(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】区域化した触媒物品
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20231128BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20231128BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231128BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231128BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20231128BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J35/04 301L
B01J37/02 101D
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/24 K
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528703
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021058735
(87)【国際公開番号】W WO2022103805
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/128650
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チー イー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シン チュー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シヤオショワン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオ-リン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォランテ,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】キンネ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】チョン,シヤオライ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA03
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4G169EA27
4G169EC28
4G169EE09
4G169FB19
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、TWCに特に有用な区域化した触媒物品に関し、該触媒物品は、a)触媒組成物の被覆であって、担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、触媒組成物の被覆の第1区域、及び担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含む、触媒組成物の被覆の第2区域を含む、触媒組成物の被覆、及びb)基材を含み、触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されており、排気ガスの処理に有用であり、そして本発明は、該区域化した触媒物品を含む排気処理システムに関する。本発明はまた、該区域化した触媒物品を含む排気処理システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
区域化した触媒物品、特にTWCに有用な区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. 担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、前記触媒組成物の被覆の第1区域、及び
ii. 担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含む、前記触媒組成物の被覆の第2区域
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
前記触媒組成物の被覆の前記第1区域及び前記第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【請求項2】
前記第1区域が前記第2区域の上流又は下流、好ましくは上流に配置されている、請求項1に記載の区域化した触媒物品。
【請求項3】
前記第2区域が、前記ロジウム成分と前記白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを主要な白金族金属成分として含み、好ましくは、白金、パラジウム及びロジウム以外の任意のPGMを実質的に含まない、請求項1又は2に記載の区域化した触媒物品。
【請求項4】
前記第2区域がロジウム成分、白金成分及びパラジウム成分を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の区域化した触媒物品。
【請求項5】
前記第2区域がトップ層及びボトム層を含み、各層が、前記ロジウム成分と前記白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとから選択される1つ以上の白金族金属成分を含有し、これら成分がそれぞれの担体上に担持されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項6】
前記第2区域がトップ層及びボトム層を含み、前記トップ層が、1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含有し、そして前記ボトム層が、1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項7】
前記第2区域がトップ層及びボトム層を含み、前記トップ層が、1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持された白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分を含有し、そして前記ボトム層が、1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項8】
前記第1区域がトップ層及びボトム層を含み、各層が1つ以上の担体に担持された白金族金属成分を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項9】
白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分のそれぞれのための前記担体が、耐火性金属酸化物、酸素貯蔵成分及びこれらの任意の組み合わせから独立して選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項10】
前記耐火性金属酸化物が、バリアでドープされたアルミナ、ランタナでドープされたアルミナ、セリアでドープされたアルミナ、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナ、バリア-セリアでドープされたアルミナ、及びこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項9に記載の区域化した触媒物品。
【請求項11】
前記酸素貯蔵成分が、セリア-ジルコニア複合酸化物及び安定化セリア-ジルコニア複合酸化物から選択される、請求項9に記載の区域化した触媒物品。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、各層が1つ以上の担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、前記触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、前記トップ層が1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持された白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分を含有し、そして前記ボトム層が1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、前記触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
前記触媒組成物の被覆の前記第1区域及び前記第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、
- 前記トップ層が、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含み、
- 前記ボトム層が、耐火性金属酸化物上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、
前記触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、
- 前記トップ層が、耐火性金属酸化物上に担持されたパラジウム成分、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持されたロジウム成分、及びパラジウム成分とロジウム成分のそれぞれの担体上に担持された白金成分を含有し、
- 前記ボトム層が、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持された白金成分を含有する、
前記触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
前記触媒組成物の被覆の前記第1区域及び前記第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、
- 前記トップ層が、セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含み、
- そのボトム層が、バリア-セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、
前記触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、
- 前記トップ層が、バリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物上に担持されたパラジウム成分、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持されたロジウム成分、及びパラジウム成分とロジウム成分のそれぞれの担体上に担持された白金成分を含有し、
- 前記ボトム層が、セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持された白金成分を含有する、
前記触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
前記触媒組成物の被覆の前記第1区域及び前記第2区域は、1つの基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【請求項15】
前記第1区域の前記白金成分が、白金元素として計算して1~250g/ft
3、又は5~150g/ft
3、又は10~100g/ft
3、又は30~80g/ft
3、又は40~70g/ft
3の量で担持されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項16】
前記白金成分が、前記第1区域の前記トップ層及び前記ボトム層に1:10~10:1の範囲、又は1:5~10:1、又は1:2~5:1、又は1:1~3:1の質量比で担持されている、請求項3から15のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項17】
前記第2区域のPGM成分が、それぞれのPGM元素として計算して1~250g/ft
3、又は5~150g/ft
3、又は10~100g/ft
3、又は30~80g/ft
3、又は40~70g/ft
3の総量で担持されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項18】
前記第2区域における前記ロジウム成分が、前記第2区域におけるPGM成分の総担持量に対して0.5~90質量%、又は0.5~70質量%、又は0.5~50質量%、又は1~20質量%、又は3~10質量%の量で担持されている、請求項1から17のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項19】
前記第1区域における総Pt担持量と前記第2区域における総PGM担持量との比が、1:10~10:1の範囲、又は5:1~1:5、又は4:1~1:4、又は3:1~1:3、又は2:1~1:1である、請求項1から18のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項20】
前記基材がフロースルー基材又はウォールフロー基材である、請求項1から19のいずれか一項に記載の区域化した触媒物品。
【請求項21】
内燃エンジン、特にガソリンエンジンの下流に位置する請求項1から20のいずれか一項に定義した区域化した触媒物品を含む、排気処理システム。
【請求項22】
モータサイクル用である、請求項21に記載の排気処理システム。
【請求項23】
排気流、特にモータサイクルエンジンからの排気流を処理する方法であって、請求項1から20のいずれか一項に定義した区域化した触媒物品又は請求項21又は22に定義した排気処理システムと、前記排気流とを接触させることを含む方法。
【請求項24】
請求項1から20のいずれか一項に定義した区域化した触媒物品又は請求項21又は22に定義した排気処理システムを、ガソリンエンジン、特にモータサイクルエンジンからの排気中の炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物、特に炭化水素及び一酸化炭素を削減するのに使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの処理に有用な区域化した触媒物品、及びその区域化した触媒物品を含む排気処理システムに関するものである。特に、本発明は、内燃エンジン(特にモータサイクル用)のTWCコンバータにおいて有用な、区域化した触媒物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン排気は実質的に、粒子状物質及びガス状汚染物質、例えば未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)からなる。内燃エンジン、特にガソリンエンジンについては、エンジン排気を処理するために三元転化(TWC)触媒(以下、互換的にTWC触媒又はTWCという)が広く用いられており、これら触媒は、未燃炭化水素及び一酸化炭素の酸化と、窒素酸化物の還元とを同時に行うことができる。
【0003】
ここ数十年、自動車の排出規制は、特に未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)に対して世界的にますます厳しくなっている。そのため、一方では、汚染物質の生成を減らすことがエンジンに対してさらに要求され、そして他方では、汚染物質をより効果的に転化することが触媒に対してさらに要求されている。
【0004】
エンジンからの窒素酸化物(NOx)排出は、こうしたガス状汚染物質の中で最も低いレベルに定義されている。未燃炭化水素(HC)及びCOの排出をより少なくすることができれば、より望ましいであろう。
【0005】
未燃炭化水素(HC)の排出は主に、エンジンの冷間始動段階に発生する。冷間始動段階の未燃炭化水素の酸化は、ほとんどのTWC触媒のライトオフ温度が高いことから、CO及びNOxよりも困難である。冷間始動段階中の未燃炭化水素の効果的な酸化は、TWC触媒の製造者にとって課題となっている。
【0006】
エンジンからの一酸化炭素(CO)の排出は、未燃炭化水素(HC)及びNOxほど低いレベルに定義されていない。CO排出は、特に先進国又は地域の都市部における自動車に由来するものが主要な割合を占めると言われていた。COは人体に有害であるだけでなく、植生にも悪影響を及ぼす。エンジン排気中に最も多く含まれる危険なガス状汚染物質であるCOの排出を制御することは、TWC触媒製造者にとって別の大きな課題となっている。
【0007】
よって、内燃機関の排気からのHC、CO及びNOxの除去、特にHC及びCOの除去に、より効果的なTWC触媒を提供する必要がある。経済的な通勤車両として、モータサイクルはいくつかの地域で非常に人気があり、そして例えばアジアの一部では、その量が小型車両を上回る。しかしながら、モータサイクルの排出規制は、それほど厳しくない。HC、CO及びNOxの除去、特にHC及びCOの除去に、より効果的なTWC触媒は、モータサイクルが主な車両である地域でも望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、HC、CO及びNOxの削減に関して優れた触媒性能を有し、HC及びCOの削減に特に有効である、白金族金属を含む触媒物品を提供することである。
【0009】
驚くべきことに、本発明の目的は、白金族金属としてPtのみを含む区域を有する、区域化した触媒物品によって達成されることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって、1つの態様において、本発明は、区域化した触媒物品を提供するものであり、この触媒物品は、
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. 担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、触媒組成物の被覆の第1区域、及び
ii. 担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含む、触媒組成物の被覆の第2区域
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている。
【0011】
別の態様において、本発明は、内燃エンジン、特にガソリンエンジンの下流に位置する、本明細書に記載の区域化した触媒物品を含む、排気処理システムを提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の区域化した触媒物品又は排気処理システムと排気流とを接触させることを含む、排気流を処理する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による、単一の基材を備える区域化された触媒物品設計の概略図である。
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による、2つの基材を備える区域化された触媒物品設計の概略図である。
【
図2】
図2Aは、本発明のいくつかの実施形態による、例示的な層構成を備える白金成分のみを含む第1区域の概略図である。
【0014】
図2Bは、本発明のいくつかの実施形態による、例示的な層構成を備える白金、パラジウム及びロジウム成分を含む第2区域の概略図である。
【
図3】
図3は、実施例で示す試料1の例示的な層構成を備える区域化した触媒物品設計の概略図である。
【
図4】
図4は、実施例で示す試料2の例示的な層構成を備える区域化した触媒物品設計の概略図である。
【
図5】
図5は、実施例で示す試料3の例示的な層構成を備える区域化した触媒物品設計の概略図である。
【
図6】
図6は、実施例で示す新鮮な試料1、2及び3でエンジン排気を処理した後のTHC、CO及びNOxに関するテールパイプ排出を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例で示すエージングした試料1、2及び3でエンジン排気を処理した後のTHC、CO及びNOxに関するテールパイプ排出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に記載する。本発明は、多くの異なる方法で具体化され得、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるものではないことを理解されたい。
【0016】
単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかにそうではない指示がない限り、複数の参照を含む。「含む」、「含んでいる」等の用語は、「含有する」、「含有」等と互換的に使用され、非限定的で開放的に解釈される。すなわち、例えば、さらなる成分又は要素が存在し得る。「からなる」又は「本質的に…からなる」又は同義語の表現は、「含む」又は同義語の中に包含され得る。
【0017】
ここで使用する用語「パラジウム成分」、「白金成分」及び「ロジウム成分」は、これら白金族金属が任意の可能な価数状態で存在することの記載が意図されており、これらは例えば触媒活性形態としてのそれぞれの金属又は金属酸化物であり得、又は例えば触媒のか焼又は使用時に分解するか又は触媒活性形態に転化するそれぞれの金属化合物、錯体等であり得る。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、TWCに特に有用な区域化した触媒物品が提供され、この触媒物品は、
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. 担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、触媒組成物の第1区域、及び
ii. 担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含む、触媒組成物の被覆の第2区域
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている。
【0019】
本発明による区域化した触媒物品における触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、基材の長手方向に互いに隣接しており、正確に隣接していてよいが、例えば2つの区域が2つの基材上に担持されている場合には非意図的に間隙を空けて中断されていてもよく、又は例えば2つの区域が単一の基材上に担持されている場合には非意図的に重なっていてもよいことを理解されたい。
【0020】
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域が基材それぞれの上に担持されている場合、基材は長手方向に配置されて、処理される排気ガスが各基材を順次通過することをさらに理解されたい。
【0021】
文脈内の用語「第1」及び「第2」は、2つの区域の相対的な位置を示すことを意図するものではなく、排気流方向に関して、2つの区域の相対的な位置を制限するものとして理解されてはならない。
【0022】
触媒組成物の被覆の第1区域は、第2区域の上流又は下流に配置されていてよい。いくつかの実施形態では、第1区域は上流に配置されている。代替の実施形態では、第2区域は上流に配置されている。ここで、他方から上流に配置されている区域は「前方区域」と呼ばれ、すなわち、エンジンからの排気流が他方の区域に先行して接触する区域である。よって下流に配置されている区域は後方区域と呼ばれ、すなわち、前方区域から流れる排気流が接触する区域である。
【0023】
触媒組成物の被覆の第1区域(以下、第1区域とも略記する)は、Pt以外の任意の白金族金属(PGM)を実質的に含まない。言い換えれば、白金成分は第1区域における唯一の白金族金属成分である。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1区域は層状であってよく、例えばトップ層及びボトム層を含み、各層が1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する。
【0025】
触媒組成物の被覆の第2区域(以下、第2区域とも略記する)は、ロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを主要な白金族金属成分として含んでよい。ここで使用する用語「主要な」とは、区域における白金族金属成分の総担持量に対して50%を超える、例えば60%を超える、又は70%、又は80%、又は90%以上の量を指す。特に、第2区域は、白金、パラジウム及びロジウム以外の任意のPGMを実質的に含まなくてよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、第2区域は層状であってよく、例えばトップ層及びボトム層を含み、各層が、ロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとから選択される1つ以上の白金族金属成分を含有し、これら成分はそれぞれの担体上に担持されている。同じ1つの層における異なる白金族金属成分は、1つ以上の担体上に個別に、又は一緒に担持してよい。
【0027】
いくつかのさらなる実施形態では、第2区域はトップ層及びボトム層を含み、そのトップ層は、1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含有し、そしてそのボトム層は、1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する。例えば、第2区域にはトップ層及びボトム層が含まれ、そのトップ層が、1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持された白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分を含有し、そしてそのボトム層が、1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する。特に、第2区域において、トップ層は白金、パラジウム及びロジウム以外の任意のPGMを実質的に含まず、及び/又はボトム層は白金以外の任意のPGMを実質的に含まない。
【0028】
ここで、PGMを実質的に含まない区域又は層への言及は、特定されたPGMが、その区域又は層に意図的に添加又は使用されていないという意味が意図されている。当業者には、原材料からの微量の不純物PGMが不可避であることが理解されよう。さらに、その区域又は層への微量のPGM(複数可)の移行が、担持、コーティング及び/又はか焼中に不注意に起こり、微量の特定したPGM(複数可)がその区域又は層中に存在し得る。一般的に、0.75質量%未満、0.5質量%未満、0.25質量%未満、又は0.1質量%未満等、1質量%未満の特定したPGM(複数可)が存在し得る。
【0029】
本発明の文脈において、「担体」は、1つ以上の白金族金属成分を受け取り担持する材料を指し、これは他の成分、例えば安定剤、促進剤及びバインダーを受け取り担持してもよい。
【0030】
触媒組成物の被覆における白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分の担体は、同じである又は異なることが理解されよう。さらに、複数の白金族金属が同じ1つの被覆層に存在する場合、複数の白金族金属成分が同じ担体上に担持されてよい。また、触媒組成物の被覆内の異なる層又は異なる区域における同じ白金族金属成分の担体は、同じである又は異なることが理解されよう。
【0031】
本発明による区域化した触媒物品におけるPGM成分の有用な担体として、耐火性金属酸化物、酸素貯蔵成分及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0032】
耐火性金属酸化物は、排気処理用の触媒物品中の白金族金属成分の担体として広く使用されており、一般的には、高表面積のアルミナベースの材料、ジルコニアベースの材料又はそれらの組み合わせである。本発明の文脈において、「アルミナベースの材料」は、ベースとしてのアルミナ及び任意のドーパントを含む材料を指す。同様に、「ジルコニアベースの材料」は、ベースとしてのジルコニア及び任意のドーパントを含む材料を指す。
【0033】
アルミナベースの材料の好適な例には、限定するものではないが、アルミナ、例えば、エタ、カッパ及びシータアルミナ相の実質量を含有し得るアルミナのガンマ及びデルタ相の混合物、ランタナでドープされたアルミナ、バリアでドープされたアルミナ、セリアでドープされたアルミナ、ジルコニアでドープされたアルミナ、セリア-ジルコニアでドープされたアルミナ、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナ、バリア-ランタナでドープされたアルミナ、バリア-セリアでドープされたアルミナ、バリア-ジルコニアでドープされたアルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアでドープされたアルミナ、ランタナ-セリアでドープされたアルミナ、及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。ジルコニアベースの材料の好適な例には、限定するものではないが、ジルコニア、ランタナでドープされたジルコニア、イットリアでドープされたジルコニア、ネオジミアでドープされたジルコニア、プラセオジミアでドープされたジルコニア、チタニアでドープされたジルコニア、チタニア-ランタナでドープされたジルコニア、ランタナ-イットリアでドープされたジルコニア、及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0034】
特に、担体として有用な耐火性金属酸化物は、バリアでドープされたアルミナ、ランタナでドープされたアルミナ、セリアでドープされたアルミナ、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナ、バリア-セリアでドープされたアルミナ、及びこれらの任意の組み合わせから選択してよい。
【0035】
一般に、耐火性金属酸化物の量は、単一被覆層の総質量に対して10~90質量%である。
【0036】
酸素貯蔵成分(OSC)は、多価の状態を有し、そして酸化条件下で酸化剤、例えば酸素又は窒素酸化物と活発に反応することができる、又は還元条件下で還元剤、例えば一酸化炭素(CO)又は水素と反応する実体を指す。典型的には、OSCは、1つ以上の還元可能な希土類金属酸化物、例えばセリアを含む。OSCは、ランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、ハフニア、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上も含み、セリアとの複合酸化物を構成する。好ましくは、酸素貯蔵成分は、セリア-ジルコニア複合酸化物及び安定化セリア-ジルコニア複合酸化物から選択される。一般に、酸素貯蔵成分の量は、単一被覆層の総質量に対して20~80質量%である。
【0037】
いくつかの特定の実施形態では、本発明による区域化した触媒物品は、
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、各層が1つ以上の担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、そのトップ層が1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持された白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分を含有し、そしてそのボトム層が1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている。
【0038】
いくつかのより特定の実施形態では、本発明による区域化した触媒物品は、
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含み、
- そのボトム層が、耐火性金属酸化物上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、
触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、耐火性金属酸化物上に担持されたパラジウム成分、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持されたロジウム成分、及びパラジウム成分とロジウム成分のそれぞれの担体上に担持された白金成分を含有し、
- そのボトム層が、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持された白金成分を含有する、
触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている。
【0039】
いくつかのさらなる実施形態では、本発明による区域化した触媒物品は、
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含み、
- そのボトム層が、バリア-セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、
触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、バリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物上に担持されたパラジウム成分、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持されたロジウム成分、及びパラジウム成分とロジウム成分のそれぞれの担体上に担持された白金成分を含有し、
- そのボトム層が、セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持された白金成分を含有する、
触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、1つの基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている。
【0040】
上記のいくつかの実施形態では、第1区域の白金成分は、白金元素として計算して1~250g/ft3、又は5~150g/ft3、又は10~100g/ft3、又は30~80g/ft3、又は40~70g/ft3の量で担持してよい。
【0041】
さらに、上記の第1区域にトップ層及びボトム層が含まれるいくつかの実施形態では、白金成分は第1区域のトップ層及びボトム層に1:10~10:1、又は1:5~10:1、又は1:2~5:1、又は1:1~3:1の範囲の質量比で担持してよい。
【0042】
上記のいくつかの実施形態では、第2区域のPGM成分は、それぞれのPGM元素として計算して1~250g/ft3、又は5~150g/ft3、又は10~100g/ft3、又は30~80g/ft3、又は40~70g/ft3の総量で担持してよい。
【0043】
第2区域におけるロジウム成分は、第2区域におけるPGM成分の総担持量に対して、例えば0.5~90質量%、又は0.5~70質量%、又は0.5~50質量%、又は1~20質量%、又は3~10質量%の量で担持してよい。パラジウム成分の白金成分に対する質量比は、第2区域に両方が存在する場合、例えば、それぞれ元素として計算して1:10~10:1の範囲、又は1:5~5:1、又は1:3~3:1、又は1:2~2:1であってよい。
【0044】
さらに、第2区域にトップ層及びボトム層が含まれ、その両方が白金成分を含むいくつかの実施形態では、白金成分は、第1区域のトップ層及びボトム層に1:10~10:1の範囲、1:5~3:1、又は1:3~2:1、又は2:3~1:1の質量比で担持してよい。
【0045】
上記のいくつかの実施形態では、第1区域における総Pt担持量と第2区域における総PGM担持量との比は、例えば1:10~10:1の範囲、又は5:1~1:5、又は4:1~1:4、又は3:1~1:3、又は2:1~1:1である。代替的又は追加的に、第1区域及び第2区域は、長さ比1:10~10:1、又は5:1~1:5、又は4:1~1:4、又は3:1~1:3、又は2:1~1:1で延びる。長さとは、2つの区域が単一の基材に担持されている場合には、区域が延びる基材の部分の長さを指し、又は2つの区域が2つの基材それぞれに担持されている場合には、区域が延びる基材それぞれの長さを指す。
【0046】
一般に、第1区域の総担持量は、0.2~5.0g/in3の範囲又は1.0~4.0g/in3、又は1.5~3.0g/in3でよい。代替的又は追加的に、第2区域の総担持量は、0.2~10.0g/in3の範囲又は1.0~5.0g/in3、又は1.5~3.0g/in3でよい。
【0047】
触媒組成物の被覆は、所望により安定剤及び/又は促進剤を任意に含む。好適な安定剤には、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びそれらの混合物からなる群より選択される金属の非還元性酸化物が含まれる。好ましくは、バリウム及び/又はマグネシウムの1つ以上の酸化物が、安定剤として使用される。好適な促進剤には、ランタン、プラセオジム、イットリウム、セリウム、タングステン、ネオジム、ガドリニウム、サマリウム、ハフニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される希土類金属の非還元性酸化物が含まれる。
【0048】
上記のトップ層及びボトム層が区域に含まれるいくつかの特定の実施形態では、ボトム層は基材上に担持されており、そしてトップ層は如何なる中間層もなくボトム層上に担持されている。
【0049】
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は一般に、「ウォッシュコート」の形態で基材上に担持されている。用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野におけるその通例の意味を有し、基材に適用された触媒又は他の材料の薄く付着したコーティングを指す。ウォッシュコートは一般に、液体媒体中に或る一定の固形分(例えば、15~60質量%)の粒子を含有するスラリーを調製することにより形成され、次いでこれを基材上に適用し、乾燥及びか焼してウォッシュコート層を提供する。
【0050】
ここで使用する基材は、典型的にはウォッシュコートの形態で、触媒組成物が担持された燃焼エンジンの排気流中に生じる条件に耐えるのに好適な構造体を指す。基材は一般に、セラミック又は金属ハニカム構造であり、構造の一端から他端まで延びる微細で平行なガス流通路を有する。
【0051】
基材を構成するのに有用な金属材料には、耐熱金属及び金属合金、例えばチタン及びステンレス鋼、さらに鉄が実質的又は主要成分である他の合金が含まれる。このような合金は、1つ以上のニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有してよく、そしてこれら金属の総量は、有利には、少なくとも15質量%の合金、例えば10~25質量%のクロム、3~8%のアルミニウム、及び20質量%以下のニッケルを含んでよい。合金は、少量又は微量の1つ以上の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタン等を含有してもよい。金属基材の表面を、高温、例えば1000℃以上で酸化させて基材の表面に酸化物層を形成し、合金の耐食性を向上させ、そしてウォッシュコート層の金属表面への付着を容易にしてよい。
【0052】
基材を構成するのに有用なセラミック材料には、任意の好適な耐火性材料、例えば、コージェライト、ムライト、コージェライト-アルミナ、シリコンニトリド、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルミナ及びアルミノシリケートが含まれる。
【0053】
本発明の文脈内で、フロースルー基材が好ましく、これは、基材の入口面から出口面に延びる複数の微細で平行なガス流通路を有し、通路がそこを通る流体の流れに対して開かれている基材である。通路は、その流体入口からその流体出口まで本質的に直線的な経路であり、通路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように触媒材料がウォッシュコートとして適用された壁によって規定されている。モノリシック基材の流れ通路は薄壁のチャネルであり、任意の好適な断面形状及びサイズ、例えば台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形等とすることができる。このような構造は、断面の1平方インチ当たり約60~約900以上のガス入口開口部(すなわち、セル)を含有してよい。例えば、基材は、約200~900、より通例は約300~750のセル/平方インチ(「cpsi」)を有してよい。フロースルー基材の壁厚は様々でよく、典型的な範囲は1ミル~0.1インチである。
【0054】
基材が、基材の入口面から出口面に沿って延びる複数の微細で平行なガス流通路を有するウォールフロー基材であり、交互の通路が反対側の端部で塞がれていることも可能である。その構成には、ガス流がウォールフロー基材の多孔質壁を通って出口面に到達することが必要である。ウォールフロー基材は、約700セル/平方インチ(cpsi)以下、例えば約100~400cpsi、及びより典型的には約200~約300cpsiを含有してよい。通路の断面形状は、フロースルー基材の通路について上述したように、様々とすることができる。ウォールフロー基材の壁厚は様々でよく、典型的な範囲は2ミル~0.1インチである。
【0055】
ここで使用するPGMの担持量は、基材の単位体積当たりの触媒におけるPGM金属の質量として、g/ft3で定義される。被覆担持量は、基材の単位体積当たりの触媒組成物の被覆の全成分(すなわち、PGM、担体、バインダー等)の総質量として、g/in3で定義される。
【0056】
本発明による区域化した触媒物品は、如何なる制限もなく、当該技術分野で既知で任意の従来の方法によって調製してよい。典型的には、担持されたPGM(複数可)の触媒粒子、任意に安定剤及び/又は促進剤又はその前駆体、溶媒(例えば水)、任意にバインダー、及び任意に補助剤、例えば界面活性剤、pH調整剤及び増粘剤を含むスラリーを基材上に適用する、ウォッシュコーティング法を採用してよい。
【0057】
担持されたPGM(複数可)の触媒粒子は、PGM(複数可)の前駆体、例えば可溶性塩及び/又はその複合体を、従来の技術を介して、例えば乾式含浸(初期湿潤含浸又はキャピラリー含浸とも呼ばれる)又は湿式含浸によりそれぞれの担体上に含浸させ、任意にその後乾燥及び/又はか焼することにより、調製してよい。PGMの好適な前駆体は、アンミン錯塩、ヒドロキシル塩、ニトレート、カルボン酸塩、アンモニウム塩、及び酸化物から選択してよい。非限定的な例には、パラジウムニトレート、テトラアンミンパラジウムニトレート、ロジウムニトレート、テトラアンミン白金アセテート、及び白金ニトレート、テトラアンミン白金アセテート、ヘキサヒドロキシプラチン酸ジエタノールアミン塩((HOCH2CH2NH3)2[Pt(OH)6])が含まれる。
【0058】
バインダーは、アルミナ、ベーマイト、シリカ、ジルコニウムアセテート、コロイド状ジルコニア、又はジルコニウムヒドロキシドから提供してよい。バインダーは、存在する場合、典型的には、ウォッシュコート総担持量の0.5~5.0質量%の量で使用する。
【0059】
スラリーは、固形分を例えば20~60質量%、より具体的には30~50質量%の範囲で有してよい。スラリーは、粒径を低減するために粉砕されることが多い。典型的には、スラリーは粉砕後、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定して3.0~40ミクロン、好ましくは10~30ミクロン、より好ましくは20ミクロン未満のD90粒径を有する。
【0060】
適用したスラリーは、高温(例えば、100~150℃)で或る期間(例えば、10分~3時間)乾燥し、そしてさらに高い温度(例えば、400~700℃)で典型的には約10分~約3時間か焼して、基材上に堆積させてよい。か焼後のウォッシュコート担持量は、被覆基材と非被覆基材との間の質量差を求めることにより決定できる。当業者には明らかなように、ウォッシュコート担持量は、スラリーレオロジーを変更することによって変えることができる。さらに、ウォッシュコートを生成するためのコーティング、乾燥及びか焼を含む堆積プロセスは、層を所望の担持レベル又は厚さに構築するため必要に応じて繰り返すことができ、これは、複数のウォッシュコートを適用してよいことを意味する。
【0061】
本発明の別の態様によれば、内燃エンジン、特にガソリンエンジンの下流に位置する上記の区域化した触媒物品を含む、排気処理システムが提供される。いくつかの実施形態では、排気処理システムはモータサイクルに特に有用である。
【0062】
本発明のさらなる態様によれば、特にモータサイクルエンジンからの、排気流を処理する方法が提供され、この方法には、上記の区域化した触媒物品又は排気処理システムと排気流とを接触させることが含まれる。
【0063】
ここで使用する用語「排気」及び「排気流」等は、粒子状物質も含有し得る任意のエンジン排出物を指す。
【0064】
本発明による区域化した触媒物品及び排気処理システムは、ガソリンエンジン、特にモータサイクルエンジンからの排気中の炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物、特に炭化水素及び一酸化炭素を削減するのに有用である。
【0065】
実施形態
実施形態1. TWCに特に有用な区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. 担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、触媒組成物の被覆の第1区域、及び
ii. 担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含む、触媒組成物の被覆の第2区域
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【0066】
実施形態2. 第1区域が第2区域の上流又は下流、好ましくは上流に配置されている、実施形態1による区域化した触媒物品。
【0067】
実施形態3. 第2区域が、ロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを主要な白金族金属成分として含み、好ましくは、白金、パラジウム及びロジウム以外の任意のPGMを実質的に含まない、実施形態1による区域化した触媒物品。
【0068】
実施形態4. 第2区域がロジウム成分、白金成分及びパラジウム成分を含む、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0069】
実施形態5: 第2区域がトップ層及びボトム層を含み、各層が、ロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとから選択される1つ以上の白金族金属成分を含有し、これら成分がそれぞれの担体上に担持されている、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0070】
実施形態6. 第2区域がトップ層及びボトム層を含み、そのトップ層が、1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持されたロジウム成分と白金成分及びパラジウム成分の少なくとも1つとを含有し、そしてそのボトム層が、1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0071】
実施形態7. 第2区域がトップ層及びボトム層を含み、そのトップ層が、1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持された白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分を含有し、そしてそのボトム層が、1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0072】
実施形態8. 第1区域がトップ層及びボトム層を含み、各層が1つ以上の担体に担持された白金族金属成分を含有する、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0073】
実施形態9. 白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分のそれぞれのための担体が、耐火性金属酸化物、酸素貯蔵成分及びこれらの任意の組み合わせから独立して選択される、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0074】
実施形態10. 耐火性金属酸化物が、バリアでドープされたアルミナ、ランタナでドープされたアルミナ、セリアでドープされたアルミナ、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナ、バリア-セリアでドープされたアルミナ、及びこれらの任意の組み合わせから選択される、実施形態9による区域化した触媒物品。
【0075】
実施形態11. 酸素貯蔵成分が、セリア-ジルコニア複合酸化物及び安定化セリア-ジルコニア複合酸化物から選択される、実施形態9による区域化した触媒物品。
【0076】
実施形態12. 先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、各層が1つ以上の担体上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、そのトップ層が1つ以上の担体上に個別に又は一緒に担持された白金成分、パラジウム成分及びロジウム成分を含有し、そしてそのボトム層が1つ以上の担体上に担持された白金成分を含有する、触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【0077】
実施形態13. 先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含み、
- そのボトム層が、耐火性金属酸化物上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、
触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、耐火性金属酸化物上に担持されたパラジウム成分、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持されたロジウム成分、及びパラジウム成分とロジウム成分のそれぞれの担体上に担持された白金成分を含有し、
- そのボトム層が、耐火性金属酸化物及び酸素貯蔵成分上に担持された白金成分を含有する、
触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、単一の基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【0078】
実施形態14. 先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品であって、以下:
a) 触媒組成物の被覆であって、
i. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含み、
- そのボトム層が、バリア-セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物上に担持された白金成分からなる白金族金属成分を含む、
触媒組成物の被覆の第1区域と、
ii. トップ層及びボトム層を含み、
- そのトップ層が、バリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物上に担持されたパラジウム成分、ランタナ-ジルコニアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持されたロジウム成分、及びパラジウム成分とロジウム成分のそれぞれの担体上に担持された白金成分を含有し、
- そのボトム層が、セリアでドープされたアルミナから選択される耐火性金属酸化物及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される酸素貯蔵成分上に担持された白金成分を含有する、
触媒組成物の被覆の第2区域と
を含む、触媒組成物の被覆、及び
b)基材
を含み、
触媒組成物の被覆の第1区域及び第2区域は、1つの基材上に担持されているか又は基材それぞれの上に担持されている、区域化した触媒物品。
【0079】
実施形態15. 第1区域の白金成分が、白金元素として計算して1~250g/ft3、又は5~150g/ft3、又は10~100g/ft3、又は30~80g/ft3、又は40~70g/ft3の量で担持されている、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0080】
実施形態16. 白金成分が第1区域のトップ層及びボトム層に1:10~10:1の範囲、又は1:5~10:1、又は1:2~5:1、又は1:1~3:1の質量比で担持されている、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0081】
実施形態17. 第2区域のPGM成分が、それぞれのPGM元素として計算して1~250g/ft3、又は5~150g/ft3、又は10~100g/ft3、又は30~80g/ft3、又は40~70g/ft3の総量で担持されている、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0082】
実施形態18. 第2区域におけるロジウム成分が、第2区域におけるPGM成分の総担持量に対して0.5~90質量%、又は0.5~70質量%、又は0.5~50質量%、又は1~20質量%、又は3~10質量%の量で担持されている、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0083】
実施形態19. 第1区域における総Pt担持量と第2区域における総PGM担持量との比が、1:10~10:1の範囲、又は5:1~1:5、又は4:1~1:4、又は3:1~1:3、又は2:1~1:1である、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0084】
実施形態20. 基材がフロースルー基材又はウォールフロー基材である、先行する実施形態のいずれか1つによる区域化した触媒物品。
【0085】
実施形態21. 内燃エンジン、特にガソリンエンジンの下流に位置する実施形態1から20のいずれか1つに定義した区域化した触媒物品を含む、排気処理システム。
【0086】
実施形態22. モータサイクル用である、実施形態21による排気処理システム。
【0087】
実施形態23. 排気流、特にモータサイクルエンジンからの排気流を処理する方法であって、実施形態1から20のいずれか1つに定義した区域化した触媒物品又は実施形態21又は22に定義した排気処理システムと、排気流とを接触させることを含む方法。
【0088】
実施形態24:実施形態1から20のいずれか1つに定義した区域化した触媒物品又は実施形態21又は22に定義した排気処理システムを、ガソリンエンジン、特にモータサイクルエンジンからの排気中の炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物、特に炭化水素及び一酸化炭素を削減するのに使用する方法。
【実施例】
【0089】
本発明の態様を、以下の実施例によってより完全に記載するが、これらの実施例は、本発明の特定の態様を説明するために記載され、それを限定するものとして解釈されるものではない。
【0090】
実施例1.1 PGMとしてPtのみを含む触媒モジュールの調製
ボトムコートスラリー:
29.1グラムの16%ヘキサヒドロキシ白金酸ジエタノールアミン((MEA)2Pt(OH)6)水溶液を354グラムのバリア-セリア-アルミナ(16/41/43)粉末に初期湿潤含浸を介して含浸させた後、得られた粉末を、111グラムのD.I.水、20.0グラムの酢酸、50.2グラムの29.6%ジルコニウムアセテート水溶液及び100.4グラムの30%マグネシウムアセテート水溶液を含有する溶液に連続的に撹拌しながら添加し、pHを酢酸で5.5~6.5に調整した。その後、19.8グラムのアルミナバインダーを加え、粉末を14~16ミクロンの間のD90に粉砕した。
【0091】
トップコートスラリー:
35.2グラムの16%(MEA)2Pt(OH)6水溶液を192グラムのセリア-アルミナ(8/92)粉末に含浸させ、15.1グラムの16%(MEA)2Pt(OH)6水溶液を108グラムのセリア-ジルコニア(40/60)粉末に含浸させた後、得られた粉末を118グラムのD.I.水及び14グラムの酢酸を含有する溶液に添加し、粉末を10~12ミクロンの間のD90に粉砕した。その後、84グラムの28.5%セリウムニトレート溶液及び36.8グラムのアルミナバインダーを加え、酢酸を用いてpHを4~5に調整した。
【0092】
触媒モジュール:
ボトムコートスラリーを、直径42mm及び長さ110mmの300/2(cpsi/ミル)フロースルー金属基材に被覆し、150℃で1時間乾燥し、次いで500℃で2時間か焼した。ウォッシュコートの担持量が1.0g/in
3、及びボトムコーティングのPt担持量が20g/ft
3であるボトムコートを得た。次に、トップコートスラリーを適用し、150℃で1時間乾燥した後、500℃で2時間か焼した。ウォッシュコートの担持量が1.0g/in
3であるトップコートが得られ、トップコートのPGM担持量は40g/ft
3のPtであった。このモジュールの概略図を
図2Aに示す。
【0093】
実施例1.2 PGMとしてPt、Pd及びRhを含む触媒モジュールの調製(Pt/Pd/Rh=10/10/1)
ボトムコートスラリー:
15.6グラムの16%(MEA)2Pt(OH)6水溶液を80グラムのセリア-アルミナ(8/92)粉末及び266グラムのセリア-ジルコニア(55/45)粉末に初期湿潤含浸を介して含浸させた。生成物を水と混合し、次いで49グラムの硫酸バリウム粉末及び44グラムのアルミナバインダーを加えた。次いで硫酸を加えることにより、pHをおよそ3.5~4.5に調整した。
【0094】
トップコートスラリー:
第1の成分は、21.1グラムの20%Pd-ニトレート水溶液、その後23.9グラムの30%La-ニトレート水溶液を、209グラムのバリウム-アルミナ(10/90)粉末に初期湿潤含浸を介して含浸させることによって調製した。
【0095】
第2の成分は、4.25グラムの10%Rh-ニトレート水溶液を、26グラムのランタン-ジルコニア-アルミナ(3/20/77)粉末及び79グラムのセリア-ジルコニア(32/68)粉末に初期湿潤含浸を介して含浸させることによって調製した。
【0096】
11.2グラムの16%(MEA)2Pt(OH)6水溶液を水中で希釈し、その後第1及び第2の成分を加え、硝酸の添加によりpHを4~5に調整した。次いでスラリーを18~22ミクロンの間のD90に粉砕し、6.2グラムの硫酸バリウム粉末を加えた。その後、95.9グラムのアルミナバインダーを加え、硝酸を添加し、その後3.7gのジルコニウムアセテート溶液を添加することによりpHを3.5~4.5にさらに調整した。
【0097】
触媒モジュール:
ボトムコートスラリーを、直径42mm及び長さ110mmの300/2(cpsi/ミル)フロースルー金属基材に被覆し、150℃で1時間乾燥し、次いで500℃で2時間か焼した。ウォッシュコートの担持量が1.53g/in
3、及びボトムコーティングのPt担持量が16.5g/ft
3であるボトムコートを得た。次に、トップコートスラリーを適用し、150℃で1時間乾燥した後、500℃で2時間か焼した。ウォッシュコートの担持量が1.37g/in
3であるトップコートが得られ、トップコートのPGM担持量は12g/ft
3のPt、28.5g/ft
3のPd及び3g/ft
3のRhからなっていた。このモジュールの概略図を
図2Bに示す。
【0098】
実施例2 試験試料の調製
以下の表1に示す区域配置の試験試料は、処理するガスの入口及び出口を備えたハウジングにそれぞれのモジュールを収容することによって調製した。
【0099】
【0100】
試料1~3の構成を、
図3~5にそれぞれ模式的に示す。
【0101】
実施例3 触媒性能試験
触媒性能試験は、新鮮な状態とエージングした状態の両方の試験試料に対して行った。エージングは650ccのモータサイクルエンジンを用いて、試料入口温度780℃で30時間行った。
【0102】
試験は、100ccのオートバイで、世界二輪試験サイクル(WMTC)を用いてGB14622-2016、タイプIに準拠して行った。試験試料の性能は、1つの試験サイクルに含まれる以下の2段階からテールパイプの全炭化水素(THC)、CO及びNOxの排出量を測定することによって評価した。
【0103】
P1:0~600秒の冷間始動段階
P2:600~1200秒の高温段階。
【0104】
2段階からの排気は、2.03L/100kmの燃料消費下で以下の累積組成を有していた。
【0105】
P1:2.350g/kmのCO、0.410g/kmのTHC、0.471g/kmのNOx、
P2:1.471g/kmのCO、0.312g/kmのTHC、0.514g/kmのNOx。
【0106】
各試料を3回試験し、表2~4に示すように平均値を試験結果として得た。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
排出の試験結果も、新鮮な試料については
図6に、エージングした試料については
図7にグラフで示した。本発明によるPGMとしてPtのみを含む区域を有する試料1及び試料2は、新鮮な状態及びエージングした状態の両方において、THC及びCOの削減に関して、PGMとしてPtのみを含む区域を有しない試料3よりも優れていることが分かる。さらに、新鮮な状態の試料1は、NOx削減に関しても試料3より優れている。
【0111】
HC及びCOの酸化触媒はPt及びPdが関与し、NOxの還元触媒はRhが関与していること、そしてPtはCO、不飽和HC及びメタンの酸化には効果が低いが、C3
+HCにはPdよりも効果的であることは、既知であった。そのため、TWCでは一般的にPt、Pd及びRhの3つのPGMが組み合わされて使用されていた。さらに、Ptはガソリンエンジンからの排気の高温に対する耐性が低いので、ガソリンエンジン用のTWC触媒に単独で使用するには適していないと考えられていた。よって本発明の発見は驚くべきものである。
【0112】
また、PGMとしてPtのみを含む前方区域と、Pt、Pd及びRhを含む後方区域とを有する試料1のTHC及びCO削減に関する触媒性能が、逆の区域配置の試料2よりもさらに優れているという事実も驚きである。
【0113】
本明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を記載してきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用を単に例示するものであることを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。よって本発明には、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある修正及び変形が含まれることが意図される。
【国際調査報告】