(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】耐水素脆性に優れた熱間成形用めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/12 20060101AFI20231129BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20231129BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20231129BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20231129BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20231129BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20231129BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20231129BHJP
C21D 1/74 20060101ALI20231129BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20231129BHJP
C23C 2/02 20060101ALI20231129BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C23C2/12
C22C21/00 N
C22C38/00 301T
C22C38/38
C21D9/46 J
C21D1/18 C
C21D9/00 A
C21D1/74 H
C23C2/40
C23C2/02
C23C28/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523048
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2022006922
(87)【国際公開番号】W WO2022245064
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065296
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 サン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】オー、 ジン-クン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ソン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、 ヒョ-シク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、 スル-ギ
【テーマコード(参考)】
4K027
4K037
4K042
4K044
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB02
4K027AB05
4K027AB48
4K027AC15
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA16
4K037EA18
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB05
4K037EB09
4K037EB11
4K037FA02
4K037FA03
4K037FC03
4K037FC04
4K037FE01
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG01
4K037FH01
4K037FJ02
4K037FJ05
4K037FJ06
4K037GA05
4K042AA25
4K042BA01
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA12
4K042DA01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
4K042DE02
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BB03
4K044BB04
4K044CA11
4K044CA12
4K044CA18
(57)【要約】
本発明は、自動車車体部品などとして用いられる熱間成形(Hot Press Forming、HPF)用めっき鋼板及び熱間成形部材とこれらを製造する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板の表面に形成されたAl系めっき層を含み、
前記Al系めっき層内のNi平均含有量は0.05~0.35重量%である、耐水素脆性に優れる熱間成形用めっき鋼板。
【請求項2】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.07~0.5%、Si:0.05~1%、Mn:0.5~4%、P:0.001~0.015%、S:0.0001~0.02%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.01~1%、N:0.001~0.02%、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残りはFe及び不可避不純物を含む、請求項1に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形用めっき鋼板。
【請求項3】
前記Al系めっき層は、Al-リッチ層及び濃度勾配層を含む、請求項1に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形用めっき鋼板。
【請求項4】
素地鋼板を準備する段階;
前記準備された素地鋼板をめっき付着量150~2500mg/m
2でNiめっきする段階;及び
前記Niめっきされた冷延鋼板を連続焼鈍し、Al系めっきする段階;を含む、耐水素脆性に優れる熱間成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記素地鋼板を準備する段階は、
重量%で、C:0.07~0.5%、Si:0.05~1%、Mn:0.5~4%、P:0.001~0.015%、S:0.0001~0.02%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.01~1%、N:0.001~0.02%、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下を含み、残りはFe及び不可避不純物を含む鋼スラブを準備する段階;
前記鋼スラブを1050~1300℃で加熱する段階;
前記加熱された鋼スラブを800~950℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;
前記熱延鋼板を500~700℃の温度範囲で巻き取る段階;及び
前記巻取後に酸洗し、30~80%の圧下率で冷間圧延する段階;を含む、請求項4に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記連続焼鈍は740~860℃の温度範囲、露点温度-75~-25℃で行う、請求項4に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
素地鉄;及び
前記素地鉄上に形成された合金めっき層を含み、
前記合金めっき層の表面から深さ方向に15μmまで、Ni含有量が最も高い地点(Nimax)におけるNi含有量が0.1~0.75重量%である、耐水素脆性に優れる熱間成形部材。
【請求項8】
前記合金めっき層はNi濃化層を含み、
前記Ni濃化層は、グロー放電分光法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDS)を用いて、前記合金めっき層のNi含有量を導出した濃度プロファイルグラフにおいて、Ni含有量が最も高い地点(Nimax)から前記部材の表面方向にグラフの傾きが0となる地点(Nio)及び前記Nimaxから前記部材の深さ方向に前記Nioと同じ含有量を有する地点(Nio’)との間の幅である、請求項7に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形部材。
【請求項9】
前記Ni濃化層の厚さは1~15μmである、請求項8に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形部材。
【請求項10】
前記熱間成形部材の拡散性水素量は0.3重量ppm以下である、請求項7に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形部材。
【請求項11】
前記素地鉄の主相はマルテンサイトである、請求項7に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形部材。
【請求項12】
素地鋼板、及び前記素地鋼板の表面に形成されたAl系めっき層を含み、前記Al系めっき層内のNi平均含有量は0.05~0.35重量%であるブランクを提供する段階;
前記ブランクをAc3~975℃の温度範囲で加熱する段階;及び
前記加熱されたブランクをプレスに移送して成形し、20℃/s以上の冷却速度で冷却する段階;を含む、耐水素脆性に優れる熱間成形部材の製造方法。
【請求項13】
前記温度範囲で1~1000秒維持する、請求項12に記載の耐水素脆性に優れる熱間成形部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体部品などとして用いられる熱間成形(Hot Press Forming、HPF)用めっき鋼板及び熱間成形部材とこれらを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間成形部材は、最近、自動車軽量化による燃費向上及び乗客保護などの目的で自動車などの構造部材に多く使用されており、特に超高強度またはエネルギー吸収能が大きく要求されるバンパー、ドアまたはフィラー補強材などに多く活用されている。特に、熱間成形部材を用いる場合に耐食性などを確保するために表面がめっきされためっき鋼板を多く使用している。
【0003】
かかる熱間成形技術に関する代表的な技術としては、特許文献1がある。特許文献1では、Al-Siめっき鋼板を850℃以上加熱した後、プレスによる熱間成形及び急冷による部材の組織をマルテンサイトで形成させて、超高強度を確保することができる。このような熱間成形技術を用いて超高強度を確保する場合、高温で成形するため、複雑な形状も容易に成形することができる。また、金型内の急冷による強度上昇によって高強度化と同時に軽量化効果が期待できる。
【0004】
しかしながら、上記マルテンサイト組織は水素脆性に対する抵抗性が低いことが知られている。特に、熱間成形後に製造された部品は、加熱後の急冷による残留応力が存在し、鋼中の拡散性水素量が増加する場合、水素脆性による遅延破壊が起こり得るため、部品の適用が制限されるという欠点がある。したがって、このような問題を解決するための方案が求められている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、熱間成形部材の水素脆性による遅延破壊発生を低減させることができ、耐水素脆性に優れた熱間成形用めっき鋼板とこれを用いて製造された熱間成形部材、そしてこれらを製造する方法に関するものである。
【0007】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の明細書の全体的な事項から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、素地鋼板;及び
上記素地鋼板の表面に形成されたAl系めっき層を含み、
上記Al系めっき層内のNi平均含有量は、0.05~0.35重量%である耐水素脆性に優れた熱間成形用めっき鋼板に関するものである。
【0009】
本発明の他の一態様は、素地鋼板を準備する段階;
上記準備された素地鋼板をめっき付着量150~2500mg/m2でNiめっきする段階;及び
上記Niめっきされた冷延鋼板を連続焼鈍し、Al系めっきする段階;
を含む耐水素脆性に優れた熱間成形用めっき鋼板の製造方法に関するものである。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、素地鉄;及び
上記素地鉄上に形成された合金めっき層を含み、
上記合金めっき層の表面から深さ方向に15μmまで、Ni含有量が最も高い地点(Nimax)でのNi含有量が0.1~0.75重量%である耐水素脆性に優れた熱間成形部材に関するものである。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、素地鋼板及び上記素地鋼板の表面に形成されたAl系めっき層を含み、上記Al系めっき層内のNi平均含有量は0.05~0.35重量%であるブランクを提供する段階;
上記ブランクをAc3~975℃の温度範囲で加熱する段階;及び
上記加熱されたブランクをプレスに移送して成形し、20℃/s以上の冷却速度で冷却する段階;
を含む耐水素脆性に優れた熱間成形部材の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱間成形用めっき鋼板を熱間成形する場合に、鋼中の拡散性水素量を低減させて、耐水素脆性に優れた熱間成形部材を提供することができる。
【0013】
本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例中の発明例1の熱間成形用めっき鋼板でAl系めっき層のFeとNi含有量をグロー放電分光法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDS)で分析したグラフである。
【
図2】実施例中の発明例3の熱間成形部材の合金めっき層におけるNi含有量をGDS分析したグラフであり、これによってNi濃化層を示した図面である。
【
図3】実施例中の発明例1~3及び比較例2の熱間成形部材の合金めっき層でのNi含有量をGDS分析したグラフである。
【
図4】実施例中の発明例1~8、比較例1~2の熱間成形部材におけるNimax地点でのNi含有量及び各部材の拡散性水素量を測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で用いられる用語は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定する意図ではない。また、本明細書において用いられる単数の形態は、関連定義がこれと明らかに反対される意味を表さない限り、複数の形態も含む。
【0016】
明細書で用いられる「含む」という意味は、構成を具体化し、他の構成の存在や付加を除外するものではない。
【0017】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有するように解釈される。
【0018】
本発明の発明者らは、熱間成形部材の水素脆性について深く研究した結果、熱間成形時にアルミニウムなどのめっき層を有するブランク(熱間成形用めっき鋼板から製造)を加熱する段階中に、熱処理炉内に存在する水蒸気がブランク表面で吸着されることを確認した。次いで、水が解離しながら発生する水素は、高温で水素溶解度の高いオーステナイト相を有する鋼中に吸蔵される。
【0019】
しかし、熱間成形による急冷が発生してマルテンサイト相に変化すると、水素の溶解度は急激に低下し、めっき層が合金化しながら形成された合金めっき層は、水素を放出し難くする妨害物の役割を果たすことになるということが分かった。したがって、相当量の拡散性水素含有量が鋼中に残り、これによって水素遅延破壊によるクラック生成の可能性が高くなる。そこで、熱処理時に吸蔵される拡散性水素量を減らすことが重要であることが分かった。
【0020】
本発明者らは、熱間成形用鋼材において水素脆性に影響を及ぼす鋼中の拡散性水素量に対する分析を行いながら、Niめっきによって拡散性水素量を減少させることができるという効果を見出し、本発明に至った。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一態様である熱間成形用めっき鋼板は、素地鋼板、上記素地鋼板上に形成されたAl系めっき層を含み、上記Al系めっき層内のNi含有量が0.05重量%以上であることが好ましい。
【0023】
上記Al系めっき層は、上記Niを除外すると、本発明が属する熱間成形用めっき鋼板の技術分野における通常の技術者によって行われる熱間成形用めっき鋼板で広く用いられるAl系めっきであれば十分であり、その成分の含有量や種類は特に限定しない。例えば、純粋Alめっきだけでなく、Alに一部Siを含んで行われるめっきなどを全て含むことができる。
【0024】
上記Al系めっき層は、Al-リッチ(rich)層及び濃度勾配層を含むことができる。上記濃度勾配層は、素地鋼板を用いてAl系めっきを行う過程で、素地鋼板のFeとAlめっき浴成分が相互反応してFeを含んで形成された区間である。上記Al系めっき層で上記Al-リッチ層と濃度勾配層の境界を明確に区別することは容易ではない。但し、上記Al-リッチ層におけるFeの含有量が濃度勾配層におけるFeの含有量より少ない。一例として、上記Al系めっき層におけるFeの含有量が約2重量%以上になると、めっき成分よりも素地鋼板で拡散したFeの含有量が多くなるものと理解することがあり、Al-リッチ層と濃度勾配層の境界と見なすことができ、上記濃度勾配層と素地鋼板の境界は、Feの含有量が約80重量%になる地点までであると見なすことができるが、必ずしもこのように明確に区別されるものではない。
【0025】
一例として、
図1を参照すると、下記実施例中の発明例1の熱間成形用めっき鋼板を表面から深さ方向にグロー放電分光法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDS)を行った分析結果として、これにより上記Al系めっき層は、Al-リッチ層とFeの含有量が80重量%までである濃度勾配層を含むものと理解することができる。
【0026】
上記熱間成形用めっき鋼板において、上記Al系めっき層は、Niの平均含有量が0.05重量%以上含むことが好ましい。上記
図1に示したように、上記Al系めっき層に含まれるNiは深さ方向に分布されていることが好ましい。但し、
図1を参照すると、上記Niの含有量はめっき鋼板の表面からめっき層の深さ方向に一定ではない。上記の平均的な含有量は、表面からAl系めっき層の深さ方向に分析した結果の平均を意味する。これを測定する好ましい一例として、
図1のようなGDS分析Niプロファイルでグラフの平均値として導出することができる。上記Al系めっき層に含まれるNiは、後述するように、熱間成形過程で形成される合金めっき層内にNi濃化層形成を図り、このように形成されたNi濃化層が熱間成形のための熱処理過程で吸蔵されることがある外部水素が素地鋼板に浸透することを防ぐ役割を果たす。これにより、熱間成形部材の耐水素脆性を改善することができる役割を果たす。
【0027】
上記Ni含有量が0.05重量%未満では熱間成形時に十分なNi濃化層が形成されず、これにより熱間成形熱処理中に吸蔵される外部水素を効果的に防ぐことが難しい。一方、上記Ni含有量が高いほど、外部水素を防ぐ効果が増加する。しかし、Ni含有量が0.35重量%を超過する場合には、Ni付着量の増加に伴う原価上昇及び幅方向の不均一も増加することから、均一な鋼板を製造することが困難であるため、上記Ni含有量は0.35重量%を超過しないことが好ましい。より好ましい範囲は0.055~0.335重量%である。
【0028】
本発明において上記素地鋼板の種類、合金の成分系は特に限定されず、熱間成形部材として用いられるものであれば、その種類は制限されない。好ましい一例として、本発明における上記素地鋼板は、重量%で、炭素(C):0.07~0.5%、シリコン(Si):0.05~1%、マンガン(Mn):0.5~4%、リン(P):0.001~0.015%、硫黄(S):0.0001~0.02%、アルミニウム(Al):0.01~0.1%、クロム(Cr):0.01~1%、窒素(N):0.001~0.02%、残りは鉄(Fe)及び不可避不純物を含む。さらに、チタン(Ti):0.1%以下(0を含む)、ホウ素(B):0.01%以下(0を含む)を含むことができる。以下、各合金成分について簡略に説明する。
【0029】
炭素(C):0.07~0.5重量%(以下、%)
上記Cは、熱間成形部材の強度及び硬化能を向上させる元素であり、強度調節のための必須元素として適宜含まれる必要がある。上記C含有量が0.07%未満であると硬化能が低くて冷却速度の減少時に十分なマルテンサイトを確保することができず、フェライト生成で所望の強度を確保することが難しいため、0.07%以上含むことが好ましく、0.5%を超過するようになると、強度が過度に上昇して脆性を誘発し、溶接性が低下するため、0.5%を超過しないことが好ましい。
【0030】
シリコン(Si):0.05~1%
上記Siは、製鋼において脱酸剤として添加される必要があるだけでなく、固溶強化元素であり、炭化物生成を抑制し、内部組織の均一化に効果的である。また、熱間成形部材の強度上昇に寄与し、材質均一化に効果的な元素である。但し、その含有量が0.05%未満であると上記効果が期待できず、1%を超過するようになると、焼鈍中に鋼板の表面に生成される過度のSi酸化物によってめっき性が大きく低下されるため、1%以下であることが好ましい。
【0031】
マンガン(Mn):0.5~4%
上記Mnは、固溶強化効果によって所望の強度を確保することができるだけでなく、硬化能向上を通じて熱間成形時にフェライト形成を抑制するために必要な元素である。上記Mn含有量が0.5%未満であると十分な硬化能効果を得ることが難しく、不足した硬化能のために他の高価の合金元素が過度に必要となって製造原価が大きく増加するという問題が発生する。一方、Mn含有量が4%を超過すると、微細組織上の圧延方向に配列されたバンド(band)性組織が深化して内部組織の不均一性が生じるようになり、これによる耐衝突性を低下することがあるため、4%以下であることが好ましい。
【0032】
リン(P):0.001~0.015%
上記Pは、鋼中の不純物として存在し、その最小含有量が0.001%未満にするためには、多くの製造費用が要求されるため好ましくなく、最大含有量が0.015%を超過すると、熱間成形部材の溶接性及び高温粒界偏析による材質物性が低下するため、0.015%を超過しないことが好ましい。
【0033】
硫黄(S):0.0001~0.02%
上記Sは、不純物として部材の延性、衝撃特性及び溶接性を阻害する元素であるため、最大含有量を0.02%にすることが好ましい。また、最小含有量を0.0001%未満にするためには、製造費用が大きく上昇するため好ましくない。
【0034】
アルミニウム(Al):0.01~0.1%
上記Alは、Siと共に製鋼で脱酸作用をして鋼の清浄度を高める元素である。上記Al含有量が0.01%未満であると、このような効果が得られ難く、0.1%を超過する場合には、連鋳工程中に形成される過度のAlN析出物による高温延性が低下されて、スラブのクラックが発生して製造上の問題を生じる可能性があるため、その上限は0.1%であることが好ましい。
【0035】
クロム(Cr):0.01~1%
上記Crは、Mnのように鋼の硬化能を確保して熱間成形後のフェライト生成を抑制するための元素として添加される。上記Cr含有量が0.01%未満であると、上記効果を確保することが難しく、1%を超過すると添加量に対する硬化能向上効果が僅かであるだけでなく、粗大な鉄炭化物が過度に形成されて、応力作用時にクラックが生じる可能性があることから、材質を劣化させるため、1%を超過しないことが好ましい。
【0036】
窒素(N):0.001~0.02%
上記Nは、鋼中に不純物として含まれる。上記N含有量を0.001%未満にするためには過度の製造費用が伴われ、その含有量が0.02%超過すると添加されたAlのようにAlN形成に伴うスラブのクラックが発生しやすくなるため、0.02%を超過しないことが好ましい。
【0037】
チタン(Ti):0.1%以下(0を含む)
上記Tiは、鋼に不純物として残存する窒素と結合してTiNを生成させることで、硬化能確保のためのBが化合物にならないように保護することができる。このために、上記Tiをさらに含むことができる。また、TiC析出物の形成を通じて析出強化及び結晶粒の微細化効果が期待できる。但し、その含有量が0.1%を超過すると、却って粗大なTiNが多量形成されて、鋼の材質を劣化させるため、その上限は0.1%を超過しないことが好ましい。
【0038】
ホウ素(B):0.01%以下(0を含む)
上記Bは、硬化能を効果的に向上させることができる元素であって、旧オーステナイト結晶粒界に偏析して、不純物であるP及び/またはSの粒界偏析による熱間成形部材の脆性を抑制することができるため、さらに含むことができる。但し、上記Bが0.01%を超過すると、Fe23CB6複合化合物の形成によって熱間圧延で脆性を生じる可能性があるため、その上限は0.01%であることが好ましい。
【0039】
残りは鉄(Fe)及び不可避不純物を含む。不可避不純物は通常の鉄鋼製造工程で意図せずに混入されることがあるものであって、これを全面排除することはできず、通常の鉄鋼製造分野の技術者であれば、その意味を容易に理解することができる。なお、本発明は、上述した鋼組成以外の他の組成の添加を全面的に排除するものではない。
【0040】
次に、本発明の他の一態様である熱間成形用めっき鋼板の製造方法について詳細に説明する。説明される製造方法は、上述した熱間成形用めっき鋼板を製造する好ましい一例であり、必ずしもこのように製造する必要はない。
【0041】
上記製造方法は、素地鋼板を準備する段階;上記準備された素地鋼板の表面をNiめっきする段階;及び上記Niめっきされた素地鋼板を連続焼鈍し、Al系めっきを行う段階を含む。
【0042】
上記素地鋼板は上述のとおりであり、上記素地鋼板を準備する過程は、上述した鋼組成を満たす鋼スラブを加熱した後、熱間圧延、巻き取り、冷間圧延して得られる。
【0043】
上述した組成を満たす鋼スラブを1050~1300℃に加熱した後、熱間圧延を行う。上記加熱温度が1050℃未満では鋼スラブ組織が十分に均質化されないため、析出元素を活用する場合、再固溶させ難く、1300℃を超過する場合には、過度の酸化層が形成されて酸化層除去のための製造費用の増加をもたらし、熱間圧延後に表面欠陥が発生する可能性が高くなる。
【0044】
上記熱間圧延の仕上げ圧延温度は、800~950℃の温度範囲で行うことが好ましい。上記仕上げ圧延温度が800℃未満では二相域圧延が進行し、鋼板表層部にフェライトが導入されて板状制御が難しい。一方、950℃を超過する場合には、熱間圧延の結晶粒の粗大化が生じる可能性がある。
【0045】
熱間圧延の後には500~700℃の温度範囲で巻取りを行う。上記巻取温度が500℃未満であると、鋼板の全体または部分的にマルテンサイトが形成されてコイルの形状制御が難しいだけでなく、熱延鋼板の過度の強度上昇により後続する冷間圧延性が低下するという問題がある。一方、700℃を超過する場合には、粗大な炭化物が過度に形成され、熱間成形部材の応力発生時にクラック発生が促進されることから、耐衝突性が低下するおそれがある。
【0046】
この後、冷間圧延工程を行う。但し、冷間圧延の前に表面酸化物を除去するために、酸洗工程をさらに行うことができる。必要に応じて、冷間圧延を行わずに、めっきを行って熱間成形用の素地鋼板として用いられることができる。
【0047】
上記冷間圧延時の冷間圧下率は、所定の厚さを得るために行われるものであって、30~80%の圧下率で行うことが好ましい。
【0048】
上記のように準備された素地鋼板の表面にNiめっきを行う。上記Niめっきの一例として、Niフラッシュめっきを行うことができる。Niフラッシュめっきは、焼鈍前に行われる一種の電気めっき方式の一つであり、Ni電解液を用いて、電気めっき間の電流量などを調節することで行うものである。上記Niめっきは、素地鋼板の表面に150~2500mg/m2の付着量で行うことが好ましい。
【0049】
上記Niめっきで行われたNiめっき付着量は、150~2500mg/m2であることが好ましい。上記Niめっき付着量が150mg/m2未満の場合には、熱間成形のための熱処理でめっき層にNi濃化ができないため、本発明の効果を十分に発揮できず、2500mg/m2を超過する場合には、電気めっき間に過度の電流集中によって鋼板内部で局部的な未めっきが発生するだけでなく、Ni塗布のための電気めっき用溶液を過度に用いるなど製造原価の費用が過度に上昇するため、2500mg/m2以下で行うことが好ましい。一方、より好ましいNiめっき付着量は200~2000mg/m2が好ましい。
【0050】
上記Niめっきされた素地鋼板を連続焼鈍し、Al系めっきを行う。焼鈍時の焼鈍温度は740~860℃であることが好ましい。上記焼鈍温度が740℃未満の場合には、冷間圧延された組織の再結晶が十分に完了されないため、板状が不良になったり、めっき後の強度が高すぎたりして、ブランキング工程中に金型摩耗を生じる可能性がある。一方、860℃を超過する場合には、焼鈍工程中に表面酸化物の形成が促進されて、Al系めっき時にめっき表面に欠陥を引き起こすことがある。また、焼鈍熱処理時の雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましく、水素-窒素混合ガスなどを用いることができる。このとき、雰囲気ガスの露点温度(Dew point)は-75~-20℃であることが好ましい。上記露点温度が-75℃未満になるためには、露点温度制御のための付加設備が要求されるため、製造費用が上昇するという問題があり、-20℃を超過すると焼鈍中の鋼板の表面に焼鈍酸化物が形成されて未めっきなどの表面品質不良をもたらすことがある。
【0051】
上記焼鈍後にAl系めっきを行う。上記Al系めっきはアルミニウムまたはアルミニウム合金めっきを意味し、熱間成形用めっき鋼板に適用されるめっき層であれば、本発明にも制限なく適用することができる。
【0052】
上記Al系めっきはAl系めっき浴に浸漬して行うことが好ましく、好ましい一例として、上記めっき浴組成はシリコン(Si):6~12重量%、鉄(Fe):1~4重量%、残りはアルミニウム(Al)及び不可避不純物を含むことが好ましい。
【0053】
上記Al系めっき時のめっき付着量は片面当たり20~140g/m2であることが好ましい。片面当たりのめっき付着量が20g/m2未満では、所望の熱間成形部材の耐食性を確保し難い。一方、140g/m2を超過する場合には、過度のめっき付着量に応じた製造原価が上昇するだけでなく、めっき層を均一にコイルの全幅及び長さ方向にめっきすることが容易でない。
【0054】
次に、本発明の他の一態様である熱間成形部材について詳細に説明する。好ましい一例として、上記熱間成形部材は、上述した熱間成形用めっき鋼板を熱間成形して得ることができる。
【0055】
上記熱間成形部材は、素地鉄、及び上記素地鉄上に形成された合金めっき層を含み、上記合金めっき層は、その表面から15μmまでNi含有量を測定した結果、Ni含有量が最も高い地点(Nimax)におけるNi含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。上記Nimaxを確認する方法の一例としては、グロー放電分光法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDS)の結果から得られたグラフを分析して確認することができる。上記NimaxにおけるNi含有量が0.1重量%未満であると、Ni濃化層が十分に形成されず、熱間成形間の外部水素の吸蔵を効果的に妨げることができなくて、耐水素脆性を確保することが困難である。上記NimaxにおけるNi含有量は高いほど水素吸蔵を抑制する効果は高くなるが、その含有量が過度であると、Ni付着量の増加に伴う原価増加が懸念され、溶接時に環境問題が発生するおそれがあるため、0.75重量%を超過しないことが好ましい。
【0056】
上記合金めっき層は、上記Al系めっき層が熱間成形による加熱過程で、めっき層の成分、素地鉄などが相互反応して合金化されて得られた層として、本発明では上記合金めっき層について特に限定しない。
【0057】
一方、上記合金めっき層内にNi濃化層を含むことが好ましい。上記Ni濃化層を確認する方法は、様々な方法があり得る。好ましい一例として、上記合金めっき層の表面で部材の厚さ方向にグロー放電分光法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDS)を用いて導出された濃度プロファイルのグラフを用いることができる。上記濃度プロファイルグラフにおいて、Ni含有量が最も高い地点(Nimax)から上記部材の表面方向にグラフの傾きが0となる最初の地点(Nio)及び上記Nimaxから上記部材の深さ方向に上記Nioと同じ含有量を有する地点(Nio’)間の幅を上記Ni濃化層として規定することができる。
【0058】
図2は、下記実施例中の発明例3の熱間成形部材におけるNi含有量をGDS分析した濃度プロファイルグラフである。上記
図2から上記Nimax、Nio、Nio’を導出して、これからNi濃化層を確認することができる。
【0059】
上記Ni濃化層の厚さは特に限定されず、めっき、熱間成形時の熱処理条件などに応じて異なることができる。具体的な一例として、上記Ni濃化層の厚さは1~15μmであることが好ましい。上記Ni濃化層の厚さが1μm未満であると、十分な耐水素脆性の効果を確保することが困難であり、15μmを超過すると過度のNiフラッシュめっきを行う必要があり、原価増加及び溶接時の環境問題などを引き起こすことがある。
【0060】
上記熱間成形部材の拡散性水素量は0.3重量ppm以下であることが好ましい。上記熱間成形部材の拡散性水素量は、TDA(Thermal Desortion Analysis)装備を用いて測定が可能であり、具体的な方式としては約400℃まで20℃/sの昇温速度で昇温し、拡散性水素ピーク(peak)が十分に出るように時間を維持して拡散水素カーブ(curve)を測定し、このようなカーブを積分して得られた値である。
【0061】
熱間成形用めっき鋼板の素地鋼板と熱間成形部材の素地鉄とは、合金組成において差異は大きくないが、微細組織上に差異がある可能性があるため、これを区別することが好ましい。そこで、本発明においても、素地鋼板は熱間成形用めっき鋼板で用いられるものであり、熱間成形部材では素地鉄であると区別した。一方、熱間成形用めっき鋼板の素地鋼板の場合には、フェライト及びパーライト組織をなしているが、熱間成形を経て形成された熱間成形部材の素地鉄では、主相としてマルテンサイトが形成され、一部はベイナイトが形成されることができる。
【0062】
以下、本発明のまた他の一態様である熱間成形部材の製造方法について説明する。このために、素地鋼板、及び上記素地鋼板の表面に形成されたAl系めっき層を含み、上記Al系めっき層内のNi平均含有量は0.05~0.35重量%であるブランクを提供する。上記ブランクを提供するための一例として、上述した熱間成形用めっき鋼板を用いてブランクを製造することができる。
【0063】
上記提供されたブランクを、オーステナイト単相域の温度以上、より具体的にはAc3~975℃の温度範囲で加熱することが好ましい。上記加熱温度がAc3の温度未満では、二相域の区間による未変態されたフェライトの存在により強度及び耐衝突性を確保することが困難である。一方、加熱温度が975℃を超過すると、部材表面に過度の酸化物が生成して、スポット溶接性の確保が難しく、高い温度維持のための製造費用が上昇する。このように加熱されたブランクは、上記温度範囲に1~1000秒が維持することが好ましい。維持時間が1秒未満ではブランクの全体での均一な温度分布が難しく、位置別の材質偏差を引き起こすことがあり、1000秒を超過すると、表面に過度の酸化物生成によるスポット溶接性の確保が難しいだけでなく、部材の製造費用の増加を引き起こす可能性がある。上記Ar3は以下の式で導出することができる。
Ar3=902-255C+19Si-11Mn-5Cr[℃]
(上記C、Si、Mn、及びCrは各成分の含有量を意味する)
【0064】
上記加熱されたブランクをプレスに移送して成形及び冷却する工程を行う。このとき、冷却速度は20℃/s以上であることが好ましい。上記冷却速度が20℃/s未満であると、冷却中のフェライト相が導入されて結晶粒界に生成され、強度、耐衝突性などの物性を低下させることがある。上記ブランクの移送、成形及び冷却の過程は特に限定されず、熱間成形工法に対して通常的に活用されることをそのまま適用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解のためのものであり、本発明の権利範囲を解釈するためのものではない。
【0066】
(実施例)
まず、下記表1の鋼組成(単位は重量%である)を満たす鋼スラブを厚さ60mmに真空溶解して製造した。このとき、表1に記載されていない鋼組成の残りはFe及び不可避不純物である。このように準備された鋼スラブを1200℃に加熱して1時間維持した後に熱間圧延を行い、900℃の熱間圧延終了温度で仕上げ、600℃の温度で巻き取った。この後、冷間圧延を行って厚さ1.5mmの冷延鋼板を製造した。
【0067】
上記冷延鋼板に対してNiフラッシュ処理によりNiめっきを行った。この時、Niめっき量の付着量は表1に示した。上記Niフラッシュ処理は、Ni電解液を用いた電気めっきとして、電気めっき間の電流量を調節して上記付着量を調節した。
【0068】
上記Niフラッシュ処理された冷延鋼板を焼鈍し、Si9重量%、Fe2重量%、残りはAl及び不可避不純物を含むAl系めっき浴を用い、めっき温度約660℃で、めっき付着量は片面当たり75g/m2で行った。上記連続焼鈍は800℃の温度で行った。
【0069】
上記のように製造されためっき鋼板のAl系めっき層内に分布されたNiの平均含有量を測定して表2に示した。上述したように、Al系めっき層は、めっき層と濃度勾配層(Al系めっき層にFe含有量が80重量%以下になる地点まで)を含んで測定し、GDS850A(モデル名、LECO社製品)DC及びRF装備を用いてグロー放電分光法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDS)を活用して分析した。
【0070】
また、Ni電気めっき後のめっき密着性を調べるために、生産されためっき鋼板を目視で観察して鋼板から剥離された部位の長軸長さを測定し、下記の基準で評価及び表2に示した。
○:剥離された部位の長軸長が3mm以下
×:剥離された部位の長軸長が3mm超過
【0071】
上記めっき鋼板を用いてブランクを製造し、これを900℃に加熱し、6分間維持し、10秒内に金型に移送して成形及び冷却を進行した。このとき、冷却は20~40℃/sの冷却速度で冷却した。このように製造された熱間成形部材において、合金めっき層の表面から深さ方向に15μmまでNi含有量が最も高い地点(Nimax)のNi含有量を上記GDS分析してその結果を表2に示し、そして部材内の拡散性水素量を測定して同様に表2に示した。
【0072】
【0073】
【0074】
一方、
図1は、上記発明例1の熱間成形用めっき鋼板のAl系めっき層におけるFe及びNiの含有量をGDS分析したグラフである。また、
図2は、発明例1~3、比較例2の熱間成形部材における合金めっき層でのNi含有量をGDS分析したグラフである。
図3は、上記発明例1~8及び比較例1~2の熱間成形部材における合金めっき層でのNi最大含有量及び拡散性水素量を示したグラフである。
【0075】
上記実施例により得られた、上記表2及び
図1~4の結果から分かるように、本発明の範囲に属する発明例は、めっき鋼板で優れためっき密着性を有し、これを熱間成形したとき、優れた耐水素脆性を有することが分かる。
【0076】
しかし、本発明の範囲から外れて、Niフラッシュめっきをしないか、少なく行った比較例1及び2では熱間成形後で合金めっき層でも十分なNiが確保されず、本発明で要求される耐水素脆性を確保し難いことが分かった。
【0077】
一方、Niフラッシュめっき量を過度に行った比較例2及び3では耐水素脆性は確保することができるが、めっき時の鋼板内のバーニング現象により、未めっきが発生してめっき密着性に劣ることが確認できた。
【国際調査報告】