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特表2023-550774コンパクトな薄膜表面実装可能結合器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】コンパクトな薄膜表面実装可能結合器
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/48 20060101AFI20231128BHJP
   H01P 5/18 20060101ALI20231128BHJP
   H01F 19/04 20060101ALI20231128BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20231128BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H03H7/48 A
H01P5/18 J
H01F19/04
H01F27/00 S
H01F30/10 D
H01F30/10 K
H01F41/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531035
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 US2021060454
(87)【国際公開番号】W WO2022115403
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/117,615
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】マレク,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オニール,エリナー
(72)【発明者】
【氏名】タラライフスキ,アリエ・レオニード
(72)【発明者】
【氏名】ベームシュタイン,ナホム
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD01
5E070AA05
5E070AA11
5E070AB01
5E070AB02
5E070AB07
5E070CB12
5E070CB18
5E070DB08
(57)【要約】
表面実装可能薄膜結合器が、モノリシックベース基板と、モノリシックベース基板の上に形成された複数のポートとを含んでもよい。表面実装可能薄膜結合器は、複数のポートのうちの少なくとも1つのポートに接続された少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。表面実装可能薄膜結合器は、1GHzを超える下限と下限より少なくとも200MHz高い上限とを有する結合周波数範囲にわたって-5dBより大きく-1dB未満である結合係数を示すことができる。結合器の占有面積は約3mm未満とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装可能薄膜結合器であって、
モノリシックベース基板と、
前記モノリシックベース基板の上に形成された複数のポートと、
前記複数のポートのうちの少なくとも1つのポートに接続された少なくとも1つの薄膜コンポーネントとを含み、
前記表面実装可能薄膜結合器が、1GHzを超える下限と前記下限より少なくとも200MHz高い上限とを有する結合周波数範囲にわたって-5dBより大きく-1dBより小さい結合係数を示し、
前記結合器の占有面積が約3mm未満である、表面実装可能薄膜結合器。
【請求項2】
前記表面実装可能薄膜結合器が、前記結合周波数範囲にわたって約-3dBの結合係数を示す、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項3】
前記表面実装可能薄膜結合器が、前記結合周波数範囲にわたって変動が5dB未満である結合係数を示す、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項4】
前記表面実装可能薄膜結合器が、前記結合周波数範囲にわたって変動が1GHzごとに3dB未満である結合係数を示す、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項5】
前記表面実装可能薄膜結合器が、前記結合周波数範囲にわたって約-10dB未満の分離係数を示す、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項6】
前記結合器の幅が約1.2mm未満である、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項7】
前記結合器の長さが約2mm未満である、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項8】
前記結合器の占有面積が約3mm未満である、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントが、約50マイクロメートル未満の厚さを有する層を含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項10】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントが薄膜インダクタを含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項11】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントが、薄膜キャパシタを含む、請求項10に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項12】
前記複数のポートが分離ポートと結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含み、前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントが、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間に接続された第1の薄膜インダクタと、
前記結合ポートと前記分離ポートとの間に接続され、前記第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタとを含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項13】
前記複数のポートが分離ポートと結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含み、前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントが、
前記入力ポートと前記結合ポートとの間に接続された第1の薄膜キャパシタと、
前記分離ポートと前記出力ポートとの間に接続された第2の薄膜キャパシタとを含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項14】
前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントの上に形成されたカバー層をさらに含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項15】
前記カバー層が酸窒化シリコンを含む、請求項14に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項16】
前記薄膜回路の前記少なくとも1つの薄膜コンポーネントが第3の薄膜インダクタを含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項17】
前記モノリシックベース基板がセラミック材料を含む、請求項1に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項18】
表面実装可能薄膜結合器であって、
モノリシックベース基板と、
前記モノリシックベース基板の上に形成された複数のポートであって、分離ポートと結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含む、複数のポートと、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間に接続された第1の薄膜インダクタと、
前記結合ポートと前記分離ポートとの間に接続され、前記第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタとを含み、
前記結合器の占有面積が約3mm未満である、表面実装可能薄膜結合器。
【請求項19】
前記表面実装可能薄膜結合器が、結合周波数範囲にわたって約-10dB未満の分離係数を示す、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項20】
前記表面実装可能薄膜結合器が、結合周波数範囲にわたって-1dBと-5dBの間の結合係数を示す、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項21】
前記表面実装可能薄膜結合器が、結合周波数範囲にわたって変動が5dB未満である結合係数を示す、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項22】
前記表面実装可能薄膜結合器が、結合周波数範囲にわたって変動が1GHzごとに3dB未満である結合係数を示す、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項23】
前記第1の薄膜インダクタまたは前記第2の薄膜インダクタのうちの少なくとも一方が、約50マイクロメートル未満の厚さを有する層を含む、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項24】
前記入力ポートまたは前記分離ポートのうちの少なくとも一方に接続された少なくとも1つの薄膜キャパシタをさらに含む、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項25】
前記入力ポートと前記結合ポートとの間に接続された第1の薄膜キャパシタと、
前記分離ポートと前記出力ポートとの間に接続された第2の薄膜キャパシタとをさらに含む、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項26】
前記第1の薄膜インダクタと前記第2の薄膜インダクタとの上に形成されたカバー層をさらに含む、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項27】
前記カバー層が酸窒化シリコンを含む、請求項26に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項28】
前記結合器の幅が約1.2mm未満である、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項29】
前記結合器の長さが約2mm未満である、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項30】
前記モノリシックベース基板がセラミック材料を含む、請求項18に記載の表面実装可能薄膜結合器。
【請求項31】
表面実装可能薄膜結合器を形成する方法であって、
モノリシックベース基板を設けるステップと、
前記モノリシックベース基板の上に複数のポートを形成するステップであって、前記複数のポートが分離ポートと結合ポートと入力ポートと出力ポートとを含む、複数のポートを形成するステップと、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間に接続された第1の薄膜インダクタを形成するステップと、
前記結合ポートと前記分離ポートとの間に接続され、前記第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタを形成するステップとを含み、
前記結合器の占有面積が約3mm未満である、方法。
【請求項32】
請求項1に記載の1つまたは複数の表面実装可能薄膜結合器を含む電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月24日出願の米国仮特許出願第63/117,615号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
結合器は一般に、直接電気接続なしにソース線を結合線に結合し、信号線の電気信号を結合線に再現する。微細化の趨勢によって、微小な受動コンポーネントがますます望まれるようになっている。しかし、微細化により、そのような微小な結合器の表面実装の困難度が増している。したがって、当技術分野では、コンパクトな表面実装可能薄膜結合器が歓迎されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態によると、表面実装可能薄膜結合器が、モノリシックベース基板と、モノリシックベース基板の上に形成された複数のポートとを含んでもよい。表面実装可能薄膜結合器は、複数のポートのうちの少なくとも1つのポートに接続された少なくとも1つの薄膜コンポーネントを含んでもよい。表面実装可能薄膜結合器は、1GHzを超える下限と、下限より少なくとも200MHz高い上限とを有する結合周波数範囲にわたって-5dBより大きい結合係数を示すことができる。結合器の占有面積は約3mm未満とすることができる。
【0004】
本発明の別の実施形態によると、表面実装可能薄膜結合器が、モノリシックベース基板と、モノリシックベース基板の上に形成された複数のポートとを含んでもよい。複数のポートは、分離ポートと、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含んでもよい。入力ポートと出力ポートとの間に第1の薄膜インダクタが接続されてもよい。第2の薄膜インダクタが結合ポートと分離ポートとの間に接続され、第1の薄膜インダクタに誘導結合されてもよい。結合器の占有面積は約3mm未満とすることができる。
【0005】
本発明の別の実施形態によると、表面実装可能薄膜結合器を形成する方法が、モノリシックベース基板を設けることと、モノリシックベース基板の上に複数のポートを形成することとを含んでもよい。複数のポートは、分離ポートと、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含んでもよい。方法は、入力ポートと出力ポートとの間に接続された第1の薄膜インダクタを形成することを含んでもよい。方法は、結合ポートと分離ポートとの間に接続され、第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタを形成することを含んでもよい。結合器の占有面積は約3mm未満とすることができる。
【0006】
本明細書には、当業者を対象とする本発明の最良の形態を含む本発明の完全で実施可能な開示が記載されている。本明細書では以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の態様によるコンパクトな薄膜表面実装可能結合器を示す概略図である。
図2】本開示の態様による結合器の一実施形態を示す上面図である。
図3図2の結合器の側面図である。
図4A】本開示の態様によるコンパクトな薄膜表面実装可能結合器のモノシリック基板の上に形成可能な、例示の第1のパターン形成導電層を示す図である。
図4B】本開示の態様による、図4Aの第1の層の上に形成可能な例示の第2のパターン形成導電層を示す図である。
図4C】本開示の態様による、図4Bの第2の層の上に形成可能な例示の第2のパターン形成導電層を示す図である。
図5】本開示の態様による表面実装可能結合器を形成する方法を示すフローチャートである。
図6】2GHzから3GHzまでに及ぶ周波数範囲にわたる、図1および図4Cの結合器として全体的に構成された3dB結合器の理論的に計算されたSパラメータを示すグラフである。
図7】3GHzから4.5GHzまでに及ぶ周波数範囲にわたる、図1および図4Cの結合器として全体的に構成された3dB結合器の論理的に計算されたSパラメータを示すグラフである。
図8】本開示の態様による結合器を含む電源を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および添付図面全体を通して参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
【0009】
コンパクトな表面実装可能パッケージにおいて高周波の均等な結合を実現する表面実装薄膜結合器が提供される。結合器は一般に、結合器の入力ポートに入力信号が印加されるのに応答して、結合ポートにおいて結合信号を再生する。実施形態によっては、結合器は3dBスプリッタ/コンバイナとして構成可能である。3dBスプリッタ/コンバイナは、入力信号を結合ポートと出力ポートとにほぼ均等に分配することができる。入力信号は、結合線と出力線のそれぞれにおいて入力信号の振幅の半分の振幅で再生可能である。同様に、3dBスプリッタ/コンバイナは、入力ポートに印加された第1の信号と結合ポートに印加された第2の信号とを合成して出力ポートにおいて合成信号を生成することができる。このような3dBスプリッタ/コンバイナは、例えば図8を参照しながら後述する電源を含む、様々な用途で使用される。
【0010】
一般に、本開示の薄膜結合器は、きわめてコンパクトな表面実装可能パッケージにおいてすぐれた性能特性を示す。したがって、この薄膜結合器は、プリント回路基板などの表面に実装される際にわずかなスペース(例えばわずかな占有面積)しか必要としない。このようなコンパクトなサイズは、電源などの表面実装技術を採用するデバイスが微小化するにつれて特に有用となり得る。
【0011】
例えば、この結合器は占有面積が小さく、したがって、プリント回路基板に実装するためのスペースがより少なくて済む。結合器は、約3mm未満、実施形態によっては約2.5mm未満、実施形態によっては約2.0mm未満、実施形態によっては約1.5mm未満、実施形態によっては、約1.0mm未満、実施形態によっては約0.8mm未満、実施形態によっては約0.6mm未満の占有面積を有する場合がある。
【0012】
結合器は、約2.0mm未満、実施形態によっては、約1.8mm未満、実施形態によっては約1.5mm未満、実施形態によっては約1.1mm未満の長さを有する場合がある。結合器の幅は、約1.2mm未満、実施形態によっては約1mm未満、実施形態によっては約0.8mm未満、実施形態によっては約0.7mm未満、実施形態によっては約0.6mm未満の場合がある。実施形態によっては、薄膜結合器は、1206、805、0504、0402、0303、0202またはこれより小さいEIAケースサイズを有する場合がある。
【0013】
この結合器は、一般には、モノリシックベース基板を含む。例えばグリッドアレイ型実装(例えば、ランドグリッドアレイ(LGA)型実装、ボールグリッドアレイ(BGA)型など)を使用して結合器を表面実装するために、結合器の外側に沿って少なくとも1つのポート(例えば、入力ポート、出力ポート、結合ポートおよび/または分離ポート)が露出してもよい。結合器は、モノリシックベース基板と、モノリシックベース基板の上に形成された複数のポートとを含んでもよい。複数のポートのうちの少なくとも1つのポートに少なくとも1つの薄膜コンポーネントが接続されてもよい。表面実装可能薄膜結合器は、1GHzを超える下限と下限より少なくとも200MHz高い上限とを有する結合周波数範囲にわたって-5dBより大きい結合係数を示すことができる。例えば、結合周波数範囲の下限は、約1GHzから約8GHzまでの範囲とすることができ、実施形態によっては約1.5GHzから約6GHz、さらに実施形態によっては約2GHzから約4GHzとすることができる。上限は、下限より200MHz以上高く、実施形態によっては下限より300MHz以上高く、実施形態によっては下限より500MHz以上高く、実施形態によっては下限より800MHz以上高く、実施形態によっては下限より1GHz以上高く、さらに実施形態によっては下限より2GHz以上高くすることができる。
【0014】
実施形態によっては、結合器は、結合周波数範囲にわたって-5dBより大きく-1dB未満である結合係数を示すことができる。例えば、上述のように、実施形態によっては、結合器は3dB結合器とすることができる。そのような実施形態では、結合器は約-3dBの結合係数を示すことができる。例えば、結合器は、-2dBと-4dBの間、実施形態によっては-2.5dBと-3.5dBの間の結合係数を示すことができる。別の実施例として、結合周波数範囲は、約2GHzから約3GHz、実施形態によっては約2GHzから約4GHz、さらに実施形態によっては約3GHzから約4.5GHzまでに及ぶことがある。
【0015】
結合器は、結合周波数範囲にわたって一定した結合を行うことができる。例えば、結合器は、結合周波数範囲にわたって変動が5dB未満、実施形態によっては4.5dB未満、実施形態によっては4dB未満、実施形態によっては3.5dB未満、さらに実施形態によっては3dB未満の結合係数を示すことができる。結合係数の変動は、1GHzごとに5dB未満、実施形態によっては1GHzごとに3dB未満、実施形態によっては1GHzごとに2dB未満、実施形態によっては1GHzごとに1.5GHz未満、さらに実施形態によっては1GHzごとに1.2dB未満とすることができる。
【0016】
結合器は、結合周波数範囲にわたって約-10dB未満、実施形態によっては結合周波数範囲にわたって約-12dB未満、実施形態によっては約-14dB未満、実施形態によっては約-16dB未満、さらに実施形態によっては約-17dB未満の分離係数を示すことができる。結合周波数範囲にわたる低い分離係数は、すぐれた指向性を示す。それに対して、高い分離係数(例えば-10dBより大きい分離係数)は、損失の多い結合器を示すことになる。
【0017】
結合器は、入力ポートによって受信した入力信号に応答して(例えば分離ポートに対して)結合ポートで結合信号を生成するように構成された1つまたは複数の薄膜コンポーネントを含んでもよい。例えば、結合器は、入力ポートと出力ポートとの間に接続された第1の薄膜インダクタを含んでもよい。結合器は、結合ポートと分離ポートとの間に接続され、第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタを含んでもよい。
【0018】
実施形態によっては、結合器は、1つまたは複数の薄膜キャパシタを含んでもよい。例えば、入力ポートと結合ポートとの間に第1の薄膜キャパシタが接続されてもよい。分離ポートと出力ポートとの間に第2の薄膜キャパシタが接続されてもよい。
【0019】
結合器は、モノリシックベース基板を含んでもよい。モノリシックベース基板の上に複数の層が形成されてもよい。複数の層は、誘電材料および/または保護材料を含んでもよい。結合器は、様々な層の上および/または間に形成された薄膜コンポーネントを含む、パターン形成導電層を含んでもよい。実施形態によっては、これらの層の上にカバー層が形成されてもよい。カバー層は、酸窒化シリコンなどの様々な適切な材料を含んでもよい。実施形態によっては、カバー層の上に第1の保護層が形成されてもよい。第1の保護層は、ポリイミドなどの様々な適切な材料を含んでもよい。
【0020】
ポートは、これらの層を(および第1の保護層があれば第1の保護層も)貫通して延び、第1のパターン形成導電層(たとえばモノリシックベース基板に隣接)、第2のパターン形成導電層、および/または第3のパターン形成導電層に電気的に接続してもよい。ポートは、結合器がポートを介して(例えばプリント回路に)実装され、電気的に接続可能なように、カバー層の外面を越えて突出してもよい(例えば「フリップチップ」)。ポートは、選択的エッチングとそれに続いて、例えば電気めっきを使用した導電材料(例えば銅)の堆積によって形成されてもよい。ポートは、スズ、ニッケルまたはこれらの混合物のめっきなどの導電性材料の上に1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0021】
本明細書で使用する場合、第2の層「の上に形成されている」第1の層とは、結合器の厚さ方向を基準にして第1の層が第2の層の上に配置されていることを指す場合がある。第1の層は、第2の層に直接接触していてもよい。しかし、第1の層と第2の層とが互いに直接接触しないように、これらの層の間に中間層も形成されてもよい。
【0022】
カバー層は、例えば後述するような適切なセラミック誘電材料を含んでもよい。カバー層は、約100マイクロメートルから約600マイクロメートル、実施形態によっては約125マイクロメートルから約500マイクロメートル、実施形態によっては約150マイクロメートルから約400マイクロメートル、さらに実施形態によっては約175マイクロメートルから約300マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
【0023】
ベース基板、誘電体層、および/またはカバー層は、1つまたは複数の適切なセラミック材料を含んでもよい。適切な材料は概ね電気絶縁性であり、熱伝導性である。誘電材料の例には、二酸化ハフニウム(HFO)、酸化アルミニウム(AL)、五酸化タンタル(Ta)、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、および、絹などの有機材料が含まれる。別の実施形態では、以下の誘電材料のうちの1つまたは複数を採用してもよい。すなわち、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、タンタル酸ビスマスストロンチウム、ニオブ、このような物質の酸化物または窒化物、NPO(COG)、X7R、X7S、Z5U、Y5V製剤、ドープまたは非ドープPZT誘電体などの鉛系材料などがある。
【0024】
ベース基板および/またはカバー層は、ガラス、セラミック、有機材料、またはこれらの混合物を含むことができる。ベース基板および/またはカバー層のその他の材料の例には、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコン、炭化シリコン、シリカ、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、酸化ジルコニウム、これらの混合物、このような物質の酸化物および/または窒化物、または任意のその他の適切なセラミック材料がある。その他のセラミック材料には、チタン酸カルシウム(CaTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、低火度ガラス含有セラミック、およびその他のガラス結合材料がある。
【0025】
実施形態によっては、ベース基板、誘電体層および/またはカバー層のうちの1つまたは複数が、サファイヤまたはルビーを含んでもよい。サファイヤおよびルビーは、追加微量物質を含有する酸化アルミニウム(セラミック材料)の結晶形態である、コランダムの一種である。サファイヤを含む基板は、優れた電気絶縁、熱放散および高温安定性を含むいくつかの利点を示す場合がある。さらに、サファイヤは概ね透明であるため、結合器の内部フィーチャを目視検査することができ、それによって完成コンポーネントの品質の検査に付随する時間と困難度が低減される。
【0026】
ベース基板、誘電体層および/またはカバー層は、25℃の動作温度および1kHzの周波数で、ASTM D2149-13に従って測定された約30未満の誘電率、実施形態によっては約25未満、実施形態によっては約20未満、実施形態によっては、約15未満の誘電率を有する材料を含んでもよい。しかし、他の実施形態では、より高い周波数および/またはより微小なコンポーネントを実現するために、30より高い誘電率を有する材料を使用してもよい。例えば、そのような実施形態では、誘電率は、25℃の動作温度および1kHzの周波数で、ASTM D149-13に従って測定された、約30から約120の範囲またはそれ以上、実施形態によっては約50から約100、実施形態によっては約70から約90の範囲であってもよい。
【0027】
薄膜コンポーネントは、様々な適切な材料から形成されてもよい。薄膜インダクタおよび/またはキャパシタは、導電層を含んでもよい。導電層は、様々な適切な導電材料を含んでもよい。導電性材料の例としては、銅、ニッケル、金、スズ、鉛、パラジウム、銀、およびこれらの合金がある。しかし、薄膜製作に適した任意の導電性金属または非金属材料を使用してもよい。実施形態によっては、結合器は薄膜抵抗器を含んでもよい。薄膜抵抗器は抵抗層を含んでもよく、抵抗層は様々な適切な抵抗物質から形成されてもよい。例えば、抵抗層は、窒化タンタル(TaN)、ニッケルクロム(NiCr)、タンタルアルミナイド、クロム・シリコン、窒化チタン、チタン・タングステン、タンタル・タングステン、これらの物質の酸化物および/または窒化物、および/または任意のその他の適切な薄膜抵抗材料を含んでもよい。
【0028】
薄膜コンポーネントの層は、約50マイクロメートル以下、実施形態によっては20マイクロメートル以下、実施形態によっては10マイクロメートル以下、実施形態によっては5マイクロメートル以下の厚さを有してもよい。例えば、実施形態によっては、薄膜コンポーネントの厚さは、約0.05マイクロメートルから約50マイクロメートルの範囲、実施形態によっては約0.1マイクロメートルから約20マイクロメートル、実施形態によっては約0.3マイクロメートルから約10マイクロメートル、実施形態によっては約1マイクロメートルから約5マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0029】
薄膜コンポーネントは、様々な適切な減法プロセス、準加法プロセスまたは完全加法プロセスを使用して精密に形成してもよい。例えば、物理気相付着および/または化学気相付着を使用してもよい。例えば、実施形態によっては、薄膜コンポーネントは、物理気相付着の一種であるスパッタリングを使用して形成してもよい。しかし、例えばプラズマ化学気相付着(PECVD)、無電解めっき、電気めっきを含む様々なその他の適切なプロセスを使用してもよい。薄膜コンポーネントの目的の形状を作成するために、リソグラフィマスクとエッチングを使用してもよい。反応性ガスまたは非反応性ガス(例えば、アルゴン、窒素、酸素、塩素、ホウ素、三塩化物)のプラズマを使用したドライエッチング、および/またはウェットエッチングを含む、様々な適切なエッチング技法を使用してもよい。
【0030】
実施形態によっては、結合器は、薄膜コンポーネントのうちの1つまたは複数の薄膜コンポーネントと接触した少なくとも1つの接着層を含んでもよい。接着層は、薄膜コンポーネントと、ベース基板、誘電体層および/またはカバー層などの隣接層との接着を向上させるのに適した様々な材料であるか、またはそのような材料を含んでもよい。例として、接着層は、Ta、Cr、TaN、TiW、TiまたはTiNのうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、接着層は、タンタル(Ta)(例えばタンタルまたはその酸化物または窒化物)であるかまたはそれを含んでもよく、マイクロストリップとベース基板との接着を向上させるためにマイクロストリップとベース基板との間に形成してもよい。理論にとらわれずに、接着層の材料は、格子不整合および残留応力などの現象を克服するように選択されてもよい。
【0031】
接着層は、様々な適切な厚さを有してもよい。例えば、実施形態によっては、接着層の厚さは、約100オングストロームから約1000オングストロームまでの範囲、実施形態によっては約200オングストロームから約800オングストローム、実施形態によっては、約400オングストロームから約600オングストロームの範囲であってもよい。
【0032】
上記で示したように、結合器は、コンポーネントを表面実装するために結合器の底面に沿って露出したポートを使用して、プリント回路基板(PCB)などの実装面に表面実装するように構成してもよい。例えば、結合器は、ランドグリッドアレイ(LGA)型実装、ボールグリッドアレイ(BGA)型実装、または任意のその他の適切な種類のグリッドアレイ型表面実装などの、グリッドアレイ型表面実装用に構成されてもよい。したがって、ポートは、例えば表面実装デバイス(SMD)の場合のように、ベース基板の側面に沿って延びていなくてもよい。したがって、実施形態によっては、ベース基板および/または結合器の側面には導電材料がなくてもよい。
【0033】
実施形態によっては、結合器は、結合器の底面に沿って露出した第1の保護層、および/または結合器の上面に沿って露出した第2の保護層を含んでもよい。例えば、第1の保護層は、カバー層の上に形成されてもよい。実施形態によっては、第2の保護層は、モノリシックベース基板の第2の表面の上に形成されてもよい。第1の保護層および/または第2の保護層は、ポリマー材料(例えばポリイミド)、SiNO、Al、SiO、Si、ベンゾシクロブテンまたはガラスの層を含んでもよい。第1の保護層および/または第2の保護層は、約1マイクロメートルから約300マイクロメートル、実施形態によっては約5マイクロメートルから約200マイクロメートル、実施形態によっては、約10マイクロメートルから約100マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
I.例示の実施形態
図1に、本開示の態様による結合器100の概略図を示す。結合器100は、入力ポート102と、出力ポート104と、結合ポート106と、分離ポート108とを含んでもよい。第1のインダクタ110が第2のインダクタ112に誘導結合されてもよい。第1のインダクタ110は、入力ポート102と出力ポート104との間に接続されてもよい。第2の薄膜インダクタ112が結合ポート106と分離ポート108との間に接続されてもよい。
【0034】
実施形態によっては、入力ポート102と結合ポート106との間に第1の薄膜キャパシタ114が結合されてもよい。分離ポート108と出力ポート104との間に第2の薄膜キャパシタ116が接続されてもよい。
【0035】
しかし、本開示の範囲内で、他の構成を採用することができる。例えば、1つまたは複数のキャパシタ114、116を省いてもよい。目的の性能特性を与えるために、追加のキャパシタ、インダクタ、および/または抵抗器を採用してもよい。当業者は、本開示の範囲内で様々な構成が可能であることがわかるであろう。
【0036】
図2に、本開示の態様による結合器200の一実施形態の上面図を示す。結合器200は、例えば入力ポート202、出力ポート204、結合ポート206、および/または分離ポート208を含む、複数のポートを含んでもよい。第1の薄膜インダクタ210が第2の薄膜インダクタ212に誘導結合されてもよい。第1のインダクタ210は、入力ポート202と出力ポート204との間に接続されてもよい。例えば、第1の薄膜インダクタ210は、例えば図4Aから図4Cを参照しながら後述するように、結合器200の厚さ方向に第2の薄膜インダクタ212のパターン形成導電線から分離されたパターン形成導電線を含むことができる。第2の薄膜インダクタ212は、例えば1つまたは複数のビア209によって結合ポート206と分離ポート208との間に接続されてもよい。第2の薄膜インダクタ212は、結合器200の厚さ方向に(例えば図3に示す第2の層244によって)第1の薄膜インダクタ210のパターン形成導電線から分離されたパターン形成導電線を含むことができる。
【0037】
実施形態によっては、入力ポート202と結合ポート206との間に第1の薄膜キャパシタ214が接続されてもよい。第1の薄膜キャパシタ214は、第1の部分214aと第2の部分214bとからなってもよい。第1の部分214aは、結合器200の1つの層上の第1のパターン形成導電線によって形成されてもよく、第2の部分214bは、結合器200の厚さ方向に第1の部分214aを有する層から分離された別の層上の第2のパターン形成導電線によって形成されてもよい。分離ポート208と出力ポート204との間に第2の薄膜キャパシタ216が接続されてもよい。第2の薄膜キャパシタ216は、第1の部分216aと第2の部分216bとからなってもよい。第1の部分216aは、結合器200の1つの層上の第1のパターン形成導電線によって形成されてもよく、第2の部分216bは結合器200の厚さ方向に第1の部分216aを有する層から分離された別の層上の第2のパターン形成導電線によって形成されてもよい。
【0038】
結合器200は、長手方向220の長さ218と横方向224の幅222とを有してもよい。上述のように、結合器200は、結合器の長さ218に幅222を乗じた値に等しい結合器200の面積として定義することができる微小な占有面積(例えば約3mm未満)を有し、したがってプリント回路基板上に実装するためのスペースが少なくて済む。
【0039】
第1の薄膜キャパシタ214の第1の部分214aと第2の薄膜キャパシタ216の第1の部分216aの斑点状陰影、第1の薄膜インダクタ210の格子状陰影、および第2の薄膜インダクタ212のクロスハッチ陰影など、異なる要素の陰影の違いは、図2において異なる要素を区別するためなど、図面を詳細に見ることを目的としているに過ぎないことを理解されたい。また、図2は、ポート202、204、206、208、第1のインダクタ210、第2のインダクタ212、第1のキャパシタ214、第2のキャパシタ212など、結合器200の様々な要素の、結合器200の少なくとも一部の実施形態における互いに対して相対的な位置またはレイアウトを示しており、図2は様々なパターン形成導電線の、例えば厚さ方向の相対位置を必ずしも表していない。
【0040】
図3を参照すると、結合器200はモノリシックベース基板240を含んでもよい。結合器200の厚さ方向243を基準にしてモノリシックベース基板240の上に、第1の層242が形成されてもよい。第1の層242の上に第2の層244が形成されてもよい。第2の層244の上にカバー層246が形成されてもよい。モノリシックベース基板240の上に第1のパターン形成導電層248が形成されてもよい。第1の層242の上に第2のパターン形成導電層250が形成されてもよい。第2の層244の上に第3のパターン形成導電層252が形成されてもよい。パターン形成導電層248、250、242のうちの1つまたは複数の層の上に、および/または第1の層242、第2の層244および/または第3の層246の上に、1つまたは複数の保護層が形成されてもよい。例えば、第2のパターン形成導電層248と第1の層242との間に保護層が形成されてもよい。保護層は、ポリイミドなどのポリマー材料を含んでもよい。
【0041】
層242、244のうちの1つまたは複数の層を貫通して1つまたは複数のビア209が形成されてもよい。カバー層246は、酸窒化シリコンなどの様々な適切な材料を含んでもよい。実施形態によっては、カバー層246の上に第1の保護層が形成されてもよい。第1の保護層は、ポリイミドなどの様々な適切な材料を含んでもよい。
【0042】
図3を参照すると、ポート202、204、206、208が層242、244、246(および第1の保護層があれば第1の保護層)を貫通して延びてもよく、例えば図4Aから図4Cに関して説明し、図示しているように、第1のパターン形成導電層248、第2のパターン形成導電層250、および/または第3のパターン形成導電層252と電気的に接続してもよい。
【0043】
ポート202、204、206、208は、結合器200をポート202、204、206、208を介して(例えばプリント回路に)実装し、電気的に接続することができるように、カバー層246の外面254より突出してもよい。ポート202、204、206、208は、選択的エッチングとそれに続く、例えば電気めっきを使用した導電材料(例えば銅)の堆積によって形成されてもよい。ポート202、204、206、208は、スズ、ニッケルまたはこれらの混合物のめっきなどの導電性材料の上の1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0044】
図4Aから図4Cに、本開示の態様による例示の導電パターンを示す。図4Aは、モノリシックベース基板240の上に形成可能な例示の第1のパターン形成導電層248を示す。図4Bは、第1の層242の上に形成可能な例示の第2のパターン形成導電層250を示す。図4Cは、第2の層244の上に形成可能な例示の第3のパターン形成導電層252を示す。
【0045】
図5を参照すると、本開示の態様は、表面実装可能結合器を形成する方法500を対象とする。全体として、ここでは方法500について、図1から図4Cを参照して上述した薄膜結合器200を参照しながら説明する。しかし、開示する方法500は、任意の適切な薄膜結合器で実装することもできることを理解されたい。さらに、図5では、例示と説明のために特定の順序で行われるステップを示しているが、本明細書で説明する方法は、いかなる特定の順序または配置にも限定されない。本明細書で示されている開示を使用する当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示する方法の様々なステップを様々な仕方で省略、並べ替え、組み合わせ、および/または改変することができることがわかるであろう。
【0046】
方法500は、(502)で、モノリシックベース基板を設けることを含んでもよい。モノリシックベース基板は、1つまたは複数の適切なセラミック材料、サファイヤ、またはルビーなど、本明細書に記載の様々な材料であるか、またはそのような材料を含んでもよい。
【0047】
方法500は、(504)で、モノリシックベース基板の上に複数のポートを形成することを含んでもよい。複数のポートは、例えば図1から図4Cを参照しながら上述したように、分離ポートと、結合ポートと、入力ポートと、出力ポートとを含むことができる。モノリシックベース基板上に一連の層を堆積させることができる。それを通してポートを形成または堆積させることができる開口または窓を、これらの一連の層内に形成することができる。
【0048】
方法500は、(506)で、入力ポートと出力ポートとの間に接続された第1の薄膜インダクタを形成することを含んでもよい。方法500は、(508)で、結合ポートと分離ポートとの間に接続され、第1の薄膜インダクタに誘導結合された第2の薄膜インダクタを形成することを含んでもよい。例えば、図2から図4Cを参照しながら上述したように、第1の薄膜インダクタは、第2の薄膜導電体のパターン形成導電線から結合器の厚さ方向に分離されたパターン形成導電線を形成することを含むことができる。例えば、第1の薄膜インダクタの形成は、導電層を(例えば、第1の層242の上に第2のパターン形成導電層250を)堆積させることとパターン形成することとを含むことができる。第2の薄膜インダクタの形成は、導電層を(例えば、第2の層244の上に第3のパターン形成導電層252を)堆積させることとパターン形成することとを含むことができる。
【0049】
実施形態によっては、方法500は、(510)で、例えば図1から図4Cを参照しながら上述したように、入力ポートと結合ポートとの間に接続された第1の薄膜キャパシタを形成することと、分離ポートと出力ポートとの間に接続された第2の薄膜キャパシタを形成することとを含んでもよい。
II.シミュレーションデータ
図6に、本開示の態様による、図1から図4Cの結合器200を参照しながら上述したように全体として構成された第1の結合器の、理論的に計算されたSパラメータを示す。図6は、2GHzから3GHzに及ぶ周波数範囲にわたるSパラメータを示す。当技術分野で了解されているように、SパラメータはS(a,b)という形で添字を使用して表される。値aおよびbは、各Sパラメータが、ポートaで入力された信号の結果としてポートbで生じる信号を表すと理解することができるように、Sパラメータに関連するポート番号を示す。当技術分野で了解されているように、Sパラメータは一般に以下のように称される。
【0050】
【表1】
図6に示すように、この実施例では、結合係数は2GHzにおける約-4dBから3GHzにおける-2dBまで変動する。したがって、結合係数は2GHzから3GHzまでの周波数範囲にわたって約2dB変動する。結合係数は、図6に示す周波数範囲にわたって1GHzごとに約2dB変動する。
【0051】
しかし、結合周波数範囲は2.3GHzから2.7GHzまでと定義することができる。以下の表に、この結合周波数範囲の上限と下限における結合係数を示す。
【0052】
【表2】
結合係数は、結合周波数範囲にわたって約0.65dB変動する場合がある。結合周波数範囲の上限2.7GHzは、結合周波数範囲の下限2.3GHzより400MHz高い。したがって、結合係数はこの実施例では結合周波数範囲にわたって1GHzごとに約1.63dB変動する場合がある。
【0053】
分離係数は、結合周波数範囲にわたって-18dB未満である。このような低い分離係数は、すぐれた指向性を示す。これに対して、-10dBより大きい分離係数は損失の多い結合器を示すことになる。
【0054】
図7は、本開示の態様による、図1から図4Cの結合器200を参照しながら上述したように全体が構成された第2の結合器の、理論的に計算されたSパラメータを示す。この実施例では、結合係数は3GHzにおける-4.5dBから4.5GHzにおける約-2.5dBまで変動する。したがって、2GHzから3GHzまでの周波数範囲にわたって結合係数は約2dB変動する。結合係数は、図7に示す周波数範囲にわたって1GHzごとに約2dB変動する。
【0055】
しかし、結合周波数範囲を3.7GHzから4GHzまでと定義することができる。以下の表に、結合周波数範囲の上限と下限における結合係数を示す。
【0056】
【表3】
結合係数は、結合周波数範囲にわたって約1.02dB変動する場合がある。結合周波数範囲の上限4GHzは結合周波数範囲の下限3.7GHzより300MHz高い。したがって、結合係数は、この実施例では結合周波数範囲にわたって1GHzごとに約1.02dB変動する場合がある。
【0057】
分離係数は、結合周波数範囲にわたって-17dB未満である。このような低い分離係数は優れた指向性を示す。それに対して、-10dBより大きい分離係数は損失の多い結合器を示すことになる。
III.試験
結合係数、挿入損失、リターン損失およびその他のSパラメータ特性の試験を、信号源信号発生器(例えば1306ケースレー2400シリーズ電源測定ユニット(SMU)、例えばケースレー2410-C SMU)を使用して行ってもよい。例えば、信号源信号発生器を使用して、結合器の入力ポートに入力信号を印加し、結合器の結合ポートで結合信号を測定してもよい。
IV.用途
本開示の結合器は、様々な用途で使用することができる。例えば、用途としては、電力増幅器、WiFi、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)、無線ブロードバンド(WIBRO)、ロングタームエボルーション(LTE)、Bluetooth、および/または、低出力無線ゲートウェイ用途がある。その他の例としては、パワー検出、周波数検出、および電圧定在波比(VSWR)モニタリングがある。
【0058】
用途の例には、5G信号処理(例えば5G基地局)、スマートフォン、信号リピータ(例えばスモールセル)、中継局、レーダ、無線ID(RFID)デバイス用に構成されたコンパクトなコンポーネントが含まれる。例えば、電源は本開示による3dB結合器を含むことができる。上述のように、3dB結合器はスプリッタ/コンバイナとも呼ばれる。優れた性能特性を有するコンパクトな3dB結合器は、より安価な電源設計を容易にすることができる。1つの強力でコストのかかる電源増幅器を使用する代わりに、例えば図8を参照しながら以下に説明するように、2つの3dB結合器を使用した1対のより強力でない、より安価な電源増幅器を採用することができる。
【0059】
図8は、本開示の態様による結合器を含む電源800を示す。電源800は、例えば図1から図4Cの結合器200に関して上述したような第1の結合器802を含む。第1の結合器802の分離ポート806が接地808に接続されてもよい。第1の結合器802の入力ポート810が電源800の入力に相当してもよい。第1の結合器802の出力ポート812は、第1の増幅器814に接続することができる。第1の結合器802の結合ポート816は、第2の増幅器818に接続することができる。実施形態によっては、第1の結合器802は、出力ポート812で出力される信号に対して相対的に位相シフトされた結合信号を結合ポート816で提供するように構成可能である。例えば、結合ポート816における結合信号は、出力信号と90度位相がずれることができる。
【0060】
第1の増幅器814と第2の増幅器818は、第2の結合器804に接続されてもよい。より具体的には、第1の増幅器814は第2の結合器804の結合ポート820に接続することができる。第2の増幅器818は、第2の結合器804の入力ポート822に接続することができる。第2の結合器804の分離ポート824は接地826に接続することができる。第2の結合器804の出力ポート828は電力増幅器800の出力に相当することができる。
【0061】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の上記およびその他の修正および変形が、当業者によって実施可能である。さらに、様々な実施形態の態様の全体または一部の両方を入れ替えてもよいことを理解されたい。さらに、当業者は、以上の説明が例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定することを意図していないことがわかるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】