IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニの特許一覧

特表2023-550831P2X3阻害剤としてのフタラジン誘導体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】P2X3阻害剤としてのフタラジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 237/34 20060101AFI20231128BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20231128BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20231128BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20231128BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C07D237/34
C07D405/14 CSP
C07D403/12
C07D417/14
C07D403/14
A61K31/506
A61K31/502
A61P43/00 111
A61P11/14
A61P11/06
A61P11/00
A61P19/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532304
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021083146
(87)【国際公開番号】W WO2022112493
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20210200.0
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591095465
【氏名又は名称】キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】フィオレッリ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ビアジェッティ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】バーカー-グレン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ プール,エルヴェ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063AA05
4C063BB01
4C063BB03
4C063BB09
4C063CC28
4C063CC31
4C063CC62
4C063CC78
4C063DD22
4C063DD28
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086BC42
4C086BC82
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA96
4C086ZC02
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明はP2Xプリン受容体3を阻害する式Iの化合物に関する;特に本発明は、フタラジン誘導体である化合物、そのような化合物の製造方法、それを含む医薬組成物およびその治療用途に関する。
本発明の化合物は、咳嗽、喘息、特発性肺線維症(IPF)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む呼吸器疾患などのP2X受容体機構と関連する多くの処置に有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
〔式中、Zは(5~6員)-ヘテロアリールおよびアリールからなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールおよびアリールの何れも場合により(C-C)アルキル-およびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルであり;
はヘテロアリールおよび(C-C)シクロアルキル-からなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールの何れも場合により(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキルおよびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルであり;
YはH、(C-C)アルキル-、(C-C)シクロアルキル-、(C-C)ヘテロシクロアルキル、(C-C)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-からなる群から選択される。〕
の化合物。
【請求項2】
N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)-7-(5-メチルピリミジン-2-イル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-アミン、
N-(シクロプロピルメチル)-7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-アミン、
7-(4-フルオロフェニル)-N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)フタラジン-1-アミン、
(R)-4-シクロプロピル-7-(4-フルオロフェニル)-N-(1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)エチル)フタラジン-1-アミン、
(R)-4-シクロプロピル-7-(4-フルオロフェニル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)フタラジン-1-アミン、
(R)-7-(4-フルオロフェニル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-N-(1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)エチル)フタラジン-1-アミン、
(R)-7-(4-フルオロフェニル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-アミン、
7-(5-フルオロピリジン-2-イル)-N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-アミン、
7-(5-フルオロピリジン-2-イル)-N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-1-アミン、
7-(5-フルオロピリジン-2-イル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-アミンの単一エナンチオマー1、
N-[(6-メチルピリダジン-3-イル)メチル]-7-(5-メチルチアゾール-2-イル)フタラジン-1-アミン、
7-(5-メチルチアゾール-2-イル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-N-((3-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル)フタラジン-1-アミン、
N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)-7-(5-メチルチアゾール-2-イル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-1-アミン、
4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)フタラジン-1-アミンのラセミ混合物、
7-(1-メチルピラゾール-3-イル)-N-[1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル]-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フタラジン-1-アミン、
4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)フタラジン-1-アミンの単一エナンチオマー2
からなる群から選択される、請求項1の式Iの化合物。
【請求項3】
YおよびRがHであり、式Ia
【化2】
〔式中、Zは(5~6員)-ヘテロアリールおよびアリールからなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールおよびアリールの何れも場合により(C-C)アルキル-およびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はヘテロアリールおよび(C-C)シクロアルキル-からなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールの何れも場合により1以上の(C-C)アルキル-で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルである。〕
により表される、請求項1の式(I)の化合物。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに定義する化合物またはその薬学的に許容される塩を、単独でまたは1以上の活性成分と組み合わせて、1以上の薬学的に許容される担体または添加物と混合して含む、医薬組成物。
【請求項5】
経口投与のための、請求項4の医薬組成物。
【請求項6】
医薬として使用するための請求項1~3の何れかの化合物または請求項4または5の医薬組成物。
【請求項7】
P2X受容体が関与するあらゆる疾患の処置に使用するための、請求項1~3の何れかの化合物または請求項4または5の医薬組成物。
【請求項8】
咳嗽、亜急性または慢性咳嗽、処置抵抗性咳嗽、特発性慢性咳嗽、ウイルス感染後咳嗽、医原性咳、喘息、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)ならびにCOPD、喘息および気管支痙攣などの呼吸器疾患と関連する咳嗽を含む呼吸器疾患の予防および/または処置に使用するための請求項1~3の何れかの化合物または請求項4または5の医薬組成物。
【請求項9】
慢性咳嗽の予防および/または処置に使用するための請求項1~3の何れかの化合物または請求項4または5の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、P2Xプリン受容体3(以後P2X阻害剤)を阻害する化合物に関する;特に本発明は、フタラジン誘導体である化合物、そのような化合物の製造方法、それを含む医薬組成物およびその治療用途に関する。
【0002】
本発明の化合物は、咳嗽、喘息、特発性肺線維症(IPF)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む呼吸器疾患などのP2X受容体機構と関連する多くの処置に有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
P2X受容体は、細胞外アデノシン5-トリホスフェート(ATP)により活性化される細胞表面イオンチャネルである。P2X受容体ファミリーは、ホモマーおよびヘテロマーチャネルとして集合する7つの異なるサブユニットサブタイプ(P2X1~7)からなる三量体集合体である。全サブユニットは、細胞内末端、イオンチャネルを形成する2個の膜貫通螺旋およびATP結合部位を含む大型細胞外ドメインの共通形態を共有する。ホモマーP2X、P2X、P2X、P2X、P2XおよびP2XチャネルおよびヘテロマーP2X2/3およびP2X1/5チャネルは、異種発現後完全に特徴づけられている。P2X受容体は豊富に分布し、機能的応答は神経細胞、グリア、上皮、内皮、骨、筋肉および造血組織に見られる。平滑筋で、P2X受容体は交感神経性運動神経から放出されるATPに応答する(例えば、射精において)。感覚神経で、いくつかの内臓における求心性シグナルの開始に関与し(例えば、膀胱、腸)、組織傷害性および炎症性刺激の感知に重要な役割を有する。P2X受容体を介するATPシグナル伝達の傍分泌役割は、神経性下垂体、導管腺、気道上皮、腎臓、骨および造血組織に存在する可能性がある。(RA. North: Molecular Physiology of P2X Receptors; Physiol Rev, Vol 82, Oct 2002)。全P2X受容体はNa+およびCa+イオン透過性の非選択的カチオンチャネルであり、ATPにより活性化される;しかしながら、受容体サブタイプの薬理学は、ATPおよび小分子アンタゴニストに対する感受性の点で、種々である。(K Kaczmarek-Hajek et al: Molecular and functional properties of P2X receptors - recent progress and persisting challenges; Purinergic Signalling 8:375-417, 2012)
【0004】
ヒトにおいて、P2X受容体は、心臓および脊髄にmRNAレベルでならびにRG、腸(筋層間神経叢神経細胞)、膀胱(尿路上皮および尿路上皮下)および歯髄にタンパク質レベルで報告されている(Garcia-Guzman M et al: Molecular characterization and pharmacological properties of the human P2X3 purinoceptor: Brain Res Mol Brain Res. 1997;47(1-2):59-66)。
【0005】
気道の感覚神経機能におけるP2X受容体の役割は、体性侵害受容を介在するものに類似する(Undem BJ and Nassenstein C: Airway nerves and dyspnea associated with inflammatory airway disease, Respir Physiol Nerobiol 167: 36-44, 2009)。この類似性により、咳嗽および気管支反応性亢進を含む気道機能不全の症状へのP2X受容体の関与を考慮する仮説が導かれた(Ford AP: In pursuit of P2X3 antagonists: novel therapeutics for chronic pain and and afferent sensitization, Purinergic signal 8 (suppl 1):3-26, 2012; North RA, Jarvis MF P2X Receptors as Drug Targets; Mol Pharmacol, 83:759-769, 2013)。P2Xサブユニットは、特に、DRG、下神経節、孤束核および味蕾内で多くの神経細胞で共局在化もしている(Cheung KK, Burnstock G: Localization of P2X3 receptors and coexpression with P2X2 receptors during rat embryonic neurogenesis. J Comp Neurol 443(4):368-382 2002)
【0006】
P2Xアンタゴニストは糖尿病性神経障害性疼痛の処置について提案されている(Guo J et al: Contributions of purinergic P2X3 receptors within the midbrain periaqueductal gray to diabetes-induced neuropathic pain, J Physiol Sci Jan;65(1):99-104 2015)。
【0007】
P2XおよびP2X2/3チャネルは関節炎の関節の関節痛覚過敏の伸展に重要な役割を有する(Teixeira JM et al: P2X3 and P2X2/3 Receptors Play a Crucial Role in Articular Hyperalgesia Development Through Inflammatory Mechanisms in the Knee Joint Experimental Synovitis, Mol Neurobiol Oct;54(8):6174-6186, 2017)。
【0008】
P2Xは、膀胱疼痛の治療的処置の標的の可能性もある。尿管疝痛の処置および輸尿管結石通過の促進のための鎮痛剤標的としても提案された(Canda AE et al: Physiology and pharmacology of the human ureter: basis for current and future treatments, Urol Int. 78(4):289-98, 2007)。
【0009】
P2X可発現は、肝細胞癌患者の悪い無再発生存とも関連づけられ、P2Xが可能性のある治療標的として同定される(Maynard JP et al: P2X3 purinergic receptor overexpression is associated with poor recurrence-free survival in hepatocellular carcinoma patients Oncotarget Dec 1;6(38):41162-79, 2015)。
【0010】
P2Xアンタゴニストは勃起回復を改善し得ることが示唆されている(Li CL et al: Effects of intracavernous injection of P2X3 and NK1 receptor antagonists on erectile dysfunction induced by spinal cord transection in rats, Andrologia. Feb;47(1):25-9, 2015)。
【0011】
ATPは前臨床モデルでクエン酸誘発およびヒスタミン誘発を促進し、P2X選択的アンタゴニストにより減弱され得る効果である(Kamei J and Takahashi Y: Involvement of ionotropic purinergic receptors in the histamine-induced enhancement of the cough reflex sensitivity in guinea pigs, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16935279 Oct 10;547(1-3):160-4, 2006)。ヒトにおいて、ATPの局所送達は咳嗽および気管支痙攣を開始する((Basoglu OK et al: Effects of aerosolized adenosine 5'-triphosphate vs adenosine 5'-monophosphate on dyspnea and airway caliber in healthy nonsmokers and patients with asthma, Chest. Oct;128(4):1905-9, 2005)。
【0012】
P2Xアンタゴニストの慢性咳嗽の処置についての治療見込みは、最初にFordおよびUndemにより認識された(Ford AP, Undem BJ: The therapeutic promise of ATP antagonism、P2X3 receptors in respiratory and urological disorders, Front Cell Neurosci, Dec 19;7:267, 2013)。P2Xは気道求心性神経により発現され、咳嗽反射の過敏症に介在し、これは経口P2Xアンタゴニスト、AF-219で劇的に低減する(Abdulqawi et al: P2X3 receptor antagonist (AF-219) in refractory chronic cough: a randomised, double-blind, placebo-controlled phase 2 study, Lancet 385, 1198-205, 2015)。
【0013】
ATPは、大部分P2X2/3ヘテロ多量体受容体を介して作用する、味覚系における重要な神経伝達物質である。結果として、味覚機能の混乱は、プリン作動性P2Xアンタゴニストを使用する疼痛、慢性咳嗽および他の状態の治療的治験の意図しない結果であり得る(Vandenbeuch A et al: Role of the ectonucleotidase NTPDase2 in taste bud function, Proc Natl Acad Sci U S A, Sep 3;110(36):14789-94, 2013. Bo X et al: Localization of ATP-gated P2X2 and P2X3 receptor immunoreactive nerves in rat taste buds, Neuroreport, 10(5):1107-11, 1999)。
【0014】
種々の化合物が、P2Xおよび/またはP2X2/3阻害剤として文献に記載されている。
【0015】
WO2017058645(Afferent Pharmaceuticals INC)は、ジアミノピリミジンP2X/P2X2/3アンタゴニストの、開示される化合物の有効量を投与することによる、呼吸器疾患または障害と関連する咳嗽を含む、咳嗽、慢性咳嗽および咳の衝動を含む障害の処置における使用を開示する。しかしながら、フタラジン誘導体は開示されない。
【0016】
WO2017011729(Patara Pharma LLC)、は、肺疾患および状態の処置のための鎮咳剤としてのクロモリンまたはその薬学的に許容される塩およびP2Xおよび/またはP2X2/3受容体アンタゴニストの使用を開示する。
【0017】
WO2016091776(Evotec AG)は、P2X受容体を阻害する1,3-チアゾール-2-イル置換ベンズアミド化合物およびそのような化合物を含む医薬組成物および呼吸器疾患を含む数種の障害の処置なめの該化合物の使用を開示する。
【0018】
WO2016088838(Shionogi)は、新規P2Xおよび/またはP2X2/3受容体拮抗作用を有するプリン誘導体化合物を開示する。
【0019】
WO2016084922(Shionogi)は、新規P2Xおよび/またはP2X2/3受容体拮抗作用を有するトリアジン誘導体化合物を開示する。
【0020】
WO2008123963(Renovis)は、テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミジン群の縮合ヘテロ環式化合物およびそのような化合物を含む医薬組成物に関する。開示される化合物を投与することによる、神経変性障害、疼痛、喘息、自己免疫性障害などのいくつかの障害の予防および/または処置のための方法も艇庫油される。
【0021】
WO2008130481(Renovis)は、テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミジン群の2-シアノフェニル縮合ヘテロ環式化合物およびそのような化合物を含む医薬組成物を開示する。
【0022】
WO2010033168(Renovis)は、P2Xプリン作動性受容体およびより具体的にP2X受容体および/またはP2X2/3受容体アンタゴニストに関連する疾患の処置に有用であると述べられるフェニルまたはピリジルで置換された一連のベンズアミドを開示する。しかしながら、フタラジン誘導体は開示されない。
【0023】
WO2009110985(Renovis)はフェニルおよびピリジル置換ベンズアミド化合物およびそのような化合物を含む医薬組成物に関するが、チアゾール置換ベンズアミドにより、該化合物は本発明の化合物と異なる。
【0024】
WO2008000645(Roche)は、泌尿生殖器、疼痛、消化器および呼吸器疾患、状態および障害の処置に有用な、P2Xおよび/またはP2X2/3受容体アンタゴニストのテトラゾール置換アリールアミドを開示する。
【0025】
上に記載した先行技術にも関わらず、新規フタラジン誘導体化合物が、特に、好ましくは味覚に対する副作用を回避するためのP2X受容体に選択的作用を有するものが、特に呼吸器疾患などの多くの治療領域で、P2X受容体と関連する疾患の処置のためになお必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
注目すべきは、先行文献は、上記必要性を解決する、本発明の一般式(I)のフタラジン誘導体化合物を記載も示唆もしない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の要約
本発明は、式(I)
【化1】
〔式中、Zは(5~6員)-ヘテロアリールおよびアリールからなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールおよびアリールの何れも場合により(C-C)アルキル-およびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルであり;
はヘテロアリールおよび(C-C)シクロアルキル-からなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールの何れも場合により(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキルおよびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルであり;
YはH、(C-C)アルキル-、(C-C)シクロアルキル-、(C-C)ヘテロシクロアルキル、(C-C)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-からなる群から選択される。〕
の化合物に関する。
【0028】
第二の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、単独でまたは他の1以上の活性成分と組み合わせて、1以上の薬学的に許容される担体または添加物と混合して含む、医薬組成物に関する。
【0029】
第三の態様において、本発明は、医薬として使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、P2X受容体が関与するあらゆる疾患の処置に使用するための、式(I)の化合物の使用を提供する。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、咳嗽、亜急性または慢性咳嗽、処置抵抗性咳嗽、特発性慢性咳嗽、ウイルス感染後咳嗽、医原性咳、喘息、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)ならびにCOPD、喘息および気管支痙攣などの呼吸器疾患と関連する咳嗽を含む呼吸器疾患の予防および/または処置に使用するための式(I)の化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な記載
特に断らない限り、用語式(I)の化合物は、立体異性体、互変異性体または薬学的に許容される塩または溶媒和物をその意味に含む。
【0033】
ここで使用する用語「薬学的に許容される塩」は、親化合物が、存在するならば、遊離酸または塩基性基の、慣用的に薬学的に許容されるとして意図される何れかの塩基または酸での対応する付加塩への変換により適切に修飾された、式(I)の化合物の誘導体をいう。
【0034】
該塩の適当な例は、故に、アミノ基などの塩基性基の無機たは有機酸付加塩ならびにカルボン酸基などの酸性基の無機または有機塩基性付加塩を含み得る。
【0035】
ここで使用する用語「ハロゲン」または「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子、好ましくは塩素またはフッ素を含む。
【0036】
用語「(C-C)アルキル」(ここで、xおよびyは整数である)は、x~y炭素原子を有する、直線または分岐鎖アルキル基をいう。故に、例えば、xが1であり、yが6であるとき、本用語はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルを含む。
【0037】
ここで使用する用語「(C-C)アルキレン」(ここで、xおよびyは整数である)は、二価メチレンラジカルなどの計2個の原子価が充足されてないC-Cアルキル基をいう。
【0038】
表現「(C-C)ハロアルキル」(ここで、xおよびyは整数である)は、1以上の水素原子が同一でも異なってもよい1以上のハロゲン原子に置き換わっている、上に定義した「C-Cアルキル」基をいう。
【0039】
故に、該「(C-C)ハロアルキル」基の例は、ハロゲン化、ポリ-ハロゲン化および水素原子全てがハロゲン原子に置き換わっている、例えばトリフルオロメチルまたはジフルオロメチル、トリフルオロエチル基を含み得る。
【0040】
同様の方法で、用語「(C-C)ヒドロキシアルキル」または「(C-C)アミノアルキル」は、それぞれ、1以上の水素原子が1以上のヒドロキシ(OH)またはアミノ基に置き換わっている、上に定義した「(C-C)アルキル」基をいう。例は、それぞれヒドロキシメチル、アミノメチル、ジメチルアミノプロピルなどを含む。
【0041】
本明細書において、特に断らない限りアミノアルキルは、1以上のアミノ基(-NR)で置換されたアルキル基(すなわち「(C-C)アルキル」基)を含む。故に、アミノアルキルの例は、RN-(C-C)アルキルなどのモノ-アミノアルキル基である。
【0042】
用語「(C-C)シクロアルキル」(ここで、xおよびyは整数である)は、示す数の環炭素原子を含む飽和環状炭化水素基をいう。例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルを含む。
【0043】
用語「アリール」は、環が芳香族である6環原子を有する単環状炭素環系をいう。適当なアリール単環式環系の例は、例えば、フェニルを含む。
【0044】
用語「ヘテロアリール」は、S、NおよびOから選択される1以上のヘテロ原子を含む単または二環芳香族ラジカルをいい、共通する結合により縮合した2個のこのような単環式環または1個のこのような単環式環と1個の単環式アリール環を有するラジカルを含む。適当な5,6員ヘテロアリールの例はチエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリルおよびトリアジニルである。
【0045】
用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式」は、S、NおよびOから選択される1以上のヘテロ原子を含む飽和単、二または三環式非芳香族ラジカルに関する。二環式ヘテロ環系の場合、縮合、スピロおよび架橋二環系は本用語の範囲内に含まれる。
【0046】
用語「(C-C)ヘテロシクロアルキル」(ここで、xおよびyは整数である)は、少なくとも1個の環炭素原子が少なくとも1個のヘテロ原子(例えばN、SまたはO)に置き換えられているまたは-オキソ(=O)置換基を担持し得る、飽和または部分的不飽和単環式(C-C)シクロアルキル基をいう。該ヘテロシクロアルキル(すなわちヘテロ環式ラジカルまたは基)は、環の利用可能な位置、すなわち置換に利用可能な炭素原子またはヘテロ原子が場合によりさらに置換されていてよい。炭素原子の置換はスピロ二置換ならびに2個の隣接炭素原子の置換を含み、故に、何れの場合も、さらなる縮合5~6員ヘテロ環式環が形成される。(C-C)ヘテロシクロアルキルの例は、ピロリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロ-またはテトラヒドロ-ピリジニル、テトラヒドロチオフェニル、アゼチジニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、2H-または4H-ピラニル、ジヒドロ-またはテトラヒドロフラニル、ジヒドロイソオキサゾリル、ピロリジン-2-オン-イル、ジヒドロピロリル基などにより表される。
【0047】
該ヘテロ環ラジカルの具体例は、テトラヒドロチオフェン1,1-ジオキシド、3,3-ジフルオロピロリジニル、1-ピロリジニル、1-メチル-2-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニルである。
【0048】
表現「アリールオキシル」および「アリール(C-C)アルコキシル」、同様に「ヘテロアリールオキシル」および「ヘテロアリール(C-C)アルコキシル」は、酸素架橋および鎖状アリール-アルコキシルまたはヘテロアリール-アルコキシル基を介して結合したアリールまたはヘテロアリール基をいう。このような基の例は、それぞれフェニルオキシ、ベンジルオキシおよびピリジニルオキシである。
【0049】
用語「アリール(C-C)アルキル」は、炭素原子数が1~6である直鎖または分岐鎖アルキル基に連結したアリール環、例えばフェニルメチル(すなわちベンジル)、フェニルエチルまたはフェニルプロピルをいう。
【0050】
用語(C-C)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル(ここで、zおよびkは整数である)は、x~y炭素原子を有する鎖または分岐鎖アルキル基に連結したヘテロ環式環をいう。
【0051】
同様に、用語「ヘテロアリール(C-C)アルキル」または「アリール(C-C)アルキル」は、x~y炭素原子を有する鎖または分岐鎖アルキル基に連結したヘテロアリールまたはアリール環をいう。
【0052】
表現「環系」は、アリール、(C-C10)シクロアルキル、(C-C)ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールなどの飽和、部分的不飽和または不飽和であり得る単または二環式または多環式環系をいう。
【0053】
用語「基」、「ラジカル」または「フラグメント」または「置換基」は同義であり、結合または他の断片もしくは分子に結合可能な官能基分子の断片を示すことを意図する。故に、例として、ここでの「ヘテロ環式ラジカル」は単または二環状飽和または部分的飽和ヘテロ環式部分(基、ラジカル)、好ましくは4~11員単環式ラジカルをいい、該ヘテロ環式ラジカルにおける少なくとも1個のさらなる環炭素原子は場合によりN、SまたはOから独立して選択される少なくとも1個のさらなるヘテロ原子に置き換わるおよび/または-オキソ(=O)置換基を有してよく、該ヘテロ環式ラジカルはさらに場合によりスピロ二置換ならびにさらなる5~6員環状またはヘテロ環式、飽和、部分的飽和または芳香環を形成する2個の隣接またはビシナル原子の置換を含む。該ヘテロ環ラジカルの例は1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、4-モルホリニルなどである。
【0054】
2個の文字または記号の間にはないダッシュ(「-」)は置換基の結合点を表すことを意図する。図で表すとき、環状官能基の結合点は、官能基が結合または分子の他の断片に結合可能である利用可能な環原子の1個に局在化したドット(「・」)で示す。
【0055】
オキソ部分は、他の一般的な表記、例えば(=O)の代替として(O)により示す。故に、一般式の観点で、カルボニル基はここでは-C(O)-として表し、一般に、カッコ内の基は側鎖基であり、鎖の中に含まれず、有用であると考えられるならば、カッコを使用するとき、直鎖化学式との曖昧さの回避を助ける;例えばスルホニル基-SO-は、例えば、スルフィン基-S(O)O-との曖昧さを回避するために、-S(O)-としても表される。
【0056】
式Iの化合物に塩基性アミノまたは4級アンモニウム基が存在するとき、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、トリフルオロアセテート、ホルメート、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレアート、アセテート、シトレート、フマラート、タートレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート、p-トルエンスルホネート、パモエートおよびナフタレンジスルホネートから選択される、生理学的に許容されるアニオンが存在し得る。同様に、COOH基などの酸性基存在下、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属イオンを含む対応する生理学的カチオン塩が同様に存在し得る。
【0057】
式(I)の化合物が1以上の立体中心を含むとき、光学立体異性体として存在し得ることは明らかである。
【0058】
本発明の化合物が少なくとも1個の立体中心を有するとき、従ってエナンチオマーとして存在し得る。本発明の化合物が2以上の立体中心を有するとき、さらにジアステレオ異性体として存在し得る。全てのこのような単一エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびあらゆる比率のそれらの混合物は、本発明の範囲内に包含される。立体中心を担持する炭素の絶対配置(R)または(S)は、基の特性に基づきカーン・インゴルド・プレローグ命名規則に基づき割り当てる。
【0059】
本発明は、さらに式(I)の化合物の対応する重水素化誘導体を考慮する。
【0060】
式Iの化合物について上記および下記の全ての好ましい基または実施態様を、互いに組み合わせてよく、そしてしかるべき変更を加えた上で同様に適用される
【0061】
上記のとおり、本発明は、下に詳述する一般式(I)により表される一連の化合物に関し、これは受容体P2Xに対するアンタゴニスト性質を備える。
【0062】
先行文献の類似化合物と異なり、式(I)の本発明の化合物は、特に、呼吸器疾患、特に慢性咳嗽の処置に有用な適当かつ効果的化合物を探索する際に当業者に認識されるとおり、実質的かつ有効な方法で、アンタゴニストP2Xとして作用できる。
【0063】
実験部分に示すとおり、式(I)の化合物は、各化合物について受容体上の半数阻害濃度(pIC50)として表される効力を報告する、表2に示す活性を有する。
【0064】
さらなる利点として、式(I)の化合物は、驚くべきことに主にP2X受容体を効率的かつ選択的に阻害することが判明し、該化合物は、味覚応答喪失などの有害事象を回避しながら呼吸器疾患を処置するのに有用である。In fact、表3から認識され得るとおり、式(I)の化合物は、受容体P2X2/3に比して、受容体P2Xに対する大きな活性を示す。
【0065】
故に、ある態様において、本発明は、P2Xアンタゴニストとしての一般式(I)
【化2】
〔式中、Zは(5~6員)-ヘテロアリールおよびアリールからなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールおよびアリールの何れも場合により(C-C)アルキル-およびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルであり;
はヘテロアリールおよび(C-C)シクロアルキル-からなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールの何れも場合により(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキルおよびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルであり;
YはH、(C-C)アルキル-、(C-C)シクロアルキル-、(C-C)ヘテロシクロアルキル、(C-C)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-からなる群から選択される。〕
の化合物に関する。
【0066】
好ましい実施態様において、Zはアリールまたは(5~6員)-ヘテロアリールであり、ここで、ヘテロアリールはチアゾール、ピリジン、ピリミジンおよびピラゾールからなる群から選択される。
【0067】
好ましい実施態様において、Rはヘテロアリールまたは(C-C)シクロアルキル-であり、ここで、ヘテロアリールはピリダジン、ピリミジンおよびオキサジアゾールからなる群から選択され、(C-C)シクロアルキル-はシクロプロピルである。
【0068】
好ましい実施態様において、本発明は、下表1に列記した化合物の少なくとも1個およびその薬学的に許容される塩をいう。
【0069】
【表1】
【表2】
【表3】
【0070】
ある好ましい実施態様において、本発明は、YおよびRがHである、式Ia
【化3】
〔式中、Zは(5~6員)-ヘテロアリールおよびアリールからなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールおよびアリールの何れも場合により(C-C)アルキル-およびハロから選択される1以上の基で置換されていてよく;
はヘテロアリールおよび(C-C)シクロアルキル-からなる群から選択され、ここで、このようなヘテロアリールの何れも場合により1以上の(C-C)アルキル-で置換されていてよく;
はHまたは(C-C)アルキルである。〕
により表される、式(I)の化合物に関する。
【0071】
ここで上に挙げた化合物全てまたは少なくとも1個を含む式(I)の化合物を、一般に知られる方法を使用して、下に示すスキームに詳述する方法により一般に製造できる。
【0072】
【化4】
【0073】
本発明のある実施態様において、式(I)の化合物を、スキーム1に従い化合物(II)から製造し得る。
【0074】
化合物(IV)を、化合物(II)から、NBS/ヒドラジン系により介在さえる2工程閉環反応により調製し得る。
【0075】
あるいは、化合物(IV)を、化合物(III)から、スキーム1に概説する一連の4工程閉環反応により調製し得る。
【0076】
化合物(VI)を、化合物(IV)から金属触媒宮浦ホウ素化反応により調製し得る。
【0077】
化合物(V)を、化合物(IV)から、(試薬3)などの適当な試薬を用いるスティルまたは鈴木などまたは"Transition Metals for Organic Synthesis", 2nd Ed, 1, 2004に記載されるような類似の金属触媒クロスカップリング反応により調製し得る。
【0078】
あるいは、化合物(V)を、化合物(VI)から、(試薬2)などの適当な試薬を用いるスティルまたは鈴木などまたは"Transition Metals for Organic Synthesis", 2nd Ed, 1, 2004に記載されるような類似の金属触媒クロスカップリング反応により調製し得る。
【0079】
化合物(VII)を、化合物(VI)から、例えば、オキシ塩化リンなどの試薬により介在されるデオキシハロゲン化反応により調製し得る。
【0080】
式(I)の化合物を、化合物(VII)から、例えばTEAまたはDIPEAなどの塩基の存在下の適当なアミン(試薬1)との反応により調製し得る。
【0081】
一部の式(I)の化合物は保護ヒドロキシルまたはアミノ基を含み得て、次いで周知手順下に除去し得る。
【0082】
本発明の化合物は、驚くべきことにP2X受容体を効率的に阻害することが判明し、該化合物は呼吸器疾患の処置に有用である。
【0083】
ある実施態様において、代表的式(I)の本発明の化合物は、驚くべきことにP2X受容体を効率的におよび選択的に阻害することが判明し、該化合物は、味覚応答喪失などの有害事象を回避しながら呼吸器疾患を処置するのに有用である。
【0084】
好ましい実施態様において、式(I)の化合物は、選択的P2Xアンタゴニストであり、ここで、選択的P2Xアンタゴニストは、P2X2/3ヘテロマー受容体拮抗作用に対してP2Xホモマー受容体拮抗作用に少なくとも10倍選択的である。
【0085】
さらに好ましい実施態様において、選択的P2Xアンタゴニストは、P2X2/3ヘテロマー受容体拮抗作用に対してP2Xホモマー受容体拮抗作用に少なくとも30倍選択的である。
【0086】
さらに好ましい実施態様において、選択的P2Xアンタゴニストは、P2X2/3ヘテロマー受容体拮抗作用に対してP2Xホモマー受容体拮抗作用に少なくとも50倍選択的である。
【0087】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1以上の薬学的に許容される担体または添加物と組み合わせて、単独でまたは1以上のさらなる活性成分と組み合わせて含む、医薬組成物も提供する。
【0088】
ある態様において、本発明は医薬として使用するための本発明の式(I)の化合物に関する。
【0089】
さらなる態様において、本発明は、P2X受容体機序と関連する障害の処置、好ましくは呼吸器疾患の処置のための医薬の製造における、式(I)の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0090】
好ましくは、本発明は、呼吸器疾患、好ましくは咳嗽、亜急性または慢性咳嗽、処置抵抗性咳嗽、特発性慢性咳嗽、ウイルス感染後咳嗽、医原性咳、喘息、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)ならびにCOPD、喘息および気管支痙攣などの呼吸器疾患と関連する咳嗽の予防および/または処置に使用するための式(I)の化合物に関する。
【0091】
より好ましくは、本発明は、慢性咳嗽ならびにCOPD、喘息および気管支痙攣などの呼吸器疾患と関連する咳嗽の予防および/または処置に使用するための式(I)の化合物に関する。
【0092】
本発明はまたP2X受容体機序と関連する障害を予防および/または処置する方法も提供し、該方法は、このような処置を必要とする患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0093】
特に本発明は、障害が咳嗽、亜急性または慢性咳嗽、処置抵抗性咳嗽、特発性慢性咳嗽、ウイルス感染後咳嗽、医原性咳、喘息、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)ならびにCOPD、喘息および気管支痙攣などの呼吸器疾患と関連する咳嗽である予防および/または処置の方法に関し、ここで、該方法は、それを必要とする患者に適当な量の式(I)の化合物を投与することを含む。
【0094】
さらに好ましい実施態様において、障害は慢性咳嗽である。
【0095】
本発明の処置方法は、それを必要とする患者に安全かつ有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩または他の薬学的活性剤についてここで使用する「安全かつ有効量」は、患者の状態の処置に十分であるが、重度副作用を介するのに十分に低い化合物の量を意味し、それにも関わらず、当業者により慣用的に決定され得る。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1回でまたは複数回の用量が一定期間種々の間隔で投与される投薬レジメンに従い投与され得る。典型的1日投与量は、選択する特定の投与経路により変わり得る。
【0096】
本発明は、1以上の薬学的に許容される担体または添加物、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences Handbook, XVII Ed., Mack Pub., N.Y., U.S.A.に記載のものと混合された、式(I)の化合物の医薬組成物も提供する。
【0097】
本発明の化合物およびその医薬組成物の投与は、患者の必要性に従い、例えば、経口、経鼻、非経腸(皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内および点滴)および吸入により達成され得る。
【0098】
好ましくは本発明の化合物は経口または吸入により投与され得る。より好ましくは本発明の化合物は経口投与される。
【0099】
種々の固形経口投与形態を本発明の化合物の投与に使用でき、錠剤、ジェルキャップ、カプセル、カプレット、顆粒、ロゼンジおよび原薬粉末などの固体形態を含む。本発明の化合物を単独でまたは懸濁化剤、可溶化剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、防腐剤、着色剤、風味剤、滑沢剤などを含む種々の薬学的に許容される担体、希釈剤(例えばスクロース、マンニトール、ラクトース、デンプン)および既知添加物と組み合わせて投与できる。持続放出型カプセル、錠剤およびゲルも、本発明の化合物の投与に遊離である。
【0100】
好ましくは、本発明の化合物を錠剤の形態で投与する。
【0101】
種々の液体経口投与形態も本発明の化合物の投与に使用でき、水性および非水溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。このような投与形態は水などの適当な既知不活性希釈剤および防腐剤、湿潤剤、甘味剤、風味剤、ならびに本発明の化合物を乳化および/または懸濁する薬剤などの適当な既知添加物も含み得る。本発明の化合物を、等張無菌溶液の形態で、例えば、静脈内に注射し得る。
【0102】
呼吸管の疾患の処置のために、本発明の化合物は好ましくは吸入により投与される。
【0103】
吸入可能性剤は、吸入可能粉末、噴射剤含有定量エアロゾルまたは噴射剤不含吸入可能製剤を含む。
【0104】
乾燥粉末として投与するために、先行文献から知られる単回または多回用量吸入器が利用され得る。この場合、粉末は是拉致、プラスチックまたは他のカプセル、カートリッジまたはブリスターパックまたはリザーバーに充填され得る。
【0105】
本発明の化合物と化学的に不活性な希釈剤または担体、例えばラクトースまたは吸入性画分の改善に適する任意の他の添加剤を、本発明の粉末化合物に添加し得る。
【0106】
ヒドロフルオロアルカンなどの噴射剤ガスを含む吸入エアロゾルは、溶液でまたは分散形態で本発明の化合物を含み得る。噴射剤駆動製剤は、共溶媒、安定化剤および所望により他の添加物などの他の成分も含み得る。
【0107】
本発明の化合物を含む噴射剤不含吸入可能性剤は、水性、アルコール性またはヒドロアルコール性媒体中の溶液または懸濁液の形態であってよく、先行文献で知られるジェットまたは超音波ネブライザーまたはソフトミストネブライザーにより送達され得る。
【0108】
好ましくは、本発明の化合物は経口投与される。
【0109】
本発明の化合物を、唯一の活性剤としてまたは他の医薬活性成分と組み合わせて投与し得る。
【0110】
好ましくは、本発明の化合物を、P2X受容体と関連するまたはそれにより介在される疾患の処置に有用な治療剤または活性成分と組み合わせ得る。
【0111】
本発明の化合物の投与量は、とりわけ、処置する特定の疾患、症状の重症度、投与経路などを含む多様な因子に依存する。
【0112】
本発明はまた単回または多回用量乾燥粉末吸入器または定量吸入器の形態の、本発明の式(I)の化合物を含む医薬組成物を含む、デバイスにも関する。
【0113】
本明細書に記載する本発明の種々の態様を、どんな方法でも本発明を限定することを意図しない次の実施例により説明する。次の実施例は、本発明を説明する。
【実施例
【0114】
ここに記載する試験例は、本発明を説明するために提供され、本発明を示す例に限定しない。
【0115】
中間体および実施例化合物の製造
化学名をDotmaticsソフトウェアを使用して作成した。ある場合、市販試薬の一般に許容される名称を、Dotmaticsソフトウェアが作成した名称の代わりに使用した。
【0116】
合成が実験部分に記載されていない全試薬は、市販されているかまたは既知化合物であるかまたは当業者に既知の方法により既知化合物から形成され得る。
【0117】
(R)-1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)エタナミン塩酸塩および(R)-1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エタン-1-アミン塩酸塩をWO2016/091776に記載する方法により調製した。
【0118】
略語 - 意味
EtO:ジエチルエーテル;
EtN:トリエチルアミン;
TEA:トリエチルアミン;
DCC:N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド;
PyBOP:(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;
DMF:ジメチルホルムアミド;
EtOAc:酢酸エチル;
RT:室温;
THF:テトラヒドロフラン;
DCM:ジクロロメタン;
MeOH:メチルアルコール;
EtOH:エチルアルコール;
TFA:トリフルオロ酢酸;
LC-MS:液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー;
HPLC:高速液体クロマトグラフィー;
MPLC:中圧液体クロマトグラフィー;
SFC:超臨界流体クロマトグラフィー;
dppf:1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;
MgSO:硫酸マグネシウム
DIEAまたはDIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;
MeCN:アセトニトリル;
MTBE:tert-ブチルメチルエーテル;
TBDMSCl:tert-ブチル(クロロ)ジメチルシラン;
DMSO:ジメチルスルホキシド;
BocO:二炭酸ジ-tert-ブチル;
UPLC:超高性能液体クロマトグラフィー。
【0119】
一般的実験詳細および方法
分析法
液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー
方法1
UPLC-MSを、tempカラムに維持したAcquity UPLC BEH Shield RP18 1.7μm 100×2.1mm(プラスガードカートリッジ)を使用するWaters DAD+Waters SQD2、単一四重極型UPLC-MSスペクトロメーターで実施し、最初に0.4分間5%アセトニトリル/水(各移動相10mM 重炭酸アンモニウム含有)に維持し、続いて6.4分間以内に5~95%の直線勾配、次いで1.2分間95%に維持した(F=0.4mL/分)。
【0120】
方法2
UPLC-MSを、tempカラムに維持したAcquity UPLC BEH Shield RP18 1.7μm 100×2.1mm(プラスガードカートリッジ)を使用するWaters DAD+Waters SQD2、単一四重極型UPLC-MSスペクトロメーターで実施し、最初に0.4分間0.1%ギ酸と共に0.1%(V/V)ギ酸/水(PureLab Optionユニットを介した高純度)を含む5%アセトニトリル(Far UVグレード)に維持し、続いて6.4分間以内に5~95%の直線勾配、次いで1.2分間95%に維持した(F=0.4mL/分)。
【0121】
NMR
H核磁気共鳴(NMR)スペクトロスコピーを、特に断らない限り、ほぼRTで記載した溶媒を使用して400MHzで操作するBrukerまたはVarian装置を使用して、実施した。全例で、NMRデータは提案された構造と一致した。特徴的化学シフト(δ)を主ピークの指定の慣用の略語を使用する百万分率で示す:例えばs、一重項;d、二重項;t、三重項;q、四重項;dd、二重の二重項;dt、二重の三重項;m、多重項;br、幅広。
【0122】
分取逆相HPLC条件
分取HPLC精製を、Waters Fractionlynx分取HPLCシステム(2525ポンプ、2996/2998 UV/VIS検出器、2767液体ハンドラー)またはGilson Trilution UV指向システムなどの等価なHPLCシステムを使用する逆相HPLCにより実施した。Waters 2767液体ハンドラーはオートサンプラーおよびフラクションコレクターの両方として作用した。化合物の分取精製に使用したカラムは、Waters Sunfire OBD Phenomenex Luna Phenyl HexylまたはWaters Xbridge Phenyl、10μm 19×150mmまたはWaters CSH Phenyl Hexyl、19×150、5μmカラムであった。適切な集中的勾配は、酸性または塩基性条件下のアセトニトリルおよびMeOH溶媒系に基づき選択した。酸性/塩基性条件下で使用した修飾剤はそれぞれギ酸またはトリフルオロ酢酸(0.1%V/V)および重炭酸アンモニウム(10mM)であった。精製をWaters Fractionlynxソフトウェアで210~400nmのモニタリングおよび260nmの閾値コレクション値によるトリガー、そしてFractionlynxを使用するとき、標的分子イオンの存在をAPI条件下に観察される標的分子イオンの存在により制御した。集めたフラクションをLCMS(Waters Acquity系とWaters SQD)により分析した。
【0123】
キラル超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)分離プロトコール
化合物のジアステレオマー分離は、Waters Thar Prep100分取SFCシステム(P200 COポンプ、2545修飾剤ポンプ、2998 UV/VIS検出器、Stacked Injection Moduleを備えた2767液体ハンドラー)を使用する超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)により達成した。Waters 2767液体ハンドラーはオートサンプラーおよびフラクションコレクターの両方として作用した。非修飾または塩基性条件下、MeOH、EtOHまたはイソプロパノール溶媒系に基づき適切な定組成方法を選択した。使用した標準的SFC方法は、修飾剤、CO、100mL/分、120バール背圧、40℃カラム温度であった。塩基性条件下使用した修飾剤はジエチルアミン(0.1%V/V)であった。酸性条件下使用した修飾剤はギ酸(0.1%V/V)またはトリフルオロ酢酸(0.1%V/V)であった。SFC精製を、Waters Fractionlynxソフトウェアによる210~400nmのモニタリングおよび典型的に260nmの閾値コレクション値でのトリガーにより制御した。集めたフラクションをSFC(Waters SQDを備えるWaters/Thar SFC系)により分析した。所望の生成物を含むフラクションを、真空遠心分離により濃縮した。
【0124】
超臨界流体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー分析条件
方法3
SFC-MSを、YMC Amylose-Cカラムを使用するWaters SQDを備えたWaters/Thar SFCシステムで、5mL/分、120バール背圧、40℃カラム温度の20%メチルアルコール/CO(0.1%ジエチルアミン含有)定組成ランで実施した。
【0125】
方法4
SFC-MSを、YMC Amylose-Cカラムを使用するWaters SQDを備えたWaters/Thar SFCシステムで、5mL/分、120バール背圧、40℃カラム温度の30%メチルアルコール/CO(0.1%ジエチルアミン含有)定組成ランで実施した。
【0126】
方法5
SFC-MSを、YMC Cellulose-Cカラムを使用するWaters SQDを備えたWaters/Thar SFCシステムで、5mL/分、120バール背圧、40℃カラム温度の15%メチルアルコール/CO(0.1%ジエチルアミン含有)定組成ランで実施した。
【0127】
方法6
SFC-MSを、Lux Cellulose-4カラムを使用するWaters SQDを備えたWaters/Thar SFCシステムで、5mL/分、120バール背圧、40℃カラム温度の30%イソ-プロピルアルコール/CO(0.1%ジエチルアミン含有)定組成ランで実施した。
【0128】
方法7
SFC-MSを、YMC Cellulose-Cカラムを使用するWaters SQDを備えたWaters/Thar SFCシステムで、5mL/分、120バール背圧、40℃カラム温度の40%イソ-プロピルアルコール/CO(0.1%ジエチルアミン含有)定組成ランで実施した。
【0129】
中間体1
7-ブロモ-N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)イソキノリン-1-アミン
【化5】
7-ブロモ-1-クロロイソキノリン(100mg、0.412mmol)、炭酸カリウム(171mg、1.24mmol)および6-メチルピリダジン-3-イル)メタンアミン塩酸塩(121mg、0.619mmol)をNMP(1mL)に溶解した。反応混合物を145℃で60分間、マイクロ波リアクター中で加熱した。飽和水性塩化ナトリウム溶液(10mL)を添加し、粗製物の混合物をクロロホルム/2-プロパノール(60:40)(3×20mL)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下除去した。残渣をシリカクロマトグラフィーで精製し、-0~20%MeOHのDCM溶液で溶出して、表題化合物を灰白色固体(70mg、50%)として得た。
LCMS (方法2): [MH+] = 329.0、2.56分
【0130】
中間体2
7-ブロモフタラジン-1-オール
【化6】
6-ブロモイソベンゾフラン-1(3H)-オン(1g、4.69mmol)、N-ブロモスクシンイミド(919mg、5.16mmol)およびAIBN(81mg、0.491mmol)の1,2-ジクロロエタン(25mL)中の混合物を還流温度で2時間加熱し、RTに冷却し、蒸発させた。残渣を水(5mL)で洗浄し、得られた黄色ガム状物を、水(24mL)中、還流温度で3時間加熱し、次いでRTに冷却した。沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、空気乾燥した。固体を2-プロパノール(25mL)に溶解し、65%ヒドラジン水和物(1.9mL)を添加した。得られた混合物を還流温度で2.5時間加熱した。混合物を冷却し、濾過し、固体を水(5mL)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物を無色固体(637mg、60%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 12.90-12.80 (m, 1 H), 8.44 (s, 1 H), 8.38-8.35 (m, 1 H), 8.20-8.15 (m, 1 H), 7.99-7.94 (m, 1 H)
【0131】
中間体3
7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-オール
【化7】
窒素ガスを5分間7-ブロモフタラジン-1-オール(中間体2)(250mg、1.11mmol)、4-フルオロベンゼンボロン酸(187mg、1.33mmol)、炭酸カリウム(461mg、3.33mmol)の1,4-ジオキサン(5mL)/水(1mL)およびPd(dppf)Cl(41mg、0.056mmol)中の混合物を通してバブリングした。混合物を115℃で1.5時間加熱した。混合物を冷却し、EtOAc(30mL)で希釈した。有機相を分離し、減圧下濃縮し、残渣をシリカクロマトグラフィーで精製し、0~10%MeOHのDCM溶液勾配で溶出して、表題化合物を薄桃色固体(241mg、90%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.22 (s, 1 H), 8.61 (s, 1 H), 8.21-8.19 (m, 1 H), 8.06-8.02 (m, 1 H), 7.82-7.79 (m, 1 H), 7.73-7.66 (m, 2 H), 7.24-7.16 (m, 2 H)
【0132】
中間体4
7-ブロモ-4-シクロプロピルフタラジン-1-オール
【化8】
イソプロピルマグネシウムクロライド(3.2mL、6.45mmol、THF中2M)を、撹拌中のメチル5-ブロモ-2-ヨードベンゾエート(2.00g、5.87mmol)のTHF(40mL)溶液に、-78℃で窒素下添加した。得られた混合物を0℃で30分間、窒素雰囲気下に撹拌し、次いで無水臭化亜鉛(1.45g、6.45mmol)を添加し、得られた沈殿を15分間、0℃で撹拌した。シクロプロパンカルボニルクロライド(0.64ml、7.04mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.34g、0.29mmol)を添加し、混合物60℃で2時間加熱した。反応混合物をRTに冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)の添加によりクエンチした。得られた溶液をEtO(2×75mL)で抽出した。有機層を合わせ、水で洗浄し、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去して、黄色ガム状物を得た。残渣のEtOH(40mL)溶液にヒドラジン水和物(0.20mL、6.45mmol)を滴下し、混合物をRTで2時間撹拌した。溶媒を減圧下除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、5~100%EtOAcのイソヘキサン溶液で溶出して、表題化合物を薄黄色固体(614mg、39%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.80 (br s, 1 H), 8.59 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.02-7.95 (m, 2 H), 2.24-2.15 (m, 1 H), 1.04-0.99 (m, 4 H). LCMS (方法2): [MH+] = 265、1.54分
【0133】
下表に挙げる次の中間体を7-ブロモ-4-シクロプロピルフタラジン-1-オールの調製について記載する方法に従い調製した。
【表4】
【0134】
中間体7
4-クロロ-1-シクロプロピル-6-(4-フルオロフェニル)フタラジン
【化9】
工程1)4-シクロプロピル-7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-オールの調製
【化10】
窒素を10分間、7-ブロモ-4-シクロプロピルフタラジン-1-オール(中間体3)(250mg、0.943mmol)、4-フルオロフェニルボロン酸(158mg、1.13mmol)、炭酸カリウム(391mg、2.83mmol)、Pd(dppf)Cl(34mg、0.047mmol)の1,4-ジオキサン(5mL)および水(1mL)懸濁液を通してバブリングした。得られた混合物を110℃で2時間撹拌した。反応混合物をRTに冷却した。水(10mL)を添加し、反応物をEtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相を疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、0~10%MeOHのDCM溶液で溶出して、表題化合物をベージュ色固体(231mg、87%)として得た。
LCMS (方法2): [MH+] = 281、4.64分
【0135】
工程2:4-クロロ-1-シクロプロピル-6-(4-フルオロフェニル)フタラジンの調製
【化11】
4-シクロプロピル-7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-オール(110mg、0.392mmol)、オキシ塩化リン(V)(1.8mL、18.95mmol)および1,2-ジクロロエタン(5mL)の混合物を、90℃で窒素雰囲気下に2時間加熱した。反応物をRTに冷却し、減圧下濃縮した。残渣を水およびDCMに分配した。合わせた有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去して、表題化合物を褐色固体(116mg、99%)として得た。
LCMS (方法2): [MH+] = 299、5.59分
【0136】
下表に挙げる次の中間体を上記4-クロロ-1-シクロプロピル-6-(4-フルオロフェニル)フタラジンの調製について記載する方法に従い調製した。
【表5】
【0137】
中間体10
2-(4-クロロ-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-6-イル)-5-メチルチアゾール
【化12】
工程1:7-(5-メチルチアゾール-2-イル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-1-オールの調製
【化13】
窒素ガスを7-ブロモ-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-1-オール(中間体5)(300mg、0.93mmol)、ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン(283mg、1.11mmol)、Pd(dppf)Cl(38mg、0.046mmol)および酢酸カリウム(182mg、1.86mmol)のジオキサン(7.5mL)中の混合物を通してバブリングした。混合物を100℃で4時間加熱した。反応混合物を冷却し、さらに精製することなく、ジオキサン溶液として次工程で使用した。水性炭酸セシウム溶液(605mg、1.86mmol)の水(1.5mL)溶液および2-ブロモ-5-メチルチアゾール(174mg、0.98mmol)を添加した。得られた混合物を100℃でさらに18時間加熱した。反応混合物を冷却し、セライト(登録商標)で濾過し、フィルターケーキをEtOAc(2×10mL)で洗浄した。合わせた有機相を疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、0~100% 9:1 EtOAc/EtOHのシクロヘキサン溶液で溶出して、表題化合物をベージュ色固体(231mg、2工程にわたり72%)として得た。
LCMS(方法2): [MH+] = 342、3.74分
【0138】
工程2:2-(4-クロロ-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-6-イル)-5-メチルチアゾールの調製
【化14】
7-(5-メチルチアゾール-2-イル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-1-オール(231mg、0.68mmol)、オキシ塩化リン(V)(3.0mL、32.5mmol)および1,2-ジクロロエタン(4mL)の混合物を90℃で、窒素下に2時間加熱した。反応混合物をRTに冷却し、減圧下濃縮した。得られた残渣を水およびDCMに分配した。合わせた有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去して、表題化合物を薄褐色固体(216mg、88%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.73 (s, 1 H), 8.54 (d, J = 8.2 Hz, 1 H), 8.15 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 7.69-7.63 (m, 1 H), 3.96 (d, J = 8.7 Hz, 2 H), 3.42-3.26 (m, 4 H), 2.60 (s, 3 H), 2.28 (s, 1 H), 1.70-1.54 (m, 3 H), 1.28-1.19 (m, 1 H)
【0139】
実施例1
N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)-7-(5-メチルピリミジン-2-イル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-アミン
【化15】
4-クロロ-6-(5-メチルピリミジン-2-イル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン(中間体9)(50mg、0.13mmol)および(6-メチルピリダジン-3-イル)メタンアミン塩酸塩(49mg、0.40mmol)のクロロホルム(0.5mL)中の混合物を、封管中、窒素下に18時間、80℃で加熱した。混合物をRTに冷却し、EtOAc(15mL)で希釈し、飽和水性塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣を分取HPLCで精製して、表題化合物を灰白色固体(20.7mg、36%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.36 (s, 1 H), 8.89 (s, 2 H), 8.84 (dd, J = 1.4, 8.7 Hz, 1 H), 8.49 (dd, J = 5.8, 5.8 Hz, 1 H), 8.33 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.56 (d, J = 8.7 Hz, 1 H), 7.48 (d, J = 8.7 Hz, 1 H), 5.02 (d, J = 5.6 Hz, 2 H), 3.99 (dd, J = 2.6, 11.2 Hz, 2 H), 3.71-3.59 (m, 3 H), 2.60 (s, 3 H), 2.39 (s, 3 H), 2.00-1.88 (m, 2 H), 1.81 (d, J = 12.4 Hz, 2 H). LCMS (方法2): [MH+] = 428、2.70分
【0140】
実施例2
【化16】
N-(シクロプロピルメチル)-7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-アミン
7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-オール(中間体3)(149mg、0.62mmol)およびオキシ塩化リン(2.8mL、29.95mmol)の1,2-ジクロロエタン(5mL)中の混合物を90℃で1.5時間加熱した。冷却した混合物をDCM(20mL)で希釈し、氷で冷却し、飽和NaHCO(15mL)で処理した。相を分離し、水相をDCM(2×10mL)で抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下除去した。得られた褐色固体をEtO(2×20mL)で磨砕し、黄色固体(160mg)を得た。63mgのこの固体をシクロプロピルメチルアミン(1mL、11.67mmol)で処理し、80℃で蓋したマイクロ波バイアルで5時間加熱した。溶媒を減圧下除去し、残渣を分取HPLCで精製して、N-(シクロプロピルメチル)-7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-アミンを灰白色固体(34.7mg、49%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 8.78-8.77 (m, 1 H), 8.50-8.48 (m, 1 H), 8.06 (dd, J = 1.7, 8.3 Hz, 1 H), 7.87-7.80 (m, 3 H), 7.58-7.53 (m, 1 H), 7.31-7.26 (m, 2 H), 3.35-3.31 (m, 2 H), 1.22-1.11 (m, 1 H), 0.40-0.34 (m, 2 H), 0.21-0.16 (m, 2 H). LCMS (方法1): [MH+] = 294、4.70分
【0141】
次の化合物をN-(シクロプロピルメチル)-7-(4-フルオロフェニル)フタラジン-1-アミンの調製と同じ方法を使用して得た。
【表6】
【0142】
実施例4
(R)-4-シクロプロピル-7-(4-フルオロフェニル)-N-(1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)エチル)フタラジン-1-アミン
【化17】
4-クロロ-1-シクロプロピル-6-(4-フルオロフェニル)フタラジン(中間体7)(55mg、0.18mmol)および(R)-1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)エタン-1-アミン(105mg、0.55mmol)の混合物を、封管中、窒素下に6時間、80℃で加熱した。得られた反応物をRTに冷却し、EtOAc(15mL)で希釈し、飽和水性塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を集め、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣を分取HPLCで精製して、表題化合物を灰白色固体(23.7mg、28%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.15 (s, 2 H), 8.72 (d, J = 1.5 Hz, 1 H), 8.41 (d, J = 8.5 Hz, 1 H), 8.26 (dd, J = 1.7, 8.6 Hz, 1 H), 8.02-7.98 (m, 2 H), 7.85 (d, J = 6.4 Hz, 1 H), 7.45 (dd, J = 8.8, 8.8 Hz, 2 H), 5.58-5.52 (m, 1 H), 2.63-2.55 (m, 1 H), 1.74 (d, J = 7.2 Hz, 3 H), 1.03-0.96 (m, 4 H). LCMS (方法1): [MH+] = 454、5.51分
【0143】
下表に挙げる次の化合物を上記(R)-4-シクロプロピル-7-(4-フルオロフェニル)-N-(1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)エチル)フタラジン-1-アミンの調製について記載する方法に従い調製した。
【表7】
【0144】
中間体11
7-(5-フルオロ-2-ピリジル)-N-[(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル]-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フタラジン-1-アミン
【化18】
工程1:7-(5-フルオロピリジン-2-イル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-オールの調製
【化19】
窒素ガスを、10分間、7-ブロモ-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-オール(中間体5)(500mg、1.62mmol)、ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン(493mg、1.94mmol)、Pd(dppf)Cl(66mg、0.081mmol)および酢酸カリウム(317mg、3.23mmol)のジオキサン(12.5mL)中の混合物を通してバブリングした。混合物を100℃で4時間加熱した。反応混合物を冷却し、さらに精製することなく、ジオキサン溶液として次工程で使用した。この溶液に、炭酸セシウム水溶液(1054mg、3.23mmol、2.5mL)および2-ブロモ-5-フルオロピリジン(299mg、1.70mmol)を添加した。得られた混合物を100℃で18時間加熱した。反応物を冷却し、セライト(登録商標)で濾過し、フィルターケーキをEtOAc(2×10mL)で洗浄した。有機相を合わせ、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、3~70%3:1 EtOAc/EtOHのシクロヘキサン溶液で溶出して、表題化合物を薄橙色固体(380mg、2工程にわたり72%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.96 (s, 1 H), 8.95 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 8.63-8.60 (m, 2 H), 8.00-7.95 (m, 2 H), 7.59-7.52 (m, 1 H), 4.17-4.10 (m, 2 H), 3.70-3.62 (m, 2 H), 3.45-3.36 (m, 1 H), 2.10-1.98 (m, 2 H), 1.90 (dd, J = 1.6, 13.5 Hz, 2 H)
【0145】
工程2:4-クロロ-6-(5-フルオロピリジン-2-イル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジンの調製
【化20】
7-(5-フルオロピリジン-2-イル)-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン-1-オール(380mg、1.18mmol)、オキシ塩化リン(V)(5.3mL、56.7mmol)および1,2-ジクロロエタン(10mL)の混合物を90℃で、窒素下に2時間加熱した。反応物をRTに冷却し、溶媒を減圧下除去した。残渣を水およびDCMに分配した。水相をジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。有機相を合わせ、an水性飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、疎水性フリットを通した。溶媒を減圧下除去して、表題化合物(370mg、91%)を薄褐色固体として得て、それをさらに精製することなく次工程で使用した。
【0146】
工程3:7-(5-フルオロ-2-ピリジル)-N-[(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル]-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フタラジン-1-アミンの調製
【化21】
4-クロロ-6-(5-フルオロピリジン-2-イル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フタラジン(50mg、0.13mmol)、3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メタンアミン.塩酸塩(59mg、0.40mmol)のクロロホルム(0.5mL)およびEtN(0.07mL、0.52mmol)中の混合物を、封管中、窒素下に18時間、80℃で加熱した。得られた混合物をRTに冷却し、EtOAc(15mL)で希釈し、飽和水性塩化ナトリウムで洗浄した。有機相を疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣を分取HPLCで精製して、表題化合物を灰白色固体(22.0mg、22%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.03 (d, J = 1.5 Hz, 1 H), 8.80 (d, J = 2.9 Hz, 1 H), 8.64 (dd, J = 1.6, 8.7 Hz, 1 H), 8.47 (dd, J = 5.6, 5.6 Hz, 1 H), 8.37-8.32 (m, 2 H), 8.06-8.00 (m, 1 H), 5.01 (d, J = 5.6 Hz, 2 H), 3.99 (dd, J = 2.7, 11.4 Hz, 2 H), 3.73-3.58 (m, 3 H), 2.32 (s, 3 H), 2.01-1.89 (m, 2 H), 1.80 (d, J = 14.1 Hz, 2 H).LCMS (方法2): [MH+] = 421、3.00分
【0147】
下表に挙げる次の化合物を7-(5-フルオロ-2-ピリジル)-N-[(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル]-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フタラジン-1-アミンの調製について記載する方法に従い調製した:
【表8】
【0148】
下表に挙げる次の化合物を7-(5-フルオロ-2-ピリジル)-N-[(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル]-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フタラジン-1-アミンの調製について記載する方法に従い調製した。単一異性体を、対応するラセミ混合物のキラル分取SFC精製により得た。
【表9】
【0149】
実施例13
N-[(6-メチルピリダジン-3-イル)メチル]-7-(5-メチルチアゾール-2-イル)フタラジン-1-アミン
【化22】
工程1:7-(5-メチルチアゾール-2-イル)フタラジン-1-オールの調製
【化23】
窒素ガスを5分間7-ブロモ-フタラジン-1-オール(113mg、0.502mmol)(中間体2)および5-メチル-2-(トリブチルスタンニル)チアゾール(195mg、0.502mmol)の無水1,4-ジオキサン(2mL)および無水トルエン(2mL)中の混合物を通してバブリングした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0(29mg、0.0251mmol)を添加した。混合物をマイクロ波リアクターで、150℃で3時間加熱し、冷却し、DCMで希釈し、溶媒を減圧下除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、0~20%MeOHのDCM溶液で溶出して、表題化合物を無色固体(110mg、90%)として得た。
LCMS (方法1): [MH+] = 244、3.28分
【0150】
工程2:N-[(6-メチルピリダジン-3-イル)メチル]-7-(5-メチルチアゾール-2-イル)フタラジン-1-アミンの調製
【化24】
7-(5-メチルチアゾール-2-イル)フタラジン-1-オール(110mg、0.452mmol)およびオキシ塩化リン(V)(2mL)の1,2-ジクロロエタン(5mL)の中の混合物を90℃で2時間加熱した。混合物を冷却し、DCM(30mL)で希釈し、冷飽和炭酸水素ナトリウム(10mL)で洗浄した。有機相を分離し、水層をDCM(10mL)で抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下除去した。残渣を(6-メチルピリダジン-3-イル)メタンアミンに添加し、混合物を90℃で2時間加熱し、次いで冷却した。溶媒を減圧下除去し、残渣を逆相分取HPLCで精製して、表題化合物を薄褐色固体(4.1mg、2.6%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 8.97-8.96 (m, 1 H), 8.88 (s, 1 H), 8.60 (t, J = 5.8 Hz, 1 H), 8.42-8.35 (m, 1 H), 8.06-8.03 (m, 1 H), 7.77-7.75 (m, 1 H), 7.60-7.57 (m, 1 H), 7.50-7.47 (m, 1 H), 5.04 (d, J = 5.6 Hz, 2 H), 2.60 (s, 3 H), 2.58 (d, J = 1.1 Hz, 3 H). LCMS (方法1): [MH+] = 349、3.33分
【0151】
実施例14
7-(5-メチルチアゾール-2-イル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-N-((3-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル)フタラジン-1-アミン
【化25】
2-(4-クロロ-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フタラジン-6-イル)-5-メチルチアゾール(52mg、0.13mmol)(中間体10)および(3-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メタンアミン塩酸塩(32mg、0.16mmol)のDIPEA(0.06mL、0.33mmol)および1,4-ジオキサン(0.5mL)溶液を、マイクロ波リアクター中で、100℃で1.5時間加熱した。得られた混合物をRTに冷却し、EtOAc(15mL)で希釈し、飽和水性塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣を分取HPLCで精製して、表題化合物を灰白色固体(3.91mg、6%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 8.85 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.72 (dd, J = 5.6, 5.6 Hz, 1 H), 8.43 (dd, J = 1.8, 8.7 Hz, 1 H), 8.26 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.79 (d, J = 1.3 Hz, 1 H), 5.13 (d, J = 5.5 Hz, 2 H), 3.81 (dd, J = 2.8, 11.3 Hz, 2 H), 3.23 (dd, J = 9.9, 11.5 Hz, 2 H), 3.04 (d, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.59 (s, 3 H), 2.06-2.00 (m, 1 H), 1.53-1.48 (m, 2 H), 1.38-1.27 (m, 2 H). LCMS (方法1): [MH+] = 491、4.71分
【0152】
下表に挙げる次の化合物を7-(5-メチルチアゾール-2-イル)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-N-((3-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル)フタラジン-1-アミンの調製について記載する方法に従い調製した。
【表10】
【0153】
実施例16
4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)フタラジン-1-アミン
【化26】
工程1:4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フタラジン-1-オールの調製
【化27】
窒素を10分間、7-ブロモ-4-シクロプロピルフタラジン-1-オール(中間体4)(120mg、0.45mmol)、1-メチル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(122mg、0.59mmol)、炭酸セシウム(295mg、0.91mmol)、Pd(dppf)Cl(33mg、0.045mmol)の1,4-ジオキサン(4mL)および水(1mL)懸濁液を通してバブリングした。得られた混合物を90℃で2時間撹拌した。反応混合物をRTに冷却した。反応物を水(10mL)およびEtOAc(30mL)に分配した。水層をEtOAc(2×30mL)で抽出した。有機相を合わせ、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、0~6%MeOHのDCM溶液で溶出して、表題化合物をベージュ色固体(117mg、96%)として得た。
LCMS (方法2): [MH+] = 267、3.62分
【0154】
工程2:4-クロロ-1-シクロプロピル-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フタラジンの調製
【化28】
4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フタラジン-1-オール(110mg、0.41mmol)、オキシ塩化リン(V)(1.9mL、20.0mmol)および1,2-ジクロロエタン(5mL)の混合物を90℃で、窒素下に4時間加熱した。反応物をRTに冷却し、減圧下濃縮した。次いで、残渣を水およびDCMに分配した。水層をDCM(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去して、表題化合物を褐色固体(116mg、99%)として得た。
LCMS (方法2): [MH+] = 285、4.33分
【0155】
工程3:4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)フタラジン-1-アミンの調製
【化29】
4-クロロ-1-シクロプロピル-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フタラジン(113mg、0.36mmol)および非希釈1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エタン-1-アミン塩酸塩(147mg、1.07mmol)の混合物を、封管中、窒素下に4日間、80℃で加熱した。得られた残渣をRTに冷却し、EtOAc(15mL)で希釈し、飽和水性塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を疎水性フリットを通し、溶媒を減圧下除去した。得られた残渣を分取HPLCで精製して、表題化合物を灰白色固体(25.1mg、28%)として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 8.82 (s, 1 H), 8.37-8.31 (m, 2 H), 7.80 (d, J = 2.3 Hz, 1 H), 7.59 (d, J = 8.7 Hz, 1 H), 7.44 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.02 (d, J = 2.3 Hz, 1 H), 5.65-5.62 (m, 1 H), 3.97 (s, 2 H), 2.55 (s, 3 H), 2.54-2.51 (m, 1 H), 1.7 (d, J = 7.0 Hz, 3 H), 0.96-0.92 (m, 4 H). LCMS (方法2): [MH+] = 386、2.78分
【0156】
下表に挙げる次の化合物を4-シクロプロピル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N-(1-(6-メチルピリダジン-3-イル)エチル)フタラジン-1-アミンの調製について記載する方法に従い調製した。
【表11】
【0157】
下表に挙げる次の化合物を上記のラセミ混合物のキラル分取SFC精製により単一異性体として得た。
【表12】
【0158】
本発明の化合物の薬理学的活性。
P2Xのインビトロ電気生理学アッセイ
P2X受容体を発現する細胞を標準的な手法に従い増殖させ、37℃で5%加湿CO雰囲気に維持した。細胞をアッセイ日の2日前にT175フラスコに播種し、80~90%コンフルエンスまで増殖したとき、TrypLEを使用してフラスコから解離させた。開始した細胞を、3×10細胞/mlの細胞密度で無血清培地に再懸濁し、Sophion Qube自動化パッチクランプ系に充填した。細胞外アッセイ緩衝液は、pH7.4で45mM NaCl、4mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、10mM HEPESおよび10mM グルコースを含んだ。細胞内アッセイ溶液はpH7.2で140mM CsF、10mM NaCl、10mM EGTA、10mM HEPESを含んだ。アゴニスト原液をHO中に調製し、使用前に浴液で希釈した。全アンタゴニストをDMSO中10mM原液として調製し、使用前に浴液で希釈した。全実験を全細胞パッチクランプ配置下に室温で実施し、384の独立した細胞がSophion Qube装置上で同時に-60mVで電圧固定された。α,β-MeATP(800nM)の適用により2個のベースライン応答を確立し、その後のアゴニスト適用を0.5U/mlアピラーゼ含有細胞外アッセイ緩衝液を使用して洗い流した。第二のアゴニスト適用後、アンタゴニストをα,β-MeATP非存在下で10分間インキュベートした。アンタゴニストプレインキュベーション後、800nM α,β-MeATPおよびアンタゴニストを共投与して、アンタゴニストの阻害効果を決定した。アンタゴニストの1濃度を単一細胞に対して評価し、異なる濃度のアンタゴニストを、384記録基質上の別の細胞に適用した。対照P2X電流振幅を第二アゴニスト応答からのピーク電流振幅から採り、その後アンタゴニストとプレインキュベーションした。アンタゴニスト存在下のピークP2X電流振幅を、次の式に従い、アンタゴニストの各濃度の阻害効果を計算するために使用した:
P2X阻害パーセンテージ=(P2X対照ピーク振幅-P2Xアンタゴニストピーク振幅)/P2X対照ピーク振幅)*100
【0159】
濃度-応答曲線を10の異なる濃度で構築し、各濃度のアンタゴニストを少なくとも2個の独立した細胞で試験した。P2X電流を50%阻害するアンタゴニスト濃度(IC50)を、次の式にデータをフィットさせることにより決定した:
Y=a+[(b-a)/(1+10^((log c-x) d)]
ここで、‘a’は最小応答であり、‘b’は最大応答であり、‘c’はIC50であり、‘d’はヒルスロープである。
【0160】
個々の化合物の結果を下表2に提供し、活性の範囲として表す。
【表13】


ここで、化合物を、次の分類基準に従い、P2Xの阻害活性に関する効力の点で分類する:
+++:pIC50 h P2X>6.5
++:6.5<pIC50 h P2X>5.5
【0161】
P2X2/3のインビトロ電気生理学アッセイ
代表的本発明の化合物をP2X2/3受容体についても試験した。
P2X2/3アッセイについてP2Xアッセイと同じアッセイプロトコールを、2つの修飾をして使用した:1)アゴニストとして10μM ATPを使用した;および2)平均電流振幅をアゴニスト適用7秒後に測定した。
【0162】
表3の結果は、代表的本発明の化合物が選択的P2X3アンタゴニストであることを示す。
【表14】


ここで、化合物を、次の分類基準に従い、P2XまたはP2X2/3アイソフォームの阻害活性に関する効力の点で分類する:
+++:pIC50 h P2Xまたはh P2X2/3>6.5
++:6.5<pIC50 h P2Xまたはh P2X2/3>5.5
+:5.5<pIC50 h P2Xまたはh P2X2/3>4.5。
【0163】
比較実施例A
(7-(4-フルオロフェニル)-N-((6-メチルピリダジン-3-イル)メチル)イソキノリン-1-アミン
【化30】
比較実施例Aの化合部Tの活性を、上記のとおりP2X受容体の活性の決定についてのインビトロアッセイで試験した。
本発明の式(I)の化合物と異なり、比較実施例AはP2Xに適切な阻害活性を示さず、実際pIC50として表される受容体P2Xに対する活性は<5.5である。
【0164】
上記結果は、足場における適切な位置の窒素原子が、予想外に、受容体P2Xに対して活性な一連の化合物をもたらすことを示す。
【国際調査報告】