(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】メソ多孔性・マクロ多孔性担体上の捕捉塊の存在中での有機金属不純物の捕捉方法
(51)【国際特許分類】
C10G 45/10 20060101AFI20231128BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231128BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20231128BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231128BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C10G45/10 A
B01J37/08
B01J37/10
B01J35/10 301D
B01J23/755 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532274
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021082068
(87)【国際公開番号】W WO2022112080
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ルフレーヴ フィリベール
(72)【発明者】
【氏名】ジラール エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】フェカン アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
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4G169BC69A
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4H129NA30
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、硫黄化合物およびオレフィンを含有しているガソリンタイプの炭化水素供給原料中の有機金属不純物を捕捉するための方法であって、前記供給原料を水素およびニッケルベースの活性相と、メソ細孔の二峰性分布を有しているメソ多孔性およびマクロ多孔性のアルミナ基質とを含んでいる捕捉塊と接触させ、ここで、径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の容積は、前記基質の全細孔容積の10~30容積%に相当し、径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の容積は、前記基質の全細孔容積の30~50容積%に相当し、径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、前記基質の全細孔容積の30~50容積%に相当する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄化合物およびオレフィンを含有しているガソリンタイプの炭化水素供給原料中の有機金属不純物を捕捉するための方法であって、捕捉塊を、処理されるべき供給原料および水素の流れと接触させ、その際の温度は、200℃~400℃であり、圧力は、0.2~5MPaであり、水素流量対炭化水素供給原料流量の比は、50~800Nm
3/m
3であり、前記捕捉塊は、ニッケルをベースとする活性相と、メソ細孔の二峰性分布を含んでいるメソ多孔性およびマクロ多孔性のアルミナの担体とを含み、
- 径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の10~30容積%に相当し;
- 径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の30~50容積%に相当し;
- 径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の30~50容積%に相当する
方法。
【請求項2】
前記担体が含む比表面積は、50~210m
2/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記担体が含む全細孔容量は、0.7~1.3mL/gである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の15~25容積%に相当する、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の35容積%~45容積%に相当する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の35~50容積%に相当する、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ニッケル含有率は、NiOの形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して5~65重量%である、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
活性相は、ニッケルのみからなる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉塊の活性相は、コバルト、モリブデンおよびリンをさらに含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
ニッケル含有率は、NiOの酸化物の形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して5~65重量%であり、コバルト含有率は、CoOの形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して0.5~10重量%であり、モリブデン含有率は、MoO
3の形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して2~20重量%であり、リン含有率は、P
2O
5の形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して0.2~10重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、10.5~14.5nmの値の範囲に集中している、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、22~28nmの値の範囲に集中している、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記担体が含む比表面積は、70~180m
2/gである、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記担体は、径が2~4mmであるビーズの形態にある、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記担体は、以下の工程により得られる、請求項14に記載の方法:
s1) 水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムの脱水を、400℃~1200℃、好ましくは600℃~900℃の温度で、0.1秒~5秒、好ましくは0.1秒~4秒の期間にわたって行い、アルミナ粉末を得る工程;
s2) 工程s1)において得られた前記アルミナ粉末を、ビーズの形態に形付けする工程;
s3) 工程s2)において得られたアルミナビーズを、200℃以上の温度で熱処理する工程;
s4) 工程s3)の終わりに得られたアルミナビーズの水熱処理を、水または水溶液を含浸させ、次いで、100℃~300℃の温度でオートクレーブ中に滞留させることにより行う工程;
s5) 工程s4)の終わりに得られたアルミナビーズを、500℃~820℃の温度で焼成する工程。
【請求項16】
炭化水素供給原料は、前記供給原料の全重量に相対して、5重量%~60重量%のモノオレフィン、50~6000重量ppmの硫黄化合物および10~1000ppbのヒ素を含有している接触分解ガソリンである、請求項1~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
有機金属不純物は、重金属、ケイ素、リンおよびヒ素の有機金属不純物から選択される、請求項1~16のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄化合物およびオレフィンを含むガソリンタイプの炭化水素供給原料に含まれる有機金属不純物を、ニッケルベースの捕捉塊を用いて捕捉する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料の仕様では、これらの燃料中、とりわけガソリン中の硫黄含有率を大幅に低減させることが求められている。この低減は、とりわけ、自動車の排気ガス中の硫黄および窒素の酸化物の含有率を制限することに向けられている。欧州において2009年以来、ガソリン燃料について現在施行されているこれらの仕様では、硫黄の最大含有率を、硫黄の重量で10重量ppm(parts per million:百万分率)に設定されている。このような仕様は、他の国々、例えば米国および中国においても施行されており、これらの国々において、2017年1月以来、同様の最大硫黄含有率が要求されている。これらの仕様を達成するために、脱硫方法を介してガソリンを処理することが必要である。
【0003】
ガソリンベース中の硫黄の主な源は、「分解」ガソリンであり、主に、原油の常圧または真空の蒸留の残渣の接触分解の方法から得られたガソリンフラクションである。接触分解からのガソリンフラクションは、平均してガソリンベースの40%を表すが、実際、ガソリン中の硫黄の90%超を占める。その結果として、低硫黄ガソリンの製造には、接触分解ガソリンの脱硫の工程が必要となる。ガソリン留分からの硫黄の除去には、具体的には、水素の存在中での脱硫方法を介して、これらの硫黄リッチなガソリンを処理することが含まれる。これらは、水素化脱硫(hydrodesulfurization:HDS)方法と称される。しかしながら、これらのガソリン留分、より具体的にはFCCから得られたガソリンには、良好なオクタン価に貢献するモノオレフィン(約20重量%~50重量%)、ジオレフィン(0.5重量%~5重量%)および芳香族化合物の形態にある不飽和化合物が多く含まれている。これらの不飽和化合物は、不安定であり、水素化脱硫処理中に反応する。ジオレフィンは、水素化脱硫処理中にポリマー化によりガム状物を形成する。このガム状物の形成により、水素化脱硫触媒が徐々に失活するか、または反応器が徐々に閉塞するに至る。したがって、ジオレフィンは、これらのガソリンに何らかの処理が施される前に、水素化によって除去されなければならない。従来の処理方法では、大部分のモノオレフィンを水素化することにより、ガソリンを非選択的に脱硫しており、これにより、オクタン価の多大な喪失および大量の水素の消費が引き起こされている。最近の水素化脱硫方法により、モノオレフィンに豊富な分解ガソリンを脱硫しながら、モノオレフィンの水素化およびその結果としてのオクタンの喪失を制限することが可能となる。そのような方法は、例えば、特許文献1および2に記載されている。
【0004】
水素化脱硫方法は、少なくとも3年から5年の期間にわたって連続的に運転される。硫黄含有ガソリン類の水素化脱硫を行うために用いられる触媒は、したがって、数年にわたって連続的に運転させるように、経時的に良好な活性、良好な選択性および良好な安定性を有する必要がある。しかしながら、脱硫されるべき炭化水素供給原料中に、重金属、例えば、水銀、ヒ素、あるいは、汚染物質、例えば、リン、ケイ素が、有機金属化合物の形態で存在すると、水素化処理触媒が急速に失活する結果となる。そのため、水素化脱硫触媒と接触させる前に、供給原料からこれらの汚染物質を除去することが必要である。
【0005】
炭化水素供給原料中のこれらの不純物、より詳細にはヒ素を抽出するための様々な解決手段が提案されている。一般に、捕捉塊(吸着剤)は、水素化脱硫ユニットの上流に位置する反応器、または水素化脱硫触媒を含む触媒床の上流にある水素化脱硫反応器のいずれかに配置される。そのような吸着剤は、特許文献3および4に記載されている。これらの吸着剤は、水素の存在中で用いられるが、処理されるべきガソリンが不飽和化合物を含む場合に不都合が生じる。この結果、オクタン価が低下し、不純物の吸着の段階から考えられるガソリンの品質が低下するに至る。これらの吸着剤は、水素化脱硫反応に対して比較的触媒的に不活性であるという欠点もある。さらに、それらは反応器内で少なくない体積を占め、水素化脱硫触媒の床のために利用できる体積を低減させるため、全体として方法の性能低下につながる。したがって、関係するガソリンのオクタン価を低下させる原因となる水素化反応を制限するという目的を有しつつ、これらの不純物、例えば、ヒ素を除去することが可能となる解決策を模索することが必要である。これらの解決策は、オレフィンの水素化に対する水素化脱硫反応の選択性を損なうことなく、水素化脱硫性能を向上させることも可能とするものでなければならない。
【0006】
それ故に、重金属についての吸着特性および最適化された触媒特性を有している、すなわち、水素化脱硫(hydrodesulfurization:HDS)における活性と、オレフィン水素化反応と比較した水素化脱硫反応の最大選択性(HDS/HYD)との間の良好な妥協点を有しかつ捕捉後の吸着および触媒活性の特性が経時的に安定している捕捉塊を有することの依然として必要性がある。
【0007】
さらに、担体の細孔分布が触媒性能に有益な影響を有することができることが、先行技術から知られている。
【0008】
特許文献5には、触媒担体の調製方法が開示されており、この触媒担体は、マクロ多孔度部を含有せず、メソ多孔度部中に二峰性の細孔構造を有し、多孔度部の2峰は、1~20nmだけ分けられるようになされている。この担体は、数多くの触媒用途、特に、水素化処理、特に、水素化脱窒において用いられ得る。
【0009】
特許文献6には、水素化脱硫または水素化脱金属の触媒担体として使用されるための多孔質アルミナ担体の調製方法が開示されており、前記担体が含んでいる全細孔容積は0.65~1.30cm3/gであり、前記多孔質担体は、2つの個体群のマクロ細孔を含み、そのうち、全細孔容積に相対する約2容積%~20容積%は、径が10000オングストローム~100000オングストローム(1000~10000nm)であるマクロ細孔の形態にあり、そのうち全細孔容積に相対して約5容積%~30容積%が、径が1000オングストローム~10000オングストローム(100~1000nm)であるマクロ細孔の形態にあり、そのうち全細孔容積に相対する約50容積%~93容積%が、細孔径が30オングストローム~1000オングストローム(3~100nm)であるメソ細孔の形態にある。
【0010】
特許文献7~9には、種々の触媒用途(プロパン脱水素、エステル化)のための触媒が開示されており、その担体は、三峰性の細孔分布を有し、メソ細孔の個体群が、それぞれ2~4nm、5~15nmおよび10~40nmである3つのピークに集中している。
【0011】
特許文献10には、三峰性の多孔度部を含む、ハロゲン化物の捕捉のためのアルミナが開示されており、この三峰性の多孔度部の40容積%~49容積%は、担体の全細孔容積に相対して、径が15~50nmである細孔の形態にある。
【0012】
しかしながら、従来技術の文献のいずれにも、二峰性メソ細孔の多孔度部と大きいメソ細孔容積の両方を有し、これを、特定のマクロ細孔容積と組み合わせた担体を含んでいる捕捉塊の存在中で有機金属不純物、特に、炭化水素供給原料中に含有されているものを捕捉するための方法の実施は記載されていない。
【0013】
この脈絡において、本発明の目的の1つは、硫黄化合物およびオレフィンを含有しているガソリンタイプの炭化水素供給原料中の有機金属不純物を捕捉するための方法を提案することにあり、当該方法において、捕捉塊は、メソ多孔性およびマクロ多孔性担体上に、ニッケルを少なくとも含んでいる活性相を含み、二峰性のメソ細孔性の多孔度部と高いメソ細孔容積の両方を示し、これに所定のマクロ多孔性容積が組み合わされている。これは、驚くべきことに、この捕捉塊の使用により、オレフィンおよび硫黄を含有しているガソリン中に含有される有機金属不純物、特にヒ素を効率的に捕捉する一方で、オレフィンの水素化率を一般に30%未満、優先的には20%未満、よりなおさら好ましくは10%未満の値に制限することが可能となることが発見されたためである。
【0014】
実際に、いかなる科学理論にも結び付けられることなく、このような捕捉塊の使用により、異なるサイズのメソ細孔の集団の存在によって、反応物および生成物の内部拡散の現象が改善される。さらに、マクロ多孔度部が組み合わされて存在していることが特に賢明であるのは、処理されるべき供給原料が、有意な量の反応性オレフィン(不飽和化合物)、特にジオレフィンを含有している場合であり、これは、ガソリンについてのケースであり、ガム状物の形成のもとになり得、それ故に、マクロ多孔度の存在なしでは捕捉塊の多孔度部をブロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1077247号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1174485号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2794381号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/037884号
【特許文献5】米国特許第6589908号明細書
【特許文献6】米国特許第5266300号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第108855197号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第104248987号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第104248985号明細書
【特許文献10】米国特許第7790130号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の主題)
本発明の主題は、硫黄化合物およびオレフィンを含有しているガソリンタイプの炭化水素供給原料中の有機金属不純物を捕捉するための方法であって、捕捉塊を、処理されるべき供給原料および水素の流れと接触させ、その際の温度は、200℃~400℃であり、圧力は、0.2~5MPaであり、水素流量対炭化水素供給原料流量の比は、50~800Nm3/m3であり、前記捕捉塊は、ニッケルをベースとする活性相と、メソ細孔の二峰性分布を含んでいるメソ多孔性およびマクロ多孔性のアルミナの担体とを含み、
- 径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の10~30容積%に相当し;
- 径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の30~50容積%に相当し;
- 径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の30~50容積%に相当する
方法に関する。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、前記担体が含む比表面積は、50~210m2/gである。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、前記担体が含む全細孔容積は、0.7~1.3mL/gである。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の15~25容積%に相当する。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の35~45容積%に相当する。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の35~50容積%に相当する。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、ニッケル含有率は、NiOの形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して5~65重量%である。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、活性相は、ニッケルのみからなる。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、前記捕捉塊の活性相は、コバルト、モリブデンおよびリンをさらに含む。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、ニッケル含有率は、NiOの酸化物の形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して5~65重量%であり、コバルト含有率は、CoOの形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して0.5~10重量%であり、モリブデン含有率は、MoO3の形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して2~20重量%であり、リン含有率は、P2O5の形態で表されて、前記捕捉塊の全重量に相対して0.2~10重量%である。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、10.5~14.5nmの値の範囲に集中している。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によると、径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、22~28nmの値の範囲に集中している。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によると、前記担体が含む比表面積は、70~180m2/gである。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によると、前記担体は、径が2~4mmであるビーズの形態にある。
【0030】
1つまたは複数の実施形態によると、前記担体がビーズの形態にある場合、前記担体は、以下の工程により得られる:
s1) 水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムの脱水を、400℃~1200℃、好ましくは600℃~900℃の温度で、0.1秒~5秒、好ましくは0.1秒~4秒の期間にわたって行い、アルミナ粉末を得る工程;
s2) 工程s1)において得られた前記アルミナ粉末を、ビーズの形態に形付けする工程;
s3) 工程s2)において得られたアルミナビーズを、200℃以上の温度で熱処理する工程;
s4) 工程s3)の終わりに得られたアルミナビーズの水熱処理を、水または水溶液を含浸させ、次いで、100℃~300℃の温度でオートクレーブ中に滞留させることにより行う工程;
s5) 工程s4)の終わりに得られたアルミナビーズを、500℃~820℃の温度で焼成する工程。
【0031】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料は、前記供給原料の全重量に相対して、5重量%~60重量%のモノオレフィン、50~6000重量ppmの硫黄化合物および10~1000ppbのヒ素を含有している接触分解ガソリンである。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によると、有機金属不純物は、重金属、ケイ素、リンおよびヒ素の有機金属不純物から選択される。好ましくは、有機金属不純物は、有機金属ヒ素不純物である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
続けて、化学元素の族は、CAS分類(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)によって与えられる。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に相当する。
【0034】
BET比表面積は、規格ASTM D3663-03に従う窒素物理吸着によって測定され、この方法は、Rouquerol F.、Rouquerol J.、およびSingh K.による著作“Adsorption by Powders & Porous Solids: Principles, Methodology and Applications”, Academic Press, 1999に記載されている。
【0035】
本明細書において、IUPAC協定にしたがって、「ミクロ細孔」は、径が2nm未満、すなわち0.002μm未満である細孔を意味すると理解される;「メソ細孔」は、径が2nm超、すなわち0.002μm超、かつ、50nm未満、すなわち0.05μm未満である細孔を意味すると理解され、「マクロ細孔」は、径が50nm以上、すなわち0.05μm以上である細孔を意味すると理解される。
【0036】
本発明の以下の説明において、アルミナまたは捕捉塊の「全細孔容積」は、ASTM D4284-83規格に従う水銀ポロシメトリによる圧入によって、最大圧力4000bar(400MPa)で、表面張力484dyne/cmおよび接触角140°を用いて測定される容積を意味すると理解される。濡れ角は、Jean CharpinおよびBernard Rasneurによって記述された刊行物"Techniques de l'ingenieur, traite analyse et caracterisation"[エンジニアのテクニック、分析および特性評価に関する論文]、1050~1055頁の推奨にしたがって140°に等しいとみなされた。
【0037】
より高い精度を得るために、本明細書の以降で与えられる全細孔容積(mL/g)の値は、サンプルについて測定される全水銀容積(水銀圧入ポロシメトリによる圧入によって測定される全細孔容積)(mL/g)の値から30psi(約0.2MPa)に相当する圧力で同じサンプルについて測定される水銀の容積(mL/g)の値を減算したものに相当する。
【0038】
マクロ細孔およびメソ細孔の容積は、規格ASTM D4284-83に従う水銀圧入ポロシメトリによって、最大圧力4000bar(400MPa)で、表面張力484dyne/cmおよび接触角140°を用いて測定される。
【0039】
水銀が全ての粒間空隙(intergranular voids)を満たす値およびそれ以上の値は、0.2MPaに設定され、この値を上回ると、水銀がサンプルの細孔中へと侵入すると考えられている。
【0040】
触媒のマクロ細孔容積は、0.2MPa~30MPaの圧力で導入された水銀の累積容積であるとして定義され、これは、見かけ上の径が50nm超である細孔中に含有される容積に相当する。
【0041】
触媒のメソ細孔容積は、30MPa~400MPaの圧力で導入される水銀の累積容積であるとして定義され、これは、見かけ上の径が2~50nmである細孔中に含有される容積に相当する。
【0042】
水銀ポロシメトリによって測定される増分細孔容積が、細孔径の関数としてプロットされる場合、多孔度モードは、表される関数の変曲点に対応する。
【0043】
金属元素(第VIII族金属、第VIB族金属)およびリンの含有率は、蛍光X線によって測定される。
【0044】
(2.説明)
(有機金属不純物を捕捉するための方法)
本発明は、以下に定義する捕捉塊を使用して、炭化水素供給原料中に含有される有機金属不純物、例えば、重金属、ケイ素またはリン、より詳細にはヒ素を捕捉するための方法であって、前記捕捉塊を、水素の存在中で炭化水素供給原料と接触させる方法に関する。本発明の意味において、本発明による捕捉方法は、水素の存在中で炭化水素供給原料中のヒ素および場合によりケイ素を少なくとも部分的に捕捉して、重金属、特にヒ素の含有率が低下し、オクタン価の損失が限定された流出物を生じさせるための方法である。本発明による捕捉方法により、ヒ素を除去することが可能となり、またモノオレフィンの水素化率を制限することが可能となる。オレフィンの水素化率は、有利には50%未満、優先的には30%未満、よりなおさら好ましくは20%未満である。
【0045】
処理されるべき炭化水素供給原料は、有利には、接触分解、熱分解または水蒸気分解ユニットからの接触分解ガソリンである。本方法は、原油から生じる重金属を含有する場合がある直接蒸留ガソリンと、モノオレフィンおよびジオレフィンを含んでいる分解ガソリンとの混合物の処理にも適用され得る。好ましくは、処理されるべき炭化水素供給原料は、5重量%~60重量%のモノオレフィン、50重量ppm~6000重量ppmの硫黄化合物および10~1000重量ppbのヒ素を含んでいる接触分解ガソリンである。処理されるべき炭化水素供給原料中に含有される硫黄化合物は、有機硫黄化合物、例えば、チオール、チオフェン化合物、ベンゾチオフェン化合物および他の芳香族硫黄化合物、ジスルフィド化合物等であり得る。処理されるべき炭化水素供給原料中に含有されるヒ素化合物は、有機ヒ素化合物、例えば、トリメチルアルシンまたはトリエチルアルシンであり得る。モノオレフィンは、単一の炭素-炭素二重結合を示す炭化水素分子を示し、ジオレフィンは、少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含んでいる炭化水素分子を示す。モノオレフィンおよびジオレフィンは、直鎖状、分枝状および/または環状の炭化水素分子であり得る。
【0046】
本発明による捕捉塊は、有利には、ヒ素の捕捉率を最大にする一方で、オレフィンの水素化率を制限するような操作条件下に実施される。接触操作が一般に行われる際の温度は、200~400℃であり、その際の圧力は、0.2~5MPaであり、これに伴う水素の流量対炭化水素供給原料の流量の比は、50~800Nm3/m3である。用いられる水素は、任意の水素源から生じることができる。好ましくは、精製所から生じたフレッシュな水素および/または水素化脱硫ユニット、好ましくは精製されるべき炭化水素留分の水素化脱硫のためのユニットからのリサイクル水素が用いられる。
【0047】
本発明による捕捉塊の存在中で炭化水素供給原料からのヒ素の捕捉を実施するために、いくつかの反応器技術が想定され得るが、最も伝統的で最も普及している技術は、固定床技術である。この場合、反応器は、本発明による捕捉塊および水素化脱硫触媒を充填され、ヒ素の吸着および水素化脱硫における操作を、原則として出口流出物中にヒ素が出現するまで(当業者にはブレイクスルーという用語で知られている現象)行う。場合によっては、被毒した捕捉塊の全量が、同量のフレッシュな捕捉塊で置き換えられ得る。本発明による捕捉塊を交換するための技術のチョイスは、本発明の関連において、限定的要素とはみなされない。捕捉塊は、移動床反応器において使用され得る、すなわち、使用済みの捕捉塊は、連続的に抜き出され、フレッシュな捕捉塊と交換される。この種の技術により、捕捉塊によるヒ素の捕捉を維持し、生じた流出物へのヒ素のブレイクスルーを回避することが可能となる。他の解決策の中で、言及がなされてよいのは、膨張床反応器の使用であり、このものは、捕捉塊の連続的な抜き出しと補充も可能とし、捕捉塊の脱硫活性を維持する。
【0048】
本発明による捕捉方法は、好ましくは、本発明による捕捉塊と接触させる操作から生じた流出物に対して実施される選択的水素化または接触水素化脱硫の少なくとも1回の追加的な段階と結び付けられる。そのため、捕捉塊による炭化水素供給原料の処理の段階は、選択的水素化または水素化脱硫の後続の段階において用いられる触媒の触媒活性を保持することを特に可能にする前処理とみなされる。それ故に、本発明による捕捉方法は、選択的水素化または水素化脱硫の1回または複数回の他の追加的な段階を含み、当該段階において、炭化水素供給原料を本発明による捕捉塊と接触させることから生じた流出物を、供給原料中に存在するジオレフィンの選択的水素化または水素化脱硫のための少なくとも1種の他の触媒と接触させる。前記追加的な水素化脱硫段階(1回または複数回)により、ヒ素が枯渇し、硫黄の含有率がより低下している流出物中に含有される残留硫黄化合物を除去することが可能となる。これらの残留硫黄化合物の一部は、供給原料中に存在するオレフィンへのH2Sの付加に由来することができる。H2Sは、炭化水素供給原料が捕捉塊と接触させられている操作の間、すなわちヒ素の捕捉の間に形成され得る。前記追加の水素化脱硫段階(1回または複数回)が実施されるのは、炭化水素供給原料が捕捉塊と接触させられる操作から得られる流出物が一般に10ppm超の硫黄含有率を示す場合および現在の仕様(多くの国々において10ppm以下である)を満たす低い硫黄含有率を有しているガソリンを生じさせることが必要である場合である。ヒ素および硫黄化合物の一部が除かれた流出物は、次に、選択的水素化脱硫の前記追加段階のうちの少なくとも1つにおいて処理される。前記段階(1回または複数回)において、前記流出物は、炭化水素供給原料が捕捉塊と接触させられた条件と同一であっても異なっていてもよい操作条件下に、少なくとも1種の他の水素化脱硫触媒と接触させられる。
【0049】
前記追加的な水素化脱硫段階(1回または複数回)において用いられる触媒(1種または複数種)は、本発明による捕捉塊により、供給原料中に存在するヒ素による不活性化から保護される。それ故に、ヒ素の存在に対して敏感な非常に選択的な水素化脱硫触媒は、前記追加的な水素化脱硫段階(1回または複数回)において用いられ得る。任意の水素化脱硫触媒が、前記追加の水素化脱硫段階(1回または複数回)において用いられ得る。好ましくは、使用がなされる触媒は、オレフィン水素化反応と比較して水素化脱硫反応に対して高い選択性を有する。このような触媒は、少なくとも1種の多孔質および無定形の鉱物担体と、第VIB族金属と、第VIII族金属とを含む。第VIB族金属は、優先的には、モリブデンまたはタングステンであり、第VIII族金属は、優先的には、ニッケルまたはコバルトである。担体は、一般に、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、炭化ケイ素、酸化チタン(単独でまたはアルミナ若しくはシリカ-アルミナとの混合物として)、および酸化マグネシウム(単独でまたはアルミナ若しくはシリカ-アルミナとの混合物として)によって構成される群から選択される。好ましくは、担体は、アルミナ、シリカおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される。好ましくは、追加の水素化脱硫工程(1回または複数回)において用いられる水素化脱硫触媒は、以下の特徴を有する:
- 第VIB族の元素の含有率は、第VIB族の元素の酸化物の重量で1重量%~20重量%である、
- 第VIII族の元素の含有率は、第VIII族の元素の酸化物の重量で0.1重量%~20重量%である、
- モル比(第VIII族の元素/第VIB族の元素)は、0.1~0.8である。
【0050】
非常に好適な水素化脱硫触媒は、コバルトおよびモリブデンを含み、上記の特徴を有している。さらに、水素化脱硫触媒は、リンを含んでよい。この場合、リンの含有率は、P2O5の重量で、触媒の全重量に相対して、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、リン対第VIB族元素のモル比は、0.25以上、好ましくは0.27以上である。
【0051】
前記追加の水素化脱硫段階(1回または複数回)において、炭化水素供給原料を本発明による捕捉塊と接触させることから生じたヒ素が枯渇した流出物は、以下の操作条件下に、少なくとも1種の他の選択的水素化脱硫触媒と接触させられる:
- 温度は、約210℃~約410℃、優先的には240℃~360℃である、
- 全圧は、0.2~5MPa、より優先的には0.5~3MPaである、
- 炭化水素供給原料の単位容積当たりの水素の容積は、50~800Nm3/m3、より優先的には60~600Nm3/m3である。
【0052】
本発明による方法の代わりの形態において、炭化水素供給原料を本発明による捕捉塊と接触させるための操作条件は、前記追加の水素化脱硫段階(1回または複数回)において使用される条件と同一である。
【0053】
別の実施形態によると、本発明による捕捉塊による捕捉の段階から生じた流出物を水素化処理する段階は、選択的水素化であり、これにより、オレフィンを与えるジオレフィンの水素化、場合による不飽和硫黄化合物の水素化が可能となるだけではなく、軽質硫黄化合物(すなわち、チオフェンの温度より低い温度を有する)のチオフェンの温度より高い温度を有している硫黄化合物への転化(重量増加)、例えば、オレフィンへのチオールの付加によるものが可能となる。この水素化段階は、水素と、第VIB族の少なくとも1種の金属および第VIII族の少なくとも1種の非貴金属を多孔質担体上に堆積されて含有している触媒との存在中で実施される。好ましくは、用いられる触媒は、以下の通りである:
- 第VIB族の元素の酸化物の重量含有率は、触媒の重量に対して、6%~18%である、
- 第VIII族の元素の酸化物の重量含有率は、触媒の重量に対して、4%~12%である、
- 触媒の比表面積は、200~270m2/gである、
- 第VIB族の元素の密度は、第VIB族の元素の酸化物の前記重量含有率対触媒の比表面積の比として表されて、4~6×10-4g/m2である、
- 第VIII族の金属対第VIB族の金属のモル比は、0.6~3モル/モルである。
【0054】
第VIB族の金属は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選ばれ、大いに好ましくは、第VIB族の金属は、モリブデンである。第VIII族の金属は、好ましくは、ニッケルおよび/またはコバルトであり、大いに好ましくはニッケルである。水素は、一般に、ジオレフィンを水素化するのに必要な化学量論(ジオレフィンのモル当たり水素1モル)に対して、わずかに過剰に、最大5モル/モルで導入される。ガソリンと水素からなる混合物は、0.5~5MPaの圧力、80℃~220℃の温度、1~10h-1の液体空間速度(LHSV)で触媒と接触させられ、ここで、液体空間速度は、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たりの供給原料の容積(リットル)(L/L・h)で表される。
【0055】
本発明による方法の代わりの形態において、本発明による捕捉塊は、選択的水素化および/または水素化脱硫の前記追加的な段階(1回または複数回)において使用される触媒(1種または複数種)を含有している1基または複数基の反応器の保護床の位置に配置され得る。本発明による方法の別の代わりの形態において、本発明による捕捉塊は、「捕捉」反応器に配置される。この反応器は、選択的水素化および/または水素化脱硫の前記追加的な段階(1回または複数回)において使用される触媒(1種または複数種)を含有している反応器(1基または複数基)とは別であり、反応器(1基または複数基)の上流に配置される。選択的水素化および/または水素化脱硫の少なくとも1回の追加的な段階を使用する本発明による方法のすべての代わりの形態において、本発明による捕捉塊の容積の、選択的水素化および/または水素化脱硫の前記追加的な段階(1回または複数回)において使用される触媒(1種または複数種)の容積に対する比は、有利には4%~50%、好ましくは5%~40%、より好ましくは5%~35%である。
【0056】
(捕捉塊)
本発明による方法の関連において用いられる捕捉塊は、活性相を含み、この活性相は、ニッケルと、場合による第VIII族からの少なくとも1種の追加元素と、場合による第VIB族からの少なくとも1種の元素と、場合によるリンとを含んでいる。
【0057】
ニッケル含有率は、NiOの形態で表されて、捕捉塊の全重量に相対して有利には5~65重量%、好ましくは10~30重量%である。
【0058】
追加の第VIII族元素が存在する場合、それの含有率は、酸化物の形態で表されて、有利には、捕捉塊の全重量に相対して0.5~10重量%である。
【0059】
第VIB族元素が存在する場合、それの含有率は、酸化物の形態で表されて、有利には、捕捉塊の全重量に相対して2~20重量%である。
【0060】
リンが存在する場合、それの含有率は、酸化物の形態で表されて、捕捉塊の全重量に相対して0.2~10重量%である。
【0061】
本発明による1つの実施形態において、活性相は、ニッケルのみからなる。ニッケル含有率は、NiOの形態で表されて、有利には、捕捉塊の全重量に相対して5~65重量%、好ましくは10~30重量%である。
【0062】
本発明による1つの実施形態において、活性相は、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびリンを含む。ニッケル含有率は、NiO酸化物の形態で表されて、捕捉塊の全重量に相対して有利には5~65重量%、好ましくは10~30重量%である。コバルト含有率は、CoOの形態で表されて、捕捉塊の全重量に相対して有利には0.5~10重量%、好ましくは0.5~5重量%である。モリブデン含有率は、MoO3の形態で表されて、捕捉塊の全重量に相対して有利には2~20重量%、好ましくは3~15重量%である。リン含有率は、P2O5の形態で表されて、捕捉塊の全重量に相対して有利には0.2~10重量%、好ましくは0.5~5重量%である。
【0063】
捕捉塊が一般に含む比表面積は、50~200m2/g、好ましくは60~170m2/g、好ましくは70~130m2/gである。
【0064】
捕捉塊の細孔容量は、一般に0.5mL/g~1.3mL/g、好ましくは0.6mL/g~1.1mL/gである。
【0065】
(アルミナ担体)
本発明による方法の関連において用いられる捕捉塊のアルミナ担体は、マクロ細孔性およびメソ細孔性のアルミナ担体であり、このアルミナ担体は、メソ細孔の二峰性の分布を有し:
- 径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の10~30容積%に相当する;
- 径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の30~50容積%に相当する;
- 径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の30~50容積%に相当する。
【0066】
好ましくは、径が2nm以上かつ18nm未満である、担体のメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の15~25容積%に相当する。
【0067】
好ましくは、径が18nm以上かつ50nm未満である、担体のメソ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の35~45容積%に相当する。
【0068】
好ましくは、径が50nm以上かつ8000nm未満である、担体のマクロ細孔の容積は、前記担体の全細孔容積の35~50容積%に相当する。
【0069】
本発明による1つの実施形態において、径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、10.5~14.5nm、好ましくは12~13nmの値の範囲に集中している。
【0070】
本発明による1つの実施形態において、径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、22~28nm、好ましくは23~27nmの値の範囲に集中している。
【0071】
担体が一般的に含む比表面積は、50~210m2/g、好ましくは70~180m2/g、さらにより好ましくは70~160m2/gである。
【0072】
担体の細孔容積は、一般的に0.7mL/g~1.3mL/g、好ましくは0.8mL/g~1.2mL/gである。
【0073】
有利には、担体は、径が0.8~10mm、優先的には1~5mm、より優先的には2~4mmであるビーズの形態にある。
【0074】
(担体調製方法)
本発明による方法の関連において用いられる捕捉塊のアルミナ担体は、当業者に知られている任意の方法によって合成され得る。
【0075】
好適な実施形態によると、本発明に従って用いられるアルミナ担体は、ビーズの形態にある。この好適な実施形態によると、担体の調製は、以下の工程を含む:
s1) 水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムの脱水を、400℃~1200℃、好ましくは600℃~900℃の温度で、0.1秒~5秒、好ましくは0.1秒~4秒の期間にわたって行い、アルミナ粉末を得る、工程;
s2) 工程s1)において得られた前記アルミナ粉末を、ビーズの形態に形付けする工程;
s3) 工程s2)において得られたアルミナビーズを、200℃以上の温度で熱処理する工程;
s4) 工程s3)の終わりに得られたアルミナビーズの水熱処理を、水または優先的には酸性水溶液を含浸させ、次いで、100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃の温度でオートクレーブ中に滞留させることにより行う工程;;
s5) 工程s4)の終わりに得られたアルミナビーズを、500℃~820℃の温度で焼成する工程。
【0076】
工程s1)~s5)は、以下に詳述される。
【0077】
(工程s1))
工程s1)によると、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムの脱水は、400℃~1200℃、好ましくは600℃~900℃の温度で、0.1秒~5秒、好ましくは0.1秒~4秒の期間にわたって行われ、アルミナ粉末を得る。水酸化アルミニウムは、ハイドラーギライト、ギブサイトまたはバイヤライトから選ばれ得る。オキシ水酸化アルミニウムは、ベーマイトまたはダイアスポアから選ばれ得る。
【0078】
好ましくは、工程s1)は、ハイドラーギライトを用いて行われる。
【0079】
一般的に、工程s1)は、高温ガス、例えば乾燥空気または湿潤空気の流れの存在中で行われ、これにより、蒸発した水を迅速に除去・同伴させることが可能となる。
【0080】
一般的に、アルミニウムの水酸化物またはオキシ水酸化物の脱水の後に得られた活性アルミナ粉末は、10~200μmの粒子サイズに粉砕される。
【0081】
一般的に、アルミニウムの水酸化物またはオキシ水酸化物の脱水の後に得られた活性アルミナ粉末は、水または酸性水溶液により洗浄される。洗浄工程が酸性水溶液により行われる場合、任意の無機酸または有機酸が用いられてよく、好ましくは、無機酸の、硝酸、塩酸、過塩素酸または硫酸が、有機酸の、カルボン酸(ギ酸、酢酸またはマロン酸)、スルホン酸(パラ-トルエンスルホン酸)または硫酸エステル(ラウリル硫酸)がある。
【0082】
(工程s2))
工程s2)によると、工程s1)の終わりに得られた前記アルミナ粉末は、形付けされる。
【0083】
前記アルミナ粉末の形付けが行われ、ビーズを得、これは、造粒と称され、一般的に、回転技術、例えば、回転造粒機または回転ドラムによって行われる。このタイプの方法により、径および細孔分布が制御されたビーズを得ることが可能となり、これらの寸法およびこれらの分布は、一般的に、凝集工程の間に作り出される。
【0084】
多孔度は、種々の手段によって作り出され得、例えば、アルミナ粉末の粒子サイズ分布の選択または異なる粒子サイズ分布を有する数種のアルミナ粉末の凝集がある。別の方法は、凝集段階の前またはその最中にアルミナ粉末と、細孔形成化合物として知られている1種または複数種の化合物とを混合することを含む。細孔形成化合物は、加熱することにより消失し、これによりビーズ中に多孔度を作り出す。用いられる細孔形成化合物として、言及されてよいのは、例として、木粉、木炭、活性炭、カーボンブラック、硫黄、タール、プラスチック材料またはプラスチック材料のエマルジョン、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナフタレン等である。加えられる細孔形成化合物の量は、未処理の充填密度が500~1100kg/m3、優先的には700~950kg/m3であり、径が0.8~10mm、好ましくは1~5mm、さらにより好ましくは2~4mmであるビーズを得るのに望まれる容積により決定される。得られたビーズの篩いによる選別は、望みの粒子サイズに応じて行われ得る。
【0085】
(工程s3))
工程s3)によると、熱処理は、工程s2)の終わりに得られたビーズの形態に形付けされたアルミナ粉末上で、200℃以上、好ましくは200℃~1200℃、好ましくは300℃~900℃、大いに好ましくは400℃~750℃の温度で、一般的に1~24時間、好ましくは1~6時間の期間にわたって行われる。この中間工程において得られるビーズが有する比表面積は、50~420m2/g、好ましくは60~350m2/g、さらにより好ましくは80~300m2/gである。
【0086】
(工程s4))
工程s4)によると、工程s3)の終わりに得られたアルミナビーズは、水熱処理を経る。この処理は、水または好ましくは酸性水溶液を含浸させ、次いで、オートクレーブ中、100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃の温度で保持することにより行われる。
【0087】
水熱処理は、一般的に、100℃~300℃、優先的には150℃~250℃の温度で、45分超、優先的には1~24時間、非常に優先的には1.5~12時間の継続期間にわたって行われる。水熱処理は、一般的に、1種または複数種の無機および/または有機の酸、好ましくは、硝酸、塩酸、過塩素酸、硫酸および、溶液が有するpHが4未満である弱酸、例えば、酢酸若しくはギ酸を含んでいる酸性水溶液を用いて行われる。一般的に、前記酸性水溶液は、アルミニウムイオンと結合可能なアニオンを放出可能な1種または複数種の化合物も含み、好ましくは、ニトラートイオン(硝酸アルミニウム等)、クロリド、スルファート、パークロラート、クロロアセタート、トリクロロアセタート、ブロモアセタート、ジブロモアセタート、並びに、ホルマートおよびアセタート等の、一般式:R-COOのアニオンを含む化合物を含む。
【0088】
(工程s5))
工程s5)によると、工程s4)の終わりに得られたアルミナビーズは、500℃~820℃、好ましくは550℃~750℃の温度で、一般的に1時間~24時間、好ましくは1時間~6時間の期間にわたって焼成を経る。この工程の終わりに、得られたアルミナアルミナビーズが含む比表面積は、50~210m2/g、好ましくは70~180m2/g、さらにより好ましくは70~160m2/gである。
【0089】
(捕捉塊を調製するための方法)
捕捉塊の活性相の金属は、当業者に周知の技術にしたがって、例えば、金属前駆体の溶液からの含浸によって、担体上に堆積させられ得る。含浸は、例えば、既知の乾式含浸の形態にしたがって実施され得、これによれば、可溶性塩の形態にある元素の望みの量が、選ばれた溶媒、例えば脱塩水中に導入され、担体の多孔度部を可及的に正確に充填するようにする。こうして溶液を充填された担体は、好ましくは乾燥させられる。
【0090】
金属は、共含侵でまたは逐次添加により堆積させられ得る。含浸溶液(1種または複数種)にリンが加えられ得る。
【0091】
有利には、硝酸ニッケル、水酸化ニッケルまたは炭酸ニッケルがニッケルの活性相の前駆体として用いられる。
【0092】
活性相が追加の第VIII族元素としてコバルトを含んでいる場合、硝酸コバルト、水酸化コバルトまたは炭酸コバルトが前駆体として有利に用いられる。
【0093】
活性相が第VIB族金属としてのモリブデンを含む場合、用いられる前駆体は、有利には、七モリブデン酸アンモニウムまたは酸化モリブデンMoO3である。
【0094】
活性相にリンが存在する場合、前駆体としてリン酸が有利に用いられる。水溶液中に十分な溶解性を有し、乾燥工程または任意のタイプの酸化処理中に分解可能な、当業者に知られている任意の他の塩も使用され得る。
【0095】
ニッケル、場合による少なくとも1種の第VIII族金属、場合による少なくとも1種の第VIB族金属および場合によるリンの導入の後に、捕捉塊は、好ましくは、焼成処理に供される。この処理の目的は、金属の分子前駆体を酸化物相に変換することにある。この場合のこの処理は、酸化処理であるが、捕捉塊の単純な乾燥も実施され得る。好ましくは、捕捉塊は、本発明による方法におけるそれの使用の前に、焼成処理に供される。前記焼成処理は、有利には、空気中または希釈酸素中、200℃~550℃、好ましくは300℃~500℃の温度で実施される。焼成の後に、担体上に堆積した金属は、酸化物の形態にある。
【0096】
有利には、焼成済み捕捉塊も、本発明による方法におけるそれの使用の前に、硫化処理に供される。硫化は、スルホ還元媒体中、すなわちH2Sおよび水素の存在中で実施され、金属酸化物を遷移金属硫化物、例えば、MoS2、Ni3S2およびCo9S8に転化する。硫化は、捕捉塊上に、H2Sおよび水素を含有している流れ、または捕捉塊および水素の存在中で分解してH2Sを与えることができる硫黄化合物を注入することによって行われる。ポリスルフィド、例えば、ジメチルジスルフィドは、硫化物触媒に通常用いられるH2S前駆体である。温度は、H2Sが、金属酸化物と反応して金属硫化物を形成するように調節される。この硫化は、現場内(in situ)または現場外(ex situ)(水素化脱硫反応器の内側または外側)で、200~600℃、より好ましくは250~500℃の温度で実施され得る。活性であるために、金属は、好ましくは、実質的に硫化されるべきである。捕捉塊の活性相を構成する金属の硫化度は、有利には60%に少なくとも等しく、好ましくは80%に少なくとも等しい。硫化された材料中の硫黄含有率は、ASTM D5373に従う元素分析により測定される。金属が硫化されていると考えられるのは、捕捉塊上に存在する硫黄(S)と前記金属のモル比によって定義される、全体的な硫化率が、考慮される金属(1種または複数種)の完全な硫化に相当する理論モル比の60%に少なくとも等しい場合である。全硫化度は、以下の式によって定義される:
(S/元素)捕捉塊≧0.6×(S/元素)理論
式中:
(S/元素)捕捉塊:捕捉塊上に存在する硫黄(S)と元素との間のモル比、
(S/元素)理論:硫化物を与える元素の全硫化に対応する、硫黄と元素のモル比。
【0097】
この理論モル比は、対象となる元素に応じて変わる:
- (S/Co)理論=8/9
- (S/Ni)理論=1/1
- (S/Mo)理論=2/1
【0098】
硫化後、捕捉塊は、本発明による方法において用いられる準備が整っている。
【0099】
本発明は、以下に続く実施例によって例証される。
【0100】
(実施例)
本発明は、以下に続く実施例によって例証される。
【0101】
(実施例1:捕捉塊A(本発明に合致))
ヒ素捕捉塊Aの担体S1の調製を、ハイドラーギライト(EMPLURA(登録商標)、Merck)の脱水により行い、アルミナ粉末を得る。温度を800℃に設定し、脱水されるべき材料と乾燥空気の流れとの接触時間を1秒とする。得られたアルミナ粉末を、10~200μmの粒子サイズに粉砕し、次いで、用いられる粉末の容積の2倍に等しい容積の蒸留水により3回洗浄する。前記アルミナ粉末を、カーボンブラック(N990 Thermax(登録商標))の存在中で、円錐筒状のボウルを備えたプレート造粒機(GRELBEX P30)を用いて、角度30°、回転速度40回転/分で形付けし、固体を篩分けした後に、径が主として2~4mmであるビーズを得る。カーボンブラックの量を調節して、物体の未処理充填密度800kg/m3を得る。前記ビーズは、空気中、720℃での熱処理を経て、それらに200m2/gの比表面積を与える。次に、水熱処理の前記ビーズへの適用を、細孔容積に、硝酸水溶液(0.1N、Merck(登録商標))を含浸させることにより行う。水熱処理を、回転バスケット式オートクレーブ中、200℃の温度で6.5時間にわたって行う。このようにして得られたビーズは、空気中、650℃で2時間にわたって最終焼成処理を経る。担体S1が有する比表面積は、141m2/gであり、全細孔容積は、0.97mL/gであり、また、水銀ポロシメトリにより与えられた以下の細孔分布を有している:
- 径が2nm以上かつ18nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、13nmに集中しており、メソ細孔の容積は、0.15mL/gであり、これは全細孔容積の15%に相当する;
- 径が18nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、26nmに集中しており、メソ細孔の容積は、0.43mL/gであり、これは全細孔容積の44%に相当する;
- 径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、0.39mL/gであり、これは全細孔容積の40%に相当する。
【0102】
ヒ素捕捉塊Aを、硝酸ニッケル水溶液を介したアルミナ担体の二重乾式含浸により得る。担体S1が示す水取込容積は、0.95mL/gである。含浸溶液の調製を、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O、99.5%、Merck(登録商標))18.24グラムを蒸留水37.2mL中に希釈することにより行う。担体40グラムの乾式含浸および飽和水蒸気雰囲気中の12時間にわたる熟成工程の後、固体を、120℃で12時間にわたり乾燥させて、触媒前駆体を得る。第2の含浸工程を、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O、99.5%、Merck(登録商標))19.35グラムを蒸留水33.7mL中に希釈することにより調製された溶液により行う。触媒前駆体の乾式含浸および飽和水蒸気雰囲気中の12時間にわたる熟成工程の後に、固体を、120℃で12時間にわたり乾燥させる。固体を、その後、空気中、450℃で2時間にわたり焼成する。得られたヒ素捕捉塊Aは、捕捉塊の全重量に相対して20重量%のNiOを含有する。ヒ素捕捉塊Aが有する全細孔容量は、0.87mL/gであり、比表面積は、112m2/gである。
【0103】
(実施例2:捕捉塊B(非対応;マクロ多孔性および大型単峰性メソ多孔性捕捉塊)
捕捉塊Bの担体S2の調製を、ハイドラーギライト(EMPLURA(登録商標)、Merck(登録商標))の脱水により行い、活性アルミナ粉末を得る。温度を800℃に設定し、脱水されるべき材料と乾燥空気の流れとの接触時間を1秒とする。得られた活性アルミナ粉末を、10~200μmの粒子サイズに粉砕し、次いで、用いられる粉末の容積の2倍に等しい容積の蒸留水により3回洗浄する。前記活性アルミナ粉末を、カーボンブラック(N990 Thermax)の存在中で、円錐筒状のボウルを備えたプレート造粒機(GRELBEX(登録商標) P30)を用いて、角度30°、回転速度40回転/分で形付けし、径が主として2~4mmであるビーズを(固体を篩分けした後に)得、物体の未処理充填密度は、780kg/m3である。前記ビーズは、空気中、700℃での熱処理を経て、それらに250m2/gの比表面積を与える。次に、水熱処理の前記ビーズへの適用を、細孔容積に、硝酸の水溶液(0.1N、Merck(登録商標))を含浸させることにより行う。水熱処理を、回転バスケット式オートクレーブ中、200℃の温度で6.5時間にわたって行う。このようにして得られたビーズは、空気中、950℃で2時間にわたって最終焼成処理を経る。担体S2が有する比表面積は、71m2/gであり、全細孔容積は、0.56mL/gであり、また、水銀ポロシメトリにより与えられた以下の細孔分布を有している:
- 径が10nm以上かつ50nm未満であるメソ細孔の細孔分布は、20nmに集中しており、メソ細孔の容積は、0.35mL/gであり、これは全細孔容積の63%に相当する;
- 径が50nm以上かつ8000nm未満であるマクロ細孔の容積は、0.21mL/gであり、これは全細孔容積の38%に相当する。
【0104】
ヒ素捕捉塊Bを、硝酸ニッケルの水溶液を介したアルミナ担体の二重乾式含浸により得る。担体S2が示す水取込容積は、0.54mL/gである。含浸溶液の調製を、硝酸ニッケル六水和物(Sigma-Aldrich(登録商標)、純度≧98.5%)18.24グラムを蒸留水20.8mL中に希釈することにより行う。担体40グラムの乾式含浸および飽和水蒸気雰囲気中の12時間にわたる熟成工程の後、固体を、120℃で12時間にわたり乾燥させて、触媒前駆体を得る。第2の含浸工程を、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O、99.5%、Merck(登録商標))19.35グラムを蒸留水17.5mL中に希釈することにより調製された溶液により行う。得られたヒ素捕捉塊Bは、捕捉塊の全重量に相対して20重量%のNiOを含有する。ヒ素捕捉塊Bが有する全細孔容量は、0.48mL/gであり、比表面積は、66m2/gである。
【0105】
(実施例3:捕捉塊のヒ素捕捉性能の評価)
ヒ素捕捉試験のための反応器への導入の前に、捕捉塊AおよびBの現場外硫化を、15容積%のH2Sを含有しているH2/H2S混合物の流れ下、350℃の温度で2時間にわたって行い、その後、2時間にわたる200℃でのプラトーで高純度水素下に冷却する。
【0106】
ヒ素捕捉性能試験には、モデル供給原料中に溶解したヒ素化合物の消失の速度をモニタリングすることが含まれる。反応を、静的モードで、撹拌式密閉オートクレーブ反応器において、210℃の温度で、水素の存在中、35bar(3.5MPa)の全圧下に行う。モデル供給原料は、250cm3の容積、すなわち217gのトルエンと、「As」相当で500重量ppmの含有率にある、すなわち、As約1.45mmolにあるトリフェニル-アルシン(AsPh3)とからなる。用いられる固体の質量を調節して、初期Ni/Asモル比5を得る。
【0107】
【0108】
(実施例4:オレフィン水素化性能の評価)
接触分解(FCC:Fluid Catalytic Cracking流動接触分解)ガソリン(下記表にその特徴をまとめる)を、異なる捕捉塊と接触させる。反応を、横断床タイプの反応器において、以下の条件下に行う:P=2MPa、H2/HC=360リットル/リットル(炭化水素供給供給原料)、HSV=10h-1、温度を250℃に設定する。流出物をガスクロマトグラフィーによって分析し、炭化水素濃度を決定する。
【0109】
【0110】
試験されたすべての塊について、オレフィンの水素化率は極めて低く、オレフィンの全重量に相対して2重量%未満である。
【国際調査報告】