーティングされたレーンのベースライン蛍光強度測定を提供した。このベースライン測定値を
図6Dのグラフに示す。
【0203】
ナノ粒子溶液の導入、インキュベーション、及び除去の後、並びにクエン酸ナトリウム緩衝液の導入の後、TYPHOON(登録商標)スキャナ(Amersham)上のフローセルの別の蛍光スキャン(532nm励起)を行った。ナノ粒子溶液の導入、インキュベーション、及び除去後、並びにクエン酸ナトリウム緩衝液の導入後に行われた蛍光スキャン(532nm励起)からのレーン3~レーン7の蛍光強度もまた、
図6Dに示す。
【0204】
図6Dの結果は、ヒドロゲルに導入された溶液中のプラズモンナノ構造の濃度が大きいほど、蛍光増強が大きいことを示している。例えば、最高濃度のナノ粒子(1mg/mL)に曝露されたレーン3は、ベースライン測定と比較して、緑色(532nm)信号の4.5倍の増強に達した。
【0205】
実施例2
ナノ粒子濃度がプラズモンナノ粒子増強の大きさに及ぼし得る影響を更に調べるために、異なる蛍光ヒドロゲルを有する別のフローセルを調製し、試験した。
【0206】
この例では、8つのフローチャネル(長さ8cm)を有するパターン化フローセルを使用した。各フローチャネルはパターン化された樹脂材料に形成されたくぼみを含んだ。全てのレーンを第2の蛍光PAZAMでコーティングし、この実施例では、ALEXA FLUOR(登録商標)488色素がそこにグラフトされたPAZAMであった。
【0207】
第2の蛍光PAZAMをレーンに導入した後、フローセルのTYPHOON(登録商標)スキャナで蛍光スキャン(488nm励起)を行った。レーン8のスキャンは、実施例1のNSP1~NSP5のうち1つで処理する前に、コーティングされたレーンのベースライン蛍光強度測定を提供した。このベースライン測定値を
図7のグラフに示す。
【0208】
実施例1、NPS1~NPS5からの各ナノ粒子溶液100μLを、それぞれ、レーン3~レーン7(第2の蛍光PAZAMでコーティング)に洗い流した。溶液を、5分間にわたり室温でインキュベートした後、フローセルから洗い流させた。クエン酸ナトリウム緩衝液をレーン1~レーン8の各々に導入し、TYPHOON(登録商標)スキャナ(Amersham)でフローセルの別の蛍光スキャン(488nm励起)を行った。レーン3~レーン7の蛍光強度もまた
図7に示す。
【0209】
図7の結果は、ヒドロゲルに導入された溶液中のプラズモンナノ構造の濃度が大きいほど、蛍光増強が大きいことを示している。例えば、最高濃度のナノ粒子(1mg/mL)に曝露されたレーン3は、ナノ粒子処理前にスキャンされた同じフローセルで得られた標準強度と比較して、青色(488nm)信号の両方で4.5倍の増強に達した。これらの結果は
図6Dに示す緑色(532nm)の結果と一致する。
【0210】
実施例3
実施例1と同じ種類のフローセルを使用した。この例では、3つのレーンを以下のように処理した:レーン1をPAZAMでコーティングし、P5及びP7プライマーをグラフトした。レーン2をPAZAMでコーティングし、室温で5分間にわたり実施例1からのNPS1(1mg/mL)で処理した後、NPS1を除去し、次いで、P5プライマー及びP7プライマーをグラフトした。レーン3をPAZAMによりコーティングし、P5プライマー及びP7プライマーによりグラフトし、次いで、実施例1からのNPS1(1mg/mL)により室温で5分間処理した後、NPS1を除去した。
【0211】
次いで、レーン1~レーン3の各々を、レーン内のP5プライマーにハイブリダイズし、したがって標識されたALEXA FLUOR(商標)545-P5補体に曝露した。TYPHOON(登録商標)スキャナ(Amersham)でフローセルの蛍光スキャン(532nm励起)を行った。結果は本明細書で再現されないが、蛍光増強はレーン1では観察されなかった一方で、レーン2及びレーン3で観察され、両方ともプラズモンナノ粒子で処理された。これらの結果は、プラズモンナノ粒子が、プライマーグラフトの前又は後のいずれかでヒドロゲルに導入され得ることを示した。
【0212】
追記事項
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組合せが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組合せは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解すべきである。
【0213】
「一例」、「別の例」、「ある例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくともよいことを意味している。更に、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせ得ることを理解すべきである。
【0214】
本明細書に提供される範囲は、そのような値又は部分範囲が明示的に列挙されているかのように、示される範囲及びその示される範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約2mm~約300mmにわたる範囲は、約2mm~約300mmの明示的に記載された限界だけでなく、約40mm、約250.5mmなどの個々の値、及び約25mm~約175mmなどの部分範囲も含むと解釈するべきである。
【0215】
更に、「約」及び/又は「実質的に」が値を説明するために利用される場合、それらは、示された値からのわずかな変動(最大で±10%)を包含することを意味する。
【0216】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解すべきである。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
【0217】
代表的な特徴。
代表的な特徴は、以下の番号を付けた条項に記載されており、単独であってもよく、又は任意の組合せで、本明細書の本文及び/又は図面に開示される1つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
1.方法であって、
基材の表面にヒドロゲルを適用することと、
プライマーを当該適用ヒドロゲルにグラフトすることと、
当該プライマーをグラフトする前又は後に、当該適用ヒドロゲルにプラズモンナノ構造を導入することと、
を含む、方法。
2.当該プラズモンナノ構造が、当該ヒドロゲルの遊離アジド基に共有結合するアルキンで官能化されている、条項1に記載の方法。
3.当該プラズモンナノ構造が、当該ヒドロゲルのアルキンに共有結合するアジドで官能化されている、条項1又は条項2に記載の方法。
4.当該プラズモンナノ構造が、当該ヒドロゲルに付着している当該結合対の第2のメンバーと相互作用する結合対の第1のメンバーで官能化されている、条項1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.当該第1のメンバー及び当該第2のメンバーが、NiNTAリガンド及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ(spytag)及びスパイキャッチャー(spycatcher)、又はマレイミド及びシステイン、又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びアミン、又はアルデヒド及びヒドラジン、又はアミン及び活性化カルボキシレート、又はアミン及びN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又はチオール及びアルキル化試薬、又はホスホラミダイト及びチオエーテルを含む、条項4に記載の方法。
6.当該基材の当該表面が、間隙領域によって分離されたくぼみを含み、当該方法が、当該プライマーをグラフトする前及び当該プラズモンナノ構造を導入する前に、当該ヒドロゲルを当該間隙領域から除去することを更に含む、条項1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.当該基材の当該表面が、間隙領域によって取り囲まれたレーンを含み、当該方法が、当該プライマーをグラフトする前及び当該プラズモンナノ構造を導入する前に、当該ヒドロゲルを当該間隙領域から除去することを更に含む、条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.当該プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、条項1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.当該プラズモンナノ構造が、各々、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有する、条項1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.フローセルであって、
ベース支持体と、
当該ベース支持体上のパターン化材料であって、当該パターン化材料は、
樹脂マトリックス材料、及び
当該樹脂マトリックス材料の表面全体にわたって分散されている又は配置されている、消光ナノ構造
を含む、パターン化材料と、
活性領域のための領域を画定する当該パターン化材料であって、当該領域が間隙領域によって取り囲まれている、パターン化材料と、
当該領域内のヒドロゲルと、
当該ヒドロゲルに付着されたプライマーと、
を含む、フローセル。
11.当該消光ナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、条項10に記載のフローセル。
12.当該消光ナノ構造が、固体構造、中空構造、又はコアシェル構造を有する、条項10又は条項11に記載のフローセル。
13.当該領域が、レーンを含み、当該間隙領域が、当該レーンを取り囲む、条項10~12のいずれか一項に記載のフローセル。
14.
当該領域が、くぼみであり、
当該パターン化材料が、複数の当該くぼみを画定し、
当該複数のくぼみの各々が、当該間隙領域によって分離されている、
条項10~13のいずれか一項に記載のフローセル。
15.フローセルにおける配列決定中にシグナル・ノイズ比を増加させるための方法であって、
樹脂マトリックス材料をナノインプリントして、間隙領域によって分離されたくぼみを含むパターン化材料を形成することと、
パターン化材料の表面上に消光ナノ構造のフィルムを堆積させることであって、当該フィルムが約1nm~約20nmの範囲の厚さを有する、堆積させることと、
ヒドロゲルを当該くぼみへと導入することと、
プライマーを当該ヒドロゲルにグラフトすることと、
を含む、方法。
16.当該消光ナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、条項15に記載の方法。
17.フローセルにおける配列決定中にシグナル・ノイズ比を増加させるための方法であって、
消光ナノ構造を樹脂マトリックス材料へと組み込むことと、
間隙領域によって取り囲まれた活性領域のための領域を画定するように当該樹脂マトリックス材料をパターン化することと、
ヒドロゲルを当該領域へと導入することと、
プライマーを当該ヒドロゲルにグラフトすることと、
を含む、方法。
18.当該消光ナノ構造が、当該消光ナノ構造と当該樹脂マトリックス材料との混合物の総重量の約0.1重量%~約10重量%の範囲にわたる量で当該樹脂マトリックス材料へと組み込まれる、条項17に記載の方法。
19.当該消光ナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープシリコンナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、条項17又は条項18に記載の方法。
20.当該領域が、レーンを含み、当該間隙領域が、当該レーンを取り囲む、条項17~19のいずれか一項に記載の方法。
21.
当該領域が、くぼみであり、
当該パターン化材料が、複数の当該くぼみを画定し、
当該複数のくぼみの各々が、当該間隙領域によって分離されている、
条項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】