(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】非導電液体の電気放電処理のための装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
H05H1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530777
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021083072
(87)【国際公開番号】W WO2022112458
(87)【国際公開日】2022-06-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ロキニー, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ベレット, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アダンス, セバスティアン
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA19
2G084BB05
2G084BB37
2G084CC03
2G084DD15
2G084DD22
2G084DD32
2G084DD35
2G084DD41
2G084FF31
2G084HH45
(57)【要約】
本発明は、本質的に矩形の、平行な、及び離隔したn個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートの少なくとも1つの交互の連続体であって、n≧2であり、電極プレートは1からnまで付番されている連続体を備える、非導電液体の電気放電処理のための装置に関し、装置が、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に電気的に接続された一連の第1電気コネクタを備えること、及び装置が、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に電気的に接続された一連の第2電気コネクタを備えることを特徴とする。更に、本発明は、前記装置を使用した非導電液体の電気放電処理のための方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電液体の電気放電処理のための装置であって、前記装置は、本質的に矩形の、平行な、及び離隔したn個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートの少なくとも1つの交互の連続体を備え、n≧2であり、前記電極プレートは、1からnまで付番されている、装置において、前記装置が、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に電気的に接続された一連の第1電気コネクタを備えること、及び前記装置が、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に電気的に接続された一連の第2電気コネクタを備え、前記装置が、前記一連の第1電気コネクタに接続された第1極と、前記一連の第2電極コネクタに接続された第2極とを有するAC電源を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電極プレート及び誘電体プレートは、前記プレートの下部に、上部に、及び/又は側部に位置された1つ又は複数のガイドレールによって離隔して保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項3】
前記誘電体プレートの表面積は、前記電極プレートの表面積より大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項4】
前記装置は、前記電極プレート及び誘電体プレートの少なくとも1つの交互の連続体が内部に配置される閉鎖容器を更に備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項5】
前記閉鎖容器は、前記閉鎖容器の下部部分に位置する第1非導電液体出口と、前記閉鎖容器の上部部分に位置する非導電液体入口とを更に備えることを特徴とする、請求項4に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項6】
前記閉鎖容器は、少なくとも2つの別個の電気フィードスルーコネクタを備え、それらを介して前記奇数及び偶数付番された電極プレートがそれぞれ前記電源に電気的に接続されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項7】
前記閉鎖容器は、1つ又は複数のプロセスガスの進入のための少なくとも1つのガス入口ポートを更に備えることを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項8】
前記対角線上の対向する第1の対の角及び前記対角線上の対向する第2の対の角は、互いに対して横断方向に位置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項9】
前記第1及び第2電気コネクタは、それぞれの角において交わる2つの辺のうち長い方の辺の長さの最大15%に相当する距離だけそれぞれの角から離れて電極プレートに電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項10】
前記装置は、液体ディストリビュータを更に備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項11】
前記電極プレートは、0.2~4m
2の表面積を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項12】
前記電極プレートは、金属、金属合金、金属化合物、炭素、炭素化合物、導電性セラミック、又は半導体を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気放電処理のための装置。
【請求項13】
前記誘電体プレートの表面積は、前記電極プレートの表面積よりも10~25%だけ大きいことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項14】
前記誘電体プレートは、ガラス、石英、マイカ、硬質ポリマー、及びこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項15】
前記装置は、前記非導電液体のためのディストリビュータを備えることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の非導電液体の電気放電処理のための装置。
【請求項16】
非導電液体の電気放電処理のための方法であって、
a.本質的に矩形の、平行な、及び離隔したn個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートの少なくとも1つの交互の連続体を閉鎖容器内に提供するステップであって、n≧2であり、前記電極プレートは、1からnまで付番されている、ステップと、
b.第1端子に交流双極電圧を供給し、第2端子に反対の交流双極電圧を供給するAC電源を提供するステップと、
c.任意選択により、前記閉鎖容器内に、水素を含む減圧雰囲気を提供するステップと、
d.前記閉鎖容器の第1入口を介して、前記非導電液体を前記閉鎖容器内に導入するステップと、
e.前記n個の電極プレート及び任意選択によりn+1個の誘電体プレートの表面上に前記非導電液体を分配させ、前記電極及び任意選択により前記誘電体プレートの表面上に非導電液体の薄膜を形成するステップと、
を含む方法において、
f.前記交流双極電圧は、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に提供され、前記第1端子は、第1電気コネクタに電気的に接続され、前記第1電気コネクタは、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に電気的に接続されていること、及び
g.前記反対の交流双極電圧は、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に提供され、前記第2端子は、第2電気コネクタに電気的に接続され、前記第2電気コネクタは、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に電気的に接続されていること、
を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非導電液体の電気放電処理のための装置に関する。これらの非導電液体は、例えば、炭化水素、ケイ素含有化合物、及び動物由来又は植物由来の脂肪物質であってよい。
【0002】
「液体」により、本発明者らは、この電気放電処理の条件下において液体状態に留まる化合物を意味する。「非導電液体」により、本発明者らは、相対的に大きい電気抵抗率を有する、特に25℃において、好ましくは最大で125℃まで少なくとも1×108Ωcmの抵抗率を有する液体を意味する。非導電液体は、例えば、炭化水素油又はパラフィンであってよい。具体的には、「液体ケイ素含有化合物」により、本発明者らは、少なくとも1つのケイ素原子を含む化学物質を意味する。本発明による「脂肪物質」という用語は、疎水性特性を有しトリグリセリドで主に構成される分子から構成された物質を意味する。トリグリセリドは、グリセロール分子及び3つの脂肪酸から形成されたエステルである。これらの脂肪物質は、油、ワックス、及び脂肪を含む。本発明の範囲内においては油が好ましく、その理由は、これらが主に不飽和脂肪酸から構成され、従って、低い、即ち室温以下である融点を有するために、室温において液体状態にあるからである。その一方で、脂肪及びワックスは、主に飽和脂肪酸から形成されており、室温超の融点を有するため、室温において粘性を有するか又は固体である。脂肪及びワックスの場合には融点が高いことにより、本発明による装置においては、これらの使用は、好ましくはこれらが液体形態にあるように、室温超の温度において実行しなければならない。
【0003】
ヴォルトリゼーション(voltolisation)とも呼称される、液体形態の植物又は鉱物由来の油などの非導電液体の電気放電による電気放電処理は、いわゆるサイレンサである電気放電を伴う方法である。電気放電は、誘電材料とも呼称される電気絶縁体によって分離された2つの電極又は一連の平行な金属電極の間に生成される。電極の間に交流電圧を印加することにより、これらの間に誘電材料を通じてプラズマが生成される。このプラズマが、電極及び誘電体の表面上における薄膜の形態の油の処理を可能にする。
【背景技術】
【0004】
従来技術から、特に仏国特許第363078号明細書において、魚油の特徴的な不快な匂いを除去するために電気放電処理装置に依存することが知られている。この特許文献においては、魚油は円筒形の閉鎖容器内に収容され、水素と接触している。次いで、水素は、閉鎖容器内の電極の間に印加された電気放電の後に自分自身を魚油に結合させ、これにより、魚油の不快な匂いが漸進的に除去される。
【0005】
この反応の際に消費される水素は、これを目的として提供されたタップに起因して、閉鎖容器内に迅速及び手動で再導入される。この魚油の処理のための動作条件については、この特許文献には記述されていない。
【0006】
従って、従来技術において、液体有機材料の電気的処理がその物理化学的特性の変更を可能にしたという証拠がある。従って、この方法も、過去に、潤滑剤中の添加剤としての使用に適した特性を得るために、植物油又は鉱物油、又はこれらの混合物を「濃縮」するために適用されている。
【0007】
既知の液体有機材料の電気放電処理のための装置は、n個の実質的に平行な電極(1及び2)を備える一連の電極であって、n≧2であり、それぞれの電極は高電圧源に及び/又は接地に接続されるように配置されている電極と、それぞれの電極が2つの誘電材料要素の間にあるように、前記電極に実質的に平行であり、一連の電極のそれぞれの電極の両側に置かれたn+1個の誘電材料要素を備える一連の誘電材料要素と、前記非導電液体を受け取るように配置され、前記一連の電極及び前記一連の誘電材料要素を取り囲む閉鎖容器と、前記一連の電極及び前記一連の誘電材料を少なくとも部分的に浸漬するように配置された前記一連の電極及び前記一連の誘電材料の浸漬装置とを備える。
【0008】
英国特許出願公開第407379号明細書は、電気放電を利用して炭化水素油及びパラフィンを処理する装置について記述する。この特許文献において示されている電気放電処理(揮発)のための装置は、ガラスプレートによって互いに分離された直列に置かれた複数の金属プレートを収容する、チューブの形態のコンデンサである。金属プレートは、高周波電流源に交互に接続されており、これは、第1金属プレートが高周波電流源に接続されている際に第2の反対の金属プレートが接地電極として機能することを意味する。次いで、ガラスプレートが、電流源に接続された金属プレートと接地電極として機能する金属プレートの間に位置する。ガラスプレートは、コンデンサの中心軸の周りにおいて回転させることができる。金属プレート及びガラスプレートは、処理対象の炭化水素中に浸漬される。
【0009】
英国特許出願公開第190507101号明細書には、電気放電を液体に印加する類似の装置について記述されている。この特許文献において記述されている装置も、ガス圧力がその内部において水銀圧力計を有する補完装置に起因して相対的に一定に維持され得る回転可能な円筒形閉鎖容器から構成されている。この結果、水銀圧力計によって計測された閉鎖容器内のガス圧力が降下した際にガスを閉鎖容器内に再導入することができる。従って、閉鎖容器内のガス圧力は、閉鎖容器内のガス圧力が相対的に一定に維持されるように、その初期の値に戻るために増大する。一連の金属ディスク及び絶縁材料のディスクが、交互に閉鎖容器の回転シャフト上に置かれ、即ち、これらは、金属ディスク、絶縁材料のディスク、金属ディスク、絶縁材料のディスクなどとなるように、回転シャフトに沿って連続的に置かれる。電極の間に置かれた、誘電材料とも呼称される絶縁材料は、液体の過剰に強力な局所的処理を引き起こし、処理された液体の劣化をもたらし得る、局所的アーク放電の形成を低減することができる。
【0010】
残念ながら、以前の装置は、植物油又は鉱物油を処理するために使用される際に非常にランダムな結果を与える。処理済みの油の物理化学的特性が予測不能であり、及び、制御不能である/制御されていない。これに加えて、開示されている装置の実装については記述されておらず、任意の産業的発展が存在する可能性がない。開示されていない動作条件がこれらの特定の装置に固有のものであり、ランダムな結果を与えることから、開示されている装置の産業的発展が可能ではなかったことが報告されている。
【0011】
また、その他の従来技術における電源に対する接続は、恐らくは交互であるが、常にそれぞれのプレートの一方の側においてのみであり、これらの文献における電極は絶縁体内においてカバーされていることから、非導電液体を処理するために適合されていない。国際特許出願公開第9815357号パンフレット、欧州特許出願公開第1809082号明細書、及び中華人民共和国特許出願公開第106793435号明細書は、ガス及び水溶液をプラズマ処理する装置について記述している。
【0012】
国際特許出願公開第2018002329号パンフレットは、植物由来の脂肪物質の相対的に制御可能な電気放電処理のための装置について記述しており、この場合に、電極は、閉鎖容器の外側表面上において配置された電気コネクタと任意の電極の間の電流フロー距離が同一になるような方式で個々に接続されている。この電極を接続する方式は、すべての電極がその独自の電気コネクタを必要とすることから、このような装置のアップスケーリングを相当に複雑化させている。更には、例えば、0.2平方メートル超などの大きな電極上においては、プラズマが電極全体にわたって均一に分配されなかったことも見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
容易にスケールアップされる能力を有し、非導電液体の電気放電処理が制御され、再現可能であり、及び、均一である装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題を解決するために、本発明は、非導電液体の電気放電処理のための装置を提供し、装置は、本質的に矩形の、平行な、及び離隔したn個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートの少なくとも1つの交互の連続体を備え、n≧2であり、電極プレートは、1からnまで付番されている、装置において、装置が、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に電気的に接続された一連の第1電気コネクタを備えること、及び装置が、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に電気的に接続された一連の第2電気コネクタを備え、装置が、前記一連の第1電気コネクタに接続された第1極と、前記一連の第2電極コネクタに接続された第2極とを有するAC電源を更に備えることを特徴とする。
【0015】
本発明による装置の実装の際に非導電液体の電気放電処理の再現性、制御、及び均一性を改善するために、本発明者らは、驚いたことに、対角線上の対向する角において同時にそれぞれの電極に電流を供給することにより、プラズマが電極プレート上において均一に確立され、任意の電気アーク及びこの電極及び誘電体プレートの表面上において薄膜の形態において存在する例えば植物油などの非導電液体の不均一な処理が、制限され、及び、場合によっては回避されることに気付いた。この結果は、電源と電極プレートの間の電気経路の長さが電極プレート間において変化し得るにも拘わらず、実現されている。
【0016】
この結果、本発明による装置における非導電液体の処理は、処理の結果得られる処理済みの非導電液体の物理化学的特性が制御されるようにしつつ、相対的に高速であり及び相対的に効果的である。実際に、アークが発生する際に発生するものなどのように、例えば、植物油などの非導電液体に対する過剰に強力な処理の適用は、油の過剰に迅速な濃縮をもたらし、不溶性の塊の形成、従って、堆積物の形成をもたらし得る。
【0017】
本発明の装置の別の更なる利点は、電源と電極プレートの間の電流の経路長を正確に制御する必要性を回避することにより、容易にスケールアップされ得るという点にある。
【0018】
n個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートは、交互の連続体として位置されている。これは、任意の電極プレートが2つの誘電体プレートの間にあるように誘電体プレートと電極プレートが互いに交互に配置されていることを意味する。
【0019】
n個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートは、離隔している。これは、これらが互いに直接的な接触状態にないことを意味する。
【0020】
本発明の装置は、好ましくは、前記n個の電極プレート及び任意選択によりn+1個の誘電体プレートの表面上に前記非伝導性液体を分配させるように、及び前記電極及び任意選択により前記誘電体プレートの表面上に前記非導電液体の薄膜を形成するように構成されている。装置は、それぞれの電極プレート及び任意選択によりそれぞれの誘電体プレートの上方に、前記非導電液体のためのディストリビュータを備えることができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、誘電体プレートの表面積は、電極プレートの表面積より大きい。有利には、
図4に示されているように、誘電体プレート(3)は、X及びZ軸の両方に沿った両方の方向において電極プレート(1)よりも更に延在する。本発明者らは、誘電体プレートが電極プレートを超えて延在するようにすることにより、隣接する電極プレートの間の直接的なアークが相対的に容易に回避され得ることを見出した。
【0022】
奇数付番された及び偶数付番された電極プレートは、互いに交互の方式で配置されている。従って、奇数付番された電極は、誘電体プレートがそれぞれの電極プレートの間にある状態において、同一のタイプの2つの電極が連続しないように偶数付番された電極に対向しており、以下同様である。
【0023】
また、以下の説明においては、「非導電液体」という表現は、わかりやすさを理由として、しばしば、油という用語によって表現することとする。「油」という用語は、わかりやすさを理由として使用されており、その理由は、本発明に従って使用されている非導電液体は、動物又は植物油、脂肪、又はワックスに、或いは、天然又は合成炭化水素に、或いは、ケイ素含有化合物に、由来するかどうかとは無関係に、処理条件下において液体形態にあるからである。上述のように、脂肪又はワックスが使用される際には、動作温度は、好ましくは、液体形態にあるように適合されている。
【0024】
植物由来の脂肪物質は、例えば、菜種、亜麻仁、アルガンなどに由来し得る。
【0025】
好ましくは、非導電液体は、ある程度の不飽和度を有しており、具体的には、100~180の範囲の処理前のヨウ素価を有する。
【0026】
本発明によれば、「高電圧」という用語は、好ましくは1kV~10kV、有利には2kV~3kVの範囲の電位とも呼称される電圧を意味しており、その電流密度が、好ましくは0.5~2mA/cm2であり、その周波数が、有利には3~100kHz、有利には5~70kHz、更に有利には10~40kHzである小さな交流電流を特徴とする。
【0027】
本発明によれば、装置は、少なくともn=2の電極プレートを備える一連の電極プレートを備え、電極プレートは、好ましくは、任意の奇数付番された電極プレートに電流が供給された際に任意の偶数付番された電極プレートに反対の電流が供給されるような方式でAC電源を介して電気的に接続されている。好ましくは、電極プレートは、そのいずれもが接地されていない。
【0028】
「ACパワー」は、電圧が正弦波である、方形波である、パルス化されている、又はなんらかのその他の波形である方式でなんらかの周波数において変化する交流源からの電気パワーを意味するものと解釈されたい。電圧変動は、しばしば、負から正に向かうものである。周期あたりの平均電流は、0Aに平均される。双極形態を有する際には、2つのリードによって供給されるパワー出力は、一般に位相が約180°だけずれている。AC電源は、変動又は交流双極電圧を2つの電極に供給する。AC電源(AC power supply)又はAC電源(AC power source)は、当初、奇数付番された電極プレートを負電圧に駆動し、これにより、プラズマ形成を可能にする一方で、偶数付番された電極プレートは、電圧印加回路のためのアノードとして機能するように、正の電圧に駆動されている。これは、次いで、第1電極を正の電圧に駆動し、カソードとアノードの役割を逆転させている。
【0029】
好適な一実施形態において、本発明における電源は、ソリッドステート電源を変圧器と組み合わせている。これにより、ソリッドステート電源の経済的及び技術的利点、進歩したレベルの制御、柔軟性、及び施設設計が維持されており、上述の必要とされているkV範囲に到達するように、通常は約800~1000Vである一般的なソリッドステート電源の相対的に低い電圧が変圧器との組合せによって補償される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
例として、及び、以下の添付図面に参照し、本発明のこれらの及び更なる態様について更に詳細に説明することとする。
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による平行な、矩形の、離隔した、誘電体プレート及び電極プレートの交互のシーケンスの概略的な3次元図を示す。
【0032】
【
図2】本発明の一実施形態による電極プレートと電源の間の電気接続の例示のための一実施形態の概略的な3次元図を示す。
【0033】
【
図3】電極プレートの4つの角に使用される表記の概略図を示す。
【0034】
【
図4】電極プレート及び誘電体プレートの正面図を示す。
【0035】
図は、その縮尺が正確ではない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明によれば、電極プレート及び誘電体プレートは離隔しており、従ってすべてが、
図1に示されているように、XZ平面に対して平行な別個の平面内に位置する。
図1は、本発明の一実施形態による平行な、矩形の、離隔した、誘電体プレート(5)及び電極プレート(1、2、3、4)の交互のシーケンスを示す。電極プレート(1、2、3、4)及び誘電体プレート(5)は、別個のXZ平面内に配置され、軸Yに沿って離隔する。すべての電極プレート(1、2、3、4)は、2つの誘電体プレート(5)の間に位置する。電極プレートは互いとの関係において整列され、誘電体プレートは互いとの関係において整列される。
【0037】
本発明の有利な実施形態によれば、電極プレートと誘電体プレートの間の間隔は、有利には、4~10mm、更に有利には5~7mmである。
【0038】
本発明の有利な一実施形態によれば、電極プレートの数nは、2~100、更に有利には5~50、更に有利には8~30、好ましくは12~22である。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、電極プレート及び誘電体プレートは、プレートの下部に、上部に、及び/又は側部に位置された1つ又は複数のガイドレールにより、離隔して保持されている。ガイドレールには、例えば、電極及び誘電体プレートがその内部において容易に配置され得る切り欠きを提供することができる。この装置のn個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートは、定位置においてプレートを保持するように機能し得る上述のガイドレールを好ましくは備えるラック内に、一緒に保持することができる。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態による電極プレートの電気的接続を示す。一連の第1電気コネクタ(6)が、すべての偶数付番された電極プレート(2、4)の対角線上の対向する第1の対の角に電気的に接続されており、一連の第2電気コネクタ(7)が、すべての奇数付番された電極プレート(1、3)の対角線上の対向する第2の対の角に電気的に接続されている。この図においては、電気コネクタを相対的に良好に示すために、誘電体プレート(5)の外形のみが破線によって示されている。第1及び第2電気コネクタ(6、7)は、AC電源(8)に電気的に接続されている。
【0041】
一実施形態において、本発明の装置はAC電源を更に備え、前記AC電源を介して、少なくともn=2個の電極プレートが互いに接続される。周期当たりの平均電流は、0Aに平均化される。AC電源は、変動又は交流双極電圧を少なくとも2つの電極に供給する。双極電源は、当初、すべての奇数付番された電極プレートを負電圧に駆動し、これにより、プラズマ形成を可能にする一方で、偶数付番された電極プレートは、電圧印加回路のためのアノードとして機能するように、正電圧に駆動されている。次いで、これは、奇数付番された電極プレートを正電圧に駆動し、カソード及びアノードの役割を逆転させている。プラズマは、奇数付番された電極プレートと偶数付番された電極プレートとの間に確立されている。次いで、他方のカソードがアノードを形成し、電子がプラズマから逃げて他方の側まで移動するようにして、電気回路を完成させる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、AC電源は、振幅及び周波数において安定化された電源を備えることができると共に、高電圧及び高周波数変圧器を更に備えることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、AC電源は、3~300kHzの周波数及び1~5kVの高電圧において電流を供給するように構成することができる。
【0044】
また、好ましくはないが、誘電体プレート、高電圧ソースに接続された電極プレート、誘電体プレート、高電圧ソースに接続された電極プレート、及び誘電材料要素、以下同様であるという交互のシーケンスを有するように、偶数付番された電極プレートを高電圧ソースに、及び奇数付番された電極プレートを接地に、交互に接続することも可能であり、及び、その逆も可能である。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、装置は、電極プレート及び誘電体プレートの交互の連続体がその内部に配置される閉鎖容器(enclosure)を更に備える。
【0046】
本発明による閉鎖容器は、有利には、好ましくは金属から製造された、更に好ましくはステンレス鋼から製造された、本質的に矩形のプリズム形状を有する。
【0047】
有利には、閉鎖容器は、閉鎖容器の下部部分に位置する非導電液体出口と、閉鎖容器の上部部分内に位置する非導電液体入口とを更に備える。本発明の有利な一実施形態によれば、閉鎖容器は、複数の非導電液体入口を備える。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、閉鎖容器は、少なくとも2つの別個の電気フィードスルーコネクタを備え、それらを介して前記奇数及び偶数付番された電極プレートがそれぞれ前記電源に電気的に接続される。電気フィードスルーコネクタは、有利には、自身を閉鎖容器から電気的に分離する電気絶縁体を備える。電気フィードスルーコネクタは、有利には、少なくとも3cm、少なくとも5cm、少なくとも10cmだけ互いに離れている。2つの別個の電気フィードスルーコネクタは、それぞれ、反対の交流電流を電極に供給する。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、閉鎖容器は、電気絶縁性の内張りにより、内側において内張りされている。これにより、電極プレートと閉鎖容器の間のアーク放電が回避され得る。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、閉鎖容器は、10~400Torrの、好ましくは80~300Torrの、更に好ましくは100~260Torrの圧力において動作することが可能である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、本発明の閉鎖容器は、有利には、真空ポンプに接続され得るガス排気ポートを更に備える。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、本発明の閉鎖容器は、プロセスを閉鎖容器内で実行するのに必要とされる1つ又は複数のプロセスガスの進入のための少なくとも1つのガス入口を更に備え得る。プロセスガスは、有利には、任意の希ガス、酸素、及び水素の1つ又は複数のうちから選択することができる。油処理の際には、水素などのプロセスガスが消費される場合があり、従って、閉鎖容器内の圧力は、油処理時間の結果として減少する傾向を有し得る。圧力ゲージが、閉鎖容器内のガス圧力の計測を可能にし得ると共に、これにより、更なる量のプロセスガスの注入を制御し得る。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、非導電液体の処理の際に、10~400Torr、好ましくは80~300Torr、及び更に好ましくは100~260Torrの圧力を維持することができる。より低い圧力は、特に電極上の非導電液体の存在下におけるプラズマの形成を促進する。
【0054】
また、本発明による装置の有利な実施形態において、前記閉鎖容器は、非導電液体を容器の第1非導電液体出口までガイドするための少なくとも1つの傾斜した表面を有する。このガイドするための傾斜表面は、閉鎖容器の外側の前記非導電液体の循環を更に促進するように、非導電液体が閉鎖容器内の前記非導電液体出口に供給されることを可能にする。
【0055】
有利な実施形態において、本発明による装置は、閉鎖容器内に位置付けられ閉鎖容器内のガス圧力を計測するように配置された圧力ゲージを更に備える。圧力ゲージは、例えば、MKSブランドの容量性真空ゲージであってよく、これは、閉鎖容器内のガス圧力の計測を可能にする。油処理の際には、例えば、水素などの第1ガスが消費される場合があり、従って、閉鎖容器内の圧力は、油処理時間の結果として減少する傾向を有し得る。圧力ゲージは、閉鎖容器内のガス圧力を計測することを可能にし、従って、閉鎖容器内において一定のガス圧力を維持するために、所定量の第1補完ガスの注入が必要となる時点を知ることを可能にする。
【0056】
これに加えて、装置である本発明の一実施形態は、前記圧力ゲージに接続されるように及びフローメータ又は高速応答漏洩弁に接続されるように配置されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、フローメータ、漏洩弁を制御するように配置され、前記フローメータは、閉鎖容器の第1ガスのための前記第2入口によって閉鎖容器内に注入される前記第1ガスの量を計測するために、閉鎖容器の第1ガスのための前記第2入口との流体接続状態となるように配置される。
【0057】
圧力ゲージが過剰に低い閉鎖容器内のガス圧力を計測した際には、閉鎖容器のガスのための入口を介してガス注入を実施することができると共に、注入されたガスの量が、有利には、フローメータに起因して制御されている。
【0058】
本発明によれば、一連の第1電気コネクタが、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角に電気的に接続されており、及び、一連の第2電気コネクタが、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角に電気的に接続されている。
図3は、電極プレート(1、2)の角が表記され得る方式を示す。この図においては、わかりやすさを目的として、誘電体プレート(5)の外形のみが破線によって示されている。奇数付番された電極プレート(1)及び偶数付番された電極プレート(2)の両方において、角は、「N」、「W」、「S」、及び「E」という時計回りの方式によってラベル付与されている。角(N)及び(S)は、対角線上の対向する角の対を形成しており、及び、角(E)及び(W)は、対角線上の対向する角の対を形成する。奇数付番された電極プレート(1)の角の対(N、S)及び偶数付番された電極プレート(2)の角の対(E、W)は、互いに横断方向において位置されている。
【0059】
本発明の例示のための実施形態によれば、第1電気コネクタは、対角線上の対向する角(E、W)又は(N、S)の同一の第1の対におけるすべての奇数付番された電極プレートに電気的に接続されており、及び、第2の電気コネクタは、対角線上の対向する角(E、W)又は(N、S)の同一の第2の対におけるすべての偶数付番された電極プレートに電気的に接続されている。
【0060】
本発明の好適な一実施形態においては、例えば、
図2における奇数付番された電極プレート上の対角線上の対向する角の第1の対(E、W)及び偶数付番された電極プレート上の対角線上の対向する角の第2の対(N、S)などのように、対角線上の対向する角の第1の対及び対角線上の対向する角の第2の対は、互いに対して横断方向に位置されている。
図2においては、対角線上の対向する角の対(E、W)及び(S、N)は、互いとの関係において横断方向の位置に存在する。
【0061】
電極プレート及び誘電体プレートは、好ましくは、垂直の位置にあり、即ち、これらは、好ましくは2つの辺が垂直方向軸Zに沿っており及び2つの辺が水平方向軸Xに沿っている状態において、本質的に垂直方向の位置に保持されている。これは、処理されている非導電液体が重量のみによって電極プレートに沿って自由降下することを可能にする。
【0062】
第1及び第2電気コネクタは、電極プレートの角の近傍において少なくとも辺に、或いは、辺に隣接する、即ち、辺から5cm以下である、プレート表面に、電気的に接続されている。電気コネクタは、辺上に、例えば、はんだ付けされてもよく、ねじ止めされてもよく、締結されてもよく、圧入されてもよい。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2電気コネクタは、その個々の電極プレートの角の近傍において、即ち、それぞれの角において交わる2つの辺のうち長い方の辺の長さの最大15%に相当する距離だけそれぞれの角から離れて電極プレートに電気的に接続されている。特定の有利な実施形態によれば、第1及び第2電気コネクタは、それぞれの角において交わる2つの辺のうち長い方の辺の長さの最大10%に相当する距離だけそれぞれの角から離れて電極プレートに電気的に接続することができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、奇数付番された電極プレートは、第1電気コネクタを介してAC電源の第1端子に接続されており、及び、偶数付番された電極プレートは、第2電気コネクタを介してAC電源の第2端子に接続されている。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、装置には、第1電気コネクタに電気的に接続された2つの第1電気コレクタ及び第2電気コネクタに電気的に接続された2つの第2電気コレクタを提供することができる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、2つの第1電気コネクタの一方は、奇数付番された電極プレートの同一の角に電気的に接続された第1電気コネクタに電気的に接続され、2つの第1電気コネクタの他方は、奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する角に電気的に接続された第1電気コネクタに電気的に接続される。同様に、本発明の一実施形態によれば、2つの第2電気コネクタの一方は、偶数付番された電極プレートの同一の角に電気的に接続された第2電気コネクタに電気的に接続され、2つの第2電気コネクタの他方は、偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する角に電気的に接続された第2電気コネクタに電気的に接続される。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、装置は、非導電液体のためのディストリビュータを備える。ディストリビュータは、電極プレートの及び任意選択により誘電体プレートの表面に沿って処理対象の非導電液体を分配させるように構成することができる。当技術分野においては、いくつかのタイプのディストリビュータが既知であり、これらは、例えば、チャネルタイプのディストリビュータ又はスプラッシュプレートタイプのディストリビュータであってよい。この装置内において使用される液体ディストリビュータは、好ましくは、大きな粘度の範囲の液体を分配させるように適合されている。特定の実施形態において、ディストリビュータは、電極プレートの上方に、及び任意選択により誘電体プレートの上方に位置することができると共に、液体の下向きのフローを目的として構成することができる。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、装置には、閉鎖容器の外側において循環回路が提供されている。閉鎖容器内の非導電液体のための第1入口及び第1出口の存在は、非導電液体が閉鎖容器の外側において循環することを可能にする。
【0069】
本発明の有利な一実施形態によれば、装置には、冷却装置、加熱装置、温度計測システムの1つ又は複数を備える温度制御システムが提供される。有利には、プラズマ処理が非導電液体の温度を増大させる傾向を有することから、非導電液体は、非導電液体の過熱を回避するために、冷却装置を通じて循環することができる。この冷却装置は、処理温度を望ましい範囲内において維持するために、熱交換器、及び/又は、より冷たい非導電液体を注入するための三方弁を備えることができる。加熱システムは、前記非導電液体を収容する閉鎖容器を加熱するために、閉鎖容器の周りに配置された加熱装置を備えることができる。加熱システムは、閉鎖容器の環境内において発生し得る温度変動にも拘わらず、閉鎖容器の温度を制御し、一定に維持することができる。更には、脂肪又はワックスタイプの非導電液体が使用される際には、この加熱システムは、非導電液体が閉鎖容器内において液体形態にあるように、前記液体がその溶融温度以上において供給されることを可能にする。有利には、前記温度計測システムは、閉鎖容器の出口において又は循環回路内において、閉鎖容器内の非導電液体中において直接的に浸漬される温度プローブを備える。温度プローブは、好ましくは、非導電液体の温度を継続的に計測するように構成されている。温度制御システム内において、温度プローブは、装置内の非導電液体の温度が制御され及び一定に維持されるように、加熱及び/又は冷却を制御するために、それ自体が加熱及び/又は冷却システムに接続されたコントローラに接続することができる。
【0070】
本発明の好適な一実施形態において、温度制御システムは、50~100℃、更に好ましくは55~85℃の範囲の温度において非導電液体を維持するように構成されている。
【0071】
別の有利な実施形態において、本発明の装置は、処理済みの非導電液体をフィルタリングするフィルタを備える。フィルタは、プロセスの末尾において処理済みの液体をフィルタリングするように、出口に配置することができる。或いは、この代わりに、非導電液体は、閉鎖容器の外側において配置されたフィルタを通じて循環することもできる。フィルタを通じた通過は、非導電液体に印加された強力及び効果的なプラズマの後に処理済みの材料の均質性が維持されることを可能にする。フィルタは、そのサイズが、0.01~1mm、好ましくは0.015~0.8mmの範囲であるメッシュを有することができる。有利には、フィルタは、金属フィルタである。
【0072】
また、本発明の一実施形態において、閉鎖容器の外側の非導電液体の循環及び閉鎖容器の入口を介したその戻りは、前記非導電液体が電極プレート上に、及び任意選択により誘電体プレート上に分配されることを可能にすることができる。
【0073】
本発明の一実施形態において、装置は、閉鎖容器の前記第1非導電液体出口と流体接続するように配置された第1入口及び任意選択により上述のフィルタと流体接続するように配置された第1出口を有する粘度計を更に備え、前記粘度計は、例えば、前記閉鎖容器と前記金属フィルタの間において前記非導電液体の粘度を計測するように配置される。従って、粘度計は、非導電液体の粘度が処理の全体を通じて計測されることを可能にする。この粘度計測は、処理済みの非導電液体の粘度特性の制御が更に改善されることを可能にする。例えば、好ましくは温度プローブを有する、例えば、Sofraser MiVIセンサなどの、振動型直接挿入粘度計を使用することができる。計測は、共振周波数において振動するロッドを使用することによって実施されてもよく、この場合に振動振幅は、ロッドが浸漬されている液体の粘度に従って変化する。
【0074】
本発明は、有利には、閉鎖容器の前記第1出口と流体接続している第1入口及び任意選択により上述の粘度計及び/又は上述のフィルタと流体接続している第2出口を有する循環ポンプを更に備え、前記循環ポンプは、閉鎖容器の前記第1出口と前記第2入口との間に前記非導電液体を循環させるように配置される。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、装置は、循環回路内においてサンプリング弁を更に備える。これは、処理の際の製品の品質及び性能を監視するための処理済みの材料のサンプルの抽出を可能にすることになる。本発明による装置の特に有利な一実施形態において、前記閉鎖容器は、閉鎖容器から外に前記液体植物材料を抽出するように配置された除去弁を有する。
【0076】
本発明の好適な一実施形態によれば、nは、4以上であり、有利には5以上であり、更に有利には6以上であり、更に有利には7以上である。電極の数及び誘電材料の数の増大は、電気放電と電極プレート及び誘電体プレート上の薄膜の形態において存在する非導電液体の間の接触表面を増大させることにより、非導電液体の処理の有効性が増大することを可能にする。本発明の特定の実施形態においては、nは、100以下、又は50以下、又は30以下であってよい。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、装置の電極プレートは、0.5mm~10mm、好ましくは0.8~6mm、更に好ましくは1mm~3mmの厚さを有する。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、装置の電極プレート及び誘電体プレートは、本質的に、0.2m2~4m2の表面積を有する矩形である。
【0079】
電極プレート様の構築材料は、好ましくは、電極プレートの抵抗加熱が制限されるように、及びこれらが放電を維持するために必要な電流を搬送し得るように、電圧変動が迅速に確立され得るように十分な導電性を有する。本発明の一実施形態によれば、電極プレートの材料には、金属、金属合金、金属化合物、炭素、炭素化合物、導電性セラミック、又は半導体が含まれる。有利には、使用される材料は、金属合金又は黒鉛状炭素、特に鋼、ステンレス鋼、銅、又はアルミニウムを含むことができる。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、それぞれの誘電体プレートの材料は、ガラス、石英、マイカ、硬質ポリマー、及びこれらの混合物から構成された群から選択することができる。ガラスは、例えば、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、又はアルミノシリケートガラスであってよい。有利な一実施形態において、誘電体プレートの材料は、硬質ポリマーを含むことができる。有利な一実施形態において、誘電体プレートの材料は、1.9以上の10~60Hzにおける誘電定数を有することができる。有利な一実施形態においては、誘電体プレートの材料は、連続的な動作に耐える80℃以上の動作温度を有することができる。好ましくは、動作温度は、150℃以上であり、更に好ましくは200℃以上である。有利な一実施形態において、IEC60243規格による誘電体プレートの材料の誘電強度は、10kV/mm以上である。
【0081】
本発明の一実施形態においては、誘電体プレートは、本質的に矩形であり、好ましくは0.5mm~10mm、好ましくは2mm~6mmの範囲の厚さを有する。
【0082】
好適な一実施形態において、誘電体プレートの表面積は、電極プレートの表面積よりも3~25%だけ、更に好ましくは6~15%だけ大きい。
【0083】
本発明による装置の別の利点は、これが、動物又は植物油の特徴的な匂いが低減される、或いは場合によっては除去されることをも可能にするという点にある。この動物又は植物由来の脂肪物質からの匂いの低減は、例えば、潤滑ベースとして使用されている植物由来の脂肪物質からの過剰に強力な匂いの回避を要する化粧品又は食品分野における用途の場合に有利である。
【0084】
従って、本発明による装置は、電気放電によって処理される動物又は植物由来の脂肪酸が、大規模に生成され、及び、制御可能な、制御された、及び有利には脱臭された特徴によって再生されることを可能にする。
【0085】
本発明による装置のその他の実施形態は、添付の請求項において示されている。
【0086】
また、本発明は、本発明による、例えば、2、3、4、又はそれ以上の数の装置などの複数の装置を備える、非導電液体の電気放電処理のためのシステムに関し、前記装置は、互いに直列に、及び/又は並列に配置される。複数の装置は、1つの及び同一の閉鎖容器を共有することができる。
【0087】
本発明によるシステムのその他の実施形態は、添付の請求項において示されている。
【0088】
また、本発明は、上述の任意の実施形態又は実施形態の任意の可能な組合せによる非導電液体の電気放電処理のための装置を使用する非導電液体の電気放電処理のための方法にも関する。
【0089】
本発明は、具体的には、
a.本質的に矩形の、平行な、及び離隔したn個の電極プレート及びn+1個の誘電体プレートの少なくとも1つの交互の連続体を閉鎖容器内に提供するステップであって、n≧2であり、前記電極プレートは、1からnまで付番されている、ステップと、
b.第1端子に交流双極電圧を供給し、第2端子に反対の交流双極電圧を供給するAC電源を提供するステップと、
c.任意選択により、前記閉鎖容器内に、水素を含む減圧雰囲気を提供するステップと、
d.前記閉鎖容器の第1入口を介して、前記非導電液体を前記閉鎖容器内に導入するステップと、
e.前記n個の電極プレート及び任意選択によりn+1個の誘電体プレートの表面上に前記非導電液体を分配させ、前記電極及び任意選択により前記誘電体プレートの表面上に非導電液体の薄膜を形成するステップと、
を含む、非導電液体の電気放電処理のための方法に関し、
前記方法は、
f.前記交流双極電圧は、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に提供され、前記第1端子は、第1電気コネクタに電気的に接続され、前記第1電気コネクタは、すべての偶数付番された電極プレートの対角線上の対向する第1の対の角の近傍に電気的に接続されていること、及び
g.前記反対の交流双極電圧は、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に提供され、前記第2端子は、第2電気コネクタに電気的に接続され、前記第2電気コネクタは、すべての奇数付番された電極プレートの対角線上の対向する第2の対の角の近傍に電気的に接続されていること、
を特徴とする。
【0090】
本発明による方法は、電極プレートの間に確立されたプラズマを使用した非導電液体の処理を可能にする。
【0091】
電極プレートの対角線上の対向する角における交流電圧の印加は、アーク又はその他の形態のホットスポットの形成が極小された状態における電極プレートの全体表面にわたる均一なプラズマを結果的にもたらす。
【0092】
これは、均一に処理された非導電液体を得ることを結果的にもたらす。
【0093】
本発明による装置における処理の後に得られる処理済みの非導電液体は、ISO2884-1規格に従ってコーンプレート粘度計によって40℃において計測される200秒以下の緩和時間を特徴とし得る。緩和時間は、剪断応力に晒された際に、粘弾性特性を有する潤滑物質がその初期の状態に戻るために必要とされる時間に対応する。プロセスを実行しつつ、応力が処理済みの非導電液体のサンプルに印加され、この応力に対する結果的に得られる応答を時間に伴って監視することができる。
【0094】
従って、本発明による装置は、非導電液体が加工又は処理されること及び適切な粘弾性特性を有する加工又は処理された非導電液体が得られることを可能にする。例えば、本発明による装置内の処理済みの非導電液体は、特にエンジン内において応力に晒された際にも、この応力の印加の後に、その初期の粘度に迅速に戻っている。この200秒以下の緩和時間という特徴は、非導電液体が、応力の印加にも拘らず、経時的に相対的に安定した、及び一定の粘度を維持することを可能にする。
【0095】
有利には、本発明による方法は、電極プレートに印加される電源の高電圧が、1kV~10kV、好ましくは2kV~3kV、の範囲であり、周波数が、有利には3kHz~100kHz、更に有利には5kHz~70kHz、更に有利には10kHz~40kHz、の範囲であるという点を特徴とする。
【0096】
本発明による方法の特定の一実施形態において、前記非導電液体は、閉鎖容器の第1非導電液体出口と閉鎖容器の前記非導電液体入口との間で循環される。任意選択により、非導電液体は、循環されながらフィルタリングすることができる。任意選択により、非導電液体は、過熱を防止するために又は適切なフロー特徴、即ち粘度、を維持するために、循環されながら加熱又は冷却することもできる。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記非導電液体の分配は、前記電極及び任意選択により前記誘電材料の表面上における非導電液体の薄膜の形成によって得られており、これは、スプレーにより、或いは、チャネルタイプのディストリビュータ又はスプラッシュプレートタイプのディストリビュータにより、得られている。
【0098】
本発明は、上述の及び添付の請求項において示されている任意の実施形態又は実施形態の組合せに更に関する。
【国際調査報告】