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特表2023-550693光退色情報を使用する単一分子検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】光退色情報を使用する単一分子検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20231128BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20231128BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231128BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231128BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20231128BHJP
【FI】
G01N21/64 F ZNA
G01N21/64 B
G01N33/483 C
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525609
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 US2021056707
(87)【国際公開番号】W WO2022093861
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/106,325
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/252,906
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/165,798
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プレストン、カイル
(72)【発明者】
【氏名】リード、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】シー、シンホア
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ハイドン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA03
2G043KA09
2G043LA02
2G043NA01
2G043NA02
2G045CA00
2G045CB00
2G045DA00
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA35
2G045FA16
2G045FA19
2G045FB12
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB20
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
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4B063QQ42
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4B063QR32
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4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本開示の態様は、集積デバイスを備えるシステムを較正するための技法に関する。いくつかの実施形態によれば、集積デバイスを含むシステムを較正するための方法が提供され、方法は、少なくとも1つの励起源からの光により集積デバイスのチャンバ内に配置された参照色素分子を励起するステップと、参照色素分子によって放出された信号であって、参照色素分子の退色時間を表す情報を含む信号を取得するステップと、参照色素分子の退色時間に基づいてシステムの1つまたは複数の特性を調整するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積デバイスを備えるシステムを較正するための方法であって、
少なくとも1つの励起源からの光により前記集積デバイスのチャンバ内に配置された参照色素分子を励起するステップと、
前記参照色素分子によって放出された信号であって、前記参照色素分子の退色時間を表す情報を含む前記信号を取得するステップと、
前記参照色素分子の前記退色時間に基づいて、前記システムの1つまたは複数の特性を調整するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の特性は、前記少なくとも1つの励起源の出力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調整するステップは、前記参照色素分子の前記退色時間が閾値時間未満である場合に、前記少なくとも1つの励起源の出力を減少させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記参照色素分子を励起するステップが、少なくとも前記参照色素分子が光退色を起こすまで、前記集積デバイスの前記チャンバに光を照射することを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照色素分子によって放出された前記信号に基づいて、前記参照色素分子の前記退色時間を決定するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記参照色素分子の前記退色時間を決定するステップが、前記参照色素分子によって放出された前記信号の強度が閾値強度を超える持続時間を決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記システムの前記1つまたは複数の特性を調整した後に、前記集積デバイスを動作させて、前記集積デバイスの前記チャンバ内に配置されたサンプルによって放出された信号を取得するステップをさらに含み、前記サンプルによって放出された前記信号が、前記サンプルの少なくとも1つの特性を表す情報を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルの前記少なくとも1つの特性に基づいて前記サンプルを同定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルがポリペプチドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルを同定するステップが、前記サンプルの少なくとも1つの特徴を表す前記情報に少なくとも部分的に基づいて前記サンプルの1つまたは複数のアミノ酸を同定すること、および前記1つまたは複数のアミノ酸に少なくとも部分的に基づいてポリペプチドを同定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが核酸鎖を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルを同定するステップが、前記サンプルの前記少なくとも1つの特徴を表す前記情報に少なくとも部分的に基づいて、前記核酸鎖の1つまたは複数のヌクレオチドを同定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記チャンバは、複数のチャンバを含んでおり、
前記参照色素分子は、前記複数のチャンバのそれぞれに配置された複数の参照色素分子を含んでおり、
前記参照色素分子によって放出された信号を取得するステップは、前記複数の参照色素分子によって放出された複数の信号を取得することを含んでおり、
前記システムの前記1つまたは複数の特性を調整するステップは、前記複数の参照色素分子の退色時間を表す情報に基づく、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の参照色素分子が同じ分子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
集積デバイスであって、
参照色素分子を受容するための少なくとも1つのチャンバと、
少なくとも1つの励起源からの光によって励起されたときに前記参照色素分子によって放出された信号であって、前記参照色素分子の退色時間を表す情報を含む前記信号を受信するための少なくとも1つの光検出領域と、
前記参照色素分子の前記退色時間に基づいて、前記集積デバイスを含むシステムの1つまたは複数の特性の調整を制御するように構成されている少なくとも1つのコントローラと、を備える集積デバイス。
【請求項16】
前記1つまたは複数の特性は、前記少なくとも1つの励起源の出力を含む、請求項15に記載の集積デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記参照色素分子の前記退色時間が閾値時間未満である場合に、前記少なくとも1つの励起源の前記出力を減少させることによって、少なくとも部分的に前記システムの前記1つまたは複数の特性の調整を制御するように構成されている、請求項16に記載の集積デバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのコントローラが、前記参照色素分子の前記退色時間を決定するようにさらに構成されている、請求項15乃至17のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項19】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記参照色素分子によって放出された前記信号が閾値強度を超える持続期間を決定することによって、少なくとも部分的に前記参照色素分子の前記退色時間を決定するように構成されている、請求項18に記載の集積デバイス。
【請求項20】
集積デバイスを製造する方法であって、
前記集積デバイスの基板上にチャンバを準備するステップと、前記チャンバは、参照色素分子を受容するように構成されるとともに、前記参照色素分子が少なくとも1つの光源からの光を受光するように前記基板上に配置されており、
前記チャンバに隣接して配置された光検出領域を準備して、前記少なくとも1つの光源からの光が前記参照色素分子に照射されたときに前記参照色素分子によって放出された信号を前記光検出領域が受信するようにするステップと、
少なくとも1つのコントローラを前記光検出領域に結合して、前記少なくとも1つのコントローラが前記参照色素分子によって放出された前記信号に含まれる情報であって、前記参照色素分子の退色時間を表す前記情報を受信するようにするステップと、を含む方法。
【請求項21】
集積デバイスにおけるサンプルの定量的装填の指標を決定するための方法であって、
少なくとも1つの励起源からの励起光を用いて、前記励起光による励起の間に、前記集積デバイスの1つまたは複数のチャンバのうちの1つのチャンバの表面に結合された前記サンプルの個々の生体分子に付着された1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップと、
前記励起光に反応して前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を取得するステップと、
前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された前記信号に基づいて、前記サンプルの定量的装填の指標を決定するステップと、を含む方法。
【請求項22】
前記信号が、ある期間にわたって前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された光の強度を表す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップが、前記1つまたは複数の参照色素分子を光退色させることを含む、請求項21乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された前記信号における退色ステップの数を決定するステップと、前記光退色ステップの数に基づいて、前記チャンバの表面に結合された個々の生体分子の数を決定するステップとをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルの前記定量的装填の指標が、前記1つまたは複数のチャンバのうちの単一のチャンバの表面に結合された前記個々の生体分子の数を含む、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記サンプルの前記定量的装填の指標が、前記1つまたは複数のチャンバのうちの個々の表面に結合された前記サンプルの単一生体分子を含む前記1つまたは複数のチャンバの割合を含む、請求項21乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記定量的装填の指標に基づいて前記集積デバイスの動作を最適化するステップをさらに含む、請求項21乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記定量的装填の指標に基づいて前記集積デバイスの動作を最適化するステップは、前記集積デバイスへの前記サンプルの装填を行う方法を調整することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記集積デバイスへの前記サンプルの装填を行う方法を調整することが、前記サンプルにおける生体分子の濃度を調整することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルの装填を行う方法を調整することが、前記サンプルの表面に結合された単一の生体分子を含む前記1つまたは複数のチャンバの数を最大化するように前記サンプルの装填を行う方法を調整することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記定量的装填の指標に基づいて前記集積デバイスの動作を最適化するステップは、前記1つまたは複数のチャンバのうちの少なくともいくつかからの信号を後続の分析から除外することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
最適な数の前記1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、前記1つまたは複数のチャンバの個々のチャンバの表面に結合された少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含むまで、前記1つまたは複数のチャンバに追加のサンプルを再装填するステップをさらに含む、請求項21乃至31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記定量的装填の指標を使用して、最適な数の前記1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、前記1つまたは複数のチャンバの個々のチャンバの表面に結合された少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含む時期を決定するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
最適な数の前記1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、前記サンプルの少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含む場合に、装填を終了するステップをさらに含み、前記装填を終了するステップが、結合されていない生体分子を前記集積デバイスから除去することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
装填を終了した後に、
前記励起光を前記1つまたは複数のチャンバに照射すること、
前記励起光に応答して前記1つまたは複数のチャンバから放出された信号を取得すること、
前記信号に基づいて、前記サンプルの1つまたは複数の生体分子を同定すること、によって少なくとも部分的に前記サンプルをシークエンシングするステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の参照色素分子の各々が、前記個々の生体分子に付着されている場合、前記個々の生体分子から少なくとも1nm離れている、請求項21乃至35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記個々の生体分子が、ペプチドまたは核酸のうちの1つである、請求項21乃至36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数の参照色素分子が、前記個々の生体分子に共有結合している、請求項21乃至37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記1つまたは複数の参照色素分子が、前記個々の生体分子に非共有結合している、請求項21乃至38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記1つまたは複数の参照色素分子が、個々の二次生体分子に結合され、前記個々の二次生体分子が、前記サンプルの個々の生体分子に付着される、請求項21乃至39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記個々の二次生体分子がオリゴヌクレオチドを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記個々の二次生体分子がN末端アミノ酸認識剤を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記個々の二次生体分子が、前記個々の生体分子に可逆的に結合する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記1つまたは複数の参照色素分子は、前記1つまたは複数の参照色素分子の個々の参照色素分子が前記個々の生体分子に結合されたときにのみ放出光を放出するようなパルス化パターンを示す、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記サンプルの前記定量的装填の指標が前記チャンバの表面に結合された生体分子の数を含み、前記方法が、前記1つまたは複数の参照色素分子の前記パルス化パターンに基づいて前記チャンバ内の生体分子の数を決定するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記1つまたは複数の参照色素分子のうちの少なくともいくつかは、前記個々の生体分子が結合される個々のリンカーに付着され、前記個々のリンカーは、前記チャンバの表面に結合される、請求項21乃至45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
サンプルの定量的装填の指標を決定するように構成された集積デバイスであって、
前記サンプルの個々の生体分子に付着される1つまたは複数の参照色素分子を、少なくとも1つの励起源から照射される励起光による前記1つまたは複数の参照色素分子の励起の間、受容するための少なくとも1つのチャンバであって、前記個々の生体分子は、前記少なくとも1つのチャンバの表面に結合される、前記少なくとも1つのチャンバと、
前記少なくとも1つの励起源からの前記励起光に反応して前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を受信するための少なくとも1つの光検出領域と、
前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された前記信号に基づいて、前記サンプルの定量的装填の指標を決定するように構成された少なくとも1つのコントローラと、を備える集積デバイス。
【請求項48】
前記信号が、ある期間にわたって前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された光の強度を表す、請求項47に記載の集積デバイス。
【請求項49】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記1つまたは複数の参照色素分子が少なくとも光退色するまで、前記励起光を前記少なくとも1つのチャンバに照射するように前記少なくとも1つの励起源を制御するように構成されている、請求項47乃至48のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項50】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された前記信号における光退色ステップの数を決定し、前記光退色ステップの数に基づいて、前記チャンバの表面に結合された個々の生体分子の数を決定するように構成されている、請求項49に記載の集積デバイス。
【請求項51】
前記サンプルの前記定量的装填の指標が、前記少なくとも1つのチャンバのうちの単一のチャンバの表面に結合された前記個々の生体分子の数を含む、請求項47乃至50のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項52】
前記サンプルの前記定量的装填の指標が、前記少なくとも1つのチャンバの個々のチャンバの表面に結合された前記サンプルの単一生体分子を含む、前記少なくとも1つのチャンバにおけるチャンバの割合を含む、請求項47乃至51のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項53】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記定量的装填の指標を使用して、前記少なくとも1つのチャンバのうちの最適な数のチャンバがそれぞれ、前記少なくとも1つのチャンバの個々のチャンバの表面に結合された少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含む時期を決定するようにさらに構成されている、請求項47乃至52のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項54】
前記少なくとも1つのコントローラが、前記信号に基づいて前記個々の生体分子を同定するようにさらに構成されている、請求項47乃至53のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項55】
前記個々の生体分子が、ペプチドまたは核酸のうちの1つである、請求項47乃至54のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項56】
前記1つまたは複数の参照色素分子が、前記個々の生体分子に共有結合される、請求項47乃至55のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項57】
前記1つまたは複数の参照色素分子が、前記個々の生体分子に非共有結合される、請求項47乃至55のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項58】
前記1つまたは複数の参照色素分子が、個々の二次生体分子に結合され、前記個々の二次生体分子が、前記サンプルの前記個々の生体分子に付着される、請求項47乃至56のいずれか一項に記載の集積デバイス。
【請求項59】
前記個々の二次生体分子がオリゴヌクレオチドを含む、請求項58に記載の集積デバイス。
【請求項60】
前記個々の二次生体分子がN末端アミノ酸認識剤を含む、請求項58に記載の集積デバイス。
【請求項61】
前記個々の二次生体分子が、前記個々の生体分子に可逆的に結合する、請求項58に記載の集積デバイス。
【請求項62】
集積デバイスにおいてサンプルの定量的装填の指標を決定するための方法であって、
前記サンプルの個々の生体分子に可逆的に結合する個々の二次生体分子に付着された1つまたは複数の参照色素分子を少なくとも1つの励起源からの光により励起するステップと、前記個々の生体分子は、前記集積デバイスの複数のチャンバのうちの1つのチャンバの表面に結合されており、
前記励起光に反応して前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を取得するステップと、
前記1つまたは複数の参照色素分子のパルス化パターンを決定するステップと、
前記1つまたは複数の参照色素分子の前記パルス化パターンに基づいて、前記サンプルの定量的装填の指標を決定するステップと、を含む方法。
【請求項63】
前記個々の二次生体分子は、パルス周期ごとに1回、前記サンプルの前記個々の生体分子に結合し、
前記パルス化パターンは、1つまたは複数のパルスを含むか、またはパルスを含んでおらず、
前記定量的装填の指標は、パルス化期間の間に受信された前記1つまたは複数のパルスの数に基づいて決定される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記個々の二次生体分子がオリゴヌクレオチドを含む、請求項62乃至63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記個々の二次生体分子がN末端アミノ酸認識剤を含む、請求項62乃至64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記の定量的装填の指標が、前記チャンバの表面に結合された前記サンプルの前記個々の生体分子の数を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記サンプルの前記定量的装填の指標を決定するステップが、前記パルス化パターン内にパルスが存在しない場合、前記チャンバが生体分子を含んでいないと決定することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記信号が、ある期間にわたって前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された光の強度を表す、請求項62乃至67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップが、前記1つまたは複数の参照色素分子を光退色させることを含む、請求項62乃至68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記1つまたは複数の参照色素分子によって放出された前記信号における退色ステップの数を決定するステップと、前記光退色ステップの数に基づいて、前記チャンバの表面に結合された個々の生体分子の数を決定するステップとをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記サンプルの前記定量的装填の指標が、前記1つまたは複数のチャンバのうちの単一のチャンバの表面に結合された前記個々の生体分子の数を含む、請求項62乃至70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記サンプル前記の定量的装填の指標が、前記1つまたは複数のチャンバのうちの個々の表面に結合された前記サンプルの単一生体分子を含む前記1つまたは複数のチャンバの割合を含む、請求項62乃至71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記定量的装填の指標に基づいて前記集積デバイスの動作を最適化するステップをさらに含む、請求項62乃至72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記定量的装填の指標に基づいて前記集積デバイスの動作を最適化するステップは、前記集積デバイスへの前記サンプルの装填を行う方法を調整することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記集積デバイスへの前記サンプルの装填を行う方法を調整することが、前記サンプルにおける生体分子の濃度を調整することを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記サンプルの装填を行う方法を調整することが、前記サンプルの表面に結合された単一の生体分子を含む前記1つまたは複数のチャンバの数を最大化するように前記サンプルの装填を行う方法を調整することを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記定量的装填の指標に基づいて前記集積デバイスの動作を最適化するステップは、前記1つまたは複数のチャンバのうちの少なくともいくつかからの信号を後続の分析から除外することを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
最適な数の前記1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、前記1つまたは複数のチャンバの個々のチャンバの表面に結合された少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含むまで、前記1つまたは複数のチャンバに追加のサンプルを再装填するステップをさらに含む、請求項62乃至77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記定量的装填の指標を使用して、最適な数の前記1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、前記1つまたは複数のチャンバの個々のチャンバの表面に結合された少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含む時期を決定するステップをさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記最適な数の前記1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、前記サンプルの少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含む場合に、装填を終了するステップをさらに含み、前記装填を終了するステップが、結合されていない生体分子を前記集積デバイスから除去することを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
装填を終了した後に、
前記励起光を前記1つまたは複数のチャンバに照射すること、
前記励起光に応答して前記1つまたは複数のチャンバから放出された信号を取得すること、
前記信号に基づいて、前記サンプルの1つまたは複数の生体分子を同定すること、によって少なくとも部分的に前記サンプルをシークエンシングするステップをさらに含む、請求項80に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、何万もの反応チャンバに対して同時に短光パルスを提供し、反応チャンバからサンプル分析用の蛍光信号を受け取ることによって、サンプルの超並列分析を行うことのできる集積デバイスおよびそれに関連する機器に関する。当該機器はポイント・オブ・ケア遺伝学的シークエンシングや個人化医療に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
様々な用途で光を検出するのに光検出器が使用される。入射光の強度を示す電気信号を生成する集積型光検出器が開発されている。撮像用途の集積型光検出器は、シーン全体から受光した光の強度を検出するピクセルアレイを含む。集積型光検出器の例には、電荷結合素子(CCD)イメージセンサや相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサが含まれる。
【0003】
生物学的サンプルや化学的サンプルを超並列分析できる機器は、大きなサイズ、可搬性の欠如、当該機器を操作する熟練技術者の要求、出力の必要性、制御された操作環境の必要性、コストといった理由から、一般に研究室での使用に限定されている。このような機器を使用してサンプルを分析する場合、臨床でまたは現場でサンプルを抽出し、そのサンプルを研究室に送り、分析結果を待つのが一般的なパラダイムである。結果を待つ時間は、数時間から数日の幅がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスを含むシステムを較正するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの励起源からの光により集積デバイスのチャンバ内に配置された参照色素分子を励起するステップと、参照色素分子によって放出された信号であって、参照色素分子の退色時間を表す情報を含む信号を取得するステップと、参照色素分子の退色時間に基づいてシステムの1つまたは複数の特性を調整するステップとを含む。
【0005】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスに関し、集積デバイスは、参照色素分子を受容するための少なくとも1つのチャンバと、少なくとも1つの励起源からの光によって励起されたときに参照色素分子によって放出された信号であって、参照色素分子の退色時間を表す情報を含む信号を受信するための少なくとも1つの光検出領域と、参照色素分子の退色時間に基づいて、集積デバイスを含むシステムの1つまたは複数の特性の調整を制御するように構成された少なくとも1つのコントローラとを備える。
【0006】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスを製造する方法に関し、方法は、集積デバイスの基板上にチャンバを準備するステップと、チャンバは、参照色素分子を受容するように構成されるとともに、参照色素分子が少なくとも1つの光源からの光を受光するように基板上に配置されており、チャンバに隣接して配置された光検出領域を準備して、少なくとも1つの光源からの光が参照色素分子に照射されたときに参照色素分子によって放出された信号を光検出領域が受信するようにするステップと、少なくとも1つのコントローラを光検出領域に結合して、少なくとも1つのコントローラが参照色素分子によって放出された信号に含まれる情報を受信するようにするステップと、を含み、情報は参照色素分子の退色時間を表す。
【0007】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスにおけるサンプルの定量的装填の指標(a measure of quantitative loading)を決定するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの励起源からの励起光により、集積デバイスの1つまたは複数のチャンバのうちの1つのチャンバの表面に結合されたサンプルの個々の生体分子に、励起光による励起の間に、付着された1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップと、励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を取得するステップと、1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号に基づいて、サンプルの定量的装填の指標を決定するステップと、を含む。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、サンプルの定量的装填の指標を決定するように構成された集積デバイスに関し、集積デバイスは、サンプルの個々の生体分子に、少なくとも1つの励起源から照射される励起光による1つまたは複数の参照色素分子の励起の間に、付着されている1つまたは複数の参照色素分子を受容するための少なくとも1つのチャンバと、個々の生体分子が少なくとも1つのチャンバの表面に結合されており、少なくとも1つの励起源からの励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を受信するための少なくとも1つの光検出領域と、1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号に基づいて、サンプルの定量的装填の指標を決定するように構成された少なくとも1つのコントローラとを備える。
【0009】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスにおけるサンプルの定量的装填の指標を決定するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの励起源からの光により、1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップと、1つまたは複数の参照色素分子は、サンプルの個々の生体分子に可逆的に結合する個々の二次生体分子に付着されており、個々の生体分子は、集積デバイスの複数のチャンバのうちの1つのチャンバの表面に結合されており、励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を取得するステップと、1つまたは複数の参照色素分子のパルス化パターンを決定するステップと、1つまたは複数の参照色素分子のパルス化パターンに基づいてサンプルの定量的装填の指標を決定するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1A】いくつかの実施形態による、集積デバイスおよび機器のブロック図である。
図1-1B】いくつかの実施形態による、集積デバイスの概略図である。
図1-1C】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルの概略図である。
図1-1D】いくつかの実施形態による、図1-1Cのピクセルの回路図である。
図1-1E】いくつかの実施形態による、図1-1Cのピクセルの上面図である。
図1-1F】いくつかの実施形態による、図1-1Cおよび図1-1Dのピクセルの平面図である。
図1-1G】いくつかの実施形態による、集積デバイスの代替ピクセルの概略図である。
図1-1H】いくつかの実施形態による、図1-1Gのピクセルの回路図である。
図1-1I】いくつかの実施形態による、図1-1Cおよび図1-1Dのピクセルの平面図である。
図2】いくつかの実施形態による、光退色を使用して集積デバイスを含むシステムを較正するための例示的プロセスを示す図である。
図3-1】いくつかの実施形態による、表面に付着された色素でラベル付けされたサンプルを示す図である。
図3-2】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内に付着された色素でラベル付けされたサンプルを示す図である。
図4】いくつかの実施形態による、経時的な光源励起出力を示す例示的なグラフを示す図である。
図5-1】いくつかの実施形態による、参照色素からの経時的に測定された信号を示する例示的なグラフを示す図である。
図5-2】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内の単一分子の収集に関する測定された退色時間および色素強度の例示的なヒストグラムを示す図である。
図6】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内のシークエンシング反応を示す図である。
図7】いくつかの実施形態による、1つまたは複数の反応チャンバの装填を定量化するための例示的なプロセスを示す図である。
図8-1】いくつかの実施形態による、単一装填されたウェルを表す、チップ装填プロセスからの例示的なトレースを示す図である。
図8-2】いくつかの実施形態による、二重装填ウェルを表す、チップ装填プロセスからの例示的なトレースを示す図である。
図8-3】いくつかの実施形態による、多重装填ウェルを表す、チップ装填プロセスからの例示的なトレースを示す図である。
図9】いくつかの実施形態による、生体分子に可逆的に結合される蛍光分子の周期的パルス化パターンを示す図である。
図10】いくつかの実施形態による、装填パーセントを例示する反応チャンバの例示的なヒートマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の特徴および利点は、図面とともに、以下に記載される詳細な説明からより明かになり得る。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向の言及(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」等)を使用することがある。このような参照は、通常の向きで図面を見る読者の助けとなることのみが意図される。これらの方向の言及は具現化されるデバイスの特徴部の好適な向きまたは唯一の向きを記述することを意図するわけではない。デバイスは他の向きを使用しても具現化することができる。
【0012】
I. 序論
本開示の態様は、集積デバイスを含むシステムを較正するための技法に関する。いくつかの実施形態によれば、較正技法は、光退色情報を使用して、集積デバイスおよび/または集積デバイスと相互作用するコンポーネントの態様(例えば、レーザ出力、チップ構成等)を較正する。
【0013】
蛍光発光によって生物学的サンプルまたは化学的サンプルの分析を行う機器は、光損傷を受けやすい場合がある。例えば、集積デバイスの反応チャンバに励起光を照射する光源は、集積デバイスを用いて信号収集および分析を行うには強力すぎる励起光を提供する場合がある。色素の光退色は、色素がもはや蛍光を発することができないように(例えば、高出力レーザ光にある期間曝露された後に)光化学的に変化した場合に起こる。高出力励起光は、集積デバイスの反応チャンバ内の蛍光分子をより迅速に退色させ得、これは、蛍光分子の発光から得られ得る有用な情報の量を減少させ得る。本発明者らは、集積デバイスに適用される較正技法が、他の方法で発生する光損傷を防止し得ることを認識した。
【0014】
例えば、本発明者らは、退色情報(例えば、参照分子の退色時間)が、本明細書に記載される集積デバイスを含むシステムを較正して光損傷を防止するために使用され得ることを認識した。例えば、いくつかの実施形態において、較正プロセスは、集積デバイスを用いて任意のサンプリングおよび分析を行う前に行われ得る。較正プロセスは、反応チャンバを励起光により照射することによって、反応チャンバ内に装填された参照色素に関する退色情報を収集し得る。退色情報は、各反応チャンバ内の分子の参照励起強度を決定するために使用され得、分子の参照励起強度は、レーザ出力および/またはチップ構成を含む、集積デバイスおよび/または集積デバイスと相互作用するコンポーネントの態様を調整するかどうかを決定するために使用され得る。
【0015】
本発明者らはさらに、集積デバイスの反応チャンバ間の差異により、励起強度を含む因子が集積デバイスの異なる反応チャンバ間で変化し得ることを認識した。従って、いくつかの実施形態において、同じ参照色素が、集積デバイスの反応チャンバの各々に装填され、反応チャンバ間の励起強度の差異が、評価され得る。集積デバイスに光損傷を引き起こし得る励起光を反応チャンバが受光しないことを確実にするために、反応チャンバ間の励起強度の決定された差異に基づいて、例えば、励起光を反応チャンバに照射する光源の出力に対して、集積デバイスに調整が行われ得る。
【0016】
従って、いくつかの態様は、集積デバイスを含むシステムを較正するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの励起源(例えば、レーザ)からの光により集積デバイスのチャンバ内に配置された参照色素分子を励起するステップと、参照色素分子によって放出された信号であって、参照色素分子の退色時間を表す情報を含む信号を取得するステップと、参照色素分子の退色時間に基づいて、システムの1つまたは複数の特性(例えば、少なくとも1つの励起源の出力)を調整するステップとを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、調整するステップは、参照色素分子の退色時間が閾値時間未満である場合に、少なくとも1つの励起源の出力を減少させることを含む。いくつかの実施形態において、参照色素分子を励起するステップは、少なくとも参照色素分子が光退色を起こすまで、集積デバイスのチャンバに光を照射することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、方法は、参照色素分子によって放出された信号に基づいて、例えば、参照色素分子によって放出された信号の強度が閾値強度を超える持続時間を決定することによって、参照色素分子の退色時間を決定するステップをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、方法は、集積デバイスの1つまたは複数の特性を調整した後に、集積デバイスを動作させて、集積デバイスのチャンバ内に配置されたサンプルによって放出された信号を取得するステップをさらに含み、サンプルによって放出された信号が、サンプルの少なくとも1つの特性(例えば、信号強度、蛍光波長、蛍光寿命、パルス持続時間、および/またはパルス間持続時間)を表す情報を含む。いくつかの実施形態において、集積デバイスを動作させることは、サンプルが少なくとも1つの光子を放出するように少なくとも1つの励起源からの光によりサンプルを励起すること、およびサンプルによって放出された少なくとも1つの光子を集積デバイスの光検出領域により収集することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、方法は、サンプルの少なくとも1つの特性に基づいてサンプルを同定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、ポリペプチド(例えば、タンパク質ならびに/もしくはデオキシリボ核酸および/またはリボ核酸などの核酸鎖)を含む。サンプルを同定するステップは、サンプルの少なくとも1つの特徴を表す情報に少なくとも部分的に基づいてサンプルの1つまたは複数のアミノ酸(例えば、少なくとも5個のアミノ酸、50個以下のアミノ酸、ポリペプチドの一部を超えないアミノ酸)を同定すること、および1つまたは複数のアミノ酸に少なくとも部分的に基づいてポリペプチドを同定することを含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルを同定するステップは、サンプルの少なくとも1つの特徴を表す情報に少なくとも部分的に基づいて、DNA鎖および/またはRNA鎖の1つまたは複数のヌクレオチドを同定することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、参照色素分子は、集積デバイスのチャンバ内に固定化された蛍光分子を含む。
いくつかの実施形態において、チャンバは複数のチャンバを含み、参照色素分子は、複数のチャンバのそれぞれに配置された複数の参照色素分子を含み、参照色素分子によって放出された信号を取得することは、複数の参照色素分子によって放出された複数の信号を取得することを含み、集積デバイスの1つまたは複数の特性を調整することは、複数の参照色素分子の退色時間を表す情報に基づく。いくつかの態様において、複数の参照色素分子が同じ分子を含む。
【0022】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスに関し、集積デバイスは、参照色素分子を受容するための少なくとも1つのチャンバと、少なくとも1つの励起源からの光によって励起されたときに参照色素分子によって放出された信号であって、参照色素分子の退色時間を表す情報を含む信号を受信するための少なくとも1つの光検出領域と、参照色素分子の退色時間に基づいて、集積デバイスを含むシステムの1つまたは複数の特性の調整を制御するように構成された少なくとも1つのコントローラとを備える。いくつかの実施形態において、集積デバイスの少なくとも1つのコントローラは、少なくとも部分的に、本明細書に説明される方法を行うように構成されている。
【0023】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスを製造する方法に関し、方法は、集積デバイスの基板上にチャンバを準備するステップと、チャンバは、参照色素分子を受容するように構成されるとともに、参照色素分子が少なくとも1つの光源からの光を受光するように基板上に配置されており、チャンバに隣接して配置された光検出領域を準備して、少なくとも1つの光源からの光が参照色素分子に照射されたときに参照色素分子によって放出された信号を光検出領域が受信するようにするステップと、少なくとも1つのコントローラを光検出領域に結合して、少なくとも1つのコントローラが参照色素分子によって放出された信号に含まれる情報を受信するようにするステップと、を含み、情報は参照色素分子の退色時間を表す。
【0024】
本開示のさらなる態様はさらに、集積デバイスの定量的装填の指標を決定するための技法に関する。例えば、集積デバイスは、本明細書に記載されるように、複数の反応チャンバを含み得る。集積デバイスによって処理されるサンプルは、複数の生体分子(例えば、ペプチド、核酸)を含み得る。装填される場合、各反応チャンバは、生体分子を含まない(空)か、単一の生体分子を含む(単一装填(singly loaded))か、2個の生体分子を含む(二重装填(doubly loaded))か、または3個以上の生体分子を含む(多重装填(multi-loaded))かのいずれかであり得る。
【0025】
本発明者らは、反応チャンバがどのようにして装填されているのかの指標を得ることが有利であることを認識した。特に、指標は、特定の反応チャンバが空であるか、単一装填されているか、二重装填されているか、または多重装填されているかを示し得る。いくつかの実施形態において、指標は、集積デバイス全体の装填された割合を示し得る。
【0026】
定量的装填情報は、少なくとも1つの励起源から照射される励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子から放出された信号に基づいて決定され得る。例えば、いくつかの実施形態において、個々の参照色素分子は、反応チャンバ内に存在する各個々の生体分子に付着され得る。反応チャンバ内に存在する参照色素分子の数を決定することによって、反応チャンバ内に存在する生体分子の数が推測され得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、参照色素分子は、光退色され得る。光退色ステップ(photobleaching steps)の数が、反応チャンバ内に存在する参照色素分子の数を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、参照色素分子は、光退色を行わずに励起光によって励起され得、反応チャンバから取得された信号の相対強度を使用して、反応チャンバ内に存在する参照色素分子の数を決定し得る。いくつかの実施形態において、参照色素分子は、二次生体分子(例えば、オリゴヌクレオチド、N末端アミノ酸認識剤(N-terminal amino acid recognizer))に結合され得る。二次生体分子は生体分子に結合され得る。いくつかの実施形態において、二次生体分子は、生体分子に可逆的に結合し得る。参照色素分子は、参照色素分子が(例えば、二次生体分子を介して)生体分子に結合され、かつ励起光によって励起された場合にのみ、信号を放出し得る。参照色素分子の特徴的なパルスパターンを使用して、反応チャンバ内に存在する参照色素分子の数を決定し得る。
【0028】
そのような情報は、集積デバイスの使用を最適化するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、定量的装填情報は、(例えば、集積デバイスの装填を連続的に監視するために)装填プロセスの間に使用され得る。いくつかの実施形態において、定量的装填情報は、(例えば、多数のウェルが空のままであると判定される場合)集積デバイスに追加のサンプルを装填し続けるかどうかを判定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、定量的装填情報を使用して、装填を行う方法を調整し得る(例えば、装填されるサンプル内の生体分子の濃度を調整する)。
【0029】
いくつかの実施形態において、定量的装填情報は、装填ステップを完了した後、集積デバイスの使用を最適化するために使用され得る。例えば、定量的装填情報は、集積デバイスの将来の装填を実行する際に使用され得る。いくつかの実施形態において、定量的装填情報は、どの反応チャンバからの信号を処理するのかを決定するために使用され得る。
【0030】
従って、本発明者らは、集積デバイスに装填されるサンプルの定量的装填の指標を決定するための技法を開発した。本開示のいくつかの態様は、集積デバイスにおけるサンプルの定量的装填の指標(例えば、1つまたは複数のチャンバのうちの単一チャンバ内に存在する生体分子の数、サンプルの単一生体分子を含む1つまたは複数のチャンバの割合)を決定するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの励起源からの光により、集積デバイスの1つまたは複数のチャンバのうちの1つのチャンバの表面に結合されたサンプルの個々の生体分子(例えば、ペプチド、核酸)に、励起光による励起の間に、(例えば、共有結合的に、非共有結合的に)付着された1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップと、励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号(例えば、ある期間にわたって1つまたは複数の参照色素分子によって放出された光の強度を表す信号)を取得するステップと、1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号に基づいて、サンプルの定量的装填の指標を決定するステップとを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子のうちの少なくともいくつかは、個々の生体分子が結合される個々のリンカーに付着され、個々のリンカーは、チャンバの底部に結合される。
【0032】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップは、1つまたは複数の参照色素分子を光退色させることを含む。方法は、1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号における光退色ステップの数を決定するステップと、光退色ステップの数に基づいて、チャンバの表面に結合された生体分子の数を決定するステップとをさらに含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、方法は、定量的装填の指標に基づいて集積デバイスの動作を最適化するステップをさらに含む。例えば、定量的装填の指標に基づいて集積デバイスの動作を最適化するステップは、(例えば、サンプル内生体分子の濃度を調整することによって)集積デバイスへのサンプルの装填を行う方法を調整することを含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルの装填を行う方法を調整することは、サンプルの表面に結合された単一生体分子を含む1つまたは複数のチャンバの数を最大化するようにサンプルの装填を行う方法を調整することを含む。いくつかの実施形態において、定量的装填の指標に基づいて集積デバイスの動作を最適化するステップは、1つまたは複数のチャンバのうちの少なくともいくつかからの信号を後続の分析から除外することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、方法は、最適な数の1つまたは複数のチャンバがそれぞれ、(例えば、定量的装填の指標を使用して、最適な数の1つまたは複数のチャンバが単一の生体分子を含む時期を決定することによって)1つまたは複数のチャンバの個々の1つのチャンバの表面に結合された少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含むまで、1つまたは複数のチャンバに追加のサンプルを再装填するステップをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、最適な数の1つまたは複数のチャンバが、サンプルの少なくとも1個かつ1個を超えない生体分子を含む場合に、(例えば、結合されていない参照色素分子を集積デバイスから除去することによって)装填を終了するステップをさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、方法は、装填を終了した後に、(1)励起光を1つまたは複数のチャンバに照射すること、(2)励起光に反応して1つまたは複数のチャンバから放出された信号を取得すること、(3)信号に基づいてサンプルの1つまたは複数の生体分子を同定することによって、少なくとも部分的にサンプルをシークエンシングするステップをさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子の各々は、個々の生体分子に付着されている場合、個々の生体分子から少なくとも1nm離れている。
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子は、二次生体分子(例えば、オリゴヌクレオチド、N末端アミノ酸認識剤)を介して個々の生体分子に付着される。即ち、二次生体分子は個々の生体分子に結合され得、参照色素分子は二次生体分子に結合され得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、二次生体分子は、個々の生体分子に可逆的に結合され得る。例えば、各二次生体分子は、個々の生体分子に周期的に結合し得る。1つまたは複数の参照色素分子は、励起光によって励起された1つまたは複数の参照色素分子の個々の参照色素分子が、(個々の二次生体分子を介して)個々の生体分子に結合されたときにのみ放出光を放出するようなパルス化パターンを示し得る。いくつかの実施形態において、サンプルの定量的装填の指標は、チャンバ内に存在する生体分子の数を含み得、方法は、1つまたは複数の参照色素分子のパルス化パターンに基づいて、チャンバ内に存在する生体分子の数を決定するステップをさらに含み得る。
【0039】
本開示のいくつかの態様は、サンプルの定量的装填の指標を決定するように構成された集積デバイスに関し、集積デバイスは、サンプルの個々の生体分子に付着されている1つまたは複数の参照色素分子を受容するための少なくとも1つのチャンバと、1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号であって、ある期間にわたって少なくとも1つの励起源からの励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子によって放出された光の強度を表す信号を受信するための少なくとも1つの光検出領域と、1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号に基づいて、サンプルの定量的装填の指標を決定するように構成された少なくとも1つのコントローラと、を備える。
【0040】
本開示のいくつかの態様は、集積デバイスにおけるサンプルの定量的装填の指標を決定するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの励起源からの光により、1つまたは複数の参照色素分子を励起するステップと、1つまたは複数の参照色素分子は、サンプルの個々の生体分子に可逆的に結合する個々の二次生体分子(例えば、オリゴヌクレオチド、N末端アミノ酸認識剤)に付着されており、個々の生体分子は、集積デバイスの複数のチャンバのうちの1つのチャンバの表面に結合されており、励起光に反応して1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号を取得するステップと、1つまたは複数の参照色素分子のパルス化パターンを決定するステップと、1つまたは複数の参照色素分子のパルス化パターンに基づいてサンプルの定量的装填の指標を決定するステップとを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子は、個々の生体分子に周期的に結合し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子は、パルス期間毎に1回、個々の生体分子に結合し得、パルス化パターンは、1つまたは複数のパルスを含むか、またはパルスを含んでおらず、定量的装填の指標は、パルス期間の間に受信された1つまたは複数のパルスの数に基づいて決定される。
【0042】
いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、チャンバ内に存在する生体分子の数を含む。いくつかの実施形態において、サンプルの定量的装填の指標を決定するステップは、パルス化パターン内にパルスが存在しない場合、チャンバが生体分子を含んでいないと決定することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の参照色素分子は、個々の生体分子に結合されたときにのみ放出光を放出し得る。
いくつかの実施形態において、サンプルの定量的装填の指標は、チャンバの表面に結合されたサンプルの個々の生体分子の数を含む。サンプルの定量的装填の指標を決定するステップは、パルス化パターン内にパルスが存在しない場合、チャンバが生体分子を含んでいないと決定することを含み得る。
【0044】
上記の態様および実施形態、ならびに追加の態様および実施形態は、以下でさらに説明される。これらの態様および/または実施形態は、本出願がこの点において限定されないので、個別に、全て一緒に、または任意の組合せで使用され得る。
【0045】
II.集積デバイスの概要
本明細書に記載されるように、本明細書に記載される技法は、集積デバイスの定量的装填を決定することを可能にし得る。集積デバイスは、集積デバイスのピクセルアレイとは別に配置された1つまたは複数の励起源から、サンプルを含む反応チャンバへの励起光の提供を可能にし得る。励起光は、反応チャンバ内の照射領域を照射するために、集積デバイスの要素によって少なくとも部分的に1つまたは複数のピクセルに向けられ得る。反応チャンバ内に配置されたサンプル、またはサンプルに付着した反応成分(例えば、蛍光ラベルなど)は、反応チャンバの照射領域内に位置するときに、励起光によって照射されることに反応して、放出光を放出し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の励起源は、集積デバイスを備えるシステムの一部である。
【0046】
1つまたは複数の反応チャンバ(例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも2つの反応チャンバ)から放出される放出光は、集積デバイスのピクセル内の1つまたは複数の光検出器によって検出され得る。本明細書で説明されるように、集積デバイスは、複数のピクセル(例えば、ピクセルのアレイ)を有するように構成されてもよく、従って、複数の反応チャンバおよび対応する複数の光検出器を有し得る。検出された放出光の特徴は、放出光に関連付けられるラベルを同定するための指示を提供することができる。そのような特徴は、光検出器によって検出される光子の到着時間、光検出器によって経時にわたって蓄積される光子の量、および/または2つ以上の光検出器にまたがる光子の分布を含む、任意の好適なタイプの特徴を含むことができる。いくつかの実施形態において、光検出器は、放出光に関連付けられる1つ以上の特徴、例えばタイミング特徴(例えば、蛍光寿命、パルス持続時間、パルス間持続時間)、波長、および/または、強度を検出可能にする構造を有することができる。一例では、1つまたは複数の光検出器は、励起光のパルスが集積デバイスを通じて伝搬した後の光子到着時間の分布を検出することができ、到着時間の分布は、放出光のタイミング特徴(例えば、蛍光寿命、パルス持続時間、および/またはパルス間持続時間のプロキシ)の指示を提供することができる。そのような情報は、例えば、「METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING」と題する米国特許出願第16/686,028号(2019年11月15日出願、代理人整理番号R0708.70042US02)、「METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING」と題するPCT出願第PCT/US19/61831号(2019年11月15日出願、代理人整理番号R0708.70042WO00)、「INTEGRATED SENSOR FOR MULTI-DIMENSIONAL SIGNAL ANALYSIS」と題する米国特許仮出願第62/984,229号(2020年3月2日出願、代理人整理番号R0708.70090US00)、「LABELED NUCLEOTIDE COMBINATIONS AND METHODS FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING」と題する米国特許出願第15/600,979号(2017年5月22日出願、代理人整理番号R0708.70018US02)、および「METHODS FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING」と題する米国特許出願第15/161,125号(2016年5月20日出願、代理人整理番号R0708.70020US00)に記載の技術を含む、サンプル中の分子の検出および/または同定のための技術において使用されてもよく、これらの出願の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光検出器は、蛍光ラベルによって放出される放出光の確率(例えば、蛍光強度)の指示を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光検出器は、放出光の空間的な分布(例えば、波長)を捕捉するようにサイズ決めおよび配置され得る。1つまたは複数の光検出器からの出力信号を使用して複数のラベルの中からある蛍光ラベルを区別することができ、この場合、複数のラベルを使用して、本明細書に記載されているように、サンプルまたはその構造を同定することができる。
【0047】
例えば、例示的なシステム1-100の概略的な概説が図1-1Aにおいて示されている。システムは、機器1-104とインタフェースする集積デバイス1-102の双方を備える。いくつかの実施形態において、機器1-104は、機器1-104の一部として集積される1つ以上の励起源1-106を含むことができる。いくつかの実施形態において、励起源は、機器1-104および集積デバイス1-102の双方の外部にあるものとすることができ、機器1-104は、励起光を励起源から受け取るとともに、励起光を集積デバイスに方向付けるように構成することができる。集積デバイスは、集積デバイスを受けるとともに集積デバイスを励起源と光学的に正確に位置合わせして保持するため、任意の好適なソケットを使用して機器とインタフェースすることができる。励起源1-106は、集積デバイス1-102に励起光を提供するように構成することができる。図1-1Aにおいて概略的に示されているように、集積デバイス1-102は、複数のピクセル1-112を有し、この場合、ピクセルの少なくとも一部分は、対象のサンプルの独立した分析を行うことができる。ピクセルがそのピクセルとは別々の励起源1-106から励起光を受け取るため、そのようなピクセル1-112は「受動源ピクセル」と称することができる。この場合、この源からの励起光が、ピクセル1-112のうちのいくつかまたはすべてを励起する。励起源1-106は、任意の好適な光源とすることができる。好適な励起源の例は、2015年8月7日に出願され、「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/821,688号(代理人管理番号R0708.70002US02)に記載されており、この出願は参照によりその全体が援用される。いくつかの実施形態において、励起源1-106は、励起光を集積デバイス1-102に照射するように組み合わせられる複数の励起源を含む。複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成することができる。
【0048】
図1-1Bを参照すると、ピクセル1-112は、関心対象の少なくとも1つのサンプルを受け取るように構成された反応チャンバ1-108、および、励起源1-106によって提供される励起光によってサンプルおよび反応チャンバ1-108の少なくとも一部分を照らすことに反応して、反応チャンバから放出される放出光を検出する光検出器1-110を有する。いくつかの実施形態において、反応チャンバ1-108は、集積デバイス1-102の表面に近接してサンプルを保持し得、これは、サンプルへの励起光の照射およびサンプルまたは反応成分(例えば、蛍光ラベル)からの放出光の検出を容易にし得る。図1-1Bの図示された実施形態に示されるように、反応チャンバ1-108および光検出器1-110は、1対1の対応を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるように、各ピクセルは、光検出器毎に複数の反応チャンバを備え得る。
【0049】
励起光源1-106からの励起光を集積デバイス1-102に結合するとともに、励起光を反応チャンバ1-108にガイドする光学素子が、集積デバイス1-102および機器1-104のうちの一方または双方に位置付けられ得る。源からチャンバへの光学素子は、集積デバイス1-102に位置付けられる1つ以上の格子カプラを備えることができ、励起光を集積デバイスおよび導波路に結合して、励起光を機器1-104からピクセル1-112内の反応チャンバに照射する。1つ以上の光学スプリッタ素子は、格子カプラと導波路との間に位置することができる。光学スプリッタは、格子カプラからの励起光を結合するとともに、励起光を導波路のうちの少なくとも1つに送達することができる。いくつかの実施形態において、光学スプリッタは、励起光を、すべての導波路にわたって実質的に均一に送達することを可能にする構造を有することができ、それによって、導波路のそれぞれは、実質的に同様の量の励起光を受け取る。そのような実施形態は、集積デバイスの反応チャンバによって受け取られる励起光の均一性を改善することによって、集積デバイスの性能を改善することができる。
【0050】
反応チャンバ1-108、励起源からチャンバへの光学系の一部分、および、反応チャンバから光検出器への光学系は、集積デバイス1-102に位置付けられる。励起源1-106および源からチャンバへのコンポーネントの一部分は、機器1-104内に位置付けられる。いくつかの実施形態において、単一のコンポーネントが、励起光を反応チャンバ1-108に結合すること、および、反応チャンバ1-108からの放出光を光検出器1-110に送達することの双方においての役割を果たし得る。励起光を反応チャンバに結合するおよび/または放出光を光検出器に方向付けるための、集積デバイスに含まれる好適なコンポーネントの例は、2015年8月7日に出願された「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/821,688号(代理人管理番号R0708.70004US02)、および、2014年11月17日に出願された「INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING, DETECTING, AND ANALZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/543,865号(代理人管理番号R0708.70005US00)に記載されており、これらの双方は参照によりその全体が援用される。
【0051】
ピクセル1-112は、それ自体の個々の反応チャンバ1-108および少なくとも1つの光検出器1-110に関連付けられる。集積デバイス1-102の複数のピクセルは、任意の好適な形状、サイズ、および/または寸法を有するように構成することができる。集積デバイス1-102は、任意の好適な数のピクセルを有することができる。集積デバイス1-102内のピクセルの数は、およそ100,000ピクセル~64,000,000ピクセルの範囲内、またはその範囲内における任意の範囲内の値とすることができる。いくつかの実施形態において、ピクセルは、1024個のピクセル×2048個のピクセルのアレイに配置することができる。集積デバイス1-102は、任意の好適な方法で機器1-104とインタフェースすることができる。いくつかの実施形態において、機器1-104は、集積デバイス1-102に着脱可能に結合するインタフェースを有することができ、それによってユーザは、集積デバイス1-102の使用のために集積デバイス1-102を機器1-104に取り付けて懸濁液中の少なくとも1つの関心対象のサンプルを分析するとともに、別の集積デバイスを取り付け可能にするために集積デバイス1-102を機器1-104から取り外し得る。機器1-104のインタフェースは、機器1-104の回路部と結合するように集積デバイス1-102を位置決めし、1つ以上の光検出器からの読み出し信号を機器1-104に送信することを可能にすることができる。集積デバイス1-102および機器1-104は、大きなピクセルアレイ(例えば、10,000超のピクセル)に関連付けられるデータを取り扱うためにマルチチャネル高速通信リンクを含むことができる。
【0052】
機器1-104は、機器1-104および集積デバイス1-102のうちの少なくとも一方の動作を制御するためにユーザインタフェースを含むことができる。ユーザインタフェースは、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび/または設定などの情報をユーザが機器に入力可能とするように構成することができる。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェースは、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および、音声命令のためのマイクを含むことができる。ユーザインタフェースは、ユーザが、適切な位置合わせおよび/または集積デバイス上の光検出器からの読み出し信号によって取得される情報などの、機器および/または集積デバイスの性能に関するフィードバックを受け取ることを可能にすることができる。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェースは、スピーカを使用してフィードバックを提供し、可聴フィードバックを提供することができる。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェースは、ユーザに視覚的なフィードバックを提供するための、インジケータライトおよび/またはディスプレイスクリーンを含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、機器1-104は、コンピューティングデバイスと接続するように構成されたコンピュータインタフェースを含むことができる。コンピュータインタフェースは、USBインタフェース、ファイヤーワイヤーインタフェース、または任意の他の好適なコンピュータインタフェースとすることができる。コンピューティングデバイスは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータとすることができる。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、好適なコンピュータインタフェースを介して無線ネットワークを通じてアクセス可能なサーバ(例えば、クラウドベースのサーバ)とすることができる。コンピュータインタフェースは、機器1-104とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にすることができる。機器1-104を制御および/または構成するための入力情報を、コンピュータインタフェースを介して、コンピューティングデバイスに提供するとともに、機器1-104に送信することができる。機器1-104によって生成される出力情報は、コンピュータインタフェースを介してコンピューティングデバイスによって受け取られることができる。出力情報は、機器1-104の性能、集積デバイス1-102の性能、および/または光検出器1-110の読み出し信号から生成されるデータについてのフィードバックを含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、機器1-104は、集積デバイス1-102の1つ以上の光検出器から受け取られるデータを分析するとともに制御信号を励起源1-106に送信する、または集積デバイス1-102の1つ以上の光検出器から受け取られるデータを分析するか、もしくは制御信号を励起源1-106に送信するように構成された処理デバイスを含むことができる。いくつかの実施形態において、処理デバイスは、汎用プロセッサ、特別に適応されたプロセッサ(例えば、1つ以上のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラコアなどの中央処理ユニット(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組合せ)を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の光検出器からのデータの処理は、機器1-104の処理デバイスおよび外部のコンピューティングデバイスの双方によって行うことができる。他の実施形態においては、外部のコンピューティングデバイスを省いてよく、1つ以上の光検出器からのデータの処理は、集積デバイス1-102の処理デバイスのみによって行ってよい。
【0055】
図1-1Bには、ピクセル1-112の行を示す集積デバイス1-102の断面概略図が示されている。集積デバイス1-102は、結合領域1-201、ルーティング領域1-202、およびピクセル領域1-203を含み得る。ピクセル領域1-203は、励起光(破線の矢印として示される)が集積デバイス1-102に結合する結合領域1-201から離れた位置の表面上に配置された複数の反応チャンバ1-108を有する複数のピクセル1-112を含み得る。複数の反応チャンバ1-108は、1つまたは複数の金属層1-106を貫通して形成され得る。点線の矩形によって示される1つのピクセル1-112は、反応チャンバ1-108と、1つまたは複数の光検出器1-110を有する光検出領域とを含む集積デバイス1-102の領域である。図示された実施形態において、ピクセルは単一の反応チャンバ1-108を含む。いくつかの実施形態において、各ピクセルは、2つ以上の反応チャンバを備え得る。
【0056】
図1-1Bは、励起光のビームを結合領域1-201および反応チャンバ1-108に結合することによる励起経路(破線で示される)を示す。図1-1Bに示される反応チャンバ1-108の行は、導波路1-220と光学的に結合するように位置付けられ得る。励起光は、反応チャンバ内に位置付けられるサンプルを照射し得る。サンプルまたは反応成分(例えば、蛍光ラベル)は、励起光によって照射されることに反応して、励起状態に達し得る。サンプルまたは反応成分が励起状態にあるとき、サンプルまたは反応成分は、反応チャンバに関連付けられた1つまたは複数の光検出器によって検出され得る放出光を放出し得る。図1-1Bは、反応チャンバ1-108からピクセル1-112の1つまたは複数の光検出器1-110への放出光(実線として示される)の光軸を概略的に示す。ピクセル1-112の1つまたは複数の光検出器1-110は、反応チャンバ1-108からの放出光を検出するように構成および配置され得る。好適な光検出器の例は、2015年8月7日に出願された「INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS」と題する米国特許出願第14/821,656号(代理人整理番号R0708.70002US02)に記載されており、この出願は参照によりその全体が援用される。個々のピクセル1-112に関して、反応チャンバ1-108および個々の光検出器1-110は、共通の軸に沿って(図1-1Aに示されるy方向に沿って)整列され得る。このように、光検出器(複数可)は、ピクセル1-112内で反応チャンバと重なり得る。
【0057】
反応チャンバ1-108からの放出光の方向性は、1つまたは複数の金属層1-106が放出光を反射するように作用し得るため、1つまたは複数の金属層1-106に対する反応チャンバ1-108内のサンプルの位置に応じて変わり得る。このように、1つまたは複数の金属層1-106と反応チャンバ1-108内に位置する蛍光マーカとの間の距離は、蛍光マーカによって放出される光を検出するための、反応チャンバと同じピクセル内にある、1つまたは複数の光検出器1-110の効率に影響を及ぼし得る。1つまたは複数の金属層1-106と、動作中にサンプルが位置可能な場所に近接する反応チャンバ1-108の底面との間の距離は、100nm~500nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、金属層1-106と反応チャンバ1-108の底面との間の距離は、約300nmである。
【0058】
サンプルと1つまたは複数の光検出器との間の距離もまた、放出光を検出する際の効率に影響を及ぼし得る。光がサンプルと光検出器との間を移動しなければならない距離を減少させることによって、放出光の検出効率が改善され得る。加えて、サンプルと光検出器との間の距離を小さくすると、集積デバイスに占めるピクセルの設置面積を小さくすることを可能にし得、これにより、より多くの数のピクセルが集積デバイスに含まれることを可能にし得る。反応チャンバ1-108の底面と1つまたは複数の光検出器との間の距離は、1マイクロメートル~15マイクロメートルの範囲、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、放出光は、励起光源および反応チャンバ以外の手段を通して提供され得ることを理解されたい。従って、いくつかの実施形態は、反応チャンバ1-108を含まなくてもよい。
【0059】
1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、反応チャンバ1-108と光検出器1-110との間に配置され得るとともに、励起光が光検出器1-110に到達することを低減または防止するように構成され得、そうでなければ、励起光は放出光を検出する際の信号ノイズの一因となり得る。図1-1Bに示すように、1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、導波路1-220と光検出器1-110との間に配置され得る。1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタ、および空間フィルタを含む1つまたは複数の光除去フォトニック構造を含み得る。1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、共通の軸に沿って個々の反応チャンバ1-108及びそれらの個々の1つまたは複数の光検出器1-110と整列するように配置され得る。集積デバイス1-102の回路として機能し得る金属層1-240は、いくつかの実施形態によれば、空間フィルタまたは偏光フィルタとしても機能し得る。そのような実施形態において、1つまたは複数の金属層1-240は、励起光の一部または全部が光検出器1-110に到達することを阻止するように配置され得る。
【0060】
結合領域1-201は、外部の励起源、例えば、図1-1Aに示される1つまたは複数の励起源1-116からの励起光を結合するように構成された1つまたは複数の光学コンポーネントを含み得る。結合領域1-201は、励起光のビームの一部又は全部を受光するように配置された格子カプラ1-216を含み得る。好適な格子カプラの例は、2017年12月15日に出願された「OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDE SYSTEM」と題する米国特許出願第15/855,403号(代理人整理番号R0708.70021US01)、および2020年4月29日に出願された「SLICED GRATING COUPLER WITH INCREASED BEAM ALIGNMENT SENSITIVITY」と題された米国特許出願第16/861,399号(代理人整理番号R0708.70071US01)に記載されており、これらの出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される。格子カプラ1-216は、励起光を、1つまたは複数の反応チャンバ1-108の近傍に伝搬するように構成され得る導波路1-220に結合し得る。代替的に、結合領域1-201は、光を導波路に結合するための他の周知の構造を備え得る。
【0061】
集積デバイスから離れて配置されたコンポーネントを使用して、励起源1-116を集積デバイスに対して位置決めおよび位置合わせし得る。このようなコンポーネントは、レンズ、鏡、プリズム、ウィンドウ、アパーチャ、減衰器、および/または光ファイバを含む光学コンポーネントを含み得る。1つまたは複数の位置合わせコンポーネントの制御を可能にするために、付加的な機械的なコンポーネントが器具に含まれ得る。そのような機械的なコンポーネントは、アクチュエータ、ステッパモータ、および/またはノブを含み得る。好適な励起源及び位置合わせ機構の例は、2016年5月20日に出願された「PULSED LASER AND SYSTEM」と題する米国特許出願第15/161,088号(代理人整理番号R0708.70010US02)に記載されており、この出願は参照によりその全体が援用される。ビームステアリングモジュールの別の例は、2017年12月14日に出願された「Compact Beam Shaping and Steering Assembly」と題する米国特許出願第15/842,7720号(代理人整理番号R0708.70024US01)に記載されており、この出願は参照により本明細書に援用される。
【0062】
分析されるサンプルは、ピクセル1-112の反応チャンバ1-108に導入され得る。サンプルは、生物サンプル又は化学的サンプルなどの任意の他の適切なサンプルであり得る。サンプルは、複数の分子を含み得、反応チャンバは、単一分子を分離するように構成され得る。いくつかの例においては、反応チャンバの寸法は、単一分子を反応チャンバ内に閉じ込めるように作用し得、測定が単一分子に対して実行されることを可能にする。励起光は、反応チャンバ1-108内の照射領域内にある間に、サンプル、またはサンプルに付着されるか、またはサンプルに別様に関連付けられた少なくとも1つの蛍光マーカを励起するように、反応チャンバ1-108内に照射され得る。
【0063】
動作時、反応チャンバ内のサンプルの並列な分析は、励起光を使用してウェル内のサンプルの一部または全部を励起し、サンプル放出からの信号を光検出器で検出することによって実行される。サンプルからの放出光は、対応する光検出器によって検出され、少なくとも1つの電気信号に変換され得る。放出光の様々な特性(例えば、波長、蛍光寿命、強度、パルス持続時間、および/または任意の他の適切な特性)に関する情報は、本明細書で説明されるように、収集され、後続の分析のために使用され得る。電気信号は、集積デバイスの回路内の導電線(例えば、金属層1-240)に沿って送信され得、導電線は、集積デバイスとインタフェースする機器に接続され得る。電気信号は、続いて処理および/または分析され得る。電気信号の処理または分析は、機器上または機器から離れて配置された好適なコンピューティングデバイス上で行われ得る。
【0064】
図1-1Cは、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102のピクセル1-112の断面図を示す。図1-1Dは、ピクセル1-112の回路図を示す。図1-1Eは、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含まれ得るピクセル1-112の例示的なアレイおよび処理回路1-114を示す。
【0065】
図1-1C及び図1-1Dにおいて、ピクセル1-112は、ピン止めフォトダイオード(PPD:pinned photodiode)であり得る光検出領域と、蓄積ダイオード(SD(storage diode)0及びSD1)であり得る2つの電荷蓄積領域と、浮遊拡散(FD:floating diffusion)領域であり得る読み出し領域とを含む。また図示のように、ピクセル1-112は、ドレイン領域Dと、転送ゲートST0、TX0、TX1、およびREJとを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、及び読み出し領域FDは、基板の一部をドーピングすることによって集積回路基板上に形成される。例えば、基板は低濃度にドープされ得、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDはより高濃度にドープされ得る。この例では、基板は低濃度にp型ドープされ得、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、ならびに読み出し領域FDはn型ドープされ得る。代替的に、本明細書で説明される実施形態はそのように限定されないため、基板が低濃度にn型ドープされ得、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDがp型ドープされ得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPDは、入射光子が光検出領域PPD内で受け入れられると、電荷キャリア(例えば、光電子)を生成するように構成され得る。いくつかの実施形態において、電荷蓄積領域SD0及びSD1は、光検出領域PPDにかつ/又は互いに電気的に結合され得る。例えば、ピクセル1-112は、電荷蓄積領域SD0及びSD1を光検出領域PPDに及び/又は互いに電気的に結合する1つまたは複数の転送チャネルを含み得る。いくつかの実施形態において、転送チャネルは、領域間に配置された集積回路基板の部分をドープすることによって形成され得る。例えば、これらの部分は、領域(例えば、n型ドープPPDおよびSD0との間に配置されたn型ドープチャネル)と同じ導電型でドープされ得る。図1-1Dを参照すると、例えば、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に結合されたトランジスタのチャネルは、光検出領域PPDを電荷蓄積領域SD0に電気的に結合する転送チャネルである。同様に、電荷蓄積領域SD0とSD1との間に結合されたトランジスタのチャネルは、電荷蓄積領域SD0とSD1とを電気的に結合する転送チャネルであり、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に結合されたトランジスタのチャネルは、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとを電気的に結合する転送チャネルである。光検出領域PPDとドレイン領域Dとの間に結合されたトランジスタのチャネルは、光検出領域PPDとドレイン領域Dとの間の転送チャネルである。
【0068】
いくつかの実施形態において、転送ゲートST0、TX0、TX1、およびREJは、光検出領域PPDから蓄積領域SD0、SD1への、電荷蓄積領域SD0、SD1との間の、および/または電荷蓄積領域SD0、SD1と読み出し領域FDとの間の電荷キャリアの転送を制御するように構成され得る。例えば、転送ゲートST0、TX0、TX1、およびREJは、適切な制御信号が転送ゲートに印加されたときに領域間で電荷キャリアを転送するために、ピクセル1-112の領域を電気的に結合するように転送チャネルに電気的に結合され、かつ転送チャネルをバイアスするように構成され得る。様々な実施形態によれば、転送ゲートは、転送チャネルに導電的に(例えば、物理的に)結合され得、かつ/または転送チャネルに十分に近接して配置され得、かつ/または転送チャネルに容量的に結合するために十分に薄い絶縁体によって分離され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で説明する転送ゲートは、金属などの導電性材料を使用して形成され得る。代替的または追加的に、いくつかの実施形態において、本明細書で説明される転送ゲートは、ポリシリコンなどの半導体材料を使用して形成され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の転送ゲートを形成するために使用される材料は、少なくとも部分的に不透明であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、制御信号が転送ゲートで受信されると、転送ゲートは、制御信号を転送チャネルに電気的に結合し、転送チャネルにバイアスをかけ、それによって転送チャネルの導電率を増加させ得る。いくつかの実施形態において、転送チャネルは、同じ導電型であるが、転送チャネルによって電気的に結合されたピクセル1-112の領域よりも低いドーパント濃度でドープされてもよく、それによって、領域間に固有電位障壁(intrinsic electric potential barrier)を生成する。固有電位障壁は、転送ゲートまたは転送チャネルに外部電界が印加されない場合であっても、領域間に存在し得る。例えば、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間の転送チャネルのドーパント濃度によって、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に固有電位障壁が生成され得る。いくつかの実施形態において、転送チャネルによって電気的に結合された領域間の固有電位障壁を低下させて、転送チャネルの導電率を増加させ、領域間の電荷キャリアの転送を引き起こすように構成される制御信号が転送ゲートに印加され得る。例えば、n型ドープされた転送チャネルの場合、制御信号は、領域のうちの1つ(例えば、転送チャネルのソース端子)における電圧よりも少なくとも転送チャネルの閾値電圧だけ大きい電圧を有し得、閾値電圧は、転送チャネルのサイズ、転送チャネルに近接する集積デバイス1-102の基板電圧、および他のそのようなパラメータに依存する。同様に、p型ドープされた転送チャネルの場合、制御信号は、領域のうちの1つにおける電圧よりも少なくとも閾値電圧だけ低い電圧を有し得る。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102の制御回路は、本明細書でさらに説明されるように、そのような制御信号を生成して転送ゲートに提供するように構成され得る。
【0070】
図1-1Cにおいて、ピクセル1-112は、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDが転送ゲートREJ、ST0、TX0、及びTX1から間隔を空けている方向(例えば、前面照射)において入射光子を受光するように構成された構成で示されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、光検出領域PPDは、転送ゲートREJ、ST0、TX0、およびTX1が光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDから間隔を空けている方向(例えば、裏面照射)において入射光子を受光するように構成され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態において、そのような構成は、転送ゲートの光学特性が入射光子に及ぼす影響が低減されるため、転送ゲートの電気特性を改善することができる。
【0071】
図1-1Dにおいて、ピクセル1-112は、読み出し領域FDに結合されるとともに、高電圧VDDPに結合するように構成されたリセット(RST)転送ゲートと、読み出し領域FDとビット線との間に結合された行選択(RS)転送ゲートとをさらに含む。集積デバイス1-102が電源(例えば、少なくともDC電源)に結合されると、転送ゲートRSTは高電圧VDDPに結合され得、高電圧VDDPは、電源によって供給され、および/または集積デバイス1-102の電圧レギュレータによって調整される。
【0072】
いくつかの実施形態において、転送ゲートRSTは、読み出し領域FDの電圧をリセットするように構成され得る。例えば、リセット信号が転送ゲートRSTに印加されると、転送ゲートRSTは、読み出し領域FDを高電圧VDDPに電気的に結合するように転送チャネルをバイアスして、転送チャネルの導電率を増加させて、電荷キャリアを読み出し領域FDから高電圧VDDPに転送し得る。いくつかの実施形態において、リセット転送ゲートRSTは、電荷蓄積領域SD0および/またはSD1の電圧をリセットするようにさらに構成され得る。例えば、リセット信号がリセット転送ゲートRSTに印加され、制御信号が転送ゲートTX1に印加されると、転送ゲートTX1は、電荷蓄積領域SD1内の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、転送ゲートRSTは、電荷キャリアを高電圧VDDPに転送し得る。同様に、リセット信号がリセット転送ゲートRSTに印加され、制御信号が転送ゲートTX1およびTX0に印加されると、転送ゲートTX0は電荷蓄積領域SD0内の電荷キャリアをSD1に転送し、転送ゲートTX1は電荷蓄積領域SD1内の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、転送ゲートRSTは電荷キャリアを高電圧VDDPに転送し得る。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを収集および読み出す前に、読み出し領域FDおよび電荷蓄積領域SD0、SD1をリセットするように構成され得る。例えば、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを収集して読み出す前に、読み出し領域FDをリセットし、次いで電荷蓄積領域SD1をリセットし、次いで電荷蓄積領域SD0をリセットするように構成され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、ビット線は、読み出し領域FDに読み出された電荷キャリアを示す電圧レベルを受け取るように構成された集積デバイス1-102上の処理回路および/または外部回路に結合され得る。いくつかの実施形態において、処理回路1-114は、アナログデジタル変換器(ADC)を含み得る。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを読み出す前に、各ピクセルの読み出し領域FDの電圧をリセットするように構成され得る。例えば、集積デバイス1-102は、読み出し領域FDの電圧をリセットし、電圧をサンプリングし、電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、再び電圧をサンプリングするように構成され得る。この例では、第2のサンプリングされた電圧は、第1のサンプリングされた電圧と比較したときに読み出し領域FDに転送された電荷キャリアの数を示し得る。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、行ごとおよび/または列ごとなど、各ピクセル1-112からビット線に順次電荷キャリアを読み出すように構成され得る。ピクセル1-112のいくつかのアレイは、ピクセル1-112の異なるピクセルおよび/またはグループに電気的に結合された複数のビット線を有し得ることを理解されたい。いくつかの実施形態において、複数の列のピクセルは、同時に個々の処理回路に読み出され得る。例えば、各列の第1のピクセル(例えば、ピクセル(1,1)および(1,2)等)は、同時に個々の処理回路に読み出され、次いで、各列の第2のピクセル(例えば、ピクセル(2,1)および(2,2)等)は、同時に個々の処理回路に読み出され得る。いくつかの実施形態において、処理回路が、各列の代替として、または各列に加えて、アレイの各行に対して設けられてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、処理回路の複数のユニット(各々がビット線に電気的に結合されるもの等)を含み得る。
【0074】
様々な実施形態によれば、本明細書で説明する転送ゲートは、1つまたは複数の半導体材料および/または金属を含み得るとともに、電界効果トランジスタ(FET)のゲート、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)のベースなどを含み得ることを理解されたい。様々な転送ゲートに印加される、本明細書で説明される制御信号は、半導体領域および半導体領域に電気的に結合された領域(例えば、隣接する領域)の電位などに応じて、形状および/または電圧が変化し得ることも理解されたい。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるピクセルは、2つより多い電荷蓄積領域を含み得る。例えば、図1-1G~図1-1Iに関連して本明細書で説明されるピクセル2-112は、3つの電荷蓄積領域を含む。
【0076】
図1-1Eは、いくつかの実施形態による、代替ピクセル1-112’の平面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル1-112’は、ピクセル1-112について説明した態様で構成され得る。図1-1Eにおいて、ピクセル1-112’のドレイン領域Dは、光検出領域PPDの電荷蓄積領域SD0、SD1および読み出し領域FDと同じ側に配置されている。また、図1-1Eに示されるように、光検出領域PPDは、三角形の開口部を有するマスクを含み得、三角形の開口部は、電荷蓄積領域SD0、SD1およびドレイン領域Dに近接する光検出領域の側にある三角形の開口部の底辺部と、ドレイン領域Dおよび電荷蓄積領域SD0、SD1とは反対側の光検出領域PPDの側にある三角形の開口部の対応する頂部とを有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPDは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0、SD1およびドレイン領域Dに向かう方向に固有電界(intrinsic electric field)を誘起するように構成され得る。例えば、光検出領域PPDは、開口部を通して集積デバイス1-102の基板をドーピングすることによって形成され得、ドーピング中にマスクによって覆われた領域よりも、開口部を通して露出された基板の領域においてより高いドーパント濃度がもたらされる。この例では、三角形の開口部の底辺部におけるドーパント(例えば、n型ドーパント)の量が多いほど、ドレイン領域Dおよび電荷蓄積領域SD0に近接する光検出領域PPDの底辺部の電位が、光検出領域PPDの反対側の光検出領域PPDの頂部の電位よりも低くなり得る。光検出領域PPDにおける固有電界は、ピクセル1-112に印加される外部電界が存在しない場合であっても存在し得る。本発明者らは、光検出領域PPDの固有電界が、光検出領域PPDからドレイン領域Dおよび/または蓄積領域SD0、SD1への電荷転送の速度を増加させ、ピクセル1-112の動作中に電荷キャリアが排出および/または収集される効率を増加させることを認識した。図1-1Eの例では、固有電界は、ドレイン領域と電荷蓄積領域SD0との間の点線の矢印に沿って方向付けられ得る。例えば、固有電界は、電荷キャリアを点線の矢印に沿って流れることができ、転送ゲートREJまたはST0に印加される制御信号によって誘導される外部電界は、電荷キャリアをそれぞれドレイン領域Dまたは電荷蓄積領域SD0に流れさせることができる。
【0078】
図1-1Fは、いくつかの実施形態による、ピクセル1-112’の上面概略図である。図1-1Fに示すように、コンタクトは、ピクセル1-112’の部分の上方に配置され得る。いくつかの実施形態において、コンタクトは、入射光子が光検出領域PPD以外のピクセル1-112’の部分に到達すること、及び/又は斜めの入射角で隣接するピクセルの光検出領域に到達することを阻止するように構成され得る。例えば、コンタクトは、光検出PPDが入射光子を受光するように構成されている光軸に平行な方向に細長くなっていてもよい。いくつかの実施形態において、コンタクトは、タングステンなどの不透明材料を使用して形成され得る。本発明者らは、本明細書で説明されるコンタクトが、多くのまたは全ての入射光子が光軸以外の光路に沿って電荷蓄積領域SD0、SD1に到達することを防止して、入射光子が電荷蓄積領域SD0、SD1においてノイズ電荷キャリアを生成することを防止することを認識した。
【0079】
図1-1Fにおいて、一対のコンタクトが光検出領域PPDの両側に配置され、一対のコンタクトの第1のコンタクトはマスクの三角形の開口部の頂部のより近くに配置され、一対のコンタクトの第2のコンタクトはマスクの三角形の開口部の底辺部のより近くに配置される。第2のコンタクトは、入射光子が電荷蓄積領域SD0、SD1に到達するのを阻止するように構成され得る。第3のコンタクトが、光検出領域PPDが配置される端部とは反対側のピクセル1-112の端部に配置される。第1および第3のコンタクトはピクセル1-112と個々の隣接するピクセルとの間に配置され、第2のコンタクトは光検出領域PPDと転送ゲートST0,REJとの間に配置される。いくつかの実施形態において、光検出領域PPDの両側のコンタクトの対は、単一の円筒形コンタクト壁など、光検出領域PPDを少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つのコンタクト壁で置き換えられ得ることを理解されたい。
【0080】
図1-1Gは、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含まれ得る代替の例示的なピクセル2-112の断面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル2-112は、図1-1A~図1-1Fに関連してピクセル1-112について説明した態様で構成され得る。例えば、図1-1Gに示されるように、領域FD、およびドレイン領域D、ならびに転送ゲートは、それぞれ、ピクセル1-112に関して説明した態様で構成され得る。ピクセル2-112は、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に電気的に結合された電荷蓄積領域SD2をさらに含む。転送ゲートST1は、電荷蓄積領域SD0を電荷蓄積領域SD1に電気的に結合し得る。例えば、複数の転送チャネルは、電荷蓄積領域SD1を電荷蓄積領域SD2に電気的に結合し、電荷蓄積領域SD2を読み出し領域FDに電気的に結合し得る。図1-1Gにおいて、転送ゲートTX0は、電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2への電荷キャリアの転送を制御するように構成され、転送ゲートTX1は、電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDへの電荷キャリアの転送を制御するように構成される。
【0081】
図1-1Hは、いくつかの実施形態による、ピクセル2-112の回路図である。図1-1Hに示すように、電荷蓄積領域SD1を電荷蓄積領域SD2に電気的に結合する転送チャネルは、転送ゲートTX0を有するトランジスタのチャネルであり、電荷蓄積領域SD2を読み出し領域FDに電気的に結合する転送チャネルは、転送ゲートTX1を有するトランジスタのチャネルである。リセットゲートRSTを有するトランジスタおよび行選択転送ゲートRSを有するトランジスタなど、図1-1Hに示すピクセル2-112の他のトランジスタは、図1-3Aおよび図1-3Bに関連してピクセル1-112に関して説明した態様で構成され得る。例えば、ピクセル2-112のアレイは、図1-3Bおよび1-3Cに関連してピクセル1-112に関して本明細書で説明したような処理回路を備える構成で配置され得る。
【0082】
図1-1Iは、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含まれ得るピクセル2-112’の上面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル2-112’は、ピクセル1-112’に関して本明細書で説明した態様で構成され得る。例えば、ピクセル2-112’の光検出領域PPDは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0及びドレイン領域Dに向かう方向に固有電界を誘起するように構成され得る。
【0083】
III. 光退色情報を使用した集積デバイス較正
本明細書に記載される技術の態様は、参照色素から取得される光退色情報を使用して、集積デバイスおよび/または集積デバイスと相互作用する1つまたは複数のコンポーネントを較正するための技法に関する。例えば、集積デバイスは、少なくとも1つの励起源をさらに含むシステムの一部であり得る。本明細書で説明される較正技法は、集積デバイスを備えるシステムを較正するために使用され得る。図2は、いくつかの実施形態による、光退色情報を使用して集積デバイスを備えるシステムを較正するための例示的なプロセス200を示す。
【0084】
動作202において、サンプル分子は、参照色素によりラベル付けされ得る。例えば、参照色素は、少なくとも1つの光源からの光による励起に反応して放出光を放出する蛍光分子を含み得る。参照色素分子は、参照色素分子によって放出される放出光の特性が、参照色素分子が結合されるサンプル分子を同定するために使用され得るように、特定のサンプル分子に結合する種類のものであり得る。
【0085】
動作204において、色素ラベル付けされたサンプルが1つまたは複数の反応チャンバ内に装填される。例えば、いくつかの実施形態において、複数の反応チャンバから受信した信号の差を評価するために、同じ種類の複数の参照色素が複数の反応チャンバに装填される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される技術の態様はこの点で限定されず、サンプル分子は、サンプル分子が複数の反応チャンバに装填された後に参照色素によりラベル付けされ得る。
【0086】
図3-1は、いくつかの実施形態による、表面306に付着した参照色素分子310によりラベル付けされたサンプル分子309を示す。図3-2は、いくつかの実施形態による、反応チャンバ内に付着された色素ラベルサンプルを図示する。特に、図3-2では、アミノ酸鎖(フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、ロイシン(L)、およびセリン(S))からなるサンプル分子309が、反応チャンバ308内に装填される。サンプル分子309は、参照色素分子310によりラベル付けされる。集積デバイスの概要を参照して本明細書で説明したように、参照色素分子310によって放出された信号を収集するためのフォトニックコンポーネント312を含むCMOSチップ314が設けられ得る。
【0087】
動作204は、1つまたは複数の反応チャンバが励起光により照射されていない間に実行され得る。いくつかの実施形態において、複数の色素でラベル付けされたサンプル分子が、動作204において複数の反応チャンバ内に装填され得ることを理解されたい。
【0088】
いくつかの実施形態において、参照色素を有するサンプル分子は、反応チャンバ内に単独で装填されてもよく、シークエンシングされる分子は、その後、反応チャンバ内に装填されてもよい。いくつかの実施形態において、参照色素を有する分子は、較正プロセスを実行した後にシークエンシングされる分子と共に反応チャンバ内に装填され得る。いくつかの実施形態において、参照色素は、シークエンシングされるべき分子自体に結合され得、参照色素は、シークエンシングを行う前に切断され得る。いくつかの実施形態において、参照色素は、反応チャンバ内に付着または他の方法で固定化される必要がない自由拡散色素分子であり得る。いくつかの実施形態において、参照色素は、チップの界面化学調製(surface chemistry preparation)の一部として反応チャンバ内に装填され得る。従って、本技術の態様は、反応チャンバ内の参照色素の特定の構成に限定されない。いくつかの実施形態によれば、動作202は、2019年10月28日に出願された「METHODS OF PREPARING SAMPLES FOR MULTIPLEX POLYPEPTIDE SEQUENCING」と題する米国特許出願第17/082,906号(代理人整理番号R0708.70077US01)に記載されている技法を含み得、この出願は参照によりその全体が援用される。
【0089】
動作206において、1つまたは複数の反応チャンバが、光源(例えば、レーザ)からの励起光により照射される。特に、動作206において、1つまたは複数の反応チャンバが、(例えば、光源をブロック解除すること、光源をチップに再結合すること、および/またはシステムの特性退色時間(characteristic bleaching time)に対して速い時間内に光源によって供給される出力を増加させることによって)励起光により周期的に照射され得る。例えば、図4は、いくつかの実施形態による、経時的な光源励起出力を示す例示的なグラフ400を示す。励起光は、いくつかの実施形態において、参照色素が退色されるまで、反応チャンバに照射され得る。いくつかの実施形態において、反応チャンバへの励起光の照射は、参照色素分子の退色を回避するように制御され得る。光退色参照色素分子のさらなる説明は、本明細書において提供される。
【0090】
動作208において、動作206において照射された1つまたは複数のサンプル分子を含む反応チャンバに関する退色ステップを示す時間トレースが記録される。例えば、図5-1は、いくつかの実施形態による、参照色素からの経時的に測定された信号を示す例示的なグラフ500を示す。図5-1に示されるように、測定された信号は、強度が上昇し、その後、ある期間後に強度が低下する。測定された信号の強度の上昇と低下との間の期間は、参照色素分子の退色時間に相当し得る。
【0091】
動作210において、励起すべき追加の励起経路があるかどうかが判定される。動作210において、励起すべき追加の励起経路があると判定された場合、プロセス200は、「是」の分岐を通って動作206に戻り、追加の励起経路により追加の反応チャンバを照射する。動作210において、追加の励起経路が存在しないと判定された場合、プロセス200は、「否」の分岐を通って動作212に進行し得る。
【0092】
動作212において、参照メトリック(reference metrics)が保存され得る。例えば、参照メトリックは、動作208で取得された退色ステップを示す時間トレースを含み得る。例えば、図5-2は、いくつかの実施形態による、反応チャンバ内の単一分子の収集に関する測定された退色時間および色素強度の例示的なヒストグラムを示す。グラフ502は、集積デバイスの反応チャンバ内に装填された単一分子参照色素の収集に関する測定された退色時間のヒストグラムを示す。図5-2に示されるように、単一分子参照色素の収集に関するメジアン退色時間は、5.8秒である。グラフ504は、集積デバイスの反応チャンバ内に装填された単一分子参照色素の収集に関する測定された参照色素信号強度のヒストグラムを示す。いくつかの実施形態において、退色時間は、測定された信号強度に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。例えば、測定された信号強度はピークを示し得る。ピーク強度に達してからピーク強度から低下するまでの期間が、退色時間に相当し得る。
【0093】
参照メトリックは、動作208において取得された情報から導出される情報を含み得る。いくつかの実施形態において、参照メトリックは、特性退色時間に基づいて決定され得る、反応チャンバ(単数または複数)内の分子(単数または複数)に関する参照励起強度を含み得る。例えば、退色時間の指数分布はexp(-t/τ)で表され、ここで、τは特性退色時間である。単一分子の収集に関して、ln(2)で除算されたメジアン退色時間は、特性退色時間τの推定値を提供する。より速い特性退色時間は、より高い励起強度から生じ得、逆もまた同様である。
【0094】
動作214において、シークエンシングパラメータは、参照メトリック(例えば、特性退色時間、励起強度)に基づいて調整され得る。いくつかの実施形態において、反応チャンバに励起光を照射するレーザの出力が調整され得る。例えば、いくつかの実施形態において、レーザ出力は、比較的速い特性退色時間を考慮して減少され得る。レーザ出力は、いくつかの実施形態において、その後のシークエンシング用途の間の励起強度が標的値を超えないことを確実にするために減少され得る。従って、光損傷がシークエンシング反応の寿命の要因となり得るシークエンシング用途に関する読み取り長(read length)が改善され得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、集積デバイスの構成は、参照メトリックに基づいて調整され得る。例えば、本発明者らは、反応チャンバにおける差異により、参照色素の特性退色時間が異なる反応チャンバ間で変化し得ることを認識した。従って、反応チャンバ、光検出器、および/または励起光をピクセルに照射する光源の構成は、参照メトリックに基づいて調整され得る。例えば、比較的速い退色時間を有する反応チャンバの場合、反応チャンバに照射される励起光の強度および/または持続時間は、減少され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、退色情報は、反応チャンバ内の参照色素分子の数を特定するために使用され得る。例えば、参照色素分子が光退色するまでに、励起光が1つまたは複数の参照色素分子に照射される実施形態において、退色ステップは、反応チャンバから収集された(例えば、1つまたは複数の参照色素分子から放出された)信号の強度の経時的変化を見ることによって観察され得る。1つの参照色素分子の光退色は、強度の単一のステップ(single step)(例えば、ある時点における信号の強度の特徴的な低下)によって表され得る。いくつかの実施形態において、信号の強度の特徴的な低下は、退色前に参照色素分子によって放出された信号の強度と実質的に等しい。具体的には、退色後、参照色素分子はもはや信号を放出せず、退色前の参照色素分子によって放出された信号の強度と実質的に等しい強度の単一のステップ分の減少が生じる。
【0097】
単一の退色ステップが観察される場合(例えば、経時的に観察される信号強度の変化によって表されるように)、単一の参照色素分子が退色して、信号が収集される反応チャンバ内に単一の参照色素分子が存在していると判定され得る。2つ以上の退色ステップが観察される場合、複数の参照色素分子が反応チャンバ内に装填されたと判定され得る。反応チャンバ内に装填されていると判定された参照色素分子の数は、反応チャンバ内に存在するサンプルの生体分子の数を決定するための代理とみなすことができる。いくつかの実施形態において、反応チャンバ内のサンプル分子の数の指標は、特定の反応チャンバをその後の分析に含めるか、または除外するために使用され得る。光退色を使用して定量的装填の指標を決定するためのさらなる説明が、本明細書において提供される。
【0098】
較正プロセス200の実行に続いて、集積デバイスは、1つまたは複数の反応チャンバ内に配置された分子からの信号を収集および分析するために使用され得る。例えば、図6は、いくつかの実施形態による、較正プロセス200に続いて実行され得る反応チャンバ内のシークエンシング反応を示す。図6に示されるシークエンシング反応は、反応チャンバ308内のサンプル309への参照色素分子310A、310Bの付着を含み得る。本明細書に記載されるように、参照色素分子は、特定の種類のものであり得、例えば、特定の種類のサンプル分子に結合し得る。例えば、参照色素分子310Aは、第1の種類のアミノ酸(例えば、図4-1においてLで示されるロイシン)のみに選択的に結合し、参照色素分子310Bは、第2の種類のアミノ酸(例えば、図4-1においてそれぞれF、Y、およびWで示されるフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン)に選択的に結合する。サンプル分子309のサンプリング(例えば、励起光を反応チャンバ308に照射し、結合した参照色素分子310A、310Bから放出される信号を収集することによる)に続いて、サンプル分子および/またはそれに結合した参照色素分子310A、310Bの切断が、切断分子316を用いて行われ得る。サンプル分子は、参照分子によって放出される信号に基づいて同定され得る。結合、放出信号の受信、および切断のプロセスは、単一のサンプル分子および/または反応チャンバに対して複数回繰り返され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に説明される較正技法は、タンパク質および/またはDNA/RNAシークエンシング用途における使用のために構成される集積デバイスを含むシステムを較正するために使用され得る。
【0099】
本明細書に説明される較正技法は、較正に続いて行われる任意の好適なサンプリング技法と組み合わせて使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に説明される較正技法は、2020年10月23日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR SAMPLE PROCESS SCALING」と題する米国特許仮出願第63/105,185号(代理人整理番号R0708.70112US00)に説明されるようなサンプル多重化のための技法と組み合わせて使用されてもよく、この出願は参照によりその全体が援用される。
【0100】
IV. 定量的装填
本明細書で説明されるように、いくつかの態様は、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバの定量的装填の指標を決定するためのシステムおよび方法に関する。例えば、本発明者らは、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバの定量的装填の指標をリアルタイムで(例えば、装填プロセスの間に)決定することが有利であることを認識した。定量的装填の指標は、反応チャンバ内に何個の生体分子が存在するか(例えば、反応チャンバが空であるか、単一装填されているか、二重装填されているか、または3個以上の生体分子が多重装填されているか)の表示を含み得る。いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、単一装填(または所望される任意の他の個数に装填)されている反応チャンバの割合の表示を含み得る。
【0101】
図7は、いくつかの実施形態による、1つまたは複数の反応チャンバの装填を定量化するための例示的なプロセス700を示す。プロセス700は、集積デバイスにサンプルが装填される動作702で開始され得る。サンプルは、複数の生体分子を含み得る。複数の生体分子は、任意の適切な種類のものであり得る。例えば、複数の生体分子は、シークエンシングを通じて同定されることが望まれる生体分子を含み得る。いくつかの実施形態において、複数の生体分子はペプチドを含む。いくつかの実施形態において、複数の生体分子は、核酸(例えば、リボ核酸、デオキシリボ核酸)を含む。
【0102】
複数の生体分子は、蛍光ラベル分子(本明細書では参照色素分子とも呼ばれる)によりラベル付けされ得る。いくつかの実施形態において、複数の生体分子は、サンプルを集積デバイス上に装填する前にラベル付けられ得る。いくつかの実施形態において、複数の生体分子は、装填時にラベル付けられていなくてもよく、集積デバイス上に事前または後に装填される蛍光ラベル分子は、複数の生体分子に結合され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子は、生体分子自体に直接付着され得る。蛍光ラベル分子は、生体分子に共有結合され得るか、または生体分子に非共有結合され得る(例えば、リンカーまたはストレプトアビジンを介して)。いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子は、チップの界面化学調製の一部として反応チャンバ内に装填され得る。いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子は、本明細書にさらに記載されるように、生体分子に可逆的に結合される。従って、本技術の態様は、反応チャンバ内の蛍光ラベル分子の特定の構成に限定されない。いくつかの実施形態によれば、動作702は、2020年10月28日に出願された「METHODS OF PREPARING SAMPLES FOR MULTIPLEX POLYPEPTIDE SEQUENCING」と題する米国特許出願第17/082,906号(代理人整理番号0708.70077US01)に記載されている技法を含み得、この出願は参照によりその全体が援用される。
【0104】
いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子はオリゴヌクレオチドからなる。オリゴヌクレオチドは生体分子に共有結合され得る。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、生体分子に共有結合している相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。
【0105】
蛍光ラベル分子は、生体分子から(例えば、1つまたは複数のスペーサーを介して)最小距離(例えば、1nm超、2nm超、5nm超、5~10nm、10nm超、10~15nm、15nm超、15~20nm、20nm超)分離され得る。蛍光ラベル分子を生体分子から最小距離だけ分離することによって、定量的装填の決定の間(例えば、光退色の間)に生体分子に損傷が生じることが防止され得る。
【0106】
動作704において、励起光は、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバに照射され得る。励起光は、本明細書に説明されるように、少なくとも1つの励起源(例えば、レーザ)により生成され得る。励起光は、集積デバイスの反応チャンバの全てまたはその一部に照射され得る。
【0107】
励起光は、反応チャンバ内の生体分子に結合された任意の蛍光ラベル分子を励起させて励起光を放出させる。動作706において、励起光に反応して個々の反応チャンバから1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号が取得され得る。
【0108】
例えば、放出光は、集積デバイスの1つまたは複数の光検出領域によって収集され得る。いくつかの実施形態において、集積デバイスは、各反応チャンバに対して1つの光検出領域を含み得る。いくつかの実施形態において、複数の光検出領域が単一の反応チャンバに対して設けられ得る。いくつかの実施形態において、複数の反応チャンバが単一の光検出領域に対応し得る。
【0109】
動作708において、定量的装填の指標が、動作706において取得された放出信号に基づいて決定され得る。本明細書に記載されるように、定量的装填の指標は、反応チャンバ内に何個の生体分子が存在するか(例えば、反応チャンバが空であるか、単一装填されているか、二重装填されているか、または3個以上の生体分子が多重装填されているか)の表示を含み得る。いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、単一装填(または所望される任意の他の個数に装填)されている反応チャンバの割合の表示を含み得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、励起光を集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバに照射することは、1つまたは複数の蛍光ラベル分子を光退色させることを含み、定量的装填の指標は、放出信号において表される光退色ステップの数(例えば、放出信号において観察され得る光退色ステップの数)に基づいて決定される。例えば、反応チャンバ(単数または複数)は、(例えば、光源をブロック解除すること、光源をチップに再結合すること、および/またはシステムの特性退色時間に対して速い時間に光源によって供給される出力を増加させることによって)ステップ関数(step function)に応じて励起光により照射され得る。励起光は、参照色素が退色されるまで、反応チャンバに照射され得る。図8-1、図8-2、および図8-3は、動作704において光退色される蛍光ラベル分子を有するチャンバから取得された例示的なトレースを示す。他の実施形態において、反応チャンバ内の1つまたは複数の参照色素によって放出された信号は、光退色を行うことなく取得され得る。
【0111】
図8-1は、いくつかの実施形態による、単一装填されたウェルを表すチップ装填プロセスからの例示的なトレース800Aを示す。図8-1に示すように、ある期間にわたる信号強度がプロットされている。励起光が最初に反応チャンバに照射されると、反応チャンバから受信される信号の強度は、ピークまで上昇し得る。(例えば、レーザ等の光源をオンにすることによって)励起光を反応チャンバに照射した後、強度の単一のステップ(例えば、ある時点における信号の強度の特徴的な低下)が図8-1において確認される。いくつかの実施形態において、図8-1に示されるように、信号の強度の特徴的な低下は、退色前に参照色素分子によって放出された信号の強度と実質的に等しい。退色後、参照色素分子はもはや信号を放出せず、その結果、図5-1に示すように強度の単一のステップ分の減少が生じる。従って、図8-1に示される信号は、反応チャンバ内の単一の蛍光ラベル、従って単一の生体分子の存在を示す。
【0112】
図8-2は、いくつかの実施形態による、二重装填されたウェルを表すチップ装填プロセスからの例示的なトレース800Bを示す。図8-2に示されるように、信号は、2個の蛍光ラベル分子、従って反応チャンバ内の2個の生体分子の存在を示す信号強度の2つのステップを含む。
【0113】
図8-3は、いくつかの実施形態による、多重装填されたウェルを表すチップ装填プロセスからの例示的なトレース800Cを示す。図8-3に示されるように、信号は、3個の蛍光ラベル分子、従って反応チャンバ内の3個の生体分子の存在を示す信号強度の3つのステップ(受信信号の強度の3つの特徴的な低下)を含む。
【0114】
場合によっては、光退色ステップが観察されないことがある。従って、観察された光退色の欠如に基づいて、生体分子が反応チャンバ内に存在しないことが決定され得る。
いくつかの実施形態において、反応チャンバ内に存在する蛍光ラベル分子を光退色することなく、信号が反応チャンバから取得され得る。そのような実施形態において、反応チャンバ内に存在する蛍光ラベル分子の数、従って生体分子の数は、反応チャンバから取得される信号の相対強度によって決定され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子は、生体分子または生体分子に付着した二次生体分子に可逆的に結合され得る。例えば、二次生体分子は、N末端アミノ酸認識剤(例えば、ClpS、UBRボックスなど)を含み得る。いくつかの実施形態において、二次生体分子はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、生体分子または生体分子に付着したオリゴヌクレオチドへの可逆的ハイブリダイゼーションが可能である。
【0116】
蛍光ラベル分子の生体分子への結合のオンおよびオフは、蛍光ラベル分子のオンおよびオフパルス化によって表すことができる。特に、蛍光ラベル分子が生体分子に結合されて励起光により励起されるとき、蛍光ラベル分子は、1つまたは複数の光検出領域によって収集され得る放出光を放出する。結合していない場合、蛍光ラベル分子は放出光を放出し得ない。蛍光ラベル分子は、生体分子に対して周期的な結合パターンをとることができる。従って、蛍光ラベルは、生体分子に結合したときに蛍光ラベルから放出された光を収集することによって検出することができる周期的パルス化パターンを生成する。
【0117】
図9は、いくつかの実施形態による、生体分子に可逆的に結合される蛍光分子の周期的パルス化パターンを示す図である。プロット902及び904は、単一パルス周期Tの間に1つまたは複数の光検出領域によって検出されたパルスの例を示す。
【0118】
プロット902および904は、2個の生体分子およびそれに可逆的に結合された個々の蛍光ラベルを有する二重装填されたウェルの例を示す。従って、パルス期間T中に2個のパルスが検出される。プロット902の図示された実施形態において、2個の蛍光ラベル分子は、期間Tの間に実質的に同時に個々の生体分子に結合する。従って、2個の蛍光ラベル分子の各々からの個々のパルスから構成される強度2Iを有する単一の複合パルスが、期間T内に検出される。プロット904の図示された実施形態において、2個の蛍光ラベル分子は、期間Tの間の離散時間において個々の生体分子に結合する。従って、強度Iを有する2個のパルスが期間T内に検出される。
【0119】
図示される実施形態は、反応チャンバに2個の生体分子が二重装填される例を示したが、本明細書に説明される技法は、同様に、パルス化周期Tの間に反応チャンバから放出されたパルスの強度を決定することによって、反応チャンバ内の単一生体分子の存在、2個を上回る生体分子の存在、または任意の生体分子の欠如を検出するために使用され得る。パルスのパルス化周期および強度は、生体分子に可逆的に結合される蛍光ラベル分子の特性パルス幅および特性強度に基づいて決定され得る。
【0120】
図9は、パルスのタイミングおよび強度を検出し、かつ使用して、個々のパルス周期Tの間に生体分子に結合されている反応チャンバ内の蛍光ラベル分子の数、従って、反応チャンバ内に現在存在する生体分子の数を決定する方法を示す。従って、プロセス700の動作708は、本明細書に記載されるような可逆的結合分子を使用して行われ得る。
【0121】
プロセス700に戻ると、プロセス700は、放出された信号に基づいて定量的装填の指標を決定した後、動作710に進行し得る。動作710において、装填を継続するかどうかが決定される。装填を継続するか終了するかの決定は、動作710で決定された定量的装填の指標に基づいて決定され得る。
【0122】
例えば、いくつかの実施形態において、集積デバイスの動作は、定量的装填の指標に基づいて最適化され得る。いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、集積デバイスへのサンプルの装填を行う方法を調整するために使用され得る。いくつかの実施形態において、定量的装填の指標を使用して、最適な数の反応チャンバに所望の数の生体分子が装填されたかどうかを判定することができる。いくつかの実施形態において、生体分子の所望の数は1であり、従って、定量的装填の指標を使用して、最適な数(例えば、最大)の反応チャンバが単一装填されているかどうかが判定される。
【0123】
定量的装填の指標によって示されるように、装填される反応チャンバの最適な数に達していない場合、追加の装填が行われ得る。例えば、プロセス700は、追加のサンプルが集積デバイスに装填される動作702にループバックされ得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、定量的装填の指標を使用して、後続の装填ステップで装填される追加のサンプルの量を調整することができる。例えば、サンプルは、特定の濃度の生体分子を含み得る。定量的装填の指標を使用して、生体分子の濃度を増加させるかまたは減少させるかを決定することができる。例えば、単一装填反応チャンバの最適な数が満たされていないと判定された場合、初期サンプルよりも生体分子の濃度が高い追加のサンプルを使用して追加の装填を実施することができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、後続の分析のために反応チャンバからの信号を処理する方法を調整するために使用され得る。例えば、反応チャンバが空であるか、二重装填されているか、または多重装填されていると判定された場合、これらの反応チャンバに対してシークエンシングを実行しないこと、またはこれらの反応チャンバから受信した信号を処理しないことのいずれかによって、これらの反応チャンバからの信号を無視すると判定され得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、集積デバイスの将来の動作を通知するために使用され得る。例えば、定量的装填の指標は、集積デバイスへのサンプルの装填を将来行う方法(例えば、サンプル中に存在する生体分子の濃度、装填を実施する時間、装填を実施する速度など)を調整するために使用され得る。
【0127】
動作710において装填を継続しないと決定された場合、プロセス700は動作712に進行し、そこで装填が終了される。例えば、いくつかの実施形態において、終了は、固定化されていない(例えば、結合されていない)ペプチドを含む溶液の除去、洗浄、および/または交換によって実施され得る。いくつかの実施形態において、終了は自律的に実行され得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、装填を終了させることは、反応チャンバから蛍光ラベル分子を除去することを含み得る。いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子は、化学的切断プロセスによって除去され得る。いくつかの実施形態において、蛍光ラベル分子は、酵素的切断プロセスによって除去され得る。
【0129】
本明細書で説明されるように、プロセス700は連続的に実行され得る。いくつかの実施形態において、プロセス700は、例えば、ソフトウェアを使用して自律的に実行され得る。これにより、各反応チャンバ内のラベル付けられた生体分子の数を連続的に監視することが可能になる。ソフトウェア分析プロセスは、装填をリアルタイムで監視することができる。例えば、ソフトウェア分析は、本明細書に記載されるように、信号パルス/光退色ステップを検出し得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の異なる種類の蛍光ラベル分子が生体分子に提供される。例えば、第1の種類の蛍光ラベル分子および第2の種類の蛍光ラベル分子が、生体分子への結合のために提供され得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、反応チャンバの「ヒートマップ(heatmap)」を生成して、1つまたは複数の生体分子が装填された集積デバイスの割合(例えば、反応チャンバの割合)を視覚的に示し得る。図10は、いくつかの実施形態による、装填パーセントを例示する反応チャンバの例示的なヒートマップを示す。
【0132】
いくつかの実施形態において、定量的装填の指標は、集積デバイスの一部(例えば、集積デバイスの全ての反応チャンバの一部)に対してのみ取得され得る。定量的装填の指標は、集積デバイス全体(または、従って、他の部分)に関する定量的装填の外挿された指標を得るために、集積デバイスの残りの反応チャンバに外挿され得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、サンプルのシークエンシングは、本明細書に説明される較正および定量的装填技法を実行した後に、(例えば、プロセス700の動作714において)実行され得る。例えば、較正および定量的装填技術は、例えば、2020年6月12日に出願された「TECHNIQUES FOR PROTEIN IDENTIFICATION USING MACHINE LEARNING AND RELATED SYSTEMS AND METHODS」と題する米国特許出願第16/900,582号(代理人整理番号R0708.70063US01)に記載されるような、機械学習を使用したサンプル同定のための技術と組み合わせて使用されてもよく、この出願は、参照によりその全体が援用される。
【0134】
IV. 別例および範囲
本開示の技術のいくつかの態様および実施形態をこのように記載したが、様々な改変、変更および改良が当業者に容易に想起されることを理解されたい。そのような改変、変更および改良は、本明細書に記載される技術の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、上記の実施形態は例として提示されているものにすぎないこと、ならびに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は詳細に記載されているものとは別様に実践され得ることを理解されたい。加えて、本明細書に記載される2つ以上の特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾するものでなければ、本開示の範囲内に含まれる。
【0135】
また、記載したように、いくつかの態様は、1つ以上の方法として具現化してよい。方法の一部として実施される動作は、任意の好適な形で順序付けることができる。それに応じて、例示的な実施形態では連続的な動作として示されている場合であっても、いくつかの動作を同時に実施することを含み得る、示されているものとは異なる順序で動作が実施される実施形態を構築することができる。
【0136】
本明細書において定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文献中の定義および定義される用語の通常の意味の両方、またはそのいずれかを超えて統括するものと理解されたい。
【0137】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、明らかにそれとは反対のことが示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。
【0138】
「および/または」などの句は、本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、そのように連結された要素の「一方または両方」を、すなわち、ある場合には連言的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素を意味するものと理解されたい。
【0139】
本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、1つ以上の要素の列挙に関して、「少なくとも1つ」という句は、要素の列挙中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されたいが、必ずしも、要素の列挙内に具体的に列挙されるあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また要素の列挙中の要素の任意の組み合わせを排除するわけではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が言及する要素の列挙内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関するか関しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。
【0140】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「から構成される」などのようなすべての移行句はオープンエンド、すなわち限定はされないが含むことを意味するものであると理解されたい。「からなる」および「本質的に~からなる」という移行句はそれぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句とする。
図1-1A】
図1-1B】
図1-1C】
図1-1D】
図1-1E】
図1-1F】
図1-1G】
図1-1H】
図1-1I】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
【国際調査報告】