(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】光起電素子内のセルのフィールド幅調整
(51)【国際特許分類】
H10K 39/12 20230101AFI20231128BHJP
H10K 30/30 20230101ALN20231128BHJP
【FI】
H10K39/12
H10K30/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532315
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 DE2021100949
(87)【国際公開番号】W WO2022111765
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020131742.5
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512286163
【氏名又は名称】ヘリアテク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HELIATEK GMBH
【住所又は居所原語表記】Treidlerstrasse 3, 01139 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー ヤコブ, マルティン
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251BA11
5F251CB13
5F251CB14
5F251DA03
5F251DA07
5F251EA03
5F251EA09
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5F251EA11
5F251EA14
5F251EA16
5F251EA20
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
5F251XA01
(57)【要約】
本発明は、第一のセル(3)から第nのセル(3)までの、基板(27)上に配置されたn個のセル(3)を有する光起電素子(1)であって、- セル(3)は、ベース電極(5)と、カバー電極(7)と、少なくとも1つの光活性層(10)を有する層システム(9)とをそれぞれ有し、層システム(9)は、ベース電極(5)とカバー電極(7)との間に配置され、- セルは、直列に相互接続され、及び - 光起電素子(1)は、第一のセル(3)及び/又は第nのセル(3)に導電接触(13)によって接続される少なくとも1つのバスバー(11)を有する、光起電素子(1)に関する。少なくとも1つのバスバー(11)の、第一のセル(3)のカバー電極(7)及び/又は第nのセル(3)のカバー電極(7)への導電接触(13)は、バスバー(11)の長手方向に互いから特定の距離A(15)、好ましくは周期的な距離(15)に配置されたビア点(17)によって形成される。個々のビア点(17)間の領域では、カバー電極(7)と少なくとも1つのバスバー(11)との間に導電接触(13)が形成されない。A/2未満、好ましくはA/4未満の直径を有する取り囲む円における、ビア点(17)の周りの周囲区域(19)は、光活性でないか、又は少なくともより低い程度に光活性である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のセル(3)から第nのセル(3)までの、基板(27)上に配置されたn個のセル(3)を含む光起電素子(1)であって、前記セル(3)は、下部電極(5)と、上部電極(7)と、少なくとも1つの光活性層(10)を含む層システム(9)とをそれぞれ有し、前記層システム(9)は、前記下部電極(5)と前記上部電極(7)との間に配置され、及び前記セル(3)は、互いに直列に相互接続され、前記光起電素子(1)は、前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)に導電接触(13)によって接続された少なくとも1つのバスバー(11)を有する、光起電素子(1)において、前記少なくとも1つのバスバー(11)の、前記第一のセル(3)の前記上部電極(7)及び/又は前記第nのセル(3)の前記上部電極(7)との前記導電接触(13)は、それぞれの場合に前記バスバー(11)の長手方向に互いから特定の距離A(15)、好ましくは周期的な距離(15)に配置されたビア点(17)によって形成され、前記個々のビア点(17)間の領域では、前記上部電極(7)と前記少なくとも1つのバスバー(11)との間に導電接触(13)が形成されず、A/2未満、好ましくはA/4未満の直径を有する取り囲む円における、前記ビア点(17)の周りの周囲区域(19)は、光活性でないか、又は少なくとも低下した程度に光活性であることを特徴とする光起電素子(1)。
【請求項2】
前記n個のセル(3)の各々は、それぞれの場合に特定の幅B及び特定の長さLを有し、前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)は、2~n-1の前記セル(3)と比較してより大きい幅Bを有し、及び前記n個のセル(3)は、同一の長さLをそれぞれ有し、好ましくは、前記第一のセル(3)から前記第nのセル(3)までの前記n個のセル(3)は、それらの長手方向の辺で互いに対して配置され、及び/又は2~n-1の前記セル(3)の面積は、互いに同一の大きさであり、それにより、前記少なくとも1つのバスバー(11)から離れる方を向く前記光起電素子(1)の面からの均一な照明時における前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)の光電流生成は、2~n-1の前記セル(3)と比較して少なくとも同一の大きさであり、好ましくは少なくとも5%だけ大きいか、好ましくは少なくとも10%だけ大きいか、又は好ましくは少なくとも20%だけ大きいことを特徴とする、請求項1に記載の光起電素子(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバスバー(11)と、前記セル(3)、好ましくは前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)の前記上部電極(7)及び/又は前記層システム(9)との間において、機械的保護機能、酸素バリア機能及び/又は水分バリア機能を有する保護層(21)、好ましくは保護フィルムであって、前記ビア点(17)の周りの前記周囲区域(19)で少なくとも部分的に穿孔される保護層(21)、好ましくは保護フィルムが配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光起電素子(1)。
【請求項4】
前記第一のセル(3)は、2~nの前記セル(3)と比較してより小さい幅Bを有し、及び前記n個のセル(3)は、同一の長さLをそれぞれ有し、前記第一のセル(3)は、好ましくは、少なくともほぼ光活性でないか、又は電気的にブリッジされることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【請求項5】
前記ビア点(17)は、前記バスバー(11)の前記長手方向に互いから少なくとも1cmの距離(15)、好ましくは互いから少なくとも2cmの距離(15)、好ましくは互いから少なくとも5cmの距離(15)又は好ましくは互いから少なくとも10cmの距離(15)に形成されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【請求項6】
2~n-1の前記セル(3)の前記幅Bは、0.5cm~5cm、好ましくは1cm~5cmであり、及び/又は1~nの前記セル(3)の長さLは、10cm~20m、好ましくは50cm~20mであり、及び/又は前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)の前記幅Bは、2~n-1の前記セル(3)と比較して少なくとも5%だけ、好ましくは少なくとも10%だけ、好ましくは少なくとも20%だけ又は好ましくは少なくとも25%だけ増加され、それにより、前記少なくとも1つのバスバー(11)から離れる方を向く前記光起電素子(1)の面からの均一な照明時における前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)の光電流生成は、2~n-1の前記セル(3)と比較して好ましくは少なくとも5%だけ大きいことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【請求項7】
前記ビア点(17)の周りの前記周囲区域(19)内の前記下部電極又は前記上部電極の何れかは、前記第一のセル(3)及び/又は前記第nのセル(3)の前記層システム(9)の残りの部分における前記それぞれの電極(5、7)から、それぞれの場合に閉じた構造化線(23)、好ましくは円形又は矩形の構造化線(23)によって導電的に絶縁され、それにより、前記ビア点(17)の周りの前記周囲区域(19)内の前記下部コンタクト(5)と前記上部コンタクト(7)との間に生じるシャント電流経路は、前記対応する第一のセル(3)及び/又は第nのセル(3)の短絡回路をもたらさないことを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【請求項8】
前記ビア点(17)の周りの前記周囲区域(19)は、それぞれの場合において、光活性層(10)を含む層システム(9)を有しないか、又は少なくとも完全な光活性層(10)を含む層システム(9)を有さず、好ましくは、前記ビア点(17)は、光活性層(10)を含む層システム(9)を有しないことを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【請求項9】
それぞれの場合に前記ビア点(17)の周りの前記周囲区域(19)内における、前記ビア点(17)の周りの領域の前記セル(3)の前記層システム(9)は、前記ビア点(17)において、前記ビア点(17)の周りの前記周囲区域(19)の外の前記層システム(9)に浸透した水分の拡散を少なくとも部分的に防止する分離線(25)を追加的に有することを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【請求項10】
光起電薄膜素子、好ましくは有機光起電薄膜素子及び/又は可撓性光起電薄膜素子であり、前記光起電薄膜素子は、好ましくは、吸収体材料としての小分子で構成される少なくとも1つの光活性層(10)を有することを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載の光起電素子(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一のセルから第nのセルまでの、基板上に配置されたn個のセルを含む光起電素子であって、セルは、下部電極と、上部電極と、少なくとも1つの光活性層を含む層システムとをそれぞれ有し、層システムは、下部電極と上部電極との間に配置され、及びセルは、互いに直列に相互接続され、光起電素子は、第一のセル及び/又は第nのセルに導電接触によって接続された少なくとも1つのバスバーを有する、光起電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニクスは、光学及び半導体電子工学の分野で構成される。これは、特に、電気的に生成されたエネルギを発光に変換するか、又は発光をエネルギに変換することを可能にするシステム及び方法を包含する。オプトエレクトロニックコンポーネント、特に光起電素子、例えば有機光起電素子(OPV)及び有機発光ダイオード(OLED)は、電気エネルギを生成するか、又は電気エネルギを発光に変換するが、それを応用のために後にオプトエレクトロニックコンポーネンの外又はその中に誘導しなければならない。電流は、通常、電極の縁部に取り付けられたバスバーによって外部に伝えられる。接触のために、光起電素子のバスバーの領域に接続箱が配置される。
【0003】
有機光起電素子は、少なくとも1つの光活性層を含む一連の薄層からなり、これらは、好ましくは、真空下での蒸着によって堆積されるか又は溶液から加工される。電気的リンクは、金属層、透明導電性酸化膜及び/又は透明導電性ポリマーによって実現され得る。有機層の真空蒸着は、特に多層太陽電池、特にタンデム又はトリプルセルの製造で有利である。
【0004】
光起電素子は、複数の層を含む層構成を有する。層構成は、通常、特に導電性透明材料からなる電極層、透明導電性金属酸化膜(TCO)、1つ又は複数の光活性層及び電極層を含む。透明又は半透明光活性素子の場合、両方の電極が金属であり得る。光起電素子の層システムの考え得る構成は、国際公開第2004083958A2号及び国際公開第2011138021A2号に記載されている。
【0005】
有機光起電素子は、例えば、材料の蒸着、ポリマーの印刷又は液体からの加工によって製作され得る。有機光起電素子の基本的構成は、国際公開第2004083958号及び国際公開第2011138021号に記載されている。有機光起電素子は、レーザ加工によって構成される。これらの方法は、特にオプトエレクトロニックコンポーネント上の個々の光起電セルを相互接続し、且つ光起電セルを電気的に絶縁するためにも使用される。層システムの導電性が限定的であることから、また光起電素子の出力電圧及び出力電流を適合させるために、光起電素子、すなわち光起電素子の層システムは、通常、互いに隣接して配置されるセルに細分され、これらは、互いに直列に相互接続される。この場合、このようなセルの幅は、通常、約数ミリメートル~センチメートルの範囲である。
【0006】
特に機械的及び化学的損傷に関して極めて重要である、太陽電池、特に有機太陽電池のための従来の解決策は、バスバーを幅全体にわたって又は少なくとも短距離のビア点でそれぞれのセルに接続することである。このようなビア点、特にビア点を含む片面コンタクト太陽電池は、先行技術から知られている。
【0007】
欧州特許第2033228B1号明細書では、ビアを設けて構成される少なくとも1つの吸収体層と、半導体材料で構成さるエミッタ層とを含む片面コンタクト太陽電池が開示されており、前記エミッタ層は、吸収体層の片面の全面積にわたって配置され、余剰の電荷キャリアは、吸収体層の片面上に共同で配置された2つのコンタクトシステムによって回収され、吸収体層中に放散され、前記コンタクトシステムは、外部で電気的に接触し、互いに絶縁される。
【0008】
欧州特許第2466640A2号明細書は、薄膜光起電モジュールを開示しており、これは、基板上に配置され、薄膜光起電モジュールの層構成の少なくとも1つの層を切断する分離線により、集積的な方式で直列に電気接続される複数の光起電セルに細分され、分離線の少なくとも2つは、互いに非平行に延び、分離線の少なくとも1つの部分は、隣接する2つの光起電セルを直列に相互接続する一連の相互接続ストリップの一部であり、分離線の少なくとも1つは、薄膜光起電モジュールの全ての層を切断し、隣接する2つの光起電セルを互いに絶縁する。
【0009】
この先行技術は、同様に、光起電素子上の異なるフォーマットのセルを開示しており、これらのセルは、同一の面積を有する。
【0010】
独国実用新案第202007010590U1号明細書は、同一の面積を有する相互接続された複数の個々の太陽電池を含むソーラモジュールを開示しており、太陽電池間に透明又は半透明の領域が設けられ、少なくとも2つの異なるフォーマットの太陽電池が提供される。
【0011】
光起電素子のセルで得られる電流は、セルの面積に比例するため、部分的に損傷を受けたか又は十分に機能しないセルが生成する電流は、より小さく、直列接続されたセルの場合、最も電流の低い、特に最も小さい面積のセルによって光起電素子の電流が決まる。
【0012】
直列に接続されたセルを含むモジュール内の最初の又は最後のセルと、それぞれのバスバーとの間の電気接続は、特に問題である。第一に、接続は、光活性層システム内の局所的な損傷の形成を伴うことが多く、これは、例えば、金属粒子を含有する導電性感圧接着剤(PSA)が押圧された場合の機械的負荷及び/又は導電性接着剤が使用された場合の化学的損傷の結果として生じる。第二に、主にバリア層又は封止材に関連して、できるだけ密封状態で水分及び大気中の酸素から保護されることが意図されるセルと、典型的には封止された区域外にあるバスバーとの間の電気接続は、水分及び大気中の酸素の侵入に関して重大である。
【0013】
したがって、先行技術に関する不利な点は、バスバーの下のセルが光起電的に完全に又は少なくともほとんど不活性であること、すなわちモジュールの効率に寄与しないことである。これは、特に非常に長いモジュールからの電流を搬出しようとする場合のように、比較的幅の広い、例えば1cm超の幅のバスバーが必要とされる場合に効率の大きい損失につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、上述の欠点が生じないか又は少なくとも軽減され、特にバスバーによる、このようなバスバーを含むセルへの有害な影響が最小化され、より高い効率及び/又はより長い寿命の光起電素子が得られる、光起電素子を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0016】
この目的は、特に、第一のセルから第nのセルまでの、基板上に配置されたn個のセルを含む光起電素子を提供することによって達成され、セルは、下部電極と、上部電極と、少なくとも1つの光活性層を含む層システムとをそれぞれ有し、層システムは、下部電極と上部電極との間に配置され、及びセルは、互いに直列に相互接続され、光起電素子は、第一のセル及び/又は第nのセルに導電接触によって接続された少なくとも1つのバスバーを有する。少なくとも1つのバスバーの、第一のセルの上部電極及び/又は第nのセルの上部電極との導電接触は、それぞれの場合にバスバーの長手方向に互いから特定の距離A、好ましくは周期的な距離に配置されたビア点によって形成され、個々のビア点間の領域では、上部電極と少なくとも1つのバスバーとの間に導電接触が形成されず、A/2未満、好ましくはA/4未満の直径を有する取り囲む円における、ビア点の周りの周囲区域は、光活性でないか、又は少なくとも低下した程度に光活性である。
【0017】
本発明によれば、第一のセル及び/又は第nのセルは、少なくとも1つのバスバーにビア点、いわゆるビアによって導電的に接続される。好ましくは、少なくとも1つのバスバーと第一のセル又は第nのセルとの導電接触は、全体に存在するのではなく、各々が互いから特定の距離Aにあるビア点に存在する。好ましくは、少なくとも1つのバスバーは、セルの全長にわたって上部電極に導電的に接続されない。
【0018】
本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのバスバーの下の第一のセル及び/又は第nのセルの光活性領域は、2~n-1のセルと比較して十分に大きく、それにより、少なくとも1つのバスバーの下の第一のセル及び/又は第nのセルの電流生成は、確実に、光起電素子の直列に相互接続された他のセルに関するものと少なくとも同じ大きさであり、好ましくは、少なくとも1つのバスバーの下の第一のセル及び/又は第nのセルの幅は、2~n-1のセルと比較して増加される。
【0019】
したがって、好ましくは、第一のセル及び/又は第nのセルは、2~n-1のセルと比較して面積が増加した結果として、特に幅が増加した結果として、エージング前の効率が幾分高くなり、それにより、それぞれのセルは、バスバーの下の第一のセル及び/又は第nのセルにおける水分の浸入によって前記セルの劣化が加速したとしても、光起電素子の直列に相互接続されたセルのうち、電流を制限するセルにならないことが確実となる。
【0020】
本発明の1つの好ましい実施形態では、下部電極、層システム及び上部電極は、レーザによって構造化される。本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子の個々のセルは、レーザ構造化によって互いに直列に相互接続される。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態では、上部電極及び/又は下部電極は、銀若しくは銀合金、アルミニウム若しくはアルミニウム合金、金若しくは金合金又はこれらの材料の組合せ、導電性酸化膜、特にITO、ZnO、ZnO:Al、SnO2若しくは他の何れかのTCO(透明導電性酸化膜)、導電性ポリマー、特にPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルフォネート)又はPANI(ポリアニリン)を含む。さらに、上部電極及び/又は下部電極は、金属ナノワイヤ又は金属ナノ粒子の網状構造を有し得、金属は、銀、銅又は金であることが好ましい。
【0022】
本発明の1つの好ましい実施形態では、下部電極は、基板、特に薄膜上に配置される。
【0023】
光起電要素とは、光起電セル、特に太陽電池を意味すると理解されたい。光起電素子は、好ましくは、直列又は並列に相互接続され得る複数の光起電セルから構成される。複数の光起電セルは、光起電素子内において様々な方法で配置及び/又は相互接続され得る。
【0024】
本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのビア点は、点状、線状又は格子形に形成される。本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点は、1cm2未満の面積内に好ましくは円又は矩形パターンの複数のより小さいビア点を含む。これは、ビア点の接触抵抗が、面積ではなく、縁部の全長によって変化する場合に特に有利である。
【0025】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点は、第一及び/又は第nのセルと少なくとも1つのバスバーとの間に少なくとも2cm、好ましくは少なくとも5cm、好ましくは少なくとも10cm又は好ましくは少なくとも20cmの距離に形成される。
【0026】
バスバーとは、特に、電気エネルギの中央分配器としての電気接触の目的のために、取り込み及び取り出し線に、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極と共に導電的に接続される配置を意味すると理解されたい。少なくとも1つのバスバーは、下部電極又は上部電極で少なくとも部分的に導電的に接触される。バスバーは、特にリボン、ストリップ、プレート又は金属層として平面的に形成される。
【0027】
1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのバスバーの層厚は、10μm~500μm、好ましくは100μm~500μm、好ましくは10μ~200μm、好ましくは10μm~100μm、好ましくは10μm~50μm又は好ましくは20μm~40μmである。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのバスバーは、金属又はその合金、好ましくは銅及びスズから形成される。
【0029】
有機光起電素子とは、特に少なくとも1つの有機光活性層を含む光起電素子、特にポリマー有機光起電素子又は小分子に基づく有機光起電素子を意味すると理解されたい。光活性層は、特にアクセプタ-ドナーシステムを形成し、複数の個々の層又は混合された層を含み得る。
【0030】
小分子とは、特に単分散モル質量が100~2000g/molである、標準圧力(周辺大気の空気圧)、室温において固相で存在する非ポリマー有機分子を意味すると理解されたい。特に、小分子は、光活性であり、光活性とは、分子が光入射にさらされると、その帯電状態及び/又はその配向状態を変化させることを意味すると理解されたい。小分子に基づくこれらの吸収体材料の利点は、真空中での蒸発性である。
【0031】
本発明の1つの好ましい実施形態では、層システムの少なくとも1つの光活性層は、真空中で蒸発可能な小分子を含む。本発明の1つの好ましい実施形態では、層システムの少なくとも1つの光活性層は、真空下での蒸着によって堆積される。
【0032】
本発明の1つの好ましい実施形態では、第一のセル及び/又は第nのセルの面積は、それぞれの場合に2~n-1のセルの面積より大きい。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのバスバーは、より高い表面導電性を有するセルの電極と導電的に接触され、より高い導電性の電極のシート抵抗は、10オーム毎スクエア未満、好ましくは1オーム毎スクエア未満又は好ましくは0.1オーム毎スクエアである。
【0034】
本発明の1つの好ましい実施形態では、セルの上部電極は、より導電性の高い電極であり、セルの下部電極は、より導電性の低い電極であり、好ましくは、より導電性の低い電極のシート抵抗は、10オーム毎スクエア未満、好ましくは1オーム毎スクエア未満である。
【0035】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子は、少なくとも1つの光活性層を含む少なくとも1つのセル、特にCISセル、CIGSセル、GaAsセル若しくはSiセル、ペロブスカイトセル又は有機光起電素子(OPV)、いわゆる有機太陽電池を有する。
【0036】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子は、少なくとも2つの光活性層を含む層システムを有し、この場合、光起電素子は、タンデムセルであり、好ましくは少なくとも3つの光活性層を含む層システムを有し、この場合、光起電素子は、トリプルセルである。
【0037】
本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのバスバーは、1つのセルの長手方向Lに配置される。
【0038】
セルの長手方向Lとは、特に光起電素子のセルの、その範囲が最長である方向を意味すると理解されたい。
【0039】
好ましくは、光起電素子の基板上に互いに横並びに配置された複数のセルは、互いに直列に相互接続される。
【0040】
本発明による光起電素子は、先行技術と比較して利点を有する。有利には、第一及び/又は第nのセルへの少なくとも1つのバスバーによる損傷、特にその結果として生じる帰納的面積の損失は、第一及び/又は第nのセルの範囲がより大きいことによって補償される。有利には、第一及び/又は第nのセルのビア点における劣化が生じても、特に水分及び/又は酸素が侵入しても、バスバーを有する第一のセル及び/又は第nのセルの十分に機能的な面積は、依然として保持される。有利には、少なくとも1つのバスバーを有する第一のセル及び/又は第nのセルは、より長い寿命にわたり、引き続き少なくとも他のセルと同程度の光電流を発生させることができる。有利には、構造化線及び/又は分離線により、セルへのさらなる損傷が少なくとも部分的に防止される。有利には、水分がそこを通してセル内に浸透し得るビア点の数又はビア点の総面積が少なくされる。有利には、光起電素子の機能は、特に光起電素子が比較的著しいエージングを経たとしても保持される。有利には、光起電素子の効率を改善することができる。有利には、光起電素子の寿命が延長される。
【0041】
本発明の1つの発展形態によれば、n個のセルの各々は、それぞれの場合に特定の幅B及び特定の長さLを有し、第一のセル及び/又は第nのセルは、2~n-1のセルと比較してより大きい幅Bを有し、及びn個のセルは、同一の長さLをそれぞれ有し、好ましくは、第一のセルから第nのセルまでのn個のセルは、それらの長手方向の辺で互いに対して配置され、及び/又は2~n-1のセルの面積は、互いに同一の大きさであり、それにより、少なくとも1つのバスバーから離れる方を向く光起電素子の面からの均一な照明時における第一のセル及び/又は第nのセルの光電流生成は、2~n-1のセルと比較して少なくとも同一の大きさであり、好ましくは少なくとも5%だけ大きいか、好ましくは少なくとも10%だけ大きいか、又は好ましくは少なくとも20%だけ大きいようになされる。好ましくは、セルの光電流生成は、セルのエージング、すなわち機械的負荷、大気中の酸素との接触、水分との接触の結果としてのエージング及び/又は時間によるエージングの開始までの時間に関係する。
【0042】
本発明の1つの好ましい実施形態では、2~n-1のセルは、同一の幅及び同一の長さを有する。
【0043】
本発明の1つの発展形態によれば、少なくとも1つのバスバーと、セル、好ましくは第一のセル及び/又は第nのセルの上部電極及び/又は層システムとの間において、機械的保護機能、酸素バリア機能及び/又は水分バリア機能を有する保護層、好ましくは保護フィルムが配置されるようになされ、これは、ビア点の周りの周囲区域で少なくとも部分的に穿孔される。本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つの保護層は、光起電素子の封止材を形成する。
【0044】
保護層とは、特に外的影響、特に大気中の酸素及び/又は水分が通過し得ることを防止するためのバリア層、機械的耐久性、特に耐引っかき性を増大させるための保護層及び/又はフィルタ層、好ましくはUVフィルタを備える層を意味すると理解されたい。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つの保護層の層厚は、250nm~500nm、好ましくは250nm~100μm、好ましくは250nm~100μm又は好ましくは100μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、好ましくは10μm~50μm又は好ましくは20μm~40μmである。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態では、保護層は、セルとバスバーとの間のSiOCH層であり、ビア点は、セルとバスバーとの間にSiOCH層を通して形成される。
【0047】
本発明の1つの好ましい実施形態では、セルの長さは、セルの幅の大きさの少なくとも2倍、好ましくはその大きさの少なくとも5倍、好ましくはその大きさの少なくとも10倍、好ましくはその大きさの少なくとも20倍、好ましくはその大きさの少なくとも50倍、好ましくはその大きさの少なくとも100倍又は好ましくはその大きさの少なくとも1000倍である。
【0048】
本発明の1つの好ましい実施形態では、オプトエレクトロニックコンポーネントは、少なくとも1つのバスバーと、太陽と反対であることが意図される側から導電接触によって接触される。
【0049】
本発明に関して、光起電素子の太陽と反対の面とは、光起電素子の、光の入射に向かうことが意図される側にない裏面を意味すると理解されたい。したがって、本発明では、光起電素子の太陽に向かう面とは、光起電素子の、光の入射に向かうことが意図される側にある前面を意味すると理解されたい。
【0050】
本発明の1つの発展形態によれば、第一のセルは、2~nのセルと比較してより小さい幅Bを有し、及びn個のセルは、同一の長さLをそれぞれ有するようになされ、第一のセルは、好ましくは、少なくともほぼ光活性でないか、又は電気的にブリッジされる。
【0051】
本発明の1つの好ましい実施形態では、セルの幅対長さの比は、1対10~1対1000、好ましくは1対10~1対500、好ましくは1対10~1対300、好ましくは1対10~1対100、好ましくは1対100~1対1000、好ましくは1対100~1対500又は好ましくは1対10~1対300である。
【0052】
本発明の1つの好ましい実施形態では、セルは、基板上に下方に向かって互いに少なくともほぼ平行に配置される。
【0053】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点の断面積は、0.1~100mm2、好ましくは0.1~25mm2、好ましくは0.2~10mm2、好ましくは0.2~1mm2、好ましくは1~2mm2又は好ましくは1~1.5mm2である。
【0054】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点は、バスバーの長手方向に互いから少なくとも1cmの距離、好ましくは互いから少なくとも2cmの距離、好ましくは互いから少なくとも5cmの距離、好ましくは互いから少なくとも10cmの距離又は互いから少なくとも20cmの距離に形成されるようになされる。
【0055】
本発明の1つの好ましい実施形態では、2~n-1のセルの幅Bは、0.5cm~5cm、好ましくは1cm~5cmであり、及び/又はセル1~nの長さLは、10cm~20m、好ましくは20cm~10m又は好ましくは50cm~5mであるようになされる。
【0056】
本発明の1つの好ましい実施形態では、第一のセル及び/又は第nのセルの幅Bは、2~n-1のセルと比較して少なくとも5%だけ、好ましくは少なくとも10%だけ、好ましくは少なくとも20%だけ又は好ましくは少なくとも25%だけ増加されるようになされ、それにより、少なくとも1つのバスバーから離れる方を向く光起電素子の面からの均一な照明時における第一のセル及び/又は第nのセルの光電流の生成は、2~n-1のセルと比較して少なくとも5%だけ、好ましくは少なくとも10%だけ又は好ましくは少なくとも20%だけ大きい。
【0057】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点の周りの周囲区域内の下部電極又は上部電極の何れかは、第一のセル及び/又は第nのセルの層システムの残りの部分のそれぞれの電極から、それぞれの場合に閉じた構造化線、好ましくは円形又は矩形の構造化線によって導電的に絶縁されるようになされ、それにより、ビア点の周りの周囲区域内の下部コンタクトと上部コンタクトとの間に生じるシャント電流経路は、対応する第一のセル及び/又は第nのセルの短絡回路をもたらさない。その結果、下部電極と上部電極との間に生じるシャント電流経路によるセル、特に第一のセル及び/又は第二のセルの損傷は、少なくとも1つのバスバーの下の第一のセル及び/又は第nのセルに関する短絡回路をもたらさない。
【0058】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点の領域内の下部電極と上部電虚との何れかは、構造化線によってそれぞれの他方の電極から導電的に絶縁される。
【0059】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点の周りの周囲区域内の下部電極又は上部電極の何れかは、第一のセル及び/又は第nのセルの層システムの残りの部分におけるそれぞれの電極から、それぞれの場合に閉じた構造化線、好ましくは円形又は矩形の構造化線によって導電的に絶縁されるようになされ、それにより、ビア点の周りの周囲区域内の下部電極と上部電極との間に生じるシャント電流経路は、第一のセル及び/又は第nのセルの短絡回路をもたらさない。
【0060】
構造化線とは、特に下部電極又は上部電極からの、ビア点の周りの周囲区域内のそれぞれの電極と、ビア点の周りの周囲区域の外のそれぞれの電極との間の層システムを電気的に絶縁するような表面曲線を意味すると理解されたく、好ましくは、2つの電極の一方は、電気的に絶縁され、構造化線は、層システムに関して水平方向では、ビア点の周りの周囲区域と共にビア点の円周全体に沿って形成され、層システムに関して垂直方向では、下部電極又は上部電極から選択された1つのみにより、好ましくは補足的に全体として又は少なくとも部分的に層システムを通して形成される。平面図で見ると、表面曲線は、直線又は曲線に見える。構造化線は、特にレーザアブレーションによって形成される。
【0061】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビア点の周りの周囲区域は、それぞれの場合において、光活性層を含む層システムを有しないか、又は少なくとも完全な光活性層を含む層システムを有さず、好ましくは、ビア点は、光活性層を含む層システムを有しない。
【0062】
本発明の1つの発展形態によれば、それぞれの場合にビア点の周りの周囲領域内における、ビア点の周りの領域のセルの層システムは、ビア点において、ビア点の周りの周囲区域の外の層システム中に浸透した水分の拡散を少なくとも部分的に防止する分離線を追加的に有するようになされる。分離線は、好ましくは、レーザアブレーションによって形成され、好ましくは、分離線25は、下部電極5若しくは上部電極7の構造化線23と空間的に一致するか、又は構造化線23によって画定される領域内にある。
【0063】
分離線とは、特に層システムを、構造化線によって提供される境界内のビア点の周りの周囲領域と共にビア点から空間的に分離するものを意味すると理解されたく、分離線は、ビア点の周りの周囲領域と共に、ビア点の完全な円周全体に沿って層システムに関して水平方向に形成され、層システムに関して垂直方向では、層システム全体により少なくとも部分的に層システムを通して形成され、層システムの電極の少なくとも一方又は両方の電極は、少なくともほぼ保持される。分離線は、特にレーザアブレーションによって形成される。
【0064】
光起電セルは、光活性層システムの数に応じてシングル、タンデム又はマルチセルに区別され、これは、下部及び上部両コンタクト間の層構成中の輸送層及び他の層によるものである。タンデム及びマルチセルは、電極間で上下に重ねて配置される少なくとも2つのサブセルからなり、各サブセルは、少なくとも1つの光活性層システムを含む。
【0065】
本発明の1つの好ましい実施形態では、層システムは、少なくとも2つの光活性層を有し、この場合、光起電セルは、タンデムセルであり、好ましくは少なくとも3つの光活性層を含み、この場合、光起電セルは、トリプルセルである。
【0066】
本発明の1つの好ましい実施形態では、層システムは、少なくとも1つの電荷キャリア輸送層を追加的に有し、少なくとも1つの電荷キャリア輸送層は、下部電極又は上部電極と光活性層との間に配置され、好ましくは少なくとも第一の電荷キャリア輸送層及び第二の電荷キャリア輸送層を有し、第一の電荷キャリア輸送層は、下部電極と少なくとも1つの光活性層との間に配置され、第二の電荷キャリア輸送層は、少なくとも1つの光活性層と上部電極との間に配置される。
【0067】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子は、少なくとも1つの不活性領域、すなわち層システム、特に光活性層が存在するが、これが特に対応するレーザ構造化によって不活性化される領域を有し、好ましくは第一のセルが不活性化される。
【0068】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子の第一のセルは、不活性化されるか、又は他の2~nのセルと直列に相互接続されない。
【0069】
本発明の1つの発展形態によれば、光起電素子は、光起電薄膜素子、好ましくは有機光起電薄膜素子及び/又は可撓性光起電薄膜素子であるようになされ、光起電薄膜素子は、好ましくは、吸収体材料としての小分子で構成される少なくとも1つの光活性層を有する。
【0070】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子は、有機光起電素子、好ましくは可撓性有機光起電素子であり、好ましくは、有機光起電素子の少なくとも1つの光活性層は、吸収体材料としての小分子を含む。
【0071】
可撓性光起電素子とは、特に特定の領域で折り曲げ可能及び/又は伸展可能な光起電素子を意味すると理解されたい。
【0072】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子は、少なくとも第一のバスバー及び第二のバスバーを有し、第一のバスバーは、第一の導電接触によって第一のセルに接続され、第二のバスバーは、第二の導電接触によって第nのセルに導電的に接続される。
【0073】
本発明の1つの好ましい実施形態では、光起電素子は、接続箱を有し、少なくとも1つのバスバーは、接続箱に導電的に接続される。接続箱とは、特に光起電素子を外部電気回路に接続するための素子を意味すると理解される。本発明の1つの好ましい実施形態では、第一のバスバー及び第二のバスバーは、接続箱に導電的に接続される。
【0074】
以下では、下記の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】光起電素子のセルの層システムの構成の1つの例示的実施形態の概略図を側面図で示す。
【
図2】導電接触を有する直列接続された複数のセルを含む光起電素子の1つの例示的実施形態の概略図を側面図で示す。
【
図3】互いから距離Aに配置されたビア点を含む導電接触を有する、直列接続された複数のセルを含む光起電素子の1つの例示的実施形態の概略図を平面図で示す。
【
図4】互いから距離Aに配置されたビア点を含む導電接触を有する、直列接続された複数のセルを含む光起電素子の1つの例示的実施形態の概略図を平面図で示す。
【
図5】互いから距離Aに配置されたビア点を含む導電接触を有する、直列接続された複数のセルを含む光起電素子の1つの例示的実施形態の概略図を平面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、光起電素子1の層システム9のセル3の構成の1つの例示的実施形態の概略図を側面図で示す。
【0077】
この例示的実施形態では、光起電素子1は、光活性層10を含む一連の薄膜で構成されるセル3からなり、これは、好ましくは、真空下での蒸着によって堆積されるか又は溶液から加工される。電気的リンク、すなわち接触手段は、金属層、透明導電性酸化膜及び/又は透明導電性ポリマーによって実現される。層システム9を含むこのようなセル3の構成が
図1に示されている。
【0078】
この例示的実施形態では、光起電素子1のセル3は、例えば、ガラスで構成される基板27上に配置された、例えばITOで構成される下部電極5、特に透明下部電極5を含む。層システム9がその上に形成され、前記層システムは、フラーレンC60を含む電気輸送層20、少なくとも1つの吸収体材料とフラーレンC60とを含む光活性層10及びdi-NPBとNDP9で構成される電気輸送層22を含む。金で構成される上部電極7がその上に配置される。層システム9及び/又は電極5、7は、レーザによって構造化される。層システム9は、別の正孔注入層、正孔輸送層、光活性層及び/又は電子輸送層も有し得る。セル3、層システム9の層及び基板27の相対的大きさは、正確な縮尺によって示されていない。
【0079】
個々の層及び電極の構造化は、例えば、レーザアブレーション、電子若しくはイオンビームアブレーション、機械的スクライビング又はシャドウマスクによって実現され得る。その結果、層システム9中に正孔及び/又はスロットが作られ、例えば、これは、下部電極5を層システム9中に通す役割を果たし、それによりビア点が電極5、7間に形成される(P2構造化)。光起動素子内のセルの直列相互接続のために、下部電極5内の構造化(P1構造化)及び上部電極7内の構造化(P3構造化)がさらに必要となる。さらに、電極5、7及び層システム9で構成される完全なセル3を取り囲む構造化線が得られる(P4構造化)。
【0080】
図2は、導電接触を有する直列接続された複数のセル3を含む光起電素子1の1つの例示的実施形態の概略図を側面図で示す。同じ及び機能的に同じ要素には、同じ参照符号が付されているため、この点で上述の説明文を参照されたい。
【0081】
この例示的実施形態の光起電素子1は、薄膜技術を用いた光起電素子1である。
【0082】
光起電素子1は、第一のセル3から第nのセル3までの、基板27上に配置されたn個のセル3を有し、セル3は、下部電極5と、上部電極7と、少なくとも1つの光活性層10を含む層システム9とをそれぞれ有し、層システム9は、下部電極5と上部電極7との間に配置され、及びセル3は、互いに直列に相互接続される。光起電素子1は、第一のセル3及び/又は第nのセル3に導電接触13によって接続された少なくとも1つのバスバー11を有する。少なくとも1つのバスバー11の、第一のセル3の上部電極7及び/又は第nのセル3の上部電極7との導電接触は、それぞれの場合にバスバー11の長手方向に互いから特定の距離A15、好ましくは周期的距離15に配置されたビア点17によって形成される。個々のビア点17間の領域では、上部電極7と少なくとも1つのバスバー11との間に導電接触が形成されない。A/2未満、好ましくはA/4未満の直径を有する取り囲む円における、ビア点17の周りの周囲区域19は、光活性でないか、又は少なくとも低下した程度に光活性である。この例示的実施形態では、下部電極5、上部電極7及び層システム9は、セル3を形成する目的及びセル3を直列に相互接続する目的のためにレーザで構造化される。この場合、本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つのバスバー11は、アルミニウム又はスズ及び銅から形成される。
【0083】
この例示的実施形態では、少なくとも1つのバスバー11と上部電極7及び/又はセル3、好ましくは第一及び/又は第nのセル3の層システム9との間において、保護層21、好ましくは保護薄膜が配置され、これは、機械的保護機能、酸素バリア機能及び/又は水分バリア機能を有し、これは、ビア点17の周りの周囲区域19で少なくとも部分的に穿孔される。
【0084】
この例示的実施形態では、左側に配置された、第一のセル3に対応するセル3は、他のセル3(2~n)と比較してより小さい幅Bを有し、右側に配置された、第nのセル3に対応するセル3は、他のセル(1~n-1)と比較してより大きい幅Bを有し、中央のセル3(2~n-1)の各々は、同一の幅Bを有する。その結果、セル3の各々が同じ長さを有するため、光起電素子1の第一のセル3の面積は、最も小さく、光起電素子1の第nのセル3の面積は最も大きい。この例示的実施形態では、第一のセル3は、直列相互接続に集積されず、すなわち、第一のセル3は、光起電に寄与せず、したがってその面積を最小化することができる。
【0085】
この例示的実施形態では、層システム9は、1つの光活性層9を有するが、代替的に、層システムは、2、3又は4つの光活性層10を有し得る。
【0086】
この例示的実施形態では、光起電素子1の第一のセル3の幅Bは、2~n-1のセル3の幅と比較してより小さく、したがって特に対応するレーザ構造化によって不活性化されるか、又は他の2~nのセル3と直列に相互接続されない。その結果、より小さい面積を有する第一のセル3は、光起電素子1全体のパワーを制限しない。その代替的実施形態では、第一のセル3は、2~n-1のセル3と比較してより大きい幅B、特に第nのセル3の幅Bに対応する幅Bを有し、活性化され、他の2~nのセル3と直列に相互接続される。この実施形態では、2~nのセル3と比較してより大きい第一のセル3の面積は、光起電素子1全体のパワーに対する限定的な影響を有しない。
【0087】
その結果、少なくとも1つのバスバーによる第一及び/又は第nのセルの損傷、特に結果として生じる機能的面積の損失は、第一及び/又は第nのセルの範囲がより大きいことによって補償される。ビア点における水分の侵入があっても、バスバーを有する第一のセル及び/又は第nのセルの十分な機能的面積は依然として保持される。有利には、光起電素子の寿命が延びる。
【0088】
本発明の1つの実施形態では、n個のセル3の各々は、それぞれの場合に特定の幅B及び特定の長さLを有し、第一のセル3及び/又は第nのセル3は、2~n-1のセル3と比較してより大きい幅Bを有し、及びn個のセル3は、同一の長さLをそれぞれ有し、好ましくは、第一のセル3から第nのセル3のn個のセル3は、それらの長手方向の辺で互いに対して配置され、及び/又は2~n-1のセル3の面積は、互いに同一の大きさであり、それにより、光起電素子1の少なくとも1つのバスバー11と反対の面から均一に照明された場合の第一のセル3及び/又は第nのセル3の光電流生成は、2~n-1のセル3と比較して少なくとも同一の大きさであり、好ましくは少なくとも5%だけ大きいか、好ましくは少なくとも10%だけ大きいか、又は好ましくは少なくとも20%だけ大きい。
【0089】
本発明の別の実施形態では、第一のセル3は、2~nのセル3と比較してより小さい幅Bを有し、及びn個のセル3は、同一の長さLをそれぞれ有し、第一のセル3は、好ましくは、少なくともほぼ光活性でないか、又は電気的にブリッジされる。好ましくは、第一のセル3は、直列相互接続に含まれないか、又は第一のセル3は、電気的にブリッジされ、したがって直列相互接続に関して電流制限効果を有しない。
【0090】
本発明の別の実施形態では、第一のセル3は完全なセルではなく、下部電極5又は上部電極7を含み、特に下部電極5及び上部電極7から選択された、より高い表面導電性を有する電極である。
【0091】
本発明の別の実施形態では、第一のセル3のバスバー11は、第一のセル3より大きい幅を有するように形成され、それにより、バスバー11は、少なくとも一部が第二のセル3の上に乗るが、第二のセル3から保護層21によって導電的に絶縁される。
【0092】
本発明の別の実施形態では、ビア点17はバスバー11の長手方向に互いから少なくとも1cmの距離15、好ましくは互いから少なくとも2cm、好ましくは互いから少なくとも5cm、好ましくは互いから少なくとも10cm又は好ましくは互いから少なくとも20cmの距離15に形成される。
【0093】
本発明の別の実施形態では、2~n-1のセル3の幅Bは、0.5cm~5cm、好ましくは1cm~5cmであり、及び/又は1~nのセル3の長さLは、10cm~20m、好ましくは50cm~20mであり、及び/又は第一のセル3及び/又は第nのセル3の幅Bは、2~n-1のセル3と比較して少なくとも5%だけ、好ましくは少なくとも10%だけ、好ましくは少なくとも20%だけ又は好ましくは少なくとも25%だけ大きくされ、それにより、少なくとも1つのバスバー11から離れる方を向く光起電素子1の面からの均一な照明時における第一のセル3及び/又は第nのセル3の光電流生成は、2~n-1のセルと比較して好ましくは少なくとも5%だけ、好ましくは少なくとも10%だけ又は好ましくは少なくとも20%だけ大きい。
【0094】
本発明の別の実施形態では、ビア点17の周りの周囲区域19内の下部電極又は上部電極は、第一のセル3及び/又は第nのセル3の層システムの残りの部分のそれぞれの電極5、7から、それぞれの場合に閉じた構造化線23、好ましくは円形又は矩形の構造化線23によって導電的に絶縁され、それにより、ビア点17の周りの周囲区域19内の下部コンタクト5と上部コンタクト7との間に生じるシャント電流経路は、対応する第一のセル3及び/又は第nのセル3の短絡回路をもたらさない。
【0095】
本発明の別の実施形態では、下部電極5又は上部電極7に隣接する構造化線23の領域内では、層システム9はまた、全体的に又は少なくとも部分的に中断され、それによりビア点17の周りの周囲区域19内の水分及び/又は大気中酸素の拡散、特に横方向の拡散が防止され得るか又は少なくとも低減化され得る。
【0096】
本発明の別の実施形態では、ビア点17の周りの周囲区域19は、それぞれの場合において、光活性層10を含む層システム9を有しないか、又は少なくとも光活性層10を含む層システム9を有さず、好ましくは、ビア点17は、光活性層10を含む層システム9を有しない。
【0097】
本発明の別の実施形態では、セル3の層システム9は、それぞれの場合にビア点17の周りの周囲区域19内、すなわちビア点17の周りの領域において追加的に分離線25を有し、これは、ビア点17でビア点17の周りの周囲区域19の外の層システム9中に浸透した水分の拡散を少なくとも部分的に防止する。その結果、セルへのさらなる損傷は少なくとも部分的に防止される。本発明の1つの実施形態では、分離線25は下部電極5又は上部電極7の構造線23と一致させることができるか、又は構造化線23によって画定される領域内に存在させることができ、特に構造化線23と比較してより小さい直径を有することができる。
【0098】
本発明の別の実施形態では、光起電素子1は、光起電薄膜素子、好ましくは有機光起電薄膜素子及び/又は可撓性光起電薄膜素子であり、光起電薄膜素子は、好ましくは、吸収体材料としての小分子で構成される少なくとも1つの光活性層10を有する。
【0099】
1つの実施形態では、セル3の上部電極7と少なくとも1つのバスバー11との間の少なくとも1つのビア点17による導電接触は、以下のように生成され得る:
A)上部電極7とバスバー11との間の絶縁層の局所的レーザアブレーション又は標的を絞った機械的ダメージと、その後の導電性PSA又は導電性接着剤、例えばUV硬化性又は熱硬化性エポキシ系若しくはアクリル系接着剤による導電接続、
B)構造化された絶縁層の、絶縁層が所望の地点で中断されるような、印刷又はコーティング方式による、好ましくはリソグラフィステップとの併用による堆積と、その後の導電性PSA又は導電性接着剤、例えばUV効果性又は熱硬化性エポキシ系又はアクリル系接着剤による導電接続、
C)セル3の上部電極7へのトポグラフィ的に高度な導電性構造の、例えば導電性接着剤又は例えばレーザを用いた上部電極7の粗化による堆積と、その後のトポグラフィ的に複雑な区域の領域から離れたあらゆる箇所のセルとバスバーとを絶縁させることになる薄い絶縁層の堆積。
【0100】
別の例示的実施形態では、A)による接触の目的のために、好ましくはSiOCHから形成される絶縁層21は層21のスクレープ又はレーザ処理によって局部的に除去され、その後の導電性接着剤、例えば銀含有接着剤の液滴の塗布によって導電的に接続される。
【0101】
図3は、互いから距離Aに配置されたビア点17を含む導電接触13を有する直列接続された複数のセル3を含む光起電素子1の1つの例示的実施形態の概略図を平面図で示す。同じ及び機能的に同じ要素には同じ参照符号が付されているため、この点に関しては上述の説明文を参照されたい。
【0102】
1~n-1のセル3は、セルnの幅B(Bn)と比較してより小さい幅B(B1~Bn-1)を有する。セル3の長さLは、それぞれの場合に同一に形成される。セル3の長さLは、ここで、セル3の幅Bより大きい。この例示的実施形態における光起電素子1は、薄膜技術を用いた光起電素子1である。
【0103】
横方向Qに直列に相互接続された2~n-1のセル3の面積は、同じであり、第nのセル3の面積は、他のセル3と比較してより大きい。それぞれのバスバー11は、第一のセル3上及び第nのセル3上に配置される。第nのセル3上のバスバー11は、3つのビア点17を有し、これらは、バスバー11の長手方向に互いから距離Aに形成され、それにより第nのセル3の上部電極7との導電接触13が形成される。光電流生成がより少ない領域は、それぞれの場合にビア点17の周りの周囲区域19内にある。
【0104】
この例示的実施形態では、2~n-1及びnのセル3の幅と比較してより小さい幅Bが与えられた第一のセル3は、不活性であるか又は少なくともほぼ不活性であり、これは、特にバスバーによって被覆されることによるか又は不活性化されることによる。
【0105】
図4は、互いから距離Aに配置されたビア点17を含む導電接触13を含む光起電素子1の1つの例示的実施形態の概略図を平面図で示す。同じ及び機能的に同じ要素には同じ参照符号が付されているため、この点に関しては上述の説明文を参照されたい。
【0106】
1~n-1のセル3は、セルnの幅B(Bn)と比較してより小さい幅B(B1~Bn-1)を有し、1のセル3は、2~n-1のセル3の幅B(B2~Bn-1)と比較してより小さい幅B(B1)を有する。セル3の長さLは、それぞれの場合に同一に形成される。
【0107】
それぞれのバスバー11は第一のセル3上及び第nのセル3上に配置される。第nのセル3上のバスバー11は3つのビア点17を有し、これらはバスバー11の長手方向に互いから距離Aに形成され、それにより第nのセル3の上部電極7への導電接触13が形成される。光電流生成がより少ない領域は、それぞれの場合にビア点17の周りの周囲区域19内に存在する。
【0108】
ビア点17の周りの周囲区域19は、ビア点17の周りの周囲領域19Aでは劣化前に光電流生成が減少しているように示され、ビア点17の周りの周囲区域19Bでは劣化後に光電流生成が減少しているように示されている。
【0109】
この例示的実施形態では、2~n-1及びnのセル3の幅と比較してより小さい幅Bを与えられた第一のセル3は、不活性であるか又は少なくともほぼ不活性であり、これは、特にバスバー11によって被覆されることによるか又は不活性化されることによる。
【0110】
図5は、互いから距離Aに配置されたビア点17を含む導電接触13を有する直列接続された複数のセル3を含む光起電素子1の1つの例示的実施形態の概略図を平面図で示す。同じ及び機能的に同じ要素には同じ参照符号が付されているため、この点に関しては上述の説明文を参照されたい。
【0111】
1~n-1のセル3は、セルnの幅B(Bn)と比較してより小さい幅B(B1~Bn-1)を有する。1~n-1のセルの幅B(B1~Bn-1)は、同じである。セル3の長さLは、それぞれの場合に同一に形成される。セル3の長さLは、ここで、セル3の幅Bより大きい。この例示的実施形態の光起電素子1は、薄膜技術を用いる光起電素子1である。
【0112】
それぞれの構造化線21は、ビア点17の周りの周囲区域19と共にビア点17の周囲に閉じた状態に形成され、ビア点の周りの周囲区域19内の下部コンタクト5又は上部コンタクト7をセル3の面積の残りの部分から分離し、それにより、下部コンタクト5又は上部コンタクト7は、セル3の面積の残りの部分から電気的に絶縁される。
【0113】
この例示的実施形態では、2~n-1及びnのセル3の幅と比較してより小さい幅Bを与えられた第一のセル3は、不活性であるか又は少なくともほぼ不活性であり、これは、特にバスバー11によって被覆されることによるか又は不活性化されることによる。
【国際調査報告】