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特表2023-550821メソ多孔性・マクロ多孔性担体上の触媒の存在下におけるガソリンの選択的水素化のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】メソ多孔性・マクロ多孔性担体上の触媒の存在下におけるガソリンの選択的水素化のための方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/36 20060101AFI20231128BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231128BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C10G45/36
B01J35/10 301A
B01J37/08
B01J37/10
B01J37/02 101E
B01J27/051 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532273
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021082067
(87)【国際公開番号】W WO2022112079
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2012318
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ルフレーヴ フィリベール
(72)【発明者】
【氏名】ジラール エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】フェカン アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BB05C
4G169BB09B
4G169BB20C
4G169BC57A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC65A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169CC01
4G169CC02
4G169DA05
4G169EA04X
4G169EA04Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC16X
4G169EC16Y
4G169EC17X
4G169EC17Y
4G169EC20
4G169EC22Y
4G169FA02
4G169FB10
4G169FB14
4G169FB29
4G169FB30
4G169FB50
4G169FB62
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA19
4H129KA10
4H129KB03
4H129KB05
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC32X
4H129KC32Y
4H129KC33X
4H129KC33Y
4H129NA09
4H129NA26
4H129NA37
4H129NA40
(57)【要約】
多価不飽和化合物と軽質の硫黄化合物とを含むガソリンの選択的水素化のための方法が開示され、ガソリンは、水素と共に、第VIB族金属と、第VIII族金属と、二峰性のメソ孔分布を有するメソ多孔性かつマクロ多孔性のアルミナ担体とを含む触媒と接触させられ:2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量は前記担体の全細孔容量の10体積%および30体積%の間に対応し;18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量は前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応し;50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量は前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和化合物と軽質の硫黄化合物とを含むガソリンの選択的水素化のためのプロセスであって、前記プロセスにおいては、前記ガソリンおよび水素が、触媒と80℃および220℃の間の温度で、1h-1および10h-1の間の液空間速度で、かつ0.5および5MPaの間の圧力で接触させられ、1超かつ100mol/mol未満の水素と水素化されるべきジオレフィンとの間のモル比を有し、前記触媒が、少なくとも1つの第VIB族金属と、少なくとも1つの第VIII族金属と、メソ孔の二峰性分布を含むメソ多孔性かつマクロ多孔性のアルミナ担体とを含み:
・2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の10体積%および30体積%の間に対応し;
・18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の前記全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応し;
・50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量が、前記担体の前記全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応する、
プロセス。
【請求項2】
前記担体が50および210m/gの間の比表面積を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記担体が0.7および1.3ml/gの間の全細孔容量を含む、請求項1および2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の前記全細孔容量の15体積%および25体積%の間に対応する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の前記全細孔容量の35体積%および45体積%の間に対応する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量が、前記担体の前記全細孔容量の35体積%および50体積%の間に対応する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
酸化物の形態で表される前記触媒中の第VIB族金属の含有量が、前記触媒の総重量に対して相対的に1重量%および30重量%の間である、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
酸化物の形態で表される前記触媒中の第VIII族金属の含有量が、前記触媒の前記総重量に対して相対的に1重量%および20重量%の間である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第VIB族金属に対する前記第VIII族金属のモル比が0.3および3mol/molの間である、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第VIII族金属がニッケルである、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第VIB族金属がモリブデンである、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
2nm以上かつ18nm未満の直径を有する前記メソ孔の細孔分布が10.5および14.5nmの間を中心とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
18nm以上かつ50nm未満の直径を有する前記メソ孔の前記細孔分布が22および28nmの間を中心とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ガソリンが接触分解ガソリンである、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記担体が、2および4mmの間の直径を有するビーズの形態である、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記担体が、
水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムを、400℃および1200℃の間、好ましくは600℃および900℃の間の温度で、0.1秒および5秒の間、好ましくは0.1秒および4秒の間の時間に渡って脱水して、アルミナ粉末を得るステップs1)と、
ステップs1)で得られた前記アルミナ粉末をビーズの形態で成形するステップs2)と、
ステップs2)で得られた前記アルミナビーズを200℃以上の温度で熱処理するステップs3)と、
ステップs3)の終了時に得られた前記アルミナビーズを、水または水溶液による含浸、それから100℃および300℃の間の温度のオートクレーブにおける滞留によって水熱処理するステップs4)と、
ステップs4)の終了時に得られた前記アルミナビーズを500℃および820℃の間の温度でか焼するステップs5)と、
に従って得られる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒がリンを含まない、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン留分、特に流動層接触分解ユニットからもたらされるガソリン留分を水素化処理する分野に関する。より具体的には、本発明は、ガソリンの選択的水素化のためのおよび軽質のメルカプタンの分子量増大のためのプロセスにおける触媒の使用に、ならびにガソリンに含有される多価不飽和化合物から一価不飽和化合物への選択的水素化、および不飽和化合物との反応によって軽質の硫黄化合物の分子量増大を同時に実施するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
新たな環境基準に合うガソリンの生成は、それらの硫黄含有量が一般的には50ppmを超過しない、選好的には10ppm未満の値まで有意に縮減されることを要求する。
【0003】
さらにその上、変換ガソリン、より具体的には、ガソリンプールの30%から50%に相当し得る接触分解から来るものは、オレフィンおよび硫黄の高い含有量を有するということが公知である。
【0004】
ガソリン中に存在する硫黄は、この理由から、90%近くまで、接触分解プロセスからもたらされるガソリンに帰せられ得る。これらは爾後にFCC(流動接触分解)ガソリンと呼ばれるであろう。かくして、FCCガソリンは本発明のプロセスにとって好ましい原料である。より一般的には、本発明に従うプロセスは、ある種の割合のジオレフィンを含有し、さらにC3およびC4留分に属するいくつかのより軽質の化合物をもまた含有し得る任意のガソリン留分に適用可能である。
【0005】
クラッキングユニットからのガソリンは一般的にはオレフィンおよび硫黄に富むが、ジオレフィンにもまた富み、これらの含有量は接触分解からのガソリンでは最大で5重量%までの範囲であり得る。ジオレフィンは容易に重合し得る不安定な化合物であり、一般的には、これらのガソリンのいずれかの処理、例えばガソリン中の硫黄含有量についての仕様に合うことを意図される水素化脱硫処理の前に除去されなければならない。しかしながら、この水素化は、ジオレフィンに対して選択的でなければならず、水素消費およびガソリンからのオクタンの損失を限定するためにオレフィンの水素化を限定しなければならない。さらにその上、特許文献1に記載された通り、脱硫ステップの前に分子量増大によってメルカプタンを変換することが有利である。なぜなら、これは、単純な蒸留によって、オクタンの損失なしに、5つの炭素原子を有するオレフィンから主に組成される脱硫されたガソリン留分を生成することを可能にするからである。原料中に存在する硫黄の量は、選択的水素化および軽質の硫黄化合物の分子量増大後に改変されないが、硫黄の性質のみが軽質の硫黄化合物の分子量増大によって改変される。
【0006】
加えて、処理されるべき原料中に存在するジエン化合物は不安定であり、重合によってガム分を形成する傾向を有する。このガム分形成は、下流に所在するこの触媒の漸進的な失活または水素化脱硫反応器の漸進的な詰まりに至る。よって、工業用途では、触媒の最大のサイクル時間を保証するために、ポリマーの形成を抑制する触媒、すなわち、低い酸性を有するか、または原料中の炭化水素によるポリマーもしくはガム分前駆体の連続抽出を促進するようにその多孔性が最適化されている触媒を用いることが重要である。
【0007】
従来技術から、触媒担体の細孔分布は触媒性能に対する有益な影響を与えることは公知である。
【0008】
特許文献2は触媒担体を調製するためのプロセスを開示し、これはマクロ多孔性を含有せず、多孔性の2つのモードが1から20nmだけ離間されているような、メソ多孔性・二峰性細孔構造を有する。この担体は、数々の触媒用途、特に水素化処理、特に水素化脱窒素に用いられ得る。
【0009】
特許文献3は、水素化脱硫または水素化脱メタル触媒担体としてのその使用のための多孔質アルミナ担体を調製するための方法を開示し、前記担体は0.65から1.30cm/gの間の全細孔容量を含み、前記多孔質担体はマクロ孔の2つの集団を含み、そのうち、全細孔容量に対して相対的におよそ2体積%から20体積%は、10000オングストロームおよび100000オングストローム(1000および10000nm)の間の直径を有するマクロ孔の形態であり、全細孔容量に対して相対的におよそ5体積%から30体積%は、1000オングストロームおよび10000オングストローム(100および1000nm)の間の直径を有するマクロ孔の形態であり、全細孔容量に対して相対的におよそ50体積%から93体積%は、30オングストロームおよび1000オングストロームの間(3~100nm)の細孔直径を有するメソ孔の形態である。
【0010】
特許文献4、5、および6は種々の触媒用途(プロパン脱水素化、エステル化)のための触媒を開示し、これらの担体は三峰性細孔分布を有し、メソ孔の集団はそれぞれ2および4nm、5および15nm、ならびに10および40nmの間の3つのピークに集中する。
【0011】
特許文献7は、三峰性の多孔性を含むハロゲン化物捕捉のためのアルミナを開示し、そのうち、担体の全細孔容量に対して相対的に40体積%から49体積%は15および50nmの間の直径を有する細孔の形態である。
【0012】
最後に、特許文献8および9は、その容量が全細孔容量の10%および40%の間であるマクロ多孔性を有する触媒による多価不飽和化合物の選択的水素化のためのプロセスを開示している。
【0013】
しかしながら、従来技術文書のいずれも、高いメソ孔容量と特定のマクロ孔容量がカップリングされた二峰性のメソ多孔性を有する担体を含む触媒の存在下で、多価不飽和化合物と軽質の硫黄化合物とを含むガソリンの選択的水素化のためのプロセスの使用は記載していない。
【0014】
この文脈において、本発明の目的の1つは、活性および選択性の点で少なくとも従来技術から公知のプロセスと同じくらい良好な、またはさらにはより良好な性能を有する担持された触媒の存在下において、多価不飽和化合物、より具体的にはジオレフィンの選択的水素化と、軽質の硫黄化合物、より具体的にはメルカプタンの分子量増大とを同時に実施するためのプロセスを提供することである。
【0015】
出願人は、メソ多孔性かつマクロ多孔性の担体上の、少なくとも1つの第VIB族金属および少なくとも1つの第VIII族金属に基づく触媒の使用であって、高いメソ孔容量が所与のマクロ孔容量とカップリングされた二峰性のメソ多孔性を有する使用が、従来技術で開示された触媒と比較してより良好な活性および選択性を有し、これは、軽質の硫黄化合物のより良好な変換を許可能にしながら、ジオレフィンの水素化において少なくとも同じくらい良好、またはさらにはより良好であるということを発見した。
【0016】
具体的には、いずれかの科学的な理論によって拘束されることなしに、ガソリンの選択的水素化のためのプロセスにおけるかかる触媒の使用は、異なるサイズのメソ孔の集団の存在によって反応物および生成物の内部拡散の現象を改善する。加えて、マクロ多孔性の連係した存在は、処理されるべき原料が有意な量の反応性のオレフィン(不飽和化合物)、特にジオレフィンを含有するときには特に適切である。これはガソリンで該当し、これはガム分の形成を引き起こし得、かくしてマクロ多孔性の存在なしでは触媒の多孔性を詰まらせ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第01077247号明細書
【特許文献2】米国特許第6,589,908号明細書
【特許文献3】米国特許第5,266,300号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第108855197号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第104248987号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第104248985号明細書
【特許文献7】米国特許第7,790,130号明細書
【特許文献8】仏国特許出願公開第2,895,414号明細書
【特許文献9】仏国特許出願公開第2,895,415号明細書
【発明の概要】
【0018】
本発明の1つの対象は、多価不飽和化合物と軽質の硫黄化合物とを含むガソリンの選択的水素化のためのプロセスであり、このプロセスにおいては、ガソリンおよび水素が触媒と80℃および220℃の間の温度で、1h-1および10h-1の間の液空間速度で、かつ0.5および5MPaの間の圧力で接触させられ、1超かつ100mol/mol未満の水素と水素化されるべきジオレフィンとの間のモル比を有し、前記触媒は、少なくとも1つの第VIB族金属と、少なくとも1つの第VIII族金属と、メソ孔の二峰性分布を含むメソ多孔性かつマクロ多孔性のアルミナ担体とを含み:
・2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の10体積%および30体積%の間に対応し;
・18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応し;
・50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応する。
【0019】
1つまたは複数の実施形態に従うと、前記担体は50および210m/gの間の比表面積を含む。
【0020】
1つまたは複数の実施形態に従うと、前記担体は0.7および1.3ml/gの間の全細孔容量を含む。
【0021】
1つまたは複数の実施形態に従うと、2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の15体積%および25体積%の間に対応する。
【0022】
1つまたは複数の実施形態に従うと、18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の35体積%および45体積%の間に対応する。
【0023】
1つまたは複数の実施形態に従うと、50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の35体積%および50%体積の間に対応する。
【0024】
1つまたは複数の実施形態に従うと、酸化物の形態で表される前記触媒中の第VIB族金属の含有量は、触媒の総重量に対して相対的に1重量%および30重量%の間である。
【0025】
1つまたは複数の実施形態に従うと、酸化物の形態で表される前記触媒中の第VIII族金属の含有量は、触媒の総重量に対して相対的に1重量%および20重量%の間である。
【0026】
1つまたは複数の実施形態に従うと、第VIB族金属に対する第VIII族金属のモル比は0.3および3mol/molの間である。
【0027】
1つまたは複数の実施形態に従うと、第VIII族金属はニッケルである。
【0028】
1つまたは複数の実施形態に従うと、第VIB族金属はモリブデンである。
【0029】
1つまたは複数の実施形態に従うと、2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の細孔分布は10.5および14.5nmの間の値の範囲を中心とする。
【0030】
1つまたは複数の実施形態に従うと、18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の細孔分布は22および28nmの間の値の範囲を中心とする。
【0031】
1つまたは複数の実施形態に従うと、ガソリンは接触分解ガソリンである。
【0032】
1つまたは複数の実施形態に従うと、担体は、2および4mmの間の直径を有するビーズの形態である。
【0033】
1つまたは複数の実施形態に従うと、担体がビーズの形態であるときに、前記担体は次のステップに従って得られる:
水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムを、400℃および1200℃の間、好ましくは600℃および900℃の間の温度で、0.1秒および5秒の間、好ましくは0.1秒および4秒の間の時間に渡って脱水して、アルミナ粉末を得るステップs1);
ステップs1)で得られた前記アルミナ粉末をビーズの形態で成形するステップs2);
ステップs2)で得られたアルミナビーズを200℃以上の温度で熱処理するステップs3);
ステップs3)の終了時に得られたアルミナビーズを、水または水溶液による含浸、それから100℃および300℃の間の温度のオートクレーブにおける滞留によって水熱処理するステップs4);
ステップs4)の終了時に得られたアルミナビーズを500℃および820℃の間の温度でか焼(calcination)するステップs5)。
【0034】
1つまたは複数の実施形態に従うと、前記触媒はリンを含まない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1.定義
以降の文においては、化学元素の族はCAS分類に従って与えられる(CRC化学・物理学ハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics),CRCプレス(CRC Press)刊,D.R.ライド(Lide)監修,第81版,2000-2001年)。例えば、CAS分類に従う第VIII族は、新たなIUPAC分類に従うカラム8、9、および10からの金属に対応する。
【0036】
BET比表面積は、ルークロール(Rouquerol)F.,ルークロール(Rouquerol)J.,およびシン(Singh)K.による著作物である「粉末および多孔質固体による吸着:原理、方法論、および用途(Adsorption by Powders & Porous Solids: Principles, Methodology and Applications)」,アカデミック・プレス(Academic Press),1999年に記載されている方法のASTM-D3663-03規格に従う窒素物理吸着によって測定される。
【0037】
本明細書においては、IUPAC規則に従って、「マイクロ孔」は2nmすなわち0.002μm未満の直径を有する細孔を意味すると理解される;「メソ孔」は2nmすなわち0.002μm超かつ50nmすなわち0.05μm未満の直径を有する細孔を意味すると理解され、「マクロ孔」は50nm、すなわち0.05μm以上の直径を有する細孔を意味すると理解される。
【0038】
本発明の以下の説明において、アルミナまたは触媒の「全細孔容量」は、水銀ポロシメトリーによってASTM-D4284-83規格に従って4000bar(400MPa)の最大圧力で484ダイン/cmの表面張力および140°の接触角を用いて測定される容量を意味すると理解される。ぬれ角は刊行物「エンジニアの技術,分析およびキャラクタリゼーション概論(Techniques de l'ingenieur, traite analyse et caracterisation)」,1050-5ページ,ジャン・シャルパン(Jean Charpin)およびベルナール・ラスヌール(Bernard Rasneur)著の推奨を踏襲して140°に等しいとした。
【0039】
より良好な正確度を得るために、後続する文中で与えられるml/gによる全細孔容量の値は、サンプルについて測定されるml/gによる総水銀体積(水銀圧入ポロシメトリーによって測定される全細孔容量)の値から、同じサンプルについて30psi(およそ0.2MPa)に対応する圧力で測定されるml/gによる水銀体積の値を差し引いた値に対応する。
【0040】
マクロ孔およびメソ孔の容量は、水銀圧入ポロシメトリーによってASTM-D4284-83規格に従って4000bar(400MPa)の最大圧力で484ダイン/cmの表面張力および140°の接触角を用いて測定される。
【0041】
水銀が全ての粒間空隙を満たす値は0.2MPaにセットされ、この値よりも上では、水銀はサンプルの細孔に浸透すると考えられる。
【0042】
触媒のマクロ孔容量は、0.2MPaおよび30MPaの間の圧力で導入される水銀の累積体積であると定義され、50nm超の見かけ上の直径を有する細孔に含有される体積に対応する。
【0043】
触媒のメソ孔容量は、30MPaおよび400MPaの間の圧力で導入される水銀の累積体積であると定義され、2および50nmの間の見かけ上の直径を有する細孔に含有される体積に対応する。
【0044】
水銀ポロシメトリーによって測定される増分細孔容量が細孔直径の関数としてプロットされるときには、多孔性のモードは描かれた関数の変曲点に対応する。
【0045】
第VIII族金属および第VIB族金属の含有量はX線蛍光によって測定される。
2.説明
触媒
本発明に従って選択的水素化プロセスの文脈において用いられる触媒は、少なくとも1つの第VIB族金属および少なくとも1つの第VIII族金属から形成される活性相を含む。
【0046】
触媒の活性相に存在する第VIB族金属は、選好的にはモリブデンおよびタングステンから、より選好的にはモリブデンから選ばれる。触媒の活性相に存在する第VIII族金属は、選好的にはコバルト、ニッケル、およびこれらの2つの元素の混合物から、より選好的にはニッケルから選ばれる。
【0047】
好ましくは、活性相はモリブデンおよびニッケルからなる。
【0048】
第VIII族金属の総含有量は、一般的には、触媒の総重量に対して相対的に第VIII族金属の酸化物の形態で表されて1重量%および20重量%の間、好ましくは2重量%および15重量%の間、好ましくは触媒の総重量に対して相対的に3重量%および13重量%の間である。金属がコバルトまたはニッケルであるときに、金属含有量はそれぞれCoOおよびNiOとして表される。
【0049】
第VIB族金属の含有量は、一般的には、触媒の総重量に対して相対的に第VIB族金属の酸化物の形態で表されて1重量%および30重量%の間、好ましくは5重量%および20重量%の間、さらにはより選好的には触媒の総重量に対して相対的に8重量%および15重量%の間である。金属がモリブデンまたはタングステンであるときに、金属含有量はそれぞれMoOまたはWOとして表される。
【0050】
第VIII族金属および第VIB族金属の間のモル比は有利には0.3および3mol/molの間、好ましくは0.4および2.5mol/molの間、非常に好ましくは0.5および2mol/molの間である。
【0051】
第VIII族金属は好ましくはニッケルである。
【0052】
第VIB族金属は好ましくはモリブデンである。
【0053】
好ましくは、触媒はリンを含有しない。
【0054】
触媒は、一般的には、50および200m/gの間、好ましくは60および170m/gの間、好ましくは70および130m/gの間の比表面積を含む。
【0055】
触媒の細孔容量は、一般的には0.5ml/gおよび1.3ml/gの間、好ましくは0.6ml/gおよび1.1ml/gの間である。
【0056】
アルミナ担体
本発明に従って選択的水素化プロセスの文脈において用いられる触媒のアルミナ担体は、メソ孔の二峰性分布を含むマクロ多孔性かつメソ多孔性のアルミナ担体であり:
・2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の10体積%および30体積%の間に対応し;
・18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応し;
・50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応する。
【0057】
好ましくは、2nm以上かつ18nm未満の直径を有する担体のメソ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の15体積%および25体積%の間に対応する。
【0058】
好ましくは、18nm以上かつ50nm未満の直径を有する担体のメソ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の35体積%および45体積%の間に対応する。
【0059】
好ましくは、50nm以上かつ8000nm未満の直径を有する担体のマクロ孔の容量は、前記担体の全細孔容量の35体積%および50体積%の間に対応する。
【0060】
本発明に従う1つの実施形態において、2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の細孔分布は、10.5および14.5nmの間、好ましくは12および13nmの間の値の範囲を中心とする。
【0061】
本発明に従う1つの実施形態において、18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の細孔分布は、22および28nmの間、好ましくは23および27nmの間の値の範囲を中心とする。
【0062】
担体は、一般的には、50および210m/gの間、好ましくは70および180m/gの間、好ましくは70および160m/gの間の比表面積を含む。
【0063】
担体の細孔容量は一般的には0.7ml/gおよび1.3ml/gの間、好ましくは0.8ml/gおよび1.2ml/gの間である。
【0064】
有利には、担体は、0.8および10mmの間、選好的には1および5mmの間、より選好的には2および4mmの間の直径を有するビーズの形態である。
【0065】
好ましくは、触媒は、モリブデンおよびニッケルからなる活性相とメソ孔の二峰性分布を含むメソ多孔性かつマクロ多孔性のアルミナ担体とからなり:
・2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の10体積%および30体積%の間に対応し;
・18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応し;
・50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量が、前記担体の全細孔容量の30体積%および50体積%の間に対応する。
【0066】
担体を調製するためのプロセス
本発明に従って選択的水素化プロセスの文脈において用いられる触媒のアルミナ担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって合成され得る。
【0067】
好ましい実施形態に従うと、本発明に従って用いられるアルミナ担体はビーズの形態である。この好ましい実施形態に従うと、担体の調製は次のステップを含む:
水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムを、400℃および1200℃の間、好ましくは600℃および900℃の間の温度で、0.1秒および5秒の間、好ましくは0.1秒および4秒の間の時間に渡って脱水して、アルミナ粉末を得るステップs1);
ステップs1)で得られた前記アルミナ粉末をビーズの形態に成形するステップs2);
ステップs2)で得られたビーズを200℃以上の温度で熱処理するステップs3);
ステップs3)の終了時に得られたアルミナビーズを、水または水溶液、選好的には酸性水溶液による含浸、それから、100℃および300℃の間、好ましくは150℃および250℃の間の温度のオートクレーブにおける滞留によって水熱処理するステップs4);
ステップs4)の終了時に得られた前記アルミナビーズを500℃および820℃の間の温度でか焼するステップs5)。
【0068】
ステップs1)からs5)は下で詳細に記載される。
【0069】
ステップs1)
ステップs1)に従うと、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムが、400℃および1200℃の間、好ましくは600℃および900℃の間の温度で、0.1秒および5秒の間、好ましくは0.1秒および4秒の間の時間に渡って脱水されて、アルミナ粉末を得る。水酸化アルミニウムはハイドラルジライト、ギブサイト、またはバイヤライトから選ばれ得る。オキシ水酸化アルミニウムはベーマイトまたはダイアスポアから選ばれ得る。
【0070】
好ましくは、ステップs1)はハイドラルジライトを用いることによって実施される。
【0071】
一般的には、ステップs1)は、高温ガス、例えば乾燥空気または湿潤空気の流れの存在下において実施され、蒸発した水を速やかに除去および同伴することを可能にする。
【0072】
一般的には、水酸化またはオキシ水酸化アルミニウムの脱水後に得られる活性アルミナ粉末は10から200μmの間の粒径に粉砕される。
【0073】
一般的には、水酸化またはオキシ水酸化アルミニウムの脱水後に得られる活性アルミナ粉末は、水または酸性水溶液によって洗浄される。洗浄ステップが酸性水溶液によって実施されるときには、いずれかの鉱酸または有機酸、好ましくは、鉱酸では硝酸、塩酸、過塩素酸、または硫酸、有機酸ではカルボン酸(ギ酸、酢酸、またはマロン酸)、スルホン酸(パラトルエンスルホン酸)、または硫酸エステル(ラウリル硫酸)が用いられ得る。
【0074】
ステップs2)
ステップs2)に従うと、ステップs1)の終了時に得られた前記アルミナ粉末は成形される。
【0075】
前記アルミナ粉末の成形はビーズを得るために実施され、これは造粒と言われ、一般的には、回転テクノロジー、例えば回転造粒機または回転ドラムによって実施される。この型のプロセスは、コントロールされている直径および細孔分布を有するビーズを得ることを可能にし、これらの寸法およびこれらの分布は一般的には凝集ステップの間に作り出される。
【0076】
多孔性は、種々の手段、例えばアルミナ粉末の粒径分布の選び方または異なる粒径分布を有するいくつかのアルミナ粉末の凝集によって作り出され得る。別の方法は、凝集ステップの前または間に、加熱によって消失し、かくしてビーズ中の多孔性を作り出す細孔形成化合物として公知の1つまたは複数の化合物をアルミナ粉末と混合することにある。用いられる細孔形成化合物としては、例として、木粉、木炭、活性炭、カーボンブラック、硫黄、タール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナフタレン、もしくは同類などのプラスチック、またはプラスチックのエマルションの言及がなされ得る。追加される細孔形成化合物の量は、500および1100kg/mの間、選好的には700および950kg/mの間の圧粉充填密度と0.8および10mmの間、選好的には1および5mmの間、さらにはより選好的には2および4mmの間の直径とを有するビーズを得るための所望の容量によって決定される。得られたビーズは、所望の粒径に従う篩分けによって選択され得る。
【0077】
ステップs3)
ステップs3)に従うと、ステップs2)の終了時に得られたビーズの形態で成形されたアルミナ粉末の熱処理が、200℃以上、好ましくは200℃および1200℃の間、選好的には300℃および900℃の間、非常に選好的には400℃および750℃の間の温度で、一般的には1および24時間の間、好ましくは1および6時間の間の時期に渡って実施される。この中間ステップで得られるビーズは、50および420m/gの間、好ましくは60および350m/gの間、さらにはより選好的には80および300m/gの間の比表面積を含む。
【0078】
ステップs4)
ステップs4)に従うと、ステップs3)の終了時に得られたアルミナビーズは、水または水溶液、選好的には酸性水溶液による含浸、それから、100℃および300℃の間、好ましくは150℃および250℃の間の温度のオートクレーブにおける滞留による水熱処理に付される。
【0079】
水熱処理は、一般的には、100℃から300℃、選好的には150℃から250℃の温度で、45分超、選好的には1から24時間、非常に選好的には1.5から12時間の時期に渡って実施される。水熱処理は、一般的には、1つまたは複数の鉱酸および/または有機酸、好ましくは硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、またはその溶液が4未満のpHを有する弱酸、例えば酢酸またはギ酸を含む酸性水溶液を用いて実施される。一般的には、前記酸性水溶液は、アルミニウムイオンと化合することができるアニオンを放出することができる1つまたは複数の化合物、好ましくは、硝酸イオン(例えば硝酸アルミニウム)、塩化物、硫酸、過塩素酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸、またはジブロモ酢酸イオン、ならびにギ酸および酢酸などの一般式:R-COOのアニオンを含む化合物をもまた含む。
【0080】
ステップs5)
ステップs5)に従うと、ステップs4)の終了時に得られたアルミナビーズは、500℃および820℃の間、選好的には550℃および750℃の間の温度で、一般的には1および24時間の間、好ましくは1および6時間の間の時期に渡ってか焼される。このステップの出口において、得られるアルミナビーズは、50および210m/gの間、好ましくは70および180m/gの間、さらにはより選好的には70および160m/gの間の比表面積を有する。
【0081】
触媒を調製するためのプロセス
本発明に従って選択的水素化プロセスの文脈において用いられる触媒は、当業者に公知のいずれかの技術によって、特に、選択された担体に対する第VIIIおよびVIB族元素の含浸によって調製され得る。
【0082】
この含浸は、例えば、乾式含浸の術語で当業者に公知の方法に従って実施され得、可能な限り正確に担体の多孔性を満たすようにして、選ばれた溶媒、例えば脱イオン水中の可溶性の塩の形態のちょうど所望の元素の量が導入される。第VIII族元素に基づく活性相の前駆体および第VIB族元素の活性相の前駆体は、同時にまたは逐次的に導入され得る。各前駆体の含浸は有利には少なくとも2回実施され得る。かくして、種々の前駆体は、有利には、異なる含浸および熟成時間によって逐次的に含浸させられ得る。前駆体の1つは数回もまた含浸させられ得る。かくして溶液によって満たされた担体は、50℃よりも下の温度、好ましくは周囲温度で、0.5時間および12時間の間、好ましくは0.5時間および6時間の間、さらにはより選好的には0.5および3時間の間の期間に渡って熟成するように放置される。
【0083】
活性相の前駆体を導入した後に、触媒前駆体は活性化処理に付される。この処理の狙いは一般的には元素の分子前駆体を酸化物相へと転換することである。それはこのケースでは酸化処理であるが、触媒の単純な乾燥もまた実施され得る。
【0084】
乾燥のケースでは、触媒前駆体は、50℃および200℃の間、好ましくは70℃および180℃の間の温度で、典型的には0.5および12時間の間の期間に渡って、さらにはより好ましくは0.5から5時間の期間に渡って乾燥される。乾燥ステップは、有利には、横断床で高温空気またはいずれかの他の高温ガスを用いて実施される。好ましくは、乾燥が横断床で実施されるときには、用いられるガスは空気または不活性ガスいずれか、例えばアルゴンまたは窒素である。非常に好ましくは、乾燥は空気の存在下の横断床で実施される。
【0085】
か焼ともまた言われる酸化処理のケースでは、前記処理は一般的には空気中または希薄酸素中において実施され、処理温度は、一般的には、200℃および550℃の間、好ましくは300℃および500℃の間、かつ有利には典型的には0.5および24時間の間の期間、好ましくは0.5から12時間の期間、さらにはより好ましくは0.5から10時間の期間に渡ってである。酸化処理ステップは、有利には、横断床で高温空気またはいずれかの他の高温ガスを用いて実施される。好ましくは、酸化処理が横断床で実施されるときには、用いられるガスは空気または不活性ガスのいずれか、例えばアルゴンまたは窒素である。非常に好ましくは、酸化処理は空気の存在下の横断床で実施される。
【0086】
例として、第VIII族元素がニッケルでありかつ第VIB族元素がモリブデンであるときに、触媒調製プロセスに用いられ得るモリブデンおよびニッケル金属塩は例えば硝酸ニッケルおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムである。十分な可溶性を有するかつ活性化処理の間に分解され得る当業者に公知のいずれかの他の塩もまた用いられ得る。有利には、乾燥および酸化処理は両方とも触媒調製プロセスの間に実施される。
【0087】
水素化処理触媒としてのその使用の前に、乾燥または任意にか焼された触媒を硫化ステップ(活性化段階)に付すことが有利である。この活性化段階は、当業者に周知の方法によって、有利には硫黄還元性雰囲気において水素および硫化水素の存在下で実施される。硫化水素は直接的に用いられ得るかまたは硫化物剤(例えばジメチルジスルフィド)によって生じ得る。
【0088】
触媒は好ましくは少なくとも部分的にその硫化された形態で用いられる。硫黄の導入は、いずれかの活性化ステップ、つまり乾燥またはか焼ステップの前または後にとり行われ得る。硫黄または硫黄化合物は、エクスサイチュで、つまり本発明に従うプロセスが実施される反応器の外で、またはインサイチュで、つまり本発明に従うプロセスに用いられる反応器内で導入され得る。第1のケースでは、これらのエクスサイチュ硫化は最後のパッシベーションステップを特徴とする。実際に、硫化物相は周囲空気に対する非常に高い反応性(酸化を原因とする自然発熱性)を有し、この反応性を限定することを狙った追加の処理なしには、それらの爾後の取り扱いを不可能にする。市販のエクスサイチュ硫化手法のうち、EurecatからのTOTSUCAT(商標)プロセス(欧州特許第0564317B1号および同第0707890B1号)およびTricatからのXpresS(商標)プロセス(米国特許第5958816A号)の言及がなされる。第2のケース(インサイチュ硫化)では、触媒は、ひとたび分解されると触媒上の硫黄の固定に至る少なくとも1つの硫黄化合物を含有する原料を通過させることによって硫化される。この原料は、ガスまたは液体、例えばHSを含有する水素または少なくとも1つの硫黄化合物を含有する液体であり得る。
【0089】
選択的水素化プロセス
本発明は、いずれかの型の化学物質ファミリー、特にジオレフィン、モノオレフィン、ならびにメルカプタンおよび軽質の硫化物の形態の硫黄化合物を含むガソリンを処理するためのプロセスに関する。本発明は、変換ガソリン、特に、接触分解、流動接触分解(FCC)、コーキングプロセス、ビスブレーキングプロセス、またはパイロリシスプロセスに由来するガソリンの転換において具体的な用途を見出す。好ましくは、原料は接触分解ユニットからのガソリンである。本発明が適用される原料は一般的には0℃および280℃の間の沸点を有する。原料は3または4つの炭素原子を有する炭化水素をもまた含有し得る。
【0090】
例えば、接触分解(FCC)ユニットからもたらされるガソリンは、平均で、0.5重量%および5重量%の間のジオレフィン、20重量%および50重量%の間のモノオレフィン、および10重量ppmおよび0.5重量%の間の硫黄を含有し、一般的には300ppm未満のメルカプタンを包含する。メルカプタンは、一般的には、ガソリンの軽質の留分中に、より具体的には120℃よりも下の沸点を有する留分中に濃縮されている。
【0091】
本選択的水素化プロセスに記載されるガソリン処理は、主に:
・ジオレフィンをモノオレフィンに選択的に水素化すること;
・モノオレフィンとの反応によって、軽質の飽和硫黄化合物、主にメルカプタンをより重質の硫化物またはメルカプタンに転換すること;
・それらのC=C二重結合を外側の位置に有するモノオレフィン化合物を、それらのC=C二重結合を内部の位置に有するそれらの異性体に異性化すること、
にある。
【0092】
ジオレフィンからモノオレフィンへの水素化のための反応は、容易に2-ペンテンへと水素化され得る不安定な化合物の1,3-ペンタジエンの転換によって下で例示されている。しかしながら、下の例ではn-ペンタンの形成に至るであろうモノオレフィン水素化の副反応を限定することが求められる。
【0093】
【化1】
【0094】
転換することを求められる硫黄化合物は主にメルカプタンである。メルカプタンを転換するための主反応はモノオレフィンおよびメルカプタンの間のチオエーテル化反応からなる。この反応は、プロピルペンチルスルフィドを形成するための2-ペンテンへのプロパン-2-チオールの付加によって下で例示されている。
【0095】
【化2】
【0096】
水素の存在下において、硫黄化合物の転換は中間のHS形成をもまた経過し得る。それから、これは原料中に存在する不飽和化合物に付加され得る。しかしながら、この経路は好ましい反応条件においては少数派である。
【0097】
メルカプタンに加えて、このやり方で転換されることおよびより重質にされることが蓋然的な化合物は硫化物であり、主にCS、COS、チオファン、およびメチルチオファンである。
【0098】
いくつかのケースでは、軽質の窒素系化合物、主にニトリル、ピロール、およびその誘導体の分子量が増大する反応を観察することが可能である。
【0099】
本発明によれば、触媒は、それらのC=C二重結合を外側の位置に有するモノオレフィン系化合物からそれらのC=C二重結合を内部の位置に有するそれらの異性体への異性化を実施することをもまた可能となる。
【0100】
この反応は1-ヘキセンから2-ヘキセンまたは3-ヘキセンへの異性化によって下で例示されている。
【0101】
【化3】
【0102】
本発明に従う選択的水素化プロセスでは、処理されるべき原料は、触媒と接触させられる前に水素と混合される。注入される水素の量は、水素と水素化されるべきジオレフィンとの間のモル比が1(化学量論)超かつ100未満、好ましくは1および10mol/molの間であるようなものである。あまりに過剰の水素は、モノオレフィンの強い水素化、それゆえにガソリンのオクタン価の減少に至り得る。原料の全ては一般的には反応器の入口において注入される。しかしながら、ある種のケースでは、反応器内に置かれた2つの連続した触媒層の間において原料のある部分または全てを注入することが有利であり得る。この実施形態は、特に、反応器の入口が原料中に存在するポリマー、粒子、またはガム分の堆積物によって詰まる場合でも、反応器を稼働させ続けることを可能にする。
【0103】
ガソリンおよび水素からなる混合物は、触媒と80℃および220℃の間、好ましくは90℃および200℃の間の温度で、1h-1および10h-1の間の液空間速度(LHSV)で接触させられる。液空間速度は、時間あたりかつ触媒のリットルあたりの原料のリットルである(l/l.h)。圧力は、反応混合物が反応器内で主に液体形態であるように調整される。圧力は0.5MPaおよび5MPaの間、好ましくは1および4MPaの間である。
【0104】
上述の条件において処理されたガソリンは、ジオレフィンおよびメルカプタンの縮減された含有量を有する。一般的には、生成されるガソリンは、1重量%未満のジオレフィン、好ましくは0.5重量%未満のジオレフィンを含有する。チオフェンの沸点(84℃)よりも低い沸点を有する軽質の硫黄化合物は、一般的には50%よりも多く変換される。よって、蒸留によってガソリンから軽質の留分を分離することと、追加の水素化脱硫処理なしに、この留分を直接的にガソリンプールに送ることとが可能である。ガソリンの軽質の留分は、一般的には、120℃よりも下の、好ましくは100℃よりも下の、最も好ましくは80℃よりも下の終点を有する。
【0105】
本発明に従う選択的水素化プロセスは、特許出願欧州特許第1077247号に記載されている脱硫プロセスの文脈において実装されることにとって特に好適である。
【0106】
本発明の対象は、少なくとも次のステップを含む硫黄化合物を含むガソリンの脱硫のためのプロセスでもある:
a)上に記載されているプロセスを実装する選択的水素化ステップ;
b)ステップa)で得られたガソリンをそれぞれ軽質のガソリンおよび重質のガソリンを含む2つの留分に分離するステップ;
c)少なくとも部分的に硫黄化合物をHSに分解することを可能にする、触媒による、ステップb)で分離された重質のガソリンの水素化脱硫のステップ。
【0107】
分離ステップb)は、好ましくは、スプリッターともまた呼ばれる従来の蒸留塔によって実施される。この分留塔は、10重量ppm未満の硫黄を含有するガソリンの軽質の留分を分離することを可能にしなければならない。
【0108】
この塔は、一般的には、0.1および2MPaの間、好ましくは0.2および1MPaの間の圧力で稼働する。この分離塔の理論段数は、一般的には10および100の間、好ましくは20および60の間である。kg/hで表される蒸留物流量によって除算された塔の液体流量の比として表される還流比は、一般的には1未満、好ましくは0.8未満である。
【0109】
分離の終了時に得られる軽質のガソリンは、一般的には少なくともC5オレフィンの全て、好ましくはC5化合物およびC6オレフィンの少なくとも20%を含有する。一般的には、この軽質の留分は、10重量ppmの硫黄未満の硫黄含有量を有する。つまり、それを燃料として用いる前に追加の水素化脱硫ステップによって軽質の留分を処理することは必要ではない。
【0110】
脱硫ステップc)は好ましくは水素化脱硫ステップであり、重質のガソリンを、水素の存在下において、少なくとも1つの第VIII族元素および/または少なくとも1つの第VIB族元素を少なくとも部分的に硫化物形態で含む触媒上に、約210℃および約350℃の間、好ましくは220℃および320℃の間の温度で、一般的には約1および約4MPaの間、好ましくは1.5および3MPaの間の圧力で通過させることによって実施される。液空間速度は、約1および約20h-1の間(触媒の体積あたりかつ時間あたりの液体の体積として表される)、好ましくは1および10h-1の間、非常に好ましくは3および8h-1の間である。H/原料比は100および600Nl/lの間、選好的には300および600Nl/lの間である。
【0111】
酸化物として表される第VIII族金属の含有量は、触媒の重量に対して相対的に、一般的には0.5重量%および15%の間、選好的には1重量%および10重量%の間である。酸化物として表される第VIB族金属の含有量は、触媒の重量に対して相対的に、一般的には1.5重量%および60重量%の間、選好的には3重量%および50重量%の間である。
【0112】
第VIII族元素が存在するときには、好ましくはコバルトであり、存在するときには、第VIB族元素は一般的にはモリブデンまたはタングステンである。コバルト-モリブデンなどの組み合わせが好ましい。触媒の担体は、通常は、多孔質の固体、例えば、アルミナ、シリカ-アルミナ等、または他の多孔質固体、例えば、単独でのまたはアルミナもしくはシリカ-アルミナとの混合物としての、マグネシア、シリカ、もしくは酸化チタン等である。重質のガソリン中に存在するオレフィンの水素化を最小化するためには、比表面積の単位あたり酸化物の形態の第VIB族金属の重量%(触媒の総重量に対して相対的に表される重量%)として表される第VIB族金属の密度が0.07超、好ましくは0.12超である触媒を選好的に用いることが有利である。ステップc)に従う触媒は、好ましくは250m/g未満、より好ましくは230m/g未満、非常に好ましくは190m/g未満の比表面積を有する。
【0113】
担体上の金属の担持は、当業者の公知のいずれかの方法、例えば、例えば乾式含浸によって、金属前駆体を含有する過剰な溶液によって得られる。含浸溶液は、金属前駆体を所望の濃度で溶解し得るように選ばれる。例えば、CoMo触媒の合成のケースでは、モリブデン前駆体は酸化モリブデン、ヘプタモリブデン酸アンモニウムであり得、コバルト前駆体は例えば硝酸コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルトであり得る。前駆体は、一般的には、所望の濃度でのそれらの可溶化を許す媒体中に溶解される。
【0114】
元素(単数または複数)の導入および任意に触媒の成形の後に、触媒は第1のステップにおいて活性化される。この活性化は、酸化およびそれから還元、または直接的な還元、またはか焼のみいずれかに対応し得る。か焼ステップは、一般的には、約100℃から約600℃の範囲、好ましくは200℃および450℃の間の温度で、空気流下において実施される。還元ステップは、主成分金属の酸化形態の少なくとも一部を金属に変換することを可能にする条件において実施される。一般的には、それは、触媒を水素の流れ下において好ましくは少なくとも300℃に等しい温度で処理することにある。還元は化学的な還元剤の手段によって部分的にもまた実施され得る。
【0115】
ステップc)に用いられる触媒は好ましくは少なくとも部分的にその硫化形態で用いられる。硫黄の導入は、いずれかの活性化ステップ、つまりか焼または還元ステップの前または後にとり行われ得る。硫黄または硫黄化合物は、エクスサイチュで、つまり水素化脱硫反応器の外で、またはインサイチュで、つまり水素化脱硫反応器内で導入され得る。第1のケースでは、これらのエクスサイチュ硫化は最後のパッシベーションステップを特徴とする。実際に、硫化物相は周囲空気に対する非常に高い反応性(酸化を原因とする自然発熱性)を有し、この反応性を限定することを狙った追加の処理なしには、それらの爾後の取り扱いを不可能にする。市販のエクスサイチュ硫化手法のうち、EurecatからのTOTSUCAT(商標)プロセス(欧州特許第0564317B1号および同第0707890B1号)およびTricatからのXpresS(商標)プロセス(米国特許第5958816A号)が挙げられる。第2のケース(インサイチュ硫化)では、触媒は、好ましくは、上に記載されている条件において還元され、それから、ひとたび分解されると触媒上の硫黄の固定に至る少なくとも1つの硫黄化合物を含有する原料を通過させることによって硫化される。この原料は、ガスまたは液体、例えばHSを含有する水素または少なくとも1つの硫黄化合物を含有する液体であり得る。
【実施例
【0116】
実施例1:触媒A(本発明による)
触媒Aの担体S1は、アルミナ粉末を得るためのハイドラルジライト(Emplura(登録商標)、メルク(商標))の脱水によって得られる。温度は800℃にセットされ、乾燥空気流との脱水されるべき材料の接触時間は1秒である。得られたアルミナ粉末は10から200μmの間の粒径に粉砕され、それから、用いられる粉末の体積の2倍に等しい体積の蒸留水によって3回洗浄される。前記アルミナ粉末は、カーボンブラック(N990Thermax(登録商標))の存在下において、30°の角度および40rpmの回転スピードの円錐形の円筒状容器を備えたディスクペレタイザー(GRELBEX(商標)P30)によって、固体を篩分けした後に主に2および4mmの間の直径を有するビーズを得るように成形される。カーボンブラックの量は、800kg/mの対象物の圧粉充填密度を得るために調整される。前記ビーズは、それらに200m/gの比表面積を与えるように空気中において720℃で熱処理に付される。次に、水熱処理が、硝酸の水溶液(0.1N、メルク(商標))による細孔容量の含浸によって前記ビーズに適用される。水熱処理は、200℃の温度で6.5時間に渡って回転バスケット型オートクレーブにおいて実施される。かくして得られたビーズは空気中において650℃で2時間に渡って最後のか焼処理に付される。担体S1は、141m/gの比表面積、0.97ml/gの全細孔容量、および水銀ポロシメトリーによって与えられる次の細孔分布を有する:
・0.15ml/gというその細孔分布が13nmに集中する2nm以上かつ18nm未満の直径を有するメソ孔の容量であって、全細孔容量の15%に対応する;
・0.43ml/gというその細孔分布が26nmに集中する18nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量であって、全細孔容量の44%に対応する;
・0.39ml/gという50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量であって、全細孔容量の40%に対応する。
【0117】
担体S1は0.95ml/gの水取り込み量を有する。含浸溶液は、6.07gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、17.43gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を36.2mlの蒸留水によって希釈することによって調製される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。固体は爾後に空気中において450℃で2時間に渡ってか焼される。得られる触媒Aは、9.1重量%のNiOおよび10.0重量%のMoOを含有し、ならびにNi/Moモル比=1.75である。触媒Aは0.83ml/gの全細孔容量および103m/gの比表面積を有する。
【0118】
実施例2:本発明に従わない触媒B(大きいメソ孔の単峰性分布を有するマクロ多孔性かつメソ多孔性の触媒)
触媒Bの担体S2は、活性アルミナ粉末を得るためのハイドラルジライト(Emplura(登録商標)、メルク)の脱水によって得られる。温度は800℃にセットされ、乾燥空気流との脱水されるべき材料の接触時間は1秒である。得られた活性アルミナ粉末は10から200μmの間の粒径に粉砕され、それから、用いられる粉末の体積の2倍に等しい体積の蒸留水によって3回洗浄される。前記活性アルミナ粉末は、30°の角度および40rpmの回転スピードの円錐形の円筒状容器を備えたディスクペレタイザー(GRELBEX(商標)P30)によって、主に2および4mmの間の直径(固体を篩分けした後)および780kg/mの対象物の圧粉充填密度を有するビーズを得るように成形される。前記ビーズは、それらに250m/gの比表面積を与えるように空気中において700℃で熱処理に付される。次に、水熱処理が、硝酸の水溶液(0.1N、メルク(商標))による細孔容量の含浸によって前記ビーズに適用される。水熱処理は200℃の温度で6.5時間に渡って回転バスケット型オートクレーブにおいて実施される。かくして得られたビーズは空気中において950℃で2時間に渡って最後のか焼処理に付される。担体S2は、71m/gの比表面積、0.56ml/gの全細孔容量、および水銀ポロシメトリーによって与えられる次の細孔分布を有する:
・0.35ml/gというその細孔分布が20nmに集中する10nm以上かつ50nm未満の直径を有するメソ孔の容量であって、全細孔容量の63%に対応する;
・0.21ml/gという50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量であって、全細孔容量の38%に対応する。
【0119】
担体S2は0.54ml/gの水取り込み量を有する。含浸溶液は、2.76gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、8.80gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を20.7mlの蒸留水によって希釈することによって調製される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。第2の含浸ステップが、3.18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、7.69gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を18.8mlの蒸留水によって希釈することによって調製された溶液によって実施される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。固体は爾後に空気中において450℃で2時間に渡ってか焼される。得られる触媒Bは、8.9重量%のNiOおよび10.3重量%のMoOを含有し、ならびにNi/Moモル比=1.67である。触媒Bは0.45ml/gの全細孔容量および59m/gの比表面積を有する。
【0120】
実施例3:本発明に従わない触媒C(マクロ多孔性触媒)
2および4mmの間の直径を有するビーズの形態の市販の担体S3(SA52124、UniSpheres(登録商標)NorPro)が提供される。担体S3は、8m/gの比表面積、0.33ml/gの全細孔容量、および水銀ポロシメトリーによって与えられる次の細孔分布を有する:
・0.33ml/gという50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量であって、全細孔容量の100%に対応する。
【0121】
担体S3は0.47ml/gの水取り込み量を有する。含浸溶液は、2.76gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、8.80gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を18mlの蒸留水によって希釈することによって調製される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。第2の含浸ステップが、3.18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、7.69gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を16.4mlの蒸留水によって希釈することによって調製された溶液によって実施される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。固体は爾後に空気中において450℃で2時間に渡ってか焼される。触媒Cは8.9重量%のNiOおよび10.3重量%のMoOを含有し、ならびにNi/Moモル比=1.68である。触媒Cは0.23ml/gの全細孔容量および4m/gの比表面積を有する。
【0122】
実施例4:本発明に従わない触媒D(単峰性のメソ多孔性触媒)
市販の担体S4(SA6578、NorPro(商標))が5mm直径の押出物の形態で供給される。担体S4は、175m/gの比表面積、0.82ml/gの全細孔容量、および水銀ポロシメトリーによって与えられる次の細孔分布を有する:
・0.82ml/gというその細孔分布が13nmに集中する2nm以上かつ20nm以下の直径を有するメソ孔の容量であって、全細孔容量の100%に対応する。
【0123】
担体S4は0.81ml/gの水取り込み量を有する。含浸溶液は、6.06gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、17.40gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を30.7mlの蒸留水によって希釈することによって調製される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。固体は爾後に空気中において450℃で2時間に渡ってか焼される。得られる触媒Dは、9.0重量%のNiOおよび10.0重量%のMoOを含有し、ならびにNi/Moモル比=1.73である。触媒Dは0.74ml/gの全細孔容量および127m/gの比表面積を有する。
【0124】
実施例5:本発明に従わない触媒E(マクロ孔と小さいメソ孔の単峰性分布とを有する触媒)
市販の担体S5(SA6176、NorPro(商標))が1.6mm直径の押出物の形態で供給される。担体S5は、250m/gの比表面積、1.05ml/gの全細孔容量、および水銀ポロシメトリーによって与えられる次の細孔分布を有する:
・0.68ml/gというその細孔分布が7nmに集中する2nm以上かつ20nm以下の直径を有するメソ孔の容量であって、全細孔容量の65%に対応する;
・0.37ml/gという50nm以上かつ8000nm未満の直径を有するマクロ孔の容量であって、全細孔容量の35%に対応する。
【0125】
担体S5は1.02ml/gの水取り込み量を示す。含浸溶液は、6.00gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(Mo(NH24・4HO、99.98%、メルク(商標))、17.40gの硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO、99.5%、メルク(商標))を39.1mlの蒸留水によって希釈することによって調製される。40gの担体の乾式含浸および湿潤飽和雰囲気における12時間の熟成のステップの後に、固体は120℃で12時間に渡って乾燥される。固体は爾後に空気中において450℃で2時間に渡ってか焼される。触媒Eは、9.0重量%のNiOおよび9.9重量%のMoOを含有し、ならびにNi/Moモル比=1.75である。触媒Eは0.84ml/gの全細孔容量および207m/gの比表面積を有する。
【0126】
実施例6:選択的水素化における触媒の使用
触媒A、B、C、D、およびEの活性が、500mlの撹拌オートクレーブ反応器で実施されるモデル分子の混合物の選択的水素化の試験によって評価される。典型的には、2および6gの間の触媒が、大気圧で、硫化ベンチにおいて、15体積%のHSからなるHS/H混合物下において、1l/g.hの触媒で、かつ400℃で、2時間に渡って硫化され(5℃/minのランプ)、次に、200℃における純粋な水素下の2時間のプラトーである。このプロトコールは、本発明に従う全ての触媒で70%超の硫化率を得ることを可能にする。かくして硫化された触媒は空気の非存在下において反応器に移され、それから、1.5MPaの全圧および160℃の温度において250mlのモデル原料と接触させられる。圧力は水素を供給することによって試験の間は一定に保たれる。活性試験に用いられた原料は次の組成を有する:n-ヘプタン中に、3-メチルチオフェンの形態のチオフェン化合物の1000重量ppmの硫黄、2-プロパンチオールの形態のメルカプタンの500重量ppmの硫黄、1-ヘキセンの形態の10重量%のオレフィン、およびイソプレンの形態の1重量%のジオレフィン。
【0127】
試験の時間t=0は触媒および原料を接触させることに対応する。試験の長さは200分にセットされ、得られる液体流出物のガスクロマトグラフィー分析は、イソプレンの水素化(メチルブテンの形成)、1-ヘキセンの水素化(n-ヘキサンの形成)、および2-プロパンチオールの分子量の増大(2-プロパンチオールの消失)における種々の触媒の活性を評価することを可能にする。
【0128】
各反応のための触媒の活性は、触媒のグラムあたりの正規化された各反応の得られた速度定数に対して相対的に定義される。速度定数は反応の次数1を仮定して計算される。活性は触媒Aの100%に対して正規化される。
【0129】
イソプレンの水素化に対する触媒の選択性は、イソプレンおよび1-ヘキセンの水素化における触媒の活性の比:A(イソプレン)/A(1-ヘキセン)に等しい。選択性は触媒Aの100%に対して正規化される。
【0130】
種々の触媒によって得られた結果が下の表1に報告されている。
【0131】
【表1】
【0132】
本発明に従う触媒Aは、他の触媒のものよりも体系的に多大であるジオレフィン水素化活性およびメルカプタン分子量増大活性を有するということが見出される。その上、選択性は、本発明に従う触媒Aでは常に最も高いものに入る。
【国際調査報告】