(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】キウイ発酵物を含む胃機能改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20231129BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A23L33/135
C12N1/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569257
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2022009764
(87)【国際公開番号】W WO2023068486
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0139025
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522442917
【氏名又は名称】ヴァイテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ド ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン キョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョク セ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】オ、ヒョン チョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME11
4B065AA01X
4B065AA30X
4B065BA22
4B065BB26
4B065CA42
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃機能改善用組成物に関し、本発明によると、本発明に係るキウイ発酵物を含む組成物は、胃の消化機能及び胃粘膜の損傷を改善し、胃酸の分泌を抑制することによって、胃の機能を改善できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃機能改善用組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌は、キウイ由来の乳酸菌であることを特徴とする請求項1に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項3】
前記キウイ由来の乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus Lactis)VI-01 KCTC 14351BP及びラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)VI-02 KCTC 14352BPのうちの1つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項4】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス・エキシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus Helveticus)で構成される群から選択される1つ以上の菌株を含むことを特徴とする請求項1に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項5】
前記キウイ発酵物は、組成物の総重量に対して30~80重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、健康機能食品組成物であることを特徴とする請求項1に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項7】
前記健康機能食品組成物は、カプセル、精製、粉末、顆粒、液状、丸、片状、ペースト状、シロップ、ゲル、飲料、ゼリー及びバーで構成される群から選択される1つ以上の剤形であることを特徴とする請求項6に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、食品組成物であることを特徴とする請求項1に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項9】
前記食品組成物は、乳製品、飲料、ソース類、ジャム類及び製菓類で構成される群から選択される1つ以上の剤形であることを特徴とする請求項8に記載の胃機能改善用組成物。
【請求項10】
キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む消化機能改善用組成物。
【請求項11】
キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃粘膜損傷改善用組成物。
【請求項12】
キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃酸分泌抑制用組成物。
【請求項13】
キウイを乳酸菌又はその培養液で発酵させて発酵物を得る段階を含む請求項1に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【請求項14】
前記乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus Lactis)VI-01 KCTC 14351BP又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)VI-02 KCTC 14352BPであることを特徴とする請求項13に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【請求項15】
前記発酵は、ラクトバチルス・エキシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus Helveticus)で構成される群から選択される1つ以上の菌株を更に用いて発酵させることを特徴とする請求項13に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【請求項16】
前記培養液は、
第1培地に菌株をそれぞれ培養して第1培養産物を製造する段階と、
前記第1培養産物を第2培地に接種及び培養して第2培養産物を製造する段階と、
前記第2培養産物を遠心分離して上澄み液を除去して培養液を得る段階によって製造されることを特徴とする請求項13に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【請求項17】
前記(a)段階でキウイ及び培養液は、7.5~8.5:2.5~1.5重量%の割合で混合することを特徴とする請求項13に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【請求項18】
前記キウイ発酵物を乾燥及び粉末化する段階を更に含むことを特徴とする請求項13に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【請求項19】
前記乾燥は、
液体窒素冷凍機(liquid nitrogen freezer、LNF)を用いて発酵物を-180℃~-195℃で急速凍結する段階と、
急速凍結された発酵物を-35℃~-45℃で凍結乾燥する段階によって行うことを特徴とする請求項18に記載のキウイ発酵物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キウイ発酵物を含む胃機能改善用組成物及びキウイ発酵物の製造方法に関し、より詳細には、キウイ由来の乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃機能改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胃は消化管の一部分であって、食道と十二指腸を繋ぐ中空の袋状の器官である。胃は、食道を通して入ってくる食べ物をしばらく貯め、一部の消化作用を経て十二指腸に食べ物を送ることを調節して膵臓酵素の分泌と調和をなして効率的な消化と吸収が行われるようにする臓器である。胃は、食べ物が入ってくると、これを消化させるために胃酸を分泌するが、この際に胃粘膜の保護層が強い酸性である胃酸によって胃粘膜の損傷を抑制する。
【0003】
人の胃機能に否定的な影響を及ぼす要因は、遺伝的、生理学的、環境的及び精神的要因など多様である。このような多様な要因によって胃の運動能力が低下する場合、消化不良、胸やけ、胃もたれ、嘔吐などの症状が現れる恐れがあり、このような症状が3ヶ月以上続く場合を機能性胃腸障害という。また、胃酸が過剰に分泌される場合、胃酸によって胃粘膜の保護層が損傷するが、この際に胃に炎症が起き、この炎症が持続的に繰り返される場合、胃炎及び胃潰瘍を誘発する恐れがある。胃炎は、炎症による病変が胃粘膜に限られている場合をいい、胃潰瘍は、胃粘膜を傷つけて粘膜下組織と筋肉層まで潰瘍を形成した場合をいう。更に、慢性胃炎が繰り返されて悪化する場合、粘膜に腸上皮化生(Intestinal Metaplasia)の変化が生じることもあるが、このような変化は、胃癌にまで発展させる可能性があるので、胃機能を改善して胃の健康を維持する必要がある。
【0004】
キウイ(kiwi fruit)は、マタタビ科(Acinidiaceae)マタタビ属(Actinidia)に属する雌雄異株のつる性落葉果樹であって、主に温帯地域で育つ。実の形が茶色の毛で覆われており、ニュージーランドに生息する「キーウィ」という鳥に似ていることから、キウイという名前が付けられたとされ、韓国ではびこう桃、チャイニーズ・グーズベリーとも呼ばれている。キウイは、食品の味、香味だけでなく、多様な生理活性に貢献すると知られているフェノール性化合物が含有されており、ビタミンC、ビタミンEが豊富であり、葉酸、カリウム、カルシウム、燐などの無機質が多量に含まれているだけでなく、クロロフィル、カロチノイドのような健康に有益な生理活性物質が含有されている。このようにキウイには、多様な生理活性物質などが含まれており、キウイを用いた多様な研究が続けられている。具体的に、下記の特許文献1は、キウイ抽出物を含有する肌のトーンアップ及び肌の老化防止効果のある化粧料組成物に関するものであって、キウイ抽出物が肌の糖化反応を効果的に抑制することによって、肌をトーンアップさせ、肌のシワを緩和できることが開示されている。下記の特許文献2は、ゴールドキウイ乳酸菌発酵物を有効成分として含有する抗酸化組成物に関するものであって、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株培養液で発酵させて製造されたゴールドキウイ乳酸菌発酵物は、発酵していないゴールドキウイに比べて総フェノール及びフラボノイドの含有量が著しく増加し、抗酸化の活性に優れていることが開示されている。また、キウイに含まれているアクチニジンは、蛋白質を分解する酵素であって、消化促進に効果的であるため、胃の健康に役立つ果物として知られている。しかし、従来技術には、キウイ発酵物が消化機能及び胃粘膜の損傷を改善し、胃酸の分泌を抑制することによって、胃の機能を改善する効果については言及していない。
【0005】
また、キウイは、多様な効能があるにも拘らず、キウイの柔らかくなり過ぎる性質による低い貯蔵性と、一定期間が経過すると嗜好度が低下するという短所により摂取が容易でないため、適切な加工食品の開発が求められているが、キウイの加工食品は乏しいのが現状である。
【0006】
一方、乳酸菌(lactic acid bacteria)は、糖類を発酵させて乳酸及び多様な代謝産物を生産する微生物であって、乳酸菌の発酵によって生産される代謝産物は、風味の増進、拮抗物質の生成による人体有害微生物の抑制、ビタミンのような人体有用物質の合成による栄養及び健康増進効果、抗菌効果など多様な特性を有するため、乳酸菌のこのような機能性に基づいた多様な食品を発酵させる研究が行われている。
【0007】
これにより、本発明者らは、前記従来技術の問題を解決すべく鋭意研究した結果、キウイをキウイ由来の乳酸菌であるラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus Lactis)VI-01 KCTC 14351BP又はその培養液、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)VI-02 KCTC 14352BP又はその培養液で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃機能改善用組成物の場合、胃の消化機能及び胃粘膜の損傷を改善し、胃酸の分泌を抑制することによって、胃機能を改善できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第1081910号公報
【特許文献2】韓国登録特許第2027798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、胃の消化機能及び胃粘膜の損傷を改善し、胃酸の分泌を抑制することによって、胃機能を改善できるキウイ発酵物を含む胃機能改善用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、キウイ由来の乳酸菌を用いたキウイ発酵物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、本発明は、キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃機能改善用組成物を提供する。
【0012】
本発明における用語である「胃機能改善」は、胃の健康を維持して増進させることができるように胃の機能を改善して向上させるものであって、具体的には、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼのような消化酵素の活性を増加させ、胃の運動性を向上させることによって、消化機能を促進及び改善し、胃炎を防止して損傷した胃粘膜を改善することで、胃粘膜の損傷を予防及び改善し、胃酸の分泌を抑制することによって、胃を保護することを意味する。
【0013】
本発明におけるキウイは、Actinidia chinensis属(ゴールドキウイ)のキウイであり、細部品種としては、ジェシーゴールド(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Jecy Gold’)、ハンラゴールド(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Halla Gold’)、ヘグム(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Haegum’)、ゼスプリゴールドZespri(登録商標)Gold(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Hort16A’)、ゼスプリサンゴールドZespri(登録商標)SunGold(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Zesy002’)、ゼスプリゼシー003 Zespri(登録商標)Zesy003(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Zesy003’)、ゼスプリゼッシュ004 Zespri(登録商標)ZESH004(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘Zesh004’)、ドリConsorzio Dori Europe(登録商標)Dori(Actinidia chinensis Planch var. chinensis‘AC 1536')及びジンゴールドJingold(登録商標)(Actinidia chinensis Planch‘Jintao')で構成される群から選択されるキウイであり得るが、これに制限されない。
【0014】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記乳酸菌は、キウイ由来の乳酸菌であって、前記キウイ由来の乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus Lactis)VI-01 KCTC 14351BP及びラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)VI-02 KCTC 14352BPのうちの1つ以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、キウイから分離された菌株から乳酸菌を分離し、選別された菌株を16s rRNA分析を通じて遺伝体の塩基配列を解読した。また、遺伝体の塩基配列の解読によって選別された菌株を「ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus Lactis)VI-01」及び「ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)VI-02」と命名し、生命工学研究院の生命資源センター(KCTC)に2020年11月3日付で寄託し、寄託番号KCTC14351BP、KCTC14352BPがそれぞれ付与された。
【0016】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記乳酸菌は、当業界において一般に発酵に用いる乳酸菌であり、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・デルブルエッキイー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノースス(Lactobacillus rhamnosus)及びラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)で構成される群から選択される1つ以上の菌株、より好ましくはラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus Helveticus)で構成される群から選択される1つ以上の菌株を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記キウイ発酵物は、組成物の総重量に対して30~80重量%、好ましくは30~60重量%含まれることを特徴とする。前記キウイ発酵物の含有量が30重量%未満の場合、十分な胃機能改善の効果を表し難く、80重量%超過する場合、含有量に比べて胃機能改善の効果が十分でないことから、経済的な面から好ましくない。
【0018】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記組成物は、健康機能食品の組成物であることを特徴とする。
【0019】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記健康機能食品の組成物は、摂取と活用に便利な剤形を有することができ、好ましくはカプセル、錠剤、粉末、顆粒、液状、丸、片状、ペースト状、シロップ、ゲル、飲料、ゼリー及びバーで構成される群から選択される1つ以上の剤形であることを特徴とする。このような剤形に製造するために、通常の賦形剤、安定剤、増粘剤などを更に含むことができる。また、食品添加物を追加で含むことができ、「食品添加物」として適しているか否かは他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法などによって該当品目に関する規格及び基準により判定する。
【0020】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記組成物は、食品組成物であることを特徴とする。
【0021】
本発明の胃機能改善用組成物において、前記食品組成物は、キウイ発酵物を主成分として利用可能な食品に剤形化でき、好ましくは乳製品、飲料、ソース類、ジャム類及び製菓類で構成される群から選択される1つ以上の剤形であることを特徴とする。
【0022】
本発明の他の態様によると、本発明は、キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む消化機能改善用組成物を提供する。
【0023】
本発明の一実験例によると、本発明に係るキウイ発酵物は、消化酵素であるアミラーゼ、リパーゼ及びプロテアーゼの活性に優れており(実験例5参照)、胃の排出能(実験例6参照)及び胃腸管の運動能(実験例7参照)に優れていることを確認した。このような結果は、本発明に係るキウイ発酵物が消化機能を改善でき、このような消化機能の改善は、最終的には胃の機能を改善することで、胃の健康を増進させることができることを示唆する。
【0024】
本発明の更に他の態様によると、本発明は、キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃粘膜損傷改善用組成物を提供する。
【0025】
本発明の一実験例によると、本発明に係るキウイ発酵物は、抗酸化効果に優れており(実験例4参照)、損傷した胃粘膜を回復させ(実験例8参照)、胃粘膜における炎症を減少(実験例9)させることを確認した。このような結果は、本発明に係るキウイ発酵物が胃粘膜の損傷を予防及び改善でき、このような胃粘膜損傷の予防及び改善は、最終的には胃の機能を改善することで、胃の健康を増進させることができることを示唆する。
【0026】
本発明の別の態様によると、本発明は、キウイを乳酸菌で発酵させたキウイ発酵物を有効成分として含む胃酸分泌抑制用組成物を提供する。
【0027】
本発明の一実験例によると、本発明に係るキウイ発酵物は、胃酸の分泌を抑制することを確認した(実験例11参照)。このような結果は、本発明に係るキウイ発酵物が胃酸の分泌を抑制することによって、胃粘膜を保護でき、このような胃酸分泌の抑制は、最終的には胃の機能を改善することで、胃の健康を増進させることができることを示唆する。
【0028】
本発明の更に別の態様によると、本発明は、キウイを乳酸菌又はその培養液で醗酵させて発酵物を得る段階を含むキウイ発酵物の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の用語である「培養液」は、本発明に係るキウイ由来の乳酸菌を公知の培地で培養させて得られた産物を意味し、前記産物は乳酸菌を含む。
【0030】
キウイは、多様な効能物質を含んでいるが、柔らかくなり過ぎる性質による低い貯蔵性と、一定期間が経過すると嗜好度が低下するという短所によって摂取が容易でないことから、健康食品としての選好度が低い。これにより、本発明者らは、キウイを乳酸菌又はその培養液で培養して製造したキウイ発酵物をLNF(liquid nitrogen freezer)を用いて粉末化する場合、摂取が容易な剤形に製造できることを確認した。
【0031】
前記キウイは、果実そのものを用いることもできるが、好ましくはキウイピューレに製造して用いることができる。キウイピューレは、キウイの果皮をむいて果肉を細かく切り、磨砕機を用いて磨砕した後、濾過網を用いて種を除去することによって製造できる。
【0032】
本発明のキウイ発酵物の製造方法において、前記乳酸菌はキウイ由来の菌株であって、前記キウイ由来の菌株は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus Lactis)VI-01 KCTC14351BP又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)VI-02 KCTC14352BPであることを含んでいる。
【0033】
本発明のキウイ発酵物の製造方法において、前記発酵は、当業界において一般に発酵に用いる乳酸菌を追加的に利用して発酵させることができ、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・デルブルエッキイーサブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノースス(Lactobacillus rhamnosus)及びラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)で構成される群から選択される1つ以上の菌株、より好ましくはラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus Helveticus)で構成される群から選択される1つ以上の菌株を更に用いて発酵させることを含む。
【0034】
本発明のキウイ発酵物の製造方法において、前記培養液は、第1培地に菌株をそれぞれ培養(種菌培養)して第1培養産物(種培養液)を製造する段階、前記第1培養産物を第2培地に接種及び培養(大量培養)して第2培養産物(大量培養液)を製造する段階、及び前記第2培養産物を遠心分離して上澄み液を除去して培養液を得る段階によって製造されたものを含む。前記で第1培地及び第2培地は同一であるか、異なることができ、菌株を培養するために当業界において用いる如何なる産業の培地も利用可能であり、好ましくはMRSブロスであり得る。
【0035】
前記第1培養産物(種培養液)を製造する段階は、菌株をそれぞれの培地の0.01~0.5%に接種した後、35℃~37℃で18時間~28時間培養して製造できる。前記第2培養産物(大量培養液)を製造する段階は、菌株を培地の0.01~1%ずつ接種した後、35℃~37℃で7時間~10時間培養して製造できる。
【0036】
本発明のキウイ発酵物の製造方法において、前記キウイ及び培養液は、7.5~8.5:2.5~1.5重量%の割合で混合でき、好ましくは8:2重量%の割合で混合することを含む。
【0037】
本発明のキウイ発酵物の製造方法において、前記キウイ発酵物を液状形態で利用可能であるが、パウダー形態で用いるために乾燥及び粉末化する段階を更に含む。
【0038】
本発明のキウイ発酵物の製造方法において、前記乾燥は、液体窒素冷凍機(LNF)を用いて発酵物を-180℃~-195℃で、好ましくは-195℃で急速凍結する段階、及び急速凍結された発酵物を-35℃~-45℃で、好ましくは-40℃で凍結乾燥する段階によって行うことを含む。
【0039】
本発明の乾燥段階で液体窒素冷凍機(LNF)を用いて急速凍結を先に行う場合、凍結乾燥過程で加えられる乳酸菌のダメージを最小化することで、乾燥後の生菌の生存率を増加させることができ、キウイ内の糖成分による褐変現象を最小化できる。
【発明の効果】
【0040】
前述したように、本発明に係るキウイ発酵物を含む組成物は、胃の消化機能及び胃粘膜の損傷を改善し、胃酸の分泌を抑制することによって、胃機能を改善できる。また、キウイを摂取し易い液状又はパウダー状の加工食品又は食品添加剤として製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明に係る寄託菌株をグラム染色した図である。
【
図2】本発明に係る寄託菌株の炭酸カルシウム分解による透明環の形成を示す図である。
【
図3】本発明に係る寄託菌株Lactococcus Lactis VI-01 KCTC 14351BPの形態を観察した図である。
【
図4】本発明に係る寄託菌株Lactobacillus paracasei VI-02 KCTC 14352BPの形態を観察した図である。
【
図5】本発明に係る寄託菌株Lactococcus Lactis VI-01 KCTC 14351BPの系統樹である。
【
図6】本発明に係る寄託菌株Lactobacillus paracasei VI-02 KCTC 14352BPの系統樹である。
【
図7】本発明に係るキウイ発酵物の抗酸化効果を確認した結果である。
【
図8】本発明に係るキウイ発酵物の抗酸化効果を確認した結果である。
【
図9】本発明に係るキウイ発酵物の胃排出能を測定した結果である。
【
図10】本発明に係るキウイ発酵物の胃腸管運動能評価の結果である。
【
図11】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜損傷の抑制度を確認した結果である。
【
図12】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜損傷の抑制度を確認した結果である。
【
図13】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜の改善を確認した結果である(ウエスタン・ブロッティング法)。
【
図14】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜の改善を確認した結果である(ウエスタン・ブロッティング法)。
【
図15】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜の改善を確認した結果である(ウエスタン・ブロッティング法)。
【
図16】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜の改善を確認した結果である(ELISA)。
【
図17】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜の改善を確認した結果である(ELISA)。
【
図18】本発明に係るキウイ発酵物の胃粘膜の改善を確認した結果である(ELISA)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであるため、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものとして解釈されるわけではない。
【0043】
準備例1:微生物の分離及び確認
1)分離元及び試料の前処理
ゴールドキウイから乳酸菌を分離するために、ゴールドキウイフルーツとピューレを用いた。ゴールドキウイフルーツは、ニュージーランドから輸入したゼスプリゴールドキウイを2020年9月にスーパーで購入し、3次蒸留水で洗浄して異物を除去した後、皮と共に細かく切って用いた。ゴールドキウイピューレは、(株)ナムヤン冷凍食品のゴールデンキウイピューレを2020年5月に購入し、-20℃で保管し、使用時に室温で完全に解凍して均一に混合して実験に用いた。
【0044】
2)自然発酵
細かく切ったゴールドキウイとピューレは、塩蔵条件と脱脂条件で発酵した。塩蔵条件は、それぞれの試料に8%の天日塩を添加し、3時間塩漬けした後、滅菌した1%のフラクトオリゴ糖溶液を混合し、脱脂条件は、それぞれの試料に滅菌した2%の脱脂と1%のフラクトオリゴ糖溶液を混合した。混合した全ての試料は、水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを6.0以上に補正し、37℃の培養器で約3日間発酵させた。
【0045】
3)乳酸菌の選別及び同定
発酵した試料は、均一に混合した後、発酵液の一部を取ってBCPプレートカウント寒天培地(栄研化学(株)製、日本)を用いて接種し、37℃で48時間培養した。その後、培地が黄色を呈し、表現型が互いにコロニーを対象にMRS寒天(Difco社製、USA)平板培地を用いて純粋分離した。純粋分離した菌株は、コロニーの特性を確認し、顕微鏡観察(1000倍)を通じて細胞の形態を確認し、グラム染色によってグラム陽性を示す菌株のみを1次選別した(
図1)。その後、炭酸カルシウム(DAEJUNG社製、大韓民国)が1%含まれているMRS寒天培地に接種し、37℃で48時間培養して有機酸によって炭酸カルシウムを分解して透明環(clear zone)が大きく形成された菌株2種を最終的に選別した(
図2)。
【0046】
分離した2種菌株は、任意でVI-01、VI-02と命名し、30%のグリセロールを用いてストックに製造して-80℃で保管した。2種菌株の糖分解能、アルギニンおよびエスクリン分解能などの生化学的特性を確認するために、API 50 CHLキット(Biomerieux社製、フランス)を用いて培地の色変化をアピウェブプログラム(apiweb program)(http://apiweb.biomerieux.com)を用いて同定した。
【0047】
16s rRNA分析は、株式会社バイオファクトに依頼し、27Fと1492Rのプライマーを用いたPCRの遂行及び配列分析を行った。確認された各菌株の塩基配列は、NCBIのBLASTプログラムを用いてGenBankに登録された16S リボソームのRNA遺伝子配列と相同性を比較し、近接結合法(neighbor-joining method)を適用したClustalX 2.1プログラムを用いてアライメントした。系統樹は、ClustalX 2.1のブートストラップN-Jツリー方法を用い、NJplotプログラムで確認した。
【0048】
4)遺伝体塩基配列の解析
系統VI-01菌株の16S rRNA遺伝子分析を通じて1,414bpサイズの塩基配列を確認した結果、Lactococcus lactisNBRC 100933 strainと100%の相同性を示した。従って、VI-01菌株をLactococcus lactis VI-01と命名した(配列番号1)。
【0049】
系統VI-02菌株の16S rRNA遺伝子分析を通じて1,441bpサイズの塩基配列を確認した結果、Lactobacillus paracasei R094 strainと99%の相同性を示した。従って、VI-02菌株をLactobacillus paracasei VI-02と命名した(配列番号2)。
【0050】
5)糖利用性調査による同定
分離菌株のAPI 50 CHLキットを用いて糖利用性調査による菌同定結果、系統 VI-01は、Lactococcus lactisと98.4%の類似性が確認され、株VI-02は、Lactobacillus paracaseiと99.6%の類似性が確認された。
【0051】
準備例2:菌株の生化学的及び形態学的特性
1)生化学的特性
分離菌株の生化学的特性は、API 50 CHLキットで測定した。MRS寒天培地に純粋培養したコロニーをAPI 50 CHL培地に適正濃度に希釈してAPI 50 CHLキットに接種した後、37℃で24~48時間培養して接種された培地の色変化を観察した。
【0052】
Lc.lactis VI-01菌株は、49個の糖のうちガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、マンニトール、マルトース、ラクトースなど計19個の糖を用いたが、ソルビトールやキシリトールなどは利用できないことが確認された(表1)。
【0053】
【0054】
L.paracasei VI-02菌株は、糖49個のうちガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、マンニトール、ソルビトールなどを含んで22個の糖を用い、ラクトースとキシリトールなどは利用できなかった(表2)。
【0055】
【0056】
2)形態学的特性
形態学的特性は、MRS寒天培地で培養した菌株のコロニー形態と色などを確認し、顕微鏡で菌株の形態を観察した。
【0057】
Lc.lactis VI-01菌株のコロニーは、0.5-1.5mmの小さくて丸い形であり、白色の光沢のある形態である。顕微鏡で菌株の形態を観察した結果、球菌であることが確認された(
図3)。
【0058】
L.paracasei VI-02菌株のコロニーの形態は、1.5-2.5mmの丸くて凸状であり、白色又はクリーム色の光沢がある。顕微鏡による観察の結果、杆菌として長連鎖を形成した(
図4)。
【0059】
準備例3:菌株寄託
16S RNA配列分析と形態学的特性を確認し、最終的に菌株確認作業を行った後、生物資源センターに寄託手続きを行い、寄託番号が付与された(表3)。
【0060】
【0061】
前記のように新規分離された寄託菌株の活性を確認するための実験を行うために、下記の表4のように、試験群の構成を設定して耐酸性試験、人工胃液抵抗性試験及び人工胆汁酸抵抗性試験を行った。寄託菌株1及び2は、本発明でキウイから分離した新規菌株であり、一般菌株1及び2は、商業的に販売される菌株である。
【0062】
【0063】
実験例1:耐酸性試験
滅菌したMRSブロス30mLを50mLのコニカルチューブに移した後、菌液1%を接種して37℃で18時間培養した。培養液は、4500rpmの条件で10分以上遠心分離して菌体を完全に沈めた後、上澄み液のみを除去した。上澄み液を除去し、菌体のみ入っている50mLのコニカルチューブにpH2.0とpH3.0のPBS緩衝液を除去した上澄み液と同じ量で添加して均一に混合した。37℃で2時間培養した後、試料の一部を取り、0.85%のNaCl溶液を用いて適正濃度に希釈し、MRS寒天培地に接種して37℃で48時間培養した。コロニーが15~300個分布したMRS寒天プレートを選別してコロニーを計数して結果を確認し、その結果を下記の表5に示した。
【0064】
【0065】
その結果、前記表5に示すように、本発明でキウイから分離した寄託菌株が一般菌株に比べて生存率が高いことから、耐酸性に優れていることが確認できる。
【0066】
実験例2:人工胃液抵抗性の試験
1%のペプシン溶液を製造し、滅菌されたMRSブロス30mlを50mlのコニカルチューブに移した後、各実験サンプルの菌液1%を接種して37℃で18時間培養した。pH2.5 MRSブロス89mLに1%のペプシン溶液を10mL添加した後、培養液1%を混合し、37℃で2時間培養し、培養0、1、2時間に試料の一部を取り、0.85%のNaCl溶液を用いて適正濃度に希釈した後、MRS寒天培地に接種して37℃で48時間培養した。培養完了後、生菌数の確認を通じて生存率を測定して結果を確認し、その結果を下記の表6に示した。
【0067】
【0068】
その結果、前記表6に示すように、本発明でキウイから分離した寄託菌株が一般菌株に比べて人工胃液の酸性条件での生存率が高いことが分かった。pH3~4程度の水準であるキウイから分離された本発明の寄託菌株の耐酸性が顕著に優れていることが分かった。
【0069】
実験例3:人工胆汁酸抵抗性試験
耐胆汁酸試験の場合、胃を経た後、十二指腸内で胆汁による生存可能性及び活性維持などを確認できる実験方法として人工胆汁処理の後に、生菌数を測定して生存率を確認した。
【0070】
具体的に、滅菌されたMRSブロスに菌体を1%接種し、37℃で18時間培養したサンプルを人工胃液に2時間前処理を行った後、MRSブロス87mlと10%のオックスゴール溶液を3ml混合し、人工胃液前処理サンプルを10ml混合して37℃で4時間培養して処理したサンプルをプレートに塗抹した後、生成されたコロニー数を確認して生存率を計算し、その結果を下記の表7に示した。試験の結果、人体の消化過程に対する補正のために胆汁酸試験の場合、人工胃液の処理後に人工胆汁酸を処理して最終結果を確認した。
【0071】
【0072】
その結果、前記表7に示すように、人工胃液に前処理して生存率が減少した状態で人工胆汁酸の処理時に、本発明でキウイから分離した寄託菌株の場合、何れも50%以上の生存率を示したのに対し、一般菌株の場合、30%台の生存率のみ示し、寄託菌株の活性の消化器内における胃液や胆汁酸などの消化酵素に対して活性が高いことが分かった。
【0073】
実施例:乳酸菌を用いたキウイ発酵物の製造
1)キウイの入庫
様々な品種のキウイを使用できるが、本発明では、Actinidia chinensis属(ゴールドキウイ)のキウイを用いた。
【0074】
2)前処理過程(キウイピューレの製造)
キウイフルーツを数回洗って、原料として使用できるキウイフルーツを選別する。選別基準は、肉眼で観察した際に果実に傷のないもの、腐ったり、菌に汚染していないもの、糖度が13Brix%以上(超えない場合、追熟過程を経る)のものを選別する。選別された果実の果皮をむいて果肉を細かく切る。
【0075】
3)磨砕・種分離過程(キウイピューレの製造)
磨砕・種分離は、細かく切られた果肉を遠心分離磨砕機に投入して磨砕し、濾過網に濾過された種を除去した後、撹拌して均質する。
【0076】
4)乳酸菌培養の過程(種培養-タンク培養-遠心分離)
4-1)乳酸菌の菌種
キウイ発酵物を製造するために用いる乳酸菌は、以前実験で分離したL.paracasei VI-02 KCTC14352BP、Lc.lactis VI-01 KCTC14351BPの菌株にラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus Helveticus)の3種のラクトバチルス菌種を混合して発酵を行い、3種のラクトバチルス菌種の場合、ソッコ(Socco)社の製品を用いた。
【0077】
4-2)培養過程
4-2-1)種菌の培養
種菌の培養は、MRSブロスで培養した。具体的な培養方法は、各菌株をそれぞれの培地の0.1%で接種した後、37℃で24時間培養して第1培養産物(菌株)を得た。滅菌は、121℃で15分間実施した。
【0078】
4-2-2)大量培養
大量培養は、前記第1培養産物を用いて行った。MRS培地に第1培養産物を接種した後、37℃で9時間培養して第2培養産物を得た。滅菌は、121℃で20分間実施した。
【0079】
大量培養は、1つの菌株のみを用いる場合は、1つの菌株のみを培養して得た第1培養産物をMRS培地に接種して大量に培養し、1つ以上の菌株を用いる場合には、1つ以上の菌株をそれぞれ培養して得たそれぞれの第1培養産物を全て1つの培地(MRS培地)に接種して大量に培養する。
【0080】
大量培養段階で1つ以上の菌株を接種する場合、菌株を培養した第1培養産物を同じ量で接種して培養するか、好ましくは寄託菌株を培養した第1培養産物を25~50重量%で接種し、一般(commercial)菌株を培養した第1培養産物は、合計が50重量%になるように接種して培養する。
【0081】
4-2-3)遠心分離及び濃縮
培養が完了した乳酸菌を遠心分離して乳酸菌が含まれている培養液を濃縮する。
【0082】
5)混合
原料(キウイピューレ)と乳酸菌培養液を8:2の割合で混合する。具体的な構成及び接種量は、下記の表8の通りである。
【0083】
【0084】
6)発酵
前記混合した原料を37℃で8~12時間培養する。
【0085】
7)粉末化
実験に用いるために、前記製造された発酵物を急速凍結及び凍結乾燥した後、粉砕して粉末化し、キウイ発酵物粉末(FGKP)を製造した。
【0086】
前記急速凍結は、液体窒素冷凍機を用いて発酵物を急速凍結させ、凍結乾燥は、発酵した原料を-40℃以下で凍結乾燥する。
【0087】
8)粉砕
乾燥した原料を粉末化する。
【0088】
準備例4:動物モデルの準備
6週齢雄性スプラーグドーリーラット(Sprague-Dawley(SD)Rat)を購入した後、飼育施設で7日間の馴化期間を経た後、実験に投入した(温度:22±2℃、湿度:40~60%、明暗周期:12時間)。飼育期間中の飼育室の温・湿度は8時間単位で確認した。
【0089】
実験例4:抗酸化効果の確認
1)DPPHラジカル消去活性の測定
実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)は、100mg/mlの濃度で3時間以上室温で懸濁した後、適正濃度に希釈して実験に用いた。陽性対照群としてはL-アスコルビン酸を用い、各試料を濃度別に希釈した溶液と6.3mg/50mlの濃度のDPPHを1:9で混合して10分間暗所状態で反応させた後、517nmで吸光度を測定し、その結果を下記の表9及び
図7に示した。
【0090】
2)ABTSラジカル消去活性の測定
100mg/mlの濃度で3時間以上室温で懸濁したキウイ発酵物の粉末(FGKP;実施例)を適正濃度に希釈した。陽性対照群としてはL-アスコルビン酸を用い、7mMのABTS溶液と2.4mMの過硫酸カリウムを混合して16時間以上暗所状態で放置した。放置されたABTSストックでABTS+を形成させた後、734nmで吸光度値が0.70±0.02になるように、無水エタノールで希釈した後、希釈された溶液と試料を9:1の割合で1分間放置した後、吸光度を測定し、その結果を下記の表9及び
図8に示した。
【0091】
【0092】
その結果、前記表9及び
図7、
図8に示すように、L-アスコルビン酸100μg/mlでは抗酸化効果が96%と現れ、本発明に係るキウイ発酵物(FGKP)は、濃度が増加するほど抗酸化効果が増加した。
【0093】
実験例5:消化酵素活性の測定
1)アミラーゼ活性の測定
実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)0.1gに蒸留水10ml(1%溶液)を加え、密封後に室温で4時間の振とう後、遠心分離して得られた上澄み液を酵素液として用いた。1%のデンプン溶液1.0mlに予め調剤した酵素液1.0mlを添加し、40℃で30分間反応させた後、1Mの酢酸溶液10mlを加えて反応を停止させ、0.00025Nヨウ素溶液10mlを加えて発色させた後、660nmで吸光度を測定した。このとき、空試験(blank)として酵素液の代わりに蒸留水を用いて同じ方法で反応させた後、660nmで吸光度を測定した。試料反応液の吸光度測定値が空試験(blank)の吸光度値を基準に10%減少させることを1ユニットとし、試料1.0g(乾燥重量比)当たりに換算して示した。結果は、表10に示した。
【0094】
2)リパーゼ活性の測定
α-アミラーゼ活性の測定のために用意した酵素液(蒸留水に1%の濃度で希釈した溶液)を用いた。リパーゼ活性は、Leeなど(1999)及びCaoなど(2015)の方法を若干変形して測定した。アセトニトリルに10mMの濃度となるように、4-ニトロフェニル酢酸を溶解させた溶液とエタノール及び100mMのリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.0)を実験前に1:4:95(v/v/v)の割合で混合した基質溶液1.8mLに酵素液200ulを加え、37℃で20分間反応させた後、405nmで吸光度を測定した。このとき、空試験(blank)として酵素液の代わりに蒸留水を用いて同じ条件で実験したものを空試験溶液とした。別途にp-ニトロフェノール標準品を用いて検量曲線を基準にリパーゼの活性を計算し、リパーゼの1Uは1分当たり1uMのp-ニトロフェノールを遊離させる酵素の量として試料1g(乾燥重量比)当たりに換算して示した。結果は表10に示した。
【0095】
3)プロテアーゼ活性の測定
実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)0.10gを取り、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.5)10mlを加えた後、粉末が完全に溶解するまで撹拌(約10秒)した。次いで、往復振とう機を用いて約10分間振とうした後、遠心分離(4500rpm、7分)させた後、上澄み液を試験液として用い、全ての試料は、実験に用いるまで4℃以下の冷蔵室に保管した。0.1Mリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.5)1.5mLに試験液0.1mLを加えた後、37℃の水浴槽で約1分間平衡化させた後、基質溶液0.1mLを加えて10分間更に反応させた。次いで、反応液に50%の酢酸溶液0.4mLを加えて、酵素反応を停止させた後、分光光度計を用いて405nmで吸光度を測定した。このとき、空試験(blank)は、試験液0.1mLの代わりに0.1Mリン酸ナトリウム緩衝溶液0.1mlを用いて吸光度を測定した後に補正した。プロテアーゼの作用により基質から遊離したp-ニトロアニリンの量は、p-ニトロアニリン標準品として作成した検量線を用いて定量し、酵素活性の1ユニット(U)は、1分当たりに1uMのp-ニトロアニリンを遊離させるのに必要な酵素の量とした試料1g(乾燥重量比)当たりに換算して示した。下記の表10に示した。
【0096】
【0097】
※全ての実験は、3回の反復実験後に平均及び標準偏差で示す。
【0098】
酵素食物は、酵素(α-アミラーゼ、プロテアーゼ)を含有して食品公典上の酵素食品(穀類酵素含有製品、胚酵素含有製品など)として許可が得られた製品であって、酵素力価の表示規定は、α-アミラーゼ、プロテアーゼの表示量以上の酵素の力価を有せばよい。前記表10に示すように、α-アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼは、それぞれ121.5±1.98U/g、4.42±0.01U/g、21.15±0.07U/gの数値であって、市販中の代表的な酵素製品の測定結果と類似する水準の酵素力価が確認された。
【0099】
実験例6:胃排出能の測定
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹で6グループに分けて実験した。馴化を終えた実験動物を48時間絶食させた後、それぞれの試験物質を経口投与した。HPMCを賦形剤として用い、正常群(NOR)と対照群(CON)には、3%のHPMCを2ml経口投与し、実験群には、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を濃度別に(FGKP50mg/kg、125mg/kg、250mg/kg)3%のHPMCと混ぜた後、経口投与した。陽性対照群には、イトプリド30mg/kgを3%のHPMCと混ぜた後、経口投与した。それと同時に、正常群(NOR)には蒸留水を腹腔内投与し、対照群(CON)、実験群(FGKP)、陽性対照群(イトプリド)には、シスプラチンを10mg/kgの濃度で腹腔内投与した。1時間後、0.5%のフェノールレッドを流動食(liquid meal)として用い、1.5%のHPMCを混ぜて全ての群に経口投与した。
【0100】
2)実験方法
胃に残っているフェノールレッドの量を測定するために、胃排出遅延誘発物質であるシスプラチンで胃排出遅延を誘発した後、20分後にイソフルランで吸入麻酔と共に安楽死させた後、食道部分と十二指腸部分を縛って胃を摘出した。摘出した胃は、滅菌されたビーカーに入れて0.1N NaOH100mlを入れて20秒間ホモジナイズ(homogenize)させた。完全にすりおろされた胃と胃の内容物は、1時間室温に放置させた後、その内容物5mlを取り、0.5mlの20%TCA溶液と混ぜる。十分に混ぜた後、2500xgで20分間遠心分離させた後、チューブに上澄み液2mlを分離した後、0.5N NaOH2mlを混ぜる。十分に反応させた後、マイクロプレート分光光度計(microplate spectrophotometer)を用いて560nmの波長で吸光度を測定した。胃排出能の変化を測定した結果を下式1胃排出能(Gastric emptying rate)(%)を用いて換算し、その結果を表11及び
図9に示した。
【0101】
【0102】
【0103】
その結果、前記表11及び
図9に示すように、対照群(CON)は、20.1±10.9であって、正常群(NOR)67.7±5.3に比べて有意に低い数値を示し、FGKP実験群は、濃度依存的に対照群に比べて有意に胃排出能の数値が高くなることを確認した。陽性対照群であるイトプリドでも、対照群に比べて胃排出能の数値が高い有意性を示した。
【0104】
実験例7:胃腸管運動能の評価
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹で6グループに分けて実験した。馴化を終えた実験動物を48時間絶食させた後、それぞれの試験物質を経口投与した。HPMCを賦形剤として用い、正常群(NOR)と対照群(CON)には、3%のHPMCを2ml経口投与し、実験群には、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を濃度別に(FGKP50mg/kg、125mg/kg、250mg/kg)3%のHPMCと混ぜた後、経口投与した。陽性対照群には、モサプリド(mosapride)10mg/kgを3%のHPMCと混ぜた後、経口投与した。それと同時に、正常群(NOR)には蒸留水を腹腔内投与し、対照群(CON)、実験群(FGKP)、陽性対照群(モサプリド)には、アトロピンを1mg/kgの濃度で腹腔内投与した。1時間後、FITC-デキストランを流動食として用い、6.25mg/mlの濃度で0.1mlずつ経口投与した。
【0105】
2)実験方法
FITC-デキストランを経口投与した15分後に麻酔して安楽死させた後、小腸部分のみを再び分離して小腸の先端部分を糸で結んで小腸の内容物が流れないように固定する。分離した小腸は、10個の分節に一定に分けた後、各分節ごとのFITC-デキストランの量を蛍光を用いて測定し、G.C(ジオメトリックセンター(geometric center))を算出した。G.Cの算出方法は、それぞれの分節をチューブに入れ、0.05Mトリス緩衝液を3mlずつそれぞれのチューブに入れて撹拌させた後、1200rpmで5分間遠心分離させた。遠心分離が終了すると、上澄み液を取ってマイクロプレート分光光度計を用いて490~520nmで蛍光シグナルを測定した。胃腸管転移の変化を確認するために、下式2(G.C)を用いて換算し、その結果を表12及び
図10に示した。
【0106】
【0107】
【0108】
その結果、前記表12及び
図10に示すように、対照群(CON)は、3.77±0.57で正常群(NOR)6.55±0.58に比べて顕著に減少し、実験群であるFGKP群は、低濃度、中濃度、高濃度でそれぞれ4.98±0.38、5.81±0.42、5.12±0.43と測定され、陽性対照群であるモサプリド群と共に高い有意性を示し、FGKP群(125mg/kg)で最も高い数値を示した。
【0109】
実験例8:胃粘膜損傷の抑制度確認
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹ずつ6グループに分けて実験を行った。急性胃炎の誘発前に24時間絶食させ、飲水は自由に提供した。実験当日、実験群(FGKP)は、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を50mg/kg、125mg/kg、250mg/kgの濃度でそれぞれ経口投与し、陽性対照群(スクラルファート)には、胃粘膜保護効果のあるスクラルファート(Sucralfate)を50mg/kgの濃度で経口投与した。試料及びスクラルファートを投与1時間後、正常群(NOR)には、蒸留水を経口投与し、実験群(FGKP)と陽性対照群(スクラルファート)には、150mMのHCLと60%のエタノールを混ぜた溶液を2mlずつ経口投与した。
【0110】
2)実験方法
摘出した胃組織をピンで固定させた後、2%のPFAで30分間固定させた後、光学デジタルカメラ(DSC-HX50V、ソニー(株)製、東京、日本)を用いて撮影した。損傷した胃粘膜測定は、image-Jプログラムを用いて実際の損傷部位の面積(式3)を測定した後、胃全体面積と比較して損傷割合(式4)で表し、その結果を表13と
図11及び
図12に示した。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
その結果、前記表13と
図11及び
図12に示すように、HCL/エタノールで誘発された急性胃炎動物実験モデルで胃粘膜を肉眼で観察した結果、正常群(NOR)における病変が見られない胃粘膜と比較して、対照群(CON)は、HCL/エタノールの誘発によって胃粘膜に損傷を受け、発赤、出血及びむくみが明確に現れた。それに対し、陽性対照群(スクラルファート)と試料投与群(FGKP)の何れも出血性粘膜損傷が顕著に減少することが観察できた。また、胃粘膜の損傷度をi-solutionプログラムを用いて測定したとき、正常群(NOR)では、胃粘膜の病変は見られなかったが、対照群(CON)の場合、損傷面積は18.15±1.05と高く現れた。反面、陽性対照群であるスクラルファートは、4.05±0.76で対照群に比べて顕著に減少し、実験群であるFGKPは、10.35±0.61、7.87±1.52、2.45±1.00で有意性のある減少を示した。
【0115】
実験例9:胃粘膜改善の確認
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹ずつ6グループに分けて実験を行った。急性胃炎の誘発前に24時間絶食させ、飲水は自由に提供した。実験当日、実験群(FGKP)は、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を50mg/kg、125mg/kg、250mg/kgの濃度でそれぞれ経口投与し、陽性対照群(スクラルファート)には、胃粘膜保護効果のあるスクラルファートを50mg/kgの濃度で経口投与した。試料及びスクラルファートを投与1時間後、正常群(NOR)には、蒸留水を経口投与し、実験群(FGKP)と陽性対照群(スクラルファート)には、150mMのHCLと60%のエタノールを混ぜた溶液を2mlずつ経口投与した。
【0116】
2)実験方法
胃の細胞質を得るために、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA緩衝液[140mM、Tris-HCl(25mM、pH7.4)、0.1%SDS、1%トリトンX-100]を入れて組織粉砕機で粉砕した後、15分間氷に放置した後、12,000rpmで20分間遠心分離した。胃組織蛋白質を有してウエスタン・ブロッティング法でiNOS及びCOX-2蛋白質の発現を測定し、PGE
2、TNF-α及びIL-6の変化量を確認するために、ELISAキットを用いて含有量を測定した。ウエスタン・ブロッティングの結果を表14と
図13~
図15に示し、ELISAの結果を表15と
図16~
図18に示した。
【0117】
【0118】
ウエスタン・ブロッティングの結果、COX-2の発現は、正常群と比較して対照群で有意な増加があり、FGKP実験群と陽性対照群では、対照群と比較して減少する数値を示した。iNOSの発現は、対照群と比較してFGKP実験群、陽性対照群で何れも有意に減少する数値を示した。
【0119】
【0120】
ELISAの結果、対照群は正常群よりもTNF-α、IL-6の発現を何れも有意に増加させた。FGKP投与群は、対照群に比べて有意に減少させる傾向を示した。また、胃組織の内部に存在するPGE2の濃度を確認した結果、対照群は、19.43±1.85ng/mgで正常群43.26±2.12ng/mgに比べて大きく減少した。陽性対照群は、25.59±1.68ng/mgで対照群と比較して増加し、FGKP実験群は、それぞれ21.56±1.85、24.34±2.81、36.01±2.02に増加した。
【0121】
実験例10:胃腺長さの測定
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹ずつ6グループに分けて実験を行った。急性胃炎の誘発前に24時間絶食させ、飲水は自由に提供した。実験当日、実験群(FGKP)は、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を50mg/kg、125mg/kg、250mg/kgの濃度でそれぞれ経口投与し、陽性対照群(スクラルファート)には、胃粘膜保護効果のあるスクラルファートを50mg/kgの濃度で経口投与した。試料及びスクラルファートを投与1時間後、正常群(NOR)には、蒸留水を経口投与し、実験群(FGKP)と陽性対照群(スクラルファート)には、150mMのHCLと60%のエタノールを混ぜた溶液を2mlずつ経口投与した。
【0122】
2)実験方法
HCL/エタノールで誘発された急性胃炎実験動物において胃の損傷程度を調べるために、摘出した胃を4%のPFAに24時間固定させた後、キシレンを用いて脱水させて、パラフィン組織標本を製作した。次いで、薄切り機を用いて4μm厚さの切片を製作した後、スライドグラスに付着させた。パラフィンを除去した後、ヘマトキシンとエオシン(H&E)を用いて組織切片を染色した後、光学顕微鏡(zeiss社製、ドイツ)を用いて100倍で染色された組織切片を観察し、i-solution映像分析プログラムを用いて胃腺(gastric gland)の長さを測定し、その結果を表16と
図19及び
図20に示した。
【0123】
【0124】
その結果、前記表16と
図19及び
図20に示すように、HCL/エタノールを処理していない正常群の全ての実験動物の胃粘膜では、有意な病変が観察されず、対照群では、正常群に比べて胃腺の長さが短く観察されて胃粘膜の損傷が誘発されたことが確認でき、HCL/エタノールと共にスクラルファートを処理した陽性対照群では、対照群に比べて胃腺の長さが長く観察されてスクラルファートの胃粘膜の損傷抑制効果が確認できた。また、FGKPを処理した後、HCL/エタノールを処理した実験群でも対照群に比べて胃腺の長さが長く観察された。
【0125】
実験例11:胃酸分泌度の確認
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹で5グループに分けて実験した。馴化を終えた実験動物を24時間絶食させた後、それぞれの試験物質を経口投与した。対照群(CON)には、蒸留水を経口投与し、実験群は、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を50mg/kg、125mg/kg、250mg/kg濃度別に経口投与した。陽性対照群(スクラルファート)には、スクラルファート50mg/kgを経口投与した。試料投与30分後、各群をイソフルランで麻酔した後、腹腔を2センチほど開腹して胃と十二指腸を繋いでいる幽門部部位を結紮した。切開した腹腔を縫合した後、回復チャンバに留まらせ、ケージに移動させた。
【0126】
2)実験方法
幽門結紮6時間後、麻酔と共に安楽死させた後、胃を除去して胃液を取って実験に用いた。獲得した胃液は、総体積を測定した後、pH計を用いてpHを測定する。後に胃液1mlをチューブに移し、フェノールフタレン溶液を2~3滴入れる。次いで、0.05N NaOH水酸化ナトリウムを赤色になるまで入れる。総酸度は、下式5によって計算し、その結果を表17と
図21~
図24に示した。
【0127】
【0128】
【0129】
その結果、前記表17と
図21~
図24に示すように、対照群の胃酸の体積が最も多く測定され、FGKP実験群では、高濃度に行くほど胃液の量が減少した。陽性対照群であるスクラルファートでも対照群に比べて胃酸の体積が減少したことが確認された。また、pHを見たとき、対照群で最も低く測定され、高濃度に行くほどpHが高くなる傾向を示した。陽性対照群も対照群に比べてpHが高くなった。酸度と遊離酸度も同様、対照群で最も高いことが確認でき、陽性対照群だけでなく、FGKP実験群で高濃度に行くほど低い測定値が得られた。
【0130】
実験例12:ペプシン活性度の確認
1)動物モデル
実験動物は、1群当たり8匹で5グループに分けて実験した。馴化を終えた実験動物を24時間絶食させた後、それぞれの試験物質を経口投与した。対照群(CON)には、蒸留水を経口投与し、実験群は、実施例で製造したキウイ発酵物の粉末(FGKP)を50mg/kg、125mg/kg、250mg/kg濃度別に経口投与した。陽性対照群(スクラルファート)には、スクラルファート50mg/kgを経口投与した。試料投与30分後、各群をイソフルランで麻酔した後、腹腔を2センチほど開腹して胃と十二指腸を繋いでいる幽門部部位を結紮した。切開した腹腔を縫合した後、回復チャンバに留まらせ、ケージに移動させた。
【0131】
2)実験方法
幽門結紮6時間後、麻酔後に安楽死させた後、胃を除去して胃液を取って実験に用いた。2%のヘモグロビンを500μlずつ各チューブに入れ、37℃で3~4分熱を加えた後、各チューブに胃液を100μlずつ入れる。次いで、10分間37℃で熱を加える。後に1mlのTCA16%をそれぞれのチューブに入れ、6000xgで30分間遠心分離する。そこから出たそれぞれのチューブから上澄み液を取り、20℃で一定時間反応させた後、280nmで吸光度を測定した。ペプシン活性度は、下式6によって計算し、その結果を表18及び
図25に示した。
【0132】
【0133】
【0134】
その結果、前記表18及び
図25に示すように、対照群で最も活性度が高い結果を確認し、FGKP実験群、陽性対照群では、高濃度に行くほどペプシンの活性度が低くなった。
【配列表フリーテキスト】
【0135】
SEQ ID NO:1:Lactococcus Lactis VI-01 KCTC14351BP
SEQ ID NO:2:Lactobacillus paracasei VI-02 KCTC14352BP
【0136】
[微生物寄託]
1)寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14351BP
受託日付:2020.11.03.
2)寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14352BP
受託日付:2020.11.03.
【国際調査報告】