(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分配粘度が低く、分配後の鉛直流が少なく、硬化後の熱インピーダンスが低い熱界面材料
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20231129BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231129BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20231129BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20231129BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231129BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231129BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20231129BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/013
C08K3/08
C08K3/38
C08K3/22
C08L83/05
C08K3/16
C09K5/14 E ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517742
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2020116991
(87)【国際公開番号】W WO2022061559
(87)【国際公開日】2022-03-31
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジグァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、シュエドン
(72)【発明者】
【氏名】グォ、チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】バグワガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP03Y
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DA097
4J002DA116
4J002DD046
4J002DE107
4J002DE186
4J002DK007
4J002FD017
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
熱界面材料であって、ジビニルポリジメチルシロキサンと、鎖延長剤と、架橋剤と、80体積パーセント以上の熱伝導性充填剤と、処理剤組成物と、白金ヒドロシリル化触媒と、最大0.2重量パーセントのヒドロシリル化抑制剤と、を含有し、重量パーセントの値が、熱界面材料組成物の重量に対するものであり、体積パーセントの値が、熱界面材料組成物の体積に対するものであり、当該熱界面材料組成物におけるシリルヒドリド基のビニル基に対するモル比が、0.4以上であると同時に1.0以下であり、当該鎖延長剤からのシリルヒドリド官能基の当該架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比が、13以上であると同時に70以下である、熱界面材料が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱界面材料組成物であって、
a.30~200ミリパスカル*秒の粘度を有するジビニルポリジメチルシロキサンと、
b.分子の各末端に1つずつ、2つの末端シリルヒドリド官能基を有する直鎖ポリシロキサンである鎖延長剤と、
c.2つを超えるシリルヒドリド官能基を有するポリシロキサンである架橋剤と、
d.80体積パーセント以上の熱伝導性充填剤と、
e.アルキルトリアルコキシシラン並びに重合度が20~120であるモノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンを含む処理剤組成物と、
f.白金ヒドロシリル化触媒と、
g.最大0.2重量パーセントのヒドロシリル化阻害剤と、
を含み、
重量パーセントの値が、熱界面材料組成物の重量に対するものであり、体積パーセントの値が、熱界面材料組成物の体積に対するものであり、前記熱界面材料組成物におけるシリルヒドリド基のビニル基に対するモル比が、0.4以上であると同時に1.0以下であり、前記鎖延長剤からのシリルヒドリド官能基の前記架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比が、13以上であると同時に70以下である、組成物。
【請求項2】
a.前記ジビニルポリジメチルシロキサンが、2~4重量パーセントの濃度で存在し、
b.前記鎖延長剤が、0.5~1.5重量パーセントの濃度で存在し、
c.前記架橋剤が、0.005~0.05重量パーセントの濃度で存在し、
d.前記アルキルトリアルコキシシランが、1.8~4重量パーセントの濃度で存在し、前記モノトリアルコキシ末端ジメチルポリシロキサンが、0.05~0.5重量パーセントの濃度で存在し、
重量パーセントの値が、熱界面材料組成物の重量に対するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性充填剤が、1マイクロメートル未満の平均サイズを有する酸化亜鉛粒子と、1~20マイクロメートルの平均粒径を有するアルミニウム充填剤と、任意選択で8~30マイクロメートルの粒径を有する窒化ホウ素フレークと、を含む、請求項1又は2に記載の熱界面材料組成物。
【請求項4】
前記窒化ホウ素粒子が、熱界面材料組成物の重量に対して1~10重量パーセントの濃度で存在する、請求項3に記載の熱界面材料組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性充填剤が、TIM組成物の重量に対する重量%で、44~48.6重量%の、9マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤、25~26重量%の、2マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤、17~18重量%の、0.2マイクロメートルのD50を有する酸化亜鉛、3~4重量%の、30マイクロメートルの平均サイズを有する窒化ホウ素フレーク、及び最大1.6重量%又は更には最大2.0重量%の、8マイクロメートルの平均サイズを有する窒化ホウ素フレークを含む、請求項3又は4に記載の熱界面材料組成物。
【請求項6】
前記鎖延長剤が、シリルヒドリド末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、以下の平均化学構造:
【化1】
(式中、yの平均値は3以上であり、xの値は、前記架橋剤が10~25ミリパスカル*秒の粘度を有するような値である)を有する、請求項7に記載の熱界面材料組成物。
【請求項8】
有機溶媒を含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物を基板上に分配することを含む、プロセス。
【請求項10】
基板上に配置された請求項1~8のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン系熱界面材料、そのような熱界面材料を適用する方法、及び熱界面材料を含有する物品に関する。
【0002】
序論
熱界面材料(TIM)は、2つの成分間に熱伝導性結合を提供するものであり、熱源からヒートシンクに熱を引き出すために電子機器において使用されることが多い。TIM材料の有効性は、基板間のTIMの熱インピーダンスによって測定可能である:
【数1】
(式中、Θは、TIMの熱インピーダンスであり、dは、ボンドラインの厚さ(BLT)であり、κは、TIMの熱伝導率であり、R
接触は、TIM及び隣接する基板の接触抵抗値の和である)。熱インピーダンス値の低下は、TIMを通じた熱放散の有効性の増大に対応する。熱インピーダンスは、0.1℃*平方センチメートル/ワット(℃*cm
2/W)未満の値を有することが望ましい。
【0003】
TIMの熱インピーダンスを低下させる1つの方法は、TIMのボンドラインの厚さを減少させることである。BLTは、基板間のTIMのTIMの厚さに相当する。概して、厚さ1ミリメートルであってよい厚さでTIM材料を基板に適用し、次いで、別の基板を適用し、TIMを基板間で圧縮させる。BLTの減少は、熱インピーダンスを低減するために、また、より小型の機器の製造を容易にするために望ましい。BLTをより薄くすることによって電子部品をより薄くすることが可能になり、これは、消費者がより小さな携帯電話及び他の電子機器を求めているため望ましいことである。TIMは、基板間で30マイクロメートル未満のBLTまで圧縮可能であることが望ましい。
【0004】
TIMにおいては熱伝導率も重要である。熱伝導率を増大させることは、熱インピーダンスを低減するのに役立ち、基板間のTIMを通じた効率的な熱伝達を促進する。電子機器がより高出力になり、それに付随してより多くの熱を発生させるので、熱伝導率を増大させることは重要である。TIMが6.0ワット/メートル*ケルビン(W/m*K)以上の熱伝導率を有する場合、更に有益である。
【0005】
TIM単独で低い熱インピーダンスを実現することが望ましいが、基板上に印刷することによる容易な適用を可能にするために低い分配可能粘度(120パスカル*秒(Pa*s)以下)を有すると同時に、垂直滴下試験中に膨張することも、スリップすることも、ボイド形成の証拠を示すこともなくその元の位置に留まるために十分に高い低剪断粘度を有するTIMを提供しながらそのようにすることが更に望ましい。TIM材料に関する課題は、「ポンプアウト」又はボイド形成であり、これは、典型的には、異なる熱膨張係数を有する熱源及びヒートシンク並びに/又はTIM材料における不均一性から生じる。垂直滴下試験に合格することは、TIMのポンプアウトが最小限であるか又は全くなく、ボイド形成もないことを示す。単にTIMの粘度を上昇させることによって垂直滴下試験に合格させようとすることが試みられることもあるが、そのようなアプローチは、TIMを分配する能力を阻害する場合がある。したがって、120Pa*s以下のより低い分配可能粘度が望ましいが、垂直滴下試験に合格しながらそれを得ることは困難である。
【0006】
垂直滴下試験の性能を改善しようと試みながら低い分配可能粘度を実現するための1つのアプローチは、有機溶媒を高粘度TIM製剤とブレンドすることである。溶媒は、まず粘度を低下させて分配性を可能にするが、次いで、蒸発して、分配後により高い粘度のTIM組成物を生じさせる。しかしながら、そのような製剤では、蒸発して、望ましくないことに揮発性有機組成物(VOC)の放出の一因となる有機溶媒の使用を必要とする。したがって、低い分配可能粘度を有し、有機溶媒を必要とすることなく垂直滴下試験に合格するTIMを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ASTM D-5470に従って80℃で15分間、276キロパスカル(kPa)(40ポンド/平方インチ)の圧力下で試験した場合に30マイクロメートル以下のボンドライン厚さ(BLT)を実現するように十分に圧縮可能でありつつ、(ASTMD4440-15に従って、25ミリメートルの平行板を備えたTA Instruments製のRES-G2回転レオメーターを使用して、0.01~300%の歪み及び10ラジアン/秒の周波数を使用して試験した場合)120Pa*s以下の分配可能粘度を有しつつ、低い熱インピーダンス(0.1℃*cm2/W未満)を提供し、本明細書において以下に記載する垂直滴下試験に合格する、熱界面材料(TIM)を得るという課題に対する解決策を提供する。望ましくは、TIMは、有機溶媒を含まないことと共に、これらの特徴の全てを有する。更により望ましくは、本発明のTIMはまた、本明細書において以下に記載する熱伝導率試験方法によって求めた場合、6.0W/m*K以上、好ましくは6.5W/m*K以上の熱伝導率を有する。
【0008】
本発明は、末端に配置された2つのシリルヒドリド官能基を有する直鎖ポリシロキサン(ジ-SiHポリシロキサン)と2つを超えるシリルヒドリド官能基を有するポリシロキサン(マルチ-SiHポリシロキサン)との特定のブレンドと組み合わせて、特定のシリルヒドリド対ビニル比(SiH:ビニル比)を有するポリシロキサンマトリックス組成物が、滴下を妨げるのに十分に架橋するが、30マイクロメートル以下のBLTへの圧縮を妨げるほど広範囲には架橋せず、0.1℃*cm2/W未満の熱インピーダンスを実現するTIMを実現することができることを見出した結果である。SiH:Vi比が0.4以上1.0以下であり、ジ-SiHポリシロキサンからのSiH官能基のマルチ-SiHポリシロキサンからのSiH官能基に対するモル比が13以上70以下である場合、TIM製剤は、架橋された場合であっても30マイクロメートル未満のBLTまで圧縮できることが見出された。SiH/Vi比が1.0超である場合及び/又はジ-SiHポリシロキサンSiH官能基のマルチ-SiHポリシロキサン官能基に対する比が13未満である場合、硬化したTIMは、架橋しすぎて30マイクロメートル未満のBLTまで圧縮できない傾向がある。SiH/Vi比が0.4未満である場合及び/又はジ-SiHポリシロキサン官能基のマルチ-SiHポリシロキサン官能基に対する比が70超である場合、未反応ポリマーに起因してポンプアウトが起こる場合がある。
【0009】
本発明者らは、更に驚くべきことに、前述の特性に加えて、本発明の組成物が、窒化ホウ素が組成物の重量に対して0.5~12重量パーセント(重量%)である熱伝導性充填剤組成物を含む場合に、6.0W/m*K以上の熱伝導率を実現できることを見出した。
【0010】
第1の態様では、本発明は、(a)30~200ミリパスカル*秒の粘度を有するジビニルポリジメチルシロキサンと、(b)分子の各末端に1つずつ、2つの末端シリルヒドリド官能基を有する直鎖ポリシロキサンである鎖延長剤と、(c)2つを超えるシリルヒドリド官能基を有するポリシロキサンである架橋剤と、(d)80体積パーセント以上の熱伝導性充填剤と、(e)アルキルトリアルコキシシラン並びに重合度が20~120であるモノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンを含む処理剤組成物と、(f)白金ヒドロシリル化触媒と、(g)最大0.2重量パーセントのヒドロシリル化阻害剤と、を含み、重量パーセントの値が、熱界面材料組成物の重量に対するものであり、体積パーセントの値が、熱界面材料組成物の体積に対するものであり、当該熱界面材料組成物におけるシリルヒドリド基のビニル基に対するモル比が、0.4以上であると同時に1.0以下であり、当該鎖延長剤からのシリルヒドリド官能基の当該架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比が、13以上であると同時に70以下である、組成物である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を基板上に適用する方法であって、第1の態様の組成物を基板上に分配することを含む、方法である。
【0012】
第3の態様では、本発明は、基板と接触している硬化形態の第1の態様の組成物を含む、物品である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0014】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0015】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0016】
「粘度」は、特に明記しない限り、(a)分配可能粘度を測定するためのものを含む、TIM組成物については:ASTMD4440-15に従って、25ミリメートル平行プレートを備えたTA Instruments製のRES-G2回転レオメーターを使用し、0.01~300%の歪み及び10ラジアン/秒の周波数を使用して測定した場合の動的粘度;並びに(b)個々のポリシロキサンについては:25℃でガラスキャピラリーCannon-Fenske型粘度計を使用する、ASTM D 445による粘度を指す。
【0017】
特に明記しない限り、非硬化状態で熱界面材料組成物の全ての特徴を決定する。
【0018】
ポリシロキサンは、複数のシロキサン単位で構成されている。シロキサン単位は、M、D、T、及びQ型のシロキサン単位から選択される。シロキサン単位は、以下の化学組成を有する:
【数2】
(式中、Aは、水素、ヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル、又はヒドロキシル、アルコキシル、若しくはハロゲン等の任意の他の基であってよく、酸素が他のシロキサン単位と共有される酸素を表す場合、各酸素の半分は、記載されたシロキサン単位と結合している)。例えば、「O
1/2」は、別のシロキサン単位と共有される1つの酸素に対応し、「O
3/2」は、他のシロキサン単位と共有される3つの酸素に対応する。分子中の各シロキサン単位の平均数は、典型的には、化学構造においてシロキサン単位に付随する下付き文字によって特定される。
1H、
13C、及び
29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NME)スペクトル法により、ポリシロキサンの化学構造を決定する。特に、ポリシロキサンのシロキサン単位は、本明細書に特に明記しない限り、ポリシロキサン内でランダム、ブロック、部分的にランダム、及び部分的にブロックであり得る。
【0019】
本発明は、熱界面材料(TIM)組成物である。すなわち、TIMとして使用するのに好適な組成物である。TIM組成物は硬化性であり、これは、架橋反応することによって硬化できることを意味する。硬化は、ビニル基とシリルヒドリド(SiH)基との間のヒドロシリル化化学反応によって起こる。これに関して、TIM組成物は、ビニル官能性ポリシロキサン及びシリルヒドリド官能性ポリシロキサンを含む。望ましくは、ポリシロキサンのいずれも、ビニル及びシリルヒドリド官能基の両方を有していない。
【0020】
TIM組成物は、ジビニルポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。ジビニルPDMSは、30ミリパスカル*秒(mPa*s)以上、好ましくは45mPa*s以上、60mPa*s以上の粘度を有し、90mPa*s以上、100mPa*s以上、120mPa*s以上、140mPa*s以上、160mPa*s以上、更には180mPa*s以上の粘度を有し得ると同時に、200mPa*s以下、180mPa*s以下、更には160mPa*s以下、140mPa*s以下、120mPa*s以下、100mPa*s以下、80mPa*s以下、又は更には60mPa*s以下の粘度を有する。粘度が高すぎる場合、TIM組成物の粘度が高くなりすぎて、80体積パーセント以上の熱伝導性充填剤を含めることができなくなる。粘度が低すぎる場合、TIM粘度が低くなりすぎて、機械的特性が低下し、チョーキングが起こる場合がある。
【0021】
望ましくは、ジビニルPDMSは、末端ビニル基を有し、以下の一般化学構造(I):
【化1】
(式中、「Vi」は、ビニル基(-CH=CH
2)を指し、nは、ジメチルシロキサン単位の平均数を指し、これはPDMSの重合度(DP)である)を有する。ジビニルPDMSについて所望の粘度を実現するようにnを選択する。典型的には、nは、25以上の値であり、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、80以上、更には90以上であり得ると同時に、典型的には、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、更には50以下である。
【0022】
TIM組成物中のジビニルPDMSの濃度は、TIM組成物の重量に基づく重量%で、望ましくは2重量パーセント(重量%)以上であり、3重量%以上、更には4重量%以上であり得ると同時に、典型的には、10重量%以下であり、8重量%以下、6重量%以下、又は更には4重量%以下であり得る。ジビニルPDMSが多すぎると、高粘度になることから、含めることができる熱伝導性充填剤の量が減少する。ジビニルPDMSが少なすぎると、TIM組成物が分配性を失うほど多くの充填剤を必要とするようになる。
【0023】
好適なジビニルPDMS材料は、米国特許第5883215(A)号に教示されているように、停止のためのビニル末端ブロッカーを用いたシクロシロキサンの開環重合によって作製することができる。
【0024】
TIM組成物は、分子の各末端に1つずつ、2つの末端シリルヒドリド官能基を有する直鎖ポリシロキサンである鎖延長剤を含む。直鎖ポリシロキサンは、主にM及びD型のシロキサン単位を含むが、最大5モルパーセント(モル%)、好ましくは最大4モル%、最大3モル%、最大2モル%、最大1モル%の合計濃度でT及び/又はQ型のシロキサン単位を含んでいてもよく、最も好ましくはT及びQシロキサン単位を含まず、T及びQシロキサン単位のモル%は、直鎖ポリシロキサンにおけるシロキサン単位の総数に対するものである。直鎖ポリシロキサン鎖延長剤は、各々SiH官能基を含む末端M基を有する。
【0025】
鎖延長剤は、望ましくは、5mPa*s以上の粘度を有するものであり、7mPa*s以上、10mPa*s以上、20mPa*s以上、更には30mPa*s以上の粘度を有し得ると同時に、概ね100mPa*s以下の粘度を有するものであり、75mPa*s以下、50mPa*s以下、25mPa*s以下、20mPa*s以下、15mPa*s以下、更には10mPa*s以下の粘度を有し得る。粘度が高すぎる場合、TIM組成物の粘度が高くなりすぎて、80体積パーセント以上の熱伝導性充填剤を含めることができなくなる。粘度が低すぎる場合、TIM粘度が低くなりすぎて、機械的特性が低下し、チョーキングが起こる場合がある。
【0026】
望ましくは、鎖延長剤は、各末端にSiH官能基を有するPDMS(シリルヒドリド末端PDMS)である。そのようなPDMSは、以下の一般化学構造(II)を有し得る:
【化2】
鎖延長剤について既に上で教示したもの等の所望の粘度を実現するように、下付き文字mの値を選択する。望ましくは、下付き文字mは、10以上、11以上、12以上、13以上、更には14以上の平均値を有すると同時に、典型的には、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、更には15以下である。1つの好適な鎖延長剤の例は、7~10mPa*sの粘度を有し、1.25重量%のビニルを含有するヒドリド末端PDMS(Alfa ChemistryからACM83817714として、GelestからDMS-V21として市販されている)である。
【0027】
鎖延長剤の濃度は、TIM組成物の重量に基づいて0.5重量%以上、0.75重量%以上、1.0重量%以上、更には1.25重量%以上であり得ると同時に、概ね2.0重量%以下、1.75重量%以下、1.5重量%以下、1.25重量%以下、又は更には1.0重量%以下である。この濃度範囲は、TIM組成物の架橋密度及び最終硬度を実現するために必要な、所望のSiH/Vi比及び鎖延長剤からのシリルヒドリド官能基の架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比を実現するのに最も好適である。
【0028】
好適な鎖延長剤としては、GelestからDMS-H11として市販されているヒドリド末端PDMSが挙げられる。
【0029】
TIM組成物は、2つを超えるシリルヒドリド官能基、好ましくは3つ以上のシリルヒドリド官能基を有するポリシロキサンである架橋剤を含む。望ましくは、架橋剤の粘度は、10mPa*s以上、12mPa*s以上、14mPa*s以上、15mPa*s以上、16mPa*s以上、18mPa*s以上、又は更には19mPa*s以上であると同時に、典型的には、30mPa*s以下、25mPa*s以下、20mPa*s以下、更には19mPa*s以下である。これらの粘度範囲は、特定の成分濃度で適切なTIM組成物粘度を実現するために望ましい。
【0030】
望ましくは、架橋剤は、直鎖ポリシロキサンである。架橋剤は、望ましくは、両末端がトリメチル末端である直鎖ポリシロキサンである。架橋剤は、平均化学構造(III):
【化3】
(式中、Aは、シロキサン単位について既に記載した通りであるが、望ましくは、各出現においてメチル及びフェニルから選択され、最も好ましくは、各出現においてメチルであり、yの平均値は3以上であり、同時に10以下、8以下、6以下、更には4以下であり、xは、架橋剤全体について所望の粘度を実現するように選択される)を有し得る。
【0031】
架橋剤は、TIM組成物の重量に対して0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、更には0.04重量%以上の濃度で存在し得ると同時に、典型的には、1.5重量%以下、1.25重量%以下、1.0重量%以下、0.75重量%以下、0.50重量%以下、0.25重量%以下、0.010重量%以下、0.075重量%以下、0.06重量%以下、又は更には0.05重量%以下の濃度で存在する。この濃度範囲は、TIM組成物の架橋密度及び最終硬度を実現するために必要な、所望のSiH/Vi比及び鎖延長剤からのシリルヒドリド官能基の架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比を実現するのに最も好適である。
【0032】
好適な架橋剤としては、GelestからDMS-071及びDMS-301、並びにDow,Inc.からDOWSIL(商標)6-3570の名称で市販されている材料が挙げられる(DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である)。
【0033】
TIM組成物のシリルヒドリドのビニル基に対するモル比は、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上であり、0.9以上であり得ると同時に、1.0以下であり、0.9以下、更には0.8以下であり得る。モル比が1.0を超える場合、組成物が硬すぎて30マイクロメートル以下のボンドライン厚さに圧縮できなくなる可能性がある。モル比が0.1未満である場合、架橋が不十分であることから、垂直滴下試験に不合格となるリスクがある。
【0034】
TIM組成物は、13以上、15以上、16以上、18以上、20以上、22以上、24以上、26以上、28以上、30以上、35以上、40以上、45以上、更には50以上であると同時に、典型的には、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、又は更には25以下である、鎖延長剤のみからのシリルヒドリド官能基の架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比を有する。モル比が70を超える場合、組成物が硬くなりすぎて30マイクロメートル以下のボンドライン厚さに圧縮できなくなるリスクがある。モル比が13未満である場合、垂直滴下試験に不合格になるリスクがある。
【0035】
TIM組成物は、80体積パーセント(体積%)以上、典型的には98体積%以下、好ましくは95体積%以下の熱伝導性充填剤を含むものであり、94体積%以下、93体積%以下、92体積%以下、91体積%以下、90体積%以下、89体積%以下、88体積%以下、87体積%以下、86体積%以下、85体積%以下、84体積%以下、83体積%以下、更には82体積%以下、又は81体積%以下の熱伝導性充填剤を含有し得る。
【0036】
熱伝導性充填剤は、TIM組成物に使用することが知られている1つよりも多い熱伝導性充填剤のいずれか1つ又は任意の組み合わせ、例えば、アルミニウム、銀、銅、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、銀被覆アルミニウム、炭素繊維、及び黒鉛から選択されるいずれか1つ又は1つを超えるものの任意の組み合わせであってよい。望ましくは、熱伝導性充填剤は、酸化亜鉛、アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群から選択されるいずれか1つ又は1つを超えるものの任意の組み合わせである。
【0037】
望ましくは、熱伝導性充填剤は、小(1マイクロメートル未満のD50)、中(1~5マイクロメートルのD50)、及び大(5マイクロメートル超、好ましくは8マイクロメートル以上、200マイクロメートル未満のD50)から選択される2つ又は3つの異なるサイズの充填剤の組み合わせである。数平均粒径で報告される値を用いて、操作ソフトウェアに従って操作されるレーザー回析粒径分析器(例えば、CILAA920 Particle Size Analyzer又はBeckman Coulter LS 13 320 SW)を使用して熱伝導性充填剤のD50を求める。
【0038】
1つの望ましい熱伝導性充填剤は、1マイクロメートル未満のD50を有する酸化亜鉛充填剤と、1~20マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤と、任意選択で、8~30マイクロメートルの粒径を有する少なくとも1種の窒化ホウ素フレークと、を含む。驚くべきことに、窒化ホウ素フレークが、TIM組成物の重量の1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上、2.5重量%以上、更には3.0重量%以上であると同時に10重量%以下、好ましくは8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、更には3重量%以下の濃度で存在する場合、TIM組成物の熱伝導率が特に高く、更には6.0ワット/メートルケルビン(W/m*K)を超えることが見出された。6.5W/m*Kの熱伝導率をもたらす熱伝導性充填剤の特に望ましい組み合わせは、TIM組成物の重量に対する重量%で、44~48.6重量%の、9マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤、25~26重量%の、2マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤、17~18重量%の、0.2マイクロメートルのD50を有する酸化亜鉛、3~4重量%の、30マイクロメートルの平均サイズを有する窒化ホウ素フレーク、及び最大1.6重量%又は更には最大2.0重量%の、8マイクロメートルの平均サイズを有する窒化ホウ素フレークを含む。
【0039】
TIM組成物は、処理剤組成物を含む。処理剤組成物は、アルキルトリアルコキシシラン並びにモノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンを含む。アルキルトリアルコキシシランは、望ましくは、炭素数6~12の(C6~C12)アルキルトリメトキシシラン、好ましくは、C8~C12アルキルトリメトキシシランであり、n-デシルトリメタエトキシシラン(n-decyltrimethethoxy silane)であってもよい。好適なアルキルトリアルコキシシランとしては、Dow,Inc.からDOWSIL(商標)Z-6210シランとして入手可能なn-デシルトリメトキシシランが挙げられる(DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である)。
【0040】
モノ-トリアルコキシシラン末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、望ましくは、20以上の重合度を有するものであり、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、更には90以上であり得ると同時に、典型的には、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、更には30以下である。より長い鎖長(20以上の重合度)は、より短い鎖よりも高い安定性を有するので望ましい。しかしながら、より短い鎖長はより長い鎖長よりも粘度を低下させるのにより効率的であるので、重合度を150未満に保つことが望ましい。
【0041】
好適なモノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの例は、化学構造(IV):
【化4】
(式中、下付き文字aは、モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンについて上述した重合度に等しい値を有する)を有する。
【0042】
好適なモノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、米国特許出願公開第2006/0100336号の教示に従って合成することができる。
【0043】
望ましくは、アルキルトリアルコキシシランは、典型的には、TIM組成物の重量に対する重量%で、1.8重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、更には3.5重量%以上の濃度で存在すると同時に、典型的には、4.0重量%以下、3.5重量%以下、又は更には3.0重量%以下の濃度で存在する。
【0044】
望ましくは、モノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、TIM組成物の重量に対して0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、又は更には0.4重量%以上の濃度で存在すると同時に、典型的には、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下の濃度で存在する。
【0045】
TIM組成物は、白金ヒドロシリル化触媒を含む。白金ヒドロシリル化触媒としては、Speier触媒(H2PtCl6)及びKarstedt触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン錯体)が挙げられる。触媒は、封入されていても封入されていなくてもよい。封入触媒は、典型的には、フェニル樹脂中に封入された触媒である。
【0046】
白金ヒドロシリル化触媒は、典型的には、TIM組成物の重量に対して0.1重量%以上、0.2重量%以上の濃度で存在するものであり、0.3重量%以上であり得ると同時に、典型的には、0.5重量%以下、0.4重量%以下、更には0.3重量%以下の濃度で存在する。
【0047】
TIM組成物は、TIM組成物の重量の最大0.2重量%の濃度でヒドロシリル化阻害剤を含んでいてもよい。ヒドロシリル化阻害剤は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランであってよく、例えば、それである。望ましくは、阻害剤は、ビニルジメチル末端PDMS中に存在し、送達される。
【0048】
望ましくは、TIM組成物は、有機溶媒を含まず、更により望ましくはいかなる溶媒も含まない。
【0049】
本発明のTIM組成物は、TIM組成物を基板上に分配するプロセスにおいて特に有用である。特に、本発明のTIM組成物は、TIM組成物を基板上に印刷することによってTIM組成物を基板上に分配することを含むプロセスによって、特定のパターンで基板上に印刷することができる。更により有益なことは、基板上に分配されてから、第2の基板をTIM組成物上に適用し、TIM組成物に押し付けて、2枚の基板間に30マイクロメートル以下のボンドライン厚さを有するTIM組成物を形成することができるという事実である。
【0050】
本発明は、好ましくは2枚の基板の間に位置する基板上に分配されたTIM組成物を含む、物品を更に含む。
【実施例】
【0051】
材料。サンプル製剤において使用するための材料を表1に列挙する。
【表1】
DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。
Polarthermは、Momentive Performance Materials Inc.の商標である。
【0052】
特性評価方法。以下の方法に従ってサンプルの特性評価を行う。
【0053】
分配可能粘度。分配可能粘度は、TIM製剤を印刷によって基板上に配置できる性の尺度である。粘度が高すぎる場合、TIM製剤を精密かつ正確に印刷することは困難である。本発明は、120Pa*s以下の分配可能粘度を実現する。ASTM D4440-15の動的粘度試験方法を使用し、25ミリメートルの平行板を備えたTA Instruments製のARES-G2レオメーターを使用して、分配可能粘度を求める。試験条件は、25℃、0.1~300%の歪み、及び10ラジアン/秒の周波数における歪み掃引に基づく。
【0054】
ボンドライン厚さ及び熱インピーダンス。ASTM D-5470に従って、LongWin Model LW 9389 TIM熱界面材料試験機を使用して、TIM製剤のボンドライン厚さ(BLT)及び熱インピーダンスを求める。TIM材料サンプルに加えられる圧力は、275.9キロニュートン/平方メートル(40ポンド/平方インチ)である。各サンプルの試験時間は15分間であり、温度は80℃である。
【0055】
垂直滴下試験。0.2グラムのTIM製剤を一片のアルミニウムパネル上に適用する。2つの0.2ミリメートルのプラスチックシムをサンプルの両側に置き、1ミリメートルの厚さのスライドカバーガラスをTIM製剤の上に置き、製剤に押し付けて、カバースライドカバーガラスとアルミニウムパネルとの間にTIM製剤の0.2ミリメートルの厚さのフィルムを得る。カバーガラス及びアルミニウムパネルをクリップで一緒に固定して、それらを定位置に保持し、アセンブリを温度循環チャンバ(ESPEC Corp.製PSL-2J)内で垂直に配置する。各温度限界の間15分で、-40℃~125℃の勾配で温度を循環させ、各温度限界で15分間保持する。500サイクル後、サンプルを評価する。スライドカバーガラスとアルミニウムパネルとの間からTIM製剤が膨張した証拠もスライドした証拠もなく、ボイドがほどんど又は全く形成されず、TIM製剤のポンプアウトもほとんど又は全く観察されない場合、TIM製剤は、垂直滴下試験に「合格」する。
【0056】
熱伝導率。ISO 22007-2:2015試験方法に従って、Hot Disk AB(Goteborg,Sweden)製のHot Disk Instrument TPS 2500 Sを使用して、TIM製剤の熱伝導率を測定する。C5501センサー、2~5秒の加熱時間、及び500ミリワットの電力を使用する。2つのカップをTIM製剤で満たし、平面センサーを内側に置く。ポイント50~150の間で選択された温度ドリフト補償及び時間補正を用いて、微調整した分析を用いる。
【0057】
サンプルTIM製剤
製剤の調製。100ミリリットル(mL)のスピードミキサーカップ内で成分を合わせることによって、サンプル製剤を調製する。100mLのスピードミキサーカップに、処理剤、ビニルPDMSを含むシリコーンオイル、鎖延長剤、及び架橋剤を添加する。次いで、小サイズ及び中サイズの熱伝導性充填剤を添加し、FlackTekスピードミキサーを用いて100回転/分(RPM)で20秒間混合する。大きな熱伝導性充填剤を2回に分けて添加し、各添加後に1000RPMで20秒間及び1500RPMで20秒間混合する。適用可能であれば、BN充填剤を添加し、1000RPMで20秒間、次いで1500RPMで20秒間混合して、流動性金属-ポリオルガノシロキサン混合物を得る。触媒を添加し、800RPMで20秒間2回混合する。粘度、熱伝導率、及び垂直滴下試験性能を求める。100℃のオーブン内で1時間製剤を硬化させた後、ボンドライン厚さ及び熱インピーダンスについて試験する。
【0058】
全てのサンプル製剤は有機溶媒を含まない。
【0059】
範囲外のSiH/Vi比及び鎖延長剤からのSiH官能基の架橋剤からのSiH官能基に対するモル比。サンプル1~7は、SiH/Vi比が1.0を超えるか、又は鎖延長剤からのSiHの架橋剤からのSiH官能基に対するモル比が13未満であるTIM製剤を示す。結果は、これらの状況のいずれにおいても、製剤を30マイクロメートル以下のBLTまで圧縮できないことを示す。特に、これらの製剤は全て、120Pa*s以下の分配可能粘度を有する。
【0060】
サンプル7は、1.0のSiH/Vi比を有するが、320マイクロメートルのBLTを有することに注目すべきである。この特定のサンプルは、30マイクロメートル以下のBLTを実現することができない製剤を示すが、サンプル1~6と比較して30マイクロメートルに近づいている。サンプル23(表3参照)は、SiH/Vi比が1.0であるとき、SiH CE/SiH架橋剤比が十分に増加している場合、30マイクロメートル以下のBLTを実現可能であることを示す。
【0061】
表2は、サンプル1~7の製剤及びそれらのサンプルの特性評価を示す。製剤は、製剤を調製するために使用される成分をグラムで特定する。
【表2】
*NM:測定せず
**ボイドの形成及びTIM製剤のポンプアウトのために不合格であった。
【0062】
範囲内のSiH/Vi比及びSiH鎖延長剤官能基のSiH架橋剤官能基に対するモル比。サンプル8~23は、SiH/Vi比が1.0以下であり、鎖延長剤SiHの架橋剤SiH官能基に対するモル比が13以上であるTIM製剤を示す。結果は、これらの比が満たされたとき、製剤は30マイクロメートル未満のBLTを形成することができると共に、0.1℃*cm2W未満の熱インピーダンス、120Pa*s以下の分配可能粘度を実現することができ、垂直滴下試験に合格することができることを示す。更に、窒化ホウ素熱伝導性充填剤を含むサンプルは、6.0W/m*Kを超える特に高い熱伝導率値を有する。特に、これらの製剤は全て、120Pa*s以下の分配可能粘度を有する。
【0063】
表3は、サンプル8~23の製剤及びそれらのサンプルの特性評価を示す。製剤は、製剤を調製するために使用される成分をグラムで特定する。注記:「TA」=処理剤。「TCF」=TC充填剤。「CE」=鎖延長剤。「TC」=熱伝導率。「TI」=熱インピーダンス。
「VDP」=垂直滴下試験。
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱界面材料組成物であって、
a.30~200ミリパスカル*秒の粘度を有するジビニルポリジメチルシロキサンと、
b.分子の各末端に1つずつ、2つの末端シリルヒドリド官能基を有する直鎖ポリシロキサンである鎖延長剤と、
c.2つを超えるシリルヒドリド官能基を有するポリシロキサンである架橋剤と、
d.80体積パーセント以上の熱伝導性充填剤と、
e.アルキルトリアルコキシシラン並びに重合度が20~120であるモノ-トリアルコキシシロキシ末端及びトリメチルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンを含む処理剤組成物と、
f.白金ヒドロシリル化触媒と、
g.最大0.2重量パーセントのヒドロシリル化阻害剤と、
を含み、
重量パーセントの値が、熱界面材料組成物の重量に対するものであり、体積パーセントの値が、熱界面材料組成物の体積に対するものであり、前記熱界面材料組成物におけるシリルヒドリド基のビニル基に対するモル比が、0.4以上であると同時に1.0以下であり、前記鎖延長剤からのシリルヒドリド官能基の前記架橋剤からのシリルヒドリド官能基に対するモル比が、13以上であると同時に70以下である、組成物。
【請求項2】
a.前記ジビニルポリジメチルシロキサンが、2~4重量パーセントの濃度で存在し、
b.前記鎖延長剤が、0.5~1.5重量パーセントの濃度で存在し、
c.前記架橋剤が、0.005~0.05重量パーセントの濃度で存在し、
d.前記アルキルトリアルコキシシランが、1.8~4重量パーセントの濃度で存在し、前記モノトリアルコキシ末端ジメチルポリシロキサンが、0.05~0.5重量パーセントの濃度で存在し、
重量パーセントの値が、熱界面材料組成物の重量に対するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性充填剤が、1マイクロメートル未満の平均サイズを有する酸化亜鉛粒子と、1~20マイクロメートルの平均粒径を有するアルミニウム充填剤と、任意選択で8~30マイクロメートルの粒径を有する窒化ホウ素フレークと、を含む、請求項1又は2に記載の熱界面材料組成物。
【請求項4】
前記窒化ホウ素粒子が、熱界面材料組成物の重量に対して1~10重量パーセントの濃度で存在する、請求項3に記載の熱界面材料組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性充填剤が、TIM組成物の重量に対する重量%で、44~48.6重量%の、9マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤、25~26重量%の、2マイクロメートルのD50を有するアルミニウム充填剤、17~18重量%の、0.2マイクロメートルのD50を有する酸化亜鉛、3~4重量%の、30マイクロメートルの平均サイズを有する窒化ホウ素フレーク、及び最大1.6重量%又は更には最大2.0重量%の、8マイクロメートルの平均サイズを有する窒化ホウ素フレークを含む、請求項3に記載の熱界面材料組成物。
【請求項6】
前記鎖延長剤が、シリルヒドリド末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、以下の平均化学構造:
【化1】
(式中、yの平均値は3以上であり、xの値は、前記架橋剤が10~25ミリパスカル*秒の粘度を有するような値である)を有する、請求項6に記載の熱界面材料組成物。
【請求項8】
有機溶媒を含まない、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物を基板上に分配することを含む、プロセス。
【請求項10】
基板上に配置された請求項1~8のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物を含む、物品。
【国際調査報告】