IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 燕山大学の特許一覧

特表2023-550865油圧アクティブサスペンションの流量制御システム
<>
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図1
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図2
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図3
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図4
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図5
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図6
  • 特表-油圧アクティブサスペンションの流量制御システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】油圧アクティブサスペンションの流量制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B60G17/015 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517720
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022084822
(87)【国際公開番号】W WO2022206957
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110361524.3
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521158923
【氏名又は名称】燕山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 丁▲選▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 建旭
(72)【発明者】
【氏名】▲鞏▼ 明▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 爽
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 祝新
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 志国
(72)【発明者】
【氏名】倪 涛
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 彬
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 明元
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA53
3D301AA54
3D301AA77
3D301DA28
3D301DB35
3D301DB39
3D301DB43
3D301DB45
3D301EB02
3D301EC01
3D301EC05
(57)【要約】
本発明は油圧アクティブサスペンションの流量制御システムに関し、作動油タンクと、油吸入口が作動油タンクに連通する可変吐出量ポンプと、可変吐出量ポンプの油吐出口に順に接続された逆止弁、サーボ弁、及びサーボ弁により制御されたサスペンションシリンダーと、を含み、可変吐出量ポンプはクラッチを介してエンジンに接続され、サーボ弁と逆止弁との間にアキュムレータが連通して設置され、アキュムレータの出口に装着される油圧センサ、エンジン回転数センサ、車速センサ、及び可変吐出量ポンプの吐出量を制御する流量コントローラをさらに含む。流量コントローラは、アキュムレータの出口圧力、車速及びエンジン回転数に基づいて、アクティブサスペンション油圧システムの吐出圧力及び流量に対して閉ループ制御を行い、アキュムレータの出口圧力を基本的に安定化させるように維持し、可変吐出量ポンプの吐出流量とアクティブサスペンションシステムに必要な流量を基本的に一致させ、本システムは閉ループ制御によってアクティブサスペンションシステムを安定して連続的に動作させることができ、アクティブサスペンションシステムによるエンジンパワーの消費を低減させ、エンジンの動力を合理的に利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクティブサスペンションの流量制御システムであって、作動油タンク(1)と、油吸入口が作動油タンク(1)に連通する可変吐出量ポンプ(2)と、可変吐出量ポンプ(2)の油吐出口に順に接続された逆止弁(4)、サーボ弁(8)、及びサーボ弁(8)により制御されたサスペンションシリンダー(7)と、を含み、可変吐出量ポンプ(2)はクラッチ(12)を介してエンジン(9)に接続され、サーボ弁(8)と逆止弁(4)との間にアキュムレータ(6)が連通して設置され、エンジン回転数を検出するためのエンジン回転数センサ(10)と、車速を検出するための車速センサ(11)と、アキュムレータ(6)の出口圧力を検出するための油圧センサ(5)と、エンジン回転数センサ(10)、車速センサ(11)及び油圧センサ(5)のデータを受信することによって可変吐出量ポンプ(2)の吐出量を制御する流量コントローラ(13)と、をさらに含み、可変吐出量ポンプ(2)の油吐出口には逆止弁(4)に並列に連通するリリーフ弁(3)がさらに設置され、
流量コントローラ(13)はアキュムレータ(6)の出口圧力、車速、エンジン回転数に基づいてアクティブサスペンション油圧システムに対する閉ループ制御を実現し、方法は以下のとおりであり、
まず、アキュムレータ(6)の出口圧力値の変化に基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第1調整量を計算し、
Δv=k(p-p
ここで、pは予め設定された圧力閾値であり、pはアキュムレータの出口圧力値であり、kは比例係数であり、
次に、リアルタイムに検出された車速及びエンジン回転数に基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第2調整量を計算し、方法は以下のとおりであり、
1)現在時刻より前のt秒以内の可変吐出量ポンプから供給された平均流量及び平均車速を計算し、
【数1】
【数2】
ここで、qaverageはt秒以内の可変吐出量ポンプから供給された平均流量であり、uaverageはt秒以内の車両の平均車速であり、v、n、uはそれぞれ時刻tの可変吐出量ポンプの瞬時吐出量、エンジンの瞬時回転数及び瞬時車速であり、tはサンプリング時間であり、
2)可変吐出量ポンプから供給された平均流量、現在の車速及びエンジン回転数に基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第2調整量を計算し、
【数3】
ここで、n、nt-1はそれぞれ現在時刻と前の時刻のエンジン回転数であり、kは比例係数であり、uは現在の車速であり、
最後、総吐出量調整量は第1調整量と第2調整量の両方で構成され、すなわちΔv=Δv+Δvであり、可変吐出量ポンプの特性に基づいて、総吐出量調整量Δvと制御電流Δiとの間の関係Δi=k・Δvを得て、計算して制御電流を出力し、可変吐出量ポンプの吐出量を調整する、ことを特徴とする油圧アクティブサスペンションの流量制御システム。
【請求項2】
前記逆止弁(4)の出口にはアキュムレータ(6)及びサーボ弁(8)のPポートが並列に接続され、サーボ弁(8)のAポート及びBポートはそれぞれサスペンションシリンダー(7)のボトム室及びロッド室に接続され、サーボ弁(8)のTポート及びリリーフ弁(3)の油吐出口は作動油タンク(1)に連結され、油圧センサ(5)はアキュムレータ(6)の出口に設置され、前記流量コントローラ(13)の出力部は可変吐出量ポンプ(2)の制御部に接続され、可変吐出量ポンプ(2)の吐出量を制御することに用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧アクティブサスペンションの流量制御システム。
【請求項3】
前記可変吐出量ポンプはN個直列に設置され、総吐出量調整量Δvは全ての可変吐出量ポンプの吐出量調整量の合計であり、各可変吐出量ポンプの定格吐出量に応じて最終的な吐出量調整量を分配し、単一の可変吐出量ポンプの吐出量調整量を得て、すなわちi番目の可変吐出量ポンプの調整量であり、
【数4】
ここで、vはi番目(i=1、2…N)の可変吐出量ポンプの定格吐出量であることを特徴とする請求項1に記載の油圧アクティブサスペンションの流量制御システム。
【請求項4】
前記サーボ弁(8)及びそれが制御するサスペンションシリンダー(7)は1組以上設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧アクティブサスペンションの流量制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車制御の技術分野に属し、具体的に油圧アクティブサスペンションの流量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションシステムは車両シャーシーの重要な構成部分であり、その性能は車両の操縦安定性及び走行の滑らかさを決定する。アクティブサスペンションは優れたアクティブ調節機能を有し、路面による車体への衝撃を最大限に軽減することができる。油圧アクティブサスペンションは、その強い荷重能力及び柔軟な調節方式によりメーカーに歓迎されている。油圧サスペンションシステムの出力部材は油圧シリンダーであり、システムは路面の状況に応じてサスペンション油圧シリンダーの伸縮量を自動的に調整することができる。各タイヤにサスペンションシリンダーが対応して設置され、それによりタイヤの接地特性及び車体姿勢を調整制御し、車両の走行の滑らかさ及び操縦安定性を向上させることができる。
【0003】
アクティブサスペンションシステムの動作にエネルギーの入力が必要である。現在の動力源はモーター又はエンジンの2つに分けられる。公開番号が「CN108025614A」である特許文献にはモーターが動力源として使用される。このような応用方式は2回のエネルギー転化を必要とするため、エネルギーの無駄になってしまう。エンジンが可変吐出量ポンプを直接駆動することによって、エネルギー転化中のエネルギー損失を軽減し、エネルギーの利用率を向上させることができ、省エネルギー及び環境保護に有益であるが、車両走行中のエンジン回転数及びサスペンションシリンダーの運動に消費される作動油量が車速、道路状況等の要因に応じて変化し、エンジンとサスペンションシステムとの間の作動パラメータは正確にマッチングすることができない。
【0004】
サスペンションシステムの正常な作動を確保するために、一般的に、可変吐出量ポンプの吐出量をシステムに必要な範囲よりも高く調節し、このような条件下で作動し、可変吐出量ポンプから供給されるオイルがアキュムレータの調節能力を超える場合、システム全体の圧力は常に高圧状態にあり、システムの圧力がリリーフ弁のリリーフ圧力を超える場合、大量の高圧オイルはリリーフ弁を経て油タンクに流れ戻る。自動車は長時間にこのような状況で作動すると、エンジンのパワーリザーブが不足であり、サスペンションシステムに消費されるパワーが大幅に変動する場合、エンジンシェイクやエンジン停止を招く恐れがあり、サスペンションシステムがエンジンパワーを過度に消費し、車両の走行動力を低下させ、自動車の走行性能に深刻な影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第108025614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は油圧アクティブサスペンションの流量制御システムを提供することで、自動車のアクティブサスペンションシステムを安定して連続的に動作させ、アクティブサスペンションシステムによるエンジンパワーの消費を低減させ、エンジンの動力を合理的に利用し、エンジンシェイクやエンジン停止の問題を効果的に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本発明が用いる技術的解決手段は以下のとおりである。
【0008】
油圧アクティブサスペンションの流量制御システムであって、作動油タンクと、油吸入口が作動油タンクに連通する可変吐出量ポンプと、可変吐出量ポンプの油吐出口に順に接続された逆止弁、サーボ弁、及びサーボ弁により制御されたサスペンションシリンダーと、を含み、可変吐出量ポンプはクラッチを介してエンジンに接続され、サーボ弁と逆止弁との間にアキュムレータが連通して設置され、エンジン回転数を検出するためのエンジン回転数センサと、車速を検出するための車速センサと、アキュムレータの出口圧力を検出するための油圧センサと、エンジン回転数センサ、車速センサ及び油圧センサのデータを受信することによって可変吐出量ポンプの吐出量を制御する流量コントローラと、をさらに含み、可変吐出量ポンプの油吐出口には逆止弁に並列に連通するリリーフ弁がさらに設置される。
【0009】
本発明の技術的解決手段のさらなる改良として、前記逆止弁の出口にはアキュムレータ及びサーボ弁のPポートが並列に接続され、サーボ弁のAポート及びBポートはそれぞれサスペンションシリンダーのボトム室及びロッド室に接続され、サーボ弁のTポート及びリリーフ弁の油吐出口は作動油タンクに連結され、油圧センサはアキュムレータの出口に設置され、前記流量コントローラの出力部は可変吐出量ポンプの制御部に接続され、可変吐出量ポンプの吐出量を制御することに用いられる。
【0010】
本発明の技術的解決手段のさらなる改良として、流量コントローラはアキュムレータの出口圧力、車速、エンジン回転数に基づいてアクティブサスペンション油圧システムに対する閉ループ制御を実現し、方法は以下のとおりであり、
まず、アキュムレータの出口圧力値の変化に基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第1調整量を計算し、
Δv=k(p-p
ここで、pは予め設定された圧力閾値であり、pはアキュムレータの出口圧力値であり、kは比例係数であり、
次に、リアルタイムに検出された車速及びエンジン回転数に基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第2調整量を計算し、方法は以下のとおりであり、
1)現在時刻より前のt秒以内の可変吐出量ポンプから供給された平均流量及び平均車速を計算し、
【数1】
【数2】
ここで、qaverageはt秒以内の可変吐出量ポンプから供給された平均流量であり、uaverageはt秒以内の車両の平均車速であり、v、n、uはそれぞれ時刻tの可変吐出量ポンプの瞬時吐出量、エンジンの瞬時回転数及び瞬時車速であり、tはサンプリング時間であり、
2)可変吐出量ポンプから供給された平均流量、現在の車速及びエンジン回転数に基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第2調整量を計算し、
【数3】
ここで、n、nt-1はそれぞれ現在時刻と前の時刻とのエンジン回転数であり、kは比例係数であり、uは現在の車速であり、
最後、総吐出量調整量は第1調整量と第2調整量との両方で構成され、すなわちΔv=Δv+Δvであり、可変吐出量ポンプの特性に基づいて、総吐出量調整量Δvと制御電流Δiとの間の関係Δi=k・Δvを得て、計算して制御電流を出力し、可変吐出量ポンプの吐出量を調整し、ここで、kはΔiとΔvとの間の変換係数であり、具体的な値が可変吐出量ポンプの特性により決まる。
【0011】
本発明の技術的解決手段のさらなる改良として、前記可変吐出量ポンプはN個直列に設置され、総吐出量調整量Δvは全ての可変吐出量ポンプの吐出量調整量の合計であり、各可変吐出量ポンプの定格吐出量に応じて最終的な吐出量調整量を分配し、単一の可変吐出量ポンプの吐出量調整量を得て、すなわちi番目の可変吐出量ポンプの調整量であり、
【数4】
ここで、vはi番目(i=1、2…N)の可変吐出量ポンプの定格吐出量である。
【0012】
本発明の技術的解決手段のさらなる改良として、前記サーボ弁及びそれが制御するサスペンションシリンダーは1組以上設置される。
【発明の効果】
【0013】
上記の技術的解決手段を用いるため、本発明は以下の技術的進歩を取得する。
【0014】
1、本システムは、可変吐出量ポンプの吐出量の適応的な調整を実現し、可変吐出量ポンプの作動状態を車両が走行している路面の状況に応じて変化させることができ、車両が異なる路面に走行する時にシステムパラメータを手動で調整する必要がなくなる。
【0015】
2、本システムは、アクティブサスペンションシステムの連続的な動作を確保するとともに、エンジン回転数及びサスペンションシステムの消費流量が迅速に変化することによる可変吐出量ポンプの出口流量及び圧力の変動を減少し、反応感度が高く、システムの作動がより安定する。
【0016】
3、本システムは、自動車のサスペンションシステムとエンジンのマッチングを実現し、アクティブサスペンションシステムにエンジンの動力をより合理的に利用させ、エンジンの荷重が高すぎることによるエンジン停止の問題を効果的に防止することができる。
【0017】
4、本システムは、現在時刻より前の一定時間以内のサスペンションシステムの平均消費流量を計算することによって可変吐出量ポンプの吐出量調整量を計算し、サスペンションの運動に消費される流量を含むだけでなく油圧システムの漏洩流量を含み、計算がより正確であり、最終的な可変吐出量ポンプの吐出量調整量が正確であることを確保する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の油圧アクティブサスペンションの流量制御システムの模式図である。
図2図2は本発明の油圧アクティブサスペンションの流量制御の原理図である。
図3図3はエンジン回転数の変化の比較グラフである。
図4図4はアキュムレータの出口圧力の比較グラフである。
図5図5はシステム消費の瞬時パワーの比較グラフである。
図6図6はエンジンの出力トルク百分率の比較グラフである。
図7図7は車両加速中の車速の比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例の技術的解決手段を明確且つ完全に説明し、説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な労働を必要とせずに取得する全ての他の実施例はいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0020】
本発明は従来技術に存在している問題に基づき、油圧アクティブサスペンションの流量制御システムを提供し、図1に示すように、該システムは主に油タンク1、可変吐出量ポンプ2、サーボ弁8及びサスペンションシリンダー7を含む。
【0021】
サスペンションシリンダー7は該システムのアクチュエータであり、サスペンションシリンダー7の動作がサーボ弁8により制御され、サーボ弁は一般的に3位置4方電磁弁を選択する。図1におけるサーボ弁8の右側電磁石が給電される場合、それが制御するサスペンションシリンダー7は伸長し、左側電磁石が給電される場合、サスペンションシリンダー7は収縮し、両側がいずれも給電されない場合、サスペンションシリンダー7は剛性的にロックされる状態にある。本実施例の図1では、2組のサーボ弁及びそれが制御するサスペンションシリンダーの構造のみが与えられ、実際の状況に応じて1組以上のサーボ弁及びそれが制御するサスペンションシリンダーを設置することができる。複数組のサーボ弁及びそれが制御するサスペンションシリンダーが設置される場合、各組のサーボ弁及びそれが制御するサスペンションシリンダーは並列関係である。
【0022】
本システムの高圧動力油は可変吐出量ポンプ2により供給され、その出口にはオイルの逆流を防止する逆止弁4が設置される。逆止弁4の出口はアキュムレータ6及びサーボ弁8のPポートに管路を介して接続される。アキュムレータ6の出口に油圧センサ5が設置される。図1に示すように、可変吐出量ポンプ2の油吐出口には、逆止弁4、サーボ弁8及びサスペンションシリンダー7が順に直列に接続されて設置され、アキュムレータ6はサーボ弁8と逆止弁4との間に位置し、油圧センサ5はアキュムレータ6と逆止弁4との間に位置する。可変吐出量ポンプ2の出口にリリーフ弁が設置され、システムの圧力がその所定値を超えると開放してリリーフを行い、システムの安全を保護することに用いられる。
【0023】
本発明の可変吐出量ポンプ2の主軸はクラッチ12を介してエンジン9に接続され、エンジン9は可変吐出量ポンプ2を作動させるように駆動する。可変吐出量ポンプ2は電磁比例可変吐出量油圧ポンプを選択することができ、吐出量の調節を容易に行うことができる。
【0024】
本システムの検出部材は、エンジン回転数を検出するためのエンジン回転数センサ10、車速を検出するための車速センサ11、及びアキュムレータの出口圧力を検出するための油圧センサ5を含む。前記エンジン回転数センサ10、車速センサ11、油圧センサ5はいずれも流量コントローラ13に接続され、それぞれ収集したエンジン回転数、車速、アキュムレータの出口圧力のデータを流量コントローラ13に送信する。前記流量コントローラ13の出力部は前記可変吐出量ポンプ2の制御部に接続される。流量コントローラ13はエンジン回転数、車速、アキュムレータの出口圧力のデータに基づいて計算し、電流値を出力して可変吐出量ポンプ2の吐出量を変更する。
【0025】
本発明の作動過程は以下のとおりである。
【0026】
サスペンションシリンダー7は運動中にシステムの高圧油を消費し、可変吐出量ポンプ2から供給された流量は消費された流量と同じではない場合、流量差がアキュムレータ6により補充され、この時、アキュムレータ6の出口圧力値が油圧センサ5により検出されて、流量コントローラ13に送信される。流量コントローラ13は、検出されたアキュムレータ6の出口圧力pと予め設定された圧力閾値pとの差Δp=p-pに基づいて、可変吐出量ポンプの吐出量の第1調整量Δv=kΔpを計算する。Δvは油圧ポンプの吐出量を調整し、システムの圧力が圧力閾値以上であることを確保することに用いられる。この圧力閾値はシステムの正常な動作に必要な最も低い圧力である。
【0027】
また、エンジン回転数又はサスペンションシステムに消費される流量の変化による可変吐出量ポンプの出口流量及び圧力の突然変化を低減させるために、流量コントローラはエンジン回転数及び車速等のパラメータを収集することによって、可変吐出量ポンプの吐出量をリアルタイムに変更する。具体的な方法は以下のとおりであり、
エンジン回転数n及び車速uはそれぞれエンジン回転数センサ10及び車速センサ11により検出されて流量コントローラ13に送信され、流量コントローラ13は記憶されているデータに基づいて、それぞれ時間t以内の平均流量及び平均車速を計算し、
【数5】
【数6】
次にさらにポンプ吐出量の第2調整量を計算し、
【数7】
ここで、qaverageはサスペンションシステムのt秒以内の平均消費流量であり、システム漏洩流量及びサスペンションシリンダーの運動に消費される流量を含み、kは比例係数であり、uaverageはt秒以内の平均車速であり、vは時刻tの可変吐出量ポンプの瞬時吐出量である。
【数8】
はΔvが現在の車速の変化状況に応じて調整できるようにするためのものである。車両が同様な路面で走行する過程でサスペンションシリンダーの運動速度は車速に従って変化し、車速はサスペンションシステムの消費流量に影響を与える重要な要因であるため、該式は車速変化の状況を十分に考慮している。変数qaverageは車両のt秒以内の高圧オイルの消費状況に従って変化し、すなわち、サスペンションシステムの消費流量の変化を引き起こす車速、路面状況、システム漏洩等の重要な要因をさらに十分に考慮している。変数qaverageを使用することにより、本システムは車両の走行状態の変化に応じて、適応的に調整する機能を実現することができる。
【0028】
総吐出量調整量は第1調整量と第2調整量との両方で構成され、すなわちΔv=Δv+Δvであり、可変吐出量ポンプの特性に基づいて、総吐出量調整量Δvと制御電流Δiとの間の関係Δi=k・Δvを得て、計算して制御電流i=it-1+Δiを出力し、it-1は前の時刻の制御電流であり、流量コントローラはこの電流を可変吐出量ポンプに出力して、可変吐出量ポンプの吐出量を変更し、流量制御を実現する。
【0029】
具体的な実施において、可変吐出量ポンプ2はN個直列に設置されてもよく、共同で高圧油を供給する。この時、最終的な吐出量調整量ΔvはN個の可変吐出量ポンプの吐出量調整量の合計であり、且つ各可変吐出量ポンプの定格吐出量に基づいて最終的な吐出量調整量を分配し、単一の可変吐出量ポンプの吐出量調整量を得る。i番目の可変吐出量ポンプの吐出量調整量は
【数9】
であり、
ここで、vはi番目(i=1、2…N)の可変吐出量ポンプの定格吐出量である。システムの作動原理は図2に示される。
【0030】
該システムでは、エンジンは可変吐出量ポンプを駆動して逆止弁を経て高圧油をそれぞれ各サーボ弁に送る。各サーボ弁はそれに接続されるサスペンションシリンダーの伸縮を制御する。車両が走行する過程で、サスペンションシステムの動作過程が複雑であるため、システムの消費油量は正確に計算できず、従って、直接流量制御の方式で可変吐出量ポンプの吐出量を制御することができない。可変吐出量ポンプにより供給される流量がサスペンションシステムに消費される流量と同じではない場合、アキュムレータはオイルを貯蔵(又はリリース)することによって、可変吐出量ポンプから供給される多すぎる(又は少なすぎる)高圧油量を調節して、システムの作動の安定性を確保する。アキュムレータに貯蔵される油量が出口圧力に関連するため、アキュムレータの出口圧力を制御する。このような制御方法はオイル圧力がシステムに必要な圧力以上であることを確保できるとともに、アキュムレータに一定量の高圧油が貯蔵されることを確保できる。アキュムレータの貯油能力が限られているため、それは流量が小範囲内で変動するときのみに流量補償の役割を果たすことができ、且つ圧力の制御はまずシステムの圧力変化を検出する必要があるため、フィードバック及び制御の過程で調整時間があり、エンジンの作動回転数が大きく変化する場合、圧力のフィードバック及び制御の反応が遅く、同様にシステムの圧力変動をもたらす。従って、エンジンの作動回転数、車速等のパラメータを検出することによって、車両の走行状態に応じて所定の流量調整を行うことは、異なる路面での車両の実際の走行状況に適する。
【0031】
本発明の研究開発過程において、発明者は本新規な油圧アクティブサスペンションの流量制御システムが取り付けられた車両と元のアクティブサスペンションの流量制御システムが取り付けられた車両に対して制御効果の比較試験を行った。試験過程で、支持脚を使用して車両全体を支持し、サスペンションシリンダーを正弦波運動させ、それにより車両の走行過程におけるアクティブサスペンションシステムの流量消費の状況をシミュレートした。サスペンションシリンダーは0.5Hzの周波数で運動し且つ制御目標に安定的に追従しているときに、アクセルペダルを瞬間的に最大限に踏み込み、エンジン回転数が550r/minから約1400r/minに上昇するときにアクセルペダルを解放した。図3はエンジン回転数の変化の比較グラフである。図面において、元の流量制御システムのエンジン回転数が550r/minから1400r/minに上昇することに必要な時間tは1.65秒であり、新規な流量制御システムにおいて、この時間tは0.96秒であり、加速時間は41.8%減少し、新規な流量制御システムにおいて加速過程でエンジンが受けたトルクは低下すると説明する。図4は2つのシステムのアキュムレータの出口圧力の比較グラフである。図面において、元の制御システムのアキュムレータの出口圧力は18Mpaから22.4mpaに上昇し、新規な流量制御システムにおいて、この圧力は予め設定された17.8Mpa程度に安定することができる。図5は2つのシステムが消費する瞬時パワーの比較グラフである。図面において、元のアクティブサスペンション制御システムが消費するエンジンパワーはエンジン回転数及びシステム圧力の変化に従って徐々に上昇する傾向にあり、平均パワーは22.7kwであり、ピークパワーは32.8kwに達した。新規な流量制御システムにおいて、このパワーは安定する傾向にあり、平均パワーは13.2kwであり、ピークパワーは17.3kwであり、平均パワー及びピークパワーはそれぞれ42%及び47%低下する。図6は2つの制御システムにおけるエンジンのトルク百分率の比較グラフである。図面において、エンジンのトルク百分率の平均値は48.7%から29.4%に低下し、39.6%低下する。
【0032】
本システムの作用効果をさらに検証するために、車両の加速性能に対して比較試験を行った。2回の試験において、車両は同じ開始位置にあり、発進段階でエンジンのアクセルペダルを最大限に踏み込み、車両の走行速度データを収集し、図7は車両加速中の車速の比較グラフである。グラフは、同じ加速時間下で、元のシステムの最終車速が6.46km/hに達し、新規な流量制御システムを用いた車両の最終速度が8.99km/hに達することを示している。
【0033】
上記実験結果から分かるように、新規な流量制御システムは、エンジン回転数及びサスペンションシステムに消費される流量が変化する場合、油圧ポンプの吐出量を適応的に調節することができ、アキュムレータの出口圧力をより良好に安定化させることができるとともに、システムが消費するパワーを低下させ、エンジンの荷重を低下させる。エンジンはより多くのパワーを走行システムに供給することができ、車両の加速性能が明らかに向上する。本システムは、アクティブサスペンションシステムが安定して連続的に動作することを確保するとともに、エンジンの動力をより合理的に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、作動油タンク
2、可変吐出量ポンプ
3、リリーフ弁
4、逆止弁
5、油圧センサ
6、アキュムレータ
7、サスペンションシリンダー
8、サーボ弁
9、エンジン
10、エンジン回転数センサ
11、車速センサ
12、クラッチ
13、流量コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】