(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】水蒸気改質プラントの窒素酸化物排出を最小化するための方法及びその水蒸気改質プラント
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
C01B3/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532222
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021081763
(87)【国際公開番号】W WO2022112049
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020214918.6
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514088943
【氏名又は名称】ティッセンクルップ インダストリアル ソリューションズ アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Industrial Solutions AG
(71)【出願人】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マイスナー,オリバー
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB12
(57)【要約】
本発明は、水蒸気改質器(16)の炉ユニット(10)に第2の燃焼ガス(9)と第1の煙道ガス(2)とを供給する方法に関し、第1の煙道ガス(2)は、第1の燃焼ガス(4)の空気との燃焼によって、水蒸気改質器(16)の外側に位置し、前記水蒸気改質器(16)の上流に取り付けられた外部燃焼室(3)内で生成され、第2の燃焼ガス(9)と共に水蒸気改質器(16)の炉ユニット(10)内に導入され、第1の煙道ガス(2)は、炉について十分な残留酸素含有量を有する。本発明はまた、そのような方法を実施するための水蒸気改質プラント(1)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気改質器(16)の燃焼ユニット(10)に第2の燃料ガス(9)と第1の煙道ガス(2)とを供給する方法であって、
前記第1の煙道ガス(2)が、
第1の燃料ガス(4)の空気(5)との燃焼によって前記水蒸気改質器(16)の外側及び該水蒸気改質器(16)の上流に配置された外部燃焼室(3)内において生成され、
前記第2の燃料ガス(9)と共に、燃焼のために前記水蒸気改質器(16)の前記燃焼ユニット(10)の内部に導入され、
前記第1の煙道ガス(2)が、前記燃焼に十分な残留酸素含有量を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2の燃料ガス(9)及び前記第1の煙道ガス(2)が、前記第1の煙道ガス(2)の前記残留酸素含有量が前記第2の燃料ガス(9)の完全燃焼に十分な量比で前記燃焼ユニット(10)の内部に導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の煙道ガス(2)の前記残留酸素含有量が、前記第2の燃料ガス(9)の完全燃焼のための化学量論比を1%~30%、好ましくは5%~15%上回ることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃焼ユニット(10)の内部に導入される際の前記第1の煙道ガス(2)中の前記残留酸素含有量が、10体積%~19体積%の範囲であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の煙道ガス(2)の温度は、前記第1の煙道ガス(2)と混合する第2の燃料ガス(9)が自然燃焼するように、調整されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の燃料ガス(9)が天然ガスを含有し、前記第1の煙道ガス(2)の温度が前記燃焼ユニット(10)の内部に導入される際に少なくとも700℃であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記水蒸気改質器(16)の上流に配置された前記外部燃焼室(3)において形成された熱エネルギーが、前記水蒸気改質器(16)の前記燃焼ユニット(10)用の前記第1の煙道ガス(2)を予備加熱するためにのみ利用されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記水蒸気改質器(16)の上流に配置された前記外部燃焼室(3)において燃焼中に形成された熱エネルギーが、前記水蒸気改質器(16)の内部に導入される前に、少なくとも部分的に取り出され、前記第1の煙道ガス(2)から分離されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記水蒸気改質器(16)の外側に配置された前記燃焼室(3)において生成された前記第1の煙道ガス(2)が、前記燃焼ユニット(10)の内部に導入される前に空気と混合されることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記水蒸気改質器(16)が複数の燃焼ユニット(10)を具備し、前記外部燃焼室(3)からの共通の第1の煙道ガス流が全ての燃焼ユニット(10)に使用されることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記燃焼ユニット(10)に、共通のチャネルシステム(14)を介して前記第1の煙道ガス(2)が供給されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記外部燃焼室(3)からの前記第1の煙道ガス(2)が、約150℃~250℃の温度を有することを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1の煙道ガス(2)の生成中に発生した熱が、前記水蒸気改質器(16)に供給されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の方法を実施するための水蒸気改質プラント(1)。
【請求項15】
1又はそれ以上の燃焼ユニット(10)と、
前記第1の燃料ガス(3)の空気との燃焼によって前記第1の煙道ガス(2)を生成するために前記水蒸気改質器(16)の上流に配置された少なくとも1つの外部燃焼(3)室と、
前記第1の煙道ガス(2)を前記燃焼ユニット(10)に供給する手段であるチャネルシステム(14)と、
を有する水蒸気改質器(16)を具備する、請求項14に記載の水蒸気改質プラント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気改質器の燃焼ユニットに第2の燃料ガスと第1の煙道ガスとを供給する方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施するための水蒸気改質プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に増加している水素に対する需要を考慮して、生産能力の継続的な拡大及び効率面での水素製造法の最適化が進められている。効率的であり、また、したがって広く使用されている水素製造方法は水蒸気改質であり、水素は、炭化水素、例えば、天然ガス、ナフサ(原油、石油)、LPG、水素に富むガス、例えば、精製オフガス、バイオマス又は原油等から製造される。
【0003】
水蒸気改質は、典型的には、以下のプロセスチェーンに組み込まれる。
【0004】
多くの場合、水蒸気改質の上流には、例えば、投入材料の圧縮又は蒸発又は予備加熱を含む投入調製物が配置される。これには多くの場合、有機硫黄化合物だけでなく、投入材料中に存在するオレフィンも水素化ユニット内で水素化される2段階の材料脱硫が続く。ここでH2Sの形態の硫黄は、その後、例えば酸化亜鉛に吸収される。
【0005】
投入材料の調製に続いて、例えば、後続の触媒ステップに必要なプロセス蒸気量の全体が添加される。添加は、特定のモル比で実施される。比率は、投入材料流中に存在する有機炭素及びプロセス蒸気流量から形成される。
【0006】
投入材料及び燃料消費を最小限に抑え、水蒸気改質器のサイズを最小限に抑えるために、約450℃~540℃で重質炭化水素をメタン、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素に変換する予備改質を、実際の水蒸気改質の前に断熱反応器内で実施することができる。
【0007】
水蒸気改質器で水素を得るための実際の水蒸気改質は、約500℃~930℃で実施され、炭化水素、例えばメタンと水蒸気との吸熱反応の過程で起こる。
【0008】
CH4+H2O⇔CO+3H2
吸熱反応のためのエネルギーは、水蒸気改質器における燃焼によって供給される。
【0009】
飽和炭化水素の場合、一般的な形態において、以下が適用される。
【0010】
CnHm+nH2O⇔nCO+(m/2+n)H
水素収率を高めるために続くことがあり、水素製造のためのプラントの場合には、多くの場合、一酸化炭素と水(プロセス蒸気)とを反応させて二酸化炭素及び水素を得る、いわゆる水性ガスシフト反応が続く。
【0011】
CO+H2O⇔CO2+H2
最後に、水蒸気改質器から出る合成ガスは、圧力スイング吸着プラントに適した温度に冷却される。圧力スイング吸着プラントでは、CO、CO2、H2O、N2及びCH4などの不純物が効率的に分離されて、高純度の水素が得られる。
【0012】
水蒸気改質の場合の特定の問題は、サーマルNOxの形成が火炎温度と不均衡に増加し、水蒸気改質器の燃焼空間で発生する温度が比較的高いため、無視できない量の窒素酸化物(NOx)、特にサーマルNOxが生成されることである。効果的なNOx生成を最小限に抑える1つの方法は、窒素酸化物の排出を許容されるレベルまで低減するために、コスト及び資源集約的な窒素酸化物除去、特に触媒窒素酸化物除去プラントを組み込むことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、サーマル窒素酸化物の形成が、窒素酸化物除去プラントを著しく小型化し、より安価にすることができ、より資源効率的な方法で運転することができるか、又は更には回避することができるような程度まで低減される、水蒸気改質器の燃焼ユニットを供給するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明によれば、冒頭で説明したような方法によって達成され、第1の煙道ガスは、第1の燃料ガスの空気との燃焼によって水蒸気改質器の外側及び水蒸気改質器の上流に配置された外部燃焼室内で生成され、第2の燃料ガスと共に、燃焼のために水蒸気改質器の燃焼ユニット内に導入され、第1の煙道ガスは、燃焼に十分な残留酸素含有量を有する。
【0015】
これは、燃焼の最大限の段階化を行うことによって、外部燃焼室及び水蒸気改質器の両方における火炎温度が可能な限り低く保たれるという結果をもたらす。外部燃焼室では、高い空気過剰が火炎の冷却に寄与し、一方、改質器での燃焼は、第1の煙道ガス中の酸素含有量の減少に起因して窒素酸化物の生成が少なくなる。第1の燃料ガスの空気との燃焼によって外部燃焼室内で生成される第1の煙道ガスは、予備燃焼に起因して通常の21体積%未満の酸素を含むため、改質器内の水蒸気改質器の燃焼ユニットの燃焼のための第1の煙道ガスとの第2の燃料ガスの実際の燃焼は、もはやこの燃焼段階化がない場合と同様に急速に発生せず、したがって高温で発生しなくなる。これにより、サーマル窒素酸化物の形成が大幅に低減される。観測されたサーマル窒素酸化物の形成の減少は50%を超える範囲であるため、窒素酸化物除去システムの使用を回避することができ、又は窒素酸化物除去プラントを著しく小型化し、著しくより資源効率的な方法で運転することができる。
【0016】
本発明による方法の更なる利点は、燃焼空気が、例えば始動時又は低温の周囲温度の場合に予備加熱され、したがって、例えば煙道ガス加熱燃焼空気予備加熱器における凝結のリスクがなくなることである。さらに、水蒸気改質器は、第1の燃焼ユニットの着火前に既に均一な高温に加熱される。
【0017】
本発明の開発において、第2の燃料ガス及び第1の煙道ガスは、第1の煙道ガスの残留酸素含有量が第2の燃料ガスの完全燃焼に十分な量比で水蒸気改質器の燃焼ユニットに導入される。これにより、第2の燃料ガス中に存在するエネルギー含有量の効率的な利用が保証され、望ましくない副生成物、例えば一酸化炭素のより高い割合の生成につながる第2の燃料ガスの不完全燃焼が回避される。特に、水蒸気改質器の燃焼ユニットへの更なる酸素含有ガスの導入を省略することができる。
【0018】
第1の煙道ガスの残留酸素含有量は、第2の燃料ガスの完全燃焼のための化学量論比を1%~30%上回ることが好ましい。化学量論比を15%超えて上回る残留酸素含有量は、例えば、熱工学的理由から高い煙道ガス流が所望される場合に有利であり得る。NOx低減及び完全燃焼の更なる改善のために、化学量論比を5%~15%上回る残留酸素含有量が好ましい。この範囲における酸素過剰は、燃焼ユニットにおける実際の条件下で第2の燃料ガスの完全燃焼を確実に達成することを可能にすることが見出された。燃焼ユニットの燃焼室内の残留酸素含有量が高いほど、窒素酸化物の形成が増加した。したがって、この範囲における残留酸素含有量は、窒素酸化物の低排出と相まって完全燃焼を可能にする。
【0019】
水蒸気改質器の燃焼ユニットに導入される際の第1の煙道ガス中の残留酸素含有量は、10体積%~19体積%の範囲が好ましい。第1の煙道ガスを燃焼ユニットに導入する前の空気の混合は、外部燃焼室から出る際の第1の煙道ガスの残留酸素含有量がこの範囲を下回る場合に好ましい。空気と比較して残留酸素含有量が減少した結果として、第1の煙道ガスの燃焼ユニットにおける燃焼において不活性挙動を示す成分の割合が増加する。したがって、第2の燃料ガスの燃焼中に火炎がより大きな体積を占め、その結果、単位体積当たりの熱エネルギーが減少する。さらに、不活性成分も熱を吸収する。いずれの効果も、火炎温度を低下させ、したがって窒素酸化物の生成を減少させるという結果をもたらす。10体積%未満の残留酸素含有量では、燃焼ユニットにおける必要な反応体積が十分に大きくなり、均一な反応条件を提供することが更に困難になる。さらに、そのような低い残留酸素含有量を達成するには、予備燃焼における強力な加熱を必要とし、それ自体が窒素酸化物の増加をもたらす。
【0020】
本発明によるこの方法の開発において、第1の煙道ガスの温度は、第1の煙道ガスと混合する第2の燃料ガスが自然燃焼、すなわち点火源なしで燃焼するように調整される。それによってもたらされる自己着火は、一般的に存在するバーナーにおけるポータブル点火器又は恒久的に設置された点火器を有する人員が、もはや改質器における燃焼を開始する必要がないため、高価で複雑なバーナー制御手段を省略することによって、水蒸気改質プラントの運転をかなり容易にする。これもまた、本発明による方法が、水蒸気改質プラントのより経済的な運転に寄与するのに役立つ。
【0021】
第2の燃料ガスが天然ガスを含有する場合、第1の煙道ガスの温度は、燃焼ユニットへの導入時に少なくとも700℃であることが好ましい。これにより、第2の燃料ガスの自己着火を確実に確保することを可能にする。
【0022】
本発明による方法の好ましい実施形態において、水蒸気改質器の上流に配置された外部燃焼室において形成された熱エネルギーは、水蒸気改質器の燃焼ユニット用の第1の煙道ガスを予備加熱するためにのみ利用される。本文脈において、改質器の外側に配置された燃焼ユニットにおける燃焼は、他の媒体への熱放出なしに実施される。第1及び第2の燃料ガスの合計は、従来技術のように改質器における単独燃焼の場合に必要とされる燃料ガス量に相当するため、本発明による方法の利点を放棄する必要なく、従来技術と比較して追加の燃料ガスを使用する必要はない。そのような方法方式は、上流の外部燃焼室の使用によって全体の質量及び熱のバランスが変化しないため、既存のプラントの改良ソリューションの場合に特に有利である。
【0023】
本発明による方法の代替的実施形態において、水蒸気改質器の上流に配置された外部燃焼室において燃焼中に形成された熱エネルギーは、水蒸気改質器に導入される前に、少なくとも部分的に取り出され、第1の煙道ガスから分離される。したがって、燃焼は、他の媒体への熱放出を伴って改質器の外側に配置された燃焼ユニットにおいて実施され、したがって第1の煙道ガスの温度を更に低下させる。このこと及び酸素含有量の減少の結果として、改質器におけるサーマル窒素酸化物の形成が更により減少する。
【0024】
本発明による方法の特に好ましい発展形態において、改質器の外側に配置された燃焼室において生成された第1の煙道ガスは、燃焼ユニットに導入される前に空気と混合される。これにより、外部燃焼室におけるサーマル窒素酸化物の形成が更に最小限に抑えられ、及び/又は燃焼室の寸法を縮小することができるように、第1の燃料ガスに対する燃焼空気の比を調整するための更なる自由度が開かれる。燃焼空気の予備加熱の場合、これは、外部燃焼室における燃焼に関与しない部分に限定される。外部燃焼室における燃焼に関与する低温の空気の割合は、サーマル窒素酸化物の形成を更により減少させる。
【0025】
本発明による方法の特に単純な変形例において、水蒸気改質器は複数の燃焼ユニットを備え、外部燃焼室からの共通の第1の煙道ガス流が全ての燃焼ユニットに使用される。共通の煙道ガス流は、同一の構造の燃焼ユニットにおける燃焼条件が同様に同一であることを確保する。共通の煙道ガス流への制限は、予備燃焼の制御を更に単純化する。本発明による方法の開発において、複数の燃焼ユニットに、共通のチャネルシステムを介して第1の煙道ガスを供給することができ、したがってチャネルシステムを比較的単純にすることができる。
【0026】
本発明による方法の変形例において、サーマル窒素酸化物の形成を最小限に抑えることに関する開発において、燃焼空気は、他のあらゆる予備加熱なしで外部燃焼室に供給され、その中でほんの少量の燃料ガスの燃焼が生じる。外部燃焼室からの第1の煙道ガスは、約150℃~250℃の温度を有する。これは、燃焼空気が他のあらゆる予備加熱なしで外部燃焼室に供給され、それに対応して第1の燃焼ガスの量が少ない場合であり得る。改質器燃焼室における燃焼中のサーマル窒素酸化物の形成は著しく低減され、一方、この比較的低温の第1の煙道ガスは同時に、第1の煙道ガスを燃焼ユニットに供給するチャネルシステムの単純な構造及び材料選択を可能にする。
【0027】
本発明による方法の特にエネルギー効率の良い開発において、第1の煙道ガスの生成中に発生した熱は、水蒸気改質器に供給される。
【0028】
本発明はさらに、本発明による方法を実施するための水蒸気改質プラントに関する。
【0029】
この目的のために、水蒸気改質プラントは、好ましくは、1つ又は複数の燃焼ユニットと、第1の燃料ガスの空気との燃焼によって第1の煙道ガスを生成するために水蒸気改質器の上流に配置された少なくとも1つの外部燃焼室と、第1の煙道ガスを燃焼ユニットに供給する手段であるチャネルシステムとを有する水蒸気改質器を備える。
【0030】
本発明は、添付の図面を参照して例示的な実施形態に基づいて以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による方法を実施するための水蒸気改質プラントの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による方法を実施するための水蒸気改質プラント1の概略図である。第1のステップにおいて、第1の燃料ガス4の空気5との燃焼によって、水蒸気改質器16の外側及び水蒸気改質器16の上流に配置された外部燃焼室3内に第1の煙道ガス2が生成される。しかしながら、第1の煙道ガス2を生成するための2つ以上の外部燃焼室を設けることも可能である。外部燃焼室は、互いに平行及び/又は直列に配置してもよい。空気5、特に周囲空気は、例えば送風機6によって外部燃焼室3に送られ、空気5の温度は、任意選択の熱交換器7を介して調整してもよい。
【0033】
続いて、第2のステップにおいて、任意選択の熱交換器8で温度を調整するために冷却又は加熱されていてもよい外部燃焼室3から出る生成された第1の煙道ガス2は、第2の燃料ガス9と共に、燃焼のために水蒸気改質器16の燃焼ユニット10内に導入される。これにより、外部燃焼室3及び改質器燃焼室11への局所的な分離に起因して全体的な燃焼が非常に著しく段階化されるため、火炎温度が可能な限り低く保たれる。
【0034】
したがって、第1の燃料ガス4の空気5との燃焼によって外部燃焼室3内で生成される第1の煙道ガス2は、通常の21体積%未満の酸素を含むため、改質器内の水蒸気改質器の燃焼ユニットの燃焼のための第1の煙道ガス2との第2の燃料ガス9の実際の燃焼は、もはやそのような燃焼段階化がない場合と同様に急速に/高温で発生しなくなる。
【0035】
改質器バーナーとも呼ばれる少なくとも1つの燃焼ユニット10に加えて、各水蒸気改質器16は、耐火材料で作られた燃焼室11と、少なくとも1つの改質器管12とを備える。少なくとも1つの改質器バーナー10は、例えば燃焼室11の上部表面若しくは底部表面に、又は他に壁上に配置され、改質器管12間の中間空間を燃焼させる。これにより、改質器管12間の体積が加熱され、したがって改質器管12が加熱される。水蒸気改質反応が進行する改質器管12には、多くの場合、この目的のために触媒が含まれている。
【0036】
同様に、
図1から、バーナー13を備える外部燃焼室3からの共通の第1の煙道ガス流が、全ての改質器バーナー10に使用されていることが明らかである。改質器バーナー10には、共通のチャネルシステム14を介して第1の煙道ガス2が供給され、したがって、必要なチャネルシステム14を比較的単純にすることが可能となる。燃焼による煙道ガスは、第2の煙道ガス15として水蒸気改質器16から排出される。
【符号の説明】
【0037】
1 水蒸気改質プラント
2 第1の煙道ガス
3 外部燃焼室
4 第1の燃料ガス
5 空気
6 送風機
7 熱交換器
8 熱交換器
9 第2の燃料ガス
10 燃焼ユニット/改質器バーナー
11 燃焼室
12 改質器管
13 バーナー
14 チャネルシステム
15 第2の煙道ガス
16 水蒸気改質器
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気改質器(16)の燃焼ユニット(10)に第2の燃料ガス(9)と第1の煙道ガス(2)とを供給する方法であって、
前記第1の煙道ガス(2)が、
第1の燃料ガス(4)の空気(5)との燃焼によって前記水蒸気改質器(16)の外側及び該水蒸気改質器(16)の上流に配置された外部燃焼室(3)内において生成され、
前記第2の燃料ガス(9)と共に、燃焼のために前記水蒸気改質器(16)の前記燃焼ユニット(10)の内部に導入され、
前記第1の煙道ガス(2)が、前記燃焼に十分な残留酸素含有量を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2の燃料ガス(9)及び前記第1の煙道ガス(2)が、前記第1の煙道ガス(2)の前記残留酸素含有量が前記第2の燃料ガス(9)の完全燃焼に十分な量比で前記燃焼ユニット(10)の内部に導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の煙道ガス(2)の前記残留酸素含有量が、前記第2の燃料ガス(9)の完全燃焼のための化学量論比を1%~30%
上回ることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の煙道ガス(2)の前記残留酸素含有量が、前記第2の燃料ガス(9)の完全燃焼のための化学量論比を5%~15%上回ることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記燃焼ユニット(10)の内部に導入される際の前記第1の煙道ガス(2)中の前記残留酸素含有量が、10体積%~19体積%の範囲であることを特徴とする、請求項1から請求項
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の煙道ガス(2)の温度は、前記第1の煙道ガス(2)と混合する第2の燃料ガス(9)が自然燃焼するように、調整されることを特徴とする、請求項1から請求項
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2の燃料ガス(9)が天然ガスを含有し、前記第1の煙道ガス(2)の温度が前記燃焼ユニット(10)の内部に導入される際に少なくとも700℃であることを特徴とする、請求項1から請求項
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記水蒸気改質器(16)の上流に配置された前記外部燃焼室(3)において形成された熱エネルギーが、前記水蒸気改質器(16)の前記燃焼ユニット(10)用の前記第1の煙道ガス(2)を予備加熱するためにのみ利用されることを特徴とする、請求項1から請求項
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記水蒸気改質器(16)の上流に配置された前記外部燃焼室(3)において燃焼中に形成された熱エネルギーが、前記水蒸気改質器(16)の内部に導入される前に、少なくとも部分的に取り出され、前記第1の煙道ガス(2)から分離されることを特徴とする、請求項1から請求項
7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記水蒸気改質器(16)の外側に配置された前記燃焼室(3)において生成された前記第1の煙道ガス(2)が、前記燃焼ユニット(10)の内部に導入される前に空気と混合されることを特徴とする、請求項1から請求項
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記水蒸気改質器(16)が複数の燃焼ユニット(10)を具備し、前記外部燃焼室(3)からの共通の第1の煙道ガス流が全ての燃焼ユニット(10)に使用されることを特徴とする、請求項1から請求項
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記燃焼ユニット(10)に、共通のチャネルシステム(14)を介して前記第1の煙道ガス(2)が供給されることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記外部燃焼室(3)からの前記第1の煙道ガス(2)が、
150℃~250℃の温度を有することを特徴とする、請求項1から請求項
12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第1の煙道ガス(2)の生成中に発生した熱が、前記水蒸気改質器(16)に供給されることを特徴とする、請求項1から請求項
13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項
14のいずれかに記載の方法を実施するための水蒸気改質プラント(1)。
【請求項16】
1又はそれ以上の燃焼ユニット(10)と、
前記第1の燃料ガス(3)の空気との燃焼によって前記第1の煙道ガス(2)を生成するために前記水蒸気改質器(16)の上流に配置された少なくとも1つの外部燃焼(3)室と、
前記第1の煙道ガス(2)を前記燃焼ユニット(10)に供給する手段であるチャネルシステム(14)と、
を有する水蒸気改質器(16)を具備する、請求項
15に記載の水蒸気改質プラント(1)。
【国際調査報告】