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特表2023-550832CD39およびTGFβを標的とする新規のコンジュゲート分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】CD39およびTGFβを標的とする新規のコンジュゲート分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231128BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231128BHJP
   C07K 14/72 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231128BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/44 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231128BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/113 120Z
C12N15/113 140Z
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/72
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/395 D
A61K39/395 C
A61K45/00
A61K39/395 Y
A61K39/44
A61P35/00
A61K48/00
A61P1/18
A61P43/00 105
A61P35/02
A61K47/68
A61P37/06
A61P31/00
A61P31/18
A61P31/14
A61P31/20
A61P1/04
A61P43/00 121
A61P7/00
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P17/06
A61P1/00
A61P37/02
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 S
A61K39/395 E
A61K39/395 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532306
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2021133083
(87)【国際公開番号】W WO2022111576
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/132392
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111396829.4
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520502972
【氏名又は名称】エルピサイエンス(スーチョウ)・バイオファーマ,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520502983
【氏名又は名称】エルピサイエンス・バイオファーマ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】スン,ダウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チーハオ
(72)【発明者】
【氏名】スン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ゲン,イェナン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】タン,リリ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,チンリン
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ヤンシェン
(72)【発明者】
【氏名】アーチ,ロバート・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ホンタオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA93Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC20
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA601
4C084ZA602
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB051
4C084ZB052
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
CD39とその基質との間の相互作用を妨害することができるCD39阻害性部分、およびTGFβとその受容体との間の相互作用を妨害することができるTGFβ阻害性部分を含むコンジュゲート分子、これらをコードする単離されたポリヌクレオチド、これらを含む医薬組成物、ならびにそれらの使用が提供される。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD39とその基質との間の相互作用を妨害することができるCD39阻害性部分、およびTGFβとその受容体との間の相互作用を妨害することができるTGFβ阻害性部分を含む、コンジュゲート分子。
【請求項2】
CD39阻害性部分がCD39とATP/ADPとの間の相互作用を妨害することができ、かつ/またはTGFβ阻害性部分がTGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を妨害することができる、請求項1に記載のコンジュゲート分子。
【請求項3】
CD39阻害性部分が、CD39結合剤、CD39のコード配列を標的とするRNAi、CD39のコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド、およびCD39と競合してその基質に結合する薬剤からなる群から選択されるCD39のアンタゴニストである、請求項1又は2に記載のコンジュゲート分子。
【請求項4】
TGFβ阻害性部分が、TGFβ結合剤、TGFβのコード配列を標的とするRNAi、TGFβのコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド、およびTGFβと競合してその受容体に結合する薬剤からなる群から選択されるTGFβのアンタゴニストである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項5】
CD39結合剤が、CD39を特異的に認識する抗体またはその抗原結合性断片、およびCD39に結合する低分子化合物からなる群から選択され、かつ/またはTGFβ結合剤が、TGFβを特異的に認識する抗体またはその抗原結合性断片、およびTGFβに結合する低分子化合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項6】
TGFβ結合ドメインに連結されたCD39結合ドメインを含む融合タンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項7】
TGFβ結合ドメインが、ヒトおよび/またはマウスTGFβに結合する、請求項6に記載のコンジュゲート分子。
【請求項8】
TGFβ結合ドメインが、ヒトTGFβ1、ヒトTGFβ2、および/またはヒトTGFβ3に結合する、請求項6に記載のコンジュゲート分子。
【請求項9】
TGFβ結合ドメインが、TGFβ受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項10】
TGFβ受容体が、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、またはTGFβ受容体III(TGFβRIII)である、請求項9に記載のコンジュゲート分子。
【請求項11】
ECDが、配列番号163、配列番号164、配列番号165のアミノ酸配列、またはその少なくとも85%の配列同一性を有ししかもTGFβに対する結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含む、請求項9又は10に記載のコンジュゲート分子。
【請求項12】
TGFβ結合ドメインが、TGFβ受容体の2つ以上のECDを含む、請求項6~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項13】
前記2つ以上のECDが、同じTGFβ受容体に由来するか、または少なくとも2つの異なるTGFβ受容体に由来する、請求項12に記載のコンジュゲート分子。
【請求項14】
前記2つ以上のECDが、TGFβRIに由来する第1のECDおよびTGFβRIIに由来する第2のECDを含む、請求項12に記載のコンジュゲート分子。
【請求項15】
前記2つ以上のECDが連続して作動可能に連結された、請求項12~14のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項16】
前記2つ以上のECDが第1のリンカーを介して連結された、請求項15に記載のコンジュゲート分子。
【請求項17】
TGFβ結合ドメインが、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のコンジュゲート分子。
【請求項18】
CD39結合ドメインがヒトCD39に結合する、請求項6~17のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項19】
TGFβ結合ドメインが、第2のリンカーを介してCD39結合ドメインに連結された、請求項6~18のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項20】
CD39結合ドメインが抗CD39抗体部分を含む、請求項6~19のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項21】
抗CD39抗体部分が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項20に記載のコンジュゲート分子。
【請求項22】
抗CD39抗体部分が、重鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された重鎖定常ドメインをさらに含む、請求項21に記載のコンジュゲート分子。
【請求項23】
抗CD39抗体部分が、軽鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された軽鎖定常ドメインをさらに含む、請求項21又は22に記載のコンジュゲート分子。
【請求項24】
TGFβ結合ドメインが、抗CD39抗体部分の、1)重鎖可変領域のアミノ末端、2)軽鎖可変領域のアミノ末端、3)重鎖可変領域のカルボキシル末端、4)軽鎖可変領域のカルボキシル末端、5)重鎖定常領域のカルボキシル末端、および6)軽鎖定常領域のカルボキシル末端からなる群から選択される位置で抗CD39抗体部分に連結された、請求項21~23のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項25】
融合タンパク質が、(i)抗CD39抗体部分の重鎖可変領域に全て連結された、または(ii)抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域に全て連結された、2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項26】
融合タンパク質が、抗CD39抗体部分の重鎖および軽鎖可変領域にそれぞれ連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項27】
融合タンパク質が、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域に全て連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項28】
融合タンパク質が、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域に全て連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項29】
融合タンパク質が、抗CD39抗体部分の重鎖および軽鎖定常領域にそれぞれ連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項30】
融合タンパク質が、2、3、4、5、6つまたはそれ以上のTGFβ結合ドメインを含む、請求項6~29のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項31】
第1および/または第2のリンカーが、切断可能リンカー、切断不能リンカー、ペプチドリンカー、可撓性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される、請求項16~30のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項32】
第1および/または第2のリンカーがペプチドリンカーを含む、請求項31に記載のコンジュゲート分子。
【請求項33】
ペプチドリンカーが、GSリンカーを含む、請求項32に記載のコンジュゲート分子。
【請求項34】
GSリンカーが、配列番号177(GGGS)または配列番号173(GGGGS)の1つもしくは複数の反復を含む、または配列番号182(GGGGSGGGGSGGGGSG)のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のコンジュゲート分子。
【請求項35】
抗CD39抗体部分が、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに/またはLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、
a)HCDR1が、NYGMN(配列番号1)、KYWMN(配列番号2)、NYWMN(配列番号3)、DTFLH(配列番号4)、DYNMY(配列番号5)、およびDTYVH(配列番号6)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
b)HCDR2が、LINTYTGEPTYADDFKD(配列番号7)、EIRLKSNKYGTHYAESVKG(配列番号8)、QIRLNPDNYATHXAESVKG(配列番号9)、X58IDPAX5960NIKYDPKFQG(配列番号151)、FIDPYNGYTSYNQKFKG(配列番号11)、およびRIDPAIDNSKYDPKFQG(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
c)HCDR3が、KGIYYDYVWFFDV(配列番号13)、QLDLYWFFDV(配列番号14)、HGXRGFAY(配列番号15)、SPYYYGSGYRIFDV(配列番号16)、IYGYDDAYYFDY(配列番号17)、およびYYCALYDGYNVYAMDY(配列番号18)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
d)LCDR1が、KASQDINRYIA(配列番号19)、RASQSISDYLH(配列番号20)、KSSQSLLDSDGRTHLN(配列番号21)、SAFSSVNYMH(配列番号22)、SATSSVSYMH(配列番号23)、およびRSSKNLLHSNGITYLY(配列番号24)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
e)LCDR2が、YTSTLLP(配列番号25)、YASQSIS(配列番号26)、LVSKLDS(配列番号27)、TTSNLAS(配列番号28)、STSNLAS(配列番号29)、およびRASTLAS(配列番号30)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
f)LCDR3が、LQYSNLLT(配列番号31)、QNGHSLPLT(配列番号32)、WQGTLFPWT(配列番号33)、QQRSTYPFT(配列番号34)、QQRITYPFT(配列番号35)、およびAQLLELPHT(配列番号36)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
がYまたはFであり、XがSまたはTであり、X58がRまたはKであり、X59がN、G、S、またはQであり、X60がG、A、またはDである、請求項20~34のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項36】
a)HCDR1が配列番号3のアミノ酸配列を含み、かつ/または
b)HCDR2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、かつ/または
c)HCDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ/または
d)LCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ/または
e)LCDR2が配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ/または
f)LCDR3が配列番号33のアミノ酸配列を含み、
およびXが請求項35に定義した通りである、請求項35に記載のコンジュゲート分子。
【請求項37】
HCDR2が配列番号37および配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が配列番号40および配列番号41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項36に記載のコンジュゲート分子。
【請求項38】
a)HCDR1が配列番号4のアミノ酸配列を含み、かつ/または
b)HCDR2が配列番号151のアミノ酸配列を含み、かつ/または
c)HCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ/または
d)LCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、かつ/または
e)LCDR2が配列番号28のアミノ酸配列を含み、かつ/または
f)LCDR3が配列番号34のアミノ酸配列を含み、
58、X59およびX60が請求項35に定義した通りである、請求項35に記載のコンジュゲート分子。
【請求項39】
重鎖可変領域が
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号7の配列を含むHCDR2、および配列番号13の配列を含むHCDR3、または
b)配列番号2の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、および配列番号14の配列を含むHCDR3、または
c)配列番号3の配列を含むHCDR1、配列番号37の配列を含むHCDR2、および配列番号40の配列を含むHCDR3、または
d)配列番号3の配列を含むHCDR1、配列番号38の配列を含むHCDR2、および配列番号41の配列を含むHCDR3、または
e)配列番号4の配列を含むHCDR1、配列番号10の配列を含むHCDR2、および配列番号16の配列を含むHCDR3、または
f)配列番号4の配列を含むHCDR1、配列番号134、135、136、137、138、および139からなる群から選択される配列を含むHCDR2、ならびに配列番号16の配列を含むHCDR3、または
g)配列番号5の配列を含むHCDR1、配列番号11の配列を含むHCDR2、および配列番号17の配列を含むHCDR3、または
h)配列番号6の配列を含むHCDR1、配列番号12の配列を含むHCDR2、および配列番号18の配列を含むHCDR3
を含む、請求項35~38のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項40】
軽鎖可変領域が、
a)配列番号19の配列を含むLCDR1、配列番号25の配列を含むLCDR2、および配列番号31の配列を含むLCDR3、または
b)配列番号20の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3、または
c)配列番号21の配列を含むLCDR1、配列番号27の配列を含むLCDR2、および配列番号33の配列を含むLCDR3、または
d)配列番号22の配列を含むLCDR1、配列番号28の配列を含むLCDR2、および配列番号34の配列を含むLCDR3、または
e)配列番号23の配列を含むLCDR1、配列番号29の配列を含むLCDR2、および配列番号35の配列を含むLCDR3、または
f)配列番号24の配列を含むLCDR1、配列番号30の配列を含むLCDR2、および配列番号36の配列を含むLCDR3
を含む、請求項35~39のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項41】
a)HCDR1が配列番号1の配列を含み、HCDR2が配列番号7の配列を含み、HCDR3が配列番号13の配列を含み、LCDR1が配列番号19の配列を含み、LCDR2が配列番号25の配列を含み、LCDR3が配列番号31の配列を含むか、または
b)HCDR1が配列番号2の配列を含み、HCDR2が配列番号8の配列を含み、HCDR3が配列番号14の配列を含み、LCDR1が配列番号20の配列を含み、LCDR2が配列番号26の配列を含み、LCDR3が配列番号32の配列を含むか、または
c)HCDR1が配列番号3の配列を含み、HCDR2が配列番号37の配列を含み、HCDR3が配列番号40の配列を含み、LCDR1が配列番号21の配列を含み、LCDR2が配列番号27の配列を含み、LCDR3が配列番号33の配列を含むか、または
d)HCDR1が配列番号3の配列を含み、HCDR2が配列番号38の配列を含み、HCDR3が配列番号41の配列を含み、LCDR1が配列番号21の配列を含み、LCDR2が配列番号27の配列を含み、LCDR3が配列番号33の配列を含むか、または
e)HCDR1が配列番号4の配列を含み、HCDR2が配列番号10の配列を含み、HCDR3が配列番号16の配列を含み、LCDR1が配列番号22の配列を含み、LCDR2が配列番号28の配列を含み、LCDR3が配列番号34の配列を含むか、または
f)HCDR1が配列番号4の配列を含み、HCDR2が配列番号134、135、136、137、138、および139からなる群から選択される配列を含み、HCDR3が配列番号16の配列を含み、LCDR1が配列番号22の配列を含み、LCDR2が配列番号28の配列を含み、LCDR3が配列番号34の配列を含むか、または
g)HCDR1が配列番号5の配列を含み、HCDR2が配列番号11の配列を含み、HCDR3が配列番号17の配列を含み、LCDR1が配列番号23の配列を含み、LCDR2が配列番号29の配列を含み、LCDR3が配列番号35の配列を含むか、または
h)HCDR1が配列番号6の配列を含み、HCDR2が配列番号12の配列を含み、HCDR3が配列番号18の配列を含み、LCDR1が配列番号24の配列を含み、LCDR2が配列番号30の配列を含み、LCDR3が配列番号36の配列を含む、請求項35~40のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項42】
抗CD39抗体部分が、1つまたは複数の重鎖フレームワーク領域HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4、ならびに/または軽鎖フレームワーク領域LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4をさらに含み、
HFR1が配列番号84~86、115、119~120、および131からなる群から選択される配列を含み、
HFR2が配列番号87~90、および121~123からなる群から選択される配列を含み、
HFR3が配列番号91~97、116~117、および124~125からなる群から選択される配列を含み、
HFR4が配列番号79および118からなる群から選択される配列を含み、
LFR1が配列番号98~103、および127~129からなる群から選択される配列を含み、
LFR2が配列番号104、105、および130からなる群から選択される配列を含み、
LFR3が配列番号106~110、および132~133からなる群から選択される配列を含み、
LFR4が配列番号83および153からなる群から選択される配列を含む、請求項35~41のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項43】
抗CD39抗体部分が、配列番号60、62、64、66、140、141、142、146、147、および39からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトCD39に対する特異的結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに
配列番号61、63、65、67、143、144、145、111、112、および63からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトCD39に対する特異的結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項35~42のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項44】
抗CD39抗体部分が、配列番号68、70、72、および74からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトCD39に対する特異的結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに
配列番号69、71、73、および75からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトCD39に対する特異的結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項35~43のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項45】
抗CD39抗体部分が、
a)配列番号42の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51の配列を含む軽鎖可変領域、または
b)配列番号43の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号52の配列を含む軽鎖可変領域、または
c)配列番号44の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号53の配列を含む軽鎖可変領域、または
d)配列番号45の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域、または
e)配列番号47の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域、または
f)配列番号49の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号58の配列を含む軽鎖可変領域、または
g)配列番号50の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号59の配列を含む軽鎖可変領域、または
h)配列番号60の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号63の配列を含む軽鎖可変領域、または
i)配列番号62の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号63の配列を含む軽鎖可変領域、または
j)配列番号64の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号63の配列を含む軽鎖可変領域、または
k)配列番号66の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号63の配列を含む軽鎖可変領域、または
l)配列番号60の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号65の配列を含む軽鎖可変領域、または
m)配列番号62の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号65の配列を含む軽鎖可変領域、または
n)配列番号64の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号65の配列を含む軽鎖可変領域、または
o)配列番号66の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号65の配列を含む軽鎖可変領域、または
p)配列番号60の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号67の配列を含む軽鎖可変領域、または
q)配列番号62の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号67の配列を含む軽鎖可変領域、または
r)配列番号64の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号67の配列を含む軽鎖可変領域、または
s)配列番号66の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号67の配列を含む軽鎖可変領域、または
t)配列番号140の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号61の配列を含む軽鎖可変領域、または
u)配列番号141の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号61の配列を含む軽鎖可変領域、または
v)配列番号142の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号61の配列を含む軽鎖可変領域、または
w)配列番号140の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号143の配列を含む軽鎖可変領域、または
x)配列番号141の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号143の配列を含む軽鎖可変領域、または
y)配列番号142の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号143の配列を含む軽鎖可変領域、または
z)配列番号140の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号144の配列を含む軽鎖可変領域、または
aa)配列番号141の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号144の配列を含む軽鎖可変領域、または
bb)配列番号142の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号144の配列を含む軽鎖可変領域、または
cc)配列番号140の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号145の配列を含む軽鎖可変領域、または
dd)配列番号141の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号145の配列を含む軽鎖可変領域、または
ee)配列番号142の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号145の配列を含む軽鎖可変領域、または
ff)配列番号146の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号111の配列を含む軽鎖可変領域、または
gg)配列番号146の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号112の配列を含む軽鎖可変領域、または
hh)配列番号147の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号111の配列を含む軽鎖可変領域、または
ii)配列番号39の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号63の配列を含む軽鎖可変領域、または
jj)配列番号68の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号69の配列を含む軽鎖可変領域、または
kk)配列番号70の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号69の配列を含む軽鎖可変領域、または
ll)配列番号72の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号69の配列を含む軽鎖可変領域、または
mm)配列番号74の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号69の配列を含む軽鎖可変領域、または
nn)配列番号68の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号71の配列を含む軽鎖可変領域、または
oo)配列番号70の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号71の配列を含む軽鎖可変領域、または
pp)配列番号72の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号71の配列を含む軽鎖可変領域、または
qq)配列番号74の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号71の配列を含む軽鎖可変領域、または
rr)配列番号68の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号73の配列を含む軽鎖可変領域、または
ss)配列番号70の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号73の配列を含む軽鎖可変領域、または
tt)配列番号72の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号73の配列を含む軽鎖可変領域、または
uu)配列番号74の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号73の配列を含む軽鎖可変領域、または
vv)配列番号68の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号75の配列を含む軽鎖可変領域、または
ww)配列番号70の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号75の配列を含む軽鎖可変領域、または
xx)配列番号72の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号75の配列を含む軽鎖可変領域、または
yy)配列番号74の配列を含む重鎖可変領域、および配列番号75の配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項35~44のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項46】
抗CD39抗体部分が、1つまたは複数のアミノ酸残基の置換または修飾をさらに含み、しかもヒトCD39に対する特異的結合特異性を保持している、請求項35~45のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項47】
前記置換または修飾のうち少なくとも1つが重鎖可変領域または軽鎖可変領域のCDR配列の1つもしくは複数の中、および/または非CDR配列の1つもしくは複数の中にある、請求項46に記載のコンジュゲート分子。
【請求項48】
定常領域がヒト免疫グロブリン(Ig)、または任意選択でヒトIgGに由来する、請求項21~47のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項49】
定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、またはIgMに由来する、請求項48に記載のコンジュゲート分子。
【請求項50】
抗CD39抗体部分がヒト化されている、請求項35~49のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項51】
抗CD39抗体部分が、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、多重特異的抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体である、請求項19~50のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項52】
FACSアッセイによって測定して10-8M以下のEC50でヒトCD39に特異的に結合することができる、請求項1~51のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項53】
a)FACSアッセイによって測定してヒトCD39に特異的に結合するが、マウスCD39に特異的に結合しない、
b)FACSアッセイによって測定して10-8M以下のEC50でカニクイザルCD39に特異的に結合する、
c)Biacoreアッセイによって測定して10-7M以下(たとえば5×10-8M以下、3×10-8M以下、2×10-8M以下、1×10-8M以下、または8×10-9M以下)のK値でヒトCD39に特異的に結合する、
d)Octetアッセイによって測定して10-8M以下(たとえば8×10-9M以下、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、1×10-9M以下、または9×10-10M以下)のK値でヒトCD39に特異的に結合する、
e)ATPアーゼ活性アッセイによって測定して50nM以下(たとえば1nM以下、5nM以下、10nM以下、または30nM以下)のIC50でCD39発現細胞中のATPアーゼ活性を阻害する、
f)FACSアッセイによるCD80、CD86、および/またはCD40の発現の解析によって測定して10nM以下(たとえば5nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.5nM以下、または0.2nM以下)の濃度でATP媒介単球活性化を増強することができる、
g)IL-2の分泌、IFN-γの分泌、CD4+またはCD8+のT細胞の増殖によって測定して25nM以下の濃度でPBMC中のATP媒介T細胞活性化を増強することができる、
h)FACSアッセイによるCD83の発現の解析によって、またはT細胞の増殖を促進する活性化樹状細胞(DC)の能力によって、または混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおけるIFN-γの産生を促進する活性化DCの能力によって測定して、25nM以下(または10nM以下、または5nM以下、または1nM以下、または0.5nM以下)の濃度でATP媒介DC活性化を増強することができる、
i)FACSアッセイによって測定して1nM以下(たとえば0.1nM以下、0.01nM以下)の濃度で(ATPから加水分解される)アデノシンによって誘導されるCD4T細胞の増殖の阻害をブロックすることができる、
j)哺乳動物のNK細胞またはマクロファージ細胞に依存する様式で腫瘍の成長を阻害することができる、
k)T細胞の増殖、CD25細胞、および生細胞集団によって測定して、eATPによって阻害されたヒトCD8T細胞の増殖を反転させることができる、および
l)ELISAアッセイによって測定して50nM以下(または12.5nM以下、または3.13nM以下、または0.78nM以下、または0.2nM以下、または0.049nM以下、または0.012nM以下、または0.003nM以下、または0.0008nM以下)の濃度で、LPS刺激によって誘導されたヒトマクロファージのIL1βの放出を増強することができる、
からなる群から選択される1つまたは複数の特性を有する、請求項1~52のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項54】
CD39結合ドメインが、ヒトCD39との結合について配列番号43の配列を含む重鎖可変領域および配列番号52の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1~34のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項55】
CD39結合ドメインが、ヒトCD39との結合について配列番号44の配列を含む重鎖可変領域および配列番号53の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合するか、または配列番号45の配列を含む重鎖可変領域および配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1~34のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項56】
CD39結合ドメインが、ヒトCD39との結合について配列番号47の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1~34のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項57】
CD39結合ドメインが、CD39のエピトープと特異的に結合し、エピトープが、Q96、N99、E143、R147、R138、M139、E142、K5、E100、D107、V81、E82、R111、およびV115からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項58】
エピトープが、Q96、N99、E143、およびR147からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、請求項57に記載のコンジュゲート分子。
【請求項59】
エピトープが、R138、M139、およびE142からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、請求項57に記載のコンジュゲート分子。
【請求項60】
エピトープが、K5、E100、およびD107からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、請求項57に記載のコンジュゲート分子。
【請求項61】
エピトープが、V81、E82、R111、およびV115からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、請求項57に記載のコンジュゲート分子。
【請求項62】
CD39結合ドメインが、配列番号162のアミノ酸配列を含むヒトCD39に特異的に結合する、請求項1~61のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項63】
CD39結合ドメインが、抗体9-8B、抗体T895、および抗体I394のいずれにも由来せず、
抗体9-8Bが配列番号46の配列を含む重鎖可変領域および配列番号48の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
抗体T895が配列番号55の配列を含む重鎖可変領域および配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
抗体I394が配列番号113の配列を含む重鎖可変領域および配列番号114の配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項56~62のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項64】
a)ヒトTGFβ1、ヒトTGFβ2、および/またはヒトTGFβ3に特異的に結合する、
b)類似した親和性でヒトTGFβ1およびマウスTGFβ1に特異的に結合する、
c)ELISAアッセイによって測定して3×10-11M以下(たとえば2×10-11M以下、1×10-11M以下、0.9×10-11M以下、0.8×10-11M以下、0.7×10-11M以下、0.6×10-11M以下、0.5×10-11M以下)のEC50でヒトTGFβ1に特異的に結合する、
d)ブロッキングアッセイによって測定して4×10-10M以下(たとえば、3×10-10M以下、2×10-10M以下、1×10-10M以下、0.5×10-10M以下)のIC50でヒトTGFβ1およびTGFβRII結合をブロックすることができる、
e)FACSアッセイによって測定して用量依存的にヒトCD39に結合することができる、
f)ELISAアッセイまたはFACSアッセイによって測定してCD39およびTGFβに同時に結合することができる、
g)TGF-β SMADレポーターアッセイによって測定して4×10-11M以下のIC50でTGFβシグナルを阻害することができる、
h)ATPアーゼ活性アッセイによって測定して7×10-10M以下(たとえば6×10-10M以下、5×10-10M以下、4×10-10M以下、3×10-10M以下、2×10-10M以下、1×10-10M以下、0.5×10-10M以下)のIC50でCD39発現細胞におけるATPアーゼ活性を阻害することができる、
i)Octetアッセイによって測定して4×10-10M以下(たとえば3×10-10M以下、2×10-10M以下、1×10-10M以下、または0.5×10-10M以下)のK値でヒトCD39に特異的に結合する、
j)Octetアッセイによって測定して4×10-11M以下(たとえば3×10-11M以下、2×10-11M以下、1×10-11M以下、または0.5×10-11M以下)のK値でヒトTGFβ1に特異的に結合する、
k)Treg抑制アッセイによって測定してT細胞機能を回復させることができる、
l)用量依存的にヒトT細胞のアポトーシスを阻害することができる、
m)刺激によるヒトT細胞の生存および活性化を促進することができる、
n)全T細胞におけるTGFβ誘導Foxp3発現をブロックすることができる、
o)ヒトT細胞増殖に対するATP誘導阻害を回復させることができる、
からなる群から選択される1つまたは複数の特性を有する、請求項1~63のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項65】
1つまたは複数のコンジュゲート部分をさらに含む、請求項1~64のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子。
【請求項66】
コンジュゲート部分がクリアランス修飾剤、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリンバインダー、精製部分、またはその他の抗がん薬物を含む、請求項65に記載のコンジュゲート分子。
【請求項67】
請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項68】
請求項1~67のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項69】
請求項68に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項70】
請求項69に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項71】
請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子、および/または請求項67に記載の医薬組成物、ならびに第2の治療剤を含む、キット。
【請求項72】
請求項69に記載のベクターが発現される条件下で請求項70に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子を発現する方法。
【請求項73】
治療有効量の請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子、および/または請求項67に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法。
【請求項74】
治療有効量の請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子、および/または請求項67に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるCD39のATPアーゼ活性を低減させることによって処置可能な疾患を処置し、防止し、または軽減する方法。
【請求項75】
治療有効量の請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子、および/または請求項67に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるT、単球、マクロファージ、DC、APC、NK、および/またはB細胞の活性のアデノシン媒介阻害に関連する疾患を処置し、防止し、または軽減する方法。
【請求項76】
治療有効量の請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子、および/または請求項67に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるTGFβのレベルおよび/または活性の上昇に関連する疾患を処置し、防止し、または軽減する方法。
【請求項77】
前記疾患、障害、または状態が、がん、膵萎縮症、または線維症である、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
がんが、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、TもしくはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、腺癌である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
がんが、白血病、リンパ腫、膀胱がん、神経膠腫、膠芽細胞腫、卵巣がん、黒色腫、前立腺がん、甲状腺がん、食道がん、または乳がんである、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
対象が、任意選択で非がん細胞または非免疫抑制細胞において通常見られるレベルより有意に高いレベルで、CD39および/またはTGFβを発現しているがん細胞または腫瘍浸潤性免疫細胞もしくは免疫抑制細胞を有すると同定されている、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
免疫抑制細胞が制御性T細胞である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
対象が、対照の対象に通常見られる制御性T細胞の活性と比較して、腫瘍微小環境において過剰活性な制御性T細胞を有すると同定されている、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
対象が、免疫抑制の反転、または機能不全の疲弊したT細胞の反転から利益を得ることが予想される、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記疾患、障害、または状態が自己免疫疾患または感染である、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
自己免疫疾患が、免疫性血小板減少症、全身性強皮症、硬化症、成人呼吸窮迫症候群、湿疹、喘息、シェーグレン症候群、アジソン病、巨細胞性動脈炎、免疫複合体性腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性血小板減少症、セリアック病、乾癬、皮膚炎、結腸炎、または全身性エリテマトーデスである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
感染がHIV感染、HBV感染、HCV感染、炎症性腸疾患、またはクローン病である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
対象がヒトである、請求項73~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記投与が経口、経鼻、静脈内、皮下、舌下、または筋肉内投与を介する、請求項73~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
治療有効量の第2の治療剤を投与するステップをさらに含む、請求項73~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
第2の治療剤が、化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート剤、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
CD39陽性細胞を請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子および/または請求項67に記載の医薬組成物に曝露するステップを含む、CD39陽性細胞におけるCD39の活性を調節する方法。
【請求項92】
CD39陽性細胞が免疫細胞である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
対象におけるCD39関連またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減するための医薬の製造における、請求項1~66のいずれか一項に記載のコンジュゲート分子および/または請求項67に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は一般に、CD39およびTGFβを標的とする新規のコンジュゲート分子に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]CD39は、エクト-ヌクレオシドトリホスフェートジホスホヒドロラーゼ1(ENTPDアーゼ1)としても知られている、ATPまたはADPをAMPに変換する内在性膜タンパク質であり、次いでCD73がAMPを脱ホスホリル化してアデノシンに変換する。アデノシンは強力な免疫抑制剤であり、CD4、CD8T細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞の表面においてアデノシン受容体(たとえばA2A受容体)に結合し、T細胞およびNK細胞の応答を阻害して、それにより免疫系を抑制する。アデノシンはまた、マクロファージおよび樹状細胞の上のA2AおよびA2B受容体に結合し、ファゴサイトーシスおよび抗原提示を阻害し、VEGF、TGFβ、およびIL-6等の腫瘍促進因子の分泌を増加させる。CD39およびCD73の酵素活性は、ADPおよびATPのAMPへの変換、ならびにAMPのアデノシンへの変換のそれぞれを通して免疫細胞に送達されるプリン作動性シグナルの持続期間、規模、および化学的性質の調整に重要な役割を果たしている(Luca Antonioli et al.,Trends Mol Med.2013 Jun;19(6):355-367)。CD39およびCD73によって媒介されるアデノシンレベルの増加は免疫抑制性環境を生成し、それによりがんの発生および進行が促進される。
【0003】
[003]トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)は、多面的なサイトカインであり、末期の原発性および転移性腫瘍において高レベルで発現し、抗増殖および腫瘍促進の両方のシグナル伝達カスケードを活性化する。腫瘍間質細胞および、乳房、大腸、肺、膵臓、前立腺、血液悪性腫瘍等多くの種類の腫瘍で、TGFβが高レベルに産生されている。TGFβは、腫瘍細胞の上皮間葉転換(EMT)、浸潤、転移を促進するほか、インターフェロンγ(IFN-γ)の発現抑制、Th1細胞の分化抑制、CD8エフェクター細胞の機能減退等のメカニズムにより、腫瘍が免疫監視から逃れられるようにする。最も重要なことは、TGFβが制御性T細胞(Treg)の分化を誘導することである。Tregは、免疫抑制性サイトカイン(IL-10、TGFβ、IL-35)の産生、阻害性分子(CTLA-4)の発現、CD39を介してATPをアデノシンに加水分解することにより、さらに炎症を抑制する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[004]CD39とTGFβが腫瘍に対する免疫応答を調節する役割を果たすことを考えると、たとえばがん等の疾患の処置のために、CD39活性、あるいはCD39とTGFβの両方の活性に拮抗する治療剤へのニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[005]本開示を通して、冠詞「a」、「an」、および「the」は、本明細書において、その冠詞の文法的目的物の1つまたはそれ超(即ち、少なくとも1つ)を意味するために用いられる。例として、「抗体」は1つの抗体または2つ以上の抗体を意味する。
【0006】
[006]1つの観点では、本開示は、CD39とその基質との間の相互作用を妨害することができるCD39阻害性部分、およびTGFβとその受容体との間の相互作用を妨害することができるTGFβ阻害性部分を含むコンジュゲート分子を提供する。
【0007】
[007]ある特定の実施形態では、CD39阻害性部分はCD39とATP/ADPとの間の相互作用を妨害することができ、かつ/またはTGFβ阻害性部分がTGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を妨害することができる。ある特定の実施形態では、CD39阻害性部分は、CD39結合剤、CD39のコード配列を標的とするRNAi、CD39のコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド、およびCD39と競合してその基質に結合する薬剤からなる群から選択されるCD39のアンタゴニストである。ある特定の実施形態では、TGFβ阻害性部分が、TGFβ結合剤、TGFβのコード配列を標的とするRNAi、TGFβのコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド、およびTGFβと競合してその受容体に結合する薬剤からなる群から選択されるTGFβのアンタゴニストである。ある特定の実施形態では、CD39結合剤は、CD39を特異的に認識する抗体もしくはその抗原結合性断片、およびCD39に結合する低分子化合物からなる群から選択され、かつ/またはTGFβ結合剤は、TGFβを特異的に認識する抗体もしくはその抗原結合性断片、およびTGFβに結合する低分子化合物からなる群から選択される。
【0008】
[008]ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子は、TGFβ結合ドメインに連結されたCD39結合ドメインを含む融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、ヒトおよび/またはマウスTGFβに結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、ヒトTGFβ1、ヒトTGFβ2、および/またはヒトTGFβ3に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体は、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、またはTGFβ受容体III(TGFβRIII)である。ある特定の実施形態では、ECDは、配列番号163、配列番号164、配列番号165のアミノ酸配列、またはその少なくとも85%の配列同一性を有ししかもTGFβに対する結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ受容体の2つ以上のECDを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは、同じTGFβ受容体に由来するか、または少なくとも2つの異なるTGFβ受容体に由来する。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは、TGFβRIに由来する第1のECDおよびTGFβRIIに由来する第2のECDを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは連続して作動可能に連結される。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは第1のリンカーを介して連結される。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
[009]ある特定の実施形態では、CD39結合ドメインは、ヒトCD39に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、第2のリンカーを介してCD39結合ドメインに連結される。ある特定の実施形態では、CD39結合ドメインは、抗CD39抗体部分を含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、重鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された重鎖定常ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、軽鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された軽鎖定常ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の、1)重鎖可変領域のアミノ末端、2)軽鎖可変領域のアミノ末端、3)重鎖可変領域のカルボキシル末端、4)軽鎖可変領域のカルボキシル末端、5)重鎖定常領域のカルボキシル末端、および6)軽鎖定常領域のカルボキシル末端からなる群から選択される位置で抗CD39抗体部分に連結される。
【0010】
[0010]ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、(i)抗CD39抗体部分の重鎖可変領域に全て連結された、または(ii)抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域に全て連結された、2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖および軽鎖可変領域にそれぞれ連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域に全て連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域に全て連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む。融合タンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖および軽鎖定領域にそれぞれ連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む。
【0011】
[0011]ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、2、3、4、5、6つまたはそれ以上のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、第1および/または第2のリンカーは、切断可能リンカー、切断不能リンカー、ペプチドリンカー、可撓性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、第1および/または第2のリンカーはペプチドリンカーを含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GSリンカーを含む。ある特定の実施形態では、GSリンカーは、配列番号177(GGGS)または配列番号173(GGGGS)の1つもしくは複数の反復を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号182)のアミノ酸配列を含む。
【0012】
[0012]別の態様では、本開示は、本開示のコンジュゲート分子、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。別の態様では、本開示は、本開示のコンジュゲート分子をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。別の態様では、本開示は、本開示の単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。別の態様では、本開示は、本開示のベクターを含む宿主細胞を提供する。別の態様では、本開示は、本開示のコンジュゲート分子および/または本開示の医薬組成物、ならびに第2の治療剤を含むキットを提供する。
【0013】
[0013]別の態様では、本開示は、本開示のベクターが発現される条件下で本開示の宿主細胞を培養するステップを含む、本開示のコンジュゲート分子を発現する方法を提供する。別の態様では、本開示は、治療有効量の本開示のコンジュゲート分子、および/または本開示の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法を提供する。別の態様では、本開示は、治療有効量の本開示のコンジュゲート分子、および/または本開示の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるCD39のATPアーゼ活性を低減させることによって処置可能な疾患を処置し、防止し、または軽減する方法を提供する。別の態様では、本開示は、治療有効量の本開示のコンジュゲート分子、および/または本開示の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるT、単球、マクロファージ、DC、APC、NKおよび/またはB細胞の活性のアデノシン媒介阻害に関連する疾患を処置し、防止し、または軽減する方法を提供する。別の態様では、本開示は、CD39陽性細胞を本開示のコンジュゲート分子および/または本開示の医薬組成物に曝露するステップを含む、CD39陽性細胞におけるCD39の活性を調節する方法を提供する。
【0014】
[0014]別の態様では、本開示は、治療有効量の本開示のコンジュゲート分子、および/または本開示の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるTGFβのレベルおよび/または活性の上昇に関連する疾患を処置し、防止し、または軽減する方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象におけるCD39関連またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減するための医薬の製造における、本開示のコンジュゲート分子および/または本開示の医薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[0015]図1は、抗CD39モノクローナル抗体mAb21、およびmAb23によるT細胞増殖のATP媒介抑制の封鎖を示す。mIgG2aをアイソタイプ対照抗体として用いた。
図2】[0016]図2は、抗CD39キメラ抗体c14、c19、c21、およびc23によるT細胞増殖のATP媒介抑制の封鎖を示す。hIgG4はヒトIgG4アイソタイプ対照抗体を意味する。
図3】[0017]図3は、樹状細胞(DC)上のCD39の発現レベルを示す。
図4-1】[0018]図4A~4Cは、FACSを用いたCD86(図4A)、CD83(図4B)、及びHLA-DR(図4C)の発現によって測定した抗CD39キメラ抗体c14、c19、c21、およびc23によるATP媒介DC活性化を示す。
図4-2】同上。
図5】[0019]図5は、MOLP-8細胞(ヒト多発性骨髄腫細胞株)を接種したマウスにおいて抗CD39キメラ抗体c23-hIgG4およびc23-hIgG1で処置した後の腫瘍の成長を示す。
図6】[0020]図6Aは、ヒト化抗体hu23.H5L5のENTPD1(即ちCD39)、ENTPD2(即ちCD39L1)、ENTPD3(即ちCD39L3)、ENTPD5(即ちCD39L4)、およびENTPD6(即ちCD39L2)タンパク質それぞれに対する結合特性を示す。図6Bは、陰性対照hIgG4のENTPD1(即ちCD39)、ENTPD2(即ちCD39L1)、ENTPD3(即ちCD39L3)、ENTPD5(即ちCD39L4)、およびENTPD6(即ちCD39L2)タンパク質それぞれに対する結合を示す。
図7】[0021]図7Aおよび7Bは、FACSによるc23ヒト化抗体のMOLP-8細胞との結合活性を示す。
図8】[0022]図8は、c23ヒト化抗体(酵母ディスプレイによって得られた)のMOLP-8細胞との結合活性を示す。
図9】[0023]図9Aおよび9Bは、FACSによるc23ヒト化抗体のSK-MEL-28細胞におけるATPアーゼ阻害を示す。
図10-1】[0024]図10A~10Cは、FACSによるc14ヒト化抗体のMOLP-8細胞との結合活性を示す。
図10-2】同上。
図11-1】[0025]図11A~11Dは、IL-2(図11A)、IFN-γ(図11B)、CD4T細胞増殖(図11C)、及びCD8T細胞増殖(図11D)によって測定したヒト化抗体hu23.H5L5によるPMBC中のATP媒介T細胞活性化を示す。
図11-2】同上。
図12-1】[0026]図12A~12Eは、FACSによるヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1の、SK-MEL-5細胞(図12A)、SK-MEL-28細胞(図12B)、MOLP-8細胞(図12C)、CHOK1-cynoCD39細胞(図12D)、及びCHOK1-mCD39細胞(図12E)との結合活性を示す。
図12-2】同上。
図12-3】同上。
図13】[0027]図13Aは、SK-MEL-5細胞におけるヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1によるATPアーゼ阻害活性を示す。図13Bは、MOLP-8細胞におけるヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1によるATPアーゼ阻害活性を示す。
図14-1】[0028]図14A~14Cは、CD80(図14A)、CD86(図14B)、及びCD40(図14C)の発現によって測定した抗CD39ヒト化抗体hu23.H5L5によるATP媒介単球活性化を示す。
図14-2】同上。
図15-1】[0029]図15は、CD83の発現(図15A)、増強されたT細胞の増殖(図15B)、及びT細胞の活性化(図15C)によって測定してヒト化抗体hu23.H5L5がATP媒介DC活性化を増加させることを示す。
図15-2】同上。
図15-3】同上。
図16】[0030]図16は、MOLP-8異種移植マウスにおけるヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1による腫瘍成長阻害を示す。
図17】[0031]図17は、NKが枯渇したMOLP-8異種移植マウスにおける抗CD39ヒト化抗体hu23.H5L5の腫瘍成長阻害を示す。
図18】[0032]図18は、マクロファージが枯渇したMOLP-8異種移植マウスにおける抗CD39ヒト化抗体hu23.H5L5の腫瘍成長阻害を示す。
図19-1】[0033]図19Aは、ヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1と参照抗体とのエピトープビニングの結果を示す。図19Bは、試験した抗体のエピトープ分類を示す。
図19-2】同上。
図20】[0034]図20は、LPS刺激によって誘導されたヒトマクロファージのIL1β放出に対する抗CD39ヒト化抗体hu23.H5L5の効果を示す。
図21】[0035]図21は、PBMC養子マウスにおける異なる用量(0.03mg/kg、0.3mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、30mg/kg)のヒト化抗体hu23.H5L5の腫瘍成長阻害を示す。
図22】[0036]図22は、ヒト化抗体hu23.H5L5、キメラ抗体c34およびc35、ならびに参照抗体T895、I394、および9-8Bのエピトープマッピングの結果を示す。
図23-1】[0037]図23A~23Cは、T細胞の増殖(図23A)、CD25細胞(図23B)、及び生細胞集団(図23C)によって測定したヒト化抗体hu23.H5L5によって反転された細胞外ATP阻害CD8T細胞の増殖を示す。
図23-2】同上。
図24-1】[0038]図24A~24Gは、本開示の例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の模式図を示す。
図24-2】同上。
図24-3】同上。
図24-4】同上。
図24-5】同上。
図24-6】同上。
図24-7】同上。
図25-1】[0039]図25A~25Dは、ヒトTGFβ1(図25A)、ヒトTGFβ2(図25B)、ヒトTGFβ3(図25C)およびマウスTGFβ1(図25D)への例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の結合特性をそれぞれ示す。
図25-2】同上。
図26】[0040]図26は、ヒトTGFβ1およびTGFβRIIに対する例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子のブロッキングアッセイの結果を示す。
図27】[0041]図27Aおよび27Bは、FACSによる、ヒトCD39に対する例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の結合活性をMOLP-8細胞(図27A)およびCHOK1細胞(図27B)を用いてそれぞれ示す。
図28】[0042]図28Aおよび28Bは、ELISA(図28A)およびFACS(図28B)による、ヒトCD39およびTGFβ1に対する例示的な抗CD39/TGFβトラップ分子の同時結合活性をそれぞれ示す。
図29】[0043]図29Aは、トランスフェクトされたHEK293細胞における例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子のTGFβレポーターアッセイの結果を示す。図29Bは、異なるCD39タンパク質:抗CD39/TGFβ Trap分子比でプレインキュベートした場合の、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子のTGFβ中和活性を示す。
図30-1】[0044]図30A~30Cは、MOLP-8細胞(図30Aおよび30B)およびCHO細胞(図30C)における例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子によるATPアーゼ阻害活性をそれぞれ示す。
図30-2】同上。
図31-1】[0045]図31Aは、同種DCによってプライミングされた自己T細胞へのTregの添加が、T細胞のIFN-γ分泌を抑制することを示す。図31B~31Dは、CD4T細胞増殖%(図31B)、CD8T細胞増殖%(図31C)およびIFN-γ分泌の変化(図31D)によって測定した、ヒトT細胞のTreg媒介抑制に対する例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の効果を示す。
図31-2】同上。
図32】[0046]図32は、示されたように、同モルの抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2、抗CD39抗体ES014_v2、TGF-ベータ Trap ES014_v1、ならびに対照抗体ES014_v3で処理したヒトT細胞に対するアポトーシスの阻害パーセントを描写するグラフを提供する。図32Aは、全T細胞における初期アポトーシスの割合を示し、X軸は抗体および濃度を示し、Y軸は初期T細胞アポトーシスの割合(%)を示す(Annexin VPI)。図32Bは、全T細胞における後期アポトーシスの割合を示し、X軸は抗体および濃度を示し、Y軸は後期T細胞アポトーシスの割合(%)を示す(Annexin VPI)。
図33】[0047]図33は、示されたように、同モルの抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2、抗CD39抗体ES014_v2、TGF-ベータ Trap ES014_v1、ならびに対照抗体ES014_v3で処理したT細胞の機能を描写するグラフを提供する。図33Aは、細胞生存率および細胞活性化に関するFACSプロットを示し、図33Bは、上清におけるIL-2およびIFN-γの産生を示した。
図34】[0048]図34は、示されたように、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2、抗CD39抗体ES014_v2、TGF-ベータ Trap ES014_v1、ならびに対照抗体ES014_v3で処理したT細胞におけるFoxp3発現を描写するグラフを提供する。図34Aは、CD4T細胞におけるFoxp3発現の割合を示し、図34Bは、CD8T細胞におけるFoxp3発現の割合を示した。
図35】[0049]図35は、示されたように、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2、抗CD39抗体ES014_v2、TGF-ベータ Trap ES014_v1、ならびに対照抗体ES014_v3で処理した全T細胞の分割された割合(%)を描写するグラフを提供する。図35Aは、CD4T細胞の分割された割合(%)を示し、図35Bは、CD8T細胞の分割された割合(%)を示した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0050]以下の本開示の記述は、本開示の種々の実施形態を説明することを意図しているのみである。したがって、議論する特定の改変は本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本開示の範囲から逸脱することなしに種々の等価物、変更、および改変ができることは、当業者には明らかであり、そのような等価の実施形態が本明細書に含まれるべきことが理解される。出版物、特許、および特許出願を含む本明細書で引用した全ての参照文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0017】
定義
[0051]本明細書で用いる用語「抗体」は、特定の抗原に結合する任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、二価抗体、一価抗体、多重特異的抗体、または二重特異的抗体を含む。天然のインタクトな抗体は2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。哺乳動物の重鎖はアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューに分類され、それぞれの重鎖は可変領域(VH)ならびに第1、第2、第3、および任意選択で第4の定常領域(それぞれCH1、CH2、CH3、CH4)からなる。哺乳動物の軽鎖はλまたはκと分類され、それぞれの軽鎖は可変領域(VL)および定常領域からなる。抗体は「Y」の形状を有し、Yの軸はジスルフィド結合を介して互いに結合した2つの重鎖の第2および第3の定常領域からなる。Yのそれぞれのアームは、1本の軽鎖の可変および定常領域に結合した1本の重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は抗原の結合に関与している。両方の鎖の可変領域は一般に、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖CDR、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖CDR)と呼ばれる3つの高度に可変性のループを含む。本明細書で開示する抗体および抗原結合性断片のCDRの境界は、Kabat、IMGT、Chothia、またはAl-Lazikaniの規則によって定義され、または同定されてよい(Al-Lazikani,B.,Chothia,C.,Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,273(4),927(1997);Chothia,C.et al.,J Mol Biol.Dec 5;186(3):651-63(1985);Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,196,901(1987);Chothia,C.et al.,Nature.Dec 21-28;342(6252):877-83(1989);Kabat E.A.et al.,Sequences of Proteins of immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Marie-Paule Lefranc et al.,Developmental and Comparative Immunology,27:55-77(2003);Marie-Paule Lefranc et al.,Immunome Research,1(3),(2005);Marie-Paule Lefranc,Molecular Biology of B cells(second edition),chapter 26,481-514,(2015))。3つのCDRは、CDRよりも高度に保存され、高度に可変性のループを支持するスキャフォールドを形成するフレームワーク領域(FR)(LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4を含む軽鎖FR、ならびにHFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4を含む重鎖FR)として知られる隣接する区間の間に挿入されている。重鎖および軽鎖の定常領域は抗原結合には関与しないが、種々のエフェクター機能を呈する。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り付けられる。抗体の5つの主なクラスまたはアイソタイプはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらはそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミュー重鎖の存在によって特徴付けられる。主な抗体クラスのいくつかは、IgG1(ガンマ1重鎖)、IgG2(ガンマ2重鎖)、IgG3(ガンマ3重鎖)、IgG4(ガンマ4重鎖)、IgA1(アルファ1重鎖)、またはIgA2(アルファ2重鎖)等のサブクラスに分割される。
【0018】
[0052]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体はその任意の抗原結合性断片を包含する。本明細書で用いる用語「抗原結合性断片」は、1つまたは複数のCDRを含む抗体の一部から形成された抗体断片、または抗原に結合するが、インタクトな天然の抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を意味する。抗原結合性断片の例には、限定なく、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、二重特異的抗体、多重特異的抗体、ラクダ化単鎖ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体が含まれる。抗原結合性断片は、親抗体が結合する同じ抗原に結合することができる。
【0019】
[0053]「Fab」は、抗体に関して、ジスルフィド結合によって単一の重鎖の可変領域および第1の定常領域に結合した単一の軽鎖(可変領域と定常領域の両方)からなる抗体の部分を意味する。
【0020】
[0054]「Fab’」は、ヒンジ領域の一部を含むFab断片を意味する。
[0055]「F(ab’)」は、Fab’のダイマーを意味する。
[0056]「Fc」は、抗体(たとえばIgG、IgA、またはIgDアイソタイプ)に関して、ジスルフィド結合を介して第2の重鎖の第2および第3の定常ドメインに結合した第1の重鎖の第2および第3の定常ドメインからなる抗体の部分を意味する。IgMおよびIgEアイソタイプの抗体に関するFcは、第4の定常ドメインをさらに含む。抗体のFc部分は、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)等の種々のエフェクター機能に関与しているが、抗原結合には機能しない。
【0021】
[0057]「Fv」は、抗体に関して、完全な抗原結合部位を担う抗体の最小断片を意味する。Fv断片は、単一の重鎖の可変領域に結合した単一の軽鎖の可変領域からなる。
[0058]「単鎖Fv抗体」または「scFv」は、直接またはペプチドリンカー配列を介して相互に連結された軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる操作された抗体を意味する(Huston JS et al.Proc Natl Acad Sci USA,85:5879(1988))。
【0022】
[0059]「単鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」は、抗体のFc領域に連結されたscFvからなる操作された抗体を意味する。
[0060]「ラクダ化単鎖ドメイン抗体」、「重鎖抗体」、または「HCAb」は、2つのVドメインを含み、軽鎖を含まない抗体を意味する(Riechmann L.and Muyldermans S.,J Immunol Methods.Dec 10;231(1-2):25-38(1999);Muyldermans S.,J Biotechnol.Jun;74(4):277-302(2001);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体はもともとラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびリャマ)に由来する。ラクダ化抗体は軽鎖を有しないが、真正の抗原結合能力を有する(Hamers-Casterman C.et al.,Nature.Jun 3;363(6428):446-8(1993);Nguyen VK.et al.Immunogenetics.Apr;54(1):39-47(2002);Nguyen VK.et al.Immunology.May;109(1):93-101(2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって生成される既知の最小の抗原結合単位を表す(Koch-Nolte F.et al.,FASEB J.Nov;21(13):3490-8.Epub 2007 Jun 15(2007))。
【0023】
[0061]「ナノボディ」は、重鎖抗体のVHHドメインおよび2つの定常ドメイン、CH2およびCH3からなる抗体断片を意味する。
[0062]「ダイアボディ」または「dAb」には、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片が含まれ、断片は同じポリペプチド鎖の中でVドメインに連結されたVドメインを含む(V-VまたはV-V)(たとえばHolliger P.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.Jul 15;90(14):6444-8(1993);EP404097;WO93/11161を参照)。同じ鎖の中の2つのドメインの間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることによって、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと対を形成することを強制され、それにより2つの抗原結合部位が創出される。抗原結合部位は同じまたは異なる抗原(またはエピトープ)を標的とし得る。ある特定の実施形態では、「二重特異的dsダイアボディ」は、2つの異なる抗原(またはエピトープ)を標的とするダイアボディである。
【0024】
[0063]「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む抗体断片を意味する。ある例では、2つ以上のVドメインがペプチドリンカーと共有結合的に接合されて、二価または多価のドメイン抗体が創出される。二価ドメイン抗体の2つのVドメインは、同じまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0025】
[0064]本明細書で用いる用語「価」は、所与の分子の中の特定した数の抗原結合部位の存在を意味する。用語「一価」は、ただ一つの単一の抗原結合部位を有する抗体または抗原結合性断片を意味し、用語「多価」は、複数の抗原結合部位を有する抗体または抗原結合性断片を意味する。したがって、用語「二価」、「四価」、および「六価」は、抗原結合性分子の中のそれぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位の存在を示す。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は二価である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は四価である。
【0026】
[0065]本明細書で用いる場合、「二重特異的」抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体に由来する断片、または1つの抗体と別のタンパク質(たとえば、TGFβ受容体)に由来する断片を有し、2つの異なるエピトープに結合することができる人工の抗体を意味する。2つのエピトープは同じ抗原の上に存在してもよく、または2つの異なる抗原の上に存在してもよい。
【0027】
[0066]ある特定の実施形態では、「scFvダイマー」は、別のV-V部分と二量化した(ペプチドリンカーによって二量化された)V-Vを含む二価ダイアボディまたは二重特異的scFv(BsFv)であり、それにより1つの部分のVが他の部分のVと協調して、同じ抗原(またはエピトープ)または異なる抗原(またはエピトープ)を標的とすることができる2つの結合部位を形成する。他の実施形態では、「scFvダイマー」は、(ペプチドリンカーによって連結された)VL1-VH2と会合した(これもペプチドリンカーによって連結した)VH1-VL2を含む二重特異的ダイアボディであり、それによりVH1とVL1が協調し、VH2とVL2が協調して、それぞれの協調した対が異なる抗原特異性を有する。
【0028】
[0067]「dsFv」は、単一の軽鎖の可変領域と単一の重鎖の可変領域との間の連結がジスルフィド結合であるジスルフィド安定化Fv断片を意味する。一部の実施形態では、「(dsFv)」または「(dsFv-dsFv’)」は、3つのペプチド鎖、即ちペプチドリンカー(たとえば長い可撓性リンカー)によって連結され、ジスルフィド架橋を介してそれぞれ2つのV部分に結合した2つのV部分を含む。一部の実施形態では、dsFv-dsFv’は、ジスルフィドで対を形成したそれぞれの重鎖および軽鎖が異なる抗原特異性を有する二重特異的である。
【0029】
[0068]本明細書で用いる用語「キメラ」は、1つの種に由来する重鎖および/または軽鎖の一部と、異なる種に由来する重鎖および/または軽鎖の残りとを有する抗体または抗原結合性断片を意味する。説明的な例では、キメラ抗体はヒトに由来する定常領域と、マウス等の非ヒト動物に由来する可変領域とを含んでよい。一部の実施形態では、非ヒト動物は哺乳動物、たとえばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、またはハムスターである。
【0030】
[0069]本明細書で用いる用語「ヒト化」は、抗体または抗原結合性断片が非ヒト動物に由来するCDR、ヒトに由来するFR領域、および適用される場合にはヒトに由来する定常領域を含むことを意味する。
【0031】
[0070]本明細書で用いる用語「親和性」は、免疫グロブリン分子(即ち抗体)またはその断片と抗原との間の非共有結合相互作用の強さを意味する。
[0071]本明細書で用いる用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、たとえば抗体と抗原のような2つの分子の間の非ランダム結合反応を意味する。特異的結合は、たとえば抗原と抗原結合性分子との間の結合が平衡に達したときのK値、即ち解離速度と会合速度との比(koff/kon)によって表される結合親和性において特徴付けることができる。Kは、それだけに限らないが、表面プラスモン共鳴法、Octet法、ミクロスケールサーモフォレーシス法、HPLC-MS法、およびFACSアッセイ法を含む当技術分野で既知の任意の従来法を用いて決定してよい。10-6M以下(たとえば5×10-7M以下、2×10-7M以下、10-7M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、10-8M以下、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、または10-9M以下)のK値は、抗体またはその抗原結合性断片とCD39(たとえばヒトCD39)との間の特異的結合を示し得る。
【0032】
[0072]本明細書で用いる「ヒトCD39との結合について競合する」能力は、第1の抗体または抗原結合性断片の、ヒトCD39と第2の抗CD39抗体との間の結合相互作用を何らかの検出可能な程度で阻害する能力を意味する。ある特定の実施形態では、ヒトCD39との結合について競合する抗体または抗原結合性断片は、ヒトCD39と第2の抗ヒトCD39抗体との間の結合相互作用を少なくとも85%、または少なくとも90%阻害する。ある特定の実施形態では、この阻害は95%より大きく、または99%より大きくてよい。
【0033】
[0073]本明細書で用いる用語「エピトープ」は、それに抗体が結合する抗原の上の特定の原子またはアミノ酸の群を意味する。2つの抗体が抗原に対して競合的結合を示せば、それらは抗原の中の同じまたは密接に関連したエピトープに結合し得る。エピトープは線状またはコンフォメーション状(即ち、隔たれたアミノ酸残基を含む)であってよい。たとえば、抗体または抗原結合性断片が参照抗体の抗原への結合を少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%ブロックすれば、その抗体または抗原結合性断片は、参照抗体と同じ/密接に関連したエピトープと結合するとみなしてよい。
【0034】
[0074]本明細書で用いる用語「アミノ酸」は、それぞれのアミノ酸に特有の側鎖とともにアミン(-NH)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物を意味する。本開示においてアミノ酸の名称は標準的な1文字または3文字のコードとして表すこともでき、それらを以下に要約する。
【0035】
【表1】
【0036】
[0075]用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では相互交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび非天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0037】
[0076]アミノ酸配列に関する「保存的置換」は、アミノ酸残基を、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基で置き換えることを意味する。たとえば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばMet、Ala、Val、Leu、およびIle)の間で、中性親水性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばCys、Ser、Thr、Asn、およびGln)の間で、酸性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばAsp、Glu)の間で、塩基性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばHis、Lys、およびArg)の間で、または芳香族側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばTrp、Tyr、およびPhe)の間で行うことができる。当技術分野で既知のように、保存的置換は通常、タンパク質のコンフォメーション構造において顕著な変化を生じず、したがってタンパク質の生物学的活性を保持することができる。
【0038】
[0077]本明細書で用いる用語「相同」は、最適に整列させたときに別の配列と少なくとも60%(たとえば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する核酸配列(またはその相補的ストランド)またはアミノ酸配列を意味する。
【0039】
[0078]アミノ酸配列(または核酸配列)に関する「配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要な場合には同一のアミノ酸(または核酸)の数が最大になるようにギャップを導入した後の、参照配列におけるアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列におけるアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。換言すれば、アミノ酸配列(または核酸配列)の配列同一性パーセント(%)は、比較する参照配列に関して同一であるアミノ酸残基(または塩基)の数を、候補配列または参照配列のどちらか短い方におけるアミノ酸残基(または塩基)の全数で除することによって計算することができる。アミノ酸残基の保存的置換は、同一の残基とみなしてもよく、みなさなくてもよい。アミノ酸(または核酸)の配列同一性パーセントを計算するための整列は、たとえばBLASTN、BLASTp(U.S.National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトから入手可能、Altschul S.F.et al.,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990);Stephen F.et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997)も参照されたい)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイトから入手可能、Higgins D.G.et al.,Methods in Enzymology,266:383-402(1996);Larkin M.A.et al.,Bioinformatics(Oxford,England),23(21):2947-8(2007)も参照されたい)、およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公衆利用可能なツールを用いて達成することができる。当業者であれば、ツールによって提供されるデフォルトパラメーターを用いてもよく、またはたとえば好適なアルゴリズムを選択することによって整列のために適切なパラメーターをカスタマイズしてもよい。
【0040】
[0079]本明細書で用いる「エフェクター機能」は、抗体のFc領域の、C1複合体およびFc受容体等のそのエフェクターへの結合に帰せられる生物学的活性を意味する。例示的なエフェクター機能には、抗体とC1複合体上のC1qとの相互作用によって媒介される補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体のFc領域のエフェクター細胞上のFc受容体への結合によって媒介される抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、およびファゴサイトーシスが含まれる。エフェクター機能は、Fc受容体結合アッセイ、C1q結合アッセイ、および細胞溶解アッセイ等の種々のアッセイを用いて評価することができる。
【0041】
[0080]「単離された」物質は、天然の状態から人の手によって改変されている。「単離された」組成物または物質が天然に生じるならば、それはその元の環境から変化しもしくは除去されているか、またはその両方である。たとえば、生きている動物の中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その天然の状態において共存する物質から十分に分離されて実質的に純粋な状態で存在するならば、「単離されて」いる。「単離された核酸配列」は、単離された核酸分子の配列を意味する。ある特定の実施形態では、「単離された抗体またはその抗原結合性断片」は、電気泳動法(SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリ電気泳動等)またはクロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLC)によって決定して少なくとも60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有する抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0042】
[0081]本明細書で用いる用語「ベクター」は、その中に遺伝要素が作動可能に挿入され、その遺伝要素の発現が生じて、それにより、その遺伝要素によってコードされるタンパク質、RNA、またはDNAが産生され、またはその遺伝要素が複製されるビヒクルを意味する。ベクターは、宿主細胞をトランスフォーム、トランスデュース、またはトランスフェクトして、それが宿主細胞の中に運搬する遺伝要素の発現を生じさせるために用い得る。ベクターの例には、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)等の人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージ等のバクテリオファージ、および動物ウイルスが含まれる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能な要素、およびレポーター遺伝子等の発現を制御するための種々の要素を含んでよい。さらに、ベクターは複製の起点を含んでよい。ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、またはタンパク質コーティングを含むがこれらに限定されない、ベクターの細胞内への進入を補助する物質を含んでもよい。ベクターは発現ベクターまたはクローニングベクターであってよい。本開示は、抗体またはその抗原結合性断片をコードする本明細書で提供される核酸配列、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(たとえばSV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーを含むベクター(たとえば発現ベクター)を提供する。
【0043】
[0082]本明細書で用いる語句「宿主細胞」は、その中に外来のポリヌクレオチドおよび/またはベクターを導入することができ、またはこれらが導入された細胞を意味する。
[0083]用語「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非ヒト霊長類、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、ヒツジ、イヌ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類等の非哺乳動物を含む。注記した場合を除いて、用語「患者」または「対象」は、本明細書では相互交換可能に用いられる。
【0044】
[0084]用語「抗腫瘍活性」は、腫瘍細胞の増殖、生存性、または転移活性の低減を意味する。たとえば、抗腫瘍活性は、治療のない対照と比較して、治療中に生じる異常な細胞の増殖速度の低下、または腫瘍のサイズの安定性もしくは低減、あるいは治療による長期生存によって示すことができる。そのような活性は、異種移植モデル、同種移植モデル、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)モデル、および抗腫瘍活性を検討するための当技術分野で既知のその他のモデルを含むがこれらに限らない許容されたin vitroまたはin vivoの腫瘍モデルを用いて評価することができる。
【0045】
[0085]本明細書で用いる疾患、障害、もしくは状態を「処置すること」またはそれらの「処置」は、疾患、障害、もしくは状態を防止しまたは軽減すること、疾患、障害、もしくは状態の発症または発生速度を遅くすること、疾患、障害、もしくは状態を発生させるリスクを低減すること、疾患、障害、もしくは状態に関連する症状の発生を防止しまたは遅延させること、疾患、障害、もしくは状態に関連する症状を低減しまたは終止させること、疾患、障害、もしくは状態を完全にまたは部分的に寛解させること、疾患、障害、もしくは状態を治癒させること、またはそれらのいくつかの組合せを含む。
【0046】
[0086]用語「診断」、「診断する」、または「診断すること」は、CD39関連疾患の同定のような、病的な状態、疾患、または状態の同定を意味し、または特定の処置レジメンによって恩恵を受ける可能性のあるCD39関連疾患を有する対象の同定を意味する。一部の実施形態では、診断はCD39の異常な量または活性の同定を含む。一部の実施形態では、診断は対象におけるがんまたは自己免疫疾患の同定を意味する。
【0047】
[0087]本明細書で用いる場合、用語「生物学的試料」または「試料」は、目的の対象から得られまたは由来し、たとえば物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特徴に基づいて特徴付けおよび/または同定される、細胞および/またはその他の分子実体を含む生物学的組成物を意味する。生物学的試料は、当業者には既知の任意の方法によって得られる対象の細胞、組織、臓器、および/または生物学的流体を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、生物学的試料は流体試料である。一部の実施形態では、流体試料は全血、血漿、血清、粘液(鼻漏および痰を含む)、腹水、胸膜液、胸水、唾液、尿、滑液、脳脊髄液(CSF)、胸腔穿刺液、腹部の液、腹水、または心嚢液である。一部の実施形態では、生物学的試料は対象の心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、皮膚、または血管から得られる組織または細胞である。
【0048】
[0088]用語「作動可能に連結する」または「作動可能に連結された」は、スペーサーまたはリンカーの有無にかかわらず、目的の2つ以上の生物学的配列が、それらが意図した方法で機能することを可能にする関係にあるように並置されていることを意味する。ポリペプチドに関して用いる場合、ポリペプチド配列が、連結された生成物が意図された生物学的機能を有することを可能にするような方法で連結されていることを意味することが意図される。たとえば、抗体可変領域は、抗原結合活性を有する安定な生成物を提供するように、定常領域に作動可能に連結されてよい。この用語は、ポリヌクレオチドに関しても用いられてよい。一例として、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが調節配列(たとえば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列等)に作動可能に連結されている場合、ポリヌクレオチドからのポリペプチドの調節された発現を可能にするような方法で、ポリヌクレオチド配列が連結されていることを意味することが意図される。
【0049】
[0089]アミノ酸配列(たとえば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質)に関して用いる場合、用語「融合」または「融合した」は、たとえば化学結合または組換え手段によって、天然には存在しない単一のアミノ酸配列に2つ以上のアミノ酸配列を結合することを意味する。融合アミノ酸配列は、2つのコードポリヌクレオチド配列の遺伝子組換えにより産生してよく、組換えポリヌクレオチドを含む構築物を宿主細胞に導入する方法によって発現させることができる。
【0050】
[0090]本明細書で用いる「CD39」は、ENTPD1またはENTPDアーゼ1としても知られている、ATPをAMPに変換する内在性膜タンパク質を意味する。構造的には、これは2つの膜貫通ドメイン、小さな細胞質ドメイン、および大きな細胞外疎水性ドメインによって特徴付けられる。ある特定の実施形態では、CD39はヒトCD39である。本明細書で用いるCD39は、マウスおよびとりわけカニクイザル等のその他の動物種からであってよい。ヒトCD39タンパク質の例示的な配列は、NCBI Ref Seq No.NP_001767.3に開示されている。Mus musculus(マウス)CD39タンパク質の例示的な配列はNCBI Ref Seq No.NP_033978.1に開示されている。カニクイザル(サル)CD39タンパク質の例示的な配列はNCBI Ref Seq No.XP_015311945.1に開示されている。
【0051】
[0091]CD39に加えて、ENTPDアーゼファミリーは、ENTPDアーゼ2、3、4、5、6、7、および8(ENTPD2、3、4、5、6、7、および8としても知られており、本開示では相互交換可能に用いる)を含む他のいくつかのメンバーをも含む。ENTPDアーゼのうち4つは、細胞外に面する触媒部位を有する典型的な細胞表面局在酵素(ENTPDアーゼ1、2、3、8)である。ENTPDアーゼ5および6は細胞内局在化を呈し、非相同発現の後で分泌を受ける。ENTPDアーゼ4および7は完全に細胞内局在化しており、細胞質オルガネラの管腔に面している。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片はCD39(即ちENTPDアーゼ1)に特異的に結合するが、他のファミリーメンバー、たとえばENTPDアーゼ2、3、5、または6には結合しない。
【0052】
[0092]用語「抗CD39抗体部分」は、CD39(たとえば、ヒトまたはサルCD39)に特異的に結合できる抗体(その抗原結合性断片を含む)を意味し、CD39とTGFβの両方を標的とするコンジュゲート分子の一部を形成する。用語「抗ヒトCD39抗体部分」は、ヒトCD39に特異的に結合できる抗体(その抗原結合性断片を含む)を意味し、ヒトCD39とTGFβの両方を標的とするコンジュゲート分子の一部を形成する。
【0053】
[0093]本明細書で用いる「CD39関連」の疾患、障害、または状態は、CD39の増加したまたは減少した発現または活性によって惹起され、悪化され、またはその他に関連する任意の疾患または状態を意味する。一部の実施形態では、CD39関連の疾患、障害、または状態は、たとえば自己免疫疾患等の免疫関連障害である。一部の実施形態では、CD39関連の疾患、障害、または状態は、たとえばがん等の過剰な細胞の増殖に関連する障害である。ある特定の実施形態では、CD39関連の疾患または状態は、CD39および/またはENTPD1、2、3、4、5、6、7、または8遺伝子等のCD39関連遺伝子の発現または過発現において特徴付けられる。
【0054】
[0094]本明細書で用いる用語「トランスフォーミング成長因子ベータ」および「TGFβ」は、対象(たとえばヒト)由来のいずれかのTGFベータの完全長、天然のアミノ酸配列を有するいずれかのTGFβファミリータンパク質を意味し、潜在型、および前駆体と成熟TGFβとの関連または非関連複合体(「潜在性TGFβ」)も含まれる。本明細書におけるこのようなTGFβへの言及は、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3アイソフォームおよびそれらの潜在型を含む現在同定されている形態のいずれか1つ、ならびに将来同定されるヒトTGFβ種への言及であり、任意の公知のTGFβの配列に由来し、配列と少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約95%相同なポリペプチドが含まれると理解される。特定の用語「TGFβ1」、「TGFβ2」、および「TGFβ3」は、たとえば、Derynck et al.,Nature,Cancer Res.,47:707(1987);Seyedin et al.,J.Biol.Chem.,261:5693-5695(1986);deMartin et al.,EMBO J.,6:3673(1987);Kuppner et al.,Int.J.Cancer,42:562(1988)の文献で定義されているTGF-ベータを意味する。用語「トランスフォーミング成長因子ベータ」、「TGFβ」、「TGFbeta」、「TGF-β」、「TGF-beta」、「TGFb」、「TGF-b」、「TGFB」、および「TGF-B」は、本開示では相互交換可能に用いられる。
【0055】
[0095]本明細書で用いる場合、用語「ヒトTGFβ1」は、ヒトTGFB1遺伝子(たとえば、野生型ヒトTGFB1遺伝子)によりコードされるTGFβ1タンパク質を意味する。例示的な野生型ヒトTGFβ1タンパク質は、GenBank受入番号NP_000651.3によって提供される。本明細書で用いる場合、用語「ヒトTGFβ2」は、ヒトTGFB2遺伝子(たとえば、野生型ヒトTGFB2遺伝子)によりコードされるTGFβ2タンパク質を意味する。例示的な野生型ヒトTGFβ2タンパク質は、GenBank受入番号NP_001129071.1およびNP_003229.1によって提供される。本明細書で用いる場合、用語「ヒトTGFβ3」は、ヒトTGFB3遺伝子(たとえば、野生型ヒトTGFB3遺伝子)によりコードされるTGFβ3タンパク質を意味する。例示的な野生型ヒトTGFβ3タンパク質は、GenBank受入番号NP_003230.1、NP_001316868.1、およびNP_001316867.1によって提供される。
【0056】
[0096]本明細書で用いる場合、用語「マウスTGFβ1」、「マウスTGFβ2」、および「マウスTGFβ3」は、マウスTGFB1遺伝子(たとえば、野生型マウスTGFB1遺伝子)、マウスTGFB2遺伝子(たとえば、野生型マウスTGFB2遺伝子)、およびマウスTGFB3遺伝子(たとえば、野生型マウスTGFB3遺伝子)によってそれぞれコードされるTGFβ1タンパク質、TGFβ2タンパク質およびTGFβ3タンパク質を意味する。例示的な野生型マウス(Mus musculus)TGFβ1タンパク質は、GenBank受入番号NP_035707.1およびCAA08900.1によって提供される。例示的な野生型マウスTGFβ2タンパク質は、GenBank受入番号NP_033393.2によって提供される。例示的な野生型マウスTGFβ3タンパク質は、GenBank受入番号AAA40422.1によって提供される。
【0057】
[0097]本明細書で用いる用語「TGFβ受容体」は、少なくとも1つのTGFβアイソフォームを結合する任意の受容体を意味する。一般に、TGFβ受容体は、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、またはTGFβ受容体III(TGFβRIII)である。
【0058】
[0098]ヒトに関して、用語「TGFβ受容体I」または「TGFβRI」は、野生型ヒトTGFβ受容体1型配列(たとえば、GenBank受入番号ABD46753.1のアミノ酸配列)を有する、またはGenBank受入番号ABD46753.1のアミノ酸配列と実質的に同一の配列を有するポリペプチドを意味する。TGFβRIは、野生型配列のTGFβ結合活性の少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%を保持してもよい。発現されたTGFβRIのポリペプチドは、シグナル配列を欠く。
【0059】
[0099]ヒトに関して、用語「TGFβ受容体II」または「TGFβRII」は、野生型ヒトTGFβ受容体2型アイソフォームA配列(たとえば、GenBank受入番号NP_001020018.1のアミノ酸配列)を有するポリペプチド、あるいは野生型ヒトTGFβ受容体2型アイソフォームB配列(たとえば、GenBank受入番号NP_003233.4のアミノ酸配列)を有する、またはGenBank受入番号NP_001020018.1もしくはGenBank受入番号NP_003233.4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性の配列を有するポリペプチドを意味する。TGFβRIIは、野生型配列のTGFβ結合活性の少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%を保持してもよい。発現されたTGFβRIIのポリペプチドは、シグナル配列を欠く。
【0060】
[00100]ヒトに関して、用語「TGFβ受容体III」または「TGFβRIII」は、野生型ヒトTGFβ受容体3型アイソフォームA配列(たとえば、GenBank受入番号NP_003234.2のアミノ酸配列)を有するポリペプチド、または野生型ヒトTGFβ受容体3型アイソフォームB配列(たとえば、GenBank受入番号NP_001182612.1のアミノ酸配列)を有する、もしくはGenBank受入番号NP_003234.2およびNP_001182612.1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性の配列を有するポリペプチドを意味する。TGFβRIIIは、野生型配列のTGFβ結合活性の少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%を保持してもよい。発現されたTGFβRIIIのポリペプチドは、シグナル配列を欠く。
【0061】
[00101]本明細書で用いる「TGFβ関連」の疾患、障害、または状態は、TGFβの増加したまたは減少した発現または活性によって惹起され、悪化され、またはその他に関連する任意の疾患または状態を意味する。一部の実施形態では、TGFβ関連の疾患、障害、または状態は、たとえば自己免疫疾患等の免疫関連障害である。一部の実施形態では、TGFβ関連の疾患、障害、または状態は、たとえばがん等の過剰な細胞の増殖に関連する障害である。ある特定の実施形態では、TGFβ関連の疾患または状態は、TGFβおよび/またはTGFB1、TGFB2、TGFB3遺伝子等のTGFβ関連遺伝子の発現または過発現において特徴付けられる。
【0062】
[00102]用語「抗TGFβ抗体部分」は、TGFβ(たとえば、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)に特異的に結合できる抗体を意味し、CD39とTGFβの両方を標的とするタンパク質の一部を形成する。用語「抗ヒトTGFβ抗体部分」は、ヒトTGFβに特異的に結合できる抗体を意味し、CD39とヒトTGFβの両方を標的とするタンパク質の一部を形成する。
【0063】
[00103]用語「薬学的に許容される」は、指定した担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、および/または塩が一般に、その製剤を構成する他の成分と化学的におよび/または物理的に適合性があり、その受容者に生理学的に適合性があることを示す。
【0064】
[00104]本明細書で用いる用語「CD39陽性細胞」は、細胞の表面にCD39を発現する細胞(たとえば食細胞)を意味する。
[00105]本明細書で用いる用語「経路」は、ある化合物を別の化合物に段階的なプロセスで連続して変換することができる生化学反応群を意味する。経路の第1のステップの生成物は第2のステップの基質であってよく、第2のステップの生成物は第3のステップの基質であってよい、等である。経路の構成要素は、経路の全ての基質、補因子、副産物、中間体、最終産物、任意の酵素を含む。したがって、本明細書で用いる用語「アデノシン経路」は、生化学的経路のコレクションを意味し、そのうちのいずれか1つはアデノシン、たとえばアデノシンの産生またはアデノシンの他の物質への変換を含む。本明細書で用いる用語「TGFβシグナル伝達経路」は、生化学的経路のコレクションを意味し、そのうちのいずれか1つはTGFβ、たとえばTGFβの産生またはTGFβの他の物質への変換を含む。
【0065】
[00106]本明細書で用いる用語「アンタゴニスト」は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの発現レベルまたは活性を阻害し、それによってタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの量、形成、機能、および/または下流のシグナル伝達を減少させる分子を意味する。たとえば、本開示の「CD39のアンタゴニスト」は、CD39の発現レベルまたは活性を阻害し、それによってCD39の量、形成、機能、および/または下流のシグナル伝達を減少させる分子を意味する。別の例として、本開示の「TGFβのアンタゴニスト」は、TGFβの発現レベルまたは活性を阻害し、それによってTGFβの量、形成、機能、および/または下流のシグナル伝達を減少させる分子を意味する。
【0066】
[00107]本明細書で用いる用語「コードされる」または「コードする」は、mRNAへの転写および/またはペプチドもしくはタンパク質への翻訳が可能であることを意味する。用語「コード配列」または「遺伝子」は、ペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を意味する。これらの2つの用語は、本開示では相互交換可能に用いられ得る。一部の実施形態では、コード配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)から逆転写される相補的DNA(cDNA)配列である。一部の実施形態では、コード配列はmRNAである。
【0067】
[00108]本明細書で用いる用語「アンチセンスヌクレオチド」は、水素結合によって標的核酸にハイブリダイゼーションすることができるオリゴマー化合物を意味する。たとえば、「CD39のコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド」は、CD39のコード配列またはその一部にハイブリダイゼーションすることができるヌクレオチドを意味する。
【0068】
CD39およびTGFβを標的とするコンジュゲート分子
[00109]現在の免疫チェックポイント阻害剤(たとえば、PD1およびCTLA-4)の潜在的な限界は、アデノシンおよびTGFβに富む腫瘍微小環境(「TME」)である。腫瘍浸潤性T細胞の局在微小環境におけるアデノシンおよびTGFβシグナル伝達は、それらをTregに偏らせ、免疫エフェクター細胞の活性化を減衰させることができた。本発明者らは、新規のコンジュゲート分子によってCD39とTGFβを同時に標的とすることにより、アデノシン経路(CD39の阻害による)およびTGFβシグナル伝達経路(TGFβ Trapを介して)の同時封鎖により、より免疫正常化したTMEと相乗的な抗腫瘍効果を達成できることを予想外に見出した。実際、本発明者らは、本開示のCD39およびTGFβを同時に標的とするコンジュゲート分子が、特にT細胞の生存、サイトカイン産生およびTreg抑制の点で、TGFβ受容体または抗CD39抗体による単剤療法で観察されたものを超える相乗的抗腫瘍効果を示すことを証明した。
【0069】
[00110]1つの態様では、本開示は、CD39とその基質との間の相互作用を妨害することができるCD39阻害性部分、およびTGFβとその受容体との間の相互作用を妨害することができるTGFβ阻害性部分を含むコンジュゲート分子を提供する。コンジュゲート分子は、低分子、化合物(天然または合成)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、干渉性RNA、メッセンジャーRNA等であってよい。ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子は、2つ以上の異なる物質の混合物ではない(すなわち、2つ以上の異なる物質は、一緒に置かれているだけで、化学的に結合されていない)。ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子は二機能性分子であり、CD39とその基質との間の相互作用を妨害することができ、TGFβとその受容体との間の相互作用を妨害することができる。
【0070】
[00111]アデノシン経路は、マクロファージ、樹状細胞、骨髄由来抑制細胞、T細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞のような免疫細胞および炎症細胞の機能を制御することにより、免疫寛容な腫瘍微小環境の形成に関与している。また、アデノシン経路は、がん細胞と内皮細胞にそれぞれ発現するアデノシン受容体を介して、がん細胞の増殖、アポトーシス、血管新生を妨害することにより、がんの増殖と転移を制御する。固形腫瘍は、高レベルのCD39およびCD73、ならびに低レベルのヌクレオシドトランスポーター(NT)、エクトアデノシンデアミナーゼおよびその補因子CD26を発現する。これは、がん環境におけるアデノシンシグナル伝達の増加をもたらす。ある特定の実施形態では、本開示のCD39阻害性部分は、CD39とATP/ADPとの間の相互作用を妨害することができる。ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子のCD39阻害性部分は、がんの処置、防止または軽減に特に有用である。
【0071】
[00112]ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子のCD39阻害性部分は、CD39結合剤、CD39のコード配列を標的とするRNAi、CD39のコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド、およびCD39と競合してその基質に結合する薬剤からなる群から選択されるCD39のアンタゴニストである。
【0072】
[00113]分子がCD39の発現レベルまたは活性を阻害すると考えられるのは、分子がCD39の発現(転写または翻訳のいずれかのレベル)レベルまたは活性を有意に低下させる場合である。同様に、分子がCD39とその基質(たとえばATPまたはADP)の間の結合を阻害すると考えられるのは、分子がCD39とその基質の間の結合を著しく低下させる場合である。これによりCD39によって媒介される下流のシグナル伝達および機能を著しく低下させる。低下は、たとえば、低下が少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であれば、有意と考えられる。
【0073】
[00114]CD39結合剤(アンタゴニスト)は、2つの方法で作用することができる。一部の実施形態では、本開示のCD39結合剤は、CD39と競合してその基質に結合し、それによってCD39のその基質への結合を妨害、ブロックまたは他の方法で防止することができる。基質を結合するが、予想されるシグナル伝達を誘発しないこのタイプのアンタゴニストは、「競合アンタゴニスト」としても公知である。他の実施形態では、本開示のCD39結合剤は、CD39のその基質への結合を実質的に妨害、ブロックまたは他の方法で防止するために、十分な親和性および特異性でCD39に結合して隔離することができる。このタイプのアンタゴニストは、「中和アンタゴニスト」としても公知であり、たとえば、CD39に特異的に結合するCD39に向けられた抗体またはアプタマーを含むことができる。
【0074】
[00115]ある特定の実施形態では、CD39結合剤は、CD39を特異的に認識する抗体またはその抗原結合性断片、およびCD39に結合する低分子化合物からなる群から選択される。
【0075】
[00116]本明細書で用いる用語「低分子化合物」は、酵素基質または生物学的プロセスの調節因子として機能することができる低分子量化合物を意味する。一般に、「低分子化合物」は、サイズが約5キロダルトン(kD)未満である分子である。一部の実施形態では、低分子は、約4kD未満、3kD未満、約2kD未満、または約1kD未満である。一部の実施形態では、低分子は、約800ダルトン(D)未満、約600D未満、約500D未満、約400D未満、約300D未満、約200D未満、または約100D未満である。一部の実施形態では、低分子は、約2000g/モル未満、約1500g/モル未満、約1000g/モル未満、約800g/モル未満、または約500g/モル未満である。一部の実施形態では、低分子は非ポリマーである。一部の実施形態では、本開示に従って、低分子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖類、糖タンパク質、プロテオグリカン等ではない。一部の実施形態では、低分子は治療薬である。一部の実施形態では、低分子はアジュバントである。一部の実施形態では、低分子は薬物である。
【0076】
[00117]ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子のTGFβ阻害性部分は、TGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を妨害することができる。ある特定の実施形態では、TGFβとTGFβ受容体との間の相互作用は、TGFβシグナル伝達経路内のシグナル伝達カスケードを破壊し、TGFβまたはTGFβスーパーファミリーリガンドがその内因性受容体に結合することを破壊または防止し得る薬剤によってブロックされる。TGFβシグナル伝達経路阻害剤の阻害活性を決定するために使用できる例示的なアッセイには、特に限定されないが、電気泳動移動度シフトアッセイ、抗体スーパーシフトアッセイ、ならびにWO2006/012954に記載のTGFβ誘導性遺伝子レポーターアッセイ等がある。
【0077】
[00118]ある特定の実施形態では、コンジュゲート分子のTGFβ阻害性部分は、TGFβ結合剤、TGFβのコード配列を標的とするRNAi、TGFβのコード配列を標的とするアンチセンスヌクレオチド、およびTGFβと競合してその受容体(たとえば、TGFβRI、TGFβRII、またはTGFβRIII)に結合する薬剤からなる群から選択されるTGFβのアンタゴニストである。
【0078】
[00119]分子がTGFβの発現レベルまたは活性を阻害すると考えられるのは、分子がTGFβの発現(転写または翻訳のいずれかのレベル)レベルまたは活性を有意に低下させる場合である。同様に、分子がTGFβとその受容体(たとえば、TGFβRI、TGFβRII、またはTGFβRIII)の間の結合を阻害すると考えられるのは、分子がTGFβとその受容体の間の結合を著しく低下させる場合である。これによりTGFβによって媒介される下流のシグナル伝達および機能を著しく低下させる。低下は、たとえば、低下が少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であれば、有意と考えられる。
【0079】
[00120]TGFβ結合剤(アンタゴニスト)は、2つの方法で作用することができる。一部の実施形態では、本開示のTGFβ結合剤は、TGFβと競合してその受容体に結合し、それによってTGFβはその受容体への結合を妨害、ブロックまたは他の方法で防止することができる。受容体を結合するが、予想されるシグナル伝達を誘発しないこのタイプのアンタゴニストは、「競合アンタゴニスト」としても公知である。他の実施形態では、本開示のTGFβ結合剤は、TGFβのその受容体への結合を実質的に妨害、ブロックまたは他の方法で防止するために、十分な親和性および特異性でTGFβに結合して隔離することができる。このタイプのアンタゴニストは、「中和アンタゴニスト」としても公知であり、たとえば、TGFβに特異的に結合するTGFβに向けられた抗体またはアプタマーを含むことができる。
【0080】
[00121]ある特定の実施形態では、TGFβ結合剤は、TGFβを特異的に認識する抗体またはその抗原結合性断片、およびTGFβに結合する低分子化合物からなる群から選択される。
【0081】
[00122]ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、TGFβ結合ドメインに連結されたCD39結合ドメインを含む融合タンパク質である。
[00123]本明細書で用いる場合、用語「結合ドメイン」は、標的分子または複合体に特異的に結合する能力を有する部分を意味する。結合ドメインは、低分子、ペプチド、修飾ペプチド(たとえば、非天然アミノ酸残基を有するペプチド)、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその抗原結合性断片、リガンド、核酸、またはそれらの任意の組合せを含んでよい。たとえば、用語「CD39結合ドメイン」は、CD39(たとえば、ヒトおよび/またはマウスCD39)に特異的に結合する能力を有する部分を意味する。用語「TGFβ結合ドメイン」は、TGFβファミリーの1つもしくは複数のファミリーメンバーまたはアイソフォーム(たとえば、TGFβ1、TGFβ2、もしくはTGFβ3)に特異的に結合する能力を有する部分を意味する。「TGFβ結合ドメイン」は、本開示において「TGFβ Trap」とも称されてよい。したがって、本開示のTGFβ結合ドメインに連結されたCD39結合ドメインを含むタンパク質は、本開示において「抗CD39/TGFβ Trap」とも称されてよい。
【0082】
[00124]ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、ヒトTGFβ1、ヒトTGFβ2、および/またはヒトTGFβ3に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、類似した親和性でヒトTGFβ1およびマウスTGFβ1に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、ELISAアッセイによって測定して3×10-11M以下(たとえば2×10-11M以下、1×10-11M以下、0.9×10-11M以下、0.8×10-11M以下、0.7×10-11M以下、0.6×10-11M以下、0.5×10-11M以下)のEC50でヒトTGFβ1に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、ブロッキングアッセイによって測定して4×10-10M以下(たとえば、3×10-10M以下、2×10-10M以下、1×10-10M以下、0.5×10-10M以下)のIC50でヒトTGFβ1およびTGFβRII結合をブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、FACSアッセイによって測定して用量依存的にヒトCD39に結合することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、ELISAアッセイまたはFACSアッセイによって測定してCD39およびTGFβに同時に結合することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、TGF-β SMADレポーターアッセイによって測定して4×10-11M以下のIC50でTGFβシグナルを阻害することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、ATPアーゼ活性アッセイによって測定して7×10-10M以下(たとえば6×10-10M以下、5×10-10M以下、4×10-10M以下、3×10-10M以下、2×10-10M以下、1×10-10M以下、0.5×10-10M以下)のIC50でCD39発現細胞におけるATPアーゼ活性を阻害することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、Octetアッセイによって測定して4×10-10M以下(たとえば3×10-10M以下、2×10-10M以下、1×10-10M以下、または0.5×10-10M以下)のK値でヒトCD39に特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、Octetアッセイによって測定して4×10-11M以下(たとえば3×10-11M以下、2×10-11M以下、1×10-11M以下、0.5×10-11M以下)のK値でヒトTGFβ1に特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、Treg抑制アッセイによって測定してT細胞機能を回復させることができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、用量依存的にヒトT細胞のアポトーシスを阻害することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、刺激によるヒトT細胞の生存および活性化を促進することができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、全T細胞におけるTGFβ誘導Foxp3発現をブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本開示のコンジュゲート分子は、ヒトT細胞増殖に対するATP誘導阻害を回復させることができる。
【0083】
TGFβ結合ドメイン
[00125]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、ヒトおよび/またはマウスTGFβに結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβシグナル伝達経路に拮抗し、かつ/またはそれを阻害することができる。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβに拮抗し、かつ/またはそれを阻害することができる。本開示では、TGFβ結合ドメインは、TGFβファミリーの1つもしくは複数のファミリーメンバーまたはアイソフォームに特異的に結合する任意の部分であり得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ1(たとえばヒトTGFβ1)、TGFβ2(たとえばヒトTGFβ2)、および/もしくはTGFβ3(たとえばヒトTGFβ3)に結合するタンパク質、または類似もしくは改善されたTGFβ結合親和性を有するそのバリアントを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ1(たとえば、ヒトTGFβ1)に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ2(たとえば、ヒトTGFβ2)に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ3(たとえば、ヒトTGFβ3)に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ1(たとえばヒトTGFβ1)およびTGFβ2(たとえばヒトTGFβ2)に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ1(たとえばヒトTGFβ1)およびTGFβ3(たとえばヒトTGFβ3)に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ2(たとえばヒトTGFβ2)およびTGFβ3(たとえばヒトTGFβ3)に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ1(たとえばヒトTGFβ1)、TGFβ2(たとえばヒトTGFβ2)およびTGFβ3(たとえばヒトTGFβ3)に特異的に結合する。当業者であれば、TGFβファミリーの1つのファミリーメンバーまたはアイソフォームに結合するTGFβ結合ドメインが、TGFβファミリーの1つまたは複数の他のファミリーメンバーまたはアイソフォームに類似またはより高い親和性で結合することができることを理解するであろう。
【0084】
[00126]本開示のTGFβ結合ドメインは、抗TGFβ抗体部分またはその抗原結合性断片であってよい。例示的な抗TGFβ抗体部分には、フレソリムマブおよびメテリムマブ、ならびに、たとえば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、US7494651B2、US8383780B2、US8012482B2、WO2017141208A1に記載の抗TGFβ抗体部分またはその抗原結合性断片が含まれる。
【0085】
[00127]本開示のTGFβ結合ドメインはまた、TGFβ受容体(たとえば、TGFβRI、TGFβRII、TGFβRIII)またはその断片であってよい。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、可溶性TGFβ受容体(たとえば、可溶性ヒトTGFβ受容体)、またはその断片を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ受容体(たとえば、ヒトTGFβ受容体)の細胞外ドメイン(ECD)を含む。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体は、TGFβ受容体I(TGFβRI)、TGFβ受容体II(TGFβRII)、またはTGFβ受容体III(TGFβRIII)、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体は、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)である。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体は、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)である。ある特定の実施形態では、TGFβ受容体は、TGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)である。
【0086】
[00128]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)のECD、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)のECD、TGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)のECD、またはそれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)のECDを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)のECDを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)のECDを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)のECD、およびTGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)のECDを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)のECD、およびTGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)のECDを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)のECD、TGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)のECDを含む。
【0087】
[00129]ある特定の実施形態では、TGFβ受容体のECDは、配列番号163、配列番号164、もしくは配列番号165のアミノ酸配列、またはその少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有ししかもTGFβに対する結合特異性を保持しているアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0088】
[00130]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、TGFβ受容体の2つ以上の(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10等)ECDを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは同一のTGFβ受容体に由来する。たとえば、2つ以上のECDは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)に由来し、本開示において「TGFβRI ECD」または「TGFβRI ECDs」とも称される。別の例では、2つ以上のECDは、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)に由来し、本開示において「TGFβRII ECD」または「TGFβRII ECDs」とも称される。さらに別の例では、2つ以上のECDは、TGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)に由来し、本開示において「TGFβRIII ECD」または「TGFβRIII ECDs」とも称される。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDのアミノ酸配列は、同一である。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDのアミノ酸配列は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1アミノ酸以下だけ異なっている。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDのアミノ酸配列は異なるが、互いに少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDのアミノ酸配列は異なるが、それぞれが、配列番号163から165のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有ししかもTGFβに対する結合特異性を保持している。
【0089】
[00131]ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは、少なくとも2つの異なるTGFβ受容体に由来する。たとえば、2つ以上の(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10等)ECDは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)、およびTGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)から選択される少なくとも2つ(たとえば、2、3)の異なるTGFβ受容体に由来する。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)に由来する第1のECD、およびTGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)に由来する第2のECDを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは、TGFβRI(たとえば、ヒトTGFβRI)に由来する第1のECD、およびTGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)に由来する第2のECDを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは、TGFβRII(たとえば、ヒトTGFβRII)に由来する第1のECD、およびTGFβRIII(たとえば、ヒトTGFβRIII)に由来する第2のECDを含む。
【0090】
[00132]ある特定の実施形態では、TGFβとTGFβ受容体の相互作用をブロックする際の抗CD39/TGFβ Trapの能力は、TGFβ受容体ECDの増加とともに増加する。たとえば、4つのTGFβRII ECDを有する抗CD39/TGFβ Trapは、TGFβとTGFβRIIとの相互作用をブロックすることにおいて、2つのTGFβRII ECDを有する抗CD39/TGFβ Trapより強力である。
【0091】
[00133]ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは連続して作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは互いに共有結合的にまたは非共有結合的に連結されている。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは互いに直接的に連結されるか、リンカーを介して互いに連結されている。ある特定の実施形態では、2つ以上のECDは第1のリンカーを介して連結されている。
【0092】
[00134]本明細書で用いる用語「リンカー」は、ペプチド結合によって連結された、1、2、3、4、5個のアミノ酸残基、または5から15、20、30、50以上の間の長さのアミノ酸残基を有する人工アミノ酸配列を意味し、1つまたは複数のポリペプチドの連結に使用される。リンカーは、二次構造を有していても、有していなくてもよい。リンカー配列は当技術分野で公知であり、たとえばHolliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993);Poljak et al.,Structure 2:1121-1123(1994)を参照されたい。
【0093】
[00135]ある特定の実施形態では、第1のリンカーは、切断可能リンカー、切断不能リンカー、ペプチドリンカー、可撓性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される。当技術分野で公知の任意の適切なリンカーが使用され得る。ある特定の実施形態では、第1のリンカーは、ペプチドリンカーを含む。たとえば、本開示における有用なリンカーは、グリシンおよびセリン残基が豊富であってよい。例としては、TGGGG(配列番号172)、GGGGS(配列番号173)またはSGGGG(配列番号174)またはそのタンデム反復(たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の反復)のようなスレオニン/セリンおよびグリシンを含む単一または反復配列を有するリンカーが挙げられる。ある特定の実施形態では、本開示で用いられる第1のリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号175)を含む。あるいは、リンカーは、GAPGGGGGAAAAAGGGGG(配列番号176)のアミノ酸配列の1つまたは複数の連続反復またはタンデム反復を含む長いペプチド鎖であってよい。ある特定の実施形態では、第1のリンカーは、配列番号176の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の連続反復またはタンデム反復を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GSリンカーを含む。ある特定の実施形態では、GSリンカーは、GGGS(配列番号177)または配列番号173の1つもしくは複数の反復を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号182)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第1のリンカーは、配列番号172~177、182のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。上記の第1のリンカーの説明は、以下の第1のリンカーにも適用可能である。
【0094】
[00136]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0095】
[00137]TGFβ受容体のいくつかの例示的なECDのアミノ酸配列を、以下の表30に示す。第1のリンカーは下線が引かれている。
【0096】
【表2-1】
【0097】
【表2-2】
【0098】
【表2-3】
【0099】
CD39結合ドメイン
[00138]ある特定の実施形態では、本開示のCD39結合ドメインは、CD39(たとえば、ヒトCD39、カニクイザルCD39、またはマウスCD39)に結合する。ある特定の実施形態では、本開示のCD39結合ドメインは、ヒトCD39に結合する。
【0100】
[00139]ある特定の実施形態では、本開示のCD39結合ドメインは、抗CD39抗体部分を含む。例示的な抗CD39抗体部分には、たとえば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、US10556959B2、US20200277394A1、EP3429692A1、WO2018065552A1に記載の抗CD39抗体またはその抗原結合性断片が含まれる。ある特定の実施形態では、例示的な抗CD39抗体部分は、本開示の抗CD39抗体部分の節および実例となる抗CD39抗体部分の節に開示される。
【0101】
[00140]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、1つまたは複数のCDRを含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、本開示の実例となる抗CD39抗体部分の節に記載の1つまたは複数のCDRを含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、本開示の実例となる抗CD39抗体部分の節に開示される抗CD39抗体のVHおよびVLを含む。
【0102】
[00141]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、重鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された重鎖定常ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMからなる群に由来する。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、またはIgMに由来する。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1(配列番号178)またはIgG4(配列番号179)に由来する。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分は、軽鎖可変領域のカルボキシル末端に付加された軽鎖定常ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖に由来する。カッパ軽鎖定常領域およびラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号180および配列番号181に示される。いくつかの例示的な定常領域のアミノ酸配列を、以下の表31に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
TGFβ結合ドメインとCD39結合ドメインとの間の連結
[00142]本開示では、TGFβ結合ドメインは、CD39結合ドメイン(たとえば、抗CD39抗体部分)の任意の部分に連結され得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の、1)重鎖可変領域のアミノ末端、2)軽鎖可変領域のアミノ末端、3)重鎖可変領域のカルボキシル末端、4)軽鎖可変領域のカルボキシル末端、5)重鎖定常領域のカルボキシル末端、および6)軽鎖定常領域のカルボキシル末端からなる群から選択される位置で抗CD39抗体部分に連結される。
【0105】
[00143]TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の任意の部分(たとえば、免疫グロブリン鎖のアミノ末端またはカルボキシル末端)に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)(共有結合的または非共有結合的に)連結され得る。共有結合連結は、化学的連結または遺伝的連結であり得る。ある特定の実施形態では、第2のリンカーは、切断可能リンカー、切断不能リンカー、ペプチドリンカー、可撓性リンカー、剛性リンカー、ヘリックスリンカー、および非ヘリックスリンカーからなる群から選択される。当技術分野で公知の任意の適切なリンカーが使用され得る。ある特定の実施形態では、第2のリンカーは、ペプチドリンカーを含む。たとえば、本開示における有用なリンカーは、グリシンおよびセリン残基が豊富であってよい。例としては、TGGGG(配列番号172)、GGGGS(配列番号173)またはSGGGG(配列番号174)またはそのタンデム反復(たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の反復)のようなスレオニン/セリンおよびグリシンからなる単一または反復配列を有するリンカーが挙げられる。ある特定の実施形態では、本開示で用いられる第2のリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号175)を含む。あるいは、リンカーは、GAPGGGGGAAAAAGGGGG(配列番号176)のアミノ酸配列の1つまたは複数の連続反復またはタンデム反復を含む長いペプチド鎖であってよい。ある特定の実施形態では、第2のリンカーは、配列番号176の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の連続反復またはタンデム反復を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GSリンカーを含む。ある特定の実施形態では、GSリンカーは、GGGS(配列番号177)または配列番号173の1つもしくは複数の反復を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号182)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2のリンカーは、配列番号172~177、182のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。上記の第2のリンカーの説明は、以下の第2のリンカーにも適用可能である。
【0106】
[00144]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域に連結される。TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のアミノ末端(N末端)またはカルボキシル末端(C末端)アミノ酸残基を含む、重鎖可変領域の任意の部分に連結され得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。
【0107】
[00145]抗CD39抗体部分のそれぞれの重鎖可変領域のアミノ末端に連結された2つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Cに示す。
【0108】
[00146]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域に連結される。TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のアミノ末端またはカルボキシル末端アミノ酸残基を含む、軽鎖可変領域の任意の部分に連結され得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。
【0109】
[00147]抗CD39抗体部分のそれぞれの軽鎖可変領域のアミノ末端に連結された2つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Dに示す。
【0110】
[00148]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域に連結される。TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のアミノ末端またはカルボキシル末端アミノ酸残基を含む、重鎖定常領域の任意の部分に連結され得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。
【0111】
[00149]抗CD39抗体部分のそれぞれの重鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された1つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Aに示す。抗CD39抗体部分のそれぞれの重鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された2つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Bに示す。
【0112】
[00150]ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域に連結される。TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のアミノ末端またはカルボキシル末端アミノ酸残基を含む、軽鎖定常領域の任意の部分に連結され得る。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。ある特定の実施形態では、TGFβ結合ドメインは、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結される。
【0113】
[00151]抗CD39抗体部分のそれぞれの軽鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された2つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Fに示す。
【0114】
[00152]ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の重鎖可変領域に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のアミノ末端およびカルボキシル末端にそれぞれ(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のTGFβ結合ドメインは、互いに直接または第1のリンカーを介して連結される。
【0115】
[00153]ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のCD39とTGFβの両方を標的とするタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のアミノ末端およびカルボキシル末端にそれぞれ(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のTGFβ結合ドメインは、互いに直接または第1のリンカーを介して連結される。
【0116】
[00154]ある特定の実施形態では、本開示のCD39とTGFβの両方を標的とするタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖および軽鎖可変領域にそれぞれ連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖可変領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖可変領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。
【0117】
[00155]抗CD39抗体部分のそれぞれの重鎖可変領域のアミノ末端に連結された1つのTGFβRII ECD、および抗CD39抗体部分のそれぞれの軽鎖可変領域のアミノ末端に連結された1つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Eに示す。
【0118】
[00156]ある特定の実施形態では、本開示のCD39とTGFβの両方を標的とするタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の重鎖定常領域に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のアミノ末端およびカルボキシル末端にそれぞれ(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のTGFβ結合ドメインは、互いに直接または第1のリンカーを介して連結される。
【0119】
[00157]ある特定の実施形態では、本開示のCD39とTGFβの両方を標的とするタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のCD39とTGFβの両方を標的とするタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のアミノ末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、全てが抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のカルボキシル末端に(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のアミノ末端およびカルボキシル末端にそれぞれ(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上(たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のTGFβ結合ドメインは、互いに直接または第1のリンカーを介して連結される。
【0120】
[00158]ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖および軽鎖定常領域にそれぞれ(たとえば、直接または第2のリンカーを介して)連結された2つ以上のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質は、抗CD39抗体部分の重鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメイン、および抗CD39抗体部分の軽鎖定常領域のアミノ末端に連結された少なくとも1つ(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のTGFβ結合ドメインを含む。
【0121】
[00159]抗CD39抗体部分のそれぞれの重鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された1つのTGFβRII ECD、および抗CD39抗体部分のそれぞれの軽鎖定常領域のカルボキシル末端に連結された2つのTGFβRII ECDを含む、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子の概略図を本開示の図24Gに示す。
【0122】
[00160]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分の重鎖(たとえば、重鎖可変領域、重鎖定常領域)または軽鎖(たとえば、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域)のC末端に連結されたTGFβ結合ドメインを含む抗CD39/TGFβ Trap分子は、抗CD39抗体部分の重鎖(たとえば、重鎖可変領域、重鎖定常領域)または軽鎖(たとえば、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域)のN末端に連結されたTGFβ結合ドメインを含む抗CD39/TGFβ Trap分子よりも、CD39および/またはTGFβに結合する効果が高い。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分の重鎖(たとえば、重鎖可変領域、重鎖定常領域)または軽鎖(たとえば、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域)のN末端に連結されたTGFβ結合ドメインを含む抗CD39/TGFβ Trap分子は、抗CD39抗体部分の重鎖(たとえば、重鎖可変領域、重鎖定常領域)または軽鎖(たとえば、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域)のC末端に連結されたTGFβ結合ドメインを含む抗CD39/TGFβ Trap分子よりも、CD39および/またはTGFβに結合する効果が高い。
【0123】
抗CD39抗体部分
[00161]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲート分子のCD39結合ドメインは、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、CD39に特異的に結合することができる。
【0124】
[00162]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、Biacoreアッセイによって10-7M以下、8×10-8M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下のK値で、ヒトCD39に特異的に結合する。Biacoreアッセイは表面プラスモン共鳴技術に基づいている。たとえばMurphy,M.et al.,Current protocols in protein science,Chapter 19,unit 19.14,2006を参照されたい。ある特定の実施形態では、K値は本開示の実施例5.1に記載した方法によって測定される。ある特定の実施形態では、K値は約25℃、または約37℃で測定される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、25℃で測定して、37℃で測定したK値と同程度の、たとえば37℃で測定したK値の約80%~約150%、約90%~約130%、または約90%~約120%、約90%~約110%のK値を有する。
【0125】
[00163]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、Octetアッセイによって10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、1×10-9M以下、9×10-10M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下のK値で、ヒトCD39に特異的に結合する。Octetアッセイは、生物層干渉分光技術に基づいている。たとえばAbdiche,Yasmina N.,et al.Analytical biochemistry 386.2(2009):172-180およびSun Y S.,Instrumentation Science & Technology,2014,42(2):109-127を参照されたい。ある特定の実施形態では、K値は本開示の実施例5.1に記載した方法によって測定される。
【0126】
[00164]本明細書で提供される抗体部分またはその抗原結合性断片のヒトCD39への結合は、「50%効果濃度」(EC50)値によっても表すことができる。EC50値は、その最大の結合の50%が観察される抗体部分の濃度を意味する。EC50値は当技術分野で既知の結合アッセイ、たとえば酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)等の直接または間接結合アッセイ、FACSアッセイ、およびその他の結合アッセイによって測定することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体部分およびその抗原結合性断片は、FACS(蛍光活性化細胞ソーティング)アッセイによって測定して、10-7M以下、8×10-8M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下のEC50(即ち50%結合濃度)で、ヒトCD39に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、結合はELISAまたはFACSアッセイによって測定される。
【0127】
[00165]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、ヒトCD39(即ちENTPDアーゼ1)に特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、ENTPDアーゼファミリーの他のメンバーには結合しない。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、たとえばELISAアッセイによって測定して、ヒトCD39に特異的に結合するが、ENTPDアーゼ2、3、5、6には特異的に結合しない。
【0128】
[00166]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、たとえばFACSアッセイによって測定して、ヒトCD39に特異的に結合するが、マウスCD39には特異的に結合しない。
【0129】
[00167]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによって10-7M以下、8×10-8M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下のEC50で、カニクイザルCD39に特異的に結合する。
【0130】
[00168]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、ATPアーゼ活性アッセイによって測定して50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、8nM以下、5nM以下、3nM以下、1nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、0.1nM以下、0.09nM以下、0.08nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下、または0.05nM以下のIC50で、CD39発現細胞中のATPアーゼ活性を阻害する。ATPアーゼ活性アッセイは当技術分野で既知の任意の方法を用いて、たとえばATPアーゼ活性の結果として放出されるリン酸塩の比色検出によって決定することができる。ある特定の実施形態では、ATPアーゼ活性は、本開示の実施例3.3に記載した方法によって決定される。
【0131】
[00169]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、CD80、CD86、および/またはCD40の上方制御が単球の活性化を示すFACSアッセイによるCD80、CD86、および/またはCD40の発現の解析によって測定して、50nM以下(たとえば40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.5nM以下、または0.2nM以下)の濃度で、ATP媒介単球活性化を増強することができる。ATP媒介単球の活性は当技術分野で既知の方法を用いて、たとえば本開示の実施例5.5に記載の方法によって決定することができる。
【0132】
[00170]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、IL-2の分泌、またはIFN-γの分泌、またはCD4もしくはCD8のT細胞の増殖によって測定して、たとえば本開示の実施例5.5に記載の方法によって、25nM以下、20nM以下、15nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、または1nM以下の濃度で、PBMC中のATP媒介T細胞活性化を増強することができる。
【0133】
[00171]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによるCD83の発現の解析によって測定して、25nM以下(または10nM以下、または5nM以下、または1nM以下、または0.5nM以下)の濃度で、ATP媒介樹状細胞(DC)活性化を増強することができる。
【0134】
[00172]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、T細胞の増殖を促進する活性化DCの能力によって測定して、25nM以下(または10nM以下、または5nM以下、または1nM以下、または0.5nM以下)の濃度で、ATP媒介DC活性化を増強することができる。
【0135】
[00173]本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおけるIFN-γの産生を促進する活性化DCの能力によって測定して、25nM以下(または10nM以下、または5nM以下、または1nM以下、または0.5nM以下)の濃度で、ATP媒介DC活性化を増強することができる。
【0136】
[00174]ATP媒介DC成熟の活性は、当技術分野で既知の方法、たとえば本開示の実施例5.5に記載の方法を用いて決定することができる。
[00175]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによって測定して1nM以下(たとえば0.1nM以下、0.01nM以下)の濃度で、(ATPから加水分解される)アデノシンによって誘導されるCD4T細胞の増殖の阻害をブロックすることができる。T細胞の増殖は、当技術分野で既知の方法、たとえば本開示の実施例3.4に記載の方法を用いて決定することができる。
【0137】
[00176]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、NK細胞またはマクロファージ細胞に依存する様式で哺乳動物における腫瘍の成長を阻害することができる。
【0138】
[00177]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、T細胞の増殖、CD25細胞、および生細胞集団によって測定して、eATPによって阻害されたヒトCD8T細胞の増殖を反転させることができる。T細胞の増殖の%、CD25細胞の%、および生細胞の%は、当技術分野で既知の方法、たとえば本開示の実施例3.4に記載の方法を用いて決定することができる。
【0139】
[00178]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、ELISAアッセイによって測定して、50nM以下(または12.5nM以下、または3.13nM以下、または0.78nM以下、または0.2nM以下、または0.049nM以下、または0.012nM以下、または0.003nM以下、または0.0008nM以下)の濃度で、LPS刺激によって誘導されたヒトマクロファージのIL1βの放出を増強することができる。マクロファージのIL1β放出は、当技術分野で既知の方法、たとえば本開示の実施例5.5.4に記載の方法を用いて決定することができる。
【0140】
実例となる抗CD39抗体部分
[00179]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分(たとえば抗ヒトCD39抗体部分)およびその抗原結合性断片は、NYGMN(配列番号1)、KYWMN(配列番号2)、NYWMN(配列番号3)、DTFLH(配列番号4)、DYNMY(配列番号5)、DTYVH(配列番号6)、LINTYTGEPTYADDFKD(配列番号7)、EIRLKSNKYGTHYAESVKG(配列番号8)、QIRLNPDNYATHXAESVKG(配列番号9)、X58IDPAX5960NIKYDPKFQG(配列番号151)、FIDPYNGYTSYNQKFKG(配列番号11)、RIDPAIDNSKYDPKFQG(配列番号12)、KGIYYDYVWFFDV(配列番号13)、QLDLYWFFDV(配列番号14)、HGXRGFAY(配列番号15)、SPYYYGSGYRIFDV(配列番号16)、IYGYDDAYYFDY(配列番号17)、YYCALYDGYNVYAMDY(配列番号18)、KASQDINRYIA(配列番号19)、RASQSISDYLH(配列番号20)、KSSQSLLDSDGRTHLN(配列番号21)、SAFSSVNYMH(配列番号22)、SATSSVSYMH(配列番号23)、RSSKNLLHSNGITYLY(配列番号24)、YTSTLLP(配列番号25)、YASQSIS(配列番号26)、LVSKLDS(配列番号27)、TTSNLAS(配列番号28)、STSNLAS(配列番号29)、RASTLAS(配列番号30)、LQYSNLLT(配列番号31)、QNGHSLPLT(配列番号32)、WQGTLFPWT(配列番号33)、QQRSTYPFT(配列番号34)、QQRITYPFT(配列番号35)、およびAQLLELPHT(配列番号36)からなる群から選択される配列を含む1つまたは複数の(たとえば1、2、3、4、5、または6つの)CDRを含み、ここでXはYまたはFであり、XはSまたはTであり、X58はRまたはKであり、X59はN、G、S、またはQであり、X60はG、A、またはDである。ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号1~9、11~36、および151のいずれかの1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸残基の置換を有する。
【0141】
[00180]本明細書で用いる抗体「mAb13」は、配列番号42の配列を有する重鎖可変領域および配列番号51の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0142】
[00181]本明細書で用いる抗体「mAb14」は、配列番号43の配列を有する重鎖可変領域および配列番号52の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0143】
[00182]本明細書で用いる抗体「mAb19」は、配列番号44の配列を有する重鎖可変領域および配列番号53の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0144】
[00183]本明細書で用いる抗体「mAb21」は、配列番号45の配列を有する重鎖可変領域および配列番号54の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0145】
[00184]本明細書で用いる抗体「mAb23」は、配列番号47の配列を有する重鎖可変領域および配列番号56の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0146】
[00185]本明細書で用いる抗体「mAb34」は、配列番号49の配列を有する重鎖可変領域および配列番号58の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0147】
[00186]本明細書で用いる抗体「mAb35」は、配列番号50の配列を有する重鎖可変領域および配列番号59の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を意味する。
【0148】
[00187]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、抗体mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、またはmAb35の1つまたは複数の(たとえば1、2、3、4、5、または6つの)CDR配列を含む。
【0149】
[00188]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号1~6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7~9、11~12、および151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号13~18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号19~24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号25~30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号31~36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0150】
[00189]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号7の配列を含むHCDR2、配列番号13の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号19の配列を含むLCDR1、配列番号25の配列を含むLCDR2、および配列番号31の配列を含むLCDR3を含む。
【0151】
[00190]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号2の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、配列番号14の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号20の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3を含む。
【0152】
[00191]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号3の配列を含むHCDR1、配列番号37の配列を含むHCDR2、配列番号40の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号21の配列を含むLCDR1、配列番号27の配列を含むLCDR2、および配列番号33の配列を含むLCDR3を含む。
【0153】
[00192]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号3の配列を含むHCDR1、配列番号38の配列を含むHCDR2、配列番号41の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号21の配列を含むLCDR1、配列番号27の配列を含むLCDR2、および配列番号33の配列を含むLCDR3を含む。
【0154】
[00193]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号4の配列を含むHCDR1、配列番号10の配列を含むHCDR2、配列番号16の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号22の配列を含むLCDR1、配列番号28の配列を含むLCDR2、および配列番号34の配列を含むLCDR3を含む。
【0155】
[00194]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号5の配列を含むHCDR1、配列番号11の配列を含むHCDR2、配列番号17の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号23の配列を含むLCDR1、配列番号29の配列を含むLCDR2、および配列番号35の配列を含むLCDR3を含む。
【0156】
[00195]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体およびその抗原結合性断片は、配列番号6の配列を含むHCDR1、配列番号12の配列を含むHCDR2、配列番号18の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号24の配列を含むLCDR1、配列番号30の配列を含むLCDR2、および配列番号36の配列を含むLCDR3を含む。
【0157】
[00196]下の表1は、抗体部分mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35のCDRアミノ酸配列を示す。CDRの境界はKabatの規則によって定義し、または同定した。下の表2は、抗体部分mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35の重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0158】
【表4】
【0159】
【表5-1】
【0160】
【表5-2】
【0161】
[00197]抗体部分mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35のそれぞれがCD39に結合することができ、抗原結合特異性が一次的にCDR1、CDR2、およびCDR3領域によって提供されることを考えれば、抗体部分mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3の配列、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3の配列は「混合および整合されて」(即ち異なる抗体部分のCDRは混合および整合されるが、それぞれの抗体部分はHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含まなくてはならない)、本開示の抗CD39結合分子を創出することができる。そのような「混合および整合された」抗体のCD39結合は、上記および実施例に記載した結合アッセイを用いて試験することができる。好ましくは、VH CDR配列が混合および整合される場合には、特定のVH配列からのHCDR1、HCDR2、および/またはHCDR3配列は、構造的に同様のCDR配列で置き換えられる。同様に、VL CDR配列が混合および整合される場合には、特定のVL配列からのLCDR1、LCDR2、および/またはLCDR3配列は、好ましくは構造的に同様のCDR配列で置き換えられる。たとえば、抗体部分mAb13およびmAb19のHCDR1はいくつかの構造的同様性を共有しており、したがって混合および整合させやすい。モノクローナル抗体部分mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35について1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR配列を本明細書で開示したCDR配列からの構造的に同様の配列で置換することによって新規のVHおよびVL配列が創出され得ることは、当業者には容易に明白になる。
【0162】
[00198]CDRは抗原結合に関与していることが知られている。しかし、6つのCDRの全てが不可欠または不変ではないことが見出されている。換言すれば、CD39への特異的な結合親和性を実質的に保持しながら抗CD39抗体部分mAb13、mAb14、mAb19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35における1つまたは複数のCDRを置き換え、変更、または修飾することが可能である。
【0163】
[00199]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、その抗体部分およびその抗原結合性断片がCD39に特異的に結合することができる限り、好適なフレームワーク領域(FR)配列を含む。上の表1で提供したCDR配列はマウス抗体から得られるが、これらは組換え手法等の当技術分野で既知の好適な方法を用いてとりわけマウス、ヒト、ラット、ウサギ等の任意の好適な種の任意の好適なFR配列にグラフトすることができる。
【0164】
[00200]ある特定の実施形態では、本開示の抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、ヒト化される。ヒト化抗体部分またはその抗原結合性断片は、ヒトにおけるその低減した免疫原性において望ましい。ヒト化抗体部分は、非ヒトCDR配列がヒトまたは実質的にヒトのFR配列にグラフトされているので、その可変領域においてキメラである。抗体部分または抗原結合性断片のヒト化は本質的に、非ヒト(マウス等)CDR遺伝子をヒト免疫グロブリン遺伝子中の対応するヒトCDR遺伝子で置換することによって実施することができる(たとえばJones et al.(1986)Nature 321:522-525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536)を参照されたい)。
【0165】
[00201]この目的を達成するために、当技術分野で既知の方法を用いて好適なヒト重鎖および軽鎖の可変ドメインを選択することができる。説明的な例では、「ベストフィット」アプローチを用いることができ、ここでは非ヒト(たとえばげっ歯類)抗体の可変ドメイン配列が既知のヒト可変ドメイン配列に対してスクリーニングまたはBLAST処理され、非ヒトクエリー配列に最も近いヒト配列が同定され、非ヒトCDR配列をグラフトするためのヒトスキャフォールドとして用いられる(たとえばSims et al.,(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia et al.(1987)J.Mot.Biol.196:901を参照されたい)。あるいは、非ヒトCDRのグラフト化のために、全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワークを用いてもよい(たとえばCarter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623を参照されたい)。
【0166】
[00202]一部の実施形態では、本開示はそれぞれhu14.H1L1、hu14.H2L1、hu14.H3L1、hu14.H4L1、hu14.H1L2、hu14.H2L2、hu14.H3L2、hu14.H4L2、hu14.H1L3、hu14.H2L3、hu14.H3L3、hu14.H4L3、hu14.H1L4、hu14.H2L4、hu14.H3L4、およびhu14.H4L4と表記されるc14の16種のヒト化抗体部分を提供する。c14のそれぞれのヒト化抗体部分の重鎖および軽鎖の可変領域の配列番号を実施例5.1の表16に示す。c14の16種のヒト化抗体部分のそれぞれは、配列番号2の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、配列番号14の配列を含むHCDR3、配列番号20の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3を含む。CDRの境界はKabatの規則によって定義し、または同定した。
【0167】
[00203]一部の実施形態では、本開示はそれぞれhu23.H1L1、hu23.H2L1、hu23.H3L1、hu23.H4L1、hu23.H1L2、hu23.H2L2、hu23.H3L2、hu23.H4L2、hu23.H1L3、hu23.H2L3、hu23.H3L3、hu23.H4L3、hu23.H1L4、hu23.H2L4、hu23.H3L4、hu23.H4L4、hu23.H5L1、hu23.H6L1、hu23.H7L1、hu23.H1L5、hu23.H5L5、hu23.H6L5、hu23.H7L5、hu23.H1L6、hu23.H5L6、hu23.H6L6、hu23.H7L6、hu23.H1L7、hu23.H5L7、hu23.H6L7、およびhu23.H7L7と表記されるc23の31種のヒト化抗体部分を提供する。c23のそれぞれのヒト化抗体部分の重鎖および軽鎖の可変領域の配列番号を実施例5.1の表13および表14に示す。上の抗体部分c23についての31種のヒト化抗体部分のそれぞれは、配列番号4の配列を含むHCDR1、配列番号10の配列を含むHCDR2、配列番号16の配列を含むHCDR3、配列番号22の配列を含むLCDR1、配列番号28の配列を含むLCDR2、および配列番号34の配列を含むLCDR3を含む。CDRの境界はKabatの規則によって定義し、または同定した。
【0168】
[00204]一部の実施形態では、本開示は、HCDR2のアミノ酸配列が異なることを除いてc23と同じCDRを有する6種のヒト化抗体部分をも提供する。一部の実施形態では、これらのc23のバリアント(c23’)のヒト化抗体部分のHCDR2のアミノ酸配列は、X58IDPAX5960NIKYDPKFQG(配列番号151)のアミノ酸配列を含み、ここでX58はRまたはKであり、X59はN、G、S、またはQであり、X60はG、A、またはDである。一部の実施形態では、これらのc23のバリアント(c23’)のヒト化抗体部分のHCDR2のアミノ酸配列は、RIDPAGGNIKYDPKFQG(配列番号134)、RIDPASGNIKYDPKFQG(配列番号135)、RIDPAQGNIKYDPKFQG(配列番号136)、RIDPANANIKYDPKFQG(配列番号137)、RIDPANDNIKYDPKFQG(配列番号138)、およびKIDPANGNIKYDPKFQG(配列番号139)からなる群から選択される配列を含む。CDRの境界はKabatの規則によって定義し、または同定した。
【0169】
[00205]一部の実施形態では、本開示は、hu23.201、hu23.203、hu23.207、およびhu23.211と表記される、酵母ディスプレイによるc23バリアントに対する4種のヒト化抗体をも提供する。ヒト化抗体部分hu23.201、hu23.203、hu23.207、およびhu23.211の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を実施例5.1の表15に示す。4種のヒト化抗体部分hu23.201、hu23.203、hu23.207、およびhu23.211のそれぞれは、配列番号4の配列を含むHCDR1、配列番号10の配列を含むHCDR2、配列番号16の配列を含むHCDR3、配列番号22の配列を含むLCDR1、配列番号28の配列を含むLCDR2、および配列番号34の配列を含むLCDR3を含む。CDRの境界はKabatの規則によって定義し、または同定した。
【0170】
[00206]下の表3は、ヒト化c14重鎖可変領域の4つのバリアント(即ちhu14.VH_1、hu14.VH_2、hu14.VH_3、およびhu14.VH_4)およびヒト化c14軽鎖可変領域の4つのバリアント(即ちhu14.VL_1、hu14.VL_2、hu14.VL_3、およびhu14.VL_4)を示す。下の表4は、ヒト化c14の重鎖および軽鎖の可変領域についてのFRのアミノ酸配列を示す。下の表5は、それぞれhu14.H1L1、hu14.H2L1、hu14.H3L1、hu14.H4L1、hu14.H1L2、hu14.H2L2、hu14.H3L2、hu14.H4L2、hu14.H1L3、hu14.H2L3、hu14.H3L3、hu14.H4L3、hu14.H1L4、hu14.H2L4、hu14.H3L4、hu14.H4L4と表記されるキメラ抗体部分c14についての16種のヒト化抗体部分のそれぞれの重鎖および軽鎖のFRアミノ酸配列を示す。これら16種のヒト化抗体部分の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を実施例5.1の表16に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
【表7】
【0173】
【表8】
【0174】
[00207]下の表6は、ヒト化c23重鎖可変領域の7つのバリアント(即ちhu23.VH_1、hu23.VH_2、hu23.VH_3、hu23.VH_4、hu23.VH_5、hu23.VH_6、およびhu23.VH_7)およびヒト化c23軽鎖可変領域の7つのバリアント(即ちhu23.VL_1、hu23.VL_2、hu23.VL_3、hu23.VL_4、hu23.VL_5、hu23.VL_6、およびhu23.VL_7)を示す。下の表7に、酵母ディスプレイによって得られたキメラ抗体部分c23についての4種のヒト化抗体部分の重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。下の表8に、c23の35種のヒト化抗体部分のFRアミノ酸配列を示す。下の表9に、c23の35種のヒト化抗体部分のそれぞれの重鎖および軽鎖についてのFRアミノ酸配列を示す。
【0175】
【表9-1】
【0176】
【表9-2】
【0177】
【表10】
【0178】
【表11-1】
【0179】
【表11-2】
【0180】
【表12】
【0181】
[00208]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、非ヒトであるCDR配列を除いて、実質的に全てのヒト配列からなっている。一部の実施形態では、可変領域FRおよび存在する場合には定常領域は、完全にまたは実質的にヒト免疫グロブリン配列からのものである。ヒトFR配列およびヒト定常領域配列は異なるヒト免疫グロブリン遺伝子由来でよく、たとえばFR配列は1つのヒト抗体由来であり、定常領域は別のヒト抗体に由来する。一部の実施形態では、ヒト化抗体部分またはその抗原結合性断片は、ヒト重鎖HFR1~4、および/または軽鎖LFR1~4を含む。
【0182】
[00209]一部の実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、それが由来する元のヒト免疫グロブリンと同じアミノ酸配列を含んでよい。一部の実施形態では、ヒトFRの1つまたは複数のアミノ酸残基は、親の非ヒト抗体からの対応する残基で置換される。これは、ある特定の実施形態ではヒト化抗体またはその断片を非ヒト親抗体の構造に密接に近似させ、それによって結合特性を最適化(たとえば結合親和性を増大)させるために望ましい。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体部分またはその抗原結合性断片は、ヒトFR配列のそれぞれにおいて10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1個以下のアミノ酸残基の置換、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインの全てのFR配列において10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1個以下のアミノ酸残基の置換を含む。一部の実施形態では、アミノ酸残基におけるそのような変化は、重鎖FR領域にのみ、軽鎖FR領域にのみ、または両方の鎖に存在し得る。ある特定の実施形態では、ヒトFR配列の1つまたは複数のアミノ酸はランダムに変異して結合親和性を増大させる。ある特定の実施形態では、ヒトFR配列の1つまたは複数のアミノ酸は親の非ヒト抗体の対応するアミノ酸に復帰変異して結合親和性を増大させる。
【0183】
[00210]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、X19VQLVX20SGX21222324KPGX25SX262728SCX29ASGX30313233(配列番号76)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR1、WVX34QX35PGX3637LEWX3839(配列番号77)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR2、X4041TX424344DX45SX4647TX48YX49505152SLX5354EDTAVYYCX5556(配列番号78)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR3、およびWGQGTX57VTVSS(配列番号126)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR4を含み、ここでX19はQまたはEであり、X20はEまたはQであり、X21はGまたはAであり、X22はGまたはEであり、X23はLまたはVであり、X24はVまたはKであり、X25はGまたはAであり、X26はL、M、またはVであり、X27はRまたはKであり、X28はVまたはLであり、X29はAまたはKであり、X30はFまたはYであり、X31はNまたはTであり、X32はFまたはLであり、X33はSまたはKであり、X34はRまたはKであり、X35はAまたはSであり、X36はKまたはQであり、X37はRまたはGであり、X38はM、I、またはVであり、X39はGまたはAであり、X40はRまたはKであり、X41はV、A、またはFであり、X42はIまたはLであり、X43はSまたはTであり、X44はRまたはAであり、X45はDまたはTであり、X46はK、A、またはSであり、X47はSまたはNであり、X48はL、V、またはAであり、X49はMまたはLであり、X50はQまたはEであり、X51はMまたはLであり、X52はS、I、またはNであり、X53はRまたはKであり、X54はSまたはTであり、X55はAまたはTであり、X56はR、N、またはTであり、X57はTまたはLである。
【0184】
[00211]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、XIVXTQSPATLXSPGERXTXC(配列番号80)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR1、WYQQKPGQX10PX11LLIY(配列番号81)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR2、GX12PX13RFSGSGSGTX1415TLTISSX16EPEDFAVYX17C(配列番号82)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR3、およびFGX18GTKLEIK(配列番号152)の配列またはその少なくとも80%の相同配列を含む軽鎖LFR4を含み、ここでXはEまたはQであり、XはLまたはMであり、XはSまたはTであり、XはL、V、またはAであり、XはAまたはVであり、XはLまたはIであり、XはSまたはTであり、X10はAまたはSであり、X11はRまたはKであり、X12はIまたはVであり、X13はAまたはTであり、X14はDまたはSであり、X15はFまたはYであり、X16はL、M、またはVであり、X17はYまたはFであり、X18はGまたはQである。
【0185】
[00212]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、EVQLVESGGGLVKPGGSX61RLSCAASGFTFS(配列番号154)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR1、WVRQX62PGKGLEWVX63(配列番号155)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR2、RFTISRDDSKNTX64YLQMNSLKTEDTAVYYCTT(配列番号156)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR3、WGQGTTVTVSS(配列番号79)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR4を含み、ここでX61はLまたはMであり、X62はAまたはSであり、X63はGまたはAであり、X64はLまたはVである。
【0186】
[00213]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、EIVX65TQSPATLSX66SPGERX67TLSC(配列番号157)またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR1、WYQQKPGQX68PRLLIY(配列番号158)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR2、GIPARFSGSGSGTDFTLTISSX69EPEDFAVYX70C(配列番号159)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR3、およびFGGGTKLEIK(配列番号153)またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR4を含み、ここでX65はLまたはMであり、X66はLまたはVであり、X67はAまたはVであり、X68はAまたはSであり、X69はLまたはVであり、X70はYまたはFである。
【0187】
[00214]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、X71VQLVQSGAEVKKPGASVKX72SCKASGYX73LK(配列番号160)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR1、WVX74QAPGQX75LEWX76G(配列番号161)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR2、X7778TX79TX80DTSX8182TAYX83ELX84SLRSEDTAVYYCAX85(配列番号149)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR3、WGQGTX57VTVSS(配列番号126)またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR4を含み、ここでX57は上で定義した通りであり、X71はQまたはEであり、X72はVまたはLであり、X73はNまたはTであり、X74はRまたはKであり、X75はRまたはGであり、X76はMまたはIであり、X77はRまたはKであり、X78はVまたはAであり、X79はIまたはLであり、X80はRまたはAであり、X81はAまたはSであり、X82はSまたはNであり、X83はMまたはLであり、X84はSまたはIであり、X85はRまたはNである。
【0188】
[00215]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、X86IVLTQSPATLX8788SPGERX89TX9091C(配列番号150)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR1、WYQQKPGQX10PX11LLIY(配列番号81)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR2、GX92PX93RFSGSGSGTX9495TLTISSX96EPEDFAVYYC(配列番号148)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR3、およびFGQGTKLEIK(配列番号83)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR4を含み、ここでX10およびX11は上で定義した通りであり、X86はEまたはQであり、X87はSまたはTであり、X88はLまたはAであり、X89はAまたはVであり、X90はLまたはIであり、X91はSまたはTであり、X92はIまたはVであり、X93はAまたはTであり、X94はDまたはSであり、X95はFまたはYであり、X96はLまたはMである。
【0189】
[00216]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号84~86、115、119~120、および131からなる群から選択される配列を含む重鎖HFR1、配列番号87~90および121~123の配列を含む重鎖HFR2、配列番号91~97、116~117、および124~125からなる群から選択される配列を含む重鎖HFR3、および配列番号79および118からなる群から選択される配列を含む重鎖HFR4、ならびに/または配列番号98~103および127~129からなる群からの配列を含む軽鎖LFR1、配列番号104、105、および130からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR2、配列番号106~110および132~133からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR3、および配列番号83および153からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR4を含む。
【0190】
[00217]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、hu14.VH_1(配列番号68)、hu14.VH_2(配列番号70)、hu14.VH_3(配列番号72)、hu14.VH_4(配列番号74)、hu23.VH_1(配列番号60)、hu23.VH_2(配列番号62)、hu23.VH_3(配列番号64)、hu23.VH_4(配列番号66)、hu23.VH_5(配列番号140)、hu23.VH_6(配列番号141)、hu23.VH_7(配列番号142)、hu23.201H(配列番号146)、hu23.207H(配列番号147)、およびhu23.211H(配列番号39)からなる群から選択される重鎖可変領域に含まれるHFR1、HFR2、HFR3、および/またはHFR4配列を含む。
【0191】
[00218]ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、hu14.VL_1(配列番号69)、hu14.VL_2(配列番号71)、hu14.VL_3(配列番号73)、hu14.VL_4(配列番号75)、hu23.VL_1(配列番号61)、hu23.VL_2(配列番号63)、hu23.VL_3(配列番号65)、hu23.VL_4(配列番号67)、hu23.VL_5(配列番号143)、hu23.VL_6(配列番号144)、hu23.VL_7(配列番号145)、hu23.201L(配列番号111)、hu23.203L(配列番号112)、およびhu23.211L(配列番号63)からなる群から選択される軽鎖可変領域に含まれるLFR1、LFR2、LFR3、および/またはLFR4配列を含む。
【0192】
[00219]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、配列番号39、60、62、64、66、68、70、72、74、140、141、142、146、147からなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列、ならびに/または配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、111、112、143、144、および145からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0193】
[00220]本開示のキメラ抗体部分c14の例示的なヒト化抗体部分は、
1)hu14.VH_1(配列番号68)の重鎖可変領域およびhu14.VL_1(配列番号69)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H1L1」、
2)hu14.VH_2(配列番号70)の重鎖可変領域およびhu14.VL_1(配列番号69)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H2L1」、
3)hu14.VH_3(配列番号72)の重鎖可変領域およびhu14.VL_1(配列番号69)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H3L1」、
4)hu14.VH_4(配列番号74)の重鎖可変領域およびhu14.VL_1(配列番号69)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H4L1」、
5)hu14.VH_1(配列番号68)の重鎖可変領域およびhu14.VL_2(配列番号71)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H1L2」、
6)hu14.VH_2(配列番号70)の重鎖可変領域およびhu14.VL_2(配列番号71)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H2L2」、
7)hu14.VH_3(配列番号72)の重鎖可変領域およびhu14.VL_2(配列番号71)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H3L2」、
8)hu14.VH_4(配列番号74)の重鎖可変領域、およびhu14.VL_2(配列番号71)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H4L2」、
9)hu14.VH_1(配列番号68)の重鎖可変領域およびhu14.VL_3(配列番号73)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H1L3」、
10)hu14.VH_2(配列番号70)の重鎖可変領域およびhu14.VL_3(配列番号73)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H2L3」、
11)hu14.VH_3(配列番号72)の重鎖可変領域およびhu14.VL_3(配列番号73)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H3L3」、
12)hu14.VH_4(配列番号74)の重鎖可変領域、およびhu14.VL_3(配列番号73)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H4L3」、
13)hu14.VH_1(配列番号68)の重鎖可変領域およびhu14.VL_4(配列番号75)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H1L4」、
14)hu14.VH_2(配列番号70)の重鎖可変領域およびhu14.VL_4(配列番号75)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H2L4」、
15)hu14.VH_3(配列番号72)の重鎖可変領域およびhu14.VL_4(配列番号75)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H3L4」、
16)hu14.VH_4(配列番号74)の重鎖可変領域、およびhu14.VL_4(配列番号75)の軽鎖可変領域を含む「hu14.H4L4」、
を含む。
【0194】
[00221]本開示のキメラ抗体部分c23の例示的なヒト化抗体部分は、
1)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L1」、
2)hu23.VH_2(配列番号62)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H2L1」、
3)hu23.VH_3(配列番号64)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H3L1」、
4)hu23.VH_4(配列番号66)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H4L1」、
5)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_2(配列番号63)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L2」、
6)hu23.VH_2(配列番号62)の重鎖可変領域およびhu23.VL_2(配列番号63)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H2L2」、
7)hu23.VH_3(配列番号64)の重鎖可変領域およびhu23.VL_2(配列番号63)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H3L2」、
8)hu23.VH_4(配列番号66)の重鎖可変領域およびhu23.VL_2(配列番号63)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H4L2」、
9)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_3(配列番号65)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L3」、
10)hu23.VH_2(配列番号62)の重鎖可変領域およびhu23.VL_3(配列番号65)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H2L3」、
11)hu23.VH_3(配列番号64)の重鎖可変領域およびhu23.VL_3(配列番号65)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H3L3」、
12)hu23.VH_4(配列番号66)の重鎖可変領域およびhu23.VL_3(配列番号65)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H4L3」、
13)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_4(配列番号67)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L4」、
14)hu23.VH_2(配列番号62)の重鎖可変領域およびhu23.VL_4(配列番号67)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H2L4」、
15)hu23.VH_3(配列番号64)の重鎖可変領域およびhu23.VL_4(配列番号67)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H3L4」、
16)hu23.VH_4(配列番号66)の重鎖可変領域およびhu23.VL_4(配列番号67)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H4L4」、
17)hu23.VH_5(配列番号140)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H5L1」、
18)hu23.VH_6(配列番号141)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H6L1」、
19)hu23.VH_7(配列番号142)の重鎖可変領域およびhu23.VL_1(配列番号61)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H7L1」、
20)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_5(配列番号143)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L5」、
21)hu23.VH_5(配列番号140)の重鎖可変領域およびhu23.VL_5(配列番号143)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H5L5」、
22)hu23.VH_6(配列番号141)の重鎖可変領域およびhu23.VL_5(配列番号143)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H6L5」、
23)hu23.VH_7(配列番号142)の重鎖可変領域およびhu23.VL_5(配列番号143)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H7L5」、
24)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_6(配列番号144)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L6」、
25)hu23.VH_5(配列番号140)の重鎖可変領域およびhu23.VL_6(配列番号144)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H5L6」、
26)hu23.VH_6(配列番号141)の重鎖可変領域およびhu23.VL_6(配列番号144)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H6L6」、
27)hu23.VH_7(配列番号142)の重鎖可変領域およびhu23.VL_6(配列番号144)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H7L6」、
28)hu23.VH_1(配列番号60)の重鎖可変領域およびhu23.VL_7(配列番号145)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H1L7」、
29)hu23.VH_5(配列番号140)の重鎖可変領域およびhu23.VL_7(配列番号145)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H5L7」、
30)hu23.VH_6(配列番号141)の重鎖可変領域およびhu23.VL_7(配列番号145)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H6L7」、
31)hu23.VH_7(配列番号142)の重鎖可変領域およびhu23.VL_7(配列番号145)の軽鎖可変領域を含む「hu23.H7L7」、
32)hu23.201H(配列番号146)の重鎖可変領域およびhu23.201L(配列番号111)の軽鎖可変領域を含む「hu23.201」、
33)hu23.201H(配列番号146)の重鎖可変領域およびhu23.203L(配列番号112)の軽鎖可変領域を含む「hu23.203」、
34)hu23.207H(配列番号147)の重鎖可変領域およびhu23.201L(配列番号111)の軽鎖可変領域を含む「hu23.207」、
35)hu23.211H(配列番号39)の重鎖可変領域およびhu23.211L(配列番号63)の軽鎖可変領域を含む「hu23.211」
を含む。
【0195】
[00222]これらの例示的なヒト化抗CD39抗体部分はCD39に対する特異的な結合能力または親和性を保持しており、その観点において親のマウス抗体部分mAb14またはmAb23と少なくとも同程度またはそれより優れていた。
【0196】
[00223]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分および抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、および/または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む。一実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、本明細書で提供される重鎖可変ドメインの全てまたは一部からなる単鎖ドメイン抗体である。そのような単鎖ドメイン抗体のさらなる情報は当技術分野で利用可能である(たとえば米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0197】
[00224]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリン(Ig)の定常領域をさらに含み、これは任意選択で重鎖および/または軽鎖の定常領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域はCH1、ヒンジ、および/またはCH2-CH3領域(または任意選択でCH2-CH3-CH4領域)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、またはIgMの重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域はCκまたはCλを含む。本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片の定常領域は、野生型の定常領域の配列と同一であってもよく、1つまたは複数の変異において異なってもよい。
【0198】
[00225]ある特定の実施形態では、重鎖定常領域はFc領域を含む。Fc領域は、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)および抗体の補体依存性細胞毒性(CDC)等のエフェクター機能を媒介することが知られている。異なるIgアイソタイプのFc領域はエフェクター機能を誘導する異なる能力を有する。たとえば、IgG1およびIgG3のFc領域は、IgG2およびIgG4のFc領域より効果的にADCCとCDCの両方を誘導することが認識されている。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、ADCCまたはCDCを誘導することができるIgG1またはIgG3アイソタイプのFc領域を含み、あるいはエフェクター機能が低減しまたは枯渇したIgG4もしくはIgG2アイソタイプの定常領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG1に由来するFc領域は低減したエフェクター機能を有する。一部の実施形態では、ヒトIgG1に由来するFc領域はL234Aおよび/またはL235Aの変異を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、野生型のヒトIgG4 Fc領域またはその他の野生型のヒトIgG4の対立遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、S228Pの変異および/もしくはL235Eの変異、ならびに/またはF234AおよびL235Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4に由来するFc領域はS228Pの変異ならびに/またはF234AおよびL235Aの変異を含む。
【0199】
[00226]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、診断用および/または治療用に提供するために十分なヒトCD39に対する特異的結合親和性を有する。
【0200】
[00227]本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異的抗体、多重特異的抗体、標識抗体、二価抗体、抗イディオタイプ抗体、または融合タンパク質であってよい。組換え抗体は、動物体内でなくin vitroで組換え法を用いて調製された抗体である。
【0201】
[00228]ある特定の実施形態では、本開示は、CD39との結合について本明細書で提供される抗体部分またはその抗原結合性断片と競合する、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、ヒトCD39との結合について配列番号43の配列を含む重鎖可変領域および配列番号52の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体部分と競合する、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、ヒトCD39との結合について配列番号44の配列を含む重鎖可変領域および配列番号53の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体部分と競合する、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、ヒトCD39との結合について配列番号45の配列を含む重鎖可変領域および配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体部分と競合するか、またはヒトCD39との結合について配列番号47の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体部分と競合する、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片を提供する。
【0202】
[00229]一部の実施形態では、本開示は、CD39のエピトープと特異的に結合する抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片を提供し、ここでエピトープはQ96、N99、E143、R147、R138、M139、E142、K5、E100、D107、V81、E82、R111、およびV115からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む。
【0203】
[00230]一部の実施形態では、エピトープはQ96、N99、E143、およびR147からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む。一部の実施形態では、エピトープは残基Q96、N99、E143、およびR147の全てを含む。
【0204】
[00231]一部の実施形態では、エピトープはR138、M139、およびE142からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む。一部の実施形態では、エピトープは残基R138、M139、およびE142の全てを含む。
【0205】
[00232]一部の実施形態では、エピトープはK5、E100、およびD107からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む。一部の実施形態では、エピトープは残基K5、E100、およびD107の全てを含む。
【0206】
[00233]一部の実施形態では、エピトープはV81、E82、R111、およびV115からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む。一部の実施形態では、エピトープは残基V81、E82、R111、およびV115の全てを含む。
【0207】
[00234]一部の実施形態では、CD39はヒトCD39である。一部の実施形態では、CD39は配列番号162のアミノ酸配列を含むヒトCD39である。
[00235]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、抗体9-8B、抗体T895、および抗体I394のいずれでもない。
【0208】
[00236]本明細書で用いる「9-8B」は、配列番号46のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号48のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0209】
[00237]本明細書で用いる「T895」は、配列番号55のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号57のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0210】
[00238]本明細書で用いる「I394」は、配列番号113のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号114のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0211】
抗体バリアント
[00239]本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片は、本明細書で提供される抗体配列の種々のバリアントをも包含する。
【0212】
[00240]ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、上の表1で提供したCDR配列の1つもしくは複数、上の表4、表5、表8、および表9で提供した重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域の非CDR配列の1つもしくは複数、ならびに/または定常領域(たとえばFc領域)における1つまたは複数の修飾または置換を含む。そのようなバリアントはCD39に対するそれらの親抗体の結合特異性を保持しているが、修飾または置換によって与えられる1つまたは複数の望ましい特性を有する。たとえば、抗体バリアントは、改善された抗原結合親和性、改善されたグリコシル化パターン、低減されたグリコシル化のリスク、低減された脱アミノ化、低減されまたは枯渇したエフェクター機能、改善されたFcRn受容体結合、増大した薬物動態学的半減期、pH感受性、および/またはコンジュゲート化に対する適合性(たとえば導入された1つまたは複数のシステイン残基)を有し得る。
【0213】
[00241]当技術分野で既知の方法、たとえば「アラニンスキャニング変異生成」を用いて親抗体配列をスクリーニングして、修飾しまたは置換するために好適なまたは好ましい残基を同定してよい(たとえばCunningham and Wells(1989) Science,244:1081-1085を参照されたい)。簡単には、標的の残基(たとえばArg、Asp、His、Lys、およびGlu等の荷電残基)を同定し、中性または陰荷電のアミノ酸(たとえばアラニンまたはポリアラニン)で置き換えることができ、修飾された抗体を産生して目的の特性についてスクリーニングする。特定のアミノ酸の位置における置換によって目的の機能の変化が実証されれば、その位置を修飾または置換のための可能性のある残基として同定することができる。可能性のある残基は、異なる種類の残基(たとえばシステイン残基、陽荷電残基等)で置換することによってさらに評価してよい。
【0214】
親和性バリアント
[00242]抗体の親和性バリアントは、上の表1で提供した1つもしくは複数のCDR配列、上の表4、表5、表8、および表9で提供した1つもしくは複数のFR配列、または上の表2、表3、表6、および表7で提供した重鎖または軽鎖の可変領域配列における修飾または置換を含んでよい。CDR領域は可変領域において2つのFR領域に隣接していることが当技術分野で公知であるので、FR配列は、上の表1におけるCDR配列および上の表2、表3、表6、および表7における可変領域配列に基づいて当業者によって容易に同定することができる。親和性バリアントはCD39に対する親抗体の特異的結合親和性を保持し、または親抗体よりも改善されたCD39特異的結合親和性さえも有する。ある特定の実施形態では、CDR配列、FR配列、または可変領域配列における置換の少なくとも1つ(または全て)は、保存的置換を含む。
【0215】
[00243]当業者であれば、上の表1で提供したCDR配列、ならびに上の表2、表3、表6、および表7で提供した可変領域配列において、1つまたは複数のアミノ酸残基が置換され、しかも得られる抗体もしくは抗原結合性断片がまだCD39に対する結合親和性もしくは結合容量を保持し、または改善された結合親和性もしくは容量さえも有することが理解される。この目的を達成するために、当技術分野で既知の種々の方法を用いることができる。たとえば、ファージディスプレイ技術を用いて抗体バリアント(FabまたはscFvバリアント等)のライブラリーを生成して発現させ、次いでヒトCD39への結合親和性についてスクリーニングすることができる。別の例として、コンピューターソフトウェアを用いて抗体のヒトCD39への結合を仮想的に模擬し、結合界面を形成する抗体上のアミノ酸残基を同定することができる。そのような残基は、結合親和性の低減を防止するために置換において避けるか、またはより強い結合を提供するために置換の標的としてもよい。
【0216】
[00244]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、CDR配列の1つもしくは複数において、および/またはFR配列の1つもしくは複数において、1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含む。ある特定の実施形態では、親和性バリアントは、CDR配列中および/またはFR配列中、合計で20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下の置換を含む。
【0217】
[00245]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、上の表1に列挙したCDRと少なくとも80%(たとえば少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つ、2つ、または3つのCDR配列を含み、しかもその親抗体と同様またはそれより高いレベルでさえCD39に対する特異的結合親和性を保持している。
【0218】
[00246]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、上の表2、表3、表6、および表7に列挙した可変領域配列と少なくとも80%(たとえば少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つまたは複数の可変領域配列を含み、しかもその親抗体と同様またはそれより高いレベルでさえCD39に対する特異的結合親和性を保持している。一部の実施形態では、上の表2、表3、表6、および表7に列挙した可変領域配列において全部で1~10個のアミノ酸が置換され、挿入され、または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外(たとえばFRの中)の領域で起こる。
【0219】
グリコシル化バリアント
[00247]本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、抗体またはその抗原結合性断片のグリコシル化の程度を増加しまたは減少することによって得られるグリコシル化バリアントをも包含する。
【0220】
[00248]抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、グリコシル化部位を導入しまたは除去する1つまたは複数の修飾を含んでよい。グリコシル化部位は、炭水化物部分(たとえばオリゴ糖構造)を結合することができる側鎖を有するアミノ酸残基である。抗体のグリコシル化は、典型的にはN連結またはO連結である。N連結は、アスパラギン残基、たとえばアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン等のトリペプチド配列においてXがプロリンを除く任意のアミノ酸である、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。O連結グリコシル化は、糖、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を意味する。天然のグリコシル化部位の除去は、たとえば配列中に存在する上記のトリペプチド配列(N連結グリコシル化部位について)またはセリンもしくはスレオニン残基(O連結グリコシル化部位について)の1つが置換されるようにアミノ酸配列を改変することによって、便利に達成することができる。そのようなトリペプチド配列またはセリンもしくはスレオニン残基を導入することによって、新たなグリコシル化部位を同様に創出することができる。
【0221】
[00249]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分および抗原結合性断片は、1つまたは複数の脱アミド化部位を除去するために、N55、G56、およびN239からなる群から選択される位置に1つまたは複数の変異を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分および抗原結合性断片は、N55の変異(たとえばN55G、N55S、またはN55Q)、および/またはG56の変異(たとえばG56A、G56D)、および/またはN297の変異(たとえばN297A、N297Q、またはN297G)を含む。これらの変異を試験し、本明細書で提供される抗体部分の結合親和性に悪影響を与えないと考えられる。
【0222】
システイン操作されたバリアント
[00250]本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、導入された1つまたは複数の遊離のシステインアミノ酸残基を含む、システイン操作されたバリアントをも包含する。
【0223】
[00251]遊離のシステイン残基は、ジスルフィド架橋の部分ではない残基である。システイン操作されたバリアントは、操作されたシステインの部位で、たとえばマレイミドまたはハロアセチルによって、たとえば細胞毒性および/またはイメージング化合物、標識、またはとりわけ放射性同位体とコンジュゲートするために有用である。抗体またはその抗原結合性断片を操作して遊離のシステイン残基を導入する方法は当技術分野で既知であり、たとえばWO2006/034488を参照されたい。
【0224】
Fcバリアント
[00252]本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、たとえばADCCおよびCDC等の改変されたエフェクター機能を提供するために、Fc領域および/またはヒンジ領域に1つまたは複数のアミノ酸残基の修飾または置換を含むFcバリアントをも包含する。抗体操作によってADCC活性を改変する方法は当技術分野において記載されており、たとえばShields RL.et al.,J Biol Chem.2001.276(9):6591-604;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2000.164(8):4178-84;Steurer W.et al.,J Immunol.1995,155(3):1165-74;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2001,166(4):2571-5;Lazar GA.et al.,PNAS,2006,103(11):4005-4010;Ryan MC.et al.,Mol.Cancer Ther.,2007,6:3009-3018;Richards JO,.et al.,Mol Cancer Ther.2008,7(8):2517-27;Shields R.L.et al.,J.Biol.Chem,2002,277:26733-26740;Shinkawa T.et al.,J.Biol.Chem,2003,278:3466-3473を参照されたい。
【0225】
[00253]本明細書で提供される抗体部分または抗原結合性断片のCDC活性は、たとえばC1q結合および/またはCDCを改善しまたは減退させることによって改変することもできる(たとえばWO99/51642;Duncan & Winter Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;ならびにFe領域バリアントの他の例に関してはWO94/29351を参照されたい)。Fc領域のアミノ酸残基329、331、および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えて、C1qの結合および/または低減されもしくは消失された補体依存性細胞毒性(CDC)を改変することができる(たとえばIdusogieらによる米国特許第6,194,551号を参照されたい)。1つまたは複数のアミノ酸置換を導入して、抗体の補体を固定する能力を改変することもできる(BodmerらによるPCT公開WO 94/29351を参照されたい)。
【0226】
[00254]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は低減したエフェクター機能を有し、IgG1において234、235、237、238、268、297、309、330、および331からなる群から選択される位置に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片はIgG1アイソタイプのものであり、N297A、N297Q、N297G、L235E、L234A、L235A、L234F、L235E、P331Sからなる群から選択される1つもしくは複数のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片はIgG1アイソタイプのものであり、L234AおよびL235Aの変異を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片はIgG2アイソタイプのものであり、H268Q、V309L、A330S、P331S、V234A、G237A、P238S、H268Aからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組合せ(たとえばH268Q/V309L/A330S/P331S、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片はIgG4アイソタイプのものであり、S228P、N297A、N297Q、N297G、L235E、F234A、L235Aからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片はIgG2/IgG4交差アイソタイプのものである。IgG2/IgG4交差アイソタイプの例はRother RP et al.,Nat Biotechnol 25:1256-1264(2007)に記載されている。
【0227】
[00255]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分およびその抗原結合性断片はIgG4アイソタイプのものであり、228、234、および235の1つまたは複数の点に1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分および抗原結合性断片はIgG4アイソタイプのものであり、Fc領域にS228Pの変異ならびに/またはL235Eの変異ならびに/またはF234AおよびL235Aの変異を含む。
【0228】
[00256]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、新生児Fc受容体(FcRn)へのpH依存性結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。そのようなバリアントは酸性pHでFcRnに結合してこれをリソソーム内での分解から逃れさせ、次いで転座して細胞外に放出されることを可能にするので、延長された薬物動態学的半減期を有することができる。抗体またはその抗原結合性断片を操作してFcRnとの結合親和性を改善する方法は当技術分野で公知であり、たとえばVaughn,D.et al.,Structure,6(1):63-73,1998;Kontermann,R.et al.,Antibody Engineering,Volume 1,Chapter 27:Engineering of the Fc region for improved PK,published by Springer,2010;Yeung,Y.et al.,Cancer Research,70:3269-3277(2010);and Hinton,P.et al.,J.Immunology,176:346-356(2006)を参照されたい。
【0229】
[00257]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、Fc領域の界面においてヘテロ二量化を容易にしおよび/または促進する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。これらの修飾は、第1のFcポリペプチドへの突出部の導入および第2のFcポリペプチドへの空洞の導入を含み、突出部が空洞の中に位置して第1および第2のFcポリペプチドの相互作用が促進され、ヘテロ二量体または複合体が形成される。これらの修飾を有する抗体を生成する方法は、たとえば米国特許第5,731,168号に記載されているように当技術分野で既知である。
【0230】
抗原結合性断片
[00258]抗CD39抗原結合性断片も、本明細書で提供される。種々の型の抗原結合性断片が当技術分野で既知であり、たとえばそのCDRが上の表1に示され、可変配列が表2、表3、表6、および表7に示される、例示的な抗体部分ならびにその種々のバリアント(親和性バリアント、グリコシル化バリアント、Fcバリアント、システイン操作されたバリアント、その他)を含む本明細書で提供される抗CD39抗体部分に基づいて開発することができる。
【0231】
[00259]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗原結合性断片は、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、多重特異的抗体、ラクダ化単鎖ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、および二価ドメイン抗体である。
【0232】
[00260]そのような抗原結合性断片の産生のために種々の手法を用いることができる。実例的な方法には、インタクトな抗体の酵素消化(たとえばMorimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992);およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、E.coli等の宿主細胞による組換え発現(たとえばFab、Fv、およびScFv抗体断片のため)、上で論じたファージディスプレイライブラリーからのスクリーニング(たとえばScFvのため)、およびF(ab’)断片を形成するための2つのFab’-SH断片の化学的カップリング(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))が含まれる。抗体断片の産生のためのその他の手法は、当業者には明らかになる。
【0233】
[00261]ある特定の実施形態では、抗原結合性断片はscFvである。scFvの生成は、たとえばWO 93/16185;米国特許第5,571,894号および第5,587,458号に記載されている。ScFvはアミノまたはカルボキシル末端でエフェクタータンパク質と融合して、融合タンパク質を提供することができる(たとえばAntibody Engineering,Borrebaeck編を参照されたい)。
【0234】
[00262]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、二価、四価、六価、または多価である。二価を超えるいずれの分子も多価と考えられ、たとえば三価、四価、六価等を包含する。
【0235】
[00263]二価分子は、2つの結合部位がいずれも同じ抗原または同じエピトープへの結合について特異的であれば、単一特異的である。これは、ある特定の実施形態では、抗原またはエピトープに対して一価の対応物よりも強い結合を提供する。同様に、多価分子も単一特異的であり得る。ある特定の実施形態では、二価または多価の抗原結合性部分において、結合部位の第1の価および結合部位の第2の価は構造的に同一である(即ち、同じ配列を有する)か、または構造的に異なる(即ち、同じ特異性であるが異なる配列を有する)。
【0236】
[00264]二価も、2つの結合部位が異なる抗原またはエピトープに特異的であれば、二重特異的であり得る。これは多価分子にもあてはまる。たとえば、三価分子は、2つの結合部位が第1の抗原(またはエピトープ)に対して単一特異的で、第3の結合部位が第2の抗原(またはエピトープ)に対して特異的であれば、二重特異的であり得る。
【0237】
二重特異的抗体
[00265]ある特定の実施形態では、抗CD抗体部分またはその抗原結合性断片は、二重特異的である。ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、前記抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片とは異なる結合特異性を有する第2の機能性部分にさらに連結されている。
【0238】
[00266]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異的抗体またはその抗原結合性断片は、CD39以外の第2の抗原、またはCD39の上の第2のエピトープに特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、第2の抗原は、TGFベータ、CD73、PD1、PDL1、4-1BB、CTLA4、TIGIT、GITA、VISTA、TIGIT、B7-H3、B7-H4、B7-H5、CD112R、Siglec-15、LAG3、SIRPα、CD47およびTIM-3からなる群から選択される。
【0239】
コンジュゲート
[00267]一部の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、1つまたは複数のコンジュゲート部分をさらに含む。コンジュゲート部分は、抗体部分またはその抗原結合性断片に連結することができる。コンジュゲート部分は、抗体部分またはその抗原結合性断片に結合することができる部分である。種々のコンジュゲート部分が本明細書で提供される抗体部分またはその抗原結合性断片に連結され得ることが意図されている(たとえば「Conjugate Vaccines」,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr.(eds.),Carger Press,New York,(1989)を参照されたい)。これらのコンジュゲート部分は、とりわけ共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体化、会合、ブレンド、または付加によって、抗体部分またはその抗原結合性断片に連結され得る。一部の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、リンカーを介して1つまたは複数のコンジュゲートに連結することができる。
【0240】
[00268]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、エピトープ結合部分の外に、1つまたは複数のコンジュゲート部分への結合に利用できる特定の部位を含むように操作してよい。たとえば、そのような部位は、コンジュゲート部分への共有結合リンケージを容易にする1つまたは複数の反応性アミノ酸残基、たとえばシステインまたはヒスチジン残基を含んでよい。
【0241】
[00269]ある特定の実施形態では、抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、コンジュゲート部分に間接的に、または別のコンジュゲート部分を通して連結されてもよい。たとえば、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片をビオチンにコンジュゲートさせ、次いでアビジンにコンジュゲートした第2のコンジュゲートに間接的にコンジュゲートしてよい。一部の実施形態では、コンジュゲート部分は、クリアランス修飾剤(たとえば半減期を延長させるPEG等のポリマー)、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、検出可能な標識(たとえば発光標識、蛍光標識、酵素基質標識)、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリンバインダー、精製部分、またはその他の抗がん薬物を含む。
【0242】
[00270]「毒素」は、細胞に有害なまたは細胞に損傷を与えもしくはこれを殺す任意の薬剤であり得る。毒素の例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、MMAE、MMAF、DM1、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアンスラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、プロマイシンおよびそのアナログ、抗代謝物(たとえばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(たとえばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アンスラサイクリン類(たとえばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生剤(たとえばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシンおよびアンスラマイシン(AMC))、抗有糸分裂剤(たとえばビンクリスチンおよびビンブラスチン)、トポイソメラーゼ阻害剤、ならびにチューブリンバインダーが限定なく含まれる。
【0243】
[00271]検出可能な標識の例には、蛍光標識(たとえばフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、またはテキサスレッド)、酵素基質標識(たとえばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルセリフェラーゼ類、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ類、またはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位体(たとえば123I、124I、125I、131I、35S、H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Bi、および32P、その他のランタニド)、発光標識、色素体部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子、または検出用の金が含まれてよい。
【0244】
[00272]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、抗体の半減期を延長することを補助するクリアランス修飾剤であり得る。説明的な例には、水溶性ポリマー、たとえばPEG、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、その他が含まれる。ポリマーは任意の分子量のものであってよく、分枝しても分枝しなくてもよい。抗体に結合されるポリマーの数は変動し、2つ以上のポリマーが結合される場合にはこれらは同じ分子または異なる分子であり得る。
【0245】
[00273]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は磁気ビーズ等の精製部分であり得る。
[00274]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39抗体部分またはその抗原結合性断片は、コンジュゲートのための基礎として用いられる。
【0246】
ポリヌクレオチドおよび組換え方法
[00275]本開示は、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本明細書で用いる用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそのポリマーを意味する。他に指示しなければ、特定のポリヌクレオチド配列は、その保存的に修飾されたバリアント(たとえば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補的配列をも黙示的に包含し、ならびに明白に示された配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、その中の1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合された塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);およびRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994)を参照されたい)。
【0247】
[00276]モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(たとえば抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離され、シーケンシングされる。コードするDNAは、合成法によって得てもよい。
【0248】
[00277]本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapをコードする単離されたポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の組換え手法を用いて、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のためにベクターに挿入することができる。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には一般に、それだけに限らないが、以下の1つまたは複数が含まれる。シグナル配列、複製の起源、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター(たとえばSV40、CMV、EF-1α)、および転写終止配列。
【0249】
[00278]本開示は、本明細書で提供される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(たとえばSV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーをコードする。ベクターの例には、それだけに限らないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(たとえばヘルペスシンプレックスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(たとえばSV40)、ラムダファージ、およびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM.、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bos等が含まれる。
【0250】
[00279]本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを、クローニングまたは遺伝子発現のために宿主細胞に導入することができる。本明細書におけるベクター中でのクローニングまたはDNA発現に適した宿主細胞は、原核細胞、酵母、または上述の高等な真核細胞である。この目的に適した原核細胞には、グラム陰性またはグラム陽性の生命体等の真正細菌、たとえばエシェリキア属、たとえば大腸菌等の腸内細菌科、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、たとえばSalmonella typhimurium、セラチア属、たとえばSerratia marcescans、およびシゲラ属、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformis等のバチルス属、P.aeruginosa等のシュードモナス属、ならびにストレプトミセス属が含まれる。
【0251】
[00280]原核細胞に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗CD39/TGFβ Trapをコードするベクターのための好適なクローニングまたは発現用の宿主である。低級真核宿主微生物の中で、Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的な製パン用酵母が最も一般に使用されている。しかし、Schizosaccharomyces pombe、たとえばK.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianus等のクルイベロミセス宿主、ヤロウィア(EP 402,226)、Pichia pastoris(EP 183,070)、カンジダ、Trichoderma reesia(EP 244,234)、Neurospora crassa、Schwanniomyces occidentalis等のシュワニオミセス、およびたとえばNeurospora、Penicillium、Tolypocladium等の糸状菌、ならびにA.nidulansおよびA.niger等のアスペルギルス属の宿主等の他の多数の属、種、および株が一般に利用可能であり、本明細書で有用である。
【0252】
[00281]本明細書で提供されるグリコシル化抗体またはその抗原結合性断片の発現のために好適な宿主細胞は、多細胞生命体に由来する。無脊椎動物の細胞の例には、植物および昆虫の細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株およびバリアント、ならびにSpodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ミバエ)、およびBombyx mori等の宿主からの対応する許容される昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、たとえばAutographa californica NPVのL-1バリアントおよびBombyx mori NPVのBm-5株は公に利用可能であり、そのようなウイルスは本発明に従って本明細書のウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために用いてよい。木綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養も宿主として利用することができる。
【0253】
[00282]しかし、関心は脊椎動物細胞において最大であり、培養における脊椎動物細胞の増殖(組織培養)が通常の手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、SV40でトランスフォームされたサル腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングした293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞、ならびにヒト肝細胞がん株(Hep G2)がある。一部の実施形態では、宿主細胞は、CHO、BHK、NS0、293等の哺乳動物培養細胞株、およびそれらの誘導体である。
【0254】
[00283]宿主細胞は、抗CD39/TGFβ Trapの産生のための上記の発現またはクローニング用のベクターによってトランスフォームされ、プロモーターの誘導、トランスフォーマントの選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適するように修飾された従来の栄養培地中で培養される。別の実施形態では、抗CD39/TGFβ Trapは当技術分野で既知の相同組換えによって産生してよい。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapを産生することができる。
【0255】
[00284]本開示はまた、本開示のベクターが発現される条件下で、本開示で提供される宿主細胞を培養するステップを含む、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapを発現する方法を提供する。本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapを産生するために用いる宿主細胞は、種々の培地中で培養してよい。HamのF10(Sigma)、Minimal Essential Medium(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびDulbeccoのModified Eagle’s Medium(DMEM)(Sigma)等の市販の培地は、宿主細胞を培養するために好適である。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、もしくは第5,122,469号、WO 90/03430、WO 87/00195、または米国特許Re.30,985に記載された培地のいずれも、宿主細胞の培養培地として用いてよい。これらの培地のいずれにも、ホルモンおよび/またはその他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮細胞成長殖因子等)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝剤(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン等)、抗生剤(GENTAMYCIN(商標)薬物等)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースもしくは当量のエネルギー源を必要に応じて補ってよい。当業者に既知の他の任意の必要な補助物も、適切な濃度で含んでよい。温度、pH、その他の培養条件は、発現のために選択した宿主細胞とともに既に用いられたものであり、当業者には明白になる。
【0256】
[00285]組換え手法を用いる場合には、抗CD39/TGFβ Trapは細胞内で、細胞膜周辺腔で、産生され、または培地中に直接分泌することができる。抗CD39/TGFβ Trapが細胞内で産生される場合には、第1のステップとして、宿主細胞または溶解した断片の粒子状のデブリは、たとえば遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離する手順を記載している。簡単には、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下に約30分かけて細胞ペーストを解凍する。細胞デブリは遠心分離によって除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合には、そのような発現システムからの上清を、一般に市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえばAmiconまたはMilliporeのPellicon限外濾過ユニットを用いてまず濃縮する。タンパク質分解を阻害するためにPMSF等のプロテアーゼ阻害剤を前記ステップのいずれにも含ませ、外来の夾雑物の増殖を防止するために抗生剤を含ませてよい。
【0257】
[00286]細胞から調製した抗CD39/TGFβ Trapは、たとえばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAEセルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈降、塩析、およびアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製することができ、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製手法である。
【0258】
[00287]ある特定の実施形態では、固相に固定化されたプロテインAが、抗CD39/TGFβ Trapの免疫アフィニティ精製のために用いられる。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの好適性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンのFcドメインの種およびアイソタイプによる。プロテインAは、ヒトガンマ1、ガンマ2、またはガンマ4の重鎖に基づく抗体を精製するために用いることができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。全てのマウスアイソタイプおよびヒトガンマ3についてはプロテインGが推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:1567 1575(1986))。アフィニティリガンドが結合するマトリックスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスは、アガロースによって達成されるよりも速い流量および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合には、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラム上の分別、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上のクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)上のクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈降等のタンパク質精製のための他の手法も、回収すべき抗体に応じて利用可能である。
【0259】
[00288]任意の予備的な精製ステップに続いて、目的の抗体および夾雑物を含む混合物を、約2.5~4.5のpHで溶出緩衝液を用い、好ましくは低い塩濃度(たとえば約0~0.25Mの塩)で実施する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供してよい。
【0260】
医薬組成物
[00289]本開示は、抗CD39/TGFβ Trapおよび1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0261】
[00290]本明細書で開示する医薬組成物における使用のための薬学的に許容される担体には、たとえば薬学的に許容される液体、ゲル、もしくは固体の担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、麻酔剤、懸濁/分散剤、隔離剤もしくはキレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性補助物質、当技術分野で既知の他の成分、またはそれらの種々の組合せが含まれ得る。
【0262】
[00291]好適な成分には、たとえば抗酸化剤、充填材、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、または糖およびシクロデキストリン等の安定剤が含まれ得る。好適な抗酸化剤には、たとえばメチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、および/またはプロピルガレートが含まれ得る。本明細書で開示したように、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapおよびコンジュゲートを含む組成物におけるメチオニン等の1つもしくは複数の抗酸化剤の含有により、抗CD39/TGFβ Trapの酸化が低減される。この酸化の低減によって結合親和性の喪失が防止されまたは低減され、それにより抗体の安定性が改善され、保存期間が最大化される。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で開示した1つもしくは複数の抗CD39/TGFβ Trapおよびメチオニン等の1つもしくは複数の抗酸化剤を含む医薬組成物が提供される。抗CD39/TGFβ Trapをメチオニン等の1つもしくは複数の抗酸化剤と混合することによって、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapの酸化を防止し、保存期間を延長し、および/または効率を改善する方法がさらに提供される。
【0263】
[00292]さらに説明すると、薬学的に許容される担体には、たとえば注射用塩化ナトリウム、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、注射用滅菌水、もしくはデキストロースおよびラクテート化リンゲル注射液等の水性ビヒクル、植物由来の固定化油、綿実油、コーン油、ゴマ油、またはピーナツ油等の非水性ビヒクル、静細菌性または静真菌性の濃度の抗微生物剤、塩化ナトリウムもしくはデキストロース等の等張剤、リン酸塩もしくはクエン酸塩等の緩衝剤、重硫酸ナトリウム等の抗酸化剤、プロカイン塩酸塩等の局所麻酔剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはポリビニルピロリドン等の懸濁分散剤、Polysorbate80(TWEEN(登録商標)-80)等の乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)もしくはEGTA(エチレングリコール四酢酸)等の隔離剤もしくはキレート化剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸が含まれ得る。多数回投与用容器中の医薬組成物には、フェノール類もしくはクレゾール類、水銀化合物、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムを含む、担体として利用される抗微生物剤を添加してよい。好適な賦形剤には、たとえば水、食塩液、デキストロース、グリセロール、またはエタノールが含まれ得る。好適な非毒性補助物質には、たとえば湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、または酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、もしくはシクロデキストリン等の薬剤が含まれ得る。
【0264】
[00293]医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、ピル、カプセル、錠剤、持続放出製剤、または粉末であり得る。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体が含まれ得る。
【0265】
[00294]ある特定の実施形態では、医薬組成物は注射可能な組成物に製剤化される。注射可能な医薬組成物は、たとえば液体溶液、懸濁液、エマルジョン、を生成するために好適な液体溶液、懸濁液、エマルジョン、または固体形態等の任意の従来の形態で調製してよい。注射用の調製物には、即時注射可能な無菌かつ/または非発熱性の溶液、皮下注射用錠剤を含む使用直前に溶媒と即時混合できる凍結乾燥粉末等の無菌の乾燥した可溶性製品、即時注射可能な無菌の懸濁液、使用直前にビヒクルと即時混合できる無菌の乾燥した不溶性製品、ならびに無菌かつ/または非発熱性のエマルジョンが含まれ得る。溶液は水性または非水性であってよい。
【0266】
[00295]ある特定の実施形態では、単位用量の調製物がアンプル、バイアル、または針付きシリンジの中に包装される。非経口投与のための全ての調製物は、当技術分野で知られており実践されているように、無菌かつ非発熱性であるべきである。
【0267】
[00296]ある特定の実施形態では、無菌の凍結乾燥された粉末は、本明細書で開示した抗体または抗原結合性断片を好適な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、粉末または粉末から調製される再構成された溶液の安定性またはその他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含んでよい。用い得る賦形剤には、それだけに限らないが、水、デキストロース、ソルビタール、フルクトース、コーンシラップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、またはその他の好適な薬剤が含まれる。溶媒は、一実施形態ではほぼ中性のpHで、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはカリウム、またはその他の当業者には既知のそのような緩衝剤等の緩衝剤を含んでよい。引き続く溶液の無菌濾過およびそれに続く当業者には既知の標準的条件下における凍結乾燥によって、望ましい製剤が提供される。一実施形態では、得られる溶液は凍結乾燥のためのバイアルに分注される。各バイアルは、抗CD39/TGFβ Trap、またはその組成物の単一用量または多回用量を含み得る。用量または用量の組に必要な量より少量(たとえば約10%)多くバイアルを過剰充填することは、正確な試料取り出しおよび正確な投与を容易にするために許容される。凍結乾燥された粉末は、約4℃~室温等の適切な条件下で保存することができる。
【0268】
[00297]凍結乾燥された粉末を注射用水で再構成することによって、非経口投与における使用のための製剤が提供される。一実施形態では、再構成のために、無菌かつ/もしくは非発熱性の水またはその他の好適な液体担体を、凍結乾燥された粉末に添加する。正確な量は与えられる選択した療法に依存し、実験的に決定することができる。
【0269】
キット
[00298]ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、ならびに/または本明細書で提供される医薬組成物を含むキットを提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、ならびに第2の治療剤を含むキットを提供する。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤、抗がん薬物、放射線療法、免疫療法剤、抗血管形成剤、標的療法、細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート化剤、およびサイトカインからなる群から選択される。
【0270】
[00299]そのようなキットは、当業者には容易に明白になるように、所望であればたとえば1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む容器、追加の容器、その他の種々の従来の医薬キット成分の1つまた複数をさらに含み得る。投与すべき成分の量を示す、挿入物またはラベルとしての説明書、投与のためのガイドライン、および/または成分を混合するためのガイドラインも、キットに含ませることができる。
【0271】
使用の方法
[00300]本開示は、治療有効量の本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法をも提供する。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。本発明者らは、アデノシン経路のブロック(CD39の阻害による)およびTGFβシグナル伝達経路のブロック(TGFβ Trapを介して)を同時に行うことにより、対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害または状態の処置、防止または軽減において相乗効果が得られることを予想外に発見した。
【0272】
[00301]一部の実施形態では、CD39関連の疾患、障害、または状態は、CD39の発現または過発現によって特徴付けられる。一部の実施形態では、TGFβ関連の疾患、障害、または状態は、TGFβの発現または過発現によって特徴付けられる。
【0273】
[00302]ある特定の実施形態では、CD39関連の疾患、障害、または状態は、がんである。ある特定の実施形態では、がんはCD39を発現しているがんである。本明細書で用いる「CD39を発現している」がんは、がん細胞、腫瘍浸潤性免疫細胞もしくは免疫抑制細胞の中でCD39タンパク質を発現していること、またはがん細胞、腫瘍浸潤性免疫細胞もしくは免疫抑制細胞の中で正常細胞において予想されるよりも有意に高いレベルでCD39を発現していることにおいて特徴付けられるがんを意味する。対象からの試験生物学的試料の中のCD39の存在および/または量を決定するために、種々の方法を用いることができる。たとえば、試験生物学的試料を、発現されたCD39タンパク質に結合し、これを検出する抗CD39抗体またはその抗原結合性断片に曝露することができる。あるいは、qPCR、逆転写酵素PCR、マイクロアレイ、SAGE、FISH、その他の方法を用いて、核酸発現レベルでCD39を検出することもできる。一部の実施形態では、試験試料はがん細胞もしくは組織、または腫瘍浸潤性免疫細胞に由来する。参照試料は、健常もしくは非疾患個体から得られた対照試料、または試験試料を得た同じ個体からの健常もしくは非疾患試料であり得る。たとえば、参照試料は、試験試料(たとえば腫瘍)に隣接したまたはその付近の非疾患試料であり得る。
【0274】
[00303]ある特定の実施形態では、TGFβ関連の疾患、障害、または状態は、がんである。ある特定の実施形態では、がんはTGFβを発現しているがんである。本明細書で用いる「TGFβを発現している」がんは、がん細胞、腫瘍浸潤性免疫細胞もしくは免疫抑制細胞の中でTGFβタンパク質を発現していること、またはがん細胞、腫瘍浸潤性免疫細胞もしくは免疫抑制細胞の中で正常細胞において予想されるよりも有意に高いレベルでTGFβを発現していることにおいて特徴付けられるがんを意味する。
【0275】
[00304]本開示は、治療有効量の本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるTGFβのレベルおよび/または活性の上昇に関連する疾患を処置し、防止し、または軽減する方法をも提供する。
【0276】
[00305]対象からの試験生物学的試料の中のTGFβの存在および/または量を決定するために、種々の方法を用いることができる。たとえば、試験生物学的試料を、発現されたTGFβタンパク質に結合し、これを検出する抗TGFβ抗体またはその抗原結合性断片に曝露することができる。あるいは、qPCR、逆転写酵素PCR、マイクロアレイ、SAGE、FISH、その他の方法を用いて、核酸発現レベルでTGFβを検出することもできる。一部の実施形態では、試験試料はがん細胞もしくは組織、または腫瘍浸潤性免疫細胞に由来する。参照試料は、健常もしくは非疾患個体から得られた対照試料、または試験試料を得た同じ個体からの健常もしくは非疾患試料であり得る。たとえば、参照試料は、試験試料(たとえば腫瘍)に隣接したまたはその付近の非疾患試料であり得る。
【0277】
[00306]ある特定の実施形態では、疾患、障害、または状態は、がん、膵萎縮症、または線維症である。
[00307]ある特定の実施形態では、がんは肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、肛門がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、TまたはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、および腺癌からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、がんは白血病、リンパ腫、膀胱がん、神経膠腫、膠芽細胞腫、卵巣がん、黒色腫、前立腺がん、甲状腺がん、食道がん、または乳がんである。
【0278】
[00308]TGFβは、慢性腎臓病(CKD)の全てではないにしても、そのほとんどの形態において線維症を促進する主要な因子である。TGF-βのアイソフォームであるTGF-β1やその下流のシグナル伝達経路を阻害すると、様々な疾患モデルにおいて腎線維症が大幅に制限されるが、TGF-β1の過発現は腎線維症を誘発する。TGF-β1は、正準シグナル伝達経路(Smadベース)と非正準シグナル伝達経路(非Smadベース)の両方の活性化を介して線維症を誘導し、筋線維芽細胞の活性化、細胞外マトリックス(ECM)の過剰生産、ECM分解の阻害をもたらす。線維症の制御におけるSmadタンパク質の役割は複雑で、線維化促進作用と抗線維化作用(間葉系移行制御を含む)が競合し、TGF-β/Smadと他のシグナル伝達経路との間の複雑な相互作用がある。研究により、線維症におけるTGF-β1/Smadシグナル伝達の作用を制御する追加のメカニズムが特定され、これには短いノンコーディングRNA分子および長いノンコーディングRNA分子、DNAやヒストンタンパク質のエピジェネティック修飾が含まれている。TGF-β1が他のプロセスに関与しているため、TGF-β1を直接標的とした抗線維化療法は実現しそうにないが、TGF-β1が線維症を制御する様々な経路の理解を深めることにより、CKDにおける最も有害なプロセスを阻止する新規治療薬を開発する代替の標的が特定された。
【0279】
[00309]アデノシンは炎症や組織リモデリングに重要な役割を持ち、アデノシン受容体(A2AR)の活性化により皮膚線維症を促進する。細胞外アデノシンは、エクト酵素CD39とCD73によって連動して生成され、線維化を促進する。アデノシン軸は腎虚血再灌流障害(IRI)に関与し、CD39とCD73の作用によるアデノシンの生成は保護的である。しかし、アデノシンの慢性的な上昇は、腎線維症の発症に関連している。エビデンスは、CD39および/またはCD73の欠失が、コラーゲン含有量を減少させ、ブレオマイシン負荷後の皮膚肥厚および引張強度上昇を防止することを示した。皮膚線維症の特徴の減少は、CD39および/またはCD73欠損マウスにおいて、線維化促進のメディエーターであるトランスフォーミング成長因子-β1および結合組織成長因子の発現の減少、ならびに筋線維芽細胞集団の減少に関連していた。
【0280】
[00310]CD39およびTGF-βの阻害は、強皮症、肝線維症および腎線維症等の疾患における線維症の処置に有望であると仮説を立てた。
[00311]ある特定の実施形態では、線維症は、強皮症、腎線維症、肺線維症(たとえば、嚢胞性線維症、特発性肺線維症)、肝線維症(たとえば、架橋線維症、肝硬変)、脳線維症、関節線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、腎性全身性線維症、後腹膜線維症、および心筋線維症(たとえば、間質性線維症、置換性線維症)からなる群から選択される。一部の実施形態では、対象は、任意選択で非がん細胞または非免疫抑制細胞において通常見られるレベルより有意に高いレベルで、CD39および/またはTGFβを発現しているがん細胞または腫瘍浸潤性免疫細胞もしくは免疫抑制細胞を有すると同定されている。
【0281】
[00312]一部の実施形態では、免疫抑制細胞は、制御性T細胞である。制御性T細胞(「Treg」)は、in vitroでレスポンダーT細胞の増殖を優位に抑制し、in vivoで自己免疫疾患を阻害する能力を有する、Tリンパ球の別個の集団である。本開示のTregは、抑制特性を有するCD4 CD25 FoxP3T細胞であり得る。ある特定の実施形態では、本開示のTregは、CD4 Treg、特に、CD39を過発現するCD4 Tregである。
【0282】
[00313]一部の実施形態では、対象は、対照の対象に通常見られる制御性T細胞の活性と比較して、腫瘍微小環境において過剰活性な制御性T細胞を有すると同定されている。腫瘍微小環境における制御性T細胞の活性は、当技術分野における従来の方法、たとえば、T細胞上のCD25Foxp3の上方調節、TGFβおよびIL-10の分泌、CTL細胞傷害性の阻害等によって決定することができる。
【0283】
[00314]一部の実施形態では、対象は、免疫抑制の反転、または機能不全の疲弊したT細胞の反転から利益を得ることが予想される。
[00315]一部の実施形態では、疾患、障害、または状態は、自己免疫疾患または感染である。一部の実施形態では、自己免疫疾患は免疫性血小板減少症、全身性強皮症、硬化症、成人呼吸窮迫症候群、湿疹、喘息、シェーグレン症候群、アジソン病、巨細胞性動脈炎、免疫複合体性腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性血小板減少症、セリアック病、乾癬、皮膚炎、結腸炎、または全身性エリテマトーデスである。一部の実施形態では、感染はウイルス感染または細菌感染である。一部の実施形態では、感染はHIV感染、HBV感染、HCV感染、炎症性腸疾患、またはクローン病である。
【0284】
[00316]別の態様では、治療有効量の本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物を、疾患、障害、または状態の処置、防止、または軽減を必要とする対象に投与するステップを含む、CD39の活性および/またはTGFβの活性を調節することによる恩恵を受ける対象における疾患、障害、または状態を処置、防止、または軽減する方法が提供される。ある特定の実施形態では、疾患、障害、または状態は、上で定義したCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態である。
【0285】
[00317]本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapの治療有効量は、たとえば体重、年齢、過去の病歴、現在の投薬、対象の健康状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性、および有害な副反応、ならびに投与経路および疾患発生の程度等の当技術分野で既知の種々の因子に依存する。用量は、これらのおよびその他の状況または要求によって指示されるように、当事者(たとえば医師または獣医師)によって比例的に低減されまたは増加されてよい。
【0286】
[00318]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapは、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療有効用量で投与してよい。ある特定の実施形態では、投与用量は処置の経過にわたって変化してよい。たとえばある特定の実施形態では、初期の投与用量は引き続く投与用量より高くてよい。ある特定の実施形態では、投与用量は対象の反応に応じて処置の経過にわたって変動してよい。
【0287】
[00319]投薬レジメンは、最適の所望の応答(たとえば治療応答)が提供されるように調整してよい。たとえば、単一用量を投与してもよく、いくつかに分割した用量を経時的に投与してもよい。
【0288】
[00320]本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapは、当技術分野で公知の任意の経路、たとえば非経口(たとえば皮下、腹腔内、静脈内注入を含む静脈内、筋肉内、または皮内注射)または非-非経口(たとえば経口、鼻内、眼内、舌下腺、直腸、または局所)経路によって投与してよい。
【0289】
[00321]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapは、単独で、または治療有効量の第2の治療剤と組み合わせて、投与してよい。たとえば、本明細書で開示する抗CD39/TGFβ Trapは、第2の治療剤、たとえば化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート剤、およびサイトカインと組み合わせて投与してよい。
【0290】
[00322]本明細書で用いる用語「免疫療法」は、免疫系を刺激してがん等の疾患と闘わせるか、一般的な方法で免疫系を強化する療法の型を意味する。免疫療法の例には、チェックポイント調節剤、養子細胞移植、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、および治療用ワクチンが限定なく含まれる。
【0291】
[00323]「標的療法」は、がんに関連する特定の分子、たとえばがん細胞には存在するが正常な細胞には存在しない、もしくはがん細胞でより豊富に存在する特定のタンパク質、またはがんの成長および生存に寄与するがん微小環境における標的分子に作用する療法の型である。標的療法は治療剤を腫瘍に標的させ、それにより正常組織を治療剤の影響から救う。
【0292】
[00324]これらの実施形態のあるものでは、1つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与される本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapは、その1つもしくは複数の追加の治療剤と同時に投与してよく、またこれらの実施形態のあるものでは、抗CD39/TGFβ Trapおよび追加の治療剤は、同じ医薬組成物の部分として投与してよい。しかし、別の治療剤と「組み合わせて」投与される抗CD39/TGFβ Trapは、その薬剤と同時にもしくは同じ組成物中で投与されなくてもよい。別の薬剤の前にもしくはその後に投与される抗CD39/TGFβ Trapは、その抗CD39/TGFβ Trapおよび第2の薬剤が異なる経路を介して投与されたとしても、その語句が本明細書で使用されれば、その薬剤と「組み合わせて」投与されたと考えられる。可能な場合には、本明細書で開示した抗CD39/TGFβ Trapと組み合わせて投与された追加の治療剤は、その追加の治療剤の製品情報シートに列挙されたスケジュールに従って、またはPhysicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57版;Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57版(2002年11月)もしくは当技術分野で公知のプロトコルに従って、投与される。
【0293】
[00325]本開示は、CD39陽性細胞を本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapに曝露するステップを含む、CD39陽性細胞におけるCD39の活性を調節する方法をさらに提供する。一部の実施形態では、CD39陽性細胞は免疫細胞である。
【0294】
[00326]本開示は、TGFβ陽性細胞を本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapに曝露するステップを含む、TGFβ陽性細胞におけるTGFβの活性を調節する方法をさらに提供する。
【0295】
[00327]別の態様では、本開示は、試料を本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物と接触させるステップ、ならびに試料中のCD39の存在または量を決定するステップを含む、試料中のCD39および/またはTGFβの存在または量を検出する方法を提供する。
【0296】
[00328]別の態様では、本開示は、a)対象から得た試料を本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapおよび/または本明細書で提供される医薬組成物と接触させるステップ、b)試料中のCD39および/またはTGFβの存在または量を決定するステップ、ならびにc)CD39および/またはTGFβの存在または量を対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、またはステータスの存在または状態と相関させるステップを含む、対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を診断する方法を提供する。
【0297】
[00329]別の態様では、本開示は、CD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態の検出に有用な、任意選択で検出可能な部分とコンジュゲートした、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物を含むキットを提供する。キットは、使用説明書をさらに含んでよい。
【0298】
[00330]別の態様では、本開示は、対象におけるCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減するための医薬の製造における、ならびにCD39関連および/またはTGFβ関連の疾患、障害、または状態を診断するための診断試薬の製造における、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapおよび/または本明細書で提供される医薬組成物の使用をも提供する。
【0299】
[00331]別の態様では、本開示は、治療有効量の本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるCD39のATPアーゼ活性を低減させることによって処置可能な疾患を処置し、防止し、または軽減する方法を提供する。たとえば、CD39を発現しているがん細胞、腫瘍浸潤性免疫細胞、免疫抑制細胞のATPアーゼ活性を低減させるために、本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trapを投与してよい。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象はがん、膵萎縮症、線維症、自己免疫疾患、および感染症からなる群から選択される疾患、障害、または状態を有する。
【0300】
[00332]別の態様では、本開示は、治療有効量の本明細書で提供される抗CD39/TGFβ Trap、および/または本明細書で提供される医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるT細胞、単球、マクロファージ、DC、APC、NKおよび/またはB細胞の活性のアデノシン媒介阻害に関連する疾患を処置し、防止し、または軽減する方法を提供する。
【0301】
[00333]以下の実施例は、特許請求する発明をより良く説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。以下に記載する全ての特定の組成物、材料、および方法は全体としてまたは部分的に、本発明の範囲に含まれる。これらの特定の組成物、材料、および方法は本発明を限定することを意図しておらず、本発明の範囲に含まれる特定の実施形態を説明するのみである。当業者であれば、発明の能力を行使することなく、また本発明の範囲から逸脱せずに、等価の組成物、材料、および方法を開発することができる。本発明の境界内に留まりつつ、本明細書に記載した手順の中で多くの変形を行うことができることが理解されよう。そのような変形が本発明の範囲に含まれることは、本発明者らの意図である。
【実施例
【0302】
実施例1.材料の生成
[00334]1.1.参照抗体の生成
[00335]抗CD39参照抗体は、公開された配列に基づいて生成した。抗体9-8Bは特許出願WO 2016/073845A1に開示されており、その重鎖および軽鎖の可変領域の配列はそれぞれ配列番号46および48として本明細書に含まれている。抗体T895は抗体31895として特許出願WO 2019/027935A1に開示されており、その重鎖および軽鎖の可変領域の配列はそれぞれ配列番号55および57として本明細書に含まれている。抗体I394は特許出願WO 2018/167267A1に開示されており、その重鎖および軽鎖の可変領域の配列はそれぞれ配列番号113および114として本明細書に含まれている。抗体9-8B、T895、およびI394の重鎖および軽鎖の可変領域を下の表10に示す。参照抗体をコードするDNAをExpi293細胞(Invitrogen)中でクローニングし、発現させた。細胞培養培地を収集して遠心分離し、細胞ペレットを除去した。回収した上清をプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(MabselectSure、GE Healthcare)で精製して、参照抗体調製物を得た。
【0303】
【表13】
【0304】
[00336]1.2.ヒト、カニクイザル、およびマウスのCD39安定発現細胞株の生成
[00337]それぞれ全長のヒトCD39(NP_001767.3)、カニクイザルCD39(XP_015311944.1)、およびマウスCD39(NP_033978.1)をコードするDNA配列を発現ベクター中にクローニングし、続いてHEK293細胞中でトランスフェクトし発現させた。それぞれヒトCD39、カニクイザルCD39、およびマウスCD39を発現しているトランスフェクトされた細胞を選択培地中で培養した。ヒトCD39、カニクイザルCD39、またはマウスCD39を安定的に発現している単一細胞クローンを限界希釈法によって単離した。続いて細胞を、抗ヒトCD39抗体(BD、Cat#555464)、抗カニクイザルCD39(9-8B)、抗マウスCD39(Biolegend、Cat#143810)を用いるFACSによってスクリーニングした。
【0305】
[00338]同様にして、ヒトCD39、カニクイザルCD39、およびマウスCD39発現プラスミドでトランスフェクトしたCHOK1細胞(Invitrogen)を選択培地中で培養した。ヒトCD39、カニクイザルCD39、またはマウスCD39を安定的に発現している単一細胞クローンを限界希釈法によって単離し、続いて抗ヒトCD39抗体、抗カニクイザルCD39抗体、または抗マウスCD39抗体を用いるFACSによってスクリーニングした。
【0306】
[00339]安定な細胞株をそれぞれHEK293-hCD39、HEK293-cynoCD39、HEK293-mCD39、CHOK1-hCD39、CHOK1-cynoCD39、およびCHOK1-mCD39と表記した。これらの全ては高い発現およびATPアーゼ活性を示した。
【0307】
[00340]1.3.組換えタンパク質の生成
[00341]ヒトCD39の細胞外ドメイン(ECD)をコードするDNA配列を発現ベクター中にクローニングし、HEK293細胞中にトランスフェクトして、組換えECDタンパク質を発現させた。
【0308】
実施例2.抗体の生成
[00342]2.1.免疫ならびにハイブリドーマの生成およびスクリーニング
[00343]CD39に対する抗体を生成するため、Balb/cおよびSJL/Jマウス(SLAC)を、組換え発現させたヒトCD39抗原もしくはその断片、または全長のヒトCD39をコードするDNA、および/またはヒトCD39を発現する細胞で免疫した。免疫プロトコルの経過にわたって、尾静脈または後眼窩での採血によって得られた血漿または血清試料によって免疫応答をモニターした。抗CD39抗体の十分なタイターを有するマウスを融合に用いた。免疫したマウスの脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウスミエローマ細胞株(SP2/0)に融合させた。得られたハイブリドーマを、ヒトCD39 ECD組換えタンパク質を用いるELISAアッセイによって、またはヒトCD39を安定的に発現しているCHOK1-hCD39細胞を用いるAcumenアッセイ(TTP Labtech)によって、CD39特異的抗体の産生についてスクリーニングした。hCD39に特異的なハイブリドーマクローンをFACSおよび酵素活性ブロッキングアッセイによって確認し、サブクローニングして安定なハイブリドーマクローンを得た。1~2回のサブクローニングの後、抗体の産生のためにハイブリドーマモノクローンを増殖させ、ストックとして凍結した。
【0309】
[00344]抗体を分泌するハイブリドーマを限界希釈法によってサブクローニングした。安定なサブクローンをin vitroで培養し、特徴付けのために組織培養培地中で抗体を生成させた。1~2回のサブクローニングの後、抗体の産生のためにハイブリドーマモノクローンを増殖させた。
【0310】
[00345]約14日間の培養の後、ハイブリドーマ細胞培養培地を収集してプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(GE)によって精製した。ハイブリドーマ抗体クローンをそれぞれmAb13、mAb14、Ab19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35と表記した。
【0311】
実施例3.抗体の特徴付け
[00346]3.1.抗体
[00347]ハイブリドーマ抗体クローンmAb13、mAb14、Ab19、mAb21、mAb23、mAb34、およびmAb35を、以下に記載するように一連の結合および機能性アッセイにおいて特徴付けた。
【0312】
[00348]3.2.ヒトCD39、カニクイザルCD39、およびマウスCD39に対する結合親和性
[00349]FACSを用いて、天然に(SK-MEL-28)もしくは組換えによって(CHOK1-hCD39、CHOK1-cynoCD39、およびCHOK1-mCD39)CD39を発現している細胞株、または陰性対照としてCD39発現を欠く細胞(CHOK1-blank)への抗体の結合を決定した。
【0313】
[00350]CHOK1-hCD39、CHOK1-cCD39、CHOK1-mCD39、およびCHOK1-blank細胞を、ATCCの手順に従って培養培地中で維持した。細胞を収集し、細胞密度3×10個/mlでブロッキング緩衝液中に再懸濁した。細胞を100μl/ウェル(3×10個/ウェル)で96ウェルのFACSプレートに移し、プレートを遠心分離し、FACS緩衝液(PBS、1% FBS、0.05% Tween(登録商標)-20)で2回洗浄した。抗CD39抗体の4倍段階希釈をFACS緩衝液中で30μg/mlから始めて調製した。参照抗体9-8Bおよびマウス/ヒト対照IgGを、それぞれ陽性および陰性の対照として用いた。細胞を100μL/ウェル希釈抗体中で再懸濁し、プレートを4℃で60分インキュベートした。プレートをFACS緩衝液で洗浄し、Alexa-Fluor(登録商標)488ラベル二次抗体(FACS緩衝液中1:1000)を各ウェルに加えて、4℃で30分インキュベートした。プレートをFACS緩衝液で洗浄し、細胞を100μL/ウェルのPBSで再懸濁した。次いで細胞をFACSVerse(商標)で解析し、平均蛍光強度を決定した。抗体濃度の範囲を試験することによって、CD39発現細胞について完全結合曲線を生成した。Prismソフトウェアを用いて、各抗体について見かけの親和性を決定した。
【0314】
[00351]同様に、ヒトCD39発現細胞SK-MEL-5、SK-MEL-28、またはMOLP-8を勾配濃度の抗CD39抗体とともに4℃で30分インキュベートした。FACS緩衝液を用いて細胞を3回洗浄し、次いで蛍光標識二次抗体(ヤギ抗マウスIgGまたはヤギ抗ヒトIgG)と4℃で30分インキュベートした。細胞を3回洗浄し、次いでFACS緩衝液中に再懸濁して、BD Celestaでフローサイトメトリー解析によって解析した。データはGraphPad Prism8.02を用いてプロットし、解析した。
【0315】
[00352]精製された7種のハイブリドーマ抗体の結合親和性を、既知の抗CD39抗体9-8Bと比較して表11に要約する。全てのハイブリドーマ抗体は用量依存的にヒトおよびカニクイザルのCD39に結合したが、FACS研究においていずれもマウスCD39を認識しなかった。
【0316】
【表14】
【0317】
[00353]3.3.ATPアーゼ阻害の検出
[00354]CD39発現細胞、SK-MEL-5およびMOLP-8をPBS緩衝液で洗浄し、抗体の勾配とともに37℃で30分インキュベートした。50mMのATPを各ウェルに加え、細胞とともに16時間インキュベートした。上清を収集し、ATPの分解によるオルソリン酸塩産物をMalachite Green Phosphate Detection Kit(R&D systems、カタログ#DY996)により、製造者のマニュアルに従って測定した。アイソタイプおよび/または9-8Bを対照として用いた。データはGraphPad Prism8.02を用いてプロットし、解析した。EC50はこのアッセイにおいてシグナルの50%に達する表示した抗体の濃度である。
【0318】
[00355]表11に要約したように、精製した7種のハイブリドーマ抗体の全てが、参照抗体9-8Bと比較して良好なATPアーゼ阻害活性を有していた。
[00356]3.4.ATP媒介T細胞増殖抑制アッセイ
[00357]CSFEで標識し、抗CD3および抗CD28で刺激したヒトT細胞を、ATPの存在下で抗CD39抗体またはアイソタイプ対照とともにインキュベートした。T細胞の増殖はCSFE希釈によるFACSで解析した。mIgG2aをアイソタイプ対照として用いた。
【0319】
[00358]選択した抗CD39抗体mAb21およびmAb23のT細胞増殖活性を図1に示し、表11に要約した。EC50はこのアッセイにおいてシグナルの50%に達する表示した抗体の濃度である。両方の抗体が用量依存的にT細胞の増殖を増強した。即ち、両方の抗体がT細胞の増殖に対するATP媒介阻害をブロックした。
【0320】
[00359]3.5.エピトープビニング
[00360]Alex488標識キットを用いて抗CD39抗体を標識し、一連の濃度で希釈して、CHOK1-hCD39細胞と混合し、FACSを用いて結合のEC50を試験した。非標識抗体の標識抗体に対するブロッキング効率を試験した。簡単には、単核CHOK1-hCD39細胞を2×10個/mlに調製して50μl/ウェルで96ウェルプレートに播種し、最終体積100μlまで抗体勾配と混合し、等量のAlex488標識抗体をEC80の2倍の濃度で加えた。96ウェルプレートを4℃で1時間インキュベートし、遠心沈殿して、200μlのFACS緩衝液で3回洗浄した。FACScelestaマシンでFACS解析を実施し、データをFlowjoソフトウェアで解析した。ブロッキング率を計算し、非競合ウェル(Alex488標識抗体のみ)と比較して80%を超える競合率を有する抗体を1つのエピトープ群に割り付けた。
【0321】
[00361]競合の結果を表12に示す。競合の結果に基づいて、表11に示すように、4種の抗CD39ハイブリドーマ抗体(mAb14、mAb19、mAb21、mAb23)を4つの異なるエピトープ群に分類することができる。具体的には、抗CD39抗体mAb19とmAb21は高度に類似したエピトープについて競合し、表11に示すようにエピトープ群Iに分類される。mAb14は試験した他のいずれの抗体とも競合せず、表11に示すようにエピトープ群IVに分類された。mAb23はmAb19およびmAb21と交差競合を示し、表11のエピトープ群IIに分類された。
【0322】
【表15】
【0323】
[00362]3.6.ハイブリドーマのシーケンシング
[00363]モノクローナルハイブリドーマ細胞からRNAを単離し、市販のキットを用いてcDNAに逆転写した。次いでcDNAを鋳型として用い、Mouse Ig-Primer Set(Novagen)のプライマーで重鎖および軽鎖の可変領域を増幅した。正しいサイズのPCR産物を収集して精製し、好適なプラスミドベクターでライゲートした。ライゲーション産物をDH5αコンピテント細胞にトランスフォームした。クローンを選択し、挿入された断片をDNAシーケンシングによって解析した。
【0324】
[00364]ハイブリドーマ抗体の可変領域配列を本明細書の表2に提供する。
実施例4.キメラ抗体の生成および特徴付け
[00365]4.1.キメラ抗体の生成および産生
[00366]選択した4種のハイブリドーマ抗体(mAb14、mAb19、mAb21、およびmAb23)の可変領域をコードするDNAを合成し、前もってヒトIgG定常遺伝子を含ませた発現ベクターにサブクローニングした。組換えタンパク質の発現のためにベクターを哺乳動物細胞にトランスフェクトし、発現させた抗体をプロテインAアフィニティカラムで精製した。得られたキメラ抗体を本明細書ではc14、c19、c21、およびc23と称し、ここで接頭辞「c」は「キメラ」を示し、数字はハイブリドーマ抗体のクローンを示す。たとえば数「14」はハイブリドーマ抗体mAb14からであることを示す。
【0325】
[00367]4.2.キメラ抗体の特徴付け
[00368]精製された4種のキメラ抗体を、T細胞の増殖に対するATP媒介抑制をブロックする活性について試験した(実施例3.4に記載した方法と同様)。図2に示すように、抗CD39キメラ抗体c14、c19、c21、およびc23は用量依存的に(100nM、10nM、1nM、0.1nM、0.01nM、および0.001nMの範囲の濃度で)CD4T細胞の増殖に対する抑制をブロックした。CFSE-CD4TおよびhIgG4をそれぞれATP媒介T細胞増殖の陽性および陰性の対照として用いた。
【0326】
[00369]精製された4種のキメラ抗体を、ATP誘導樹状細胞(DC)活性化およびATPの存在下の成熟を増強する能力についてさらに試験した。ATPは、単球に由来する樹状細胞の上のP2Y11受容体の刺激を通してDCの成熟を誘導する。
【0327】
[00370]簡単には、健常ヒト血液からヒト単球を単離し、GM-CSFおよびIL-4の存在下で6日間、MoDCに分化させた。次いで分化したMoDCを異なる用量の4種の抗CD39キメラ抗体と、ATPの存在下でさらに24時間、処置した。次いでDCの成熟をFACSアッセイでCD86、CD83、およびHLA-DRの発現を解析することによって評価した。
【0328】
[00371]図3に、FACSによるDC表面上のCD39のレベルを示した。図4A図4Cには、それぞれ抗体処置後のCD86(図4A)、CD83(図4B)、およびHLA-DR(図4C)の発現を示した。ATP誘導DC成熟は、ビヒクル処置と比較して増加したCD86、CD83、およびHLA-DRの発現によって示された。4種の抗CD39抗体c14、c19、c21、およびc23の全ては、ATP誘導DC成熟の増強に対して顕著な効果を示した。
【0329】
[00372]キメラ抗体を、抗腫瘍活性についてin vivoでも試験した。NOD-SCIDマウスの右後側腹領域に、腫瘍発生のためのマトリゲル(1:1)と混合した0.1mlのPBS中の腫瘍細胞(10×10個)を皮下接種した。平均腫瘍サイズがほぼ80mmに達した時にマウスをランダムに群別した。処置はランダム化と同じ日に30mg/kgで開始し、毎週2回投与した。腫瘍体積はランダム化の後、週2回、キャリパーを用いて二次元で測定し、式:V=(L×W×W)/2を用いて体積をmmで表した。ここでVは腫瘍体積、Lは腫瘍の長さ(最長の腫瘍寸法)、Wは腫瘍の幅(Lに直角な最長の腫瘍寸法)である。投薬ならびに腫瘍および体重の測定は層流キャビネット内で行った。データはGraphpad Prismによる双方向ANOVAを用いて解析した。
【0330】
[00373]キメラ抗CD39抗体c23の腫瘍成長結果を図5に示した。c23のヒトIgG1アイソタイプとIgG4アイソタイプの両方が得られ、試験した。c23-hIgG4とc23-hIgG1の両方のキメラ抗体はビヒクル群と比較して抗腫瘍効率を示し、c23-hIgG4とc23-hIgG1の間に有意差は同定されなかった。
【0331】
実施例5.抗体のヒト化および親和性成熟
[00374]5.1.ヒト化
[00375]キメラ抗体c23およびc14をヒト化のためのクローンとして選択した。抗体配列をヒト生殖細胞配列と整列させて最適フィットモデルを同定した。元のマウス抗体配列との相同性に基づき、ヒト化のための鋳型として最良整合したヒト生殖細胞配列を選択した。次いでマウス抗体配列からのCDRを、抗体の上部および中央のコア構造を維持するための残基とともに鋳型にグラフトした。最適化された変異をフレームワーク領域に導入して、ヒト化重鎖可変領域のバリアントおよびヒト化軽鎖可変領域のバリアントを生成し、これらを混合して整合させ、多重ヒト化抗体クローンを提供した。グラフトおよび変異の後、ヒト化抗体はヒトCD39発現細胞に同様の結合親和性を保持していた。ヒト化抗体を、CD39 ATPアーゼ阻害アッセイおよびin vitroの免疫細胞活性化アッセイによってさらに評価した。ヒト化抗体のいくつかについてはin vivo研究も行った。
【0332】
[00376]c23について全部で31種のヒト化抗体クローンが得られ、ヒト化c23重鎖可変領域の7種のバリアント(即ちhu23.VH_1、hu23.VH_2、hu23.VH_3、hu23.VH_4、hu23.VH_5、hu23.VH_6、およびhu23.VH_7)ならびにヒト化c23軽鎖可変領域の7種のバリアント(即ちhu23.VL_1、hu23.VL_2、hu23.VL_3、hu23.VL_4、hu23.VL_5、hu23.VL_6、およびhu23.VL_7)を混合し、整合させた。31種のヒト化抗体クローンを上の表9ならびに下の表13、表14、および表15に示すようにhu23.H1L1、hu23.H1L2等と表記した。ここで接頭辞「hu」は「ヒト化」を示し、接尾辞、たとえば「H1L1」はhu23.VH_1バリアントおよびhu23.VL_1バリアントの可変領域を有するc23ヒト化抗体クローンの一連番号を表す。
【0333】
【表16】
【0334】
【表17】
【0335】
【表18】
【0336】
[00377]同様に、c14について全部で16種のヒト化抗体が得られ、ヒト化c14重鎖可変領域の4つのバリアント(即ちhu14.VH_1、hu14.VH_2、hu14.VH_3、およびhu14.VH_4)ならびにヒト化c14軽鎖可変領域の4つのバリアント(即ちhu14.VL_1、hu14.VL_2、hu14.VL_3、およびhu14.VL_4)を混合し、整合させた。16種のヒト化抗体クローンを同じ表象によって下の表16に示すようにhu14.H1L1、hu14.H1L2等と表記した。
【0337】
【表19】
【0338】
[00378]c23について酵母ディスプレイによっていくつかのヒト化抗体クローンも得た。簡単には、マウス重鎖および軽鎖の配列をヒト抗体配列の社内のデータベースと整列させた。重鎖および軽鎖のCDRグラフト化のため、それぞれ最大の相同性を有する鋳型であるIGHV1-301およびIGKV3-1101を選択した。復帰変異は酵母ディスプレイを用いる高スループット法によって同定した。具体的には、CDRのコンフォメーションに寄与する位置(Vernierゾーン残基)を同定し、DNA合成の間に鋳型およびマウス残基の両方をそれぞれの位置に組み込むことによって復帰変異のライブラリーを創出した。ヒトCD39タンパク質へのトップバインダーのシーケンシングによって最終の候補を同定した。酵母ディスプレイを介して得られたc23についてのヒト化抗体をhu23.201(配列番号146/111のVH/VLを有する)、hu23.203(配列番号146/112のVH/VLを有する)、hu23.207(配列番号147/111のVH/VLを有する)、およびhu23.211(配列番号39/63のVH/VLを有する)と表記する。
【0339】
[00379]表13、表14、表15、および表16のヒト化抗体を組換えで産生して結合親和性について試験し、これらがヒトCD39への特異的結合を保持できることが示された。比較的高い親和性を有するヒト化抗体を、CD39ブロッキングアッセイおよびin vitro免疫細胞活性化アッセイを含む機能性アッセイにおいてさらに評価した。
【0340】
[00380]特に、ヒト化抗体hu23.H5L5、hu23.201、hu14.H1L1、ならびに参照抗体I394およびT895を、Biacore(GE)を用いてヒトCD39に対する結合親和性について特徴付けた。簡単には、Human Antibody Caputure Kit(GE)を用いて試験すべき抗体をCM5チップ(GE)に捕捉した。6×Hisタグ付けしたヒトCD39の抗原を多重用量のため段階希釈し、30μl/分で180秒、注入した。解離のため緩衝液流量を400秒、保った。チップの再生のため3MのMgClを用いた。会合および解離の曲線は1:1結合モデルに合致し、それぞれの抗体についてKa/Kd/K値を計算した。試験した抗体の親和性データを下の表17に要約する。
【0341】
【表20】
【0342】
[00381]さらに、Octetアッセイ(Creative Biolabs)を用いて製造者のマニュアルに従い、ヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L2、ならびに参照抗体I394、T895、および9-8Bを、ヒトCD39に対する結合親和性について特徴付けた。簡単には、抗体をセンサーにカプリングし、次いでセンサーをCD39の勾配に浸漬した(開始時200nM、2倍希釈により全体で8用量)。これらの結合応答をリアルタイムで測定した。結果は全体的に合致した。試験した抗体の親和性データを下の表18に要約する。
【0343】
【表21】
【0344】
[00382]さらに、c23抗体のヒト化抗体クローン(たとえばhu23.H5L5)のHCDR2において、脱アミド化を受けやすい1つのNGモチーフ(N55G56)が同定された。脱アミド化部位を除去するため、N55またはG56に様々な変異を導入し、N55およびG56はそれぞれ種々の残基に変異させることができ、しかもヒトCD39への特異的結合を保持することが見出された。たとえば、N55をG、S、またはQによって一点のみ置き換えると、抗体結合親和性は保持され、かつヒトCD39への結合には不利な影響がないことが見出された。同様に、G56をAまたはDで置き換えると、変異抗体もヒトCD39への特異的結合および結合親和性を保持していた。その他の変異も同様に効果があると予想された。
【0345】
[00383]5.2.結合特異性の検出
[00384]精製されたヒト化抗体hu23.H5L5のENTPDアーゼファミリーメンバーに対する結合特異性をELISAアッセイによって検出した。簡単には、ENTPD1(即ちCD39)およびENTPD2/3/5/6タンパク質を96ウェルのELISAプレートに4℃で一夜コートした。翌日ELISAプレートを洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS中1%BSAおよび0.05% Tween(登録商標)20)200μl/ウェルで2時間ブロッキングした。次いでhu23.H5L5の勾配を2連にしてウェルに入れ、抗hIgG-HRPで染色した。プレートの洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、2N HClで停止した。プレートリーダーを用いてOD450を記録し、Graphpad Prismによってプロットした。hu23.H5L5の結合特異特性を図6に示す。図6Aより、ヒト化抗体hu23.H5L5はヒトCD39に特異的に結合するが、ENTPD2/3/5/6タンパク質のいずれにも結合しないことが分かる。図6Bは、陰性対照hIgG4がENTPD1/2/3/5/6タンパク質のいずれにも結合しないことを示している。
【0346】
[00385]5.3.ヒト化抗体の特徴付け
[00386]c23のヒト化抗体の結合親和性をFACSにより、実施例3.2に記載したものと同様の方法を用いて決定した。良好な結合親和性を示すc23ヒト化抗体クローンを下の表19および表20に列挙し、また図7A図7B、および図8にも示す。EC50はこのアッセイにおいてシグナルの50%に達する表示した抗体の濃度である。
【0347】
【表22】
【0348】
【表23】
【0349】
[00387]選択したc23のヒト化抗体を、ATPアーゼ阻害アッセイで(実施例3.3に記載したように)SK-MEL-28細胞について試験した。表示した抗体の阻害プロットを図9Aおよび図9Bに示し、表21に要約する。さらなるバリデーションのためにhu23.H5L5およびhu23.201を選択した。
【0350】
【表24】
【0351】
[00388]c14のヒト化抗体の結合親和性をFACSにより、ヒトCD39を発現するMOLP-8細胞を用い、実施例3.2に記載したものと同様の方法を用いて決定した。
[00389]良好な結合親和性を示すc14のヒト化抗体クローンを図10A図10B、および図10Cに示した。EC50は表22に要約した。
【0352】
【表25】
【0353】
[00390]5.4.エピトープビニング
[00391]選択したヒト化抗体を競合結合について試験した(実施例3.5に記載した方法)。ヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1と参照抗体のエピトープビニングの結果を図19Aに示した。
【0354】
[00392]競合の結果(図19Aに示す)に基づいて、2種のヒト化抗CD39抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1が2つの異なるエピトープ群に分類できた(図19Bを参照)。具体的には、抗CD39抗体hu23.H5L5は高度に類似したエピトープについて参照抗体I394、T895、および9-8Bと競合し、エピトープ群Iに分類された。hu14.H1L1、c34、およびc35はT895と部分的に競合する他には試験した他のいずれの抗体とも競合せず、エピトープ群IIに分類された。
【0355】
[00393]5.5.最適化されたヒト化抗体の特徴付け
[00394]5.5.1 hu23.H5L5によるCD39の封鎖は、細胞外ATP(eATP)の存在下でヒトT細胞の増殖を改善した。
【0356】
[00395]抗CD3抗体および抗CD28抗体で刺激したヒトPBMCを、ATPの存在下で、それぞれ25nMのヒト化抗CD39抗体hu23.H5L5およびビヒクルとともにインキュベートした。それぞれIL-2およびIFN-γの分泌の検出のために細胞培養上清を回収した。CD4T細胞およびCD8T細胞の増殖を5日目にFACSによりCell Trace Violet染料希釈によって解析した。
【0357】
[00396]図11A図11Dに示すように、hu23.H5L5は濃度25nMでCD4およびCD8T細胞の増殖を有意に増強し、それらのIL-2およびIFN-γの産生を活性化させた。図11A図11B、および図11Dに示すように、PBMCでのT細胞の活性化の増強において、hu23.H5L5はI394よりも有意に高い活性を示した。
【0358】
[00397]ヒトCD8T細胞も健常ドナーのPBMCから単離し、次いで細胞増殖染料で標識し、抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化し、異なる用量のヒト化抗CD39抗体hu23.H5L5または参照抗体I394で全処置期間を5日として処置し、CD39封鎖処置の開始後3日目に200μMのATPを細胞に加えた。5日目にフローサイトメトリーを用いてCD8T細胞の増殖%、CD25細胞の%、および生細胞の%を解析した。
【0359】
[00398]図23A図23Cに示すように、hu23.H5L5は、eATPによって阻害されたヒトCD8T細胞の増殖を顕著に反転させた。
[00399]ヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1の結合親和性を、様々な細胞についてFACSにより、実施例3.2に記載したものと同様の方法に従って試験した。
【0360】
[00400]図12A図12Eに、SK-MEL-5(図12A)、SK-MEL-28(図12B)、MOLP-8(図12C)、CHOK1-cynoCD39(図12D)、およびCHOK1-mCD39(図12E)に対する抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1の結合親和性をそれぞれ示す。参照抗体T895およびI394を対照抗体として並行して試験した。図12に示し、表23に要約するように、抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1の両方は用量依存的にかつナノモル未満もしくはナノモルのレベルのEC50による類似した親和性で、ヒトおよびカニクイザルのCD39発現細胞に結合した。これらの抗体のいずれもFACS研究でマウスCD39を認識しなかった。それぞれの抗体について細胞の間で異なる最大シグナル(平均蛍光強度、MFI)は、それらの発現レベルの相違によると考えられる。
【0361】
【表26】
【0362】
[00401]図13に、hu23.H5L5が参照抗体T895およびI394と同様にSK-MEL-5細胞(図13A)またはMOLP-8細胞(図13B)におけるCD39 ATPアーゼ活性をブロックしたことを示す(実施例3.3に記載した方法)。結果は表24に要約した。
【0363】
[00402]hu23.H5L5はSK-MEL-5細胞で70pM、MOLP-8細胞で330pMの酵素ブロッキングIC50を示し、参照抗体T895およびI394と同様またはこれらよりやや良好であった。9-8Bはこのアッセイでは非ブロッカーとして同定された。
【0364】
【表27】
【0365】
[00403]5.5.2 hu23.H5L5によるCD39の封鎖は、ATP媒介単球活性化を増強した。
[00404]ヒト化抗体hu23.H5L5を、ATP媒介単球活性化アッセイでも試験した。ATP媒介炎症促進活性は、単球を含む多種の免疫細胞型の機能の制御において重要な役割を有する。CD39の封鎖がATP媒介単球活性化を増強できるか否かを評価するため、健常ヒト血液からヒト単球を精製し、次いでATPの存在下で、0.2nM~100nMの範囲の種々の濃度で抗CD39抗体とインキュベートした。hu23.H5L5は0.2nM、即ち試験した最低の濃度で、単球活性化の誘導に効果的であることが示された。単球活性化はFACSアッセイにより、CD80(図14A)、CD86(図14B)、およびCD40(図14C)の発現を解析することによって評価した(hu23.H5L5の濃度は50nMである)。参照の抗CD39抗体I394およびT895を対照として用い、hIgG4をアイソタイプ対照として用いた。
【0366】
[00405]結果を図14に示す。ATP単独による刺激はCD80およびCD86の上方制御された発現を示し、単球の活性化が示された。抗CD39ヒト化抗体hu23.H5L5は、参照抗体I394による増強と同程度のレベルでのCD80、CD86、およびCD40の上方制御によって実証されるように、ATP媒介単球活性化をさらに増強した。参照抗体T895はATP誘導活性化単球に対して顕著な効果を示さなかった。
【0367】
[00406]5.5.3 hu23.H5L5によるCD39の封鎖は、ATP媒介DC活性化を増強した。
[00407]選択したヒト化抗体hu23.H5L5を、ATP媒介DC活性化アッセイにおいても試験した(実施例4.2に記載した同様の方法に従って)。簡単には、FACSアッセイによってCD83の発現を解析することによってDCの成熟を評価した。ATPは、CD83の増加した発現を示すことによって、DCの成熟を誘導した(図15A)。hu23.H5L5は0.2nMという低いレベルから開始して用量依存的にCD83の発現を増加させ、0.6nMの抗体レベルでCD83の発現を顕著に増加させた。これは参照抗体T895およびI394のいずれよりも強力である。
【0368】
[00408]T細胞の活性化に対するATP媒介DC活性化の結果的な効果をさらに評価するために、ATP活性化DCを洗浄し、次いで混合リンパ球反応(MLR)のために同種T細胞とインキュベートした。T細胞の増殖(図15B)および活性化T細胞からのIFN-γの産生を解析した(図15C)。
【0369】
[00409]参照抗体I394およびT895比較して、抗CD39抗体hu23.H5L5はATP誘導DC成熟の増強に対して用量依存的かつ顕著な効果を示した。参照I394は同様であったがやや弱い活性を示した。一方T895の効果は極めて軽度であった。一貫して、図15Bおよび図15Cに示すように、抗CD39ブロッキング抗体hu23.H5L5によって増強されたATP媒介MoDC成熟により、より高いT細胞の増殖およびMLRアッセイにおけるIFN-γの産生がもたらされた。
【0370】
[00410]5.5.4 hu23.H5L5によるCD39の封鎖は、LPS刺激によって誘導されたヒトマクロファージのIL1βの放出を促進した。
[00411]健常ヒトPBMCからヒトCD14T細胞を単離し、次いで富化したCD14単球を2×10個/ウェルの密度で6ウェルのプレートに播種し、100ng/mLのヒトGM-CSFと6日間培養して、M1様マクロファージを生成した。in vitroで分化させたマクロファージを、増加する用量のhu23.H5L5または参照抗体I394と1時間処置し、続いて10ng/mLのLPSで3時間刺激し、800μMのATPを2時間加えた。細胞培養上清中のIL-1βをELISAによって定量した。
【0371】
[00412]結果を図20に示す。アステリスクはそれぞれの条件の間の有意差を示す。図20に示すように、hu23.H5L5はLPS刺激によって誘導されたヒトマクロファージのIL1βの放出を顕著に促進し、hu23.H5L5はLPS刺激によって誘導されたヒトマクロファージのIL1βの放出の促進において参照抗体I394より有意に高い活性を示した。
【0372】
[00413]5.6.in vivo研究
[00414]ヒト化抗体hu23.H5L5およびhu14.H1L1の効果をMOLP-8異種移植マウスについて実施例4.2に記載した方法に従って決定した。
【0373】
[00415]結果を図16に示す。抗CD39抗体の全ては、ビヒクル群と比較して腫瘍の成長を阻害した。I394について観察された効率は、hu23.H5L5およびhu14.H1L1を含む他の抗体よりもやや弱かった。
【0374】
[00416]ヒト化抗体hu23.H5L5の抗腫瘍効率も、in vivoでPBMC養子動物モデル(NCGマウス、MOLP-8細胞を5M/マウスで接種)において実施例4.2に記載した方法に従って異なる用量(0.03mg/kg、0.3mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、i.p.、BIW×6用量)の範囲で試験することによって試験した。
【0375】
[00417]結果を図21に示す。図21に示すように、ヒト化抗体hu23.H5L5は試験した全ての用量で強力に腫瘍の成長を阻害した。
[00418]抗CD39抗体の抗腫瘍効率がNK細胞またはマクロファージ細胞のいずれに依存しているかも判定した。抗アシアロ-GM1のNK枯渇処置を腹腔内20μl/マウスで7日目に開始し、5日ごとに1回行った。クロドロネートリポソームのマクロファージ枯渇処置も静脈内200μl/マウスで7日目および9日目に開始し、毎週1回行った。血液試料解析データにより、単核食細胞またはNKが試薬によって顕著に除去されたことが実証された。
【0376】
[00419]NK(図17)またはマクロファージ(図18)細胞が枯渇したモデルにおいてhu23.H5L5の腫瘍成長阻害効果は消失され、抗CD39抗体の抗腫瘍効果がNK細胞およびマクロファージに依存していることが示唆された。
【0377】
[00420]具体的には、図17に示すように、抗アシアロ-GM1はビヒクルと比較して遅い段階で腫瘍成長をやや増強した。hu23.H5L5で処置した群と比較して、これを抗アシアロ-GM1と組み合わせることによって、hu23.H5L5の腫瘍成長阻害効率は完全に消失された。図18に示すように、クロドロネートリポソームはビヒクルと比較して腫瘍成長に影響がなかった。しかし、クロドロネートリポソーム処置によってhu23.H5L5の腫瘍成長阻害効率は完全に消失された。
【0378】
実施例6.エピトープマッピング
[00421]抗CD39抗体のエピトープを定義するため、CD39変異体を設計し、ヒトCD39の表面上で分子表面に露出したアミノ酸の置換によって定義した。下の表25に示すように、変異体をC末端EGFP配列と融合した発現ベクター中にクローニングし、HEK-293F細胞にトランスフェクトした。標的したアミノ酸変異を、UniProtKB-P49961(ENTP1_HUMAN)の番号付けを用いて示す。これはヒトCD39の野生型アミノ酸配列であり、本明細書で配列番号162として示す。たとえば、V77Gは配列番号162の77位のバリンがグリシンによって置き換えられていることを意味する。
【0379】
【表28】
【0380】
[00422]簡単には、ヒトCD39変異体を遺伝子合成によって生成し、次いで発現ベクターpCMV3-GFPSparkの中にクローニングした。バリデートした変異配列を含むベクターを調製し、HEK293F細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、トランスジーンの発現についてEGFPを試験するため、細胞を収集した。生成した20種の変異体について用量範囲の抗体(100nMから開始、3倍希釈、11点)を試験し、FACSにより、AlexFluor647標識抗hIgGによって染色した。抗体結合は、AlexFluor647の強度をGFPの強度で除して導き出される相対結合として記述した。結果を図22に示す。
【0381】
[00423]図22に示すように、ヒト化抗体hu23.H5L5は変異体KW27-6およびKW27-20への結合性を失っていたが、他の変異体には結合性を失っていなかった。変異体KW27-6は残基Q96、N99、E143、およびR147にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがhu23.H5L5のコアエピトープに重要であることを示している。変異体KW27-20は残基R138、M139、およびE142にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがまたhu23.H5L5のコアエピトープに重要であることを示している。
【0382】
[00424]図22に示すように、キメラ抗体c34は変異体KW27-16への結合性を失っていたが、他のいずれの変異体にも結合性を失っていなかった。変異体KW27-16は残基K5、E100、およびD107にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがc34のコアエピトープに重要であることを示している。
【0383】
[00425]図22に示すように、キメラ抗体c35は変異体KW27-2への結合性を失っていたが、他のいずれの変異体にも結合性を失っていなかった。変異体KW27-2は残基V81、E82、R111、およびV115にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがc35のコアエピトープに重要であることを示している。
【0384】
[00426]図22に示すように、参照抗体T895は変異体KW27-20への結合性を失っていたが、他のいずれの変異体にも結合性を失っていなかった。変異体KW27-20は残基R138、M139、およびE142にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがT895のコアエピトープに重要であることを示している。
【0385】
[00427]図22に示すように、参照抗体I394は変異体KW27-6およびKW27-20への結合性を失っていたが、他の変異体には結合性を失っていなかった。変異体KW27-6は残基Q96、N99、E143、およびR147にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがI394のコアエピトープに重要であることを示している。変異体KW27-20は残基R138、M139、およびE142にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てがI394のコアエピトープに重要であることを示している。
【0386】
[00428]図22に示すように、参照抗体9-8Bは変異体KW27-6への結合性を失っていたが、他のいずれの変異体にも結合性を失っていなかった。変異体KW27-6は残基Q96、N99、E143、およびR147にアミノ酸置換を含み、変異体の残基の1つもしくは複数、または全てが9-8Bのコアエピトープに重要であることを示している。
【0387】
実施例7.抗CD39/TGFβ Trap構築および発現
[00429]抗CD39/TGFβ Trap分子は、抗CD39抗体部分の重鎖および/または軽鎖のN末端またはC末端で、TGFβ受容体II ECD(TGFβRII ECD)に連結された抗CD39抗体部分として構築された。可撓性(GlySer)リンカーは、TGFβRII ECDのN末端に遺伝的に連結されていた。TGFβRII ECDのモル比および抗CD39抗体部分の位置を変更して、いくつかの抗CD39/TGFβ Trap分子を構築し、それらの概略図をそれぞれ図24A~Gに示した。TGFβ受容体I ECD(TGFβRI ECD)またはTGFβ受容体III ECD(TGFβRIII ECD)に連結された抗CD39抗体部分を含む抗CD39/TGFβ Trap分子は、同様の方法で構築してよいが、本明細書では示さなかった。
【0388】
[00430]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および2つのTGFβRII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1であって、1つのTGFβRII ECDはそれぞれの重鎖定常領域のC末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24A)。
【0389】
[00431]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および4つのTGFβRII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-2であって、2つのTGFβRII ECDはそれぞれの重鎖定常領域のC末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24B)。
【0390】
[00432]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および4つのTGFβII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-3であって、2つのTGFβRII ECDはそれぞれの重鎖可変領域のN末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24C)。
【0391】
[00433]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および4つのTGFβII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-4であって、2つのTGFβRII ECDはそれぞれの軽鎖可変領域のN末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24D)。
【0392】
[00434]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および4つのTGFβII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-5であって、1つのTGFβII ECDはそれぞれの重鎖可変領域のN末端で抗CD39抗体部分に連結され、1つのTGFβII ECDはそれぞれの軽鎖可変領域のN末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24E)。
【0393】
[00435]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および4つのTGFβII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-6であって、2つのTGFβRII ECDはそれぞれの軽鎖定常領域のC末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24F)。
【0394】
[00436]1つの抗CD39抗体部分(すなわちhu23.H5L5)および6つのTGFβII ECD(すなわち配列番号164)を含む抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-7であって、1つのTGFβRII ECDはそれぞれの重鎖定常領域のC末端で抗CD39抗体部分に連結され、2つのTGFβRII ECDはそれぞれの軽鎖定常領域のC末端で抗CD39抗体部分に連結される(図24G)。
【0395】
[00437]発現のために、同じ発現ベクターまたは別々の発現ベクターにある軽鎖および重鎖をコードするDNAを使用して、トランスフェクションのためのCHO細胞にトランスフェクトした。培養液を採取し、プロテインA Sepharoseカラムで融合タンパク質を精製した。
【0396】
実施例8.ELISAによる抗CD39/TGFβ Trap分子のTGFβへの結合
[00438]抗CD39/TGFβ Trap分子の結合能と特異性を決定するために、ヒトTGFβ1、ヒトTGFβ2、ヒトTGFβ3およびマウスTGFβ1を用いたELISAアッセイを行った。試験した抗原は、1μg/mlの濃度でNUNC96ウェル免疫プレートにコートした。抗CD39/TGFβ Trap分子の濃度上昇に伴う結合は、PBT緩衝液で希釈した抗ヒトFc抗体西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを用い、次いでTMB基質で発色させて測定した。可溶性TGFβ trapは対照として使用した。図25A~25Cに示すように、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2は、3つのTGFβホモログ:ヒトTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3全てと結合する。他の試験した抗CD39/TGFβ Trap分子(ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7を含む)の結合アッセイの結果は同様であり、本明細書では示さなかった。ヒトTGFβ1に対するEC50を、以下の表26に列挙した。さらに、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1は、ヒトTGFβ1と類似した親和性でマウスTGFβ1に結合する(図25D)。
【0397】
【表29】
【0398】
実施例9.TGFβおよびTGFβRのブロッキングアッセイ
[00439]ブロッキングアッセイのために、TGFβペプチド(TGFβ1)をマイクロプレートにコートした。精製抗体の連続希釈液を、TGFβ1がコートされたプレートで、組換えTGFβRII-Hisタンパク質(SinoBiological)と共に1時間インキュベートした。洗浄後、残存するTGFβRII-Hisを抗His-HRPがコンジュゲートした二次抗体で検出した。TGFβ1へのTGFβRII-His結合の定量化のために、450nmにおける吸光度の値をマイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices Corp)で読み取った。試験した全ての抗CD39/TGFβ Trap分子(すなわち、ES014-1、ES014-2、ES014-3、ES014-6)は、TGFβ受容体TGFβRIIへのヒトTGFβ1の結合を効果的にブロックできた(図26、対照として、可溶性TGFβ trap(すなわちTGFβRII)を使用した)。抗CD39/TGFβ Trap分子のIC50値を、GraphPad Prismを用いて分析した。ES014-2、ES014-3およびES014-6のようなTGFβRII ECDを4コピー有する抗CD39/TGFβ Trap分子は、ES014-1のようなTGFβRII ECDを2コピー有する抗CD39/TGFβ Trap分子より強力である(表27)。
【0399】
【表30】
【0400】
実施例10.FACSによる抗CD39/TGFβ Trap分子のCD39への結合
[00440]CD39を過発現している約100,000個のMOLP-8骨髄腫細胞を洗浄緩衝液で洗浄し、100μlの抗CD39/TGFβ Trap分子の連続希釈液と共に30分間氷上でインキュベートした。細胞を次いで洗浄緩衝液で2回洗浄し、100μlの抗ヒトFc-PEと共に30分間氷上でインキュベートした。細胞を次いで洗浄緩衝液で2回洗浄し、FACS CantoIIアナライザー(BD Biosciences)で分析した。図27Aに示すように、試験した抗CD39/TGFβ Trap分子(たとえば、ES014-1、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)は全て、用量依存的にMOLP-8細胞に結合した。図27Bに示すように、ES014-1は、用量依存的にCHOK1/hCD39細胞に結合した。他の試験した抗CD39/TGFβ Trap分子(たとえば、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)のCHOK1/hCD39細胞との結合の特徴は同様であり、本明細書では示さなかった。
【0401】
実施例11.抗CD39/TGFβ Trap分子のCD39およびTGFβ1への同時結合。
[00441]CD39/Hisタンパク質(Sino Biological)をコートしたプレートまたはCHO-K1/hCD39細胞を、ES014-1、抗CD39AbまたはTGFβ trap対照の連続希釈液、次いでビオチン化TGFβ1と共にインキュベートした。結合は、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼまたはストレプトアビジン-フルオレセインイソチオシアネートを用いて評価した。光学濃度(OD)は450nmで読み取った。データは平均値±SDであり、非線形ベストフィットを示す(n=2技術的反復)。結果を図28に示す。図28に示すように、代表的な抗CD39/TGFβ Trap分子(ES014-1)は、ELISA検出(図28A)およびFACS検出(図28B)により、それぞれCD39およびTGFβに同時に結合することができた。他の試験した抗CD39/TGFβ Trap分子(たとえば、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)の結果は同様であり、本明細書では示さなかった。
【0402】
実施例12.抗CD39/TGFβ Trap分子はTGFβシグナルを阻害する
[00442]HEK-Blue(商標)TGF-βレポーター細胞アッセイ(InvivoGen)を用いて、正準TGFβシグナル伝達に及ぼす抗CD39/TGFβ Trap分子の効果を評価した。抗CD39/TGFβ Trap分子または抗CD39の連続希釈液を、組換えヒトTGF-β1(5ng/ml)の存在下でHEK-Blue(商標)TGF-βレポーター細胞と共に24時間インキュベートした。抗CD39/TGFβ Trap分子は、トランスフェクトされたHEK293細胞におけるTGF-β SMADレポーターアッセイにおいて、TGF-β正準シグナル伝達[半最大阻害濃度(IC50)=32pM]をブロックしたが、抗CD39はブロックしなかった(図29A)。さらにCD39タンパク質で抗CD39/TGFβ Trap分子をプレインキュベートしても、抗CD39/TGFβ Trap分子のTGF-β中和活性に影響を与えなかった(図29B)。図29Aおよび図29Bは、代表的な抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1の結果を示している。他の試験した抗CD39/TGFβ Trap分子(たとえば、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)の結果は同様であり、本明細書では示さなかった。
【0403】
実施例13.悪性細胞のCD39活性に及ぼす抗CD39/TGFβ Trap分子の効果
[00443]悪性細胞株のCD39の酵素活性を阻害する抗CD39/TGFβ Trap分子の能力を、cell-titer glo(CTG)アッセイを用いて測定した。簡単には、細胞を抗CD39/TGFβ Trap分子、抗CD39抗体または対照抗体および100μM ATPで60分間処理した。残りのATPレベルは、CellTiterGlo Luminescentアッセイキット(Promega)を用いて測定した。このアッセイには、MOLP-8(ヒト多発性骨髄腫細胞株)またはCHO/hCD39細胞を使用した。図30A~Bに示すように、ATPの存在下で、抗CD39/TGFβ Trap分子または対照抗体の示した濃度の範囲でMOLP-8細胞を処理すると、試験した分子ES014-1、ES014-2およびES014-6によるCD39活性の用量依存的阻害を生じた。CD39活性の阻害は、残存するATPの程度によって決定し、阻害%として表した。下記表28に記載したIC50の通り、ES014-1、ES014-2、ES014-6は、ナノモルのIC50で強い阻害活性を示した。図30Cに示すように、ATPの存在下で、例示的な抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1または対照抗体の示した濃度の範囲でCHO/hCD39細胞を処理すると、試験した全ての抗体によるCD39活性の用量依存的阻害を生じた。他の試験した抗CD39/TGFβ Trap分子(たとえば、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)の濃度の範囲でCHO/hCD39細胞を処理した結果は同様で、本明細書では示さない。
【0404】
【表31】
【0405】
実施例14.抗CD39/TGFβ Trap結合親和性
[00444]代表的な抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1は、製造者のマニュアルに従ってOctetアッセイ(ForeBio)を用いて、ヒトTGFβ1またはCD39に対する結合親和性について別々に特徴付けられた。簡単には、抗体をセンサーにカプリングし、次いでセンサーをTGFβまたはCD39のタンパク質勾配に浸漬した(開始時200nM、2倍希釈により全体で8用量)。これらの結合応答をリアルタイムで測定した。結果は全体的に合致した。試験した分子ES014-1の親和性データを下の表29に要約する。他の試験した分子(たとえば、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)の親和性データは同様であり、本明細書では示さなかった。
【0406】
【表32】
【0407】
実施例15.Treg抑制アッセイ
[00445]TregはTGFβの主要な分泌源であり、CD39はTregおよびDCに発現していることから、Tregが媒介するT細胞の抑制を打ち消す抗CD39/TGFβ Trap分子の相対能力を、Treg抑制アッセイを用いて調べた。簡単には、ヒトPBMCから単離したCD3全T細胞を、PBMCから単離した自己CD4/CD25天然Treg(nTreg)の存在下でIL-4とGM-CSFでパルスした同種DCに加えて、IL2、抗CD3/CD28およびラパマイシンの1:1:10の比の存在下でX-vivo培地で増殖させた。
【0408】
[00446]これらの混合リンパ球を、抗CD39/TGFβ Trap分子、抗CD39抗体、可溶性TGFβ trap、または抗CD39抗体とTGFβ trapの組合せで3日間培養した後、CFSE細胞トレーサーによるCD4およびCD8T細胞増殖、HTRF(Cisbo)によるIFNγ分泌を測定してT細胞機能を評価した。予想通り、自己Tregの添加は、同種DCによって誘発されるT細胞の活性化を抑制した(図31A)。代表的な抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1は、自己Tregの存在下でTregが媒介する抑制を打ち消し、T細胞の活性化を回復させる上で、抗CD39抗体、可溶性TGFβ trapまたはその組合せよりも効果が高かった(図31B~D)。これらのデータは、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1が、T細胞機能の回復において、抗CD39抗体、可溶性TGFβ trapまたはそれらの組合せよりも効果が高いことを示す。他の試験した分子(たとえば、ES014-2、ES014-3、ES014-4、ES014-5、ES014-6、ES014-7)も同様の効果を示した(データは示さない)。
【0409】
実施例16.抗CD39/TGFβ Trap分子は刺激なしでヒトT細胞のアポトーシスを阻害する
[00447]2×10のヒトPBMCからの精製全CD3T細胞を一晩培養し、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2、TGFβR失活型変異体ES014_v2、抗CD39失活型変異体ES014_v1およびダブルネガティブ変異体ES014_v3と等モル濃度で一晩インキュベートした。ヒトT細胞のアポトーシスは、製造者の使用説明書に従って、APC標識アネキシンVとPIによりフローサイトメトリーで測定した。
【0410】
[00448]図32Aおよび図32Bに示すように、抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2は、TGFβR失活型変異体ES014_v2、抗CD39失活型変異体ES014_v1およびダブルネガティブ変異体ES014_v3と比較して用量依存的にヒトT細胞のアポトーシスを阻害した。
【0411】
実施例17.抗CD39/TGFβ Trap分子は刺激によるヒトT細胞の生存と活性化を促進する
[00449]5×10の精製全CD3T細胞を、抗CD3および抗CD28ビーズ刺激の存在下、同モルの抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1およびES014-2、抗CD39抗体ES014_v2、TGF-ベータ trap ES014_v1、コンボ(ES014_v2およびES014_v1)ならびに対照としてダブル変異体抗体ES014_v3を4日間共培養した。T細胞の機能は、生死染色によるT細胞の生存率、celltrace標識によるT細胞の増殖、CD25発現によるT細胞の活性化、サイトカイン産生を測定して定量化した。
【0412】
[00450]図33Aに示すように、抗CD3/CD28刺激では、抗CD39/TGFβ Trap分子群を除く全ての群で死細胞がほとんどであった。さらに、抗CD39/TGFβ Trap分子群の生細胞は、より高い細胞増殖および活性化(図33A)、ならびにIL-2およびIFN-γ産生(図33B)を維持していた。これらのデータは、抗CD39/TGFβ Trap分子が、T細胞の過剰活性化において、抗CD39抗体、TGFβ trapまたはそれらの組合せよりも効果が高いことを示す。
【0413】
実施例18.抗CD39/TGFβ Trap分子は、全T細胞上のTGF-ベータ誘導Foxp3発現をブロックする
[00451]5×10の精製T細胞を、抗CD3および抗CD28ビーズ刺激の存在下、同モルの抗CD39/TGFβ Trap分子(ES014-1およびES014-2)、抗CD39抗体(ES014_v2)、TGF-ベータ trap(ES014_v1)、コンボ(ES014_v2+ES014_v1)ならびに対照抗体(ES014_v3)で前処理を30分間行い、10ng/mlのTGF-ベータを添加した。TGF-ベータで4日間処理した後、Treg分化を測定した。
【0414】
[00452]図34Aおよび34Bに示すように、抗CD39/TGFβ Trap分子(ES014-1およびES014-2)、TGF-ベータ trap(ES014_v1)およびコンボ(ES014_v2+ES014_v1)による処理は、培地、抗CD39(ES014_v2)および対照抗体(ES014_v3)で処理されるものに比べ、CD4およびCD8T細胞のTGFベータ誘導Foxp3発現をブロックすることができた。特に、抗CD39/TGFβ Trap分子処理群におけるブロッキング効果は、TGF-ベータ trap(ES014_v1)およびコンボ(ES014_v2+ES014_v1)処理群よりもより優れた活性を示し、特に抗CD39/TGFβ Trap分子ES014-1は優れた活性を示した。
【0415】
実施例19.抗CD39/TGFβ Trap分子は、ヒトT細胞増殖に対するATP誘導阻害を回復させる
[00453]5×10の精製T細胞を、celltrace violetで標識し、抗CD3および抗CD28ビーズ刺激の存在下、抗CD39/TGFβ Trap分子(ES014-1およびES014-2)、抗CD39抗体(ES014_v2)、TGF-ベータ trap(ES014_v1)、コンボ(ES014_v2+ES014_v1)と対照抗体(ES014_v3)で一晩前処理を行った。1日目に200μM ATPを添加し、3日間ATPで処理した後、T細胞増殖を測定した。図35Aおよび35Bに示すように、抗CD39/TGFβ Trap分子(ES014-1およびES014-2)、抗CD39抗体(ES014_v2)およびコンボ(ES014_v2+ES014_v1)による処理は、培地、TGFベータ trap(ES014_v1)および対照抗体(ES014_v3)で処理されるものに比べ、CD4およびCD8T細胞増殖に対するATP誘導阻害を反転することができた。回復したT細胞増殖の結果は、CD39活性のブロッキングに対する抗CD39/TGFβ Trap分子の効果を示し、ATPアーゼ阻害活性の結果と一致した。
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【配列表】
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【国際調査報告】