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特表2023-550817フラッシュアルミナ担体を含む触媒を使用する水素化脱硫方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】フラッシュアルミナ担体を含む触媒を使用する水素化脱硫方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/08 20060101AFI20231128BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 27/19 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C10G45/08 Z
B01J37/08
B01J37/10
B01J37/00 D
B01J35/10 301J
B01J27/19 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532267
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021082065
(87)【国際公開番号】W WO2022112077
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2012315
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ルフレーヴ フィリベール
(72)【発明者】
【氏名】ジラール エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】フェカン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンズ シャルリー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BB05C
4G169BB20C
4G169BC57A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC65A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC69A
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CC02
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA04X
4G169EA04Y
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC07Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FA02
4G169FB10
4G169FB14
4G169FB29
4G169FB50
4G169FB61
4G169FB67
4G169FB77
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA16
4H129KA07
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC32X
4H129KC32Y
4H129KD13X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD17X
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD22X
4H129KD22Y
4H129KD23X
4H129KD37X
4H129KD37Y
4H129NA03
4H129NA26
4H129NA27
4H129NA30
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、硫黄含有オレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫のための方法であって、ガソリン留分、水素、及び、0.1秒から5秒の間の時間、400℃から1200℃の間の温度で水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを脱水することによって得られたアルミナ担体と、第VIB族からの少なくとも1つの金属と、第VIII族からの少なくとも1つの金属と、リンとを含み、リンと第VIB族の金属の間のモル比が0.2から0.35の間である触媒、を接触させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有オレフィン系ガソリン留分、水素及び触媒を接触させる前記硫黄含有オレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫方法であって、前記水素化脱硫方法は、温度が200℃から400℃の間、総圧力が1から3MPaの間、触媒の体積に対する原料の体積の流量として定義される毎時空間速度が1から10h-1の間、及び、水素/ガソリン留分の体積比が100から600Sl/lの間で実施され、前記触媒は、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間の時間、400から1200℃の間の温度で脱水することによって得られるアルミナ担体と、第VIb族からの少なくとも1つの金属、第VIII族からの少なくとも1つの金属、及び、リンを含み、第VIb族からの金属に対するリンのモル比は、0.2から0.35の間である、方法。
【請求項2】
第VIb族からの前記金属に対する前記リンのモル比が0.23から0.35の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒の第VIb族からの前記金属に対する第VIII族からの前記金属のモル比が0.1から0.8の間である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
酸化物の形態で表される、前記触媒の第VIb族からの金属の含有量が、前記触媒の総重量に対して1重量%から30重量%の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸化物の形態で表される、前記触媒の第VIII族からの金属の含有量が、前記触媒の前記総重量に対して0.3重量%から10重量%の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
の形態で表される、リンの含有量が、前記触媒の前記総重量に対して0.1重量%から10重量%の間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第VIII族からの前記金属がコバルトである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第VIb族からの前記金属がモリブデンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミナ担体が、ビーズの形態で提供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ビーズの形態の前記アルミナ担体が、以下の工程、
s1)アルミナ粉末を得るために、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間、好ましくは0.1秒から4秒の間の時間、400℃から1200℃の間、好ましくは600℃から900℃の間の温度で、脱水する工程、
s2)工程s1)で得られた前記アルミナ粉末をビーズの形態に成形する工程、
s3)工程s2)において得られたビーズを、200℃以上、好ましくは200℃から1200℃の間、より選好的には300℃から800℃の間、さらにより選好的には300℃から750℃の間の温度で熱処理する工程、
を含む調製方法によって得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビーズの形態の前記アルミナ担体が、さらに、以下の工程、
s4)水又は水溶液で含浸させ、次いで100℃から300℃の間の温度でオートクレーブ中に滞留させることにより工程s3)の終了時に得られた材料を水熱処理する工程、
s5)500℃から1100℃の間の温度で、工程s4)の終了時に得られた材料を焼成する工程、
を含む調製方法によって得られる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ビーズの形態の前記アルミナ担体が、50から420m2/gの間の比表面積を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ビーズの形態の前記アルミナ担体が、50から210m2/gの間の比表面積を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミナ担体が、押出成形物の形態で提供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
押出成形物の形態の前記アルミナ担体が、以下の工程、
s1’)アルミナベースの材料を得るために、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間、好ましくは0.1秒から4秒の間の時間、400℃から1200℃の間、好ましくは600℃から900℃の間の温度で、脱水する工程、
s2’)押出された材料を得るために、工程s1’)の終了時に得られた前記アルミナベースの材料を混錬及び押出する工程、
s3’)200℃以上の温度で熱処理する工程、
s4’)水又は水溶液、選好的には酸性水溶液で含浸させ、次いで100℃から300℃の間、好ましくは150℃から250℃の間の温度でオートクレーブ中に滞留させることにより工程s3’)の終了時に得られた前記材料を水熱処理する工程、
s5’)500℃から1100℃の間、選好的には550℃から800℃の間の温度で、工程s4’)の終了時に得られた前記材料を焼成する工程、
を含む調製方法によって得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
押出成形物の形態の前記アルミナ担体が、50から210m2/gの間の比表面積を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムがハイドラルジライトである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ガソリンが接触分解ユニットから得られるガソリンである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン留分、特に、流動床接触分解ユニットから得られるガソリン留分の水素化処理の分野に関する。より詳細には、本発明は、オレフィン及び芳香族化合物を水素化することなく硫黄含有化合物の含有量を低減することが求められる、硫黄を含有するオレフィン系ガソリン留分、例えば、接触分解から得られたガソリンの水素化脱硫におけるプロセスにおける触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製及び石油化学は現在新しい制約を受けている。というのも、どの国も徐々に厳格な硫黄規格を採用しつつあり、その目的は、例えば、欧州及び日本においては、市販のガソリン中の硫黄を10重量ppmにすることである。硫黄含有量を低減するという問題は、基本的に、ガソリンプール中の硫黄の主前駆体である、接触分解(FCC又は流動接触分解)又は非触媒分解(コーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解)のいずれかによって得られるガソリンに焦点が当てられている。
【0003】
硫黄含有量を低減するための当業者に周知の解決策は、水素及び不均一触媒の存在下で、炭化水素留分(特に接触分解ガソリン)の水素化処理(又は水素化脱硫)を実施することからなる。しかし、このプロセスは、使用する触媒が十分に選択的ではない場合、オクタン価の極めて著しい低下を引き起こすという大きな欠点を示す。このオクタン価の低減は、特に、水素化脱硫と同時の、このタイプのガソリン中に存在するオレフィンの水素化と関連している。したがって、他の水素化処理プロセスとは異なり、ガソリンの水素化脱硫は、ガソリンの極端な水素化脱硫と、存在する不飽和化合物の水素化の制限という二重の拮抗的な制約に対応できるようにしなくてはならない。
【0004】
この二重の問題に対応する1つの方法は、水素化脱硫において活性であり、またオレフィンの水素化のための反応に対して水素化脱硫において極めて選択的でもある水素化脱硫触媒を利用することからなる。
【0005】
触媒にリンを添加すると脱硫活性が向上することが長年にわたって実証されてきた(例えば、特許文献1を参照されたい)。これは一般に、触媒の調製時に含浸液にリン酸の形態で添加される。特許文献2では、触媒の重量に対してリンの重量の割合が0.5重量%~10重量%の範囲でリンの添加が規定されており、特許文献3では、0.1重量%~10重量%の範囲で規定されている。リンはまた、特許文献4及び特許文献5に示されるように、炭化水素原料の水素化脱硫のための活性のためのドーパントとして使用される。
【0006】
特許文献6には、CoMoPをベースとする活性相を、混錬及び押出成形されたべーマイトゲルから得られる担体上に沈着させた触媒が開示されている。これらの触媒のP/Moモル比は、0.1から0.3の間である。この文献では、このタイプの触媒は、フラッシュアルミナから得られる担体、すなわちハイドラルジライト(hydrargillite)の急速脱水によって得られる担体を含むCoMoP触媒との比較において改善されたオレフィンの水素化に関して、水素化脱硫における活性だけでなく水素化脱硫における選択性も示すことが実証されている。開示されたフラッシュアルミナ担体上のCoMoP触媒は、0.15のP/Moモル比を有する。
【0007】
特許文献7には、その活性相が、CoMoPをベースとする活性相を、135m/g未満の比表面積を有するアルミナからなる担体上に沈着された触媒が開示されている。これらの触媒のP/Moモル比は、0.27から2.00の間であり、より高められた技術的効果のためには、0.50から0.95の間の範囲である。この好ましい範囲のP/Moモル比によって、脱硫活性の低下にもかかわらず選択性の改善が可能となる。
【0008】
したがって、特に、水素化脱硫における触媒活性及び/又は選択性の観点から改善されている触媒性能品質を示し、したがって、一旦使用されると、オクタン価を著しく低下させることなく、低い硫黄含有量を有するガソリンを生成することを可能にする水素化脱硫触媒、特にガソリン留分の水素化脱硫のための水素化脱硫触媒に対して、精製業者の間で強い関心が今日も依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3287280号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0261124号明細書
【特許文献3】米国特許第6746598B1号明細書
【特許文献4】米国特許第4880525号明細書
【特許文献5】米国特許第5246569号明細書
【特許文献6】欧州特許第2925433号明細書
【特許文献7】米国特許第7981828号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに関連して、本発明の目的の1つは、従来技術の既知プロセスのものと、少なくとも同程度に良好、実際にはそれよりもさらに良好である、活性及び選択性における性能品質を示す担持された触媒の存在下での硫黄含有オレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、硫黄含有オレフィン系ガソリン留分、水素及び触媒を接触させる硫黄含有オレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫方法であって、前記水素化脱硫方法は、温度が℃から400℃の間、総圧力が1から3MPaの間、触媒の容量に対する原料の容量の流量として定義される毎時空間速度が1から10h-1の間、及び、水素/ガソリン留分の体積比が100から600Sl/lの間で実施され、前記触媒は、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間の時間、400から1200℃の間の温度で、脱水することで得られるアルミナ担体、第VIb族からの少なくとも1つの金属、第VIII族からの少なくとも1つの金属、及び、リンを含み、第VIb族からの金属に対するリンのモル比は、0.2から0.35の間である、方法である。
【0012】
本出願人企業は、驚くべきことに、第VIb族からの少なくとも1つの金属、第VIII族からの少なくとも1つの金属、及び、リンをベースとし、リンに対する第VIb族からの元素の特定のモル比を有する触媒を、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムの脱水によって得られる担体上で、水素化脱硫プロセスにおいて使用することが、前記方法の触媒性能品質を触媒活性及び選択性の観点から改善することを可能にすることを発見した。これは、先行技術において使用されるものと同一作動条件下で、原料のより良好な転化率をもたらす。これは、いずれか1つの科学的理論にこだわることなく、第VIb族及び第VIII族からの金属並びにリンの明確に定義された組成を有する(リンに対する第VIb族からの元素の特定のモル比を有する)活性相を含む触媒の利用が、活性相の硫化を最大化することを可能にし、その結果、水素化脱硫における活性を促進することを可能にするためであり、またその一方で、「フラッシュ」経路によって調製された担体の使用が、担体の表面と活性相の間の相互作用を最適化することを可能にし、触媒の選択性を向上させるためである。
【0013】
1つ以上の実施形態によれば、第VIb族からの金属に対するリンのモル比は、0.23から0.35の間である。
【0014】
1つ以上の実施形態によれば、触媒の第VIb族の金属に対する第VIII族からの金属のモル比は、0.1から0.8の間である。
【0015】
1つ以上の実施形態によれば、酸化物の形態で表される、前記触媒の第VIb族からの金属の含有量は、触媒の総重量に対して1重量%から30重量%の間である。
【0016】
1つ以上の実施形態によれば、酸化物の形態で表される、前記触媒の第VIII族からの金属の含有量は、前記触媒の総重量に対して0.3重量%から10重量%の間である。
【0017】
1つ以上の実施形態によれば、P形態で表される、リンの含有量は、前記触媒の総重量に対して0.1重量%から10重量%の間である。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、第VIII族からの金属はコバルトである。
【0019】
1つ以上の実施形態によれば、第VIb族からの金属はモリブデンである。
【0020】
1つ以上の実施形態によれば、アルミナ担体は、ビーズの形態で提供される。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、アルミナ担体がビーズの形態である場合には、前記アルミナ担体は、以下の工程を含む調製方法によって得られる:
s1)アルミナ粉末を得るための、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間、好ましくは0.1秒から4秒の間の時間、400℃から1200℃の間、好ましくは600℃から900℃の間の温度で脱水する工程、
s2)工程s1)で得られた前記アルミナ粉末をビーズの形態へ成形する工程、
s3)工程s2)において得られたビーズを、200℃以上、好ましくは200℃から1200℃の間、より好ましくは300℃から800℃の間、さらにより好ましくは300℃から750℃の間の温度で熱処理する工程。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、アルミナ担体がビーズの形態である場合には、前記アルミナ担体は、以下の工程をさらに含む調製プロセスによって得られる:
s4)工程s3)の終了時に得られた材料を、水又は水溶液に含浸させ、次いで100℃から300℃の間の温度のオートクレーブ中に滞留させることにより、水熱処理する工程、
s5)工程s4)の終了時に得られた材料を、500℃から1100℃の間の温度で焼成する工程。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、ビーズの形態のアルミナ担体は、50から420m2/gの間の比表面積を示す。
【0024】
1つ以上の実施形態によれば、ビーズの形態のアルミナ担体は、50から210m2/gの間の比表面積を示す。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、アルミナ担体は、押出成形物の形態で提供される。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、押出成形物の形態のアルミナ担体は、以下の工程を含む調製方法によって得られる:
s1’)アルミナベースの材料を得るための、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間、好ましくは0.1秒から4秒の間の時間、400℃から1200℃の間、好ましくは600℃から900℃の間の温度で脱水する工程、
s2’)押出成形された材料を得るための、工程s1’)の終了時に得られたアルミナベースの材料の混錬及び押出工程、
s3’)200℃以上の温度で熱処理する工程、
s4’)工程s3’)の終了時に得られた前記材料を、水又は水溶液に、選好的には酸性水溶液に含浸させ、次いで、100℃から300℃の間、好ましくは150℃から250℃の間の温度のオートクレーブ中に滞留させることにより、水熱処理する工程、
s5’)工程s4’)の終了時に得られた材料を、500℃から1100℃の間、選好的には550℃から800℃の間の温度で焼成する工程。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、押出成形物の形態のアルミナ担体は、50から210m2/gの間の比表面積を示す。
【0028】
1つ以上の実施形態によれば、前記水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムは、ハイドラルジライトである。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、ガソリンは、接触分解ユニットから得られるガソリンである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.定義
続いて、CAS分類に従って化学元素の族が与えられる(CRC Pressによって出版されたCRC Handbook of Chemistry and Physics、編集長D.R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新しいIUPAC分類による8、9及び10列の金属に対応する。
【0031】
全細孔容積は、規格ASTM D4284-92に従い、例えばMicromeritics(商標)ブランドのAutopore III(商標)デバイスを使用して、140°の濡れ角で水銀ポロシメトリーにより測定される。
【0032】
BET比表面積は、規格ASTM D3663-03に準拠した窒素物理吸着によって測定され、この方法は、Rouquerol F., Rouquerol J.及びSingh K.による研究、“Adsorption by Powders & Porous Solids: Principles, Methodology and Applications”, Academic Press, 1999に記載されている。
【0033】
第VIII族からの金属、第VIb族からの金属、及び、リンの含有量は、蛍光X線によって測定される。
2.説明
担体の調製
本発明による方法において使用される触媒のアルミナ担体は、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムタイプの前駆体、好ましくは、例えば、一般に「バイエル」プロセス(バイヤー法)と呼ばれるプロセスから得られたハイドラルジライトを使用し、前記前駆体が急速脱水されることによって得られる。この方法は、特に、P. Euzen, P. Raybaud, X. Krokidis, H. Toulhoat, J. L. Le Loarer, J. P. Jolivet and C. Froidefond, Alumina, in Handbook of Porous Solids, edited by F. Schuth, K. S. W. Sing and J. Weitkamp, Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002, pp. 1591-1677の文献に詳細に記載されている。この方法により、一般に「フラッシュアルミナ」と呼ばれるアルミナを生成することを可能にする。
【0034】
第1の代替的な実施形態によれば、本発明による方法において使用される担体は、ビーズの形態で提供される。担体の調製は、以下の工程を含む:
s1)アルミナ粉末を得るための、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間、好ましくは0.1秒から4秒の間の時間、400℃から1200℃の間、好ましくは600℃から900℃の間の温度で脱水する工程、
s2)工程s1)で得られた前記アルミナ粉末をビーズの形態へ成形する工程、
s3)工程s2)において得られたビーズを、200℃以上、好ましくは200℃から1200℃の間、より選好的には300℃から800℃の間、さらにより選好的には300℃から750℃の間の温度で熱処理する工程。
【0035】
工程s1)は、乾燥空気又は湿度の高い空気といった高温ガスの流れの存在下で実施されることで、蒸発した水を迅速に除去して巻き込みうるのが好ましい。
【0036】
水酸化アルミニウムは、ハイドラルジライト、ギブサイト又はバイヤライトから選択できる。オキシ水酸化アルミニウムは、べーマイト又はダイアスポアから選択できる。
【0037】
好ましくは、工程s1)は、ハイドラルジライトを使用して実施される。
【0038】
工程s1)は、工程s2)を実施する前に少なくとも2回実施されるのが好ましい。
【0039】
好ましくは、工程s1)の終了時に得られるアルミナ粉末は、10から200μmの間の粒子サイズに粉砕され、その後、工程s2)において成形される。
【0040】
一般に、工程s1)の終了時に得られるアルミナ粉末は、水又は酸性水溶液で洗浄される。洗浄工程が酸性水溶液を用いて実施される場合には、任意の無機酸又は有機酸、好ましくは、無機酸については硝酸又は硫酸、有機酸についてはカルボン酸(ギ酸、酢酸又はマロン酸)、スルホン酸(パラ-トルエンスルホン酸)又は硫酸エステル(ラウリル硫酸塩)を使用することができる。
【0041】
触媒の担体をビーズの形態に成形するという工程s2)は、一般に、回転造粒機又は回転ドラムなどの回転技術によって実施される。造粒と呼ばれる当業者に周知のこのタイプのプロセスによって、直径及び細孔分布が制御されたビーズを得ることが可能となり、これらの寸法及び細孔分布は、一般に、凝集工程の間に形成される。細孔は、アルミナ粉末の粒子サイズ分布の選択又は異なる粒子サイズ分布を有する複数のアルミナ粉末の凝集などの種々の手段によって作出できる。好ましくは、アルミナ担体は、ビーズの形態に成形され、その直径は、好ましくは0.8から10mmの間、より選好的には1から5mmの間である。好ましくは、成形工程s2)は、500から1100kg/mの間、選好的には700から950kg/mの間の原充填密度からなるアルミナビーズを得るように実施される。
【0042】
代替的な下位実施形態によれば、上記の工程s2)の際の、担体を得るための別の成形方法は、凝集工程の前又は凝集工程の間に、工程s1)の終了時に得られたアルミナ粉末と、加熱すると消失し、その結果、ビーズに細孔を作出する細孔形成化合物と呼ばれる1つ以上の化合物を混合することからなる。使用される細孔形成化合物としては、例として、木粉、木炭、カーボンブラック、硫黄、タール、プラスチック又はプラスチックのエマルション、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナフタレンなどを言及することができる。添加される細孔形成化合物の量は、所望の体積によって決定される。
【0043】
工程s3)によれば、ビーズの形態に成形されたアルミナ粉末は、一般に1から24時間、好ましくは1から6時間の間の時間、200℃以上、好ましくは200℃から1200℃の間、好ましくは300℃から800℃の間、さらにより選好的には300℃から750℃の間の温度で熱処理される。工程s3)の終了時に、得られたアルミナビーズは、50から420m2/gの間、好ましくは60から350m2/gの間、さらにより選好的には80から300m2/gの間の比表面積を有する。
【0044】
本発明による代替的な実施形態では、凝集体を得るために、工程s3)の終了時に得られたアルミナビーズは、水又は水溶液、好ましくは酸性水溶液で含浸させられ、次いで前記アルミナビーズを100℃から300℃の間、好ましくは150℃から250℃の間の温度のオートクレーブ中に滞留させられることによる水熱処理工程s4)をさらに施される。水熱処理工程s4)は、一般に、100℃から300℃の間、好ましくは150℃から250℃の間の温度で、45分より長い、選好的には1時間から24時間の間、極めて選好的には1.5時間から12時間の間の時間実施される。水熱処理は、一般に、1つ以上の無機酸及び/又は有機酸、好ましくは、硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、その溶液が4未満のpHを有する弱酸、例えば、酢酸又はギ酸を含む酸性水溶液を使用して実施される。一般に、前記酸性水溶液はまた、アルミニウムイオンと結合可能な陰イオンを放出できる1つ以上の化合物、好ましくは、硝酸(例えば、硝酸アルミニウム)、塩素、硫酸、過塩素酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸又はジブロモ酢酸イオンと、一般式R-COOの陰イオン、例えば、ギ酸及び酢酸を含む化合物を含む。
【0045】
工程s4)の終了時に得られた凝集体は、その後工程s5)において、一般に1から24時間の間、好ましくは1から6時間の間の時間、500℃から1100℃の間、好ましくは550℃から1050℃の間の温度で焼成される。この焼成は、一般に、50から210m2/gの間、好ましくは70から180m2/gの間、さらにより選好的には70から160m2/gの間の比表面積を有するアルミナビーズを得るために実施される。
【0046】
第2の代替的な実施形態によれば、本発明による方法において使用される担体は、押出成形物の形態で提供される。この第2の代替的な実施形態によれば、担体の調製は、以下の工程を含む:
s1’)アルミナベースの材料を得るための、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムを、0.1秒から5秒の間、好ましくは0.1秒から4秒の間の時間、400℃から1200℃の間、好ましくは600℃から900℃の間の温度で脱水する工程、
s2’)押出成形された材料を得るための、工程s1’)の終了時に得られたアルミナベースの材料の混錬及び押出工程、
s3’)200℃以上の温度で熱処理する工程、
s4’)工程s3’)の終了時に得られた前記材料を、水又は水溶液、選好的には酸性水溶液で含浸させ、次いで100℃から300℃の間、好ましくは150℃から250℃の間の温度のオートクレーブ中に滞留させることにより、水熱処理する工程、
s5’)工程s4’)の終了時に得られた材料を、500℃から1100℃の間、選好的には550℃から800℃の間の温度で焼成する工程。
【0047】
水酸化アルミニウムは、ハイドラルジライト、ギブサイト又はバイヤライトから選択できる。オキシ水酸化アルミニウムは、べーマイト又はダイアスポアから選択できる。
【0048】
好ましくは、工程s1’)は、ハイドラルジライトを使用することによって実施される。
【0049】
工程s2’)では、一般に、前記アルミナベースの材料の成形の際に加熱すると消失する1つ以上の細孔形成材料が添加される。前記細孔形成材料は、木粉、木炭、硫黄、タール、プラスチック物質、プラスチック物質のエマルション、ポリビニルアルコール及びナフタレンからなる群から選択される。
【0050】
工程s3’)では、工程s2’)の終了時に得られた押出成形物形態の材料は、一般に、1から24時間の間、好ましくは1から6時間の間、200℃以上、好ましくは200℃から1200℃の間、好ましくは300℃から800℃の間、より選好的には300℃から750℃の間の温度で熱処理される。工程s3’)の終了時に得られた押出成形された材料は、50から420m2/gの間、好ましくは60から350m2/gの間、さらにより選好的には80から300m2/gの間の比表面積を有する。
【0051】
工程s4’)では、水熱処理は、一般に100℃~300℃、選好的には150℃~250℃の温度で、45分より長い、選好的には1時間から24時間の間、極めて選好的には1.5時間から12時間の間の時間実施される。水熱処理は、一般に、1つ以上の無機酸及び/又は有機酸、好ましくは、硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、その溶液が4未満のpHを有する弱酸、例えば、酢酸又はギ酸を含む酸性水溶液を使用して実施される。一般に、前記酸性水溶液はまた、アルミニウムイオンと結合可能な陰イオンを放出できる1つ以上の化合物、好ましくは、硝酸(例えば、硝酸アルミニウム)、塩素、硫酸、過塩素酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸又はジブロモ酢酸イオンと、一般式R-COOの陰イオン、例えば、ギ酸及び酢酸を含む化合物を含む。
【0052】
工程s5’)では、工程s4’)の終了時に得られた材料が、500℃から1100℃の間、好ましくは550℃から1050℃の間の温度で、一般に1から24時間の間、好ましくは1から6時間の間の時間焼成される。この焼成は、一般に50から210m2/gの間、好ましくは70から180m2/gの間、さらにより選好的には70から160m2/gの間の比表面積を有する押出されたアルミナを得るために実施される。
【0053】
したがって、担体の調製工程の終了時に:
・担体がビーズの形態で提供され、かつ、調製工程が水熱処理工程s4)及び焼成工程s5)を含まない場合には、担体の比表面積は、50から420m2/gの間、好ましくは60から350m2/gの間、さらにより選好的には80から300m2/gの間である;
・担体がビーズの形態で提供され、かつ、調製工程が水熱処理工程s4)及び焼成工程s5)を含む場合には、前記担体の比表面積は、50から210m2/gの間、好ましくは70から180m2/gの間、さらにより選好的には70から160m2/gの間である;
・担体が押出成形物の形態で提供される場合、担体の比表面積は、50から210m2/gの間、好ましくは70から180m2/gの間、さらにより選好的には70から160m2/gの間である。
【0054】
担体の細孔容積は、一般に0.4cm/gから1.3cm/gの間、好ましくは0.4cm/gから1.1cm/gの間である。
触媒
本発明による水素化脱硫方法において使用される触媒は、少なくとも1つの第VIb族からの金属、少なくとも1つの第VIII族からの金属、及び、リンから形成される活性相を含む。
【0055】
触媒の活性相中に存在する第VIb族からの金属は、選好的にはモリブデン及びタングステンから選択され、より選好的にはモリブデンである。触媒の活性相中に存在する第VIII族からの金属は、選好的には、コバルト、ニッケル及びこれら2つの元素の混合物から選択され、より選好的にはコバルトである。
【0056】
一般に、第VIII族からの金属の全含有量は、酸化物の形態で表され、触媒の総重量に対して0.3重量%から10重量%の間、好ましくは0.4重量%から8重量%の間、好ましくは0.45重量%から7重量%の間、極めて好ましくは0.5重量%から6重量%の間、さらにより好ましくは0.5重量%から5重量%の間である。金属がコバルト又はニッケルである場合には、金属含有量は、それぞれCoO又はNiOとして表される。
【0057】
一般に、第VIb族からの金属の含有量は、酸化物の形態で表され、触媒の総重量に対して1重量%から30重量%の間、好ましくは2重量%から20重量%の間、好ましくは2重量%から15重量%の間、極めて好ましくは3重量%から15重量%の間である。金属が、モリブデン又はタングステンである場合には、金属含有量は、それぞれMoO又はWOとして表される。
【0058】
触媒の第VIb族からの金属に対する第VIII族からの金属のモル比は、一般に0.1から0.8の間、好ましくは0.2から0.6の間、好ましい方法では0.3から0.5の間、さらにより好ましくは0.35から0.45の間である。
【0059】
リン含有量は、一般に、触媒の総重量に対してPが、0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.3重量%から5重量%の間、さらにより選好的には0.4重量%から3重量%の間である。
【0060】
第VIb族からの金属に対するリンのモル比は、0.2から0.35の間、好ましくは0.23から0.35の間、さらにより選好的には0.25から0.35の間である。
【0061】
担体がビーズの形態で提供され、かつ、調製工程が水熱処理工程s4)及び焼成工程s5)を含まない場合は、触媒の比表面積は、40から350m2/gの間、好ましくは50から330m2/gの間、さらにより選好的には70から300m2/gの間である。
【0062】
担体がビーズの形態で提供され、かつ、調製工程が水熱処理工程s4)及び焼成工程s5)を含む場合には、触媒の比表面積は、60から170m2/gの間、さらにより選好的には60から150m2/gの間である。
【0063】
担体が押出成形物の形態で提供される場合には、触媒の比表面積は、60から170m2/gの間、さらにより選好的には60から150m2/gの間である。
触媒の調製
担体への活性相の導入は、当業者に公知の任意の調製方法によって実施できる。担体への活性相の添加は、触媒前駆体を得るために、第VIb族からの金属の少なくとも1つの成分、第VIII族からの金属の少なくとも1つの成分、及び、リンを担体と接触させることからなる。
【0064】
第1の実施形態によれば、第VIb族からの金属、第VIII族からの金属及びリンの前記成分は、1以上の共含浸工程によって前記担体上に沈着される、すなわち、第VIb族からの金属、第VIII族からの金属及びリンの前記成分は、前記担体中に同時に導入される。共含浸工程(複数可)は、選好的には、乾式含浸によって、又は溶液の過剰含浸によって実施される。この第1の実施形態が、いくつかの共含浸工程の実施を含む場合には、各共含浸工程の後に、一般に200℃未満、好適には50から180℃の間、好ましくは60から150℃の間、極めて好ましくは75から140℃の間の温度で、0.5~24時間、好ましくは0.5~12時間の時間の中間乾燥の工程が続くのが好ましい。
【0065】
共含浸による好ましい実施形態によれば、含浸溶液は、好ましくは、水溶液である。好ましくは、水性含浸溶液は、コバルト、モリブデン及びリンを含む場合には、溶液中でのヘテロポリアニオンの形成を促進するpH条件下で調製される。例えば、このような水溶液のpHは、1から5の間である。
【0066】
第2の実施形態によれば、触媒前駆体は、前記担体上に、第VIb族からの金属の成分、第VIII族からの金属の成分及びリンを、任意の順序において連続的に沈着させることによって調製される。沈着は、当業者に周知の方法による乾式含浸、過剰含浸、又は沈着/沈殿によって実施できる。この第2の実施形態では、第VIb族及び第VIII族からの金属の成分及びリンの沈着は、2つの連続含浸の間に、一般に200℃未満、好適には50から180℃の間、好ましくは60から150℃の間、極めて好ましくは75から140℃の間の温度で、0.5~24時間、好ましくは0.5~12時間の時間の中間乾燥の工程を有するいくつかの含浸によって実施できる。
【0067】
利用される金属及びリンの沈着様式に関わらず、水又は有機溶媒(例えば、アルコール)等、含浸溶液の組成に関与する溶媒が、活性相の金属前駆体を溶解するように選択される。
【0068】
例として、酸化物及び水酸化物のモリブデンの供給源の中でも、モリブデン酸及びその塩、特にアンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム又はヘプタモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(HPMo1240)及びそれらの塩、任意選択で、シリコモリブデン酸(HSiMo1240)及びその塩を使用できる。モリブデンの供給源はまた、例えば、ケギン(Keggin)、空隙ケギン、置換ケギン、ドーソン(Dawson)、アンダーソン(Anderson)又はストランドバーグ(Strandberg)型の任意のヘテロポリ化合物であり得る。好ましくは、三酸化モリブデン、並びに、ケギン、空隙ケギン、置換ケギン及びストランドバーグ型のヘテロポリ化合物が使用される。
【0069】
使用できるタングステン前駆体も、当業者に周知である。例えば、酸化物及び水酸化物のタングステンの供給源の中でも、タングステン酸及びその塩、特にアンモニウム塩、例えば、タングステン酸アンモニウム又はメタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸及びそれらの塩、任意選択で、シリコタングステン酸(HSiW1240)及びその塩を使用できる。タングステンの供給源はまた、例えば、ケギン、空隙ケギン、置換ケギン又はドーソン型の任意のヘテロポリ化合物であり得る。好ましくは、酸化物及びアンモニウム塩、例えば、メタタングステン酸アンモニウム、又は、ケギン、空隙ケギンもしくは置換ケギン型のヘテロポリアニオンが使用される。
【0070】
使用できるコバルト前駆体は、好適には、例えば、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩及び硝酸塩から選択される。好ましくは、水酸化コバルト及び炭酸コバルトが使用される。
【0071】
使用できるニッケル前駆体は、好適には、例えば、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩及び硝酸塩から選択される。好ましくは、水酸化ニッケル及びヒドロキシ炭酸ニッケルが使用される。
【0072】
リンは、好適には、その調製の種々の工程で、種々の方法で触媒中に導入できる。リンは、前記アルミナ担体の成形の際に、又は、好ましくはこの成形の後に導入できる。好適には、単独で、又は、第VIb族からの金属及び第VIII族からの金属のうちの少なくとも一方との混合物として、導入できる。リンは、好ましくは、第VIb族からの金属及び第VIII族からの金属の前駆体との混合物として、金属の前駆体及びリンの前駆体を含有する溶液を使用する前記アルミナ担体の乾式含浸によって、成形されたアルミナ担体上に完全に又は部分的に導入される。リンの好ましい供給源は、オルトリン酸HPOであるが、その塩及びエステル、例えば、リン酸アンモニウム又はそれらの混合物も適している。リンはまた、例えば、ケギン、空隙ケギン、置換ケギン又はストランドバーグ型のヘテロポリアニオンの形態の第VIb族からの元素(複数可)と同時に導入することもできる。
【0073】
第VIII族からの金属、第VIb族からの金属及びリンを担体と接触させる工程(1つ又は複数)が終了すると、触媒の前駆体は、当業者に公知の任意の技術によって実施される乾式工程に付される。好適には、大気圧下で、又は、減圧下で実施される。好ましくは、この工程は大気圧下で実施される。この工程は、200℃未満、好ましくは50℃から180℃の間、好ましくは60℃から150℃の間、極めて好ましくは75℃から140℃の間の温度で実施される。
【0074】
乾式工程は、好適には、空気又は任意の他の高温ガスを使用して横断床(traversed bed)において実施される。好ましくは、乾燥が横断床において実施される場合には、使用されるガスは、空気又は不活性ガス、例えば、アルゴン又は窒素のいずれかである。極めて好ましくは、乾燥は空気の存在下で横断床において実施される。
【0075】
好ましくは、この乾燥工程は、30分から24時間の間、好ましくは1時間から12時間の間持続される。
【0076】
乾燥工程の終了時に乾燥された触媒が得られ、これは活性化工程(硫化工程)後の水素化処理触媒として使用できる。
【0077】
代替的な態様によれば、乾燥触媒を、その後、例えば空気下で200℃以上の温度での焼成工程に付すことができる。焼成は、一般に600℃以下、好ましくは200℃から600℃の間、特に好ましくは250℃から500℃の間の温度で実施される。焼成時間は、一般に0.5時間から16時間の間、好ましくは、1時間から6時間の間である。焼成は、一般に空気下で実施される。焼成によって、第VIb族及び第VIII族からの金属の前駆体を酸化物に変換することが可能となる。
【0078】
水素化処理触媒として使用する前に、乾燥された、又は任意で焼成された触媒を、硫化工程(活性化工程)に付すことが好ましい。この活性化工程は、当業者に周知の方法によって、好適には、水素及び硫化水素の存在下において、スルホ還元雰囲気下で実施される。硫化水素は直接使用することもできるし、硫化剤(例えばジメチルジスルフィド)によって生成させることもできる。
ガソリンの水素化脱硫のためのプロセス
水素化処理プロセスは、硫黄含有オレフィン系ガソリン留分を、上記のような触媒及び水素と以下の条件下で接触させることからなる:
・温度が200℃から400℃の間、好ましくは230℃から330℃の間、
・総圧力が1から3MPaの間、好ましくは1.5から2.5MPaの間、
・触媒の体積に対する原料の体積の流量であると定義される毎時空間速度(HSV)が1から10h-1の間、好ましくは2から6h-1の間、
・水素/ガソリン原料の体積比が100から600Sl/lの間、好ましくは200から400Sl/lの間。
【0079】
したがって、本発明による方法によって、任意のタイプの硫黄含有オレフィン系ガソリン留分、例えば、コーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解又は接触分解(FCC、流動接触分解)ユニットから得られた留分などを処理することが可能となる。このガソリンは、任意に他の生成プロセス、例えば、常圧蒸留(直接蒸留から得られたガソリン(又は直留ガソリン))、あるいは変換プロセス(コーキング又は水蒸気分解ガソリン)に由来するガソリンの大部分から構成することができる。前記原料は、好ましくは、接触分解ユニットから得られたガソリン留分からなる。
【0080】
原料は、好適には、硫黄含有化合物及びオレフィンを含有するガソリン留分であり、30℃から250℃未満の間、好ましくは35℃から240℃の間、好ましい態様では40℃から220℃の間の沸点を有するガソリン留分である。
【0081】
接触分解(FCC)によって生成されるガソリン留分の硫黄含有量は、FCCによって処理される原料の硫黄含有量、FCCの原料の前処理の有無及び留分の終点に依存する。一般に、ガソリン留分全体、特に、FCCに由来するものの硫黄含有量は、100重量ppmよりも多く、ほとんどの場合500重量ppmよりも多い。終点が200℃を超えるガソリンの場合、硫黄含有量は、1000重量ppmよりも多いことが多く、場合によっては4000~5000重量ppmに達することさえある。
【0082】
さらに、接触分解(FCC)ユニットから得られたガソリンは、平均で0.5重量%から5重量%の間のジオレフィン、20重量%から50重量%の間のオレフィン、及び、10ppmから0.5重量%の間の硫黄を含有し、一般に300ppm未満のメルカプタンを含む。メルカプタンは、一般に、ガソリンの軽質留分に、より具体的には、沸点が120℃未満の留分に濃縮される。
【0083】
ガソリン中に存在する硫黄含有化合物は、複素環式硫黄含有化合物、例えば、チオフェン、アルキルチオフェン又はベンゾチオフェンなど、を含むことがあることに留意すべきである。これらの複素環式化合物は、メルカプタンとは異なり、抽出プロセスによって除去することができない。これらの硫黄含有化合物は、結果として炭化水素とHSに変化する水素化処理によって除去される。
【0084】
好ましくは、本発明によるプロセスによって処置されるガソリンは、分解プロセスから得られたガソリンのブロードカット(又はフルレンジ分解ナフサのFRCN)を軽質ガソリン(軽質分解ナフサのLCN)及び重質ガソリンHCNに分離することを目的とした蒸留工程から得られた重質ガソリン(又は重質分解ナフサのHCN)である。軽質ガソリン及び重質ガソリンのカットポイントは、軽質ガソリンの硫黄含有量を制限し、好ましくは追加の後処理なしでガソリンプールにおいて使用できるようにするために決定される。ブロードカットFRCNは、蒸留工程の前に選択的水素化工程に付される。
【実施例
【0085】
【実施例1】
【0086】
触媒A(本発明による)
ビーズの形態で提供される触媒Aの担体S1は、活性アルミナ粉末を得るためにハイドラルジライト(Emplura(登録商標)、Merck(商標))のフラッシュ焼成による脱水によって得られる。高温ガス流によって、蒸発した水を極めて迅速に除去し、巻き込むことができる。温度は800℃に設定され、脱水される材料とガスとの接触時間は1秒とされる。得られた活性アルミナ粉末は10から200μmの間の粒子サイズに粉砕され、次いで水で洗浄される。その後、アルミナ粉末は造粒機によってビーズの形態に成形される。カーボンブラック(N990、Thermax(登録商標))の量は、ふるい分け後に785kg/mの生充填密度、及び、2から4mmの間の直径を有するビーズが得られるように調整される。720℃で2時間の熱処理後、ビーズは、200m/gの比表面積を示す。その後、ビーズに酸性水溶液を含浸させる水熱処理を施す。水熱処理は、回転式バスケットオートクレーブ内で、200℃の温度で6.5時間実施され、含浸溶液は硝酸アルミニウム(0.1N、Merck(商標))を含む酸性水溶液である。その後、得られた凝集体は650℃の温度で2時間焼成される。146m/gの比表面積及び0.99cm/gの全細孔容積を有するビーズの形態のアルミナ担体S1が得られる。
【0087】
担体S1は、0.95ml/gの吸水量を示す。含浸溶液は、9.3mlの蒸留水中で、1.15グラムの酸化モリブデン(MoO >99.5%、Merck(商標))、0.30グラムの水酸化コバルト(95% Co(OH)、Merck(商標))、及び、0.26グラムのリン酸(85% HPO、Merck(商標))を90℃で3時間加熱することによって調製される。10グラムの担体を乾式含浸し、水分飽和雰囲気下で12時間熟成させた後、固形物を120℃で12時間乾燥させる。その後、固形物を450℃の空気下で2時間焼成する。得られた触媒Aは、触媒の総重量に対して、2.0重量%のCoO、10重量%のMoO及び1.4重量%のPを有する、すなわち、0.38のCo/Mo原子比及び0.28のP/Mo原子比を有する。触媒Aは、0.84ml/gの全細孔容積及び118m/gの比表面積を有する。金属の含有量は、酸化物の形態で測定され、以下の表1に示される。
【実施例2】
【0088】
触媒B(本発明による)
ビーズの形態で提供される触媒Bの担体S2は、活性アルミナ粉末を得るためにハイドラルジライト(Emplura(登録商標)、Merck(商標))をフラッシュ焼成して脱水することによって得られる。高温ガス流によって、蒸発した水を極めて迅速に除去し、巻き込むことが可能になる。温度は800℃に設定され、脱水されるべき材料とガスとの接触時間は1秒とされる。得られた活性アルミナ粉末は10から200μmの間の粒子サイズに粉砕され、次いで、水で洗浄される。その後、アルミナ粉末は造粒機によってビーズの形態に成形される。ビーズは、ふるい分け後に、785kg/mの生充填密度及び2から4mmの間の直径を有する。720℃で2時間の熱処理後、200m/gの比表面積及び0.75cm/gの全細孔容積を示すビーズの形態のアルミナ担体S2が得られる。
【0089】
担体S2は、0.73ml/gの吸水量を示す。含浸溶液は、7.1mlの蒸留水中で、1.15グラムの酸化モリブデン(MoO >99.5%、Merck(商標))、0.30グラムの水酸化コバルト(95% Co(OH)、Merck(商標))、及び、0.26グラムのリン酸(85% HPO、Merck(商標))を90℃で3時間加熱することによって調製される。10グラムの担体の乾式含浸し、水分飽和雰囲気下で12時間の熟成させた後、固形物を120℃で12時間乾燥させる。その後、固形物を450℃の空気下で2時間焼成する。得られた触媒Bは、触媒の総重量に対して、2.0重量%のCoO、10重量%のMoO及び1.4重量%のPを有する、すなわち、0.38のCo/Mo原子比及び0.28のP/Mo原子比を有する。触媒Bは、0.65ml/gの全細孔容積及び118m/gの比表面積を有する。金属の含有量は、酸化物の形態で測定され、以下の表1に示される。
【実施例3】
【0090】
触媒C(本発明によらない)
この本発明によらない例では、P/Mo比は0.2未満である。
【0091】
触媒Cは、実施例1による担体S1上で調製される。含浸溶液は、9.3mlの蒸留水中で、1.15グラムの酸化モリブデン(MoO >99.5%、Merck(商標))、0.30グラムの水酸化コバルト(95% Co(OH)、Merck(商標))及び0.14グラムのリン酸(85% HPO、Merck(商標))を90℃で3時間加熱することによって調製される。10グラムの担体を乾式含浸し、水分飽和雰囲気下で12時間熟成させた後、固形物を120℃で12時間乾燥させる。その後、固形物を450℃の空気下で2時間焼成する。得られた触媒Cは、2.0重量%のCoO、10重量%のMoO及び0.75重量%のP、すなわち、0.38のCo/Mo原子比及び0.15のP/Mo原子比を含有する。触媒Cは、0.85ml/gの全細孔容積及び120m/gの比表面積を有する。金属の含有量は、酸化物の形態で測定され、以下の表1に示される。
【実施例4】
【0092】
触媒D(本発明によらない)
この本発明によらない例では、P/Mo比は、0.35より大きい。
【0093】
触媒Dは、実施例1による担体S1上で調製される。含浸溶液は、9.3mlの蒸留水中で、1.15グラムの酸化モリブデン(MoO >99.5%、Merck(商標))、0.30グラムの水酸化コバルト(95% Co(OH)、Merck(商標))及び0.48グラムのリン酸(85% HPO、Merck(商標))を90℃で3時間加熱することによって調製される。10グラムの担体の乾式含浸し。水分飽和雰囲気下で12時間熟成させた後、固形物を120℃で12時間乾燥させる。その後、固形物を450℃の空気下で2時間焼成する。得られた触媒Dは、2.0重量%のCoO、10重量%のMoO及び2.55重量%のPを有する、すなわち、0.38のCo/Mo原子比及び0.52のP/Mo原子比を有する。触媒Dは、0.82ml/gの全細孔容積及び117m/gの比表面積を有する。金属の含有量は、酸化物の形態で測定され、以下の表1に示される。
【実施例5】
【0094】
触媒E(本発明によらない)
この本発明によらない例では、アルミナ担体は、水酸化アルミニウム又はオキシ水酸化アルミニウムの脱水によって得られたものではない。
【0095】
押出成形物の形態で提供される担体S4は、MXタイプのダブルZアームニーダー(Guittard(登録商標))の密閉容器内でべーマイト粉末(Sasol(登録商標))を混錬することによって得られる。ペプタイジング剤(硝酸、HNO)はべーマイト100gあたり4gまで添加される。強熱減量が50%付近になるように水を徐々に導入し、その値は均質で粘着性のあるペーストが得られるように調整される。その後、このペーストを直径1.8mmのダイを通してピストン押出機で押し出す。こうして得られた押出成形物を120℃で12時間乾燥させ、次いで、900℃の温度で2時間焼成する。得られた押出成形物は、140m2/gの比表面積及び0.73cm/gの全細孔容積を示す。
【0096】
担体S4は、0.72ml/gの吸水量を示す。含浸溶液は、7.0mlの蒸留水中で、1.15グラムの酸化モリブデン(MoO >99.5%、Merck(商標))、0.30グラムの水酸化コバルト(95% Co(OH)、Merck(商標))及び0.26グラムのリン酸(85% HPO、Merck(商標))を90℃で3時間加熱することによって調製される。10グラムの担体の乾式含浸し、水分飽和雰囲気下で12時間の熟成させた後、固形物を120℃で12時間乾燥させる。その後、固形物を450℃の空気下で2時間焼成する。得られた触媒Eは、2.0重量%のCoO、10重量%のMoO及び1.4重量%のPを有する、すなわち、0.38のCo/Mo原子比及び0.28のP/Mo原子比を有する。触媒Eは、0.63ml/gの全細孔容積及び118m/gの比表面積を有する。金属の含有量は、酸化物の形態で測定され、以下の表1に示される。
【0097】
【表1】
【実施例6】
【0098】
水素化脱硫リアクターに使用する触媒の性能品質の評価
10重量%の2,3-ジメチルブタ-2-エン及び0.33重量%の3-メチルチオフェンを含有する接触分解ガソリンの代表的なモデル原料(すなわち、原料中の1000重量ppmの硫黄)を、種々の触媒の触媒性能品質の評価に使用する。使用される溶媒は、ヘプタンである。
【0099】
水素化脱硫反応(HDS)は、4mlの触媒の存在下で、固定横断床リアクター内で、1.5MPaの総圧力下で、210℃で、HSV=6h-1(HSV=原料の体積流量/触媒の体積流量)及び300Sl/lのH/原料の体積比で、実施される。HDS反応に先立ち、大気圧で15mol%のHSを含有する水素気流下、350℃で2時間、触媒をその場で硫化する。
【0100】
各触媒を前記リアクター内に連続して配置する。サンプルを異なる時間間隔で採取し、ガスクロマトグラフィーで分析し、反応物の消失及び生成物の生成を観察する。
【0101】
触媒の触媒性能品質は、触媒活性及び選択性の観点から評価される。水素化脱硫(HDS)活性は、触媒導入量で標準化され、硫黄含有化合物に対する一次速度論を仮定して、3-メチルチオフェンのHDS反応速度定数(kHDS)から表される。オレフィン(HydO)の水素化の活性は、触媒導入量で標準化され、オレフィンに対する一次速度論を仮定して、2,3-ジメチルブタ-2-エンの水素化反応の速度定数から表される。
【0102】
触媒の選択性は、速度定数kHDS/kHydOの標準化比によって表される。kHDS/kHydO比は、触媒の選択性が高くなるにつれ増大する。得られた値は、触媒Aを基準(相対HDS活性及び相対選択性が100に等しい)に採用することによって標準化される。したがって、性能品質は、相対HDS活性及び相対選択性である。
【0103】
【表2】
【0104】
本発明による触媒の活性及び選択性における同時改善は、オレフィンの水素化によるオクタン価の喪失をできる限り制限しようとするための、オレフィンを含有するガソリンの水素化脱硫方法に使用する場合に特に好適である。
【国際調査報告】