(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】コモン・モード・フィルタ及び端末デバイス
(51)【国際特許分類】
H01P 1/205 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
H01P1/205 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532128
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2021099641
(87)【国際公開番号】W WO2022110762
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011356034.6
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェン,カイカイ
(72)【発明者】
【氏名】リィウ,チェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウエイチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ロォン
(72)【発明者】
【氏名】ディ,ウエイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ジエンジュン
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006JA01
5J006JA15
5J006JA17
5J006LA01
5J006LA02
(57)【要約】
この出願は、フィルタ技術の分野に関し、コモン・モード・フィルタ及び端末デバイスを提供する。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線と第2の巻線と、を含む。第1の巻線の一部及び第2の巻線の一部は、第1のコイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線の他の部分及び第2の巻線の他の部分は、第1のコイル層と積層された第2のコイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1のコイル層及び第2のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンの巻線を囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモン・モード・フィルタであって
第1の巻線と、
第2の巻線と、
前記第1の巻線の一部及び前記第2の巻線の一部は、第1のコイル層において、同じの軸の周りに回転することによって形成されており、前記第1の巻線の他の部分及び前記第2の巻線の他の部分は、前記第1のコイル層と積層された第2のコイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されており、前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層において、前記第1の巻線の各2つの隣接するターン間に前記第2の巻線の1つのターンが存在し、
前記第1のコイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記外側のターンに位置し、
前記第2のコイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記内側のターンに位置し、
前記第2のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向は、前記第1のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向と同じである、コモン・モード・フィルタ。
【請求項2】
前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層の積層方向と直交する方向に互い違いに配置されている、請求項1に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項3】
前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層のいずれかにおいて、前記第1の巻線の各2つの隣接するターンが、それぞれ前記第1の巻線の第1のターン及び前記第1の巻線の第2のターンであり、前記第1の巻線の前記第1のターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間に位置する前記第2の巻線のターンが、前記第2の巻線の中間ターンであり、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第1のターンとの間隔が、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間隔よりも小さい、請求項1又は2に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項4】
前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層は、誘電体層内に配設され、前記誘電体層によって間隔を空けて配置され、前記積層方向に沿った導電チャネルが前記誘電体層を通過し、前記第1のコイル層における前記第1の巻線は、前記導電チャネルを介して前記第2のコイル層における前記第1の巻線に電気的に接続され、前記第1のコイル層における前記第2の巻線は、前記導電チャネルを介して前記第2のコイル層における前記第2の巻線に電気的に接続され、
前記第1のコイル層における前記第2の巻線の前記導電チャネルに近い部分は、前記積層方向の直交方向において、前記第2のコイル層における前記第1の巻線の前記導電チャネルに近い部分と交差している、請求項1~3のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項5】
前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有し、前記接続端は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されており、前記接続端の線幅は、前記スパイラルの巻線の線幅よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項6】
前記コモン・モード・フィルタは、さらに、
基板であって、前記第2のコイル層は、前記基板の表面に配設され、前記第1のコイル層は、前記第2のコイル層に位置する、基板と、
両方とも、前記第1のコイル層の前記第2のコイル層から離れた側に配設された前記入口端子及び前記出口端子と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項7】
コモン・モード・フィルタであって
第1の巻線と、
第2の巻線であって、前記第1の巻線の一部及び前記第2の巻線の一部は、2線コイル層において、同じの軸の周りに回転することによって形成されており、前記第1の巻線の他の部分及び前記第2の巻線の他の部分は、別の2線コイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されており、前記2線コイル層のうちのいずれか1つにおいて、前記第1の巻線の各2つの隣接するターン間に前記第2の巻線の1つのターンが存在する、第2の巻線と、
第3の巻線であって、前記第3の巻線の一部は、単線コイル層に形成され、前記第3の巻線の他の部分は、別の他の単線コイル層に形成された、第3の巻線と、
前記単線コイル層と、前記単線コイル層に隣接する2線コイル層との間で、積層方向の直交方向において、前記第3の巻線、前記第1の巻線、及び前記第2の巻線は、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造を形成しており、前記第1の巻線の任意のターン又は前記第2の巻線の任意のターンも独立した三角形結合構造に属する、コモン・モード・フィルタ。
【請求項8】
前記2線コイル層のいずれかにおいて、前記第1の巻線の各2つの隣接するターンは、それぞれ前記第1の巻線の第1のターン及び前記第1の巻線の第2のターンであり、前記第1の巻線の前記第1のターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間に位置する前記第2の巻線のターンは、前記第2の巻線の中間ターンであり、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第1のターンとの間隔は、S1であり、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間隔は、S2であり、S1は、S2よりも小さく、
前記第3の巻線、前記第2の巻線の前記中間ターン、及び前記第1の巻線の第1のターンは、独立した三角形結合構造を形成している、請求項7に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項9】
前記積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造の間隔は、d1であり、各三角形結合構造において、互いに隣接する前記2線コイル層と前記単線コイル層との間隔は、d2であり、d2は、d1よりも大きい、請求項7又は8に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項10】
前記2線コイル層及び前記単線コイル層は、誘電体層内に配設され、前記誘電体層によって間隔を空けて配置され、前記積層方向に一致する第1の導電チャネル、第2の導電チャネル及び第3の導電チャネルは、前記誘電体層を通過し、2つの隣接する2線コイル層における第1の巻線は、前記第1の導電チャネルを介して電気的に接続され、前記2つの隣接する2線コイル層における第2の巻線は、前記第2の導電チャネルを介して電気的に接続され、前記2つの隣接する2線コイル層における第3の巻線は、前記第3の導電チャネルを介して電気的に接続されており、
前記積層方向の前記直交方向において、前記第1の導電チャネル、前記第2の導電チャネル及び前記第3の導電チャネルは、互い違いに配置され、三角形結合構造を形成している、請求項7~9のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項11】
前記2つの隣接する2線コイル層の一方は、第1の2線コイル層であり、他方は、第2の2線コイル層であり、
前記第1のコイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記外側のターンに位置し、
前記第2のコイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記内側のターンに位置し、前記第2のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向は、前記第1のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向と同じである、請求項7~10のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項12】
前記第1の2線コイル層における前記第2の巻線の前記第2の導電チャネルに近い部分は、前記積層方向の直交方向において、前記第2の2線コイル層における前記第1の巻線の前記第1の導電チャネルに近い部分と交差している、請求項11に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項13】
第1の単線コイル層と第2の単線コイル層の2つの単線コイル層が存在し、前記第1の2線コイル層と前記第2の2線コイル層の2つの2線コイル層が存在する、請求項7~12のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項14】
前記コモン・モード・フィルタは、
基板であって、前記基板は、互いに対向する第1の表面及び第2の表面を有し、前記基板は、前記第1の表面から前記第2の表面まで通過する導電チャネルを有する、基板と、
前記第1の表面に、前記第1の単線コイル層及び前記第1の2線コイル層が配設され、前記第2の表面に、前記第2の単線コイル層及び前記第2の2線コイル層が配設され、
前記基板から離れた前記第1の単線コイル層及び前記第1の2線コイル層の表面にそれぞれ配設された入口端子及び出口端子と、をさらに含む、請求項13に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項15】
端末デバイスであって、
プリント回路基板と、
請求項1~14のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタと、を含み、
前記コモン・モード・フィルタは、前記プリント回路基板に電気的に接続されている、端末デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2020年11月26日に中国国家知識産権局に出願され、「COMMON MODE FILTER AND TERMINAL DEVICE」と題された、中国特許出願第202011356034.6号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願は、フィルタ技術の分野に関係し、特に、コモン・モード・フィルタ及び端末デバイスに関係する。
【背景技術】
【0003】
モバイル通信端末デバイスでは、プロセッサとマルチメディア・デバイス(ディスプレイ、カメラなど)を接続するためのデータ伝送規格として、モバイル・デバイス産業用プロセッサ・インターフェース(Mobile Industry Processoer Interference、MIPI)のためのD-PHY及びC-PHYプロトコルが業界で広く使用されている。
【0004】
ディスプレイ及びカメラに伝送される高速信号への干渉を抑制するために、これらの端末デバイスは、コモン・モード・フィルタ(Common Mode Filters、CMF)をさらに含む。第5世代のモバイル通信技術(5th generation mobile networks、5G)の発展に伴い、より広い周波数帯域を有するアンテナが導入されている。5G高周波高速適用シナリオでは、高速信号のパワースペクトルとアンテナ周波数帯との重なりが広くなる。ノイズ周波数が増加するにつれて、コモン・モード・フィルタのモード変換は増大するインパクトを引き起こす。より一般的なモード・ノイズは、差動モード・ノイズに変換され、差動信号に重畳される。これは、高速信号の伝送品質を大きく劣化させる。例えば、コモン・モード・フィルタのモード変換は、ディスプレイ、カメラなどの構造物に結合されたアンテナの高速インターフェース上で、モード変換を介して高速信号上に電流を重畳させ、大量のビットエラーを発生させる。これにより、カメラ、ディスプレイなどのモジュールに、表示の乱れや縞などの干渉が生じることがある。
【0005】
追加的に、従来のコモン・モード・フィルタは、抑制帯域幅(抑制中心周波数とも呼ばれる)が低いため、5Gの高周波帯域におけるコモン・モード・ノイズに対する抑制効果は乏しく、5Gの周波数帯域における端末デバイス内の各インターフェース回路に対する反干渉効果は顕著ではない。
【0006】
追加的に、伝送速度が上昇すると、従来のコモン・モード・フィルタにより生じる高周波信号上の挿入損失が大きくなる。これはリンク帯域幅の向上を大きく制限し、高速信号品質に影響を与える。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、モード変換損失を低減し、高周波挿入損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を拡大することができるコモン・モード・フィルタを主に提供するコモン・モード・フィルタ及び端末デバイスを提供する。
【0008】
この出願では、以下の技術的解決策を使用する。
【0009】
第1の態様によれば、この出願はコモン・モード・フィルタを提供する。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線と第2の巻線と、を含む。第1の巻線の一部及び第2の巻線の一部は、第1のコイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線の他の部分及び第2の巻線の他の部分は、第1のコイル層と積層された第2のコイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1のコイル層及び第2のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンの巻線を囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。
【0010】
この出願で提供されるコモン・モード・フィルタによれば、各コイル層における第1の巻線及び第2の巻線は同じ軸の周りに回転し、第1の巻線の2つの隣接するターンは、第2の巻線の1ターン分間隔を空けて配置される。このように、いずれのコイル層においても、第1の巻線及び第2の巻線がスパイラルの半径方向に沿って間隔を空けるように配設されていることにより、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード結合インダクタンスを強化し、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード磁気結合のバランスが良くなる。
【0011】
追加的に、第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置している。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。このように、全てのコイル層における第1の巻線の長さの合計は、全てのコイル層における第2の巻線の長さの合計と基本的に等しい。これにより、第1の巻線及び第2の巻線における信号伝送のレイテンシ差を解消し、差動モード信号とコモン・モード信号との変換を低減し、それにより、コモン・モード・フィルタのモード変換損失を低減し、高周波挿入損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を広げる。
【0012】
第1の態様の可能な実装では、第1の巻線及び第2の巻線は、第1のコイル層及び第2のコイル層の積層方向と直交する方向に互い違いに配置されている。第1の巻線と第2の巻線を積層方向と直交する方向に互い違いに配設されているときに、2つの隣接するコイル層間の寄生分布容量を低減することができ、それにより、コモン・モード・フィルタの抑制帯域幅をさらに向上し、モード変換損失を低減することができる。
【0013】
第1の態様の可能な実装では、第1のコイル層及び第2のコイル層のいずれか1つにおいて、第1の巻線の各2つの隣接する巻線は、それぞれ第1の巻線の第1のターン及び第1の巻線の第2のターンである。第1の巻線の第1のターンと第1の巻線の第2のターンとの間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターンである。第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第1のターンとの間隔は、第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第2のターンとの間隔よりも小さい。このように、第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第1のターンとの磁気結合量が第1の巻線の第2のターンによって大きく妨害されることがなく、コモン・モード・フィルタのバランスが向上する。
【0014】
第1の態様の可能な実装では、第1のコイル層及び第2のコイル層は、誘電体層内に配設され、誘電体層によって間隔を空けて配置される。積層方向と一致する導電チャネルが、誘電体層を通過する。第1のコイル層における第1の巻線は、導電チャネルを介して第2のコイル層における第1の巻線に電気的に接続される。第1のコイル層における第2の巻線は、導電チャネルを介して第2のコイル層における第2の巻線に電気的に接続される。第1のコイル層における第2の巻線の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交方向において、第2のコイル層における第1の巻線の導電チャネルに近い部分と交差している。第1の巻線と第2の巻線を接続するこのような構造では、全てのコイル層における第1の巻線の長さの和と全てのコイル層における第2の巻線の長さの和とが基本的に等しいことを前提として、導電チャネルが積層方向に沿って通過することができ、処理や製造が容易になる。
【0015】
第1の態様の可能な実装では、第1の巻線及び第2の巻線は、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有する。接続端は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されており、接続端の線幅は、スパイラルの巻線の線幅よりも大きい。接続端の線幅を大きくすることにより、入出力配線の特性インピーダンスが向上し、コモン・モード・フィルタのリターン損失が低減される。
【0016】
第1の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、基板であって、第2のコイル層は、基板の表面に配設され、第1のコイル層は、第2のコイル層に位置する、基板と、両方とも、第1のコイル層の第2のコイル層から離れた側に配設された入口端子及び出口端子と、をさらに含む。
【0017】
第1の態様の可能な実装では、基板は、非磁性材料で作製される。このように、半導体プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造してもよく、巻線の線幅をより柔軟に設計し、インピーダンス制御を容易に実装し、誘電材料損失が低く、2線コモン・モード・フィルタが高い適用帯域幅を有することができる。
【0018】
第1の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、第3のコイル層と、第4のコイル層と、をさらに含む。第1のコイル層、第2のコイル層、第3のコイル層及び第4のコイル層は、順次積層されている。第3のコイル層及び第4のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第3のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第4のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設されている。第3のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第4のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。このように、高周波挿入損失が極めて低く、コモン・モード抑制帯域幅が大きく、モード変換損失が極めて低い2線コモン・モード・フィルタを形成することができる。
【0019】
第1の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、第1の基板と第2の基板と、をさらに含む。第1の基板及び第2の基板のうちの少なくとも1つは、磁性材料から作製される。第1の基板と第2の基板とは対向して配設され、第1の基板と第2の基板との間にコイル層が配設されている。第1の基板及び第2の基板うちの少なくとも1つは、磁性材料から作製され、その結果、バランスに影響を与えることなく低周波干渉適用シナリオを満たすことができる。
【0020】
第2の態様によれば、この出願は、コモン・モード・フィルタを提供する。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線、第2の巻線、及び第3の巻線を含む。第1の巻線の一部及び第2の巻線の一部は、2線コイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線の他の部分及び第2の巻線の他の部分は、別の2線コイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。任意の2線コイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第3の巻線の一部は、単線コイル層に形成され、第3の巻線の他の部分は、別の他の単線コイル層に形成されている。単線コイル層と、単線コイル層に隣接する2線コイル層との間で、積層方向の直交方向において、第3の巻線、第1の巻線、及び第2の巻線は、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造を形成している。第1の巻線の任意のターンまたは第2の巻線の任意のターンは、独立した三角形結合構造に属する。
【0021】
この出願で提供されるコモン・モード・フィルタによれば、各2線コイル層における第1の巻線及び第2の巻線は同じ軸の周りに回転し、第1の巻線の2つの隣接するターンは、第2の巻線の1ターン分間隔を空けて配置されている。このように、いずれの2線コイル層においても、第1の巻線及び第2の巻線がスパイラルの半径方向に沿って間隔を空けるように配設されていることにより、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード結合インダクタンスを強化し、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード磁気結合のバランスが良くなる。
【0022】
追加的に、積層方向の直交方向において、第3の巻線、第1の巻線及び第2の巻線は、互い違いに配設され、互いに独立した複数の三角形結合構造を形成している。このように、第1の巻線、第2の巻線及び第3の巻線が整合したインピーダンス及び整合した結合インダクタンスを有し、その結果、3つの巻線によって形成される各差動モード挿入損失が整合し、コモン・モード・フィルタ全体のリターン損失が小さい。
【0023】
第2の態様の可能な実装では、任意の2線コイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンは、それぞれ、第1の巻線の第1のターンと第1の巻線の第2のターンである。第1の巻線の第1のターンと第1の巻線の第2のターンとの間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターンである。第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第1のターンとの間隔は、S1である。第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第2のターンとの間隔は、S2であり、S1は、S2よりも小さい。第3の巻線、第2の巻線の中間ターン、及び第1の巻線の第1のターンは、独立した三角形結合構造を形成している。このように、積層方向の直交方向において、隣接する三角形結合構造を水平方向に互いから離間させることができ、それにより特性インピーダンス変動及び分布容量を低減し、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11、及びバランス性能Scd21が向上する。
【0024】
第2の態様の可能な実装では、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造の間隔は、d1であり、各三角形結合構造において、互いに隣接する2線コイル層と単線コイル層との間隔は、d2であり、d2は、d1よりも大きい。このように、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造は、互いに離間され分離される。同様に、特性インピーダンス変動及び分布容量が低減され、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11、及びバランス性能Scd21が向上する。
【0025】
第2の態様の可能な実装では、2線コイル層及び単線コイル層は、誘電体層内に配設され、誘電体層によって間隔を空けて配置されている。積層方向に一致する第1の導電チャネル、第2の導電チャネル、及び第3の導電チャネルは、誘電体層を通過する。2つの隣接する2線コイル層における第1の巻線は、第1の導電チャネルを介して電気的に接続される。2つの隣接する2線コイル層における第2の巻線は、第2の導電チャネルを介して電気的に接続される。2つの隣接する単線コイル層における第3の巻線は、第3の導電チャネルを介して電気的に接続される。積層方向の直交方向において、第1の導電チャネル、第2の導電チャネル及び第3の導電チャネルは、互い違いに配置され、三角形結合構造を形成している。第1の導電チャネル、第2の導電チャネル及び第3の導電チャネルを使用して三角形結合構造を形成することにより、コモン・モード・フィルタのバランスがさらに向上することができる。
【0026】
第2の態様の可能な実装では、2つの隣接する2線コイル層の一方は、第1の2線コイル層であり、他方は、第2の2線コイル層である。第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンの巻線を囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。したがって、全ての2線コイル層における第1の巻線の長さの合計は、全ての2線コイル層における第2の巻線の長さの合計と基本的に等しい。これにより、第1の巻線及び第2の巻線における信号伝送のレイテンシ差を解消し、差動モード信号からコモン・モード信号への変換を生じさせず、それにより、コモン・モード・フィルタのモード変換損失を低減し、高周波挿入損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を広げる。
【0027】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層における第2の巻線の第2の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交方向において、第2の2線コイル層における第1の巻線の第1の導電チャネルに近い部分と交差している。第1の巻線と第2の巻線を接続するこのような構造では、全ての2線コイル層における第1の巻線の長さの和と全ての2線コイル層における第2の巻線の長さの和とが基本的に等しいことを前提として、導電チャネルが積層方向に沿って通過することができ、処理や製造が容易になる。
【0028】
第2の態様の可能な実装では、第1の単線コイル層と第2の単線コイル層の2つの単線コイル層が存在し、前記第1の2線コイル層と前記第2の2線コイル層の2つの2線コイル層が存在する。このように形成された3線コモン・モード・フィルタは、4層構造である。3線コモン・モード・フィルタは、6層より多い層を有する従来の3線コモン・モード・フィルタと比較して、巻線層の数を低減し、3線コモン・モード・フィルタ全体の小型化を実装する。
【0029】
第2の態様の可能な実装では、第1の単線コイル層、第1の2線コイル層、第2の2線コイル層、及び第2の単線コイル層が順次積層されている。
【0030】
第2の態様の可能な実装では、第1の単線コイル層、第1の2線コイル層、第2の単線コイル層、及び第2の2線コイル層が順次積層されている。
【0031】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層、第1の単線コイル層、第2の単線コイル層、及び第2の2線コイル層が順次積層されている。
【0032】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層、第1の単線コイル層、第2の2線コイル層、及び第2の単線コイル層が順次積層されている。
【0033】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層、第2の2線コイル層、第1の単線コイル層、及び第2の単線コイル層が、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有する。接続端は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されており、接続端の線幅は、スパイラルの巻線の線幅よりも大きい。接続端の線幅を大きくすることにより、入出力配線の特性インピーダンスが向上し、コモン・モード・フィルタのリターン損失が低減される。
【0034】
第2の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、基板であって、基板は、互いに対向する第1の表面及び第2の表面を有し、基板は、第1の表面から第2の表面まで通過する導電チャネルを有する、基板と、第1の表面に、第1の単線コイル層及び第1の2線コイル層が配設され、第2の表面に、第2の単線コイル層及び第2の2線コイル層が配設され、基板から離れた第1の単線コイル層及び第1の2線コイル層の表面にそれぞれ配設された入口端子及び出口端子と、をさらに含む、基板の第1の表面に、第1の単線コイル層及び第1の2線コイル層が配設され、基板の第2の表面に、第2の単線コイル層及び第2の2線コイル層が配設されている。このように、基板を使用して積層方向に複数の三角形結合構造を互いに分離して離間させることができる。
【0035】
第2の態様の可能な実装では、基板は、非磁性材料で作製される。このように、半導体プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造してもよく、巻線の線幅をより柔軟に設計し、インピーダンス制御を容易に実装し、誘電材料損失が低く、2線コモン・モード・フィルタが高い適用帯域幅を有することができる。
【0036】
第2の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、第1の基板と、第2の基板と、をさらに含む。第1の基板及び第2の基板のうちの少なくとも1つは、磁性材料から作製される。第1の基板と第2の基板とは対向して配設され、第1の基板と第2の基板との間に2線コイル層及び単線コイル層が各々配設されている。第1の基板及び第2の基板うちの少なくとも1つは、磁性材料から作製され、その結果、バランスに影響を与えることなく低周波干渉適用シナリオを満たすことができる。
【0037】
第3の観点によれば、この出願は、プリント回路基板と、第1の態様の実装のいずれか1つによるコモン・モード・フィルタと、を含む端末デバイスをさらに提供する。コモン・モード・フィルタは、プリント回路基板に電気的に接続される。
【0038】
この出願のこの実施形態で提供される端末デバイスは、第1の実施形態におけるコモン・モード・フィルタを含む。したがって、この出願のこの実施形態で提供される端末デバイス及び前述の技術的解決手段におけるコモン・モード・フィルタは、同じ技術的課題を解決し、同じ予期される効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】この発明の一実施形態による、端末デバイスの構成の一部を示す概略図である。
【0040】
【
図2】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0041】
【
図3】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタの2つの隣接するコイル層の配線の概略図である。
【0042】
【
図4】この出願の一実施形態による、2つの隣接するコイル層の間の接続関係の3次元概略図である。
【0043】
【
図5】この出願の一実施形態による、2つの隣接するコイル層の間の接続関係を示す2次元概略図である。
【0044】
【
図6】この出願の一実施形態による、別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【
図10】この出願の一実施形態による、さらに別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0049】
【
図11】この出願の一実施形態による、さらに別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0050】
【
図12】この出願の一実施形態による、またさらに別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0051】
【
図13(a)】
図12の差動モード挿入損失Sdd21の曲線図である。
【0052】
【
図13(b)】
図12のコモン・モード挿入損失Scc21の曲線図である。
【0053】
【
図13(c)】
図12のモード変換損失Scd21の曲線図である。
【0054】
【
図13(d)】
図12のリターン損失Sdd11の曲線図である。
【0055】
【
図14】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構造の概略図である。
【0056】
【
図15】この出願の一実施形態による、さらなる2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0057】
【
図16(a)】
図15の差動モード挿入損失Sdd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0058】
【
図16(b)】
図15のコモン・モード挿入損失Scc21と従来技術との比較の曲線図である。
【0059】
【
図16(c)】
図15のモード変換損失Scd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0060】
【
図16(d)】
図15のリターン損失Sdd11と従来技術との比較の曲線図である。
【0061】
【
図17】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構造の概略図である。
【0062】
【
図18】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0063】
【
図19】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタの各コイル層の配線の概略図である。
【0064】
【
図20】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタの各コイル層の配線の概略図である。
【0065】
【
図21】この出願の一実施形態による、隣接するコイル層の間の接続関係の2次元概略図である。
【0066】
【
図22】この出願の一実施形態による、別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0067】
【
図23】この出願の一実施形態による、さらに別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0068】
【
図24】この出願の一実施形態による、さらに別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0069】
【
図25】この出願の一実施形態による、またさらに別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0070】
【
図26】従来技術における3線コモン・モード・フィルタの部分断面図である。
【0071】
【
図27】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタにおける三角形結合構造の構造の概略図である。
【0072】
【
図28】この出願の一実施形態による、さらなる3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0073】
【
図29】この出願の一実施形態による、またさらなる3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0074】
【
図30】この出願の一実施形態による、別の3線コモン・モード・フィルタの3次元図である。
【0075】
【
図31(a)】
図29の差動モード挿入損失Sdd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0076】
【
図31(b)】
図29のコモン・モード挿入損失Scc21と従来技術との比較の曲線図である。
【0077】
【
図31(c)】
図29のモード変換損失Scd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0078】
【
図31(d)】
図29のリターン損失Sdd11と従来技術との比較の曲線図である。
【0079】
【
図32】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構造の概略図である。
【0080】
【
図33】この出願の一実施形態による、さらに別の3線コモン・モード・フィルタの3次元図である。
【0081】
【
図34】この出願の一実施形態による、またさらなる3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0082】
【
図35】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構成を示す概略図である。
【0083】
符号:01-PCB、02-電気接続構造、03-コモン・モード・フィルタ、1-第1の巻線、101-第1の巻線の第1のターン、102-第1の巻線の第2のターン、2-第2の巻線、201-第2の巻線の第1のターン、202-第2の巻線の第2のターン、3-第3の巻線、4-誘電体層、5-導電チャネル、51-第1の導電チャネル、52-第2の導電チャネル、53-第3の導電チャネル、6-接続端、7-入口端子、71-第1の入口端子、72-第2の入口端子、73-第3の入口端子、8-出口端子、81-第1の出口端子、82-第2の出口端子、83-第3の出口端子、9-基板、91-第1の基板、92-第2の基板、10-支持板、11-三角形結合構造、111-第1の三角形結合構造、112-第2の三角形結合構造、113-第3の三角形結合構造、L1-第1のコイル層、L2-第2のコイル層、L3-第3のコイル層、L4-第4のコイル層、L21-第1の2線コイル層、L22-第2の2線コイル層、L 31-第1の単線コイル層、L32-第2の単線コイル層
【発明を実施するための形態】
【0084】
技術的解決策の理解を容易にするために、以下、この出願における技術的用語について説明する。
【0085】
差動モード挿入損失Sパラメータは、信号伝送において重要なパラメータである。Sijは、ポートjから注入され、かつポートiで測定されるエネルギーを示す。差動モード挿入損失パラメータは、Sdd21パラメータとも呼ばれ、ポート1から入力される差動モード信号のエネルギーに対するポート2から出力される差動モード信号のエネルギーの比を表す。0dBに近いSdd21値が好ましい。
【0086】
コモン・モード挿入損失Sパラメータは、Scc21パラメータとも呼ばれ、ポート1からのコモン・モード・ノイズエネルギーに対するポート2からのコモン・モード・ノイズ・エネルギーの比を表す。Scc21の値が小さいほど、コモン・モード・ノイズ抑制能力が強く、周波数帯域が広いほど抑制帯域幅が大きくなることを示す。
【0087】
モード変換損失Sパラメータは、Scd21パラメータとも呼ばれ、ポート1から入力される差動モード信号のエネルギーが、ポート2から出力されるコモン・モード・ノイズ・エネルギーにどれだけ変換されるかを表す。Scd21が小さいほど、フィルタのバランスが良好になり、モード損失が小さくなることを示す。
【0088】
リターン損失Sパラメータは、Sdd11パラメータとも呼ばれ、ポート1から入力された差動モード信号のエネルギーがどれだけ反射してポート1に戻るかを表す。よりも小さいSdd11値が、好ましい。
【0089】
以下、添付図面を参照して、この出願の実施形態における技術的解決策を詳細に説明する。
【0090】
この出願の一実施形態は、端末デバイスを提供する。端末デバイスは、携帯電話(mobile phone)、タブレット・コンピュータ(pad)、インテリジェント・ウェアラブル製品(例えば、スマート・ウォッチ又はスマートバンド)、仮想現実(virtual reality、VR)デバイス、拡張現実(argmented reality、AR)デバイスなどのデバイスを含んでもよい。この出願の実施形態では、端末デバイスの具体的な形態は特に限定されない。
【0091】
これらの端末デバイスは、一般に、カメラ・モジュール、ディスプレイ・モジュールなどを含み、アンテナも含む。プロセッサからカメラ・モジュール又はディスプレイ・モジュールに伝送される信号に対するアンテナ信号によって生じる干渉を抑制するために、端末デバイスは、コモン・モード・フィルタをさらに含む。コモン・モード・フィルタは、コモン・モード・ノイズを抑制し、差動データ信号を伝送するように構成されている。
【0092】
第5世代モバイル通信技術(5th generation wireless systems、5G)の発展に伴い、これらの端末デバイス内のアンテナも5Gの周波数帯をカバーしている。この場合、コモン・モード・フィルタの性能をさらに最適化する必要がある。例えば、モード変換損失が極めて小さく、コモン・モード抑制帯域幅がより大きく、及び高周波挿入損失極めて小さいことが要求される。これらの端末デバイスの5G高周波高速適用シナリオでは、高速インターフェースに結合されたアンテナの電流がモード変換により高速信号に重畳され、カメラ及びディスプレイに表示の乱れや縞が発生することを防止することができる。
【0093】
図1は、前述の端末デバイスの構造の一部を示す図である。端末デバイスは、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)01と、コモン・モード・フィルタ03と、を含む。コモン・モード・フィルタ03は、PCB01上に統合され、電気接続構造02を介してPCB01に電気的に接続される。例えば、PCB01上に差動信号線が配設され、コモン・モード・フィルタ03が、電気接続構造02を介して差動信号線に電気的に接続される。
【0094】
端末デバイスでは、通常、データ伝送規格としてD-PHYプロトコル及びC-PHYプロトコルが使用される。D-PHYプロトコル規格では、信号は、2つの差動線を介して伝送される。C-PHYプロトコル規格では、送信側において3つの配線を介して異なるレベルが伝送され、受信側において差動出力が行われる。
【0095】
言い換えれば、D-PHYプロトコル規格では、2線コモン・モード・フィルタが使用され、すなわち、2つの巻線が存在する。C-PHYプロトコル規格では、3線コモン・モード・フィルタが使用され、すなわち、3つの巻線が存在する。
【0096】
したがって、この出願は、2つのコモン・モード・フィルタ、すなわち、2線コモン・モード・フィルタ及び3線コモン・モード・フィルタを提供する。以下、2線コモン・モード・フィルタと3線コモン・モード・フィルタについて詳細に説明する。
【0097】
以下、2線コモン・モード・フィルタの構成について詳細に説明する。
【0098】
図2及び
図3は、2線コモン・モード・フィルタの構造の図である。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線1と、第2の巻線2と、を含む。第1の巻線1の一部及び第2の巻線2の一部は、第1のコイル層L1において、同じ軸(
図3に示す軸P1)の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線1の他の部分及び第2の巻線2の他の部分は、第1のコイル層L1と積層された第2のコイル層L2において、別の同じ軸(
図3に示す軸P2)の周りに回転することによって形成されている。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2は、
図2のP方向に沿って積層されており、第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2は、誘電体層4によって間隔を空けて配置されている。
【0099】
2つの隣接するコイル層の間の電気的接続を実装するために、導電チャネル5が誘電体層4を通過し、導電チャネル5は、第1のコイル層及び第2のコイル層において同じ名前を有する巻線に電気的に接続される。言い換えれば、第1のコイル層における第1の巻線は、導電チャネルを介して第2のコイル層における第1の巻線と電気的に接続され、第1のコイル層における第2の巻線も導電チャネルを介して第2のコイル層における第2の巻線と電気的に接続される。
【0100】
図3は、
図2の第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2の配線構造を示す。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2において、第1の巻線1の2つの隣接するターンの間に第2の巻線2の1つのターンが存在する。
【0101】
第1のコイル層L1における第1の巻線1は、第2のコイル層L2における第1の巻線1に電気的に接続され(
図3の破線W1によって)、第1のコイル層L1における第2の巻線2は、第2のコイル層L2における第2の巻線2に電気的に接続される(
図3の破線W2によって)。
【0102】
このように、第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2のいずれかにおいて、スパイラルの半径方向(
図3に示すD方向)に沿って第1の巻線1及び第2の巻線2が間隔を空けるように配設されている。このため、各コイル層において、第1の巻線1と第2の巻線2との間のコモン・モード結合インダクタンスを強化し、コモン・モード抑制を向上させることができる。各コイル層を差動信号が通過するときに、第1の巻線と第2の巻線で差動モード電流を反転させることによって発生する磁束が打ち消し合って、それにより、差動信号の伝送損失を低減し、差動信号の品質が向上する。
【0103】
第1のコイル層L1における配線と第2のコイル層L2における配線との違いは 以下のように、
図3を参照する。第1のコイル層L1において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線1は、第2の巻線2に対して内側のターンに位置し、すなわち、第1の巻線1は、軸P1に近い内側のターンに位置する。しかしながら、第1のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線2は、第1の巻線1に対して内側のターンに位置し、すなわち、第2の巻線2は、軸P2に近い内側のターンに位置する。
【0104】
このように、第1のコイル層L1におけるターンの数と第2のコイル層L2におけるターンの数とが同じであるときに、2つのコイル層における第1の巻線1の長さの和は、第2の巻線2の長さの和と基本的に等しくなる。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2を通して差動信号が伝送された後、信号伝送のレイテンシ差が解消され、差動モード信号とコモン・モード信号との変換が低減され、それにより、Scd21を低減し、コモン・モード・フィルタのバランスを向上させる。
【0105】
図3に示すように、2つの隣接するコイル層における第1の巻線及び第2の巻線は、導電チャネルを介して別々に電気的に接続される必要がある。
図3に示す配線構造は、 以下のようである。すなわち、第1のコイル層L1において、外側のターンから内側のターンにかけて、第1の巻線1及び第2の巻線2が反時計回り(counterclockwise)に囲むように配設される。第1のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線1及び第2の巻線2がまた、反時計回り(counterclockwise)に囲むように配設される。
図4は、
図3に示す第1のコイル層L1と第2のコイル層L2との間の第1の巻線1の接続構造及び第2の巻線2の接続構造の図である。
【0106】
図4を参照する。誘電体層を通過する第1の導電チャネル51は、2つの隣接するコイル層において第1の巻線1に電気的に接続され、誘電体層を通過する第2の導電チャネル52は、2つの隣接するコイル層において第2の巻線2に電気的に接続される。追加的に、第1のコイル層L1における第2の巻線2の第2の導電チャネル52に近い部分は、積層方向の直交方向(
図5に示すQ方向)において、第2のコイル層L2における第1の巻線1の第1の導電チャネル51に近い部分と交差している。層間クロス構造を介して巻線を電気的に接続するときに、
図4に示すように、第1の導電チャネル51及び第2の導電チャネル52は共に積層方向と平行な方向に通過する。
【0107】
図6は、4つのコイル層、すなわち、第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3コイル層L3、及び第4コイル層L4を有する別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3及び第4のコイル層L4は、積層方向Pに沿って順次積層されている。
【0108】
図6は、2線コモン・モード・フィルタの一実施形態にすぎず、代替的には、より多くのコイル層を含んでもよい。結論として、2線コモン・モード・フィルタにおいて、N個のコイル層が存在し、Nは、2以上の偶数である。
【0109】
図7は、
図6の各コイル層の配線構造を示す。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2の巻き方は、
図3に示したものと同じであり、第3のコイル層L3の巻き方は、第1のコイル層L1の巻き方と同じであり、第4コイル層L4の巻き方は、第2のコイル層L2の巻き方と同じである。
【0110】
追加的に、第1のコイル層L1における第1の巻線1は、第2のコイル層L2における第1の巻線1に電気的に接続され(
図3の破線で示すように)、第1のコイル層L1における第2の巻線2は、第2のコイル層L2における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図7の破線で示すように)、第1のコイル層L1と第2のコイル層L2の電気的接続を実装する。
【0111】
第2のコイル層L2における第1の巻線1は、第3のコイル層L3における第1の巻線1に電気的に接続され(
図7の破線で示すように)、第2のコイル層L2における第2の巻線2は、第3のコイル層L3における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図7の破線で示すように)、第2のコイル層L2と第3のコイル層L3との電気的な接続を実装する。
【0112】
第3のコイル層L3における第1の巻線1は、第4のコイル層L4における第1の巻線1に電気的に接続され(
図7の破線で示すように)、第3のコイル層L3における第2の巻線2は、第4のコイル層L4における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図7の破線で示すように)、第3のコイル層L3と第4のコイル層L4との間の電気的接続を実装する。
【0113】
図7では、2つの隣接するコイル層の間においても、第1の巻線の接続と第2の巻線の接続とが、
図4及び
図5に示す構造を介して電気的に接続されている。具体的な接続構造については、ここでは詳しく説明しない。
【0114】
図7に示す2線コモン・モード・フィルタでは、第1の巻線1及び第2の巻線2が両方ともスパイラルの半径方向に沿って囲むように配設されているため、第1の巻線1及び第2の巻線2が間隔を空けて配置されて、各コイル層において第1の巻線と第2の巻線とのコモン・モード磁界結合を強化し、コモン・モード・インダクタンスを向上し、コモン・モード抑制を向上する。
【0115】
追加的に、2つの隣接するコイル層の間で、第1の巻線と第2の巻線とを交差させて交換する。例えば、第1のコイル層L1において、第1の巻線1が内側にあり、第2の巻線1が外側にあり、第2のコイル層L2において、第1の巻線1が外側にあり、第2の巻線1が内側にあり、第3のコイル層L3において、第1の巻線1が内側にあり、第2の巻線1が外側にあり、第4のコイル層L4において、第1の巻線1が外側にあり、第2の巻線1が内側にある。これにより、信号のモード変換損失を大幅に低減することができ、基本的にレイテンシ差0を達成することができる。
【0116】
図7において、各コイル層に形成される楕円に近似したスパイラルの構造は一実施形態にすぎず、代替的には、矩形スパイラルや円形スパイラルなどであってもよいことに留意されたい。
【0117】
図8は、
図7の積層方向Pの直交面に投影された第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4の構造の図である。
図9は、
図8のA-A断面図である。
図9では、積層方向Pの直交方向Qには、各2つの隣接するコイル層間の第1の巻線1と第2の巻線2とが対向配設されている。
【0118】
図9では、2つの隣接するコイル層の間に大きな分布容量が存在する。分布容量を低減し、損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を増加させて、バランスをさらに向上させるために、この出願は、さらに2線コモン・モード・フィルタを提供する。
図10に示すように、2線コモン・モード・フィルタでは、積層方向Pの直交方向Qでは、第1の巻線1と第2の巻線2とが互い違いに配置されている。隣接するコイル層を互い違いに配設することにより、2層の間の寄生分布容量を大幅に低減することができ、コモン・モード・フィルタのコモン・モード抑制帯域幅やモード変換性能をさらに向上することができることにも理解されたい。
【0119】
図8を参照する。複数のコイル層が存在するときに、第1の巻線及び第2の巻線は、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有する。接続端6は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されている。上部コイル層と下部コイル層では巻き方が異なるため、
図7に示すように、第1のコイル層L1において、第1の巻線1及び第2の巻線2は、内側のターンから外側のターンにかけて時計回りに囲むように配設されている。第2のコイル層L2において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて時計回りに囲むように配設されている。このように、第1の巻線1に接続された接続端6と第2の巻線2に接続された接続端6とは逆方向に延びており、スパイラルの巻線ではない。第1の巻線と第2の巻線は、軸を中心に平行に囲むように配設されている。このように、2つの接続端6の間に高いインピーダンスが存在する。
図8を参照する。インピーダンスを低減し、無結合による急激なインピーダンス変化を緩和し、リターン損失を低減するためには、接続端を広げてもよく、すなわち接続端6の線幅がスパイラルの巻線の線幅よりも大きい。
【0120】
図11を参照する。2線コモン・モード・フィルタのバランスをさらに向上させるために、任意のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接する巻線は、それぞれ第1の巻線の第1のターン101及び第1の巻線の第2のターン102である。第1の巻線の第1のターン101と第1の巻線の第2のターン102との間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターン201である。第2の巻線の中間ターン201と第1の巻線の第1のターン101との間隔S1は、第2の巻線の中間ターン201と第1の巻線の第2のターン102との間隔S2よりも小さい。このように、第2の巻線の中間ターン201、及び第1の巻線の第1のターン101は、独立した結合構造T1を形成している。第2の巻線の中間ターン202、及び第1の巻線の第2のターン102は、別の独立した結合構造T2を形成している。結合構造T1と結合構造T2との間の磁気結合衝撃は小さく、それにより、モード変換性能とバランスがさらに向上する。
【0121】
図12は、基板9を有する2線コモン・モード・フィルタを示している。コモン・モード・フィルタは、基板9を含む。複数のコイル層は、基板9の同じ表面上に配設され、積層方向Pに沿って積層されている。このように、入口端子7及び出口端子8は、複数のコイル層の基板9から離れた表面上に配設されている。
【0122】
入口端子7は、第1の巻線1に電気的に接続された第1の入口端子と、第2の巻線に電気的に接続された第2の入口端子と、を含む。
【0123】
出口端子8は、第1の巻線1に電気的に接続された第1の出口端子と、第2の巻線に電気的に接続された第2の出口端子と、を含む。
【0124】
一般に、第1の入口端子及び第2の入口端子は、導電チャネルを介して上部に位置するコイル層に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。第1の出口端子及び第2の出口端子は、別の導電チャネルを介して底部に位置するコイル層に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。例えば、
図12に示すように、第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4が基板9に向かう方向に沿って順次積層されている。このように、第1の入口端子及び第2の入口端子は、導電チャネルを介して第1のコイル層L1に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続され、第1の出口端子及び第2の出口端子は、別の導電チャネルを介して第4コイル層L4に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続される。
【0125】
図12に示す構造では、基板9は、磁性材料で作製されていてもよいし、シリコン、ガラス、樹脂、セラミック、フェライトなどの非磁性材料で作製されていてもよい。
【0126】
図13(a)~
図13(d)は、
図12の構造における基板9が非磁性基板であるときの2線コモン・モード・フィルタの性能シミュレーションである。
【0127】
図13(a)は、コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21の曲線図である。この曲線から、2線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が-4dBよりも大きいときに、対応する帯域幅が20GHzに達することが分かる。
【0128】
図13(b)は、コモン・モード・フィルタのコモン・モード挿入損失Scc21の曲線図である。この曲線から、2線コモン・モード・フィルタのScc21が-15dBよりも小さいときに、対応するコモン・モード抑制帯域幅が1.5GHz~6GHzであり、合計5GHzよりも大きいことが分かる。
【0129】
図13(c)は、コモン・モード・フィルタのモード変換損失Scd21の曲線図である。この曲線から、2線コモン・モード・フィルタのScd21が8GHz以内で-40 dBよりも小さいことが分かる。これにより、5G干渉周波数帯のノイズを効果的に抑制し、信号伝送への影響を最小限に抑えることができる。
【0130】
図13dは、コモン・モード・フィルタのリターン損失Sdd11の曲線図である。この曲線から、リターン損失Sdd11が8GHz内で-20dBよりも小さいことが分かる。
【0131】
基板9がシリコン、ガラスなどの非磁性材料で作製されているときに、従来の半導体プロセスを使用して2線コモン・モード・フィルタが製造されてもよい。以下、半導体プロセスを使用した2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0132】
図14に示すように、コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0133】
図14の(a)及び(b)に示すように、非磁性材料から作製された基板9の表面上に誘電体層4を形成する。
【0134】
図14の(c)に示すように、誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。
【0135】
図14の(d)に示すように、パターン層が形成された基板上に第1の巻線及び第2の巻線を配設し、第1の巻線及び第2の巻線が同じ軸の周りに回転してスパイラルの第1のコイル層L1を形成する。第1のコイル層L1において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0136】
追加的に、第1のコイル層L1を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0137】
図14の(e)に示すように、第1のコイル層L1の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0138】
図14の(b)、(c)、及び(d)の方法により、
図14の(f)に示すように、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4を順次形成する。
【0139】
第2のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0140】
第3のコイル層L3において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0141】
第4のコイル層L4において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0142】
第2のコイル層L2を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0143】
第1のコイル層L3を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0144】
第4のコイル層L4を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0145】
図14の(g)に示すように、入口端子7及び出口端子8を形成する。入口端子7は、第4コイル層L4における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続され、出口端子8は、第1のコイル層L1における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。
【0146】
半導体プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造するときに、巻線の線幅をより柔軟に設計し、インピーダンス制御を容易に実装し、誘電材料損失が低く、2線コモン・モード・フィルタが高い適用帯域幅を有することができる。
【0147】
図15は、基板を有する別の2線コモン・モード・フィルタを示している。コモン・モード・フィルタは、第1の基板91と第2の基板92とを含む。第1の基板91と第2の基板92とは対向して配設され、第1の基板91と第2の基板92との間には、積層方向Pに沿って複数のコイル層が積層されている。コモン・モード・フィルタの両側には、入口端子7と出口端子8が位置する。追加的に、入口端子7は、第4コイル層L4における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続され、出口端子8は、第1のコイル層L1における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。
【0148】
図15に示す2線コモン・モード・フィルタでは、第1の基板91及び第2の基板92は、各々、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92の1つは、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92は、各々磁性材料から作製される。
【0149】
図15に示すように、第1の基板91及び第2の基板92が各々非磁性材料から作製されるとき、又は
図14で製造される2線コモン・モード・フィルタにおける基板9も非磁性材料から作製され、かつコモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が3dBであるときに、対応する帯域幅は、20GHzに達する。したがって、コモン・モード・フィルタの高周波性能が優れていることから、超高速適用シナリオ、例えば、2線差動インターフェース規格を使用し、伝送速度が16 Gbps以上であるすべての5G超高速シナリオに好適なコモン・モード・フィルタとなっている。具体的な製品としては、カメラ(Camera)、携帯電話の液晶ディスプレイ(LCD)、PAD LCD、PC LCD、及び高精細マルチメディア・インターフェース(HDMI)を含む。
【0150】
いくつかの低周波適用シナリオに適合するために、
図15の第1の基板91及び第2の基板92のうちの少なくとも1つは、磁性材料から作製されてもよい。これにより、バランスを変更することなく巻線間の磁界結合を強化し、コモン・モード・インダクタンスが向上し、コモン・モード抑制周波数を低減することができる。
【0151】
図15の構造における2つの基板のうちの少なくとも1つが磁性基板であるときに、
図16(a)~
図16(d)は、2線コモン・モード・フィルタの性能シミュレーションである。
【0152】
図16(a)に示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術における差動モード挿入損失Sdd21の曲線である。2つの曲線から、2線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が明らかに低減されていることが分かる。
【0153】
図16(a)に示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのコモン・モード挿入損失Scc21の曲線であり、破線は、従来技術におけるコモン・モード挿入損失Scc21の曲線である。2つの曲線から、Scc21の中心周波数は、約2GHzに移動しており、Scc21が-15 dBよりも小さいときに、対応するコモン・モード抑制帯域幅は900MHz~5GHzをカバーしてもよい。このため、コモン・モード・フィルタの性能は、5G通信周波数帯及びグローバル・システム・フォー・モバイル通信(Global System for Mobile Communications、GSM)規格に適合し、伝送速度10Gbps未満の5G高速高周波シナリオを満足する。
【0154】
図16cに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのモード変換損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術におけるモード変換損失Scd21の曲線である。2つの曲線から、コモン・モード・フィルタのモード変換損失が従来技術より明らかに好ましいことが分かる。
【0155】
図16dに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのリターン損失Sdd11の曲線であり、破線は、従来技術におけるリターン損失Sdd11の曲線である。コモン・モード・フィルタのリターン損失は、従来技術のリターン損失よりも好ましい。
【0156】
図15に示す構造は、磁気デバイス薄膜プロセスを使用して製造されてもよい。以下、磁気デバイス薄膜プロセスを使用して2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0157】
図17に示すように、コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0158】
図17(a)及び(b)に示すように、支持板10の表面上に誘電体層4を形成する。
【0159】
図17(c)に示すように、誘電体層4上に第1の巻線及び第2の巻線をセットし、その結果、第1の巻線及び第2の巻線が誘電体層4上に配設され、第1の巻線及び第2の巻線が同じ軸の周りに回転するスパイラルの第1のコイル層L1を形成する。第1のコイル層L1において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0160】
追加的に、第1のコイル層L1を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0161】
図17の(d)に示すように、第1のコイル層L1の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0162】
図17の(b)、(c)、及び(d)の方法により、
図17の(e)に示すように、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4を順次形成する。
【0163】
第2のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0164】
第3のコイル層L3において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0165】
第4のコイル層L4において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0166】
第2のコイル層L2を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0167】
第1のコイル層L3を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0168】
第4のコイル層L4を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0169】
図17の(f)に示すように、支持板10を除去する。
【0170】
図17の(g)に示すように、第1の基板91と第2の基板92とを配設し、その結果第1の基板91と第2の基板92との間に4層のコイル層をロードする。
【0171】
図17の(h)に示すように、第1の基板91、第2の基板92及び4つのコイル層を含む側面に、入口端子7及び出口端子8をそれぞれ配設する。
【0172】
追加的に、
図17に従って2線コモン・モード・フィルタを製造するときに、複数のコイル層を形成した後、入口端子及び出口端子を配設する前に、本方法は、コモン・モード・フィルタを積層方向と平行な方向に沿って切断することと、次いで、入口端子及び出口端子を配設することと、をさらに含む。
【0173】
以上、4つのコイル層を有する2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法が提供される。より多くのコイル層が存在する場合、前述の方法に従って類推によって2線コモン・モード・フィルタを製造してもよく、詳細は、ここでは再度説明しない。
【0174】
以下、3線コモン・モード・フィルタの構成について詳細に説明する。
【0175】
図18は、3線コモン・モード・フィルタの断面図であり、
図19は、
図18の各コイル層の配線構造を示している。コモン・モード・フィルタは、2線コイル層と、単線コイル層と、を含む。
【0176】
図18に示すように、この出願で提供される3線コモン・モード・フィルタにおける2線コイル層は、2つの層、すなわち、第1の2線コイル層L21と、第2の2線コイル層L22と、を含む。単線コイル層は、2つの層、すなわち、第1の単線コイル層L31と、第2の単線コイル層L32と、を含む。
【0177】
このように、2線コイル層は第1の巻線と、第2の巻線と、を含むため、形成される3線コモン・モード・フィルタは、4つのコイル層を有する。従来の6つのコイル層と比較して配線層の数が低減され、それにより、3線コモン・モード・フィルタ全体の積層方向の厚さを低減し、3線コモン・モード・フィルタの小型化を実装する。
【0178】
確かに、いくつかの実装では、2つより多くの2線コイル層が存在してもよいし、2つより多くの単線コイル層が存在してもよい。
【0179】
図19を参照する。第1の巻線1の一部と第2の巻線2の一部は、第1のコイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線1の他の部分及び第2の巻線2の他の部分は、別の2線コイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第3の巻線3の一部は、単線コイル層に形成され、第3の巻線の他の部分は、別の他の単線コイル層に形成されている。
【0180】
第1の2線コイル層L21における第1の巻線1は、第2の2線コイル層L22における第1の巻線1に電気的に接続され(
図19の破線で示すように)、第1の2線コイル層L21における第2の巻線2は、第2の2線コイル層L22における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図19の破線で示すように)、第1の2線コイル層L21と第2の2線コイル層L22の電気的接続を実装する。
【0181】
第1の単線コイル層L31における第3の巻線3は、第2の単線コイル層L32における第3の巻線3に電気的に接続され(
図19の破線で示すように)、第1の単線コイル層L31と第2の単線コイル層L32との間の電気的接続を実装する。
【0182】
さらに、
図19に示すように、第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22において、第1の巻線1の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線2の1つのターンが存在する。
【0183】
図20は、
図18の各コイル層の別の配線構造を示す。
図20と
図19の違いは、
図19の第1の2線コイル層L21において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2の2線コイル層L22において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
図20に示す第1の2線コイル層L21において、第1の巻線及び前記第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2の2線コイル層L22において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、依然として第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0184】
図20に示す構造と比較して
図19に示す構造では、第1の2線コイル層L21におけるターンの数と第2の2線コイル層L22におけるターンの数とが同じであるときに、2つの2線コイル層における第1の巻線1の長さの和は、第2の巻線2の長さの和と基本的に等しくなる。第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22を通して差動信号が伝送された後、信号伝送のレイテンシ差が解消され、差動モード信号からコモン・モード信号への変換が生じず、それにより、Scd21を低減し、コモン・モード・フィルタのバランスを向上させる。
【0185】
第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22を
図19に示すようにルーティングするときに、
図4及び
図5に示す接続構造は、第1の巻線と第2の巻線とを接続するように構成されてもよい。具体的には、第1の2線コイル層L21における第2の巻線2の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交平面において、第2の2線コイル層L22における第1の巻線1の導電チャネルに近い部分と交差している。
【0186】
第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22を
図20に示すようにルーティングするときに、2つの2線コイル層の間で第1の巻線と第2の巻線が交換されないため、
図4及び
図5に示す層間クロス構造は、巻線と電気的に接続される必要がない。
図21に示す接続構造は、使用されてもよい。具体的には、第1の2線コイル層L21における第2の巻線2の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交平面において、第2の2線コイル層L22における第1の巻線1の導電チャネルに近い部分と交差しない。
【0187】
図19及び
図20において、各コイル層に形成される矩形に近似したスパイラルの構造は一実施形態にすぎず、代替的には、矩形スパイラルや円形スパイラルなどであってもよいことに留意されたい。
【0188】
図19及び
図20を参照する。第1の巻線及び第2の巻線は各々、スパイラルの外側に延びる接続端6を有し、第3の巻線もスパイラルの外側に延びる接続端6を有する。接続端6は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されている。
図19を参照すると、第1の2線コイル層L21と第2の2線コイル層L2とにおいて、接続端6が互いから離間されている。スパイラルの巻線の違いは、第1の巻線と第2の巻線が軸を中心に平行に囲むように配設されていることである。このように、2つの接続端の間に高いインピーダンスが存在する。
図19を参照する。インピーダンスを低減し、無結合による急激なインピーダンス変化を緩和し、リターン損失を低減するためには、接続端を広げてもよく、すなわち接続端6の線幅がスパイラルの巻線の線幅よりも大きい。同様に、第1の単線コイル層L31及び第2の単線コイル層L32における接続端の幅もよりも大きくてもよい。
【0189】
2つの2線コイル層及び2つの単線コイル層は、複数の積層方式を有する。
【0190】
図22は、積層方式を示す。第1の単線コイル層L31、第1の2線コイル層L21、第2の2線コイル層L22、及び第2の単線コイル層L32が順次積層されている。
【0191】
図23は、別の積層方式を示す。第1の単線コイル層L31、第1の2線コイル層L21、第2の単線コイル層L32、及び第2の2線コイル層L22が順次積層されている。
【0192】
図24は、別の積層方式を示す。第1の2線コイル層L21、第1の単線コイル層L31、第2の単線コイル層L32、及び第2の2線コイル層L22が順次積層されている。
【0193】
図25は、別の積層方式を示す。第1の2線コイル層L21、第1の単線コイル層L31、第2の2線コイル層L22、及び第2の単線コイル層L32が順次積層されている。
【0194】
図22~
図25に示すように、互いに隣接する隣接する2線コイル層と単線コイル層との間で、積層方向の直交方向において、第3の巻線3、第1の巻線1、及び第2の巻線2が、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造11を形成しており、第1の巻線1の任意のターン又は第2の巻線2の任意のターンも独立した三角形結合構造11に属する。
【0195】
第1の巻線の任意のターン又は第2の巻線の任意のターンも独立した三角形結合構造11に属することに留意されたい。例えば、
図25に示すように、第1の巻線の第1のターン101は、第2の三角形結合構造112のみに属する。
【0196】
図26は、従来技術における3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
図26から分かるように、第1の巻線の第1のターン101は、第1の三角形結合構造111及び第2の三角形結合構造112に属する。
【0197】
図26に示す従来の3線コモン・モード・フィルタと比較して、
図25のこの出願のこの実施形態で提供される3線コモン・モード・フィルタでは、互いに独立した複数の三角形結合構造が形成されている。このように、3線のインピーダンスと結合インダクタンスを基本的に整合させ、別の三角形結合構造の3線の影響を受けないようにすることができ、信号のモード変換損失を低減し、バランスを向上することを保証し得る。また、4層配線構造の3線コモン・モード・フィルタは、寄生容量がより小さく、抑制帯域幅がより大きいことを有する。
【0198】
図27は、この出願による、三角形結合構造を示す。具体的な実装では、第3の巻線3と第1の巻線1との間の間隔1a、第3の巻線3と第2の巻線2との間の間隔1b、及び第2の巻線2と第1の巻線1との間の間隔1cは、3つの巻線が等しいインピーダンス及び等しい結合を実装する限り、必ずしも正三角形を形成しない。
【0199】
図22及び
図24に示すように、第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22は、中間面Mに対して対称に配設されており、第1の単線コイル層L31及び第2の単線コイル層L32も中間面Mに対して対称に配設されている。
【0200】
図23及び
図25に示すように、第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22は、中間面Mに対して非対称に配設されており、第1の単線コイル層L31及び第2の単線コイル層L32も中間面Mに対して非対称に配設されている。
【0201】
第1の2線コイル層L21、第1の単線コイル層L31、第2の2線コイル層L22、及び第2の単線コイル層L32を、
図22及び
図24に示す中間面Mに対して対称に配設することにより、バランスをさらに向上させることができる。
【0202】
ここでの中間面Mは、
図22に示すように、積層方向Pに直交する面であり、中間面Mとコモン・モード・フィルタの第1の面との距離X1は、中間面Mとコモン・モード・フィルタの第2の面との距離X2に等しいか又はそれに近いことに留意されたい。
【0203】
一般に、
図28に示すように、第1の導電チャネル51、第2の導電チャネル52及び第3の導電チャネル53は、誘電体層4を通過する。
【0204】
第1の2線コイル層L21における第1の巻線は、導電チャネル51を介して第2の2線コイル層における第1の巻線に電気的に接続される。
【0205】
第1の2線コイル層L21における第2の巻線は、導電チャネル52を介して第2のコイル層における第2の巻線に電気的に接続される。
【0206】
第1の単線コイル層L31における第3の巻線は、第3の導電チャネル53を介して第2の単線コイル層L32の第3の巻線と電気的に接続される。
【0207】
図28を参照する。さらにバランスを向上するために、積層方向Pの直交方向Qにおいて、第1の導電チャネル51、第2の導電チャネル52及び第3の導電チャネル53は、同じ直線上に位置しないが、
図28に示すように、第1の導電チャネル51、第2の導電チャネル52及び第3の導電チャネル53は、互い違いに配置され、三角形結合構造11を形成している。
【0208】
3線コモン・モード・フィルタのバランスをさらに向上させるために、2つの隣接する三角形結合構造が、積層方向と交差する方向に互いに分離され離間される。
図28を参照すると、任意の2線コイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンは、それぞれ、第1の巻線の第1のターン101と第1の巻線の第2のターン102である。第1の巻線の第1のターン101と第1の巻線の第2のターン102との間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターン2である。第2の巻線の中間ターン2と第1の巻線の第1のターン101との間隔S1は、第2の巻線の中間ターン2と第1の巻線の第2のターン102との間隔S2よりも小さい。第3の巻線3、第2の巻線の中間ターン2、及び第1の巻線の第1のターン101は、独立した三角形結合構造を形成している。このように、第1の三角形結合構造111と第2の三角形結合構造112とを積層方向の直交方向(水平方向とも呼ばれる)に離間させ、それにより特性インピーダンス変動及び分布容量を低減し、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11、バランス性能Scd21を向上させる。S2及びS1の設計では、バランス性能要件とコモン・モード・フィルタ全体の長さ(
図28のQ方向に沿ったサイズ)要件の両方をS2の設計とS1の設計で考慮する必要がある。
【0209】
図28を参照する。追加的に、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造の間隔は、d1であり、各三角形結合構造において、互いに隣接する2線コイル層と単線コイル層との間隔は、d2であり、d2は、d1よりも大きい。このように、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造が互いに離間され分離され、特性インピーダンス変動及び分布容量が低減され、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11及びバランス性能Scd21が向上する。しかしながら、2つの隣接する三角形結合構造を互いに分離して離間させることは、共通モードインダクタンスを低減し、低周波干渉抑制能力を弱める。したがって、d1及びd2の設計では、d1の設計及びd2の設計において、コモン・モード・フィルタ全体に対するバランス性能要件及び高さ要件の両方を考慮する必要がある。
【0210】
例えば、
図25に示すように、本明細書における2つの隣接する三角形結合構造の間隔d1とは、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間で、第1の単線コイル層L31が第2の2線コイル層L22に隣接しているので、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間隔d1は、第1の単線コイル層L31と第2の2線コイル層L22との間隔であると留意されたい。別の例では、
図28に示すように、第1の2線コイル層L21は、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間で第2の2線コイル層L22に隣接しているため、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間隔d1は、第1の2線コイル層L21と第2の2線コイル層L22との間隔である。
【0211】
図29及び
図30は、基板を有する3線コモン・モード・フィルタを示す。3線コモン・モード・フィルタは、第1の基板91と、第2の基板92と、を含む。第1の基板91と第2の基板92とは対向して配設され、第1の基板91と第2の基板92との間には、積層方向Pに沿って複数のコイル層が積層されている。コモン・モード・フィルタの両側には、入口端子7と出口端子8が位置する。
【0212】
入口端子7は、第1の入口端子71と、第2の入口端子72と、第3の入口端子73と、を含む。第1の入口端子71は、第1の2線コイル層において第1の巻線に電気的に接続され、第2の入口端子72は、第1の2線コイル層において第2の巻線に電気的に接続され、第3の入口端子73は、第1の単線コイル層において第3の巻線に電気的に接続される。
【0213】
出口端子8は、第1の出口端子81と、第2の出口端子82と、第3の出口端子83と、を含む。第1の出口端子81は、第2の2線コイル層において第1の巻線に電気的に接続され、第2の出口端子82は、第2の2線コイル層において第2の巻線に電気的に接続され、第3の出口端子83は、第2の単線コイル層において第3の巻線に電気的に接続されている。
【0214】
図28及び
図29に示す3線コモン・モード・フィルタでは、第1の基板91及び第2の基板92は、各々、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92の1つは、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92は、各々磁性材料から作製される。
【0215】
第1の基板91及び第2の基板92のうちの少なくとも1つが磁性材料であるときに、巻線間のコモン・モード磁界結合が強化され、コモン・モード・インダクタンスが向上し、コモン・モード抑制周波数は主に約3.3GHzであり、5G RF干渉の主周波数帯域に適合し、現在の5G携帯電話におけるカメラC-PHY高速インターフェースの適用シナリオに好適である。
【0216】
図29及び
図30の構造における2つの基板のうちの少なくとも1つが磁性基板であるときに、
図31a~
図31dは、2線コモン・モード・フィルタの性能シミュレーションである。
【0217】
図16(a)に示すように、黒の実線は、3線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術における差動モード挿入損失Sdd21の曲線である。2つの曲線から、3線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が明らかに低減されていることが分かる。
【0218】
図16(a)に示すように、黒の実線は、3線コモン・モード・フィルタのコモン・モード挿入損失Scc21の曲線であり、破線は、従来技術におけるコモン・モード挿入損失Scc21の曲線であるこの2つの曲線から、3線コモン・モード・フィルタは寄生容量が小さく、抑制帯域幅が大きいことが分かる。
【0219】
図31cに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのモード変換損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術におけるモード変換損失Scd21の曲線である。この2つの曲線から、3線コモン・モード・フィルタが信号のモード変換損失を低減していることが分かる。
【0220】
図31dに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのリターン損失Sdd11の曲線であり、破線は、従来技術におけるリターン損失Sdd11の曲線である。3線コモン・モード・フィルタの挿入損失差がより小さく、3線のインピーダンス整合性が高い。
【0221】
図29及び
図30に示す構造は、磁気デバイス薄膜プロセスを使用して製造されてもよい。以下、磁気デバイス薄膜プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0222】
図32に示すように、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0223】
図32の(a)及び(b)に示すように、支持板10の表面上に誘電体層4を形成する。
【0224】
図32の(c)に示すように、誘電体層4において第3の巻線を配設し、第3の巻線が軸の周りに回転して、スパイラルの第1の単線コイル層L31を形成する。
【0225】
第1の単線コイル層L31を形成するときに、第3の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0226】
図32の(d)に示すように、第1の単線コイル層L31の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0227】
図32の(b)、(c)、及び(d)の方法により、
図32の(e)に示すように、第1の2線コイル層L21、第2の2線コイル層L22、第2の単線コイル層L32を順次形成する。
【0228】
第1の2線コイル層L21において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0229】
第2の2線コイル層L22において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0230】
第1の2線コイル層L21を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0231】
第2の2線コイル層L22を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0232】
第2の単線コイル層L32を形成するときに、第3の巻線を、内側から外側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0233】
図32の(f)に示すように、支持板10を除去する。
【0234】
図32の(g)に示すように、第1の基板91と第2の基板92とを配設し、その結果第1の基板91と第2の基板92との間に4層のコイル層をロードする。
【0235】
図32の(h)に示すように、入口端子7及び出口端子8を配設する。
【0236】
図33及び
図34は、基板を有する別の3線コモン・モード・フィルタを示す。3線コモン・モード・フィルタは、基板9を有する。基板9は、互いに対向する第1の表面及び第2の表面を有する。第1の表面に、第1の2線コイル層21及び第1の単線コイル層31が配設され、第2の表面に、第2の2線コイル層22及び第2の単線コイル層32が配置されている。このように、基板9を使用して積層方向に一致した三角形結合構造を互いに離間させて分離することができる。
【0237】
図33及び
図34の構造では、導電チャネルが基板9を通過して、第1の2線コイル層21と第2の2線コイル層22との間の電気的接続を実装し、さらに第1の単線コイル層31と第2の単線コイル層32との間の電気的接続を実装する。
【0238】
図33及び
図34の基板は、磁性材料で作製されてもよいし、非磁性材料、例えば、フェライト、樹脂、セラミック、シリコン、ガラスなどであってもよい。基板がシリコンから作製されるときに、基板に形成される導電チャネルは、スルー・シリコン・ビア(Through Silicon Via、TSV)である。基板がガラスから作製されるときに、基板に形成される導電チャネルは、スルー・ガラス・ビア(Through Glass Via、TGV)である。
【0239】
図33及び
図34の3線コモン・モード・フィルタの基板が磁性材料から作製されないときに、高さが低下せず、それにより、上部コイル層と下部コイル層との分離距離がさらに大きくなる。したがって、3線コモン・モード・フィルタは優れた高周波性能を有し、コモン・モード抑制共振周波数は8GHz以上であり、その結果、将来のミリ波帯通信やC-PHY超高速レートの適用シナリオにより好適である。
【0240】
図33及び
図34の構造における基板9が非磁性基板であるときに、3線コモン・モード・フィルタは、従来の半導体プロセスを使用して製造されてもよい。以下、半導体プロセスを使用した3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0241】
図35に示すように、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0242】
図35の(a)に示すように、非磁性材料から作製された基板9には、第1の表面A1から第2の表面A2まで通過する導電チャネル5が形成されている。
【0243】
図35の(b)に示すように、第1の表面A1上に誘電体層4を形成する。
【0244】
図35の(c)に示すように、誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。
【0245】
図35の(d)に示すように、パターン層が形成された基板上に第3の巻線を配設し、第3の巻線が軸の周りに回転してスパイラルの第1の単線コイル層L31を形成する。
【0246】
第1の単線コイル層L31を形成するときに、第3の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0247】
図35の(e)に示すように、第1の単線コイル層L31の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0248】
図35の(b)、(c)、及び(d)により、
図35の(f)に示すように、第1の2線コイル層L21が形成される。
【0249】
第1の2線コイル層L21において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0250】
第1の2線コイル層L21を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0251】
図35の(g)に示すように、第1の2線コイル層L21及び第1の単線コイル層L31が形成された基板9を、基板の第2の面A2が上側となるように反転で配設する。
【0252】
図35の(h)に示すように、第1の表面A2上に誘電体層4を形成する。
【0253】
図35の(i)に示すように、誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。
【0254】
図35の(j)に示すように、パターン層が形成された基板上に第1の巻線及び第2の巻線を配設し、第1の巻線及び第2の巻線が同じ軸の周りに回転してスパイラルの第2の2線コイル層L22を形成する。
【0255】
第2の2線コイル層L22において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0256】
第2の2線コイル層L22を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0257】
図35の(k)に示すように、第2の2線コイル層L22の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。パターン層において第3の巻線を配設し、第2の単線コイル層L32が形成する。
【0258】
第2の単線コイル層L32を形成するときに、第3の巻線を、内側から外側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0259】
図35の(l)に示すように、入口端子7及び出口端子8を配設する。
【0260】
この明細書の説明において、説明された特定の特徴、構造、材料、または特性は、実施形態または例のいずれか1つ以上において適切に組み合わせられてもよい。
【0261】
前述の説明は、この出願の単に具体的な実装に過ぎないが、この出願の保護範囲を制限することを意図したものではない。この出願に開示された技術的範囲内で、当業者によって容易に理解することができる変更又は代替は、この出願の保護範囲に含まれるものとする。したがって、この出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモン・モード・フィルタであって
第1の巻線と、
第2の巻線と、
前記第1の巻線の一部及び前記第2の巻線の一部は、第1のコイル層において、同じの軸の周りに回転することによって形成されており、前記第1の巻線の他の部分及び前記第2の巻線の他の部分は、前記第1のコイル層と積層された第2のコイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されており、前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層において、前記第1の巻線の各2つの隣接するターン間に前記第2の巻線の1つのターンが存在し、
前記第1のコイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記外側のターンに位置し、
前記第2のコイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記内側のターンに位置し、
前記第2のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向は、前記第1のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向と同じである、コモン・モード・フィルタ。
【請求項2】
前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層の積層方向と直交する方向に互い違いに配置されている、請求項1に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項3】
前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層のいずれかにおいて、前記第1の巻線の各2つの隣接するターンが、それぞれ前記第1の巻線の第1のターン及び前記第1の巻線の第2のターンであり、前記第1の巻線の前記第1のターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間に位置する前記第2の巻線のターンが、前記第2の巻線の中間ターンであり、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第1のターンとの間隔が、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間隔よりも小さい、請求項1又は2に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項4】
前記第1のコイル層及び前記第2のコイル層は、誘電体層内に配設され、前記誘電体層によって間隔を空けて配置され、前記積層方向に沿った導電チャネルが前記誘電体層を通過し、前記第1のコイル層における前記第1の巻線は、前記導電チャネルを介して前記第2のコイル層における前記第1の巻線に電気的に接続され、前記第1のコイル層における前記第2の巻線は、前記導電チャネルを介して前記第2のコイル層における前記第2の巻線に電気的に接続され、
前記第1のコイル層における前記第2の巻線の前記導電チャネルに近い部分は、前記積層方向の直交方向において、前記第2のコイル層における前記第1の巻線の前記導電チャネルに近い部分と交差している、請求項1~3のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項5】
前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有し、前記接続端は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されており、前記接続端の線幅は、前記スパイラルの巻線の線幅よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項6】
前記コモン・モード・フィルタは、さらに、
基板であって、前記第2のコイル層は、前記基板の表面に配設され、前記第1のコイル層は、前記第2のコイル層に位置する、基板と、
両方とも、前記第1のコイル層の前記第2のコイル層から離れた側に配設された前記入口端子及び前記出口端子と、を含む、請求項
5に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項7】
コモン・モード・フィルタであって
第1の巻線と、
第2の巻線であって、前記第1の巻線の一部及び前記第2の巻線の一部は、2線コイル層において、同じの軸の周りに回転することによって形成されており、前記第1の巻線の他の部分及び前記第2の巻線の他の部分は、別の2線コイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されており、前記2線コイル層のうちのいずれか1つにおいて、前記第1の巻線の各2つの隣接するターン間に前記第2の巻線の1つのターンが存在する、第2の巻線と、
第3の巻線であって、前記第3の巻線の一部は、単線コイル層に形成され、前記第3の巻線の他の部分は、別の他の単線コイル層に形成された、第3の巻線と、
前記単線コイル層と、前記単線コイル層に隣接する2線コイル層との間で、積層方向の直交方向において、前記第3の巻線、前記第1の巻線、及び前記第2の巻線は、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造を形成しており、前記第1の巻線の任意のターン又は前記第2の巻線の任意のターンも独立した三角形結合構造に属する、コモン・モード・フィルタ。
【請求項8】
前記2線コイル層のいずれかにおいて、前記第1の巻線の各2つの隣接するターンは、それぞれ前記第1の巻線の第1のターン及び前記第1の巻線の第2のターンであり、前記第1の巻線の前記第1のターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間に位置する前記第2の巻線のターンは、前記第2の巻線の中間ターンであり、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第1のターンとの間隔は、S1であり、前記第2の巻線の前記中間ターンと前記第1の巻線の前記第2のターンとの間隔は、S2であり、S1は、S2よりも小さく、
前記第3の巻線、前記第2の巻線の前記中間ターン、及び前記第1の巻線の第1のターンは、独立した三角形結合構造を形成している、請求項7に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項9】
前記積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造の間隔は、d1であり、各三角形結合構造において、互いに隣接する前記2線コイル層と前記単線コイル層との間隔は、d2であり、d2は、d1よりも大きい、請求項7又は8に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項10】
前記2線コイル層及び前記単線コイル層は、誘電体層内に配設され、前記誘電体層によって間隔を空けて配置され、前記積層方向に一致する第1の導電チャネル、第2の導電チャネル及び第3の導電チャネルは、前記誘電体層を通過し、2つの隣接する2線コイル層における第1の巻線は、前記第1の導電チャネルを介して電気的に接続され、前記2つの隣接する2線コイル層における第2の巻線は、前記第2の導電チャネルを介して電気的に接続され、前記2つの隣接する2線コイル層における第3の巻線は、前記第3の導電チャネルを介して電気的に接続されており、
前記積層方向の前記直交方向において、前記第1の導電チャネル、前記第2の導電チャネル及び前記第3の導電チャネルは、互い違いに配置され、三角形結合構造を形成している、請求項7~9のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項11】
前記2つの隣接する2線コイル層の一方は、第1の2線コイル層であり、他方は、第2の2線コイル層であり、
前記第1の
2線コイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記外側のターンに位置し、
前記第2の
2線コイル層において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設されており、前記第2の巻線は、前記第1の巻線に対して前記内側のターンに位置し、前記第2のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向は、前記第1のコイル層における前記第1の巻線及び前記第2の巻線の囲み方向と同じである、請求項
10に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項12】
前記第1の2線コイル層における前記第2の巻線の前記第2の導電チャネルに近い部分は、前記積層方向の直交方向において、前記第2の2線コイル層における前記第1の巻線の前記第1の導電チャネルに近い部分と交差している、請求項11に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項13】
第1の単線コイル層と第2の単線コイル層の2つの単線コイル層が存在し、前記第1の2線コイル層と前記第2の2線コイル層の2つの2線コイル層が存在する、請求項7~12のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項14】
前記コモン・モード・フィルタは、
基板であって、前記基板は、互いに対向する第1の表面及び第2の表面を有し、前記基板は、前記第1の表面から前記第2の表面まで通過する導電チャネルを有する、基板と、
前記第1の表面に、前記第1の単線コイル層及び前記第1の2線コイル層が配設され、前記第2の表面に、前記第2の単線コイル層及び前記第2の2線コイル層が配設され、
前記基板から離れた前記第1の単線コイル層及び前記第1の2線コイル層の表面にそれぞれ配設された入口端子及び出口端子と、をさらに含む、請求項13に記載のコモン・モード・フィルタ。
【請求項15】
端末デバイスであって、
プリント回路基板と、
請求項1~14のいずれか一項に記載のコモン・モード・フィルタと、を含み、
前記コモン・モード・フィルタは、前記プリント回路基板に電気的に接続されている、端末デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、フィルタ技術の分野に関係し、特に、コモン・モード・フィルタ及び端末デバイスに関係する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信端末デバイスでは、プロセッサとマルチメディア・デバイス(ディスプレイ、カメラなど)を接続するためのデータ伝送規格として、モバイル・デバイス産業用プロセッサ・インターフェース(MIPI)のためのD-PHY及びC-PHYプロトコルが業界で広く使用されている。
【0003】
ディスプレイ及びカメラに伝送される高速信号への干渉を抑制するために、これらの端末デバイスは、コモン・モード・フィルタ(CMF)をさらに含む。第5世代のモバイル通信技術(5G)の発展に伴い、より広い周波数帯域を有するアンテナが導入されている。5G高周波高速適用シナリオでは、高速信号のパワースペクトルとアンテナ周波数帯との重なりが広くなる。ノイズ周波数が増加するにつれて、コモン・モード・フィルタのモード変換は増大するインパクトを引き起こす。より一般的なモード・ノイズは、差動モード・ノイズに変換され、差動信号に重畳される。これは、高速信号の伝送品質を大きく劣化させる。例えば、コモン・モード・フィルタのモード変換は、ディスプレイ、カメラなどの構造物に結合されたアンテナの高速インターフェース上の電流を、モード変換を介して高速信号上に重畳する。結果として、大量のビットエラーが発生する。これにより、カメラ、ディスプレイなどのモジュールに、表示の乱れや縞などの干渉が生じることがある。
【0004】
追加的に、従来のコモン・モード・フィルタは、抑制帯域幅(抑制中心周波数とも呼ばれる)が低いため、5Gの高周波帯域におけるコモン・モード・ノイズに対する抑制効果は乏しく、5Gの周波数帯域における端末デバイス内の各インターフェース回路に対する反干渉効果は顕著ではない。
【0005】
追加的に、伝送速度が上昇すると、従来のコモン・モード・フィルタにより生じる高周波信号上の挿入損失が大きくなる。これはリンク帯域幅の向上を大きく制限し、高速信号品質に影響を与える。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、モード変換損失を低減し、高周波挿入損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を拡大することができるコモン・モード・フィルタを主に提供するコモン・モード・フィルタ及び端末デバイスを提供する。
【0007】
この出願では、以下の技術的解決策を使用する。
【0008】
第1の態様によれば、この出願はコモン・モード・フィルタを提供する。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線と第2の巻線と、を含む。第1の巻線の一部及び第2の巻線の一部は、第1のコイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線の他の部分及び第2の巻線の他の部分は、第1のコイル層と積層された第2のコイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1のコイル層及び第2のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンの巻線を囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。
【0009】
この出願で提供されるコモン・モード・フィルタによれば、各コイル層における第1の巻線及び第2の巻線は同じ軸の周りに回転し、第1の巻線の2つの隣接するターンは、第2の巻線の1ターン分間隔を空けて配置される。このように、いずれのコイル層においても、第1の巻線及び第2の巻線がスパイラルの半径方向に沿って間隔を空けるように配置されていることにより、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード結合インダクタンスを強化し、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード磁気結合のバランスが良くなる。
【0010】
追加的に、第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置している。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。このように、全てのコイル層における第1の巻線の長さの合計は、全てのコイル層における第2の巻線の長さの合計と基本的に等しい。これにより、第1の巻線及び第2の巻線における信号伝送のレイテンシ差を解消し、差動モード信号とコモン・モード信号との変換を低減し、それにより、コモン・モード・フィルタのモード変換損失を低減し、高周波挿入損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を広げる。
【0011】
第1の態様の可能な実装では、第1の巻線及び第2の巻線は、第1のコイル層及び第2のコイル層の積層方向と直交する方向に互い違いに配置されている。第1の巻線と第2の巻線を積層方向と直交する方向に互い違いに配置されているときに、2つの隣接するコイル層間の寄生分布容量を低減することができ、それにより、コモン・モード・フィルタの抑制帯域幅をさらに向上し、モード変換損失を低減することができる。
【0012】
第1の態様の可能な実装では、第1のコイル層及び第2のコイル層のいずれか1つにおいて、第1の巻線の各2つの隣接する巻線は、それぞれ第1の巻線の第1のターン及び第1の巻線の第2のターンである。第1の巻線の第1のターンと第1の巻線の第2のターンとの間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターンである。第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第1のターンとの間隔は、第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第2のターンとの間隔よりも小さい。このように、第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第1のターンとの磁気結合量が第1の巻線の第2のターンによって大きく妨害されることがなく、コモン・モード・フィルタのバランスが向上する。
【0013】
第1の態様の可能な実装では、第1のコイル層及び第2のコイル層は、誘電体層内に配設され、誘電体層によって間隔を空けて配置される。積層方向と一致する導電チャネルが、誘電体層を通過する。第1のコイル層における第1の巻線は、導電チャネルを介して第2のコイル層における第1の巻線に電気的に接続される。第1のコイル層における第2の巻線は、導電チャネルを介して第2のコイル層における第2の巻線に電気的に接続される。第1のコイル層における第2の巻線の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交方向において、第2のコイル層における第1の巻線の導電チャネルに近い部分と交差している。第1の巻線と第2の巻線を接続するこのような構造では、全てのコイル層における第1の巻線の長さの和と全てのコイル層における第2の巻線の長さの和とが基本的に等しいことを前提として、導電チャネルが積層方向に沿って通過することができ、処理や製造が容易になる。
【0014】
第1の態様の可能な実装では、第1の巻線及び第2の巻線は、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有する。接続端は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されており、接続端の線幅は、スパイラルの巻線の線幅よりも大きい。接続端の線幅を大きくすることにより、入出力配線の特性インピーダンスが向上し、コモン・モード・フィルタのリターン損失が低減される。
【0015】
第1の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、基板であって、第2のコイル層は、基板の表面に配設され、第1のコイル層は、第2のコイル層に位置する、基板と、両方とも、第1のコイル層の第2のコイル層から離れた側に配設された入口端子及び出口端子と、をさらに含む。
【0016】
第1の態様の可能な実装では、基板は、非磁性材料で作製される。このように、半導体プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造してもよく、巻線の線幅をより柔軟に設計し、インピーダンス制御を容易に実装し、誘電材料損失が低く、2線コモン・モード・フィルタが高い適用帯域幅を有することができる。
【0017】
第1の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、第3のコイル層と、第4のコイル層と、をさらに含む。第1のコイル層、第2のコイル層、第3のコイル層及び第4のコイル層は、順次積層されている。第3のコイル層及び第4のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第3のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第4のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設されている。第3のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第4のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。このように、高周波挿入損失が極めて低く、コモン・モード抑制帯域幅が大きく、モード変換損失が極めて低い2線コモン・モード・フィルタを形成することができる。
【0018】
第1の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、第1の基板と第2の基板と、をさらに含む。第1の基板及び第2の基板のうちの少なくとも1つは、磁性材料から作製される。第1の基板と第2の基板とは対向して配設され、第1の基板と第2の基板との間にコイル層が配設されている。第1の基板及び第2の基板うちの少なくとも1つは、磁性材料から作製され、その結果、バランスに影響を与えることなく低周波干渉適用シナリオを満たすことができる。
【0019】
第2の態様によれば、この出願は、コモン・モード・フィルタを提供する。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線、第2の巻線、及び第3の巻線を含む。第1の巻線の一部及び第2の巻線の一部は、2線コイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線の他の部分及び第2の巻線の他の部分は、別の2線コイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。任意の2線コイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線の1つのターンが存在する。第3の巻線の一部は、単線コイル層に形成され、第3の巻線の他の部分は、別の他の単線コイル層に形成されている。単線コイル層と、単線コイル層に隣接する2線コイル層との間で、積層方向の直交方向において、第3の巻線、第1の巻線、及び第2の巻線は、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造を形成している。第1の巻線の任意のターンまたは第2の巻線の任意のターンは、独立した三角形結合構造に属する。
【0020】
この出願で提供されるコモン・モード・フィルタによれば、各2線コイル層における第1の巻線及び第2の巻線は同じ軸の周りに回転し、第1の巻線の2つの隣接するターンは、第2の巻線の1ターン分間隔を空けて配置されている。このように、いずれの2線コイル層においても、第1の巻線及び第2の巻線がスパイラルの半径方向に沿って間隔を空けるように配置されていることにより、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード結合インダクタンスを強化し、第1の巻線と第2の巻線との間のコモン・モード磁気結合のバランスが良くなる。
【0021】
追加的に、積層方向の直交方向において、第3の巻線、第1の巻線及び第2の巻線は、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造を形成している。このように、第1の巻線、第2の巻線及び第3の巻線が整合したインピーダンス及び整合した結合インダクタンスを有し、その結果、3つの巻線によって形成される各差動モード挿入損失が整合し、コモン・モード・フィルタ全体のリターン損失が小さい。
【0022】
第2の態様の可能な実装では、任意の2線コイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンは、それぞれ、第1の巻線の第1のターンと第1の巻線の第2のターンである。第1の巻線の第1のターンと第1の巻線の第2のターンとの間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターンである。第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第1のターンとの間隔は、S1である。第2の巻線の中間ターンと第1の巻線の第2のターンとの間隔は、S2であり、S1は、S2よりも小さい。第3の巻線、第2の巻線の中間ターン、及び第1の巻線の第1のターンは、独立した三角形結合構造を形成している。このように、積層方向の直交方向において、隣接する三角形結合構造を水平方向に互いから離間させることができ、それにより特性インピーダンス変動及び分布容量を低減し、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11、及びバランス性能Scd21が向上する。
【0023】
第2の態様の可能な実装では、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造の間隔は、d1であり、各三角形結合構造において、互いに隣接する2線コイル層と単線コイル層との間隔は、d2であり、d2は、d1よりも大きい。このように、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造は、互いに離間され分離される。同様に、特性インピーダンス変動及び分布容量が低減され、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11、及びバランス性能Scd21が向上する。
【0024】
第2の態様の可能な実装では、2線コイル層及び単線コイル層は、誘電体層内に配設され、誘電体層によって間隔を空けて配置されている。積層方向に一致する第1の導電チャネル、第2の導電チャネル、及び第3の導電チャネルは、誘電体層を通過する。2つの隣接する2線コイル層における第1の巻線は、第1の導電チャネルを介して電気的に接続される。2つの隣接する2線コイル層における第2の巻線は、第2の導電チャネルを介して電気的に接続される。2つの隣接する単線コイル層における第3の巻線は、第3の導電チャネルを介して電気的に接続される。積層方向の直交方向において、第1の導電チャネル、第2の導電チャネル及び第3の導電チャネルは、互い違いに配置され、三角形結合構造を形成している。第1の導電チャネル、第2の導電チャネル及び第3の導電チャネルを使用して三角形結合構造を形成することにより、コモン・モード・フィルタのバランスがさらに向上することができる。
【0025】
第2の態様の可能な実装では、2つの隣接する2線コイル層の一方は、第1の2線コイル層であり、他方は、第2の2線コイル層である。第1のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンの巻線を囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2のコイル層において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。第2のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向は、第1のコイル層における第1の巻線及び第2の巻線の囲み方向と同じである。したがって、全ての2線コイル層における第1の巻線の長さの合計は、全ての2線コイル層における第2の巻線の長さの合計と基本的に等しい。これにより、第1の巻線及び第2の巻線における信号伝送のレイテンシ差を解消し、差動モード信号からコモン・モード信号への変換を生じさせず、それにより、コモン・モード・フィルタのモード変換損失を低減し、高周波挿入損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を広げる。
【0026】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層における第2の巻線の第2の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交方向において、第2の2線コイル層における第1の巻線の第1の導電チャネルに近い部分と交差している。第1の巻線と第2の巻線を接続するこのような構造では、全ての2線コイル層における第1の巻線の長さの和と全ての2線コイル層における第2の巻線の長さの和とが基本的に等しいことを前提として、導電チャネルが積層方向に沿って通過することができ、処理や製造が容易になる。
【0027】
第2の態様の可能な実装では、第1の単線コイル層と第2の単線コイル層の2つの単線コイル層が存在し、前記第1の2線コイル層と前記第2の2線コイル層の2つの2線コイル層が存在する。このように形成された3線コモン・モード・フィルタは、4層構造である。3線コモン・モード・フィルタは、6層より多い層を有する従来の3線コモン・モード・フィルタと比較して、巻線層の数を低減し、3線コモン・モード・フィルタ全体の小型化を実装する。
【0028】
第2の態様の可能な実装では、第1の単線コイル層、第1の2線コイル層、第2の2線コイル層、及び第2の単線コイル層が順次積層されている。
【0029】
第2の態様の可能な実装では、第1の単線コイル層、第1の2線コイル層、第2の単線コイル層、及び第2の2線コイル層が順次積層されている。
【0030】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層、第1の単線コイル層、第2の単線コイル層、及び第2の2線コイル層が順次積層されている。
【0031】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層、第1の単線コイル層、第2の2線コイル層、及び第2の単線コイル層が順次積層されている。
【0032】
第2の態様の可能な実装では、第1の2線コイル層、第2の2線コイル層、第1の単線コイル層、及び第2の単線コイル層が、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有する。接続端は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されており、接続端の線幅は、スパイラルの巻線の線幅よりも大きい。接続端の線幅を大きくすることにより、入出力配線の特性インピーダンスが向上し、コモン・モード・フィルタのリターン損失が低減される。
【0033】
第2の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、基板であって、基板は、互いに対向する第1の表面及び第2の表面を有し、基板は、第1の表面から第2の表面まで通過する導電チャネルを有する、基板と、第1の表面に、第1の単線コイル層及び第1の2線コイル層が配設され、第2の表面に、第2の単線コイル層及び第2の2線コイル層が配設され、基板から離れた第1の単線コイル層及び第1の2線コイル層の表面にそれぞれ配設された入口端子及び出口端子と、をさらに含む、基板の第1の表面に、第1の単線コイル層及び第1の2線コイル層が配設され、基板の第2の表面に、第2の単線コイル層及び第2の2線コイル層が配設されている。このように、基板を使用して積層方向に複数の三角形結合構造を互いに分離して離間させることができる。
【0034】
第2の態様の可能な実装では、基板は、非磁性材料で作製される。このように、半導体プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造してもよく、巻線の線幅をより柔軟に設計し、インピーダンス制御を容易に実装し、誘電材料損失が低く、2線コモン・モード・フィルタが高い適用帯域幅を有することができる。
【0035】
第2の態様の可能な実装では、コモン・モード・フィルタは、第1の基板と、第2の基板と、をさらに含む。第1の基板及び第2の基板のうちの少なくとも1つは、磁性材料から作製される。第1の基板と第2の基板とは対向して配設され、第1の基板と第2の基板との間に2線コイル層及び単線コイル層が各々配設されている。第1の基板及び第2の基板うちの少なくとも1つは、磁性材料から作製され、その結果、バランスに影響を与えることなく低周波干渉適用シナリオを満たすことができる。
【0036】
第3の観点によれば、この出願は、プリント回路基板と、第1の態様の実装のいずれか1つによるコモン・モード・フィルタと、を含む端末デバイスをさらに提供する。コモン・モード・フィルタは、プリント回路基板に電気的に接続される。
【0037】
この出願のこの実施形態で提供される端末デバイスは、第1の実施形態におけるコモン・モード・フィルタを含む。したがって、この出願のこの実施形態で提供される端末デバイス及び前述の技術的解決手段におけるコモン・モード・フィルタは、同じ技術的課題を解決し、同じ予期される効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】この発明の一実施形態による、端末デバイスの構成の一部を示す概略図である。
【0039】
【
図2】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0040】
【
図3】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタの2つの隣接するコイル層の配線の概略図である。
【0041】
【
図4】この出願の一実施形態による、2つの隣接するコイル層の間の接続関係の3次元概略図である。
【0042】
【
図5】この出願の一実施形態による、2つの隣接するコイル層の間の接続関係を示す2次元概略図である。
【0043】
【
図6】この出願の一実施形態による、別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【
図10】この出願の一実施形態による、さらに別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0048】
【
図11】この出願の一実施形態による、さらに別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0049】
【
図12】この出願の一実施形態による、またさらに別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0050】
【
図13(a)】
図12の差動モード挿入損失Sdd21の曲線図である。
【0051】
【
図13(b)】
図12のコモン・モード挿入損失Scc21の曲線図である。
【0052】
【
図13(c)】
図12のモード変換損失Scd21の曲線図である。
【0053】
【
図13(d)】
図12のリターン損失Sdd11の曲線図である。
【0054】
【
図14】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構造の概略図である。
【0055】
【
図15】この出願の一実施形態による、さらなる2線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0056】
【
図16(a)】
図15の差動モード挿入損失Sdd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0057】
【
図16(b)】
図15のコモン・モード挿入損失Scc21と従来技術との比較の曲線図である。
【0058】
【
図16(c)】
図15のモード変換損失Scd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0059】
【
図16(d)】
図15のリターン損失Sdd11と従来技術との比較の曲線図である。
【0060】
【
図17】この出願の一実施形態による、2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構造の概略図である。
【0061】
【
図18】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0062】
【
図19】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタの各コイル層の配線の概略図である。
【0063】
【
図20】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタの各コイル層の配線の概略図である。
【0064】
【
図21】この出願の一実施形態による、隣接するコイル層の間の接続関係の2次元概略図である。
【0065】
【
図22】この出願の一実施形態による、別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0066】
【
図23】この出願の一実施形態による、さらに別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0067】
【
図24】この出願の一実施形態による、さらに別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0068】
【
図25】この出願の一実施形態による、またさらに別の3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0069】
【
図26】従来技術における3線コモン・モード・フィルタの部分断面図である。
【0070】
【
図27】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタにおける三角形結合構造の構造の概略図である。
【0071】
【
図28】この出願の一実施形態による、さらなる3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0072】
【
図29】この出願の一実施形態による、またさらなる3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0073】
【
図30】この出願の一実施形態による、別の3線コモン・モード・フィルタの3次元図である。
【0074】
【
図31(a)】
図29の差動モード挿入損失Sdd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0075】
【
図31(b)】
図29のコモン・モード挿入損失Scc21と従来技術との比較の曲線図である。
【0076】
【
図31(c)】
図29のモード変換損失Scd21と従来技術との比較の曲線図である。
【0077】
【
図31(d)】
図29のリターン損失Sdd11と従来技術との比較の曲線図である。
【0078】
【
図32】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構造の概略図である。
【0079】
【
図33】この出願の一実施形態による、さらに別の3線コモン・モード・フィルタの3次元図である。
【0080】
【
図34】この出願の一実施形態による、またさらなる3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
【0081】
【
図35】この出願の一実施形態による、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法における各ステップが完了した後の対応する構成を示す概略図である。
【0082】
符号:01-PCB、02-電気接続構造、03-コモン・モード・フィルタ、1-第1の巻線、101-第1の巻線の第1のターン、102-第1の巻線の第2のターン、2-第2の巻線、201-第2の巻線の第1のターン、202-第2の巻線の第2のターン、3-第3の巻線、4-誘電体層、5-導電チャネル、51-第1の導電チャネル、52-第2の導電チャネル、53-第3の導電チャネル、6-接続端、7-入口端子、71-第1の入口端子、72-第2の入口端子、73-第3の入口端子、8-出口端子、81-第1の出口端子、82-第2の出口端子、83-第3の出口端子、9-基板、91-第1の基板、92-第2の基板、10-支持板、11-三角形結合構造、111-第1の三角形結合構造、112-第2の三角形結合構造、113-第3の三角形結合構造、L1-第1のコイル層、L2-第2のコイル層、L3-第3のコイル層、L4-第4のコイル層、L21-第1の2線コイル層、L22-第2の2線コイル層、L 31-第1の単線コイル層、L32-第2の単線コイル層
【発明を実施するための形態】
【0083】
技術的解決策の理解を容易にするために、以下、この出願における技術的用語について説明する。
【0084】
差動モード挿入損失Sパラメータは、信号伝送において重要なパラメータである。Sijは、ポートjから注入され、かつポートiで測定されるエネルギーを示す。差動モード挿入損失パラメータは、Sdd21パラメータとも呼ばれ、ポート1から入力される差動モード信号のエネルギーに対するポート2から出力される差動モード信号のエネルギーの比を表す。0dBに近いSdd21値が好ましい。
【0085】
コモン・モード挿入損失Sパラメータは、Scc21パラメータとも呼ばれ、ポート1からのコモン・モード・ノイズエネルギーに対するポート2からのコモン・モード・ノイズ・エネルギーの比を表す。Scc21の値が小さいほど、コモン・モード・ノイズ抑制能力が強く、周波数帯域が広いほど抑制帯域幅が大きくなることを示す。
【0086】
モード変換損失Sパラメータは、Scd21パラメータとも呼ばれ、ポート1から入力される差動モード信号のエネルギーが、ポート2から出力されるコモン・モード・ノイズ・エネルギーにどれだけ変換されるかを表す。Scd21が小さいほど、フィルタのバランスが良好になり、モード損失が小さくなることを示す。
【0087】
リターン損失Sパラメータは、Sdd11パラメータとも呼ばれ、ポート1から入力された差動モード信号のエネルギーがどれだけ反射してポート1に戻るかを表す。よりも小さいSdd11値が、好ましい。
【0088】
以下、添付図面を参照して、この出願の実施形態における技術的解決策を詳細に説明する。
【0089】
この出願の一実施形態は、端末デバイスを提供する。端末デバイスは、携帯電話、タブレット・コンピュータ(pad)、インテリジェント・ウェアラブル製品(例えば、スマート・ウォッチ又はスマートバンド)、仮想現実(VR)デバイス、拡張現実(AR)デバイスなどのデバイスを含んでもよい。この出願の実施形態では、端末デバイスの具体的な形態は特に限定されない。
【0090】
これらの端末デバイスは、一般に、カメラ・モジュール、ディスプレイ・モジュールなどを含み、アンテナも含む。プロセッサからカメラ・モジュール又はディスプレイ・モジュールに伝送される信号に対するアンテナ信号によって生じる干渉を抑制するために、端末デバイスは、コモン・モード・フィルタをさらに含む。コモン・モード・フィルタは、コモン・モード・ノイズを抑制し、差動データ信号を伝送するように構成されている。
【0091】
第5世代モバイル通信技術(5G)の発展に伴い、これらの端末デバイス内のアンテナも5Gの周波数帯をカバーしている。この場合、コモン・モード・フィルタの性能をさらに最適化する必要がある。例えば、モード変換損失が極めて小さく、コモン・モード抑制帯域幅がより大きく、及び高周波挿入損失極めて小さいことが要求される。これらの端末デバイスの5G高周波高速適用シナリオでは、高速インターフェースに結合されたアンテナの電流がモード変換により高速信号に重畳され、カメラ及びディスプレイ・モジュールに表示の乱れや縞が発生することを防止することができる。
【0092】
図1は、前述の端末デバイスの構造の一部を示す図である。端末デバイスは、プリント回路基板(
PCB)01と、コモン・モード・フィルタ03と、を含む。コモン・モード・フィルタ03は、PCB01上に統合され、電気接続構造02を介してPCB01に電気的に接続される。例えば、PCB01上に差動信号線が配設され、コモン・モード・フィルタ03が、電気接続構造02を介して差動信号線に電気的に接続される。
【0093】
端末デバイスでは、通常、データ伝送規格としてD-PHYプロトコル及びC-PHYプロトコルが使用される。D-PHYプロトコル規格では、信号は、2つの差動線を介して伝送される。C-PHYプロトコル規格では、送信側において3つの配線を介して異なるレベルが伝送され、受信側において差動出力が行われる。
【0094】
言い換えれば、D-PHYプロトコル規格では、2線コモン・モード・フィルタが使用され、すなわち、2つの巻線が存在する。C-PHYプロトコル規格では、3線コモン・モード・フィルタが使用され、すなわち、3つの巻線が存在する。
【0095】
したがって、この出願は、2つのコモン・モード・フィルタ、すなわち、2線コモン・モード・フィルタ及び3線コモン・モード・フィルタを提供する。以下、2線コモン・モード・フィルタと3線コモン・モード・フィルタについて詳細に説明する。
【0096】
以下、2線コモン・モード・フィルタの構成について詳細に説明する。
【0097】
図2及び
図3は、2線コモン・モード・フィルタの構造の図である。コモン・モード・フィルタは、第1の巻線1と、第2の巻線2と、を含む。第1の巻線1の一部及び第2の巻線2の一部は、第1のコイル層L1において、同じ軸(
図3に示す軸P1)の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線1の他の部分及び第2の巻線2の他の部分は、第1のコイル層L1と積層された第2のコイル層L2において、別の同じ軸(
図3に示す軸P2)の周りに回転することによって形成されている。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2は、
図2のP方向に沿って積層されており、第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2は、誘電体層4によって間隔を空けて配置されている。
【0098】
2つの隣接するコイル層の間の電気的接続を実装するために、導電チャネル5が誘電体層4を通過し、導電チャネル5は、第1のコイル層及び第2のコイル層において同じ名前を有する巻線に電気的に接続される。言い換えれば、第1のコイル層における第1の巻線は、導電チャネルを介して第2のコイル層における第1の巻線と電気的に接続され、第1のコイル層における第2の巻線も導電チャネルを介して第2のコイル層における第2の巻線と電気的に接続される。
【0099】
図3は、
図2の第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2の配線構造を示す。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2において、第1の巻線1の2つの隣接するターンの間に第2の巻線2の1つのターンが存在する。
【0100】
第1のコイル層L1における第1の巻線1は、第2のコイル層L2における第1の巻線1に電気的に接続され(
図3の破線W1によって)、第1のコイル層L1における第2の巻線2は、第2のコイル層L2における第2の巻線2に電気的に接続される(
図3の破線W2によって)。
【0101】
このように、第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2のいずれかにおいて、スパイラルの半径方向(
図3に示すD方向)に沿って第1の巻線1及び第2の巻線2が間隔を空けるように
配置されている。このため、各コイル層において、第1の巻線1と第2の巻線2との間のコモン・モード結合インダクタンスを強化し、コモン・モード抑制を向上させることができる。各コイル層を差動信号が通過するときに、第1の巻線と第2の巻線で差動モード電流を反転させることによって発生する磁束が打ち消し合って、それにより、差動信号の伝送損失を低減し、差動信号の品質が向上する。
【0102】
第1のコイル層L1における配線と第2のコイル層L2における配線との違いは 以下のように、
図3を参照する。第1のコイル層L1において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線1は、第2の巻線2に対して内側のターンに位置し、すなわち、第1の巻線1は、軸P1に近い内側のターンに位置する。しかしながら、第1のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線2は、第1の巻線1に対して内側のターンに位置し、すなわち、第2の巻線2は、軸P2に近い内側のターンに位置する。
【0103】
このように、第1のコイル層L1におけるターンの数と第2のコイル層L2におけるターンの数とが同じであるときに、2つのコイル層における第1の巻線1の長さの和は、第2の巻線2の長さの和と基本的に等しくなる。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2を通して差動信号が伝送された後、信号伝送のレイテンシ差が解消され、差動モード信号とコモン・モード信号との変換が低減され、それにより、Scd21を低減し、コモン・モード・フィルタのバランスを向上させる。
【0104】
図3に示すように、2つの隣接するコイル層における第1の巻線及び第2の巻線は、導電チャネルを介して別々に電気的に接続される必要がある。
図3に示す配線構造は、 以下のようである。すなわち、第1のコイル層L1において、外側のターンから内側のターンにかけて、第1の巻線1及び第2の巻線2が反時計回り
に囲むように配設される。第1のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線1及び第2の巻線2がまた、反時計回り
に囲むように配設される。
図4は、
図3に示す第1のコイル層L1と第2のコイル層L2との間の第1の巻線1の接続構造及び第2の巻線2の接続構造の図である。
【0105】
図4を参照する。誘電体層を通過する第1の導電チャネル51は、2つの隣接するコイル層において第1の巻線1に電気的に接続され、誘電体層を通過する第2の導電チャネル52は、2つの隣接するコイル層において第2の巻線2に電気的に接続される。追加的に、第1のコイル層L1における第2の巻線2の第2の導電チャネル52に近い部分は、積層方向の直交方向(
図5に示すQ方向)において、第2のコイル層L2における第1の巻線1の第1の導電チャネル51に近い部分と交差している。層間クロス構造を介して巻線を電気的に接続するときに、
図4に示すように、第1の導電チャネル51及び第2の導電チャネル52は共に積層方向と平行な方向に通過する。
【0106】
図6は、4つのコイル層、すなわち、第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3コイル層L3、及び第4コイル層L4を有する別の2線コモン・モード・フィルタの断面図である。第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3及び第4のコイル層L4は、積層方向Pに沿って順次積層されている。
【0107】
図6は、2線コモン・モード・フィルタの一実施形態にすぎず、代替的には、より多くのコイル層を含んでもよい。結論として、2線コモン・モード・フィルタにおいて、N個のコイル層が存在し、Nは、2以上の偶数である。
【0108】
図7は、
図6の各コイル層の配線構造を示す。第1のコイル層L1及び第2のコイル層L2の巻き方は、
図3に示したものと同じであり、第3のコイル層L3の巻き方は、第1のコイル層L1の巻き方と同じであり、第4コイル層L4の巻き方は、第2のコイル層L2の巻き方と同じである。
【0109】
追加的に、第1のコイル層L1における第1の巻線1は、第2のコイル層L2における第1の巻線1に電気的に接続され(
図3の破線で示すように)、第1のコイル層L1における第2の巻線2は、第2のコイル層L2における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図7の破線で示すように)、第1のコイル層L1と第2のコイル層L2の電気的接続を実装する。
【0110】
第2のコイル層L2における第1の巻線1は、第3のコイル層L3における第1の巻線1に電気的に接続され(
図7の破線で示すように)、第2のコイル層L2における第2の巻線2は、第3のコイル層L3における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図7の破線で示すように)、第2のコイル層L2と第3のコイル層L3との電気的な接続を実装する。
【0111】
第3のコイル層L3における第1の巻線1は、第4のコイル層L4における第1の巻線1に電気的に接続され(
図7の破線で示すように)、第3のコイル層L3における第2の巻線2は、第4のコイル層L4における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図7の破線で示すように)、第3のコイル層L3と第4のコイル層L4との間の電気的接続を実装する。
【0112】
図7では、2つの隣接するコイル層の間においても、第1の巻線の接続と第2の巻線の接続とが、
図4及び
図5に示す構造を介して電気的に接続されている。具体的な接続構造については、ここでは詳しく説明しない。
【0113】
図7に示す2線コモン・モード・フィルタでは、第1の巻線1及び第2の巻線2が両方ともスパイラルの半径方向に沿って囲むように配設されているため、第1の巻線1及び第2の巻線2が間隔を空けて配置されて、各コイル層において第1の巻線と第2の巻線とのコモン・モード磁界結合を強化し、コモン・モード・インダクタンスを向上し、コモン・モード抑制を向上する。
【0114】
追加的に、2つの隣接するコイル層の間で、第1の巻線と第2の巻線とを交差させて交換する。例えば、第1のコイル層L1において、第1の巻線1が内側にあり、第2の巻線1が外側にあり、第2のコイル層L2において、第1の巻線1が外側にあり、第2の巻線1が内側にあり、第3のコイル層L3において、第1の巻線1が内側にあり、第2の巻線1が外側にあり、第4のコイル層L4において、第1の巻線1が外側にあり、第2の巻線1が内側にある。これにより、信号のモード変換損失を大幅に低減することができ、基本的にレイテンシ差0を達成することができる。
【0115】
図7において、各コイル層に形成される楕円に近似したスパイラルの構造は一実施形態にすぎず、代替的には、矩形スパイラルや円形スパイラルなどであってもよいことに留意されたい。
【0116】
図8は、
図7の積層方向Pの直交面に投影された第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4の構造の図である。
図9は、
図8のA-A断面図である。
図9では、積層方向Pの直交方向Qには、各2つの隣接するコイル層間の第1の巻線1と第2の巻線2とが対向配設されている。
【0117】
図9では、2つの隣接するコイル層の間に大きな分布容量が存在する。分布容量を低減し、損失を低減し、コモン・モード抑制帯域幅を増加させて、バランスをさらに向上させるために、この出願は、さらに2線コモン・モード・フィルタを提供する。
図10に示すように、2線コモン・モード・フィルタでは、積層方向Pの直交方向Qでは、第1の巻線1と第2の巻線2とが互い違いに配置されている。隣接するコイル層を互い違いに配設することにより、2層の間の寄生分布容量を大幅に低減することができ、コモン・モード・フィルタのコモン・モード抑制帯域幅やモード変換性能をさらに向上することができることにも理解されたい。
【0118】
図8を参照する。複数のコイル層が存在するときに、第1の巻線及び第2の巻線は、各々、スパイラルの外側に延びる接続端を有する。接続端6は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されている。上部コイル層と下部コイル層では巻き方が異なるため、
図7に示すように、第1のコイル層L1において、第1の巻線1及び第2の巻線2は、内側のターンから外側のターンにかけて時計回りに囲むように配設されている。第2のコイル層L2において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて時計回りに囲むように配設されている。このように、第1の巻線1に接続された接続端6と第2の巻線2に接続された接続端6とは逆方向に延びており、スパイラルの巻線ではない。第1の巻線と第2の巻線は、軸を中心に平行に囲むように配設されている。このように、2つの接続端6の間に高いインピーダンスが存在する。
図8を参照する。インピーダンスを低減し、無結合による急激なインピーダンス変化を緩和し、リターン損失を低減するためには、接続端を広げてもよく、すなわち接続端6の線幅がスパイラルの巻線の線幅よりも大きい。
【0119】
図11を参照する。2線コモン・モード・フィルタのバランスをさらに向上させるために、任意のコイル層において、第1の巻線の各2つの隣接する巻線は、それぞれ第1の巻線の第1のターン101及び第1の巻線の第2のターン102である。第1の巻線の第1のターン101と第1の巻線の第2のターン102との間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターン201である。第2の巻線の中間ターン201と第1の巻線の第1のターン101との間隔S1は、第2の巻線の中間ターン201と第1の巻線の第2のターン102との間隔S2よりも小さい。このように、第2の巻線の中間ターン201、及び第1の巻線の第1のターン101は、独立した結合構造T1を形成している。第2の巻線の中間ターン202、及び第1の巻線の第2のターン102は、別の独立した結合構造T2を形成している。結合構造T1と結合構造T2との間の磁気結合衝撃は小さく、それにより、モード変換性能とバランスがさらに向上する。
【0120】
図12は、基板9を有する2線コモン・モード・フィルタを示している。コモン・モード・フィルタは、基板9を含む。複数のコイル層は、基板9の同じ表面上に配設され、積層方向Pに沿って積層されている。このように、入口端子7及び出口端子8は、複数のコイル層の基板9から離れた表面上に配設されている。
【0121】
入口端子7は、第1の巻線1に電気的に接続された第1の入口端子と、第2の巻線に電気的に接続された第2の入口端子と、を含む。
【0122】
出口端子8は、第1の巻線1に電気的に接続された第1の出口端子と、第2の巻線に電気的に接続された第2の出口端子と、を含む。
【0123】
一般に、第1の入口端子及び第2の入口端子は、導電チャネルを介して上部に位置するコイル層に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。第1の出口端子及び第2の出口端子は、別の導電チャネルを介して底部に位置するコイル層に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。例えば、
図12に示すように、第1のコイル層L1、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4が基板9に向かう方向に沿って順次積層されている。このように、第1の入口端子及び第2の入口端子は、導電チャネルを介して第1のコイル層L1に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続され、第1の出口端子及び第2の出口端子は、別の導電チャネルを介して第4コイル層L4に対応する第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続される。
【0124】
図12に示す構造では、基板9は、磁性材料で作製されていてもよいし、シリコン、ガラス、樹脂、セラミック、フェライトなどの非磁性材料で作製されていてもよい。
【0125】
図13(a)~
図13(d)は、
図12の構造における基板9が非磁性基板であるときの2線コモン・モード・フィルタの性能シミュレーションである。
【0126】
図13(a)は、コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21の曲線図である。この曲線から、2線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が-4dBよりも大きいときに、対応する帯域幅が20GHzに達することが分かる。
【0127】
図13(b)は、コモン・モード・フィルタのコモン・モード挿入損失Scc21の曲線図である。この曲線から、2線コモン・モード・フィルタのScc21が-15dBよりも小さいときに、対応するコモン・モード抑制帯域幅が1.5GHz~6GHzであり、合計5GHzよりも大きいことが分かる。
【0128】
図13(c)は、コモン・モード・フィルタのモード変換損失Scd21の曲線図である。この曲線から、2線コモン・モード・フィルタのScd21が8GHz以内で-40 dBよりも小さいことが分かる。これにより、5G干渉周波数帯のノイズを効果的に抑制し、信号伝送への影響を最小限に抑えることができる。
【0129】
図13dは、コモン・モード・フィルタのリターン損失Sdd11の曲線図である。この曲線から、リターン損失Sdd11が8GHz内で-20dBよりも小さいことが分かる。
【0130】
基板9がシリコン、ガラスなどの非磁性材料で作製されているときに、従来の半導体プロセスを使用して2線コモン・モード・フィルタが製造されてもよい。以下、半導体プロセスを使用した2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0131】
図14に示すように、コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0132】
図14の(a)及び(b)に示すように、非磁性材料から作製された基板9の表面上に誘電体層4を形成する。
【0133】
図14の(c)に示すように、誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。
【0134】
図14の(d)に示すように、パターン層が形成された基板上に第1の巻線及び第2の巻線を配設し、第1の巻線及び第2の巻線が同じ軸の周りに回転してスパイラルの第1のコイル層L1を形成する。第1のコイル層L1において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0135】
追加的に、第1のコイル層L1を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0136】
図14の(e)に示すように、第1のコイル層L1の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0137】
図14の(b)、(c)、及び(d)の方法により、
図14の(f)に示すように、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4を順次形成する。
【0138】
第2のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0139】
第3のコイル層L3において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0140】
第4のコイル層L4において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0141】
第2のコイル層L2を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0142】
第1のコイル層L3を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0143】
第4のコイル層L4を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0144】
図14の(g)に示すように、入口端子7及び出口端子8を形成する。入口端子7は、第4コイル層L4における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続され、出口端子8は、第1のコイル層L1における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。
【0145】
半導体プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造するときに、巻線の線幅をより柔軟に設計し、インピーダンス制御を容易に実装し、誘電材料損失が低く、2線コモン・モード・フィルタが高い適用帯域幅を有することができる。
【0146】
図15は、基板を有する別の2線コモン・モード・フィルタを示している。コモン・モード・フィルタは、第1の基板91と第2の基板92とを含む。第1の基板91と第2の基板92とは対向して配設され、第1の基板91と第2の基板92との間には、積層方向Pに沿って複数のコイル層が積層されている。コモン・モード・フィルタの両側には、入口端子7と出口端子8が位置する。追加的に、入口端子7は、第4コイル層L4における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続され、出口端子8は、第1のコイル層L1における第1の巻線及び第2の巻線に電気的に接続されている。
【0147】
図15に示す2線コモン・モード・フィルタでは、第1の基板91及び第2の基板92は、各々、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92の1つは、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92は、各々磁性材料から作製される。
【0148】
図15に示すように、第1の基板91及び第2の基板92が各々非磁性材料から作製されるとき、又は
図14で製造される2線コモン・モード・フィルタにおける基板9も非磁性材料から作製され、かつコモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が3dBであるときに、対応する帯域幅は、20GHzに達する。したがって、コモン・モード・フィルタの高周波性能が優れていることから、超高速適用シナリオ、例えば、2線差動インターフェース規格を使用し、伝送速度が16 Gbps以上であるすべての5G超高速シナリオに好適なコモン・モード・フィルタとなっている。具体的な製品としては、カメラ
、携帯電話の液晶ディスプレイ(LCD)、PAD LCD、PC LCD、及び高精細マルチメディア・インターフェース(HDMI)を含む。
【0149】
いくつかの低周波適用シナリオに適合するために、
図15の第1の基板91及び第2の基板92のうちの少なくとも1つは、磁性材料から作製されてもよい。これにより、バランスを変更することなく巻線間の磁界結合を強化し、コモン・モード・インダクタンスが向上し、コモン・モード抑制周波数を低減することができる。
【0150】
図15の構造における2つの基板のうちの少なくとも1つが磁性基板であるときに、
図16(a)~
図16(d)は、2線コモン・モード・フィルタの性能シミュレーションである。
【0151】
図16(a)に示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術における差動モード挿入損失Sdd21の曲線である。2つの曲線から、2線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が明らかに低減されていることが分かる。
【0152】
図16(a)に示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのコモン・モード挿入損失Scc21の曲線であり、破線は、従来技術におけるコモン・モード挿入損失Scc21の曲線である。2つの曲線から、Scc21の中心周波数は、約2GHzに移動しており、Scc21が-15 dBよりも小さいときに、対応するコモン・モード抑制帯域幅は900MHz~5GHzをカバーしてもよい。このため、コモン・モード・フィルタの性能は、5G通信周波数帯及びグローバル・システム・フォー・モバイル通信(GSM)規格に適合し、伝送速度10Gbps未満の5G高速高周波シナリオを満足する。
【0153】
図16cに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのモード変換損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術におけるモード変換損失Scd21の曲線である。2つの曲線から、コモン・モード・フィルタのモード変換損失が従来技術より明らかに好ましいことが分かる。
【0154】
図16dに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのリターン損失Sdd11の曲線であり、破線は、従来技術におけるリターン損失Sdd11の曲線である。コモン・モード・フィルタのリターン損失は、従来技術のリターン損失よりも好ましい。
【0155】
図15に示す構造は、磁気デバイス薄膜プロセスを使用して製造されてもよい。以下、磁気デバイス薄膜プロセスを使用して2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0156】
図17に示すように、コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0157】
図17(a)及び(b)に示すように、支持板10の表面上に誘電体層4を形成する。
【0158】
図17(c)に示すように、誘電体層4上に第1の巻線及び第2の巻線をセットし、その結果、第1の巻線及び第2の巻線が誘電体層4上に配設され、第1の巻線及び第2の巻線が同じ軸の周りに回転するスパイラルの第1のコイル層L1を形成する。第1のコイル層L1において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0159】
追加的に、第1のコイル層L1を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0160】
図17の(d)に示すように、第1のコイル層L1の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0161】
図17の(b)、(c)、及び(d)の方法により、
図17の(e)に示すように、第2のコイル層L2、第3のコイル層L3、及び第4のコイル層L4を順次形成する。
【0162】
第2のコイル層L2において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0163】
第3のコイル層L3において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0164】
第4のコイル層L4において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0165】
第2のコイル層L2を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0166】
第1のコイル層L3を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0167】
第4のコイル層L4を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0168】
図17の(f)に示すように、支持板10を除去する。
【0169】
図17の(g)に示すように、第1の基板91と第2の基板92とを配設し、その結果第1の基板91と第2の基板92との間に4層のコイル層をロードする。
【0170】
図17の(h)に示すように、第1の基板91、第2の基板92及び4つのコイル層を含む側面に、入口端子7及び出口端子8をそれぞれ配設する。
【0171】
追加的に、
図17に従って2線コモン・モード・フィルタを製造するときに、複数のコイル層を形成した後、入口端子及び出口端子を配設する前に、本方法は、コモン・モード・フィルタを積層方向と平行な方向に沿って切断することと、次いで、入口端子及び出口端子を配設することと、をさらに含む。
【0172】
以上、4つのコイル層を有する2線コモン・モード・フィルタを製造するための方法が提供される。より多くのコイル層が存在する場合、前述の方法に従って類推によって2線コモン・モード・フィルタを製造してもよく、詳細は、ここでは再度説明しない。
【0173】
以下、3線コモン・モード・フィルタの構成について詳細に説明する。
【0174】
図18は、3線コモン・モード・フィルタの断面図であり、
図19は、
図18の各コイル層の配線構造を示している。コモン・モード・フィルタは、2線コイル層と、単線コイル層と、を含む。
【0175】
図18に示すように、この出願で提供される3線コモン・モード・フィルタにおける2線コイル層は、2つの層、すなわち、第1の2線コイル層L21と、第2の2線コイル層L22と、を含む。単線コイル層は、2つの層、すなわち、第1の単線コイル層L31と、第2の単線コイル層L32と、を含む。
【0176】
このように、2線コイル層は第1の巻線と、第2の巻線と、を含むため、形成される3線コモン・モード・フィルタは、4つのコイル層を有する。従来の6つのコイル層と比較して配線層の数が低減され、それにより、3線コモン・モード・フィルタ全体の積層方向の厚さを低減し、3線コモン・モード・フィルタの小型化を実装する。
【0177】
確かに、いくつかの実装では、2つより多くの2線コイル層が存在してもよいし、2つより多くの単線コイル層が存在してもよい。
【0178】
図19を参照する。第1の巻線1の一部と第2の巻線2の一部は、第1のコイル層において、同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第1の巻線1の他の部分及び第2の巻線2の他の部分は、別の2線コイル層において、別の同じ軸の周りに回転することによって形成されている。第3の巻線3の一部は、単線コイル層に形成され、第3の巻線の他の部分は、別の他の単線コイル層に形成されている。
【0179】
第1の2線コイル層L21における第1の巻線1は、第2の2線コイル層L22における第1の巻線1に電気的に接続され(
図19の破線で示すように)、第1の2線コイル層L21における第2の巻線2は、第2の2線コイル層L22における第2の巻線2に電気的に接続されて(
図19の破線で示すように)、第1の2線コイル層L21と第2の2線コイル層L22の電気的接続を実装する。
【0180】
第1の単線コイル層L31における第3の巻線3は、第2の単線コイル層L32における第3の巻線3に電気的に接続され(
図19の破線で示すように)、第1の単線コイル層L31と第2の単線コイル層L32との間の電気的接続を実装する。
【0181】
さらに、
図19に示すように、第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22において、第1の巻線1の各2つの隣接するターンの間に第2の巻線2の1つのターンが存在する。
【0182】
図20は、
図18の各コイル層の別の配線構造を示す。
図20と
図19の違いは、
図19の第1の2線コイル層L21において、第1の巻線及び第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2の2線コイル層L22において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
図20に示す第1の2線コイル層L21において、第1の巻線及び前記第2の巻線は、外側のターンから内側のターンにかけて囲むように配設されており、第2の巻線は、第1の巻線に対して外側のターンに位置する。第2の2線コイル層L22において、第1の巻線及び第2の巻線は、内側のターンから外側のターンにかけて囲むように配設され、第2の巻線は、依然として第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0183】
図20に示す構造と比較して
図19に示す構造では、第1の2線コイル層L21におけるターンの数と第2の2線コイル層L22におけるターンの数とが同じであるときに、2つの2線コイル層における第1の巻線1の長さの和は、第2の巻線2の長さの和と基本的に等しくなる。第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22を通して差動信号が伝送された後、信号伝送のレイテンシ差が解消され、差動モード信号からコモン・モード信号への変換が生じず、それにより、Scd21を低減し、コモン・モード・フィルタのバランスを向上させる。
【0184】
第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22を
図19に示すようにルーティングするときに、
図4及び
図5に示す接続構造は、第1の巻線と第2の巻線とを接続するように構成されてもよい。具体的には、第1の2線コイル層L21における第2の巻線2の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交平面において、第2の2線コイル層L22における第1の巻線1の導電チャネルに近い部分と交差している。
【0185】
第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22を
図20に示すようにルーティングするときに、2つの2線コイル層の間で第1の巻線と第2の巻線が交換されないため、
図4及び
図5に示す層間クロス構造は、巻線と電気的に接続される必要がない。
図21に示す接続構造は、使用されてもよい。具体的には、第1の2線コイル層L21における第2の巻線2の導電チャネルに近い部分は、積層方向の直交平面において、第2の2線コイル層L22における第1の巻線1の導電チャネルに近い部分と交差しない。
【0186】
図19及び
図20において、各コイル層に形成される矩形に近似したスパイラルの構造は一実施形態にすぎず、代替的には、矩形スパイラルや円形スパイラルなどであってもよいことに留意されたい。
【0187】
図19及び
図20を参照する。第1の巻線及び第2の巻線は各々、スパイラルの外側に延びる接続端6を有し、第3の巻線もスパイラルの外側に延びる接続端6を有する。接続端6は、入口端子又は出口端子に接続するように構成されている。
図19を参照すると、第1の2線コイル層L21と第2の2線コイル層L2とにおいて、接続端6が互いから離間されている。スパイラルの巻線の違いは、第1の巻線と第2の巻線が軸を中心に平行に囲むように配設されていることである。このように、2つの接続端の間に高いインピーダンスが存在する。
図19を参照する。インピーダンスを低減し、無結合による急激なインピーダンス変化を緩和し、リターン損失を低減するためには、接続端を広げてもよく、すなわち接続端6の線幅がスパイラルの巻線の線幅よりも大きい。同様に、第1の単線コイル層L31及び第2の単線コイル層L32における接続端の幅もよりも大きくてもよい。
【0188】
2つの2線コイル層及び2つの単線コイル層は、複数の積層方式を有する。
【0189】
図22は、積層方式を示す。第1の単線コイル層L31、第1の2線コイル層L21、第2の2線コイル層L22、及び第2の単線コイル層L32が順次積層されている。
【0190】
図23は、別の積層方式を示す。第1の単線コイル層L31、第1の2線コイル層L21、第2の単線コイル層L32、及び第2の2線コイル層L22が順次積層されている。
【0191】
図24は、別の積層方式を示す。第1の2線コイル層L21、第1の単線コイル層L31、第2の単線コイル層L32、及び第2の2線コイル層L22が順次積層されている。
【0192】
図25は、別の積層方式を示す。第1の2線コイル層L21、第1の単線コイル層L31、第2の2線コイル層L22、及び第2の単線コイル層L32が順次積層されている。
【0193】
図22~
図25に示すように、互いに隣接する隣接する2線コイル層と単線コイル層との間で、積層方向の直交方向において、第3の巻線3、第1の巻線1、及び第2の巻線2が、互い違いに配置され、互いに独立した複数の三角形結合構造11を形成しており、第1の巻線1の任意のターン又は第2の巻線2の任意のターンも独立した三角形結合構造11に属する。
【0194】
第1の巻線の任意のターン又は第2の巻線の任意のターンも独立した三角形結合構造11に属することに留意されたい。例えば、
図25に示すように、第1の巻線の第1のターン101は、第2の三角形結合構造112のみに属する。
【0195】
図26は、従来技術における3線コモン・モード・フィルタの断面図である。
図26から分かるように、第1の巻線の第1のターン101は、第1の三角形結合構造111及び第2の三角形結合構造112に属する。
【0196】
図26に示す従来の3線コモン・モード・フィルタと比較して、
図25のこの出願のこの実施形態で提供される3線コモン・モード・フィルタでは、互いに独立した複数の三角形結合構造が形成されている。このように、3線のインピーダンスと結合インダクタンスを基本的に整合させ、別の三角形結合構造の3線の影響を受けないようにすることができ、信号のモード変換損失を低減し、バランスを向上することを保証し得る。また、4層配線構造の3線コモン・モード・フィルタは、寄生容量がより小さく、抑制帯域幅がより大きいことを有する。
【0197】
図27は、この出願による、三角形結合構造を示す。具体的な実装では、第3の巻線3と第1の巻線1との間の間隔1a、第3の巻線3と第2の巻線2との間の間隔1b、及び第2の巻線2と第1の巻線1との間の間隔1cは、3つの巻線が等しいインピーダンス及び等しい結合
インダクタンスを実装する限り、必ずしも正三角形を形成しない。
【0198】
図22及び
図24に示すように、第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22は、中間面Mに対して対称に配設されており、第1の単線コイル層L31及び第2の単線コイル層L32も中間面Mに対して対称に配設されている。
【0199】
図23及び
図25に示すように、第1の2線コイル層L21及び第2の2線コイル層L22は、中間面Mに対して非対称に配設されており、第1の単線コイル層L31及び第2の単線コイル層L32も中間面Mに対して非対称に配設されている。
【0200】
第1の2線コイル層L21、第1の単線コイル層L31、第2の2線コイル層L22、及び第2の単線コイル層L32を、
図22及び
図24に示す中間面Mに対して対称に配設することにより、バランスをさらに向上させることができる。
【0201】
ここでの中間面Mは、
図22に示すように、積層方向Pに直交する面であり、中間面Mとコモン・モード・フィルタの第1の面との距離X1は、中間面Mとコモン・モード・フィルタの第2の面との距離X2に等しいか又はそれに近いことに留意されたい。
【0202】
一般に、
図28に示すように、第1の導電チャネル51、第2の導電チャネル52及び第3の導電チャネル53は、誘電体層4を通過する。
【0203】
第1の2線コイル層L21における第1の巻線は、導電チャネル51を介して第2の2線コイル層における第1の巻線に電気的に接続される。
【0204】
第1の2線コイル層L21における第2の巻線は、導電チャネル52を介して第2のコイル層における第2の巻線に電気的に接続される。
【0205】
第1の単線コイル層L31における第3の巻線は、第3の導電チャネル53を介して第2の単線コイル層L32の第3の巻線と電気的に接続される。
【0206】
図28を参照する。さらにバランスを向上するために、積層方向Pの直交方向Qにおいて、第1の導電チャネル51、第2の導電チャネル52及び第3の導電チャネル53は、同じ直線上に位置しないが、
図28に示すように、第1の導電チャネル51、第2の導電チャネル52及び第3の導電チャネル53は、互い違いに配置され、三角形結合構造11を形成している。
【0207】
3線コモン・モード・フィルタのバランスをさらに向上させるために、2つの隣接する三角形結合構造が、積層方向と交差する方向に互いに分離され離間される。
図28を参照すると、任意の2線コイル層において、第1の巻線の各2つの隣接するターンは、それぞれ、第1の巻線の第1のターン101と第1の巻線の第2のターン102である。第1の巻線の第1のターン101と第1の巻線の第2のターン102との間に位置する第2の巻線のターンは、第2の巻線の中間ターン2である。第2の巻線の中間ターン2と第1の巻線の第1のターン101との間隔S1は、第2の巻線の中間ターン2と第1の巻線の第2のターン102との間隔S2よりも小さい。第3の巻線3、第2の巻線の中間ターン2、及び第1の巻線の第1のターン101は、独立した三角形結合構造を形成している。このように、第1の三角形結合構造111と第2の三角形結合構造112とを積層方向の直交方向(水平方向とも呼ばれる)に離間させ、それにより特性インピーダンス変動及び分布容量を低減し、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11、バランス性能Scd21を向上させる。S2及びS1の設計では、バランス性能要件とコモン・モード・フィルタ全体の長さ(
図28のQ方向に沿ったサイズ)要件の両方をS2の設計とS1の設計で考慮する必要がある。
【0208】
図28を参照する。追加的に、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造の間隔は、d1であり、各三角形結合構造において、互いに隣接する2線コイル層と単線コイル層との間隔は、d2であり、d2は、d1よりも大きい。このように、積層方向において、2つの隣接する三角形結合構造が互いに離間され分離され、特性インピーダンス変動及び分布容量が低減され、挿入損失Sdd21、リターン損失Sdd11及びバランス性能Scd21が向上する。しかしながら、2つの隣接する三角形結合構造を互いに分離して離間させることは、共通モードインダクタンスを低減し、低周波干渉抑制能力を弱める。したがって、d1及びd2の設計では、d1の設計及びd2の設計において、コモン・モード・フィルタ全体に対するバランス性能要件及び高さ要件の両方を考慮する必要がある。
【0209】
例えば、
図25に示すように、本明細書における2つの隣接する三角形結合構造の間隔d1とは、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間で、第1の単線コイル層L31が第2の2線コイル層L22に隣接しているので、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間隔d1は、第1の単線コイル層L31と第2の2線コイル層L22との間隔であると留意されたい。別の例では、
図28に示すように、第1の2線コイル層L21は、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間で第2の2線コイル層L22に隣接しているため、隣接する第2の三角形結合構造112と第3の三角形結合構造113との間隔d1は、第1の2線コイル層L21と第2の2線コイル層L22との間隔である。
【0210】
図29及び
図30は、基板を有する3線コモン・モード・フィルタを示す。3線コモン・モード・フィルタは、第1の基板91と、第2の基板92と、を含む。第1の基板91と第2の基板92とは対向して配設され、第1の基板91と第2の基板92との間には、積層方向Pに沿って複数のコイル層が積層されている。コモン・モード・フィルタの両側には、入口端子7と出口端子8が位置する。
【0211】
入口端子7は、第1の入口端子71と、第2の入口端子72と、第3の入口端子73と、を含む。第1の入口端子71は、第1の2線コイル層において第1の巻線に電気的に接続され、第2の入口端子72は、第1の2線コイル層において第2の巻線に電気的に接続され、第3の入口端子73は、第1の単線コイル層において第3の巻線に電気的に接続される。
【0212】
出口端子8は、第1の出口端子81と、第2の出口端子82と、第3の出口端子83と、を含む。第1の出口端子81は、第2の2線コイル層において第1の巻線に電気的に接続され、第2の出口端子82は、第2の2線コイル層において第2の巻線に電気的に接続され、第3の出口端子83は、第2の単線コイル層において第3の巻線に電気的に接続されている。
【0213】
図28及び図
30に示す3線コモン・モード・フィルタでは、第1の基板91及び第2の基板92は、各々、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92の1つは、非磁性材料から作製される。代替的には、第1の基板91及び第2の基板92は、各々磁性材料から作製される。
【0214】
第1の基板91及び第2の基板92のうちの少なくとも1つが磁性材料であるときに、巻線間のコモン・モード磁界結合が強化され、コモン・モード・インダクタンスが向上し、コモン・モード抑制周波数は主に約3.3GHzであり、5G RF干渉の主周波数帯域に適合し、現在の5G携帯電話におけるカメラC-PHY高速インターフェースの適用シナリオに好適である。
【0215】
図29及び
図30の構造における2つの基板のうちの少なくとも1つが磁性基板であるときに、
図31a~
図31dは、2線コモン・モード・フィルタの性能シミュレーションである。
【0216】
図16(a)に示すように、黒の実線は、3線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術における差動モード挿入損失Sdd21の曲線である。2つの曲線から、3線コモン・モード・フィルタの差動モード挿入損失Sdd21が明らかに低減されていることが分かる。
【0217】
図16(a)に示すように、黒の実線は、3線コモン・モード・フィルタのコモン・モード挿入損失Scc21の曲線であり、破線は、従来技術におけるコモン・モード挿入損失Scc21の曲線であるこの2つの曲線から、3線コモン・モード・フィルタは寄生容量が小さく、抑制帯域幅が大きいことが分かる。
【0218】
図31cに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのモード変換損失Sdd21の曲線であり、破線は、従来技術におけるモード変換損失Scd21の曲線である。この2つの曲線から、3線コモン・モード・フィルタが信号のモード変換損失を低減していることが分かる。
【0219】
図31dに示すように、黒の実線は、コモン・モード・フィルタのリターン損失Sdd11の曲線であり、破線は、従来技術におけるリターン損失Sdd11の曲線である。3線コモン・モード・フィルタの挿入損失差がより小さく、3線のインピーダンス整合性が高い。
【0220】
図29及び
図30に示す構造は、磁気デバイス薄膜プロセスを使用して製造されてもよい。以下、磁気デバイス薄膜プロセスを使用してコモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0221】
図32に示すように、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0222】
図32の(a)及び(b)に示すように、支持板10の表面上に誘電体層4を形成する。
【0223】
図32の(c)に示すように、誘電体層4において第3の巻線を配設し、第3の巻線が軸の周りに回転して、スパイラルの第1の単線コイル層L31を形成する。
【0224】
第1の単線コイル層L31を形成するときに、第3の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0225】
図32の(d)に示すように、第1の単線コイル層L31の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0226】
図32の(b)、(c)、及び(d)の方法により、
図32の(e)に示すように、第1の2線コイル層L21、第2の2線コイル層L22、第2の単線コイル層L32を順次形成する。
【0227】
第1の2線コイル層L21において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0228】
第2の2線コイル層L22において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0229】
第1の2線コイル層L21を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0230】
第2の2線コイル層L22を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0231】
第2の単線コイル層L32を形成するときに、第3の巻線を、内側から外側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0232】
図32の(f)に示すように、支持板10を除去する。
【0233】
図32の(g)に示すように、第1の基板91と第2の基板92とを配設し、その結果第1の基板91と第2の基板92との間に4層のコイル層をロードする。
【0234】
図32の(h)に示すように、入口端子7及び出口端子8を配設する。
【0235】
図33及び
図34は、基板を有する別の3線コモン・モード・フィルタを示す。3線コモン・モード・フィルタは、基板9を有する。基板9は、互いに対向する第1の表面及び第2の表面を有する。第1の表面に、第1の2線コイル層21及び第1の単線コイル層31が配設され、第2の表面に、第2の2線コイル層22及び第2の単線コイル層32が配置されている。このように、基板9を使用して積層方向に一致した三角形結合構造を互いに離間させて分離することができる。
【0236】
図33及び
図34の構造では、導電チャネルが基板9を通過して、第1の2線コイル層21と第2の2線コイル層22との間の電気的接続を実装し、さらに第1の単線コイル層31と第2の単線コイル層32との間の電気的接続を実装する。
【0237】
図33及び
図34の基板は、磁性材料で作製されてもよいし、非磁性材料、例えば、フェライト、樹脂、セラミック、シリコン、ガラスなどであってもよい。基板がシリコンから作製されるときに、基板に形成される導電チャネルは、スルー・シリコン・ビア(
TSV)である。基板がガラスから作製されるときに、基板に形成される導電チャネルは、スルー・ガラス・ビア(
TGV)である。
【0238】
図33及び
図34の3線コモン・モード・フィルタの基板が磁性材料から作製されないときに、高さが低下せず、それにより、上部コイル層と下部コイル層との分離距離がさらに大きくなる。したがって、3線コモン・モード・フィルタは優れた高周波性能を有し、コモン・モード抑制共振周波数は8GHz以上であり、その結果、将来のミリ波帯通信やC-PHY超高速レートの適用シナリオにより好適である。
【0239】
図33及び
図34の構造における基板9が非磁性基板であるときに、3線コモン・モード・フィルタは、従来の半導体プロセスを使用して製造されてもよい。以下、半導体プロセスを使用した3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法について詳細に説明する。
【0240】
図35に示すように、3線コモン・モード・フィルタを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0241】
図35の(a)に示すように、非磁性材料から作製された基板9には、第1の表面A1から第2の表面A2まで通過する導電チャネル5が形成されている。
【0242】
図35の(b)に示すように、第1の表面A1上に誘電体層4を形成する。
【0243】
図35の(c)に示すように、誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。
【0244】
図35の(d)に示すように、パターン層が形成された基板上に第3の巻線を配設し、第3の巻線が軸の周りに回転してスパイラルの第1の単線コイル層L31を形成する。
【0245】
第1の単線コイル層L31を形成するときに、第3の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0246】
図35の(e)に示すように、第1の単線コイル層L31の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。
【0247】
図35の(b)、(c)、及び(d)により、
図35の(f)に示すように、第1の2線コイル層L21が形成される。
【0248】
第1の2線コイル層L21において、内側のターンから外側のターンにかけて、第2の巻線は、第1の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0249】
第1の2線コイル層L21を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、外側から内側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0250】
図35の(g)に示すように、第1の2線コイル層L21及び第1の単線コイル層L31が形成された基板9を、基板の第2の面A2が上側となるように反転で配設する。
【0251】
図35の(h)に示すように、第1の表面A2上に誘電体層4を形成する。
【0252】
図35の(i)に示すように、誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。
【0253】
図35の(j)に示すように、パターン層が形成された基板上に第1の巻線及び第2の巻線を配設し、第1の巻線及び第2の巻線が同じ軸の周りに回転してスパイラルの第2の2線コイル層L22を形成する。
【0254】
第2の2線コイル層L22において、内側のターンから外側のターンにかけて、第1の巻線は、第2の巻線に対して内側のターンに位置する。
【0255】
第2の2線コイル層L22を形成するときに、第1の巻線及び第2の巻線を、内側から外側へ反時計回りに囲むように配設する。
【0256】
図35の(k)に示すように、第2の2線コイル層L22の上方に別の誘電体層4を形成し、この別の誘電体層4において導電チャネル5を形成する。誘電体層4をパターニングして、基板9上にパターン層を形成する。パターン層において第3の巻線を配設し、第2の単線コイル層L32が形成する。
【0257】
第2の単線コイル層L32を形成するときに、第3の巻線を、内側から外側にかけて反時計回りに囲むように配設する。
【0258】
図35の(l)に示すように、入口端子7及び出口端子8を配設する。
【0259】
この明細書の説明において、説明された特定の特徴、構造、材料、または特性は、実施形態または例のいずれか1つ以上において適切に組み合わせられてもよい。
【0260】
前述の説明は、この出願の単に具体的な実装に過ぎないが、この出願の保護範囲を制限することを意図したものではない。この出願に開示された技術的範囲内で、当業者によって容易に理解することができる変更又は代替は、この出願の保護範囲に含まれるものとする。したがって、この出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【国際調査報告】